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  • 特開-プレキシフィラメント状シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052010
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】プレキシフィラメント状シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20230404BHJP
   D01D 5/11 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
D04H3/16
D01D5/11
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022204547
(22)【出願日】2022-12-21
(62)【分割の表示】P 2020203460の分割
【原出願日】2015-06-18
(31)【優先権主張番号】62/013,820
(32)【優先日】2014-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】メールフェルト ヤン ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ コルネイユ
(72)【発明者】
【氏名】マチュー ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッブス ノエル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】スコプリャク オレスト
(72)【発明者】
【氏名】ルモアーヌ クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルブイア セルジュ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良いバリア性および低い通気度の両方を示さなければならないハウスラップなどの用途に適したフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートを提供する。
【解決手段】0.002~0.2(m3/m2.分)@50gsmの標準化されたフラジール通気度、および150~250センチメートル@50gsmの標準化された水頭を有するプレキシフィラメント状構造物を有するシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.002~0.2m3/m2.分@50gsmの標準化されたフラジール通気度、および150~250cm@50gsmの標準化された水頭を有するプレキシフィラメント状構造物を含むシート。
【請求項2】
本質的にポリエチレンからなる、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記プレキシフィラメント状構造物が少なくとも9m2/gのBET表面積を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項4】
前記プレキシフィラメント状構造物が0.09m3/m2.分@50gsm以下の標準化されたフラジール通気度を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項5】
前記プレキシフィラメント状構造物が0.0075m3/m2.分@50gsm以上のフラジール通気度を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項6】
前記プレキシフィラメント状構造物が165~208センチメートル@50gsmの標準化された水頭を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項7】
前記プレキシフィラメント状構造物が9~25m2/gmのBET表面積を有する、請求項6に記載のシート。
【請求項8】
前記プレキシフィラメント状構造物が9~20m2/gmのBET表面積を有する、請求項6に記載のシート。
【請求項9】
前記プレキシフィラメント状構造物が30グラム/平方メートル以上の基本重量を有する、請求項1に記載のシート。
【請求項10】
少なくとも1つのシートが請求項1に記載のシートである2つ以上の複数のシートを含む複数層構造物。
【請求項11】
前記プレキシフィラメント状構造物が少なくとも9m2/gのBET表面積を有する、請求項10に記載の複数層構造物。
【請求項12】
請求項1に記載のシートから製造される熱により固化されたシート。
【請求項13】
