IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィアの特許一覧

特開2023-52057リンパ系疾患の診断及び治療のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052057
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】リンパ系疾患の診断及び治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230404BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20230404BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20230404BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230404BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230404BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/6883 Z
C12N15/12
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
A61K45/00
A61P7/00
A61P43/00 121
A61K31/436
A61K31/4709
A61K31/519
A61K31/4184
A61K45/06
A61K38/21
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022206535
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019511562の分割
【原出願日】2017-08-30
(31)【優先権主張番号】62/382,147
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハゥコーナルソン, ホーコン
(72)【発明者】
【氏名】リー, トン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン, リーフォン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ケニー
(72)【発明者】
【氏名】スレイマン, パトリック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リンパ異常の診断及び治療のための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】ヒト患者におけるリンパ異常を診断することを補助するための方法であって、患者から得た生物学的試料においてEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数における一塩基変異(SNV)を検出することを含み、前記SNVの存在は、リンパ異常を示す、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者におけるリンパ異常を診断するための方法であって、
a)患者から核酸を含む生物学的試料を得ること;
b)
i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又は
ii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するか
どうかを決定するために核酸をアッセイすること;並びに
c)i)若しくはii)のSNVが存在する場合、患者をリンパ異常と診断すること
を含む、方法。
【請求項2】
ヒト患者におけるリンパ異常を診断するための方法であって、
a)ヒト患者から遺伝子型配列情報を得ること;
b)
i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又は
ii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するか
どうかを決定するために核酸をアッセイすること;並びに
c)i)若しくはii)のSNVが存在する場合、患者をリンパ異常と診断すること
を含む、方法。
【請求項3】
ヒト患者におけるリンパ異常を治療するための方法であって、
a)患者から核酸を含む生物学的試料を得ること;
b)
i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又は
ii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するか
どうかを決定するために核酸をアッセイすること;並びに
c)i)若しくはii)のうちの1つ又は複数のSNVを有すると同定された患者に前記リンパ異常の治療に適した1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ異常を治療すること
を含む、方法。
【請求項4】
ヒト患者におけるリンパ異常を治療するための方法であって、
a)ヒト患者から遺伝子型配列情報を得ること;
b)
i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又は
ii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するか
どうかを決定するために核酸をアッセイすること;並びに
c)i)若しくはii)のうちの1つ又は複数のSNVを有すると同定された患者に、リンパ異常の治療に適した1又は複数の薬剤を単独で又は組み合わせて投与し、それによってリンパ異常を治療すること
を含む、方法。
【請求項5】
前記リンパ異常の治療に適した前記薬剤が、1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤の1つ又は複数の組み合わせの群から選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記1若しくは複数の薬剤又は1若しくは複数の阻害剤が、表1及び/又は2に記載される、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
SNVが、
a)EPHB4におけるc.2334+1G>C;
b)PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;
c)PIK3R6におけるc.1393-7C>T;
d)mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;
e)ARAFにおけるc.640T>C:p.S214P、及び
f) a)、b)、c)、d)又はe)の前記SNVの1つ又は複数と連鎖不平衡にあるSNV
から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ヒト患者におけるリンパ異常を治療するための方法であって、1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤の1つ又は複数の組み合わせから選択される薬剤の有効量を投与し、それによってリンパ異常を治療することを含む、方法。
【請求項9】
リンパ異常が、リンパ管の異常な形成及び/又は組織の異常増殖によって特徴付けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リンパ異常がリンパ管腫症(LAM)である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
リンパ異常がリンパ管腫症(GLA)である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
リンパ異常が、心膜滲出液、胸膜滲出液又は腹膜滲出液を含む乳び性滲出液によって特徴付けられる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
生物学的試料における検出後にSNVを同定する報告を作成することをさらに含む、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項14】
該方法において同定されたSNVに基づいて、リンパ異常に対して提案された治療(1つ又は複数)を見極める報告を作成することをさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リンパ異常を治療するために適した1又は複数の薬剤の有効量を、診断された患者に投与することをさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤の1つ又は複数の組み合わせから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤又は前記阻害剤が表1及び2に列挙されている、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PI3Kシグナル伝達を阻害する少なくとも1の薬剤が投与される、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
MEK/ERKシグナル伝達を阻害する少なくとも1の薬剤が投与される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
mTORシグナル伝達を阻害する少なくとも1の薬剤が投与される、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ラパマイシンが投与される、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
BEZ-235(ダクトリシブ)が投与される、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
薬剤が、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
薬剤が、mTORシグナル伝達を阻害し、かつ付加的な生物学的活性を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
付加的な生物学的活性が、PI3Kの阻害、FK506結合タンパク質の阻害、DNA-PKの阻害、p110の阻害、又はp70S6Kの阻害である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
患者がEPHB4においてSNVを有しない、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
患者がPIK3R4においてSNVを有しない、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
患者がPIK3R6においてSNVを有しない、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
患者がmTORにおいてSNVを有しない、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
患者がARAFにおいてSNVを有しない、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
患者が、以下のSNV:
a)EPHB4におけるc.2334+1G>C;
b)PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;
c)PIK3R6におけるc.1393-7C>T;
d)mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;及び
e)ARAFにおけるc.640T>C:p.S214P
の1つ、2つ、3つ、4つ又は5つを任意の組み合わせで有する、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
患者が、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において、前記SNVと連鎖不平衡にあるSNVを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療が、全身化学療法、インターフェロンアルファ、放射線療法、及び/又は外科手術を施すことをさらに含む、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ構造を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長させることを含む、EPHB4におけるSNV c.2334+1G>C又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法。
【請求項35】
前記薬剤が表1及び2に列挙されている、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ構造を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長させることを含む、PIK3R4におけるSNV c.3481A>G:p.S1161G又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法。
【請求項37】
前記薬剤が表1及び2に列挙されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ構造を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長させることを含む、PIK3R6におけるSNV c.1393-7C>T又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法。
【請求項39】
前記薬剤が表1及び2に列挙されている、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ構造を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長させることを含む、mTORにおけるSNV c.6818A>G:p.P2273L又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法。
【請求項41】
前記薬剤が表1及び2に列挙されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
1又は複数のmTOR阻害剤、1又は複数のPIK3K阻害剤、1又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される1又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ構造を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長させることを含む、ARAFにおけるSNV c.640T>C:p.S214P又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法。
【請求項43】
前記薬剤が表1及び2に列挙されている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ若しくは複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又は前記SNVと連鎖不均衡にあるSNVが存在するかどうかを決定するために核酸をアッセイする工程が、ポリヌクレオチド試料を分析して、特異的ハイブリダイゼーションの検出、対立遺伝子サイズの測定、制限断片長多型分析、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション分析、一塩基プライマー伸長反応、及び増幅されたポリヌクレオチドの配列決定からなる群から選択される方法を実施することによって前記SNVの存在を決定する工程をさらに含む、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項45】
生物学的試料がDNAを含む、請求項1から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
生物学的試料がRNAを含む、請求項1から45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記SNV(1つ又は複数)を含む核酸が、ヒト患者の単離された細胞から得られる、請求項1から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
a)EPHB4におけるc.2334+1G>C;
b)PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;
c)PIK3R6におけるc.1393-7C>T;
d)mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;及び
e)ARAFにおけるc.640T>C:p.S214P
から選択されるSNVを有する核酸をコードする、単離されたベクター。
【請求項49】
請求項48に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項50】
請求項49に記載の細胞を含むトランスジェニック動物。
【請求項51】
マウス又はゼブラフィッシュである、請求項50に記載のトランスジェニック動物。
【請求項52】
a)請求項1から51のいずれか1項に記載されるような少なくとも1つのSNV又は前記SNVと連鎖不平衡にあるSNVを含む少なくとも1の核酸を発現する細胞を提供すること、
b)a)のSNVに対応する同種野生型配列を発現する細胞を提供すること;
c)a)及びb)の細胞を、試験剤と接触させること;並びに
d)前記薬剤が、工程b)のものと比較して、工程a)の細胞の細胞シグナル伝達を変化させるかどうかを分析すること
を含む、細胞シグナル伝達を変化させる薬剤を同定するための方法。
【請求項53】
前記薬剤がMEK/ERK阻害剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
前記MEK/ERK阻害剤が、セルメチニブ(AZD6244)、PD0325901、トラメチニブ(GSK1120212)、PD184352(CI-1040)、ピマセルチブ(AS-703026)、TAK-733、AZD8330、ビニメチニブ(MEK162、ARRY-162、ARRY-438162)、SL-327、レファメチニブ(RDEA119、Bay 86-9766)、及びコビメチニブ(GDC-0973、RG7420)から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記阻害剤がセルメチニブである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
PI3K阻害剤及びMEK/ERK阻害剤からなる群から選択される薬剤の投与をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項57】
薬剤の組み合わせが投与され、前記組み合わせが、
a)リダフォロリムスとトラメチニブ;
b)リダフォロリムスとセルメチニブ又はコビメチニブ;
c)BEZ235とセルメチニブ;
d)オミパリシブとセルメチニブ又はトラメチニブ;
e)エベロリムスとトラメチニブ又はセルメチニブ;
f)シロリムスとリダフォロリムスとセルメチニブ;
g)シロリムスとリダフォロリムスとトラメチニブ;
h)トルキニブとトラメチニブ;
i)BEZ235とトルキニブとトラメチニブ;及び
j)シロリムスとゲダトリシブとトラメチニブ
からなる群から選択される、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本出願は、2016年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/382147号の優先権を主張し、その内容全体は出典明示により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、リンパ系の遺伝学、個別化医療、及び奇形の分野に関する。より具体的には、本発明は、リンパ管腫症(Lymphangiomatosis)及び他のリンパ管腫症(generalized lymphatic anomalies)(GLA)に関連する症状を改善するための新しい遺伝的標的及び治療的処置計画を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明が属する最新技術を説明するために、本明細書を通していくつかの刊行物及び特許文書が引用されている。これらの引用のそれぞれは、あたかも完全に記載されているかのように、出典明示により本明細書に援用される。
【0004】
リンパ系は体液の循環を維持し、身体を病気から守り、小腸の脂肪を吸収するのに重要な役割を果たす(1)。複雑なリンパ管の異常は、リンパ管の異常な形成と組織の異常増殖によって特徴付けられる。患者は、重篤な肺疾患を引き起こし得る重複する症状をしばしば呈する(2、3)。リンパ異常の例には、リンパ管腫症(GLA)、リンパ管拡張症、及び乳び性滲出液(心膜、胸膜又は腹膜)が含まれる。診断における重要な課題のために、複雑なリンパ異常の研究は分類と命名法の不一致によって妨げられてきた(3-6)。複雑なリンパ異常の分子遺伝学的病因はあまり理解されていないが、リンパ系の先天性奇形は、根底にある遺伝的病因に関連しているように見える(7-9)。実際、生殖細胞系突然変異及び体細胞突然変異の両方が、PI3K/mTOR及びRas/MAPK経路に収束する遺伝子において同定されている(1、8)。
【0005】
PI3K/mTOR及びRas/MAPKシグナル伝達経路の破壊又は異常は、成熟リンパ管ネットワークの構築中の正常な拡大及びリモデリングを損なうことが示されており、このような破壊はリンパ管疾患に関連している。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)活性の上昇をもたらす、AKT1及びPIK3CAの機能獲得型突然変異が、プロテウス症候群(OMIM 176920)、CLOVES症候群(OMIM 612918)及びクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群(OMIM 149000)などの症候群の一部を構成するリンパ管奇形の患者で確認された(9-11)。KRAS、HRAS、RAF1、PTPN11、SOS1及びRASA1の突然変異は、RAS経路活性の調節不全をもたらし、ヌーナン症候群(OMIM 163950)、コステロ症候群(OMIM 218040)、心臓・顔・皮膚症候群(OMIM 115150)及び毛細血管奇形-動静脈奇形(CM-AVM)症候群(OMIM 608354)においてリンパ浮腫又はリンパ管拡張症を引き起こす(12-17)。
【0006】
これらの理解にもかかわらず、リンパ管腫症/リンパ管拡張症(LAM)、リンパ管腫症(GLA)、乳び性滲出液などのリンパ管疾患及びリンパ異常を有する患者の同定に使用するための遺伝的バイオマーカーが欠如しており、これらの疾患に関連する遺伝的マーカーを標的とする治療薬も同様である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
