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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051878
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】豆腐の製造保存方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20230404BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23L11/45 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157785
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021161908
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521429225
【氏名又は名称】エコスペースジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】大島 政治
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB02
4B020LC07
4B020LR10
(57)【要約】
【課題】豆腐の製造保存方法であって、溶存気体を除去した水を豆腐製造用水として用いることで、製造された豆腐を包装容器内に封入した後に加熱殺菌を行うことなく、包装容器内の菌の繁殖を可及的に抑制し消費期限を延長することができる豆腐の製造保存方法を提供する。
【解決手段】溶存気体を除去した水を豆腐製造用水として、豆腐製造に係る水と接触する浸漬工程、摩砕工程及び切り出し工程のすべての工程に用いると共に、包装容器内部に豆腐製造用水を満たし、豆腐を浸漬させた状態で封入することにより課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器への封入後に加熱殺菌を行わずとも長い消費期限の設定が可能となる豆腐の製造保存方法であって、
溶存酸素を除去した水を豆腐製造用水として、
豆腐製造に係る水と接触する浸漬工程、摩砕工程及び切り出し工程のすべての工程に用いると共に、
包装容器内部に前記豆腐製造用水を満たし、
豆腐を浸漬させた状態で封入することを特徴とする豆腐の製造保存方法。
【請求項2】
水に含まれる溶存酸素を除去した前記豆腐製造用水を生成する製造用水生成装置を備えた豆腐製造装置であって、
前記製造用水生成装置は、溶存酸素を含む水を貯留する水タンクと、
前記水タンクに貯留された水から溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、
前記溶存酸素除去装置により生成された前記豆腐製造用水に含まれる溶存酸素量を計測する溶存酸素計測装置と、
前記豆腐製造用水を貯留する製造用水タンクと、
より構成したことを特徴とする豆腐の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器への封入したのち、加熱殺菌を行わずとも消費期限を長く設定することが可能となる豆腐の製造保存方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、商店等で販売される豆腐には、充填豆腐と絹ごし豆腐と木綿豆腐とがある。充填豆腐は、大豆から得た豆乳を冷却したのち凝固剤と共に包装容器内部に充填及び封入され、加熱凝固させ製造を行う。この充填豆腐は、包装容器に封入された後で加熱を行うため加熱殺菌がなされ、消費期限を長く設定することができる利点がある。
【0003】
対して、絹ごし豆腐と木綿豆腐とは、大豆から得た豆乳を型へ流し込み型内部に凝固剤を投入することで凝固させたのち、包装容器の大きさに合わせて切り出され、保存水と一緒に包装容器内部に封入される。このように包装容器に封入された後で加熱を行わない豆腐を生豆腐と呼び、充填豆腐よりも風味や食感に優れている。しかしながら、包装容器に封入した後で加熱を行わないために味の劣化が速く、消費期限が短くなる欠点があった。
【0004】
その欠点を鑑みて、消費期限を延ばすために、包装容器に封入した後で加熱殺菌を行う方法が一般に行われている。この豆腐はボイル豆腐と呼ばれ、消費期限が長くなるものの、加熱する際に豆腐の味が共に封入された保存水へ逃げてしまったり、豆腐自体の食感が悪くなったりする虞がある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されているように、製造された豆腐を溶存酸素が1mg/L以下に脱酸素処理された水に浸漬させると共に、包装容器への封入時に一緒に入れる水にも溶存酸素が1mg/L以下に脱酸素処理された水を用いることにより、加熱殺菌を行わずに好気性細菌の繁殖を可及的に抑制し、消費期限を延長する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-83760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された豆腐の製造方法は、脱酸素処理装置を備えた冷却装置により、脱酸素処理された冷却水に製造された豆腐を浸漬させたのち、該脱酸素処理された水と一緒に豆腐を包装容器内部に封入させる方法について記載されている。
【0008】
この方法によれば、豆腐を脱酸素処理された冷却水に浸漬させることにより、豆腐に含まれる水分を脱酸素処理された水へ置換し、更に脱酸素処理された水と豆腐を包装容器に一緒に封入することにより、容器内部の酸素量を低減させることで加熱殺菌を行わずに消費期限を延長させることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の方法では、豆腐に含まれる酸素量を低減するには不十分であると云える。すなわち、従来行われている豆腐の製造方法は、その過程に酸素を豆腐に含ませてしまう虞のある工程が多く存在する。そのため、豆腐内に含まれた酸素を脱酸素処理された水に浸漬させることで内部に含まれた水を完全に置換することができるとは云い難い。
さらに、豆腐の酸化は、消費期限に直接影響を及ぼさないものの、風味の劣化を招くものであり、特許文献1に記載された方法で消費期限は延長されたとしても、味の劣化までは防ぐことができるものではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、溶存酸素を除去した水を豆腐製造用水として、豆腐製造に係る水と接触する浸漬工程、摩砕工程及び切り出し工程のすべての工程に用いると共に、包装容器内部に豆腐製造用水を満たし、その包装容器内部に豆腐を浸漬させた状態で封入することで、包装容器に封入された豆腐の酸素量を低減すると共に、酸素との接触を減らし酸化を防止する豆腐の製造保存方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、溶存酸素を含む水を貯留する水タンクと、水タンクに貯留された水から溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、溶存酸素除去装置により生成された豆腐製造用水に含まれる溶存酸素量を計測する溶存酸素計測装置と、豆腐製造用水を貯留する製造用水タンクと、より構成した製造用水生成装置を備えたことで、水に含まれる溶存酸素を取り除き大豆の加工から豆腐の包装までの全ての工程で酸化を防止することのできる豆腐の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本発明に係る豆腐の製造方法及び保存方法は、溶存酸素を除去した水を豆腐製造用水として、豆腐製造に係る水と接触する浸漬工程、摩砕工程及び切り出し工程のすべての工程に用いると共に、包装容器内部に豆腐製造用水を満たし、豆腐を浸漬させた状態で封入することを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る豆腐の製造装置は、溶存酸素を含む水を貯留する水タンクと、水タンクに貯留された水から溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、溶存酸素除去装置により生成された豆腐製造用水に含まれる溶存酸素量を計測する溶存酸素計測装置と、豆腐製造用水を貯留する製造用水タンクと、より構成した製造用水生成装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る豆腐の製造保存方法によれば、溶存酸素を除去した水を豆腐製造用水として豆腐の製造に用いると共に、その豆腐製造用水に豆腐を浸漬させた状態で包装容器に封入することにより、豆腐及び豆腐を封入した包装容器内部の酸素量を低減させて、好気性細菌の繁殖を可及的に抑制し、加熱殺菌を行わずとも豆腐の消費期限を延ばすことができる。
