(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051959
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】防指紋表面を有する筐体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20230404BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230404BHJP
C03C 15/00 20060101ALI20230404BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20230404BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230404BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20230404BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230404BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05K5/02 J
C03C21/00 101
C03C15/00 D
C03C19/00 A
C03C19/00 Z
B01J35/02 J
H04M1/02 C
G06F1/16 312G
G06F1/16 312L
G09F9/00 302
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022200219
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2020024105の分割
【原出願日】2016-01-19
(31)【優先権主張番号】62/105,004
(32)【優先日】2015-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミン アミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ゴリエ
(72)【発明者】
【氏名】シャンドン ディー ハート
(72)【発明者】
【氏名】カール ウィリアム コック ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ワギーシャ セナラトネ
(57)【要約】
【課題】コスト効率が良く、小型、軽量、堅牢、及び美的観点から満足のいく筐体を提供する。
【解決手段】電子装置筐体において、防指紋表面を有する基体であって、防指紋表面に付着または接合した粒子を含むテクスチャ表面を有する基体を備え、0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲によって定義される、無線及びマイクロ波周波数透明性、磁場透明性、誘導場透明性、及び赤外線透明性のいずれか1つ以上を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置筐体であって、
防指紋表面を有する基体であって、前記基体の表面に付着または接合した粒子を含むテクスチャ表面を有する基体を備え、前記防指紋表面は0.5%~40%の範囲のヘイズ及び200nmより大きいRMS表面粗さを示し、
前記防指紋表面を備えた前記筐体は、
0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲によって定義される、無線及びマイクロ波周波数透明性、
磁場透明性、
誘導場透明性、及び
赤外線透明性
のいずれか1つ以上を示すことを特徴とする筐体。
【請求項2】
前記防指紋表面を備えた前記筐体は、
0.60MPa・m1/2より大きい破壊靭性、
350MPaより大きい4点曲げ強度、
少なくとも450kgf/mm2(約4.4GPa)のビッカース硬さ、
少なくとも5kgf(約49N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値、
50GPa~100GPaの範囲のヤング率、及び
2.0W/m℃未満の熱伝導率
のいずれか1つ以上を示すことを特徴とする、請求項1記載の電子装置筐体。
【請求項3】
前記粒子が100ナノメートルから2マイクロメートルの範囲の平均主寸法を有することを特徴とする、請求項1記載の電子装置筐体。
【請求項4】
前記筐体は、前記防指紋表面を通して測定して、400nm~750nmの波長範囲にわたり、又は750nm~2000nmの波長範囲にわたり、80%以上の平均透過率を示すことを特徴とする、請求項1記載の電子装置筐体。
【請求項5】
前記基体が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラスのいずれか1つを含むことを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項6】
前記基体が、強化され、
20μm以上の層深さ(DOL)を有する圧縮表面層、
400MPaより大きい圧縮応力、及び
20MPaより大きい中央張力
のいずれか1つ以上を有することを特徴とする、請求項5記載の電子装置筐体。
【請求項7】
前記基体が、強化ガラスセラミック基体、非強化ガラスセラミック基体、又は単結晶基体を含むことを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項8】
携帯電話、タブレット、ラップトップ、及びメディアプレーヤーから選択される電子装置を更に備えたことを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項9】
前記テクスチャ表面を有する筐体に対する対照筐体の全反射色ずれが1未満であり、前記テクスチャ表面を有する筐体の全反射は全反射色ずれを決めるために前記テクスチャ表面を有する防指紋表面について測定されることを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項10】
前記テクスチャ表面を有する筐体に対する対照筐体の拡散反射色ずれが1未満であり、前記テクスチャ表面を有する筐体の拡散反射は拡散反射色ずれを決めるために前記テクスチャ表面を有する防指紋表面について測定されることを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項11】
前記テクスチャ表面を有する筐体に対する対照筐体の全透過色ずれ(DC*)および前記テクスチャ表面を有する筐体に対する対照筐体の全透過色ずれ(DE*)がどちらも全て1未満であり、前記テクスチャ表面を有する筐体の全透過は全透過色ずれ(DC*)および全透過色ずれ(DE*)を決めるために前記テクスチャ表面を有する防指紋表面を通して測定されることを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【請求項12】
前記RMS表面粗さが、0.8マイクロメートル以下であることを特徴とする、請求項1~4いずれか1項記載の電子装置筐体。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容に依拠し、参照により、全内容が本明細書に組み込まれたものとする、2015年1月19日出願の米国仮特許出願第62/105,004号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は電子機器の筐体に関し、より具体的には、それを通して、無線データ伝送又は無線充電エネルギーの伝送を可能にする、防指紋表面を有する筐体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ラップトップ、タブレット、メディアプレーヤー、携帯電話等の携帯用電子機器が小型軽量化、及び強力になるにつれ、携帯用コンピューティング機器の一部の構成要素及び筐体の設計を改善する必要が生じている。かかる筐体の設計は、軽量で薄いが、堅牢かつ堅固でなければならない。通常、薄いプラスチック構造体、及び少ない締結具を用いる軽量の筐体は、一般に、厚いプラスチック構造体、及び厚くて重い多くの締結具を使用する、より堅牢かつ堅固な筐体と比較して、柔軟かつ傷がつき易く、座屈及び湾曲する傾向が強い。堅牢かつ堅固な筐体の重い重量は、ユーザーの不満につながり、軽量の構造体の湾曲/座屈によって、携帯用電子機器内部の部品が損傷する可能性がある。
【0004】
