(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005236
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】樹脂複合体並びにその乾燥方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B29B 13/06 20060101AFI20230111BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20230111BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230111BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B29B13/06
B29B9/12
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C08J7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107019
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野(古田) 亜衣子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和誠
(72)【発明者】
【氏名】森下 隆実
(72)【発明者】
【氏名】田桑 謙
【テーマコード(参考)】
4F070
4F073
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC88
4F070AE27
4F070DA55
4F070DB01
4F070DB03
4F073AA29
4F073BA23
4F073BA24
4F073GA01
4F073HA05
4F201AA24
4F201AC01
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4F201AR06
4F201BA04
4F201BC01
4F201BC03
4F201BC12
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4F201BC29
4F201BC37
4F201BD05
4F201BL06
4F201BL42
4F201BL43
4F201BN24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芯鞘構造を有する樹脂複合体の乾燥工程において、ブロッキングを生じにくくする乾燥方法の提供。
【解決手段】第1熱可塑性樹脂を含む芯と、前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程と、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程と、を含む、樹脂複合体の乾燥方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体を乾燥する乾燥工程、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法。
【請求項2】
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程と、
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程と、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法。
【請求項3】
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで結晶化されている、
請求項1又は2に記載の乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じ、かつ、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じない温度で実施される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【請求項5】
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【請求項6】
前記第2熱可塑性樹脂が、
ポリエチレンテレフタレートである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥方法。
【請求項7】
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程、
を含む、樹脂複合体の製造方法。
【請求項8】
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程、
を更に含む、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記結晶化工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで、前記第2熱可塑性樹脂を結晶化することを含む、
請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じ、かつ、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じない温度で実施される、
請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、
請求項7~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2熱可塑性樹脂が、
ポリエチレンテレフタレートである、
請求項7~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体。
【請求項14】
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで結晶化されている、
請求項13に記載の樹脂複合体。
【請求項15】
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、
請求項13又は14に記載の樹脂複合体。
【請求項16】
前記第2熱可塑性樹脂が、
ポリエチレンテレフタレートである、
請求項13~15のいずれか一項に記載の樹脂複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合体並びにその乾燥方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は一般的に加熱溶融されて成形されるが、熱可塑性樹脂が水分を含んでいると、加熱によって樹脂が分解する等の問題が生じることがある。このような問題に対処するために、熱可塑性樹脂はその使用前に高い温度で乾燥されるが、樹脂の種類によっては、乾燥条件において流動状態となり、樹脂のペレット同士が付着するブロッキングが生じることがある。
【0003】
