(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052203
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法及びそれから得られるポリエステル
(51)【国際特許分類】
C08G 63/12 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
C08G63/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000299
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2020529211の分割
【原出願日】2018-11-27
(31)【優先権主張番号】102017000135678
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】コッティ コメッティーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレッロ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】バスティオリ,カティア
(72)【発明者】
【氏名】カプッツィ,ルイジ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生分解性であり、低い色数及び優れた機械的特性を有するポリエステルを提供する。
【解決手段】再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物と、2又は3以上のジカルボン酸を含む混合物との縮合に由来する1,4-ブチレンジカルボキシレート繰り返し単位を含むポリエステルであって、前記組成物は、1,4-ブタンジオールの濃度が99.0重量%以上であり、6ppm以下の量の2-ピロリドン及び800ppm以下の量の2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランを含み、劣化後のAPHA色数が30以下である、ポリエステルとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物と、2又は3以上のジカルボン酸を含む混合物との縮合に由来する1,4-ブチレンジカルボキシレート繰り返し単位を含むポリエステルであって、
前記組成物は、1,4-ブタンジオールの濃度が99.0重量%以上であり、6ppm以下の量の2-ピロリドン及び800ppm以下の量の2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランを含み、劣化後のAPHA色数が30以下である、
ポリエステル。
【請求項2】
前記繰り返し単位が、芳香族ジカルボン酸の混合物又は芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物であって、
-総ジカルボン酸含量に関して35~100モル%の1又は2以上の芳香族ジカルボン酸又は複素環式芳香族ジカルボン酸化合物又はそれらのエステル若しくは塩、
-総ジカルボン酸含量に関して0~65モル%の1又は2以上の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル若しくは塩
を含む混合物に由来する、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
前記繰り返し単位が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物であって、
-総ジカルボン酸含量に関して40~95モル%の1又は2以上の芳香族ジカルボン酸又は複素環式芳香族ジカルボン酸化合物又はそれらのエステル若しくは塩
-総ジカルボン酸含量に関して5~60モル%の1又は2以上の脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル若しくは塩
を含む混合物に由来する、請求項1又は2に記載のポリエステル。
【請求項4】
前記繰り返し単位が、少なくとも2つの芳香族ジカルボン酸を含む混合物であって、
-総芳香族ジカルボン酸含量に関して1~99モル%テレフタル酸又はそのエステル若しくは塩、
-総芳香族ジカルボン酸含量に関して99~1モル%の2,5-フランジカルボン酸又はそのエステル若しくは塩
を含む混合物に由来する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステル。
【請求項5】
前記繰り返し単位が、少なくとも2つの飽和脂肪族ジカルボン酸を含む混合物であって、総脂肪族ジカルボン酸含量に関して少なくとも50モル%の、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、それらのC1~C24、好ましくはC1~C4のエステル及びそれらの混合物からなる群より選択される1又は2以上の飽和脂肪族ジカルボン酸を含む混合物に由来する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵経路による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法、得られる1,4-ブタンジオール及び該1,4-ブタンジオールから得られる二酸-ジオールタイプのポリエステル又はポリエステル-ポリオールに関する。
【背景技術】
【0002】
1,4-ブタンジオールは、種々のタイプの製品、例えば、少なくとも1つのジカルボン酸及び少なくとも1つのジオールに由来する繰り返し単位を含む二酸-ジオールタイプのポリエステル又はポリエステルポリオールのような製品の製造のために広く用いられるモノマーである。カルボン酸及びジオールに由来する繰り返し単位を含むポリエステルは、その機械特性及び加工特性に起因して、熱可性ポリマー材料の応用(例えばフィルム、成形及びブロー成型の物品及び繊維)の全ての分野において現在広く使用されている。また、得られるポリエステルは、生分解性、特に規格EN 13432に従う生分解性であることが要求される。
【0003】
本明細書において、用語「再生可能資源」は、その固有的特性に起因して、天然に再生されるか又は人間の寿命の時間スケールでは枯渇し得ない(転じて、その使用が将来世代の天然資源を損なわない)資源を意味する。また、再生可能な起源の生成物の使用は、大気中のCO2の減少及び非再生可能資源の使用の減少に寄与する。再生可能資源の代表例は農作物により構成される。
【0004】
1,4-ブタンジオールは、先行技術において広く知られた種々の方法により製造され得、例えば、種々の前駆体、例えばブタジエン、アセチレン、無水マレイン酸又はプロピレンオキシドから出発する石油化学起源の原材料から取得し得る。
或いは、1,4-ブタンジオールは、再生可能資源から、炭水化物、例えば糖及びリグノセルロースバイオマスから出発する発酵プロセスによって取得し得る。
【0005】
例えば、WO 2015/158716は、1,4-ブタンジオール合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する微生物による培養培地の発酵を含み、培養基がグルコースとショ糖との混合物を含む1,4-ブタンジオールの製造方法を記載する。
具体的には、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールは、一般に、発酵プロセスに直接由来する副生成物及び1,4-ブタンジオールの分解プロセスに由来する副生成物を含む種々の不純物を含有する。
これら不純物は、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールから得られた二酸-ジオールタイプのポリエステル又はポリエステル-ポリオールに対して悪影響を及ぼし得る。
【0006】
