(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005228
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/083 20230101AFI20230111BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
B65G61/00 544
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107006
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘基
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
(57)【要約】
【課題】荷主や輸送業者等が希望する各物品の輸送品質を確保するために、輸送ルートの適切な変更を可能にする物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムを提供する。
【解決手段】特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートR1~R5を自動的に生成し、予め用意した複数種類の輸送品質条件P1~P5の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択し、生成された複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位L1~L5を表す情報と共に提示する。様々な種類の小口の物品が混在する状態で、様々な配送先へ配送する場合であっても、それぞれの輸送業者や荷主等が重視する品質の条件P1~P5に合わせて、適切な配送予定ルートを容易に決定できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する物品配送支援装置であって、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示部と、
を備える物品配送支援装置。
【請求項2】
前記配送ルート生成部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントのそれぞれを優先する複数種類の探索条件に従って、前記複数の配送ルートをそれぞれ生成し、
前記品質条件選択部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントの中の1つを優先する条件を、前記特定品質条件として選択する、
請求項1に記載の物品配送支援装置。
【請求項3】
前記配送ルート生成部は、対象車両が輸送する物品の中に温度管理を必要とする保冷物品が含まれている場合には、所定の保冷条件を満たす別の配送ルートを生成する、
請求項2に記載の物品配送支援装置。
【請求項4】
前記配送ルート生成部は、選択された配送ルート上を走行中の前記対象車両から当該対象車両の位置情報を取得し、当該配送ルートに基づく配送計画と当該位置情報との比較の結果、前記保冷物品に対する前記保冷条件が満たされなくなった場合には、当該保冷条件を満たすよう配送ルートを再生成する、
請求項3に記載の物品配送支援装置。
【請求項5】
物品の配送を発注する荷主が利用可能な荷主端末と、
前記物品の配送先の顧客が利用可能な顧客端末と、
前記物品を輸送する車両に搭載された車載器と、
前記物品の輸送を管理すると共に、前記荷主端末、前記顧客端末、及び前記車載器との間で通信が可能な管理装置と、
を含む物品配送支援システムであって、
前記管理装置は、
互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中から、ユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示部と、
を備える物品配送支援システム。
【請求項6】
互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する管理装置のコンピュータが実行可能な物品配送支援プログラムであって、
前記コンピュータに、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成手順と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択手順と、
生成された複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示手順と、
を実行させる物品配送支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの車両を用いて様々な物品を輸送する物流業界においては、近年では、電子商取引(EC)市場の拡大に伴って小口の物品配送が増加する傾向にある。したがって物流業界では、小口の物品配送における配送コストを低減することが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1は輸送中の物品の平常時や異常発生時に物品の所在位置、安全性、保全性の確認ができ、異常発生時には迅速な対応ができる物品輸送管理方法およびシステムを開示している。
【0004】
また、特許文献2には、荷物の輸送に対する基本的な要求だけではなく、荷主の付加的要求を加味した輸送業者の選定を可能にする求貨求車システムが開示されている。具体的には、荷主がサービスを利用する際に、最新の輸送品質結果情報に基づいて輸送業者の選定を行い、荷主に対して適正な輸送品質を有する輸送業者を提案することができる。
【0005】
