IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チャン ソンシクの特許一覧

特開2023-51903自由電荷、オゾン、および光を生成するエネルギー効率の良いプラズマプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051903
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】自由電荷、オゾン、および光を生成するエネルギー効率の良いプラズマプロセス
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20230404BHJP
   C01B 13/11 20060101ALI20230404BHJP
   H01J 63/04 20060101ALI20230404BHJP
   H01J 63/08 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05H1/24
C01B13/11 F
H01J63/04
H01J63/08
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022188917
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2020508973の分割
【原出願日】2018-04-26
(31)【優先権主張番号】62/492,103
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/525,749
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/554,552
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/575,503
(32)【優先日】2017-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/962,850
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519385087
【氏名又は名称】チャン ソンシク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】チャン ソンシク
(57)【要約】
【課題】プラズマの生成および使用ためのシステムを提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)システムを使用することによる電流源、光源、およびオゾン発生器の形成を説明する。電荷を生成するためのシステムはガス媒体で満たされた間隙により隔てられた少なくとも二つの電極を有するCDDBDを含んでもよく、少なくとも二つの電極の各々が、少なくとも二つの電極内の電荷がガス媒体を通過することを阻止する絶縁体で覆われ、少なくとも二つの絶縁体の各々の表面が絶縁体の材料よりも高い二次電子放出効率を有する材料でコーティングされる。さらに、電荷を生成するためのシステムはまた、最初の電場を形成するためにCDDBDデバイスにエネルギーを供給するCDDBDデバイスに結合した電源を含んでもよい。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマの生成および使用ためのシステムであって、前記システムは
被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)デバイスを通過する宇宙線から電荷を生成するCDDBDデバイスと、
最初の電場を形成するためにエネルギーを前記CDDBDデバイスに供給する前記CDDBDデバイスに結合した電源と、
を備え、
前記CDDBDデバイスがガス媒体で満たされた間隙により隔てられた少なくとも二つの電極を備え、前記少なくとも二つの電極の各々が、前記少なくとも二つの電極内の電荷が前記ガス媒体を通過することを阻止する絶縁体で覆われ、前記少なくとも二つの絶縁体の各々の表面が前記絶縁体の材料よりも高い二次電子放出効率を有する材料で覆われ、
前記宇宙線が最初の電場エネルギー以外の前記電源により供給される前記エネルギーを使用することなく前記CDDBDデバイスを通過する際に前記ガス媒体内のガス分子の衝突電離により前記CDDBDデバイスの前記間隙内で電荷が増倍される、
システム。
【請求項2】
前記CDDBDデバイスが電気絶縁材料で形成された中空管を備え、前記中空管が当該中空管の遠位端に開口部を有し、前記中空管の内部空間がガス媒体で満たされ、前記中空管が、前記中空管の内部に電場を生成する前記中空管に沿って軸方向に隔てられた、前記中空管の外側にコーティングされた前記少なくとも二つの電極を備え、前記中空管の内表面が前記絶縁体の前記材料よりも高い前記二次電子放出効率を有する前記材料でコーティングされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気絶縁材料が1017Ω・cmよりも高い電気抵抗率および15MV/mよりも高い絶縁耐力を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気絶縁材料が、石英、磁器、ガラス、ポリイミド、テフロン(登録商標)、またはポリエチレンテレフタラート(PET)のうち一つである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記中空管の前記少なくとも二つの電極に供給される電圧を調節する交流(AC)電源を備える前記電源であって、前記供給される電圧がパッシェン絶縁破壊電圧よりも高い、前記電源と、
前記中空管内で生成された電荷が前記中空管から放出されて電荷のジェットを形成する、プラズマのジェットを形成する前記中空管と、
をさらに備え、
宇宙線が前記中空管を通過する際に前記中空管内のガス分子の電離によりプラズマが生成されて前記電源により供給される前記電圧が前記中空管の軸方向に電場を生成する前記パッシェン絶縁破壊電圧よりも高い場合に衝突電離プロセスにより電荷が増倍され、
前記中空管が容量性のシステムであり、前記AC電源がプラズマの前記ジェットの形成のためにエネルギーを前記中空管に輸送しない、