例えば、窒素原子含有不純物、一般には、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの合成の間に発酵プロセスに使用される原材料及び発酵プロセス自体に由来する、特にアミノ酸、タンパク質、アンモニウム塩、尿素及び微生物に由来する窒素原子含有不純物の含量が高いと、加水分解に対する耐性が弱いポリエステルを生じる。
更に、2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフラン(これは、1,4-ブタンジオールの脱水による環化反応によって生成される)に起因する不純物は、大量に存在すると、ポリエステル合成プロセスの間に反応器中に堆積して生産性を制限する固体副生成物を生じる。
【0007】
また、バッチ重合プロセスの場合、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールに存在する不純物により、所望のポリエステルの最終的な粘性を調整するプロセス条件を実質的に変更することが必要になり得る。
再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの精製に関して現在開発されているプロセスは、一般に蒸留カラムをベースとする分離システムを含む。先行技術において公知の精製システムは、蒸留の少なくとも1つの段階で種々の薬剤を添加して、存在する不純物を除去することを含み得る。
【0008】
例えば、蒸留の少なくとも1つの段階で還元剤を添加することにより最終生成物における色安定性を確保することが知られている。
2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの存在はまた、テトラヒドロフラン(THF)合成に悪影響を及ぼし得る。例えば、EP 2 730 566は、1,4-ブタンジオールから出発するTHF(上限3500ppmの2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフラン含量)の製造方法を具体的に記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、得られる1,4-ブタンジオールが有利には生分解性の、二酸-ジオールタイプのポリエステル又はポリエステル-ポリオールの合成に利用可能であるように純度を増大させることができる、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの新たな製造方法の探索において、本出願人は、今や、驚くべきことに、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの水性組成物の精製段階において、特定のpH範囲でのカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の通過の組合せにより、得られる1,4-ブタンジオールの2-ピロリドン含量を劇的に低減させることができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、第1の観点において、本発明は、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法に関し、該方法は:
(1)再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む発酵ブロスの準備と、
その後、次:
(2)再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む液体画分を、1又は2以上の固体画分から分離すること、ここで、前記液体画分は2-ピロリドンを80ppm以上の量で含み;
(3)得られる液体画分を、該液体画分のpHが4~2となるまで、1又は2以上のカチオン交換樹脂を含むベッドに1回又は2回以上通過させること、
(4)得られる液体画分を、該液体画分のpHが8~11となるまで、1又は2以上のアニオン交換樹脂を含むベッドに1回又は2回以上通過させること、及び
(5)液体画分を蒸留して、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物であって、1,4-ブタンジオールの濃度が99.0重量%以上であり、2-ピロリドンの量が6ppm以下である組成物を取得すること
を含む、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの精製と
を含んでなる。
【0012】
本発明の意味において、表現「再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール」は、1,4-ブタンジオールの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する1又は2以上の微生物の存在下で少なくとも1つの糖の発酵プロセスから取得される1,4-ブタンジオールを意味する。
本発明による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法は、有利には、更なる精製のため、したがって最終生成品の安定化のために先行技術において一般に用いられる処理後プロセスを必要としない。実際、本発明による方法は、有利には、1又は2以上の補助剤、例えば還元剤のような補助剤の非存在下で実施される。還元剤の非限定的例としては、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化リチウムアルミニウムが挙げられる。
【0013】
第2の観点において、本発明は、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物であって、1,4-ブタンジオールの濃度が99.0重量%以上であり、2-ピロリドンの量が6ppm以下であり、APHA色数が30以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である、組成物に関する。
本発明による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物は、有利には、本発明による方法によって取得される。
本発明による組成物は、1,4-ブタンジオールの濃度が好ましくは99.1重量%~99.9重量%、より好ましくは99.5重量%~99.9重量%である。
【0014】
本発明による組成物は、驚くべきことに、経時的に安定なAPHA色数を維持することが見出されている。具体的には、本発明による組成物は、APHA色数を維持し、貯蔵段階(例えば20℃以上、代表的には50℃以上の温度での貯蔵)の間に変化しない。
本発明による組成物は、代表的には、劣化後のAPHA色数が30以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
APHA色数は、先行技術において公知の任意の方法を用いて、例えば測光法により、測定し得る。代表的には、APHA色数は、標準法DIN EN ISO 6271-1を用いて測定される。
【0015】
本発明による組成物は、2-ピロリドンの量が、好ましくは5ppm以下、より好ましくは4ppm以下、より好ましくは3ppm以下、更により好ましくは2.5ppm以下である。
2-ピロリドンが存在する場合、本発明による組成物は、2-ピロリドンの量が好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.02ppm以上である。
2-ピロリドンの含量は、先行技術において公知の任意の方法により測定され得る。代表的には、2-ピロリドンの含量は、不活性雰囲気中でのサンプルの燃焼及び窒素原子含有化合物についての分析装置(一般には化学発光分析装置)を用いる燃焼ガスの分析により測定される。
【0016】
本発明による組成物はまた、2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの量が、800ppm、好ましくは600ppm以下、より好ましくは550ppm以下であり得る。
