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特開2023-51846モールド、モールドの製造方法および微細凹凸構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051846
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】モールド、モールドの製造方法および微細凹凸構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20230404BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20230404BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C59/02 B
B29C59/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155327
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021162075
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 大貴
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 俊一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F209
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AF01
4F202AG05
4F202CA19
4F202CB02
4F202CC07
4F202CD02
4F202CD22
4F202CD23
4F202CD24
4F202CD30
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH73
4F209AJ09
4F209AJ11
4F209PA02
4F209PA03
4F209PB01
4F209PB02
4F209PQ03
4F209PQ11
(57)【要約】
【課題】優れた離型性及び転写性を得ることができるモールド、モールドの製造方法および微細凹凸構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】モールド1は、表面に微細凹凸構造を有する基材10と、微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜21を有するスパッタ層20とを備える。最表面に酸化膜21を有するスパッタ層20を有することにより、優れた離型性及び転写性を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細凹凸構造を有する基材と、
前記微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜を有するスパッタ層と
を備えるモールド。
【請求項2】
前記スパッタ層が、Cr、Ni、Cu、HfO、Ti、Ta、Al、Mo、及び、Siからなる群より選ばれる1種からなる請求項1記載のモールド。
【請求項3】
前記スパッタ層は、最表層側の酸化度と基材側の酸化度が異なることを特徴する請求項1又は2記載のモールド。
【請求項4】
前記スパッタ層の平均表面粗さが、1.0nm以下である請求項1又は2記載のモールド。
【請求項5】
前記スパッタ層の厚みが、30nm以下である請求項1又は2記載のモールド。
【請求項6】
前記酸化膜の厚みが、10nm以下である請求項1又は2記載のモールド。
【請求項7】
前記微細凹凸構造の深さが、300nm以上である請求項1又は2記載のモールド。
【請求項8】
基材の表面に微細凹凸構造を形成する工程と、
前記微細凹凸構造の表面に、最表面に酸化膜を有するスパッタ層を形成する工程と
を有するモールドの製造方法。
【請求項9】
前記酸化膜を空気酸化により形成する請求項8記載のモールドの製造方法。
【請求項10】
表面に微細凹凸構造を有する基材と、前記微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜を有するスパッタ層とを備えるモールドを用いて、前記微細凹凸構造を硬化性樹脂に転写し、前記硬化性樹脂を硬化させる微細凹凸構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、転写用のモールド、モールドの製造方法および微細凹凸構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外光を利用したセンシング・測距・形状認識を兼ねた、センサー、カメラなどのデバイス開発が進む中、可視光だけでなく近赤外光の受光感度を高めるべく、デバイス内のカバーガラスなどで可視光~近赤外光まで低反射率を示す反射防止膜が必要とされている。
【0003】
図10は、多層スパッタ膜(Multi layer AR)、モスアイ(Moth-eye)、及びガラス(Bare Glass)の反射率(Reflectance)を示すグラフである。反射防止膜の代表例である多層スパッタ膜は、特定波長以外の波長において、反射率が極端に高くなる傾向がある。一方、モスアイ(微細凹凸構造体)は、連続的に反射スペクトルが変化する傾向がある。そのため、可視光~近赤外光といった広帯域の反射防止膜は、モスアイの方が実現しやすい。
【0004】
