(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052539
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ろう付け用材料
(51)【国際特許分類】
B23K 35/14 20060101AFI20230404BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20230404BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20230404BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230404BHJP
B23K 35/30 20060101ALN20230404BHJP
B23K 35/22 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
C22C38/00 302Z
C22C38/58
B23K1/00 330L
B23K1/00 330H
B23K35/30 310E
B23K35/22 310A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023007028
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2019530664の分割
【原出願日】2017-12-11
(31)【優先権主張番号】1651661-9
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】502298310
【氏名又は名称】スウェップ インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ダールベリ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ボーネゴード ニクラス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ろう付けするための方法を提供する。
【解決手段】プレス加工された稜と溝とのパターンが設けられた複数の熱交換器プレートを含むろう付けプレート熱交換器をろう付けするためのろう付け材料であり、少なくとも1種類の融点降下元素と熱交換器プレートの組成に似た金属とを含むろう付け合金を含むろう付け用材料でろう付けする方法であり、ろう付け材料は、ろう付け温度より低い固相、液相温度を有する融解ろう付け材料の粒子とろう付け温度を上回る固相、液相温度を有する非融解ろう付け材料の粒子との間の混合物を含み、および、ここで、前記ろう付け用合金の50重量%以上が前記非融解ろう付け用材料を熱交換器プレートの接触面に施用する施用ステップと、前記ろう付け用材料を、融解ろう付け用材料の粒子の液相以上の温度で、非融解ろう付け用材料の粒子の固相温度以下の温度であるろう付け温度まで加熱する加熱ステップと、を有する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う熱交換器プレートの間に接触点を提供し、これによって、前記熱交換器プレートは、互いから距離を置いて保持され、前記熱交換器プレートの間に媒質が熱を交換するためのプレート間流路が形成されるようになっている、プレス加工された稜と溝とのパターンが設けられた複数の熱交換器プレートを含むろう付けプレート熱交換器をろう付けするためのろう付け用材料であり、前記ろう付け用材料は、少なくとも1種類の融点降下元素と前記熱交換器プレートの組成に似た金属を含むろう付け用合金とを含むろう付け用材料であって、
前記ろう付け用材料は、ろう付け温度より低い固相温度および液相温度を有する融解ろう付け用材料の粒子と、前記ろう付け温度を上回る固相温度および液相温度を有する非融解ろう付け用材料の粒子との間の混合物を含み、前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料との間の比は、前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料とによって形成される合金が、前記ろう付け温度より低い固相温度と前記ろう付け温度より高い液相温度とを有するようなものであることを特徴とする、ろう付け用材料。
【請求項2】
前記融解ろう付け用材料粒子は、融点降下元素としてホウ素を含む、請求項1に記載のろう付け用材料。
【請求項3】
前記融解ろう付け用材料粒子は、1.5~3%のMo、10~15%のNi、16~20%のCr、7~10%のSi、5~7%のMn、1~2%のBを含み、残りはFeである、請求項2に記載のろう付け用材料。
【請求項4】
前記非融解ろう付け用材料粒子は、1.5~3のMo、10~15%のNi、16~20%のCr、5~7%のSi、5~7%のMnを含み、残りはFeである、請求項1~3のいずれか一項に記載のろう付け用材料。
