(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052184
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】治療に適するリポソームRNA製剤の調製および保管
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20230404BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230404BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230404BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230404BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230404BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20230404BHJP
A61K 38/17 20060101ALN20230404BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20230404BHJP
A61P 31/00 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K31/7105
A61K48/00
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/24
A61P35/00
A61K38/17
A61K38/02
A61P31/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000105
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2020520738の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】62/574,965
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519258736
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナー, ゼバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エスパルサ ボルキューズ, イサック エルナン
(72)【発明者】
【氏名】ヒラ―, トーマス ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ベイツ, フェルディア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生物学的に活性のRNAを、標的組織へと送達するための製剤であって、送達されたRNAが、それがコードするペプチドまたはタンパク質へと、効率的に翻訳される製剤を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と、を含み、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、0mM~約40mMの濃度の塩化ナトリウムと、安定剤とを含む、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームコロイドを作製する方法であって、エタノール中の脂質溶液を、水性相へと注入して、リポソームコロイドを作製することを含み、脂質溶液中の脂質のうちの少なくとも1つの濃度が、エタノール中の少なくとも1つの脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い、方法。
【請求項2】
脂質溶液が、2つまたはこれを超える、異なる脂質の混合物の溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂質溶液中の1つの脂質の濃度が、室温における、エタノール中の脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脂質溶液中の総脂質濃度が、約180mM~約600mM、約300mM~約600mM、または約330mMである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
脂質溶液が、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
脂質溶液中のさらなる脂質の濃度が、エタノール中のさらなる脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比が、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脂質溶液が、DOTMAと、DOPEとを、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
脂質溶液中のDOPEの濃度が、少なくとも約60mM、または少なくとも約90mMである、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脂質溶液が、約50rpm~約150rpmの、水性相の攪拌速度で、水性相へと注入される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
水性相が、水である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
リポソームコロイドを攪拌することをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
リポソームコロイドが、約15分間~約60分間、または約30分間攪拌される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
リポソームコロイドを作製する方法であって、DOTMAと、DOPEとを、エタノール中に、約2:1のモル比で含む脂質溶液を、約150rpmの攪拌速度で攪拌される水へと注入して、リポソームコロイドを作製することを含み、脂質溶液中のDOTMAおよびDOPEの濃度が約330mMである、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法により得られるリポソームコロイド。
【請求項19】
リポソームが、少なくとも約250nmの平均直径を有する、請求項18に記載のリポソームコロイド。
【請求項20】
リポソームが、約250nm~約800nmの範囲の平均直径を有する、請求項18または19に記載のリポソームコロイド。
【請求項21】
リポソームが、カチオン性リポソームである、請求項18から20のいずれか一項に記載のリポソームコロイド。
【請求項22】
リポソームが、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む、請求項18から21のいずれか一項に記載のリポソームコロイド。
【請求項23】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む、請求項22に記載のリポソームコロイド。
【請求項24】
少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、請求項22または23に記載のリポソームコロイド。
【請求項25】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項22から24のいずれか一項に記載のリポソームコロイド。
【請求項26】
少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比が、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である、請求項22から25のいずれか一項に記載のリポソームコロイド。
【請求項27】
リポソームが、DOTMAと、DOPEとを、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含む、請求項18から26のいずれか一項に記載のリポソームコロイド。
【請求項28】
RNAリポプレックス粒子を調製する方法であって、請求項18から27のいずれか一項に記載のリポソームコロイドを、RNAを含む溶液へと添加することを含む、方法。
【請求項29】
RNAリポプレックス粒子の連続フロー製造のための方法であって、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液とを、RNAおよびカチオン性リポソームの制御された混合条件下で混合することを含む、方法。
【請求項30】
カチオン性リポソームを含む溶液が、請求項18から27のいずれか一項に記載のリポソームコロイドである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
RNAを含む溶液およびカチオン性リポソームを含む溶液が、水溶液である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との混合を可能とする流速が使用される、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
流動が、300を超えるか、または約500~約2100のレイノルズ数により特徴づけられる、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
制御された混合条件が、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との混合比を制御することを含む、請求項29から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
制御された混合条件が、混合される、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との相対体積を制御することを含む、請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
RNAと、カチオン性リポソームとの混合比が、RNAを含む溶液およびカチオン性リポソームを含む溶液の、同一の混合体積(v/v)を使用し、それぞれの溶液中のRNAおよびカチオン性リポソームの濃度を調整することにより制御される、請求項29から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
制御された混合条件が、目詰まりを回避しながら、RNAリポプレックス粒子の特性を維持するように選択される、請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
Y字型混合要素またはT字型混合要素を使用することを含む、請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
Y字型混合要素またはT字型混合要素が、約1.2mm~約50mmの直径を有する、請求項29から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1つがカチオン性リポソームを含む溶液を含み、1つがRNAを含む溶液を含む、2つのシリンジが、同じポンプへと、並列に挿入されたシリンジポンプを使用することを含む、請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
加圧容器、膜ポンプ、ギアポンプ、磁気浮揚ポンプ、または蠕動ポンプを、任意選択で、流速のオンライン制御およびリアルタイム調整のためのフィードバックループを伴う流速センサーと組み合わせて使用することを含む、請求項29から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
RNAを含む溶液と、リポソームを含む溶液との混合物が、約45mM~約300mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または約45mM~約300mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む、請求項29から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
RNAを含む溶液と、リポソームを含む溶液との混合物が、少なくとも約50mMのイオン強度を有する、請求項29から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
X線散乱パターンにおいて、RNAリポプレックスが、約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅が、0.2nm-1より小さい、請求項28から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
RNAリポプレックス粒子が、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する、請求項28から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
RNAリポプレックス粒子を含む凍結組成物を調製する方法であって、(i)RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することと、(ii)組成物を凍結させることとを含む、方法。
【請求項47】
凍結させることが、約-15℃~約-40℃、または約-30℃の温度である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
安定剤が、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することが、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を用意することと、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することとを含む、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することが、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物のイオン強度を低減する、請求項46から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度が、生理的オスモル濃度に要求される値より高い、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度が、RNAリポプレックス粒子の品質を維持し、特に、約-15℃~約-40℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間にわたる、組成物の保管の後で、RNA活性の実質的な喪失を回避するのに十分である、請求項46から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中のpHが、RNAを保管するための、通常のpH最適値より低い、請求項46から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物が、約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む、請求項46から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物が、約20mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を有する、請求項46から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
RNAリポプレックス粒子が、請求項28から44のいずれか一項に記載の方法により得られる、請求項46から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
請求項28から45のいずれか一項に記載の方法により得られる、RNAリポプレックス粒子を含む組成物。
【請求項58】
RNAリポプレックス粒子が、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
RNAが、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、請求項57または58に記載の組成物。
【請求項60】
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0であり、
約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅が、0.2nm-1より小さい、RNAリポプレックス粒子
を含む組成物。
【請求項61】
約10~約300mM、約45mM~約300mM、約10mM~約50mM、または約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを、さらに含む、請求項57から60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
バッファーをさらに含む、請求項57から61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
キレート剤をさらに含む、請求項57から62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
請求項46から56のいずれか一項に記載の方法により得られるRNAリポプレックス粒子を含む組成物。
【請求項65】
RNAリポプレックス粒子が、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
RNAが、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、請求項64または65に記載の組成物。
【請求項67】
約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項64から66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と、
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
0mM~約40mMの濃度の塩化ナトリウムと、
安定剤と
を含む組成物。
【請求項69】
バッファーをさらに含む、請求項64から68のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
組成物中のRNAの量が、約0.01mg/mL~約1mg/mL、約0.05mg/mL~約0.5mg/mL、または約0.05mg/mLである、請求項64から69のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項71】
塩化ナトリウムが、約20mM~約30mMの濃度である、請求項67から70のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項72】
塩化ナトリウムが、約20mMの濃度である、請求項67から71のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項73】
塩化ナトリウムが、約30mMの濃度である、請求項67から71のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項74】
組成物中の安定剤の濃度が、生理的オスモル濃度に要求される値より高い、請求項64から73のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項75】
組成物中の安定剤の濃度が、約5~約35重量/体積パーセント(%w/v)、または約12.5~約25重量/体積パーセント(%w/v)である、請求項64から74のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項76】
安定剤が、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である、請求項64から75のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項77】
安定剤が、約5~約25重量/体積パーセント(%w/v)の濃度のショ糖である、請求項64から76のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項78】
ショ糖が、約15%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である、請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
ショ糖が、約20%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である、請求項77に記載の組成物。
【請求項80】
ショ糖が、約22%(w/v)の濃度である、請求項77に記載の組成物。
【請求項81】
ショ糖が、約20%(w/v)の濃度である、請求項77に記載の組成物。
【請求項82】
RNAを保管するための、通常のpH最適値より低いpHを有する、請求項64から81のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項83】
約5.7~約6.7、または約6.2のpHを有する、請求項64から82のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項84】
バッファーが、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)である、請求項68から83のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項85】
HEPESが、約2.5mM~約10mM、または約7.5mMの濃度である、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
キレート剤をさらに含む、請求項64から85のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項87】
約0.05mg/mLの濃度の、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
約2:1のモル比の、DOTMAおよびDOPEと
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
約20mMの濃度の塩化ナトリウムと、
約22%(w/v)の濃度のショ糖と、
pHが約6.2である、約7.5mMの濃度のHEPESと、
約2.5mMの濃度のEDTAと
を含む組成物。
【請求項88】
液体状態または凍結状態である、請求項64から87のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項89】
約-15℃~約-40℃の温度で、少なくとも1カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項90】
約-15℃の温度で、少なくとも1カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項91】
約-15℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項92】
約-20℃の温度で、少なくとも1カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項93】
約-20℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項94】
約-30℃の温度で、少なくとも1カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項95】
約-30℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である、請求項88に記載の凍結組成物。
【請求項96】
請求項88から95のいずれか一項に記載の凍結組成物を融解させ、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することにより得られる、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物。
【請求項97】
組成物のオスモル濃度が、約200ミリオスモル~約450ミリオスモルである、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを含む、請求項96または97に記載の組成物。
【請求項99】
RNAリポプレックス粒子が、請求項28から45のいずれか一項に記載の方法により得られる、請求項64から98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
RNAリポプレックス粒子が、約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅が、0.2nm-1より小さい、請求項64から99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
RNAリポプレックス粒子が、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する、請求項57から100のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項102】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む、請求項58から63、65から86、および88から101のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項103】
少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む、請求項58から63、65から86、および88から102のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項104】
少なくとも1つのカチオン性脂質が、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質が、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項58から63、65から86、および88から103のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項105】
少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比が、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である、請求項58から63、65から86、および88から104のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項106】
RNAリポプレックス粒子が、DOTMAおよびDOPEを、約10:0~1:9、約4:1~1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含み、DOTMA内の正の電荷の、RNA内の負の電荷に対する電荷比が、約1:2~1.9:2である、請求項58から63、65から86、および88から105のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項107】
キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項63、86、および88から106のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項108】
EDTAが、約0.25mM~約5mM、または約2.5mMの濃度である、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
アジュバントをさらに含む、請求項57から108のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項110】
全身投与のために製剤化される、請求項57から109のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項111】
全身投与が、静脈内投与による、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
治療的使用のための、請求項57から111のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項113】
RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を調製する方法であって、請求項88から112のいずれか一項に記載の凍結組成物を融解させることと、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することとを含む、方法。
【請求項114】
水性液体を添加して、約200ミリオスモル~約450ミリオスモルのオスモル濃度の組成物を得る、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
水性液体を添加して、約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを得る、請求項113または114に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非経口投与の後、特に、静脈内投与の後における、RNAの、標的組織への送達のためのRNAリポプレックス粒子を調製するための方法と、このようなRNAリポプレックス粒子を含む組成物とに関する。本開示はまた、産業的なGMPに準拠する形で、RNAリポプレックス粒子を調製することを可能とする方法にも関する。さらに、本開示は、製品の品質の実質的な喪失を伴わずに、特に、RNA活性の実質的な喪失を伴わずに、RNAリポプレックス粒子を保管するための方法および組成物に関する。本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子製剤は、液体の保管と比較して、製品の貯蔵寿命の延長を得ることを可能とする、凍結乾燥、噴霧乾燥、または関連する方法により凍結または脱水させることができる。一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質など、目的のペプチドまたはタンパク質をコードするmRNAなどの一本鎖RNAを含む。RNAは、標的組織の細胞により取り込まれ、RNAは、その生理的活性を呈示しうる、コードされたペプチドまたはタンパク質へと翻訳される。目的のペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数のエピトープに対して方向付けられた免疫応答を誘導または増強するための、1つまたは複数のエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質でありうる。本明細書で記載される方法および組成物は、医薬品についての要件に準拠する、より具体的には、GMPに則った製造についての要件、および非経口適用のための、医薬品の品質についての要件に準拠する形での使用に適する。
