(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052058
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】標的組織切除のための侵襲性を最小限に抑えた方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3205 20060101AFI20230404BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61B10/02 110K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206630
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019542522の分割
【原出願日】2018-02-02
(31)【優先権主張番号】62/463,312
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/453,672
(32)【優先日】2017-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519280896
【氏名又は名称】プレシジョン ソラシック, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ボイル, エドワード, エム., ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ベレス, ケネス, アラン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシェル, リチャード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】侵襲性を最小限に抑えた組織の摘除を促進し、患者の体壁を麻酔する直接的なアプローチを促進する方法および装置を提供する。また、胸郭内の外科的介入に対するアクセスを提供するために体壁に開口部を導入するプル型切断デバイスが開示され、例えば、患者の肺内部からの結節を含む、患者内部からの標的組織の切除のための侵襲性を最小限に抑えた生検術も記載される。
【解決手段】標的組織を切除する方法であって、患者内部の標的組織に近接して位置する捕捉ワイヤの近位端部から該捕捉ワイヤに張力を加えることと、該捕捉ワイヤに張力を加えることによって印加された反力に逆らって該捕捉ワイヤに沿って切除デバイスを前進させて、該標的組織を切除することとを含む、方法。
【選択図】
図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組織を切除する方法であって、患者内部の標的組織に近接して位置する捕捉ワイヤの近位端部から該捕捉ワイヤに張力を加えることと、該捕捉ワイヤに張力を加えることによって印加された反力に逆らって該捕捉ワイヤに沿って切除デバイスを前進させて、該標的組織を切除することとを含む、方法。
【請求項2】
前記捕捉ワイヤの近位端に接続された組織アンカーを前記標的組織に対して係合させることによって、前記捕捉ワイヤに張力を加えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の体壁と前記標的組織との間の組織路を、その間に伸長する拡張カテーテルの膨脹によって拡張させることを更に含み、前記切除デバイスが前記拡張させた組織路を通して挿入されて前記標的組織を切除する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記切除デバイスの挿入に先立って、前記膨脹させた拡張カテーテル上に固定径スリーブを挿入して、前記組織路に沿って固定径通路を提供することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記切除デバイスが、外周切断エッジで終端する中空スリーブを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反力に逆らって前記標的組織へと前記切除デバイスを回転させながら前進させることにより、前記切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製することと、前記標的組織が前記スリーブ内に位置するまで、前記中空スリーブを、前記切開部を通して前記標的組織上を前進させることとを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉ワイヤと前記切除デバイスの両方を、前記患者内の組織路を通して同時に引き抜くことにより、前記標的組織を切除することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の体壁と前記標的組織との間の組織路を、その間に伸長する拡張カテーテルの膨脹によって拡張させることを更に含み、前記切除デバイスを前記拡張させた組織路を通して挿入して前記標的組織を切除する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記切除デバイスの挿入に先立って、前記膨脹させた拡張カテーテル上に固定径スリーブを挿入して、前記組織路に沿って固定径通路を設けることを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切除デバイスが、外周切断エッジで終端する中空スリーブを備え、前記方法が、前記反力に逆らって前記標的組織へと前記切除デバイスを回転させながら前進させることにより、前記切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製することと、前記標的組織が前記スリーブ内に位置するまで、前記中空スリーブを、前記切開部を通して前記標的組織上を前進させることとを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記捕捉ワイヤと前記切除デバイスの両方を、前記組織路を通して同時に引き抜くことにより、前記標的組織を切除することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者の肺内の結節を切除する方法であって、前記結節から捕捉ワイヤを固定させることと、前記結節と体壁の開口部との間に伸長する組織路を通る前記捕捉ワイヤに張力を加えることと、前記肺の周辺の胸膜を通って前記結節まで肺へと伸長する前記経路内での拡張カテーテルの膨脹を介して前記組織路を拡張させることと、前記捕捉ワイヤに張力を加えることによって印加された反力に逆らって前記捕捉ワイヤに沿って切除デバイスを前進させて、前記結節を切除することとを含む、方法。
【請求項13】
前記拡張カテーテルを、前記捕捉ワイヤ上で該捕捉ワイヤに沿って前記組織路に挿入し、前記捕捉ワイヤに張力を加えることによって供給された反力に逆らって前記結節へと前進させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記切除デバイスが、外周切断エッジを有し、前記結節が前記切除デバイス内に配置されるまで前記切除デバイスを前進させ、その後、前記切除デバイスを引き抜く中空スリーブを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉ワイヤおよび前記切除デバイスを前記体壁の開口部から出るまで同時に引き抜くことを更に含み、前記捕捉ワイヤが、前記体壁の開口部の反対側の前記結節に対して係合された組織アンカーを介して前記結節から固定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組織路を拡張させた後に前記膨張させた拡張カテーテル上に固定径スリーブを挿入して前記組織路に沿って固定径通路を提供することと、その後、前記組織路から膨脹カテーテルを収縮させて引き抜くことと、その後、外周切断エッジを有する中空スリーブを備える切除デバイスを前記結節まで前記組織路に挿入することと、前記結節が前記切除デバイス内に配置されるまで前記切除デバイスを前進させることとを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記膨張した拡張カテーテル上に前記切除デバイスを挿入し、前記反力に逆らって前記結節へと前記切除デバイスを前進させることと、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記結節の周辺の組織において切開部を作製することと、前記結節が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切除デバイスを、前記切開部を通して前記結節上を前進させることと、を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記結節が前記患者の体外に到達するまで、前記組織アンカー、前記切除デバイスおよび前記拡張カテーテルをタンデムに引き抜くことを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記膨張させた拡張カテーテルの中心にあるチャネルを通して前記切除デバイスを挿入して、前記反力に逆らって前記結節へと前記切除デバイスを前進させることと、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記結節の周辺の組織において切開部を作製し、前記結節が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切除デバイスを、前記切開部を通して前記結節上を前進させることとを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項20】
前記膨張させた拡張カテーテル上に前記切除デバイスを挿入し、前記反力に逆らって前記結節へと前記切除デバイスを前進させることと、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記結節の周辺の組織において切開部を作製することと、前記結節が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切除デバイスを、前記切開部を通して前記結節上を前進させることとを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記結節が前記患者の体外に到達するまで、前記組織アンカー、前記切除デバイスおよび前記拡張カテーテルをタンデムに引き抜くことを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記膨張させた拡張カテーテルの中心にあるチャネルを通って前記切除デバイスを挿入し、前記反力に逆らって前記結節へと前記切除デバイスを前進させることと、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記結節の周辺の組織において切開部を作製することと、前記結節が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切除デバイスを、前記切開部を通して前記結節上を前進させることとを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
ガイドワイヤを、該ガイドワイヤの近位端部が結節に近接してまたは該結節を越えて位置するまで、前記結節へと前進させることを含み、前記ガイドワイヤが、前記結節を切除する手技を通して所定の場所に留まり、前記ガイドワイヤの上のまたは該ガイドワイヤに沿った組織路を通して前記結節まで前記患者の外部からの器具の挿入を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
標的組織を切除する方法であって、経路を通って患者から標的組織を切除することと、前記標的組織が切除された付近まで前記経路を通って封止デバイスを前進させることと、前記封止デバイスを作動させながら引き抜いて前記経路を封止することとを含む、方法。
【請求項25】
標的組織を切除する方法であって、
その外周壁に一連の開口部を有する管状部材を、経路を通って患者内の標的組織へと前進させることと、
なお、前記管状部材が真空源と連通している;
前記管状部材に吸引を行って前記一連の開口部を通して吸引することにより、前記経路に沿った前記管状部材の周辺の組織に対して真空に引くことと、
前記患者の外部の場所から前記管状部材を通して前記標的組織に対して手術を行うことと、
を含む、方法。
【請求項26】
標的組織を切除するように構成される装置であって、前記装置が、患者内の標的組織からその近位端部より張力調整可能な捕捉ワイヤと、使用の際に、前記捕捉ワイヤに張力を加えることによって印加される反力に逆らって前記捕捉ワイヤに沿って前進させて、前記標的組織を切除することができるように構成される切除デバイスとを備える、標的組織を切除するように構成される装置。
【請求項27】
前記装置が、前記捕捉ワイヤの前記近位端部に接続された組織アンカーを備え、前記捕捉ワイヤが前記標的組織に対して前記組織アンカーを係合することによって張力調整可能である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記装置が、前記患者の胸壁と前記標的組織との間の組織路を拡張するため膨脹可能なように構成された拡張カテーテルを備え、前記切除デバイスが、前記標的組織を切除するために前記膨脹させた組織路を通して挿入可能なように構成される、請求項26または27に記載の装置。
【請求項29】
前記装置が、前記切除デバイスの挿入に先立って、前記組織路に沿った固定径通路を提供するため、前記膨張させた拡張カテーテル上に挿入可能であるように構成された固定径スリーブを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記切除デバイスが、外周切断エッジで終端する中空スリーブを備える、請求項26~29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記切除デバイスが、使用に際して、前記反力に逆らって前記標的組織へと前記捕捉ワイヤに沿って該切除デバイスを回転させながら前進させることにより、前記切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製し、前記標的組織が前記スリーブ内に位置するまで、前記切開部を通して前記標的組織上に前記中空スリーブを前進させることができるように構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記装置が、前記捕捉ワイヤと前記切除デバイスの両方が前記患者内の組織路を通して同時に引き抜かれて前記標的組織を切除することができるように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記拡張カテーテルが、使用の際に、前記捕捉ワイヤ上で該捕捉ワイヤに沿って前記組織路に挿入されて、前記捕捉ワイヤに張力を加えることによって供給される反力に逆らって前記標的組織へと前進され得るように構成される、請求項28または請求項28に従属する任意の請求項に記載の装置。
【請求項34】
前記拡張カテーテルが、使用の際に、収縮して前記組織路から引き抜かれ、前記組織路に沿って前記固定径通路を後に残すことができるように構成される、請求項28または請求項28に従属する任意の請求項に記載の装置。
【請求項35】
前記切除デバイスが、使用に際し、前記切除デバイスが前記反力に逆らって前記標的組織へと前進され、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製し、前記標的組織が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切開部を通して前記標的組織上を前進することができるように、前記膨張させた拡張カテーテル上に挿入可能であるように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項36】
