(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052493
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】医学療法のための凝集マイクロ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/52 20060101AFI20230404BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230404BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20230404BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20230404BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61K9/52
A61K9/50
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/36
A61K31/404
A61K45/00
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006261
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2018523814の分割
【原出願日】2016-11-11
(31)【優先権主張番号】62/254,707
(32)【優先日】2015-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/257,608
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/276,530
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518093617
【氏名又は名称】グレイバグ ビジョン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー ユン
(72)【発明者】
【氏名】ケイズ ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミン
(72)【発明者】
【氏名】クレランド ジェフリー エル.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼障害を治療するための組成物及び方法を提供する。また、in vivoでの治療用物質の持続投与のための薬物送達マイクロ粒子を提供する。
【解決手段】本発明は、in vivoで凝集して、固結したより大きな粒子を形成する、医学療法のための表面処理された薬物担持固体(例えば、非多孔性)マイクロ粒子である。一実施形態では、粒子は眼療法に使用される。表面処理マイクロ粒子及び表面処理マイクロ粒子を含む注射用配合物を作製する方法も提供する。眼に使用する場合、視力を障害することなく、望ましくない炎症応答を最小限に抑えた長期の一定な眼内送達を達成することができる。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)固体コアを有し、
(ii)治療剤を含み、
(iii)約18℃未満の温度の穏やかな条件下で処理して、表面界面活性剤又は表面
界面活性剤及び表面ポリマーの両方を除去した修飾表面を有し、
(iv)in vivoでの注射に十分に小さく、
(v)in vivoで凝集して、in vivoで少なくとも1ヶ月の持続薬物送達
をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットをin vivoで形成す
る、
少なくとも1つの生分解性ポリマーを含む表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項2】
注射に好適である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項3】
硝子体内、基質内、前房内、テノン嚢下、網膜下、球後、球周囲、脈絡膜上、結膜、結
膜下、強膜上、後強膜近傍、角膜周囲及び涙管注射からなる群から選択される送達経路に
好適である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項4】
非眼内送達に好適である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項5】
少なくとも1つのペレットにより少なくとも2ヶ月の持続薬物送達が可能である、請求
項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項6】
少なくとも1つのペレットにより少なくとも3ヶ月の持続薬物送達が可能である、請求
項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項7】
少なくとも1つのペレットにより少なくとも4ヶ月の持続薬物送達が可能である、請求
項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項8】
少なくとも1つのペレットにより少なくとも5ヶ月の持続薬物送達が可能である、請求
項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項9】
少なくとも1つのペレットにより少なくとも6ヶ月の持続薬物送達が可能である、請求
項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項10】
得られる凝集ペレットが少なくとも7ヶ月の持続薬物送達をもたらす、請求項1に記載
の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項11】
表面修飾が約14~約12のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子。
【請求項12】
表面修飾が約12~約10のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子。
【請求項13】
表面修飾が約10~約8のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイク
ロ粒子。
【請求項14】
表面修飾が約6~約8のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項15】
表面修飾が約6.5~約7.5のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集
マイクロ粒子。
【請求項16】
表面修飾が約1~約6のpHで行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項17】
表面修飾が16℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項18】
表面修飾が10℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項19】
表面修飾が8℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒
子。
【請求項20】
表面修飾が5℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒
子。
【請求項21】
前記固体コアが、全体積に対する空所の比率による空隙率が10パーセント未満の生分
解性ポリマーを含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項22】
前記固体コアが、空隙率が8パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項23】
前記固体コアが、空隙率が7パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項24】
前記固体コアが、空隙率が6パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項25】
前記固体コアが、空隙率が5パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項26】
前記固体コアが、空隙率が4パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項27】
前記固体コアが、空隙率が3パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項28】
前記固体コアが、空隙率が2パーセント未満の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記
載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項29】
前記治療剤が医薬品である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項30】
前記治療剤が生物学的製剤である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項31】
前記治療剤がスニチニブ又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項32】
前記治療剤がチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子。
【請求項33】
20μm~30μmの平均直径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項34】
20μm~50μmの平均直径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項35】
25μm~35μmの平均直径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項36】
20μm~40μmの平均直径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項37】
25μm~40μmの平均直径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ
粒子。
【請求項38】
少なくとも1つのペレットが少なくとも600μmの直径を有する、請求項1に記載の
表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項39】
少なくとも1つのペレットが少なくとも700μmの直径を有する、請求項1に記載の
表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項40】
少なくとも1つのペレットが少なくとも1mmの直径を有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項41】
少なくとも1つのペレットが少なくとも1.5mmの直径を有する、請求項1に記載の
表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項42】
少なくとも1つのペレットが少なくとも2mmの直径を有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項43】
少なくとも1つのペレットが少なくとも3mmの直径を有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項44】
少なくとも1つのペレットが少なくとも4mmの直径を有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項45】
少なくとも1つのペレットが、in vivoで投与した場合に少なくとも5mmの直
径を有する、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項46】
少なくとも1つのペレットが、24時間の間に全ペイロードの約10パーセント以下の
前記治療剤をin vivoで放出することが可能である、請求項1に記載の表面修飾固
体凝集マイクロ粒子。
【請求項47】
少なくとも1つのペレットが、24時間の間に全ペイロードの約15パーセント以下の
前記治療剤をin vivoで放出することが可能である、請求項1に記載の表面修飾固
体凝集マイクロ粒子。
【請求項48】
少なくとも1つのペレットが、12時間の間に全ペイロードの約10パーセント以下の
前記治療剤をin vivoで放出することが可能である、請求項1に記載の表面修飾固
体凝集マイクロ粒子。
【請求項49】
少なくとも1つのペレットが、12時間の間に全ペイロードの約15パーセント以下の
前記治療剤をin vivoで放出することが可能である、請求項1に記載の表面修飾固
体凝集マイクロ粒子。
【請求項50】
1重量パーセント~40重量パーセントの薬物担持を有する、請求項1に記載の表面修
飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項51】
5重量パーセント~25重量パーセントの薬物担持を有する、請求項1に記載の表面修
飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項52】
5重量パーセント~15重量パーセントの薬物担持を有する、請求項1に記載の表面修
飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項53】
0.1重量パーセント~5重量パーセントの薬物担持を有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項54】
ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイク
ロ粒子。
【請求項55】
ポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を
含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項56】
2つ以上の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子
。
【請求項57】
ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、及びポリエチレングリコールに共有結合的に連結
したポリ(ラクチド-コ-グリコリド)の両方を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝
集マイクロ粒子。
【請求項58】
ポリ(乳酸)を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項59】
ポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリ(乳酸)を含む、請求項1に記載
の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項60】
ポリ(乳酸)、及びポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリ(乳酸)の両
方を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項61】
ポリ(乳酸)、及びポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリ(ラクチド-
コ-グリコリド)の両方を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項62】
ポリカプロラクトンを含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項63】
ポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリカプロラクトンを含む、請求項1
に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項64】
ポリカプロラクトン、及びポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリカプロ
ラクトンの両方を含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項65】
界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項66】
ポリビニルアルコールを更に含む、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項67】
請求項1~66のいずれか一項に記載のマイクロ粒子をin vivo投与用の薬学的
に許容可能な担体中に含む注射材料。
【請求項68】
注射前のマイクロ粒子の凝集を阻害する化合物を更に含む、請求項67に記載の注射材
料。
【請求項69】
前記化合物が糖である、請求項68に記載の注射材料。
【請求項70】
前記糖がマンニトールである、請求項69に記載の注射材料。
【請求項71】
増粘剤を更に含む、請求項67に記載の注射材料。
【請求項72】
前記増粘剤がヒアルロン酸を含む、請求項71に記載の注射材料。
【請求項73】
前記増粘剤がヒアルロン酸ナトリウムを含む、請求項71に記載の注射材料。
【請求項74】
約100mg/ml~600mg/mlの表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を
有する、請求項67に記載の注射材料。
【請求項75】
約500mg/ml以下の表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を有する、請求項
67に記載の注射材料。
【請求項76】
約300mg/ml以下の表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を有する、請求項
67に記載の注射材料。
【請求項77】
約200mg/ml以下の表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を有する、請求項
67に記載の注射材料。
【請求項78】
約150mg/ml以下の表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を有する、請求項
67に記載の注射材料。
【請求項79】
表面修飾固体凝集マイクロ粒子を作製する方法であって、
(i)ポリマー及び治療剤を1つ以上の溶媒に溶解又は分散させて、ポリマー及び治療
剤の溶液又は分散液を形成し、該ポリマー及び治療剤の溶液又は分散液を、界面活性剤を
含有する水相と混合して、溶媒を含んだマイクロ粒子を作製し、次いで該溶媒を除去して
、前記治療剤及び界面活性剤を含有するマイクロ粒子を作製することにより、1つ以上の
生分解性ポリマーを含むマイクロ粒子を調製する第1の工程と、
(ii)工程(i)の前記マイクロ粒子の表面のみを、内部細孔が顕著に生じないよう
に約18℃以下の温度で約120分以下にわたって穏やかに処理して、表面界面活性剤並
びに表面ポリマー及びオリゴマーを除去する第2の工程と、
(iii)表面処理マイクロ粒子を単離する工程と、
を含む、方法。
【請求項80】
前記マイクロ粒子がポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を含む、請求項79に記載の方
法。
【請求項81】
前記マイクロ粒子がポリ(乳酸)を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記マイクロ粒子がポリカプロラクトンを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記界面活性剤が500を超える分子量を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記界面活性剤が両親媒性である、請求項79に記載の方法。
【請求項85】
前記界面活性剤がポリビニルアルコールである、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
工程(ii)を17℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項87】
工程(ii)を15℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
工程(ii)を10℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項89】
工程(ii)を5℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
工程(iii)を25℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項91】
工程(iii)を15℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項92】
工程(iii)を10℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項93】
工程(iii)を5℃未満の温度で行う、請求項79に記載の方法。
【請求項94】
工程(ii)を約8分間行う、請求項79に記載の方法。
【請求項95】
工程(ii)を約6分間行う、請求項79に記載の方法。
【請求項96】
工程(ii)を約4分間行う、請求項79に記載の方法。
【請求項97】
工程(ii)を約3分間行う、請求項79に記載の方法。
【請求項98】
表面界面活性剤を除去する作用物質がリン酸緩衝生理食塩水を含む、請求項79に記載
の方法。
【請求項99】
表面界面活性剤を除去する作用物質が水を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項100】
表面界面活性剤を除去する作用物質がNaOHを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項101】
表面界面活性剤を除去する作用物質が塩基性pHの緩衝溶液を含む、請求項79に記載
の方法。
【請求項102】
前記緩衝溶液が約14~12のpHを有する、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記緩衝溶液が約12~10のpHを有する、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記緩衝溶液が約10~8のpHを有する、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
表面界面活性剤を除去する作用物質が水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリ
ウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、リチウムアミド、ナトリウムアミド、炭
酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化バリウム水和物、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、
水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭
酸ストロンチウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプ
ロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルア
ミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルア
ミン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、アザジュロリジン、ベ
ンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、DABCO、1,5-
ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]
ノナ-7-エン、2,6-ルチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、プロトンス
ポンジ、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、トリペレンナミ
ン、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、エタノールアミン及びトリズマから選
択される塩基を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項106】
表面界面活性剤を除去する作用物質が塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン
酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ
酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、
フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、
スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスル
ホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル
酸及びアジピン酸からなる群から選択される酸を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項107】
表面界面活性剤を除去する作用物質がアルコール、エーテル、アセトン、アセトニトリ
ル、DMSO、DMF、THF、ジメチルアセトアミド、二硫化炭素、クロロホルム、1
,1-ジクロロエタン、ジクロロメタン、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール
、酢酸メチル、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、ペンタン、エタノール、プロパ
ノール、2-プロパノール、トルエン、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトアミド
、ピペラジン、トリエチレンジアミン、ジオール及びCO2から選択される溶媒を含む、
請求項79に記載の方法。
【請求項108】
表面界面活性剤を除去する作用物質がエタノールを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項109】
前記マイクロ粒子が約50パーセントを超える治療剤のマイクロ粒子へのカプセル化効
率を有する、請求項79に記載の方法。
【請求項110】
前記マイクロ粒子が約75パーセントを超える治療剤のカプセル化効率を有する、請求
項79に記載の方法。
【請求項111】
前記マイクロ粒子が約80パーセントを超える治療剤のカプセル化効率を有する、請求
項79に記載の方法。
【請求項112】
前記マイクロ粒子が約90パーセントを超える治療剤のカプセル化効率を有する、請求
項79に記載の方法。
【請求項113】
前記生分解性ポリマーが75:25のラクチド対グリコリド比のPLGAを含む、請求
項79に記載の方法。
【請求項114】
pH約14未満かつpH約11超で行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項115】
pH約11未満かつpH約9超で行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項116】
pH約8未満かつpH約6超で行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項117】
pH約7.6未満かつpH約6.5超で行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項118】
ほぼ中性のpHで行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項119】
pH約1超かつpH約6未満で行われる、請求項79に記載の方法。
【請求項120】
表面界面活性剤を除去する作用物質が反応条件下で前記生分解性ポリマーの分解剤では
ない、請求項79に記載の方法。
【請求項121】
界面活性剤、表面ポリマー又は表面オリゴマーを除去して、前記マイクロ粒子の親水性
を低下させることを更に含む、請求項79に記載の方法。
【請求項122】
工程(ii)を約90分未満の時間にわたって行う、請求項79に記載の方法。
【請求項123】
工程(ii)を約60分未満の時間にわたって行う、請求項79に記載の方法。
【請求項124】
工程(ii)を約30分未満の時間にわたって行う、請求項79に記載の方法。
【請求項125】
工程(ii)を約10分未満の時間にわたって行う、請求項79に記載の方法。
【請求項126】
眼障害を治療する方法であって、それを必要とする宿主に有効量の治療剤を含む表面修
飾固体凝集マイクロ粒子を投与することを含み、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マ
イクロ粒子が眼に注射され、in vivoで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬物送
達をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを、該ペレットが顕著に
視力を損なうことなく視軸の実質的に外側に留まるように形成する、方法。
【請求項127】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が請求項1~66のいずれか一項に記載されるもの
である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子を、薬学的に許容可能な担体を含む注射材料中で注
射する、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記注射材料が請求項67~78のいずれか一項に記載されるものである、請求項12
6に記載の方法。
【請求項130】
前記眼障害が滲出型又は萎縮型加齢黄斑変性である、請求項126に記載の方法。
【請求項131】
前記眼障害が緑内障である、請求項126に記載の方法。
【請求項132】
前記眼障害がサイトメガロウイルス(CMV)感染、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経
網膜症、黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫等);ベーチェット病、網膜障
害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静
脈閉塞症、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、眼外傷、眼のレーザー治療又は光線力学療法
、光凝固術に起因する損傷、放射線網膜症、網膜前膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚
血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、眼炎症、眼感染及び網膜色素変性症から
選択される、請求項126に記載の方法。
【請求項133】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約10パーセント以下である、請求項126に記載の方法。
【請求項134】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約7パーセント以下である、請求項126に記載の方法。
【請求項135】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約5パーセント以下である、請求項126に記載の方法。
【請求項136】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約2パーセント以下である、請求項126に記載の方法。
【請求項137】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において実質的な炎症を引き起こさない、請求
項126に記載の方法。
【請求項138】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において免疫応答を引き起こさない、請求項1
26に記載の方法。
【請求項139】
表面修飾が湿潤マイクロ粒子に対して行われる、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マ
イクロ粒子。
【請求項140】
表面処理マイクロ粒子が、非表面処理マイクロ粒子と比較した場合により長時間にわた
って治療剤を放出することが可能である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイクロ粒
子。
【請求項141】
表面修飾前のマイクロ粒子よりも少ない界面活性剤を含有する、請求項1に記載の表面
修飾固体凝集マイクロ粒子。
【請求項142】
表面修飾前のマイクロ粒子よりも疎水性である、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マ
イクロ粒子。
【請求項143】
非表面処理マイクロ粒子よりも炎症性が低い、請求項1に記載の表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子。
【請求項144】
表面界面活性剤を除去する作用物質が、前記ポリマーを部分的に溶解又は膨潤する溶媒
を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項145】
障害を治療する方法であって、それを必要とする宿主に有効量の治療剤を含む表面修飾
固体凝集マイクロ粒子を投与することを含み、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子が前記宿主に注射され、in vivoで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬
物送達をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを形成する、方法。
【請求項146】
前記治療剤が医薬品又は生物製剤である、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子を前記宿主の口腔内、皮下、洞内、腹腔内、関節内
、軟骨内、脳内;歯冠内、歯;椎間板内、筋肉内又は腫瘍内に注射する、請求項145に
記載の方法。
【請求項148】
眼障害の治療に対する有効量の治療剤を含む表面修飾固体凝集マイクロ粒子の使用であ
って、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼に注射され、in viv
oで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬物送達をもたらす直径少なくとも500μmの
少なくとも1つのペレットを、該ペレットが顕著に視力を損なうことなく視軸の実質的に
外側に留まるように形成する、使用。
【請求項149】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が請求項1~66のいずれか一項に記載されるもの
である、請求項148に記載の使用。
【請求項150】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が薬学的に許容可能な担体を含む注射材料中で注射
される、請求項148に記載の使用。
【請求項151】
前記注射材料が請求項67~78のいずれか一項に記載されるものである、請求項14
8に記載の使用。
【請求項152】
前記眼障害が滲出型又は萎縮型加齢黄斑変性である、請求項148に記載の使用。
【請求項153】
前記眼障害が緑内障である、請求項148に記載の使用。
【請求項154】
前記眼障害がサイトメガロウイルス(CMV)感染、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経
網膜症、黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫等);ベーチェット病、網膜障
害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静
脈閉塞症、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、眼外傷、眼のレーザー治療又は光線力学療法
、光凝固術に起因する損傷、放射線網膜症、網膜前膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚
血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、眼炎症、眼感染及び網膜色素変性症から
選択される、請求項148に記載の使用。
【請求項155】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約10パーセント以下である、請求項148に記載の使用。
【請求項156】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約7パーセント以下である、請求項148に記載の使用。
【請求項157】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約5パーセント以下である、請求項148に記載の使用。
【請求項158】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約2パーセント以下である、請求項148に記載の使用。
【請求項159】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において実質的な炎症を引き起こさない、請求
項148に記載の使用。
【請求項160】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において免疫応答を引き起こさない、請求項1
48に記載の使用。
【請求項161】
障害の治療に対する有効量の治療剤を含む表面修飾固体凝集マイクロ粒子の使用であっ
て、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マイクロ粒子が宿主に注射され、in viv
oで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬物送達をもたらす少なくとも500μmの少な
くとも1つのペレットを形成する、使用。
【請求項162】
前記治療剤が医薬品又は生物製剤である、請求項161に記載の使用。
【請求項163】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が前記宿主の口腔内、皮下、洞内、腹腔内、関節内
、軟骨内、脳内;歯冠内、歯;椎間板内、筋肉内又は腫瘍内に注射される、請求項161
に記載の使用。
【請求項164】
眼障害の治療のための薬剤の製造における有効量の治療剤を含む表面修飾固体凝集マイ
クロ粒子の使用であって、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼に注射
され、in vivoで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬物送達をもたらす少なくと
も500μmの少なくとも1つのペレットを、該ペレットが顕著に視力を損なうことなく
視軸の実質的に外側に留まるように形成する、使用。
【請求項165】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が請求項1~66のいずれか一項に記載されるもの
である、請求項164に記載の使用。
【請求項166】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が薬学的に許容可能な担体を含む注射材料中で注射
される、請求項164に記載の使用。
【請求項167】
前記注射材料が請求項67~78のいずれか一項に記載されるものである、請求項16
4に記載の使用。
【請求項168】
前記眼障害が滲出型又は萎縮型加齢黄斑変性である、請求項164に記載の使用。
【請求項169】
前記眼障害が緑内障である、請求項164に記載の使用。
【請求項170】
前記眼障害がサイトメガロウイルス(CMV)感染、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経
網膜症、黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫等);ベーチェット病、網膜障
害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む);網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静
脈閉塞症、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、眼外傷、眼のレーザー治療又は光線力学療法
、光凝固術に起因する損傷、放射線網膜症、網膜前膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚
血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、眼炎症、眼感染及び網膜色素変性症から
選択される、請求項164に記載の使用。
【請求項171】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約10パーセント以下である、請求項164に記載の使用。
【請求項172】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約7パーセント以下である、請求項164に記載の使用。
【請求項173】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約5パーセント以下である、請求項164に記載の使用。
【請求項174】
in vivoでより大きなペレットへと凝集しない前記表面修飾固体凝集マイクロ粒
子が、投与総重量の約2パーセント以下である、請求項164に記載の使用。
【請求項175】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において実質的な炎症を引き起こさない、請求
項164に記載の使用。
【請求項176】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼において免疫応答を引き起こさない、請求項1
64に記載の使用。
【請求項177】
障害の治療のための薬剤の製造における有効量の治療剤を含む表面修飾固体凝集マイク
ロ粒子の使用であって、該治療剤を含有する表面修飾固体凝集マイクロ粒子が宿主に注射
され、in vivoで凝集して、少なくとも1ヶ月の持続薬物送達をもたらす少なくと
も500μmの少なくとも1つのペレットを形成する、使用。
【請求項178】
前記治療剤が医薬品又は生物製剤である、請求項177に記載の使用。
【請求項179】
前記表面修飾固体凝集マイクロ粒子が前記宿主の口腔内、皮下、洞内、腹腔内、関節内
、軟骨内、脳内;歯冠内、歯;椎間板内、筋肉内又は腫瘍内に注射される、請求項177
に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年11月12日付けで出願された米国特許出願第62/254,7
07号、2015年11月19日付けで出願された米国特許出願第62/257,608
号及び2016年1月8日付けで出願された米国特許出願第62/276,530号に対
する優先権の利益を主張するものである。これらの出願は全ての目的で引用することによ
り本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、in vivoで凝集して、固結した(consolidated)より大きな粒子を形
成する、医学療法のための表面処理された薬物担持固体(例えば、非多孔性)マイクロ粒
子である。一実施の形態では、粒子は眼療法に使用される。表面処理マイクロ粒子及び表
面処理マイクロ粒子を含む注射用配合物を作製する方法も提供する。眼に使用する場合、
視力障害を最小限に抑え、望ましくない炎症応答を最小限に抑える長期の一定な眼内送達
を達成することができる。
【背景技術】
【0003】
眼の構造は、前部及び後部の2つの部分に分けることができる。前区は眼の前方3分の
1を含み、硝子体液の前の構造:角膜、虹彩、毛様体及び水晶体が含まれる。後区は眼の
後方3分の2を含み、強膜、脈絡膜、網膜色素上皮、神経網膜、視神経及び硝子体液が含
まれる。
【0004】
眼の前区を冒す重要な疾患としては、緑内障、アレルギー性結膜炎、前部ブドウ膜炎及
び白内障が挙げられる。眼の後区を冒す疾患としては、萎縮型及び滲出型加齢黄斑変性(
AMD)、サイトメガロウイルス(CMV)感染、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生、急
性黄斑視神経網膜症、黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫等)、ベーチェッ
ト病、網膜障害、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、網膜動脈閉塞性疾患
、網膜中心静脈閉塞症、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、眼外傷、眼のレーザー治療又は
光線力学療法、光凝固術に起因する損傷、放射線網膜症、網膜前膜障害、網膜静脈分枝閉
塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、並びに網膜色素変性症が挙
げられる。緑内障治療の治療目標は、網膜細胞又は視神経細胞の損傷又は喪失に起因する
視力低下を予防又は低減することであるため、緑内障は後部眼病態とみなされる場合もあ
る。
【0005】
典型的な眼への薬物投与の経路としては、局所、全身、硝子体内、眼内、前房内、結膜
下、テノン嚢下(subtenon)、球後及び後強膜近傍が挙げられる(非特許文献1)。
【0006】
眼に治療剤を送達するために多数のタイプの送達系が開発されている。このような送達
系としては、従来のもの(溶液、懸濁液、エマルション、軟膏、インサート及びゲル)、
小胞(リポソーム、ニオソーム(niosomes)、ディスコーム(discomes)及びファーマコ
ソーム(pharmacosomes))、先端材料(強膜プラグ、遺伝子送達、siRNA及び幹細
胞)、及び制御放出系(インプラント、ヒドロゲル、デンドリマー、イオン導入、コラー
ゲンシールド、ポリマー溶液、治療用コンタクトレンズ、シクロデキストリン担体、マイ
クロニードル、マイクロエマルション、並びに微粒子(マイクロ粒子及びナノ粒子))が
挙げられる。
【0007】
後区疾患の治療は、依然として製剤研究者にとって大変な挑戦である。眼の後区への薬
物送達は通例、硝子体内注射、眼周囲経路、インプラント又は全身投与により達成される
。眼周囲経路による後区への薬物送達は、高い網膜及び硝子体中濃度をもたらす強膜のご
く近傍への薬物溶液の適用を含み得る。
【0008】
硝子体内注射は、30ゲージ以下の針を用いて行われることが多い。硝子体内注射は高
濃度の薬物を硝子体眼房及び網膜に与えるが、これらは網膜剥離、眼内炎及び硝子体内出
血等の様々な短期合併症を伴い得る。小粒子の注射が、視界を遮る可能性がある粒子の急
速な分散(患者が「飛蚊症」("floaties" or "floaters")として経験する)及び注射部
位からの粒子の急速な除去(リンパ排液系を介して又は食作用により起こり得る)を引き
起こし得ることが経験的に示されている。加えて、ミクロスフェアがマクロファージ並び
に免疫系の他の細胞及びメディエーターにより認識されて免疫原性が生じる可能性がある
。
【0009】
眼周囲注射における合併症としては、眼内圧の上昇、白内障、前房出血、斜視及び角膜
代償不全が挙げられる。眼周囲投与による経強膜送達が硝子体内注射の代替手段とみなさ
れているが、強膜、脈絡膜、網膜色素上皮、リンパ流及び全身血流等の眼障壁により有効
性が損なわれることがある。全身投与は全身に対する眼の体積比を考えると有益ではなく
、潜在的全身毒性を引き起こし得る。
【0010】
多数の会社が、眼障害の治療のためのマイクロ粒子を開発している。例えばAllerganは
、眼内注射に好適な高粘度担体中に配合される治療剤を送達するため、又は非眼障害を治
療するための生分解性ミクロスフェアを開示している(2003年12月16日の一連の
出願に対する優先権を主張している特許文献1及び特許文献2)。一実施の形態では、特
許文献1は、複数の生分解性ミクロスフェアと、治療剤と、粘性の担体とを含む生体適合
性の眼内薬物送達系を記載しており、担体は0.1/秒の剪断速度、25℃で少なくとも
約10cpsの粘度を有する。
【0011】
Allerganはまた、媒体中に分散した複数のマイクロ粒子を含む、患者の眼に注射するこ
とができる複合薬物送達材料を開示しており、マイクロ粒子は薬物と生分解性又は生侵食
性(bioerodible)コーティングとを含有し、媒体はデポー剤形成材料中に分散した薬物
を含み、媒体組成物は眼への注射時にゲル化又は凝固することができる(2012年1月
23日の優先権を主張している特許文献3を参照されたい)。Allerganは、この発明を用
いて固体持続薬物送達系を眼内に切開することなく植え込むためのデポー剤手段を提供す
ることができると述べている。概して、デポー剤は注射時に注射による投与が困難又は不
可能であり得る粘度を有する材料へと変換される。
【0012】
加えて、Allerganは、充血を生じることなく前眼房内に効果的に保持される直径が40
μm~200μm、平均直径が60μm~150μmの生分解性ミクロスフェアを開示し
ている(特許文献4)。ミクロスフェアは、投与後7日超にわたって前眼房へと放出され
る眼病態に効果的な薬物を含有する。これらの大粒子の投与は、概して忍容性が低い1μ
m~30μmの粒子を注射することの欠点を克服することを意図したものである。
【0013】
Regentec Limitedは、組織スキャフォールディングとして使用することができる多孔性
粒子の調製に関する一連の特許出願を出願している(特許文献5及び特許文献6(200
3年3月27日付けで出願された)及び特許文献7(2005年9月20日付けで出願さ
れた)及び特許文献8(2006年10月7日付けで出願された))。粒子の空隙率は、
粒子内に保持される細胞を受け入れるのに十分である必要がある。細胞はマトリックスの
植え込み時若しくは植え込み前、又はin situでの内在性細胞からの動員の場合に
はその後にマトリックスに添加することができる。Regentecは、多孔性粒子を用いた組織
スキャフォールディングに関する論文も発表している(非特許文献2)。
【0014】
加えて、Regentec Limitedは、薬物送達に使用することができる多孔性の大粒子の調製
に関する特許出願も出願している(特許文献9及び特許文献10(2009年3月5日付
けで出願された))。粒子の空隙率により治療剤の迅速な送達が可能となる。粒子は、温
度変化等の誘因によって、それらが注射される空間を満たすスキャフォールドを形成する
ことを意図したものである。
【0015】
高多孔性マイクロ粒子に関する付加的な参照文献としては、Rahman及びKimによる文献
が挙げられる。非特許文献3は、空隙率およそ50パーセントのヒドロゲル及びそれらの
対応する機械的特性を記載している。非特許文献4は、ヒト成長ホルモンの送達のための
孔を有するPLGAポリマーを記載している。
【0016】
Locate Therapeutics Limitedにより出願された特許文献11(2007年2月1日付
けで出願された)、並びにRegentec Limitedにより出願された特許文献12、特許文献1
3(2007年2月1日付けで出願された)及び特許文献14(2007年2月1日付け
で出願された)は、必ずしも多孔性ではないが、誘因(温度等)に曝された場合に、宿主
における損傷又は喪失組織の修復に有用な組織スキャフォールドを形成する粒子の調製を
開示している。
【0017】
2015年10月20日付けでWarsaw Orthopedicに対して交付された特許文献15及
びWarsaw Orthopedic Inc.によって出願された特許文献16は、標的組織部位で又はその
近くで硬化する流動性組成物を含む、皮膚下の標的組織部位での注射のための流動性組成
物を開示している。
【0018】
非特許文献5は、集塊又は凝集しないPLGAのマイクロ粒子を作製する詳細なプロセ
スを記載している。
【0019】
「特に非湿潤鋳型における粒子複製を用いた分解性化合物及びその使用方法(Degradab
le compounds and methods of use thereof, particularly with particle replication
in non-wetting templates)」という表題のLiquidia Technologiesによって出願された
特許文献17は、シリルコアを用い、急速に分解するマトリックスを形成することができ
る分解性ポリマーを記載している。
【0020】
眼内送達のための粒子に関する付加的な参照文献としては以下のものが挙げられる。Ay
alasomayajula, S.P.及びKompella, U.B.は、ラットにおけるセレコキシブ-ポリ(ラク
チド-コ-グリコリド)(PLGA)マイクロ粒子の結膜下投与を開示している(非特許
文献6)。Danbiosyst UK Ltd.は生分解性ポリマーと、8000ダルトン以上の水溶性ポ
リマーと、活性剤との混合物を含むマイクロ粒子を開示している(特許文献18)。Poly
-Med, Inc.は、担体上に堆積した生物活性剤を有するヒドロゲル塊と担体とを含む組成物
を開示している(特許文献19)。MacroMed Inc.は、マイクロ粒子と生分解性ゲルとを
含む作用物質送達系の使用を開示している(特許文献20及び特許文献21)。Novartis
は、薬理学的に許容可能なポリマーがポリオールのポリラクチド-コ-グリコリドエステ
ルである眼周囲又は結膜下投与のための眼科用デポー配合物を開示している(特許文献2
2、特許文献23、特許文献24及び特許文献25)。ナバーラ大学は、ペグ化生分解性
ポリマーを含む生物活性分子を担持する経口ペグ化ナノ粒子を開示している(特許文献2
6)。Surmodics, Inc.は、薬物送達のためのマトリックスを含有するマイクロ粒子を開
示している(特許文献27)。Minu, L.L.C.は、膜貫通輸送を促進するナノ粒子形態のマ
イクロ粒子における作用物質の使用を開示している。エモリー大学及びGeorgia Tech Res
earch Corporationは、脈絡膜上の空間内の挿入部位から治療部位への治療用粒子の移動
を促進する非ニュートン性流体中に分散させた粒子を開示している(特許文献28)。Pf
izerは、注射用デポー配合物としてのナノ粒子を開示している(特許文献29)。Abbott
は、チロシンキナーゼ阻害剤の送達のための薬学的に許容可能なポリマーを含む医薬投薬
形態を開示している(特許文献30)。Brigham and Woman's Hospital, Inc.は、ポリマ
ーに共有結合した治療剤を有する修飾ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ポリマーを開示し
ている(特許文献31)。BIND Therapeutics, Inc.は、約50重量パーセント~99.