【背景技術】
【0002】
外来の遺伝情報の、標的細胞への送達のための、RNAの使用は、DNAに対する、魅力的な代替物を提供する。RNAを使用することの利点は、一過性発現および非形質転換的性格を含む。RNAは、発現させるために、核に侵入し、さらに、宿主ゲノムに組み込まれる必要がなく、これにより、発がん性の危険性がなくなる。
【0003】
RNAは、RNAを、カチオン性脂質と、ヘルパー脂質との混合物から構成される、リポソームへと結合させて、注射用ナノ粒子製剤を形成する、いわゆるリポプレックス製剤により送達することができる。しかし、製剤を保管した後であってもなお、生物学的に活性のRNAを、標的組織へと送達するための製剤を開発する必要は、満たされていない。加えて、貯蔵寿命が長い、GMPに準拠する注射用RNAリポプレックス粒子製剤を製造するための方法を開発する必要も、満たされていない。
【0004】
したがって、生物学的に活性のRNAを、標的組織へと送達するための製剤であって、送達されたRNAが、それがコードするペプチドまたはタンパク質へと、効率的に翻訳される製剤を提供することが必要とされている。さらに、製品の品質の実質的な喪失を伴わずに、特に、RNAの生物活性の実質的な喪失を伴わずに常温保存可能な製剤を提供することが必要とされている。
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子製剤が、上記で言及された要件を満たすことを見出した。
【発明の概要】
【0006】
I.RNAリポプレックス粒子を調製するための方法、RNAリポプレックス粒子、およびRNAリポプレックス粒子を含む組成物
第1の態様では、本開示は、生物活性が改善されたRNAリポプレックス粒子を調製するための方法、本開示に従い調製されたRNAリポプレックス粒子、およびこのようなRNAリポプレックス粒子を含む組成物に関する。RNAリポプレックス粒子、およびRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、非経口投与の後、特に、静脈内投与の後における、RNAの、標的組織への送達に有用である。RNAリポプレックス粒子は、エタノール中の脂質の濃度が高濃度の溶液を、水または適切な水性相へと注入することにより得られるリポソームを使用して調製される。一実施態様では、RNAリポプレックス製品は、約1nm-1における単一のブラッグピークが観察され、ピーク幅が0.2nm-1より小さい、x線散乱における特異的パターンにより特徴づけられる。
【0007】
一実施態様では、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。脂質混合物中のDOPEの濃度は、エタノール単独中のDOPEの平衡溶解度より高い。室温では、DOPE単独は、約50mMの溶解度を有するが、DOTMAと併せると、100mMまたはこれを超える溶解度を有する。そこから高活性のリポプレックスを得る、リポソームを形成するための脂質溶液は、270mMまたはこれを上回る総脂質濃度(例えば、90mMまたはこれを上回る濃度のDOPE)を有しうる。温度を上昇させることにより、エタノール中の濃度がなおより高い溶液を得ることができる。DOPEの濃度が、平衡溶解度を上回る脂質溶液から得られるリポソームは、DOPEの濃度が、平衡溶解度以下である脂質溶液に由来するリポソームより、著明に大型である。リポソームサイズは、エタノール中の濃度と共に、単調に増大する。
【0008】
本開示に従い調製されるリポソームは、リポソームを、RNAと混合することにより、RNAリポプレックス粒子を調製するために使用することができる。一実施態様では、RNAを、リポプレックスの活性を増大させるために要求される、ある特定のイオン強度を調整するために、混合の前に、NaClと共にインキュベートする。これらの大型のリポソームから形成されるリポプレックスは、インビトロおよびインビボにおける実験により裏付けられる通り、著明に高度の生物活性を有する。これらの高活性のリポプレックスは、明らかに、ある特定の物理化学的パラメータ、例えば、(i)ブラッグピークの低ピーク幅、および(ii)場流動分画のような、サイズ測定のための分散的解析法における、異なる分離プロファイルにより、低活性のリポプレックスから弁別することができる。低活性のリポプレックスは、平均して、小型である。加えて、低活性のリポプレックスはまた、分子コンフォメーション、形状、およびバルク相との相互作用のようなパラメータと、おそらく関連する、異なる溶出プロファイルも有する。
【0009】
したがって、この態様では、本開示は、リポソームコロイドを作製する方法であって、エタノール中の脂質溶液を、水性相へと注入して、リポソームコロイドを作製することを含み、脂質溶液中の脂質のうちの少なくとも1つの濃度が、エタノール中の少なくとも1つの脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い方法に関する。
【0010】
一実施態様では、方法は、脂質溶液を加熱して、脂質溶液中の、脂質の濃度を上昇させることを含む。一実施態様では、脂質溶液を、少なくとも約40℃、または少なくとも約60℃の温度へと加熱する。
【0011】
一実施態様では、脂質溶液は、2つまたはこれを超える、異なる脂質の混合物の溶液である。
【0012】
一実施態様では、脂質溶液中の1つの脂質の濃度は、エタノール中の脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い。
【0013】
一実施態様では、脂質溶液中の総脂質濃度は、約180mM~約600mM、約300mM~約600mM、または約330mMである。
【0014】
一実施態様では、脂質溶液は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0015】
一実施態様では、脂質溶液中のさらなる脂質の濃度は、エタノール中のさらなる脂質の平衡溶解度に対応するか、またはこれより高い。
【0016】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0017】
一実施態様では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。
【0018】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0019】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である。
【0020】
一実施態様では、脂質溶液は、DOTMAと、DOPEとを、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含む。
【0021】
一実施態様では、脂質溶液中のDOPEの濃度は、少なくとも約60mM、または少なくとも約90mMである。
【0022】
一実施態様では、脂質溶液は、約50rpm~約150rpmの、水性相の攪拌速度で、水性相へと注入される。
【0023】
一実施態様では、水性相は、水である。
【0024】
一実施態様では、水性相は、酸性のpHを有する。一実施態様では、水性相は、例えば、約5mMの量の酢酸を含む。
【0025】
一実施態様では、方法は、リポソームコロイドを攪拌することをさらに含む。
【0026】
一実施態様では、リポソームコロイドは、約15分間~約60分間、または約30分間攪拌される。
【0027】
本開示は、リポソームコロイドを作製する方法であって、DOTMAと、DOPEとを、エタノール中に、約2:1のモル比で含む脂質溶液を、約150rpmの攪拌速度で攪拌される水へと注入して、リポソームコロイドを作製することを含み、脂質溶液中のDOTMAおよびDOPEの濃度が、約330mMである方法にさらに関する。
【0028】
一実施態様では、リポソームを作製する方法は、リポソームを押し出す工程を含まない。
【0029】
本開示は、リポソームを作製する方法により得られるリポソームコロイドにさらに関する。
【0030】
一実施態様では、リポソームは、少なくとも約250nmの平均直径を有する。
【0031】
一実施態様では、リポソームは、約250nm~約800nmの範囲の平均直径を有する。
【0032】
一実施態様では、リポソームは、約0.5より小さいか、約0.4より小さいか、または約0.3より小さい多分散指数を有する。
【0033】
一実施態様では、リポソームは、カチオン性リポソームである。
【0034】
一実施態様では、リポソームは、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0035】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0036】
一実施態様では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。
【0037】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0038】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である。
【0039】
一実施態様では、リポソームは、DOTMAと、DOPEとを、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含む。
【0040】
本開示は、RNAリポプレックス粒子を調製する方法であって、上記のリポソームコロイドを、RNAを含む溶液へと添加することを含む方法にさらに関する。
【0041】
一実施態様では、X線散乱パターンにおいて、RNAリポプレックスは、約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅は、0.2nm-1より小さい。
【0042】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。
【0043】
本開示は、上記で記載した通りに得られる、RNAリポプレックス粒子を含む組成物にさらに関する。
【0044】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0045】
一実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比は、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である。
【0046】
本開示は、
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0であり、
約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅が、0.2nm-1より小さい、RNAリポプレックス粒子
を含む組成物にさらに関する。
【0047】
一実施態様では、組成物は、約10mM~約300mM、約45mM~約300mM、約10mM~約50mM、または約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを、さらに含む。
【0048】
一実施態様では、組成物は、バッファーをさらに含む。
【0049】
一実施態様では、組成物は、キレート剤をさらに含む。
【0050】
一実施態様では、この態様のI.の下に記載されるRNAリポプレックス粒子は、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。
【0051】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約0.5より小さいか、約0.4より小さいか、または約0.3より小さい多分散指数を有する。
【0052】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0053】
一実施態様では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。
【0054】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0055】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である。
【0056】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子が、DOTMAおよびDOPEを、約10:0~1:9、約4:1~1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含み、DOTMA内の正の電荷の、RNA内の負の電荷に対する電荷比は、約1:2~1.9:2である。
【0057】
一実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0058】
一実施態様では、EDTAは、約0.25mM~約5mM、または約2.5mMの濃度である。
【0059】
一実施態様では、組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0060】
一実施態様では、組成物は、全身投与のために製剤化される。
【0061】
一実施態様では、全身投与は、静脈内投与による。
【0062】
本開示は、治療的使用のために記載される組成物にさらに関する。
【0063】
II.産業的なGMPに準拠する形で、RNAリポプレックス粒子を調製するための方法
第2の態様では、本開示は、産業的なGMPに準拠する形で、RNAリポプレックス粒子を調製することを可能とする方法に関する。
【0064】
本開示の一実施態様では、生成物の品質に重要な、RNAの、リポソームに対する混合比の正確な制御を可能とする流路システムを、医薬用RNAリポプレックス粒子生成物のGMPに則った製造のために使用する。一実施態様では、流路は、リポソーム溶液と、RNA溶液とを、1対1(体積/体積)の形で混合することを含み、この場合、成分の濃度は、目的の電荷比を正確に維持するために選択される。一実施態様では、RNAを、リポプレックスの活性に要求される、ある特定のイオン強度を調整するために、混合の前に、NaClと共にインキュベートする。一実施態様では、単一の使用材料に完全に基づく、Y字型混合の設定を実現する。粒子特性を維持し、目詰まりを回避するように、流体力学を最適化する。これに対し、市販のマイクロ流体デバイスを使用する場合、ある程度の時間の後に、目詰まりが生じ、GMPに向けた適用が不可能となる。
【0065】
一実施態様では、リポプレックスは、RNAを、カチオン性リポソームと共にインキュベートすることにより製造され、この場合、混合比および混合条件は、1つがリポソームを含み、1つがRNAを含む、2つのシリンジが、シリンジポンプ内の、同じポンプへと、優先的に、並列に挿入されるシリンジポンプ(灌流ポンプ)を使用することにより、正確に制御される。両方の(poth)ポンプのピストンは、同じ駆動器により、前方に動かされるので、混合される相対体積が、正確に制御される。選択される処理条件では、同一なシリンジを、両方の溶液に使用するので、正確な1対1(v/v)の混合条件が可能となる。次いで、混合の前に、2つの溶液の濃度を調整することにより、RNAと、リポソーム(カチオン性脂質)との比を、正確に制御する。
【0066】
したがって、この態様では、本開示は、RNAリポプレックス粒子の連続フロー製造のための方法であって、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液とを、RNAおよびカチオン性リポソームの制御された混合条件下で混合することを含む方法に関する。
【0067】
一実施態様では、カチオン性リポソームを含む溶液は、上記で記載したリポソームコロイドである。
【0068】
一実施態様では、RNAを含む溶液およびカチオン性リポソームを含む溶液は、水溶液である。
【0069】
一実施態様では、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との混合を可能とする流速が使用される。
【0070】
一実施態様では、流動は、300を超えるか、または約500~約2100のレイノルズ数により特徴づけられる。
【0071】
一実施態様では、制御された混合条件は、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との混合比を制御することを含む。
【0072】
一実施態様では、制御された混合条件は、混合される、RNAを含む溶液と、カチオン性リポソームを含む溶液との相対体積を制御することを含む。
【0073】
一実施態様では、RNAと、カチオン性リポソームとの混合比は、RNAを含む溶液およびカチオン性リポソームを含む溶液の同一の混合体積(v/v)を使用し、それぞれの溶液中のRNAおよびカチオン性リポソームの濃度を調整することにより制御される。
【0074】
一実施態様では、制御された混合条件は、目詰まりを回避しながら、RNAリポプレックス粒子の特性を維持するように選択される。
【0075】
一実施態様では、方法は、Y字型混合要素またはT字型混合要素を使用することを含む。
【0076】
一実施態様では、Y字型混合要素またはT字型混合要素は、約1.2mm~約50mmの直径を有する。
【0077】
一実施態様では、方法は、例えば、Y字型混合要素またはT字型混合要素、2本のチューブまたはホースからの流体が合流し、例えば、分岐および再混合、互い違いのヘリングボーン型チャネル、ジグザグ型チャネル、もしくはツイスト型チャネル、または三次元蛇行路としての内的静態的混合要素は、存在しない混合要素を使用することを含む。混合要素は、1.2~50.0mmの間の直径を有しうる。
【0078】
一実施態様では、方法は、1つがカチオン性リポソームを含む溶液を含み、1つがRNAを含む溶液を含む、2つのシリンジが、同じホルダーまたは2つのホルダーへと、並列に挿入され、デバイスのピストンが、1つまたは2つの精密アクチュエーターにより引き出されるデバイスを使用することを含む。一実施態様では、方法は、1つがカチオン性リポソームを含む溶液を含み、1つがRNAを含む溶液を含む、2つのシリンジが、同じポンプへと、並列に挿入されたシリンジポンプを使用することを含む。
【0079】
一実施態様では、方法は、加圧容器、膜ポンプ、ギアポンプ、磁気浮揚ポンプ、蠕動ポンプ、HPLC/FPLCポンプ、または他の任意のピストンポンプを、任意選択で、流速のオンライン制御およびリアルタイム調整のためのフィードバックループを伴う流速センサーと、任意選択で組み合わせて使用することを含む。
【0080】
一実施態様では、RNAを含む溶液と、リポソームを含む溶液との混合物は、約45mM~約300mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または約45mM~約300mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む。
【0081】
一実施態様では、RNA溶液は、約90mM~約600mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または約90mM~約600mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む。
【0082】
一実施態様では、RNAを含む溶液と、リポソームを含む溶液との混合物は、少なくとも約50mMのイオン強度を有する。
【0083】
一実施態様では、X線散乱パターンにおいて、RNAリポプレックスは、約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅は、0.2nm-1より小さい。
【0084】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。
【0085】
本開示は、上記で記載した通りに得られる、RNAリポプレックス粒子を含む組成物にさらに関する。
【0086】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0087】
一実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比は、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である。
【0088】
本開示は、
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0であり、
約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅が、0.2nm-1より小さい、RNAリポプレックス粒子
を含む組成物にさらに関する。
【0089】
一実施態様では、組成物は、約10~約300mM、約45mM~約300mM、約10mM~約50mM、または約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを、さらに含む。
【0090】
一実施態様では、組成物は、バッファーをさらに含む。
【0091】
一実施態様では、組成物は、キレート剤をさらに含む。
【0092】
一実施態様では、この態様のII.の下に記載されるRNAリポプレックス粒子は、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。
【0093】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約0.5より小さいか、約0.4より小さいか、または約0.3より小さい多分散指数を有する。
【0094】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0095】
一実施態様では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。
【0096】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0097】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である。
【0098】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子が、DOTMAおよびDOPEを、約10:0~1:9、約4:1~1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含み、DOTMA内の正の電荷の、RNA内の負の電荷に対する電荷比は、約1:2~1.9:2である。
【0099】
一実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0100】
一実施態様では、EDTAは、約0.25mM~約5mM、または約2.5mMの濃度である。
【0101】
一実施態様では、組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0102】
一実施態様では、組成物は、全身投与のために製剤化される。
【0103】
一実施態様では、全身投与は、静脈内投与による。
【0104】
本開示は、治療的使用のために記載される組成物にさらに関する。
【0105】
III.RNAリポプレックス粒子を保管するための方法および組成物
第3の態様では、本開示は、製品の品質の実質的な喪失を伴わずに、特に、RNA活性の実質的な喪失を伴わずに、RNAリポプレックス粒子を保管するための方法および組成物に関する。特に、本開示は、RNAリポプレックス粒子の品質の実質的な喪失を伴わずに、特に、RNA活性の実質的な喪失を伴わずに、RNAリポプレックス粒子の凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥を可能とする製剤に関する。
【0106】
本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子製剤は、液体の保管と比較して、製品の貯蔵寿命の延長を得ることを可能とする、凍結乾燥、噴霧乾燥、または関連する方法により凍結または脱水させることができる。
【0107】
凍結を可能とするために、安定剤(低温保護剤)を添加する。一実施態様では、製造の後で、リポプレックスを、安定剤(低温保護剤)で希釈し、これにより、イオン強度を調整し、優先的には、イオン強度を低減することを可能とし、安定剤の適切な濃度を調整する。生成物を凍結させるためには、安定剤の濃度は、生理的オスモル濃度を得るための値より高い場合がある。この場合、投与のためには、所望のオスモル濃度およびイオン強度を調整するために、製品を、適切な水性相(例えば、注射用水、生理食塩水)で希釈する。安定剤として、グルコース、ショ糖、またはトレハロースのような糖類を使用しうるが、また、デキストランのような、他の化合物も使用しうる。
【0108】
驚くべきことに、本開示に従い、本明細書で記載される、安定剤を含むRNAリポプレックス製剤はまた、凍結乾燥させることもできることが見出されている。凍結乾燥のために、要求される安定剤(凍結乾燥保護剤)の濃度は、凍結させるより低い可能性があり、許容されるNaCl濃度(イオン強度)も、凍結させるより高い可能性がある。大スケールにおける、費用節減的脱水が要求される場合、生成物はまた、噴霧乾燥させることもできる。
【0109】
RNAリポプレックス製剤のうちの一部のpHは、通例の生理的範囲およびバルク相におけるRNA保管のための、通常のpHの最適値より低い値に調整する。最適値のpHは、約6.2であり、適切な範囲は、約5.7~約6.7の間である。他の製剤では、理想的なpHは、なお低い場合がある。RNAリポプレックス内部の局所pHは、カチオン性脂質の正電荷に起因して、バルク相pHより高いことが仮定される。
【0110】
RNAリポプレックス組成物を、保管のために凍結させる、本開示の実施態様では、組成物を、融解させることができ、任意選択で、水性液体を添加することにより、組成物の、オスモル濃度、イオン強度、および/またはpHを、調整することができる。結果として得られる組成物は、対象へと投与されうる。
【0111】
RNAリポプレックス組成物を、保管のために凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)させる、本開示の実施態様では、水性液体を添加することにより、組成物を、再構成することができ、任意選択で、水性液体を添加することにより、組成物の、オスモル濃度、イオン強度、および/またはpHを、調整することができる。結果として得られる組成物は、対象へと投与されうる。
【0112】
したがって、この態様では、本開示は、RNAリポプレックス粒子を含む凍結組成物を調製する方法であって、(i)RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することと、(ii)組成物を凍結させることとを含む方法に関する。
【0113】
一実施態様では、凍結させることは、約-15℃~約-40℃、または約-30℃の温度である。
【0114】
一実施態様では、組成物は、例えば、約-15℃~約-40℃、または約-20℃の保管温度で保管される。
【0115】
一実施態様では、安定剤は、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である。
【0116】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することは、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を用意することと、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することとを含む。したがって、凍結させるための組成物を調製する方法は、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を用意することと、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することとを含む。
【0117】
一実施態様では、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することは、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物のイオン強度を低減する。
【0118】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、生理的オスモル濃度に要求される値より高い。
【0119】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、RNAリポプレックス粒子の品質を維持し、特に、約-15℃~約-40℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間、組成物の保管の後で、RNA活性の実質的な喪失を回避するのに十分である。
【0120】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、約5%~約35.0%(w/v)、約10%~約30.0%(w/v)、約12.5%~約25.0%(w/v)、または約22.0%(w/v)である。
【0121】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中のpHは、RNAを保管するための、通常のpH最適値より低い。
【0122】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物は、約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または、約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む。
【0123】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物は、約20mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を有する。
【0124】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、上記のI.およびII.の下に記載した方法により得られる。
【0125】
一実施態様では、凍結組成物を調製する方法は、RNAリポプレックス粒子を含む凍結組成物を保管することをさらに含む。組成物は、凍結温度に対応するか、またはこれに本質的に対応する温度で保管することもでき、凍結温度より高温または低温で保管することもできる。一般に、組成物は、約-15℃~約-40℃、例えば、約-20℃の温度で保管される。
【0126】
本開示は、上記の凍結組成物を調製する方法により得られるRNAリポプレックス粒子を含む組成物にさらに関する。本開示はまた、凍結させるための組成物を調製する、上記の方法により得られるRNAリポプレックス粒子を含む組成物にも関する。
【0127】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0128】
