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▶ イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023051968
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】多重特異的NKp46結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20230404BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230404BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230404BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
G01N33/53 D
C12N15/13 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200543
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2020167983の分割
【原出願日】2015-06-23
(31)【優先権主張番号】62/017,886
(32)【優先日】2014-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/108,088
(32)【優先日】2015-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】ナディア・アンセリジュ
(72)【発明者】
【氏名】アリアーヌ・モレル
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン・ロッシ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】標的細胞の非存在下で、NK細胞を非特異的に活性化させることなく、NK細胞に結合し且つそれを特異的にリダイレクトして目的の標的細胞を溶解する多重特異的タンパク質を提供する。
【解決手段】第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含む単離された多重特異的タンパク質であって、前記第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がヒトNKp46ポリペプチドに結合し、且つ他方が目的の抗原に結合し、前記多重特異的タンパク質が一価で前記NKp46ポリペプチドに結合し、前記多重特異的タンパク質が、NKp46発現NK細胞に前記目的の抗原を発現する標的細胞を溶解させることができる、単離された多重特異的タンパク質を提供する。このタンパク質は、疾患、特に癌又は感染病の処置に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含む単離された多重特異的タンパク質であって、前記第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がヒトNKp46ポリペプチドに結合し、且つ他方が目的の抗原に結合し、前記多重特異的タンパク質が一価で前記NKp46ポリペプチドに結合し、前記多重特異的タンパク質が、NKp46発現NK細胞に前記目的の抗原を発現する標的細胞を溶解させることができる、単離された多重特異的タンパク質。
【請求項2】
前記標的細胞の前記溶解がNKp46シグナル伝達によって媒介される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多重特異的タンパク質が、前記目的の抗原を発現する細胞の非存在下で、NKp46発現NK細胞と共にインキュベートされたときに前記NK細胞の活性化をもたらさない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多重特異的タンパク質が、前記目的の抗原を発現する細胞の存在下で、NKp46陰性、CD16陽性リンパ球と共にインキュベートされたときに前記NK細胞の活性化をもたらさない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記多重特異的タンパク質が、(a)NKp46発現NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときにNK細胞を活性化し、且つ(b)標的細胞の非存在下でNK細胞と共にインキュベートされたときにNKp46発現NK細胞を活性化しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記多重特異的タンパク質が、Fcγ発現細胞の存在下で、NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときにNKp46発現NK細胞の活性化をもたらさない、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ヒトNKp46ポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記タンパク質がFcドメインの少なくとも一部を含み、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記Fcドメインが前記2つの抗原結合ドメイン間に配置されている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記多重特異的タンパク質が、NKp46ポリペプチドに対する結合について、モノクローナル抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9、又は抗CD19-IgG1-F2-NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせと競合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記多重特異的タンパク質が、
a.野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基R101、V102、E104、及び/又はL105に変異を有する変異NKp46ポリペプチド、
b.前記野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基K41、K42、E119、Y121、及び/又はY194のいずれか1つ以上に変異を有する変異NKp46ポリペプチド、及び
c.前記野生型NKp46に対する結合性と比較して、残基P132、E133、I135、及び/又はS136のいずれか1つ以上に変異を有する変異NKp46ポリペプチド
からなる群から選択される変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記タンパク質がヒトFcγ受容体に対する結合性を実質的に欠いている、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記多重特異的タンパク質が、(a)NKp46に結合する第1の抗原結合ドメイン、(b)標的細胞で発現されるポリペプチドに結合する第2の抗原結合ドメイン、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含む一本鎖タンパク質であり、前記多重特異的ポリペプチドがヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記Fcドメインが、(i)CH2ドメイン、及び(ii)CH3-CH3二量体化を防止するための改変、任意選択によりアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記CH3ドメインが、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位、及び/又はK409位(Kabatと同様のEU付番)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つにアミノ酸置換を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記Fcドメインが、(i)CH2ドメイン、及び(ii)リンカーペプチドによって分離された第1及び第2のCH3ドメインを含み、前記2つのCH3ドメインが、非共有相互作用によって互いに結合している、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記タンパク質が、前記第1の抗原結合ドメインと前記第2の抗原結合ドメインとの間に配置されたFcドメインを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記タンパク質が、ドメイン配置:(ABD)-CH2-CH3-(ABD)を有するポリペプチドを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記タンパク質が、ドメイン配置:(ABD)-リンカー-CH2-CH3-リンカー-(ABD)を有するポリペプチドを含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記タンパク質が、ドメイン配置:(ABD)-リンカー-CH2-CH3-リンカー-CH3-リンカー-(ABD)を有するポリペプチドを含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記タンパク質が、単離されたヘテロ二量体ポリペプチドであり、前記ヘテロ二量体ポリペプチドが、
(a)N末端からC末端にかけて、第2の可変ドメイン及び第3の可変ドメイン、Fcドメイン又はその一部、第1の可変ドメイン(V)、並びにCH1又はCK定常領域を含む、第1のポリペプチド鎖、及び
(b)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖
を含み、前記CH1又はCK定常領域が、前記第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖の前記CH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、前記第1のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメインと前記第2のポリペプチドの前記第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記タンパク質が、単離されたヘテロ二量体ポリペプチドであり、前記ヘテロ二量体ポリペプチドが、
(a)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、Fcドメイン又はその一部、第2の可変ドメイン、及び第3の可変ドメインを含む、第1のポリペプチド鎖、及び
(b)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖
を含み、前記CH1又はCK定常領域が、前記第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖の前記CH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、前記第1のポリペプチド鎖の前記第1の可変ドメインと前記第2のポリペプチドの前記第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記タンパク質が、ヘテロ二量体であり、且つ、
(a)Va-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-Vb-2、及びVa-2-Vb-2-Fcドメイン-Va-1-(CH1又はCK)から選択されるドメイン配置を有する第1のポリペプチド、及び
(b)ドメイン配置:Vb-1-(CH1又はCK)を有する第2のポリペプチド鎖
を含み、Va-1及びVb-1の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、
(CH1又はCK)が中心鎖上の前記(CH1又はCK)と二量体化し、且つ前記Vb-1が前記中心鎖のVa-1と共に抗原結合ドメインを形成し、Va-2とVb-2とが共に抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12、21、又は22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記タンパク質が、ヘテロ二量体であり、且つ、
(a)ドメイン配置:Va-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-Vb-2を有する第1のポリペプチド、及び
(b)ドメイン配置:Vb-1-(CH1又はCK)-Fcドメインを有する第2のポリペプチド鎖
を含み、Va-1及びVb-1の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、
(CH1又はCK)が中心鎖上の前記(CH1又はCK)と二量体化し、且つ前記Vb-1が前記中心鎖のVa-1と共に抗原結合ドメインを形成し、Va-2とVb-2とが共に抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12又は22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
a-2とVb-2とが共に、NKp46に結合する抗原結合ドメインを形成する、請求項22~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記タンパク質が、単離されたヘテロ三量体ポリペプチドであり、前記ヘテロ三量体ポリペプチドが、
(a)N末端からC末端にかけて、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、Fcドメイン又はその一部、及び第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)を含む、第1のポリペプチド鎖、
(b)第2のポリペプチド鎖であって、N末端からC末端にかけて、前記第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、前記第1のポリペプチド鎖の(前記第2ではなく)前記第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメイン、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)N末端からC末端にかけて、CH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含み、前記CH1又はCK定常領域が、前記第1のポリペプチド鎖の(前記第1ではなく)前記第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域と相補的であるように選択される、第3のポリペプチド鎖
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記タンパク質が、ヘテロ三量体であり、且つ、
(a)ドメイン配置:Va-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-(CH1又はCK)を有する第1のポリペプチド鎖、
(b)ドメイン配置:Vb-1-(CH1又はCK)を有する第2のポリペプチド鎖、及び
(c)ドメイン配置:Vb-2-(CH1又はCK)を有する第3のポリペプチド鎖
を含み、Va-1及びVb-1の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、
(CH1又はCK)が中心鎖上の前記(CH1又はCK)と二量体化し、且つ前記Va-1と前記Vb-1とが抗原結合ドメインを形成し、
(CH1又はCK)が前記中心鎖上の前記(CH1又はCK)単位と二量体化し、且つ前記Va-2と前記Vb-2とが抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12又は26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記Fcドメインが、(i)CH2ドメイン、及び(ii)CH3-CH3二量体化を防止するためのアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含む、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項29】
前記Fcドメインが、(i)CH2ドメイン、及び(ii)リンカーペプチドによって分離された第1及び第2のCH3ドメインを含み、前記2つのCH3ドメインが、非共有相互作用によって互いに結合している、請求項26又は27に記載の組成物。
【請求項30】
前記タンパク質が、ヘテロ三量体であり、且つ、
(a)ドメイン配置:Va-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-(CH1又はCK)を有する第1のポリペプチド鎖、
(b)ドメイン配置:Vb-1-(CH1又はCK)-Fcドメインを有する第2のポリペプチド鎖、及び
(c)ドメイン配置:Vb-2-(CH1又はCK)を有する第3のポリペプチド鎖
を含み、Va-1及びVb-1の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方が軽鎖可変ドメインであり、且つ他方が重鎖可変ドメインであり、
(CH1又はCK)が中心鎖上の前記(CH1又はCK)と二量体化し、且つ前記Va-1と前記Vb-1とが抗原結合ドメインを形成し、
(CH1又はCK)が前記中心鎖上の前記(CH1又はCK)単位と二量体化し、且つ前記Va-2と前記Vb-2とが抗原結合ドメインを形成する、請求項1~12又は26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記タンパク質が、ヘテロ三量体であり、且つドメイン配置:
【化1】
を含み、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2がそれぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1及びVb-1の一方がVHであり、且つ他方がVLであり、それにより、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成し、Va-2及びVb-2の一方がVHであり、且つ他方がVLであり、それにより、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメインを形成し、前記ABDの一方がNKp46に結合し、且つ他方が目的の抗原に結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記タンパク質が、異なる親抗体からの2つの軽鎖及び重鎖の対を含む四量体抗体であり、抗体がヘテロ二量体を優先的に形成するように改変CH3ドメイン界面を含み、任意選択によりさらに、FcドメインがヒトIgG4 Fcドメイン又はその一部であり、任意選択により1つ以上のアミノ酸改変を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
前記タンパク質が、ドメイン配置:
【化2】
を含み、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2がそれぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1及びVb-1の一方がVHであり、且つ他方がVLであり、それにより、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成し、Va-2及びVb-2の一方がVHであり、且つ他方がVLであり、それにより、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメインを形成し、第1鎖と第2鎖とがCH3-CH3二量体化によって結合し、且つ第3鎖が第1鎖と、第4鎖が第2鎖と結合できるようにCH1及びCKが選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
各抗原結合ドメインが、抗体の超可変領域、任意選択により抗体の重鎖及び軽鎖CDRを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記Fcドメインが、ヒトFcγ受容体に対する結合性を低下させるためのアミノ酸置換、任意選択により残基N297(Kabatと同様のEU付番)の置換を含むヒトCH2ドメインを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
標的細胞で発現される前記ポリペプチドが癌抗原である、請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
標的細胞で発現される前記ポリペプチドが、ウイルス又は細菌抗原である、請求項1~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
NKp46に結合する前記抗原結合ドメインが、
(a)配列番号3の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号4の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(b)配列番号5の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号6の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(c)配列番号7の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号8の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(d)配列番号9の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号10の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(e)配列番号11の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号12の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、又は
(f)配列番号13の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号14の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖
を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
NKp46に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、
(a)配列番号3の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号4の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(b)配列番号5の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号6の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(c)配列番号7の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号8の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(d)配列番号9の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号10の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(e)配列番号11の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号12の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、又は
(f)配列番号13の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号14の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖
を含む、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項40】
前記抗体又は抗原結合ドメインが、ヒトフレームワーク領域からのフレームワーク残基を含む、請求項38又は39に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の化合物及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物。
【請求項42】
疾患の処置用の薬剤としての、請求項1~41のいずれか一項に記載のポリペプチド又は化合物の使用。
【請求項43】
請求項1~41のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、前記対象の疾患を処置する方法。
【請求項44】
前記疾患が、癌、感染疾患、又は炎症性若しくは自己免疫疾患である、請求項42又は43に記載の方法又は使用。
【請求項45】
請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物が、第2の治療薬との併用で投与され、前記第2の治療薬が、抗体であって、前記抗体に結合される抗原を発現する細胞に対するADCCを媒介することができる抗体である、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項46】
ヘテロ二量体タンパク質を産生する方法であって、
a)請求項21~25又は31のいずれか一項に記載の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意するステップ、
b)請求項21~25又は31のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意するステップ、及び
c)それぞれ前記第1及び第2の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、産生された前記タンパク質を親和性精製支持体、任意選択によりプロテインA支持体にローディングし、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項47】
ヘテロ三量体タンパク質を産生する方法であって、
(a)請求項26~30のいずれか一項に記載の第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を用意するステップ、
(b)請求項26~30のいずれか一項に記載の第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を用意するステップ、
(c)請求項26~30のいずれか一項に記載の第3のポリペプチド鎖を含む、第3の核酸を用意するステップ、及び
(d)それぞれ前記第1、第2、及び第3の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、産生された前記タンパク質を親和性精製支持体、任意選択によりプロテインA支持体にローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項48】
ポリペプチドを特定又は評価する方法であって、
(a)請求項1~38のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸を用意するステップ、
(b)それぞれ前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記ポリペプチドを産生し、且つ前記ポリペプチドを回収するステップ、及び
(c)産生された前記ポリペプチドを目的の生物学的活性について評価するステップ
を含む、方法。
【請求項49】
前記ポリペプチドを評価するステップが、
(a)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、活性化受容体を発現するNKp46発現エフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、前記ポリペプチドが前記エフェクター細胞を活性化する能力を試験するステップ、及び
(b)(目的の抗原を発現する)標的細胞の非存在下で、NKp46発現エフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、前記ポリペプチドが前記エフェクター細胞を活性化する能力を試験するステップ
を含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全ての図面を含め、参照により両方の全内容が本明細書に組み入れられる、2014年6月27日出願の米国仮特許出願第62/017,886号明細書及び2015年1月27日出願の米国仮特許出願第62/108,088号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
配列表の参照
本出願は、電子形式の配列表と合わせて出願されている。この配列表は、2015年6月23日に作成された303KBサイズの「NKp46-3 PCT_ST25 txt」という名称のファイルとして提供される。この配列表の電子形式の情報は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。
【0003】
標的細胞の非存在下で、NK細胞を非特異的に活性化させることなく、NK細胞に結合し且つそれを特異的にリダイレクトして目的の標的細胞を溶解する多重特異的タンパク質が提供される。このタンパク質は、疾患、特に癌又は感染病の処置に有用である。
【背景技術】
【0004】
2つの異なるエピトープに結合する二重特異的抗体は、特異性を高める機会、効力を拡張する機会、及び従来のモノクローナル抗体では達成できない作用の新規な機序を利用する機会を提供する。同時に2つの標的に結合する二重特異的抗体の様々な形態が報告されている。また、二重特異的抗体を用いて2つの異なる受容体を架橋してシグナル伝達経路を阻害することは、様々な適用例で有用性を示している(例えば、(非特許文献1)を参照されたい)。二重特異的抗体は、2つの異なる受容体を中和するために使用されてきた。他のアプローチでは、二重特異的抗体は、免疫エフェクター細胞を動員するために使用され、ここで、T細胞の活性化が、2つの異なる細胞型における受容体に同時に結合する二重特異的抗体によって腫瘍細胞の近傍で達成される((非特許文献2)を参照されたい)。これまでに開発されたアプローチは、主として、T細胞上のCD3複合体を腫瘍関連抗原に結合する二重特異的抗体に関係している。しかしながら、他の例では、一方のアームがCD16(FcγRIIIa)に結合し、且つ他方のアームが目的の抗原、例えば、CD19に結合する二重特異的抗体が開発された((非特許文献3)を参照されたい)。
【0005】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球の亜集団である。NK細胞は、不所望の細胞、例えば、腫瘍又はウイルス感染細胞を排除することができる効率的な免疫学的監視機構を提供する。NK細胞の特徴及び生物学的特性は、CD16、CD56、及び/又はCD57を含む表面抗原の発現、細胞表面上のα/β又はγ/δTCR複合体の非存在、特定の細胞溶解酵素の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合してその細胞を殺す能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の異常細胞を殺す能力、及び免疫応答を刺激又は抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を含む。
【0006】
NK細胞の活性は、シグナルの活性化及び阻害の両方を伴う複合機構によって調節される。NK細胞媒介認識及びHLAクラスI欠損標的細胞の殺生において重要な役割を果たすいくつかの異なるNK細胞受容体が同定されている。1つの受容体は、NK細胞に特異的ではないが、NK細胞媒介ADCCに関与するFcγR3a(CD16)である。別のNK細胞受容体は、IgスーパーファミリーのメンバーであるNKp46である。NKp46は、NK細胞に特異的であり、特定のmAbによって誘導されるその架橋は、細胞内Ca++のレベルを上昇させる強いNK細胞の活性化をもたらし、それにより細胞障害性が誘発され、リンホカインが放出される。(特許文献1)(Innate Pharma)は、Fcγ陽性の血液悪性腫瘍の処置での、Fcγ受容体に結合する単一特異的完全長IgG抗NKp46抗体の使用を開示している。腫瘍細胞(例えば、B細胞悪性腫瘍)上のFcγ受容体は、NK細胞に結合する抗NKp46抗体のFcドメインと相互作用し、それにより、活性化NK細胞が、抗体の2つの反応部分(例えば、抗原認識ドメイン及びFcドメイン)によってそれらの標的細胞に接近するようになり、処置の効率を高めると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/105858号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jackman,et al.,(2010)J.Biol.Chem.285:20850-20859
【非特許文献2】Baeuerle,P.A.,et al,(2009)Cancer Res 69(12):4941-4
【非特許文献3】Kellner et al.(2011)Cancer Lett.303(2):128-139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでNK細胞特異的二重特異的抗体は開発されていない。NK細胞障害性を漸増させる除去剤、例えば、抗腫瘍抗体は、典型的にはCD16によってADCCを媒介する完全長IgG1である。様々な形態の二重特異的抗体の存在にもかかわらず、恩恵をもたらし得る新規な十分に定義された作用機序を有し、且つ完全長抗体に加えて使用することができるタンパク質が当技術分野でなお要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、NK細胞上のNKp46及び標的細胞上の目的の抗原に結合し、且つNK細胞をリダイレクトして、目的の抗原を発現する標的細胞、例えば、疾患の一因である細胞を溶解することができる機能的な多重特異的タンパク質(例えば、限定されるものではないが、抗体ベースのタンパク質形態を含む、ポリペプチド、一本鎖タンパク質、多鎖タンパク質)の発見に由来する。
【0011】
有利には、一実施形態において、NK細胞及び標的細胞の存在下で、多重特異的タンパク質が(i)標的細胞上の目的の抗原、及び(ii)NK細胞上のNKp46に結合することができ、標的細胞上の目的の抗原及びNKp46に結合すると、NKp46を介してNK細胞のシグナル伝達及び/又はNK細胞の活性化を誘導することができ(このタンパク質はNKp46作動薬として機能する)、それにより、特にNKp46によって伝達される活性化シグナルによってNK細胞の活性化及び/又は標的細胞の溶解が促進される。特定の有利な実施形態では、多重特異的タンパク質は、一価でNKp46に結合し、標的細胞上の目的の抗原及びNKp46の両方に結合すると、NKp46を介してNK細胞のシグナル伝達を誘導する。一実施形態では、このタンパク質は、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含み、第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がヒトNKp46ポリペプチドに結合し、且つ第1又は第2の抗原結合ドメインの他方が、標的細胞で発現される目的の抗原に結合する。
【0012】
しかしながら、多重特異的タンパク質は、このタンパク質が標的細胞上の目的の抗原に結合していないときに(例えば、目的の抗原及び/又は標的細胞の非存在下で)、NK細胞にNKp46シグナル伝達(及び/又はこのシグナル伝達から生じるNK活性化)を実質的に誘導しない。標的細胞の非存在下でのNKp46におけるアゴニスト活性の不足により(NK細胞の活性化が、NKp46への結合の結果として実質的に誘導されず)、多重特異的タンパク質が、(例えば、疾患の部位以外の)不所望のNK細胞の活性化を回避することができる。一実施形態では、二重特異的タンパク質は、NKp46でよりも目的の抗原(例えば、癌抗原)に対してより強く結合する(より強い結合親和性を有する)。
【0013】
ヒトNKp46のNK細胞選択的発現パターンを考慮すると、多重特異的タンパク質は、実質的にNK細胞(例えば、NKp46発現細胞)に限定される標的細胞に対する免疫エフェクター応答(例えば、細胞障害性応答)を誘導することができる。さらに、FcγRIIIa(CD16)は、いずれのNK細胞にも存在しないため、FcγRIIIaによって抗体依存性細胞傷害(ADCC)を与えるように設計された(例えば、ヒトアイソタイプIgG1の)従来の治療用抗体は、いずれのNK細胞も動員することができず、他方、本タンパク質は、NKp46による全てのNK細胞の動員を可能にする。本発明のタンパク質は、FcγRではなくNKp46によって伝達される活性化シグナルによる標的細胞の溶解を促進するため、本発明のタンパク質は、FcγRIIIa(CD16)によってADCCを誘導し、それにより、2つの別個のNK細胞の細胞毒性経路を標的とする治療薬、例えば、抗体と有利に併用することもできる。
【0014】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現NK細胞及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性、及び
(b)標的細胞の非存在下でNK細胞、例えば、NKp46発現NK細胞と共にインキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性の欠如
によって特徴付けることができる。任意選択により、NK細胞は、精製NK細胞である。
【0015】
タンパク質が、NKp46発現細胞及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときに、NKp46におけるアゴニスト活性を有するか否かの決定を、例えば、(a)NKp46発現(例えば、NK細胞又はレポーター細胞)、及び(b)多重特異的タンパク質の非存在下で、レポーター細胞内でNKp46シグナル伝達を誘導しない標的細胞と共にタンパク質をインキュベートすることによって行うことができ、且つタンパク質がNKp46シグナル伝達、NK細胞の活性化、及び/又は標的細胞に対するNK細胞毒性を引き起こすか否かを評価する。一実施形態では、タンパク質がNKp46シグナル伝達を引き起こすか否かの評価は、NKp46シグナル伝達経路の変化の測定、例えば、リン酸化の監視によって行われる。一実施形態では、使用されるレポーター細胞は、NKp46シグナル伝達が引き起こされたかどうかの検出可能なシグナルを生成するように設計されている。
【0016】
タンパク質が、標的細胞の非存在下でNK細胞と共にインキュベートされたときに、アゴニスト活性を欠いているか否かの決定を、例えば、精製NKp46発現NK細胞と共にタンパク質をインキュベートすることによって行うことができる。タンパク質がNK細胞(例えば、NKp46発現NK細胞)の活性化をもたらさない場合、このタンパク質は、NKp46におけるアゴニスト活性を欠いている。別の実施形態では、タンパク質がNKp46シグナル伝達を引き起こさない場合、このタンパク質は、NKp46におけるアゴニスト活性を欠いている。
【0017】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化する能力、及び
(b)標的細胞の非存在下でNKp46発現NK細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。任意選択により、NK細胞は、精製NK細胞である。
【0018】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞に標的細胞を溶解させる能力、及び
(b)標的細胞の非存在下でNKp46発現NK細胞と共に(例えば、NKp46発現NK細胞のみで)インキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。任意選択により、NK細胞は、精製NK細胞である。
【0019】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化させ、且つ/又はNK細胞の細胞毒性を媒介する能力、及び
(b)NKp46-CD16+NK細胞及び標的細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46陰性、CD16陽性(NKp46+CD16-)NK細胞を活性化させ、且つ/又はNK細胞毒性を媒介する能力の欠如
によって特徴付けることができる。任意選択により、NK細胞は、精製NK細胞である。
【0020】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、ヒトFcγ受容体(例えば、CD16)に対して低下した結合性を有する(又は結合性を欠いている)。例えば、多重特異的タンパク質は、Fcドメインを欠いていることができる。
【0021】
一実施形態では、免疫グロブリンの抗原結合ドメイン及び/又は定常領域ドメインを含む抗体ベースの形態を含め、NKp46ベースのNK細胞エンゲイジャー(engager)に使用されるように構成された多重特異的タンパク質形態が提供される。NKp46のNK選択的発現を、多重特異的タンパク質がヒトFcγ受容体に対する低下した結合を有している(又はそれを欠いている)が、Fcドメインの少なくとも一部を維持している多重特異的(例えば、二重特異的)抗体形態と組み合わせることにより、本発明者らは、少なくとも部分的なFcRn結合による好ましい薬理学を有し、且つNK細胞毒性を目的の標的に向ける多重特異的抗体形態を提供し、このとき、抑制性Fcγ受容体を活性化させることも、(NK細胞の効力を低下させ得る)NK細胞上のFcγ受容体の活性化をブロッキングすることもなく、且つ不所望の免疫抑制効果又は不所望の毒性(例えば、サイトカイン媒介毒性)をもたらし、全体的な多重特異的タンパク質の特異性を低下させ、及び/又は他の不所望の効果、例えば、Fcγ受容体発現細胞によって媒介される腫瘍誘発効果(pro-tumoral effect)をもたらし得る、他の免疫細胞上の抑制性及び/又は活性化Fcγ受容体(例えば、単球由来マクロファージ上のCD16)をトリガーすることもない。
【0022】
