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特開2023-52271自走式電気掃除装置、自走式電気掃除装置用プログラム及び掃除システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052271
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】自走式電気掃除装置、自走式電気掃除装置用プログラム及び掃除システム
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/28 20060101AFI20230404BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230404BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/28 Q
G05D1/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001480
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2021121172の分割
【原出願日】2013-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】514228217
【氏名又は名称】みこらった株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 將洋
(72)【発明者】
【氏名】佐古 曜一郎
(57)【要約】
【課題】掃除動作を効率良く実行することができる自走式電気掃除装置を提供する。
【解決手段】非掃除対象物を検出する検出手段と、この検出手段により検出された非掃除対象物を移動させることができるかどうかを判断する移動可否判断手段と、検出手段で検出された非掃除対象物が、移動可否判断手段で移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する登録決定手段とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非掃除対象物を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記非掃除対象物が、移動可能であるかどうかを判断する移動可否判断手段と、
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する登録決定手段と、
を備えることを特徴とする自走式電気掃除装置。
【請求項2】
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動可能ではないと判断された場合に、前記非掃除対象物を回避して走行する回避手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項3】
前記移動可否判断手段は、前記非掃除対象物を自装置が押すことで移動可能であるかどうかを判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項4】
前記登録決定手段は、前記移動可否判断手段で移動不可と判断された前記非掃除対象物を、前記掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを問い合わせる問い合わせ手段と、前記問い合わせに対する使用者による登録するか否かの指示入力に基づいて前記非掃除対象物を、前記掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する手段とを備える
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項5】
少なくとも自律走行の方向を撮像するための撮像部と、
前記撮像部で撮像された撮像画像を画像認識する画像認識手段と、
を備え、
前記検出手段は、前記画像認識手段の画像認識結果に基づいて、前記非掃除対象物を検出する
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項6】
少なくとも自律走行の方向を撮像するための撮像部と、
前記撮像部で撮像された撮像画像を画像認識する画像認識手段と、
を備え、
前記移動可否判断手段は、前記画像認識結果に基づいて、前記検出手段により検出された前記非掃除対象物が、移動可能であるかどうかを判断する
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項7】
少なくとも自律走行の方向を撮像するための撮像部と、
前記非掃除対象物の画像情報を、前記非掃除対象物が移動可能であるかどうかの移動可否情報と対応させて記憶する記憶部と、
を備え、
前記移動可否判断手段は、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物の画像情報に対応して前記記憶部に記憶されている前記移動可否情報に基づいて、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、移動可能であるかどうかを判断する
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項8】
自律走行をしながらの掃除を行う前記掃除エリアを示す掃除地図を記憶する掃除地図記憶部と、
前記掃除エリアにおける自装置の位置を検出しながら、前記掃除地図記憶部の前記掃除地図に基づいて、前記自律走行をして掃除動作を行う機能と、
を備え、
前記登録決定手段で掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録すると決定された前記非掃除対象物は、前記掃除地図の前記掃除エリア内の対応する位置に登録される
ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項9】
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動可能であると判断された場合に、前記非掃除対象物を他の位置に移動させる移動手段を備える
ことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項10】
前記移動手段は、前記非掃除対象物を掃除の邪魔にならない所定の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項9に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項11】
前記移動手段により前記掃除の邪魔にならない所定の位置に移動させた前記非掃除対象物を、元の位置に戻す手段を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項12】
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動可能であると判断された場合に、前記検出手段により前記非掃除対象物を検出した位置に、自己発信型マーカを設置する手段を備え、
前記元の位置に戻す手段は、前記自己発信型マーカからの発信信号に基づいて、前記自己発信型マーカの位置を検出し、当該検出した前記自己発信型マーカの位置を前記非掃除対象物を戻す位置として検出する
ことを特徴とする請求項11に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項13】
前記検出手段で前記非掃除対象物を検出した場合に、前記走行駆動部を制御して、前記掃除動作の自律走行を一時停止または減速させるようにし、
前記移動手段により前記非掃除対象物を前記他の位置に移動させた後に、前記自律走行をしながらの掃除動作を再開する
ことを特徴とする請求項9~請求項12のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項14】
前記移動手段は、前記非掃除対象物を掬う手段、押す手段、掴む手段、引っ張る手段、持ち上げる手段、気体を吹き付ける手段、払う手段、引っ掛ける手段、粘着させる手段、磁石で吸着する手段のうちの一つ、または、二つ以上からなる
ことを特徴とする請求項9~請求項13のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項15】
前記移動手段は、前記非掃除対象物を把持するための把持手段を備える
ことを特徴とする請求項9~請求項14のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項16】
前記移動手段は、前記非掃除対象物を永久磁石及び/または電磁石で吸着する機能を備え、
前記移動可否検出手段は、検出した前記非掃除対象物が磁気的に吸着可能なものか否かを判別する機能を備え、
前記移動可否判断手段は、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が磁気的に吸着可能なものであると判別した場合に、前記永久磁石及び/または前記電磁石で前記非掃除対象物を吸着して移動可能であると判断する
ことを特徴とする請求項9~請求項15のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項17】
前記検出手段は、検出した前記非掃除対象物が容器であるか否かを判別する機能を備え、
前記移動可否判断手段は、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が容器であると判別した場合に、前記容器に液体が入っているか否かを判別し、前記容器に液体が入っているか否かの判別結果に基づいて前記容器が移動可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1~請求項16のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項18】
前記移動可否判断手段は、前記容器に液体が入っていないと判別した場合に、前記容器が移動可能であると判断し、前記移動手段は、前記容器を前記他の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項17に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項19】
前記移動可否判断手段は、前記容器に液体が入っていると判別した場合に、または、液体が入っているか否かを判別することができない場合に、前記容器が移動可能ではないと判断し、前記回避手段は、前記容器を回避して走行する
ことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項20】
前記移動可否判断手段は、検出した前記非掃除対象物がレジ袋、ビニール袋、紙袋などの袋であるか否かを判別する機能を備え、
前記移動可否判断手段は、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が袋であると判別した場合に、前記袋の中身が入っているか否かを判別し、前記袋の中身が入っているか否かの判別結果に基づいて前記袋が移動可能であるか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1~請求項19のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項21】
前記移動可否判断手段は、前記袋の中身が入っていないと判別した場合に、前記袋が移動可能であると判断し、前記移動手段は、前記袋を前記他の位置に移動させる
