(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005233
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】配線基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107014
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久田 晃禎
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA34
5E316BB02
5E316CC02
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF07
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG17
5E316HH40
(57)【要約】
【課題】幅の狭い配線導体および幅の広い配線導体の両方が剥離しにくい配線基板を提供する。
【解決手段】本開示に係る配線基板は、第1絶縁層と、第1絶縁層の上面に位置する第2絶縁層と、第1絶縁層の上面に位置し、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体と、第2絶縁層の上面から第1絶縁層に向けて凹む溝内に位置し、15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体とを備える。第1配線導体は、第1絶縁層上に位置する第1下地金属層と、第1下地金属層上に位置し、側面が第2絶縁層と接している第1電解めっき層とを含む。第2配線導体は、溝の内壁面上に位置する第2下地金属層と、第2下地金属層上において溝内に充填された第2電解めっき層とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
該第1絶縁層の上面に位置する第2絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面に位置し、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体と、
前記第2絶縁層の上面から前記第1絶縁層に向けて凹む溝内に位置し、15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体と、
を備え、
前記第1配線導体は、前記第1絶縁層上に位置する第1下地金属層と、該第1下地金属層上に位置し、側面が前記第2絶縁層と接している第1電解めっき層とを含み、
前記第2配線導体は、前記溝の内壁面上に位置する第2下地金属層と、該第2下地金属層上において前記溝内に充填された第2電解めっき層とを含む、
配線基板。
【請求項2】
前記第1電解めっき層において、前記側面の算術平均粗さRaは150nm以上300nm以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2絶縁層において、前記溝の内壁面の算術平均粗さRaは50nm以上100nm以下である、請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2配線導体は、前記第2絶縁層内に収まっている、請求項1~3のいずれかに記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1配線導体は、上面の少なくとも一部が、前記第2絶縁層で被覆されている、請求項1~4のいずれかに記載の配線基板。
【請求項6】
第1絶縁層を形成する工程と、
該第1絶縁層の上面に、第1下地金属層および該第1下地金属層上に位置する第1電解めっき層を含み、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上面および前記第1配線導体を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、
該第2絶縁層の上面から前記第1絶縁層に向けて凹む第1溝を形成する工程と、
前記第2絶縁層の上面および前記第1溝の内壁面を被覆する第2下地金属層と、該第2下地金属層上に位置し、前記第1溝を充填する厚みの第2電解めっき層とを形成する工程と、
前記第2絶縁層の上面に位置する前記第2下地金属層および前記第2電解めっき層を少なくとも除去し溝内に位置する15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体を形成する工程と、
