(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052556
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】二本鎖コンカテマーDNAを使用したセルフリータンパク質発現
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20230404BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230404BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20230404BHJP
【FI】
C12P21/00 C ZNA
C12N15/09 Z
C12Q1/6844 Z
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023007508
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2020507608の分割
【原出願日】2018-08-06
(31)【優先権主張番号】15/631,510
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520481714
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・オペレーションズ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】エリック・リミン・クヴァム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・リチャード・ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ガオ
(57)【要約】
【課題】真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAを使用したインビトロでの転写及び翻訳のための方法が提供される。
【解決手段】方法は、(a)二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる工程、及び(b)真核生物セルフリー発現系で二本鎖コンカテマーDNAからインビトロでタンパク質を発現させる工程を含む。二本鎖コンカテマーDNAは、複数のタンデム反復配列を含む。複数のタンデム反復配列は、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)、及びオープンリーディングフレームを含む発現配列を含む。真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.1ng/μL~約35ng/μLの範囲である。RCA産物DNAは、方法の二本鎖コンカテマーDNAとして使用することがきる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロでの転写及び翻訳のための方法であって、
二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる工程であって、二本鎖コンカテマーDNAが複数のタンデム反復配列を含み、複数のタンデム反復配列の各々が、プロモーターを含む発現配列、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)、及びオープンリーディングフレームを含む、工程;並びに
真核生物セルフリー発現系において二本鎖コンカテマーDNAからインビトロでタンパク質を発現させる工程
を含み、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が約0.1ng/μL~約35ng/μLの範囲である、方法。
【請求項2】
真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が、約0.5ng/μL~約20ng/μLの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が、約2ng/μL~約10ng/μLの範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が、約3ng/μL~約7ng/μLの範囲である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)が、内部リボソーム進入部位(IRES)、翻訳増強エレメント(TEE)、又はそれらの組合せを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
オープンリーディングフレームが、翻訳を増強するためのコドン最適化配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
オープンリーディングフレームが、発現タンパク質の精製のためのタグ配列、増強したリボソーム認識のためのIRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列、又はそれらの組合せを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発現配列が、ポリA配列、転写終結配列、インスレーター配列、又はそれらの組合せを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる前に、二本鎖コンカテマーDNAを基材に固定する工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
インビトロでタンパク質を発現させた後、真核生物セルフリー発現系から基材固定化二本鎖コンカテマーDNAを回収し、回収された基材固定化二本鎖コンカテマーDNAを、続くインビトロでの転写及び翻訳反応に再使用する工程を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
二本鎖コンカテマーDNAが、ローリングサークル増幅(RCA)産物DNAである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
二本鎖コンカテマーDNAが、ビオチン化ヌクレオチド、ホスホロチオエート化ヌクレオチド、イノシン含有ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチド又はそれらの組合せを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
インビトロでの転写及び翻訳のための方法であって、
DNAミニサークルを用意する工程、
DNAミニサークルのローリングサークル増幅を介して二本鎖コンカテマーDNAを生成する工程;及び
生成された二本鎖コンカテマーDNAをインビトロで真核生物セルフリー発現系と接触させて、転写及び翻訳を介して二本鎖コンカテマーDNAからタンパク質を発現させる工程
を含み、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が約0.1ng/μL~35ng/μLの範囲である、方法。
【請求項14】
DNAミニサークルが、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント、及びオープンリーディングフレームから本質的になる最小限の発現配列から本質的になる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
最小限の発現配列が、宿主細胞内におけるプラスミドの増幅に必要とされる任意外来配列を欠いている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)が、内部リボソーム進入部位(IRES)、翻訳増強エレメント(TEE)、又はそれらの組合せを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
最小限の発現配列が、更にインスレーター配列、ポリA配列、転写終結配列、又はそれらの組合せから本質的になる、請求項14、15又は16に記載の方法。
【請求項18】
オープンリーディングフレームが、翻訳を増強するためのコドン最適化配列、発現タンパク質の精製のためのタグ配列、増強したリボソーム認識のためのIRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列又はそれらの組合せを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が、約0.5~20ng/μLの範囲である、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度が、約3ng/μL~約7ng/μLの範囲である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
二本鎖コンカテマーDNAが、修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はそれらの組合せを含む、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
二本鎖コンカテマーDNAが、ホスホロチオエート化ヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、イノシン含有ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチド又はそれらの組合せを含む、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる前に、二本鎖コンカテマーDNAを基材に固定する工程を更に含む、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
インビトロでタンパク質を発現させた後、真核生物セルフリー発現系から基材固定化二本鎖コンカテマーDNAを回収し、回収された基材固定化二本鎖コンカテマーDNAを、続くインビトロでの転写及び翻訳反応に再使用する工程を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ローリングサークル増幅が、約10μM~約10mMの範囲の最終濃度のデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)及び任意のアルファ-チオdNTPを使用して実施される、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ローリングサークル増幅が、ヌクレオチド類似体を含むランダムプライマー混合物を使用して実施される、請求項13~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ランダムプライマー混合物が、配列+N+N(atN)(atN)(atN)*N(配列番号6)又は5'-ビオチン-NNNN*N*N(配列番号7)を有する、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2017年6月16日に作製された前記ASCIIコピーの名称は、316478-1_SL.txtであり、サイズは5,663バイトである。