ことを特徴とする請求項20に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項22】
前記移動可否判断手段は、前記袋の中身が入っていると判別した場合に、または、前記袋の中身が入っているか否かを判別することができない場合に、前記袋が移動可能ではないと判断し、前記回避手段は、前記袋を回避して走行する
ことを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項23】
前記検出手段は、インターネットを通じて接続されるクラウド上に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項22のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項24】
前記移動可否判断手段は、インターネットを通じて接続されるクラウド上に設けられている
ことを特徴とする請求項1~請求項23のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項25】
前記画像認識手段は、インターネットを通じて接続されるクラウド上に設けられている
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の自走式電気掃除装置。
【請求項26】
粘着手段を備え、
前記粘着手段で前記非掃除対象物を粘着させる
ことを特徴とする請求項1~請求項25のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項27】
磁石を備え、
前記磁石で前記非掃除対象物を吸着させる
ことを特徴とする請求項1~請求項15のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項28】
自律走行を行うための走行駆動部を備え、
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物の種類によって、前記走行駆動部を、一時停止、減速又は等速とするように制御する
ことを特徴とする請求項1~請求項27のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項29】
自律走行を行うための走行駆動部と、少なくとも前記自律走行の方向を撮像するための撮像部とを備え、
前記検出手段で前記非掃除対象物が検出された場合に、前記非掃除対象物の近傍を前後左右に走行するように前記走行駆動部を制御すると共に、前記非掃除対象物を種々の方向から前記撮像部で撮像する
ことを特徴とする請求項1~請求項28のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項30】
自律走行を行うための走行駆動部と、少なくとも前記自律走行の方向を撮像するための撮像部とを備え、
前記検出手段で前記非掃除対象物が検出された場合に、前記撮像部による前記非掃除対象物の撮像画像を確認しながら、前記非掃除対象物の近傍を前後左右に走行するように前記走行駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1~請求項29のいずれかに記載の自走式電気掃除装置。
【請求項31】
自走式電気掃除装置が有するコンピュータを、
前記非掃除対象物を検出する検出手段、
前記検出手段により検出された前記非掃除対象物が、移動可能であるかどうかを判断する移動可否判断手段、
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する登録決定手段、
として機能させるための自走式電気掃除装置用プログラム。
【請求項32】
自走式電気掃除装置と、前記自走式電気掃除装置と通信ネットワークを通じて無線接続されるサーバ装置とを有する掃除システムであって、
前記自走式電気掃除装置は、
非掃除対象物を検出する検出手段と、
前記非掃除対象物を撮像するための撮像部と、
前記サーバ装置と前記通信ネットワークを通じて無線接続するための第1の通信手段と、
前記検出手段で前記非掃除対象物が検出された場合に、前記撮像部の撮像画像を前記第1の通信手段により前記サーバ装置に送信する第1の送信手段と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記自走式電気掃除装置と前記通信ネットワークを通じて無線接続するための第2の通信手段と、
前記第2の通信手段を通じて前記自走式電気掃除装置から受信した前記撮像画像を画像認識する画像認識手段と、
前記画像認識手段の画像認識結果に基づいて、前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が移動可能であるかどうかを判断する移動可否判断手段と、
前記移動可否判断手段の判断結果を前記第2の通信手段により前記自走式電気掃除装置に送信する第2の送信手段と、
を備え、
前記自走式電気掃除装置は、前記サーバ装置からの前記判断結果が、前記非掃除対象物が移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する登録決定手段を備える
ことを特徴とする掃除システム。
【請求項33】
前記サーバ装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、またはパッド型の携帯コンピュータを含む
ことを特徴とする請求項32に記載の掃除システム。
【請求項34】
前記自走式電気掃除装置の前記登録決定手段は、前記移動可否判断手段で移動不可と判断された前記非掃除対象物を、前記掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かの問い合わせを前記第1の通信手段を通じて前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、前記問い合わせに対する使用者による登録するか否かの指示入力に受け付けて、前記第2の通信手段を通じて前記自走式電気掃除装置に送信し、
前記自走式電気掃除装置の前記登録決定手段は、前記サーバ装置から受信した前記指示入力に基づいて、前記非掃除対象物を前記掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項32又は請求項33に記載の掃除システム。
【請求項35】
前記サーバ装置は、前記自走式電気掃除装置から送られてくる前記撮像画像を表示画面に表示して前記検出された前記非掃除対象物を、前記指示入力をする使用者に呈示する
ことを特徴とする請求項34に記載の掃除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自走式電気掃除装置、自走式電気掃除装置用プログラム及び掃除システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源として充電式のバッテリを備えると共に、自律走行(以下、自走という)を行うための走行駆動部を備え、自走をしながら掃除動作を行う自走式の電気掃除機が知られている。従来から、この種の自走式電気掃除装置においては、掃除対象の部屋などの掃除エリア内に、障害物が存在している場合であっても、その障害物を避けて自走することで、自走しながらの掃除動作を支障なく行えるようにする技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2011-233149号公報)には、掃除時または走行時に作成した掃除地図を提供し、特定の位置または領域の監視画像を提供するロボット掃除機を備えることにより、掃除地図上の特定の位置または領域にロボット掃除機を移動させたり、該当領域の掃除を行わせたりするように制御する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2004-33340号公報)には、部屋に在る障害物を登録した部屋地図データと、障害物の属性を記憶した属性データと、掃除の経路を記憶した掃除ルートとを備えて、登録した障害物を避けた自走を行うことで、掃除動作を支障なく行えるようにした電気掃除機が記載されている。そして、特許文献2においては、障害物を検知する障害物検出センサを備え、掃除中に、登録していない障害物に遭遇したときに、掃除ルートを再構築して掃除を再開することで、その登録していない障害物をも避けた掃除動作ができるようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-233149号公報
【特許文献2】特開2004-33340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には、掃除地図に存在しない物体が出現したときの対処方法については、何ら開示されていない。
【0007】
一方、特許文献2には、掃除地図に存在しない(登録されていない)物体が出現したときには、その物体を避けて自走するように掃除ルートを再構築するので、掃除地図に存在しない物体が出現したときにも対処可能である。
【0008】
しかし、特許文献2の技術では、掃除地図に存在しない物体を回避して自走する掃除ルートを再構築するので、掃除地図に存在しない物体により、未掃除となる領域が拡大してしまうという問題があった。
【0009】
この発明は、以上の点に鑑み、掃除動作中に、障害物や掃除地図に存在しない物体が出現した場合に適切に対処することができるようにした自走式電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、
非掃除対象物を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記非掃除対象物が、移動可能であるかどうかを判断する移動可否判断手段と、
前記検出手段で検出された前記非掃除対象物が、前記移動可否判断手段で移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを決定する登録決定手段と、
を備えることを特徴とする自走式電気掃除装置を提供する。
【0011】
上記の構成の請求項1の発明の自走式電気掃除装置においては、非掃除対象物を検出した場合には、検出した非掃除対象物が、移動可否判断手段で移動不可と判断された場合に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かが決定される。
【0012】
上記の構成の請求項1の発明の自走式電気掃除装置によれば、移動不可の非掃除対象物を、掃除エリア内に常駐させる物体として登録することができるので、効率良く掃除動作を実行することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明による自走式電気掃除装置によれば、移動不可の非掃除対象物を、掃除エリア内に常駐させる物体として登録することができるので、効率の良い掃除動作を実行することができ、非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態の機構部の構成例を示す図である。
図2】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態の機構部の構成例を示す図である。
図3】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態における電気的構成例を示すブロック図である。
図4】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態の構成例の要部を説明するために用いる図である。