本明細書の任意の実施形態の別の態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、Fcγ受容体発現細胞(例えば、Fcγ受容体発現リンパ球)の存在下で、且つ標的細胞(例えば、目的の抗原を発現する細胞)の非存在下で、NK細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46におけるアゴニスト活性の欠如によって特徴付けることができる。一態様では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、Fcγ受容体発現細胞(例えば、Fcγ受容体発現リンパ球、Fcγ受容体発現NK細胞)の存在下で、且つ標的細胞(例えば、目的の抗原を発現する細胞)の非存在下で、NKp46発現NK細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化させる能力の欠如によって特徴付けることができる。
【0023】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現細胞(例えば、NK細胞)及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性、及び
(b)Fcγ受容体発現細胞(例えば、Fcγ受容体発現リンパ球)の存在下で、且つ標的細胞(目的の抗原を発現する細胞)の非存在下で、NK細胞と共にインキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性の欠如
によって特徴付けることができる。
【0024】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、例えば、
(a)NKp46発現細胞(例えば、NK細胞)及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときの、NKp発現NK細胞を活性化する能力、及び
(b)Fcγ受容体発現細胞(例えば、Fcγ受容体発現リンパ球)の存在下で、且つ標的細胞(目的の抗原を発現する細胞)の非存在下で、NK細胞と共にインキュベートされたときの、NKp46発現NK細胞を活性化する能力の欠如
によって特徴付けることができる。
【0025】
タンパク質が、Fcγ受容体発現細胞の存在下で、且つ標的細胞の非存在下でNK細胞と共にインキュベートされたときにアゴニスト活性を欠いているか否かの決定を、例えば、標的細胞は存在しないが、Fcγ受容体発現リンパ球の存在下でNK細胞と共にタンパク質をインキュベートすることによって(例えば、タンパク質をPBMCと共にインキュベートすることによって)行うことができる。
【0026】
一実施形態では、NK細胞上のNKp46及び標的細胞によって発現される目的の抗原に結合する多重特異的タンパク質を同定する、試験する、及び/又は産生する方法が提供され、この方法は、
(a)多重特異的タンパク質が、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞)及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときにNKp46におけるアゴニスト活性を有するか否かを決定するステップ、及び
(b)多重特異的タンパク質が、標的細胞の非存在下で(任意選択により、さらにFcγ受容体発現細胞の存在下で)NK細胞と共にインキュベートされたときにNKp46におけるアゴニスト活性を有するか否かを決定するステップ
を含む。
【0027】
任意選択により、NK細胞は、精製NK細胞である。
【0028】
一実施形態では、多重特異的タンパク質を同定する、試験する、及び/又は産生する方法が提供され、この方法は、NK細胞上のNKp46及び標的細胞によって発現される目的の抗原に結合する複数の多重特異的タンパク質を用意するステップを含み、
(a)各多重特異的タンパク質を、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞)及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性について評価するステップ、
(b)各多重特異的タンパク質が、標的細胞の非存在下でNK細胞と共に(任意選択により、さらにFcγ受容体発現細胞と共に)インキュベートされたときのNKp46におけるアゴニスト活性について評価するステップ、及び
(c)多重特異的タンパク質が、
a.NKp46発現細胞(例えば、NK細胞)及び標的細胞の存在下でインキュベートされたときに、NKp46におけるアゴニスト活性を有し、且つ
b.標的細胞の非存在下で(任意選択により、さらにFcγ受容体発現細胞の非存在下で)NK細胞と共にインキュベートされたときにNKp46におけるアゴニスト活性を欠いている場合に、(例えば、薬剤として使用するため、さらなる評価のため、さらなる産生などのために)多重特異的タンパク質を選択するステップ
を含む。
【0029】
任意の実施形態では、アゴニスト活性(又はその欠如)は、例えば、NK細胞活性化マーカーの発現、NK細胞毒性の誘導、又はNK細胞の活性の増加についての他の適切なアッセイによって評価される、NKp46発現NK細胞を活性化させる能力(又はその欠如)によって特徴付けることができる。
【0030】
さらに、NKp46上の特定のエピトープが提供され、このエピトープは、有利な特性、特に(例えば、NKp46媒介シグナル伝達による)NK細胞による標的細胞の溶解の誘導において高い効果を有する二重特異的タンパク質をもたらすNKp46結合部分を標的とするのに良く適している。また、効率的な多重特異的タンパク質の構築に使用するのに適した異なる抗NKp46抗体のCDR、及び例示的な多重特異的タンパク質のアミノ酸配列も提供される。
【0031】
一実施形態では、多重特異的タンパク質(例えば、ポリペプチド、非抗体ポリペプチド、抗体)が提供され、この多重特異的タンパク質は、(a)第1の抗原結合ドメイン、及び(b)第2の抗原結合ドメインを含み、第1の抗原結合ドメインの一方がNKp46に結合し、且つ他方が(NKp46以外の)標的細胞上の目的の抗原に結合し、この多重特異的タンパク質は、NKp46発現NK細胞に前記標的細胞を溶解させることができる。一実施形態では、このタンパク質は、ヒトFcドメインの少なくとも一部、例えば、FcRnによって結合されるFcドメインを含み、任意選択により、多重特異的抗体は、低下したFcγR結合性を有するか、又はそれを実質的に欠くように設計され、一実施形態では、Fcドメインは、2つのABD(1つのABDがFcドメインのN末端に位置し、且つ他方がC末端に位置する)間に位置する。
【0032】
一態様では、多重特異的タンパク質は、一本鎖タンパク質である。一態様では、多重特異的タンパク質は、2つ以上のポリペプチド鎖、即ち、複数鎖ポリペプチドを含む。例えば、多重特異的タンパク質又は複数鎖タンパク質は、二量体、三量体、又は四量体である。
【0033】
ポリペプチド鎖に位置する抗原結合ドメインは、このようにその標的(即ち、NKp46若しくは目的の抗原)に結合することができるか、又は任意選択により、異なるポリペプチド鎖に位置する相補的なタンパク質ドメイン(抗原結合ドメイン)と共にその標的に結合することができ、この2つのポリペプチド鎖は結合して多量体(例えば、二量体、三量体など)を形成する。
【0034】
一態様では、多重特異的タンパク質は、一価で(例えば、NK細胞の表面の)NKp46ポリペプチドに結合する。一態様では、タンパク質は、一価で目的の抗原に結合する。
【0035】
一態様では、このタンパク質(及び/又はNKp46に結合するその抗原結合ドメイン)は、NKp46ポリペプチドに対する結合について、モノクローナル抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9、又は抗CD19-F2-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせと競合する。一実施形態では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9、又は抗CD19-F2-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つ又は組み合わせに結合した残基から選択される1つ、2つ、又は3つ以上の残基を含む配列番号1のNKp46ポリペプチド上のエピトープに結合する。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができる。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、例えば、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒト及び/又は非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)Fcγ受容体に対して低い結合性を有するか、又は結合性が消失している。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、低下した(例えば、部分的又は完全に消失した)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はNKp46陰性エフェクター細胞によって媒介されるFcR媒介血小板活性化/減少を有する。
【0036】
別の実施形態では、単量体又は多量体多重特異的一本鎖又は複数鎖タンパク質が提供され、このタンパク質は、(a)第1の抗原結合ドメイン(ABD)、(b)第2の抗原結合ドメインであって、第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がNKp46に結合し、且つ他方が(NKp46以外の)標的細胞上の目的の抗原に結合する、第2の抗原結合ドメイン、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含み、このFcドメインは、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、且つ例えば完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、低下した(例えば、部分的又は完全に消失した)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はNKp46陰性エフェクター細胞によって媒介されるFcR媒介血小板活性化/減少を有する。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、単量体である。一実施形態では、多重特異的Fc由来タンパク質は、二量体、例えば、ヘテロ二量体である。一実施形態では、単量体又は二量体タンパク質は、ドメイン構造を有するタンパク質を含み、このドメイン構造では、Fcドメインは、NKp46に結合する第1の抗原結合ドメイン(ABD)と目的の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインとの間に位置する。一実施形態では、多重特異的Fc由来ポリペプチドは、二重特異的抗体である。
【0037】
本明細書の任意のタンパク質の一実施形態では、目的の抗原に結合する抗原結合ドメインは、NK細胞によって溶解される標的細胞によって発現される抗原(例えば、ポリペプチド)に結合する。任意選択により、このような抗原は、癌細胞、ウイルス感染細胞、又は自己免疫疾患若しくは炎症性疾患の原因となる細胞によって発現される。
【0038】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、一価でNKp46に結合する。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、一価で目的の抗原に結合する。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、一価でNKp46及び目的の抗原の両方に結合する。
【0039】
一実施形態では、第1の抗原結合ドメインは、抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。任意選択により、前記重鎖及び軽鎖可変ドメインの両方は、NKp46との結合相互作用に関与する。
【0040】
一実施形態では、第2の抗原結合ドメインは、抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。任意選択により、前記重鎖及び軽鎖可変ドメインの両方は、第2の抗原結合ドメインに結合された抗原との結合相互作用に関与する。
【0041】
任意選択により、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部及びCH3ドメインの少なくとも一部を含む。
【0042】
一実施形態では、CH2ドメインは、野生型CH2ドメインに対してアミノ酸改変を含む。一実施形態では、CH2改変は、二重特異的ポリペプチドのヒトFcγ受容体への結合性を低下させる。一実施形態では、CH2ドメインは、N297X突然変異(Kabatと同様のEU付番)を含み、このXは、アスパラギン以外の任意のアミノ酸である。一実施形態では、CH3ドメインは、野生型CH3ドメインに対してアミノ酸改変を含む。
【0043】
一実施形態では、CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインは、天然に存在する(非変異)ヒトCH2及び/又はCH3ドメインである。一実施形態では、多重特異的タンパク質は、N結合型グリコシル化を欠いているか、又は改変N結合型グリコシル化を有するFc由来ポリペプチドを含む。
【0044】
一実施形態では、Fc由来ポリペプチドは単量体である。
【0045】
一実施形態では、Fc由来ポリペプチドは二量体であり、任意選択により、ホモ二量体又はヘテロ二量体である。一実施形態では、Fc由来ポリペプチドはヘテロ三量体である。一実施形態では、Fc由来ポリペプチドはヘテロ四量体である。
【0046】
一実施形態では、CH3ドメインは、別のFc由来ポリペプチドと二量体化しない(例えば、別の同一のFcポリペプチドとホモ二量体を実質的に形成しないが、ヘテロ二量体又はヘテロ三量体として残り、ホモ二量体を形成せず、単量体として残る)。一実施形態では、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体の形成を防止するためにCH3ドメインの界面にアミノ酸変異(例えば、置換)を含む。
【0047】
単量体二重特異的タンパク質の例は、図1図3及び図6A図6Cに示されている。一実施形態では、(a)目的の抗原に結合する第1の抗原結合ドメイン、(b)NKp46に結合する第2の抗原結合ドメイン、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含む単量体二重特異的タンパク質が提供され、このFcドメインは、別のFc由来ポリペプチドと二量体化しない(例えば、同一の単量体二重特異的ポリペプチドと二量体を形成しない)。一実施形態では、単量体二重特異的タンパク質は、ヒトFcRnに結合することができ、且つ野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する。一実施形態では、単量体二重特異的タンパク質は、完全長野生型ヒトIgG1 Fcドメインを有するポリペプチドと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有するが、他は同一である。任意選択により、Fcドメインは、CH2ドメイン、及びCH3-CH3二量体化を防止する(例えば、同一の単量体二重特異的ポリペプチド中の別のCH3ドメインと相互作用により二量体を形成しないようにする)ための改変CH3ドメインを含む。
【0048】
一実施形態では、Fcドメインは、ポリペプチド鎖上の第1の抗原結合ドメインと第2の結合ドメインとの間に位置し、例えば、このポリペプチドは、ドメイン配置:(ABD)-CH2-CH3-(ABD)を有するか、又はさらにこのポリペプチドは、ドメイン配置:(ABD)-リンカー-CH2-CH3-リンカー-(ABD)を有し、任意選択により、介在アミノ酸配列は、任意のタンパク質ドメイン間に存在する。一実施形態では、ABDは目的の抗原に結合する抗原結合ドメインであり、ABDはNKp46に結合する抗原結合ドメインである。
【0049】
任意の実施形態の一態様では、第1の抗原結合ドメイン及び/又は第2の抗原結合ドメインは、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメインを含む。任意の実施形態の一態様では、第1の抗原結合ドメイン及び/又は第2の抗原結合ドメインは、scFvを含み、任意選択により、scFvは、ヒトフレームワークアミノ酸配列を含む。
【0050】
任意選択により、単量体ポリペプチドは、中程度の親和性でヒトFcRnに結合することができ、例えば、FcRnに結合するが、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcRn受容体に対して低い結合性を有し、任意選択により、単量体ポリペプチドは、さらに、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγR(例えば、CD16、CD32A、CD32B、及び/又はCD64)に対して低い結合性を有する。
【0051】
一実施形態では、ヘテロ多量体タンパク質又はポリペプチドは四量体抗体であり、この四量体抗体は、2つの異なる親抗体に由来する可変領域(又はその1つ、2つ、若しくは3つのCDR)を含む2つの重鎖、及び2つの異なる親抗体に由来する可変領域(又はその1つ、2つ、若しくは3つのCDR)を含む2つの軽鎖から構成される。このような四量体は、(a)それぞれ可変領域、CH1ドメイン、ヒンジ、及びFcドメインを含む2つの重鎖、並びに(b)それぞれ軽鎖可変領域及びCKドメインを含む2つの抗体軽鎖を含むことができ、1つの重鎖可変領域は軽鎖可変領域と共にNKp46に結合し、且つ他方の重鎖可変領域は軽鎖可変領域と共に目的の抗原に結合する。任意選択により、Fcドメインは、FcRn結合性を保持しているが、FcγR結合性が欠如した又は低いIgG4アイソタイプ又は改変型(例えば、アミノ酸置換を有するか、又は適切な宿主細胞で産生される)である。
【0052】
一実施形態では、ヘテロ多量体、例えば、ヘテロ二量体の二重特異的タンパク質が提供され、この二重特異的タンパク質は、(a)CH1又はCKドメインに融合された第1の可変領域(V)を含み、V-(CH1/CK)単位がヒトFcドメイン(完全Fcドメイン又はその一部)の第1の末端(N末端又はC末端)に融合されている、第1のポリペプチド鎖、(b)第1鎖のCH1又はCKと相補的なCH1又はCKドメインに融合されてCH1-CK二量体を形成する第1の可変領域(V)を含み、任意選択により、V-(CH1/CK)単位が少なくともヒトFcドメイン(完全Fcドメイン又はその一部)に融合され、2つの第1の可変領域が、一価で目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する、第2のポリペプチド鎖、並びに(c)(任意選択により、相補的な抗原結合ドメインと共に)第2の抗原に結合する抗原結合ドメイン、及び任意選択により、FcドメインがV-(CH1/CK)単位と第2の抗原に結合する抗原結合ドメインとの間に位置するように第1のポリペプチドのFcドメインの第2の末端(N末端又はC末端)に融合された第2のCH1又はCKドメインを含み、第1及び第2の抗原の一方はNKp46である。任意選択により、第1及び第2のポリペプチド鎖は、例えば、それぞれのCH1ドメインとCKドメインとの間に形成された鎖間ジスルフィド結合によって結合される。任意選択により、V-(CH1/CK)単位は、ヒトFcドメインに直接的に、又は介在配列、例えば、リンカー、他のタンパク質ドメインなどによって融合される。
【0053】
上記のヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質の一実施形態では、ポリペプチド又はタンパク質は、ヘテロ二量体であり、第2の抗原の抗原結合ドメインは、scFvであり、任意選択により、NKp46に結合するscFvである。
【0054】
上記のヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質の一実施形態では、ポリペプチド又はタンパク質はヘテロ三量体であり、第2の抗原の抗原結合ドメインは重鎖又は軽鎖可変領域であり、ヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、第1鎖のCH1又はCKと相補的なCH1又はCKドメインに融合されてCH1-CK二量体を形成する可変領域(V)を含む、第3のポリペプチド鎖をさらに含み、第1のポリペプチドの第2の抗原の抗原結合ドメインである可変領域と第3鎖の可変領域とが抗原結合ドメインを形成する。二重の二量体化から形成された3つのポリペプチド鎖は、三量体を形成する。第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域は、(第1のポリペプチド鎖の第1のCH1/CKに相補的ではないが)第1のポリペプチド鎖の第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択される。
【0055】
一態様では、一価で目的の第1及び第2の抗原に結合し、抗原の一方がNKp46であり、且つ他方が目的の抗原である、単離されたヘテロ二量体ポリペプチドが提供され、このヘテロ二量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、Fcドメイン又はその一部、第2の可変ドメイン、及び第3の可変ドメインを含む、第1のポリペプチド鎖、及び
(b)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖
を含み、CH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する。第2のポリペプチド鎖にFcドメインが欠如している場合、第1のポリペプチド鎖は、CH3-CH3二量体化(例えば、置換又は直列型CH3ドメイン)を防止するための改変されたFcドメインを含む。
【0056】
一態様では、一価で目的の第1及び第2の抗原に結合し、抗原の一方がNKp46であり、且つ他方が目的の抗原である、単離されたヘテロ二量体ポリペプチドが提供され、このヘテロ二量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端にかけて、第2の可変ドメイン及び第3の可変ドメイン、Fcドメイン又はその一部、第1の可変ドメイン(V)、並びにCH1又はCK定常領域を含む、第1のポリペプチド鎖、及び
(b)N末端からC末端にかけて、第1の可変ドメイン(V)、CH1又はCK定常領域、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖
を含み、CH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成し、第2の可変ドメインと第3の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に結合する抗原結合ドメインを形成する。第2のポリペプチド鎖にFcドメインが欠如している場合、第1のポリペプチド鎖は、CH3-CH3二量体化(例えば、置換又は直列型CH3ドメイン)を防止するための改変されたFcドメインを含む。
【0057】
一態様では、一価で目的の第1及び第2の抗原に結合し、抗原の一方がNKp46であり、且つ他方が目的の抗原である、三量体ポリペプチドが提供され、この三量体ポリペプチドは、
(a)N末端からC末端にかけて、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、Fcドメイン又はその一部、及び第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)を含む、第1のポリペプチド鎖、
(b)第2のポリペプチド鎖であって、N末端からC末端にかけて、第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の(第2ではなく)第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメイン、及び任意選択によりFcドメイン又はその一部を含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)N末端からC末端にかけて、CH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含み、CH1又はCK定常領域が、第1のポリペプチド鎖の(第1ではなく)第2の可変領域及び第2のCH1又はCK定常領域と相補的であるように選択される、第3のポリペプチド鎖
を含む。従って、第1のポリペプチドと第3のポリペプチドとは、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間にCH1-CKヘテロ二量体を形成する。第1のポリペプチドと第2のポリペプチドと第3のポリペプチドとは、CH1-CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとは、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとは、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。
【0058】
一実施形態では、上記のヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、1つ以上の追加のポリペプチド鎖を含む。
【0059】
一実施形態では、ヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、単量体Fcドメインを含み(例えば、第2のポリペプチドはFcドメインを含まない)、任意選択により、Fcドメインは、CH3-CH3二量体化又は直列型CH3ドメインを防止するためのアミノ酸変異を有するCH3ドメインを含む。
【0060】
一実施形態では、上記のヘテロ多量体ポリペプチド又はタンパク質は、二量体Fcドメインを含む。
【0061】
任意選択により、ヘテロ二量体ポリペプチド又はタンパク質は、中程度の親和性でヒトFcRnに結合することができ、例えば、FcRnに結合するが、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcRn受容体に対して低い結合性を有し、任意選択により、単量体ポリペプチドは、さらに、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγR受容体(例えば、CD16、CD32A、CD32B、及び/又はCD64)に対して低い結合性を有する。
【0062】
任意選択により、CH1及び/又はCKドメインは、ヒンジ領域を介してFcドメインに融合される。任意選択により、ヒンジ、CH2、及び/又はCH3は、ヒトFcγR受容体(例えば、CD16、CD32A、CD32B、及び/又はCD64)に対する結合性が低下するか又は実質的に消失するようにアミノ酸改変を含む。任意選択により、このような変異は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はNKp46陰性細胞によるFcR媒介血小板活性化/減少を低下させる(例えば、部分的又は完全に消失させる)。好ましくは、本明細書の任意の実施形態では、CH1及びCKドメインはヒト起源である。
【0063】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、二重特異的タンパク質は、NKp46に対してよりも、目的の抗原(例えば、癌抗原)に対してより強く結合する(より高い結合親和性を有する)。このような抗体は、有利な薬理学的特性を提供する。本明細書の任意の実施形態の一態様では、このポリペプチドは、NKp46ポリペプチドに対する結合について、10-7M未満、好ましくは10-8M未満、又は好ましくは10-9M未満のNKp46との結合(一価)のKdを有し、任意選択により、このポリペプチドは、NKp46ポリペプチドとの結合(一価)のKdよりも低い、癌、ウイルス、又は細菌抗原との結合(一価)のKdを有する(即ち、より優れた結合親和性を有する)。本明細書の任意の実施形態の一態様では、このポリペプチドは、NKp46ポリペプチドに対する結合について10-7M(100ナノモル)~10-10M(0.1ナノモル)のNKp46との結合(一価)のKdを有する。本明細書の任意の実施形態の一態様では、このポリペプチドは、NKp46ポリペプチドに対する結合について10-8M(10ナノモル)~10-10M(0.1ナノモル)のNKp46との結合(一価)のKdを有する。本明細書の任意の実施形態の一態様では、このポリペプチドは、NKp46ポリペプチドに対する結合について10-8M(10ナノモル)~10-9M(1ナノモル)のNKp46との結合(一価)のKdを有する。
【0064】
本発明の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9、又は抗CD19-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つに結合されたアミノ酸残基に一致するNKp46の少なくとも1つの残基に結合する。一態様では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9、又は抗CD19-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つ又は組み合わせに結合されたエピトープ内のNKp46の少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つ以上のアミノ酸に結合する。本発明の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9、又は抗CD19-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれかと同じNKp46ポリペプチドのエピトープに結合する。一実施形態では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、又は-9のいずれかに結合された残基の群から選択される1つ、2つ、又は3つ以上の残基を含む配列番号1のNKp46ポリペプチドのエピトープに結合する。
【0065】
一部の実施形態では、NKp46に結合するタンパク質は、配列番号1の野生型NKp46ポリペプチドと比較して、抗体NKp46-1、-2、-3、-4、-6、又は-9のいずれかに結合された残基が異なるアミノ酸で置換された変異NKp46ポリペプチドに対して著しく低い結合性を示す。
【0066】
本発明の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合するタンパク質は、NKp46ポリペプチドに対する結合について、モノクローナル抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9、又は抗CD19-抗NKp46-1、-2、-3、-4、-6、若しくは-9二重特異的抗体のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせと競合する。一実施形態では、NKp46に結合するタンパク質は、以下の群から選択される抗体と、NKp46ポリペプチドに対する結合について競合する:
(a)配列番号3のVH領域及び配列番号4のVL領域を有する抗体(NKp46-1)、
(b)配列番号5のVH領域及び配列番号6のVL領域を有する抗体(NKp46-2)、
(c)配列番号7のVH領域及び配列番号8のVL領域を有する抗体(NKp46-3)、
(d)配列番号9のVH領域及び配列番号10のVL領域を有する抗体(NKp46-4)、
(e)配列番号11のVH領域及び配列番号12のVL領域を有する抗体(NKp46-6)、及び
(f)配列番号13のVH領域及び配列番号14のVL領域を有する抗体(NKp46-9)。
【0067】
一実施形態では、NKp46ポリペプチドに対する結合について、以下の群から選択される抗体と競合する、Nkp46に特異的に結合する単離されたタンパク質(例えば、単一特異的モノクローナル抗体、多重特異的ポリペプチド、二重特異的抗体)が提供される:
(a)配列番号3のVH領域及び配列番号4のVL領域を有する抗体(NKp46-1)、
(b)配列番号5のVH領域及び配列番号6のVL領域を有する抗体(NKp46-2)、
(c)配列番号7のVH領域及び配列番号8のVL領域を有する抗体(NKp46-3)、
(d)配列番号9のVH領域及び配列番号10のVL領域を有する抗体(NKp46-4)、
(e)配列番号11のVH領域及び配列番号12のVL領域を有する抗体(NKp46-6)、及び
(f)配列番号13のVH領域及び配列番号14のVL領域を有する抗体(NKp46-9)。
【0068】
本発明の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9のいずれか1つの超可変領域を含む。
【0069】
本発明の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合する抗原結合ドメインは、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、及びNKp46-9からなる群から選択される抗体の重鎖の1つ、2つ、又は3つのCDRを有する重鎖可変領域及び/又はこれらの抗体の軽鎖の1つ、2つ、又は3つのCDRを有する軽鎖可変領域を有する。
【0070】
一態様では、(i)NKp46、及び(ii)(NKp46以外の)目的の抗原に特異的に結合する単離された多重特異的タンパク質(単量体又は多量体ポリペプチド)が提供され、この多重特異的タンパク質は、配列番号2の配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一であるアミノ酸配列を含む単量体Fcドメインを含み、任意選択により、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のアミノ酸が、異なるアミノ酸によって置換され、任意選択により、配列番号2の残基121、136、165、175、177、又は179の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つに置換を含む。
【0071】
一実施形態では、本開示によるNKp46に結合する単離された多重特異的タンパク質は、以下の群から選択される任意の抗体の重鎖CDR1、2、及び3並びに軽鎖CDR1、2、及び3又はその抗原結合ドメインを含む:
(a)配列番号3のVH領域及び配列番号4のVL領域を有する抗体(NKp46-1)、
(b)配列番号5のVH領域及び配列番号6のVL領域を有する抗体(NKp46-2)、
(c)配列番号7のVH領域及び配列番号8のVL領域を有する抗体(NKp46-3)、
(d)配列番号9のVH領域及び配列番号10のVL領域を有する抗体(NKp46-4)、
(e)配列番号11のVH領域及び配列番号12のVL領域を有する抗体(NKp46-6)、及び
(f)配列番号13のVH領域及び配列番号14のVL領域を有する抗体(NKp46-9)。
【0072】
一実施形態では、NKp46に結合する、本開示による抗体又は抗原結合ドメインは、以下を含む:
(a)(i)表AのNKp46-1の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-1の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(b)(i)表AのNKp46-2の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-2の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(c)(i)表AのNKp46-3の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-3の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(d)(i)表AのNKp46-4の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-4の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(e)(i)表AのNKp46-6の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-6の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、又は
(f)(i)表AのNKp46-9の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに(ii)表AのNKp46-9の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖。
【0073】
一態様では、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9からなる群から選択される抗体と同じNKp46のエピトープに結合するNKp46に特異的に結合する単離されたポリペプチド(単量体又は多量体ポリペプチド)(例えば、単一特異的モノクローナル抗体、多重特異的ポリペプチド、二重特異的抗体)が提供される。単離されたポリペプチドは、例えば、単一特異的モノクローナル抗体、多重特異的ポリペプチド、又は二重特異的抗体であり得る。
【0074】
一態様では、以下を含む、NKp46に特異的に結合する単離されたポリペプチド(単量体又は多量体ポリペプチド)(例えば、単一特異的モノクローナル抗体、多重特異的ポリペプチド、二重特異的抗体)が提供される:
(a)配列番号3の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号4の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(b)配列番号5の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号6の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(c)配列番号7の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号8の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(d)配列番号9の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号10の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、
(e)配列番号11の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号12の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖、又は
(f)配列番号13の重鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む重鎖、並びに配列番号14の軽鎖可変領域のCDR1、2、及び3を含む軽鎖。
【0075】
一態様では、単離された多重特異的ヘテロ二量体タンパク質が提供され、この多重特異的ヘテロ二量体タンパク質は、本明細書に開示されるF1~F17ポリペプチドの第1のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第1のアミノ酸配列、及び本明細書に開示されるそれぞれのF1~F17ポリペプチドの第2のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第2のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド鎖を含む。任意選択により、第1鎖及び第2鎖の可変領域又はCDRのいずれか又は全ては、異なる可変領域で置換され、任意選択により、可変領域又はCDRは、同一性の計算に考慮される配列から除外され、任意選択により、抗NKp46可変領域又はCDRは、同一性の計算に含められ、他の抗原に結合する抗原結合ドメインの可変領域又はCDRは、同一性の計算に考慮される配列から除外される。
【0076】
一態様では、単離された多重特異的ヘテロ三量体タンパク質が提供され、この多重特異的ヘテロ三量体タンパク質は、本明細書に開示されるF1~F17ポリペプチドの第1のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第1のアミノ酸配列、本明細書に開示されるそれぞれのF1~F17ポリペプチドの第2のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第2のアミノ酸配列、及び本明細書に開示されるそれぞれのF1~F17ポリペプチドの第3のポリペプチド鎖の配列に少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は98%同一である第3のアミノ酸配列を含む、第1のポリペプチド鎖を含む。任意選択により、第1及び第2鎖の可変領域又はCDRのいずれか又は全ては、異なる可変領域で置換され、任意選択により、可変領域又はCDRは、同一性の計算に考慮される配列から除外され、任意選択により、抗NKp46可変領域又はCDRは、同一性の計算に含められ、他の抗原に結合する抗原結合ドメインの可変領域又はCDRは、同一性の計算に考慮される配列から除外される。
【0077】
本明細書の任意のポリペプチドの一実施形態では、多重特異的ポリペプチドは、NKp46発現NK細胞に目的の標的細胞(例えば、NKp46以外の抗原を発現する標的細胞)を溶解させることができる。
【0078】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、本開示の任意のタンパク質の第1のポリペプチド鎖、及び/又は第2のポリペプチド鎖、及び/又は第3のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸が提供される。本明細書の任意の実施形態の一態様では、本開示の任意のタンパク質の第1のポリペプチド鎖、及び/又は第2のポリペプチド鎖、及び/又は第3のポリペプチド鎖をコードする核酸を含む組換え宿主細胞が提供され、任意選択により、この宿主細胞は、少なくとも1、2、3、又は4mg/Lの収量(精製後の最終生産性)で本開示のタンパク質を産生する。また、本開示の第1のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、本開示の第2のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸、及び任意選択により、本開示の第3のポリペプチド鎖をコードする組換え核酸を含む核酸のキット又はセットも提供される。また、本開示の単量体、ヘテロ二量体、及びヘテロ三量体タンパク質を産生する方法も提供される。
【0079】
いずれの方法も、特に「発明を実施するための形態」を含め、本出願に開示されるあらゆるステップを含むとしてさらに特徴付けることができる。本発明はさらに、本明細書に開示のタンパク質を同定する、試験する、及び/又は産生する方法に関する。本発明はさらに、任意の本方法によって得ることができる多重特異的タンパク質に関する。本開示はさらに、本明細書に開示される多重特異的タンパク質の医薬剤又は診断剤に関する。本開示はさらに、治療又は診断の方法での多重特異的タンパク質の使用方法に関する。
【0080】
