(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052137
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】多量体化ストラドマーGL-2045の製造最適化
(51)【国際特許分類】
C12P 21/02 20060101AFI20230404BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230404BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20230404BHJP
C07K 1/20 20060101ALI20230404BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230404BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C07K1/22
C07K1/18
C07K1/20
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211024
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2019530804の分割
【原出願日】2017-12-08
(31)【優先権主張番号】62/432,402
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】510089111
【氏名又は名称】グリックニック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, デイビッド エス.
(72)【発明者】
【氏名】メリジョン, エマニュエル ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, ヘンリック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】多量体化ストラドマーGL-2045の製造最適化の提供。
【解決手段】ホモ二量体及び/又は前記ホモ二量体の多量体を含む組成物を生成するための方法であって、前記ホモ二量体が、特定の配列のアミノ酸21~264をそれぞれ含む2つの単量体を含み、前記方法が(a)前記特定の配列をコードする核酸配列を含む発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、37℃±1℃の成長温度で5±1日間培養することと、(b)成長温度を37℃±1℃から32.5℃±1℃にシフトさせることと、(c)前記培地から前記ホモ二量体及び/又は前記ホモ二量体の多量体を採取することと、を含む、方法である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え生成されたGL-2045組成物であって、前記GL-2045組成物のホモ二量体画分が、前記組成物全体の20%未満を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項2】
組み換え生成されたGL-2045組成物であって、前記GL-2045組成物の最高次の多量体画分が、前記組成物全体の少なくとも約30%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項3】
前記ホモ二量体の二量体画分が、前記組成物全体の約7%~約12%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項4】
前記ホモ二量体の三量体画分が、前記組成物全体の約6%~約11%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項5】
前記ホモ二量体の四量体画分が、前記組成物全体の約10%~約15%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項6】
前記ホモ二量体の五量体画分が、前記組成物全体の約6%~約10%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項7】
前記ホモ二量体の六量体画分が、前記組成物全体の約10%~約14%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項8】
前記ホモ二量体~6マーの二量体画分が、前記組成物全体の合計約40~60%を構成する、請求項1または2に記載の組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項9】
組み換え生成されたGL-2045組成物であって、
a)ホモ二量体画分が、前記組成物全体の約20%未満を構成し、
b)最高次の多量体画分が、前記組成物全体の少なくとも約30%を構成し、
c)前記ホモ二量体の二量体画分が、前記組成物全体の約7%~約11%を構成し、
d)前記ホモ二量体の三量体画分が、前記組成物全体の約6%~約11%を構成し、
e)前記ホモ二量体の四量体画分が、前記組成物全体の10%~約15%を構成し、
f)前記ホモ二量体の五量体画分が、前記組成物全体の約6%~約10%を構成し、
g)前記ホモ二量体の六量体画分が、前記組成物全体の約10%~約14%を構成し、
h)前記ホモ二量体の前記二量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約40%~約60%を構成し、
i)前記ホモ二量体の前記三量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約32%~約50%を構成し、
j)前記ホモ二量体の前記四量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、約26%~約39%を構成し、
k)前記ホモ二量体の前記五量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約18%~約23%を構成し、または
l)(a)~(k)の任意の組み合わせである、組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項10】
組み換え生成されたGL-2045組成物であって、
a)ホモ二量体画分が、前記組成物全体の約20%未満を構成し、
b)最高次の多量体画分が、前記組成物全体の少なくとも約30%を構成し、
c)前記ホモ二量体の二量体画分が、前記組成物全体の約7%~約11%を構成し、
d)前記ホモ二量体の三量体画分が、前記組成物全体の約6%~約11%を構成し、
e)前記ホモ二量体の四量体画分が、前記組成物全体の10%~約15%を構成し、
f)前記ホモ二量体の五量体画分が、前記組成物全体の約6%~約10%を構成し、
g)前記ホモ二量体の六量体画分が、前記組成物全体の約10%~約14%を構成する
、組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項11】
組み換え生成されたGL-2045組成物であって、
a)ホモ二量体画分が、前記組成物全体の約20%未満を構成し、
b)最高次の多量体画分が、前記組成物全体の少なくとも約30%を構成し、
h)前記ホモ二量体の前記二量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約40%~約60%を構成し、
i)前記ホモ二量体の前記三量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約32%~約50%を構成し、
j)前記ホモ二量体の四量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約26%~約39%を構成し、
k)前記ホモ二量体の五量体~前記ホモ二量体の前記六量体画分が、前記組成物全体の約18%~約23%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の前記組み換え生成された精製GL-2045を用いて、治療または予防が必要な対象における炎症性、自己免疫、または感染性疾患または障害を治療または予防する方法。
【請求項13】
前記疾患または障害が、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性多発ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、重症筋無力症、臓器移植、およびリウマチ性関節炎から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記GL-2045が、静脈内に、皮下に、経口で、腹腔内に、舌下に、口腔内に、経皮的に、皮下移植を介して、または筋肉内に投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
GL-2045を生成するための方法であって、
(a)GL-2045をコードする発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、前記CHO細胞が約500万~約3000万細胞/mLの細胞密度に到達するまで、37℃±1℃で培養することと、
(b)成長温度を37℃±1℃から32.5℃±1℃にシフトさせることと、
(c)前記培地からGL-2045を採取することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記細胞が、前記成長温度のシフト前に、約1000万~約2500万細胞/mLの密度まで成長される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が、前記成長温度のシフト前に、約1000万~約1500万細胞/mLの密度まで成長される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、前記成長温度のシフト前に、約1500万~約2000万細胞/mLの密度まで成長される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記培養が、ActiCHO P基礎培地中で行われる、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CHO細胞が、培養中に、ActiCHO餌料AおよびActiCHO餌料Bを給餌される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CHO細胞が、1日おきに給餌される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記GL-2045をコードする発現ベクターが、配列番号1のリーダーペプチドを含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記GL-2045をコードする発現ベクターが、piggyBacトランスポゼース認識配列をさらに含み、かつpiggyBacトランスポゼースをコードするベクターでトランスフェクトされる、請求項15~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記GL-2045をコードする発現ベクターが、20個未満のゲノム挿入を生じる、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項15~24のいずれか一項に記載の方法によって作製された、組み換え生成されたGL-2045。
【請求項26】
GL-2045発現カセットを含む、GL-2045をコードする発現ベクターであって、前記GL-2045発現カセットが、隣接したpiggyBac最小逆方向反復要素である、GL-2045をコードする発現ベクター。
【請求項27】
GL-2045を生成するための方法であって、
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を請求項26に記載の発現ベクターでトランスフェクトすることと、
(b)37℃±1°の成長温度で、ActiCHO P培地を用いて生物反応器中で(a)からの前記CHO細胞を培養することと、
(c)前記培養物が約1000万~約1500万細胞/mLの細胞密度に到達するまで、37℃±1℃の成長温度で、Acti CHO餌料AおよびActi CHO餌料Bを(b)からの培養物に毎日給餌することと、
(d)前記成長温度を37℃±1℃から32.5℃±1℃にシフトさせることと、
(e)前記培地からGL-2045を採取することと、を含み、前記方法が、21日目に>80%の細胞生存率、および>9,000mg/mLの最終タンパク質力価であって、そのうちGL-2045の>70%が多量体として存在する、最終タンパク質力価を生じ、前記多量体の>30%がさらに高次の多量体GL-2045である、方法。
【請求項28】
前記細胞生存率が、培養の18日目に95%を超える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
多量体の割合が、80%を超える、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法によって生成されたGL-2045を精製する方法であって、
(a)親和性クロマトグラフィによって前記培養上清からGL-2045を精製することと、
(b)陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、および疎水性相互作用クロマトグラフィのうちの1つ以上によってGL-2045を研磨することと、
を含む、方法。
【請求項31】
前記親和性クロマトグラフィが、タンパク質Aカラムを使用する、請求項30に記載の
方法。
【請求項32】
前記タンパク質Aカラムが、NaOH耐性カラムである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質Aカラムが、MabSelect SuRue樹脂である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
親和性クロマトグラフィによる精製が、3つの異なる洗浄緩衝液のうちの1つを利用して、精製状態を最適化することを含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
親和性クロマトグラフィによる精製が、前記親和性クロマトグラフィカラムからGL-2045を溶出させることを含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
GL-2045の溶出が、pH勾配を有する溶出を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
GL-2045の溶出が、pH勾配を有しない溶出を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記親和性クロマトグラフィカラムが再生されて、結合されたGL-2045を除去する、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記親和性クロマトグラフィカラムが、製造業者によって示唆されるよりも頻繁に再生される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記親和性クロマトグラフィカラムが、各精製周期の前に再生される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記親和性クロマトグラフィカラムが、0.5MのNaOH緩衝液を用いて再生される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
GL-2045の研磨が、クロマトグラフィを通した陰イオン交換流を含む、請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
クロマトグラフィを通した陰イオン交換流が、Q Sepharose速流カラムを使用することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
GL-2045の研磨が、陽イオン交換クロマトグラフィを含む、請求項30~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
陽イオン交換クロマトグラフィが、POROS XSカラムを使用することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
陽イオン交換クロマトグラフィが、酢酸ナトリウム溶出緩衝液を使用することを含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記溶出緩衝液が、36.5~38.5%の1MのNaCl緩衝液をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
GL-2045の研磨が、疎水性相互作用クロマトグラフィを含む、請求項30~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
疎水性相互作用クロマトグラフィが、ブチルFF樹脂を使用することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
疎水性相互作用クロマトグラフィが、フェニルHP樹脂を使用することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記カラムが、前記GL-2045ホモ二量体の単離を生じる、請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
疎水性相互作用クロマトグラフィが、オクチルFF樹脂を使用することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記カラムが、GL-2045の非秩序凝集体の除去を生じる、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
GL-2045を精製するための方法であって、
(a)タンパク質A親和性クロマトグラフィによって培養上清からGL-2045を精製することを含み、前記タンパク質Aカラムが、MabSelect SuRe培地などの耐アルカリ性培地を使用し、前記精製が少なくとも2つの洗浄周期で行われ、定置洗浄(CIP)手順が、0.5MのNaOH緩衝液などの高NaOH再生工程を用いた各精製ランの後に行われる、GL-2045を精製するための方法。
【請求項55】
GL-2045を研磨するための方法であって、
(a)陽イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することであって、前記陽イオン交換カラムが、POROS XSなどの高能力の高解像度樹脂を含有し、前記溶出緩衝液が、36.5~38.5%の1MのNaCl緩衝液から構成される酢酸ナトリウム緩衝液である、陽イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することと、
(b)陰イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することであって、前記陰イオン交換カラムが、高い化学的安定性を有し、Q Sepharose速流培地のような定置洗浄および衛生プロトコルを可能にする、強陰イオン交換培地を含有する、陰イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することと、
(c)疎水性相互作用クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することであって、前記疎水性相互作用培地が、ブチルFF、フェニルHP、またはオクチルFF樹脂であり、かつ研磨に加えて、GL-2045の特定の画分を単離または除去するために選択される、疎水性相互作用クロマトグラフィによってGL-2045を研磨することと、を含む、GL-2045を研磨するための方法。
【請求項56】
前記GL-2045の最終タンパク質力価が、>4g/Lである、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記GL-2045の最終タンパク質組成物が、>70%の多量体である、請求項1~
56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記多量体が、さらに高次の多量体である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~58のいずれか一項に記載の方法によって作製された、組み換え生成された精製GL-2045。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2016年12月9日に出願された、米国仮特許出願第62/432,402号に対する優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出されるテキストファイルの記載 ここで電子的に提出されるテキストファイルの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。コンピュータ読み取り可能なフォーマットコピーの配列一覧(ファイル名:GLIK_017_01WO_ST25.txt;記録日:2017年12月8日;ファイルサイズ、15kb)。
【0003】
本発明は、概して、免疫学、自己免疫、炎症、および腫瘍免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、GL-2045を製造する最適化方法に関する。本発明はまた、そのように最適に製造されたGL-2045を含む新規組成物、ならびにGL-2045組成物を使用する方法に関する。本発明はさらに、自己免疫疾患および炎症性疾患などの病的状態の治療または予防に関する。
【背景技術】
【0004】
プールヒト静脈内免疫グロブリン(IVIG)は、1950年代前半以降の免疫不全症の治療に、その後の数十年では自己免疫疾患および炎症性疾患の治療に使用されている。IVIGは、補体C1qおよびFcガンマ受容体(FcγR)へのIVIG凝集体の結合、ならびにNK細胞(例えば、FcγRIIIa)、マクロファージ(例えば、FcγRIIa)、B細胞(例えば、FcγRIIb)、単球、および樹状細胞を含む単球由来細胞などの免疫細胞に対するこれらの受容体の架橋を含む、いくつかの機構を介して、寛容原性免疫効果を媒介する。IVIGは、少量かつ不定量の多量体免疫グロブリン、IgAまたはIgMを含む、典型的には90%超の未変性IgGを含有するプールヒト血漿から製造される、無菌状態の精製免疫グロブリンG(IgG)生成物の製剤である(Rutter A et al.,J Am Acad Dermatol,2001,June;44(6):1010-1024)。
【0005】
実質的な公開データは、hIVIGの小さな凝集IgG画分、具体的にはこれらの凝集体のFc部分が、病的免疫複合体によって媒介された特定の疾患の治療において過度に効果的であることを示唆している。微量(1~5%)のIgGが、IVIG内に多量体の形態として存在し、IgG二量体が、hIVIGの5~15%を構成し得ることが観察されている。IVIG凝集体に類似する、Fc受容体および補体成分C1qを貪欲に結合させる組み換え生成されたFc多量体を使用するIVIG療法に対する代替案が記載されている(米国特許出願公開第2010/0239633号、同第2013/0156765号、同第2015/0218236号、および国際特許出願公開第WO2015/132364号を参照のこと)。
【0006】
1つのそのようなFc多量体、GL-2045は、以前に開示されている(米国特許出願公開第2013/0156765号)。GL-2045は、IVIGの組み換え模倣薬である多量体化汎用ストラドマーである。GL-2045は、免疫グロブリンIgG1 Fcが結合するリガンドのうちの大部分または全てを結合させる。さらに、GL-2045は、全ての標準受容体に、かつ補体C1qに、高い親和性および結合力で結合し、IVIGと比較して、10~1,000倍大きいインビトロ効能を有する。加えて、GL-2045、またはそのマウス等価物は、コラーゲン誘導関節炎、実験的自己免疫性神経障害、特発性血小板減少性紫斑病、および実験的自己免疫性重症筋無力症を含む、自己免疫疾患の多数の動物モデルにおいて効果的である。このように、GL-2045はまた、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性多発ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、重症筋無力症、臓器移植、およびリウマチ性関節炎を含むがこれらに限定されない、広範囲の自己免疫疾患の治療において潜在的な臨床有用性を有する。
【0007】
GL-2045の効力および効能においてIVIGを上回る利点に加えて、GL-2045は、製造プロセスにおけるいくつかの利点を実証している。IVIGは、プールヒト血液製剤であり、これは、数万人のドナーの血液から得られ、次にそれらの血清を一緒に混合し、続いて精製して、ウィルスおよび他の感染体、ならびに凝集IgGを除去することを意味する。このように、入手および供給が制限されており、かつ生成費用が高い。加えて、大量のIVIG間に有意な程度のばらつきがある。反対に、GL-2045は、組み換え生成されるため、供給および生成費用の困難をなくすと同時に、製造プロセスにわたってより良好な制御を提供する。
【0008】
GL-2045ホモ二量体は、Fcガンマ受容体および補体C1qを含むFcリガンドに対して、親和性を有し、かつ実質的な結合力を有さずに結合する。GL-2045ホモ二量体はまた、結合力により標準受容体に結合することができるさらに高次の多量体を天然に形成する。GL-2045ホモ二量体は、IVIGの多量体画分の増強された効能を模倣するGL-2045のこれらのさらに高次の多量体である。しかしながら、標準的な細胞培養条件は、可変的な細胞生存率のレベル、多量体されたタンパク質の程度、およびタンパク質力価を生み出す。したがって、定義された多量体パターンを生じるGL-2045、および特に、細胞生存率およびタンパク質力価を最適化しながら、さらに高次の多量体の百分率の増加を生じるGL-2045を製造する方法が当該技術分野において必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0239633号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0156765号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0218236号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/132364号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Rutter A et al.,J Am Acad Derm atol,2001,June;44(6):1010-1024
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、標準的な製造技術に対して、細胞生存率の改善、高タンパク質力価の改善、およびさらに高次の多量体の百分率の驚くべき実質的な増加の3つ全てを提供する。したがって、この最適化された製造方法は、非最適に製造されたGL-2045組成物と比較して、炎症性疾患を治療するための増強された効能を有する最適に製造されたGL-2045組成物を提供する。GL-2045の最適化された製造は、最適化された上流製造方法を含み、およびいくつかの実施形態では、最適化された下流方法を含む。最適化された上流製造方法は、a)高タンパク質力価を発生させ、b)高細胞生存率を維持して細胞片残屑を最小にし、かつc)GL-2045の機能性に必須であるホモ二量体の高秩序多量体、および所望に応じて、ホモ二量体の両方を保持する。最適化された下流製造方法は、具体的にはGL-2045の選択された多量体プロファイルを維持するために用いられる様々な精製技術を含む。したがって、いくつかの実施形態では、定義された多量体プロファイルを有するGL-2045組成物を本明細書に提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、GL-2045をコードする発現ベクターで安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、CHO細胞が約500万~約3000万細胞/mLの細胞密度に到達するまで、37℃±1℃で培養することと、成長温度を37℃±1℃~32.5℃±1℃にシフトさせることと、培地からGL-2045を採取することと、を含む、GL-2045を生成するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、成長温度のシフト前に、約1000万~約2500万細胞/mLの密度まで成長される。いくつかの実施形態では、細胞は、成長温度のシフト前に、約1000万~約1500万細胞/mLの密度まで成長される。いくつかの実施形態では、細胞は、成長温度のシフト前に、約1500万~約2000万細胞/mLの密度まで成長される。いくつかの実施形態では、生物反応器培養の約3日目の37℃±1℃~34℃±1℃へのシフトと、約7日目の34℃±1℃~31℃±1℃への第2の温度シフトとを伴う、二重温度シフトを用いる。
【0013】
