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特開2023-52494抗凝固薬の即時放出医薬製剤及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052494
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】抗凝固薬の即時放出医薬製剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4365 20060101AFI20230404BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230404BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230404BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61K31/4365
A61K9/20
A61K9/30
A61K9/48
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/44
A61P7/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006319
(22)【出願日】2023-01-19
(62)【分割の表示】P 2020554512の分割
【原出願日】2018-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】520380510
【氏名又は名称】チャンスー ヴィーケア ファーマテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ヤンレイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シュエファン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ユアン
(72)【発明者】
【氏名】スン ホンビン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン ヤンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ヨンキャン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗凝固薬の即時放出医薬製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】抗凝固薬の即時放出医薬製剤は、ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される形態を含み、前記の製剤は錠剤またはカプセルの形態であり、前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態はD90<50μmである適切な粒子径で提供される。本発明において得られる薬物含有粒子は、これによって形成される医薬製剤がインビトロでの溶解試験で迅即な時放出特性を示し、インビボでの薬物動態においてより高い薬物吸収程度(AUC)や薬物吸収速度(Cmax)のようなかなりのメリットがある。本発明は、さらに本発明において開示される薬物含有粒子の処方により、任意の調製工程の組み合わせによって優れた安定性を有するカプセルまたは錠剤の即時放出製剤を得ることができる、前記の抗凝固薬の即時放出医薬製剤を調製するための方法を提供するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される形態を含む抗凝固薬の即時放出医薬製剤であって、前記製剤は錠剤またはカプセルの形態であり、前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態はD90<50μmである適切な粒子径で提供されることを特徴とする、抗凝固薬の即時放出医薬製剤。
【請求項2】
a)ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態であるビカグレル活性成分、
b)一種または複数種の充填剤、
c)一種または複数種の崩壊剤、
d)一種または複数種の結合剤、
e)一種または複数種の流動助剤・滑剤
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の即時放出医薬製剤。
【請求項3】
以下の成分:
a)錠剤またはカプセル充填物の0.5~30重量%を占める前記ビカグレル活性成分、
b)錠剤またはカプセル充填物中に1~95重量%の範囲内で存在する前記充填剤、
c)錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在する前記結合剤、
d)錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在する前記崩壊剤、
e)錠剤またはカプセル充填物中に0%~5重量%の範囲内で存在する前記流動助剤・滑剤、
f)0~5重量%の範囲内で存在する前記安定化剤
からなり、
全ての成分の百分率の合計が100%であることを特徴とする、