一実施形態では、多重特異的タンパク質は、治療有効量のADCC誘導抗体と組み合わせて、疾患(例えば、癌、ウイルス疾患、又は細菌疾患)を有する個人に投与される。ADCC誘導抗体は、例えば、ヒトFcγ受容体(例えば、CD16)に結合されたFcドメインを含む、癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に結合する抗体であり得る。一部の実施形態では、ADCC誘導抗体は、ヒトIgG1又はIgG3アイソタイプ抗体からのナイーブ又は改変Fcドメインを含む。一部の実施形態では、ADCC誘導抗体は、例えば、1つ以上のアミノ酸改変、例えば、アミノ酸置換又は低フコシル化(hypofucosylation)を含むFcドメインを含み、ナイーブヒトIgG Fcドメインと比較して高いADCC活性を有する。
【0081】
本発明のこれら及び追加の有利な態様及び特徴は、本明細書の他の部分にさらに開示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】抗原結合ドメイン(ABD又はABD)の一方がNKp46に特異的に結合し、且つABDの他方が目的の抗原に結合する多重特異的ポリペプチドの2つの例を示し、左側の図は、直列型scFvを有し、右側の図は、間にFcドメインが配置された2つのABDを有する。
図2】本明細書の実施例で使用される抗CD19-F1-抗NKp46の概略図を示す。CH2ドメインの星は任意選択のN297S変異を示す。
図3】抗CD19-抗NKp46-IgG1-Fcmonoの概略図を示す。scFv直列型構築物のために、抗NKp46 VKドメイン(C末端)が、規則的なVK-CK L型接合部(regular VK-CK elbow junction)を模倣したリンカーペプチド(RTVA)を用いてCH2ドメイン(N末端)に連結されている。
図4】抗CD19-F1-抗CD3が、分離されているときは、B221(CD19)又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下でT/B細胞の凝集を引き起こさないが、B221及びJURKAT細胞の両方が共にインキュベートされたときに細胞の凝集を引き起こすことを示す。
図5】抗CD19-F1-抗CD3が、2:1の比率(各抗体に対して2つのFcRn)でFcRnに結合するヒトIgG1定常領域(KD=15.4nM)を有するキメラ完全長抗体と比較して、1:1の比率(各単量体Fcに対して1つのFcRn)でFcRNとの結合(KD=194nM)を維持することを示す。
図6-1】作製される二重特異的抗NKp46タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図6-2】作製される二重特異的抗NKp46タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図6-3】作製される二重特異的抗NKp46タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図6-4】作製される二重特異的抗NKp46タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図6-5】作製される二重特異的抗NKp46タンパク質の異なるドメイン配置を示す。
図7-1】図7Aは、図7Bのそれぞれの差し引きセンサーグラム(subtracted sensorgram)を作成するために使用された、生データ曲線、サンプル(NKp46)、及びブランク(緩衝液)を示す重畳センサーグラムを示す。
図7-2】図7Bは、NKp46組換えタンパク質の捕捉二重特異的単量体ポリペプチドへの結合性を示す重畳差し引きセンサーグラムを示す。
図8図8Aおよび図8Bは、それぞれNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的F1及びF2抗体を示し、これらの抗体は、静止NK細胞をそれらのCD19陽性Daudi腫瘍標的細胞に誘導することができ、アイソタイプ対照抗体は、Daudi細胞の除去をもたらさなかった。リツキシマブ(RTX)はADCCの陽性対照としての役割を果たし、RTX(このアッセイでは10μg/ml)で得られた最大応答は21.6%の特異的溶解であった。
図9-1】図9Aは、F2形態のタンパク質におけるNKp46及びCD19結合領域を有する二重特異的抗体が標的細胞の非存在下で静止NK細胞を活性化しないが、完全長抗NKp46抗体及び陽性対照アレムツズマブがNK細胞を活性化したことを示す。図9A
図9-2】図9Bは、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の結合ドメインのそれぞれを含む)がDaudi標的細胞の存在下で静止NK細胞を活性化したが、完全長抗CD19が最良でも非常に低いNK細胞の活性化を示し、完全長抗NKp46抗体もアレムツズマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を実質的に超える活性化を示さなかったことを示す。
図9-3】図9Cは、CD19陰性HUT78細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の可変領域のそれぞれを含む)のいずれもNK細胞を活性化しなかったことを示す。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツズマブは、NK細胞のみの存在下で観察された同様のレベルで、NK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は活性化を誘導しなかった。
図10図10Aおよび図10Bは、1:1の低いエフェクター:標的の比率では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体のそれぞれは、Daudi細胞の存在下でNK細胞を活性化させ、且つ二重特異的抗NKp46x抗CD19が、ADCC誘導抗体としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体よりも遥かに効力があったことを示す。
図11】各NKp46×CD19二重特異的タンパク質(形態F3、F5、及びF6)は、ヒトKHYG-1 CD16陰性hNKp46陽性NK細胞株によってDaudi細胞又はB221細胞の特異的溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体はそうではなかったことを示す。
図12】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-1は、野生型NKp46(図12A)と比較して、変異体2(図12B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図13A)と比較して、追加変異体Supp7(図13B)に対して低い結合性を有していた。
図13】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-1は、野生型NKp46(図12A)と比較して、変異体2(図12B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図13A)と比較して、追加変異体Supp7(図13B)に対して低い結合性を有していた。
図14】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-3は、野生型NKp46(図14A)と比較して、変異体Supp8(図14B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図15A)と比較して、追加変異体19(図15B)に対して低い結合性を有していた。
図15】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-3は、野生型NKp46(図14A)と比較して、変異体Supp8(図14B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図15A)と比較して、追加変異体19(図15B)に対して低い結合性を有していた。
図16】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-4は、野生型NKp46(図16A)と比較して、変異体6(図16B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図17A)と比較して、追加変異体Supp6(図17B)に対して低い結合性を有していた。
図17】抗体の異なるNKp46変異体への結合を示す。抗体NKp46-4は、野生型NKp46(図16A)と比較して、変異体6(図16B)に対して低い結合性を有し、野生型NKp46(図17A)と比較して、追加変異体Supp6(図17B)に対して低い結合性を有していた。
図18】カニクイザル(Macaca fascicularis)組換えFcgR(上のグラフ;CyCD64、CyCD32a、CYCD32b、CyCD16)及びヒト組換えFcgR(下のグラフ;HuCD64、HuCD32a、HuCD32b、HUCD16a)の固定化ヒトIgG1対照(灰色)及びCD19/NKp46-1二重特異的抗体(黒色)に対する結合性を示す重畳センサーグラムを示す。完全長野生型ヒトIgG1は、全てのカニクイザル及びヒトFcγ受容体に結合したが、CD19/NKp46-1二重特異的抗体は、いずれの受容体にも結合しなかった。
図19-1】図19Aは、DART及びBITEと比較した、タンパク質形態6(F6)のSECによる精製の結果を示す。BITE及びDARTは、F6と比較して非常に低い産生収率を示し、極めて複雑なSECプロフィールを有する。
図19-2】図19Bは、予想SEC画分でのクマーシー染色後のSDS-PAGEを示し(BITEの3及び4並びにDARTの4及び5)、F6形態は、主ピーク(画分3)が所望の二重特異的タンパク質を含む明確且つ単純なSEC及びSDS-PAGEプロフィールを示した。
【発明を実施するための形態】
【0083】
定義
本明細書で使用される「1つの(a)」又は「1つの(an)」は1つ以上を意味し得る。請求項において「含む(comprising)」という語と共に使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は1つ又は2つ以上を意味し得る。
【0084】
「含む(comprising)」が使用される場合、これは、任意選択により「本質的に~からなる(essentially consisting of)」で置き換えることができ、さらに任意選択により「~からなる(consisting of)」に置き換えることができる。
【0085】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」という語は、エピトープに免疫特異的に結合することができる3次元構造を含むドメインを指す。従って、一実施形態では、前記ドメインは、超可変領域、任意選択により抗体鎖のVH及び/又はVLドメイン、任意選択により少なくとも1つのVHドメインを含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、抗体鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含み得る。別の実施形態では、結合ドメインは、非免疫グロブリン足場からのポリペプチドドメインを含み得る。
【0086】
本明細書の「抗体」という語は、広い意味で使用され、特に、完全長モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、並びに抗体断片及び誘導体(但し、所望の生物学的活性を示すものに限られる)を含む。抗体の作製に適切な様々な技術が、例えば、Harlow,et al.,ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1988)に示されている。「抗体断片」は、完全長抗体、例えば、その抗原結合領域又は可変領域の一部を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、F(ab)、Fv(典型的には、抗体の単一アームのVL及びVHドメイン)、一本鎖Fv(scFv)、dsFv、Fd断片(典型的には、VH及びCH1ドメイン)、及びdAb(典型的には、VHドメイン)断片;VH、VL、VhH、及びV-NARドメイン;ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びカッパボディ(例えば、Ill et al.,Protein Eng 1997;10:949-57を参照されたい);ラクダIgG;IgNAR;並びに抗体断片から形成された多重特異的抗体断片、及び1つ以上の単離されたCDR又は機能的パラトープが挙げられ、単離されたCDR又は抗原結合残基若しくはポリペプチドは、機能的抗体断片を形成するように1つに結合又は連結され得る。様々なタイプの抗体断片が、例えば、Holliger and Hudson,Nat Biotechnol 2005;23,1126-1136;国際公開第2005040219号パンフレット、及び米国特許出願公開第20050238646号明細書及び同第20020161201号明細書に記載され、再考察されている。
【0087】
本明細書で使用される「抗体誘導体」という語は、完全長抗体、又は例えばその少なくとも抗原結合領域又は可変領域を含む抗体の断片を含み、1つ以上のアミノ酸が、例えば、アルキル化、PEG化、アシル化、エステル形成、又はアミド形成などによって化学修飾されている。これは、限定されるものではないが、PEG化抗体、システイン-PEG化抗体、及びこれらの変異体を含む。
【0088】
「超可変領域」という語は、本明細書で使用される場合、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24-34(L1)、50-56(L2)、及び89-97(L3)並びに重鎖可変ドメインの残基31-35(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3);Kabat et al.1991)、及び/又は「超可変ループ」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26-32(L1)、50-52(L2)、及び91-96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol 1987;196:901-917)を含む。典型的には、この領域のアミノ酸残基の付番は、前出のKabatらに記載の方法によって行われる。本明細書の「Kabat位置」、「Kabatと同様の可変ドメイン残基の付番」、及び「Kabatによる」などの句は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについてのこの付番方式を指す。Kabat付番方式を用いると、ペプチドの実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮又はFR又はCDRへの挿入に一致するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後の単一アミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び重鎖FR残基82の後の挿入残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabat付番は、抗体の配列の相同領域と「基準」Kabat付番配列とのアラインメントによって所与の抗体について決定することができる。
【0089】
本明細書で使用される「フレームワーク」又は「FR」残基とは、CDRとして定義される部分を除く抗体可変ドメインの領域のことである。各抗体可変ドメインフレームワークは、CDRによって分離された連続した領域にさらに細分することができる(FR1、FR2、FR3、及びFR4)。
【0090】
本明細書で定義される「定常領域」とは、軽鎖又は重鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによってコードされる抗体由来定常領域のことである。本明細書で使用される「定常軽鎖」又は「軽鎖定常領域」とは、κ(Cκ)又はλ(Cλ)軽鎖によってコードされる抗体の領域のことである。定常軽鎖は、典型的には、単一ドメインを含み、且つ本明細書で定義されるように、Cκの108~214位、又はCλを指し、付番は、EUインデックスによる((Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)。本明細書で使用される「定常重鎖」又は「重鎖定常領域」とは、μ、δ、γ、α、又はε遺伝子によってそれぞれコードされてIgM、IgD、IgG、IgA、又はIgEとして抗体のアイソタイプを確定する抗体の領域のことである。完全長IgG抗体では、本明細書で定義される定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までを指し、従って118~447位を含み、付番は、EUインデックスによる。
【0091】
本明細書で使用される「Fab」又は「Fab領域」とは、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドのことである。Fabは、分離されたこの領域、又はポリペプチド、多重特異的ポリペプチド、若しくはABD、又は本明細書で概説されたその他の実施形態との関連でのこの領域を指し得る。
【0092】
本明細書で使用される「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片のことであり、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが、抗原結合のための所望の構造を形成できるようにする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvを作製する方法は当技術分野で周知である。scFvを作製する方法の再考察については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0093】
本明細書で使用される「Fv」、又は「Fv断片」、又は「Fv領域」とは、単一抗体のVL及びVHドメインを含むポリペプチドのことである。
【0094】
本明細書で使用される「Fc」又は「Fc領域」とは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く、抗体の定常領域を含むポリペプチドのことである。従って、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びに可撓性ヒンジN末端からこれらのドメインまでを指す。IgA及びIgMでは、FcはJ鎖を含み得る。IgGでは、Fcは、免疫グロブリンドメインCγ2(CH2)及びCγ3(CH3)、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226、P230、又はA231からそのカルボキシ末端までを含むように定義され、この付番はEUインデックスによる。Fcは、以下に記載される、分離されたこの領域、又はFcポリペプチドとの関連でのこの領域を指し得る。本明細書で使用される「Fcポリペプチド」又は「Fc由来ポリペプチド」とは、Fc領域の全て又は一部を含むポリペプチドのことである。Fcポリペプチドは、限定されるものではないが、抗体、Fc融合体、及びFc断片を含む。
【0095】
本明細書で使用される「可変領域」とは、それぞれ軽鎖(κ及びλを含む)免疫グロブリン遺伝子座及び重鎖免疫グロブリン遺伝子座を構成するVL(Vκ(VK)及びVλを含む)遺伝子及び/又はVH遺伝子のいずれかによって実質的にコードされる1つ以上のIgドメインを含む抗体の領域のことである。軽鎖可変領域又は重鎖可変領域(VL又はVH)は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」又は「FR」領域からなる。フレームワーク領域及びCDRとの関連では、例えば、Kabatと同様に(“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” E.Kabat et al.,U.S.Department of Health and Human Services,(1983)を参照されたい)、及びChothiaと同様に正確に定義されている。抗体のフレームワーク領域、即ち、構成軽鎖及び構成重鎖の組み合わせフレームワーク領域は、CDRを配置して整列させる役割を果たし、CDRは抗原への結合に主に関与する。
【0096】
「特異的に結合する」という語は、抗体又はポリペプチドを、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ、又は単離された標的細胞の表面に存在するナイーブタンパク質のいずれかを用いて評価される、好ましくは競合的結合アッセイでの結合パートナー、例えば、NKp46に結合できることを意味する。競合的結合アッセイ及び特異的結合を決定する他の方法は、以下にさらに記載され、当技術分野で周知である。
【0097】
抗体又はポリペプチドが、特定のモノクローナル抗体(例えば、抗NKp46単一又は二重特異的抗体との関連でのNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9)と「競合する」と言われる場合、この「競合する」は、抗体又はポリペプチドが、組換え標的(例えば、NKp46)分子又は表面発現標的(例えば、NKp46)分子のいずれかを用いた結合アッセイでモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいてNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9のNKp46ポリペプチド又はNKp46発現細胞に対する結合性を低下させる場合、抗体は、それぞれNKp46-1、-2、-4、-6、又は-9と「競合する」と言われる。
【0098】
本明細書で使用される「親和性」という語は、抗体又はポリペプチドのエピトープへの結合の強さを指す。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kによって示され、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、及び[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和定数Kは1/Kによって定義される。mAbの親和性の決定に好ましい方法は、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられるHarlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988),Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)に記載されている。mAbの親和性を決定するための当技術分野で周知の1つの好ましい標準的な方法では、(例えば、BIAcore(商標)SPR分析装置での分析によって)表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングを使用する。
【0099】
本発明との関連では、「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を指定する。
【0100】
「エピトープ」という語は、抗原決定基を指し、抗体又はポリペプチドが結合する抗原の範囲又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、並びに特定の抗原結合抗体又はペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基、即ち、抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。タンパク質エピトープは、例えば、抗体又は受容体と結合することができる複合抗原分子上の最も単純な形態又は最も小さい領域である。エピトープは、線形又は高次構造/構造であり得る。「線形エピトープ」という語は、アミノ酸の線形配列(一次構造)上の連続したアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。「高次構造又は構造エピトープ」という語は、全てが連続しているわけではないアミノ酸残基から構成され、従って分子の折り畳み(二次、三次、及び/又は四次構造)によって互いに近接するアミノ酸の線形配列の分離した部分を表すエピトープとして定義される。高次構造エピトープは3次元構造によって決まる。従って、「高次構造の」という語は、「構造の」という語と頻繁に同義的に使用される。
【0101】
本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書のアミノ酸改変の一例は置換である。本明細書の「アミノ酸改変」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失のことである。本明細書の「アミノ酸置換」又は「置換」とは、タンパク質配列の所与の位置のアミノ酸の別のアミノ酸での置換のことである。例えば、置換Y50Wは、親ペプチドの変異体を指し、50位のチロシンがトリプトファンで置換されている。ポリペプチドの「変異体」は、基準ポリペプチド、典型的にはナイーブ又は「親」ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。ポリペプチド変異体は、ナイーブアミノ酸配列内の特定の位置に1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有し得る。
【0102】
「保存的な」アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で公知であり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0103】
2つ以上のポリペプチドの配列間の関係で使用される「同一性」又は「同一の」という語は、2つ以上のアミノ酸残基のストリング間の一致の数によって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の計算モデル又はコンピュータープログラム(即ち、「アルゴリズム」)によって行われる、(存在する場合)ギャップアライメントを用いた同様の2つ以上の配列間の完全な一致のパーセントを示す。関連ポリペプチド間の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。このような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;and Carillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載の方法が挙げられる。
【0104】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を得るように設計されている。同一性を決定する方法は、公表されているコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法は、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含め、GCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)及び他の情報源(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.,前出)から公表されている。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用することができる。
【0105】
「単離された」分子は、組成物中の主な種である分子であり、この組成物中では、この分子は、この分子が属する分子のクラスに対して見出される(即ち、単離された分子は、組成物中の分子のタイプの少なくとも約50%を構成し、典型的には、組成物中の分子、例えば、ペプチドの種の少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%以上を構成する)。通常、ポリペプチドの組成は、組成物中に存在する全てのペプチド種との関連でのポリペプチドに対して、又は少なくとも提案される使用との関連での実質的に活性なペプチド種に対して98%、98%、又は99%の均一性を示す。
【0106】
本明細書に関連して、「処置」又は「処置する」は、反対の旨の記載がない限り、疾患又は障害の1つ以上の症状又は臨床的に関連する兆候を予防すること、緩和すること、管理すること、治癒すること、又は軽減することを指す。例えば、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認されていない患者の「処置」は、防止又は予防療法であり、疾患又は障害の症状又は臨床的に関連する兆候が確認された患者の「処置」は、一般に、防止又は予防療法とはならない。
【0107】
本明細書で使用される「NK細胞」は、従来にない免疫に関与するリンパ球の亜集団を指す。NK細胞は、特定の特徴及び生物学的特性、例えば、ヒトNK細胞のCD56及び/又はNKp46を含む特定の表面抗原の発現、細胞表面のα/β又はγ/δTCR複合体の非存在、特定の細胞溶解装置の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合してその細胞を殺す能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の異常細胞を殺す能力、及び免疫応答を刺激又は抑制するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力によって特定することができる。これらの特徴及び活性のいずれかを用いて、当技術分野で周知の方法でNK細胞を特定することができる。NK細胞のいかなる亜集団もNK細胞という語に包含される。本明細書に関連して、「活性な」NK細胞は、標的細胞を溶解する又は他の細胞の免疫機能を促進する能力を有するNK細胞を含む生物学的に活性なNK細胞を指す。NK細胞は、当技術分野で公知の様々な技術、例えば、血液サンプルからの単離、細胞吸着除去療法、組織又は細胞の収集などによって得ることができる。NK細胞を伴うアッセイの有用なプロトコルは、Natural Killer Cells Protocols(edited by Campbell KS and Colonna M).Human Press.pp.219-238(2000)に記載されている。
【0108】
本明細書で使用される、Nkp46で「アゴニスト」活性を有する作用物質は、「NKp46シグナル伝達」を引き起こす又は増加させることができる作用物質である。「NKp46シグナル伝達」は、細胞内シグナル伝達経路を活性化させる又は伝達するNKp46ポリペプチドの能力を指す。NKp46シグナル伝達活性の変化は、例えば、シグナル伝達要素のリン酸化の監視などによるNKp46シグナル伝達経路の変化を測定するように設計されたアッセイ、特定のシグナル伝達要素と他のタンパク質若しくは細胞内構造の結合を測定するアッセイ、又はキナーゼなどの成分の生化学活性において、又はNKp46感受性プロモーター又はエンハンサーの制御下でのレポーター遺伝子の発現を測定するように設計されたアッセイによって、又はNKp46ポリペプチドによって媒介される下流の効果(例えば、NK細胞における特定の細胞溶解装置の活性化)によって間接的に測定することができる。レポーター遺伝子は、天然に存在する遺伝子であり得る(例えば、サイトカインの産生を監視する)、又は細胞に人工的に導入される遺伝子であり得る。他の遺伝子は、このような調節要素の制御下に置くことができ、従って、NKp46シグナル伝達のレベルを報告する役割を果たす。
【0109】
「NKp46」は、Ncr1遺伝子又はこのような遺伝子から調製されるcDNAによってコードされるタンパク質又はポリペプチドを指す。あらゆる天然に存在するイソ型、対立遺伝子、又は変異体は、NKp46ポリペプチドという語(例えば、配列番号1に90%、95%、98%、若しくは99%同一のNKp46ポリペプチド、又はその少なくとも20、30、50、100、若しくは200のアミノ酸残基の連続した配列)に包含される。ヒトNKp46(イソ型a)の304のアミノ酸残基の配列は、以下のように示される。
【化1】
【0110】
配列番号1は、NCBIアクセッション番号NP_004820に一致し、この開示は、参照により本明細書に組み入れられる。ヒトNKp46 mRNA配列は、NCBIアクセッション番号NM_004829に示されており、この開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0111】
ポリペプチドの産生
本明細書に記載のタンパク質に使用される抗原結合ドメインは、様々な免疫グロブリン又は非免疫グロブリン足場、例えば、ブドウ球菌プロテインAのZドメインをベースとしたアフィボディ、エンジニアリングされたKunitzドメイン、ヒトフィブロネクチンIIIの第10細胞外ドメインをベースとしたモノボディ又はアドネクチン、リポカリンに由来するアンチカリン、DARPin(設計アンキリン反復ドメイン、多量体化LDLR-Aモジュール、アビマー、又はシステインリッチknottinペプチド)から容易に得ることができる。例えば、参照により開示内容が本明細書に組み入れられる、Gebauer and Skerra(2009)Current Opinion in Chemical Biology 13:245-255を参照されたい。
【0112】
可変ドメインは、通常、抗体(免疫グロブリン鎖)に由来し、例えば、2つのポリペプチド鎖に存在する結合したVL及びVHドメイン、又は一本鎖抗原結合ドメイン、例えば、scFv、Vドメイン、Vドメイン、dAb、V-NARドメイン、又はVHドメインの形態である。抗原結合ドメイン(例えば、ABD及びABD)はまた、Fabのような抗体から容易に得ることができる。
【0113】
典型的には、抗体は、最初は、抗体(例えば、ヒトポリペプチド)を得るのに望ましいポリペプチド、又は典型的には免疫原性断片であるその断片若しくは誘導体を含む免疫原を用いて、非ヒト動物、例えば、マウスの免疫によって得られる。非ヒト哺乳動物を抗原で免疫するステップは、マウスの抗体の産生を刺激するための当技術分野で周知の任意の方式で行うことができる(例えば、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるE.Harlow and D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988)を参照されたい)。免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞を産生するのであれば、他のプロトコルも使用することができる。非免疫非ヒト哺乳動物からのリンパ球を単離し、in vitroで増殖させ、これを細胞培養で免疫原に曝露することもできる。次いで、リンパ球を回収し、以下に記載される融合ステップを行う。例示的なモノクローナル抗体では、次のステップは、免疫された非ヒト哺乳動物からの脾細胞の単離であり、続いて、抗体産生ハイブリドーマを産生するためのこれらの脾細胞の不死化細胞との融合である。次いで、ハイブリドーマコロニーを、抗体が望ましいポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生についてアッセイした。アッセイは、典型的には、比色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖されるウェルに適合させることができる任意のアッセイを利用することができる。他のアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ又は蛍光活性化細胞分類が挙げられる。所望の抗体の産生に陽性なウェルを検査して、1つ以上の異なるコロニーが存在するか否かを決定する。2つ以上のコロニーが存在する場合、細胞を再びクローニングして、単一の細胞のみが、所望の抗体を産生するコロニーに生じるようになるように成長させることができる。所望のモノクローナル抗体を産生するまで十分に成長させたところで、モノクローナル抗体を含む成長培地(又は腹水)を細胞から分離し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、典型的には、ゲル電気泳動法、透析、プロテインA若しくはプロテインGセファロースを用いるクロマトグラフィー、又は固体支持体、例えば、アガロース若しくはセファロースビーズに連結された抗マウスIgによって達成される(全てが、例えば、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるAntibody Purification Handbook,Biosciences,publication No.18-1037-46,Edition ACに記載されている)。
【0114】
ヒト抗体は、ヒト抗体レパートリーを発現するようにエンジニアリングされたトランスジェニック動物(Jakobovitz et Nature 362(1993)255)を免疫に用いることによって、又はファージ提示法を用いる抗体レパートリーの選択によって産生することもできる。例えば、XenoMouse(Abgenix,Fremont,CA)を免疫に使用することができる。XenoMouseは、その免疫グロブリン遺伝子が機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられたマウス宿主である。従って、このマウスによって、又はこのマウスのB細胞から産生されたハイブリドーマで産生される抗体は既にヒト化されている。XenoMouseは、参照によりその内容が本明細書に組み入れられる米国特許第6,162,963号明細書に記載されている。
【0115】
抗体はまた、例えば、(参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられるWard et al.Nature,341(1989)p.544)に開示されているように、免疫グロブリンの組み合わせライブラリーの選択によって産生することもできる。ファージ提示法(McCafferty et al(1990)Nature 348:552-553)を用いて、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから抗体を産生することができる。例えば、Griffith et al(1993)EMBO J.12:725-734;米国特許第5565332号明細書;同第5573905号明細書;同第5567610号明細書;同第5229275号明細書を参照されたい。組み合わせライブラリーが、ヒト起源の可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーを含む場合、組み合わせライブラリーからの選択により、ヒト抗体が得られる。
【0116】
加えて、広範囲の抗体が、DNA及び/又はアミノ酸配列を含む化学文献及び特許文献で、又は民間供給業者から入手可能である。抗体は、典型的には、所定の抗原に対するものである。抗体の例としては、除去されるべき標的細胞、例えば、増殖細胞又は病理の原因となる細胞によって発現される抗原を認識する抗体が挙げられる。例としては、腫瘍抗原、微生物(例えば、細菌)抗原、又はウイルス抗原を認識する抗体が挙げられる。
【0117】
NKp46に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載される(「CDR配列」のセクションを参照されたい)抗NKp46抗体に由来し得る。可変領域は、直接使用することもできるし、又はNKp46抗体の超可変又はCDR領域を選択して、これらを適切なVL又はVHフレームワーク、例えば、ヒトフレームワークに入れることによって改変することもできる。NKp46に結合する抗原結合ドメインはまた、抗体を産生する方法を用いて新たに得ることもできる。抗体は、NKp46ポリペプチドに対する結合性について試験することができる。本明細書の任意の実施形態の一態様では、NKp46に結合するポリペプチド(例えば、多重特異的ポリペプチド、二重特異的又は単一特異的抗体)は、細胞の表面で発現されるNKp46、例えば、NK細胞によって発現されるナイーブNKp46に結合することができる。
【0118】
目的の抗原に結合する抗原結合ドメイン(ABD)は、所望の細胞標的に基づいて選択することができ、例えば、癌抗原、細菌抗原、又はウイルス抗原などを含み得る。本明細書で使用される「細菌抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷細菌、弱毒細菌、若しくは死菌、あらゆる構造的若しくは機能的細菌タンパク質若しくは炭水化物、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)の細菌タンパク質の任意のペプチド部分を含む。例としては、グラム陽性細菌抗原及びグラム陰性細菌抗原が挙げられる。一部の実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター(Helicobacter)種、特にヘリコバクターピロリス(Helicobacter pyloris);ボレリア(Borelia)種、特にボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi);レジオネラ(Legionella)種、特にレジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia);マイコバクテリア属(Mycobacteria s)種、特に結核菌(M.tuberculosis)、アビウム菌(M.avium)、イントラセルラ菌(M.intracellulare)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae);ブドウ球菌(Staphylococcus)種、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);ナイセリア(Neisseria)種、特に淋菌(N.gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N.meningitidis);リステリア(Listeria)種、特にリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ストレプトコッカス(Streptococcus)種、特にS.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.アガラクティエ(S.agalactiae)、S.ファエカリス(S.faecalis);S.ボビス(S.bovis)、肺炎連鎖球菌(S.pneumonias);嫌気性連鎖球菌(anaerobic Streptococcus)種;病原性カンピロバクター(pathogenic Campylobacter)種;エンテロコッカス(Enterococcus)種;ヘモフィルス(Haemophilus)種、特にヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenzue);バチルス(Bacillus)種、特に炭疽菌(Bacillus anthracis);コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、特にコリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheriae);エリジペロスリックス(Erysipelothrix)種、特にブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae);クロストリジウム(Clostridium)種、特にウェルシュ菌(C.perfringens)、破傷風菌(C.tetani);エンテロバクター(Enterobacter)種、特にエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)種、特にクレブシエラ1Sニューモニエ(Klebsiella 1S pneumoniae)、パストレラ(Pasturella)種、特にパストレラ・マルトシダ(Pasturella multocida)、パスツレラ(Pasturella)種、特にパスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス(Bacteroides)種;フソバクテリウム(Fusobacterium)種、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum);ストレプトバチルス(Streptobacillus)種、特にストレプトバチルス・モリホルミス(Streptobacillus moniliformis);トレポネーマ(Treponema)種、特にトレポネーマ(Treponema pertenue);レプトスピラ(Leptospira);病原性エシェリキア種(pathogenic Escherichia);及びアクチノマイセス(Actinomyces)種、特にアクチノミセス・イスラエリ(Actinomyces israelli)からなる群から選択される細菌に由来する。