ブロッキングを防止するために、特許文献1は「熱可塑性ポリエステル樹脂をブロッキングが起きる高い温度で乾燥する方法であって、前記熱可塑性ポリエステル樹脂を芯とし、前記乾燥温度ではブロッキングが起きない熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘構造ペレットの形態で乾燥することを特徴とする、熱可塑性ポリエステル樹脂の乾燥方法。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法を使用する場合、芯を形成する樹脂の種類に応じて、鞘を形成する樹脂の種類を選択する必要があり、芯と鞘との組み合わせに制限がある。そこで、本発明は、芯と鞘との組み合わせの選択肢を増やすために、ブロッキングを生じにくくする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討した結果、鞘を形成する樹脂を結晶化することによって、ブロッキングが生じにくくなることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体を乾燥する乾燥工程、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法。
[2]
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程と、
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程と、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法。
[3]
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで結晶化されている、[1]又は[2]に記載の乾燥方法。
[4]
前記乾燥工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じ、かつ、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じない温度で実施される、[1]~[3]のいずれかに記載の乾燥方法。
[5]
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の乾燥方法。
[6]
前記第2熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである、[1]~[5]のいずれかに記載の乾燥方法。
【0008】
[7]
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程、
を含む、樹脂複合体の製造方法。
[8]
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程、
を更に含む、[7]に記載の製造方法。
[9]
前記結晶化工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで、前記第2熱可塑性樹脂を結晶化することを含む、[7]又は[8]に記載の製造方法。
[10]
前記乾燥工程が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じ、かつ、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じない温度で実施される、[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11]
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、[7]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]
前記第2熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである、[7]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
[13]
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、
前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘と、
を含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体。
[14]
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂が、
前記第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に前記第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、前記第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで結晶化されている、[13]に記載の樹脂複合体。
[15]
前記第1熱可塑性樹脂が、
スピログリコールに由来する構成単位と、
エチレングリコールに由来する構成単位と、
テレフタル酸に由来する構成単位と、
を含む、[13]又は[14]に記載の樹脂複合体。
[16]
前記第2熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレートである、[13]~[15]のいずれかに記載の樹脂複合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブロッキングを生じにくくする方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
<樹脂複合体の乾燥方法>
本発明の一実施形態は、
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘とを含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体を乾燥する乾燥工程、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法に関する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘とを含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程と、
結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程と、
を含む、樹脂複合体の乾燥方法に関する。
【0014】
本実施形態に係る乾燥方法によれば、鞘を形成する第2熱可塑性樹脂が結晶化していることにより、ブロッキングを生じにくくすることができる。
【0015】
[樹脂複合体]
樹脂複合体は、芯と、前記芯を覆う鞘と、を含む芯鞘構造を有する。樹脂複合体の形状は、芯鞘構造を有していれば特に限定されないが、例えばペレット形状を挙げることができる。
【0016】
樹脂複合体における芯と鞘との重量比(芯/鞘)は、好ましくは70~99/1~30であり、より好ましくは80~97/3~20であり、更に好ましくは85~95/5~15である。