【請求項5】
前記融解ろう付け用材料の組成と前記非融解ろう付け用材料の組成とは、前記融解ろう付け用材料が1~2%のホウ素を含有すること以外は同一である、請求項1~4のいずれか一項に記載のろう付け用材料。
【請求項6】
前記非融解ろう付け用材料は、1250℃を超える固相温度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のろう付け用材料。
【請求項7】
前記融解ろう付け用材料は、1250℃未満の液相温度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のろう付け用材料。
【請求項8】
前記ろう付け用材料の割合の前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料とで形成される合金は、1250°より低い固相温度と1250℃を上回る液相温度とを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のろう付け用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣り合う熱交換器プレートの間に接触点を提供し、これによって、熱交換器プレートは、互いから距離を置いて保持され、熱交換器プレートの間に媒質が熱を交換するためのプレート間流路が形成されるようになっている、プレス加工された稜と溝とのパターンが設けられた複数の熱交換器プレートを含むろう付けプレート熱交換器をろう付けするためのろう付け用材料に関する。このろう付け用材料は、少なくとも1種類の融点降下元素と熱交換器プレートの組成に似た金属とを含むろう付け用合金を含む。
【背景技術】
【0002】
ろう付けの技術分野においては、1種または2種以上の材料が、接合される材料の接触面にろう付け用材料を施用することによって互いに接合される。その後、接合される材料およびろう付け用材料の温度は、ろう付け用材料が融解する一方で接合される材料は融解しない温度に増加される。
【0003】
ろう付けプレート熱交換器の技術分野において、最も普通の基材およびろう付け用材料は、それぞれステンレス鋼および銅である。この材料組み合わせは、さまざまな点で非常に有利であるが、場合によっては用いることができない。例えば、国によっては水道水用途で銅を用いることが禁止されており、アンモニアが冷媒として用いられる場合は銅およびアンモニアの存在下で銅が水溶性錯体を形成するため、銅は除外される。
【0004】
銅を用いることができない用途に向けて、ろう付け用材料としてニッケルを用いることができる。しかし、ろう付け用材料としてのニッケルには、ニッケルの融点を降下させるための融点降下剤に起因して脆いろう付け接合部を生じるという欠点がある。融点降下剤は、通常はケイ素、ホウ素、リンまたはそれらの組み合わせである。
【0005】
さらに別の選択肢は、ステンレス鋼系ろう付け用材料、すなわちケイ素、ホウ素および/またはリンなどの融点降下剤と混合されたステンレス鋼を用いることである。しかし、ステンレス鋼を融点降下剤とともに用いると、融点降下剤が基材中に移動し、そのことが基材の融点を低下させ、ひいては浸食および「溶け落ち」、すなわちプレートの厚さ全体にわたってプレート材料が融解し、ひいては熱交換器プレートのプレートを通る孔の原因となるような程度まで、ろう付け用材料中の融点降下剤がプレート材料の融点を降下させることによって引き起こされる現象、につながる傾向があるという欠点がある。
【0006】
本出願の出願人によって出願された特許文献1に浸食問題に対する解決策が提示されている。ここで、融点降下剤の量が非常に少ないのでろう付け用材料はろう付け時に融解しない。ろう付けプロセス時に基材とろう付け用材料とは、互いに溶解し合うことによって接合されるのではなく、非融解ろう付け用材料と基材とは、拡散によって接合される。特許文献1に開示されている接合方法は、事実上浸食を生じないという点で有利であるが、欠点は、非融解ろう付け用材料の粒子を含む接合部が多孔質となることである。多孔質は、場合によっては接合部が弱くなることにつながり得る。
【0007】
ケイ素、ホウ素および/またはリンなどの融点降下剤を含有するろう付け合金が単一温度融点を持たないことは、周知である。むしろ、そのようなろう付け用合金には、ろう付け用合金が融解し始める低温側の温度(「固相温度(固相線温度)」)と、ろう付け用合金が完全に融解する高温側の温度(「液相温度(液相線温度)」)とを有する融点範囲がある。
【0008】