を含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1配線導体を形成する工程において、前記第1電解めっき層の側面に、150nm以上300nm以下の算術平均粗さRaとなる粗化処理を施す、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1溝を形成する工程において、前記第1溝の内壁面が、50nm以上100nm以下の算術平均粗さRaとなる溝形成処理を行う、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1溝を形成する工程において、前記第1溝の底面を前記第2絶縁層内に形成する、請求項6~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2配線導体を形成する工程において、前記第1配線導体の上面の少なくとも一部が露出しないように、第2絶縁層上に位置する前記第2下地金属層および前記第2電解めっき層を少なくとも除去する、請求項6~9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板における配線導体の形成方法としてセミアディティブ法が用いられている。セミアディティブ法は、次のような手順で配線導体を形成する方法である。まず、絶縁層の露出表面に無電解めっき法やスパッタリング法などにより薄い下地金属層を形成する。次に、この下地金属層上に配線導体のパターンに対応する開口部を有するめっきレジスト層を形成する。次に、このめっきレジスト層の開口部内に露出する下地金属層上に電解めっき層を形成する。次に、めっきレジスト層を剥離除去し、最後に電解めっき層で覆われていない部分の下地金属層をエッチング除去する。
【0003】
ところで、配線基板においては、配線導体の微細化が進んでいる。例えば、配線導体の幅が15μm以下であり、互いに隣接する配線導体同士の間隔が15μm以下であるものが要求されるようになってきている。このように、配線導体の幅が例えば15μm以下の狭いものとなると、絶縁層と配線導体との下地金属層を介した接合面積が小さいものとなり、配線導体が絶縁層から剥離しやすくなる。さらに、互いに隣接する配線導体同士の間で、電気的な絶縁信頼性が低下してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のように、溝内に残る下地金属層および電解めっき層からなる配線導体を形成する方法が提案されている。まず、絶縁層の表面に配線導体のパターンに対応する溝をレーザー加工により所定深さに形成する。次に、溝の内壁を含む絶縁層の表面に無電解めっき法やスパッタリング法などにより薄い下地金属層を形成する。次に、この下地金属層上に溝を埋める厚みの電解めっき層を形成する。最後に絶縁層上の下地金属層および電解めっき層を化学的機械研磨により研磨除去する。
【0005】
この方法よると、比較的狭い幅(例えば、15μm以下)の配線導体用の溝は、電解めっき層により良好に充填される。しかし、比較的広い幅(例えば、150μm以上)の配線導体用の溝は、電解めっき層により良好に充填されにくい。その結果、幅の広い配線導体においては、配線導体の上面が大きく凹んで平坦性が乏しくなる。この凹みを解消するために電解めっき層の厚みをさらに厚くすると、この電解めっき層を形成する際に発生する応力が大きくなる。そのため、応力が下地金属層を介して幅の広い配線導体用の溝の内壁との間に大きく作用して、幅の広い配線導体が剥離しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の課題は、幅の狭い配線導体および幅の広い配線導体の両方が剥離しにくい配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る配線基板は、第1絶縁層と、第1絶縁層の上面に位置する第2絶縁層と、第1絶縁層の上面に位置し、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体と、第2絶縁層の上面から第1絶縁層に向けて凹む溝内に位置し、15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体とを備える。第1配線導体は、第1絶縁層上に位置する第1下地金属層と、第1下地金属層上に位置し、側面が第2絶縁層と接している第1電解めっき層とを含む。第2配線導体は、溝の内壁面上に位置する第2下地金属層と、第2下地金属層上において溝内に充填された第2電解めっき層とを含む。
【0009】