【0017】
(樹脂複合体の芯)
樹脂複合体の芯は、第1熱可塑性樹脂を含む。第1熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、ポリエステル樹脂であることが好ましい。ポリエステル樹脂はエステル結合を有するが、この結合は水分存在下での加熱によって加水分解するおそれがあるため、本実施形態に係る乾燥方法を実施する対象としてポリエステル樹脂は好適である。
【0018】
第1熱可塑性樹脂は、
・下記式(1)で表されるスピログリコールに由来する構成単位(以下「スピログリコール単位」と称する。)と、
・エチレングリコールに由来する構成単位(以下「エチレングリコール単位」と称する。)と、
・テレフタル酸に由来する構成単位(以下「テレフタル酸単位」と称する。)と、
を含むことがより好ましい。
【化1】
【0019】
スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む熱可塑性樹脂は、ブロッキングを防止するために、そのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で乾燥する必要がある。そのため、これに適した乾燥機を所持していない場合、前記樹脂を使用し難いという問題がある。しかし、本実施形態に係る乾燥方法によれば、より高い温度での乾燥が可能となり、乾燥条件が緩和される。そのため、スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む熱可塑性樹脂は、本実施形態に係る乾燥方法を実施する対象として好適である。
【0020】
スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む熱可塑性樹脂の具体的な製品としては、例えば、三菱瓦斯化学株式会社製のALTESTER(登録商標)を挙げることができる。
【0021】
スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位との合計モル%は、第1熱可塑性樹脂を基準として、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは95モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。
【0022】
スピログリコール単位のモル%は、第1熱可塑性樹脂を基準として、好ましくは2~40モル%であり、より好ましくは5~30モル%であり、更に好ましくは8~20モル%である。
【0023】
エチレングリコール単位のモル%は、第1熱可塑性樹脂を基準として、好ましくは10~70モル%であり、より好ましくは20~60モル%であり、更に好ましくは30~50モル%である。
【0024】
テレフタル酸単位のモル%は、第1熱可塑性樹脂を基準として、好ましくは10~70モル%であり、より好ましくは20~60モル%であり、更に好ましくは30~50モル%である。
【0025】
第1熱可塑性樹脂は、スピログリコール単位、エチレングリコール単位、及びテレフタル酸単位に加えて、更なる構成単位を含んでいてもよい。更なる構成単位としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位(以下「ナフタレンジカルボン酸単位」と称する。)を挙げることができる。
【0026】
更なる構成単位(例えば、ナフタレンジカルボン酸単位)が含まれる場合、このモル%は、第1熱可塑性樹脂を基準として、例えば、1~30モル%、5~20モル%、又は10~15モル%としてもよい。
【0027】
第1熱可塑性樹脂は、1種類の樹脂であってもよいし、2種類以上の樹脂の組み合わせであってもよい。
【0028】
樹脂複合体の芯は、第1熱可塑性樹脂に加えて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、可塑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃化剤、及び抗菌剤を挙げることができる。
【0029】
(樹脂複合体の鞘)
樹脂複合体の鞘は、第2熱可塑性樹脂を含む。第2熱可塑性樹脂は、結晶化可能な樹脂であれば特に限定されず、第1熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。具体的には、第2熱可塑性樹脂を結晶化した場合に、第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、ブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなる第2熱可塑性樹脂を選択すればよい。
【0030】
本明細書において「結晶化可能な樹脂」とは、溶融状態から徐冷することによって結晶構造が生じる樹脂を意味する。
【0031】
第2熱可塑性樹脂は、好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0032】
第2熱可塑性樹脂は、1種類の樹脂であってもよいし、2種類以上の樹脂の組み合わせであってもよい。
【0033】
樹脂複合体の鞘は、第2熱可塑性樹脂に加えて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、芯に含まれ得る添加剤として上記したものを挙げることができる。
【0034】
[結晶化工程]
本実施形態に係る乾燥方法における結晶化工程は、樹脂複合体における第2熱可塑性樹脂を結晶化する工程である。鞘に含まれる第2熱可塑性樹脂を結晶化することによって、樹脂複合体を乾燥させる際にブロッキングを生じにくくすることができる。
【0035】
結晶化工程では、第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで、第2熱可塑性樹脂を結晶化することが好ましい。結晶化の好ましい度合いは、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の種類に応じて変わるため、適宜調節すればよい。一例として、結晶化熱量が0J/gとなるまで、第2熱可塑性樹脂を結晶化してもよい。
【0036】
結晶化の方法は特に限定されず、例えば、第2熱可塑性樹脂の結晶化温度(Tc)の温度条件下で、樹脂複合体を保持する方法が挙げられる。
【0037】
第1熱可塑性樹脂が、スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む樹脂であり、かつ、第2熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である場合、結晶化工程の温度は、好ましくは90~200℃であり、より好ましくは100~140℃である。
【0038】
第1熱可塑性樹脂が、スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む樹脂であり、かつ、第2熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である場合、結晶化工程の時間は、好ましくは0.1~10時間であり、より好ましくは0.5~5時間である。
