(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052250
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】モジュレータアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20230404BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230404BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230404BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230404BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230404BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230404BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z ZNA
A61K47/64
A61K31/4439
A61P37/06
A61P29/00
A61P17/06
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/04
A61P29/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P25/16
A61P25/08
A61K31/496
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023001089
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2020174314の分割
【原出願日】2015-10-22
(31)【優先権主張番号】1510758.4
(32)【優先日】2015-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オコンネル、ジェームス フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ポーター、ジョン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ローソン、アレステア
(72)【発明者】
【氏名】クロップリン、ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ラペッキ、スティーブン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン、ティモシー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワレロウ、グラハム ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ある特定の化合物がTNFに結合し、TNF受容体に結合するトリマーTNFのコンフォメーションを安定化することが証明された。これらの化合物を、TNFのモジュレータとして使用する。
【解決手段】a)試料中での化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合を同定するステップ;b)化合物を含む試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を測定するステップ;c)化合物を含む試料中での必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルを測定するステップ;d)トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合に関する化合物とプローブ化合物との競合を測定するステップを含み、化合物-トリマー複合体は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップを含む、上記アッセイを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を同定するための方法であって、化合物-トリマー複合体は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節することができ、前記方法は、
a)試料中での、化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合を同定するステップ;及び/又は
b)化合物を含む試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を測定するステップ;及び/又は
c)化合物を含む試料中での必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルを測定するステップ;及び/又は
d)トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合に関する化合物とプローブ化合物との競合を測定するステップ
を含み、並びに、(a)における化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合、及び/又は(b)におけるトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性、及び/又は(c)における必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベル、及び/又は(d)で観察された競合のレベルを、対照試料に由来する対応する値と比較するステップ、及びTNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
a)TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含有する試料に対して質量分析を行って、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーの量を検出するステップ;
b)試料中のTNFスーパーファミリーメンバーのトリマーの量と、対照試料とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)TNFスーパーファミリーメンバーと化合物との試料を、表面に結合した必要なTNF受容体に加える受容体-リガンド結合アッセイを実行するステップ;
b)必要なTNF受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーのトリマーの量と、対照試料とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)TNFスーパーファミリーメンバーと化合物との試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmを決定するためのアッセイを実行するステップ;
b)試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmと、対照試料とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
a)化合物とプローブ化合物とを使用して蛍光偏光アッセイを実行するステップ;
b)化合物の存在下でのプローブ化合物の偏光度と、対照試料中での偏光度とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含有する試料が、不安定化剤をさらに含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
不安定化剤がDMSOである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)等温熱量測定分析を実行して、化合物の存在下での必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合を測定するステップ;
b)必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合と、対照試料とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)が、化合物を含む試料中でのトリマーTNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)TNFスーパーファミリーメンバーと化合物との試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを決定するためのアッセイを実行するステップ;
b)試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rと、対照試料とを比較するステップ;及び
c)TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、請求項1又は9に記載の方法。
【請求項11】
化合物が、化合物の非存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性と比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を増加させる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
安定性の増加が、少なくとも1℃のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(Tm)の増加をもたらす、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
安定性の増加が、少なくとも10℃のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(Tm)の増加をもたらす、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmの増加が10℃~20℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合親和性と比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合に関するkon-r及びkoff-r値と比較して、結合速度(kon-r)を増加させること、及び/又は解離速度(koff-r)を減少させることにより、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合親和性を増加させる、請求項15に記載の方法又は化合物。
【請求項17】
化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合に関するkon-r値と比較して、結合速度(kon-r)を増加させることにより、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合親和性を増加させる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rと比較して、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rと比較して、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを10分の1以下に減少させる;
b)化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が10nM未満である、
請求項15、16又は17に記載の方法。
【請求項19】
化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rと比較して、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのその受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rと比較して、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを4分の1以下に減少させる;
b)化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が600pM未満である、
請求項15、16又は17に記載の方法。
【請求項20】
化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が200pM未満である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が500nM以下のIC50値を有する、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
TNFスーパーファミリーメンバーがTNFαであり、受容体がTNF受容体である、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質と、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する化合物とを含む複合体。
【請求項24】
化合物が、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達と拮抗する、請求項23に記載の複合体。
【請求項25】
化合物が、化合物の非存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性と比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を増加させる、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
安定性の増加が、少なくとも1℃のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(Tm)の増加をもたらす、請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
安定性の増加が、少なくとも10℃のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(Tm)の増加をもたらす、請求項26に記載の複合体。
【請求項28】
トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmの増加が10℃~20℃である、請求項27に記載の複合体。
【請求項29】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合親和性と比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項23から28までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項30】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(kon-r)及び解離速度(koff-r)値と比較して、kon-rを増加させること及び/又はkoff-rを減少させることによって、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合に関する結合速度(kon-r)値と比較して、kon-rを増加させることによって、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性を増加させる、請求項30に記載の複合体。
【請求項32】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対するKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対するKD-rを10分の1以下に減少させる;
b)化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が10nM未満である、請求項29から31までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項33】
化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対するKD-rを減少させ、
a)化合物が、化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対するKD-rと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対するKD-rを4分の1以下に減少させる;
b)化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が600pM未満である、請求項29から31までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項34】
化合物の存在下での必要な受容体への結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値が200pM未満である、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記化合物が500nM以下のIC50値を有する、請求項23から34までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項36】
TNFスーパーファミリーメンバーがTNFαであり、受容体がTNF受容体である、請求項23から35までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項37】
ヒト又は動物の身体に対して実行される治療方法における使用のための請求項23から36までのいずれか一項に記載の複合体。
【請求項38】
自己免疫障害及び炎症障害;神経障害及び神経変性障害;疼痛障害及び侵害障害;並びに心血管障害の処置及び/又は防止における使用のために、化合物が、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達と拮抗する、請求項37に記載の複合体。
【請求項39】
関節リウマチ、クローン病、乾癬、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病、パーキンソン病及びてんかんの処置及び/又は防止における使用のための、請求項38に記載の複合体。
【請求項40】
請求項23から36までのいずれか一項に記載の複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFスーパーファミリーのモジュレータに関する。特に、本発明は、TNFスーパーファミリーの新規低分子モジュレータに関する。本発明はまた、TNFスーパーファミリーの新規モジュレータを同定するためのアッセイにも関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーは、細胞生存及び細胞死を調節する主な機能を共有するタンパク質ファミリーである。TNFスーパーファミリーのメンバーは、「ジェリーロール」β構造を形成する、逆平行β鎖を含む2つの逆平行βプリーツシートを含む、共通のコアモチーフを共有する。TNFスーパーファミリーのメンバーにより共有される別の共通の特徴は、ホモ又はヘテロトリマー複合体の形成である。それは、特定のTNFスーパーファミリー受容体に結合し、活性化するTNFスーパーファミリーメンバーのこれらのトリマー形態である。
【0003】
TNFαは、TNFスーパーファミリーの典型的なメンバーである。TNFα産生の調節異常は、有意に医学的に重要ないくつかの病状に関与してきた。例えば、TNFαは、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症(MS)に関与してきた。TNFスーパーファミリーの他のメンバーも、自己免疫疾患を含む病状に関与してきた。
【0004】
TNFスーパーファミリーメンバーの従来のアンタゴニストは、大分子であり、TNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合を阻害することによって作用する。従来のアンタゴニストの例としては、インフリキシマブ(Remicade(登録商標))、アダリムマブ(Humira(登録商標))及びセルトリズマブペゴール(Cimzia(登録商標))などの抗TNFα抗体、特に、モノクローナル抗体、又はエタネルセプト(Enbrel(登録商標))などの可溶性TNFα受容体融合タンパク質が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、TNFαを調節する低分子実体(SME)のクラスを同定した。これらの化合物は、ホモトリマー形態のTNFαに結合し、TNFαのホモトリマーのコンフォメーション変化を誘導し、安定化することによって作用する。例えば、TNFαと、結合した化合物とのホモトリマーは、TNFα受容体に結合することができるが、TNFα受容体の下流のシグナル伝達を開始することがほとんどできないか、又は開始することができない。これらの化合物を、TNFαによって媒介される状態の処置において使用することができる。本発明者らはまた、この様式でTNFαを阻害することができる化合物を同定することができるアッセイを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を同定するための方法であって、化合物-トリマー複合体は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節することができ、前記方法は、
a)試料中での化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合を同定するステップ;及び/又は
b)化合物を含む試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を測定するステップ;及び/又は
c)化合物を含む試料中での必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルを測定するステップ;及び/又は
d)トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合に関する化合物とプローブ化合物との競合を測定するステップ
を含み、並びに、(a)における化合物の、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーへの結合、及び/又は(b)におけるトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性、及び/又は(c)における必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベル、及び/又は(d)で観察された競合のレベルを、対照試料に由来する対応する値と比較するステップ、及びTNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップ
を含む、上記方法を提供する。
【0007】
したがって、本発明の方法を使用して、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体を介してトリマーによって誘導されるシグナル伝達を調節する化合物を同定することができる。換言すれば、本発明による化合物-トリマー複合体は、受容体のシグナル伝達を調節する。
【0008】
本発明はまた、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質と、それに結合する化合物とを含む(又はからなる)複合体であって、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、上記複合体も提供する。
【0009】
本発明はまた、ヒト又は動物の身体に対して実行される治療方法における使用のための、TNFスーパーファミリーメンバーと、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物とを含む複合体も提供する。
【0010】
本発明はまた、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物と、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質との複合体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】式(1)の化合物及び式(2)の化合物の構造を示す。
【
図2】式(3)の化合物及び式(4)の化合物の構造を示す。
【
図3A】TNF受容体へのTNFαの結合に影響を与える試験化合物のスクリーニング(Mesoscale Discoveryアッセイ、MSD)の結果を示す。複数の試験化合物を調査し、TNF受容体へのTNFαの結合に対する阻害%レベルを計算した。
【
図3B】前記アッセイを使用した、式(1)の化合物についての用量応答曲線を示す。
【
図3C】式(2)の化合物についての用量応答曲線を示す。
【
図4A】式(1)の化合物の存在下における、TNFR1の細胞外ドメイン(ECD)へのTNFの結合の増強を実証する受容体-リガンド結合アッセイを示す。
【
図4B】同じアッセイにおける式(2)の化合物により誘導された結合の増強を示す。
【
図5】(下部トレース)は、100%水溶液中のTNFαのデコンボリューションされた質量スペクトル画像を示す。
図5(上部トレース)は、10%v/v DMSOを含有する溶液中のTNFαのデコンボリューションされた質量スペクトル画像を示す。
図5(中部トレース)は、10%v/v DMSO及び式(1)の化合物を含有する溶液中のTNFαのデコンボリューションされた質量スペクトル画像を示す。
【
図6】式(1)の化合物を含有する溶液中のTNFαの質量スペクトル画像を示す。
【
図7A】式(1)の化合物とプレインキュベートし、次いで、TNF-Rと混合したTNFα試料の、サイズ排除クロマトグラフィー実験及びそれに続く質量分析解析の溶出プロファイルの重ね合わせを示す。
【
図7B】TNF-Rとプレインキュベートし、次いで、式(1)の化合物と混合したTNFα試料の、サイズ排除クロマトグラフィー実験及びそれに続く質量分析解析の溶出プロファイルの重ね合わせを示す。
【
図8A】TNF-RへのTNFαの結合の等温熱量解析の結果を示す。
【
図8B】TNF-Rへの、式(2)の化合物とプレインキュベートしたTNFαの結合の等温熱量解析の結果を示す。
【
図9】式(1)の化合物-トリマーTNFα複合体の結晶構造を示す。
【