いくつかの実施形態では、CHO細胞は、ActiCHO P基礎培地中に培養される。いくつかの実施形態では、CHO細胞は、培養中に、ActiCHO餌料AおよびActiCHO餌料Bを給餌される。いくつかの実施形態では、CHO細胞は、1日おきに給餌される。いくつかの実施形態では、GL-2045をコードする発現ベクターは、配列番号1のリーダーペプチドを含む。いくつかの実施形態では、GL-2045をコードする発現ベクターは、piggyBacトランスポゼース認識配列をさらに含み、かつpiggyBacトランスポゼースをコードするベクターでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、GL-2045をコードする発現ベクターは、20個未満のゲノム挿入を生じる。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって作製された組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、GL-2045発現カセットを含む、GL-2045をコードする発現ベクターであって、GL-2045発現カセットが、piggyBac最小逆方向反復要素によって隣接されている、発現ベクターを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、GL-2045を生成するための方法であって、CHO細胞を本明細書に記載される発現ベクターでトランスフェクトすることと、37℃±1°の成長温度で、ActiCHO P培地を用いて生物反応器中でCHO細胞を培養することと、培養物が約1000万~約1500万細胞/mLの細胞密度に到達するまで、37℃±1℃の成長温度で、Acti CHO餌料AおよびActi CHO餌料BをCHO細胞の培養物に毎日給餌することと、37℃±1℃~32.5℃±1℃まで成長温度をシフトさせることと、培地からGL-2045を採取することと、を含み、本方法が、21日目に>80%の細胞生存率、および>9,000mg/mLの最終タンパク質力価であって、そのうちGL-2045の>70%が多量体として存在する、最終タンパク質力価を生じ、多量体の>30%がさらに高次の多量体GL-2045である、方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞生存率は、培養の18日目に95%を超える。いくつかの実施形態では、多量体の割合は、80%を超える。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されたGL-2045を精製する方法であって、親和性クロマトグラフィによって培養上清からGL-2045を精製することと、陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、および疎水性相互作用クロマトグラフィのうちの1つ以上によってGL-2045をポリッシュすることと、を含む、方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィの前に、深層濾過を用いる。いくつかの実施形態では、深層フィルタは、X0HC(ミリポア)である。いくつかの実施形態では、深層濾過ユニットは、高百分率のDNAを上清から除去する。いくつかの実施形態では、深層濾過ユニットは、Emphaze(商標)AEXハイブリッド精製器(3M)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィは、タンパク質Aカラムを使用する。いくつかの実施形態では、タンパク質Aカラムは、NaOH耐性樹脂を含む。いくつかの実施形態では、タンパク質A樹脂は、MabSelect SuRe樹脂である。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィによる精製は、3つの異なる洗浄緩衝液のうちの1つを利用して精製状態を最適化することを含む。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィによる精製は、親和性クロマトグラフィカラムからGL-2045を溶出させることを含む。いくつかの実施形態では、GL-2045の溶出は、pH勾配を用いた溶出を含む。いくつかの実施形態では、GL-2045の溶出は、pH勾配を用いない溶出を含む。一実施形態では、溶出は、グリシン緩衝液を使用して行われる。別の実施形態では、溶出は、酢酸緩衝液を使用して行われる。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィカラムは、結合されたGL-2045を除去するために再生される。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィカラムは、製造業者によって示唆されるよりも頻繁に再生される。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィカラムは、各精製周期の前に再生される。いくつかの実施形態では、親和性クロマトグラフィカラムは、0.5MのNaOH緩衝液を用いて再生される。
【0019】
いくつかの実施形態では、GL-2045のポリッシュは、クロマトグラフィを通した陰イオン交換流を含む。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィを通した陰イオン交換流は、Q Sepharose速流カラムを使用することを含む。いくつかの実施形態では、GL-2045のポリッシュは、陽イオン交換クロマトグラフィを含む。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィは、POROS XSカラムを使用することを含む。いくつかの実施形態では、陽イオン交換クロマトグラフィは、酢酸ナトリウム溶出緩衝液を使用することを含む。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、36.5~39.0%の1MのNaCl緩衝液をさらに含む。一実施形態では、溶出方法は、段階溶出であり、別の実施形態では、溶出は、勾配溶出である。いくつかの実施形態では、GL-2045のポリッシュは、疎水性相互作用クロマトグラフィを含む。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィは、ブチルFF樹脂を使用することを含む。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィは、フェニルHP樹脂を使用することを含む。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィ(「HIC」)は、フェニルセファロース6速流高サブ樹脂を使用することを含む。一実施形態では、HIC方法は、フロースルーモードにあり、別の実施形態では、HIC方法は、結合モードにある。いくつかの実施形態では、HIC樹脂は、GL-2045ホモ二量体の単離を生じる。いくつかの実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィは、オクチルFF樹脂を使用することを含む。いくつかの実施形態では、カラムは、GL-2045の非秩序凝集体の除去を生じる。
【0020】
いくつかの実施形態では、GL-2045を精製するための方法であって、タンパク質A親和性クロマトグラフィによって培養上清からGL-2045を精製することを含み、タンパク質Aカラムが、MabSelect SuRe培地などの耐アルカリ性培地を使用し、精製が少なくとも2つの洗浄周期で行われ、定置洗浄(CIP)手順が、0.5MのNaOH緩衝液などの高NaOH再生工程を用いた各精製ランの後に行われる、GL-2045を精製するための方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、GL-2045を精製するための方法であって、陽イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045をポリッシュすることを含み、陽イオン交換カラムが、POROS XSなどの高能力の高分離能樹脂を含有し、溶出緩衝液が、36.5~39.0%の1MのNaCl緩衝液から構成される酢酸ナトリウム緩衝液である、GL-2045を精製するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、GL-2045を精製するための方法は、陰イオン交換クロマトグラフィによってGL-2045をポリッシュすることをさらに含み、陰イオン交換カラムは、高い化学的安定性を有し、Q Sepharose速流培地のような定置洗浄および衛生プロトコルを可能にする、強陰イオン交換培地を含有する。いくつかの実施形態では、GL-2045を精製するための方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィによってGL-2045をポリッシュすることをさらに含み、疎水性相互作用培地は、ブチルFF、フェニルHP、またはオクチルFF樹脂であり、かつポリッシュに加えて、GL-2045の特定の画分を単離または除去するために選択される。いくつかの実施形態では、GL-2045を精製および/またはポリッシュするための方法は、全ての濾過およびクロマトグラフィ工程の後に(すなわち、最終医薬物質)、>4g/LのGL-2045の最終タンパク質力価を生じる。いくつかの実施形態では、GL-2045の最終タンパク質組成物は、>70%の多量体を含む。いくつかの実施形態では、多量体の>28%は、分析的SEC-HPLCによって分析されるようなさらに高次の多量体である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって作製された精製GL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって作製された精製GL-2045は、ホモ二量体の百分率および/もしくはホモ二量体の二量体を最小にするか、または別様に、ホモ二量体、より低次の多量体、さらに高次の多量体、および最高次の多量体の百分率を均衡させる、定義された多量体パターンを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組み換え生成された精製GL-2045を用いて治療または予防が必要な対象における炎症性、自己免疫、または感染性疾患または障害を治療または予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患または障害は、特発性血小板減少性紫斑病、慢性炎症性多発ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、重症筋無力症、臓器移植、およびリウマチ性関節炎から選択される。いくつかの実施形態では、GL-2045は、静脈内に、皮下に、経口で、腹腔内に、舌下に、口腔内に、経皮的に、皮下移植を介して、または筋肉内に投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体画分が、組成物全体の約20%未満を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分は、組成物全体の12~19%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体画分は、組成物全体の14~19%を構成する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分は、組成物全体の15.5~17.5%を構成する。別の実施形態では、ホモ二量体画分は、組成物全体の約16.2%を構成する。
【0024】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体の二量体画分が、組成物全体の約7%~約12%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の二量体画分は、組成物全体の約9%~約11%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体の二量体画分は、組成物全体の約10%を構成する。
【0025】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体の三量体画分が、組成物全体の約5.5%~約11%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の三量体画分は、組成物全体の約6.5%~約8%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体の三量体画分は、組成物全体の約7%を構成する。
【0026】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体の四量体画分が、組成物全体の約10%~約16%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の四量体画分は、組成物全体の約13%~約15%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体の四量体画分は、組成物全体の約14%を構成する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体の五量体画分が、組成物全体の約6%~約9%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の五量体画分は、組成物全体の約7%~約8%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体の五量体画分は、組成物全体の約7%を構成する。
【0028】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、GL-2045組成物のホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約10%~約14%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を含む。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の六量体画分は、組成物全体の約12%~約13%を構成する。他の実施形態では、ホモ二量体の六量体画分は、組成物全体の約12.7%を構成する。
【0029】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、最高次の多量体(すなわち、ホモ二量体の7マー以上の画分中のもの)が、組成物全体の少なくとも約28%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、最高次の多量体は、組成物全体のわずか35%を構成する。いくつかの実施形態では、最高次の多量体画分は、組成物全体の約30%~約34%を構成する。他の実施形態では、最高次の多量体画分は、組成物全体の約31.4%を構成する。
【0030】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、
(a)ホモ二量体画分が、組成物全体の約20%未満を構成し、
(b)最高次の多量体画分が、組成物全体の少なくとも約28%を構成し、
(c)ホモ二量体の二量体画分が、組成物全体の約7%~約12.5%を構成し、
(d)ホモ二量体の三量体画分が、組成物全体の約5.5%~約11%を構成し、
(e)ホモ二量体の四量体画分が、組成物全体の約10%~約16%を構成し、
(f)ホモ二量体の五量体画分が、組成物全体の約6%~約10%を構成し、
(g)ホモ二量体の六量体画分が、画分全体の約10%~約14%を構成し、
(h)ホモ二量体の二量体~ホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約40%~約60%を構成し、
(i)ホモ二量体の三量体~ホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約32%~約50%を構成し、
(j)ホモ二量体の四量体~ホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約26%~約39%を構成し、
(k)ホモ二量体の五量体~ホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約18%~約23%を構成し、または
(l)(a)~(k)の任意の組み合わせである、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物であって、組成物全体のおよそ80%が、さらに高次の多量体を含み、これは、ホモ二量体の二量体以上(すなわち、2バンド以上)を意味する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物全体のおよそ60~80%は、ホモ二量体の三量体以上(すなわち、3バンド以上)を含む。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物の全体の約54~72%は、四量体以上(すなわち、4バンド以上)を含む。いくつかの実施形態では、GL-2045であって、組成物全体のおよそ44~57%が、五量体以上(すなわち、5バンド以上)を含む、GL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物の全体の約38~51%は、六量体以上(すなわち、6バンド以上)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045であって、組成物の2~6バンド(すなわち、ホモ二量体の二量体~ホモ二量体の六量体)が、組成物の約39~61%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045であって、組成物の3~6バンド(すなわち、ホモ二量体の三量体~ホモ二量体の六量体)が、組成物の約32~50%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045であって、組成物の4~6バンド(すなわち、ホモ二量体の四量体~ホモ二量体の六量体)が、組成物の約26~39%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045であって、組成物の5~6バンド(すなわち、ホモ二量体の五量体~ホモ二量体の六量体)が、組成物の約16~23%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】サイズ排除クロマトグラフィによるGL-2045分画(
図1A)および非還元ゲルによる結果として生じる画分の分析(
図1B)を例示する。
【
図1B】サイズ排除クロマトグラフィによるGL-2045分画(
図1A)および非還元ゲルによる結果として生じる画分の分析(
図1B)を例示する。
【
図2】GL-2045画分の生体層干渉法分析を例示する。
【
図3A】GL-2045についてのゲル分析(
図3A)およびサイズ排除分画結果(
図3B)を例示する。
【
図3B】GL-2045についてのゲル分析(
図3A)およびサイズ排除分画結果(
図3B)を例示する。
【
図4A】補体依存性細胞致死アッセイにおけるGL-2045画分の効果を例示する。
【
図4B】補体依存性細胞致死アッセイにおけるGL-2045画分の効果を例示する。
【
図4C】補体依存性細胞致死アッセイにおけるGL-2045画分の効果を例示する。
【
図4D】補体依存性細胞致死アッセイにおけるGL-2045画分の効果を例示する。
【
図5A】溶出クロマトグラム(
図5A)およびFcγRIIIa結合アッセイにおいて使用するためのGL-2045のSDS-Page分析(
図5Bおよび5C)を例示する。
【
図5B】溶出クロマトグラム(
図5A)およびFcγRIIIa結合アッセイにおいて使用するためのGL-2045のSDS-Page分析(
図5Bおよび5C)を例示する。
【
図5C】溶出クロマトグラム(
図5A)およびFcγRIIIa結合アッセイにおいて使用するためのGL-2045のSDS-Page分析(
図5Bおよび5C)を例示する。
【
図6A】
図5に示される溶出された画分のFcγRIIIaへの結合(
図6A)および最良適合曲線(
図6B)を例示する。
【
図6B】
図5に示される溶出された画分のFcγRIIIaへの結合(
図6A)および最良適合曲線(
図6B)を例示する。
【
図7】陰イオン交換画分のSDS-Page分析を例示する:GL-GLM-01=組み換え、非分画Fc(G001)、GL-GLM-02=非分画GL-2045、GL-GLM-05=pH6.0での分画GL-2045、GL-GLM-06=pH6.5での分画GL-2045、GL-GLM-07=pH7.0での分画GL-2045、GL-GLM-08=pH7.5での分画GL-2045。
【
図8】分画GL-2045の非分画の存在下での化学誘引物質としてC5aを用いた好中球走化性アッセイの結果を例示する:GL-GLM-01=組み換え、非分画Fc(G001)、GL-GLM-02=非分画GL-2045、GL-GLM-05=pH6.0での分画GL-2045、GL-GLM-06=pH6.5での分画GL-2045、GL-GLM-07=pH7.0での分画GL-2045、GL-GLM-08=pH7.5での分画GL-2045。
【
図9】培養の4、8、および10日目の、異なる培地のパネルにおいて成長されたCHO細胞の細胞密度(100万/mL単位で)を例示する。
【
図10】培養の4、8、および10日目の、異なる培地のパネルにおいて成長されたCHO細胞の細胞生存率(%)を例示する。
【
図11】培養の10日目の、異なる培地のパネルにおいて成長されたCHO細胞のタンパク質力価(mg/mL)を例示する。
【
図12A】
図9~11に例示される培地のパネル中に成長されたCHO細胞から生成されたGL-2045タンパク質のゲル分析を例示する。
【
図12B】
図9~11に例示される培地のパネル中に成長されたCHO細胞から生成されたGL-2045タンパク質のゲル分析を例示する。
【
図13A】PowerCHO3 CD、ADCF-Mab Hyclone、およびActiCHO P培地についての給餌スケジュール(
図13A)、ならびにCellvento、BalanCD CHO Growth A、CD FortiCHO Life、およびCD4MCHO Hyclone培地(
図13B)についての給餌スケジュールを例示する。
【
図13B】PowerCHO3 CD、ADCF-Mab Hyclone、およびActiCHO P培地についての給餌スケジュール(
図13A)、ならびにCellvento、BalanCD CHO Growth A、CD FortiCHO Life、およびCD4MCHO Hyclone培地(
図13B)についての給餌スケジュールを例示する。
【
図14】培養の0~11日目の、異なる培地+給餌の組み合わせのパネルにおいて成長されたCHO細胞の細胞密度(e6細胞/mL)を例示する。
【
図15】培養の0~11日目の、異なる培地+給餌の組み合わせのパネルにおいて成長されたCHO細胞の細胞生存率(%)を例示する。
【
図16】培養の0~11日目の、異なる培地+給餌の組み合わせのパネルにおいて成長されたCHO細胞からのGL-2045のタンパク質力価(mg/mL)を例示する。
【
図17】GL-2045多量体化に関する
図13A~13Bに例示される培地+給餌の組み合わせおよびスケジュールの効果のSDS-PAGE分析を例示する。
【
図18A】細胞密度(
図18A)、細胞生存率(
図18B)、培養物pH(
図18C)、およびGL-2045タンパク質力価(
図18D)に関する、毎日のActiCHO-P培地+給餌(赤色)、ならびに1日おきのActiCHO-P培地+給餌(青色)の効果を例示する。
【
図18B】細胞密度(
図18A)、細胞生存率(
図18B)、培養物pH(
図18C)、およびGL-2045タンパク質力価(
図18D)に関する、毎日のActiCHO-P培地+給餌(赤色)、ならびに1日おきのActiCHO-P培地+給餌(青色)の効果を例示する。
【
図18C】細胞密度(
図18A)、細胞生存率(
図18B)、培養物pH(
図18C)、およびGL-2045タンパク質力価(
図18D)に関する、毎日のActiCHO-P培地+給餌(赤色)、ならびに1日おきのActiCHO-P培地+給餌(青色)の効果を例示する。
【
図18D】細胞密度(
図18A)、細胞生存率(
図18B)、培養物pH(
図18C)、およびGL-2045タンパク質力価(
図18D)に関する、毎日のActiCHO-P培地+給餌(赤色)、ならびに1日おきのActiCHO-P培地+給餌(青色)の効果を例示する。
【
図19】GL-2045タンパク質力価に関する、毎日のActiCHO-P培地+給餌(赤色)、および3日おきのActiCHO-P培地+給餌(青色)の効果を例示する。
【
図20A】ActiCHO-P基礎培地を用いたActiCHO餌料A(青色)の使用と比較した、細胞生存率(
図20A)およびGL-2045タンパク質力価(
図20B)に関してPowerCHO2(赤色)基礎培地とActiCHO餌料Aを組み合わせる効果を例示する。
【
図20B】ActiCHO-P基礎培地を用いたActiCHO餌料A(青色)の使用と比較した、細胞生存率(
図20A)およびGL-2045タンパク質力価(
図20B)に関してPowerCHO2(赤色)基礎培地とActiCHO餌料Aを組み合わせる効果を例示する。
【
図21A】細胞密度(
図21A)、細胞生存率(
図21B)、およびGL-2045タンパク質力価(
図21C)に関する最適化された振とうフラスコ状態の効果を例示する。
【
図21B】細胞密度(
図21A)、細胞生存率(
図21B)、およびGL-2045タンパク質力価(
図21C)に関する最適化された振とうフラスコ状態の効果を例示する。
【
図21C】細胞密度(
図21A)、細胞生存率(
図21B)、およびGL-2045タンパク質力価(
図21C)に関する最適化された振とうフラスコ状態の効果を例示する。
【
図22】タンパク質A精製GL-2045のSDS-PAGE分析を例示する。
【
図23A】pH勾配溶出によるGL-2045の溶出後のタンパク質Aカラムからの溶出プロファイル(
図23A)および単離された画分のSDS-PAGE分析(
図23B)を例示する。
【
図23B】pH勾配溶出によるGL-2045の溶出後のタンパク質Aカラムからの溶出プロファイル(
図23A)および単離された画分のSDS-PAGE分析(
図23B)を例示する。
【
図24】溶出クロマトグラムおよび非還元SDS-PAGE分析を例示する。
【
図25】溶出クロマトグラムおよび非還元SDS-PAGE分析を例示する。
【
図26】ランC1~C3の溶出クロマトグラフを例示する。
【
図27】ランC1~C3からの溶出ピーク38%~39%の非還元SDS-PAGE分析を例示する。
【
図28】イオンクロマトグラフィ精製GL-2045の濃度測定法分析を例示する。
【
図29A】HICカラムの溶出プロファイル(上パネル)ならびに溶出およびフロースルー画分(FT)のSDS-PAGE分析(下パネル)を例示する。
【
図29B】HICカラムの溶出プロファイル(上パネル)ならびに溶出およびフロースルー画分(FT)のSDS-PAGE分析(下パネル)を例示する。
【
図30】M045のHICカラム
ポリッシュからの溶出プロファイル(右パネル)およびNu-PAGE分析(右パネル)を例示する。
【
図31】M045のHICカラム
ポリッシュからの溶出プロファイルを例示する。
【
図32】M045のHICカラム
ポリッシュからの溶出プロファイルおよびSDS-PAGE分析を例示する。
【
図33】最適に製造されたGL-2045組成物の定義された多量体パターンを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書に記載される最適化された組み換えGL-2045の生成に対する手法は、細胞生存率およびタンパク質力価を最適化しながら、GL-2045多量体化の増強を生じる最適化された上流製造方法を含む。いくつかの実施形態では、最適化された下流製造によって、医薬物質に対する最適化された状態が遂行される。さらに、定義された多量体パターンを有するGL-2045を含む組成物を本明細書に提供する。本明細書に提供される組成物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー、抗体媒介疾患、および補体媒介疾患を治療するのに有用性を有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「医薬物質」は、製造業者によって販売されるようなGL-2045の最終剤形を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、特許請求の範囲および/もしくは明細書における「備える」という用語と併せて使用される場合の「1つ(a)」もしくは「1つ(an)」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つ超」の意味とも一致する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「生体模倣薬」、「生体模倣薬分子」、「生体模倣薬化合物」という用語、および関連する用語は、プールヒト静脈内免疫グロブリン(「hIVIG」)、モノクローナル抗体、または抗体のFcフラグメントなどの別の化合物の機能を模倣する人工化合物を指す。「生物学的に活性な」生体模倣薬とは、それらの天然に発生する対応物と同一または類似の生物活性を持つ化合物のことである。「天然に発生する」とは、生物中に通常に見られる分子またはその部分を意味する。天然に発生するとはまた、実質的に天然に発生することも意味する。「免疫学的に活性な」生体模倣薬とは、抗体、サイトカイン、インターロイキン、および他の当該技術分野で知られている免疫学的な分子などの天然に発生する免疫学的に活性な分子と同一または類似の免疫学的活性を呈する生体模倣薬のことである。好ましい実施形態では、本発明の生体模倣薬は、本明細書で定義されるように、(例えば、最適に製造されたGL-2045)最適化された多量体化ストラドマーである。