一実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比は、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である。
【0129】
一実施態様では、組成物は、約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムをさらに含む。
【0130】
本開示は、
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と、
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
0mM~約40mMの濃度の塩化ナトリウムと、
安定剤と
を含む組成物にさらに関する。
【0131】
一実施態様では、組成物は、バッファーをさらに含む。
【0132】
一実施態様では、組成物中のRNAの量は、約0.01mg/mL~約1mg/mL、約0.05mg/mL~約0.5mg/mL、または約0.05mg/mLである。
【0133】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約20mM~約30mMの濃度である。
【0134】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約20mMの濃度である。
【0135】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約30mMの濃度である。
【0136】
一実施態様では、組成物中の安定剤の濃度は、生理的オスモル濃度に要求される値より高い。
【0137】
一実施態様では、組成物中の安定剤の濃度は、約5~約35重量/体積パーセント(%w/v)、または約12.5~約25重量/体積パーセント(%w/v)である。
【0138】
一実施態様では、安定剤は、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である。
【0139】
一実施態様では、安定剤は、約5~約25重量/体積パーセント(%w/v)の濃度のショ糖である。
【0140】
一実施態様では、ショ糖は、約15%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。
【0141】
一実施態様では、ショ糖は、約20%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。
【0142】
一実施態様では、ショ糖は、約22%(w/v)の濃度である。
【0143】
一実施態様では、ショ糖は、約20%(w/v)の濃度である。
【0144】
一実施態様では、組成物は、RNAを保管するための、通常のpH最適値より低いpHを有する。
【0145】
一実施態様では、組成物は、約5.7~約6.7、または約6.2のpHを有する。
【0146】
一実施態様では、バッファーは、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)である。
【0147】
一実施態様では、HEPESは、約2.5mM~約10mM、または約7.5mMの濃度である。
【0148】
一実施態様では、組成物は、キレート剤をさらに含む。
【0149】
本開示は、
約0.05mg/mLの濃度の、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
約2:1のモル比の、DOTMAおよびDOPEと
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
約20mMの濃度の塩化ナトリウムと、
約22%(w/v)の濃度のショ糖と、
pHが約6.2である、約7.5mMの濃度のHEPESと、
約2.5mMの濃度のEDTAと
を含む組成物にさらに関する。
【0150】
一実施態様では、組成物は、液体状態または凍結状態である。
【0151】
一実施態様では、凍結組成物は、約-15℃~約-40℃の温度で、少なくとも1カ月間安定、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間である。
【0152】
一実施態様では、凍結組成物は、約-15℃の温度で、少なくとも1カ月間安定、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間である。
【0153】
一実施態様では、凍結組成物は、約-15℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である。
【0154】
一実施態様では、凍結組成物は、約-20℃の温度で、少なくとも1カ月間安定、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間である。
【0155】
一実施態様では、凍結組成物は、約-20℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である。
【0156】
一実施態様では、凍結組成物は、約-30℃の温度で、少なくとも1カ月間安定、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間である。
【0157】
一実施態様では、凍結組成物は、約-30℃の温度で、少なくとも2カ月間安定である。
【0158】
本開示は、上記の凍結組成物を融解させ、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することにより得られる、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物にさらに関する。
【0159】
一実施態様では、組成物のオスモル濃度は、約200ミリオスモル~約450ミリオスモルである。
【0160】
一実施態様では、組成物は、約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを含む。
【0161】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、上記のI.およびII.の下に記載した方法により得られる。
【0162】
本開示は、脱水、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥させた、RNAリポプレックス粒子を含む組成物を調製する方法であって、(i)RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することと、(ii)組成物を脱水すること、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥することとを含む方法にさらに関する。
【0163】
一実施態様では、安定剤は、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である。
【0164】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物を用意することは、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を用意することと、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することとを含む。したがって、脱水、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥のための組成物を調製する方法は、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を用意することと、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することとを含む。
【0165】
一実施態様では、安定剤を、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物へと添加することは、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物のイオン強度を低減する。
【0166】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子と、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、生理的オスモル濃度に要求される値より高い。
【0167】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、RNAリポプレックス粒子の品質を維持し、特に、少なくとも1カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間、組成物の保管の後で、RNA活性の実質的な喪失を回避するのに十分である。
【0168】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中の、安定剤の濃度は、約5%~約35.0%(w/v)、約10%~約30.0%(w/v)、約12.5%~約25.0%(w/v)、または約22.0%(w/v)である。
【0169】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物中のpHは、RNAを保管するための、通常のpH最適値より低い。
【0170】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物は、約10mM~約80mMもしくは約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムを含むか、または約10mM~約80mMもしくは約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を含む。
【0171】
一実施態様では、RNAリポプレックスと、安定剤とを含む水性組成物は、約20mM、約40mM、約60mM、または約80mMの濃度の塩化ナトリウムに対応するイオン強度を有する。
【0172】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、上記のI.およびII.の下に記載した方法により得られる。
【0173】
一実施態様では、脱水組成物、例えば、凍結乾燥組成物または噴霧乾燥組成物を調製する方法は、凍結乾燥または噴霧乾燥させたRNAリポプレックス粒子を含む組成物を保管することをさらに含む。一般に、組成物は、約-15℃~約-40℃、例えば、約-20℃の温度で保管される。ある特定の実施態様では、組成物は、0℃より高温で、例えば、約25℃もしくは約4℃で、または、例えば、室温で保管される。
【0174】
本開示は、上記の脱水組成物、例えば、凍結乾燥組成物または噴霧乾燥組成物を調製する方法により得られる、RNAリポプレックス粒子を含む組成物にさらに関する。本開示はまた、脱水、例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥のための組成物を調製する、上記の方法により得られる、RNAリポプレックス粒子を含む組成物にも関する。
【0175】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質とを含む。
【0176】
一実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードし、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比は、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である。
【0177】
一実施態様では、組成物は、約10mM~約80mMまたは約10mM~約50mMの濃度の塩化ナトリウムを、さらに含む。
【0178】
本開示は、
少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
少なくとも1つのカチオン性脂質と、少なくとも1つのさらなる脂質と
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1:2~約1.9:2、または約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
10mM~約80mMの濃度の塩化ナトリウムと、
安定剤と
を含む組成物にさらに関する。
【0179】
一実施態様では、組成物は、バッファーをさらに含む。
【0180】
一実施態様では、組成物中のRNAの量は、約0.01mg/mL~約1mg/mL、約0.05mg/mL~約0.5mg/mL、または約0.05mg/mLである。
【0181】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約20mM~約30mMの濃度である。
【0182】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約20mMの濃度である。
【0183】
一実施態様では、塩化ナトリウムは、約30mMの濃度である。
【0184】
一実施態様では、組成物中の安定剤の濃度は、生理的オスモル濃度に要求される値より高い。
【0185】
一実施態様では、組成物中の安定剤の濃度は、約5~約35重量/体積パーセント(%w/v)、または約10~約25重量/体積パーセント(%w/v)である。
【0186】
一実施態様では、安定剤は、単糖、二糖類、三糖類、糖アルコール、オリゴ糖またはその対応する糖アルコール、および直鎖ポリアルコールから選択される炭水化物である。
【0187】
一実施態様では、安定剤は、約5~約35重量/体積パーセント(%w/v)の濃度のトレハロースである。
【0188】
一実施態様では、トレハロースは、約5%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。
【0189】
一実施態様では、トレハロースは、約10%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。
【0190】
一実施態様では、トレハロースは、約10%(w/v)の濃度である。
【0191】
一実施態様では、トレハロースは、約15%(w/v)の濃度である。
【0192】
一実施態様では、組成物は、RNAを保管するための、通常のpH最適値より低いpHを有する。
【0193】
一実施態様では、組成物は、約5.7~約6.7、または約6.2のpHを有する。
【0194】
一実施態様では、バッファーは、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)である。
【0195】
一実施態様では、HEPESは、約2.5mM~約10mM、または約7.5mMの濃度である。
【0196】
一実施態様では、組成物は、キレート剤をさらに含む。
【0197】
本開示は、
約0.05mg/mLの濃度の、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAと、
約2:1のモル比の、DOTMAおよびDOPEと
を含み、
RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する比が、約1.3:2.0である、RNAリポプレックス粒子と、
約20mMの濃度の塩化ナトリウムと、
約10%(w/v)の濃度のトレハロースと、
pHが約6.2である、約7.5mMの濃度のHEPESと、
約2.5mMの濃度のEDTAと
を含む組成物にさらに関する。
【0198】
一実施態様では、組成物は、液体状態、または脱水状態、例えば、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)状態である。
【0199】
一実施態様では、脱水組成物、例えば、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)組成物は、少なくとも1カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも24カ月間、または少なくとも36カ月間安定である。一実施態様では、組成物は、0℃より高温で、例えば、約25℃もしくは約4℃で、または、例えば、室温で保管される。
【0200】
一実施態様では、脱水組成物、例えば、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)組成物は、少なくとも1カ月間安定である。
【0201】
一実施態様では、脱水組成物、例えば、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)組成物は、少なくとも2カ月間安定である。
【0202】
本開示は、上記の脱水組成物、例えば、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)組成物を再構成し、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することにより得られる、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物にさらに関する。
【0203】
一実施態様では、組成物のオスモル濃度は、約150ミリオスモル~約450ミリオスモルである。
【0204】
一実施態様では、組成物は、約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを含む。
【0205】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、上記のI.およびII.の下に記載した方法により得られる。
【0206】
一実施態様では、この態様のIII.の下で記載されるRNAリポプレックス粒子は、約1nm-1における単一のブラッグピークにより特徴づけられ、ここで、ピーク幅は、0.2nm-1より小さい。
【0207】
一実施態様では、この態様のIII.の下で記載されるRNAリポプレックス粒子は、約200~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。
【0208】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約0.5より小さいか、約0.4より小さいか、または約0.3より小さい多分散指数を有する。
【0209】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0210】
一実施態様では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)、および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。
【0211】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0212】
一実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、約3:1~約1:1、または約2:1である。
【0213】
一実施態様では、RNAリポプレックス粒子が、DOTMAおよびDOPEを、約10:0~1:9、約4:1~1:2、約3:1~約1:1、または約2:1のモル比で含み、DOTMA内の正の電荷の、RNA内の負の電荷に対する電荷比は、約1:2~1.9:2である。
【0214】
一実施態様では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0215】
一実施態様では、EDTAは、約0.25mM~約5mM、または約2.5mMの濃度である。
【0216】
一実施態様では、組成物は、アジュバントをさらに含む。
【0217】
一実施態様では、組成物は、全身投与のために製剤化される。
【0218】
一実施態様では、全身投与は、静脈内投与による。
【0219】
本開示は、治療的使用のために記載される組成物にさらに関する。
【0220】
本開示は、RNAリポプレックス粒子を含む水性組成物を調製する方法であって、上記で記載した凍結組成物を融解させるか、または上記で記載した凍結乾燥組成物もしくは噴霧乾燥組成物を再構成することと、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することとを含む方法にさらに関する。
【0221】
一実施態様では、水性液体を添加して、約200ミリオスモル~約450ミリオスモルのオスモル濃度の組成物を得る。
【0222】
一実施態様では、水性液体を添加して、約80mM~約150mMの濃度の塩化ナトリウムを得る。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【
図1】脂質原液中の脂質濃度と、リポソームサイズとの相関を示す図である。リポソームは、水中の、エタノール注入(エタノール注入の後において、濾過法を実施しなかった)により調製した。リポソームのサイズは、エタノール中の脂質の濃度と共に増大する。例:%によるモル比を、66:33とする脂質混合物であるDOTMA/DOPE。
【
図2】異なる濃度の、異なる脂質溶液により調製された、DOTMA/DOPEリポソーム製剤中に存在する粒子の量を示す図である。
【
図3】リポソーム前駆体(使用される、非濾過リポソームコロイド)サイズの、RNAリポプレックスサイズに対する影響を示す図である。小型のリポソームを、それらの形成のために使用したところ、小型のRNAリポプレックスが得られた。全ての大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックス内では、リポソームサイズと、RNAリポプレックスサイズとの明らかな相関が見出されなかった。
【
図4】異なるリポソーム前駆体(非濾過リポソーム)により調製された、RNAリポプレックス製剤内に存在する粒子の量を示す図である。0.5μmの粒子の量は、大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックス製剤内で増大する。リポソームは、異なる脂質濃度で、異なる脂質原液を使用する、エタノール注入により調製した。
【
図5】4/1の電荷比(上)、および1.3/2の電荷比で調製されたリポソームにより形成されたRNAリポプレックスによるSAXS測定から得られた回折曲線であって、リポプレックス形成のためのリポソームが、エタノール中に、400mM、300mM、および100mMの脂質原液により得られた場合の回折曲線を示す図である。
【
図6】異なるリポソーム前駆体により調製された、異なるRNAリポプレックスの、インビトロ(ヒト樹状細胞)における相関長、およびトランスフェクション効率を示す図である。生物活性(インビトロにおけるRNAトランスフェクション)は、RNAリポプレックスの相関長と共に、単調に増大する。リポソームは、エタノール注入と、異なる脂質濃度で調製された、異なる脂質原液とにより調製した。
【
図7】エタノール中に150mMの原液、またはエタノール中に400mMの原液から製造された、2つの異なる種類のリポソームに由来するリポプレックスの、AF4測定を示す図である。
【
図8】樹状細胞内の、異なるRNAリポプレックスの、インビトロにおけるトランスフェクション効率を示す図である。ルシフェラーゼシグナルは、RNAリポプレックスの形成のために使用されるリポソームサイズと共に、単調に増大する。
【
図9】樹状細胞内の、異なるRNAリポプレックスの、インビトロにおけるトランスフェクション効率を示す図である。ルシフェラーゼシグナルは、リポソームサイズと共に、単調に増大する。
【
図10】適用の6時間後における、RNAリポプレックス製剤の、インビボにおけるトランスフェクション効率を示す図である。RNAリポプレックスは、小型および大型のリポソーム(非濾過リポソーム)により調製した。大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスは、高ルシフェラーゼ発現を結果としてもたらす。
【
図11】適用の6時間後における、RNAリポプレックスの、インビボイメージングを示す図である。RNAリポプレックスは、小型および大型のリポソームにより調製した。A)生コロイドに由来する、小型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスを示す図である。B)生コロイドに由来する、大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスを示す図である。C)濾過された、小型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスを示す図である。D)濾過された、大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスを示す図である。大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスにより得られた、高生物発光シグナルである。
【
図12】RNAリポプレックスの、自動式バッチ製造のための一般的手順を示す図である。
【
図13】異なる流速で、内径を3.2mmとする、Y字型混合要素を使用して調製される、RNAリポプレックスのZ平均および多分散性を示す図である。
【
図14】異なる流速で、内径を2.4mmとする、Y字型混合要素を使用して調製される、RNAリポプレックスのZ平均および多分散性を示す図である。
【
図15】リポプレックス形成時における、粒子サイズと、RNA濃度との相関を示す図である。PCSの測定は、凍結させる前に実施した。
【
図16】3凍結融解サイクル後の、リポプレックス形成時における、粒子特性と、RNA濃度との相関を示す図である。
【
図17】粒子特性と、1.0:2.0~2.1:2.0の範囲の電荷比(正:負)との相関を示す図である。
【
図18】粒子特性と、2.0:1.0~5.0:1.0の範囲の電荷比(正:負)との相関を示す図である。
【
図19】リポプレックス形成時における、粒子特性と、NaCl濃度との相関を示す図である。
【
図20】リポプレックス形成時における、生物活性と、NaCl濃度との相関を示す図である。
【
図21】+40℃における加速保管の後における、いくつかのpH値の、異なるバッファー物質(HEPES;酢酸Na;リン酸Na;炭酸Na)を使用する、低温保護剤を伴わずにRNA
(LIP)組成物中の、RNAの完全性の測定を示す図である。異なるバーは、左(3日間)から、右(21日間)へと、保管期間の増大を指し示す。
【
図22】+40℃における加速保管の後における、いくつかのpH値の、バッファー物質としてのHEPESを使用する、低温保護剤としてのショ糖を伴うRNAリポプレックス製剤中の、RNAの完全性の測定を示す図である。異なるバーは、左(1日間)から、右(21日間)へと、保管期間の増大を指し示す。
【
図23】40℃で保管された、EDTAの含有量が異なるリポプレックス中の、RNAの完全性を示す図である。
【
図24】NaClおよび低温保護剤の濃度を、各工程において最適化したことを指し示す概略図である。
【
図25】量を増大させる、代替的低温保護剤の存在下で凍結させた、RNAリポプレックスの、Z平均および多分散性を示す図である。
【
図26】量を増大させる、代替的低温保護剤の存在下で凍結させた、RNAリポプレックス製剤中の、≧10μmの、目視できない粒子の数を示す図である。
【
図27】-30℃での凍結の前および後における、5~20%w/vのショ糖(X軸)と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図28】-30℃での凍結の前および後における、5~20%w/vのトレハロース二水和物(x軸)と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図29】複数の凍結融解サイクルの後における、50mMのNaClと、多様な量(%w:v)のトレハロース二水和物とを含有するRNAリポプレックス製剤中の、粒子サイズの測定を示す図である。
【
図30】複数の凍結融解サイクルの後における、70mMのNaClと、多様な量(%w/v)のトレハロース二水和物とを含有するRNAリポプレックス製剤中の、粒子サイズの測定を示す図である。
【
図31】複数の凍結融解サイクルの後における、90mMのNaClと、多様な量(%w/v)のトレハロース二水和物とを含有するRNAリポプレックス製剤中の、粒子サイズの測定を示す図である。
【
図32】-15℃で、8カ月間にわたる保管の後における、5~20%w/vのショ糖と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。異なるバーは、左(0カ月間)から、右(8カ月間)へと、保管期間の増大を指し示す。8本未満のバーを伴う、ショ糖/NaClの組合せでは、粒子サイズが、2つの後続の時点において、仕様を超えたので、解析を中止した。
【
図33】-30℃で、8カ月間にわたる保管の後における、5~20%w/vのショ糖と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。異なるバーは、左(0カ月間)から、右(8カ月間)へと、保管期間の増大を指し示す。8本未満のバーを伴う、ショ糖/NaClの組合せでは、粒子サイズが、2つの後続の時点において、仕様を超えたので、解析を中止した。
【
図34】-15℃で、8カ月間にわたる保管の後における、5~20%w/vのトレハロース二水和物と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。異なるバーは、左(0カ月間)から、右(8カ月間)へと、保管期間の増大を指し示す。8本未満のバーを伴う、トレハロース/NaClの組合せでは、粒子サイズが、2つの後続の時点において、仕様を超えたので、解析を中止した。
【
図35】-30℃で、8カ月間にわたる保管の後における、5~20%w/vのトレハロース二水和物と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。異なるバーは、左(0カ月間)から、右(8カ月間)へと、保管期間の増大を指し示す。8本未満のバーを伴う、トレハロース/NaClの組合せでは、粒子サイズが、2つの後続の時点において、仕様を超えたので、解析を中止した。
【
図36】-20℃での保管の後における、22%w/vのショ糖と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図37】-20℃での保管の後における、22%w/vのトレハロース二水和物と、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図38】-20℃での保管の後における、22%w/vのグルコースと、多様な低NaCl濃度とを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図39】-15~-40℃で、凍結させ、保管される、22%w/vのグルコースと、20mMのNaClとを含有する、RNAリポプレックス製剤中の粒子サイズの測定を示す図である。
【
図40】表10に列挙される低温保護剤の組合せを含有する組成物中で凍結させた、RNAリポプレックスの、-20℃での保管の後における、粒子サイズの測定を示す図である。
【
図41】凍結融解の後、または凍結乾燥および再構成の後における、RNAリポプレックス製剤[RNA(lip)]製剤中の、トレハロース濃度の効果を示す図である。
【
図42】22%のトレハロース中で調製された、凍結乾燥RNA(lip)製剤中の、0.9%のNaCl溶液またはWFI(注射用水)による再構成の後における、粒子サイズの変化を示す図である。
【