図10】L929マウス線維肉腫細胞殺傷アッセイを使用して測定される残余のヒトTNFα濃度(pg/ml)に対する式(1)の化合物及び式(2)の化合物の濃度で測定するときの、式(1)(△)の化合物及び式(2)(◇)の化合物によるヒトTNFαの中和のグラフを示す。
【
図11】TNFα処理されたヒト単球における相対IL-8産生%に対する式(1)の化合物の濃度(nM)のグラフを示す。
【
図12A】HEK293細胞におけるTNFα(0.5ng/mL)の存在下でのNF-κB活性化の阻害%に対する式(2)の化合物の濃度(nM)のグラフを示す。
【
図12B】HEK293細胞におけるIL-1β(0.5ng/mL)の存在下でのNF-κB活性化の阻害%に対する式(2)の化合物の濃度(nM)のグラフを示す。
【
図12C】HEK293細胞における活性化TNF-R1抗体(300ng/mL)の存在下でのNF-κB活性化の阻害%に対する式(2)の化合物の濃度(nM)のグラフを示す。
【
図13A】表面プラズモン共鳴を使用して測定される経時的な式(1)の化合物とTNFαとの結合動態を示す。
【
図13B】式(2)の化合物とTNFαとの結合動態を示す。
【
図13C】式(3)の化合物とTNFαとの結合動態を示す。
【
図14A】TNFα単独、又は増大濃度の式(1)の化合物と共にプレインキュベートしたTNFαの、腹腔内注入(ip.)による投与に対して応答した好中球動員のレベルを示す。
【
図14B】TNFα単独、又は増大濃度の式(2)の化合物と共にプレインキュベートしたTNFαの、腹腔内注入(ip.)による投与に対して応答した好中球動員のレベルを示す。
【
図15】単独の、又は増大濃度の式(1)の化合物の存在下におけるTNFαの、経口投与に対して応答した好中球動員のレベルを示す。
【
図16】式(1)、(2)及び(3)の試験化合物を使用した蛍光偏光(FP)アッセイの結果のグラフである。試験化合物の濃度が、TNFαへの式(4)の化合物の結合の阻害%に対してプロットされている。
【
図17】(下部トレース)は、100%水溶液中のCD40Lの質量スペクトル画像を示す。
図17(中部トレース)は、10%v/vジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する溶液中のCD40Lの質量スペクトル画像を示す。
図17(上部トレース)は、10%v/vDMSO及び式(1)の化合物を含有する溶液中のCD40Lの質量スペクトル画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、C185_01974.0のHCVRを示す。
配列番号2は、C185_01974.0のLCVRを示す。
配列番号3は、C185_01974.0のmIgG1重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、C185_01974.0のカッパ軽鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、C185_01979.0のHCVRを示す。
配列番号6は、C185_01979.0のLCVRを示す。
配列番号7は、C185_01979.0のmIgG1重鎖のアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、C185_01979.0のカッパ軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【0013】
TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定するためのアッセイ
本発明者らは、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定するためのアッセイを開発した。TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータは、TNFスーパーファミリーメンバーのアゴニスト及びアンタゴニストを含んでもよい。TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータは、1又は複数のTNFスーパーファミリーメンバーのアンタゴニストであってもよい。或いは、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータは、1又は複数のTNFスーパーファミリーメンバーのアゴニストであってもよい。具体的には、本発明者らは、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、必要なTNF受容体に結合することができ、前記受容体を介するシグナル伝達を調節するコンフォメーションにこれらのトリマーを安定化する化合物を同定するために使用することができるアッセイを開発した。したがって、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定するのに有用であるアッセイを提供する。
【0014】
特に、本明細書に記載のアッセイを使用して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、必要なTNFファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体を形成する化合物を同定することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明のアッセイは、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合するが、モノマー形態には結合しない化合物を同定する。特に好ましい実施形態では、化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、これを安定化し、モノマー形態に結合せず、ダイマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーを安定化しない。試験化合物によるTNFスーパーファミリートリマーの安定化は、トリマー間のモノマー単位の交換を阻害する試験化合物によって生じてもよい。
【0016】
本発明のアッセイは、試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合を増強するかどうかを決定することを含んでもよく、したがって、TNFスーパーファミリーモジュレータを同定する。好ましい実施形態では、本発明のアッセイは、試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合を増強するかどうかを決定することを含んでもよく、したがって、シグナル伝達が減少した、又はシグナル伝達がない形態のTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合を増加させることによって作用するTNFスーパーファミリーアンタゴニストを同定する。
【0017】
本発明によるTNFスーパーファミリーモジュレータを同定するためのアッセイは、例えば、DMSOの存在下で、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーの形成を不安定化する条件下で目的のTNFスーパーファミリーメンバーの試料をインキュベートすること、及び試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバートリマーの形成を安定化する程度を測定することを含んでもよい。或いは、本発明によるTNFスーパーファミリーモジュレータを同定するためのアッセイは、TNFスーパーファミリーのトリマーを試験化合物に結合させること、及び化合物-トリマー複合体の、必要なTNF受容体への結合の程度を測定することを含んでもよい。
【0018】
TNFスーパーファミリーメンバー及びその受容体は精製されるか、又は培養細胞、組織試料、体液若しくは培養培地中などの混合物中に存在することができる。定性的又は定量的であるアッセイを開発することができ、後者は試験化合物のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合パラメータ(親和性定数及び動力学)、及びまた、化合物-トリマー複合体の、必要なTNF受容体結合パラメータを決定するのに有用である。
【0019】
モノマー、ダイマー及びトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの量を、モノマー、ダイマー及びトリマー形態の質量、モノマー、ダイマー及びトリマー形態のモル量、モノマー、ダイマー及びトリマー形態の濃度、並びにモノマー、ダイマー及びトリマー形態のモル濃度を測定することによって決定することができる。この量を、任意の適切な単位で与えることができる。例えば、モノマー、ダイマー及びトリマー形態の濃度を、pg/ml、ng/ml又はμg/mlで与えることができる。モノマー、ダイマー及びトリマー形態の質量を、pg、ng又はμgで与えることができる。
【0020】
目的の試料中のモノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの量を、本明細書に記載のような対照試料などの別の試料中のモノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのレベルと比較することができる。そのような方法では、試料中のモノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの質量、モル量、濃度又はモル濃度などの、モノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの実際の量を評価することができる。モノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの量を、モノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの質量、モル量、濃度又はモル濃度を定量することなく、別の試料中でのそれと比較することができる。したがって、本発明による試料中のモノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの量を、2つ以上の試料間の比較に基づいて、モノマー、ダイマー又はトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの相対質量、相対モル量、相対濃度又は相対モル濃度などの、相対量として評価することができる。
【0021】
本発明では、化合物のライブラリーをスクリーニングして、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定することができる(すなわち、本明細書に開示されるアッセイを使用する)。そのようなライブラリーは、典型的には、少なくとも260種の化合物を含む。好ましくは、そのようなライブラリーは、少なくとも300種、少なくとも500種又はさらには少なくとも1000種の化合物を含む。
【0022】
質量分析に基づくアッセイ
本発明者らは、質量分析を使用して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、これらのトリマーを、必要なTNF受容体に結合することができるコンフォメーションで安定化する化合物を同定することができることを見出した。
【0023】
特に、質量分析を使用して、化合物がトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーを安定化するかどうかを評価することができる。
【0024】
したがって、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節するためのアッセイであって、試料中での試験化合物のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合を同定するステップと、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含有する試料上で質量分析を行って、TNFスーパーファミリーメンバートリマーの量を検出することと、試料中のTNFスーパーファミリーメンバートリマーの量と、対照試料とを比較することとを含む、化合物のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合を、対照試料に由来する対応する値と比較するステップと、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNF受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を選択するステップとを含む、上記アッセイを提供する。対照試料は、それが試験化合物を欠くことを除いて、アッセイされる試料と同一であってもよい。TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含む試料は、不安定化剤をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明では、試験化合物を、不安定化剤の存在下でTNFスーパーファミリーメンバーの溶液に添加することができる。カオトロピックとしても知られる不安定化剤は、低モル濃度(例えば、1M)の尿素、グアニジン又はアセトニトリル、高濃度(例えば、6M以上)のこれらの試薬を含み、TNFαトリマーの完全な解離及び構成するTNFαモノマーサブユニットのアンフォールディングをもたらす。不安定化剤は、好ましくは、DMSOであり、典型的には、5%、10%以上の濃度である。得られる溶液を、質量分析を使用して分析することができる。
【0026】
1mM程度の結合親和性でTNFスーパーファミリーメンバーと試験化合物との間で形成された非共有複合体を検出することができる。試験化合物の複数の分子が結合する複合体の存在又は非存在から直接、結合化学量論を取得することができる。結合親和性(KD値)を、既知の試験化合物濃度でTNFスーパーファミリーメンバー-試験化合物複合体(化合物-トリマー複合体)/TNFスーパーファミリーメンバー濃度の比を測定することによって決定することができる。
【0027】
試験化合物は、それが、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料について観察されるトリマーの量と比較した、トリマーの割合を増加させる場合、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーを安定化する。試験化合物は、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料中に存在するトリマーの量と比較して、トリマーの量を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させてもよい。
【0028】
試験化合物はまた、不安定化剤と試験化合物の両方の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバーの試料について観察されるものと比較してトリマーの量を増加させてもよい。試験化合物は、不安定化剤と試験化合物の両方の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中に存在するトリマーの量と比較して、トリマーの量を10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させてもよい。
【0029】
トリマーの安定化は、質量分析研究において2つの方法で証明される。
【0030】
第1に、質量スペクトル中に観察されるモノマーとトリマーの比によって測定することができる、TNFαトリマー複合体の物理的解離が存在する。ダイマー種は、本発明者らの研究では観察されていない。この解離は、分子を質量分析計に導入するために使用される高エネルギープロセスの人工物であってもよい。それにも拘わらず、それを使用して、試験化合物が、噴霧及びイオン化プロセス中にトリマー複合体を安定化し、それによって、質量スペクトル中に観察されるモノマーの量、安定化の程度を決定するために使用されるモノマー/トリマー比を減少させる能力を評価することができる。
【0031】
第2に、ソフトイオン化条件下では、少ないエネルギーがトリマー複合体に与えられ、質量分析計に対するその無傷での移行をもたらし、それにより、真の溶液組成をより密接に反映する。陽性イオン化モードでは、ある特定のアミノ酸内の塩基性官能基は正電荷を獲得するため、電子スプレーイオン化プロセスは、タンパク質の複数の帯電をもたらす。質量分析計は質量/電荷比を測定する。したがって、例えば、名目上52,000DaのTNFαトリマーは、それが10個の電荷を担持している場合、5,200のm/z比に出現する。それは、マルチマータンパク質複合体の研究において使用される限界質量範囲を有する分光計を可能にするこの複数帯電効果である。分光計に同梱されているソフトウェアにより、ユーザーはデータを解析して、それが単一の電荷のみを担持することであった場合に出現する時にタンパク質の質量を得ることができる(すなわち、その原子組成に基づくその真の分子量)。
【0032】
多くのアミノ酸がコア中に埋没し、わずかなパーセンテージが表面上に露出した折り畳まれたタンパク質では、典型的には、6~8個の正電荷が獲得される。一方の単一の荷電した種は優位でなく、いくつかの種(イオン)は小さい範囲内に観察されることが多く、これらのものは電荷状態エンベロープとして知られるものを含む。タンパク質が全体として変性し(すなわち、アンフォールディングされる)、次いで、多くのさらなるアミノ酸が露出し、獲得される電荷の典型数が20に達し得る場合、電荷状態エンベロープはまた、統計的には、電荷を受け入れるより多くの利用可能な部位が現在存在するため、より多数の荷電した種を含む。したがって、電荷の数及び電荷状態エンベロープを含む荷電した種の数は、タンパク質フォールディングの程度に関する高感度のリードアウトである。さらに、折り畳まれたタンパク質が、表面に露出したアミノ酸の相対数が異なる複数のコンフォメーションで存在することができる場合、電荷状態エンベロープのシフトはこれらの差異を反映するであろう。
【0033】
ソフトナノ電子スプレーイオン化条件下では、無傷の折り畳まれたTNFαタンパク質の質量分析研究は、ほぼ100%のTNFαトリマーが検出され、非常に少ないTNFαモノマーが検出されるが、ダイマー種は完全に存在しないことを示す。
【0034】
より厳しいイオン化条件下では、又は不安定化剤がTNFα試料に添加される場合、トリマーのレベルの同時的低下と共に、モノマーTNFαレベルの増加が観察される。ほんの少量のダイマーが観察される。
【0035】
質量分析を使用して、試験化合物がモノマー、ダイマー及びトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合するかどうかを決定することもできる。
【0036】
質量分析を使用して、TNFスーパーファミリーメンバーを含む試験化合物の化学量論、すなわち、どれほど多くの試験化合物分子がTNFスーパーファミリーメンバーに結合するかを決定することもできる。
【0037】
質量分析を使用して、化合物-TNFスーパーファミリーメンバーのトリマー複合体が、必要なTNF受容体に結合するかどうかを決定することもできる。
【0038】
質量分析を使用して、試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーに結合する速度(「結合」速度、kon-c)及び試験化合物がTNFスーパーファミリーメンバーから解離する速度(「解離」速度又はkoff-c)を測定することもできる。本明細書で使用される記号「KD-c」は、TNFスーパーファミリーメンバーに対する試験化合物の結合親和性(解離定数)を示す。KD-cは、koff-c/kon-cと定義される。試験化合物は、遅い「結合」速度を有してもよく、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物-トリマー複合体ピーク強度の質量分析によって分で測定することができる。試験化合物に関するKD-c値を、異なるTNFスーパーファミリーメンバー:化合物-トリマー複合体比でこの測定を繰り返すことによって見積もることができる。好ましい実施形態では、本発明の化合物の、TNFスーパーファミリーのトリマーへの結合は、理想的には約107M-1s-1の速い「結合」速度と共に、遅い「解離」速度、例えば、典型的には、10-3s-1、10-4s-1の値、又は測定可能な「解離」速度がないことを特徴とする。
【0039】
質量分析を使用して、試験化合物が、必要な受容体の存在下でTNFスーパーファミリーメンバーに結合するかどうかを決定することもできる。これは、試験化合物を、その受容体と共に予めインキュベートしたTNFスーパーファミリーメンバーと共にインキュベートすることを含んでもよい。次いで、試験化合物を含有する試料、並びに予めインキュベートしたTNFスーパーファミリーメンバー及び受容体を分画して、例えば、分析的ゲル濾過によって、その分子サイズに応じて分子を分離することができる。得られる画分を、質量分析を使用して分析して、試験化合物が必要な受容体の存在下でTNFスーパーファミリーメンバーに結合するかどうかを決定することができる。化合物は、それがTNFスーパーファミリーメンバーに結合する場合、TNFスーパーファミリーメンバーと同じ画分中に溶出する。化合物は、それがTNFスーパーファミリーメンバーに結合しない場合、TNFスーパーファミリーメンバーとは異なる画分中に溶出する。この場合、化合物は、典型的には、TNFスーパーファミリーメンバーより後のゲル濾過画分中に溶出する。
【0040】
質量分析法としては、例えば、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI MS)、表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析(SELDI MS)、飛行時間質量分析(TOF MS)及び液体クロマトグラフィー質量分析(LC MS)が挙げられる。
【0041】
受容体-リガンド結合アッセイ
従来のTNFスーパーファミリーアンタゴニストは、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合を阻害することによって作用する。本発明者らは、受容体-リガンド結合アッセイを使用して、試験化合物が本発明のTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体に対する結合を増強するかどうかを決定した。したがって、そのような受容体-リガンド結合アッセイを使用して、シグナル伝達が減少した、又はシグナル伝達がない形態のTNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合を増加させることによって作用するTNFスーパーファミリーアンタゴニストを同定することができる。したがって、受容体-リガンド結合アッセイを使用して、TNFスーパーファミリーメンバーの、その受容体への結合を増加させることによって作用し、TNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増強するアゴニストを同定することもできる。
【0042】
したがって、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を同定するためのアッセイであって、試験化合物を含む試料中の必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルを測定するステップ及び必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルと、対照試料に由来する対応する値とを比較するステップを含み、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物の試料を、表面に結合した必要なTNF受容体に加える受容体-リガンド結合アッセイを実行するステップ、及び必要なTNF受容体に結合したTNFスーパーファミリーのトリマーの量と、対照試料とを比較するステップ、及びトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップを含む、上記アッセイを提供する。対照試料は、それが試験化合物を欠くこと、及び/又はそれが既知の化合物を含有することを除いて、アッセイされる試料と同一であってもよい。TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含む試料は、不安定化剤をさらに含んでもよい。
【0043】
試験化合物を、TNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含む溶液に添加することができる。不安定化剤のみの存在下でのTNFスーパーファミリー受容体の結合のレベル(対照試料中)を、不安定化剤及び試験化合物の存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合のレベルと比較することができる。試験化合物は、それが試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料について観察されるTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合のレベルと比較して、その受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの割合を増加させる場合、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合を増強する。
【0044】
試験化合物は、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中のその受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの量と比較して、その受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの量を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%以上増加させることができる。
【0045】
本発明の受容体-リガンド結合アッセイは、典型的には、支持体に結合したTNFスーパーファミリー受容体を必要とする。TNFスーパーファミリー受容体を、支持体に直接的に、又はアビジン若しくはストレプトアビジンなどのリンカー分子を使用して間接的に結合させることができる。次いで、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合のレベルを、TNFスーパーファミリーメンバーの溶液を不安定化剤と共に添加することによってアッセイすることができる。カオトロピックとしても知られる不安定化剤は、低モル濃度(例えば、1M)の尿素、グアニジン又はアセトニトリル、高濃度(例えば、6M以上)のこれらの試薬を含み、TNFαトリマーの完全な解離及び構成するTNFαモノマーサブユニットのアンフォールディングをもたらす。不安定化剤は、好ましくは、DMSOであり、典型的には、5%、10%以上の濃度である。