【0038】
「直接連結される」とは、介在もしくは外来配列を有せずに互いに接続される2つの配列、例えば、DNAもしくはクローニングフラグメント中への制限酵素認識部位の挿入から得られるアミノ酸配列を意味する。当業者であれば、「直接連結される」が、多量体化能力が実質的に影響を受けない限り、アミノ酸の添加または除去を包含することを理解するであろう。
【0039】
「相同な」とは、所与の核酸またはアミノ酸配列の配列全体にわたる同一性を意味する。例えば、「80%相同な」とは、所与の配列が、特許請求される配列と約80%の同一性を共有し、かつ挿入、欠損、置換、およびフレームシフトを含み得ることを意味する。当業者であれば、配列整列を行って、挿入および欠損を考慮し、配列の長さ全体にわたる同一性を判定することができることを理解するであろう。
【0040】
hIVIGが、新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、かつこれを完全に飽和させること、およびFcRnのそのような競合抑制が、hIVIGの生物活性において重要な役割を果たし得ることは記載されている(例えば、F.Jin et al.,Human Immunology,2005,66(4)403-410)。Fcγ受容体に強力に結合する免疫グロブリンは、少なくともある程度までFcRnにも結合するため、当業者であれば、1つ超のFcγ受容体に結合することができるストラドマーが、FcRnにも結合し、かつこれを完全に飽和させ得ることを認識するであろう。
【0041】
DEL多形体およびEEM多形体と呼ばれる、IgG1の2つのヒト多形体がある。DEL多形体は、位置356ではDを有し、位置358ではLを有し、EEM多形体は、位置356でEを有し、位置358でMを有する(Kabat番号付け、配列番号2および3、それぞれ、EEM多形体およびDEL多形体)。本明細書で提供されるストラドマーは、DEL多形体またはEEMIgG1多形体のいずれかを含み得る。したがって、特定の変異体についての文章がDEL多型の文脈で明示的に生成されている場合であっても、当業者であれば、EEM多形体に対して同じ変異を行って、同じ結果を生じ得ることを理解するであろう。
【0042】
US2010/0239633は、連結された免疫グロブリンFcドメインを使用して、自己免疫疾患および他の炎症状態を含む病的状態の治療のために、ストラドマーの個々の構成要素間の制限部位および親和性標識を含む短い配列を含む、hIVIGの秩序正しく多量体化された免疫グロブリンFc生体模倣薬(ストラドマーとして知られる生物学的に活性な秩序多量体)を創成することを開示している。その全体が参照により組み込まれる、US2010/0239633を参照されたい。US2013/0156765は、個々の構成要素が、制限部位または親和性標識によって分離されるのではなく、直接連結されるストラドマーを開示している。US2013/0156765はまた、N末端連結された構築物に対して多量体化および補体結合の改善を呈する(例えば、US2010/0239633に記載されたGL-2019)、そのC末端に直接連結されたIgG2ヒンジ多量体化ドメインを有するIgG1Fcドメインを含む多量体化ストラドマー(GL-2045)を特に開示している。その全体が参照により組み込まれる、US2013/0156765を参照されたい。GL-2045の構造は、IgG1ヒンジ-IgG1CH2 IgG1 CH3-IgG2ヒンジおよびGL-2045を、配列番号4および5(それぞれ、EEM多形体およびDEL多形体)として提供する。
【0043】
ストラドマー単位単量体 本明細書で使用される場合、「ストラドマー単位単量体」という用語は、少なくとも第2のストラドマー単位単量体と関連付けられたとき、少なくとも1つのFcドメインを含み、かつGL-2045およびIgG2ヒンジ多量体化ドメインの場合の、ホモ二量体「ストラドマー単位」を形成する、単一の隣接するペプチド分子を指す。好ましい実施形態では、GL-2045のストラドマー単位は、2つの関連付けられたストラドマー単位単量体から構成される。しかしながら、GL-2045ストラドマーはまた、3つ以上のストラドマー単位単量体も含有し得る。
【0044】
本発明の最適に製造されたストラドマー(最適に製造されたGL-2045)は、IgG1 Fc単量体のN末端およびリーダーペプチド(配列番号1)のC末端と、IgG1 FcのC末端および多量体化ドメインIgG2ヒンジ(配列番号6)のN末端との間の直接連結を含有する。
【0045】
明確にさせるために、当業者であれば、本発明の最適に製造されたストラドマー分子は、Fcドメイン単量体および多量体化領域をコードするポリヌクレオチド分子を調製することによって構築され得ることを理解するであろう。そのようなポリヌクレオチド分子は、発現ベクター内に挿入され得、これを使用して、細菌の集団を形質変換するか、または哺乳動物の細胞の集団にトランスフェクトすることができる。次に、形質変換された細菌またはトランスフェクトされた哺乳動物の細胞を適切な培養条件下で培養することによって、ストラドマー単位単量体を生成することができる。例えば、ジェネテシン/G418を用いて細胞を選択することによって、安定的にトランスフェクトされた細胞のプールを継続するクローナル細胞株を達成することができる。代替的に、細胞は、CMV促進剤の制御下で、本発明の最適に製造されたストラドマーをコードするDNA(例えば、配列番号4または5によるストラドマーをコードするDNA)を一時的にトランスフェクトされ得る。次に、発現されたストラドマー単位単量体は、ストラドマー単量体の相互連結を使用した、ストラドマー単量体もしくは単位の自己集合またはストラドマー単量体の会合のいずれかの際に機能的ストラドマー単位およびストラドマーを形成することができる。次に、発現されたストラドマーは、本明細書に記載される下流製造方法(例えば、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィ)によって細胞培地から精製され得る。当業者であれば、核酸構築物に含まれるリーダーペプチドは、ストラドマー単位単量体ペプチドの生成のみを促進するために使用され、かつ成熟タンパク質の発現時に開裂されることを理解するであろう。したがって、本発明の生物学的に活性な生体模倣薬は、リーダーペプチドを含まない。
【0046】
クラスターストラドマー
一実施形態では、本開示に従って作製された最適に製造されたGL-2045は、クラスターストラドマーである。「クラスターストラドマー」は、中心部分「頭部」および2つ以上の「脚部」を含むラジアル形態を有する生体模倣薬であり、各脚部は、少なくとも1つのFcガンマ受容体および/または補体を結合させることができる1つ以上のFcドメインを含む。クラスターストラドマーはまた、ストラドマーの多量体化を生じる多量体化ドメインの存在により、「多量体化ストラドマー」としても知られている。したがって、1つのストラドマー単量体分子上に複数のFcドメインを含有するシリアルストラドマーは、分子がまた、少なくとも1つの多量体化ドメインを含有する限り、依然としてクラスターストラドマーまたは多量体化ストラドマーとして分類され得る。各クラスターストラドマーは、各々が「クラスターストラドマー単位」と呼ばれる1つ超のホモ二量体タンパク質から構成される。各クラスターストラドマー単位は、少なくとも1つの機能的Fcドメインを多量体化する少なくとも1つの領域、および少なくとも1つの機能的Fcドメインを含む「脚部」領域から構成される。多量体化領域は、いったん別のクラスターストラドマー単位に多量体化されると、クラスターストラドマーの「頭部」を創成する。脚部領域は、各脚部領域中にFcドメインがあるのと同じぐらい多くの補体分子を結合させることができ得る。例えば、脚部領域は、各脚部領域中にFcドメインがあるのと同じぐらい多くのC1q分子を結合させることができる。したがって、クラスターストラドマーは、2つ以上のC1q分子を結合させることができる生体模倣薬化合物であり、したがって補体依存性細胞障害(CDC)としても知られている補体媒介溶解を防止する。
【0047】
本発明の最適に製造されたストラドマー内に含有された多量体化領域は、IgG2ヒンジ領域である。当該技術分野で知られているように、ヒトIgG2のヒンジ領域は、共有結合二量体を形成し得る(Yoo、E.M.et al.J.Immunol.170,3134-3138(2003),Salfeld Nature Biotech.25,1369-1372(2007))。IgG2の二量体形成は、潜在的に、C-C結合によるIgG2ヒンジ構造を通して媒介され(Yoo et al 2003)、これは、ヒンジ構造単独で二量体形成を媒介し得ることを示唆する。しかしながら、ヒト血清中に見られるIgG2二量体の量は限定されている。ホモ二量体の二量体として存在するIgG2の量は、IgG2全体の10%未満であると推測される(Yoo et al.2003)。さらに、ホモ二量体の二量体を超えるIgG2の多量体化の量的証拠はない。(Yoo et al.2003)。すなわち、天然のIgG2が、ヒト血清中にさらに高次の多量体を形成することは見出されていない。IgG2ヒンジ含有ストラドマー(例えば、最適に製造されたGL-2045)は、さらに高次の多量体として存在しており、IgG2ヒンジ相互作用が可変かつ動的であるヒト血清中の天然のIgG2とは違って、GL-2045は、非還元SDS-PAGEゲル、分析的超遠心、および37℃で100%の湿度での3ヶ月の安定性研究に関して証明される高度に安定的な多量体を形成することが実証された。さらに、IgG2ヒンジ含有ストラドマー調剤薬物中の多量体の量は、ヒト血清中のIgG2について観察される、二量体のおよそ10%を有意に上回り、多量体は含まれないことも驚くべきことである。例えば、ホモ二量体の二量体、三量体、四量体、およびさらに高次の多量体を含む多量体であるストラドマーの割合は、20%を超え、かつ30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはさらには90%を超える場合がある。特に好ましい実施形態では、ホモ二量体として存在するGL-2045の割合は、10~20%であり、ホモ二量体の高秩序多量体として存在するGL-2045の対応する割合は、70%を上回る。
【0048】
アミノ酸配列GL-2045は、配列番号4および5に記載されている。
【0049】
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリペプチドもしくはペプチドという用語は、天然に発生する対応物を有しないか、または例えば、膵臓、肝臓、脾臓、卵巣、精巣、筋肉、関節組織、神経組織、胃腸組織、または乳房組織もしくは腫瘍組織(例えば、乳癌組織)などの組織、あるいは血液、血清、または尿などの体液中に、それを天然に伴う構成要素から分離または精製されたかのいずれかの、ポリペプチドもしくはペプチドを指す。典型的には、ポリペプチドまたはペプチドは、天然に関連付けられるタンパク質および他の天然に発生する有機分子を含まない、乾燥重量当たり、少なくとも70%であるときに「単離された」とみなされる。好ましくは、本発明のポリペプチド(またはペプチド)の調製物は、本発明のポリペプチド(ペプチド)の乾燥重量当たり、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%である。化学的に合成されたポリペプチドまたはペプチドは、それを天然に伴う構成要素から本質的に分離されるので、合成ポリペプチドまたはペプチドは、「単離され」る。
【0050】
本発明の単離されたポリペプチド(もしくはペプチド)は、例えば、ポリペプチドもしくはペプチドをコードする組み換え核酸の発現によって、または化学合成によって得られ得る。それが天然に起こる供給源とは異なる細胞系中に生成されたポリペプチドまたはペプチドは、それを天然に伴う構成要素を必ずしも含まないため、「単離され」る。好ましい実施形態では、本発明の単離されたポリペプチドは、IgG1 Fc単量体およびIgG2ヒンジ多量体化ドメインに対応する配列(配列番号6)のみを含み、タンパク質のクローニングまたは精製(例えば、導入された制限酵素認識部位または精製標識)の助けとなり得るさらなる配列を含まない。単離もしくは純度の程度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0051】
製造方法 GL-2045は、ホモ二量体の秩序多量体を形成し、かつホモ二量体および多量体画分のうちの全てにおいて活性である。製造プロセスが最適化された多量体プロファイルを生じることは、GL-2045機能に不可欠である。本明細書で使用される場合、「最適化された多量体プロファイル」または「最適化された多量体化プロファイル」とは、IVIG模倣薬としてのGL-2045に対する所望の生物学的成果(例えば理論に縛られないが、C3/C3bのレベルでの、例えば、補体系の最初の活性化、および/または補体活性化のその後の抑制、ならびにCDCの防止によるC1qへの結合の改善)を生じる、GL-2045のホモ二量体と高秩序多量体との組み合わせを指す。当業者であれば、他の治療目的用を含めて、単独または他の要素と組み合わせてのいずれかで、別個の生成物として最適に製造されたGL-2045から様々な多量体画分を単離させることが有益であり得ることを認識するであろう。例えば、実施例に提供されるように、GL-2045のより大きい多量体画分は、C1qへの結合、下流補体媒介エフェクター機能の調節、および低親和性FcγRの結合において、より小さい多量体画分よりも活性である。したがって、本発明の方法は、最適化された多量体プロファイルを含むGL-2045組成物のみならず、所望のエフェクター機能に基づいて多量体を選択することのみを含むGL-2045組成物も対象とする。そのような実施形態では、1つの所望の生物学的成果を生じるGL-2045の最適化された多量体プロファイルは、別の所望の生物学的成果を生じる最適化された多量体プロファイルとは異なり得る。
【0052】
理論に縛られないが、ホモ二量体は、非凝集IgG1と類似の受容体およびリガンド緩衝液として機能すると考えられる。さらに高次の多量体は、低親和性Fcγ受容体および補体因子(例えば、六量体であるC1q)への増加した結合力で結合し、本明細書に記載されるように、ホモ二量体またはより低次の多量体(例えば、GL-2045ホモ二量体の二量体、三量体、および/または四量体)と比較すると、生物学的効能の増強を実証する。したがって、多量体化の程度は、臨床的に有効なGL-2045の生成において不可欠な上流および下流製造の検討事項である。このように、最適化された上流製造方法を通して、最適な細胞生存率、高タンパク質力価、およびGL-2045の最適な多量体化プロファイルを維持することが望まれるのみならず、最適化された下流製造方法を通して、GL-2045の最適な多量体化プロファイルを維持および/または改善することも望まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される最適化された製造方法は、GL-2045の少なくとも70%または少なくとも80%が、非ホモ二量体(例えば、ホモ二量体の二量体、ホモ二量体の三量体など)として存在する、GL-2045タンパク質組成物を生じる。いくつかの実施形態では、GL-2045の70%超または80%超は、非ホモ二量体として存在する。例えば、最適化された製造方法は、GL-2045の80%、85%、90%、95%以上が非ホモ二量体として存在する、GL-2045タンパク質組成物を生じ得る。いくつかの実施形態では、タンパク質組成物は、最高次の多量体(すなわち、ホモ二量体の7マー以上)として存在するGL-2045の少なくとも28%または少なくとも30%を構成する。いくつかの実施形態では、タンパク質組成物は、最高次の多量体として存在するGL-2045のわずか35%を構成する。いくつかの実施形態では、タンパク質組成物は、四量体、五量体、六量体、および7マーとして存在するGL-2045の少なくとも約35%から構成される(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%が、4~6画分から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の三量体以上として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、3画分以上から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の三量体、四量体、五量体、または六量体として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、3~6画分から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体以上の四量体として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、4画分以上から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の四量体および五量体として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、4および5画分から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の五量体以上として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、5画分以上から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の五量体および六量体として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、5および6画分から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の六量体以上として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、6画分以上から構成される)。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも約35%は、ホモ二量体の7マー以上として存在する(すなわち、GL-2045組成物全体の少なくとも35%は、7画分以上から構成される)。例えば、本明細書に記載される最適化された製造方法は、GL-2045の40%、45%、50%、55%以上がホモ二量体の五量体以上として存在する、GL-2045タンパク質組成物を生じ得る。Fc含有治療法についての現在の製造方法(例えば、モノクローナル抗体)は、下流濾過工程を通した、タンパク質力価の増加および収率の増加に焦点を当てていた。これらの方法は、概して、Fc含有タンパク質の多量体化に対する製造プロセスの効果を検討しておらず、本明細書に記載される方法とは全く対照的に、タンパク質の集合および多量体化を最小にすることを目指している。驚くべきことに、GL-2045の最高タンパク質収率を生じる培養条件は、多量体として存在するGL-2045の最高百分率を必ずしも生じない。このように、本明細書に記載されるデータは、タンパク質力価全体に影響を与える製造変数が、少なくとも部分的に、多量体化プロファイルに影響を与える変数から独立していることを実証している。したがって、当業者は、上流製造条件が当該技術分野の現在の状態に基づいてGL-2045多量体化に影響を与えることを予測することができないであろう。
【0054】
例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた組み換えタンパク質の生成のために構築されたプロトコルは、培養の特定日目の37℃~31℃への温度シフトを提供する(Ouguchi et al,Cytotechnology,52(3),pp.199-207,(2006);Masterson and Smales,Pharmaceutical Bioprocessing,2(1)、pp.49-61,(2014))。しかしながら、本発明者らは、Ouguchiらに記載されたものとは対照的に、37℃~32.5℃への温度シフトが、タンパク質力価について最適化しながら、細胞密度および高細胞生存率の維持を生じることを見出した。さらに、本発明者らは、以前に記載されているような培養の所与日目に基づくよりもむしろ、細胞密度に基づいて温度をシフトさせることが、ほぼ10g/LのGL-2045タンパク質力価の増強を生じることを見出した。
【0055】
さらに、本発明者らは、最適化された上流製造方法から生じる最適化された多量体化プロファイルの維持が、最適化された下流製造方法(例えば、親和性クロマトグラフィおよび/またはイオン交換クロマトグラフィ)に部分的に依存していることを発見した。モノクローナル抗体(mAb)およびFc融合タンパク質の濾過および精製技術は、広く記載されており、かつ一般的に使用されている。しかしながら、GL-2045に適用された場合、これらの技術は、GL-2045多量体化プロファイルの予測不能な変性を生じる。例えば、本発明者らは、驚くべきことに、大部分のタンパク質Aカラムが、実施例8に実証されるように、mAbおよびFc融合タンパク質の精製におけるそれらのルーチン使用にもかかわらず、GL-2045の精製に好適でないことを発見した。タンパク質Aは、非常に高価な試薬であり、単一の薬物の適正製造基準(GMP)の精製に従って使用するためには数百万ドルの費用がかかり、かつ経済的に実行可能であるためには100回以上も多くの再使用がなされる必要がある。mAbおよびFc融合タンパク質と同様に、GL-2045は、タンパク質Aに結合するが、mAbおよびFc融合タンパク質とは違って、GL-2045は、タンパク質AへのGL-2045の貪欲な結合のために、通常の溶出工程ではタンパク質Aから完全には解離しない。本発明者らは、最適な多量体化プロファイルが維持される、GL-2045の精製のためのタンパク質Aカラムの利用が、より頻繁なカラム清掃スケジュールを必要とすることを思いがけず発見した。
【0056】
本発明者らは、当該技術分野で一般的に使用されるタンパク質Aカラム定置洗浄(CIP)手順が、思いがけず、GL-2045多量体化プロファイルの変化を生じることをさらに発見した。通常のCIP手順は、カラムを通過するタンパク質上清の多数の周期を伴い得る、精製ランの終了時のカラム清掃を必然的に伴う。しかしながら、本発明者らは、GL-2045の高い結合力により、タンパク質AからのGL-2045の解離が欠落することを発見した。その結果として、タンパク質Aの結合部位は、占有されたままであり、その後の周期におけるGL-2045の結合を防止し、ホモ二量体の損失を生じる。したがって、本発明者らは、mAbもしくはFc融合タンパク質と共に利用されるプロトコルとは対照的に、GL-2045を用いた、タンパク質AカラムのCIP清掃を、モノクローナル抗体もしくはFc融合タンパク質を用いたもの、および0.5MのNaOHなどの高度に厳密な再生緩衝液を用いたものよりも頻繁に行わなければならないことを思いがけず発見した。
【0057】
pH溶出勾配は、精製中のタンパク質収率を最適化するために、タンパク質Aカラムと共に一般的に使用される。本発明者らは、驚くべきことに、モノクローナル抗体もしくはFc融合タンパク質のタンパク質Aカラム収率を最適化するために当該技術分野で使用されるpH溶出勾配が、GL-2045のホモ二量体もしくはさらに高次の多量体構成要素の所望の損失を引き起こし、したがってGL-2045の多量体化プロファイル(実施例10に実証される)を変化させる可能性があることを発見した。このように、本発明者らはまた、GL-2045の収率と多量体化との組み合わせを最適化するために溶出勾配技術を使用する手段を決定した。加えて、本発明者らは、驚くべきことに、新規の目的のために、すなわち、別個の最大高秩序GL-2045多量体をホモ二量体凝集体(実施例11に実証されるような)から分離させるために、pH溶出勾配をタンパク質Aカラムに適用することができることを発見した。
【0058】
本発明者らはまた、陰イオン交換および陽イオン交換などのモノクローナル抗体およびFc融合タンパク質を精製するために当該技術分野で一般的に使用されているイオン交換カラムを使用する場合に、pHおよび/または塩の変化が、実施例12に実証されるように、GL-2045の多量体化プロファイルを変化させ得ることを発見した。これは、塩もしくはpHの変化が、少量のタンパク質の損失を生じ得るが、薬物の組成物には変化をもたらさない、モノクローナル抗体もしくはFc融合タンパク質とは全く対照的である。加えて、本発明者らは、驚くべきことに、塩および/またはpHの調整を、新規の目的のために、最大高秩序GL-2045多量体を同様の分子質量からなり得るホモ二量体の凝集体から分離するために、使用することができることを発見した。実施例13に実証されるように、本発明者らは、最高次の多量体画分からの無秩序凝集体の除去が、より高い効力およびより高度に精製されたGL-2045生成物と関連付けられることを証明するために、機能的アッセイを使用する。
【0059】
疎水性相互作用(HIC)カラムは、高収率捕捉、モノクローナル抗体のポリッシュ、全長形態からの長さの小さい種の除去、不活性形態からの活性形態の分離、およびウィルスの一掃を含む、様々な機構を通してモノクローナル抗体およびFc融合タンパク質を精製するために、当該技術分野で一般的に使用されている。しかしながら、GL-2045の文脈で使用される場合、本発明者らは、標準的なHICカラムが予測不能であることを見出した。実施例14に実証されるように、異なるマトリックスから構成される7HICカラムは、同じ上清および同じ緩衝液が全てのカラムと共に使用されているにもかかわらず、16%~62%の範囲の大きく異なった捕捉率に関連付けられる。
【0060】
さらに、本発明者らは、緩衝液の変化が、GL-2045の多量体化プロファイルを変化させ得ることを予測する。これは、緩衝液の変化が、少量のタンパク質の損失またはより不完全なポリッシュを生じるが、薬物の根本的な組成物には変化をもたらさないであろう、モノクローナル抗体もしくはFc融合タンパク質とは全く対照的である。
【0061】
さらに、本発明者らは、GL-2045ホモ二量体は、高秩序多量体を形成させるIgG1 Fcおよび多量体化ドメインから構成されるため、GL-2045は、天然のIgG1 Fcホモ二量体への結合力を有さずに結合する、全てのまたはほぼ全ての多くのリガンドおよび標的に貪欲に結合することを発見した。これは、驚くべきことに、全ての低親和性Fc受容体および補体C1q、ならびに精製カラムにおいて一般的に使用されるタンパク質Aおよびタンパク質Gを含む。しかしながら、この貪欲な結合はまた、より望ましくない潜在的な標的結合、例えば、エンドトキシンも生じる。この理由のために、本発明者らは、タンパク質AによるGL-2045の精製、ならびに少なくとも1つ以上の陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換フロースルー、および疎水性相互作用カラムによるタンパク質A精製GL-2045のポリッシュを含む、複数の工程の精製プロセスが望ましいと判定した。好ましい実施形態では、タンパク質AによるGL-2045の精製、ならびに結合モードにおける陽イオン交換クロマトグラフィ、フロースルーモードにおける陰イオン交換、および結合モードもしくはフロースルーモードのいずれかにおける疎水性相互作用カラムの3つ全てによるタンパク質A精製GL-2045のポリッシュを含む、4工程の精製プロセスが望ましい。この4工程の精製プロセスは、実施例15に概説されている。当業者であれば、GL-2045組成物をさらに精製するための実施例15に記載されるプロセスの前、中、または後の任意の時点で、深層濾過および超濾過工程を含む追加の濾過工程を追加することができることを容易に理解するであろう。
【0062】
上流製造
一般的に言えば、上流製造方法は、特定の型のタンパク質生物学的生成物(例えば、GL-2045)を製造するために、制御された条件下で、生物学的材料を接種し、培養物中に成長させる方法である。本明細書で使用される場合、「上流製造方法」とは、具体的には、下流製造方法として一般的に分類されるその後の精製および濾過工程を参照しない、タンパク質の組み換え生成のための方法を指す。特定のタンパク質の特性の最適化(例えば、多量体化の効率)を目的とする変更または変化を有する上流製造方法は、本明細書で「最適化された上流製造方法」と呼ばれる。特定の特性を有する最終タンパク質生成物を生じるために、上流タンパク質製造のいくつかの態様は、最適化され得る(例えば、所望の結果を達成するために変化または変更される)。最適化され得る上流組み換えタンパク質生成の態様は、タンパク質をコードする発現ベクターの組成物、細胞型、基礎培地、給餌を含む培地添加剤、給餌スケジュール、継代スケジュール、培養温度、温度シフト、湿度、通気の程度、pH、播種細胞密度、CO2レベル、および/または酸素レベルを含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される最適化された上流製造方法は、最適化されていない上流製造方法によって生成されたGL-2045と比較して、さらに高次の多量体の百分率の増加を有する高力価のGL-2045の生成を生じる。
【0063】