【0119】
本明細書で使用される「ウイルス抗原」という語は、限定されるものではないが、無傷全ウイルス、弱毒全ウイルス、若しくは死滅全ウイルス、任意の構造的若しくは機能的ウイルスタンパク質、又は抗原性であるべき十分な長さ(典型的には、約8アミノ酸以上)のウイルスタンパク質の任意のペプチド部分を含む。ウイルス抗原の供給源としては、限定されるものではないが、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1(HTLV-III、LAV、又はHTLV-III/LAV、又はHIV-IIIとも呼ばれる;及び他の分離株、例えば、HIV-LP;ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス;ヒトコクサッキーウイルス;ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス);ブンヤウイルス科(例えば、ハンタウイルス、ブンヤウイルス、フレボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ボルナビリダエ科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス(殆どのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(バリオラウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);及びイリダウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);及び未分類ウイルス(例えば、デルタ肝炎の作用物質(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライト(defective satellite)と考えられる)、C型肝炎;ノーウォーク及び関連ウイルス、及びアストロウイルス)の科からのウイルスが挙げられる。別法では、ウイルス抗原は、組換えにより作製することができる。
【0120】
本明細書で使用される「癌抗原」及び「腫瘍抗原」という語は、同義的に使用され、癌細胞によって差次的に発現される抗原を指し、従って、癌細胞を標的にするために利用することができる。癌抗原は、明らかに腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る抗原である。これらの抗原の一部は、正常細胞によってコードされるが、必ずしも発現されるものではない。これらの抗原は、正常細胞では通常サイレントである(即ち、発現されない)抗原、分化の特定の段階のみで発現される抗原、及び胚抗原及び胎児抗原のように一時的に発現される抗原として特徴付けることができる。他の癌抗原は、変異細胞遺伝子、例えば、癌遺伝子(例えば、活性化ras癌遺伝子)、サプレッサー遺伝子(例えば、突然変異p53)、内部欠失又は染色体転座から生じる融合タンパク質によってコードされる。さらに他の癌抗原は、ウイルス遺伝子、例えば、RNA及びDNA腫瘍ウイルスに保持されたウイルス遺伝子によってコードすることができる。
【0121】
癌抗原は、通常、過剰発現される又は異常な回数で発現される正常細胞の表面抗原である。理想的には、標的抗原は、増殖細胞(例えば、腫瘍細胞)のみで発現されるが、これは、実際には稀にのみ観察される。結果として、標的抗原は、通常、増殖組織と健康組織との間の差次的な発現に基づいて選択される。受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Cripto、CD4、CD20、CD30、CD19、CD33、CD38、CD47、糖タンパク質NMB、CanAg、Her2(ErbB2/Neu)、CD22(Siglec2)、CD33(Siglec3)、CD79、CD138、CD171、PSCA、L1-CAM、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、BCMA、CD52、CD56、CD80、CD70、E-セレクチン、EphB2、メラノトランスフェリン、Mud6、及びTMEFF2を含む特定の腫瘍関連抗原を標的とする抗体が産生された。癌抗原の例としては、網羅するものではないが、B7-H3、B7-H4、B7-H6、PD-L1、MAGE、MART-1/Melan-A、gp100、主要組織適合複合体クラスI関連鎖A及びBポリペプチド(MICA及びMICB)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、キラーIg様受容体3DL2(KIR3DL2)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、受容体タンパク質チロシンキナーゼ3(TYRO-3)、ネクチン(例えば、ネクチン-4)、主要組織適合複合体クラスI関連鎖A及びBポリペプチド(MICA及びMICB)、UL16結合タンパク質(ULBP)ファミリーのタンパク質、レチノイン酸初期transcript-1(RATE1)ファミリーのタンパク質、癌胎児抗原(CEA)及びその免疫原性エピトープCAP-1及びCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異的抗原(PSA)、T細胞受容体/CD3ζ鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー、腫瘍抗原のGAGEファミリー、抗ミュラー管ホルモンII型受容体、δ様リガンド4(DLL4)、DR5、ROR1(受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1又はNTRKR1(EC2.7.10.1)としても知られている)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、MUCファミリー、VEGF、VEGF受容体、アンジオポイエチン-2、PDGF、TGF-α、EGF、EGF受容体、ヒトEGF様受容体ファミリーのメンバー、例えば、HER-2/neu、HER-3、HER-4、又は少なくとも1つのHERサブユニットからなるヘテロ二量体受容体、ガストリン放出ペプチド受容体抗原、Muc-1、CA125、αvβ3インテグリン、α5β1インテグリン、αIIbβ3インテグリン、PDGFβ受容体、SVE-カドヘリン、IL-8、hCG、IL-6、IL-6受容体、IL-15、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン及びγ-カテニン、p120ctn、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸線種様ポリープタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、p15、gp75、GM2及びGD2ガングリオシド、ウイルス産物、例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質、imp-1、P1A、EBVコード核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1及びCT-7、及びc-erbB-2が挙げられる。一態様では、目的の抗原はCD19ポリペプチドであり、一態様では、多重特異的タンパク質はscFvを含み、このscFvは、本明細書の実施例の抗CD19scFvの配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含むCD19に結合する、又は本明細書に示される抗CD19重鎖及び軽鎖可変領域の重鎖及び軽鎖CDR-1、2、及び3を含む。
【0122】
一実施形態では、ABDは、癌抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、又は感染(例えば、ウイルス感染)細胞上若しくは炎症性免疫細胞上に存在する抗原に結合する。一実施形態では、前記抗原は、腫瘍細胞、及び感染細胞又は炎症性細胞で選択的に発現される又は過剰発現されるポリペプチドである。一実施形態では、前記抗原は、阻害されると、腫瘍細胞、感染細胞、又は炎症性細胞の増殖及び/又は生存率を低下させるポリペプチドである。例えば、第1及び/又は第2の抗体又は断片は、それぞれ抗Her-1及び抗Her-2に結合することができる。抗Her-2は、例えば、Herceptin(商標)(トラスツズマブ)又は2C4(ペルツズマブ)に由来するCDRを含む抗体であり得る。抗Her2及び抗Her-1(抗体D1-5及びC3-101)アミノ酸配列は、国際公開第2011/069104号パンフレットに示されている。
【0123】
ポリペプチドに含められるABDは、多重特異的NKp46結合タンパク質に含められる前に任意の所望の活性について試験することができ、例えば、ABDは、目的の抗原への結合性について試験することができる。
【0124】
抗体に由来するABDは、一般に、結合活性を付与するのに十分な超可変領域を少なくとも含む。ABDは、限定されるものではないが、リンカー要素(例えば、リンカーペプチド、CH1、Cκ又はCλドメイン、ヒンジ、又はそれらの断片)を含む他のアミノ酸又は機能的ドメインを、場合により必要に応じて含み得ることを理解されたい。一例では、ABDは、scFv、Vドメイン及びVドメイン、又は単一ドメイン抗体(ナノボディ又はdAb)、例えば、V-NARドメイン又はVHドメインを含む。例示的な抗体形態は、本明細書にさらに説明され、ABDは、所望の形態に基づいて選択することができる。
【0125】
任意の実施形態では、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体から得ることができ、このヒト化抗体では、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、元の抗体(親又はドナー抗体、例えば、マウス又はラット抗体)のCDRからの残基によって置換されているが、所望の特異性、親和性、及び元の抗体の能力を維持している。非ヒト生物を起源とする核酸によって一部又は全てがコードされた親抗体のCDRを、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに全て又は一部を移植して、その特異性が移植されるCDRによって決まる抗体を作製する。このような抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones,1986,Nature 321:522-525,Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536に記載されている。従って、抗原結合ドメインは、非ヒト超可変領域又はCDR及びヒトフレームワーク領域の配列(任意選択により逆突然変異を含む)を有し得る。
【0126】
所望の特異性及び/又は活性を有する適切な抗原結合ドメインが特定されると、ABDのそれぞれをコードするDNAを、適切な宿主へのトランスフェクションのために、任意の要素、例えば、酵素認識タグ又はCH2ドメイン及びCH3ドメイン並びにその他の任意選択の要素をコードするDNA(例えば、ヒンジ領域をコードするDNA)と共に、適切な配置で適切な発現ベクターに別個に配置することができる。ABDは、互いに機能的に連結された所望のドメインを有するFcポリペプチドを作製するために、いずれのタイプのポリペプチドが作製されるべきかに応じて、1つの発現ベクター又は別個のベクターに配置することができる。次いで、宿主を、多重特異的ポリペプチドの組換え産生に使用することができる。
【0127】
例えば、ポリペプチド融合産物をベクターから作製することができ、このベクターでは2つのABDのうちの第1のABDが、CH2ドメインのN末端に(例えば、重鎖又は軽鎖CH1、CK、又はCλ定常領域及び/又はヒンジ領域を介して直接)機能的に連結され、CH2ドメインが、そのC末端からN末端でCH3ドメインに機能的に連結されている。2つのABDのうちの第2のABDは、いずれかの末端でポリペプチドに連結することができる、又は第1のABDを含むポリペプチドと二量体、例えば、ヘテロ二量体を形成する第2のポリペプチド鎖上とすることができる。このポリペプチドは、完全長Fcドメインを含み得る。
【0128】
次いで、多重特異的ポリペプチドを、適切な宿主細胞で、又は任意の適切な合成プロセスによって産生することができる。多重特異的ポリペプチドの発現用に選択された宿主細胞は、限定されるものではないが、免疫グロブリンCH2ドメインのタンパク質を装飾するオリゴ糖部分の組成の変化を含め、最終組成物にとって重要な寄与因子である。従って、本発明の一態様は、多重特異的ポリペプチドが、少なくとも部分的なFcRN結合を維持するが、例えば、野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較してFcγ受容体に対する結合性が低下するように、所望の治療用タンパク質を発現する産生細胞の使用及び/又は開発のための適切な宿主細胞の選択を含む。宿主細胞は、哺乳動物起源であってもよく、又はCOS-1、COS-7、HEK293、BHK21、CHO、BSC-1、Hep G2、653、SP2/0、293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はそれらの任意の誘導体、不死化若しくは形質転換細胞から選択してもよい。別法では、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化できない種又は生物、例えば、原核細胞又は生物、例えば、天然又はエンジニアリングされた大腸菌属(E.coli spp.)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、又はシュードモナス属(Pseudomonas spp.)から選択することができる。
【0129】
単量体タンパク質
単量体多特異タンパク質は、様々な形式によって産生することができる。一例では、多特異タンパク質は、単一ポリペプチド鎖に、NKp46に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びNKp46以外の抗原に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。一実施形態では、抗体は、任意選択により別のポリペプチド又はアミノ酸配列に融合された、直列型scFvである。一実施形態では、単一ポリペプチド鎖は、Fcドメイン(例えば、完全長Fcドメイン又はその一部)をさらに含み、任意選択により、Fcドメインは、第1の抗原結合ドメインと第2の抗原結合ドメインとの間に配置される。
【0130】
(a)NKp46に結合する抗原結合ドメイン、(b)NKp46以外の抗原に結合する抗原結合ドメイン、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含む、有利な特性を有する単量体二重特異的Fc由来ポリペプチドを産生することができ、このFcドメインは、(i)別のFc由来ポリペプチドと二量体化せず、(ii)ヒトFcRnに結合することができ、且つ(iii)野生型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する(又は結合性が欠如している)。任意選択により、Fcドメインは、第1のABDと第2のABDとの間に配置される。
【0131】
任意の実施形態の一態様では、第1の抗原結合ドメイン及び/又は第2の抗原結合ドメインは、scFvを含み、任意選択により、このscFvは、ヒトフレームワークアミノ酸配列を含む。一実施形態では、(a)NKp46に結合する第1のscFv、(b)NKp46以外の抗原に結合する第2のscFv、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含む単量体二重特異的Fc由来ポリペプチドが提供され、このFcドメインは、(i)別のFc由来ポリペプチドと二量体化せず、(ii)ヒトFcRnに結合することができ、且つ(iii)野生型ヒトIgG1 Fcドメインと比較して、ヒトFcγ受容体に対して低い結合性を有する。任意選択により、Fcドメインは、第1のscFvと第2のscFvとの間に配置される。
【0132】
2つのABD及びFcドメインの少なくとも一部を含むポリペプチド融合産物が単量体である場合、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化を防止するために配置することができ、且つ/又はアミノ酸改変を含むことができる。一実施形態では、CH3ドメインは、鎖間CH3-CH3二量体化を防止するために二量体の界面に変異を含む。別の実施形態では、CH3ドメインは、鎖間CH3-CH3二量体化を防止するための直列型CH3ドメインである(又はFcドメインが直列型CH3ドメインを含む)。このような単量体は、(例えば、野生型完全長ヒトIgG1抗体と比較して)部分的なFcRn結合性を維持するが、低いヒトFcγ受容体結合性を有する。任意選択により、単量体ポリペプチドは、中程度の親和性でヒトFcRnに結合することができ、例えば、FcRnに対する結合性を維持するが、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcRn受容体に対して低い結合性を有する。Fc部分は、例えば、CH2ドメインに、1つ以上のFcγ受容体に対する結合性をさらに低下させるか、又は実質的に消失させる1つ以上のアミノ酸改変をさらに含み得る。
【0133】
任意選択により、任意の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメインと、このFcドメインが別のFc由来ポリペプチドと二量体化しない(例えば、相互作用により別のCH3ドメインと二量体化しない)ように1つ以上のアミノ酸改変を含むCH3ドメインとを含む。
【0134】
ポリペプチドの一部の実施形態では、NKp46に結合するABDは、NKp46以外の抗原に結合するABDに機能的に連結され(例えば、2つのABDはリンカーを介して融合され)、2つのABDのうちの一方が、CH2ドメインに融合され、このCH2ドメインは、CH3ドメイン(又はCH2ドメインに融合されるCH3)に融合される(例えば、そのC末端で融合される)。一部の実施形態では、第1のABDは、両方のABDを含む直列型抗原結合ドメインが形成されるようにペプチドリンカーによって第2のABDに機能的に連結される。
【0135】
このようなポリペプチドの例としては、以下のいずれか1つのドメイン配置:
(ABD)-(ABD)-CH2-CH3
(ABD)-(ABD)-CH2-CH3
CH2-CH3-(ABD)-(ABD
CH2-CH3-(ABD)-(ABD
を含むことができ、ABD及びABDの一方が目的の抗原に結合し、且つ他方がNKp46に結合し、任意選択により、CH1ドメイン又はその断片及び/又はヒンジドメインが、ABDとCH2との間、又はABDとCH2との間に配置される。任意選択により、各ABDは、VL及びVHドメインを含む。任意選択により、これらの任意のポリペプチドが直列型CH3ドメインを含み、第2のCH3ドメインが第1のCH3ドメインのC末端に可撓性リンカーを介して融合される。
【0136】
任意選択により、ABDは、直列型scFvを含むポリペプチドが産生されるようにそれぞれのscFvである。第1及び第2のABDは、ABDが結合しようとするそれぞれの抗原への結合を可能にするようにABDを折り畳むことができる十分な長さのリンカーによって互いに連結することができる。ABDのABDへの連結に使用される、又はABDのCH2若しくはCH3への連結に使用される適切なペプチドリンカーが当技術分野で公知であり、例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2007/073499号パンフレットを参照されたい。リンカー配列の例としては、(GS)が挙げられ、xは、整数(例えば、1、2、3、又は4以上)である。従って、直列型抗原結合ドメインは、例えば、構造(ABD-ペプチドリンカー-ABD-ペプチドリンカー-(単量体CH2-CH3ドメインを含むポリペプチド))を有し得る。例えば、このポリペプチドは、融合産物として、構造(scFv-ペプチドリンカー-scFv-ペプチドリンカー-CH2-CH3)を含み得、各要素は、以下の要素に融合されている。
【0137】
本明細書で提示される任意のドメイン配置では、ABD又はABDの一方がNKp46に結合し、且つ他方が目的の抗原に結合するのであれば、NKp46に結合するABDをABD又はABDのいずれかで表すことができ、目的の抗原に結合するABDをABD又はABDのいずれかで表すことができる。
【0138】
第1の抗原結合ドメイン(ABD)及び第2の抗原結合ドメイン(ABD)を有するポリペプチドの一部の実施形態では、2つのABDの一方は、任意選択により介在アミノ酸を介して、(例えば、完全又は部分的なCH2ドメイン及び完全又は部分的なCH3ドメインを含む)Fcドメインの一端に融合され、2つのABDの他方が、任意選択により介在アミノ酸を介して、Fcドメインの他端に融合される。一部の実施形態では、ABDは、(例えば、完全若しくは部分的なヒンジ領域及び/又は完全若しくは部分的なCH1ドメインを含む)リンカーを介してCH2ドメインに連結される。このようなポリペプチドは、特に、直列型scFvとして構築されると機能的ではないが単一scFv形態では機能的である抗体のVL及びVHドメインを容易に使用できるという利点を有する。このポリペプチドは、以下のいずれか1つのドメイン配置:
(ABD)-CH2-CH3-(ABD
(ABD)-CH2-CH3-(ABD
を含むことができ、ABD及びABDの一方が目的の抗原に結合し、且つ他方がNKp46に結合し、任意選択により、CH1ドメイン及び/又はヒンジドメインが、ABDとCH2との間、又はABDとCH2との間に配置される。任意選択により、各ABDは、VL及びVHドメインを含む。任意選択により、これらの任意のポリペプチドが、可撓性リンカーを介して第1のCH3ドメインのC末端に融合された第2のCH3ドメインを有する。このようなポリペプチドの例は、図6Aの形態1、3、及び4として示されている。
【0139】
ヒトFcドメインの少なくとも一部を有する単量体Fc由来ポリペプチドは、FcγIIIAポリペプチド(CD16)及びCH3ドメインに実質的に結合しないCH2ドメインを有利に含むことができ、前記CH3ドメインは、別のFc由来ポリペプチドとの二量体化を防止するための改変CH3二量体界面(例えば、CH3二量体界面の変異)を含む。
【0140】
本明細書の任意のポリペプチド又は方法の一実施形態では、CH3ドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位(又はY407位)、及び/又はK409位(Kabatと同様のEU付番)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つでアミノ酸置換を含む。
【0141】
単量体多重特異的タンパク質に使用することができるCH3ドメインの別の構成は、直列型CH3ドメインである(例えば、図6Aの形態3及び4を参照されたい)。直列型CH3ドメインは、第1及び第2のCH3ドメインを含み、2つのCH3ドメインは、非共有相互作用を介して互いに結合している。一実施形態では、2つのCH3ドメインは、各CH3ドメインのCH3二量体化界面を介して互いに結合している。一実施形態では、ポリペプチド鎖は、Fcドメインを含む別のポリペプチド鎖と二量体化しない。直列型CH3ドメインを含むFcドメインは、新生児Fc受容体(FcRn)と相互作用するが、ヒトFcγ受容体、特にCD16に対して低い結合性を有する又は結合しない。
【0142】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、第1のCH3ドメインは、リンカーによって第2のCH3ドメインに接続されている。従って、直列型CH3ドメインは、以下のようにN末端からC末端にドメイン配置:
-CH3-リンカー-CH3-
を有するように同じポリペプチド鎖上に配置することができる。
【0143】
リンカーは、可撓性リンカー(例えば、ペプチドリンカー)であり得る。一実施形態では、リンカーにより、CH3ドメインが、非共有相互作用によって互いに結合することができる。一実施形態では、リンカーは、10~50のアミノ酸残基を有するペプチドリンカーである。任意選択により、リンカーは、式(GS)を有する。一実施形態では、xは、2、3、4、5、又は6である。任意の実施形態では、各CH3ドメインは独立に、完全長及び/又はナイーブCH3ドメイン、又は機能的なCH3二量体化界面を維持する断片若しくは改変CH3ドメインである。
【0144】
従って、本発明の単量体タンパク質のドメイン配置の例は、以下のいずれか1つを含む:
(ABD)-CH2-CH3-リンカー-CH3-(ABD
(ABD)-CH2-CH3-リンカー-CH3-(ABD
(ABD)-(ABD)-CH2-CH3-リンカー-CH3
(ABD)-(ABD)-CH2-CH3-リンカー-CH3
CH2-CH3-リンカー-CH3-(ABD)-(ABD
CH2-CH3-リンカー-CH3-(ABD)-(ABD)。
【0145】
多量体タンパク質
多量体二重特異的タンパク質、例えば、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、及び四量体(この四量体は、例えば、2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する抗体を含む)は、様々な形態に従って産生することができる。
【0146】
NKp46抗体の1つの有利な形態では、多量体ポリペプチドは、ヒトFcRnに結合することができ、例えば、完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体(例えば、D16、CD32、及び/又はCD64)に対して低い結合性を有する。2つのABDを含むポリペプチドが多量体である場合、少なくとも部分的なFcRn結合性及び低い又は消失したヒトFcγ受容体結合性を有するFc部分は、本明細書にさらに記載されるように、適切なCH2及び/又はCH3ドメインを使用して得ることができる。一実施形態では、IgG4ベースのFcドメインが、実質的なFcRn結合性を維持するが低いFcγ受容体結合性を有するため、Fc部分は、ヒトIgG4アイソタイプ定常領域に由来する。一実施形態では、Fc部分は、宿主細胞でのポリペプチドの産生によって、又はN297連結グリコシル化を生じさせないプロセス、例えば、細菌細胞によって得ることができる。一実施形態では、Fc部分は、例えば、CH2ドメインに、1つ以上のFcγ受容体への結合性を低下させ、少なくとも部分的なFcRN結合性を維持する1つ以上のアミノ酸改変を含む。
【0147】
一実施形態では、例示的なヘテロ二量体分子は、ドメイン配置:
【化2】
を有することができ、V及びVは、単一可変ドメイン(例えば、Vドメイン、Vドメイン、dAb、V-NARドメイン、又はVHドメイン)であり、V及びVの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。任意選択により、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化を防止するための直列型CH3ドメイン又は改変されたCH3ドメインである。
【0148】
一実施形態では、例示的なヘテロ二量体分子は、ドメイン配置:
【化3】
を有することができ、V及びVは、単一可変ドメイン(例えば、Vドメイン、Vドメイン、dAb、V-NARドメイン、又はVHドメイン)であり、V及びVの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。
【0149】
一実施形態では、例示的なヘテロ二量体分子は、ドメイン配置:
【化4】
を有することができ、V1a、V1b、V2a、及びV2bは、それぞれVドメイン又はVドメインであり、V1a及びV1bの一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、V1aとV1bとが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成し、V2a及びV2bの一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、V2aとV2bとが第2のABDを形成し、ABDの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。任意選択により、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化を防止するための直列型CH3ドメイン又は改変されたCH3ドメインである。Vドメインの各対は、(例えば、scFvを形成するために)リンカーペプチドによって分離することができる。
【0150】
一実施形態では、例示的なヘテロ二量体分子は、ドメイン配置:
【化5】
を有することができ、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2は、それぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1及びVb-1の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成し、Va-2及びVb-2の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメインを形成し、ABDの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。前述の一変異型では、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2のいずれか又はそれぞれは、(2つの可変ドメインから形成された)scFvである。Vドメインの各対は、(例えば、scFvを形成するために)リンカーペプチドによって分離することができる。
【0151】
同様のアプローチでは、三量体を作製することができる。例示的なヘテロ三量体分子は、ドメイン配置:
【化6】
を有することができ、第1/中心鎖と第2鎖とは、CH3-CH3二量体化によって結合し、第1/中心鎖と第3鎖とは、CH1又はCK二量体化によって結合し、第1/中心鎖及び第3鎖のドメインは、第1鎖と第3鎖とがCH1-CK二量体化によって結合できるように相補的となるように選択され、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2は、それぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1及びVb-1の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成し、Va-2及びVb-2の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、従って、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメイン(例えば、Va-2及びVb-2がリンカーによって分離されているscFv)を形成し、ABDの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。任意選択により、CH3ドメインは、アミノ酸置換を含み、抗体Fc領域のCH3ドメイン界面は、Fc二量体界面にわたって変更された電荷極性が生じるように変異され、従って、静電気的に一致したFc鎖の同時発現が有利な引力相互作用を支援し、それにより、所望のFcヘテロ二量体の形成が促進され、不利な反発電荷相互作用が不所望のFcホモ二量体の形成を抑制する。
【0152】
他の態様では、1つ又は2つの鎖がそれぞれCH1-CKヘテロ二量体化によって中心鎖に結合した、間置Fcドメインによって分離された2つのABDを有するヘテロ二量体又はヘテロ三量体ポリペプチドを作製することができる。このような多量体は、異なる抗体特異性の別個の抗原結合ドメインの一部である2つの免疫グロブリン可変ドメインを含む中心(第1)のポリペプチド鎖から構成することができ、Fcドメインが、ポリペプチド鎖上の2つの免疫グロブリン可変ドメイン間に配置され、CH1又はCK定常ドメインが、可変ドメインに隣接したポリペプチド鎖上に配置される。
【0153】
第1(中心)のポリペプチド鎖は、第2のポリペプチド鎖上の相補的な可変ドメインと共に、目的の1つの(例えば、第1の)抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する1つの可変ドメインを提供する。第1(中心)のポリペプチド鎖はまた、相補的な可変ドメインと対を形成して目的の別の(例えば、第2の)抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する(間置Fcドメインの反対側の端部に位置する)第2の可変ドメインを提供し、第2の可変ドメインに相補的な可変ドメインは、(例えば、直列型可変ドメイン構築物、例えば、scFvの第2の可変ドメインに隣接した)中心ポリペプチド上に配置することができる、又は別個のポリペプチド鎖、特に第3のポリペプチド鎖上に配置することができる。第2(及び第3(存在する場合))のポリペプチド鎖は、CH1-CKヘテロ二量体化によって中心ポリペプチド鎖に結合し、それぞれのヒンジドメイン間及び相補的なCH1ドメインとCKドメインとの間に鎖間ジスルフィド結合を形成し、CH/CK及びVH/VKドメインが、優先的に所望のVH-VL対形成をもたらす好ましい二量体化構造を生じさせるように選択される限り、一次多量体ポリペプチドが形成される。残りの不所望の対形成は、産生中に最小限に維持することができ、精製ステップ中に除去することができる。三量体では、又はポリペプチドが三量体の調製のために作製される場合、一般に、天然に存在しないVH-CK又はVK-CH1ドメイン配置を含む1つのポリペプチド鎖が必要であろう。
【0154】
このようなヘテロ二量体タンパク質に使用される中心ポリペプチド鎖のドメイン配置(N末端からC末端)の例としては、
a-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-Vb-2、及び
a-2-Vb-2-Fcドメイン-Va-1-(CH1又はCK)
が挙げられ、Va-1は、軽鎖又は重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0155】
さらなる例としては、
a-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-V、及び
-Fcドメイン-Va-1-(CH1又はCK)
が挙げられ、Vは、単一可変ドメイン(例えば、dAb、VhH)である。
【0156】
中心鎖のFcドメインは、所望の機能(例えば、FcRn結合性)を付与するのに十分な完全なFcドメイン(CH2-CH3)又はその一部であり得る。次いで、第2のポリペプチド鎖が作製され、この第2のポリペプチド鎖は、免疫グロブリン可変ドメイン、及びCH1-CKの中心ポリペプチド鎖とのヘテロ二量体化を可能にするように選択されたCH1又はCK定常領域、例えば、(CH1又はCK)単位を含み、この免疫グロブリン可変ドメインは、CH1又はCKドメインに隣接した中心鎖の可変ドメインを補完し、それにより、相補的な可変ドメインが、目的の第1の抗原の抗原結合ドメインを形成するように選択される。
【0157】
例えば、第2のポリペプチド鎖は、ドメイン配置:
b-1-(CH1又はCK)、又は
b-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)と二量体化し、Vb-1が中心鎖のVa-1と共に抗原結合ドメインを形成する。中心鎖のVa-1が軽鎖可変ドメインである場合、Vb-1は重鎖可変ドメインであり、中心鎖のVa-1が重鎖可変ドメインである場合、Vb-1は軽鎖可変ドメインである。
【0158】
次いで、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを、目的の第2の抗原の抗原結合ドメインを形成する中心鎖の直列型可変ドメイン(例えば、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖(κ)可変ドメイン(VK)であり、例えば、scFv単位を形成する)として構成されたVa-2及びVb-2から形成することができる。目的の第2の抗原の抗原結合ドメインは、別法では、中心鎖に存在する単一可変ドメインVから形成することもできる。
【0159】
得られるヘテロ二量体は、例えば、以下の構成を有することができる(図6A及び図6Cに形態2、11、及び12として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化7】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa-1及び第2のポリペプチド鎖のVb-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0160】
得られるヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(図6Bに形態10として示されているこのようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化8】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa-1及び第2のポリペプチド鎖のVb-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0161】
得られるヘテロ二量体は、別の例では、以下の構成を有することができる(図6D及び図6Eに形態13及び14として示されているようなタンパク質の例も参照されたい)。
【化9】
ここで、第1のポリペプチド鎖のVa-1及び第2のポリペプチド鎖のVb-1の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインであり、Va-2及びVb-2の一方は軽鎖可変ドメインであり、且つ他方は重鎖可変ドメインである。
【0162】
一実施形態では、ヘテロ二量体二重特異的Fc由来ポリペプチドは、以下の1つのドメイン配置を含み、任意選択により、一方又は両方のヒンジドメインがペプチドリンカーによって置き換えられ、任意選択により、Fcドメインがペプチドリンカーを介して抗NKp46 scFvに融合される。
【化10】
【0163】
形成されるヘテロ二量体ポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下の表のドメイン配置が挙げられる。
【0164】
【表1】
【0165】
ヘテロ三量体タンパク質は、例えば、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部(即ち、Fcドメインは、第1及び第2のV-(CH1/CK)単位間に配置されている)を含む中心(第1)のポリペプチド鎖を使用することによって形成することができる。例えば、ヘテロ三量体タンパク質に使用される中心のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)以下のドメイン配置を有することができる:
a-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン-Va-2-(CH1又はCK)
【0166】
次いで、第2のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
b-1-(CH1又はCK)、又は
b-1-(CH1又はCK)-Fcドメイン
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)と二量体化し、Va-1とVb-1とが抗原結合ドメインを形成する。
【0167】
次いで、第3のポリペプチド鎖は、(N末端からC末端に)ドメイン配置:
b-2-(CH1又はCK)
を含むことができ、それにより、(CH1又はCK)が中心鎖の(CH1又はCK)単位と二量体化し、Va-2とVb-2とが抗原結合ドメインを形成する。
【0168】
二量体Fcドメイン(図6D及び図6Eにも形態5、6、7、及び16として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化11】
を有する。
【0169】
単量体Fcドメイン(図6B及び図6Cにも形態8、9、及び17として示されている)を有する、得られるヘテロ三量体の構成の一例は、ドメイン配置:
【化12】
を有する。
【0170】
従って、三量体ポリペプチドの構成では、第1のポリペプチドは、別個のポリペプチド鎖の可変ドメイン(即ち、第2鎖及び第3鎖の可変ドメイン)を有する抗原結合ドメインをそれぞれ形成する2つの可変ドメインを有することができ、第2のポリペプチド鎖は、1つの可変ドメインを有し、第3のポリペプチドは、1つの可変ドメインを有する。
【0171】
三量体ポリペプチドは、
(a)第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン(V)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む、第1のポリペプチド鎖、
(b)第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメイン、及び任意選択によりFcドメインを含む、第2のポリペプチド鎖、及び
(c)CH1又はCK定常領域に(例えば、そのC末端で)融合された可変ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖であって、この可変ドメイン及び定常領域が、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、それにより、第1及び第3のポリペプチドが、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第1のCH1又はCK定常領域との間ではなく、第3のポリペプチドのCH1又はCK定常領域と第1のポリペプチドの第2のCH1又はCK定常領域との間に形成されたジスルフィド結合によって結合されたCH1-CKヘテロ二量体を形成する、第3のポリペプチド鎖