美的観点からは、指紋の転写又は汚れに対し、耐性を示す表面が筐体に望まれる。電子機器に関連する用途に関し、かかる表面の一般的な要件には、高い透過性、管理されたヘイズ、指紋転写に対する耐性、及び取り扱いに対する堅牢性が含まれる。抗指紋表面は、使用者の指又は皮膚が触れたとき、水分及び油の両方の転写に対して耐性を示す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の筐体における前述の問題に鑑み、携帯用電子機器のための向上した筐体の必要性が存在している。特に、現在の筐体の設計よりもコスト効率が良く、小型、軽量、堅牢、及び美的観点から満足のいく筐体が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、防指紋表面を有する基体を備えた電子装置筐体に関連している。1つ以上の実施の形態において、防指紋表面に指紋を付着させたとき、防指紋表面は、約0.95未満の視認性、又は約20未満の色ずれを示す。一部の実施の形態において、防指紋表面に指紋を付着させたとき、防指紋表面が、約0.95未満の視認性、及び約20未満の色ずれの両方を示す。防指紋表面は、テクスチャ表面、被膜表面、又は被膜テクスチャ表面を含むことができる。テクスチャ表面は、約0.05マイクロメートル~約10マイクロメートルのRMS粗さ高さ、約0.1マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲の横方向の空間的周期、又は約0.05マイクロメートル~約10マイクロメートルのRMS粗さ高さと約0.1マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲の横方向の空間的周期との組合せを有することができる。
【0007】
一部の実施の形態において、筐体は、約0.5%~約40%の範囲の(透過又は反射における)ヘイズを示す。筐体は、約400nm~約750nmの波長範囲にわたり、約80%以上の平均透過率を示すことができる。別の実施の形態において、筐体は、約750nm~約2000nmの波長範囲にわたり、約80%以上の平均透過率を示すことができる。
【0008】
筐体は、筐体を電子機器に用いることを可能にする特性を示すことができる。かかる特性には、0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲によって定義される、無線及びマイクロ波周波数透明性、磁場透明性、誘導場透明性、及び赤外線透明性のいずれか1つ以上が含まれる。一部の実施の形態において、筐体は、500MHz~3.0GHzの周波数範囲において、0.015未満の損失正接で定義される、無線及びマイクロ波周波数透明性を示す。
【0009】
1つ以上の実施の形態において、筐体は、筐体を携帯用電子機器に用いることを可能にする様々な機械的特性を示すことができる。その機械的特性には、0.60MPa・m1/2(又は0.75MPa・m1/2)より大きい破壊靭性、350MPa又は475MPaより大きい4点曲げ強度、少なくとも450kgf/mm2(約4.4GPa)又は500kgf/mm2(約4.9GPa)のビッカース硬さ、少なくとも5kgf(約49N)又は約10kgf(約98N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値、約50GPa~約100GPa(又は約50GPa~約75GPa)の範囲のヤング率、及び2.0W/m℃未満又は1.5W/m℃の熱伝導率のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0010】
筐体に利用される基体は、非晶質基体又は結晶質基体を含むことができる。非晶質基体の例には、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラスが含まれる。一部の例において、非晶質基体を強化することができる。1つ以上の実施の形態において、強化非晶質基体は、20μm以上の層深さ(DOL)を有する圧縮表面層、400MPaより大きい圧縮応力、及び20MPaより大きい中央張力のいずれか1つ以上を示すことができる。結晶質基体の例には、強化ガラスセラミック基体、非強化ガラスセラミック基体、又は単結晶基体が含まれる。かかる強化ガラスセラミック基体は、20μm以上の層深さ(DOL)を有する圧縮表面層、400MPaより大きい圧縮応力、及び20MPaより大きい中央張力のいずれか1つ以上を示すことができる。
【0011】
本開示の第2の態様は、ハウジング、少なくとも部分的にハウジングの内部に配置された電気部品、及びガラス系の基体を有する電子装置に関連している。1つ以上の実施の形態において、電子部品は少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含むことができ、ガラス系の基体は、ディスプレイの上方又はディスプレイの後方に配置される。1つ以上の実施の形態において、ガラス系の基体は強化され、表面、及び表面から約20マイクロメートル以上の層深さ(DOL)に延びる圧縮応力を有している。1つ以上の実施の形態において、ガラス系の基体は、可視スペクトルにわたり、約80未満の透過率を示す。
【0012】
1つ以上の実施の形態のガラス系の基体は、約20%より大きい透過ヘイズを有している。一部の例において、ガラス系の基体は、鏡面反射から2度又は鏡面反射から5度のいずれかにおいて、20%より大きい反射ヘイズを有している。透過及び反射ヘイズは、ASTM E430に従って測定することができる。
【0013】
一部の例において、ガラス系の基体は、炭化ケイ素球の対向面に対して測定したとき、0.3未満の摩擦係数を示す。1つ以上の実施の形態において、ガラス系の基体は、主表面において測定したとき、約200nmより大きい、又は約500nmより大きいRMS表面粗さを示す。
【0014】
1つ以上の実施の形態において、ガラス系の基体は、ガラス系の基体の主表面に配置されたインク層を備えている。一部の例において、ガラス系の基体は、疎水性又は疎油性の材料を含んでいる。ガラス系の基体は、着色ガラスを含むか、又は色彩を示すことができる。
【0015】
電子装置筐体は、携帯電話、タブレット、ラップトップ又はノート型コンピュータ、及びメディアプレーヤーから選択される電子装置を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】対照筐体、及び異なる透過ヘイズレベルを示す筐体の波長に対する全反射率をプロットしたグラフ。
【
図3】
図2に示す筐体の波長に対する拡散反射率をプロットしたグラフ。
【
図4】
図2に示す筐体の全反射におけるa
*及びb
*色値、並びに拡散反射におけるa
*及びb
*色値をプロットしたグラフ。
【
図5】
図2に示す筐体の、全透過におけるa
*及びb
*色値をプロットしたグラフ。
【
図6】
図2に示す筐体の、透過ヘイズに対する全反射色ずれ、及び透過ヘイズに対する拡散反射色ずれをプロットしたグラフ。
【
図7】
図2に示す筐体の、透過ヘイズに対する全透過色ずれ、及び透過ヘイズに対する、色値L
*を考慮した、全透過色ずれをプロットしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において以下に説明するように、携帯用電子機器のためのよりコスト効率がよく、小型、軽量、堅牢、及び美的観点から満足のいく筐体が必要である。かかる機器には、携帯電話、メディア(音楽を含む)プレーヤ、ラップトップ又はノート型コンピュータ、タブレット、ゲーム機器、電子書籍リーダー、及び他の機器が含まれる。本開示の実施の形態は、衝撃損傷(例えば、凹み傷)に対して重み及び/又は耐性を示し、防指紋表面を備えた、かかる筐体に適した材料に関連している。筐体、特に金属の筐体に使用される多くの既知の材料と異なり、本明細書に記載の材料は、無線通信に妨害を与えない。例えば、筐体は、無線周波数、マイクロ波、磁場、誘導場、無線データ伝送、無線充電エネルギー、又はこれらの組合せ等の伝送を可能にすることができる。本開示の一部の実施の形態は、本明細書に記載の筐体を含む電子機器に関連している。
【0018】
本明細書の実施の形態は、防指紋表面を備えた基体を有する筐体に関連している。本明細書において、「筐体」という用語は、「ハウジング」及び「カバー又は保護カバー」と交換可能に用いることができる。
図1に示すように、筐体100は、対向する主表面110、120、及び対向する副表面130、140を備えた基体101を有しているが、基体に関して以下に説明するように、別の構成も可能である。一部の実施の形態において、筐体は、電子装置の非表示領域又は構成要素を覆う。かかる筐体は、電子装置の背面及び/又は電子装置の任意の縁部を形成する。1つ以上の実施の形態において、基体の一方の主表面120が、電子装置の外面を形成することができ、他方の主表面110が筐体の内面を形成することができ、電子装置内部の構成要素に隣接する。内面を形成する主表面110は、装飾的な機構を形成する被膜を有することができ、これには色、図形、金属化表面等を付与する被膜を含むことができる。