本発明のいくつかの態様では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、GL-2045をコードする発現ベクターでトランスフェクトされる。いくつかの態様では、ゲノムへのGL-2045発現カセットの挿入は、GL-2045発現カセットがpiggyBac最小逆方向反復要素によって隣接される、piggyBacトランスポゾンによって媒介される。このGL-2045発現ベクターの、piggyBacトランスポゼースをコードするベクターとの共発現は、積極的に転写されるゲノムの領域内への遺伝子組み込みを媒介し、標準的なトランスフェクト方法(参照により本明細書に組み込まれる、US2010/0311116およびMatasci et al,Biotechnol.Bioeng.V.108,pp 2141-2140,(2011)を参照のこと)と比較して、安定的かつ増強された遺伝子発現を有する細胞株の発生を生じる。ピギーバックシステムは、通常、少なくとも部分的に多数の統合された導入遺伝子のために、タンパク質の生成を増加させる。しかしながら、本発明者らは、導入遺伝子の挿入率が比較的低い(例えば、UV分光光度法によって判定された、および11コピー)高力価、高生存率のクローナル細胞株を選択したが、当業者であれば、選択的な抗菌圧力の使用がまた、約50個超の挿入コピーまたは約100個超の挿入コピーの導入遺伝子挿入率の使用も可能にすることを理解するであろう。いくつかの態様では、発現ベクターは、リーダーペプチド(例えば配列番号1)をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、発現ベクターは、成功裏にトランスフェクトされたCHO細胞の選択を可能にするための抗菌耐性遺伝子をさらに含む。本発明のある態様では、成功裏にトランスフェクトされたCHO細胞は、抗菌選択の不在下で発生される(US2010/0311116を参照のこと)。いくつかの態様では、発現ベクターは、GL-2045の高レベルの発現を促進するための転写促進剤(例えば、CMV促進剤)をさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を、生物反応器中で培養する。いくつかの実施形態では、転写的に活性な部位で優先的に挿入を引き起こす技術を使用してGL-2045発現ベクターで1度安定的にトランスフェクトされるように、多くの変異体があるCHO細胞株を慎重に選択する。いくつかの実施形態では、当該トランスフェクトされた選択CHO細胞株に適用された培養条件は、培養プロトコルが、細胞生存率に悪影響を与えることなく、標準的な製造方法によるよりも長く継続することを可能にする。標準的な製造方法は、生物反応器中の12日間を平均化することができ、その時点で、培養物中に存在する細胞片の増加のために、細胞生存率の減少がある。細胞生存率の損失と関連付けられることに加えて、細胞片は、濾過および精製と関連付けられる課題を劇的に増加させる。本発明のいくつかの実施形態では、細胞を、所定の細胞密度で生物反応器中に播種し、>12日間培養する。いくつかの実施形態では、細胞を、13、14、15、16、17、18、19、20、21日以上の間、許容可能な生存細胞密度を有する生物反応器中に培養する。
【0065】
いくつかの実施形態では、ActiCHO Pを、最適に製造されたGL-2045の最適化された上流製造のための基礎培地として使用する。本明細書で相互変換可能に使用されるような「ActiCHO P」および「最適化された培地」という用語は、市販のActiCHO(登録商標)基礎培地(「ActiCHO P」GE Healthcare)、その任意の実質的なコピー、またはActiCHO Pと実質的に同じ分量中に実質的に同じ構成物質を含む培地を指す。ActiCHO Pはまた、ActiCHO Pとほぼ同一の生成物であり、これらの開示の目的のための等価的試薬である、ハイクローン「ActiPro」としても、最近GEによって販売されている。いくつかの実施形態では、ActiCHO(登録商標)餌料Aおよび餌料B(ActiCHO(登録商標)餌料Aおよび餌料Bと同一の生成物であり、この開示の目的のための等価的試薬である、ハイクローン「Cell Boost 7a」およびハイクローン「Cell Boost 7b」としても、最近GEによって販売されている)を、基礎培地に加えて使用する。本明細書で相互変換可能に使用されるような「ActiCHO餌料A」もしくは「最適化された餌料A」、および本明細書で相互変換可能に使用されるような「ActiCHO餌料B」もしくは「最適化された餌料B」という用語は、市販のActiCHO(登録商標)給餌(GE Healthcare)、その実質的なコピー、またはActiCHO餌料Aおよび/もしくはActiCHO餌料Bと実質的に同じ分量中に実質的に同じ構成物質を含む給餌を指す。本発明のいくつかの態様では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞に、ActiCHO餌料Aおよび餌料Bを毎日給餌する。本発明のいくつかの態様では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞に、ActiCHO餌料Aおよび餌料Bを1日おきに給餌する。本発明のいくつかの態様では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞に、ActiCHO餌料Aおよび餌料Bを連続的な給餌を介して給餌する。
【0066】
最適化された上流製造方法のいくつかの実施形態では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を、温度シフト前に、特定の細胞密度まで成長させる。いくつかの態様では、CHO細胞を、温度シフト前に、約500万~3000万細胞/mLの密度まで成長させる。いくつかの態様では、細胞を、温度シフト前に、約600万、700万、800万、900万、1000万、1500万、2000万、2500万、または約3000万細胞/mLの密度まで成長させる。いくつかの態様では、CHO細胞を、温度シフト前に、約1000万~2500万細胞/mLの密度まで成長させる。最適化された製造方法のいくつかの態様では、CHO細胞を、温度シフト前に、約1000万~1500万細胞/mLの密度まで成長させる。
【0067】
いくつかの実施形態では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を、所定の細胞密度に到達するまで、37℃±1℃で培養する。いくつかの態様では、温度を、細胞が所定の細胞密度に到達した後に、32.5℃±1℃にシフトさせる。この態様は、細胞を所定の日数の間37℃で培養し、その後、温度を31℃にシフトさせることが多い、以前に記載されている組み換えタンパク質の生成のための培養方法(Ouguchi et al,Cytotechnology,52(3),pp.199-207,(2006);Masterson and Smales,Pharmaceutical Bioprocessing,2(1),pp.49-61,(2014))とは対照的である。本発明者らは、培養時間ではなく細胞密度に基づく、37℃±1℃~32.5℃±1℃への温度シフトは、思いがけず、標準的な上流製造方法に対する、生存率の増加、細胞密度の改善、タンパク質力価の実質的な増加の組み合わせを提供することを判定した。いくつかの実施形態では、GL-2045発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を、二重温度シフトに供する。一実施形態では、トランスフェクトされたCHO細胞を、37℃±1℃で培養し、ピーク生存細胞密度に到達する前に、34℃±1℃にシフトさせる。好ましい実施形態では、この温度シフトは、CHO細胞がログ成長段階で維持される間に起こる。特に好ましい実施形態では、最初の温度シフトは、培養の3日目または4日目に起こる。別の実施形態では、トランスフェクトされたCHO細胞を、所定の細胞密度に到達するまで、37℃±1℃で培養し、その時間に、温度は、34℃±1℃にシフトされる。好ましい実施形態では、細胞密度は、第1の温度シフトで、500万~2000万細胞/mlである。特に好ましい実施形態では、細胞密度は、第1の温度シフトで、800万~1500万細胞/mlである。いくつかの実施形態では、第2の温度シフトは、7±1日目に起こる。いくつかの実施形態では、次に、温度が、31℃にさらにシフトされる。いくつかの実施形態では、この第2の温度シフトは、最初の温度シフトの約4日後に行われる。
【0068】
下流製造方法
いくつかの実施形態では、GL-2045の採取は、下流製造方法によって達成される。いくつかの実施形態では、下流製造方法を、本明細書に記載される最適化された上流製造方法と組み合わせて用いて、特定のタンパク質画分を除去または単離(例えば、ホモ二量体GL-2045の無秩序高分子量凝集体の除去)する。本明細書で使用される場合、「下流製造方法」は、所望の純度および/または濃度のタンパク質組成物を発生させるためのタンパク質上清に対して行われるタンパク質精製および濾過工程である。いくつかの実施形態では、下流製造方法は、本明細書で「最適化された下流製造方法」と呼ばれる、GL-2045の特定の多量体化プロファイルを生じ、かつ/または維持するために、GL-2045の精製および濾過のために最適化されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、GL-2045は、親和性クロマトグラフィによって精製される。いくつかの実施形態では、GL-2045は、タンパク質Aカラムを使用して精製される。以上に記載されたように、タンパク質Aカラムは、非常に高価であり、経済的に実行可能であるために、かなりの回数再使用される。タンパク質Aカラムの再使用は、タンパク質結合能を維持するために、タンパク質Aカラムの「再生」を必然的に伴う。本明細書で使用される場合「再生」または「再生させる」とは、溶出プロセス中に除去されなかったタンパク質Aカラムからの結合されたタンパク質の除去を指す。いくつかの実施形態では、タンパク質Aカラムは、GL-2045精製中に、製造業者の指示において示されるよりも頻繁に、またはモノクローナル抗体もしくはFc融合タンパク質を精製するための当該技術分野における通常よりも頻繁に、再生されなければならない。いくつかの実施形態では、タンパク質Aカラムは、製造業者によって推奨されるよりも少なくとも2倍頻繁に再生されなければならない。さらなる実施形態では、タンパク質Aカラムは、カラムにわたるGL-2045上清の通過の各成功裏のラウンド間に再生されなければならない。そのような実施形態では、タンパク質A親和性カラムを用いたGL-2045の精製は、貪欲に結合されたGL-2045多量体をタンパク質Aカラムから除去し、タンパク質Aカラムの完全な結合能を再生させるために、高度に厳密な再生緩衝液の使用を必然的に伴う。好ましい実施形態では、高度に厳密な再生緩衝液は、タンパク質Aカラムの劣化を引き起こさないか、またはカラムの劣化がほとんどないことに関連付けられる。いくつかの実施形態では、高度に厳密な再生緩衝液は、可溶性塩基を含む。いくつかの実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。いくつかの実施形態では、再生緩衝液は、0.3MのNaOHよりも大きいNaOH濃度を有する。例えば、高度に厳密な再生緩衝液は、0.35M、0.4M、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9M、1.0M以上を上回るNaOHであり得る。特定の実施形態では、再生緩衝液中のNaOHの濃度は、0.5MのNaOHである。
【0070】
いくつかの実施形態では、タンパク質A親和性カラムからのGL-2045の溶出は、医薬物質からのGL-2045の高分子量無秩序凝集体の量を除去または減少させるように最適化される。いくつかの実施形態では、GL-2045は、溶出勾配(例えば、pH溶出勾配)によってタンパク質Aカラムから溶出される。
【0071】
いくつかの実施形態では、GL-2045の最適化された下流製造方法は、親和性クロマトグラフィ(例えば、タンパク質A親和性クロマトグラフィ)による精製、ならびに陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、および疎水性相互作用カラムから選択される少なくとも1つ以上のポリッシュ工程を含む、複数の工程の精製プロセスを含む。好ましい実施形態では、親和性クロマトグラフィ(例えば、タンパク質A親和性クロマトグラフィ)による精製、ならびに陽イオン交換クロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、および疎水性相互作用カラムの各々によるポリッシュを含む、当該技術分野で一般的に実践される2つまたは3つの工程の精製プロセスの代わりに、GL-2045に対する4工程の精製プロセスが使用される。「ポリッシュ」という用語は、古典的に、凝集体、エンドトキシン、DNA、および/またはウィルスを含む、残りの不純物のタンパク質A精製後の除去を指す。加えて、GL-2045に関しては、「ポリッシュ」とは、さらに、これらの同じクロマトグラフィ技術の使用を通してなど、ホモ二量体および特定のさらに高次の多量体の割合を制御することを意味する。
【0072】
いくつかの実施形態では、GL-2045は、イオン交換クロマトグラフィ(例えば、陽イオンまたは陰イオン交換)によってポリッシュされる。いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィによるGL-2045のポリッシュは、タンパク質A精製後のプロセス中に保持されるGL-2045ホモ二量体の無秩序高分子量凝集体の量を低減および/または最小にする溶出緩衝液を用いて行われる。いくつかの実施形態では、タンパク質AカラムからGL-2045を溶出させるために、段階溶出が行われる。いくつかの実施形態では、タンパク質AカラムからGL-2045を溶出させるために、勾配溶出が行われる。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、酢酸ナトリウム緩衝液である。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムの濃度は、少なくとも25mMである。例えば、溶出緩衝液中の酢酸ナトリウムの濃度は、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、75、100mM以上の酢酸ナトリウムであり得る。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、50mMの酢酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、可変量の追加の塩緩衝液(例えば、NaCl緩衝液)の添加を含む50mMの酢酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、追加の緩衝液は、1MのNaCl、pH5の緩衝液(「緩衝液b」)である。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、少なくとも30%の緩衝液Bを含む。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、30%~40%の緩衝液Bを含む。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、35%~40%の緩衝液Bを含む。またさらなる実施形態では、溶出緩衝液は、37%~39%の緩衝液Bを含む。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、38%+/-0.5%の緩衝液bを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、GL-2045は、疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)を使用してポリッシュされる。いくつかの実施形態では、GL-2045の高分子量無秩序凝集体を除去するために、HICカラム(例えば、オクチルFF HICカラム)が選択される。HICカラムを用いてGL-2045を精製するために、フロースルーモードまたは結合モードのいずれかを行うことができる。当業者は、pH条件および塩条件などの変数を調製することで、GL-2045がHIC樹脂に結合するか、またはカラムを通して流動するかが判定されるであろうと理解している。いくつかの実施形態では、ホモ二量体および/またはさらに高次の多量体(例えば、ブチルHPおよび/またはフェニルHPカラム)などのGL-2045の特定の画分を精製するために、HICカラムが選択される。いくつかの実施形態では、特定の疾患の兆候の治療のために、GL-2045の特定の画分を単離することが望ましい場合がある。例えば、特定のGL-2045画分から構成される医薬物質(例えば、主にGL-2045ホモ二量体から構成される医薬物質、主にホモ二量体の二量体から構成される医薬物質、GL-2045のより高秩序の多量体から構成される医薬物質など)を発生させるために、HICカラムを使用し得る。GL-2045画分の、別個の生成物への分離は、特定の疾患の兆候に対して有益であり得る。例えば、GL-2045ホモ二量体は、FcγRIに結合するが、実質的には、他のFcRに結合する。このように、GL-2045ホモ二量体は、少なくとも部分的に、腹膜炎(Heller et al.,J.Immunol,V.162,1992)または急性肺損傷(Xie et al.J.Immunol.,V 188,2012)などを信号伝達するFcγRIによって媒介される疾患の治療に特に有用であり得る。同様に、GL-2045の三量体、潜在的に、二量体および四量体は、自己免疫疾患を治療するために特に有用であり得る(WO2015/168643を参照のこと)。C1qは六量体であるので、五量体、六量体、および七量体は、補体媒介疾患の治療に特に有用であり得る。当業者であれば、これらは、GL-2045画分が特定の疾患を治療するのに有益であり得る方法のうちの単なるいくつかであることを認識するであろう。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される最適化された下流製造方法は、個々の精製および/または濾過技術の組み合わせであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、最適化された下流方法は、親和性クロマトグラフィによるGL-2045の精製(例えば、タンパク質Aカラムについての最適化方法による精製)、引き続きイオン交換クロマトグラフィ方法による追加のポリッシュ(例えば、最適化された陽イオン交換方法によるポリッシュ)、および/または疎水性相互作用カラムを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される最適化された下流方法は、タンパク質A、陽イオン交換、陰イオン交換フロースルー、および疎水性相互作用カラムによる精製を含む、4工程の精製プロセスを含む。いくつかの実施形態では、追加の深層濾過および/または超濾過工程も、使用され得る。
【0075】
したがって、本明細書で相互変換可能に使用される「最適な製造方法」または「最適化された製造方法」という用語は、最適化された上流および/または最適化された下流製造方法を指し得る。いくつかの実施形態では、最適化された製造方法は、最適化された上流方法および下流方法の両方を含む。このように、本明細書で使用される場合、「最適に製造されたストラドマー」または「最適に製造されたGL-2045」という用語は、最適化された上流製造条件および/または最適化された下流製造方法に従って作製された高力価で高次の多量体優性GL-2045組成物を指す。本明細書に記載されるGL-2045組成物は、最適に生成されたGL-2045(すなわち、本明細書に記載される方法によって作製されたGL-2045)であり得るが、当業者であれば、本明細書に記載される定義された多量体パターン内に該当するGL-2045組成物を、他の手段によって達成することができることを理解するであろう。したがって、「GL-2045組成物」または「組み換えGL-2045組成物」または「精製GL-2045組成物」とは、組成物が最適な製造方法を介して作製されたか否かにかかわらず、GL-2045医薬物質を含む、GL-2045を含む組成物を指す。本明細書では、「多量体パターン」もしくは「バンドパターン」という用語または任意の類似の用語は、相互変換可能に使用され、かつGL-2045組成物の分析的アッセイにおいて観察される多量体のパターンを指す。例示的多量体パターンを
図33に示す。
【0076】
いくつかの実施形態では、定義された多量体パターンを用いて組み換え生成されたGL-2045組成物を本明細書に提供する。本明細書で使用される場合、「定義された多量体パターン」または「定義された多量体化パターン」または「定義されたバンドパターン」という用語は、再生可能であり、かつホモ二量体、さらに高次の多量体、および/または最高次の多量体として存在するGL-2045組成物全体の百分率の観点から記載され得るGL-2045多量体化のパターンを指す。当業者であれば、ホモ二量体および/または多量体の百分率の絶対値が使用される分析的方法に基づいて変化し得ることを理解するであろう。例としては、SDS-PAGEゲルのデジタルソフトウエア分析であれば、同一の組成物の分析的SEC-HPLCと比較して、いくらか異なる多量体の百分率を生じるであろう。本明細書で別段明記されない限り、本明細書に記載されるGL-2045組成物のホモ二量体および多量体の百分率は、分析的SEC-HPLC方法によって測定される百分率として発現される。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも80%が、非ホモ二量体または「多量体」(例えば、ホモ二量体の二量体、ホモ二量体の三量体など)として存在する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、GL-2045の80%超が、多量体として存在する。例えば、本明細書に記載されるようなものなどの最適化された製造方法は、GL-2045の80%、85%、90%、95%以上が多量体として存在する、GL-2045タンパク質組成物を生じ得る。いくつかの実施形態では、GL-2045の少なくとも30%は、ホモ二量体の7マー以上として本明細書に定義される「最高次の多量体」として存在する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045のわずか40%は、最高秩序多量体として存在する。当業者であれば、「バンド」または「画分」について話す場合、別段明記されない限り、バンドの数が、画分中に存在するホモ二量体の数を内包することを理解するであろう。したがって、例えば、2バンドは、ホモ二量体の二量体を含み、3バンドは、ホモ二量体の三量体を含む。したがって、例えば、2バンドは、ホモ二量体の二量体を含み、3バンドは、ホモ二量体の三量体を含み、4バンドは、ホモ二量体の四量体を含むなどである。
【0077】
本明細書で使用される場合、「さらに高次の多量体」とは、ホモ二量体の三量体以上(すなわち、3画分以上に存在する多量体)を指す。本明細書で使用される場合、「最高次の多量体」という用語は、7画分以上における多量体、またはホモ二量体の7マー以上を含む画分を指す。
【0078】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分が組成物全体の約20%未満を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分は、タンパク質組成物全体の約12%~約19%、約14%~約19%、約15.5%~約17.5%、または約14%~約18.5%を構成する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分は、タンパク質組成物全体の約15.9%または約16.2%を構成する。
【0079】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体の二量体画分が、組成物全体の約7%~約13%、約7%~約12.5%、約7%~約12%、約9%~約11%、または約9.1%~約11.7%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の二量体画分は、タンパク質組成物全体の約10%または約10.6%を構成する。
【0080】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体の三量体画分が、組成物全体の約5.5%~約11%、約5.5%~約10%、または約6.5%~約8%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の三量体画分は、タンパク質組成物全体の約7%または約7.3%を構成する。
【0081】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体の四量体画分が、組成物全体の約10%~約16%、約11%~約16%、約13%~約15%、または約12.4%~約15.1%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の四量体画分は、タンパク質組成物全体の約14%または約14.3%を構成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体の五量体画分が、組成物全体の約6%~約9%、約7%~約8%、または約7.1%~約8.2%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、五量体画分の二量体は、タンパク質組成物全体の約7%または約7.5%を構成する。
【0083】
いくつかの実施形態では、ホモ二量体の六量体画分が、組成物全体の約10%~約14%、約12%~約13%、または約12.1%~約13.2%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体の六量体画分は、タンパク質組成物全体の約12.7%または約12.6%を構成する。
【0084】
いくつかの実施形態では、最高次の多量体画分が、組成物全体の少なくとも約28%を構成する、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、最高次の多量体画分は、タンパク質組成物全体のわずか約35%を構成する。いくつかの実施形態では、最高次の多量体画分は、タンパク質組成物全体の約30%~約34%、または約28.6%~約35.1%を構成する。いくつかの実施形態では、最高次の多量体画分は、タンパク質組成物全体の約31.4%または約31.9%を構成する。いくつかの実施形態では、ホモ二量体画分が組成物全体の約20%未満を構成し、最高次の多量体画分が組成物全体の少なくとも約28%を構成し、ホモ二量体の二量体画分が組成物全体の約7%~約13%を構成し、ホモ二量体の三量体画分が組成物全体の約5%~約11%を構成し、ホモ二量体の四量体画分が組成物全体の約10%~約16%を構成し、ホモ二量体の五量体画分が組成物全体の約6%~約10%を構成し、ホモ二量体の六量体画分が画分全体の約10%~約14%を構成し、ホモ二量体の二量体~ホモ二量体の六量体画分が組成物全体の約40%~約60%を構成し、ホモ二量体の三量体~ホモ二量体の六量体画分が組成物全体の約32%~約50%を構成し、ホモ二量体の四量体~ホモ二量体の六量体画分が組成物全体の約30%~約37%を構成し、ホモ二量体の五量体~ホモ二量体の六量体画分が組成物全体の約18%~約23%を構成し、または前述の任意の組み合わせである、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。
【0085】
いくつかの実施形態では、GL-2045組成物全体のおよそ80%がホモ二量体の二量体以上(すなわち、2バンド以上)を含む、組み換え生成されたGL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物全体のおよそ60~80%、62~80%、または60~78%は、ホモ二量体の三量体以上(すなわち、バンド3以上)を含む。いくつかの実施形態では、組み換え生成されたGL-2045組成物全体の約54~76%、約54~72%、約56~76%、または約54~67%は、四量体以上(すなわち、バンド4以上)を含む。いくつかの実施形態では、組成物全体のおよそ44~60%、44~57%、または44~51%が五量体以上(すなわち、バンド5以上)を含む、GL-2045組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物全体のおよそ38~51%が六量体以上(すなわち、バンド6以上)を含む、GL-2045組成物を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、組成物の2~6バンド(すなわち、ホモ二量体の二量体~ホモ二量体の六量体)が組成物の約39~61%または約44~60%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組成物の3~6バンド(すなわち、ホモ二量体の三量体~ホモ二量体の六量体)が組成物の約32~50%または約35~48%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組成物の4~6バンド(すなわち、ホモ二量体の四量体~ホモ二量体の六量体)が組成物の約26~39%または約30~39%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。いくつかの実施形態では、組成物の5~6バンド(すなわち、ホモ二量体の五量体~ホモ二量体の六量体)が組成物の約16~23%または約18~23%を構成する、組み換え生成されたGL-2045を提供する。
【0087】