図11は、従来のモスアイの形成方法の一例を模式的に示す断面図であり、図11(A)は、基板フィルム上に光硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図11(B)は、光硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、光硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図11(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。モスアイの形成方法の代表例として、UV(Ultraviolet)ナノインプリントが挙げられる。UVナノインプリントは、モールド101である金型上のパターンを、基材102上のUV硬化性樹脂103に型押しし、UV光を照射し樹脂を硬化させ、パターンを転写することで基材102上にモスアイ104を作製する方法である。金型の表面には、転写時に金型から基材が離型し易いように、フッ素系有機離形剤をWetコーティングすることで、フッ素膜の離型層が設けられる(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
しかしながら、フッ素系有機離形剤をWetコーティングする場合、金型のアスペクト比が高くなると、金型の凹部に有機離形剤が埋まり易くなる。このため、形を保ったまま金型の凹凸構造を転写する転写性が低下し、モスアイ104の反射防止特性も悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-207221号公報
【特許文献2】特開2016-026122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、優れた離型性及び転写性を得ることができるモールド、モールドの製造方法および微細凹凸構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術に係るモールドは、表面に微細凹凸構造を有する基材と、前記微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜を有するスパッタ層とを備える。
【0009】
本技術に係るモールドの製造方法は、基材の表面に微細凹凸構造を形成する工程と、前記微細凹凸構造の表面に、最表面に酸化膜を有するスパッタ層を形成する工程とを有する。
【0010】
本技術に係る微細凹凸構造体の製造方法は、表面に微細凹凸構造を有する基材と、前記微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜を有するスパッタ層とを備えるモールドを用いて、前記微細凹凸構造を光硬化性樹脂に転写し、前記光硬化性樹脂を硬化させる。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、最表面に酸化膜を有するスパッタ層を有することにより、優れた離型性及び転写性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施の形態に係るモールドの一例を模式的に示す断面図である。
図2図2(A)は、微細凹凸構造の深さが200nmである転写物の一例を示す断面写真であり、図2(B)は、微細凹凸構造の深さが320nmである転写物の一例を示す断面写真である。
図3図3は、微細凹凸構造の深さが200nmである転写物及び微細凹凸構造の深さが320nmである転写物の反射率Re(%)の一例を示すグラフである。
図4図4は、本実施の形態に係る微細凹凸構造体の製造方法の一例を模式的に示す断面図であり、図4(A)は、基板フィルム上に光硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図4(B)は、光硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、光硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図4(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。
図5図5は、転写物を製造する転写装置の構成の一例を示す模式図である。
図6図6は、実施例の転写物の作製方法の一例を模式的に示す断面図であり、図6(A)は、基板フィルム上に紫外線硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図6(B)は、紫外線硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、紫外線硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図6(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。
図7図7は、実施例1、実施例2、及び実施例3のモールドの平坦部分のESCAによる深さ方向の組成変化を示すグラフである。
図8図8は、実施例1、実施例2、及び実施例3のモールドの微細凹凸構造部分のESCAによる深さ方向の組成変化を示すグラフである。
図9図9は、実施例1、実施例3、及び比較例1の転写サンプルの反射率を示すグラフである。
図10図10は、多層スパッタ膜(Multi layer AR)、モスアイ(Moth-eye)、及びガラス(Bare Glass)の反射率(Reflectance)を示すグラフである。
図11図11は、従来のモスアイの形成方法の一例を模式的に示す断面図であり、図11(A)は、基板フィルム上に光硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図11(B)は、光硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、光硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図11(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.モールド