特許文献3には、小ロットの商品の配送コスト低減、効率化に貢献する物流管理システムが開示されている。この物流管理システムは、配送車の位置と配送車の荷台の空き状況を含む運行状況情報を管理する第1のデータベースと、倉庫の位置と倉庫内の商品の在庫状況を管理する第2のデータベースと、に接続可能である。また、顧客からの注文に基づいて、第2のデータベースから、顧客から注文を受けた商品を在庫している倉庫のうち、商品の配送先の近傍に位置する倉庫を選択する倉庫選択部と、第1のデータベースから、倉庫選択部にて抽出された倉庫の近傍に位置する配送車であって、荷台に空きのある配送車を選択する車両選択部と、車両選択部にて選択された配送車に対し、顧客からの注文に基づいた配送を依頼する配送依頼部と、を備える。また、顧客の注文した商品を保管している倉庫が複数ある場合も、これらの倉庫とその最寄りの車両の組み合わせから、走行距離zを最も短くできるものが選択され、Eコマース等で注文された商品の配送コストの低減が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-159394号公報
【特許文献2】特開2020-170378号公報
【特許文献3】特開2020-187620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば特許文献3の物流管理システムは、車両の走行距離を短くするという分かり易い部分だけに着目しているが、実際の小口の物流においては複雑な課題がある。例えば、同一の車両で、日用品、生鮮食品、医薬品などの物品が混在する状態で輸送しなければならない場合がある。
【0008】
その場合、多数の配送先に対して全体の走行距離が最短になることを優先して車両の配送ルートを決めると、生鮮食品の配送先が配送ルートの後ろの方に設定され、生鮮食品が配達されるまでの時間が長くかかる場合がある。これにより、生鮮食品の鮮度低下、すなわち輸送品質の低下が発生する。また、ごく少量の生鮮食品を輸送するだけのために保冷環境の整っている特別な車両を使用すると、無駄が多くなるので輸送コストが増大する。つまり、環境に依存して品質が変化する可能性のある様々な物品が混在している状態で輸送する場合には、輸送コストを重視すると輸送品質が低下してしまう可能性があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷主や輸送業者等が希望する各物品の輸送品質を確保するために、輸送ルートの適切な変更を可能とする物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係る物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムは、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1) 互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する物品配送支援装置であって、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示部と、
を備える物品配送支援装置。
【0011】
(2) 前記配送ルート生成部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントのそれぞれを優先する複数種類の探索条件に従って、前記複数の配送ルートをそれぞれ生成し、
前記品質条件選択部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントの中の1つを優先する条件を、前記特定品質条件として選択する、
上記(1)に記載の物品配送支援装置。
【0012】
(3) 前記配送ルート生成部は、対象車両が輸送する物品の中に温度管理を必要とする保冷物品が含まれている場合には、所定の保冷条件を満たす別の配送ルートを生成する、
上記(2)に記載の物品配送支援装置。
【0013】
(4) 前記配送ルート生成部は、選択された配送ルート上を走行中の前記対象車両から当該対象車両の位置情報を取得し、当該配送ルートに基づく配送計画と当該位置情報との比較の結果、前記保冷物品に対する前記保冷条件が満たされなくなった場合には、当該保冷条件を満たすよう配送ルートを再生成する、
上記(3)に記載の物品配送支援装置。
【0014】
(5) 物品の配送を発注する荷主が利用可能な荷主端末と、
前記物品の配送先の顧客が利用可能な顧客端末と、
前記物品を輸送する車両に搭載された車載器と、
前記物品の輸送を管理すると共に、前記荷主端末、前記顧客端末、及び前記車載器との間で通信が可能な管理装置と、
を含む物品配送支援システムであって、
前記管理装置は、
互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中から、ユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示部と、
を備える物品配送支援システム。
【0015】
(6) 互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する管理装置のコンピュータが実行可能な物品配送支援プログラムであって、
前記コンピュータに、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成手順と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択手順と、
生成された複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示手順と、
を実行させる物品配送支援プログラム。
【0016】
上記(1)の構成の物品配送支援装置によれば、荷主あるいは運送業者等のユーザは、推奨配送ルート提示部が提示した複数の配送ルートの中から1つの配送ルートを選択できる。しかも、ユーザ自身の選択により決定された特定品質条件に従う推奨順位の情報も提示されるので、ユーザは希望する輸送品質条件が得られるように適切な配送ルートを容易に選択できる。
【0017】