前記膨張させた拡張カテーテルが、該膨張させた拡張カテーテルの中心にチャネルを備え、該チャネルを通って前記切除デバイスは挿入可能であり、該チャネルを通って前記切除デバイスは前記反力に逆らって前記標的組織へと前進し、前記切除デバイスの切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製し、前記標的組織が前記切除デバイス内に位置するまで、前記切開部を通って前記標的組織上を前進することができる、請求項28に記載の装置。
【請求項37】
前記標的組織が、前記患者の肺内の結節を含む、請求項26~36のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2017年2月2日付で出願された米国仮出願第62/453,672号、および2017年2月24日付で出願された同第62/463,312号の利益を主張し、それらの米国仮出願はいずれも全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
技術分野
本発明は、手術の用具および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
米国肺協会によれば、毎年344000人を超えるアメリカ人が肺疾患で亡くなり、肺疾患は、この国で3番目に多い死因となっている。より一層驚異的な統計値は、更に3500万人のアメリカ人が慢性で体を衰弱させる肺疾患を抱えながら生活しているということである。肺疾患を有するまたは肺疾患のリスクがある患者が、様々な形式の胸部画像撮影を受けることは珍しくない。これは先に例を見ないほど多くの患者に、癌の疑いがある結節異常または様々な形態の間質性肺疾患(ILD)が疑われる間質の異常があると肺専門医に提示されることにつながっている。患者にこれらの異常があることがわかると、診断、予後診断を確定させるため、また更なる治療を導くため、しばしば組織生検を行う必要がある。
【0004】
肺疾患に寄与する因子の1つは、喫煙である。疾病管理センターによれば、米国では過去および現在で9400万人の喫煙者がいる。半数が45歳(肺癌発生率が増加する年齢)を超えている。多くの喫煙者が肺癌になるリスクについて関心を持っており、CTによる肺癌スクリーニングプログラムが成功しつつあることを説明する。これらのプログラムに関連する問題は、スクリーニングされた患者の約30%が癌を示唆する結節を有する疑いがあるが、最終的に癌であると証明されるのはごくわずかな割合であることである。CTによる肺癌早期発見プログラムが初期段階の肺癌の検出において有益であることを示唆する相当な証拠が存在するものの、最も大きな臨床上充足されていないニーズの領域は、良性および悪性の結節を識別する能力にある。CTガイド下生検、気管支鏡検査、胸腔鏡検査または開胸術等の現在利用可能な肺生検術は、感度が低すぎるかまたは侵襲性が高すぎるかのいずれかであり、それらの有用性を制限して、最善の状態で判断することを困難にしている。したがって、肺癌スクリーニングプログラムの成功を妨げている最も重大な制限要因の1つは、侵襲性を最小限に抑えて肺組織を採取するための安全で有効な方法がないことであった。
【0005】
同様のジレンマは、間質性肺疾患の診断についても存在する。ILDまたは癌を示唆する疑わしい画像パターンが存在する多くの場合、病理学者は異常の正確な原因を確定させることができるように、組織を採取することが望ましい。組織採取の問題は、現在の肺生検術が侵襲性で、痛みを伴い、多くが全身麻酔を必要とし、これは肺機能が損なわれた患者では必ずしも忍容性が良好であるとは限らないことである。多くの患者は、患者の医学的障害および肺機能不全の程度によって「外科的治療の対象とならない(not a surgical candidate)」と判断される。開胸術(胸筋を通る肋骨間の大きな切開)および胸腔鏡検査(肺周辺の空間で手術を行うための肋骨を通るスコープおよび他の作業ポートの使用)は、いずれも非常に生活支障度が高く、痛みを伴う場合がある。実際、これらの形式の手術は、一般的には、胸壁の筋肉、肋骨および肋骨間の肋間神経に手を加えるため、心臓手術および腹部手術等の他の形式の手術よりも一層痛みを伴い、生活支障度が高い。現在、開胸術および胸腔鏡検査は、しばしば長期入院および更に長期の回復時間を必要とする。いずれの処置も、驚くほど高い割合の患者において慢性疼痛症候群に結びつく可能性がある。
【0006】
肺結節510に対して生検を実施する決定がなされる場合、
図1に示されるように、幾つかの選択肢がある。1つの選択肢は、気管支鏡のアプローチを使用することである。しかしながら、これは、より大きく、より中心性の腫瘍に最も有用である。一般的には、ほとんどの肺結節510が肺502の周囲501にあり、気道503とは繋がっていないことから、中心性アプローチは、より一般的な小さな結節に対しては有用な選択肢ではない。別の選択肢は、肺502のCTガイド下針生検522を使用することである。このアプローチは、より大きく、より末梢の腫瘍に有用となり得るが、肺502においてより深部のより小さな結節510には特に有用ではない。さらに、組織の小さなコアサンプリングのみが行われ得るため、偽陰性生検がよく起こる。さらに、肺502を封止する機構がないため、出血性合併症および気胸は頻繁に見られる懸念事項であり、患者の20%近くに起こる。
【0007】
肺結節の生検を行うための胸部外科的アプローチを、開胸術および胸腔鏡検査の2つのカテゴリーに分類することができる。開胸術530は、胸壁の皮膚304上の300mm~450mm(12インチ~18インチ)の切開532の後に続く、大きな背筋を邪魔にならないようにどけるための分離または剥離、肋骨42の部分的な摘除、および執刀者に対して胸郭内のアクセスを提供するための開胸器534の配置である。開胸術の利点は、外科医が胸郭内の構造物にうまくアクセスし、肺502および他の構造物を直接見て、手で触ることができるということである。小さな肺結節510を標的とする場合、これは特に重要である。主な不利益は、切開の規模と関係する疼痛の程度および合併症の可能性である。開胸術は、急性および慢性の疼痛が重大な問題である、患者にとって非常に痛みを伴う手術であることがよく知られている。侵襲性の程度により、重大な肺疾患を有するほとんどの患者は開胸術に耐えることができず、著しい罹患率および死亡率を伴わずに回復することができないことから、開胸術は外科的治療に最も適した対象者に対してのみ確保される。これらの理由から、当該技術分野において胸部手術の侵襲性を減少させるニーズが存在することが認識される。
【0008】
長年存在してきた1つのアプローチは、胸部内において可視化を促進するための内視鏡542を利用して、開胸術の大きな切開の必要性を排除することである。胸腔鏡検査540は、胸部造瘻術によってまたは肋骨42の間に配置された小さな孔を通して導入される専用の観察器具、通常は硬性内視鏡542の使用である。一旦内視鏡542が、胸膜腔として知られる肺502を取り囲む空間に入れられると、通常、2つ~3つの追加の胸部造瘻孔が追加の器具544を導入するために作られる。追加の器具544は、把持器、切断器、および胸腔鏡下肺生検の場合にはEthicon Endosurgery Endo GIA 45mmステープラー等の自動吻合器(cutting stapler)を備える。内視鏡542および他の器具544を使用して、例えば、内視鏡542は、把持器が一方向から挿入され、ステープラーが別の方向から挿入され、組織がステープラーを用いて切断されて、ポートの1つを通して摘除されるのを観察するために使用される場合に、「三角測量」術が利用される。
【0009】
このアプローチの主な不利益の1つは、生検を実施するため、上記の数およびサイズのポートを三角形にする必要があることである。このアプローチが、腹腔鏡下胆嚢摘出術等の腹部で行われる大半の腹腔鏡下手術においてありふれたことであるのに対し、このアプローチを望ましくないものにする胸腔内手術に特有の特徴がある。第1に、胸腔鏡下肺生検を行うため、たいていは全身麻酔を利用することが必要である。さらに、人工換気が反対側の肺に送達されて生検が行われている肺の側へと排除され得るように、大概は特別に配置されるより複雑な二腔気管チューブを利用する必要がある。一側肺換気として知られるこの技術は、現在のほぼ全ての胸腔鏡下手術に必要である。しかしながら、末期肺疾患を有する患者の多くは、全身麻酔に耐えることができず、全身麻酔に耐えることが可能であったとしても、それらの患者の予備呼吸量(respiratory reserve:予備呼気量)は非常に制限されることから、多くが一側肺換気に耐えることができない可能性がある。
【0010】
さらに、肋間腔は、肋骨の間には固定されて制限された空間があり、肋間神経が肋間腔の各肋骨の真下を走ることから、圧力に特に敏感である。胸部造瘻術が行なわれるたびに、疼痛はより激しくなり、長引く可能性がある。これは、当今の胸腔鏡検査に一般的に使用される10mmおよび12mmのポート等のより大きな胸部造瘻術ポートサイズを伴う場合に特にあてはまる。いくつかの研究は、3分の1もの患者が胸腔鏡検査の後、最長1年間、胸壁に慢性疼痛を有すると推定し、これは複数の大きなポートが肋骨間の胸膜腔へと導入される場合に生じる肋間神経刺激に起因すると考えられている。非常に限定的な手技に関する文献において単一ポートの手技が報告されているが、それらの手技は、一般的には単一のポートに複数の器具を通すために30mm以上の非常に大きな切開を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
気管支鏡、開胸肺生検および胸腔鏡検査の欠点のため、紹介する医師が、利用可能な技術の精度と相まって侵襲性の程度について不安を抱くことから、患者の大部分は肺生検について単に紹介されていないだけである。肺疾患における画像診断の進歩および組織診断の価値の認識の改善を考慮すれば、正確で、侵襲性を最小限に抑えたやり方で肺を生検する新たな技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
同様の参照符号は、通常、図中の対応する要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】肺結節を生検する様々な従来技術の方法を示す図である。
【
図2A】本発明の実施形態による、拡張された配置のプル型切断デバイスの垂直断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態による、収縮された配置のプル型切断デバイスの垂直断面図である。
【
図3A】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが胸膜腔等の体腔がアクセスされ、マイクロポートが作られる。
【
図3B】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが胸膜腔等の体腔がアクセスされ、マイクロポートが作られる。
【
図3C】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが胸膜腔等の体腔がアクセスされ、マイクロポートが作られる。
【
図3D】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが胸膜腔等の体腔がアクセスされ、マイクロポートが作られる。
【
図3E】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが胸膜腔等の体腔がアクセスされ、マイクロポートが作られる。
【
図4】本発明の実施形態による、軸遠位端部および軸近位端部を有する軸と、そこを通り抜けて伸長するガイドワイヤ管腔と、そこを通り抜けて伸長する流体管腔とを備える、麻酔送達カテーテルの側面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による、治療ヘッドがマイクロニードルの形態の送達要素を備える、麻酔送達カテーテルの側面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による、麻酔送達カテーテルが係合されて、送達要素が肋間腔の組織へと流体を送達している、側面図である。
【
図7A】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、本発明の別の実施形態によれば、限定されないが、胸膜腔等の体腔がアクセスされ、肋間腔に局所麻酔が供給される。
【
図7B】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、本発明の別の実施形態によれば、限定されないが、胸膜腔等の体腔がアクセスされ、肋間腔に局所麻酔が供給される。
【
図7C】本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、本発明の別の実施形態によれば、限定されないが、胸膜腔等の体腔がアクセスされ、肋間腔に局所麻酔が供給される。
【
図8A】本発明の実施形態による、軸遠位端部および軸近位端部を有する軸を備え、展開される前の状態の麻酔送達カテーテルの側面図である。
【
図8B】本発明の実施形態による、軸遠位端部および軸近位端部を有する軸を備え、展開された状態の麻酔送達カテーテルの側面図である。
【
図8C】本発明の実施形態による、麻酔送達カテーテルの側面図である。
【
図9A】本発明の実施形態による、送達要素の垂直断面図である。
【
図9B】本発明の実施形態による、送達要素の垂直断面図である。
【
図10】本発明の実施形態による、送達要素の垂直断面図である。
【
図11】本発明の実施形態による、送達要素の垂直断面図である。
【
図12A】本発明の実施形態による、肺組織等の生検試料を集めるための生検用具の垂直断面図である。
【
図12B】本発明の実施形態による、肺組織等の生検試料を集めるための生検用具の垂直断面図である。
【
図12C】本発明の実施形態による、肺組織等の生検試料を集めるための生検用具の垂直断面図である。
【
図13A】本発明による、生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図13B】本発明による、生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図13C】本発明による、生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図14A】本発明の実施形態による、中空針と、収縮された状態の展開可能かつ収縮可能なスネアとを備える生検用具の垂直断面図である。
【
図14B】本発明の実施形態による、中空針と、展開された状態の展開可能かつ収縮可能なスネアとを備える生検用具の垂直断面図である。
【
図15A】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図15B】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図15C】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図15D】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図15E】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図15F】本発明の実施形態による、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図16A】本発明の実施形態による、組織中でスネア軸に沿って前進および経路を切断するのに適した針の垂直断面図である。
【
図16B】本発明の実施形態による、組織中でスネア軸に沿って前進および経路を切断するのに適した針の正面図である。
【
図17A】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17B】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17C】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17D】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17E】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17F】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図17G】本発明の実施形態による、プル型切断デバイスと組み合わせて生検用具を使用する、肺組織の生検材料を得る方法を説明する図である。