低い多孔性を有するかまたは多孔性がない一方で基材の浸食が少ないろう付け接合部を与えるろう付け用材料を提供することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】スウェーデン特許出願第1550718-9号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ろう付け温度より低い固相温度および液相温度を有する融解ろう付け用材料の粒子と、ろう付け温度より高い固相温度および液相温度を有する非融解ろう付け用材料の粒子と、の間のブレンドを含むろう付け用材料であって、融解ろう付け用材料と非融解ろう付け用材料との間の比は、融解ろう付け用材料と非融解ろう付け用材料とによって形成される合金がろう付け温度より低い固相温度とろう付け温度より高い液相温度とを有するようなものである、ろう付け用材料を提供することによって、上記課題およびその他の課題を解決するかまたは少なくとも軽減する。
【0011】
融解ろう付け用材料の粒子は、ホウ素を、その迅速な拡散速度と高い融点降下効果とにより融点降下元素として含んでよい。
【0012】
熱交換器プレートの組成に似せるために、融解ろう付け用材料粒子は、1.5~3%のMo、10~15%のNi、16~20%のCr、7~10%のSi、5~7%のMn、1~2%のBを含み、残りはFeであってよい。
【0013】
同じ理由で、非融解ろう付け用材料粒子は、1.5~3のMo、10~15%のNi、16~20%のCr、5~7%のSi、5~7%のMnを含み、残りはFeであってよい。
【0014】
ホウ素の迅速な拡散を利用するために、融解ろう付け用材料の組成と非融解ろう付け用材料の組成とは、融解ろう付け用材料が1~2%のホウ素を含有すること以外は同じであってよい。
【0015】
所望のろう付け温度に合わせるために、非融解ろう付け用材料は、1250℃を超える固相温度を有してよく、融解ろう付け用材料は、1250℃未満の液相温度を有する。
【0016】
基材の浸食を低減させる一方で非多孔質のろう付け接合部を得るために、ろう付け用材料の割合の融解ろう付け用材料と非融解ろう付け用材料とで形成される合金は、1250°より低い固相温度と1250℃を上回る液相温度とを有してよい。
【0017】
以下において、添付の図面を参照して本発明が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】1種類以上の融点降下剤を含む4種類の典型的なろう付合金の典型的なDTA-TGA曲線である。
【
図2】熱交換器プレートを接合するためにろう付け温度より低い固相温度および液相温度を有するろう付け用材料が用いられた、研磨された先行技術ろう付け接合部の顕微鏡写真である。
【
図3】ろう付け温度より高い固相温度および液相温度を有するろう付け用材料が用られた、研磨された先行技術ろう付け接合部を示す顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の実施形態による研磨されたろう付け接合部を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、1種類以上の融点降下元素を含む典型的なろう付け用合金の2つのDSC(示差走査熱量測定)曲線が示される。手短に、DSC曲線とは、温度の関数として測定された試料および参照物の温度を増加させるために必要な熱量の差を表すものである。
【0020】
図1を参照すると、上の方のDSC曲線は、700℃から約1120℃までの第1区間を含む。この区間では試料(この場合ろう付け用合金)を加熱するために必要な熱はむしろ一定である。約1120℃から1164℃、すなわち第2区間では、温度を増加させるためにはるかに多くのエネルギーが必要である。これは、ろう付け用材料の融解に起因する。約1164℃から約1180℃、すなわち第3区間では、温度を増加させるために必要なエネルギーは、第1区間の間とほぼ同じ値に戻り、第4区間では、ろう付け用材料は完全に融解し、温度を増加させるために必要なエネルギーは再び一定になる。
【0021】
これらの曲線からいわゆる固相温度および液相温度、すなわちすべてのろう付け用材料がそれぞれ固体状態および液体状態にある温度を推定するにはこれらの温度をそれぞれ開始温度および終了温度と言い換えることが普通であり、ここで開始温度は、第1区間の平均接線と第2区間の平均接線との間の交点の温度であり、終了温度は、第3区間の平均接線と第4区間の平均接線との間の交点の温度である。以下において、DSC曲線の開始温度および終了温度は、ろう付け用材料の固相温度および液相温度とみなされる。
【0022】
以下の図において、ろう付け接合部の断面写真が示される。これらの写真はすべて隣り合う熱交換器プレートの交差し合う稜および溝の間のろう付け接合部を示す。ろう付け用材料は、溶媒、結合剤およびろう付け用合金の粉末を含むペーストの形で加えられた。
【0023】
図2では、プレート熱交換器内に含まれる隣り合う熱交換器プレートの稜および溝の間の先行技術ろう付け接合部が示される。ろう付け用材料は、ステンレス鋼と融点降下剤(ホウ素およびケイ素)とを含む合金であり、ろう付け温度は、ろう付け用材料の液相温度と固相温度との両方より高い―言い換えると、ろう付け用材料は、ろう付け時に完全に融解している。ろう付け用材料は、本出願人によって国際公開第2015/062992A1号に開示されているように、隣り合うプレートの稜および溝の間の交点ではなく、交点の近くに施用されたことをつけ加えることもできよう。