を含み、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドと第3のポリペプチドとがCH1-CKヘテロ三量体を形成し、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第1の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成し、且つ第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインと第3のポリペプチド鎖の可変ドメインとが、目的の第2の抗原に特異的な抗原結合ドメインを形成する。
【0172】
形成される三量体二重特異的ポリペプチドのドメイン配置の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0173】
【表2】
【0174】
任意のドメイン配置では、Fcドメインは、CH2-CH3単位(完全長CH2及びCH3ドメイン又はその断片)を含み得る。Fcドメイン(二量体Fcドメイン)を有する2つの鎖を含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、CH3ドメインは、CH3-CH3二量体化が可能である(例えば、野生型CH3ドメイン)。Fcドメイン(単量体Fcドメイン)を有する1つの鎖のみを含むヘテロ二量体又はヘテロ三量体では、Fcドメインは、CH3-CH3二量体化が不可能であり、例えば、CH3ドメインが、CH3二量体界面にアミノ酸改変を有する、又はFcドメインが、CH3-CH3二量体化が不可能な直列型CH3ドメインを含む。本明細書の任意の態様の一実施形態では、第1のCH3ドメインは、リンカーによって第2のCH3ドメインに接続されている。直列型CH3ドメインは、以下のように、N末端からC末端にドメイン配置を有することができる:
-CH3-リンカー-CH3-。
【0175】
直列型CH3ドメインのリンカーは、可撓性リンカー(例えば、ペプチドリンカー)であり得る。一実施形態では、リンカーは、非共有相互作用によるCH3ドメインの互いの結合を可能にする。一実施形態では、リンカーは、10~50のアミノ酸残基を有するペプチドリンカーである。一実施形態では、リンカーは、式(GS)を有する。任意選択により、xは、2、3、4、5、又は6である。任意の実施形態では、各CH3ドメインは、独立に、完全長及び/若しくはナイーブCH3ドメイン、又は機能的なCH3二量体化界面を維持する断片又は改変CH3ドメインである。
【0176】
一部の例示的な構成では、多特異タンパク質は、四量体、例えば、2つの重鎖及び2つの軽鎖を有する四量体であり得る。一部の実施形態では、「Fab-exchange」アプローチが使用され、このアプローチでは、異なる抗体の重鎖及び付着した軽鎖が2つのIgG4抗体間又は2つのIgG4様抗体間で交換される。例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2008/119353号パンフレット及び同第2011/131746号パンフレットを参照されたい。一部の実施形態では、「knob-into-holes」アプローチが使用され、このアプローチでは、抗体Fc領域のCH3ドメイン界面が、抗体がヘテロ二量体(付着した軽鎖をさらに含む)を優先的に形成するように変異される。これらの変異は、Fc二量体界面にわたる電荷極性の変化を生じさせ、従って、静電気的に一致したFc鎖の同時発現が有利な引力相互作用を支援し、それにより、所望のFcヘテロ二量体の形成が促進され、不利な反発電荷相互作用が不所望のFcホモ二量体の形成を抑制する。例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2009/089004号パンフレットを参照されたい。このようなヘテロ多量体抗体が、ヒトIgG4 Fc領域に由来するFc領域を有する場合、抗体は、実質的なFcRn結合性を維持するが、低いFcγ受容体結合性を有する。一実施形態では、抗体は、残基N297(Kabat EU付番)におけるN連結グリコシル化を欠いている。
【0177】
一部の実施形態では、ABDの一方がCH1ドメインに連結され(例えば、CH1ドメインに連結された可変領域を含み)、ABDの他方が相補的なCκ(又はCλ)定常ドメインに連結され(例えば、Cκ(又はCλ)定常ドメインに連結された可変領域を含み)、CH1及びCκ(又はCλ)定常ドメインが結合してヘテロ二量体分子を形成する。例えば、第1及び第2のABDは、有利には、異なる抗原結合特異性(例えば、VhH及びVhH)を有する単一可変ドメイン(例えば、VhHドメイン)であり得る。VhHは、CH1ドメインに融合することができ、VhHは、Cκ又はCλドメインに融合することができる。V-Cκ(又はCλ)鎖は、Fabが形成されるようにV-CH1鎖と結合する。Fcドメインを含まないこのような抗体の例については、例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2006/064136号パンフレット及び同第2012/089814号パンフレットを参照されたい。次いで、CH1及び/又はCκドメインを、任意選択によりヒンジ領域(又は、例えば同様の機能的特性を有する、リンカーペプチド)を介して、CH2ドメインに連結することができる。次いで、CH2ドメインがCH3ドメインに連結される。従って、CH2-CH3ドメインは、任意選択により完全長Fcドメインとして実施することができる。
【0178】
一部の実施形態では、このタンパク質は、異なる親抗体からの2つの軽鎖及び重鎖の対を含む四量体抗体であり、抗体がヘテロ二量体を優先的に形成するように改変CH3ドメイン界面を含み、任意選択によりさらに、Fcドメインが、ヒトIgG4 Fcドメイン又はその一部であり、任意選択により1つ以上のアミノ酸改変を含む。
【0179】
一実施形態では、四量体タンパク質は、CH3-CH3二量体化及び/又はヒンジ二量体化により二量体を形成する2つのFc含有鎖(例えば、第1鎖及び第2鎖)、並びに2つのFc含有鎖の一方と二量体化するV-CH/CK単位をそれぞれ含む2つのさらなる鎖(例えば、第3鎖及び第4鎖)をベースとする。例えば、このような例示的な四量体分子は、ドメイン配置:
【化13】
を有することができ、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2は、それぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成するように、Va-1及びVb-1の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメインを形成するように、Va-2及びVb-2の一方はVHであり、且つ他方はVLである。CH1及びCKは、第3鎖が第1鎖と、第4鎖が第2鎖と結合できるように選択される。
【0180】
例えば、このような例示的な四量体分子は、ドメイン配置:
【化14】
を有することができ、Va-1、Vb-1、Va-2、及びVb-2は、それぞれVドメイン又はVドメインであり、Va-1とVb-1とが第1の抗原結合ドメイン(ABD)を形成するように、Va-1及びVb-1の一方はVHであり、且つ他方はVLであり、Va-2とVb-2とが第2の抗原結合ドメインを形成するように、Va-2及びVb-2の一方はVHであり、且つ他方はVLである。CH1及びCKは、第3鎖が第1鎖と、第4鎖が第2鎖と結合できるように選択される。
【0181】
本開示の任意のタンパク質では、ヒンジ領域は、典型的には、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のポリペプチド鎖に存在し、且つ/又はCKドメインとCH2ドメインとの間に存在し得る。ヒンジ領域は、任意選択により、例えば、適切なリンカーペプチドによって置き換えることができる。
【0182】
本開示で記載されるタンパク質ドメインは、任意選択により、N末端からC末端であると指定することができる。例示のための開示のタンパク質の配置は、N末端(左側)からC末端へと示されている。ドメインは、互いに融合されていると言える(例えば、ドメインは、その左側のドメインのC末端に融合されていると言え、且つ/又はドメインは、その右側のドメインのN末端に融合されていると言える)。
【0183】
本開示に記載されるタンパク質ドメインは、直接又は介在アミノ酸配列を介して互いに融合することができる。例えば、CH1又はCKドメインは、リンカーペプチド、任意選択によりヒンジ領域又はその断片を介してFcドメイン(又はそのCH2若しくはCH3ドメイン)に融合される。別の例では、VH又はVKドメインは、リンカーペプチドを介してCH3ドメインに融合される。直列型に互いに連結されたVH及びVLドメインは、(例えば、scFvのように)リンカーペプチドを介して融合される。Fcドメインに連結されたVH及びVLドメインは、リンカーペプチドを介して融合される。2つのポリペプチド鎖は、好ましくは相補的なCH1及びCKドメイン内のシステイン残基間に形成される鎖間ジスルフィド結合によって、互いに結合される(「|」によって示される)。
【0184】
可変ドメインのリンカー
一実施形態では、ABD(例えば、scFv、VH又はVLドメイン)のCH2又はCH3への連結に使用されるペプチドリンカーは、CH1ドメインの断片を含む。例えば、CH1のN末端アミノ酸配列は、抗体の天然の構造を可能な限り模倣するために、ABD(例えば、scFv、VH又はVLドメインなど)に融合することができる。一実施形態では、リンカーは、2~4の残基、2~4の残基、2~6の残基、2~8の残基、2~10の残基、2~12の残基、2~14の残基、2~16の残基、2~18の残基、2~20の残基、2~22の残基、2~24の残基、2~26の残基、2~28の残基、又は2~30の残基のN末端CH1アミノ酸配列を含み得る。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列RTVAを含む、又はアミノ酸配列RTVAからなる。
【0185】
ABDがscFvである場合、scFvを形成するVHドメイン及びVLドメイン(VL又はVHドメイン、又は結合特異性を維持したその断片)は、ABDが結合する予定の抗原への結合を可能にするようにABDを折り畳むことができる十分な長さのリンカーによって互いに連結される。リンカーの例としては、例えば、グリシン及びセリン残基、例えば、アミノ酸配列GEGTSTGS(GS)GGADを含むリンカーが挙げられる。別の特定の実施形態では、scFvのVHドメイン及びVLドメインは、アミノ酸配列(GS)によって互いに連結される。
【0186】
任意のペプチドリンカーは、少なくとも5残基、少なくとも10残基、少なくとも15残基、少なくとも20基、少なくとも25残基、少なくとも30残基以上の長さを含み得る。他の実施形態では、リンカーは、2~4の残基、2~4の残基、2~6の残基、2~8の残基、2~10の残基、2~12の残基、2~14の残基、2~16の残基、2~18の残基、2~20の残基、2~22の残基、2~24の残基、2~26の残基、2~28の残基、又は2~30の残基の長さを含む。
【0187】
一実施形態では、ヒンジ領域は、ヒンジ領域の断片(例えば、システイン残基を含まない切断ヒンジ領域)であるか、又はシステイン残基、任意選択によりヒンジ領域中の両方のシステイン残基を(例えば、別のアミノ酸による置換、又は欠失により)除去するために1つ以上のアミノ酸改変を含み得る。システインの除去は、単量体ポリペプチドのジスルフィド架橋の形成を防止するのに有用であり得る。
【0188】
定常領域
定常領域ドメインは、任意の適切な抗体から得ることができる。特に興味深いのは、定常重(CH)ドメイン及びヒンジドメインを含む重鎖ドメインである。IgG抗体との関連では、IgGアイソタイプは、それぞれ3つのCH領域を有する。従って、IgGとの関連での「CH」ドメインは、次の通りである:「CH1」は、Kabatと同様のEUインデックスによると118~220位を指す。「CH2」は、Kabatと同様のEUインデックスによると237~340位を指す。「CH3」は、Kabatと同様のEUインデックスによると341~447位を指す。「ヒンジ」、「ヒンジ領域」、又は「抗体ヒンジ領域」とは、抗体における第1及び第2の定常ドメイン間のアミノ酸を含む可撓性ポリペプチドのことである。構造的に、IgG Ch1ドメインは、EU220位で終端し、IgG CH2ドメインは、EU237位の残基で始まる。従って、IgGでは、ヒンジは、本明細書では、221位(IgG1のD221)~236位(IgG1のG236)を含むように定義され、付番は、Kabatと同様のEUインデックスに従った。ポリペプチド内に見られる定常領域ドメイン内のアミノ酸残基について言及する場合、特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、IgG抗体との関連で、Kabatに準拠するものとする。
【0189】
本抗体に役立ち得るCH3ドメインは、任意の適切な抗体から得ることができる。このようなCH3ドメインは、改変CH3ドメインの基準として役立ち得る。任意選択により、CH3ドメインはヒト起源である。
【0190】
(例えば、単量体Fcドメインを含む単量体、二量体、又は三量体二重特異的抗体の)本明細書の特定の実施形態では、CH3ドメインは、CH3二量体化界面を妨害するために1つ以上のアミノ酸改変(例えば、アミノ酸置換)を含み得る。任意選択により、CH3ドメインの改変は、CH2-CH3ドメインが単量体型である場合に疎水性残基の露出によって引き起こされるタンパク質の凝集を防止する。任意選択により、CH3ドメインの改変は、Fc由来ポリペプチドの新生児Fc受容体(FcRn)、例えば、ヒトFcRnに結合する能力をさらに消失させるものではない。
【0191】
ホモ二量体の形成を防止するために使用することができるCH3ドメインは、様々な刊行物に記載されている。例えば、参照によりそれぞれの開示内容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2006/0074225号明細書、国際公開第2006/031994号パンフレット、同第2011/063348号パンフレット、及びYing et al.(2012)J.Biol.Chem.287(23):19399-19407を参照されたい。ホモ二量体の形成を抑制するために、CH3-CH3界面を構成する1つ以上の残基が、相互作用が静電気的に不利になるように荷電アミノ酸で置換される。例えば、国際公開第2011/063348号パンフレットには、界面における正に荷電したアミノ酸、例えば、リジン、アルギニン、又はヒスチジンが、異なるアミノ酸(例えば、負に荷電したアミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)で置換され、且つ/又は界面における負に荷電したアミノ酸が、異なる(例えば、正に荷電した)アミノ酸で置換されることが記載されている。一例としてヒトIgGを使用すると、反対の電荷に荷電することができる界面内の荷電残基は、R355、D356、E357、K370、K392、D399、K409、及びK439を含む。特定の実施形態では、界面内の2つ以上の荷電残基が反対の電荷に荷電される。例示的な分子としては、K392D及びK409D変異を含む分子、並びにD399K及びD356K変異を含む分子が挙げられる。単量体型のポリペプチドの安定性を維持するために、CH3-CH3界面を構成する1つ以上の大きい疎水性残基が小さい極性アミノ酸で置換される。一例としてヒトIgGを使用すると、CH3-CH3界面の大きい疎水生残基は、Y349、L351、L368、L398、V397、F405、及びY407を含む。小さい極性アミノ酸残基は、アスパラギン、システイン、グルタミン、セリン、及びトレオニンを含む。従って、一実施形態では、CH3ドメインは、R355位、D356位、E357位、K370位、K392位、D399位、K409位、及びK439位の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つでアミノ酸改変(例えば、置換)を含む。国際公開第2011/063348号パンフレットでは、CH3ドメイン界面に密接して位置する2つの正に荷電したLys残基がAspに変異された。次いで、トレオニンスキャニング突然変異誘発が、これらの2つのLysからAspへの変異の背景において構造的に保存された大きい疎水性残基に対して行われた。トレオニンでの様々な置換と共にK392D及びK409D変異を含むFc分子が、単量体形成について分析された。例示的な単量体Fc分子は、K392D、K409D、及びY349T置換を有する単量体Fc分子、並びにK392D、K409D、及びF405T置換を有する単量体Fc分子を含む。
【0192】
Ying et al.(2012)J.Biol.Chem.287(23):19399-19407では、CH3ドメイン内の残基L351、T366、L368、P395、F405、T407、及びK409でアミノ酸が置換された。異なる変異の組み合わせにより、タンパク質の凝集が起きることなく、CH3二量体化界面の破壊が起きた。従って、一実施形態では、CH3ドメインは、L351位、T366位、L368位、P395位、F405位、T407位、及び/又はK409位の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つでのアミノ酸改変(例えば、置換)を含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351Y、T366Y、L368A、P395R、F405R、T407M、及びK409Aを含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351S、T366R、L368H、P395K、F405E、T407K、及びK409Aを含む。一実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸改変L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含む。
【0193】
一実施形態では、ホモ二量体の形成を防止するための改変されたCH3ドメインを含むCH2-CH3部分は、配列番号2のアミノ酸配列、又は配列番号2と少なくとも90%、95%、若しくは98%同一の配列を含み:
【化15】
任意選択により、配列番号2の残基121、136、165、175、177、又は179の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つの置換を含む。
【0194】
本明細書の特定の実施形態では、単量体Fcドメインを有する単量体、二量体、又は三量体二重特異的抗体では、Fcドメインは、直列型CH3ドメインを含む。直列型CH3ドメインは、リンカーを介して第2のCH3ドメインに接続された第1のCH3ドメインを含む。従って、直列型CH3ドメインは、N末端からC末端に以下のドメイン配置:
-CH3-リンカー-CH3-
を有するようにポリペプチド鎖に配置することができる。
【0195】
リンカーは、可撓性リンカー(例えば、ペプチドリンカー)である。一実施形態では、リンカーは、非共有相互作用によってCH3ドメインの互いに対する結合を可能にする。一実施形態では、リンカーは、10~50のアミノ酸残基を有するペプチドリンカーである。一実施形態では、リンカーは、式(GS)を有する。任意選択により、xは、2、3、4、5、又は6である。任意の実施形態では、各CH3ドメインは、独立に、完全長及び/又はナイーブCH3ドメイン、又は機能的なCH3二量体化界面を維持する断片若しくは改変CH3ドメインである。
【0196】
可撓性ペプチドリンカー(下線が引かれている)を有する例示的な直立型CH3が以下に示されている。従って、例示的な直列型CH3ドメインは、配列番号112のアミノ酸配列、又は配列番号112と少なくとも70%、80%、90%、95%、若しくは98%同一の配列を含み得る。
【化16】
【0197】
CH2ドメインは、任意の適切な抗体から容易に得ることができる。任意選択により、CH2ドメインはヒト起源である。CH2は、ヒンジ又はリンカーアミノ酸配列に(例えば、そのN末端で)連結されてもよく、又は連結されなくてもよい。一実施形態では、CH2ドメインは、天然に存在するIgG1、2、3、4、又は4サブクラスのヒトCH2ドメインである。一実施形態では、CH2ドメインは、CH2ドメインの断片(例えば、少なくとも10、20、30、40、又は50のアミノ酸)である。
【0198】
一実施形態では、CH2ドメインは、本明細書に記載のポリペプチドに存在する場合、新生児Fc受容体(FcRn)、特にヒトFcRnに対する結合性を維持する。
【0199】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドに存在する場合のCH2ドメイン、及び本明細書に記載のポリペプチドは、Fcγ受容体、特にFcγRIIIA(CD16)に対して結合しにくくするか、又は全く結合しないようにする。
【0200】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド並びにそのFcドメイン及び/又はそのCH2ドメインは、低下した抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、FcR媒介細胞活性化(例えば、FcR架橋によるサイトカインの放出)、及び/又はNKp46陰性免疫細胞によって媒介されるFcR媒介血小板活性化/減少を有するか、又はそれらを実質的に欠いている。
【0201】
一実施形態では、ポリペプチド内のCH2ドメインは、活性化Fcγ受容体、例えば、FcγRIIIA(CD16)、FcγRIIA(CD32A)、若しくはCD64に対する結合性、又は抑制性Fc受容体、例えば、FcγRIIB(CD32B)に対する結合性が実質的に消失する。一実施形態では、ポリペプチドのCH2ドメインはさらに、補体(C1q)の第1の成分に対する結合性が実質的に消失する。
【0202】
本明細書に記載の例示的な多重特異的タンパク質は、単量体Fcドメインの野生型CH2ドメイン、又は二量体Fcドメインタンパク質の残基N297(Kabat付番)でのCH2変異を利用する。しかしながら、当業者であれば、他の構成も実施できることを理解されよう。例えば、233~236位でのヒトIgG1又はIgG2残基の置換、並びに327位、330位、及び331位でのIgG4残基の置換は、Fcγ受容体に対する結合性、従ってADCC及びCDCを大幅に低下させることを示した。さらに、Idusogie et al.(2000)J Immunol.164(8):4178-84は、K322を含む異なる位置でのアラニン置換が補体の活性化を著しく低下させることを実証した。
【0203】
一実施形態では、FcRn受容体に対する結合性は維持するが、Fcγ受容体に対する結合性の減少を有するCH2ドメインは、例えば残基N297(Kabat EU)でのN連結グリコシル化を欠いているか、又は改変されたN連結グリコシル化を有する。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドのFc領域に結合するNアセチルグルコサミンへのフコシルの付加について高い酵素活性を自然に有するか、又はN297でグリコシル化が起きない細胞株(例えば、細菌宿主細胞)で発現される。別の実施形態では、ポリペプチドは、残基297~299での正準Asn-X-Ser/Thr N連結グリコシル化モチーフの欠如を引き起こし、従ってFcγ受容体に対する結合性も低下させ得る1つ以上の置換を有し得る。従って、CH2ドメインは、N297及び/又は隣接残基(例えば、298、299)に置換を有し得る。
【0204】
一実施形態では、Fcドメイン又はそのCH2ドメインは、FcyR結合能の低下を示すが、FcRn結合性を維持したIgG1、IgG3,IgG4、又はIgG2 Fc変異に由来する。一態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド、Fcドメイン、又はCH2ドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、P238Sを含む。別の態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド又はFcドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、H268Q、又はH268A、V309L、A330S、P331Sを含む。特定の態様では、IgG2 Fc変異若しくは誘導多重特異的ポリペプチド又はFcドメインは、EU付番方式による変異V234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、P331S、及び任意選択によりP233Sを含む。任意選択により、Fcγ受容体に対する結合性が消失したCH2ドメインは、PAAAP、PAAAS、及びSAAASから選択されるn個のアミノ酸配列を含む残基233、234、235、237、及び238(EU付番方式)を含み得、任意選択により、このような変異を有するFcドメインは、変異H268A又はH268Q、V309L、A330S、及びP331Sをさらに含み得る(参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第2011/066501号パンフレットを参照されたい)。
【0205】
一実施形態では、Fcγ受容体に対する結合性を消失したCH2ドメインは、任意選択によりさらに他のドメイン(例えば、ヒンジドメイン又はCH3ドメイン)の1つ以上のアミノ酸改変と組み合わせて、Fc領域のCH2ドメインに少なくとも1つのアミノ酸改変を含む(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸改変を有する)。Fc改変の任意の組み合わせは、例えば、Armour KL.et al.,(1999)Eur J Immunol.29(8):2613-24;Presta,L.G.et al.(2002)Biochem.Soc.Trans.30(4):487-490;Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.26;277(30):26733-26740 and Shields,R.L.et al.(2001)J.Biol.Chem.276(9):6591-6604)に開示されている異なる改変の任意の組み合わせで行うことができる。一実施形態では、ヒトFcγ受容体に対する低い結合性を有する本発明のポリペプチドは、アミノ酸残基237~340(EU付番)内の野生型CH2ドメインに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸改変を有し)、このようなCH2ドメインを含むポリペプチドは、野生型CH2ドメインを含む同等のポリペプチドと比較して、目的のヒトFcγ受容体に対して低い親和性を有し、任意選択により、変異型CH2ドメインは、233位、234位、235位、236位、237位、238位、268位、297位、238位、299位、309位、327位、330位、331位(EU付番)のいずれか1つ以上に置換を含む。
【0206】
CDR配列及びエピトープ
一実施形態では、本明細書のタンパク質及び抗体は、配列番号1のNKp46ポリペプチドのNKp46のD1ドメイン、NKp46のD2ドメイン、又は(D1とD2ドメインの境界、D1/D2接合部において)D1及びD2ドメインの両方に跨る領域に結合する。一実施形態では、タンパク質又は抗体は、10-8M未満、10-9M未満、又は10-10M未満のKによって特徴付けられるヒトNKp46に対する親和性を有する。
【0207】
別の実施形態では、この抗体は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-と実質的に同じNKp46上のエピトープでNKp46に結合する。別の実施形態では、この抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46によって結合されたセグメントの少なくとも1つの残基と少なくとも部分的に重複するか、又はこの少なくとも1つの残基を含む。一実施形態では、エピトープの全ての重要な残基は、ドメインD1又はD2に対応するセグメント内にある。一実施形態では、この抗体は、D1ドメイン内に存在する残基及びD2ドメイン内に存在する残基に結合する。一実施形態では、抗体は、配列番号1のNKp46ポリペプチドのドメインD1又はD2に対応するセグメント内の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ以上の残基を含むエピトープに結合する。一実施形態では、抗体は、ドメインD1に結合し、且つ残基R101、V102、E104、及び/又はL105の1つ、2つ、3つ、又は4つを含むエピトープに結合する。
【0208】
一実施形態では、抗体は、ドメインD1/D2接合部に結合し、且つ残基K41、E42、E119、Y121、及び/又はY194の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つを含むエピトープに結合する。
【0209】
一実施形態では、抗体は、ドメインD2に結合し、且つ残基P132、E133、I135、及び/又はS136の1つ、2つ、3つ、又は4つを含むエピトープに結合する。
【0210】
本明細書の実施例のセクションに、一連の変異ヒトNKp46ポリペプチドの構築が記載される。NKp46変異体でトランスフェクトされた細胞への抗NKp46抗体の結合を測定し、野生型NKp46ポリペプチド(配列番号1)に結合する抗NKp46抗体の能力と比較した。本明細書で使用される抗NKp46抗体と変異NKp46ポリペプチドとの間の結合の低下は、抗NKp46抗体の結合親和性の低下(例えば、公知の方法、例えば、特定の変異体を発現する細胞のFACS試験によって、又は変異ポリペプチドへの結合性のBiacore試験によって測定される)、及び/又は抗NKp46抗体の総結合能の低下(例えば、抗NKp46抗体濃度のポリペプチド濃度に対するプロットにおけるBmaxの減少によって裏付けられる)が存在することを意味する。結合性の著しい低下は、変異残基が抗NKp46抗体に対する結合性に直接関与しているか、又は抗NKp46抗体がNKp46に結合するときに結合タンパク質に非常に近接していることを示唆する。従って、抗体エピトープは、好ましくはこのような残基を含み、且つこのような残基に隣接した追加の残基を含み得る。
【0211】
一部の実施形態では、結合性の著しい低下は、抗NKp46抗体と変異NKp46ポリペプチドとの間の結合親和性及び/又は結合能が、この抗体と野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1に示されているポリペプチド)との間の結合性に対して、40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、又は95%超低下していることを意味する。特定の実施形態では、結合性は、検出限界未満に低下する。一部の実施形態では、結合性の著しい低下は、抗NKp46抗体の変異NKp46ポリペプチドに対する結合性が、抗NKp46抗体と野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1に示されているポリペプチド(又はその細胞外ドメイン))との間で観察される結合性の50%未満(例えば、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、又は10%未満)であるときに立証される。このような結合性の測定は、当技術分野で公知の様々な結合アッセイを用いて行うことができる。1つのこのようなアッセイの特定の例が、実施例のセクションに記載される。
【0212】
一部の実施形態では、野生型NKp46ポリペプチド(例えば、配列番号1)の残基が置換されている変異NKp46ポリペプチドに対する著しい結合性の低下を示す抗NKp46抗体が提供される。本明細書で使用される略語では、その形式は、配列番号1に示されている残基の番号が付された野生型残基:ポリペプチドの位置:変異残基である。
【0213】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、(配列番号1における)残基R101、V102、E104、及び/又はL105のいずれか1つ以上に変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0214】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、(配列番号1における)残基K41、E42、E119、Y121、及び/又はY194のいずれか1つ以上に変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0215】
一部の実施形態では、抗NKp46抗体は、野生型NKp46ポリペプチドに結合するが、野生型NKp46に対する結合性と比較して、(配列番号1における)残基P132、E133、I135、及び/又はS136のいずれか1つ以上に変異(例えば、アラニン置換)を有する変異NKp46ポリペプチドに対して低い結合性を有する。
【0216】
抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、及びNKp46-9の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ本明細書の表Bに列記され(配列番号:3、5、7、9、11、及び13)、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、及びNKp46-9の軽鎖可変領域のアミノ酸配列もそれぞれ本明細書の表Bに列記されている(配列番号:4、6、8、10、12、及び14)。
【0217】
特定の一実施形態では、モノクローナル抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9と本質的に同じエピトープ又は決定基に結合する、二重特異的単量体ポリペプチドを含む抗体、例えば、完全長単一特異的抗体、多重特異的又は二重特異的抗体が提供され、任意選択により、この抗体は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の超可変領域を含む。本明細書の任意の実施形態では、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9は、そのアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸配列によって特徴付けることができる。一実施形態では、この抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9のFab又はF(ab’)2部分を含む。また、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖可変領域を含む抗体も提供される。一実施形態によると、抗体は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。また、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9の軽鎖可変領域のCDRの1つ、2つ、又は3つをさらに含むポリペプチドも提供される。任意選択により、前記軽鎖又は重鎖CDRのいずれか1つ以上は、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のアミノ酸改変(例えば、置換、挿入、若しくは欠失)を含み得る。任意選択により、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、若しくはNKp46-9の抗原結合領域の一部若しくは全てを含む軽鎖及び/又は重鎖可変領域のいずれかがヒトIgG型の免疫グロブリン定常領域に融合されたポリペプチドが提供される。
【0218】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば、抗体、完全長単一特異的抗体、多重特異的若しくは二重特異的タンパク質、又はポリペプチド鎖若しくはその断片、並びにこれらのいずれかをコードする核酸を提供し、このタンパク質は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖CDRを含み、それぞれの抗体が、表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むHCDR1領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって置換することができる、HCDR1領域;表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むHCDR2領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって置換することができる、HCDR2領域;表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むHCDR3領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって置換することができる、HCDR3領域を含む。
【0219】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば、抗体、完全長単一特異的抗体、多重特異的若しくは二重特異的タンパク質、又はポリペプチド鎖若しくはその断片、並びにこれらのいずれかをコードする核酸を提供し、このタンパク質は、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の軽鎖CDRを含み、それぞれの抗体が、表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むLCDR1領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって置換することができる、LCDR1領域;表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むLCDR2領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって置換することができる、LCDR2領域;表Aに示されているアミノ酸配列、又は少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸の配列を含むLCDR3領域であって、これらのアミノ酸の1つ以上を異なるアミノ酸によって欠失させる又は置換することができる、LCDR3領域を含む。
【0220】
別の態様では、本発明は、ヒトNKp46に結合するタンパク質を提供し、このタンパク質は、
(a)任意選択により1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Bに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖可変領域、
(b)任意選択により1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Bに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の軽鎖可変領域、
(c)任意選択により1つ以上のこれらのアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Bに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖可変領域、及び任意選択により1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Bに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9のそれぞれの軽鎖可変領域、
(d)任意選択によりCDRの1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Aに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖CDR1、2、及び3(HCDR1、HCDR2)アミノ酸配列、
(e)任意選択によりCDRの1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Aに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の軽鎖CDR1、2、及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列、又は
(f)任意選択によりCDRの1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Aに示されているNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9の重鎖CDR1、2、及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列、並びに任意選択によりCDRの1つ、2つ、又は3つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸によって置換することができる、表Aに示されているそれぞれのNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、又はNKp46-9抗体の軽鎖CDR1、2、及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列
を含む。
【0221】
一実施形態では、上述のCDRは、例えば、表1に示されているようにKabatに従っている。一実施形態では、上述のCDRは、例えば、表Aに示されているようにChotia付番に従っている。一実施形態では、上述のCDRは、例えば、表Aに示されているようにIMGT付番に従っている。
【0222】
本明細書の任意の実施形態の別の態様では、重鎖及び軽鎖の任意のCDR1、2、及び3は、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、若しくは10の連続したそのアミノ酸配列によって、並びに/又は対応する配列番号若しくは表Aに列記されている特定のCDR若しくは一連のCDRと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、若しくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有することによって特徴付けることができる。
【0223】
別の態様では、本発明は、NKp46の結合について、上述の(a)~(f)のモノクローナル抗体と競合する抗体を提供する。
【0224】
別の態様では、本発明は、上述の(a)~(f)のヒトNKp46に結合する抗体、又はこの抗体とNKp46の結合について競合する、単量体Fcドメインに(任意選択により、介在アミノ酸配列によって)融合され、任意選択により第2の抗原結合ドメイン(例えば、scFv、Vドメイン、Vドメイン、dAb、V-NARドメイン、若しくはVHドメイン)にさらに(任意選択により、介在アミノ酸配列によって)融合された抗体を含む二重特異的抗体を提供する。任意選択により、第2の抗原結合ドメインは、癌抗原、ウイルス抗原、又は細菌抗原に結合する。
【0225】
IMGT、Kabat、及びChothia定義方式に従ったCDRの配列が以下の表Aに要約されている。本発明による抗体の可変鎖の配列は、以下の表Bに列記されている。本明細書の任意の実施形態では、VL又はVH配列は、シグナルペプチド若しくはその任意の部分を含む又は含まないように指定又は付番することができる。