【0015】
また、製造工程に用いる水として溶存酸素を除去した豆腐製造用水とすることで、製造時に酸素との接触を減らし酸化を防止することができ、豆腐の風味が劣化することを可及的に防止し風味や食感を長期間保つことができる。
【0016】
また、包装容器内に豆腐を封入した後に加熱殺菌せずに消費期限を延長することが可能となることにより、加熱殺菌に要するエネルギーと加熱後の冷却に要するエネルギーを大幅に減らすことができると共に、ランニングコストの削減も可能となる。
【0017】
請求項2に係る豆腐の製造装置によれば、水に含まれる溶存酸素を除去した豆腐製造用水を生成し、その豆腐製造用水を用いて大豆加工を行う装置や豆腐を包装する装置に供給させて豆腐の製造及び包装を行うことにより、製造過程において酸素との接触を最小限とし、豆腐の風味や食感を長期間保つことができる豆腐を製造することができると共に包装容器内部で好気性細菌が繁殖することを抑制させることができる。
【0018】
また、水に含まれる溶存酸素を除去することで生成された豆腐製造用水の溶存酸素量を計測することで、溶存酸素が確実に除去されていることを目視で確認することができ、豆腐製造における酸素との接触を減らすことに寄与することができる。
【0019】
また、請求項1及び請求項2に記載された豆腐製造保存方法及び製造装置によれば、豆腐製造から保存までに酸素との接触を低減させることで豆腐の酸化や好気性細菌の繁殖を防止することと、上述した方法を実現するために溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と溶存酸素の除去が確実に行われているかを確認する溶存酸素計測装置とを備えた豆腐の製造装置を提供することにより、加熱殺菌を行わずとも消費期限を長く設定することができ、食の安全を確保するために設けられたHACCPの認証を受けることができる。
【0020】
上述したように、包装容器に包装された豆腐を加熱殺菌する必要がなくなり、豆腐製造の省エネルギー化を図ることができることから、持続可能な開発目標(SDGs)のうち食品ロス問題やエネルギー消費による環境問題に関連する「つくる責任つかう責任」及び「気候変動に具体的な対策を」に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る豆腐の製造方法及び保存方法の手順を説明するフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る豆腐製造装置の全体像を示すための模式的説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る摩砕装置の構成を示すための模式的説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る切り出し装置から包装装置までの搬送部分を示した模式的説明図である。
図5】他の実施形態に係る豆腐の製造方法及び保存方法の手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の要旨は、溶存酸素を除去した水を豆腐製造用水として、豆腐製造に係る水と接触する浸漬工程、摩砕工程及び切り出し工程のすべての工程に用いると共に、包装容器内部に豆腐製造用水を満たし、豆腐を浸漬させた状態で封入することにある。
【0023】
また、豆腐の製造装置において、溶存酸素を含む水を貯留する水タンクと、水タンクに貯留された水から溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置と、溶存酸素除去装置により生成された豆腐製造用水に含まれる溶存酸素量を計測する溶存酸素計測装置と、豆腐製造用水を貯留する製造用水タンクと、より構成した製造用水生成装置を備えたことにも特徴を有する。
【0024】
[1.豆腐の製造方法及び保存方法]
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る豆腐の製造方法及び保存方法の一実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、本実施形態では、凝固させたのち切り出しを行う絹ごし豆腐の製造を例として説明しているが、豆腐を絞り上げ形成する木綿豆腐についても同じように製造することができる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る大豆から豆腐を製造するまでの方法と製造後の豆腐の保存方法との手順を説明するフロー図である。
【0026】
本実施形態に係る豆腐の製造保存方法は、図1のステップ1~ステップ9に示すように、主に大豆に水を含ませ柔らかくする軟化工程S1と、軟化した大豆の水を切る水切り工程S2と、水を切った大豆を加水しながら粉砕する摩砕工程S3と、摩砕して得た生呉を煮沸する加熱工程S4と、加熱して得た煮呉からおからと豆乳とを分離させる抽出工程S5と、抽出して得た豆乳に凝固剤を投入し凝固させる凝固工程S6と、豆乳を凝固させて生成した豆腐を水に浸漬させて切る切り出し工程S7と、切り出した豆腐を包装容器内に封入する封入工程S8と、包装容器内に封入した豆腐を保存に適した温度まで下げる冷却工程S9と、からなる。
【0027】
以下、本実施形態に係る豆腐の製造保存方法手順ステップ1~ステップ9について具体的に説明する。また、本実施形態に係る豆腐の製造保存方法に用いる豆腐製造用水SWは、溶存酸素を除去した水である。豆腐製造用水SWを生成する際の溶存酸素の除去方法としては、水中の溶存酸素を窒素やアルゴン等の不活性ガスに置換して行う。また、水中に不活性ガスを送り込むバブリング方式を用いてもよいが、密封容器中に不活性ガスを満たし、その中に水を通過せることで溶存酸素を不活性ガスと置換させる方法が好ましい。
【0028】
ステップ1である軟化工程S1は、大豆を豆腐製造用水SWに浸漬させることにより、水を含ませて柔らかくする工程である。具体的には、大豆浸漬用タンク内に豆腐製造用水SWを満たし、その内部に大豆を漬け込むことで行う。浸漬にかかる時間は、大豆が収穫された後の経過時間や気候により変動するが、例えば夏期(7月~9月)では11時間ほど、冬期(11月~2月)では18時間ほど浸漬させる。
【0029】
この時、従来製法の軟化工程のように、溶存酸素が多く含まれた水を用いると、大豆に含まれる酵素(大豆タンパク質)が活性状態となり酸化する。しかしながら、溶存酸素を除去し生成された豆腐製造用水SWを軟化工程S1に用いることで、大豆に含まれる酵素(大豆タンパク質)の活性を可及的に抑え、酸化を防止することができる。
【0030】
また、この軟化工程S1は、豆腐製造用水SWを入れた大豆浸漬用タンクによって行うことで豆腐製造用水SWに酸素が溶け込むことを防止しているが、この大豆浸漬用タンクを上部開口の水槽で行ってもよい。その際には、水槽内の豆腐製造用水SWに酸素が溶け込まないように、定期的に新たな豆腐製造用水SWに交換したり、窒素等の不活性ガスを注入したりすることでより酸化を防止することができる。