【0002】
本発明は、概して、二本鎖コンカテマーDNAのインビトロでの転写及び翻訳(IVTT)を伴う改善されたセルフリータンパク質発現系に関する。
【背景技術】
【0003】
セルフリータンパク質発現は、細胞培養、細胞工学、又は細胞トランスフェクションの複雑な要素なしにタンパク質を生成するための簡単であり、効率的な方法を提供する。組換えタンパク質を発現させるためのセルフリータンパク質発現系は、タンパク質毒性、タンパク質分解、タンパク質凝集及びミスフォールディング、制御されていない翻訳後修飾、又は細胞機構の隔離による細胞成長におけるタンパク質発現の負の効果等の細胞ベースの発現系の様々な制限に対処する。下流のハイスループット構造及び機能分析に用いることができるセルフリータンパク質発現系を使用すると、大幅に大量のタンパク質を短時間で発現させることができる。このようなインビトロでのタンパク質発現はまた、コスト削減、生産の合理化、スケールアップの容易化、及び精製の簡素化の点で顕著な利点を有する。セルフリータンパク質発現系では、目的とする所望のタンパク質は、目的のタンパク質の遺伝子をコードするデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)を転写-翻訳-コンピテント細胞抽出物に添加し、目的の遺伝子の転写及び/又は翻訳を実施することによって発現される。目的の遺伝子を含有するDNAの転写及び翻訳を単一の反応でカップリングして、新たに合成されたmRNAのタンパク質への即時翻訳を可能にしても、第1の反応でmRNAが生成され、続いて、生成されたmRNAを二次反応でタンパク質に翻訳されるように連結してもよい。一般的に、インビトロでの転写及び翻訳のカップリング(セルフリー系における転写-翻訳のカップリング)は、より少ない時間及びインビトロでの操作により発現タンパク質の収量を増加させる。mRNAの即時翻訳はまた、mRNAの分解又はミスフォールディングに関連付けられる、考えられる有害効果も回避する。
【0004】
インビトロでの転写-翻訳系の1つの制限は、それがより大量(一般的にはマイクログラム量)のDNA鋳型を必要とすることである。一般的に、十分な量のこのようなDNA鋳型は、複数のワークフロー工程及び多大な労力によってのみ入手することができる。例えば、IVTTに適したDNA鋳型は、複数のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)からDNA鋳型を合成し、及び/又はDNA鋳型をプラスミドベクターにクローニングし、大腸菌(E. coli)等の宿主細胞中でプラスミドベクターを増幅させることにより生成することができる。しかしながら、一部にはPCRの突然変異率が高いため、PCRは、高品質のDNAの大規模な生成には適さないことがよくある。更に、PCR反応の熱サイクリングは、大体積で温度をいかに速く上昇させることができるかに制限があるため、より大きな反応にスケールアップすることが困難である。更に、直鎖状DNA配列であるPCR産物は、セルフリー転写-翻訳抽出物に存在するヌクレアーゼにより急速に分解される。更に、目的の遺伝子をプラスミドベクターにサブクローニングし、続いて遺伝子選択により大腸菌で大規模に増幅させることは、時間がかかり、労働集約的である。
【0005】
一般的に、哺乳動物セルフリー抽出物におけるセルフリー転写及び翻訳は、原核細胞抽出物を使用するものほど効率的ではない。哺乳動物セルフリー抽出物を使用してタンパク質発現を増強するための一般的な方法の1つは、過剰な試薬(例えば、アミノ酸及びエネルギー源)を供給し、透析膜を使用して、翻訳に悪影響を与える老廃物を除去することである。しかしながら、透析プロセスでは、IVTT反応の体積が大幅に増加する。更に、鋳型DNAは、透析チャンバーから回収できない場合がある。したがって、透析が用いられている場合、効率的なIVTTのために鋳型DNAの必要な最終濃度を維持するために、鋳型DNAは実質的により多い量で提供されなければならない。
【0006】
ローリングサークル増幅(RCA)等の等温DNA増幅技術は、少ない労力、時間、及び費用で大量の高品質のDNAを生成するために用いることができる。急速な加熱及び冷却の必要がないため、等温増幅反応により、より大きな反応サイズへのスケールアップが容易になる。ローリングサークル増幅では、環状DNA鋳型を用い、鋳型DNAのタンデム反復単位(コンカテマー)であるRCA産物を生成する。目的のタンパク質を生成するために、プラスミドDNAのRCAと、それに続くインビトロでの転写及び翻訳のカップリングが可能である。しかしながら、これらのプラスミドは、一般的に、大腸菌等の宿主細胞内での遺伝子選択を含む標準的なクローニング方法によって作製される。このようなプラスミドは、複製起点(例えば、oriC)、抗生物質選択(例えば、ベータ-ラクタマーゼに関するamp)のための配列、並びに宿主細胞においてプラスミドの選択及び/又はスクリーニングに使用されるアクセサリー配列(例えば、lacZ、ベータ-ガラクトシダーゼ)を含む多くの更なるコード配列及び非コード配列を含有する。これらの補助配列の転写及び/又は発現は望ましくなく、ワークフロー全体が非効率になる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Singh, S. K.ら、Chem. Comm.、4巻、455~456頁、1998年
【非特許文献2】Koshkin, A. A.ら、Tetrahedron、54巻、3607~3630頁、1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プラスミドDNAと比較して限定された濃度の鋳型DNAから所望のタンパク質を容易に生成するためのものであり、したがって、PCRベースの鋳型DNA合成を必要としない改善されたインビトロでの転写及び翻訳真核生物系の必要性が存在する。また、簡単であり、対費用効果が高く、時間のかからない方法を使用して、セルフリータンパク質系を可能にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAを使用したインビトロでの転写及び翻訳のための方法が提供される。方法は、(a)二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系に接触させる工程、及び(b)真核生物セルフリー発現系で二本鎖コンカテマーDNAからインビトロでタンパク質を発現させる工程を含む。二本鎖コンカテマーDNAは、各々が発現配列を含む複数のタンデム反復配列を含む。発現配列には、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)、及びオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれる。真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.1ng/μL~約35ng/μLの範囲である。
【0010】
一部の実施形態では、DNAミニサークルから生成された二本鎖コンカテマー(DNA)を使用したインビトロでの転写及び翻訳のための方法が提供される。方法は、(a)DNAミニサークルを用意する工程、(b)DNAミニサークルのローリングサークル増幅を介して二本鎖コンカテマーDNAを生成する工程、及び(c)生成された二本鎖コンカテマーDNAをインビトロで真核生物セルフリー発現系と接触させて、転写及び翻訳を介して二本鎖コンカテマーDNAからタンパク質を発現させる工程を含む。真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.1ng/μL~35ng/μLの範囲である。
【0011】
本発明のこれらの及び他の特色、態様及び利点は、添付の図を参照して、以下の詳細な説明を読むとよりよく理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】増幅していないプラスミドDNAと比較した場合、インビトロでの転写及び翻訳の鋳型として、プラスミドDNAから生成された異なる濃度のチオ化又は非チオ化RCA産物DNAを使用したTurbo緑色蛍光タンパク質(TurboGFP)のセルフリー発現を示す図である。
【
図2】最小限の発現配列を有するDNAミニサークルを示す図である。
【
図3】DNAミニサークルに由来する異なる濃度のRCA産物DNAをインビトロでの転写及び翻訳反応に使用した場合、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のセルフリー発現を示すSDS PAGEの画像である。IVTTによるpCFE-GFPプラスミドのTurboGFP発現を対照として使用した。
【
図4】
図3のSDS-PAGEのゲルデンシトメトリーにより生成された、対照としてのプラスミドDNA鋳型の濃度と、DNAミニサークルに由来するRCA産物DNAの異なる濃度を用いた高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のセルフリー発現の比較を示す図である。
【
図5】DNAミニサークルに由来するRCA産物DNAを磁気ビーズにコンジュゲートし、対照としてTurboGFPをコードする非コンジュゲートプラスミドDNA鋳型とともに、インビトロでの転写及び翻訳の鋳型として使用した場合、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)のセルフリー発現を示す図である。
【
