(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052239
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】生体試料中で改善された性能を有するIGFBP7のためのアッセイ
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20230404BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20230404BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230404BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C07K16/18
C07K17/00 ZNA
G01N33/53 D
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000938
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2022003920の分割
【原出願日】2014-11-06
(31)【優先権主張番号】62/054,324
(32)【優先日】2014-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/900,942
(32)【優先日】2013-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/064,380
(32)【優先日】2014-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】511053023
【氏名又は名称】アスチュート メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジャエンドラン,ラヴィ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタスッバラオ,スリヴァスタ
(57)【要約】
【課題】改善されたIGFBP7イムノアッセイの提供。
【解決手段】ヒトIGFBP7に特異的に結合し、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適なモノクローナル抗体であって、LIWNKVKRGHYGVQRTELLPGDRDNL(配列番号1)またはSSSSSDTCGPCEPASCPPLP(配列番号2)から構成されるポリペプチドに特異的に結合するか、またはIGFBP7の立体構造エピトープに特異的に結合する、抗体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIGFBP7タンパク質に結合するモノクローナル抗体であって、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適な抗体。
【請求項2】
シグナル発生要素にコンジュゲートされている、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
固体支持体にコンジュゲートされている、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
ヒトIGFBP7の存在または量を検出するためのイムノアッセイの方法であって、
サンプルを請求項1に記載の抗体と接触させるステップと、
前記サンプル中のヒトIGFBP7の前記抗体への結合を検出するステップと、
検出された結合をヒトIGFBP7の存在または量と関連させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年11月6日に出願された米国仮特許出願第61/900,942号、および2014年9月23日に出願された米国仮特許出願第62/054,324号、および2014年10月15日に出願された米国仮特許出願第62/064,380(その各々は、全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み込まれる)の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景の下記詳述は、読み手の発明の理解を助けるために提供されるにすぎず、本発明に対する先行技術を説明する、またはこれを構成することを認めるものではない。
【0003】
IGFBP7(ヒト前駆体Swiss ProtエントリQ16270)は、組織におけるインスリン様増殖因子発現の制御に関与し、その受容体へのIGFの結合を調節する分泌タンパク質である。これはまた、報告によれば、プロスタサイクリン産生および細胞接着を刺激する。IGFBP7は、IGF非依存的メカニズムにより、前立腺および乳癌細胞株の増殖およびコロニー形成を抑制し、細胞周期のG1期の遅延、およびアポトーシスの増加を引き起こす。IGFBP7は正常ヒト組織において幅広く発現され、それは通常、前立腺、乳房、結腸、および肺由来の癌細胞株における発現の低減を示す。
【0004】
加えて、WO2011/097539号およびWO2011/075744号(その各々は全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書で参照により組み込まれる)は、個々に、およびマルチマーカーパネルにおいて、被験体の腎臓状態を評価するためのIGFBP7の使用を記載する。特に、イムノアッセイにより測定されるIGFBP7レベルは、腎臓状態のリスク層別化、診断、ステージ分類、予後、分類およびモニタリングと相関することが示されている。
【0005】
イムノアッセイなどの特異的結合アッセイから得られたシグナルは、1つ以上の結合種(例えば、抗体)と標的生体分子(すなわち、分析物)と抗体が結合するのに必要なエピトープ(複数可)を含むポリペプチドとの間で形成された複合体の直接的な結果である。イムノアッセイは、しばしば分析物を「検出することができる」;が、抗体エピトープはおよそ8アミノ酸であるので、対象となるマーカーを検出するように構成されたイムノアッセイはまた、それらのポリペプチドが、アッセイで使用される1つまたは複数の抗体に結合するのに必要なエピトープ(複数可)を含む限り、マーカー配列に関連するポリペプチドを検出するであろう。そのようなアッセイは、全長バイオマーカーを検出することができ、アッセイ結果は、対象となるバイオマーカーの濃度として表され得るが、アッセイからのシグナルは実際には、試料中に存在する全てのそのような「免疫反応性」ポリペプチドの結果である。そのような結合アッセイはまた、追加の種、例えば結合タンパク質、受容体、ヘパリン、脂質、糖、などに複合体化される、生体試料中に存在する免疫反応性ポリペプチドを検出することができ、ただし、それらの追加の種は結合種と標的生体分子の間の結合を妨害しないことを条件とする。しかしながら、典型的には、特異的結合アッセイは、精製分析物を使用して策定され、複合体形成およびフラグメント化パターンは考慮されない。これは、そのような追加の結合種のアイデンティティがわかっていない場合に特に当てはまる。
【発明の概要】
【0006】
発明の1つの目的は、特に、腎損傷の評価において使用された場合、改善された臨床成績を有するIGFBP7イムノアッセイを提供することである。特定的には、我々は、生物流体などの複雑な臨床標本で使用された場合、特に、迅速アッセイフォーマットで使用された場合に、改善されたアッセイ性能を示す抗体および抗体ペアの選択および使用を記載する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、ヒトIGFBP7に特異的に結合し、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適なモノクローナル抗体に関する。抗体は、LIWNKVKRGHYGVQRTELLPGDRDNL(配列番号1)またはSSSSSDTCGPCEPASCPPLP(配列番号2)から構成されるポリペプチドに特異的に結合する。
【0008】
関連する態様では、本発明は、ヒトIGFBP7に特異的に結合し、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適な抗体ペアに関し、この抗体ペアは、LIWNKVKRGHYGVQRTELLPGDRDNL(配列番号1)から構成されるポリペプチドに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体およびSSSSSDTCGPCEPASCPPLP(配列番号2)から構成されるポリペプチドに特異的に結合する第2のモノクローナル抗体を含む。
【0009】
別の関連する態様では、本発明は、ヒトIGFBP7に特異的に結合し、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適なモノクローナル抗体に関する。抗体はIGFBP7の立体構造エピトープに特異的に結合する。立体構造エピトープは、逐次的には連続していないが、IGFBP7タンパク質内の3次元空間内では共に接近する残基により形成される。そのような抗体の一例は、1D6と呼ばれ、以下で記載される。
【0010】
関連する態様では、本発明は、ヒトIGFBP7に特異的に結合し、サンドイッチイムノアッセイにおいて使用するのに好適な抗体ペアに関し、抗体ペアは、IGFBP7の立体構造エピトープに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体、およびLIWNKVKRGHYGVQRTELLPGDRDNL(配列番号1)またはSSSSSDTCGPCEPASCPPLP(配列番号2)から構成されるポリペプチドに特異的に結合する第2のモノクローナル抗体を含む。
【0011】
ある一定の実施形態では、本発明の抗体は、(i)配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9に少なくとも90%同一な配列を有する軽鎖可変領域、および(ii)配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10に少なくとも90%同一な配列を有する重鎖可変領域の1つまたは両方を含み、ここで、抗体はヒトIGFBP7に特異的に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、本明細書では、IC9E4.1と呼ばれるものである。
【0012】
他の実施形態では、本発明の抗体は(i)配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11に少なくとも90%同一な配列を有する軽鎖可変領域、および(ii)配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12に少なくとも90%同一な配列を有する重鎖可変領域の1つまたは両方を含み、ここで、抗体はヒトIGFBP7に特異的に結合する。好ましい実施形態では、抗体は、本明細書では、1D6と呼ばれるものである。
【0013】
ある一定の実施形態では、本発明の抗体ペアは、(i)(i)配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11に少なくとも90%同一な配列を有する軽鎖可変領域、および(ii)配列番号12または配列番号12に少なくとも90%同一な配列のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域の1つまたは両方を含む第1の抗体であって、ヒトIGFBP7に特異的に結合する抗体;および(ii)(i)配列番号9のアミノ酸配列または配列番号9に少なくとも90%同一な配列を有する軽鎖可変領域、および(ii)配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10に少なくとも90%同一な配列を有する重鎖可変領域の1つまたは両方を含む第2の抗体であって、ヒトIGFBP7に特異的に結合する抗体を含む。好ましい実施形態では、抗体ペアは、本明細書では、1D6と呼ばれる第1の抗体および本明細書では、IC9E4.1と呼ばれる第2の抗体を含む。
【0014】
特定の配列「から構成されるポリペプチドに特異的に結合する」という句は、本明細書では、抗体がその配列を含むより長いポリペプチドまたはその配列のサブセットであるより短いポリペプチドに結合しないことを意味することを意図しない。むしろ、この句は抗体が特定の列挙されたポリペプチドに結合することを意味することを単に意図する。
【0015】
特許請求される方法において使用するための抗体は、様々な種から得られ得る。例えば、本発明の抗体は、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ヒト、ラマまたはらくだ配列、またはそのような配列の組み合わせ(いわゆるキメラ抗体)である免疫グロブリン配列を含んでもよい。本発明で使用するための抗体は、イムノアッセイにおいてそれらの性能により同定され、その後、その性能に関連するエピトープを理解するために、エピトープマッピングによりさらに特徴付けられ得る。
【0016】
エピトープは、通常、例えばアミノ酸または糖側鎖など分子の化学的に活性な表面基から構成され、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的電荷特性を有する。立体構造および非立体構造エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。好ましくは、各抗体に対するエピトープは、ヒトIGFBP7配列から得られる配列である、配列番号1または配列番号2内に含まれる。ある一定の実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、IGFBP7への結合のための、少なくとも1つ、好ましくは2、3、または4つの連続した「重要残基」を含む。「重要残基」は、アラニンに変更されると、配列番号1(または配列番号2)自体へのその結合に対し、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%だけ、抗体の結合が低減される、配列番号1(または配列番号2)のアミノ酸として規定される。好ましい実施形態では、少なくとも1つの重要残基は配列TELLPGDRD(配列番号3)中の少なくとも1つの残基または配列EPASC(配列番号4)中の少なくとも1つの残基である。