上記(2)の構成の物品配送支援装置によれば、距離の条件を優先する場合、所要時間の条件を優先する場合、及びライフサイクルアセスメントの条件を優先する場合、のいずれをユーザが希望する場合でも、その希望に合わせて前記特定品質条件を選択すれば、複数の配送ルートが希望と一致する適切な順位で提示されるので、希望する輸送品質が得られる配送ルートを容易に選択できる。
【0018】
上記(3)の構成の物品配送支援装置によれば、輸送対象の物品の中に保冷物品が含まれている場合には、輸送中の保冷物品の品質低下を防止するのに適した新たな配送ルートが容易に選択可能になる。
【0019】
上記(4)の構成の物品配送支援装置によれば、事前に配送計画で決定した配送予定ルートに従って実際に配送を開始した後、道路工事や渋滞などの予期しない道路事情の影響で、輸送品質が低下する可能性がある場合には、輸送中に適切な配送ルートに自動的に変更できる。
【0020】
上記(5)の構成の物品配送支援システムによれば、管理装置を使用する荷主あるいは運送業者等のユーザは、推奨配送ルート提示部が提示した複数の配送ルートの中から1つの配送ルートを選択できる。しかも、ユーザ自身の選択により決定された特定品質条件に従う推奨順位の情報も提示されるので、ユーザは、希望する輸送品質条件が得られるように適切な配送ルートを容易に選択できる。また、管理装置は前記車載器との間で通信できるので、輸送品質に影響を及ぼす輸送中の温度等の環境条件や、配送ルート上の各地点の環境条件を把握することが容易になる。更に、輸送中の実際の環境条件の情報を荷主端末や顧客端末に通知することも可能になる。
【0021】
上記(6)の構成の物品配送支援プログラムによれば、コンピュータで実行されることにより、荷主あるいは運送業者等のユーザは、推奨配送ルート提示手順により提示された複数の配送ルートの中から1つの配送ルートを選択できる。しかも、ユーザ自身の選択により決定された特定品質条件に従う推奨順位の情報も提示されるので、ユーザは、希望する輸送品質条件が得られるように適切な配送ルートを容易に選択可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムによれば、荷主や輸送業者等が希望する各物品の輸送品質を確保するために、輸送ルートの適切な変更が可能になる。
【0023】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る物品配送支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、注文処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、配送計画処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ルート決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、生成した複数の配送ルートと優先指定項目と推奨レベルとの関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、輸送中処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る物品配送支援システム100の構成を示すブロック図である。
【0027】
物品配送支援システム100は、例えば一般の様々な消費者がインターネット上のWebサービスを利用して購入した商品などの物品を、各店舗の倉庫から、所望の輸送・配送業者を経由して各消費者の配送先まで輸送したり、卸業者の倉庫から小売業者の各店舗まで所望の輸送・配送業者を経由して輸送する場合のような物品配送を支援するために利用できる。
【0028】
また、基本的には輸送する複数の物品がそれぞれ小口であるので、例えば各種日用品、生鮮食品を含む各種食料品、医薬品のような様々な種類の物品が同時に混在する状態で、1台のトラック車両に積載され輸送される。したがって、各トラック車両の配送ルートは、様々な顧客がそれぞれ指定した様々な配送先のそれぞれを順番に経由するように逐次決定する必要がある。
【0029】
また、各トラック車両の配送ルートは、配送コストを低減するために効率的な配送ができるように決める必要があるので、通常は各トラック車両の走行距離や顧客の指定時間を考慮して決定される。
【0030】
さらに、輸送する物品の中に生鮮食品等が含まれている場合には、輸送に時間がかかると鮮度が低下するおそれがあるため、ある程度の温度管理が必要となる。また、輸送中に大きな振動が加わると故障や機能低下などが発生しやすい物品が含まれる場合もある。しかし、このような物品は、温度や振動の管理を必要としない一般の物品と同時に輸送されることが多いため、保冷機能や振動対策を施した専用の輸送車両を用いて配送する場合には、これらの輸送車両の運行に関するコストが無駄にかかることになる。
【0031】
また、様々な物品を輸送する際に必要とされる品質については、荷主、顧客、あるいは輸送業者毎にそれぞれ異なる場合が多いので、特に種類が異なる多数の物品を同じトラック車両に混載した状態で輸送する場合には、配送ルートの決定は非常に難しい。そこで、詳細については後述するが、
図1に示した物品配送支援システム100は、配送ルートの決定を支援するための機能も搭載している。
【0032】
図1に示すように、物品配送支援システム100は、Webサーバ10、荷主端末21、輸送事業者端末22、顧客端末23、及び車載器24を含んでいる。荷主端末21、輸送事業者端末22、及び顧客端末23のそれぞれは、例えば通信が可能な一般的なパーソナルコンピュータにWebサーバ10のサービスを利用するためのソフトウェアを組み込むことにより実現できる。
【0033】
Webサーバ10は、例えば所定のデータセンタに設置されたコンピュータシステムにより構成され、インターネットと接続されている。また、Webサーバ10は、様々なWebサービスを利用するためのWEB-API(Application Programming Interface)を含んでおり、様々な端末との間で通信可能に構成されている。また、物品配送支援システム100の主要な機能を実現する各種のソフトウェアは、Webサーバ10に組み込まれている。