理論に縛られないが、低親和性Fc受容体およびC1qへの結合におけるGL-2045の少なくとも活性構成要素は、ホモ二量体およびホモ二量体の二量体である。当業者であれば、本明細書に記載される最適化されたクロマトグラフィ方法、または同様の精製技術を使用して、最終生成物中のホモ二量体またはホモ二量体および二量体の量を低減させることができると容易に理解するであろう。したがって、当業者であれば、そうすることで、本明細書に記載される多量体の百分率を変更すると知っているであろう。例示の方法によって、かつ前述の一般性を制限することなく、当業者が精製プロセスにおいてホモ二量体またはホモ二量体および二量体の50%を除去する場合、各残りの多量体(すなわち、三量体、四量体、五量体、六量体、7マーなど)の百分率は、それに応じて増加するであろう。ホモ二量体の90%および二量体の50%を除去すれば、最終生成物中に存在するタンパク質全体をおよそ20%+/-5%を減少させ、したがって、タンパク質全体の割合として表される、三量体、四量体、五量体、六量体、および7マーの百分率を増加させるであろう。
【0088】
その上、当業者であれば、現在のクロマトグラフィ技術は、一般に、ある程度まで六量体などの隣接するバンドを、かつ比較的低い程度まで五量体を、同時に除去しなければ、最高次の多量体などの単一の多量体バンドの除去または低減を可能にしないことをさらに認識しているであろう。したがって、当業者であれば、最高次の多量体の除去または低減の結果としてのホモ二量体の任意の所与の多量体の百分率における観察される代償性増加が、除去されるGL-2045の画分由来の所与の多量体よりも大きい程度増加することを知っているであろう(例えば、ホモ二量体の百分率は、最高次の多量体が除去または低減されたときに六量体について観察される百分率の増加よりも大きい程度増加するであろう)。いずれの場合でも、残りの多量体の多量体百分率の累積増加は、分析的方法に起因する何らかのばらつきに依存して、除去された画分についての多量体の割合に等しいべきである。
【0089】
医薬組成物
本明細書に記載されるGL-2045組成物の投与は、任意の一般的な経路を介して、経口で、非経口で、または局所になされるであろう。例示的経路は、縫合などの移植可能デバイス上に、または移植可能ポリマー、硬膜内、皮質内、または皮膚などの移植可能デバイス内に統合された、経口、経鼻、口腔、直腸、膣、眼、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、動脈内、腫瘍内、脊椎、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、舌下、口腔粘膜、気管支、リンパ管、子宮内、皮下、腫瘍内を含むがこれらに限定されない。そのような組成物は、通常、本明細書に記載されるような薬学的に許容可能な組成物として投与されるであろう。好ましい実施形態では、単離された最適に製造されたストラドマーを、静脈内に、または皮下に投与する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、任意および全ての溶剤、分散培地、被覆、抗菌性および抗真菌性薬剤、等張および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質に対するそのような培地および薬剤の使用は、当該技術分野でよく知られている。任意の従来の培地または薬剤は、本発明のベクターまたは細胞と互換性がない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が考えられる。補助的活性成分を、組成物中に組み込むこともできる。
【0091】
本発明のGL-2045組成物を、中性形態または塩形態で製剤化してもよい。薬学的に許容可能な塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石、マンデルなどの有機酸と共に形成される酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)を含む。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも得ることができる。
【0092】
無菌注射可能な溶液は、上記に列挙される様々な他の成分を含む適切な溶剤中に必要とされる量で最適に製造されたGL-2045を組み込み、必要に応じて、その後濾過殺菌することによって調製される。いくつかの実施形態では、筋肉内、皮下、または静脈内投与のために、無菌注射可能な溶液を製剤化する。概して、分散液は、基礎分散培地および上記に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル内に様々な殺菌された活性成分を組み込むことによって調製される。無菌注射可能な溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分の粉末+その以前に無菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分を産出する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0093】
さらに、一実施形態は、経口投与に好適なGL-2045組成物であり、不活性希釈剤を含むか、または含まない薬学的に許容可能な担体中に提供される。担体は、同化可能であるか、または食用であるべきであり、かつ液体、半固体(例えば、ペースト)、または固体担体を含む。任意の従来の培地、薬剤、希釈剤、または担体が、内部に含有される最適に製造されたストラドマー調剤薬の受容性または治療有効性にとって有害である場合を除いて、本発明の方法の実践において使用するための経口で投与可能な最適に製造されたストラドマー組成物におけるその使用が適切である。担体もしくは希釈剤の例には、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、バインダー、充填剤など、またはそれらの組み合わせが含まれる。本明細書で使用される場合、「経口投与」という用語は、経口、口腔、経腸、または経胃投与を含む。
【0094】
一実施形態では、GL-2045組成物は、任意の従来の実践的な方法における、すなわち、溶液、懸濁、乳化、混和、カプセル化、マイクロカプセル化、吸収などによる、担体と組み合わされる。そのような手順は、当業者にとってはルーチンである。
【0095】
特定の実施形態では、粉末形態でのGL-2045組成物は、半固体または固体担体と完全に組み合わされる、または混合される。混合は、粉砕などの任意の従来の方法で実行され得る。治療活性の欠落(例えば、胃の変性を通して)から組成物を保護するために、混合プロセスにおいて安定剤を添加することもできる。経口で投与可能な組成物において使用するための安定剤の例には、緩衝液、胃酸の分泌物に対する拮抗薬、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、ブドウ糖、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの炭水化物、タンパク質分解酵素抑制剤などが含まれる。より好ましくは、経口で投与された組成物について、安定剤は、胃酸の分泌物に対する拮抗薬を含むこともできる。
【0096】
さらに、半固体または固体担体と組み合わせられた経口投与のためのGL-2045組成物を、硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセル、タブレット、またはピルへとさらに製剤化することができる。より好ましくは、ゼラチンカプセル、タブレット、またはピルを、経腸的に被覆する。腸溶性被覆は、pHが酸性である胃または上部腸内の組成物の変性を防止する。米国特許第5,629,001号を参照されたい。小腸に到達した際、内部の基礎pHが被覆を溶解させ、組成物を放出して腸管細胞、例えば、パイエル板M細胞と相互作用することを可能にする。
【0097】
別の実施形態では、粉末形体でのGL-2045組成物は、免疫学的に活性な生体模倣薬をカプセル化するナノ粒子を創成するか、または免疫学的に活性な生体模倣薬が付着される材料と完全に組み合わされるか、または混合される。各ナノ粒子は、100ミクロン以下のサイズを有するであろう。ナノ粒子は、別様に、経口で生物利用ができないであろう、免疫学的に活性な生体模倣薬の胃腸吸収を可能にする粘膜接着特性を有し得る。
【0098】
別の実施形態では、粉末状組成物を、安定剤を含むか、もしくは含まない、水もしくは生理食塩水などの液体担体と組み合わせる。
【0099】
使用され得る特定のGL-2045製剤は、緩衝液の組成物が以下の通り:6mMのリン酸ナトリウム一塩基一水和物、9mMのリン酸ナトリウム二塩基七水和物、pH7.0+/-0.1の50mMの塩化ナトリウム、カリウムを含まない低張リン酸塩ベースの緩衝液中の免疫学的に活性な生体模倣薬タンパク質の溶液である。低張緩衝液中の免疫学的に活性な生体模倣薬タンパク質の濃度は、10μg/mL~100mg/mLの範囲であり得る。この製剤は、任意の投与経路、例えば、限定されないが、静脈内投与を介して投与され得る。
【0100】
さらに、半固体担体と組み合された局所投与のためのGL-2045組成物を、クリームまたはゲル軟骨へとさらに製剤化することができる。ゲル軟骨の形成のために好ましい担体は、ゲルポリマーである。本発明のゲル組成物を製造するのに使用される好ましいポリマーは、カルボポール、カルボキシメチルセルロース、およびプルロニックポリマーを含むがこれらに限定されない。具体的には、粉末状Fc多量体組成物を、皮膚の上または真下の疾患の治療のための皮膚への適用のために、0.5重量%~5重量%/体積の強度でカルボポール980などのポリマー化剤を含有する水性ゲルと組み合わせる。本明細書で使用される場合、「局所投与」という用語は、皮膚、表皮性、皮下、または粘膜表面への適用を含む。
【0101】
さらに、GL-2045組成物を、皮下または皮下移植のためにポリマーへと製剤化することができる。移植可能な薬物注入ポリマーのために好ましい製剤は、一般に安全とみなされる薬剤であり、例えば、交差結合デキシトランを含み得る(Samantha Hart,Master of Science Thesis,“Elution of Antibiotics from a Novel Cross-Linked Dextran Gel:Quantification“Virginia Polytechnic Institute and State University,June 8,2009)dextran-tyramine(Jin,et al.(2010)Tissue Eng.Part A.16(8):2429-40),dextran-polyethylene glycol(Jukes,et al.(2010)Tissue Eng.Part A.,16(2):565-73),or dextran-gluteraldehyde(Brondsted,et al.(1998)J.Controlled Release,53:7-13)。当業者であれば、ポリマーまたはヒドロゲル内に固着されたストラドマーを組み込み、かつ細孔径を所望の直径に制御する、多くの同様のポリマーおよびヒドロゲルを形成することができることを知るであろう。
【0102】
製剤に対して、投与製剤と互換性のある方法で、かつ症状の改善または修復をもたらすのに治療的に効果的である量で、溶液を投与する。製剤は、摂取可能な溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。治療される対象の状態に応じて、投与の何らかの変形が生じ得る。投与に対して責任を負う人は、いかなる場合も、個々の対象に適切な用量を判定することができる。さらに、ヒトへの投与について、製剤は、必要に応じて、FDA生物学的製剤評価研究センター標準規格による、無菌状態、一般的安全性、および純度標準規格を満たす。
【0103】
投与の経路は、治療される疾患の場所および性質により必然的に変化し、かつ例えば、皮内、経皮的、皮下、非経口、経鼻、静脈内、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、腫瘍内、かん流、洗浄、直接注入、直腸内、および経口投与を含み得る。
【0104】
一実施形態では、GL-2045組成物は、静脈内に、皮下に、経口で、腹腔内に、舌下に、口腔的に、経皮的に、直腸的に、皮下移植によって、または筋肉内に投与される。特定の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、静脈内に、皮下に、または筋肉内に投与される。一実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、約0.005mg/Kg~約1000mg/Kgの用量で投与される。さらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、約0.01mg/Kg~約100mg/Kgで投与される。またさらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、約0.1mg/Kg~約20mg/Kgで投与される。またさらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、約1mg/Kg~約10mg/Kgで投与される。またさらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、約2mg/Kg~約5mg/Kgで投与される。最適に製造されたストラドマーは、少なくとも毎日、毎週、隔週、毎月、または時にはより長い間隔で投与され得る。第1の投与段階が第2の投与段階の約0.1%~約300%を構成する、二相性投与計画を使用してもよい。
【0105】
さらなる実施形態では、GL-2045組成物は、1つ以上の追加の医療品および/もしくは治療薬の投与前、中、または後に投与される。さらなる実施形態では、追加の薬学的に活性な薬剤は、ステロイド;モノクローナル抗体、融合タンパク質、または抗サイトカインなどの生物学的抗自己免疫薬物;非生物学的抗自己免疫薬物;免疫抑制剤;抗菌;および抗ウィルス薬;サイトカイン;または別様に、免疫調節薬として作用することができる薬剤を含む。またさらなる実施形態では、ステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、コルチゾン、デキサメタゾン、モメタゾンテストテロン、エストロゲン、オキサンドロロン、フルチカゾン、ブデソニド、ベクロメタゾン、アルブテロール、またはレブアルブテロールである。またさらなる実施形態では、モノクローナル抗体は、エクリズマブ、オクレリズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、リツキシマブ、トシリズマブ、ゴリムマブ、オファツムマブ、LY2127399、ベリムマブ、ベルツズマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、ジヌツキシマブ、セクキヌマブ、エボロクマブ、ブリナツモマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ベドリズマブ、シルツキシマブ、オビヌツズマブ、アドトラスツズマブ、ラキシバクマブ、ペルツズマブ、ブレンツキシマブ、イピルムマブ、デノスマブ、カナキヌマブ、ウステキヌマブ、カツマキソマブ、ラニビズマブ、パニツムマブ、ナタリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、エファリズマブ、オマリズマブ、トイツモマブ-I131、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、トラスツズマブ、パリビズマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、アブシキマブ、ムロノノマブ、ベドチン、イブリツモマブチウキセタン、モタビツマブ、またはセルトリズマブである。またさらなる実施形態では、融合タンパク質は、エタネルセプトまたはアバタセプトである。またさらなる実施形態では、抗サイトカイン生物製剤は、アナキンラである。またさらなる実施形態では、抗リウマチ非生物学的薬物は、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、ミノサイクリン、有機金化合物、フォスタマチニブ、トファシチニブ、エトリコキシブ、またはスルファサラジンである。またさらなる実施形態では、免疫抑制剤は、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、またはアレムツズマブである。またさらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、化学療法薬の投与前、中、または後に投与される。またさらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーおよび追加の治療薬は、一緒に投与されたときに、治療的相乗効果を示す。一実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、追加の治療薬の投与前に投与される。別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、追加の治療薬の投与と同時に投与される。また別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、追加の治療薬と共に投与後に投与される。
【0106】
一実施形態では、GL-2045組成物は、移植可能デバイスに共有結合的に固着された状態で投与される。一実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、縫合に固着される。別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、移植片またはステントに固着される。別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、心臓弁、整形外科関節置換、または移植された電子リードに固着される。別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、移植可能マトリックスに固着され、かつ移植可能マトリックス内に埋め込まれる。好ましい実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、移植可能ヒドロゲルに固着され、かつ移植可能ヒドロゲル内に埋め込まれる。一実施形態では、ヒドロゲルは、デキストラン、ポリビニルアルコール、ナトリウムポリアクリレート、またはアクリレートポリマーから構成される。さらなる実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、免疫細胞の入口が固着されたストラドマーと相互作用し、次に血液循環に戻ることを可能にするのに十分大きい細孔径を有するヒドロゲル内に固着された状態で投与される。さらなる実施形態では、ヒドロゲルの細孔径は、5~50ミクロンである。好ましい実施形態では、ヒドロゲルの細孔径は、25~30ミクロンである。
【0107】
別の実施形態では、GL-2045組成物は、種特異的またはキメラストラドマー分子を有する、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、およびチンパンジー)、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、ウサギ、ヤギ、シカ、ヒツジ、フェレット、アレチネズミ、モルモット、ハムスター、コウモリ、トリ(例えば、ニワトリ、七面鳥、およびダック)、魚、および爬虫類を治療するために投与される。別の実施形態では、ヒトは、大人または子供である。また別の実施形態では、最適に製造されたストラドマーは、補体媒介疾患を予防するために投与される。さらなる実施形態では、ストラドマーは、コンパニオン動物および家畜におけるワクチン関連自己免疫状態を予防するために投与される。
【0108】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」という用語は、腸を介した吸収を伴わずに、化合物が対象内に吸収される任意の投与形態を含む。本発明で使用される例示的非経口投与は、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、腫瘍内、眼球内、経鼻、または関節内投与を含むがこれらに限定されない。
【0109】
加えて、本発明のGL-2045組成物は、任意選択的に、別の医薬品の前、中、または後に投与され得る。
【0110】
以下は、特定の例示的疾患について、示されるように、様々な医薬製剤の分類および投与の好ましい経路についての特定の例である:
【0111】
口腔または舌下で溶解可能なタブレット:アンギナ、結節性多発動脈炎。
【0112】
静脈内、筋肉内、または皮下:重症筋無力症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、膜性腎症、視神経脊髄炎、同種移植の抗体媒介拒否、ループス腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、特発性血小板減少性紫斑病、封入体筋炎、パラプロテイン血症性IgM脱髄性多発性ニューロパシー、壊疽性筋膜炎、天疱瘡、壊疽、皮膚筋炎、肉芽腫、リンパ腫、肺血症、再生不良性貧血、多系統臓器不全、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、慢性炎症性脱髄性多発根神経、炎症性筋疾患、血栓性血小板減少性紫斑病、筋炎、貧血症、新生組織形成、溶血性貧血症、脳炎、脊髄炎、ヒトt細胞白血病ウィルス1型と特に関連付けられる脊髄症、白血病、多発性硬化症および視神経炎、ぜんそく、表皮壊死症、Lambert-Eaton筋無力症候群、神経障害、ブドウ膜炎、ギラン・バレー症候群、移植片対宿主病、スティフマン症候群、抗Yo抗体を有する傍腫瘍性小脳変性、抗Hu抗体を有する腫瘍随伴性脳脊髄症および感覚性神経障害、全身性血管炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫糖尿病性神経障害、急性突発性自律神経障害、フォークト・小柳・原田症候群、多巣性運動ニューロパシー、抗/GM1と関連付けられる下位運動ニューロン症候群、脱髄、膜性増殖性糸球体腎炎、心筋症、川崎病、リウマチ性関節炎、およびエバンス症候群、CIDP、MS、皮膚筋炎、筋ジストロフィー。本明細書で使用される場合、「静脈内投与」という用語は、静脈内注入もしくは点滴を介して体循環へと送達するための全ての技術を含む。
【0113】
皮膚ゲル、ローション、クリーム、またはパッチ:白斑、帯状疱疹、にきび、口唇炎。
【0114】
肛門坐薬、ゲル、または点滴:潰瘍性結腸炎、痔炎症。
【0115】
ピル、トローチ、被嚢性として、または腸溶性被覆による口腔:クローン病、セリアック病、過敏性腸症候群、炎症性肝臓疾患、バレット食道。
【0116】
皮質内:てんかん、アルツハイマー病、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病。
【0117】
腹腔内点滴または移植:子宮内膜症。
【0118】
医療デバイス:冠動脈ステント、人工関節上で被覆される。
【0119】
最適に製造されたGL-2045の治療用途
一実施形態では、自己免疫疾患、炎症性疾患、または補体媒介疾患もしくは状態などの疾患もしくは状態を治療または予防するための方法を提供する。
【0120】
合理的設計ならびにインビトロおよびインビボ検証に基づいて、本発明の最適に製造されたGL-2045は、炎症性疾患および障害を治療するための、ならびにアレルギー、癌、自己免疫疾患、感染性疾患、および炎症性疾患に対する生物免疫療法などの様々な他の状況において免疫機能を変更するための重要な生物医薬品として機能するであろう。本明細書に開示される免疫学的に活性な最適に製造されたGL-2045を用いた治療に好適な医学的状態は、増加されたもしくは不適切な補体活性を含む、補体活性化もしくは補体媒介エフェクター機能により引き起こされるか、またはこれと関連付けられる任意の疾患を含む。そのような医学的状態は、エクリズマブなどの補体結合薬物を用いて現在治療されているか、または以前に治療された医学的状態を含む。エクリズマブは、補体タンパク質C5(古典的補体経路におけるC1およびC1qの下流である補体タンパク質)に結合し、その開裂およびその後の補体媒介細胞溶解を抑制する。本発明の生体模倣薬は、当該技術分野で知られている他の補体結合薬物に対する安全かつ効果的な代替品を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の生体模倣薬は、古典的補体経路のC1複合体における第1のサブ単位である、C1qを結合させる。免疫学的に活性な最適に製造されたストラドマーを用いた治療に好適な医学的状態は、重症筋無力症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、膜性腎症、視神経脊髄炎、拒同種移植の抗体媒介拒否、ループス腎炎、黄斑変性症、鎌状赤血球病、および膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載される免疫学的に活性な最適に製造されたGL-2045の治療に好適な追加の医学的状態は、自己免疫血球減少症、慢性炎症脱髄性多発性ニューロパシー、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、抗因子VIII自己免疫疾患、皮膚筋炎、血管炎、およびブドウ膜炎などのhIVIGが臨床的に有用であると見出された、広範囲の免疫抑制療法を用いて現在ルーチン的に治療されているもの(F.G.van der Meche et al.,N.Engl.J.Med.326,1123(1992);P.Gajdos et al,Lancet i,406(1984);Y.Sultan,M.et al,Lancet ii,765(1984);M.C.Dalakas et al.,N.Engl.J.Med.329,1993(1993);D.R.Jayne et al.,Lancet 337,1137(1991);P.LeHoang,et al.,Ocul.Immunol.Inflamm.8,49(2000)を参照のこと)、ならびにモノクローナル抗体が使用され得るか、またはすでに臨床使用されているこうした癌もしくは炎症性疾患状態を含む。この発明の対称である化合物によって効果的に治療され得るものの中に含まれる状態は、サイトカインネットワークに不均衡を有する炎症性疾患、病原性自己抗体もしくは自己攻撃的T細胞によって媒介される自己免疫疾患、または急性もしくは慢性期の慢性再発性自己免疫、炎症、あるいは感染性疾患もしくはプロセスを含む。
【0121】
加えて、補体を伴う炎症性成分を有する他の医学的状態は、ぜんそく、エリテマトーデス、糸球体腎炎、糸球体腎症、関節炎、自己免疫溶血性貧血症および自己免疫心臓疾患を含む自己抗体媒介疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症性腸疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症、非定型溶血性尿毒症症候群、例として、心筋梗塞、脊髄損傷、および脳卒中を含む虚血再かん流傷害、移植された器官もしくは血液の拒否、B型肝炎、C型肝炎、ヒト免疫不全ウィルス関連炎症、副腎脳白質ジストロフィー、ならびにてんかん性障害、特にラスムッセン症候群、ウェスト症候群、およびレノックスガストー症候群を含むウィルス感染後脳炎と関連付けられると考えられるものなどのGL-2045組成物を用いた治療から有益を受けるであろう。
【0122】
本明細書に記載されるGL-2045組成物を使用した治療に対する一般的な手法は、疾患または状態を有する対象に、治療に影響を与えるための治療的に効果的な量のGL-2045組成物を投与することである。いくつかの実施形態では、疾患もしくは状態は、サイトカインネットワークにおける不均衡を有する炎症性疾患、病原性自己抗体もしくは自己攻撃的T細胞によって媒介される自己免疫障害、または急性期もしくは慢性期の慢性再発性疾患もしくはプロセスとして広く分類され得る。
【0123】
本明細書に使用される場合、「治療する」および「治療」という用語は、対象が疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態の症状の改善を有するように、本発明の最適に製造されたストラドマーの治療的に効果的な量を対象に投与することを指す。改善は、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態の症状の任意の改善もしくは修復である。改善は、観察可能なもしくは測定可能な改善であるか、または対象の健全性の一般的な感覚の改善であり得る。したがって、当業者は、治療は疾患状態を改善させ得るが、疾患についての完全な治癒ではない場合があることを理解している。具体的には、対象の改善は、炎症の減少;C反応性タンパク質などの炎症性実験室マーカーの減少;自己抗体などの自己免疫マーカーまたは血小板数、白血球数、もしくは赤血球数の改善、発疹もしくは紫斑の減少、脱力、無感覚、もしくはヒリヒリ感の減少、高血糖を有する患者のグルコースレベルの増加、関節痛、炎症、腫れ、もしくは劣化の減少、筋けいれんおよび下痢頻度および体積の減少、アンギナの減少、組織炎症の減少、または発作頻度の減少のうちの1つ以上によって証明されるような自己免疫の低下;癌腫瘍量の減少、腫瘍進行時間の増加、癌疼痛の減少、延命の増加もしくは生活の質の改善;あるいは骨粗しょう症の進行の遅延もしくは改善のうちの1つ以上を含み得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、「治療的に効果的な量」という用語は、疾患または状態の症状の改善または修復をもたらす量を指す。当業者であれば、本明細書で生成されるGL-2045の治療的に効果的な量は最終医薬物質に応じて変化し得ることを理解するであろう。したがって、例えば、全てのより低次の多量体を取り除く必要がある場合、結果として生じるさらに高次の多量体の低減された用量が必要とされ得ると考えられる。このように、GL-2045の1つ超の「治療的に効果的な用量」がある。