【0031】
特に、大豆を浸漬させる水槽の下部より常に豆腐製造用水SWを注ぎ続け、水槽から豆腐製造用水SWが零れるようにすることが好ましい。すなわち、空気の触れない水槽下部より豆腐製造用水SWを入れ続け、水槽をオーバーフローさせることにより常に水槽内の豆腐製造用水SWが新鮮なものとなるようにすることができる。したがって、ステップ1である軟化工程S1において、より大豆と酸素が接触する機会を与えないようにすることができる。また、この軟化工程S1の前に豆腐製造用水SWに浸漬させる大豆の薄皮を剥離させてもよい。
【0032】
ステップ2である水切り工程S2は、豆腐製造用水SWにより軟化された大豆の表面に付着した水を除去する工程である。大豆に付着した豆腐製造用水SWは、溶存酸素を除去した水であるが、溶存酸素を除去した水は刺激が加わることで気体が溶け込みやすい性質のため、豆腐製造用水SWから取り出した大豆に付着した水分、すなわち余剰水は確実に取り除く必要がある。そのため、ステップ2の水切り工程S2では、軟化した大豆を豆腐製造用水SWから取り出し遠心分離機を用いて確実に水切りを行う。このように確実に大豆に付着した余剰水を除去することで、大豆の酸化を可及的に抑制することができる。
【0033】
この水切り工程S2を終えた大豆は表面に付着した水は確実に除去しつつ内部の含水率を30~40%ほどとしている。また、本実施形態では遠心分離機を用いて水切りを行っているが、水切りの方法は余剰水を確実に除去できるものであればどのような方法であってもよく、例えば笊を用いて行う方法や乾いた布巾で表面をふき取る方法等どのような方法であってもよい。
【0034】
ステップ3である摩砕工程S3は、水を切った後の大豆を加水しながら粉砕する工程である。この工程により生呉と呼ばれる豆乳とおからの元となる状態にする。この摩砕工程S3における加水には、溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWを用いる。すなわち、大豆を粉砕する際に摩擦熱による大豆たんぱく質の活性や熱変性が行われないように加える水を、溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWとすることにより摩砕工程S3での大豆の酸化を抑制することができる。
【0035】
具体的な摩砕工程S3の方法としては、水切り工程S2により余剰水を十分に除去した大豆を大豆摩砕用のグラインダーに投下し、豆腐製造用水SWを加えながら行う。この加水は、グラインダーの刃による摩擦熱で大豆に含まれる大豆たんぱく質が熱変性を起こさないように行われる。また、摩砕工程S3において大豆を粉砕するための手段としてグラインダーを用いるとしているが、大豆を細かく粉砕することができればどのような手段であってもよい。また、軟化工程S1の前に大豆の薄皮を取り除かない場合は、この摩砕工程S3により種子と同時に粉砕される。
【0036】
ステップ4である加熱工程S4は、摩砕工程S3により得た生呉を加熱することで大豆タンパク質を熱変性させる工程である。具体的には、摩砕工程S3で得た生呉を80℃~100℃の温度で煮沸させる。このとき、生呉に含まれる水分は、ステップ3の摩砕工程S3で加水した豆腐製造用水SWであることから、生呉を酸化させることなく煮沸させることができる。また、生呉の煮沸時には、大豆に含まれる大豆サポニンの界面活性効果により泡が発生する。この泡は、通常の豆腐製造方法のように溶存酸素を多く含んだ水で煮沸した場合では、水の中に含まれる酸素と結びつき大量に発生することとなる。
【0037】
しかしながら、本実施形態に係る生呉は上述した方法により含有する酸素量が少ないため、大豆サポニンによる泡の発生を最小限とすることができる。このサポニンにより煮沸時に発生する泡が大量である場合では、煮こぼれを起こしたり、泡を残した状態で豆腐に加工した場合に食感を悪くしたりする虞がある。そのため泡を消す消泡剤を投入する必要がある。消泡剤は、人が食しても身体への害はないものの、風味が低下したり、大豆サポニンを消失させたりする。しかしながら、本実施形態では発生する泡が少ないため消泡剤の投入を最小限に抑えることができる。
【0038】
この加熱工程S4により、大豆タンパク質を熱変性させることで煮呉と呼ばれる状態にし、煮呉をおからと豆乳とに分離して、得た豆乳に後述する凝固工程S6において凝固剤を加えることで豆腐にすることができる。この加熱工程S4の生呉の加熱方法としては、生呉を80℃~100℃で加熱させることができる方法であればどのような方法であってもよいが、例えば、オートクレイブ処理が可能な加熱方法とすることで、発生した飽和水蒸気により鍋内部が高温高圧状態となり滅菌効果が得られると共に、低酸素状態となりより酸化を抑制することができる。
【0039】
ステップ5である抽出工程S5は、加熱工程S4により得た煮呉を豆乳とおからとに分離する工程である。具体的な分離方法としては、加熱工程S4により得た煮呉をメッシュにより濾すことで豆乳とおからとを分離させる。また、この豆乳とおからとに分離する方法としてメッシュを用いた方法としているが、豆乳とおからとに分離させることができればどのような方法であってもよく、例えば布巾に包み加熱した粉砕大豆を絞るようにして行ったり、スクリュー式の絞り機によって絞るようにして行ったりしてもよい。
【0040】
ステップ6である凝固工程S6は、抽出工程S5で得られた豆乳に凝固剤を投入して凝固させる工程である。具体的には、抽出工程S5で抽出した豆乳を、ステンレス製の型に流し込み凝固剤を投入する。豆乳は、抽出工程S5の前工程である加熱工程S4において生呉を加熱することで大豆タンパク質の熱変性が行われることにより、凝固剤による凝固が確実に行われる。
【0041】
ここで使用される凝固剤は、塩化マグネシウム(にがり)や硫酸カルシウム等の金属塩を用いる方法又はグルコノデルタラクトンや葛粉を用いる方法であってもよい。また、塩化カリウムと硫酸マグネシウムとを混合したもののように、複数の凝固剤を混合したものを用いてもよい。また、この凝固剤は通常時に粉末状であり、豆乳の中へ投入される際には、豆腐製造用水SWにより溶かして作られる凝固液として豆乳に投入されることが好ましい。型枠に流し込んだ豆乳に凝固剤を投入し、10分~30分ほどの時間で豆乳が完全に固まり豆腐とすることができる。
【0042】
上述してきたように、大豆は豆腐へ加工が完了されるまでに酸素と必要以上に触れることの無い製造方法として、溶存気体を除去した豆腐製造用水SWを用いてすべての工程が行われることで、製造工程での大豆の酸化を防ぎ大豆本来の味を生かした品質の高い豆腐を製造することができる。
【0043】
ステップ7の切り出し工程S7は、上述してきた豆腐の製造方法において製造した豆腐を、水を張った水槽内に浸漬させて切り出す工程である。具体的には、水槽内に溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWを満たし、その水槽内に凝固工程S6により豆乳を凝固させ製造された豆腐を型の中から取り出し浸漬させる。浸漬させた豆腐を水槽内で水に晒しながら包装容器の大きさに合わせて切り出す。さらに、水槽内で切り出した豆腐は、同じ水槽内部で上部開口の包装容器内に収納される。
【0044】
この切り出し工程S7は、溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWで満たした水槽内に豆腐を浸漬させつつ切り出すことにより、酸素と触れることがなく豆腐の酸化を防止することができる。さらに、水槽内部で包装容器内に収納されることで収納容器内部に豆腐と一緒に豆腐製造用水SWが収納されることとなり、次の工程である封入工程S8に移行する際にも豆腐が酸素と接触することを防止することができる。また、この豆腐製造用水SWはステップ1の軟化工程S1と同様に、豆腐製造用水SWに気体が溶け込まないように、定期的に新たな豆腐製造用水SWに交換したり、窒素等の不活性ガスを注入したりするとより酸化を防止することができる。