2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランが存在する場合、本発明による組成物は、2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの量が好ましくは50~600ppm、より好ましくは100~550ppmである。
2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの含量は、先行技術において公知の任意の方法を用いて測定され得る。代表的には、2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの含量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定される。
【0017】
本発明による組成物はまた、水を、代表的には500ppm以下、好ましくは350ppm以下の量で含み得る。
本発明の目的には、用語「ppm」は、百万あたりの部数、すなわち、物質1キログラム(kg)毎についてミリグラム(mg)で表される物質の値を定義するものとする。
本発明による組成物はまた、有利には、イソシアネートと反応させてポリウレタンを合成する中間体としてのポリエステル-ポリオールの製造方法において使用され得る。
【0018】
本発明による組成物は、有利には、二酸-ジオールタイプのポリエステル(以下、「ポリエステル」と記載)の製造方法において使用され得る。
したがって、第3の観点では、本発明は、二酸-ジオールタイプのポリエステルの製造方法における本発明による組成物の使用に関する。
本発明によるポリエステルの製造方法は、有利には、6ppm以上の量の2-ピロリドンを含有する1,4-ブタンジオールの存在下で行われる方法で必要とされる滞留時間より短い滞留時間を要する。
【0019】
第4の観点では、本発明は、
(a)(a1)総ジカルボン酸成分に関して0~80モル%の少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位、及び
(a2)総ジカルボン酸成分に関して20~100モル%の少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位
を含むジカルボン酸成分と、
(b)再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物(1,4-ブタンジオールの濃度が99.0重量%以上であり、2-ピロリドンの量が6ppm以下である組成物)に由来する単位を含むジオール成分と
を含むポリエステルに関する。
【0020】
別の1つの実施形態において、本発明は、
(a)(a1)総ジカルボン酸成分に関して0~80モル%の少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸に由来する単位、及び
(a2)総ジカルボン酸成分に関して20~100モル%の少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸に由来する単位
を含むジカルボン酸成分と、
(b)本発明の第1の観点による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの製造方法により得られるジオール成分と
を含むポリエステルに関する。
【0021】
本発明によるポリエステルの製造方法において用いる再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物は、有利には、本発明による組成物である。
本発明によるポリエステルは、有利には、生分解性であり、好ましくは規格EN 13432に従う生分解性である。
本発明によるポリエステルは、驚くべきことに、2-ピロリドンの量が6ppm以上である1,4-ブタンジオール組成物でジオールが置換された類似するポリエステルより低い色数を有する。
加えて、本発明によるポリエステルは、優れた機械的特性を有する。
【0022】
本発明による方法のステージ(1)において、発酵ブロスは、有利には、発酵経路を介する再生可能資源からの1,4-ブタンジオールの製造方法によって取得される。
発酵経路を介する再生可能資源からの1,4-ブタンジオールの製造方法は、一般に、先行技術において広く知られた方法の1つに従って、例えばWO 2015/158716に記載された方法に従って、行われる。
本発明による方法のステージ(1)において、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む発酵ブロスは、一般に、少なくとも1つの糖、好ましくはグルコースと、任意に、1又は2以上のグルコース以外の糖とを含む培養培地を、1,4-ブタンジオール合成の少なくとも1つの代謝経路を有する1又は2以上の微生物の存在下で発酵させることを含む方法により調製される。
【0023】
培養培地はまた、元素、例えばC、H、O、N、K、S、P、Fe、Ca、Co、Mn、Mgのような元素を供給することにより、発酵ステージでの微生物の増殖及び支持に必要である他の物質を含み得る。代表的には、培養培地はまた、グルコース以外の糖、タンパク質加水分解物、タンパク質、アミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル塩、酵母抽出物及び微量元素、例えばコバルト、カルシウム及び銅のような元素からなる群より選択される1又は2以上の成分を含み得る。コバルト、カルシウム及び銅は、培養培地に、例えば塩として、例えば塩化コバルト、塩化カルシウム及び塩化銅として添加され得る。一般に、培養培地は、少なくとも1つの糖、一般にはグルコースと、任意に1又は2以上のグルコース以外の糖とを10~100g/Lの濃度で含む。微生物は、本方法による発酵ステージの間に1又は2以上の糖を消費するので、一般には、発酵反応器中に前記糖を補充することが必要である。この補充は、連続的に又はバッチモードで、当業者に公知の様式で行い得る。
【0024】
また、利用されない糖の含量を制限するため、したがって本方法の経済的実現性を最適化するため、1又は2以上の糖の供給は、有利には、発酵の終了前に、中断されるか又は徐々に減少させる。培養培地の他の可能な成分に関して、培養培地は、一般に、塩、必須ミネラル及び消泡剤を含む。培養培地は、当業者に公知の任意の手段により、例えば成分を全て一緒に混合することにより、又はグルコース以外の全成分を予め混合し、その後グルコースを添加することにより、調製され得る。成分は、個々に又は既に予め混合されたプレミックスとして提供されてもよい。市販の培養培地を出発ベースとして使用し、その後、例えば再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの合成のための少なくとも1つの代謝経路を有する微生物と培養培地を接触させるときに、その組成を変更することも可能である。再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの合成方法において、発酵の開始前に又は発酵前ステージで、1又は2以上の微生物を、少なくとも1つの糖を任意に含む任意の適切な培養培地と接触させて、微生物の増殖を促すことができる。このステージは、必要に応じて1回又は2回以上繰り返して、当初の十分な微生物含量を確保し得る。発酵の間、微生物と1又は2以上の糖を含有する培養培地とを含む全体は、再生可能資源からの1,4-ブタンジオールの合成の代謝経路を利用するに適切な条件下に保持される。更に、当業者は、例えば、1又は2以上のパラメータをモニターし、必要な場合、1,4-ブタンジオールの製造に適切な条件に当該プロセスを復帰させるために該パラメータを変化させることにより、発酵過程での当該プロセスの進行を検証することができる。1,4-ブタンジオール合成の代謝経路に関して、これは、微生物に天然に存在してもよいし、或いは人工的に、例えば、微生物の既存の代謝経路を変更、修飾、増幅、消去若しくは制限すること、1若しくは2以上の他の微生物に由来する遺伝物質を当該微生物に導入すること、自発的な遺伝子変異を誘導すること、当該プロセスの間に当該代謝経路を阻害若しくは刺激する化学物質を添加すること、又は任意の遺伝子操作技法を利用する任意の事象により、創出してもよい。