【0039】
[乾燥工程]
本実施形態に係る乾燥方法における乾燥工程は、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む樹脂複合体を乾燥する工程である。鞘に含まれる第2熱可塑性樹脂が結晶化されているため、乾燥工程においてブロッキングが生じにくくなる。
【0040】
乾燥工程は、第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じ、かつ、結晶化されている第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じない温度で実施することが好ましい。具体的な乾燥温度は、第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂の種類に応じて変わるため、適宜調節すればよい。
【0041】
乾燥の方法は特に限定されず、例えば、慣用されている乾燥機中で樹脂複合体を乾燥する方法が挙げられる。
【0042】
第1熱可塑性樹脂が、スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む樹脂であり、かつ、第2熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である場合、乾燥工程の温度は、好ましくは100~180℃であり、より好ましくは105~165℃である。
【0043】
第1熱可塑性樹脂が、スピログリコール単位と、エチレングリコール単位と、テレフタル酸単位とを含む樹脂であり、かつ、第2熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂である場合、乾燥工程の時間は、好ましくは1~24時間であり、より好ましくは2~6時間である。
【0044】
<樹脂複合体の製造方法>
本発明の一実施形態は、
第1熱可塑性樹脂を含む芯と、前記芯を覆う、結晶化可能な第2熱可塑性樹脂を含む鞘とを含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体における前記第2熱可塑性樹脂を結晶化する結晶化工程、
を含む、樹脂複合体の製造方法に関する。
【0045】
本実施形態に係る製造方法は、結晶化されている前記第2熱可塑性樹脂を含む前記樹脂複合体を乾燥する乾燥工程を更に含むことが好ましい。
【0046】
本実施形態に係る製造方法における樹脂複合体、結晶化工程、及び乾燥工程の詳細は、前記<樹脂複合体の乾燥方法>の項目において記載したとおりである。
【0047】
<樹脂複合体>
本発明の一実施形態は、第1熱可塑性樹脂を含む芯と、前記芯を覆う、結晶化されている第2熱可塑性樹脂を含む鞘とを含む、芯鞘構造を有する樹脂複合体に関する。
【0048】
本実施形態に係る樹脂複合体において、第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂を単独で乾燥した場合に第1熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度よりも、第2熱可塑性樹脂のブロッキングが生じる最低乾燥温度が高くなるまで結晶化されていることが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る樹脂複合体の詳細は、前記<樹脂複合体の乾燥方法>の項目において記載したとおりである。なお、本実施形態に係る樹脂複合体は、上述の乾燥工程を経たものであってもよいし、経ていないものであってもよい。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0051】
なお、実施例における各種の値は、本発明の実施形態における好ましい下限値又は上限値としてもよいし、上述した本発明の実施形態における同種の値(数値範囲の下限値及び上限値を含む。)と適宜組み合わせて好ましい数値範囲としてもよい。また、実施例における同種の2つの値を適宜組み合わせて好ましい数値範囲としてもよい。
【0052】
<ガラス転移温度及び結晶化熱量の測定方法>
島津製作所製DSC/TA-50WSを使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/分)気流中、昇温速度20℃/分で測定を行った。その際、ベースラインに不連続的部分が現れる領域の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)とし、結晶化温度(Tc)に発熱として現れるピークの面積から求めた値を結晶化熱量とした。
【0053】
[実施例1]
表1に示す組成を有する第1熱可塑性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、商品名:ALTESTER、ガラス転移温度=約93℃)を芯用二軸押出機に供給し、第2熱可塑性樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、商品名:ノバペックスBK2180、三菱ケミカル社製、ガラス転移温度=79℃)を鞘用単軸押出機に供給した。第1熱可塑性樹脂を約250℃、第2熱可塑性樹脂を280℃で、それぞれの押出機から芯鞘型ダイに、芯鞘比が芯/鞘=90/10重量%で供給した。押し出されたストランドを水槽に通し冷却し、ペレタイザーにてカッティングし、長さ約3mmかつ断面形状の直径約2mmの楕円形の芯鞘構造のペレットを得た。
【0054】
ペレット(20g)をアルミカップに入れ、110℃に調整した熱風乾燥機中で2時間放置して、ペレットを結晶化した。ペレットを取り出し、冷却し、袋に入れて振とうした。
【0055】
ペレット(20g)をアルミカップに入れ、150℃に調整した熱風乾燥機中で5時間放置して、ペレットを乾燥させた。乾燥させたペレットのブロッキングの有無について観察した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2~9]
表1に示す条件をそれぞれ採用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1~3]
表2に示す条件をそれぞれ採用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、比較例1~3では、結晶化工程を実施しなかった。結果を表2に示す。
【0058】
[比較例4~7]
表2に示す条件をそれぞれ採用したこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、比較例4~7では、第2熱可塑性樹脂の鞘を形成せず、また、結晶化工程を実施しなかった。結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
表1の結果は、芯鞘構造を有する樹脂複合体の鞘を結晶化することによって、乾燥によるブロッキングを防止できることを示している。
表2の結果は、芯鞘構造を有していないと、乾燥によるブロッキングを防止できないこと(比較例4~7)、及び芯鞘構造を有していても鞘を結晶化しないと、乾燥によるブロッキングを防止できないこと(比較例1~3)を示している。