3世代家族のうち6人がGLAを含むリンパ異常、及び重大な静脈うっ血に罹患したため、その家族のメンバーを、新規生殖細胞系列突然変異を探索するためにエクソーム配列決定(ES)を使用して分析した。EPHB4のヘテロ接合生殖細胞系列突然変異が同定された。ゼブラフィッシュにおけるEPHB4ノックダウン研究は、EPHB4がリンパ管の発達と分岐、mTORシグナル伝達を含むプロセスに役割を果たしていることを確認した。
【0008】
GLA又はリンパ管拡張症と診断された13家族のコホートが、そのすべてが乳び性滲出液を有する少なくとも1人の家族のメンバーを有しており、配列決定された。PI3K複合体の調節サブユニットをコードするPIK3R6におけるホモ接合変異体、MTORにおけるヘテロ接合突然変異、PIK3R4におけるヘテロ接合突然変異、及びmTOR経路の相互作用因子であるRas/MAPK経路に関与するARAFにおける反復性新規機能獲得型突然変異が同定された。
【0009】
したがって、本発明の一実施態様において、ヒト患者におけるリンパ異常を診断するための方法が提供される。例示的な方法は、患者から核酸を含む生物学的試料を得ること、i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又はii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するかどうかを決定するために核酸をアッセイすること;及びi)又はii)のSNVが存在する場合、患者をリンパ異常と診断することを含む。別の態様において、ヒト患者におけるリンパ異常を診断するための方法は、ヒト患者から遺伝子型配列情報を得ること、i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又はii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するかどうかを決定するために核酸をアッセイすること;及びi)又はii)のSNVが存在する場合、患者をリンパ異常と診断することを伴う。
【0010】
本発明はまた、ヒト患者におけるリンパ異常を治療するための方法を提供する。例示的な方法は、患者から核酸を含む生物学的試料を得ること;i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SANV)が存在するか、又はii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するかどうかを決定するために核酸をアッセイすること;及びi)又はii)のうちの1つ又は複数のSNVを有すると同定された患者に前記リンパ異常の治療に適した1つ又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ異常を治療することを含む。この方法の代替の実施態様において、遺伝子型情報は患者から得られ、i)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するか、又はii)EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数においてSNVと連鎖不平衡にあるSNVが存在するかどうかを決定するためにアッセイされ;及びi)又はii)のうちの1つ又は複数のSNVを有すると同定された患者に前記リンパ異常の治療に適した1つ又は複数の薬剤を投与し、それによってリンパ異常を治療する。この方法の代替の実施態様において、遺伝子型情報は患者から得られる。
【0011】
特定の実施態様において、リンパ異常は、リンパ管の異常な形成及び/又は組織の異常増殖によって特徴付けられる。他の実施態様において、リンパ異常は、リンパ管腫症(LAM)である。別の実施態様において、リンパ異常は、リンパ管腫症(GLA)である。リンパ異常は、心膜滲出液、胸膜滲出液、又は腹膜滲出液を含む乳び性滲出液によって特徴付けることができる。
【0012】
診断方法は、生物学的試料における検出後にSNVを同定する報告を作成することをさらに含み得る。上記の治療方法は、その方法において同定されたSNVに基づいて、リンパ異常に対して提案された治療(1つ又は複数)を見極める報告を作成することをさらに含むことができる。
【0013】
さらに別の実施態様において、本明細書に記載の診断方法は、前記リンパ異常を治療するために適した1つ又は複数の薬剤の有効量を、診断された患者に投与することをさらに含むことができる。
【0014】
治療方法の特定の実施態様において、1つ又は複数のリンパ異常関連SNVを保有する患者に投与される薬剤は、1つ又は複数のmTOR阻害剤、1つ又は複数のPIK3K阻害剤、1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤、及び前記阻害剤のうちのいずれかの1つ又は複数の組み合わせから選択される。他の実施態様において、薬剤又は前記阻害剤は表1及び2に記載される。いくつかの実施態様において、薬剤がmTor阻害剤であるとき、ラパマイシン及び/又はBEZ-235(ダクトリシブ)が投与される。特定の実施態様において、1つ又は複数のmTOR阻害剤、1つ又は複数のPIK3K阻害剤、及び/又は1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0015】
本発明の別の態様において、mTORシグナル伝達を阻害する薬剤はまた、付加的な生物学的活性を有する。これらには、限定されないが、PI3Kの阻害、FK506結合タンパク質の阻害、DNA-PKの阻害、p110の阻害、又はp70S6Kの阻害が挙げられる。いくつかの実施態様において、患者は、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのそれぞれにおいて、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのSNVを有する。いくつかの実施態様において、患者はEPHB4においてSNVを有しない。いくつかの実施態様において、患者はPIK3R4においてSNVを有しない。いくつかの実施態様において、患者はPIK3R6においてSNVを有しない。いくつかの実施態様において、患者はmTORにおいてSNVを有しない。いくつかの実施態様において、患者はARAFにおいてSNVを有しない。
【0016】
いくつかの実施態様において、表1及び2に記載された薬剤は組み合わせて使用される。これらの組み合わせは、限定されないが、a)リダフォロリムス(Ridaforolimus)及びトラメチニブ(Trametinib);b)リダフォロリムス及びセルメチニブ(Selumetinib)又はコビメチニブ(Cobimetinib);c)BEZ235及びセルメチニブ;d)オミパリシブ(Omipalisib)及びセルメチニブ又はトラメチニブ;e)エベロリムス(Everolimus)及びトラメチニブ又はセルメチニブ;f)シロリムス(Sirolimus)、リダフォロリムス及びセルメチニブ;g)シロリムス、リダフォロリムス及びトラメチニブ;h)トルキニブ(Torkinib)及びトラメチニブ;i)BEZ235、トルキニブ及びトラメチニブ;並びにj)シロリムス及びゲダトリシブ(Gedatolisib)及びトラメチニブが挙げられる。他の実施態様において、治療は、全身化学療法、インターフェロンアルファ、放射線療法、及び/又は手術を施すことをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、SNVは、EPHB4におけるc.2334+1G>C;PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;PIK3R6におけるc.1393-7C>T;mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;及びARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pから選択される。
【0018】
いくつかの実施態様において、診断方法は、EPHB4におけるc.2334+1G>Cの検出を含む。いくつかの実施態様において、診断方法は、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤から選択される1つ又は複数の薬剤により前記患者を治療することをさらに含む。他の実施態様において、薬剤は表1-2から選択され、それによってリンパ構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0019】
いくつかの実施態様において、診断方法はEPHB4におけるc2334+1G>Cを検出すること、並びに少なくとも1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて投与することを含む。他の実施態様において、薬剤は表1-2から選択され、それによってリンパ管構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0020】
いくつかの実施態様において、診断方法は、PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161Gの検出を含む。いくつかの実施態様において、診断方法は、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて用いて前記患者を治療することをさらに含む。他の実施態様において、薬剤は表1-2から選択され、それによってリンパ構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0021】
いくつかの実施態様において、診断方法は、PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161Gを検出すること、並びに1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて投与することを含む。他の実施態様において、投与のために少なくとも1つの薬剤が表1-2から選択され、それによってリンパ管構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0022】
いくつかの実施態様において、診断方法は、PIK3R6におけるc.1393-7C>Tの検出を含む。いくつかの実施態様において、診断方法は、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて用いて前記患者を治療することをさらに含む。他の実施態様において、表1-2からの薬剤が選択され、それによってリンパ構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0023】
いくつかの実施態様において、診断方法は、PIK3R6におけるc.1393-7C>Tを検出すること、並びに1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施態様において、表1-2からの少なくとも1つの薬剤が投与され、それによってリンパ管構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0024】
いくつかの実施態様において、診断方法は、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273Lの検出を含む。いくつかの実施態様において、診断方法は、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて用いて前記患者を治療することをさらに含む。他の実施態様において、表1-2からの薬剤が投与され、それによってリンパ構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0025】
いくつかの実施態様において、診断方法は、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273Lを検出すること、並びにmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて投与することを含む。他の実施態様において、表1-2からの少なくとも1つの薬剤が投与され、それによってリンパ管構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0026】
いくつかの実施態様において、診断方法は、ARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pの検出を含む。いくつかの実施態様において、診断方法は、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて用いて前記患者を治療することをさらに含む。いくつかの実施態様において、表1-2からの薬剤が投与され、それによってリンパ構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。
【0027】
いくつかの実施態様において、診断方法は、ARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pを検出すること、並びに1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて投与することを含む。いくつかの実施態様において、表1-2からの少なくとも1つの薬剤が投与され、それによってリンパ管構造の1つ又は複数を改善し、乳び性胸膜滲出液を減少させ、呼吸機能を改善し、併用薬の使用の漸減を可能にし、又は生存期間を延長する。ARAFにおいてSNVを有する対象において、薬剤はERK/MEK阻害剤である。治療に適したERK/MEK阻害剤は、限定されないが、セルメチニブ(AZD6244)、PD0325901、トラメチニブ(GSK1120212)、PD184352(CI-1040)、ピマセルチブ(Pimasertib)(AS-703026)、TAK-733、AZD8330、ビニメチニブ(Binimetinib)(MEK162、ARRY-162、ARRY-438162)、SL-327、レファメチニブ(Refametinib)(RDEA119、Bay 86-9766)、及びコビメチニブ(GDC-0973、RG7420)が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施態様において、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異体(SNV)が存在するかどうかを決定するために核酸をアッセイする工程は、特異的ハイブリダイゼーションの検出、対立遺伝子サイズの測定、制限断片長多型分析、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション分析、一塩基プライマー伸長反応、及び増幅されたポリヌクレオチドの配列決定からなる群から選択されるプロセスを実行することによって前記SNVの存在を決定するために、ポリヌクレオチド試料を分析する工程をさらに含む。
【0029】
いくつかの実施態様において、生物学的試料はDNAを含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、生物学的試料はRNAを含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、前記SNV(1つ又は複数)を含む核酸は、ヒト患者の単離された細胞から得られる。
【0032】
いくつかの実施態様において、単離されたベクターはSNVを有する核酸をコードし、ここでSNVは、EPHB4におけるc.2334+1G>C;PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;PIK3R6におけるc.1393-7C>T;mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;及びARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pから選択される。
【0033】
いくつかの実施態様において、宿主細胞は、SNVを有する核酸をコードする単離されたベクターを含む。いくつかの実施態様において、トランスジェニック動物は、宿主細胞を含む。いくつかの実施態様において、トランスジェニック動物は、マウス又はゼブラフィッシュである。
【0034】
いくつかの実施態様において、薬剤の効果をスクリーニングする方法は、宿主細胞又はトランスジェニック動物を、1つ又は複数のmTor阻害剤、1つ又は複数のPI3K阻害剤、及び1つ又は複数のMEK/ERK阻害剤を単独で又は組み合わせて接触させること、又は表1-2からの薬剤と接触させることを含む。いくつかの実施態様において、スクリーニングされる薬剤の効果は、ゼブラフィッシュにおける尾部レスキュー(caudal rescue)又は分岐レスキュー(branching rescue)である。いくつかの実施態様において、スクリーニングされる薬剤の効果は、mTORのリン酸化である。
【0035】
いくつかの実施態様において、細胞シグナル伝達を変化させる薬剤を同定する方法は、上記のように少なくとも1つのSNVを含む少なくとも1つの核酸を発現する細胞を提供すること、SNVを欠く同種野生型配列を発現する細胞を提供すること;両方の細胞集団を試験薬剤と接触させること;及び前記薬剤が、前記SNVを欠く細胞と比較して、SNVを含む核酸を保有する細胞の細胞シグナル伝達を変化させるかどうかを分析することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】家族-1の血統及びEPHB4突然変異の同時分離パターン。白丸は罹患していない女性を示し、白四角は罹患していない男性を示す;ベタ塗り図形は罹患した対象を示す。EPHB4遺伝子型が、DNAが試験に利用可能であった各対象についての記号の下に示されている。
図2】血管発達においてEPHB4が果たす役割の概略図。
図3A-3B】EPHB4突然変異は不活性EPHB4キナーゼへと導く。図3Aにおいて、293T細胞を、野生型EPHB4単独、突然変異体EPHB4単独、又は野生型と突然変異体の示された比率の混合物で一過性にトランスフェクトした。溶解物をSDS-PAGEによって分離し、ホスホチロシン(pTyr、上)又はEPHB4(下)についてブロットした。図3Bでは、A375細胞を、野生型EPHB4、突然変異体EPHB4でトランスフェクトし、又はトランスフェクトしないままにした。コントロールとして、プレート結合エフリンB2 Fc又はヒトIgG1のいずれかにより細胞を刺激した。細胞を溶解し、トランスフェクトしたタンパク質を免疫沈降させた。免疫沈降物を、ホスホチロシン(上)又はEPHB4(中)についてブロットした。同等の発現を実証するために、全細胞溶解物をEPHB4についてブロットした(下)。
図4】2dpf(受精後の日数(days post-fertilization))にて、エクソン13モルホリノを異なるローディング濃度で使用したゼブラフィッシュにおけるEPHB4のcDNAノックダウンを示すゲル。エクソン13は216塩基対を有する。C=コントロール(モルホリノなし)。
図5A-5D】ephb4aノックダウンは、体節間血管系において、mTORシグナル伝達依存性の、尾部血管叢及び誤って導かれる血管の拡大を誘導する。モルホリノが媒介するephb4aのノックダウン(図5B)は、コントロール(図5A)と比較して2.5dpfで尾部血管系の拡大及び融合を誘導する(矢頭)。図5Cは、4dpfで、ゼブラフィッシュ血管系が背腹方向に突出した体節間血管(矢印)並びにより細いリンパ管(矢頭)からなることを示す。リンパ管脊索傍線(lymphatic parachordal line)は、体幹に沿って水平に走り(下向き矢頭)、一方、セグメント間のリンパ管は下向きに突出する(上向き矢頭)。図5Dは、ephb4aノックダウンが、血管(矢印)及びリンパ管(矢頭)に似ている誤って導かれる血管を誘導することを示す。(図5C及び5Dは、2つの隣接する共焦点スキャンから合併されている)。
図5E-5H】図5Eは、2.5dpfでephb4aモルホリノを注入した幼虫の52%に尾部神経叢の欠陥が検出され、4日目に誤分岐(mis-branching)血管系が46%で存在することを示す。ラパマイシンは、2.5dpf(図5F)及び4dpf(図5G)において欠陥のある動物の数を有意に減らすことができる。図5Hは、BEZ-235が4日目に同様に分岐欠陥をレスキューすることを示す。
図6A-6D】pik3r6ノックダウンは、mTORシグナル伝達依存性の誤分岐体節間血管を誘導する。図6A(コントロール)及び6B(pik3r6モルホリノ)は、pik3r6のモルホリノ媒介ノックダウンが、血管(矢印)及びリンパ管(矢頭)に似ている血管の誤分岐を誘導することを示す(パネルは2つの隣接する共焦点スキャンから併合されている)。体幹血管の欠陥は、エクソン4(図6C)及びエクソン13(図6D)を標的とするモルホリノによって誘導され得る。
図6E-6F】ラパマイシン(図6E)及びBEZ-235(図6F)は両方とも、血管の欠陥を有する幼虫の数を有意に減少させた。
図7A-7D】モルホリノ媒介pik3r4ノックダウンは、誤って導かれる体節間血管を誘導するコントロール注入幼虫は、4dpfで正常な血管構造を示し(図7A)、一方、pik3r4ノックダウンは、血管(矢頭)又はリンパ管(矢印)に似ている血管における誤分岐を誘導する(図7B-7C)。図7Dは、欠陥は、コントロール注入幼虫のわずか5%で検出されたが、pik3r4モルホリノ注入幼虫の16%に検出されたことを示す。
図8A-8B】過活動性のmTORC1は誤分岐表現型に寄与し、mTOR阻害剤は表現型をレスキューする。図8Aは、PIK3R6モルホリノ又はコントロールモルホリノのいずれかにより処置し、ラパマイシン若しくはBEZ235により未処置であるか又は処置したゼブラフィッシュ幼虫からの溶解物をSDS-PAGEによって分離し、ホスホ-mTOR S2448又はホスホ-p70S6K T389についてブロットした。ベータアクチンのブロッティングをローディングコントロールとして使用した。図8Bは、EPHB4モルホリノ又はコントロールモルホリノのいずれかで処置し、ラパマイシンで未処置又は処置したゼブラフィッシュ幼虫からの溶解物をSDS-PAGEによって分離し、ホスホ-mTOR S2448又はホスホ-p70S6K T389についてブロットした。ベータアクチンのブロッティングをローディングコントロールとして使用した。
図9】遺伝子編集による野生型HEK293T細胞又はEPHB4突然変異体細胞のウエスタンブロッティング分析。EPHB4スプライス改変突然変異を含む細胞は、野生型細胞よりも高いP-p70S6Kレベルを示した。ベータアクチンのブロッティングをローディングコントロールとして使用した。
図10】mTOR P2273L突然変異体は、タンパク質キナーゼ活性の増加を示す。フラッグタグベクター、野生型mTOR及びP2273L-mTOR突然変異体でトランスフェクトしたHeLa細胞のウエスタンブロッティング分析。活性化は、p70S6Kのリン酸化の増加によって反映されている。e.v.=空のベクター。ベータアクチンのブロッティングをローディングコントロールとして使用した。
図11A】ARAF S214P突然変異は、MAPK活性を増加させ、ゼブラフィッシュにおけるヒトARAF突然変異体の過剰発現は、血管系の欠陥をもたらした。(図11A)HEK293T細胞からの細胞溶解物を、FLAGタグ付き野生型ARAF又はS214P-ARAF突然変異体でトランスフェクトした。免疫沈降は抗FLAG(M2)抗体を使用して行い、続いて指示された抗体を使用してウエスタンブロットを行った。細胞溶解物のアリコートをウエスタンブロットにより分析した。活性化は、14-3-3タンパク質との結合の障害によるERKのリン酸化の増加によって反映された。