【0045】
特に本実施形態では、大豆を浸漬させる水槽の下部より常に豆腐製造用水SWを注ぎ続け、水槽から豆腐製造用水SWが零れるようにしている。すなわち、空気の触れない水槽下部より豆腐製造用水SWを入れ続け、水槽をオーバーフローさせることにより常に水槽内の豆腐製造用水SWが新鮮なものとなるようにしている。そうすることで、ステップ7である切り出し工程S7において、常に溶存酸素を除いた豆腐製造用水SWに触れた状態で豆腐が所定の大きさにカットされ、豆腐と酸素との接触の機会を与えないようにすることができる。
【0046】
ステップ8である封入工程S8は、切り出し工程S7により切り出された豆腐を収納した包装容器の上部開口を密閉状態で封入する工程である。この時、上部開口に蓋をする前に包装容器の上部開口から新たな豆腐製造用水SWを投入し、元々包装容器内部に収納されていた豆腐製造用水SWと交換する。このようにすることで、豆腐は販売時や保存時に常に溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWに浸漬されることとなり酸化することなく味の劣化を防止することができると共に、包装容器内の酸素量を低減させ好気性細菌の繁殖を抑制することができる。
【0047】
具体的には、上部開口の容器に豆腐製造用水SWと一緒に収納された豆腐は、容器の開口を塞ぐ包装装置320までをコンベアCによって搬送される。このとき包装装置320により開口部が塞がれるまでの経路の途中は、容器の上部開口より豆腐製造用水SWが空気に触れることとなる。すなわち、この間に容器中の豆腐製造用水SWに酸素が溶け込む虞がある。
【0048】
そのため、本実施形態においては、図4に示すように、容器に豆腐を収納した水槽から包装装置320までの間に豆腐製造用水SWを容器内へ流し入れるための豆腐製造用水供給部321を複数設けている。すなわち、搬送途中の容器内へ新たな豆腐製造用水SWを流し入れ、元々容器内に収納されていた古い豆腐製造用水SWと入れ替えながら搬送することで、搬送途中の際の容器内豆腐製造用水SWへの酸素混入を防止することができる。
【0049】
ステップ9である冷却工程S9は、封入工程S8により豆腐と豆腐製造用水SWとを封入した包装容器を保存に適した温度まで下げる工程である。
この冷却工程S9は、従来の豆腐製造方で行われるボイルクール工程と同様の方法で行われる。すなわち、豆腐と豆腐製造用水SWとを封入した包装容器を冷却槽内の冷却水により約5℃となるまで冷却する。ただし、従来の製造工程にある加熱殺菌処理(ボイル処理)を行わないため、冷却前の豆腐の温度は従来と比較して低い温度となることで、冷却にかかる時間が大幅に短縮することができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、絹ごし豆腐を製造する工程について記載しているが、木綿豆腐を製造する際には、上述の絹ごし豆腐を製造する方法と同様の工程により製造することに加え、凝固後の豆腐に布を巻いて圧力をかけ中の水分を抜く工程が存在する。この工程を行う際に用いる布は、豆腐を巻いて覆う前に豆腐製造用水SWで湿らせることが好ましい。そうすることで、ただの水によって湿らせたものよりも接触する水分に酸素が含まれる量が少なくなるため、より好気性細菌の増加を抑制することができる。
【0051】
[2.一般生殺菌の測定結果について]
次に、本実施形態に係る豆腐の製造保存方法により製造された豆腐の消費期限の設定に関して説明する。一般的に豆腐の消費期限は一般細菌数が100000個/gに達した日から2日前ほどに設定される。そこで、発明者は、以下の内容の実験を行い本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造された絹ごし豆腐の消費期限を一般的なボイル豆腐と同じ10~12日と設定した。
【0052】
実験の内容としては、同日に製造された絹ごし豆腐のうち、実験対象を10個ランダムに選んだ。この10個の絹ごし豆腐を製造日から6日、13日、16日、19日及び22日の5回に分けて2個ずつ開封し、一般細菌の数を計測した。このとき、製造日から6日とした理由としては、本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造された絹ごし豆腐と同じように非加熱の豆腐である生豆腐の一般的な消費期限の設定日による。また、同日中に大量に製造される絹ごし豆腐のうちからランダムに10個を選んだ理由としては、一般的に食品の検査と同様に、製造が全く同じタイミングのものを選択すると製造方法全体の安全性を調べることが困難であるためである。以下、上記の実験の結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実験結果は、表1に示すように、保存期間22日までの絹ごし豆腐のうち、一般細菌の数が最も高い数値でも20000個/gであった。そのため、一般細菌の値が、100000個/gという基準を大きく下回っている。したがって、この絹ごし豆腐の消費期限を、豆腐を容器に封入したあとに加熱処理を行うボイル豆腐の一般的な消費期限である10~12日に設定することに何ら問題ないことが証明された。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造された絹ごし豆腐は、容器に封入したあとで加熱殺菌処理をしないことで生豆腐特有の大豆の風味豊かな呈味を有すると同時に、加熱殺菌したボイル豆腐と同様以上の消費期限を設定することができる。
【0056】
また、発明者は、絹ごし豆腐だけでなく上述した本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造した木綿豆腐の一般細菌数を調べる実験を行っている。条件としては、絹ごし豆腐と同じように、同日に製造された木綿豆腐のうち、実験対象を10個ランダムに選んだ。この10個の木綿豆腐を製造日から6日、13日、16日、19日及び22日の5回に分けて2個ずつ開封し、一般細菌の数を計測した。以下、上記の実験の結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実験結果は、表2に示すように、保存期間22日までの木綿豆腐のうち、一般細菌の数が最も高い数値でも24000個/gであった。そのことから、本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造された木綿豆腐も絹ごし豆腐と同様に一般細菌の値が、100000個/gという基準を大きく下回っており、消費期限を、豆腐を容器に封入したあとに加熱処理を行うボイル豆腐の一般的な消費期限である10~12日に設定することに何ら問題ないことが証明された。
【0059】
これらの実験結果から、豆腐の製造において、水との接触する工程に溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWを使用し、酸素の混入を防止する方法を用いることで、大豆の風味が豊かで優れた呈味の生豆腐を長期間保存することが可能となることが証明された。
【0060】
[3.豆腐の製造保存方法に係るエネルギー消費量の比較]
次に、豆腐の製造に係るエネルギー量を従来の製法と比較する。ここで説明するエネルギー量とは、加熱に係るガスの使用や冷却に係る電気の使用等であり、カロリー(kcal)を単位として表す。また、外気温25℃の環境において、絹ごし豆腐を製造した場合を例として比較する。
【0061】