1,4-ブタンジオール合成代謝経路を有する微生物は、当業者に公知であり、例えば、Yim H.ら,Nature Chemical Biology, Vol. 7, July 2011, p. 445-452(以下、「Yimら 2011」)並びに特許出願WO 2008/115840、WO 2009/023493、WO 2010/030711、WO 2010/071697、WO 2010/141780、WO 2010/141920、WO 2011/031897、WO 2011/047101、WO 2011/066076、WO 2012/177943、AU 2013/3204409、AU 2013/3204038、AU 2013/202623、AU 2013/203176、AU 2013/203177、AU 2013/203342、AU 2013/203440、AU 2013/203480、AU 2013/203163に記載される。本発明による方法のステージ(1)における発酵ブロスはまた、1又は2以上の要素を含み得、これには、1又は2以上の微生物、細胞残渣、場合により未反応の糖、副生成物、代謝産物、及び微生物により同化も代謝もされなかった培養培地の任意の成分が含まれる。
【0025】
本発明による方法のステージ(2)に関して、固体画分は、一般に、1又は2以上の要素を含有し、これには、1又は2以上の微生物、細胞残渣、場合により未反応の糖、副生成物、ミネラル塩、代謝産物、及び場合により、微生物により同化も代謝もされなかった培養培地の成分が含まれる。
本発明の意味では、固体画分は、懸濁物及びスラリも意味し得る。
【0026】
本発明による方法のステージ(2)において、発酵に由来する反応媒体を、沈降、遠心分離、ろ過、精密ろ過、ナノろ過、限外ろ過、イオン交換、浸透、その他の適切な固/液分離技法及びそれらの組合せから選択される1又は2以上により処理することができる。例えば、反応媒体は、先ず遠心分離され、その後、ろ過、精密ろ過、ナノろ過、限外ろ過され、最後に浸透に付されてもよい。本発明による方法のステージ(2)において、反応媒体又は種々の中間画分のエバポレーションのための1又は2以上の操作を提供して、存在する水の幾らかを除去することもできる。本発明による方法のステージ(2)において、得られる液体画分は、例えば再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む液体画分を、エバポレーション、蒸留、精留又はそれらの組合せから選択される1又は2以上により処理することにより、更に精製されてもよい。この精製は、例えば、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む液相中の成分の異なる揮発性を利用する装置を用いて行い得る。本発明による方法の1つの実施形態において、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む液相は、加温し及び/又は蒸気相の少なくとも一部を凝縮することにより少なくとも1つの蒸気相及び少なくとも1つの凝縮物を分離する1又は2以上の装置に供給して、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールを本質的に含む最終組成物を取得する。
【0027】
本発明による方法のステージ(2)で得られる液体画分は、代表的には、2-ピロリドンの量が100ppmを超える。
本発明による方法のステージ(2)で得られる液体画分は、代表的には、2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの量が1500ppmを超える。
本発明による方法のステージ(2)で得られる液体画分は、一般に、液体画分の総重量に関して50重量%まで、好ましくは30重量%まで、より好ましくは20重量%までの水を含む。
本発明による方法のステージ(2)で得られる液体画分は、一般に、液体画分の総重量に関して50~95重量%、好ましくは70~90重量%、より好ましくは75~85重量%の再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールを含む。
【0028】
本発明による方法のステージ(3)において、カチオン交換樹脂は、一般に、強酸(例えば、スルホネート基)又は弱酸(例えば、カルボキシレート基)に由来する樹脂からなる群より選択される。カチオン交換樹脂は、好ましくは、スルホネート基からなる群より選択される官能基を含有する。本発明による方法に有用であるカチオン交換樹脂の非限定的例としては、例えば、DOWEX(登録商標)88又はDOWEX(登録商標)88 MBの商標で市販されている樹脂が挙げられる。
本発明による方法のステージ(3)を離れる際のpHは、4~2、好ましくは4~3、更により好ましくは3.6~3である。
【0029】
本発明による方法のステージ(4)において、アニオン交換樹脂は、一般に、強塩基(例えば、四級アミン基)又は弱塩基(例えば、三級アミン基)に由来する樹脂からなる群より選択される。アニオン交換樹脂は、好ましくは、四級アミン基からなる群より選択される官能基を含有する。本発明による方法に有用であるアニオン交換樹脂の非限定的例としては、例えば、DOWEX(登録商標)22の商標を有する市販の樹脂が挙げられる。
本発明による方法のステージ(4)を離れる際のpHは、8~11、好ましくは8~10、より好ましくは8~9.5、更により好ましくは8.6~9.5である。
本発明による方法のステージ(3)及び(4)の順序は、特に限定されない。ステージ(3)はステージ(4)に先行してもよいし後続してもよい。好ましくは、ステージ(3)はステージ(4)に先行する。
【0030】
本発明による方法のステージ(5)において、蒸留は、一般に、1又は2以上の蒸留カラムを用いて行われる。蒸留は、好ましくは、少なくとも1つの水除去ステージ、少なくとも1つの重画分除去ステージ及び少なくとも1つの軽画分除去ステージを含む。蒸留は、先行技術において公知の任意の方法、例えばWO 2014/152665に記載の方法を用いて行われ得る。本発明の1つの実施形態によれば、蒸留は、少なくとも3つの蒸留カラムにより行われる。本発明の1つの好適な実施形態によれば、蒸留は、第1の蒸留カラムの目的は水の分離であり、第2の蒸留カラムの目的は重画分の分離であり、第3の蒸留カラムの目的は軽画分の分離である3つの蒸留カラムを用いて行われる。
【0031】
本発明によるポリエステルの製造方法は、代表的には、
(i)(a)(a1)総ジカルボン酸成分に関して0~80モル%の少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、塩若しくは誘導体に由来する単位、及び
(a2)総ジカルボン酸成分に関して20~100モル%の少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル、塩若しくは誘導体に由来する単位
を含むジカルボン酸成分と、
(b)上記の再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物に由来する単位を含むジオール成分と
を含む混合物のエステル化及び/又はトランスエステル化反応によるオリゴマー生成物の製造
(ii)ステージ(i)で得られたオリゴマー生成物の重縮合、及び
(iii)ステージ(ii)で得られたポリエステルの造粒
を含む。
【0032】
ジカルボン酸は、有利には、再生可能資源から取得され得る。
カルボン酸は、脂肪族又は芳香族であり得、好ましくは、フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸、複素環式芳香族ジカルボン酸化合物、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、それらのエステル、塩及び混合物からなる群より選択される。