図11B】(図11B)Tol2ゲートウェイキットを使用して、Tg(fli1:ARAF-V2a-mCherry)系統を作製した。簡潔には、ヒトS214P突然変異体又は野生型ARAF cDNAに、fil1プロモーターを有するTol2コンストラクトを含むトランスポゾンドナープラスミドを注入した。一過性モザイク発現は、自己触媒的V2aタンパク質切断部位によってARAFに連結されたmCherryによって視覚化された。
図11C-11D】(図11C及び図11D)ヒトARAFの発現は、拡大した尾部血管を誘導した。
図11E-11J】(図11E)拡大した尾部血管の欠陥は、2dpfで、ヒトARAF S214Pのトランスジェニック発現の21%において検出されたが、野生型では検出されなかった(***P<0.001)。(図11F及び図11G)mTORC1阻害剤ラパマイシン(図11F)とPI3K及びmTORC1の両方を標的とするBEZ235(図11G)は、一過性トランスジェニックゼブラフィッシュに対して治療効果を示さなかった(n.s.、有意ではない)。(図11H図11I、及び図11J)MEK阻害薬、U0126(図11H**P<0.01)、コビメチニブ(図11I**P<0.01)及びセルメチニブ(図11J***P<0.001)は、2dpfで尾部血管系の拡大及び融合を有する幼虫の数が有意に減少した。
図11K-11L】(図11L及び図11K)ゼブラフィッシュにおけるヒトARAF S214Pのトランスジェニック発現は、正常な背側/腹側血管形成に深刻な影響を与えることが見出され(図11L)、一方野生型ARAF発現は影響がなかった(図11K)。
図12】LGA関連突然変異A-RafS214Pは、内皮細胞の遊走特性を損なった。細胞遊走を、Millipore Transwellチャンバーを使用して測定した。A-Raf wt又はA-Raf-S214Pを発現するHy926細胞(300μl、2×10細胞/ml)をTranswellプレートの上部チャンバーに播種し、10%FBSを含むDMEM400μlを下部チャンバーに添加した。次にプレートを、37℃で、5%COを含むインキュベーターに24時間入れた。インキュベーション後、上部チャンバーに残っている細胞を注意深く取り除き、Transwell膜を4%PFAで固定し、0.5%クリスタルバイオレットで染色した。クリスタルバイオレットの量は、1%のSDS溶液による処理の後に光学濃度により決定した。データは、セルメチニブが血管新生を部分的に回復させる可能性があることを示唆している。
【0037】
配列の概要
以下の配列番号表は、本出願において使用される配列に関する情報を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
三世代家族から得られたDNA試料の全エクソーム配列決定(3世代はリンパ異常に罹患している)が、これまで説明されていなかったこの希少疾患の遺伝的根拠を同定するために行われた。家族の常染色体優性遺伝モデルと一致するすべてのミスセンス、ナンセンス、スプライス改変、及びコーディング挿入欠失変異を調べた。同義の変異体、0.5%を超えるマイナーアレル頻度(MAF)を有する変異体、及び以前にコントロールにおいて同定された変異体を除外するために、結果をフィルタリングした。関連候補をさらに分析した。結果として、EPHB4遺伝子内のスプライス部位変異をもたらす一塩基対置換、c.2334+1G>Cが原因変異として同定された。リンパ異常と診断された追加の患者からの試料が分析され、追加の疾患原因SNV- PIK3R3におけるミスセンス突然変異、PIK3R6におけるスプライシング突然変異、MTORにおけるミスセンス突然変異、及びARAFにおける保存されたリン酸化部位の突然変異が同定された。
【0039】
これらの新規なリンパ異常関連SNVは、EPHB4におけるc.2334+1G>C、PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G、PIK3R6におけるc.1393-7C>T、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L、及びARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pである。EPHB4におけるc.2334+1G>C、PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G、PIK3R6におけるc.1393-7C>T、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L、及びARAFにおけるc.640T>C:p.S214PのSNVは、本出願において、「リンパ異常関連SNV」又は「リンパ異常関連突然変異」と称され得る。
【0040】
したがって、本開示は、リンパ異常を診断するための方法を包含し、ここで、患者が、陰性コントロールと比較して、EPHB4、PIK3R3、PIK3R6、及びmTORにおいて少なくとも1つのSNVを有する場合、又はEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFにおける少なくとも1つのSNVと連鎖不平衡にある少なくとも1つのSNVを有する場合、患者はリンパ異常と診断される。本開示はまた、少なくとも1つのmTOR阻害剤、少なくとも1つのPIK3K阻害剤、及び/又は少なくとも1つのMEK阻害剤(例えば、表1-2に記載される少なくとも1つの薬剤)を用いて、EPHB4、PIK3R3、PIK3R6、及びmTORにおいて少なくとも1つのSNVを有する患者におけるリンパ異常を治療するための方法を包含する。
【0041】
ここで本発明の特定の実施態様について詳細に言及され、その実施例は添付の図面に示される。本発明は、図示された実施態様と併せて説明されるが、それは本発明をそれらの実施態様に限定することを意図するものではないことが理解されよう。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得るすべての代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図している。
【0042】
本教示を詳細に説明する前に、本開示は特定の組成物又はプロセス工程に限定されず、そのため変化し得ることを理解されたい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つのコンジュゲート」への言及は複数のコンジュゲートを含み、「1つの細胞」への言及は複数の細胞などを含む。
【0043】
わずかで実体のない逸脱が本明細書における本教示の範囲内であるように、本開示において論じられている温度、濃度、時間などの前に、暗黙の「約」があることが理解されよう。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」の使用は、限定を意図するものではない。前述の一般的な説明及び詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的なものにすぎず、教示を限定するものではないことを理解されたい。
【0044】
上記の明細書に特に記載のない限り、様々な構成要素を「含む」と記載する本明細書中の実施態様はまた、記載された構成要素「からなる」又は「から本質的になる」と考えられ;様々な構成要素「からなる」と記載する本明細書中の実施態様はまた、記載された構成要素「を含む」又は「から本質的になる」と考えられ;かつ様々な構成要素「から本質的になる」と記載する本明細書中の実施態様はまた、記載された構成要素「からなる」又は「を含む」と考えられる(この互換性は、特許請求の範囲におけるこれらの用語の使用には適用されない)。
【0045】
本明細書において使用される節の見出しは、構成上の目的のためであり、いかなる方法でも所望の主題を限定するものとして解釈されるべきではない。出典明示により本明細書に援用される何れの文献も本明細書中に定義される任意の用語と矛盾する場合、本明細書が優先する。本教示は様々な実施態様と併せて説明されているが、本教示がそのような実施態様に限定されることを意図するものではない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、修正物、及び等価物を包含する。
【0046】
さらに、「からなる群から選択される」化合物は、2つ以上の化合物の混合物(すなわち、組み合わせ)を含む、以下の一覧にある1つ又は複数の化合物を指す。本発明によれば、単離された、又は生物学的に純粋な分子は、その天然の環境から取り出された化合物である。したがって、「単離された」及び「生物学的に純粋な」は、化合物が精製されている程度を必ずしも反映しない。本発明の単離された化合物は、その天然の供給源から得ることができ、実験室での合成技術を使用して製造することができ、あるいは任意のそのような化学合成経路により製造することができる。
【0047】
「リンパ異常」は、リンパ管の異常形成及び組織の異常増殖を特徴とする疾患又は障害を指す。リンパ異常の非限定的な例には、「リンパ管腫症(Lymphangiomatosis)」又は「リンパ管拡張症(lymphangiectasia)」(本明細書ではまとめてLAMと呼ばれる)、リンパ管腫(lymphangiomas)、リンパ管腫症(generalized lymphatic anomaly)(GLA)、及び乳び性滲出液、全身性リンパ管腫(generalized lymphangioma)、全身性嚢胞性血管腫症(systemic cystic angiomatosis)、多発性リンパ管拡張症(multiple lymphangiectasias)、全身性リンパ管奇形(generalized lymphatic malformation)、びまん性リンパ管奇形(diffuse lymphatic malformation)、カポジフォームLAM及びゴーハム・スタウト病(GSD)、進行性骨溶解を特徴とするリンパ管起源のまれな血管障害が含まれる。
【0048】
臨床的には、リンパ管腫はいくつかの型に分類される。これらには、(1)シンプレックスが含まれ、これは毛細血管サイズの、薄壁のリンパ管で構成されている。このタイプは、通常、皮膚に影響を与える(限局性リンパ管腫);(2)嚢胞性リンパ管腫(又は嚢腫):これは、若い頃、一般的に首や腋窩に見られるように、数ミリメートルから数センチメートルの範囲の大きさになり得る;(3)海綿体:このタイプは、しばしば線維性外膜コートを伴う、拡張型リンパ管からなる。これは、通常、胸部、腹部、及び骨の臓器に影響を与えるタイプである。これらのリンパ管腫のそれぞれが、本発明に包含される。
【0049】
「一塩基変異(SNV)」は、その位置に通常の塩基とは異なる一塩基が存在するゲノムDNA中の位置を指す。SNVは頻度情報を提供しないものの、SNVは、SNPが一般的に、ある頻度で起こる(例えば、ある集団のある割合を超える割合で起こる)SNVを指すことを除いて、SNPと類似している。何百万というSNVがヒトゲノムに登録されている。いくつかのSNVは疾患の原因であるが、一方、他のSNVはゲノムにおける正常な変異である。
【0050】
「リンパ異常関連SNV又は特異的マーカー」は、リンパ異常を発症する危険性の増加と関連するSNVであり、この疾患を患っていない患者には見いだされない。そのようなマーカーは、限定されないが、核酸、それによってコードされるタンパク質、又は他の小分子を挙げることができる。
【0051】
本明細書において使用される「遺伝子改変」という用語は、1つ又は複数の核酸分子の野生型又は参照配列からの変化を指す。遺伝子改変には、限定されないが、SNV及びSNP、コピー数多型(CNV)、既知配列の核酸分子からの少なくとも1つのヌクレオチドの塩基対置換、付加、及び欠失が挙げられる。
【0052】
「連鎖」は、遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座又は遺伝的マーカーが、同じ染色体上のそれらの位置の結果として、一緒に遺伝する傾向を表し、2つの遺伝子、対立遺伝子、遺伝子座、又は遺伝的マーカーの間の組換え率(組換え割合、又はθとも呼ばれる)によって測定される。2つの遺伝子座が染色体上で物理的に近くにあるほど、組換え割合は低くなる。通常、疾患原因遺伝子内の多型部位を、疾患との連鎖に関して試験すると、組換え割合はゼロとなり、疾患とその疾患原因遺伝子とが、常に一緒に受け継がれることを示す。まれな事例では、ある遺伝子が非常に大きなゲノムセグメントに及んでいる場合、その遺伝子の一方の末端の多型部位と、他方の末端の病因的突然変異との間で組換えを観察する可能性もあり得る。しかしながら、病因的突然変異が疾患との連鎖に関して試験されている多型である場合、組換えは観察されないであろう。
【0053】
「センチモルガン」は、2つの遺伝子マーカー、対立遺伝子、遺伝子、又は遺伝子座の間の連鎖を表す遺伝的距離の単位であり、任意の減数分裂事象に関して2つのマーカー又は遺伝子座の間の組換えの確率1%に相当する。
【0054】
「連鎖不平衡」又は「対立遺伝子相関」は、集団内の任意の特定の対立遺伝子の頻度に関して、染色体上の位置が近傍にある、特定の対立遺伝子、遺伝子座、遺伝子、又は遺伝子マーカーと、ある特定の対立遺伝子、遺伝子座、遺伝子、又は遺伝子マーカーとに、偶然に予想されるよりも高い頻度での優先的な相関性があることを意味する。
【0055】
本明細書において使用される「固体マトリックス」という用語は、ビーズ、微小粒子、マイクロアレイ、微量滴定ウェル若しくは試験管の表面、ディップスティック、又はフィルタなど、任意の形式を指す。マトリックスの材料は、ポリスチレン、セルロース、ラテックス、ニトロセルロース、ナイロン、ポリアクリルアミド、デキストラン又はアガロースであり得る。固体マトリックスは、核酸が溶液中でマトリックスから除去できないようにその上に固定化された核酸を含むことができる。
【0056】
本明細書において使用される「標的核酸」は、複合核酸混合物中に存在する核酸の既定の領域を指し、ここで、既定の野生型領域は、少なくとも1つの既知のヌクレオチド変異を含み、この変異はリンパ異常と関連している場合もあればしていない場合もある。核酸分子は、cDNAクローニング若しくはサブトラクティブハイブリダイゼーションによって天然源から単離され得るか、又は手作業で合成され得る。核酸分子は、トリエステル合成法によって手作業で合成され得るか、又は自動DNA合成装置を使用して合成され得る。
【0057】
本発明において使用される核酸に関して、「単離核酸」という用語は、DNAに適用される場合、DNA分子が由来する生物体の天然に存在するゲノムにおいてそのDNA分子が直接連続している(5’方向及び3’方向に)配列から分離された、DNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、ベクター、例えば、プラスミドベクター若しくはウイルスベクターに挿入されているか、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれている、DNA分子を含み得る。「単離核酸分子」はまた、cDNA分子を含み得る。ベクターに挿入された単離核酸分子はまた、本明細書において、組換え核酸分子と称されることもある。
【0058】
RNA分子に関して、「単離核酸」という用語は、主として、上記に定義された単離DNA分子によってコードされるRNA分子を指す。あるいは、この用語は、あるRNA分子がその天然の状態で関連しているであろうRNA分子(すなわち、細胞若しくは組織中の)から十分に分離されており、結果として、「実質的に純粋な」形態で存在する、RNA分子を指し得る。
【0059】
核酸に関する「濃縮(enriched)」という用語の使用は、目的の細胞又は溶液中に存在する全DNA又は全RNAのうち、特定のDNA又はRNA配列が、正常な細胞又は配列が得られた細胞においてよりも、有意に高い割合(2-5倍)を占めることを意味する。これは、ある人物が、存在する他のDNA若しくはRNAの量を優先的に低減することによって、又は特定のDNA配列若しくはRNA配列の量を優先的に増大することによって、又はこれら2つの組合せによって、引き起こすことができる。しかしながら、「濃縮」は他のDNA配列又はRNA配列が存在しないことを示すものではなく、単に目的の配列の相対量が有意に増大していることに留意されたい。
【0060】
一部の目的では、ヌクレオチド配列が精製された形態であることも有利である。核酸に関する「精製された」という用語は、絶対的な純度(均一な調製物など)を必要とするものではなく、配列が、天然の環境よりも相対的に純粋であるという指標を表している。
【0061】
「相補的」という用語は、2つのヌクレオチドが互いに複数の良好な相互作用を形成し得ることを指す。例えば、アデニンはチミンに対して相補的であるが、これは、これらが2つの水素結合を形成し得るためである。同様に、グアニンとシトシンは、3つの水素結合を形成できるため、相補的である。したがって、核酸配列が以下の塩基配列:チミン、アデニン、グアニン、及びシトシンを含む場合、この核酸分子の「相補体」は、チミンの場所にアデニン、アデニンの場所にチミン、グアニンの場所にシトシン、及びシトシンの場所にグアニンを含む分子であろう。相補体は、親核酸分子と最適な相互作用を形成する核酸配列を含むため、そのような相補体は、親分子に高い親和性で結合することができる。
【0062】
一本鎖核酸、特にオリゴヌクレオチドに関して、「特異的にハイブリダイズする」という用語は、当技術分野で一般的に使用される所定の条件下において、そのようなハイブリダイゼーションを可能にするのに十分に相補的な(「実質的に相補的な」と称されることもある)配列の2つの一本鎖ヌクレオチド分子間における結合を指す。具体的には、この用語は、オリゴヌクレオチドと、本発明の一本鎖DNA又はRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列とのハイブリダイゼーションを指すが、オリゴヌクレオチドと非相補的な配列の一本鎖核酸とのハイブリダイゼーションは実質的に除外される。例えば、特異的ハイブリダイゼーションは、ある配列が、任意のリンパ異常特異的マーカー核酸にハイブリダイズするが、他のヌクレオチドにはハイブリダイズしないことを指し得る。そのようなマーカーは、例えば、本明細書に含まれる表に示されるリンパ異常特異的マーカーを含む。様々な相補性の一本鎖核酸分子の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする適切な条件は当技術分野において周知である。
【0063】
例えば、指定された配列相同性の核酸分子間でのハイブリダイゼーションを達成するのに必要なストリンジェンシー条件を計算するための一般的な式を、以下に記載する(Sambrook et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989):
=81.5"C+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)-0.63(%ホルムアミド)-600/二重鎖の塩基数
【0064】
上記の式の例として、[Na+]=[0.368]、50%ホルムアミド、GC含量42%、及び平均プローブサイズ200塩基を使用すると、Tは57℃となる。DNA二重鎖のTは、相同性が1%減少するごとに1-1.5℃低下する。したがって、約75%を上回る配列同一性を有する標的は、42℃のハイブリダイゼーション温度を使用すると観察されるであろう。ハイブリダイゼーション及び洗浄のストリンジェンシーは、主として、溶液の塩濃度及び温度に依存する。一般に、プローブとその標的とのアニーリング率を最大化するために、ハイブリダイゼーションは、通常、そのハイブリッドの計算されたTよりも20-25℃低い、塩及び温度条件で行われる。洗浄条件は、標的に対するプローブの同一性の度合いにとって可能な限りストリンジェントであるべきである。一般に、洗浄条件は、ハイブリッドのTよりもおよそ12-20℃低くなるように選択される。本発明の核酸に関しては、中等度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、6×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%のSDS、及び100μg/mlの変性サケ精子DNA、42℃におけるハイブリダイゼーション、並びに2×SSC及び0.5%のSDS中において55℃で15分間の洗浄として定義される。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、6×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%のSDS、及び100μg/mlの変性サケ精子DNA、42℃におけるハイブリダイゼーション、並びに1×SSC及び0.5%のSDS中において65℃で15分間の洗浄として定義される。非常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、6×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%のSDS、及び100μg/mlの変性サケ精子DNA、42℃におけるハイブリダイゼーション、並びに0.1×SSC及び0.5%のSDS中において65℃で15分間の洗浄として定義される。
【0065】
本明細書において使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを2つ以上、好ましくは3つを上回って含む、核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの厳密なサイズは、様々な要因に依存し、オリゴヌクレオチドの具体的な用途及び使用に依存するであろう。プローブ及びプライマーを含め、オリゴヌクレオチドは、3ヌクレオチドから核酸分子の完全長までの任意の長さであってよく、3からポリヌクレオチドの完全長までの連続する核酸のうちの可能な数すべてを明示的に含む。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、少なくとも約10ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長である。
【0066】
本明細書において使用される「プローブ」という用語は、精製された制限酵素消化物のように天然に存在するか、又は合成で生成されたかに関係なく、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はRNA若しくはDNAのいずれかである核酸を指し、これは、プローブに相補的な配列を有する核酸とアニーリングするか又は特異的にハイブリダイズすることができる。プローブは、一本鎖又は二本鎖のいずれであってもよい。プローブの厳密な長さは、温度、プローブ源、及び方法の用途を含む、多数の要因に依存するであろう。例えば、診断用途のために、標的配列の複雑さに応じて、オリゴヌクレオチドプローブ(特定の場合において、dbSNPデータベースにおいて利用可能な一塩基多型に関連する特定のrs番号に関連する核酸)は、典型的には15-25、15-35、20-50、又は100以上のヌクレオチドを含むが、ただしSNVの部位がプローブに含まれるならば、それはより少ないヌクレオチドを含み得る。本明細書におけるプローブは、特定の標的核酸配列の様々な鎖に相補的となるように選択される。これは、プローブが、所定の条件セット下において、そのそれぞれの標的鎖に「特異的にハイブリダイズする」か又はアニーリングすることができるように、十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プローブ配列は、必ずしも標的の厳密な相補的配列を反映するものではない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片が、プローブの5’末端又は3’末端に結合し、プローブ配列の残りの部分が標的鎖に相補的であってもよい。あるいは、非相補的塩基又はより長い配列が、プローブに散在していてもよいが、ただし、プローブ配列が、標的核酸の配列と特異的にアニーリングするのに十分な相補性を有することを条件とする。