【0017】
そのようなモノクローナル抗体は、シグナル発生要素にコンジュゲートさせてもよく、または固体支持体上に固定化させてもよい。サンドイッチアッセイの一例では、第1の抗体(検出可能に標識されている)および第2の抗体(試験装置のあらかじめ決められたゾーンに固定化されている)は、試料中のIGFBP7と、試験装置のあらかじめ決められたゾーンでサンドイッチ複合体を形成する。サンドイッチアッセイでは、第1および第2の抗体は同じ(特に、ポリクローナル抗体が使用される場合)か、異なるものとすることができる。よって、発明の抗体はサンドイッチ対で使用することができ、または個々に、モノクローナル抗体ではない別の結合実体、例えばポリクローナル抗体またはアプタマーと共に使用することができる。
【0018】
本発明の抗体は、生体試料中のIGFBP7を検出するための試験キットにおいて試薬として使用することができる。そのような試験キットは、例えば、生体試料中のヒトIGFBP7の存在または量と関連する検出可能なシグナルを発生させるように構成された使い捨て試験装置を含むことができる。あるいは、そのような試験キットは、使い捨て試験装置を使用しない臨床分析計においてアッセイを実施するために策定することができる。好ましくは、試験キットはインビトロ診断である。「インビトロ診断」という用語は、本明細書では、医療装置を示し、これは、単独で使用されるか、組み合わせて使用されるかに関係なく、単にまたは主に生理的または病理学的状態に関する、または先天異常に関する、または可能性のあるレシピエントとの安全性および適合性を決定するため、または治療手段をモニタするための情報を提供する目的で、標本、例えば、人体に由来する血液および組織供与物の検査のためにインビトロで使用されるが製造者によって企図された、試薬、試薬製品、キャリブレーター、対照材料、キット、機器、器具、設備、またはシステムである。
【0019】
ある一定の実施形態では、イムノアッセイはラテラルフローフォーマットで実施される。ラテラルフローテストは、試験試料がクロマトグラフィー様式で吸水性または非吸水性多孔性固体基材に沿って流れるイムノアッセイの形態である。ラテラルフローテストは、競合的またはサンドイッチフォーマットアッセイのいずれかとして動作することができる。好ましいラテラルフロー装置は使い捨ての、単回使用試験装置である。試料は、試験装置に適用ゾーンで適用され、基材を移行し、抗体または抗原で前処理されたラインまたはゾーンに遭遇する。「テストゾーン」という用語は、本明細書では、対象となる分析物の存在または量に関連するシグナルを発生させるために情報が得られる、ラテラルフローテストストリップ上の別々の場所を示す。検出可能なシグナルは視覚的に読み取ることができ、または使い捨て試験装置を分析機器、例えば、反射率計、蛍光光度計、または透過光度計に挿入することにより得ることができる。このリストは制限することを意味しない。試料は前処理なしで、適用ゾーンに適用してもよく、または適用前に1つ以上のアッセイ試薬と予混合されてもよい。後者の場合、抗体は使い捨て試験装置とは別の容器で提供され得る。
【0020】
本発明の抗体は、拡散により、使い捨て試験装置内の表面に固定化してもよく、そのため、抗体は、試料が表面と接触すると試料中に溶け込む。サンドイッチアッセイフォーマットでは、この拡散により結合された抗体が試料中のその同族抗原に結合することができ、その後、抗原が、検出ゾーンで非拡散により結合された第2の抗体により結合されると、検出ゾーンで固定化され得る。競合的フォーマットでは、試料中のその同族抗原は、拡散により結合された抗体に対する結合について、アッセイ試薬として提供される標識抗原と競合し得る。
【0021】
発明のキットはさらに、検出可能なシグナルをIGFBP7の濃度に関連づける較正を含むことができる。例として、較正曲線は、使い捨て試験装置を収容する分析機器により読み取られる電子記憶装置上で提供することができ、例えばROMチップ、フラッシュドライブ、RFIDタグ、などである。あるいは、較正曲線はコードラベル上で提供することができ、光学的に読み取られ、例えば2-Dバーコード、またはネットワーク接続により伝送される。分析機器はその後、この較正曲線を使用して、アッセイからの検出可能なシグナルをIGFBP7濃度に関連させることができる。
【0022】
ある一定の実施形態では、本発明の抗体ペアを使用して実施されるアッセイ方法は、生体試料中のヒトIGFBP7の存在または量と関連するシグナルを提供し、ここで、このアッセイ法におけるIGFBP7の最低検出可能濃度は20ng/mL以下、より好ましくは10ng/mL以下、5ng/mL以下、1ng/mL以下、最も好ましくは0.1ng/mL以下である。
【0023】
関連する態様では、本発明は、下記を含む、生体試料中のヒトIGFBP7の存在または量を決定するための方法を提供し:
一緒になってヒトIGFBP7とともにサンドイッチ複合体を形成する第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体を用いて生体試料上でイムノアッセイを実施することであって、イムノアッセイは、サンドイッチ複合体中の結合された生体試料中のヒトIGFBP7の存在または量に関連する検出可能なシグナルを提供すること;ならびに
検出可能なシグナルを生体試料中のヒトIGFBP7の存在または量に関連付けること。好ましくは、イムノアッセイにおけるIGFBP7の最低検出可能濃度は20ng/mL以下、より好ましくは10ng/mL以下、5ng/mL以下、1ng/mL以下、最も好ましくは0.1ng/mL以下である。
【0024】
特に好ましい実施形態では、第1のモノクローナル抗体は、配列番号1から構成されるポリペプチドに結合し、第2のモノクローナル抗体は、配列番号2から構成されるポリペプチドに結合し、各場合において少なくとも108M-1の親和性を有する。
【0025】
好ましいアッセイ法は、ヒトIGFBP7を検出するイムノアッセイを実施することを含む。そのようなイムノアッセイは、前記体液試料を、マーカーを検出する抗体と接触させること、およびその抗体への結合を検出することを含むことができる。好ましくは、体液試料は、尿、唾液、血液、血清、および血漿からなる群より選択され、最も好ましくは尿である。
【0026】
本発明の抗体に関しては、発明はまた、追加の態様では、そのような抗体をコードする核酸、およびそのような抗体を発現する抗体発現細胞株に関する。
【0027】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細が添付の図面および以下の説明において明記される。本開示の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書では、「インスリン様増殖因子結合タンパク質7」および「IGFBP7」という用語は、インスリン様増殖因子結合タンパク質7前駆体(Swiss-ProtQ16270(配列番号5))に由来する、生体試料中に存在する1つ以上のポリペプチドを示す
10 20 30 40 50 60
MERPSLRALL LGAAGLLLLL LPLSSSSSSD TCGPCEPASC PPLPPLGCLL GETRDACGCC
70 80 90 100 110 120
PMCARGEGEP CGGGGAGRGY CAPGMECVKS RKRRKGKAGA AAGGPGVSGV CVCKSRYPVC
130 140 150 160 170 180
GSDGTTYPSG CQLRAASQRA ESRGEKAITQ VSKGTCEQGP SIVTPPKDIW NVTGAQVYLS
190 200 210 220 230 240
CEVIGIPTPV LIWNKVKRGH YGVQRTELLP GDRDNLAIQT RGGPEKHEVT GWVLVSPLSK
250 260 270 280
EDAGEYECHA SNSQGQASAS AKITVVDALH EIPVKKGEGA EL
【0029】
下記ドメインがインスリン様増殖因子結合タンパク質7において同定されている:
残基 長さ ドメインID
1-26 26 シグナルペプチド
27-282 256 インスリン様増殖因子結合タンパク質7
【0030】
本明細書で特定的に別記されない限り、使用される用語の定義は、薬科学の技術分野で使用される標準定義である。本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で明確に別記されない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「1つの医薬担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物、などを含む。
【0031】
「被験体」という用語は、本明細書では、ヒトまたは非ヒト生物を示す。よって、本明細書で記載される方法および組成物はヒトおよび動物疾患の両方に適用可能である。さらに、被験体は好ましくは生体であるが、本明細書で記載される発明は、同様に死後分析において使用され得る。好ましい被験体はヒトであり、最も好ましくは「患者」であり、これは、本明細書では、疾患または病状に対し医療を受けている、生きているヒトを示す。これは、病態の徴候について調べられている、規定された病気を有さない個人を含む。
【0032】
好ましくは、分析物は試料中で測定される。そのような試料は被験体から得ることができ、または、被験体に提供されることが意図されている生物学的材料から得ることができる。例えば、試料は、被験体への移植の可能性について評価されている腎臓、および既存の損傷について腎臓を評価するために使用される分析物測定から得ることができる。好ましい試料は体液試料である。
【0033】
「体液試料」という用語は、本明細書では、対象となる被験体、例えば患者または移植ドナーの診断、予後、分類または評価の目的のために得られる体液の試料を示す。ある一定の実施形態では、そのような試料は、進行中の病状の転帰または治療レジメンの病状に対する効果を決定する目的のために得られ得る。好ましい体液試料としては、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、および胸水が挙げられる。加えて、当業者であれば、ある一定の体液試料は、分画または精製手順、例えば、全血の血清または血漿成分への分離後に、より容易に分析されるであろうことを理解するであろう。
【0034】
「診断」という用語は、本明細書では、当業者が、患者が所定の疾患または病状を患うかどうかの確率(「可能性」)を推定するおよび/または決定することができる方法を示す。本発明の場合、「診断」は、試料を採取し、アッセイした被験体について、本発明の腎臓損傷マーカーに対するアッセイ、最も好ましくはイムノアッセイの結果を、任意で他の臨床特性と共に使用して、急性腎臓損傷またはARFの診断に達する(すなわち、発生または不発生)ことを含む。そのような診断が「決定される」ことは、診断が100%正確であることを暗示することを意味しない。多くのバイオマーカーは複数の病状を示す。熟練した臨床医は情報が全くないところではバイオマーカー結果を使用せず、むしろ、試験結果を他の臨床徴候と共に使用して、診断に至る。よって、あらかじめ決められた診断閾値の一側面での測定されたバイオマーカーレベルは、あらかじめ決められた診断閾値の他の側面での測定されたレベルに比べ、被験体における疾患の発生のより大きな可能性を示す。
【0035】
同様に、予後リスクは所定の経過または転帰が起こる確率(「可能性」)を示す。予後指標のレベルまたはレベルの変化(ひいては、罹患率の確率(例えば、腎機能の悪化、将来のARF、または死亡)の増加と関連する)は、患者における有害転帰の「可能性の増加を示す」と呼ばれる。
【0036】
「ラテラルフロー」という用語は、本明細書では、実質的に平板な多孔性材料を通る長手方向の試薬の流れを示す。そのような多孔性材料は、材料の厚さが長さおよび幅寸法の10%以下である場合、「実質的に平板」である。
【0037】
装置の第1の領域に対して本明細書で使用される「下流領域」という用語は、その流体がすでに第1の領域に到達した後に流体が流れ込むものを示す。
【0038】
「試料適用領域」という用語は、本明細書では、対象となる流体試料が、その成分を決定する目的で導入されるアッセイ装置の部分を示す。
【0039】
マーカーアッセイ
【0040】
一般に、イムノアッセイは、対象となるバイオマーカーを含む、または含む疑いがある試料をバイオマーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体と接触させることを含む。その後、試料中のポリペプチドの抗体への結合により形成された複合体の存在または量を示すシグナルを発生する。シグナルはその後、試料中のバイオマーカーの存在または量と関連付けられる。バイオマーカーの検出および分析のための多くの方法および装置が当業者によく知られている。例えば、米国特許6,143,576号;6,113,855号;6,019,944号;5,985,579号;5,947,124号;5,939,272号;5,922,615号;5,885,527号;5,851,776号;5,824,799号;5,679,526号;5,525,524号;および5,480,792号、ならびにThe Immunoassay Handbook, David Wild, ed. Stockton Press, New York, 1994(その各々は、全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書で参照により組み込まれる)を参照されたい。
【0041】
