(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051824
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】収縮嵌めシール兼リテーナが設けられた回動サスペンションストッパ
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3232 20160101AFI20230404BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20230404BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
F16J15/3232 201
F16C33/78 Z
F16C19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022154118
(22)【出願日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】2110338
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】508275098
【氏名又は名称】エヌティエヌーエスエヌアール・ルルマン
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バウドゥ・アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ボノーデ・オレリアン
(72)【発明者】
【氏名】カンパール・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】プロイ-ソラリ・バンサン
【テーマコード(参考)】
3J006
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE25
3J006AE34
3J006AE41
3J006CA01
3J216AA02
3J216AA14
3J216AB02
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB04
3J216CB07
3J216CB13
3J216CC01
3J216CC15
3J216CC25
3J216CC33
3J216CC70
3J216EA09
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA63
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA63
3J701BA73
3J701FA13
3J701FA60
3J701GA01
(57)【要約】
【課題】カバーと下側支持体との間の密封や軸方向の保持を行い、製造公差が精密でない下側支持体にも使用可能で且つ下側支持体の軸方向成形にも対応可能なシールを備える、回動サスペンションストッパを提供する。
【解決手段】サスペンションストラット用の回動サスペンションストッパ10は、軸受18と、コイルばねの上側巻線部16を支承する支承面14および基準径方向に向いた環状の収縮嵌め対象面38,40を形成している下側支持体12と、収縮嵌め対象面38,40に離間対向して軸方向に延びる環状のスカート部46,48を有するカバー20と、本体部58,74、本体部58,74から環状のスカート部46,48に向かって前記基準径方向に突出した少なくとも1つの環状の密封リップ部64,80、および本体部58,74から収縮嵌め対象面38,40に向かって突出して収縮嵌め対象面38,40に収縮嵌めされた少なくとも第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌め弾性リップ部60,76を有するシール56,72と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションストラット用の回動サスペンションストッパ(10)であって、
-当該回動サスペンションストッパ(10)の基準軸(100)および上向き軸方向(200)を設定している、軸受(18)と、
-前記上向き軸方向(200)の軸方向反対側に向いてコイルばねの上側巻線部(16)を支承する支承面(14)、および基準径方向に向いた環状の収縮嵌め対象面(38,40)を形成している、下側支持体(12)と、
-前記下側支持体(12)と共同で前記軸受(18)の環状空間(300)を形成しているカバー(20)であって、前記収縮嵌め対象面(38,40)に離間対向して軸方向に延びる環状のスカート部(46,48)を有する、カバー(20)と、
-前記下側支持体(12)の前記収縮嵌め対象面(38,40)に取り付けられたシール(56,72)であって、本体部(58,74)、および当該本体部(58,74)から前記環状のスカート部(46,48)に向かって前記基準径方向に突出した少なくとも1つの環状の密封リップ部(64,80)を有する、シール(56,72)と、