【0067】
本明細書において使用される「プライマー」という用語は、適切な環境におかれたときに、鋳型依存的核酸合成の開始剤として機能的に作用することができる、RNA又はDNAのいずれか、一本鎖又は二本鎖のいずれか、生物系に由来するか、制限酵素消化によって生成されたか、又は合成で産生されたかのいずれのオリゴヌクレオチドを指す。適切な核酸鋳型、核酸の好適なヌクレオシド三リン酸前駆体、ポリメラーゼ酵素、好適な補助因子及び条件、例えば、好適な温度及びpHが提示されると、プライマーは、ポリメラーゼの作用又は同様の活性によるヌクレオチドの付加によってその3’末端が伸長されて、プライマー伸長産物を得ることができる。プライマーは、具体的な条件及び用途要件に応じて、長さが多様であり得る。例えば、診断用途では、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的に、15-25、15-35、10-40又はそれ以上のヌクレオチド長である。プライマーは、所望される伸長産物の合成を開始するために、すなわち、ポリメラーゼ又は同様の酵素による合成の開始に使用するのに適した並列位置にプライマーの3’ヒドロキシル部分を提供するのに十分な様式で、所望される鋳型鎖とアニーリングすることができるように、所望される鋳型に対して十分な相補性のものでなければならない。プライマー配列が、所望される鋳型の厳密な相補体を表すことは、必須ではない。例えば、非相補的ヌクレオチド配列が、それ以外は相補的なプライマーの5’末端に付加されてもよい。あるいは、非相補的塩基が、オリゴヌクレオチドプライマー配列内に散在していてもよいが、ただし、プライマー配列が、伸長産物の合成のための鋳型-プライマー複合体を機能的に提供するのに十分な、所望される鋳型鎖の配列との相補性を有することを条件とする。
【0068】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、米国特許第4683195号、同第4800195号、及び同第4965188号に記載されており、これらの全開示が、本明細書に参照により援用される。
【0069】
「siRNA」は、標的とされる遺伝子の配列との相同性を有する低分子干渉RNA(siRNA)を提供することによる、配列特異的転写後遺伝子サイレンシング又は遺伝子ノックダウンのためのRNA干渉プロセスに関与する分子を指す。低分子干渉RNA(siRNA)は、インビトロで合成され得るか、又はリボヌクレアーゼIII切断によってより長いdsRNAから生成され得、配列特異的mRNA分解の媒介因子である。好ましくは、本発明のsiRNAは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び従来的なDNA/RNA合成装置を使用して化学的に合成される。siRNAは、2つの別個の相補的RNA分子として合成することもでき、又は2つの相補的な領域を有する単一のRNA分子として合成することもできる。合成RNA分子又は合成試薬の供給業者としては、Applied Biosystems(Foster City、CA、USA)、Proligo(Hamburg、Germany)、Dharmacon Research(Lafayette、Colo.、USA)、Pierce Chemical(Perbio Science、Rockford、Ill.、USAの一部)、Glen Research(Sterling、Va.、USA)、ChemGenes(Ashland、Mass.、USA)、及びCruachem(Glasgow、UK)が挙げられる。リンパ管腫症のmRNAを阻害するための具体的なsiRNAコンストラクトは、例えば、15-35ヌクレオチド長であり得、より典型的には約21ヌクレオチド長であり得る。
【0070】
「ベクター」という用語は、細胞に感染させるか、トランスフェクトするか、又は形質転換することができ、独立して又は宿主細胞のゲノム内で複製することができる、一本鎖又は二本鎖の環状核酸分子を指す。環状二本鎖核酸分子を、切断し、それによって制限酵素で処理して線状化することができる。各種のベクター、制限酵素、及び制限酵素によって標的とされるヌクレオチド配列に関する情報は、当業者であれば容易に入手可能であり、これらとしては、任意のレプリコン、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、又はウイルスが挙げられ、別の遺伝子配列又はエレメント(DNA又はRNAのいずれか)がこれらに結合して、結合した配列又はエレメントの複製物がもたらされ得る。本発明の核酸分子は、ベクターを制限酵素で切断することによって、又は2つの部分を一緒にライゲーションすることによって、ベクターに挿入され得る。重複又は欠失を含む遺伝子領域をクローニングする際、当業者であれば、罹患領域の上流及び下流にある好適な長さ(例えば、50-100以上のヌクレオチド)の隣接する配列が、クローニングプロセスに利用されることを十分に認識している。そのようなベクターは、例えば、そのような改変がコードされるタンパク質に対して有する影響を研究するための細胞株において、有用性を有するであろう。
【0071】
当業者であれば、発現コンストラクトを原核生物体又は真核生物体に形質転換、トランスフェクション、又は形質導入するのを容易にするための多数の技術が利用可能である。「形質転換」、「トランスフェクション」、及び「形質導入」という用語は、核酸及び/又は発現コンストラクトを細胞又は宿主生物体に挿入する方法を指す。これらの方法には、宿主細胞外膜又は細胞壁に目的の核酸分子が透過するように、高濃度の塩、電界、又は界面活性剤で細胞を処理すること、マイクロインジェクション、PEG-融合などの様々な技術が含まれる。
【0072】
「プロモーターエレメント」という用語は、適切な細胞内に入ると、転写因子及び/又はポリメラーゼ結合、並びに続いてベクターDNAの部分のmRNAへの転写を促進することができる、ベクターに組み込まれているヌクレオチド配列を説明する。一実施態様において、本発明のプロモーターエレメントは、リンパ異常特異的マーカー核酸分子の5’末端よりも前にあり、結果として、その後のものがmRNAに転写される。次いで、宿主細胞の機序により、mRNAがポリペプチドに翻訳される。次いで、宿主細胞の機序により、mRNAがポリペプチドに翻訳される。プロモーターエレメントは、目的のコード領域の構成的又は誘導的発現を駆動し得る。
【0073】
当業者であれば、核酸ベクターが、プロモーターエレメント及びリンパ異常特異的マーカーコード核酸以外の核酸エレメントを含み得ることを理解するであろう。これらの他の核酸エレメントとしては、限定されないが、複製開始点、リボソーム結合部位、薬物耐性酵素又はアミノ酸代謝酵素をコードする核酸配列、及び分泌シグナル、局在化シグナル、又はポリペプチド精製に有用なシグナルをコードする核酸配列が挙げられる。
【0074】
「レプリコン」は、主にそれ自体の制御下において複製することができる、任意の遺伝子エレメント、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、プラスチド、ファージ、又はウイルスである。レプリコンは、RNA又はDNAのいずれであってもよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0075】
「発現オペロン」は、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(例えば、ATG又はAUGコドン)、ポリアデニル化シグナル、終結因子などの転写及び翻訳制御配列を有し得、宿主細胞又は生物体においてポリペプチドコード配列の発現を促進する、核酸断片を指す。
【0076】
本明細書に使用されるとき、「レポーター」、「レポーター系」、「レポーター遺伝子」、又は「レポーター遺伝子産物」という用語は、核酸が、発現されるとレポーターシグナルを生じる産物をコードする遺伝子を含み、これを、例えば、生物アッセイ、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、又は比色法、蛍光法、化学発光法、若しくは他の方法によって容易に測定することができる、動作可能な遺伝子系を意味するものとする。核酸は、RNA又はDNA、線形又は環状、一本鎖又は二本鎖、アンチセンス極性又はセンス極性のいずれであってもよく、レポーター遺伝子産物の発現に必要な制御エレメントに動作可能に連結されている。必要とされる制御エレメントは、レポーター系の性質、及びレポーター遺伝子がDNAの形態であるかRNAの形態であるかに応じて多様であるが、限定することなく、プロモーター、エンハンサー、翻訳制御配列、ポリA付加シグナル、転写終結シグナルなどのエレメントを挙げることができる。
【0077】
導入された核酸は、レシピエント細胞又は生物体の核酸に組み込まれる(共有結合で連結される)場合もあれば、そうでない場合もある。例えば、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、及び哺乳動物細胞において、導入された核酸は、エピソームエレメント又はプラスミドなどの独立したレプリコンとして、維持されてもよい。あるいは、導入された核酸は、レシピエント細胞又は生物体の核酸に組み込まれ、その細胞又は生物体において安定に維持され、さらに、レシピエント細胞又は生物体の子孫細胞又は生物体に継代されるか受け継がれてもよい。最終的には、導入された核酸は、レシピエント細胞又は宿主生物体に一過性に存在するだけであってもよい。
【0078】
「選択可能なマーカー遺伝子」という用語は、発現されると、形質転換された細胞に、選択可能な表現型、例えば抗生物質耐性を与える、遺伝子を指す。
【0079】
「動作可能に連結された」という用語は、コード配列の発現に必要な調節配列が、コード配列の発現を達成できるように、DNA分子内でコード配列に対して適切な位置にあることを意味する。この同じ定義は、発現ベクターにおける転写ユニット及び他の転写制御エレメント(例えば、エンハンサー)の配置に適用される。
【0080】
「組換え生物体」又は「トランスジェニック生物体」という用語は、新しい組み合わせの遺伝子又は核酸分子を有する生物体を指す。新しい組み合わせの遺伝子又は核酸分子は、当業者であれば利用できる多様な核酸操作技術を使用して、生物体に導入することができる。「生物体」という用語は、少なくとも1つの細胞を含む任意の生命体に関する。生物体は、1つの真核細胞ほどに単純であってもよく、哺乳動物のように複雑であってもよい。したがって、「組換え生物体」という語句は、組換え細胞、並びに真核生物体及び原核生物体を包含する。トランスジェニック生物体の例には、ゼブラフィッシュ又はマウスが含まれる。
【0081】
「単離されたタンパク質」又は「単離され精製されたタンパク質」という用語が、本明細書において時に使用される。この用語は、主として、本発明の単離核酸分子の発現によって産生されたタンパク質を指す。あるいは、この用語は、あるタンパク質が、天然に関連しているであろう他のタンパク質から、「実質的に純粋な」形態で存在するように、十分に分離されていることを指し得る。「単離された」とは、他の化合物若しくは物質との人工的混合物若しくは合成混合物を除外することを意味するものでも、基本的な活性を妨害しない不純物の存在、例えば、不完全な精製、安定剤の添加、又は例えば免疫原性調製物若しくは薬学的に許容される調製物への調合に起因して存在し得る不純物の存在を除外することを意味するものでもない。
【0082】
「特異的結合対」は、互いに対して特定の特異性を有し、通常の条件下において、他の分子よりも優先的に互いに結合する、特異的結合メンバー(sbm)及び結合パートナー(bp)を含む。特異的結合対の例としては、抗原と抗体、リガンドと受容体、及び相補的なヌクレオチド配列がある。当業者であれば、他の多数の例を把握している。さらに、「特異的結合対」という用語はまた、特異的結合メンバー及び結合パートナーのうちの一方又は両方が、より大きな分子の一部を成す場合にも適用可能である。特異的結合対が核酸配列を含む実施態様において、それらは、アッセイの条件下において互いにハイブリダイズする長さ、好ましくは、10ヌクレオチド長より長い、より好ましくは15又は20ヌクレオチド長より長いものであろう。
【0083】
「試料」又は「患者試料」又は「生物学的試料」は、一般に、特定の分子、好ましくはリンパ異常特異的マーカー分子、例えば、下記に提供される表に示されるマーカーに関して試験することができる試料を指す。試料としては、限定されないが、細胞、体液、例えば、血液、血清、血漿、尿、リンパ液、唾液、涙、胸膜液などが挙げられる。
【0084】
「遺伝子型配列情報」とは、一般的には、対象のDNA又はRNAの配列に関するあらゆる情報を意味する。遺伝子型配列情報は、全ゲノム、全エクソーム配列決定、エクソーム配列決定、又は対象のゲノム内の目的の領域の標的配列決定を含む。遺伝子型配列情報はまた、本明細書においてリンパ異常と関連していることが見いだされたものなどの特定のSNVの存在又は非存在に関するデータの生成を含み得る。さらに、遺伝子型配列情報は、1つ又は複数のリンパ異常関連SNVの存在及び/又は発現を検出するためのプローブの使用を含むであろう。遺伝子型配列情報を得るためにプローブをどのように使用することができるかの例には、限定されないが、(1)インサイチューハイブリダイゼーション;(2)サザンハイブリダイゼーション(3)ノーザンハイブリダイゼーション;及び(4)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの各種増幅反応が挙げられる。
【0085】
「薬剤」及び「試験化合物」という用語は、本明細書において互換可能に使用され、化学的化合物、化学的化合物の混合物、生体高分子、又は生物学的物質、例えば、細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳動物)の細胞若しくは組織などから作製された抽出物を指す。生体高分子としては、siRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチド/DNA複合体、及び本明細書に記載のSNVを含む核酸又はそれらによってコードされるタンパク質の活性を調節する能力を呈する任意の核酸に基づく分子が挙げられる。例示的な薬剤としては、少なくとも1つのmTOR阻害剤、少なくとも1つのPIK3K阻害剤、及び/又は少なくとも1つのMEK阻害剤が挙げられる。例示的な薬剤はまた、表1-2に記載のものを含む。薬剤は、本明細書において後述されるスクリーニングアッセイを含め、可能性のある生物活性に関して評価される。
【0086】
本明細書において使用される「治療」には、ヒトを含む哺乳動物における疾患のための治療薬の投与又は適用が含まれ、疾患若しくは疾患の進行を阻害すること、疾患若しくはその増悪を抑制若しくは遅延させること、その進行を阻止すること、疾患を部分的若しくは完全に軽減すること、疾患の発症を予防すること、又は疾患の症状の再発を予防することが含まれる。治療例としては、少なくとも1つのmTOR阻害剤、少なくとも1つのPIK3K阻害剤、及び/又は少なくとも1つのMEK阻害剤(例えば、表1-2に記載された少なくとも1つの薬剤)を有効量で投与することが含まれる。
【0087】
「阻害(inhibition)」又は「阻害する(inhibit)」という用語は、任意の事象(タンパク質リガンド結合など)の減少若しくは休止、又は表現型の特徴の減少若しくは休止、又はその特性の発生率、程度、若しくは可能性の減少若しくは休止を指す。「減少させる」又は「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、及び/又は量を減少させる(decrease)、減少させる(reduce)又は抑止する(arrest)ことである。阻害又は減少は完全である必要はない。例えば、特定の実施態様において、「減少させる」又は「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を指す。別の実施態様において、「減少させる」又は「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を指す。さらに別の実施態様において、「減少させる」又は「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%、又はそれ以上の全体的な減少を引き起こす能力を指す。
【0088】
「阻害剤」という用語は、特定の化学反応、シグナル伝達経路若しくは他のプロセスを減速する又は妨げる、あるいは特定の反応物、触媒、又は酵素の活性を低下させる物質を指す。
【0089】
「患者」及び「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳動物を意味するために互換的に使用される。
【0090】
「mTOR」という用語は、mTORによってコードされている哺乳類ラパマイシン標的タンパク質を指す。mTORは他のタンパク質と複合体を形成して重要な細胞機能を可能にし得る。「mTORC」という用語は、ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mechanistic target to rapamycin complex 1)としても知られる哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mammalian target of rapamycin complex 1)を指し、これはタンパク質の翻訳を活性化するように機能するタンパク質複合体である。例えば、mTORC1は、mTOR、mTORの調節関連タンパク質(Raptor)、哺乳類致死性SEC13タンパク質8(mammalian lethal with SEC13 protein 8)(MLST8)、PRAS40、及びDEPTORを含む。別の例では、mTORC2複合体は、mTOR、ラパマイシン非感受性mTORコンパニオン(rapamycin-insensitive companion of mTOR)(RICTOR)、GβL、哺乳類ストレス活性化プロテインキナーゼ相互作用タンパク質1(mammalian stress-activated protein kinase interacting protein 1)(mSIN1)、Protor 1/2、DEPTOR、TTI1、及びTEL2を含む。mTORを含む任意のタンパク質複合体は、本明細書においてはmTORCと称され得る。「mTORシグナル伝達」という用語は、これらのタンパク質と複合体を形成して相互作用することが知られている他のタンパク質と共に、mTOR、mTORC1、及びMTORC2の活性を指すであろう。
【0091】
「mTORC阻害剤」という用語は、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)関連キナーゼ(PIKK)のファミリーに属するセリン/スレオニン特異的タンパク質キナーゼであるラパマイシン標的タンパク質(mechanistic target of rapamycin)(mTOR)を阻害する薬剤のクラスを指す。mTORは、2つのタンパク質複合体、mTORC1及びmTORC2を介して形成及びシグナル伝達することによって細胞の代謝、増殖、及び増殖を調節する。最も確立されたmTOR阻害剤はいわゆるラパログ(rapalog)(ラパマイシン及びその類似体)である。いくつかのラパログが、表1と2に記載されている。
【0092】
「PIK3K」又は「PI3K」という用語は、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(ホスファチジルイノシチド3-キナーゼ、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ、PI3-キナーゼ、PI(3)K、PI-3Kとも呼ばれる)を指すために本明細書では互換的に用いられる。PI3Kは、細胞増殖、増殖、分化、運動性、生存及び細胞内輸送などの細胞機能に関与する酵素のファミリーであり、これらはさらにがんに関与している。PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PtdIns)のイノシトール環の3位ヒドロキシル基をリン酸化することができる細胞内酵素を調節するシグナルトランスデューサー酵素である。
【0093】
「PIK3K阻害剤」又は「PI3K阻害剤」という用語は、増殖制御、代謝及び翻訳開始などの多くの細胞機能のための重要なシグナル伝達経路である、PI3K/AKT/mTOR経路の一部である1つ又は複数のホスホイノシチド3-キナーゼ酵素を阻害することによって機能する一群の薬剤を指す。この経路内には多くの構成成分があり、それらの阻害は腫瘍抑制をもたらし得る。これらの抗がん剤は、標的療法の例である。PI3Kの多くの異なるクラス及びアイソフォームがある。クラス1のPI3Kは、p110として知られる触媒サブユニットを有し、4つのタイプ(アイソフォーム)-p110アルファ、p110ベータ、p110ガンマ及びp110デルタがある。
【0094】
「MEK」という用語は、細胞の表面上の受容体から細胞の核内のDNAにシグナルを伝達する、細胞内のタンパク質の鎖を含むMAPK/ERK経路(Ras-Raf-MEK-ERK経路としても知られる)を指す。シグナル伝達分子が細胞表面の受容体に結合するとシグナルが開始し、核内のDNAがタンパク質を発現して細胞分裂などの細胞に何らかの変化を生じるとシグナルが終了する。この経路には、MAPK(元々はERK、細胞外シグナル制御キナーゼと呼ばれるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ)を含む多くのタンパク質が含まれ、それらは「オン」又は「オフ」スイッチとして作用する隣接タンパク質にリン酸基を付加することによって情報交換する。
【0095】
「MEK阻害剤」又は「MEK/ERK阻害剤」という用語は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ酵素MEK1、MEK2、及び/又はERKを阻害する薬剤を指す。それらは、一部のがんにおいてしばしば過活動性であるMAPK/ERK経路に影響を与えるために使用することができる。「細胞内シグナル伝達」という用語は、mTORシグナル伝達、並びに細胞の恒常性又は活性を支配する任意の他のシグナル伝達経路プロセスを含むであろう。
【0096】
リンパ異常を有する患者の診断
いくつかの実施態様において、リンパ異常を有する患者は、患者から得られた生物学的試料から遺伝子型配列情報を得た後にSNVの存在に基づいて診断される。いくつかの実施態様において、リンパ異常を有する患者は、患者から得られた生物学的試料から遺伝子型配列情報を得た後で、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子における1つ又は複数のSNV、又はリンパ異常に関連するEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子におけるSNVと連鎖不均衡にあるSNVの存在の検出に基づいて診断される。いくつかの実施態様において、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子におけるこの1つ又は複数のSNVは、EPHB4におけるc.2334+1G>C;PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;PIK3R6におけるc.1393-7C>T;mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;又はARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pから選択される。