【0019】
本明細書において、「防指紋」という用語は、概して、表面上の指紋の視認性の低下に関連している。かかる低下は、表面に疎水性(即ち、水の接触角>90°)を付与する、表面に親油性(即ち、油の接触角<90°)を付与する、指紋に見られる粒状又は液状物質の表面付着に対する耐性を付与する、又はこれ等の組み合わせることによって実現することができる。一部の実施の形態において、これ等の特性のステッキは、様々な表面改質、被膜、又はこれ等の組合せによって表面に付与することができる。
【0020】
基体
1つ以上の実施の形態において、基体は、非晶質基体、結晶質基体、又はこれ等の組合せを含むことができる。一部の実施の形態において、基体は無機物として、又はより具体的には、ガラス系として特徴付けることができる。1つ以上の実施の形態において、非晶質基体は、ガラス基体を含むことができ、ガラス基体は強化されていてもいなくてもよい。適切なガラス基体の例には、ソーダ石灰ガラス基体、アルカリアルミノシリケートガラス基体、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス基体、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラス基体が含まれる。一部の変形例において、ガラス基体は酸化リチウムを含んでいなくてもよい。1つ以上の別の実施の形態において、基体101は、ガラスセラミック基体等の結晶質基体(強化されていてもいなくてもよい)、又はサファイア等の、単結晶構造体を含むことができる。1つ以上の特定の実施の形態において、基体は非晶質のベース(例えば、ガラス)及び結晶質のクラッド(例えば、サファイア層、多結晶アルミナ層、及び/又はスピネル(MgAl2O4)層)を含んでいる。
【0021】
一部の実施の形態において、基体101は有機体であってよく、具体的にはポリマーであってもよい。適切なポリマーには、ポリスチレン(PS)(スチレンコポリマー及びブレンドを含む)、ポリカーボネート(PC)(コポリマー及びブレンドを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートコポリマーを含むコポリマー及びブレンドを含む)、ポリオレフィン(PO)及び環状ポリオレフィン(環状PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリルポリマー(コポリマー及びブレンドを含む)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリエーテルイミド(PEI)及びこれ等のポリマーをブレンドしたものが含まれるが、これに限定されるものではない。別の例示的なポリマーには、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及びシリコーン樹脂が含まれる。
【0022】
基体は実質的に平坦であってよいが、別の実施の形態は、湾曲した基体、又は(例えば、2.5次元又は3次元の形状を有する)造形若しくは彫刻された基体を利用することができる。基体は実質的に光学的に透明であり、透き通り、光の散乱がない。基体は約1.45~約1.55の範囲の屈折率を有することができる。本明細書において、屈折率の値は波長550nmに対するものである。基体は、かかる基体の1つ以上の対向する主表面において測定したとき、(本明細書に記載、強化されていない基体と比較した場合)高い平均曲げ強度を有し、又は(本明細書に記載の、強化されていない基体と比較した場合)高い破損表面歪みを有するとして特徴付けることができる。
【0023】
1つ以上の実施の形態において、基体は色彩を呈するか、又は着色基体(即ち、色彩又は色調を有するように見える基体)であってよい。ガラス系の基体を利用する場合、ガラス系の基体は、コバルト、バナジウム、銅、鉄、マンガン等の酸化物等の着色剤を含有する組成を有することができる。
【0024】
加えて又は代えて、美的及び/又は機能的理由から、1つ以上の方向の寸法に沿って、基体の厚さを変えることができる。例えば、基体の中央領域と比較して、縁部をより厚くすることができる。筐体の用途又は使用に応じて、基体の長さ、幅、及び厚さの寸法を変えることもできる。
【0025】
基体は様々な異なる方法によって形成することができる。例えば、基体がガラス基体を含む場合、例示的なガラス基体形成方法には、フロートガラス法、並びにフュージョンドロー及びスロットドロー等の、ダウンドロー法が含まれる。
【0026】
フロートガラス法によって用意されたガラス基体は、滑らかな表面を特徴とし、均一な厚さは、一般的にはスズである溶融金属床の上に浮遊させた溶融ガラスによってもたらされる。例示的な方法において、溶融スズ床の表面に供給された溶融ガラスによって、浮遊ガラスリボンが形成される。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるにつれ、温度が徐々に低下して、ガラスリボンが固体ガラスリボンに固化し、スズ浴からローラーに引き上げることができる。スズ浴から引き上げた後、ガラス基体を更に冷却し、アニールして内部応力を低減することができる。
【0027】
ダウンドロー法は、比較的清浄無垢な表面を有する均一な厚さのガラス基体を生成する。ガラス基体の平均曲げ強度は、表面の欠陥の量及び大きさに支配されるため、接触が最小限に抑えられた清浄無垢な表面は、より高い初期強度を有している。次に、この高強度のガラス基体を(例えば、化学的に)強化すると、粗研磨及び艶出した表面を有するガラス基体の強度より高い強度を得ることができる。ダウンドローしたガラス基体は、約2mm未満の厚さに延伸することができる。加えて、ダウンドローしたガラス基体は、高価な研削及び研磨を必要とせずに、最終用途に使用できる非常に平坦かつ滑らかな表面を有している。
【0028】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融ガラス原料を受け取るための溝を有する延伸タンクを使用する。溝は、溝の両側に、溝の長さに沿って上に開放した堰を有している。溶融ガラスで溝が満たされると、溶融ガラスは堰をオーバーフローする。重力によって、溶融ガラスは、2つの流れるガラス膜として、延伸タンクの外面を流れ落ちる。延伸タンクのこれ等の外面は、延伸タンクの下方の縁部で合流するように、下方かつに内側に延びている。2つの流れるガラス膜は、この縁部で合流して1つの流れるガラス基体を形成する。フュージョンドロー法は、溝を越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するため、得られるガラス基体のいずれの外面も、装置の部品に全く触れないという利点を有している。従って、フュージョンドローされたガラス基体の表面特性は、かかる接触に影響されない。
【0029】
スロットドロー法は、溶融ドロー法とは異なる。スロットドロー法では、溶融原料ガラスが延伸タンクに供給される。延伸タンクの底部には開放スロットが設けられ、開放スロットは、スロットの長さに沿って延びるノズルを有している。溶融ガラスはスロット/ノズルを通して流れ、連続した基体として下方に延伸され、アニーリング領域に入る。
【0030】
一部の実施の形態において、ガラス基体に使用される組成は、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、及びSnO2を含む群から選択される、少なくとも1種の0~2モル%の清澄剤を含むバッチにすることができる。
【0031】
形成後、ガラス基体を強化して、強化ガラス基体を形成することができる。ガラスセラミック基体も、ガラス基体と同様に、強化できることが理解されるであろう。本明細書において、「強化基体」は、例えば、ガラス基体又はガラスセラミック基体の表面のより小さいイオンを、より大きいイオンにイオン交換する等、化学的に強化したガラス基体又はガラスセラミック基体を意味することができる。しかし、熱強化等、当該技術分野で公知の別の強化方法を利用して、強化ガラス基体を形成することができる。
【0032】
本明細書に記載の強化基体は、イオン交換処理によって化学的に強化することができる。イオン交換処理において、一般的には、ガラス又はガラスセラミック基体を、所定の時間、溶融塩浴に浸漬することによって、ガラス又はガラスセラミック基体の表面又は表面近傍のイオンが、塩浴からのより大きい金属イオンに交換される。1つの実施の形態において、溶融塩浴の温度は約400~430℃であり、所定の時間は約4~約8時間である。より大きいイオンをガラス又はガラスセラミック基体に組み込むことによって、基体の表面近傍領域、又は表面及びその近傍領域に圧縮応力が生じ、基体が強化される。基体の中央領域又は基体の表面から一定の距離を置いた領域に、対応する引張応力が誘導され、圧縮応力とのバランスが取られる。この強化処理を利用するガラス又はガラスセラミック基体は、より具体的には、化学強化又はイオン交換ガラス又はガラスセラミック基体と表現することができる。