当技術分野で知られているアッセイ装置および方法は、様々なサンドイッチ、競合的、または非競合的アッセイフォーマットで標識分子を使用し、対象となるバイオマーカーの存在または量と関連するシグナルを発生させることができる。好適なアッセイフォーマットはまた、クロマトグラフィー、質量分析、およびタンパク質「ブロッティング」法を含む。加えて、ある一定の方法および装置、例えばバイオセンサおよび光学イムノアッセイが、標識分子の必要なく、分析物の存在または量を決定するために、使用され得る。例えば、米国特許5,631,171号;および5,955,377号(その各々は、全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書で参照により組み込まれる)を参照されたい。当業者はまた、ロボット機器、例えば、限定はされないが、Beckman ACCESS(登録商標)、Abbott AXSYM(登録商標)、Roche ELECSYS(登録商標)、Dade Behring STRATUS(登録商標)システムはイムノアッセイを実施することができるイムノアッセイ分析計の1つであることを認識する。しかし、任意の好適なイムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIAs)、競合結合アッセイ、などを使用してもよい。
【0042】
抗体または他のポリペプチドが、アッセイにおいて使用するための様々な固体支持体上に固定化され得る。特異的結合部材を固定化するために使用され得る固相としては、固相結合アッセイにおける固相として開発され、かつ/または使用されるものが挙げられる。好適な固相の例としては、メンブレンフィルタ、セルロース系紙、ビーズ(ポリマー、ラテックスおよび常磁性粒子を含む)、ガラス、シリコンウエハ、微小粒子、ナノ粒子、TentaGel、AgroGel、PEGAゲル、SPOCCゲル、およびマルチプルウェルプレートが挙げられる。アッセイストリップは、1つまたは複数の抗体を一列に固体支持体上でコーティングすることにより調製することができる。このストリップはその後、試験試料中に浸漬させることができ、その後、洗浄および検出工程により直ちに処理することができ、測定可能なシグナル、例えば着色スポットが生成される。抗体または他のポリペプチドは、アッセイ装置の特異的ゾーンに、アッセイ装置表面に直接コンジュゲートすることにより、または間接結合により結合させることができる。後者の場合の一例では、抗体または他のポリペプチドが粒子または他の固体支持体、および装置表面に固定化されたその固体支持体上に固定化され得る。
【0043】
生物学的アッセイでは、検出するための方法が必要とされ、結果の定量化のための最も一般的な方法の1つは、検出可能な標識を、研究される生物系内の成分の1つに対し親和性を有するタンパク質または核酸にコンジュゲートさせるものである。検出可能な標識としては、それ自体が検出可能である分子(例えば、蛍光部分、電気化学標識、金属キレート、など)ならびに検出可能な反応生成物の生成により(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、などの酵素)、またはそれ自体検出可能な特異的結合分子(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロベンゼン、ヒ酸フェニル、ssDNA、dsDNA、など)により間接的に検出され得る分子が挙げられる。
【0044】
固相および検出可能な標識コンジュゲートの調製はしばしば、化学架橋剤の使用を含む。架橋試薬は少なくとも2つの反応基を含み、一般に、ホモ官能性架橋剤(同一の反応基を含む)およびヘテロ官能性架橋剤(非同一の反応基を含む)に分類される。アミン、スルフヒドリルを介して結合する、または非特異的に反応するホモ二官能性架橋剤は多くの商業的供給源から入手可能である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、α-ハロアシルおよびピリジルジスルフィドはチオール反応基である。マレイミド、ハロゲン化アルキルおよびアリール、およびα-ハロアシルはスルフヒドリルと反応し、チオールエーテル結合を形成し、一方、ピリジルジスルフィドはスルフヒドリルと反応し、混合ジスルフィドを生成する。ピリジルジスルフィド生成物は切断可能である。イミドエステルもまた、タンパク質-タンパク質架橋に非常に有用である。様々なヘテロ二官能性架橋剤は、それぞれ、成功コンジュゲーションのための異なる属性を合わせており、市販されている。
【0045】
ある一定の態様では、本発明は、記載されるマーカーの分析のためのキットを提供する。キットは、マーカーに特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含む少なくとも1つの試験試料の分析のための試薬を含む。キットはまた、本明細書で記載される診断および/または予後相関の1つ以上を実施するための装置および説明書を含む。好ましいキットは、サンドイッチアッセイを実施するための抗体ペア、または競合的アッセイを実施するため、分析物のための標識種を含むであろう。好ましくは、抗体ペアは固相にコンジュゲートされた第1の抗体および検出可能な標識にコンジュゲートされた第2の抗体を含み、ここで、第1および第2の抗体の各々は腎臓損傷マーカーに結合する。最も好ましくは、抗体の各々はモノクローナル抗体である。キットを使用し、相関を実施するための説明書は、ラベルの形態とすることができ、これは、その製造、輸送、販売または使用中の任意の時に、キットに添付された、または別様に付随する、任意の記載されたまたは記録された書類を示す。例えば、ラベルという用語は、広告チラシおよびパンフレット、包装材料、説明書、オーディオまたはビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキット上に直接プリントされた文字を含む。
【0046】
ある一定の実施形態では、マーカーアッセイは、単回使用の使い捨て試験装置を使用して実施される。そのような試験装置はしばしば、ラテラルフロー装置の形態をとり、これは現在、処方箋なしで購入できる妊娠テストの一般的な使用からよく知られるようになっている。一般に、これらのアッセイ装置は伸長したベース層を有し、その上では、試料添加領域と評価領域の間で差別化することができる。典型的な使用では、試料が試料添加領域に適用され、ベース層に平行に走っている液体輸送経路に沿って流れ、その後、評価領域に流れ込む。捕捉試薬が評価領域中に存在し、捕捉された分析物は、捕捉された分析物と結合した視認可能な部分を検出するための様々なプロトコルにより検出することができる。例えば、アッセイは視認可能なシグナル、例えば色変化、蛍光、ルミネセンス、などを生成させることができ、その時に、生体試料中の分析物の有無が示される。
【0047】
試料添加領域は、例えば、ハウジング内のオープンチャンバの形態;吸収パッドの形態;などで提供することができる。試料添加領域は、様々な形状、すなわち、円形、長方形、正方形などのポートとすることができ、またはその領域は装置内のトラフとすることができる。
【0048】
フィルタ要素は、例えば妨害する血液細胞を血液から除去または遅延させるために微粒子を試料から濾過するために、試料添加領域内、上、またはこれに隣接して配置することができ、よって、血漿がさらに装置を通って移動することができる。濾液はその後、フィルタに流動的に接続された多孔性部材中に移動することができる。血液中に存在する細胞材料を除去または遅延させるのに好適なフィルタは当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許4,477,575号;5,166,051号;6,391,265号;および7,125,493号(その各々はその全体が本明細書で参照により組み込まれる)を参照されたい。多くの好適な材料が当業者に知られており、ガラス繊維、合成樹脂繊維、様々な型のメンブレン(細孔サイズが約65~約15μmで異なる非対称メンブレンフィルタを含む)、およびそのような材料の組み合わせが挙げられる。加えて、フィルタ要素は、赤血球の血液血漿からの分離を促進する、1つ以上の化学物質を含むことができる。そのような化学物質の例はトロンビン、レクチン、カチオン性ポリマー、1つ以上の赤血球表面抗原に対する抗体などである。赤血球の血漿からの分離を促進するそのような化学物質(複数可)は、フィルタ要素において、共有結合手段、非特異的吸収、などにより提供することができる。
【0049】
ある一定の実施形態では、標識ゾーンは、試料投入ゾーンの下流に配置され、拡散により配置された標識試薬を含み、これは、対象となる分析物に結合し、または、結合種への結合に対し対象となる分析物と競合する。あるいは、標識ゾーンは、標識試薬を試料投入ゾーンへの適用前に試料と予混合する場合、排除することができる。検出ゾーンは標識ゾーンの下流に配置され、対象となる分析物に結合する固定化された捕捉試薬を含む。
【0050】
発明において使用するためのメンブレンに対する最適細孔直径は約10~約50μmである。メンブレンは典型的には約1ミル~約15ミルの厚さであり、典型的には5から10ミルの範囲であるが、最大200ミルまで、およびそれ以上であってもよい。メンブレンは一般に水不浸透性層、例えばMylar(登録商標)ポリエステルフィルム(DuPont Teijin Films)により裏打ちされ得る。使用される場合、バッキングは一般にメンブレンに、接着剤、例えば3M 444両面接着テープにより固定される。典型的には、水不浸透性バッキングが低い厚さのメンブレンのために使用される。多種多様のポリマーが使用され得るが、ただし、それらがアッセイ構成要素に非特異的に結合せず、試料の流れを妨害しないことを条件とする。例示的なポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどが挙げられる。あるいは、メンブレンは自立とすることができる。他の非吸水性メンブレン、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、などもまた使用することができる。様々な実施形態では、標識ゾーン材料は、ブロッキング剤および安定化剤を含む溶液で前処理され得る。ブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、メチル化BSA、カゼイン、脱脂粉乳が挙げられる。装置はまた、追加の構成要素、例えば、例として、緩衝剤、HAMA阻害剤、洗浄剤、塩(例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、などの塩化物および/または硫酸塩)、およびタンパク質性構成要素(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、乳タンパク質、など)を含むことができる。このリストは制限することを意味しない。
【0051】
装置は、さらに、試験装置が適正に動作したことを決定するために読み取られる様々なコントロール位置を含む。例として、手順コントロールゾーンがアッセイ検出ゾーンとは別に、試料の流れが予想通りであることを確認するために提供され得る。コントロールゾーンは好ましくは空間的に別の領域であり、そこでは、試薬の適正な流れを示すシグナルが生成され得る。手順コントロールゾーンは対象となる分析物、またはそのフラグメントを含むことができ、これらに、分析物アッセイにおいて使用される過剰の標識抗体が結合することができる。動作中、標識試薬は、対象となる分析物が試験試料に存在しなくても、コントロールゾーンに結合する。コントロールラインにおけるシグナルの出現は、たとえ否定的な結果であっても、試験結果を読み取ることができる時間を示すという点で、コントロールラインの使用は助けになる。よって、予想されたシグナルがコントロールラインで現れた場合、キャプチャーゾーン中のシグナルの有無を示すことができる。装置は、さらに陰性コントロール領域を含むことができる。このコントロール領域の目的は、試験装置が適正に動作していないことをユーザーに警告することである。適正に動作している場合、シグナルまたはマークは陰性コントロール領域で視認されないはずである。
【0052】
そのようなアッセイ装置の外側のケーシングまたはハウジングは様々な形態をとり得る。典型的には、細長いケーシングを含み、複数の中間取り付け(interfitting)部品を有し得る。特に好ましい実施形態では、ハウジングは上カバーおよび底部支持体を含む。上カバーは、適用開口部および観察窓を含む。好ましい実施形態では、ハウジングは水分不浸透性固体材料、例えば、プラスチック材料から製造される。様々な市販のプラスチック、例えば、限定はされないが、ビニル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスルファン、ポリエステル、ウレタン、およびエポキシがハウジングを構築するために使用され得ることが企図される。ハウジングは、従来の方法、例えば、当技術分野においてよく知られており、使用されている標準成形技術により調製され得る。ハウジングは、成形技術により生成され得、成形技術としては、射出成形、圧縮成形、トランスファ成形、ブロー成形、押出成形、発泡成形、および熱成形が挙げられるが、それらに限定されない。前記成形技術は当技術分野でよく知られており、そのため、本明細書では、詳細に記載していない。例えば、Processes And Materials Of Manufacture, 第3版, R. A. Lindsberg (1983) Allyn and Baron pp. 393-431を参照されたい。
【0053】
必要に応じて、使用される検出可能な標識の比色分析、ルミネセンス、または蛍光強度がその後、標識に適切な機器を用いて評価され得る。例として、蛍光光度計は蛍光標識を検出するするために使用することができ;反射率計は、光を吸収する標識を検出するために使用することができる、などである。試料中の対象となる分析物の濃度は、測定された応答を試料流体中の分析物の量に相関させることにより決定することができる。
【0054】
アッセイ相関
「相関させる」および「関連させる」という用語は、本明細書では、アッセイにおけるバイオマーカーの測定に関しては、アッセイから得られたシグナルに基づき、試料中のバイオマーカーの存在、またはより好ましくは量を決定することを示す。しばしば、これは、アッセイに参加する1つの種上の検出可能な標識から発生したシグナルを、シグナルをバイオマーカーの濃度または閾値量に変換するために使用することができる、あらかじめ決められた検量線と比較する形態をとる。
【0055】