図5】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態における処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図6】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態における処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図7】この発明による自走式電気掃除装置の実施形態における処理動作例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
図8】この発明による自走式電気掃除装置の他の実施形態を構成する自走式の電気掃除機の機構部の構成例を示す図である。
図9】この発明による自走式電気掃除装置の他の実施形態を構成する自走式の電気掃除機の機構部の構成例を示す図である。
図10】この発明による自走式電気掃除装置の他の実施形態の構成例の要部を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明による自走式電気掃除装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0016】
この実施形態の自走式電気掃除装置は、自走式の電気掃除機と、この自走式の電気掃除機と無線通信路を通じて接続される掃除支援サーバ装置(以下、単にサーバ装置という)とからなる。無線通信路は、以下に説明する実施形態では、例えばBluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信路が用いられる。無線通信路は、これに限らず、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)や、その他の無線通信手段を用いることもできる。サーバ装置は、例えばパーソナルコンピュータで構成することもできるし、いわゆるスマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話端末で構成することもできる。なお、この例では、サーバ装置はパーソナルコンピュータとしている。
【0017】
[この実施形態の自走式電気掃除装置の処理の概要]
この実施形態の自走式電気掃除装置を構成する自走式の電気掃除機は、自走を行うための走行駆動部と、自走をしながらの掃除動作中において進行方向及びその他の方向を撮影するための撮像部と、掃除動作中に非掃除対象物を移動させる移動手段と、走行駆動部及び移動手段を制御する制御部と、撮像部で撮像した撮像画像情報をサーバ装置に無線送信すると共に、サーバ装置からの送信情報を受信するための無線通信手段とを備える。
【0018】
一方、サーバ装置は、電気掃除機から送られてくる撮像画像情報を用いて、電気掃除機が自走をしながらの掃除動作中における非掃除対象物を検出する検出部と、この検出部により検出された非掃除対象物が移動させることができるか否かを判断する判断手段と、この判断手段での判断結果を電気掃除機に送信すると共に、前記の撮像画像情報を電気掃除機から受信するための無線通信部とを備える。
【0019】
そして、自走式の電気掃除機は、自走をしながらの掃除動作中において進行方向及びその他の方向を撮像部により撮像し、その撮像画像情報を、無線通信路を通じてサーバ装置に送る。
【0020】
サーバ装置は、受信した撮像画像情報を解析して、非掃除対象物の検出処理を実行する。そして、サーバ装置は、非掃除対象物を検出したときには、その検出した非掃除対象物が移動可能か否か判断し、その判断結果を、無線通信路を通じて電気掃除機に送信する。
【0021】
電気掃除機は、サーバ装置から受信した判断結果を解析して、移動可能な非掃除対象物が検出されたと判断したときには、その非掃除対象物を、移動手段を用いて移動する。こうして、電気掃除機は、移動可能な非掃除対象物は、他の場所に移動しながら、掃除動作を実行する。
【0022】
後述するように、この実施形態では、その移動の態様として、非掃除対象物を押して移動する、後述するマニピュレータを用いて掴む及び掴んで持ち上げる(ピックアップする)、などの態様をとることができる。すなわち、この例のマニピュレータは、非掃除対象物を掴む手段と持ち上げる手段の両方の機能を備える。この例の電気掃除機は、マニピュレータにより非掃除対象物を掴んでそのまま移動させる手段としての機能と、マニピュレータにより非掃除対象物を掴んで持ち上げて、移動させる手段としての機能を有する。
【0023】
また、この実施形態では、電気掃除機は、予め作成されている掃除地図を備え、その掃除地図に基づく掃除エリアにおいて、自走をしながらの掃除動作を実行するようにする。そして、この実施形態では、電気掃除機は、移動可能な非掃除対象物は、掃除地図から予め定められた、自走をしながらの掃除動作の邪魔にならない所定の場所に移動させるようにする。そして、掃除動作が終了した後、所定の場所に移動してあった非掃除対象物を、元の位置に戻す機能を有している。
【0024】
[自走式の電気掃除機の機構的構成例]
図1及び図2は、この実施形態の自走式電気掃除装置を構成する自走式の電気掃除機10の外観構成を説明するための図である。図1(A)は、この例の自走式の電気掃除機10を、その上面10a側から見た図、図1(B)は、この例の自走式の電気掃除機10を、側面方向から見た図である。図2(A)は、この例の自走式の電気掃除機10を、その吸い込み口11を備える底面10b側から見た図、図2(B)は、この例の自走式の電気掃除機10を、掃除動作時の前方進行方向から見た図である。なお、図1(A),(B)及び図2(A)において、矢印ARは、自走式の電気掃除機10の掃除動作時の進行方向(前方方向)を示している。
【0025】
図1及び図2に示すように、この例の自走式の電気掃除機10は、ほぼ矩形の扁平の盤形状の筐体を備える。この電気掃除機10の上面10aには、図1(A)に示すように、例えばタッチ式の操作ボタン群12が設けられていると共に、リモコン用の受信部13が設けられている。タッチ式の操作ボタン群12は、例えば、電気掃除機の駆動開始及び駆動停止用のスタート/ストップボタン、非掃除対象物を移動しながらの掃除動作をするモードをオンにするか否かのモードボタン、充電開始、停止を制御する充電ボタンなどを備える。
【0026】
なお、このタッチ式の操作ボタン群12は、例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)とタッチパネルとで構成され、LCDには、充電中などの所定の表示も合わせて行うことができるようにされている。リモコン用の受信部13は、図示を省略したリモコン送信機からの、例えば赤外線のリモコン信号を受けて、この例の電気掃除機の駆動開始、駆動停止、モード制御をすることが可能である。
【0027】
また、この電気掃除機10の底面10bには、図2(A)に示すように、吸い込み口11が設けられている。そして、電気掃除機10の筐体内には、図2(B)において点線で示すように、吸い込み口11に連通して、吸い込んだ掃除対象物及び掃除対象物以外の非掃除対象物を捕集する集塵室14が設けられている。なお、図1及び図2では、図示を省略したが、電気掃除機10の筐体内には、集塵室14に掃除対象物を吸い込むようにするための吸引駆動部が設けられている。
【0028】
そして、この実施形態の電気掃除機10は、図2(A)に示すように、吸い込み口11内に、フレキシブルブラシ15及びローリングブラシ16を備える。そして、電気掃除機10の筐体の底面10bの吸い込み口11の位置に対して掃除動作時の進行方向の前方のほぼ中央には、ローラ17が設けられている。このローラ17は、その回転軸の軸方向が底面10bに平行な面内において回動可能に取り付けられている。このため、ローラ17の回転軸の軸心方向は、矢印ARに直交する方向のみならず、任意の方向を向くことが可能とされている。そして、底面10bの吸い込み口11の両側には、図2では図示を省略する走行駆動部により回転駆動される車輪(ホイール)18,19が設けられている。
【0029】
車輪18,19が走行駆動部により駆動されて回転することにより、電気掃除機10は自走するが、前述したように、ローラ17は任意の方向を回転軸方向として回動可能であるので、電気掃除機10は、矢印ARの方向に直進走行するだけでなく、回転運動したり、矢印ARに対して交差する任意の方向を進行方向として走行移動したりすることが可能とされている。また、走行駆動部による車輪の回転方向制御により、電気掃除機10は、矢印ARとは逆側に後ろ向き走行することもできる。
【0030】
そして、この実施形態では、電気掃除機10は撮像部を備える。すなわち、電気掃除機10のローラ17の前方の筐体側面には、撮影方向(光軸方向)が底面10bにほぼ平行な方向となるようにカメラ21が設けられている。また、この実施形態では、カメラ21が設けられている筐体側面のほぼ角部には、矢印ARで示す方向に対して、交差する方向である斜め方向を撮影方向(光軸方向)とするカメラ22及び23が設けられている。カメラ22及び23の光軸方向は、カメラ21と同様に、撮影方向(光軸方向)が底面10bにほぼ平行な方向となるようにしてもよいが、この例では、平行な方向よりも、若干上向きに取り付けられている。また、電気掃除機10のローラ17の後方の筐体側面には、撮影方向(光軸方向)が底面10bにほぼ平行な方向となるようにカメラ24が設けられている。
【0031】
カメラ21は、自走式の電気掃除機10の走行方向の前方を所定の画角で撮影する。また、カメラ22及び23は、走行方向の斜め右方向及び斜め左方向を所定の画角で撮影する。さらに、カメラ24は、自走式の電気掃除機10の走行方向の後方を所定の画角で撮影する。
【0032】
この実施形態においては、非掃除対象物を認識したときに、その位置の画像として、カメラ21~24の画像を、認識した非掃除対象物の識別情報(非掃除対象物ID)と対応付けて記憶するようにする。そして、電気掃除機10は、非掃除対象物IDを付与した撮像画像情報をサーバ装置に送るようにする。
【0033】
以上のカメラ21~24は、例えばCCDイメージセンサや、CMOSイメージセンサと撮像レンズを含んで構成されている。
【0034】
電気掃除機10は、移動可能性の判断手段による判断結果に応じて制御される移動手段を備える。この移動手段は、この実施形態では、いわゆるマジックハンドを備えるマニピュレータ30により構成されている。
【0035】
このマニピュレータ30は、この例では、図1及び図2に示すように、電気掃除機10の前方走行方向に向かって、右側面に設けられている。そして、このマニピュレータ30は、伸縮摺動リンク機構部31と、回動リンク機構部32と、マジックハンド部33とからなる。
【0036】
伸縮摺動リンク機構部31は、伸縮摺動基部31aに伸縮摺動リンク部31bが結合されたもので、伸縮摺動基部31a内に設けられる伸縮摺動駆動部(図示は省略)により、伸縮摺動リンク部31bが、電気掃除機10の筐体の側面に沿う方向に伸縮することができるように構成されている。そして、伸縮摺動基部31a内に設けられる伸縮摺動駆動部は、後述するように、電気掃除機10が備える、例えばマイクロコンピュータを備える制御部からの制御信号により制御されて、伸縮摺動リンク部31bが電気掃除機10の筐体の側面に沿って伸縮するように制御される。
【0037】
回動リンク機構部32は、回動基部32aと、回動アーム部32bとからなる。回動基部32aは、伸縮摺動リンク機構部31の伸縮摺動リンク部31bの先端に結合されて設けられている。回動アーム部32bは、回動基部32aに対して、当該回動基部32aを回動中心として回動するように取り付けられている。そして、回動基部32a内に設けられる回動駆動部(図示は省略)は、電気掃除機10が備える制御部からの制御信号により制御されて、回動アーム部32bが、電気掃除機10の筐体の側面に沿う面内において、回動基部32aを回動中心として、回動するように制御される。
【0038】
