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特開2023-52387リウマチ関節炎治療用ペプチド及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052387
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】リウマチ関節炎治療用ペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20230404BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20230404BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230404BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230404BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230404BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230404BHJP
   G01N 33/542 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
A23L33/18
C12N15/11 Z
C12N15/12
A61K38/10
A61P19/02
A61P29/00
A61P29/00 101
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/542 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003697
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2020573530の分割
【原出願日】2019-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0077329
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0078953
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519001383
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アールアンドディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュ ユン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユジン シー.
(72)【発明者】
【氏名】カン ミン ジョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リウマチ関節炎治療用ペプチド及びその用途を提供する。
【解決手段】特定の配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチド、該ペプチドを含むリウマチ関節炎治療用薬学的組成物、あるいはリウマチ関節炎改善用健康機能性食品組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記組成物は、炎症性サトカインの分泌を抑制させるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記サトカインはIL-1β(interleukin-1β)、IL-6、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、それらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドのN末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるか、
前記ペプチドのC末端は、アミノ基(-NH)及びアジド基(-NHNH)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記ペプチド以外の他の抗炎症剤と同時、別途、または順に併用投与されるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または改善用の健康機能性食品組成物。
【請求項9】
(a)ENO1(α-enolase)を含む個体の試料に、アポリポ蛋白質B100(apo
B100)を、候補物質と共に接触させる段階と、
(b)前記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルを、候補物質が投与されていない対照群と比較する段階と、を含む、リウマチ関節炎治療剤をスクリーニングする方法。
【請求項10】
前記試料は、血液試料である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルは、ツーハイブリッド方法、共同免疫沈降方法、共同局所化分析、閃光近接測定法(SPA)、UV架橋結合方法または化学的架橋結合方法、異分子相互作用分析(BIA)、質量分析法(MS)、NMR(nuclear magnetic resonance)、蛍光偏光分析法(FPA)及び試験管内プルダウンアッセイからなる群で選択されるいずれか1以上の方法によって測定されるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルが、対照群に比べて低下された場合、リウマチ関節炎治療剤として決定する段階をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リウマチ関節炎治療用ペプチド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
リウマチ関節炎(RA:rheumatoid arthritis)は、関節や筋の滑膜に非細菌性炎症
反応が慢性的に示され、それにより、滑膜が増殖され、滑液の量が増加し、関節の腫れと疼痛とをもたらす疾患である。リウマチ関節炎は、全身性炎症反応であり、人体内の多くの組織及び器官(皮膚、血管、心臓肺、筋肉)に影響を与えて、特に、関節に非可逆的な増殖性滑膜炎を起こし、関節軟骨の破壊と関節の硬直とに進む。リウマチ関節炎の原因は、まだ明らかにされていないが、自家免疫反応が、本疾患の慢性化と進行とに重要な役割を行うと知られている。さらに具体的には、炎症性媒介体またはサトカインの局所的な放出と共に、T細胞が重要な役割を行い、関節を破壊させる持続的な自家免疫反応が起こる。主要症状としては、疲れ、無力感、疼痛などであり、関節炎が進みながら、発熱及び体力衰弱を伴う。また、炎症が起こった関節近辺に、筋肉硬直と筋肉萎縮とが示され、関節の動きに影響を与える。