請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態の粒子径が、D90<30μmであることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態の粒子径が、D90<15μmであることを特徴とする、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
a)D90<50μmである微粉化されたビカグレル活性成分粉末を提供する工程であって、前記ビカグレル活性粉末とはビカグレルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または他の担体の微粉化形態である、工程、
b)ビカグレル活性成分粉末と添加剤とを混合し、薬物含有粒子を作製する工程、
c)薬物含有粒子を充填、打錠またはフィリングの方法により、ビカグレルのカプセルまたは錠剤を得る工程
を含むことを特徴とする、抗凝固薬の即時放出医薬製剤の調製方法。
【請求項7】
前記工程c)において、薬物含有粒子に一種または複数種の安定化剤を加えて、充填、打錠またはフィリングを行い、安定化剤と薬物含有粒子との重量比が0~5:100であることを特徴とする、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記安定化剤が、フマル酸、クエン酸、クエン酸、硬化ヒマシ油、硬化大豆油及びベヘン酸グリセリルから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
安定化剤と薬物含有粒子との重量比が、0.2~1:100であることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項10】
前記の工程c)で得られる錠剤に、さらにコーティング工程を行い、ビカグレルのコーティング錠が得られ、前記コーティング成分の中に、ポリエチレングリコール及び滑石粉が含まれないことを特徴とする、請求項6に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に関し、即時放出医薬製剤、具体的には抗凝固薬であるビカグレル(Vicagrel)及びその許容される塩担体の即時放出錠剤またはカプセルを提供し、また上記即時放出医薬製剤の調製方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ビカグレルは、新規の血小板凝集阻害薬の一つであり、「クロピドグレル耐性」やプラスグレルの高出血リスクなどの既存の抗血小板薬の臨床応用上の欠点を改めるために使用できる。ビカグレルは、臨床研究の段階に入っており、より安全で効果的な抗血小板薬への発展が期待される。
【0003】
中国特許CN103254211B(特許文献1)には、ビカグレルとその誘導体の調製方法を開示しており、中国特許CN103720700A(特許文献2)は、血栓症によって引き起こされる疾患を予防または治療するためのビカグレルとアスピリンの組み合わせを開示しているが、現在ビカグレルを単一活性成分とする製剤の処方プロセスに関して、報告はない。抗凝固薬としては、治癒効果を発揮するために、体内での有効血中濃度に速やかに達する必要があり、特に経口即時放出製剤の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】CN103254211B
【特許文献2】CN103720700A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ビカグレルの即時放出製剤を提供することにある。これに基づいて、本発明は、ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態を含む、カプセル剤、錠剤または粒子剤の形態であり得る即時放出用の経口薬用製剤を設計する。
【0006】
本発明に採用された技術案は、次のようである:
ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される形態を含む抗凝固薬の即時放出医薬製剤であって、前記の製剤は、錠剤またはカプセルの形態であり、前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態はD90<50μmである適切な粒子径で提供される、抗凝固薬の即時放出医薬製剤。
【0007】
本発明における前記ビカグレルの薬学的に許容される形態には、ビカグレルの薬学的活性を有するビカグレルの塩、溶媒和物、及び他の薬学的に許容される担体が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
本発明により提供される即時放出製剤において、原料薬は、粉砕されており、その粒子径はD90<50μmが好ましく、さらに好ましくはD90<30μm、最も好ましくはD90<15μmである。
【0009】
本発明の一実施形態では、即時放出医薬製剤は、カプセルに充填されるまたは錠剤を形成するための薬物含有粒子の形態であり、
a)ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態であるビカグレル活性成分、
b)一種または複数種の充填剤、
c)一種または複数種の崩壊剤、
d)一種または複数種の結合剤、
e)一種または複数種の流動助剤・滑剤
が含まれる。
【0010】
好ましくは、その組成比は、以下の通りである:
a)前記ビカグレル活性成分は、錠剤またはカプセル充填物の0.5~30重量%を占め、
b)充填剤は、錠剤またはカプセル充填物中に1~95重量%の範囲内で存在し、
c)結合剤は、錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在し、
d)崩壊剤は、錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在し、
e)流動助剤/滑剤は、錠剤またはカプセル充填物中に0~5重量%の範囲内で存在し、
f)安定化剤は、0~5重量%の範囲内で存在し、
全ての組成の百分率の合計は100%である。
【0011】
一実施形態では、薬物含有粒子は、ビカグレル及び一種または複数種の充填剤を含む。適切な充填剤には、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、α化デンプン・デンプン、マンニトール、あるいは当技術分野で既知の他の一般的に使用される充填剤、あるいはそれらの一種または複数種の組み合わせが含まれる。他の実施形態では、薬物含有粒子は、以下のアジュバントの一種または複数種を任意に含む:(1)一種または複数種の結合剤、(2)一種または複数種の崩壊剤、(3)一種または複数種の流動助剤・滑剤。適切な結合剤には、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン及び当技術分野で既知の他のものが含まれる。適切な崩壊剤には、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン及び当技術分野で既知の他のものが含まれる。適切な流動助剤・滑剤には、例えば、二酸化珪素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム及び当技術分野で既知の他のものが含まれる。
【0012】
前記薬物含有粒子をカプセルに充填するまたは錠剤に打錠する場合、ビカグレルは、単位製剤あたり1~30mgを含むように存在し、1日用量が1~30mgであり、1日に1~4回で単回または複数回投与することができる。
【0013】
本発明は、抗凝固薬であるビカグレル、またはビカグレルの塩、溶媒和物、またはその他の薬学的に許容される担体を含む、錠剤及びカプセル製剤の形態が含まれる即時放出医薬製剤を提供する。
【0014】
本発明の即時放出製剤は、カプセルまたは錠剤であり得、前記即時放出製剤は、具体的にはカプセルに充填されるかまたは錠剤に打錠される薬物含有粒子として提供される。
【0015】
本明細書に記載される「薬物含有粒子」は、高せん断造粒、ロールプレス造粒、スプレードライ造粒、積層造粒などの方法により内部アジュバントを造粒し、さらに外部アジュバントと混合し形成された粒子が含まれ、また適切な賦形剤の選択でAPI(薬学的活性成分;Active pharmaceutical ingredients)と直接混合することによって形成される混合粉末も含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の即時放出製剤は、カプセルを充填するまたは打錠するための粒子、微粒子、粉末の形成に寄与する本明細書に示される医薬賦形剤を含み得る。
【0017】
本発明の薬物含有粒子における比率は、打錠するまたはカプセルを充填する前の安定化剤(任意に)が含まれない材料の重量百分率に計量上等しい。
【0018】
本発明の薬物含有粒子において、ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態は、薬物含有粒子中の0.5重量%~30重量%、好ましくは1%~20%を占める。
【0019】
薬物含有粒子中の充填剤は、薬物含有粒子の1重量%~95重量%の範囲内で存在し、より好ましくは、薬物含有粒子の10重量%~85重量%の範囲内で存在する。前記充填剤としては、微結晶性セルロース、ラクトース、デンプン、α化デンプン、マンニトール、ソルビトール、及び当技術分野で既知の一般的に使用される充填剤が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、微結晶性セルロース、ラクトース、α化デンプン及びマンニトールであり、その中で、ラクトースは薬物含有粒子の10%~75%の範囲内で存在し、マンニトールは薬物含有粒子の10%~75%の範囲内で存在し、α化デンプンは薬物含有粒子充填物の5%~65%の範囲内で存在し、微結晶性セルロースは薬物含有粒子の10%~60%の範囲内で存在する。
【0020】
結合剤は、薬物含有粒子の0重量%~20重量%の範囲内の量で存在し、1重量%~10重量%の範囲が好ましい。適切な結合剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース及び他の慣用の結合剤の一種または複数種の混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0021】
崩壊剤は、薬物含有粒子の0重量%~20重量%の範囲内の量で存在し、1重量%~10重量%の範囲が好ましい。適切な崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポリビニルピロリドンが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0022】