「相関させる」および「関連させる」という用語は、本明細書では、診断または予後のためのバイオマーカーの使用に関しては、患者におけるバイオマーカー(複数可)の存在または量を所定の病状を患うことがわかっている、またはそのリスクがあることがわかっている個人;または所定の病状を有さないことがわかっている個人におけるその存在または量と比較することを示す。しばしば、これは、バイオマーカー濃度の形態のアッセイ結果を、疾患の発生または不発生、またはいくつかの将来の転帰の可能性を示すために選択されたあらかじめ決められた閾値と比較する形態をとる。
【0056】
診断閾値を選択することは、とりわけ、疾患の確率、異なる試験閾値での正しいおよび誤った診断の分布、および診断に基づく治療の結果(または治療の失敗)の推定の検討を含む。例えば、非常に有効であり、リスクのレベルが低い特定の療法を投与することを考えた時、試験はほとんど必要なく、というのも、臨床医は実質的な診断の不確実性を受け入れることができるからである。他方、治療選択がより有効でなく、よりリスクが高い状況では、臨床医はしばしば、診断確実性のより高い程度を必要とする。よって、費用便益分析は、診断閾値を選択することに含まれる。
【0057】
好適な閾値は様々な方法で決定され得る。例えば、心筋トロポニンを使用した急性心筋梗塞の診断に対する1つの推奨される診断閾値は、正常集団において見られる濃度の97.5パーセンタイルである。別の方法は、同じ患者由来の連続試料を見ることとしてもよく、この場合、前の「ベースライン」結果が、バイオマーカーレベルの一時的な変化をモニタするために使用される。
【0058】
集団研究はまた、決定閾値を選択するために使用され得る。受信者動作特性(「ROC」)はレーダー画像の分析のために第二次世界大戦中に開発されたシグナル検出理論の分野から生じ、ROC分析はしばしば、「疾患」亜集団を「非疾患」亜集団から最もよく区別することができる閾値を選択するために使用される。この場合における偽陽性は、個人の試験は陽性であるが、実際には、疾患を有していない時に起こる。他方、偽陰性は個人の試験は陰性であり、健康であることが示唆され、その際、実際には、疾患を有している時に起こる。ROC曲線を描くために、決定閾値が連続して変動するので、真陽性率(TPR)および偽陽性率(FPR)が決定される。TPRは、感度と同じであり、FPRは1-特異度に等しいので、ROCグラフは時として、感度対(1-特異度)プロットと呼ばれる。完全な試験は、1.0のROC曲線下面積を有するであろう;ランダム試験は0.5の面積を有するであろう。閾値は特異度および感度の許容されるレベルを提供するように選択される。
【0059】
この状況では、「疾患」は1つの特性(疾患または病状の存在またはいくつかの転帰の発生)を有する集団を示すことを意味し、「非疾患」は、その特性を欠く集団を示すことを意味する。単一の決定閾値はそのような方法の最も簡単な適用であるが、複数の決定閾値が使用され得る。例えば、第1の閾値未満では、疾患の不存在が比較的高い信頼度で割り当てられ、第2の閾値超では、疾患の存在がまた、比較的高い信頼度で割り当てられ得る。2つの閾値の間は、未定であると考えられ得る。これは、本質的に例示にすぎないことが意味される。
【0060】
閾値比較に加えて、アッセイ結果を患者分類(疾患の発生または不発生、転帰の可能性、など)に相関させるための他の方法としては、決定木、ルールセット、ベイジアン方法、およびニューラル・ネットワーク法が挙げられる。これらの方法は、被験体が複数の分類から1つの分類に属する程度を表す確率値を生成させることができる。
【0061】
試験精度の測定値は、Fischer et al., Intensive Care Med. 29: 1043-51, 2003において記載されるように得ることができ、所定のバイオマーカーの有効性を決定するために使用することができる。これらの測定値は感度および特異度、予測値、尤度比、診断オッズ比、およびROC曲線面積を含む。ROCプロットの曲線下の面積(「AUC」)は、分類指標がランダムに選択した陽性例をランダムに選択した陰性例よりも高くランクづけする確率に等しい。ROC曲線下面積は、マンホイットニーのU検定(考慮する2つの群が連続データである場合、2つの群において得られるスコア間の中央値差に対する試験)、またはランクのウィルコクソン検定に等しいと考えることができる。
【0062】
上記のように、好適な試験はこれらの様々な測定値に対し下記結果の1つ以上を示すことができる:0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なお一層より好ましくは少なくとも0.9および最も好ましくは少なくとも0.95の特異度、対応する感度は0.2超、好ましくは0.3超、より好ましくは0.4超、さらにより好ましくは少なくとも0.5、なお一層より好ましくは0.6、その上より好ましくは0.7超、さらにより好ましくは0.8超、より好ましくは0.9超、および最も好ましくは0.95超;0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは少なくとも0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なお一層より好ましくは少なくとも0.9および最も好ましくは少なくとも0.95の感度、対応する特異度は0.2超、好ましくは0.3超、より好ましくは0.4超、さらにより好ましくは少なくとも0.5、なお一層より好ましくは0.6、その上より好ましくは0.7超、さらにより好ましくは0.8超、より好ましくは0.9超、および最も好ましくは0.95超;少なくとも75%特異度と合わせられる少なくとも75%感度;0.5超、好ましくは少なくとも0.6、より好ましくは0.7、さらにより好ましくは少なくとも0.8、なお一層より好ましくは少なくとも0.9、および最も好ましくは少なくとも0.95のROC曲線面積;1とは異なるオッズ比、好ましくは少なくとも約2以上または約0.5以下、より好ましくは少なくとも約3以上または約0.33以下、さらにより好ましくは少なくとも約4以上または約0.25以下、なお一層より好ましくは少なくとも約5以上または約0.2以下、および最も好ましくは少なくとも約10以上または約0.1以下;1を超える、少なくとも2、より好ましくは少なくとも3、さらにより好ましくは少なくとも5、および最も好ましくは少なくとも10の陽性尤度比(感度/(1-特異度)として計算);ならびにまたは、1未満、0.5またはそれ未満、より好ましくは0.3またはそれ未満、および最も好ましくは0.1またはそれ未満の陰性尤度比((1-感度)/特異度として計算)。
【0063】
抗体
「抗体」という用語は、本明細書では、抗原またはエピトープに特異的に結合することができる、1つまたは複数の免疫グロブリン遺伝子、またはそのフラグメントに由来する、これに倣って作られた、またはこれにより実質的にコードされたペプチドまたはポリペプチドを示す。例えば、Fundamental Immunology, 第3版, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993); Wilson (1994; J. Immunol. Methods 175:267-273; Yarmush (1992) J. Biochem. Biophys. Methods 25:85-97を参照されたい。抗体という用語は、抗原に結合する能力を保持する抗原結合部分、すなわち、「抗原結合部位」(例えば、フラグメント、部分配列、相補性決定領域(CDR))を含み、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCHlドメインから構成される一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCHlドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから構成されるFvフラグメント、(v)VHドメインから構成されるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。単鎖抗体もまた、言及により「抗体」という用語に含められる。
【0064】
本明細書では、「抗体可変ドメイン」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)、およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽および重鎖の部分を示す。VHは、重鎖の可変ドメインを示す。VLは、軽鎖の可変ドメインを示す。この発明で使用される方法によれば、CDRおよびFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabatにより規定され得る(Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991))。抗体または抗原結合性フラグメントのアミノ酸番号付けもまた、Kabatのそれによる。
【0065】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定および分離および/または回収されたものである。その自然環境の汚染成分は、抗体に対する診断または治療的使用を妨害するであろう材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。好ましい実施形態では、抗体は、(1)Lowry法で測定した場合、95重量%超の抗体まで、および最も好ましくは99重量%超まで(2)スピニングカップシークエネーターの使用により、少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)SDS-PAGEにより、還元または非還元条件下でクーマシーブルーまたは、好ましくは、銀染色を使用して均質となるまで精製されるであろう。単離された抗体は、インサイチューで組換え細胞内にある抗体を含み、というのも、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0066】
通常、抗体は、わかっている結合特性を有する親抗体の重または軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む重および/または軽鎖可変を含み得る。この配列に関する同一性または類似性は、本明細書では、配列を整列させ、必要に応じて、最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後に、種依存性抗体残基と、同一(すなわち同じ残基)または同様(すなわち、共通の側鎖特性に基づく同じ群由来のアミノ酸残基)である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして規定される。N末端、C末端、または内部拡張、欠失、または可変ドメインの外側の抗体配列中への挿入のいずれも、配列同一性または類似性に影響するものとして解釈されないであろう。天然起源の残基は、共通の側鎖特性に基づき、群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr、asn、gln;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;ならびに
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0067】
保存的置換がしばしば好ましいが、非保存的置換(これらのクラスの1つのメンバーの別のクラスのメンバーとの交換を伴う)もまた、企図される。
【0068】
好ましい治療抗体はIgG抗体である。「IgG」という用語は、本明細書では、認識された免疫グロブリンγ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトでは、このクラスはIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。マウスでは、このクラスはIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。IgGクラスの抗体中のわかっているIgドメインはVH、Cγ1、Cγ2、Cγ3、VL、およびCLである。IgGはいくつかの実用的理由のために治療抗体のための好ましいクラスである。IgG抗体は安定で、容易に精製され、医薬サプライチェーンにとってに実用的である条件下で貯蔵することができる。インビボでは、それらは長い生物学的半減期を有し、これは、それらのサイズの単なる関数ではなく、それらのいわゆるFc受容体(またはFcRn)との相互作用の結果でもある。この受容体はIgGを細胞内の異化反応から保護すると考えられ、これをリサイクルして血漿に戻す。
【0069】
抗体は特異抗原に結合する免疫学的タンパク質である。ヒトおよびマウスを含むほとんどの哺乳類では、抗体は、対になった重および軽ポリペプチド鎖から構築される。軽および重鎖可変領域は抗体間で著しい配列多様性を示し、標的抗原への結合に関与している。各鎖は個々の免疫グロブリン(Ig)ドメインから構成され、よって免疫グロブリンという総称はそのようなタンパク質に対して使用される。
【0070】
「に特異的に結合する」という用語は、抗体がその意図された標的に排他的に結合することを示すことは意図されず、というのも、上述のように、抗体は、抗体が結合するエピトープ(複数可)を提示する任意のポリペプチドに結合するからである。むしろ、適切なエピトープ(複数可)を提示しない非標的分子に対するその親和性と比較した時に、その意図された標的に対するその親和性が約5倍大きい場合、抗体は「特異的に結合する」。好ましくは、抗体の親和性は少なくとも約5倍、好ましくは10倍、より好ましくは25倍、なお一層より好ましくは50倍、および最も好ましくは100倍またはそれ以上、非標的分子に対するその親和性よりも標的分子に対し大きい。好ましい実施形態では、好ましい抗体は、少なくとも約107M-1、好ましくは約108M-1~約109M-1、約109M-1~約1010M-1、または約1010M-1~約1012M-1の親和性で結合する。
【0071】