図43】22%のトレハロース中、異なるNaCl濃度で調製された、凍結乾燥RNAリポプレックス製剤[RNA(lip)]の、インビトロにおける、luc-RNAトランスフェクションを示す図である。凍結乾燥試料は、0.9%のNaCl溶液により再構成した(縞柄カラム:液体コントロール)。
【
図44】異なるトレハロース/NaCl比で製剤化され、2~8℃または25℃で保管された、凍結乾燥RNAリポプレックス製剤[RNA(lip)]の、0.9%のNaCl溶液による再構成の後における、Z平均直径を示す図である。製剤は、凍結乾燥の後、元の体積で再構成した。
【
図45】異なるトレハロース/NaCl比で製剤化され、2~8℃または25℃で保管された、凍結乾燥RNA(lip)の、0.9%のNaCl溶液による再構成の後における、RNAの完全性(完全長RNA%)を示す図である。製剤は、凍結乾燥の後、元の体積で再構成し、細胞培養実験のために、0.9%のNaCl溶液で、1:1に希釈した(0.01mg/mLのRNA)。
【発明を実施するための形態】
【0224】
本開示について、下記で詳細に記載するが、本開示は、それらは、変動しうるので、本明細書で記載される、特定の方法、プロトコール、および試薬に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語法は、特定の実施態様について記載することだけを目的とするものであり、付属の特許請求の範囲だけにより限定される、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。別途規定がない限り、本明細書で使用される、全ての技術用語および科学用語は、当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0225】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms(IUPAC Recommendations)」、H.G.W.Leuenberger、B.Nagel、およびH.Kolbl編、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland(1995)において記載されている通りに規定される。
【0226】
本開示の実施では、別途指示がない限り、化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA法の従来の方法が援用され、これらについては、当技術分野の文献において説明されている(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、2版、J.Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1989を参照されたい)。
【0227】
以下では、本開示の要素について記載する。これらの要素を、具体的な実施態様と共に列挙するが、それらを、任意の形および任意の数で組み合わせて、さらなる実施態様を創出しうることを理解されたい。様々に記載される例および実施態様は、本開示を、明示的に記載された実施態様だけに限定するようには解釈されないものとする。この記載は、明示的に記載された実施態様を、任意の数の、開示された要素と組み合わせる実施態様を開示し、包摂するように理解されるものとする。さらに、記載される全ての要素の、任意の順列および組合せは、文脈により別途指示がない限り、この記載により開示されると考えられるものとする。
【0228】
「約」という用語は、「およそ」または「ほぼ」を意味し、本明細書で明示される数値または範囲の文脈における、一実施態様では、列挙されるかまたは主張される数値または範囲の±20%、±10%、±5%、または±3%を意味する。
【0229】
「ある(a)」および「ある(an)」および「その」という用語、ならびに本開示について記載する文脈で(とりわけ、特許請求の範囲の文脈で)使用される類似の言及は、本明細書で別途指示がないか、または文脈により明確に否定されない限り、単数および複数の両方を対象とするように解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に収まる各個別の値に、個々に言及することの縮約法として用いられることだけを意図するものである。本明細書で別途指示がない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙された場合と同様に、本明細書へと組み込まれる。本明細書で別途指示がないか、または文脈により明確に否定されない限り、本明細書で記載される全ての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提示される、任意の例および全ての例、または例示のための表現(例えば、「など」)の使用は、本開示をよりよく例示することだけを意図するものであり、特許請求の範囲に、限定を施すものではない。本明細書におけるいかなる表現も、本開示の実施に不可欠な、任意の、特許請求されていない要素を指し示すとは解釈されないものとする。
【0230】
別途明示的な指示がない限り、「~を含むこと」という用語は、本文献の文脈では、「~を含むこと」により導入されるリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーも、任意選択で存在しうることを指し示すのに使用される。しかし、本開示の具体的実施態様として、「~を含むこと」という用語が、さらなるメンバーが存在しない可能性も包摂することも想定される、すなわち、この実施態様の目的では、「~を含むこと」とは、「~からなること」の意味を有すると理解されるものとする。
【0231】
いくつかの文献は、本明細書の本文を通して引用される。本明細書で引用される文献の各々(全ての特許、特許出願、学術刊行物、製造元の仕様、指示書などを含む)は、上記の引用であれ、下記の引用であれ、参照によりそれらの全体において組み込まれる。本明細書におけるいかなる事柄も、本開示が、このような開示に先行する権利が与えられていないことの容認として解釈されないものとする。
【0232】
定義
以下では、本開示の全ての態様に当てはまる定義を提示する。別途指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有する。任意の、規定されていない用語は、当該技術分野で認知された、それらの意味を有する。
【0233】
本明細書で使用される「~を低減する」または「~を阻害する」などの用語は、例えば、約5%もしくはこれを超える、約10%もしくはこれを超える、約20%もしくはこれを超える、約50%もしくはこれを超える、または約75%もしくはこれを超えるレベルの全体的な低下を引き起こす能力を意味する。「~を阻害する」という用語または同様の語句は、完全または本質的に完全な阻害、すなわち、ゼロまたは本質的にゼロへの低減を含む。
【0234】
一実施態様では、「~を増大させる」または「~を増強する」などの用語は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、または少なくとも約100%の増大または増強に関する。
【0235】
本明細書で使用される「生理的pH」とは、約7.5のpHを指す。
【0236】
本開示で使用される「%w/v」とは、ミリリットル(mL)単位の溶液の総体積に対するパーセントとして表される、グラム(g)単位の溶質の量を測定する、濃度の単位である、重量/体積パーセントを指す。
【0237】
「イオン強度」という用語は、異なる種類のイオン性分子種の数の間の数学的関係、特に、溶液と、それらのそれぞれの電荷との数学的関係を指す。したがって、イオン強度Iは、式
[式中、cは、特定のイオン性分子種のモル濃度であり、zは、その電荷の絶対値である。総和Σは、溶液中の、全ての異なる種類のイオン(i)について取る]により、数学的に表される。
【0238】
一実施態様では、本開示に従う、「イオン強度」という用語は、一価イオンの存在に関する。一実施態様では、二価イオン、特に、二価カチオンの存在に関して、キレート剤の存在のために、それらの濃度または有効濃度(遊離イオンの存在)は、RNAの分解を防止するのに、十分に低い。一実施態様では、二価イオンの濃度または有効濃度は、RNAヌクレオチドの間の、ホスホジエステル結合の、加水分解のための触媒レベルを下回る。一実施態様では、遊離二価イオンの濃度は、20μMまたはこれ未満である。一実施態様では、遊離二価イオンが存在しないか、または本質的に存在しない。
【0239】
「オスモル濃度」とは、溶媒1キログラム当たりの溶質のオスモル数として表される、特定の溶質の濃度を指す。
【0240】
レイノルズ数とは、以下の形式:
[式中、ρは、流体の密度であり、νは、流体量であり、lは、特性長(ここでは、混合要素の内径)であり、ηは、粘度である]を使用して計算されうる、無次元数である。
【0241】
「~を凍結させること」という用語は、通例、熱の除去による、液体の固体化に関する。
【0242】
「~を凍結乾燥すること」または「凍結乾燥」という用語は、物質を凍結させ、次いで、周囲の圧力を低減して、凍結させた物質中の媒体が、固体相から、気体相へと、直接昇華することを可能とすることによる、物質の凍結乾燥を指す。
【0243】
「噴霧乾燥」という用語は、(加熱された)気体を、容器(噴霧乾燥器)内で微粒子化された(噴霧された)流体と混合し、ここで、形成された液滴から、溶媒がエバポレートし、乾燥粉末をもたらすことにより噴霧乾燥された物質を指す。
【0244】
「低温保護剤」という用語は、凍結段階において、有効成分を保護するために、製剤へと添加される物質に関する。
【0245】
「凍結乾燥保護剤」という用語は、乾燥段階において、有効成分を保護するために、製剤へと添加される物質に関する。
【0246】
「~を再構成する」という用語は、水などの溶媒を、乾燥生成物へと添加して、その元の液体状態など、液体状態へと戻すことに関する。
【0247】
本開示の文脈における、「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作られた」を意味する。一実施態様では、本開示の文脈における「組換え対象物」は、天然に存在しない。
【0248】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、対象物を、天然で見出しうるという事実を指す。例えば、生物体(ウイルスを含む)に存在し、天然の供給源から単離することが可能であり、実験室内で、人為により、意図的に修飾されたペプチドまたは核酸は、天然に存在する。「天然で見出される」という用語は、「天然に存在する」を意味し、公知の対象物のほか、天然から発見および/または単離されていないが、将来において、天然の供給源から発見および/または単離されうる対象物を含む。
【0249】
「平衡溶解度」という用語は、溶質が溶解する速度と、溶質が溶液から沈着する速度とが同じである、溶質の濃度を指す。一実施態様では、用語は、室温における、それぞれの濃度に関する。
【0250】
本明細書で使用される「室温」という用語は、4℃を超える温度、好ましくは、約15℃~約40℃、約15℃~約30℃、約15℃~約24℃、または約16℃~約21℃の温度を指す。このような温度は、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、および22℃を含むであろう。
【0251】
本開示の文脈では、「粒子」という用語は、分子または分子複合体により形成された構造化実体に関する。一実施態様では、「粒子」という用語は、ミクロンサイズまたはナノサイズの稠密構造など、ミクロンサイズまたはナノサイズの構造に関する。
【0252】
本開示の文脈では、「RNAリポプレックス粒子」という用語は、脂質、特に、カチオン性脂質、およびRNAを含有する粒子に関する。正に帯電したリポソームと、負に帯電したRNAとの静電相互作用は、複合体化およびRNAリポプレックス粒子の自発的形成を結果としてもたらす。正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質、およびDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成することができる。一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、ナノ粒子である。
【0253】
本開示で使用される「ナノ粒子」とは、RNAと、少なくとも1つのカチオン性脂質とを含み、静脈内投与に適する平均直径を有する粒子を指す。
【0254】
「平均直径」という用語は、長さの次元を伴う、いわゆるZaverageと、無次元である多分散指数(PI)とを結果として提示する、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用するデータ解析を伴う、動的光散乱(DLS)により測定される、粒子の平均値流体力学的直径(Koppel,D.、J.Chem.Phys.、57、1972、4814~4820頁、ISO 13321)を指す。ここで、粒子の「平均直径」、「直径」、または「サイズ」は、Zaverageによるこの値と同義に使用される。
【0255】
本明細書では、「多分散指数」という用語は、粒子、例えば、ナノ粒子の集合についての、サイズ分布の尺度として使用される。多分散指数は、いわゆるキュムラント解析により、動的光散乱測定に基づき計算される。
【0256】
本明細書で使用される「目視できない粒子」とは、100マイクロメートル(μm)未満の平均直径を有する粒子を指す。目視できない粒子の数は、本開示におけるRNAリポプレックス粒子の凝集の程度を指し示す、光掩蔽を使用して測定することができる。一部の実施態様では、10μm以上の平均直径を有する、目視できない粒子の数を測定する。他の実施態様では、25μm以上の平均直径を有する、目視できない粒子の数を測定する。
【0257】
「エタノール注入法」という用語は、注射針を介して、脂質を含むエタノール溶液を、水溶液へと、急速に注入する方法を指す。この方法は、脂質を、溶液全体に分散させ、脂質構造形成、例えば、リポソーム形成などの脂質ベシクル形成を促進する。一般に、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、RNAを、コロイド状リポソーム分散体へと添加することにより得られる。一実施態様では、エタノール注入法を使用して、このようなコロイド状リポソーム分散体を、以下の通りに:DOTMAのようなカチオン性脂質などの脂質を含むエタノール溶液と、さらなる脂質とを、攪拌下で、水溶液へと注入して形成する。一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、押出し工程を伴わずに得られる。
【0258】
「~を押し出す」または「押出し」という用語は、一定の断面プロファイルを有する粒子の創出を指す。特に、「~を押し出す」または「押出し」という用語は、粒子を、規定された小孔を伴うフィルターを通るように強いる、粒子の小型化を指す。
【0259】
RNAリポプレックス粒子の直径
本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、一実施態様では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250~約700nm、約400~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。具体的な実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。ある実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
【0260】
本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、例えば、本明細書で記載される方法により作出されるRNAリポプレックス粒子は、約0.5未満、約0.4未満、または約0.3未満の多分散指数を呈示する。例として、RNAリポプレックス粒子は、約0.1~約0.3の範囲内の多分散指数を呈示しうる。
【0261】
脂質
一実施態様では、脂質溶液、リポソームおよび本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質を含む。本明細書で使用される「カチオン性脂質」は、正味の正の電荷を有する脂質を指す。カチオン性脂質は、脂質マトリックスとの静電相互作用により、負に帯電したRNAに結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖またはジアシル鎖、および正の電荷を保有することが典型的な、脂質のヘッド基などの親油性部分を有する。カチオン性脂質の例は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチル塩化アンモニウム(DODAC)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)-ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、1(l),2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウム臭化物(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1(l)-プロパナミウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)を含むがこれらに限定されない。DOTMA、DOTAP、DODAC、およびDOSPAが好ましい。具体的な実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、DOTMAおよび/またはDOTAPである。
【0262】
さらなる脂質を組み込んで、全体的な正電荷の、負電荷に対する比と、物理的なRNAリポプレックス粒子の安定性とを調整することができる。ある特定の実施態様では、さらなる脂質は、中性脂質である。本明細書で使用される「中性脂質」は、正味の電荷がゼロである脂質を指す。中性脂質の例は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、およびセレブロシドを含むがこれらに限定されない。具体的な実施態様では、第2の脂質は、DOPE、コレステロール、および/またはDOPCである。
【0263】
ある特定の実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的実施態様では、カチオン性脂質は、DOTMAであり、さらなる脂質は、DOPEである。理論に束縛されることを望まないが、少なくとも1つのさらなる脂質の量と比較した、少なくとも1つのカチオン性脂質の量は、電荷、粒子サイズ、安定性、組織選択性、およびRNAの生物活性など、重要なRNAリポプレックス粒子特性に影響を及ぼしうる。したがって、一部の実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。具体的な実施態様では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1でありうる。例示的実施態様では、少なくとも1つのカチオン性脂質の、少なくとも1つのさらなる脂質に対するモル比は、約2:1である。
【0264】
RNA
本開示では、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施態様では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全てまたは大部分を含有する。本明細書で使用される「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位において、ヒドロキシル基を伴うヌクレオチドを指す。RNAは、限定せずに述べると、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離RNAなど、部分精製RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え作製RNAのほか、1つまたは複数のヌクレオチドの、付加、欠失、置換、および/または変更により、天然に存在するRNAと異なる、修飾RNAを包摂する。このような変更は、非ヌクレオチド素材の、内部RNAヌクレオチドまたはRNAの末端への付加を指す場合がある。本明細書ではまた、RNA内のヌクレオチドが、化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなど、非標準ヌクレオチドでありうることも想定される。本開示のために、これらの変更されたRNAは、天然に存在するRNAのアナログであると考えられる。
【0265】
本開示の、ある特定の実施態様では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関する、メッセンジャーRNA(mRNA)である。当該技術分野で確立されている通り、mRNAは、一般に、5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチドコード化領域、および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含有する。一部の実施態様では、RNAを、インビトロ転写または化学合成により作製する。一実施態様では、mRNAを、DNAが、デオキシリボヌクレオチドを含有する核酸を指す、DNA鋳型を使用する、インビトロ転写により作製する。
【0266】
一実施態様では、RNAは、インビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写により得ることができる。転写を制御するためのプロモーターは、任意のRNAポリメラーゼのための、任意のプロモーターでありうる。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特に、cDNAをクローニングし、これを、インビトロ転写に適切なベクターへと導入することにより得ることができる。cDNAは、RNAの逆転写により得ることができる。
【0267】
本開示の、ある特定の実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス組成物中のRNAは、約0.01mg/mL~約1mg/mL、または約0.05mg/mL~約0.5mg/mLの濃度である。具体的な実施態様では、RNAは、約0.05mg/mL、約0.06mg/mL、約0.07mg/mL、約0.08mg/mL、約0.09mg/mL、約0.10mg/mL、約0.11mg/mL、約0.12mg/mL、約0.13mg/mL、約0.14mg/mL、約0.15mg/mL、約0.16mg/mL、約0.17mg/mL、約0.18mg/mL、約0.19mg/mL、約0.20mg/mL、約0.21mg/mL、約0.22mg/mL、約0.23mg/mL、約0.24mg/mL、約0.25mg/mL、約0.26mg/mL、約0.27mg/mL、約0.28mg/mL、約0.29mg/mL、約0.30mg/mL、約0.31mg/mL、約0.32mg/mL、約0.33mg/mL、約0.34mg/mL、約0.35mg/mL、約0.36mg/mL、約0.37mg/mL、約0.38mg/mL、約0.39mg/mL、約0.40mg/mL、約0.41mg/mL、約0.42mg/mL、約0.43mg/mL、約0.44mg/mL、約0.45mg/mL、約0.46mg/mL、約0.47mg/mL、約0.48mg/mL、約0.49mg/mL、または約0.50mg/mLの濃度である。例示的実施態様では、RNAは、0.05mg/mLの濃度である。
【0268】
一実施態様では、RNAは、修飾リボヌクレオチドを有しうる。修飾リボヌクレオチドの例は、限定せずに述べると、5-メチルシチジンおよびシュードウリジンを含む。
【0269】
一部の実施態様では、本開示に従うRNAは、5’キャップを含む。一実施態様では、本開示のRNAは、キャッピングされていない5’三リン酸を有さない。一実施態様では、RNAは、5’キャップアナログにより修飾することができる。「5’キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端において見出される構造を指し、一般に、5’から5’への三リン酸連結を介して、RNAへと接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施態様では、このグアノシンを、7位においてメチル化する。RNAに、5’キャップまたは5’キャップアナログを施すことは、インビトロ転写により達成することができ、この場合、5’キャップを、共転写により、RNA鎖へと発現させることもでき、キャッピング酵素を使用して、転写後において、RNAへと接合させることもできる。
【0270】
一部の実施態様では、本開示に従うRNAは、5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、アミノ酸配列、またはmRNA分子など、RNA分子内の対応する領域へと、転写はされるが、翻訳はされない、DNA分子内の領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンの読み枠の5’側(上流)(5’-UTR)、および/またはオープンの読み枠の3’側(下流)(3’-UTR)存在しうる。5‘-UTRは、存在する場合、タンパク質コード化領域の開始コドンの上流である、5’末端に位置する。5’-UTRは、5’キャップ(存在する場合)の下流であり、例えば、5’キャップと直接隣接する。3‘-UTRは、存在する場合、タンパク質コード化領域の終結コドンの下流である、3’末端に位置するが、「3’-UTR」という用語は、好ましくは、ポリ(A)テールを含まない。したがって、5’-UTRは、ポリ(A)配列(存在する場合)の上流であり、例えば、ポリ(A)配列と直接隣接する。
【0271】
一部の実施態様では、本開示に従うRNAは、3’-ポリ(A)配列を含む。「ポリ(A)配列」という用語は、典型的に、RNA分子の3’末端に位置する、アデニル(A)残基の配列に関する。本開示に従い、一実施態様では、ポリ(A)配列は、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約80、または少なくとも約100のAヌクレオチドを含み、最大で約500、最大で約400、最大で約300、最大で約200、または最大で約150のAヌクレオチドを含み、特に、約120のAヌクレオチドを含む。
【0272】
本開示の文脈では、「転写」という用語は、DNA配列内の遺伝子コードが、RNAへと転写される過程に関する。その後、RNAは、ペプチドまたはタンパク質へと翻訳されうる。
【0273】
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖が、アミノ酸の配列のアセンブリーを、ペプチドまたはタンパク質をもたらすように方向付ける、細胞のリボソーム内の過程に関する。
【0274】
一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子を投与した後で、RNAのうちの、少なくとも一部は、標的細胞へと送達される。一実施態様では、RNAのうちの、少なくとも一部は、標的細胞のサイトゾルへと送達される。一実施態様では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAであり、RNAは、標的細胞により翻訳されて、ペプチドまたはタンパク質をもたらす。一実施態様では、標的細胞は、脾臓細胞である。一実施態様では、標的細胞は、脾臓内の、プロフェッショナルの抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施態様では、標的細胞は、脾臓内の樹状細胞である。したがって、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、RNAを、このような標的細胞へと送達するために使用することができる。したがって、本開示はまた、RNAを、対象における標的細胞へと送達するための方法であって、を含む方法。本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子の、対象への投与にも関する。一実施態様では、RNAは、標的細胞のサイトゾルへと送達される。一実施態様では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNAであり、RNAは、標的細胞により翻訳されて、ペプチドまたはタンパク質をもたらす。
【0275】
ある実施態様では、RNAは、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質をコードする。
【0276】
本開示に従う、「RNAは、~をコードする」という用語は、RNAが、標的組織の細胞内など、適切な環境内に存在する場合、翻訳過程において、それがコードするペプチドまたはタンパク質を産生するように、アミノ酸のアセンブリーを方向付けうることを意味する。一実施態様では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質の翻訳を可能とする、細胞内翻訳機構と相互作用することが可能である。細胞は、コードされるペプチドまたはタンパク質を、細胞内において(例えば、細胞質中および/または核内において)産生する場合もあり、コードされるペプチドまたはタンパク質を、分泌する場合もあり、表面へと産生する場合もある。
【0277】
本開示に従う、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合を介して、互いへと連結された、約2つまたはこれを超え、約3つまたはこれを超え、約4つまたはこれを超え、約6つまたはこれを超え、約8つまたはこれを超え、約10またはこれを超え、約13またはこれを超え、約16またはこれを超え、約20またはこれを超え、かつ、最大で約50、約100、または約150の連続アミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大型のペプチド、特に、少なくとも約151アミノ酸を有するペプチドを指すが、本明細書では、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、通例、同義語として使用される。
【0278】
「薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質」は、対象へと、治療有効量で施される場合に、対象の状態または病状に対して、適正な効果または有利な効果を及ぼす。一実施態様では、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質は、治癒的特性または緩和的特性を有し、疾患または障害の、1つまたは複数の症候を、改善するか、軽減するか、和らげるか、抑制するか、これらの発症を遅延させるか、またはこれらの重症度を軽減するように投与される。薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質は、予防的特性を有することが可能であり、疾患の発症を遅延させるか、またはこのような疾患もしくは病理学的状態の重症度を軽減するのに使用することができる。「薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質」という用語は、全タンパク質または全ポリペプチドを含み、また、これらの薬学的に活性の断片も指す。「薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質」という用語はまた、ペプチドまたはタンパク質の、薬学的に活性のアナログも含みうる。