従来の製法で豆腐を製造した場合に係る総カロリー数は、豆腐一丁あたり約102kcalを要する。その内訳としては、上述した摩砕工程S3で得た生呉を加熱する加熱工程S4にて要するカロリー数が豆腐一丁あたり約32kcal(25℃の生呉を75℃温度上昇させて100℃とする場合)、豆乳を凝固させる凝固工程S6及び豆腐を水に浸漬させて切り出す切り出し工程S7に要するカロリー数が豆腐一丁あたり約22kcal(100℃の煮呉に凝固剤を入れてから切り出すまでに水槽内で55℃の熱を奪い豆腐の温度が45℃となった場合)、豆腐を包装容器に封入した後加熱殺菌するボイル工程で要するカロリー数が約16kcal(切り出し工程で45℃となった豆腐の温度を40℃上昇させ85℃にする場合)、ボイル工程で殺菌された包装容器封入豆腐を保存温度まで下げる冷却工程に要するカロリー数が約32kcal(ボイル工程にて85℃となった豆腐を80℃下降させ保存温度5℃とする場合)となる。
【0062】
本実施形態に係る豆腐の製造保存方法によって豆腐の製造を行った場合では、上述したように、豆腐を包装容器内に封入した後に加熱殺菌を行う必要がなくなり、ボイル工程に要するカロリー数を抑えることができ、更に加熱しないので最後にカロリーの消費がされる冷却工程S9での消費カロリー数を抑えることができる。
【0063】
そのため、大豆から豆腐を製造し、製造された豆腐を包装容器内に封入して保存を行うまでに要する総カロリー数は約70kcalとなる。
【0064】
その内訳としては、上述した摩砕工程S3で得た生呉を加熱する加熱工程S4にて要するカロリー数が豆腐一丁あたり約32kcal(25℃の生呉を75℃温度上昇させて100℃とする場合)、豆乳を凝固させる凝固工程S6及び豆腐を水に浸漬させて切り出す切り出し工程S7に要するカロリー数が豆腐一丁あたり約22kcal(100℃の煮呉に凝固剤を入れてから切り出すまでに水槽内で55℃の熱を奪い豆腐の温度が45℃となった場合)、切り出し工程S7の後に包装容器に封入して保存温度まで下げるのに要するカロリー数は約16kcal(切り出し工程S7後に45℃となっている豆腐を、40℃温度下降させ5℃とした場合)となり、合計が70kcalとなる。
【0065】
上述してきように、販売時や保存時に溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWを用いて製造された豆腐を豆腐製造用水SWと一緒に包装容器に封入することで、包装容器内の酸素量を低減し好気性細菌の繁殖を防ぐことができる。すなわち、豆腐を包装容器の中に封入したのち加熱殺菌を行わずとも菌の繁殖を可及的に抑制し消費期限を延長させることができる。また、加熱殺菌を行わずに豆腐の消費期限を延ばすことができることで、食品ロス対策やエネルギー消費による環境問題対策として持続可能な開発目標(SDGs)に定められた「つくる責任つかう責任」及び「気候変動に具体的な対策を」に寄与することができる。
【0066】
[4.製造装置について]
次に、上述してきた豆腐の製造及び保存方法を実現する豆腐の製造装置について図面に基づいて説明する。図2は、本実施例に係る豆腐製造装置Mに必要となる構成と豆腐製造用水SWを供給する供給ポンプの接続箇所を説明するための模式図である。
【0067】
豆腐製造装置Mは、図2に示すように、主に水に含まれる溶存酸素を除去することで豆腐製造用水SWを生成する製造用水生成装置100と、大豆から豆腐までの加工を行う大豆加工装置200と、製造された豆腐を包装する包装冷却装置300と、より構成される。
【0068】
製造用水生成装置100は、水供給部400から供給された水Wを貯留する水タンク110と、水タンク110に貯留された水Wに含まれる溶存酸素を除去する溶存酸素除去装置120と、水中に含まれる溶存酸素の量を計測する溶存酸素計測装置130と、溶存酸素を除去した水(豆腐製造用水SW)を貯留する製造用水タンク140と、からなる。
【0069】
水供給部400は、豆腐製造に使用可能な水Wを供給できるものであればどのようなものでもよく、例えば井戸や水道等が考えられる。また、水タンク110は、水供給部400から供給される水Wを蓄えられるものであればよい。
【0070】
溶存酸素除去装置120は、内部に水タンク110に貯留されている水Wを通過させることで水中に含まれる溶存酸素を除去する装置である。具体的には、低圧密閉容器中に窒素ガスを充満させており、水Wをその内部へ通過させることにより、水中に含まれる溶存酸素を窒素ガスに置換することができる。水中に含まれる溶存酸素を窒素で置換したものを上述してきた豆腐製造用水SWとして、大豆の加工や豆腐の保存に使用する。
【0071】
また、本実施形態では、低圧密閉容器中に窒素ガス満たしたことで通過する水Wの溶存酸素を除去する方法を用いているが、水中に含まれる溶存酸素を除去できる方法であればどのような方法や装置を用いてもよく、例えば不活性ガスを水Wの中に溶かし込むバブリング法を用いたものであってもよい。また、本実施形態では置換する気体として窒素を使用しているが、不活性ガスであればどのようなものでもよく、例えば窒素の代わりにアルゴンガスを用いてもよい。
【0072】
溶存酸素計測装置130は、溶存酸素除去装置120により生成された豆腐製造用水SWの中に含まれる溶存酸素の量を計測するためのものである。この溶存酸素量を計測する方法としては、隔膜電極を用いた方法や青色LEDを照射する蛍光式のセンサを用いた方法等により行われるとよい。
【0073】
豆腐製造用水SWとして大豆の加工や豆腐の保存に用いるための値としては、2mg/L未満であることが好ましい。そのため、溶存酸素計測装置130により、溶存酸素量を計測し、基準値2mg/Lを越えている場合には、再び溶存酸素除去装置120に通し溶存酸素除去を行い、基準値未満の値であった場合には、次の製造用水タンク140へ運ばれる。
【0074】
製造用水タンク140は、溶存酸素除去装置120により生成され、且つ溶存酸素計測装置130により溶存酸素量が基準値2mg/L未満であることが確認された豆腐製造用水SWを貯留するためのものである。この製造用水タンク140は、豆腐製造用水SWを貯留できるものであればどのような形状であってもよいが、溶存酸素を除去した水(豆腐製造用水SW)は、刺激が加わると再び酸素が水中に溶け込む虞がある。
【0075】
そのため、豆腐製造用水SWを投入するための投入パイプをタンク本体の下方に設けている。こうすることで、製造用水タンクの内部に投入される豆腐製造用水SWの落下距離を短くし刺激を最小限に抑え、尚且つ投入開始後すぐに投入パイプの排出口が水面よりも下となり空気との接触も最小限となるようにし、再び酸素が水中に溶け込むことを防止することができる。
【0076】
製造用水タンク140には、図2に示すように、供給ポンプ143が接続されており、後述する浸漬タンク210と摩砕装置230と豆腐切り出し装置310と包装装置320とへ豆腐製造用水SWを供給するように構成されている。
【0077】
また、製造用水生成装置100の各装置間の水W及び豆腐製造用水SWの搬送には、装置の設置の状況から必要に応じて送り出しのためのポンプを設けてもよい。例えば、大型施設では、水タンク110が施設の屋上に設置される場合があり、施設内部に設置された溶存酸素除去装置120への水Wの供給には、送り出すためのポンプが必要になることが考えられる。
【0078】
大豆加工装置200は、大豆を浸漬させる浸漬タンク210と、浸漬させた大豆の水切りを行う水切り装置220と、水を切った大豆を磨り潰し生呉とする摩砕装置230と、生呉を加熱して煮呉とする加熱装置240と、煮呉を豆乳とおからとに分離させる抽出装置250と、豆乳を凝固させる凝固枠260と、からなる。
【0079】
浸漬タンク210は、上述した豆腐の製造方法の軟化工程S1を行うためのものである。具体的には、豆腐の原材料である丸大豆に水分を含ませ軟化させる。この時、浸漬タンク210の内部に張られた水分は、供給ポンプ143により供給された豆腐製造用水SWを用いる。そうすることで、大豆の酸化を防ぎつつ大豆に水分を含ませて軟化させることができる。
【0080】
水切り装置220は、上述した豆腐の製造方法の水切り工程S2を行うためのものである。具体的には、浸漬して軟化された大豆の表面に付着した余剰水を除去するための装置であり、例えば遠心分離機を用いる。
