(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052056
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ビリルビン誘導体及び金属を含む粒子
(51)【国際特許分類】
C07D 207/44 20060101AFI20230404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230404BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230404BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20230404BHJP
C07F 3/02 20060101ALI20230404BHJP
C07F 3/04 20060101ALI20230404BHJP
C07F 15/02 20060101ALI20230404BHJP
C07F 13/00 20060101ALI20230404BHJP
C07F 15/04 20060101ALI20230404BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20230404BHJP
C07F 1/08 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/409 20060101ALI20230404BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C07D207/44
A61P35/00
A61P29/00
A61K51/04 200
A61K47/60
A61P39/06
A61K33/243
C07F3/02 Z
C07F3/04
C07F15/02
C07F13/00 A
C07F15/04
C07F5/00 D
C07F1/08 C
A61K47/02
A61K31/409
A61K9/14
A61K47/22
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206483
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2020513477の分割
【原出願日】2018-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0059597
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】519403716
【氏名又は名称】ビリックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BILIX CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】#1201,12th Floor,MeeWang Building.364,Gangnam-daero Gangnam-gu Seoul 06241,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ドン ユン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヨン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ヨー,ド ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ウォン シク
(57)【要約】
【課題】ビリルビン誘導体及び金属を含むビリルビン誘導体粒子を提供すること。
【解決手段】ビリルビン誘導体粒子が提供される。そのようなビリルビン誘導体は、ビリルビン誘導体及び金属を含む。ビリルビン誘導体は、ビリルビンに親水性分子がコンジュゲーションされたものである。金属は、クラスター金属粒子の形態である。金属が中心部に位置し、ビリルビン誘導体が金属の周辺を囲む形態からなることを特徴とする。また、金属及びビリルビン誘導体を含むビリルビン誘導体粒子の製造方法が提供される。そのような製造方法は、(a)ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションしてビリルビン誘導体を製造するステップと、(b)前記ビリルビン誘導体と金属を配位結合して金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を製造するステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビリルビン誘導体及び金属を含み、
前記ビリルビン誘導体は、ビリルビンに親水性分子がコンジュゲーションされたものであり、
前記金属は、クラスター金属粒子の形態であり、
前記金属が中心部に位置し、前記ビリルビン誘導体が前記金属の周辺を囲む形態からなることを特徴とするビリルビン誘導体粒子。
【請求項2】
前記ビリルビン誘導体が前記金属をコーティングする、請求項1に記載のビリルビン誘導体粒子。
【請求項3】
前記金属粒子は、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(superparamagnetic iron oxide nanoparticle(SPION))または金ナノ粒子である、請求項1に記載のビリルビン誘導体粒子。
【請求項4】
前記金属粒子は、前記ビリルビン誘導体のカルボキシル基、ラクタム基またはピロール環と配位結合される、請求項1に記載のビリルビン誘導体粒子。
【請求項5】
前記親水性分子は、デキストラン(dextran)、カルボデキストラン(carbodextran)、ポリサカライド(polysaccharide)、サイクロデキストラン(cyclodextran)、プルロニック(pluronic)、セルロース(cellulose)、澱粉(starch)、グリコーゲン(glycogen)、カーボハイドレート(carbohydrate)、単糖類(monosaccharide)、二糖類(bisaccharide)、オリゴ糖類(oligosaccharide)、ポリフォスファジェン(polyphosphagen)、ポリラクタイド(polylactide)、ポリラクチドーコーグリコリド(poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリマレイン酸(polymaleic acid)及びポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート(polyalkylcyanoacrylate)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutylate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、ポリ-L-リシン(poly-L-lysine)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリメチルメタクリレート(poly[methyl]met[h]acrylate)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリ(アクリレート)(poly[acrylate])、ポリ(アクリルアミド)(poly[acrylamide])、ポリ(ビニルエステル)(poly[vinylester])、ポリ(ビニルアルコール)(poly[vinyl alcohol])、ポリスチレン(polystyrene)、ポリオキサイド(polyoxide)、ポリエレクトロライト(polyelectrolyte)、ポリ(1-ニトロプロピレン)(poly[1-nitropropylene])、ポリ(N-ビニルピロリドン)(poly[N-vinyl pyrrolidone])、ポリビニルアミン(poly[vinyl amine])、ポリ(ベータ-ヒドロキシエチルメタクリレート)(Poly[beta-hydroxyethylmethacrylate])、ポリエチレンオキサイド(Polyethyleneoxide)、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキサイド)(Poly[ethylene oxide-b-propyleneoxide])及びペプチドからなる群より選択される、請求項1に記載のビリルビン誘導体粒子。
【請求項6】
前記親水性分子はポリエチレングリコールである、請求項1に記載のビリルビン誘導体粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビリルビン誘導体粒子を含む画像診断用造影剤組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビリルビン誘導体粒子を含む癌の治療用薬剤学的組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビリルビン誘導体粒子を含む光熱治療用薬剤学的組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビリルビン誘導体粒子を含む炎症性疾患の診断又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載のビリルビン誘導体粒子を含む活性酸素種検出用組成物。
【請求項12】
(a)ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションしてビリルビン誘導体を製造するステップと、
(b)前記ビリルビン誘導体と金属を配位結合して金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を製造するステップとを含み、
前記(b)ステップは、有機溶媒に溶かしたビリルビン誘導体とメタノールに溶かした超常磁性酸化鉄ナノ粒子溶液を共に混ぜた後、窒素ガス条件下で溶媒を乾燥させて生成される脂質膜層を水和して行う、金属及びビリルビン誘導体を含むビリルビン誘導体粒子の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒はクロロホルムである、請求項12に記載の金属及びビリルビン誘導体を含むビリルビン誘導体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大韓民国科学技術情報通信部の支援下で課題番号2018M3A9B5023 527によりなされたものであって、前記課題の研究管理専門機関は韓国研究財団、研究事業名は“バイオ・医療技術開発事業”、研究課題名は“腫瘍微細環境標的及び感応型薬物伝達プラットフォーム技術開発”、主管機関は韓国科学技術院、研究期間は2018.04.01-2020.12.31である。
【0002】
本特許出願は2017年5月13日付で大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2017-0059597号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として挿入される。
【0003】
本発明はビリルビン誘導体及び金属を含む粒子、その用途及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
有機金属錯体(metal-organic coordination complexes)で構成された自然的に発生するビルディングブロックは長い間科学的霊感の源泉となってきた。例えば、特定金属と有機リガンドの配位は金属蛋白質(metalloproteins)、光合成(Mg(II)-porphyrin)、酸素輸送(Cu(II)-heme)及び付着(Fe(III)-phenolics)のような生物学的機能の遂行において決定的な役割をする。このような有機金属錯体はバイオ医学分野だけでなく、センサー、分離工程及び触媒作用を含んだ化学領域でも潜在能力を見せる。しかしながら、その適用範囲は毒性問題と製造工程にかかる所要時間のために非常に限られていた。
【0005】
ビリルビン(Bilirubin)は私達の生体内でのヘム(heme)の最終代謝産物であって、自然的に発生する有機金属錯体である。本発明者らはビリルビンを金属-有機配位物質として使用しようとする本発明の戦略において胆汁排出経路で発生する病理学的現象である胆石形成からヒントを得た。胆石は異常な胆汁代謝によって胆汁酸が金属と結合して胆管に形成された結石(calculus)である。ビリルビンは胆汁酸として排泄されるが、胆石の中で黒色胆石(black pigmented gallstone)は前記胆汁酸でビリルビンと銅及び/又はビリルビンとカルシウムからなる複合体の最終産物として知られている。ビリルビンは内在的に不対電子または非結合電子対(unpaired electrons or nonbonding electron pair)を有する豊富な官能基を有しているので、外部リンカーがなくても陽イオン、金属イオンと反応して有機金属錯体を作ることができる。しかしながら、ビリルビンは非常に疎水性を帯び、溶媒によく溶解されないので、これを化学的に用いることは容易ではなかった。