請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記中空管が、風が当該中空管を通る向きになるようにその向きが定められ、前記中空管を通過する前記風の中の空気分子が運動エネルギーを前記中空管内で生成された前記プラズマ内で形成される帯電した分子または電子に変換し、前記風から前記帯電した分子または電子への前記運動エネルギーの前記変換が前記電荷の前記中空管からの放出を引き起こす、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
電荷が放出される前記中空管の端部と前記二以上の電極との間に、前記中空管の前記外側にコーティングされた第三の下流電極をさらに備え、前記第三の下流電極に最も近い前記二以上の電極のうち一つとは異なる一定のポテンシャルで第三の電極がバイアスをかけられ、前記中空管からの電荷の出力を促進するために前記第三の電極と前記二以上の電極のうち前記一つとの間の電場が前記ジェット内の電荷に軸方向のクーロン力を印加する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも二つの電極が金属電極である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも二つの電極が半導体電極である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
電力ストレージデバイスと、
前記中空管から放出された電荷の前記ジェットを捕捉して前記捕捉した電荷から前記電力ストレージデバイスに電荷を供給する前記電力ストレージデバイスに電気的に結合した、金属プレートまたは金属メッシュと、
をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項11】
電動デバイスと、
前記中空管から放出された電荷の前記ジェットを捕捉して前記捕捉された電荷から電動デバイスに電力を供給するために電荷を供給する、前記電動デバイスに電気的に結合した金属プレートまたは金属メッシュと、
をさらに備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項12】
前記ガス媒体が一気圧で酸素および窒素を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
CDDBDシステムが閉じた系であり、前記ガス媒体が一気圧の1%から一気圧までの範囲の圧力でヘリウムまたはアルゴンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記絶縁体よりも高い前記二次電子放出効率を有する絶縁材料をコーティングする前記材料が、Ni、W、Mo、BeO、MgO、GaP、GaAsP、Si、PbO、またはアルカリアンチモン化合物のうち一つである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
この出願は、2017年4月28日に出願された米国仮特許出願第62/492,103号、2017年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/525,749号、2017年9月5日に出願された米国仮特許出願第62/554,552号、および2017年10月22日に出願された米国仮特許出願第62/575,503号に基づく優先権および利益を主張するものである。上記の出願の開示はその全体が本明細書に参照により組み入れられる。
【0002】
[技術分野]
本開示の実施形態は概して電流、オゾン、および光の生成の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
地球は地球温暖化の脅威の下にあり、その結果である気候変動は頻繁または巨大な嵐、山火事、陸地の水没、および有用な水源の融解により人々を脅かしている。地球温暖化は世界のエネルギーの60%以上を生み出す化石燃料を燃焼させる際に二酸化酸素(CO2)が排出されることで引き起こされると考えられている。環境を保護するため、CO2を排出しないエネルギー、グリーンエネルギー、または再生可能エネルギーの新しいエネルギー源が常に追求されている。風力エネルギー、水力エネルギー、および核エネルギーは追及されている再生可能エネルギー源の例である。
【0004】
水不足もまた困難な課題であり、地球温暖化だけでなくカリフォルニアまたはアフリカのような所定の地域おける乾燥した気候にも起因する。使用済みまたは汚染された水を効率的に再利用することが水不足の問題を解決する助けになる。しかしながら、使用済みまたは汚染された水の化学処理は例えばスイミングプールで使用された場合に皮膚炎を引き起こすことが知られている。さらに、このような処理された水は例えば飲用水として使用された場合に不快な臭気を有することがある。オゾン水処理は優れた水処理プロセスとして知られているが、オゾンの生成にかかる高いエネルギーコストに苦慮している。
【0005】
照明システムの発光効率は電球の2%から蛍光灯ランプまたは発光ダイオード(LED)の20%まで上昇した。最近の開発およびコスト低減によりLED技術は従来の電球または蛍光灯ランプに置き換えられてきている。しかしながら、さらに高いエネルギー効率が探求されている。さらに、現在LEDは有毒な化学エピタキシャル成長プロセスにより製造されているが、これは望ましくないことである。LEDはサイズが小さく、弱くて広いエリアの照射と同じ総光出力を与えることが可能な広域照明には好適でない。この広域照射は特に狭いエリアでの激しい照射の間に人々の目が予期せず失明することを防ぐために有用である。
【0006】
本発明は、以下で与えられる詳細な説明および様々な実施形態の添付図面からより完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは本明細書において説明され例示される実施形態を限定するものではなく、説明および理解のみを目的とするものであるとするべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】DC電源を有する被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD(coated double dielectric barrier discharge))システムの一実施形態を例示する。
図2】電荷生成および発光をもたらすパッシェン放電の閾値を上回る図1におけるCDDBDシステムを例示する。
図3】繰り返される電荷生成および発光をもたらすパッシェン放電の閾値を上回るAC電源を有するCDDBDシステムを例示する。