【0046】
TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合は、典型的には、TNFスーパーファミリーメンバーに特異的であり、マーカーに結合する抗体を使用して決定される。マーカーは、検出することができる任意の分子であってもよい。例えば、マーカーは、放射性同位体(例えば、125I、32P、35S及び3H)、蛍光染料(例えば、フルオレセイン、ローダミン)、酵素コンジュゲートなどであってよい。酵素のための基質を使用して、表面結合した受容体に結合したTNFスーパーファミリーメンバーの量を定量する。他のマーカーとしては、電気などのある特定の刺激に対する曝露に際して光を産生するように活性化することができる分子標識が挙げられる。マーカーの選択は、使用される検出系に依存する。
【0047】
受容体-リガンド結合アッセイを、細胞に基づく結合アッセイ、溶液相アッセイ及びイムノアッセイなどのいくつかの形式で実行することができる。受容体-リガンド結合反応のための固体支持体は、好ましくは、ウェルを含有する。一般的には、試験化合物-トリマー複合体を、特定の期間にわたって必要なTNFスーパーファミリー受容体と共にインキュベートした後、受容体に結合する化合物-トリマー複合体の量を測定する。結合した化合物-トリマー複合体のレベルを、顕微鏡、蛍光計、シンチレーションカウンター、又は任意の利用可能なイムノアッセイを使用してマーカーを測定することによって算出することができる。
【0048】
本明細書で使用される記号「kon-r」は、化合物-トリマー複合体がTNFスーパーファミリー受容体に結合する速度(「結合」速度)を指す。本明細書で使用される記号「koff-r」は、化合物-トリマー複合体がTNFスーパーファミリー受容体から解離する速度(「解離」速度)を指す。本明細書で使用される記号「KD-r」は、化合物-トリマー複合体の、スーパーファミリー受容体に対する結合親和性(解離定数)を指す。KD-rは、koff-r/kon-rと定義される。
【0049】
受容体-リガンド結合アッセイを使用して、本発明の化合物-トリマー複合体の必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する結合親和性を測定することができる。特に、競合アッセイを使用して、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する本発明の化合物-トリマー複合体のkon-r及びkoff-r値と、試験化合物の非存在下でのその受容体に結合するTNFスーパーファミリーメンバーのkon-r及びkoff-r値とを比較し、本発明の化合物-トリマー複合体の必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する結合に関するKD-r値を決定することができる。
【0050】
安定性アッセイ
本発明者らは、TNFスーパーファミリーメンバーの安定性に対する試験化合物の効果を決定するための方法を開発した。したがって、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を同定するためのアッセイであって、それにより、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節し、化合物を含む試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を測定するステップと、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物の試料中のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmを決定するためのアッセイを実施すること、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmと対照試料とを比較することを含む、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を、対照試料に由来する対応する値と比較するステップと、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を選択するステップとを含む、上記アッセイを提供する。対照試料は、それが試験化合物を欠くこと、及び/又はそれが既知の化合物を含有することを除いて、アッセイされる試料と同一であってもよい。TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含む試料は、不安定化剤をさらに含んでもよい。
【0051】
試験化合物を、TNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含む溶液に添加することができる。不安定化剤のみの存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性(対照試料中)を、不安定化剤及び試験化合物の存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性と比較することができる。試験化合物は、それが試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリーメンバー及び不安定化剤を含有する試料について観察されるトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmと比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの温度遷移中点(Tm)を増大させる場合、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの安定性を増強する。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmは、生物分子の50%がアンフォールディングされる温度である。試験化合物の存在下及び/又は非存在下でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmを、当業界で公知の任意の好適な技術を使用して、例えば、示差走査熱量測定(DSC)又は蛍光プローブ熱変性アッセイを使用して測定することができる。
【0052】
試験化合物は、試験化合物の非存在下、TNFスーパーファミリーメンバーを含有する試料中でのトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmと比較して、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmを少なくとも1℃、少なくとも2℃、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃以上増加させることができる。好ましくは、試験化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのTmを、少なくとも1℃、より好ましくは少なくとも10℃、さらにより好ましくは10℃~20℃増加させる。
【0053】
カオトロピックとしても知られる不安定化剤は、低モル濃度(例えば、1M)の尿素、グアニジン又はアセトニトリル、高濃度(例えば、6M以上)のこれらの試薬を含み、TNFαトリマーの完全な解離及び構成するTNFαモノマーサブユニットのアンフォールディングをもたらす。不安定化剤は、好ましくは、DMSOであり、典型的には、5%、10%以上の濃度である。
【0054】
等温熱量測定アッセイ
本発明者らは、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性に対する試験化合物の効果を決定するための等温熱量測定法を開発した。
【0055】
したがって、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を同定するためのアッセイであって、化合物を含む試料中の必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルを測定するステップ及び必要な受容体に結合したトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのレベルと、対照試料に由来する対応する値とを比較するステップを含み、等温熱量測定分析を実行して、化合物の存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーの必要な受容体に対する結合親和性を測定するステップ;及びTNFスーパーファミリーメンバーの、必要な受容体に対する結合親和性と、対照試料とを比較するステップ及びTNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を選択するステップであって、化合物-トリマー複合体が、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する、ステップを含む、上記アッセイを提供する。対照試料は、それが試験化合物を含まない、及び/又はそれが既知の化合物を含有することを除いて、アッセイされる試料と同一であってもよい。
【0056】
TNFスーパーファミリーメンバーのアリコートを、必要なTNF受容体の容器に連続的に添加することができる。アリコートの容量は、任意の適切な範囲にあってもよい。アリコートは、0.1μl~10μlなどの任意の適切な容量のものであってもよい。好ましい実施形態では、アリコートは、0.5μl、1.0μl、又は3.0μlの容量であってもよい。シリンジ容量に応じて、より大きい容量を使用することが可能である。
【0057】
TNFスーパーファミリーメンバーの各添加は、TNFスーパーファミリートリマーが受容体に結合する時に少量の熱の放出又は吸収をもたらす。典型的には、TNFスーパーファミリーメンバーの各添加は、TNFスーパーファミリートリマーが受容体に結合する時に少量の熱の放出をもたらす。熱放出の量を、等温熱量測定を使用して測定し、この情報を使用して、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との結合親和性を取得することができる。
【0058】
このプロセスを、TNFスーパーファミリーメンバーと試験化合物を含む溶液の、TNFスーパーファミリー受容体の容器への連続的添加を使用して繰り返すことができる。好ましくは、TNFスーパーファミリーメンバー及び試験化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にある。再度、熱放出の量を、等温熱量測定を使用して測定し、この情報を使用して、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との結合親和性を取得することができる。
【0059】
TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物-トリマー複合体の結合親和性を比較して、化合物がTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性を増加させるかどうかを決定することができる。
【0060】
試験化合物は、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性と比較して、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性を2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍以上増加させることができる。
【0061】
結合親和性を、結合親和性(KD-r)を単位として与えることができ、μM、nM又はpMなどの任意の適切な単位で与えることができる。KD-r値が小さいほど、TNFスーパーファミリーメンバーのその受容体に対する結合親和性が大きい。
【0062】
試験化合物の存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、試験化合物の非存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値の少なくとも1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1でもよい。
【0063】
試験化合物の存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、1μM、100nM、10nM、5nM、1nM、100pM、10pM以下であってもよい。好ましい実施形態では、試験化合物の存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、1nM以下である。
【0064】
競合アッセイ
本発明者らは、試験化合物がトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合についてプローブ化合物と競合する能力を調査することによって、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法を開発した。したがって、本発明は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合について、試験化合物と、プローブ化合物との競合を測定することと、それにより観察された競合のレベルを対照試料に由来する対応する値と比較することと、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を選択することとを含むアッセイを提供する。
【0065】
プローブ化合物は、放射標識された本発明による化合物を含んでもよい。本発明のプローブ中で使用することができる放射性核としては、トリチウム(3H)、14C、18F、22Na、32P、33P、35S、36Cl、125I、131I及び99mTcが挙げられる。
【0066】
特に、競合アッセイは、蛍光偏光度が蛍光分子の回転緩和時間、したがって、分子サイズと関連する蛍光偏光(FP)アッセイであってもよい。大きい分子は、小さい分子よりも高い偏光度を示す。したがって、FPアッセイを使用して、小さい蛍光リガンド又はプローブと、TNFスーパーファミリーメンバーなどのより大きなタンパク質との相互作用を測定することができる。偏光度は、蛍光リガンドの結合/遊離比の直接的尺度を提供する。
【0067】
本発明は、したがって、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を同定するための方法であって、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合について、化合物とプローブ化合物との競合を測定するステップ、観察された競合のレベルを、対照試料に由来する対応する値と比較するステップ、及びTNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができ、それによって、化合物-トリマー複合体が必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節する化合物を選択するステップを含み、化合物及びプローブ化合物を使用して蛍光偏光アッセイを実施すること、化合物の存在下でのプローブ化合物の偏光度と、対照試料中での偏光度とを比較することを含む、上記方法を提供する。
【0068】
試験化合物がプローブ又はリガンドと競合する能力を、半数最大阻害濃度(IC50)などの標準的な用語を使用して定量することができる。この文脈では、IC50値は、プローブのトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合の50%の阻害をもたらすのに必要とされる化合物の濃度を表す。試験化合物は、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、1nM、100pM以下のIC50値を有してもよい。好ましくは、試験化合物は、200nM以下のIC50値を有する。より好ましくは、試験化合物は、150nM以下のIC50値又は100nM以下のIC50値を有する。
【0069】
上記のように、本発明では、化合物のライブラリーを、典型的には、1又は複数の本明細書に記載のアッセイにかけて、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定する。少なくとも260種の化合物、少なくとも300種、少なくとも500種又はさらには少なくとも1000種の化合物を含んでもよいそのようなライブラリーを、蛍光偏光を使用してスクリーニングすることができる。
【0070】
化合物のライブラリーを、蛍光偏光を使用してアッセイする場合、方法は、化合物が特定のIC50値をもたらす場合に、化合物をTNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータとして選択することを含んでもよい。例えば、化合物が50μM未満のIC50値をもたらす場合、化合物をTNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータと同定することができる。一部の態様では、化合物が500nM未満、200nM未満、又はさらには100nM未満のIC50値をもたらす場合、それらが同定される。
【0071】
ライブラリーに由来する化合物が試験されるライブラリーの全ての化合物のうちで最も低いIC50値を有する場合、それをTNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータと同定することもできる。同様に、化合物がライブラリーの他の化合物と比較して低いIC50値(すなわち、より良好なIC50値)を有する場合、それをTNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータと同定することができる。例えば、最も低いIC50値をもたらすライブラリーの化合物の50%を、モジュレータと同定することができる。一部の態様では、最も低いIC50値をもたらすライブラリーの化合物の25%又はさらには10%を、モジュレータと同定することができる。
【0072】
一実施形態では、プローブ化合物は、蛍光リガンドにコンジュゲートされた本発明による化合物を含む。好適には、蛍光リガンドは、10ns以下の蛍光寿命を有する蛍光染料である。好適な蛍光染料の典型例としては、フルオレセイン、ローダミン、Cy染料(例えば、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5若しくはCy7)、Alexa Fluor(登録商標)染料(例えば、Alexa Fluor(登録商標)350、405、430、488、532、546、555、568、594、610、633、635、647、660、680、700、750若しくは790)又はBODIPY(登録商標)染料(例えば、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR若しくはBODIPY TR)が挙げられる。本発明のプローブ化合物の特定例は、
図2に記載される式(4)の化合物である。
【0073】
対照試料は、それが試験化合物を欠くこと、及び/又はそれが既知の化合物を含有することを除いて、アッセイされる試料と同一であってもよい。
【0074】
TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物を含む試料は、不安定化剤をさらに含んでもよい。カオトロピックとしても知られる不安定化剤は、低モル濃度(例えば、1M)の尿素、グアニジン又はアセトニトリル、高濃度(例えば、6M以上)のこれらの試薬を含み、TNFαトリマーの完全な解離及び構成するTNFαモノマーサブユニットのアンフォールディングをもたらす。不安定化剤は、好ましくは、DMSOであり、典型的には、5%、10%以上の濃度である。
【0075】
蛍光偏光を使用して、TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータを同定することができるが、本発明の一部の態様では、そのようなモジュレータを、蛍光偏光を除く本明細書に記載の任意のアッセイによって(すなわち、蛍光偏光ではない方法によって)同定することができる。特に、化合物のトリマーTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合、及びトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する結合に関する化合物とプローブ化合物との競合を、蛍光偏光以外の任意の方法によって決定することができる。
【0076】
TNFスーパーファミリー受容体を介するシグナル伝達
本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーに結合したTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を調節する(すなわち、防止する、減少させる、又は増強する)ことができる化合物を同定するための方法を含んでもよい。
【0077】
一実施形態では、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーに結合したTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を防止するか、又は減少させることができる化合物を同定するための方法を含んでもよい。そのような方法は、TNFスーパーファミリー受容体を、TNFスーパーファミリーメンバーと化合物-トリマー複合体の両方と接触させることと、試験化合物がTNFスーパーファミリー受容体を介するTNFスーパーファミリーメンバートリマーシグナル伝達を防止するか、又は減少させるかどうかを検出することとを含んでもよい。化合物-トリマー複合体で処理されたTNFスーパーファミリー受容体からのシグナル伝達の量を、TNFスーパーファミリーメンバーのみで処理されたTNFスーパーファミリー受容体からのシグナル伝達の量と比較することができる。
【0078】
或いは、本発明は、TNFスーパーファミリーメンバーに結合したTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増強することができる化合物を同定するための方法を含んでもよい。そのような方法は、TNFスーパーファミリー受容体を、TNFスーパーファミリーメンバーと化合物-トリマー複合体の両方と接触させること、及び試験化合物がTNFスーパーファミリー受容体を介するTNFスーパーファミリーメンバーのトリマーのシグナル伝達を増加させるかどうかを検出することを含んでもよい。化合物-トリマー複合体で処理されたTNFスーパーファミリー受容体からのシグナル伝達の量を、TNFスーパーファミリーメンバーのみで処理されたTNFスーパーファミリー受容体からのシグナル伝達の量と比較することができる。
【0079】
TNFスーパーファミリー受容体シグナル伝達の下流の効果を測定するアッセイを実施して、シグナル伝達のレベルを検出することができる。例えば、L929マウス線維肉腫細胞殺傷アッセイを使用して、TNFによる細胞死の刺激を評価することができる。ヒト単球によるTNF誘導性IL-8産生の阻害を使用して、試験化合物がその受容体によるTNFシグナル伝達を阻害するかどうかを評価することもできる。
【0080】
トリマー-化合物複合体を同定するための抗体
本発明者らは、本発明の化合物と、トリマーTNFスーパーファミリーメンバーとを含む複合体に選択的に結合する抗体を開発した。これらの抗体を使用して、TNFを阻害することができるさらなる化合物を同定することができる。
【0081】
特に、本発明者らは、本発明の化合物との複合体にある、ヒトTNFαに対して生じた、CA185_01974及びCA185_01979と呼ばれる、2つの抗体を同定した。CA185_01974の重鎖可変領域(HCVR)は配列番号1に示され、CA185_01974の軽鎖可変領域(LCVR)は配列番号2に示される。完全長IgG1重鎖は配列番号3(1974HC mIgG1フル)に示され、完全長軽鎖(1974LCカッパフル)は配列番号4に示される。
【0082】
CA185_01979のHCVRは配列番号5に示され、CA185_01979のLCVRは配列番号6に示される。CA185_01979の完全長IgG1重鎖は配列番号7(1979HC mIgG1フル)に示され、完全長軽鎖は配列番号8(1979LCカッパフル)に示される。
【0083】
当業者であれば、上記のHCVR/LCVR又は完全長配列対を含む抗体を、標準的な技術を使用して容易に生成することができる。
【0084】
TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合し、受容体を介するシグナル伝達を調節することができる化合物を決定するための本発明の方法は、したがって、配列番号1/2又は5/6のHCVR/LCVR対を有する抗体がトリマー-化合物複合体に結合するかどうかを同定することを含んでもよい。同様に、方法は、配列番号3/4又は7/8の配列対を有する抗体がトリマー化合物複合体に結合するかどうかを同定することを含んでもよい。抗体アッセイを、本明細書に記載の他のアッセイに加えて使用してもよい。
【0085】
本発明の抗体を、例えば、標準的なELISA又はウェスタンブロッティングにより、化合物-トリマー複合体への結合について試験することができる。例えば、フローサイトメトリーにより、標的タンパク質を発現する細胞への抗体の結合をモニタリングすることによって、抗体の結合選択性を決定することもできる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、ELISA若しくはウェスタンブロットを実行することにより、又はフローサイトメトリーにより、化合物-トリマー複合体に結合することができる抗体を同定するステップを含んでもよい。
【0086】
本明細書に記載の抗体は、少なくとも1つの化合物-トリマー複合体、すなわち、化合物-トリマー複合体中のエピトープを選択的(又は特異的)に認識する。抗体、又は他の化合物は、それが選択的であるが、他のタンパク質に実質的に結合しない、又は低い親和性で結合するタンパク質に優先的な、又は高い親和性で結合する場合、タンパク質に「選択的に結合する」又はそれを「選択的に認識する」。
【0087】