少なくとも1つのシートが請求項12に記載のシートである2つ以上の複数のシートを含む複数層構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームラップ、防護衣、および、シートまたは布が良いバリア性および低い通気度の両方を示さなければならないその他の最終用途に適したフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートまたは布に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウスラップは、家または他の建物の外面をその建設中に、より詳しくは、堰板の取付け後および側壁/外装材の設置前に包むために使用される。
【0003】
ハウスラップは一般的に、外からの水または湿気に対する防湿層を提供し、さらに住宅の内部からの水蒸気透過を可能にするバリア層を含む。このようにして、建造物内への液体の水および空気(例えば、雨および風)の通過が制限され、それによって断熱材および構造部材に対する水による損傷を防ぎ、壁内の空気の移動を最小にする。同時に、建造物の内部から壁に入る水蒸気は、壁内で凝縮して場合によっては断熱材および構造部材に損傷を与えることがないように出ることができる。典型的なハウスラップバリア材には、E.I.Du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEによって商品名「DuPont(商標)Tyvek(登録商標)HomeWrap(登録商標)として販売されているスパンボンデッド高密度ポリエチレン繊維、E.I.Du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEによって商品名「DuPont(商標)Tyvek(登録商標)CommercialWrap(登録商標)」として販売されている不織布バリア材、Raven Industries,Inc.,Sioux Falls,SDによって商品名「Rufco-wrap」として販売されている高密度、直交積層の微細有孔ポリエチレンシート材料、およびAmoco Foam Products Company,Atlanta,GA、およびFabrene Inc.,Mississauga,Ontario,Canadaによってそれぞれ商品名「Amowrap Housewrap」および「Air-Gard(登録商標)Housewrap」として販売されている交差織り微細有孔ポリオレフィンシート材料が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウスラップは、低いフラジール通気度、ならびにさらに、高い水頭を必要とする。したがって、新たに実施される産業全体にわたるエネルギーおよび建築基準を満たしながらエネルギー効率と建物内の空気侵入および湿気発生に対する保護を改善する保護ラップを提供する必要がある。また、既存の骨組構造または開口に対する新たに実施されるコード要件を満たすかまたは超えるおよび/または建物の壁断面を増やさない保護ラップを使用する必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、0.002~0.2m3/m2.分@50グラム/平方メートル(gsm)の標準化されたフラジール通気度、および150~250cm@50gsmの標準化された水頭を有するシートに関する。
【0006】
本発明のさらなる実施形態が少なくとも9m2/gのBET表面積を有する。
【0007】
さらに別の実施形態において、シートが0.09m3/m2.分@50gsm以下の標準化されたフラジール通気度を有する。また、シートが0.0075m3/m2.分@50gsm以上の標準化されたフラジール通気度を有してもよい。
【0008】
さらに別の実施形態において、シートが165~208cm@50gsmの標準化された水頭を有する。
【0009】
さらに別の実施形態において、シートが9~25m2/gのBET表面積、またはさらに9~20m2/gのBET表面積を有する。
【0010】
また、シートが30グラム/平方メートル以上の基本重量を有してもよい。
【0011】
本発明はさらに、少なくとも1つのシートが0.002~0.2m3/m2.分@50gsmの標準化されたフラジール通気度、
I.150~250cm@50gsmの標準化された水頭、および
II.30gsm以上の基本重量
を有するプレキシフィラメント状構造物を含むシートである2つ以上の複数のシートを含む複数層構造物に関する。
【0012】