図4】宇宙線がCDDBDシステム内部でガス分子を電離する際の図1におけるCDDBDシステムを例示する。
図5】CDDBDシステム内部で電荷増倍が発生している段階の図1におけるCDDBDシステムを例示する。
図6A】孔を有する平面CDDBDシステムを備える電流源の一実施形態の側面図を例示する。
図6B】孔を有する平面CDDBDシステムを備える電流源の一実施形態の上面図を例示する。
図7A】ワイヤアレイを備えるCDDBDシステムの電流源の別の実施形態の側面図を例示する。
図7B】ワイヤアレイを備えるCDDBDシステムの電流源の別の実施形態の上面図を例示する。
図8A】CDDBDシステムの電流源、外側に管状電極を有する絶縁管を備えるプラズマ管ジェットの別の実施形態を例示する。
図8B図8Aの電源の極性が逆の場合を例示する。
図9】第三の電極により形成された電場により電荷が抽出される、CDDBDシステムを使用する電流源の一実施形態を例示する。
図10】電場を使用するより効率の良い電荷抽出のための第三の電極を有するプラズマ管ジェットを例示する。
図11図1で説明された平面CDDBDシステムを使用する風力エネルギーハーベスタの一実施形態を例示する。
図12図7Aおよび図7Bで説明されたワイヤCDDBDシステムを使用する風力エネルギーハーベスタの一実施形態を例示する。
図13】電極間の電圧差、パッシェン放電が無い場合のコーティング間の電圧差、パッシェン放電がある場合のコーティング間の電圧差、および生成された電荷を例示する。
図14】例示的な埋込電極を有するCDDBDシステムの一実施形態を例示する。
図15】CDDBDシステムを用いて構成されたエネルギー効率の良い蛍光灯ランプの一実施形態を例示する。
図16】CDDBDシステムを用いて構成されたエネルギー効率の良い広域蛍光灯ランプの別の実施形態を例示する。
図17】半導体電極を用いて構成されたバラストフリー蛍光灯ランプの一実施形態を例示する。
図18】CDDBDシステムを用いて構成されたエネルギー効率の良いオゾン発生器の一実施形態を例示する。
図19】CDDBDシステムを用いて構成された直列のエネルギー効率の良いオゾン発生器の別の実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、多数の詳細が明らかにされる。しかしながら、本開示の利益を有する当業者においては、本明細書に記載の実施形態はこれらの特定の詳細によらずに実行され得ることが明らかになるであろう。いくつかの例では、本明細書に記載の実施形態を不明瞭にすることを回避するために、周知の構造およびデバイスがその詳細を示すのではなくブロックダイアグラムの形態で示されている。
【0009】
理想的なキャパシタはエネルギーを消費しない電気回路の無効成分である。二つの電極を有するキャパシタは各電極を絶縁体で覆うかまたは埋め込み、さらにガスシステムにおいて間隔を設けることにより作ることができる。交流(AC)電圧がキャパシタに印加される場合、電源における望ましくない損失以外の電力消費が無い。印加されるAC電圧がパッシェン閾値よりも高い場合、間隙においてプラズマが形成されるが、依然として電気的により高い静電容量を有するキャパシタである。電極を覆っている絶縁体を通過する電荷が無いため、電力は消費されない。プラズマが作用した結果として得られる生成物は浮遊電荷、発光、およびラジカル形成である。本明細書においてさらに詳細に説明されるように、これらの副産物は電流源、エネルギー効率の良い発光体、およびエネルギー効率の良いオゾン発生器のようなシステムを作るために使用することができる。
【0010】
本発明の実施形態は、被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)システムを使用することによる電流源、光源、およびオゾン発生器の形成を説明する。実施形態では、CDDBDシステムは電極を覆う絶縁体およびその間にガスシステムを有する電気的なキャパシタである。非散逸絶縁体を用いると、このようなシステムは電源における望ましくない電力損失以外にAC電力を消費しない。AC電圧をパッシェン絶縁破壊電圧よりも高く増幅すると、追加で電力を消費するのではなく、電場エネルギーの変換の結果として浮遊電荷および発光が発生する。非常に効率の良い電源または電気発生器を用いると、自由電荷および/または発光から構成される正味のエネルギーの生成は正となる可能性がある。
【0011】
物理的な視点では、宇宙線によりガスの電離が開始され、高電場の下で電荷増倍が発生する。このようにしてプラズマが形成される。宇宙線は、(10億エレクトロンボルトの範囲の)高エネルギー放射であり、主としてソーラーシステムの外、遠くの銀河からも生じる。宇宙線は主に陽子、原子核、およびエネルギー的に孤立した電子から構成される。宇宙線は宇宙から与えられ、これには費用がかからないが、それに続く電荷増倍プロセスは電場エネルギーの電離および発光への変換を伴う。
【0012】
本明細書で論じられる実施形態では、連続電流源を達成するために本明細書で論じられる電極配置を介して放電システム内で生成される電荷を解放することができる。一実施形態では、放電システムからの電荷の解放を促進するために風力エネルギーを効果的に使用することができ、したがってこのようなシステムは電気エネルギーコンバータに対する風力エネルギーになる。別の実施形態では、プラズマ内部で生成されたラジカルによりシステムが酸素注入を備えるエネルギー効率の良いオゾン発生器になる。さらに別の実施形態では、このシステムからの発光はエネルギー効率の良い照明システムとして使用することができる。本明細書で論じられるように、本発明の実施形態は多くの分野、例えば電力発生器、光発生器、およびオゾン発生器に応用され得る。
【0013】
以下でさらに詳細に説明されるように、本発明の実施形態は電力発生器、光発生器、およびオゾン発生器の実施形態を説明する。例えば電力発生器として、風力エネルギーの変換と併用される場合、本発明の実施形態は電源、バッテリ充電器、電流源、および風力エネルギーハーベスタのために使用することができる。例えば光発生器として、本発明の実施形態はエネルギー効率の良い、または低コストの蛍光灯ランプとして使用することができる。例えばオゾン発生器として、本発明の実施形態は水処理、食品加工、および織物加工において有用な用途を有する効果的な病原体キラーとして使用することのできるエネルギー効率の良いオゾン発生器に関連する。
【0014】