【0034】
荷主は、荷主端末21を利用して、インターネットを経由してWebサーバ10と接続し、物品配送支援システム100の各種機能を利用することができる。また、輸送事業者は、輸送事業者端末22を利用し、インターネットを経由してWebサーバ10と接続し、物品配送支援システム100の各種機能を利用することができる。互いに関連付けられた荷主及び輸送事業者は、Webサーバ10を介して各種データを共有することができ、これにより迅速なトラブル対応が可能になる。
【0035】
具体例として、荷主及び輸送事業者は、Webサーバ10を利用して、輸送中の荷物をリアルタイムで監視することができる。この監視機能の中には、異常発生などの様々な情報を自動的に通知する機能、車両すなわち荷物の位置情報を地図表示により出力する機能、荷物の累積温度を監視する機能、多チャンネルの情報を監視する機能などが含まれている。
【0036】
各荷物の納入先(配送先)である小売業者や一般の消費者等は、顧客端末23を利用して、インターネットを経由してWebサーバ10と接続し、物品配送支援システム100の各種機能を利用することができる。具体的には、購入した物品のトレーサビリティを可視化した状態で提供するサービスを利用できる。また、購入品の管理状況の照会機能や、荷物追跡サービスなどが利用できる。また、荷物の位置情報、センサ履歴、輸送事業者における過去の運送成績などのデータを参照できる。
【0037】
輸送・配送事業者は、輸送車両25に搭載して運搬する各荷物26を可搬ボックスの中に収容した状態で可搬ボックス単位で管理している。また、
図1に示すように複数のセンサ27が可搬ボックス毎に設置されている。センサ27は、例えば各部の温度、湿度、振動、無線タグ情報などを検出することができる。
【0038】
各輸送車両25に搭載されている車載器24は、輸送車両25の情報を収集すると共に、各々の可搬ボックスに設置されているセンサ27から取得可能な情報を輸送中に常時監視している。また、車載器24は、無線通信によりインターネットを経由してWebサーバ10と接続し、必要なデータを逐次送受信している。また、車載器24は、荷物を可搬ボックスと共に他の車両に積み替える際に荷物の紛失やデータの欠落が生じないように管理している。
【0039】
図2は、注文処理の手順を示すフローチャートである。すなわち、物品を購入する各消費者等が顧客端末23を操作して注文情報を物品配送支援システム100のWebサーバ10に入力すると、それぞれの顧客からの注文情報に対して
図2の注文処理PR1がWebサーバ10により実行される。
図2の注文処理PR1について以下に説明する。
【0040】
Webサーバ10は、S01で注文情報が入力されると、該当する注文における希望配送日及び時間帯を記録する(S02)。
Webサーバ10がアクセス可能な顧客情報DB(データベース)31は、事前に登録された顧客毎の配送先住所などを表す情報を保持している。
【0041】
Webサーバ10は、S03で顧客情報DB31から該当する顧客の配送先住所の情報を取得し、この配送先住所に基づき配送エリアの仕分けを実施する。すなわち、配送先住所を含むある範囲内を処理対象の特定配送エリアに決定する。
【0042】
また、Webサーバ10がアクセス可能な在庫情報DB32は、注文対象の商品が存在する可能性のある様々な店舗や倉庫のそれぞれの在庫状況を商品毎に管理している。また、各店舗や各倉庫の所在地を表す情報も在庫情報DB32に登録されている。
【0043】
Webサーバ10は、在庫情報DB32にアクセスして、注文された商品の在庫のある店舗や倉庫を検索し、該当する商品を確保する(S04)。ここで、該当する商品の在庫がある店舗や倉庫が複数存在する場合には、その商品を注文した顧客の配送先までの距離がより近い場所に存在する店舗又は倉庫を優先的に選択する。
【0044】
特に、購入対象の商品が例えば生鮮食品のように冷蔵又は冷凍状態で管理される商品の場合には、S03で決定した前記特定配送エリアに基づき、可能であれば配送先の住所により近い店舗や倉庫に配送の途中で立ち寄って該当する商品を確保できるように配送ルートの手配を実施する。これにより、生鮮食品等の輸送品質を高めることができる。
【0045】
Webサーバ10は、在庫ありの商品にて各注文情報の配送品目が確定した後、その中で温度管理が必要な商品や振動にデリケートな商品の有無を次のS05~S08で検索する。
【0046】
Webサーバ10がアクセス可能な商品情報DB33は、各顧客が注文した商品に関する情報を管理している。具体的には、商品の名称や単純な商品区分に加え、冷蔵・冷凍状態の商品か否かを表す情報や、輸送中の振動に注意が必要な商品か否かを表す情報も商品情報DB33で管理されている。
【0047】
Webサーバ10は、今回注文された商品について、商品情報DB33が保持している情報を参照し、冷蔵・冷凍状態の商品が注文に含まれているか否かをS05で識別する。そして、冷蔵・冷凍状態の商品が含まれている場合はS06で「温度フラグ」を立てる。
【0048】
また、Webサーバ10は、今回注文された商品について、商品情報DB33が保持している情報を参照し、振動注意が必要な商品が注文に含まれているか否かをS07で識別する。そして、振動注意が必要な商品が含まれている場合はS08で「振動フラグ」を立てる。
【0049】
一方、Webサーバ10がアクセス可能な配送車両DB34は、事前に登録された複数の配送業者のそれぞれが確保している運送車両(トラック)の情報を管理している。また、それぞれの配送業者における過去の配送実績を表す情報もデータベースとして蓄積されている。また、この過去の配送実績の中には前記「温度フラグ」、「振動フラグ」等の有無を表す情報も含まれている。
【0050】