【0006】
本発明者らは前記ビリルビンの疎水性による適用上の問題を解決し、多様な用途に適用するためにビリルビンと親水性高分子の複合体からなるビリルビンナノ粒子を開発し、大韓民国登録特許第10-1681299号の登録を受けたことがあり、前記特許は本特許明細書に参照として挿入される。
【0007】
本明細書の全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体として本明細書に参照として挿入されて、本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ビリルビン誘導体及び金属を含むビリルビン誘導体粒子を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を含む画像診断用造影剤を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を含む癌の治療及び診断用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を含む炎症性疾患の治療または診断用薬剤学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を含む活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を含む活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用センサー装置を提供することにある。
【0015】
本発明の更に他の目的は、前記ビリルビン誘導体粒子を用いて活性酸素種を検出する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は下記の発明の詳細な説明、請求範囲及び図面により、一層明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は下記1乃至17の発明を提供する。
【0018】
1.ビリルビン誘導体及び金属を含む、ビリルビン誘導体粒子。
【0019】
2.前記ビリルビン誘導体粒子はビリルビン誘導体と前記金属が配位結合を通じて構成されたことを特徴とする、発明1のビリルビン誘導体粒子。
【0020】
3.1において、前記配位結合はビリルビン誘導体のカルボキシル基、ラクタム基またはピロール環と前記金属との間に形成することを特徴とする、発明2のビリルビン誘導体粒子。
【0021】
4.前記金属はCu、Ga、Rb、Zr、Y、Tc、In、Ti、Gd、Mn、Fe、Au、Pt、Pd、Ag、Co、Mn、Zn、Gd、Mo、Ni、Fe、Cr、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra及びランタン族金属からなる群より選択された金属のイオンまたは金属化合物であることを特徴とする、発明1乃至3のビリルビン誘導体粒子。
【0022】
5.前記金属は超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION:superparamagnetic iron oxidenanoparticle)または金ナノ粒子であることを特徴とする、発明1乃至3のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子。
【0023】
6.前記ビリルビン誘導体粒子は金属が中心部に位置し、前記ビリルビン誘導体が前記金属の周辺を囲む形態からなることを特徴とする、発明5のビリルビン誘導体粒子。
【0024】
7.前記金属は単一金属粒子またはクラスター金属粒子の形態であることを特徴とする、発明6のビリルビン誘導体粒子。
【0025】
8.前記金属はプラチナ(Pt)イオンまたはシスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、ネダプラチン(nedaplatin)及びヘプタプラチン(heptaplatin)からなる群より選択されたプラチナ系抗癌剤であることを特徴とする、発明1乃至3のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子。
【0026】
9.前記金属は64Cu、68Ga、82Rb、89Zr、90Y、99mTc、111In及び201TIからなる群より選択された放射性同位元素であることを特徴とする、発明1乃至3のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子。
【0027】
10.前記ビリルビン誘導体はビリルビンに親水性分子がコンジュゲーションされたことを特徴とする、発明1乃至9のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子。
【0028】
11.前記親水性分子はデキストラン(dextran)、カルボデキストラン(carbodextra n)、ポリサカライド(polysaccharide)、サイクロデキストラン(cyclodextran)、プルロン(pluronic)、セルロース(cellulose)、澱粉(starch)、グリコーゲン(glycogen)、カーボハイドレート(carbohydrate)、単糖類(monosaccharide)、二糖類(bis accharide)及びオリゴ糖類(oligosaccharide)、ポリフォスファジェン(polyphosphag en)、ポリラクタイド(polylactide)、ポリラクチドーコーグリコリド(poly(lactic- co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリマレイン酸(polymaleic acid)及びポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート(polyalkylcyanoacrylate)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutylate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、ポリ-L-リシン(poly-L-lysine)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリメチルメタクリレート(poly[methyl]met[h]acrylate)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリ(アクリレート)(poly[acrylate])、ポリ(アクリルアミド)(poly[acrylamide])、ポリ(ビニルエステル)(poly[vinyl ester])、ポリ(ビニルアルコール)(poly[vinyl alcohol])、ポリスチレン(polystyrene)、ポリオキサイド(polyoxide)、ポリエレクトロライト(polyelectrolyte)、ポリ(1-ニトロプロピレン)(poly[1-nitropropylene])、ポリ(N-ビニルピロリドン)(poly[N-vinyl pyrrolidone])、ポリビニルアミン(poly[vinyl amine])、ポリ(ベータ-ヒドロキシエチルメタクリレート)(Poly[beta-hydroxyethylmethacrylate])、ポリエチレンオキサイド(Polyethyleneoxide)、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキサイド(Poly[ethylene oxide-b-propyleneoxide])、ポリリシン(Polylysine)及びペプチドからなる群より選択されたことを特徴とする、発明10のビリルビン誘導体粒子。
【0029】
12.前記親水性分子はポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)であることを特徴とする、発明11のビリルビン誘導体粒子。
【0030】
13.前記PEGはメトキシPEG(methoxy polyethylene glycol)、PEGプロピオン酸のスクシンイミド(succinimide of PEG propionic acid)、PEGブタン酸のスクシンイミド(succinimide of PEG butanoic acid)、分岐型のPEG-HNS(branched PEG-NHS)、PEGスクシンイミジルスクシネート(PEG succinimidyl succinate)、カルボキシルメチル化PEGのスクシンイミド(succinimide of carboxymethylated PEG)、PEGのベンゾトリアゾールカーボネート(benzotriazole carbonate of PEG)、PEG-グリシジルエーテル(PEG-glycidyl ether)、PEG-オキシカルボニルイミダゾール(PEG oxycarbonylimidazole)、PEGニトロフェニルカーボネート(PEG nitrophenyl carbonates)、PEG-アルデヒド(PEG aldehyde)、PEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル(PEG succinimidyl carboxymethyl ester)及びスクシンイミジルエステル(PEG succinimidyl ester)からなる群より選択されることを特徴とする、発明 12のビリルビン誘導体粒子。
【0031】
14.前記PEGの平均分子量は200乃至20000Daであることを特徴とする、発明12のビリルビン誘導体粒子。
【0032】
15.1乃至14のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む組成物。
【0033】
16.前記組成物は画像診断用造影剤組成物であることを特徴とする、発明15の組成物。
【0034】
17.前記画像診断用造影剤組成物は、磁気共鳴診断(MR)用、CT診断用、PET診断用または光学診断用であることを特徴とする発明16の組成物。
【0035】
18.前記組成物は癌の治療用薬剤学的組成物であることを特徴とする発明15の組成物。
【0036】
19.前記癌は、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、直膓癌及び子宮頚部癌からなる群より選択されたことを特徴とする発明18の組成物。
【0037】
20.前記組成物は炎症性疾患の治療及び診断用薬剤学的組成物であることを特徴とする発明15の組成物。
【0038】
21.次のステップを含む金属及びビリルビン誘導体を含むビリルビン誘導体粒子の製造方法:
【0039】
(a)ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションしてビリルビン誘導体を製造するステップ;及び
【0040】
(b)前記ビリルビン誘導体と金属を配位結合して金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を製造するステップ。
【0041】
22.前記(b)ステップは次のステップを含むことを特徴とする、発明21のビリルビン誘導体粒子の製造方法:
【0042】
(b-1)ビリルビン誘導体からなる粒子を製造するステップ;及び
【0043】
(b-2)ビリルビン誘導体からなる粒子に金属を封入するステップ。
【0044】
23.前記(b)ステップはビリルビン誘導体からなる粒子が製造されると共に、金属が封入されることを特徴とする、発明21のビリルビン誘導体粒子の製造方法。
【0045】
24.前記組成物は活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用であることを特徴とする発明15の組成物。
【0046】
25.前記組成物は造影剤組成物であることを特徴とする発明24の組成物。
【0047】
26.前記活性酸素種はスーパーオキサイド(O2
-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(hydroxyl radical、OH)、一重項酸素(1O2 singlet oxygen)、有機ヒドロペルオキシド(ROOH)、アルコキシラジカル(RO・)、ペルオキシラジカル(ROO・)またはオゾン(O3)及び二酸化窒素(NO2)からなる群より選択されることを特徴とする発明24の組成物。
【0048】
27.発明1乃至14のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用センサー装置。
【0049】
28.次のステップを含む、活性酸素種検出方法:
【0050】
(a)発明1乃至13のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む懸濁液を活性酸素種を含む試料と接触させるステップ;及び
【0051】
(b)前記試料を接触する前後の懸濁液の変化を対照群と比較分析するステップ。
【0052】
29.前記(b)ステップの懸濁液の変化はビリルビン誘導体粒子の沈殿有無、波長に従う吸光度、懸濁液の透明度、懸濁液内の金属イオンの濃度及びMRI画像シグナルの強度からなる群より選択されることを特徴とする発明28の方法。
【0053】
30.発明1乃至14のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象(subject)に投与するステップを含む画像診断方法。
【0054】
31.発明1乃至14のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象(subject)に投与するステップを含む、癌の治療方法。
【0055】
32.発明1乃至14のいずれか1つのビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象(subject)に投与するステップを含む、炎症性疾患の治療及び診断方法。
【0056】
本発明の一態様によれば、本発明はビリルビン誘導体及び金属を含むビリルビン誘導体粒子を提供する。
【0057】
本発明者らは人体で銅(Cu)と有機リガンドであるビリルビンとの間に形成された錯体である胆石からヒントを得て、ビリルビンの配位結合特性を多様な用途に活用できるナノ粒子を開発するために鋭意研究努力した。その結果、ビリルビンに親水性分子を導入して水溶性ビリルビン誘導体とこれらが自己組織化されて形成されたビリルビン誘導体粒子を製作し、これらの多様な金属に対するキレート効果及び画像診断用造影剤、炎症性疾患及び癌疾患の治療剤としての活用可能性を確認した。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体粒子は前記金属との配位結合を通じて金属錯体(metal complex)を形成する。
【0059】
本発明の前記金属錯体(metal complex)とは、1つまたはそれ以上の金属原子やイオンを中心として幾つの異なるイオン分子または原子団などが方向性を有して立体的に配位して1つの原子集団をなしていることをいう。ここで、中心になる金属原子またはイオンに配位しているイオン分子または原子団をリガンドと呼ぶ。本発明のビリルビン誘導体粒子でビリルビン誘導体はリガンドとなり、ビリルビン誘導体と結合する金属は中心金属イオンとなる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、前記配位結合は金属イオンとビリルビン誘導体のカルボキシル基、ピロール環、あるいはラクタム基の間に形成される。
【0061】
前記配位結合が形成できるビリルビン分子内の位置を表現すれば、以下の化学式1で点線の円で表示された部分である。
【0062】
【0063】
本発明の一実施形態によれば、配位結合を通じて本発明のビリルビン誘導体と結合されることによって含まれる金属は、Cu、Ga、Rb、Zr、Y、Tc、In、Ti、Gd、Mn、Fe、Au、Pt、Pd、Ag、Co、Mn、Zn、Gd、Mo、Ni、Fe、 Cr、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra及びEu、Tbなどのランタン族金属からなる群より選択された金属のイオンまたは金属化合物でありうるが、これに限定されるのではない。
【0064】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体はSPION(superparamagnetic iron oxide nanoparticle)及び金ナノ粒子(AuNP、gold nanoparticle)を含む多様な金属粒子と結合する。
【0065】
下記の実施例で確認されたように、本発明のビリルビン誘導体は、SPION(superparamagnetic iron oxide nanoparticle)と結合してナノ粒子を形成し(
図6a乃至6c)、前記SPION結合ビリルビン誘導体粒子は既存の臨床的に使われるT2強調MR造影剤であるフェリデックス(Feridex)に比べて優れる緩和度(relaxivity)を示すところ、MRI造影向上のための造影剤として有用に使われることができる(
図7)。
【0066】
また、本発明の一実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体粒子は活性酸素を消去することができる。下記の実施例で確認されたように、本発明のSPIONを含むビリルビン誘導体粒子は、活性酸素種(ROS、reactive oxygen species)発生剤である次亜塩素酸塩(hypochlorite)処理に反応して凝集されるので(
図8)、炎症組織の活性酸素を消去することによって炎症を治療することに使われることができる。
【0067】
したがって、本発明の前記ビリルビン誘導体粒子は、炎症疾患治療用薬学的組成物にも有用に使われることができる。
【0068】
また、本発明の前記ビリルビン誘導体粒子は、大韓民国登録特許第10-1681299号に開示されたように、ビリルビン誘導体粒子自体の抗癌作用、血管新生抑制作用によって癌疾患または血管新生疾患治療用薬学的組成物にも有用に使われることができる。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、前記ビリルビン誘導体粒子は金属が中心部に位置し、前記ビリルビン誘導体が前記金属の周辺を囲む形態に形成される。
【0070】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明の金属を含むビリルビン誘導体粒子は多数個の金属粒子がクラスター(cluster)を形成したクラスター金属粒子形態と、各々の金属粒子が単一に分布した単一金属粒子形態、2つの区別された粒子形態に製造できる。
【0071】
下記の実施例で確認されたように、本発明者らは本発明のビリルビン誘導体粒子が前記2つの形態に製造できるか否かを確認するためにPEG-ビリルビンコーティング酸化鉄ナノ粒子を構成するために2つの方法を全て適用した。その結果、本発明者らはTEMイメージでPEG-ビリルビンシェルを使用して2つの類型の粒子が成功的に製造されたことを確認した(
図6c)。
【0072】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体粒子に含まれる前記金属は、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、ネダプラチン(nedaplatin)及びヘプタプラチン(heptaplatin)からなる群より選択されたプラチナ系抗癌剤である。下記の実施例で確認されたように、本発明のビリルビン誘導体粒子はシスプラチンを効果的にローディングすることができた(
図15)。前記シスプラチンと本発明のビリルビン誘導体粒子との間の予想結合形態は
図16の通りである。
【0073】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明の前記プラチナ系抗癌剤を含むビリルビン誘導体粒子は、光、活性酸素または酸性pH刺激によりローディングした抗癌剤を周囲に放出することができる(
図17a及び
図17b)。
【0074】
したがって、本発明のビリルビン誘導体粒子は前述したビリルビン誘導体自体の抗癌/血管新生抑制作用だけでなく、前記プラチナ系抗癌剤のローディング及び放出特性によって癌を治療するための有効性分に使われることができる。
【0075】
本明細書で、用語、“ビリルビン誘導体”はビリルビンの親水性分子とコンジュゲーション(conjugation、結合)されて形成する親水性または両親媒性の化合物を意味する。本発明のビリルビン誘導体は、金属成分と配位結合を形成して本発明のビリルビン誘導体粒子を形成する。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、前記親水性分子はビリルビンのカルボキシル基にコンジュゲーションされて親水性または両親媒性ビリルビン誘導体を形成する(Amphiphiles: Molecular Assembly and Applications (ACS Symposium Series) 1st Edition by Ramanathan Nagarajan及びVarious Self-Assembly Behaviors of Amphiphilic Molecules in Ionic Liquids By Bin Dong and Yanan Gao, DOI:10.5772/59095参照)。前記ビリルビンのカルボキシル基は親水性分子のアミン基とアミンコンジュゲーション(ex.EDC/NHS反応)または親水性分子のヒドロキシ基とエステル化反応を通じてコンジュゲーションされる(Conjugated Chitosan as a Novel Platform for Oral Delivery of Paclitaxel, Lee et al., J. Med. Chem., 2008, 51 (20), p.6442-6449, DOI: 10.1021/jm800767c参照)。親水性分子がコンジュゲーションされた形態のビリルビンは両親媒性性質を有するので、水溶性溶媒に溶解可能であるので、化学的に取扱うことに有用であるだけでなく、自発的に自己組織化されて粒子を形成するので、疎水性及び親水性製剤全てに対して適用可能である。本発明の実施例で、本発明者らは親水性化合物であるPEG(Poly Ethylene Glycol)を使用してカルボキシル酸塩にアミド結合を形成する単純な反応を通じて本発明に従うビリルビン誘導体としてPEG化ビリルビン(PEG-BR、PEG-ビリルビン、Pegylated bilirubin)を製造した。
【0077】
本発明で使用可能な親水性分子には、例えば、デキストラン(dextran)、カルボデキストラン(carbodextran)、ポリサカライド(polysaccharide)、サイクロデキストラン
(cyclodextran)、プルロニック(pluronic)、セルロース(cellulose)、澱粉(starch)、グリコーゲン(glycogen)、カーボハイドレート(carbohydrate)、単糖類(monosaccharide)、二糖類(bisaccharide)及びオリゴ糖類(oligosaccharide)、ポリフォスファジェン(polyphosphagen)、ポリラクタイド(polylactide)、ポリラクチドーコーグリコリド(poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリマレイン酸(polymaleic acid)及びポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート(polyalkylcyanoacrylate)、ポリヒドロキシブチレート(polyhydroxybutylate)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、ポリ-L-リシン(poly-L-lysine)、ポリグリコリド(polyglycolide)、ポリメチルメタクリレート(poly[methyl]met[h]acrylate)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリ(アクリレート)(poly[acrylate])、ポリ(アクリルアミド)(poly[acrylamide])、ポリ(ビニルエステル)(poly[vinylester])、ポリ(ビニルアルコール)(poly[vinylalcohol])、ポリスチレン(polystyrene)、ポリオキサイド(polyoxide)、ポリエレクトロライト(polyelectrolyte)、ポリ(1-ニトロプロピレン)(poly[1-nitropropylene])、ポリ(N-ビニルピロリドン)(poly[N-vinyl pyrrolidone])、ポリビニルアミン(poly[vinyl amine])、ポリ(ベータ-ヒドロキシエチルメタクリレート)(Poly[beta-hydroxyethylmethacrylate])、ポリエチレンオキサイド(Polyethyleneoxide)、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキサイド(Poly[ethyleneoxide-b[-]propyleneoxide])及びポリリシン(Polylysine)などを挙げることができる。
【0078】