【0279】
薬学的に活性のタンパク質の例は、免疫学的に活性の化合物(例えば、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、インテグリン、アドレッシン、セレチン、ホーミング受容体、T細胞受容体、免疫グロブリン、可溶型主要組織複合抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、またはウイルス抗原、アレルゲン、自己抗原、自己抗体など、免疫学的に活性の抗原)、ホルモン(インスリン、甲状腺ホルモン、カテコールアミン、ゴナドトロフィン、栄養ホルモン、プロラクチン、オキシトシン、ドーパミン、ウシソマトトロフィン、レプチンなど)、成長ホルモン(例えば、ヒト成長(grown)ホルモン)、増殖因子(例えば、上皮増殖因子、神経成長因子、インスリン様成長因子など)、増殖因子受容体、酵素(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、コレステロール生合成酵素またはコレステロール分解酵素、ステロイド産生酵素、キナーゼ、ホスホジエステラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、デヒドロゲナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アロマターゼ、チトクローム、アデニル酸シクラーゼまたはグアニル酸シクラーゼ、ノイラミニダーゼなど)、受容体(ステロイドホルモン受容体、ペプチド受容体)、結合性タンパク質(成長ホルモンまたは増殖因子結合性タンパク質など)、転写因子および翻訳因子、腫瘍増殖抑制性タンパク質(例えば、血管新生を阻害するタンパク質)、構造タンパク質(コラーゲン、フィブロイン、フィブリノーゲン、エラスチン、チューブリン、アクチン、およびミオシンなど)、血液タンパク質(トロンビン、血清アルブミン、第VII因子、第VIII因子、インスリン、第IX因子、第X因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、プロテインC、フォンウィレンブラント因子、アンチトロンビンIII、グルコセレブロシダーゼ、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、または修飾第VIII因子、抗凝固剤など、サイトカインおよび免疫系タンパク質を含むがこれらに限定されない。
【0280】
「免疫学的に活性の化合物」という用語は、例えば、免疫細胞の成熟を誘導および/もしくは抑制し、サイトカイン生合成を誘導および/もしくは抑制することにより、免疫応答を変更し、かつ/またはB細胞による抗体の産生を刺激することにより、体液性免疫を変更する、任意の化合物に関する。免疫学的に活性の化合物抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を含むがこれらに限定されない、強力な免疫刺激活性を有し、免疫応答の他の側面もまた下方調節しうる、例えば、免疫応答を、広範なTH2媒介性疾患を処置するために有用なTH2免疫応答からシフトさせうる。免疫学的に活性の化合物は、ワクチンアジュバントとして有用でありうる。
【0281】
一実施態様では、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質は、1つもしくは複数の抗原、または1つもしくは複数のエピトープを含む、すなわち、ペプチドまたはタンパク質の、対象への投与は、対象における、1つもしくは複数の抗原、または1つもしくは複数のエピトープに対する免疫応答であって、治療的であるか、または部分的に、もしくは完全に防御的である免疫応答を誘発する。
【0282】
「抗原」という用語は、それに対する免疫応答を発生させうるエピトープを含む作用物質に関する。「抗原」という用語は、特に、タンパク質およびペプチドを含む。一実施態様では、抗原は、樹状細胞またはマクロファージのような抗原提示細胞など、免疫系の細胞により提示される。一実施態様では、抗原またはT細胞エピトープなど、このプロセシング産物には、T細胞受容体もしくはB細胞受容体、または抗体などの免疫グロブリン分子が結合する。したがって、抗原またはこのプロセシング産物は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と、特異的に反応しうる。一実施態様では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり、エピトープは、このような抗原に由来する。
【0283】
「疾患関連抗原」という用語は、疾患と関連する、任意の抗原を指すように、その最広義において使用される。疾患関連抗原は、疾患に対して、抗原特異的な、細胞性免疫応答および/または体液性抗体応答をもたらすように、宿主の免疫系を刺激するエピトープを含有する分子である。したがって、疾患関連抗原またはこのエピトープは、治療目的で使用することができる。疾患関連抗原は、微生物、典型的に、微生物性抗原による感染と関連する場合もあり、がん、典型的に、腫瘍と関連する場合もある。
【0284】
「腫瘍抗原」という用語は、細胞質、細胞表面、および細胞核に由来しうる、がん細胞の構成要素を指す。特に、「腫瘍抗原」は、細胞内で、または腫瘍細胞上の表面抗原として産生される抗原を指す。
【0285】
「ウイルス抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち、個体において、免疫応答を惹起することが可能な、任意のウイルス成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはウイルスエンベロープタンパク質でありうる。
【0286】
「細菌抗原」という用語は、抗原特性を有する、すなわち、個体において、免疫応答を惹起することが可能な、任意の細菌の構成要素を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞膜に由来しうる。
【0287】
「エピトープ」という用語は、免疫系により認識される抗原など、分子の部分または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞、または抗体により認識されうる。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含むことが可能であり、約5~約100アミノ酸の間の長さでありうる。一実施態様では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の間の長さである。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含む。
【0288】
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子の文脈で提示される場合に、T細胞により認識される、タンパク質の部分または断片を指す。「主要組織適合性複合体」という用語および「MHC」という略号は、MHCクラスI分子およびMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物において存在する、遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質またはMHC分子は、免疫反応における、リンパ球と、抗原提示細胞または罹患細胞とのシグナル伝達に重要であり、この場合、MHCタンパク質またはMHC分子は、ペプチドエピトープに結合し、それらを、T細胞上のT細胞受容体による認識のために提示する。MHCによりコードされるタンパク質は、細胞の表面上に発現し、自己抗原(細胞自体に由来するペプチド断片)および非自己抗原(例えば、侵入する微生物の断片)の両方を、T細胞へと提示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合性ペプチドは、典型的に、約8~約10アミノ酸の長さであるが、これより長いペプチドまたは短いペプチドも、有効でありうる。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合性ペプチドは、典型的に、約10~約25アミノ酸の長さであり、特に、約13~約18アミノ酸の長さであるが、これより長いペプチドおよび短いペプチドも有効でありうる。
【0289】
本開示の、ある特定の実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープをコードする。ある特定の実施態様では、エピトープは、腫瘍抗原に由来する。腫瘍抗原は、多様ながんにおいて発現することが一般に公知である、「標準的」抗原でありうる。腫瘍抗原はまた、個体の腫瘍に特異的であり、いまだ、免疫系により認識されていない、「ネオ抗原」でもありうる。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化を結果としてもたらす、がん細胞のゲノム内の、1つまたは複数のがん特異的突然変異から生じうる。腫瘍抗原の例は、限定せずに述べると、p53、ART-4、BAGE、ベータ-カテニン/m、Bcr-abLCAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、CLAUDIΝ(CLAUD ΓΝ)-6、CLAUDIN-18.2、およびCLAUDIN-12など、claudinファミリーの細胞表面タンパク質、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(orhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくは、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/Melan-A、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl90 minor BCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVIVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTE、WT、およびWT-1を含む。
【0290】
がん突然変異は、各個体と共に変動する。したがって、新規のエピトープ(ネオエピトープ)をコードするがん突然変異は、ワクチン組成物および免疫療法の開発において、魅力的な標的を表す。腫瘍免疫療法の有効性は、宿主内で、強力な免疫応答を誘導することが可能な、がん特異的な抗原およびエピトープの選択に依拠する。RNAを使用して、患者特異的腫瘍エピトープを、患者へと送達することができる。脾臓内にある樹状細胞(DC)は、腫瘍エピトープなど、免疫原性エピトープまたは抗原のRNAを発現させるために、特に、目的となる抗原提示細胞を表す。複数のエピトープの使用は、腫瘍ワクチン組成物中で、治療有効性を促進することが示されている。腫瘍ミュータノームの迅速なシーケンシングは、本明細書で、例えば、単一のポリペプチドとして記載されるRNAによりコードされうる、個別化ワクチンのための、複数のエピトープであって、任意選択で、リンカーにより隔てられたエピトープを提示しうる。本開示の、ある特定の実施態様では、RNAは、少なくとも1つのエピトープ、少なくとも2つのエピトープ、少なくとも3つのエピトープ、少なくとも4つのエピトープ、少なくとも5つのエピトープ、少なくとも6つのエピトープ、少なくとも7つのエピトープ、少なくとも8つのエピトープ、少なくとも9つのエピトープ、または少なくとも10のエピトープをコードする。例示的実施態様は、少なくとも5つのエピトープをコードするRNA(「ペンタトープ」と称する)と、少なくとも10のエピトープをコードするRNA(「デカトープ」と称する)とを含む。
【0291】
電荷比
本開示のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質内に存在する電荷と、RNA内に存在する電荷との総和である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質内に存在する正の電荷の、RNA内に存在する負の電荷に対する比である。少なくとも1つのカチオン性脂質内に存在する正の電荷の、RNA内に存在する負の電荷に対する電荷比は、以下の式:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(モル))×(カチオン性脂質内の、正の電荷の総数)]/[(RNA濃度(モル))×(RNA内の、負の電荷の総数)]により計算される。RNAの濃度、および少なくとも1つのカチオン性脂質量は、当業者が、常套的方法を使用して決定することができる。
【0292】
第1の実施態様では、生理的pHでは、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比は、約1.9:2~約1:2である。具体的な実施態様では、生理的pHにおける、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比は、約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。一実施態様では、生理的pHにおける、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比は、1.3:2.0である。別の実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、生理的pHで、等数の正の電荷と負の電荷とを有することから、正味の中性電荷比を伴うRNAリポプレックス粒子をもたらしうる。
【0293】
第2の実施態様では、生理的pHでは、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比は、約6:1~約1.5:1である。具体的な実施態様では、生理的pHにおける、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比は、約6.0:1.0、約5.9:1.0、約5.8:1.0、約5.7:1.0、約5.6:1.0、約5.5:1.0、約5.4:1.0、約5.3:1.0、約5.2:1.0、約5.1:1.0、約5.0:1.0、約4.9:1.0、約4.8:1.0、約4.7:1.0、約4.6:1.0、約4.5:1.0、約4.4:1.0、約4.3:1.0、約4.2:1.0、約4.1:1.0、約4.0:1.0、約3.9:1.0、約3.8:1.0、約3.7:1.0、約3.6:1.0、約3.5:1.0、約3.4:1.0、約3.3:1.0、約3.2:1.0、約3.1:1.0、約3.0:1.0、約2.9:1.0、約2.8:1.0、約2.7:1.0、約2.6:1.0、約2.5:1.0、約2.4:1.0、約2.3:1.0、約2.2:1.0、約2.1:1.0、約2.0:1.0、約1.9:1.0、約1.8:1.0、約1.7:1.0、約1.6:1.0、または約1.5:1.0である。
【0294】
RNAベースの免疫療法のために、脾臓など、正確な臓器のターゲティングは、他の臓器内の自己免疫応答および潜在的な毒性を回避するのに必要である。本開示に従い、RNAは、異なる細胞、組織、または臓器へとターゲティングすることができる。
【0295】
第1の実施態様に従う電荷比を有するRNAリポプレックス粒子を使用して、抗原提示細胞、特に、樹状細胞など、脾臓組織または脾臓細胞を、優先的にターゲティングしうることが見出されている。したがって、一実施態様では、RNAリポプレックス粒子の投与の後において、脾臓内のRNAの蓄積および/またはRNAの発現が生じる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓内で、RNAを発現させるために使用することができる。ある実施態様では、RNAリポプレックス粒子の投与の後において、肺内および/または肝臓内のRNAの蓄積および/またはRNAの発現が生じない。一実施態様では、RNAリポプレックス粒子の投与の後において、脾臓内の、プロフェッショナルの抗原提示細胞内など、抗原提示細胞内のRNAの蓄積および/またはRNAの発現が生じる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、このような抗原提示細胞内で、RNAを発現させるために使用することができる。一実施態様では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
【0296】
第2の実施態様に従う電荷比を有するRNAリポプレックス粒子を使用して、肺組織または肺細胞を、優先的にターゲティングしうることが見出されている。したがって、一実施態様では、RNAリポプレックス粒子の投与の後において、肺内のRNAの蓄積および/またはRNAの発現が生じる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、肺内で、RNAを発現させるために使用することができる。したがって、第1の実施態様に従う電荷比、例えば、約1:2~約1.9:2の電荷比と関連する、本明細書で記載される実施態様において、脾臓以外の組織内のRNAの発現が所望である場合は、第1の実施態様に従う電荷比の代わりに、第2の実施態様に従う電荷比、例えば、約6:1~約1.5:1の電荷比を使用することができる。これらの実施態様および他の実施態様では、本明細書では、少なくとも1つのエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA以外のRNAが記載される、例えば、本明細書で記載される、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを使用することができる。一実施態様では、薬学的に活性のペプチドまたはタンパク質が、サイトカインであり、かつ/または肺がんの処置が目的である。
【0297】
RNAリポプレックス粒子を含む組成物
A.塩強度およびイオン強度
本開示に従い、本明細書で記載される組成物は、塩化ナトリウムなどの塩を含みうる。理論に束縛されることを望まないが、塩化ナトリウムは、少なくとも1つのカチオン性脂質と混合する前に、RNAを前処理するためのイオン性オスモル濃度剤として機能する。ある特定の実施態様は、本開示における塩化ナトリウムに対する、代替的な有機塩または無機塩を想定する。代替的な塩は、限定せずに述べると、塩化カリウム、リン酸二カリウム、リン酸一カリウム、酢酸カリウム、重炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩化カルシウム、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウム塩を含む。
【0298】
一般に、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、好ましくは、0mM~約500mM、約5mM~約400mM、または約10mM~約300mMの範囲の濃度の塩化ナトリウムを含む。一実施態様では、RNAリポプレックス粒子を含む組成物は、このような塩化ナトリウム濃度に対応するイオン強度を含む。
【0299】
一般に、RNAおよびリポソームから、RNAリポプレックス粒子を形成するための組成物、およびこれから得られる組成物であって、本明細書で記載される組成物などの組成物は、高塩化ナトリウム濃度を含むか、または、高イオン強度を含む。一実施態様では、塩化ナトリウムは、少なくとも45mMの濃度である。一実施態様では、塩化ナトリウムは、約45mM~約300mM、または約50mM~約150mMの濃度である。一実施態様では、組成物は、このような塩化ナトリウム濃度に対応するイオン強度を含む。
【0300】
一般に、RNAリポプレックス粒子を凍結するための組成物など、RNAリポプレックス粒子を保管するための組成物であって、本明細書で記載される組成物などの組成物は、低塩化ナトリウム濃度を含むか、または、低イオン強度を含む。一実施態様では、塩化ナトリウムは、0mM~約50mM、0mM~約40mM、または約10mM~約50mMの濃度である。具体的な実施態様では、塩化ナトリウムは、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約31mM、約32mM、約33mM、約34mM、約35mM、約36mM、約37mM、約38mM、約39mM、約40mM、約41mM、約42mM、約43mM、約44mM、約45mM、約46mM、約47mM、約48mM、約49mM、または約50mMの濃度である。好ましい実施態様では、塩化ナトリウムは、約20mM、約30mM、または約40mMの濃度である。例示的な一実施態様では、塩化ナトリウムは、20mMの濃度である。別の例示的実施態様では、塩化ナトリウムは、30mMの濃度である。一実施態様では、組成物は、このような塩化ナトリウム濃度に対応するイオン強度を含む。
【0301】
一般に、凍結させた、RNAリポプレックス粒子組成物を融解させることと、任意選択で、水性液体を添加することにより、オスモル濃度およびイオン強度を調整することとから得られる組成物は、高塩化ナトリウム濃度を含むか、または、高イオン強度を含む。一実施態様では、塩化ナトリウムは、約50mM~約300mM、または約80mM~約150mMの濃度である。一実施態様では、組成物は、このような塩化ナトリウム濃度に対応するイオン強度を含む。
【0302】
B.安定剤
本明細書で記載される組成物は、凍結組成物、凍結乾燥組成物、または噴霧乾燥組成物の、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥、および保管時における、製品の品質の実質的な喪失を回避し、特に、RNA活性の実質的な喪失を回避するための安定剤を含みうる。本明細書では、このような組成物はまた、安定とも称する。典型的に、安定剤は、凍結工程、凍結乾燥工程、または噴霧乾燥工程の前に存在し、結果として得られる凍結調製物中、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)調製物中に存続する。本明細書で記載される組成物を使用して、凍結調製物、凍結乾燥(lyophilizedまたはfreeze-dried)調製物の、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥、および保管時に、RNAリポプレックス粒子を保護する、例えば、凝集、粒子崩壊、RNA分解、および/または他の種類の損傷を低減または防止することができる。
【0303】
ある実施態様では、安定剤は、炭水化物である。本明細書で使用される「炭水化物」という用語は、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖、および多糖類を指し、これらを包摂する。
【0304】
ある実施態様では、安定剤は、単糖である。本明細書で使用される「単糖」という用語は、より単純な炭水化物単位へと、加水分解されえない、単一の炭水化物単位(例えば、単糖)を指す。例示的な、単糖による安定剤は、グルコース、果糖、ガラクトース、キシロース、リボースなどを含む。
【0305】
ある実施態様では、安定剤は、二糖類である。本明細書で使用される「二糖類」という用語は、グリコシド連結を介して、例えば、1-4連結または1-6連結を介して、一体に結合した、2つの単糖単位により形成される、化合物または化学的部分を指す。二糖類は、2つの単糖類へと加水分解することができる。例示的な、二糖類による安定剤は、ショ糖、トレハロース、ラクトース、マルトースなどを含む。
【0306】
「三糖類」という用語は、1つの分子を形成するように、一体に連結された、3つの糖類を意味する。三糖類の例は、ラフィノースおよびメレジトースを含む。
【0307】
ある実施態様では、安定剤は、オリゴ糖である。本明細書で使用される「オリゴ糖」という用語は、グリコシド連結を介して、例えば、1-4連結または1-6連結を介して、直鎖状構造、分枝状構造、または環状構造を形成するように、一体に結合した、3つ~約15、好ましくは、3つ~約10の単糖単位により形成される、化合物または化学的部分を指す。例示的な、オリゴ糖による安定剤は、シクロデキストリン、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、スタキオース、アカルボースなどを含む。オリゴ糖は、酸化することもでき、還元することもできる。
【0308】
ある実施態様では、安定剤は、環状オリゴ糖である。本明細書で使用される「環状オリゴ糖」という用語は、グリコシド連結を介して、例えば、1-4連結または1-6連結を介して、環状構造を形成するように、一体に結合した、3つ~約15、好ましくは、6つ、7つ、8つ、9つ、または10の単糖単位により形成される、化合物または化学的部分を指す。例示的な、環状オリゴ糖による安定剤は、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、またはγシクロデキストリンなど、個別の化合物である、環状オリゴ糖を含む。
【0309】
他の例示的な、環状オリゴ糖による安定剤は、環状オリゴ糖部分を含有するポリマーなど、大型の分子構造内に、シクロデキストリン部分を含む化合物を含む。環状オリゴ糖は、酸化することもでき、還元することもでき、例えば、ジカルボニル形態へと酸化することができる。本明細書で使用される「シクロデキストリン部分」という用語は、ポリマーなど、大型の分子構造に組み込まれるか、またはこの部分である、シクロデキストリン(例えば、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン、またはγシクロデキストリン)基を指す。シクロデキストリン部分は、1つまたは複数の他の部分へと、直接結合させることもでき、任意選択のリンカーを介して結合させることもできる。シクロデキストリン部分は、酸化することもでき、還元することもでき、例えば、ジカルボニル形態へと酸化することができる。
【0310】
炭水化物による安定剤、例えば、環状オリゴ糖による安定剤は、誘導体化炭水化物でありうる。例えば、ある実施態様では、安定剤は、誘導体化環状オリゴ糖、例えば、誘導体化シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば、部分エーテル化シクロデキストリン(例えば、部分エーテル化βシクロデキストリン)である。
【0311】
例示的安定剤は、多糖である。本明細書で使用される「多糖」という用語は、グリコシド連結を介して、例えば、1-4連結または1-6連結を介して、直鎖状構造、分枝状構造、または環状構造を形成するように、一体に結合した、少なくとも16の単糖単位により形成される、化合物または化学的部分を指し、それらの骨格構造の部分として、多糖類を含むポリマーを含む。骨格内で、多糖は、直鎖状の場合もあり、環状の場合もある。例示的な、多糖による安定剤は、グリコーゲン、アミラーゼ、セルロース、デキストラン、マルトデキストリンなどを含む。
【0312】
ある実施態様では、安定剤は、糖アルコールである。本明細書で使用される「糖アルコール」という用語は、「糖類」の還元生成物を指し、単糖アルコール分子内の、全ての酸素原子が、ヒドロキシル基の形態で存在することを指し示す糖アルコールは、「ポリオール」である。この用語は、3つまたはこれを超えるヒドロキシル基を含有する化合物を指し、別の一般的な用語である、多価アルコールと同義である。糖アルコールの例は、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、エリトリトール、グリセリン、キシリトール、またはイノシトールを含むがこれらに限定されない。
【0313】
本開示に従い、ショ糖を、安定剤として含む薬学的組成物が提示される。理論に束縛されることを望まないが、ショ糖は、組成物の低温保護を促進するように機能し、これにより、RNAリポプレックス粒子の凝集を防止し、組成物の化学的安定性および物理的安定性を維持する。ある特定の実施態様は、本開示における、ショ糖に対する代替的安定剤を想定する。代替的安定剤は、限定せずに述べると、トレハロース、グルコース、果糖、アルギニン、グリセリン、マンニトール、プロリン、ソルビトール、グリシンベタイン、およびデキストランを含む。具体的な実施態様では、ショ糖に対する代替的安定剤は、トレハロースである。
【0314】
一実施態様では、安定剤は、約5%(w/v)~約35%(w/v)、または約10%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。具体的な実施態様では、安定剤は、約10%(w/v)、約11%(w/v)、約12%(w/v)、約13%(w/v)、約14%(w/v)、約15%(w/v)、約16%(w/v)、約17%(w/v)、約18%(w/v)、約19%(w/v)、約20%(w/v)、約21%(w/v)、約22%(w/v)、約23%(w/v)、約24%(w/v)、または約25%(w/v)の濃度である。好ましい一実施態様では、安定剤は、約15%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。別の好ましい実施態様では、安定剤は、約20%(w/v)~約25%(w/v)の濃度である。例示的な一実施態様では、安定剤は、約25%(w/v)の濃度である。別の例示的実施態様では、安定剤は、約22%(w/v)の濃度である。本開示の、ある実施態様では、安定剤は、ショ糖またはトレハロースである。本開示の、ある実施態様では、安定剤は、ショ糖である。本開示の、ある実施態様では、安定剤は、トレハロースである。
【0315】
本開示に従い、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子組成物は、組成物の安定性に適する安定剤濃度、特に、RNAリポプレックス粒子の安定性に適し、RNAの安定性に適する安定剤濃度を有する。
【0316】
C.pHおよびバッファー
本開示に従い、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子組成物は、RNAリポプレックス粒子の安定性に適し、特に、RNAの安定性に適するpHを有する。一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子組成物は、約5.7~約6.7のpHを有する。具体的な実施態様では、組成物は、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、または約6.7のpHを有する。
【0317】
本開示に従い、バッファーを含む組成物が提示される。理論に束縛されることを望まないが、バッファーの使用は、組成物の製造時、保管時、および使用時において、組成物のpHを維持する。本開示の、ある特定の実施態様では、バッファーは、重炭酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、2-(ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)酢酸(ビシン)、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(トリス)、N-(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)グリシン(トリシン)、3-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸(TAPSO)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)、2-[[1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イル]アミノ]エタンスルホン酸(TES)、1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、ジメチルヒ酸(arsinic acid)、2-モルホリン-4-イルエタンスルホン酸(MES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)でありうる。他の適切なバッファーは、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、および塩中のリン酸でありうる。