【0081】
摩砕装置230は、上述した豆腐製造方法の摩砕工程S3を行うためのものでる。具体的には、図3に示すように、大豆を摩砕する摩砕部231と摩砕部231の下方に配設され大豆を摩砕することで得た生呉を受け止める生呉受け部232と豆腐製造用水SWを供給する供給パイプ233とを構成した装置であり、例えばグラインダーを用いる。供給パイプ233は、供給ポンプ143に基端部を接続され、端部を二股に形成してそれぞれを摩砕部231と生呉受け部232とに豆腐製造用水SWを供給可能としている。
【0082】
大豆を磨り潰す際には、装置と大豆との間に生じる摩擦熱により、大豆たんぱく質が熱変性しないように水を加える必要がある。そのため、摩砕装置230は上述した供給ポンプ143が接続され豆腐製造用水SWによる加水を行いながら摩砕作業を行う。
【0083】
ところで、豆腐の製造にはブリックスと呼ばれる値が重要となる。ブリックスとはブリックス計により計測される値であり、生呉や豆乳等の中に固形成分がどれだけ含まれているかを示す値であり、この値が低すぎると固形成分(大豆たんぱく質)と水分とが分離してしまう。その状態で凝固剤を投入すると凝固されたものの含水率が低く絹ごし豆腐と呼ばれる製品にはならない。
【0084】
そのため、全体おけるブリックスの割合が、絹ごし豆腐を作る際には全体の12%以上のブリックス値、木綿豆腐を作る際には全体の7%以上のブリックス値となるように調整を行う必要がある。そこで、従来の豆腐の製造では、上記の値(絹ごし豆腐では12%以上、木綿豆腐では7%以上)となるように、摩砕作業中の加水により調整を行っていた。しかしながら、摩砕装置230としてグラインダーを用いた場合では、摩砕時に大豆と一緒に加水された水も大きくかき回されることにより、その刺激を受けて溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWであっても酸素が再び溶け込む虞がある。
【0085】
そのため、この摩砕装置230で行われる摩砕作業時には、摩砕時に生じる摩擦熱を防止する最小限の豆腐製造用水SWを図3に示す上の供給パイプ233より直接摩砕部231に供給する。そして、磨り潰して得られた生呉内に含まれるブリックスの値が、上記の値(絹ごし豆腐では12%以上、木綿豆腐では7%以上)となるように図3に示す下部に設けた供給パイプ233より、今度は生呉受け部232へ豆腐製造用水SWを供給し調整を行う。このような方法をとることで、摩砕時に避けようのない酸素の溶解を最小限にとどめることができる。
【0086】
加熱装置240は、上述した豆腐製造方法の加熱工程S4を行うためのものである。具体的には、摩砕装置S3により摩砕され得られた生呉を加熱することで、大豆に含まれる大豆たんぱく質を熱変性させて煮呉と呼ばれる状態にするためのものである。加熱装置240は、生呉を80℃~100℃で加熱させることができる方法であればどのような装置であってもよく、例えば煮釜に直火で熱を伝える方法であってもよい。ただし、ボイラー等を用いてオートクレイブ処理が可能となる装置を用いることで、加熱状態が高温高圧状態となり、滅菌作用に加えて装置内部が低酸素状態となることでより酸化を抑制することができるためより好ましい。
【0087】
抽出装置250は、上述した豆腐製造方法の抽出工程S5を行うためのものでる。具体的には、加熱装置240により大豆タンパク質の変性が行われた煮呉を豆乳とおからとに分離させる。装置としては、煮呉の液体部分と個体部分とに分離することができればどのようなものであってもよいが、例えば、装置内部にスクリューを備えその回転により煮呉を絞ることで分離させるスクリュー式絞り機やメッシュを通して煮呉を濾すことで分離させる濾し機等を用いるとよい。
【0088】
凝固枠260は、上述した豆腐製造方法の凝固工程S6を行うためのものである。具体的は、方形状のステンレス枠からなり、上述した抽出装置250から得られた豆乳を枠内部に流し込み凝固溶液を投入することで豆乳を凝固させ豆腐を生成する。凝固溶液は、塩化マグネシウム(にがり)や硫酸カルシウム等の金属塩を用いる方法やグルコノデルタラクトンや葛粉を用いる方法、又は塩化カリウムと硫酸マグネシウムとを混合したもののように、複数の凝固剤を混合したもの等何を用いてもよいが、粉末状の凝固剤を凝固液とするための溶媒として豆腐製造用水SWを用いたものを使用する。こうすることで、凝固液に含まれる水分が原因となり豆腐が酸化することを防止することができる。凝固枠260の中に豆乳と凝固液を投入することで10~30分ほどで凝固が完了し豆腐とすることができる。
【0089】
包装冷却装置300は、製造された豆腐を所定の大きさに切り出すための切り出し装置310と、切り出した豆腐を包装容器に封入する包装装置320と、包装された豆腐の余熱を取り除き保存に適した温度に冷却する冷却装置330と、よりなる。
【0090】
切り出し装置310は、上述した豆腐製造方法の切り出し工程S7を行うためのものである。具体的には、凝固枠260の中に形成された豆腐を水中で取り出すための水槽と水槽に設けられた切断部と包装容器投入部とよりなり、作業員が豆腐を切断部へ誘導することで自動的に豆腐を包装容器の大きさに合わせて切り出し、さらに包装容器投入部にセットされた上部開口の包装容器内に水中で豆腐を入れるためのものであり、従来から用いられている自動水中切断機やカットケーサーと呼ばれる装置を用いるとよい。また、水槽のみを備え、豆腐の切り出し及び包装容器への収納には職人の手作業で行われることも考えられる。
【0091】
この、切り出し装置310に設けられた水槽は、通常の水Wではなく図2に示すように、接続された供給ポンプ143より供給される豆腐製造用水SWを用いる。水槽内部を豆腐製造用水SWで満たすことで、豆腐を切り出す際に酸素との接触を断つことで、豆腐の内部に酸素を含まないようにし酸化を可及的に防ぐことができる。また、上部開口の包装容器に豆腐を収納する際に水中で行うため、収納動作中にも酸素との接触を断つことができると共に、上部開口の包装容器内にも豆腐製造用水SWが豆腐と一緒に収納されるため、次の包装装置320への搬送途中であっても豆腐が直接酸素と接触することを防ぐことができる。
【0092】
また、水槽には、製造用水タンク140と供給ポンプ143を介して接続されているため、定期的に水槽内の豆腐製造用水SWを新たな豆腐製造用水SWへ交換が円滑に行うことができ、常に溶存酸素量が2mg/L未満の豆腐製造用水SWを水槽に張ることができる。
【0093】
また、最も好ましくは、水槽の下方位置に豆腐製造用水SWの供給口を設け、豆腐製造用水SWが空気に触れることなく供給されると共に、常に供給を行い続け水槽の上部から古い豆腐製造用水SWが零れる、すなわちオーバーフローさせた状態を維持するとよい。そうすることで、水槽内の豆腐製造用水SWは、常に新鮮なものとすることができ、時間と共に酸素が混入することを可及的に防止することができる。
【0094】
包装装置320は、上述した豆腐製造方法の封入工程S8を行うためのものでる。具体的には、切り出し装置310により豆腐を収納された包装容器の上部開口に蓋をして密閉状態で封入する。また、蓋を封入するための包装装置320への搬送途中には、図2に示すように、製造用水タンク140と接続された供給ポンプ143により包装容器の上部開口へ向けて豆腐製造用水SWを供給するための供給口が設けられている。
【0095】
より詳しくは、豆腐を切り出した水槽から容器の開口部を塞ぐ包装装置320までの搬送に使用されるコンベアCの上方に複数の豆腐製造用水供給部321を備える。そうすることで、搬入中の豆腐収納の容器内の豆腐製造用水SWを常に新しいものに交換させながら搬入を行うことができる。したがって、コンベアCにより搬送される間に豆腐と共に容器に収納された豆腐製造用水SW中に酸素が混入することを可及的に防止することができる。