本発明の一実施形態によれば、前記親水性高分子はポリエチレングリコールまたはその誘導体である。前記ポリエチレングリコール誘導体は、例えば、メトキシPEG(methox y polyethylene glycol)、PEGプロピオン酸のスクシンイミド(succinimide of PEG propionic acid)、PEGブタン酸のスクシンイミド(succinimide of PEG butanoic ac id)、分岐型のPEG-HNS(branched PEG-NHS)、PEGスクシンイミジルスクシネート(PEG succinimidyl succinate)、カルボキシルメチル化PEGのスクシンイミド(succinimide of carboxymethylated PEG)、PEGのベンゾトリアゾールカーボネート(benzotriazole carbonate of PEG)、PEG-グリシジルエーテル(PEG-glycidyl ether)、PEG-オキシカルボニルイミダゾール(PEG oxycarbonylimidazole)、PEGニトロフェニルカーボネート(PEG nitrophenyl carbonates)、PEG-アルデヒド(PEG aldehyde)、PEGスクシンイミジルカルボキシメチルエステル(PEG succinimidyl carboxymethyl ester)及びスクシンイミジルエステル(PEG succinimidyl ester)などを挙げることができる(PEGylated polymers for medicine: from conjugation to self-assembled systems, Jorlemon et al., Chem. Commun., 2010, 46, 1377-1393参照)。
【0079】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記ポリエチレングリコールの平均分子量は200乃至20000Daである。
【0080】
本発明で使用可能な親水性分子の更に他の例には、2つ以上(例えば、2-50個)のアミノ酸からなるペプチドなどがある。前記アミノ酸には天然型アミノ酸だけでなく、非天然アミノ酸も含まれる。親水性アミノ酸には、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トレオニン、アスパラギン、アルギニン、セリンなどがあり、疎水性アミノ酸には、フェニルアラニン、トリプトファン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、メチオニン、バリン、アラニンなどがある。非コード化された親水性アミノ酸は、例えば、Cit及びhCysなどがある。当業者はこのような情報とペプチド合成技術に基づいて親水性のペプチドを容易に合成してビリルビンナノ粒子の製造に使用することができる。
【0081】
前記親水性分子の範囲には、前述した化合物だけでなく、これらの誘導体も含まれる。より具体的に、前記親水性分子はアミン基またはヒドロキシル基を有するか、またはアミン基またはヒドロキシル基を有するように変形されたものでありうる。この場合、本発明のビリルビンのカルボキシル基が前記親水性分子のアミングループとアミド結合を通じて
、またはヒドロキシル基とエステル化反応を通じて非常に容易にコンジュゲーションできることは、本発明と関連した当業者に自明である。
【0082】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前記金属を含むビリルビン誘導体粒子を含む画像診断用造影剤を提供する。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、前記画像診断用造影剤は磁気共鳴(MR、magnetic resonance)診断用、コンピュータ断層撮影(CT、computed tomography)診断用、PET(positron emission tomography)診断用または光学診断用に使われることができる。
【0084】
本発明の前記光学診断用途は光-音響診断及び蛍光イメージを用いた診断方法(用途)を含む。前記光-音響診断はビリルビン誘導体にシスプラチン金属を結合させることによって本発明の実施例を通じて検証したことがあり、前記蛍光イメージはEu(III)及びTb(III)などのランタン族(lanthanide)金属が有する蛍光特性を用いるものであって、前記金属にビリルビン誘導体を結合させることによって、ランタン族金属が有する蛍光波長帯あるいはその強さなどを調節してランタン族金属が放出する蛍光を検出することによって画像化が可能である。
【0085】
具体的に、本発明のビリルビン誘導体粒子は外部リンカーの使用無しで多様な金属イオンをビリルビン誘導体内に導入して核医学イメージング(64Cu、68Ga、82Rb、89Zr、90Y、99mTc、111In、201TI)、MRイメージング(Gd、Mn、Fe)及びCTイメージング(Au)に適用することができる。特に、従来の磁気共鳴画像またはコンピュータ断層撮影で使われる造影剤は外部リンカーと金属を複合体に提供してリガンドを操作したが、本発明のビリルビン誘導体は別途のリンカーがなくても速く効果的に前記金属と結合可能である。
【0086】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前記金属を含むビリルビン誘導体粒子を含む癌の治療及び診断用薬剤学的組成物を提供する。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、前記癌は、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、直膓癌及び子宮頚部癌でありうるが、これに限定されるのではない。
【0088】
本発明のビリルビン誘導体粒子は、抗-血管新生活性を示して癌の予防及び治療に用いることができる。具体的に、前述したシスプラチンなどのプラチナ系抗癌剤をローディングするビリルビン誘導体粒子が体内に投与される場合、EPR効果により腫瘍組織で蓄積され、この際、外部から腫瘍組織に光を照射すれば、ビリルビンからなる疎水性層が親水性の光異性質体を含む親水性層に変換され、これによってナノ粒子が瓦解(崩壊)されることによってナノ粒子に含まれていた抗癌薬物が腫瘍組織に放出されて癌の治療が可能である。同時に、ナノ粒子から分解されたモノマーがアルブミンと結合するようになって腫瘍組織から蛍光が放出され、これを用いて腫瘍組織のイメージングが可能である。
【0089】
下記の実施例で確認されたように、本発明の前記ビリルビン誘導体は、
64Cu、SP ION(Superparamagnetic iron oxide nanoparticle)、金ナノ粒子(GNP、Gold Nanoparticle)及びNi、Mn、Gd、Mg、Ca、Feなどの金属イオン、そしてプラチナ系抗癌剤と錯体を効果的に形成するので、多様な金属のキレート化が可能であり、多様な用途への適用が可能である(
図5a及び5b)。
【0090】
一方、本発明のビリルビン誘導体粒子は腫瘍組織に選択的に蓄積され、外部から特定波長の光照射時、高熱を発生させる光熱効果を起こすので、癌疾患の治療に使われることができる。
【0091】
下記の実施例のように、本発明者らはシスプラチン-ビリルビン誘導体粒子を腫瘍異種移植モデルのマウスで生体内の光-音響イメージングに初めて適用した結果、静脈内注射後、徐々に光-音響信号が増加し(
図18)、808nmの光に露出後、5分以内に腫瘍の表面温度が55~60℃まで急激に上昇することを確認することによって、本発明のビリルビン誘導体粒子は、光-音響イメージング(photo-acoustic imaging)だけでなく、光熱治療(photo-thermal therapy、PTT)にも活用可能であることを確認した(
図19)。
【0092】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前記金属を含むビリルビン誘導体粒子を含む炎症性疾患の治療及び診断用薬剤学的組成物を提供する。
【0093】
本発明のビリルビン誘導体粒子は炎症性疾患の診断及び治療のためのROS感受性物質として活用できる。具体的に、非経口的に体内に投与されたビリルビン誘導体粒子は、EPR効果により炎症部位をターゲッティングすることができる。
【0094】
また、ビリルビン誘導体粒子は炎症部位で異常な水準の活性酸素を消去することによって、抗炎活性を示すことができるので、炎症の治療が可能である。
【0095】
本発明が適用可能な炎症性疾患は、例えば、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、アトピー皮膚炎、浮腫、皮膚炎、アレルギー、喘息、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、粥状硬化症、咽喉炎、扁桃炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔疾、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症(fibromyalgia)、乾癬性関節炎
、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren's syndrome)及び多発性硬化症などを挙げることができるが、これに限定されるのではない。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体粒子は、金属イオンと配位結合することができる。金属イオンと配位結合した本発明のビリルビン誘導体粒子は、次亜塩素酸などの活性酸素種と反応すれば、粒子が崩壊しながら金属イオンを放出する。本発明の具体的な実施形態によれば、マンガンイオン(Mn2+)と配位結合したビリルビン誘導体粒子は、次亜塩素酸などの活性酸素種と反応してマンガンイオンを放出する。したがって、ビリルビン誘導体に配位されている時と放出された時のマンガンイオンの磁気共鳴画像でのT1値が変わるようになってMRI画像の明暗の差が出るが、これを通じて活性酸素種の検出が可能である。
【0097】
本発明の組成物が薬剤学的組成物の場合、薬剤学的に許容される担体が含まれる。前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。
【0098】
本発明の薬剤学的組成物は非経口投与が可能であり、例えば静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与または局部投与できる。また、その他にも経口投与、直腸投与、吸入投与、経鼻投与などが可能である。
【0099】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、疾病症状の程度、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因により多様であり、普通に熟練した医者は目的とする治療に効果的な投与量を容易に定及び処方することができる。
【0100】
本発明の薬剤学的組成物は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化されることによって単位容量形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造できる。この際、剤形は油性または水性媒質の中の溶液、懸濁液または乳化液形態でありえ、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0101】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は次のステップを含む金属及びビリルビン誘導体を含むビリルビン誘導体粒子の製造方法を提供する:
【0102】
(a)ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションしてビリルビン誘導体を製造するステップ;及び
【0103】
(b)前記ビリルビン誘導体と金属を配位結合して金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を製造するステップ。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、前記(b)ステップは次のステップを含むことができる:
【0105】
(b-1)ビリルビン誘導体からなる粒子を製造するステップ;
【0106】
(b-2)ビリルビン誘導体からなる粒子に金属を封入するステップ;
【0107】
本発明の他の一実施形態によれば、前記(b)ステップはビリルビン誘導体からなる粒子が製造されると共に、金属が封入できる。
【0108】
前記本発明のビリルビン誘導体と金属を含む粒子の製造方法をステップ別に詳細に説明する。
【0109】
(a)ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションしてビリルビン誘導体を製造するステップ
【0110】