本発明の例では、化合物-トリマー複合体は、典型的には、1nM未満の親和性で、配列番号1/2若しくは5/6のHCVR/LCVR対(又は配列番号3/4若しくは7/8の配列対)を有する抗体に結合することができる。換言すれば、本発明の方法は、配列番号1/2若しくは5/6のHCVR/LCVR対(又は配列番号3/4若しくは7/8の配列対)を有する抗体が、1nM未満のKD-abでトリマー-化合物複合体に結合することを同定することによって、化合物がTNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合し、受容体を介するシグナル伝達を調節することができることを決定することを含んでもよい。いくつかの例では、KD-abは、500pM未満、又は200pM未満であってもよい。親和性を、表面プラズモン共鳴によって決定することができる。TNFは、典型的には、ヒトTNFαである。
【0088】
同様に、本発明の複合体は、化合物-トリマー複合体が配列番号1/2若しくは5/6のHCVR/LCVR対(又は配列番号3/4若しくは7/8の配列対)を有する抗体に結合する、トリマーTNFスーパーファミリーメンバーの複合体であってもよい。再度、TNFは、典型的にはヒトTNFαであり、結合親和性は、典型的には1nM未満(又は500pM/200pM未満)である。結合親和性は、典型的には、表面プラズモン共鳴によって決定される。
【0089】
TNFスーパーファミリーメンバーのモジュレータ
本明細書に記載のアッセイを使用して、本発明者らは、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する試験化合物を同定した。これらの化合物は、1000Da以下、好ましくは750Da以下、より好ましくは600Da以下の分子量を有する低分子実体(SME)である。これらの化合物は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を調節するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化する。
【0090】
トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに対する本発明の化合物の安定化効果を、化合物の存在下及び非存在下でのトリマーの温度遷移中点(Tm)を測定することによって定量することができる。Tmは、生物分子の50%がアンフォールディングされる温度を表す。TNFスーパーファミリーメンバートリマーを安定化する化合物は、トリマーのTmを増加させる。Tmを、当業界で公知の任意の適切な技術を使用して、例えば、示差走査熱量測定(DSC)又は蛍光プローブ熱変性アッセイを使用して決定することができる。
【0091】
化合物は、TNFスーパーファミリーメンバートリマー内に存在する中心空間の内側(すなわち、トリマーのコア)に結合することができる。
【0092】
これらの化合物は、TNFスーパーファミリーメンバーをTNFスーパーファミリー受容体アンタゴニストに向かわせることができる。これらの化合物は、したがって、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との高親和性相互作用と競合する必要なく、TNFスーパーファミリーメンバーシグナル伝達を遮断することができる。
【0093】
或いは、化合物は、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を増強するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化することができる。これらの化合物は、したがって、TNFスーパーファミリーメンバーとその受容体との結合親和性相互作用と競合する必要なく、TNFスーパーファミリーメンバーシグナル伝達を増加させることができる。
【0094】
本明細書において化合物がアンタゴニストとして記載される場合、化合物は同等にアゴニストであってもよく、TNFスーパーファミリーメンバーのトリマーと、そのようなアゴニスト化合物との複合体に結合するTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加させることが理解される。同様に、他の開示が拮抗化合物、そのような化合物を同定する方法及びそのような化合物の使用を指す場合、本開示は同等にアゴニスト化合物を指してもよい。
【0095】
本発明の方法によって同定される化合物は、TNFスーパーファミリー受容体の天然のアゴニスト、すなわち、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、これらのトリマーに、必要なTNFスーパーファミリー受容体に依然として結合し、受容体によるシグナル伝達を調節するコンフォメーションを採用させるアロステリックなモジュレータである。調節することにより、化合物は拮抗効果を有し、したがって、TNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を減少させるか、又は他には刺激効果を有し、したがって、TNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加若しくは増強してもよいことが理解される。
【0096】
本発明の方法によって同定される化合物は、天然のTNFスーパーファミリーメンバーアゴニストをアンタゴニストに変換することができる。対照的に、従来のTNFスーパーファミリーメンバーアンタゴニストは、TNFスーパーファミリーメンバー又はTNFスーパーファミリー受容体に結合し、TNFスーパーファミリーメンバーの必要な受容体に対する結合を防止する。別の方法では、本発明の方法によって同定される化合物は、TNFスーパーファミリーメンバーが化合物の非存在下で結合する場合のTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達のレベルと比較して、TNFスーパーファミリーメンバーが結合する場合のTNFスーパーファミリー受容体によるシグナル伝達を増加させることができる。本発明の方法によって同定される化合物は、したがって、天然のTNFスーパーファミリーメンバーアゴニストを、いわゆる「スーパーアゴニスト」に変換することができる。本発明の方法によって同定される化合物は、したがって、リガンド活性のアロステリックモジュレータ(AMLA)としても公知であってよい。
【0097】
本発明の方法によって同定される化合物は、それらが少なくとも1つのTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、必要なTNFスーパーファミリー受容体に結合し、TNFスーパーファミリー受容体のシグナル伝達を調節するトリマーTNFスーパーファミリーメンバーのコンフォメーションを安定化するという条件で、その化学式又は構造に関して限定されない。本発明の方法によって同定される化合物は、したがって、本明細書に記載のアッセイ及び方法を使用して同定することができる。本発明の方法によって同定される化合物は、ベンゾイミダゾール部分又はそのイソスター、例えば、式(1)、(2)及び(3)の化合物を含んでもよい。
【0098】
本発明の方法によって同定される化合物は、化合物の非存在下での必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバーの結合親和性と比較して、必要な受容体に対するTNFスーパーファミリーメンバー(化合物-トリマー複合体の形態にある)の結合親和性を増加させることができる。
【0099】
本発明の方法によって同定される化合物は、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する。そのような化合物は、トリマー形態の1又は複数のTNFスーパーファミリーメンバーに特異的に結合することができる。本発明の方法によって同定される化合物は、ただ1つのTNFスーパーファミリーメンバーに特異的に結合することができるが、他の任意のTNFスーパーファミリーメンバーには結合しない。本発明の方法によって同定される化合物はまた、2つ、3つ、4つ、又は最大で全てのTNFスーパーファミリーメンバーに特異的に結合することもできる。特異的とは、化合物が、TNFスーパーファミリーの他のメンバーを含んでもよい、他の任意の分子との有意な交差反応性なしに、目的の分子又は複数の分子に、この場合、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合することが理解される。交差反応性を、任意の好適な方法、例えば、表面プラズモン共鳴によって評価することができる。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーの化合物と、トリマー形態のその特定のTNFスーパーファミリーメンバー以外の分子との交差反応を、化合物がトリマー形態の目的のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は100%の強さで他の分子に結合する場合、有意と考えることができる。トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに特異的である化合物は、それがトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%又は20%未満で別の分子に結合することができる。好ましくは、化合物は、それがトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合する強さの20%未満、15%未満、10%未満又は5%未満、2%未満又は1%未満で他の分子に結合する。
【0100】
試験化合物(すなわち、化合物-トリマー複合体の形態にある)の存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、試験化合物の非存在下でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値の少なくとも1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、40分の1、50分の1、60分の1、70分の1、80分の1、90分の1、100分の1でもよい。好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーに対する結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値は、試験化合物の非存在下でTNFスーパーファミリー受容体に結合するTNFスーパーファミリートリマーのKD-r値の少なくとも1.5分の1、好ましくは、少なくとも3分の1、より好ましくは少なくとも4分の1に減少する、すなわち、TNFスーパーファミリー受容体に対する化合物-トリマー複合体の結合親和性は、好ましくは、試験化合物の非存在下でのTNFスーパーファミリー受容体に対するTNFスーパーファミリートリマーの結合親和性と比較して、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍増加する。
【0101】
受容体に結合するTNFスーパーファミリートリマーのみのKD-r値と比較した、TNFスーパーファミリー受容体に対する結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値の減少は、TNFスーパーファミリートリマーのみと比較した、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)の増加、及び/又はTNFスーパーファミリートリマーのみと比較した解離速度(koff-r)の減少の結果であってよい。好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)は、TNFスーパーファミリートリマーのみと比較して増加する。別の実施形態では、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は、TNFスーパーファミリートリマーのみと比較して減少する。さらなる実施形態では、TNFスーパーファミリートリマーのみと比較して、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)は増加し、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は減少する。必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する化合物-トリマー複合体のkon-r値は、化合物の非存在下でのその受容体に結合するTNFスーパーファミリートリマーのkon-r値と比較して少なくとも1.5倍又は少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍増加してもよく、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する化合物-トリマー複合体のkoff-r値は、化合物の非存在下でその受容体に結合するTNFスーパーファミリートリマーのkoff-r値と比較して少なくとも1.2分の1、少なくとも1.6分の1、少なくとも2分の1、より好ましくは少なくとも2.4分の1に減少してもよい。
【0102】
一実施形態では、TNFスーパーファミリートリマーに結合する化合物の結合速度(kon-c)は、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)よりも速い。別の実施形態では、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)は、TNFスーパーファミリートリマーに結合する化合物の解離速度(koff-c)よりも速い。さらなる実施形態では、TNFスーパーファミリートリマーに結合する化合物の結合速度(kon-c)はTNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の結合速度(kon-r)よりも速く、TNFスーパーファミリー受容体に結合する化合物-トリマー複合体の解離速度(koff-r)はTNFスーパーファミリートリマーに結合する化合物の解離速度(koff-c)よりも速い。好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリートリマーに対する結合に関する化合物のKD-c値は、TNFスーパーファミリー受容体に対する結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値よりも低い、すなわち、化合物は、化合物-トリマー複合体が受容体に対して有するものよりも高いトリマーに対する親和性を有する。
【0103】
必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する化合物-トリマー複合体とTNFスーパーファミリートリマーの両方に関するkon-r、koff-r、及びKD-r値を、任意の好適な技術、例えば、本明細書の例に記載されるような、表面プラズモン共鳴、質量分析及び等温熱量測定を使用して決定することができる。試験化合物の存在下でのその受容体結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、1μM、100nM、10nM、5nM、1nM、100pM、10pM以下であってもよい。好ましい実施形態では、試験化合物の存在下(すなわち、化合物-トリマー複合体中)でのその受容体に対する結合に関するTNFスーパーファミリーメンバーのKD-r値は、1nM以下である。より好ましい実施形態では、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値は、600pM未満、より好ましくは500pM未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、100pM未満又は50pM未満である。最も好ましい実施形態では、必要なTNFスーパーファミリー受容体に対する結合に関する化合物-トリマー複合体のKD-r値は、200pM未満である。
【0104】
本発明の方法によって同定される化合物を、TNFスーパーファミリーメンバー及び化合物の試料中のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを決定すること;試料中のトリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーのKD-rを対照試料と比較すること;並びに本発明の化合物を選択することを含むアッセイによって同定することができる。
【0105】
本発明の方法によって同定される化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達を完全に、又は部分的に阻害することができる。化合物は、TNFスーパーファミリー受容体を介するシグナル伝達を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少させるように作用することができる。或いは、本発明の方法によって同定される化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達を増加させることができる。化合物は、TNFスーパーファミリー受容体を介するシグナル伝達を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%又は200%増加させるように作用することができる。シグナル伝達のレベルの任意の変化を、アルカリホスファターゼ又はルシフェラーゼによるレポーター遺伝子活性、Cellomics Arrayscanなどの機械を使用するNF-κB転座、下流エフェクターのリン酸化、シグナル伝達分子の動員、又は細胞死の測定を含む任意の適切な技術によって測定することができる。
【0106】
本発明の方法によって同定される化合物は、化合物-トリマー複合体の形態にあるTNFスーパーファミリーメンバーが受容体に結合する場合、TNF受容体を介するシグナル伝達の下流の効果の少なくとも1つを調節することができる。そのような効果は、本明細書で考察され、TNFスーパーファミリー誘導性IL-8、IL17A/F、IL2及びVCAM産生、TNFスーパーファミリー誘導性NF-κB活性化及び好中球動員を含む。TNFスーパーファミリーメンバーの下流の効果を測定するための標準的な技術が当業界で公知である。本発明の方法によって同定される化合物は、TNF受容体を介するシグナル伝達の少なくとも1、2、3、4、5、10又は最大で全部の下流の効果を調節することができる。
【0107】
本発明の方法によって同定される化合物の活性を、IC50又は半数最大効果濃度(EC50)値などの標準的な用語を使用して定量することができる。IC50値は、特定の生物学的又は生化学的機能の50%の阻害に必要とされる化合物の濃度である。EC50値は、その最大効果の50%に必要とされる化合物の濃度である。本発明の方法によって同定される化合物は、500nM、400nM、300nM、200nM、100nM、90nM、80nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、1nM、100pM以下のIC50又はEC50値を有してもよい。IC50及びEC50値を、任意の適切な技術を使用して測定することができ、例えば、サイトカイン産生を、ELISAを使用して定量することができる。次いで、IC50及びEC50値を、シグモイド型用量応答モデルとしても知られる標準的な4パラメータロジスティックモデルを使用して生成することができる。
【0108】
TNFスーパーファミリー及びその受容体
現在公知の22種のTNFスーパーファミリーメンバーが存在する:TNFα(TNFSF1A)、TNFβ(TNFSF1B)、CD40L(TNFSF5)、BAFF(TNFSF13B/BlyS)、APRIL(TNFSF13)、OX40L(TNFSF4)、RANKL(TNFSF11/TRANCE)、TWEAK(TNFSF12)、TRAIL(TNFSF10)、TL1A(TNFSF15)、LIGHT(TNFSF14)、リンホトキシン、リンホトキシンβ(TNFSF3)、4-1BBL(TNFSF9)、CD27L(TNFSF7)、CD30L(TNFSF8)、EDA(エクトジスプラシン)、EDA-A1(エクトジスプラシンA1)、EDA-A2(エクトジスプラシンA2)、FASL(TNFSF6)、NGF及びGITRL(TNFSF18)。
【0109】
好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーは、TNFαである。TNFαは、可溶性(TNFαs)と膜結合型(TNFαm)の両方で存在する。本明細書でTNFαを言う場合、これはTNFαsとTNFαm型の両方を包含する。特に好ましい実施形態では、TNFαは、TNFαs型にある。
【0110】
本発明のアッセイを使用して、22種の公知のTNFスーパーファミリーメンバーを含む、任意のTNFスーパーファミリーメンバーのうちの少なくとも1つのモジュレータを同定することができる。具体的には、本発明のアッセイを使用して、任意のTNFスーパーファミリーメンバー、特に、トリマー形態のTNFスーパーファミリーメンバーに結合し、必要なTNF受容体に結合することができ、前記受容体を介するシグナル伝達を調節するコンフォメーションにこれらのトリマーを安定化する化合物を同定することができる。好ましい実施形態では、本発明のアッセイは、TNFα又はCD40L、より好ましくは、TNFα、又はさらにより好ましくはTNFαsのモジュレータを同定するために使用される。
【0111】
本発明の方法によって同定される化合物は、22種の公知のTNFスーパーファミリーメンバーを含む、任意のTNFスーパーファミリーメンバーのうちの少なくとも1つのモジュレータであってもよい。好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーは、TNFα又はCD40L、より好ましくはTNFα、又はさらにより好ましくはTNFαsである。
【0112】
本発明の化合物-トリマー複合体は、22種の公知のTNFスーパーファミリーメンバーを含む、任意のTNFスーパーファミリーメンバーのトリマー形態を含んでもよい。好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーは、TNFα又はCD40Lである。より好ましくはTNFスーパーファミリーメンバーはTNFαであり、さらにより好ましくはTNFαsである。
【0113】
TNFスーパーファミリーのメンバーは、TNF受容体に結合し、それを介するシグナル伝達を開始させる。現在、34種の公知のTNF受容体が存在する:4-1BB(TNFRSF9/CD137)、NGF R(TNFRSF16)、BAFF R(TNFRSF13C)、オステオプロテゲリン(TNFRSF11B)、BCMA(TNFRSF17)、OX40(TNFRSF4)、CD27(TNFRSF7)、RANK(TNFRSF11A)、CD30(TNFRSF8)、RELT(TNFRSF19L)、CD40(TNFRSF5)、TACI(TNFRSF13B)、DcR3(TNFRSF6B)、TNFRH3(TNFRSF26)、DcTRAIL R1(TNFRSF23)、DcTRAIL R2(TNFRSF22)、TNF-R1(TNFRSF1A)、TNF-R2(TNFRSF1B)、DR3(TNFRSF25)、TRAIL R1(TNFRSF10A)、DR6(TNFRSF21)、TRAIL R2(TNFRSF10B)、EDAR、TRAIL R3(TNFRSF10C)、Fas(TNFRSF6/CD95)、TRAIL R4(TNFRSF10D)、GITR(TNFRSF18)、TROY(TNFRSF19)、HVEM(TNFRSF14)、TWEAK R(TNFRSF12A)、TRAMP(TNFRSF25)、リンホトキシンβ R(TNFRSF3)及びXEDAR。
【0114】
好ましい実施形態では、TNF受容体は、TNF-R1又はTNF-R2である。本明細書に記載されるTNF-Rは、TNF-R1とTNF-R2の細胞外ドメイン(ECD)などの、TNF-R1とTNF-R2の両方を包含する。本発明のアッセイを使用して、任意の必要なTNFスーパーファミリー受容体を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を調節する化合物を同定することができる。好ましい実施形態では、本発明のアッセイを使用して、TNF-R1、TNF-R2又はCD40を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を調節する化合物を同定することができる。より好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαであり、TNF受容体はTNF-R1又はTNF-R2である。さらにより好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαsであり、TNF受容体はTNF-R1である。本発明のアッセイを使用して、TNF-R1を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を特異的に調節することによって作用する化合物を同定することができる。特に、化合物は、TNF-R1を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を調節することによって作用することができるが、TNF-R2を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達に対する効果はない。さらにより好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαsであり、TNF受容体はTNF-R1である。
【0115】
本発明の化合物-トリマー複合体は、34種の公知のTNF受容体を含む、少なくとも1つのTNF受容体を介するTNFスーパーファミリーメンバーのシグナル伝達を調節することができる。好ましい実施形態では、TNF受容体は、TNF-R1、TNF-R2又はCD40Lである。
【0116】
より好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαであり、TNF受容体はTNF-R1又はTNF-R2である。さらにより好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαであり、TNF受容体はTNF-R1である。さらにより好ましい実施形態では、TNFスーパーファミリーメンバーはTNFαsであり、TNF受容体はTNF-R1である。
【0117】
治療指標
TNFαは、TNFスーパーファミリーの典型的なメンバーである。TNFαは、免疫調節及び炎症応答を媒介する多面的なサイトカインである。in vivoでは、TNFαは細菌、寄生虫及びウイルス感染に対する応答に関与することも知られている。特に、TNFαは、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、喘息、敗血症、発熱、全身性エリテマトーデス(SLE)及び多発性硬化症(MS)並びにがんにおいて役割を有することが知られている。TNFαはまた、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、虚血性脳卒中、免疫複合体媒介性糸球体腎炎、ループス腎炎(LN)、抗好中球細胞質抗体(ANCA-)関連糸球体腎炎、微小変化型疾患、糖尿病性腎症(DN)、急性腎傷害(AKI)、閉塞性尿路疾患、腎同種移植拒絶、シスプラチン誘導性AKI及び閉塞性尿路疾患における役割を有することが知られている。
