(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052140
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ポリマー配合物およびそれらから形成されるホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 81/02 20060101AFI20230404BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20230404BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20230404BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08G81/02
C08G63/06
C09J167/00
C09J153/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211079
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2021052720の分割
【原出願日】2016-11-16
(31)【優先権主張番号】62/257,318
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】518176116
【氏名又は名称】ダニマー・バイオプラスティックス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】キャラウェイ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ワン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド,ラシェル
(72)【発明者】
【氏名】グラッブス,ジョセフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホットメルト接着剤として使用することができる、主として生物由来のポリマー配合物を提供する。
【解決手段】配合物は以下の構造:
[式中、G
1およびG
2は独立して(CH
2)
xであり、変数xは1ないし10の整数であり、変数yは約50ないし約500の整数であり、変数zは約100ないし約600の整数であり、変数nは約5ないし約10,000の整数であり、XはH、アルコール官能基を含む官能化アルキレンポリマーのブロック、またはそれらの混合物であり、YはH、アシル基、カルボン酸官能基を含む官能化アルキレンポリマー、またはそれらの混合物である]を有するポリマーを含む場合がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを含むポリマーを含むポリマー配合物であって、
ここで該ポリマーは
【化1】
[式中、
G
1およびG
2は独立して(CH
R)
xであり、Rはアルキル基またはHであり、そしてxは1ないし10の整数であり;
yは約50ないし約500の整数であり;
zは約100ないし約600の整数であり;
nは約5ないし約10,000の整数であり;
XはH、アルコール官能基を含む官能化アルキレンポリマーのブロック、またはそれらの混合物であり;そして
YはH、アシル基、カルボン酸官能基を含む官能化アルキレンポリマー、またはそれらの混合物である]
の構造を有する、
ポリマー配合物。
【請求項2】
前記乳酸のブロックはL-乳酸を含む、請求項1のポリマー配合物。
【請求項3】
乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを組み合わせる工程と、
乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを反応させて請求項1のポリマーを形成する工程と
を含む方法であって、
そこで該乳酸のブロックは
【化2】
の構造を有し、
そして前記脂肪族ポリエステルのブロックは、
【化3】
の構造を有し、
そこで、前記の式中、
G
1およびG
2は独立して(CH
R)
xであり、Rはアルキル基またはHであり、そしてxは1ないし10の整数であり;
yは約50ないし約500の整数であり;
zは約100ないし約600の整数であり;
XはH、アルコール官能基を含む官能化アルキレンポリマーのブロック、またはそれらの混合物であり;そして
YはH、アシル基、カルボン酸官能基を含む官能化アルキレンポリマー、またはそれらの混合物である、
方法。
【請求項4】
乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを含むポリマーを含むホットメルト接着剤であって、
そこで該ポリマーが
【化4】
[式中、
G
1およびG
2は独立して(CH
R)
xであり、Rはアルキル基またはHであり、そしてxは1ないし10の整数であり;
yは約50ないし約500の整数であり;
zは約100ないし約600の整数であり;
nは約5ないし約10,000の整数であり;
XはH、アルコール官能基を含む官能化アルキレンポリマーのブロック、またはそれらの混合物であり;そして
YはH、アシル基、カルボン酸官能基を含む官能化アルキレンポリマー、またはそれらの混合物である]:
の構造をもつ、ホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記乳酸のブロックはL-乳酸を含む、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項6】
ポリマーと場合により1種以上の接着剤と、からなる請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項7】
290°F(143.3℃)において800ないし3000cPsの粘度を有する、請
求項4のホットメルト接着剤。
【請求項8】
290°F(143.3℃)において24時間の貯蔵後に10%未満の粘度の低下を有する、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項9】
5秒以上の開放時間(open time)を有する、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項10】
請求項4のホットメルト接着剤により一緒に接着される2種の基材を含む、包装品(package)。
【請求項11】