図1において分かるように、ろう付け接合部は、均一である(すなわち、接合部は孔を含まないか非常に少数しか含まない)。しかし、接合部の周辺でプレート材料のある程度の浸食を見ることができる。この浸食は、ろう付け用合金中の融点降下元素がプレート材料中に移動し、ひいてはプレート材料の融点を降下させることに起因する。したがって、融点降下元素が移動した先のプレート材料は、融解し、ろう付け接合部の一部となり、ひいてはろう付け接合部の近傍でプレート材料の厚さを低下させるかもしれない。重篤な場合、プレート材料の浸食は、熱交換器プレートを通る孔があることを意味する、いわゆる「溶け落ち」につながるかもしれない。これは、プレートを通る孔が熱交換器の中の内部漏れにつながるから、もちろんプレート熱交換器にとって壊滅的である。
【0024】
図2に示されるようなろう付け用材料による浸食および溶け落ち問題を低減するために、本出願人は、ろう付け温度より高い固相温度および液相温度を有するろう付け用材料で実験を行った―言い換えると、ろう付け用材料は、ろう付け時に融解しない。
図2のろう付け用材料で起こるように融解させ、続いて固化させることによって熱交換器プレートを接合する代りに、ろう付け温度より高い固相温度および液相温度を有するろう付け用材料は、拡散によってプレートを接合させる。
図3にろう付け温度より高い液相温度および固相温度を有するろう付け用材料によって実現される典型的なろう付け接合部が示される。この図で分かるように、ろう付け接合部は、侵食をまったく含まない―このことは、ろう付け用材料中の融点降下剤の量がろう付け用材料自体の融解を可能にするには十分でないから、驚くべきことではない。融点降下元素の一部がプレート材料中に移動するような場合も、プレート材料中の融点降下元素の百分率は、プレート材料を融解させるのに十分でないだろう。
図2と対照的に、ろう付け用材料は、隣り合うプレートの稜および溝の間の接触点に施用されたことが言及されてもよいだろう。
【0025】
ろう付け接合部の中央部分には孔がないことも分るだろう。交差する隣り合ったプレートの稜および溝の間の圧力は、ろう付け用材料の粒子を一緒に融合させ、孔のない接合部を形成させるのに十分である。しかし、ろう付け接合部の外周には孔がある。
【0026】
試験は、
図2および3のろう付け接合部の強度は、N/mm
2の点ではほぼ等しいが、
図3のろう付け用材料を用いて実現された有効な、すなわち孔のない接合部は、
図2に従って実現された接合部の場合より小さく、得られた接合部強度は低いことを示した。他方で、浸食はない。
【0027】
「発明の概要」部分で述べたように、孔のない接合部をもたらし、基材すなわちプレート材料の浸食をもたらさないかまたは少ししかもたらさないろう付け用材料を提供することが目的である。
【0028】
これは、非融解ろう付け用合金、すなわちろう付け温度より高い固相温度および液相温度を有する合金と、融解ろう付け用合金、すなわちろう付け温度より低い液相温度および固相温度を有するろう付け用材料の粉末とを混合することによって実現される。
【0029】
すべての実施形態について、ろう付け用合金の50%(重量で)より多くが非融解ろう付け用合金であることが共通である。すべての実施形態について、ろう付け用材料がペーストの形であること、およびペーストがろう付け用材料の粒子を含み、特定の百分率の粒子が融解ろう付け用材料から製造され、残りの粒子が非融解ろう付け用材料から製造されることも共通である。ろう付け用材料の粒子由来を除いて、ペーストは、粒子のペーストを形成するためにに使用される溶媒およびバインダーを含む。
【0030】
本ろう付け用材料のための典型的な粒径は、100ミクロン未満である。これは、粒子の全表面積が、ろう付け用材料が覆う基材の表面積より何倍も大きいことを意味する。
【0031】
前述のように、融点降下元素を含む融解ろう付け用材料の大きな問題は、融点降下元素が基材中に移動し、基材が融解するようにその融点を降下させる傾向があり、このことが基材の浸食の原因となることである。浸食プロセスは、時間に非常に依存する―ろう付け時間が長いほど浸食が多くなる。しかし、実施形態によると、融点降下元素が基材中に移動するために利用可能な時間は、効率的な方法で調整される。融解ろう付け用材料が融解すると、融点降下元素は移動し始めるが、非融解性粒子の表面積はろう付け用材料と接触する基材の面積よりはるかに大きいから、大部分の融点降下剤は、基材中ではなく非融解ろう付け用材料粒子中に移動する。もちろん、これは、非融解性粒子の「浸食」につながるが、融解したろう付け用材料がろう付け用材料不足となることにもつながり、これは、すべてまたは大部分の非融解ろう付け用材料が「侵食され」るかまたは溶解すると、基材の融点がろう付け温度より低くなる程度に基材中に移動するために十分な融点降下剤が融解したろう付け用材料内に残っていないことを意味する。したがって、大勢として基材の浸食は回避される。
