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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051883
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】時間計測器
(51)【国際特許分類】
   G04F 3/00 20060101AFI20230404BHJP
   G04G 15/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G04F3/00 301G
G04G15/00 B
G04G15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158380
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021176951
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022119093
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521472287
【氏名又は名称】合同会社エム・プラス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 徳子
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA05
2F002BA04
2F002EB01
2F002GC06
(57)【要約】
【課題】複数の異なる長さの時間計測を、その開始から終了まで1回の簡単な操作で可能にしながら、使用者が時間計測器を見ていなくても、計測終了を使用者に確実に報知可能にする。
【解決手段】複数の異なる時間の計測が可能に構成された時間計測器1は、複数の異なる時間にそれぞれ対応した複数の計時開始ボタン11~20と、操作された計時開始ボタン11~20に対応した時間の計測を開始し、時間が経過すると計時終了信号を出力する計時部31と、計時終了音を発生する音発生部30と、計時終了信号を受信すると計時終了音を発生するように音発生部30を制御する制御部40とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる時間の計測が可能に構成された時間計測器であって、
複数の異なる時間にそれぞれ対応した複数の計時開始ボタンと、
前記計時開始ボタンの操作状態を検出し、操作された前記計時開始ボタンに対応した時間の計測を開始し、当該時間が経過すると計時終了信号を出力する計時部と、
計時終了音を発生する音発生部と、
前記計時部から出力された計時終了信号を受信し、当該計時終了信号を受信すると前記計時終了音を発生するように前記音発生部を制御する制御部とを備えていることを特徴とする時間計測器。
【請求項2】
請求項1に記載の時間計測器において、
前記制御部は、前記計時開始ボタンの操作状態を検出し、前記計時開始ボタンの操作状態に応じて前記計時終了音の発生時間を変更するように前記音発生部を制御することを特徴とする時間計測器。
【請求項3】
請求項2に記載の時間計測器において、
前記制御部は、前記計時開始ボタンに対して第1の操作がなされた場合には前記計時終了音を第1の所定時間発生するように前記音発生部を制御する一方、前記第1の操作とは異なる第2の操作が前記計時開始ボタンに対してなされた場合には前記計時終了音を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間発生するように前記音発生部を制御することを特徴とする時間計測器。
【請求項4】
請求項1に記載の時間計測器において、
前記制御部により制御される時間表示部を備えており、
前記制御部は、操作された前記計時開始ボタンに対応した時間を前記時間表示部に表示させた後、計時終了までの残り時間を前記時間表示部にカウントダウン表示させることを特徴とする時間計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば歯科医療における診療行為等で施術をする際に使用可能な時間計測器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に開示されているように、暖房器等にはタイマー装置が設けられている。特許文献1のタイマー装置は、複数のタイマー時刻を設定可能なタイマー手段と、タイマー時刻が予約されたときに、そのタイマー時刻に運転を自動的に停止または開始させる制御手段と、タイマー時刻表示部とを備えており、タイマー時刻表示部には、次に動作するタイマー時刻と停止/開始の情報とが表示されるようになっている。
【0003】
また、特許文献2のタイマー装置は、個々に設定可能な複数のタイマー手段と、表示手段とを備えており、表示手段には複数のタイマー手段の設定状態が一度に表示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-85919号公報
【特許文献2】特開2004-347223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、歯科治療では、エッチング剤、ボンディング剤、オペーク剤、麻酔、印象剤、セメント等をはじめとした様々な薬剤や歯科材料等が使用される。各薬剤や歯科材料等が所望の機能を発揮するための放置時間が予め定められており、その時間は、例えば材料によって異なり、秒単位での時間とされている場合も少なくない。予め決められた放置時間を忠実に守ることが、歯科用材料の物理的機能を十分に発揮させるためには大変重要である。
【0006】