290°F(143.3℃)において4000ないし5000cPsの粘度を有する、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項12】
290°F(143.3℃)において24時間の貯蔵後に約10%ないし約30%の粘度の降下を有する、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項13】
Yは2個ないし20個の炭素原子を有するアシル基である、請求項1のポリマー配合物。
【請求項14】
Yはプロピオニル基である、請求項1のポリマー配合物。
【請求項15】
Yは2個ないし20個の炭素原子を有するアシル基である、請求項4のホットメルト接着剤。
【請求項16】
Yはプロピオニル基である、請求項4のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として生物由来のポリマーと、主として生物由来のポリマーを含むホットメルト接着剤と、それらの製法と、最終梱包(end of line packaging)における使用とに関する。幾つかの態様において、生物由来のポリマーは生分解性(biodegradable)である。
【背景技術】
【0002】
共同研究契約に対する当事者(parties)
本開示はDaniMer Scientific,LLCおよびHenkel Corporation間の共同開発契約(agreement)下で実施された。
【0003】
包装産業において、多数の完成品が、発送のためにダンボール箱(cardboard
boxes)またはカートン(carton)に包装される。「最終梱包(“End of line” packaging)」は、発送のために完成品を包装するこの工程を意味する。最終梱包工程において、箱の一面、一般に底面は、典型的に、箱が充填される前に、ホットメルト接着剤またはテープで封止される。箱が充填された後に、箱の開いた上面の、その面および側部フラップを、内側にまた下方に畳み込む。次に、それらを折り畳んで閉じる前に、折り畳んだフラップの接合面の内側に接着剤を適用するか、またはそれらを折り畳んで閉じた後にフラップの外部にテープを使用することにより箱を封止する。ホットメルト接着剤は箱の封止のために使用する場合がある。この適用のためには、固形のホットメルト接着剤は溶融槽(melt tank)内で溶融される。溶融された接着剤は加熱されたホースを通して加熱されたノズルにポンプで押出される。ホットメルトの溶融ビードは、それがノズルを通過する時に包装品(package)のフラップ上に堆積され、そしてノズルが開いてホットメルトを押出す。包装品のフラップは機械的に閉止され、次に圧縮区域中で封止維持される。最終梱包システムは、発送用荷運び台(pallets)上で箱を組立てる前に、箱の中に多量の完成品を迅速に詰め込み(pack)、封止するように高度に自動化する場合がある。
【0004】
最終梱包には、非硬化性または従来のホットメルト接着剤を使用する場合がある。非硬化性または従来のホットメルト接着剤は室温で固体であるが、高温に加熱されると、液体または流動体状態に溶融され、それらはその形態で基材に適用される。接着剤配合物は冷却されると、その固体形態を取り戻す。接着剤冷却時に形成される1種以上の固形相(hard phase)が最終接着剤に凝集力(cohesion)(強さ、靭性、クリープおよび熱抵抗)を与える。従来のホットメルト接着剤は溶媒も水も含まない。ホットメルト接着剤はまた、一般的に、俗語の「ホットグルー(hot glue)」によって知られている。
【0005】
硬化性または反応性ホットメルト接着剤配合物も知られているが、典型的には最終梱包には使用されない。硬化性または反応性ホットメルト接着剤配合物は、室温で固体であり、高温に加熱されると、液体または流動体状態に溶融され、その形態でそれらは基材に適用される。前記接着剤配合物は、冷却時にその固体形態を取り戻す。硬化性または反応性ホットメルト接着剤配合物は、湿気に対する曝露のような適当な条件に曝露されると化学的架橋反応により硬化すると考えられる。前記接着剤配合物は、硬化の前には熱可塑性であり、そして再溶融され、再固化されることができる。前記接着剤配合物は、一旦硬化されると不可逆的な固体形態になり、もはや熱可塑性ではない。硬化性ホットメルト接着剤は溶媒も水も含まない。
【0006】
従来のホットメルト接着剤は熱可塑性ポリマーまたはそのようなポリマーを含む配合物を含む。従来のホットメルト接着剤中に有用なポリマーの幾つかの例は、エチレン-ビニルアセテート(EVA)コポリマー、エチレン-アクリレート・コポリマー、ポリオレフィンおよびポリオレフィン・コポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートおよびスチレンブロックコポリマーを含む。
【0007】
ホットメルト接着剤は最終梱包に対して溶媒型接着剤よりも幾つかの利点を提供する。溶媒も水も存在しないので、乾燥工程が除外される。溶媒含有接着剤よりもホットメルト接着剤に対しては、環境、健康および可燃性の心配がずっと低い可能性がある。ホットメルト接着剤は溶媒型接着剤と異なり、固化期間中に層の厚さを喪失する傾向をもたない。
【0008】
すべてのホットメルト接着剤が最終梱包システムにおける使用に適するわけではない。従来のホットメルト接着剤は典型的には、この適用において、反応性ホットメルト接着剤より費用優位性(cost advantage)を提供する。幾つかの従来のホットメルト接着剤は、最終梱包装置における使用には高過ぎる溶融粘度をもつ。幾つかの従来のホットメルト接着剤は、高速の最終梱包環境における使用には、冷却し、強さを発達する速度が遅すぎる。幾つかの従来のホットメルト接着剤は、長い期間にわたり溶融状態に維持される時には、安定でない。
【0009】
従来のホットメルトは主として、再生不可能な原料(例えば、石油化学品)でできている。これらの接着剤の多くのエンドユーザーは、これらのホットメルトが環境の影響および/または将来の供給の長期の確保のために生物由来の材料を基剤にすることを好むと考えられる。今日まで、最終梱包に対するすべての適用および最終用途の性能条件を満たす、主として生物由来のホットメルト接着剤を製造することは接着剤配合物製造業者にとって挑戦的な課題であった。
【0010】