75重量パーセントのジブロックポリ(乳酸)-ポリ(エチレン)グリコールコポリマー
又はジブロックポリ(乳酸-コ-グリコール酸)-ポリ(エチレン)グリコールコポリマ
ーを含む治療用ナノ粒子を開示しており、治療用ナノ粒子は10重量パーセント~約30
重量パーセントのポリ(エチレン)グリコールを含む(特許文献32)。BIND Therapeut
ics, Inc.に譲渡された付加的な公報としては、特許文献33及び特許文献34が挙げら
れる。Allerganは、眼病態の治療への薬物を含有する生分解性ミクロスフェアの使用を開
示している(特許文献1、特許文献4、特許文献2、特許文献35及び特許文献3)。Al
lerganは、粒子形態で存在することができるプロスタミド成分と1週間~6ヶ月にわたる
薬物の遅延放出を可能にする生分解性ポリマーとを含有する、緑内障等の眼病態の治療の
ための生体適合性インプラントも開示している(特許文献36及び特許文献37)。Jade
Therapeuticsは、標的組織に直接送達するか又は好適な送達デバイスに入れることがで
きる、活性剤及びポリマーマトリックスを含有する配合物を開示している(特許文献38
)。Bayer Healthcareは、スニチニブと少なくとも1つの薬学的に許容可能なビヒクルと
を含む局所眼科用医薬組成物を開示している(特許文献39)。pSivida Us, Inc.は、眼
内使用のためのミクロ多孔性又はメソ多孔性シリコン体を含む生分解性薬物を溶出する粒
子を開示している(特許文献40)。pSivida Us, Inc.に譲渡された付加的な特許として
は、特許文献41、特許文献42、特許文献43、特許文献44、特許文献45、特許文
献46及び特許文献47が挙げられる。ForSight Vision4, Inc.は、眼内への植え込みの
ための治療用デバイスを開示している(特許文献48)。ForSight Vision4, Inc.に譲渡
された付加的な特許としては、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献5
2、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文
献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61、特許文献62、特許文献63、特
許文献64、特許文献65及び特許文献66が挙げられる。名古屋産業科学研究所は近年
、薬物を眼の後区へと送達するためのリポソームの使用を開示している(特許文献67)
。
【0021】
眼疾患、特に後区の疾患を治療するためには、有効性を達成するのに十分な期間にわた
って薬物を治療レベルで送達する必要がある。この一見単純な目標は、実際には達成する
ことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0074957号
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0147406号
【特許文献3】国際公開第2013/112434号
【特許文献4】米国特許出願公開第2014/0294986号
【特許文献5】国際公開第2004/084968号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0263335号
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0241248号
【特許文献8】国際公開第2008/041001号
【特許文献9】国際公開第2010/100506号
【特許文献10】米国特許出願公開第2012/0063997号
【特許文献11】欧州特許第2125048号
【特許文献12】国際公開第2008/093094号
【特許文献13】米国特許出願公開第2010/0063175号
【特許文献14】国際公開第2008/093095号
【特許文献15】米国特許第9,161,903号
【特許文献16】米国特許出願公開第2016/0038407号
【特許文献17】米国特許出願公開第2011/0123446号
【特許文献18】米国特許第5,869,103号
【特許文献19】米国特許第6,413,539号
【特許文献20】米国特許第6,287,588号
【特許文献21】米国特許第6,589,549号
【特許文献22】米国特許出願公開第2004/0234611号
【特許文献23】米国特許出願公開第2008/0305172号
【特許文献24】米国特許出願公開第2012/0269894号
【特許文献25】米国特許出願公開第2013/0122064号
【特許文献26】米国特許第8,628,801号
【特許文献27】米国特許第8,663,674号
【特許文献28】米国特許出願公開第2016/0310417号
【特許文献29】米国特許出願公開第2008/0166411号
【特許文献30】米国特許出願公開第2009/0203709号
【特許文献31】米国特許出願公開第2012/0052041号
【特許文献32】米国特許出願公開第2014/0178475号
【特許文献33】米国特許出願公開第2014/0248358号
【特許文献34】米国特許出願公開第2014/0249158号
【特許文献35】欧州特許第1742610号
【特許文献36】米国特許出願公開第2015/0157562号
【特許文献37】米国特許出願公開第2015/0099805号
【特許文献38】米国特許出願公開第2014/0107025号
【特許文献39】国際公開第2013/188283号
【特許文献40】米国特許第9,023,896号
【特許文献41】米国特許第8,871,241号
【特許文献42】米国特許第8,815,284号
【特許文献43】米国特許第8,574,659号
【特許文献44】米国特許第8,574,613号
【特許文献45】米国特許第8,252,307号
【特許文献46】米国特許第8,192,408号
【特許文献47】米国特許第7,998,108号
【特許文献48】米国特許第8,808,727号
【特許文献49】米国特許第9,125,735号
【特許文献50】米国特許第9,107,748号
【特許文献51】米国特許第9,066,779号
【特許文献52】米国特許第9,050,765号
【特許文献53】米国特許第9,033,911号
【特許文献54】米国特許第8,939,948号
【特許文献55】米国特許第9,905,963号
【特許文献56】米国特許第8,795,712号
【特許文献57】米国特許第8,715,346号
【特許文献58】米国特許第8,623,395号
【特許文献59】米国特許第8,414,646号
【特許文献60】米国特許第8,399,006号
【特許文献61】米国特許第8,298,578号
【特許文献62】米国特許第8,277,830号
【特許文献63】米国特許第8,167,941号
【特許文献64】米国特許第7,883,520号
【特許文献65】米国特許第7,828,844号
【特許文献66】米国特許第7,585,075号
【特許文献67】米国特許第9,114,070号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Gaudana, R., et al., "Ocular Drug Delivery", The American Association of Pharmaceutical Scientist Journal, 12(3)348-360, 2010
【非特許文献2】Qutachi et al. "Injectable and porous PLGA microspheres that form highly porous scaffolds at body temperature", Acta Biomaterialia, 10, 5080-5098, (2014)
【非特許文献3】Rahman et al. "PLGA/PEG-hydrogel composite scaffolds with controllable mechanical properties" J. of Biomedical Materials Research, 101, 648-655, (2013)
【非特許文献4】Kim et al. "Biodegradable polymeric microspheres with "open/closed" pores for sustained release of human growth hormone" J. of Controlled Release, 112, 167-174, (2006)
【非特許文献5】Bible et al. "Attachment of stem cells to scaffold particles for intra-cerebral transplantation", Nat. Protoc., 10, 1440-1453, (2009)
【非特許文献6】Ayalasomayajula, S.P. and Kompella, U.B., "Subconjunctivally administered celecoxib-PLGA microparticles sustain retinal drug levels and alleviate diabetes-induced oxidative stress in a rat model", Eur. J. Pharm., 511, 191-198 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、眼障害を治療するための組成物及び方法を提供することである。別の
目的は、概してin vivoでの治療用物質の持続投与のための薬物送達マイクロ粒子
を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、in vivo注射時に、より小さな粒子の望ましくない副作用を低減する
ようにより大きな粒子(ペレット)へと凝集し、長期間(例えば、最大で又は代替的には
少なくとも3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月若しくは7ヶ月、又はそれ以上)にわたる治
療剤の持続送達に好適である、穏やかに表面処理された固体生分解性マイクロ粒子を提供
する。一実施の形態では、穏やかに表面処理された固体生分解性マイクロ粒子は眼内注射
に好適であり、その点で粒子が凝集して、顕著に視力を損なうことなく視軸の外側に留ま
るペレットを形成する。粒子は1つ又は幾つかのペレットへと凝集することができる。凝
集体のサイズは注射されるマイクロ粒子懸濁液の濃度及び容量、並びにマイクロ粒子を懸
濁する希釈剤によって決まる。
【0026】
このため、一実施の形態では、本発明は、少なくとも1つの生分解性ポリマーを含む表
面修飾固体凝集マイクロ粒子であって、表面修飾固体凝集マイクロ粒子が固体コアを有し
、治療剤を含み、約18℃以下の温度の穏やかな条件下で処理して表面界面活性剤を除去
した修飾表面を有し、in vivoでの注射に十分に小さく、in vivoで凝集し
て、少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットをin vivoで形成し、in
vivoで少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月若しくは7ヶ
月、又はそれ以上の持続薬物送達をもたらすことが可能である、表面修飾固体凝集マイク
ロ粒子である。表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、例えば硝子体内注射、眼内インプラン
トを含むインプラント、眼周囲送達又は眼外でのin vivo送達に好適である。
【0027】
一実施の形態では、本明細書に記載される表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、in v
ivo注射時にin vivoで凝集して、in vivoで少なくとも1ヶ月、2ヶ月
、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月若しくは7ヶ月、又はそれ以上の持続薬物送達をもた
らす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットをin vivoで形成する。
【0028】
別の実施の形態では、本発明は、in vivo投与のための薬学的に許容可能な担体
中に本発明のマイクロ粒子を含む注射材料である。注射材料は、注射前のマイクロ粒子の
凝集を阻害する化合物、及び/又は増粘剤及び/又は塩を含み得る。一実施の形態では、
注射材料は、約50mg/ml~700mg/mlの表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃
度範囲を有する。或る特定の例では、注射材料は約50mg/ml、100mg/ml、
150mg/ml、200mg/ml、250mg/ml、300mg/ml、350m
g/ml、400mg/ml、450mg/ml、500mg/ml、550mg/ml
、600mg/ml、650mg/ml又は700mg/ml以下の表面修飾固体凝集マ
イクロ粒子の濃度を有する。一実施の形態では、注射材料は約200mg/ml~400
mg/ml、150mg/ml~450mg/ml又は100mg/ml~500mg/
mlの表面修飾固体凝集マイクロ粒子の濃度を有する。或る特定の実施の形態では、注射
材料は、最大約150mg/ml、200mg/ml、300mg/ml又は400mg
/mlを有する。
【0029】
本発明は、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を作製する方法であって、
(i)ポリマー及び治療剤を1つ以上の溶媒に溶解又は分散させて、ポリマー及び治療
剤の溶液又は分散液を形成し、ポリマー及び治療剤の溶液又は分散液と界面活性剤を含有
する水相とを混合して、溶媒を含んだマイクロ粒子を作製した後、溶媒を除去して、治療
剤、ポリマー及び界面活性剤を含有するポリマーマイクロ粒子を作製することによって、
1つ以上の生分解性ポリマーを含むマイクロ粒子を調製する第1の工程と、
(ii)工程(i)のマイクロ粒子の表面を約18℃、15℃、10℃、8℃又は5℃
以下の温度で任意に最大約1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、30分
間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間、100分間、11
分間、120分間又は140分間にわたって表面界面活性剤、表面ポリマー又は表面オリ
ゴマーを除去する作用物質を用いて、内部細孔が顕著に生じないように穏やかに処理する
第2の工程と、
(iii)表面処理マイクロ粒子を単離することと、
を含む、方法を更に含む。
【0030】
この方法は、連続製造ラインにおいて又は一工程で又は段階的に達成することができる
。一実施の形態では、湿潤生分解性マイクロ粒子を単離することなく、表面処理された固
体生分解性マイクロ粒子の製造に使用することができる。一実施の形態では、表面処理さ
れた固体生分解性マイクロ粒子は製造プロセス中に顕著に凝集しない。別の実施の形態で
は、表面処理された固体生分解性マイクロ粒子は再懸濁し、シリンジに充填する際に顕著
に凝集しない。幾つかの実施の形態では、シリンジはおよそ30ゲージ、29ゲージ、2
8ゲージ、27ゲージ、26ゲージ又は25ゲージであり、標準壁又は薄壁を有する。
【0031】
また別の実施の形態では、眼障害を治療する方法であって、それを必要とする宿主に有
効量の治療剤を含む穏やかに表面修飾された固体凝集マイクロ粒子を投与することを含み
、表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼に注射され、in vivoで凝集して、少なくと
もおよそ1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月若しくは7ヶ月、又はそれ以
上の持続薬物送達をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを、該ペ
レットが顕著に視力を損なうことなく視軸の実質的に外側に留まるように形成する、眼障
害を治療する方法を提供する。一実施の形態では、表面処理された固体生分解性マイクロ
粒子は、治療剤の約1パーセント~約20パーセント、約1パーセント~約15パーセン
ト、約1パーセント~約10パーセント又は約5パーセント~20パーセント、例えば最
大約1パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント又は20パーセント
を最初の24(?)時間の間に放出する。一実施の形態では、表面処理された固体生分解
性マイクロ粒子は、非処理固体生分解性マイクロ粒子と比較して少ない治療剤を最大約1
日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、又は更には最大約1ヶ月、2ヶ
月、3ヶ月、4ヶ月若しくは5ヶ月にわたってin vivoで放出する。一実施の形態
では、表面処理された固体生分解性マイクロ粒子は、治療の過程にわたってin viv
oで非処理固体生分解性マイクロ粒子と比較して少ない炎症を誘導する。
【0032】
本発明は、身体運動及び/又は硝子体内の房水流により眼内で分散する傾向がある小薬
物担持粒子(例えば、20μm~40μm、10μm~30μm、20μm~30μm若
しくは25μm~30μmの平均直径、又は例えば約20μm、25μm、26μm、2
7μm、28μm、29μm、30μm、35μm若しくは40μmを超えない平均直径
(Dv))を用いた眼内療法の問題に対処するものである。分散したマイクロ粒子は飛蚊
症、炎症等により視力の障害及び悪化を引き起こす恐れがある。本発明のマイクロ粒子は
in vivoで凝集して、少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを形成し
、視力障害及び炎症を最小限に抑える。さらに、表面処理マイクロ粒子の凝集ペレットは
生分解性であるため、表面処理マイクロ粒子の凝集ペレットを外科的に除去する必要はな
い。
【0033】
一実施の形態では、表面処理は、マイクロ粒子を水性塩基、例えば水酸化ナトリウム及
び上記に別に記載されるような溶媒(アルコール、例えばエタノール若しくはメタノール
、又はDMF、DMSO若しくは酢酸エチル等の有機溶媒等)で処理することを含む。よ
り一般には、水酸化物塩基、例えば水酸化カリウムが使用される。有機塩基を使用しても
よい。他の実施の形態では、上記の表面処理は水性酸、例えば塩酸中で行われる。一実施
の形態では、表面処理はマイクロ粒子をリン酸緩衝生理食塩水及びエタノールで処理する
ことを含む。
【0034】
幾つかの実施の形態では、表面処理は5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃
、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃又は18℃以下の温度、約5℃~約
18℃、約5℃~約16℃、約5℃~約15℃、約0℃~約10℃、約0℃~約8℃又は
約1℃~約5℃、約5℃~約20℃、約1℃~約10℃、約0℃~約15℃、約0℃~約
10℃、約1℃~約8℃又は約1℃~約5℃の低温で行われる。これらの各々の条件の各
組合せが、各々の組合せが別個に列挙されるかのように独立して開示されるとみなされる
。
【0035】
表面処理のpHは当然ながら、処理を塩基性、中性又は酸性のいずれの条件で行うかに
よって異なる。処理を塩基中で行う場合、pHは約8、9、10、11、12、13又は
14以下を含む約7.5~約14の範囲であり得る。処理を酸中で行う場合、pHは1、
2、3、4、5又は6以上を含む約6.5~約1の範囲であり得る。中性条件下で行う場
合、pHは通例、約6.4又は6.5~約7.4又は7.5の範囲であり得る。
【0036】
本発明の主要な態様は、処理が塩基性、中性又は酸性のいずれの条件で行うかに関わら
ず、孔、穴又はチャネルを形成することで粒子を顕著に損傷することのない穏やかな処理
をもたらす時間、温度、pH剤及び溶媒の組合せの選択を含むことである。これらの各々
の条件の各組合せが、各々の組合せが別個に列挙されるかのように独立して開示されると
みなされる。
【0037】
処理条件は、粒子が固体粒子として留まり、過度の凝集又は集塊なしに注射可能であり
、少なくとも500μmの少なくとも1つの凝集粒子を形成するように表面を単に穏やか
に処理するものとする。
【0038】
一実施の形態では、表面処理は、マイクロ粒子をpH=6.6~7.4又は7.5の水
溶液及びエタノールを用いて約1℃~約10℃、約1℃~約15℃、約5℃~約15℃又
は約0℃~約5℃の低温で処理することを含む。一実施の形態では、表面処理は、マイク
ロ粒子をpH=6.6~7.4又は7.5の水溶液及び有機溶媒を用いて約0℃~約10
℃、約5℃~約8℃又は約0℃~約5℃の低温で処理することを含む。一実施の形態では
、表面処理は、マイクロ粒子をpH=1~6.6の水溶液及びエタノールを用いて約0℃
~約10℃、約0℃~約8℃又は約0℃~約5℃の低温で処理することを含む。一実施の
形態では、表面処理は、マイクロ粒子を、有機溶媒を用いて約0℃~約18℃、約0℃~
約16℃、約0℃~約15℃、約0℃~約10℃、約0℃~約8℃又は約0℃~約5℃の
低温で処理することを含む。加工温度の低下(室温未満、通例18℃未満)は、粒子が「
穏やかに」のみ表面処理されることを確実にする助けとなる。
【0039】
医薬及び生物学的治療剤を、本発明を用いて制御方式で送達することができる。一実施
の形態では、医薬品はスニチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤である。本発明の目標の1
つは、少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月又はそれ
以上の期間にわたり、治療すべき障害に効果的な薬物濃度を少なくとも眼内で維持するよ
うな眼、特に眼の後部への薬理活性化合物の持続放出をもたらすことである。一実施の形
態では、薬物は実質的に線形の持続放出をもたらす表面処理マイクロ粒子中で投与される
。別の実施の形態では、放出は線形ではないが、指定の期間にわたる放出の最低濃度であ
っても治療上効果的な用量以上である。
【0040】
一実施の形態では、表面処理マイクロ粒子はポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLG
A)を含む。別の実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は、少なくともPLGA及びP
LGA-ポリエチレングリコール(PEG)を有するポリマー又はコポリマー(PLGA
-PEGと称される)を含む。一実施の形態では、表面処理マイクロ粒子はポリ(乳酸)
(PLA)を含む。別の実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は、少なくともPLA及
びPLA-ポリエチレングリコール(PEG)を有するポリマー又はコポリマー(PLA
-PEGと称される)を含む。一実施の形態では、表面処理マイクロ粒子はポリカプロラ
クトン(PCL)を含む。別の実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は、少なくともP
CL及びPCL-ポリエチレングリコール(PEG)を有するポリマー又はコポリマー(
PCL-PEGと称される)を含む。別の実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は少な
くともPLGA、PLGA-PEG及びポリビニルアルコール(PVA)を含む。別の実
施の形態では、表面処理マイクロ粒子は少なくともPLA、PLA-PEG及びポリビニ
ルアルコール(PVA)を含む。別の実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は少なくと
もPCL、PCL-PEG及びポリビニルアルコール(PVA)を含む。他の実施の形態
では、PLA、PLGA又はPCLの任意の組合せを、PVAを含む又は含まないPLA
-PEG、PLGA-PEG又はPCL-PEGの任意の組合せと混合することができ、
これらの各々の条件の各組合せが、各々が別個に列挙されるかのように独立して開示され
るとみなされる。
【0041】
一実施の形態では、ポリビニルアルコールは部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルで
ある。例えば、ポリ酢酸ビニルは、ポリ酢酸ビニルが実質的に加水分解されるように少な
くとも約78%が加水分解される。一例では、ポリ酢酸ビニルは、ポリ酢酸ビニルが実質
的に加水分解されるように少なくとも約88%~98%が加水分解される。
【0042】
一実施の形態では、薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、約80パーセント
又は89パーセント~約99パーセントのPLGA、例えば少なくとも約80パーセント
、85パーセント、90パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント
、98パーセント又は99パーセントのPLGAを含有する。他の実施の形態では、PL
A又はPCLをPLGAの代わりに使用する。また他の実施の形態では、PLA、PLG
A及び/又はPCLの組合せが使用される。
【0043】
或る特定の例では、表面処理マイクロ粒子は、約0.5パーセント~約10パーセント
のPLGA-PEG、約0.5パーセント~約5パーセントのPLGA-PEG、約0.