図6】A:2つの発現配列を含むタンデム反復配列の概略図であり、発現配列は同じタンパク質をコードする2つのORFを含む。B:2つの発現配列を含むタンデム反復配列の概略図であり、発現配列は2つの異なるタンパク質をコードする2つのORFを含む。C:2つの発現配列を含むタンデム反復配列の概略図であり、発現配列の各々は2つの異なるタンパク質をコードする2つのORFを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は例示であり、本発明又は本発明の使用を限定することを意図するものではない。明細書全体を通じて、特定の用語の例証は、非限定的な例とみなされるべきである。単数形の「a」、「an」、及び「the」には、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書及び特許請求の範囲を通じて、本明細書で使用される近似用語は、関連する基本機能の変更をもたらさずに許容できる程度に変化し得る任意の定量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「約」等の用語によって修飾された値は、指定された正確な値に限定されない。特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表すすべての数字は、すべての場合において、「約」という用語によって修飾されているものと理解されるべきである。したがって、そうでないことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。必要に応じて、範囲が提供されており、それらの範囲には、その間のすべての部分範囲が含まれる。特許請求される発明の主題をより明確で、簡潔に説明し、指摘するために、以下の説明及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語に対して以下の定義が提供される。
【0014】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオシド」という用語は、核酸塩基 (ヌクレオ塩基)が糖部分に連結しているグリコシルアミン化合物を指す。「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドリン酸塩を指す。ヌクレオチドは、Table 1(表1)に記載されるように、そのヌクレオシドに対応するアルファベット文字(文字指定)を使用して表すことができる。例えば、Aはアデノシン(ヌクレオ塩基、アデニンを含有するヌクレオシド)を示し、Cはシチジンを示し、Gはグアノシンを示し、Uはウリジンを示し、Tはチミジン(5-メチルウリジン)を示す。Nはランダムなヌクレオシドを表し、dNTPはデオキシリボヌクレオシド三リン酸を指す。Nは、A、C、G、又はT/Uのいずれかであり得る。
【0015】
【0016】
本明細書で使用する場合、「ヌクレオチド類似体」という用語は、天然に存在するヌクレオチドに構造的に類似した化合物を指す。ヌクレオチド類似体は、変更されたリン酸骨格、糖部分、ヌクレオ塩基、又はそれらの組合せを有し得る。ヌクレオチド類似体は、天然ヌクレオチド、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は代替の置き換え部分(例えば、イノシン)であり得る。一般的に、変更されたヌクレオ塩基を有するヌクレオチド類似体は、とりわけ、異なる塩基対形成及び塩基スタッキング特性を付与する。本明細書で使用する場合、「LNA(ロックド核酸)ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド類似体を指し、ヌクレオチドの糖部分がリボ核酸(RNA)模倣糖コンフォメーションにロックされた二環式フラノース単位を含有する。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化は、化学的観点、すなわち、2'位及び4'位の炭素原子間の追加の連結の導入(例えば、2'-C、4'-C-オキシメチレン連結;例えば、Singh, S. K.ら、Chem. Comm.、4巻、455~456頁、1998年、又はKoshkin, A. A.ら、Tetrahedron、54巻、3607~3630頁、1998年を参照されたい)から限定される。LNAヌクレオチドのフラノース単位の2'及び4'位は、O-メチレン(例えば、オキシ-LNA:2'-O、4'-C-メチレン-β-D-リボフラノシルヌクレオチド)、S-メチレン(チオ-LNA)、又はNH-メチレン部分(アミノ-LNA)等によって連結される場合がある。このような連結は、フラノース環のコンフォメーションの自由度を制限する。LNAオリゴヌクレオチドは、相補的な一本鎖RNA、及び相補的な一本鎖又は二本鎖DNAに対する、増強したハイブリダイゼーション親和性を示す。LNAオリゴヌクレオチドは、A型(RNA様)二重鎖コンフォメーションを誘発し得る。PNA骨格は、ペプチド結合により連結された繰り返しN-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成される。様々なプリン及びピリミジン塩基は、メチレン架橋(-CH2-)及びカルボニル基(-(C=O)-)によって骨格に連結される。PNAはペプチドのように記述され、最初(左)の位置にN末端を、最後(右)の位置にC末端を有する。PNAオリゴマーは、相補的DNAへの結合においてより高い特異性を示し、結合効率及び特異性はまたPNA/RNA二重鎖に適用される。PNAは、ヌクレアーゼ及びプロテアーゼのいずれにも容易に認識されないため、酵素による分解に対して耐性がある。また、PNAは広いpH範囲にわたって安定である。変更されたリン酸-糖骨格を有するヌクレオチド類似体(例えば、PNA、LNA)は、とりわけ、二次構造形成等の鎖特性をしばしば修飾する。文字指定に先行する星印(*)は、文字で指定されたヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを示す。例えば、*Nはホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表し、「atN」はランダムヌクレオチドを表し、ヌクレオチドは、2-アミノdA、2-チオ-dT、通常のG又は通常のCのいずれかであり得、文字指定に先行するプラス(+)記号は、文字で指定されたヌクレオチドがLNAヌクレオチドであることを示す。例えば、+AはアデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nはロックドランダムヌクレオチド(すなわち、ランダムLNAヌクレオチド)を表す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「修飾ヌクレオチド」という用語は、追加の部分がヌクレオチドに結合している修飾を有するヌクレオチド(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)を指す。修飾は、主溝又は副溝のいずれかに面することができる。修飾ヌクレオチドは、目的の核酸標的への官能基の酵素的導入のための便利なツールである。ヌクレオ塩基の主溝への修飾は、ピリミジンの5位及びプリンの7位での取り込み効率をより良好にさせる。多くの場合、必要とされる修飾は、リンカーを介してヌクレオチドに導入される(例えば、リンカーを介してヌクレオチドに結合したビオチン部分)。修飾部位に結合するリンカーアームの柔軟性は、ヌクレオチドの利用に影響を及ぼす可能性がある。例えば、剛直な直鎖状リンカーは、核酸増幅中のより良好なdNTP取り込みを提供する。リンカーアームの長さはまた、増幅中の修飾dNTPの取り込みにおいて役割を果たす。例えば、ビオチン化ヌクレオチドは、多くの場合、5-アミノアリル-dCTP及び5-アミノアリル-dUTPとビオチン含有リンカーをコンジュゲートさせて、ビオチン化ヌクレオチドを調製することにより調製される。リンカーの位置及び長さはまた、4つのdNTPの各々の官能基の導入に影響を与える。より短いリンカーアームを有する修飾dNTPは、より長いリンカーアームを有するヌクレオチドよりも増幅反応に対してより良好な基質である。
【0018】
本明細書で使用する場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのオリゴマーを指す。本明細書で使用される「核酸」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを指す。本明細書で使用される「配列」という用語は、オリゴヌクレオチド又は核酸のヌクレオチド配列を指す。明細書全体を通じて、オリゴヌクレオチド又は核酸が文字の配列により表される場合はいつでも、ヌクレオチドは左から右に5'→3'の順序である。オリゴヌクレオチド又は核酸は、DNA、RNA、又はそれらの類似体(例えば、ホスホロチオエート類似体)であり得る。オリゴヌクレオチド又は核酸はまた、修飾された塩基及び/又は骨格(例えば、修飾されたリン酸連結又は修飾された糖部分)を含み得る。核酸に安定性及び/又は他の利点を付与する合成骨格の非限定的な例には、ホスホロチオエート連結、ペプチド核酸、ロックド核酸、キシロース核酸、又はそれらの類似体が含まれ得る。
【0019】
本明細書で使用する場合、「プライマー」という用語は、核酸合成反応をプライミングするために標的核酸配列(例えば、増幅されるDNA鋳型)にハイブリダイズする短い直鎖状オリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、又はキメラ配列であり得る。プライマーは、天然、合成、又は修飾ヌクレオチドを含有し得る。プライマーの長さの上限と下限の両方は、経験的に決定される。プライマーの長さの下限は、核酸増幅反応条件下で、標的核酸とのハイブリダイゼーション時に安定した二重鎖を形成するために必要とされる最小の長さである。非常に短いプライマー(通常は3ヌクレオチド長未満)は、このようなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と熱力学的に安定した二重鎖を形成しない。上限は、しばしば、標的核酸における所定の核酸配列以外の領域に二重鎖形成を有する可能性によって決定される。一般的に、適切なプライマーの長さは、約3ヌクレオチド長~約40ヌクレオチド長の範囲である。
【0020】