本発明の複数層構造物のさらなる実施形態が少なくとも9m2/gのBET表面積を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートを製造するための方法を示す紡糸セルの、縮尺通りではない略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願人らは、本開示における全ての引用された文献の全内容を具体的に組み込む。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメーターが範囲、好ましい範囲、または高い側の好ましい値および低い側の好ましい値のリストのいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく、任意の範囲上限または好ましい値と任意の範囲下限または好ましい値との任意の対から形成されたすべての範囲を具体的に開示するものとして理解されなければならない。数値の範囲が本明細書に記載される場合、別記しない限り、範囲は、それらの端点、および範囲内のすべての整数および分数を含めるものとする。範囲を規定する時に記載された特定の値に本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0015】
本明細書中で用いられるとき、用語「ポリマー」は一般に、限定されないが、ホモポリマー、コポリマー(例えば、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互共重合体など)、ターポリマー等、ならびにそれらのブレンドおよび変性物を包含する。さらに、別に具体的に限定されなければ、用語「ポリマー」は、材料の全てのあり得る幾何学配置を包含するものとする。これらの配置には、限定されないが、アイソタクチック、シンジオタクチック、およびランダムシンメトリーなどが含まれる。
【0016】
本明細書中で用いられるとき、用語「ポリエチレン」は、エチレンのホモポリマーだけでなく、例えばエチレンとアルファ-オレフィンとのコポリマーなどの反復単位の少なくとも85%がエチレン単位であるコポリマーを包含することを意図する。
【0017】
本明細書中で用いられるとき、用語「不織布」、「不織布シート」または「不織布ウェブ」は、メリヤス生地に見られるように、識別できるパターンのない平面材料を形成するように不規則な方法で配置される単一繊維または糸の構造物を意味する。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、「縦方向」はシートの平面内の長さ方向であり、すなわち、シートが製造される方向である。「横方向」は、縦方向に垂直であるシートの平面内の方向である。
【0019】
本明細書中で用いられるとき、用語「プレキシフィラメント状」は、不規則な長さおよび約25マイクロメートル未満のメジアンフィブリル幅の複数の薄い、リボン状の、フィルムフィブリル要素の三次元一体網目構造を意味する。プレキシフィラメント状構造物において、フィルムフィブリル要素は一般的に、構造物の軸線と同延に整列され、構造物の長さ、幅および厚さの全体にわたって様々な場所において不規則な間隔で不連続に結合および分離して連続した三次元網目構造を形成する。
【0020】
用語「紡糸流体」は、本明細書において説明された紡糸装置を使用して紡糸される全組成物を指す。紡糸流体はポリマーと紡糸剤とを含有する。
【0021】
用語「紡糸剤」は、最初にポリマーを溶解して紡糸流体を形成するために使用される加工媒体または媒体の混合物を指す。
【0022】
本明細書において「本質的に~からなる(consisting essentially of)」とは、請求の範囲に記載されている品目が優位な構成要素を含有するが、請求の範囲に記載されている品目の機能性能を改善または改良するために加えられる他の品目を含有してもよいことを意味する。例えば本質的にポリエチレンからなる品目はまた、充填剤、酸化防止剤、およびその性能または機能を改良するその他の添加剤を含有してもよい。
【0023】
試験方法
説明、実施例、および請求の範囲において、以下の試験方法を使用して様々な報告された特性および性質を確認した。ASTMはアメリカ試験材料協会(the American Society for Testing and Materials)を指し、TAPPIは紙・パルプ技術協会(the Technical Association of the Pulp and Paper Industry)を指す。
【0024】
プレキシフィラメント状フィルム-フィブリルウェブ製品のBET表面積は、フラッシュ紡糸製品のフィブリル化の程度および細かさの別の尺度である。表面積は、S.Brunauer、P.H.Emmett and E.Teller,J.Am.Chem.Soc.,V.60 p309-319(1938)のBET窒素吸収法によって測定され、m2/gとして記録される。BET表面積はカンタクローム(Quantachrome)モデルNOVA 3000eを使用して測定される。
【0025】
基本重量はASTM D-3776(その内容を参照によって本願明細書に組み入れる)によって測定され、g/m2またはgsm単位で記録される。以下の実施例について記録された基本重量はそれぞれ、試料に対して実施した少なくとも12回の測定の平均に基づいている。