【0318】
一部の実施態様では、バッファーは、約5.7~約6.7のpHを有する。具体的な実施態様では、バッファーは、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、または約6.7のpHを有する。一実施態様では、バッファーは、HEPESである。好ましい実施態様では、HEPESは、約5.7~約6.7のpHを有する。具体的な実施態様では、HEPESは、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、または約6.7のpHを有する。例示的実施態様では、HEPESは、約6.2のpHを有する。
【0319】
さらに別の実施態様では、バッファーは、約2.5mM~約10mMの濃度を有する。HEPESがバッファーである、具体的な実施態様では、HEPESの濃度は、約2.5mM、約2.75mM、3.0mM、約3.25mM、約3.5mM、約3.75mM、約4.0mM、約4.25mM、約4.5mM、約4.75mM、約5.0mM、約5.25mM、約5.5mM、約5.75mM、約6.0mM、約6.25mM、約6.5mM、約6.75mM、約7.0mM、約7.25mM、約7.5mM、約7.75mM、約8.0mM、約8.25mM、約8.5mM、約8.75mM、約9.0mM、約9.25mM、約9.5mM、約9.75mM、または約10.0mMである。好ましい実施態様では、HEPESは、約7.5mMの濃度である。
【0320】
D.キレート剤
本開示のある特定の実施態様は、キレート剤の使用を想定する。キレート剤とは、金属イオンとの、少なくとも2つの配位共有結合を形成し、これにより、安定的な、水溶性の複合体を発生させることが可能な化合物を指す。理論に束縛されることを望まないが、キレート剤は、そうしなければ、本開示における、加速RNA分解を誘導しうる、遊離二価イオンの濃度を低減する。適切なキレート剤の例は、限定せずに述べると、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAの塩、デスフェリオキサミンB、デフェロキサミン、ジチオカルブナトリウム、ペニシラミン、ペントテト酸カルシウム、ペンテト酸のナトリウム塩、スクシマー、トリエンチン、ニトリロ三酢酸、trans-ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸(DCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ビス(アミノエチル)グリコールエーテル-N,N,N’,N’-テトラ酢酸、イミノ二酢酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、またはこれらの塩を含む。ある特定の実施態様では、キレート剤は、EDTAまたはEDTAの塩である。例示的実施態様では、キレート剤は、EDTA二ナトリウム二水和物である。
【0321】
一部の実施態様では、EDTAは、約0.25mM~約5mMの濃度である。具体的な実施態様では、EDTAは、約0.25mM、約0.3mM、約0.4mM、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.1mM、約1.2mM、約1.3mM、約1.4mM、約1.5mM、約1.6mM、約1.7mM、約1.8mM、約1.9mM、約2.0mM、約2.1mM、約2.2mM、約2.3mM、約2.4mM、約2.5mM、約2.6mM、約2.7mM、約2.8mM、約2.9mM、約3.0mM、約3.1mM、約3.2mM、約3.3mM、約3.4mM、約3.5mM、約3.6mM、約3.7mM、約3.8mM、約3.9mM、約4.0mM、約4.1mM、約4.2mM、約4.3mM、約4.4mM、約4.5mM、約4.6mM、約4.7mM、約4.8mM、約4.9mM、または約5.0mMの濃度である。好ましい実施態様では、EDTAは、約2.5mMの濃度である。
【0322】
E.本開示の例示的組成物
例示的な一実施態様では、RNAリポプレックス粒子の組成物は、約2:1~約1:1のモル比の、DOTMAおよびDOPEと、少なくとも1つのエピトープをコードする、約0.05mg/mLの濃度のRNAとを含み、この場合、生理的pHにおいて、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比が、約1.3:2.0であり;約20mMの濃度の塩化ナトリウムと;約22%(w/v)の濃度のショ糖と;pHが約6.2である、約7.5mMの濃度のHEPESと;約2.5mMの濃度のEDTAとを含む。さらなる具体的実施態様では、RNAは、5つのエピトープまたは10のエピトープをコードする。
【0323】
別の例示的実施態様では、RNAリポプレックス粒子の組成物は、約2:1~約1:1のモル比の、DOTMAおよびDOPEと、少なくとも1つのエピトープをコードする、約0.05mg/mLの濃度のRNAとを含み、この場合、生理的pHにおいて、RNAリポプレックス粒子内の、正の電荷の、負の電荷に対する電荷比が、約1.3:2.0であり;約30mMの濃度の塩化ナトリウムと;約20%(w/v)の濃度のショ糖と;pHが約6.2である、約7.5mMの濃度のHEPESと;約2.5mMの濃度のEDTAとを含む。さらなる具体的実施態様では、RNAは、5つのエピトープまたは10のエピトープをコードする。
【0324】
F.本開示の組成物の安定性
本明細書で使用される「安定な」とは、多様な生理化学的パラメータについての測定値が、規定された範囲内にある組成物を指す。一実施態様では、多様なパラメータに従い、安定性について評価するように、組成物を解析する。本開示に従い、安定性パラメータは、限定せずに述べると、RNAリポプレックス粒子の平均直径、多分散指数、RNAの完全性、RNA含有量、pH、オスモル濃度、および目視できない粒子の数を含む。当業者は、常套的な実験室法および測定器を使用して、このようなパラメータを測定することが可能であろう。例えば、安定性パラメータは、動的光散乱(DLS)、光掩蔽、分光光度法法、アガロースゲル電気泳動、バイオアナライザー、または他の任意の適切な技法を使用して評価することができる。一実施態様では、バイオアナライザーは、RNAの完全性およびRNAの含有量の両方を測定することが可能な、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)である。一実施態様では、バイオアナライザーは、Advanced Analytical製の、Fragment Analyzerである。
【0325】
理論に束縛されることを望まないが、DLS測定は、本開示のRNAリポプレックス粒子と関連するパラメータを解析するために有用である。一実施態様では、DLSを使用して、Z平均(平均粒子サイズについての尺度)との関係で表される、RNAリポプレックス粒子の平均直径を決定することができる。別の実施態様では、DLSを使用して、RNAリポプレックス粒子のサイズ分布および重量分布を指し示す、RNAリポプレックス粒子の多分散指数を決定することができる。
【0326】
ある特定の実施態様では、組成物は、安定性パラメータについての尺度が、規定された範囲内にある場合に安定である。安定な組成物についての、一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、元の平均直径(すなわち、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥させ、融解または再構成させる前における平均直径)と、±20%、±10%、±5%、または±3%以下異なる平均直径を有する。安定な組成物についての一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、元の平均直径(すなわち、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥させ、融解または再構成させる前における平均直径)と比較して、20%、10%、5%、または3%を超えない平均直径を有する。安定な組成物についての、別の実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、元の多分散指数(すなわち、凍結、凍結乾燥、または噴霧乾燥させ、融解または再構成させる前における多分散指数)と、±20%、±10%、±5%、または±3%以下異なる多分散指数を有する。一実施態様では、安定な組成物は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、直径が10μm以上である、6,000以下の、目視できない粒子を有する。一実施態様では、安定な組成物は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、直径が25μm以上である、600以下の、目視できない粒子を有する。
【0327】
安定な組成物についての一実施態様では、RNAの完全性は、保管の後で、例えば、約-15℃~約-40℃の温度における保管の後で、少なくとも80パーセントである。
【0328】
一実施態様では、組成物は、約-15℃~約-40℃の保管温度で安定である。具体的な実施態様では、組成物は、約-15℃、約-16℃、約-17℃、約-18℃、約-19℃、約-20℃、約-21℃、約-22℃、約-23℃、約-24℃、約-25℃、約-26℃、約-27℃、約-28℃、約-29℃、約-30℃、約-31℃、約-32℃、約-33℃、約-34℃、約-35℃、約-36℃、約-37℃、約-38℃、約-39℃、または約-40℃の温度で安定である。好ましい実施態様では、組成物は、約-15℃、約-20℃、約-30℃、または約-40℃の温度で安定である。
【0329】
一実施態様では、薬学的組成物を、光から保護する場合に、組成物は、約-15℃~約-40℃の温度で安定である。好ましい実施態様では、組成物を、光から保護する場合に、組成物は、約-15℃~約-25℃の温度で安定である。
【0330】
一実施態様では、組成物は、約-15℃~約-40℃の温度で、約24カ月後までの、少なくとも1カ月間安定である。具体的な実施態様では、組成物は、約-15℃~約-40℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも7カ月間、少なくとも8カ月間、少なくとも9カ月間、少なくとも10カ月間、少なくとも11カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも13カ月間、少なくとも14カ月間、少なくとも15カ月間、少なくとも16カ月間、少なくとも17カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも19カ月間、少なくとも20カ月間、少なくとも21カ月間、少なくとも22カ月間、少なくとも23カ月間、少なくとも24カ月間、少なくとも25カ月間、少なくとも26カ月間、少なくとも27カ月間、少なくとも28カ月間、少なくとも29カ月間、少なくとも30カ月間、少なくとも31カ月間、少なくとも32カ月間、少なくとも33カ月間、少なくとも34カ月間、少なくとも35カ月間、または少なくとも36カ月間安定である。
【0331】
好ましい実施態様では、組成物は、約-15℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、または少なくとも6カ月間安定である。
【0332】
別の好ましい実施態様では、組成物は、約-20℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、または少なくとも6カ月間安定である。
【0333】
さらに別の好ましい実施態様では、組成物は、約-30℃の温度で、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも5カ月間、または少なくとも6カ月間安定である。
【0334】
一実施態様では、組成物は、約-15℃~約-40℃の温度で凍結させ、約4℃~約25℃の温度(常温)へと融解させた後で、安定である。別の実施態様では、組成物は、複数の凍結融解サイクル内で、約-15℃~約-40℃の温度で凍結させ、約4℃~約25℃の温度(常温)へと融解させた後で、安定である。
【0335】
G.本開示の組成物の物理的状態
ある実施態様では、本開示の組成物は、液体または固体である。非限定的な固体の例は、凍結形態または凍結乾燥形態を含む。好ましい実施態様では、組成物は、液体である。
【0336】
本開示の薬学的組成物
本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、治療処置または予防処置のための、薬学的組成物または医薬として有用であるか、またはこれらを調製するために有用である。
【0337】
本開示の粒子は、任意の適切な薬学的組成物の形態で投与されうる。
【0338】
「薬学的組成物」という用語は、治療的に有効な薬剤を、好ましくは、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤と併せて含む製剤に関する。前記薬学的組成物は、前記薬学的組成物の、対象への投与により、疾患または障害を、処置、防止、またはこれらの重症度を軽減するために有用である。当該技術分野ではまた、薬学的組成物は、薬学的製剤としても公知である。本開示の文脈では、薬学的組成物は、本明細書で記載される、RNAリポプレックス粒子を含む。
【0339】
本開示の薬学的組成物は、好ましくは、1つもしくは複数のアジュバントを含むか、または、1つまたは複数のアジュバントと共に投与される。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長するか、増強するか、またはこれを加速化させる化合物に関する。アジュバントは、油性エマルジョン(例えば、フロイントのアジュバント)、鉱物性化合物(ミョウバンなど)、細菌生成物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫刺激性複合体など、異質な化合物群を含む。アジュバントの例は、限定せずに述べると、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、増殖因子、およびモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインなどのサイトカインを含む。ケモカインは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、INFa、INF-γ、GM-CSF、LT-aでありうる。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントのアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示における使用に適する、他のアジュバントは、Pam3Cysなどのリポペプチドを含む。
【0340】
本開示に従う薬学的組成物は、一般に、「薬学的に許容される調製物」中に、「薬学的有効量」で適用される。
【0341】
「薬学的に許容される」という用語は、薬学的組成物の活性成分と相互作用しない、材料の非毒性を指す。
【0342】
「薬学的有効量」という用語は、単独で、またはさらなる用量と併せて、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の処置の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行の緩徐化、特に、疾患の進行の中断または抑制を含む。疾患の処置における所望の反応はまた、前記疾患もしくは前記状態の発症の遅延、またはこれらの発症の防止でもありうる。本明細書で記載される粒子または組成物の有効量は、処置される状態、疾患の重症度、年齢、生理的状態、身長および体重、処置の持続期間、併用治療(存在する場合)の種類、特異的投与経路および類似の因子を含む、患者の個別のパラメータに依存するであろう。したがって、本明細書で記載される粒子または組成物の、投与される用量は、このような諸パラメータに依存しうる。万一、初期用量では、患者における反応が不十分である場合、高用量(または異なる、より局所的な投与経路により達成される、有効な高用量)を使用することができる。
【0343】
本開示の薬学的組成物は、塩と、バッファーと、防腐剤と、任意選択で、他の治療剤とを含有しうる。一実施態様では、本開示の薬学的組成物は、1つまたは複数の、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を含む。
【0344】
本開示の薬学的組成物における使用に適する防腐剤は、限定せずに述べると、ベンザルコニウムクロライド、クロロブタノール、パラベン、およびチメロサールを含む。
【0345】
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の薬学的組成物中に存在しうるが、有効成分ではない物質を指す。賦形剤の例は、限定せずに述べると、担体、結合剤、希釈剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤を含む。
【0346】
「希釈剤(diluent)」という用語は、希釈(dilutingおよび/またはthinning)剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体、もしくは固体の懸濁液、および/または混合媒体のうちの、任意の1または複数を含む。適切な希釈剤の例は、エタノール、グリセロール、および水を含む。
【0347】
「担体」という用語は、薬学的組成物の投与を容易とするか、増強するか、またはこれを可能とするために、その中で活性成分を混合する、天然、合成、有機、無機でありうる成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適する、1つまたは複数の、適合性の、固体または液体の、充填剤、希釈剤、または封入物質でありうる。適切な担体は、限定せずに述べると、滅菌水、リンゲル液、乳酸化リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張性生理食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、および、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、またはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体を含む。一実施態様では、本開示の薬学的組成物は、等張性生理食塩水を含む。
【0348】
医薬技術分野では、治療使用のための、薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤が周知であり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.(A.R Gennaro編、1985)において記載されている。
【0349】
医薬用の、担体、賦形剤、または希釈剤は、目的の投与経路および標準的な薬学的実践に照らして選択することができる。
【0350】
本開示の薬学的組成物の投与経路
一実施態様では、本明細書で記載される薬学的組成物は、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、または筋肉内投与される。ある特定の実施態様では、薬学的組成物は、局所投与または全身投与のために製剤化される。全身投与は、消化管を介する吸収を伴う経腸投与、または非経口投与を含みうる。本明細書で使用される「非経口投与」は、静脈内注射など、消化管を介する投与以外の、任意の形の投与を指す。好ましい実施態様では、薬学的組成物は、全身投与のために製剤化される。別の好ましい実施態様では、全身投与は、静脈内投与による。
【0351】
製品
一態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、薬学的組成物中に存在する。別の態様では、本明細書で記載される組成物は、薬学的組成物である。
【0352】
一態様では、本開示は、本明細書で記載される薬学的組成物を含有するバイアルに関する。別の態様では、本開示は、本明細書で記載される薬学的組成物を含有するシリンジに関する。
【0353】
本開示の薬学的組成物の使用
本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子は、多様な疾患、特に、ペプチドまたはタンパク質の、対象への提供が、治療効果または予防効果を結果としてもたらす疾患の、治療処置または予防処置において使用することができる。例えば、ウイルスに由来する抗原またはエピトープの提供は、前記ウイルスにより引き起こされるウイルス性疾患の処置において有用でありうる。腫瘍抗原またはエピトープの提供は、がん細胞が、前記腫瘍抗原を発現させるがん疾患の処置において有用でありうる。
【0354】
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす、異常な状態を指す。疾患は、特異的な症候および徴候と関連する医学的状態として解釈されることが多い。疾患感染性疾患など、元来、外部の疾患源に由来する因子により引き起こされる場合もあり、自己免疫疾患など、内的機能不全により引き起こされる場合もある。ヒトでは、「疾患」は、より広範に、罹患個体へと、疼痛、機能不全、苦痛、社会的問題、または死を引き起こすか、または罹患個体と接触する個体に、同様の問題を引き起こす、任意の状態を指すように使用されることが多い。このより広義において、「疾患」は、場合によって、傷害、身体機能障害、障害、症候群、感染、孤発性症候、逸脱性挙動、ならびに構造および機能の非典型的な変動を含むが、他の文脈において、他の目的では、「疾患」は、識別可能な類別であると考えられる。多くの疾患に罹患し、これらと共に生きることは、人生の見方を変更する場合があり、性格を変更しうるので、疾患は、通例、個体に、物理的影響を及ぼすだけでなく、また、情緒的影響も及ぼす。
【0355】
本文脈では、「処置」、「~を処置すること」、または「治療介入」という用語は、疾患または障害などの状態に対抗することを目的とする、対象の管理およびケアに関する。用語は、対象が患う、所与の状態のための、全スペクトルにわたる処置であって、症候もしくは合併症を緩和し、疾患、障害、もしくは状態の進行を遅延させ、症候および合併症を緩和するか、もしくは和らげ、かつ/または疾患、障害、もしくは状態を治癒もしくは消失させるほか、状態を防止するのに、治療的に有効な化合物の投与などであり、防止が、疾患、状態、または障害に対抗することを目的とする、個体の管理およびケアであることが理解され、症候または合併症の発症を防止する、活性化合物の投与を含む処置を含むことを意図する。
【0356】
「治療処置」という用語は、個体の健康状態を改善し、かつ/または個体の寿命を延長する(増大させる)、任意の処置に関する。前記処置は、個体における疾患を消失させる場合もあり、個体における疾患の発生を停止もしくは緩徐化させる場合もあり、個体における疾患の発生を阻害するか、もしくは緩徐化させる場合もあり、個体における症候の頻度もしくは重症度を減殺する場合もあり、かつ/または現在のところ疾患を有するか、もしくはかつてこれを有したことがある個体における再発を減殺する場合もある。
【0357】
「予防処置」または「防止処置」という用語は、個体において疾患が生じることを防止することを意図する、任意の処置に関する。本明細書では、「予防処置」または「防止処置」という用語は、互換的に使用される。
【0358】
本明細書では、「個体」および「対象」という用語は、互換的に使用される。「個体」および「対象」という用語は、疾患または障害(例えば、がん)に罹患しうるか、またはこれらに対する感受性があるが、疾患または障害を有する場合もあり、これらを有さない場合もある、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。多くの実施態様では、個体は、ヒトである。別途指定のない限り、「個体」および「対象」という用語は、特定の年齢を表示せず、したがって、成人、老齢者、小児、および新生児を包摂する。本開示の、ある実施態様では、「個体」または「対象」とは、「患者」である。
【0359】
「患者」という用語は、処置のための個体または対象、特に、罹患個体または罹患対象を意味する。
【0360】
本開示の一実施態様では、目的は、腫瘍抗原を発現させるがん細胞など、抗原を発現させる罹患細胞に対する免疫応答をもたらし、腫瘍抗原などの抗原を発現させる細胞に関与するがん疾患などの疾患を処置することである。
【0361】
1つもしくは複数の抗原、または1つもしくは複数のエピトープを含む、RNAをコードすることペプチドまたはタンパク質を含む、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物は、対象へと投与されて、対象における、1つもしくは複数の抗原、または1つもしくは複数のエピトープに対する免疫応答であって、治療的であるか、または部分的に、もしくは完全に防御的である免疫応答を誘発する。当業者には、免疫療法およびワクチン接種の原理が、対象を、処置される疾患に関して、免疫学的に関与性である、抗原またはエピトープで免疫化することにより、疾患に対する免疫防御反応がもたらされるという事実に基づくことが公知であろう。したがって、本明細書で記載される薬学的組成物は、免疫応答の誘導または増強に適用可能である。したがって、本明細書で記載される薬学的組成物は、抗原またはエピトープに関与する疾患の予防処置および/または治療処置において有用である。
【0362】
本明細書で使用される「免疫応答」は、抗原または抗原を発現させる細胞に対する、統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。細胞性免疫応答は、限定せずに述べると、抗原を発現させる細胞へと方向付けられ、クラスI MHC分子またはクラスII MHC分子を伴う抗原の提示により特徴づけられている、細胞性応答を含む。細胞性応答は、免疫応答を調節することにより、中心的な役割を果たす、ヘルパーT細胞(また、CD4+ T細胞とも称する)、または感染細胞もしくはがん細胞におけるアポトーシスを誘導する、キラー細胞(また、細胞傷害性T細胞、CD8+ T細胞、またはCTLとも称する)として分類されうる、Tリンパ球に関する。一実施態様では、本開示の薬学的組成物を投与することは、1つまたは複数の腫瘍抗原を発現させるがん細胞に対する、抗腫瘍CD8+ T細胞応答の刺激を伴う。具体的な実施態様では、腫瘍抗原は、クラスI MHC分子により提示される。
【0363】
本開示は、防御的な場合もあり、防止的な場合もあり、予防的な場合もあり、かつ/または治療的な場合もある免疫応答を想定する。本明細書で使用される「免疫応答を誘導する[または免疫応答を誘導すること]」とは、誘導の前に、特定の抗原に対する免疫応答が存在しなかったことを指し示す場合もあり、誘導の前にも、特定の抗原に対する、基礎レベルの免疫応答が見られたが、誘導の後で増強されたことを指し示す場合もある。したがって、「免疫応答を誘導する[または免疫応答を誘導すること]」は、「免疫応答を増強する[または免疫応答を増強すること]」を含む。
【0364】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導または増強することによる、疾患または状態の処置に関する。「免疫療法」という用語は、抗原による免疫化、または抗原によるワクチン接種を含む。
【0365】
「免疫化」または「ワクチン接種」という用語は、例えば、治療的理由または予防的理由で、免疫応答を誘導することを目的として、抗原を、個体へと投与する方法について記載する。
【0366】
一実施態様では、本開示は、脾臓組織をターゲティングする、本明細書で記載される、RNAリポプレックス粒子を投与する実施態様を想定する。RNAは、例えば、本明細書で記載される、抗原またはエピトープを含む、ペプチドまたはタンパク質をコードする。RNAは、樹状細胞など、脾臓内の抗原提示細胞により取り込まれて、ペプチドまたはタンパク質を発現させる。抗原提示細胞による、任意選択のプロセシングおよび提示の後、抗原またはエピトープに対する免疫応答が発生する結果として、抗原またはエピトープに関与する疾患の、予防処置および/または治療処置がもたらされうる。一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子により誘導される免疫応答は、樹状細胞および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞による、抗原またはエピトープなど、この断片の提示と、この提示に起因する、細胞傷害性T細胞の活性化とを含む。例えば、RNAまたはこのプロセッション(procession)産物によりコードされる、ペプチドまたはタンパク質は、抗原提示細胞上に発現する、主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質により提示されうる。次いで、MHCペプチド複合体は、T細胞またはB細胞などの免疫細胞により認識され、それらの活性化をもたらしうる。
【0367】
したがって、一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子内のRNAは、投与の後、脾臓へと送達され、かつ/または脾臓内で発現する。一実施態様では、脾臓の抗原提示細胞を活性化させるために、RNAリポプレックス粒子を、脾臓へと送達する。したがって、一実施態様では、RNAリポプレックス粒子を投与した後で、抗原提示細胞内の、RNAの送達および/またはRNAの発現が生じる。抗原提示細胞は、プロフェッショナルの抗原提示細胞の場合もあり、非プロフェッショナルの抗原提示細胞の場合もある。プロフェッショナルの抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージであることが可能であり、なおより好ましくは、脾臓樹状細胞および/または脾臓マクロファージでありうる。
【0368】
したがって、本開示は、免疫応答、好ましくは、がんに対する免疫応答を誘導または増強するための、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物に関する。
【0369】
さらなる実施態様では、本開示は、抗原、好ましくは、がん疾患に関与する疾患の、予防処置および/または治療処置における使用のための、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物に関する。
【0370】