を備える、回動サスペンションストッパ(10)において、前記シール(56,72)が、前記本体部(58,74)から前記収縮嵌め対象面(38,40)に向かって突出して前記収縮嵌め対象面(38,40)に収縮嵌めされた、少なくとも第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌め弾性リップ部(60,76)を有することを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)が、前記密封リップ部(64,80)の前記本体部との接合領域(66,82)から軸方向に離間位置した、前記本体部(58,74)との接合領域(62,78)から突出しており、好ましくは前記上向き軸方向(200)とは逆の軸方向に突出していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)が、前記本体部(58,74)から前記基準径方向とは逆の径方向に且つ前記上向き軸方向(200)に突出していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)の自由端部が、軸方向断面で、20°超の鋭角、好ましくは70°超ないし90°未満、好ましくは80°未満の鋭角を有する頂点部(400)を形成しており、当該頂点部の軸方向断面の二等分線が、前記上向き軸方向(200)に対して角度(500)、好ましくは10°超の角度(500)、好ましくは30°超の角度(500)を形成していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記カバー(20)が、前記環状のスカート部(46)から前記基準径方向とは逆の径方向に突出した少なくとも1つの保持係止部(54)を含み、前記密封リップ部(64,80)は、前記保持係止部(54)から前記上向き軸方向に離れて当該保持係止部(54)と径方向に部分的にオーバーラップしていることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記密封リップ部(64,80)は、V字の頂点部が前記上向き軸方向(200)に向いたV字状の軸方向断面を有していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記本体部(58,74)が、軸方向両側の2つの端面(68,70,84,86)、好ましくは環状の、好ましくは径方向に互いにオーバーラップしている軸方向両側の2つの端面(68,70,84,86)を有することを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)のうちの密封リップ部(64,80)の全体が、軸方向で、前記本体部(58,74)の前記軸方向両側の2つの端部(68,70,84,86)間に位置していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記下側支持体(12)が、軽金属材料の単一品であることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記収縮嵌め対象面(38,40)が、円筒状または略円筒状の包絡線を有していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)が、第1の環状の収縮嵌め弾性リップ部(60,76)、または前記基準軸回りにN次の回転対称性を有するN個からなる一列の第1のリップ部(60,76)で構成されており、Nは、2以上、好ましくは3以上の整数であることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記シール(56,72)が、前記第1のセットの前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60)から軸方向に離間位置した、少なくとも1つの第2のセットの1つ以上の第2の収縮嵌めリップ部(160)を有することを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項13】
請求項12に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記密封リップ部(64)が、前記カバーの前記環状のスカート部との摺接または何らかの接触の環状の領域を有しており、当該環状の領域が、軸方向で、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60)と前記収縮嵌め対象面(38)との収縮嵌め接触の領域と、前記1つ以上の第2の収縮嵌めリップ部(160)と前記収縮嵌め対象面(38)との収縮嵌め接触の領域との間に位置することを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項14】