【0097】
いくつかの実施態様において、特定の対象に存在するSNVを同定する報告は実験データから生成され得る。いくつかの実施態様において、リンパ異常に対して提案された治療(1つ又は複数)を見極める報告は、遺伝子型配列情報を使用して同定されたSNVに関するデータに基づいて生成され得る。
【0098】
いくつかの実施態様において、患者から得られた生物学的試料から遺伝子型配列情報を得た後で、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子における1つ又は複数のSNV、又はEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子におけるSNVと連鎖不均衡にあるSNVの存在の検出に基づいた診断は、その患者に対する治療の選択を導く。いくつかの実施態様において、患者から得られた生物学的試料から遺伝子型配列情報を得た後で、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子における1つ又は複数のSNV、又はEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFから選択される遺伝子におけるSNVと連鎖不均衡にあるSNVの存在の検出に基づいた診断は、その患者に対する治療の選択を導いたり、影響を与えたりしない。
【0099】
いくつかの実施態様において、リンパ異常の診断は、臨床症状、スキャン結果、及び/又は家族歴にのみ基づいて行われる。いくつかの実施態様において、リンパ異常の診断は遺伝子配列情報の検査なしに行われる。いくつかの実施態様において、リンパ異常の診断は、遺伝子配列情報とともに臨床症状に基づいて行われる。
【0100】
本発明に開示されたリンパ異常関連SNVは、リンパ異常を診断するために多くの方法で使用することができる。
【0101】
例えば、リンパ異常関連SNVを含む核酸は、リンパ異常特異的マーカーの存在及び/又は発現を検出するためのプローブとして使用され得る。リンパ異常関連マーカー核酸をそのようなアッセイのためのプローブとして利用することができる方法には、限定されないが、(1)インサイチューハイブリダイゼーション;(2)サザンハイブリダイゼーション(3)ノーザンハイブリダイゼーション;及び(4)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの各種増幅反応が挙げられる。
【0102】
さらに、リンパ異常関連SNV、又はそれによってコードされるタンパク質を検出するためのアッセイは、体液(血液、尿、血清、胃洗浄液を含む)、あらゆる種類の細胞(脳細胞、白血球、単核球など)又は体組織を含むがこれらに限定されない任意の種類の生物学的試料に対して行われ得る。
【0103】
リンパ異常の検出と診断を目的として、リンパ異常関連SNVを含む核酸、それを発現するベクター、リンパ異常関連SNVを含むマーカータンパク質及び抗リンパ異常特異的マーカー抗体を使用して、体組織、細胞、又は体液中のリンパ異常関連SNVを検出し、リンパ異常関連SNVを含むマーカータンパク質の発現を変化させることができる。
【0104】
リンパ異常関連SNVに基づいて、リンパ異常を検出及び/又は診断するための方法が包含される。この方法は、リンパ異常関連SNVを検出することを含み得、試料中のリンパ異常関連SNVを含む核酸は、試料中に存在する他の配列と比較して鋳型の量を増加させるために、例えばPCRを使用して最初に増幅されるであろう。これにより、標的配列が試料中に存在する場合、標的配列を高い感度で検出することが可能になる。この初期工程は、当技術分野でますます重要になってきている高感度アレイ技術を使用することによって回避することができる。
【0105】
あるいは、新しい検出技術がこの制限を克服することができ、わずか1μgの総RNAを含む少量の試料の分析を可能にする。従来の蛍光技術とは対照的に、共鳴光散乱(RLS)技術を使用して、複数の読み取りにより、ビオチン標識ハイブリダイズ標的及び抗ビオチン抗体を使用して少量のmRNAを検出することができる。PCR増幅に対する別の代替法は、信号対雑音比を増大させ、バックグラウンド干渉を減少させるための平面導波路技術(PWG)を含む。両方の技術が、Qiagen Inc.(USA)から市販されている。
【0106】
したがって、前述の技術のいずれかを使用して、リンパ異常関連SNVマーカーの発現を検出又は定量し、それに応じて、リンパ異常又はその発症の危険性を診断することができる。
【0107】
リンパ異常を有する患者の治療
本明細書に記載のリンパ異常関連SNVが、リンパ異常表現型を調節する際に果たす役割の解明は、リンパ異常の治療に有用な、既存の治療法の再利用、及び新しい治療法の開発を促進する。いくつかの実施態様において、本発明は、1つ又は複数のmTOR阻害剤、1つ又は複数のPIK3K阻害剤、及び/又は1つ又は複数のMEK阻害剤(例えば、表1-2のうちの1つ又は複数の薬剤)をリンパ異常を有する患者に投与することを含む。
【0108】
いくつかの実施態様において、治療を受けるリンパ異常を有する患者は、リンパ異常の症状と家族歴陽性に基づいて診断されている。いくつかの実施態様において、単純フィルムラジオグラフィ、骨スキャン、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴イメージング、及びリンパシンチグラフィーなどの様々なスキャン技術が、リンパ異常を診断するための臨床症状とともに使用される。いくつかの実施態様において、生検は、リンパ異常を診断するために行われる。いくつかの実施態様において、リンパ異常は、リンパ管の異常増殖に基づいて診断される。いくつかの実施態様において、リンパ異常は、リンパ管の異常形成に基づいて診断される。いくつかの実施態様において、リンパ異常は、心膜滲出液、胸膜滲出液、又は腹膜滲出液を含む乳び性滲出液に基づいて診断される。
【0109】
いくつかの実施態様において、治療を受けるリンパ異常を有する患者は、本明細書に記載の診断方法に従って診断されている。
【0110】
いくつかの実施態様において、1つ又は複数のmTOR阻害剤、1つ又は複数のPIK3K阻害剤、及び/又は1つ又は複数のMEK阻害剤(例えば、表1-2のうちの1つ又は複数の薬剤)は、リンパ異常を治療するための医薬の調製に有用である。1つ又は複数の薬剤が、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者に周知の他の材料と共に製剤化することができる。そのような材料は無毒性であるべきであり、かつ活性成分の有効性を妨げるべきではない。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚若しくは皮下、経鼻、エアロゾル化、筋肉内、及び腹腔内経路に依存し得る。リンパ異常関連突然変異を含むインビトロ系又はトランスジェニック生物体を使用して、ヒトの治療のための特定の薬剤を選択することができる。
【0111】
治療に有用な薬剤には、限定されないが、表1及び2の薬剤が挙げられる。いくつかの薬剤は表1と2の両方に記載されているが、薬剤が両方の表に記載されていないという事実には意味がない。
【0112】
表2は、リンパ異常を治療するために単独で、又は表1若しくは表2のいずれかの薬剤と組み合わせて使用できる薬剤を提供する。
【0113】
リンパ異常を有する個体を治療するため、又は疾患の徴候若しくは症状を軽減するために、本明細書に開示される遺伝子を標的とする適切な薬剤を組み合わせて投与して、患者に治療上の利益を提供することができる。そのような薬剤は、有効量で投与されるべきである。
【0114】
ひとたび遺伝的変化(1つ又は複数)が同定されると、次いで治療は、変化した遺伝子によって影響を受ける生物学的経路及びシグナル伝達経路を調節するように考案される。例えば、mTOR阻害剤は、単独で又は追加のmTOR阻害剤と組み合わせて使用することができる。同様に、PIK3K阻害剤は、単独で、又は上記のPIK3K阻害剤のいずれかと組み合わせて使用することができる。MAPK(MEK1/MEK2)及びERK経路を阻害することが望ましい場合には、MEK阻害剤を単独で又は他のMEK/ERK阻害剤と組み合わせて使用することができる。特定の実施態様において、治療は、PIK3K阻害剤と一緒にmTOR阻害剤を投与することを必要とする。他の実施態様において、患者に治療上の利益を提供するために、mTOR及びMEK/ERK阻害剤が組み合わされる。別のアプローチにおいて、疾患の症状を改善するために、PIK3K及びMEK/ERK阻害剤が組み合わされる。本明細書に記載の特定のARAF機能獲得型突然変異について、有効な治療は、MEK/ERK阻害剤の投与を含む。上記の組み合わせ治療法は相加的様式で作用することができる。他の実施態様において、組み合わせた薬剤は相乗的に作用して症状を軽減する。
【0115】
第1に、生物学的試料及び/又は遺伝子型判定情報を患者から入手することができる。次いで、試料中に存在する核酸から集められた遺伝情報は、例えば、リンパ異常関連SNVの存在又は非存在について評価されるであろう。リンパ異常の危険性又は疾患の存在を示すこれらの突然変異の存在は、影響を受ける遺伝子の同時同定とともに、どの治療剤が適切であるかについての指導を臨床医に提供する。1つ又は複数の総治療用量(2つ以上の標的を調節する場合)は、単回用量として対象に投与することができ、又は複数回/別々の用量をより長期間にわたって投与する分割治療プロトコルを使用して投与することができ、例えば、1日投与量の投与を可能にするために1日の期間にわたって、又は所望の期間にわたって用量を投与するためにより長い期間にわたって投与することができる。当業者は、対象において有効量を得るために必要とされるリンパ異常薬剤の量は、対象の年齢、体重及び一般的健康状態、並びに投与経路及び施される治療の数を含む多くの要因に依存することを知っているであろう。これらの要因を考慮して、当業者は、リンパ異常を有する個体を治療するための有効量を得るように特定の用量を調整するであろう。
【0116】
リンパ異常治療剤(1つ又は複数)の有効量は、投与方法、及び治療されている個体の体重に依存するであろう。本明細書に記載の投与量は、一般に、平均的な成人のためのものであるが、子供の治療のために調整することができる。用量は一般に約0.001mgから約1000mgの範囲であろう。
【0117】
特にリンパ異常、より重篤な形態の疾患に罹患している個体において、リンパ異常治療剤の投与は、例えば、そのような疾患を治療するための従来の薬剤と組み合わせて投与される場合に特に有用であり得る。当業者は、リンパ異常治療剤(1つ又は複数)を単独で又は組み合わせて投与するであろう、そして肺、腸、甲状腺、若しくは炎症機能の判定、放射線学的若しくは免疫学的アッセイ、又は指示されている場合は、組織病理学的方法などの日常的な方法を使用してそのような治療の有効性をモニターするであろう。リンパ異常の治療のための他の薬剤は、疾患の基礎となる症状を緩和するために、全身化学療法、インターフェロンα療法、放射線療法、又は手術が含まれる。
【0118】
薬学的調製物(pharmaceutical preparation)の投与は、好ましくは「有効量」であり、これは個体に対して利益を示すのに十分である。この量は、患者におけるリンパ異常の症状の重症度を予防、軽減(alleviate)、寛解(abate)、又は他の方法で軽減する。有効量のmTOR阻害剤、PIK3K阻害剤、及び/又はMEK阻害剤(例えば、表1-2からの薬剤)による、リンパ異常を有する患者の治療は、リンパ構造の改善、乳び性胸膜滲出液の減少、呼吸機能の改善、併用薬の使用の漸減、又は生存期間の延長をもたらす可能性がある。
【0119】
薬学的調製物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与量単位形態で処方される。投与量単位形態は、本明細書で使用される場合、治療を受けている患者に適した薬学的調製物の物理的に別個の単位を指す。各投与量は、選択された薬学的担体と共に所望の効果を生じるように計算された量の活性成分を含むべきである。適切な投与量単位を決定するための手順は当業者に周知である。
【0120】
投与量単位は、患者の体重に基づいて比例的に増加又は減少させることができる。特定の病理学的状態の緩和のための適切な濃度は、当技術分野で周知のように、投与量濃度曲線計算によって決定され得る。
【0121】
本発明の方法に有用な薬学的組成物は、非経口的に、経口用の固体及び液体製剤で、皮下、皮内、筋肉内、舌下、局所的、耳介(OTIC)、口腔内、結膜、皮膚、歯、電気浸透を介して、子宮頸管内、副鼻腔又は気管を介して、腸内、硬膜外、浸潤を介して、間質内、腹腔内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、滑液嚢内、心臓内、軟骨内、尾内、海綿体内、腔内、脳内、皮内、リンパ管内、心膜内、腹腔内、経鼻、経皮、呼吸器、眼、座薬、エアロゾル、局所又は他の既知の投与経路において全身投与することができる。リンパ異常を治療するために有用な薬剤に加えて、薬学的組成物は薬学的に許容される担体、及び薬物投与を増強し、促進することが知られている他の成分を含有してもよい。したがって、そのような組成物は、アジュバント、例えば、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの水性懸濁液、及び/又は生理食塩水などの他の薬学的に許容される担体などの他の成分を任意選択的に含み得る。ナノ粒子、リポソーム、再シールされた赤血球、及び免疫学に基づくシステムなどの他の可能な製剤もまた、本発明の方法に従って患者に適切な薬剤を送達/投与するために使用され得る。そのような薬剤を送達するためのナノ粒子の使用、並びに使用され得る細胞膜透過性ペプチド担体は、Crombez et al., Biochemical Society Transactions v35:p44 (2007)に記載されている。
【0122】
リンパ異常を治療するために有用な薬剤(1つ又は複数)の投与は、リンパ異常関連SNVマーカー発現を首尾よく検出又は定量化し、それに応じてリンパ異常又はその発症の危険性を診断した後に行うことができる。リンパ異常関連SNVマーカー発現を検出又は定量化することは、治療に使用される特定の薬剤の選択を導き得る。リンパ異常関連SNVマーカー発現を検出又は定量化することは、特定の治療が特定の対象には適切ではないことを示し得る。
【0123】
他の実施態様において、リンパ異常の治療は疾患の臨床診断に基づいて行われてもよく、治療は遺伝子配列情報の検出又は定量化なしで開始されてもよい。他の実施態様において、リンパ異常の治療は疾患の臨床診断に基づいて行われてもよく、治療はリンパ異常関連SNVマーカー発現の検出又は定量化なしで開始されてもよい。
【0124】
他の実施態様において、リンパ異常の治療は疾患の臨床診断に基づいて行われてもよく、治療はリンパ異常関連SNVマーカー発現がコントロールと変わらない場合に開始されてもよい。
【0125】
いくつかの実施態様において、治療は、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、又はARAFにおいてSNVを有しない患者に施される。
【0126】
いくつかの実施態様において、表1-2からの2つ以上の薬剤が投与される。いくつかの実施態様において、表1-2からの3つ以上の薬剤が投与される。
【0127】
いくつかの実施態様において、投与される薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、及びmTORC2の阻害プロファイルを有する。mTOR、mTORC1、及びmTORC2の活性は、「mTORシグナル伝達」と称され得る。mTOR、mTORC1、及びmTORC2の阻害は、mTORシグナル伝達の阻害と称され得る。いくつかの実施態様において、mTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害プロファイルを有するこの薬剤(1つ又は複数)は、表1-2に含まれないが、mTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害のインビトロ又は無細胞プロファイルを有する。いくつか実施態様において、mTORシグナル伝達の阻害剤、mTOR阻害剤、mTORC1阻害剤、又はmTORC2阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0128】
いくつか実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、他の標的よりもmTOR、mTORC1、及び/又はmTORC2の阻害に対して選択的である。いくつか実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、他の標的よりもmTOR、mTORC1、及び/又はmTORC2の阻害に対して選択的でない。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、及び/又はmTORC2を阻害し、また他の測定可能な生物学的効果を有する。
【0129】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)はATP競合的mTOR阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)はATP競合的ではないmTOR阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤は二重mTORC1/C2阻害剤である。
【0130】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、PI3K及びmTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、又はmTORC2を阻害しないPI3Kの阻害剤である。いくつか実施態様において、PI3K阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0131】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、FKB12の遺伝子産物であるペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼの阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤は、FK506結合の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ又はFKB12の遺伝子産物、及びmTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、又はmTORC2を阻害しない、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ又はFKB12の遺伝子産物の阻害剤である。いくつか実施態様において、ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ又はFKB12の遺伝子産物の阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0132】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、DNA活性化プロテインキナーゼ(DNA-PK)の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、DNA-PK及びmTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、又はmTORC2を阻害しないDNA-PKの阻害剤である。いくつか実施態様において、DNA-PKの阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0133】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、p110としても知られる、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼの阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、p110の1つ又は複数のサブユニット(α、β、γ、δなど)の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、p110及びmTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、又はmTORC2を阻害しないp110の阻害剤である。いくつか実施態様において、p110の阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0134】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、P70S6キナーゼ(P70S6K)の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、P70S6K及びmTOR、mTORC1、又はmTORC2の阻害剤である。いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、mTOR、mTORC1、又はmTORC2を阻害しないP70S6Kの阻害剤である。いくつか実施態様において、P70S6Kの阻害剤は、100μM未満、10μM未満、1μM未満、100nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50を有する。
【0135】
いくつか実施態様において、阻害剤は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ酵素MEK1及び/又はMEK2を阻害するMEK1/2阻害剤である。それらは、一部のがん及び他の障害においてしばしば過活動性であるMAPK/ERK経路に影響を与えるために使用することができる。
【0136】
いくつかの実施態様において、薬剤(1つ又は複数)は、ラパマイシン又はBEZ-235(ダクトリシブ)である。mTOR阻害剤であるラパマイシンは、シロリムスとしても知られている。ダクトリシブ又はNVP-BEZ235としても知られるBEZ-235は、p110、PI3K、及びmTORに対して既知の活性を有する化合物である。
【0137】
いくつかの実施態様において、治療方法において投与される薬剤は、ラパマイシン(シロリムス)、エベロリムス(RAD001)、AZD8055、テムシロリムス(CCI-779、NSC 683864)、KU-0063794、MHY1485、BEZ235(NVP-BEZ235、Dactolisib)、PI-103、トルキニブ(PP242)、タクロリムス(FK506)、リダフォロリムス(デフォロリムス、MK-8669)、INK 128(MLN0128)、ボクスタリシブ(SAR245409、XL765)、トリン1、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ(GDC-0980、RG7422)、GSK1059615、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、WYE-354、AZD2014、トリン2、WYE-125132(WYE-132)、PP121、WYE-687、CH5132799、WAY-600、ETP-46464、GDC-0349、XL388、ゾタロリムス(ABT-578)、タクロリムス(FK506)、BGT226(NVP-BGT226)、パロミド529(P529)、及びクリソファン酸から選択される。