【
図18A】本発明の実施形態による、展開または拡張された配置のプル型切断デバイスの垂直断面図である。
【
図18B】本発明の実施形態による、展開または拡張された配置のプル型切断デバイスの端面図である。
【
図18C】本発明の実施形態による、展開または拡張された配置のプル型切断デバイス、およびスネアの垂直断面図である。
【
図18D】本発明の実施形態による、展開または拡張された配置のプル型切断デバイス、およびスネアの垂直断面図である。
【
図19】本発明の実施形態により作製された体組織における経路の横断面図である。
【
図20】本発明の実施形態による、標的組織が引き出された後に経路に残されたガイドワイヤ上を前進させた体腔チューブの横断面図である。
【
図21A】本発明の実施形態による封止デバイスの垂直断面図である。
【
図21B】本発明の実施形態による封止デバイスの垂直断面図である。
【
図22A】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図22B】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図22C】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図22D】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図22E】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図22F】本発明の実施形態による、上に提供される生検用具の実施形態を使用して、体腔に近接する標的組織の生検材料を得る方法、および標的組織またはその一部が切除された後に体腔を封止する方法を説明する図である。
【
図23A】本発明の実施形態による、完成前の配置の、体腔において穴の封止に適合された封止デバイスの垂直断面図である。
【
図23B】本発明の実施形態による、完成した配置の、体腔において穴の封止に対して適合された封止デバイスの垂直断面図である。
【
図24】本発明の実施形態による、真空源と連通している作業ポートを説明する図である。
【
図25】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図26】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図27】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図28】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図29】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図30】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図31】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図32】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図33】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図34】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図35】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図36】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図37】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図38】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図39】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【
図40】本発明による、患者から肺組織の切除物を得る方法を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これより、図面に示されている実施形態を参照し、具体的な用語を使用してそれらの実施形態を説明する。しかしながら、それによって本発明の範囲が限定されるものではなく、本発明が関連する技術分野の当業者であれば通常思いつくように、例示されるデバイスの変更および更なる修正、そこで例示される本発明の原理のかかる更なる応用が企図されていることが理解されよう。
【0015】
本発明の実施形態によれば、侵襲性を最小限に抑えた組織生検材料の摘除を促進する方法および装置が提供される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、胸壁を麻酔するための直接アプローチを促進する方法および装置が提供される。
【0017】
胸壁にチャネルを通して器具を導入するためのマイクロポートチャネルを作る方法および装置が提供される。
【0018】
本発明の実施形態によれば、肺組織を留めて、切除する方法、デバイスおよび装置が提供される。
【0019】
本発明の実施形態によれば、肺組織内のアクセス路を拡張する方法、デバイスおよび装置が提供される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、手技の間の出血および空気漏れを最小限にするように、肺組織内の拡張された経路を引き込む(suck down)ため吸引/真空を利用する方法、デバイスおよび装置が提供される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、手技の間の出血および空気漏れを最小限にするように、肺組織内の拡張された組織経路を引き込むまたは吸い込むため吸引/真空を利用する方法、デバイスおよび装置が提供される。
【0022】
標的組織を切り取るおよび切除するのに用いられる方法、デバイスおよび装置が提供される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、肺生検材料から空気漏れが存在するかどうかを判断する方法および装置が提供される。
【0024】
本発明の実施形態によれば、肺経路(lung tract)を排水し、封止する方法および装置が提供される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、体腔の欠損、または気管支若しくは腸の内部管腔の欠損を封止するまたは塞ぐ方法および装置が提供される。
【0026】
侵襲性を最小限に抑えた肺生検を行うことにおける課題の1つは、胸壁に小さな孔またはポートを作る方法である。従来の胸腔鏡検査において、胸壁を越えて胸膜腔に胸部造瘻術ポートを配置することが望ましい場合、または肺周辺の胸膜腔から流体を排水するために胸腔チューブを入れる場合、胸腔チューブを入れる前に、胸壁に付着しているどの肺も剥離させて自由になり得るように、一般的には、手術者が、肋間腔(隣接する肋骨の間の空間)を通して胸膜腔へと用指剥離を行う(finger dissect)ことができるように十分大きな切開部を作ることが教示される。用指剥離が通常少なくとも12mm~15mmのポートを必要とすることから、3mm~5mmのポートを配置したい場合には、これは十分ではない。したがって、手術者の指よりはるかに小さい、サイズの小さなポートを作るため、現在、手術者は切開部を作って鋭利機器で剥離させ(dissect down)、下にある組織または構造物を触らずに盲目的に胸壁を押し通さなければならない。肺自体、胸部にある大きな血管、横隔膜および肝臓、並びに心臓等の下にある極めて重要な構造物を危険にさらす可能性があるため、これは、上記手技に対して相当なリスクを課す。したがって、一般的には、下にある構造物が入って来る鋭利な器具の近くにないことを確認するのに、手でそれらの構造物を触らず、また剥離させることなく、胸部へと器具を前進させるべきではないと教示される。
【0027】
本発明の実施形態によれば、体組織を通る所定のサイズの測定されたマイクロポートを作る装置および方法が提供される。該装置は、例えば、その空間の下にある構造物を危険にさらすことなく、限定されないが10mm(0.4インチ)未満の1つ以上の小さな切開部を通る体腔へのアクセスを提供する。上記装置は、重大な内部構造物から離れて、手術者の方に向いた組織切断を提供する。上記装置は、引っ張った際に切断動作を生み出すため、プル型切断デバイスと称される場合がある。
【0028】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、展開または拡張された配置、および展開されておらず収縮された配置のプル型切断デバイス1の垂直断面図である。上記プル型切断デバイス1は、軸遠位端部22および軸近位端部21と、そこを通って伸長する軸管腔23とを有する細長い軸20を備える。プル型切断デバイス1は、2つの同軸の入れ子チューブ、すなわち第1のチューブ61および第2のチューブ63を備え、第1のチューブ61および第2のチューブ63は、それぞれ、近位端部21から遠位端部22へと伸長する。第1のチューブ61は、そこを通って伸長するガイドワイヤ管腔23を画定し、その中にガイドワイヤを摺動自在に収納するように構成される。第2のチューブ63は第1のチューブ61の上に伸長し、軸遠位端部22で第1のチューブに連結される。第2のチューブ63は、軸遠位端部22に近接する伸縮性部分13を画定する。第2のチューブ63は、軸近位端部21から伸縮性部分13へと伸長する膨脹管腔25を画定する。膨脹管腔25は、収縮または展開される前の位置よりも大きな直径へと伸縮性部分13を膨張させて展開させるため、軸近位端部21から伸縮性部分13へと膨脹流体を連通させるように構成される。軸遠位端部22に近接して配置されるのは切断ヘッド10である。切断ヘッド10は、軸遠位端部22から遠位に切断部分11を有する伸縮性部分13を備える。
【0029】
或る実施形態では、プル型切断デバイス1は、オーバーザワイヤバルーンカテーテルを備え、伸縮性部分13はバルーンであり、軸管腔23はガイドワイヤの上を通るように構成される。オーバーザワイヤバルーンカテーテルは、心血管の技術分野で知られている。切断部分11は、引っ張られて体腔の内壁と接触するように構成される。切断部分11から伸長しているのは、複数の切断要素12である。切断要素12の例としては、限定されないが、刃、高周波、レーザーおよび電気焼灼切断要素が挙げられ、それらは、組織に逆らって引っ張られた場合に切開部を作るように構成されている。引っ張りおよび切断の動作が手術者の方に向かっているため、これは、体腔の開口部が作られる際に、内臓または他の構造物が損傷され得るというリスクを減少させることから、改善された安全性プロファイルをもたらす。
【0030】
或る実施形態では、本発明の実施形態によれば、デバイス1は、ミクロソラトーム(microthoratome)と称され、胸壁を通る測定されたマイクロポートを作るように構成され、胸腔に近接するまたは胸腔へと入る。
【0031】
他の実施形態は、限定されないが、腹腔鏡検査のための腹膜腔、膿瘍空洞、尿生殖路、気管切開術に対する気道、および血管等にアクセスするための胸腔の外側の手技に関すると予想される。
【0032】
図3A~
図3Eは、本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが、胸膜腔等の体腔47がアクセスされ、マイクロポート48が作られる。既知のオーバーザワイヤーセルディンガー法(over-the-wire Seldinger technique)を利用して、針30を2つの肋骨42間の胸壁外表面41から、所定の距離および位置で体腔47へと前進させる。ガイドワイヤ32は針30を通して、体腔47(胸膜腔等)へと渡される。針30を前進させてガイドワイヤ32から取り除く。収縮させたプル型切断デバイス1を、ガイドワイヤ32上の管腔23を通すことにより、ガイドワイヤ32上を前進させる。切断ヘッド10は、切り取られる組織45を越えて配置される。切断ヘッド10は、切断部分11が切り取られる組織45に近接するように展開される。切断要素12が引っ張られて体腔47の内表面45と接触するように、プル型切断デバイス1を引っ張って、体腔47の内表面45と接触させる。手術者は胸壁外表面41の方へと切断ヘッド10を引っ張り、それによって、体腔47の胸壁外表面41の方へと肋間腔44の組織を通るマイクロポート48を切る。この方法では、切断方向が胸壁内表面45ではなく、体腔47の胸壁外表面41の方に向いている場合にマイクロポート48が作られる。これは、マイクロポートが作られる際に内臓または他の構造物が損傷され得るリスクを減少させることから、改善された安全性プロファイルをもたらす。
【0033】
胸部外科で満たされていないニーズの最も大きな領域の1つは、疼痛管理に関するものである。本発明の実施形態は、マイクロポートを設置する前に局所麻酔を用いて患者に非常に正確に麻酔をかけるように構成される。全身麻酔下で患者に対して通常行われる従来の開胸術および胸腔鏡検査とは異なり、本発明の実施形態は、リスクを最小化し、より迅速な回復を促進させるためのマイクロポートの形成、および覚醒患者に対するその後の処置を可能とする。
【0034】
本発明の実施形態によれば、麻酔剤等の診断目的または治療目的の流体または物質の浸透に対する、肋間腔への安全で正確なアクセスのための装置および方法が提供される。
【0035】
本発明の実施形態によれば、
図4は、軸遠位端部22および軸近位端部21を有する軸20と、該軸20を通って伸長するガイドワイヤ管腔23と、該軸20を通って伸長する流体管腔25とを備える、麻酔送達カテーテル2の側面図である。軸遠位端部22に隣接して配置されるのは、治療ヘッド50である。治療ヘッド50はバルーンの形態の伸縮性部分53を備える。伸縮性部分53は治療部分51を備える。伸縮性部分53は流体管腔25と流体連通しており、軸近位端部21で流体管腔25へと導入される流体で満たされるように構成される。治療部分51は、
図6に示されるように、伸縮性部分53が展開されると、治療部分51から伸長して肋間腔44の胸膜表面45と接触するように構成されている、限定されないが、中空タインおよびマイクロ誘導針等の複数の送達要素52を備える。
図6は、麻酔送達カテーテル2の側面図であり、麻酔送達カテーテル2は係合されて、送達要素52が肋間腔44の組織に流体を送達している。
【0036】
送達要素52は、流体管腔25と流体連通している開口54を備える。開口54は、流体を、「内側から外側に(from the inside out)」流体管腔25から肋間腔44の組織45へと直接連通させるように構成される。組織45への注入が可能な流体としては、限定されないが、短期または長期作用型の局所麻酔剤、ステロイド、およびアルコールまたはフェノール等の神経破壊アブレーション剤(neurolytic ablative agent)が挙げられる。
【0037】
図4の実施形態を再び参照すると、送達要素52は、本発明の実施形態によれば、中空円錐の形態である。
図5は、麻酔送達カテーテル3の側面図であり、本発明の別の実施形態によれば、治療ヘッド50は、マイクロニードルの形態の送達要素55を備える。
【0038】
図7A~
図7Cは、本発明の方法の実施形態を示す横断面図であり、限定されないが、胸膜腔等の体腔47がアクセスされ、肋間腔44には局所麻酔が供給される。本発明の方法の実施形態では、2つの肋骨42の間で胸膜腔47へとマイクロ誘導針30を前進させる。ガイドワイヤ32を、針30を通して針30を越えた所定の場所へと前進させる。ガイドワイヤ32から針30を取り除いて、その場所にガイドワイヤ32を残す。麻酔送達カテーテル2のガイドワイヤ管腔23をガイドワイヤ32の上で前進させ、治療ヘッド50を胸膜腔47へと前進させる。次いで、限定されないが、空気、ガス、または生理食塩水、水若しくは局所麻酔剤を含む治療用物質等の液体を含む流体を、麻酔送達カテーテル2の遠位端部22に隣接する治療ヘッド50に吹き込む。次いで、麻酔送達カテーテル2は手術者の方へと引き戻され、治療部分51を引っ張って、肋間腔44の内表面45に付勢接触させる。送達要素52は、肋間腔44の組織へと流体を注入するように内表面45に突き刺さる。