本開示に係る配線基板の製造方法は、第1絶縁層を形成する工程と、第1絶縁層の上面に、第1下地金属層および第1下地金属層上に位置する第1電解めっき層を含み、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体を形成する工程と、第1絶縁層および第1配線導体を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、第2絶縁層の上面から第1絶縁層に向けて凹む第1溝を形成する工程と、第2絶縁層の上面および第1溝の内壁面を被覆する第2下地金属層と、第2下地金属層上に位置し、第1溝を充填する厚みの第2電解めっき層とを形成する工程と、第2絶縁層上に位置する前記第2下地金属層および前記第2電解めっき層を少なくとも除去し、溝内に位置する15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る配線基板によれば、幅の狭い配線導体および幅の広い配線導体の両方が剥離しにくい配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る配線基板の断面を示す説明図である。
【
図2】(A)~(D)は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明するための説明図である。
【
図3】(A)~(D)は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明するための説明図である。
【
図4】(A)~(C)は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明するための説明図である。
【
図5】(A)~(C)は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明するための説明図である。
【
図6】(A)および(B)は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明するための説明図である。
【
図7】本開示の第2の実施形態に係る配線基板の断面を示す説明図である。
【
図8】本開示の第3の実施形態に係る配線基板の断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の配線基板を、図に基づいて説明する。
図1は、本開示の第1の実施形態に係る配線基板1の断面を示す模式図である。第1の実施形態に係る配線基板1は、コア層11と、コア層11の表面に位置する導体層12と、コア層11および導体層12を被覆するように位置するビルドアップ層と、ビルドアップ層の表面に位置するソルダーレジスト17とを含む。
【0013】
コア層11は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマーなどの樹脂で形成されている。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。コア層11には、ガラスクロス等の補強材が入っていても良く、さらには絶縁粒子が分散されていてもよい。絶縁粒子は限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機絶縁性フィラーが挙げられる。コア層11は、例えば0.1mm以上2.0mm以下の厚みを有している。
【0014】
コア層11の主面には、導体層12が位置している。導体層12は銅などの導体、例えば銅箔や銅めっきで形成されている。導体層12の厚みは特に限定されず、例えば5μm以上25μm以下である。
【0015】
コア層11は、コア層11の上下面の導体層12を電気的に接続するためのスルーホール導体11aを有している。スルーホール導体11aは、コア層11の上下面を貫通するスルーホール内に位置している。スルーホール導体11aは、例えば、銅めっきなどの金属めっきからなる導体で形成されている。スルーホール導体11aは、コア層11の両面の導体層12に接続されている。スルーホール導体11aは、スルーホールの内壁面のみに形成されていてもよく、スルーホール内に充填されていてもよい。
【0016】
ビルドアップ層は、第1絶縁層131と、第1絶縁層131の上面に位置する第2絶縁層132と、第1絶縁層131の上面に位置する第1配線導体14と、第2絶縁層132の上面から第1絶縁層131に向けて凹む溝151内に位置する第2配線導体15とを含む。ビルドアップ層は、第1絶縁層131、第2絶縁層132、第1配線導体14および第2配線導体15を1つの単位として、
図1では、この単位が4つ存在している。この単位は4つに限定されず、少なくとも1つ存在していればよい。
【0017】
第1絶縁層131は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマーなどの樹脂で形成されている。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第1絶縁層131には、絶縁粒子が分散されていてもよい。絶縁粒子は限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機絶縁性フィラーが挙げられる。第1絶縁層131は、例えば10μm以上50μm以下の厚みを有している。