従来のホットメルト接着剤に伴う欠点は、それらの、生分解性の一般的な欠如である。ホットメルト接着剤配合物を形成する基剤ポリマーと、その分配性および/または接着性を適合させるために基剤ポリマーに添加されることができる様々な添加剤と、の両方が、生分解性を限定する可能性がある。従来のホットメルト接着剤の生分解性の欠如は、このような接着剤で接着された紙および厚紙製品(cardboard products)の再利用を妨げる可能性がある。最低でも、紙または厚紙のバッチ中の残留ホットメルト接着剤がこれらの材料の金銭的価値を低下させ、それが恐らく、これらの材料を再利用施設に販売することに興味をもつ消費者団体にとってそれらを魅力の少ないものにさせる可能性がある。最悪の場合は、再利用材料のバッチ中の残留ホットメルト接着剤が再利用工程流(recycling process stream)内の表面を汚染させて、修理コストおよび、工程の停止時間をもたらす可能性がある。実際、ホットメルト接着剤を含む再利用流の価値の低下と装置の損傷および停止時間の可能性は、これさえなければ容易に再利用されることができた材料の流れの拒絶をもたらす可能性がある。
【0011】
詳細な説明
本開示は、主として生物由来のポリマーと、主として生物由来のポリマーを含むホットメルト接着剤と、それらの製法と、最終梱包における使用と、に関する。幾つかの実施態様において、生物由来ポリマーは生分解性である。
【0012】
上記の考察の通り、従来のホットメルトは、生物由来が優勢ではなく、そのことは未来のそれらの利用可能性を限定し、消費者の受容性を限定しそして/または不都合な環境の影響をもつ可能性がある。更に上記に考察されたように、従来のホットメルト接着剤は特に生分解性であるわけではなく、そのことは、他の場合には容易に再利用可能であると考えられる材料の流れを再利用するその能力に不都合に影響を与える可能性がある。更に、
多数の従来のホットメルト接着剤は、適切な分配性および/または接着性を提供するために、基剤ポリマー(base polymer)と混合される更なる添加剤を含む。
【0013】
本発明者は、ホットメルト接着剤の分野における上記考察の課題に対処する、新規の熱可塑性ポリマーを見出した。本発明者は更に、本明細書で更に考察されるような、それによりポリマーを合成することができる容易な方法をも見出した。
【0014】
以下に説明されるポリマー配合物は従来のホットメルト接着剤よりも多数の利点を提供することができる。なかでも、本開示の熱可塑性ポリマーは主として生物由来であり、容易に生分解性である場合がある。本明細書で使用される用語「主として生物由来である」は、物質重量の50%超、そして好適には60%超、そしてより好適には70%超が再生可能な材料から生成される物質を表わす。再生可能材料は地下資源よりむしろ生物学的資源から誘導される原料から生成されるものである。生物学的原料は、その相対的濃度が大気中の炭素-14の天然存在度(natural abundance)にほぼ等しい炭素-14同位元素含量をもつ炭素を含む。本明細書で使用される用語「生分解性(biodegradable)」は、天然または非天然の微生物、日光、空気、熱、等を含む環境条件に対する曝露により分解されることができる物質を意味する。用語「生分解性」の使用は、生分解性の特定の度合い、生分解性の機序または特定の生分解の半減期を示唆するものではない。更に、本開示ポリマーの分子構造は、それらが、分配および/または接着を促進するための更なる添加剤の使用を伴わずに、ホットメルト接着剤として適用することができるように調整される場合がある。しかし、特定のポリマーまたは配置(deployment)条件のために必要な場合には、更なる添加剤をも含んで、ホットメルト接着剤配合物を形成する場合もある。
【0015】
具体的には、本発明者は乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを含む生分解性の熱可塑性のブロックコポリマーを見出した。本開示の熱可塑性ブロックのコポリマーは、乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを別個に合成もしくは獲得し、次に2種のブロックを相互に反応させて、コポリマーを形成する工程により調製することができる。場合により、ポリマーの一方または両方の末端を更に、官能化アルキレンポリマーまたは、ポリマーの接着性および/または分配性を更に調整することができるキャッピング基(capping group)を使用して官能化させる場合がある。
【0016】
本開示のポリマー配合物は、主たるポリマーの主鎖形(backbone type)を伴って得る場合がある。主たるポリマーの合成工程期間中に、場合により、関連するポリマーの主鎖形をもつポリマーが、形成される可能性があり、従ってポリマー配合物は主たるポリマーおよび関連ポリマーの主鎖形の混合物を含む場合がある。これらのポリマー配合物のいずれも、ホットメルト接着剤配合物として役立つ場合がある。
【0017】
概して、本開示の熱可塑性ポリマーは下記の式1
【0018】
【0019】
[式中、Aは乳酸のブロックであり、Bは脂肪族ポリエステルのブロックであり、XはHまたは、乳酸ブロックの末端カルボン酸基またはB*における(存在する場合)カルボン酸基と反応性のキャッピング基であり、YはHまたは、脂肪族ポリエステルブロックの末端ヒドロキシル基またはA*における(存在する場合)ヒドロキシル基と反応性のキャッ
ピング基であり、そしてnは約5ないし約10,000の整数である]
に示される分子構造を有する。
【0020】
乳酸のブロックA中の乳酸モノマーは、相互に対して頭・尾に配列される(すなわち、第1の乳酸モノマーのヒドロキシル基を、第2の乳酸モノマーのカルボン酸基と反応させることにより)。同様に、脂肪族ポリエステルのブロックBは、相互にエステル化されたジオールと二酸の反復モノマー単位を含む。式1のポリマーを調製する際に脂肪族ポリエステルのブロック内に不完全にエステル化された二酸が存在する場合は、不完全にエステル化された二酸が乳酸ブロックAと反応して、末端の乳酸のブロックAとX間に、場合によりB*として介在する場合がある。同様に、乳酸のブロックA内の乳酸は脂肪族ポリエステルのブロックB内の不完全にエステル化された二酸と反応して末端脂肪族ポリエステルのブロックとY間に、場合によりA*として介在する場合がある。不完全にエステル化された二酸が存在しない場合でも、このようなポリマーはまた、エステル交換(transesterification)により形成される場合がある。従って、本開示のポリマー配合物は、関連ポリマーの混合物として得ることができる。
【0021】
式2に示されるように、A*および/またはB*が不在の時は、末端の乳酸のブロックAはXに結合され、そして末端の脂肪族ポリエステルのブロックBはYに結合されることが認められるはずである。以下に続く具体的な式において、A*およびB*は簡略化のために構造式から省略される。しかし、A*および/またはB*を含む関連ポリマーは以下に開示される具体的なポリマーと混合される場合があるは認められなければならない。