本明細書で使用する場合、「ランダムプライマー」という用語は、所定位置が可能なヌクレオチド又はそれらの類似体のうちの任意のものからなり得るようにオリゴヌクレオチド配列中の任意の所定位置でヌクレオチドをランダム化することによって生成されるプライマー配列の混合物を指す(完全なランダム化)。したがって、ランダムプライマーは、オリゴヌクレオチド配列のランダムな混合物であり、配列内のヌクレオチドのあらゆる可能な組合せからなる。例えば、ヘキサマーランダムプライマーは、配列NNNNNN又は(N)6によって表され得る。ヘキサマーランダムDNAプライマーは、4つのDNAヌクレオチドA、C、G、及びTのあらゆる可能なヘキサマーの組合せからなり、46(4,096)個の固有なヘキサマーDNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物をもたらす。ランダムプライマーは、標的核酸の配列が知られていない場合、又は全ゲノム増幅反応を実施するために、核酸合成反応をプライミングするために効果的に使用され得る。ランダムプライマーはまた、プライマーの濃度に依存して、一本鎖RCA産物ではなく、二本鎖ローリングサークル増幅(RCA)産物のプライミング及び産生に効果的であり得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、「ローリングサークル増幅(RCA)」という用語は、ローリングサークル機構を介して環状核酸鋳型(例えば、一本鎖/二本鎖DNAサークル)を増幅する核酸増幅反応を指す。ローリングサークル増幅反応は、環状の、しばしば一本鎖の核酸鋳型へのプライマーのハイブリダイゼーションによって開始される。次に、核酸ポリメラーゼは、環状核酸鋳型の周りを連続的に進行して、核酸鋳型の配列を何度も繰り返して複製することによって、環状核酸鋳型にハイブリダイズするプライマーを伸長させる(ローリングサークル機構)。ローリングサークル増幅は、典型的には、環状核酸鋳型配列のタンデム反復単位を含むコンカテマーを産生する。ローリングサークル増幅は、直鎖状増幅動力学を示す直鎖状RCA(LRCA)(例えば、単一の特異的プライマーを使用するRCA)であり得るか、又は指数関数的増幅動力学を示す指数関数的RCA(ERCA)であり得る。ローリングサークル増幅はまた、超分岐状コンカテマーにつながる複数のプライマー(マルチプリープライムドローリングサークル増幅又はMPRCA)を使用して実施することができる。例えば、二重プライムドRCAでは、一方のプライマーが直鎖状RCAでのように環状核酸鋳型に相補的であり得、他方がRCA産物のタンデム反復単位核酸配列に相補的であり得る。結果として、二重プライムドRCAは、複数のハイブリダイゼーション、プライマー伸長、及び両方のプライマー及び両方の鎖が関与する鎖置換イベントの一連のカスケードを特徴とする指数関数的増幅動力学による連鎖反応として進行し得る。これはしばしば、コンカテマーの二本鎖核酸増幅産物の別個のセットを生成する。RCAは、Phi29 DNAポリメラーゼ等の適切な核酸ポリメラーゼを使用して、等温条件下、インビトロで実施することができる。適切なポリメラーゼは、鎖置換DNA合成能を有する。
【0022】
本明細書で使用する場合、「発現配列」という用語は、タンパク質発現にコンピテントであるDNA配列を指す。言い換えると、発現配列は、1つ又は複数のオープンリーディングフレーム(ORF)に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む発現コンピテント単位である。1つ又は複数のORFは、1つ又は複数の同一又は異なるタンパク質をコードし得る。場合によっては、発現配列は、1つよりも多いORFに作動可能に連結された1つのプロモーターを含み得る。例えば、発現配列は、2つの異なるORFに機能的に連結されたプロモーターを含み得、一方は抗体の重鎖をコードし、他方は軽鎖をコードする。発現配列は、効率的なタンパク質発現を支援するためのキャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)等の配列を更に含み得る。
【0023】
1つ又は複数の実施形態は、真核生物セルフリー発現系(例えば、インビトロでの転写及び翻訳系又はIVTT)においてタンパク質を発現するための方法を対象とする。一実施形態では、タンパク質は、二本鎖コンカテマーDNA(例えば、ローリングサークル増幅により生成されるRCA産物DNA)のインビトロでの転写及び翻訳によって発現される。これらのインビトロでの転写及び翻訳反応は、いずれもの無傷の細胞が混入していないタンパク質産物を生じさせる。このようなタンパク質の生成は、構造的及び機能的プロテオミクスを含む多数の用途で望まれる可能性がある。このようなタンパク質のセルフリー発現は、治療用途に特に望ましい場合がある。
【0024】
セルフリー発現は、一般的に2つのモードを包含する:(1)mRNA及びタンパク質は単一反応で作られ(例えば、カップリングIVTT)、及び(2)mRNAは第1の反応で作られ、結果として生じるmRNA産物は第2の別個の翻訳反応に添加される(例えば、連結IVTT)。二本鎖RCA産物DNA等の二本鎖コンカテマーDNAは、(1)又は(2)のいずれかのモードで利用することができる。例えば、一実施形態では、RCA産物は、カップリングしたインビトロでの転写-翻訳反応に提供され得、RCA産物DNAはmRNAに変換され、mRNAは同時に、RNA及びタンパク質を産生することができる単一の反応混合物中のタンパク質に発現される。別の実施形態では、RCA産物は、連結した転写-翻訳反応に提供され得、RCA産物DNAは、転写反応混合物において最初にmRNAに変換され、次に、生成されたmRNAは、タンパク質発現のために翻訳反応混合物に添加される。一部の実施形態では、カップリングしたインビトロでの転写-翻訳反応、又は連結した転写-翻訳反応に提供されるRCA産物は、DNAミニサークルに由来する。
【0025】
一実施形態では、インビトロでの転写及び翻訳のための方法は、二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる工程、及び真核生物セルフリー細胞系において二本鎖コンカテマーDNAからインビトロでタンパク質を発現させる工程を含む。二本鎖コンカテマーDNAは、複数のタンデム反復配列を含む。複数のタンデム反復配列の各々は、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)、及びORFを含む発現配列を含む。真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.1ng/μL~約35ng/μLの範囲である。
図1及び
図3~
図5は、インビトロでの転写及び翻訳反応の鋳型として、異なる濃度の二本鎖コンカテマーDNAを使用した異なるタンパク質のセルフリー発現を示す。一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、二本鎖ローリングサークル増幅(RCA)産物である。一部の実施形態では、RCA産物DNAは、最小限の発現配列に由来する。最小限の発現配列(ミニサークル)の一実施形態は、
図2に示される。
図2は、ポリA配列p11Aを含む転写ターミネーター(p11A+T7ターミネーター)を含む最小限の発現配列を示し、p11Aは11個のアデニン残基を表す。
【0026】
一部の実施形態では、複数のタンデム反復配列の各々は、少なくとも1つの発現配列を含む。このような実施形態では、少なくとも1つの発現配列は、少なくとも1つのプロモーター、少なくとも1つのCITE、及び少なくとも1つのORFを含む。一部の実施形態では、複数のタンデム反復配列の各々は、2つ以上の発現配列を含む。2つ以上の発現配列は、同じタンパク質又は異なるタンパク質をコードし得る。一部の実施形態では、発現配列は、少なくとも1つのORFに機能的に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む。例えば、一態様では、発現配列において、1つのプロモーターは、
図6A及び
図6Bに概略的に示されるように、1つのORFに機能的に連結される。別の態様では、発現配列において、1つのプロモーターは、
図6Cに概略的に示されるように、2つの異なるORFに機能的に連結される。一部の実施形態では、発現配列は、2つ以上のORFに機能的に連結された2つ以上のプロモーターを含み得る。
【0027】
図6A~
図6Cを更に参照すると、
図6Aは、2つの発現配列を含むタンデム反復配列を示し、両方の発現配列は同じタンパク質をコードする。別の例では、
図6Bは、2つの発現配列を含むタンデム反復配列を示し、第1の発現配列は第1のタンパク質をコードし、第2の発現配列は第2のタンパク質をコードし、第1のタンパク質は第2のタンパク質と異なる。
図6Aと
図6Bの両方において、例示された発現配列は、キャップ非依存性翻訳エレメント(例えば、IRES)及び単一のORFに機能的に連結されたプロモーターを含む。
【0028】
図6Cは、2つの異なるタンパク質をコードする2つのORFを含む発現配列を示す。
図6Cにおいて、発現配列は、2つの異なるORFに作動可能に連結されたプロモーターを含み、それらの各々は、互いに異なるタンパク質をコードする。この例では、単一のプロモーターが、キャップ非依存性翻訳エレメントを介して2つのORFに機能的に連結される。ORFの各々は、翻訳開始配列及び翻訳終止配列を含む。翻訳の終結又は終止配列を有することが必要であり、そうでなければ、無限のポリタンパク質が合成される可能性があり、これは望ましくない。しかしながら、転写終止コドンは、転写時にポリシストロン性mRNAの生成をもたらす第1のORFに対して任意であり得る。このような場合、第1と第2のORFの間に介在する配列は、IVTTに応じて、単一のポリシストロン性mRNAが産生されたとしても、2つの異なるタンパク質に翻訳できるように選択することができる。
【0029】
図6Cにおいて、1つのプロモーターは、IRES及び2つのORF(例えば、第1のORF及び第2のORF)に機能的に結合される。第1のORFは、第1のタンパク質をコードし、第2のORFは、第1のタンパク質とは異なる第2のタンパク質をコードする。ORFの各々は、翻訳開始配列及び翻訳終止配列を含む。ポリシストロン性mRNAは、
図6Cに示される発現配列の転写時に生成される。第1のORFの翻訳による第1のタンパク質の合成に、第2のORFの第2の翻訳開始配列へのリボソームの滑りが続き、第2のORFからの第2のタンパク質の合成が開始され得る。これは、第1と第2のORFの間に「自己切断配列」を組み込むことによって達成され得る。ウイルスP2Aモチーフ等の適切な自己切断配列は、1つの単一のmRNAからの2つ以上のタンパク質の作製を促進する。
【0030】
上述した通り、IRESエレメントの非存在下では、「自己切断」2Aペプチドをマルチシストロニック配列に組み込んで、翻訳時に同じmRNAから等モルレベルの複数の遺伝子を産生することができる。これらの2Aペプチドは、典型的には、リボソームに2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせ、2A配列の終わりと次の下流のペプチドの始まりの間で分離させることによって機能する。「切断」は、C末端に見出されるグリシン残基とプロリン残基の間で発生し、これは、上流のシストロンは末端にいくつかの追加された残基を有する一方、下流のシストロンはプロリンで開始することを意味する。配列番号1~4等の4つの異なる2Aペプチドは、真核細胞における自己切断の目的で一般的に使用される(Table 2(表2))。
【0031】