【0003】
リウマチ関節炎を治療するための主要目的は、関節の痛症と炎症とを低減させ、関節変形を防止するだけではなく、さらに根本的には、関節炎を誘発する細胞内作用メカニズムを明らかにし、そのメカニズムを制御するところにある。しかし、リウマチ関節炎の発病原因及びメカニズムに係わる多くの研究と、その結果を利用した多様な新薬開発とにもかかわらず(韓国公開特許10-2018-003659)、今のところ、完治に至らせる治療剤が開発されていない状態である。
【0004】
これまで知られた関節炎治療剤としては、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAIDs)(アスピリン、イブプロフェン)、メトトレキサート(methotrexate)、レフルノミド(leflunomide)、スルサラファジン(sulfasalazine)、ステロイドホルモン剤などがある。しかし、そのような治療剤は、長期間服用時、副作用が伴う問題点がある。そのために、最近では、炎症メカニズムの中心役割を行うTNF(tumor necrosis factor)の水
溶性受容体、TNFやインターロイキン(IL)6受容体に対する抗体、またはCD20に対する抗体などを遺伝子組み換え技術で生産し、それらを治療剤として開発し、疾病経過をかなり好転させているが、それもまた、重症感染、結核または腫瘍のような予期せぬ副作用が発生する問題点がある。
そのような技術的背景下で、リウマチ関節炎と係わる核心的な炎症メカニズムを調節することにより、リウマチ関節炎の諸般の症状である炎症、骨及び軟骨組織の浸食などを緩和させることができる新たな治療剤の発掘が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-003659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一様相は、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、それをコーディングするポリヌクレオチドを提供するものである。
【0007】
他の様相は、前記ペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを有効成分として含むリウマチ関節炎の予防用または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0008】
さらに他の様相は、前記ペプチドを有効成分として含むリウマチ関節炎の予防用または改善用の健康機能性食品組成物を提供するものである。
【0009】
さらに他の様相は、(a)ENO1(α-enolase)を含む個体の試料に、アポリポ蛋
白質B100(apoB100)を、候補物質と共に接触させる段階と、(b)前記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルを、候補物質が投与されていない対照群と比較する段階と、を含む、リウマチ関節炎治療剤をスクリーニングする方法を提供するものである。
【0010】
本出願の、それら以外の目的及び利点は、添付された特許請求の範囲、及び図面と共に、下記の詳細な説明により、さらに明確になるであろう。本明細書に記載されていない内容は、本出願の技術分野、または類似した技術分野における当業者であるならば、十分に認識して類推することができるものであるので、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一様相は、リウマチ関節炎治療のための、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、アミド結合(または、ペプチド結合)で連結された2個以上のアミノ酸からなるポリマーを意味し、さらに具体的には、前記ペプチドは、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からもなる。本発明者らは、生物学的に有効な活性を有するペプチドを開発するために、鋭意努力を傾けた結果、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドを究明した。ここで、前記生物学的に有効な活性は、(a)炎症性サトカインの分泌抑制、(b)リウマチ関節炎による炎症反応緩和、(c)リウマチ関節炎による病理的症状緩和のような特性から選択されるいずれか1以上を示すものでもある。従って、前記ペプチドは、リウマチ関節炎の予防または治療のための用途にも活用される。
【0013】
また、前記ペプチドは、さらに良好な化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸水性、力価、効能など)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトル)、低減された抗原性を獲得するために、前記ペプチドのN末端またはC末端に、保護基が結合されてもいる。望ましくは、前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール(PEG)でもあるが、ペプチドの改質、特にペプチドの安定性を増進させることができる成分であるならば、制限なしに含んでもよい。一具体例において、前記ペプチドのN末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか一つの保護基とも結合され、かつ/または前記ペプチドのC末端は、アミノ基(-NH)及びアジド基(-NHNH)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基とも結合される。
【0014】
前記用語「安定性」は、生体内蛋白質切断酵素の攻撃から、本発明のペプチドを保護するインビボ安定性だけではなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も意味するものでもある。
【0015】
併せて、前記ペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基のための特定目
的のために製造されたアミノ酸配列を追加して含んでもよい。
【0016】
本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドが結合された重合体であり、遺伝情報を伝達する役割を行う分子を称する。前記ポリヌクレオチドは、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドをコーディングし、前記ペプチドをコーディングするポリヌクレオチド配列と、それぞれ約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上または約99%以上の配列相同性を有する配列を含んでもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「相同性(Homology)」は、野生型アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列との類似程度を示すためのものであり、そのような相同性の比較は、当業界で周知されている比較プログラムを利用して行うことができ、2個以上の配列間相同性を百分率(%)で計算することができる。