2.モールドの製造方法
3.微細凹凸構造体の製造方法
4.実施例
【0014】
<1.モールド>
図1は、本実施の形態に係るモールドの一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係るモールド1は、表面に微細凹凸構造を有する基材10と、微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜21を有するスパッタ層20とを備える。最表面に酸化膜21を有するスパッタ層20を有することにより、優れた離型性及び転写性を得ることができる。
【0015】
モールド1は、例えば、直押し方式、ロールツーロール(roll-to-roll)方式のインプリントに用いられる原盤であり、繰り返し使用可能なものである。モールド1の微細凹凸構造を被転写材に押し当てることにより、モールド1の微細凹凸構造の反転構造が転写物に形成される。
【0016】
[基材]
基材10は、例えば、平板形状であっても、内部に空洞を有する中空の円筒型形状の部材であっても、内部に空洞を有さない中実の円柱型形状の部材であってもよい。基材10が円筒型形状又は円柱型形状であることにより、ロールツーロール(roll-to-roll)方式のインプリントに用いることができる。基材10が円筒型形状又は円柱型形状である場合、高さ(軸方向の長さ)は100mm以上であることが好ましく、底面又は上面の円の直径(軸方向と直交する径方向の外径)は50mm以上300mm以下であることが好ましい。また、基材10が円筒型形状の場合、径方向の厚み(肉厚)は2mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0017】
基材10の一面(基材10が円筒型形状である場合は、基材10の外周面)の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、微細凹凸構造の凹凸の高低差の1/100以下とすることが好ましく、1/10000以下とすることがより好ましい。基材10の一面の表面粗さは、小さければ小さいほどよいが、基材10の加工限界の観点から、微細凹凸構造の凹凸の高低差の1/10000を下限としてもよい。これにより、微細凹凸構造の形成性を向上させることができる。
【0018】
基材10としては、溶融石英ガラス、合成石英ガラス、耐熱ガラス、白板ガラス、強化ガラス等のガラス材料、PET(PolyEthylene Terephthalate)、PC(PolyCarbonate)等の樹脂材料、各種セラミック材料などを用いることができる。また、基材10として、AlN、C、SiC、Siなどを用いることも可能である。
【0019】
微細凹凸構造は、基材10の一面に設けられ、レーザ光による熱リソグラフィを用いて形成されたものであっても、UV硬化性樹脂を硬化させるUVナノインプリントを用いて形成されたものであってもよい。微細凹凸構造をガラス材料で形成することにより、高い耐腐食性を得ることができる。
【0020】
微細凹凸構造は、複数の凹部又は凸部が規則的又は不規則的に配列された構造である。微細凹凸構造は、例えば、複数の凹部又は凸部の平面形状の大きさの平均が可視光帯域に属する光の波長以下であってもよく、複数の凹部又は凸部の互いの間隔の平均が可視光帯域に属する光の波長以下となるように、複数の凹部又は凸部を規則的又は不規則的に配置した構造であってもよい。
【0021】
例えば、凹部又は凸部の平面形状の大きさ及び間隔の平均は、1μm未満であってもよく、好ましくは100nm以上350nm以下であってもよい。凹部又は凸部の平面形状の大きさ及び間隔の平均が上記範囲内である場合、微細凹凸構造は、可視光帯域に属する光の反射を抑制する、いわゆるモスアイ構造として機能することができる。一方、凹部又は凸部の平面形状の大きさ及び間隔の平均が100nm未満である場合、微細凹凸構造の形成が困難となることがある。また、凹部又は凸部の平面形状の大きさ及び間隔の平均が350nmを超える場合、可視光の回折が生じ、モスアイ構造としての機能が低下する可能性がある。
【0022】
また、微細凹凸構造の深さは、100nm以上1000nm以下であってもよく、微細凹凸構造の深さの下限は、好ましくは300nm以上、より好ましくは400nm以上、さらに好ましくは500nm以上である。これにより、波長400~1000nm(可視光線~近赤外線の波長帯域)において、低い反射率を得ることができる。微細凹凸構造で反射率を低く抑えることによって、転写物である光学体をセンサーに用いた際、通常の画像イメージングに用いられる可視光領域だけでなく、位置、空間認識等のセンシングに用いられる近赤外領域においても、反射の抑制が可能となるため、ゴーストやフレアの発生を抑えることができ、ひいては受光効率の向上が期待できる。微細凹凸構造の深さは、凹部の底から凸部の頂点までの距離の平均であり、例えば5箇所以上の凹凸高を測定し、平均を算出することで得ることができる。
【0023】
微細凹凸構造のアスペクト比は、0.81~1.46の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.94~1.28の範囲である。アスペクト比が0.81未満であると反射特性および透過特性が低下する傾向にあり、アスペクト比が1.46を超えると光学素子の作製時において剥離特性が低下し、転写後の剥離の際に微細凹凸構造が破損する傾向がある。ここで、微細凹凸構造のアスペクト比は、エッチングにより形成されたパターンの深さと凹部又は凸部の間隔の平均、若しくは凹部又は凸部の平面形状の大きさの平均の比であり、間隔又は大きさの平均が小さく深さが大きいほどアスペクト比が高くなる。換言すれば、アスペクト比は、以下の式(1)により定義することもできる。