【0226】
【表3】
【0227】
【表4】
【0228】
【表5】
【0229】
【表6】
【0230】
また、本明細書の実施例に示されるように、単量体二重特異的ポリペプチドのアミノ酸配列を含むタンパク質が提供され、このタンパク質は、抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、NKp46-6、及びNKp46-9の配列番号3~14として列記されているそれぞれに重鎖及び軽鎖可変領域の重鎖及び軽鎖CDR1、2、及び3を含むscFv、単量体Fcドメイン、並びに抗CD19抗体、例えば、本明細書の実施例のセクションに示される抗CD19の重鎖及び軽鎖可変領域の重鎖及び軽鎖CDR1、2、及び3を含むscFvを含む。
【0231】
多重特異的タンパク質が作製されると、このタンパク質を、生物学的活性、例えば、アゴニスト活性について評価することができる。
【0232】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、NKp46発現細胞(例えば、精製NK細胞)及び目的の抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)の活性化を誘導することができる。
【0233】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、標的細胞の非存在下で、NKp46発現細胞(任意選択によりさらにFcγ受容体発現細胞の存在下で、例えば、精製NK細胞又は精製レポーター細胞)と共にインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)の実質的な活性化を誘導することができる。
【0234】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、NKp46発現細胞(例えば、精製NK細胞)及び目的の抗原を発現する標的細胞の存在下でインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)にNKp46シグナル伝達を誘導することができる。
【0235】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、多重特異的タンパク質は、標的細胞の非存在下で、NKp46発現細胞(任意選択によりさらにFcγ受容体発現細胞の存在下で、例えば、精製NK細胞又は精製レポーター細胞)と共にインキュベートされた場合、NKp46発現細胞(例えば、NK細胞、レポーター細胞)にNKp46シグナル伝達を引き起こす(又はNKp46シグナル伝達を増加させる)ことができない。
【0236】
任意選択により、NK細胞の活性化又はシグナル伝達は、活性化の細胞表面マーカー、例えば、CD107、CD69などの発現の増加によって特徴付けられる。
【0237】
活性は、例えば、多重特異的ポリペプチドの存在下で、標的細胞とNKp46発現細胞とを互いに接触させることによって測定することができる。一例では、標的細胞とNK細胞との凝集が測定される。別の例では、多重特異的タンパク質は、例えば、NK細胞の活性に関連した当技術分野で公知の任意の特性又は活性、例えば、細胞毒性のマーカー(CD107)又はサイトカインの産生(例えば、IFN-γ若しくはTNF-α)の測定可能な増加をもたらす能力、細胞内遊離カルシウムレベルの増加、リダイレクト殺傷アッセイ(redirected killing assay)において標的細胞を溶解する能力などについて評価することができる。
【0238】
標的細胞(目的の抗原を発現する標的細胞)及びNKp46を発現するNK細胞の存在下で、多重特異的タンパク質は、in vitroにおいて、NK細胞の活性に関連した特性又は活性(例えば、NK細胞の細胞毒性の活性化、CD107の発現、IFNγの産生)の増加を引き起こすことができる。例えば、本開示の多重特異的タンパク質は、多重特異的タンパク質に接触されない同じNK細胞と標的細胞を用いて同じエフェクター:標的細胞比で達成されるNK細胞の活性と比較して、約20%超、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又はそれを超えるNK細胞の活性を増加させることができるように選択することができ、このNK細胞の活性は、NK細胞の活性のアッセイ、例えば、NK細胞傷害性の活性化マーカー、CD107又はCD69の発現、IFNγの産生、従来のin vitroでの細胞毒性のクロム放出試験によって測定される。活性化及び細胞毒性アッセイのプロトコルの例は、本明細書の実施例のセクション、及び例えばPessino et al,J.Exp.Med,1998,188(5):953-960;Sivori et al,Eur J Immunol,1999.29:1656-1666;Brando et al,(2005)J.Leukoc.Biol.78:359-371;El-Sherbiny et al,(2007)Cancer Research 67(18):8444-9;and Nolte-’t Hoen et al,(2007)Blood 109:670-673)に記載されている。
【0239】
活性はまた、使用できるレポーターアッセイを用いて評価することもでき、このアッセイでは、NKp46リガンド発現標的細胞がNKp46発現レポーター細胞(例えば、NK細胞、T細胞)に接触され、抗体がNKp46シグナル伝達を誘導する能力が評価される。例えば、NKp46発現レポーター細胞は、DO.11.10 T細胞ハイブリドーマ、又はマウスCD3ζの細胞質内ドメインがNKp46の細胞外部分に融合された(例えば、DOMSP46 cells as described in Schleinitz et al.,(2008)Arthritis Rheum.58:3216-3223を参照されたい)キメラNKp46タンパク質をコードするレトロウイルス粒子で形質導入された同様の細胞であり得る。キメラタンパク質の細胞表面での結合は、IL-2の分泌を引き起こす。インキュベーション後、細胞上清を、標準的な標的細胞生存アッセイでマウスIL-2の存在についてアッセイすることができる。多重特異的タンパク質の非存在下ではレポーター細胞にNKp46シグナル伝達を誘導しない標的細胞を選択することができる。次いで、多重特異的タンパク質を、標的細胞の存在下でNKp46発現レポーター細胞に接触させることができ、NKp46シグナル伝達を評価することができる。DOMSP46又はDO.11.10(96ウェルプレートで20,000細胞/ウェル)を、96ウェルプレートで標的細胞及び多重特異的タンパク質と共にインキュベートすることができる。20時間後、細胞上清を、Cell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて標準的なCTLL-2生存アッセイでマウスIL-2の存在についてアッセイする。
【0240】
一実施形態では、本発明は、単量体ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の任意の単量体タンパク質)を産生する方法を提供し、この方法は、
a)本明細書に記載の単量体二重特異的ポリペプチド(例えば、(a)NKp46に結合する第1の抗原結合ドメイン、(b)標的細胞で発現されるポリペプチドに結合する第2の抗原結合ドメイン、及び(c)ヒトFcドメインの少なくとも一部を含むポリペプチド、ここで、多重特異的ポリペプチドは、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができ、且つ完全長野生型ヒトIgG1抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対する低い結合性を有する)をコードする核酸を用意するステップ、及び
b)それぞれ前記核酸を宿主細胞で発現させて前記ポリペプチドを産生し、且つ単量体タンパク質を回収するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(b)は、産生されたタンパク質を、親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つ単量体タンパク質を収集するステップを含む。
【0241】
一実施形態では、本発明は、ヘテロ二量体タンパク質(例えば、本明細書に記載の任意のヘテロ二量体タンパク質)を産生する方法を提供し、この方法は、
a)本明細書に記載の第1のポリペプチド鎖(例えば、CH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2の可変ドメイン(及び任意選択により第3の可変ドメイン、ここで、第2及び第3の可変ドメインは第1の抗原結合ドメインを形成する)、及び第1の可変ドメインと第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含むポリペプチド鎖)をコードする第1の核酸を用意するステップ、
b)本明細書に記載の第2のポリペプチド鎖(例えば、第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された第1の可変ドメイン(V)を含み、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの第1の可変ドメインとが第2の抗原結合ドメインを形成する、ポリペプチド鎖)をコードする第2の核酸を用意するステップであって、第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がNKp46に結合し、且つ他方が目的の抗原に結合する、ステップ、及び
c)それぞれ前記第1及び第2の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
を含む。任意選択により、産生されたヘテロ二量体タンパク質は、精製前の総タンパク質(例えば、二重特異的タンパク質)の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、ステップ(c)は、産生されたタンパク質を、親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ二量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(又は親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ二量体画分を収集するステップを含む。一実施形態では、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインは、(任意選択により第3の可変ドメインと共に)NKp46に結合する。
【0242】
本開示のタンパク質は、BITE、DART、及び他の二重特異的形態と異なり、標準的な細胞株及び高収量の標準化方法で産生することができるため、多重特異的タンパク質に組み込まれるべき最も有効な可変領域についてのスクリーニング用の従来のツールも提供する。一態様では、本開示は、ヘテロ二量体タンパク質に使用される候補可変領域を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
a)複数の核酸対を用意するステップであって、各対が、(例えば、同じ又は異なる目的の抗原に結合する異なる抗体から得られる)複数の重鎖及び軽鎖可変領域対のそれぞれについて、重鎖候補可変領域をコードする1つの核酸及び軽鎖候補可変領域をコードする1つの核酸を含む、ステップ、
b)複数の核酸対のそれぞれについて、ヘテロ二量体タンパク質を、
(i)CH1又はCK定常領域に融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の一方、第2の可変ドメイン(及び任意選択により第3の可変ドメイン、ここで、第2及び第3の可変ドメインは第1の抗原結合ドメインを形成する)、及び候補と第2の可変ドメインとの間に配置されたFcドメイン又はその一部を含む、第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を作製するステップ、
(ii)第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の他方を含む、第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を作製するステップであって、重鎖と軽鎖候補可変ドメインとが第2の抗原結合ドメインを形成する、ステップ、及び
(iii)それぞれ第1及び第2のポリペプチド鎖をコードする前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
によって作製するステップ、及び
c)産生された複数のヘテロ二量体タンパク質を、目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示される活性について評価するステップ
を含む。この方法では、第1又は第2の抗原結合ドメインの一方がNKp46に結合し、且つ他方が目的の抗原に結合する。一実施形態では、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインは、(任意選択により第3の可変ドメインと共に)NKp46に結合する。任意選択により、産生されたヘテロ二量体タンパク質は、精製前の総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、(iii)の回収するステップは、産生されたタンパク質を、親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ二量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(又は親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ二量体画分を収集するステップを含む。一実施形態では、第1の抗原結合ドメインはNKp46に結合し、第2の抗原結合ドメインは目的の抗原に結合し、任意選択により、第1の抗原結合ドメインは抗NKp46 scFvである。一実施形態では、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメインは、(任意選択により第3の可変ドメインと共に)NKp46に結合する。
【0243】
一実施形態では、本発明は、ヘテロ三量体タンパク質(例えば、本明細書に記載の任意のヘテロ三量体タンパク質)を産生する方法を提供し、この方法は、
(a)本明細書に記載の第1のポリペプチド鎖(例えば、第1のCH1又はCK定常領域に融合された第1の可変ドメイン(V)、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン、及び第1の(V-CH1/CK)単位と第2の(V-CH1/CK)単位との間に配置されたFcドメイン若しくはその一部を含むポリペプチド鎖)をコードする第1の核酸を用意するステップ、
(b)本明細書に記載の第2のポリペプチド鎖(例えば、第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチド鎖の第1の可変ドメインと第2のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成する、CH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された可変ドメイン(V)を含みポリペプチド鎖)をコードする第2の核酸を用意するステップ、
(c)本明細書に記載の第3のポリペプチド鎖(例えば、そのC末端でCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含むポリペプチド鎖であって、このCH1又はCK定常領域が、第1及び第3のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成する、ポリペプチド鎖)を含む、第3の核酸を用意するステップ、及び
(d)それぞれ前記第1、第2、及び第3の核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1、第2、及び第3のポリペプチド鎖を含むタンパク質を産生し、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ
を含む。任意選択により、産生されたヘテロ三量体タンパク質は、精製前の総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、ステップ(d)は、産生されたタンパク質を、親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を回収するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換又はプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ三量体画分を収集するステップを含む。この方法では、抗原結合ドメインの一方はNKp46に結合し、且つ他方は目的の抗原に結合する。一実施形態では、第2又は第3のポリペプチドは、(例えば、ヒンジドメイン又はリンカーを介して)CH1又はCKドメインのC末端に融合されたFcドメイン若しくはその断片をさらに含む。一実施形態では、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとは、NKp46に結合する抗原結合ドメインを形成する。
【0244】
一態様では、本開示は、ヘテロ三量体タンパク質に使用される候補可変領域を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
a)複数の核酸対を用意するステップであって、各対が、(例えば、同じ又は異なる目的の抗原に結合する異なる抗体から得られる)複数の重鎖及び軽鎖可変領域対のそれぞれについて、重鎖候補可変領域をコードする1つの核酸及び軽鎖候補可変領域をコードする1つの核酸を含む、ステップ、
b)複数の核酸対のそれぞれについて、ヘテロ三量体タンパク質を、
(i)第1のCH1又はCK定常領域に融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の一方、第2のCH1又はCK定常領域に融合された第2の可変ドメイン、及び第1の(V-CH1/CK)単位と第2の(V-CH1/CK)単位との間に配置されたFcドメイン若しくはその一部を含む、第1のポリペプチド鎖をコードする第1の核酸を作製するステップ、
(ii)第1及び第2のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第1のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択されたCH1又はCK定常領域にそのC末端で融合された重鎖又は軽鎖候補可変ドメイン(V)の他方を含む、第2のポリペプチド鎖をコードする第2の核酸を作製するステップであって、重鎖及び軽鎖候補可変ドメインが抗原結合ドメインを形成する、ステップ、
(ii)そのC末端でCH1又はCK定常領域に融合された可変ドメインを含む、第3のポリペプチド鎖をコードする第3の核酸を作製するステップであって、このCH1又はCK定常領域が、第1及び第3のポリペプチドがCH1-CKヘテロ二量体を形成するように、第1のポリペプチド鎖の第2の可変ドメイン及び第2のCH1又はCK定常領域に相補的であるように選択され、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとが抗原結合ドメインを形成する、ステップ、及び
(iii)それぞれ第1及び第2のポリペプチド鎖をコードする前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記第1及び第2のポリペプチド鎖を産生し、且つヘテロ二量体タンパク質を回収するステップ
によって作製するステップ、及び
c)産生された複数のヘテロ二量体タンパク質を、目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示される活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、第2又は第3のポリペプチドは、(例えば、ヒンジドメイン又はリンカーを介して)CH1又はCKドメインのC末端に融合されたFcドメイン若しくはその断片をさらに含む。任意選択により、産生されたヘテロ三量体タンパク質は、精製前の総タンパク質の少なくとも20%、25%、又は30%を占める。任意選択により、(iii)の回収するステップは、産生されたタンパク質を、親和性精製支持体、任意選択により親和性交換カラム、任意選択によりプロテインA支持体又はカラムにローディングし、且つヘテロ三量体タンパク質を収集するステップ、及び/又は産生されたタンパク質(例えば、親和性交換若しくはプロテインAカラムにローディングした後に収集されたタンパク質)をイオン交換カラムにローディングし、且つヘテロ三量体画分を収集するステップを含む。
【0245】
候補可変領域を特定又は評価する方法では、候補可変領域が、抗NKp46抗体を形成するか、又は目的の抗原に結合する抗原を形成し得ることを理解されたい。また、候補可変領域対及び他の可変領域対のそれぞれのABDの位置を逆にできることも理解されたい。例えば、三量体タンパク質では、この方法は、重鎖及び軽鎖候補可変ドメインが第1のポリペプチドの第2のV領域及び第2のポリペプチドのV領域によって形成され、且つ他方の可変領域対が第1のポリペプチドの第1のV領域及び第3のポリペプチドのV領域によって形成されるように変更することができる。
【0246】
一実施形態では、第1のポリペプチドの第2の可変ドメインと第3のポリペプチドの可変ドメインとが、NKp46に結合する抗原結合ドメインを形成する。
【0247】
さらに、標準的な細胞株及び高収量の標準化方法で全てを産生することができるが、タンパク質の機能的活性に影響を与え得る異なる特性(例えば、配座柔軟性、2つの抗原結合ドメイン間の空間など)を有する異なる多重特異的タンパク質の形態のパネルを提供することにより、本開示のタンパク質の形態をパネルに使用してタンパク質の構造又は形態をスクリーニングし、所与の目的の抗原又は目的の第1及び第2の抗原の組み合わせに対して最も有効な構造又は形態を特定することができる。異なるタンパク質形態は、それらの抗原標的に別々にアクセス又は結合することができる。
【0248】
一態様では、本開示は、ヘテロ二量体タンパク質に使用される候補タンパク質の構造を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
本開示の、ドメイン配置が異なる複数の多重特異的タンパク質を別個に(例えば、別の容器で)産生するステップ、及び
産生された複数の多重特異的タンパク質を、目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示の活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、異なるドメイン配置を有するタンパク質は、NKp46及び/又は目的の抗原について抗原結合ドメイン(例えば、同じCDR又は可変ドメイン)を共有する。一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれを超える異なるタンパク質が産生され、評価される。一実施形態では、タンパク質の1つ以上(又は全て)が、本明細書に開示のドメイン配置を有するタンパク質、例えば、形態F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8、F9、F10、F11、F12、F13、F14、F15、F16、及びF17のタンパク質の群から選択される。一実施形態では、タンパク質は、本明細書に開示の方法に従って産生される。任意選択により、複数の多重特異的タンパク質は、単量体Fcドメインを有する1つのタンパク質及び二量体Fcドメインを有する1つのタンパク質を含む。
【0249】
一態様では、本開示は、少なくとも5つ、10、20、30、50の本開示のヘテロ多量体タンパク質のライブラリーを提供し、これらのタンパク質は、ドメイン配置を共有するが、それらの抗原結合ドメインの一方又は両方の可変ドメインのアミノ酸配列が異なる。
【0250】
一態様では、本開示は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、又は10の本開示のヘテロ多量体タンパク質のライブラリーを提供し、これらのタンパク質は、それらの抗原結合ドメインの一方又は両方の可変ドメインのアミノ酸配列を共有するが、ドメイン配置が異なる。
【0251】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、単量体、ヘテロ二量体、又はヘテロ三量体タンパク質を回収するステップは、タンパク質を固定化するために固相にタンパク質を導入するステップを含み得る。続いて、固定化タンパク質を溶出することができる。一般に、固体支持体は、タンパク質を不所望の物質、例えば、過剰な試薬、汚染物質、及び溶媒から分離できるように直接的又は間接的に可逆的に取り付けることができる任意の適切な不溶性の機能性物質であり得る。固体支持体の例としては、例えば、機能性ポリマー材料、例えば、アガロース、又はそのビーズ形態Sepharose(登録商標)、デキストラン、ポリスチレン、及びポリプロピレン、又はそれらの混合物;微小流体チャネル構造を含むコンパクトディスク;タンパク質アレイチップ;ピペットチップ;膜、例えば、ニトロセルロース又はPVDF膜;及び微粒子、例えば、常磁性又は非常磁性ビーズが挙げられる。一部の実施形態では、親和性媒体は、固体支持体に結合され、タンパク質は、親和性媒体を介して固体支持体に間接的に取り付けられる。一態様では、固体支持体は、プロテインA親和性媒体又はプロテインG親和性媒体を含む。「プロテインA親和性媒体」及び「プロテインG親和性媒体」は、それぞれプロテインA若しくはプロテインGのFc結合ドメインを含む天然若しくは合成タンパク質がそれぞれ結合した固相、又はプロテインA若しくはプロテインGのFc結合ドメインの変異した変異体若しくは断片がそれぞれ結合した固相を指し、この変異体又は断片は、抗体のFc部分の親和性を維持している。プロテインA及びプロテインGは、哺乳動物IgGのFc部分の結合部位を有する細菌細胞壁タンパク質である。IgGについてのこれらのタンパク質の能力は、種によって異なる。一般に、IgGは、プロテインAよりもプロテインGに対して高い親和性を有し、プロテインGは、広範囲の種のIgGに結合することができる。特にマウス及びヒトからの様々なIgGサブクラスの親和性は、プロテインGよりもプロテインAで異なる。従って、プロテインAは、アイソタイプ的に純粋なIgGをいくつかの種から調製するために使用することができる。固体マトリックス、例えば、架橋アガロースに共有結合する場合、これらのタンパク質を使用して、生化学溶液から抗原-タンパク質複合体を捕捉して精製することができる。市販の製品の例としては、例えば、アガロース又はセファロースビーズに結合されたプロテインG、A、又はLが挙げられ、例えば、EZview(登録商標)Red Protein G Affinity Gelが、4%アガロースビーズ(Sigma Aldrich Co);又はPOROS(登録商標)A、G、及びCaptureSelect(登録商標)HPLCカラム(Invitrogen Inc.)に共有結合されたプロテインGである。また、親和性捕捉試薬が、例えば、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられるAntibody Purification Handbook,Biosciences,publication No.18-1037-46,Edition ACに記載されている。
【0252】
本明細書の任意の実施形態の一態様では、単量体、ヘテロ二量体、又はヘテロ三量体タンパク質を目的の特徴について評価するステップは、タンパク質を、目的の抗原への結合性、NKp46に対する結合性、腫瘍、ウイルス、又は細菌抗原に対する結合性、FcRn受容体に対する結合性、Fcγ受容体に対する結合性、Fcドメイン媒介エフェクター機能、多量体タンパク質が結合するポリペプチドでのアゴニスト又はアンタゴニスト活性、目的の抗原を発現する細胞の活性(例えば、この細胞死を引き起こす)を調節する能力、目的の抗原を発現する細胞にリンパ球を誘導する能力、目的の抗原を発現する細胞の存在下及び/又は非存在下でリンパ球を活性化する能力、NK細胞の活性化、標的細胞の非存在下ではなく存在下でのNKp46発現リンパ球(例えば、NK細胞)の活性化、NKp46陰性リンパ球の活性化の欠如、in vitro又はin vivoでの安定性又は半減期、産生収率、組成物内の純度、及び溶液中での凝集のしやすさからなる群から選択される1つ以上の特性について評価する。
【0253】
一態様では、本開示は、抗NKp46二重特異的タンパク質を特定又は評価する方法を提供し、この方法は、
(a)本明細書に記載の抗NKp46二重特異的タンパク質をコードする核酸を用意するステップ、
(b)それぞれ前記核酸を宿主細胞で発現させて、前記タンパク質を産生し、及び前記タンパク質を回収するステップ、及び
(c)産生されたタンパク質を、目的の生物学的活性、例えば、本明細書に開示の活性について評価するステップ
を含む。一実施形態では、複数の異なる抗NKp46二重特異的タンパク質が産生され、評価される。
【0254】
一実施形態では、ステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、前記エフェクター細胞を活性化するタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0255】
一実施形態では、ステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の非存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、前記エフェクター細胞を実質的に活性化しないタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0256】
一実施形態では、ステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ、及び
(ii)(目的の抗原を発現する)標的細胞の非存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、タンパク質がこのようなエフェクター細胞を活性化させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、この方法は、標的細胞の非存在下でインキュベートされたときに前記エフェクター細胞を実質的に活性化せず、且つ標的細胞の存在下でインキュベートされたときに前記エフェクター細胞を活性化するタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップをさらに含む。
【0257】
一実施形態では、ステップ(c)は、
(i)(目的の抗原を発現する)標的細胞の存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、ポリペプチドが、このようなエフェクター細胞に(目的の抗原を発現する)標的細胞を溶解させる能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、標的細胞の存在下で、NKp46を発現するエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞に標的細胞を溶解させるタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0258】
一実施形態では、ステップ(c)は、
(i)標的細胞の存在下で、CD16を発現するがNKp46を発現しないエフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を活性化させるタンパク質の能力を試験するステップ
を含む。任意選択により、ステップ(i)の後に、標的細胞の存在下で前記エフェクター細胞と共にインキュベートされたときに、このようなエフェクター細胞を実質的に活性化しないタンパク質を(例えば、さらなる開発のため、薬剤としての使用のために)選択するステップを含む。
【0259】
化合物の使用
一態様では、必要とする哺乳動物の処置又は診断用の医薬製剤の製造における本明細書で定義される任意の化合物の使用が提供される。また、薬剤として、又は薬剤中の活性成分若しくは活性物質として上記定義された任意の化合物の使用も提供される。さらなる態様では、経口投与、局所投与、又は注射用の固体又は液体製剤を提供するために、上記定義された化合物を含む医薬組成物を調製する方法が提供される。このような方法又はプロセスは、少なくとも化合物を薬学的に許容され得る担体と混合するステップを含む。
【0260】
一態様では、特定の効果を与えることによって所定の状態を処置する、予防する、若しくはより一般的には所定の状態に影響を及ぼす、又は本明細書に記載の多重特異的タンパク質若しくはこの多重特異的タンパク質を含む(医薬)組成物を用いて特定の状態を検出する方法が提供される。
【0261】
例えば、一態様では、本発明は、必要とする患者(例えば、癌又はウイルス若しくは細菌感染を有する患者)においてNKp46+NK細胞の活性を回復させる又は高める方法を提供し、この方法は、前記患者に本明細書に記載の多重特異的タンパク質を投与するステップを含む。一実施形態では、この方法は、リンパ球(例えば、NK細胞)の活性の増加が有益であるか、又は不十分なNK細胞の活性によって引き起こされる若しくは特徴付けられる疾患、例えば、癌又はウイルス若しくは微生物/細菌感染を有する患者にNKp46+リンパ球の活性の増加に関する。
【0262】
本明細書に記載のポリペプチドを使用して、抗体で処置することができる障害、例えば、癌、固形及び非固形腫瘍、血液悪性腫瘍、感染、例えば、ウイルス感染、及び免疫又は自己免疫疾患を予防又は処置することができる。
【0263】
一実施形態では、目的の抗原(非NKp46抗原)は、以下からなる群から選択される癌のタイプの悪性細胞の表面で発現される抗原である:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T-PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)。
【0264】
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドを使用して、以下からなる群から選択される癌を予防又は処置することができる:膀胱癌、頭頸部癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、頸癌、甲状腺癌、及び扁平上皮癌を含む皮膚癌を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、及びバーケッツリンパ腫を含むリンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性の骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉系起源の腫瘍;神経芽腫及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及び神経鞘腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む横紋筋起源の腫瘍;並びに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍。本発明によって処置することができる他の例示的な障害としては、リンパ系統の造血腫瘍、例えば、限定されるものではないが、小細胞及び大脳細胞型を含むT細胞障害、例えば、T前リンパ球性白血病(T-PLL)を含むT細胞及びB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒性リンパ球性白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T-NHL肝脾臓リンパ腫;末梢/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性亜型);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸管T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球;並びにリンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)が挙げられる。
【0265】
一例では、腫瘍抗原は、リンパ腫細胞又は白血病細胞の表面で発現される抗原であり、多重特異的タンパク質は、リンパ腫又は白血病を有する個人に投与され、且つ/又はこの個人の処置に使用される。任意選択により、腫瘍抗原は、CD19、CD20、CD22、CD30、又はCD33から選択される。
【0266】
一態様では、処置の方法は、治療有効量の本明細書に記載の多重特異的タンパク質を個人に投与するステップを含む。治療有効量は、疾患又は障害を有する患者に治療効果を有する(又は疾患若しくは障害を有する患者及び患者と実質的に同様の特徴を有する患者の少なくとも相当数でこのような効果を促進する、高める、及び/又は誘導する)任意の量であり得る。
【0267】
一実施形態では、本明細書に記載の多重特異的タンパク質は、抗体が投与される特定の治療目的に通常は利用される作用物質を含む1つ以上の他の治療薬との併用治療に使用することができる。追加の治療薬が、処置される特定の疾患又は状態の単一療法でその治療薬に典型的に使用される量及び治療計画で通常は投与される。このような治療薬は、癌の処置に使用される場合、限定されるものではないが、抗癌剤及び化学療法薬を含み、感染疾患の処置では、限定されるものではないが、抗ウイルス薬及び抗生物質を含む。
【0268】
一実施形態では、追加の治療薬は、例えば、NK細胞によって発現されるCD16を介して作用物質が結合する細胞のADCCを誘導することができる作用物質である。典型的には、このようなタンパク質は、Fcドメイン又はその一部を有し、且つFcγ受容体(例えば、CD16)に対する結合性を示す。一実施形態では、そのADCC活性は、CD16によって少なくとも部分的に媒介される。一実施形態では、追加の治療薬は、ナイーブ又は改変ヒトFcドメイン、例えば、ヒトIgG1又はIgG3抗体からのFcドメインを有する抗体である。「抗体依存性細胞媒介傷害」又は「ADCC」という語は、当技術分野で良く理解されている語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介する非特異的細胞傷害性細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球、及び好酸球を含む。「ADCC誘導抗体」という語は、当業者に公知のアッセイによって測定されるADCCを立証する抗体を指す。このような活性は、典型的には、Fc領域の様々なFcRとの結合によって特徴付けられる。任意の特定の機序に限定されるものではないが、当業者であれば、抗体がADCCを立証する能力が、例えば、そのサブクラス(例えば、IgG1又はIgG3)によって、Fc領域に導入される変異によって、又は抗体のFc領域における糖のパターンの改変によって可能であることを理解されよう。
【0269】
野生型Fc領域と比較した抗体のFc領域の特定の改変が、ADCC活性を高めることも当業者に周知である。追加の治療薬としてのこのような「ADCC促進」抗体との組み合わせは、このような抗体が、CD16による高い活性化を誘導し得るために特に有利であり、及びNKp46を介して作用する多重特異的タンパク質は、ADCC促進抗体によって利用されるCD16経路を妨害することなく、且つさらなる免疫関連毒性を引き起こすことなく、相補的な機序によってNK細胞の活性化及び/又は標的細胞の溶解を誘導する。典型的な改変は、少なくとも1つのアミノ酸改変(例えば、置換、欠失、挿入)を含む改変ヒトIgG1定常領域、及び/又は変更されたタイプのグリコシル化、例えば、低フコシル化を含む。このような改変は、Fc受容体:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)との相互作用に影響を与え得る。FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、及びFcγRIII(CD16)は、活性化(即ち、免疫系強化)受容体であるが、FcγRIIB(CD32B)は、抑制(即ち、免疫系抑制)受容体である。改変は、例えば、エフェクター(例えば、NK)細胞上でのFcドメインのFcγIIIaへの結合を増加させ、且つ/又はFcγRIIBへの結合を減少させる。改変の例は、参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられる2013年9月17日出願の国際出願PCT/欧州特許出願公開第2013/069302号明細書に記載されている。
【0270】
一部の実施形態では、追加の治療薬は、変異型Fc領域を含む抗体であり、このFc領域は、そのCH3ドメインに少なくとも1つのアミノ酸改変を含む(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上のアミノ酸改変を有する)。他の実施形態では、変異型Fc領域を含む抗体は、このFc領域のCH2ドメインに少なくとも1つのアミノ酸改変を含み(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上のアミノ酸改変を有し)、CH2ドメインは、アミノ酸231~341まで伸長していると定義される。一部の実施形態では、抗体は、少なくとも2つのアミノ酸改変を含み(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上のアミノ酸改変を有し)、少なくとも1つのこのような改変は、CH3領域にあり、且つ少なくとも1つのこのような改変は、CH2領域にある。また、ヒンジ領域のアミノ酸改変も包含される。一実施形態では、Fc領域のCH1ドメインのアミノ酸改変が包含され、CH1ドメインは、アミノ酸216~230まで伸長していると定義される。Fc改変のあらゆる組み合わせ、例えば、米国特許第7,632,497号明細書;同第7,521,542号明細書;同第7,425,619号明細書;同第7,416,727号明細書;同第7,371,826号明細書;同第7,355,008号明細書;同第7,335,742号明細書;同第7,332,581号明細書;同第7,183,387号明細書;同第7,122,637号明細書;同第6,821,505号明細書、及び同第6,737,056号明細書;国際公開第2011/109400号パンフレット;同第2008/105886号パンフレット;同第2008/002933号パンフレット;同第2007/021841号パンフレット;同第2007/106707号パンフレット;同第06/088494号パンフレット;同第05/115452号パンフレット;同第05/110474号パンフレット;同第04/1032269号パンフレット;同第00/42072号パンフレット;同第06/088494号パンフレット;同第07/024249号パンフレット;同第05/047327号パンフレット;同第04/099249号パンフレット、及び同第04/063351号パンフレット;並びにLazar et al.(2006)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103(11):405-410;Presta,L.G.et al.(2002)Biochem.Soc.Trans.30(4):487-490;Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.26;277(30):26733-26740 and Shields,R.L.et al.(2001)J.Biol.Chem.276(9):6591-6604)に開示されている異なる改変のあらゆる組み合わせが可能である。