マジックハンド部33は、連結結合部33aと、連結アーム部33bと、把持部33cとからなる。連結結合部33aは、回動リンク機構部32の回動アーム部32bの先端に結合されている。連結アーム部33bは、連結結合部33aに、当該連結アーム部33b自身がその軸心方向を中心として回動可能の状態で結合されている。把持部33cは、連結アーム部33bの先端に取り付けられている。
【0039】
把持部33cは、2個の円弧形状の把持アーム331,332を、互いに対向するような状態で、駆動支点部333に取り付けたものである。把持アーム331,332は、初期状態では、図1(A)に示すように、互いの先端が所定の距離だけ離れて対向する状態とされている。そして、この例のマジックハンド部33においては、周知のマジックハンドと同様の機構で、把持アーム331,332は、駆動支点部333を駆動支点として、図1において矢印HLで示すように、互いのアーム先端が接近するように駆動されて、物質を把持することができるようにされている。
【0040】
この例では、連結結合部33aには把持アーム駆動部(図示は省略)が設けられている。この把持アーム駆動部は、連結アーム部33bを介して、把持部33cの駆動支点部333及び把持アーム331,332に対して、連結結合部33a側への引張り力を印加するように動作し、この引張り力により、把持アーム331,332が、駆動支点部333を駆動支点として、矢印HLで示すように、互いのアーム先端が接近するように駆動される。つまり、把持アーム331,332は、非掃除対象物を把持する動作をする。そして、連結結合部33aに設けられる把持アーム駆動部は、電気掃除機10が備える制御部からの制御信号により制御されて、把持アーム331,332の把持動作を行うことができるように制御される。
【0041】
また、連結結合部33aには、連結アーム部33bの、軸心方向を中心とした回動を制御する機構も設けられ、2個の把持アーム331,332を含む面の方向が、例えば常に電気掃除機10の筐体の上面10aと平行な状態を保つように制御したり、2個の把持アーム331,332を含む面の方向が、電気掃除機10の筐体の上面10aと直交する状態となるように制御したりすることができるようにされている。
【0042】
以上のように構成されるマニピュレータ30は、電気掃除機10の制御部からの制御信号を受けて、検出された非掃除対象物を把持するようにするために、伸縮摺動リンク機構部31は回動リンク機構部32の回動基部32aの位置を摺動移動させ、また、回動リンク機構部32の回動アーム部32bをマジックハンド部33の連結結合部33aの位置を非掃除対象物の位置近傍になるように回動させる。そして、電気掃除機10の制御部は、電気掃除機10の走行制御と相まって、マジックハンド部33の2個の把持アーム331,332を、非掃除対象物を把持することができる位置に制御し、その位置で把持アーム331,332により非掃除対象物を把持するようにする。なお、この制御の際に、制御部は、カメラ21~24の撮像画像情報をも参照しながら、走行駆動部122を走行させて位置制御するようにするものである。
【0043】
[実施形態の自走式電気掃除装置の電気的構成例の説明]
図3は、この実施形態の自走式電気掃除装置の電気掃除機10と、当該電気掃除機10と無線通信路50を介して無線接続されるサーバ装置40の電気的回路構成を示す図である。
【0044】
[電気掃除機10の回路構成例]
先ず、電気掃除機10の回路構成例について説明する。
電気掃除機10は、電気的回路構成として、図3に示すように、マイクロコンピュータを搭載する制御部101に対して、システムバス100を通じて、吸引制御部102と、走行制御部103と、マニピュレータ制御部104と、操作部105と、無線通信部106と、送信画像情報生成部107と、受信情報解析部108と、掃除エリア地図データ記憶部109と、掃除エリア内自位置検出部110と、非掃除対象物検出部111と、位置画像記憶部112と、制御信号生成部113と、カメラ21~24が接続されている。
【0045】
吸引制御部102には、吸引駆動部121が接続されており、また、走行制御部103には、走行駆動部122が接続されている。吸引駆動部121は、吸い込み口11から掃除対象物を吸引するためのものである。走行駆動部122は、車輪(ホイール)18,19を回転駆動させて、電気掃除機10を自走させるようにする。
【0046】
制御部101は、操作部105を通じて掃除開始指示入力を受けたときには、吸引制御部102及び走行制御部103を通じて、駆動開始制御信号を、吸引駆動部121及び走行駆動部122に供給して、それらの駆動を開始させ、電気掃除機10による自走しながらの自動掃除動作を開始させるようにする。また、制御部101は、操作部105を通じて掃除停止指示入力を受けたときには、吸引制御部102及び走行制御部103を通じて、駆動停止制御信号を吸引駆動部121及び走行駆動部122に供給して、吸引駆動部121及び走行駆動部122の駆動を停止させ、電気掃除機10による自動掃除動作を停止させるようにする。
【0047】
さらに、この実施形態においては、制御部101は、内蔵するメモリに記憶されている掃除支援プログラムに基づいて、無線通信部106を通じてサーバ装置40からの制御指示情報を受信したときには、当該制御指示情報に基づいた制御信号を生成し、吸引制御部102及び走行制御部103を通じて、吸引駆動部121及び走行駆動部122に供給して、その駆動を制御するようにする。
【0048】
マニピュレータ制御部104は、マニピュレータ30の、前述した回動基部32a内に設けられる回動駆動部、伸縮摺動基部31a内に設けられる伸縮摺動駆動部及び連結結合部33a内に設けられる把持アーム駆動部のそれぞれを、互いに独立に接続して、互いに独立に駆動制御するように構成されている。
【0049】
制御部101は、サーバ装置40から、掃除動作中に検出された非掃除対象物の移動指示を受信したときには、前述した掃除支援プログラムに基づいて、その移動指示で示される移動態様に応じた移動処理を行う。例えば、移動指示が、検出した非掃除対象物をピックアップして移動させる指示であるときには、制御部101は、掃除支援プログラムに基づいて、そのピックアップ動作をするように、マニピュレータ30を制御する制御信号を、マニピュレータ制御部104を通じてマニピュレータ30に供給する。
【0050】
操作部105は、前述したタッチ式の操作ボタン群12及びリモコン用の受信部13を含み、タッチ式の操作ボタン群12のいずれかが押下操作されたことに基づく指示入力情報や、リモコン用の受信部13で受信したリモコン送信機からの指示入力情報を、システムバス100を通じて制御部101に供給する。制御部101は、その指示入力情報に応じた処理を実行する。
【0051】
この実施形態では、カメラ21,22,23,24のそれぞれには、例えばLEDからなる照明部21L,22L,23L,24Lが付加されている。制御部101は、カメラ21,22,23,24のそれぞれにカメラ制御信号を供給して、これらカメラ21,22,23,24のそれぞれの撮像開始、撮像停止を制御する。カメラ21,22,23,24のそれぞれは、撮像開始制御を受けて、撮像動作状態においては、撮像画像をシステムバス100に供給する。
【0052】
照明部21L,22L,23L,24Lは、制御部101により点灯制御される。この場合に、制御部101は、ソフトウエア処理により、カメラ21,22,23,24からの撮像画像の明るさ(撮像画像の輝度の平均値など)を測定し、撮像画像の明るさが所定以下のときに、制御部101が、照明部21L,22L,23L,24Lを点灯させるように制御するようにする。なお、制御部101は、カメラ21,22,23,24が撮像動作状態においては、常に、照明部21L,22L,23L,24Lを点灯するように制御してもよい。
【0053】
送信画像情報生成部107は、電気掃除機10が掃除動作中において、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報の送信画像情報を生成する。この場合に、送信画像情報生成部107は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報には、いずれのカメラの撮像画像情報であるかのカメラ識別情報(カメラID)を付与するようにする。また、送信画像情報生成部107は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報を、適宜、データ圧縮などのエンコード処理を施して、送信画像情報を生成し、無線通信部106を通じて送信するようにする。
【0054】
無線通信部106は、無線通信路50を通じてサーバ装置40と情報を送受するためのもので、前述したように、この実施形態では、Bluetooth(登録商標)規格の近距離無線通信の機能を有する。無線通信部106は、送信画像情報生成部107で生成された送信画像情報を、無線通信路50を通じてサーバ装置40に送信し、また、無線通信路50を通じてサーバ装置40を通じて送られてくる制御指示情報を受信情報解析部108に転送する。
【0055】
受信情報解析部108は、サーバ装置40を通じて送られてくる制御指示情報を解析して、移動可否と判定すると共に、移動可であれば、移動態様を判定して、その判定結果を制御信号生成部113に供給する。
【0056】
この実施形態の電気掃除機10は、掃除エリア地図データ記憶部109を備える。この掃除エリア地図データ記憶部109には、例えば、予め電気掃除機10が走行することで認識した掃除エリアのデータと、当該認識した掃除エリアにおける電気掃除機10の走行経路のデータが記憶されている。この走行経路は、記憶されている掃除エリアにおける特定の位置をホーム地点として、そのホーム地点を起点として作成されている。なお、この掃除エリア地図の作成方法及び走行経路の作成方法としては、例えば、特開2005-205028号公報や、前述の特許文献1,2、さらには、特開平8-16241号公報、特開平9-222852号公報に記載の公知の技術を用いることができるものである。非掃除対象物を移動させる、掃除の邪魔にならない所定の位置は、この掃除エリア地図内において、予め設定されており、移動手段による移動動作時には、この掃除エリア地図が参照されて、予め設定されている、掃除の邪魔にならない位置への移動処理が行われる。
【0057】
掃除エリア内自位置検出部110は、自走をしながらの掃除動作を行っているときの自位置を検出する。この掃除エリア内自位置検出部110は、例えば、地磁気センサを用いた移動方位の検出手段と、ジャイロなどの加速度検出手段を用いて、移動方向と走行距離とを検知し、前述のホーム地点を起点として、どの方向に、どれだけ移動したかにより、掃除エリア内における自位置を検出する。
【0058】
非掃除対象物検出部111は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像について、大きさが予め設定された大きさ以上のものであるか否か、また、貴金属のように光を当てた時の反射光の光度が所定以上であるものであるか否かなどを判定して、掃除対象物以外の非掃除対象物であるか否かを認識するようにする機能を有する。また、非掃除対象物検出部111においては、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像については、掃除対象の床面に存在する物のみを、検出対象とするように構成されている。床面以外に存在する物は、掃除動作において、吸引駆動及び走行駆動に影響を与えないからである。なお、この非掃除対象物検出部111は、登録されている画像と比較して画像認識するような機能を有する必要はない。
【0059】