【0022】
【0023】
より具体的な実施態様において、Xは乳酸のブロックAまたはB*(存在する場合)の末端のカルボン酸基と反応する官能化アルキレンポリマーのキャッピング基である場合があり、そしてYは脂肪族ポリエステルのブロックBまたはA*(存在する場合)の末端のヒドロキシル基と反応する官能化アルキレンポリマーのキャッピング基、アシル基またはそれらの混合物である場合がある。幾つかの実施態様において、XまたはYの少なくとも一つはHではない。式1において、ポリマー中のモノマーの総数に対する乳酸のブロックA中の乳酸モノマーの割合は、約0.1ないし約0.9の範囲にある。より具体的な実施態様において、ポリマー中のモノマーの総数に対する乳酸のブロックA中の乳酸モノマーの割合は、約0.6ないし約0.8の範囲にある。
【0024】
式1および2において、ポリマー中のモノマーの総数に対する、脂肪族ポリエステルのブロックB中の脂肪族ポリエステルモノマーの割合は、約0.1ないし約0.9の範囲にある。より具体的な実施態様において、ポリマー中のモノマーの総数に対する、脂肪族ポリエステルのブロックB中の脂肪族ポリエステルモノマーの割合は、約0.2ないし約0.4の範囲にある。
【0025】
より具体的な実施態様において、ポリマー中の乳酸モノマーの割合は約0.6ないし約0.8の範囲にあり、そしてポリマー中の脂肪族ポリエステルモノマーの割合は約0.2ないし約0.4の範囲にある。
【0026】
式1および2において、nは約5ないし約10,000の整数である。より具体的な実施態様において、nは約20ないし約2,000の整数である。
【0027】
より具体的な実施態様において、乳酸のブロックAは以下の式3に示される構造を有し、そして脂肪族ポリエステルのブロックBは以下の式4に示される構造を有し、従って該熱可塑性ポリマーは以下の式5に示される構造を有する。再度、式5のポリマーを含むポリマー配合物は、関連ポリマー形と混合される場合があることは認められなければならない。特に、式5のポリマーは、Xと末端の乳酸のブロックA間に介在するB*および/またはYと末端の脂肪族ポリエステルのブロックB間に介在するA*をもつことができる。
【0028】
【0029】
上記の式3および5において、yは約50ないし約500の整数である。より具体的な実施態様において、yは約100ないし約400の整数である。
【0030】
上記の式4および5において、zは、脂肪族ポリエステルのブロックが約20,000ないし約100,000の分子量をもつように選択される整数である。従ってzは約100ないし約600の場合がある。より具体的な実施態様において、zは約150ないし約550、または約200ないし400の範囲の場合がある。
【0031】
更に、上記の式4および5において、G1およびG2は独立して(CHR)xであり、式
中RはHか、少なくとも幾つかの(CHR)xの繰り返し中に存在する任意的な分枝アル
キル基かであり、そしてxは1ないし約10の整数である。幾つかの実施態様において、RはHであり、そしてG1および/またはG2は独立して(CH2)xである。より具体的な実施態様において、xは2ないし約10の整数である。更により具体的な実施態様において、G1は(CH2)x1であり、式中x1は2ないし約10、または2ないし約6の整数で
あり、そしてG2は(CH2)x2であり、式中x2は2ないし約10、または2ないし約8
の整数である。まだ、より具体的な実施態様において、x1は2または4であり、そして
x2は3、4または6である。
【0032】
幾つかの実施態様において、ポリ乳酸のブロックは主として、乳酸、特にL-乳酸の単一のエナンチオマーを含む場合がある。本明細書に記載のポリマー中に高率のL-乳酸モノマーを含むことにより、溶融ポリマーの冷却時に、ポリマーの硬化特性が改善され得る。幾つかの実施態様において、ポリ乳酸のブロックは単独にL-乳酸から形成される場合がある。他の様々な実施態様において、ポリ乳酸のブロック中のL-乳酸の割合は約0.7ないし約1にわたることができ、ポリ乳酸のブロック中の乳酸モノマーの残りの割合はD-乳酸からなる。
【0033】
他の様々な実施態様において、ポリ乳酸のブロックはL-乳酸およびD-乳酸の混合物を含む場合がある。様々な実施態様において、D-乳酸に対するL-乳酸の比率は約0.01ないし約1.0、より典型的には約0.3ないし約0.7、または約0.5ないし約0.7の範囲にあることができる。幾つかの実施態様において、ポリ乳酸のブロックはL-乳酸とD-乳酸のラセミ混合物を含む場合がある。
【0034】
幾つかの実施態様において、ポリ乳酸のブロックは、単一の乳酸のエナンチオマー(例えば、L-乳酸)を含む第1のサブブロックと、乳酸エナンチオマーの混合物を含む第2のサブブロックとを含むことができる。該サブブロックは以下に更に詳細に考察される通りに、別々に合成され、反応されて、乳酸のブロックを形成する場合がある。
【0035】
幾つかの実施態様においては、上記の式1、2および5において、XおよびYは双方とも、Hの場合がある。幾つかの実施態様においては、XまたはYの一方はHの場合があり、そしてXまたはYの他方は官能化アルキレンポリマーの場合がある。更にまた他の実施態様においては、XもYもHではない。XおよびYの、より具体的な定義は以下に従う。
【0036】
より具体的な実施態様において、Xは独立してH、または第1の官能化アルキレンポリマーのブロックである。第1の官能化アルキレンポリマーのブロックは、カルボン酸基と(すなわち、乳酸のブロックAまたはB*からの)のエステル化を受けることができるアルコールの官能基を含む場合がある。他の実施態様において、Xは約2ないし約20個の炭素原子をもつアルカノールであり、そのアルコール基が同様な方法で乳酸のブロックAまたはB*にキャップする場合がある。更に他の実施態様において、Xとして、アクリレートおよびメタクリレートのヒドロキシル化コポリマーを使用する場合がある。
【0037】
より具体的な実施態様において、Xは独立して、Hまたは、第1の官能化アルキレンポリマーのブロックであり、そしてYは独立してH、アシル基または第2の官能化アルキレンポリマーのブロックである。同様に、他のより具体的な実施態様において、Yは独立してH、アシル基または第2の官能化アルキレンポリマーのブロックである。第2の官能化アルキレンポリマーのブロックは、ヒドロキシル基(すなわち、脂肪族ポリエステルのブロックBまたはA*からの)を使用するエステル化を受けることができるカルボン酸官能基を含む場合がある。