Webサーバ10は、上記の処理により配送が確定した各商品について、S09で配送車両を選択する。具体的には、配送車両DB34に登録されている複数の配送業者の中から過去の配送実績に基づいて、適切な配送業者を選択し、選択した配送業者の車両を商品配送用に確保する。また、前記「温度フラグ」又は「振動フラグ」が立っている注文については、対象のフラグの実績件数が上位の配送業者を、輸送品質の高い適切な配送業者として優先的に選定する。
【0051】
図3は、配送計画処理PR2の手順を示すフローチャートである。すなわち、様々な顧客の注文情報入力に応じて
図2の注文処理PR1がそれぞれ実行され、それぞれの商品を実際に配送する配送業者及び配送車両が決定された(S10)後、それぞれの配送車両に対して
図3の配送計画処理PR2がWebサーバ10により実行される。
【0052】
また、この配送計画処理PR2が実行されるのは、それぞれの配送車両(車両a)における全ての配送先、配送エリア、品目、積み地(店舗)業者が決定した(S11)後である。この配送計画処理PR2について以下に説明する。
【0053】
配送計画処理PR2では、各ステップS12A、S12B、及びS12CがそれぞれWebサーバ10により実行される。
S12Aでは、これまでに決定している情報に基づき、該当する車両aにおける走行距離が最短になることを優先する探索条件に従い、車両aの配送予定ルートR1を候補として生成する。
【0054】
S12Bでは、これまでに決定している情報に基づき、該当する車両aにおける走行時間が最短になることを優先する探索条件に従い、車両aの配送予定ルートR2を候補として生成する。
【0055】
S12Cでは、これまでに決定している情報に基づき、該当する車両aにおける二酸化炭素(CO2)排出量が最小になることを優先する探索条件に従い、車両aの配送予定ルートR3を候補として生成する。
【0056】
例えば、環境省のライフサイクルアセスメント(LCA)に関する基本ガイドラインにおいては(燃費法)として以下のような考え方が提示されている。
CO2排出量=Σ[{(輸送距離)/(燃費)}×(排出原単位)] ・・・(1)
【0057】
したがって、S12Cでは上記式(1)に基づき二酸化炭素排出量が最小になることを優先する条件で配送予定ルートR3を生成する。なお、燃費は車両情報から取得できる。また、輸送距離は顧客情報DB31内に登録されている住所に基づいて算出できる。
【0058】
次のS13では、車両aの様々な配送先の中に「温度フラグ」が立っているものがあるか否かを識別する。そして、「温度フラグ」が立っている場合はS14、S15の処理を実行する。
【0059】
S14では、S12A、S12B、及びS12Cのいずれかで生成された複数の配送ルートに基づいて、「温度フラグ」が立っている特定の配送先の配送順序が1軒でも早くなるようにリルートの処理を実行して新たな配送ルートを生成する。また、S14で生成した新たな配送ルートを輸送品質(温度優先)の配送予定ルートR4に定める(S15)。
【0060】
次のS16では、車両aの様々な配送先の中に「振動フラグ」が立っているものがあるか否かを識別する。そして、「振動フラグ」が立っている場合はS17の処理に進む。
S17では、S15で決定した配送予定ルートR4、又はS12A、S12B、及びS12Cのいずれかで生成された複数の配送ルートの中に、振動の影響が大きい道路が含まれているか否かを識別する。振動の影響が大きい道路が含まれている場合はS18に進み、含まれていなければS20に進む。
【0061】
S18では、S15で決定した配送予定ルートR4、又はS12A、S12B、及びS12Cのいずれかで生成された複数の配送ルートに基づいて、「振動フラグ」が立っている配送先に至るまでの間の振動の影響がより小さくなるように、リルートの処理を実行して新たな配送ルートを生成する。また、S18で生成した新たな配送ルートを輸送品質(振動優先)の配送予定ルートR5に定める(S19)。
【0062】
一方、上記車両aで配送業務を実施する配送業者は、自社の方針や各荷主の要望に基づいてより適切と考えられる配送ルートを必要に応じて選択することが可能である。すなわち、上記の処理により生成された車両aの各配送予定ルートR1~R5の中から、配送業者が適切な配送ルートをS20で決定する。詳細についてはこの後で説明する。
【0063】
図4は、ルート決定処理(S20)の詳細を示すフローチャートである。
図4の手順について以下に説明する。
【0064】
Webサーバ10は、ユーザである配送業者等が重視する輸送品質条件の入力をS21で受け付ける。すなわち、輸送事業者端末22、又は荷主端末21から輸送品質条件が入力される。ここで入力可能な輸送品質条件は、「距離優先」、「時間優先」、「LCA優先」、「輸送温度優先」、及び「輸送振動優先」の中から選択できる。
【0065】
Webサーバ10は、ユーザが選択した輸送品質条件をS22で識別した結果に応じて各ステップS23、S24、S25、S26、及びS27のいずれか1つを実行する。
S23では、Webサーバ10は既に生成した配送予定ルートR1~R5のそれぞれを距離を短くすることを優先する条件で評価して、配送予定ルートR1~R5の推奨順位を各々決定する。
【0066】
S24では、Webサーバ10は既に生成した配送予定ルートR1~R5のそれぞれを時間を短くすることを優先する条件で評価して、配送予定ルートR1~R5の推奨順位を各々決定する。
【0067】
S25では、Webサーバ10は、既に生成した配送予定ルートR1~R5のそれぞれをLCAの最適化(CO2排出の最小化)を優先する条件で評価して、配送予定ルートR1~R5の推奨順位を各々決定する。
【0068】
S26では、Webサーバ10は、既に生成した配送予定ルートR1~R5のそれぞれを「温度フラグ」が立っている配送先に対する温度変化の最小化を優先する条件で評価して、配送予定ルートR1~R5の推奨順位を各々決定する。
【0069】
S27では、Webサーバ10は、既に生成した配送予定ルートR1~R5のそれぞれを「振動フラグ」が立っている配送先の商品に配送中に加わる振動の影響の最小化を優先する条件で評価して、配送予定ルートR1~R5の推奨順位を各々決定する。
【0070】