[被覆誘電体バリア放電システム]
本発明の動作原理および第一の実施形態を図1から図5を参照して説明する。図1は被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)システム10を示しており、特殊コーティング13が施されている絶縁体12で覆われた電極11がガス15内の間隙14により隔てられている。電源16はCDDBDシステムに結合されている。CDDBDシステム10は二つの絶縁材料、絶縁体12および間隙内のガス15を有する電気的なキャパシタである。電源16により電圧が印加されると、電荷17は電極に向かって移動し、電場18を形成する。絶縁体12が非常に高い電気抵抗率を有するのであれば、電荷の散逸および電力消費は無い。
【0015】
空気にかかる電圧がパッシェン閾値を上回る場合、空気の絶縁破壊が発生する。図2に示されるように、パッシェン閾値は電荷生成21だけでなく発光22ももたらす。このプロセスにおいて生成された電荷は反対の符号を持つ電極に移動して最初の電場18と逆向きの電場23を形成し、したがって電極における電圧境界条件を満足するためにさらに電荷24が電極に流入する。しかしながら、依然として電荷はキャパシタを通過せず、電力は消費されない。生成された電荷および光は生み出されたものではないが、当初の電場エネルギー17から変換されたものである。電気回路の視点では、静電容量の値は変化しており、したがってV=Q/C=Q’/C’を満足するためにさらに電荷が電極に移動する。ここでCは絶縁破壊前の静電容量であり、C’は絶縁破壊後の静電容量である。
【0016】
実施形態では、電極11からの電荷がガス媒体を通じてリークしないようにCDDBDシステムで使用される絶縁体12のための材料は電気抵抗が高い。CDDBDシステムで使用されている電場の下では材料が電気的に絶縁破壊しないように絶縁材料12は高い絶縁耐力も有する。例えば、石英、磁器、ガラス、ポリイミド、テフロン(登録商標)、またはポリエチレンテレフタラート(PET)のような絶縁体12に適した材料は、1017Ω・cmよりも高い電気抵抗率および15MV/mよりも高い絶縁耐力を有する可能性がある。
【0017】
CDDBDシステムにおいて説明されたガス媒体15は空気とすることができ、空気は一気圧で窒素および空気を含む。CDDBDシステムはまた、ガス媒体15が一気圧よりも低い気圧でアルゴンまたはヘリウムのような不活性ガスシステムである閉じた系として構成することもできる。
【0018】
図3に示されるようにAC電圧31が印加される場合、電荷生成21および発光22の連続した動作が発生する。極性が変化すると、残存電荷に起因してパッシェン閾値が変化し、新たに生成された電荷の位置が反転する。しかしながら、各周期において新たな電荷の生成21および発光22が発生する。電気回路の視点では、依然としてそれは静電容量回路であり、CDDBDシステムでの電力消費は無い。電荷生成および発光は絶縁体に適切なコーティング13が施された場合に強まる可能性がある。このコーティングはアルカリアンチモン化合物、酸化ベリリウム(BeO)、酸化マグネシウム(MgO)、リン化ガリウム(GaP)、ガリウムヒ素リン(GaAsP)、一酸化鉛(PbO)、タングステン(W)、またはモリブデン(Mo)のような高い二次電子放出効率を有する材料である。コーティング材料は一つの電子の衝突により多くの電子が生み出される光電子増倍管に使用される陰極材料とすることもできる。次に、このAC駆動CDDBDシステムにおいて生成される正味のエネルギーは生成された電荷および発光の全エネルギーから電源システムにおいて発生した損失を引いたものになる。ここで、プラズマはプラズマ領域にジュール熱が存在しないコールドプラズマに限定される。プラズマの輝度は電極11材料の導電率により制御することもできる。ストリーマは通常大気圧プラズマシステムにおいて発生する高輝度フィラメント放電である。ストリーマは電極11において自由電荷からの電場強調の正のフィードバックのために発生する。電極11における自由電荷密度を制御することによりストリーマ輝度を制御することができる。例えば、106Ω・cmまでの電気抵抗率を有する半導体材料を使用することにより、10-6Ω・cmまでの電気抵抗率を有する典型的な金属と比較して自由電荷は10桁低減される。
【0019】
本明細書に記載の実施形態では、本発明の実施形態において説明されるプラズマプロセスは宇宙線のハーベスティングエネルギーであり、次に電場エネルギーを自由電荷および光に変換する。従来のシステムとは異なり、図4に示されるようにプラズマは宇宙線41により点火される。空気分子の典型的な電離エネルギーは10から20eVのオーダーであり、例えば窒素分子の場合は15eVである。高電圧電源からの典型的な電場だけを印加することにより電離を達成することはできない。宇宙線41の90%がGeVのエネルギーを有し、それらの90%が陽子である。したがって、宇宙線41はガス分子を電離するために十分に高いエネルギーを有する。GeV宇宙線41は途中で一または二のガス分子を電離させ、それを続行する。したがって、最初の15eVのエネルギーは宇宙から解放される。
【0020】
図4は宇宙線電離プロセスを説明する。電場の存在しないところで宇宙線誘起電離が発生した場合、陽イオン42および電子43は多くの運動エネルギーを有さず、再結合さえする。しかしながら、電場内で電離が発生した場合、陽イオン42および電子43は逆方向に一掃される。この時点で、この電子および陽イオンは配置によるポテンシャルエネルギーを有する。結合したポテンシャルエネルギーはeE・gであり、ここでeは電荷、Eは電場、gは間隙である。例えば、プラズマ領域では電場は9V/umであり、間隙は100umである。電離が負電極の近くで発生した場合、電子は正電極に向かって加速する。この電子のポテンシャルエネルギーはe・E・g=e・(9V/um)・(100um)=900eVである。電離がプラズマ領域の中心で発生した場合、電子はポテンシャルエネルギーのうち450eVを有し、陽イオンが450eVを有する。電離が正電極の近くで発生した場合、陽イオンは900eVを有し、電子はポテンシャルエネルギーを有しない。平均すると、または統計により、このプラズマ領域における平均電子ポテンシャルエネルギーは450eVになる。周囲に空気分子が存在しない場合、電子は自身の速度を獲得し、450eVのポテンシャルエネルギーは運動エネルギーに変換される。周囲にガス分子が存在する場合、電子は空気分子と衝突し、また運動エネルギーが十分に高い場合、別の分子等を電離させる。図5に示されるようにこれは衝突電離プロセスまたはアバランシェプロセスである。窒素の電離エネルギーが15eVであるため、衝突電離プロセスを通じて450eVのポテンシャルエネルギーから30個の自由電子52および陽イオン51が生み出される。したがって、この時点で30個の自由電子52および陽イオン51、ならびに宇宙線および電場からの電離プロセスからは光が得られ、電場エネルギーは29個の電子および陽イオンならびに発光に対応する正確な量だけ減少する。