【0271】
一部の実施形態では、追加の治療薬は、変異型Fc領域を含む抗体であり、この変異型Fc領域は、野生型Fc領域に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上のアミノ酸改変を有し)、それにより、この分子は、野生型Fc領域を含む分子に対して増強されたエフェクター機能を有し、任意選択により、変異型Fc領域は、221位、239位、243位、247位、255位、256位、258位、267位、268位、269位、270位、272位、276位、278位、280位、283位、285位、286位、289位、290位、292位、293位、294位、295位、296位、298位、300位、301位、303位、305位、307位、308位、309位、310位、311位、312位、316位、320位、322位、326位、329位、330位、332位、331位、332位、333位、334位、335位、337位、338位、339位、340位、359位、360位、370位、373位、376位、378位、392位、396位、399位、402位、404位、416位、419位、421位、430位、434位、435位、437位、438位、及び/又は439位のいずれか1つ以上に置換を含む。一実施形態では、一部の実施形態では、追加の治療薬は、変異型Fc領域を含む抗体であり、変異型Fc領域は、野生型Fc領域に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を含み(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上のアミノ酸改変を有し)、それにより、この分子は、野生型Fc領域を含む分子に対して増強されたエフェクター機能を有し、任意選択により、変異型Fc領域は、239位、298位、330位、332位、333位、及び/又は334位のいずれか1つ以上に置換(例えば、S239D、S298A、A330L、I332E、E333A、及び/又はK334A置換)を含む。
【0272】
一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗体のFc受容体結合能を増大させる変更されたグリコシル化パターンを含む抗体である。このような炭水化物修飾は、例えば、変更されたグリコシル化装置を有する宿主細胞で抗体を発現させることによって達成することができる。変更されたグリコシル化装置を有する細胞は、当技術分野で説明されており、組換え抗体を発現させてグリコシル化が変更された抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。例えば、それぞれ参照によりそれらの全内容が本明細書に組み入れられるShields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740;Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-1、並びに欧州特許第1,176,195号明細書;国際公開第06/133148号パンフレット;同第03/035835号パンフレット;同第99/54342号パンフレットを参照されたい。一態様では、抗体は、それらの定常領域が低フコシル化されている。このような抗体は、アミノ酸の変更を含んでもよく、又はアミノ酸の変更を含まなくてもよいが、このような低フコシル化が得られるような条件下で産生する又は処置することができる。一態様では、抗体組成物は、本明細書に記載のキメラ、ヒト、又はヒト化抗体を含み、組成物中の抗体種の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、75%、85%、90%、95%、又は実質的に全てが、フコースが欠損したコア炭水化物構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)を含む定常領域を有する。一実施形態では、フコースを有するコア炭水化物構造を含む抗体が含まれていない抗体組成物が提供される。コア炭水化物は、好ましくは、Asn297の糖鎖である。
【0273】
ADCC促進抗体の例としては、限定されるものではないが、GA-101(低フコシル化抗CD20)、マルゲツキシマブ(margetuximab)(Fc強化抗HER2)、メポリズマブ(mepolizumab)、MEDI-551(Fcエンジンリング抗CD19)、オビヌツズマブ(obinutuzumab)(糖エンジニアリング/低フコシル化抗CD20)、オカラツヅマブ(ocaratuzumab)(Fcエンジニアリング抗CD20)、XmAb(登録商標)5574/MOR208(Fcエンジニアリング抗CD19)が挙げられる。
【0274】
一例では、追加の治療薬(例えば、ADCCを誘導することができる抗体)は、リンパ腫又は白血病細胞上に存在する癌抗原、例えば、CD19、CD20、CD22、CD30、又はCD33に結合し、及び多重特異的タンパク質及び追加の治療薬は、リンパ腫又は白血病を有する個人に投与され、且つ/又はこのような個人の処置に使用される。
【0275】
「併用療法」は、第2の治療薬(例えば、ADCC誘導抗体)及び本明細書に記載の多重特異的タンパク質の相互作用による有利な効果を提供することを目的とした特定の治療計画の一部としてのこれらの治療薬の投与を含む。併用療法の有利な効果は、限定されるものではないが、治療薬の併用から生じる薬物動態学的又は薬力学的相互作用を含む。これらの治療薬の併用投与は、典型的には、所定の期間(通常は、選択される併用によって数分間、数時間、数日間、又は数週間)にわたって行われる。「併用療法」は、一般に、偶然且つ任意に本発明の併用となる別個の単一治療計画の一部としてこれらの治療薬の2つ以上の投与を含むものではない。「併用療法」は、これらの治療薬の連続的な投与、即ち、これらの各治療薬が異なる時間に投与される投与、及びこれらの治療薬又はこれらの治療薬の少なくとも2つの実質的に同時の投与を含む。実質的に同時の投与は、例えば、一定比率の各治療薬を有する単一カプセルの対象への投与、又は治療薬のそれぞれの単一カプセルの複数回投与によって達成することができる。それぞれの治療薬の連続的な投与又は実質的に同時の投与は、限定されるものではないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を介して直接の吸収を含む任意の適切な経路によって行うことができる。治療薬は、同じ経路によって、又は異なる経路によって投与することができる。例えば、選択される併用の第1の治療薬は、静脈注射によって投与することができ、併用の他方の治療薬は、経口投与することができる。別法では、例えば、両方の治療薬を経口投与してもよく、又は両方の治療薬を静脈注射によって投与してもよい。治療薬が投与される順序は、それほど重要ではない。「併用療法」はまた、他の生物学的に活性な成分(例えば、限定されるものではないが、第2の異なる抗悪性腫瘍薬)及び非薬物療法(例えば、限定されるものではないが、外科手術又は放射線治療)とさらに併用される上記の治療薬の投与も含み得る。
【0276】
多重特異的ポリペプチドは、キットに含めることができる。このキットは、任意選択により、任意の数のポリペプチド及び/又は他の化合物、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又はその他の数の多重特異的ポリペプチド及び/又は他の化合物をさらに含み得る。キットの内容についてのこの記載は、全く限定ではないことを理解されたい。例えば、キットは、他のタイプの治療化合物を含み得る。任意選択により、キットは、ポリペプチドの使用についての取扱説明書、例えば、本明細書に記載の方法の詳細も含む。
【0277】
また、上記定義された化合物を含む医薬組成物も提供される。化合物は、医薬組成物として医薬担体と共に精製された形態で投与することができる。形態は、意図する投与方式及び治療又は診断用途によって決まる。医薬担体は、化合物を患者に送達するのに適した任意の適合性の非毒性物質とすることができる。薬学的に許容され得る担体は、当技術分野で公知であり、例えば、水溶液、例えば、(滅菌)水若しくは生理緩衝食塩水、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えば、グリコール、グリセロール、油、例えば、オリーブ油、又は注射可能な有機エステル、アルコール、脂肪、ワックス、及び不活性固体を含む。薬学的に許容され得る担体は、例えば化合物の吸収を安定させる又は高めるように作用する、生理的に許容され得る化合物をさらに含み得る。このような生理的に許容され得る化合物は、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロース、又はデキストラン、抗酸化物、例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定剤若しくは賦形剤を含む。当業者であれば、生理的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容され得る担体の選択が、例えば、組成物の投与経路によって決まることを理解されよう。薬学的に許容され得るアジュバント、緩衝剤、及び分散剤なども医薬組成物に含まれ得る。
【0278】
化合物は、非経口投与することができる。非経口投与用の化合物の調製は、滅菌でなければならない。滅菌は、任意選択により凍結乾燥及び再生の前又は後での、滅菌濾過膜に通す濾過によって容易に達成される。化合物の投与の非経口経路は、公知の方法、例えば、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、動脈内経路、若しくは病巣内経路による注射又は注入に従う。化合物は、注入又はボーラス注射によって連続的に投与することができる。静脈注射用の典型的な組成物は、特定のタイプの化合物及びその必要な投与計画に合わせて、任意選択により20%アルブミン溶液が添加された100~500mlの滅菌0.9%NaCl又は5%グルコース及び1mg~10gの化合物を含むように構成することができる。非経口投与可能な組成物を調製する方法は、当技術分野で公知である。
【実施例0279】
実施例1
抗huNKp46抗体の作製
Balb/cマウスを、組換えヒトNKp46細胞外ドメイン組換えFcタンパク質で免疫した。マウスは、50μgのNKp46タンパク質と完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により最初の免疫を行い、50μgのNKp46タンパク質と不完全フロイントアジュバントのエマルションの腹腔内投与により2回目の免疫を行い、最後に、10μgのNKp46タンパク質の静脈投与により追加免疫した。免疫脾細胞を、追加免疫の3日後にX63.Ag8.653不死化B細胞に融合し、これを、放射線照射脾細胞の存在下で培養した。
【0280】
一次スクリーニング:増殖しているクローンの上清(S/N)を、細胞表面でヒトNKp46構築物を発現する細胞株を用いるフローサイトメトリーによって一次スクリーニングで試験した。簡単に述べると、FACSスクリーニングでは、上清中の反応抗体の存在を、PEで標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)によって明らかにした。
【0281】
NKp46に結合する抗体のセレクションを選択し、産生し、及びそれらの可変領域を二重特異的分子との関連でのそれらの活性についてさらに評価した。
【0282】
実施例2 エフェクター細胞受容体を標的とする、FcRnには結合するがFcγRには結合しない二重特異的抗体形態の同定
この実験の目的は、Fcドメインを、抗NKp46結合ドメイン及び抗標的抗原結合ドメインと共にポリペプチドに配置する新規な二重特異的タンパク質形態を開発することにあった。二重特異的タンパク質は、その抗NKp46結合ドメインを介してNKp46に一価で結合する。単量体Fcドメインは、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する少なくとも部分的な結合を維持するが、ヒトCD16及び/又は他のヒトFcγ受容体には実質的に結合しない。結果として、二重特異的タンパク質は、Fcγ媒介(例えば、CD16媒介)標的細胞溶解を誘導しない。
【0283】
実施例2-1 抗CD19-IgG1-Fcmono抗CD3の作製及び結合分析
このようなタンパク質が機能的であり得るか否かを示すことができる抗NKp46二重特異的抗体が作製されていないため、NKp46を介したNK細胞の標的化前に新規な一価二重特異的タンパク質形態の機能を調べるために、NKp46の代わりにCD3をモデル抗原として使用した。
【0284】
腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースとした二重特異的Fcを使用して、新規な単量体二重特異的ポリペプチド形態のFcRn結合及びCD19結合機能を評価した。最終ポリペプチドのドメイン配置が図2に示されており、このドメイン配置は、「F1」形態とも呼ばれる(CH2ドメインの星は、本明細書で試験されたポリペプチドには含まれていない任意選択のN297S変異を示す)。
【0285】
二重特異的単量体Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19に特異的なscFv(抗CD19 scFv)及びT細胞の活性化受容体CD3に特異的なscFv(抗CD3 scFv)をベースに構築した。CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。このポリペプチドは、次のように配置されたドメインを有する:抗CD19-CH2-CH3-抗CD3。アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。
【0286】
CH3ドメインは、変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含んでいた。CH2ドメインは、野生型CH2であった。単量体CH2-CH3Fc部分及び抗CD19のDNA及びアミノ酸配列は以下に示されている。
【0287】
抗CD19 scFvに対応する軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列は次の通りであった。
【0288】
【表7】
【0289】
単量体CH2-CH3 Fc部分及び最終二重特異的IgG1-Fcmonoポリペプチド(その構築物では最後のKが除去された)のDNA配列が配列番号117に示されている。アミノ酸配列が配列番号2に示されている。抗CD19-F1-抗CD3完全配列(成熟タンパク質)が配列番号118に示されている。
【0290】
組換えタンパク質のクローニング及び産生
コード配列を、直接合成及び/又はPCRによって構築した。PCRは、PrimeSTAR MAX DNAポリメラーゼ(Takara,#R045A)を用いて行い、PCR産物を、NucleoSpinゲル及びPCR clean-upキット(Macherey-Nagel,#740609.250)を用いて1%アガロースゲルから精製した。精製した後、PCR産物を定量してから、製造者のプロトコル(ClonTech,#ST0345)に記載されているようにIn-Fusion連結反応を行った。プラスミドは、Nucleospin 96プラスミドキット(Macherey-Nagel,#740625.4)を用いてEVO200(Tecan)で行われたミニプレップ調製後に得た。次いで、CHO細胞株のトランスフェクションの前に、プラスミドを配列の確認のために配列決定した。
【0291】
CHO細胞を、フェノールレッド及び6mM GlutaMaxが添加されたCD-CHO培地(Invitrogen)で増殖した。トランスフェクションの前日に、細胞をカウントし、175,000細胞/mlで播種した。トランスフェクションのために、細胞(200,000細胞/トランスフェクション)を、AMAXA SF細胞株キット(AMAXA,#V4XC-2032)に記載されているように調製し、Nucleofector 4D装置でDS137プロトコルを用いてヌクレオフェクトした。全てのトランスフェクションは、300ngの検証済みプラスミドを用いて行った。トランスフェクション後、細胞を、24ウェルプレートの予熱された培養培地に播種する。24時間後、ハイグロマイシンBを、培養培地に添加した(200μg/ml)。タンパク質の発現を、1週間後に培地で監視する。次いで、タンパク質を発現している細胞をサブクローニングして最高の産生株を得る。96平底ウェルプレートを用いて、200μg/mlのハイグロマイシンBが添加された200μlの培養培地に1細胞/ウェルで細胞を播種して、サブクローニングを行った。クローンの生産性を試験する前に、細胞を3週間放置した。
【0292】
IgG1-Fc断片を含む組換えタンパク質を、プロテインAビーズ(-rProteinA Sepharose fast flow,GE Healthcare,ref.:17-1279-03)を用いて精製する。簡単に述べると、細胞培養上清を濃縮し、遠心分離によって清澄化し、プロテインAカラムに注入し、組換えFc含有タンパク質を捕捉した。タンパク質を酸性pH(クエン酸0.1M pH3)で溶出し、TRIS-HCL pH8.5を用いて即座に中和し、1×PBSで透析した。「six his」タグを含む組換えscFvを、コバルト樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。他の組換えscFvを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
【0293】
実施例2-2:抗CD19-IgG1-Fcmono-抗CD3~B221、JURKAT、HUT78、及びCHO細胞株の結合分析
細胞を回収して、抗CD19-F1-抗CD3産生細胞の細胞上清で、4℃で1時間染色した。染色緩衝液(PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM)で2回洗浄した後、細胞を、ヤギ抗ヒト(Fc)-PE抗体(IM0550 Beckman Coulter-1/200)で、4℃で30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0294】
CD3及びCD19の発現もフローサイトメトリーによって制御した。細胞を回収して、5μlの抗CD3-APC及び5μlの抗CD19-FITC抗体を用いて、PBS 1X/BSA 0.2%/EDTA 2mM緩衝液で、4℃で30分間染色した。2回の洗浄後、染色物をBD FACS Canto IIで得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
【0295】
抗CD19-F1-抗CD3タンパク質は、CD3細胞株(HUT78及びJURKAT細胞株)及びCD19細胞株(B221細胞株)に結合するが、陰性対照として使用されるCHO細胞株には結合しない。
【0296】
実施例2-3:
精製抗CD19-F1-抗CD3によるT細胞及びB細胞の凝集
精製抗CD19-F1-抗CD3をT/B細胞凝集アッセイで試験して、抗体が、CD19及びCD3発現細胞の凝集において機能するか否かを評価した。
【0297】
結果が図4に示されている。上のパネルは、抗CD19-F1-抗CD3は、B221(CD19)又はJURKAT(CD3)細胞株の存在下で凝集を引き起こさないが、B221及びJURKAT細胞の両方が同時にインキュベートされるときに細胞を凝集させることを示し、二重特異的抗体が機能的であることを例示する。下のパネルは、抗体を含まない対照を示す。
【0298】
実施例2-4:
二重特異的単量体FcポリペプチドのFcRnに対する結合性
表面プラズモン共鳴(SPR)による親和性試験
Biacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)で、25℃で行った。全てのBiacore実験では、酢酸緩衝液(50mM酢酸 pH5.6、150mM NaCl、0.1%界面活性剤p20)及びHBS-EP+(Biacore GE Healthcare)がそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムを、Biacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。組換えマウスFcRnをR&D Systemsから購入した。
【0299】
FcRnの固定化
組換えFcRnタンパク質を、Sensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面を、EDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。FcRnタンパク質を、結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0300】
親和性試験
一価親和性試験を、Single Cycle Kinetic(SCK)プロトコルに従って行った。5段階希釈の41.5~660nMの可溶性分析物(抗体及び二重特異的分子)を(再生なしで)FcRnに添加し、再生の10分前に解離させた。各分析物について、全てのセンサーグラムを、1:1SCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0301】
結果
そのCH2-CH3ドメインが2つの抗原結合ドメイン(ここでは2つのscFv)間に配置された抗CD19-F1-抗CD3を評価して、このような二重特異的単量体Fcタンパク質が、FcRnに対する結合性を維持することができ、それにより、従来の二重特異的抗体と比較して改善されたin vivo半減期を有するか否かを決定した。結果は、FcRN結合性が維持されたことを示し、このモデルは、正常なIgGに対して、2:1の比率(各抗体に対して2つのFcRn)ではなく1:1の比率(各単量体Fcに対して1つのFcRn)を示唆している。結果は図5に示されている。
【0302】
親和性を、ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗体に対してSPRを用いて評価した。結果が表5に示されている。単量体Fcは、FcRnに対して著しい単量体結合性を維持した(単量体Fc:KD=194nMの親和性;二価結合性を有する完全長抗体:KD=15.4nMの親和性)。
【0303】
実施例3:
抗CD19x抗NKp46二重特異的単量体Fcドメインポリペプチドの作製
NK細上の活性化受容体が標的細胞の溶解に寄与し得るかは不明であり、抗NKp46抗体がNKp46をブロックし得るため、細胞毒性がNKp46のトリガーによって媒介することができたか否かは不明であった。本発明者らは、二重特異的タンパク質形態が、NKp46のトリガーを引き起こすことができたか否か、さらに標的細胞の非存在下でNKp46アゴニズムを誘導することなく、標的から離れた不適切なNK活性化及び/又は標的細胞に対する全活性の低下をもたらすことができたかを調べた。
【0304】
新規な二重特異的タンパク質形態を、FcRnには結合するがFCγRには結合しない一本鎖タンパク質として開発した。加えて、2つ又は3つのポリペプチド鎖を含み、Fcドメインが単量体を維持している多量体タンパク質を開発し、この多量体タンパク質は、scFv形態に変換されたときにそれらの標的に対する結合性を維持しない抗体可変領域での使用に適合している。scFv形態は、抗体のスクリーニングに便利に使用することができ、少なくとも1つの結合領域をF(ab)構造として含めることにより、任意の抗標的(例えば、抗腫瘍)抗体可変領域を、抗体がscFvとして結合性を維持するか否かにかかわらず、二重特異的タンパク質内のF(ab)形態として二重特異的構築物で直接発現させて試験することができ、それにより、利用可能な抗体を単純にスクリーニングしてその数を増加させることができる。Fcドメインが単量体を維持するこれらの形態は、NKp46又は標的抗原に対する最適な結合性を可能にし得る最大の配座柔軟性を維持するという利点を有する。
【0305】
異なる構築物を、実施例2-1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvからの可変ドメインDNA及びアミノ酸配列、及び実施例1に示されたNKp46受容体に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて、二重特異的抗体の調製に使用するために作製した。また、NKp46受容体に特異的な既存の抗体Bab281(Beckman Coulter,Inc.(Brea,CA,USA)が市販するmIgG1(Pessino et al,J.Exp.Med,1998,188(5):953-960 and Sivori et al,Eur J Immunol,1999.29:1656-1666も参照されたい))からの可変領域を抗NKp46として用いて作製した。
【0306】
Fcドメインが、一本鎖ポリペプチドで、又は1つの鎖のみがFcドメインを有する多量体で単量体を維持するために、CH3-CH3二量体化が、2つの異なる戦略:(1)変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Yを含むCH3ドメインの使用によって、又は(2)直列型CH3ドメインが互いに結合された可撓性リンカーによって分離され、それにより、鎖間CH3-CH3二量体化を防止する直列型CH3ドメインの使用によって防止された。点変異を有する単量体CH2-CH3Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2-1と同様であった。直列型CH3ドメインを有する単量体CH2-CH3-リンカーCH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、図6A図6Dに示されている。
【0307】
抗CD19 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列は、実施例2-1と同様であった。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。以下に、抗NKp46 scFvの軽鎖及び重鎖DNA及びアミノ酸配列が示される。
【0308】
【表8】
【0309】
【表9】
【0310】
形態1(F1)(抗CD19-IgG1-Fcmono-抗NKp46(scFv))
形態1(F1)のドメイン構造が図6Aに示されている。二重特異的Fc含有ポリペプチドを、腫瘍抗原CD19(抗CD19 scFv)に特異的なscFv及びNKp46受容体に特異的なscFvをベースに構築した。このポリペプチドは、以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する一本鎖ポリペプチドである。
(VK-VH)抗CD19-CH2-CH3-(VH-VK)抗NKp46
【0311】
アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。図2に示されている最終ポリペプチドのドメイン配置(CH2ドメインの星は、任意選択のN297S変異を示す)では、抗CD3 scFvが抗NKp46 scFvによって置換されている。(VK-VH)単位は、VHドメインとVKドメインとの間にリンカーを含む。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的ポリペプチドのアミノ酸配列(完全な配列(成熟タンパク質))が、以下の表3に列記された対応する配列番号に示されている。
【0312】
【表10】
【0313】
形態2(F2):CD19-F2-NKp46-3
F2ポリペプチドのドメイン構造が図6Aに示されている。単量体CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、実施例2-1と同様であり、CH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y)を含む。ヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK-VH)抗CD19-CH2-CH3-VH抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CK。
【0314】
(VK-VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(即ち、scFv)から構成されていた。二重特異的ポリペプチドの他の形態と同様に、アミノ酸配列STGSを有するCH3/VHリンカーペプチドをコードするDNA配列を、CH3-VH接合部に特定のSall制限部位を挿入するために設計した。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F2タンパク質の第1鎖及び第2鎖のアミノ酸配列は、配列番号140及び141に示されている。
【0315】
形態3(F3):CD19-F3-NKp46-3
F3ポリペプチドのドメイン構造が図6Aに示されている。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、同じポリペプチド鎖上の2つのCH3ドメインが互いに結合し、それにより、異なる二重特異的タンパク質間の二量体化が防止される直列型CH3ドメインを含んでいた。
【0316】
一本鎖ポリペプチドは、以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する。
(VK-VH)抗CD19-CH2-CH3-CH3-(VH-VK)抗NKp46
【0317】
(VK-VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(scFv)から構成されていた。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、3.4mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィール有していた。F3タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号142に示されている。
【0318】
形態4(F4):CD19-F4-NKp46-3
F4ポリペプチドのドメイン構造が図6Aに示されている。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F3と同様に直列型CH3ドメインを含むが、さらに、N連結グリコシル化を防止してFcγR結合性を消失させるN297S変異を含んでいた。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、1mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィール有していた。NKp46-3可変ドメインを有するF4タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号143に示されている。
【0319】
形態8(F8)
F8ポリペプチドのドメイン構造が図6Bに示されている。単量体CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、CH3ドメイン変異(変異(EU付番)L351K、T366S、P395V、F405R、T407A、及びK409Y、並びにN連結グリコシル化を防止してFcγR結合性を消失させるためのN297S変異)を含む形態F2と同様であった。F8タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F8Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F8B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F8C)。変異型F8B及びF8Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。ヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-VH抗NKp46-CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK
【0320】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、3.7mg/L(F8C)の高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。NKp46-3可変領域を有するF8タンパク質(C変異体)の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号144、145、及び146に示されている。
【0321】
形態9(F9):CD19-F9-NKp46-3
F9ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びそれぞれCH1-CKの二量体化によって中心鎖に結合された2つのポリペプチド鎖を有する三量体ポリペプチドである。三量体F9タンパク質のドメイン構造が図6Bに示されており、CH1とCKドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインは、抗体がscFv形態で機能を支持するか否かにかかわらず、この抗体の使用を可能にするF(ab)構造を有する。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F4と同様の直列型CH3ドメイン及びN297S置換を含むCH2ドメインを含んでいた。F9タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F9Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F9B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F9C)。変異型F9B及びF9Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。このヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-VH抗NKp46-CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CH1、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK
【0322】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、8.7mg/L(F9A)及び3.0mg/L(F9B)の高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。
【0323】
F9タンパク質変異型F9Aの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号147、148、及び149に示されている。F9タンパク質変異型F9Bの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号150、151、及び152に示されている。F9タンパク質変異型F9Cの3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号153、154、及び155に示されている。
【0324】
形態10(F10):CD19-F9-NKp46-3
F10ポリペプチドは、中心ポリペプチド鎖、及びCH1-CKの二量体化によって中心鎖に結合された第2のポリペプチド鎖を有する二量体タンパク質である。二量体F10タンパク質のドメイン構造が図6Bに示され、CH1とCKドメインとの間の結合は、鎖間ジスルフィド結合である。2つの抗原結合ドメインの一方はFab構造を有し、且つ他方はscFvである。CH2-CH3 Fc部分のDNA及びアミノ酸配列は、形態F4と同様の直列型CH3ドメイン及びN297S置換を有するCH2ドメインを含んでいた。加えて、F10タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F10Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されている(F10B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F10C)。変異型F10B及びF10Cは、中心鎖のホモ二量体の形成を防止することによって作製に利点を提供した。(VK-VH)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(scFv)から構成されていた。ヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-(VH-VK)抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK。
【0325】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/L(F10A)の良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F10Aタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号156(第2鎖)及び157(第1鎖)に示されている。F10Bタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号158(第2鎖)及び159(第1鎖)に示されている。F10Cタンパク質変異体の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号160(第2鎖)及び161(第1鎖)に示されている。
【0326】
形態11(F11):CD19-F11-NKp46-3
F11ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されている。このヘテロ二量体タンパク質は、F10に類似しているが、抗原結合ドメインの構造が逆である。2つの抗原結合ドメインの一方はFab様構造を有し、且つ他方はscFvである。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK-VH)抗CD19-CH2-CH3-CH3-VH抗NKp46-CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CH1。
【0327】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F11タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号162(第1鎖)及び配列番号163(第2鎖)に示されている。
【0328】
形態12(F12):CD19-F12-NKp46-3
二量体F12ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されており、CH1とCKドメインとの間の結合は、ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体タンパク質は、F11に類似しているが、F(ab)構造内のCH1とCKドメインが逆である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
(VK-VH)抗CD19-CH2-CH3-CH3-VH抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CK。
【0329】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.8mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。F12タンパク質のDNA及びアミノ酸配列が、以下に示されている。F12タンパク質の2つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号164(第1鎖)及び配列番号165(第2鎖)に示されている。
【0330】
形態17(F17):CD19-F17-NKp46-3
三量体F17ポリペプチドのドメイン構造が図6Cに示されており、CHとCKドメインとの間の結合はジスルフィド結合である。ヘテロ二量体タンパク質は、F9と同様であるが、VH及びVKドメイン、並びにC末端F(ab)構造内のCH1及びCKドメインは、それぞれ、それらのパートナーと逆である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-CH3-VK抗NKp46-CH1、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VH抗NKp46-CK、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK
【0331】
加えて、F17タンパク質の3つの変異体を作製した:(a)ヒンジ領域のシステイン残基が完全なままである(野生型、F17Aと呼ばれる)、(b)ヒンジ領域のシステイン残基がセリン残基によって置換されえいる(F10B)、及び(c)リンカー配列GGGSSがヒンジの残基DKTHTCPPCPを置換している(F17C)。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。F17Bタンパク質の3つの鎖のアミノ酸配列は、配列番号166、167、及び168に示されている。
【0332】
実施例4:
二量体Fcドメインを有する二重特異的NKp46抗体形態
二量体Fcドメインを有する新規なタンパク質構築物を開発し、このタンパク質構築物は、実施例3の単量体Fcドメインタンパク質の利点を共有するが、高い親和性でFcRnに結合し、さらにFcγRに対して低い結合性を有する、又は結合性が消失している。このポリペプチド形態を、(VH-(CH1/CK)-CH2-CH3-)単位又は(VK-(CH1又はCK)-CH2-CH3-)単位を有する中心鎖を含むヘテロ二量体タンパク質の機能を調べるために試験した。次いで、CH3ドメインの一方又は両方は、任意選択により介在アミノ酸配列若しくはドメインを介して、可変ドメイン(分離されたポリペプチド鎖上の可変ドメインに結合する単一可変ドメイン)、直列型可変ドメイン(例えば、scFv)、又は単一可変ドメインとして抗原に結合することができる単一可変ドメインに融合される。次いで、2つの鎖が、CH1-CK二量体化によって結合してジスルフィド結合二量体を形成する、又は第3鎖と結合して三量体を形成する。形態のこのファミリーのメンバーは、ナイーブ抗体又は他の二重特異的構築物と比較して低い配座柔軟性を有し得る。
【0333】
様々な構築物を、二重特異的抗体の調製に使用するために、実施例2-1に記載の腫瘍抗原CD19に特異的なscFvに由来する可変ドメインDNA及びアミノ酸配列及び実施例1で明らかにされたNKp46に特異的な抗体からの異なる可変領域を用いて作製した。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。ドメイン構造は、図6A図6Dに示されている。
【0334】
形態5(F5):CD19-F5-NKp46-3