【0138】
いくつかの実施態様において、投与される薬剤は、セルメチニブ(AZD6244)、PD0325901、トラメチニブ(GSK1120212)、PD184352(CI-1040)、ピマセルチブ(AS-703026)、TAK-733、AZD8330、ビニメチニブ(MEK162、ARRY-162、ARRY-438162)、SL-327、レファメチニブ(RDEA119、Bay 86-9766)、及びコビメチニブ(GDC-0973、RG7420)から選択されるMEK阻害剤である。
【0139】
上記の薬剤の組み合わせは、リンパ異常の治療のための有効性を有するはずである。以下の組み合わせは、LAMを治療するために相加的又は相乗的に作用し得る。特定の実施態様において、投与のための組み合わせは、1)リダフォロリムス及びトラメチニブ;2)リダフォロリムス及びセルメチニブ又はコビメチニブ;3)BEZ235及びセルメチニブ;4)オミパリシブ及びセルメチニブ又はトラメチニブ;5)エベロリムス及びトラメチニブ又はセルメチニブ;6)シロリムス、リダフォロリムス及びセルメチニブ;7)シロリムス、リダフォロリムス及びトラメチニブ;8)トルキニブ及びトラメチニブ;9)BEZ235、トルキニブ及びトラメチニブ;並びに10)シロリムス及びゲダトリシブ及びトラメチニブから選択される。
【0140】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載された薬剤による治療は、全身化学療法、インターフェロンアルファ、放射線療法、及び/又は手術のうちの1つ又は複数と組み合わせて使用される。
【0141】
有用な治療用薬剤を同定する方法
本明細書で同定されたSNVはリンパ異常の病因と関連しているので、そのようなSNVを含む遺伝子及びそれらがコードする産物の活性を調節する薬剤を同定するための方法により、この状態の治療のために有効な治療剤の生成がもたらされるはずである。
【0142】
本明細書に記載の染色体領域は、それらの活性を調節する治療剤の合理的設計のための適切な標的を提供するタンパク質コード領域を含む。これらの領域に対応する小ペプチド分子は、コードされたタンパク質の活性を効果的に調節する治療剤の設計において有利に使用され得る。
【0143】
分子モデリングは、機能に必要な立体構造又は重要なアミノ酸残基に基づいて、SNVを含む核酸によってコードされるタンパク質の活性部位に結合する能力を有する特異的な有機分子の同定を容易にするはずである。コンビナトリアルケミストリーのアプローチを使用して、最大の活性を有する分子を同定することができ、次いで、これらの分子の繰り返しが、さらなるサイクルのスクリーニングに展開されるであろう。特定の実施態様において、候補薬物を、合成化合物又は天然化合物の大きなライブラリーからスクリーニングすることができる。1つの例は、ヒトによって使用することができるFDAに認可された化合物ライブラリーである。加えて、化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(Trevillet、Cornwall、UK)、Comgenex(Princeton、NJ)、Microsource(New Milford、CT)、Aldrich(Milwaukee、WI)、AKos Consulting and Solutions GmbH(Basel、Switzerland)、Ambinter(Paris、France)、Asinex(Moscow、Russia)、Aurora(Graz、Austria)、BioFocus DPI、Switzerland、Bionet(Camelford、UK)、ChemBridge、(San Diego、CA)、ChemDiv、(San Diego、CA)、Chemical Block Lt、(Moscow、Russia)、ChemStar(Moscow、Russia)、Exclusive Chemistry、Ltd(Obninsk、Russia)、Enamine(Kiev、Ukraine)、Evotec(Hamburg、Germany)、Indofine(Hillsborough、NJ)、Interbioscreen(Moscow、Russia)、Interchim(Montlucon、France)、Life Chemicals、Inc.(Orange、CT)、Microchemistry Ltd.(Moscow、Russia)、Otava、(Toronto、ON)、PharmEx Ltd.(Moscow、Russia)、Princeton Biomolecular(Monmouth Junction、NJ)、Scientific Exchange(Center Ossipee、NH)、Specs(Delft、Netherlands)、TimTec(Newark、DE)、Toronto Research Corp.(North York ON)、UkrOrgSynthesis(Kiev、Ukraine)、Vitas-M、(Moscow、Russia)、Zelinsky Institute、(Moscow、Russia)、及びBicoll(Shanghai、China)を含むがこれらに限定されない、多数の企業から市販されている。
【0144】
細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物、及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、市販されているか、又は当技術分野において周知の方法によって容易に調製することができる。動物、細菌、真菌、葉及び樹皮を含む植物源、並びに海洋試料などの天然源から単離された化合物を、潜在的に有用な医薬品の存在についての候補としてアッセイすることができることが提案されている。スクリーニングされるべき医薬品は、化学的組成物又は人工化合物に由来するか又はそれらから合成されてもよいことが理解されよう。いくつかの市販ライブラリーを、スクリーニングに使用することができる。
【0145】
薬物スクリーニングアッセイに用いられるポリペプチド又は断片は、溶液中で遊離しているか、固体支持体又は細胞内に固定されているかのいずれであってもよい。薬物スクリーニングの1つの方法は、ポリペプチド又は断片を発現する組換えポリヌクレオチドが安定に形質転換されている真核生物宿主細胞又は原核生物宿主細胞を、好ましくは競合的結合アッセイにおいて、利用する。このような細胞は、生きた状態又は固定された形式のいずれかで、標準的な結合アッセイに使用することができる。例えば、ポリペプチド若しくは断片と試験されている薬剤との間における複合体の形成を決定してもよく、又はポリペプチド若しくは断片と既知の基質との間における複合体の形成が、試験されている薬剤によって妨害される程度を試験してもよい。
【0146】
薬物スクリーニングのためのさらなる技術は、機能していないか又は改変されたリンパ異常関連遺伝子を有する、宿主真核細胞株、細胞(内皮細胞など)又は動物モデル全体(例えば、トランスジェニックマウス又はゼブラフィッシュ)の使用を伴う。いくつかの実施態様において、トランスジェニック生物体は、EPHB4におけるc.2334+1G>C;PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;PIK3R6におけるc.1393-7C>T;mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;又は及びARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pの突然変異を有する細胞を含む。これらの宿主細胞株、細胞又はトランスジェニック動物は、ポリペプチドレベルで欠損している。宿主細胞株又は細胞を、薬物化合物の存在下において増殖させる。例えば、ゼブラフィッシュモデルでは、尾部及び又はD/V血管構造のレスキューを評価することができる。さらに、宿主細胞株におけるmTORによるリン酸化の誘導を評価することができる。
【0147】
薬物スクリーニングの例示的な方法は、表1-2に記載された薬剤などの、細胞シグナル伝達を変化させる薬剤を同定するための方法であろう。この方法は、少なくとも1つのリンパ異常関連SNVを含む少なくとも1つの核酸を発現する細胞を提供すること;リンパ異常関連SNVに対応する同種野生型配列を発現する細胞を提供すること;少なくとも1つのリンパ異常関連SNVを発現する細胞及び同種野生型配列を発現する細胞を試験剤と接触させること;及び前記薬剤が細胞シグナル伝達を変化させるかどうかを分析することを含むであろう。
【0148】
本発明のリンパ異常関連SNV又はその機能的断片を発現する宿主細胞は、潜在的化合物又は薬剤をリンパ異常の発症を調節する能力についてスクリーニングするためのシステムを提供する。したがって、一実施態様において、本発明の核酸分子を使用して、リンパ異常及び異常な血管形成に関連する異常なmTORシグナル伝達の態様を調節する薬剤を同定するためのアッセイにおける使用のための組換え細胞株が作製され得る。SNVを含む核酸によってコードされるタンパク質の機能を調節することができる化合物についてスクリーニングする方法もまた本明細書に提供される。
【0149】
別のアプローチは、SNVを含む核酸によってコードされるポリペプチドの断片をファージ表面に発現するように操作されたファージディスプレイライブラリーの使用を伴う。このようなライブラリーを、次いで、コンビナトリアルケミカルライブラリーと、発現されたペプチドと化合物ライブラリーの構成成分との間の結合親和性を検出することができる条件下において、接触させる。米国特許第6057098号及び第5965456号は、そのようなアッセイを実施するための方法及び装置を提供している。
【0150】
別の実施態様において、リンパ異常関連改変核酸の利用可能性は、本発明の改変核酸を保有する実験用マウスの系統の産生を可能にする。これらのリンパ異常関連改変核酸は、EPHB4におけるc.2334+1G>C;PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G;PIK3R6におけるc.1393-7C>T;mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L;及び/又はARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pであり得る。本発明のリンパ異常関連突然変異を発現するトランスジェニックマウスは、突然変異核酸によってコードされるタンパク質の、リンパ異常への発症及び進行における役割を調べるためのモデル系を提供する。実験用マウスに導入遺伝子を導入する方法は、当業者に知られている。3つの一般的な方法としては、1.初期胚に目的の外来遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを組み込むこと;2.DNAを新たな受精卵の前核に注入すること;及び3.遺伝子操作した胚性幹細胞を初期胚に組み込むことが挙げられる。上記のトランスジェニックマウスの産生により、標的タンパク質がリンパ異常表現型に関連する様々な過程において果たす役割の分子的解明が促進されるであろう。そのようなマウスは、全動物モデルにおいて推定上の治療薬を研究するためのインビボスクリーニングツールを提供するものであり、本発明に包含される。
【0151】
「動物」という用語は、ヒトを除き、すべての脊椎動物を含んで本明細書において使用される。これにはまた、胚段階及び胎児段階を含む、すべての発達段階における個々の動物も含まれる。「トランスジェニック動物」は、細胞以下のレベルで入念な遺伝子操作によって、例えば、標的化された組換え又はマイクロインジェクション、又は組換えウイルスでの感染によって、直接的又は間接的に、遺伝情報が改変又は受容された1つ又は複数の細胞を含む任意の動物である。「トランスジェニック動物」という用語は、古典的な異種交配又はインビトロでの受精を包含することを意味するのではなく、むしろ、1つ又は複数の細胞が組換えDNA分子によって改変されているか、又はそれを受容した、動物を包含することを意味する。この分子は、定義された遺伝子座を特異的に標的とし得るか、染色体内にランダムに組み込まれ得るか、又は染色体外でDNAを複製し得る。「生殖細胞株トランスジェニック動物」という用語は、遺伝子改変又は遺伝情報が、生殖細胞株に導入されており、それによって、遺伝情報を子孫に伝える能力を付与したトランスジェニック動物を指す。そのような子孫が、実際に、その改変又は遺伝情報のうちの一部又はすべてを有する場合、それらも、トランスジェニック動物である。
【0152】
遺伝情報の改変は、レシピエントが属する動物種にとって外来のものであり得るか、若しくは特定の個々のレシピエントにとってのみ外来であり得るか、又はレシピエントが既に有している遺伝情報であり得る。最後の事例では、改変又は導入された遺伝子は、本来の遺伝子とは異なって発現され得る。そのような改変されたか又は外来の遺伝情報は、改変されたリンパ異常関連ヌクレオチド配列の導入を含むであろう。
【0153】
標的遺伝子を改変するために使用されるDNAは、ゲノム源からの単離、単離したmRNA鋳型からのcDNAの調製、直接合成、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な技術によって得ることができる。
【0154】
導入遺伝子を導入するための標的細胞の一種は胚性幹細胞(ES)である。ES細胞は、インビトロで培養された着床前の胚から得ることができる(Evans et al., (1981) Nature 292:154-156; Bradley et al., (1984) Nature 309:255-258; Gossler et al., (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. 83:9065-9069)。導入遺伝子は、DNAトランスフェクション又はレトロウイルス媒介型形質導入などの標準的な技術によって、ES細胞に効率的に導入することができる。結果として得られた形質転換ES細胞を、次いで、非ヒト動物に由来する胚盤胞と合わせることができる。導入されたES細胞が、次いで、胚にコロニー形成し、結果として得られるキメラ動物の生殖系列に寄与する。
【0155】
個々の遺伝子及びそれらの発現産物の寄与を決定する問題に対する1つのアプローチは、単離された、突然変異を含むリンパ異常関連遺伝子を、分化全能性ES細胞(上記のものなど)において野生型遺伝子を選択的に不活性化するための挿入カセットとして使用し、次いで、トランスジェニックマウスを生成することである。遺伝子標的化トランスジェニックマウスの生成において遺伝子標的化ES細胞を使用することは、説明されており、他の箇所で考察されている(Frohman et al., (1989) Cell 56:145-147; Bradley et al., (1992) Bio/Technology 10:534-539)。
【0156】
標的化相同組換えを使用して特定の変化を染色体対立遺伝子に挿入することによって、任意の遺伝子領域を不活性化するか又は所望される突然変異に改変するための技術が、利用可能である。しかしながら、ほぼ100%の頻度で生じる相同的染色体外組換えと比較して、相同的プラスミド-染色体組換えは、当初、10-6から10-3の頻度でしか検出されないことが報告されていた。非相同的プラスミド-染色体の相互作用は、同等の相同的挿入よりも10倍から10倍高いレベルでより頻繁に生じる。
【0157】
マウスES細胞におけるこの低い割合の標的化組換えに対処するために、まれな相同組換え体を検出又は選択するための様々な戦略が開発されている。相同的改変事象を検出するための1つのアプローチでは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、相同的挿入のための形質転換体細胞のプールをスクリーニングし、続いて個々のクローンをスクリーニングする。あるいは、相同的挿入が生じた場合にのみ活性となるマーカー遺伝子を構築し、これらの組換え体を直接選択することができる、陽性遺伝子選択アプローチが開発されている。改変の直接的な選択が存在しない遺伝子のために開発された陽性-陰性選択(PNS)法が、相同的組換え体を選択するために開発された最も強力なアプローチのうちの1つである。PNS法は、マーカー遺伝子がそれ自体のプロモーターを有するため、高いレベルで発現されない遺伝子を標的とするのにより効率的である。非相同的組換え体は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を使用し、ガンシクロビル(GANC)又は(1-(2-デオキシ-2-フルオロ-B-Dアラビノフルラノシル)-5-ヨードウラシル(FIAU)などの効果的なヘルペス薬により非相同的挿入に対して選択を行うことによって、選択される。この対抗選択によって、生存している形質転換体中の相同的組換え体の数が増大し得る。変異リンパ異常関連核酸を標的化挿入カセットとして用いることで、例えば、EPHB4核酸によってコードされるポリペプチドに免疫学的に特異的な抗体に対する免疫反応性の獲得によって可視化されるように、挿入の成功を検出するための手段が得られ、所望される遺伝子型を有するES細胞のスクリーニング/選択が容易となる。
【0158】
本明細書に使用されるとき、ノックイン動物とは、内因性マウス遺伝子が、例えば、本発明のヒトリンパ異常関連遺伝子と置き換えられているものである。このようなノックイン動物は、リンパ異常の発症を研究するための理想的なモデル系を提供する。
【0159】
本明細書に使用されるとき、変異リンパ異常関連核酸、その断片、又はリンパ異常関連融合タンパク質の発現は、リンパ異常関連核酸のすべて又は一部分をコードする核酸配列が、特定の組織又は細胞型においてコードされるタンパク質の発現を誘導する制御配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)に動作可能に連結されているベクターを使用して、「組織特異的様式」又は「細胞型特異的様式」で標的とすることができる。このような制御エレメントは、インビトロ及びインビボの両方の用途に有利に使用され得る。組織特異的タンパク質を誘導するためのプロモーターは、当技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。あるいは、導入遺伝子は、組織特異的又は「全身」様式で機能し得る誘導性プロモーターの制御下にあり得る。
【0160】
本発明のリンパ異常関連突然変異体をコードする核酸配列は、トランスジェニック動物における発現のために、様々な異なるプロモーター配列に動作可能に連結され得る。そのようなプロモーターには、限定されないが、ハムスター又はマウスのThy-1プロモーターなどのプリオン遺伝子プロモーター;PGKプロモーター;又は所望の細胞型における導入遺伝子の発現のためのCMVプロモーターが挙げられる。
【0161】
本発明のトランスジェニックマウスの使用方法もまた、本明細書に提供される。変異リンパ異常関連核酸を含む核酸又はそのコードされたタンパク質が導入されているトランスジェニックマウスは、例えば、治療剤をスクリーニングしてリンパ異常の発症を調節することができるものを同定するためのスクリーニング方法を開発するのに有用である。
【0162】
検出製品及びキット
リンパ異常SNVを検出するのに有用である組成物又は製品が包含される。例えば、リンパ異常関連SNVを含む核酸、それを発現するベクター、リンパ異常関連SNVを含むマーカータンパク質、及び抗リンパ異常特異的マーカー抗体は、SNVである、EPHB4におけるc.2334+1G>C、PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G、PIK3R6におけるc.1393-7C>T、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L、又はARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pを検出することができる製品である。SNVである、EPHB4におけるc.2334+1G>PIK3R4におけるc.3481A>G:p.S1161G、PIK3R6におけるc.1393-7C>T、mTORにおけるc.6818A>G:p.P2273L、又はARAFにおけるc.640T>C:p.S214Pを検出するのに十分な長さ及び特徴を有する核酸プローブもまた包含される。検出製品は、それらが検出できるように標識され得る。
【0163】
リンパ異常関連SNVを検出するのに有用な任意の製品をキットに組み込むことができる。リンパ異常を治療するのに有用な任意の製品をキットに組み込むことができる。そのような検出製品及び治療用製品を含むキットが包含される。キットは、1つ又は複数のリンパ異常関連SNV特異的マーカーポリヌクレオチド又は固体支持体上に固定化されたそのようなマーカーの1つ若しくは集合、遺伝子チップ、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体、ラベル、マーカー、レポーター、薬学的に許容される担体、生理学的に許容される担体、使用説明書、容器、投与用容器、アッセイ基質、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0164】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施態様を例示するために提供される。これらは、決して本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例0165】
実施例I
LAM/GLAの遺伝的根拠を同定するために、異型のリンパ異常に罹患した6人の個体を含む3世代の家族からの家族メンバーから得られたDNA試料に対して全エクソーム配列決定(ES)を行った。罹患した家族メンバーは、リンパ管疾患との組み合わせでの著しい静脈うっ血を含む様々なリンパ異常を示した。図1に示すように、血統は常染色体優性遺伝モデルを実証した。
【0166】
家族1の発端者は24歳の男性であり、主に右側の乳び性滲出液として現れる複雑なリンパ管疾患の生涯にわたる病歴を有している。肺リンパ管腫症の診断は、生後4ヶ月の開胸肺生検における組織病理学的証拠によって以前に確認されていた。リンパ管造影では正常なリンパ管弁は認められなかった。リンパ液の逆流が見いだされ、これは、肺への(からではなく)流れの疑いを含んでいた。脊髄周囲の後腹膜及び肺にリンパ管の増殖があった。リンパ管は機能不全であり、リンパ節にガドリニウムを注射した後の流れは異常であった。気道周囲の腫れやリンパ管、気管支周囲のリンパ管を示唆する両側性の気管支周囲樹のT2強調があった。以前に乳び胸があった右肺底部での線維化の証拠もまた見いだされた。彼の家族歴は、彼の母親、母親の叔父と叔母、並びに母親の祖父におけるリンパ管の欠陥のために注目に値する。罹患した家族全員に静脈の変化があるが、一部の家族メンバーにおいて様々な程度のリンパ管の関与がある。
【0167】