5パーセント~約4パーセントのPLGA-PEG、約0.5パーセント~約3パーセン
トのPLGA-PEG、又は約0.1パーセント~約1パーセント、2パーセント、5パ
ーセント若しくは10パーセントのPLGA-PEGを含む。他の実施の形態では、PL
A-PEG又はPCL-PEGをPLGA-PEGの代わりに使用する。他の実施の形態
では、PLGA-PEG、PLA-PEG又はPCL-PEGの任意の組合せをPLGA
、PLA又はPCLの任意の組合せと共にポリマー組成物中に使用する。各々の組合せが
本明細書で個別に記載されるかのように具体的に記載されるとみなされる。一実施の形態
では、ポリマー配合物は最大約1%、2%、3%、4%、5%、6%、10%又は14%
の選択ペグ化ポリマーを含む。
【0044】
幾つかの例では、マイクロ粒子は約0.01パーセント~約0.5パーセントのPVA
(ポリビニルアルコール)、約0.05パーセント~約0.5パーセントのPVA、約0
.1パーセント~約0.5パーセントのPVA又は約0.25パーセント~約0.5パー
セントのPVAを含有する。幾つかの例では、マイクロ粒子は約0.001パーセント~
約1パーセントのPVA、約0.005パーセント~約1パーセントのPVA、約0.0
75パーセント~約1パーセントのPVA又は約0.085パーセント~約1パーセント
のPVAを含有する。幾つかの例では、マイクロ粒子は約0.01パーセント~約5.0
パーセントのPVA、約0.05パーセント~約5.0パーセントのPVA、約0.1パ
ーセント~約5.0パーセントのPVA、約0.50パーセント~約5.0パーセントの
PVAを含有する。幾つかの例では、マイクロ粒子は約0.10パーセント~約1.0パ
ーセント又は約0.50パーセント~約1.0パーセントのPVAを含有する。幾つかの
実施の形態では、マイクロ粒子は最大約0.10%、0.15%、0.20%、0.25
%、0.30%、0.40%又は0.5%のPVAを含有する。所望の結果を達成する任
意の分子量のPVAを使用することができる。一実施の形態では、PVAは最大約10k
d、15kd、20kd、25kd、30kd、35kd又は40kdの分子量を有する
。幾つかの実施の形態では、PVAは限定されるものではないが、最大約70%、75%
、80%、85%、88%、90%又は更には95%加水分解されたポリ酢酸ビニルを含
む、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルである。一実施の形態では、PVAは約88
%加水分解されたポリ酢酸ビニルである。一実施の形態では、PVAポリマーは2000
0g/mol~40000g/molの分子量を有する。一実施の形態では、PVAポリ
マーは24000g/mol~35000g/molの分子量を有する。
【0045】
一実施の形態では、PLGAポリマーは30000g/mol~60000g/mol
(また、キロダルトン、kDa又はkD)の分子量を有する。一実施の形態では、PLG
Aポリマーは40000g/mol~50000g/mol(例えば40000g/mo
l、45000g/mol又は50000g/mol)の分子量を有する。一実施の形態
では、PLAポリマーは30000g/mol~60000g/mol(例えば4000
0g/mol、45000g/mol又は50000g/mol)の分子量を有する。一
実施の形態では、PLGA又はPLAについて記載したものと同じkDa範囲のPCLポ
リマーが使用される。
【0046】
一実施の形態では、表面処理マイクロ粒子は薬理活性化合物を含む。マイクロ粒子中の
薬理活性化合物のカプセル化効率は、具体的なマイクロ粒子形成条件及び治療剤の特性に
基づいて、例えば約20パーセント~約90パーセント、約40パーセント~約85パー
セント、約50パーセント~約75パーセントと広範囲であり得る。幾つかの実施の形態
では、カプセル化効率は例えば最大約50パーセント、55パーセント、60パーセント
、65パーセント、70パーセント、75パーセント又は80パーセントである。
【0047】
表面処理マイクロ粒子中の医薬活性化合物の量は、医薬活性化合物の分子量、効力及び
薬物動態特性に左右される。
【0048】
一実施の形態では、薬理活性化合物は、表面処理マイクロ粒子の総重量をベースとして
少なくとも1.0重量パーセント~約40重量パーセントの量で存在する。幾つかの実施
の形態では、薬理活性化合物は、表面処理マイクロ粒子の総重量をベースとして少なくと
も1.0重量パーセント~約35重量パーセント、少なくとも1.0重量パーセント~約
30重量パーセント、少なくとも1.0重量パーセント~約25重量パーセント又は少な
くとも1.0重量パーセント~約20重量パーセントの量で存在する。マイクロ粒子中の
活性物質の重量の非限定的な例は少なくとも約5重量%、6重量%、7重量%、8重量%
、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%又は15重
量%である。一例では、マイクロ粒子は約10重量%の活性化合物を有する。
【0049】
一実施の形態では、本発明は、マイクロ粒子とマイクロ粒子中にカプセル化された薬理
活性化合物とを含むマイクロ粒子を作製する方法であって、
(a)(i)PLGA又はPLA、(ii)PLGA-PEG又はPLA-PEG、(
iii)薬理活性化合物及び(iv)1つ以上の有機溶媒を含む溶液又は懸濁液(有機相
)を調製することと、
(b)有機相を水相に添加し、約3000rpm~約10000rpmで約1分間~約
30分間混合することによって、ポリビニルアルコール(PVA)水溶液(水相)中のエ
マルションを調製することと、
(c)薬理活性化合物を含む溶媒を含んだマイクロ粒子を含むエマルションを、ほぼ室
温で溶媒が実質的に蒸発するまで撹拌することによって硬化させることと、
(d)薬理活性化合物を含むマイクロ粒子を遠心分離することと、
(e)溶媒を除去し、薬理活性化合物を含むマイクロ粒子を水で洗浄することと、
(f)薬理活性化合物を含むマイクロ粒子を濾過して、凝集体又は所望のサイズよりも
大きな粒子を除去することと、
(g)任意に、薬理活性化合物を含むマイクロ粒子を凍結乾燥し、マイクロ粒子を乾燥
粉末として安定性が最大約6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、20ヶ月、22ヶ月若
しくは24ヶ月又はそれ以上維持されるように保管することと、
を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】PBSへの注入及び37℃で2時間のインキュベーション後の非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)(S-1及びS-5)及び表面処理マイクロ粒子(STMP)(S-3及びS-8)の凝集を示す図である。NSTMPであるS-1及びS-5は2時間のインキュベーション後に管を反転させると即座に分散を開始し、STMPであるS-3及びS-8は全観察期間(約10分間)を通じて分散せずに管の底部に凝集したままであった。サンプルは左から右にS-1、S-3、S-5及びS-8である(実施例5)。
【
図2】HAへの注入及び37℃で2時間のインキュベーション後の表面処理マイクロ粒子(STMP)(S-3及びS-8)の凝集を示す図である。サンプルは左から右にS-1、S-3、S-5及びS-8である(実施例5)。
【
図3】PBS中、37℃で2時間のインキュベーションを行い、続いてかき混ぜて凝集体を管の底部から剥離させた後の粒子のin vitroでの凝集及び分散の結果を示す図である。上列左から右にサンプル:S-1、S-2、S-3、S-4;下列左から右にサンプル:S-5、S-6、S-7及びS-8(実施例5)。
【
図4】PBS中、37℃で2時間のインキュベーションを行い、続いて管のタッピング及びフリッキング(flicking)によってかき混ぜた後のPBS/EtOHで処理した代表的な表面処理マイクロ粒子(STMP)(サンプルS-21)のin vitroでの凝集を示す図である(実施例6)。
【
図5】表面処理マイクロ粒子(STMP)の代表的なバッチ(S-12)のin vitro加速薬物放出プロファイルを示す図である(実施例12)。x軸は測定時間(日数)であり、y軸は累積放出パーセントである。
【
図6】1%Tween 20を含むPBS中、37℃でのサンプルS-1、S-2及びS-3のin vitro薬物放出プロファイルを示す図である(実施例13)。x軸は測定時間(日数)であり、y軸は累積放出パーセントである。
【
図7】1%Tween 20を含むPBS中、37℃でのS-13、S-14、S-15及びS-16のin vitro薬物放出プロファイルを示す図である(実施例15)。x軸は測定時間(日数)であり、y軸は累積放出パーセントである。
【
図8A】37℃で2時間のインキュベーション後(上)、及び37℃で2時間インキュベーションを行い、続いてオービタルシェーカー上、250rpmで2分間振盪した後(下)の4mLのPBS中における5倍希釈ProVisc中100mg/mLの濃度の表面処理マイクロ粒子(STMP)のin vitro凝集を示す図である(実施例17)。
【
図8B】37℃で2時間のインキュベーション後(上)、及び37℃で2時間インキュベーションを行い、続いてオービタルシェーカー上、250rpmで2分間振盪した後(下)の4mLのHA(5mg/mL溶液)中における5倍希釈ProVisc中100mg/mLの濃度の表面処理マイクロ粒子(STMP)のin vitro凝集を示す図である(実施例17)。
【
図8C】37℃で2時間インキュベーションを行い、続いてオービタルシェーカー上、250rpmで2分間振盪した後(下)の4mLのPBS中における5倍希釈ProVisc中200mg/mLの濃度の表面処理マイクロ粒子(STMP)のin vitro凝集を示す図である(実施例17)。
【
図8D】37℃で2時間インキュベーションを行い、続いてオービタルシェーカー上、250rpmで2分間振盪した後(下)の4mLのHA(5mg/mL溶液)中における5倍希釈ProVisc中200mg/mLの濃度の表面処理マイクロ粒子(STMP)のin vitro凝集を示す図である(実施例17)。
【
図9】注射の2時間後のex vivoウシ眼における粒子の凝集体の写真である(実施例18)。
【
図10A】ウサギ眼の中央硝子体へのPBSに懸濁したSTMP S-10の注射後の硝子体内(左)及び硝子体外(右)の粒子凝集体の写真である(実施例19)。
【
図10B】ウサギ眼の中央硝子体への5倍希釈ProViscに懸濁したSTMP S-10の注射後の硝子体内(左)及び硝子体外(右)の粒子凝集体の写真である(実施例19)。
【
図11A】表面処理マイクロ粒子(STMP)を注射したウサギ眼の代表的な1ヶ月目の組織像である(実施例20)。
【
図11B】非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)を注射したウサギ眼の代表的な1ヶ月目の組織像である(実施例20)。
【
図12】表面処理マイクロ粒子(STMP)の代表的なバッチ(S-12)のサイズ分布を示す図である(実施例22)。x軸は測定された粒径(マイクロメートル)を表し、y軸は体積パーセントを表す。
【
図13A】有色ウサギにおける0.0125mg/眼又は0.00125mg/眼の用量でのリンゴ酸スニチニブ(遊離薬物)の両側注射後の網膜内でのスニチニブの選択PKプロファイルを示す図である(実施例24)。x軸は測定時間(時間)であり、y軸はスニチニブの濃度(ng/g)である。
【
図13B】有色ウサギにおける0.0125mg/眼又は0.00125mg/眼の用量でのリンゴ酸スニチニブ(遊離薬物)の両側注射後の硝子体内でのスニチニブの選択PKプロファイルを示す図である(実施例24)。x軸は測定時間(時間)であり、y軸はスニチニブの濃度(ng/g)である。
【
図13C】有色ウサギにおける2.5mg/眼、0.25mg/眼又は0.025mg/眼の用量でのリンゴ酸スニチニブ(遊離薬物)の両側注射後の血漿中でのスニチニブの選択PKプロファイルを示す図である(実施例24)。x軸は測定時間(時間)であり、y軸はスニチニブの濃度(ng/g)である。
【
図14】1mgのスニチニブを含有する10mgのSTMPを注射したウサギにおける投与後7ヶ月にわたるスニチニブレベル(ng/g)を示す図である。ウサギを4ヶ月目に屠殺し、硝子体、網膜、血漿及びRPE-脈絡膜におけるスニチニブレベル(ng/g)を決定した。スニチニブレベルは、VEGFR及びPDGFRに対するスニチニブのK
iを超えていた(実施例20)。x軸は投与後の時間(月数)を表し、y軸は測定されたスニチニブの濃度(ng/g)を表す。
【
図15】0.2mgのスニチニブを含有する2mgのSTMP(10%(w/w)STMP)を注射したウサギにおける投与後4ヶ月にわたるスニチニブレベル(ng/g)を示す図である。ウサギを4ヶ月目に屠殺し、硝子体、網膜、血漿及びRPE-脈絡膜におけるスニチニブレベル(ng/g)を決定した。スニチニブレベルは、RPE-脈絡膜及び網膜においてVEGFR及びPDGFRに対するスニチニブのK
iを超えていた(実施例20)。x軸は投与後の時間(月数)を表し、y軸は測定されたスニチニブの濃度(ng/g)を表す。
【
図16】0.2mgのスニチニブを含有する10mgのSTMP(2%(w/w)STMP)を注射したウサギにおけるスニチニブレベル(ng/g)を示す図である。ウサギを4ヶ月目に屠殺し、硝子体、網膜、血漿及びRPE-脈絡膜におけるスニチニブレベル(ng/g)を決定した。スニチニブレベルは、RPE-脈絡膜及び網膜においてVEGFR及びPDGFRに対するスニチニブのK
iを超えていた(実施例20)。x軸は投与後の時間(月数)を表し、y軸は測定されたスニチニブの濃度(ng/g)を表す。
【
図17】PBSへの注入及び37℃で2時間のインキュベーション後の表面処理マイクロ粒子(STMP)(S-28~S-37及びS-12)の凝集を示す図である。2時間のインキュベーション後に、非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)であるS-27は、試験管をオービタルシェーカー上に400rpmで30秒間置いた場合に分散したが、表面処理マイクロ粒子(STMP)であるS-28~S-37及びS-12は、同じかき混ぜ条件下で凝集したままであった。サンプルは左から右、上列から下列にS-28、S-29、S-30、S-31、S-32、S-33、S-34、S-35、S-36、S-37、S-12及びS-27である(実施例10)。
【
図18】PBSへの注入及び37℃で2時間のインキュベーション後の表面処理マイクロ粒子(STMP)(S-39~S-45)の凝集を示す図である。2時間のインキュベーション後に、非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)であるS-38は、試験管をオービタルシェーカー上に400rpmで30秒間置いた場合に分散したが、表面処理マイクロ粒子(STMP)であるS-39~S-45は、同じかき混ぜ条件下で凝集したままであった。サンプルは左から右、上列から下列にS-39、S-40、S-41、S-42、S-43、S-44及びS-45である(実施例10)。
【
図19】ウサギにおける1mgのリンゴ酸スニチニブを含有するSTMPの単回IVT注射後のPKを示すグラフである。ウサギを10日目及び3ヶ月目に屠殺し、硝子体、網膜及びRPE-脈絡膜におけるスニチニブレベル(ng/g)を決定した。スニチニブレベルは、RPE-脈絡膜及び網膜においてVEGFR及びPDGFRに対するスニチニブのK
iを超えていた(実施例29)。x軸は投与後の時間(月数)を表し、y軸は測定されたスニチニブの濃度(ng/g)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
I. 専門用語
特定の用語が本明細書で用いられるが、これらは限定を目的とするのではなく、包括的
及び記述的な意味でのみ用いられる。他に規定のない限り、本明細書で用いられる全ての
技術用語及び科学用語は、この今回記載される主題が属する技術分野の当業者により一般
に理解されるものと同じ意味を有する。
【0052】
化合物は正式名称を用いて記載される。他に規定のない限り、本明細書で使用される全
ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される
ものと同じ意味を有する。
【0053】
数量を特定しない用語(The terms "a" and "an")は量の限定を表すのではなく、言及
される項目の少なくとも1つの存在を表す。
【0054】
値の範囲の列挙は本明細書に他に指定されない限り、単にその範囲に含まれる各々の別
個の値に個別に言及する簡単な方法としての役割を果たすことを意図するものであり、各
々の別個の値は、それらが本明細書に個別に列挙されたかのように引用することにより本
明細書の一部をなす。全ての範囲の端点はその範囲内に含まれ、独立して組み合わせるこ
とができる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に他に指定されない又は文脈によ
り明らかに否定されない限り、好適な順序で行うことができる。例又は例示的な言葉(例
えば、「等(such as)」)の使用は単に本発明をよりよく説明することを意図するもの
であり、他に主張のない限り本発明の範囲の限定を示すものではない。
【0055】
「担体」という用語は希釈剤、賦形剤又はビヒクルを指す。
【0056】
「投薬形態」は、表面処理マイクロ粒子及び治療活性化合物を含む組成物の投与単位を
意味する。投薬形態の例としては、注射剤、懸濁液、液体、エマルション、インプラント
、粒子、スフェア、クリーム、軟膏、吸入可能形態、経皮形態、口腔投薬形態、舌下投薬
形態、局所投薬形態、ゲル、粘膜投薬形態等が挙げられる。「投薬形態」には例えば、担
体中に薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子も含まれ得る。
【0057】
「マイクロ粒子」という用語は、サイズがマイクロメートル(μm)で測定される粒子
を意味する。通例、マイクロ粒子は約1μm~100μmの平均直径を有する。幾つかの
実施形態では、マイクロ粒子は約1μm~60μm、例えば約1μm~40μm、約10
μm~40μm、約20μm~40μm、約25μm~40μm、約20μm~35μm
の平均直径を有する。例えば、マイクロ粒子は20μm~40μmの平均直径を有し得る
。本明細書で使用される場合、「ミクロスフェア」という用語は、実質的に球状のマイク
ロ粒子を意味する。
【0058】
「患者」又は「宿主」又は「被験体」は通例ヒトであるが、より一般には哺乳動物であ
り得る。代替的な実施形態では、これは例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、
ウサギ、ラット、マウス、鳥類等を指す場合がある。
【0059】
「穏やかな」又は「穏やかに」という用語は、マイクロ粒子の表面修飾を記載するため
に使用される場合、修飾(通例、粒子の内部コアではなく表面からの界面活性剤の除去)
が、室温でそれ以外は同じ条件を用いて行う場合よりも厳密、顕著又は広範でないことを
意味する。概して、本発明の固体マイクロ粒子の表面修飾は、in vivoでのマイク
ロ粒子の分解を顕著に加速し得る顕著なチャネル又は大きな孔を生じず、更には表面を軟
化し、その親水性を減少させ、in vivoでの凝集を促進する働きをするように行わ
れる。
【0060】
「固体」という用語は、穏やかに表面処理されたマイクロ粒子の特性を示すために使用
される場合、粒子が生分解の時間を不必要に短縮する顕著なチャネル及び大きな孔を有す
る不均一なものではなく、材料構造中で実質的に連続していることを意味する。
【0061】
II. 穏やかに表面処理された凝集マイクロ粒子及び方法
本発明は、注射時にin vivoでより大きな粒子(ペレット)へと、より小さな粒
子の望ましくない副作用を低減するように凝集し、長期間(例えば、最大若しくは少なく
とも3ヶ月、最大4ヶ月、最大5ヶ月、最大6ヶ月、最大7ヶ月又はそれ以上)にわたる
治療剤の持続送達に好適な穏やかに表面処理された固体生分解性マイクロ粒子を提供する
。一実施形態では、軽く表面処理された固体生分解性マイクロ粒子は眼内注射に好適であ
り、その点で粒子が凝集してペレットを形成することで、顕著に視力を損なうことなく視
軸の外側に留まる。粒子は1つ又は幾つかのペレットへと凝集することができる。凝集体
のサイズは、注射する粒子の質量(重量)によって決まる。
【0062】
本明細書で提供される穏やかに表面処理された生分解性マイクロ粒子は、細胞又は組織
材料で満たされ得る孔による組織再生に使用される「スキャフォールド」マイクロ粒子と
は区別される。対照的に、本マイクロ粒子は、凝集して、長期制御薬物送達のために主に
表面浸食によって浸食する、より大きな複合粒子を形成することができる空隙率が十分に
低い固体材料となるように設計される。
【0063】
本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、例えば硝子体内注射、インプラント、眼周
囲送達又は眼外でのin vivo送達に好適である。
【0064】
本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、in vivo送達に有用な任意の方法で
の全身、非経口、経膜、経皮、口腔内、皮下、洞内、腹腔内、関節内、軟骨内、脳内、歯
冠内、歯(dental)、椎間板内、筋肉内、腫瘍内、局所又は膣内送達にも好適である。
【0065】
このため、一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの生分解性ポリマーを含む表面
修飾固体凝集マイクロ粒子であって、表面修飾固体凝集マイクロ粒子が固体コアを有し、
治療剤を含み、約18℃以下の温度の穏やかな条件下で処理して表面界面活性剤を除去し
た修飾表面を有し、in vivoでの注射に十分に小さく、in vivoで凝集して
、in vivoで少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月若しく
は7ヶ月、又はそれ以上の持続薬物送達をもたらすように、少なくとも500μmの少な
くとも1つのペレットをin vivoで形成する、表面修飾固体凝集マイクロ粒子であ
る。表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、例えば硝子体内注射、眼内インプラントを含むイ
ンプラント、眼周囲送達又は眼外でのin vivo送達に好適である。
【0066】
代替的には、表面処理は約10℃、8℃又は5℃以下の温度で行われる。
【0067】
表面処理は、所望の目的を達成する任意のpHで行うことができる。pHの非限定的な
例は約6~約8、6.5~約7.5、約1~約4、約4~約6及び6~約8である。一実
施形態では、表面処理は約8~約10のpHで行うことができる。一実施形態では、表面
処理は約10.0~約13.0のpHで行うことができる。一実施形態では、表面処理は
約12~約14のpHで行うことができる。一実施形態では、表面処理は有機溶媒を用い
て行うことができる。一実施形態では、表面処理はエタノールを用いて行うことができる
。他の様々な実施形態では、表面処理はメタノール、酢酸エチル及びエタノールから選択
される溶媒中で行われる。非限定的な例は、有機水性塩基を含むエタノール;エタノール
及び無機水性塩基;エタノール及び水酸化ナトリウム;エタノール及び水酸化カリウム;
エタノール中の酸性水溶液;エタノール中の塩酸水溶液:及びエタノール中の塩化カリウ
ム水溶液である。
【0068】
本発明に含まれる固体コアの例としては、空隙率10パーセント、空隙率8パーセント
、空隙率7パーセント、空隙率6パーセント、空隙率5パーセント、空隙率4パーセント
、空隙率3パーセント又は空隙率2パーセント未満の生分解性ポリマーを含む固体コアが
挙げられる。本明細書で使用される空隙率は、表面修飾固体凝集マイクロ粒子の全体積に
対する空所の比率によって規定される。
【0069】
本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、少なくとも1ヶ月又は少なくとも2ヶ月又
は少なくとも3ヶ月又は少なくとも4ヶ月又は少なくとも5ヶ月又は少なくとも6ヶ月又
は少なくとも7ヶ月にわたる持続送達をもたらす。
【0070】
表面修飾固体凝集マイクロ粒子によって送達される治療剤は、一実施形態では医薬品又
は生物製剤である。非限定的な例では、医薬品はスニチニブ、別のチロシンキナーゼ阻害
剤、抗炎症薬、抗生物質、免疫抑制剤、抗VEGF剤、抗PDGF剤又は下記の他の治療
剤を含む。
【0071】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は10μm~60μm、20μm~5
0μm、20μm~40μm、20μm~30μm、25μm~40μm又は25μm~
35μmの平均直径を有する。
【0072】
さらに、開示の発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、in vivoで投与した場
合に凝集して少なくとも約300μm、400μm、500μm、600μm、700μ
m、1mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm又は5mmの直径を有する少なくとも
1つのペレットを生じることができる。
【0073】
一実施形態では、本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、全ペイロードの約10パ
ーセント又は15パーセントを超えるバーストなしに1週間又は5日間、4日間、3日間
、2日間又は1日にわたって治療剤を放出するペレットをin vivoで生じる。
【0074】
幾つかの実施形態では、長期制御薬物送達は、数ヶ月(例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月
若しくは4ヶ月、又はそれ以上)にわたる凝集したマイクロ粒子の表面浸食、続いて凝集
したマイクロ粒子の残存部分の浸食、続いて凝集した粒子からの長期放出期間にわたる活
性物質が結合したin vivoのタンパク質からの活性物質の遅延放出の組合せによっ
て達成される。別の実施形態では、マイクロ粒子は少なくとも約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月
、4ヶ月、5ヶ月若しくは6ヶ月、又はそれ以上の期間にわたって表面浸食により実質的
に分解する。
【0075】
別の実施形態では、本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子は1パーセント~40パー
セント、5パーセント~25パーセント又は5パーセント~15パーセント(重量/重量
)の薬物担持を有する。
【0076】
本発明の表面修飾固体凝集マイクロ粒子に含まれるポリマー組成物の例としては、ポリ
(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリエチレングリコールに共有結合的に連結したポリ(
ラクチド-コ-グリコリド)、混合された2つ以上の生分解性ポリマー又はコポリマー、
例えばポリ(ラクチド-コ-グリコリド)とポリエチレングリコールに共有結合的に連結
したポリ(ラクチド-コ-グリコリド)との混合物、ポリ(乳酸)、ポリビニルアルコー
ル(加水分解されたポリ酢酸ビニルであってもよい)等の界面活性剤が挙げられるが、こ
れらに限定されない。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、in vivo投与のための薬学的に許容可能な担体中
に本発明のマイクロ粒子を含む注射材料である。注射材料は、注射前のマイクロ粒子の凝
集を阻害する化合物、及び/又は増粘剤及び/又は塩を含み得る。一実施形態では、注射
材料は約50mg/ml~700mg/ml、500mg/ml以下、400mg/ml
以下、300mg/ml以下、200mg/ml以下又は150mg/ml以下の表面修
飾固体凝集マイクロ粒子の濃度範囲を有する。
【0078】
本発明は、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を作製する方法であって、
(i)ポリマー及び治療剤を1つ以上の溶媒に溶解又は分散させて、ポリマー及び治療
剤の溶液又は分散液を形成し、ポリマー及び治療剤の溶液又は分散液と界面活性剤を含有
する水相とを混合して、溶媒を含んだマイクロ粒子を作製した後、溶媒を除去して、治療
剤、ポリマー及び界面活性剤を含有するマイクロ粒子を作製することによって、1つ以上
の生分解性ポリマーを含むマイクロ粒子を調製する第1の工程と、
(ii)工程(i)のマイクロ粒子の表面のみを約18℃以下の温度で任意に最大約1
40分間、120分間、110分間、100分間、90分間、80分間、70分間、60
分間、50分間、40分間、30分間、10分間、8分間、5分間、4分間、3分間、2
分間又は1分間にわたって表面界面活性剤、表面ポリマー又は表面オリゴマーを除去する
作用物質を用いて、内部細孔が顕著に生じないように穏やかに処理する第2の工程と、
(iii)表面処理マイクロ粒子を単離することと、
を含む、方法を更に含む。
【0079】
或る特定の実施形態では、上記工程(ii)は17℃、15℃、10℃又は5℃未満の
温度で行われる。さらに、工程(iii)は任意に25℃未満、17℃、15℃、10℃
、8℃又は5℃未満の温度で行われる。工程(ii)は、例えば8分未満、6分未満、4
分未満、3分未満、2分未満又は1分未満にわたって行うことができる。一実施形態では
、工程(ii)は60分、50分、40分、30分、20分又は10分未満にわたって行
われる。
【0080】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法は、表面界面活性剤を
除去する作用物質を使用することを含む。非限定的な例としては、例えば水性酸、リン酸
緩衝生理食塩水、水、NaOH水溶液、塩酸水溶液、塩化カリウム水溶液、アルコール又
はエタノールから選択されるものが挙げられる。
【0081】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法は、例えばアルコール
、例えばエタノール、エーテル、アセトン、アセトニトリル、DMSO、DMF、THF
、ジメチルアセトアミド、二硫化炭素、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、ジクロ
ロメタン、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、酢酸メチル、メチルt-ブチ
ルエーテル(MTBE)、ペンタン、プロパノール、2-プロパノール、トルエン、N-
メチルピロリドン(NMP)、アセトアミド、ピペラジン、トリエチレンジアミン、ジオ
ール及びCO2から選択される溶媒を含む表面界面活性剤を除去する作用物質を使用する
ことを含む。
【0082】
表面界面活性剤を除去する作用物質は塩基性緩衝溶液を含み得る。さらに、表面界面活
性剤を除去する作用物質は水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化
カルシウム、水酸化マグネシウム、リチウムアミド、ナトリウムアミド、炭酸バリウム、
水酸化バリウム、水酸化バリウム水和物、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水酸化セシウ
ム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ストロンチ
ウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン
、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリメ
チルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、アニリ
ン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、アザジュロリジン、ベンジルアミン
、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、DABCO、1,5-ジアザビシク
ロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ノナ-7-エ
ン、2,6-ルチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、プロトンスポンジ、1,
5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、トリペレンナミン、水酸化ア
ンモニウム、トリエタノールアミン、エタノールアミン及びトリズマから選択される塩基
を含み得る。
【0083】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法はアルコール、例えば
エタノール、エーテル、アセトン、アセトニトリル、DMSO、DMF、THF、ジメチ
ルアセトアミド、二硫化炭素、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、ジクロロメタン