しかし、今までは、歯科治療の現場で頻用する秒単位の計測を効率的に管理できるようなタイマーは見当たらなかったので、歯科医療現場ではいわゆるキッチンタイマーと呼ばれるタイマーが使用されている。この種のタイマーは、所望の時間を設定するための時間設定ボタンを押した後、計時開始ボタンを操作するといった、複数段階の操作が要求され、設定する時間によっては時間設定ボタンを複数回押す必要があった。歯科治療では、一般的に1人の患者に対して複数回の異なる時間計測及び管理が必要であるため、上記キッチンタイマーのようなタイマーを使用すると、時間計測を開始する度に、複数段階の操作を行うことによるタイムロスが生じて工程管理の精度が低下するだけでなく、機器への接触回数が増えることによる感染の防止の観点からも望ましいものとは言えなかった。
【0007】
また、特許文献1、2のようなタイマー装置も知られているが、これらは暖房器の運転開始/停止を自動制御するためのタイマーであることから、周囲の者に時間の経過を報知することを目的としたものではなく、設定された時間になると、静かに暖房器の運転開始/停止を実行するだけである。一方、歯科治療時には、原則として患者の口腔内を注視しているので、タイマー装置の表示部に残り時間や経過時間が表示されていたとしてもそれをずっと見ているわけにはいかず、音による計測終了の報知が必須になる。この点、特許文献1、2のような暖房器を制御するためのタイマー装置は、報知音を発しないので、歯科治療の現場で使用可能なタイマー装置とは言い難い。また、特許文献1、2のタイマー装置は、暖房器のタイマー装置であることから、時間が一度設定されると、頻繁に変更されるものではなく、歯科治療現場のように、複数回の異なる時間計測が必要な現場に適した構造とはなっていないし、秒単位の細かな設定も不可能である。
【0008】
また、例えば美容院等で各種施術を行う際や学習塾での時間管理の際にも、複数回の異なる時間計測が必要な場合があり、歯科治療現場と同様な問題が生じ得る。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、複数の異なる長さの時間計測を、その開始から終了まで1回の簡単な操作で可能にしながら、使用者が時間計測器を見ていなくても、計測終了を使用者に確実に報知可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、複数の異なる時間の計測が可能に構成された時間計測器を前提とすることができる。時間計測器は、複数の異なる時間にそれぞれ対応した複数の計時開始ボタンと、前記計時開始ボタンの操作状態を検出し、操作された前記計時開始ボタンに対応した時間の計測を開始し、当該時間が経過すると計時終了信号を出力する計時部と、計時終了音を発生する音発生部と、前記計時部から出力された計時終了信号を受信し、当該計時終了信号を受信すると前記計時終了音を発生するように前記音発生部を制御する制御部とを備えている。計時終了音は、制御部の制御によって自動的に停止させることができる。
【0011】
この構成によれば、複数の計時開始ボタンのうち、使用者が計測したい時間に対応した計時開始ボタンを操作すると、その計時開始ボタンが操作されたことを計時部が検出する。計時部は、操作された計時開始ボタンに対応した時間の計測を開始し、当該時間が経過すると計時終了信号を制御部に出力する。すると、制御部は、音発生部を制御して計時終了音を発生させる。したがって、計測したい時間に対応した計時開始ボタンを操作するだけで、計測開始から終了、計時終了音の発生までが自動的に実行されるので、従来のキッチンタイマーのような複数段階の操作が不要になる。これにより、タイムロスが発生し難くなるので工程管理を高精度に行うことができ、しかも、操作回数が減ることで感染の危険性が低くなる。つまり、感染の危険性が少ない最小限の操作で済む。また、使用者が時間計測器を見ていなくても、計測終了を計時終了音によって使用者に確実に報知できる。
【0012】
本開示の第2の態様に係る制御部は、前記計時開始ボタンの操作状態を検出し、前記計時開始ボタンの操作状態に応じて前記計時終了音の発生時間を変更するように前記音発生部を制御してもよい。この構成によれば、計時開始ボタンに対する操作を変えるだけで、計時終了音の発生時間を簡単に変更できる。
【0013】
本開示の第3の態様に係る制御部は、前記計時開始ボタンに対して第1の操作がなされた場合には前記計時終了音を第1の所定時間発生するように前記音発生部を制御する一方、前記第1の操作とは異なる第2の操作が前記計時開始ボタンに対してなされた場合には前記計時終了音を前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間発生するように前記音発生部を制御してもよい。
【0014】
この構成によれば、計時開始ボタンに対して第1の操作がなされると、音発生部が比較的短い時間、計時終了音を発生する一方、計時開始ボタンに対して第2の操作がなされると、音発生部が比較的長い時間、計時終了音を発生する。従って、時間計測器の近傍に使用者がいる場合には第1の操作を行うことで短い時間だけ計時終了音が発生するので、例えば歯科治療中の患者の交感神経を刺激せずに済む。一方、時間計測器から離れた所に使用者がいる場合には第2の操作を行うことで計時が終了したことを使用者に対して確実に報知できる。
【0015】
本開示の第4の態様では、制御部により制御される時間表示部を備えていてもよい。この場合、前記制御部は、操作された前記計時開始ボタンに対応した時間を前記時間表示部に表示させた後、計時終了までの残り時間を前記時間表示部にカウントダウン表示させることができる。この構成によれば、計測したい時間を時間表示部で確認できるので、誤った時間が計測されてしまうのを未然に防止できる。また、残り時間がカウントダウン表示されるので、使用者や患者等が時間の経過状況を把握できる。例えば、治療時間が明視下におかれることにより患者にも見える化という形で診療を行うことができ、患者の精神的な苦痛を和らげることができる。また、あと何分、あと何秒でこの状態保持が終わるのかを確認できるので、患者と治療者の信頼関係の構築にもつながる。さらに、治療者においても次の作業までの段取りがしやすくなり、診療効率が向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、複数の異なる長さの時間計測を、その開始から終了まで1回の簡単な操作で可能にすることができ、しかも、使用者が時間計測器を見ていなくても、計測終了を使用者に確実に報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る時間計測器の斜視図である。