アスペクト比=H/P (1)
式(1)において、Hは微細凹凸構造の深さ(又は、微細凹凸構造の高さ)であり、Pは微細凹凸構造の平均配置ピッチ(平均周期)である。
【0024】
図2(A)は、微細凹凸構造の深さが200nmである転写物の一例を示す断面写真であり、図2(B)は、微細凹凸構造の深さが320nmである転写物の一例を示す断面写真である。また、図3は、微細凹凸構造の深さが200nmである転写物及び微細凹凸構造の深さが320nmである転写物の反射率Re(%)の一例を示すグラフである。図2及び図3に示すように、微細凹凸構造の深さを320nmとすることにより、波長780nm以上の赤外線の波長域において、低い反射率を得ることができる。
【0025】
また、凹部又は凸部の平面形状は、略円形状、楕円形状、又は多角形状のいずれであってもよい。また、微細凹凸構造における凹部又は凸部の配置は、最密充填配置、四方格子状配置、六方格子状配置、又は千鳥格子状配置のいずれであってもよい。微細凹凸構造が転写された転写物が奏する機能に応じて、当該配置を適宜選択することができる。
【0026】
[スパッタ層]
スパッタ層20は、スパッタリングにより形成された、緻密で欠陥の少ない精密な膜である。スパッタ層20の平均表面粗さ(Ra)は、好ましくは1.0nm以下、より好ましくは0.8nm以下、さらに好ましくは0.6nm以下である。これにより、優れた離型性及び転写性を得ることが可能となる。スパッタ層の平均表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて、スパッタ層の平坦部分を測定することにより計測することができる。
【0027】
スパッタ層20の厚みは、3nm以上30nm以下であってもよく、スパッタ層20の厚みの上限は、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。これにより、微細凹凸構造の形を保ったまま転写する転写性を向上させることができる。スパッタ層の厚みは、触針式の表面粗さ計による段差測定により計測することができる。
【0028】
スパッタ層20は、スパッタリング可能であり、最表面に酸化膜を形成可能である成膜材料であれば、特に限定されるものではなく、金属、合金、金属酸化物などで構成される。例えば、スパッタ層は、Cr、Ni、Cu、HfO、Ti、Ta、Al、Mo、及び、Siからなる群より選ばれる1種からなることが好ましい。これにより、モールドと転写物との優れた離型性を得ることができる。
【0029】
スパッタ層20は、最表層側の酸化度と基材側の酸化度が異なっていてもよい。すなわち、スパッタ層20は、最表面の酸化膜21の酸化度とスパッタ層20の内部の酸化度が異なっていてもよい。スパッタ層20の酸化度は、例えば、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により測定した酸素結合割合とすることができる。
【0030】
酸化膜21は、スパッタ層20の最表面に形成されたスパッタ層20の一部であり、例えば酸化膜21の酸素の結合割合がスパッタ層20の内部よりも大きいものであっても、酸化膜21の酸素の結合割合がスパッタ層20の内部と同じであってもよい。酸素結合割合は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により測定することができる。酸化膜21の酸素の結合割合がスパッタ層20の内部と同じである場合、例えば、スパッタ層20が金属酸化物である場合、最表面から深くなっても金属と酸素との結合割合が同じである。
【0031】
酸化膜21の酸素の結合割合がスパッタ層20の内部と同じである場合、酸化膜21の厚みは、スパッタ層20の厚みと同じであってもよい。また、酸化膜21の酸素の結合割合がスパッタ層20の内部よりも大きいものである場合、酸化膜21の厚みは、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。酸化膜21の厚みは、ESCAにより深さ方向の組成変化に基づいて測定することができる。例えば、スパッタ層20が金属である場合、最表面から深くなると金属と酸素との結合割合が連続的に減少し、所定深さで一定の結合割合になり、その所定深さを酸化膜21の厚みとすることができる。また、酸化膜21の厚み2nmにおける酸素の結合割合は、微細凹凸構造部分において、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。これにより、モールドと転写物との優れた離型性を得ることができる。
【0032】
<2.モールドの製造方法>
本実施の形態に係るモールドの製造方法は、基材の表面に微細凹凸構造を形成する工程(A)と、微細凹凸構造の表面に、最表面に酸化膜を有するスパッタ層を形成する工程(B)とを有する。これにより、優れた離型性及び転写性を有するモールドを得ることができる。
【0033】
[工程(A)]
工程(A)では、レーザ光による熱リソグラフィを用いても、UV硬化性樹脂を硬化させるUVナノインプリントを用いてもよい。以下では、レーザ光による熱リソグラフィを用いて、円筒基材の外周表面に微細凹凸構造を形成する方法について説明する。
【0034】
この微細凹凸構造の形成方法は、円筒基材の外周表面にレジスト層を成膜するレジスト成膜工程と、レジスト層に潜像を形成する露光工程と、潜像が形成されたレジスト層を現像する現像工程と、現像されたレジスト層のパターンをマスクとしてエッチングし、円筒基材の外周表面に微細凹凸構造を形成するエッチング工程とを有する。
【0035】
(レジスト成膜工程)
先ず、例えば石英ガラスである円筒基材の外周面にレジスト層を成膜する。レジスト層の材料としては、例えば有機系レジスト、又は無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、タングステン、モリブデンなどの1種または2種以上の遷移金属からなる金属酸化物を用いることができる。