ビリルビンを親水性分子とコンジュゲーションして親水性乃至は両親媒性のビリルビンを製造する。具体的には、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)(EDC)またはEDC/NHSを用いてビリルビンのカルボキシル基を活性化させ、アミン基(-NH2)を有する親水性分子とアミド結合を通じてのコンジュゲーションを誘導する。前記ビリルビンとコンジュゲーションされる親水性分子は前述した親水性分子としてアミン基を有するか、またはアミン基を有するように変形されたものである。
【0111】
また、前記ビリルビンのカルボキシル基は親水性分子のヒドロキシル基とエステル化(esterification)反応を通じてコンジュゲーションされる。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、ビリルビンを有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、DMSO)に溶かして、ビリルビンに存在するカルボキシル基を活性化させて所望の反応を誘導するためにEDCを添加し、常温で約10分間反応させる。その後、末端にアミン基を有する親水性分子(例えば、ポリエチレングリコール)を添加し、一定時間反応させて親水性分子がコンジュゲーションされたビリルビン誘導体を合成する。最後に、カルボキシル基とアミン基との間の反応により生成されたアミドボンドを有する最終ビリルビン誘導体をシリカカラムを通じて副産物から純粋に分離及び抽出する。
【0113】
(b)前記ビリルビン誘導体と金属を配位結合して金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を製造するステップ
【0114】
本ステップは、前記(a)ステップで抽出した両親媒性ビリルビン誘導体(例えば、PEG化されたビリルビン)を多様な金属粒子または金属イオンと配位結合を誘導して実際的に利用可能なナノ粒子形態に作るステップである。下記の具体的な製造方法は例示的なものであり、本発明の範囲はこれに限定されるのではない。
【0115】
(b-1)前記ビリルビン誘導体でビリルビンナノ粒子を製造するステップ
【0116】
具体的に、親水性分子がコンジュゲーションされた両親媒性ビリルビン誘導体をクロロホルムまたはジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に溶解させ、これを窒素ガス条件下に乾燥させて脂質膜層を作る。その後、製作されたビリルビン誘導体の脂質膜層を水溶液で水和させれば、自己組織化されたビリルビンナノ粒子を収得することができる。
【0117】
(b-2)前記ビリルビン誘導体からなる粒子に金属粒子または金属イオンを封入するステップ
【0118】
前記(b-1)ステップで得られたビリルビンナノ粒子水溶液に多様な金属粒子または金属イオン水溶液を混ぜて反応させれば、キレーター(chelator)あるいはリンカー(linker)など、他の添加物無しでも所望の金属がビリルビン誘導体に封入されるか、あるいは錯体を形成するようになる。反応しない金属イオンなどはサイズ排除カラムあるいは透析を通じて除去して最終的に所望の反応物を得ることができる。
【0119】
本発明のビリルビン誘導体粒子に金属を封入するステップ(b-2)は、前記ビリルビン誘導体でビリルビンナノ粒子を製造するステップ(b-1)と同時になされることができる。
【0120】
即ち、ビリルビン誘導体の脂質膜層を水溶液に水和させてビリルビンナノ粒子を製造(ステップb-1)した後に金属イオン水溶液を混合して反応(ステップb-2)させず、ビリルビン誘導体の脂質膜層に直ちに金属イオン水溶液を混合しながら水和させれば、ステップ(b-1)-(b-2)を順次に遂行することと同様に、ビリルビン誘導体粒子に金属イオンが封入される。しかしながら、ステップ(b-1)-(b-2)を順次に遂行してビリルビンナノ粒子水溶液を作った後、金属イオン水溶液を混ぜて錯体を作る方が金属イオンの封入効率の面で優れる。
【0121】
金属ナノ粒子(例えば、鉄ナノ粒子及び金ナノ粒子など)にビリルビン誘導体をコーティングする方法は金属イオンを封入する方法と少し異なる過程を経る。
【0122】
本発明の他の実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体は金属イオンを単一層にコーティングした粒子を形成することができる。
【0123】
具体的に、鉄ナノ粒子にビリルビン誘導体を単一層にコーティングする方法は、前記ステップ(b)過程で得られたビリルビンナノ粒子水溶液に鉄ナノ粒子(SPION)が溶解されているヘキサン(hexane)溶液を入れるようになれば、水層と有機溶媒層の境界部が形成され、その境界部にソニケーターを用いて人為的な圧力を加えて一定時間2つ層を混ぜてくれれば、リガンド交換(ligand exchange)方法により鉄ナノ粒子(SPION)に元来コーティングされていたオレイン酸(oleic acid)層が落ちて、その代わりにビリルビン誘導体(例えば、PEG化されたビリルビン)のカルボキシル基が鉄ナノ粒子(SPION)のコア部分とキレート化反応を通じて金属ナノ粒子をコーティングするようになる。
【0124】
本発明の他の実施形態によれば、本発明のビリルビン誘導体は金属粒子クラスターをコーティングした粒子を形成することができる。
【0125】
具体的に、有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶かしたビリルビン誘導体(例えば、PEG化ビリルビン)とメタノールに溶かしたSPION粒子を共に混ぜた後、窒素ガス条件下で前記有機溶媒を乾燥させれば、脂質膜層が生成される。生成された脂質膜層を水和させれば、クラスター形態のSPIONナノ粒子が生成される。
【0126】
純粋なSPIONナノ粒子は前記各々の過程を経た後に磁石を用いた磁気分離方法により最終的な反応物を分離することができる。
【0127】
本発明の更に他の実施形態に、金ナノ粒子にビリルビン誘導体をコーティングする方法は、前記(a)ステップで収得したビリルビン誘導体を有機溶媒でない水に溶かした後、金ナノ粒子が溶けている水溶液と直ちに一定時間反応させて得ることができ、SPIONと類似な原理により元来の金ナノ粒子をコーティングしていたクエン酸(citrate)に代えてビリルビン誘導体がナノ粒子コア部分を囲みながらコーティングするようになる。
【0128】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前述した本発明のビリルビン誘導体粒子を含む活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用組成物を提供する。
【0129】
本明細書で活性酸素種とは、普通に存在する基底状態の三重項酸素(3O2)より反応性が大きく、活性が豊富な酸素種をいう。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、前記活性酸素種はスーパーオキサイド(O2
-)、過酸化水素(H2O2)、ヒドロキシラジカル(hydroxyl radical、(・OH)、一重項酸素(1O2 singlet oxygen)を含む。また、前記活性酸素種は有機ヒドロペルオキシド(ROOH)、アルコキシラジカル(RO・)、ペルオキシラジカル(ROO・)またはオゾン(O3)及び二酸化窒素(NO2)を含む。
【0131】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前述した本発明のビリルビン誘導体粒子を含む活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)検出用センサー装置を提供する。
【0132】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記検出用センサー装置は特別に制限されず、後述するように本発明のビリルビン誘導体粒子と活性酸素種の接触による物理-化学的変化が感知できる当業界で使われる如何なる装置でも可能である。
【0133】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は次のステップを含む活性酸素種検出方法を提供する:
【0134】
(a)本発明のビリルビン誘導体粒子を含む懸濁液を活性酸素種を含む試料と接触させるステップ;
【0135】
(b)前記試料を接触する前後の懸濁液の変化を対照群と比較分析するステップ。
【0136】
本発明の前記活性酸素種検出方法をステップ別に説明する。
【0137】
(a)本発明のビリルビン誘導体粒子を含む懸濁液を活性酸素種を含む試料と接触させるステップ
【0138】
前記ステップは本発明のビリルビン誘導体粒子を含む懸濁液(suspension)と活性酸素種を検出しようとする試料と接触させて懸濁液の中のビリルビン誘導体粒子と活性酸素種を反応させるステップである。本発明のビリルビン誘導体は活性酸素種と反応性がある。したがって、前記懸濁液の中のビリルビン誘導体が試料の内部の活性酸素種と接触すれば、活性酸素との反応により金属粒子のシェル(shell)を成していたビリルビン誘導体が金属粒子から分離される。これによって疎水性を有する金属粒子が互いに合って凝集物(aggregate)または沈殿物(precipitate)を形成する。
【0139】
本明細書で試料はヒトまたは動物の尿、唾液、血液(血漿、血清、血球)、組織(肝、膵臓、皮膚などの病変部の組織)を含むが、これに限定されるのではない。また、前記試料は活性酸素種を発生させる化合物を含む溶液など、その他の物質を含む。
【0140】
(b)前記試料を接触する前後の懸濁液の変化を対照群と比較分析するステップ
【0141】
前記ステップはビリルビン誘導体が試料内の活性酸素種との反応により表れる懸濁液の変化を対照群と比較分析するステップである。前記対照群は活性酸素種の種類及び濃度別にi)予め測定されるか、またはii)前記ステップ(a)と同時に測定される活性酸素種の種類及び濃度に従う懸濁液の変化を意味する。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、前記(b)ステップの懸濁液の変化はビリルビン誘導体粒子の沈殿有無、波長に従う吸光度、懸濁液の透明度、懸濁液内の金属イオンの濃度及び MR画像シグナルの強度を含むが、必ずこれに限定されるのではない。
【0143】
本発明の前記方法は前述した本発明のビリルビン誘導体粒子、これを含む組成物または装置を共通的に用いるので、この両者に共通した内容は本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0144】
本発明の一態様によれば、本発明はビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象(subject)に投与するステップを含む画像診断方法を提供する。
【0145】
本発明の他の一態様によれば、本発明はビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象(subject)に投与するステップを含む癌の治療方法を提供する。
【0146】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明はビリルビン誘導体粒子を含む組成物を対象
(subject)に投与するステップを含む炎症性疾患の治療及び診断方法を提供する。
【0147】
本明細書で使われた用語、“投与”または“投与する”は、本発明の組成物の治療的または診断的有効量を前記組成物を必要とする対象(個体)に直接的に投与することによって対象の体内で同一な量が形成されるようにすることをいう。
【0148】
組成物の“治療的有効量”は組成物を投与しようとする対象に治療的または予防的効果を提供することに充分の組成物の含有量を意味し、これに“予防的有効量”を含む意味である。組成物の“診断的有効量”は組成物を投与しようとする対象に診断効果を提供することに充分の組成物の含有量を意味する。
【0149】
本明細書で使われた用語、“対象”は制限無しでヒト、マウス、ラット、モルモット、犬、猫、馬、牛、豚、猿、チンパンジー、ヒヒ(baboon)または赤毛猿を含む。具体的には、本発明の対象はヒトである。
【0150】
本発明の画像診断方法、癌の治療方法及び炎症性疾患の治療及び診断方法は、本発明の一態様であるビリルビン誘導体粒子を含む各用途の組成物を投与するステップを含む方法であるので、これらの間に重複する内容に対しては本明細書の記載の過度な複雑性を避けるために省略する。
【発明の効果】
【0151】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
【0152】
(i)本発明は金属を含む親水性ビリルビン誘導体粒子、その用途及び製造方法を提供する。
【0153】
(ii)本発明のビリルビン誘導体粒子は多様な金属と配位結合を形成するので、MR診断、CT診断、光-音響診断、PET診断または光学診断に使用することができる。