次のS28では、Webサーバ10は、S23~S27のいずれかで決定したそれぞれの推奨順位が分かるように、推奨順位の順番に並べて複数の配送予定ルートR1~R5を端末の画面上に一覧表示する。
【0071】
配送業者等のユーザは、S28で輸送事業者端末22の画面上に一覧表示された配送予定ルートR1~R5の中から、いずれか1つを選択するように輸送事業者端末22を操作してWebサーバ10に指示を与えることができる。Webサーバ10は、このユーザからの選択指示に従い、S29で1つの配送予定ルートを選択する。
【0072】
上述の配送計画処理PR2においてWebサーバ10が生成した複数の配送予定ルートR1~R5と、ユーザが指定する優先指定項目P1~P5と、推奨レベルL1~L5との関係の例を
図5に示す。なお、
図5において推奨レベルL2、L3、L4、及びL5は、それぞれ「◎」、「○」、「△」、及び「×」で表されている。
【0073】
例えば、「距離」の短縮を優先することを表す優先指定項目P1を
図4のS21でユーザが選択した場合には、その条件に従い、配送予定ルートR1~R5のそれぞれについて評価が実施される。そして、その評価結果が良好な順位を表す推奨レベルL1~L5のいずれかが、各配送予定ルートR1~R5に割り当てられる。
【0074】
同様に、優先指定項目P2~P5のそれぞれをユーザが選択した場合は、「時間」、「LCA」、「温度」、及び「振動」を優先する条件に従い、配送予定ルートR1~R5のそれぞれについて評価が実施される。
【0075】
図5に示した例では、優先指定項目P1をユーザが選択した場合は、配送予定ルートR1、R2、R3、R4、及びR5に対して、それぞれ推奨レベルL1、L2、L3、L3、及びL5が割り当てられる。
【0076】
つまり、距離を優先する条件で生成された配送予定ルートR1には最も高い推奨レベルL1が割り当てられ、時間を優先する条件で生成された配送予定ルートR2には2番目の高い推奨レベルL2が割り当てられ、LCAを優先する条件で生成された配送予定ルートR3には3番目に高い推奨レベルL3が割り当てられ、温度の輸送品質を優先する条件で生成された配送予定ルートR4には3番目に高い推奨レベルL3が割り当てられ、振動の輸送品質を優先する条件で生成された配送予定ルートR5には最も低い推奨レベルL5が割り当てられる。
【0077】
また、
図5の例では優先指定項目P2をユーザが選択した場合は、配送予定ルートR1、R2、R3、R4、及びR5に対して、それぞれ推奨レベルL3、L1、L3、L3、及びL5が割り当てられる。
【0078】
また、
図5の例では優先指定項目P3をユーザが選択した場合は、配送予定ルートR1、R2、R3、R4、及びR5に対して、それぞれ推奨レベルL4、L5、L1、L3、及びL4が割り当てられる。
【0079】
また、
図5の例では優先指定項目P4をユーザが選択した場合は、配送予定ルートR1、R2、R3、R4、及びR5に対して、それぞれ推奨レベルL3、L2、L4、L1、及びL5が割り当てられる。
【0080】
また、
図5の例では優先指定項目P5をユーザが選択した場合は、配送予定ルートR1、R2、R3、R4、及びR5に対して、それぞれ推奨レベルL4、L5、L2、L3、及びL1が割り当てられる。
【0081】
例えば、距離を優先する条件で生成された配送予定ルートR1を優先指定項目P5の条件で評価した場合には、配送車両の走行距離は配送予定ルートR1~R5の中で最短になるが、二酸化炭素排出量に関する評価や、振動の輸送品質に関する評価が低いので総合的な評価が低くなり4番目の推奨レベルL4(△)になる。
【0082】
したがって、
図5に示した状況の場合にユーザが優先指定項目(距離優先)P1をS21で選択した場合には、距離優先ルート(R1)、時間優先ルート(R2)、LCA優先ルート(R3)、輸送品質(温度)優先ルート(R4)、及び輸送品質(振動)優先ルート(R5)の順番で並んだ状態で推奨順位が視覚的に把握できるようにS28で画面に一覧表示される。
【0083】
また、ユーザが優先指定項目(振動優先)P5をS21で選択した場合には、輸送品質(振動)優先ルート(R5)、LCA優先ルート(R3)、輸送品質(温度)優先ルート(R4)、距離優先ルート(R1)、及び時間優先ルート(R2)の順番で並んだ状態で推奨順位が視覚的に把握できるようにS28で画面に一覧表示される。
【0084】
したがってWebサーバ10のサービスを利用して配送ルートを決定する配送業者等の各ユーザは、それぞれの価値観に従い優先すべき項目(P1~P5のいずれか)を指定したうえで、画面に表示される複数の配送予定ルートR1~R5の中から、これらの推奨順位を参照しつつ、最適な配送予定ルート(R1~R5のいずれか:通常は推奨レベルL1のルート)を容易に選択できる。
【0085】
また、例えば温度管理が必要な商品と振動を長時間かけられない商品とが混在する状態で、同じ配送車両で同時に配送される場合には、配送予定ルートR4又はR5を選択することが想定される。すなわち、配送予定ルートR4を選択することで、距離が短い配送予定ルートR1の状態に対して、温度管理が必要な商品の配送先に向かう順序をより上位に変更し、輸送品質を上げることが可能になる。また、配送予定ルートR5を選択することで、振動を長時間かけられない商品の配送先に向かう順序をより上位に変更し、輸送品質を上げることが可能になる。
【0086】
図6は、輸送中処理RP3の手順を示すフローチャートである。
図1に示した物品配送支援システム100においては、前述の配送計画処理PR2で配送予定ルートを決定した後、該当する車両aに指定された多数の商品を積載し、前記配送予定ルートに従う経路を順次に通るように実際に車両aを運行して配送を開始する。この実際の配送の際に、Webサーバ10又は車載器24が
図6に示した輸送中処理PR3を実行する。
【0087】
実際に車両を運行して商品の配送を行う際には、例えば道路の渋滞、道路工事などのように予期しない道路事情の影響を受けて事前の予想よりも配送時間が大幅に延びる場合がある。そのような場合に、輸送中処理PR3を実行することで、商品の輸送品質の低下を抑制できる。