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは二本鎖RCA産物DNAである。RCA産物DNAは、タンデム反復配列を有する直鎖状又は分岐状コンカテマーであり得る。一部の実施形態では、複数(例えば、2つ)の別個の二本鎖コンカテマーDNAを用いることができ、別個の二本鎖コンカテマーDNAの各々は、異なるタンパク質をコードする発現配列を含む。例えば、2つのRCA産物DNAを用いることができ、第1のRCA産物DNAは第1のタンパク質をコードする第1の発現配列を含み、第2のRCA産物DNAは第2のタンパク質をコードする第2の発現配列を含み、第1のタンパク質は第2のタンパク質と異なる。RCA産物DNA等の二本鎖コンカテマーDNAは、修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、又はそれらの組合せを含み得る。
【0033】
一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、ヌクレオチド類似体(例えば、ホスホロチオエート化ヌクレオチド)又は修飾ヌクレオチド(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)を含む。二本鎖コンカテマーDNAには、限定されないが、ビオチン化ヌクレオチド、ホスホロチオエート化ヌクレオチド、イノシン含有ヌクレオチド、LNAヌクレオチド、PNAヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチド又はそれらの組合せが含まれ得る。一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAのタンデム反復配列の各々は、ヌクレオチド類似体を含む。
【0034】
一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含む。ホスホロチオエート化ヌクレオチドには、α-S-dATP又はα-S-dTTP等のホスホロチオエート化dNTPが含まれる。用語「ホスホロチオエート化」ヌクレオチドは、以降「チオエート化」ヌクレオチドとして互換的に使用される。一部の実施形態では、RCA産物DNA等の二本鎖コンカテマーDNAは、内部でチオ化され得る(アルファ-チオ-dNTPを有する)。一部の実施形態では、内部でチオ化された二本鎖コンカテマーDNAを生成するために、RCA反応にホスホロチオエート化ヌクレオチドが補充される。ホスホロチオエート化ヌクレオチドは、増幅中にRCA産物DNAへのチオ化塩基のランダム取り込みのために、dNTP混合物に取り込まれる。一部の他の実施形態では、RCA反応にチオ化プライマー配列を用いることにより、ホスホロチオエート化ヌクレオチドを含むRCA産物DNAを生成することができる(例えば、チオ化され、アルファ-チオ-dNTPを有する)。ある特定の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、ビオチン化ヌクレオチドを含み、これは、二本鎖コンカテマーDNAをストレプトアビジン結合ビーズ等の基材にコンジュゲートさせるために使用され得る。ビオチン化二本鎖コンカテマーDNAは、ビオチン化プライマーを使用してRCA反応を実施することにより生成することができる。結果として生じるビオチン化RCA産物DNAは、一般的に、ストレプトアビジン結合ビーズへのコンジュゲーション前に過剰なビオチン化プライマーを除去するために精製される。精製されたビオチン化RCA産物DNAをストレプトアビジンビーズと混合して、RCA産物DNAをストレプトアビジンビーズにコンジュゲートさせ得る。
【0035】
従来、原核生物セルフリー発現系、例えば、大腸菌細胞溶解物を使用するものを用いるIVTT反応では、IVTT反応液の1マイクロリットルあたり5~10ngの鋳型DNAが必要である。原虫細胞溶解物を使用するIVTT反応では、適切なタンパク質発現のために少なくとも35ng/μLのプラスミドDNAが必要であった。しかしながら、HeLa又はCHO細胞溶解物等の真核細胞又は哺乳動物細胞溶解物を使用するIVTT反応では、従来、より高いセルフリータンパク質発現収量のために40ng/μLを超えるプラスミドDNAが使用されている。真核生物のIVTT反応のためのこのような大量のプラスミドDNAの生成は、多くの場合、労働集約的であり、対費用効果が高くない。対照的に、プラスミドDNAの反応と比較して、大幅に低い濃度の二本鎖コンカテマーDNAを反応に用いた場合でさえ、所望のタンパク質の真核生物セルフリー発現の効率は大幅に高かった。一部の実施形態では、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.5ng/μL~約20ng/μLの範囲である。ある特定の実施形態では、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約5ng/μL~約20ng/μLの範囲である。一部の他の実施形態では、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約2ng/μL~約10ng/μLの範囲である。一部の実施形態では、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約3ng/μL~約7ng/μLの範囲である。例示的な実施形態では、真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は約5ng/μLである。
【0036】
真核生物溶解物におけるセルフリータンパク質発現は、鋳型として、より高い濃度(例えば、25μL IVTT反応における1μgを超えるRCA産物DNA)の使用と比較して、より低い濃度の二本鎖コンカテマーDNA(例えば、25μL IVTT反応における0.125μgのRCA産物DNA)を使用することにより、予想外に改善されることが観察された。
図1に示されるように、例えば、IVTキットで示されているよりも高い濃度(例えば、2μg又は3μg)の、TurboGFP遺伝子を含むRCA DNA鋳型を適用することにより、セルフリータンパク質発現系においてTurboGFPタンパク質のより低い収量がもたらされた。しかしながら、RCA産物DNAをIVTキットのプロトコールにより示されている濃度よりも低い濃度(例えば、500ng、250ng、125ng)で使用した場合、セルフリーTurboGFPタンパク質の発現の上昇が観察された(
図1)。結果は、ホスホロチオエート化及び非ホスホロチオエート化RCA産物DNAを用いて比較することができ、ホスホロチオエート化RCA産物DNAからのタンパク質発現がわずかに良好であった。RCA産物DNAから得られた結果とは対照的に、タンパク質収量は、同じIVTT実験条件下でプラスミドDNA鋳型の濃度に比例して減少した。例えば、500ngのプラスミドDNA(製造業者のIVTプロトコールにより2×に希釈)は、鋳型として1μgのプラスミドDNAを使用した場合と比較してTurboGFPタンパク質の収量が少なくなった(
図1)。したがって、IVTT反応におけるプラスミドDNA鋳型の濃度と比較して、より低い濃度のRCA産物DNA鋳型で、セルフリータンパク質発現の大幅な改善が得られ、これは予想外であった。RCA産物DNA鋳型の濃度の減少を伴うセルフリータンパク質発現の増加傾向(
図1)はまた、IVTT反応速度論の一般的な傾向と比較して予想外であり、セルフリータンパク質発現は、典型的なIVTT反応における鋳型DNAの濃度に直接比例する。
【0037】
一般的に、IVTTの反応体積が増大するにつれて、より多量のDNA鋳型が必要とされる。例えば、1-Step Human High-Yield Maxi IVTキットは、2mLの反応体積用に製剤化される。キットのプロトコールにより、IVTT実験での効率的なタンパク質発現のために、最終濃度が40ng/μlであるプラスミドDNA鋳型(すなわち、2mLの反応体積あたり80μgのプラスミドDNA)が必要とされる。このような反応体積を更にスケールアップするには、プラスミドDNAのより多い総量が必要とされ、費用、調製時間、及び労力が更に増加する。例えば、4mLの反応体積では、40ng/μLの鋳型の最終濃度を満たすために計160μgのプラスミドDNAが必要になる。更に、反応スケールアウトの場合、IVTT反応の数が並行して増加する。RCA DNAはセルフリータンパク質発現に約5ng/μLで効果的であるため、80μgの総プラスミドDNAの代わりに約20μgの総RCA DNAが80×25μLの個々の反応を可能にするために必要とされた。そのため、セルフリータンパク質発現の鋳型としてより少ない量のRCA産物DNAが必要とされることは、反応体積のスケールアップ、反応体積のスケールアウト、及び鋳型のコスト管理に有利である。
【0038】
哺乳動物セルフリー抽出物におけるインビトロでの転写及び翻訳反応からのタンパク質収量を増強するために、老廃物の除去は、老廃物が翻訳機構に悪影響を与えるため、しばしば必要とされる。これは、従来、透析膜を使用して行われる。更に、透析システム内の成分の濃度を最大限にするために、IVTT反応体積がスケールアップされる。したがって、鋳型DNAはまた、大幅にスケールアップされて、スケールアップされたIVTT反応体積における鋳型DNAの必要な濃度が維持される。しかしながら、DNA鋳型は、従来、溶液ベースのIVTT反応では失われる。このような懸念に対処し、IVTTタンパク質収量を増強するために、DNA鋳型を基材に固定して、溶液ベースのIVTT反応からDNA鋳型を回収することができる。一部の実施形態では、固定化DNA鋳型は、タンパク質が固定化DNA鋳型から連続的に産生されるように、連続フロー下でセルフリー発現系に曝露される。
【0039】
1つ又は複数の実施形態では、方法は、二本鎖コンカテマーDNAを基材に固定する工程を更に含む。二本鎖コンカテマーDNA鋳型を固定化するために使用される基材は、磁性粒子、セファロースビーズ、ガラス基材、ポリマー基材又は金属基材から選択され得る。磁性粒子は、磁性ビーズ又は磁性インペラであり得る。基材は、ガラス試験管、ペトリ皿、マルチウェルプレート、マイクロ流体デバイス/システム、分析デバイス/システムであるか、又はその一部であり得、二本鎖コンカテマーDNAは基材に固定することができる。
【0040】
二本鎖コンカテマーDNAは、様々な方法によって基材に固定され得る。例えば、一実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAはビオチン化ヌクレオチドを含む。このような実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介してストレプトアビジンコーティングされた基材に固定され得る。二本鎖コンカテマーDNAをストレプトアビジンコーティングされた基材に固定する工程は、二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる前に実施される。二本鎖コンカテマーDNAを基材に固定した後、真核生物セルフリータンパク質発現系が、固定化二本鎖コンカテマーDNAに添加され、インビトロでのセルフリータンパク質発現の鋳型として機能する。実施例4は、DNAミニサークル(