【0039】
この方法は、肋間腔への治療剤の正確な送達のため、標準的な肋間神経ブロックより優れている。標準的な肋間神経ブロックでは、手術者は、どれくらい深く針を挿入するかを推測しなければならない。浅すぎると神経を外し、治療利益は達成されない。針が深すぎると治療剤が胸膜腔に注入されて、治療利益が達成されない。さらに、針を深く入れ過ぎると、肺、または心臓および大きな血管等の他の胸郭内の構造物を傷付けて、気胸に結び付く可能性がある。これは、針が肋骨の間から胸膜腔へと挿入される際には常にリスクとなるが、肋間神経ブロックで肋間神経の周りの空間を最大限に浸透させようとしてその空間に針を出し入れする際に特に懸念される。永続的な神経アブレーションを行うことを目的として神経破壊剤を注入する場合、深すぎるまたは浅すぎる針は特に問題である。肋間神経ブロックの過程での針の置き違いを最小限にするため、蛍光透視法の形式の画像誘導を使用して針の誘導を支援する。しかしながら、画像誘導を用いても、肺等のより深部の構造物を傷つけずに、治療物質が肋間神経と接触している状態となり得る場所に針を適切に入れることを確実にするのはほぼ不可能である。
【0040】
本発明の方法の別の実施形態では、膨潤麻酔を使用して、肋間組織に浸透させる。膨潤は、腫脹または膨満を意味する。膨潤麻酔は、脂肪吸引または静脈内伏在静脈アブレーション等の外来患者の診療所での手技で一般的に利用される。膨潤麻酔により、組織を薄い液体麻酔剤で浸水させ、膨らませる。膨潤麻酔に特有の特徴は、非常に低濃度の局所麻酔薬の使用を含むことである。大量の流体は、血管を圧迫して、出血を最小限にする。この技術によって達成された麻酔は優れており、持続期間が長い。このアプローチは、以前は全身麻酔または広範囲の区域麻酔を必要とする手技を、外来患者の状況で利用することを可能とする。
【0041】
胸部手技における膨潤麻酔の利用に極めて重要な構成要素は、肺が針によって傷害され得るまたは胸膜腔に注入され得るほどの深部にまで行かずに、肋間神経のまわりの適切な場所への麻酔剤の正確な浸透である。
【0042】
一側肺換気を伴う全身麻酔は、任意の開口または胸腔鏡下胸部手技に必須であると考えられる。開胸術およびビデオ補助胸腔鏡手術(VATS:Video-assisted thoracoscopy surgery)はいずれも、古典的には、手術した肺を虚脱させるため、通常、二腔気管チューブを用いる全身麻酔を使用して行われる。胸腔鏡手術は覚醒患者において行われるが、肋間腔への麻酔剤の適切な送達は、画像誘導を用いたとても非常に難しい。
【0043】
図8Aおよび
図8Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、展開する前の状態および展開した状態の、軸遠位端部22および軸近位端部21を有する軸20を備える、麻酔送達カテーテル4の側面図である。送達カテーテル4は、それぞれ近位端部21から遠位端部22まで伸長する、第1のチューブ60、第2のチューブ62および第3のチューブ64の3本の同軸の入れ子チューブを備える。第1のチューブ60は、そこを通って伸長するガイドワイヤ管腔23を画定し、その中にガイドワイヤを摺動自在に収納するように構成される。第2のチューブ62は第1のチューブ60の上に伸長し、軸遠位端部22で第1のチューブに連結される。第2のチューブ62は、軸遠位端部22に近接する伸縮性部分53を画定する。第2のチューブ62は、軸近位端部21から伸縮性部分53へと伸長する膨脹管腔61を画定する。膨脹管腔61は、収縮または展開される前の位置よりも大きな直径へと伸縮性部分53を膨張させて展開させるため、軸近位端部21から伸縮性部分53へと膨脹流体を連通させるように構成される。
【0044】
第3のチューブ64は第2のチューブ62の上に伸長し、軸遠位端部22で第2のチューブ62に連結される。第3のチューブ64は、伸縮性部分53と連設される治療部分51を画定する。第3のチューブ64は、軸近位端部21から治療部分51へと伸長する流体送達管腔63を画定する。治療部分51は、伸縮性部分53が膨脹されると治療部分51から伸長して肋間腔44の胸膜表面45と接触するように構成されている、限定されないが、中空タインおよびマイクロ誘導針等の複数の送達要素52を備える。送達要素52は、流体送達管腔63と流体連通している開口54を備える。
【0045】
図9Aおよび9Bは、本発明の実施形態による、送達要素52の垂直断面図である。送達要素52は、流体が送達要素52を出ることを可能とするように、所定の流体圧力のもとで開いて、流体送達管腔63と流体連通している開口54を形成するように構成されている伸長性弾性部材58を備える。流体が開口54を出るが入らないようにするため、流体送達要素52は一方向バルブとして作用する。
【0046】
図10は、本発明の実施形態による、送達要素52の垂直断面図である。送達要素52は、流体送達管腔63と流体連通している針管腔57を有するマイクロニードル55を備える。針管腔57と流体送達管腔63との間のバルブ56は、流体が送達要素52を出ることを可能にするように、流体送達管腔63内において所定圧力で開くように構成される。
【0047】
図11は、本発明の実施形態による、送達要素52の垂直断面図である。送達要素52は、治療部分51によって画定される開口54または細孔を備える。伸縮性部分53を膨張させると、麻酔送達カテーテル4が手術者へと引き戻される際に、開口54が肋間腔44の内表面45と付勢接触して配置される。麻酔等の治療用流体は、静水圧下で送達要素52から、そして内表面45へと治療用流体を放出するように所定圧力で流体送達管腔63へと導入される。この種の送達は、麻酔流体を肋間の組織に浸透させるために使用される、膨潤麻酔の形態をとってもよい。膨潤は、腫脹または膨満を意味する。膨潤麻酔は、脂肪吸引または静脈内伏在静脈アブレーション等の外来患者の診療所での手技で一般的に利用される。膨潤麻酔により、組織を薄い液体麻酔剤で浸水させ、膨らませる。膨潤麻酔に特有の特徴は、非常に低濃度の局所麻酔薬の使用を含むことである。大量の流体は、血管を圧迫して、出血を最小限にする。この技術によって達成された麻酔は優れており、持続期間が長い。このアプローチは、以前は全身麻酔または広範囲の区域麻酔を必要とする手技を、外来患者の状況で利用することを可能とする。
【0048】
図7A~
図7Cを再び参照すると、本発明の方法によれば、限定されないが、胸膜腔等体腔47がアクセスされて、肋間腔44に局所麻酔が供給される。2つの肋骨42の間で胸膜腔47へとマイクロ誘導針30を前進させる。針30を通して、針30を越えた所定の場所へとガイドワイヤ32を前進させる。ガイドワイヤ32から針30を取り除いて、その場所にガイドワイヤ32を残す。麻酔送達カテーテル4のガイドワイヤ管腔23をガイドワイヤ32上で前進させ、治療ヘッド50を胸膜腔47へと前進させる。伸縮性部分53を膨張させて展開させるように、所定圧力のもと膨脹管腔61へと膨脹流体を導入して伸縮性部分を膨脹させることで治療ヘッド50を膨張させる。次いで、麻酔送達カテーテル4を手術者の方へと引き戻し、治療部分51、したがって送達要素52を引っ張って、肋間腔44の内表面45と付勢接触させる。送達要素52は、肋間腔44の組織へと流体を注入するように、内部表面45を貫入する。麻酔等の治療用流体は、送達要素53から内表面45へと治療用流体を排出するように所定圧力で流体送達管腔63へと導入される。治療の完了に際して、治療用流体の導入は終了し、膨脹流体は、伸縮性部分53を収縮させて拡張前の状態に実質的に一致させるように構成された膨脹管腔61から抜去される。麻酔送達カテーテル4をガイドワイヤ32から引き出す。ガイドワイヤ32をその場所に残す。
【0049】
実質的に
図3B~
図3Eで提示されるように、肋間腔を麻酔した後、切断カテーテルはガイドワイヤ32上を前進されて、マイクロポートが作られる。
【0050】
本発明の別の実施形態では、この方法およびデバイスは、肋間腔を麻酔する目的で、膨潤麻酔を覚醒患者に注入するために使用される。これは、臨床では、覚醒下での胸腔鏡検査のための胸腔チューブの配置、または肋間ポートの配置に使用され得る。別の実施形態では、上記方法およびデバイスは、ステロイド等の抗炎症剤を用いて(or)、痛みを伴う急性または亜急性の肋骨骨折を治療するために使用される。別の実施形態では、上記方法およびデバイスは、慢性疼痛管理の目的で神経の永続的なアブレーションのため神経破壊剤を注入するのに使用される。
【0051】
図8Cは、本発明の実施形態による、軸遠位端部22および軸近位端部21を有する軸20と、そこを通り抜けて伸長するガイドワイヤ管腔と、そこを通り抜けて伸長する流体管腔とを備える、治療カテーテル5の別の実施形態の側面図である。軸遠位端部22に近接して配置されるのは、治療ヘッド250である。治療ヘッド250はバルーンの形態の伸縮性部分213を備える。バルーン213は、軸20の遠位端部22に近い遠位端部252と、軸20の遠位端部22から遠位の近位端212と、その間に該バルーン中心部分253とを有する。バルーン213の遠位端部252および近位端部251は、バルーン中心部分253より大きく、唖鈴に似る。バルーン213は流体管腔と流体連通し、軸近位端部で流体管腔へ導入される流体で満たされるように構成される。バルーン213は、バルーン213の内部から所定圧力でバルーン213の外部へと流体を解放するように構成された複数の送達要素52を有する。
【0052】
本発明の方法の別の実施形態では、治療カテーテル5は折り畳まれ、留置されたガイドワイヤ上を前進される。バルーン213は、肋間腔内に優先的に置かれる。バルーン213は、限定されないが、薄いリドカイン溶液を利用する膨潤麻酔等の麻酔剤で加圧される。一旦肋間腔に麻酔剤が浸透すると、バルーン213を拡張させる流体を引き出し、バルーン213を収縮させて、カテーテル5を取り除く。
【0053】
本発明の他の実施形態では、治療カテーテルは、胸壁が非常に正確に麻酔されるとすぐに、手術者の方へと切断要素を引っ張ることによって小さなポートを切り取ることができるよう、送達要素52による麻酔剤注入の実施形態と、切断部分11による切断の実施形態との組み合わせを備える。
【0054】
図12A~
図12Cは、本発明の実施形態による、肺組織等の生検試料を集めるための生検用具6の垂直断面図である。生検用具6は、組織切断要素72を収容する外套シース71と、光源74を有する内視鏡75と、組織把持要素76とを備える。組織切断要素72および組織把持要素76は、特定の目的に適した外套シース遠位端部77から伸長し、またそこへと引き込まれるように構成される。
【0055】
図12Aは、組織切断要素72および組織把持要素76が、外套シース71内に納められた生検用具6を示す。収納されている場合、生検用具6は、マイクロポートを通り、限定されないが、肺に近接する胸膜腔等の体腔へと挿入され得る。
図12Bは、組織把持要素76が、生検が行われる標的組織と連結されるように、外套シース遠位端部77から伸長されている生検用具6を示す。
図12Cは、標的組織を切り離して収容するように、組織切断要素72が組織把持要素76を越えて伸長する生検用具6を示す。
【0056】
本発明の実施形態によれば、生検用具6は、上に記載されるマイクロポートへの挿入に適した、2mm~5mmの外径を有する。他の要素が外套シース71内に収容されてもよいことが予想される。
【0057】
図13A~
図13Cは、本発明による、生検用具6を使用して肺組織の生検材料を得る方法を説明する。上の実施形態に提示されるように、胸壁40を麻酔してマイクロポートを作る。外套シース遠位端部77がマイクロポート48を通して挿入され、生検を行う標的組織45に近接する胸膜腔47に置かれる。
図13Aに示されるように、組織把持要素76は伸長されて、組織と連結される。切り離しに備えて組織を引き伸ばし、延長させ、薄く伸展させる(thin out)ように、組織把持要素76を引き込むおよび/または生検用具6を所定量引き出す。
図13Bに示されるように、標的組織が組織切断要素72と組織把持要素76との間に収容されるように、組織切断要素72は引き伸ばされた組織上に伸長される。
図13Cに示されるように、組織切断要素72は肺から標的組織を切り離すとともに、手術部位で肺を封止する。生検用具6を、組織切断要素72内に収容され、組織把持要素76によって保持されている標的組織と共にマイクロポートから引き出す。
【0058】
生検用具6を使用して、肺組織の生検材料を得る方法の実施形態では、ILD用の生検に対して行われるように、上記方法および生検用具6は肺組織を非特異的に採取するように構成される。肺組織を採取する方法は、視認機構と、把持機構と、切断機構との全てが小さな胸腔鏡を通して挿入され得る1つの機器に組み合わされている、侵襲性を最小限に抑えた直接的アプローチを利用する。アプローチが直接的であるため、三角測量法を必要としないことから、従来の胸腔鏡検査にあるような一側肺換気は絶対的な要件ではない。さらに、生検用具6が小さいことから、このアプローチを、全身麻酔ではなく局所麻酔剤の支援によって行うことができる。
【0059】
生検用具6の内視鏡75の実施形態としては、限定されないが、内視鏡75が軟性である場合、内視鏡75が硬性である場合、内視鏡75が外套シース71に固定されている場合、並びに内視鏡75を外套シース71内でおよび外套シース71から前進させるように構成し、所望の位置に固定して生検を行う標的組織を最大限目に見えるようにする場合が挙げられる。別の実施形態では、内視鏡75の遠位端部は、様々な配置を有することができ、0度から180度まで視認することを可能とする。
【0060】
組織把持要素76が特定の目的に適した多くの配置を備え得ることが十分に理解される。
図12A~
図12Cおよび
図13A~
図13Cの実施形態では、組織把持要素76はフック(hook:鉤)である。この実施形態では、フックを標的組織45の方へと外套シース遠位端部77から前進させ、組織をフック形状の組織把持要素76によって「留める」。一旦標的組織45を留めると、組織把持要素76は外套シース遠位端部77へと引き戻され、内視鏡75の光学系へと標的組織45を伸展させる。次いで、組織切断要素72を使用して標的組織45を切り落とし、組織把持要素76は生検用具6が除去される際に標的組織45が保護されるチャネルへと標的組織45を引っ張るように構成される。
【0061】
標的組織を把持するのに適した装置および方法の他の実施形態としては、限定されないが、とりわけ、組織を安定化させる吸引の使用、極低温凍結の使用、および高粘着性ポリマー物質の使用が挙げられる。
【0062】
組織切断要素72が特定の目的に適している多くの配置を備え得ることが十分に理解される。本発明の実施形態では、別々の要素が手術部位を封止する間、組織切断要素72は組織を切断する。切断の後に封止が続く組織切断要素72の実施形態としては、限定されないが、組織を切断するため、外套シース遠位端部77からの組織把持要素76の伸長を越える所定のループに従う、取り付けられたメス刃等の切断機構を含む。生検用具6は、限定されないが、ステープルデバイス、圧着デバイス、並びに限定されないが弾性バンドおよび縫合糸等の圧迫デバイス等の封止要素を更に備える。
【0063】
他の実施形態では、組織切断要素72は、組織を切断し、手術部位を封止するように構成される。組織を切断し、手術部位を封止するのに適した装置としては、限定されないが、高周波、レーザー、高周波超音波および電気焼灼が組み込まれた要素が挙げられる。
【0064】