【0125】
本明細書で使用される場合、「予防」とは、疾患の症状の完全な予防、疾患の症状の発現の遅延、または続いて発症された疾患の症状の重症度の緩和を意味し得る。
【0126】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本明細書の最適に製造されたストラドマーが本明細書に記載される方法に従って投与される、任意の哺乳動物の対象という意味で捉えられる。特定の実施形態では、本開示の方法は、ヒト対象を治療するために用いられる。本開示の方法はまた、種特異的またはキメラストラドマー分子を生成するために、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、およびチンパンジー)、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ブタ、ウサギ、ヤギ、シカ、ヒツジ、フェレット、アレチネズミ、モルモット、ハムスター、コウモリ、トリ(例えば、ニワトリ、七面鳥、およびダック)、魚、ならびに爬虫類を治療するために用いられ得る。
【0127】
補体抑制は、抗体媒介疾患を低減することが実証されている(Stegall et al.,American Journal of Transplantation 2011 Nov;11(1):2405-2413-Epub 2011 Sept 22を参照のこと)。本発明の最適に製造されたストラドマーはまた、抗体媒介である疾患または状態を治療するために使用され得る。自己抗体は、多くの既知の自己免疫疾患を媒介し、多数の他の自己免疫疾患において役割を果たす可能性が高い。本発明の最適に製造されたストラドマーが使用され得る認識された抗体媒介疾患は、グッドバスチャー病を含む抗糸球体基底膜抗体媒介腎炎;固体臓器移植における抗ドナー抗体(ドナー特異的同種抗体);視神経脊髄炎における抗アクアポリン4抗体;神経筋緊張症における抗VGKC抗体、辺縁系脳炎、およびマルファン症候群;重症筋無力症における抗ニコチン性アセチルコリン受容体および抗MuSK抗体;Lambert-Eaton筋無力症候群における抗VGCC抗体;腫瘍と関連付けられることが多い辺縁系脳炎における抗AMPARおよび抗GABA(B)R抗体;全身硬直症候群もしくは過剰驚愕症における抗GlyR抗体;反復自然流産、ヒューズ症候群、および全身性エリテマトーデスにおける抗リン脂質、抗カルジオリピン、および抗β2糖タンパク質I抗体;全身硬直症候群、自己免疫小脳性運動失調症、もしくは辺縁系脳炎における反グルタミン酸脱炭酸酵素抗体;卵巣奇形種と関連付けられることが多いが非腫瘍随伴性であり得る若年成人および子供に多い顕著な運動障害を伴う辺縁系特徴および皮質下特徴の両方を含む、新たに記載される症候群における抗NMDA受容体抗体;抗二重鎖DNA、全身性エリテマトーデスにおける抗一本鎖DNA、抗RNA、抗SM、および抗C1q抗体;強皮症、シェーグレン症候群、および抗Ro、抗La、抗Scl70、抗Jo-1を含むポリ筋炎を含む結合組織疾患における抗核および抗核小体抗体;リウマチ性関節炎における抗リウマチ因子抗体;結節性多発動脈炎における抗B型肝炎表面抗原抗体;CREST症候群における抗セントロメア抗体;心内膜炎における、または心内膜炎のリスクとしての抗連鎖球菌抗体;橋本甲状腺炎における抗サイログロブリン、抗甲状腺ペルオキシダーゼ、および抗TSH受容体抗体;混合性結合組織疾患および全身性エリテマトーデスにおける抗U1 RNP抗体;ならびに天疱瘡における抗デスモグレインおよび抗ケラチン生成細胞抗体を含むがこれらに限定されない。
【0128】
本発明のGL-2045組成物は、鬱血性心不全(CHF)、血管炎、酒さ、にきび、湿疹、心筋炎および心筋の他の状態、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、髄液線維芽細胞、ならびに骨髄基質;骨粗しょう;パジェット病、骨巨細胞腫;多発性骨髄腫;乳癌;不使用骨粗しょう症;栄養失調、歯周病、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、脊髄損傷、急性肺血症性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性骨異形成症、多発性線維性骨形成異常、歯周再構築、および骨折;サルコイドーシス;溶骨性骨癌、肺癌、腎臓癌、および直腸癌;骨転移、骨疼痛管理、および体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎および他の脊椎関節症;移植拒絶反応、ウィルス感染、血液学的新生組織形成および腫瘍様状態、例えば、ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ球性白血病、菌状息肉腫、外套細胞リンパ腫、小胞リンパ腫、びまん性大細胞型b細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、毛様細胞白血病、およびリンパ形質細胞性白血病)、B細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫、およびT細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含むリンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、末梢T細胞白血病、大人T細胞白血病/T細胞リンパ腫および大型顆粒リンパ球性白血病、ランゲルハンス細胞肉芽腫症を含む成熟TおよびNK細胞の腫瘍、成熟したAML、分化していないAML、急性前骨髄球白血病、急性骨髄単球性白血病、および急性単球性白血病を含む急性骨髄性白血病などの骨髄新生組織形成、骨髄異形成症候群、および慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性障害、中枢神経系の腫瘍、例えば、脳腫瘍(グリオーマ、神経芽細胞腫、星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、および網膜芽腫)、固体腫瘍(鼻咽頭癌、基底細胞癌、膵臓癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮、膣もしくは頸部癌、卵巣癌、原発性肝臓癌もしくは子宮内膜癌、血管系の腫瘍(血管肉腫および血管周囲細胞腫))、または他の癌を含むがこれらに限定されたに状態を治療するために使用され得る。
【0129】
本発明のGL-2045組成物を使用して、自己免疫疾患を治療することができる。本明細書に使用される場合、「自己免疫疾患」という用語は、80個超の疾患および状態の多様な群を指す。これらの疾患および状態のうちの全てにおいて、根本的な問題は、体の免疫系が体自体を攻撃することである。自己免疫疾患は、結合組織、神経、筋肉、内分泌系、皮膚、血液、ならびに呼吸器系および消化器系を含む全ての主な体組織に影響を与える。自己免疫疾患には、例えば、慢性炎症脱髄性多発性ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、重症筋無力症、および1型糖尿病が含まれる。
【0130】
本発明の組成物および方法を使用して治療可能な疾患もしくは状態は、鎌状赤血球病、特発性血小板減少性紫斑病、同種免疫/自己免疫血小板減少症、後天性免疫血小板減少症、自己免疫好中球減少症、自己免疫溶血性貧血症、パルボウィルスB19関連赤血球形成不全、後天性抗因子VIII自己免疫、後天性ウォン・ヴィレブランド疾患、多発性骨髄腫および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、肺血症、再生不良性貧血、赤芽球形成不全、ダイアモンド・ブラックファン貧血症、新生児の溶血性疾患、免疫媒介好中球減少症、血小板輸血に対する治療抵抗性、新生児の輸血後紫斑、溶血性尿毒症症候群、全身性血管炎、血栓性血小板減少性紫斑病、またはエバンス症候群を含むがこれらに限定されない血液免疫学的なプロセスであり得る。
【0131】
疾患もしくは状態はまた、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発根神経、パラプロテイン血症性IgM脱髄性多発性ニューロパシー、Lambert-Eaton筋無力症候群、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパシー、抗GM1と関連付けられる下位運動ニューロン症候群、脱髄、多発性硬化症および視神経炎、スティフマン症候群、抗Yo抗体を有する傍腫瘍性小脳変性、腫瘍随伴性脳脊髄症、抗Hu抗体を有する感覚性神経障害、てんかん、脳炎、脊髄炎、ヒトT細胞リンパ向性ウィルス1と特に関連付けられる脊髄症、自己免疫糖尿病性神経障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、または急性突発性自律神経障害を含むがこれらに限定されない神経免疫学的なプロセスであり得る。
【0132】
疾患もしくは状態はまた、聴力損失もしくは失明と関連付けられる炎症もしくは自己免疫であり得る。例えば、疾患もしくは状態は、騒音性聴力損失もしくは加齢に伴う聴力損失などの自己免疫関連の聴力損失であり得るか、または聴覚デバイスなどのデバイスの移植(例えば、蝸牛移植)と関連付けられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、デバイスの移植前、同時に、または後に対象に投与され得る。
【0133】
疾患もしくは状態はまた、川崎病、リウマチ性関節炎、フェルティ症候群、ANCA陽性血管炎、自発性ポリ筋炎、皮膚筋炎、抗リン脂質症候群、反復自然流産、全身性エリテマトーデス、若年性特発性関節炎、レイノー病、クレスト症候群、またはブドウ膜炎を含むがこれらに限定されないリウマチ疾患プロセスであり得る。
【0134】
疾患もしくは状態はまた、中毒性表皮壊死症、壊疽、肉芽腫、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、落葉状天疱瘡、白斑を含む自己免疫皮膚水疱形成疾患、連鎖球菌毒素性ショック症候群、強皮症、広範性および極限性皮膚全身性硬化症を含む全身性硬化症、またはアトピー性皮膚炎(特に、ステロイド剤依存性)を含むがこれらに限定されない皮膚免疫学的な疾患プロセスであり得る。
【0135】
疾患もしくは状態はまた、封入体筋炎、壊疽性筋膜炎、炎症性筋疾患、筋炎、抗デコリン(BJ抗原)ミオパシー、腫瘍随伴性壊死ミオパシー、X連結性空胞化ミオパシー、ペニシラミン誘導性ポリ筋炎、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、または心筋症を含むがこれらに限定されない筋骨格免疫学的な疾患プロセスであり得る。
【0136】
疾患もしくは状態はまた、悪性貧血症、自己免疫慢性活性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病、疱疹状皮膚炎、特発性肝硬変、反応性関節炎、クローン病、ウィップル病、潰瘍性結腸炎、または硬化性胆管炎を含むがこれらに限定されない胃腸免疫学的な疾患プロセスであり得る。
【0137】
疾患もしくは状態はまた、移植片対宿主病、抗体媒介移植片の拒絶、骨髄移植後拒絶、感染性後疾患炎症、リンパ腫、白血病、新生組織形成、ぜんそく、抗ベータ細胞抗体を有する1型糖尿病、シェーグレン症候群、混合性結合組織疾患、アジソン疾患、フォークト・小柳・原田症候群、膜性増殖性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫症、矯小多脳回症、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発動脈炎、または多系統臓器不全であり得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、「アレルギー」とは、IgEによって媒介される全ての免疫反応、ならびにIgE媒介反応を模倣するこうした反応を含む。アレルギーは、IgEまたはIgE様免疫反応をトリガするタンパク質、ペプチド、炭水化物、およびそれらの組み合わせを含むアレルギーによって誘導される。例示的アレルギーは、ナッツアレルギー、花粉アレルギー、および虫刺されアレルギーを含む。例示的アレルギーは、ツタウルシおよびオーク中のウルシオール;ハウスダスト抗原;カバノキ花粉成分Bet v 1およびBet v 2;セロリ中の15kD抗原;リンゴ抗原Mal d 1;モモ中のPru p3;オオアワガエリ花粉アレルギーPhl p 1;ホソムギ中のLol p 3、Lol p 1、またはLol p V;ギョウギシバ中のCyn d 1;イエダニアレルギーのイエダニDer p1、Der p2、またはDer f1;グルテン中のα-グリアジンおよびγ-グリアジンエピトープ;ハチ毒ホスホリパーゼA2;ピーナッツ中のAra h 1、Ara h 2、およびAra h 3エピトープを含む。
【0139】
別の実施形態では、本明細書に記載されるGL-2045組成物は、血液が患者から引き出され、患者内に導入し戻す前に約1時間半~約3時間の一定時間、最適に製造されたストラドマー(複数可)と一時的に接触される、プライミング系において利用され得るであろう。細胞療法のこの形態では、患者自身のエフェクター細胞は、最適に製造されたストラドマーへのエフェクター細胞の曝露を通してエフェクター細胞を調節するために、エクスビボでマトリックス上に固着された最適に製造されたストラドマーに曝露される。次に、調節されたエフェクター細胞を含む血液を、患者内に注入し戻す。そのようなプライミング系は、多数の臨床および治療用途を有し得るであろう。
【0140】
本明細書に記載されるGL-2045組成物はまた、免疫反応プロファイルの特定の変化に影響を与えるための様々な文脈で免疫系反応を変更するために容易に適用され得る。対象における免疫反応の変更または調節は、免疫反応の増加、減少、または割合もしくは成分の変化を指す。例えば、サイトカイン生成もしくは分泌レベルは、補体に結合し、かつこれらの受容体と相互作用するように設計されたストラドマーとのFcRsの適切な組み合わせと共に補体を標的とすることによって所望に応じて増加または減少され得る。抗体生成はまた、増加もしくは増加され得;2つ以上のサイトカインもしくは免疫細胞受容体の割合が変化され得;または追加の型のサイトカインもしくは抗体が生成され得る。
【0141】
好ましい実施形態では、自己免疫または炎症性疾患を有する対象は、本明細書に記載されるGL-2045組成物の治療的に効果的な量を対象に投与する工程を含む、変更されたそれらの免疫反応を有し、GL-2045組成物の治療的に効果的な量は、対象における免疫反応を変更する。理想的には、この発明は、対象における疾患もしくは状態を治療する。変更された免疫反応は、増加または減少された反応で有り得、かつIL-1RAおよび他のIL-1ファミリーメンバー、IL-6、IL-10、IL-8、IL-23、IL-7、IL-4、IL-12、IL-13、IL-17、IL-1受容体、TNF-α、他のTNFファミリーメンバーおよびTNF受容体、IFN-α、他のインターフェロンファミリーメンバーおよびインターフェロン受容体のうちのいずれかのレベルを含む変更されたサイトカインレベル、またはCCL、CXC、XC、およびFAM19ケモカインファミリーメンバーのうちのいずれかのレベルを含むケモカインレベルを伴い得る。好ましい実施形態では、IL-6またはIL-8は、治療に対する反応において低減される。特に好ましい実施形態では、IL-6およびIL-8は、治療に対する反応において低減され、かつ/またはIL-10もしくはIL-1RAは、治療に対する反応において増加される。しかしながら、本発明は、記載される生体模倣薬の作用の任意の特定の機構によって限定されない。変更された免疫反応は、対象における変更された自己抗体レベルであり得る。変更された免疫反応は、対象における変更された自己攻撃的T細胞レベルであり得る。
【0142】
例えば、自己免疫疾患におけるTNFアルファ生成の低減量は、治療効果を有し得る。この実用的な用途は、抗TNFアルファ抗体療法(例えば、REMICADE(登録商標))であり、これは、尋常性乾癬、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、および強直性脊椎炎を治療することが臨床的に証明されている。これらの自己免疫疾患は、異なる病因を有するが、炎症および免疫細胞活性に関連する疾患プロセスの重要な免疫学的成分を共有している。TNFアルファ生成を減少させるように設計されたストラドマーは、これらおよび多くの他の自己免疫疾患において同様に効果的であろう。変更された免疫反応プロファイルはまた、抗体生成、例えば、対象自身の組織を標的とする自己抗体、または対象における変更された自己侵攻性T細胞レベルの減少に影響を与えるための直接的もしくはは間接的調節であり得る。例えば、多発性硬化症は、インターフェロンベータ療法によって治療され得る自己反応性T細胞を伴う自己免疫障害である。例えば、Zafranskaya M,et al.,Immunology 2007 May;121(l):29-39-Epub 2006 Dec 18を参照されたい。自己反応性T細胞レベルを減少させるように設計された最適に製造されたストラドマーは、多発性硬化症において同様に効果的であり、かつ自己反応性T細胞を伴う他の自己免疫疾患であり得る。
【0143】
本明細書に記載されるGL-2045組成物は、樹状細胞、マクロファージ、破骨細胞、単球、もしくはNK細胞を含む免疫細胞からの共刺激分子の発現を調節するために、またはこれらの同じ免疫細胞の分化、成熟、もしくはインターロイキン-12(IL-12)を含むサイトカイン分泌の抑制のために、あるいはインターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-6(IL-6)、もしくはIL1-RAを含むサイトカイン分泌を増加させるために、使用され得る。当業者はまた、最適化された免疫学的に活性な生体模倣薬に免疫細胞を曝露することによって、かつ免疫細胞が樹状細胞、マクロファージ、破骨細胞、または単球である免疫細胞機能の調節を測定することによって、最適化された免疫学的に活性な生体模倣薬の効能を検証し得る。一実施形態では、免疫細胞は、最適化された免疫学的に活性な生体模倣薬にインビトロで曝露され、細胞表面受容体の量もしくはサイトカイン生成の量を判定する工程をさらに含み、細胞表面受容体もしくはサイトカイン生成の量の変化は、免疫細胞機能の調節を示す。別の実施形態では、免疫細胞は、自己免疫疾患のためのモデル動物において最適化された免疫学的に活性な生体模倣薬にインビボで曝露され、自己免疫疾患の改善の程度を評価する工程をさらに含む。
【0144】
本明細書に記載されるGL-2045組成物はまた、デバイスの構成要素として使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるGL-2045は、医療用インプラントなどのデバイス上で被覆され得る。例えば、最適に製造されたストラドマーは、例えば、ブドウ膜炎もしくは黄斑変性症における眼内使用のために、浸透を改善し、かつ薬物放出を長引かせるために、冠状動脈ステント上で、またはナノ粒子療法の一部として被覆され得る。本明細書に記載される最適に製造されたストラドマーはまた、診断の一成分として使用され得る。いくつかの実施形態では、当業者は、どの患者において、ストラドマーの使用が特に有益であり得るかを判定することによって、治療を個人化することができる。例えば、当業者は、患者の免疫細胞を免疫学的に活性な生体模倣薬に曝露して、高反応者を識別するために、フローサイトメトリーもしくはサイトカインプロファイルによって免疫細胞の活性化もしくは成熟の調節を測定し得る。
【0145】
本明細書で引用される全ての参照は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【実施例0146】
高タンパク質力価、付随低細胞片を含む長い生存率、およびGL-2045のさらに高次の多量体の生成の組み合わせを最適化するために、製造プロセスにおいて様々な手法をとった。具体的には、多量体化の増加の特性を有するGL-2045生成物のための最適な条件:基礎培地、給餌の型、給餌のタイミング、温度シフト、通気、および振とうフラスコ条件を判定するための以下の上流製造プロセスの態様は、様々であった。各例では、最適な条件を識別するために、細胞密度、生存率、タンパク質力価、および多量体化を分析した。さらに、GL-2045の最適な多量体化プロファイルが維持されたGL-2045の精製および濾過のための最適な条件を判定するための緩衝液、洗浄プロトコル、およびカラム選択を含む下流製造プロセスの態様は、様々であった。以下の例は、例示のみの方法によって、かつ限定の方法によらずに提供される。
【0147】
実施例1-GL-2045の分画および生体層干渉法分析 0.05MのTris-HCL+0.15MのNaCl緩衝液(pH7.5)中にGE Hi-Load 26/60 Superdex 200pgカラム(GE、#17-1071-01)を使用して、GL-2045の溶液を分画した。3.2mLのGL-2045溶液を、2.6mL/分の流量で装填した。6つの画分(1~6)を、2.0mLの体積で回収し、280nmのUV測定によって、タンパク質濃度を判定した(
図1A)。GL-2045画分の各々についての多量体化を評価した。簡潔に言うと、画分1~6の各々の試料を、4~12%の非還元Nu-Page BTゲル(インビトロゲン、#NP0322BOX)に装填した。試料を、150ボルトでおよそ3時間実験した。結果は、
図1Bに提供され、かつ画分1~6のGL-2045のさらに高次の多量体の存在下で、明白な差を実証している。画分1~3は、より低次の多量体(例えば、バンド1~4)から構成される。画分1は、ほぼ包括的に、55KDの明白なMWを有するホモ二量体から構成される(バンド1、非還元SDS-PAGEからMW推測)。画分2は、110KDのMWを有するホモ二量体のおよそ97%の二量体から構成される(バンド2)。画分3は、主に、それぞれ、より少ない量のバンド2、5(MW=275KD)、6(MW=330KD)、および7(MW=385KD)と共に、165KDおよび220KDのMWを有するバンド3および4から構成される。画分4は、主に、より少ない量のバンド3、7、8(MW=440KD)およびさらに高次のバンドと共に、バンド4、5、および6から構成される。しかしながら、画分5および6は、主に、さらに高次の多量体(バンド5+)から構成される。
【0148】
生体層干渉法運動結合分析を使用して、FcγRIIIA受容体への結合について、GL-2045の画分を分析した。生体層干渉法は、バイオセンサチップ表面上に固体化されたリガンドと溶液中の分析との間の結合を検出する。結合が起こると、波長シフトを生じる(「RU」の反応単位として検出される)、バイオセンサチップでの光学的厚さの増加を生成する。最大結合レベル(RU max)は、センサ表面上のリガンドの量を飽和させる平衡での試料結合の最大可能量である。
【0149】
His標識付き受容体タンパク質(5μg/mL)を、300秒間、ForteBio(Cat.#18-1092)から1X運動分析緩衝液中の抗Hisセンサチップ(抗Penta-His HIS1K、ForteBio Cat.#18-5121)に結合させた。装填されたセンサを、60秒間基線測定値を得るために、ラベル化された受容体またはリガンドを含まない1X運動緩衝液中に移送した。基線を得た後、受容体/タンパク質のオン比を、50μg/mL、25μg/mL、および12.5μg/mLの濃度で60秒間選択される精製ストラドマーを含有する1x運動緩衝液にセンサチップを移送することによって測定した。オフ比を、センサチップを1X運動緩衝液に移送することによって300秒間測定し、RU値、オン比値、解離比、およびKd値を、ForteBioソフトウエアを使用して計算した。
【0150】
結合曲線結果を、
図2に示し、ForteBio Octetソフトウエアによって計算される運動結合データを、表2に提供する。これらの結合曲線は、より低い分子量画分(例えば、画分1および2)について観察されるものよりも高い分子量のGL-2045(例えば、画分3、4、5、および6)を含有する画分について、ますますより低いオフ比を有する、より高い結合力を実証しており、GL-2045の高分子量画分は、より低い分子量画分よりも貪欲に結合することを示している。
【表2】
【0151】
実施例2-GL-2045画分を用いた補体依存性細胞(CDC)致死アッセイ
補体活性化を抑制するためのGL-2045画分の能力を評価した。GL-2045を、サイズ排除クロマトグラフィによって6画分に分画し(
図3A)、各々を、非還元ゲルについての多量体化について分析した(
図3B)。補体活性化に対する各画分の効果を判定するために、CD20発現ウィル2細胞を、抗CD20モノクローナル抗体を用いて20分間培養し、その後、細胞を遠心分離し、新たな培地中に再懸濁した。次に、細胞を、本明細書に記載される画分1~6の各々、ならびに6つの濃度:100μg/mL、50μg/mL、20μg/mL、10μg/mL、5μg/mL、または1μg/mLのうちの1つでの比較としての非分画GL-2045を含有する培地の96ウェルプレート中に培養した。補体依存性細胞溶解を開始するために、血清を細胞懸濁液に添加し、プレートを、37℃で3時間培養した。細胞死を、Promega Cytotox Gloアッセイを用いて定量化した。Cytotoxアッセイ試薬を、プレートの各ウェルに添加し、プレートを、室温で15分間暗所で培養した。15分後の発光を、Promega GloMax照度計上で読み取り、細胞死を、この読み取りから計算した。結果は、
図4A~4Dに示され、かつ画分5および6(バンド5~13中により高い分子量の多量体を含有する)が、画分1~4中に存在する、より低い分子量の多量体よりもCDCのより顕著な抑制を示すことを実証している。4バンド以上を含む画分のみが、六量体C1qへのさらに高次の多量体の多価Fc結合と一致する、CDCの効果的な抑制を実証していることも留意される。
【0152】
実施例3-FcγRIIIaへのGL-2045画分の結合
FcγRIIIaへのGL-2045画分の結合を判定した。GL-2045の上清を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの結合緩衝液を用いたタンパク質A HiTrap MabSelect Sure(GE#11-0034-95)を有する親和性クロマトグラフィによって精製し、pH2.7の0.1Mのグリシンを用いて溶出した(
図5A)。親和性クロマトグラフィ-精製GL-2045を、pH7.2の1X PBS(Quality Biological,Inc #119-069-101)中に保存した。精製GL-2045のプールを、pH5.0の50mMの酢酸ナトリウムに対してさらに透析し、かつpH5.0の50mMの酢酸ナトリウムの結合緩衝液を用いたPOROS CIEXカラム(1.2cmD×10cmLのGOPUREカラム、Poros XS、Life Technologies、#4448885)に対する陽イオン交換クロマトグラフィ、および50mMの酢酸ナトリウム、pH5.0の1MのNaClを用いた溶出勾配(0~100%の溶出緩衝液)によってポリッシュした。このポリッシュ工程を、最終画分から最高次の多量体および/または非秩序凝集体を取り除くことなく行った。最終工程として、CIEXポリッシュされたGL-2045を、≦5mLの体積まで濃縮し、緩衝液を、ゲル濾過ランニング緩衝液に対して交換し、かつ0.05MのTris-HCL+pH7.5の0.15MのNaClを実験緩衝液(Tris HCL、pH7.5 Teknova #T1075)として使用して、ゲル濾過カラム(Hiload 26/60 Superdex 200pg(GE #17-1071-01))中に注入した。次に、ゲル分析によって、多量体化について画分を分析した(
図5Bおよび
図5C)。
【0153】
FcγRIIIaへの分画されたGL-2045の結合を、FcγRIIIa ELISA結合アッセイを使用して判定した。簡潔に言うと、96プレートを、組み換えFcγRIIIaで被覆し、GL-2045と反応させた。洗浄後、FcγRIIIa結合材料の量を、ELISAベースのアッセイにおけるFc検出mAbを使用して判定した(
図6Aおよび
図6B)。各画分についてのEC50値を表3に示す。これらの結果は、さらに高次の多量体(画分1C4、1C5、1C6、1C7、1C8、1C9、1C10、および1C11)が、より低次の多量体(画分1D9、1E4、および1F7)よりもFcγRIIIaに対して低EC50よって留意される、より貪欲な結合を実証し、かつ驚くべきことに、最高分子量の多量体(画分1C3、1C2、1C1、1B12、1B11よりも貪欲な結合を実証することを実証している。高度に機能的な最高次の多量体(例えば、画分1B11、1B12、1C1、1C2、および1C3)と共に、特定のより低い効力の高分子量凝集化画分を含むために、まさに最高分子量画分を前提とする。これらの結果は、非常に驚くべきことに、GL-2045の全ての高分子量画分が、高秩序高分子量の多量体の形成とは対照的に、ホモ二量体の非秩序集合の効果による可能性が高い、FcγRへの結合の増加を実証するわけではないことを示している。これらのデータは、高分子量のさらに高次の多量体の生成および保持、ならびに結合標的の低親和性受容体にはより効果的でない(表3の1B11および1B12についてのEC50値を参照のこと)非秩序の高分子量凝集体(例えば、1B11および1B12)の取り除きを生じるように、最適な上流製造方法と組み合わせた、最適化された下流製造方法(タンパク質A精製、イオン交換クロマトグラフィ、および疎水性相互作用クロマトグラフィについての最適化された条件を含む)の必要性を示している。