さらなる実施態様では、本開示は、抗原もしくは抗原のエピトープを、脾臓内の、プロフェッショナルの抗原提示細胞などの抗原提示細胞へと送達するか、または脾臓内の、プロフェッショナルの抗原提示細胞などの抗原提示細胞内で、抗原もしくは抗原のエピトープを発現させるための方法であって、を含む方法。対象へと、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物を投与することに関する。一実施態様では、抗原は、腫瘍抗原である。この態様では、抗原または抗原のエピトープは、好ましくは、RNAリポプレックス粒子内のRNAによりコードされる。
【0371】
一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物を全身投与することは、脾臓内であり、肺内および/または肝臓内ではない、RNAリポプレックス粒子またはRNAのターゲティングおよび/または蓄積を結果としてもたらす。一実施態様では、RNAリポプレックス粒子は、脾臓内にRNAを放出し、かつ/または脾臓内の細胞に侵入する。一実施態様では、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物を全身投与することは、RNAを、脾臓内の抗原提示細胞へと送達する。具体的な実施態様では、脾臓内の抗原提示細胞は、樹状細胞またはマクロファージである。
【0372】
さらなる実施態様では、本開示は、対象における免疫応答を誘導または増強するための方法であって、対象へと、本明細書で記載されるRNAリポプレックス粒子、またはRNAリポプレックス粒子を含む薬学的組成物を投与することを含む方法に関する。例示的実施態様では、免疫応答は、がんに対する。
【0373】
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によりもたらされる、食作用性細胞の亜群を指す。炎症、免疫サイトカイン、または微生物生成物により活性化するマクロファージは、病原体の分解を結果としてもたらす、加水分解攻撃および酸化攻撃により、マクロファージ内の、外来の病原体を、非特異的に飲み込み、死滅させる。分解されたタンパク質に由来するペプチドは、マクロファージ細胞表面上に表示され、ここで、T細胞により認識され、B細胞表面上の抗体と、直接相互作用する結果として、T細胞およびB細胞の活性化、ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらすことができる。マクロファージは、抗原提示細胞のクラスに属する。一実施態様では、マクロファージは、脾臓マクロファージである。
【0374】
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する、食作用性細胞の、別の亜型を指す。一実施態様では、樹状細胞は、骨髄造血前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞はまず、未成熟樹状細胞へと形質転換する。これらの未成熟細胞は、高食作用活性および低T細胞活性化の潜在的可能性により特徴づけられる。未成熟樹状細胞は、周囲の環境を、ウイルスおよび細菌などの病原体について、恒常的にサンプリングする。未成熟樹状細胞は、提示しうる抗原と接触すると、成熟樹状細胞へと活性化するようになり、脾臓またはリンパ節へと遊走し始める。未成熟樹状細胞は、病原体を貪食し、それらのタンパク質を、小片へと分解し、成熟すると、MHC分子を使用して、これらの断片を、それらの細胞表面へと提示する。同時に、DCは、CD80、CD86、およびCD40など、T細胞の活性化において、共受容体として作用する、細胞表面受容体を上方調節し、T細胞を活性化させるそれらの能力を、大幅に増強する。DCはまた、樹状細胞が、血流を介して、脾臓へと移動するか、またはリンパ系を介して、リンパ節へと移動するように誘導する走化性受容体である、CCR7も上方調節する。DCは、抗原提示細胞として作用し、それらに、非抗原特異的な共刺激シグナルと共に、抗原を提示することにより、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞のほか、B細胞も活性化させる。したがって、樹状細胞は、T細胞関連免疫応答またはB細胞関連免疫応答を、能動的に誘導しうる。一実施態様では、樹状細胞は、脾臓樹状細胞である。
【0375】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、少なくとも1つの抗原または抗原性断片を、その細胞表面上に(または、細胞表面において)表示し、取り込み、かつ/または提示することが可能な、様々な細胞のうちの1つの細胞である。抗原提示細胞は、プロフェッショナルの抗原提示細胞と、非プロフェッショナルの抗原提示細胞とに識別することができる。
【0376】
「プロフェッショナルの抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に要求される、主要組織適合性複合体クラスII(MHCクラスII)分子を、構成的に発現させる、抗原提示細胞に関する。T細胞が、抗原提示細胞の膜上の、MHCクラスII分子複合体と相互作用すると、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する、共刺激分子を産生する。プロフェッショナルの抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
【0377】
「非プロフェッショナルの抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を、構成的には発現させないが、インターフェロンガンマなど、ある特定のサイトカインにより刺激されると、これを発現させる、抗原提示細胞に関する。例示的な、非プロフェッショナルの抗原提示細胞は、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞、または血管内皮細胞を含む。
【0378】
「抗原のプロセシング」とは、抗原の、前記抗原の断片である、プロセッション(procession)産物への分解(例えば、タンパク質の、ペプチドへの分解)と、抗原提示細胞などの細胞による、特異的T細胞への提示のための、これらの断片のうちの1つまたは複数の、MHC分子との会合(例えば、結合を介する)とを指す。
【0379】
「疾患に関与する抗原」または「疾患に関与するエピトープ」という用語は、抗原またはエピトープに関与する任意の疾患、例えば、抗原またはエピトープの存在により特徴づけられる疾患を指す。抗原またはエピトープに関与する疾患は、感染性疾患の場合もあり、がん疾患の場合もあり、単に、がんの場合もある。上記で言及した通り、抗原は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原など、疾患関連抗原であることが可能であり、エピトープは、このような抗原に由来しうる。
【0380】
「感染性疾患」という用語は、個体から個体へと伝染される場合もあり、生物体から生物体へと伝染される場合もあり、微生物性作用物質(例えば、一般的な風邪)により引き起こされる、任意の疾患を指す。当該技術分野では、感染性疾患が公知であり、例えば、ウイルス、細菌、および寄生虫のそれぞれにより引き起こされる、ウイルス疾患、細菌性疾患、または寄生虫病を含む。この点で、感染性疾患は、例えば、肝炎、性感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C字型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、トリインフルエンザ、およびインフルエンザでありうる。
【0381】
「がん疾患」または「がん」という用語は、典型的に、調節不能の細胞増殖により特徴づけられる、個体における生理的状態を指すか、またはこれについて記載する。がんの例は、癌、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含むがこれらに限定されない。より特定すると、このようながんの例は、骨がん、血液がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、性生殖器の癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌システムのがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、膀胱がん、腎がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、神経外胚葉がん、脊椎腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫を含む。本開示に従う「がん」という用語はまた、がん転移も含む。
【0382】
がん処置における組合せ戦略は、単剤療法の効果より、大幅に強力でありうる、結果として得られる相乗効果に起因して、所望でありうる。一実施態様では、薬学的組成物を、免疫療法剤と共に投与する。本明細書で使用される「免疫療法剤」は、特異的な免疫応答および/または免疫エフェクター機能の活性化に関与しうる、任意の薬剤に関する。本開示は、免疫療法剤としての抗体の使用を想定する。理論に束縛されることを望まないが、抗体は、アポトーシスを誘導するか、シグナル伝達経路の構成要素をブロックするか、または腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む、多様な機構を介して、がん細胞に対して治療効果を達成することが可能である。ある特定の実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して、細胞死を誘導しうるか、または、補体タンパク質に結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)として公知の、直接的な細胞傷害性をもたらす。本開示と組み合わせて使用されうる、抗がん抗体および潜在的な抗体標的(カッコ内)の非限定的な例は、アバゴボマブ(CA-125)、アブシキシマブ(CD41)、アデカツムマブ(EpCAM)、アフツズマブ(CD20)、アラシズマブペゴル(VEGFR2)、ペンテト酸アルツモマブ(CEA)、アマツキシマブ(MORAb-009)、アナツモマブマフェナトクス(TAG-72)、アポリズマブ(HLA-DR)、アルシツモマブ(CEA)、アテゾリズマブ(PD-L1)、バビツキシマブ(ホスファチジルセリン)、ベクツモマブ(CD22)、ベリムマブ(BAFF)、ベバシズマブ(VEGF-A)、ビバツズマブメルタンシン(CD44v6)、ブリナツモマブ(CD19)、ブレンツキシマブベドチン(CD30であるTNFRSF8)、カンツズマブメルタンシン(ムチンCanAg)、カンツズマブラバタンシン(MUC1)、カプロマブペンデチド(前立腺癌細胞)、カルルマブ(CNT0888)、カツマキソマブ(EpCAM、CD3)、セツキシマブ(EGFR)、シタツズマブボガトクス(EpCAM)、シクスツムマブ(IGF-1受容体)、クラウジキシマブ(Claudin)、クリバツズマブテトラキセタン(MUC1)、コナツムマブ(TRAIL-R2)、ダセツズマブ(CD40)、ダロツズマブ(インスリン様成長因子I受容体)、デノスマブ(RANKL)、デツモマブ(B細胞リンパ腫細胞)、ドロジツマブ(DR5)、エクロメキシマブ(GD3ガングリオシド)、エドレコロマブ(EpCAM)、エロツズマブ(SLAMF7)、エナバツズマブ(PDL192)、エンシツキシマブ(NPC-1C)、エプラツズマブ(CD22)、エルツマキソマブ(HER2/neu、CD3)、エタラシズマブ(インテグリンανβ3)、ファレツズマブ(葉酸受容体1)、FBTA05(CD20)、フィクラツズマブ(SCH900105)、フィギツムマブ(IGF-1受容体)、フランボツマブ(糖タンパク質75)、フレソリムマブ(TGF-β)、ガリキシマブ(CD80)、ガニツマブ(IGF-I)、ゲムツズマブオゾガミシン(CD33)、ゲボキズマブ(IL-Ιβ)、ギレンツキシマブ(炭酸脱水酵素9(CA-IX))、グレムバツムマブベドチン(GPNMB)、イブリツモマブチウキセタン(CD20)、イクルクマブ(VEGFR-1)、イゴボマブ(Igoboma)(CA-125)、インダツキシマブラブタンシン(SDC1)、インテツムマブ(CD51)、イノツズマブオゾガマイシン(CD22)、イピリムマブ(CD152)、イラツムマブ(CD30)、ラベツズマブ(CEA)、レキサツムマブ(TRAIL-R2)、リビビルマブ(B型肝炎表面抗原)、リンツズマブ(CD33)、ロルボツズマブメルタンシン(CD56)、ルカツムマブ(CD40)、ルミリキシマブ(CD23)、マパツムマブ(TRAIL-R1)、マツズマブ(EGFR)、メポリズマブ(IL-5)、ミラツズマブ(CD74)、ミツモマブ(GD3ガングリオシド)、モガムリズマブ(CCR4)、モキセツモマブパスドトクス(CD22)、ナコロマブタフェナトクス(C242抗原)、ナプツモマブエスタフェナトクス(5T4)、ナマツマブ(RON)、ネシツムマブ(EGFR)、ニモツズマブ(EGFR)、ニボルマブ(IgG4)、オファツムマブ(CD20)、オララツマブ(PDGF-Ra)、オナルツズマブ(ヒト散乱因子受容体キナーゼ)、オポルツズマブモナトクス(EpCAM)、オレゴボマブ(CA-125)、オキセルマブ(OX-40)、パニツムマブ(EGFR)、パトリツマブ(HER3)、ペムツモマブ(MUC1)、ペルツズマブ(HER2/neu)、ピンツモマブ(腺癌抗原)、プリツムマブ(ビメンチン)、ラコツモマブ(N-グリコリルノイラミン酸)、ラドレツマブ(フィブロネクチン細胞外ドメインB)、ラフィビルマブ(狂犬病ウイルス糖タンパク質)、ラムシルマブ(VEGFR2)、リロツムマブ(HGF)、リツキシマブ(CD20)、ロバツムマブ(IGF-1受容体)、サマリズマブ(CD200)、シブロツズマブ(FAP)、シリツキシマブ(IL-6)、タバルマブ(BAFF)、タカツズマブテトラキセタン(アルファ-フェトプロテイン)、タプリツモマブパプトクス(CD19)、テナツモマブ(テネイシンC)、テプロツムマブ(CD221)、チシリムマブ(CTLA-4)、チガツズマブ(TRAIL-R2)、TNX-650(IL-13)、トシツモマブ(CD20)、トラスツズマブ(HER2/neu)、TRBS07(GD2)、トレメリムマブ(CTLA-4)、ツコツズマブセルモロイキン(EpCAM)、ユビリツキシマブ(MS4A1)、ウレルマブ(4-1BB)、ボロシキシマブ(インテグリンα5β1)、ボツムマブ(腫瘍抗原CTAA16.88)、ザルツムマブ(EGFR)、およびザノリムマブ(CD4)を含む。
【0383】
一実施態様では、免疫療法剤は、PD-1軸結合性アンタゴニストである。PD-1軸結合性アンタゴニストは、PD-1結合性アンタゴニスト、PD-L1結合性アンタゴニスト、およびPD-L2結合性アンタゴニストを含むがこれらに限定されない。「PD-1」の別称は、CD279およびSLEB2を含む。「PD-L1」の別称は、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hを含む。「PD-L2」の別称は、B7-DC、Btdc、およびCD273を含む。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンドの結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的態様では、PD-1リガンドの結合パートナーは、PD-L1(PD-Ll)、および/またはPD-L2である。別の実施態様では、PD-L1(PD-Ll)結合性アンタゴニストは、PD-L1(PD-Ll)の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な実施態様では、PD-L1(PD-Ll)の結合パートナーは、PD-1および/またはB7-1である。別の実施態様では、PD-L2結合性アンタゴニストは、PD-L2の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な実施態様では、PD-L2の結合パートナーは、PD-1である。PD-1結合性アンタゴニストは、抗体、この抗原結合性断片であるイムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドでありうる。一部の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。抗PD-1抗体の例は、限定せずに述べると、MDX-1106(ニボルマブ、OPDIVO)、Merck3475(MK-3475、ペムブロリズマブ、KEYTRUDA)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、BGB-108、およびBGB-A317を含む。
【0384】
一実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、定常領域へと融合させた、PD-L1またはPD-L2の、細胞外部分またはPD-1結合性部分を含む、イムノアドヘシンである。一実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、WO2010/027827およびWO2011/066342において記載された、融合可溶型受容体である、AMP-224(また、B7-DC Igとしても公知であり、PD-L2-Fcである)である。
【0385】
一実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、限定せずに述べると、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MEDI4736(ヅルバルマブ)、MDX-1105、およびMSB0010718C(アベルマブ)を含む、抗PD-L1(PD-Ll)抗体である。
【0386】
一実施態様では、免疫療法剤は、PD-1結合性アンタゴニストである。別の実施態様では、PD-1結合性アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。例示的実施態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブである。
【0387】
本明細書で参照される文献および研究の引用は、前述のうちのいずれかが、関連の先行技術であることの容認としては意図されない。これらの文献の内容についての、全ての言明は、本出願者らに入手可能な情報に基づくものであり、これらの文献の内容の正確さについての、いかなる容認も構成しない。
【0388】
以下の記載は、当業者が、多様な実施態様を行い、使用することを可能とするように提示される。具体的なデバイス、技法、および適用についての記載は、例だけとして提示される。当業者には、本明細書で記載される例に対する、多様な改変が、容易に明らかとなり、本明細書で規定される、一般的原理は、多様な実施態様の精神および範囲から逸脱しない限り、他の例および適用へも適用することができる。したがって、多様な実施態様は、本明細書で記載され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と符合する範囲を与えられるものとする。
【実施例0389】
実施例1
材料
本明細書の後出で記載される実験のために使用される、重要な材料は、
であった。
【0390】
実施例2
脂質混合物の調製
DOTMA/DOPE脂質混合物を、それぞれ、脂質モル比を2:1として、異なる、エタノール中の脂質の濃度で調製する。溶液を、以下の通りに調製する:
・DOPE脂質を秤量する。
・DOTMA/DOPEの、%によるモル比を、2:1に保つ、DOTMAの量を計算する。
・DOTMA脂質を秤量する。
・脂質を溶解させるのに必要な無水エタノールの量を計算する。
・無水エタノールを秤量する。
・37℃の水浴(bad)を用いて、脂質を、エタノール中に溶解させる。
【0391】
DOPEおよびDOPE/DOTMAの、エタノール中の溶解度は、エタノール中に300mMのDOPE溶液、または330mMのDOPE/DOTMA(66:33)溶液を調製することにより探索した。脂質は、脂質溶液を、37℃で、20分間インキュベートすることにより溶解させた。DOPE溶液を、17000Gで、1時間遠心分離し、DOPE濃度は、上清中で、HPLCにより測定した。DOTMA/DOPE溶液は、0.22μmのPESシリンジフィルターを通して濾過し、脂質濃度は、濾液中で、HPLCにより測定した。
【0392】
他の脂質を、出発物質として使用し、かつ/または他のモル比を計算することを条件として、本実施例で記載される基礎工程に従うことにより、さらなる脂質混合物もまた調製することができる。
【0393】
実施例3
リポソームの調製
リポソームは、以下の通りに、エタノール注入により調製した:0.9×40mmの注射針を装備した、1mLのシリンジを用いて、エタノール中に0.2mLのDOTM/DOPE(または他の脂質溶液)を、120rpmの攪拌下で、9.8mLの水へと注入した。リポソームコロイドを、30分間攪拌した。リポソームは、0.45もしくは1.2もしくは5μmのCAシリンジフィルターを介するか、またはこれらを介さずに濾過した。リポソームコロイドは、4~8℃で保管した。DOTMA/DOPE脂質溶液は、50mMずつの中間段階を伴う、100~400mMにわたる、異なる総脂質濃度の、66:33の%によるモル比で調製した。
【0394】
実施例4
RNAリポプレックスの調製
RNAリポプレックス製剤は、以下の通り、まず、RNA溶液(例えば、luc-RNA溶液)を、NaCl溶液と混合し、luc-RNAをあらかじめ濃縮することにより調製した。この後で、リポソームコロイドと、luc-RNA-NaCl溶液とを混合して、RNAリポプレックスを形成した。RNAリポプレックス製剤は、室温で、10分間インキュベートし、4~8℃で保管した。異なるRNAリポプレックス製剤を、例えば、0.65のN/P比で調製した。RNAの、これらの異なるRNAリポプレックス製剤中の濃度は、0.1mg/mLであり、NaCl濃度は、50mMであった。RNAリポプレックスを調製するために、異なるリポソーム前駆体(異なるサイズ)を使用した。
【0395】
実施例5
動的光散乱
リポソームサイズおよびRNAリポプレックスサイズは、Nicomp測定器(PSS、Santa Barbara、USA)を使用する、公知の動的光散乱(DLS)法により測定した。リポソーム試料は、水により、1mMの全脂質濃度へと希釈した。RNAリポプレックス試料は、0.9%のNaCl溶液により、1対5に希釈した。試料は、5×50mmの培養チューブ(Kimble、USA)内で測定した。
【0396】
実施例6
光掩蔽:動的光散乱
0.5~5μmの間のサイズ範囲内の、異なるリポソーム製剤およびRNAリポプレックス製剤についての、粒子の計数/測定は、Accusizer A7000測定器(PSS、Santa Barbara、USA)を使用して実施した。5mLの体積(2.5μLの試料/20mLの遊離粒子水)について、3回の測定を実施した。得られた結果は、3回の測定による粒子の量の平均値を表した。
【0397】
実施例7
小角度X線散乱
異なるリポソーム前駆体により調製される、異なるRNAリポプレックス製剤の内部構造パラメータは、小角度X線散乱(SAXS)により測定した。SAXSとは、材料を通過する場合の、X線の弾性散乱挙動を解析し、それらの小角度の散乱を記録することにより、試料中のナノスケールの密度差を定量しうる技法である。あらゆる被験RNA製剤について、長さパラメータと、d間隔パラメータとの相関を計算した。RNAリポプレックス製剤は、0.65のN/P比、0.1mg/mLのRNA、および112mMのNaClにより調製した。
【0398】
実施例8
アガロースゲル電気泳動
遊離RNAの、異なるRNAリポプレックス試料中の量は、ゲル電気泳動により測定した。次亜塩素酸ナトリウムを含有する、1%のアガロースゲルを使用して、測定を実施した。RNAリポプレックス試料は、DNAローディングダイにより、1:6に希釈した。12μLの、希釈RNAリポプレックス試料を、アガロースゲルへと、注意深くロードした。電気泳動を、80V、40分間の試行時間で実施した。
【0399】
実施例9
HPLC
異なるリポソーム製剤中の脂質濃度は、Sunfire C18 2.5μm 4.6×75mmカラム(Waters、Massachusetts、USA)と、205nmの波長とを使用する、HPLC(Agilent technologies、Santa Clara、USA)により測定した。移動相Aは、70%のメタノール/30%のイソプロパノール/0.1%のTFAの混合物であり、移動相Bは、55%のメタノール/15%のイソプロパノール/30%の水/0.1%のTFAの混合物であった。リポソーム試料は、水により、3mMの全脂質濃度へと希釈するか、または希釈しないでおいた。
【0400】
実施例10
細胞培養物:インビトロにおける、樹状細胞内のRNAトランスフェクション
RNAリポプレックス製剤は、異なるリポソーム前駆体およびluc-RNAにより調製した。RNAリポプレックスは、細胞培養実験のために、0.9%のNaCl溶液により、0.01mg/mLのRNAへと希釈した。異なるRNAリポプレックス製剤の、RNAトランスフェクション効率は、培地中または全血中に播種された、ヒト樹状細胞内で探索した。
【0401】
実施例11
動物モデル:脾臓のターゲティングおよび樹状細胞内のRNAトランスフェクション
異なるRNAリポプレックス製剤のトランスフェクション効率は、BALB/cマウスにおいて探索した。20μgの製剤化RNAリポプレックスを、眼窩後注射し、樹状細胞(脾臓標的)内のルシフェラーゼ発現を、6時間後に測定した。RNAリポプレックスは、luc-RNAおよび異なるリポソーム前駆体、生コロイドから得られた、小型または大型のリポソーム、ならびに0.45μmの濾過の後における小型および大型のリポソーム、0.65のN/P比、ならびに112mMのNaClにより調製した。
【0402】
実施例12
溶解度試験
高濃度(過飽和状態)のDOPE含有溶液を調製し、リポソームを製造するためのエタノール注入(次節)に使用しうるのかどうかを調べた。この溶解度試験シリーズにおいて得られる結果を、表1および2に示す。
【0403】
これらの結果に従い、異なる供給元から購入されたDOPEは、約50~60mM(室温)の、エタノール中の平衡溶解度を有する。しかし、カチオン性脂質であるDOTMAとの共溶液を調製する場合、平衡溶解度は、著明に、例えば、モル比を66:33とするDOTMA/DOPE共溶液を使用する場合、約90~100mMへと増大する。
【0404】
実施例13
異なるサイズのリポソームの製造
リポソームは、実施例3で記載したプロトコールを使用する、エタノール注入により製造した。エタノール注入後に、濾過法は実施しなかった。他の全てのパラメータを固定したまま、エタノール中の脂質の濃度を変動させた。リポソームサイズおよびは、実施例5および6に記載した、動的光散乱(DLS)により測定した。
【0405】
例として、%によるモル比を66:33とするDOTMA/DOPE混合物から得られた、リポソームに関する結果を、表3(下記)ならびに
図1および2に示す。
【0406】
見られる通り、得られたリポソームのサイズ(Z平均)は、エタノール注入に使用されるエタノール溶液中の脂質濃度と共に増大する。したがって、エタノール中の脂質の濃度は、リポソームのサイズを制御するために、効率的に使用することができる。興味深いことに、サイズの変化は、DOPE濃度が、エタノール単独中のDOPEの平衡溶解度を下回る場合、およびこれを上回る場合に最も顕著であった。DOPE濃度が、50mM(150mMの全脂質濃度)を上回った場合、得られるリポソームサイズは、<50nmから、500nmを超えるサイズへと、大幅に増大した(
図1)。しかし、溶解度限界を上回ってもまた、リポソームサイズは、脂質濃度の増大と共に、さらに単調に増大した。
【0407】
全てのリポソーム製剤中には、0.5μmのリポソーム画分が存在し、このリポソーム画分は、300mMの脂質溶液により調製されたリポソーム内では増大し、低脂質濃度および高脂質濃度で調製されたリポソーム内では減少した。さらに、高脂質濃度で調製されたリポソーム製剤中では、0.6μmおよび0.7μmのリポソーム画分も測定された(
図2)。高濃度の脂質溶液へのエタノール注入後には、大型のリポソームが形成された。形成されたリポソームの総量は、脂質溶液中の低脂質濃度で調製されたリポソーム製剤と比較して低量であった。得られた結果は、3回の測定による粒子の量の平均値を表した。
【0408】
実施例14
異なるサイズのリポソームからの、RNAリポプレックスの製造
RNAリポプレックスは、他の全てのパラメータを固定したまま、それらの形成のためのリポソームのサイズを変動させる、異なるリポソーム前駆体を使用して、実施例4に記載される通りに製造した。リポソームサイズ(z平均)および多分散指数(PDI)は、実施例5および6に記載される、動的光散乱(DLS)実験の経過において決定した。
【0409】
リポソーム調製物についての、脂質濃度の、RNAリポプレックスサイズ(Z平均)に対する影響(および、したがって、リポソーム前駆体サイズに対する影響)に関する結果を、表4(下記)、ならびに対応する
図3および4に示す。
【0410】
この試験シリーズに従い、小型のリポソームから得られたRNAリポプレックスは、大型のリポソームに由来するRNAリポプレックスより小型であった。300mMおよびこれを上回る溶液により製造したリポソームから得られたRNAリポプレックスは、150mMの原液から得られたリポソームに由来するRNAリポプレックスの約2倍であった。大型のリポソームにより調製された、全てのRNAリポプレックス内で、リポソームサイズと、RNAリポプレックスサイズとの相関は見出されなかった(
図3)。
【0411】
得られたRNAリポプレックスの量は、それらの形成のために使用されるリポソームのサイズと共に増大した。大型のリポソームにより調製された製剤中では、高量の大型RNAリポプレックス粒子が測定されることから、動的光散乱測定から得られたデータが確認される(
図4)。得られた結果は、3回の測定による粒子の量の平均値を表した。
【0412】
実施例15
異なるリポプレックスによる小角度X線散乱(SAXS)
小角度のX線散乱実験は、異なる濃度の原液に由来するリポソームから得られたRNAリポプレックスにより、記載される通りに実施した。例えば、RNAリポプレックスは、DOTMA/DOPEを、2/1(モル/モル)とするリポソーム、および電荷比を1.3対2とするRNAから形成した。リポソームは、エタノール中の脂質の濃度を、100mM、300mM、および400mMとして、記載される通りに、エタノール注入により製造した。
【0413】
4/1の電荷比(上)、および1.3/2の電荷比で調製されたリポソームにより形成されたRNAリポプレックスによる小角度X線散乱測定から得られた回折曲線であって、リポプレックス形成のためのリポソームが、エタノール中に、400mM、300mM、および100mMの脂質原液により得られた場合の回折曲線を、
図5に示す。
【0414】
散乱パターンは、約1nm
-1の、単一のブラッグピークを含む。これは、過剰量の(負に帯電した)RNAを、リポプレックス形成のために使用した、脾臓ターゲティングリポプレックスについての、典型的な回折パターンである。リポプレックスが、負に帯電していない場合、散乱プロファイルは、完全に異なる。例として、電荷比を±4/1とするRNAリポプレックスを測定したところ、はるかに曖昧なピークが見出された。同様に、二次ピークも識別可能である(低強度であるが)。実際、リポプレックスのx線散乱プロファイルの一般的特徴は、相状態に応じて、等距離の場合もあり、他の間隔を有する場合もある、いくつかのピークが存在することである。ここでは、これに対して、単一のピークだけが決定される。さらに、ピーク幅も、元来、リポソームを製造するために使用された、原液の濃度に応じて変化する。エタノール中の濃度が高い場合、ピーク幅は、小さかった。ブラッグピークは、リポプレックスが、規則的に配置されており、ここで、反復距離(d間隔)は、