【0096】
すなわち、切り出し装置310により豆腐を収納された包装容器は、供給口から供給される豆腐製造用水SWにより、切り出し装置310によって豆腐と一緒に収納された豆腐製造用水SWを新しいものへと交換し、その後包装装置320により上部開口を密閉状態にして封入する。切り出し装置310から包装装置320までの搬送中に元々一緒に収納されていた豆腐製造用水SW内部に酸素が再び溶け込んでしまっても封入前に新しい豆腐製造用水SWに交換されることで確実に封入後の豆腐の酸化を防ぐことができる。また、豆腐を溶存酸素量2mg/L未満の豆腐製造用水SWと一緒に包装容器内部に封入することで、包装容器内部にて好気性細菌の繁殖を防ぎ、上述したように包装容器へ封入後に加熱殺菌を行わずとも豆腐の消費期限を2週間ほどに延ばすことができる。
【0097】
また、従来の製法では、豆腐を包装容器に合わせて切り出した後しばらく冷却のために水中に晒す製法もあるが、本実施形態に係る豆腐製造装置M及び豆腐製造保存方法では、豆腐の切り出し後にすぐに包装容器の封入を行う。そうすることで豆腐が酸素と触れる可能性を最小限とし、確実に酸化防止及び包装容器内への酸素混入を防止することができる。
【0098】
冷却装置330は、上述した豆腐製造方法の冷却工程S9を行うためのものでる。包装装置320により包装容器内部に封入した豆腐は、それまでの製造工程により生じた熱、すなわち余熱を持った状態のままであり、そのまま出荷されてしまうと熱による傷みが生じてしまう虞がある。そのため従来の製造方法と同じように冷却水を張った水槽につけることで余熱を除去し、保存に適した温度まで冷却させる。
【0099】
具体的には、上述した豆腐製造保存方法に係るエネルギー消費量に示したように、切り出し工程S7後の豆腐の温度は約45℃であり、保存に適した温度約5℃~10℃まで包装容器ごと冷却水に浸し余熱を取り除く。また、従来では、絹ごし豆腐や木綿豆腐の殺菌を行うために包装容器封入後に加熱殺菌処理(ボイル処理)を行う必要があったため、ボイル後の温度約85℃から保存に適した温度約5℃~10℃まで冷却する。そのため、本実施形態に係る豆腐製造装置M及び豆腐の製造保存方法では冷却に係る時間が短くできる効果がある。
【0100】
上述してきたように、本発明に係る豆腐製造装置Mは、溶存酸素を取り除く溶存酸素除去装置120と溶存酸素除去装置120により溶存酸素を除去し生成された豆腐製造用水SWが基準値である2mg/L未満であるかを確認する溶存酸素計測装置130とを備え、生成された豆腐製造用水SWを供給ポンプ143により大豆加工装置200と包装冷却装置300とに供給することで豆腐製造時の酸化や保存状態での好気性細菌の繁殖を抑制し、加熱殺菌を行わずとも消費期限を延長させることができる。
【0101】
また、このように溶存酸素を除去したことで消費期限を延ばすことに成功したこの豆腐製造保存方法と、この豆腐生存保存方法を実現するため豆腐製造装置Mが溶存酸素を除去する装置とその除去を目視で確認できる装置とを備えたことにより、HACCPの承認を得ることができる。
【0102】
また、大豆加工装置200と包装冷却装置300とは、風を送ることで水分を除去する除水装置を各所に備えてもよい。そうすることで、各装置や搬送経路に付着した水分を除去することができ誤って溶存酸素を含む水が混入してしまうことを防止することができる。
【0103】
[4.他の実施例]
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る豆腐の製造方法及び保存方法の他の実施形態について説明する。図5は、他の実施形態に係る豆腐の製造方法及び保存方法の手順を説明するフロー図である。
【0104】
他の実施形態としては、軟化工程S1により軟化した大豆の水を切り、水を切った大豆を粉砕して蒸すことにより加熱する方法が考えられる。
【0105】
他の実施形態に係る豆腐の製造方法は、図5のステップ1~ステップ5に示すように、主に大豆に水を含ませ柔らかくする軟化工程S1′と、軟化した大豆の水分を切り粉砕する大豆粉砕工程S2′と、粉砕大豆を蒸して加熱を行う大豆タンパク質変性工程S3′と、蒸しあがった大豆をおからと豆乳との分離させる抽出工程S4′と、抽出した豆乳に凝固剤を投入する凝固工程S5′と、からなる。
【0106】
以下、本実施形態に係る豆腐の製造方法手順ステップ1~ステップ5について具体的に説明する。また、後述する豆腐の製造方法及び保存方法において用いられる豆腐製造用水SWは、溶存酸素を除去した水である。豆腐製造用水SWを生成する際の溶存気体の除去方法は、特に限定されるものではなく、例えば膜式脱気法や不活性ガスによる置換法や減圧法等によって生成されたものであればよい。
【0107】
ステップ1である軟化工程S1′は、大豆を豆腐製造用水SWに浸漬させることにより、水分を含ませて柔らかくする工程である。この時、浸漬に用いる水として溶存酸素を除去し生成された豆腐製造用水SWを用いることで、大豆は浸漬中に酸素に触れず酸化することなく軟化工程S1を終えることができる。また、この軟化工程S1′中に豆腐製造用水SWに気体が溶け込まないように、定期的に新たな豆腐製造用水SWに交換したり、窒素等の不活性ガスを注入したりすることでより酸化を防止することができる。
【0108】
ステップ2である大豆粉砕工程S2′は、大豆の水切りを行う水切り工程S2′-1と水分を切った大豆を粉砕する粉砕工程S2′-2とよりなる。
【0109】
水切り工程S2′-1は、ステップ1の軟化工程S1′により内部に水分を含み柔らかくなった大豆を豆腐製造用水SWから取り出し、表面に付着した余剰水を除去する工程である。表面に付着した余剰水が十分に切れていない場合には、溶存気体を除去し生成された豆腐製造用水SWが空気に触れ続けることとなってしまい、結果として酸素を含む水となり大豆に混入する虞がある。そのため、この水切り工程S2′-1により、表面に付着した余剰水を確実に切ることで、大豆の酸化を防ぐことができる。
【0110】
具体的な水切り方法としては、笊を用いて行う方法や乾いた布巾で表面をふき取る方法等どのような方法であってもよい。また、遠心分離機を用いて水切りを行ってもよい。
この水切り工程S2′-1では、大豆内の含水率を30~40%ほどとすることが望ましい。
【0111】
粉砕工程S2′-2は、水切り工程S2′-1により余剰水を十分に切った大豆をグラインダーにより粉砕する工程である。この工程によって大豆を細かく粉砕することで後述する抽出工程S4′で豆乳の抽出を行いやすくする効果がある。また、粉砕工程S2′-2において大豆を粉砕するための手段としてグライダーを用いるとしているが、大豆を細かく粉砕することができればどのような手段であってもよい。
【0112】
ステップ3である大豆タンパク質変性工程S3′は、大豆を蒸気で蒸して加熱をする加熱工程S3′-1と蒸した大豆を蒸らすことで水分が均一に馴染むようにする蒸らし工程S3′-2とからなる。
【0113】
加熱工程S3′-1は、大豆粉砕工程S2′で粉砕された粉砕大豆を蒸し釜に入れて加熱する工程である。この際に釜内部の温度が80℃~100℃となるように加熱する。そうすることにより釜内部は過熱水蒸気状態又はそれに近い高温の飽和水蒸気状態となる。過熱水蒸気状態又はそれに近い高温の飽和水蒸気状態となった釜内部は、水蒸気で満たされ空気が排除されるため無酸素状態あるいは低酸素状態となる。すなわち、釜内部の粉砕大豆は、無酸素状態あるいは低酸素状態の中で加熱されるため、酸化を防ぎつつ大豆たんぱく質の変性を行うことができる。この大豆タンパク質の変性が加熱により行われることで、後述する凝固工程S5′により変性した大豆タンパク質が凝固され豆乳から豆腐を生成することができるようになる。また、この時加熱により大豆サポニンの界面活性効果により泡が生じるが、従来の製法と異なり水気が少ないため泡の発生は少量であり消泡剤を用いる必要がなくなる。
【0114】