【表3】
【0154】
実施例4-GL-2045画分のC5a誘導走化性分析
GL-2045細胞培養物を、Lグルタミン(Lonza、#17-605E)およびHT補完剤(Life Technologies、#11067-030)を用いてPowerCHO2培地(Lonza、#U21-070)中に成長させた。GL-2045の上清を、タンパク質A HiTrap MabSelect Sure(GE、#11-0034-95)を用いて親和性クロマトグラフィによって精製し、次に、低分子バンドを高分子バンドに分離させるための異なるpH条件を使用して、AIEX HiScreen Q FF(GE、#28-9505-10)で分画した。結果を
図7に示す(GL-GLM-01=組み換え、非分画Fc(G001)、GL-GLM-02=非分画GL-2045、GL-GLM-05=pH6.0での分画GL-2045、GL-GLM-06=pH6.5での分画GL-2045、GL-GLM-07=pH7.0での分画GL-2045、GL-GLM-08=pH7.5での分画GL-2045)。最後に、異なる画分を濃縮し、HBSS(Lonza、#10-527F)に対して透析した。
【0155】
GL-2045の上清を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの結合緩衝液を用いて、タンパク質A(pA)HiTrap MabSelect Sure(GE、#11-0034-95)を有する親和性クロマトグラフィによって精製した。結合緩衝液を用いた第1の洗浄、および1MのNaCl、5mMのEDTA、2Mの尿素、pH7.0の50mMのリン酸塩を含む緩衝液を用いた第2の洗浄後、pAに結合されたタンパク質を、pH2.7の0.1Mのグリシンで溶出した。
【0156】
親和性クロマトグラフィ精製GL-2045を、pH7.0の1X PBS(Quality Biological,Inc #119-069-101)中に保存した。4バッチの精製GL-2045を、pH6.0、6.5、7.0、または7.5の50mMのTris-HCLでさらに希釈し(6X)、pH6.0、6.5、7.0、または7.5の50mMのTris-HCLの結合緩衝液を用いてHiScreen Q FFカラムに対する陰イオン交換クロマトグラフィによって精製し、かつpH6.0、6.5、7.0、7.5の50mMのTris-HCL+1MのNaClを用いて勾配溶出(0~100%の溶出緩衝液)によって溶出した。
【0157】
これらの精製画分を利用して、好中球走化性に対するGL-2045画分の効果を判定した。簡潔に言うと、補体C5aを、1nMの濃度でのより低いウェルのボイデンチャンバに対する化学誘引物質として添加した。ボイデンチャンバへの添加前に、好中球(PBMCからの血液全体から精製された、最終濃度2.25×106細胞/mL)を、示されたGL-2045画分(0.02~10μg/mLの最終濃度μg/mL)または組み換えFc対照(GLM-001、G001)を用いて30分間、予め培養した。次に、細胞懸濁液を、ボイデンチャンバの上ウェルに添加し、25分間培養した。培養期間後、移動された集団を、各状態についてより低いチャンバ内の細胞の数を計測することによって評価し、各状態についての割合走化性を判定した(
図8)。GL-GLM-001について、走化性は観察されなかった(組み換えFc対照、G001)。より高次の多量体(バンド5~13を含む、画分GL-GLM-002、GL-GLM-005、GL-GLM-006、およびGL-GLM-007)は、より低次の多量体(バンド1~4を含む、画分GL-GLM-008)よりもC5a誘導走化性のより貪欲な抑制を実証した。
【0158】
実施例1~4に提供されたデータは、GL-2045に対するさらに高次の多量体の増強された効能を実証している。上記のデータに基づいて、最大生物学的効能を達成するためのGL-2045のさらに高次の多量体(例えば、
図1、3、5、および7のバンド5+)の特定の生成のために最適な条件を判定するために、上流製造プロトコルを試験した。
【0159】
実施例5-GL-2045生成における基礎培地のスクリーニング
この実験の目的は、GL-2045のタンパク質力価、細胞生存率、細胞密度、およびGL-2045の多量体化に対する基礎培地のパネルの効果を試験することであった。
【0160】
37Cおよび5%CO2でのシェーカー培養器中で、Lグルタミン(Lonza #17-605E)およびヒポキサンチンナトリウムおよびチミジン(HT、Gibco #11067-030)を含む、ProCHO5培地(Lonza #12-766Q)中に、GL-2045を成長させた。継代後、細胞を洗浄し、50mLのチューブスピン内に選択された培地(表4に示される)中の0.5×106細胞/mLで重複して接種した。各チューブは、10mLの培養物を含有し、かつ37℃、5%CO2、80%湿度、および180rpm回転速度のキューナー商標磁気浮上シェーカー培養器中に置かれた。4、8、および10日目に、細胞密度、細胞生存率、およびグルコースレベルを測定するために、各培養物から試料の1ミリリットルを取り出した。試料を遠心分離し、上清を+4℃で保存した。4mMのLグルタミンならびに1Xヒポキサンチンナトリウムおよびチミジンを列挙しなかった選択された培地に、成分としてLグルタミンおよびHTを補完した。選択される培地についての成長条件を表4に示す。
【表4】
【0161】
選択された培地中に成長されたGL-2045細胞培養物を、細胞密度、細胞生存率、タンパク質力価、およびさらに高次の多量体の割合について評価した。細胞をトリパンブルーと混合することによって、細胞密度および細胞生存率の評価を行った。手動の細胞計数器を使用して、生存細胞および死細胞を計数した。細胞密度(
図9、表5)および細胞生存率(
図10、表6)について、培養の4日目および8日目についてのデータを示す。試験された19個の培地のうち、ActiCHO P、CHOMACS CD、およびCD FortiCHOによる、4日目の最大細胞密度を観察した。8日目では、細胞密度の傾向は、4日目と比較して、ActiCHO P、BalanCD CHO、ExpiCHO、Cell Vento CHO 210、およびCell Vento CHO 210を除いた全ての培地について陰性であった。19個の培地のうち、ActiCHO P、続いてExpiCHO、Cell Vento CHO 110、およびHYQ SFX-CHO LMによる、試験された8日目の最大細胞生存率を観察した。19個の培地のうち、4日目~8日目の細胞生存率において肯定的な傾向を有する唯一の培地は、ActiCHO Pであった。したがって、4日目に高細胞密度を生成し、かつ8日目に細胞密度について陰性傾向を有しない唯一の培地は、ActiCHO Pである。
【表5】
【表6】
【0162】
培養物を、10日目に沈降させ、0.2μmで濾過し、かつタンパク質A親和性カラムを使用して精製するまで4℃に保った。精製について、上清培養物を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの結合緩衝液を含む、1mLのタンパク質AカラムのHiTrap MabSelect SuRe(GE、#11-0034-93)を有する親和性クロマトグラフィによって精製した。カラム-結合されタンパク質を、結合緩衝液を用いて洗浄し、続いて1MのNaCl、5mMのEDTA、2Mの尿素、pH7.0の50mMのリン酸塩による第2の洗浄を行った。カラムに結合されたGL-2045を、pH2.7の0.1Mのグリシンで溶出し、かつHiPrep26/10脱塩カラム(GE、#17-5087-01)を通してpH7.0の1X PBS中で脱塩した。精製された全ての試料を4℃で保存した。生体層干渉法(Octet)によって、タンパク質力価の測定を行った(
図11および表7)。試験された19個の基礎培地のうち、Cell Vento CHO 110による、続いてBalanCD CHO Growth A培地、ActiCHO P、およびExpiCHOによる、10日目の最大タンパク質力価を観察した。力価の有意な低下が他の培地と共に起こった。
【表7】
【0163】
さらに高次の多量体の割合を判定するために、SDS-PAGEゲル(NuPage3~8%トリスアセテートゲル、Life Technologies、#EA03752BOX)に対して、各精製培養物を実験した(非低減形態で)。2μgのタンパク質を、3μLの試料緩衝液(NuPage、LDS(4X)、Life Technologies、#NP0007)、20μMのヨードアセトアミド(Bio Rad #163-2109)、および脱イオン(DI)水中で、10μLの最終体積まで希釈した。試料を、80℃で10分間加熱し、ゲルに装填し、かつランニング緩衝液(トリスアセテートSDS(20X)(Life Technologies、#LA0041))を使用して、150Vで1時間25分間実験した。ゲルをDI水中で洗浄し、SimplyBlue Safe(Life Technologies、#LC6060)で染色し、かつDI水で脱染した。完全な脱染後、Syngene製のG:BOXシステムを使用して画像を切り取り、かつSyngeneソフトウエアのGeneToolを用いた濃度測定法によって、バンドパターンを分析した。各レーンの各個々のバンドの強度を測定した(
図12Aおよび
図12B)。
【0164】
思いがけず、ActiCHO P、続いてEX-CELL CD CHOおよびCH-S SFM2による、試験された19個の培地のうちの4バンドを超えるさらに高次の多量体の最大割合を観察した(表8)。これらのデータは、さらに高次の多量体の百分率の増加が、制御されるべき独立変数であり、かつ総タンパク質力価の増加と単に相関性がないことを示す。ActiCHO Pは、第3の最高タンパク質力価および最大レベルの多量体化(バンド5+中に存在するタンパク質の45.9%)を生じ、Cell Vento CHO 110は、最大タンパク質力価であるが、実質的により低いレベルの多量体化(バンド5+中に存在するタンパク質の32.6%)を生じた。
【表8】
【0165】
実施例6-給餌によるGL-2045の培地のスクリーニング推奨される給餌スケジュール
実施例5の実験の結果に基づいて、最高GL-2045タンパク質力価と関連付けられる4つの基礎培地および最低GL-2045タンパク質力価を関連付けられる3つの基礎培地を、市販の給餌を培養中に提供する反復実験に供した。高力価を生成したCell Vento 110およびExpiCHOは、製造業者が推奨する給餌が識別されなかったため、給餌実験のために選択されなかった。Cell Vento CHO 110は、給餌を伴わない細胞順応のために使用されるべき完全培地であり、Cell Vento 210は、給餌との組み合わせで培養のために使用される。この実験で使用される培地および給餌の組み合わせを表9に詳述する。
【表9】
【0166】
GL-2045クローン58を、37Cおよび5%CO2でのシェーカー培養器中のLグルタミン(Lonza #17-605E)ならびにヒポキサンチンナトリウムおよびチミジン(HT、Gibco #11067-030)を有する「ProCHO5」培地(Lonza #12-766Q)中に培養した。継代後、細胞を洗浄し、0.5×106細胞/mlで接種し、次に、密度が1×106~3×106細胞/mLおよび≧80%の生存率に到達したときにサブ培養した。GL-2045クローン58を、表10に詳述される選択された培地へと直接順応させた。少なくとも2~3継代にわたって安定的な倍加時間(20~30時間)および≧90%の生存細胞密度(VCD)を得たときに、順応が完了すると思われた。細胞を、選択された培地(d0)中に0.5×106細胞/mLで播種し、37C、5%CO2、および高湿度で150rpmで設定された培養器における標準的な振とうプラットフォーム中に培養した。PowerCHO3 CDを除く全ての培養について、給餌は、3日目に始めた(d3)。PowerCHO3 CD培地についての給餌は、1日目に始めた。総培養物体積は、120mLであった。生存率が50%まで低下したときに、培養物を採取した。推奨されるプロトコルに従って、製造業者が推奨する給餌と共に、7つの培地の各々中に、GL-2045安定細胞株を成長させた。試験された培地の各々についての給餌戦略およびスケジュールを
図13Aおよび
図13Bに概説する。
【0167】
細胞密度、細胞生存率、およびGL-2045タンパク質力価の測定を、研究全体にわたって行った。タンパク質力価について、試料を、ペレット細胞に遠心分離し、細胞上清中のタンパク質の測定を、実施例6に記載されるような細胞上清の生体層干渉法(Octet)によって行った。GL-2045多量体化を、実施例5に記載されるようなタンパク質A精製後の研究の各アームの終端で評価した。培養物を、14日目または生存率が50%未満に低下するまで継続した。
【0168】
驚くべきことに、製造業者が推奨する給餌によりActiCHO P中に成長されたGL-2045は、製造業者が推奨する給餌による他の培地のうちのいずれかにおいて成長されたGL-2045よりもはるかに高いピーク細胞密度を達成した。この優れた細胞密度は、驚くべきことに、Cell Vento 210を除く、試験された全ての他の培地/給餌の組み合わせと比較して、3倍以上であった(
図14)。
【0169】
さらに、製造業者が推奨する給餌によりActiCHO P、CD FortiCHO、またはADCF MAB中に成長されたGL-2045は、製造業者が推奨する給餌により試験された他の培地中に成長されたGL-2045よりも、10日目にはるかに良好な(2~3倍)細胞生存率を達成した。これは、これらの3つの培地が、試験されたいくつかの他の培地/給餌の組み合わせと比較して、優れた細胞生存率を生じることを実証する(
図15)。
【0170】
加えて、製造業者が推奨するActiCHO餌料AおよびActiCHO餌料BによりActiCHO P培地中に成長されたGL-2045 CHO安定細胞株は、試験された任意の他の培地および製造業者が推奨する給餌よりも実質的に高い力価を発生させた(
図16)。ActiCHO P培養物から生成された力価は、試験された他の培地のうちのいずれから生成された力価よりも少なくとも4倍高く、12日目のCell Vento CHO-210-についての500mg/L未満および他の培地についてはさらにそれ未満と比較して、振とうフラスコ中で10日目に2g/Lに到達した。
【0171】
異なる培養条件によるバンド5以上(5+)における割合多量体によって測定されるようなGL-2045の多量体化を、実施例5に記載されるように判定した(
図17、表10)。製造業者推奨基礎培地および給餌を使用したGL-2045多量体化の最高割合は、CD FortiCHO、続いてActiCHOおよびPowerCHO3であった。ADCF-MabおよびBalanCDは、他の培養条件と比較して、有意に悪いGL-2045多量体化を実証した。
【表10】
【0172】
要約では、ActiCHO P培地は、細胞密度、生存率、およびタンパク質力価に関して試験される他の培地よりも有意に良好である。濃度測定法分析は、CD FortiCHO培地+CD Efficient 給餌Cが、35.7%で最高割合の最大活性多量体(表10、バンド5+)を有することを示している。しかしながら、CD FortiCHO培地+CD Efficient 給餌Cは、4.7%のゲル中に移動しない最高割合の高分子材料を有し(
図17のゲルの上部に見られるように)、これは、この培地がまた、ActiCHO Pよりも低い高秩序およびより機能的な多量体を有する凝集された非秩序多量体のより大きい画分も発生させることを示唆している。ActiCHO P+餌料AおよびBは、ゲル中に移動しない、無視できる量の非特異的に凝集された高分子量の材料を有する30.1%の4バンドを上回る第2の最高割合のさらに高次の多量体バンドを有する。したがって、ActiCHO Pは、完全に機能的なさらに高次の多量体バンドの最高割合を有する可能性が高い。これらのデータは、上流製造条件が細胞生存率、密度、および総タンパク質力価に影響を与えるのみならず、GL-2045の臨床的に有効なさらに高次の多量体の生成にも影響を与えることをさらに示している。実施例3に実証されるように、最高分子量画分は、FcRγIIIaに対する結合の減少を呈し、これは、最高分子量画分(例えば、無秩序GL-2045凝集体)がGL-2045の高秩序多量体よりも生物学的に活性でないことを示唆している。本明細書に示されるように、非常に驚くべきことに、試験される全ての基礎培地のうち、ActiCHO-Pのみが、高い総GL-2045タンパク質力価、高多量体化、ならびに最小量の無秩序高分子量のGL-2045凝集体を実証した。
【0173】
変更された給餌プロトコル ActiCHO P培地+給餌が最適なタンパク質力価およびさらに高次の多量体の生成を生じると判定した後、変更された給餌スケジュールを試験して、1日おきに給餌することによって、同様のまたは最適化された結果を得ることができるかどうかを判定した。
図18に実証されるように、1日おきに給餌することは(青色)、毎日の給餌と比較して、細胞密度(
図18A)、細胞生存率(
図18B)、培養物pH(
図18C)、またはタンパク質力価(
図18D)に著しい影響を与えなかった。これらの結果は、驚くべきことに、1日おきの給餌により、同様の結果を得ることができることを示しており、かつ無菌状態を維持し、製造費用を最小にするために好ましい場合がある。しかしながら、3日おきに給餌する同様の実験は、生存率およびタンパク質生成が、2日おきよりも頻繁でない給餌により減少し始め得ることを示唆した(
図19)。
【0174】
同様の結果を達成するためにActiCHO P給餌を他の非ActiCHO基礎培地と共に使用することができるかどうかを判定するために、追加の実験を行った。簡潔に言うと、GL-2045クローン58を、Power CHO-2 CD(Lonza、#12-771Q)+4mMのLグルタミン(Lonza、#17-605E)+1X HT補完剤(Gibco、#11067-030)中に培養した。継代後、細胞を洗浄し、かつActiCHO P完全培地ActiCHO P+6mMのLグルタミン(Lonza、#17-605E)またはPower CHO-2 CD完全培地中に0.3×106細胞/mlで接種され、温度シフトなしに培養した。+1mLのActiCHO給餌A(PAA、#U15-072)+0.1mLの給餌B(PAA、#U05-034)によるActiCHO P PowerCHO培養物を毎日給餌した。9日目に、培養全体を通して実施例5に記載されるように、細胞生存率およびタンパク質力価を判定した(
図20)。結果は、製造業者の推奨に従ってActiCHO給餌AおよびBと共に使用された場合、PowerCHO2およびActiCHO Pの両方が、同じ細胞生存率およびGL-2045タンパク質収率を発生させることを示している。したがって、多量体組成物がActiCHO P+A+Bに対して無変化のままである場合、ActiCHO給餌AおよびBを、他の選択的高実行基礎培地と共に使用することができ得る。
【0175】
実施例7-GL-2045生成のための温度シフトの最適タイミングおよび延長
この実験の目的は、温度シフトの最適なタイミングおよび延長を評価することであった。多数の研究員は、組み換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株の細胞周期、アポトーシス、および代謝に対する温度シフトの効果を検討した。しかしながら、検討事項は、概して、生存細胞密度に対する温度シフトの効果に対して与えられるが、最適な温度シフトの結果について必要とされる最小細胞密度には、あるとしてもほとんど注意が払われていない。さらに、多量体化ストラドマーにおける温度シフトを成功裏に行うために必要な最小細胞密度は、検討されていない。
【0176】
本発明の研究員は、驚くべきことに、最適なGL-2045発現および最大力価のためには、温度シフトの時間に1000万細胞/mLの最小生存細胞密度が必要とされることを見出した。さらに、この要件は、温度シフトが起こる培養日よりも重要である。温度シフトのタイミングは、驚くべきことに、生存細胞密度が対数成長段階にあるとき、概して、生存細胞密度が1000万~1500万細胞/mLであるときに最も成功する。これは、概して、最初の播種密度に応じて、生物反応器の培養の4~5日目に対応する。
【0177】
さらに、当該技術分野で記載されるものから逸脱すると、高力価のGL-2045を製造するための最適な上流条件について、37セ氏温度(37℃)+/-1.0C~32.5C+/-1.0Cの温度シフトが、31℃+/-0.5Cへの温度シフトに対して好ましい。GL-2045の上清の2つの別個のプールを、温度シフトの性質を除いて、同一の条件を使用した安定CHOクローンから発生させた。CHO細胞を、5日目に7.1~7.0のpHシフトを有する10L XDR-10単一使用生物反応器システムの生物反応器(Xcellerex、GE)中に培養した。ActiCHO-P CD(cat#U21-051)7リットルを、280mlのPAA餌料A(cat#U15-053)を毎日および28mlのPAA餌料B(cat#U15-054)を毎日と共に生成のために使用した。PAA餌料AおよびBは、ActiCHO餌料Aおよび餌料Bと等価である。32.5度(A)への温度シフトおよび31.0度への温度シフト(B)は各々、5日目に起こった。結果を表11に示す。
【表11】
【0178】
実施例8-GL-2045のタンパク質Aカラム精製は、より頻繁なCIP手順を必要とする
GL-2045を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの結合緩衝液を含むタンパク質A HiTrap MabSelect SuReカラム(GE#11-0034-95)を有する親和性クロマトグラフィ(AC)により精製し、かつpH2.7の0.1Mのグリシンにより溶出した。AC精製GL-2045を、pH7.0の1X PBS中に保存した(Quality Biological,Inc.#119-069-101)。各実験の終了時に、AC GL-2045精製を、カラム適所清掃(CIP)手順によらずに処理した。CIP手順は、典型的には、タンパク質A樹脂を消毒しながら沈殿物を加水分解するために精製周期間にカラムを通して希釈された水酸化ナトリウム(0.1~0.5MのNaOH)を流動させ、よってタンパク質Aカラムの結合能を再生させることを伴う(Boulet-Audet et al,Scientific Reports,Vol.6、2016)。GL-2045を、4つの別個のタンパク質A親和性カラム(カラム1~4、ラン11.27.12)上で精製した。次に、同じタンパク質A親和性カラムを、100%溶出緩衝液によりカラムを溶出した後、第2の親和性精製ラン(ラン11.28.12)のために使用した。同じカラムを使用した2回のGL2045の精製は、第2の精製ラン後、低減量のより低い分子量の種、ホモ二量体およびホモ二量体の二量体の両方を示した(
図22)。表12に示されるように、SDS-PAGEの濃度測定法分析は、ホモ二量体および二量体バンドの有意な損失を実証し、これは、より低い分子量バンドが、溶出緩衝液による溶出によってタンパク質Aカラムから完全には除去されない、残存するタンパク質Aに高度に貪欲なGL-2045タンパク質によるタンパク質A親和性カラムへの結合において上回ることを示している。
【表12】
【0179】
より低い分子量バンドの損失は、複数のタンパク質A結合部位を含む高分子量の多量体GL-2045が、低分子量の種を上回り、これが、より低い分子量の種の損失を引き起こし、かつ薬物の組成物を効果的に変更させる、親和性カラムに対する結合力ベースの結合があることを示している。これらのデータは、より頻繁なCIP手順、およびよって、より頻繁なタンパク質Aカラムの再生が、複数の精製ランについてタンパク質Aカラムを使用したときに、GL-2045の最適な精製のために必要であることを示唆している。これらの結果は、以上に記載されたように、再生が、典型的には、当該技術分野で最も一般的に使用されるタンパク質Aカラムを劣化させるであろうNaOHの使用を必要とするため、予期されなかった。したがって、そのような緩衝液のより頻繁な使用は、タンパク質Aカラムのより急速な劣化を生じるであろう。このように、0.5MのNaOHなどの高強度NaOH緩衝液による頻繁なCIP手順に耐えることができるタンパク質Aカラムは、無傷のGL-2045薬物の最適プロファイルを維持するために、GL-2045の精製において反復的に使用されるタンパク質Aカラムの再生のために使用されなければならない。
【0180】
実施例9-GL-2045の反復的精製周期についてタンパク質Aを再生するためのCIP手順は、0.5MのNaOHを必要とする
実施例8に示されるような、CIP手順の不在における低分子量の種の損失はまた、第1のカラムラン後にタンパク質A親和性カラムへの結合を維持する高分子量の種があり、よって結合部位を占拠し、その後の精製ランにおけるより低い分子量の種の結合を防止することを示している。これらのデータは、追加のCIP手順が、タンパク質A精製GL-2045の多量体プロファイルを維持するために用いられるべきであることを示した。
【0181】
本発明者らは、HiTrap MabSelectカラム(GE #28-4082-58)を使用した定期的な毎日の精製によって、およそ6~7回の精製ラン後、精製GL-2045の組成物が、ホモ二量体および二量体画分のわずかな損失によって顕著な変化を生じることを発見した。例えば、モノクローナル抗体を精製する当業者であれば、6~7回のタンパク質A精製ラン後、精製された生成物の組成物中の変化を見出すことを予期しないであろう。この問題を解決するために、製造業者が推奨する0.1MのNaOHによるCIP手順を、タンパク質Aカラムの結合能を再生するために行った。これらのCIP手順を、各精製ラン後に行い、これは、当該技術分野において使用されるよりも頻繁である。頻繁なCIP手順を用いることで、何らかの改善が得られたが、より低い分子量の種の損失の問題は解決されなかった。したがって、本発明者らは、タンパク質AへのGL-2045の貪欲な結合が、ホモ二量体および二量体の保持を促進するために、カラムの完全な再生のために当業者が通常使用するであろうよりも厳密なCIPレジメンを必要とすると推論した。
【0182】
しかしながら、タンパク質Aカラムにおいて一般的に使用される樹脂(例えば、MabSelect)は、NaOH耐性ではなく、したがって、より厳密なNaOH緩衝液の使用により急速に劣化し、かつそのような再生は、減少した精製能力およびGL-2045多量体組成物中の変化と関連付けられる。しかしながら、一般的にあまり使用されないタンパク質A培地(例えば、MabSelect SuRe(General Electric #11-0034-95))は、0.5NaOHでの改善された清掃に耐えることができる。このように、本発明者らは、0.5MのNaOH緩衝液を使用した毎日のCIP手順によるMabSelect SuReカラムを使用した。より頻繁かつより厳密なCIP手順の実行後、ホモ二量体または二量体の損失を伴わずに、かつGL-2045の組成物中の変化を伴わずに、毎日のペースでGL-2045のタンパク質A精製を達成した。
【0183】
したがって、本発明者らは、GL-2045のタンパク質AカラムCIPが、ホモ二量体および二量体、およびよって、無傷のGL-2045薬物の最適プロファイルを保持するために、モノクローナル抗体またはFc融合タンパク質を用いて作業する当業者によって通常用いられるであろう、より厳密かつより頻繁なCIP手順を必要とすることを発見した。
【0184】
実施例10-タンパク質AカラムのpH溶出勾配を使用して、高秩序多量体でないホモ二量体凝集体のGL-2045を精製する
pH溶出勾配は、総タンパク質収率について最適化するためにタンパク質精製中にタンパク質Aカラムと共に一般に使用されるが、典型的には、薬物の組成物を変化させるために使用されない。本発明者らは、タンパク質Aカラム上でのそのようなpH溶出勾配を、さらに高次の多量体からGL-2045の無秩序凝集体を取り除くために使用することができることを発見した。GL-2045 CHOの上清を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの混合緩衝液を含むタンパク質A HiTrap MabSelect SuRe(GE#11-0034-95)を有する親和性クロマトグラフィ(AC)によって精製し、続いて結合緩衝液による追加の洗浄を行った。タンパク質Aに結合されたGL-2045を、0%~100%のpH2.7の0.1Mのグリシンを含む溶出緩衝液によって溶出し、それによってタンパク質A親和性カラムからのGL-2045の溶出のためのpH勾配を創成した。溶出画分を、96ウェルプレート(Greiner bio-one #780271)内に回収し、かつpH9.0のTris-HClを各ウェル内に添加することによって、pH7.5に中和した。次に、画分の各々の等価のタンパク質量を、非還元SDS-PAGEゲル(4~12%NuPage Bis-Tris、インビトロゲン #NPO322BOX)上で実験した。
【0185】
pH溶出勾配によるタンパク質Aカラムの溶出によって得られた画分のSDS-PAGE分析は、画分D6およびD7中に、非常に高い分子量の種が最後に溶出されたことを実証した(
図23Aおよび
図23B)。驚くべきことに、まさに第1の画分(D1)がまた、高分子量の種を含有した。このように、これらの結果は、高分子量画分が、タンパク質A親和性カラムのpH勾配溶出によって、GL-2045の主な種(例えば、ホモ二量体、二量体、およびさらに高次の多量体)から分離され得ることを示している。実施例1~3に示されるように、これらの画分は、減少したFc受容体結合および減少したCDC抑制により実証される、より低い活性の種を表し得る。