請求項12または13に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部(60,76)が、前記シール(56)の第1の共通の円周にわたって分布した複数の第1の収縮嵌めリップ部(60)で構成されており、前記第2のセットの1つ以上の第2の収縮嵌めリップ部(160)が、前記シール(56)の第2の共通の円周にわたって分布した複数の第2の収縮嵌めリップ部(160)で構成されており、前記第2の収縮嵌めリップ部(160)は、前記第1の収縮嵌めリップ部(60)とオーバーラップしないことを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記下側支持体(12)が、前記収縮嵌め対象面(38,40)から前記基準径方向に延びていると共に前記上向き軸方向(200)に向いている環状の遷移面(42,44)を有しており、好ましくは、前記シール(56,72)は、当該遷移面(42,44)に環状に密封支承されており、好ましくは、静的な密封リップ部(68)または静的な密封ヒール部(68,84)を介して環状に密封支承されていることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記密封リップ部(64,80)が、前記環状のスカート部(46,48)に摺接していることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記基準径方向が、径方向外方の向きであり、好ましくは、前記スカート部(46)は、前記軸受(18)の径方向外側に配置されていることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の回動サスペンションストッパ(10)において、前記基準径方向は、径方向内方の向きであり、好ましくは、前記スカート部(48)は、前記軸受(18)の径方向内側に配置されていることを特徴とする、回動サスペンションストッパ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションのコイルばねの上側巻線部と同車両の車体との間のインターフェース部となる回動サスペンションストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
EP 3 626 486 A1(特許文献1)には、サスペンションストラット用の回動サスペンションストッパが記載されている。この回動サスペンションストッパは、コイルスプリングの上側巻線部の支承面を形成する下側支持体と、当該下側支持体に支持された軸受と、当該下側支持体と協働して同軸受の収容部を形成するカバーと、を備える。同カバーには、環状シールが収縮嵌めされている。同環状シールは、下側支持体に摺接することで上記軸受が設けられた収容部の保護シールを形成する、密封リップ部を有している。同シールは、さらに、下側支持体に形成された環状溝内へと径方向に凸設されることで車両への本回転ストッパの装着前の時点のカバーと下側支持体との一体性を確保する、ヒール部を有している。この解決手段は、下側支持体が、本回動ストッパの回転軸に対して径方向平面に移動可能な金型部での成形体からなる場合に適している。下側支持体が軸方向鋳造法で作製されたものである場合には、上記環状溝に機械加工を施す必要がある。これは、経済性の面から許容できない。しかも、下側支持体が金属材料からなる場合、上記密封リップ部との摺接面用に特定の仕上げを行う必要がある。
【0003】
WO 2021/018837(特許文献2)には、下側支持体が軸方向成形での金属材料からなるサスペンションストッパが開示されている。同文献では、回動ストッパのカバーと下側支持体との取付けを可能にするため、ころ軸受の下側ワッシャを当該下側支持体に収縮嵌めすると共に、当該下側ワッシャのフランジ部を上記カバーに形成された溝内に配置することが提案されている。この解決手段は、密封機能を具備せずに、車両への装着前の時点での回動ストッパの一体性を維持する機能のみを具備したものであるが、厳しい公差が要求されるだけでなく、下側支持体と軸受の下側ワッシャとの収縮嵌め界面部に大きな応力が生じるという短所を有している。FR 3101279 A1(特許文献3)では、上記カバーに摺接する密封リップ部を有するシールを上記下側支持体にオーバーモールド成形または収縮嵌めして密封機能を実現することが推奨されている。しかし、このようなシールのオーバーモールド成形や金型成形には、複雑な形状が要求される。
【0004】
EP3693625 A1(特許文献4)には、シール兼リテーナが備え付けられた回動サスペンションストッパが提示されている。同シール兼リテーナは、特定されていない何らかのかたちで下側支持体に固定されているシール本体部、およびカバーの円筒壁に摺接して密封機能を実現するリップ部を有する。カバーの上記円筒壁の端部には、当該リップ部と径方向にオーバーラップすることでカバーと下側支持体とを軸方向に確実に保持するビード部が設けられている。上記シール本体部は、下側支持体に対し、円筒状界面部と環状平坦界面部とに沿って表面接触している。本シールを下側支持体に固定するための解決手段の一つは、例えばFR 2 989 634 A1(特許文献5)に記載されているようなオーバーモールド成形である。理論的な解決手段としては、それ以外にも、収縮嵌めが挙げられる。しかし、この場合、下側支持体のうちの、上記シール本体部と接触する円筒状壁部分に、極めて厳しい製造公差が要求されることになる。これは、当該円筒状壁部分の円筒度の欠陥によって上記シール本体部を通じて上記密封リップ部に影響が生じ、それによって当該リップ部の密封性能や寿命が悪化しないようにするためである。また、本解決手段では、上記シールの断面が小さかったり収縮嵌めの余裕高さが低かったりするため、収縮嵌めを確実に制御する目的で、上記シールに高剛性の補強部を施す必要がある。
【0005】