親和性はKd=koff/konとして計算される(koffは解離速度定数であり、Konは会合速度定数であり、Kdは平衡定数である)。親和性は平衡状態で、様々な濃度(c)での標識リガンドの結合分画(r)を測定することにより決定することができる。データはScatchard式を用いてグラフ化される:r/c=K(n-r):ここで、r=平衡状態での結合リガンドのモル/受容体のモル;c=平衡状態での遊離リガンド濃度;K=平衡会合定数;ならびにn=受容体分子当たりのリガンド結合部位の数。グラフィック分析により、r/cがY軸にX軸上のrに対してプロットされ、よってScatchardプロットが生成される。Scatchard分析による抗体親和性測定は当技術分野でよく知られている。例えば、van Erp et al., J. Immunoassay 12: 425-43, 1991; Nelson and Griswold, Comput. Methods Programs Biomed. 27: 65-8, 1988を参照されたい。
【0072】
発明の抗体はさらにエピトープマッピングにより特徴付けることができ、そのため、本明細書で記載されるイムノアッセイにおいて最大臨床有用性を有する抗体およびエピトープが選択され得る。「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができる抗原決定基を示す。エピトープは通常、分子の化学的に活性な表面基、例えばアミノ酸または糖側鎖から構成され、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的電荷特性を有する。立体構造および非立体構造エピトープは、後者ではなく前者への結合が、変性溶媒の存在下で失われるという点で区別される。好ましくは、標的分子上に存在するが、非標的分子に部分的にまたは全く存在しないエピトープが標的にされる。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗体足場は異なる種由来の配列の混合物とすることができる。そのようなものとして、抗体が1つの抗体である場合、そのような抗体はキメラ抗体および/またはヒト化抗体であり得る。一般に、「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」はどちらも、2つ以上の種由来の領域を組み合わせた抗体を示す。例えば、「キメラ抗体」は、伝統的にマウス(または、場合によってはラット)由来の可変領域(複数可)およびヒト由来の定常領域(複数可)を含む。「ヒト化抗体」は一般に、ヒト抗体において見出された配列と交換される可変ドメインフレームワーク領域を有していた非ヒト抗体を示す。一般に、ヒト化抗体では、CDRを除く抗体全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによりコードされ、またはそのCDRを除きそのような抗体と同一である。CDRは、そのいくらかまたは全てが非ヒト生物に起源をもつ核酸によりコードされ、ヒト抗体可変領域のβシートフレームワークにグラフトされ、抗体が作製され、その特異性は、グラフトされたCDRにより決定される。そのような抗体の作製は、例えば、WO92/11018号、Jones, 1986, Nature 321:522-525、Verhoeyen et al., 1988, Science 239:1534-1536に記載される。最初のグラフトされたコンストラクトにおいて失われた親和性を取り戻すために、選択されたアクセプターフレームワーク残基の対応するドナー残基への「逆突然変異」がしばしば必要とされる(米国特許第5,530,101号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第6,180,370号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,821,337号;米国特許第6,054,297号;米国特許第6,407,213号)。ヒト化抗体はまた、最適に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部分を含み、よって典型的にはヒトFc領域を含むであろう。ヒト化抗体はまた、遺伝子操作された免疫系を有するマウスを使用して作製することができる。Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654。非ヒト抗体をヒト化し、再形成するための様々な技術および方法は当技術分野でよく知られている(Tsurushita & Vasquez, 2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells, 533-545, Elsevier Science (USA)、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい)。ヒト化方法としては、下記に記載される方法が挙げられるが、それらに限定されない:Jones et al., 1986, Nature 321:522-525; Riechmann et al., 1988; Nature 332:323-329; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536; Queen et al., 1989, Proc Natl Acad Sci, USA 86:10029-33; He et al., 1998, J. Immunol. 160: 1029-1035; Carter et al., 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-9, Presta et al., 1997, Cancer Res.57(20):4593-9; Gorman et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4181-4185; O’Connor et al., 1998, Protein Eng 11:321-8。ヒト化または非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減させる他の方法としては、例えば、Roguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969-973において記載される表面再構成法が挙げられる。1つの実施形態では、親抗体は、当技術分野で知られているように親和性成熟されている。構造に基づく方法が、例えば、米国特許出願第11/004,590号に記載されるように、ヒト化および親和性成熟のために使用され得る。選択に基づく方法が抗体可変領域をヒト化するおよび/または親和性成熟させるために使用され得、限定はされないが、下記で記載される方法が挙げられる:Wu et al., 1999, J. Mol. Biol. 294:151-162; Baca et al., 1997, J. Biol. Chem. 272(16):10678-10684; Rosok et al., 1996, J. Biol. Chem. 271(37): 22611-22618; Rader et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 8910-8915; Krauss et al., 2003, Protein Engineering 16(10):753-759。他のヒト化方法は、CDRの一部のみのグラフティングを含むことができ、限定はされないが、下記に記載される方法が挙げられる:米国特許出願第09/810,502号;Tan et al., 2002, J. Immunol. 169:1119-1125; De Pascalis et al., 2002, J. Immunol. 169:3076-3084。
【0074】
1つの実施形態では、抗体は完全ヒト抗体である。「完全ヒト抗体」または「完全なヒト抗体」は、ヒト染色体に由来する抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体を示す。完全ヒト抗体は、例えば、トランスジェニックマウス(Bruggemann et al., 1997, Curr Opin Biotechnol 8:455-458)またはヒト抗体ライブラリを選択方法と結合させて使用することにより得ることができる(Griffiths et al., 1998, Curr Opin Biotechnol 9:102-108)。
【0075】
抗体の生成
モノクローナル抗体調製物は、当技術分野で知られている多種多様の技術、例えばハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせを用いることにより生成させることができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で知られており、例えば、下記において教示されるものを含むハイブリドーマ技術を使用して生成させることができる:Harlow et al., ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版1988); Hammerling, et al., in: MONOCLONAL ANTIBODIES AND T-CELL HYBRIDOMAS, pp. 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981)(どちらも、その全体が参照により組み込まれる)。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書では、ハイブリドーマ技術により生成された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む単一のクローンに由来する抗体を示し、それが生成された方法ではない。
【0076】
ラットおよびマウス以外の動物に由来するモノクローナル抗体は独特の利点を提供する。シグナル伝達および疾患と関連する多くのタンパク質標的はマウス、ラットおよびヒト間で高度に保存され、そのため、マウスまたはラット宿主により自己抗原として認識される可能性があり、それらはより免疫原性でなくなる。この問題は、ウサギを宿主動物として使用すれば回避することができる。例えば、Rossi et al., Am. J. Clin. Pathol., 124, 295-302, 2005を参照されたい。
【0077】
ハイブリドーマ技術を使用して、特異抗体を生成させ、スクリーニングするための方法はルーチンであり、当技術分野でよく知られている。非限定的な例では、マウスは対象となる抗原またはそのような抗原を発現する細胞で免疫化することができる。免疫応答が検出される、例えば、抗原に特異的な抗体がマウス血清中で検出されるとすぐに、マウス脾臓が収集され、脾細胞が単離される。脾細胞はその後、よく知られた技術により、任意の好適な骨髄腫細胞に融合される。ハイブリドーマが選択され、限界希釈によりクローニングされる。ハイブリドーマクローンがその後、当技術分野で知られている方法により、抗原に結合することができる抗体を分泌する細胞についてアッセイされる。腹水は、一般に高レベルの抗体を含み、マウスに、腹腔内に陽性ハイブリドーマクローンを接種することにより作製させることができる。
【0078】
抗体作製の方法において使用することができるアジュバントとしては下記が挙げられるが、それらに限定されない:タンパク質アジュバント;細菌アジュバント、例えば、全細菌(BCG、コリネバクテリウム・パルバム、サルモネラ・ミネソタ)および細菌成分、例えば細胞壁骨格、トレハロースジミコレート、モノホスホリルリピドA、結核菌のメタノール抽出可能な残渣(MER)、フロイント完全または不完全アジュバント;ウイルスアジュバント;化学アジュバント、例えば、水酸化アルミニウム、ヨード酢酸およびコレステリルヘミスクシナートまたは;ネイキッドDNAアジュバント。発明の方法において使用することができる他のアジュバントとしては、コレラ毒素、パラポックスタンパク質、MF-59(Chiron Corporation;Bieg et al. (1999)“GAD65 And Insulin B Chain Peptide (9-23) Are Not Primary Autoantigens In The Type 1 Diabetes Syndrome Of The BB Rat,” Autoimmunity, 31(1):15-24(参照により本明細書に組み込まれる)もまた参照にされたい)、MPL(登録商標)(Corixa Corporation; Lodmell et al. (2000) “DNA Vaccination Of Mice Against Rabies Virus: Effects Of The Route Of Vaccination And The Adjuvant Monophosphoryl Lipid A (MPL),” Vaccine, 18: 1059-1066; Johnson et al. (1999) “3-O-Desacyl Monophosphoryl Lipid A Derivatives: Synthesis And Immunostimulant Activities,” Journal of Medicinal Chemistry, 42: 4640-4649; Baldridge et al. (1999) “Monophosphoryl Lipid A (MPL) Formulations For The Next Generation Of Vaccines,” Methods, 19: 103-107(全て参照により本明細書に組み込まれる)もまた、参照されたい)、RC-529アジュバント(Corixa Corporation;Corixaのアミノアルキルグルコサミニド4-ホスフェート(AGP)化合物ライブラリからのリード化合物、www.corixa.comもまた、参照されたい)、およびDETOX(商標)アジュバント(Corixa Corporation;DETOX(商標)アジュバントはMPL(登録商標)アジュバント(モノホスホリルリピドA)およびマイコバクテリア細胞壁骨格を含む;Eton et al. (1998) “Active Immunotherapy With Ultraviolet B-Irradiated Autologous Whole Melanoma Cells Plus DETOX In Patients With Metastatic Melanoma,” Clin. Cancer Res. 4(3):619-627;およびGupta et al. (1995) “Adjuvants For Human Vaccines‐Current Status, Problems And Future Prospects,” Vaccine, 13(14): 1263-1276(どちらも参照により本明細書に組み込まれる)もまた、参照されたい)。