【0186】
また、再生によって得られた非常に高い分子量の画分(0.5MのNaOHによる、HClによって中和されたCIP)が、ゲル(
図23B、右端のレーン)上に示されている。これらの結果は、溶出後のタンパク質Aカラム上に存在する高分子量の種があることを示しており、これは、完全なカラム結合能を再生するためにCIP手順中の高度に厳密なNaOH緩衝液についての必要性を再び示している。
【0187】
したがって、この目的のためには通常使用されないが、pH溶出勾配を使用して、生物学的に活性なより低いおよびさらに高次の多量体からGL-2045の高分子量無秩序凝集体を分離および除去することができる。そのような分離を用いて、精製GL-2045の多量体プロファイルをさらに最適化または維持することができる。代替的に、段階溶出勾配を使用して、最適化されたGL-2045組成物に到達してもよい。
【0188】
実施例11-イオン交換カラム塩およびpH条件が、GL-2045多量体組成物を変性させる
GL-2045の精製のための重要な目標は、最終精製生成物の多量体組成物の厳格な制御である。イオン交換カラム(例えば、陽イオンと陰イオンとの交換)は、モノクローナル抗体およびFc融合タンパク質の精製のポリッシュ工程のためにルーチン的に使用される。本発明者らは、異なる濃度の塩を含む溶出緩衝液を用いて、陽イオン交換培地であるPOROS CIEX(インビトロゲン GoPure XS(10mL)cat#4448885)を試験した。第1に、GL-2045を、タンパク質A親和性クロマトグラフィによって精製し、次に、CIEXカラムへの装填前に、pH5.0の50mMの酢酸ナトリウム中にプールおよび透析した。pH5の50mMの酢酸ナトリウムを、平衡および洗浄緩衝液として使用した。添加される可変量の緩衝液B(
図24に%として示されるpH5の1MのNaCl)を含む50mMの酢酸ナトリウム溶出緩衝液を用いて、GL-2045のポリッシュに対する溶出緩衝液(EB)塩含有量の効果を試験した。AktaAvant上でクロマトグラフィランを行った。簡潔に言うと、Avant法は、10カラム体積(cv)の総体積で、2mL/分で、pH5の50mMの酢酸ナトリウムを用いてCIEXカラムを平衡化することを含む。pH5の50mMの酢酸ナトリウム中に以前に透析された65~100mgのGL-2045を、カラムに装填した。5cvの結合緩衝液を用いて、2mL/分で、カラムを洗浄した。次に、多様な百分率のNaCl(例えば、30~50%緩衝液Bから構成される溶出緩衝液)を含む9~15cvの緩衝液を用いて、2mL/分で、GL-2045を溶出した。
【0189】
GL-2045の%回復を、30%緩衝液b、40%緩衝液b、および50%緩衝液b(それぞれ、30%EB、40%EB、および50%EB)を含む溶出緩衝液により溶出されたGL-2045について判定し、溶出緩衝液についての最適な範囲の塩濃度を判定した(
図24)。これらのデータは、溶出緩衝液中の塩含有量の変更が、GL-2045の多量体組成物を実質的に変性させ得ることを実証した。
【表13】
【0190】
実施例11に示され、かつ表13に定量化されるように、SDS-PAGE分析は、30%EB、40%EB、または50%EBの溶出緩衝液により溶出された場合に、GL-2045分子量の種の分離における劇的な差を実証した。91.7%の材料を、30~40%緩衝液bを含む溶出緩衝液により溶出し、50%緩衝液Bを含む溶出緩衝液により回復された材料は、高分子量の材料のみであった。これらのデータは、溶出緩衝液の変更が、GL-2045の多量体組成物を実質的に変性させ得ることを実証する。したがって、イオン交換のために選択された溶出緩衝液を使用して、この技術の新規使用であるGL-2045の多量体組成物を変性させることができることは明白である。同時に、本発明者らは、GL-2045の組成物中の変化がイオン交換ポリッシュ工程において所望されない場合、精密のレベルは、当業者によって通常実践されない精密さのレベルが、イオン交換ポリッシュ工程において使用するための溶出緩衝液の塩濃度の選択において必要とされることを発見した。
【0191】
実施例12-イオン交換クロマトグラフィを使用して、ホモ二量体またはホモ二量体の二量体を低減または取り除くことができる。
実施例11のGL-2045材料の91.7%が、30~40%緩衝液bを含む溶出緩衝液により溶出され、かつ50%緩衝液Bを含む溶出緩衝液により回復された材料は、高分子量の材料のみであったため、30~40%の緩衝液bの範囲を有する溶出緩衝液が、さらなる分析のために選択された。用いられた方法は、実施例11に記載されるものと同様であった。
【0192】
SDS-PAGE分析は、35%、36%、または37%以上の緩衝液b(それぞれ、35%EB、36%EB、37%EBなど)を含む溶出緩衝液により溶出された場合に、GL-2045ホモ二量体の分離において劇的な差を実証した。35%EBで明確に視認可能なホモ二量体およびホモ二量体の二量体は、対照的に、36%EBで大きく減少され、37%EB以上で完全に取り除かれることに留意されたい(
図25)。同様に、SDS-PAGE分析は、35%EB、36%EB、もしくは37%EBで溶出された場合、またはより高い緩衝液bの濃度を有する溶出緩衝液により溶出された場合に、GL-2045の最高次の多量体と大きい無秩序凝集体との分離における劇的な差を実証している。したがって、イオン交換について選択された溶出緩衝液を使用して、この技術の新規使用であるGL-2045の多量体プロファイルを変性させることができることは明白である。この段階溶出からのデータは、所望のGL-2045プロファイルを得るために、当業者が単一の工程または複数の段階溶出を選択するのに使用することができることも明白である。例えば、POROS CIEXカラムおよび36.5~38.5%緩衝液bを含む溶出緩衝液を使用したGL-2045のポリッシュは、多量体10を通して全てのホモ二量体、二量体、および多量体を保持し、かつ大きい無秩序凝集体および最高次の多量体を溶出するであろう。異なるカラムを使用する同様の例を実施例4に示す。
【0193】
実施例13-イオン交換クロマトグラフィを使用して、大きいホモ二量体凝集体および最高次の多量体を減少または取り除くことができる
GL-2045の最適な組成物の製造は、最高次のGL-2045多量体(例えば、明確に描写可能なバンド10を上回るバンド、およそ600kD)の量を最小にし、原子価の増加が免疫原性の理論的リスクの増加をもたらす、大きいホモ二量体凝集体および最高次の多量体の両方を除去するために、1000kDを上回る材料を取り除くことを必要とする。GL-2045を、異なる百分率の緩衝液b(38%EB(C1)、39%EB(C2)、および40%EB(C3))を含む溶出緩衝液により溶出した(
図26)。38%(C1)、39%(C2)、および40%(C3)(
図26)で、続いて50%および100%緩衝液Bでのより小さい溶出ピークで、GL-2045についての主な溶出ピークを観察した。各溶出緩衝液についてのGL-2045回復の%を判定し、表14に表す。
【表14】
【0194】
溶出されたGL-2045画分の多量体プロファイルを、SDS-PAGE分析の目視検査によって判定した(
図27)。溶出された画分のSDS-PAGE分析の目視検査は、溶出緩衝液の38%が、残存する高分子量の材料の最小量を含むGL-2045を回復することを示した。
【0195】
GL-2045のピークを、濃度測定法によって定量化した(SDS-PAGEバンドにおける割合強度として表15に要約した、
図28)。ピーク11は、最低分子量を有するホモ二量体を表し、ピーク1は、好ましくは、取り除かれる最高分子量の材料を含む材料を表す。
【表15】
【0196】
これらの結果は、pH5の38%または39%緩衝液Bを含むアセテート溶出緩衝液による段階溶出プロトコルが、GL-2045の好ましい画分のおよそ85%を生じ、かつ600kDを上回る、より高い分子量の画分を低減したことを実証している。SDS-PAGEの目視検査は、高分子量の材料が38%緩衝液bを含む溶出緩衝液を溶出した画分において最低であることを示したが、濃度測定分析は、39%緩衝液bを含む溶出緩衝液により、最高分子量画分の最低百分率が得られることを示した。しかしながら、濃度測定分析は、CIEX精製タンパク質組成物の全てが親和性クロマトグラフィのみによって精製された材料と比較して、高分子量画分(バンド1)においてより少ない量を含有することを実証した。全体的に、溶出の分析は、大きい凝集体および最高次の多量体の量を、POROS CIEXカラムを用いた制御された溶出条件を適用することによって制御することができることを示唆している。したがって、イオン交換のために選択された溶出緩衝液を使用して、この技術の新規使用であるGL-2045の大きい凝集体および最大高秩序多量体組成物を変性させることができることは明白である。異なるカラムを使用する同様の例は実施例4にある。
【0197】
実施例14-疎水性相互作用クロマトグラフィカラムを用いたGL-2045多量体組成物の変性
GL-2045を、安定HEK 293F細胞株から生成し、かつGlutamax(Gibco #35050-061)およびGeneticin(Gibco #10131-027)を有する293自由型培地(Gibco #12338-018)中に成長させた。上清を、一週間に2回採取し、かつ0.2μmで1Lのフィルタシステム(Corning #431098)へと濾過した。次に、GL-2045の上清を、20mMのリン酸ナトリウム、pH7.2の0.15MのNaClの結合緩衝液を有するタンパク質A HiTrap MabSelect SuRe(GE#11-0034-95)により精製し、3.0~3.6のpHを有する0.1Mのクエン酸ナトリウム溶出緩衝液で溶出した。AC精製GL-2045を、pH7.0の1X PBS(Quality Biological,Inc.#119-069-101)中に保存した。
【0198】
次に、GL-2045を、HiTrap HIC選択キット(GE #28-4110-07)を使用した、7つの異なる疎水性相互作用カラム(HIC)上で精製した。このキットに含まれたカラムを表16に記載する。
【表16】
【0199】
HICカラムを、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.0の1.0Mの硫酸アンモニウム(開始緩衝液)により平衡化し、かつ3.5mgのAC精製GL-2045(4体積の開始緩衝液中に希釈される)を、各カラムに装填した。開始緩衝液による洗浄後、pH7.0の0%~100%の50mMのリン酸ナトリウムを使用して、勾配溶出を行った。全ての分画ピークおよびフロースルーを、SDSページによって試験した。非低減試料を、15%Tris HCl(Bio-Rad#161-115)内に装填した。銀染色キット形態であるインビトロゲン#LC6100を使用して、染色を行った。
【0200】
7つの異なるHICカラムは、GL-2045の異なる多量体プロファイルを実証した。一例として、ブチルHPカラムは、ホモ二量体画分(画分A10)をA12に見出される多量体分子量の種から分離した。フェニルHPカラム(画分B8と比較した画分B11)で、同じ効果が見られた。オクチルFFカラムによる溶出画分中に、装填された材料の16%のみが回復され、これは、それがGL-2045のためのフロースルーモードポリッシュ方法に良好に適合され得ることを示している。さらに、オクチルFFカラムから溶出された画分は、より高い分子量の種を含有し、これは、カラムが、より低い効力を有する非常に高い分子量のホモ二量体凝集体の種の除去にも良好に適合され得ることを示している。
【0201】
M045として知られるマウス版のGL-2045上で、同様の実験を行い、タンパク質A親和性クロマトグラフィによって、M045を精製し、次に、Hiload 26/10フェニルセファロース高性能(GE 17-1086-01)を有するHICによって、AKTA Avant(GE)上でさらに精製した。HICカラムを、0.1Mのリン酸ナトリウム、pH7.0の1Mの硫酸アンモニウム(開始緩衝液)により平衡化し、M045をカラム上に装填し、続いて開始緩衝液による洗浄工程を行い、全ての非結合材料を除去した。次に、M045を、勾配溶出によるpH7.0の0.1Mのリン酸ナトリウム溶出緩衝液により溶出した(
図30~31)。
【0202】
M045のHIC精製画分を、SDS-PAGEによって分析して、M045多量体プロファイルに対するHICカラムのポリッシュの効果を判定した。これらの結果は、疎水性相互作用カラムを使用して、ホモ二量体、二量体、三量体、および多量体画分の明確な分離によって留意される、M045の多量体組成物を変性させることができることをさらに実証した(
図32)。
【0203】
実施例15-最適に生成されたGL-2045についての例示的なプロトコル
本明細書に記載されるデータは、(1)タンパク質力価、(2)培養全体を通した細胞生存率、および(3)GL-2045の多量体化、ならびに(4)最終GL-2045医薬物質中の多量体プロファイルの維持の最適化を生じる、GL-2045の上流および下流製造プロセスのいくつかの変数についての最適な条件を実証している。重要なことに、GL-2045の多量体化のレベルは、ストラドマーの臨床的効能にとって不可欠である(実施例1~4を参照のこと)。現在の培養方法は、特定の画分の最適化された生成または特定の多量体化パターンの向上を必ずしも目的としていない。このように、多量体化に影響を与える上流培養試薬および条件ならびに下流精製培地および条件は、全て知られておらず、かつ当該技術分野の現在の状態に基づいて予測することができない。
【0204】
本明細書に記載されるデータは、最適に製造されたGL-2045を発生させるための以下のプロトコル要素の発見をもたらした:
【0205】
(1)最適に製造されたGL-2045を発生させるための最適ベースの培地は、ActiCHO Pである。 本明細書に記載されるデータは、最適な基礎培地がActiCHO Pであったと実証している。ActiCHO P基礎培地中の生物反応器において培養されたCHO細胞は、試験された他の基礎培地と比較して、タンパク質力価の増加のために最適化されると同時に、高細胞密度および細胞生存率をもたらした。驚くべきことに、ActiCHO P培地は、培養プロトコルの終了時に存在するGL-2045のさらに高次の多量体の百分率の増加をもたらした。
【0206】
(2)最適に製造されたGL-2045を発生させるための最適な給餌は、ActiCHO PおよびActiCHO餌料Aおよび餌料Bである。 本明細書に記載されるデータは、最適な給餌が、毎日または1日おきに培養物に添加された、ActiCHO P餌料Aおよび餌料Bであったとさらに実証している。ActiCHO P餌料Aおよび餌料Bは、試験された他の培地/給餌の組み合わせよりも4倍大きいタンパク質力価をもたらしながら、高細胞密度および高細胞生存率を維持した。重要なことに、かつ思いがけず、餌料Aおよび餌料Bを有するActiCHO P培地は、試験された他の培地/給餌の組み合わせと比較して、高レベルの高秩序多量体、および重要なことに、GL-2045の高分子量無秩序凝集体の百分率の減少をもたらした。これらのデータは、この特定の培地/給餌の組み合わせが、改善された臨床的効能を有するGL-2045多量体のより大きい百分率(例えば、高秩序GL-2045多量体のより大きい百分率)の生成をもたらすことを示している。本発明者らは、驚くべきことに、餌料Aおよび餌料Bの1日おきの添加について同様の結果を見出し、これは、この特定の培地/給餌の組み合わせを使用して、費用を低減し、かつ毎日の培養操作と関連付けられる汚染のリスクを軽減することができることを示している。
【0207】
さらに、餌料Aおよび餌料Bを有するActiCHO P培地は、GL-2045の非秩序の高分子量凝集体の百分率を最小にしながら、さらに高次の多量体として存在するGL-2045の実質的な百分率の生成をもたらした。このように、この特定の培地/給餌の組み合わせは、驚くべきことに、高秩序多量体化されたGL-2045の生物学的に機能的かつ臨床的に有効な画分について最適化し、したがって、さらに下流の精製工程における高次の凝集体を取り除く必要を低減しながら、GL-2045多量体プロファイルの保持を最適化した。
【0208】
(3)最適に製造されたGL-2045を発生させるための最適な温度シフトは、細胞密度に基づく37℃~32.5℃のシフトである。 本明細書に記載されるデータは、加えて、細胞密度に基づく37℃~32.5℃の温度シフトが、最適な細胞密度、生存率、およびタンパク質力価をもたらすことを実証している。この温度シフトプロトコルは、単に培養日に基づく37℃~31℃の温度シフトを記載する、構築されたプロトコル(Ouguchi et al、Cytotechnology、52(3)、pp.199-207、(2006);Masterson and Smales、Pharmaceutical Bioprocessing、2(1)、pp.49-61、(2014))から逸脱している。本発明者らは、思いがけず、細胞が約10~15×106細胞/mLの密度に到達した後の32.5℃への温度のシフトが、以前に構築されたプロトコルと比較して、高細胞密度および細胞生存率の維持のみならず、タンパク質力価の実質的な増加をもたらすことを見出した。
【0209】
本明細書で実証されたデータは、特定の下流精製プロトコルが、最適化された多量体化プロファイルを有するGL-2045組成物をもたらすことを示している。これらの精製方法を実行する際に、カラム条件および緩衝液を制御することによって、GL-2045の所望の多量体プロファイルを維持するために、厳しい注意を払わなければならない。これは、収率の純度および保持が主な目標である、モノクローナル抗体、Fc融合タンパク質、または類似のCHO由来タンパク質とは全く対照的である。
【0210】
(4)GL-2045の最適化されたタンパク質A精製は、頻繁かつ厳密なCIP方法を必要とする。 GL-2045は、タンパク質Aに貪欲に結合する。この貪欲な結合は、mAb精製のために通常用いられるCIP手順が使用されたときに、カラム中のタンパク質A培地への結合を維持するGL-2045をもたらした。結果として、タンパク質Aカラムの使用の反復周期により、GL-2045のホモ二量体画分は、タンパク質Aに結合し、かつカラムを通して流動することができなかった。これは、最終タンパク質A精製GL-2045生成物の多量体プロファイルの実質的かつ機能的に重要な変化をもたらした。したがって、GL-2045の貪欲な結合は、当該技術分野で一般的に使用される(例えば、mAbまたはFc-融合タンパク質精製中に)ものよりも頻繁かつ厳密な(例えば、0.5MのNaOH洗浄緩衝液を使用した)CIP手順のための要件をもたらした。これらの結果は、最も一般的に使用されるタンパク質Aカラムが、GL-2045多量体を除去し、かつタンパク質Aカラムを完全に再生させるのに必要とされる厳密なNaOH洗浄に耐えることができないため、予期されなかった。したがって、一部だけのタンパク質Aカラム、具体的にはMabSelect SuReは、GL-2045の精製のために使用することができ、かつ所望のGL-2045多量体プロファイルを維持するために、およそ0.5MのNaOHによる頻繁なCIP手順を必要とするであろう。
【0211】
(5)。pH溶出勾配または段階溶出は、より低いかつさらに高次の多量体からGL-2045の最高分子量画分の分離を促進する。 タンパク質Aの精製によるpH溶出勾配の使用は、第1および最後の溶出画分において溶出された最高分子量の成分をもたらした。これらのデータは、pH勾配を用いて、GL-2045の生物学的に活性な画分(例えば、ホモ二量体、二量体、およびさらに高次の多量体)を、生物活性を低減したと以前に示された、非秩序の高分子量凝集体から構成される画分から分離させることができることを示している。
【0212】
(6)イオン交換クロマトグラフィによるGL-2045のポリッシュに最適な溶出緩衝液は、アセテート緩衝液+30~40%緩衝液b、特に37.5%~39%+/0.5%である。 イオン交換クロマトグラフィは、一般に、mAb生成中に不純物の薬物をポリッシュするために使用される。しかしながら、本発明者らは、最適な多量体化プロファイルが達成されるように、GL-2045の特定の画分(例えば、ホモ二量体の最高次の多量体および高分子量無秩序凝集体)を取り除くためにイオン交換クロマトグラフィを用いた。具体的には、本発明者らは、30~40%緩衝液bの溶出緩衝液が、GL-2045の高分子量無秩序凝集体の量を低減することを見出した。さらにより具体的には、38~39%緩衝液bの溶出緩衝液は、具体的には、低減量の無秩序凝集体についても最適化しながら、最終GL-2045生成物中に存在するホモ二量体の量を維持した。
【0213】
(7)疎水性相互作用カラム(HIC)を用いて、特定のGL-2045多量体化プロファイルを達成することができる。 本明細書のデータは、GL-2045を精製するポリッシュ工程において、複数のHICを使用することができることを実証している。例えば、オクチルFFカラムからのフロースルーは、主に高分子量の種を含有し、これは、具体的にはGL-2045の高分子量凝集体の除去のためにこのカラムを使用することができることを示している。代替的に、ブチルHPカラムを使用して、画分のうちの1つがより望ましい成果を達成し得る用途のための多量体画分から、ホモ二量体画分を分離させることができる。代替的に、結合モードにおいて、HICカラムを使用することができる。
【0214】
GL-2045についての最適化された製造プロトコル まとめると、上記に考察されたパラメータのうちの全てを組み込むと、以下のプロトコルは、多量体として全体的な集団の最高百分率を維持しながら、GL-2045の最高タンパク質収率をもたらした。
【0215】
ExcellGene SA(Monthey、Switzerland)、piggyBacトランスポゼース標的配列によって隣接されたGL-2045発現カセットを含むGL-2045発現ベクター、およびpiggyBacトランスポゼースを含む第2のベクターを使用して、CHO細胞を2つのベクターでトランスフェクトした。PiggyBacトランスポゾンは、ゲノムの高度に転写された領域への優先的な挿入を有し、加えて、遺伝子抑制による絶縁を提供する、逆方向末端反復を含有する。トランスフェクトは、高度に転写されたゲノム領域への発現カセットの組み込みをもたらし、それによって導入遺伝子の20個未満のゲノム挿入を有する安定的にトランスフェクトされたCHO細胞のバンクを構築する。次に、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞を、37℃の成長温度でActiCHO P培地による生物反応器中に培養した。この培養中に、培養物が約1000万~約1500万細胞/mLの細胞密度に到達するまで、37℃の成長温度でActiCHO餌料Aおよび餌料Bにより毎日細胞を給餌した。そのような密度に到達した後、成長温度を、37℃±1℃~32.5℃±1℃にシフトし、かつ培地から最適に製造されたGL-2045を、培養の最終日に培地から採取した。
【0216】
このプロトコルは、培養の18日目に95%超、および21日目に80%超の細胞生存率、ならびに9,000mg/mL超の最終総タンパク質力価をもたらし、GL-2045の70%超が、非ホモ二量体として存在し、30%超が、第5の多量体を上回るさらに高次の多量体として存在した。
【0217】
最大高秩序多量体の継代を妨害せず、それによって上清のホモ二量体および多量体プロファイルを保持する、接線流動濾過システムにより培養上清から、GL-2045を採取した。次に、下流製造方法を用いて、GL-2045を単離し、不純物を除去し、かつGL-2045の多量体プロファイルを制御するために特定の画分を単離した(例えば、非秩序高分子量凝集体の除去)。タンパク質A親和性クロマトグラフィによって、GL-2045を精製し、高アルカリ性再生に耐える能力のために、タンパク質A培地を選択した。さらに、1つ超の洗浄緩衝液を使用して、精製プロセスにわたるさらなる制御を可能にした。加えて、CIP手順は、最終GL-2045組成物中にホモ二量体を保持するのに必要とされるようなタンパク質Aカラムの結合能を完全に再生させるために、通常よりも頻繁に行われ、かつカラムに貪欲に結合されたGL-2045多量体を除去するために0.5MのNaOH緩衝液により行われた。pH溶出勾配を伴うか、または伴わずに、タンパク質Aカラムから、GL-2045を溶出した。タンパク質Aカラムの親和性クロマトグラフィによる精製後、追加のポリッシュ工程を用いた。陽イオン交換クロマトグラフィを使用して、37~39%+/-0.5%緩衝液bを含む溶出緩衝液により、好ましくは、CIEX POROS XS樹脂により、GL-2045の高分子量無秩序凝集体を除去した。いくつかの実施形態では、HICカラムを使用して、GL-2045をさらに精製した。GL-2045の高分子量無秩序凝集体を除去するために、オクチルFF樹脂を、追加のポリッシュ工程として使用した。代替的に、ブチルHP含有カラムを使用して、特定のGL-2045画分を単離(例えば、さらに高次の多量体を単離)した。加えて、陰イオン交換カラム、具体的にはQ Sepharose速流カラムを、特にフロースルーモードにおける追加のポリッシュ工程として使用した。
【0218】
これらの追加の精製工程は、個々に使用され得るが、タンパク質A親和性クロマトグラフィによるGL-2045の精製は、最終タンパク質力価が>4g/Lであり、GL-2045の>70%が多量体として存在し、多量体の>30%が五量体以上の多量体である、最終GL-2045医薬物質に到達するために、陰イオン交換、陽イオン交換、および疎水性相互作用クロマトグラフィの3つ全てと組み合わせて使用されることが好ましかった。
【0219】
実施例16-最適に生成されたGL-2045の分析 本明細書に記載される方法によって作製された最適に生成されたGL-2045をさらに特徴付けするために、本明細書に記載されるActiPro基礎培地、給餌、温度シフトを使用した本明細書に記載される上流方法に従って、生物反応器中にGL-2045を生成した。次に、結果として生じるGL-2045の上清を、ミリポアX0HC深層フィルタを通して送り、続いて0.2μmのフィルタを通した濾過を行い、かつ複数の下流処理方法を使用して処理した。GL-2045組成物の多量体化プロファイルは、各処理工程後に評価され、
図33に示されている。濾過されたGL-2045調製物の多量体化プロファイルを、
図33に赤い点によって示す。次に、濾過されたGL-2045調製物を、タンパク質A MabSelect Sure(GE.#11-0034-95)を有する親和性クロマトグラフィに供し(
図33に青い点によって示される多量体化プロファイル)、次に、Q Sepharose速流カラムを使用したフロースルーモードにおけるAIEXを用いて精製した。次に、結果として生じたGL-2045は、pH5.0±0.10に調整されたpHであり、かつ0.2μmのフィルタを通して濾過した(
図33に緑の点によって示される多量体化プロファイル)。次に、50mMのNaアセテート+pH5.0の375mMのNaClを含む溶出緩衝液(
図33に黄色の点によって示される多量体化プロファイル)を含む溶出緩衝液、その後、疎水性相互作用クロマトグラフィ(
図33に橙色の点によって示される多量体化プロファイル)、および濾過(
図33に紫の点によって示される多量体化プロファイル)を使用して、最終医薬物質(
図33に黒の点として示される多量体化プロファイル)に到達するための段階溶出によって、結合モードにおけるPoros XSカラムを使用した陽イオン交換クロマトグラフィにより、GL-2045を精製した。
図33についての生データを以下の表17に示す。
【表17-1】
【表17-2】
【表17-3】
【表17-4】
【0220】
分析的HPLCの各工程の後に、ホモ二量体、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、および7+マー画分の百分率を評価した。簡潔に言うと、本明細書に記載される上流方法に従って、GL-2045の安定的にトランスフェクトされたCHOの上清を発生させた。次に、本明細書に記載される下流方法に従って、GL-2045を精製した。以下の成功裏の精製段階で、試料を得た:タンパク質A MabSelect SuRe負荷、タンパク質A MabSelect SuReプール、陰イオン交換プール、陽イオン交換プール、HICプール、UFDFプール、および医薬物質。分析的SEC-HPLCによって、試料を比較した。簡潔に言うと、高速液体クロマトグラフィシステム(Agilent 1100 HPLCシステム)上で、280nmのUV検出を含む一連の2つのSECカラム(Agilent Bio SEC(300Å))を使用して、HPCLによって、アイソクラチック分離を行った。クロマトグラフィは、60分のラン時間、および0.5mL/分の流量で行われる。各ピークの相対面積割合を計算する。
【0221】
結果を
図33に示す。
図33において明白であるように、GL-2045の下流処理は、最小画分であるホモ二量体およびホモ二量体の二量体、ならびに最大画分である7マー+を変更し、画分3~6は、かなり安定的なままであった。より小さい多量体に関して、タンパク質Aカラムの装填から最終医薬物質までの漸進的な下流製造工程は、ホモ二量体およびホモ二量体の二量体の回復の増加をもたらした。しかしながら、漸進的な下流処理工程は、最高次の多量体に対して反対の効果を有し、それらの関連する百分率の減少をもたらした。
【0222】
結果として生じるGL-2045薬物生成物は、組成物全体の百分率として、ホモ二量体の約20%未満、および7マー以上の約28%超を構成する、定義された多量体パターンを有した。組成物はまた、約7~12%のホモ二量体の二量体、約6~11%のホモ二量体の三量体、約10~16%のホモ二量体の四量体、約6~9%のホモ二量体の五量体、および約10~14%のホモ二量体の六量体を含んだ。