【0033】
1つの例において、強化ガラス又はガラスセラミック基体中のナトリウムイオンが、硝酸カリウム塩浴等の溶融浴からのカリウムイオンに置換されるが、ルビジウム又はセシウム等のより大きい原子半径を有する別のアルカリ金属イオンが、ガラス中のより小さいアルカリ金属イオンを置換することができる。特定の実施の形態によれば、ガラス又はガラスセラミック中のより小さいアルカリ金属イオンをAg+イオンで置換することができる。同様に、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物等を含み、これに限定されない他のアルカリ金属塩をイオン交換処理に使用することができる。
【0034】
ガラスネットワークが緩和し得る温度よりも低い温度で、より小さいイオンをより大きいイオンに置換することによって、強化された基体の表面全体にわたりイオン分布が生成され、応力プロファイルがもたらされる。入ってくるイオンのより大きい体積によって、表面に圧縮応力(CS)が生じ、強化基体の中央部に張力(中央張力又はCT)が生じる。圧縮応力は、以下の関係によって、中央張力に関連付けられる。
【0035】
【0036】
ここで、tは強化ガラス又はガラスセラミック基体の全厚であり、圧縮層深さ(DOL)は交換深さである。交換深さは、イオン交換プロセスによって促進されるイオン交換が生じる、強化ガラス又はガラスセラミック基体内の深さ(即ち、ガラス基体の表面からガラス又はガラスセラミック基体の中央領域までの距離)と表現することができる。
【0037】
1つの実施の形態において、強化ガラス又はガラスセラミック基体は、300MPa以上、例えば、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、又は800MPa以上の表面圧縮応力を有することができる。強化ガラス又はガラスセラミック基体は、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)の圧縮層深さ、及び/又は10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPa、又は50MPa以上)かつ100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)の中央張力を有することができる。1つ以上の特定の実施の形態において、強化ガラス又はガラスセラミック基体は、500MPaより大きい表面圧縮応力、15μmより大きい圧縮層深さ、及び18MPaより大きい中央張力のうちの1つ以上を有している。
【0038】
理論に束縛されるものではないが、500MPaより大きい表面圧縮応力、及び約15μmより大きい圧縮層深さを有する強化ガラス又はガラスセラミック基体は、概して、非強化ガラス又はガラスセラミック基体(換言すれば、イオン交換又は他の方法で強化されていないガラス基体)より大きい破損歪みを有すると考えられる。
【0039】
基体に使用できる例示的なガラスには、アルミノシリケートガラス組成又はアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成を含むことができるが、他のガラス組成も考えられる。かかるガラス組成は、イオン交換可能であると特徴付けることができる。本明細書において、「イオン交換可能」とは、組成を含む基体が、基体の表面又はその近傍に位置する陽イオンを、大きさがより大きい又はより小さい、同じ価数の陽イオンと交換できることを意味する。1つの例示的なガラス組成は、SiO2、B2O3、及びNa2Oを含み、(SiO2+B2O3)≧66モル%、Na2O≧9モル%である。1つの実施の形態において、ガラス組成は少なくとも6質量%の酸化アルミニウムを含んでいる。別の実施の形態において、基体は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5質量%となるように、1種以上のアルカリ土類酸化物を含有するガラス組成を含んでいる。一部の実施の形態において、適切なガラス組成は、K2O、MgO、及びCaOのうちの少なくとも1種を更に含んでいる。特定の実施の形態において、基体に使用されるガラス組成は、61~75モル%のSiO2、7~15モル%のAl2O3、0~12モル%のB2O3、9~21モル%のNa2O、0~4モル%のK2O、0~7モル%のMgO、及び0~3モル%のCaOを含むことができる。
【0040】
基体に適した別の例示的なガラス組成は、60~70モル%のSiO2、6~14モル%のAl2O3、0~15モル%のB2O3、0~15モル%のLi2O、0~20モル%のNa2O、0~10モル%のK2O、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO2、0~1モル%のSnO2、0~1モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、及び50ppm未満のSb2O3を含み、12モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦20モル%、及び0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0041】
基体に適した更に別の例示的なガラス組成は、63.5~66.5モル%のSiO2、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、0~5モル%のLi2O、8~18モル%のNa2O、0~5モル%のK2O、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO2、0.05~0.25モル%のSnO2、0.05~0.5モル%のCeO2、50ppm未満のAs2O3、及び50ppm未満のSb2O3を含み、14モル%≦(Li2O+Na2O+K2O)≦18モル%、及び2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0042】
特定の実施の形態において、基体に適したアルカリアルミノシリケートガラス組成は、アルミナ、少なくとも1種のアルカリ金属、及び一部の実施の形態においては、50モル%より大きいSiO2、別の実施の形態においては、少なくとも58モル%のSiO2、更に別の形態においては、少なくとも60モル%のSiO2を含み、比((Al2O3+B2O3)/Σ改質剤)>1であり、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。特定の実施の形態において、このガラス組成は58~72モル%のSiO2、9~17モル%のAl2O3、2~12モル%のB2O3、8~16モル%のNa2O、及び0~4モル%のK2Oを含み、比((Al2O3+B2O3)/Σ改質剤)>1である。
【0043】
更に別の実施の形態において、基体は、64~68モル%のSiO2、12~16モル%のNa2O、8~12モル%のAl2O3、0~3モル%のB2O3、2~5モル%のK2O、4~6モル%のMgO、及び0~5モル%のCaOを含み、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%、及び4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である、アルカリアルミノシリケートガラス組成を含むことができる。
【0044】
別の実施の形態において、基体は、2モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2、又は4モル%以上のAl2O3及び/又はZrO2を含む、アルカリアルミノシリケートガラス組成を含むことができる。
【0045】
基体が結晶質基体を含んでいる場合、基体は単結晶を含むことができ、単結晶はAl2O3を含みことができる。かかる単結晶基体はサファイアと呼ばれている。結晶質基体に適した別の材料には、多アルミナ層及び/又はスピネル(MgAl2O4)が含まれる。
【0046】