発端者(すなわち、罹患した個体)及び健常な姉妹、両親、罹患していない母方の叔母、並びに最も有効なベースラインデータを提供した罹患した母方の祖父に対してエクソーム配列決定を行った。家族の常染色体優性遺伝モデルと一致するすべてのミスセンス、ナンセンス、スプライス改変、及びコーディング挿入欠失変異を調べた。同義の変異体、0.5%を超えるマイナーアレル頻度(MAF)を有する変異体、及び以前にコントロールにおいて同定された変異体を除外するために、社内のエクソームバリアントデータベースにより、結果をフィルタリングした。関連する候補は手作業のキュレーションで進められた。
【0168】
結果として、EPHB4遺伝子内のスプライス部位変異をもたらす一塩基対置換、c.2334+1G>Cが原因変異として同定された。表現型による突然変異の同時分離は、サンガー配列決定によって確認され、これは、6人の罹患した個体におけるヘテロ接合スプライシング変異体の存在及び7人の罹患していない家族メンバーにおける突然変異の非存在を実証した。図1の単一のアスタリスクは、この原因となる突然変異について陽性と試験されたことを示し、二重のアスタリスクは突然変異について陰性と試験された個体を示す。
【0169】
EPHB4はリンパ管集合管の弁に発現しており、発端者における罹患した個体は、弁の欠損又は機能不全を示唆する逆流を示すリンパ管造影を有している。c.2334+1G>C突然変異は、1000ゲノムプロジェクト、COSMIC、ESP6500SI及びExAC 61,000エクソームv0.3リリースには存在しなかった。リード発端者から得られた皮膚生検を用いたRNA-seqは、EPHB4スプライス改変突然変異がイントロンの介在12bpの保持を引き起こし、プロテインキナーゼドメインの高度に保存された触媒ループにおける非フレームシフト4アミノ酸挿入をもたらす隠れたスプライスドナーを作り出すことを示し、これは標準的なサンガー配列決定法によっても確認された(データは示さず)。RT-PCRにより、発端者及び母親から作製されたEBV形質転換リンパ芽球様細胞株(LCL)に2つのバンドが確認され、非罹患コントロールからの皮膚は野生型EPHB4の発現レベルが高いことが示された(データは示さず)。健常な家族メンバー及び患者由来のLCLにおけるEPHB4のタンパク質イムノブロットは、すべての試料において予測サイズのバンド(120kD)を示し、コントロールにおいてより顕著なバンドを示した(データは示さず)。
【0170】
EPHB4は、受容体チロシンキナーゼであり、特異的リガンドとしてエフリンB2(EFNB2)を認識するエフリンB型受容体4をコードする。EFNB2/EPHB4経路は、静脈及びリンパ系細胞の運命決定に影響を与えることが以前に示されている。図2は、動脈表現型、静脈表現型及びリンパ管表現型を生じさせるシグナル伝達経路の概略図を提供し、静脈表現型の発達におけるEPHB4の役割を強調する。
【0171】
実施例II
10の追加の家族を配列決定して、3つの追加の疾患原因遺伝子を同定した。一つ目はホスホイノシチド-3-キナーゼ調節サブユニット4(PIK3R4)のミスセンス突然変異、二つ目はホスホイノシチド-3-キナーゼ調節サブユニット6(PIK3R6)のホモ接合スプライシング突然変異、三つ目はmTORのミスセンス突然変異であった。PIK3R4、PIK3R6、MTOR、及びEPHB4aは、それらが同じ生理学的PI3K/AKT/mTOR経路に収束するという点で関連している。したがって、この経路は、リンパ異常の治療に有効性を有し得る治療薬にとって理想的な標的を提供する。
【0172】
表3は、これらのデータの要約を提供する。EPHB4のc.2334+1G>Cに上記の突然変異を有する家族を家族-1と命名した。家族2については、エクソン配列決定により、両親がヘテロ接合体である発端者のPIK3R6においてホモ接合変異体、c.1393-7C>Tが明らかとなった。PIK3R6は、触媒サブユニットp110と対合してクラスIB PI3K複合体を形成する調節サブユニット(p84)をコードする。家族3及び4については、MTORにおいて非常にまれなミスセンス突然変異、c.6818A>G:p.P2273L、及びPIR3R4において新規ミスセンス突然変異、c.3481A>G:p.S1161Gがそれぞれ同定された。家族5及び6において、保存されたリン酸化部位において反復性ARAF突然変異、c.640T>C:p.S214Pが同定され、これは推定上、残基S214のリン酸化がA-RAF癌原遺伝子(ARAF)の調節に関与しているので、機能獲得をもたらすであろう。遺伝様式は、表3に記載のように、常染色体優性(AD)又は常染色体劣性(AR)として特徴付けられた。
【0173】
実施例III
4つの同定されたヒト突然変異のインビボでのゼブラフィッシュ研究は、それらがリンパ異常に関連があることを確認した。
【0174】
EPHB4におけるc.2334+1G>C突然変異が遺伝子産物の触媒活性に影響を与えるかどうかを決定するために、EPHB4の野生型及び突然変異体型を含む発現コンストラクトを作製した。EPHB4コード配列を含むプラスミドは、GE Dharmacon(カタログ番号MHS6278-202833446、Lafayette、CO)から入手した。発見された12塩基対の挿入は、プライマー配列番号1及び配列番号2を使用してQuikchange II突然変異誘発キット(Agilent、Santa Clara、CA)を用いて行われた。コード配列を、順方向プライマー配列番号3及び逆方向プライマー配列番号4を使用してPCRによって増幅し、pBabe+CMV PuroのEcoRI及びNotI部位に連結した。順方向プライマー配列番号5及び逆方向プライマー配列番号6を使用して、Q5突然変異誘発キット(NEB、Ipswich、MA)を用いてシグナルペプチドに続いてコード配列にFLAGタグを挿入した。すべての配列は、サンガー配列決定により確認された。
【0175】
HEK239T細胞及びA375メラノーマ細胞株は、ATCC(Manassas、Virginia)から入手した。製造者のプロトコルに従って、3μgのDNA及び9μlのトランスフェクション試薬を用いて、Fugene HD(Promega、Madison、WI)を使用してトランスフェクションを行った。エフリン-B2-Fcでトランスフェクトした細胞を刺激するために、6ウェルプレート(組織培養処理していない、Thermo Scientific)を、50mM炭酸ナトリウム溶液(pH9.6)中5μg/mLのエフリン-B2-Fc(カタログ番号7397-EB、R&D Systems)又はヒト骨髄腫血漿由来のIgG1、カッパ(カタログ番号I5154、Sigma)のいずれかで一晩37℃でコーティングした。プレートをPBSで洗浄し、PBS中1%のBSAで4℃で30分間ブロックし、再びPBSで洗浄した。トランスフェクトした細胞を、DMEM中の10mMのEDTAを使用してそれらのプレートから取り出し、洗浄し、無血清DMEM中に再懸濁し、被覆プレートに添加した。プレートを15分間4℃に置き、20分間で37℃に移した後、細胞を溶解した。指示される場合は、FLAG免疫沈降(IP)を、Anti-FLAG M2 Affinity Gel(カタログ番号A2220、Sigma、St.Louis、MO)を使用して行った。IP及び溶解物をNuPAGE 4-12%Bis-Trisゲル上で泳動し、抗ホスホチロシン-4G10-ビオチン(カタログ番号16-103、EMD Millipore、Billerica Ma)及び抗EPHB4(カタログ番号AF3038、R&D Systems、Minneapolis、MN)を用いてブロットした。
【0176】
293T細胞への野生型EPHB4のトランスフェクションは、タンパク質の構成的チロシンリン酸化をもたらした(図3A、上部パネルにリン酸化Tyr(pTyr)及び下部パネルに総EPHB4)。対照的に、劇的に少ないチロシンリン酸化が、変異体のトランスフェクションで検出された。胎児水腫におけるEPHB4の異なる突然変異について前に記載したように、野生型と突然変異体タンパク質の混合物のトランスフェクションは、トランスフェクトされた突然変異体タンパク質の量にほぼ比例して、リン酸化の減少をもたらした。Martin-Almedina S, et al. J Clin Invest 126:3080-3088 (2016)を参照。A375メラノーマ細胞株への突然変異体EPHB4のトランスフェクション(図3B)は、野生型EPHB4のトランスフェクションと比較してはるかに少ない構成的リン酸化をもたらした(FLAG免疫沈降又は全細胞溶解物後のEPHB4に対するpTyrブロットによるシグナルを比較)。EPHB4のリガンドであるエフリンB2でトランスフェクトした細胞を刺激すると、野生型EPHB4のリン酸化の誘導をもたらしたが、突然変異体EPHB4のリン酸化は誘導されなかった(データは示さず)。これらの結果は、スプライス改変突然変異によって引き起こされる4つのアミノ酸挿入が突然変異体EPHB4のキナーゼ活性に重大な影響を及ぼすこと、及び突然変異体の存在が野生型タンパク質のリン酸化に影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0177】
EPHB4変異体の機能的影響を評価するために、tg(fli1:GFP)株を使用することによって患者において同定されたのと同じエクソン13のスプライスジャンクションを阻害する、ゼブラフィッシュにおけるモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、mRNAノックダウンアプローチを行った。エクソン13を標的とするモルホリノ配列はCGAGAGCAGTATTTACCAGTGAGCT(配列番号15)であり、0.8mMの濃度で使用した。pik3r6 ex4 delについては、用いた濃度は0.25mMであり、pik3r6 ex13 delについては、濃度は0.5mMであった。RT-PCR分析は、~66%の効率的なノックダウンを示した(図4)。
【0178】
受精後2.5日(dpf)での血管の融合及び尾部血管叢の一般的な拡大(図5Aのコントロールを図5Bのモルホリノ処置と比較)は、図5Eにおいて定量化され(「尾部欠陥」として表示)、モルホリノ注入幼虫の約52%において観察された(225匹の動物を用いた4つの実験、P<0.0006)。さらに、受精後4日目(dpf)に体節間血管の側方異常及び過剰分岐が、注入幼虫の約46%で観察された(図5C[コントロール]及び図5D[モルホリノ処置])。図5Eは定量化を示す(「誤分岐」と表示、6つの実験、259匹の動物、P<3.9E-08)。形態学及び側方分岐は、これらの異常な分岐がリンパ管の特徴を有することを示している。モルファント(MO)由来のephb4a cDNAの増幅は、13番目のエクソンを特異的に標的とすることが、小さい又はより大きい挿入のいずれかを伴う異常なスプライシングをもたらすことを明らかにした。サンガー配列決定は、小さい方のバンドが30bpのインフレーム挿入(VNTALVLSILをコードする)である一方、大きい方のバンドはエクソン13と14の間のイントロンの保持に起因するものであり、おそらく未成熟終止コドンをもたらすことを示した。
【0179】
モルホリノデータを検証するために、もともとサンガー研究所によってtillingアプローチを用いて発見された点突然変異ephb4asa11431を保有する突然変異株(Kettleborough RN, et al., Nature 496:494-497 (2013)を参照)を取得した。しかしながら、tg(fli1:GFP)バックグラウンドを有する突然変異キャリアの近交系間交配種は、尾部神経叢における欠陥又は体節間血管の誤分岐を示さなかった。潜在的に、ゼブラフィッシュの2番目のephb4遺伝子、ephb4bは、ephb4aの完全な欠如を補うことができた。実際に、エクソン13スプライスジャンクションを標的とするephb4bモルホリノの注入は、受精後54時間(hpf)で尾部神経叢の融合及び拡大をもたらした。より高濃度では、これらの幼虫の約70%もまた4dpfで誤分岐を発症した(データは示さず)。重要なことに、これらの表現型は、モルホリノが野生型幼虫においてephb4bのみを標的とする場合には誘導されなかった(データは示さず)。
【0180】
mTORC1がリンパ管発達のための重要なシグナル伝達経路であることが示唆されている(Sun et al., Nature 496:494-497 (2015)を参照のこと)。したがって、EPHB4のエクソン13の同じスプライスジャンクションを阻害するために、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドに曝露されたゼブラフィッシュを、mTORC1阻害剤ラパマイシン(1μM)及びBEZ-235(100nM)で処理した。24hpfから56hpfのラパマイシンによる処置は、図5Fに示すように、44%(コントロール、処置なし)から29%(6つの実験、321匹の動物、P<0.01)の尾部血管叢における欠陥の有意なレスキューを示した。ラパマイシンはまた、2.5dpfから4dpfで処置したときに、体節間血管の誤分岐をレスキューした(47%[コントロール、治療なし]対20%)(図5G、6つの実験、136匹の動物、P<0.00007)。BEZ-235はまた、45%(コントロール)から15%へと誤分岐をレスキューした(図5H、2つの実験、41匹の動物、P<0.037)。
【0181】
したがって、ゼブラフィッシュからのデータはリンパ系の適切な発達におけるEPHB4の役割を確認した。これらのデータは、c.2334+1G>CなどのEPHB4の突然変異が、ヒト患者の血統に見られるようなリンパ異常の表現型を予測することを支持している。
【0182】
次に、pik3r6に対する2つのモルホリノ株を開発した。両方とも1つはエクソン4に、他方はエクソン13においてスプライスドナー部位を標的とし、患者において同定されたのと同じオルソログ領域をカバーした。これらのモルホリノのいずれも尾部血管叢にて表現型を誘導しなかったが、両方とも体節間血管の重篤な誤分岐を引き起こした。エクソン4の欠失(図6B)は、エクソン13の欠失よりもより重篤な表現型を引き起こす。(図6A図6D、ex4:注入されたモルホリノの55%、7つの実験、210匹の動物、P<1.13E-07;ex13:47%、3つの実験、70匹の動物、P<0.0016)。
【0183】
さらに、ラパマイシン及びBEZ-235も、pik3r6エクソン4モルホリノによって誘導される誤分岐表現型を阻害し得るかどうかを調べた。実際に、両薬物は、それらが血管正常化をもたらす機能的プロセスを逆転させることができることを示した。ラパマイシンは、異常分岐を有する動物の数を47%から21%に減少させ(図6E、4つの実験、190匹の動物、P<0.003)、BEZ-235は誤分岐動物を56%から23%に減少させた(図6F、4つの実験、103匹の動物、P<0.008)。
【0184】
pik3r4がゼブラフィッシュのリンパ管発達に影響を与えるかどうかを調べるために、モルホリノをエクソン3のスプライスジャンクション部位に対して設計した。5%の誤分岐を有するコントロールと比較して、モルホリノは、注入された幼虫の16%に誤分岐を誘導し、これが体節間血管又はリンパ管に影響を及ぼした(形態及び血管の位置によって評価される)(図7A-7D;2つの実験;198匹の動物;P<0.05)。
【0185】
PIK3R6及びEPHB4モルホリノによって引き起こされる生化学的効果を決定するために、複数のゼブラフィッシュ幼虫を4.5から5dpfの間で溶解させ、溶解物をウエスタンブロットによってmTORC1シグナル伝達について分析した。4.5-5dpfのゼブラフィッシュ幼虫の体幹切片を、プロテアーゼ阻害剤(完全プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤、Roche、Mannheim、Germany)を補充した放射性免疫沈降法(RIPA)緩衝液中で溶解した。MOPS SDS泳動緩衝液(Life Technologies、Carlsbad、CA)を用いて泳動させたNuPAGE 4-12%Bis-Trisゲル上で、約5マイクログラムのタンパク質を分離した。以下の抗体を使用してウエスタンブロッティングを行った:p-p70 S6キナーゼT389(カタログ番号9205S、Cell Signaling、Danvers、MA)、ホスホ-mTOR Ser2448(カタログ番号5536P、Cell Signaling)、HIF1(カタログ番号LS-C287203、LSBio、Seattle、WA)、ベータアクチン(カタログ番号AC-15、Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)。
【0186】
PIK3R6(図8A)及びEPHB4 MO(図8B)は両方とも、mTOR及びその下流標的p70S6Kの両方のリン酸化によって検出されるように、活性化mTORC1シグナル伝達を示した。いずれのモルホリノによるmTORC1の活性化も、ラパマイシンによる発育期の幼虫の処理によって阻害された。PIK3R6モルホリノによる活性化は、BEZ235、二重PI-3-キナーゼ及びmTOR阻害剤によっても阻害された。さらに、EPHB4突然変異の細胞モデルをCRISPRを使用して開発した。EPHB4 cDNAのエクソン12から14領域をPCRにより増幅し、直接配列決定してノックインを確認した。EPHB4遺伝子座に対する特異的な標的配列(gRNA-EPHB4)を含むpSpCas9(BB)-2A-Puroベクターを、一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)を用いて、製造業者の指示に従ってLipofectamine 2000トランスフェクション試薬を使用して293T細胞にトランスフェクトした。ssODNは、EPHB4突然変異及びそれぞれ4又は3の同義又は非コードの変化を再現するためのゲノム配列に対する一塩基ミスマッチを含む。pSpCas9(BB)-2A-Puro(PX459)V2.0はAddgeneから購入した(プラスミドID番号62988)。この研究で使用されたガイドRNA(gRNA)(EPHB4については配列番号7)は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)のすぐ上流に存在し、MITからのgRNAデザイナーを使用して設計された(http://crispr.mit.edu/)。gRNAアセンブリのために、以下の配列(hEPHB4-F=配列番号8、hEPHB4-R=配列番号9、hPIK3R6-F=配列番号10、hPIK3R6-R=配列番号11)を有する各標的部位について一対の合成オリゴをアニールし、BbsI(NEB、Ipswich、MA)制限酵素部位を使用してpSpCas9(BB)-2A-Puroにペーストした。合成されたssODN(180塩基、配列番号12)はIDTから購入した。
【0187】
CRISPR試薬のトランスフェクション後、EPHB4スプライス改変突然変異を有する遺伝子編集細胞のウエスタンブロット分析は、野生型細胞と比較してp70S6K(P-p70S6K)のリン酸化のより高いレベルを示した(図9)。
【0188】
野生型又は変異型のmTOR cDNAをトランスフェクトしたHeLa細胞において、mTORの発現が有意に増加することも見出された。N末端にFLAGタグを有するヒト野生型mTORcDNA(ID番号26603)を含む哺乳動物発現ベクター(pcDNA3-FLAG mTOR wt)をAddgeneから入手した。野生型mTOR cDNAを保有するこの発現ベクターを使用して、製造業者の指示に従ってQ5部位特異的突然変異誘発キット(NEB、Ipswich、MA)を用いてP2273L mTOR突然変異体を生成した。プライマーは、鋳型特異的変異原性プライマー設計プログラムを使用して設計された。プライマー配列は配列番号13及び配列番号14であった。
【0189】
HeLa細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手し、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)中で37℃で増殖させた。HeLa細胞を、製造業者の指示(Invitrogen Life Technologies、CA)に従って、空のベクター(e.v.)、野生型(wt)又はP2273L変異体mTOR発現ベクターで一過性にトランスフェクトした。培地はトランスフェクションの24時間後に交換した。トランスフェクションの36-48時間後、細胞を氷冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、50mMのTris-HCl、pH7.4、100mMのNaCl、50mMのβ-グリセロリン酸、10%グリセロール(w/v)、1%のNP-40(w/v)、1mMのEDTA、2mMのNaVO4、溶解緩衝液1mL当たり20μlのEDTAフリータンパク質阻害剤カクテル(Roche Applied Science、Mannheim Germany)を含む、新たに調製した氷冷細胞溶解緩衝液を使用して氷上で溶解した。細胞溶解物を、1.5mLの微量遠心管に集め、ボルテックスにより破砕し、氷上で5分間インキュベートした。次いで細胞溶解物を4℃で5分間12,000rpmで遠心分離した。上清を回収し、タンパク質濃度をBradfordタンパク質アッセイキット(Bio-Rad Laboratories、Hercules CA)を使用して測定した。この細胞溶解物をウエスタンブロッティングに使用した。SDS/PAGE上で分離し、PVDF膜(Millipore Co.、Bedford、MA)に転写した10-30μgの細胞溶解物を使用してウエスタンブロッティングを行った。膜を5%スキムミルク/0.1%Tween20を含むTBS(TBST)を用いて室温で1時間ブロックし、次いで膜を分子量に基づいてスライスした。膜を、抗EPHB4、抗ホスホ-p70S6K(カタログ番号9234、Cell Signaling Technology、Danvers、MA)、抗FLAG(カタログ番号2972、Cell Signaling Technology、Danvers MA)、又は抗βアクチン(カタログ番号sc-1616R、Santa Cruz Biotechnology)抗体を含む一次抗体と共に室温(RT)で1時間又は4℃で一晩インキュベートした。TBSTにより4回洗浄した後、ブロットをそれぞれのHRP結合抗ウサギ又は抗マウス二次抗体(カタログ番号sc-2004及びc-2005、Santa Cruz Biotechnology)と共に室温で1時間インキュベートした。TBSTにより洗浄した後、膜上のタンパク質バンドを増強化学発光(ECL)反応試薬(Thermo Scientific、Waltham、MA)を用いて検出し、X線フィルムに露光した。
【0190】
mTOR突然変異体、P2273Lは、野生型mTOR又は空ベクター(e.v.)と比較して、p70S6Kのリン酸化(P-p70S6K)の増加をもたらし(図10)、シグナル伝達の増強を示し、機能獲得型突然変異と一致する。
【0191】
ARAF c.640T>C:p.S214P突然変異を評価するための実験は、実施例IIに記載されているように行われた。ヒトARAF野生型又はS214P突然変異体を発現する内皮細胞を作製し、5%FBS培地中で漸増用量のERK阻害剤(1ー100nm)と共にインキュベートした。これらの細胞株を使用して、ARAF S214P突然変異は血管新生を損ない、内皮細胞の遊走能力を低下させることが決定された(図11A及び12を参照)。
【0192】