【0021】
電荷である陽イオン51および電子52を除去することにより当初の電場エネルギーが復元され、プロセスが継続する。効果的な電極配置だけでなく、次のセクションで説明される風力エネルギーを用いることで電荷を除去することが可能になる。連続的に解放される電荷を有するCDDBDシステムは電流源であり、したがってこのようなシステムは電力発生器である。
【0022】
[被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)システムからの電流源]
図6から図9で説明される本発明の第二、第三、第四、第五の実施形態はCDDBDシステムのバージョンであり、浮遊電荷がCDDBDシステムを脱出することができるように構成される。解放された電荷は捕捉して電子デバイスを直接駆動するために使用することができ、またはバッテリのような電気ストレージシステムに格納することができる。図6Aおよび図6Bは、特に電荷脱出のために設計された、図1から図5で説明された実施形態のバリエーションの実施形態を例示している。孔63は各電極/絶縁体/コーティングアセンブリ上に形成される。図6Aはこの実施形態の側面図61であり、図6Bはこの実施形態の上面図62である。電場64は各電極アセンブリの外に延び、したがって電子65および陽イオン66はCDDBDシステムの外に脱出することができる。脱出した電荷は電子デバイスを駆動するため、またはバッテリのような電気ストレージデバイスに格納するために収集することができる。電荷が全て無くなると、図1における当初の電場は電源からの電荷を使用することなく復元され、したがってあらゆるエネルギーを使用しない。したがって、持続可能な電荷供給、すなわち、電流供給が可能である。しかしながら、図6Aにおけるいくつかの電荷67はそれらが孔63の近くにないため脱出できないことになる。図6Aおよび図6Bで説明される実施形態は最も効率の良い電流源ではない可能性があるが、図1から図5で説明された先の実施形態から大きく逸脱することなく原理を説明するためにここで言及される。
【0023】
図7Aおよび図7Bで説明される本発明の第三の実施形態は電流源の別のバージョンである。図7Aはこの実施形態の側面図71であり、図7Bはこの実施形態の上面図72である。電極/絶縁体/コーティングアセンブリはワイヤ73の形状により形成され、最内部は73a、中間部は絶縁体73b、外側部分は高い二次電子放出効率を有するコーティング73cである。上面および底面の電極エリアはワイヤ74a、74bのアレイから構成され、電場78はこれらワイヤ74a、74bの二つのアレイ間に形成される。電場78はワイヤアレイ74a、74bの外に延び、ワイヤの上面アレイ74aと底面アレイ74bとの間で生成された電荷77a、77bはワイヤ間のスペースを通って脱出することができる。ワイヤ間のスペース76はワイヤ直径75よりも著しく大きく、したがって孔63を備えた平面電極11、12、13を有する図6の実施形態よりも脱出効率が優れている。本実施形態は電源における望ましくない損失以外に電源からの電力を消費しないCDDBDシステムから最適化された電流源または電流発生器である。したがって、正味の出力電力は自由電荷から望ましくない電源損失を引いたものである。
【0024】
図8Aおよび図8Bで説明される本発明の第四の実施形態は電流源として最適化された、すなわち電荷がCDDBDシステムから容易に脱出できるように最適化されたCDDBDシステムの別のバージョンである。図8Aおよび図8Bで説明される実施形態はプラズマ管ジェット81であり、これはその内表面85が高い二次電子放出効率材料でコーティングされた電気絶縁管82から構成され、管の外径に二つの管状電極83、84が構成されている。電気絶縁管82は、例えば石英、磁器、ガラス、ポリイミド、テフロン(登録商標)、またはポリエチレンテレフタラート(PET)のうち一つから形成することができる。プラズマまたは電荷増倍は、CDDBDシステムの第一の実施形態のセクションで説明されたのと同じ原理を用いて管の内側に形成される。電源から管状電極83、84にもたらされた電荷は絶縁した管を通過することはなく、したがって電源内部での望ましくない損失以外に電源からの電力を消費しない。管内の電場88A、88Bは管状電極の長さにわたって延び、したがって電荷は軸方向の軸に沿って著しい量の運動エネルギーを獲得し、管から脱出86、87することができる。電荷の速度は陽イオンでは1km/sec、電子では200km/secにも達する可能性がある。脱出電荷86、87はプラズマ管ジェット81の外側の電極で収集することができ、直接機器の電流源として使用するかまたは電気ストレージに格納することができる。図8Aおよび図8BはAC電源を有するこの実施形態を例示している。図8Aは特に右電極84が左電極83よりも正の電圧にある場合を例示している。したがって図8Aにおける電場88Aは左方向を向いており、陽イオン87Aは左の開口部から脱出し、電子86Aは右の開口部から脱出する。図8Bは特に右電極84が左電極83よりも負の電圧にある場合を例示している。したがって図8Bにおける電場88Bは右方向を向いており、陽イオン87Bは右の開口部から脱出し、電子86Bは左の開口部から脱出する。
【0025】
電流源として活用することのできる本発明の第五の実施形態が図9に例示されている。図9で説明される実施形態はイオンジェットであり、プラズマ領域15内の電荷94、95は第三の電極91により形成された電場93により抽出される。AC電源16により動作するCDDBDシステム10の隣に追加の電極91が間隙を設けて配置され、電極91は第三の電極91と第一の二つの電極17の平均電圧との間で固定された電圧差を有するように別のDC電源92によりバイアスがかけられる。第三の電極91と第一の二つの電極17の平均電圧との間に十分な電位差がある場合、電荷94、95はクーロン力によりCDDBDシステムのプラズマ領域15から第三の電極に向かって抽出される。図9は平面CDDBDシステム10を有するイオンジェットを説明しているが、それらが電荷を抽出するための強力な電場を形成するために効果的に第三の電極の隣に配置されるのであれば、例えば図6から図8で説明される任意のCDDBDシステムを代わりに使用することができる。