その他にも、WO11103921 A1(特許文献6)から、下側支持体とカバーとの双方に対して可動に取り付けられたシールを備える回動サスペンションストッパが知られている。このシールは、カバーおよび下側支持体に向かって径方向に突出して当該カバーを当該下側支持体に対して軸方向に保持する保持手段を含む。しかし、得られる密封の質は十分なものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3626486号明細書
【特許文献2】国際公開第2021/018837号
【特許文献3】仏国特許出願公開第3101279号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3693625号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2989634号明細書
【特許文献6】国際公開第2011/103921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、先行技術の欠点を解消し、回動サスペンションストッパのカバーと下側支持体との密封、好ましくは軸方向の保持、を行う解決手段を提案すること、特には、製造公差が精密でない下側支持体にも使用可能で且つ下側支持体の軸方向成形にも対応可能な解決手段を提案することを目的としている。
【発明を解決するための手段】
【0008】
これを実行するために、本発明の第1の態様では、サスペンションストラット用の回動サスペンションストッパであって、
-当該回動ストッパの基準軸および上向き軸方向を設定している、軸受と、
-前記上向き軸方向の軸方向反対側に向いてコイルばねの上側巻線部を支承する支承面、および基準径方向に向いた環状の収縮嵌め対象面を形成している、下側支持体と、
-前記下側支持体と共同で前記軸受の環状空間を形成しているカバーであって、前記収縮嵌め対象面に離間対向して軸方向に延びる環状のスカート部を有する、カバーと、
-前記下側支持体の前記収縮嵌め対象面に取り付けられたシールであって、本体部、当該本体部から前記環状のスカート部に向かって前記基準径方向に突出した少なくとも1つの環状の密封リップ部、および前記本体部から前記収縮嵌め対象面に向かって突出して前記収縮嵌め対象面に収縮嵌めされた少なくとも第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌め弾性リップ部を有するシールと、
を備える、回動サスペンションストッパが提案される。
【0009】
前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部と前記収縮嵌め対象面との接触面の面積は、比較的小さいものとなっており、前記シール本体部が前記収縮嵌め対象面に面している表面積よりも大幅に小さい。これにより、組付けに大きな手間を要することなく、高い接触圧が得られるようになっている。前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部の弾性により、前記収縮嵌め対象面関係の製造公差が大きい場合にも、収縮嵌め圧を制御することが可能である。前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部と前記密封リップ部との間に介在する前記シール本体部により、前記密封リップ部と前記スカート部との摺接で前記収縮嵌め対象面上に円筒度欠陥が発生するのを抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部は、前記密封リップ部の前記本体部との接合領域から軸方向に離間位置した、前記本体部との接合領域から突出しており、好ましくは、前記上向き軸方向とは逆の軸方向に突出している。前記密封リップ部の接合領域と前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部の接合領域との間のこの軸方向距離により前記シール本体部の弾性変形能力が増大するので、前記収縮嵌め対象面の欠陥の前記密封リップ部への影響を限定的なものにし、同欠陥を吸収することが可能となる。
【0011】
好ましくは、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部は、前記本体部から前記基準径方向とは逆の径方向に且つ前記上向き軸方向に突出している。前記第1のセットの前記1つ以上の収縮嵌めリップ部のこの向きにより、前記下側支持体への前記シールの前記上向き方向とは逆の方向での強制挿入による組付けが容易となるほか、前記シールの前記上向き軸方向への収縮が妨げられる。
【0012】
極めて高性能な一実施形態において、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部の自由端部は、軸方向断面で、20°超の鋭角、好ましくは70°超ないし90°未満、好ましくは80°未満の鋭角を有する頂点部を形成しており、当該頂点部の軸方向断面の二等分線が、前記上向き軸方向に対して角度、好ましくは10°超の角度、好ましくは30°超の角度を形成している。これらの形状により、前記シールの前記上向き軸方向への耐収縮性を向上させることができる。
【0013】