【0154】
(iii)本発明のビリルビン誘導体粒子は前記診断用途だけでなく、ビリルビン自体の抗酸化活性、抗癌活性によって抗炎症活性及び抗癌活性を示すので、炎症性疾患や癌疾患を治療する治療用途にも同時に使用することができるセラノスティックス(theranostics)の概念である。
【0155】
(iv)本発明のビリルビン誘導体粒子は、光または活性酸素刺激により分解されることによって、内部に封入した薬物を外部に放出させることができる。
【0156】
また、本発明のビリルビン誘導体粒子は活性酸素種との反応性があるので、活性酸素種の種類及び濃度を検出するための組成物、センサー、キット、造影剤または装置として使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【
図1】本発明のビリルビン誘導体粒子を用いた応用方法の例を示す。
【0158】
【
図2】本発明のビリルビン誘導体粒子の製造過程及びPETイメージングに使用するための放射性同位元素
64Cuを用いたプロセスを示した図である。
【0159】
【
図3】放射性標識効率を最適化するための反応条件を確認するためにpH及び温度に従う効率を示した図である。
【0160】
【
図4】
64Cu-ビリルビン粒子を静脈内注射後、1、3及び6時間後のPC-3腫瘍(黄色矢印)保有マウスの代表的なmicro-PETイメージを示した図である(axial image、上段;coronal image、下段)。
【0161】
【
図5a】PEG-ビリルビンと金属イオンの反応時、比色計測定を示したものであって、特定金属イオンとの反応前(上段)と反応後(下段)のビリルビン粒子の懸濁液写真である。
【0162】
【
図5b】PEG-ビリルビンと金属イオンの反応時、比色計測定を示したものであって、特定金属イオンとの反応前後のビリルビン粒子の懸濁液に対するUV/Visスペクトルを示した図である。
【0163】
【
図6a】PEG-ビリルビンを用いた鉄酸化物基盤MRプローブの製作を示した図であって、1)左側の脂質膜(lipid film)方法はクラスターを形成した酸化鉄が中心に位置し、PEG-ビリルビン層がその周辺を囲む形態の、本発明の金属が封入されたビリルビン誘導体粒子を生成し、2)右側の超音波処理(sonication)方法はPEG-ビリルビン層でコーティングされた単一酸化鉄ナノ粒子を生成する。
【0164】
【
図6b】PEG-ビリルビンと超常磁性酸化鉄の配位結合原理を示す図である。
【0165】
【
図6c】PEG-ビリルビンシェル(shell)を有するクラスターを成している酸化鉄ナノ粒子(左側)及び単一分布した酸化鉄ナノ粒子(右側)を示す代表的なTEMイメージを示した図である。
【0166】
【
図7】PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONの特徴を示すものであって、水溶液上でPEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONのT2強調MRファントムイメージと鉄濃度の関数としてのT2緩和速度を示した図である。
【0167】
【
図8】PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONの特徴を示すものであって、ROS刺激前後のPEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONのTEMイメージを示した図である。
【0168】
【
図9a】PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONの特徴を示すものであって、PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONのROS濃度に従うROS-反応性を順次的なMRファントムイメージで示した図である。
【0169】
【
図9b】PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONの特徴を示すものであって、PEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONのROS濃度に従うT2緩和値変化グラフである。
【0170】
【
図10】Nox2遺伝子の大食細胞内の発現程度をRT_qPCRで測定して示した図である。
【0171】
【
図11a】ROS生成条件下でPEG-DSPEコーティングSPIONとPEG-BR SPION処理グループとの間の大食細胞食作用の程度を光学顕微鏡で観察した結果を示した図である。
【0172】
【
図11b】マウスの腹腔から採取した大食細胞を対象とするPEG-DSPEコーティングSPIONとPEG-BR SPION処理グループとの間の大食細胞食作用の程度をMRIファントム実験で比較して示した図である。
【0173】
【
図12】PEG-BRがコーティングされた金ナノ粒子を活性酸素種と反応時、PEG-BRコーティングが剥けて、金ナノ粒子同士凝集しながら近赤外線(NIR)領域で強力な光熱効果(photothermal effect)が発生することを示す図である。
【0174】
【
図13】PEG-BRがコーティングされた金ナノ粒子を用いたマウスのCT画像結果を示した図である。
【0175】
【
図14】シスプラチンがローディングされたビリルビン粒子の陰で染色された(negatively stained)TEMイメージを示した図である。
【0176】
【
図15】シスプラチンキレート化を示したものであって、一般ビリルビン粒子(BRNP)及びシスプラチンと反応させたビリルビン粒子(BRNP+シスプラチン)の懸濁液写真(左側)及びUV/Visスペクトルを示した図である。
【0177】
【
図16】PEG-ビリルビン粒子とシスプラチンの推定反応メカニズムを示した図である。
【0178】
【
図17a】シスプラチンが封入されたPEG-ビリルビン粒子でいろいろな条件(pH、ROS)及び時間に従うシスプラチン放出様相を示した図である。
【
図17b】シスプラチンが封入されたPEG-ビリルビン粒子でいろいろな条件(pH、ROS)及び時間に従うシスプラチン放出様相を示した図である。
【0179】
【
図18】ヌードマウスの異種移植腫瘍に注射後、時間に従うイン・ビボ光音響イメージ(photoacoustic image)及びこれに相応する腫瘍でピクセル値の半-定量分析(semi-quantitative analysis)を示した図である。
【0180】
【
図19】800mW/cm
2の出力強度で近赤外線(NIR)レーザーに露出した腫瘍異種移植マウスの互いに異なる時間間隔での赤外線熱画像イメージを示した図である。
【0181】
【
図20】ヌードマウスの異種移植腫瘍にシスプラチンが封入されたPEG-ビリルビン粒子を注射した後、光を用いて光熱治療を進行し、期間別に観察した結果を示した図である。
【
図21】ヌードマウスの異種移植腫瘍にシスプラチンが封入されたPEG-ビリルビン粒子を注射した後、光を用いて光熱治療を進行し、期間別に観察した結果を示した図である。
【0182】
【
図22】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子水溶液の活性酸素種の濃度に従う変化を示した図である。
【0183】
【
図23】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子水溶液の活性酸素種としてNaOClの濃度に従う変化を示した図である。
【0184】
【
図24】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子水溶液の活性酸素種として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2'- Azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)(AAPH)の濃度に従う変化を示した図である。
【0185】
【
図25】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子水溶液の活性酸素種として過酸化水素水の濃度に従う変化を示した図である。
【0186】
【
図26】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子(PEG-BR GNP)の水溶液を各種類の活性酸素種(H
2O
2、NaOCl、AA PH)と反応させる前後の溶液の肉眼上の変化を示した図である。
【0187】
【
図27】本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子(PEG-bilirubin gold nanoparticle)の水溶液を各種類の活性酸素種(H
2O
2、NaOCl、AAPH)と反応させる前後の溶液の吸光度変化を示した図である。
【0188】
【
図28】本発明のPEG化されたビリルビンに対する対照群としてPEG-thiolがコーティングされた金ナノ粒子(PEG-thiol gold nanoparticle)の水溶液を各種類の活性酸素種(H
2O
2、NaOCl、AAPH)と反応させる前後の溶液の吸光度変化を示した図である。
【0189】
【
図29】マンガンイオン(Mn
2+)が配位結合して作ったビリルビン誘導体粒子の模式図を示した図である。
【0190】
【
図30】MRIイメージングに使用するための常磁性元素であるマンガンイオン(Mn
2+)が配位結合したビリルビン誘導体ナノ粒子の製造過程を示した図である。PEG-ビリルビンでナノ粒子を作った後、マンガンイオンを混ぜてマンガンイオンが配位結合した粒子を作る。
【0191】
【
図31】本発明のビリルビン誘導体及び金属を含む粒子が活性酸素を検出または診断することができることを示す模式図である。具体的に、本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体と活性酸素が反応した時、疎水性であるビリルビンは親水性であるビリベルジンに変わるか、またはビリルビンのフラグメント(fragments)に分解されながら結合が弱くなってナノ粒子が瓦解する。これによって、配位結合していたマンガンイオンが落ちながらMRI画像イメージ向上になる。
【0192】
【
図32】本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体粒子が活性酸素刺激によりマンガンイオンを放出する様相を示した図である。
【0193】
【
図33】マンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体(PEG-BR)ナノ粒子に活性酸素生成物質として次亜塩素酸(hypochlorite)を処理する前後のTEMイメージを示した図である。
【0194】
【
図34】マンガンが配位結合したビリルビンナノ粒子に活性酸素(次亜塩素酸塩)処理前後のMRI T1強調画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0195】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨に従って本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【0196】
実施例
【0197】
実施例1:本発明のビリルビン誘導体(PEG-BR)粒子の製造
【0198】
1-1.ビリルビン誘導体(PEG-BR)の製造
【0199】
本発明者らはビリルビンの錯体形成効果を用いた、ビリルビンと金属を含むビリルビン誘導体を製造するための前ステップであって、ビリルビンに親水性分子としてポリエチレングリコールをコンジュゲーションしたビリルビン誘導体を製造した。
【0200】
まずビリルビンをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かし、ビリルビンに存在するカルボキシル基を活性化させて所望の反応を誘導するために1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)(EDC)を適当量添加して常温で約10分間反応させた。次に、末端にアミン基を有するポリエチレングリコールを添加し、一定時間反応させてビリルビンのカルボキシル基と、ポリエチレングリコールのアミン基がアミド結合によりコンジュゲーションされたビリルビン誘導体を合成した。最後に、前記製造された最終ビリルビン誘導体をシリカカラムを通じて副産物から純粋に分離及び抽出した。
【0201】
1-2.ビリルビン誘導体(PEG-BR)粒子の製造
【0202】
前記実施例1-1で製造したポリエチレングリコールがコンジュゲーションされた両親媒性のビリルビン誘導体をクロロホルムまたはジメチルスルホキシドなどの有機溶媒に溶解させ、これを窒素ガス条件下に乾燥させて脂質膜層を製造した。製作されたビリルビン誘導体の脂質膜層を水溶液で水和させて水溶液上に溶解されている自己組織化されたビリルビン粒子を製造した。