図2を参照されたい)から生成され、更にストレプトアビジンビーズに固定されたRCA産物DNAからのセルフリー発現を明確に示し、RCA産物DNAはビオチン化された。この実施例では、RCA産物はストレプトアビジンビーズに固定されている。
【0041】
一部の実施形態では、方法は、インビトロでタンパク質を発現させた後、真核生物発現系を含む反応混合物から固定化二本鎖コンカテマーDNAを回収する工程を更に含む。このような実施形態では、タンパク質を発現させた後、発現させた所望のタンパク質及び残りの真核生物セルフリー発現系を含有する混合物を異なる容器に移すことができる。固定化二本鎖コンカテマーDNAは、その後のIVTT反応におけるその後の使用の前に(例えば、洗浄緩衝液を使用して)洗浄され得る。
【0042】
1つ又は複数の実施形態では、回収された固定化二本鎖コンカテマーDNAは、1つ又は複数のその後のセルフリー発現系で再使用され得る。回収された固定化二本鎖コンカテマーDNAは、以前のセルフリー発現系から持ち越された任意の不純物を除去するための、1つ又は複数の洗浄工程の有無にかかわらず再使用され得る。
【0043】
一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAの複数のタンデム反復配列の各々は、プロモーター、CITE、及びORFを含む発現配列を含み、CITEは内部リボソーム進入部位(IRES)、翻訳増強エレメント(TEE)、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNA鋳型として用いられるRCA産物DNAは、CITEとしてIRES配列を含む。当該技術分野において公知である適切なIRES又はTEE配列の多数の例が、CITEとして用いられ得、これには、ウイルス又は生体内の天然配列に由来するものが含まれる。IRES配列の存在は、RCA産物DNAの濃度がプラスミドDNAの濃度と比較して大幅に低い場合でさえ、真核生物セルフリー発現系で効率的な翻訳を推進する(
図1に示される)。IRESエレメントのRNAフォールディングは、翻訳効率の調節に影響を与え得る。一部の実施形態では、効率的な翻訳のために、HeLa細胞溶解物等のセルフリータンパク質発現系の成分は、IRESエレメントの効果的なRNAフォールディングを確実するように最適化される。
【0044】
発現配列は1つ又は複数のORFを含み、ORFの各々は、翻訳開始配列及び翻訳終結配列を含む。ある特定の実施形態では、ORFは、コドン最適化配列、精製タグ配列、増強したリボソーム認識のためのIRESに由来するアミノ末端ペプチド融合配列、プロテアーゼ切断部位、シグナルペプチド、又はそれらの組合せを含む。精製タグ配列は、発現タンパク質の精製に用いられ得る。1つ又は複数の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAの複数のタンデム反復配列の各々における発現配列のORFは、翻訳を増強するためのコドン最適化配列を含む。コドン最適化配列を生成するために、コドンバイアス、文脈に沿ったコドン選択、及び/又は個々のコドン選択は、一般的に考慮される因子の一部である。
【0045】
ORFのコドン最適化配列は、RCA産物DNA中の発現配列の翻訳の速度又は品質を増強させる。コドン最適化は、一般的に、目的の遺伝子のmRNA安定性又は翻訳効率を高めることにより、タンパク質発現を改善する。遺伝子の機能性はまた、カスタム設計された遺伝子内のコドン使用を最適化することによっても高めることができる。一部のコドン最適化の実施形態では、種における低頻度のコドンは、高頻度のコドンによって置き換えられ得る。例えば、低頻度のコドンUUAは、ロイシンの高頻度のコドンCUGによって置き換えられ得る。更なるコドン最適化の実施形態では、アミノ酸欠乏中に高度に荷電されるtRNAを表すコドンが使用され得る。コドン最適化は、mRNAの安定性を高め、したがって、タンパク質の翻訳又はタンパク質のフォールディングの速度を変更する場合がある。更に、コドン最適化は、転写及び翻訳制御をカスタマイズし、リボソーム結合部位を変更し、又はmRNA分解部位を安定化することができる。
【0046】
一部の実施形態では、ORFは、発現タンパク質の精製のためのタグ配列を含み得る。タグ配列は、親和性タグ、プロテアーゼ切断のための認識配列、又はそれらの組合せであり得る。親和性タグは、組換えタンパク質の迅速な精製及び検出のために使用することができる。親和性タグには、ポリヒスチジンタグ(his6)(配列番号8)、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグ(GST)、ヘマグルチニン(HA)、myc(c-myc遺伝子産物に由来する)、FLAG(エンテロキナーゼ切断部位を含む8つのアミノ酸Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(配列番号9)からなる)又はそれらの組合せが含まれ得る。融合タグは所望のタンパク質の迅速な精製又は検出に役立つが、タグは、組換えタンパク質の永続的な固定剤又はドメインとはみなされない場合がある。したがって、組換えタンパク質の構造及び機能の高度な分析研究には、融合タグの除去が必要になることがしばしばある。プロテアーゼ切断タグ等の別のタイプのタグを使用することによって、精製用のタグをタンパク質から除去することができる。プロテアーゼ切断タグは、特定のタンパク質又はペプチド配列内の異なるペプチド結合を切断するために使用され得る。プロテアーゼ切断タグには、例えば、PreScission Proteaseタグ(GE Healthcare社)又はトロンビンプロテアーゼタグ(GE Healthcare社)が含まれ得る。
【0047】
1つ又は複数の実施形態では、複数のタンデム反復配列の各々は、ポリA配列、イントロン配列、転写終結配列、インスレーター配列、又はそれらの組合せを更に含む。一部の実施形態では、タンデム反復配列の各々は、転写終結配列及びポリアデニル化部位を更に含み、転写終結配列及びポリアデニル化部位は、一般的に、DNA鋳型の遺伝子の3'末端に位置する。転写終結配列は、新たに合成されたmRNAにシグナルを提供して、転写複合体からmRNAを放出するプロセスを開始する。これはまた、所望のタンパク質産物の効果的な翻訳に役立ち得る。
【0048】
ミニサークルに由来するRCA産物における非効率的な転写終結の効果は、プラスミドDNAに由来するRCA産物と比較してほとんど重要ではない。一部の場合では、RCA産物がプラスミドから由来する場合、目的の遺伝子を含有するプラスミドDNAを制限酵素を使用して消化し、遺伝子の直後に二本鎖DNA切断を生成して、そのポイントを超えて転写が進行しないようにする必要がある。流出転写が発生した場合、多くのコード配列及び非コード配列を含有するプラスミドの他のセクション(複製起点、抗生物質選択、並びに宿主細胞においてプラスミドの選択、スクリーニング及び/又は増幅に使用されるアクセサリーの配列を含む)が転写され得る。プラスミドDNAに由来するRCA産物は、未消化の状態で使用した場合、転写リードスルーを介して、目的のタンパク質とともに(又はそれよりも多い量で)タンパク質混入物が産生される危険性のある、望ましくないmRNA種を産生する場合がある。しかしながら、ミニサークルに由来するRCA産物の転写終結が不十分でも依然として、オンターゲットmRNAが生成されることがある。結果として、プラスミド又はPCR増幅プラスミドDNAに由来するRCA産物と比較して、DNAミニサークルに由来するRCA産物からのセルフリータンパク質の収量は良好である。DNAミニサークルに由来するRCA産物が、転写終結配列を完全に欠いている場合でさえ、同様の発現の利点が観察され、これは予想外の結果である。これらのRCA産物は、シストロン性mRNA種のタンデム反復を生成することにより、セルフリータンパク質発現を改善し、mRNAのすべてのシストロンは、所望の標的遺伝子を含む。次にシストロンのタンデム反復は、特に転写終結シグナルが存在しない場合に、mRNAの安定性を改善し、所望のタンパク質産物のより高い翻訳フラックスに寄与することができる。
【0049】
インビトロでの転写及び翻訳のための方法の1つ又は複数の実施形態では、方法は、環状DNAを用意する工程、DNAサークルのRCAを介して二本鎖コンカテマーDNAを生成する工程、及び生成された二本鎖コンカテマーDNAをインビトロで真核生物セルフリー発現系と接触させて、転写及び翻訳を介して二本鎖コンカテマーDNAからタンパク質を発現させる工程を含む。真核生物セルフリー発現系における二本鎖コンカテマーDNAの最終濃度は、約0.1ng/μL~35ng/μLの範囲である。一部の実施形態では、二本鎖コンカテマーDNAは、真核生物セルフリー発現系と接触させる前に精製される。DNAミニサークルは、二本鎖DNA鋳型の分子内ライゲーションによって生成され得る。1つ又は複数の実施形態では、DNAミニサークルから生成された二本鎖RCA産物DNAは、直鎖状又は分岐状コンカテマーであり得る。
【0050】
一部の実施形態では、環状DNAから生成された二本鎖コンカテマーRCA産物DNAの最終濃度は、約0.5~20ng/μLの範囲である。一部の他の実施形態では、真核生物セルフリー発現系において環状DNAから生成された二本鎖コンカテマーRCA産物DNAの最終濃度は、約3ng/μL~約7ng/μLの範囲である。ある特定の実施形態では、真核生物セルフリー発現系において環状DNAから生成された二本鎖コンカテマーRCA産物DNAの最終濃度は、約5ng/μL~約7ng/μLの範囲である。例示的な実施形態では、真核生物セルフリー発現系のDNA環から生成された二本鎖コンカテマーRCA産物DNAの最終濃度は約5ng/μLである。実施例3、
図2及び
図3は、DNAサークルから生成されたRCA産物DNAの必要量が、真核生物セルフリー溶解物において所望のタンパク質発現のためのプラスミドDNAよりも4~8倍低いことを示す。
【0051】
DNAミニサークルから生成されたIVTT反応に使用される二本鎖RCA産物DNAは、直鎖状又は分岐状コンカテマーであり得る。DNAミニサークルは、プロモーター、キャップ非依存性翻訳エレメント、及びORFから本質的になる最小限の発現配列から本質的になる。したがって、DNAミニサークルから生成された直鎖状又は分岐状コンカテマー(二本鎖RCA産物DNA)は、最小限の発現配列のタンデム反復から本質的になる。最小限の発現配列のORFは、特定の目的の遺伝子を含有する核酸配列である。最小限の発現配列はまた、特定の目的の遺伝子の発現に必要な最小の遺伝エレメント又は配列(例えば、エンハンサー配列)を含有し得る。