極めて有利な一実施形態において、前記カバーは、前記環状のスカート部から前記基準径方向とは逆の径方向に突出した少なくとも1つの保持係止部を含み、前記密封リップ部は、前記保持係止部から前記上向き軸方向に離れて当該保持係止部と径方向に部分的にオーバーラップしている。これにより、前記シールは、前記車両への前記回動ストッパの装着前のあいだ前記カバーの密封保持機能を行う。
【0014】
一実施形態において、前記密封リップ部は、V字の頂点部が前記上向き軸方向に向いたV字状の軸方向断面を有している。この形状により、前記密封リップ部の優れた可撓性が確保されると共に、前記環状のスカート部との接触圧、つまり、前記カバーに対する前記下側支持体の前記回動ストッパの前記基準軸回りの相対回転に抗する引き摺りトルクについての制御が、確実に良好なものになる。
【0015】
一実施形態において、前記本体部は、軸方向両側の2つの端面、好ましくは環状の、好ましくは径方向に互いにオーバーラップしている軸方向両側の2つの端面を有する。これらの配置構成により、製造・輸送・取扱い時や回動ストッパへの装着に先立ち、前記シール同士を積み上げることが可能となる。
【0016】
一実施形態において、前記密封リップ部の全体は、軸方向で、前記本体部の前記軸方向両側の2つの端部間に位置している。同密封リップ部は、例えば組付け時や極端な使用条件等で顕著に変形したとしても、前記シール本体部に接触し、損傷のリスクなく当該シール本体部に乗り上がることができる。
【0017】
本発明は、前記下側支持体が軽金属材料の単一品であるサスペンションストッパに極めて適している。具体的に述べると、この下側支持体は、軸方向成形で、すなわち、アンダーカット形状用の横方向スライドバルブを要さず前記回動ストッパの前記基準軸と平行な並進により離れる2つの金型部間で製造することができる。一実施形態において、前記収縮嵌め対象面は、円筒状または略円筒状の包絡線を有している。ここで、「略円筒状」とは、シールの収縮嵌め領域の劣化を生むことなく前記下側支持体を軸方向に離型させることが可能な、製造公差内でクリアランス角が3°未満の表面のことを意味する。
【0018】
一実施形態において、前記収縮嵌め対象面は、前記上向き軸方向を基準として、前記支承面よりも軸方向上方に位置している。
【0019】
一実施形態において、前記第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部は、第1の環状の収縮嵌め弾性リップ部で構成されている。
【0020】
代替的な一実施形態において、前記第1のセットの1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部は、前記基準軸回りにN次の回転対称性を有するN個からなる一列の第1のリップ部で構成されており、Nは、2以上、好ましくは3以上の整数である。
【0021】
構成によっては、収縮嵌め時の前記シール本体部の変形制御として、前記基準軸と直交する複数の平面上に収縮嵌めリップ部を配置することが必要な場合がある。したがって、一実施形態では、前記シールが、前記第1のセットの前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部から軸方向に離間位置した、少なくとも1つの第2のセットの1つ以上の第2の収縮嵌めリップ部を有する。好ましくは、前記密封リップ部は、前記カバーの前記環状のスカート部との摺接または何らかの接触の環状の領域を有しており、当該環状の領域が、軸方向で、前記1つ以上の第1の収縮嵌めリップ部と前記収縮嵌め対象面との収縮嵌め接触の領域と、前記1つ以上の第2の収縮嵌めリップ部と前記収縮嵌め対象面との収縮嵌め接触の領域との間に位置する。アンダーカットなしでの前記シールの成形を可能にする一実施形態では、前記第1のセットが、前記シールの第1の共通の円周にわたって分布した複数の第1の収縮嵌めリップ部で構成されており、前記第2のセットが、前記シールの第2の共通の円周にわたって分布した複数の第2の収縮嵌めリップ部で構成されており、前記第2の収縮嵌めリップ部は、前記第1の収縮嵌めリップ部とオーバーラップしない。
【0022】
一実施形態において、前記下側支持体は、前記収縮嵌め対象面から前記基準径方向に延びていると共に前記上向き軸方向に向いている環状の遷移面を有しており、好ましくは、前記シールは、当該遷移面に環状に密封支承されており、好ましくは、静的な密封リップ部または静的な密封ヒール部を介して環状に密封支承されている。この環状の支承は、前記密封リップ部と前記カバーの前記環状のスカート部との間の動的な密封を完全なものにすることで前記下側支持体と前記カバーとの間の前記軸受の前記環状空間を保護する、静的なシールを構成している。
【0023】
一実施形態において、前記密封リップ部は、前記環状のスカート部に摺接している。変形例として、前記シールは、前記環状のスカート部に非接触なものとされてもよい。その場合の密封は、前記下側支持体の前記収縮嵌め対象面と前記カバーの前記環状のスカート部との間の空間の部分的な閉塞によるものとなる。前記環状のスカート部に保持係止部、好ましくは環状の保持係止部が設けられている場合には、必要に応じて、当該保持係止部が、前記シールに対して接触型のまたは非接触の突出リップ部によって密封に貢献するバッフル部を構成するものとされてもよい。
【0024】
一実施形態において、前記基準径方向は、径方向外方の向きであり、好ましくは、前記スカート部が、前記軸受の径方向外側に配置されている。
【0025】