【0026】
ガーレー・ヒル(または単に「ガーレー」)多孔度は、気体材料に対するシート材料の透過性の尺度である。特に、それは、特定の圧力勾配が存在する材料の領域を大量のガスが通過するのにどれぐらいの時間がかかるかということの尺度である。ガーレー・ヒル多孔度は、ローレンツェン・アンド・ウェットレ・モデル121Dデンソメーター(Lorentzen&Wettre Model 121D Densometer)を使用してTAPPI T-460 OM-88に従って測定される。この試験は、水の約1.21kPa(4.9インチ)の圧力下で(1平方インチの面積を有する)直径28.7mmの試料を100立方センチメートルの空気が押し通されるのに必要とされる時間を測定する。結果は、ガーレー秒としばしば称される秒単位で表わされる。
【0027】
フラジール通気度は多孔性材料の通気度の尺度であり、ft3/min/ft2の単位で記録される。フラジール通気度はASTM D737-04に従って測定される。それは、0.5インチ水柱(124.5Paに等しい)の差圧で材料を通る気流の体積を測定する。オリフィスが真空装置に設けられ、試料を通る空気流を測定可能な量に制限する。オリフィスのサイズは、材料の多孔度に依存する。フラジール多孔度とも称される、フラジール通気度は、ft3/(ft2 min)単位の較正オリフィス単位でSherman W.Frazier Co.デュアル・マノメーターを使用して測定され、それはここで記録するためにm3/(m2 min)に変換された。フラジール通気度は、50グラム/平方メートル(gsm)の基本重量に標準化されたものとしてここに記載される。ガーレー空隙率だけが試料に対して測定された場合、フラジール通気度は、以下の式に従って計算された。
フラジール(m3/m2 min)×ガーレー空隙率(秒)=0.945
【0028】
異なった基本重量のシートのフラジール通気度の比較を容易にするためにフラジール通気度を50グラム/平方メートルの基本重量を有するシートに標準化するのが便利である。50グラム/平方メートルの基本重量に対する標準化されたフラジール通気度は、以下の関係式で決められる。
【数1】
【0029】
静水頭(または水頭)は、静荷重下で液体の水による浸透に対するシートの耐性の尺度である。7インチ×7インチ(17.78cm×17.78cm)の試料をSDL 18 Shirley 静水頭試験機(Shirley Developments Limited,Stockport,Englandによって製造された)に載せる。試料の3つの領域が水によって浸透されるまで、60+/-3cm/minの速度で約0.28mmの直径のワイヤーを有する30メッシュのスクリムによって支持される試料の102.6cm形材の一つの面に向って水をポンプで送る。静水圧がインチ単位で測定され、SI単位に変換され、静水頭のセンチメートルで示される。試験は一般的にASTM D583(1976年11月刊行物による)に従う。
【0030】
水頭は、以下の式に従って50グラム/平方メートルの基本重量に標準化されたものとしてここに記載される。
【数2】
【0031】
本発明の実施形態
本発明は、0.002~0.2m3/m2.分@50gsmの標準化されたフラジール通気度、および50グラム/平方メートルの基本重量に対して150~250cm@50gsmの標準化された水頭を有する、プレキシフィラメント状構造物を含むシートを目的としている。術語「@50gsm」は、任意の基本重量の測定が50gsmに標準化される、上に示された標準化手順を指す。
【0032】
さらなる実施形態においてシートが本質的にポリエチレンからなる。
【0033】
さらに別の実施形態においてシートのBET表面積が少なくとも9m2/gである。
【0034】
さらなる実施形態において、シートが0.09m3/(m2分)@50gsm以下の標準化されたフラジール通気度を有する。また、シートが0.0075m3/m2.分@50gsm以上の標準化されたフラジール通気度を有してもよい。
【0035】
さらに別の実施形態において、シートが165~208cm@50gsmの標準化された水頭を有する。
【0036】
さらに別の実施形態において、シートが9~25m2/gのBET表面積、またはさらに9~20m2/gのBET表面積を有する。
【0037】
また、シートが30グラム/平方メートル以上の基本重量を有してもよい。
【0038】
さらなる実施形態において、本明細書において説明された実施形態のいずれかのフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状繊維ストランドをシート構造物に固化してもよい。次にこのシート構造物を任意選択により熱によりまたは機械的に接着してもよい。
【0039】
本発明はさらに、少なくとも1つのシートが、