【0079】
多くの刊行物が、選択された分析物への結合のためのポリペプチドのライブラリの作成およびスクリーニングのためのファージディスプレイ技術の使用を詳述している。例えば、下記を参照されたい:Cwirla et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6378-82, 1990; Devlin et al., Science 249, 404-6, 1990, Scott and Smith, Science 249, 386-88, 1990;およびLadner et al.,米国特許第5,571,698号。ファージディスプレイ法の基本概念は、スクリーニングされるポリペプチドをコードするDNAとポリペプチドの間の物理的関係の確立である。この物理的関係はファージ粒子により提供され、ファージ粒子は、ポリペプチドを、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するカプシドの一部として提示する。ポリペプチドとそれらの遺伝子材料との間の物理的関係の確立により、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時マススクリーニングが可能になる。標的に対する親和性を有するポリペプチドを提示するファージは標的に結合し、これらのファージが標的に対する親和性スクリーニングにより濃縮される。これらのファージから提示されるポリペプチドの同一性は、それらの個々のゲノムから決定することができる。これらの方法を使用して、所望の標的に対して結合親和性を有すると同定されたポリペプチドはその後、従来の手段により大量に合成させることができる。例えば、米国特許第6,057,098号(全ての表、図面、および特許請求の範囲を含むその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0080】
これらの方法により作製される抗体はその後、対象となる精製ポリペプチドとの親和性および特異性に対する第1のスクリーニング、必要なら、結合から排除されることが望ましいポリペプチドとの抗体の親和性および特異性に対する結果を比較することにより選択することができる。スクリーニング手順は、マイクロタイタープレートの別々のウェルにおける精製ポリペプチドの固定化を含むことができる。有望な抗体または抗体群を含む溶液をその後、個々のマイクロタイターウェルに入れ、約30分~2時間インキュベートする。マイクロタイターウェルをその後、洗浄し、標識された二次抗体(例えば、産生させた抗体がマウス抗体である場合、アルカリホスファターゼにコンジュゲートされた抗マウス抗体)をウェルに添加し、約30分間インキュベートし、その後洗浄する。基質をウェルに添加し、抗体-固定化ポリペプチド(複数可)が存在する場合、呈色反応が生じる。
【0081】
そのように同定された抗体はその後、さらに選択されたアッセイ設計において親和性および特異性について分析され得る。標的タンパク質に対するイムノアッセイの開発では、精製標的タンパク質が、選択された抗体を使用するイムノアッセイの感度および特異性を判定するための標準として機能する。様々な抗体の結合親和性は異なる可能性があり;ある一定の抗体ペア(例えば、サンドイッチアッセイにおいて)は、互いに立体的に妨害する可能性があるなど、抗体のアッセイ性能は、抗体の絶対親和性および特異性よりも重要な尺度となり得る。
【0082】
抗体はまた、トランスジェニックマウスを使って生成させることができ、トランスジェニックマウスは、機能的内在性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができる。例えば、ヒト重および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、ランダムにまたは相同組換えにより、マウス胚性幹細胞に導入することができる。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域は、ヒト重および軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞に導入され得る。マウス重および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン座位の導入と別々にまたは同時に非機能性とされ得る。特に、JH領域のホモ接合型欠失は、内在性抗体産生を防止する。改変された胚性幹細胞は拡大され、胚盤胞にマイクロインジェクトされ、キメラマウスが生成される。キメラマウスはその後、飼育され、ヒト抗体を発現するホモ接合子孫が生成される。トランスジェニックマウスは従来の方法を用いて、選択された抗原、例えば、発明のポリペプチドの全てまたは一部で免疫化される。抗原に対して作られるモノクローナル抗体は、免疫化された、トランスジェニックマウスから、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスが持つヒト免疫グロブリントランスジーンは、B細胞分化中に再配列し、その後、クラススイッチおよび体細胞変異を受ける。よって、そのような技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を生成させることができる。ヒト抗体を生成させるためのこの技術の概要については、Lonberg et al. (1995) “Human Antibodies From Transgenic Mice,” Int. Rev. Immunol. 13:65-93(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を生成させるためのこの技術およびそのような抗体を生成させるためのプロトコルの詳細な記述については、例えば、国際公開第WO98/24893号、WO96/34096号、およびWO96/33735号;ならびに米国特許第5,413,923号、5,625,126号、5,633,425号、5,569,825号、5,661,016号、5,545,806号、5,814,318号、および5,939,598号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。加えて、Abgenix、Inc.(Freemont、Calif.)およびMedarex(Princeton、N.J.)などの会社は、以上で記載されるものと同様の技術を使用して、選択された抗原に対して作られるヒト抗体を提供することに従事することができる。
【0083】
抗体の組換え発現
発明の抗体をコードする核酸配列が得られるとすぐに、抗体の生成のためのベクターが、組換えDNA技術により、当技術分野でよく知られた技術を用いて生成され得る。当業者によく知られている方法を使用して、抗体コード配列および適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換えが挙げられる(例えば、Sambrook et al, 1990, MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. and Ausubel et al. eds., 1998, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, NYで記載される技術を参照されたい)。
【0084】
抗体のヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、従来の技術(例えば、電気穿孔、リポソームトランスフェクション、およびリン酸カルシウム沈殿)により宿主細胞に導入させることができ、トランスフェクトされた細胞はその後、従来の技術により培養され、発明の抗体が生成される。特定の実施形態では、抗体の発現は、恒常的、誘導性または組織、特異的プロモーターにより調節される。
【0085】
発明の組換え抗体を発現するために使用される宿主細胞は、大腸菌などの細菌細胞、または、好ましくは、とりわけ全組換え免疫グロブリン分子の発現のためには真核生物細胞のいずれかとすることができる。特に、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの哺乳類細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期(intermediate early)遺伝子プロモーター要素などのベクターと共に、免疫グロブリンのための有効な発現系となる(Foecking et al. (1986) “Powerful And Versatile Enhancer-Promoter Unit For Mammalian Expression Vectors.” Gene 45:101-105; Cockett et al. (1990) “High Level Expression Of Tissue Inhibitor Of Metalloproteinases In Chinese Hamster Ovary Cells Using Glutamine Synthetase Gene Amplification,” Biotechnology 8:662-667)。
【0086】
様々な宿主-発現ベクター系が発明の抗体を発現させるために使用され得る。そのような宿主-発現系は、それによって抗体のコード配列が生成され、その後、精製され得る媒介物を表すが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合、インサイチューで発明の抗体を発現することができる細胞もまた、表す。これらとしては下記が挙げられるが、それらに限定されない:免疫グロブリンコード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物(例えば、大腸菌および枯草菌);免疫グロブリンコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス・ピキア);免疫グロブリンコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV))に感染した、または免疫グロブリンコード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳類細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクチニアウイルス7.5Kプロモーター)に由来するプロモーターを含む組換え発現コンストラクトを有する哺乳類細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、293T、3T3細胞、リンパ(lymphotic)細胞(米国特許第5,807,715号を参照されたい)、Per C.6細胞(Crucellにより開発されたラット網膜細胞))。
【0087】
細菌系では、多くの発現ベクターが、発現される抗体を対象とする使用によって便宜的に選択され得る。例えば、抗体の医薬組成物の作製のために、大量のそのようなタンパク質が生成されることになっている場合、容易に精製することができる高レベルの融合タンパク質生成物の発現に向かわせるベクターが望ましい可能性がある。そのようなベクターとしては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al. (1983) “Easy Identification Of cDNA Clones,” EMBO J. 2:1791-1794)(この場合、抗体コード配列が個々にベクターにlacZコード領域を有するフレーム内で連結され、よって、融合タンパク質が生成される);pINベクター(Inouye et al. (1985) “Up-Promoter Mutations In The Lpp Gene Of Escherichia coli,” Nucleic Acids Res. 13:3101-3110; Van Heeke et al. (1989) “Expression Of Human Asparagine Synthetase In Escherichia coli,” J. Biol. Chem. 24:5503-5509);など。pGEXベクターもまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために使用され得る。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリクスグルタチオン-アガロースビーズへの吸着および結合、続いて遊離グルタチオンの存在下での溶離により、溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、そのため、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得る。
【0088】
昆虫系では、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcNPV)が外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用される。ウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ細胞中で増殖する。抗体コード配列は個々に、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。
【0089】