フタル酸タイプの芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、フタル酸又はイソフタル酸、より好ましくはテレフタル酸、それらのエステル、塩及び混合物である。複素環式芳香族ジカルボン酸化合物は、好ましくは、2,5-フランジカルボン酸、2,4フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、より好ましくは2,5-フランジカルボン酸、それらのエステル、塩及びそれらの混合物である。
【0033】
飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、C2~C24、好ましくはC4~C13、より好ましくはC4~C11の飽和ジカルボン酸、それらのC1~C24、好ましくはC1~C4のアルキルエステル、その塩及び混合物から選択される。好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、2-エチルコハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ブラシル酸及びそれらのC1~C24のアルキルエステルから選択される。
不飽和脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、イタコン酸、フマル酸、4-メチレン-ピメリン酸、3,4-ビス(メチレン)ノナンジオン酸、5-メチレン-ノナンジオン酸、それらのC1~C24、好ましくはC1~C4のアルキルエステル、それらの塩及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
ジオール成分はまた、1,4-ブタンジオール以外の1又は2以上のジオールを含んでいてもよい。好ましくは、ジオール成分は、本発明による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物から本質的になる。
存在する場合、追加のジオールは、化石資源又は再生可能資源から取得され得る。
存在する場合、追加のジオールは、代表的には、飽和脂肪族ジオール、不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0035】
より好ましくは、飽和脂肪族ジオールは、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジ無水ソルビトール、ジ無水マンニトール、ジ無水イジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、100~4000の分子量を有するジアルキレングリコール及びポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0036】
不飽和脂肪族ジオールは、より好ましくは、シス2-ブテン-1,4-ジオール、トランス2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、シス2-ペンテン-1,5-ジオール、トランス2-ペンテン-1,5-ジオール、2-ペンチン-1,5-ジオール、シス2-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス2-ヘキセン-1,6-ジオール、2ヘキシン-1,6-ジオール、シス3-ヘキセン-1,6-ジオール、トランス3-ヘキセン-1,6-ジオール、3-ヘキシン-1,6-ジオール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
代わりに、芳香族ジオールは、より好ましくは、2,5-フランジメタノール、2,4-フランジメタノール、2,3-フランジメタノール、3,4-フランジメタノール、より好ましくは2,5-フランジメタノール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0037】
本発明の1つの実施形態において、ポリエステル繰り返し単位は、本発明による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物と2又は3以上のジカルボン酸、好ましくは上記のタイプのジカルボン酸を含む混合物との縮合に由来する1,4-ブチレンジカルボキシレート繰り返し単位である。
1つの好適な実施形態において、繰り返し単位は、総ジカルボン酸含量に関して:
-35~100モル%、好ましくは40~95モル%の1又は2以上の芳香族ジカルボン酸又は複素環式芳香族ジカルボン酸化合物、それらのエステル又は塩;
-0~65モル%、好ましくは5~60モル%の1又は2以上の脂肪族ジカルボン酸、それらのエステル及び塩
を含む、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の混合物に由来する。
【0038】
別の1つの好適な実施形態において、繰り返し単位は少なくとも2つの芳香族ジカルボン酸を含む混合物に由来し、該混合物は、総芳香族ジカルボン酸含量に関して:
-1~99モル%、好ましくは5~95モル%、より好ましくは10~80モル%のテレフタル酸、そのエステル又は塩;
-99~1モル%、好ましくは95~5モル%、より好ましくは90~20モル%の2,5-フランジカルボン酸、そのエステル又は塩
を含む。
本発明の別の1つの好適な実施形態において、繰り返し単位は、少なくとも2つの飽和脂肪族ジカルボン酸を含む混合物に由来し、該混合物は、総脂肪族ジカルボン酸含量に関して少なくとも50モル%、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上の1又は2以上の飽和脂肪族ジカルボン酸を含み、該飽和脂肪族ジカルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、それらのC1~C24、好ましくはC1~C4のエステル及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0039】
コポリエステルの場合、これらは、好ましくは、70モル%、より好ましくは80モル%の1,4-ブチレンジカルボキシレート単位を含有する。1,4-ブチレンジカルボキシレート単位に加えて、このコポリエステルは、好ましくは、アルキレン基が1,4-ブタンジオールでない1又は2以上のジオール、好ましくは飽和脂肪族ジオール、不飽和脂肪族ジオール、芳香族ジオール及びそれらの混合物からなる群より選択されるジオールの縮合に由来するアルキレンジカルボキシレート単位を含む。
【0040】
代表的なポリエステルの例は次のものである:ポリ(l,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(l,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(l,4-ブチレンセバケート)、ポリ(l,4-ブチレンアジペート-コ-l,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(l,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンスクシネート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート)、ポリ(l,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレン-ヘキサデカンジオエート)、ポリ(1,4-ブチレン-オクタデカンジオエート)、ポリ(1,4-ブチレン-ヘキサデカンジオエート-コ-1,4-ブチレン-テレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレン-オクタデカンジオエート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンブラシレート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンブラシレート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレンセバケート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンスクシネート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレン-ヘキサデカンジオエート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレン-オクタデカンジオエート-コ-1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)。