この実施形態では、この非掃除対象物検出部111で、非掃除対象物を検出したときには、制御部101は、走行制御部103を制御して、走行を一時停止し、サーバ装置40からの制御指示情報の受信を待つようにする。そして、サーバ装置40から制御指示情報が移動指示であるときには、当該移動指示に応じて、掃除の邪魔にならない所定の位置への移動処理動作を行った後、掃除動作を再開するようにする。サーバ装置40からの制御指示情報が、後述する回避指示であったときには、制御部101は、一時停止している状態から掃除動作を再開するが、掃除支援プログラムに組み込まれている、検出した非掃除対象物を回避して走行するようにする制御動作を行う。
【0060】
位置画像記憶部112は、サーバ装置40から制御指示情報が移動指示であるときに、一時停止している位置の位置情報を記憶すると共に、その位置情報に対応してカメラ21~24の撮像画像情報を記憶する。さらに、非掃除対象物の移動処理をしたときには、その前後の撮像画像情報を記憶するようにする。この場合に、非掃除対象物の移動処理を終えた後の撮像画像中において、移動した非掃除対象物が存在していた場所に、マークを付与しておくようにしてもよい。このようにしておけば、掃除終了後に、非掃除対象物を元の位置に戻すときに、元の位置の検出が容易になる。
【0061】
制御信号生成部113は、受信情報解析部108からの移動可否及び移動態様を含む指示制御に基づいて、走行駆動部122、マニピュレータ30に対する制御信号を生成する。吸引駆動部121の吸引駆動を休止したり、吸引力を減少させたりする制御信号を合わせて生成するようにしてもよい。
【0062】
この実施形態では、制御信号生成部113は、受信情報解析部108からの移動可否及び移動態様を含む指示制御のみに基づいて制御信号を生成するのではなく、掃除エリア内自位置検出部110で検出されている一時停止している自位置が、掃除エリア地図データ記憶部109に記憶されている掃除エリアのどの位置であるかをも考慮するようにしている。すなわち、例えば、制御信号生成部113は、受信情報解析部108からの移動可否が「可」であり、移動態様が「押す」であった場合に、自位置が掃除エリアのコーナー位置である場合には、押すことができないので、移動可否が「可」であるにもかかわらず、制御信号は、当該非掃除対象物を回避して走行させるようにする制御信号を生成する。
【0063】
なお、図3に示した電気掃除機10の回路構成において、吸引制御部102、走行制御部103、送信画像情報生成部107、受信情報解析部108、非掃除対象物検出部111、制御信号生成部113は、制御部101を構成するマイコンが、そのソフトウエア機能として実現するようにすることもできる。
【0064】
[サーバ装置40の回路構成例]
次に、サーバ装置40の回路構成例について説明する。サーバ装置40は、前述したように、この例では、パーソナルコンピュータにより構成されている。
【0065】
前述したように、サーバ装置40は、電気掃除機10から送られてくるカメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報について非掃除対象物の画像認識処理をする機能を備えていると共に、認識した非掃除対象物が電気掃除機10により移動させることができるか否かを判断する手段を備える。図3に示すサーバ装置40の構成は、便宜上、この非掃除対象物の画像認識処理機能部及び移動可能性の判断部のみの構成を示したものである。
【0066】
すなわち、サーバ装置40は、無線通信路50に接続されて、電気掃除機10と通信するための通信インターフェース401と、撮像画像記憶部402と、画像認識部403と、画像登録メモリ404と、制御指示情報生成部405を備えている。この実施形態では、画像認識部403及び制御指示情報生成部405は、画像認識した非掃除対象物が電気掃除機10により移動させることができるか否かの判断手段の機能を含む。
【0067】
撮像画像記憶部402は、通信インターフェース401を通じて受信した電気掃除機10から送られてくる送信画像情報から、カメラ21~24の撮像画像情報のそれぞれをデコードして分離して、画像認識部403での画像認識用として一時記憶する。そして、撮像画像記憶部402は、その一時格納したカメラ21,22,23,24の撮像画像情報を、画像認識用として画像認識部403に供給する。
【0068】
画像認識部403は、カメラ21,22,23,24のそれぞれからの撮像画像情報から、掃除対象物以外の非掃除対象物を認識して検出する。この場合に、画像認識部403は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報について、画像登録メモリ404に記憶されている画像と比較してパターンマッチングを行い、両者の一致あるいは両者の所定の類似度レベル以上での類似を検出することで、掃除対象物以外の非掃除対象物を認識する。
【0069】
画像認識部403は、非掃除対象物を認識したときには、画像登録メモリ404に記憶されている非掃除対象物IDの情報を認識結果として制御指示情報生成部405に供給する。後述するように、この実施形態では、画像登録メモリ404には、非掃除対象物の画像情報と非掃除対象物IDとの対応情報のほか、非掃除対象物のそれぞれに応じて、電気掃除機10により移動可能であるか否かの移動可能性についての情報と、移動態様や移動不可の場合の対処情報(この例では回避)が登録されている。制御指示情報生成部405は、認識結果の非掃除対象物IDに基づいて、画像登録メモリ404を参照して、移動可能性について判断し、電気掃除機10に送信する制御指示情報を生成する。
【0070】
画像登録メモリ404には、予め、掃除対象物以外の非掃除対象物として想定された物の撮像画像情報が登録されて記憶されている。この画像登録メモリ404に記憶される情報は、例えば電気掃除機10の製造会社が運営するWebサイトからダウンロードして、取得するようにしてもよいし、電気掃除機10の使用者が、非掃除対象物をカメラで撮像して、所定の他の登録情報と共に登録するようにしてもよい。
【0071】
この場合に、画像登録メモリ404には、一つの非掃除対象物について登録画像情報として、カメラ21~24のそれぞれで撮影された複数個の画像情報が記憶される。また、カメラ21~24のそれぞれで撮影された画像情報の各々について、前から、後ろから、左横から、右横から、などの複数の撮像方向からの画像情報が画像登録メモリ404には記憶されている。これらの非掃除対象物の登録画像情報は、それぞれの非掃除対象物に付与されている識別情報(非掃除対象物ID)に対応付けられて、画像登録メモリ404に記憶されている。
【0072】
そして、画像登録メモリ404には、登録された非掃除対象物が電気掃除機10で移動可能であるか否かの移動可否の情報が、非掃除対象物IDに対応付けられて記憶される。また、登録された非掃除対象物が電気掃除機10で移動可能である場合には、その移動態様(この例ではピックアップや押す)の情報が、指示制御のための情報として記憶されている。また、登録された非掃除対象物が電気掃除機10で移動不可である場合には、当該非掃除対象物を回避して走行するようにする指示制御の情報が記憶されている。
【0073】
使用者が、電気掃除機10で掃除対象物以外の非掃除対象物として認識させたい物の画像を登録して、この画像登録メモリ404に記憶することができるようにするために、この実施形態の自走式電気掃除装置においては、使用者による掃除対象物以外の非掃除対象物の撮像画像の登録機能を備えている。当該非掃除対象物の撮像画像の登録機能は、サーバ装置40における掃除支援プログラムの機能として、サーバ装置40にインストールされている。使用者が、この非掃除対象物の撮像画像の登録機能を選択すると、サーバ装置40の表示部の表示画面には、非掃除対象物の登録画像の登録手順がメッセージやアニメーションにより表示される。使用者は、この表示画面の登録手順のメッセージやアニメーションを観ながら非掃除対象物の登録画像の登録処理を行うことができる。
【0074】
例えば、表示画面には、まず、登録したい非掃除対象物を被写体として、カメラ21、22,23、24により撮像するよう促す画面が表示される。そして、カメラ21~24のそれぞれについて、カメラと被写体との位置関係の指示がなされ、それぞれのカメラで撮像するように促される。使用者が、表示画面に表示される登録手順に従って、カメラ21、22,23、24により撮像をすると、それらは、付与された非掃除対象物IDに関連付けられて、画像登録メモリ404に記憶される。次に、表示画面には、非掃除対象物の名称をテキスト文字で入力するように促す指示が表示され、使用者が登録する非掃除対象物の名称を入力すると、その入力されたテキスト文字情報が、登録された非掃除対象物の非掃除対象物IDと対応付けられて、画像登録メモリ404に記憶される。
【0075】
その後、登録された非掃除対象物を認識したときの移動可否の情報と、指示制御についての設定入力をするように促す指示が表示画面に表示され、使用者が、それに応じて入力して指示すると、画像登録メモリ404に、その移動可否の情報と、指示制御の情報が、非掃除対象物の登録画像及び非掃除対象物IDに対応付けられて記憶される。
【0076】
以上の説明は、電気掃除機10が備えるカメラ21~24を用いた非掃除対象物の画像の登録処理である。しかし、非掃除対象物の画像の登録処理は、このように電気掃除機10が備えるカメラ21~24を用いて非掃除対象物を撮像する方法のみではない。例えば、所定のカメラで、非掃除対象物を撮像して、例えばUSBメモリやSDカードなどの記憶媒体に記憶し、その記憶したものを、所定のインターフェース手段、例えばUSBインターフェースやSDカードインターフェースなどを通じて、登録することもできる。
【0077】
図4に、画像登録メモリ404に記憶されている非掃除対象物の情報の例を示す。この図4の例において、画像登録メモリ404には、非掃除対象物名称と、登録画像V01、V02、V03、・・・と、移動可否の情報と、指示制御の情報が、非掃除対象物IDに対応付けられて記憶されている。この実施形態では、指示制御は、移動態様として「ピックアップ」と「押す」が記憶され、移動不可の場合の指示制御として「回避」が登録される。
【0078】
登録画像V01、V02、V03、・・・のそれぞれは、前述したように、複数個の撮像画像の画像情報からなり、非掃除対象物IDに対応付けられて一つの集合として保持されている。
【0079】
なお、制御指示情報生成部405は、この実施形態では、画像登録メモリ404に記憶されている「移動可否」の情報が、移動「可」であっても、非掃除対象物がビンやグラスのように、「可(中身確認)」のように注意情報が付加されている場合には、撮像画像情報を解析して、当該ビンやグラスの液体収納空間に境目が検出できるなどにより、当該液体収納空間内に液体が残っているか否か判定した上で、最終的な制御指示情報を生成するようにする。すなわち、例えば、ビンの撮像画像において、液体が所定量以上残っていることが判明したときには、「移動可否」の情報が、移動「可」であっても、制御指示情報は「回避」とするようにする。ビンやグラス以外に、ペットボトル、醤油さし、花瓶など、液体が入っている可能性のある透明、半透明の容器については、移動可否の判断及びその判断結果に基づく移動制御について同様の処理をする。
【0080】
なお、画像認識により、ビンの開栓、未開栓または閉栓の状態を判断することができるので、ビンに液体が入っていても、未開栓または閉栓の状態の場合には、移動可能とすることができる。
【0081】
湯呑みや紙パックなどの不透明の容器の場合には、撮像画像の画像認識によっては、容器の中に液体が入っている状態であるかどうかは判断ができない。そのため、上述の実施形態の場合には、原則的に、画像認識により不透明の容器を認識したときには、移動不可として回避動作を行うようにしている。
【0082】
しかし、例えば、マニピュレータ30のマジックハンド部33の把持アーム331,332の先端にカメラを装着して、例えば湯呑みなどの不透明の容器内を覗き込むように撮影すれば、容器内に液体が残っているか否かを判断することができるので、その判断結果により、液体が残っていないことが確認されたときには、当該不透明の容器であっても、移動可能とすることができる。