【0052】
1つ又は複数の実施形態では、最小限の発現配列のORFは、コドン最適化配列、精製タグ配列、プロテアーゼ切断部位又はそれらの組合せを含む。コドン最適化配列を生成するために、コドンバイアス、文脈に沿ったコドン選択、及び/又は個々のコドン選択は、一般的に考慮される因子である。上述した通り、一部の実施形態では、最小限の発現配列は更に、転写終結配列から本質的になる。
【0053】
DNAミニサークルのキャップ非依存性翻訳エレメント(CITE)は、内部リボソーム進入部位(IRES)、翻訳増強エレメント(TEE)、又はそれらの組合せを含む。最小限の発現配列は、インスレーター配列、ポリA配列、転写終結配列、又はそれらの組合せを更に含有し得る。加えて、二本鎖コンカテマーRCA産物DNAのインビトロでの転写及び/又は翻訳に実質的に影響を与えない配列を含有し得る。例えば、翻訳エンハンサー配列、インスレーター配列、イントロン配列、又は転写終結配列等の配列を更に含み得る。しかしながら、最小限の発現配列及び結果として生じる二本鎖RCA産物には、RCA産物のインビトロでの転写及び翻訳に負の影響を与える可能性がある任意の追加の配列は含まれない。
【0054】
例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を含む、当該技術分野において公知である適切なプロモーターの多数の例を用いることができる。同様に、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)、ポリA束、種非依存性翻訳リーダー(SITS)、コザックコンセンサス配列、及びシャインダルガルノ配列を含む、適切なリボソーム結合部位の多数の例が当該技術分野において公知である。インスレーター配列は、一般的に、リボソーム結合又は翻訳開始の効率を増強する。例えば、天然IRES ORFの翻訳されたN末端、又はポリヒスチジン束をコードする配列を含む、適切なインスレーター配列の多数の例が当該技術分野において存在する。最小限の発現配列は、プレプロモーター配列、プロテアーゼ切断又はヌクレオチド切断のための配列、タンパク質精製のための配列、又はそれらの組合せを更に含み得る。最小限の発現配列は、所望のタンパク質産物の転写及び/若しくは翻訳のいずれかを妨害するか又は阻害する任意の配列を含有しない、或いは他にはタンパク質産生をより面倒にするように選択される。
【0055】
最小限の発現配列は、宿主細胞内におけるプラスミドの増幅に必要とされる任意の外来配列を欠いている。例えば、RCA産物は、複製起点、抗生物質選択遺伝子、又は宿主細胞内におけるクローニング、選択、スクリーニング及び/若しくは複製に必要とされる任意の他のアクセサリー配列等の任意の外来配列を除外する。RCA産物にこのような外来配列が存在すると、セルフリータンパク質発現の転写及び/又は翻訳に実質的に影響を与える。「外来配列」には、所望のタンパク質のコード化又は発現に必要ではない配列が含まれる。外来配列には、lacZ、ベータ-ガラクトシダーゼ等の宿主細胞内におけるプラスミドの選択、スクリーニング、及び/又は増幅に使用されるアクセサリー配列が含まれ得る。外来配列には、複製起点、抗生物質選択遺伝子、多重クローニング部位等の遺伝子の挿入に適した制限部位、又はそれらの組合せの配列が含まれ得る。外来配列は、宿主細胞へのクローニング又は宿主細胞における検出に必要とされる任意の他の配列を更に含み得る。
【0056】
二本鎖コンカテマーRCA産物DNA配列は、ホスホロチオエート化ヌクレオチド、ビオチン化ヌクレオチド、又はそれらの組合せを含み得る。ある特定の実施形態では、最小限の発現配列のタンデム反復から本質的になる二本鎖コンカテマーRCA産物DNAは、ビオチン化ヌクレオチドを含む。このような実施形態では、方法は、二本鎖コンカテマーDNAを真核生物セルフリー発現系と接触させる前に、ビオチン化ヌクレオチドを含む二本鎖コンカテマーDNAを基材に固定する工程を更に含み、基材はストレプトアビジンコーティング基材である。方法は、二本鎖コンカテマーDNAからインビトロでタンパク質を発現させた後、真核生物セルフリー発現系から固定化二本鎖コンカテマーDNAを回収する工程を更に含む。方法は、後続のIVTT反応のために最小限の発現配列のタンデム反復から本質的になる回収された二本鎖コンカテマーDNA鋳型を再使用する工程を更に含む。
【0057】
セルフリー転写反応において使用されるRNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)は、一般的に、DNAコード配列への効果的な結合のために二本鎖DNAプロモーター配列を必要とする。RNAポリメラーゼの二本鎖DNAプロモーター配列への効果的な結合により、効率的な転写が開始される。したがって、二本鎖RCA産物の生成を促進するRCA反応条件は、インビトロでの効果的な転写及び翻訳のために望まれる。
【0058】
一部の実施形態では、生成された二本鎖コンカテマーDNAは、真核生物セルフリー発現系と接触させる前に浄化する必要がある。一部の実施形態では、真核細胞抽出物を使用してセルフリー発現を進める前に、RCA産物DNAを分離して(例えば、沈殿により)、塩又は任意の他の混入物、例えば、プライマー又はより小さい断片化DNAを反応培地から除去することができる。一部の実施形態では、二本鎖RCA産物DNAは、更なる処理なしでセルフリー発現系に提供される。例えば、RCA産物DNAは、増幅後に、任意の更なる制限消化なしで、セルフリー系に直接添加することができる。
【0059】
最小限の発現配列は、転写される目的の遺伝子の上流(5')に存在するプロモーター配列を含む。DNA依存性RNAポリメラーゼは、二本鎖DNAプロモーター領域に結合して、遺伝子転写を開始する。様々な適切なRNAポリメラーゼが当該技術分野において公知であり、ただ1つのサブユニットを有するもの(例えば、T3及びT7のようなバクテリオファージ、並びにミトコンドリア由来のもの)、並びに細菌及び真核生物に由来するマルチドメインRNAポリメラーゼが含まれる。RNAポリメラーゼは、効率的な転写のために追加のタンパク質補因子を更に必要とする場合がある。
【0060】
セルフリー転写-翻訳反応の一部の実施形態では、生体分子の転写/翻訳機構が細胞から抽出され、インビトロでの翻訳に利用される。酵素の組成、割合、並びに転写及び翻訳に必要とされる構成要素は、このセルフリー抽出物によって提供される。転写によって合成されたmRNAは、翻訳反応において発現され、セルフリー抽出物中に標的タンパク質が産生される。インビトロでの発現反応において、タンパク質合成は、培養細胞内ではなくセルフリー抽出物において生じる(細胞から抽出された物質は、本明細書では「セルフリー抽出物」又は任意の無傷の細胞を含有しない「細胞抽出物」と呼ばれることがある)。細胞抽出物は、一般的に、細胞の細胞質成分及び細胞小器官成分を含有する。セルフリー抽出物は、リボソーム、翻訳因子、tRNA及びアミノ酸、酵素補因子及びエネルギー源、並びにタンパク質フォールディングに不可欠な細胞成分等の、セルフリー転写及び翻訳に必要とされる分子のすべて又はほとんどを供給し得る。インビトロでのタンパク質発現反応において、タンパク質合成は、培養した無傷の細胞内ではなくセルフリー抽出物において生じる。
【0061】
上述した通り、一部の実施形態では、セルフリー発現系は真核細胞抽出物を含み、細胞抽出物は単細胞生物(例えば、原生動物、酵母細胞、昆虫細胞)又は多細胞生物(例えば、昆虫細胞、ヒト細胞を含む哺乳動物細胞)に由来する。適切な真核細胞抽出物には、限定されないが、ウサギ網状赤血球溶解物(RRL)、小麦胚芽抽出物、昆虫細胞溶解物(SF9又はSF21等)、哺乳動物溶解物(CHO等)、ヒト溶解物(HeLa等)、又は原生動物溶解物(リーシュマニア(Leishmania)等)が含まれる。
【0062】
RCA産物DNAに由来するmRNAは、真核細胞抽出物に添加されるか、又はその中で産生され得る。RCA反応に使用されるDNA鋳型は、合成DNA又は天然DNAであり得る。DNA鋳型は、環状DNA鋳型であり得る。一例の実施形態では、直鎖状核酸鋳型の環状化は、酵素反応によって、例えば、DNAリガーゼ等のライゲーション酵素とのインキュベーションによって達成される。一部の実施形態では、DNAミニサークル鋳型は最小限の発現配列を含む。インビトロでの転写-翻訳に使用されるRCA産物は、無傷の非分解状態であり得る。
【0063】
ローリングサークル増幅反応は、しばしば、プライマー、ポリメラーゼ、及び遊離ヌクレオチド(dNTP)等の試薬を用いる。一部の実施形態では、RCAは、二本鎖DNAミニサークルをランダムプライマー混合物を含むプライマー溶液と接触させて、核酸鋳型-プライマー複合体を形成し;核酸鋳型-プライマー複合体をDNAポリメラーゼ及びデオキシリボヌクレオシド三リン酸と接触させ;及び核酸鋳型を増幅することによって実施され得る。増幅反応において用いられる核酸ポリメラーゼは、プルーフリーディング核酸ポリメラーゼであり得る。RCAは、限定されないが、Phi29 DNAポリメラーゼを含む、当該技術分野において公知であるDNA鎖置換ポリメラーゼのいずれかを使用することにより実施され得る。増幅反応混合物は、適切な増幅反応緩衝液等の追加の試薬を更に含み得る。
【0064】
一部の実施形態では、核酸増幅反応において使用される試薬の各々は、任意の混入核酸を除去するために前処理され得る。一部の実施形態では、試薬の前処理は、紫外線の存在下で、試薬をインキュベートすることを含む。一部の他の実施形態では、試薬は、ヌクレアーゼ及びその補因子(例えば、金属イオン)の存在下で、試薬をインキュベートすることにより混入物除去される。適切なヌクレアーゼには、限定されないが、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII等のエキソヌクレアーゼが含まれる。一部の実施形態では、DNA増幅反応に使用されるプルーフリーディングDNAポリメラーゼは、dNTPの非存在下で、二価金属イオン(例えば、マグネシウム又はマンガンイオン)とともにインキュベートすることにより混入物除去され得る。
【0065】