【0018】
第1絶縁層131の上面に位置する第2絶縁層132についても、上記の第1絶縁層131を形成している樹脂と同様の樹脂が挙げられ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、第2絶縁層132にも、上記の第1絶縁層131と同様の絶縁粒子が分散されていてもよい。第2絶縁層132の厚みは限定されず、例えば、第1絶縁層131の厚みより薄くてもよい。第2絶縁層132は、例えば5μm以上25μm以下の厚みを有している。
【0019】
コア層11と第1絶縁層131と第2絶縁層132とは、同じ樹脂で形成されていてもよく、異なる樹脂で形成されていてもよい。さらに、コア層11、第1絶縁層131および第2絶縁層132に絶縁粒子が分散されている場合、絶縁粒子は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0020】
第1絶縁層131の上面に位置する第1配線導体14は、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む。一方で、第1配線導体14は、15μm以下の幅のパターンを含んでいない。第1配線導体14は、主に接地用および電源用の機能を有している。第1配線導体14は、
図1に示すように、第1下地金属層14aと第1電解めっき層14bとを含む。
【0021】
第1下地金属層14aは第1配線導体14の土台となる部分であり、第1絶縁層131の上面に位置している。第1下地金属層14aは、例えば銅などの金属で形成されている。第1下地金属層14aは、例えば0.1μm以上0.5μm以下の厚みを有している。第1下地金属層14aは、
図1に示すように、ビアホールの内壁面に形成されていてもよい。第1下地金属層14aは、後述する第1電解めっき層14bの被着性を向上させるために形成される。
【0022】
第1電解めっき層14bは、第1配線導体14の本体となる層であり、第1下地金属層14a上に位置している。第1配線導体14において第1電解めっき層14bを中心に電荷が流れる。第1電解めっき層14bは、電解めっきで形成された層であれば限定されず、例えば銅などの金属で形成されている。第1電解めっき層14bは、例えば5μm以上25μm以下の厚みを有している。さらに、第1電解めっき層14bの側面は、第2絶縁層132と接している。すなわち、第1電解めっき層14bの側面に第1下地金属層14aが存在しないことによって、第1電解めっき層14bの側面と第2絶縁層132との間において、第2絶縁層132に伝わる応力をなくすことができる。その結果、第1電解めっき層14bが剥離するのを低減することができる。
【0023】
第1電解めっき層14bにおいて、側面の算術平均粗さRaは限定されず、例えば150nm以上300nm以下であってもよい。第1電解めっき層14bにおいて、側面の算術平均粗さRaが150nm以上300nm以下であれば、第1電解めっき層14bが第2絶縁層に強固に被着され、第1電解めっき層14bが剥離するのをより低減することができる。
【0024】
第2配線導体15は、第2絶縁層132の上面から第1絶縁層131に向けて凹む溝151内に位置し、15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む。一方で、第2配線導体15は、150μm以上の幅のパターンを含んでいない。溝151の深さは限定されず、例えば5μm以上25μm以下であってもよい。第2配線導体15は、主に信号伝送用の機能を有している。第2配線導体15は、
図1に示すように、第2下地金属層15aと第2電解めっき層15bとを含む。
図1において、幅広く見える第2配線導体15が存在しているが、幅広く見える第2配線導体15は、長手方向に切断された断面を示している。
【0025】
第2下地金属層15aは第2配線導体15の土台となる部分であり、溝151の内壁面に位置している。第2下地金属層15aは、例えば銅などの金属で形成されている。第2下地金属層15aは、例えば0.1μm以上0.5μm以下の厚みを有している。第2下地金属層15aは、後述する第2電解めっき層15bの被着性を向上させるために形成される。
【0026】
第2電解めっき層15bは、第2配線導体15の本体となる層であり、第2下地金属層15aが形成された溝151に充填されている。第2配線導体15において第2電解めっき層15bを中心に電荷が流れる。第2電解めっき層15bは、電解めっきで形成された層であれば限定されず、例えば銅などの金属で形成されている。第2電解めっき層15bは、側面および底面のいずれも第2下地金属層15aを介して、第2絶縁層132の溝151に位置している。そのため、優れた密着性が発揮され、第2電解めっき層15bが剥離するのを低減することができる。
【0027】