図2】上記時間計測器の平面図である。
図3】上記時間計測器のブロック図である。
図4】セラミック前装冠破折リペア修復のフローチャートである。
図5】う蝕インレー形成印象のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る時間計測器1の外観を示すものである。この時間計測器1は、複数の異なる時間の計測が可能に構成されており、例えばタイマー装置、計時器等と呼ぶことも可能な器具である。時間計測器1は、例えば歯科医療における診療行為等で施術をする際や、美容院で各種施術をする際、学習塾で時間管理を行う際等に使用することができ、歯科医療、美容院、学習塾以外にも、時間が決められている施術を行う現場で使用することができ、その使用場所や場面は特に限定されない。
【0020】
時間計測器1は、筐体2と、筐体2に内蔵された基板3(図2に仮想線で示す)と、筐体2に内蔵された電池(図示せず)とを備えている。筐体2は、例えば樹脂材等を成形してなるものであり、底板部2aと、上板部2bと、底板部2aの周縁部から上板部2bの周縁部まで上下方向に延びる周壁部2cとを備えている。筐体2は必須な部材ではなく、例えば歯科治療ユニットに時間計測器1を組み込む場合には、筐体2を省略して歯科治療ユニットの筐体を利用できる。
【0021】
この実施形態の説明では、時間計測器1を使用する使用者から見て、当該使用者に近い側を「手前側」といい、当該使用者から遠い側を「奥側」というものとする。また、使用者から見て右側を単に「右側」といい、使用者から見て左側を単に「左側」というものとする。この方向の定義は、説明の便宜を図るためのものであり、時間計測器1の使用時の向きを限定するものではない。時間計測器1の奥側と手前側とを反対にして使用することもできる。尚、使用者とは、歯科治療の場合、例えば歯科医師、その助手等を挙げることができ、美容院の場合、例えば美容師、その助手等を挙げることができるが、これら以外の者が使用者であってもよく、使用者は特に限定されない。以下、歯科治療で使用する場合について説明する。
【0022】
図示しないが、例えば歯科治療の際には、患者が歯科治療チェアに座って治療を受ける。時間計測器1は、歯科治療チェアの操作パネル面に組み込むことや、治療台、歯科技工機器等に組み込むことができる。治療台に時間計測器1を組み込む際には、治療台に凹部を形成しておき、この凹部に時間計測器1を嵌めて固定することができる。このとき、筐体2の上板部2bの高さが、治療台の上面と略同じ高さとなるようにしてもよい。また、時間計測器1は、治療台の上面や机の上に置いて使用することもできる。
【0023】
筐体2の底板部2aは左右方向に長く、かつ、水平に延びており、底板部2aの下面には例えばゴム等からなる滑り止め部材(図示せず)が取り付けられている。これにより、時間計測器1を操作する際に、時間計測器1が載置面に対して滑り難くなる。また、上板部2bは左右方向に長く形成されている点で底板部2aと同じであるが、手前側に向かって下降傾斜している点で底板部2aと異なっている。上板部2bの傾斜角度(傾斜度合い)は、特に限定されるものではないが、後述するボタン類、表示部等が使用者から見やすく、かつ、ボタン類の操作がし易いように設定されている。
【0024】
上板部2bには、複数の異なる時間にそれぞれ対応した第1~第10計時開始ボタン11~20と、リセットボタン21と、第1カスタムボタン22と、第2カスタムボタン23と、時間表示部24とが設けられている。第1~第10計時開始ボタン11~20、リセットボタン21、第1カスタムボタン22、第2カスタムボタン23及び時間表示部24は、時間計測器1の一部を構成するものであり、各々、基板3に実装されている。第1~第10計時開始ボタン11~20、リセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23は、それぞれ、基板3に実装されている電気部品からなる被操作部を含んでおり、被操作部を使用者が押すと、電気回路が閉じた状態(または開いた状態)になり、使用者が被操作部を操作したことを、後述する制御部40が検出可能になっている。
【0025】
尚、リセットボタン21、第1カスタムボタン22、第2カスタムボタン23及び時間表示部24は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。また、時間計測器1には、計時を開始するためのスタートボタンや計時を停止するためのストップボタンが設けられていない。詳細は後述するが、第1~第10計時開始ボタン11~20、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23のいずれかが操作されると、自動的に計時を開始した後、停止し、周囲の者に報知する。電源ボタンは設けてもよいし、設けなくてもよい。電源ボタンを設けない場合には、電源が常時ONの状態となっている。
【0026】
本実施形態では、互いに異なる10通りの時間を測定することが可能に構成されており、従って10個の計時開始ボタンとして、第1~第10計時開始ボタン11~20が設けられている。第1計時開始ボタン11は、5秒間を計測する際に操作するボタンである。第2計時開始ボタン12は、10秒間を計測する際に操作するボタンである。第3計時開始ボタン13は、15秒間を計測する際に操作するボタンである。第4計時開始ボタン14は、20秒間を計測する際に操作するボタンである。第5計時開始ボタン15は、30秒間を計測する際に操作するボタンである。第6計時開始ボタン16は、1分間を計測する際に操作するボタンである。第7計時開始ボタン17は、2分間を計測する際に操作するボタンである。第8計時開始ボタン18は、3分間を計測する際に操作するボタンである。第9計時開始ボタン19は、4分間を計測する際に操作するボタンである。第10計時開始ボタン20は、5分間を計測する際に操作するボタンである。このように、予め決められた計測時間が各ボタン11~20に割り当てられた状態で、後述するROM等の記憶部に記憶されている。