【0203】
実施例2:本発明の金属(金属イオン)を含むビリルビン誘導体粒子の製造1
【0204】
2-1.放射線同位元素である64Cuイオンを含むビリルビン誘導体粒子の製造及びイン・ビボPET画像化
【0205】
本発明のビリルビン誘導体粒子の金属イオンの封入効果を確認するために、次のような実験を遂行した。前記実施例1で製造したビリルビン誘導体粒子水溶液に別途の添加物無しでPET画像診断に使われる少量の放射性同位元素
64CuCl
2水溶液を混合した。すると、反応が非常に激烈で速く起こって約30分位の反応時間だけで
64Cuイオンがローディングされた(
図2)。
【0206】
また、本発明のビリルビン誘導体粒子がどれくらい多い活性があるかを確認するためにサイズ排除カラムを用いてビリルビンに内包されていない遊離の
64Cuを除去した後、放射線線量計で定量化した。一方、
64Cuキレート化のうち、他のpHと温度条件下で、反応方法は生理学的環境(37℃、pH7.4)とほぼ同一に最適化された(
図3)。
【0207】
前記64Cuイオンと本発明のビリルビン誘導体との配位結合はビリルビンのピロール基、ラクタム基、カルボキシル基と形成されることができ、これを例示的に化学式で表現すれば、以下の化学式2の通りである。
【0208】
【0209】
また、前記実施例1で製造したビリルビン誘導体(PEG-BR)粒子に
64Cuイオンを配位結合させたビリルビン誘導体粒子を腫瘍を有するラットに注入し、PET画像でイン・ビボ性能を予備的に確認した。確認結果、
64Cu-ビリルビン粒子は時間依存的に腫瘍を明確に視角化し、注射後、1時間、3時間及び6時間で表れた最も高い腫瘍の吸収率(tumor uptake)は約2.15、2.81及び3.75%注射投与量(ID)/gであった(
図4)。
【0210】
2-2.多様な金属(Ni、Mn、Gd、Mg、Ca、Fe)イオンを含むビリルビン誘導体粒子の製造
【0211】
本発明のビリルビン誘導体粒子の多様な金属イオンに対する封入効果(キレート効果)を確認するために6種の金属(Ni、Mn、Gd、Mg、Ca、Fe)イオンの間の錯体形成可能性を確認した。実験方法は前記2-1のように実施例1で製造したビリルビン粒子水溶液に前記各金属イオンを含む水溶液を入れて混合した。一定の反応時間が経た後、全ての金属、特に遷移金属はMgとCaの色相変化と比較する時、分別が可能な程度の色相変化(Ni=Fe>Gd=Mn)を示した(
図5a)。また、吸光度パターンは一般的な粒子溶液と比較して、各金属で、マグネシウムとカルシウムグループでも多様な変化を示した(
図5b)。
【0212】
前記結果のように、ビリルビン粒子溶液の色相が特定金属イオンと配位結合を成した後、元来の黄色から変化されるか、または特定吸光度パターンが変位または変更されれば、以前の生体医学応用分野を超えた新たなPEG化ビリルビンの適用可能性を見せるものでありうる。したがって、本発明のビリルビン誘導体粒子の多様な金属に対する有機金属錯体形成能力は、金属イオン感知システムを含んだ多様な応用が可能であることを確認することができる。
【0213】
実施例3:本発明の金属(金属ナノ粒子)を含むビリルビン誘導体粒子の製造2
【0214】
3-1.単一超常磁性酸化鉄ナノ粒子(superparamagnetic iron oxide nanoparticle 、SPION)を含むビリルビン誘導体粒子の製造
【0215】
超常磁性酸化鉄(SPION)に本発明のビリルビン誘導体をコーティングするために、前記実施例1で製造したビリルビンナノ粒子水溶液に酸化鉄ナノ粒子(SPION)が溶解されているヘキサン(hexane)溶液を添加して水層とヘキサン層が分れて境界部を形成した。その境界部にソニケーターを用いて人為的な圧力を加えて一定時間2つ層を混ぜることによって、酸化鉄ナノ粒子の表面にビリルビン誘導体(PEG-BR)がコーティングされた形態の粒子を製造した(
図6a)。前記反応の原理はリガンド交換(ligand exchange)原理であって、鉄ナノ粒子(SPION)に元来コーティングされていたオレイン酸(oleicacid)層が落ちて、その代わりに前記ビリルビン誘導体(PEG-BR)のカルボキシル基が鉄ナノ粒子(SPION)のコア部分とキレート化反応を通じて金属ナノ粒子をコーティングするものである(
図6b)。
【0216】
3-2.クラスター化された形態の超常磁性酸化鉄ナノ粒子(superparamagnetic iron o xide nanoparticle、SPION)を含むビリルビン誘導体粒子の製造
【0217】
金属粒子クラスターをビリルビン誘導体でコーティングした形態の粒子を製造するために、前記実施例3-1のようにビリルビン誘導体(PEG-BR)が溶解された水溶液に有機溶媒に溶解された金属粒子を添加する代わり、有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶かしたビリルビン誘導体(PEG-BR)にメタノールに溶かしたSPION粒子を混合した。その後、窒素ガス条件下で前記有機溶媒を乾燥させて脂質膜層を生成した。最後に、生成された脂質膜層を水和させてクラスター形態のSPIONナノ粒子を製造した。純粋なSPIONナノ粒子は前記過程を経た後に磁石に分離し、これを通じて製造されたクラスター形態のSPIONナノ粒子を最終的な反応物に分離した。
【0218】
本発明者らはTEMイメージでPEG-ビリルビンシェルを使用して前記実施例3-1及び3-2の2つ類型の粒子が成功的に製造されたことを確認した(
図6c)。
【0219】
3-3.金ナノ粒子を含むビリルビン誘導体粒子の製造
【0220】
金ナノ粒子にビリルビン誘導体をコーティングするために、前記実施例1-1で製造したビリルビン誘導体(PEG-BR)を有機溶媒でない水に溶かした後、金ナノ粒子が溶解されている水溶液と直ちに一定時間反応させて製造した。反応原理は、前記実施例3-1でのSPIONコーティングと類似の原理で、金ナノ粒子をコーティングしていたクエン酸(citrate)層に代えてビリルビン誘導体(PEG-BR)がナノ粒子コア部分を囲みながらコーティングするようになる。
【0221】
実施例4:本発明の金属(金属ナノ粒子)を含むビリルビン誘導体粒子のROS反応性
【0222】
4-1.SPIONを含むビリルビン誘導体粒子のMRIファントム研究(MRI phantom study)
【0223】
本発明者らは単一分布粒子の形態にPEG-ビリルビンによりコーティングされたSP IONの特性を研究するためにMRIファントム研究(phantom study)を進行した。
【0224】
まず本発明のビリルビン誘導体(PEG-ビリルビン)コーティングSPIONと、臨床的に承認されたT2強調MR剤(T2-weighted MR agent)であるフェリデックス(Feridex)のファントム画像を比較した結果、本発明のビリルビン誘導体(PEG-ビリルビン)コーティングSPIONがフェリデックスより優れる緩和度(relaxivity)値を示した(
図7)。
【0225】
また、本発明のビリルビン誘導体(PEG-ビリルビン)コーティングSPIONをROS発生剤である次亜塩素酸塩(hypochlorite)で処理すると、ビリルビン固有のROSに対する反応性(ROS-responsiveness)により、TEM画像でPEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONの凝集が観察された(
図8)。また、予想の通り、T2 MRファントム研究でもPEG-ビリルビンにより維持される親水性損失によって、ROS濃度に比例するT2信号の漸進的な減少によるROS-反応性が間接的に立証された(
図9 a及び
図9b)。このようなSPION凝集反応はSPIONのサイズを漸進的に増加させることができるので、今後magnetic hyperthermiaという治療効果の潜在的な対象になることができる。
【0226】
4-2.SPIONを含むビリルビン誘導体粒子のROS反応性に対するイン・ビトロ及びイン・ビボ試験
【0227】
PEG-ビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子がイン・ビトロ及びイン・ビボで ROSに反応して作動及び凝集するか否かを確認するために、炎症条件で活性酸素及び大食作用を通じて外部病源体(pathogen)を貪食するとよく知られた1次大食細胞及び大食細胞株を用いて以下のような実験を進行した。
【0228】
まず、人為的な炎症条件を作るためにLPS(lipopolysaccharide)を大食細胞あるいは腹腔に処理した後、それと同時にPEG-ビリルビンでコーティングされたSPIONと対照群に用いられたPEG-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-distearoylphospha tidylethanolamine)(PEG-DSPE)がコーティングされたSPION粒子を各々処理して、その貪食様相を光学顕微鏡及びMRファントム画像を用いて観察した。
【0229】
各条件でROSが同一な量に生成されるかを調べるために体内でROS発生源として知られたNox2遺伝子の大食細胞内の発現程度をRT_qPCRを通じて測定した。その結果、PEG-DSPEとPEG-BR SPIONグループ間の前記Nox2遺伝子の発現程度がほとんど類似すると表れて、正常条件よりは増加した類似な量のROSが生成されることを確認した(
図10)。
【0230】
また、同等な量のROS生成条件で各々のPEG-DSPEコーティングSPIONとPEG-BR SPION処理グループ間の貪食程度を光学顕微鏡を通じて観察した。観察結果、PEG-BRコーティングSPION処理群で対照群であるPEG-DSPEコーティングSPION処理群に比べてより高い貪食程度を示した(
図11a、貪食程度の増加により、一層濃い色として観察される)。腹腔から大食細胞を採取して得たMRI細胞ファントム研究でも同一な様相を示した(
図11b)。
【0231】
前記の結果は、LPS処理によりストレスが増加した大食細胞で生成された活性酸素に反応してPEG-BRコーティングSPIONでPEG-BRコーティングが剥けることによって、SPIONコアが凝集してそれによって貪食が増加したか、または貪食された後に活性酸素により反応して細胞内でも互いに凝集が起こって前記のような結果が生じたことと考えられる。それに反して、対照群であるPEG-DSPEコーティングSPIONは活性酸素と何の反応もしないので、相対的に完全な形態のPEG-DSPEコーティングSPIONナノ粒子、その自体の活性が観察されたことと考えられる。
【0232】
4-3.金ナノ粒子を含むビリルビン誘導体粒子のCTファントム研究及びROS反応性に対するイン・ビトロ及びイン・ビボ試験
【0233】
金ナノ粒子(Gold nanoparticle)は前臨床(preclinical)領域でCT造影剤に広く研究されている。SPIONのように、クエン酸によりコーティングされた金ナノ粒子表面は配位結合によりPEG化されたビリルビン(PEG-BR)に代替できる。本発明で、金ナノ粒子へのPEG化ビリルビンの成功的結合は、TEMイメージとCTファントムイメージを通じて確認し、キレート化後、UV-Vis波長変化及びビリルビンによりコーティングされた金ナノ粒子の反応性酸素種-反応性(ROS-responsiveness)を対照群であるPEG化チオール(pegylated thiol)によりコーティングされた金ナノ粒子と比較して観察することによって確認した。
【0234】
また、PEG-BRがコーティングされた金ナノ粒子は活性酸素と反応時、PEG-BRコーティングが剥けて、これによってリガンドを消失した金ナノ粒子同士凝集し、これによって金ナノ粒子が近赤外線領域(NIR region)で強力な光熱効果(photothermal effect)を有するようになる吸光度変化を有するようになる(
図12)。これは、PEG-BRがコーティングされた金ナノ粒子基盤の造影剤は今後にCTを用いた診断だけでなく、腫瘍で活性酸素に反応して光熱効果による治療も図ることができるツールとして利用できる可能性を示す。
【0235】
また、in vivo上でPEG化ビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子のCT画像をマウスで確認して見た結果、長時間の間安定的に循環(long circulation)しながら血管造影が可能であることを確認し、それと共に肝及び脾臓など、主要臓器の画像化においても優れる結果を示した(
図13)。
【0236】
実施例5:本発明の金属(プラチナ系抗癌剤)を含むビリルビン誘導体粒子の製造3
【0237】
本発明のビリルビン誘導体粒子の金属と錯体を形成するキレート効果及び腫瘍に対する治療効能を立証するために腫瘍に対して使われる最も代表的な金属薬物であるシスプラチンをローディングしたナノ粒子を製造した(