【0118】
TNFスーパーファミリーの他のメンバーは、自己免疫疾患及び免疫不全に関与することが知られている。特に、TNFスーパーファミリーのメンバーは、RA、SLE、がん、MS、喘息、鼻炎、骨粗鬆症及び多発性ミエローマ(MM)に関与することが知られている。TL1Aは、臓器移植片拒絶において役割を果たすことが知られている。
【0119】
本発明の方法により同定される化合物又は本発明の複合体を使用して、従来のTNFスーパーファミリーメンバーモジュレータによって処置、防止又は改善することができる任意の状態を処置、防止又は改善することができる。本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の複合体を、単独で、又は従来のTNFスーパーファミリーメンバーモジュレータと組み合わせて使用することができる。原理的には、TNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介する病的シグナル伝達から、又はTNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介するシグナル伝達の欠陥から、部分的又は全体的に生じる任意の状態を、本発明に従って処置、防止又は改善することができる。TNFスーパーファミリーメンバーによるTNF受容体を介する病的シグナル伝達は、正常な生理学的レベルのシグナル伝達を超えるTNF受容体を介するシグナル伝達の増加、最初は正常であったが、正常な生理学的シグナルに応答して停止することができないTNF受容体を介するシグナル伝達及び正常の生理学的規模範囲内にあるが、非生理的手段によって開始するTNF受容体を介するシグナル伝達を含む。好ましい実施形態では、本発明は、TNFα又はCD40Lによって媒介又は影響される状態の処置、防止又は改善に関する。
【0120】
TNFαと相互作用する本発明の方法によって同定される化合物は、したがって、様々なヒトの病気の処置及び/又は防止において有益である。これらのものとしては、自己免疫障害及び炎症障害;神経障害及び神経変性障害;疼痛障害及び侵害障害;並びに心血管障害が挙げられる。
【0121】
炎症障害及び自己免疫障害としては、全身性自己免疫障害、自己免疫性内分泌障害及び臓器特異的自己免疫障害が挙げられる。全身性自己免疫障害としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、血管炎、多発性筋炎、強皮症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、関節リウマチ及びシェーグレン症候群が挙げられる。自己免疫性内分泌障害としては、甲状腺炎が挙げられる。臓器特異的自己免疫障害としては、アジソン病、溶血性貧血又は悪性貧血、糸球体腎炎(グッドパスチャー症候群を含む)、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、インスリン依存性糖尿病、若年性糖尿病、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含む)、天疱瘡、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肺炎、自己免疫性心臓炎、重症筋無力症、自然不妊症、骨粗鬆症、喘息及び筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)が挙げられる。
【0122】
神経障害及び神経変性障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、頭部外傷、発作及びてんかんが挙げられる。
【0123】
心血管障害としては、血栓症、心臓肥大、高血圧、心臓の不規則収縮(例えば、心不全中の)、及び性的障害(勃起障害及び女性性的機能障害を含む)が挙げられる。
【0124】
特に、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の複合体を使用して、炎症障害、CNS障害、免疫障害及び自己免疫障害、疼痛、骨粗鬆症、発熱及び臓器移植拒絶を処置又は防止することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の複合体を使用して、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病を含む)、乾癬、アルツハイマー病、パーキンソン病、てんかん、喘息、敗血症、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、喘息、鼻炎、がん及び骨粗鬆症を処置又は防止することができる。別の好ましい実施形態では、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の複合体を使用して、関節リウマチ(RA)、非特異的炎症性関節炎、浸食性骨疾患、軟骨炎、軟骨変性及び/又は破壊、若年性炎症性関節炎、スティル病(若年及び/又は成人開始型)、若年性特発性関節炎、若年性特発性関節炎(少関節炎型と多関節炎型の両方)、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、回腸嚢炎を含む)、乾癬、乾癬性関節症、強直性脊椎炎、シェーグレン病、アルツハイマー病(AD)、ベーチェット病、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、虚血性脳卒中、疼痛、てんかん、骨粗鬆症、骨減少症、慢性疾患の貧血、悪液質、糖尿病、脂質異常症、代謝症候群、喘息、慢性閉塞性気道(又は肺)疾患、敗血症、発熱、呼吸窮迫症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、免疫複合体媒介性糸球体腎炎、ループス腎炎(LN)、抗好中球細胞質抗体(ANCA-)関連糸球体腎炎、微小変化型疾患、糖尿病性腎症(DN)、急性腎傷害(AKI)、閉塞性尿路疾患、腎同種移植拒絶、シスプラチン誘導性AKI及び閉塞性尿路疾患、眼疾患(糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、未熟児網膜症、加齢黄斑変性、黄斑浮腫、増殖性及び/又は非増殖性網膜症、新血管形成を含む角膜血管新生、網膜静脈閉塞、様々な形態のブドウ膜炎及び角膜炎を含む)、甲状腺炎、様々な形態の肝線維症、様々な形態の肺線維症を含む線維化障害、全身硬化症、強皮症、がん並びにがん関連合併症(骨格合併症、悪液質及び貧血を含む)を処置又は防止することができる。
【0125】
医薬組成物、用量及び用量レジメン
本発明の方法によって同定される化合物及び本発明の化合物-トリマー複合体を、典型的には、薬学的に許容される担体と共に、医薬組成物に製剤化することができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、生理的に適合する任意且つ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。担体は、例えば、注射又は輸注による、非経口、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路にとって好適であってよい。或いは、担体は、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非非経口(non-parenteral)投与にとって好適であってよい。好ましい実施形態では、担体は、経口投与にとって好適である。投与経路に応じて、モジュレータを、酸の作用及び化合物を不活化し得る他の自然条件から化合物を保護するための材料中でコーティングすることができる。
【0127】
本発明の医薬組成物は、1又は複数の薬学的に許容される塩を含んでもよい。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を保持し、いかなる望ましくない毒性効果も与えない塩を指す。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。
【0128】
好ましい薬学的に許容される担体は、水性担体又は希釈剤を含む。本発明の医薬組成物中で用いることができる好適な水性担体の例としては、水、緩衝化水及び塩水が挙げられる。他の担体の例としては、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びその好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0129】
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌性であり、安定でなければならない。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度にとって好適な他の規則的構造として製剤化することができる。
【0130】
本発明の医薬組成物は、さらなる活性成分を含んでもよい。
【0131】
また、本発明の方法によって同定される化合物及び本発明の複合体と、使用のための指示書とを含むキットも本発明の範囲内にある。キットは、上記で考察されたさらなる治療剤又は予防剤などの、1又は複数のさらなる試薬をさらに含有してもよい。
【0132】
本発明の方法によって同定される化合物及び本発明の化合物-トリマー複合体又はその製剤若しくは組成物を、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。
【0133】
治療的適用では、化合物及び化合物-トリマー複合体を、状態又は1若しくは複数のその症状を治癒させる、軽減する、又は部分的に停止させるのに十分な量で、上記の障害又は状態に既に罹患している対象に投与する。そのような治療的処置は、疾患症状の重症度の低下、又は無症状期間の頻度若しくは持続時間の増大をもたらし得る。これを達成するのに十分な量を、「治療有効量」と定義する。
【0134】
予防的適用では、製剤を、状態又は1若しくは複数のその症状のその後の効果を防止する、又は減少させるのに十分な量で、上記の障害又は状態のリスクがある対象に投与する。これを達成するのに十分な量を、「予防有効量」と定義する。それぞれの目的のための有効量は、疾患又は傷害の重症度並びに対象の体重及び全身状態に依存する。
【0135】
投与のための対象は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類などを含む。ヒトに対する投与が好ましい。
【0136】
本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の化合物-トリマー複合体を、当業界で公知の1又は複数の様々な方法を使用して、1又は複数の投与経路により投与することができる。当業者であれば理解できるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。化合物又は本発明の化合物-トリマー複合体のための投与経路の例としては、例えば、注射又は輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用される語句「非経口投与」は、通常は注射による、腸内投与及び局所投与以外の投与様式を意味する。或いは、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の本発明の化合物-トリマー複合体を、局所、表皮又は粘膜投与経路などの、非非経口経路により投与することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の化合物-トリマー複合体は、経口投与のためのものである。
【0137】
本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の化合物-トリマー複合体の好適な用量を、技術のある医師によって決定することができる。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者にとって毒性的であることなく、特定の患者のための望ましい治療応答、組成、及び投与様式を達成するのに有効である活性成分の量を得るために変化し得る。選択される用量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、用いられる特定の組成物と共に使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、年齢、性別、体重、状態、処置される患者の全身の健康及び以前の病歴、並びに医学界で周知の因子などの、様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0138】
好適な用量は、例えば、処置される患者の約0.01μg/kg~約1000mg/kg体重、典型的には、約0.1μg/kg~約100mg/kg体重の範囲であってもよい。例えば、好適な用量は、1日当たり約1μg/kg~約10mg/kg体重又は1日当たり約10μg/kg~約5mg/kg体重であってもよい。
【0139】
用量レジメンを、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するように調整することができる。例えば、治療状況の緊急性によって示されるように、単回用量を投与してもよく、数回に分割された用量を経時的に投与してもよく、又は用量を比例的に減少若しくは増加させてもよい。本明細書で使用される用量単位形態とは、処置される対象にとって単一用量として適する物理的に個別の単位を指す;それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連する所望の治療効果をもたらすように算出される活性化合物の所定量を含有する。
【0140】
投与は、単一又は複数の用量にあってもよい。複数用量を、同じか、又は異なる経路により、同じか、又は異なる位置に投与することができる。或いは、用量は、持続放出製剤によるものであってもよく、その場合、低頻度の投与が必要である。用量及び頻度は、患者におけるアンタゴニストの半減期及び望ましい処置の持続時間に応じて変化してもよい。
【0141】
上記のように、本発明の方法によって同定される化合物又は本発明の化合物-トリマー複合体を、1又は複数の他の治療剤と共に同時投与することができる。例えば、他の薬剤は、鎮痛剤、麻酔剤、免疫抑制剤又は抗炎症剤であってもよい。
【0142】
2つ以上の薬剤の組合せ投与を、いくつかの異なる方法で達成することができる。両方とも単一の組成物中で一緒に投与するか、又はそれらを組合せ治療の一部として別々の組成物中で投与してもよい。例えば、一方を、他方の前、後に、又はそれと同時に投与してもよい。
【0143】
以下の例は、本発明を例証するものである。
【実施例0144】
(例1) - 式(1)、(2)及び(3)の化合物の合成
中間体1:1-(2,5-ジメチルベンジル)-1H-ベンゾイミダゾール
炭酸セシウム(22.0g、100.0mmol)及びヨウ化n-ブチルアンモニウム(12.5g、34.0mmol)を、ベンゾイミダゾール(4.0g、34.0mmol)のDMF(60ml)中溶液に0℃で加えた。反応混合物を0℃で10分間撹拌し、次いで2,5-ジメチルベンジルブロミド(6.7g、34.0mmol)を加えた。反応混合物を室温に温め、3時間撹拌した。混合物を氷冷水(50ml)でクエンチし、酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空中で除去して標題化合物(8.0g、75%)をオフホワイト色固体として得た。δH (d6-DMSO) 8.23 (s, 1H), 7.68-7.66 (m, 1H), 7.43-7.41 (m, 1H), 7.21-7.19 (m, 2H), 7.10 (d, J 7.6 Hz, 1H), 7.01 (d, J 7.6 Hz, 1H), 6.67 (s, 1H), 5.45 (s, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.14 (s, 3H). LCMS (ES+) 237 (M+H)+.
【0145】
中間体2:5-ブロモ-2-ニトロアニリン
2-フルオロ-4-ブロモ-1-ニトロベンゼン(0.5g、2.2mmol)を、メタノール・アンモニア(10ml)に加え、室温で18時間撹拌した。次いで反応混合物を真空中で濃縮し、残渣をイソヘキサンと粉砕し、標題化合物(0.48g、97%)を黄色固体として得た。δH (d6-DMSO) 7.88 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.53 (br s, 2H), 7.25 (d, J 3.0 Hz, 1H), 6.75 (dd, J 9.2, 2.0 Hz, 1H).
【0146】
中間体3:5-ブロモ-N-(2,5-ジメチルベンジル)-2-ニトロアニリン
水素化ナトリウム(60%油中分散液、0.82g、20.7mmol)を、中間体2(5.0g、23.0mmol)のDMF(50ml)中撹拌溶液に0℃で加えた。2,5-ジメチルベンジルブロミド(4.56g、23.0mmol)を加え、反応混合物を室温に温め、5時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(3×50ml)で抽出し、水(2×30ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、5%EtOAc/イソヘキサン)により精製し、標題化合物(4.89g、63%)を黄色固体として得た。δH (d6-DMSO) 8.42 (br s, 1H), 8.01 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.12-6.86 (m, 4H), 6.85 (d, J 7.2, 1.6 Hz, 1H), 4.54 (d, J 5.6 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.21 (s, 3H).
【0147】
中間体4:5-ブロモ-N
1
-(2,5-ジメチルベンジル)ベンゼン-1,2-ジアミン
SnCl2(20.2g、89.4mmol)を、中間体3(10.0g、29.8mmol)のEtOH(200ml)中撹拌溶液に加え、反応混合物を80℃へ5時間加熱した。次いで反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和してDCM(3×100ml)で抽出した。合わせた有機物を水(2×50ml)で洗浄し、抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、5%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(5.4g、69%)を暗褐色の油として得た。δH (d6-DMSO) 7.08 (s, 1H), 7.06 (d, J 7.6 Hz, 2H), 6.97 (d, J 7.6 Hz, 1H), 6.53 (dd, J 8.4, 2.0 Hz, 1H), 6.47 (d, J 8.0 Hz, 1H), 6.45 (d, J 2.0 Hz, 1H), 5.06 (t, J 5.4 Hz, 1H), 4.77 (br s, 2H), 4.15 (d, J 5.2 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.22 (s, 3H). LCMS (ES+) 305 (M+H)+.
【0148】
中間体5:6-ブロモ-1-(2,5-ジメチルベンジル)-1H-ベンゾイミダゾール
中間体4(0.40g、1.31mmol)とギ酸(10ml)との混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮し、残渣を酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液との間で分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、20~75%EtOAc/イソヘキサン)により精製し、標題化合物(0.20g、48%)を白色固体として得た。δH (d6-DMSO) 8.24 (s, 1H), 7.74 (d, J 1.7 Hz, 1H), 7.64 (d, J 8.6 Hz, 1H), 7.34 (dd, J 8.6, 1.9 Hz, 1H), 7.12 (d, J 7.7 Hz, 1H), 7.02 (d, J 7.8 Hz, 1H), 6.61 (s, 1H), 5.47 (s, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.15 (s, 3H). LCMS (ES+) 316 (M+H)+.
【0149】
中間体6:[6-ブロモ-1-(2,5-ジメチルベンジル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル](ピリジン-4-イル)メタノール
0℃へ冷却したTHF(10ml)中のジイソプロピルアミン(2.8ml)に、n-BuLi(12.5ml、ヘキサン中1.6M)を加え、得られた混合物を0℃で10分間撹拌した。この新たに調製したLDA(1.8ml、1.62mmol)のアリコートを、中間体5(0.25g、0.81mmol)のTHF(5ml)中溶液に-78℃で加えた。反応混合物を-78℃で2時間撹拌し、次いでピリジン-4-カルボキシアルデヒド(0.15ml、1.62mmol)を加え、反応混合物を-78℃で10分間撹拌した。混合物を飽和塩化ナトリウム水溶液でクエンチし、室温に温めた。混合物を酢酸エチル(3×40ml)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、0~10%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(0.18g、51%)を白色固体として得た。LCMS (ES+) 423 (M+H)+.
【0150】
中間体7:5-(3-フルオロ-4-ニトロフェニル)-2-メトキシピリジン
6-メトキシピリジン-3-イルボロン酸(40.0g、262mmol)、4-ブロモ-2-フルオロ-1-ニトロベンゼン(52.3g、238mmol)及びNa2CO3(76g、713mmol)を、1,2-ジメトキシエタン(1200mL)及び水(300mL)中で混合した。反応混合物をアルゴンでパージした。Pd(PPh3)2Cl2(8.34g、11.89mmol)を加え、混合物を90℃へ1.5時間加熱した。EtOAc及び水を加えた。有機相を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、その後、溶媒を真空中で除去した。残渣をトルエンから再結晶化し、標題化合物(42.00g、169.2mmol、71%)を得た。MS [ESI+] m/z: 249 [M+H]+.
【0151】
中間体8:N-[2-(ジフルオロメトキシ)ベンジル]-5-(6-メトキシピリジン-3-イル)-2-ニトロアニリン
2-(ジフルオロメトキシ)ベンジルアミン(2.093g、12.09mmol)をNMP(20ml)に溶解した。中間体7(2g、8.06mmol)及びK2CO3(1.336g、9.67mmol)を加えた。この混合物をマイクロ波照射下で150℃で30分間加熱した。EtOAc及び水を加えた。有機相を分離し、水相をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層を水で3回、ブラインで2回洗浄した。Na2SO4で乾燥させた後、溶媒を真空中で除去した。残渣をヘプタン/EtOAc(100/25ml)から再結晶化し、標題化合物(2.513g、6.26mmol、78%)を得た。MS [ESI+] m/z: 402 [M+H]+.
【0152】
中間体9:N
1
-[2-(ジフルオロメトキシ)ベンジル]-5-(6-メトキシピリジン-3-イル)ベンゼン-1,2-ジアミン
パラジウム炭素(1.10g、10wt%)を、中間体8(2.512g、6.26mmol)のEtOAc(150mL)中溶液に加え、アルゴンでフラッシュした。雰囲気をH2雰囲気で置き換え、反応混合物を1バールのH2下で1時間撹拌した。混合物を珪藻土の層を通して濾過した。濾液を真空中で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィーを使用してヘプタン中7~60%のEtOAcで精製し、標題化合物(2.07g、5.57mmol、89%)を得た。MS [ESI+] m/z: 372 [M+H]+.
【0153】
中間体10:5-{4-アミノ-3-[2-(ジフルオロメトキシ)ベンジルアミノ]フェニル}ピリジン-2(1H)-オン
ピリジン塩酸塩(10.64g、92mmol)を中間体9(6.84g、18.42mmol)に加えた。反応混合物を開放容器中で165℃へ3分間加熱した。水を加え、混合物を超音波処理した。沈殿物を濾取し、次いで沸騰アセトニトリル中で粉砕した。沈殿物を濾過し、標題化合物(3.822g、9.95mmol、54%)を得た。MS [ESI+] m/z: 358 [M+H]+.
【0154】
化合物(1):[1-(2,5-ジメチルベンジル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル](ピリジン-4-イル)メタノール
中間体1(0.25g、1.06mmol)のTHF(10ml)中溶液に-78℃で1.6Mのn-ブチルリチウム(0.79ml、1.27mmol)をゆっくりと滴加し、反応混合物を20分間撹拌した。THF(1ml)中のイソニコチンアルデヒド(0.17g、1.59mmol)をゆっくりと滴加した。さらに10分後、反応混合物を水(1ml)でクエンチし、室温に温めた。反応混合物を酢酸エチル/水中に注いだ。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO4)、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、0~30%MeOH/DCM)により精製し、標題化合物(0.2g、55%)をオフホワイト色固体として得た。δH (CDCl3) 8.31 (d, J 5.9 Hz, 2H), 7.69 (d, J 8.0 Hz, 1H), 7.28-7.16 (m, 4H), 7.00-6.95 (m, 2H), 6.87-6.85 (m, 1H), 6.16 (s, 2H), 5.84 (s, 1H), 5.35-5.09 (dd, JAB17.0 Hz, 2H), 2.25 (s, 3H), 1.89 (s, 3H). LCMS (ES+) 344 (M+H)+.