蒸らし工程S3′-2は、加熱工程S3′-1により加熱された大豆を5分~13分ほど蒸らすことで、余分な水気を飛ばすと共に、粉砕大豆全体に均等に水分が含まれた状態となるようにする。すなわち、蒸しあがった粉砕大豆が部分的に浸潤しすぎたり、乾燥しすぎたりしないようにする。また、この蒸らし時間内で上述した泡は全て又はそのほとんどが自然に消滅することになる。
【0115】
ステップ4である抽出工程S4′は、蒸気で蒸して加熱した粉砕大豆を豆乳とおからとの分離させる工程である。具体的な分離方法としては、大豆タンパク質変性工程S3′により加熱した粉砕大豆をメッシュにより濾すことで豆乳とおからとを分離させる。このように加熱された粉砕大豆をメッシュで濾すことで、豆乳とおからとに分離させるため、加熱工程S3′-1にて発生した泡が残っていた場合でも抽出される豆乳に泡が混ざることがなくなる。また、この豆乳とおからとに分離する方法としてメッシュを用いた方法としているが、豆乳とおからとに分離させることができればどのような方法であってもよく、例えば布巾に包み加熱した粉砕大豆を絞るようにして行ってもよい。
【0116】
ステップ5である凝固工程S5′は、抽出工程S4′で得られた豆乳に凝固剤を投入して凝固させる工程である。具体的には、抽出工程S4′で抽出した豆乳を、ステンレス製の型に流し込み凝固剤を投入する。豆乳は、前工程である大豆タンパク質変性工程S3′において加熱されることで大豆タンパク質の変性が行われることにより凝固剤による凝固が確実に行われる。ここで使用される凝固剤は、塩化マグネシウム(にがり)や硫酸カルシウム等の金属塩を用いる方法又はグルコノデルタラクトンや葛粉を用いる方法であってもよい。また、塩化カリウムと硫酸マグネシウムとを混合したもののように、複数の凝固剤を混合したものを用いてもよい。また、凝固剤は通常時には粉末状であり、豆乳の中へ投入する際には豆腐製造用水SWを媒体とし生成した凝固液として投入される。型に流し込んだ豆乳に凝固剤を投入し、10分~30分ほどの時間で豆乳が完全に固まり豆腐の製造が完了する。
【0117】
上述してきたように、大豆は豆腐へ加工が完了されるまでに酸素と必要以上に触れることの無い製造方法として、溶存気体を除去した豆腐製造用水SWに大豆を浸漬する軟化工程S1′及び過熱水蒸気状態又はそれに近い高温の飽和水蒸気状態で大豆を加熱する大豆タンパク質変性工程S2′により行うことで、製造工程での大豆の酸化を防ぎ大豆本来の味を生かした品質の高い豆腐を製造することができる。
【0118】
また、従来の豆腐製造方法に含まれる水を多く含んだ状態での煮沸工程(従来までの大豆タンパク質の変性工程)を行わず粉砕した大豆を蒸し釜内部で蒸して加熱することで、泡の発生を最小限とし、その後加熱した粉砕大豆をメッシュ等で分離して豆乳を得る方法としていることで、生成された豆乳に泡が発生することがない。
【0119】
すなわち、泡によって生じる豆腐内の気泡や気泡が入ることで起こる喫食時の食感の悪さを防止することができる。さらに、泡が発生しないことで消泡剤を投入する必要がなく、大豆と凝固剤のみで作られた豆腐とすることができ、大豆の良い風味が豊かな豆腐となると共に、泡の原因となる大豆サポニンを豊富に含んだ豆腐を製造することができる。大豆サポニンは体内の活性酸素を抑制する効果や免疫力の向上や肝機能の向上等に良い効果をもたらす。すなわち大豆サポニンを豊富に含んだ本実施形態に係る豆腐の製造方法により製造された豆腐は健康に良い豆腐とすることができる。
【0120】
本実施形態に係る豆腐の保存方法は、図5のステップ6~ステップ8に示すように、主に型内部で凝固した豆腐を水槽に入れる水槽浸漬工程S6′と、水槽内の豆腐を販売形態に合わせ切り出した豆腐を実際の販売用容器内に封入する切り出し封入工程S7′と、包装容器に封入した豆腐の温度を保存に適した温度まで下げる冷却工程S8′と、からなる。以下、本実施形態に係る豆腐の保存方法手順ステップ6′及びステップ7について具体的に説明する。
【0121】
ステップ6′である水槽浸漬工程S6′は、上述してきた豆腐の製造方法において製造した豆腐を、水を張った水槽内に投入するステップである。この時水槽内の水は、溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWを用いる。すなわち、豆腐製造用水SWの中に豆腐を浸漬させることにより、製造された豆腐が酸素と触れず酸化することを防ぎつつ保存することができる。また、この豆腐製造用水SWはステップ1の軟化工程S1′と同様に、豆腐製造用水SWに酸素が溶け込まないように、定期的に新たな豆腐製造用水SWに交換したり、窒素等の不活性ガスを注入したりするとより酸化を防止することができる。
【0122】
ステップ7である切り出し封入工程S7′は、浸漬されている豆腐を切り出す切り出し工程S7′-1と、切り出した豆腐を容器に封入する封入工程S7′-2と、からなる。
【0123】
切り出し工程S7′-1は、水槽浸漬工程S6′で水槽内部に浸漬されている豆腐を次工程で豆腐を封入する容器に合わせて豆腐を切り出す工程である。
【0124】
封入工程S7′-2は、切り出し工程S7′-1により切り出された豆腐を販売用や保存用の容器内部に収納し、密閉状態で封入する工程である。この容器内部に豆腐を収納するに際しては、事前に容器内部を豆腐製造用水SWで満たしておく。そうすることで、豆腐は販売時や保存時に常に溶存酸素を除去した豆腐製造用水SWに浸漬されることとなり酸化することなく味の劣化を防止することができる。また、豆腐を封入する容器は、酸素を透過しにくい容器とすることが望ましい。
【0125】
ステップ8である冷却工程S8′は、封入工程S7′により豆腐と豆腐製造用水SWとを封入した包装容器を保存に適した温度まで下げる工程である。この冷却工程S8′は、従来の豆腐製造方で行われるボイルクール工程と同様の方法で行われる。すなわち、豆腐と豆腐製造用水SWとを封入した包装容器を冷却槽内の冷却水により約5℃となるまで冷却する。ただし、従来の製造工程にあるボイル工程(加熱殺菌工程)を行わないため、冷却前の豆腐の温度は従来と比較して低い温度となることで、冷却にかかる時間が大幅に短縮することができる。
【0126】
以上、上述してきた豆腐の製造保存方法及び製造装置は、豆腐を製造することを目的としているが、豆乳や油揚げ等の大豆加工製品を製造する場合にも用いることができることは云うまでもない。また、油揚げを製造する場合には、加熱工程にて加水が行われる必要があるため、その場合には製造用水タンクに貯留された豆腐製造用水を加熱装置にも供給するようにしてもよい。
【0127】
また、上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る豆腐の製造方法及び保存方法は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0128】
S1 軟化工程
S2 水切り工程
S3 摩砕工程
S4 加熱工程
S5 抽出工程
S6 凝固工程
S7 切り出し工程
S8 封入工程
S9 冷却工程
M 豆腐製造装置
W 水
SW 豆腐製造用水
100 製造用水生成装置
110 水タンク
120 溶存酸素除去装置
130 溶存酸素計測装置
140 製造用水タンク
200 大豆加工装置
210 浸漬タンク
220 水切り装置
230 摩砕装置
231 摩砕部
232 生呉受け部
233 供給パイプ
240 加熱装置
250 抽出装置
260 凝固枠
300 包装冷却装置
310 切り出し装置
320 包装装置
321 豆腐製造用水供給部
C コンベア
330 冷却装置
400 水供給部
S1′ 軟化工程
S2′ S2′ 大豆粉砕工程
S2′-1 水切り工程
S2′-2 粉砕工程
S3′ 大豆タンパク質変性工程
S3′-1 加熱工程
S3′-2 蒸らし工程
S4′ 抽出工程
S5′ 凝固工程
S6′ 水槽浸漬工程
S7′ 切り出し封入工程
S7′-1 切り出し工程
S7′-2 封入工程
S8′ 冷却工程
図1
図2
図3
図4
図5