【0026】
電流源として活用することのできる本発明の第六の実施形態が図10に例示されている。図10で説明される実施形態は異なるポテンシャルで追加の電極を有する電場の助けを用いて、CDDBDシステムの内部であるが図8Aおよび図8Bにおいて説明されるプラズマ管ジェット81のフレームで電荷を抽出する別の実施形態である。図10で説明される新たなプラズマ管ジェット101において、第三の電極102は第一の二つの電極83、84と同じ方法で構成されるが、電極84と管104の端部との間では電荷が放出される。第三の電極102は、その電圧が第二の電極84の電圧に対して一定であってそれとは異なるDCオフセット電源103に接続され、これは通常はDCオフセットを有すると説明される。例えば、図10において、オフセット電源103の極性は第三の電極の電圧が第二の電極84よりも正であるように設定される。第二の電極84と第三の電極102との間の電場105は電子にクーロン力を印加し、さらに第一の電極83と第二の電極84との間で発生したプラズマから電子106を抽出する。第三の電極102を用いることで、図8Aおよび図8Bにおける第三の電極によらずに管ジェットの電場88A、88Bと比較して電場105をさらに真っ直ぐにすることができ、したがって電荷抽出効率が上昇する。DCオフセット電源103の極性が固定されているため、図10で説明されるプラズマ管ジェット101は他方の電荷よりも一方の電荷を好む。例えば、図10において、より好まれる電荷は電子106である。第二の電極84と第三の電極102との間の電場105はパッシェン閾値よりも高くなく、したがってこの領域で新しい電荷は生成されない。電場105は効率的な電荷抽出のためだけに使用される。
【0027】
[風力エネルギーハーベスタ]
CDDBDシステムは風力エネルギーハーベスタとして使用することができる。図6から図10で説明される本発明の実施形態は特に容易な電荷脱出のための電極設計を有する。電荷脱出は電荷が脱出するための孔または管を有するメインプラズマ領域の外に電場が延びるような特別な電極設計を用いることで可能になる。しかしながら、電荷が付着することのできる要素への妨害があるためにその効率は高くない可能性がある。電荷抽出効率は気流または風で電荷を吹き飛ばすことにより上昇させることができる。陽イオンおよび電子は空中に浮かび、気流と共に移動する。したがって、風または気流はそれらを電気エネルギー源として自由に使用することができるようにCDDBDシステムの外に電荷を移動する。このプロセスにおいて、風によりCDDBD電位に拘束された電荷が解放される。電荷がCDDBD拘束ポテンシャルから解放されるための電位エネルギーを獲得するのと同じだけ、風はエネルギー保存則に従ってその運動エネルギーを失う。したがって、CDDBDシステムが活用されるこの実施形態は風力エネルギーハーベスタと呼ばれる。
【0028】
CDDBDシステムを使用する風力エネルギーハーベスティングのために構成された本発明の実施形態が図11に例示されている。この実施形態では、陽イオン112はCDDBDシステム10から吹き飛ばされ113、下流116に収集される。これは陽イオン112が電子111よりも長く空気中に留まるためである。大気放電システムにおいて、衝突電離利得は高く、放電は通常ストリーマを形成する。ストリーマ内の電子111は通常100nsecで正電極に到達し、一方陽イオン112が負電極に到達するのに数ミリ秒を要する。したがって、電子111よりも陽イオン112を収集する方が容易である。電子111は地面への絶縁破壊経路を配置することにより内側のコーティングから除去することができる。コーティングがいつでも電荷、コーティング間の空気およびプローブ絶縁破壊115の無い値を上回るポテンシャルに到達するように、接地された金属プローブ114を内部コーティングに接触させずにその近くに配置することができる。この種類の配置により任意の電子111のコーティング上への堆積の一掃が確実になる。電子111は100nsec以内に移動し、残った陽イオン112は風113により吹き飛ばすことができる。CDDBDシステムから吹き飛ばされた陽イオンは電極116により収集することができ、電流源として使用されるかまたは電気ストレージシステムに格納することができる。
【0029】
CDDBDシステムを使用する風力エネルギーハーベスティングのために構成された本発明の別の実施形態が図12に示されている。平面電極アセンブリ11、12、13により形成されたプラズマエリア15のチャネルの代わりに、二つのワイヤ電極アセンブリ73配置により電荷をより利用しやすくなる。各ワイヤ電極アセンブリ73はコア電極73a、絶縁体73b、および高い二次電子放出材料を有するコーティング73cから構成される。電子123は数百ナノ秒以内にプラズマガスエリア15を横断し、陽イオン124は数ミリ秒の間は依然としてプラズマガスエリア15内にある。陽イオン124は風125でより容易に吹き飛ばしやすい。
【0030】
図12で説明されるこの実施形態では、AC電源がワイヤの中心に接続されている。周期的に極性が変化するため、ワイヤのコーティング73c上に堆積した電子は極性が変わるたびにリセットされるかまたは除去される。したがって、DC電源を活用する図11で説明される実施形態とは対照的に、図12で説明される実施形態においては接地するための経路は必要でない。AC電源を用いると、連続した電荷生成および風により電荷を吹き飛ばすことが可能である。半周期毎に新しい電荷生成が開始される。図13は各周期に対する段階的な電圧および電荷生成を説明している。曲線131は二つのコア電極73a間の電圧差であり、曲線132はパッシェン放電が無い場合のそれらの最近点での二つの外側コーティング73c間の間隙電圧であり、曲線133はパッシェン放電が起こったそれらの最近点での外側コーティング73c間の実際の間隙電圧である。曲線133はパッシェン絶縁破壊により、本ガスシステム15のパッシェン閾値135に制限される。パッシェン絶縁破壊は時刻136aにおいて曲線132がパッシェン絶縁破壊閾値135よりも大きい場合に始まる。曲線134は時刻136aにおいて開始する電荷生成の曲線である。これは時刻137aにおいてコア電極73aの電圧131が上昇を停止するまで続く。