手術の目的が肺結節または非常に限局された特定の間質異常を特異的に採取することである場合、開胸術において観血手術で行われるように、手で肺を触診し、結節または間質の異常を突き止める方法がないことから、胸腔鏡検査の実用性は限定的である。何人かの外科医がCTによって位置が突き止められるコイルまたはワイヤで組織異常を突き止めた後、標準的な肺ステープル術を使用して、組織の大き目のウェッジ切除を行うことを試みたが、ロジスティックス上の課題(logistical challenges)のため、また同様に、小さな結節が摘除され得るように肺の広面積を楔形に取り去ることが引き続き必要があるため、この技術の有用性は限定的である。したがって、肺組織切除の現在の方法の更なる技術的懸念は、結節または間質の異常を取り除くため、肺においてウェッジ型の切開部を作る必要性である。一般的には、肺実質中の結節が深いほど、ウェッジ形成するための、より幅の広いステープルの切断に起因して、除去されなければならない肺組織が多くなる。ウェッジが切り取られる際に、より大きな血管および気道が切断され、それらの一部が漏れを起こす場合がある。
【0065】
肺ステープリング後の空気漏れは非常に一般的に発生し、ステープルラインが大きな張力を受けることになる深いウェッジ切除において特に一般的である。肺が肺ウェッジ切除後に空気漏れを起こす場合、患者の入院はかなり延び、患者の合併症率は顕著に上昇する。したがって、手術中にステープラーを配置すること、および技術的に空気漏れのリスクを管理することに対して、多大な注意が向けられるが、これらの努力にもかかわらず、深いウェッジ切除は困難な場合があり、結節が深いほど空気漏れのリスクは著しく増加し、ウェッジ切除が技術的により困難になる。空気漏れが胸腔鏡検査中に起こると、その症例は、執刀者により多くのアクセスを提供し、これらの繊細な問題を軽減するために開胸術へと移行する。
【0066】
本発明の装置および方法によれば、結節または組織の異常を突き止め、組織および組織の周り正常な肺の周縁部を切除して、切断経路を封止する機構を提供する、特異的に肺組織を切除する方法が提供される。胸部外科に利用されるポートの数およびサイズが急性および慢性の疼痛の量と直接関連することから、望ましい特徴としては、標準的な三角測量法を利用せずに、1つの小さなポート、すなわちマイクロポートを利用する場合に胸腔鏡下で肺組織を採取する能力が挙げられる。
図12A~
図12Cおよび
図13A~
図13Cの実施形態によれば、方法は、侵襲性を最小限に抑えた直接アプローチを利用して肺組織を採取するように構成され、視認、把持および切断の機構の全てが、小さな胸腔鏡ポートを通して挿入されるように構成された生検用具6へと組み合わされる。上記アプローチが直接的なものであるため、三角測量法を必要としないことから、胸膜腔に機器が作動するための余裕を持たせるため肺を収縮させなければならない従来の胸腔鏡検査のように、一側肺換気は絶対的な要件ではない。さらに、生検用具6が小さいことから、このアプローチは全身麻酔ではなく局所麻酔の支援によって実行され得る。
【0067】
図14Aおよび
図14Bは、本発明の実施形態による、中空針80と、収縮させたまたは展開させた状態の展開可能かつ収縮可能なスネア81をそれぞれ備える、生検用具7の垂直断面図である。組織を通り抜けるように針遠位端部85を尖らせる。針80は、針内腔86を画定する。スネア81は、スネア軸84と、該スネア軸84の遠位端部にスネアヘッド82とを備える。針内腔86の内部に収容された場合、スネアヘッド82は目立たない状態(low-profile)へと折り畳まれるように構成され、針内腔86から伸長される場合、スネア82はより目立つ状態に(higher profile)まで展開されるように構成される。
【0068】
下に説明されるように、スネア81は、標的組織を越えて針遠位端部85を前進させた後、該針遠位端部85を越えて前進されるように構成される。
【0069】
図15A~
図15Fは、本発明による、生検用具7を使用して肺組織46の生検材料を得る方法を説明する。
図15Aに示されるように、生検用具7を、標的組織43を通して前進させる。
図15Bに示されるように、針遠位端部85を越えてスネア81を前進させ、スネアヘッド82を展開させる。したがって、標的組織43はスネアヘッド82と手術者との間にある。
図15Cに示されるように、針80を、スネア軸84に沿って摺動可能に引き出してそこから除去し、その場所にスネア81を残す。
図15Dおよび
図15Eに示されるように、それぞれ、外径が増加する1本以上の中空針80A、80Bを前進させ、スネア軸84に沿ってスネアヘッド82付近まで引き出し、肺組織46を通して標的組織43まで切断することによってより大きな経路49を拡張するように構成される。
図15Fに示されるように、上記経路が少なくとも標的組織43の直径まで拡張されると、標的組織43が切除されてスネア81が除去される。肺組織46から抜き取られた経路49は、以下に提示されるように、出血および/または空気漏れを防止するため治癒または封止されるようにそのまま残される。
【0070】
本発明の方法の別の実施形態では、患者は画像化された特定の肺異常を有する。針80を、胸壁を通して生検が行われる肺の異常、すなわち肺結節または異常な組織等の標的組織43へとおよびそのすぐ向こうに通過させる。実施形態では、針80は、針80を前進させながら組織を焼灼するまたは封止するため組織にエネルギーを伝える先端を有する。固定するまたは留める機構は、結節のすぐ向こうの針の内部から展開される。一実施形態では、固定機構は、針内のガイドワイヤに取り付けられ、針の近位部分から遠位の固定位置または留め位置まで及ぶ。針内部から、伸縮性部材を結節のすぐ向こうに前進させる。伸縮性部材は、手術者に向かって引き戻される場合に、結節を含む組織の直径を切り取るように構成されている切断機構を備える。或る実施形態では、切断を行いながら、限定されないが、RF、レーザー、HIFU、ポリマーシーラント等のエネルギー機構で組織が封止される。切断部材は、その内径に付けられた捕捉アセンブリを備える。針はワイヤ上を移動し、一連の拡張するシースを前進させて、所望の直径まで経路を拡張させるように引き込まれる。或る実施形態では、各拡張するシースが、チャネルを剥離しながら組織を封止するためのエネルギーを伝える機構を有する遠位先端を備える。切断部材が手術者に向かって引き戻される際に、結節を含む組織のコアが切除されて、捕捉アセンブリ内に置かれる。一旦捕捉アセンブリが生検材料を収容すると、捕捉アセンブリは、シースのすぐそばまで引っ張られ、シースは、組織を通る引き抜きを補助するため、より小さい体積まで該材料を圧縮する。一旦経路が十分に拡張されると、生検材料を収容する捕捉アセンブリは、手術者の方に引っ張ることによって引き抜かれる。別の実施形態では、捕捉アセンブリが抜き出される際、経路を満たして組織の出血または空気漏れを防止するシーラントのコアを敷く形態のシーラントで組織路を含浸させる。
【0071】
図16Aおよび
図16Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、スネア軸84に沿って前進させ、組織の経路を切断するのに適した針80A、80Bの垂直断面図および正面図である。針80A、80Bは、外側チューブ管腔97を有する外側チューブ90と、外側チューブ90と共軸の内側チューブ94と、それらの間に複数の刃95とを備える。刃95は、内側チューブ94と連結され、外側チューブ管腔97内で内側チューブ94を外側チューブ90と離隔する。外側チューブ90は、組織を切断するのに適した外側チューブ遠位エッジ91を備える。内側チューブ94は、組織を切断するのに適した内側チューブ遠位エッジ93を備える。刃95は、組織を切断するのに適した刃遠位エッジ96を備える。内側チューブ管腔94は、針80A、80Bが標的組織までスネア軸84を追跡することができるように、スネア軸84を摺動自在に収納するように構成される。外側チューブ遠位エッジ91、内側チューブ遠位エッジ93、および刃遠位エッジ96によって切断された組織は、針80A、80Bが組織を通して前進される際に、外側チューブ管腔97内に収容される。
【0072】
或る実施形態では、針80A、針80Bは、限定されないが、RFエネルギー等の組織を切り取りながら焼灼するための手段を備える。
【0073】
本発明による方法の実施形態では、経路49は、肺組織46を封止し、治癒を促進するように生分解性材料で塞がれる。本発明の方法の別の実施形態では、経路49は圧縮閉鎖される。別の実施形態では、経路49は縫合して閉じられる。ドレナージが必要な場合、別の実施形態では、ドレナージチューブを経路49に入れ、ドレナージを提供するため腹膜腔と連通させる。
【0074】
本発明による別の実施形態では、直径が増加する1本以上の中空針に、組織を封止するための手段が組み込まれている。中空針に、限定されないが、とりわけRF、レーザー、クライオ(cryo)を含む、組織を封止するための手段が組み込まれていてもよい。
【0075】
本発明による或る実施形態では、方法および装置は、肺実質内の非常に特定の結節を採取するのに適している。本発明の方法の実施形態によれば、結節または特定の限局される間質の異常が突き止められる。多くの画像誘導術を、異常を突き止めるこれらの方法と組み合わせてもよいことが予想される。
【0076】
本発明の実施形態では、患者をCTスキャナに入れて結節を撮像する。肺のCTガイド下生検で一般的に使用される標準的なCTガイド下インターベンショナル術(CT guided interventional techniques)を使用して、皮膚、胸壁、胸膜腔および肺を通り、採取される標的組織を通して生検用具7を前進させる。一旦、生検用具7の遠位端部が結節または間質の異常を通過するとニチノール等の形状記憶金属で構成されるもの等の圧縮されたワイヤフックの形態のスネアが、針80の遠位端部から出て前進される。一旦スネアヘッド82が針から出て前進されると、標的組織43のすぐ向こうで所定の配置に拡張される。
【0077】
或る実施形態では、スネアヘッド82は、三叉トレブルフック(three pronged treble hook)83の形状を有する。フック83の基部にあるのは、限定されないが、ガイドワイヤ、ナイロン、組んだ綿糸および他の可撓性フィラメント等を含むスネア軸84である。針80を取り除き、取付けフィラメントを、ここで上記経路において標的組織43のすぐ向こうのトレブルフックまで完全な状態で残す。一旦針80が除去されると、手術者はスネア軸84を引っ張る。これによってトレブルフック83が標的組織に係合し、スネア軸84が、採取される結節または間質構造物の標的組織43を横断する。一旦スネア軸84およびトレブルフック83が標的組織43に係合されると、シースはスネア軸84の上を通り、標的組織43は、限定されないが、CT、MRI、超音波および蛍光透視等の撮像デバイスにより視認される。
【0078】
例として、それに限定されないが、一実施形態では、患者は画像化された特定の肺異常を有する。肺を画像化する可能な技術としては、限定されないが、CT、超音波、蛍光透視、MRI、PET、およびPET/CTが挙げられる。針80を、胸壁を通して、生検が行われる肺結節等の肺の異常へおよびそのすぐ向こうに通過させる。或る実施形態では、前進しながら組織にエネルギーを伝えて組織を焼灼または封止するように構成された先端を備える針80が提供される。針80の内部から、伸縮性スネア81は結節のすぐ向こうに押し出される。伸縮性スネア81は、限定されないが、針80内部にあるガイドワイヤまたはガイドフィラメント等のスネア軸84に取り付けられる。針80を取り除き、スネアヘッド82に連結されたスネア軸84をその場所に残す。シースをスネア軸84の上に通し、組織を通して標的組織の直前の遠位端部まで経路を拡張させる。2つ以上のシースを利用して、次第に経路を拡張させることができる。上記経路が標的組織までできると、封止機構を利用することができる。一旦経路が十分な直径になると、拡張シースは、標的組織または標的組織の周りの組織をくり抜くことができる遠位端部を有するシースで置き換えられ、シースの遠位端部とスネアヘッド82との間に包含される区域のすぐ向こうでスネアヘッド82へと固定される。スネアヘッド82は、ここでシースの遠位端部へと固定され、生検材料である標的組織43を包含し、アセンブリは手術者の方へと引き戻される。アセンブリを引き出しながら、周囲の組織が焼灼される。これが行われたら、ここでは伸縮性部材に接続されているガイドシースの内部チャネルを利用して、空間を埋めて、空気漏れを防止する組織シーラント材またはコアプラグを送達する。
【0079】
本発明の方法の別の実施形態では、患者は画像化された特定の肺異常を有する。針80を、胸壁を通して生検が行われる肺の異常、すなわち肺結節等の標的組織43へとおよびすぐ向こうに通過させる。実施形態では、針80は、針80を前進させながら組織を焼灼するまたは封止するため組織にエネルギーを伝える先端を有する。スネアヘッド82は、標的組織のすぐ向こうで針内部から展開される。或る実施形態では、スネアヘッド82は、針80の長さを通って延びるスネア軸84に取り付けられる。針内部から、伸縮性部材を結節のすぐ向こうに前進させる。伸縮性部材は、手術者に向かって引き戻される場合に、結節を含む組織の直径を切り取るように構成されている切断機構を備える。
【0080】
或る実施形態では、切断を行いながら、限定されないが、RF、レーザー、HIFU、ポリマーシーラント等のエネルギー機構で組織が封止される。切断部材は、その内径に付けられた捕捉アセンブリを備える。針はワイヤ上を移動し、一連の拡張するシースを前進させて、所望の直径まで経路を拡張させるように引き込まれる。或る実施形態では、各拡張するシースが、チャネルを剥離しながら組織を封止するためのエネルギーを伝える機構を有する遠位先端を備える。切断部材が手術者に向かって引き戻される際に、結節を含む組織のコアが切除されて、捕捉アセンブリ内に置かれる。一旦捕捉アセンブリが生検材料を収容すると、捕捉アセンブリは、シースのすぐそばまで引っ張られ、シースは、組織を通る引き抜きを補助するため、より小さい体積まで該材料を圧縮する。一旦経路が十分に拡張されると、生検材料を収容する捕捉アセンブリは、手術者の方に引っ張ることによって引き抜かれる。別の実施形態では、捕捉アセンブリが抜き出される際、経路を満たして組織の出血または空気漏れを防止するシーラントのコアを敷く形態のシーラントで組織路を含浸させる。
【0081】
図17A~
図17Eは、本発明の実施形態による、
図2の実施形態のプル型切断デバイス1と組み合わせて、
図14Aおよび
図14Bの実施形態の生検用具7を使用して肺組織46の生検材料を得る方法を説明する。
図17Aに示されるように、生検用具7を、標的組織43を通して前進させる。
図17Bに示されるように、スネア81を、針遠位端部85を越えて前進させ、スネアヘッド82を展開させる。したがって、標的組織43は、スネアヘッド82と手術者との間にある。針80を、スネア軸84に沿って摺動可能に引き出してそこから除去し、その場所にスネア81を残す。プル型切断デバイス1を、切断ヘッド10が標的組織43に近接するように、スネア軸84に沿って摺動可能に前進させる。
図17Cに示されるように、切断部分11を備える伸縮性部分13が展開される。
図17Dに示されるように、プル型切断デバイス1は、手術者の方へ引っ張られ、肺組織46への経路49を切り取る。
図17Eに示されるように、上記経路49が少なくとも標的組織43の直径にされると、標的組織43が切除されてスネア81が除去される。肺組織46から抜き取られた経路49は、以下に提示されるように、出血および/または空気漏れを防止するため治癒または封止されるようにそのまま残される。
【0082】
様々な生検術は、一般的には、内臓深部の試料組織、または癌および他の疾患の診断に対して周囲のリンパ節を採取するため小さな口径の針を用いる。主な1つの制限は組織の量であり、したがって分析用の組織試料の量および質である。より大きな組織標本を採取することが望ましいが、より良好に組織構造を保存しながらより大きな組織試料を得るために臓器またはリンパ節に大きな口径デバイスを導入する際には多くの困難がある。さらに、ほとんどの体の器官を針で突き刺すことが可能であるが、許容可能であるものの無視できない合併症プロファイルを伴い、アクセスデバイスの直径が大きくなるにつれて、同様に合併症率も増加する。これは、1.5cm未満の肺結節試料に望ましいが、出血および空気漏れのリスクが大きい肺の症例に特に当てはまる。さらに、肺、肝臓および他の場所の主な血管構造物の近くでは、大きな直径の切断要素を身体に押し込むプロセスが危険になる。したがって、生検のため組織および標的組織の周りの命にかかわる構造物を危険にさらすことなく、固形臓器またはリンパ節を含む体腔内の深部へのアクセスを得ることも望ましい。