【0036】
(露光工程)
次に、露光装置を用いて、円筒基材を回転させると共に、レーザ光(露光ビーム)をレジスト層に照射する。このとき、レーザ光を円筒基材の高さ方向(中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザ光を間欠的に照射することにより、レジスト層を全面に亘って露光する。これにより、レーザ光の軌跡に応じた潜像が、例えば、可視光波長と同程度のピッチでレジスト層の全面に亘って形成される。
【0037】
(現像工程)
次に、レジスト層を現像することで、潜像に対応するパターンをレジスト層に形成する。例えば、レジスト層が無機系レジストで形成される場合、TMAH(TetraMethylAmmonium Hydroxide:水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液などのアルカリ系溶液によって、レジスト層を現像することができる。
【0038】
(エッチング工程)
次に、微細凹凸構造に対応するパターンが形成されたレジスト層のパターン(レジストパターン)をマスクとして、円筒基材の表面をエッチング処理する。これにより、円筒基材の表面に微細凹凸構造を形成することができる。エッチングの方法としては、フッ化炭素ガスを用いたドライエッチング、又はフッ化水素酸等を用いたウェットエッチングを用いてもよい。ドライエッチングを用いることにより、レジスト層の3倍以上の深さ(選択比3以上)のガラスマスターを作製することができ、微細凹凸構造の高アスペクト比化を図ることができる。また、エッチング後、残存しているレジスト層を除去するために、アッシング処理を行ってもよい。以上により、円筒基材の外周表面に微細凹凸構造を形成することができる。
【0039】
[工程(B)]
工程(B)では、例えば、DC(直流)電源又はRF(高周波)電源のスパッタリングにより、微細凹凸構造の表面にスパッタ層を成膜する。次に、スパッタ層が金属又は合金である場合、スパッタ層の表面を酸化させる。スパッタ層表面の酸化方法としては、常温空気中に晒す自然酸化を用いることが好ましい。これにより、優れた離型性及び転写性を有するモールドを得ることができる。これは、スパッタ層表面の酸化により結晶構造が変化し、緻密で欠陥が少なくなった可能性が考えられる。
【0040】
<3.微細凹凸構造体の製造方法>
本実施の形態に係る微細凹凸構造体の製造方法は、表面に微細凹凸構造を有する基材と、微細凹凸構造の表面に形成され、最表面に酸化膜を有するスパッタ層とを備えるモールドを用いて、微細凹凸構造を光硬化性樹脂に転写し、光硬化性樹脂を硬化させる。これにより、モールドの微細凹凸構造の形を保ったまま微細凹凸構造が転写された転写物を得ることができる。
【0041】
図4は、本実施の形態に係る微細凹凸構造体の製造方法の一例を模式的に示す断面図であり、図4(A)は、基板フィルム上に光硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図4(B)は、光硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、光硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図4(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。
【0042】
先ず、図4(A)に示すように、基板フィルム2上に後述する光硬化樹脂組成物からなる光硬化性樹脂層3を形成する。基材フィルム2としては、例えばPETを挙げることができる。次に、図4(B)に示すように、モールド1の基材表面に設けられた微細凹凸構造を光硬化性樹脂層3に押し当て、メタルハライドランプ等により光硬化性樹脂層3に照射する。これにより、光硬化性樹脂組成物を硬化させ、基板フィルム2上に微細凹凸構造を転写させた転写層4を形成する。そして、図4(C)に示すように、モールド1を転写層4から離型させることにより、転写物である微細凹凸構造体を得ることができる。
【0043】
[具体例]
次に、具体例として、ロールツーロール(roll-to-roll)方式のインプリントについて説明する。
【0044】
図5は、転写物を製造する転写装置の構成の一例を示す模式図である。この転写装置は、円筒形状の原盤11と、基体供給ロール31と、巻き取りロール32と、ガイドロール33,34と、ニップロール35、剥離ロール36と、塗布装置37と、光源38とを備える。
【0045】
基材供給ロール31は、例えば、シート状基材41がロール状に巻かれたロールであり、巻取ロール32は、微細凹凸構造12が転写された樹脂層42を積層した転写物を巻き取るロールである。また、ガイドロール33、34は、転写前後で、シート状基材41を搬送するロールである。ニップロール35は、樹脂層42が積層されたシート状基材41を原盤11に押圧するロールであり、剥離ロール36は、微細凹凸構造12を樹脂層42に転写した後、樹脂層42が積層されたシート状基材41を原盤11から剥離するロールである。
【0046】
塗布装置37は、コーターなどの塗布手段を備え、光硬化樹脂組成物をシート状基材41に塗布し、樹脂層42を形成する。塗布装置37は、例えば、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、またはダイコーターなどであってもよい。また、光源38は、光硬化樹脂組成物を硬化可能な波長の光を発する光源であり、例えば、紫外線ランプなどであってもよい。また、光源38は、原盤11の外周の外側に配置してもよく、原盤11が透明である場合、円筒内に配置してもよい。