哺乳類宿主細胞では、多くのウイルスに基づく発現系が使用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、対象となる抗体コード配列がアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列に連結され得る。このキメラ遺伝子はその後、アデノウイルスゲノムにインビトロまたはインビボ組換えにより挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入により、組換えウイルスが得られ、これは、生存可能で、感染宿主において免疫グロブリン分子を発現することができる(例えば、Logan et al. (1984) “Adenovirus Tripartite Leader Sequence Enhances Translation Of mRNAs Late After Infection,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 81:3655-3659を参照されたい)。特異的開始シグナルもまた、挿入された抗体コード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルはATG開始コドンおよび隣接配列を含む。さらに、開始コドンは、全インサートの翻訳が確保されるように、所望のコード配列の読み枠と一致していなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは様々な起源を有することができ、天然および合成の両方を含む。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター、などを含めることにより増強させることができる(Bitter et al. (1987) “Expression And Secretion Vectors For Yeast,” Methods in Enzymol. 153:516-544を参照されたい)。
【0090】
加えて、挿入された配列の発現を調節し、または所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾および処理する宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能のために重要となり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴的なおよび特異的なメカニズムを有する。発現される外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確保するために、適切な細胞株または宿主系を選択することができる。この目的を達成するために、一次転写産物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。そのような哺乳類宿主細胞としてはCHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、293T、3T3、WI38、BT483、Hs578T、HTB2、BT20およびT47D、CRL7030およびHs578Bstが挙げられるが、それらに限定されない。
【0091】
組換えタンパク質の長期の高収率産生のためには、安定な発現が好ましい。例えば、発明の抗体を安定して発現する細胞株は操作することができる。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞は、適切な発現調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、など)により制御されるDNA、および選択可能なマーカーで形質転換させることができる。外来DNAの導入に続き、操作された細胞は1-2日間、濃縮培地で増殖させることができ、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する抵抗性を付与し、細胞は、安定してプラスミドをそれらの染色体に統合させ、増殖してフォーカスを形成することができ、これが今度は、クローニングされ拡大され、細胞株となることができる。この方法は、発明の抗体を発現する細胞株を操作するために使用することができる利点がある。そのような操作された細胞株は特に、発明の抗体と直接または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価において有用となり得る。
【0092】
多くの選択系が使用でき、限定はされないが、下記が挙げられる:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al. (1977) “Transfer Of Purified Herpes Virus Thymidine Kinase Gene To Cultured Mouse Cells,” Cell 11:223-232)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al. (1962) “Genetics Of Human Cess Line. IV. DNA-Mediated Heritable Transformation Of A Biochemical Trait,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 48:2026-2034)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al. (1980) “Isolation Of Transforming DNA: Cloning The Hamster Aprt Gene,” Cell 22:817-823)遺伝子が、それぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞において使用することができる。また、代謝拮抗薬抵抗性は、下記遺伝子のための選択のための基礎として使用することができる:dhfr(メトトレキサートに対する抵抗性を付与する)(Wigler et al. (1980) “Transformation Of Mammalian Cells With An Amplfiable Dominant-Acting Gene,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 77:3567-3570; O’Hare et al. (1981) “Transformation Of Mouse Fibroblasts To Methotrexate Resistance By A Recombinant Plasmid Expressing A Prokaryotic Dihydrofolate Reductase,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 78:1527-1531);gpt(ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与する)(Mulligan et al. (1981) “Selection For Animal Cells That Express The Escherichia coli Gene Coding For Xanthine-Guanine Phosphoribosyltransferase,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 78:2072-2076);neo(アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を付与する)(Tachibana et al. (1991) “Altered Reactivity Of Immunoglobutin Produced By Human-Human Hybridoma Cells Transfected By pSV2-Neo Gene,” Cytotechnology 6(3):219-226; Tolstoshev (1993) “Gene Therapy, Concepts, Current Trials And Future Directions,” Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596; Mulligan (1993) “The Basic Science Of Gene Therapy,” Science 260:926-932;およびMorgan et al. (1993) “Human gene therapy,” Ann. Rev. Biochem. 62:191-217)。使用することができる組換えDNA技術の当技術分野で普通に知られている方法は、下記において記載されている:Ausubel et al. (eds.), 1993, CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, NY; Kriegler, 1990, GENE TRANSFER AND EXPRESSION, A LABORATORY MANUAL, Stockton Press, NY;および12および13章, Dracopoli et al. (eds), 1994, CURRENT PROTOCOLS IN HUMAN GENETICS, John Wiley & Sons, NY.; Colbere-Garapin et al. (1981) “A New Dominant Hybrid Selective Marker For Higher Eukaryotic Cells,” J. Mol. Biol. 150:1-14;ならびにhygro(ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与する)(Santerre et al. (1984) “Expression Of Prokaryotic Genes For Hygromycin B And G418 Resistance As Dominant-Selection Markers In Mouse L Cells,” Gene 30:147-156)。
【0093】
発明の抗体の発現レベルはベクター増幅により増加させることができる(見直しのために、Bebbington and Hentschel, “The Use Of Vectors Based On Gene Amplification For The Expression Of Cloned Genes In Mammaian Cells,” in DNA CLONING, Vol. 3. (Academic Press, New York, 1987)を参照されたい)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターのレベルの増加はマーカー遺伝子のコピー数を増加させるであろう。増幅された領域は、抗体のヌクレオチド配列と関連するので、抗体の産生もまた増加するであろう(Crouse et al. (1983) “Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes,” Mol. Cell. Biol. 3:257-266)。
【0094】
宿主細胞を、発明の2つの発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターでコトランスフェクトすることができる。2つのベクターは、同一の選択可能なマーカーを含むことができ、これは、重および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする。あるいは、重および軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターを使用してもよい。そのような状況では、軽鎖は過剰の毒性遊離重鎖を回避するために、重鎖の前に配置されなければならない(Proudfoot (1986) “Expression And Amplification Of Engineered Mouse Dihydrofolate Reductase Minigenes,” Nature 322:562-565; Kohler (1980) “Immunoglobulin Chain Loss In Hybridoma Lines,” Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 77:2197-2199)。重および軽鎖のためのコード配列はcDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
【0095】
発明の抗体は組換えで発現されるとすぐに、抗体の精製のための当技術分野で知られている任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特異抗原に対する親和性による、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準技術により精製してもよい。
【0096】
実施例
実施例1:ウサギにおけるモノクローナル抗体発現
雌のNew Zealandウサギを皮下注射(SQ)により抗原/アジュバントエマルジョンで免疫化した。一次免疫は完全フロイントアジュバントを用いて実施し、不完全フロインドアジュバントをその後の全ての追加免疫に対して使用した。ウサギにSQで、3週毎に、1匹のウサギあたり250μgのタンパク質抗原(2つの部位、尻と肩甲骨を交互に)注射した。試験血液を耳周辺静脈から、第2の追加免疫後7日に採取した。この試験血液(免疫血清)を、間接ELISAアッセイにより試験し、ウサギの免疫応答が、モノクローナル抗体発現に適切であるかどうかを決定した。最も良好に応答したウサギに最後のSQ追加免疫を与え、4日後に、瀉血により安楽死させた。全血を心穿刺により収集した。対象となる抗体を産生するB細胞を標的抗原に関する間接ELISAにより同定し、免疫グロブリン遺伝子を単離した。重および軽鎖を別々の哺乳類発現ベクターにクローニングさせ、HEK細胞にトランスフェクトさせ(一過性トランスフェクション)、ウサギモノクローナル抗体を含む組織培養上清を収集した。
【0097】
実施例2:マウスにおけるモノクローナル抗体発現