【0027】
この実施形態では、10個の計時開始ボタン11~20を設けているが、これに限らず、図示しないが、2以上の異なる時間にそれぞれ対応した2以上の計時開始ボタンが設けられていればよく、計時開始ボタンの数は特に限定されない。また、各計時開始ボタンに割り当てられる時間についても、上記時間に限定されるものではなく、1秒以上の任意の時間を割り当てることができ、割り当てる時間の上限は例えば10分、または30分、または1時間、または2時間等にすることができる。
【0028】
リセットボタン21は、第1~第10計時開始ボタン11~20を操作して計時が開始された後に、その計時処理を途中であっても直ちに中断して強制的に終了する際に操作するボタンである。第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23は、使用者が任意の時間を記憶させておくことが可能なボタンであり、所定の操作を行うことで、第1~第10計時開始ボタン11~20とは異なる時間を対応付けておくことができる。
【0029】
時間表示部24は、操作された計時開始ボタン11~20に対応した時間を表示するとともに、計時終了までの残り時間を1秒ごとにカウントダウン表示する部分であり、例えば液晶パネル等のような数字を表示可能な表示機器で構成されている。時間表示部24には、残り時間を示す複数の数字が左右方向に並ぶように表示される。
【0030】
第1~第10計時開始ボタン11~20が10個あることから、第1~第10計時開始ボタン11~20を2段で並べている。すなわち、上板部2bにおける最も手前側に第6~第10計時開始ボタン16~20が配設され、第6~第10計時開始ボタン16~20の奥に第1~第15計時開始ボタン11~15が配設されている。第1~第15計時開始ボタン11~15は、時間の短いものから長いものの順で、左から右に配設されている。同様に、第6~第20計時開始ボタン16~20も、時間の短いものから長いものの順で、左から右に配設されている。第1~第10計時開始ボタン11~20の並びは、上述した並びに限られるものではなく、任意に並べることができ、上下方向に並べてもよい。
【0031】
第1~第10計時開始ボタン11~20は、上板部2bにおける時間表示部24よりも手前側の領域に配設されている。これにより、使用者は第1~第10計時開始ボタン11~20の操作が容易に行えるようになる。また、第1~第10計時開始ボタン11~20よりも使用頻度の低いボタンであるリセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23は、第1~第10計時開始ボタン11~20よりも奥側の領域に配設されている。時間表示部24は、リセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23の左側に配設されているが、右側に配設されていてもよい。
【0032】
上板部2bの上面部は、1枚の樹脂製シートで構成されており、この樹脂製シートにより、第1~第10計時開始ボタン11~20、リセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23を構成している電気部品が覆われている。樹脂製シートの表面には凹凸がない。このシートを構成する樹脂材は、液体を透過しない性質を有するとともに、例えば消毒用アルコール等の消毒剤、殺菌剤を塗布しても劣化、変質しないものであり、時間計測器1の使用前、使用後には、消毒用アルコール等を塗布して上板部2bの全面を隙間無く、一度に確実に消毒、殺菌することができるようになっている。これにより、感染を抑制できるので、歯科医院の信頼性を向上することにも繋がる。
【0033】
上記樹脂製シートの表面には、第1~第10計時開始ボタン11~20、リセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23を示す文字や図形が示されている。例えば、上記樹脂製シートにおける第1計時開始ボタン11を覆う部位には、第1計時開始ボタン11に対応する時間を示す表記例として「5秒」と記載されるとともに、「5秒」を囲む枠が記載されている。この記載は一例であり、図示した表記とは異なる表記であってもよい。この「5秒」と記載された部位及び枠が記載された部位も、第1計時開始ボタン11の一部とすることができ、この場合、基板3に実装されている電気部品からなる被操作部と、上記樹脂製シートにおける被操作部を覆う部位とで、第1計時開始ボタン11が構成される。他の計時開始ボタンも同様である。
【0034】
上記樹脂製シートにおけるリセットボタン21を覆う部位には「リセット」と記載され、また、上記樹脂製シートにおける第1カスタムボタン22を覆う部位には「C1」と記載され、また、上記樹脂製シートにおける第2カスタムボタン23を覆う部位には「C2」と記載されているが、この記載は一例であり、図示した表記とは異なる表記であってもよい。さらに、上記樹脂製シートにおける時間表示部24を覆う部位は透明とされており、時間表示部24の表示光を透過するように構成されている。
【0035】
図3に示すように、第1~第10計時開始ボタン11~20と、リセットボタン21と、第1カスタムボタン22と、第2カスタムボタン23と、時間表示部24とは、制御部40に接続されている。時間表示部24は、制御部40により制御される。また、時間計測器1は、計時終了音を発生する音発生部30を備えている。音発生部30は、例えばスピーカや電子ブザー等のように、筐体2の外部へ音を放射する機器で構成されている。音発生部30も制御部40により制御される。