ゼブラフィッシュにおけるヒトARAF野生型又はS214P突然変異体のトランスジェニックモザイク発現を調べた(11B-L)。ヒトARAFの発現は拡大した尾部血管を誘導し、その拡大した尾部血管の欠陥は、2dpfで、ヒトARAF S214Pのトランスジェニック発現の21%において検出されたが、野生型では検出されなかった(***P<0.001)(図11C-E)。部分的なレスキューは、MEK阻害剤(例えば、U0126、コビメチニブを生理的海水中1-10μM、及びセルメチニブを生理的海水中50-100μM)で処理した後の管形成及び遊走において検出される。図11F-L及び図12を参照のこと。EPHB4野生型、EPHB4-Dex13突然変異体、又はEPHB4-12bp挿入変異体を発現する内皮細胞も作製した。Ephb4突然変異は、これらの細胞株の管形成を損なうようには見えなかった(データは示さず)。
【0193】
実施例IV
ERK阻害剤によるARAF突然変異を有する患者の治療:
胸部のドレーンと焼灼を行うために複数の手術を必要とした重篤なGLAを有する12歳の男性が、上記のARAF突然変異を有することが判明した。彼は以前6ヶ月間ラパマイシンで治療されたことがあるが何の効果もなく、手術を必要とする進行性乳びを有し続けた。彼はその後複数の胸部手術を必要とし、ARAF突然変異が確認されERK阻害剤による治療が承認されたときには、万策が尽きていた。その後、彼はトラメチニブ(子供で承認された唯一のMEK阻害剤であり、セルメチニブとコビメチニブの効果に匹敵する効果がある)を1日1mgで開始し、応答のために1か月続けた。以前に重篤な拘束性肺疾患を示した彼の肺機能検査は、トラメチニブによる1ヵ月の治療を開始した後には全体的に45%(FVC、FEV1)改善した。手首の周りの多少の乾燥肌を除いて、彼にはトラメチニブ治療による副作用はなかった。彼はまた、トラメチニブ治療後には体調が良く、息切れも少なく、よりよく食べていた。治療後、彼は止まることなく階段を上ることができ、屋外でバスケットボールができたが、どちらも以前には不可能であった。治療後、彼の酸素脈は正常であり、最低値は朝に記録され(95%)、彼は酸素なしで過ごした。彼のCT胸部スキャンは2ヵ月の治療後も本質的に変化がなく、彼の疾患は進行していなかったことを示唆している(肺機能検査はX線撮影による測定よりも治療に対する応答の測定においてはるかに敏感である)。まとめると、これは、トラメチニブがGLA疾患の進行を停止させたという証拠であり(例えば、肺機能及び酸素飽和度の改善、並びに補給酸素に対する要件の緩和)、ERK阻害剤治療は、GLA及びARAF突然変異を有する患者にとって、かつ潜在的にはERK機能に影響を及ぼす突然変異を有する患者にとって有益であり得ることを示唆している。
【0194】
このように、本出願に提示されたデータは、GLA及び静脈うっ血を含む複雑なリンパ異常を有する6人の患者において初めて確認され、mTORC1活性の増加をもたらした、EPHB4における新規のスプライス改変突然変異を同定する。EPHB4におけるこのc.2334+1G>C突然変異は、フォワードシグナル伝達におけるリン酸化に関与するプロテインキナーゼドメインにおける非フレームシフト挿入をもたらす。
【0195】
機能的データは両方とも、突然変異EPHB4におけるc.2334+1G>Cの病原性を検証し、その挿入がEPHB4タンパク質のリン酸化状態を減少させることを示している。ゼブラフィッシュにおけるスプライシング改変EPHB4突然変異のモデル化は、リンパ管の発達における管の誤分岐及び変形をもたらし、血管とリンパ管の両方の分化欠陥の可能性を示し、家族-1の患者の症状を模倣している。際だったことに、mTORシグナル伝達を阻害する薬物はこの誤分岐表現型をレスキューすることができた。
【0196】
さらに、PI3K/mTOR経路に収束する、PIK3R6、MTOR及びPIK3R4における複数の生殖細胞系列変異及び機能的データは、これらの突然変異がゼブラフィッシュの尾部欠陥と誤分岐を引き起こす能力を支持している。したがって、本明細書に提示された裏付けとなる証拠は、PIK3R6、MTOR及びPIK3R4における突然変異もリンパ管新生過程において重複しない役割を果たすことを強く示唆している。
【0197】
反復性ARAF突然変異も、機能獲得効果が推定される保存されたリン酸化部位に見いだされた。ARAF活性化は、次にリングフィンガー及びFY3様ドメインを含むE3ユビキチンタンパク質リガーゼ(RFFL)を上方制御し、細胞の増殖促進と遊走促進を導く持続的なPKC活性化を達成するために、mTORC2の成分及びプロテインキナーゼC(PKC)リン酸化の抑制因子であるプロリンリッチ5様(PRR5L)のポリユビキチン化及び不安定化をもたらす。したがって、リンパ異常の発症において原因となる役割を有するARAFにおける突然変異の基本メカニズムもある。注目すべきことに、ARAFにおいて突然変異を有する患者のERK阻害剤による治療は、疾患の症状を首尾良く改善した。
【0198】
参考文献
1. Alitalo K, Tammela T, Petrova TV 2005 Lymphangiogenesis in development and human disease.Nature 438:946-953
2. Trenor CC, 3rd, Chaudry G 2014 Complex lymphatic anomalies.Semin Pediatr Surg 23:186-190
3. Levine C 1989 Primary disorders of the lymphatic vessels--a unified concept.J Pediatr Surg 24:233-240
4. Wassef M, Blei F, Adams D, Alomari A, Baselga E, Berenstein A, Burrows P, Frieden IJ, Garzon MC, Lopez-Gutierrez JC, Lord DJ, Mitchel S, Powell J, Prendiville J, Vikkula M 2015 Vascular Anomalies Classification: Recommendations From the International Society for the Study of Vascular Anomalies.Pediatrics 136:e203-214
5. Hilliard RI, McKendry JB, Phillips MJ 1990 Congenital abnormalities of the lymphatic system: a new clinical classification.Pediatrics 86:988-994
6. Smeltzer DM, Stickler GB, Fleming RE 1986 Primary lymphatic dysplasia in children: chylothorax, chylous ascites, and generalized lymphatic dysplasia.Eur J Pediatr 145:286-292
7. Faul JL, Berry GJ, Colby TV, Ruoss SJ, Walter MB, Rosen GD, Raffin TA 2000 Thoracic lymphangiomas, lymphangiectasis, lymphangiomatosis, and lymphatic dysplasia syndrome.Am J Respir Crit Care Med 161:1037-1046
8. Brouillard P, Boon L, Vikkula M 2014 Genetics of lymphatic anomalies.J Clin Invest 124:898-904
9. Luks VL, Kamitaki N, Vivero MP, Uller W, Rab R, Bovee JV, Rialon KL, Guevara CJ, Alomari AI, Greene AK, Fishman SJ, Kozakewich HP, Maclellan RA, Mulliken JB, Rahbar R, Spencer SA, Trenor CC, 3rd, Upton J, Zurakowski D, Perkins JA, Kirsh A, Bennett JT, Dobyns WB, Kurek KC, Warman ML, McCarroll SA, Murillo R 2015 Lymphatic and other vascular malformative/overgrowth disorders are caused by somatic mutations in PIK3CA.J Pediatr 166:1048-1054 e1041-1045
10. Kurek KC, Luks VL, Ayturk UM, Alomari AI, Fishman SJ, Spencer SA, Mulliken JB, Bowen ME, Yamamoto GL, Kozakewich HP, Warman ML 2012 Somatic mosaic activating mutations in PIK3CA cause CLOVES syndrome.Am J Hum Genet 90:1108-1115
11. Lindhurst MJ, Sapp JC, Teer JK, Johnston JJ, Finn EM, Peters K, Turner J, Cannons JL, Bick D, Blakemore L, Blumhorst C, Brockmann K, Calder P, Cherman N, Deardorff MA, Everman DB, Golas G, Greenstein RM, Kato BM, Keppler-Noreuil KM, Kuznetsov SA, Miyamoto RT, Newman K, Ng D, O’Brien K, Rothenberg S, Schwartzentruber DJ, Singhal V, Tirabosco R, Upton J, Wientroub S, Zackai EH, Hoag K, Whitewood-Neal T, Robey PG, Schwartzberg PL, Darling TN, Tosi LL, Mullikin JC, Biesecker LG 2011 A mosaic activating mutation in AKT1 associated with the Proteus syndrome.N Engl J Med 365:611-619
12. Revencu N, Boon LM, Mendola A, Cordisco MR, Dubois J, Clapuyt P, Hammer F, Amor DJ, Irvine AD, Baselga E, Dompmartin A, Syed S, Martin-Santiago A, Ades L, Collins F, Smith J, Sandaradura S, Barrio VR, Burrows PE, Blei F, Cozzolino M, Brunetti-Pierri N, Vicente A, Abramowicz M, Desir J, Vilain C, Chung WK, Wilson A, Gardiner CA, Dwight Y, Lord DJ, Fishman L, Cytrynbaum C, Chamlin S, Ghali F, Gilaberte Y, Joss S, Boente Mdel C, Leaute-Labreze C, Delrue MA, Bayliss S, Martorell L, Gonzalez-Ensenat MA, Mazereeuw-Hautier J, O’Donnell B, Bessis D, Pyeritz RE, Salhi A, Tan OT, Wargon O, Mulliken JB, Vikkula M 2013 RASA1 mutations and associated phenotypes in 68 families with capillary malformation-arteriovenous malformation.Hum Mutat 34:1632-1641
13. Burrows PE, Gonzalez-Garay ML, Rasmussen JC, Aldrich MB, Guilliod R, Maus EA, Fife CE, Kwon S, Lapinski PE, King PD, Sevick-Muraca EM 2013 Lymphatic abnormalities are associated with RASA1 gene mutations in mouse and man.Proc Natl Acad Sci U S A 110:8621-8626
14. Lo IF, Brewer C, Shannon N, Shorto J, Tang B, Black G, Soo MT, Ng DK, Lam ST, Kerr B 2008 Severe neonatal manifestations of Costello syndrome.J Med Genet 45:167-171
15. Fabretto A, Kutsche K, Harmsen MB, Demarini S, Gasparini P, Fertz MC, Zenker M 2010 Two cases of Noonan syndrome with severe respiratory and gastroenteral involvement and the SOS1 mutation F623I.Eur J Med Genet 53:322-324
16. Joyce S, Gordon K, Brice G, Ostergaard P, Nagaraja R, Short J, Moore S, Mortimer P, Mansour S 2016 The lymphatic phenotype in Noonan and Cardiofaciocutaneous syndrome.Eur J Hum Genet 24:690-696
17. Morcaldi G, Bellini T, Rossi C, Maghnie M, Boccardo F, Bonioli E, Bellini C 2015 Lymphodysplasia and Kras Mutation: A Case Report and Literature Review.Lymphology 48:121-127
18. Makinen T, Adams RH, Bailey J, Lu Q, Ziemiecki A, Alitalo K, Klein R, Wilkinson GA 2005 PDZ interaction site in ephrinB2 is required for the remodeling of lymphatic vasculature.Genes Dev 19:397-410
19. Kume T 2010 Specification of arterial, venous, and lymphatic endothelial cells during embryonic development.Histol Histopathol 25:637-646
20. Hashimoto T, Tsuneki M, Foster TR, Santana JM, Bai H, Wang M, Hu H, Hanisch JJ, Dardik A 2016 Membrane-mediated regulation of vascular identity.Birth Defects Res C Embryo Today 108:65-84
21. Martin-Almedina S, Martinez-Corral I, Holdhus R, Vicente A, Fotiou E, Lin S, Petersen K, Simpson MA, Hoischen A, Gilissen C, Jeffery H, Atton G, Karapouliou C, Brice G, Gordon K, Wiseman JW, Wedin M, Rockson SG, Jeffery S, Mortimer PS, Snyder MP, Berland S, Mansour S, Makinen T, Ostergaard P 2016 EPHB4 kinase-inactivating mutations cause autosomal dominant lymphatic-related hydrops fetalis.J Clin Invest 126:3080-3088
22. Kettleborough RN, Busch-Nentwich EM, Harvey SA, Dooley CM, de Bruijn E, van Eeden F, Sealy I, White RJ, Herd C, Nijman IJ, Fenyes F, Mehroke S, Scahill C, Gibbons R, Wali N, Carruthers S, Hall A, Yen J, Cuppen E, Stemple DL 2013 A systematic genome-wide analysis of zebrafish protein-coding gene function.Nature 496:494-497
23. Sun S, Chen S, Liu F, Wu H, McHugh J, Bergin IL, Gupta A, Adams D, Guan JL 2015 Constitutive Activation of mTORC1 in Endothelial Cells Leads to the Development and Progression of Lymphangiosarcoma through VEGF Autocrine Signaling.Cancer Cell 28:758-772.
【0199】
本発明の好ましい実施態様のいくつかを上に記載し、具体的に例示したが、本発明がそのような実施態様に限定されることを意図するものではない。以下の特許請求の範囲に記載のとおり、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、様々な修正がなされ得る。
図1
図2
図3A-3B】
図4
図5A-5D】
図5E-5H】
図6A-6D】
図6E-6F】
図7A-7D】
図8A-8B】
図9
図10
図11A
図11B
図11C-11D】
図11E-11J】
図11K-11L】
図12
【配列表】
2023052057000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者におけるリンパ異常を診断することを補助するための方法であって、
a)患者から得た生物学的試料においてEPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数における一塩基変異(SNV)を検出することを含み、
EPHB4におけるSNVは、EPHB4遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
PIK3R4におけるSNVは、c.3481A>G:p.S1161Gを含み、
PIK3R6におけるSNVは、PIK3R6遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
mTORにおけるSNVは、c.6818A>G:p.P2273Lを含み、
ARAFにおけるSNVは、ARAFにおける保存されたリン酸化部位の変異を含み、
前記SNV存在は、リンパ異常を示す、方法。
【請求項2】
mTOR阻害剤、PIK3K阻害剤、MEK/ERK阻害剤、及び前記いずれの阻害剤の1つ又は複数の組み合わせからなる群より選択される剤を含む、ヒト患者におけるリンパ異常の治療における使用のための組成物であって、
前記患者は、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数において一塩基変異(SNV)を有し、
EPHB4におけるSNVは、EPHB4遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
PIK3R4におけるSNVは、c.3481A>G:p.S1161Gを含み、
PIK3R6におけるSNVは、PIK3R6遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
mTORにおけるSNVは、c.6818A>G:p.P2273Lを含み、
ARAFにおけるSNVは、ARAFにおける保存されたリン酸化部位の変異を含む、
組成物
【請求項3】
リンパ異常が、リンパ管の異常な形成及び/又は組織の異常増殖によって特徴付けられる、請求項に記載の組成物
【請求項4】
リンパ異常がリンパ管腫症(LAM)である、請求項2又は3に記載の組成物
【請求項5】
リンパ異常がリンパ管腫症(GLA)である、請求項2又は3に記載の組成物
【請求項6】
リンパ異常が、心膜滲出液、胸膜滲出液又は腹膜滲出液を含む乳び性滲出液によって特徴付けられる、請求項2から5のいずれか1項に記載の組成物
【請求項7】
記1つ又は複数の阻害剤が、エベロリムス、AZD8055、テムシロリムス、KU-0063794、MHY1485、BEZ235、PI-103、トルキニブ、タクロリムス、セルメチニブ、PD0325901、トラメチニブ(GSK1120212)、ピマセルチブ(AS-703026)、AZD8330、ビニメチニブ(MEK162、ARRY-162、ARRY-438162)、SL-327、レファメチニブ(RDEA119、BAY 86-9766)、コビメチニブ(GDC-0973、RG7420)、リダフォロリムス、INK 128、ボクスタリシブ、トリン1、オミパリシブ、OSI-027、PF-04691502、アピトリシブ、GSK1059615、ゲダトリシブ、WYE-354、AZD2014、トリン2、WYE-125132、PP121、WYE-687、CH5132799、WAY-600、ETP-46464、GDC-0349、XL388、ゾタロリムス、BGT226、パロミド529、クリソファン酸、TAK-733及びPD184352(CI-1040)からなる群より選択される、請求項からのいずれか一項に記載の組成物
【請求項8】
生物学的試料は、DNA及び/又はRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記いずれの阻害剤の1つ又は複数の組み合わせが、
a)リダフォロリムスとトラメチニブ;
b)リダフォロリムスとセルメチニブ又はコビメチニブ;
c)BEZ235とセルメチニブ;
d)オミパリシブとセルメチニブ又はトラメチニブ;
e)エベロリムスとトラメチニブ又はセルメチニブ;
f)シロリムスとリダフォロリムスとセルメチニブ;
g)シロリムスとリダフォロリムスとトラメチニブ;
h)トルキニブとトラメチニブ;
i)BEZ235とトルキニブとトラメチニブ;及び
j)シロリムスとゲダトリシブとトラメチニブ
からなる群より選択される、請求項2~7のいずれか一項に記載の組成物
【請求項10】
ヒト患者におけるリンパ異常の診断のためのキットであって、
前記患者からの生物学的試料において、EPHB4、PIK3R4、PIK3R6、mTOR、及びARAFのうちの1つ又は複数における一塩基変異(SNV)を検出するための核酸を含み、
EPHB4におけるSNVは、EPHB4遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
PIK3R4におけるSNVは、c.3481A>G:p.S1161Gを含み、
PIK3R6におけるSNVは、PIK3R6遺伝子内のスプライス部位変異を含み、
mTORにおけるSNVは、c.6818A>G:p.P2273Lを含み、
ARAFにおけるSNVは、ARAFにおける保存されたリン酸化部位の変異を含み、
前記SNVの存在は、リンパ異常を示す、
キット
【外国語明細書】