流動助剤・滑剤は、薬物含有粒子の0重量%~5重量%の範囲内の量で存在し、0.2%~2%の範囲が好ましい。適切な流動助剤・滑剤としては、硬化植物油、二酸化珪素、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、好ましくステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウムが含まれる。
【0023】
本発明によれば、薬物含有粒子の好ましい処方は、以下の通りである:
【0024】
本発明は、以下の工程を含む前記即時放出製剤の調製方法をさらに提供する:
a)D90<50μmである微粉化されたビカグレル活性成分粉末を提供する工程であって、ビカグレル活性粉末とはビカグレルまたはその薬学的に許容される塩の微粉化形態である、工程。
b)ビカグレル活性成分粉末と添加剤とを混合し、薬物含有粒子を作製する工程。
c)薬物含有粒子を充填、打錠またはフィリングの方法により、ビカグレルのカプセルまたは錠剤を得る工程。
【0025】
本発明の方法における工程a)において、微粉化の粉砕方法は、当技術分野で慣用の粉砕技術によって行い、前記の技術は、研磨、押出、衝突、及び切断が含まれるが、これらに限定されない。使用される粉砕装置は、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミルが含まれるが、これらに限定されない。より好ましくは、ジェットミル装置が使用される。
【0026】
本発明の方法における工程b)において、薬物含有粒子の調製は、乾式造粒、湿式造粒または直接混合の方式が用いられるが、具体的には:
b1)ビカグレル活性成分を一種または複数種の充填剤と任意の順序で混合する。他の実施形態において、ビカグレルまたはその薬学的許容される担体を、一種または複数種の充填剤及び任意の一種または複数種の次の化合物と任意の順序で混合し得る:一種または複数種の結合剤、一種または複数種の崩壊剤、一種または複数種の流動助剤・滑剤。前記の混合方法は、当技術分野で慣用の混合装置を使用し、三次元混合機、V型混合機、攪拌混合機、流動混合機が含まれるが、これらに限定されない。
b2)任意で、湿式または乾式の方法によって造粒する。湿式造粒の方法により、b1)の混合後の材料を湿式造粒装置に通し、結合剤をスプレーして結合させ、粒子を形成してから、乾燥させて整粒する;乾式造粒の方法により、b1)の混合後の材料に滑剤を加えて、乾式造粒機でロールプレスして材料ストリップを作製し、これを粉砕、篩分して粒子を得る。前記湿式造粒方法は、高せん断混合造粒、流動床造粒、無孔パン積層造粒等による慣用方法が含まれる。前記乾式造粒とは、予め材料を押さえて、水平または垂直のローラーを通して材料ストリップを作製し、これを粉砕して粒子を形成することを意味する。
b3)任意で、湿式造粒の方法によれば、粒子を乾燥させ、乾燥プロセス中の材料温度を60℃以下に制御する必要がある;前記乾燥プロセスで使用される装置は、ブラスト乾燥オーブン、流動床が含まれるが、これらに限定されない。
b4)工程b1)、b2)またはb3)を経た粒子を、流動助剤・滑剤と混合しおよび/または添加する必要がある崩壊剤、充填剤と混合し、薬物含有粒子を得る。
【0027】
本発明の方法における工程c)において、薬物含有粒子に一種または複数種の安定化剤を加えて充填、打錠またはフィリングしてもよく、安定化剤と薬物含有粒子との重量比は、0~5:100であり、好ましくは0.2~1:100である。
【0028】
前記安定化剤は、フマル酸、クエン酸、クエン酸、硬化ヒマシ油、硬化大豆油、ベヘン酸グリセリル、メチルシリコーンオイル、及びジメチルシリコーンオイルから選ばれる。
【0029】
さらに、c)で得られた錠剤について、コーティング工程により、ビカグレルのコーティング錠を得ることができ、前記コーティング成分はポリエチレングリコール及び滑石粉を含まない。コーティング液のフィルム形成成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルアルコールであり得、酸化鉄、二酸化チタンなどの当技術分野で慣用のコーティング用レーキ/顔料を含むレーキを加えて色を調整することができる。市販のコーティング処方については、一般的に可塑化剤であるポリエチレングリコール及び粘着防止剤である滑石粉が含まれるが、本発明はポリエチレングリコール及び滑石粉が含まない。
【0030】
本発明により得られた薬物含有粒子から形成される医薬製剤は、インビトロでの溶解試験で迅速な即時放出放の特性を示し、そしてインビボでの薬物動態においてかなりのメリットを示し、より高い薬物吸収程度(AUC)や薬物吸収速度(Cmax)を示す。
【0031】
本発明により提供される薬物含有粒子の処方及び調製方法によれば、高い生体内生物学的利用能及び血中濃度を有する即時放出製剤を提供することができ、また本発明により提供される薬物含有粒子の処方によれば、任意の調製工程の組み合わせにより、安定性に優れたカプセルまたは錠剤の即時放出製剤を得ることができる。
[本発明1001]
ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される形態を含む抗凝固薬の即時放出医薬製剤であって、前記製剤は錠剤またはカプセルの形態であり、前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態はD90<50μmである適切な粒子径で提供されることを特徴とする、抗凝固薬の即時放出医薬製剤。