第2絶縁層132において、溝151の内壁面の算術平均粗さRaは限定されず、例えば50nm以上100nm以下であってもよい。第2絶縁層132において、溝151の内壁面の算術平均粗さRaが50nm以上100nm以下であれば、第2下地金属層15aがより強固に被着され、第2下地金属層15aが剥離するのをより低減することができる。なお、第2配線導体15は、溝151の内壁面の粗さに対応して算術平均粗さRaが50nm以上100nm以下の表面粗さを有している。この粗さは第1配線導体14(第1電解めっき層14b)の側面粗さよりも小さく、第2配線導体15に高周波信号が伝送される場合に伝送損失を低減することが可能になる点で有利である。
【0028】
ビルドアップ層の表面には、ソルダーレジスト17が位置している。ソルダーレジスト17は、例えば、アクリル変性エポキシ樹脂で形成されている。ソルダーレジスト17は、例えば、電子部品を実装するときや、マザーボードなどに接続するときに、はんだから導体層12などを保護する機能を有している。ソルダーレジスト17には、ビルドアップ層の表面に位置する第1配線導体14または第2配線導体15の一部を露出するための開口部が形成されている。この開口部から露出する第1配線導体14または第2配線導体15の一部は、半導体素子などを実装する際にパッドとして機能する。
【0029】
次に、本開示の配線基板を製造する方法を説明する。本開示に係る配線基板の製造方法は、下記の工程(a)~(f)を含む。
(a)第1絶縁層を形成する工程。
(b)第1絶縁層の上面に、第1下地金属層および第1下地金属層上に位置する第1電解めっき層を含み、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体を形成する工程。
(c)第1絶縁層および第1配線導体を被覆する第2絶縁層を形成する工程。
(d)第2絶縁層の上面から第1絶縁層に向けて凹む第1溝を形成する工程。
(e)第2絶縁層の上面および第1溝の内壁面を被覆する第2下地金属層と、第2下地金属層上に位置し、第1溝を充填する厚みの第2電解めっき層とを形成する工程。
(f)第2絶縁層上に位置する前記第2下地金属層および前記第2電解めっき層を少なくとも除去し、溝内に位置する15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体を形成する工程。
【0030】
本開示に係る配線基板の製造方法を、
図2~6に基づいて説明する。
図2~6は、第1の実施形態に係る配線基板1の製造工程を説明するための説明図である。
【0031】
まず、
図2(A)に示すように、コア層11を準備する。コア層11の主面には、導体層12が位置している。さらにコア層11は、コア層11の上下面の導体層12を電気的に接続するためのスルーホール導体11aを有している。コア層11、スルーホール導体11aおよび導体層12については、上述の通りであり、詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、第1絶縁層を形成する工程(工程(a))について説明する。第1絶縁層131は、
図2(B)に示すように、コア層11および導体層12を被覆するように形成される。第1絶縁層131については、上述の通りであり、詳細な説明は省略する。第1絶縁層131には、
図2(C)に示すように、必要に応じてビアホールが形成される。ビアホールは、例えば、CO
2レーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザーなどのようなレーザー加工によって形成される。
【0033】
次に、第1絶縁層の上面に、第1下地金属層および第1下地金属層上に位置する第1電解めっき層を含み、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む第1配線導体を形成する工程(工程(b))について説明する。
図2(D)に示すように、第1絶縁層131の上面(第1絶縁層131の表面およびビアホールの内壁面)に、無電解めっきによって銅などの金属を析出させる。無電解めっきを行う際に、触媒としてパラジウムを使用してもよい。析出させた金属が、最終的に第1下地金属層14aとなる。析出させた金属は、例えば0.1μm以上0.5μm以下の厚みを有している。
【0034】
無電解めっきによって銅などの金属を析出させた後、
図3(A)に示すように、第1電解めっき層14bを形成しない部分を、レジストで被覆する。レジストで被覆した後、
図3(B)に示すように、電解めっきによって銅などの金属を析出させる。銅などの金属を析出させる部分の幅を150μm以上とすることによって、幅広パターンを形成することができる。次いで、
図3(C)に示すようにレジストを除去し、
図3(D)に示すように、レジストで被覆されていた部分の銅を除去する。
【0035】