必要に応じ、結晶質基体は、ガラスセラミック基体を含むことができ、ガラスセラミック基体は強化されていてもいなくてもよい。適切なガラスセラミックの例には、Li2O-Al2O3-SiO2系(即ち、LAS系)ガラスセラミック、MgO-Al2O3-SiO2系(即ち、MAS系)ガラスセラミック、及び/又はβ-石英固溶体、β-スポジュメンss、コージェライト、及び二ケイ酸リチウム等を含む、優勢な結晶相を含むガラスセラミックを含むことができる。ガラスセラミック基体は、本明細書に記載のガラス基体の強化方法を使用して強化することができる。1つ以上の実施の形態において、MAS系のガラスセラミック基体がLi2SO4溶融塩によって強化され、それによってMg2+が2Li+に交換され得る。
【0047】
1つ以上の実施の形態による基体は、約100μm~約5mmの厚さを有することができる。例示的な基体の厚さは、約100μm~500μmの範囲(例えば、100、200、300、400、又は500μm)である。別の例示的な基体の厚さは、約500μm~約1000μm(例えば、500、600、700、800、900、又は1000μm)の範囲である。基体は約1mmより大きい厚さ(例えば、約2、3、4、又は5mm)を有することができる。1つ以上の特定の実施の形態において、基体は2mm以下、又は1mm未満の厚さを有することができる。基体は酸研磨又は別の方法で処理して、表面の傷の影響を除去又は抑制することができる。
【0048】
防指紋表面
1つ以上の実施の形態において、基体101の一方若しくは両方の主表面110、120、又は基体の1つ以上の副表面130、140の少なくとも一部に、防指紋表面を形成することができる。一部の実施の形態において、基体の1つ、2つ、3つ、又は全ての表面の少なくとも一部に、防指紋表面を形成することができる。一部の例において、基体101の1つ以上の表面の全体に防指紋表面を形成することができる。一部の実施の形態において、防指紋表面を所定の図柄に形成することができる。例えば、筐体は、表面の一部を占める図柄を含むことができ、図柄を覆うようにその表面に、又は図柄に隣接する表面に、防指紋表面を形成することができる。筐体上の図柄は、基体の1つの主表面に配置された膜によって形成することができ、反対側の主表面に図柄と同じ形状を有する防指紋表面を形成することができる。
【0049】
防指紋表面は、テクスチャ表面(又はテクスチャを含むように改質された表面)、被膜、又はこれ等の組合せ(即ち、被膜テクスチャ表面)を含むことができる。防指紋表面又は防指紋表面を含む対象は、約0.5%~約40%、約0.5%~約35%、約0.5%~約30%、約0.5%~約25%、約0.5%~約20%、約0.5%~約15%、約1%~約20%、約5%~約35%、約10%~約35%、約15%~約35%、約20%~約35%、又は約25%~約35%のヘイズ(透過、反射、又は透過及び反射の両方)を示すことができる。防指紋表面又は防指紋表面を含む対象は、約20%以上、約30%以上、又は約40%以上の透過ヘイズを示すことができる。透過ヘイズは約50%までとすることができる。1つ以上の実施の形態において、防指紋表面又は防指紋表面を含む対象は、約20%以上、約30%以上、又は約40%以上の反射ヘイズを示すことができる。一部の例において、反射ヘイズは約50%までとすることができる。反射ヘイズは、鏡面反射から2度又は鏡面反射から5度で測定することができる。一部の実施の形態において、ヘイズは、ASTM E430に従って測定することができる。
【0050】
テクスチャ表面を利用して防指紋表面を形成する実施の形態において、テクスチャ表面は、表面に配置された、光を散乱する、粗さを生成する、又はこれ等の組合せをもたらす機構を含むことができる。機構は、表面に、直接又は間接的に、ランダム又は非ランダムに配置することができる。ランダムに配置された機構は、指又は皮膚が表面に接触又は表面をスワイプしたとき、滑らかな触感を与えることができる。具体的には、ある程度の粗さを与える機構は、指又は物体のテクスチャ表面との接触面積を制限することによって、表面上の指又は物体の滑りを促進する滑らかな接触感覚をもたらすことができる。
【0051】
1つ以上の実施の形態において、テクスチャ表面は、約0.02マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.02マイクロメートル~約8マイクロメートル、約0.02マイクロメートル~約6マイクロメートル、約0.02マイクロメートル~約4マイクロメートル、約0.05マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.05マイクロメートル~約1マイクロメートル、又は約0.1マイクロメートル~約0.8マイクロメートルのRMS粗さ高さ(即ち、z方向)を示すことができる。RMS粗さ高さは、原子間力顕微鏡(AFM)、探針形状測定、及び光干渉形状測定等、当技術分野で公知の方法を用いて測定することができる。本明細書において、RMS粗さは、少なくとも約0.5mm×約0.5mmのサンプル表面区域を選択的に測定して、約10~約1000の範囲のいくつかの代表的な表面機構を含む代表平均を捕捉する。
【0052】
一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、テクスチャ表面の機構間(即ち、機構と機構との間に形成された谷部)に指紋油を集める低頻度の機構、大きな機構、又はこれ等の組合せを含むことができる。機構間に油を集めることによって、油滴で覆われる表面の割合が減少し、指紋油からの光の散乱が減少する。かかる実施の形態において、テクスチャ表面は、約0.05マイクロメートル~約1マイクロメートルの範囲のRMS粗さ高さを有することができる。
【0053】
一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、構造体の谷部への指紋油の移動を大幅に減少させるのに十分な大きさのRMS粗さ高さを有することができ、従って、油滴で覆われた表面の割合を制限することによって光の散乱を抑制することもできる。かかるテクスチャ表面は、約1マイクロメートル~約10マイクロメートルの範囲のRMS粗さ高さを有することができる。
【0054】
一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、約0.1マイクロメートル~約500マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約400マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約300マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約200マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約100マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約50マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.5マイクロメートル~約500マイクロメートル、約1マイクロメートル~約500マイクロメートル、約10マイクロメートル~約500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約500マイクロメートル、約100マイクロメートル~約500マイクロメートル、約1マイクロメートル~約100マイクロメートル、又は約10マイクロメートル~約50マイクロメートルの範囲の横方向(即ち、x-y面内方向)の空間的周期を有している。
【0055】
これ等の粗さのパラメータ及び表面プロファイルは、原子間力顕微鏡(AFM)、探針表面形状測定、及び光干渉表面プロファイリング等、当技術分野で公知の方法を用いて測定することができる。
【0056】
テクスチャ表面は、ウェットエッチング、ドライエッチング、マスキング及びエッチング、フォトリソグラフィー等、様々な方法で形成することができる。一部の実施の形態において、化学エッチングによって、基体の少なくとも1つの表面にテクスチャ表面を形成することができる。化学エッチングは、選択した表面部分にマスクを適用し、エッチング、サンドブラスト、又は研削によって、表面の露出部分を除去することを含むことができる。一部の実施の形態において、マスクは、表面に析出物を形成することによって形成することができる。別の実施の形態において、マスキングは、ポリマーのマスキング、ポリマー粒子のマスキング、若しくはマスクのインクジェット、又はフォトリソグラフィー若しくはナノインプリントリソグラフィによって形成されたマスク、相分離ポリマーマスク、不溶性ポリマーマスクに埋め込まれた(有機又は無機)水溶性相、埋め込み粒子を含む不溶性ポリマーマスク、あるいはこれ等の組合せによって形成されたマスクを利用することによって達成することができる。エッチングを使用する場合、エッチャントは、フッ化水素酸又はKOH若しくはNaOH等の水酸化物材料に、キレート剤を添加したものを含むことができる。フッ化水素酸は、析出物の形成を抑制することが望ましい場合、及び/又は得られる表面の組成を変えずに、基体の表面をエッチングすることが望ましい場合、塩酸、硫酸、酢酸又は硝酸等の他の酸と組み合わせることができる。一部の実施の形態において、テクスチャ表面を有する筐体は、テクスチャ処理の前又は後のいずれかにおいて実施することができる、研磨又は熱成形によって異なる形状に形成することができる。別の実施の形態において、テクスチャ表面を形成した後に、テクスチャ表面を有する筐体を(以下に説明するように)強化することができる。