【0018】
前記ペプチドは、当該分野で広く公知された多様な方法で獲得することができる。一例として、ポリヌクレオチド組み換えと、蛋白質発現システムとを利用して製造するか、あるいはペプチド合成のような化学的合成を介して試験管内で合成する方法、及び無細胞蛋白質合成法などによっても製造される(solid-phase synthesis techniques; Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85: 2149-54 (1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111 (1984); US登録特許第5,516,891号)。
【0019】
他の様相は、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または治療用の薬学的組成物を提供する。
【0020】
前記薬学的組成物において、前記「ペプチド」及び前記「ポリヌクレオチド」については、前述の通りである。
【0021】
本明細書で使用される用語「予防」は、一様相による薬学的組成物の投与により、個体のリウマチ関節炎を抑制させるか、あるいは発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0022】
本明細書で使用される用語「治療」は、一様相による薬学的組成物の投与により、個体のリウマチ関節炎に対する症状が好転するか、あるいは好ましく変更される全ての行為を意味する。
【0023】
本明細書で使用される用語「個体」は、リウマチ関節炎の治療を必要とする対象を意味し、さらに具体的には、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス・犬・猫・馬及び牛などの哺乳類を意味する。
【0024】
一実施例によれば、前記ペプチドは、末梢血液内単核球細胞表面に発現されているENO1とapoB100との結合を阻害することにより、炎症性サトカイン、例えば、血液内IL(interleukin)-1β、IL-6及び/またはTNF(tumor necrosis factor)-αの分泌量を減少させ、それにより、リウマチ関節炎治療効果を示すことを確認することができた。
【0025】
一方、一様相によるペプチドまたはそれをコーディングするポリヌクレオチドは、コロイド懸濁液、粉末、食塩水、脂質、リポソーム、微小球体(microspheres)またはナノ球形粒子のような薬学的に許容されうる担体によっても運ばれる。それらは、運搬手段と複合体を形成するか、あるいはそれと関係することができ、脂質、リポソーム、微細粒子、金、ナノ粒子、ポリマー、縮合反応剤、多糖類、ポリアミノ酸、デンドリマー、サポニン、吸着増進物質または脂肪酸のような当業界に公知された運搬システムを使用し、生体内で運搬される。前記薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、すなわち、製剤時、一般的に利用されるラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシア、ゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含んでもよく、また、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤などをさらに含んでもよい。
【0026】
前記薬学的組成物は、目的とする方法により、経口投与するか、あるいは非経口投与(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮下、皮内または局所に適用)を行い、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者によって適切にも選択される。
【0027】
前記薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本明細書において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で、疾患治療に十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含んだ要素、及びその他医学分野に周知の要素によっても決定される。一様相による薬学的組成物は、個別治療剤として投与するか、あるいは他の抗炎症剤と併用しても投与され、従来の抗炎症剤とは、同時に、別途にまたは順次にも投与され、単一または多重にも投与される。前記要素をいずれも考慮し、副作用なしに、最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、それは、当業者によって容易にも決定される。
【0028】
具体的には、前記薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内での活性成分吸収度、不活性率、排泄速度、疾病種類、併用される薬物によっても異なり、投与経路、肥満重症度、性別、体重、年齢などによっても増減される。
【0029】
さらに他の様相は、治療学的有効量の配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、リウマチ関節炎を予防または治療する方法を提供する。
【0030】
前記薬学的組成物についての説明で言及された用語または要素のうち、すでに言及されたものと同一のものは、前述の通りである。
【0031】
さらに他の様相は、配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または改善用の健康機能性食品組成物を提供する。
【0032】
前記健康機能性食品組成物において、前記「ペプチド」については、前述の通りである。
【0033】
本明細書で使用される用語「改善」とは、治る状態と係わるパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも低下させる全ての行為を意味する。このとき、前記健康機能性食品組成物は、リウマチ関節炎の予防または改善のために、当該疾患の発病段階以前または発病後、治療のための薬剤と同時または別個にも使用される。
【0034】