、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、酢酸メチル、メチルt-ブチルエーテ
ル(MTBE)、ペンタン、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、トルエン、
N-メチルピロリドン(NMP)、アセトアミド、ピペラジン、トリエチレンジアミン、
ジオール及びCO2等の溶媒の存在下で表面界面活性剤を除去する作用物質、例えば水性
酸、リン酸緩衝生理食塩水、水又はNaOHから選択されるものを使用することを含む。
【0084】
一実施形態では、表面界面活性剤を除去する作用物質は水性酸を含み得る。表面界面活
性剤を除去する作用物質は、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スル
ファミン酸、リン酸、硝酸等を含む無機酸、又は限定されるものではないが、酢酸、プロ
ピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸
、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタ
ミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-
アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスル
ホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(ここで、nは0
~4である)等を含む有機酸に由来する酸を含み得る。
【0085】
一実施形態では、表面界面活性剤を除去する作用物質は反応条件下で生分解性ポリマー
の分解剤ではない。マイクロ粒子の親水性は、界面活性剤を除去することによって低下さ
せることができる。
【0086】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法はアルコール、例えば
エタノール、エーテル、アセトン、アセトニトリル、DMSO、DMF、THF、ジメチ
ルアセトアミド、二硫化炭素、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、ジクロロメタン
、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、酢酸メチル、メチルt-ブチルエーテ
ル(MTBE)、ペンタン、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、トルエン、
N-メチルピロリドン(NMP)、アセトアミド、ピペラジン、トリエチレンジアミン、
ジオール及びCO2から選択される溶媒を含む表面界面活性剤を除去する作用物質を使用
することを含む。典型的な実施形態では、表面処理のプロセスは、エタノールを含む表面
界面活性剤を除去する作用物質を含む。
【0087】
表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法のカプセル化効率は、マイクロ粒子形成
条件及び治療剤の特性によって決まる。或る特定の実施形態では、カプセル化効率は約5
0パーセント超、約75パーセント超、約80パーセント超又は約90パーセント超であ
り得る。
【0088】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法は75/25 PLG
Aを生分解性ポリマーとして含む。
【0089】
代替的な実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を製造する方法はpH約14未
満かつpH12超、pH12未満かつpH10超、pH約10未満かつpH8超、pH約
8未満かつpH約6超、中性pH、pH約7未満かつpH4超、pH約4未満かつpH約
1.0超で行われる。
【0090】
一実施形態では、上記工程(ii)は約140分、120分、110分、100分、9
0分、60分、40分、30分、20分、10分、3分、2分又は1分未満の時間で行わ
れる。
【0091】
また別の実施形態では、眼障害を治療する方法であって、それを必要とする宿主に有効
量の治療剤を含む表面修飾固体凝集マイクロ粒子を投与することを含み、治療剤を含有す
る表面修飾固体凝集マイクロ粒子が眼に注射され、in vivoで凝集して、少なくと
も1ヶ月、2ヶ月又は3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月又はそれ以上の持続薬物
送達をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを、該ペレットが顕著
に視力を損なうことなく視軸の実質的に外側に留まるように形成する、方法を提供する。
【0092】
代替的な実施形態では、in vivoでより大きなペレットへと凝集しない表面修飾
固体凝集マイクロ粒子の重量パーセントは、投与総重量の約10パーセント以下、7パー
セント以下、5パーセント以下又は2パーセント以下である。
【0093】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は眼において実質的な炎症を引き起こ
さない。
【0094】
別の実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は眼において免疫応答を引き起こさ
ない。
【0095】
一実施形態では、本明細書に記載される本発明の表面修飾マイクロ粒子は緑内障、炭酸
脱水酵素によって媒介される障害、眼内圧(IOP)の増大に関連する障害若しくは異常
、一酸化窒素合成酵素(NOS)によって媒介される障害、又は視神経を再生/修復する
等の神経保護を必要とする障害である医学的障害を治療するために使用される。別の実施
形態では、より一般に、治療される障害はアレルギー性結膜炎、前部ブドウ膜炎、白内障
、萎縮型若しくは滲出型加齢黄斑変性(AMD)、又は糖尿病性網膜症である。
【0096】
局所又は局部送達により利益を得る可能性がある眼障害又は他の障害を治療するために
、有効量の薬理活性化合物又は薬学的に許容可能なその塩を、任意に薬学的に許容可能な
担体中に含む表面処理マイクロ粒子を宿主に投与することを含む、別の実施形態が提供さ
れる。療法は眼の前房又は後房への送達であり得る。特定の態様では、角膜、結膜、房水
、虹彩、毛様体、水晶体、強膜、脈絡膜、網膜色素上皮、神経網膜、視神経又は硝子体液
の障害を治療するために有効量の薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子が投与され
る。
【0097】
記載の組成物はいずれも、本明細書に更に記載されるように、硝子体内、基質内、前房
内、テノン嚢下、網膜下、球後、球周囲、脈絡膜上、脈絡膜下、結膜、結膜下、強膜上、
後強膜近傍、角膜周囲及び涙管注射による、又は粘液、ムチン若しくは粘膜関門を介する
ものを含む任意の所望の投与形態で、即時又は制御放出にて眼に投与することができる。
【0098】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のためのβ-アドレナリン拮抗薬を提供する。
【0099】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のためのプロスタグランジン類縁体を提供する。
【0100】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のためのアドレナリン作動薬を提供する。
【0101】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のための炭酸脱水酵素阻害剤を提供する。
【0102】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のための副交感神経興奮薬を提供する。
【0103】
一実施形態では、本開示は少なくとも最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、
6ヶ月又は7ヶ月等の長時間にわたって有効性を維持した上で表面処理マイクロ粒子から
放出され得る眼療法のための二重抗VEGF/抗PDGF剤を提供する。
【0104】
治療有効量の薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子を、かかる治療を必要とする
ヒトを含む宿主に投与することを含む、緑内障、炭酸脱水酵素によって媒介される障害、
眼内圧(IOP)の増大に関連する障害若しくは異常、一酸化窒素合成酵素(NOS)に
よって媒介される障害、視神経を再生/修復する等の神経保護を必要とする障害、アレル
ギー性結膜炎、前部ブドウ膜炎、白内障、萎縮型若しくは滲出型加齢黄斑変性(AMD)
、又は糖尿病性網膜症を含む眼障害を治療又は予防する方法が開示される。一実施形態で
は、宿主はヒトである。
【0105】
別の実施形態では、有効量の薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、緑内障に
起因する眼内圧(IOP)を低下させるために提供される。代替的な実施形態では、薬理
活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、緑内障と関連するかに関わらず眼内圧(IO
P)を低下させるために使用することができる。
【0106】
一実施形態では、障害は、緑内障治療に対する潜在的な又は以前の低い患者コンプライ
アンスに起因する眼内圧(IOP)の増大と関連する。また別の実施形態では、障害は神
経型一酸化窒素合成酵素(NOS)による潜在的な又は低い神経保護と関連する。このた
め、本明細書で提供される薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、有効量を好適
な方法で、それを必要とする宿主、通例ヒトに投与することによって宿主における緑内障
を抑制又は阻害し得る。
【0107】
有効量の薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子を投与することを含む、緑内障、
眼内圧(IOP)の増大、及び高い眼内圧(IOP)又は神経型一酸化窒素合成酵素(N
OS)に起因する視神経損傷と関連する障害を治療する方法も開示される。
【0108】
本発明の一態様では、本明細書に記載される有効量の薬理活性化合物が、例えば送達の
便宜上及び/又は持続放出送達のために、表面処理マイクロ粒子に組み込まれる。マイク
ロメートルスケールの材料の使用は溶解性、拡散性及び薬物放出特徴等の基本的物理特性
を調整する能力をもたらす。これらのマイクロメートルスケールの作用物質は、より効果
的な及び/又はより簡便な投与経路を提供し、治療による毒性を低下させ、製品ライフサ
イクルを延長し、最終的に医療費を低減する可能性がある。治療用送達系として、表面処
理マイクロ粒子は標的化送達及び持続放出を可能とし得る。
【0109】
本発明の別の態様では、表面処理マイクロ粒子は表面剤でコーティングされる。本発明
は、薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子を作製する方法を更に含む。本発明は、
患者の治療に薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子を使用する方法を更に含む。
【0110】
一実施形態では、薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、例えば米国特許第8
,916,196号に記載のようにエマルションを形成し、ビーズカラムを使用すること
によって得られる。
【0111】
一実施形態では、薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、振動メッシュ又はマ
イクロシーブを使用することによって得られる。
【0112】
一実施形態では、薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、スラリー篩分を用い
ることによって得られる。
【0113】
本明細書に記載されるミクロスフェアを作製する方法は、得られる粒子のサイズ分布を
狭める製造方法に適している。一実施形態では、粒子は材料を音響励起(振動)によりノ
ズルに通して噴霧し、均一な小滴を作製する方法によって製造される。ノズルに通した担
体流を利用して、小滴サイズを更に制御することもできる。かかる方法は、Berkland, C.
, K. Kim, et al. (2001). "Fabrication of PLG microspheres with precisely control
led and monodisperse size distributions." J Control Release 73(1): 59-74、Berkla
nd, C., M. King, et al. (2002). "Precise control of PLG microsphere size provide
s enhanced control of drug release rate." J Control Release 82(1): 137-147、Berk
land, C., E. Pollauf, et al. (2004). "Uniform double-walled polymer microspheres
of controllable shell thickness." J Control Release 96(1): 101-111に詳細に記載
されている。
【0114】
別の実施形態では、均一なサイズのマイクロ粒子は、所望のサイズのマイクロシーブを
利用する方法によって製造することができる。マイクロシーブは作製時に直接、形成され
るマイクロ粒子のサイズに作用するために、又は代替的には作製後にマイクロ粒子を均一
なサイズへと精製するために使用することができる。マイクロシーブは機械的なもの(無
機材料)であっても、又は本質的に生物学的なもの(膜等の有機材料)であってもよい。
かかる方法の1つが米国特許第8,100,348号に詳細に記載されている。
【0115】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性化合物を含み、25<Dv50<4
0μm、Dv90<45μmの粒径を有する。
【0116】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性化合物を含み、Dv10>10μm
の粒径を有する。
【0117】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性化合物を含み、薬学的に許容可能な
残留溶媒のみを有する。
【0118】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性化合物を含み、14日目までに80
パーセント超の総放出をもたらす。
【0119】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性剤を含み、シリンジを詰まらせるこ
となく標準壁26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ又は30ゲージ針による
200mg/mlの注射針通過性(syringeability)を有する。
【0120】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は治療活性剤を含み、シリンジを詰まらせるこ
となく薄壁26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ又は30ゲージ針による2
00mg/mlの注射針通過性を有する。
【0121】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、25<Dv50<40μ
m、Dv90<45μmの粒径を有する。
【0122】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、Dv10>10μmの粒
径を有する。
【0123】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、薬学的に許容可能な残留
溶媒のみを有する。
【0124】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、14日目までに80パー
セント超の総放出をもたらす。
【0125】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、シリンジを詰まらせるこ
となく標準壁26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ又は30ゲージ針による
200mg/mlの注射針通過性を有する。
【0126】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、シリンジを詰まらせるこ
となく薄壁26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ又は30ゲージ針による2
00mg/mlの注射針通過性を有する。
【0127】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、0.02EU/mg未満
のエンドトキシンレベルを有する。
【0128】
一実施形態では、スニチニブを含む表面処理マイクロ粒子は、10CFU/g未満のバ
イオバーデンレベルを有する。
【0129】
生分解性ポリマー
表面処理マイクロ粒子は1つ以上の生分解性ポリマー又はコポリマーを含み得る。ポリ
マーは、許容することができない副作用なしに患者に投与することができるという点で生
体適合性であるものとする。生分解性ポリマーは当業者に既知であり、広範な文献及び特
許の主題である。生分解性ポリマー又はポリマーの組合せは、疎水性及び親水性の性質の
適切な組合せ、in vivoでの半減期及び分解動態、送達される治療剤との相溶性、
注射部位での適切な挙動等を含むマイクロ粒子の標的特徴をもたらすように選択すること
ができる。
【0130】
例えば、様々な比率の疎水性、親水性及び生分解性の特徴を有する複数のポリマーから
マイクロ粒子を製造することによって、標的用途のためにマイクロ粒子の特性を設計する
ことができることが当業者には理解されるものとする。一例としては、90パーセントの
PLGA及び10パーセントのPEGを用いて製造したマイクロ粒子は、95パーセント
のPLGA及び5パーセントのPEGを用いて製造したマイクロ粒子よりも親水性が高い
。さらに、より生分解性の低いポリマーをより高含量で用いて製造したマイクロ粒子は概
して、よりゆっくりと分解する。この柔軟性により、本発明のマイクロ粒子を所望のレベ
ルの溶解性、医薬品の放出速度及び分解速度に合わせることが可能となる。
【0131】
或る特定の実施形態では、マイクロ粒子はポリ(α-ヒドロキシ酸)を含む。ポリ(α
-ヒドロキシ酸)の例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポ
リ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)及びポリD,L-乳酸(PDLL
A)、ポリエステル、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(3-ヒドロキシ-ブチレート
)、ポリ(s-カプロン酸)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(プロピレンフマレート
)、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール、付加ポリマー、ポリ無
水物、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビス-カルボキシフェノ
キシホスファゼン)(PCPP)、ポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)メタン](
PCPM)、SA、CPP及びCPMのコポリマー(Tamat and Langer in Journal of B
iomaterials Science Polymer Edition, 3, 315-353, 1992 and by Domb in Chapter 8 o
f The Handbook of Biodegradable Polymers, Editors Domb A J and Wiseman R M, Harw
ood Academic Publishersに記載される)、並びにポリ(アミノ酸)が挙げられる。
【0132】
一実施形態では、マイクロ粒子は、少なくとも約90パーセントの疎水性ポリマー及び
約10パーセント以下の親水性ポリマーを含む。疎水性ポリマーの例としては、ポリ乳酸
(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)
(PLGA)及びポリD,L-乳酸(PDLLA)等のポリエステル;ポリカプロラクト
ン;ポリセバシン酸無水物、ポリ(マレイン酸無水物)等のポリ無水物;並びにそれらの
コポリマーが挙げられる。親水性ポリマーの例としては、ポリエチレングリコール(PE
G)、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリ(エチレングリコール)アミン等のポリ
(アルキレングリコール);多糖;ポリ(ビニルアルコール)(PVA);ポリピロリド
ン;ポリアクリルアミド(PAM);ポリエチレンイミン(PEI);ポリ(アクリル酸
);ポリ(ビニルピロリドン)(PVP);又はそれらのコポリマーが挙げられる。
【0133】
一実施形態では、マイクロ粒子は、少なくとも約85パーセントの疎水性ポリマー及び
多くとも15パーセントの親水性ポリマーを含む。
【0134】
一実施形態では、マイクロ粒子は、少なくとも約80パーセントの疎水性ポリマー及び
多くとも20パーセントの親水性ポリマーを含む。
【0135】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLGAを含む。
【0136】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLGA及びPEGのコポリマーを含む。
【0137】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLA及びPEGのコポリマーを含む。
【0138】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLGA及びPLGA-PEG、並びにそれらの組合
せを含む。
【0139】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLA及びPLA-PEGを含む。
【0140】
一実施形態では、マイクロ粒子はPVAを含む。
【0141】
一実施形態では、マイクロ粒子はPLGA、PLGA-PEG、PVA、又はそれらの
組合せを含む。
【0142】
一実施形態では、マイクロ粒子は生体適合性ポリマーPLA、PLA-PEG、PVA
又はそれらの組合せを含む。
【0143】
一実施形態では、マイクロ粒子は、表面処理前に約25μm~約30μmの平均径及び
約29μm~約31μmのメジアン径を有する。
【0144】
一実施形態では、表面処理後のマイクロ粒子は、ほぼ同じ平均径及びメジアン径を有す
る。別の実施形態では、表面処理後のマイクロ粒子はメジアン径よりも大きな平均径を有
する。別の実施形態では、表面処理後のマイクロ粒子はメジアン径よりも小さな平均径を
有する。
【0145】
一実施形態では、マイクロ粒子は、およそ0.0075MのNaOH/エタノール~0
.75MのNaOH/エタノール(30:70、v:v)による表面処理後に約25μm
~約30μm又は30μm~33μmの平均径及び約31μm~約33μmのメジアン径
を有する。
【0146】
一実施形態では、マイクロ粒子は、およそ0.75MのNaOH/エタノール~2.5
MのNaOH/エタノール(30:70、v:v)による表面処理後に約25μm~約3
0μm又は30μm~33μmの平均径及び約31μm~約33μmのメジアン径を有す
る。
【0147】
一実施形態では、マイクロ粒子は、およそ0.0075MのHCl/エタノール~0.
75MのNaOH/エタノール(30:70、v:v)による表面処理後に約25μm~
約30μm又は30μm~33μmの平均径及び約31μm~約33μmのメジアン径を
有する。
【0148】
一実施形態では、マイクロ粒子は、およそ0.75MのNaOH/エタノール~2.5
MのHCl/エタノール(30:70、v:v)による表面処理後に約25μm~約30
μm又は30μm~33μmの平均径及び約31μm~約33μmのメジアン径を有する
。
【0149】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、湿潤マイクロ粒子を用いて製造さ
れる。
【0150】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、非表面処理マイクロ粒子と比較し
た場合により長時間にわたって治療剤を放出することができる。
【0151】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は、表面修飾前のマイクロ粒子よりも
少ない界面活性剤を含有する。
【0152】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は表面修飾前のマイクロ粒子よりも疎
水性である。
【0153】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子は非表面処理マイクロ粒子よりも炎症
性が低い。
【0154】
一実施形態では、表面修飾固体凝集マイクロ粒子の表面界面活性剤を除去する作用物質
は、表面修飾固体凝集マイクロ粒子を部分的に溶解又は膨潤する溶媒を含む。
【0155】
本発明の一態様では、本明細書に記載される有効量の薬理活性化合物が、例えば送達の
便宜上及び/又は持続放出送達のために、表面処理マイクロ粒子に組み込まれる。材料の
使用は溶解性、拡散性及び薬物放出特徴等の基本的物理特性を調整する能力をもたらす。
これらのマイクロメートルスケールの作用物質は、より効果的な及び/又はより簡便な投
与経路を提供し、治療による毒性を低下させ、製品ライフサイクルを延長し、最終的に医
療費を低減する可能性がある。治療用送達系として、表面処理マイクロ粒子は標的化送達
及び持続放出を可能とし得る。
【0156】
界面活性剤
一実施形態では、マイクロ粒子の製造は界面活性剤を含む。界面活性剤の例としては、
例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、デシルグルコ
シド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチ
ルフェノール、Triton X-100、グリセロールアルキルエステル、グリセリル
ラウレート、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド及びポ
ロキサマーが挙げられる。ポロキサマーの例としては、ポロキサマー188、237、3
38及び407が挙げられる。これらのポロキサマーはPluronic(商標)という
商品名で市販されており(BASF,Mount Olive,N.J.から市販されている)、それぞれP
luronic(商標) F-68、F-87、F-108及びF-127に対応する。
ポロキサマー188(Pluronic(商標) F-68に対応する)は、約7000
Da~約10000Da又は約8000Da~約9000Da又は約8400Daの平均
分子量を有するブロックコポリマーである。ポロキサマー237(Pluronic(商
標) F-87に対応する)は、約6000Da~約9000Da又は約6500Da~
約8000Da又は約7700Daの平均分子量を有するブロックコポリマーである。ポ
ロキサマー338(Pluronic(商標) F-108に対応する)は、約1200
0Da~約18000Da又は約13000Da~約15000Da又は約14600D
aの平均分子量を有するブロックコポリマーである。ポロキサマー407(Pluron
ic(商標) F-127に対応する)は、約E101P56E101~約E106P7
0E106又は約E101P56E101又は約E106P70E106の比率でのポリ
オキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーであり、約10000D
a~約15000Da又は約12000Da~約14000Da又は約12000Da~
約13000Da又は約12600Daの平均分子量を有する。
【0157】
本発明に使用することができる界面活性剤の付加的な例としては、ポリビニルアルコー
ル(加水分解されたポリ酢酸ビニルであってもよい)、ポリ酢酸ビニル、ビタミンE-T
PGS、ポロキサマー、コール酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、
臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、サポニン、TWEEN(商標) 20、TW
EEN(商標) 80、糖エステル、Triton Xシリーズ、L-a-ホスファチジ
ルコリン(PC)、1,2-ジパルミトイルホスファチジコリン(DPPC)、オレイン
酸、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート
、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)
ソルビタンモノオレエート、天然レシチン、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル
、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エ
ーテル、オキシエチレン及びオキシプロピレンのブロックコポリマー、合成レシチン、ジ
エチレングリコールジオレエート、テトラヒドロフルフリルオレエート、エチルオレエー
ト、イソプロピルミリステート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレー
ト、グリセリルモノリシノレート、セチルアルコール、ステアリルアルコール、塩化セチ
ルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、オリーブ油、グリセリルモノラウレート、トウ
モロコシ油、綿実油、ヒマワリ種子油、レシチン、オレイン酸及びソルビタントリオレエ
ートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
一部の界面活性剤をマイクロ粒子の製造においてポリマーとして使用することができる
ことが当業者には認識されるものとする。製造によっては、マイクロ粒子が所望に応じた
特性の更なる変更を可能とする少量の界面活性剤を保持し得ることも当業者には認識され
るものとする。
【0159】
III. 治療される障害の例
一実施形態では、組成物は、表面処理マイクロ粒子と表面処理マイクロ粒子中にカプセ
ル化された薬理活性化合物とを任意に薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤と組み
合わせて含む表面処理マイクロ粒子を含む。一実施形態では、組成物は眼障害又は眼疾患
の治療のための医薬組成物である。
【0160】
組成物を用いて治療可能である非限定的な例示的な眼障害又は疾患としては、加齢黄斑
変性、アルカリ浸食性(alkaline erosive)角結膜炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー
性角膜炎、前部ブドウ膜炎、ベーチェット病、眼瞼炎、血液房水関門破壊、脈絡膜炎、慢
性ブドウ膜炎、結膜炎、コンタクトレンズ誘発性角結膜炎、角膜剥離、角膜外傷、角膜潰
瘍、クリスタリン網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、涙嚢炎、糖尿病性角膜症、糖尿病性黄斑浮腫
、糖尿病性網膜症、ドライアイ疾患、萎縮型加齢黄斑変性、好酸球性肉芽腫、上強膜炎、
滲出性黄斑浮腫、フックスジストロフィー、巨細胞性動脈炎、巨大乳頭結膜炎、緑内障、
緑内障手術の失敗、移植片拒絶、帯状疱疹、白内障手術後の炎症、虹彩角膜内皮症候群、
虹彩炎、乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sicca)、角結膜炎炎症性疾患、円錐角膜
、格子状ジストロフィー、地図-点-指紋状ジストロフィー、壊死性角膜炎、網膜、ブド
ウ膜又は角膜を侵す血管新生疾患、例えば血管新生緑内障、角膜血管新生、硝子体切除及
び水晶体切除の併用後に生じる血管新生、視神経の血管新生、及び眼の穿通又は打撲性(
contusive)眼損傷に起因する血管新生、神経麻痺性角膜炎、非感染性ブドウ膜炎、眼ヘ