【0038】
好適な実施態様において、Yは、適切な酸無水物とのブロックコポリマーの反応により形成されて、末端基またはキャッピングアシル基を形成する場合があるアシル基である場合がある。説により限定されずに、Yがアシル基である時、最終コポリマーは長時間にわたり加熱される時に、粘度の安定度の改善を示すと考えられる。Yがアシル基であるとき、それは約2ないし約20個の炭素原子を含む場合がある。特に好適な実施態様において、Yは、プロピオン酸無水物とのブロックコポリマーの反応により形成される場合があるプロピオニル基の場合がある。
【0039】
第1の官能化アルキレンポリマーのブロックが存在するときは、それはアルコール官能基を含む官能化アルキレンポリマーの場合がある。このような官能化アルキレンポリマー
のブロックは、上記の式4中の末端カルボン酸基とのエステル化を受けることができるアルコール官能基を含むホモポリマーまたはコポリマーの場合がある。より具体的な実施態様において、第1の官能化アルキレンポリマーのブロックは、エチレンとビニルアルコールのコポリマー、エチレン、ビニルアセテートおよびビニルアルコールのコポリマー、またはポリ(ビニルアルコール)から選択されるアルキレンポリマーの場合がある。第1の官能化アルキレンポリマーのブロック中には、20モル%までのアルコール基が含まれる場合がある。幾つかの実施態様において、第1の官能化アルキレンポリマーのブロックは約1,000以上の分子量をもつアルキレンポリマーを含む場合がある。第1の官能化アルキレンポリマーのブロックは、幾つかの実施態様においては直線状であり、または他の実施態様においては分枝状であるアルキレンポリマーを含む場合がある。
【0040】
YがHではない時は、それはアシル基または第2の官能化アルキレンポリマーのブロックの場合がある。アシル基が存在するときは、それは一般式-(C=O)R1をもつ場合
があり、式中R1は1ないし18個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基である
。より具体的な実施態様において、Yがアセテートまたはプロピオネートであるときに、R1は、1ないし3個の炭素原子、より具体的には1もしくは2個の炭素原子をもつ直鎖
アルキル基である。Yが第2の官能化アルキレンポリマーのブロックであるときは、それはカルボン酸官能基を含む官能化アルキレンポリマーの場合がある。このような官能化アルキレンポリマーのブロックは、アルコール基を使用してエステル化を受ける場合があるアルコール官能基を含むホモポリマーまたはコポリマーの場合がある。より具体的な実施態様において、第2の官能化アルキレンポリマーのブロックは、ビニルアセテートおよびクロトン酸のコポリマーの場合がある。これに関して使用する場合があるビニルアセテートおよびクロトン酸の適切なコポリマーは、Wacker Chemieから市販のVINNAPAS C305である。幾つかの実施態様において、第2の官能化アルキレンポリマーのブロックは、約1,000以上の分子量をもつアルキレンポリマーを含む場合がある。第2の官能化アルキレンポリマーのブロックは、幾つかの実施態様においては直線状であり、または他の実施態様においては分枝状であるアルキレンポリマーを含む場合がある。
【0041】
一つの特定の実施態様において、本開示のポリマーは、乳酸のブロック内の末端乳酸のカルボン酸基がHとして、官能化されず、脂肪族ポリエステルのブロック内の末端ヒドロキシル基がビニルアセテート-クロトン酸のアルキレンコポリマーおよびプロピオネート誘導体との混合物として官能化されて得られる場合がある。他の具体的な実施態様において、末端のヒドロキシル基は、プロピオネート基の不在下で、ビニルアセテート-クロトン酸アルキレンのコポリマーを使用して官能化される場合がある。さらに他の特定の実施態様において、末端のヒドロキシル基は、ビニルアセテート-クロトン酸アルキレンコポリマーの不在下で、プロピオネート基または他のアシル基を使用して官能化される場合がある。
【0042】
本明細書には、本開示のポリマーを合成する方法も記載されている。本明細書に記載の合成法を実行すると、ホットメルト接着剤は反応器から得られるか、またはブロック、ペレット、スティックまたは錠剤のような適切な形状に更に加工される場合がある。
【0043】
概括的に、本開示のポリマーを合成する方法は、ポリ乳酸のブロックおよび脂肪族ポリエステルのブロックを適当な比率で合わせる工程と、これらの2つのポリマーのブロックの相互とのエステル化に影響を与えるように加熱する工程とを含む。幾つかの実施態様において、式4、5のポリマーはこのような条件下で形成される場合がある。XまたはYがHでないときは、ポリマーのブロックを相互に一緒に反応させる前に、適当な官能化化合物を少なくとも乳酸のブロックAまたは脂肪族ポリエステルのブロックBの一部と予備反応させる場合がある。例えば、予備反応された乳酸のブロックAおよび脂肪族ポリエステ
ルのブロックBは、それぞれ以下の式6および7に示される式を有する場合があり、そのx、y、XおよびYは別に、上記の通りに定義される。
【0044】
【0045】
他の様々な実施態様において、式4のポリマーを形成する方法は、これらのブロックを予備反応させずに乳酸のブロックAおよび脂肪族ポリエステルのブロックBを混合する工程と、ポリマーの頭部または尾部のいずれかで反応してポリマー中にXまたはYを導入する化合物種(species)を更に合わせる工程と、を含む場合がある。
【0046】
更なる実施態様において、本明細書に記載の方法は更に、乳酸のブロックAを合成する工程またはそれを得る工程を含む場合がある。乳酸のブロックAを合成する方法は、ラクチドの開環重合、乳酸の直接的エステル化またはそれらの組み合わせを含む場合がある。このような方法は当業者に周知であると考えられる。ラクチドの開環重合は、乳酸のブロックA中に実質的に単一の乳酸エナンチオマーを提供するために使用する場合がある。直接的エステル化は、乳酸エナンチオマーの混合物を与えることができる。開環重合により生成され、そして直接的エステル化により生成されるポリ乳酸の混合物を合わせ、反応させると、本開示の実施態様における乳酸のブロックAを形成することができる。これらの異なる合成法により生成されるポリ乳酸の混合物を反応させる工程を使用して、乳酸のブロックA中の乳酸エナンチオマーの相対的比率を調整することができる。
【0047】