この時点で、最大数の陽イオン124および電子123が生成される。電子123は外側コーティング73cのうち一つに付着している可能性が最も高いが、陽イオン124は数ミリ秒の間は依然として空気中に浮いている。時刻138aにおいて間隙電圧133はゼロであり、またこの時、正電荷124はCDDBD電位に最小限に拘束され、風によりシステムの外に容易に吹かれる。AC電源を使用すると、陽イオンがCDDBD電位に最小限に拘束される場合に、電荷生成プロセスとゼロ交差点が継続するという利点がある。プロセスはコア電圧131が他の極性に移ることで継続する。CDDBDシステムから除かれなかった空間電荷電子123および正電荷124のために、パッシェン絶縁破壊が時刻136cよりも早い時刻136bにおいて発生し、外部電源により正確なパッシェン閾値が発生する。電荷生成はコア電圧131がそれ以上は上昇しなくなる時刻137まで逆方向に継続する。コア電圧131が当初の極性に戻ると、時刻138bにおいて間隙電圧133が別のゼロと交差し、陽イオン124はCDDBDシステムの電位に最小限に拘束される。そしてプロセスは当初の極性で継続する。先の半周期からの空間電荷のために、パッシェン絶縁破壊はその最初の周期よりも早く発生する。
【0031】
AC電源を有する図12で説明される実施形態は、合成ワイヤ73内部の絶縁体73bを通過する電荷が無いため、望ましくない電源損失以外に電力を消費しない。したがって、AC電源を有する図12で説明される実施形態は風力エネルギーを消費する連続電流発生器である。したがって、図12で説明される実施形態は風力エネルギーを電気エネルギーに変換する風力エネルギーハーベスタである。連続電流源は図6から図10の実施形態において説明されたようなCDDBDシステムを用いることで可能であり、風により電荷抽出効率が上昇する。
【0032】
[埋込電極]
本発明において説明される全ての実施形態では、ガス媒体に露出している電極は絶縁体で囲まれた電極、すなわち埋込電極で置き換える必要があり得る。埋込電極の一例が図14で説明されている。図1で説明されるCDDBDシステムでは、電極11はガス媒体に露出している。高電場の下では、電極11およびコーティング13の両方がガス媒体に露出している端部において電極11とコーティング13との間でパッシェンガス絶縁破壊が発生する可能性があり、これは絶縁体12の目的に反する。これは特に大量の電荷がコーティング13上に堆積している場合に発生する可能性がある。次に、コーティング13と電極11との間の電場はガスシステムのパッシェン閾値を超える可能性があり、端部の電極11とコーティング13との間で望ましくない短絡が発生する可能性がある。この種類の望ましくない状況を阻止するため、図14に示されるように電極141が絶縁体142内部に埋め込まれる。
【0033】
[蛍光灯ランプ]
本発明の別の実施形態はエネルギー効率の良い蛍光灯ランプである。先に説明されたCDDBDシステムにより衝突電離プロセスを通じた電荷増倍プロセスが可能になる。衝突電離プロセスの間、光子が放出される。アバランシェプロセスにおいて励起状態の分子が生成されるため光子が放出され、これは次に光子を放出することにより基底状態に減衰する。最初の電位エネルギーの一部である光子エネルギーが得られる。このプロセスの繰返しは、AC電力が電極に印加されている場合に持続可能である可能性がある。電極にAC電力が印加されている場合、このプロセスの繰返しを持続させることができる。エネルギー効率の良い蛍光灯ランプの第一の実施形態が図15で説明されている。CDDBDシステムはガスシステム155を含有するガラス管154の内部に構成される。ガスシステム155はアルゴン、キセノン、ネオン、およびクリプトンを用いる低圧水銀ランプのような現在の蛍光灯ランプで使用される典型的なガスシステムである。ガラス管154の内表面はUV-可視変換のための蛍光材料でコーティングされる。電極151が絶縁体152で覆われているため、放電領域155と電源システム31との間で電荷は交換されない。回路は二つのキャパシタ間に「抵抗器のような(resistor-like)」要素であるガスを有するダブルキャパシタシステムと類似である。したがって、電力消費が存在する場合、それは「抵抗器のような」構成要素からということになる。しかしながら、放電プロセスがコールドプロセスであり、ジュール熱散逸が存在しないため、この「抵抗器のような」構成要素はオーミック損失を有する本物の抵抗器ではない。光子放出はまたジュール熱を生み出さない。電力消費のみが電源または電力トランス内部の望ましくない抵抗性構成要素によるものである。
【0034】
各電極151は絶縁材料152で完全に包まれた電極から構成される。各絶縁体の上面には、Ni、W、Mo、BeO、MgO、GaP、GaAsP、Si、PbOのような高い二次放出効率の材料だけでなく二次放出効率を有する他の材料を用いてコーティング153が施される。二つの電極151間に十分に高いAC電圧が印加されると、電場は管内の低圧ガスの電気的な絶縁破壊をもたらすために十分に高くなる。絶縁体の内部に埋め込まれた電極151材料は半導体を含む様々な導電率を有する材料とすることができる。半導体材料は、シリコン、Al23:TiO2-X混合物、SiC、ゲルマニウム、ガリウム化合物、ポリマ半導体、またはイオン導電性物質を有するポリマを含む。この材料の導電性により衝突電離プロセスにおける利得が制限され、したがってストリーマの利得が制御される。利得を制御することで電極を損傷させる可能性のあるアーク放電を抑制することができる。衝突電離利得因子は空気間隙および圧力の関数でもあり、したがって、電極材料の導電率は管の間隙およびガス圧によって変化する可能性がある。半導体電極を使用すると、現在の蛍光灯ランプにおいてバラストを使用する必要がなくなる。現在の蛍光灯ランプにおいてバラストは電流を制御するために必要であり、これが無いと、電流はランプ電気システムの負の差動抵抗のために制御できなくなる。半導体電極は自由電荷の数を制御することにより、より基本的なレベルで放電管の電流を制御および制限し、これはストリーマ生成のための電場を強め、電極に正のフィードバックシステム電場および電荷を形成することができる。
【0035】
バラストが無いことで、合理的な衝突電離利得制御のために従来の蛍光灯ランプよりも短い電極間の間隙が要求される。典型的に、一気圧において間隙が100um未満である場合に均一な放電が可能である。蛍光灯ランプ管における典型的な圧力は気圧の0.3%である。したがって、これは30cmの最大間隙に変換することができる。電極間の間隙の所与の制限に対して、合理的な発光のために幅の広い電極が必要とされ得る。