前記健康機能性食品組成物において、有効成分は、食品にそのまま添加するか、あるいは他の食品または食品成分と共にも使用され、一般的な方法によっても適切に使用される。該有効成分の混合量は、その使用目的(予防用または改善用)により、適するようにも決定される。一般的に、食品または飲料の製造時、前記健康機能性食品組成物は、原料に対し、望ましくは、約15重量%以下、望ましくは、約10重量%以下の量にも添加される。しかし、健康及び衛生を目的とするか、あるいは健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下でもある。
【0035】
前記健康機能性食品組成物は、前記有効成分を含む以外に、特別な制限なしに、他の成分を必須成分として含んでもよい。例えば、通常の飲料のように、さまざまな香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含んでもよい。前述の天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など、ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロース、及びポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンのような一般的な糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールのような糖アルコールでもある。前述のところ以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリシルヒジンなど))及び合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、当業者の選択によっても適切に決定される。
【0036】
前述のところ以外にも、一様相による健康機能性食品組成物は、さまざまな栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含んでもよい。そのような成分は、独立して、あるいは組み合わせて使用することができ、そのような添加剤の比率も、当業者によっても適切に選択される。
【0037】
さらに他の様相は、(a)ENO1(α-enolase)を含む個体の試料に、アポリポ蛋
白質B100(apoB100)を、候補物質と共に接触させる段階と、(b)前記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルを、候補物質が投与されていない対照群と比較する段階と、を含む、リウマチ関節炎治療剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0038】
本明細書で使用された「ENO1(α-enolase)」は、解糖経路(glycolytic pathway)の核心要素として最初に確認された多機能性蛋白質であり、細胞基質に偏在し(ubiquitously)発現され、プラスミノゲン結合受容体であり、細胞表面に発現すると知られている。前記ENO1に対する抗体は、ループス、クローン病及び網膜症のような自家免疫疾患患者群に発見されている。しかし、リウマチ関節炎の炎症反応誘導と係わる特定蛋白質との結合については、知られていない。
【0039】
本明細書で使用される用語「試料」は、個体から分離された全血、血清、血漿、唾液、尿、喀痰、リンパ液、細胞、組織などを含んでもよく、例えば、末梢血液、さらに具体的には、末梢血液単核球細胞でもある。
【0040】
前記方法において、「接触(contacting)」は、一般的な意味であり、2個以上の製剤(例えば、2個のポリペプチド)を結合させるか、あるいは製剤と細胞(例えば、蛋白質及び細胞)とを結合させるというようなことを称することができる。該接触は、試験管内(in vitro)においても起こる。例えば、試験管(test tube)、または他のコンテナ
(container)において、2個以上の製剤を結合させるか、あるいは試験製剤及び細胞、
または細胞溶解物及び試験製剤を結合させることができる。また、該接触は、細胞またはインサイチュ(in situ)においても起こる。例えば、2個のポリペプチドを暗号化する組み換えポリヌクレオチドを、細胞内で共同発現(coexpression)させることにより、細胞または細胞溶解物において、2個のポリペプチドを接触させることができる。また、テストする蛋白質が、固定相表面に配列された蛋白質チップ(protein chip)や蛋白質ア
レイ(protein array)を利用することもできる
【0041】
前記方法において、「候補物質」は、任意の物質(substance)、分子(molecule)、
元素(element)、化合物(compound)、実在物(entity)、またはそれらの組み合わせ
を含んでもよい。例えば、蛋白質、ポリペプチド、低分子有機化合物、ポリサッカライド、ポリヌクレオチドなどを含んでもよい。また、自然産物(natural product)、合成化合物または化学化合物、あるいはそれら2個以上物質の組み合わせでもある。
【0042】
前記「アポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルを測定する方法」は、ハイブリッド方法、共同免疫沈降方法(co-immunoprecipitation assay)、共同局所化分析(co-localization assay)、閃光近接測定法(SPA:scintillation proximity assay:SPA)、UV架橋結合方法または化学的架橋結合方法、二分子相互作用分析(BIA:bimolecular interaction analysis)、質量分析法(MS:mass spectrometry)、NMR(nuclear magnetic resonance)、蛍光偏光分析法(FPA:fluorescence polarization assays)及び試験管内プルダウンアッセイ(in vitro pull-down assay
)からなる群から選択されるいずれか1以上でもある。
【0043】
一実施例によれば、アポリポ蛋白質B100とENO1との結合を阻害する物質は、リウマチ関節炎患者群の末梢血液内炎症性サトカインの分泌量を有意的に減少させただけでなく、リウマチ関節炎動物モデルにおいても、優秀な治療効能を示したが、アポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルは、リウマチ関節炎治療剤開発のための指標としても活用される。
【0044】
従って、前記方法は、候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルが、対照群に比べて低下された場合、リウマチ関節炎の治療剤として決定する段階をさらに含んでもよい。前記結合レベルの変化は、対照群または陽性対照群と類似したレベル、あるいは1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%及び100%以上低下することを含んでもよい。