【0155】
化合物(2):[1-(2,5-ジメチルベンジル)-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル](ピリジン-4-イル)メタノール
1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(0.15g、0.71mmol)、及び2Mの炭酸ナトリウム溶液(2ml)を、中間体6(0.15g、0.36mmol)の1,4-ジオキサン:水(4:1、5ml)中溶液に加え、反応を10分間脱気した。PdCl2(dppf)(0.01g、0.05mmol)を添加し、反応混合物を10分間脱気し、Biotageマイクロ波反応器中で100℃へ60分間加熱した。酢酸エチルを加え、反応混合物を、セライトパッドを通して濾過した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を分取HPLCにより精製し、標題化合物を白色固体として得た。δH (d6-DMSO) 8.39 (dd, J 4.5, 1.6 Hz, 2H), 8.03 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.64 (d, J 8.8 Hz, 1H), 7.44-7.41 (m, 2H), 7.28 (d, J 5.6 Hz, 2H), 7.06 (d, J 7.7 Hz, 1H), 6.87 (d, J 6.8 Hz, 1H), 6.70 (d, J 5.5 Hz, 1H), 6.01 (d, J 5.5 Hz, 1H), 5.83 (s, 1H), 5.63-5.43 (m, 2H), 3.82 (s, 3H), 2.33 (s, 3H), 1.92 (s, 3H). LCMS (ES+) 424 (M+H)+.
【0156】
化合物(3):5-(1-[2-(ジフルオロメトキシ)ベンジル]-2-{[3-(2-オキソ-ピロリジン-1-イル)フェノキシ]メチル}-1H-ベンゾイミダゾール-6-イル)-ピリジン-2(1H)-オン
2-[3-(2-オキソピロリジン-1-イル)フェノキシ]酢酸(2当量)を、HATU(2当量)のDMF(2mL)中溶液に添加した。混合物を30分間撹拌した。中間体9(1当量)のDMF(2mL)中溶液を加え、混合物を室温で24時間撹拌した。次いで温度を50℃へ上昇させ、撹拌を24時間継続した。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸(4mL)中に溶解させ、80℃へ5時間加熱した。酢酸を蒸発によって除去した。残渣を水/クロロホルム(1:1、6mL)間で、50℃で分配した。層を相分離器の使用により分離した。水層をクロロホルム(4mL)で洗浄し、有機層を蒸発により乾燥させた。残渣をDMSO(1mL)中に取り、分取LCMSにより精製して、標題化合物を得た。
【0157】
(例2) - 式(4)のコンジュゲートの合成
中間体10:1-(2,5-ジメチルベンジル)-6-[4-(ピペラジン-1-イルメチル)-フェニル]-2-(ピリジン-4-イルメチル)-1H-ベンゾイミダゾール
中間体7、8及び9の調製に相当する一連のステップによる合成の後、適切なボロン酸、適切なアミン、及び適切なカルボン酸を利用して化合物(3)を調製した。
【0158】
コンジュゲート(4)
中間体10(27.02mg、0.0538mmol)をDMSO(2mL)に溶解した。5(-6)カルボキシフルオレセインスクシニミルエステル(24.16mg、0.0510mmol)(Invitrogenカタログ番号:C1311)をDMSO(1mL)に溶解し、明黄色の溶液を得た。2つの溶液を室温で混合すると、混合物が赤色になった。混合物を室温で撹拌した。混合後すぐに、20μLのアリコートを取り出し、AcOH:H2Oの80:20混合物で希釈して、1200RR-6140LC-MSシステムでLC-MS解析した。クロマトグラムは、1.42及び1.50分の保持時間の2つの近い溶出ピークを示し、これらのピークは両方とも質量(M+H)+=860.8amuであり、5-及び6-置換カルボキシフルオレセイン基で形成された2つの生成物に相当した。保持時間2.21分でのさらなるピークは、(M+H)+=502.8amuの質量を有し、中間体10に相当した。未反応の5(-6)カルボキシフルオレセインスクシニミルエステルについてのピークは観察されなかった。ピーク面積は、3つのシグナルについて22.0%、39.6%及び31.4%であり、その時間点で61.6%が所望の生成物の2つの異性体に変換されていることが示された。さらに20μLのアリコートを数時間後に抽出し、次いで一晩撹拌した後、先のように希釈し、LC-MS解析を行った。これらの時間点で、変換の割合はそれぞれ79.8%及び88.6%と決定された。混合物を、UV指示分取HPLCシステムで精製した。プールされた精製画分を凍結乾燥し、過剰の溶媒を除去した。凍結乾燥後、オレンジ色の固体(23.3mg)が収集され、これは0.027mmolの生成物と同等であり、反応及び分取HPLC精製に対して全収率53%に相当した。
【0159】
(例3) - TNFαに結合する化合物のスクリーニング
式(1)及び(2)の化合物を、以下のアッセイを使用してスクリーニングした。
【0160】
384ウェルの未コーティングプレート(標準結合)Meso Scale Discoveryプレート(MSD)を、TNFRの細胞外ドメイン(TNFR-ECD)(10μl、PBS中1ug/mL)で一晩コーティングした。均一な分布を確実にするために、プレートを1000rpmで2分間遠心分離した。次いでプレートを密閉し、+4℃で一晩保存した。
【0161】
プレートのウェルを、次いで0.05%Tween20を含む50μlのリン酸緩衝生理食塩水pH6.5(PB)(洗浄バッファー)で3回洗浄し、次いで50μlの2%BSAでブロックした。次いで、プレートを室温で振とう器(600rpm)において2時間インキュベートした。このインキュベーション後、プレートを洗浄した(ウェル当たり3×50μlの洗浄バッファー)。
【0162】
ブロッキングインキュベーションの間、式(1)及び(2)の化合物を、TNF(R&D Systems)とプレインキュベートしてから、予めブロックした洗浄MSDプレートに加えた。
図3Aに示すシングルポイントアッセイのため、化合物を、最終濃度100μM(5%最終v/v DMSO)でアッセイした。
【0163】
EC50値の決定
図3B及び3C)のため、アッセイに加えるときに試験化合物の最高濃度が50又は100μM(5%最終v/v DMSO)となるように、式(1)及び(2)の化合物をDMSOで2倍又は3倍希釈した。予め希釈した式(1)及び(2)の化合物を、1:1の比率で4ng/mLのTNF(最終濃度2ng/ml)に加え、次いで室温で600rpmの振とう器において1時間インキュベートした。
【0164】
式(1)又は(2)の化合物とTNFαとの10μlのプレインキュベート混合物を、調製したMSDプレートに加え、室温で振とう器において1時間インキュベートした。
【0165】
次いで、プレートを洗浄バッファー(ウェル当たり3×50μl)で洗浄した。次いでスルホタグ化抗TNFポリクローナル抗体を各ウェルに加え、プレートを室温で振とう器においてさらに1.5時間インキュベートした。
【0166】
次いでプレートを洗浄し(ウェル当たり3×50μlの洗浄バッファー)、その後、50μlのMSD ReadバッファーTと界面活性剤(H2Oで2分の1に希釈)を加え、SECTOR Imager6000で読み取った。
【0167】
シングルポイントアッセイのため、阻害パーセンテージを、化合物を含まない対照試料を使用して計算した。
【0168】
EC50のため、判定結果を、4パラメータロジスティックモデル(シグモイド型用量応答モデル)を使用して標準的手段により計算した。
【0169】
図3Aから分かるように、当技術分野で既知のTNFαアンタゴニストの代表例である「SPD-304」と標識された化合物は、+80%の阻害値%を有し、このことから、この化合物がTNFαのその受容体への結合を阻害することが示される。対照的に、試験した化合物のいくつかは、負の阻害値%を有し、このことから、これらの化合物がTNF受容体へのTNFαの結合を増強することが示される。
【0170】
同様に、式(1)の化合物
図3B)及び式(2)の化合物
図3C)の用量応答は、負の阻害曲線を生じる。別言すると、固定化ECD-TNFRへのTNFαの結合は、化合物の濃度が増加するにつれて増強されるようである。この理由により、IC50でなくEC50(全効果の50%を与える化合物の濃度)を計算する必要がある。この場合に、式(1)の化合物のEC50は4.6μMであり、式(2)の化合物のEC50は3.7μMであった。
【0171】
また表面プラズモン共鳴を使用するBIA(Biomolecular Interaction Analysis)を使用して、化合物誘導性のTNF受容体へのTNFαの結合増強を測定することができる。この目的のために、Biacore A100/4000を使用した。いわゆる溶液内競合/増強アッセイにおいて、TNF受容体の細胞外ドメイン(ECD-TNFR)を、pH5で、HBS-Pバッファー(10mMのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.005%の界面活性剤P20、BIAcore、GE Healthcare)中のCM5センサに1KRUのレベルまで固定化した。
【0172】
化合物は、アッセイにおける最高濃度が20μMとなるように、段階的に2倍希釈した。例えば、典型的アッセイでは、20μM、10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μM、0.312μM、0.156μM、0.078μM、0.039μMの化合物溶液を使用しうる。化合物を、0.5~1nMのTNFαと混合し、少なくとも5時間平衡化した。対照化合物を、10~15サイクル毎に試験した。TNFα/化合物混合物を、固定化されたTNFR上に3分間流動し、続けて表面再生を各サイクル後に10mMのHCL1回30mLを流量30mL/分で注入して行った。バックグラウンド減算結合曲線を、標準的手法に従って、BIAevaluationソフトウェアを使用して解析した。EC50データは、4パラメータロジスティック適応を使用して決定した。
図4A及び
図4Bは、式(1)及び式(2)の化合物についての進行曲線をそれぞれ示している。化合物の非存在下でのTNFαに対するRU(共鳴単位)値を曲線から差し引いているため、化合物により誘導された結合の増加のみがここで示されている。化合物の濃度が増加するにつれて、より高いRU値で進行曲線はプラトーに達する。この曲線から、4パラメータロジスティック適応モデルを使用して、50%の最大効果を与える化合物の濃度を決定することにより、EC50値を計算することができる。これらの実験において、式(1)の化合物のEC50は298nMであり、式(2)の化合物のEC50は280nMであると計算された。
【0173】
EC50がアッセイ間変動を示すこと並びにBiacoreアッセイ及びMSDアッセイについての条件が非常に異なっていることに注意を要する場合がある。結果として、測定されたEC50は、2つのアッセイ形式について一致するとは予測されない。
【0174】
(例4) - TNFαへの化合物1の結合の質量分析解析
質量分析は、典型的に、Waters LCT-premier飛行時間型質量分析計又はWaters SynaptG2 Q-TOF質量分析計を使用して行った。試料を、従来の分析計に代わるAdvion Triversa Nanomateナノフロー注入装置を使用して導入し、試料注入は、公称流量100nl/分の5μMノズルサイズを有する「A」シリーズチップを介した。Waters LCT-premier飛行時間型質量分析計へのさらなる改変は、供給源温度の正確な制御を可能にするカスタマイズされた供給源冷却装置及び供給源領域における真空状態に正確な制御を与える市販の圧力制御装置を含む。これらの改変はまとまって、TNFαトリマーが天然のフォールディングされたコンフォメーションを保持することを助け、弱い親和性で試験化合物と形成される複合体の検出を容易にする。典型的な設定は、供給源温度:10℃、供給源圧力3.74e-3mbar、解析機圧力1.54e-6mbarであった。
【0175】
イオンは、TNFαに複数の電荷をもたらす標準的な正イオンエレクトロスプレー条件を使用して生成した。
【0176】
質量分析は、タンパク質試料中に存在するバッファー塩に対して非常に敏感である。リン酸カリウム又はリン酸ナトリウムなどの典型的なバッファー塩は、イオン化に深刻な有害作用を有する。したがって、タンパク質を質量分析適合バッファー系、典型的にはpH6.8の50mMの酢酸アンモニウムへと交換するZeba脱塩スピンカラムを使用してタンパク質試料を前処理し、これらの塩を除去した。
【0177】
ソフトイオン化条件下でトリマー種の100%透過が観察されるとき、トリマー形態が+12、+13及び+14イオンを含む荷電状態エンベロープとして観察される100%水性環境の天然条件下で5%v/v DMSOを添加すると、荷電状態エンベロープがより低いm/z(より高いz)に移行し、予測されたように、有機共溶媒が溶液中でトリマー種の一部のアンフォールディングを生じさせることが示され、モノマーレベルの上昇も検出される。10%v/v DMSOを添加すると、モノマー形態に関連する荷電状態エンベロープのみが観察され、このレベルのDMSOが溶液中のトリマー形成を妨害することが示される。典型的に、試験化合物は、10mMのDMSOストック溶液として存在させたため、それらを溶液中のTNFαとインキュベートするとき、最終DMSO濃度は5%である。ソフトイオン化条件下で、荷電状態エンベロープは、5%DMSO対照スペクトルだけでなく100%水性下で取得されるスペクトルと比較しても、より高いm/z(より低いz)へ移行することが観察され、試験化合物が5%DMSOの不安定化効果を克服できること及び天然条件下での観察を上回る安定化を与えることができることが示される。このことは、記載される様々な条件下でタンパク質によって取得される電荷の数が変化することによって証拠付けられる。
【0178】
測定される「結合」速度は、速度定数konと試験化合物の濃度との算術積であり、高濃度の試験化合物で観察される速度は、低濃度で観察される速度よりも大きい。質量分析により様々な試験化合物濃度で観察される速度を実験的に測定することにより、誘導すべき速度定数(kon)の値が与えられる。典型的な実験では、試験化合物とTNFαトリマーとの混合物を、Advion Triversa Nanomateロボットを使用して、TNFα及び試験化合物のストック溶液から所望の濃度で調製する。次いで、試料を、質量分析計に数分間にわたって注入し、その期間、遊離TNFαとTNFα/試験化合物複合体の質量スペクトルのシグナル比率を記録する。この作業をいくつかの様々な試験化合物/TNFα比について繰り返す。
【0179】
様々な試験化合物/TNFα比について記録したデータを、Graphpad PRISM v.5を使用して、理論単相対数会合曲線(theoretical one phase logarithmic association curve)に適応させてkon値を導出した。これにより、Biacoreで観察された低いkon値が確認された。
【0180】
試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mM溶液として調製した。したがって、試験化合物の非存在下で天然のTNFαトリマーに対するDMSOの影響を確立する必要があった。DMSOをTNFαトリマーの水溶液に加えて最終濃度を5%v/vとし、質量スペクトルを取得した。
【0181】
100%水性環境において、つまりDMSOの非存在下で、大部分のTNFαはトリマー形態で存在するが、有意な割合でTNFαモノマーが存在する。100%水性環境において、TNFαのトリマー形態は、+12、+13及び+14イオンを含む荷電状態エンベロープとして観察される
図5、下部トレース)。
【0182】
5%v/v DMSOの添加で、観察されるトリマーTNFαはより少なくなった。荷電状態エンベロープは、より低い質量/電荷比(m/z)に移行し、DMSOがトリマー種の部分的なアンフォールディングを引き起こしたことが示される。モノマーTNFαのレベルの上昇が、5%v/v DMSOの存在下においても検出された。
【0183】
10%v/v DMSOを添加したとき、モノマー形態に関係する荷電状態エンベロープのみが観察され、このレベルのDMSOがTNFαのトリマー形成を妨害することが示される
図5、上部トレース)。
【0184】
式(1)の化合物を、TNFα及び5%v/v DMSOを含む溶液に加え、質量スペクトルを取得した。トリマーTNFαは、式(1)の化合物の存在下で5%v/v DMSOの溶液中に存在することが分かった
図5、中央トレース)。式1の化合物が結合されたTNFαについて観察される荷電状態エンベロープは、より高いm/z値(専ら+12及び+11)に移行し、式(1)の化合物が、DMSOのTNFαに対する弱いアンフォールディング作用を克服するだけでなく、DMSOの非存在下で観察されるものを上回るトリマーTNFα複合体の安定化に至ることを明らかにする。
【0185】
試験化合物が結合する前に十分にトリマーTNFα複合体を弱めるためにDMSOを存在させることが必要かという疑問に対処するために、100%水溶性条件下で水溶性化合物を用いて実験を繰り返した。DMSOの非存在下において、トリマー複合体に結合された化合物は、DMSOが存在したときの観察と同じ高いm/z比への移行を生じさせた(データ示さず)。これにより、試験化合物が、TNFαトリマーへ結合するためにDMSOの存在を必要としないこと、及び不安定化剤の存在にかかわらずそれらの安定化効果を発揮しうることが確認された。
【0186】
試験化合物によるTNFαのトリマー形態の安定化のさらなる証拠を、天然のトリマー形態のモノマーへの分解に有利な傾向である、より厳しいイオン化条件下で試料を解析することから取得した。TNFαが式(1)の化合物と結合するとき、これらの条件下で検出されるTNFαモノマーの量は顕著に減少した(データ示さず)。このことは、試験化合物が、TNFαトリマーを質量分析法による妨害から保護することを示唆する。
【0187】
(例5) - TNFα-式(1)の化合物複合体の化学量論
式(1)の化合物を含む試験化合物のライブラリーとTNFαとのインキュベーションを、ソフトイオン化条件下で質量分析によりモニターした。データは、TNFαトリマー当たり1分子の式(1)の化合物としての結合化学量論を示す
図6。式(1)の化合物は、TNFαのモノマー形態への結合は観察されなかった。TNFαのダイマー形態の安定化について証拠となるものはなかった。このことは、式(1)の化合物を含む試験化合物が、TNFαのダイマー形態を安定化する既知の化合物とは異なる作用様式を有することを立証する。
【0188】
(例6) - TNFαトリマーにおけるモノマー交換