【0036】
制御部40は、例えば中央演算処理装置、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成されており、例えばROMに記憶されているプログラムに従って動作する。中央演算処理装置、ROM、RAM等は、基板3に実装されているが、第1~第10計時開始ボタン11~20等とは異なる基板(図示せず)に実装されていてもよい。尚、制御部40の構成は上述した構成に限られるものではなく、各種マイクロコンピュータ等で構成することができる。また、時間計測器1は、計時部31を備えており、この計時部31も制御部40に通信可能に接続される。計時部31は、制御部40とは別体であってもよいし、制御部40と一体化されたものであってもよい。計時部31と制御部40とを一体化する場合には、上記プログラムに従って動作する中央演算処理装置により、計時部31と制御部40とを構成できる。また、計時部31及び制御部40は、ハードウエアのみ構成されていてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで構成されていてもよい。
【0037】
制御部40は、第1~第10計時開始ボタン11~20、リセットボタン21、第1カスタムボタン22及び第2カスタムボタン23の操作状態を検出する。その他にもボタンが設けられていれば、そのボタンの操作状態も検出する。制御部40には、計時部31が通信可能に接続されているので、計時部31は、制御部40を介して第1~第10計時開始ボタン11~20の操作状態を検出することができる。第1~第10計時開始ボタン11~20のうちのいずれか1つが操作されたことを計時部31が検出すると、計時が終了するまでは、他の計時開始ボタンの操作をキャンセルして受け付けないように構成されている。尚、第1~第10計時開始ボタン11~20のうちのいずれか1つが操作されたことを計時部31が検出した場合に、計時が終了するまでに他の計時開始ボタンが操作された時、その操作された計時開始ボタンの操作を有効にしてもよい。
【0038】
第1~第10計時開始ボタン11~20を計時部31に直接接続し、計時部31が第1~第10計時開始ボタン11~20の操作状態を直接検出してもよい。また、制御部40と計時部31とは概念的に分けることができるものであり、1つのマイクロコンピュータで制御部40の機能と計時部31の機能とが実行可能であってもよいし、制御部40の機能と計時部31の機能とが別のマイクロコンピュータで実行可能であってもよい。
【0039】
計時部31は、操作された計時開始ボタン(第1~第10計時開始ボタン11~20のうちのいずれか1つ)に対応した時間の計測を開始し、当該時間が経過すると計時終了信号を出力する。例えば、5秒に対応した第1計時開始ボタン11が使用者によって操作されると、計時部31は第1計時開始ボタン11が操作されたことを直ちに検出し、第1計時開始ボタン11の操作を検出した時点から計時を開始する。計時部31は、計時開始から5秒が経過すると、計時終了信号を制御部40に出力する。第2~第10計時開始ボタン12~20が操作された場合も同様であり、それぞれ、10秒、15秒、20秒、30秒、1分、2分、3分、4分、5分の計時が終了すると、計時終了信号を制御部40に出力する。
【0040】
制御部40は、計時部31から出力された計時終了信号を受信し、当該計時終了信号を受信すると計時終了音をすぐに発生するように音発生部30を制御する。これにより、第1計時開始ボタン11が操作されてから5秒経過後に直ちに計時終了音を発することになる。第2~第10計時開始ボタン12~20が操作された場合も同様であり、それぞれ、10秒、15秒、20秒、30秒、1分、2分、3分、4分、5分経過後に直ちに計時終了音を発する。計時終了音の発生後、所定時間経過すると、制御部40は音発生部30を制御して計時終了音を停止させる。
【0041】
計時終了音は、患者の交感神経を刺激しないような音色、音量とされるとともに、音の発生時間についても、患者の交感神経をできるだけ刺激しないように短くすることが可能になっている。音の発生時間を短くすると、患者の交感神経を刺激しないという点で好ましいが、例えば患者のそばから使用者が離れている場合には、時間計測器1から発せられている計時終了音に気付かなくなるおそれがある。このような場合に対応すべく、本実施形態では、計時終了音の発生時間を変更可能に構成されている。
【0042】
すなわち、使用者は、常に同一の患者に付いているわけではなく、ある処置を終えた後、次の処理までに時間があるときには、別の患者の治療を行ったり、次の処置の準備を行ったりするため、当該患者から離れることがある。時間計測器1は、患者の近くに置いてあるので、使用者が当該患者から離れるということは、時間計測器1からも離れるということであり、計時終了音が使用者に聞こえにくくなる状況が考えられる。このことに対して、制御部40は、計時開始ボタン11~20の操作状態を検出し、計時開始ボタン11~20の操作状態に応じて計時終了音の発生時間を変更するように、音発生部30を制御する。
【0043】
より具体的には、制御部40は、計時開始ボタン11~20の各々に対して第1の操作がなされた場合には計時終了音を第1の所定時間発生するように音発生部30を制御する一方、第1の操作とは異なる第2の操作が計時開始ボタン11~20の各々に対してなされた場合には計時終了音を第1の所定時間よりも長い第2の所定時間発生するように音発生部30を制御する。第1の所定時間は例えば1秒以上3秒以下とすることができ、また、第2の所定時間は例えば4秒以上10秒以下とすることができるが、第1の所定時間及び第2の所定時間は、これに限らず、任意の時間に設定することができる。第2の所定時間は、第1の所定時間の2倍以上としてもよい。
【0044】