【発明の効果】
【0045】
一様相によるペプチドによれば、末梢血液内炎症性サトカインを有意的に減少させ、それにより、リウマチ関節炎の諸般の症状である炎症、骨及び軟骨組織の浸食などの治療にも利用される。
【0046】
一様相によるスクリーニングする方法によれば、リウマチ関節炎と係わる炎症反応を有意的に低減させることができる新規治療剤を発掘することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞の表面において、ENO1の発現を共焦点顕微鏡で観察した結果である。
【0048】
図2】リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞にapoB100を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(HC:正常対照群、RA:リウマチ関節炎患者群、*p<0.05)。
【0049】
図3】ENO1とapoB100との結合いかんを、(A)免疫ブロッティング、(B)共焦点顕微鏡、(C)BIACOREシステム及び(D)ELISA分析を介して確認した結果である。
【0050】
図4】リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞にENO1siRNAを処理し、ENO1の発現を抑制させ、apoB100を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(ConsiRNA:対照群、ENO1siRNA:ENO1発現阻害群)。
【0051】
図5】LDLRノックアウトマウスにapoB100を処理した後、(A)体重、(B)足首厚及び(C)関節炎指数変化を比較した結果である(LDLRK/O:LDLRノックアウトマウス、WT:野生型マウス)。
【0052】
図6】LDLRノックアウトマウスにapoB100を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(LDLRK/O:LDLRノックアウトマウス、WT:野生型マウス)。
【0053】
図7】末梢血液内において、ENO1と結合するapoB100のモチーフを、ペプチドマイクロアレイを介して確認した結果である。
【0054】
図8】リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞にapoB100由来のペプチド#1ないしペプチド#5を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(HC:正常対照群、RA:リウマチ関節炎患者群、NBP:非結合ペプチド処理群、*p<0.05、***p<0.001)。
【0055】
図9】CD14(-)末梢血液単核球細胞及びCD14(+)末梢血液単核球細胞にapoB100由来のペプチド#1ないしペプチド#5を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(NBP:非結合ペプチド処理群、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0056】
図10】リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞に炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチド(apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5)を処理した後、(A)IL-1β、(B)IL-6及び(C)TNF-αの分泌量変化を比較した結果である(NBP:非結合ペプチド処理群、*p<0.05)。
【0057】
図11】K/BxNリウマチ関節炎動物モデルに炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチド(apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5)を処理した後、前記動物モデルの(A)足首厚及び(B)関節炎指数変化を比較した結果である。
【0058】
図12】K/BxNリウマチ関節炎動物モデルに炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチド(apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5)を処理した後、(A)間接膜炎症(synovial inflammation)(B)骨浸食(bone erosion)、(C)軟骨損傷(cartilage damage)(D)白血球浸潤(leukocyte infiltration)を比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例0060】
実施例1.ENO1とapoB100との結合が炎症性サトカイン分泌に及ぼす影響
本実施例においては、リウマチ関節炎と、末梢血液内単核球細胞のENO1発現との関連性を確認し、それらの発現を観察した。また、リウマチ関節炎患者から、IP(immunoprecipitation)/MS(mass spectroscopy)法を利用したプロテオミクス分析を介し
、ENO1(α-enolase)の結合リガンドとして選定されたアポリポ蛋白質B100(
apoB100)との結合が、リウマチ関節炎患者の末梢血液内炎症性サトカイン分泌に及ぼす影響を確認しようとした。具体的には、リウマチ関節炎患者から得た単核球細胞を対象にENO1免疫染色が施された末梢血液単核球細胞にapoB100を処理した後、IL-1β、IL-6、TNF-αの分泌量変化を比較した。なお、対照群としては、正常人から分離された細胞を利用した群(HC:healthy control)を設定した。
【0061】
その結果、図1に示されているように、対照群に比べ、リウマチ患者の単核球の表面において、有意的に高いENO1の発現が観察された。また、リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞にapoB100を処理した結果、図2に示されているように、炎症性サトカインであるIL-1β、IL-6及びTNF-αのいずれの分泌量も、正常対照群に比べて格段に増加しているということを確認した。
【0062】
また、免疫ブロッティング、Biacoreシステム、共焦点顕微鏡及びELISAを介し、ENO1とapoB100との結合いかんを確認した結果、図3に示されているように、ENO1とapoB100は、相対的に力強い結合を形成することを確認することができた。
【0063】