【0036】
電球またはLEDのような集中させた点光源の照明システムの結果としての強い発光から目を保護するために、広域ランプは有用である。本発明の一実施形態では、広域でエネルギー効率の良い蛍光灯ランプが図16で説明されている。図16の図面は広域でエネルギー効率の良い蛍光灯ランプの側面図である。電極アセンブリは電極のシート161、絶縁体のシート162、およびコーティングのシート163から構成される。この場合、電極161、絶縁体162、および二次放出コーティング163はいずれもUV透過材料から形成することができる。例えば、電極161は酸化インジウムスズ(ITO)またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のような、透明導電性酸化物から形成することができる。絶縁体162はポリイミド、PET、ガラス、または石英から形成することができる。二次放出コーティング層は例えばMgO、またはGaPとすることができる。
【0037】
本発明の別の実施形態によりバラストフリーな蛍光灯ランプが可能になる。バラストフリーな蛍光灯ランプの一実施形態が図17で説明されている。バラストフリーな蛍光灯ランプは従来の蛍光灯ランプと類似するが、電極171は金属の代わりに電気抵抗性材料または半導体材料から形成される。所与の放電間隙、ガス、圧力、および電圧に対して、強過ぎるストリーマまたは放電電流を抑制するために電極171材料の適切な導電率または抵抗率を選択することができる。これにより本蛍光灯ランプの高価な構成要素の一つが不要になる。電極171のための材料は、シリコン、Al23:TiO2-X混合物、SiC、ゲルマニウム、ガリウム化合物、ポリマ半導体、またはイオン導電性物質を有するポリマとすることができ、その導電率は最良の結果を得るために調整することができる。
【0038】
[オゾン発生器]
本発明の別の実施形態は電気放電システムを損傷させる可能性のあるアーク放電が発生しないエネルギー効率の良いオゾン発生器である。酸素(O2)が被覆二重誘電体バリア放電(CDDBD)システムに導入され、CDDBD内部のプラズマを通じてオゾン(O3)に変換される。CDDBDシステムを使用するエネルギー効率の良いオゾン発生器の一実施形態が図18に示されている。各電極181は絶縁材料182で完全に包まれた電極から構成される。各絶縁体の上面には、Ni、W、Mo、BeO、MgO、GaP、GaAsP、Si、PbO、アルカリアンチモン化合物のような、高い二次放出係数を有する材料だけでなく他の高い二次放出係数を有する材料を用いてコーティング183が施される。二つの電極181間に十分に高いAC電圧31が印加されると、電場は空気中で十分に高くなり、空気は3-10V/umで絶縁破壊し始める。O3、NO、NO2、NO(H2O)n、NO2(H2O)n等を含む多くの異なるガス分子が生成される。酸素184のみが存在する場合、酸素タンク(図示されていない)から酸素184を強制的に流すことにより、オゾン185のみが生成される。絶縁体182があるため、電源からガス領域186へ通過する電荷は無く、すなわち、CDDBDシステムは容量性の負荷である。したがって、電源31における望ましくない電力損失以外に電力を消費しない。CDDBDシステム187はまた空気が導電性である二つの静電容量システムとみなすこともできる。しかしながら、空気伝導はコールドプロセス(衝突電離またはコールドプラズマ)であり、熱散逸は無い。したがって、CDDBDシステム187全体では電源回路内の抵抗器による任意の他の望ましくない熱散逸以外に電力を消費しない。電源の最小電力消費設計(例えば、電力線からのダイレクト昇圧トランス)を用いると、電力消費は電力トランスでの消費のみにまで最小化することができる。このようなシステムはエネルギー効率の良いオゾン発生器である。
【0039】
絶縁体182の内部に埋め込まれている電極材料181は半導体を含む様々な導電率を有する材料とすることができる。半導体材料はシリコン、Al23:TiO2-X混合物、SiC、ゲルマニウム、ガリウム化合物、ポリマ半導体、またはイオン導電性物質を有するポリマを含む。この材料の導電性により衝突電離プロセスにおける利得が制限され、したがってストリーマの利得が制御される。利得を制御することによりCDDBDシステムを損傷させる可能性のあるアーク放電が抑制される。衝突電離利得は空気間隙の関数でもあり、したがって電極材料の導電率は間隙にしたがって変化する可能性があり、そのため高効率のオゾン生成が達成される一方でアーク放電を伴わない。
【0040】
エネルギー効率の良いオゾン発生器の別の実施形態が図19に示されている。この実施形態はコア電極、絶縁体およびコーティングから構成され、電極アセンブリ191間の空気間隙192を有する平面電極アセンブリ191のアレイを備える図18における実施形態を直列に拡張したものである。各電極191は、各ガス間隙192が印加された電圧からの電場、したがってパッシェン放電を有するように交流極性を有する電源に接続される。酸素193が電極アセンブリ191のシートのアレイ側に供給され、オゾン194が他の端部から出ていく。
【0041】
上記の説明は例示的であることを意図するものであり、制約するものではないことを理解されたい。当業者においては上記の説明を読み、理解する際には多くの他の実施形態が明らかになるであろう。当業者には上記で論じられた実施形態のいずれかが特定の実装、設計考慮、目標等にしたがって様々な目的のために使用され得ることを理解されたい。したがって、範囲は、添付の特許請求の範囲を参照し、権利を与えられるそのような特許請求の範囲の同等物の全範囲とともに決定されるべきである。
【0042】
説明の目的のために、上述の説明は固有の実施形態を参照して説明された。しかしながら、上記の例示的な議論は説明された実施形態を開示された正確な形態に徹底または限定することを意図したものではない。上記の教示を考慮した多くの修正およびバリエーションが可能である。実施形態は原理および様々な実施形態の実用的な適用を最も良く説明し、それにより他の当業者が検討される特定の使用に好適であり得るような様々な修正を用いて様々な実施形態を最も良く活用することを可能にするために選択され、説明された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【外国語明細書】