【0083】
本発明の一実施形態では、画像ガイダンスを使用して小さな口径の針を肺深部の肺結節等の標的組織へと前進させる機器が提供される。針は所望の組織を通り抜け、捕捉要素および安定化要素を作動させる。結節を固定し、切り離す。ここで自由になった結節を伴って、標本を横断するカテーテルは以下の特徴を有する。遠位先端は、レーザー、RF、他のエネルギー源または特定の組織シーラント若しくはプラグを送達するための機構を含むことができる封止機構を有する。組織標本の直近でカテーテルに取り付けられているのは、拡張された際に近位側に切断要素を露出する伸縮性切断部材である。手術者は本来の針経路に沿って、身体の外側表面の方へとデバイスを引き戻す。手術者が引き戻す際に、本来の針経路よりも大きな生検標本が新たに切り取られたチャネルを通して引っ張り出され得るように、組織を切り取り、正確に切り取られたチャネルを作る。経路が切り取られる際に、生検標本を囲む捕捉デバイスが引き抜かれ、カテーテルの遠位端部が後に残される経路を封止するために利用される。
【0084】
図18Aおよび
図18Bは、本発明の実施形態による、展開されたまたは拡張された配置のプル型切断デバイス8の垂直断面および端面図である。プル型切断デバイス8は、軸遠位端部22および軸近位端部21を有する軸20と、そこを通り抜けて伸長する管腔23とを備える。軸遠位端部21の周りに配置されるのは切断ヘッド100である。切断ヘッド100は、軸遠位端部22から近位に切断部分111を有する伸縮性部分113を備える。伸縮性部分113は、伸縮性部分113を膨張させるため伸縮性部分113に流体を供給するように構成される流体管腔25と流体連通している。管腔23はガイドワイヤまたはスネア軸84の上を通るように構成される。ループ切断要素112を支持する複数のスタンドオフ(stand-off)刃116が、切断部分111から伸長している。切断要素112の例としては、限定されないが、組織に逆らっておよび組織を通して引っ張る際に切開部を作るように構成される、刃、高周波、レーザーおよび電気焼灼切断要素が挙げられる。プル型切断デバイス8が組織を通して引っ張られる際に、切断要素112は組織をくり抜き、
図17Dに示されるように、組織のコアは、スネア80のその後の引き抜きによって実質的に押し出され得る。引っ張りおよび切断の動作が手術者の方に向かっているため、これは、体腔開口部が作られる際に、内臓または他の構造物が損傷され得るというリスクを減少させることから、改善された安全性プロファイルをもたらす。或る実施形態では、切断された任意の組織片が腔115に堆積される。
【0085】
図18Cおよび
図18Dは、本発明の実施形態による、展開されたまたは拡張された配置のプル型切断デバイス9およびスネア81Aの垂直断面である。プル型切断デバイス9は、軸遠位端部22および軸近位端部21を有する軸20と、そこを通り抜けて伸長する管腔23とを備える。軸遠位端部21の周りに配置されるのは切断ヘッド10Aである。切断ヘッド10Aは、軸遠位端部22から近位に切断部分11を有する伸縮性部分13を備える。伸縮性部分13は、伸縮性部分13を膨張させるため伸縮性部分13に流体を供給するように構成される流体管腔25と流体連通している。管腔23はガイドワイヤまたはスネア軸84の上を通るように構成される。軸遠位端部22では、伸縮性部分13は腔115を画定する。切断部分11から伸長するのは、複数の切断要素12である。切断要素12の例として、限定されないが、組織に逆らっておよび組織を通して引っ張られた場合に切開部を作るように構成さている、刃、高周波、レーザーおよび電気焼灼切断要素が挙げられる。プル型切断デバイス9が組織を通して引っ張られる際に、切断要素12は組織を切断する。スネア81Aは、連結要素を備える近位端89を有するスネアヘッド83を備える。
図18Dに示されるように、伸縮性部分遠位端部114は、スネアヘッド近位端部89上の連結要素と連結されるように構成される連結要素を備える。スネアヘッド83は、組織を過ぎておよび組織を通して引かれながら組織を封止するように構成される封止要素87を更に備える。
【0086】
図17Aおよび
図17B並びに
図17Fおよび
図17Gは、本発明の実施形態による、
図18Cおよび
図18Dの実施形態のプル型切断デバイス9と組み合わせて、
図14Aおよび
図14B並びに
図18Cおよび
図18Dの実施形態の生検用具7、7Aを使用して肺組織46の生検材料を得る方法を説明する。
図17Aに示されるように、生検用具7を、標的組織43を通して前進させる。
図17Bに示されるように、スネア81Aを、針遠位端部85を越えて前進させ、スネアヘッド82を展開させる。したがって、標的組織43は、スネアヘッド82と手術者との間にある。針80を、スネア軸84に沿って摺動可能に引き出してそこから除去し、その場所にスネア81Aを残す。プル型切断デバイス9を、切断ヘッド10が標的組織43に近接するように、スネア軸84に沿って摺動可能に前進させる。
図17Fに示されるように、切断部分11を備える伸縮性部分13が展開される。スネア81Aは切断ヘッド10Aの方へと引っ張られ、スネアヘッド近位端部89が伸縮性部分遠位端部114と係合され、それに連結される。
図17Gに示されるように、プル型切断デバイス9およびスネア81Aは、手術者の方に1つのユニットとして引っ張られ、肺組織46への経路49を切断する。出血および/または空気漏れを防止するため、スネア81A上の封止要素87を作動させることにより、経路49を封止する。
【0087】
本発明による方法の以下の実施形態では、先の方法のいずれかを用いて、標的組織への画像ガイド下アクセスを得て、経路を拡張させ、標的組織を切除し、標的組織を拡張された経路を通して引き抜いてもよい。手技の後、出血および空気漏れの可能性がある肺深部への組織路またはチャネルが残る。
【0088】
或る実施形態では、方法およびデバイスは、経路が体壁からの剥離、拡張および切除から治癒する間に、胸膜腔を通して肺実質への経路49を排水するように提供される。肺に針が貫入することで、および経路49が拡張されて標的組織が切除されることで、血管が切断されると肺実質の切断面は出血しやすくなり、気道が切断されると空気漏れしやすくなる。上記方法およびデバイスは、止血(出血がない)およびニューモスタシス(pneumostasis)(空気漏れがない)を提供するように構成される。
【0089】
図19に示されるように、上に提示される方法によれば、標的組織は切除され、組織中の経路49をもたらす。生検デバイスを除去したとき、ガイドワイヤ32は経路49に残される。スネア軸84の実施形態によれば、ガイドワイヤ32を、スネア軸84に提供されるガイドワイヤ管腔等の生検デバイスのガイドワイヤ管腔に通過させることにより、通路49にガイドワイヤ32を置くことができる。
【0090】
図20は、本発明の実施形態による、標的組織が取り出された後に経路49に残ったガイドワイヤ32の上を前進された体腔チューブ120の横断面図である。体腔チューブ120は、肺組織46の経路49に位置する複数の開口121を備える。肺に吸引を提供し、体腔チューブ120に並列させて組織を引っ張るため、体腔チューブ120は経路49に残されて、吸引装置に取り付けられる。一定の期間をかけて、肺組織抽出経路49は治癒し、任意の血液または空気がチューブを通して、限定されないが、胸腔チューブキャニスタ等の外部容器へと出される。
【0091】
本発明の実施形態では、外部容器は、空気および流体のドレナージのラインへと試験片を挿入し、試験片が二酸化炭素と反応すると、変色する機構を有する。二酸化炭素が存在しない場合、試験片は変化しない。二酸化炭素を含有する空気が経路の内径の切断表面から漏れているかどうかを判断するため、気体/液体の試料を胸膜腔内から採取する。二酸化炭素が存在すれば、チューブはその場所に留まる必要がある。存在しなければ、チューブを除去してもよい。
【0092】
この方法および装置は、限定されないが、胸腔チューブが使用される場合等の肺での使用を越えた用途を有し、問題は空気漏れが残るかどうかである。
【0093】
本発明の実施形態では、体腔チューブ120は生分解性であり、皮膚で切り落とされてin situで残されてもよい。
【0094】
本発明の別の実施形態では、体腔チューブ120は、その後の血胸、気胸または気管支瘻の可能性を制限するよう、炎症を促す炎症促進性物質および成長している組織で作製される。
【0095】
或る実施形態では、体腔チューブ120は、側面に複数のチャネルを有する非常に薄いフィラメントである。マルチチャネルフィラメントは組織路に残され、治癒プロセスが起こる間、生検経路から任意の血液および空気を排出するための外部吸引源に配置される。
【0096】
本発明の別の実施形態では、周囲の経路に対してマルチチャンネルを有するチューブは多孔質スポンジ様材料で充填される。吸引をチューブの外部管腔に適用する。チューブの周りの組織は、チューブ上へと吸い込まれる。多孔質スポンジ様材料は、その周りの組織が治癒する間に、肺および小さなチューブの内径に、血塊、線維物質および他の物質が詰まらないようにする。
【0097】
本発明の別の実施形態では、体腔チューブ120は、気管支、食道または腹膜腔の内部で排水される。
【0098】
図21Aは、本発明による、封止デバイス200の垂直断面図である。本発明の実施形態では、標的組織が取り出され、ガイドワイヤ32が経路49に残された後、封止デバイス200を、ガイドワイヤ32上で肺組織経路49へと通す。封止デバイス200は、RFまたはレーザーと関連するもの等の物理的エネルギーを伝えることができる遠位先端201を備える。例としては、限定されないが、ダイオードレーザー、周囲の組織に熱を伝えるように設計された任意の周波数の経路を封止するレーザーが挙げられる。別の例は、凍結アブレーションを使用して経路49を封止するように構成された極低温機構を備える遠位先端201を提供する。遠位先端201を作動させ、手術者の方へと引き戻す。遠位先端20が引き戻される際に、エネルギーが周囲の経路49に伝えられ、経路49が焼き付けられて封止され、血液または空気の放出を防止する。
【0099】
別の実施形態では、封止される経路49には流体がないことから、流体はRF(すなわちTissuelink湿式電極)またはレーザー(流体が周囲の組織の温度を越えて加熱されることとなるように)で加熱された流体として遠位先端201を通して排出され、組織が封止される。流体とRFとの組み合わせは、周囲の組織を封止し、血液、空気、リンパ組織等の漏れを防止する。
【0100】
本発明の別の実施形態では、封止機構はバルーン先端カテーテルの外側管腔上に含まれる。バルーンは組織路を満たすために拡張され、バルーンが手術者の方へと引き込まれる際に、エネルギーが周囲の組織に伝えられ、組織が封止される。
【0101】
図21Bは、本発明による、経路49を満たすように押し出される組織封止物質を含む封止デバイス200の垂直横断面図である。或る実施形態では、組織封止物質は、外部超音波等の活性化物質によって作動されるとサイズが増すか、または熱を生成するポリマーである。
【0102】
別の実施形態では、螺旋状縫合糸は、経路49の周りで螺旋状に編まれながら、経路29の表面のすぐ下あたりに巻かれ、次いで、経路を経路自体に重ねるように引っ張って、血液および空気が逃げる空間が残らないように閉じるように駆動される。本発明の他の実施形態では、他の機構を駆動し、経路の壁を経路自体に重ねるように引っ張って、血液または空気が逃げる空間を排除する。
【0103】
図22A~
図22Fは、本発明の実施形態による上に提供される生検用具140の実施形態を使用して、限定されないが、食道および気管支等の体管腔130に近接する標的組織47の生検材料を得る方法、並びに標的組織47またはその一部が切除された後に体管腔130を封止する方法を説明する。超音波内視鏡または他の撮像術を使用して、体腔130を通してガイドワイヤ32を前進させ、体管腔130の壁133を貫入させて、標的組織47に近接させて置く。
図22Aおよび
図22Bに示されるように、生検用具140をガイドワイヤ32に沿って前進させて、体管腔130において開口132を作る。
図22Cに示されるように、標的組織47は、上に記載される方法を使用して摘除され、ガイドワイヤ32が後に残される。遠位端部144に伸縮性封止要素143を備える封止デバイス142が提供される。封止デバイス142は、ガイドワイヤ32上を前進されて、遠位端部144が体管腔130の壁の開口132を通り抜ける。伸縮性封止要素143は拡張されて、体管腔130の壁133に逆らって引き戻され、開口132を覆う。
【0104】
図23Aおよび
図23Bは、本発明の実施形態による、それぞれ、完了前のおよび完了した配置の、体管腔130の開口132を封止するように構成された封止デバイス146の垂直断面図である。封止デバイス146は、二重ファランジ(double-phalange)プラグ148を有する遠位端部を備える。封止デバイスを、体腔130において開口132を横断するように、ガイドワイヤ管腔150を介してガイドワイヤ32上で前進させる。第1のファランジ149は、開口132の1つの側面に近接して位置し、第2のファランジ148は開口132の反対側に位置する。第1のファランジ149、第2のファランジ148は互いに引き寄せられ、開口132上で衝突して、開口132を封止し、その間の開口132に隣接する壁133の一部を捕捉する。ガイドワイヤ管腔150は、そこからガイドワイヤ32が除去されたら自己封止する。この実施形態は、食道穿孔にも使用され得る。
【0105】
デバイスまたはチューブが胸腔から取り除かれると、外表皮(external skin)から胸膜腔を通して胸壁までの経路が残る。患者が呼吸する際、呼吸のプロセスが外環境に対して胸腔内に陰圧を作りだすことを必要とすることから、空気が胸膜腔に戻って流入する場合がある。空気が胸腔に吸い戻されると、気胸として知られる状態を作り出し、命にかかわる場合がある。一般的には、胸腔へと空気を吸い戻すことができないようにチューブを除去する際にそれ自体に重ねて折り畳まれる組織フラップを作るため、或るレベルから別のレベルへと斜めにトンネルを作ることが教示される。しかしながら、胸腔鏡検査を行う場合、操作機器の導入および除去を促進することから、斜めに走らずに、胸膜腔に直接トンネルを作ることが望ましい。
【0106】
或る実施形態では、プラグまたは一連の縫い目が圧縮された配置で胸腔内のワイヤ上に存在する方法および装置が提供される。胸膜腔を封止することが望まれる場合、ワイヤは手術者の方へと引き戻され、プラグまたは縫い目が体腔の内側開口部に並置される。次いで、上記デバイスを作動させ、体腔の内部開口部へとプラグまたは縫い目を挿入し、ワイヤが離脱することにより、孔を閉じ、流体が漏れ出すことまたは空気が吸い戻されることを防止する。
【0107】
この実施形態は、外科的に作られた内部から外部へのポート部位(胸腔鏡検査、腹腔鏡検査等によって見られる)、および、深部の実質性肺生検が末端気管支の位置から行われる場合に気管支を封止することを含めて、様々な体腔を密閉するために使用され得る。同様に、経食道の生検が行われる場合、縦隔リンパ節および他の構造物の超音波内視鏡ガイド下生検に対して行われるように、食道を封止するためにこれを使用してもよい。これは、胸膜腔、腹膜腔または他の体腔(GU、GYN等)が腸を通してアクセスされる他の手技に使用され得る。
【0108】
肺のCTガイド下生検の難しさの1つは、肋骨および他の胸壁構造物が邪魔になる場合があり、肺を生検するのに適切なウィンドウを提供しないという事実である。胸腔鏡検査は、胸膜腔内で開始することによりこれを克服することができるが、現在、胸腔鏡検査で肺内の結節の位置を突き止めることはできない。この実施形態では、胸腔鏡は、その遠位先端に超音波プローブが取り付けられる。先端は、手術者が、結節の位置を突き止めるまで肺の表面で超音波プローブを走らせることを可能とする滑らかなカバーを有する。一旦結節の位置が突き止められると、肺がスコープ/プローブへと吸引されて、その区域を固定し、プローブをその場所にロックするように、超音波プローブ周囲付近で吸引器を始動させる。次いで、手術者は、結節にアクセスするため超音波ガイド下で肺を通して針を前進させる。次いで、上に記載されたものを含む、様々な方法で結節切除を行うことができる。
【0109】