図14)。シスプラチンは白金金属骨格を有しており、ナノ運搬体と共に使用されてきた。
【0238】
PEG化ビリルビン(PEG-BR)粒子とシスプラチンの加水分解生成物を反応させた結果、溶液の中で前例ない色変化が表れると共に、シスプラチンがローディングされることを確認した(
図15)。前記PEG化ビリルビンとシスプラチンの結合原理を示す模式図を
図16に示した。
【0239】
また、シスプラチンが封入されたビリルビンナノ粒子でいろいろな条件(pH、ROS)及び時間に従うシスプラチン放出実験を進行した結果、シスプラチンはROSに反応して最も高い放出率を示し、その次に細胞内のライソソームの環境と類似すると知られた酸性条件(pH5.5)で高い放出率を示し、生理的なpHでは最も低い放出率を示した(
図17a及び
図17b)。
【0240】
前記結果から本発明の金属を含むビリルビン誘導体粒子は安定的にシスプラチンというプラチナ系薬剤を封入し、周辺微細環境に選択的に封入した薬剤が放出できることを間接的に確認することができる。
【0241】
実施例6:本発明の金属(プラチナ系抗癌剤)を含むビリルビン誘導体粒子の光-音響及び光熱活性
【0242】
減少したSoret bandピークを犠牲させれば、赤外線領域(IR region)(赤色偏移)での吸光度の上昇は808nmの光で顕著な光熱活性を誘発する。ビリルビンナノ粒子その自体に顕著なIR光感受性が存在するので、元来の一般的なIR光源では光熱活性を引き出すことができなかった。このような変化と新しく獲得した光子特性は“プラチナブルース”理論により説明できる。この理論によれば、シスプラチンの加水分解生成物をアミドリガンドと反応させた時に得ることができる。
【0243】
PEG化されたビリルビンをシスプラチンと配位結合させた本発明のナノ粒子は近赤外線領域(NIR region)で新しく獲得した吸光度によって、本発明者らはこのような金属-錯体を光-音響イメージ(photo-acoustic image)と光熱治療(photo-thermal therapy、PTT)に使用した。光-音響イメージと光熱治療は特定波長の光で同一な原理を共有する。
【0244】
腫瘍異種移植モデルのマウスで生体内の光-音響イメージングに適用時、本発明のビリルビン誘導体は静脈内注射後、徐々に光-音響信号が増加することを確認した(
図18)。したがって、同一な条件で光熱治療可能性を確認し、808nmの光に露出後、5分以内に腫瘍の表面温度が55~60℃まで急激に上昇することを確認した(
図19)。結果的に、実際の光を用いて光熱治療を進行したグループで時間に従って有意な腫瘍ボリューム減少効果が観察された(
図20及び
図21)。
【0245】
実施例7:本発明の金属を含むビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性
【0246】
実施例7-1.鉄ナノ粒子を含むビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性確認(肉眼上の色相変化)
【0247】
本発明のビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性及び変化を確認するために活性酸素種の濃度に従う本発明のPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子の変化を確認した。
【0248】
まずPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子を含む懸濁液を前述した実施例のような方法により製造した後、懸濁液にNaOCl(100、10、1、0.1、0mM)とAAPH*(100、10、1、0.1、0mM)、過酸化水素水(100mM)を濃度別に添加し、その結果を肉眼と光学顕微鏡で観察した。[*2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(*2,2'-Azobis(2-amidinopropane) dihydroch loride (AAPH))]また、陰性対照群としてPEG化されたDSPE**がコーティングされた鉄ナノ粒子を使用した。[**1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphor ethanolamine(DSPE)]
【0249】
【0250】
図22に示したように、NaOCl 100mM濃度では高濃度の活性酸素によって鉄ナノ粒子をコーティングしていたPEG化されたビリルビンが全て脱落して残っている疎水性の鉄ナノ粒子同士互いに凝集して沈んでしまう。これによって、右側2つチューブで見える鉄ナノ粒子水溶液の固有なコーヒー色も消失して透明な水色を示した。一方、中間濃度である1mMを処理した中間チューブグループはごく少量だけ凝集しており(赤色矢印)、右側の対照群グループ(0mM)に比べて鉄ナノ粒子の弱い凝集によって、より深まったコーヒー色を示した。
【0251】
また、
図23乃至25に示したように、次亜塩素酸(HOCl)>>AAPH>>>>>過酸化水素水の順序に活性酸素との反応性が異なることを各々確認することができた。また、陰性対照群で使用したPEG化された1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)(DSPE)がコーティングされた鉄ナノ粒子は3種類の活性酸素と何の反応もしないことを確認した。したがって、本発明の活性酸素とPEG化されたビリルビンがコーティングされた鉄ナノ粒子の反応は非常に特異的であることを確認することができる。
【0252】
実施例7-2.金ナノ粒子を含むビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性確認(吸光度変化)
【0253】
本発明のビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性を定量的に確認するためにビリルビン誘導体粒子と活性酸素種を反応させる前後の吸光度を測定した。具体的に、PEG化されたビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子を各種類の活性酸素種と反応させる前後の溶液の変化を肉眼及び吸光度を測定して確認した。
【0254】
【0255】
AAPHの場合、PEG化されたビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子のみ特異的に反応し、陰性対照群に使用したPEG化されたチオール(PEG-SH)がコーティングされた金ナノ粒子は反応しなかった。また、次亜塩素酸(HOCl)の場合、PEG化されたビリルビンがコーティングされた金ナノ粒子とPEG化されたthiol(PEG-SH)がコーティングされた金ナノ粒子全て反応することと見えて、本発明のビリルビン誘導体粒子が特異的に活性酸素種(AAPH)にさらに高い反応性を示すことを確認した。
【0256】
前記結果から本発明のビリルビン誘導体粒子は活性酸素種の種類及び濃度を鑑別することに有用に使用できることが分かる。
【0257】
実施例8:本発明のマンガンイオン配位結合ビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性
【0258】
実施例8-1.マンガンイオン配位結合ビリルビン誘導体粒子の製造
【0259】
本発明の金属を含むビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性及び変化を追加的に確認するためにマンガンイオン(Mn
2+)を配位結合してビリルビン誘導体粒子を製造した。マンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体ナノ粒子の模式図と製造方法は
図29及び
図30に示した。具体的に、5)前記実施例1で製造したビリルビン誘導体(PEG-BR)粒子水溶液を強く混ぜながらPEG-BR:MnCl
2のモル割合が1:1になるようにMnCl
2水溶液をシリンジポンプ(syrynge pump)を用いて点滴した。以後、37℃で48時間の間反応させた。6)反応が終わった後、透析バック(Float A-Lyzer、MW cutoff:20K)を用いてビリルビンナノ粒子と結合できなかったマンガンイオンを除去し、7)Amicon 10Kを用いて濃縮することによってマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体ナノ粒子を製造した。8)製造されたビリルビン誘導体ナノ粒子に結合したマンガンイオンの量を測定するためにICP-OES(Agilent ICP-OES 5110)を使用した。その結果、本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体ナノ粒子はマンガンイオンが22.67±2.20mg/kg(PEG-BR 1mM基準)結合されたことを確認した。
【0260】
実施例8-2.マンガンイオン配位結合ビリルビン誘導体粒子の活性酸素種に対する反応性確認(イオン濃度、TEMイメージ及びMR画像)
【0261】
前記実施例8-1で製造した本発明のマンガンイオン配位結合ビリルビン誘導体粒子の活性酸素との反応を確認するために、マンガンイオン配位結合ビリルビン誘導体粒子に次亜塩素酸を投入し、時間に従うマンガンイオンの放出量及びMRI T1強調画像を得た。
図31は、本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体と活性酸素が反応した時、疎水性であるビリルビンが親水性であるビリベルジンに変わりながら結合が弱くなってナノ粒子が瓦解され、これによって配位結合していたマンガンイオンが落ちながら活性酸素をMRIを用いてイメージングできることを説明する。
【0262】
具体的に、マンガンイオンが配位結合したビリルビンナノ粒子1mLを透析バック(Float A-Lyzer、MW cutoff:20K)に入れて、99mLの蒸溜水にNaOCl 1mMを入れた後、室温で振ってくれて配位結合状態から落ちるマンガンイオンの透析を進行した。定まった時間(0、1、2、3、6、12、24、48及び72hr)で透析バックの内側で50μlを採取し、各分画に含まれたマンガンの量をICP-MS(Agilent ICP-MS 7700S)を通じて確認した。
【0263】
結果は
図32に示した。
図32に示したように、本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体粒子は活性酸素刺激によりマンガンイオンを放出した。
【0264】
また、本発明者らは本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体(PEG-BR)ナノ粒子の次亜塩素酸(hypochlorite)処理前後の形態学的変化を透過電子顕微鏡で観察した。結果は
図33に示した。
図33に示したように、活性酸素(次亜塩素酸)刺激前にはマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体粒子が1個所に集まって小さな球形態を帯びていたが、刺激後にはマンガンイオンとビリルビンの結合が変わりながら集まっておらず、分散された様子を確認することができた。
【0265】
また、本発明者らは本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体(PEG-BR)ナノ粒子の次亜塩素酸(hypochlorite)処理前後のMR画像シグナルの強度変化を測定した。測定装備は17-cmボアサイズの3-Tesla MRS 3000スキャナー(w/ a birdcage rat head coil, MR Solutions, Surrey, United Kingdom)を使用し、水平方向(Horizontal)T1強調画像の測定パラメータは次の通りであった:
【0266】
Time of repetition (TR)/echo time (TE); 550 ms/11 ms, flip angle; 90°, field of view (FOV); 45 mm × 45 mm, slice thickness; 1.5 mm, matrix number; 256 × 12 8.
【0267】
【0268】
【0269】
前記表1及び
図34に示したように、本発明のマンガンイオンが配位結合したビリルビン誘導体(PEG-BR)ナノ粒子は、活性酸素(次亜塩素酸)処理後、MRI T1強調画像の明るさが向上することを確認することができた。したがって、前記結果から本発明のビリルビン誘導体粒子は活性酸素、またはこれを伴う炎症部位の検出用組成物として有用に使用できることを確認した。
【0270】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者に当たってこのような具体的な技術は単に好ましい実施形態であり、ここに本発明の範囲が制限されるのでないことは明白である。