[本発明1002]
a)ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態であるビカグレル活性成分、
b)一種または複数種の充填剤、
c)一種または複数種の崩壊剤、
d)一種または複数種の結合剤、
e)一種または複数種の流動助剤・滑剤
を含むことを特徴とする、本発明1001の即時放出医薬製剤。
[本発明1003]
以下の成分:
a)錠剤またはカプセル充填物の0.5~30重量%を占める前記ビカグレル活性成分、
b)錠剤またはカプセル充填物中に1~95重量%の範囲内で存在する前記充填剤、
c)錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在する前記結合剤、
d)錠剤またはカプセル充填物中に0~20重量%の範囲内で存在する前記崩壊剤、
e)錠剤またはカプセル充填物中に0%~5重量%の範囲内で存在する前記流動助剤・滑剤、
f)0~5重量%の範囲内で存在する前記安定化剤
からなり、
全ての成分の百分率の合計が100%であることを特徴とする、
本発明1002の製剤。
[本発明1004]
前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態の粒子径が、D90<30μmであることを特徴とする、本発明1001の製剤。
[本発明1005]
前記ビカグレルまたはその薬学的に許容される形態の粒子径が、D90<15μmであることを特徴とする、本発明1004の製剤。
[本発明1006]
a)D90<50μmである微粉化されたビカグレル活性成分粉末を提供する工程であって、前記ビカグレル活性粉末とはビカグレルまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または他の担体の微粉化形態である、工程、
b)ビカグレル活性成分粉末と添加剤とを混合し、薬物含有粒子を作製する工程、
c)薬物含有粒子を充填、打錠またはフィリングの方法により、ビカグレルのカプセルまたは錠剤を得る工程
を含むことを特徴とする、抗凝固薬の即時放出医薬製剤の調製方法。
[本発明1007]
前記工程c)において、薬物含有粒子に一種または複数種の安定化剤を加えて、充填、打錠またはフィリングを行い、安定化剤と薬物含有粒子との重量比が0~5:100であることを特徴とする、本発明1006の調製方法。
[本発明1008]
前記安定化剤が、フマル酸、クエン酸、クエン酸、硬化ヒマシ油、硬化大豆油及びベヘン酸グリセリルから選択されることを特徴とする、本発明1007の調製方法。
[本発明1009]
安定化剤と薬物含有粒子との重量比が、0.2~1:100であることを特徴とする、本発明1007の調製方法。
[本発明1010]
前記の工程c)で得られる錠剤に、さらにコーティング工程を行い、ビカグレルのコーティング錠が得られ、前記コーティング成分の中に、ポリエチレングリコール及び滑石粉が含まれないことを特徴とする、本発明1006の調製方法。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、粒子径が異なる場合でのビカグレル製剤の溶出度曲線である。
図2図2は、異なる粒子径で調製されたビカグレル製剤をイヌに投与した後のM9-2の血中濃度曲線である。A:D90=23μm;B:D90=86μm;C:D90=9μm;D:D90=49μm。
図3図3は、異なる粒子径で調製されたビカグレル製剤をイヌに投与した後のM15-1血中濃度曲線である。A:D90=23μm;B:D90=86μm;C:D90=9μm;D:D90=49μm。
図4図4は、異なる粒子径で調製されたビカグレル製剤をイヌに投与した後のM15-2血中濃度曲線である。A:D90=23μm;B:D90=86μm;C:D90=9μm;D:D90=49μm。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本発明の具体的な実施形態は、以下の通りであり、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変形を行うことができるが、そのような改善は、本出願に添付された請求項の範囲内に含まれると考えられる。実施例は、本発明の革新を示すための本発明の内容のさらなる説明である。
【実施例0034】
実施例1 ビカグレルカプセル
【0035】
ハンマーミル(Frewitt)及び0.20mmメッシュにより、回転数6000rpm、1kg/min供給速度でビカグレルを粉砕し、測定してD90=43μmであった。粉砕したビカグレル、微結晶性セルロース、及びラクトースを、三次元混合機で15min混合し、硬化ヒマシ油を加えて混合し、得られた粒子を3号カプセルに充填した。
【0036】
実施例2 ビカグレルカプセル
【0037】
QL-100型ジェットミルによって原料を粉砕し、圧力0.8MPa、作業温度15℃、粉砕時間10minで、D90=9μmであった。粉砕した塩酸ビカグレル、微結晶性セルロース、及びラクトース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、三次元混合機により35rpmで10min混合し、高せん断湿式造粒機に取り出して、500rpmで攪拌し、1000rpmの切断で水を加えて造粒し、粒子を16メッシュの篩に通して整粒し、ブラスト乾燥オーブンの中で60℃で乾燥させ、取り出して、24メッシュの篩に通して整粒し、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合した。薬物含有粒子を3号カプセルに充填して、ビカグレルの即時放出カプセルを得た。