雌のBALB/cマウス(60日齢)を腹腔内注射(IP)により抗原/アジュバントエマルジョンを用いて標準操作手順のように免疫化した。一次免疫は完全フロイントアジュバントを用いて実施し、不完全フロインドアジュバントをその後の全ての追加免疫に対して使用した。マウスにIPで3週毎に1匹のマウスあたり25μgの抗原で(1匹のマウスあたり総体積125μL)を注射した。試験血液を第2の追加免疫後7~10日に伏在静脈のランセット切開により実施した。この試験血液(免疫血清)を間接ELISAアッセイにより試験し、マウスの免疫応答が融合に適切であるかどうかを決定した。最も良好に応答した2匹のマウスに、1匹のマウスあたり10μgの抗原を含む滅菌生理食塩水の最後の静脈内追加免疫を、外側尾静脈を介して与えた。IV追加免疫後4日に、マウスを安楽死させ、脾臓を収集した。脾臓から単離したリンパ球を融合プロセスで使用して、Kohler, G.; Milstein, C. (1975). “Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity”. Nature 256 (5517): 495‐497の方法を用いて、ハイブリドーマを生成させた。ハイブリドーマをPEG1500融合プロセスを用いて作製した。
【0098】
実施例3:患者試料を用いた抗体のスクリーニング(マイクロタイターに基づくELISA法)
材料:
96ウェル高結合ELISAプレート-Costar3590(Corning)
ELISAコーティング緩衝液:PBS
ELISA洗浄緩衝液:0.02%Tween-20を含むPBS
ELISAブロッキング緩衝液(Thermo Pierce、カタログ番号N502)
ELISA試薬希釈剤:200mM Tris、1%BSA(BioFx)、0.05%Tween-20、pH8.1
ニュートラアビジン-HRPコンジュゲート(Thermo Pierce、カタログ番号31001)
1-step Ultra TMB基質(R&D systems、カタログ番号34028)
停止液:2N硫酸
捕捉抗体
ビオチンコンジュゲート検出抗体
組換えヒトIGFBP7(Peprotech、カタログ番号410-02)
EXLx405プレート洗浄機(Biotek)
Multiskan FCプレートリーダー(Fisher Scientific)
【0099】
試験手順
精製した組換えIGFBP7分析物を試薬希釈剤中に添加し、段階的に希釈し、ある範囲の濃度を含む1組の標準試料を作製した。凍結させた単回使用のアリコートの患者試料を室温水浴で10分間解凍し、その後、試薬希釈剤で所望のレベルまで希釈した。
【0100】
コーティング緩衝液中で調製した100μLの5μg/mL捕捉抗体溶液を96ウェル高結合ELISAプレート上の各ウェルに添加し、一晩中室温で(22℃~25℃)インキュベートした。各ウェルを吸引し、300μLの洗浄緩衝液で、自動ウォッシャーを使用して3回洗浄した。その後、250μLのELISAブロッキング緩衝液を各ウェルに添加した。2時間の室温でのインキュベーション後、以上で記載される吸引/洗浄工程を繰り返した。
【0101】
100μLの標準または患者試料を調製したプレートの各ウェルに添加し、室温で水平なオービタルシェーカー上でインキュベートした。2時間のインキュベーション後、プレートを以上で記載されるように洗浄した。その後、試薬希釈剤中で調製した100μLの0.1μg/mL検出抗体溶液を各ウェルに添加した。1時間の室温でのインキュベーション後、プレートを再び洗浄した。ニュートラアビジン-HRPコンジュゲートの0.1μg/mL溶液を試薬希釈剤中で調製し、100μLのこの溶液を各ウェルに添加した。プレートを1時間室温でインキュベートし、洗浄した。100μLの1-step ultraTMB基質を各ウェルに添加し、室温で10分間光を遮ってインキュベートし、続いて、50μLの停止液を添加した。各ウェルにおける光学密度を450nmの波長に設定したマイクロプレートリーダーを用いて測定した。
【0102】
実施例4:患者試料を用いた抗体のスクリーニング(ラテラルフローストリップ試験法)
材料:
ニトロセルロースメンブレン
バッキングカード
試料パッド
ウィッキングパッド
メンブレンブロッキング緩衝液:10mMリン酸ナトリウム、0.1%スクロース、0.1%BSA、0.2%PVP-40、pH8.0
試料パッドブロッキング緩衝液:5mMホウ酸塩、0.1%Tween-20、0.25%PVP-40、0.5%BSA、pH8.5
泳動用緩衝液J:500mM Tris、0.2%10G、0.35%Tween-20、0.25%PVP-40、pH8.5
蛍光コンジュゲート抗体
試験ライン抗体
ヤギ-抗マウス陽性対照抗体
組換えヒトIGFBP7
【0103】
ストリップアセンブリ
ニトロセルロースメンブレンを、試験ライン抗体でAD3050吸引分配システムを用いて縞状とし、メンブレンブロッキング緩衝液でブロックし、37℃で30分間乾燥させた。一晩中デシケーター内で硬化させた後、縞状とし、ブロッキングしたニトロセルロースメンブレンを、バッキングカード上にウィッキングパッドおよび試料パッドブロッキング緩衝液で予め処理した試料パッドと共に積層した。カードを5mm幅の試験ストリップに切断し、これをその後、カートリッジ内に入れた。
【0104】
試料調製
精製した組換えIGFBP7分析物を泳動用緩衝液J中に添加し、段階的に希釈し、ある範囲の濃度を含む1組の標準試料を作製した。凍結させた単回使用のアリコートの患者試料を室温水浴で10分間解凍し、その後、泳動用緩衝液Jで所望のレベルまで希釈した。
【0105】
試験手順
10μLの蛍光コンジュゲート抗体(0.025μg/μL)を含むPBSを、100μLの試料に添加した。100μLのこの溶液をその後、カートリッジ上の投入口にロードした。結果をt=20分に、蛍光リーダーおよび関連するソフトウェアを用いて読み取った。
【0106】
実施例5:ペプチドマッピング
材料:96ウェル高結合マイクロタイタープレート、ニュートラアビジン、ビオチン化ペプチド、非コンジュゲート抗体、マウスIgG、ウサギIgG、ヤギIgG、抗マウスIgG HRPコンジュゲートにコンジュゲートされたHRP、抗ウサギIgG HRPコンジュゲート、抗ヤギIgG HRPコンジュゲート、TMB基質、2N硫酸をエピトープマッピング実験のために使用した。
【0107】
ニュートラアビジンを96ウェル高結合マイクロタイタープレートの個々のウェル内で固定化した。プレートを洗浄し未反応ニュートラアビジンを除去し、続いて、ブロッキング工程を実施した。ビオチン化ペプチドを緩衝水溶液に溶解し、10μg/mLの濃度とした。50μLのペプチド溶液をニュートラアビジンコートマイクロタイタープレートの各ウェルに添加した。これらのプレートを1時間室温でインキュベートし、その後洗浄し、未結合ペプチドを除去した。非コンジュゲートマウスおよびウサギ抗体を5μg/mLまで希釈し、プレートに100μL/ウェルで添加した。抗マウスIgG(マウス抗IGFBP7の場合)または抗ウサギIgG(ウサギ抗IGFBP7の場合)を、隣のウェルに陰性対照として添加した。プレートを1時間室温でインキュベートし、洗浄した。抗マウスIgGにコンジュゲートされたHRP(マウス抗IGFBP7およびマウスIgG陰性対照の場合)および抗ウサギIgGにコンジュゲートされたHRP(ウサギ抗IGFBP7およびウサギIgG陰性対照の場合)を0.2μg/mLまで希釈し、100μLをプレートの各ウェルに添加した。これらのプレートを20分間室温でインキュベートし、洗浄した。100μL/ウェルのTMB基質を添加し、プレートを20分間、光への曝露を回避しながらインキュベートした。50μl/ウェルの停止液(2N硫酸)を各ウェルおよびプレートに添加し、反応を停止させた。吸光度を450nmで光学密度を測定するように設定された分光光度測定96ウェルマイクロプレートリーダー上で読み取った。
【0108】
実施例6:アラニンスキャニングペプチドマッピング
アラニンスキャニングは広く使用される変異原性アプローチであり、この場合、標的タンパク質中の残基が、選択された位置で、部位特異的突然変異誘発により、系統的にアラニンに置換され、発現され、機能についてアッセイされる。アラニン残基による置換により、主鎖高次構造を変化させ、あるいは立体または静電効果を導入することなく、側鎖相互作用が排除される。自動化された変異原性プロトコルを用いて、標的ポリペプチド中の全ての残基をアラニンに変更し、各抗体結合ドメインを構成する重要残基を決定することができる。
【0109】
実施例7:結果
アラニンスキャニングおよびペプチドマッピング結果を合わせて使用し、特有のIGFBP7モノクローナル抗体を、分析性能に基づき、同定し、選択した。
【表1】
【0110】
実施例8:配列決定データ
抗体IC9E4.1をマウスIgG1/κ抗体とアイソタイプした。モノクローナル細胞株由来のcDNAを配列決定のために標準方法により入手した。重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列は下記の通りであった:
【0111】
Vlight(配列番号9)
DVVMTQTPLT LSVTIGQPAS ISCKSSQSLL YSNGETYLHW LLQRPGQSPK 50
RLIYLVSKLD SGVPDRFTGS GSRTDFTLKI SRVEAEDLGV YYCAQGTHFP 100
HTFGGGTKLE
【0112】
Vheavy(配列番号10)
QIQLVQSGPE LKKPGETVKI SCKASGYSFT DYSIHWVKQA PGKGLKWMGL 50
INTETGEPIY VDDFKGRFAF SLETSARTAY LQINNLKNED TATYFCARAY 100
YWAYWGQGTL V
【0113】
抗体1D6
抗体1D6をマウスIgG1/κ抗体とアイソタイプした。エピトープマッピングにより、1D6抗体は、IGFBP7の立体構造エピトープに結合すると決定した。モノクローナル細胞株由来のcDNAを配列決定のために標準方法により入手した。重鎖可変領域および軽鎖可変領域の配列は下記の通りであった:
【0114】
Vlight(配列番号11)
QIVLTQSPAI MSASPGEKVT MTCSASSSVS YMHWYQQKSG TSPKRWIYDT 50
SELASGVPAR FSGSGSGTSY SLTISSMEAE DAATYYCQQW SSSPFTFGSG 100
TKLEIKR
【0115】
Vheavy(配列番号12)
QIQLVQSGPE LKKPGETVKI SCKASGYTFK KYGMNWVKQA PGKGLKWMGW 50
INTYTGEPIY ADDFKGRFAF SLETSASTAY LQISNLKNED TATYFCAREE
YGPFYAMDYW GQGTSVTVSS
【0116】
発明を、当業者がこれを製造し、使用するのに十分詳細に記載し、例示してきたが、様々な代替物、改変、および改良が、本発明の精神および範囲から逸脱せずに明らかなはずである。本明細書で提供される実施例は好ましい実施形態を代表するものであり、例示であり、発明の範囲を制限するものとして意図されない。その中の改変および他の使用は当業者には思いつくものであろう。これらの改変は発明の精神の範囲内に含まれ、特許請求の範囲により規定される。
【0117】
本明細書における「または」の使用は、別記されない限り「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise、comprises)」、「含んでいる」「含有する(include、includes)」および「含有している」は、互換的であり、制限することを意図しない。
【0118】
さらに、様々な実施形態の説明で「含んでいる」という用語が使用される場合、当業者は、いくつかの特定の場合には、一実施形態は、「から本質的に構成される」または「から構成される」という言語を使用して別様に記載できることを理解するであろうことが理解されるべきである
【0119】
別に規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、それらの開示が属する分野の当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものと同様のまたは等価な任意の方法および試薬は、開示される方法および組成物において使用することができるが、例示的な方法および材料がここで記載される。
【0120】
本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物において記載され、本明細書の記載と関連させて使用され得る方法を説明し、開示する目的で、全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で言及される全ての特許および出版物は本開示の出願日前の、発明が関連する分野の当業者のレベルを示す。本明細書内のいずれも、発明者らが、以前の開示のためにそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0121】
本発明の範囲および精神から逸脱せずに、様々な置換および改変が本明細書で開示される発明には可能であることが、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0122】
本明細書で例示的に記載される発明は、本明細書で特定的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限がなくても、適当に実施され得る。よって、例えば、本明細書における各場合において、「含む」、「から本質的に構成される」および「から構成される」という用語のいずれも、他の2つの用語と置き換えることができる。使用されている用語および表現は、説明の用語として使用され、制限するものではなく、そのような用語および表現の使用では、図示され、記載される特徴またはその部分のいずれかの等価物を排除することは意図されないが、様々な改変が特許請求される発明の範囲内で可能であることが認識される。よって、本発明について、好ましい実施形態および任意的な特徴により特定的に開示してきたが、当業者は本明細書で開示される概念の改変および変更を採用することができ、そのような改変および変更は添付の特許請求の範囲により規定されるこの発明の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0123】
他の実施形態は、下記特許請求の範囲内に明記される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願の明細書に記載される発明。