ルペス、眼リンパ腫、眼酒さ、眼感染症、眼類天疱瘡、視神経炎、全ブドウ膜炎、乳頭炎
、扁平部炎、持続性黄斑浮腫、水晶体アナフィラキシー、後部ブドウ膜炎、術後炎症、増
殖性糖尿病性網膜症、増殖性鎌状赤血球網膜症、増殖性硝子体網膜症、網膜動脈閉塞、網
膜剥離、網膜静脈閉塞、網膜色素変性症、未熟児網膜症、虹彩ルベオーシス、強膜炎、ス
ティーブンス-ジョンソン症候群、交感性眼炎、側頭動脈炎、甲状腺眼症、ブドウ膜炎、
春季結膜炎、ビタミンA不足誘発性角膜軟化症、硝子体炎、並びに滲出型加齢黄斑変性が
挙げられる。
【0161】
IV. 送達される治療活性剤
本発明を用いて、広範な治療剤をin vivoで長期間持続的に送達することができ
る。
【0162】
本発明の医薬組成物/合剤の「治療有効量」は、患者に投与した場合に、選択される障
害、通例は眼障害の症状の改善等の治療上の利益をもたらすのに効果的な量を意味する。
或る特定の態様では、障害は緑内障、炭酸脱水酵素によって媒介される障害、眼内圧(I
OP)の増大に関連する障害若しくは異常、一酸化窒素合成酵素(NOS)によって媒介
される障害、視神経の再生/修復等の神経保護を必要とする障害、アレルギー性結膜炎、
前部ブドウ膜炎、白内障、萎縮型若しくは滲出型加齢黄斑変性(AMD)、又は糖尿病性
網膜症である。
【0163】
「薬学的に許容可能な塩」は、治療活性化合物がその無機塩又は有機塩、非毒性塩、酸
付加塩又は塩基付加塩を作製することによって修飾されることで形成される。塩は、従来
の化学的方法によって塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる
。概して、かかる塩は、遊離酸形態の化合物と化学量論量の適切な塩基(Na、Ca、M
g又はKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等)とを反応させるか、又は遊離塩基形態の化合
物と化学量論量の適切な酸とを反応させることによって調製することができる。かかる反
応は典型的には水若しくは有機溶媒又はそれら2つの混合物中で行われる。概して、エー
テル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルのような非水媒体
が実用可能な場合に典型的である。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミン等の塩基
性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩又は有機塩等が挙げ
られるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩としては、例えば非毒性無機酸
又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩及び第四級アンモニウム塩が挙げら
れる。例えば、従来の非毒性酸の塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸
、リン酸、硝酸等の無機酸に由来するもの、及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコ
ール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、
マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル
酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル
酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオ
ン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは0~4である)等の有機酸から調
製される塩が挙げられる。更なる好適な塩の一覧は、例えばRemington's Pharmaceutical
Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., p. 1418 (1985)に見る
ことができる。
【0164】
一実施形態では、本発明の表面処理マイクロ粒子は、緑内障の治療のための化合物、例
えばβ-アドレナリン拮抗薬、プロスタグランジン類縁体、アドレナリン作動薬、炭酸脱
水酵素阻害剤、副交感神経興奮薬、二重抗VEGF/抗PDGF治療剤又は二重ロイシン
ジッパーキナーゼ(DLK)阻害剤を含み得る。別の実施形態では、本発明の表面処理マ
イクロ粒子は、糖尿病性網膜症の治療のための化合物を含み得る。かかる化合物は、眼疾
患の部位に投与され得ることから、本発明に従ってより低用量で投与することができる。
【0165】
β-アドレナリン拮抗薬の例としては、チモロール(Timoptic(商標))、レ
ボブノロール(Betagan(商標))、カルテオロール(Ocupress(商標)
)及びメチプラノロール(OptiPranolol(商標))が挙げられるが、これら
に限定されない。
【0166】
プロスタグランジン類縁体の例としては、ラタノプロスト(Xalatan(商標))
、トラボプロスト(Travatan(商標))、ビマトプロスト(Lumigan(商
標))及びタフルプロスト(Zioptan(商標))が挙げられるが、これらに限定さ
れない。
【0167】
アドレナリン作動薬の例としては、ブリモニジン(Alphagan(商標))、エピ
ネフリン、ジピベフリン(Propine(商標))及びアプラクロニジン(Lopid
ine(商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
炭酸脱水酵素阻害剤の例としては、ドルゾラミド(Trusopt(商標))、ブリン
ゾラミド(Azopt(商標))、アセタゾラミド(Diamox(商標))及びメタゾ
ラミド(Neptazane(商標))が挙げられるが、これらに限定されない。下記構
造を参照されたい:
【化1】
【0169】
副交感神経興奮薬の一例としては、ピロカルピンが挙げられるが、これに限定されない
。
【0170】
DLK阻害剤としては、クリゾチニブ、KW-2449及びトザセルチブ(Tozasertib
)が挙げられるが、これらに限定されない。下記構造を参照されたい。
【化2】
【0171】
糖尿病性網膜症の治療に使用される薬物としては、ラニビズマブ(Lucentis(
商標))が挙げられるが、これに限定されない。
【0172】
一実施形態では、二重抗VEGF/抗PDGF治療剤はリンゴ酸スニチニブ(Sute
nt(商標))である。
【0173】
一実施形態では、化合物は緑内障の治療のためのものであり、緑内障治療を必要とする
宿主を治療するために有効量にて使用することができる。
【0174】
別の実施形態では、化合物は宿主、通例はヒトにおいて本明細書に記載の障害を治療す
るために緑内障と関連するもの以外の機構を介して作用する。
【0175】
一実施形態では、治療剤はホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、ブルト
ン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤若しくは脾臓チロシンキナーゼ(Syk)阻害剤
、又はそれらの組合せから選択される。
【0176】
本発明で使用され得るPI3K阻害剤は既知である。PI3キナーゼ阻害剤の例として
は、ウォルトマンニン、デメトキシビリジン、ペリホシン、イデラリシブ、ピクチリシブ
、Palomid 529、ZSTK474、PWT33597、CUDC-907及び
AEZS-136、デュベリシブ(duvelisib)、GS-9820、BKM120、GD
C-0032(タセリシブ)(2-[4-[2-(2-イソプロピル-5-メチル-1,
2,4-トリアゾール-3-イル)-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-d][1,4
]ベンゾオキサゼピン-9-イル]ピラゾール-1-イル]-2-メチルプロパンアミド
)、MLN-1117((2R)-1-フェノキシ-2-ブタニル水素(S)-メチルホ
スホネート;又はメチル(オキソ){[(2R)-1-フェノキシ-2-ブタニル]オキ
シ}ホスホニウム)、BYL-719((2S)-N1-[4-メチル-5-[2-(2
,2,2-トリフルオロ-1,1-ジメチルエチル)-4-ピリジニル]-2-チアゾリ
ル]-1,2-ピロリジンジカルボキサミド)、GSK2126458(2,4-ジフル
オロ-N-{2-(メチルオキシ)-5-[4-(4-ピリダジニル)-6-キノリニル
]-3-ピリジニル}ベンゼンスルホンアミド)(オミパリシブ(omipalisib))、TG
X-221((±)-7-メチル-2-(モルホリン-4-イル)-9-(1-フェニル
アミノエチル)-ピリド[1,2-a]-ピリミジン-4-オン)、GSK263677
1(2-メチル-1-(2-メチル-3-(トリフルオロメチル)ベンジル)-6-モル
ホリノ-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-4-カルボン酸ジヒドロクロリド)、KIN
-193((R)-2-((1-(7-メチル-2-モルホリノ-4-オキソ-4H-ピ
リド[1,2-a]ピリミジン-9-イル)エチル)アミノ)安息香酸)、TGR-12
02/RP5264、GS-9820((S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミ
ジン-5-イル)-7-メチル-4-モヒドロキシプロパン(mohydroxypropan)-1-
オン)、GS-1101(5-フルオロ-3-フェニル-2-([S]-1-[9H-プ
リン-6-イルアミノ]-プロピル)-3H-キナゾリン-4-オン)、AMG-319
、GSK-2269557、SAR245409(N-(4-(N-(3-((3,5-
ジメトキシフェニル)アミノ)キノキサリン-2-イル)スルファモイル)フェニル)-
3-メトキシ-4メチルベンズアミド)、BAY80-6946(2-アミノ-N-(7
-メトキシ-8-(3-モルホリノプロポキシ)-2,3-ジヒドロイミダゾ[1,2-
c]キナズ(quinaz))、AS 252424(5-[1-[5-(4-フルオロ-2-
ヒドロキシ-フェニル)-フラン-2-イル]-メタ-(Z)-イリデン]-チアゾリジ
ン-2,4-ジオン)、CZ 24832(5-(2-アミノ-8-フルオロ-[1,2
,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル)-N-tert-ブチルピリジン
-3-スルホンアミド)、ブパルリシブ(5-[2,6-ジ(4-モルホリニル)-4-
ピリミジニル]-4-(トリフルオロメチル)-2-ピリジンアミン)、GDC-094
1(2-(1H-インダゾール-4-イル)-6-[[4-(メチルスルホニル)-1-
ピペラジニル]メチル]-4-(4-モルホリニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン)
、GDC-0980((S)-1-(4-((2-(2-アミノピリミジン-5-イル)
-7-メチル-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6イル)メチル)ピペ
ラジン-1-イル)-2-ヒドロキシプロパン-1-オン(RG7422としても知られ
る))、SF1126((8S,14S,17S)-14-(カルボキシメチル)-8-
(3-グアニジノプロピル)-17-(ヒドロキシメチル)-3,6,9,12,15-
ペンタオキソ-1-(4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-クロメン-2-イル)モ
ルホリノ-4-イウム)-2-オキサ-7,10,13,16-テトラアザオクタデカン
-18-オエート)、PF-05212384(N-[4-[[4-(ジメチルアミノ)
-1-ピペリジニル]カルボニル]フェニル]-N’-[4-(4,6-ジ-4-モルホ
リニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]尿素)(ゲダトリシブ)、LY
3023414、BEZ235(2-メチル-2-{4-[3-メチル-2-オキソ-8
-(キノリン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン
-1-イル]フェニル}プロパンニトリル)(ダクトリシブ(dactolisib))、XL-7
65(N-(3-(N-(3-(3,5-ジメトキシフェニルアミノ)キノキサリン-2
-イル)スルファモイル)フェニル)-3-メトキシ-4-メチルベンズアミド)及びG
SK1059615(5-[[4-(4-ピリジニル)-6-キノリニル]メチレン]-
2,4-チアゾリデンジオン(thiazolidenedione))、PX886([(3aR,6E
,9S,9aR,10R,11aS)-6-[[ビス(プロパ-2-エニル)アミノ]メ
チリデン]-5-ヒドロキシ-9-(メトキシメチル)-9a,11a-ジメチル-1,
4,7-トリオキソ-2,3,3a,9,10,11-ヘキサヒドロインデノ[4,5h
]イソクロメン-10-イル]アセテート(ソノリシブ(sonolisib)としても知られる
))、LY294002、AZD8186、PF-4989216、ピララリシブ(pila
ralisib)、GNE-317、PI-3065、PI-103、NU7441(KU-5
7788)、HS 173、VS-5584(SB2343)、CZC24832、TG
100-115、A66、YM201636、CAY10505、PIK-75、PIK
-93、AS-605240、BGT226(NVP-BGT226)、AZD6482
、ボクスタリシブ(voxtalisib)、アルペリシブ(alpelisib)、IC-87114、T
GI100713、CH5132799、PKI-402、コパンリシブ(copanlisib)
(BAY 80-6946)、XL 147、PIK-90、PIK-293、PIK-
294、3-MA(3-メチルアデニン)、AS-252424、AS-604850、
アピトリシブ(apitolisib)(GDC-0980;RG7422)、及び国際公開第20
14/071109号に記載の下記の式を含有する構造:
【化3】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
本発明で使用されるBTK阻害剤は既知である。BTK阻害剤の例としては、イブルチ
ニブ(PCI-32765としても知られる)(Imbruvica(商標))(1-[
(3R)-3-[4-アミノ-3-(4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d
]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-イル]プロパ-2-エン-1-オン)、ジア
ニリノピリミジン系阻害剤、例えばAVL-101及びAVL-291/292(N-(
3-((5-フルオロ-2-((4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)アミノ)ピリ
ミジン-4-イル)アミノ)フェニル)アクリルアミド)(Avila Therapeutics)(米国
特許出願公開第2011/0117073号(その全体が引用することにより本明細書の
一部をなす))、ダサチニブ(N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-(6-(
4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)-2-メチルピリミジン-4-イ
ルアミノ)チアゾール-5-カルボキサミド)、LFM-A13(α-シアノ-β-ヒド
ロキシ-β-メチル-N-(2,5-ジブロモフェニル)プロペンアミド)、GDC-0
834(R-N-(3-(6-(4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-
イル)フェニルアミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イ
ル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-
2-カルボキサミド)、CGI-560 4-(tert-ブチル)-N-(3-(8-
(フェニルアミノ)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-6-イル)フェニル)ベンズアミ
ド、CGI-1746(4-(tert-ブチル)-N-(2-メチル-3-(4-メチ
ル-6-((4-(モルホリン-4-カルボニル)フェニル)アミノ)-5-オキソ-4
,5-ジヒドロピラジン-2-イル)フェニル)ベンズアミド)、CNX-774(4-
(4-((4-((3-アクリルアミドフェニル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-
2-イル)アミノ)フェノキシ)-N-メチルピコリンアミド)、CTA056(7-ベ
ンジル-1-(3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)-2-(4-(ピリジン-4-
イル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6(5H)-オン)、
GDC-0834((R)-N-(3-(6-((4-(1,4-ジメチル-3-オキソ
ピペラジン-2-イル)フェニル)アミノ)-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒド
ロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ
[b]チオフェン-2-カルボキサミド)、GDC-0837((R)-N-(3-(6
-((4-(1,4-ジメチル-3-オキソピペラジン-2-イル)フェニル)アミノ)
-4-メチル-5-オキソ-4,5-ジヒドロピラジン-2-イル)-2-メチルフェニ
ル)-4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-カルボキサミド)、
HM-71224、ACP-196、ONO-4059(Ono Pharmaceuticals)、PR
T062607(4-((3-(2H-1,2,3-トリアゾール-2-イル)フェニル
)アミノ)-2-(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン
-5-カルボキサミド塩酸塩)、QL-47(1-(1-アクリロイルインドリン-6-
イル)-9-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ベンゾ[h][1,6]ナフ
チリジン-2(1H)-オン)及びRN486(6-シクロプロピル-8-フルオロ-2
-(2-ヒドロキシメチル-3-{1-メチル-5-[5-(4-メチル-ピペラジン-
1-イル)-ピリジン-2-イルアミノ]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-
3-イル}-フェニル)-2H-イソキノリン-1-オン)、並びにBTK活性を阻害す
ることが可能な他の分子、例えばAkinleye et ah, Journal of Hematology & Oncology,
2013, 6:59(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されるBTK
阻害剤が挙げられる。
【0178】
本発明で使用されるSyk阻害剤は既知であり、例えばセルデュラチニブ(Cerdulatin
ib)(4-(シクロプロピルアミノ)-2-((4-(4-(エチルスルホニル)ピペラ
ジン-1-イル)フェニル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、エントスプレ
チニブ(entospletinib)(6-(1H-インダゾール-6-イル)-N-(4-モルホ
リノフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-8-アミン)、フォスタマチニブ([
6-({5-フルオロ-2-[(3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ]-4-ピ
リミジニル}アミノ)-2,2-ジメチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-4H-ピリ
ド[3,2-b][1,4]オキサジン-4-イル]メチル二水素ホスフェート)、フォ
スタマチニブ二ナトリウム塩(ナトリウム(6-((5-フルオロ-2-((3,4,5
-トリメトキシフェニル)アミノ)ピリミジン-4-イル)アミノ)-2,2-ジメチル
-3-オキソ-2H-ピリド[3,2-b][1,4]オキサジン-4(3H)-イル)
メチルホスフェート)、BAY 61-3606(2-(7-(3,4-ジメトキシフェ
ニル)-イミダゾ[1,2-c]ピリミジン-5-イルアミノ)-ニコチンアミドHCl
)、RO9021(6-[(1R,2S)-2-アミノ-シクロヘキシルアミノ]-4-
(5,6-ジメチル-ピリジン-2-イルアミノ)-ピリダジン-3-カルボン酸アミド
)、イマチニブ(Gleevec;4-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]
-N-(4-メチル-3-{[4-(ピリジン-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミ
ノ}フェニル)ベンズアミド)、スタウロスポリン、GSK143(2-(((3R,4
R)-3-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)アミノ)-4-(p-トリル
アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、PP2(1-(tert-ブチル)-3-
(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン)、P
RT-060318(2-(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)-
4-(m-トリルアミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド)、PRT-062607(
4-((3-(2H-1,2,3-トリアゾール-2-イル)フェニル)アミノ)-2-
(((1R,2S)-2-アミノシクロヘキシル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサ
ミド塩酸塩)、R112(3,3’-((5-フルオロピリミジン-2,4-ジイル)ビ
ス(アザンジイル))ジフェノール)、R348(3-エチル-4-メチルピリジン)、
R406(6-((5-フルオロ-2-((3,4,5-トリメトキシフェニル)アミノ
)ピリミジン-4-イル)アミノ)-2,2-ジメチル-2H-ピリド[3,2-b][
1,4]オキサジン-3(4H)-オン)、ピセアタンノール(3-ヒドロキシレスベラ
トロール)YM193306(Singh et al. Discovery and Development of Spleen Tyr
osine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 3614-3643を参照されたい)
、7-アザインドール、ピセアタンノール、ER-27319(Singh et al. Discovery
and Development of Spleen Tyrosine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012,
55, 3614-3643(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい
)、コンパウンドD(Singh et al. Discovery and Development of Spleen Tyrosine Ki
nase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 3614-3643(その全体が引用すること
により本明細書の一部をなす)を参照されたい)、PRT060318(Singh et al. D
iscovery and Development of Spleen Tyrosine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Che
m. 2012, 55, 3614-3643(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照
されたい)、ルテオリン(Singh et al. Discovery and Development of Spleen Tyrosin
e Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 3614-3643(その全体が引用する
ことにより本明細書の一部をなす)を参照されたい)、アピゲニン(Singh et al. Disco
very and Development of Spleen Tyrosine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2
012, 55, 3614-3643(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照され
たい)、ケルセチン(Singh et al. Discovery and Development of Spleen Tyrosine Ki
nase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 3614-3643(その全体が引用すること
により本明細書の一部をなす)を参照されたい)、フィセチン(Singh et al. Discovery
and Development of Spleen Tyrosine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012,
55, 3614-3643(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい
)、ミリセチン(Singh et al. Discovery and Development of Spleen Tyrosine Kinase
(SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 3614-3643(その全体が引用することによ
り本明細書の一部をなす)を参照されたい)、モリン(Singh et al. Discovery and Dev
elopment of Spleen Tyrosine Kinase (SYK) Inhibitors, J. Med. Chem. 2012, 55, 361
4-3643(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい)が挙げ
られる。
【0179】
一実施形態では、治療剤はMEK阻害剤である。本発明で使用されるMEK阻害剤は既
知であり、例えばトラメチニブ/GSKl 120212(N-(3-{3-シクロプロ
ピル-5-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-6,8-ジメチル-2,
4,7-トリオキソ-3,4,6,7-テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン-
1(2H)-イル}フェニル)アセトアミド)、セルメチニブ(6-(4-ブロモ-2-
クロロアニリノ)-7-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルベンズ
イミダゾール-5-カルボキサミド)、ピマセルチブ/AS703026/MSC 19
35369((S)-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-3-((2-フルオロ-
4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)、XL-518/GDC-0973
(1-({3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]
フェニル}カルボニル)-3-[(2S)-ピペリジン-2-イル]アゼチジン-3-オ
ール)、レファメチニブ/BAY869766/RDEAl 19(N-(3,4-ジフ
ルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)-6-メトキシフェニル)-
1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)シクロプロパン-1-スルホンアミド)、PD-
0325901(N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフル
オロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-ベンズアミド)、TAK
733((R)-3-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-フルオロ-5-(2-フ
ルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)-8-メチルピリド[2,3-d]ピリミジン-4
,7(3H,8H)-ジオン)、MEK162/ARRY438162(5-[(4-ブ
ロモ-2-フルオロフェニル)アミノ]-4-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ
)-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミド)、R0512676
6(3-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ)-4-ピリジル]メチ
ル]-4-メチル-7-ピリミジン-2-イルオキシクロメン-2-オン)、WX-55
4、R04987655/CH4987655(3,4-ジフルオロ-2-((2-フル
オロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-5-((3-
オキソ-1,2-オキサジナン-2イル)メチル)ベンズアミド)又はAZD8330(
2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(2ヒドロキシエトキシ)
-1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)、
U0126-EtOH、PD184352(CI-1040)、GDC-0623、BI
-847325、コビメチニブ、PD98059、BIX 02189、BIX 021
88、ビニメチニブ、SL-327、TAK-733、PD318088及び下記の付加
的なMEK阻害剤が挙げられる。
【0180】
一実施形態では、治療剤はRaf阻害剤である。本発明で使用されるRaf阻害剤は既
知であり、例えばベムラフェニブ(N-[3-[[5-(4-クロロフェニル)-1H-
ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル]カルボニル]-2,4-ジフルオロフェニル
]-1-プロパンスルホンアミド)、トシル酸ソラフェニブ(4-[4-[[4-クロロ
-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチ
ルピリジン-2-カルボキサミド;4-メチルベンゼンスルホネート)、AZ628(3
-(2-シアノプロパン-2-イル)-N-(4-メチル-3-(3-メチル-4-オキ
ソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イルアミノ)フェニル)ベンズアミド)、NVP
-BHG712(4-メチル-3-(1-メチル-6-(ピリジン-3-イル)-1H-
ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミノ)-N-(3-(トリフルオロメチ
ル)フェニル)ベンズアミド)、RAF-265(1-メチル-5-[2-[5-(トリ
フルオロメチル)-1H-イミダゾール-2-イル]ピリジン-4-イル]オキシ-N-
[4-(トリフルオロメチル)フェニル]ベンゾイミダゾール-2-アミン)、2-ブロ
モアルジシン(2-ブロモ-6,7-ジヒドロ-1H,5H-ピロロ[2,3-c]アゼ
ピン-4,8-ジオン)、Rafキナーゼ阻害剤IV(2-クロロ-5-(2-フェニル
-5-(ピリジン-4-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)フェノール)、ソラフ
ェニブN-オキシド(4-[4-[[[[4-クロロ-3(トリフルオロメチル)フェニ