【0057】
1つ以上の実施の形態において、基体の表面(特に有機基体の場合)に機構を付加することによって、テクスチャ表面を形成することができる。機構は表面に付着又は接合した粒子を含むことができる。一部の実施の形態において、接着剤を利用して、表面に粒子を接着することができる。別の実施の形態において、粒子を表面に直接接合することができる。粒子は、100ナノメートル~約2マイクロメートルの範囲の平均主寸法を有することができる。粒子は基体と同じ材料、又は別の材料から形成することができる。
【0058】
1つ以上の実施の形態において、テクスチャ表面は、テクスチャ表面に配置された被膜を含み、被膜テクスチャ表面を形成することができる。被膜はテクスチャ表面上に配置され、様々な機能を果たすことができる。被膜はインク被膜、硬質被膜、耐引掻性被膜、低摩擦被膜、高摩擦被膜、疎油性被膜、親油性被膜、疎水性若しくは親水性被膜、装飾被膜、反射被膜、反射防止被膜、又はこれ等の機能の組合せを示す被膜を含むことができる。被膜の具体的な選択は、電子機器の所望の用途、及び設計考慮事項に依存する。場合により、被膜は比較的厚いか(例えば、耐引掻性被膜の場合、約1マイクロメートル~約3マイクロメートル)、又は比較的薄くてもよい(疎油性又は親油性被膜の場合、約0.5ナノメートル~約50ナノメートル)。
【0059】
1つ以上の実施の形態において、テクスチャ表面は(表面に被膜を配置せずに)基体表面に親油性を付与し、従って、防指紋表面を形成する。1つ以上の実施の形態において、テクスチャ表面は、ガラス及び一部のガラスセラミック基体等、特定の基体の親油性を向上又は促進する。理論に束縛されるものではないが、表面の指紋の視認性は主に光の散乱によって決定され、光の散乱は、指紋によって残された散乱油滴の寸法に大きく依存するため、この親油性の向上によって、防指紋機能が得られると考えられる。テクスチャ処理されていない表示カバーの基体に一般に使用される、疎油性表面は、2マイクロメートル以下の平均寸法を有する多数の指紋液滴を生成する傾向がある。本明細書において、「平均主寸法」という語句に関連し、「平均」とうい語は平均値を意味し、「主寸法」という語は、かかる液滴を測定するための光学的又はその他公知の手段によって測定される、粒子の最大寸法である。かかる液滴は、光の散乱が非常に大きい液滴であって、指紋の視認性を増大させる。これに対し、親油性の表面は、染み又は5マイクロメートルより大きい非常に幅広の液滴を生成する傾向があって、光の散乱がはるかに抑制され、特に鏡面反射角から約5度超離れた散乱角で生じる。従って、親油性を示すテクスチャ表面は、防指紋性能を向上させると考えられる。
【0060】
一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、これも少なくとも多少親油性であって、親油性の被膜テクスチャ表面を形成する低摩擦被膜を有している。かかる被膜テクスチャ表面は、指に対し滑らに滑る表面を提供できるのみならず、ある程度の油滴の広がりをもたらし、光の散乱を更に抑制することができる。一部の例において、低摩擦被膜を有する被膜テクスチャ表面は、炭化ケイ素球の対向面に対して測定したとき、0.3未満の摩擦係数を示す。低摩擦親油被膜の例には、ガラス表面反応性多孔質アルキルシロキサン(例えば、メチルシロキサン、エチルシロキサン、プロピルシロキサン等)、多孔質フェニルシロキサン、多孔質アルキルシラン、無機被膜(アルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミニウム窒化チタン等)、又はこれ等の組合せが含まれる。1つ以上の別の実施の形態において、テクスチャ表面は、高摩擦被膜を有し、被膜テクスチャ表面を形成することができる。かかる高摩擦被膜の例には、アルキルシロキサン(例えば、メチルシロキサン、エチルシロキサン、プロピルシロキサン等)、フェニルシロキサン、アルキルシラン、及び他の同様の材料が含まれる。一部の例において、高摩擦被膜を有する被膜テクスチャ表面は、炭化ケイ素球の対向面に対して測定したとき、0.3以上の摩擦係数を示すことができる。
【0061】
一部の例において、(被膜を備えていない)裸のテクスチャ表面は、油、汚れ、及び指紋がテクスチャ表面に蓄積するため、使用につれて減少する親油性を示す。一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、ある程度の親油性を維持する被膜を有している。かかる被膜はTiO2を含むことができ、TiO2は紫外線に曝露された後に「自己洗浄」する材料であると考えられている。具体的には、TiO2被膜は、紫外線又は太陽光に曝露された後、光触媒反応によって、吸収した油及び汚れを化学的に分解することができる。
【0062】
1つ以上の実施の形態による筐体は、テクスチャ表面を有さないが、防指紋表面を形成する被膜を有することができる。かかる被膜は表面に親油性を与える。
【0063】
1つ以上の実施の形態において、防指紋表面は、指又は油若しくはオレイン酸を含む他のアプリケータのワイプ動作の後に、防指紋機能を示し、表面が、約2マイクロメートル、約5マイクロメートル、又は約10マイクロメートルより大きい平均主寸法を有する液滴を含むようになる。
【0064】
テクスチャ表面の防指紋機能は、光学的な方法によっても評価することができ、以下に説明するように、指紋を含む領域及び指紋を含まない領域の視認性又は色ずれの評価によって評価することができる。かかる視認性又は色ずれは、公知の方法を使用して、防指紋表面を有する筐体を、黒、白、又は着色された(若しくは着色材料に積層された)背景に、防指紋表面に対向する表面を背景に接触させて配置し、特定の照明角度又は角度範囲からテクスチャ表面を照明することによって測定することができる。(一部の画像プロジェクターを含む多くの光学装置等に見られる)広帯域光源からの平行ビーム又は半平行ビームを使用して、テクスチャ表面を照明することができる。光源は、A光源(タングステンフィラメント照明を表す)、B光源(昼光相当の光源を表す)、C光源(昼光相当の光源を表す)、D光源(自然昼光を表す)、及びFシリーズの光源(様々な種類の蛍光照明を表す)を含む、CIEによって決定される標準光源を含むことができる。次に、防指紋表面に対し、ランダム又は制御された方法で指紋を付着させる。制御された方法には、油を染み込ませた布に制御された力で押圧され、次いでガラスの試験サンプルに、制御された力で押圧される、合成指紋レプリカの使用を含むことができる。次に、サンプルの指紋領域の輝度及び/又は色レベルを、非指紋領域と比較することができるカメラシステム及びソフトウェアを使用して、結果として生じた指紋の光学的視認性を評価する。鏡面反射角(即ち、入射光源の鏡面反射角)に対し異なる角度で収集されたとき、これらの画像を比較することが望ましい場合がある。例えば、画像は、光源の鏡面反射角から5度、10度、20度、30度、40度、50度、又は60度離れた角度で画像を収集することができる。次に、これ等の画像を処理し、指紋領域の輝度及び色を非指紋領域と比較することができる。所与の指紋領域(指紋領域の10%、20%、又は50%)に対し、少なくとも10の輝度値及び色値を平均して、測定ノイズを低減することが望ましい場合がある。
【0065】
輝度に基づく視認性は、以下の式で算出することができ、ここで下付き文字1は指紋を含む領域を示し、下付き文字2は指紋を含まない領域を示すものであり:差分(輝度1- 輝度2)の絶対値をその和(輝度1+輝度2)で除したものである。一部の実施の形態において、テクスチャ表面は、特定の選択された角度において、約0.99未満、約0.95未満、約0.8未満、約0.7未満、約0.6未満、約0.5未満、約0.25未満、約0.2未満、約0.1未満、約0.05未満の視認性を示す。
【0066】
色ずれは、前述のように、テクスチャガラスの指紋領域の色点を非指紋領域と比較することによって評価することができる。本明細書において、「色ずれ」という語句は、反射又は透過において、CIE L*、a*、b*表色系における、a*及びb*値の両方が変化することを意味する。具体的には、色ずれは、特定の選択された角度における、b*値若しくはa*値の変化、又は式√((a1