【0038】
実施例3 ビカグレルカプセル
【0039】
粉砕したビカグレル塩、α化デンプン、ラクトース、及びカルボキシメチルスターチナトリウムを流動床に入れて、10min流動混合を開始し、結合剤として5%ヒドロキシプロピルメチルセルロースを調製した。送風温度80℃、床層維持温度40~50℃で結合剤をスプレーして粒子を形成した後、床層維持温度50~60℃で30min乾燥させて取り出し、ステアリルフマル酸ナトリウムを加えて5min混合し、カプセルに充填した。
【0040】
実施例4
ビカグレルを粒子径が異なる粉末に粉砕し、薬物含有粒子を調製してカプセルに充填し、USPII法に従って、0.2%SDSを含むpH4.0酢酸塩緩衝液をメディアとして、50rpmで溶出率を測定した。結果を次の表と図1に示す。
【0041】
処理1、2、3において、API粒子径が50μm以下である場合に、30minで85%を超える放出率を満たし、特に粒子径が30μm未達である場合に、15minで放出率が85%を超えた。処理4及び処理5において、API粒子径>50μmであり、そのインビトロでの放出速度は遅く、45minでの溶出速度は85%未満であった。
【0042】
実施例2での方法により、粒子径が異なる原料からビカグレルカプセルを調製し、ビーグル犬に投与した後、血中濃度及び活性代謝産物の薬物動態パラメーターを測定した。具体的には、次のように行う:
健常のビーグル犬8匹、雄、7~8か月齢、体重8~10kgを使用し、クロスオーバー試験設計を使用した。試験の前に12h絶食させ、投与の4h後に食物を提供し、全試験中水を禁止しなかった。7日間ごとに清掃した。投与する時に、水を40ml服用させた。投与する前(0h)及び投与後10min、20min、40min、1.0h、1.5h、2.0h、4.0h、6.0h、8.0h、12h及び24hの設定時点で、四肢の静脈から静脈血を1ml採取し、関連する基準の操作手順に従って試料を処理し、処理した後で、試験のために-70℃の冷蔵庫に冷凍保存した。LC-MS/MS法により、血漿中のビカグレルの代謝物M9-2、活性代謝物M15-1及びM15-2の濃度を測定した。Phoenix Win Nonlin 6.4ソフトウェアのノンコンパートメント法を使用して、ビーグル犬に投与した後のビカグレルの代謝物M9-2、活性代謝物M15-1及びM15-2の主な薬物動態パラメーターを計算した。結果を次の表に示す(n=8):
*は、粒子径23、49、86μm群に対してP<0.05である。
は、粒子径86μm群に対してP<0.05である。
【0043】
M9-2構造式は:
である。
M15-1構造式は:
である。
M15-2構造式は:
である。
【0044】
異なる粒子径で調製されたビカグレル製剤をイヌに投与した後のM9-2、M15-1及びM15-2血中濃度曲線を、それぞれ図2図3及び図4に示した。
【0045】
原料の粒子径が50μm未満である場合は、86μm粒子径群と比べて、薬物のAUCの有意な向上が見られ、特に薬物の粒子径が15μm未満である場合は、活性代謝産物A、B、Cの血中濃度-時間曲線下面積、及び活性代謝産物B、CのCmaxが、他の粒子径>15μm群と比べて有意に向上した。これは、抗凝固薬の薬効を発揮するために非常に有利である。
【0046】
実施例5 ビカグレル錠
【0047】
粉砕したビカグレル、α化デンプン、マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを、高せん断造粒機で5min攪拌混合し、4m/sの線速度で攪拌し、800rpmのダイシングブレードで切断し、水を加えて造粒し、粒子を10メッシュの篩目で整粒し、流動床で乾燥させ、乾燥中に床層維持温度が60℃未満であった。粒子を取り出して、24メッシュの篩で整粒し、ステアリルフマル酸ナトリウムを加えて混合し、10パンチ回転打錠機(ZP-10A、国薬龍立)で、8mmの浅い凹型パンチで打錠した。
【0048】
実施例6 ビカグレル錠
【0049】
粉砕したビカグレル、α化デンプン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、及び半量のクロスカルメロースナトリウム、半量のステアリン酸マグネシウムを、V型混合機で10min混合し、材料を乾式造粒機中(LGJ-300)で供給速度20Hz、ローラー回転数15rpm、押出力6bar、20メッシュの篩、切断回転数300rpmのパラメーターで造粒し、粒子と残りの崩壊剤と滑剤とを5min混合し、薬物含有粒子を得、さらに薬物含有粒子を打錠操作に供した。
【0050】
実施例7 ビカグレル錠
【0051】
粉砕したビカグレル、α化デンプン、ラクトース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを、湿式造粒機で攪拌混合し、水を加えて造粒し、16メッシュの篩で粒子を整粒した後、ブラスト乾燥オーブンにより55℃で乾燥させ、取り出して錐形整粒機により研磨整粒し、ステアリルフマル酸ナトリウムを加えて3min混合し、安定化剤であるベヘン酸グリセリルを加えて、3min混合して取り出し、硬度≧6kgfである7.5mmの浅い凹型パンチで打錠した。