ル]アミノ]カルボニル]アミノ]フェノキシ]-N-メチル-2ピリジンカルボキサミ
ド1-オキシド)、PLX-4720、ダブラフェニブ(GSK2118436)、GD
C-0879、RAF265、AZ 628、SB590885、ZM336372、G
W5074、TAK-632、CEP-32496、LY3009120及びGX818
(エンコラフェニブ(Encorafenib))が挙げられる。
【0181】
一実施形態では、治療剤はプログラム細胞死(programmed death)タンパク質1(PD
-1)阻害剤、プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PDL1)阻害剤又はプログラ
ム細胞死タンパク質リガンド2(PDL2)阻害剤である。PD-1、PDL1及びPD
L2阻害剤は当該技術分野で既知であり、例えばニボルマブ(BMS)、ペムブロリズマブ
(Merck)、ピディリズマブ(CureTech/Teva)、AMP-244(Amplimmune/GSK)、
BMS-936559(BMS)、及びMEDI4736(Roche/Genentech)、及びMP
DL3280A(Genentech)が挙げられる。
【0182】
一実施形態では、治療剤を持続的に投与することができる。
【0183】
一実施形態では、治療剤はモノクローナル抗体(MAb)である。幾つかのMAbは癌
細胞を破壊する免疫応答を刺激する。B細胞により自然に産生される抗体と同様に、これ
らのMAbは癌細胞表面を「被覆」し、免疫系によるその破壊を誘発する。例えば、ベバ
シズマブは、腫瘍血管の発生を促進する腫瘍細胞及び腫瘍の微小環境中の他の細胞によっ
て分泌されるタンパク質である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的化する。ベバシ
ズマブに結合すると、VEGFはその細胞受容体と相互作用することができず、新たな血
管の成長をもたらすシグナル伝達が妨害される。同様に、セツキシマブ及びパニツムマブ
は上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的化し、トラスツズマブはヒト上皮増殖因子受容
体2(HER-2)を標的化する。細胞表面成長因子受容体に結合するMAbは、標的化
受容体がそれらの正常成長促進シグナルを送るのを妨げる。これらはまた、アポトーシス
を誘発し、免疫系を活性化して、腫瘍細胞を破壊し得る。
【0184】
他の作用物質としては、タモキシフェン、ミダゾラム、レトロゾール、ボルテゾミブ、
アナストロゾール、ゴセレリンの少なくとも1つ、mTOR阻害剤、上記のようなPI3
キナーゼ阻害剤、二重mTOR-PI3K阻害剤、MEK阻害剤、RAS阻害剤、ALK
阻害剤、HSP阻害剤(例えば、HSP70及びHSP90阻害剤、又はそれらの組合せ
)、上記のようなBCL-2阻害剤、アポトーシス誘導化合物、MK-2206、GSK
690693、ペリホシン(KRX-0401)、GDC-0068、トリシリビン、A
ZD5363、ホノキオール、PF-04691502及びミルテホシンを含むが、これ
らに限定されないAKT阻害剤、ニボルマブ、CT-011、MK-3475、BMS9
36558及びAMP-514を含むが、これらに限定されない、上記のようなPD-1
阻害剤、若しくはP406、ドビチニブ、キザルチニブ(AC220)、アムバチニブ(
MP-470)、タンズチニブ(MLN518)、ENMD-2076及びKW-244
9を含むが、これらに限定されないFLT-3阻害剤、又はそれらの組合せを挙げること
ができるが、これらに限定されない。mTOR阻害剤の例としては、ラパマイシン及びそ
の類縁体、エベロリムス(Afinitor)、テムシロリムス、リダフォロリムス、シ
ロリムス及びデフォロリムスが挙げられるが、これらに限定されない。MEK阻害剤の例
としては、タメチニブ(tametinib)/GSKl 120212(N-(3-{3-シク
ロプロピル-5-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-6,8-ジメチル
-2,4,7-トリオキソ-3,4,6,7-テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミ
ジン-1(2H)-イル}フェニル)アセトアミド)、セルメチニブ(6-(4-ブロモ
-2-クロロアニリノ)-7-フルオロ-N-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチル
ベンズイミダゾール-5-カルボキサミド)、ピマセルチブ/AS703026/MSC
1935369((S)-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-3-((2-フル
オロ-4-ヨードフェニル)アミノ)イソニコチンアミド)、XL-518/GDC-0
973(1-({3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)ア
ミノ]フェニル}カルボニル)-3-[(2S)-ピペリジン-2-イル]アゼチジン-
3-オール)(コビメチニブ)、レファメチニブ/BAY869766/RDEA1 1
9(N-(3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)-6
-メトキシフェニル)-1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)シクロプロパン-1-ス
ルホンアミド)、PD-0325901(N-[(2R)-2,3-ジヒドロキシプロポ
キシ]-3,4-ジフルオロ-2-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-
ベンズアミド)、TAK733((R)-3-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-6-
フルオロ-5-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)-8-メチルピリド[2,
3-d]ピリミジン-4,7(3H,8H)-ジオン)、MEK162/ARRY438
162(5-[(4-ブロモ-2-フルオロフェニル)アミノ]-4-フルオロ-N-(
2-ヒドロキシエトキシ)-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボキサミ
ド)、R05126766(3-[[3-フルオロ-2-(メチルスルファモイルアミノ
)-4-ピリジル]メチル]-4-メチル-7-ピリミジン-2-イルオキシクロメン-
2-オン)、WX-554、R04987655/CH4987655(3,4-ジフル
オロ-2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(2-ヒドロキシエ
トキシ)-5-((3-オキソ-1,2-オキサジナン-2イル)メチル)ベンズアミド
)又はAZD8330(2-((2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ)-N-(
2-ヒドロキシエトキシ)-1,5-ジメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン
-3-カルボキサミド)が挙げられるが、これらに限定されない。RAS阻害剤の例とし
ては、レオライシン及びsiG12D LODERが挙げられるが、これらに限定されな
い。ALK阻害剤の例としては、クリゾチニブ、セリチニブ(Zykadia)、AP2
6113及びLDK378が挙げられるが、これらに限定されない。HSP阻害剤として
は、ゲルダナマイシン又は17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン
(17AAG)、及びラディシコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
或る特定の態様では、治療剤は抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法剤、付加的な治療剤
又は免疫抑制剤である。
【0186】
一実施形態では、化学療法剤は限定されるものではないが、メシル酸イマチニブ(Gl
eevac(商標))、ダサチニブ(Sprycel(商標))、ニロチニブ(Tasi
gna(商標))、ボスチニブ(Bosulif(商標))、トラスツズマブ(Herc
eptin(商標))、トラスツズマブ-DM1、ペルツズマブ(Perjeta(商標
))、ラパチニブ(Tykerb(商標))、ゲフィチニブ(Iressa(商標))、
エルロチニブ(Tarceva(商標))、セツキシマブ(Erbitux(商標))、
パニツムマブ(Vectibix(商標))、バンデタニブ(Caprelsa(商標)
)、ベムラフェニブ(Zelboraf(商標))、ボリノスタット(Zolinza(
商標))、ロミデプシン(Istodax(商標))、ベキサロテン(Tagretin
(商標))、アリトレチノイン(Panretin(商標))、トレチノイン(Vesa
noid(商標))、カルフィルゾミブ(Kyprolis(商標))、プララトレキサ
ート(Folotyn(商標))、ベバシズマブ(Avastin(商標))、ziv-
アフリベルセプト(Zaltrap(商標))、ソラフェニブ(Nexavar(商標)
)、スニチニブ(Sutent(商標))、パゾパニブ(Votrient(商標))、
レゴラフェニブ(Stivarga(商標))及びカボザンチニブ(Cometriq(
商標))から選択される。
【0187】
付加的な化学療法剤としては、放射性分子、細胞毒素又は細胞毒性薬とも称される毒素
が挙げられるが、これらに限定されず、細胞の生存能力にとって有害な任意の作用物質、
及び化学療法化合物を含有するリポソーム又は他のベシクルが含まれる。一般的な抗癌医
薬品としては、ビンクリスチン(Oncovin(商標))又はリポソームビンクリスチ
ン(Marqibo(商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン又はCerubidi
ne(商標))又はドキソルビシン(Adriamycin(商標))、シタラビン(シ
トシンアラビノシド、ara-C又はCytosar(商標))、L-アスパラギナーゼ
(Elspar(商標))又はPEG-L-アスパラギナーゼ(ペグアスパラガーゼ又は
Oncaspar(商標))、エトポシド(VP-16)、テニポシド(Vumon(商
標))、6-メルカプトプリン(6-MP又はPurinethol(商標))、メトト
レキサート、シクロフォスファミド(Cytoxan(商標))、プレドニゾン、デキサ
メサゾン(Decadron)、イマチニブ(Gleevec(商標))、ダサチニブ(
Sprycel(商標))、ニロチニブ(Tasigna(商標))、ボスチニブ(Bo
sulif(商標))及びポナチニブ(Iclusig(商標))が挙げられる。付加的
な好適な化学療法剤の例としては、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル
、デカルバジン(decarbazine)、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノ
マイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナト
リウム、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AM
C)、抗有糸分裂剤、シス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)(シスプラチン)
、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗物質、アスパラギナ
ーゼ、BCG生菌(BCG live)(膀胱内)、ベタメタゾンリン酸ナトリウム及び酢酸ベタ
メタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルシウムロイコボリン
、カリケアマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルム
スチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルヒチン、結合
型エストロゲン、シクロフォスファミド、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、シ
タラビン、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシ
ン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシンHCL、クエン酸ダ
ウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デキスラゾキサン、ジブロモマンニトール、
ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ドセタキセル、メシ
ル酸ドラセトロン、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌(E. coli)L-ア
スパラギナーゼ、エメチン、エポエチン-α、エルウィニアL-アスパラギナーゼ、エス
テル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、エチジウ
ムブロマイド、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシド、シトロラム(
citrorum)因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾ
ール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビン
HCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL
、ヒドロキシウレア、イダルビシンHCL、イホスファミド、インターフェロンα-2b
、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レ
バミゾールHCL、リドカイン、ロムスチン、メイタンシノイド、メクロレタミンHCL
、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプ
トプリン、メスナ、メトトレキサート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイト
マイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダン
セトロンHCL、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカ
ルピンHCL、プリマイシン(plimycin)、ポリフェプロザン20カルムスチンインプラ
ント、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール
、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール
、テニポシド、テノポシド(tenoposide)、テストラクトン、テトラカイン、チオエパク
ロラムブシル(thioepa chlorambucil)、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、
クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラス
チン、硫酸ビンクリスチン及び酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されな
い。
【0188】
付加的な治療剤としては、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、2-メトキシエ
ストラジオール又は2ME2、フィナスネート(finasunate)、バタラニブ、バンデタニ
ブ、アフリベルセプト、ボロシキシマブ、エタラシズマブ(MEDI-522)、シレン
ギチド、エルロチニブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲフィチニブ、トラスツズマブ、
ドビチニブ、フィギツムマブ、アタシセプト、リツキシマブ、アレムツズマブ、アルデス
ロイキン、アトリズマブ、トシリズマブ、テムシロリムス、エベロリムス、ルカツムマブ
(lucatumumab)、ダセツズマブ、HLL1、huN901-DM1、アチプリモード、
ナタリズマブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、マリゾミブ、タネスピマイシン、メシ
ル酸サキナビル、リトナビル、メシル酸ネルフィナビル、硫酸インジナビル、ベリノスタ
ット、パノビノスタット、マパツムマブ、レクサツムマブ、デュラネルミン(dulanermin
)、ABT-737、オブリメルセン、プリチデプシン(plitidepsin)、タルマピモド
(talmapimod)、P276-00、エンザスタウリン、チピファルニブ、ペリホシン、イ
マチニブ、ダサチニブ、レナリドミド、サリドマイド、シンバスタチン、セレコキシブ、
バゼドキシフェン、AZD4547、リロツムマブ、オキサリプラチン(Eloxati
n)、PD0332991(パルボシクリブ)、リボシクリブ(LEE011)、アベマ
シクリブ(LY2835219)、HDM201、フルベストラント(Faslodex
)、エキセメスタン(Aromasin)、PIM447、ルキソリチニブ(INC42
4)、BGJ398、ネシツムマブ、ペメトレキセド(Alimta)及びラムシルマブ
(IMC-1121B)を挙げることができる。
【0189】
本発明の一態様では、好ましくはカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン又は
アスコマイシン、例えばシクロスポリンA(NEORAL(商標))、FK506(タク
ロリムス)、ピメクロリムス、mTOR阻害剤、例えばラパマイシン又はその誘導体、例
えばシロリムス(RAPAMUNE(商標))、エベロリムス(Certican(商標
))、テムシロリムス、ゾタロリムス、バイオリムス-7、バイオリムス-9、ラパログ
(rapalog)、例えばリダフォロリムス、アザチオプリン、キャンパス1H、S1P受容
体モジュレーター、例えばフィンゴリモド又はその類縁体、抗IL-8抗体、ミコフェノ
ール酸又はその塩、例えばナトリウム塩又はそのプロドラッグ、例えばミコフェノール酸
モフェチル(CELLCEPT(商標))、OKT3(ORTHOCLONE OKT3
(商標))、プレドニゾン、ATGAM(商標)、THYMOGLOBULIN(商標)
、ブレキナルナトリウム、OKT4、T10B9.A-3A、33B3.1、15-デオ
キシスペルグアリン、トレスペリムス(tresperimus)、レフルノミドARAVA(商標
)、CTLAI-Ig、抗CD25、抗IL2R、バシリキシマブ(SIMULECT(
商標))、ダクリズマブ(ZENAPAX(商標))、ミゾルビン(mizorbine)、メト
トレキサート、デキサメサゾン、ISAtx-247、SDZ ASM 981(ピメク
ロリムス、Elidel(商標))、CTLA4lg(アバタセプト)、ベラタセプト、
LFA3lg、エタネルセプト(ImmunexによりEnbrel(商標)として販売される
)、アダリムマブ(Humira(商標))、インフリキシマブ(Remicade(商
標))、抗LFA-1抗体、ナタリズマブ(Antegren(商標))、エンリモマブ
(Enlimomab)、ガビリモマブ(gavilimomab)、抗胸腺細胞免疫グロブリン、シプリズマ
ブ、アレファセプト、エファリズマブ、ペンタサ、メサラジン、アサコール、リン酸コデ
イン、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラク及びイ
ンドメタシン、アスピリン及びイブプロフェンからなる群から選択される免疫抑制剤を使
用する。
【0190】
使用することができる治療剤のタイプの例としては、抗炎症薬、抗菌剤、血管新生抑制
剤、免疫抑制剤、抗体、ステロイド、眼圧降下薬(ocular antihypertensive drugs)及
びそれらの組合せが挙げられる。治療剤の例としては、アミカシン、酢酸アネコルタン(
anecortane)、アントラセンジオン、アントラサイクリン、アゾール、アムホテリシンB
、ベバシズマブ、カンプトテシン、セフロキシム、クロラムフェニコール、クロルヘキシ
ジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、クロトリマゾール、クロトリマゾールセファロス
ポリン、コルチコステロイド、デキサメサゾン、デサメタゾン(desamethazone)、エコ
ナゾール、エフタジジム(eftazidime)、エピポドフィロトキシン、フルコナゾール、フ
ルシトシン、フルオロピリミジン、フルオロキノリン、ガチフロキサシン、グリコペプチ
ド、イミダゾール、イトラコナゾール、イベルメクチン、ケトコナゾール、レボフロキサ
シン、マクロライド、ミコナゾール、硝酸ミコナゾール、モキシフロキサシン、ナタマイ
シン、ネオマイシン、ナイスタチン、オフロキサシン、ポリヘキサメチレンビグアニド、
プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、ペガプタニブ、白金類縁体、ポリマイシンB(po
lymicin B)、イセチオン酸プロパミジン、ピリミジンヌクレオシド、ラニビズマブ、乳
酸スクアラミン、スルホンアミド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ト
リアゾール、バンコマイシン、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)剤、VEGF抗体、
VEGF抗体フラグメント、ビンカアルカロイド、チモロール、ベタキソロール、トラボ
プロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、ブリモニジン、ドルゾラミド、アセタゾラ
ミド、ピロカルピン、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、ゲンタマイシン、トブラ
マイシン、セファゾリン、ボリコナゾール、ガンシクロビル、シドフォビル、ホスカルネ
ット、ジクロフェナク、ネパフェナク、ケトロラク、イブプロフェン、インドメタシン、
フルオロメタロン(fluoromethalone)、リメキソロン、アネコルタブ、シクロスポリン
、メトトレキサート、タクロリムス及びそれらの組合せが挙げられる。
【0191】
免疫抑制剤の例はカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリン又はアスコマイシン
、例えばシクロスポリンA(NEORAL(商標))、FK506(タクロリムス)、ピ
メクロリムス、mTOR阻害剤、例えばラパマイシン又はその誘導体、例えばシロリムス
(RAPAMUNE(商標))、エベロリムス(Certican(商標))、テムシロ
リムス、ゾタロリムス、バイオリムス-7、バイオリムス-9、ラパログ、例えばリダフ
ォロリムス、アザチオプリン、キャンパス1H、S1P受容体モジュレーター、例えばフ
ィンゴリモド又はその類縁体、抗IL-8抗体、ミコフェノール酸又はその塩、例えばナ
トリウム塩又はそのプロドラッグ、例えばミコフェノール酸モフェチル(CELLCEP
T(商標))、OKT3(ORTHOCLONE OKT3(商標))、プレドニゾン、
ATGAM(商標)、THYMOGLOBULIN(商標)、ブレキナルナトリウム、O
KT4、T10B9.A-3A、33B3.1、15-デオキシスペルグアリン、トレス
ペリムス、レフルノミドARAVA(商標)、CTLAI-Ig、抗CD25、抗IL2
R、バシリキシマブ(SIMULECT(商標))、ダクリズマブ(ZENAPAX(商
標))、ミゾルビン(mizorbine)、メトトレキサート、デキサメサゾン、ISAtx-
247、SDZ ASM 981(ピメクロリムス、Elidel(商標))、CTLA
4lg(アバタセプト)、ベラタセプト、LFA3lg、エタネルセプト(Immunexによ
りEnbrel(商標)として販売される)、アダリムマブ(Humira(商標))、
インフリキシマブ(Remicade(商標))、抗LFA-1抗体、ナタリズマブ(A
ntegren(商標))、エンリモマブ、ガビリモマブ、抗胸腺細胞免疫グロブリン、
シプリズマブ、アレファセプト、エファリズマブ、ペンタサ、メサラジン、アサコール、
リン酸コデイン、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトド
ラク及びインドメタシン、アスピリン及びイブプロフェンである。
【0192】
本発明の態様は、障害を治療する方法であって、それを必要とする宿主に有効量の治療
剤を含む表面修飾固体凝集マイクロ粒子を投与することを含み、治療剤を含有する表面修
飾固体凝集マイクロ粒子が体内に注射され、in vivoで凝集して、少なくとも1ヶ
月の持続薬物送達をもたらす少なくとも500μmの少なくとも1つのペレットを形成す
る、方法である。
【0193】
V. 薬学的に許容可能な担体
任意の好適な薬学的に許容可能な担体、例えば眼科的に許容可能な粘性担体を本発明に
従って用いることができる。担体は、所望の粘度を薬物送達系にもたらすのに効果的な量
で存在する。有利には、粘性担体は薬物送達粒子の約0.5wtパーセント~約95wt
パーセントの範囲の量で存在する。使用される粘性担体の特定の量は例えば、限定される
ものではないが、使用する特定の粘性担体、使用する粘性担体の分子量、作製及び/又は
使用する本薬物送達系に所望される粘度、並びに同様の要因を含む多数の要因に左右され
る。有用な粘性担体の例としては、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボマー
、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン、ゼラ
チン、デキストリン、多糖、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(部分的に加水
分解されたポリ酢酸ビニルであってもよい)、ポリ酢酸ビニル、それらの誘導体及びそれ
らの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
担体は水性担体であってもよい。水性担体の例としては、水溶液又は懸濁液、例えば生
理食塩水、血漿、骨髄穿刺液、緩衝液、例えばハンクス緩衝塩溶液(HBSS)、HEP
ES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、リンガー緩
衝液、ProVisc(商標)、希釈ProVisc(商標)、PBSで希釈したPro
Visc(商標)、クレブス緩衝液、ダルベッコPBS、標準PBS;ヒアルロン酸ナト
リウム溶液(HA、PBS中5mg/mL)、擬似体液、濃縮血小板血漿及び組織培養培
地、又は有機溶媒を含む水溶液若しくは懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
一実施形態では、担体はPBSである。
【0196】
一実施形態では、担体はPBS中5mg/mLのHAである。
【0197】
一実施形態では、担体は水で希釈したProVisc(商標)である。
【0198】
一実施形態では、担体はPBS中のProVisc(商標)希釈物である。
【0199】
一実施形態では、担体は水で5倍希釈したProVisc(商標)である。
【0200】
一実施形態では、担体はPBS中のProVisc(商標)5倍希釈物である。
【0201】
一実施形態では、担体は水で10倍希釈したProVisc(商標)である。
【0202】
一実施形態では、担体はPBS中のProVisc(商標)10倍希釈物である。
【0203】
一実施形態では、担体は水で20倍希釈したProVisc(商標)である。
【0204】
一実施形態では、担体はPBS中のProVisc(商標)20倍希釈物である。
【0205】
一実施形態では、担体は中性pHの等張緩衝溶液中1.25mg/mLのHAである。
【0206】
担体は任意に1つ以上の懸濁化剤を含有していてもよい。懸濁化剤はカルボキシメチル
セルロース(CMC)、マンニトール、ポリソルベート、ポリプロピレングリコール、ポ
リエチレングリコール、ゼラチン、アルブミン、アルギン酸塩、ヒドロキシルプロピルメ
チルセルロース(HPMC)、ヒドロキシルエチルメチルセルロース(HEMC)、ベン
トナイト、トラガカント、デキストリン、ゴマ油、扁桃油、スクロース、アカシアゴム及
びキサンタンガム、並びにそれらの組合せから選択され得る。
【0207】
担体は任意に1つ以上の可塑剤を含有し得る。このため、担体は可塑剤を含んでいても
よい。可塑剤は、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール
、ポリ(乳酸)若しくはポリ(グリコール酸)又はそれらのコポリマー、ポリカプロラク
トン、及びこれらのポリマーの低分子量オリゴマー、又はアジペート、ホスフェート、フ
タレート、サバケート(sabacates)、アゼレート及びシトレート等の従来の可塑剤であ
り得る。担体は、作用物質の安定性を改善するために他の既知の医薬賦形剤を含んでいて
もよい。
【0208】
一実施形態では、放出速度に更に影響を与えるために1つ以上の付加的な賦形剤又は送
達促進剤、例えば界面活性剤及び/又はヒドロゲルが含まれていてもよい。
【0209】
VI. 薬理活性化合物の持続放出
薬理活性化合物の放出速度は、表面処理マイクロ粒子に溶解した薬理活性化合物の濃度
と関連付けられ得る。幾つかの実施形態では、表面処理マイクロ粒子のポリマー組成物は
、薬理活性化合物の所望の溶解性をもたらすように選択される非治療剤を含む。ポリマー
組成物の選択は、表面処理マイクロ粒子中での薬理活性化合物の所望の溶解性をもたらす
ように行うことができる。例えば、ヒドロゲルは親水性材料の溶解性を促進し得る。幾つ
かの実施形態では、官能基をポリマーに付加して、表面処理マイクロ粒子中での薬理活性
化合物の所望の溶解性を増大させることができる。幾つかの実施形態では、添加剤を使用
して薬理活性化合物の放出動態を制御することができる。例えば、添加剤を使用して、ポ
リマー中での薬理活性化合物の溶解性を増大又は減少させることにより薬理活性化合物の
濃度を制御することで、薬理活性化合物の放出動態を制御することができる。溶解性は、
表面処理マイクロ粒子への薬理活性化合物の溶解形態の溶解性を増大及び/又は減少する
適切な分子及び/又は物質を加えることによって制御することができる。薬理活性化合物
の溶解性は、表面処理マイクロ粒子及び薬理活性化合物の疎水及び/又は親水特性と関連
付けられ得る。油及び疎水性分子をポリマー(複数の場合もある)に添加して、表面処理
マイクロ粒子中での薬理活性化合物の溶解性を増大させることができる。
【0210】
表面処理マイクロ粒子に溶解した薬理活性化合物の濃度に基づく移動速度を制御する代
わりに又はそれに加えて、ポリマー組成物の表面積を制御して、薬理活性化合物を含む表
面処理マイクロ粒子からの所望の薬物移動速度を達成することができる。例えば、より大
きな露出表面積は表面への薬理活性化合物の移動速度を増大し、より小さな露出表面積は
表面への薬理活性化合物の移動速度を減少する。露出表面積は幾つもの方法で、例えば露
出表面のキャスタレーション(castellation)、涙液又は涙液膜と接続した露出チャネル
を有する多孔性表面、露出表面の陥凹、又は露出表面の突出のいずれかにより増大させる
ことができる。露出表面は、溶解し、塩が溶解した後に多孔キャビティを残す塩の添加に
よって多孔性とすることができる。本発明においては、これらの傾向を用いて、これらの
より急速な放出の経路を回避することでポリマー組成物からの活性物質の放出速度を減少
させることができる。例えば、表面積を最小限にするか、又はチャネルを回避することが
できる。
【0211】
2種類以上のポリマーを使用する場合、各々の表面処理マイクロ粒子は異なる固化又は
凝固特性を有し得る。例えば、表面処理マイクロ粒子は、同様のポリマーから作製するこ
とができるが、異なるゲル化pH、又は異なる融解温度若しくはガラス転移点を有し得る
。
【0212】
表面処理マイクロ粒子が固結凝集体を形成するためには、例えば組成物を投与するヒト
又は非ヒト動物における粒子の周辺の温度が、およそポリマー粒子のガラス転移温度(T
g)以上である。かかる温度では、ポリマー粒子が1つ以上の他のポリマー粒子と架橋し
、固結凝集体を形成する。架橋とは、隣接ポリマー粒子が互いに接合することを意味する
。例えば、粒子は或る粒子の表面のポリマー鎖と別の粒子の表面のポリマー鎖との絡み合
いにより架橋し得る。隣接粒子間の付着、合着又は融合も生じ得る。
【0213】
通例、ポリマー又はポリマーブレンドから形成される注射用表面処理マイクロ粒子は、
体温に近いか又は体温のすぐ上(約30℃~45℃、例えば約35℃~40℃、例えば約
37℃~40℃等)のガラス転移温度(Tg)を有する。したがって、室温では表面処理