このようにして、第1絶縁層131上に、第1下地金属層14aおよび第1下地金属層14a上に位置する第1電解めっき層14bが形成され、第1配線導体14が形成される。第1電解めっき層14bは、例えば5μm以上25μm以下の厚みを有している。この第1配線導体14は、150μm以上の幅を有する幅広パターンを含む。さらに、必要に応じてビアホール導体16が形成される。
【0036】
第1電解めっき層14bの側面に粗化処理を施して、算術平均粗さRaが150nm以上300nm以下となるようにしてもよい。このような粗化処理を施すことによって、第1電解めっき層14bが第2絶縁層132に強固に被着され、第1電解めっき層14bが剥離するのをより低減することができる。
【0037】
次に、第1絶縁層の上面および第1配線導体を被覆する第2絶縁層を形成する工程(工程(c))について説明する。第2絶縁層132は、
図4(A)に示すように、第1絶縁層131および第1配線導体14を被覆するように形成される。
【0038】
次に、第2絶縁層の上面から第1絶縁層に向けて凹む第1溝を形成する工程(工程(d))について説明する。
図4(B)に示すように、第2絶縁層132には、第2配線導体15を形成する位置に、第1溝151aが形成される。第1溝151aを形成する方法は限定されず、エキシマレーザー、CO
2レーザー、UV-YAGレーザーなどのようなレーザー加工によって形成される。均一な深さの第1溝151aが形成されやすい点で、エキシマレーザーを採用するのがよい。第1溝151aの深さは限定されず、例えば5μm以上25μm以下であってもよい。
図4(B)および
図4(C)に示すように、必要に応じて、第2絶縁層132にはビアホールを形成してもよく、第2絶縁層132から第1絶縁層131まで貫通するビアホールを形成してもよい。
【0039】
第1溝151aを形成する際に、第1溝151aの内壁面が、50nm以上100nm以下の算術平均粗さRaとなるように溝形成処理を行ってもよい。この場合もエキシマレーザーを用いると内壁面を所定の粗さに形成することが容易になる。このように第1溝151aを形成すると、第2下地金属層15aが第1絶縁層および第2絶縁層に強固に被着され、第2下地金属層15aが剥離するのをより低減することができる。
【0040】
次に、第2絶縁層の上面および第1溝の内壁面を被覆する第2下地金属層と、第2下地金属層上に位置し、第1溝を充填する厚みの第2電解めっき層とを形成する工程(工程(e))について説明する。
【0041】
図5(A)に示すように、第2絶縁層132の上面(第2絶縁層132の表面およびビアホールの内壁面)および第1溝151aの内壁面に、第2下地金属層15aを形成する。第2下地金属層15aは、例えば、無電解めっきによって銅などの金属を析出させることによって形成される。無電解めっきを行う際に、触媒としてパラジウムを使用してもよい。第2下地金属層15aは、例えば0.1μm以上0.5μm以下の厚みを有している。
【0042】
第2下地金属層15aを形成した後、
図5(B)に示すように、第2下地金属層15a上に、第1溝151aが充填されるような厚みとなるように、第2電解めっき層15bを形成する。第2電解めっき層15bは、例えば銅などの金属で形成されている。
【0043】
次に、第2絶縁層上に位置する前記第2下地金属層および前記第2電解めっき層を少なくとも除去し、溝内に位置する15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体を形成する工程(工程(f))について説明する。
【0044】
図5(C)に示すように、第2絶縁層132上に位置する第2下地金属層15aおよび第2電解めっき層15bを少なくとも除去する。この除去する工程において、必要に応じて、第2絶縁層132の一部も除去してもよい。例えば、第1溝151aの開口部付近の幅が15μmを超えているような場合、第2絶縁層132上に位置する第2下地金属層15aおよび第2電解めっき層15bと合わせて、第1溝151aの幅が15μm以下となるまで第2絶縁層132の一部を除去してもよい。このようにして、溝151内に位置する15μm以下の幅を有する幅狭パターンを含む第2配線導体15が形成される。
【0045】
工程(a)~(f)を、繰り返し行うことによって、
図6(A)に示すように、コア層11および導体層12の上面に、所望の層数を有するビルドアップ層を形成する。ビルドアップ層は、上記のように、第1絶縁層131と、第1絶縁層131の上面に位置する第2絶縁層132と、第1絶縁層131の上面に位置する第1配線導体14と、第2絶縁層132の上面から第1絶縁層131に向けて凹む溝151内に位置する第2配線導体15とを含む。
【0046】
最後に、