ヒト及びマウスのTNFαホモトリマー(それぞれH3及びM3)を一緒にインキュベートし、溶液のアリコートを、交差種のヘテロトリマーの出現について、質量分析によりモニターした。質量分析の解析により、天然TNFαトリマー間のモノマー交換が溶液中で生じうることが確認された。交換速度は遅く、完全な平衡が達成されるまでに4時間の経過にわたってモニターした(データ示さず)。機構は不明であるが、ダイマー形態は何ら観察されなかったので、ダイマー形態の形成が関与している可能性は低い。モノマー交換は、純粋なヒトトリマーとマウストリマーとの間で生じているようであり、マウストリマーとヒトトリマーとを単純に混合するだけで、この交換が質量分析により確認できるようになる。
【0189】
第2の一連の実験において、過剰な式(1)の化合物をヒトTNFαとインキュベートし、次いで、過剰な式(1)の化合物を除去した。質量スペクトル解析により、1:1複合体が、式(1)の化合物とh-TNFαとの間で形成されていることが確認された。マウスTNFαをこの試料に加え、次いで、数時間にわたって質量スペクトル解析に供した。18時間後、試料の組成の変化は観察されなかった。モノマーサブユニット交換は特に生じず、MH2及びM2Hのような遊離体又はMH2L及びM2HLのようなライゲート体のいずれの混合ヘテロトリマー種の形成も観察されなかった。さらに、M3L種の形成の証拠はなく、ライゲートされていないH3種の形成の証拠もなかった。このことは、式(1)の化合物がh-TNFαに一旦結合すると、測定可能な解離速度がないことを強く示唆する。そのように、h-TNFαと共にプレインキュベートするとき、式(1)の化合物はヒトトリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0190】
次いで、実験を逆方向で繰り返した。過剰な式1の化合物をマウスTNFαとインキュベートし、次いで、過剰な式(1)の化合物を除去した。質量スペクトル解析により、1:1複合体が、式(1)の化合物とm-TNFαとの間で形成されていることが確認された。ヒトTNFαをここでこの試料に加え、次いで、数時間にわたって質量スペクトル解析に供した。データからモノマーサブユニット交換が生じうることが明確に示され、混合ヘテロトリマー種の形成が、遊離体(MH2及びM2H)並びにライゲート体(MH2L及びM2HL)状態の両方で観察された。さらに、ライゲートされたヒトホモトリマー(H3L)、ライゲートされていないマウスホモトリマー(M3)及び未結合の式(1)の化合物(L)の証拠があった。このことから、式(1)の化合物とマウスTNFαホモトリマーとの間で1:1複合体は形成されるが、測定可能な解離速度があることが示唆される。一旦この複合体(M3L)が解離すると、H3種とM3種との間とのモノマーサブユニット交換が進行し、解放されたリガンドは溶液中に存在する4つ全てのトリマー種と複合体を形成することができるようになる。そのように、m-TNFαとプレインキュベートするとき、式(1)の化合物はモノマーサブユニット交換を阻止せず、混合ヘテロトリマーの形成が観察された。
【0191】
次いで、これらの2つの実験を、式(1)の化合物に代えて式(2)の化合物を用いて繰り返した。式(2)の化合物をh-TNFαとプレインキュベートし、1:1複合体を得て、その後、ライゲートされていないm-TNFαと混合したときの結果は、式(1)の化合物を用いた場合と同じであった。モノマーサブユニット交換は観察されず、18時間後、H3L種及びM3種のみが溶液中で観察され、式(2)の化合物はまた、h-TNFαと複合体化されたとき、測定可能な解離速度を有しないことが確認された。そのように、h-TNFαとプレインキュベートするとき、式(2)の化合物はヒトトリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0192】
しかしながら、式(1)の化合物とは対照的に、式(2)の化合物をm-TNFαとプレインキュベートしたとき、1:1複合体が形成され、次いでライゲートされていないh-TNFαと混合すると、モノマーサブユニット交換は観察されず、18時間後、M3L種及びH3種のみが溶液中で観察された。このことは、式(2)の化合物は、m-TNFαと複合体化されたときも、測定可能な解離速度を有しないことを示唆する。そのように、m-TNFαとプレインキュベートするとき、式(2)の化合物はマウストリマーを閉鎖し、それゆえ、交差種モノマーサブユニット交換が観察されなかった。
【0193】
まとめると、これらのデータから、式(1)の化合物と式(2)の化合物とはヒトTNFαに対して同様の親和性を有する一方で、マウスTNFαトリマーに対しては異なる親和性を有し、式(2)の化合物は、マウスTNFαトリマーに対して、式(1)の化合物よりも強固に結合することが示唆される。
【0194】
(例7) - TNFα、TNF-R及び式(1)の化合物を使用するサイズ排除実験からの画分の質量分析の解析
TNFα、TNF-R及び式(1)の化合物の混合物のサイズ排除クロマトグラフィーからの画分を、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)により解析した。2つの試料をサイズ排除クロマトグラフィーのために調製した。第1の試料では、式(1)の化合物をTNFαとプレインキュベートした後、化合物-トリマー複合体をTNF-Rに加えた。第2の試料では、式(1)の化合物を、TNFαとTNF-Rとの予め形成された複合体に加えた。LC-MS解析により、式(1)の化合物が、2つのタンパク質を含有するこれらの化合物画分と会合していることが分かり
図7、このことから、添加の順序にかかわらず、式(1)の化合物が依然としてTNFαに結合できること、つまり、式(1)の化合物が、TNF-Rの存在下であってもTNFαに結合することが示唆される。
【0195】
(例8) - TNF-RへのTNFα及び式(2)の化合物-TNFαトリマー複合体の結合の等温熱量解析
ITCバッファー(50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.4)中のTNFα(128μM)を、化合物2のDMSOストックと60分間インキュベートし、5%DMSO中300mMの最終化合物濃度を得た(試験試料)。また化合物でなくDMSOをTNFα試料に加えた対照試料を60分間インキュベートした(対照)。
【0196】
インキュベーション後、試料を、Nap5サイズ排除カラム(GE Healthcare)でゲル濾過した。カラムを15mlのITCバッファーで平衡化した後、500μlの試料を加えてカラムに流し、1mlのITCバッファーを使用して溶出した。このプロセスは、TNF及び化合物結合TNFを、遊離化合物及びDMSOから分離する。
【0197】
280nmでの吸光度読取りを使用して、NAP5カラムから溶出された後の試験試料又は対照中のTNFα濃度を決定し、試料を64μMのTNFα濃度へ希釈した。
【0198】
200μlのTNFR1(10mM)の細胞外ドメイン(ECD)を、(Plates Standard Bプロトコルを使用して)自動的にAutoITC200(GE Healthcare)の試料セルに装着した。2つの実験において、40μlの試験試料又は対照のいずれかを、同じプロトコルを使用して自動的に注入シリンジに装填した。
【0199】
ITC実験を、等温プロット
図8A及びB)で説明されているITC注入プロトコルを使用して、1000rpmで撹拌しながら25℃で実施した。
【0200】
データを収集し、Origin4.0 SoftwareのGE Healthcare ITCアプリケーションを使用して解析し、結果を、1部位結合アルゴリズムを使用して計算した。
【0201】
試験化合物の非存在下におけるTNF-RへのTNFαの結合のK
Dは77nMと計算された
図8A)。式(2)の化合物の存在下におけるTNF-RへのTNFαの結合のK
Dは、熱量計の感度の範囲未満であり、正確に計算することはできなかった。しかしながら、熱量計の検出下限は約1nMである。したがって、式(2)の化合物の存在下におけるTNF-RへのTNFαの結合のK
Dは、1nM以下であるはずである
図8B参照)。
【0202】
(例9) - 式(1)の化合物へ結合されたトリマーTNFαの結晶構造
TNFαを式(1)の化合物とプレインキュベートして、得られた化合物-トリマー複合体を結晶化した。化合物-トリマーTNFα複合体の結晶構造を、X線結晶解析を使用して決定した。複合体の2.2Åの分解能での結晶構造を、
図9に示す。化合物が、もはや対称でないトリマーの中央に見える。
【0203】
(例10) - 本発明の化合物によるTNFαの中和
L929中和アッセイを、Baarsch MJJ et al(Immunol Methods 1991; 140: 15-22)及びGalloway CJ et al J(Immunol Methods 1991; 140: 37-43)に開示されているプロトコルを使用して実施した。
【0204】
簡単に述べると、L929細胞(ECACC、85011425)を、10%のFCS(PAA)、2mMのグルタミン(Gibco)、50U/mlのペニシリン(Gibco)及び50μg/mlのストレプトマイシン(Gibco)を含むRPMI1640(Gibco)からなる培養培地で培養した。継代されたとき、細胞をカルシウム及びマグネシウムを含まない10mLのダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Gibco)で3回洗浄し、次いで3mlのトリプシン-EDTA(Gibco)を2分間加え、細胞をフラスコから取り出した。培養培地を加えてトリプシンを中和し、細胞をピペットで上下して、あらゆる塊を除去した。
【0205】
L929細胞は、使用の前日に1/2又は1/3に分割し、さらに24時間培養した。次いで、フラスコを上記のようにトリプシン処理し、96ウェルの平底プレート(Becton Dickinson)のウェル毎に100μl中2×104個の細胞を加えた。プレートは、アッセイを設置する前に24時間培養した。
【0206】
段階希釈液を、化合物のDMSOストックから作製した。典型的には、化合物の濃縮溶液から2倍希釈して、25、12.5、6.25、3.125、1.56、0.78、0.39、0.2、0.1μMの最終アッセイ濃度を得ることにより、9点滴定曲線を作成する。
【0207】
アッセイ培地は培養培地と同じであるが、1μg/mlのアクチノマイシンD(Sigma)を含んだ。培地をプレートからはじき飛ばし、アッセイ試料プラスTNFα、標準及び対照を100μlの体積に2連で加えた。プレートをさらに16時間インキュベートし、次いで、ウェル当たり10μlの5mg/mlメチルチアゾールテトラゾリウム(MTT;Sigma)の培養培地中溶液をさらに4時間加えた。反応を、50%のジメチルホルムアミド(DMF;BDH)及び50%脱イオン水に溶解した20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、BDH)を含有する100μlの溶解バッファーの添加により停止した。
【0208】
37℃で一晩インキュベートして色素を溶解させた後、プレートをMultiskan EXプレートリーダー(Labsystem)で、570nmで読み取り、630nmでの読取りを減算した。データを、Genesisソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0209】
式(1)の化合物と式(2)の化合物の両方がヒトTNFαの細胞殺傷活性を阻害し
図10、このことから、式(1)の化合物と式(2)の化合物の両方がTNF-Rを通じたヒトTNFα誘導性シグナル伝達を阻害することができることが示された。この例において、式(1)の化合物のIC
50値は306nMであり、式(2)の化合物のIC
50値は125nMであった。またTNF-Rを通じたヒトTNFα誘導性シグナル伝達を阻害することが同じく分かった式(3)の化合物を使用して、プロトコルを繰り返した。したがって、式(3)の化合物のIC
50値は21nMであった。
【0210】
(例11) - 式(1)の化合物によるTNFα誘導性IL-8産生の阻害
健常ドナー由来の静脈血を、静脈穿刺(venupuncture)によりナトリウム/ヘパリン含有チューブ(BD Biosciences)に収集した。末梢血単核球(PBMC)を、Ficoll Paque(Amersham Biosciences)を用いて、密度勾配遠心分離により単離した。簡単に述べると、10mLの血液を、RPMI1640(Gibco)を用いて1:1(v/v)希釈し、20mLのFicoll Paque上に慎重に積層した。細胞を30分間(min)470gでスピンして沈降させ、PBMCを収集し、RPMI1640で1回洗浄し、任意の残余の混入赤血球を、赤血球溶解バッファー(1g/LのKHCO3、8.3g/LのNH4Cl、0.0372g/LのEDTA)で溶解した。PBMCからの単球の単離は、製造業者の説明書に従って、CD14+Magnetic MicroBeads(Miltenyi Biotec)を使用して実施した。簡単に述べると、PBMCを、5%のBSA(Sigma)及び2mMのEDTA(Sigma)を含有するダルベッコ変法イーグル培地に1×107細胞/mlで再懸濁した。107個の全細胞当たり25μLのCD14 MicroBeadsを、室温で15分間インキュベートした。磁気分離を、LSカラム(Miltenyi Biotec)を使用して実施した。細胞/ビーズ混合物をカラムに適用する前に、カラムを磁場に置き、5mLのバッファーで2回洗浄した。次いで、細胞懸濁液を磁場中でカラムにかけた。CD14+MicroBeadsに結合する単球はLSカラムに保持され、一方で残余のPBMCをカラムに通過させた。単球を単離するために、カラム(保持された細胞を含む)を、磁石から取り出して、収集チューブに入れた。5mLのバッファーをカラムに加え、CD14+細胞を、カラムの上部にシリンジプランジャーを適用することにより、カラムから収集した。収集した細胞をRPMI1640で1回洗浄した。
【0211】
化合物(ストック濃度10mM)の11点3倍段階希釈(ブランクを含む)を、96ウェルの丸底プレート中で、DMSOで行った。精製された単球を、遠心分離(300gで5分間)によって洗浄し、1×106細胞/mLの濃度で完全培地に再懸濁した。160μLのこの細胞集団を、96ウェルの丸底プレート中で、40μLの化合物及びRPMI1640中のTNFα(最終濃度(約1ng/ml)又は適切な対照とともに、37℃で三連にてインキュベートした。
【0212】
18時間後、プレートをスピンダウンし(300g、5分間)、上清をサイトカイン測定のために収集した。
【0213】
ヒトIL-8を、R&D Systems Ltd.からの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを使用して、製造業者の説明書に従って細胞培養上清中で測定した。ELISAのために使用した基質は、TM Blue(Serologicals Corporation)であった。プレートを630nmの波長で読み取り、470nmで補正した。式(1)の化合物は、濃度依存的様式でTNFα誘導性のIL-8産生を阻害し
図11、IC
50値は454.1nMであった。
【0214】
(例12) - 式(2)の化合物によるTNFα誘導性NF-κB活性化の阻害-レポーター遺伝子アッセイ
TNF-アルファによるHEK-293細胞の刺激により、NF-kB経路の活性化が導かれる。TNFアルファ活性を決定するために使用したレポーター細胞系を、Invivogenから購入した。HEK-Blue(商標)CD40Lは、5NF-kB結合部位に融合されたIFN-ベータ最小プロモーターの制御下でSEAP(分泌アルカリ性ホスファターゼ)を発現する安定な形質転換体である。これらの細胞によるSEAPの分泌は、濃度依存的様式で、TNF-アルファ(0.5ng/ml)、IL-1-ベータ(0.5ng/ml)及び活性化抗ヒトTNFR1抗体(300ng/ml)により刺激される。
【0215】
化合物を、10mMのDMSOストック(最終アッセイ濃度0.3%)から希釈し、10点3倍段階希釈曲線(30,000nMから2nMの最終濃度)を作成した。それら化合物希釈液を、384ウェルのマイクロタイタープレート中で1時間、刺激リガンドと混合した。新たに解凍して洗浄した細胞を、化合物/刺激物の混合物に加え、さらに18時間インキュベートした。SEAP活性を、比色定量基質Quanti-blue(商標)(Invivogen)を使用して上清中で決定した。
【0216】
化合物希釈液の阻害パーセンテージを、DMSO対照及び最大阻害(過剰の対照化合物による)と、Activity Baseのxlfit(4パラメータロジスティックモデル)を使用して計算したIC50との間で計算した。
【0217】
各化合物のTNF-アルファ応答に対する比活性を、カウンタースクリーン(counterscreen)(IL-1ベータ及び抗ヒトTNFR1抗体)で見られる比活性と比較した。
【0218】
式(2)の化合物は、TNFαによるNF-κBの活性化を濃度依存的様式で阻害し、IC
50は113nMであった
図12A)。対照的に、式(2)の化合物は、IL-1βによるNF-κBの活性化
図12B)又はTNF-R1抗体の活性化
図12C)を阻害しなかった。30,000nMを超えるIC
50値がそれぞれの場合で得られた。したがって、式(2)の化合物は、TNF-R1を介するTNFα誘導性シグナル伝達を特異的に阻害するが、他のシグナル伝達経路により(例えば、IL-1βにより)誘導されるか又はTNFαによるTNF-R1からのシグナル伝達の開始が(例えば、活性化TNF-R1抗体の使用により)バイパスされるときのNF-κB活性化には影響を与えない。
【0219】
(例13) - TNFαへの結合動態の決定
表面プラズモン共鳴を使用して、式(1)及び(2)の化合物のTNFαへの会合速度、解離速度及び親和性を測定した
図13A及びB)。この試験の目的のために、Biacore T100/T200を使用した。
【0220】
TNFαを、HBS-Pバッファー(10mMのHEPES pH7.4、0.15MのNaCl、0.005%の界面活性剤P20、BIAcore、GE Healthcare)中pH5で5~8KRUのレベルまでCM5センサ上に固定化した。次いで、TNFαを、HBS-P中、5%DMSOと共に少なくとも5時間平衡化した。試料を、10mMのストックからDMSO対応バッファーに希釈し、少なくとも5時間放置して溶解させた。流量は30μL/分であった。
【0221】
このアッセイは、式(1)の化合物について25μM及び式(2)の化合物について1μMの最高濃度から開始して、次いでこの試料を段階的に希釈し、4又は5つの濃度の化合物を加えることにより実施した。バックグラウンド減算結合曲線を、標準的手法に従って、BIAevaluationソフトウェアを使用して解析した。結合、親和性、及び動態パラメータを、Biacoreソフトウェアを使用して決定した。動態データを、levenberg marquardtアルゴリズムを使用して適応させた。
【0222】
実験により、式(1)の化合物について2.668e
3M
-1s
-1のk
on図13A)及び式(2)の化合物について1.119e
3M
-1s
-1のk