【0088】
すなわち、道路事情により配送時間が大幅に延びる場合には、温度情報から残りの蓄冷時間を予測し、自店舗へ戻ることや他店舗に寄るといった配送予定ルートのリルートを車両の運転者や配送業者の管理者等へ提案できるような仕組みを輸送中処理PR3により実現する。
図6の輸送中処理PR3をWebサーバ10が実行する場合について以下に説明する。
【0089】
当該車両がS30で配送を開始した後、Webサーバ10は、当該車両で配送中の各商品について「温度フラグ」が立っているか否かをS31で識別し、「温度フラグ」が立っている場合はS32に進む。また、まだ全ての配送先にまわっていない配送途中の状態であれば、S32からS33A、S33Bの処理に進む。
【0090】
S33Aでは、Webサーバ10は、「温度フラグ」が立っている商品が配送先に実際に届くまでに予想される残配送時間の長さを取得する。この残配送時間は、例えば現在位置から配送先までの距離、当該車両の平均走行速度、実際の道路状況などに基づいて計算で推定し求めることができる。また、Webサーバ10は、S33Bで当該車両の荷室に設置されているセンサ27を用いて現在の温度を測定し、その温度情報を取得する。
【0091】
なお、一般的なトラック車両で配送する場合であっても、温度管理を必要とする商品については、通常は簡易的な保冷ボックスの中に収容した状態で商品の配送を実施する。したがって、保冷ボックスの能力に応じてある程度の蓄冷時間の間は商品の温度が配送中に上昇するのを抑制できるが、配送に時間がかかると商品の温度が上昇して品質が低下する可能性がある。
【0092】
S34では、Webサーバ10は温度管理を必要とする商品の残配送時間の長さと、残りの蓄冷予想時間の長さとを比較する。なお、残りの蓄冷予想時間は、保冷ボックスの能力や、検出した温度の変化傾向などに基づいて推定できる。
【0093】
残配送時間の長さが残りの蓄冷予想時間以内であれば、S34からS35の処理に進む。この場合は、そのまま配送を継続する。
また、残配送時間の長さが残りの蓄冷予想時間を上回る場合には、S34からS36の処理に進む。S36では、配送予定ルート上で直前に立ち寄った店舗(自店舗)に戻る場合に予想される所要時間と、他店舗まで移動する場合に予想される所要時間とをWebサーバ10が比較する。そして、自店舗に戻るよりも他店舗まで移動する方が短時間で移動できる場合には、S36からS38の処理に進む。この場合は、当該車両の現在位置から最短時間で移動可能な特定の他店舗へ立ち寄るように、配送予定ルートのリルートを実行し、この配送予定ルートを更新する。
【0094】
一方、他店舗まで移動するよりも直前の自店舗に戻る方が所要時間が短いことが予想される場合には、S36からS37の処理に進む。この場合は、当該車両が現在位置から配送予定ルート上を直前の自店舗に戻るようにリルートを実行し、この配送予定ルートを更新する。
【0095】
また、S37を実行した場合には、より効率のよい商品配送を可能にするために配送計画をやり直す。すなわち、注文処理PR1のS03、S09、配送計画処理PR2等を再び実行する。なお、商品の確保やフラグの処理は既に完了しているのでこれらの処理は省略できる。この配送計画見直しにより、自店舗に戻った車両が配送する商品に、新たな配送先・配送物を追加することが可能になる。
【0096】
以上のように、本実施形態に係る物品配送支援システム100によれば、商品を配送する車両の配送予定ルートを適切に決めることが容易になる。すなわち、互いに異なる優先事項を条件として探索され自動的に生成された複数種類の配送予定ルートR1~R5(
図5参照)が、ユーザの指定した輸送品質の優先指定項目(P1~P5のいずれか)に基づいて自動的に評価され、各配送ルートの推奨順位が分かるように表示されるので、ユーザはそれぞれの配送業者の観点で重視すべき優先事項を考慮した最良の配送予定ルートを表示された推奨順位から直ちに把握できる。したがって、様々な配送業者が同じ物品配送支援システム100を利用してそれぞれに適した配送予定ルートを決めることができる。
【0097】
また、距離を優先する配送予定ルートR1を選択した場合には、配送車両の走行距離が短縮されるので、配送コストを削減することが容易になる。また、時間を優先する配送予定ルートR2を選択した場合には、全体的により短時間で配送先に商品を配送することが可能になる。また、LCAを優先する配送予定ルートR3を選択した場合には、二酸化炭素の排出量を削減できるので、環境への負荷に配慮した配送の実現が容易になる。また、輸送品質の温度を優先する配送予定ルートR4を選択した場合には、生鮮食料品などの物品を配送する場合でも温度変化に伴う配送中の物品の品質低下を防止することが容易になる。また、輸送品質の振動を優先する配送予定ルートR5を選択した場合には、振動の影響を受けやすい物品を配送する場合でも振動を受けにくい状態で配送することが容易になる。
【0098】
また、
図2に示した注文処理PR1を実施する場合には、注文された商品について、1店舗の在庫だけでなく消費者位置を中心として複数店舗の在庫状況をそれぞれ認識するので、例えば距離が近く効率よく顧客に配送可能な店舗で商品を確保できる。
【0099】
また、温度管理が必要な商品や、振動の影響を受けやすい商品など様々な種類の小口の物品が混在した状態で同じ車両で配送される場合であっても、多数の配送業者の中から商品の特性に合わせた実績が上位の配送業者をS09で選択することにより、輸送品質の低下を防止することが容易になる。
【0100】
また、温度管理が必要な商品や、振動の影響を受けやすい商品など様々な種類の小口の物品が混在した状態で同じ車両で配送される場合であっても、S13~S19で生成される配送予定ルートR4、又はR5を採用することで輸送品質の低下を防止できる。
【0101】
また、事前に配送計画で決定した配送予定ルートに従って実際に配送を開始した後、道路工事や渋滞などの予期しない道路事情の影響で、輸送品質が低下する可能性がある場合には、