*-a2
*)2 +(b1
*-b2
*)2)として評価され、ここで下付き文字1は指紋を含む領域を示し、下付き文字2は指紋を含まない領域を示す。1つ以上の実施の形態において、テクスチャ表面は、前述のようにテクスチャ表面に指紋を付着させた後、約20未満、約10未満、約5未満、約2未満、約1未満、又は約0.2未満の色ずれを示す。
【0067】
筐体
1つ以上の実施の形態において、筐体は、透明、半透明、又は不透明であってよい。透明筐体の実施の形態において、かかる筐体は、可視スペクトルにわたり、約80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上の(筐体内部と外面を考慮した)平均全透過率を示すことができる。一部の例において、筐体は、可視スペクトルにわたり、約80%~約96%、約80~約94%、又は約80~約92%の平均全透過率を示すことができる。本明細書において、「透過率」という用語は、材料(例えば、筐体又はその一部)を透過した、所定の波長範囲の入射光パワーの割合として定義される。透過率は、特定の線幅を用いて測定される。1つ以上の実施の形態において、透過率を特徴付けるスペクトル分解能は、5nm又は0.02eV未満である。本明細書において、「可視スペクトル」は、約420nm~約700nmの波長範囲を含む。
【0068】
一部の実施の形態において、筐体は半透明であってよく、約20%~約80%、約25%~約80%、約30%~約80%、約35%~約80%、約40%~約80%、約45%~約80%、約30%~約75%、約30%~約70%、約30%~約65%、又は約30%~約60%の平均透過率を示すことができる。別の実施の形態において、筐体は不透明であってよく、約20%未満の平均全透過率を有している。1つ以上の実施の形態において、筐体は、(筐体がディスプレイを覆っていなくても)電子装置内部からのある程度の光透過を可能にする。かかる実施の形態において、筐体を通して電子装置内部の構成要素を見ることができ、又は筐体に電子装置の充電に用いることができる光起電力要素を組み込むことができる。
【0069】
1つ以上の実施の形態において、筐体は4点曲げ強度、剛性又はヤング率、硬度、亀裂痕閾値、熱伝導率、及び(圧縮層深さ(DOL)、表面圧縮応力、及び中央張力の観点からの)強度も示す。
【0070】
1つ以上の実施の形態において、筐体は無線データ伝送又は無線充電エネルギーの伝送を可能にする。一部の実施の形態において、筐体は、0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲で定義される、無線及びマイクロ波の両方に対し透明性示す。別の例示的な実施の形態において、物品、特に電子装置筐体は、500MHz~3.0GHzの周波数範囲にわたり、0.015未満の損失正接で定義される無線及びマイクロ波の周波数に対し透明性を示す。この無線及びマイクロ波周波数に対する透明性は、筐体内部にアンテナを有する無線ハンドヘルド装置にとって重要である。この無線及びマイクロ波に対する透明性によって、無線信号が筐体/保護筐体を通過することができ、場合によりこれらの伝送が向上する。更に、赤外線において透明性であって、電子装置間の無線光通信を可能にすることが望ましい場合もあり、具体的には、約750~2000nmの範囲の周波数において、80%より大きい赤外線透明性である。別の実施の形態において、筐体は、磁場及び/又は誘導場の伝送を可能にする。
【0071】
筐体は携帯用電子機器に使用される様々な機械的属性も示す。例えば、筐体の一部の実施の形態は、0.6MPa・m1/2より大きい破壊靭性、350MPaより大きい4点曲げ強度、少なくとも600kgf/mm2(約5.9GPa)のビッカース硬さ及び少なくとも5kgf(約49N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値、約50GPa~約100GPaの範囲のヤング率、2.0W/m℃未満の熱伝導率のいずれか1つ以上を示す。一部の実施の形態において、筐体は0.6MPa・m1/2より大きい破壊靭性、前述のビッカース硬さ/亀裂閾値、及び4点曲げ強度の組合せを示す。1つ以上の実施の形態において、筐体は、0.70MPa・m1/2より大きい破壊靭性、475MPaより大きい又は525MPaより大きい4点曲げ強度、及び約50GPa~約75GPaの範囲のヤング率を示す。
【0072】
本明細書に記載の筐体は、主に剪断断層ではなく圧密化によって陥没時に変形する可能性がある。一部の実施の形態において、筐体は、変形時に表面下断層及び放射亀裂が生じない。一部の実施の形態において、使用する基体を強化するとき等において、得られる筐体は、剪断断層によって亀裂発生耐性が向上する。1つの実施の形態において、筐体は強化基体を有し、少なくとも5重量キログラム(kgf)(約49N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値を示す。第2の実施の形態において、筐体は少なくとも約10kgf(約98N)又は少なくとも約30kgf(約294N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値を示す。
【0073】
1つ以上の実施の形態において、筐体は2W/m℃未満の熱伝導率を示し、従って、高い動作温度(例えば、100℃に近い温度)であっても、触れると冷たいままである。一部の実施の形態において、筐体は1.5W/m℃未満の熱伝導率を示す。比較として、アルミナ等のセラミックは、最高29W/m℃の熱伝導率を示す。
【実施例0074】
様々な実施の形態は、以下の実施例によって更に明らかになるであろう。
【0075】
実施例1
約68モル%のSiO
2、3.5モル%のB
2O
3、13モル%のAl
2O
3、13.5モル%のNa
2O、及び約2モル%のMgOを含む組成を有する、ガラス基体から8つの筐体を形成した。7つの基体の1つの主表面をサンドブラストし、次いで化学エッチングして、様々なヘイズレベル(例えば、7%、12%、18%、22%、27%、30%、及び40%)を示すテクスチャ表面を形成した。サンドブラスト処理では、約30psi(約206.8kPa)の圧力を有する強制空気に混入させた、約1マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲の主寸法を有するガラスビーズを使用した。基体の主表面を十分な持続時間(例えば、約1分~約20分)サンドブラストし、次いでHFをエッチャントとして使用してエッチングを施し、様々なヘイズレベルを生成した(より長いサンドブラスト時間で、より低いヘイズレベルを達成)。7つの基体の各々は、対向する非テクスチャ表面を有していた。1つの基体にはエッチングを施さず、対照として使用した。
図2に示すように、筐体の各々のテクスチャ表面及び非テクスチャ表面両方の(鏡面及び拡散反射を含む)全反射率を周波数(nm)に対してプロットした。
図2に示すように、全反射率はヘイズの関数として大きく変化しない。
図3は、周波数(nm)に対してプロットした、筐体の各々のテクスチャ表面及び非テクスチャ表面両方の拡散反射率を示している。
図3に示すように、拡散反射率の変化は、ヘイズの増加と共に増加するが、必ずしも比例するとは限らない。例えば、18%のヘイズ、22%のヘイズ、及び27%のヘイズを有する筐体は略同じ拡散反射率を有し、7%のヘイズ、及び12%のヘイズを有する筐体は略同じ拡散反射率を有している。
【0076】
8つの筐体のテクスチャ表面及び非テクスチャ表面両方について、CIE L
*、a
*、b
*表色系(及び標準文献)に記載されている、全反射a
*及びb
*色値、並びに(対象とする色座標の半径約0.25の範囲内、例えばゼロ透過ヘイズを有する基体の)拡散反射a
*及びb
*色値を、D65光源の下で(互いに対して)同じ角度で測定した。一連の透過ヘイズレベルに関してプロットした、a
*及びb
*値を
図4に示す。
【0077】
8つの筐体のテクスチャ表面及び非テクスチャ表面両方について、全透過a
*及びb
*色値をD65光源の下で(互いに対して)同じ角度で測定した。プロットしたa
*及びb
*値を
図5に示す。
【0078】
図6は、式√((a
control
*-a
haze
*)
2+(b
control
*-b
haze
*)
2)を用いて、テクスチャ表面を有する7つの筐体に対する、特定の選択された角度において算出した、対照筐体の全反射色ずれ及び拡散反射色ずれを示し、ここで、下付き文字「control」は対照筐体を示し、下付き文字「haze」は特定のヘイズを有するテクスチャ表面を有する筐体を示す。
図6に示すように、全ての例において、色ずれは1未満であり、テクスチャ表面は筐体に有意な色を与えないことを示している。