【0047】
光硬化性樹脂組成物は、所定の波長の光が照射されることによって硬化する樹脂である。具体的には、光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂であってもよい。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとを包含する。また、光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、フィラー、機能性添加剤、溶剤、無機材料、顔料、帯電抑制剤、または増感色素などを含んでもよい。
【0048】
転写装置では、まず、基材供給ロール31からガイドロール33を介して、シート状基材41が連続的に送出される。送出されたシート状基材41に対して、塗布装置37により光硬化樹脂組成物が塗布されることで、シート状基材41に樹脂層42が積層される。また、樹脂層42が積層されたシート状基材41は、ニップロール35によって原盤11に押圧される。これにより、原盤11の外周面に形成された微細凹凸構造12が樹脂層42に転写される。微細凹凸構造12が転写された樹脂層42は、光源38からの光の照射により硬化される。これにより、微細凹凸構造12の反転構造が樹脂層42に形成される。微細凹凸構造12が転写されたシート状基材41は、剥離ロール36により原盤11から剥離され、ガイドロール34を介して巻取ロール32に送出され、巻き取られる。このような転写装置によれば、原盤11の外周面に形成された微細凹凸構造12を転写した転写物を効率良く連続的に製造することができる。
【実施例0049】
<4.実施例>
本実施例では、UVナノインプリントにより、フィルム基材上にモスアイ(微細凹凸構造)を形成したモスアイフィルムを作製し、モスアイフィルムの微細凹凸構造にスパッタ層を成膜し、モールドを作製した。そして、モールドを用いて微細凹凸構造を紫外線硬化樹脂に転写し、離型性評価、及び光学特性評価を行った。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[モスアイフィルムの作製]
円筒形状の石英ガラスにて構成された基材の外周面に、スパッタ法でタングステン酸化物を約50nm~60nm成膜し、レジスト層を形成した。次に、露光装置を用いて、
レーザ光の照射位置を基材の軸方向に移動させながら、レーザ光による熱リソグラフィを行い、レジスト層に潜像を形成し、露光を行った。ここで、レーザ光の出力を制御する制御信号を変調させることにより、レジスト層に所定の潜像を形成した。
【0051】
続いて、TMAH2.38質量%水溶液(東京応化工業製)を用いて、露光後の基材を現像処理することにより、潜像部分のレジスト層を溶解させ、レジスト層に凹凸構造を形成した。次に、現像後のレジスト層をマスクにして、CHFガス(30sccm)を用いて、ガス圧0.5Pa、投入電力150Wにて反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行い、基材を30分間エッチングした。その後、残存したレジスト層を除去し、外周面に深さが約320nmの微細凹凸構造が形成された原盤Aを製造した。また、同様にして、外周面に深さが約500nmの微細凹凸構造が形成された原盤Bを製造した。
【0052】
そして、転写装置を用いて、原盤A又は原盤Bの微細凹凸構造を基材フィルム上に形成された紫外線硬化性樹脂層に転写し、メタルハライドランプにより1000mJ/cmの紫外線を1分間照射して紫外線硬化性樹脂層を硬化させ、モスアイフィルムを作製した。基材フィルムとして、PET(東洋紡製 PET A4360、厚み125μm)を用いた。原盤Aを用いたモスアイフィルムの微細凹凸構造は、ピッチが150~230nm、深さが約320nmであった。また、原盤Bを用いたモスアイフィルムの微細凹凸構造は、ピッチが150~230nm、深さが約500nmであった。
【0053】
[離型性評価]
図6は、実施例の転写物の作製方法の一例を模式的に示す断面図であり、図6(A)は、基板フィルム上に紫外線硬化性樹脂層を形成する工程を説明するための図であり、図6(B)は、紫外線硬化性樹脂層にモールドの微細凹凸構造を転写し、紫外線硬化性樹脂層を硬化させる工程を説明するための図であり、図6(C)は、転写物からモールドを離型させる工程を説明するための図である。
【0054】
モールドサンプル51の微細凹凸構造をフィルム基材52(東洋紡製 PET A4360、厚み50μm)に形成された紫外線硬化性樹脂層53にUVインプリントし、転写物サンプル54を作製した。そして、転写物サンプル54を25mm幅で切り出し、図6(C)に示すように、転写物サンプル54を固定、モールドサンプル51をクランプして、90度剥離試験(JIS Z 0237 :2009に準拠)を行い、剥離力(N)を測定した。
【0055】
紫外線硬化性樹脂層は、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、東洋ケミカルズ株式会社製「Miramer M200」)を39質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、東洋ケミカルズ株式会社製「Miramer M300」)を24質量部、ジシクロペンタニルメタクリレート(昭和電工マテリアル株式会社製「FA-513M」)を34質量部、及び光重合開始剤(IGM Resins B.V.製「イルガキュア184」)を3質量部含む光硬化性樹脂組成物からなる層である。
【0056】
[光学特性評価]
モールドサンプルの微細凹凸構造をスライドガラス上に形成された紫外線硬化性樹脂層にUVインプリントし、転写サンプルを作製した。転写サンプルの背面に黒テープを貼り合わせた後、分光反射測定器(日本分光製、V770)を用いて、微細凹凸構造の波長400~1000nm(可視光線~近赤外線の波長帯域)の反射率(%)を測定した。