【0083】
また、紙パックの場合には、例えばマジックハンド部33に重量センサを装着しておき、紙パックを把持アーム331,332で掴んで持ち上げてみることで、重量センサで紙パックの重さを計測するようにする。そして、紙パックが空であるときの重量と、重量センサで計測したときの紙パックの重量を比較することで、中に液体が入っているかどうかを判断することができる。したがって、その判断結果により、液体が残っていないことが確認されたときには、当該不透明の紙パックなどの容器であっても、移動可能とすることができる。
【0084】
また、マジックハンド部33の把持アーム331,332に湿度センサを取り付けておき、その湿度センサを容器内の液体中に浸漬させ、あるいは液体に近接させて湿度を測ることで、液体が入っているか否かを判断し、その判断結果により、液体が残っていないことが確認されたときには、当該不透明の紙パックなどの容器であっても、移動可能とすることができる。
【0085】
[実施形態における掃除動作時の処理の説明]
この実施形態においては、使用者は、電気掃除機10の操作部105を通じて掃除開始指示操作をする。すると、電気掃除機10及びサーバ装置40において、以下に説明するような処理動作が実行される。
【0086】
図5及び図6は、この時の電気掃除機10における処理動作の流れの例を説明するためのフローチャートである。また、図7は、サーバ装置40の処理動作の流れの例を説明するためのフローチャートである。
【0087】
まず、図5及び図6を参照して、電気掃除機10の処理動作について説明する。なお、以下の説明は、制御部101が、吸引制御部102、走行制御部103、送信画像情報生成部107、受信情報解析部108、非掃除対象物検出部111、制御信号生成部113の機能をソフトウエア機能として実行する場合としている。
【0088】
制御部101は、掃除開始指示操作がなされたか否か判別して、掃除開始指示操作がなされるのを待つ(ステップS101)。ステップS101で、掃除開始指示操作がなされたと判別したときには、制御部101は、吸引駆動部121及び走行駆動部122を駆動開始させると共に、カメラ21~24のそれぞれに対して画像の撮像開始を指示する。さらに、無線通信部106によりサーバ装置40との通信路を生成する(ステップS102)。
【0089】
そして、制御部101は、掃除動作中のカメラ21~24のそれぞれからの撮像画像を収集して、送信画像情報を生成してサーバ装置40に送信をする準備をする(ステップS103)。
【0090】
次に、制御部101は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像について、掃除対象物以外の非掃除対象物を、前述したように、大きさや輝度に基づいて検出する処理を行う(ステップS104)。そして、制御部101は、掃除対象物以外の非掃除対象物の存在を検出したか否か判別し(ステップS105)、非掃除対象物の存在を検出していないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS103に戻し、このステップS103以降の処理を繰り返す。
【0091】
また、ステップS105で、非掃除対象物の存在を検出したと判別したときには、走行制御部103を通じて走行駆動部122に、一時停止指示信号を供給して、掃除動作を一時停止すると共に、ステップS103で準備した送信画像情報をサーバ装置40に送信する(ステップS106)。この時、この実施形態では、制御部101は、吸引制御部102を通じて吸引駆動部121を制御して、吸引力を少なくして、消費電力を低減させるようにする。なお、この吸引駆動部121の制御は行わなくてもよい。
【0092】
次に、制御部101は、サーバ装置40からの制御指示情報を受信したか否か判別する(ステップS107)。このステップS107で、サーバ装置40からの制御指示情報を受信したと判別したときには、制御部101は、受信した制御指示情報と、掃除エリア内自位置検出部110で検出された掃除エリア内における自位置と、掃除エリア地図データ記憶部109の掃除エリアの情報とに基づいて、制御信号を生成する(ステップS108)。
【0093】
すなわち、ステップS108では、次のような処理を行う。制御指示情報が「回避」であるときには、その「回避」処理を行うための制御信号を生成する。また、制御指示情報が移動で移動態様が「ピックアップ」であるときには、その「ピックアップ」の移動処理を行うための制御信号を生成する。この制御信号には、マニピュレータ30用の制御信号と、走行駆動部122への制御信号が含まれる。さらに、制御指示情報が移動で移動態様が「押す」であるときには、掃除エリア内の自位置が、掃除エリア地図データ記憶部109の掃除エリアのコーナーに位置しているか否か判別し、コーナーに位置していなければ、「押す」移動処理を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、走行駆動部122の制御信号からなる。しかし、非掃除対象物をマニピュレータ30で掴んで押す場合には、マニピュレータ30に供給する制御信号を含む。また、非掃除対象物がコーナーに位置していれば、「押す」移動処理を行わずに、「回避」処理を行うための制御信号を生成する。この制御信号は、走行駆動部122の制御信号からなる。
【0094】
このステップS108に次ぎには、制御部101は、制御信号は、移動処理に関するものか、回避処理に関するものかを判別する(ステップS109)。このステップS109で、移動処理に関するものであると判別したときには、制御部101は、移動態様は「ピックアップ」か否か判別する(図6のステップS121)。
【0095】
このステップS121で、移動態様は、「ピックアップ」ではなく、「押す」であると判別したときには、制御部101は、検出した非掃除対象物を押して、前述したように、掃除エリアにおいて、掃除の邪魔にならない、例えば所定のコーナーなどの予め定めた位置に、移動させる(ステップS122)。この「押す」移動処理においては、前述したように、マニピュレータ30により非掃除対象物の一部を掴んだ状態で、電気掃除機10の本体で「押す」動作をしてもよいし、電気掃除機10本体だけで、「押す」動作をするようにしてもよい。なお、この「押す」動作をする際に、制御部101は、カメラ21~24の撮像画像を参照して、他の非掃除対象物を確認しながら移動させるようにする。
【0096】
この「押す」移動処理により、非掃除対象物を掃除の邪魔にならない所定の位置に移動させた後には、制御部101は、走行駆動部122を制御して、掃除用の自走を再開し、掃除動作を再開する(ステップS123)。なお、この時、吸引駆動部121の吸引力を少なくしていたときには、掃除動作時の吸引力に戻すように吸引駆動部121を制御する処理も合わせて行う。また、ステップS123では、撮像画像情報のサーバ装置40への送信を停止する。
【0097】
次に、ステップS121で、移動態様は、「ピックアップ」であると判別したときには、制御部101は、当該「ピックアップ」の移動を行う前のカメラ21~24の撮像画像を、その時の自位置の情報と対応付けると共に、非掃除対象物IDとも対応付けて、位置画像記憶部112に記憶する(ステップS124)。
【0098】
次に、制御部101は、「ピックアップ」の移動処理を実行する(ステップS125)。すなわち、この時の制御信号は、マニピュレータ30を制御する制御信号であると共に、マジックハンド部33の把持アーム331,332により非掃除対象物を把持するように、走行駆動部122の走行制御するための制御信号も含まれる。すなわち、制御部101は、マニピュレータ30の伸縮摺動リンク機構部31の伸縮摺動駆動部を制御して、伸縮摺動リンク部31bの長さを、非掃除対象物を把持するのに適した位置まで伸縮させる。そして、制御部101は、マニピュレータ30の回動リンク機構部32の回動駆動部を制御して、マジックハンド部33の位置が、非掃除対象物を把持するのに適した位置となるように回動アーム部32bを回動させる。そして、マジックハンド部33の把持アーム駆動部を制御して、非掃除対象物を把持するように制御する。
【0099】
そして、制御部101は、ピックアップ後の非掃除対象物の存在しない当該位置におけるカメラ21~24の撮像画像に、非掃除対象物が存在していた位置にマークを施した画像を、位置画像記憶部112に記憶する(ステップS126)。
【0100】
次に、制御部101は、走行駆動部122を制御して、ピックアップした非掃除対象物を後で元に戻すために再度のピックアップが可能な位置であって、掃除の邪魔にならない位置にまで運ばせ、その位置で把持アーム331,332による非掃除対象物の把持を解放し、非掃除対象物を所定の位置まで移動する(ステップS127)。次に、制御部101は、処理をステップS123に進め、走行駆動部122を制御して掃除時の走行状態に戻し、掃除動作を再開する。
【0101】
ステップS123の次には、制御部101は、例えばリモコン送信機からの掃除停止指示を受けたなど、操作部105を通じて掃除動作停止指示があったか否かを判別する(ステップS128)。このステップS128で、掃除動作停止指示は受けていないと判別したときには、制御部101は、掃除範囲の全ての掃除を完了したか否かにより、掃除の終了を検知したか否か判別し(ステップS129)、掃除の終了を検知していないときには、処理をステップS103に戻し、送信画像情報を生成して、サーバ装置40に無線送信しながら、掃除動作を継続するようにする。
【0102】
そして、ステップS128で、掃除動作停止指示は受けたと判別したときには、制御部101は、位置画像記憶部112に記憶されているピックアップした非掃除対象物についてのピックアップ位置と、そのピックアップの前後の撮像画像を用いて、ピックアップした非掃除対象物を元の位置に戻す処理を行う(ステップS130)。すなわち、ピックアップした非掃除対象物を移動した位置に電気掃除機10を走行移動させて、非掃除対象物をピックアップし、その後、元の位置まで走行移動して、マジックハンド部33の把持アーム331,332における把持を解放して、元の位置に再配置する。このとき、撮像画像に付与されているマークを頼りに、元の位置を確認することが容易にできる。
【0103】
ピックアップして移動した非掃除対象物のすべてを、元の位置に戻す処理が終了したら、制御部101は、吸引駆動部121及び走行駆動部122の駆動を停止させると共に、カメラ21~24のそれぞれに対して画像の撮影停止を指示する。さらに、サーバ装置40との通信路を切断する(ステップS131)。このステップS131で、この処理ルーチンは終了となる。
【0104】
ステップS129で、掃除の終了を検知したときにも、制御部101は、処理をステップS130に進め、ピックアップした非掃除対象物を元の位置に戻す処理をした後、ステップS131に進み、吸引駆動部121及び走行駆動部122の駆動を停止させると共に、カメラ21~24のそれぞれに対して画像の撮影停止を指示し、さらに、サーバ装置40との通信路を切断する。
【0105】
この実施形態では、サーバ装置40は、非掃除対象物の画像認識を画像登録メモリ404に記憶されている画像情報との比較によるマッチング処理により行うため、電気掃除機10で非掃除対象物を検出した場合にも、その非掃除対象物をサーバ装置40では画像認識できない場合がある。この実施形態ではその点を考慮して、次のようにしている。
【0106】
すなわち、図5のステップS107でサーバ装置40からの制御指示情報を受信していないときには、制御部101は、走行を一時停止してから予め定めた一定時間が経過したか否か判別する(ステップS110)。そして、このステップS110で一定時間は経過していないと判別したときには、制御部101は、処理をステップS107に戻し、このステップS107以降の処理を繰り返す。