それにより、本実施例においては、ENO1とapoB100との結合が、リウマチ関節炎による炎症反応に対し、核心的な役割を行うか否かということに係わるさらなる検証を実施した。まず、リウマチ関節炎患者から分離された末梢血液単核球細胞にENO1siRNAを処理し、ENO1の発現を抑制させた場合、従前と同様に、apoB100の処理により、炎症性サトカインの分泌量が増加するか否かということを確認した。また、生体内において、apoB100蛋白質と結合されている状態で存在するLDLが、前記炎症反応に関与する可能性も、排除することができないが、LDLRノックアウトマウス及びC57BL/6野生型対照群マウスに、K/BxNマウスの血清(以下、K/BxN血清と命名する)及びApoB100を処理した後、それによる生体内変化を比較した。一方、K/BxNマウス血清添加は、前記K/BxN血清内に存在する自家抗体の沈着を介し、関節炎を誘発させる役割を行い、それは、自家免疫反応による関節炎動物モデルを製造するための従来技術中の一つである。
【0064】
その結果、図4に示されているように、末梢血液単核球細胞のENO1発現を抑制させた場合、apoB100処理による炎症性サトカイン分泌量の増加は、観察されていない。また、図5及び図6に示されているように、足首厚、関節炎指数及び炎症性サトカイン分泌量の変化において、LDLRノックアウトマウスは、対照群と類似しているか、あるいはかえってさらに高い結果を確認することができ、それは、前記炎症反応は、LDLまたはLDL受容体とは無関係であるということを示している。
【0065】
すなわち、そのような実験結果を総合すれば、リウマチ関節炎の発病と、末梢血液内単核球細胞のENO1発現は、密接な相関関係にあり、特に、前記末梢血液内ENO1とapoB100との結合は、当該疾病の炎症反応に核心的な役割を行うということを示すのである。
【0066】
実施例2.炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチドの導出
本実施例においては、前記実施例1の実験結果に基づき、末梢血液内ENO1とapoB100との結合を阻害することにより、炎症性サトカインの分泌を抑制させることができるペプチドを導き出そうとするものである。具体的には、図7に示されているように、ペプチドマイクロアレイを利用し、ENO1と結合するapoB100のモチーフを確認し、総5種のペプチドを得た。前記ペプチドの具体的な情報は、下記表1の通りである。
【表1】
【0067】
その後、正常人及びリウマチ患者から得た末梢血液単核球細胞に、前記ペプチド#1ないしペプチド#5(apoB100 #1、apo100 #2、apoB100 #3、apoB100 #4、apoB100 #5と命名する)を処理した後、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量変化を比較した。なお、対照群としては、非結合ペプチド処理群(NBP)を設定し、本実施例における結果は、リウマチ患者及び正常人それぞれ6名に対する平均値で示されたものである。
【0068】
その結果、図8に示されているように、前述のところと同様に、リウマチ関節炎患者において、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量が、正常人(HC)に比べ、有意的に増加するということを確認することができた。また、apoB100 #2またはapoB100 #4を処理した場合、末梢血液単核球細胞のIL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量が対照群に対し、格段に増加した一方、apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5を処理した場合には、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量が減少するということを確認することができた。
【0069】
なお、以前の研究において、リウマチ関節炎患者血液内におけるENO1の発現増大は、ほとんどCD14(+)末梢血液単核球細胞に由来することが確認されている。従って、本実施例においては、CD14(-)末梢血液単核球細胞またはCD14(+)末梢血液単核球細胞に、前記ペプチド#1ないしペプチド#5を処理した後、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量変化を比較することにより、ENO1とapoB100との結合が、前記反応に関与するか否かということを間接的に確認するものである。一方、対照群としては、非結合ペプチド処理群(NP)を設定した。
【0070】
その結果、図9に示されているように、CD14(+)末梢血液単核球細胞においては、前記図8の結果と類似した傾向を示したが、CD14(-)末梢血液単核球細胞においては、いかなる変化も観察されず、前述の反応に、ENO1とapoB100との結合が密接に関与するということを再び確認することができた。
【0071】
そのような実験結果から、炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチドとして、apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5を導き出すことができた。実施例3.リウマチ関節炎の治療効果検証
【0072】
本実施例においては、前記実施例2における、炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチド(apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5)のリウマチ関節炎治療効果を確認するものである。
3-1.リウマチ関節炎患者由来の末梢血液における炎症性サトカイン分泌低減
【0073】
リウマチ関節炎患者由来の末梢血液に、apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5を処理した後、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量変化を確認した。対照群としては、非結合ペプチド処理群(NBP)を設定した。
【0074】
その結果、図10に示されているように、apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5の処理により、IL-1β、IL-6またはTNF-αの分泌量が有意的に減少し、このうちでも、apoB100 #3の処理による効果が最も優秀であるということを確認することができた。
3-2.リウマチ関節炎動物モデルでの治療効果確認
【0075】
マウスに、K/BxN血清とapoBとを投与し、中程度の関節炎を誘導し、K/BxNリウマチ関節炎動物モデル(K/BxN serum transfer arthritis mouse)を確