【0041】
本発明によるポリエステルは、好ましくは、1,4-ブチレンジカルボキシレート単位及び任意の異なるアルキレンジカルボキシレート単位に加えて、少なくとも1つのヒドロキシ酸に由来する繰り返し単位を、ジカルボン酸成分の総モルに関して0~49モル%、好ましくは0~30モル%の量で含む。
好都合なヒドロキシ酸の例は、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ吉草酸、7-ヒドロキシヘプタン酸、8-ヒドロキシカプロン酸、9ヒドロキシノナン酸、乳酸又はラクチドである。ヒドロキシ酸は、鎖自体に挿入されてもよいし、先ず、ジカルボン酸又はジオールとの反応を引き起こされてもよい。
本発明による二酸-ジオールタイプのポリエステルは、1~50g/10分、好ましくは1.5~30g/10分、より好ましくは2~20g/10分、更により好ましくは3~10g/10分の範囲のMFR(規格ISO 1133-1により190℃にて2.16kgで測定されたもの)を有する。
【0042】
第5の観点において、本発明は、
-少なくとも1つの本発明によるポリエステルと、
-前記ポリエステル以外の1又は2以上のポリエステル
を含んでなる混合物に関する。
本発明による混合物は、好ましくは、
-少なくとも1つの本発明によるポリエステルと、
-ポリエステルの重量に関して1~70重量%の1又は2以上の前記ポリエステル以外のポリマー
を含んでなる。
【0043】
代表的には、本発明による混合物は、1又は2以上のポリマーとの混合により、代表的にはポリエステルの重量に関して1~70重量%の量の1又は2以上のポリマーとの、好ましくは押出機における150℃~250℃の温度での混合により、製造される。このポリマーは、一般には、ヒドロキシ酸ポリエステル、ポリオレフィン、1,4-ブチレンジカルボキシレート単位を含まない芳香族ポリエステル、ポリエステル-及びポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカルボネート並びに/又は充填剤、可塑剤、UV安定化剤、滑剤、核形成剤、界面活性剤、帯電防止剤、色素、難燃剤、相溶化剤、ポリフェノール、補強剤、カップリング剤、抗酸化剤、防カビ剤、ワックス及びプロセスコアジュバントから選択される1若しくは2以上の添加剤からなる群より選択される。
【0044】
ヒドロキシ酸ポリエステルのうち、次のものが好ましい:乳酸ポリエステル、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシ-ブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレート。
【0045】
好ましくは、ヒドロキシ酸ポリエステルは、ヒドロキシ酸ポリエステルの総重量に関して少なくとも80重量%の1又は2以上の乳酸ポリエステルを含む。乳酸ポリエステルは、好ましくは、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリD,L-乳酸ステレオコンプレックス、50モル%以上の前記乳酸ポリエステルを含むコポリマー又はそれらの混合物からなる群より選択される。特に好ましいものは、少なくとも95重量%の、L-乳酸若しくはD-乳酸又はそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含む乳酸ポリエステル、代表的には50,000以上の平均分子量(Mw)及び50~700Pas、好ましくは80~500Pasの動粘度(規格ASTM D3835に従って190℃の温度、1000s-1の速度勾配、1mmの径及び10のL/Dにて測定)を有する乳酸ポリエステル、例えばIngeoTM Biopolymer 4043D、3251D及び6202Dの商標を有する製品である。
好ましくは、少なくとも1つの本発明によるポリエステル及び少なくとも1つのヒドロキシ酸ポリエステルを含む混合物は、両ポリエステルの合計重量に関して1重量%~80重量%、好ましくは2重量%~70重量%の前記ヒドロキシ酸ポリエステルを含んでなる。
【0046】
ポリオレフィンのうち、次のものが好ましい:ポリエチレン、ポリプロピレン、それらのコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチル-ビニルアセテート及びポリエチレンビニルアルコール。
芳香族ポリエステルのうち、次のものが好ましい:PET、PBT、PTT、特に30%以上の再生可能含量を有するこれらのもの及びポリアルキレンフランジカルボキシレート。ポリアルキレンフランジカルボキシレートのうち、ポリ(1,2-エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,3-プロピレン-2,5-フランジカルボキシレート)、ポリ(1,4-ブチレン-2,5-フランジカルボキシレート)及びそれらの混合物が特に好ましい。
【0047】
ポリアミドの例は次のとおりである:ポリアミド6及び6.6、ポリアミド9及び9.9、ポリアミド10及び10.10、ポリアミド11及び11.11、ポリアミド12及び12.12並びにそれらの組合せ、特に6/9、6/10、6/11又は6/12タイプの組合せ。
ポリカルボネートは、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、それらの混合物及びコポリマーからなる群より選択され得る。
ポリエステルは、70,000~500,000の分子量を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、それらのコポリマー及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0048】
好ましくは、少なくとも1つの本発明によるポリエステルと、ポリオレフィン、芳香族ポリエステル、ポリエステル-及びポリエーテル-ウレタン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリカルボネート並びにそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのポリマーを含む混合物は、本発明による方法により取得されるポリエステル及び前記ポリマーの合計重量に関して5重量%~80重量%、より好ましくは10重量%~60重量%の前記ポリマーを含む。
【0049】
充填剤は、好ましくは、カオリン、バライト、クレイ、タルク、カーボネート又はカルシウム及びマグネシウム、鉄及び鉛、水酸化アルミニウム、珪藻土、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、マイカ、二酸化チタン、珪灰石、デンプン、セルロース、キチン、キトサン、アルギネート、タンパク質、例えばグルテン、ゼイン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、天然ゴム、ロジン酸及び誘導体並びにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0050】