更なる実施態様において、本明細書に記載の方法は更に、脂肪族ポリエステルのブロックBを合成または獲得する工程を含む場合がある。脂肪族ポリエステルのブロックBを合成する方法は、ジオールおよびジカルボン酸または反応性ジカルボン酸誘導体(例えば、二酸クロリド、二酸無水物または二酸環式無水物)の直接的エステル化を含む場合がある。このような方法は当業者には周知であると考えられる。例えば、幾つかの実施態様において、琥珀酸またはアジピン酸を1,4-ブタンジオールと反応させて、脂肪族ポリエステルのブロックを提供することができる。単一のジカルボン酸および単一のジオールに加えて、適切なジカルボン酸とジオールの混合物を反応させて、脂肪族ポリエステルのブロックを形成することができる。
【0048】
上記の熱可塑性ポリマーは従来のホットメルト接着剤配合物中に有用である。好都合なことには、上記の熱可塑性ポリマーは、更なる添加剤を使用せずにホットメルト接着剤配
合物として配合する場合がある。すなわち、本開示のホットメルト接着剤配合物は、上記の熱可塑性ポリマーよりなるか、または本質的にそれらよりなる場合がある。更なる添加剤を使用しないでホットメルト接着剤配合物を配合する能力は、これらの材料の生分解性を促進する場合がある。
【0049】
しかし、代わりの実施態様において、ホットメルト接着剤配合物の分配性、配合性および/または接着性を更に改変するために、更なる添加剤を含む場合がある。適切な添加剤は当業者には周知であると考えられ、例えば、熱可塑性オリゴマー、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性コポリマー、粘性付与剤、可塑化剤、ワックス、抗酸化剤、UV安定剤、顔料、染料、殺生剤(biocide)、難燃剤、帯電防止剤、粒状物充填剤等のいずれかまたはすべてを含む場合がある。幾つかのこれらの添加剤は、特定の適用に対し、並びに配置される時の長期安定度を促進するために、ホットメルト接着剤を調整するために望ましいかも知れない。幾つかの実施態様において、添加剤が存在する時に、それらは天然源から誘導され、そしてそれら自体、生分解性の場合がある。
【0050】
添加剤の総レベルは、所望される特性をもつ従来の反応性ホットメルト接着剤配合物を提供するために要する特定の添加剤それぞれの量に応じてばらつくと考えられる。添加剤のレベルは0%ないし50%、そしてより好適には0%ないし30%の場合がある。
【0051】
ワックスは、その内容が参照により本明細書に引用されていることとされる、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistryに記載されている。使用することができるワックスの例は、天然のワックス、部分合成ワックスおよび完全合成ワックスを含む。天然ワックスは生化学工程により形成され、動物または植物代謝の産物である。部分合成ワックスは天然ワックスを化学反応させることにより形成される。完全合成ワックスは、炭素、メタン、エタンまたはプロパンのような低モル質量の出発材料を重合することにより調製される。完全合成ワックスの2つの主要な群は、Fischer-Tropschワックスとポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスおよびそれらのコポリマーのようなポリオレフィンワックスとである。
【0052】
粘性付与剤は天然および改変ロジン、芳香族粘性付与剤またはそれらの混合物を含む。天然および改変ロジンは、ガム・ロジン、木材ロジン、タル油(tall oil)ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、ダイマー化ロジン、樹脂酸塩(rosinates)および重合ロジン;例えば淡色の木材ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステルおよびロジンのフェノール-改変ペンタエリスリトールエステルを含む、天然および改変ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステルを含む。本発明を実施するために使用することができると考えられる市販のロジンおよびロジン誘導体の例は、Arizona Chemicalから市販のSylvalite RE 110L、Sylvares RE 115およびSylvares RE 104、DRTからのDertocal 140、Arakawa ChemicalからのLimed
Rosin No.1、GB-120、Pencel C、Arakawa Chemical Co.から市販のKE-100のようなロジンエステル、Komo ResinsからのKomotac 2110のようなロジンエステルを含む。芳香族粘性付与剤はスチレンモノマー、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、第三ブチルスチレン、クロロスチレン、クマロン、インデンおよびメチルインデンを含むインデンモノマー、フェノール-改変芳香族樹脂である芳香族炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、脂肪族改変芳香族C9炭化水素樹脂、C9芳香族/脂肪族オレフィン誘
導、そしてSartomer and Cray Valleyから商品名Norsoleneとして市販の樹脂、およびTK芳香族炭化水素樹脂のRutgersシリーズを含む。他の芳香族粘性付与剤は、すべてEastman Chemical Co.から市
販の、Kristalex 3100、Kristalex 5140またはHercolite 240のようなアルファ-メチルスチレンタイプである。他の有用な粘性付与剤の選択に値する製品は、参照により本明細書に取り込まれたこととされる、Adhesion Science and Engineering-2,Surfaces,Chemistry and Applications,M.Chaudhury and A.V.Pocius eds.,Elsevier,New York,2002,p.718中のC.W.Paul,“Hot Melt Adhesives,”中に記載されている通りの、天然および石油誘導の材料およびそれらの組み合わせを含む。
【0053】
幾つかの実施態様において、本開示のホットメルト接着剤は紙および厚紙(cardboard)の再利用に使用されるパルプ化(pulping)条件下において生分解性の場合がある。このような条件下で本開示のポリマーは、ポリマー鎖を分解するためにそれらのエステル結合の少なくとも一部の加水分解を受ける場合がある。
【0054】