【0079】
図7は、式DC
*=√((a
control
*-a
haze
*)
2+(b
control
*-b
haze
*)
2)を用いて、テクスチャ表面を有する7つの筐体に対する、特定の選択された角度において算出した、対照筐体の全透過色ずれ(「DC
*」)を示し、ここで、下付き文字「control」は対照筐体を示し、下付き文字「haze」は特定のヘイズを有するテクスチャ表面を有する筐体を示す。
図7は、式DE
*=√((L
control
*-L
haze
*)
2+(a
control
*-a
haze
*)
2+(b
control
*-b
haze
*)
2)を用いて、テクスチャ表面を有する7つの筐体に対する、特定の選択された角度において算出した、対照筐体の色座標L
*を考慮した全透過色ずれ(DE
*)も示し、ここで、下付き文字「control」は対照筐体を示し、下付き文字「haze」は特定のヘイズを有するテクスチャ表面を有する筐体を示す。
図7に示すように、全ての例において、色ずれは1未満であり、テクスチャ表面は筐体に有意な色を与えないことを示している。
【0080】
本明細書に記載の材料、方法、及び物品に対し、様々な改良及び変形が可能である。本明細書に記載の材料、方法、及び物品の他の態様は、本明細書の考察及び本明細書に開示の材料、方法、及び物品を実施することによって明らかになるであろう。本明細書及び実施例は、例示と見なされることを意図するものである。
【0081】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0082】
実施形態1
電子装置筐体であって、
防指紋表面を有する基体であって、前記防指紋表面に指紋を付着させたとき、前記防指紋表面が、約0.95未満の視認性、及び約20未満の色ずれのいずれか一方又は両方を示す基体を備え、
0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲によって定義される無線及びマイクロ波周波数透明性、
磁場透明性、
誘導場透明性、及び
赤外線透明性
のいずれか1つ以上を示す筐体。
【0083】
実施形態2
0.60MPa・m1/2より大きい破壊靭性、
350MPaより大きい4点曲げ強度、
少なくとも450kgf/mm2(約4.4GPa)のビッカース硬さ、
少なくとも5kgf(約49N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値、
約50GPa~約100GPaの範囲のヤング率、及び
2.0W/m℃未満の熱伝導率
のいずれか1つ以上を示す、実施形態1記載の電子装置筐体。
【0084】
実施形態3
500MHz~3.0GHzの周波数範囲において、0.015未満の損失正接で定義される、無線及びマイクロ波周波数透明性を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0085】
実施形態4
0.75MPa・m1/2より大きい破壊靭性を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0086】
実施形態5
約50GPa~約75GPaの範囲のヤング率を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0087】
実施形態6
475MPaより大きい4点曲げ強度を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0088】
実施形態7
少なくとも500kgf/mm2(約4.9GPa)のビッカース硬さ、及び10kgf(約98N)より大きいビッカース中央/放射亀裂開始閾値を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0089】
実施形態8
1.5W/m℃未満の熱伝導率を示す、実施形態2記載の電子装置筐体。
【0090】
実施形態9
前記防指紋表面が、テクスチャ表面、被膜表面、又はこれ等の組合せを含む、実施形態1~8いずれかに記載の電子装置筐体。
【0091】
実施形態10
約0.5%~約40%の範囲のヘイズを更に示す、実施形態9記載の電子装置筐体。
【0092】
実施形態11
前記テクスチャ表面が、
約0.05マイクロメートル~約10マイクロメートルのRMS粗さ高さ、及び
約0.1マイクロメートル~約500マイクロメートルの範囲の横方向の空間的周期のいずれか一方又は両方を有する、実施形態9記載の電子装置筐体。
【0093】
実施形態12
約400nm~約750nmの波長範囲にわたり、約80%以上の平均透過率を示す、実施形態1~11いずれかに記載の電子装置筐体。
【0094】
実施形態13
約750nm~約2000nmの波長範囲にわたり、約80%以上の平均透過率を示す、実施形態1~12いずれかに記載の電子装置筐体。
【0095】
実施形態14
前記基体が非晶質基体又は結晶質基体を含む、実施形態1~13いずれかに記載の電子装置筐体。
【0096】
実施形態15
前記非晶質基体が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、及びアルカリアルミノホウケイ酸ガラスのいずれか1つを含む、実施形態14記載の電子装置筐体。
【0097】
実施形態16
前記非晶質基体が強化されている、実施形態15記載の電子装置筐体。
【0098】
実施形態17
前記非晶質基体が、
20μm以上の層深さ(DOL)を有する圧縮表面層、
400MPaより大きい圧縮応力、及び
20MPaより大きい中央張力
のいずれか1つ以上を更に有する、実施形態15記載の電子装置筐体。
【0099】
実施形態18
前記結晶質基体が、強化ガラスセラミック基体、非強化ガラスセラミック基体、又は単結晶基体を含む、実施形態14記載の電子装置筐体。
【0100】
実施形態19
携帯電話、タブレット、ラップトップ、及びメディアプレーヤーから選択される電子装置を更に備えた、実施形態1~18いずれかに記載の電子装置筐体。
【0101】
実施形態20
電子装置筐体であって、
防指紋表面を有する基体であって、
前記防指紋表面が、テクスチャ表面、被膜表面、又は被膜テクスチャ表面を有し、
前記防指紋表面に指紋を付着させたとき、前記防指紋表面が、約0.95未満の視認性、及び約20未満の色ずれのいずれか一方又は両方を示す基体を備え、
0.03未満の損失正接及び15MHz~3.0GHzの周波数範囲によって定義される無線及びマイクロ波周波数透明性、
磁場透明性、
誘導場透明性、
赤外線透明性、
0.60MPa・m1/2より大きい破壊靭性、
350MPaより大きい4点曲げ強度、
少なくとも450kgf/mm2(約4.4GPa)のビッカース硬さ、
少なくとも5kgf(約49N)のビッカース中央/放射亀裂開始閾値、
約50GPa~約100GPaの範囲のヤング率、及び
2.0W/m℃未満の熱伝導率
のいずれか1つ以上を示す筐体。
【0102】
実施形態21
ハウジング、少なくともコントローラ、メモリ、及びディスプレイを含む、少なくとも部分的に前記ハウジングの内部に配置された電気部品、並びに前記ディスプレイの上方又は前記ディスプレイの後方に配置された、ガラス系の基体を備えた電子装置であって、前記ガラス基体が、
主表面及び該主表面から約20マイクロメートル以上の層深さに延びる圧縮応力と、
可視スペクトルにわたり約80%未満の平均透過率と、
約0.3未満の摩擦係数と、
約200nmより大きいRMS表面粗さと、
約20%より大きい透過ヘイズ、及び
鏡面反射から2度又は鏡面反射から5度のいずれかにおいて、20%より大きい反射ヘイズ
のいずれか一方又は両方と、
を有する電子装置。
【0103】
実施形態22
前記ガラス系の基体が、該ガラス系の基体の主表面に配置されたインク層を備えた、実施形態21記載の電子装置。
【0104】
実施形態23
前記ガラス系の基体が、着色ガラスを含む、実施形態21又は実施形態22記載の電子装置。
【0105】
実施形態24
前記透過ヘイズが約40%より大きい、実施形態21~23いずれかに記載の電子装置。
【0106】
実施形態25
前記鏡面から2度又は鏡面から5度のいずれかにおける反射ヘイズが、ASTM E430によって測定したとき約40%より大きい、実施形態21~24いずれかに記載の電子装置。
【0107】
実施形態26
疎水性又は疎油性の材料層を更に含む、実施形態21~25いずれかに記載の電子装置。
【0108】
実施形態27
前記RMS表面粗さが約500nmより大きい、実施形態21~26いずれかに記載の電子装置。
【0109】
実施形態28
携帯電話、ポータブルメディアプレーヤー、ノート型コンピュータ、又はタブレットコンピュータである、実施形態21~27いずれかに記載の電子装置。