一実施形態において、前記基準径方向は、径方向内方の向きであり、好ましくは、前記スカート部が、前記軸受の径方向内側に配置されている。
【0026】
一実施形態において、前記軸受は、前記カバーに対して定位置かつ環状の上側案内路、前記下側支持体に対して定位置かつ環状であり前記上側案内路に対向して設けられた下側案内路、および前記上側案内路と前記下側案内路との間に介在して前記上側案内路に対する前記下側案内路の前記回動ストッパの前記基準軸回りの回転を可能にする手段、を含む。当該手段は、例えば、滑り軸受の場合であれば前記上側案内路および前記下側案内路に摺接する潤滑油膜または環状パッドからなるものとされ得て、ころ軸受の場合であれば前記上側案内路および前記下側案内路で転動し適宜保持器に収められた転動体からなるものとされ得る。前記上側案内路は、前記カバーと一体にまたは前記カバー上のガイドワッシャ軸受に形成され得る。前記下側案内路は、前記下側支持体と一体にまたは前記下側支持体上のガイドワッシャ軸受に形成され得る。
【0027】
好ましくは、前記シール兼リテーナは、合成材料からなり、好ましくはプラスチック、特にはポリケトン(PK)またはポリオキシメチレン(POM)からなり、好ましくは補強部なしで同材料からなる。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら下記の開示内容を参酌することによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1の実施形態における、回動サスペンションストッパの軸方向半断面図である。
【
図2】
図1のストッパのうちの外側のシール兼リテーナの詳細斜視図である。
【
図3】
図1のストッパのうちの内側のシールの詳細斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態における、回動サスペンションストッパの軸方向半断面図である。
【
図5】
図4のストッパのうちのシール兼リテーナの詳細斜視図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態における、回動サスペンションストッパの詳細軸方向断面図である。
【
図7】
図6のストッパのうちのシール兼リテーナの詳細斜視図である。
【
図8】
図7の一変形例のシール兼リテーナの詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
分かり易いように、同じ参照符号は、全ての図で同一または同様の構成要素を指しているものとする。
【0031】
図1に、車両のサスペンションストラット用の回動ストッパ10を示す。回動ストッパ10は、コイルばねの上側巻線部16の支承面14を形成している下側支持体12と、下側支持体12に支持される軸受18と、下側支持体12と共同で軸受18の収容空間300を形成しているカバー20と、を備える。
【0032】
本例では、軸受18のことを、カバー20下に支承される上側ワッシャ22、下側支持体12上に支承される下側ワッシャ24、および上側ワッシャ22に形成された上側案内路30と下側ワッシャ24に形成された下側案内路32とで転動するように転がり保持器28に保持された転動体26を含むころ軸受として説明しているが、本発明はこれに限定されない。軸受18は、当該軸受18のうちの、回転ストッパ10の基準軸を構成する回転軸100回りの、上側案内路30と下側案内路32との間、つまり、カバー20と下側支持体12との間の相対回転運動を可能にする。軸受18は、さらに、基準軸100と平行な上向き方向200を設定しており、カバー20の下に当該軸受18が位置し、当該軸受18の下に下側支持体12の支承面14が位置している。前記車両への装着後、回動ストッパ10の基準軸100は、鉛直または傾いた状態になり得る。
【0033】
下側ワッシャ24は、下側支持体12のうちの、前記上向き軸方向に面した軸受面34に支承される。本実施形態において、軸受面34は、下側支持体12に形成されたコイルばね16用支承面14と径方向にオーバーラップして設けられている。下側支持体12の支承面14は、上向き軸方向200の軸方向反対側に向いていると共に、軸方向下方に突出する心合わせスカート部36が延設されている。下側支持体12は、さらに、径方向外方に面して軸受面34の径方向外側に位置した外側かつ環状の収縮嵌め対象面38、および径方向内側に面して軸受面34の径方向内側に位置した内側かつ環状の収縮嵌め対象面40を有する。これら2つの収縮嵌め対象面38,40は、円筒状であるかまたはあるクリアランス角の(外側の収縮嵌め対象面38であれば上向き方向に集束し、内側の収縮嵌め対象面40であれば下向き方向に集束するような)テーパ状、好ましくは5°未満のクリアランス角のテーパ状である。外側の収縮嵌め対象面38には、当該外側の収縮嵌め対象面38から径方向外方に延びて上向き軸方向200に面する外側かつ環状の遷移面42が延設されている。同様に、内側の収縮嵌め対象面40には、当該内側の収縮嵌め対象面40から径方向内方に延びて上向き軸方向200に面する内側かつ環状の遷移面44が延設されている。
【0034】