【0057】
[実施例1]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、11日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価及び光学特性評価を行った。表1に示すように、実施例1の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.08Nであり、優れた離型性が得られた。
【0058】
図7は、実施例1、実施例2、及び実施例3のモールドの平坦部分のESCAによる深さ方向の組成変化を示すグラフであり、図8は、実施例1、実施例2、及び実施例3のモールドの微細凹凸構造部分のESCAによる深さ方向の組成変化を示すグラフである。
【0059】
図7及び図8に示すCr-Oの結合割合の変化から、実施例1、実施例2、及び実施例3のモールドの空気酸化による酸化膜は約3nmであった。また、図8に示す微細凹凸構造部分において、酸化膜の厚み2nmにおける酸素の結合割合は、微細凹凸構造部分において、66.1%であった。また、図8に示す微細凹凸構造部分は、空気酸化放置日数が3日以上でCr-Oの結合割合が高くなることが分かった。また、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて、実施例1のモールドの平坦部分の平均表面粗さ(Ra)を測定したところ、0.58nmであった。
【0060】
図9は、実施例1、実施例3、及び比較例1の転写サンプルの反射率を示すグラフである。図9に示すように、実施例1の転写サンプルの波長800nmにおける反射率は0.70%であり、優れた転写性が得られた。
【0061】
[実施例2]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、3日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価及び光学特性評価を行った。表1に示すように、実施例2の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.16Nであり、優れた離型性が得られた。
【0062】
[実施例3]
深さ320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、1日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価及び光学特性評価を行った。
【0063】
図9に示すように、実施例3の転写サンプルの波長800nmにおける反射率は0.80%であった。また、表1に示すように、実施例3の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.24Nであり、優れた離型性が得られた。
【0064】
[実施例4]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりSiからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、11日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価及び光学特性評価を行った。表1に示すように、実施例4の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.49Nであり、優れた離型性が得られた。また、実施例4の転写サンプルの波長800nmにおける反射率は0.88%であり、優れた転写性が得られた。
【0065】
[比較例1]
フッ素膜をコーティングし易くするため、深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりSiからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、11日間、常温空気中に晒した後、酸素プラズマ処理し、フッ素離型剤(スリーエム製、Novec1720)をコーティングし、モールドを作製した。そして、フッ素離型剤コーティング1日後に離型性評価及び光学特性評価を行った。表1に示すように、比較例1の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.10Nであった。また、図9に示すように、比較例1の転写サンプルの波長800nmにおける反射率は0.92%であった。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1~4は、比較例1のようにフッ素離型剤コーティングを行わずに、スパッタ層を成膜することにより、形を保ったままモールドの微細凹凸構造を転写することができ、低い反射率を得ることができた。また、実施例1~4によれば、90度剥離試験の剥離力が0.5N以下であれば、0.90%以下の反射率を得ることができた。よって、以下では、離型性評価のみ行い、光学特性評価を省略することとする。
【0068】
[実施例5]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み5nmのスパッタ層を成膜し、11日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表2に示すように、実施例5の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.10Nであり、優れた離型性が得られた。
【0069】