図6の輸送中処理PR3を実行することで適切な配送ルートに自動的に変更できる。これにより、温度管理が必要な商品や、振動の影響を受けやすい商品など様々な種類の小口の物品が混在した状態で配送する場合でも、輸送品質の低下を防止できる。しかも、温度管理や振動管理に適した専用の配送車両を利用する必要がないので、配送コストを低減できる。
【0102】
また、複数の受注の商品を自動的にまとめて共通の車両の配送予定ルートを自動的に生成するので、受注毎に配送ルートを決める手間を削減できる。また、様々な種類の商品の輸送品質を考慮した配送を自動化することが容易であるので、商品を注文する顧客も、その商品を配送する運送業者も輸送品質に関する安心感を得られる。
【0103】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0104】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る物品配送支援装置、物品配送支援システム、及び物品配送支援プログラムの特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品(荷物26)を共通の車両(輸送車両25)で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する物品配送支援装置(Webサーバ10)であって、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部(S11、S12A、S12B、S12C)と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件(優先指定項目P1~P5)の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部(S21)と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位(推奨レベルL1~L5)を表す情報と共に提示する推奨配送ルート提示部(S23~S28)と、
を備える物品配送支援装置。
【0105】
[2] 前記配送ルート生成部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントのそれぞれを優先する複数種類の探索条件に従って、前記複数の配送ルートをそれぞれ生成し(S12A、S12B、S12C)、
前記品質条件選択部は、少なくとも距離、所要時間、及びライフサイクルアセスメントの中の1つを優先する条件を、前記特定品質条件として選択する(S21~S25)、
上記[1]に記載の物品配送支援装置。
【0106】
[3] 前記配送ルート生成部は、対象車両が輸送する物品の中に温度管理を必要とする保冷物品が含まれている場合には、所定の保冷条件を満たす別の配送ルートを生成する(S13~S15)、
上記[2]に記載の物品配送支援装置。
【0107】
[4] 前記配送ルート生成部は、選択された配送ルート上を走行中の前記対象車両から当該対象車両の位置情報を取得し、当該配送ルートに基づく配送計画と当該位置情報との比較の結果、前記保冷物品に対する前記保冷条件が満たされなくなった場合には、当該保冷条件を満たすよう配送ルートを再生成する(輸送中処理PR3)、
上記[3]に記載の物品配送支援装置。
【0108】
[5] 物品の配送を発注する荷主が利用可能な荷主端末(21)と、
前記物品の配送先の顧客が利用可能な顧客端末(23)と、
前記物品を輸送する車両に搭載された車載器(24)と、
前記物品の輸送を管理すると共に、前記荷主端末、前記顧客端末、及び前記車載器との間で通信が可能な管理装置(Webサーバ10)と、
を含む物品配送支援システム(100)であって、
前記管理装置は、
互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成部(S11、S12A、S12B、S12C)と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件(優先指定項目P1~P5)の中から、ユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択部(S21)と、
前記配送ルート生成部が生成した複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報(推奨レベルL1~L5)と共に提示する推奨配送ルート提示部(S23~S28)と、
を備える物品配送支援システム。
【0109】
[6] 互いに荷主および配送先が異なる複数種類の物品を共通の車両で同時に輸送する場合に、前記車両の配送予定ルートの決定を支援する管理装置のコンピュータ(Webサーバ10)が実行可能な物品配送支援プログラム(
図2~
図5参照)であって、
前記コンピュータに、
特定の車両で輸送する全ての物品の配送先が決定した後で、輸送品質を表す条件が互いに異なる複数種類の探索条件のそれぞれについて、複数の配送ルートを生成する配送ルート生成手順(S11、S12A、S12B、S12C)と、
予め用意した複数種類の輸送品質条件(優先指定項目P1~P5)の中からユーザ入力に従い特定品質条件を選択する品質条件選択手順(S21)と、
生成された複数の配送ルートを、選択された前記特定品質条件に従って推奨順位を表す情報(推奨レベルL1~L5)と共に提示する推奨配送ルート提示手順(S23~S28)と、
を実行させる物品配送支援プログラム。
【符号の説明】
【0110】
10 Webサーバ
21 荷主端末
22 輸送事業者端末
23 顧客端末
24 車載器
25 輸送車両
26 荷物
27 センサ
31 顧客情報DB
32 在庫情報DB
33 商品情報DB
34 配送車両DB
100 物品配送支援システム
L1,L2,L3,L4,L5 推奨レベル
P1,P2,P3,P4,P5 優先指定項目
PR1 注文処理
PR2 配送計画処理
PR3 輸送中処理
R1,R2,R3,R4,R5 配送予定ルート