カバー20は、外側の収縮嵌め対象面38に離間対向する外側かつ環状のスカート部46、および内側の収縮嵌め対象面40に離間対向する内側かつ環状のスカート部48を有する。これにより、外側の収縮嵌め対象面38と外側のスカート部46との間には軸受18の収容空間300にアクセスするための外側かつ環状の通路50が形成され、内側の収縮嵌め対象面40と内側のスカート部48との間には軸受18の収容空間300にアクセスするための内側かつ環状の通路52が形成される。カバー20の2つのスカート部46,48のうちの一方のスカート部(本例では、外側のスカート部46)には、同スカート部から前記下側支持体に向かって径方向に突出した少なくとも1つの保持係止部が設けられ得る(本例では、外側のスカート部46の端部のビード部54の形態で形成されている)。
【0035】
外側かつ環状の通路50には、軸受18を外部の汚染から保護すると共に前記車両への回動ストッパ10の装着前の時点でのカバー20と下側支持体12との一体性を維持するように意図されたシール兼リテーナ56(以降、外側のシールと称する)が係合している。本実施形態では、
図2に詳細図示する外側のシール56が、インサートなしの合成材料の単一品からなり、かつ、環状の本体部58、本体部58との接合領域62から下側支持体12の外側の収縮嵌め対象面38に向かって突出する収縮嵌め弾性リップ部60、本体部58との接合領域66からカバー20の外側のスカート部46に向かって突出して当該カバー20の当該外側のスカート部46に摺接する密封リップ部64、および外側かつ環状の遷移面42に弾性当接するヒール部68を有している。
【0036】
本例において、収縮嵌め弾性リップ部60は、環状の略円錐台形状であり、かつ、収縮ばめ対象面38と寸法が干渉するものとされる。これにより、収縮ばめ弾性リップ部60は、回動ストッパ10組立時のカバー20取付けに先立ち、収縮嵌め対象面38に対して下向き方向に強制的に取付移動させられることで当該収縮嵌め対象面38に収縮嵌めされる。この取付移動を容易にする一方で外側のシール56が抜けないようにもするため、収縮嵌めリップ部60は、同外側のシールの本体部56から外側の収縮嵌め対象面38に向かって径方向に且つ上向き軸方向200に突出している。
【0037】
摺動密封リップ部64は、V字の頂点部が上向き軸方向200に向いたV字状の軸方向断面を有している。それと同時に、密封リップ部64のうちの、前記カバーの外側のスカート部46に接する自由端部は、当該外側のスカート部46の端部のビード部54により形成された係止部に向かって下向き軸方向に向いている。この形状により、カバー20は、下側支持体12と軸受18と外側のシール56とで構成される組立体へのスナップ固定によって容易に組み付けられる。また、組立後や前記車両への組付けまでにカバー20が抜けてしまうのを阻止するような弾性取付けが可能となる。
【0038】
前記シールの本体部58と密封保持リップ部64との接合領域66は、当該シールの本体部58と収縮嵌めリップ部60との接合領域62から軸方向に離間位置している。これにより、収縮嵌めリップ部60の収縮嵌め対象面38への収縮嵌め時の変形によってシール56素材に応力が発生しても、当該応力が同シールの本体部58に分散するので、密封保持リップ部64の著しい変形に繋がらない。第1の実施形態である本実施形態では、前記シールの本体部58と密封リップ部64との接合領域66が、上向き方向200を基準として、同シールの本体部58と収縮嵌めリップ部60との接合領域62よりも下方に位置している。
【0039】
本実施形態では、ヒール部68が、前記シールの本体部58の下端部に設けられており、下側支持体12に対する静的なシールを構成している。前記シールの上端部70は、収縮嵌めリップ部60や密封リップ部64よりも軸方向に突出している。よって、2つの各リップ部60,64の全体は、軸方向で、本体部58の軸方向両側の2つの端部68,70間に位置している。これにより、組付/組立時や使用時に一方のリップ部や他方のリップ部に大きな径方向応力が発生したとしても、同リップ部60,64は、前記シールの本体部58に乗り上がるように確実に制御可能なものとなる。また、前記シールの上端部70は、ヒール部68と径方向にオーバーラップしている。これにより、組付け前の複数のシール56を、入れ子状態になったり隣のシール同士のリップ部60,64が接触したりすることなく積み上げることが可能になる。
【0040】
また、
図3は、カバー20の内側のスカート部48と下側支持体12の内側の収縮嵌め対象面40とにより形成される内側かつ環状の通路52に位置した、第2のシール72(以降、内側のシールと称する)の詳細図である。この内側のシール72は、前述の外側のシール56と同様の構造をしており、本体部74、本体部74との接合領域78から下側支持体12の内側の収縮嵌め対象面40に向かって突出して当該収縮嵌め対象面40に収縮嵌めされる収縮嵌め弾性リップ部76、本体部78との接合領域82からカバー20の内側のスカート部48に向かって突出して当該内側のスカート部48に摺接する密封リップ部80、および内側かつ環状の遷移面44に弾性当接して当該内側かつ環状の遷移面44に静的なシールを形成するヒール部84を有する。2つのリップ部76,80の本体部74との接合領域78,82は互いに離間しており、かつ、これら2つのリップ部76,80の全体は、軸方向で、本体部74の軸方向端部84,86間に位置している。本実施形態では、内側のシール72に保持機能が与えられていない。しかし、当業者であれば、一変形例として、内側の収縮嵌め対象面40に向かって径方向に突出するビード部が内側のスカート部48の下端部に設けられてもよいことが分かるであろう。これにより、下側支持体12と内側のシール72とで構成される仮組立体に対し、カバー20の弾性取付けが行われることになる。つまり、条件に応じて、2つのシールのうちの一方のシール(外側のシール56または内側のシール72)のみ、あるいは、両方のシールに保持機能を実現することが可能である。