用語 デンプンは、全てのタイプのデンプン、特に、次のものを意味する:コムギ粉、天然デンプン、加水分解デンプン、破壊デンプン、ゼラチン化デンプン、可塑化デンプン、熱可塑性デンプン、複合体化デンプンを含むバイオフィラー又はそれらの混合物。デンプン、例えばジャガイモ、トウモロコシ、タピオカ及びエンドウに由来するデンプンが本発明によれば特に適切である。容易に破壊され得、高い初期分子量を有するデンプン、例えばジャガイモデンプン及びトウモロコシデンプンは、特に有利であることが証明されている。デンプン及びセルロースは、そのまま存在していてもよいし、化学的に修飾された形態、例えば0.2~2.5の置換度を有するデンプン又はセルロースエステル、ヒドロキシプロピルデンプン、脂肪鎖を有するように改変されたデンプンで存在していてもよく、又はセロファンとして存在してもよい。
【0051】
破壊デンプンの場合、特許EP 0 118 240及びEP 0 327 505に含まれる教示を挙げることができる。ここで、破壊デンプンは、偏光での光学顕微鏡下にて、いわゆる「マルタ十字」を、位相コントラスト法で光学顕微鏡下にて、いわゆる「ゴースト」を実質的に示さないように加工されたデンプンを意味する。
有利には、デンプンの破壊は、110℃~250℃、好ましくは130℃~180℃の温度にて、好ましくは0.1MPa~7MPa、好ましくは0.3MPa~6MPaの圧力の押出プロセスにより、好ましくは押出の間0.1kWh/kg以上の比エネルギーを付す押出プロセスにより、行われる。この破壊は、本発明による方法のステージ(2)で行なわれてもよいし、又は別の相で行われた後、既に破壊された形態のデンプンをステージ(2)に供給してもよい。
【0052】
デンプンの破壊は、好ましくは、デンプンの重量に関して1~40重量%の、水及び2~22の炭素原子を有するポリオールから選択される1又は2以上の可塑剤の存在下で行われる。水に関しては、当該デンプンに天然に存在している水であってもよい。ポリオールのうち、1~20のヒドロキシ基を有し、2~6の炭素原子を含むポリオール、それらのエーテル、チオエーテル並びに有機及び無機エステルが好ましい。ポリオールの例は、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ポリグリセロールエトキシレート、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレート及びそれらの混合物である。好適な1つの実施形態において、デンプンは、グリセロール、又はグリセロールを含む、より好ましくは2~90重量%のグリセロールを含む可塑剤の混合物の存在下で破壊される。好ましくは、破壊デンプンは、デンプンの重量に関して1~40重量%の上記から選択される可塑剤を含んでなる。破壊デンプンを含む組成物が特に好ましい。好ましくは、混合物中のデンプンは、円若しくは楕円断面又はいずれにしても楕円に類似する断面を有し、算術平均径が1μm以下である、より好ましくは粒子の主軸に関して測定したメジアン径が0.5μm以下である粒子の形態で存在する。セルロースに関しては、例えばセルロース繊維の形態又は木粉として存在していてもよい。
【0053】
有利には、2以上の充填剤が本発明による混合物に用いられてもよい。デンプン及び少なくとも1つの他の充填剤を含有する混合物が特に好ましい。可塑剤に関しては、フタレート、例えばジイソノニルフタレート、トリメリテート、例えばC4~C20モノアルコール、好ましくはn-オクタノール及びn-デカノールからなる群より選択されるC4~C20モノアルコールとのトリメリット酸のエステル、及び下記構造を有する脂肪族エステルからなる群より選択される1又は2以上の可塑剤が、任意の可塑剤、好ましくは上記の破壊デンプンの製造に用いた可塑剤に加えて存在してもよい:
R1-O-C(O)-R4-C(O)-[-O-R2-O-C(O)-R5-C(O)-]m-O-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの飽和及び不飽和の直鎖及び分岐鎖アルコール残基、C1~C24モノカルボン酸とエステル化したポリオール残基を含む1又は2以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基及びC2~C8アルキレンを含み、該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの飽和及び不飽和の直鎖及び分岐鎖アルキル基、C1~C24モノカルボン酸とエステル化したポリオール残基を含む1又は2以上の基から選択され;
R4及びR5は、同一であるか又は異なって、1又は2以上のC2~C22、好ましくはC2~C11、より好ましくはC4~C9のアルキレンを含み、C7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~7の整数である)。好ましくは、このエステルにおいて、少なくとも1つのR1及び/又はR3基は、R1及び/又はR3基の総量に関して、好ましくは10モル%以上の量、より好ましくは20モル%以上の量、更により好ましくは25モル%以上の量で、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸とエステル化したポリオール残基を含む。
【0054】
このタイプの脂肪族エステルの例は、イタリア特許出願MI2014A000030及び出願PCT/EP2015/050336、PCT/EP2015/050338に記載されている。
存在する場合、選択された可塑剤は、混合物の総重量に関して、好ましくは0.2重量%~20重量%、より好ましくは0.5重量%~10重量%の量で存在する。滑剤は、好ましくは、脂肪酸のエステル及び金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸アセチルから選択される。
用いる場合、滑剤は、混合物の総重量に関して好ましくは1重量%まで、より好ましくは0.5重量%までの量で用いられる。核形成剤の例としては、サッカリンのナトリウム塩、ケイ酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、窒化ホウ素、タルク、ステアリン酸亜鉛、低分子量PLAが挙げられる。これら添加剤は、ポリエステルの総重量に関して、好ましくは10重量%までの量、より好ましくは2重量%~6重量%の量で添加される。色素もまた必要であれば添加されてもよく、色素は、例えばクレイ、銅フタロシアニン、二酸化チタン、シリケート、酸化鉄及び水酸化鉄、カーボンブラック及び酸化マグネシウムである。これら添加剤は、好ましくは10重量%まで添加される。
【0055】
ポリフェノールに関しては、好ましくは、リグニン、シリビン、シリジアニン、イソシリビン及びシリクリスチン並びにそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、混合物の総重量に関して0.5重量%~7重量%の量で存在する。
好適な1つの実施形態において、植物起源のポリフェノールは、有利には、シリビン、シリジアニン、イソシリビン及びシリクリスチンを含む混合物を含んでなる。この混合物は、有利には、マリアアザミ(Silybum marianum)の種子の脱油ケーキからアルコール抽出により取得され得、シリマリンの名称で市販され一般に知られている。本発明による方法で取得されるポリエステルは、製品、例えばフィルム、繊維、不織布、シート、折り畳まれた、熱成形された、ブロー成形された及び展開された物品並びに押出し被覆技法を用いて積層された物品の製造のための多くの実用的応用において、単独又は他のポリマーとの混合での使用に非常に適切である。
【0056】
第6の観点では、本発明は、少なくとも1つの本発明によるポリエステルを含む製品に関する。
本発明の1つの実施形態において、本発明による製品は本発明による混合物を含んでなる。
本発明による製品は、食品応用を含む種々の適用における使用に特に適切である。
【0057】
少なくとも1つの本発明によるポリエステルを含む製品の例は、以下のものである:
-フィルム;
-有機物の収集(例えば食品廃棄物や刈り取った草の収集)用の袋;
-熱成形された又は単層若しくは多層の食品包装材、例えば、乳、ヨーグルト、肉や飲料用の容器;