[実施例6]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、CrをRF(高周波)電源のスパッタリングにより厚み25nmのスパッタ層を成膜し、11日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表2に示すように、実施例6の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.10Nであり、優れた離型性が得られた。
【0070】
[実施例7]
深さが約500nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み5nmのスパッタ層を成膜し、6日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表2に示すように、実施例7の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.26Nであり、優れた離型性が得られた。
【0071】
[実施例8]
深さが約500nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、6日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表2に示すように、実施例8の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.27Nであり、優れた離型性が得られた。
【0072】
[実施例9]
深さが約500nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCrからなる厚み25nmのスパッタ層を成膜し、6日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表2に示すように、実施例9の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.27Nであり、優れた離型性が得られた。
【0073】
【表2】
【0074】
[実施例10]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりNiからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価行った。表3に示すように、実施例10の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.08Nであり、優れた離型性が得られた。
【0075】
[実施例11]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりCuからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例11の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.11Nであり、優れた離型性が得られた。
【0076】
[実施例12]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりHfOからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例12の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.15Nであり、優れた離型性が得られた。
【0077】
[実施例13]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりTiからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例13の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.21Nであり、優れた離型性が得られた。
【0078】
[実施例14]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりTaからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例14の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.22Nであり、優れた離型性が得られた。
【0079】
[実施例15]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりAlからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例15の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.23Nであり、優れた離型性が得られた。
【0080】
[実施例16]
深さが約320nmの微細凹凸構造を有するモスアイフィルムに、RF(高周波)電源のスパッタリングによりMoからなる厚み15nmのスパッタ層を成膜し、14日間、常温空気中に晒し、モールドを作製した。そして、離型性評価を行った。表3に示すように、実施例16の転写サンプルからモールドサンプルを剥離する剥離力は0.40Nであり、優れた離型性が得られた。
【0081】
【表3】
【符号の説明】
【0082】
1 モールド、10 基材、11 原盤、12 微細凹凸構造、20 スパッタ層、21 酸化膜、31 基体供給ロール、32 巻き取りロール、33,34 ガイドロール、 35 ニップロール、36 剥離ロール、37 塗布装置、38 光源、41 シート状基材、42 樹脂層、51 モールドサンプル、52 フィルム基材、53 紫外線硬化性樹脂層、54 転写物サンプル、101 モールド、102 基材、103 UV硬化性樹脂、104 モスアイ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11