マイクロ粒子はそれらのTgを下回り、個別粒子として振る舞うが、体内では表面処理マ
イクロ粒子は軟化し、相互作用/自己固着する。通例、集塊(agglomeration)は、室温
から体温への温度上昇の20秒~約15分以内に開始する。
【0214】
表面処理マイクロ粒子は約35℃~40℃、例えば約37℃~40℃のTgを有するポ
リマーから形成することができ、ポリマーはポリ(α-ヒドロキシ酸)(PLA、PGA
、PLGA若しくはPDLLA、又はそれらの組合せ等)又はPLGA-PEGとのそれ
らのブレンドである。通例、これらの粒子は体温で集塊する。注射用表面処理マイクロ粒
子はポリ(α-ヒドロキシ酸)粒子のみを含んでいてもよく、又は他の粒子タイプが含ま
れていてもよい。マイクロ粒子は、体温以上のTgを有するポリ(D,L-ラクチド-コ
-グリコリド)(PLGA)、PLGA-PEG及びPVAのブレンドから形成すること
ができる。一実施形態では、体温では表面処理マイクロ粒子は相互作用して、固結凝集体
を形成する。注射用マイクロ粒子はPLGA/PLGA-PEG/PVA表面処理マイク
ロ粒子のみを含んでいても、又は他の粒子タイプが含まれていてもよい。
【0215】
組成物は、温度感受性表面処理マイクロ粒子と非温度感受性表面処理マイクロ粒子との
混合物を含んでいてもよい。非温度感受性表面処理マイクロ粒子は、組成物の使用が意図
される温度を超えるガラス転移温度を有する粒子である。通例、温度感受性表面処理マイ
クロ粒子と非温度感受性粒子との混合物を含む組成物中では、温度感受性表面処理マイク
ロ粒子と非温度感受性表面処理マイクロ粒子との比率は約3:1以下、例えば4:3であ
る。温度感受性表面処理マイクロ粒子は、組成物の温度をこれらのマイクロ粒子のガラス
転移温度以上に上昇させた場合に互いに有利に架橋することが可能である。温度感受性表
面処理マイクロ粒子と非温度感受性表面処理マイクロ粒子との比率を制御することによっ
て、得られる固結凝集体の空隙率を操作することが可能であり得る。表面処理マイクロ粒
子は固体外表面を有する固体であっても、又は多孔性であってもよい。粒子は不規則形状
又は実質的に球状の形状であり得る。
【0216】
表面処理マイクロ粒子は実質的に球状である場合に、それらの最長寸法又はそれらの直
径が約100μm未満かつ約1μm超というサイズを有し得る。表面処理マイクロ粒子は
、それらの最長寸法又はそれらの直径が約100μm未満というサイズを有し得る。表面
処理マイクロ粒子は、それらの最長寸法又はそれらの直径が約1μm~約40μm、より
典型的には約20μm~約40μmというサイズを有し得る。所望のサイズのポリマー粒
子は、孔径約40μmの篩又はフィルターを通過する。
【0217】
組成物からの固結凝集体の形成は、ヒト又は非ヒト動物に投与した後、通例約20秒間
~約24時間、例えば約1分間~約5時間、約1分間~約1時間、約30分未満、約20
分未満かかる。通例、固化は投与後約1分~約20分で生じる。
【0218】
通例、組成物は約20パーセント~約80パーセントの注射用表面処理マイクロ粒子材
料及び約20パーセント~約80パーセントの担体;約30パーセント~約70パーセン
トの注射用表面処理マイクロ粒子材料及び約30パーセント~約70パーセントの担体を
含む。例えば、組成物は約40パーセント~約60パーセントの注射用表面処理マイクロ
粒子材料及び約40パーセント~約60パーセントの担体を含み得る。組成物は約50パ
ーセントの注射用表面処理マイクロ粒子材料及び約50パーセントの担体を含み得る。上
述のパーセンテージは全て重量パーセントを指す。
【0219】
表面処理マイクロ粒子は、例えば表面処理マイクロ粒子中に充填された又は表面処理マ
イクロ粒子上のコーティングとして薬理活性化合物を有する。
【0220】
本発明の系は、薬理活性化合物の放出をしばらく持続させることが可能であり得る。例
えば、放出は少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくと
も約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間、少なくとも48時間、少
なくとも1週間、1週間超、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、
少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月又は少なくとも7ヶ月持続させ
ることができる。
【0221】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約1パーセント~約5パーセントを超えるバーストなしに24
時間にわたって放出する。
【0222】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約10パーセントを超えるバーストなしに24時間にわたって
放出する。
【0223】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約15パーセントを超えるバーストなしに24時間にわたって
放出する。
【0224】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約20パーセントを超えるバーストなしに24時間にわたって
放出する。
【0225】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約1パーセント~約5パーセントを超えるバーストなしに12
時間にわたって放出する。
【0226】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約10パーセントを超えるバーストなしに12時間にわたって
放出する。
【0227】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約15パーセントを超えるバーストなしに12時間にわたって
放出する。
【0228】
一実施形態では、ペレットをin vivoで生じる表面修飾固体凝集マイクロ粒子は
、治療剤を全ペイロードの約15パーセントを超えるバーストなしに12時間にわたって
放出する。
【0229】
一実施形態では、薬理活性化合物は所望される局部又は全身の生理学的又は薬理学的効
果を有するのに効果的な量で放出される。
【0230】
一実施形態では、薬理活性化合物の送達は、薬理活性化合物が固結凝集体から固結凝集
体の周辺の環境、例えば硝子体液へと放出されることを意味する。
【0231】
一実施形態では、本発明の薬理活性化合物を含む表面処理マイクロ粒子は、固結凝集体
が形成された後に固結凝集体からの薬理活性化合物の実質的にゼロ次又は一次の放出速度
を可能とする。ゼロ次放出速度は、規定の時間にわたる薬理活性化合物の一定の放出であ
る。かかる放出は既知の送達方法を用いて達成するのは困難である。
【0232】
VII. 表面処理マイクロ粒子の製造
マイクロ粒子の形成
マイクロ粒子は、当該技術分野で既知のポリマーマイクロ粒子の形成のための任意の好
適な方法を用いて形成することができる。粒子形成に用いられる方法は、薬物又はポリマ
ーマトリックス中に存在するポリマーの特徴、並びに所望の粒径及びサイズ分布を含む様
々な要因によって決まる。一部の薬物は或る特定の溶媒の存在下、或る特定の温度範囲及
び/又は或る特定のpH範囲で不安定であるため、マイクロ粒子に組み込まれる薬物(複
数の場合もある)のタイプも要因であり得る。
【0233】
1ミクロン~100ミクロンの平均粒径を有する粒子が本明細書に記載される組成物に
有用である。典型的な実施形態では、粒子は1ミクロン~40ミクロン、より典型的には
約10ミクロン~約40ミクロン、より典型的には約20ミクロン~約40ミクロンの平
均粒径を有する。粒子は任意の形状を有していてもよいが、概して球状の形状である。
【0234】
粒子の単分散集団が所望される状況では、粒子はマイクロ粒子の単分散集団を作製する
方法を用いて形成することができる。代替的には、多分散マイクロ粒子分布を生じさせる
方法を用いることができ、粒子は粒子形成後に篩分等の当該技術分野で既知の方法を用い
て分離し、所望の平均粒径及び粒径分布を有する粒子の集団を得ることができる。
【0235】
マイクロ粒子を調製する一般的な技法としては、溶媒蒸発、ホットメルト粒子形成、溶
媒除去、噴霧乾燥、転相、コアセルベーション及び低温キャスティングが挙げられるが、
これらに限定されない。粒子配合の好適な方法を下記に簡潔に記載する。pH調整剤、崩
壊剤、保存料及び酸化防止剤を含む薬学的に許容可能な賦形剤を、粒子形成時に粒子に任
意に組み込むことができる。
【0236】
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は連続化学製造プロセスを用いて調製される。
一実施形態では、表面処理マイクロ粒子は段階的製造プロセスを用いて調製される。
【0237】
一実施形態では、治療剤を含有するマイクロ粒子は、国際出願PCT/US2015/
065894号に記載されるように調製することができる。一実施形態では、マイクロ粒
子は、
(i)治療剤又はその塩を、任意にアルカリ剤を含む有機溶媒に溶解又は分散させるこ
と、
(ii)工程(i)の溶液/分散液と、少なくとも約300cPs(又は場合によって
は少なくとも約350cPs、400cPs、500cPs、600cPs、700cP
s若しくは800cPs、若しくはそれ以上)の粘度を有するポリマー溶液とを混合する
こと、
(iii)工程(ii)の治療剤ポリマー溶液/分散液と、任意に界面活性剤又は乳化
剤を含む非酸性又はアルカリ性水溶液(例えば、少なくともおよそ7、8又は9、通例約
10を超えないpH)とを混合し、溶媒を含んだ治療剤をカプセル化したマイクロ粒子を
形成すること、
(iv)マイクロ粒子を単離すること、
によって調製される。
【0238】
一実施形態では、治療剤はスニチニブである。
【0239】
アルカリ剤を有機溶媒に加えることが有用であり得ることが見出されている。しかしな
がら、国際出願PCT/US2015/065894号に記載されているように、有機溶
媒への酸の添加によりマイクロ粒子の薬物担持を改善することができることが見出されて
いる。PLGA、PEG-PLGA(PLA)及びPEG-PLGA/PLGAブレンド
等のポリエステルのマイクロ粒子が治療剤又はその薬学的に許容可能な塩の持続放出を示
すことが例により実証されている。治療剤を担持した、PLGA及びPLGAに共有結合
的にコンジュゲートしたPEG(Mw 45kDa)(PLGA45k-PEG5k)か
ら構成されるポリマーマイクロ粒子が、一重エマルション溶媒蒸発法を用いて調製された
。PEG-PLGAにより溶液中の治療剤のアルカリ性を増大させることによって、16
.1%まで担持の改善が達成されたが、これはアルカリを添加しない場合の僅か1%と比
較して、DMFを添加することにより更に増大し得る。治療剤担持は、水溶液及びポリマ
ー溶液のpHを増大させることによって更に増大した。マイクロ粒子における治療剤担持
のまた更に顕著な増大は、ポリマーの濃度又は粘度を増大させることによって達成された
。一実施形態では、治療剤はスニチニブである。
【0240】
溶媒蒸発
この方法では、薬物(又はポリマーマトリックス及び薬物)を塩化メチレン、アセトン
、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、t-ブチルアルコール、ベンゼン、
クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、エタノー
ル、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、
ペンタン、石油エーテル、イソプロパノール、n-プロパノール、テトラヒドロフラン又
はそれらの混合物等の揮発性有機溶媒に溶解する。次いで、薬物を含有する有機溶液を、
ポリ(ビニルアルコール)等の表面活性剤を含有する水溶液に懸濁する。得られるエマル
ションを、有機溶媒の大半が蒸発し、固体マイクロ粒子が残るまで撹拌する。得られるマ
イクロ粒子を水で洗浄し、凍結乾燥器内で一晩乾燥させる。異なるサイズ及び形態を有す
るマイクロ粒子をこの方法によって得ることができる。
【0241】
或る特定のポリ無水物等の不安定なポリマーを含有するマイクロ粒子は、製造プロセス
中に水の存在により分解される可能性がある。これらのポリマーについては、完全に無水
の有機溶媒中で行われる以下の2つの方法を用いることができる。
【0242】
油中油型エマルション法
溶媒除去を、加水分解に不安定な薬物から粒子を調製するために用いることもできる。
この方法では、薬物(又はポリマーマトリックス及び薬物)を塩化メチレン、アセトン、
アセトニトリル、ベンゼン、2-ブタノール、2-ブタノン、t-ブチルアルコール、ク
ロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、エタノール
、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、ペ
ンタン、石油エーテル、イソプロパノール、n-プロパノール、テトラヒドロフラン又は
それらの混合物等の揮発性有機溶媒中に分散又は溶解させる。次いで、この混合物を有機
油(シリコーン油、ヒマシ油、パラフィン油又は鉱油等)中で撹拌することによって懸濁
し、エマルションを形成する。固体粒子がエマルションから形成され、これを続いて上清
から単離することができる。この技法を用いて作製される球体の外的形態は薬物の同一性
に大きく依存する。
【0243】
水中油型エマルション法
この方法では、薬物(又はポリマーマトリックス及び薬物)を塩化メチレン、アセトン
、アセトニトリル、ベンゼン、2-ブタノール、2-ブタノン、t-ブチルアルコール、
クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、エタノー
ル、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、
ペンタン、石油エーテル、イソプロパノール、n-プロパノール、テトラヒドロフラン又
はそれらの混合物等の揮発性有機溶媒中に分散又は溶解させる。次いで、この混合物をポ
リ(ビニルアルコール)等の表面活性剤の水溶液中で撹拌することによって懸濁し、エマ
ルションを形成する。固体粒子がエマルションから形成され、これを続いて上清から単離
することができる。この技法を用いて作製される球体の外的形態は薬物の同一性に大きく
依存する。
【0244】
国際出願PCT/US2015/065894号に記載されるように、治療剤を有する
マイクロ粒子は、水中油型エマルション法を用いて調製することができる。一例では、ス
ニチニブマイクロ粒子を、100mgのPEG-PLGA(5K、45)を1mLの塩化
メチレンに溶解し、20mgのリンゴ酸スニチニブを0.5mLのDMSO及びトリエチ
ルアミンに溶解することによって調製した。次いで、溶液を混合し、5000rpmで1
分間、1%ポリビニルアルコール(PVA)を含有する水溶液中にホモジナイズし、2時
間撹拌した。粒子を回収し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。別の例では、スニチニブ
マイクロ粒子を国際出願PCT/US2015/065894号に従って、200mgの
PLGA(2A、Alkermers)を3mLの塩化メチレン、40mgのリンゴ酸スニチニブ
を0.5mLのDMSO及びトリエチルアミンに溶解することによっても調製した。次い
で、溶液を混合し、5000rpmで1分間、1%PVA中でホモジナイズし、2時間撹
拌した。粒子を回収し、再蒸留水で洗浄し、凍結乾燥した。
【0245】
噴霧乾燥
この方法では、薬物(又はポリマーマトリックス及び薬物)を塩化メチレン、アセトン
、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、t-ブチルアルコール、ベンゼン、
クロロホルム、シクロヘキサン、1,2-ジクロロエタン、ジエチルエーテル、エタノー
ル、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メタノール、メチルtert-ブチルエーテル、
ペンタン、石油エーテル、イソプロパノール、n-プロパノール、テトラヒドロフラン又
はそれらの混合物等の有機溶媒に溶解する。溶液を圧縮ガス流により駆動される微粉化ノ
ズルを通して圧送し、得られるエアロゾルを加熱空気サイクロン中に懸濁し、溶媒を微小
滴から蒸発させ、粒子を形成する。この方法を用いて0.1ミクロン~10ミクロンの範
囲の粒子を得ることができる。
【0246】
転相
粒子は薬物から転相法を用いて形成することができる。この方法では、薬物(又はポリ
マーマトリックス及び薬物)を溶媒に溶解し、溶液を薬物に対する強い非溶媒に注ぎ込み
、好都合な条件下でマイクロ粒子又はナノ粒子を自発的に生じさせる。この方法を用いて
、通例狭い粒径分布を有する、例えば約100ナノメートル~約10ミクロンを含む広範
なサイズのナノ粒子を作製することができる。
【0247】
コアセルベーション
コアセルベーションを用いた粒子形成の技法が当該技術分野で、例えば英国特許第92
9406号、英国特許第929401号、並びに米国特許第3,266,987号、同第
4,794,000号及び同第4,460,563号において既知である。コアセルベー
ションは、2つの不混和性の液相への薬物(又はポリマーマトリックス及び薬物)溶液の
分離を含む。一方の相は高濃度の薬物を含有する濃密コアセルベート相であり、第2の相
は低濃度の薬物を含有する。濃密コアセルベート相内で薬物はナノスケール又はマイクロ
スケールの小滴を形成し、これが粒子へと硬化する。コアセルベーションは温度変化、非
溶媒の添加若しくは微小塩の添加(単純コアセルベーション)、又は別のポリマーを添加
することで高分子間錯体を形成すること(複雑コアセルベーション)によって誘導するこ
とができる。
【0248】
低温キャスティング
制御放出ミクロスフェアの超低温キャスティングの方法は、Gombotz et alの米国特許
第5,019,400号に記載されている。この方法では、薬物(又はポリマーマトリッ
クス及びスニチニブ)を溶媒に溶解する。次いで、薬物溶液の凝固点未満の温度で混合物
を液体非溶媒の入った容器へと霧化することで、薬物小滴が凍結する。小滴及び薬物の非
溶媒を温めると、小滴中の溶媒が融解し、非溶媒へと抽出され、ミクロスフェアが硬化す
る。
【0249】
スケールアップ
実施例に記載のマイクロ粒子を作製する方法は、当該技術分野で既知の方法によるスケ
ールアップが可能である。かかる方法の例としては、米国特許第4,822,534号、
米国特許第5,271,961号、米国特許第5,945,126号、米国特許第6,2
70,802号、米国特許第6,361,798号、米国特許第8,708,159号及
び米国特許出願公開第2010/0143479号が挙げられる。米国特許第4,822
,534号は、分散液の使用を伴う固体ミクロスフェアを提供する製造方法を記載してい
る。これらの分散液は工業的に作製することができ、スケールアップが可能である。米国
特許第5,271,961号は低温、通常は45℃未満の使用を伴うタンパク質ミクロス
フェアの作製を開示している。米国特許第5,945,126号は、実験室規模で観察さ
れるサイズの均一性を維持した上で、実生産規模でマイクロ粒子を作製する製造方法を記
載している。米国特許第6,270,802号及び米国特許第6,361,798号は、
滅菌領域を維持した上でポリマーマイクロ粒子を製造する大規模方法を記載している。米
国特許第8,708,159号は、ハイドロサイクロン装置を用いた規模でのマイクロ粒
子の加工を記載している。米国特許出願公開第2010/0143479号は、特に遅延
放出マイクロ粒子に対する大規模でマイクロ粒子を製造する方法を記載している。
【0250】
XSprayは、サイズが10μM未満の粒子を作製するためのデバイス及び超臨界流体の使
用を開示している(米国特許第8,167,279号)。XSprayに対する付加的な特許と
しては、米国特許第8,585,942号及び米国特許第8,585,943号が挙げら
れる。Sun Pharmaceuticalsは、ミクロスフェア又はマイクロカプセルを製造するプロセ
スを開示している(国際公開第2006/123359号、引用することにより本明細書
の一部をなす)。例としては、プロセスAは、1)治療活性成分、生分解性ポリマー及び
有機溶媒を含む第1の分散相を調製することと、2)第1の分散相と水相とを混合して、
エマルションを形成することと、3)エマルションを搭載容器に噴霧して、有機溶媒を除
去することと、4)得られるミクロスフェア又はマイクロカプセルを第1及び第2のスク
リーンに通し、それにより分別されたサイズのミクロスフェア又はマイクロカプセルを回
収することと、5)ミクロスフェア又はマイクロカプセルを乾燥させることとを含む5つ
の工程を伴う。
【0251】
Xu, Q. et al.は、マイクロ流体フローフォーカシングデバイスを用いた単分散生分解
性ポリマーマイクロ粒子の調製を開示している(Xu, Q., et al "Preparation of Monodi
spersed Biodegradable Polymer Microparticles Using a Microfluidic Flow-Focusing
Device for Controlled Drug Delivery", Small, Vol 5(13): 1575-1581, 2009)。
【0252】
Duncanson, W.J. et al.は、ミクロスフェアを生成するためのマイクロ流体デバイスの
使用を開示している(Duncanson, W.J. et al. "Microfluidic Synthesis of Monodisper
se Porous Microspheres with Size-tunable Pores", Soft Matter, Vol 8, 10636-10640
, 2012)。
【0253】
Evonikに対する米国特許第8,916,196号は、本発明に関連して用いることがで
きるエマルションベースのマイクロ粒子の作製のための装置及び方法を記載している。
【0254】
VIII. 表面処理マイクロ粒子を調製するプロセス
略語
DCM、CH2Cl2 ジクロロメタン
DL 薬物担持
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOH エタノール
HA ヒアルロン酸ナトリウム
hr、h 時間
min 分
NaOH 水酸化ナトリウム
NSTMP 非表面処理マイクロ粒子
PBS ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
PCL ポリカプロラクトン
PEG ポリエチレングリコール
PLA ポリ(乳酸)
PLGA ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)
PVA ポリビニルアルコール
Rpm 毎分回転数
RT、r.t. 室温
SD 標準偏差
STMP 表面処理マイクロ粒子
UV 紫外線
【0255】
一般的方法
全ての非水性反応は乾燥アルゴン又は窒素ガスの雰囲気下で無水溶媒を使用して行った
。出発物質、中間体及び最終生成物の構造は、NMR分光法及び質量分析を含む標準分析
法を用いて確認した。
【0256】
材料
水酸化ナトリウム(NaOH、カタログ番号:S318-1、Fisher Chemical)、エ
タノール(EtOH、カタログ番号:A405-20、Fisher Chemical)、ダルベッコ
リン酸緩衝生理食塩水(PBS、カタログ番号:SH3085003、GE Healthcare Hy
Clone(商標))、ヒアルロン酸ナトリウム(HA、カタログ番号:AC2517700
10、Acros Organics)及びTween 20(カタログ番号:BP337-100、Fi
sher BioReagents)は、Fisher Scientificから購入した。ポリビニルアルコール(PV
A)(88パーセント加水分解、MWおよそ25kD)(カタログ番号:02975)は
、Polysciences, Incから購入した。リンゴ酸スニチニブは、LC Laboratoriesから購入し
た(カタログ番号:S-8803)。ProVisc(商標)(10mg/mL、0.8
5mL、カタログ番号:21989、Alcon)は、Besse Medicalから購入した。ポリ(乳
酸-コ-グリコール酸)(PLGA)ポリマー、ポリ(乳酸)(PLA)ポリマー、及び
PLGAとポリエチレングリコールとのジブロックコポリマー(PLGA-PEG)は、
Evonik Corporationから購入した(RESOMER Select 5050 DLG
mPEG 5000(10wtパーセントPEG))。FreeZone 4.5リット
ル卓上凍結乾燥システムを凍結乾燥に使用した。
【0257】
ProVisc(商標)OVD(Ophthalmic Viscosurgical
Device)は、塩化ナトリウムリン酸生理緩衝液(physiological sodium chlorid
e phosphate buffer)に溶解した滅菌、非発熱性、高分子量、非炎症性のヒアルロン酸ナ
トリウムの高精製画分である。これはFDAに認可されており、眼科用外科助剤(surgic
al aid)として使用される。ヒアルロン酸ナトリウムは、臨床用途のヒアルロナンの誘導
体である。ヒアルロン酸としても知られるヒアルロナンは、眼の房水及び硝子体液を含む
全身に見られる自然発生グリコサミノグリカンである。
【実施例0258】
実施例1. PLGAを含有する生分解性非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)の調製
リンゴ酸スニチニブを含む又は含まないPLGA及びPLGAとPEGとのジブロック
コポリマーを含むポリマーマイクロ粒子を、一重エマルション溶媒蒸発法を用いて調製し
た。簡潔に述べると、PLGA(560mg)及びPLGA-PEG(5.6mg)をジ
クロロメタン(DCM)(4mL)に同時溶解した。リンゴ酸スニチニブ(90mg)を
ジメチルスルホキシド(DMSO)(2mL)に溶解した。ポリマー溶液及び薬物溶液を
混合して、均一な溶液(有機相)を形成した。空のNSTMPについては、薬物を含まな
いDMSO(2mL)を使用した。薬物担持NSTMPについては、有機相をPBS(2
00mL)中の1%PVA水溶液に添加し、L5M-A実験室用ミキサー(Silverson Ma
chines Inc.,East Longmeadow,MA)を用いて5000rpmで1分間ホモジナイズし、
エマルションを得た。空のNSTMPについては、水(200mL)中の1パーセントP
VA溶液を使用した。
【0259】
次いで、エマルション(溶媒を含んだマイクロ粒子)を、室温で2時間超撹拌してDC
Mを蒸発させることによって硬化させた。マイクロ粒子を遠沈及び遠心分離によって回収
し、水で3回洗浄し、40μm滅菌Falcon(商標)セルストレーナー(Corning In
c.,Corning,NY)に通して濾過した。非表面処理マイクロ粒子(NSTMP)を表面処
理プロセスに直接使用するか、又は凍結乾燥によって乾燥させ、乾燥粉末として-20℃
で使用時まで保管した。
【0260】
実施例2. NaOH(水溶液)/EtOHを用いた非表面処理マイクロ粒子(NSTM
P)の表面処理
0.25M NaOH(水溶液)及びエタノールを所定の比率で含有する予め冷却した
溶液を、およそ4℃の氷浴において撹拌しながらガラスバイアル内のマイクロ粒子に添加
し、100mg/mLの懸濁液を形成した。次いで、懸濁液を所定の時間(例えば3分間
、6分間又は10分間)にわたって氷上で撹拌し、予め冷却した濾過装置内に注ぎ入れ、
NaOH(水溶液)/EtOH溶液を除去した。マイクロ粒子を予め冷却した水で更にす
すぎ、50mL容の遠心分離管に移した。次いで、粒子を予め冷却した水に懸濁し、冷蔵
庫内で30分間維持し、粒子を沈降させた。上清の除去後、粒子を再懸濁し、40μmセ
ルストレーナーに通して濾過して、大きな凝集体を除去した。続いて、粒子を室温にて水
で2回洗浄し、一晩凍結乾燥させた。NaOH(水溶液)/EtOH表面処理実験の詳細
な配合情報及び条件を表1に挙げる。
【0261】
【0262】
実施例3. 粒子凝集性のin vitro評定
表面処理マイクロ粒子(STMP)を、200mg/mLの濃度でリン酸緩衝生理食塩
水(PBS)に懸濁した。30マイクロリットル又は50マイクロリットルの懸濁液を、
37℃で予め加温した2mL容の微小遠心管内の1.5mL~2.0mLのPBS又はヒ
アルロン酸ナトリウム溶液(HA、PBS中5mg/mL)に、固定27ゲージ針(Te
rumo又はEasy Touchブランド)を有する0.5mL容のインスリンシリン
ジを用いて注入した。次いで、微小遠心管を37℃で2時間、水浴内でインキュベートし
た。マイクロ粒子の凝集性を、マイクロ粒子の入った管の反転及び/又はタッピング及び
フリッキングによる緩やかなかき混ぜ下で目視観察及び/又は撮像により評定した。非表
面処理マイクロ粒子(NSTMP)を対照として使用した。
【0263】
表面処理プロセスの成功は、良好な懸濁性、注射針通過性及び注入性を維持するSTM
Pを生じると予想される。最も重要なことには、PBS又はヒアルロン酸ナトリウムへの
注入及び37℃で2時間のインキュベーション後に、STMPは緩やかなかき混ぜ下でよ
り小さな凝集体又は浮遊性粒子へと分かれることのない固結凝集体(複数の場合もある)
を形成すると予想され、これはSTMPをNSTMP及び凝集性の低いSTMPと差別化
する主要特徴である。
【0264】
実施例4. マイクロ粒子の特性に対する表面処理中の温度の影響
表面処理に対する温度の影響を、室温で処理した粒子と4℃で処理した粒子とを比較す
ることによって研究した。室温での表面処理の手順は、4℃の代わりに室温で行う以外は
実施例2に記載の手順と同一にした。
【0265】
表面処理プロセスを0.25M NaOHとEtOHとの混合物(v/v:30/70
又は70/30)中、室温で行った場合、粒子は表面処理中に迅速かつ不可逆的に凝集し
た。対照的に、同じ体積比のNaOH/EtOHの混合物中、4℃で処理した粒子は表面
処理プロセス中に凝集せず、再構成時に良好な懸濁性及び注入性を維持していた。EtO
Hを含まない0.25M NaOH中、室温での表面処理については、粒子は1時間の表
面処理中に凝集しなかった。加えて、NaOH中で処理したSTMPは、37℃でのイン
キュベーション後に凝集することができなかった。対照的に、4℃前後で処理したSTM
Pは表面処理中に凝集しなかったが、37℃でのインキュベーション後に凝集した。凍結
乾燥及び粒子希釈剤中での再構成後に、STMPは針を閉塞させることなく容易に27ゲ
ージ針を通してシリンジに充填され、注射された。
【0266】
実施例5. 表面処理マイクロ粒子の凝集性に対するPEG含量の影響
【0267】
【0268】
異なる重量パーセンテージのPLGA/PLGA-PEGを含有する2つのNSTMP
のバッチ(S-1及びS-5)及び2つのSTMPのバッチ(S-3及びS-8)を下記
の手順に従って表面処理し、PBS及びHAゲルの両方におけるそれらの凝集性を評価し
た。
【0269】
上記表2に挙げられるように、配合物S-3は1%のPLGA-PEGを含有し、S-
8は10%のPLGA-PEGを含有するものであった。サンプルS-3及びS-8は体
積比30/70の0.25M NaOHとEtOHとの混合物中、4℃で6分間個別に処
理した。PBSへの注入及び37℃で2時間のインキュベーションの後に、微小遠心管を
反転し、粒子の凝集性を目視検査によって評定した。
図1に示されるように、NSTMP
であるS-1及びS-5は管の反転の直後に分散を開始したが、STMPであるS-3及
びS-8は、全観察期間(約10分間)を通じて分散することなく管の底部に凝集したま
まであった。
【0270】
同様の第2の実験を、同じ粒子懸濁液をHA溶液に注入し、サンプルを37℃で2時間
インキュベートすることによって行った。管の反転の直後にNSTMPを含むいずれの粒
子も分散しなかった。
図2を参照されたい。これは、粒子がゲル溶液中で急速に拡散する
のを防ぐより高いHAの粘度による可能性が高い。実験全体を通して凝集したままであっ
たS-1とは異なり、S-5はHA中で管の反転の2分後に分散を開始した。いずれの理
論にも束縛されることを望むものではないが、これは粒子間及び粒子表面とHAとの間の
相互作用に影響を及ぼすS-1中のより高いPEG含量と関連する可能性があり、そのた
め、HA中のS-5の拡散はS-1よりも妨害されなかった。S-8は注射及びPBS中
でのインキュベーション後に凝集したままであったが、HA溶液中でより分散性であるよ
うであった。対照的に、S-8よりも少ないPEGを含有するS-3は、PBS及びHA
溶液の両方において凝集することが可能であった。これらのデータから、STMPの凝集
及び分散が粒子の組成及びSTMPを注入する媒体の特性の両方の影響を受ける可能性が
あることが示される。
【0271】
第3の実験では、S-1、S-2、S-3、S-4、S-5、S-6、S-7及びS-
8を含有するサンプルをPBS中、37℃で2時間インキュベートした。管を反転させる
ことによって凝集性を評定した後、管を実験台上でタッピングすることによってより強く