【0107】
また、ステップS110で、一定時間が経過したと判別したときには、制御部101は、走行駆動部122を制御して、掃除用の自走の一時停止を解除し、検出した非掃除対象物を回避する移動ルートで掃除を実行するようにして掃除動作を再開する(ステップS111)。
【0108】
この時の非掃除対象物を回避する場合における走行駆動部122の走行駆動制御態様としては、例えばカメラ21~24の撮像画像を参照しながら、検知した非掃除対象物を回避するように、「走行駆動右折」、「走行駆動左折」、あるいは「走行駆動前進」、「走行駆動後進」、さらに「走行駆動停止して右回転」、「走行駆動停止して左回転」など、多様な態様で走行駆動制御するようにする。この非掃除対象物を回避するように走行制御する場合には、吸引駆動部121の吸引駆動制御は、合わせて行っても、また、行わなくてもよい。そして、回避動作が終了したら、吸引駆動部121の吸引力を少なくする制御をしていたときには、掃除動作時の吸引力に戻すように吸引駆動部121を制御する処理を行う。そして、このステップS110の次には、制御部101は、処理をステップS128に進め、上述したこのステップS128以降の処理を繰り返す。
【0109】
また、図5のステップS109で、回避処理に関するものであると判別したときには、制御部101は、処理をステップS111に進め、上述したように、走行駆動部122を制御して、掃除用の自走の一時停止を解除し、検出した非掃除対象物を回避する移動ルートで掃除を実行するようにして掃除動作を再開する処理を行う。
【0110】
以上で、電気掃除機10での掃除動作時の処理は終了となる。
【0111】
次に、図7を参照して、サーバ装置40の処理動作について説明する。
まず、サーバ装置40は、電気掃除機10から、通信路の生成要求を受信したか否か判別し(ステップS201)、通信路の生成要求を受信したと判別したときには、無線通信路50を通じた電気掃除機10との通信路を生成する(ステップS202)。
【0112】
次に、サーバ装置40は、生成された無線通信路を通じて電気掃除機10から送られてくる撮像画像情報を受信したか否か判別して(ステップS203)、撮像画像情報の受信を待つ。そして、このステップS203で、電気掃除機10からの撮像画像情報を受信したと判別したときには、サーバ装置40は、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像情報を分離して取得し、カメラ21~24のそれぞれからの撮像画像と、画像登録メモリ404に記憶されている非掃除対象物の画像とのパターンマッチングによる比較により画像認識処理を実行する(ステップS204)。そして、サーバ装置40は、ステップS204での画像認識の結果、非掃除対象物を認識したか否か判別する(ステップS205)。
【0113】
そして、ステップS205で、画像認識の結果、非掃除対象物を認識したと判別したときには、サーバ装置40は、画像登録メモリ404を参照して、認識した非掃除対象物は、電気掃除機10で移動可能か否か判別する(ステップS206)。このステップS206で、移動可能であると判別したときには、画像登録メモリ404を更に参照すると共に、撮像画像記憶部402に記憶されている画像を参照して、制御指示情報を生成して、電気掃除機10に送信する(ステップS207)。すなわち、ビンやグラスなどの液体の入れ物については、移動可能であるとされたときにも、撮像画像により液体が入っているか否か判断する。そして、ビンやグラスに液体が入っているときには、移動処理に失敗した場合などのときに、中身の液体をこぼしてしまう恐れがあるので、サーバ装置40は、回避処理と判定して、そのことを指示する制御指示信号を生成する。その他の場合には、この実施形態では、サーバ装置40は、画像登録メモリ404に記憶されている情報に従って制御指示信号を生成する。
【0114】
ステップS207の後、サーバ装置40と電気掃除機10の通信路切断を検知したか否かを判別する(ステップS209)。このステップS209で、通信路切断を検知したときには、この処理ルーチンは終了となる。このステップS209で、通信路切断を検知しなかったときには、ステップS203に戻り、このステップS203以降の処理を繰り返す。
【0115】
ステップS205で、非掃除対象物を認識していないと判別したときには、サーバ装置40は、処理をステップS209に進め、上述したこのステップS209以降の処理を繰り返す。
【0116】
また、ステップS206で、画像登録メモリ404を参照した結果、移動不可であると判別したときには、サーバ装置40は、回避処理を指示する制御指示信号を生成して、電気掃除機10に送信する(ステップS208)。そして、サーバ装置40は、処理をステップS209に進め、上述したこのステップS209以降の処理を繰り返す。
【0117】
[実施形態の効果]
以上のようにして、上述の実施形態の自走式電気掃除装置においては、掃除動作中に、非掃除対象物を検出したときには、その非掃除対象物が電気掃除機10により移動可能であるか否かを判断して、移動可能であれば、移動を実行して掃除エリアから取り除き、掃除動作を行うことができる。したがって、掃除エリア内に、従来掃除の障害となっていた非掃除対象物があっても、そのエリアを未掃除領域とすることなく、掃除を行うことができる。すなわち、従来掃除できなかった領域まで掃除ができるようになり、掃除領域が拡大できる。
【0118】
しかも、上述の実施形態では、非掃除対象物非掃除対象物は、掃除の邪魔にならない場所に移動させるようにしているので、掃除をスムーズにすることができる。
【0119】
また、上述の実施形態では、掃除終了後に、移動させていた非掃除対象物を元の位置に戻すようにしているので、非掃除対象物が移動されることにより、使用者が、当該非掃除対象物の所在が分からなくなるという不都合はない。
【0120】
また、上述の実施形態では、検出された非掃除対象物が移動可能であっても、液体が入っているなど、移動に支障を来す場合には、それを撮像画像から判断して、移動しないように決定するので、移動の際に液体をこぼして汚してしまうという事態を防止することができる。
【0121】
また、上述の実施形態では、検出された非掃除対象物が移動可能であっても、検出された場所が「押す」などの指定された移動態様によっては、掃除エリア地図と、自装置の位置とから移動が不可であると判断できる場合には、移動をしないように決定するので、無駄な処理をすることがないという効果がある。
【0122】
[上述の実施形態の変形例]
なお、上述した図5及び図6の処理例においては、電気掃除機10の非掃除対象物検出部111で非掃除対象物を検出したときにのみ、サーバ装置に撮像画像情報を供給するようにしたが、掃除動作中には、常時、撮像画像情報をサーバ装置に送信するようにしてもよい。そして、電気掃除機10から、掃除動作中には、常時、撮像画像情報をサーバ装置に送信する場合には、サーバ装置が、画像認識により非掃除対象物の検出処理も行って、その非掃除対象物の検出出力を電気掃除機10に送信するようにすることで、電気掃除機10では、非掃除対象物検出部111を設けなくてもよい。
【0123】
また、上述の実施形態の自走式電気掃除装置においては、自走式の電気掃除機10が非掃除対象物の存在を認識したときには、走行駆動部による走行を一時停止して掃除動作を中止するようにしたが、走行を停止するのではなく、減速して掃除動作を継続しながら、サーバ装置40からの制御指示情報の到来を待ち、受信した制御指示情報に基づく移動処理を行い、移動処理動作終了後、元の速度で掃除動作を行うようにすることもできる。また、減速せず、等速のまま掃除動作を継続しながら、移動処理を行うこともできる。なお、非掃除対象物の種類によって、一時停止、減速、等速を走行駆動部で制御するようにしてもよい。
【0124】
また、掃除動作中に、画像を用いて非掃除対象物を認識した際に、走行制御部により走行駆動部を制御して、走行を一時停止または減速した後、認識した非掃除対象物の近傍で、電気掃除機を前後左右に走行駆動制御すると共に、種々の方向から、カメラで撮像するようにしてもよい。その場合には、その種々の方向からの複数の撮像画像を用いて画像認識することで、非掃除対象物の検出確度と、移動可能性の判断確度を上げることができるものである。
【0125】
また、同様にして、非掃除対象物をマニピュレータ30のマジックハンド部33により、当該非掃除対象物を掴み易い位置に電気掃除機を位置移動制御する場合にも、カメラの撮像画像を確認しながら、走行制御部により走行駆動部を制御して、認識した非掃除対象物の近傍で、電気掃除機を前後左右に走行駆動制御する。
【0126】
また、上述の実施形態では、移動した非掃除対象物を元に戻す処理のために、移動処理を実行した掃除エリア内の自位置を検出し、その自位置と対応付けて元の位置の撮像画像を記憶するようにしたが、移動処理を実行した位置に、自己発信型のマーカを、電気掃除機10が設置する(落とす)ようにしてもよい。この場合に、マーカは、電波や光、超音波などからなる発信信号を送信する。この発信信号は、各マーカを識別する識別情報が含まれる。電気掃除機10は、移動した非掃除対象物の識別情報とマーカの識別情報とを対応して記憶しておき、マーカからの発信信号を受信して、当該マーカの位置に移動することで、移動した非掃除対象物を元に戻す位置に到達して、対応する非掃除対象物を元に戻す処理をすることができる。
【0127】
また、上述の説明では、検出した非掃除対象物は、掃除エリアにおける掃除の邪魔にならない場所に移動するようにしたが、その移動場所は、電気掃除機10の上面10aであってもよい。その場合には、電気掃除機10の上面10aにかご状の収納箱を設けておくようにする。
【0128】
また、上述の実施形態では、サーバ装置がパーソナルコンピュータの場合として説明したが、パーソナルコンピュータの代わりに、いわゆるスマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話端末や、パッド型の携帯コンピュータを用いることもできる。
【0129】
また、上述の実施形態では、検出した非掃除対象物が移動不可であった場合には、その非掃除対象物を回避する動作だけをするようにしたが、その検出した移動不可の非掃除対象物を、例えばサーバ装置40の表示画面に表示すると共に、掃除エリア内に常駐させる非掃除対象物として登録するか否かを問い合わせるようにしてもよい。
【0130】
その場合には、サーバ装置40は、その問い合わせに対応して、使用者が当該非掃除対象物を登録すると指示入力した場合には、その旨を無線通信路50を通じて電気掃除機10に送る。電気掃除機10は、その非掃除対象物の識別情報により位置画像記憶部112を参照して、その位置を検出し、掃除エリア地図データ記憶部109の掃除エリア内の対応位置に、その非掃除対象物を記憶するようにする。
【0131】
このようにすれば、移動不可の非掃除対象物であって、掃除エリア内に常駐させようとしている物体を、掃除エリア地図データ記憶部109に容易に登録して記憶することができる。もっとも、その場合には、位置画像記憶部112には、移動した非掃除対象物のみならず、検出した全ての非掃除対象物の検出位置を記憶しておく必要がある。
【0132】
[他の実施形態]
上述の実施形態では、移動手段は、マジックハンドを用いたマニピュレータの構成として、非掃除対象物を把持してピックアップしたり、把持して押したりするようにした。しかし、マジックハンドは一例であり、マニピュレータの先端の構成は、把持アームのような形状に限られる訳ではなく、ペンチ、トング、箸などの形状であってもよい。また、移動手段は、非掃除対象物を押す手段、掴む及び掴んで持ち上げる手段に限られるものではない。例えば、引っ張る手段、掬い上げる手段(掬う手段及び持ち上げる手段)、気体を吹き付ける手段、左右に払う手段、引っ掛ける手段、粘着させる手段、磁石により吸着させて移動させる手段などを用いることも可能である。