【0041】
図4および
図5の実施形態は、内側のシールが設けられていない点、さらには、上向き方向200を基準として本体部58と密封リップ部64との接合領域66が本体部56と収縮嵌めリップ部60との接合領域62よりも上方に離間位置しているという外側のシール56の構造が、前述のものと異なる。係止部として機能するビード部54についても、密封保持リップ部64との所望のクリアランスを維持するために位置が移動している。
【0042】
図6および
図7の実施形態は、外側のシール56の構造が、前述のものと異なる。密封リップ部64の形状が、略円錐台形状に変化していると共に、前記静的な密封ヒール部が、環状の遷移面42に載った弾性リップ部168に置き換えられている。さらに、外側の収縮嵌め対象面38への外側のシール56の収縮嵌めが、軸方向に互いに離間位置した2つの環状の収縮嵌めリップ部60,160によって行われている。
【0043】
図6に詳細に示すように、2つの各収縮嵌めリップ部60,160の自由端部は、前記収縮嵌め対象面に収縮嵌めされる前の軸方向断面で、20°超の鋭角400、好ましくは70°超ないし90°未満、好ましくは80°未満の鋭角400を有する頂点部を形成しており、当該頂点部の軸方向断面の二等分線が、上向き軸方向200に対して角度500、好ましくは10°超の角度500、好ましくは30°超の角度500を形成している。
【0044】
2つの収縮嵌めリップ部のうちの第1の収縮嵌めリップ部60は、前記シールの本体部58との接合領域62が、密封リップ部64の当該シールの当該本体部58との接合領域66よりも下方に離間位置している。密封リップ部64のうちの、前記カバーの環状のスカート部46に摺接するかまたは何らかのかたちで接触する自由端部は、軸方向で、第1の収縮嵌めリップ部60と収縮嵌め対象面38との収縮嵌め接触領域と、第2の収縮嵌めリップ部160と収縮嵌め対象面38との収縮嵌め接触領域との間に位置している。
【0045】
このようにして得られたシールは、収縮嵌めの機械強度の面で優れた特性を有する。しかし、アンダーカット形状の存在により、シールの回転軸と平行に並進移動可能な金型部を有する金型での同シールの成形は、妨害を受けることになる。
【0046】
図8の変形例は、2つの環状の収縮嵌めリップ部ではなく、2つのセットの複数の収縮嵌めリップ部、つまり、前記基準軸回りにN次の回転対称性を有するN個からなる第1の列の第1のリップ部60を構成している第1のセット、および前記基準軸回りにN次の回転対称性を同じく有するN個からなる第2の列の第2のリップ部160を構成している第2のセットを提供し、当該第2のリップ部160を第1のリップ部60に対してオフセットさせてこれら第1のリップ部と第2のリップ部との間に、例えば、360°/(2N)の角度にわたってオーバーラップが生じないようにすることによって、上記の問題への解決策を提示している(なお、Nは、2以上、好ましくは3以上の整数である)。
【0047】
図示・前述した例は、例示目的のものに過ぎない。それ以外の実施形態、具体的には、説明した各実施形態の構成同士を組み合わせてなる実施形態も想定可能である。具体的に述べると、
図1~
図5の実施形態の環状の収縮嵌めリップ部60,76が、
図8に示すような列を構成する収縮嵌めリップ部のセットに置き換えられてもよい。どの実施形態についても、
図6に示す収縮嵌めリップ部60,160の外形状を採用することが可能である。シール兼リテーナについて説明した内容は、密封機能のみを有するシールに適合化されてもよい。前記回動サスペンションストッパに加わる力の大きさや方向に応じて、シール56,72は、対応する環状のスカート部46,48に恒久的に摺接するものとされてもよいし、あるいは、間欠的に摺接するものとされてもよい。また、シール56,72が、対応する環状のスカート部46,48に対して通常の動作条件下では摺接しないようにすることも想定可能であり、この場合の密封は、スカートリング部46,48とシール56,72のうちの当該スカートリング部46,48に直に対峙する領域との間に形成されたラビリンスによって確保される。外側のシールについて説明した内容は、内側のシールに置き換えてもよいし、その逆も然りである。また、軸受18は、転がり軸受、滑り軸受といったどのような種類のものであってもよく、案内路30,32は、取り付けられるワッシャ22,24に形成されたものであってもよいし、カバー20と下側支持体12とに直接形成されたものであってもよい。環状のビード部54は、関係するスカート部46,48の円周にわたって分布して前記収縮嵌め対象面に向かって径方向に突出する1つ以上の係止部に置き換えられてもよい。1つ以上の収縮嵌めリップ部60,160と密封リップ部64,80との機械的な非連結性を強化するために、当該リップ部よりも高剛性の材料からなる環状の高剛性補強部をシール56,72に設けることも可能である。
【外国語明細書】