かき混ぜ、粒子凝集体を管の底部から剥離させた。次いで、凝集体の一体性を検査し、異
なる配合物間で比較した。
図3に示されるように、S-3(1パーセントPLGA-PE
G)は管の底部からの剥離後も一体化した単一凝集体のままであった。比較すると、S-
8(10%PLGA-PEG)中の大半の粒子は1つの大きな凝集体のままであったが、
多くの分散した小さな凝集体又は粒子が管内に見られた。より強いかき混ぜによるアッセ
イでは、異なる粒子配合物の凝集性を更に差別化することができた。全体として、データ
から、PEG含量がより低いSTMPは概して、PEG含量がより高いSTMPよりも強
く、より固結した凝集体を形成することが示唆される。
【0272】
実施例6. マイクロ粒子に対するPBS/EtOHによる表面処理の影響
NaOHはポリマーの部分分解を引き起こし、粒子の表面特性の急速な変更をもたらし
得る強塩基であるため、pH7.4の中性リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液をNaO
Hの代替手段として評価し、マイクロ粒子に対するPBS/EtOHを用いた表面処理の
影響を研究した。表面処理手順は、NaOH溶液をPBS(pH7.4)に置き換えた以
外は実施例2に記載のものと同一にした。実験はおよそ4℃の氷浴内で行った。詳細な配
合物組成及び表面処理条件を表3に挙げる。表面処理マイクロ粒子(STMP)の凝集性
を、実施例3に記載の手順に従って試験した。
【0273】
【0274】
凝集性試験の結果から、NaOH/EtOHでの表面処理と同様に、PBS/EtOH
で処理したSTMPの全てが、PBSへの注入及び37℃で2時間のインキュベーション
後に凝集体を形成することが可能であることが実証された。凝集体は安定し、緩やかなか
き混ぜに抵抗性を示すようであった。
図4のS-21の写真を参照されたい。これらのS
TMPとNaOH/EtOH中での処理によって生成したSTMPとの間に、in vi
tro凝集アッセイ(手順は実施例3に記載のように行った)下での粒子凝集性の明白な
差は見られなかった。薬物担持STMP及び空のSTMPの両方がPBS中で凝集するこ
とが可能であり、表面処理プロセスが薬物を含む又は含まない様々な粒子配合物との良好
な適合性を有する可能性があることが示唆された。
【0275】
実施例7. NaOH(水溶液)/EtOHを用いた表面処理条件の変更
NaOH(水溶液)/EtOHによる表面処理条件を更に最適化するために、表面処理
に対するNaOH濃度、水溶液/EtOH比及び処理時間等の様々なパラメーターの影響
を研究した(表4)。本実施例において、全水溶液/EtOH混合物中のNaOHの総モ
ル濃度を、実施例2のように水相中のNaOHのモル濃度のみを用いる代わりに、水溶液
とEtOHとの比率とは独立した変数として用いたことが注目に値する。例えば、実施例
2における0.25M NaOH(水溶液)/EtOH(v/v:30/70)は、水溶
液/EtOH(v/v:30/70)混合物中0.075MのNaOHと同等である。こ
のため、水溶液とEtOHとの体積比を、混合物中のNaOHの総量を同じにして、30
/70から50/50及び70/30へと変更した。加えて、水溶液とEtOHとの比率
を変更することなく、NaOHの量を10分の1又は100分の1に減少させた。異なる
処理時間を同等の表面処理の有効性が達成されるように選んだ。マイクロ粒子に対する表
面処理の手順は実施例2と同じにした。
【0276】
【0277】
実施例8. マイクロ粒子に対するHCl/EtOHを用いた表面処理の影響
塩基性pH(実施例2及び実施例7)又は中性pH(実施例6)の水溶液を用いた表面
処理を先に試験したことから、酸性pHの水溶液の影響を実施例8において評価した。H
Clを代表的な酸として選択した。表5に示されるように、マイクロ粒子をそれぞれH2
O/EtOH(v/v:30/70)混合物中0.075M又は0.0075MのHCl
において3分間処理した。HCl/EtOH表面処理の手順は、HCl(水溶液)をNa
OH(水溶液)に置き換えて用いた以外は実施例2と同じにした。
【0278】
【0279】
実施例9. 湿潤マイクロ粒子に対する表面処理
先の実施例に説明したように初めにNSTMP乾燥粉末を水溶液に再懸濁することによ
ってNSTMPに対して表面処理を行うことに加えて、乾燥前のNSTMP(すなわち、
「湿潤」マイクロ粒子)に対する表面処理の実行可能性も評価した。「湿潤」NSTMP
を使用する表面処理工程は、NSTMPの乾燥粉末を使用する工程よりも、STMPのス
ケールアップ生産の全プロセスに組み込むのが容易であると予想される。実施例1に示さ
れるように凍結乾燥前の「湿潤」NSTMPを得た後、懸濁液のアリコートを凍結乾燥し
て、体積当たりの粒子質量を決定した。次いで、粒子懸濁液をそれに応じて所望の濃度に
達するように濃縮又は希釈し、所望の温度まで冷却した。次いで、表6に記載されるよう
な所望の条件(例えば、各化学試薬の濃度)が達成されるように表面処理に必要とされる
他の試薬を懸濁液に添加し、表面処理プロセスを開始した。表面処理プロセスの残りは実
施例2における乾燥粒子に関して記載したものと同じである。詳細なバッチ情報及び実験
条件を表6に挙げる。
【0280】
【0281】
実施例10. in vitroでの粒子凝集性を評定する最適化方法
in vitroでの粒子凝集性を評定する方法を改善するために、オービタルシェー
カーを実施例3で用いられる手作業によるかき混ぜに置き換えて使用した。
【0282】
50マイクロリットルのPBS中の200mg/mLのSTMP懸濁液を、37℃で予
め加温した16mm丸底ガラス試験管内の2mLのPBSに、固定27ゲージ針(Ter
umo又はEasy Touchブランド)を有する1mL容のインスリンシリンジを用
いて注入した。次いで、試験管を37℃で2時間、水浴内でインキュベートした。マイク
ロ粒子の凝集性を、オービタルシェーカー(Thermo Scientific(商標)のMulti-
Platform Shakers:カタログ番号13-687-700)上、400r
pmで30秒間振盪した後に目視検査及び/又は撮像により評定した。次いで、粒子/凝
集体の入った試験管を、粒子凝集性の目視評定のために水平にした。NSTMPを対照と
して使用した。
【0283】
図17に示されるように、実施例7及び実施例8のSTMPの全てが2時間のインキュ
ベーション後に凝集体を形成し、凝集体の大部分がオービタルシェーカー上での30秒間
の振盪後に無傷のままであった。対照的に、S-27中のNSTMPは同じかき混ぜ後に
完全に分散した。異なる条件下で処理したマイクロ粒子の凝集性を比較するために、実施
例2に記載のS-12もこの評定に含めた。結果から、実施例7及び実施例8の修飾表面
処理条件の全てがS-12と同様の凝集性を有するSTMPを生じることが示唆される。
【0284】
図18に示されるように、実施例9のSTMP(S-39、S-40、S-41、S-
42、S-43、S-44、S-45)の全てが2時間のインキュベーション後に凝集体
を形成し、凝集体の大部分がオービタルシェーカー上での30秒間の振盪後に無傷のまま
であったが、NSTMP(S-38)は同じかき混ぜ後に完全に分散した。S-42、S
-44及びS-45は、
図18の他のSTMPサンプル及び
図17の乾燥粒子に対する表
面処理よりも良好に凝集するようであった。結果から、湿潤マイクロ粒子に対する表面処
理の成功及び実行可能性が実証される。
【0285】
実施例11. 薬物担持の決定
薬物担持をUV-Vis分光光度法によって決定した。スニチニブ(10mg総重量)
を含有するマイクロ粒子を無水DMSO(1mL)に溶解し、薬物の濃度が薬物のUV吸
光度の標準曲線の線形範囲となるまで更に希釈した。UV吸光度と標準曲線とを比較する
ことによって薬物の濃度を決定した。薬物担持は薬物とマイクロ粒子との重量比として規
定する。
【0286】
実施例12. in vitro薬物放出研究
スニチニブ(10mg総重量)を含有するマイクロ粒子を、6mL容ガラスバイアル内
で1%Tween 20を含有するPBS(4mL)に懸濁し、150rpmで振盪しな
がら37℃でインキュベートした。所定の時点で、粒子がバイアルの底部に沈降した後に
3mLの上清を抜き取り、3mLの新たな放出媒体に置き換えた。上清中の薬物含量をU
V-Vis分光光度法又はHPLCによって決定した。代替的には、上記の手順を50℃
で行い、
図5に示すような加速in vitro薬物放出速度を決定することができる。
【0287】
実施例13. マイクロ粒子に対する表面処理の影響に関する研究
凝集性に加え、マイクロ粒子の他の特性に対する表面処理の影響も研究し、表面処理の
実行可能性を完全に評価した。表7に示されるように、概して、より長時間処理したST
MP(実施例2)の収率及び薬物担持は、より短時間処理したものよりも僅かに低く、0
.25M NaOH/EtOH(v/v:3:7)では、STMPを高い収率及び担持で
作製する時間窓が狭い(分オーダー)ことが示唆された。しかしながら、実施例7に提示
する変更条件下では、DL及び収率(表7)並びに凝集性(実施例10)を低減すること
なく処理時間を数十分まで更に延長することができる。実施例8のHCl(水溶液)/E
tOHで処理したSTMPは、比較的高い収率で表面処理前のDLを維持していた(S-
36及びS-37)。加えて、実施例9の湿潤マイクロ粒子に対する表面処理によって作
製したSTMP(S-42、S-44及びS-45)も、実施例7及び実施例8の乾燥粒
子に対する表面処理によって作製したSTMPと同等の収率で表面処理前のDLを維持し
ていた。
【0288】
【0289】
図6に、NSTMP(S-1)及びNSTMPの同じバッチに由来する対応するSTM
P(S-2及びS-3)の代表的なin vitro薬物放出プロファイルを示す。全体
として、STMPの初期放出速度がNSTMPよりも低かった以外は、放出プロファイル
は表面処理の前後のマイクロ粒子で同様である。このことから、表面処理条件下で、マイ
クロ粒子表面に又はその近くに結合した薬物分子が表面処理プロセス中に除去された可能
性があることが示唆される。
【0290】
実施例14. 表面処理マイクロ粒子の湿潤性
STMP及びNSTMPの代表的なバッチの湿潤性を、Washburn法を用いて特
徴付けた。簡潔に述べると、フィルターベースを有する2つのガラス毛細管を、同質量の
STMP及びNSTMP乾燥粉末で別個に満たした。次いで、毛細管の底部を水の入った
ビーカーに差し込むことで、水が毛管作用により時間と共に管内に引き込まれた。管の質
量及び管内の水の高さの増大を時間の関数として決定した。水吸収速度はNSTMPの入
った管で比較的急速であったが、STMPでは比較的遅かった。同様に、試験の終了時に
、管の質量の増大はNSTMPではSTMPよりもはるかに高く、おそらくは粒子表面か
らの界面活性剤又は界面活性剤及びポリマーの両方の除去のために、表面修飾がマイクロ
粒子の湿潤性の低減をもたらすことが示された。
【0291】
実施例15. サンプルS-10、S-12、S-14、S-16及びS-18の調製並
びにそれらの薬物放出プロファイルの研究
サンプルS-10~S-16及びS-18を、1グラム~3.6グラムというより大規
模で調製した。これらのバッチの収率及び薬物担持は上記表6に示される。薬物担持が表
面処理により顕著に変化しないことが注目に値する。これらのSTMPサンプルの平均粒
径は、表面処理前の対応するNSTMPと同様であった(データは示さない)。
図7に示
されるように、より大規模で調製したSTMP(S-14及びS-16)の放出プロファ
イルも対応するNSTMPと同様であり、表面処理プロセスが全薬物放出に対して最小の
影響しか有しないことが示された。
【0292】
実施例16. 表面処理マイクロ粒子(STMP)の注入性及び投与粘稠度
およそ200mg/mLのSTMP(ST-1-5、およそ10パーセントの薬物担持
)の懸濁液を、2mg/mLのHAを含有する5倍希釈ProVisc(商標)溶液にマ
イクロ粒子を懸濁することによって調製した。室温で2時間のインキュベーション期間後
に、10μLのSTMP懸濁液を、27ゲージ針を取り付けた50μL容のハミルトンシ
リンジに充填した。短時間のボルテックスによって、STMPを完全に懸濁させた後、微
小遠心管への注入前にシリンジを水平に2分間、垂直に2分間保持した。3つの異なるシ
リンジを用いて注射を繰り返し、各シリンジを3回試験した。次いで、各管内のSTMP
をDMSOに溶解し、薬物の用量をUV-Vis分光光度法によって決定した。表8に示
されるように、同じシリンジを用いた注射間及び異なるシリンジ間での優れた投与粘稠度
が観察され、希釈ProVisc(商標)中のSTMP懸濁液は、室温で十分な時間にわ
たって安定したままであり、比較的少ない注射量(例えば、10μL)の一定な投与が可
能であることが示唆された。
【0293】
【0294】
実施例17. 表面処理マイクロ粒子(STMP)の凝集に対するマイクロ粒子濃度及び
粒子希釈剤の影響
STMPの凝集に対する粒子濃度及び希釈剤の影響を調査するために、2つの異なるマ
イクロ粒子濃度(100mg/mL及び200mg/mL)の5倍希釈ProVisc(
商標)中のSTMP懸濁液(50μL)を4mLのPBS又はHA溶液に注入し、37℃
で2時間インキュベートした。
【0295】
図8Cの上パネル及び
図3Dに示されるように、希釈ProVisc(商標)中の20
0mg/mLのSTMPは、37℃で2時間のインキュベーション後にPBS及びHAの
両方において固結凝集体を形成することが可能であった。PBS中に懸濁した200mg
/mLのSTMPと比較して、希釈ProVisc(商標)中200mg/mLのSTM
Pの凝集はより遅いようであったが、凝集体は時間と共により固結し、粒子希釈剤中のH
A分子がSTMP間の接触を妨げ、凝集プロセスを遅らせる可能性があることが示唆され
た。一方で、その粘弾性特性のために、HAは局在化した粒子の維持を助けることができ
、STMPが凝集体を形成するのに十分な時間が可能となる。HA中で形成される粒子凝
集体はまた、PBS中で形成されるものよりも球状の形態を有するようであり、粘弾性溶
液を粒子希釈剤として使用する場合、STMP凝集の全体的性能を改善するために希釈剤
濃度の最適範囲を特定する必要があることが示唆された。
【0296】
2時間のインキュベーション後に、試験管をオービタルシェーカー上、250rpmで
振盪することによって凝集体の強度を試験した。
図8C及び
図8Dの下パネルに示される
ように、凝集体はマイクロ粒子の分散なしに又は限られた分散で振盪によって生じる剪断
応力に耐えることが可能であった。
【0297】
比較すると、100mg/mLのSTMPはPBS中で凝集体を形成するようであった
にもかかわらず(上パネル、
図8A)、凝集体はPBS中の200mg/mLのSTMP
よりも密度が低いようであり(上パネル、
図8C)、かき混ぜ下で個々のマイクロ粒子へ
と離解する傾向があった(下パネル、
図8A)。加えて、100mg/mLのSTMPは
、2時間のインキュベーション期間の終了時にHA中で1つの固結凝集体を形成すること
が可能ではなく(上パネル、
図8B)、多くのSTMPがHAにおいて250rpmでの
振盪下で分散した(下パネル、
図8B)。粒子希釈剤中のHA分子と同様に、試験媒体中
のHA分子は粒子間接触を更に減少させ、固結凝集体を形成する可能性を低減し得る。結
果から、STMPの凝集性が、おそらくは平均粒子間距離の増大及び粒子間の直接接触の
可能性の減少のためにより低いマイクロ粒子濃度で減少することが示唆された。凝集は試
験媒体中のHA等の他の分子によっても更に妨げられる可能性がある。
【0298】
要約すると、STMPの凝集は粒子濃度、粒子希釈剤及び粒子を送達する環境の影響を
受ける可能性がある。全体として、適切な条件下ではSTMPが種々の粒子希釈剤及び試
験媒体中で良好な凝集性を有することがデータから実証される。
【0299】
実施例18. ex vivoウシ眼における表面処理マイクロ粒子(STMP)の凝集
ex vivo硝子体内注射後のSTMPの凝集性を評価するために、摘出ウシ眼(J.
W. Treuth & Sons,Catonsville,MD)を利用した。眼は使用前に氷上で維持した。簡潔
に述べると、5倍希釈ProVisc(商標)中に懸濁した30μLの200mg/mL
のSTMPであるS-10を、27ゲージ針を有する0.5mL容のインスリンシリンジ
(Terumo)を用いてウシ眼の中央硝子体に注射し、3回の注射を各ウシ眼において異なる
位置で行った。37℃で2時間のインキュベーション後に眼を切開し、解剖顕微鏡を用い
てSTMPの凝集体を検査した。
図9に示されるように、注射したSTMPはウシ硝子体
において固結凝集体を形成し、明らかな粒子分散は観察されなかった。
【0300】
実施例19. in vivoウサギ眼における表面処理マイクロ粒子(STMP)の凝
集
in vivoウサギ眼における表面処理マイクロ粒子の凝集を研究するために、PB
S(
図10A)又は5倍希釈ProVisc(商標)(
図10B)中に懸濁した50μL
の200mg/mLのSTMPであるS-10を、27ゲージ針を有する0.5mL容の
インスリンシリンジ(Terumo)を用いてダッチベルテッドウサギ眼の中央硝子体に注射し
た。投与の4日後にウサギを屠殺し、眼を摘出し、即座に凍結した。凍結した眼を半分に
切断し、眼の後ろ半分を室温で3分間融解して、
図10A及び
図10Bの左の写真に示さ
れるように硝子体を眼杯から単離した。粒子を含有する凍結硝子体をカセットに入れ、硝
子体を十分に融解した。STMPの硝子体内凝集体は、鉗子を用いて硝子体から容易に分
離することができ、ウサギ眼における固結STMP凝集体の形成が証明された。
【0301】
実施例20. ウサギにおける硝子体内(IVT)注射後のスニチニブがカプセル化され
た表面処理マイクロ粒子(STMP)の分布、忍容性及び薬物動態
STMP及びNSTMPの分布及び忍容性を、有色ニュージーランドウサギ(F1)に
おいてマイクロ粒子の硝子体内注射後に研究した。ProVisc(商標)をPBS中で
5倍に希釈し、希釈剤として使用して、注射のための約200mg/mLの粒子懸濁液を
調製した。詳細な研究群及び条件を表9に提示する。
【0302】
完全な眼検査を、投与後最大7ヶ月にわたり細隙灯顕微鏡及び倒像検眼鏡を用いて行い
、眼の表面形態、前区及び後区の炎症、白内障の形成、並びに網膜変化を評価した。網膜
水晶体を使用して、硝子体におけるミクロスフェアの位置、形態及び分布を検査した。組
織学的分析も摘出及び固定した眼に対して最大7ヶ月行った。最大7ヶ月にわたり所定の
時点で、様々な眼組織(例えば硝子体、網膜及びRPE/脈絡膜)及び血漿におけるスニ
チニブの薬物レベル(ng/g)も分析した。
図11Aに表面処理マイクロ粒子(STM
P)注射後の代表的な1ヶ月目の組織像を示し、
図11Bに非表面処理マイクロ粒子(N
STMP)注射後の代表的な1ヶ月目の組織像を示す。
【0303】
【0304】
投与の直後に、全ての注射についてミクロスフェアはデポーとして硝子体内注射部位に
局在化したままであった。1ヶ月及び2ヶ月の時点で、網膜水晶体を用いた眼底検査によ
り、STMPを注射した眼において、殆どの粒子注射が硝子体内で分散することなく固結
したままであり、視力の障害又は撹乱が観察されないことが示された。対照的に、粒子分
散がNSTMPを注射した眼においてより多く観察された。
【0305】
最大7ヶ月の組織学的分析により、全体として注射の忍容性が良好であり、眼炎症又は
毒性の兆候が僅かであることが示された。いかなる処理でも網膜毒性(菲薄化及び変性等
)の兆候は観察されなかった。STMPでは、炎症が観察された眼は、注射に伴う水晶体
外傷/白内障及び関連の二次的水晶体原生ブドウ膜炎を有するもののみであった。これは
STMPではなく注射手順と関連すると考えられる。表面処理されたミクロスフェアを投
与した眼における他の炎症兆候は観察されなかった(
図11、左)。NSTMPを投与し
た眼の一部で非常に穏やかではあるが、明らかなNSTMPと関連し得る硝子体内炎症が
観察された(
図11、右)。結果から、表面処理が視力の障害又は撹乱を引き起こし得る
硝子体内での粒子分散の可能性を低減するだけでなく、ミクロスフェアと関連する潜在的
な眼内炎症も低減し、治療の全体的安全性を改善し得ることが示唆される。
【0306】
図14、
図15及び
図16に示されるように、1mg又は0.2mgのリンゴ酸スニチ
ニブを含有するSTMPを与えたウサギの網膜又はRPE/脈絡膜におけるスニチニブレ
ベルは1ヶ月、2ヶ月及び4ヶ月の時点でそれぞれVEGFR及びPDGFRに対するス
ニチニブのK
iを超えていた。低いスニチニブレベルが、血漿中でのみ1ヶ月及び2ヶ月
の時点で検出された。
【0307】
実施例21. 粒子中の薬物の純度及び不純物の決定
サンプルS-12(10.5mg)をアンバーバイアルに計り取った。N,N-ジメチ
ルアセトアミド(0.3mL)及びアセトニトリル(0.6mL)を添加し、粒子を溶解
した。水(2.1mL)を添加し、混合物を十分に混合した。N,N-ジメチルアセトア
ミド/アセトニトリル/水(v/v 1:2:7)混合物中の粒子の最終濃度は3.5m
g/mLとした。STMP S-12中の活性化合物の純度をHPLCにより決定し、表
10に報告する。結果から、表面処理がカプセル化された薬物の純度に影響を及ぼさなか
ったことが示唆される。
【0308】
【0309】
実施例22. 表面処理マイクロ粒子(STMP)の平均サイズ及びサイズ分布の測定
数ミリグラムのS-12を水に懸濁した。平均粒径及び分布を、Coulter Mu
ltisizer IV(Beckman Coulter, Inc.,Brea,CA)を用いて決定した。
図1
2に示す分布は以下の統計値を有する:20.98μmのD10、32.32μmのD5
0、41.50μmのD90、31.84μmの平均及び8.07μmの標準偏差。
【0310】
実施例23. 粒子懸濁液中のエンドトキシンレベルの決定
マイクロ粒子(5mg~10mg、S-12)を、バイオセーフティキャビネット内の
滅菌バイアルに添加した。粒子をエンドトキシンフリーPBSに懸濁した。ToxinS
ensor(商標)発色LALエンドトキシンアッセイキット(GenScript USA Inc.,Pi
scataway,NJ)及び製造業者により提供される使用説明書を用いて、サンプルのエンドト
キシンの総レベルを測定した。S-12は10μEU/mg未満という低いエンドトキシ
ンレベルを有していた。
【0311】
実施例24. 毒性研究
急性非GLP IVT研究を行い、リンゴ酸スニチニブ(遊離薬物)の眼内忍容性及び
毒性を単回IVT注射後最大7日間にわたって評価した。リンゴ酸スニチニブをリン酸緩
衝生理食塩水に配合し、0.125mg/眼又は1.25mg/眼で両側注射した(0.
1mL)。1.25mg/眼の用量では、スニチニブに関連する組織学的に重要な所見と
して、被験物質の残留、水晶体液胞/変性、硝子体における軽度~極小の炎症性細胞浸潤
、網膜変性、剥離及び壊死が挙げられた。0.125mg/眼の用量では毒性学的に重要
な所見は観察されず、これが無毒性量(NOAEL)の用量とみなされた。
【0312】
図13A、
図13B及び
図13Cに、有色ウサギに由来する網膜、硝子体及び血漿のそ
れぞれにおけるリンゴ酸スニチニブの選択PKプロファイルを示す。
【0313】
実施例25. スニチニブマイクロ粒子(非表面処理)の調製
PLGA(555mg)及びPLGA-PEG5K(5.6mg)をDCM(4mL)
に溶解した。リンゴ酸スニチニブ(90mg)をDMSO(2mL)に溶解した。次いで
、ポリマー及び薬物溶液を混合した。得られる反応混合物を、0.22μm PTFEシ
リンジフィルターに通して濾過した。得られる反応混合物を250mL容ビーカー内にお
いてPBS(200mL)中の1%PVAで希釈した後、5000rpmで1分間ホモジ
ナイズした(ポリマー/薬物溶液を、ホモジナイズ条件を用いて水相に注ぎ入れ、500
0rpmで1分間ホモジナイズした)。反応物を次にバイオセーフティキャビネット内に
おいて室温、800rpmで3時間撹拌した。粒子をビーカー内で30分間沈降させ、お
よそ150mLの上清をデカントした。マイクロ粒子懸濁液に56×gで4.5分間遠心
分離を行い、溶媒を除去した後、マイクロ粒子を水で3回洗浄した。マイクロ粒子サイズ
及びサイズ分布を、凍結乾燥前にCoulter Multisizer IVを用いて
決定した。マイクロ粒子を、FreeZone 4.5リットル卓上凍結乾燥器を用いて
凍結乾燥した。全プロセスを通して光への曝露を回避した。
【0314】
実施例26. 表面処理スニチニブマイクロ粒子の調製のための基本手順
マイクロ粒子の乾燥粉末を秤量し、小さなビーカーに入れ、撹拌子を添加した。ビーカ
ーを氷浴内に入れ、約4℃に冷却した。NaOH/EtOH溶液を、水中のNaOH(0
.25M)とEtOHとを3:7(v/v)で混合し、約4℃に冷却することによって調
製した。冷NaOH/EtOH溶液を撹拌しながらマイクロ粒子の入ったビーカーに添加
して、100mg/mLの粒子懸濁液を得た。懸濁液を約4℃で3分間撹拌し、濾過装置
に注ぎ入れて、NaOH/EtOH溶液を迅速に除去した(濾過装置は-20℃の冷凍庫
内で使用前に予め冷却する必要があった)。濾過後に、マイクロ粒子を濾過装置内におい
て氷冷脱イオン水ですすぎ、50mL容の遠心分離管に移した。各々の50mL容の遠心
分離管を冷水で満たして、5mg/mL~10mg/mLの濃度の40mLの粒子懸濁液
を得た。遠心分離管を蓄熱器に入れ、粒子を30分間沈降させた。次いで、上清をデカン
トした。粒子を冷水に再懸濁し、40μmセルストレーナーに通して濾過して、任意の大
きな凝集体を除去した。粒子を遠心分離(56×gで4.5分間)によって回収し、水で
2回洗浄した。FreeZone 4.5リットル卓上凍結乾燥器を用いて生成物を凍結
乾燥した。表面処理プロセスはおよそ4℃で行い、全プロセスを通して光への曝露を回避
した。
【0315】
実施例27. 50℃での加速in vitro薬物放出を決定する方法
マイクロ粒子(10mg)をガラスシンチレーションバイアルに添加した。4ミリリッ
トルの放出媒体(pH7.4の1×PBS中1%のTween 20)をバイアルに添加
して、混合物をボルテックスした。バイアルをFisherの汎用インキュベーター内において
オービタルシェーカー上、150rpmで50℃にて振盪した。所定の時点で適切なバイ
アルを冷却し、粒子を10分間沈降させた。次いで、放出媒体(3mL)をバイアルの上
部から慎重に除去し、新たな放出媒体(3mL)に置き換えた。次いで、バイアルをオー
ビタルシェーカーに戻し、放出媒体中の薬物の量をUV分光法によって測定した。薬物の
濃度を、薬物の標準曲線と比較することによって決定した。
【0316】
実施例28. PLAを含む生分解性表面処理マイクロ粒子(STMP)の調製
NSTMPを初めに実施例1の記載と同様に作製した。簡潔に述べると、PLA及びP
LGA-PEGをジクロロメタン(DCM)に同時溶解し、リンゴ酸スニチニブをジメチ
ルスルホキシド(DMSO)に溶解した。ポリマー溶液及び薬物溶液を混合して、均一な
溶液(有機相)を形成した。空のマイクロ粒子については薬物を含まないDMSOを使用
した。有機相を1%PVA水溶液に添加し、L5M-A実験室用ミキサー(Silverson Ma
chines Inc.,East Longmeadow,MA)を用いて5000rpmで1分間ホモジナイズして
、エマルションを得た。次いで、エマルション(溶媒を含んだマイクロ粒子)を、室温で
2時間超撹拌してDCMを蒸発させることによって硬化させた。マイクロ粒子を遠沈及び
遠心分離によって回収し、水で3回洗浄し、40μm滅菌Falcon(商標)セルスト
レーナー(Corning Inc.,Corning,NY)に通して濾過した。非表面処理マイクロ粒子(
NSTMP)を表面処理プロセスに直接使用するか、又は凍結乾燥によって乾燥させ、乾
燥粉末として-20℃で使用時まで保管した。
【0317】
NaOH及びエタノールを含有する予め冷却した溶液を、およそ4℃の氷浴において撹
拌しながらガラスバイアル内のマイクロ粒子に添加し、懸濁液を形成した。次いで、懸濁
液を所定の時間にわたって氷上で撹拌し、予め冷却した濾過装置内に注ぎ入れ、NaOH
(水溶液)/EtOH溶液を除去した。マイクロ粒子を予め冷却した水で更にすすぎ、5
0mL容の遠心分離管に移した。次いで、STMPを予め冷却した水に懸濁し、冷蔵庫内
で30分間維持し、粒子を沈降させた。上清の除去後、粒子を再懸濁し、40μmセルス
トレーナーに通して濾過して、大きな凝集体を除去した。続いて、粒子を室温にて水で2
回洗浄し、一晩凍結乾燥させた。
【0318】
【0319】
STMPのin vitro凝集性を、実施例3の記載と同様に特徴付けた。簡潔に述
べると、STMPをPBS中に200mg/mLで懸濁し、30μL~50μLの懸濁液
を37℃に予め加温した1.5mL~2.0mLのPBSに注入した。37℃で2時間の
インキュベーション後に、マイクロ粒子の凝集性を穏やかな機械的かき混ぜ後に目視観察
及び/又は撮像によって評定した。全体として、表11に記載される全てのSTMPが3
7℃で2時間のインキュベーション時に凝集することが可能であった。
【0320】
実施例29. ウサギにおける硝子体内(IVT)注射後のPLAを含むスニチニブカプ
セル化STMPの分布、忍容性及び薬物動態
PLAを含むスニチニブカプセル化STMPを、PBS中で5倍希釈したProVis
c(商標)に懸濁し、50μLの粒子懸濁液中1mgのリンゴ酸スニチニブという標的用
量を得た。忍容性及び薬物動態を、有色ニュージーランドウサギ(F1)においてSTM
P懸濁液の硝子体内注射後に研究した。投与後の所定の時点で、完全な眼検査を行い、様
々な眼組織(例えば硝子体、網膜及びRPE/脈絡膜)におけるスニチニブ(ng/g)
の薬物レベルも分析した(
図19)。
【0321】
最大6ヶ月にわたる眼検査により、STMPは、ウサギ眼における忍容性が良好であり
、硝子体内で分散することなく固結したままであり、視力の障害又は撹乱が観察されない
ことが示された。
図19に示されるように、1mgのリンゴ酸スニチニブを含有するST
MPを与えたウサギの網膜又はRPE/脈絡膜におけるスニチニブレベルは、10日目及
び3ヶ月目にVEGFR及びPDGFRに対するスニチニブのK
iを超えていた。
【0322】
実施例30. より大規模(100g以上)での表面処理マイクロ粒子(STMP)の作
製
NSTMPを、連続フロー水中油型乳化法を用いて作製した。パイロットバッチのスケ
ールは100g~200gとした。分散相(DP)及び連続相(CP)を初めに調製した
。プラシーボマイクロ粒子については、PLGA及びPLGA-PEGポリマーをDCM
に同時溶解することによってDPを調製した。CPは0.25%PVA水溶液とした。薬
物担持マイクロ粒子については、リンゴ酸スニチニブをDMSOに溶解し、DCM中のポ
リマー溶液と混合することによってDPを調製した。CPはPBS(pHおよそ7)中の
0.25%PVA溶液とした。詳細な配合パラメーターを表12に挙げる。エマルション
を、高剪断インラインミキサーを用いてDP及びCPを混合することによって作製した。
DP中の溶媒をCPで希釈し、エマルション小滴を凝固させ、ポリマーマイクロ粒子とし
た。次いで、新たな水を添加し、溶媒を含有する水を中空糸フィルターにより除去する体
積交換原理を用いてマイクロ粒子を水で洗浄した。洗浄したマイクロ粒子を、続いてNS
TMPの表面修飾のためにNaOH及びエタノールを含有する溶液に懸濁した。この工程
はジャケット付き容器内で行い、懸濁液の温度を8℃前後に維持した。幾つかの表面処理
条件を表12に示すように試験した。水中での付加的な洗浄並びに工程間サンプルのマイ
クロ粒子及び薬物濃度の分析の後に、STMP懸濁液を標的濃度に調整した後、ガラスバ
イアルに充填した。一部のバッチでは、マンニトールを最終懸濁液に添加した。次いで、
バイアルを凍結乾燥し、密閉した。製造プロセスは無菌的に完了することができ、バイア
ル内の最終生成物を最終的に電子ビーム又はガンマ線照射によって滅菌することもできる
。
【0323】
【0324】
STMPのin vitro凝集性を、実施例3と同様の方法によって特徴付けた。簡
潔に述べると、STMPをPBS中に200mg/mLで懸濁し、30μL~50μLの
懸濁液を37℃に予め加温した1.5mL~2.0mLのPBSに注入した。37℃で2
時間のインキュベーション後に、マイクロ粒子の凝集性を穏やかな機械的かき混ぜ後に目
視観察及び/又は撮像によって評定した。概して、0.75mM NaOH及び40%以
上のEtOHを含有する溶液で処理した全てのSTMPは、37℃でのインキュベーショ
ン時に凝集することが可能であった。ヒアルロネート溶液への懸濁及びPBSへの注入の
後に、より高濃度のEtOHで処理したSTMPは、PBS中で浮遊するより高い傾向を
示し、表面処理の結果として湿潤性の低減及び表面疎水性の増大が示唆された。
【0325】
本明細書は本発明の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、本明細書に記
載されるような本発明の範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができ
ることが当業者には理解される。したがって、本明細書は限定的意味ではなく例示的意味
で考えられ、全てのかかる修正が本発明の範囲に含まれることが意図される。