開示された従来のホットメルト接着剤の一つの適用は、最終梱包である。該接着剤は、短時間に所望量の溶融接着剤のポンプ押出し(pumping)および適用を可能にするのに十分低い溶融粘度を有することが望ましい。大部分の適用システムは空気圧ピストンのポンプを使用するために、溶融接着剤の粘度は重要である。空気圧の調整は、オペレーターに、包装品に適用されるホットメルトの容量を制御させる。接着剤の粘度が高過ぎる場合は、接着剤をポンプで押出すために非常に高い空気圧が必要とされ、そしてビードのパターンを制御するのが困難になると思われる(例えば、ノズルから流出するビードの弱い切断力(poor cutoff)の結果としての不均一なビードまたは曳引する傾向(tendency to string))。接着剤はそれが溶融状態にある長い期間にわたり、この粘度を維持することが望ましい。
【0055】
接着剤は、それが溶融状態にある長い期間にわたり、この粘度を維持することが望ましい。熱的に安定な接着剤が重要である。適用槽中において、粘度が熱曝露とともに変化する場合は、装置のオペレーターは一定のビードを確保するために頻繁に適用の設定を調整する必要がある。長期の加熱後にゲルまたは炭化物(char)が形成される場合はインラインのフィルターまたは適用ノズルが詰まり、中断時間(downtime)および高価な部品交換をもたらす可能性がある。長時間の加熱後に生成物が異なる相に分離する場合は、恐らく唯一の相が接着剤タンクから押出され、それが許容できない性能をもたらすと考えられる。
【0056】
一つの実施態様において、ホットメルト接着剤は約290°F(143.3℃)の温度で測定される時に約800ないし約3000cPsの粘度をもつ場合がある。他の実施態様において、ホットメルト接着剤は約290°F(143.3℃)の温度で測定される時に約4000ないし約5000cPsの粘度をもつ場合がある。幾つかの実施態様において、接着剤は290°F(143.3℃)の温度で24時間の貯蔵後に、約50%未満(そして、より好適には約10%未満)の粘度低下を示す。他の場合には、接着剤は290°F(143.3℃)の温度で24時間の貯蔵後に、約10%ないし約30%の粘度低下を示す場合がある。
【0057】
接着剤の開放時間(open time)は、優良な保全性をもつ接着体(a bond)をもたらすように、適用されたホットメルトのビードを使用してフラップにのりのついていない包装品(package)のフラップを張り付けるために利用可能な時間の長さと定義される。適用されるホットメルトが優良な接着体を形成するためには、それは、のりの付いていないフラップを濡らし(wet out)そして浸透することができなければならない。接着剤は、様々な接合時間(mating time)を有する適用装置に適合するために十分な固有の開放時間をもつ必要がある(より緩徐なライン速度は、よ
り遅い接合時間をもたらすと考えられる)。
【0058】
接着剤の硬化時間(set time)は、優良な保全性をもつ接着体がもたらされるように、圧縮下の包装品のフラップの接着体をその場に保持するために要する時間の長さと定義される。接着剤の硬化時間が十分に短い場合は、包装品が圧縮下から出てくる時に、フラップが弾け開くことはないと考えられる。理想的には、フラップがこの時点で弾け開く(pop open)場合は、破壊的な「繊維引裂け(fiber-tearing)」をもつ接着体が生じると考えられる。早急な硬化をもつ接着剤は、圧縮時間が短い、急速な包装ラインを走行する消費者にとり、好都合である。溶融状態または一部固化状態の適用接着剤は、十分な凝集力を有して、接着剤が完全に固化するまで、フラップを一緒に保持することが望ましい。適用される接着剤は、溶融状態から十分に早急に固化して、短時間にフラップの接着を可能にすることができることが望ましい。
【0059】
一旦包装品が封止された後に、接着体がその耐用年数の期間中、正常に留まるかどうかを、様々な因子が決定すると考えられる。包装品の用紙(paper stocks)に対する優良な接着は、広範な環境条件にわたり重要である。接着体は低温および高温下で正常に維持されなければならず、また高湿度に曝露される時に弱体化してはならない。
【0060】
包装品のフラップは一旦封止された後は、自然のスプリング力(spring force)下にあると考えられる。接着剤の接着結合(adhesive bonds)は、特に高い貯蔵温度または運送温度下で、これらの力に耐え、また弾け開くことを防止することができる優良な熱抵抗をもたなければならない。
【0061】
ホットメルト接着剤は、接着剤を、合成ポリオレフィンポリマーから調製されるホットメルト接着剤よりずっと急速に生分解させる再生可能な材料から調製される場合がある。
【0062】
一つの実施態様において、最終梱包のための生分解性のホットメルト接着剤は以下の特性を有する:
開放時間:Kaneboテスター(MEC Co.,Ltd.,Shinsenba Building 303,1-15-8 Senbahigashi Mino city,Osaka,562-0035,Japanから市販のASM-15N Hot-Melt Tester)上で最低5秒。
硬化時間:Kaneboテスター上で最大5秒。
適用温度、典型的には290°F(143.3℃)における粘度:800ないし3000cPs,好適には800ないし2200cPs、より好適には800ないし1300cPs。熱安定度:290°F(143.3℃)で24時間の貯蔵後の粘度低下<10%。
高湿度または長期加熱に対する曝露後でも安定な硬化速度。
0ないし130F(-17.8ないし54.4℃)の温度範囲にわたり、板紙(corrugated cardboard)に接着。
粘度はBrookfield Thermosel粘度計(viscometer)RVDV1+を使用して試験された。サンプルは290°F(143.3℃)で溶融された。
開放時間および硬化時間を、290°F(143.3℃)で適用された0.1”(0.25cm)幅のビードを使用してKaneboテスター上で試験した。
熱安定度を、290°F(143.3℃)のオーブン内で、フォイルで覆った8オンス(226.4g)のガラスジャー中に100gのサンプルを保持することにより試験した。粘度を経時的にモニターし、サンプルの視覚的状態に関して観察した。
接着体(bond)の高熱抵抗を、24時間、125F(51.7℃)で一定に維持されたオーブン中に機械で封止された箱を入れることにより、試験した。弾け開いた箱の数をモニターした。どの箱も開かないことが好適である。