肺組織および結節を切除する方法および装置を提供する実施形態が提示される。これらの実施形態は、従来の生検アプローチよりも傷害を与えにくく、単一ポートで侵襲性を最小限に抑えた技術を利用する。これらの実施形態は、上に記載される麻酔およびポート切り取り術と組み合わせて実施され得る。その技術および関連する方法を使用して、正確で直接的な肺結節切除を可能とするように画像ガイダンスを使用して、ここに記載される肺組織を切除する手技を行うためのアクセスを提供することができる。これらの技術は、血液、空気を除去し、手技の間に肺虚脱を防止するために拡張させた後、胸膜腔および肺組織切除術経路の内部で吸引を利用する。また、開示される実施形態は、標的組織の大きな試料の切除を促進するためロバストで単純なアプローチを提供する、胸壁のポートから切除される(例えば肺内部の)結節の場所までの切除経路全体を拡張させるバルーン拡張術を利用する。また、出血および空気漏れの合併症を最小限にするため、一体型封止(Integrated sealing)も使用される。上記手技は、CTガイダンスにより行われてもよい。CTは、特に固形臓器の介入に非常に都合がよい。最近の技術の進歩は、リアルタイムで臓器およびデバイスの動作を示すCT蛍光透視をもたらした。CT蛍光透視により、針の軌道をリアルタイムで追跡することができ、必要に応じて主治医が調節することを可能とする。標準的なCT撮像はまだ使用され得るものの、この利点は、標準的な間欠的CT撮像を用いるものと等価またはそれよりも良好な成功率を伴って手技を短縮した。
【0110】
或る実施形態によれば、
図24および
図25に示されるように、作業ポート151は、胸壁を通り、肋間腔を通して導入されて、患者の胸膜腔へのアクセスを提供することができる。作業ポート151は、1つ以上の開口153を有する近位端部を持つ中空管状部材163を備え、上に記載される技術および技法により導入された胸壁の開口部を通して挿入され得る。ポート151の遠位端部は、真空源152と連通している。真空源152は、胸膜腔(胸壁と肺との間)、肺切除経路(肺実質内部)またはそれらの両方を排水するために使用され得る。管状部材163は、近位端が胸壁の開口部を通して挿入され、遠位端部が体外にある場合、近位端が胸腔、例えば胸膜腔内に伸長され得るように、所定の長さである。例えば、作業ポート151の管状部材163の長さは、5cm、10cm、15cm、20cmまたは25cmであってもよい。各患者のサイズおよび形状は特有であるため、作業ポートを患者の胸腔に挿入する深さは変化し得る。例えば、作業ポート151の遠位(患者から離れた)端部は、患者の胸壁外側表面41と接触していなくてもよい。作業ポート151の管状部材163は、胸腔内(例えば胸膜内)で操作(operation)または手術(surgery)を行うためのデバイスおよび外科用具、例えば、本明細書に記載され、本明細書に記載される切除プロセスで使用されるデバイスの胸腔への挿入に適応するように所定の直径を有する。例えば、作業ポート151の管状部材163の内径は、3mm、5mm、7mm、10mm、12mm、15mm、18mmまたは20mmであってもよい。真空源152は、体外にある作業ポート151の遠位端部に連結され、作業ポート151に対して真空に引くのに有効である。開口(複数の場合もある)153を通して作業ポートに引かれて得られた真空は、手術中に肺を完全に拡張させておくため、胸腔内を陰圧に維持する。一実施形態では、開口(複数の場合もある)153を通して引かれる真空は、-5cmH
2O~-100cmH
2Oである。
【0111】
図25に示されるように、肺組織を切除するための例示的な手技の初期段階では、最初に、ポート151を、本明細書に記載される胸壁の開口部を通して、好ましくはその近位端部が胸膜の付近に到達するまたは配置されるまで挿入する。次いで、ポート151が設置されたら、針154を、胸腔の外から作業ポート151を通して肺内の標的組織43まで前進させる。針154を、その近位(患者の方に向く)端部が胸膜を通して肺へと、標的組織43を越えて前進するまで前進させる。針154の前進は、リアルタイムでその軌道を追跡して調整することで、必要に応じて調整を行うことができるため、CT蛍光透視の下で遂行され得る。或る実施形態では、針154は、その先端部分に特徴があり、針154が前進される際に組織を焼灼または封止するため組織にエネルギーを伝える。例えば、針先端部分は、先端が前進される際にその組織を焼灼するため、針の前進に従って針先端部分が接触することになる組織に対して熱、高周波または電気エネルギーを送達するように構成されてもよい。特に、針154は、高周波トランスデューサーとして構成されてもよく、または使用中に熱および/または電気エネルギーを供給する電圧源に接続されてもよい。好ましい技術では、針154はその先端が、ポート151に対して、標的組織43に到達するまたは好ましくは標的組織43の向こうに到着するまで挿入される。その後、
図26に示されるように、その近位端部が、ポート151に対して、標的組織43に隣接して、好ましくはその向こうに到着するように、作業ポート151を通して、および軌道に沿って套管針155を誘導する既に据え付けられている針154の上で、套管針155を前進させる。一実施形態では、一旦外套針155が適所に置かれると、針154は引き出される。しかしながら、針154は、後に挿入される器具(すなわち、切除デバイス、封止デバイス、バルーンカテーテル、または拡張のための他の器具、吸引装置等)に対するガイドとしての役割を果たすようにその場所に留まってもよい。別の実施形態では、一旦外套針155が適所に置かれると、それを通してガイドワイヤを前進させることができることから、後に挿入される器具の、例えばガイドワイヤ上でのその後の前進および除去のため標的組織までの通路(track)が維持される。所望に応じて、一旦かかるガイドワイヤが適所に置かれると、針154は引き出されてもよい。別の実施形態では、その近位端部が、ポート151に対して、標的組織43に隣接して、好ましくはその向こうに到着するように、作業ポート15を通して、軌道に沿ってガイドワイヤを誘導する既に据え付けられている針154の上で、ガイドワイヤを前進させる。この実施形態では、このガイドワイヤ自体が、針154を収容するための長軸方向に伸長する内腔を備えてもよく、外套針155の使用は任意である。代わりに、ガイドワイヤは、その後挿入される器具のその後の前進および除去のため、標的組織43までの通路を維持することができる。
【0112】
ここで、套管針155が適所にあり、患者の体外から標的組織43のすぐ向こうの場所にチャネルを設けた状態で、捕捉ワイヤ156を、外套針155を通して、その近位端部が外套針155および標的組織43のすぐ向こうに到着するまで前進させる。或る実施形態では、捕捉ワイヤ156は、(例えば)ナイロン、組んだ綿糸および/または他の可撓性フィラメントを含む。その地点で、捕捉ワイヤ156の近位端部に取り付けられたまたはそれに隣接する組織アンカー157は、
図27に示されるように展開され得る。或る実施形態では、組織アンカー157は、ニチノール等の形状記憶金属で構成される圧縮ワイヤフックの形態である。別の実施形態では、組織アンカー157は三叉トレブルフックの形態である。一旦捕捉ワイヤ156の組織アンカー157が外套針155から出て標的組織43のすぐ向こうに前進されると(すなわち、もはや套管針155の内腔内で抑制されなくなった後)、その所定の展開された配置に拡張され得る。例えば、組織アンカー157は、外套針155の直径内で抑制されている間、展開されていない配置へと弾性的に変形され得る。しかしながら、一旦外套針を超えて前進されると、組織アンカー157は、その後、
図27の指示線内に示されるように、その展開され抑制されていない状態まで弾性的に拡張され得る。次いで、捕捉ワイヤ156は引き込まれて標的組織43から遠ざかり、それにより、捕捉ワイヤ156が組織アンカー157を介して標的組織43の後ろ(すなわち、近位側)から留められている状態で、標的組織43から捕捉ワイヤ156を引っ張る。このようにして、捕捉ワイヤ156を使用して、外側からの標的組織43への前進を含むその後の操作工程(すなわち、拡張、くり抜き(coring)等)に逆らう遠位の(すなわち患者から遠ざかる)反力を提供することができる。そのようにして、標的組織43の位置が突き止められ、組織アンカー157を使用して、体外から胸膜腔を通り肺へと標的組織43まで伸長する組織切除経路の近位端部で該標的組織43が留められる。
【0113】
次いで、套管針155を引き出し、その近位端部が組織アンカー157を介して標的組織43に固定されている捕捉ワイヤ156を残す。次に、胸腔の外から遠位方向に捕捉ワイヤ156を引っ張ることによって印加される反力に逆らって、拡張カテーテル159を、作業ポート151を通して捕捉ワイヤ上に前進させる。
図28に示されるように、拡張カテーテル159を、捕捉ワイヤ156上に胸膜腔を通して肺へと、ここで組織アンカー157に隣接して位置する標的組織43まで前進させる。任意に、図面からもわかるように、作業ポート151は、胸壁と標的組織43との間の組織路に沿ったチャネルの拡張を妨げないように、拡張カテーテル159の挿入に先立って引き出されてもよい。他の実施形態では、作業ポート151は胸壁内に位置したままである。拡張カテーテル159は、捕捉ワイヤ150が後に続く、経路に沿って、少なくとも胸壁から胸膜腔を通して肺へと、標的組織43まで伸長するバルーンカテーテルであってもよい。
【0114】
拡張カテーテル159は、ナイロン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ラテックス、ゴムおよびそれらの混合物等の膨張バルーンとしての使用に対する任意の適切な可撓性材料で作製されるバルーンカテーテルであってもよい。一実施形態では、拡張カテーテル159は、例えばナイロン、またはポリエステル等の低または非コンプライアント材料(compliant material)で作製される。低または非コンプライアントカテーテルは、拡張カテーテル159を5気圧、10気圧、15気圧、20気圧、25気圧、30気圧、35気圧または40気圧まで膨脹させるための圧力の増加に応じて、その拡張されていない直径の最大約5%まで直径を増加させる。代替的には、拡張カテーテル159は、バルーンの直径が膨張の間に約40%も増加し得る、ハイブリッド材料または高コンプライアント材料から作製され得る。ハイブリッドまたは高コンプライアントの拡張カテーテル159は、膨脹圧の増加に応じて比例的に直径が増加し得て、より少数のバルーンサイズを使用することを可能とし得る。一実施形態では、膨脹させた拡張カテーテル159は、1mm~30mm、好ましくは3mm~25mm、より好ましくは5mm~20mm、より好ましくは8mm~15mmの外径を有する。任意の事象において、切除される標的組織よりも大きな、好ましくは標的組織径よりも最大5%、10%、15%または20%大きな全径まで、拡張カテーテル159が経路を拡張することが望ましい。
【0115】
拡張カテーテル159は、薬理学的材料、抗血栓性材料、血栓促進性材料、抗感染材料、抗悪性腫瘍材料、放射線、組織を封止するために使用される任意の材料、またはこれらの任意の組み合わせで被覆され得る。
【0116】
空気(二酸化炭素を含む)が肺から漏れているかどうかを判断するため、胸膜腔内の気体/液体を採取するための二酸化炭素センサを拡張カテーテル159に配置させることができ、気道の意図しない穿刺若しくは裂傷、またはカテーテル若しくは他の手術機器が、そこにある標的組織43に到達するために肺を貫入する地点での不適切若しくは不完全な封止を示し得る。
【0117】
図29に示されるように、拡張カテーテル159は胸壁から標的組織43まで組織路に沿ったチャネルを拡張させるために膨張する。チャネルの直径は、拡張カテーテル159の膨脹径に対応する。拡張カテーテル159は、特定の膨脹圧に対応してチャネルに対して所望の直径まで伸縮性部を膨張させて展開させるように、その伸縮性(バルーン)部分に膨脹流体を連通させるように構成される。すなわち、膨脹圧は、所望のチャネル径が達成されるまで継続して増加され得る。或る実施形態では、アブレーションデバイス(図示されていない)を拡張カテーテル159の外側表面に提供する。拡張カテーテル159が膨脹する際、アブレーションデバイスは、組織路を拡張させている間、出血をくい止め、空気漏れを封止するように、周囲の組織にエネルギーを導入する。
【0118】
図30および
図31に示されるように、一旦、所望のチャネル径が任意の形態の拡張によって達成されると、円筒状のスリーブ、例えば作業ポート151の管状部材163を、その近位端が、胸膜および胸壁開口部からつながる組織路に沿った肺の隣接部分を通して肺内部の標的組織43に隣接して位置するまで、拡張カテーテル159上を前進させることができる。或る実施形態では、作業ポート151の管状部材163の近位端部は、胸膜腔を通して肺へと標的組織43まで膨張させた拡張カテーテル159上および周囲の組織を通過するその前進を促進するため、鋭利エッジ167を有する。その管状部材163(または他のスリーブ)を標的組織43まで前進させた後、拡張カテーテル159を収縮させ、患者から引き出し、胸壁の開口部から切除される標的組織43まで伸長する固定径チャネルを残す。胸膜腔中の陰圧の維持に加えて、作業ポート151の開口(複数の場合もある)153に提供される真空もまた、作業ポート151に逆らって組織路を引き、封止前の肺虚脱に結びつく空気漏れまたは出血の防止を促進する。
【0119】
別の実施形態では、一旦所望の組織路の直径が達成されると、拡張カテーテル159を収縮させ、拡張カテーテルの周りの任意のスリーブの設置を伴わずにまたはその設置に先立って患者から引き出す。作業ポート151の管状部材163を、その近位端部が胸膜および胸壁の開口部からつながる組織路に沿った肺の隣接部分を通して、肺内の標的組織43に隣接して位置するまで、開口路を通して前進させることができる。或る実施形態では、作業ポート151の管状部材163の近位端部は、胸膜腔を通して肺へと、標的組織43までその前進を促進するための鋭利エッジ167を有する。特に、拡張カテーテルは、組織路の拡張について開示されているが、拡張の他の様式、例えば、先の実施形態で開示されるように、次第に直径が大きくなる針の連続的な前進も使用され得る。
【0120】
次いで、
図32~
図34に示されるように、切除デバイス160を、標的組織43に到達するまで、組織路(例えば、作業ポート151の管状部材163若しくは他のスリーブによって提供される固定径チャネル、またはシース若しくはスリーブが設置されていない場合に露出した経路内)を通して捕捉ワイヤ156上を前進させる。組織アンカー157によって標的組織43に固定されている捕捉ワイヤ156を引っ張ることによって標的組織43に対して後ろから加えられる遠位反力に逆らって、切除デバイス160を前進させる。これにより、標的組織43が、切除デバイス160の前進によって患者へと、或いはより大きな血管または気道の構造物へと更に押し込まれることを防止する。また、それは標的組織43を適所に固定して、その後のくり抜き工程を補助する。
【0121】
切除デバイス160は、その近位端部において鋭利な外周切断エッジ165で終端し、標的組織43の方へと前進される中空管状部材またはスリーブ164を備えることが好ましい。このようにして、切断デバイス160のスリーブ164は、組織を通して前進させながら回転させることにより組織のプラグをくり抜くように構成される。切除デバイス160は、好ましくはその遠位端部で、それによって体外から前進されて、作動ロッド166の回転によって回転され得る剛性作動ロッド166に接続される。標的組織43を切除するため、切除デバイス160を、その鋭利な切断エッジ165が標的組織43の近辺に到達するまで固定径スリーブ(例えば、作業ポート151の管状部材163)を通して前進させる。その管状部材164の直径(および周囲のスリーブの直径)は、好ましくは、少なくとも標的組織43の一部、より好ましくは標的組織43の全寸法、および幾らかの周囲の組織を収容するように選択された。標的組織43の付近に到着すると、捕捉ワイヤ156を引っ張ることによってそこに印加される反力に逆らって標的組織43へと切除デバイスを同時に前に押しながら、切除デバイス160を体外からの作動ロッド166の操作を介して時計回りおよび反時計回りに交互に回転させることができる。この操作によって、切除デバイス160の鋭利エッジ165は、標的組織43の周囲の組織の環状切開部を作製し、該切開部を通して標的組織43上を、好ましくはその近位切断エッジが組織アンカー157に到達するまで前進される。その場所では、切除デバイス160は、標的組織43および幾らかの周囲の組織をくり抜き、そのコアは、切除デバイス160の中空管状部材164内に配置された。次いで、標的組織43は切除され、胸壁の開口部を通して外部へと、固定径チャネルを通して(または固定径スリーブが置かれなかった場合、組織路を通して)捕捉ワイヤ156および切除デバイス160の両方を同時に引き出すことにより、身体から摘除される。これは