【0133】
図8に、掬い上げる手段を備える電気掃除機の例を示す。この図8の例の電気掃除機10Aは、前述した電気掃除機10とは、移動手段が異なるだけで、その他は同様とされている。そこで、図8では、図1及び図2に示した電気掃除機10と同一部分には、同一参照符号を付して、その説明は省略する。
【0134】
図8(A)は、この例の自走式の電気掃除機10Aを、その上面10a側から見た図、図8(B)は、この例の自走式の電気掃除機10Aを、側面方向から見た図である。
【0135】
この例の電気掃除機10Aは、移動可能性の判断手段による判断結果に応じて制御される移動手段として、掬い上げる手段の構成を備える。この明細書では、この掬い上げる手段を、掬い上げ装置部と称することとする。
【0136】
すなわち、この例の掬い上げ装置部60は、電気掃除機10Aの左右の側面部に設けられる保持アーム機構部61L及び61Rと、これら左右の保持アーム機構部61L及び61Rで保持されるシャベル機構部62とからなる。
【0137】
図8(A)及び(B)に示すように、左右の保持アーム機構部61L及び61Rは、それぞれ、伸縮摺動リンク機構部63L及び63Rと、回動リンク機構部64L及び64Rとからなる。
【0138】
また、図9(A)及び(B)は、この例の移動手段としての掬い上げ装置部60を駆動した状態を説明するための図であり、それぞれこの例の自走式の電気掃除機10Aを、掬い上げ装置部60を駆動した状態で、その上面10a側から見た図、及び側面方向から見た図である。
【0139】
伸縮摺動リンク機構部63L及び63Rのそれぞれは、伸縮摺動基部63La及び63Raに、伸縮摺動リンク部63Lb及び63Rbがそれぞれ結合されたもので、伸縮摺動基部63La及び63Ra内に設けられる伸縮摺動駆動部(図示は省略)により、伸縮摺動リンク部63Lb及び63Rbのそれぞれが、電気掃除機10Aの筐体の側面に沿う方向に伸縮することができるように構成されている。そして、伸縮摺動基部63La及び63Ra内に設けられる伸縮摺動駆動部は、電気掃除機10Aが備える制御部101からの制御信号により制御されて、伸縮摺動リンク部63Lb及び63Rbが電気掃除機10Aの筐体の側面に沿って伸縮するように制御される。
【0140】
回動リンク機構部64L及び64Rのそれぞれは、回動基部64La及び64Raと、回動アーム部64Lb及び64Rbとからなる。回動基部64La及び64Raは、伸縮摺動リンク機構部63L及び63Rの伸縮摺動リンク部63Lb及び63Rbの先端に結合されて設けられている。回動アーム部64Lb及び64Rbは、回動基部64La及び64Raに対して、当該回動基部64La及び64Raを回動中心として回動するように取り付けられている。そして、回動基部64La及び64Ra内に設けられる回動駆動部は、電気掃除機10が備える制御部からの制御信号により制御されて、回動アーム部64Lb及び64Rbが、電気掃除機10Aの筐体の側面に沿う面内において、回動基部64La及び64Raを回動中心として、回動するように制御される。
【0141】
シャベル機構部62は、シャベル部62aと、保持アーム部62bとからなる。保持アーム部62bは、その左右の両端が、回動リンク機構部64L及び64Rの回動アーム部64Lb及び64Rbの先端に結合されている。そして、保持アーム部62bに対して、シャベル部62aが、保持アーム部62bの軸心位置を回動中心として回動可能に取り付けられている。
【0142】
以上のように構成される掬い上げ装置部60は、電気掃除機10の制御部101からの制御信号を受けて、伸縮摺動リンク機構部63L及び回動リンク機構部64Lを制御して、シャベル部62aを、図9(A)及び(B)に示すように、電気掃除機10Aの前方進行方向(図8及び図9において矢印ARで示す方向)に配置させる。そして、制御部101の制御による走行駆動部122の走行制御と、伸縮摺動リンク機構部63Lの伸縮摺動駆動制御により、非掃除対象物をシャベル部62aにより掬い上げ、その後、回動リンク機構部64Lにより、シャベル部62aに掬い上げた非掃除対象物を持ち上げるようにして、シャベル部62aを、図8(A)に示す状態に戻すことができる。
【0143】
この例の場合には、掬い上げる非掃除対象物は、例えば、図10に例示したように、封書・はがき、貴金属(宝石)、紙幣、メモリカード、鍵などの貴重品として、シャベル部62aに掬い上げた非掃除対象物は、掃除動作の終了後も、掃除エリア内の元の位置に戻さずに、シャベル部62aに保持しておくようにすることができる。また、書籍・雑誌・新聞、書類などは、重かったり、嵩張ったりするので、シャベル部62aに掬い上げた後、シャベル部62aに保持せず、掃除動作の邪魔にならない所定の場所に移動させるようにすることができる。
【0144】
この発明においては、他の移動手段として、以上説明したような掬い上げる手段以外にも、前述したように、気体を吹き付ける手段を用いることができる。この気体を吹き付ける手段は、別途空気噴出手段を設置し構成することができるが、新たな手段を設けなくても、自走式の電気掃除機の掃除動作中の排気手段で構成することができる。この排気手段を利用する場合は、排気手段の排気噴出口を非掃除対象物の方向に向けるよう、電気掃除機10を走行駆動部122が回転制御するようにする。なお、この場合に対象となる非掃除対象物は、例えばレジ袋、ビニール袋やティッシュペーパーなどの軽量なものとされ、電気掃除機は、排気を強力に噴射できるように構成してもよい。
【0145】
また、移動手段としての左右に払う手段は、例えばブラシ状の部材を、掃除動作時には、掃除面から離れた状態となり、左右に払う動作を行うときには、掃除面に若干圧接するような状態となるように、電気掃除機に取り付ける。そして、この左右に払う手段を構成するブラシにより、例えば小型の非掃除対象物を左右に払って移動させるようにする。
【0146】
次に、引っ掛ける手段は、例えば前述したマニピュレータのマジックハンド部33の把持アームの代わりに、フック手段を設ける構成とすることができる。この引っ掛ける手段の場合には、カメラの撮像画像により、例えばレジ袋、ビニール袋、紙袋などの持ち手の位置を確認して、その持ち手部分を上記のフック手段により引っ掛けて、そのまま、あるいは釣り上げて、移動させるようにすることができる。
【0147】
なお、この場合に、レジ袋、ビニール袋、紙袋、などが空であるか、中身が入っているかを、例えばカメラの撮像画像から判断して、空であると判断したときに、引っ掛ける手段により引っ掛けて移動させるようにする。ただし、紙袋などは不透明であって、中身が入っているかどうか、確認することが困難である。このことを考慮して、紙袋は初期的には、移動不可と判断するようにしてもよいが、例えば、撮像画像からレジ袋、ビニール袋、紙袋などの凹凸や、いびつさなどの形状そのものに基づいて中身が入っているか否かを判断したり、紙袋に触ってみて触覚センサにより中身が入っているか否か判断したり、一旦、引っ掛ける手段により引っ掛けて釣り上げ、その重量を重量センサで計測して、中身が入っているか否かを判断したりするようにしてもよい。
【0148】
次に、粘着手段は、例えば前述したマニピュレータのマジックハンド部33の把持アームの代わりに、粘着物により非掃除対象物を粘着させる手段を設ける構成とすることができる。この粘着手段を移動手段として用いる場合の非掃除対象物は、粘着物の粘着力にもよるが、レジ袋や、ビニール袋、DM(ダイレクトメール)、新聞広告、チラシなどの比較的軽いものとされる。
【0149】
次に、磁石により吸着させて移動させる磁石手段としては、小型ネオジウム磁石やフェライト磁石などの永久磁石を、電気掃除機の筐体の掃除面と対向する面に設ける構成と、同様の位置に、コアにコイルを巻回した電磁石を配設する構成とが可能である。磁石により吸着させて移動させる手段を用いる場合には、金属からなるネジ、釘、ピン、クリップなどを吸着して掃除エリアから排除しながら、自走式の電気掃除機により掃除動作を行うことができる。
【0150】
なお、非掃除対象物に、磁気カード(磁気ストライプの入ったキャッシュカードやクレジットカード)、時計、携帯電話端末、ビデオテープ、音楽カセットテープなどが含まれる家庭用の電気掃除装置などの場合には、前者の永久磁石を用いた構成は好ましくない。これらの磁気の影響を受ける物を非掃除対象物に含むことが予想される掃除エリアでは、磁気的に吸着可能な非掃除対象物を検出したときにのみ、コイルに電流を流して動作させるようにする電磁石を用いるようにする。
【0151】
また、鉄くずやネジ、ボルト、釘などの非掃除対象物が床に落ちている可能性が高い製造工場などで清掃作業を行う業務用の電気掃除装置の場合は、磁気の影響の心配をせずに、強力なネオジウム磁石を用いるようにしてもよい。
【0152】
なお、電気掃除機が備える移動手段としては、上述した各種の手段のうちの一つを用いる場合のみではなく、二つ以上の移動手段を組み合わせるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0153】
また、上述の実施形態では、非掃除対象物の検出手段は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを用いた撮像部で撮像した画像情報を画像認識するようにすることによって行うようにしたが、例えば光電センサ、赤外線センサ、超音波センサ、触覚センサ、バイオセンサ、においセンサ、金属探知センサ、静電容量センサ、磁気センサ、温度センサ、湿度センサ、重量センサなど、他のセンサを用いるようにしてもよい。また、撮像部と、上述のセンサとを併用することで、非掃除対象物の認識(検出)を行うようにしてもよい。さらに、イメージセンサ、光電センサ、赤外線センサ、超音波センサ、触覚センサ、バイオセンサ、においセンサ、金属探知センサ、静電容量センサ、磁気センサ、温度センサ、湿度センサ、重量センサなどの二つ以上を用いて、非掃除対象物を検出するようにしてもよい。
【0154】
また、上述の実施形態においては、自走式の電気掃除機とサーバ装置とは、近距離無線通信方式などの無線通信路を通じて接続するようにした。しかし、この発明の自走式電気掃除装置は、自走式の電気掃除機と、インターネット上のサーバ(クラウド)を用いて、構成するようにしてもよい。
【0155】
また、この発明の自走式電気掃除装置は、自走式の電気掃除機が、サーバ装置40の機能をも備えることで、当該自走式の電気掃除機だけで構成することができる。その場合には、図1の例における非掃除対象物検出部111を省略して、画像認識部が、当該非掃除対象物検出部111の機能を併せ持つように構成することができる。
【0156】
[その他の実施形態又は変形例]
なお、以上の説明は、主として、家庭用の電気掃除装置を想定して説明したが、工場や商店、飲食店などで使用する業務用の電気掃除装置にも適用することができるものであることは言うまでもない。
【0157】
以上、図面を参照しながらこの発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、この発明はかかる例に限定されない。この発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然にこの発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0158】
10…自走式の電気掃除機、11…吸い込み口、14…集塵室、21~24…カメラ、30…マニピュレータ、40…サーバ装置、50…無線通信路、101…制御部、121…吸引駆動部、122…走行駆動部、403…画像認識部、404…画像登録メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10