接着力-様々な温度条件下に対する24時間の曝露後、手製の板紙の接着体(corrugate bonds)を接着力および繊維引裂けレベルにつき試験した。接着力はテスターにより定量的に評価する。繊維引裂けは好適には、最低75%である。繊維引裂けは接着剤の、表面上に残される繊維の量として計算され、それは基材内の破綻を示し、接着剤と基材間の界面における破綻ではない。3個の試験試料を試験して、繊維引裂けの平均率を得た。
【0063】
本開示の実施態様のより良い理解を促進するために、好適なまたは代表的な実施態様の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本開示の範囲を限定または規定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0064】
前駆体の生成(formation):乳酸のブロック1。 コンデンサーの付いた2.5Lの反応器に乳酸(2431.8g)を充填し、165℃で2時間加熱した。圧力を2時間にわたり3mbarに減圧し、水を受け器(receiver)に回収した。反応を22時間にわたり165℃、3mbarの圧力下で継続した。生成物を淡褐色のガラス状固体として回収した。乳酸のブロック2。 機械的撹拌機および窒素入口を備えた2Lフラスコにラクチド(NatureWorks)(1280g)、1-ヘキサノール(7.7g)および錫(II)ブトキシド(0.7g)を充填した。容器を145℃に8時間加熱し、生成物をガラス状の淡褐色の固体として回収した。脂肪族ポリエステルのブロック。 機械的撹拌機およびコンデンサーを備えた20Lの反応器に、1,4-ブタンジオール(9.56kg)、琥珀酸(10.02kg)およびアジピン酸(3.10kg)を充填した。混合物を180℃で5時間、窒素下で加熱した。次に真空をかけて発生した水のバルクを除去した。次に、反応器上のサンプル口を通して、ジルコニウムn-ブトキシド(42.48g)を添加し、混合物を215℃の真空下で12時間加熱した。反応器の内容物をトレイに空けて、それを放置冷却することにより生成物を単離した。
【0065】
ホットメルト接着剤配合物1の調製: 機械的撹拌機を備えた2L反応器に乳酸のブロック1(109g)、乳酸のブロック2(424g)、脂肪族ポリエステルのブロック(195g)およびビニルアセテート-クロトン酸コポリマー(Wacker VINNIPAS C305、22.5g)を充填した。混合物が溶融され、混合されるまで、混合物を真空下(60mbar)で145℃に加熱した。次にプロピオン酸無水物(23.2g)を添加し、混合物を窒素下で3時間、撹拌加熱した。圧力を4mbarに減圧し、加熱を1時間継続した。
【0066】
ホットメルト接着剤配合物1の分析および試験。 ホットメルト接着剤は290°F(143.3℃)で2900cPsの粘度および、290°F(143.3℃)で24時間後に粘度の8%低下の熱安定度を有した。熱安定度試験後に、炭化、ゲル化または重篤な変色を認めなかった。接着剤は10秒の開放時間および5秒の硬化時間を有した。本ホットメルト接着剤を使用して製造された段ボールサンプルの接着試験は、0ないし130°F(-17.8℃ないし54.4℃)の温度範囲にわたり75%超の繊維引裂けを有した。本接着剤で封止された箱は125°F(51.7℃)で24時間保持された時に、弾け開かなかった(pop open)。ホットメルト接着剤配合物2はライン末端接着剤としての使用に適している。
【0067】
本明細書および関連請求項中に使用される成分の量、分子量のような特性、反応条件、等を表わすすべての数値は、別記されない限り、すべての場合に用語「約(about)」により修飾されるものと理解することができる。従って、本明細書および付記の請求項中に示される数値パラメーターはその反対を記載されない限り、本開示の実施態様により獲得されることが追求される、所望される特性に応じてばらつく可能性がある概算値であ
る。最低限でも、また請求項の範囲に対する同等物の原理(doctrine)の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有意な数値(digits)の数に照らして、また通常の概算法を適用することにより、解釈されなければならない。
【0068】
従って、本開示は、十分に、言及される結果および利点並びにその中の固有なものを達成するようになっている(well adapted to)。本開示は、本明細書の教示の利点を有する、当業者にとって明白な、異なる、しかし均等な(equivalent)方法で改変され、実施されることができるので、上記に開示された具体的な実施態様は、例示的であるのみである。更に、以下の請求項中に記載されるもの以外は、本明細書に示される構成またはデザインの詳細に対する限定は意図されない。従って、上記に開示された具体的な例示的実施態様は、変更、組み合わせまたは改変されることができ、またすべてのこのようなバリエーションは本開示の範囲および精神内にあると考えられることは明白である。本明細書に例示的に開示された本開示は、本明細書に具体的には開示されていないあらゆる要素および/または本明細書に開示された、場合により使用される要素の不在下で、適切に実施される場合がある。配合物および方法は、様々な成分または工程を「含む(comprising)」、「含む(containing)」または「含む(including)」の用語で説明されるが、該配合物および方法はまた、「本質的に様々な成分および工程からなる(consist essentially of)」または「それらからなる(consist of)」場合がある。上記に開示されたすべての数値および範囲は、若干だけ(by some amount)ばらつく可能性がある。下限および上限をもつ数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内に入るあらゆる数値およびあらゆる含まれる範囲は具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示された値の各範囲[「約aないし約b(from about a to about b)」または同様に「ほぼaないしb(from approximately a to b)」、または同様に「ほぼaないしb(from approximately a-b)」の形態の]は、値の、より広範な範囲内に包含される各数値および範囲を示すものと理解することができる。更に、請求項中の用語は、特許請求者によりはっきりと、明白に、別に定義されない限り、それらの平易な、通常の意味をもつ。更に、請求項中に使用されるような不定冠詞「a」または「an」は、本明細書では、それが紹介する(introduce)一つまたは二つ以上の要素を意味するものと定義される。