【0032】
一例として、基材と同じタイプの純粋なステンレス鋼から非融解ろう付け用材料粒子を作ることができた。しかし、最良の結果は、少量の融点降下元素と混合されたステンレス鋼から作られた粒子の形の非融解ろう付け用材料を提供することによって実現された。これは、おそらく融解ろう付け用材料のより速い不足/希釈に起因する。
【0033】
試験は、(重量で)2%のMo、12.5%のNi、18.2%のCr、6.3%のSi、5%のMnを含み、残りはFeである非融解ろう付け用材料粒子と、(重量で)2.1%のMo、13.4%のNi、18.4%のCr、8%のSi、5.3%のMn、1.1%のBを含み、残りはFeである融解ろう付け用材料粒子との90~75/10~25の割合の混合物が、1~1.5mbarの不活性気体の雰囲気、1250℃の温度でろう付けされると316ステンレス鋼から作られた基材の浸食を示さないかまたはごくわずかしか示さない、強くかつ孔のない接合部を作り出すことを示した。
【0034】
上記による非融解ろう付け用材料は、約1260℃の固相温度と約1370℃の液相温度とを有する。すなわち固相温度と液相温度との両方が1250℃のろう付け温度より高い。
【0035】
この融解ろう付け用材料は、約1110℃の固相温度と約1195℃の液相温度とを有する。すなわち固相温度と液相温度との両方がろう付け温度より低い。
【0036】
簡単な内挿法手順を用いると、上記による10%の融解ろう付け用材料と90%の非融解ろう付け用材料とを含有するろう付け用材料から作られた合金の固相温度および液相温度は、1245℃の固相温度と1352℃の液相温度とを有すると見積もられ、25%の融解ろう付け用材料と75%の非融解ろう付け用材料とを含む合金は、1222℃の固相温度と1326℃の液相温度とを有すると見積もられる。言い換えると、両方の合金の固相温度および液相温度は、固相温度がろう付け温度より低く、液相温度がろう付け温度より高いようなものである。
【0037】
純ステンレス鋼の粒子を含む非融解ろう付け用材料と上記による融解ろう付け用材料との固相温度および液相温度の間で同じ内挿法を行うことによって、27%~53%の融解ろう付け用材料含有率の場合に得られた合金について、上記で開示されるものと類似の固相温度および液相温度は、ろう付け時間よりそれぞれ低いおよび高い(すなわち、ろう付け時間よりそれぞれ低いおよび高い固相温度および液相温度となる)。
【0038】
融解ろう付け用材料粒子と非融解ろう付け用材料粒子との粒子から均一な合金を形成させるために必要な時間は、第一義的に、非融解ろう付け用材料粒子の粒子サイズに強く依存する。小さな粒子ほど均一な合金を形成するのに短い時間を示す。
【0039】
ステンレス鋼粒子から作られた非融解ろう付け用材料を用いることは、さまざまな粒子サイズ(sixes)のそのような粒子を「既製製品」から購入することができる一方で融解ろう付け用材料から作られたろう付け用材料粒子は購入できないから、経済的に有利である。
【0040】
本発明は、特に、基材、例えばケイ素、ホウ素、リンおよび/またはマンガンの形の融点降下元素を含むステンレス鋼ろう付材料を用いてろう付けされるステンレス鋼基材、の中に移動することができる融点降下元素を含むろう付け用材料によるろう付けに関する。これらの融点降下元素のうち、ホウ素は、百分率の関数としての融点降下効果の点で最も効率的であり、基材またはより低いホウ素の百分率を有する近傍の非融解粒子中への最も速い拡散速度を有する元素でもある。ホウ素は、主にステンレス鋼中のクロムと脆いホウ化物を形成する傾向もある。ホウ化物が極めて脆いこと由来を除いて、クロムホウ化物の形成は著しい量のクロムを「消費し」、それによって、ホウ化物の形成後に想定される耐浸食特性をもたらさない。クロムホウ化物は主に液相で形成され、本発明はろう付け用材料が液相にある時間を短かくするから、本発明はホウ化物形成による問題を著しく低減し、ひいては接合部のろう付け強度と耐食性との両方を改良する。
【0041】
ケイ素およびリンは、百分率の関数としての融点降下効果という点でより効率的でない融点降下元素である。従って、より大きな量のこれらの融点降下剤が必要であり、従って、脆い相形成という点で同じく問題が多い。
【0042】
マンガンは、融点降下効果以外にろう付け用材料と基材との間の良好な濡れも提供する融点降下元素である。しかし、マンガンは、ろう付け時に(特にろう付けが真空下で実行される場合)気化する傾向があり、このことは、仕上げられたろう付け接合部の融点がろう付け用材料の初期融解より高くなるかもしれないことを意味する。このことは、通常は問題でないが、不必要に大きな量のマンガンが用いられる場合、ろう付け用の炉の汚れに伴う問題があるかもしれない。