I.0.002~0.2m3/m2.分@50gsmの標準化されたフラジール通気度、
II.150~250cm@50gsmの標準化された水頭、および
III.30グラム/平方メートル(gsm)以上の基本重量
を有するプレキシフィラメント状構造物を含むポリエチレンシートである2つ以上の複数のシートを含む複数層構造物を目的としている。
【0040】
本発明の複数層構造物のさらなる実施形態は、少なくとも9m2/gのBET表面積を有するプレキシフィラメント状シートを含む。
【0041】
フラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シート、具体的にはTyvek(登録商標)スパンボンデッドオレフィンシート材料を製造するための方法は、Bladesらに対する米国特許第3,081,519号明細書(DuPontに付与)において最初に記載された。米国特許第3,081,519号明細書には、液体紡糸剤の標準沸点を超える温度において、そして自生圧以上において、液体紡糸剤の標準沸点未満でポリマーに対して溶媒ではない液体紡糸剤中のポリマーの溶液をより低い温度および実質的により低い圧力の領域に紡糸してプレキシフィラメント状フィルム-フィブリルストランドを生成する方法が記載されている。Andersonらに対する米国特許第3,227,794号明細書(DuPontに付与)に開示されるように、プレキシフィラメント状フィルム-フィブリルストランドは、フラッシュ紡糸の直前にポリマーと紡糸剤溶液の圧力が減圧チャンバ(letdown chamber)内でわずかに低下される時にBladesらにおいて開示された方法を使用して最も良好に得られる。
【0042】
本発明の説明のために選択される一般的なフラッシュ紡糸装置は、Brethauerらに対する米国特許第3,860,369号明細書(参照によって本願明細書に組み込まれる)に開示されるフラッシュ紡糸装置に似ている。可紡性ポリマーをフラッシュ紡糸するための装置および方法は、米国特許第3,860,369号明細書に完全に記載されており、図1に示される。フラッシュ紡糸方法は通常、紡糸剤除去孔11と、方法において製造される不織布シート材料を取り出す開口12とを有する、紡糸セルと称される場合もあるチャンバ10内で行なわれる。ポリマーと紡糸剤との混合物を含む紡糸流体が加圧供給導管13を通して紡糸オリフィス14に提供される。紡糸流体が供給導管13からチャンバ16へとチャンバ開口15を通って通過する。特定の紡糸用途において、チャンバ16が圧力減圧チャンバとして機能する場合があり、そこで圧力の低下は、Andersonらに対する米国特許第3,227,794号明細書に開示されるように、紡糸流体の相分離を引き起こす。チャンバ16内の圧力をモニタするために圧力センサー22が提供されてもよい。
【0043】
チャンバ16内の紡糸流体は次に、紡糸オリフィス14を通過する。加圧されたポリマーと紡糸剤がチャンバ16から紡糸オリフィスへと通過することによってオリフィスの入口付近に伸長流が生成され、それがポリマーを整列するのを助けると考えられる。ポリマーと紡糸剤がオリフィスから流れ出るとき、紡糸剤がガスとして急速に膨張し、フィブリル化プレキシフィラメント状フィルム-フィブリルを後に残す。ガスが孔11を通ってチャンバ10を出る。好ましくは、ガス状紡糸剤は紡糸流体に再利用するために濃縮される。
【0044】
紡糸オリフィス14から放出されるポリマーストランド20は慣例的に、回転デフレクターバッフル26に向かって誘導される。回転バッフル26は、バッフルが左と右に交互に誘導するより平面的な構造物24にストランド20を広げる。広げられた繊維ストランドがバッフルから下降するとき、繊維ストランドは静電帯電され、繊維ストランド24が移動ベルト32に達するまで繊維ストランドを広げられた開放配置に保持する。繊維ストランド24がベルト32上に堆積してシート34を形成する。ベルトを接地して、ベルト上の帯電繊維ストランド24の適切な固定を確実にするのを助ける。繊維シート34をローラー31下に送ってもよく、それにより、重なり合う複数方向の配置に整列されたプレキシフィラメント状フィルム-フィブリル網目で形成された軽く固化されたシート35にシートを圧縮する。シート35は、出口12を通って紡糸チャンバ10を出てからシート回収ロール29上に回収される。
【0045】
「熱により固化された」または「熱により接着された」シートは、本発明のウェブの熱固化によって製造されたシートである。熱接着法のいくつかの例は、ガス接着、スチームによる交絡(steam entanglement)、超音波接着、伸長接着、高温カレンダリング、高温ロールエンボス加工、高温表面接着によるものである。
【0046】