[式中、qは、n次とし、q
maxを、それぞれのブラッグピークが最大となる位置とし、λを波長とし、θを角度とする、
による運動量移行である]
としてのピーク位置から与えられることを指し示す。ブラッグピークに由来しうるd間隔は、6.5nmのオーダーである。
【0415】
ピーク幅であるΔqは、スタック内の反復単位の数の増大と共に減少する。液晶アレイについて、相関長は、
として与えられうる。本明細書におけるリポプレックス生成物では、散乱パターンの、前述の、リポソームを製造するための、エタノール中の脂質の濃度、および生物活性との明らかな相関を導出することができる。ピーク位置は、不変であるが、ピーク幅は、適用されたエタノール中の脂質の濃度と共に、単調に変化する。エタノール中の脂質の濃度の増大(リポソームサイズの増大をもたらす)は、ピーク幅の減少に対応し、したがって、大きな相関長に対応する。同時に、生物活性も、相関長の増大と共に増大する。したがって、活性を改善した、記載されるリポプレックスであって、その製造のためにエタノール中に高濃度の脂質原液を使用し、使用したリポソームから製造されるリポプレックスは、明らかな構造的特徴により、区別することができる。加えて、非対称場流動分画(AF4)のような、他の方法によってもまた、活性を改善した、記載されるリポプレックスを、低活性のリポプレックスから区別することができる。
【0416】
実施例16
ヒト樹状細胞内の、RNAリポプレックスのトランスフェクション効率
luc-RNAリポプレックスは、他の全てのパラメータを固定したまま、それらの形成のためのリポソームのサイズを変動させる(それらの形成のための出発脂質濃度を変動させることにより)、異なるリポソーム前駆体を使用して、記載される通りに製造した。その後、異なるRNAリポプレックス製剤の、RNAトランスフェクション効率は、培地中または全血中に播種された、ヒト樹状細胞内で探索した。
【0417】
ルシフェラーゼの発現と、異なるリポソーム前駆体により調製される、異なるRNAリポプレックスの、対応する生物活性とを測定することにより決定される、インビトロ(ヒト樹状細胞)におけるトランスフェクション効率を例示する結果を、
図6に示す。
【0418】
生物活性(インビトロにおけるRNAトランスフェクション)は、RNAリポプレックスの相関長と共に、単調に増大する。大きな相関長は、RNAリポプレックス内の脂質二重層の、より均一な集団を指し示す。
【0419】
実施例17
異なるリポプレックスの、非対称流動場流動分画
懸濁液中の粒子を、分画および分離するための、今日の、一般的かつ最新の方法である、非対称流動場流動分画(AF4)を使用して、RNAリポプレックスの、さらなる差違を決定した。AF4理論に従えば、同様の特性および同等のサイズを伴う粒子は、同時に溶出するとされる。
【0420】
エタノール中に150mMの原液、またはエタノール中に400mMの原液から製造された、2つの異なる種類のリポソームに由来するリポプレックスの、AF4測定に関する一部の結果を、
図7に示す。
【0421】
まとめると、場流動分画の測定は、エタノール中に150mMの脂質濃度によるリポソームに由来するリポプレックスが、400mMの脂質濃度によるリポプレックスと、定性的、かつ、定量的に異なることを裏付ける。150mMに由来するリポプレックスは、小型であるが、直感に反し、後で溶出するので、2つの部分の間には、定性的差違(形状、培地との相互作用、電荷)が見られるはずである。150mMのエタノールによるRNAリポプレックスは、後で溶出するが、サイズは小さい。これは、エタノール中に150mMの脂質溶液を使用したリポソームから製造された、リポソームに由来するRNAリポプレックスは、平均で、エタノール中に400mMの脂質に由来するRNAリポプレックスより小型であることを指し示す。同じサイズであってもなお、150mmに由来するリポプレックスは、400mMに由来するリポプレックスと異なる物理化学的特性を有する。これらの、サイズおよび物理化学的特性の差違は、400mMに由来するRNAリポプレックスの高生物活性と相関する。
【0422】
実施例18
インビトロにおけるRNAリポプレックスの生物活性
記載される通りに、リポソーム、異なる脂質原液、および/または異なる脂質濃度から調製された、異なるサイズの、ルシフェラーゼをコードするRNAリポプレックスの、細胞培養物へのトランスフェクション実験(樹状細胞)により決定される通り、ルシフェラーゼシグナルは、したがって、生物活性は、脂質の出発濃度と共に、単調に増大し、したがって、RNAリポプレックス形成のために使用されたリポソームサイズと共に、単調に増大する。対応する結果を、
図6、8、および9に示す。
【0423】
まとめると、リポソーム製造のために、高脂質濃度から作出されたRNAリポプレックスは、インビトロにおいて、著明な高活性を呈示する。
【0424】
実施例19
インビボにおけるRNAリポプレックスの生物活性
異なるサイズのリポソームから調製された、ルシフェラーゼをコードするRNAリポプレックスの、細胞培養物へのトランスフェクション実験(樹状細胞)により決定される通り、大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスは、著明な高ルシフェラーゼの発現と、対応する生物活性とを結果としてもたらす。
【0425】
この試験シリーズの非限定的な例を、
図10および11に示す。360mMの生コロイドに由来する、大型のリポソームにより調製されたRNAリポプレックスは、200mMの生コロイドに由来する小型のRNAリポプレックスより著明な、インビボにおける発現シグナルをもたらす。
【0426】
実施例20
RNAリポプレックスの自動式製造
RNAリポプレックスの自動式バッチ製造のために、
図12に示される、一般に適用可能な手順を開発した。全ての工程は、材料の、安全な無菌操作を可能とする、あらかじめ滅菌した、単回使用の流路を使用して実施する。まず、RNAの濃度を、リポソーム濃度に照らして調整し、RNAを濃縮するために、NaClを添加する。これにより、RNA溶液を、RNA濃度に照らして調整することから、同一体積のRNAと、リポソームとの混合を可能とする。RNAおよびリポソーム溶液の両方を、大容量シリンジへと移し、両方のシリンジを、単一のシリンジポンプへと取り付け、シリンジの2つのピストンを、同時に駆動する。RNAリポプレックス形成の後、低温保護剤溶液を添加し、薬物生成物の最終濃度を調整する。薬物生成物を、ガラス製のボトルへと充填した後で、薬物生成物を、長期保管のための濃縮物として凍結させる。
【0427】
RNAリポプレックスの、極めて重要な品質属性は、RNAとリポソームとの混合比により調整される電荷比である。混合比の効率的な制御を可能とする、RNAリポプレックスのための、自動式でスケーリング可能な産業的製造法を開発した。小スケール(≦10リットル)の製造のための方法では、RNAまたはリポソームを充填した、2つの大容量シリンジを、同時に駆動する、単一の灌流ポンプを使用することにより、リポソームおよびRNAを含有する、同一な体積の、2つの水溶液の混合の制御を達成する。大容量(≧10リットル)の、等積駆出のためには、加圧容器、膜ポンプ、ギアポンプ、磁気浮揚ポンプ、または蠕動ポンプとしてのポンピングシステムを、流速のオンライン制御およびリアルタイム調整のためのフィードバックループを伴う流速センサーと組み合わせて使用する。
【0428】
自動式のRNAリポプレックス製造のためには、RNAおよびリポソームを含有する水溶液の効率的な混合を確保する、静的混合要素が要求される。混合を増強するための、蛇行路および埋込み構造を含有する、市販のマイクロ流体型混合要素のほか、同等なアーキテクチャーを伴う試作の混合要素は、製造時に閉塞することが見出された。したがって、これらの混合要素は、RNAリポプレックスの自動式製造に適さない。直径を1.2~50.0mmの間とする、Y字型混合要素およびT字型混合要素は、RNAリポプレックスの自動式製造に適することが見出された。
【0429】
方法:RNAリポプレックスは、異なる混合要素(表1)を使用することにより調製した。リポプレックスの製造時に、作業者が、混合要素を観察し、材料の沈着または目詰まりを記録した。
【0430】
結果:市販のマイクロ流体チップ(NanoAssemblr(商標)、Precision Nanosystem、Vancouver、Canada)では、3mLのRNAリポプレックスを調製した後で目詰まりが観察された。さらなる、試作のマイクロ流体混合要素(表5)についての試験時にも、同様の観察がなされた。市販の混合要素と同等なアーキテクチャーを含む、全ての(マイクロ)流体型混合要素について、沈着、特に、要素の閉塞を観察しえたのに対し、Y字型混合要素またはT字型混合要素を使用する場合には、観察がなされなかった。直径を2.4mmとする、記載されるy字型混合要素のほか、大直径の混合要素についても調べた。Y字型混合要素の直径には、制限が見出されなかったので、記載される方法は、y字型混合要素の、最大で50mmの直径で、RNAリポプレックスの調製に適すると考えられる。
【0431】
Y字型混合要素またはT字型混合要素を使用する場合、十分な混合を達成するために、最小限の流速が要求される。RNAリポプレックスの調製は、内径を1.6~50mmとする、Y字型混合要素またはT字型混合要素を使用することから、RNAおよびリポソームを含有する、2つの水溶液を混合することにより実施することができる。効率的な混合を確保するために、混合のための流速から得られるレイノルズ数は、約300より低値とするべきではない。効率的な混合を確保するために、流速の、混合要素の直径に対する比は、約150より低値とするべきではない。約2100までのレイノルズ数について実験し、自動式製造に適することを見出した。データは、高流速もまた実施可能であることを裏付ける。これは、レイノルズ数を2100とするとき、条件は、既に、乱流モードであり、したがって、高流速であってもなお、同様の混合条件であることが予測される事実に由来する。
【0432】
方法:RNAリポプレックスは、単一の灌流ポンプを使用して、RNA溶液およびリポソーム溶液を駆出することにより調製した。RNAリポプレックスの形成は、2.4および3.2mmの内径を含む、代表的なY字型混合要素により実施した。RNAリポプレックスの粒子サイズおよび多分散性は、光子相関分光(PCS)測定により解析した。流速と混合要素の直径との組合せの探索から得られるレイノルズ数は、式を使用して、理論的に計算した(
図13)。流速の、混合要素の直径に対する比は、流速(cm
3/分)を、混合要素の直径(cm)で除することにより計算した。因数は、無次元数として与えられる。
【0433】
結果:約300を下回るレイノルズ数の理論計算値を結果としてもたらす、流速と混合要素との組合せにより、RNAリポプレックスを製造する場合に、粒子サイズおよび多分散性を増大させたRNAリポプレックスが形成される(
図13および表6)。理論的に、所望の粒子特性を伴うRNAリポプレックスの、再現可能な形成を確保するためには、レイノルズ数は、約300の最小値(
図13および14および表6)であるべきであり、流速の、混合要素の直径に対する比は、約150の最小値であるべきである。2.4mmの混合要素が、広範な流速(60~240mL/分)において、RNAおよびリポソームの、効率的、かつ、再現可能な混合を可能とすることが見出された。これらの研究では、上限が見出されなかったので、レイノルズ数または流速の、混合要素の直径に対する比の上限は予測されない。
【0434】
実施例21
RNA濃度の影響
RNAリポプレックスは、代表的な寸法(2.4mm)を伴う、y字型混合要素により調製した。現行の設定で、RNAリポプレックスを調製しうる濃度範囲を同定するために、RNA濃度を、0.05mg/mL~0.5mg/mLにおいて、体系的に変動させた。形成されたリポプレックスの安定性を探索するために、最終的な製剤を、0.05mg/mLのRNA、22%のショ糖、および20mMのNaClへと調整し、製剤を、3回にわたり凍結させた。
【0435】
RNAリポプレックス形成時におけるRNA濃度を、0.1~0.5mg/mLの間とする、RNAリポプレックスの形成は、同等な粒子特性(
図15)を結果としてもたらす。このような粒子の粒子特性はまた、3時間にわたる凍結時にも保存されたことから、RNA濃度の変動に関して、極めて頑健な製造法が指し示される(
図16)。RNAリポプレックスの調製時におけるRNA濃度の限界については、示唆がなされていないので、記載される設定は、RNA濃度を、最大で5mg/mLとするときの、RNAリポプレックスの調製に適すると考えられる。
【0436】
RNAリポプレックスの自動式製造のための、記載される方法は、異なる電荷比を伴う、安定的なRNAリポプレックスの、再現可能な調製を可能とする。
【0437】
方法:RNAリポプレックスの半自動式調製の、電荷比(ration)に関する頑健性を実証するために、このパラメータを、1.0:2.0~2.1:2.0および2.0:1.0~5.0:1:0において、体系的に変動させた。RNAリポプレックスの粒子サイズおよび多分散性は、光子相関分光(PCS)測定により解析した。
【0438】
結果:1.0:2.0~2.1:2.0の間の電荷比では、電荷比の変動の、RNAリポプレックスのサイズおよび多分散性に対する影響は、見出されなかった(
図17)。したがって、1.0:2.0~2.1:2.0の間の範囲は、品質が同等な、RNAリポプレックス調製物を結果としてもたらすと考えられる。加えて、サイズおよび多分散性が規定された、安定的な粒子は、3.0:1.0~5.0:1.0の間の電荷比でも形成された(
図18)。
【0439】
実施例22
RNAリポプレックス形成時における塩濃度
高生物活性を含むRNAリポプレックスの自動式製造のためには、RNAリポプレックス形成時における、イオン条件の制御が要求される。生物活性を確保するために、RNAリポプレックスの形成は、45~300mMのNaClの存在下で実施しなければならない。他のイオン性化合物、例えば、EDTA、HEPESなどは、イオン強度に寄与し、要求される、NaClの最小濃度を低減しうる。
【0440】
方法:RNAリポプレックスは、RNAリポプレックス形成時の、異なるNaCl濃度で、自動調製した。RNAリポプレックスの粒子サイズおよび多分散性は、光子相関分光(PCS)測定により解析した。加えて、リポプレックスの生物活性は、インビトロにおいて、ルシフェラーゼシグナルを測定することにより探索した。
【0441】
結果:粒子特性は、イオン強度を調整することにより制御することができた。製造時における塩濃度の上昇は、粒子サイズのわずかな増大を誘導した(
図19)。塩濃度は、生物活性に対して影響を及ぼすことが見出された。製造時における塩濃度の上昇は、生物活性の増大を誘導した(
図20)。したがって、RNAリポプレックス形成時におけるNaCl濃度は、45mMのNaClより低くすべきではない。
【0442】
実施例23
RNAリポプレックスの安定化
低温保護剤の存在下および非存在下の両方における、RNAリポプレックス内のRNAを安定化させるために、リポプレックス内のRNAを、pH5.5~6.7のpH範囲内に安定化させるための、HEPES、酢酸/酢酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウムとしてのバッファーシステムを使用することができる。炭酸ナトリウムシステムは、同等な安定化の有効性を結果としてもたらさないことが見出された。
【0443】
方法:最適のpH範囲について探索し、異なるpH範囲(HEPES:pH6.8~8.2、酢酸/酢酸ナトリウム:pH3.7~5.6、リン酸ナトリウム:pH5.8~8.0、および炭酸ナトリウム:pH6.2~8.6)を対象とする、異なるバッファリング薬剤について調べるため、まず、RNAリポプレックスを、低温保護剤の非存在下の、ストレス条件(40℃)下でインキュベートする。RNAの完全性は、21日間、キャピラリー電気泳動により解析した。例示的低温保護剤の存在下で、最適のpH範囲を探索するために、RNAリポプレックスを、HEPESおよびショ糖の存在下、40℃でインキュベートし、RNAの完全性を、21日間解析した。
【0444】
結果:バッファリングシステムである、HEPES、酢酸/酢酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウムについては、同等な結果が得られたのに対し、炭酸塩システムは、RNAの同等な安定化を結果としてもたらさなかった(
図21)。RNAの完全性は、製剤のpH値に依存する。最適のpH範囲は、pH5.5~7.4の間の範囲にあることが同定された。例示的な低温保護剤であるショ糖の存在下で、RNAの、最良の安定化を結果としてもたらす、pH5.5~8.0のpH範囲が同定された(
図22)。
【0445】
RNA合成法から、二価の金属イオンが生じる場合があり、製剤の賦形剤またはガラス製容器および缶は、RNAの安定性に影響を及ぼしうる。EDTA二ナトリウム塩は、アルカリ土類金属および重金属イオンと共に、安定的な水溶性の複合体を形成する。EDTA二ナトリウム塩は、RNAリポプレックス形成時に存在する、イオンの濃度に寄与し、これにより、生物活性のRNAリポプレックスを調製するために要求される、NaClの濃度を低減する。EDTA(0~20mM)の存在下における、RNAリポプレックスの形成は、記載される方法により可能である。
【0446】
方法:RNAリポプレックスを、漸増濃度のEDTA(最大で18mM)存在下で形成し、希釈したら、40℃で、EDTA含有量を低減して(0.1mM~5.4mM)インキュベートした。RNAの完全性を、21日間、鍵となる物理化学的パラメータとして解析した。
【0447】
結果:高濃度のEDTA(最大で18mM)の存在下における、RNAリポプレックスの形成は、低濃度のEDTAの存在下における調製物と同等な粒子特性を結果としてもたらすことが見出された。保管時における、0.01%(w:v)(0.1mM)~0.2%(w:v)(5.4mM)の間のEDTAを含有する、異なる群の間では、有意差が見出されなかった(
図23)。EDTA二ナトリウム塩は、RNAリポプレックス形成時に存在するイオン濃度に寄与し、RNAの完全性を減殺する可能性がある、二価金属イオンのスカベンジャーとして作用しうるので、RNAリポプレックス形成時における、最大で20mMのEDTA濃度の存在は、有利であると考えられる。
【0448】
実施例24
NaClおよび低温保護剤の含有量の最適化
調整されるイオン条件は、RNAリポプレックスの製造時、長期にわたる保管時、および患者への適用時に調整する必要がある(
図24)。NaClの濃度は、RNAリポプレックスの形成時に、45~300mMであることが可能であり;凍結状態にあるRNAリポプレックスの、長期にわたる保管時に、10~50mMであることが可能であり;融解および生理食塩水による希釈の後において、80~150mMでありうる。
【0449】
複数回の凍結時における、粒子特性の安定化を確保するために、≦70mMの、各NaCl濃度について、これを下回るべきではない、それぞれの含有量の低温保護剤を見出した。低温保護剤として、12.5~35.0%(w:v)の間の濃度の、グルコース、ショ糖、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、グリセリンとしてのトリオール、およびこれらの混合物など、単分子または二分子の糖類を使用することができる。ソルビトールの安定化有効性は、直前の化合物と比較して低度であり、アルギニンは、凍結時において、RNAリポプレックスを、効率的に安定化させない。
【0450】
方法:適切な低温保護剤を同定するために、単糖類(グルコースおよびソルビトール)、二糖類(ショ糖およびトレハロース)、アミノ酸(アルギニン、プロリン)、トリオール(グリセリン)に代表的な、異なる化合物、ならびに異なる糖類(マンニトールおよびショ糖)の混合物を含有する低温保護システムを探索した(
図25および26)。したがって、RNAリポプレックスを、濃度を増大させた、これらの化合物の存在下で凍結させた。NaClを、ある特定の濃度とするときの、低温保護剤の最小の含有量を同定するために、RNAリポプレックスを、量を増大させる、代表的な低温保護剤としての、ショ糖またはトレハロースの存在下で凍結させた(表7)。探索される低温保護剤の濃度範囲を、詳細に決定するために、まず、試料を、単回凍結させた。第3の実験において、低温保護剤であるトレハロースの存在下で、RNAリポプレックスを、最大で10回にわたり凍結させることにより、粒子サイズの安定化の有効性を吟味した(表8)。
【0451】
結果:アルギニンが、明らかに、RNAリポプレックスを不安定化させるのに対し、他の低温保護剤は、一般に、凍結時における、RNAリポプレックスの安定化に適用可能である(
図25および26)。グリセリン、マンニトール、およびショ糖(1:1、w:w)、プロリン、ならびにソルビトールは、RNAリポプレックスのための低温保護剤として使用することができる。アルギニンに加え、全てのさらなる被験安定剤は適すると考えられることから、広範にわたるアミノ酸、糖類、およびこのような化合物の混合物が、凍結時における、RNAリポプレックスの安定化に適することが指し示される。ソルビトールの安定化有効性は、直前の化合物と比較した場合、低度である。
【0452】
各濃度のNaClで要求される低温保護剤の量を、詳細に探索したところ(表8)、単回の凍結工程の後で、NaCl濃度と、要求される低温保護剤の濃度との、直接的な相関が見出された(
図27および28)。0~60mMのNaCl、20%(w:v)のショ糖またはトレハロース二水和物について、単回の凍結工程の後で、粒子サイズの、許容可能な保存が見出されたのに対し、低百分率の低温保護剤(例えば、60mMのNaClについて、≦15%;40mMのNaClについて、≦10%;20mMのNaClについて、≦5%)では、不十分な安定化が見出された。探索された範囲内の、ショ糖と、トレハロースとの間のでは、差違が見出されなかった。
【0453】
表9.3.2に示される、NaClと、トレハロースとの組合せの存在下、1、2、3、5、および10回にわたる凍結の後において、RNAリポプレックスの粒子サイズを解析したところ、以下の結果が得られた。50mMのNaClの濃度では、≧12.5%のトレハロースが、10時間にわたる凍結の後であってもなお、RNAリポプレックス粒子の特性の安定化に十分であったのに対し(
図29)、70mMのNaClでは、≧12.5%が、最小限の安定化に要求され、≧22.5%が、粒子サイズの正確な保存に要求された(
図30)。90mMのNaClでは、≧15.0%のトレハロースが、最小限の安定化に要求され、粒子サイズの正確な保存は、≧27.5%の最高探索濃度によってもなお、達成することができなかった(
図31)。
【0454】
実施例25
長期の保管のための、塩と低温保護剤との組合せ
所与の温度における、長期にわたる保管のためには、表9に列挙された、NaClと、低温保護剤との組合せを使用すべきである。
【0455】
方法:-15~-30℃、ある特定の濃度のNaClで、長期にわたる保管のための、低温保護剤の最小の含有量を探索するために、RNAリポプレックスを、NaClと、ショ糖またはトレハロースとの組合せの存在下で凍結させた。試料を、-30℃で凍結させ、次いで、長期にわたる保管のために、それぞれの温度へと移行させた(-15または-30℃)。規定された保管期間の後に、試料を解析し、PCSを使用して、粒子サイズを測定することにより、コロイドの安定性の保存について解析した。
【0456】
結果:これらの実験では、最大で70mMのNaClの存在下における凍結時に、RNAリポプレックスの粒子特性を保存しうる一方で、コロイドの安定性の不安定化に寄与するさらなる影響も観察することができた。また、例えば、60mMのNaClと、20%のショ糖との組合せについて、凍結の後における、粒子特性の許容可能な安定化も確認したところ、-15℃の保管温度では、これらの製剤の粒子サイズは、時間経過にわたり、有意に増大した(
図32および33)。この影響は、-30℃における保管時に低減された(
図34および35)。
【0457】
所与のNaCl含有量では、RNAリポプレックスの安定性は、低温保護剤の量に依存する。必要とされる低温保護剤の量は、塩の、保管溶液中含有量の増大と共に増大する。この効果は、低温保護剤として使用される糖の種類に依存しない。-15または-30℃の凍結状態における、長期にわたる保管のための、RNAリポプレックスの組成物は、表9に列挙された含有量の低温保護剤を含有すべきである。
【0458】
実施例26
異なる低温保護剤による、長期にわたる保管
22%(w:v)の、単分子または二分子の糖類の存在下における、9カ月間にわたる安定化は、10~40mMのNaClにより可能である。これらの製剤は、-15~-40℃で凍結させ、長期にわたる保管のために、それぞれの温度に保つことができる。12.6~16.8%(w:v)のデキストランの存在下では、10~30mMのNaClが使用可能である。
【0459】
方法:-20℃における、長期にわたる保管に要求される、ショ糖、トレハロース、グルコース、およびデキストランを含む混合物としての、最小含有量の、代表的な低温保護剤を探索するために、RNAリポプレックスを、変動させるNaCl濃度を、一定の低温保護剤含有量と組み合わせて凍結させた。グルコース、ショ糖、およびトレハロースとしての、モノマー分子またはダイマー分子の低温保護剤について、濃度を22%(w:v)に調整した。これらの製剤を凍結させ、-15~-40℃で保管し、規定された保管時間の後、PCSを使用して、粒子サイズを測定することにより、長期にわたる安定性を探索した。
【0460】
表9.5.1に列挙された、ポリマーであるデキストラン組成物の混合物を含有する製剤を調整した。試料を凍結させ、-20℃で保管した。規定された保管時間の後、試料を解析し、粒子サイズを測定することにより、コロイド安定性の保存を解析した。
【0461】
結果:凍結状態における、長期にわたるRNAリポプレックスの安定化を確保するために、全ての、探索される、モノマー分子またはダイマー分子の低温保護剤について、これを超えるべきではない、最大のNaCl濃度を見出した。60および80mMのNaClが、リポプレックスの、急速な不安定化を結果としてもたらしたのに対し、NaCl濃度を、≦40mMとしたところ、-20℃で保管した場合、コロイド特性を、最短で9カ月間保存することができた(表10および
図36~38)。ショ糖、トレハロース、およびグルコースについて、安定化有効性の差違を見出すことはできなかった。20mMのNaClを含む製剤について、試料を凍結させ、-15~-40℃で保管したところ、長期にわたる安定性の差違を見出すことはできなかった(
図39)。
【0462】
低温保護剤の含有量が低量である(12.6~16.8%(w:v))、デキストランを含有する製剤について探索したところ、安定化の有効性は、単分子または二分子の糖類と比較する場合に、同等なまたは良好である(
図40)。
【0463】
実施例27
凍結乾燥
a)凍結融解
最も有効な低温/凍結乾燥保護剤濃度を決定するために、凍結融解研究を実施した。RNAリポプレックス製剤を、10%、15%、20%、25%、および30%のトレハロースを添加した、5mMのHEPES、80mMのNaCl、2.6mMのEDTA中で凍結融解させた。粒子サイズは、-20℃での保管の前および後において決定した。トレハロースの非存在下で凍結させた製剤中では、粒子の凝集が観察されたので、それらの粒子サイズを決定しなかった。
図41に従い、低温/凍結乾燥保護剤と共に凍結させた製剤は、濃度依存性の低温保護を示し、粒子サイズは、低凍結乾燥/低温保護剤濃度で増大した。22%w/vのトレハロースでは、Sf/Siを1.04とし、1.3未満であるので、なおも許容可能であると考えられる(Sf=最終サイズ、Si=初期サイズ)、粒子サイズの、最小限の増大だけが観察された。低トレハロース濃度では、Sf/Si比が増大した。凍結融解研究から得られたSf/Si比は、凍結乾燥および再構成の後で、同じ製剤から得られたSf/Si比と相関する。
【0464】
b)再構成および粒子の安定性
5mMのHEPES、2.6mMのEDTA、0mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、80mMのNaCl、ならびに5%、10%、15%、および22%のトレハロース中で調製された、RNAリポプレックス製剤を凍結乾燥させた。全ての凍結乾燥試料は、良好なケーキ様外観を呈した。試料は、0.9%のNaCl溶液により、元の体積で再構成した。全ての凍結乾燥RNAリポプレックス製剤は、0.9%のNaCl溶液またはWFIによる再構成時に、速やかに溶解させた。0.9%のNaCl溶液または水による再構成の後における、22%のトレハロース中で調製された、凍結乾燥RNAリポプレックス製剤中の、粒子サイズの変化を決定した。
【0465】
図42に従い、凍結乾燥および再構成の後で、粒子サイズは、トレハロースを含有する、全ての凍結乾燥RNAリポプレックス製剤中で、安定を維持した。凍結乾燥試料を、0.9%のNaClで再構成した場合、水で再構成された凍結乾燥試料と比較して、RNAリポプレックスのサイズの、わずかな減少が観察された。NaClの、トレハロースに対する比と、粒子の安定性との相関が観察された。低濃度のトレハロースおよび高NaCl濃度で調製された製剤中では、RNAリポプレックス粒子のサイズが増大した。
【0466】
c)凍結乾燥RNAリポプレックス製剤による細胞培養実験
22%のトレハロース中、異なるNaCl濃度で調製された、凍結乾燥させた、ルシフェラーゼをコードするRNAリポプレックス製剤についての、インビトロにおけるトランスフェクション実験を実施した。凍結乾燥試料は、0.9%のNaCl溶液により再構成した。
【0467】
図43に従い、22%のトレハロースおよび異なるNaCl濃度で調製された、凍結乾燥RNAリポプレックス製剤は、樹状細胞内で、同様のluc-RNAトランスフェクションレベルを示した。RNAリポプレックス製剤中に存在するNaCl濃度と、インビトロにおけるRNAトランスフェクションとの相関は、見出されなかった。凍結乾燥試料は、トランスフェクションされていないRNAリポプレックスコントロールと比較して、同様であるか、なおまたは良好な、luc-RNAトランスフェクションを示した。
【0468】
d)安定性研究
10%のトレハロース、22%のトレハロース、ならびに0mM、20mM,40mM、60mM、および80mMのNaClを含有する、凍結乾燥RNAリポプレックス製剤を、安定性研究のために、4℃、25℃、および40℃で(1カ月間および6カ月間)探索した。0.9%のNaCl溶液による、元の体積における再構成の後、粒子サイズおよびRNAの完全性(完全長RNA%)について、試料の特徴を明らかにした。
【0469】
図44および45に従い、異なるRNAリポプレックスのサイズは、時間経過にわたり、製剤または保管温度から独立に、有意には変化しなかった。興味深いことに、低量の低温保護剤(例えば、10%)が、凍結乾燥製剤中の粒子安定性を維持するのに十分であるのに対し、高量(例えば、22%)は、凍結製剤の場合に要求される。4℃で、6カ月間にわたる保管の後における、凍結乾燥試料中のRNAの完全性(完全長RNA%)は、94%~100%の間で変動し、25℃で保管されたRNA(lip)製剤では、85%~94%の間で変動した。しかし、トレハロースの、NaCl濃度に対する比、または保管時間との相関は同定されなかった。