第1の操作とは、計時開始ボタン11~20を第1の時間だけ押すことであり、短押し操作と呼ぶことができる。一方、第2の操作とは、計時開始ボタン11~20を第1の時間よりも長い第2の時間だけ押すことであり、長押し操作と呼ぶことができる。尚、第1の操作が長押し操作であり、第2の操作が短押し操作であってもよい。このように、計時を開始するボタンと、計時終了音の発生時間を変更するボタンとが共通化されているので、使用者が時間計測器1に触れる回数を少なくすることができ、特に感染予防の観点で有効である。
【0045】
また、第1の操作を1回だけ操作する1回操作とし、第2の操作を複数回操作する複数回操作としてもよい。反対に、第1の操作を複数回操作とし、第2の操作を1回操作としてもよい。この場合も使用者が時間計測器1に触れる箇所は同一箇所なので、特に感染予防の観点で有効である。
【0046】
制御部40は、計時部31の計時途中にリセットボタン21が操作されたことを検出すると、計時部31の計時処理を直ちに中断して強制的に終了するとともに、時間表示部24の表示を消すか、0を表示させる。また、計時終了音を発生している時にリセットボタン21が操作されたことを検出すると、制御部40は音発生部30を制御し、計時終了音の発生を直ちに停止する。第1カスタムボタン22または第2カスタムボタン23が操作された場合には、計時部31は、予め記憶されている時間を計時し、計時が終了すると、計時終了信号を制御部40に出力し、音発生部30が計時終了音を発生する。
【0047】
また、制御部40は、操作された計時開始ボタン11~20に対応した時間を時間表示部24に表示させた後、計時終了までの残り時間を時間表示部24にカウントダウン表示させる。具体的には、制御部40は、第1計時開始ボタン11が操作されたことを検出すると、「5」を時間表示部24に表示させる。これとともに、計時部31が計時を開始しているので、計時部31が1秒計時するごとに、制御部40は、時間表示部24に表示される数字が0になるまで、1ずつ減じていく。時間表示部24に表示される数字が0になった時点で、計時部31による計時が終了する。尚、時間の表示形態は上述した形態に限られるものではなく、分及び秒を複数の桁数で同時に表示する形態であってもよい。
【0048】
図3に示すように、時間計測器1は、音量切替ボタン32及び音色切替ボタン33も備えているが、音量切替ボタン32及び音色切替ボタン33は必要に応じて設ければよい。音量切替ボタン32及び音色切替ボタン33は制御部40に接続されている。制御部40は、音量切替ボタン32の操作状態を検出し、音量切替ボタン32が操作されると、計時終了音の音量を変更する音量変更処理を実行する。音量切替ボタン32の操作により、計時終了音の音量を相対的に大きな音量から相対的に小さな音量へと切り替えること、また反対に相対的に小さな音量から相対的に大きな音量へと切り替えることができるようになっている。
【0049】
また、制御部40は、音色切替ボタン33の操作状態を検出し、音色切替ボタン33が操作されると、計時終了音の音色を変更する音色変更処理を実行する。音色切替ボタン33の操作により、計時終了音の音色を別の音色と切り替えることができるようになっている。切替可能な音色の種類は3以上であってもよい。これにより、歯科治療チェアが同室に3以上設けられていて各チェアに時間計測器1を設置する場合に、チェアごとに音色を変えておくことができる。
【0050】
また、歯科を含む各種医療現場で時間計測器1を使用することができる。各種医療現場では、術者のほかに患者が同席しているケースが多々ある。このような場合、従来のキッチンタイマーのようなタイマーを用いると、報知することが主目的であることから、音量が大きく、周囲の雑音との区別が容易な明瞭な音とされているので、患者の交感神経を刺激し、望ましくない各種反射を惹起させるだけでなく、恐怖心や吃驚心をあおることとなり、患者不安を増大させる懸念がある。そのため、上述したように術者が認知できる程度の小さな音を計時終了音とすることは医療現場では特に有効である。
【0051】
(時間計測器1の使用例)
歯科治療の殆どは、1工程ずつ完了して次の作業へ移っていく流れ作業である。使用する薬剤や歯科材料によって異なるが、薬剤塗布し5秒経過後、硬化剤を塗布して紫外線を20秒間照射するといったような秒単位、ないし分単位の作業時間管理が必要になることが多い。この際、従来のキッチンタイマーのようなタイマーでは、作業管理に必要な時間を工程ごとに設定ボタンで設定し、その後、別の開始ボタンを操作しなければならず、複数段階の操作が必要であった。
【0052】
これに対し、時間計測器1では、秒単位ないし分単位の小刻みな計測時間が予め設定された第1~第10計時開始ボタン11~20を備えているので、第1~第10計時開始ボタン11~20のうち、所望の時間に対応した計時開始ボタンを操作するだけで、作業管理に必要な時間の設定が完了する。さらに、所望の時間に対応した計時開始ボタンを操作するだけで、計時が開始されるので、別の開始ボタンを操作する必要はない。そして、計時が終了すると、自動的に計時終了音を発生し、計時終了音も所定時間が到来すれば自動的に停止する。つまり、第1~第10計時開始ボタン11~20のいずれか1つのみ操作すれば、その後のボタン操作は不要なので、使用者が時間管理に要する手間が軽減されて、タイムロスが少なくなり、全体の治療時間や操作時間が短縮される。このような一連の作業時間の短縮化は、診療効率を向上させ、医院経営に有効である。
【0053】
歯科治療で用いられる薬剤や歯科材料は、患者の症状に合わせて、様々なメーカーの製品から適切なものを歯科医師が選んで使用している。歯科材料のメーカーからは、各歯科材料について放置時間等を秒単位、分単位で正確に管理するよう、詳細な指示書が提示されている。時間計測器1を用いることで、指示書に従った時間管理をタイムロスなく正確に行うことができ、しかも、時間管理の際に操作するボタンは第1~第10計時開始ボタン11~20のいずれか1つだけなので、誤操作の可能性も少なく、ひいては、歯科材料の本来持つ物理学的・理工学的強度が最大限に高まることとなり、長期的な治療成績の向上がもたらされる。
【0054】