立した後、前記動物モデルを対象に、炎症性サトカイン分泌抑制用ペプチドを病変部位に皮下注射した。その後、前記ペプチド注射による足首厚(ankle thickness)及び関節炎指数(arthritis score)の変化を確認した。併せて、前述のところと同一条件で、関節液炎症、骨浸食、軟骨損傷、白血球浸潤の変化を比較した。一方、対照群として、K/BxN血清及びapoBのみを処理した、比較群としては、K/BxN血清、apoB及び非結合ペプチド処理群(NP)を設定した。
【0076】
その結果、図11に示されているように、apoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5の処理は、リウマチ関節炎によって増大した足首厚及び関節炎指数を有意的に低下させた。また、図12に示されているように、前述の結果と同様に、前記ペプチドの処理により、関節液炎症、骨浸食、軟骨損傷、白血球浸潤が低減された。すなわち、そのような結果を総合すれば、前述のapoB100 #1、apoB100 #3またはapoB100 #5は、リウマチ関節炎治療剤の有効成分としても使用されるということを示すものである。
【0077】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずにも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないということを理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2023052387000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列番号3のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
【請求項2】
列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記組成物は、炎症性サトカインの分泌を抑制させるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記サトカインはIL-1β(interleukin-1β)、IL-6、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、それらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドのN末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるか、
前記ペプチドのC末端は、アミノ基(-NH)及びアジド基(-NHNH)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記ペプチド以外の他の抗炎症剤と同時、別途、または順に併用投与されるものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または改善用の健康機能性食品組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の当業者であるならば、本発明の技術的思想や、必須な特徴を変更せずにも、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、以上で記述された実施例は、全ての面において、例示的なものであり、限定的ではないということを理解しなければならない。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなる、ペプチド。
(項目2)
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチド、またはそれをコーディングするポリヌクレオチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または治療用の薬学的組成物。
(項目3)
上記組成物は、炎症性サトカインの分泌を抑制させるものである、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目4)
上記サトカインはIL-1β(interleukin-1β)、IL-6、TNF-α(tumor necrosis factor-α)、それらの組み合わせから選択されるいずれか一つである、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目5)
上記ペプチドのN末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるか、
上記ペプチドのC末端は、アミノ基(-NH )及びアジド基(-NHNH )からなる群から選択されるいずれか1つの保護基と結合されるものである、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目6)
上記組成物は、上記ペプチド以外の他の抗炎症剤と同時、別途、または順に併用投与されるものである、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目7)
上記組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むものである、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目8)
配列番号1、配列番号3または配列番号5のアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、リウマチ関節炎の予防用または改善用の健康機能性食品組成物。
(項目9)
(a)ENO1(α-enolase)を含む個体の試料に、アポリポ蛋白質B100(apo
B100)を、候補物質と共に接触させる段階と、
(b)上記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルを、候補物質が投与されていない対照群と比較する段階と、を含む、リウマチ関節炎治療剤をスクリーニングする方法。
(項目10)
上記試料は、血液試料である、項目9に記載の方法。
(項目11)
上記アポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルは、ツーハイブリッド方法、共同免疫沈降方法、共同局所化分析、閃光近接測定法(SPA)、UV架橋結合方法または化学的架橋結合方法、異分子相互作用分析(BIA)、質量分析法(MS)、NMR(nuclear magnetic resonance)、蛍光偏光分析法(FPA)及び試験管内プルダウンアッセイからなる群で選択されるいずれか1以上の方法によって測定されるものである、項目9に記載の方法。
(項目12)
上記候補物質と接触された試料において測定されたアポリポ蛋白質B100とENO1との結合レベルが、対照群に比べて低下された場合、リウマチ関節炎治療剤として決定する段階をさらに含む、項目9に記載の方法。
【外国語明細書】