図35に見ることができる。次いで、切除デバイス160内にある組織コアの中に閉じ込められた標的43を、検体収集管、ペトリ皿、または病理学的若しくは微生物学的な分析等のex vivoの検査および分析用の他の容器に送達することができる。
【0122】
図35および
図36に示されるように、標的組織43を切除した後、封止ガイドワイヤ162を、チャネルまたは組織路を通して(例えば、まだ適所にあれば作業ポート151の管状部材163を通して)その近位端部が、そこから標的組織43が切除される付近に到達するまで通過させることができる。次いで、封止デバイス200を、封止ガイドワイヤ162上に前進させる。別の実施形態では、胸膜を通して前進させて、封止デバイス200に対するガイドとしての役割を果たすように適所に維持させた針154上に、封止デバイス200を前進させる。また、空気漏れによる肺虚脱または出血を予防するため、胸膜腔または肺を通る実質の通路の内部において陰圧を維持することに加えて、作業ポート151(存在する場合)の開口153(複数の場合もある)で提供される真空は、封止デバイス200に逆らって組織路を引いて均一でロバストな封止を促進する。封止デバイス200は、熱エネルギー、電気エネルギー、RFまたはレーザーによるもの等の、封止を促進するためエネルギーを伝えることができる近位先端を備える。例としては、限定されないが、ダイオードレーザー、周囲の組織に対して経路を封止する熱を伝えるように設計された任意の周波数のレーザーが挙げられる。別の例としては、凍結アブレーションを使用して経路を封止するように構成された極低温機構を備える近位先端が挙げられる。更なる例は、スチーム/蒸気またはマイクロ波による封止を利用する封止デバイス200を提供する。封止デバイス200が始動され、経路の封止を開始するため手術者の方に引き戻される。固定径スリーブ(作業ポート151の管状部材163等)が存在する場合であれば、封止デバイス200の近位端部は、そのスリーブの近位端部を越えて前進され、両方が共に引き出され得る。このようにして、スリーブが引き出されるにつれて新しい組織が露出され、封止デバイス200の近位端部がその組織に到着して、エネルギーを供給し、該組織を焼灼する。アセンブリ全体が引き出されて、組織路の全長が焼灼または封止されるまで、この手技に従ってもよい。封止デバイス200がその組織を焼灼する(例えば、焼き付けて封止する)際に、エネルギーが周囲の組織路に伝えられ、血液または空気の放出を防止する。
【0123】
別の実施形態では、封止デバイスが引き出されるにつれて、流体は、封止デバイス200の近位端部を通して排出され得る。封止デバイス200の近位端部を通して排出され得る流体の例としては、天然/生物学的接着剤(ポリペプチド/タンパク質系接着剤、フィブリン系接着剤、ゼラチン系接着剤、コラーゲン系接着剤、アルブミン系接着剤、多糖系接着剤、キトサン系接着剤、ヒト血液系接着剤、および動物系接着剤等)、並びに合成物および半合成接着剤(シアノアクリレート、ポリエチレングリコールヒドロゲル、ウレタン系接着剤および他の合成接着剤等)が挙げられる。流体は、経路の体積を満たすことができ、周囲の組織を焼灼して封止するのに十分な温度まで、周囲の組織の温度を越えるRFエネルギー(例えば、湿式電極)またはレーザーによって加熱され得る。流体とRFとの組み合わせは、周囲の組織を封止し、血液、空気、リンパ組織等の漏出を防止する。
【0124】
経路が封止された後、創傷を出血または空気漏れについて評価する。漏れが見つかると、上記経路を後退させてもよく、或いは胸腔チューブを肺の周囲の胸膜腔および/または胸膜の外側の胸腔から流体を排水するため挿入してもよい。代替的には、胸腔チューブを既存の経路に挿入することで、患者に対して更なる傷をもたらす必要を排除する。胸腔チューブを経路に残して、肺に吸引を提供して、従来の方法で胸壁チューブと並列させて組織を引っ張るため吸引装置に取り付けてもよい。或る期間をかけて、上記経路が治癒し、内出血がおさまったら、従来の方法で胸腔チューブを抜去して、創傷を被覆してもよい。
【0125】
或る実施形態では、リアルタイムで経路の切断面から二酸化炭素を含む空気が漏れ出ているかどうかを判断するため、胸膜腔内の気体/液体を採取する手技全体に亘って作業ポート151内部にまたはそれと連通させて二酸化炭素センサを設置する。この実施形態では、かかるCO2センサは、肺に切れ目が入っているため空気が漏れている場合、または標的組織に隣接する手術部位に到達するため肺を通る手術による刺し傷が完全に若しくは適切に封止されていない場合の指標を提供することができる。
【0126】
代替法では、
図30および
図31に示されるように、切除デバイス160を膨張させた拡張カテーテル159上に前進させて、膨張した拡張カテーテル159の近位に位置する標的組織を切除することができる。この実施形態では、切除デバイス160は、上に記載される作業ポート151の形態をとることができるが、作業ポート151の管状部材163は、組織を通して前進させながら回転させることにより組織のプラグをくり抜くように構成される。すなわち、作業ポート151は、膨脹させた拡張カテーテルの向こうの標的組織をくり抜くための切除デバイスとしてはたらく。標的組織43を切除するため、切除デバイス160/作業ポート151を、その鋭利エッジ167が標的組織43の近辺に到着するまで前進させる。その管状部材163の直径は、好ましくは少なくとも標的組織43の一部、より好ましくは標的組織43の全寸法、および幾らかの周囲の組織を収容するように選択された。標的組織43の近辺に到着すると、捕捉ワイヤ156を引っ張ることによってそこに印加される反力に逆らって標的組織43へと同時に前に押しながら、切除デバイス160/作業ポート151を体外から時計回りおよび反時計回りに交互に回転させることができる。この操作によって、鋭利エッジ167は、標的組織43の周囲の組織の環状切開部を作製し、該切開部を通して標的組織43上を、好ましくはその近位切断エッジが組織アンカー157に到達するまで前進させる。その地点では、切除デバイス160/作業ポート151は、標的組織43および幾らかの周囲の組織をくり抜き、そのコアは、管状部材163内に配置された。次いで、標的組織43は切除され、組織路を通しておよび胸壁の開口部を通して外部へと、捕捉ワイヤ156および切除デバイス160/作業ポート151の両方を同時に引き出すことにより、身体から摘除される。理解されるように、この実施形態では、組織路を通して遠位にそこにある標的組織43のコアが引き出されることを可能とするため、拡張カテーテル159もまた、切除デバイスとして作用する作業ポート151の引き出しと並行して引き出されなくてはならない。これを達成するため、拡張カテーテル159をわずかにまたは完全に収縮させて、作業ポート151および拡張カテーテル159の近位端部の向こうの標的組織43のコアとのその引き出しを促進する。その後、封止デバイス200は、針が手技の開始時から適所に留まっている場合、任意に針に沿ってまたは針上を組織路へと挿入させた後、上に記載される方法で、その引き出しの際に経路を封止するように始動され得る。管状部材163内にある組織コアの中に閉じ込められた標的43を、検体収集管、ペトリ皿、または病理学的若しくは微生物学的な分析等のex vivoの検査および分析用の他の容器に送達することができる。
【0127】
別の実施形態では、
図28に示されるように、作業ポート151を通して捕捉ワイヤ156上に拡張カテーテル159を前進させるのではなく、
図37に示されるように、標的組織43に到達するまで、切除デバイス160を捕捉ワイヤ156上に直接前進させる。これを促進するため、切除デバイス160は、標的組織まで組織路を通して切除デバイス160を誘導するため、そこを通して捕捉ワイヤ156が通過し得る中心内腔を備える。組織アンカー157によって標的組織43に固定されている捕捉ワイヤ156を引っ張ることによって標的組織43に対して後ろから加えられる遠位反力に逆らって、切除デバイス160を前進させる。これにより、標的組織43が、切除デバイス160の前進によって患者へと、或いはより大きな血管または気道の構造物へと更に押し込まれることを防止する。また、
図32~
図35に関して記載したように、それは標的組織43を適所に固定して、その後のくり抜き工程を補助する。
【0128】
別の実施形態では、
図38に示されるように、捕捉ワイヤ156を、組織アンカー157を介して標的組織43の後ろから留めた後、吸引カテーテル168を捕捉ワイヤ156上に前進させることができる。吸引カテーテル168を、標的組織43に印加された反力に逆らって前進させることができる。吸引カテーテル168は、1つ以上の開口169を有する近位端部を持つ中空管状部材である。吸引カテーテル168の遠位端部は真空源と連通している。吸引カテーテル168は、近位端部が胸壁の開口部を通して挿入され、遠位端部が体外にある場合、近位端部が胸腔へと、例えば胸膜腔内で、および肺を通して標的組織43まで伸長し得るように、所定の長さである。吸引カテーテル168の内径は、捕捉ワイヤ156の外径より大きい。吸引カテーテル168の遠位端部に連結された真空源は体外にあり、吸引カテーテル168に対して真空に引くのに有効である。そこにある開口(複数の場合もある)169を通して引かれて得られた真空は、手術中肺を完全に拡張させたままにし、吸引カテーテル168の方に肺経路を更に引くため、胸腔内を陰圧に維持する。この吸引は、さもなければ胸壁から肺を剥がし得る血液、流体および空気の除去を可能とする(すなわち、手技中の血気胸を防止する)。一実施形態では、開口169(複数の場合もある)を通して引かれる真空は、-5cmH
2O~-100cmH
2Oである。吸引カテーテル168が適所に置き、組織路内で真空を維持しながら、残りの工程(拡張カテーテル159による経路の拡張、切除デバイス160による標的組織43の切除、および封止デバイス200による経路の封止)を行うことができる。
【0129】
別の実施形態では、
図39および
図40に示されるように、捕捉ワイヤ156上を、胸腔の外から遠位方向に捕捉ワイヤ156を引っ張ることによって印加された反力に逆らって収縮した状態で細長い環状配置を有する拡張カテーテル159を前進させる。拡張カテーテル159を、胸膜腔を通り、捕捉ワイヤ156上を肺へと、組織アンカー157に近接して位置する標的組織43まで前進させる。拡張カテーテル159は、少なくとも胸壁から胸膜腔を通して肺へと、経路に沿って標的組織43まで伸長するバルーンカテーテルであってもよく、捕捉ワイヤ156が後に続く。
図39中の拡張カテーテル159は、
図40の線A-Aの断面に示されるように、それぞれ同軸の第1の(外部)チューブ202および第2の(中間)チューブ203を含むものとして示される。拡張カテーテル159を膨張させると、第1のチューブ202および第2のチューブ203は一定の直径を有して、拡張カテーテル159は細長い環状体の形態を有するようにその間の環状空隙を画定し、該環状体の体積は第1のチューブ202と第2のチューブ203との間で画定される環状円筒突出部である。チューブ202および203の一方または両方(好ましくは少なくとも外側チューブ202)は、カテーテル159が膨張していない場合、通常折り畳まれまたは折り畳み可能であり、
図40に示されるように膨脹流体によるカテーテル159の膨脹によってのみその拡張された固定径を達成するように、拡張カテーテル159の連続する柔軟な壁の一部で形成されることが好ましい。この実施形態では、チャネルは、その長さに沿って伸長する拡張カテーテル159の中心に形成される。捕捉ワイヤ156は、拡張カテーテル159のチャネルを通して伸長する。一旦拡張カテーテルが挿入されて拡張されると、切除デバイス160を、標的組織43に到達するまで、捕捉ワイヤ156上でチャネルを通して前進させることができる。組織アンカー157によって標的組織43に固定されている捕捉ワイヤ156を引っ張ることによって標的組織43に対して後ろから加えられる遠位反力に逆らって、切除デバイス160を前進させる。これにより、標的組織43が、切除デバイス160の前進によって患者へと、或いはより大きな血管または気道の構造物へと更に押し込まれることを防止する。また、
図32~
図35に関して記載したように、それは標的組織43を適所に固定して、その後のくり抜き工程を補助する。先の実施形態に開示されるように、標的組織に到達したら、切除デバイス160を作動させて標的組織またはその部分をくり抜き、引き出すことができる。その後、好ましくは、収縮した拡張カテーテル159の近位端部のすぐ向こうの場所で封止デバイス200の始動および引き出しと並行して、拡張カテーテル159の収縮および引き出し時に上記経路を封止するため、先に記載される封止デバイスを、チャネルを通して挿入することができる。理解されるように、この実施形態は、切除される標的組織(または切除されるその部分)が拡張カテーテルの中心のチャネルを通り抜けるのに十分小さい場合にのみ有効となる。そのサイズは、手技に対して適切に大きさが合わせられた拡張カテーテル159を選択することができるように、上に示されるCT蛍光透視または他の適切な技術によって前もって決定され得る。
【0130】
本発明は、その具体的な実施形態と関連させて記載されているが、更なる修飾が可能であることが理解され、本出願は、概して、本発明の原理に従う本発明の任意の変化、使用または適合を包含することが意図され、本発明が属する技術分野における既知の慣例または慣行に含まれる、並びに上に述べる必須の特徴に適用され得る、並びに本発明の範囲および添付の特許請求の範囲の限定に含まれるような、本開示からの逸脱を含む。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的組織を切除するように構成される装置であって、前記装置が、標的組織を貫通し、標的組織を超えるよう設計された近位端部を有する捕捉ワイヤと、該捕捉ワイヤの該近位端部に接続された組織アンカーと、使用の際に、該捕捉ワイヤに沿って前進させて、前記標的組織を切除することができるように構成される切除デバイスと、切除デバイスに結合させた切断エッジと、RFエネルギー源と、を備える、標的組織を切除するように構成される装置。
【請求項2】
前記装置が、組織路に沿った固定径通路を提供するため、前記捕捉ワイヤ上に挿入可能であるように構成された固定径スリーブを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記切除デバイスが、切断エッジで終端する中空スリーブを備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記切除デバイスが、使用に際して、前記標的組織へと前記捕捉ワイヤに沿って該切除デバイスを前進させることにより、前記切断エッジを介して前記標的組織の周辺の組織において切開部を作製し、前記標的組織が前記スリーブ内に位置するまで、前記切開部を通して前記標的組織上に前記中空スリーブを前進させることができるように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、前記捕捉ワイヤと前記切除デバイスの両方が前記患者内の組織路を通して引き抜かれて前記標的組織を切除することができるように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
真空源をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
封止デバイスをさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記標的組織が、前記患者の肺内の結節を含む、請求項1から7のいずれかに記載の装置。