【0052】
実施例8 ビカグレル錠
【0053】
粉砕したビカグレル、α化デンプン、マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを、湿式造粒機で攪拌混合し、水を加えて造粒し、16メッシュの篩で粒子を整粒した後、ブラスト乾燥オーブンにより55℃で乾燥させ、取り出して錐形整粒機で研磨整粒し、ステアリルフマル酸ナトリウムを加えて3min混合し、安定化剤であるベヘン酸グリセリルを加えて3min混合して取り出し、硬度≧6kgfである7.5mmの浅い凹型パンチで打錠した。
【0054】
実施例9 ビカグレルコーティング錠
実施例8で得られた錠剤コアをBG-10型コーティング機でコーティングし、オパドライIIコーティングパウダーを使用し、コーティングパウダー中にはポリエチレングリコール及び滑石粉は含まれない。錠剤コアは600g、送風温度は50℃、コーティング流速は4g/min、送風量は60m/h、床層温度は35~45℃であった。ビカグレルコーティング錠を得た。
【0055】
実施例10 安定化剤の作用の比較
薬物含有粒子を得た後に安定化剤を加えなかったこと以外、実施例7、実施例8によりビカグレル錠を調製した。得られた錠剤をHDPE瓶に密封し、60℃で10日間置いて、関連物質及び溶出度を測定した。
【0056】
薬物含有粒子を安定化剤と混合した後に打錠した場合、関連物質の増加が減少し、溶出度も大幅に低下していないことがわかる。
【0057】
実施例11 コーティング錠の安定性の比較
コーティング液に慣用の可塑化剤であるポリエチレングリコール及び粘着防止剤である滑石粉が含まれる以外に、実施例8に従ってビカグレル錠の調製を行い、実施例9中のパラメーターによりコーティングした。
【0058】
驚くべきことに、ビカグレル錠は、コーティング成分がポリエチレングリコール及び滑石粉を含まない場合でも、良好な皮膜を提供し得、且つ調製しやすいが、その安定性は上記成分を加えたコーティング錠と比べて有意に増加した。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)錠剤またはカプセル充填物の0.5~30重量%の範囲内のビカグレル化合物またはその薬学的に許容される塩、
b)錠剤またはカプセル充填物の1~95重量%の範囲内の、微結晶性セルロース、ラクトース、デンプン、α化デンプン、マンニトール、およびソルビトールから選択される1または複数の充填剤、
c)錠剤またはカプセル充填物の0~20重量%の範囲内の、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、およびエチルセルロースから選択される1または複数の結合剤、
d)錠剤またはカプセル充填物の0~20重量%の範囲内の、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびクロスポリビニルピロリドンから選択される1または複数の崩壊剤、および
e)錠剤またはカプセル充填物の0~5重量%の範囲内の、硬化植物油、二酸化珪素、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリルフマル酸ナトリウムから選択される1または複数の流動助剤・滑剤
を含み、
前記ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される塩が、の形態で提供され、前記子の90%(D90)が50μm未満である、錠剤またはカプセルの形態である即時放出医薬製剤。
【請求項2】
以下の成分:
a)錠剤またはカプセル充填物の0.5~30重量%の範囲内の前記ビカグレル化合物またはその薬学的に許容される塩、
b)錠剤またはカプセル充填物中の1~95重量%の範囲内の前記充填剤、
c)錠剤またはカプセル充填物中の0~20重量%の範囲内の前記結合剤、
d)錠剤またはカプセル充填物中の0~20重量%の範囲内の前記崩壊剤、
e)錠剤またはカプセル充填物中の0~5重量%の範囲内の前記流動助剤・滑剤
からなり、
全ての成分の百分率の合計が100%であることを特徴とする、
請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記D90が30μm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記D90が15μm未満であることを特徴とする、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
a)前記D90が50μm未満である微粉化されたビカグレル活性成分粉末を提供する工程であって、前記ビカグレル活性成分粉末とはビカグレル化合物またはその薬学的に許容される塩である、工程、
b)前記ビカグレル活性成分粉末と、(i)1または複数の充填剤、(ii)1または複数の結合剤、(iii)1または複数の崩壊剤、および(iv)1または複数の流動助剤・滑剤とを混合し、薬物含有粒子を作製する工程、
c)前記薬物含有粒子フィリングおよび打錠して、ビカグレルのカプセルまたは錠剤を得る工程
を含むことを特徴とする、請求項1記載の即時放出医薬製剤の調製方法。
【請求項6】
前記の工程c)で得られる錠剤に、さらにコーティング工程を行い、ビカグレルのコーティング錠が得られ、前記コーティング成分の中に、ポリエチレングリコール及び滑石粉が含まれないことを特徴とする、請求項5に記載の調製方法。