【0043】
好ましくは、本ろう付け用材料は、融解ろう付け用材料粒子と非融解ろう付け用材料粒子とを含むペーストと、このペーストにその利用のための流動特性を提供するための溶媒と、溶媒が蒸発したときろう付け用材料粒子を一緒に保持するようになっているバインダーと、の形で提供される。しかし、他の可能な形もあり得る。任意選択肢として、本ろう付け用材料は、グリーンボディ、すなわち粒子の間で低温焼結が起こるように加圧された、粉体型の融解ろう付け用材料と非融解ろう付け用材料とを含むボディとして提供されてもよい。本発明によると、グリーンボディは、ろう付け用材料粒子の組成差が等しくなるようにと、グリーンボディがろう付け用材料としてろう付けプロセスにおいて用いられる前に、熱処理するべきでない点に留意するべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う熱交換器プレートの間に接触点を提供し、これによって、前記熱交換器プレートは、互いから距離を置いて保持され、前記熱交換器プレートの間に媒質が熱を交換するためのプレート間流路が形成されるようになっている、プレス加工された稜と溝とのパターンが設けられた複数の熱交換器プレートを含むろう付けプレート熱交換器をろう付けするためのろう付け用材料であり、前記ろう付け用材料は、少なくとも1種類の融点降下元素と前記熱交換器プレートの組成に似た金属を含むろう付け用合金とを含むろう付け用材料でろう付けする方法であり、
前記ろう付け用材料は、ろう付け温度より低い固相温度および液相温度を有する融解ろう付け用材料の粒子と、前記ろう付け温度を上回る固相温度および液相温度を有する非融解ろう付け用材料の粒子との間の混合物を含み、前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料との間の比は、前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料とによって形成される合金が、前記ろう付け温度より低い固相温度と前記ろう付け温度より高い液相温度とを有するようなものであり、および、ここで、前記ろう付け用合金の50重量%以上が前記非融解ろう付け用材料を熱交換器プレートの接触面に施用する施用ステップと、
前記ろう付け用材料を、融解ろう付け用材料の粒子の液相以上の温度で、非融解ろう付け用材料の粒子の固相温度以下の温度であるろう付け温度まで加熱する加熱ステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記方法は、前記ろう付け用材料を少なくとも1222℃から最大1260℃に加熱する前記加熱ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記ろう付け用材料を少なくとも1245℃から最大1260℃に加熱する前記加熱ステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記ろう付け用材料を1250℃に加熱する前記加熱ステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料の粒子が、融点降下元素を混合したステンレス鋼からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記融解ろう付け用材料の粒子がホウ素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記ろう付け用合金の少なくとも75重量%が、非融解ろう付け用材料の粒子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料の粒子が1260℃の固相温度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料の粒子が7~10%のSiを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料の粒子が5~7%のMnを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料の粒子は、1.5~3のMo、10~15%のNi、16~20%のCr、5~7%のSi、5~7%のMnを含み、残りはFeである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記非融解ろう付け用材料および/または前記融解ろう付け用材料の粒子の粒径が100μm未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、前記融解ろう付け用材料と前記非融解ろう付け用材料の組成は、前記融解ろう付け用材料が1~2%のホウ素を含有すること以外は同一である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】