図6(B)に示すように、ビルドアップ層の表面に位置するように、ソルダーレジスト17を形成する。ソルダーレジスト17は、ビルドアップ層の表面を例えば、アクリル変性エポキシ樹脂などのフィルムで被覆し、硬化させることによって形成される。ソルダーレジスト17については、上述の通りであり、詳細な説明は省略する。このようにして、第1の実施形態に係る配線基板1が得られる。
【0047】
次に、本開示の他の配線基板を、
図7に基づいて説明する。
図7は、本開示の第2の実施形態に係る配線基板2の断面を示す説明図である。
図7に示す配線基板2おいて、第1の配線基板1と同様の部材については、同じ符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0048】
第1の実施形態に係る配線基板1では、第2配線導体15の底面(第2下地金属層15aの底面)が、第1絶縁層131と接触している。一方、第2の実施形態に係る配線基板2では、第2配線導体25の底面(第2下地金属層25aの底面)が、第1絶縁層131と接触していない。すなわち、第2配線導体25(第2下地金属層25aおよび第2電解めっき層25b)は、第2絶縁層132内に収まっている。このように、第2の実施形態に係る配線基板2は、第2配線導体25の配置の点で、第1の実施形態に係る配線基板1と相違する。
【0049】
無電解めっきによって第1下地金属層14aおよび第2下地金属層25aを形成する際に、触媒としてパラジウムを使用すると、パラジウムが残存している場合がある。パラジウムが残存していると、互いに隣接する第2配線導体25(第2下地金属層25a)同士の間、あるいは第2配線導体25と第1配線導体14との間において、第1絶縁層131と第2絶縁層132との境界付近でマイグレーションが生じやすくなる。第2の実施形態に係る配線基板2のように、第2配線導体25が第2絶縁層132内に収まっていると、第2下地金属層25aが第1絶縁層131と第2絶縁層132との境界から離れることになる。その結果、境界付近のマイグレーションを低減することができ、絶縁信頼性がより向上する。
【0050】
第2の実施形態に係る配線基板2を製造する方法は、例えば、上述の第1溝を形成する工程(工程(d))において、第1溝151aの深さを調節し、第1溝151aの底面が、第2絶縁層132内に収まるようにすればよい。第1溝151aの深さは、第2絶縁層132の厚みに応じて適宜設定される。
【0051】
次に、本開示のさらに他の配線基板を、
図8に基づいて説明する。
図8は、本開示の第3の実施形態に係る配線基板3の断面を示す説明図である。
図8に示す配線基板3おいて、第1の配線基板1と同様の部材については、同じ符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0052】
第1の実施形態に係る配線基板1では、第1配線導体14の上面(第1電解めっき層14bの上面)が、第2絶縁層132で被覆されていない。一方、第3の実施形態に係る配線基板3では、第1配線導体34の上面(第1電解めっき層14bの上面)の少なくとも一部が、第2絶縁層132から露出せずに、第2絶縁層132で被覆されている。このように、第3の実施形態に係る配線基3は、第1配線導体34の配置の点で、第1の実施形態に係る配線基板1と相違する。
【0053】
例えば、第2絶縁層132と、その上に位置する絶縁層との境界付近は、わずかな間隙が存在している場合があり、互いに隣接する配線導体同士が境界に露出しているとマイグレーションが生じる場合がある。つまり、第1配線導体34(第1電解めっき層14b)と第2絶縁層132との境界付近でマイグレーションが生じやすくなる。第3の実施形態に係る配線基板3のように、第1配線導体34の上面の少なくとも一部が第2絶縁層で被覆されていると、第1電解めっき層14bの上面が第2絶縁層132の上面とその上に位置する絶縁層との境界から離れることになる。その結果、第1電解めっき層14bの上面と第2絶縁層132の上面との間で、マイグレーションを低減することができ、絶縁信頼性がより向上する。
【0054】
第3の実施形態に係る配線基板3を製造する方法は、例えば、上述の第2配線導体を形成する工程(工程(f))において、第1配線導体34の上面の少なくとも一部が露出しないように、第2絶縁層132上に位置する第2下地金属層15aおよび第2電解めっき層15bを少なくとも除去すればよい。必要に応じて、第2絶縁層132の上面付近を除去してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3 配線基板
11 コア層
11a スルーホール導体
12 導体層
131 第1絶縁層
132 第2絶縁層
14、34 第1配線導体
14a 第1下地金属層
14b 第1電解めっき層
15、25 第2配線導体
151、251 溝
15a、25a 第2下地金属層
15b、25b 第2電解めっき層
16 ビアホール導体
17 ソルダーレジスト