以下、歯科治療におけるセラミック前装冠破折リペア修復と、う蝕インレー形成印象に時間計測器1を使用する場合について説明する。図4は、セラミック前装冠破折リペア修復の手順を示すフローチャートであり、これは患者のセラミックが欠けた部分に色調の似たレジンを築盛し、審美的かつ機能的回復を目指すものである。本来、セラミックとレジンはお互い接着できる材料ではないが、ここで秒単位の適切な作業工程がこの理工学的な接着を可能にする。一方、図5は、う蝕インレー形成印象の手順を示すフローチャートであり、これはう蝕歯にインレー形成を行い、後日メタルインレーをセットする作業工程のフローチャートである。セラミック前装冠破折リペア修復、う蝕インレー形成印象は、両方とも、複数の時間管理が必要な工程を備えており、かつ、管理する時間が工程ごとに異なっている。このような工程を備えた治療や作業に本実施形態の時間計測器1は有効である。尚、各工程で管理する時間は例であり、患者の状態や歯科材料等によって異なることがある。
【0055】
まず、図4に基づいてセラミック前装冠破折リペア修復の詳細について説明する。ステップS1では、術者(歯科医師)が患者のセラミックが欠けた部分を一層削り、新鮮面を出し、その新鮮面を接着面として接着面にエッチング剤を塗布する。エッチング剤の塗布後、すぐにステップS2に進み、時間計測器1の5秒計測に対応する第1計時開始ボタン11を操作する。時間計測器1を操作する者は、歯科医師であってもよいし、助手であってもよい。以下のステップにおいても同様である。
【0056】
第1計時開始ボタン11が操作されると、操作された第1計時開始ボタン11に対応した時間(5秒)の計測を計時部31が開始し、当該時間が経過すると計時終了信号を制御部40に出力する。制御部40は、音発生部30を制御して計時終了音を発生させ、所定時間経過後に自動的に停止する。これにより、5秒が経過したことをすぐに術者が把握できる。術者は、計時終了音を確認した後、ステップS3に進み、接着面を水洗乾燥後、ボンディング剤を塗布する。ボンディング剤の塗布後、すぐにステップS4に進み、時間計測器1の10秒計測に対応する第2計時開始ボタン12を操作する。10秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、10秒が経過したことをすぐに術者が把握できる。術者は、計時終了音を確認した後、ステップS5に進み、接着面に強圧エアを吹き付ける。強圧エアの吹き付けを開始するのとほぼ同時にステップS6に進む。つまり、ステップS5とステップS6とはほぼ同時に実行することができるが、わずかなタイミングのズレが生じても問題ない。ステップS6では、時間計測器1の5秒計測に対応する第1計時開始ボタン11を操作する。5秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、術者は計時終了音の確認後、強圧エアの吹き付けを終了する。
【0057】
ステップS7では、術者が接着面にオペーク剤を塗布する。オペーク剤の塗布後、すぐにステップS8に進む。オペーク剤の塗布が完了するのとほぼ同時にステップS8に進む。つまり、ステップS7とステップS8とはほぼ同時に実行することができるが、わずかなタイミングのズレが生じても問題ない。ステップS8では、オペーク剤に硬化用の光を照射するとともに、時間計測器1の20秒計測に対応する第4計時開始ボタン14を操作する。20秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、術者は計時終了音の確認後、光照射を停止する。ステップS9では術者が硬化確認を行い、硬化確認後、エナメル剤を塗布する。
【0058】
エナメル剤の塗布後、すぐにステップS10に進む。エナメル剤の塗布が完了するのとほぼ同時にステップS10に進む。つまり、ステップS9とステップS10とはほぼ同時に実行することができるが、わずかなタイミングのズレが生じても問題ない。ステップS10では、エナメル剤に硬化用の光を照射するとともに、時間計測器1の20秒計測に対応する第4計時開始ボタン14を操作する。20秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、術者は光照射を停止する。ステップS11では術者が形態修正と研磨を行い、作業を終了する。
【0059】
次に、図5に基づいてう蝕インレー形成印象の詳細について説明する。ステップSA1では、必要に応じて浸潤麻酔を行う。浸潤麻酔後、すぐにステップSA2に進む。浸潤麻酔が完了するのとほぼ同時にステップSA2に進む。つまり、ステップSA1とステップSA2とはほぼ同時に実行することができるが、わずかなタイミングのズレが生じても問題ない。ステップSA2では、時間計測器1の5分計測に対応する第10計時開始ボタン20を操作する。5分が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、術者は計時終了音が聞こえるまで、他の患者の処置等を行うことができる。
【0060】
術者は計時終了音の確認後、ステップSA3に進み、窩洞形成後、アルジネート印象材を用い口腔内で印象採得を開始する。印象採得を開始するのとほぼ同時にステップSA4に進む。つまり、ステップSA3とステップSA4とはほぼ同時に実行することができるが、わずかなタイミングのズレが生じても問題ない。ステップSA4では、時間計測器1の2分計測に対応する第7計時開始ボタン17を操作する。2分秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、術者はステップSA5に進み、印象材を口腔内から撤去する。
【0061】