on図13B)で証拠付けられるように、これらの化合物が、固定化されたTNFαに非常にゆっくり結合することが示された。またこれらの化合物は、この作用様式を有する化合物に特徴的とみられる非常に遅い解離速度を有する。式(1)の化合物についての解離速度定数(k
off)は9.46e
-5s
-1であり、式(2)の化合物についての解離速度定数は、2.24e
-5s
-1と等しい。これは、それぞれ2時間及び8時間を超える解離半減期(t
1/2)に等しい。解離定数(K
D)は、2つの定数の比k
off/k
onから計算することができる。この実験では、式(1)の化合物及び式(2)の化合物についてのK
D値はそれぞれ35nM及び2nMであった。これは、例4に示されるBiacoreで決定されたEC
50より有意に低く、アッセイ形式の違いを反映しているようである。さらにTNFαの形態が、例13の動態アッセイではTNFαが固定化されている点で異なっている。
【0223】
式(3)の化合物のTNFαへの会合速度、解離速度及び親和性を測定するために、実験を繰り返した
図13C)。式(3)の化合物は、5470M
-1s
-1のk
on、4.067e
-5s
-1の解離速度定数、及び7nMのK
Dを有することが分かった。
【0224】
(例14) - 式(1)の化合物及び式(2)の化合物は、in vivoでTNFα活性に拮抗する。
別の試験で、式(1)及び式(2)の化合物を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させたTNFαの20μM溶液と混合し、2μM、20μM及び200μMの濃度にした。したがって、各化合物のTNFαに対する比率は、0.1:1(試料1)、1:1(試料2)及び10:1(試料3)であった。この溶液を、室温で3時間インキュベートして、化合物をTNFαに結合させ、その後、Zeba Spin脱塩カラム(Thermo Scientific)を使用してゲル濾過した。この処理は、タンパク質結合化合物と遊離化合物とを分離する。PBSのみを含む対照試料を同様に処理して、試験のためのビヒクル対照を得た。溶出タンパク質の濃度を、Nanodrop(ND-1000)を使用して決定した。TNFα:化合物複合体をPBSで希釈して、0.03μg/kgの注入濃度にした。
【0225】
試験について、典型的に、各グループは10匹の雄Balb/cマウス(Charles River)を含み、これとは別に、抗ヒトTNFα抗体陽性対照では1セット5匹のマウスを使用した。抗体対照マウスに、抗hTNFαを10mg/kg(100μL)で腹腔内(i.p.)注入により投与し、5分後(t=-5)、PBS又はhTNFαのいずれかを0.1μg/kg(t=0)でi.p.注入により与えた。
【0226】
試験マウスに、t=0で、ゲル濾過ビヒクル(PBS)、hTNFα(0.03μg/kg)又は試料1、2及び3(TNFαとそれぞれ0.1:1、1:1及び10:1の比で結合した化合物)のいずれかを100μLでi.p.注入した。
【0227】
好中球動員に対する化合物の効果を評価するために、化合物のみのマウスも試験に含めた。
【0228】
全てのマウスを、hTNFαの注入2時間後(t=2h)で頚椎脱臼により殺傷し、腹腔を、3mLのFACSバッファー(2gのウシ血清アルブミンを含む500mLのPBS、6mLのHEPESバッファー、及び500mLのEDTA)で洗浄した。洗浄液を吸引し、好中球数を、下記に詳述するようなFACSにより抗Gr1PE及び抗CD45FITCで細胞を染色することによって評価した。
【0229】
各試料からの100μLの洗浄液をFACSチューブに分割した。FACSカクテルを、FACSバッファー中で抗GR-1PE(BD cat#553128 Lot#75542)を1対39希釈及び抗CD45FITC(BD cat#553080 Lot#80807)を1対19希釈で使用して作製した。Fcブロック(BD Cat#553142 Lot#87810)をFACSバッファー中、1対10希釈で調製し、10μLを、抗体カクテルの添加の5分前に各試料に加えた。10μlの抗体カクテルを、100μLの試料を含有する各チューブに加えた。試料を氷上で20分間放置した。1mLのFACS溶解溶液(BD Cat#349202 Lot#29076、dH20中で1:10に希釈)を各チューブに加え、混合し、室温で5分間放置した。1mLのFACSバッファーを次いで各チューブに加え、400gで5分間遠心分離した。次いで、FACSバッファーを慎重に注ぎ出し、チューブの先端を吸収紙上で軽くたたいて、チューブを完全に乾燥させた。次いで、FACSバッファー中で1対10希釈した300μLの参照ビーズ溶液(Sigma cat#P2477 Lot#116K1612)を各チューブに加えた。
【0230】
試料をFACScalibur II及びFloJoソフトウェアを使用して解析した。
【0231】
図14は、式(1)の化合物(A)及び式(2)の化合物(B)についての結果を示す。ビヒクル単独は、化合物単独と同様に((B)がわずかに高い)、好中球動員に対してほとんど影響を与えなかった。各試験の試料1(化合物:TNFα比0.1:1)は、化合物の非存在下でTNFαを加えた場合と有意な違いはなかった。試料2(1:1)及び試料3(10:1)は、好中球動員の有意な阻害を示した(それぞれ86%及び85%)。同様に、式(2)の化合物の試料2及び試料3は、好中球動員の有意な阻害を示した(それぞれ101%及び102%)。抗体対照マウスは、好中球動員の100%阻害を示した(データ示さず)。
【0232】
さらなる実験において、マウスをhTNFα(0.3μg/ml)で処理し、式(1)の化合物を経口(p.o.)で投与した。
【0233】
式(1)の化合物を、covaris機を使用して、1%メチルセルロースビヒクル中懸濁液にした。
【0234】
抗ヒトTNFαモノクローナル抗体(抗hTNFα、UCB)を、この試験で陽性対照として利用した。
【0235】
4匹のマウスを使用した抗hTNFαを与えた群を除いて、1群当たり10匹の雄Balb/cマウスを使用した。
【0236】
マウスに、ビヒクル(1%メチルセルロース)又は式(1)の化合物のいずれか100μLを30mg/kg又は100mg/kgでp.o.で30分間(t=-30)又は抗hTNFαを10mg/kgでi.p.で5分間(t=-5)与えてから、ヒトTNFαを注入した。t=0で、マウスに、0.03μg/kgのPBS又はhTNFαのいずれか100μLをi.p.で注入した。
【0237】
全てのマウスを、hTNFαの注入2時間後(t=2h)で頚椎脱臼により殺傷し、腹腔を洗浄し、上記のように好中球数を測定した。
【0238】
30mg/kg及び100mg/kgの式(1)の化合物の経口投与により、腹腔へのTNFα刺激好中球動員が、それぞれ49%及び79%に減少した
図15。i.p.注入によって与えた陽性対照抗体(10mg/kg)は、好中球動員を完全に阻害した。
【0239】
したがって、式(1)の化合物は、TNFαと予め混合し、i.p経路により投与したときだけでなく、経口により投与したときも、in vivoでTNFα活性を拮抗することができる。
【0240】
(例15) - 式(1)及び(2)の化合物によるTNFα安定化の解析
蛍光プローブ温度変性アッセイを実施して、化合物結合の尺度として、TNFαの熱安定性に対する化合物の効果を評価した。反応混合物は、5μlの30×SYPRO(登録商標)オレンジ色素(Invitrogen)、並びに5μlのTNFa(1.0mg/ml)、37.5μlのPBS、pH7.4、及び2.5μlの化合物(DMSO中2mM)を含んだ。10μlの混合物を384PCR光学ウェルプレートに四連で分注し、7900HT Fast Real-Time PCR System(Agilent Technologies)にかけた。PCR System加熱装置を20℃~99℃に傾斜率1.1℃/分で設定し、ウェルの蛍光変化を電荷結合素子(Charge-coupled device(CCD))によりモニターした。蛍光強度の増加を、温度の関数としてプロットし、Tmをこの変性曲線の中点(変曲点として決定)として計算した(表1)。
【0241】
TNFαの安定化が、Tmの増加により示される。式(1)及び(2)の化合物の両方がTNFαのTmを増加させる(表1に示されるように)。したがって、式(1)及び(2)の化合物の両方が、TNFαトリマーの安定性を高める。
【0242】
表1は、化合物(1)又は(2)のいずれかの存在下におけるTNFαの温度遷移中点(Tm)を示す。
【表1】
【0243】
(例16) - TNFαへの式(4)の化合物の結合に対する式(1)、(2)及び(3)の化合物の効果を決定するための蛍光偏光アッセイ
式(1)の化合物を、5%DMSOに対して100μMの最終濃度から開始して10種の濃度で、60分間、周囲温度で、20mMのTris、150mMのNaCl、0.05%のTween20中で、TNFαと共にプレインキュベートした後、式(4)の化合物を添加し、さらに周囲温度で一晩インキュベートすることによって、試験した。TNFα及び式(4)の化合物の最終濃度は、25μLの全アッセイ体積でそれぞれ50nM及び10nMであった。プレートをAnalystHTリーダーで読み取った。ActivityBaseのxlfit(4パラメータロジスティックモデル)を使用して、IC50を計算した。
【0244】
結果を、
図16にグラフで示す。式(1)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、167nMのIC
50値で阻害することができた。
【0245】
実験を、式(2)及び(3)の化合物を使用して繰り返した。式(2)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、102nMのIC50値で阻害することができた。式(3)の化合物は、TNFαへの式(4)の化合物の結合を、20nMのIC50値で阻害することができた。
【0246】
(例17) - TNFスーパーファミリーの他のメンバーを用いた予備試験
質量分析の解析により、ホモトリマーも形成するCD40Lが、DMSOにより不安定化され、トリマーCD40Lの量の減少に至ることが示された。使用したアッセイプロトコルは、TNFαについての実施例3に記載のプロトコルと同様であるが、代わりにCD40Lを使用した。式(1)の化合物は、DMSOの存在下で、トリマーCD40Lを安定化することが示された(
図17)。このことは、TNFαの試験に適用された質量分析技術、不安定化剤の存在下におけるそのコンフォメーション、及び本発明による化合物の効果が、TNFスーパーファミリーの他のメンバーにも適用可能であることを示している。
【0247】
(例18) - Maら(2014)及びSilvianら(2011)の化合物及び複合体は、本発明の化合物及び複合体と異なる特徴を有する
Maら(2014)JBC289:12457-12466の12458頁に記載されているように、C87は、TNFβの外部表面との相互作用において、TNFR1のループ2/ドメイン2由来の7アミノ酸ペプチドによって占められる空間に適応する分子を見つけることを試みるバーチャルスクリーニングを通じて発見された。MaらからのC87化合物、及びSilvian et al. (2011) ACS Chemical Biology 6:636-647からのBIO8898化合物を、本発明者によって試験した。
【0248】
知見の要約
Maらで記載されたC87についてのBiacore観察結果は再現することができなかった。
細胞におけるTNF特異的阻害の証拠は観察されなかった。
さらにC87は、ミリモルの親和性に感受性である質量分析で結合が観察されなかった。
広範な結晶学的試みで、アポ-TNF(化合物なしのTNF)のみが製造された。
蛍光偏光(FP)アッセイにおいて、C87は、蛍光読出しを有する化合物の干渉レベルを超える有意な阻害を示さなかった。
TNFαの熱融解温度の安定化を測定するThermofluorで、C87についての小さな安定化が示された。
要約すると、トリマーの中心にC87が結合している証拠は見つからなかった。圧倒的多数のデータが、TNFαとの直接的相互作用がないことを示唆した。BIO8898もTNFαに結合しないことが分かった。
【0249】
細胞-TNF誘導性HEK NFKBレポーター遺伝子アッセイ
C87を、TNFαと1時間プレインキュベートしてから、NFκBの制御下にSEAPで安定的にトランスフェクトしたHEK-293細胞に加えた。適切なカウンタースクリーンも、非TNF関連(オフターゲット)活性を検出するために試験した。アッセイを一晩インキュベートした後、阻害を、対照化合物による100%ブロッキングと比較して測定した。最大C87濃度は10,000nMであり、3倍段階希釈した。
【0250】
阻害効果は検出されず、オフターゲット活性に帰属させることはできなかった。
【0251】
Biacore
avi-タグリンカーを使用してTNFを固定化し、C87にチップを通過させた。一実験では、最高濃度の10μMからC87の用量応答を行った。結合は何ら観察されなかった。
【0252】
第2の実験では、チップを通過するC87の流量は減少した。小さなシフトが観察されたが、全体的な結合は無視できる程度であった。
【0253】
Maらに記載のTNFへのC87の結合は、Y軸上のRU値に基づいた超化学量論である可能性が高かった。チップ上の標準TNF密度で、この値は、単純な1:1結合について、予測されるよりも30倍高い領域にあった。
【0254】
別の実験では、BIO8898を、Biacore4000機器のSPRにより、CD40Lの固定化可溶性形態及びTNFαの可溶性形態に対して試験した。17μMの幾何平均IC50がCD40Lに対する結合について決定され、一方で、このアッセイにおいて、TNFαに対する結合は100μMまでの濃度で検出されなかった。
【0255】
質量分析
400μMの濃度でC87のヒトTNFα(20μM)への結合の証拠はなかった。より低い分子量(約473Da)種が、5%未満の占有率で結合しているようである。C87は、503Daの分子量を有する。400μMの濃度での占有率に基づいて、低分子量種の1mMを超える親和性が予測される。
【0256】
結晶学
全体的に、TNFαとのC87の結晶化について、本出願に記載の化合物における通常的手段の試験条件を含め、多大な努力が注がれた。これには、様々リガンド濃度、様々なタンパク質濃度、及び様々な浸漬時間での多数の結晶化の試みの設定が含まれる。いくつかの結晶が観察され、解析によって、塩、つまり化合物を有しないTNFであることが分かった。
【0257】
蛍光偏光(FP)
C87を、蛍光化合物(プローブ)に対するアッセイの前に1時間、TNFαと共にプレインキュベートした。蛍光化合物との直接的(同じ部位で結合する)又は間接的(TNFを妨害する)のいずれかの競合が、FPの減少により検出される。
【0258】
阻害曲線の外挿により、約100μMのIC50が得られた。しかしながら、最高濃度の阻害剤で蛍光消光が観察され、差し引くと、このアッセイでC87の阻害は無視できる程度となった。
【0259】
Thermofluor
Thermofluorは、タンパク質を安定化又は妨害のいずれかをする化合物によるTNFαの融解温度(Tm)の変化を測定する。3.8℃での安定化効果が500μMの濃度のC87で観察されることから、非特異的でありうる弱い結合の可能性が示唆される。
【0260】
Sequence listing
SEQ ID NO: 1 (HCVR of 1974)
DVQLVESGGGLVQPGRSLKLSCAASGFTFSAYYMAWVRQAPTKGLEWVASINYDGANTFYRDSVKGRFTVSRDNARSSLYLQMDSLRSEDTATYYCTTEAYGYNSNWFGYWGQGTLVTVSS
SEQ ID NO: 2 (LCVR of 1974)
DIQMTQSPASLPASPEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPQLLIYGATSLADGVPSRFSASRSGTQYSLKISRLQVEDFGIFYCLQGQSTPYTFGAGTKLELK
SEQ ID NO: 3 (1974 HC mIgG1 full)
DVQLVESGGGLVQPGRSLKLSCAASGFTFSAYYMAWVRQAPTKGLEWVASINYDGANTFYRDSVKGRFTVSRDNARSSLYLQMDSLRSEDTATYYCTTEAYGYNSNWFGYWGQGTLVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
SEQ ID NO: 4 (1974 LC kappa full)
DIQMTQSPASLPASPEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPQLLIYGATSLADGVPSRFSASRSGTQYSLKISRLQVEDFGIFYCLQGQSTPYTFGAGTKLELKRTDAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
SEQ ID NO: 5 (HCVR of 1979)
EVHLVESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITNSYWDWIRKFPGNKMEWMGYINYSGSTGYNPSLKSRISISRDTSNNQFFLQLNSITTEDTATYYCARGTYGYNAYHFDYWGRGVMVTVSS
SEQ ID NO: 6 (LCVR of 1979)
DIQMTQSPASLSASLEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPHLLIYGTTSLADGVPSRFSGSRSGTQYSLKISGLQVADIGIYVCLQAYSTPFTFGSGTKLEIK
SEQ ID NO: 7 (1979 HC mIgG1 full)
EVHLVESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITNSYWDWIRKFPGNKMEWMGYINYSGSTGYNPSLKSRISISRDTSNNQFFLQLNSITTEDTATYYCARGTYGYNAYHFDYWGRGVMVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
SEQ ID NO: 8 (1979 LC Kappa full)
DIQMTQSPASLSASLEEIVTITCQASQDIGNWLSWYQQKPGKSPHLLIYGTTSLADGVPSRFSGSRSGTQYSLKISGLQVADIGIYVCLQAYSTPFTFGSGTKLEIKRTDAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
本願明細書に記載の、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質に結合することができる化合物を同定するための方法、TNFスーパーファミリーメンバーであるトリマータンパク質と、トリマータンパク質に結合することができる化合物との複合体、ならびに医薬組成物。