硬い接着表面を得るためにDavidに対する米国特許第3,532,589号明細書に記載された方法によって熱表面接着を行なうことができる。この方法においてプレキシフィラメント状シートはその後、加熱されたドラム-冷却ドラム-加熱ドラム-冷却ドラムの上を通過して、材料の両面を熱により接着する。加熱ドラムは、シートの接着を含むプレキシフィラメント状構造物の部分的な溶融をもたらす温度に維持される。冷却ドラムは、抑えられない時にシートが収縮したり変形したりしない値にまで温度を低下させることを目的とする。接着プロセスの間にシートが可撓性ベルトによってわずかに圧縮され、制御された収縮がある。
【0047】
あるいは、プレキシフィラメント状シートをエンボスロールおよびゴム被覆バックアップロールによって接着してシートの1つまたは2つの面を接着してもよい。エンボスロールは平滑であるかまたは、例えば、以下の文献に示されるパターン、すなわち点パターン(米国特許第3,478,141号明細書、米国特許第6,610,390号明細書、米国特許出願公開第2004/241399A1号明細書)、リブパターン(米国特許出願公開第2003/0032355A1号明細書)、ランダムパターン(米国特許第7,744,989号明細書)または異なったパターン(米国特許第5,964,742号明細書)に限定されない異なったパターンを備えることができる。シートは、エンボスロールならびにゴム被覆バックアップロールの1つまたは複数部を通過してもよい。さらに、エンボスロールおよびバックアップロール対の前と後にシートが米国特許第5,972,147号明細書に記載されるように予熱ロールまたは冷却ロールと接触してもよい。最後に、接着プロセス、例えば、Dempseyによる米国特許第3,427,376号明細書に記載されたボタンブレーキング装置によって材料を軟化させてもよい。
【実施例0048】
米国特許第3,860,369号明細書および上に記載された方法に従って紡糸流体を調製し、フラッシュ紡糸して、固化されたシートに形成した。実施例に報告されたポリマー濃度は、紡糸流体の全重量に基づいてポリマーの重量パーセントとして計算され、そこで紡糸流体の全重量はポリマーと紡糸剤との重量を含める。
【0049】
別記しない限り、本実施例において作製されたプレキシフィラメント状ウェブおよびシートは、81重量パーセントのジクロロメタンおよび19重量パーセントの2,3-ジヒドロデカフルオロペンタンからなる紡糸剤を使用してフラッシュ紡糸された。比較例は、n-ペンタンを含む紡糸剤を使用して製造された。本発明のシートは、少なくとも15cm3の上流圧減圧チャンバおよび75バールのゲージ最小値の吐出圧から行なわれるフラッシュ紡糸法により得られ、300~400デニールの繊維をもたらした。
【0050】
実施例の全てにおいて使用されたポリマーは、(190℃および5kgの負荷においてEN ISO1133に従って測定されたとき)2.35g/10min、および(190℃および21.6kgの負荷においてEN ISO1133に従って測定されたとき)24.5g/10minのメルトインデックス、(EN ISO1183に従って測定されたとき)0.96g/cm3の密度を有する高密度ポリエチレンであった。比較例において使用されるポリマーは、(190℃および2.16kgの負荷においてASTM D1238に従って測定されたとき)0.96g/10minおよび(190℃および21.6kgの負荷においてASTM D1238に従って測定されたとき)34.4g/10minのメルトインデックスを有する高密度ポリエチレンであった。
【0051】
表1は、実施例および比較例の紡糸条件を記載する。
【0052】
【表1】
【0053】
表2は、得られたフラッシュ紡糸プレキシフィラメント状シートの性質を記載する。比較例7~9は、さらなる基本重量の値について標準化されたフラジール通気度および標準化された水頭@50gsmを記載する。BET表面積は測定されなかった(n.m.)。
【0054】
【表2】
【0055】
比較例のいずれも、表2の選択された比較基準に関して性能の独自の組合せを示す、本発明の実施例の水頭性能を達成しなかった。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なり合う複数方向の配置に整列されたプレキシフィラメント状フィルム-フィブリル網目を含むシートであって、前記シートは、紡糸セルから製造された状態で、0.002~0.2m3/m2.分@50gsmの標準化されたフラジール通気度、および150~250cm@50gsmの標準化された水頭を有し、
紡糸セルから製造された状態の前記シートは、9~20m2/gのBET表面積を有し、
ポリマーと紡糸剤とを含有する紡糸流体から、前記重なり合う複数方向の配置に整列されたプレキシフィラメント状フィルム-フィブリル編み目がフラッシュ紡糸されており、前記紡糸剤はジクロロメタンおよび2,3-ジヒドロデカフルオロペンタンからなる、シート。
【請求項2】
請求項1に記載のシートから製造される熱により固化されたシート。
【外国語明細書】