三量体F5ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合(鎖上のCH1/CKとCH2ドメイン間に図形で示されている)及びCH1とCKドメインとの間の鎖間結合は鎖間ジスルフィド結合である。ヘテロ三量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-VH抗NKp46-CK、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK-CH2-CH3、及び
(3)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第3のポリペプチド鎖:
VK抗NKp46-CH1
【0335】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、37mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号169(第2鎖)、170(第1鎖)、及び171(第3鎖)に示されている。
【0336】
形態6(F6):CD19-F6-NKp46-3
ヘテロ三量体F6ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されている。F6タンパク質は、F5と同じであるが、N連結グリコシル化を防止するためのN297S置換を有する。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、12mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号172(第2鎖)、173(第1鎖)、及び174(第3鎖)に示されている。
【0337】
形態7(F7):CD19-F7-NKp46-3
ヘテロ三量体F7ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されている。F7タンパク質は、F6と同じであるが、中心鎖とVK抗NKp46-CH1鎖との二量体種の少数集団の形成を防止するために、それらのC末端でFcドメインに連結されたCH1及びCKドメインにシステインのセリンでの置換を有する。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、11mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号175(第2鎖)、176(第1鎖)、及び177(第3鎖)に示されている。
【0338】
形態13(F13):CD19-F13-NKp46-3
二量体F13ポリペプチドのドメイン構造が図6Dに示されており、ヒンジドメイン間の鎖間結合(鎖上のCH1/CKとCH2ドメイン間に示されている)及びCH1とCKドメイン間の鎖間結合は、鎖間ジスルフィド結合である。このヘテロ二量体は、以下から構成される。
(1)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第1(中心)のポリペプチド鎖:
VH抗CD19-CH1-CH2-CH3-(VH-VK)抗NKp46、及び
(2)以下のように(N末端からC末端に)配置されたドメインを有する第2のポリペプチド鎖:
VK抗CD19-CK-CH2-CH3。
【0339】
(VH-VK)単位は、VHドメイン、リンカー、及びVK単位(scFv)から構成されていた。
【0340】
タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、6.4mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。2つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号178(第2鎖)及び179(第1鎖)に示されている。
【0341】
形態14(F14):CD19-F14-NKp46-3
二量体F14ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F14ポリペプチドは、F13形態の構造を共有する二量体ポリペプチドであるが、野生型Fcドメイン(CH2-CH3)の代わりに、F14は、N連結グリコシル化をなくすためにCH2ドメイン変異N297Sを有する。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、2.4mg/Lの高い産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。2つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号180(第2鎖)及び181(第1鎖)に示されている。
【0342】
形態15(F15):CD19-F15-NKp46-3
三量体F15ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F15ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のN末端VH-CH1とVK-CK単位とが逆であるため異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。二重特異的タンパク質を、prot-Aビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製し、分析し、且つSECによって精製した。このタンパク質は、0.9mg/Lの良好な産生収率を示し、単純なSECプロフィールを有していた。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号182(第2鎖)、183(第1鎖)、及び184(第3鎖)に示されている。
【0343】
形態16(F16):CD19-F16-NKp46-3
三量体F16ポリペプチドのドメイン構造が図6Eに示されている。F16ポリペプチドは、F6形態の構造を共有するが、中心鎖と第2鎖との間のC末端VH-CKとVK-CH1単位とが逆であるため異なっている三量体ポリペプチドである。タンパク質を、実施例2-1と同様にクローニングし、産生し、且つ精製した。3つのポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号185(第2鎖)、186(第1鎖)、及び187(第3鎖)に示されている。
【0344】
実施例5:
表面プラズモン共鳴(SPR)による、二重特異的タンパク質によるNKp46結合親和性
Bacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)で、25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare)及びNaOH 10mMは、それぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムを、Biacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。プロテインAを(GE Healthcare)から購入した。ヒトNKp46組換えタンパク質を、クローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。
【0345】
プロテインAの固定化
プロテインAタンパク質を、Sensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面を、EDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。プロテインAを、結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0346】
結合試験
まず、二重特異的タンパク質を、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の抗体からの異なる抗NKp46可変領域を有する実施例2に記載の形態F1で試験した。次に、抗体を、NKp46-3抗体からの抗NKp46可変領域を有する異なる形態F3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14として試験し、完全長ヒトIgG1のようなNKp46-3抗体と比較した。
【0347】
二重特異的タンパク質を1μg/mLで、プロテインAチップ上で捕捉し、組換えヒトNKp46タンパク質を、5μg/mLで、捕捉した二重特異的抗体に注入した。ブランク差し引きのために、サイクルを再び行って、NKp46タンパク質を泳動用緩衝液に替えた。
【0348】
Bab281抗体を、SPRによってNKp46に対する結合性について別個に試験し、さらに細胞表面にヒトNKp46構築物を発現する細胞株を用いてフローサイトメトリーによって試験した。FACSスクリーニングのために、上清中の反応抗体の存在を、PEで標識されたヤギ抗マウスポリクローナル抗体(pAb)によって明らかにした。SPC及びFACSの結果は、Bab281ベースの抗体が、NKp46細胞株にもNKp46 Fcタンパク質にも結合しないことを示した。Bab281は、二重特異的形態で存在する場合、その標的に対する結合性を失った。
【0349】
親和性試験
一価親和性試験を、製造者(Biacore GE Healthcare kinetic wizard)が推奨する正規のCapture-Kineticプロトコルに従って行った。62.5~400nMの範囲のヒトNKp46組換えタンパク質の7段階希釈物を、捕捉した二重特異的抗体に連続的に注入し、再生の10分前に解離させた。全てのセンサーグラムのセットを、1:1動態結合モデルを用いてフィッティングした。
【0350】
結果
SPRは、NKp46-1、2、3、及び4 scFv結合ドメインを有する形態F1の二重特異的ポリペプチドは、NKp46に結合したが、他の抗NKp46抗体のscFvを有する他の二重特異的ポリペプチドは、NKp46結合性を維持しなかったことを示した。単量体二重特異的形態で結合性を維持しなかった結合ドメインは、当初はNKp46に結合したが、二重特異的形態への変換時に結合性を失った。形態F1、F2、F3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、F14の二重特異的ポリペプチドの全ては、NKp46-3可変領域を用いる場合にNKp46に対する結合性を維持した。
【0351】
図7Aは、図7Bのそれぞれの差し引きセンサーグラムを作成するために使用された生データ曲線、サンプル(CD19-F1-NKp46-1)、及びブランク(緩衝液)を示す代表定な重畳センサーグラムを示す。差し引きセンサーグラムは、サンプルのセンサーグラムからブランクのセンサーグラムを差し引くことによって得た。センサーグラムは、ブランク差し引きの前の捕捉ステップの注入の開始時にy軸及びx軸で0に合わせた。
【0352】
図7Bは、CD19-F1-NKp46-1組換えタンパク質の捕捉された二重特異的単量体ポリペプチドに対する結合を示す代表的な重畳差し引きセンサーグラムを示す。センサーグラムは、サンプルステップの注入の開始時にy軸及びx軸で0に合わせた。
【0353】
一価親和性並びに動力学的結合及び解離速度定数が以下の表3に示されている。
【0354】
【表11】
【0355】
実施例6:
Daudi腫瘍標的に対するNK細胞とFc含有NKp46xCD19二重特異的タンパク質との結合
単量体Fcドメイン及び実施例3に記載の一本鎖F1又は二量体F2形態に従って配置されたドメイン、及びNKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的抗体を、NK細胞にCD19陽性腫瘍標的細胞(Bリンパ芽球細胞株によって十分に特徴付けられるDaudi)を溶解させる機能的能力について試験した。F2タンパク質は、scFv形態ではNKp46に対する結合性を失うが、F2のF(ab)様形態では結合性を維持するNKp46-9の可変領域をさらに含んでいた。
【0356】
簡単に述べると、(a)静止ヒトNK細胞、及び(b)ヒトNKp46でトランスフェクトされたヒトNK細胞株KHYG-1のそれぞれの細胞溶解活性を、U底96ウェルプレートで、典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×10細胞)で標識し、次いで、異なる濃度の単量体二重特異的抗体の存在下で、KHYG-1では50、静止NK細胞では(F1タンパク質に対して)10又は(F2タンパク質に対して)8.8に等しいエフェクター/標的比で、hNK46でトランスフェクトされたKHYG-1と混合した。短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、上清のサンプルを取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXT ベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出-平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出-平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0357】
結果
KHYG-1 hNKp46 NK実験モデルでは、各二重特異的抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9が、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)及びCD19/CD3二重特異的抗体)と比較して、ヒトKHYG-1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってKHYG-1 hNKp46によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。
【0358】
静止NK細胞をエフェクターとして使用したときに、各二重特異的抗体NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9が同様に、陰性対照(ヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体)と比較して、ヒトNK細胞によるDaudi細胞の特異的溶解を誘導し、それにより、これらの抗体が、CD19/NKp46架橋によってヒトNK細胞によるDaudi標的細胞の溶解を誘導することが示された。リツキシマブ(RTX、キメラIgG1)を、静止ヒトNK細胞によるADCC(抗体依存性細胞傷害)の陽性対照として使用した。RTX(このアッセイでは10μg/mlで)で得られた最大応答は、21.6%の特異的溶解であり、二重特異的抗体が高い標的細胞溶解活性を有することを例証した。静止NK細胞での実験の結果は、一本鎖F1タンパク質については図8Aに示され、二量体F2タンパク質については図8Bに示されている。
【0359】
実施例7:
完全長抗NKp46 mAbと枯渇抗腫瘍mAbとの比較:NKp46xCD19二重特異的タンパク質が非特異的NK活性化を防止する
これらの試験は、二重特異的抗体が、非特異的NK細胞の活性化を引き起こすことなく、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。
【0360】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を、以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46-3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較(ADCC inducing antibody control comparator)としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0361】
実験は、対照として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ、高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照;抗CD52抗体アレムツヅマブ、標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1;並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1-IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。
【0362】
様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのNK細胞の活性化に対する機能的な影響について試験した。
【0363】
簡単に述べると、NK活性化を、フローサイトメトリーによって、NK細胞でのCD69及びCD107の発現を評価することによって試験した。アッセイは、完全RPMI、150μL最終/ウェルで、96Uウェルプレートで行った。エフェクター細胞は、ドナーから精製した新鮮なNK細胞とした。標的細胞は、Daudi(CD19-陽性)、HUT78(CD19-陰性)、又はK562(NK活性化対照細胞株)とした。K562陽性対照に加えて、以下の3つの条件を試験した。
>NK細胞のみ
>NK細胞対Daudi(C19+)
>NK細胞対HUT78(CD19-)
【0364】
エフェクター:標的(E:T)比は、2.5:1(50,000E:20,000T)とし、抗体の希釈範囲は、1/4希釈で10μg/mLから始めた(n=8の濃度)。抗体、標的細胞、及びエフェクター細胞を混合し、300gで1分間回転させ、37℃で4時間インキュベートし、500gで3分間回転させ、染色緩衝液(SB)で2回洗浄し、50μLの染色Abミックスを加え、300gで30分間インキュベートし、CellFixを含むSB再懸濁ペレットで2回洗浄し、4℃で一晩保存し、Canto II(HTS)で蛍光を明らかにした。
【0365】
結果
1.NK細胞のみ
結果は図9Aに示されている。標的抗原発現細胞の非存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)はいずれも、CD69又はCD107の発現による評価によるとNK細胞を活性化しなかった。完全長抗CD19もNK細胞を活性化しなかった。しかしながら、完全長抗NKp46抗体は、NK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アレムツヅマブも非常に高いレベルでNK細胞の活性化を誘導した。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0366】
2.NK細胞対Daudi(CD19+)
結果は図9Bに示されている。標的抗原発現細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の結合ドメインのそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化した。完全長抗CD19は、最良でも非常に低いNK細胞の活性化のみを示した。完全長抗NKp46抗体もアレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性化を超えた活性化の実質的な増加を示さなかった。図9は、完全長抗NKp46抗体が、NK細胞のみの存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示すことを示す。アレムツヅマブも、NK細胞のみの存在下で観察された活性と同様のレベルのNK細胞の活性化を誘導し、この設定のより高い抗体濃度(ET 2.5:1)では、活性化は、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体を用いたときよりも高かった。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0367】
3.NK細胞対HUT78(CD19-)
結果は図9Cに示されている。標的抗原陰性HUT78細胞の存在下で、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、NK細胞を活性化しなかった。しかしながら、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、NK細胞のみの存在下で観察された同様のレベルでNK細胞の検出可能な活性化を引き起こした。アイソタイプ対照抗体は、活性化を誘導しなかった。
【0368】
結論として、二重特異的抗NKp46タンパク質は、完全長単一特異的抗NKp46抗体、及び標的細胞の非存在下で同様にNK細胞を活性化する枯渇IgGアイソタイプの完全長抗体とは異なり、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができる。抗NKp46二重特異的タンパク質で達成されるNK細胞の活性化は、完全長抗CD19 IgG1抗体で観察される活性化よりも高かった。
【0369】
実施例8:
低いET比での枯渇抗腫瘍mAb:NKp46xCD19二重特異的タンパク質の効果の比較
これらの試験は、二重特異的抗体が、低いエフェクター:標的比で、癌標的細胞に対するNKp46媒介NK細胞活性化を媒介できるか否かを調べることを目的とした。この実施例に使用されるET比は、実施例7で使用された2.5:1のET比又は実施例6の10:1のET比よりもin vivoで遭遇するであろう設定に近いと考えられる1:1とした。
【0370】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、又はNKp46-9からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3に記載のF2形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質を、以下と比較した:
(a)完全長単一特異的抗NKp46抗体(ヒトIgG1のようなNKp46-3)、及び
(b)ADCC誘導抗体対照比較としての完全長ヒトIgG1のような抗CD19抗体。
【0371】
実験は、対象として以下をさらに含んでいた:リツキシマブ(高い発現レベルを有する標的抗原の抗CD20 ADCC誘導抗体対照);抗CD52抗体アレムツヅマブ(標的細胞及びNK細胞の両方に存在するCD52標的に結合するヒトIgG1)、並びに陰性対照アイソタイプ対照治療抗体(標的細胞(HUG1-IC)に存在する標的に結合しないヒトIgG1)。様々なタンパク質を、CD19陽性腫瘍標的細胞(Daudi細胞)の存在下、CD19陰性CD16陽性標的細胞(HUT78 Tリンパ腫細胞)の存在下、且つ標的細胞の非存在下でのCD69又はCD107の発現により評価される、NK細胞活性化に対する機能的な影響について試験した。これらの実験は、ET比を1:1としたことを除いて実施例7と同様に行った。
【0372】
結果
結果は図10に示されている(図10A:CD107及び図10B:CD69)。標的抗原発現細胞の存在下では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体(NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、NKp46-4、及びNKp46-9の可変領域のそれぞれを含む)は全て、Daudi細胞の存在下でNK細胞を活性化した。
【0373】
Daudi細胞の存在下で二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、この設定で低い活性を有するADCC誘導抗体のような完全長ヒトIgG1抗CD19抗体よりも遥かに強力であった。さらに、この低いE:T比の設定では、二重特異的抗NKp46x抗CD19抗体によって誘導される活性化は、抗CD20抗体リツキシマブと同程度に強力であり、差異は、差異が2.5:1のET比で観察された濃度よりも10倍高い最高濃度でのみ観察された。
【0374】
標的細胞の非存在下又は標的抗原陰性HUT78細胞の存在下では、完全長抗NKp46抗体及びアレムツヅマブは、Daudi細胞の存在下で観察されたベースライン活性化と同様のレベルを示した。抗NKp46x抗CD19抗体は、HUT78細胞の存在下でNK細胞を活性化しなかった。
【0375】
結論として、二重特異的抗NKp46タンパク質は、標的細胞特異的にNK細胞を活性化することができ、より低いエフェクター:標的比は、NK細胞の活性化の媒介において従来のヒトIgG1抗体よりも有効である。
【0376】
実施例9:
動作機序の試験
NKp46-3からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF2、F3、F5、又はF6形態に従った配置を有するNKp46x抗CD19二重特異的抗体を、CD16-/NKp46+NK細胞株にCD19陽性腫瘍標的細胞を溶解させる機能的能力について、リツキシマブ(抗CD20 ADCC誘導抗体)、及びヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と比較した。
【0377】
簡単に述べると、CD16-/NKp46+ヒトNK細胞株KHYG-1の細胞溶解活性を、U底96ウェルプレートで、典型的な4時間の51Cr放出アッセイで評価した。Daudi細胞又はB221細胞を51Cr(50μCi(1.85MBq)/1×10細胞)で標識し、次いで、1/5希釈(n=8の濃度)で10-7mol/mLから始まる希釈範囲の試験抗体の存在下、50:1に等しいエフェクター/標的比でKHYG-1と混合した。
【0378】
短時間の遠心分離及び37℃で4時間のインキュベーション後、50μLの上清を取り出して、LumaPlate(Perkin Elmer Life Sciences,Boston,MA)に移し、51Crの放出をTopCount NXTベータ検出器(PerkinElmer Life Sciences,Boston,MA)で測定した。全ての実験条件を3連で分析し、特異的溶解のパーセンテージを以下のように決定した:100×(平均cpm実験放出-平均cpm自然放出)/(平均cpm総放出-平均cpm自然放出)。総放出のパーセンテージは、2% Triton X100(Sigma)での標的細胞の溶解によって得られ、自然放出は、培地(エフェクターもAbsも含まない)中の標的細胞に一致する。
【0379】
結果
結果は、図11A(KHYG-1対Daudi)及び図11B(KHYG-1対B221)に示されている。KHYG-1 hNKp46 NK実験モデルでは、各NKp46xCD19二重特異的タンパク質(形態F2、F3、F5、及びF6)は、ヒトKHYG-1 hNKp46 NK細胞株によるDaudi細胞又はB221細胞の特異的溶解を誘導したが、リツキシマブ及びヒトIgG1アイソタイプ対照(IC)抗体は誘導しなかった。
【0380】
実施例10:
様々な二重特異的形態のFcRnに対する結合性
様々な抗体形態のヒトFcRNに対する親和性を、実施例2~6に記載されているように、組換えFcRnタンパク質をSensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定化することによって、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。
【0381】
ヒトIgG1定常領域を有するキメラ完全長抗CD19抗体、及びNKp46-3(F2ではNKp46-2)からの抗NKp46可変ドメインを有する実施例3又は4に記載のF3、F4、F5、F6、F9、F10、F11、F13、又はF14形態に従った配置を有するNKp46xCD19二重特異的タンパク質をそれぞれの分析物について試験し、全てのセンサーグラムを、定常状態又は1:1のSCK結合モデルを用いてフィッティングした。
【0382】
結果は以下の表4に示されている。二量体Fcドメイン(形態F5、F6、F13、F14)を有する二重特異的タンパク質は、完全長IgG1抗体の親和性と同様の親和性でFcRnに結合した。単量体Fcドメイン(F3、F4、F9、F10、F11)を有する二重特異的タンパク質もFcRnに対する結合性を示したが、二量体Fcドメインを有する二重特異的タンパク質よりも低い結合性であった。
【0383】
【表12】
【0384】
実施例11
Fcγに対する結合性
ここでは2つのscFvである2つの抗原結合ドメイン間に配置されたそのCH2-CH3ドメインを有する抗CD19-F1-抗NKp46を、このような二重特異的単量体Fcタンパク質が、Fcγ受容体に対する結合性を維持できるか否かを決定するために評価した。
【0385】
ヒトIGG1抗体及びCD19/NKp46-1二重特異的抗体をCM5チップに固定した。組換えFcγR(カニクイザル及びヒトCD64、CD32a、CD32b、及びCD16)をクローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。図18は、固定化ヒトIgG1対照(灰色)及びCD19/NKp46-1二重特異的抗体(黒色)に対するカニクイザル(Macaca fascicularis)組換えFcgR(上のパネル;CyCD64、CyCD32a、CYCD32b、CyCD16)及びヒト組換えFcgR(下のパネル;HuCD64、HuCD32a、HuCD32b、HuCD16a)の結合性を示す重畳センサーグラムを示す。センサーグラムは、サンプルの注入開始時にy軸及びx軸で0に合わせた。
【0386】
図18は、完全長野生型ヒトIgG1が全てのカニクイザル及びヒトFcγ受容体に結合したが、CD19/NKp46-1二重特異的抗体がいずれの受容体にも結合しなかったことを示す。
【0387】
実施例12:
抗NKp46抗体のエピトープマッピング
A.競合アッセイ
競合アッセイを、以下に記載の方法に従って表面プラズモン共鳴(SPR)によって行った。
【0388】
Biacore T100の一般的な手順及び試薬
SPR測定を、Biacore T100装置(Biacore GE Healthcare)で、25℃で行った。全てのBiacore実験では、HBS-EP+(Biacore GE Healthcare)及びNaOH 10mM NaCl 500mMがそれぞれ泳動用緩衝液及び再生緩衝液としての役割を果たした。センサーグラムを、Biacore T100 Evaluationソフトウェアで分析した。抗6xHis標識抗体をQIAGENから購入した。ヒト6xHis標識NKp46組換えタンパク質(NKp46-His)をクローニングし、産生し、且つInnate Pharmaで精製した。
【0389】
抗6xHIs標識抗体の固定化
抗His抗体を、Sensor Chip CM5上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合により固定した。チップ表面を、EDC/NHS(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩及びN-ヒドロキシスクシンイミド(Biacore GE Healthcare))で活性化した。プロテインA及び抗His抗体を、結合緩衝液(10mM酢酸、pH5.6)で10μg/mlに希釈し、適切な固定化レベル(即ち、2000~2500RU)に達するまで注入した。残りの活性化基の不活性化を、100mMエタノールアミン pH8(Biacore GE Healthcare)を用いて行った。
【0390】
競合試験
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4に一致するNKp46結合領域を有する正常なヒトIgG1キメラ親抗体を、抗6xHis標識抗体チップを用いて行われた競合試験に使用した。
【0391】
1μg/mLの、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4をベースとするNKp46結合領域を有する二重特異的抗体を、プロテインAチップで捕捉し、組換えヒトNKp46タンパク質を、NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4の群の第2の試験二重特異的抗体と共に5μg/mLで注入した。
【0392】
NKp46-1、NKp46-2、NKp46-3、又はNKp46-4のいずれも、NKp46に対する結合について互いに競合せず、これらの抗体はそれぞれ異なるエピトープを表している。
【0393】
B.NKp46変異体に対する結合性
抗NKp46抗体のエピトープを定義するために、本発明者らは、NKp46の2つのドメイン上の分子表面に露出された1つ、2つ、又は3つのアミノ酸置換によって定義されるNKp46変異体を設計した。このアプローチにより、以下の表に示されている、Hek-293T細胞でトランスフェクトされた42の変異体が作製された。以下の表5の標的アミノ酸変異は共に、配列番号1の付番を用いて示されている(Jaron-Mendelson et al.(2012)J.Immunol.88(12):6165-74で使用された付番にも一致している)。
【0394】
【表13】
【0395】
変異体の生成
NKp46変異体をPCRによって生成した。増幅された配列をアガロースゲルにかけて、Macherey Nagel PCR Clean-Up Gel Extractionキット(参照番号740609)を用いて精製した。次いで、それぞれの変異体について生成された2つ又は3つの精製PCR産物を、ClonTech InFusionシステムで発現ベクターに連結した。変異配列を含むベクターを、Miniprepで調製し、配列決定した。配列決定後、変異配列を含むベクターを、Promega PureYield(商標)Plasmid Midiprep Systemを用いてMiniprepで調製した。HEK293T細胞をDMEM培地(Invitrogen)で増殖させ、InvitrogenのLipofectamine 2000を用いてベクターでトランスフェクトし、導入遺伝子発現の試験前にCO2インキュベーターで、37℃で24時間インキュベートした。
【0396】
抗NKp46のHEK293Tトランスフェクト細胞に対する結合性のフローサイトメトリー分析
全ての抗NKp46抗体を、それらのそれぞれの変異体に対する結合性についてフローサイトメトリーによって試験した。1つ又はいくつかの変異体に対する結合性をある濃度(10μg/ml)で失う抗体を決定するために最初の実験を行った。結合性の消失を確認するために、抗体の滴定を、結合性がNKp46変異体(1~0,1~0.01~0.001μg/ml)によって影響を受けると思われる抗体に対して行った。
【0397】
結果
結果は図12図17に示されている。抗体NKp46-1は、(図12B(変異体2)と比較して図12A(NKp46野生型)に示されているように、残基K41、E42、及びE119に変異を有する)変異体2に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、(図13B(変異Supp7)と比較して図13A(NKp46野生型)に示されているように、残基Y121及びY194に変異を有する)追加変異Supp7に対して低い結合性を有していた。
【0398】
抗体NKp46-3は、(図15B(変異体19)と比較して図15A(NKp46野生型)に示されているように、残基I135及びS136に変異を有する)変異体19に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、(図14B(変異Supp8)と比較して図14A(NKp46野生型)に示されているように、残基P132及びE133に変異を有する)追加変異Supp8に対して低い結合性を有していた。
【0399】
抗体NKp46-4は、(図16B(変異体6)と比較して図16A(NKp46野生型)に示されているように、残基R101及びV102に変異を有する)変異体6に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-1はまた、(図17B(変異Supp6)と比較して図17A(NKp46野生型)に示されているように、残基E104及びL105に変異を有する)追加変異Supp6に対して低い結合性を有していた。
【0400】
この試験では、本発明者らは、抗NKp46抗体(NKp46-1、NKp46-3、及びNKp46-4)のエピトープを特定した。NKp46-4、NKp46-3、及びNKp46-1のエピトープは、それぞれNKp46のD1ドメイン、D2ドメイン、及びD1/D2接合部にある。R101、V012、E104、及びL105は、NKp46結合性に不可欠の残基であり、NKp46-4のエピトープの一部と定義される。NKp46-1のエピトープは、K41、E42、E119、Y121、及びY194残基を含む。NKp46-3のエピトープは、P132、E133、I135、及びS136残基を含む。
【0401】
実施例13:
既存の形態と比較して改善された様々な二重特異的形態の産生プロフィール及び産生収率
ブリナツモマブ、並びにF1~F7形態及びNKp46-3をベースとするNKp46及びCD19結合領域を有する2つの二重特異的抗体、並びにブリナツモマブをそれぞれ同じプロトコルに従って、同じ発現系を用いて形態6(F6)、DART形態、及びBITE形態の下でクローニングし、産生した。F6、DART、及びBITE二重特異的タンパク質を、F6にはprot-Aビーズを用い、DART及びBITEにはNI-NTAビーズを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。精製されたタンパク質をさらに分析し、且つSECによって精製した(図19A)。BITE及びDARTは、F6と比較して非常に低い産生収率を示し、非常に複雑なSECプロフィールを有していた。図19B(矢印)に示されているように、DART及びBITEは、予想SEC画分(BITEでは3及び4、DARTでは4及び5)でのクマーシー染色後のSDS-PAGEによってわずかに検出可能であり、F6形態は、多量体二重特異的タンパク質を含む主ピーク(画分3)を有する、明確で単純なSEC及びSDS-PAGEプロフィールを示した。F6形態の主ピークは、全タンパク質の約30%に一致する。これらの観察は、F1~F17タンパク質にも当てはまり(データは不図示)、これらの形態中に存在するFcドメイン(又はFc由来ドメイン)が産生を促進し、二重特異的タンパク質の質及び溶解性を改善することを示唆している。
【0402】
さらに、タンパク質F1~F17中に存在するFcドメインは、例えば、プロテインAによって精製することができないBiTe及びDART抗体の場合、治療製品の不所望の部分として後に残存するペプチドタグの組み込みを必要とすることなく、アフィニティークロマトグラフィーに適応しているという利点を有する。F1~F17抗体は全て、プロテインAに結合される。以下の表6は、様々な形態の産生性を示す。
【0403】
【表14】
【0404】
表題及び副題は、本明細書では便宜のためにのみ使用され、本発明を限定すると決して一切解釈するべきではない。上述の要素の全ての可能なバリエーションでのあらゆる組み合わせが、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、本発明に包含される。本明細書で述べられた値の範囲は、本明細書に特段の記載がない限り、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値について個々に述べられる省略方法の役割を単に果たすものであり、それぞれの別個の値は、本明細書で個々に述べられたかのように本明細書に包含される。特段の記載がない限り、本明細書に記載される全ての正確な値は、対応するおおよその値を代表する(例えば、特定の因子又は測定値に関して記載される全ての正確な例示的な値は、適切な場合は「約」によって変更される、対応するおおよその測定値を示すものと見なすことができる)。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特段の記載がない限り、又は文脈から他の旨である場合を除き、任意の適切な順序で行うことができる。
【0405】
本明細書に記載されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「~など」)の使用は、単に本発明をより明確にするためのものであり、特段の記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明確な記載がない限り、いずれの要素も本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈される語は本明細書には存在しない。
【0406】
語、例えば、1つ又は複数の要素を指す語を用いた、本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書の説明は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その1つ又は複数の特定の要素「からなる」、「から実質的になる」、又は「を実質的に含む」本発明の同様の態様又は実施形態を支援するためである(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載される組成物は、特段の記載がない限り、又は文脈から明確に他の旨である場合を除き、その要素からなる組成物の記載でもあることを理解されたい)。
【0407】
本発明は、適用される法律によって許容される最大程度まで、本明細書に記載される態様又は請求項で述べられる主題の全ての変更形態及び均等物を含む。
【0408】
本明細書で述べられる全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が、参照により含められると具体的且つ個別に示されたかのように、参照によりそれらの全内容が本明細書に組み入れられる。
【0409】
前述の発明は、理解を明確にするために例示及び例によってある程度詳細に説明されたが、当業者であれば、添付の特許請求の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変形形態及び変更形態をなし得ることが本発明の教示から明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
【配列表】
2023051968000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0398
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0398】
抗体NKp46-3は、(図15B(変異体19)と比較して図15A(NKp46野生型)に示されているように、残基I135及びS136に変異を有する)変異体19に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-はまた、(図14B(変異Supp8)と比較して図14A(NKp46野生型)に示されているように、残基P132及びE133に変異を有する)追加変異Supp8に対して低い結合性を有していた。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0399
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0399】
抗体NKp46-4は、(図16B(変異体6)と比較して図16A(NKp46野生型)に示されているように、残基R101及びV102に変異を有する)変異体6に対して低い結合性を有していた。同様に、NKp46-はまた、(図17B(変異Supp6)と比較して図17A(NKp46野生型)に示されているように、残基E104及びL105に変異を有する)追加変異Supp6に対して低い結合性を有していた。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】