-押出しコーティング法を用いて得られたコーティング;
-紙、プラスチック材料、アルミニウム、金属化フィルムの層を有する多層積層品;
-加熱により形成されるパーツの製造用の発泡又は発泡性ビーズ;
-予備発泡品から形成される発泡ブロックを含む発泡及び半発泡製品;
-発泡シート、熱成形された発泡シート、それらから得られる食品包装用容器;
-果物及び野菜用の容器一般;
-充填剤としての、ゲル化、破壊及び/又は複合化デンプン、天然デンプン、コムギ粉、植物起源又は無機物起源のその他の天然の充填剤との組成物;及び
-公衆衛生分野、衛生習慣、農業及び被服のための、繊維、マイクロファイバ、硬質ポリマー(例えばPLA、PET、PTTなど)を含む核(コア)及び本発明による材料の外殻(アウターシェル)を有する複合繊維、ダブレンズ複合繊維(dablens composite fibre)、丸形~多葉形の種々の断面を有する繊維、フロック繊維、織られた及び不織の又はスパンボンド若しくはサーマルボンドの布地。これらは、可塑化PVCの代替品としての適用に用いられ得る。
【0058】
本発明による製品は、好ましくは、フィルムである。
本発明によるフィルムは、一軸又は二軸延伸フィルムであり得る。
本発明の1つの実施形態において、本発明によるフィルムは、他のポリマー材料との多層フィルムである。
本発明によるフィルムは、農業部門におけるマルチングフィルムとしての使用に特に適切である。
加えて、本発明によるフィルムは、食品用、農業ベール用及び廃棄物の包装用のストレッチフィルムとして特に適切である。
【実施例0059】
以下の実施例は、本発明を非限定的な様式で説明する。
測定方法
2-ピロリドン(下記で「2-P」と呼ぶ)の含量は、不活性雰囲気下でのサンプルの燃焼及び化学発光分析器(Analytik Jena Multi EA5000 analyser)を用いる燃焼ガスの分析により測定した。
2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフラン(下記で「HB-THF」と呼ぶ)の含量は、蒸留ステージ後に得られた生成物に対するガスクロマトグラフィーにより測定した。
水分含量は、蒸留ステージ後に得られた生成物について従来法により測定した。
APHA色数(Pt-Co単位で測定)は、加速劣化試験の前後に、標準法DIN EN ISO 6271-1に従って分光測光法により測定した。
加速劣化試験は、撹拌され、当該条件下に2時間維持されるシステム中で1,4-ブタンジオールのサンプルを200℃に加温することにより行った。このシステムを、その後、室温まで冷却した。この試験の終時に、1,4-ブタンジオールの熱安定性を、標準法DIN EN ISO 6271-1に従ってAPHA色の分光測光により評価した。
結果を表1に報告する。
【0060】
実施例1
本発明による再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物は、特許出願WO 2015/158716に記載される発酵ブロスから取得した。
得られた発酵ブロスを加工して、再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール及び水を含む液体画分を、1又は2以上の固体画分から分離した。次いで、得られた液体画分を、逐次の精密ろ過、ナノ濾過、イオン交換及びエバポレーション処理による精製プロセスに付して、液体画分の総重量に関して20重量%の水を含有する液体画分を得た。
次いで、残る液体画分を
(a)当該カチオン交換樹脂を離れる際に液体画分について4以下のpHが得られるまで、スルホネート基を含有するカチオン交換樹脂を含むベッドを通過させた後、当該イオン交換樹脂を離れる際に液体画分について8以上のpHが得られるまで、四級アミン基を含有するイオン交換樹脂を通過させる精製プロセス、及び
(b)蒸留
に逐次付した。
得られた組成物中の2-ピロリドン及び2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの含量を、蒸留後に測定した。
結果を表1に示す。
【0061】
比較例1
再生可能資源由来の1,4-ブタンジオール組成物は、実施例1のステージ(a)において、カチオン交換樹脂を、液体画分のpHが4.5となる時間まで、より長い時間用い、アニオン交換樹脂を、pHが7に達するまで、より長時間稼動させたことを除き、実施例1に記載の手順に従って取得した。
得られた組成物中の2-ピロリドン及び2-(4'-ヒドロキシブトキシ)-テトラヒドロフランの含量を、蒸留後に測定した。
結果を表1に示す。
【0062】
比較例2
市販グレードの化石資源由来1,4-ブタンジオール(Markor Chemical Industry Co., Ltd製)を用いた。
表1に提供したデータにより示されるとおり、本発明による方法により取得された再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物、例えば、本発明による実施例1に記載の組成物は、予想外にも、比較例1及び2の各々により取得された組成物の2-ピロリドン値より低い2-ピロリドン値を有する。
更に、表2に提供したデータにより示されるとおり、本発明による方法により取得された再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物、例えば、本発明による実施例1に記載の組成物は、有利なことに、代表的には化石資源由来の1,4-ブタンジオールの場合に必要となる、更なる精製のため、したがって最終製品の安定化のための後処理手順を要することなく、経時的に安定なAPHA色数を有する。具体的には、表1に提供したデータにより示されるとおり、本発明による方法により取得された再生可能資源由来の1,4-ブタンジオールの組成物は、驚くべきことに、加速劣化試験の前後で10未満のAPHA色数を維持する。
【0063】
【0064】
実施例2及び3のポリエステルの製造
薬剤たるテレフタル酸、アジピン酸及び/又はアゼライン酸、1,4-ブタンジオール(実施例1によるもの)及びエステル化触媒(Tyzor TE(登録商標))を、油加熱器、蒸留カラム、蒸留物除去システムを有する真空ライン及び機械的撹機構を備える25リットルのスチール製反応器に供給した。
反応器を窒素下に密封し、撹拌機構を稼動させ、温度を徐々に220℃まで1時間にわたって上昇させた。その間に、エステル化プロセスに由来する水を留去し始めた。次に、温度を240℃まで更に1時間にわたって上昇させた。
蒸留を1時間240℃にて進行させ、その終時で見かけの転換率は100%以上であった。
エステル化ステージの終時に、重合触媒(1000ppmのオルトチタン酸テトラブチル、TnBt)を添加し、融液の温度を240℃に維持し、圧力を、約30分間にわたって2ミリバール以下まで徐々に低減させた。
融液の温度を240℃に保持して、所望の固有粘度が得られるまで、反応を4時間継続させた。
次いで、スピナーにより材料をフィラメントとして排出させ、水浴で冷却し、ペレットに造粒した。
【0065】
実施例2
総ジカルボン酸成分に関して48モル%の1,4-ブチレンテレフタレート単位、16モル%のアゼライン酸単位及び36モル%のアジピン酸単位を有するポリエステル ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンアゼレート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)を得た。このポリエステルの1,4-ブチレン単位は、実施例1による1,4-ブタンジオールから得た。
【0066】
実施例3
総ジカルボン酸成分に関して47モル%の1,4-ブチレンテレフタレート単位及び53モル%のアジピン酸単位を有するポリエステル ポリ(1,4-ブチレンアジペート-コ-1,4-ブチレンテレフタレート)を得た。このポリエステルの1,4-ブチレン単位は、実施例1による1,4-ブタンジオールから得た。
実施例2及び3によるポリエステルのMFR値を表2に報告する。
【0067】