後日、ラボワークで完成したメタルインレーを口腔内に接着するため、ステップSA6で窩洞清掃の為、エッチング剤を塗布する。エッチング剤の塗布後、すぐにステップSA7に進み、時間計測器1の15秒計測に対応する第3計時開始ボタン13を操作する。15秒が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、15秒が経過したことをすぐに術者が把握できる。術者は、計時終了音を確認した後、ステップSA8に進み、窩洞を水洗乾燥した後、合着用セメントにてメタルインレーを窩洞に合着する。合着後、すぐにステップSA9に進み、時間計測器1の1分計測に対応する第6計時開始ボタン16を操作する。1分が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、1分が経過したことをすぐに術者が把握できる。術者は、計時終了音を確認した後、ステップSA10に進み、初期硬化を確認し、余剰セメントを除去する。余剰セメントの除去後、すぐにステップSA11に進み、時間計測器1の4分計測に対応する第9計時開始ボタン19を操作する。4分が経過すると時間計測器1から計時終了音が聞こえるので、4分が経過したことをすぐに術者が把握できる。術者は、計時終了音を確認した後、ステップSA12に進み、最終硬化確認し、作業を終了する。
【0062】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、時間計測器1の第1~第10計時開始ボタン11~20のうち、使用者が計測したい時間に対応した計時開始ボタン11~20を操作すると、その計時開始ボタン11~20が操作されたことを計時部31が検出する。計時部31は、操作された計時開始ボタン11~20に対応した時間の計測を開始する。また、計時開始ボタン11~20が操作されると、時間表示部24には、操作された計時開始ボタンに対応した時間が表示され、計時部31の計時により、時間表示部24の時間がカウントダウン表示されるので、使用者等は残り時間を容易に確認できる。
【0063】
設定された時間が経過すると計時部31が計時終了信号を制御部40に出力する。すると、制御部40は、音発生部30を制御して計時終了音を所定時間だけ発生させる。したがって、計測したい時間に対応した計時開始ボタンを操作するだけで、計測開始から終了、計時終了音の発生、計時終了音の停止までが自動的に実行されるので、従来のキッチンタイマーのような複数段階の操作が不要になる。これにより、タイムロスが発生し難くなるので工程管理を高精度に行うことができ、しかも、操作回数が減ることで感染の危険性が低くなる。また、使用者が時間計測器1を見ていなくても、計測終了を計時終了音によって使用者に確実に報知できる。したがって、エッチング剤、ボンディング剤、オペーク剤、麻酔、印象剤、セメント等の物理的機能を十分に発揮させる放置時間を正確に管理できる。
【0064】
計時終了音は、患者の交感神経を刺激しないような音量、音色、及び発生時間とされているので、患者の交感神経の刺激誘発が抑制されて、治療に適した状態を維持できる。
【0065】
(その他の実施形態)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0066】
上記説明では、セラミック前装冠破折リペア修復と、う蝕インレー形成印象について説明したが、別の歯科治療を行う際に時間計測器1を使用することも可能である。その場合は、管理する時間に応じて、例えば計時開始ボタン、計時部31等を変更して対応することができる。また、計時開始ボタンは、操作時に操作方向に変位ないし変形するように構成された物理的なボタン以外にも、例えば感圧式タッチパネルや静電容量検知式タッチパネル等で構成されていてもよいし、赤外線センサーや静電気を検出するセンサーを用いたタッチレス式のボタンで構成されていてもよい。または、これらを組み合わせて構成されていてもよい。タッチパネルを採用する場合、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示装置と組み合わせて用いることができ、これにより、表示装置上に自由にボタンを表示させることができる。また、表示装置を用いる場合、時間表示部24を当該表示装置に組み込むことができる。
【0067】
時間計測器1の計時開始ボタンの配置や形状、色、デザイン等は、図示したものに限られず、使用者、作業内容、管理する時間等に応じて自由に変更することができる。時間計測器1には、上述した機能とは別の機能を有するボタンを追加することもできる。時間表示部24もその形状や位置は自由に変更することができる。
【0068】
また、時間計測器1を歯科用治療ユニットに組み込んで一体化してもよいし、その他、周辺機器に時間計測器1を組み込んで一体化してもよい。また、時間計測器1をブラケット等により歯科用治療ユニットや周辺機器に着脱可能に取り付けて使用してもよい。
【0069】
また、時間計測器1の各機能は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の情報端末にインストールしたアプリケーションを当該情報端末で実行することによって実現することもできる。この場合、上記アプリケーションを実行可能な状態でインストールした情報端末が時間計測器1となる。
【0070】
また、複数の時間計測器1の機能を1つの機器に組み込むことにより、時間計測ユニットを構成することもできる。この場合、1つの時間計測ユニットを用いて同時に複数の時間管理を実行でき、例えば患者や顧客が複数存在する環境下で正確な時間管理を容易に行うことができる。また、時間計測器1は、臨床検査室、学習塾、一般家庭等で各種時間管理を行う場合に使用することもできる。特に、時間計測器1は、交感神経を刺激しない優しい音色及び音量の計時終了音を発生し、しかも、計時終了音を停止する操作は不要なので、学習時における時間管理において有効である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本開示に係る時間計測器は、例えば歯科治療等の医療現場、美容院等で利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 時間計測器
11~20 第1~第10計時開始ボタン
24 時間表示部
30 音発生部
31 計時部
40 制御部
図1
図2
図3
図4
図5