RCA反応は、ランダムプライマー混合物を使用して実施することができる。一部の実施形態では、特定のプライマーがRCA反応に使用される。1つ又は複数のヌクレオチド類似体を含むプライマー配列もまた使用され得る。1つ又は複数の実施形態では、RCAは、ヌクレオチド類似体を含むランダムプライマー混合物を使用して実施される。一部の実施形態では、RCAは、ヌクレオチド類似体を含有するdNTPを使用して実施される。ヌクレオチド類似体は、イノシン、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)ヌクレオチド、チオ化ヌクレオチド、2-アミノ-デオキシアデノシン、2-チオ-デオキシチミジン、ポリカチオンヌクレオチド、Zip核酸(ZNA)、ポリカチオン修飾ヌクレオチド、又はそれらの組合せであり得る。1つ又は複数の実施形態では、ランダムプライマー混合物は、配列+N+N(atN)(atN)(atN)*N(配列番号6)(ATヘキサマープライマー)を有する。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ耐性プライマー(例えば、適切な位置にホスホロチオエート基を含むプライマー配列)が、増幅反応に用いられる(例えば、NNNN*N*N)。一部の実施形態では、DNAミニサークルの増幅は、ランダムヘキサマー又はヘキサマープライマー、+N+N(atN)(atN)(atN)*N(配列番号6)(ATヘキサマープライマー)を用いる。
【0066】
増幅反応中、DNA鋳型、例えば、DNAミニサークルは、最小限の発現配列から本質的になり、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)又はそれらの修飾された対応物の存在下でポリメラーゼにより複製される。核酸鋳型増幅に用いられる遊離ヌクレオチドには、天然ヌクレオチド(例えば、dATP、dGTP、dCTP又はdTTP)又はそれらの修飾された類似体が含まれ得る。一部の実施形態では、反応混合物にチオ化dNTPが補充される。チオ化dNTPには、限定されないが、α-S-dGTP、α-S-dCTP、α-S-dATP、及びα-S-dTTPが含まれ得る。α-S-dATP又はα-S-dTTP等のチオ化dNTPは、RCA産物へのチオ化塩基のランダム取り込みのためにdNTP混合物に添加され得る。
【0067】
一部の実施形態では、RCAは、約10μM~約10mMの範囲の最終濃度のdNTPを使用して実施される。RCA反応の1つ又は複数の実施形態では、dNTP濃度は10mM未満である。これらの実施形態では、RCA産物からのヒドロゲル形成を回避し、反応緩衝液中に存在する二価カチオン(例えば、Mg2+)量より低いか又はそれに等しい濃度を維持するために、dNTPの濃度は10mMより低く保たれる。高濃度のdNTPの存在下で増幅した後、ヒドロゲル形成が起こる場合があり、これは、RCA産物のピペッティング及び処理等の下流操作を更に複雑にする場合がある。RCA反応において50mM以上のdNTP濃度を使用した場合、ヒドロゲル形成が観察される場合がある。
【0068】
RCAは、illustra(商標)TempliPhi(商標)増幅キット(GE Healthcare社)等の市販のRCA増幅キットを使用して実施することができる。TempliPhiローリングサークル増幅は、より高い感度及び増幅バランスを提供する修飾されたランダムプライマーを用いる。一部の実施形態では、ヌクレアーゼ耐性プライマーがRCA反応に使用される。現在のインビトロでの転写及び翻訳方法には高濃度の鋳型DNAが必要であるため、より速い反応速度及びより高い収量でのよりバランスのとれたDNA増幅は、RCAを使用して達成することができる。
【0069】
本発明の方法での使用のためのDNAミニサークル鋳型を調製するために、様々な方法を使用することができる。一部の実施形態では、直鎖状DNA鋳型を環状化して、DNAミニサークル鋳型を生成することができる。一例の実施形態では、直鎖状DNA鋳型の環状化は、酵素反応によって、例えば、DNAリガーゼ等のライゲーション酵素とのインキュベーションによって行うことができる。一部の実施形態では、直鎖状DNA鋳型の末端は、末端が近接するように核酸配列にハイブリダイズされる。次に、ライゲーション酵素とインキュベートすることにより、ハイブリダイズした直鎖状DNA鋳型の環状化が行われて、DNAミニサークルが生成され得る。適切なDNAミニサークル鋳型はまた、適切なPCRプライマーを使用して、より大きなDNAの一部(例えば、ゲノムDNA、又はDNAライブラリーからのDNA)のPCR増幅、続く、PCR産物の環状化によっても生成することができる。DNAミニサークルはまた、適切な直鎖状オリゴヌクレオチドの化学合成、続く、合成オリゴヌクレオチドの環状化によっても生成され得る。一部の実施形態では、合成された直鎖状オリゴヌクレオチドは、最小限の発現配列から本質的になり、DNAリガーゼを介して環状化を達成してDNAミニサークルを生成し得る。
【0070】
1つ又は複数の方法は、DNAミニサークルを精製する、分析する、及び/又は定量化する工程を更に含むことができる。二本鎖DNAミニサークルの単離若しくは精製、及び/又は酵素若しくはDNAのライゲーションされていない形態等の混入物の除去は、増幅反応の前に実施することができる。核酸の精製、分析又は定量化に使用される任意の適切な技術を用いることができる。非限定的な例には、沈殿、ろ過、親和性捕捉、ゲル電気泳動、配列決定又はHPLC分析が含まれる。例えば、環状核酸の精製は、親和性捕捉により達成され得る。一部の実施形態では、方法は、生成されたDNAミニサークルを処理する工程を更に含み得る。生成されたDNAミニサークルの後処理は、使用目的によって異なることがある。
【実施例0071】
他に明記しない限り、実施例に記載されている成分は、一般的な化学品供給業者から市販されている。実施例のセクションで使用されるいくつかの略語は、次のように展開される:「mg」:ミリグラム;「ng」:ナノグラム;「pg」:ピコグラム;「fg」:フェムトグラム;「mL」:ミリリットル;「mg/mL」:ミリリットルあたりのミリグラム;「mM」:ミリモル濃度;「mmol」:ミリモル;「pM」:ピコモル濃度;「pmol」:ピコモル;「μL」:マイクロリットル;「min.」:分、及び「h.」:時間。
【0072】
材料:ヒト及びCHO溶解物を使用する1-Step Coupled IVTキット、pCFE-GFP対照ベクター、並びにQuant-IT PicoGreen(登録商標)二本鎖DNAアッセイキットは、米国マサチューセッツ州ウォルサムのThermoFisher社から購入した。MICROCON(登録商標)遠心フィルター及びストレプトアビジン磁気ビーズは、米国ミシガン州セントルイスのSigma-Aldrich社から購入した。PstI酵素は、米国マサチューセッツ州イプスウィッチのNew England Biolabs社から購入した。Typhoon variable-mode Imagerは、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのGE Healthcare社から入手した。SpectraMax M5 Microplate Readerは、Molecular Devices, LLC社からであった。
【0073】
(実施例1)
RCA産物DNAの生成
RCA産物DNAは、RCA反応により、環状DNA鋳型(プラスミド陽性対照、例えば、pCFE-GFP、又は最小限の発現配列を有するDNAミニサークルのいずれか)から生成した。プラスミド陽性対照であるpCFE-GFPは、1-Step Human Coupled IVTキットの一部として購入した。この精製されたプラスミドは、脳心筋炎ウイルス(EMCV)の内部リボソーム進入部位(IRES)を含み、TurboGFPタンパク質をコードする。
【0074】
DNAミニサークルの生成:
EGFPの最小限の発現配列は、インシリコで設計し、インビトロで合成した。最小限の発現配列は、主にT7プロモーター及び+1配列(結果として生じるmRNAの5'非翻訳領域の最初のリボース位置)に続いて、EGFPコード領域に融合したIRES配列を含有した。T7プレプロモーター配列、T7 phi10プロモーターステムループ、翻訳増強エレメント(TEE)、リボソーム結合配列、リボソーム結合を増強するためのインスレーター配列、リボソーム開始を増強するためのインスレーター配列、T7転写終結配列、ポリアデニル化配列、ペプチドリーダー配列、又はプロテアーゼ切断部位を含む、様々な追加の非コーディングパラメーター及びコーディングパラメーターが最小限の発現配列の設計中に含まれた。最小限の発現配列は、コドン使用のために更に最適化され得る。代表的な最小限の発現配列は、配列番号5(Table 3(表3))として表にされている。配列番号5の最小限の発現配列は、T7プロモーター、EMVC IRES、翻訳開始コドン、EMVCポリタンパク質ORFの翻訳されたN末端(コドン最適化されたEGFPに融合している)、翻訳終止コドン、ポリA束及びT7転写ターミネーター配列を逐次的に含む。
【0075】
【0076】
【0077】
DNAシンセサイザー(Integrated DNA Technologies社)を使用して、5'末端と3'末端(それぞれBamHI及びBglII)の両方に固有の制限部位を含む直鎖状二本鎖DNAを合成した。DNAミニサークルを作製するために、二本鎖DNAを両方のエンドヌクレアーゼで消化して、相補的な付着性オーバーハングを生成した。この消化されたDNAは、T4 DNAリガーゼを使用してライゲーションした。制限消化及びライゲーションの工程を逐次的に又は同時に(例えば、同じ管内で)、20U BamH1、10U BglII、400U T4リガーゼ、1mM ATP、100μg/mLウシ血清アルブミン(BSA)、100mM NaCl、10mM MgCl2、50mM Tris-HCl、pH7.5、及び10mMジチオトレイトール(DTT)。を含む反応混合物を使用して行った。その後、すべてのライゲーション産物(DNAミニサークル)をエキソヌクレアーゼI及びエキソヌクレアーゼIIIで処理して、任意の残っている直鎖状DNA断片を消化した。エキソヌクレアーゼは、ライゲーション産物を80℃で20分間インキュベートすることにより熱不活性化した。エキソヌクレアーゼの熱不活性化後、10μl(10ngの環状DNA)の完全なライゲーション反応を変性させ、次に、Phi29 DNAポリメラーゼを使用した等温RCA反応に直接(中間体精製なしで)用いた。
【0078】
ローリングサークル増幅(RCA):
環状DNA鋳型(例えば、プラスミド又はDNAミニサークル)のRCAは、インプットDNA配列のタンデム反復を有する高分子量の超分岐状コンカテマーを生じる。水、反応緩衝液、プライマー、及びDNAポリメラーゼ酵素を含むRCA試薬は、環状DNA鋳型(プラスミド又はミニサークル)又はdNTPを添加する前に30℃で60分間、予め清澄化して、オフターゲット増幅を最小限にした。一部の実施形態では、エキソヌクレアーゼ耐性プライマー及びヌクレオチドを含むプライマー-ヌクレオチドミックスを、エキソヌクレアーゼI、エキソヌクレアーゼIII、及び一本鎖DNA結合タンパク質(SSBタンパク質)の組合せとともに、プライマー-ヌクレオチドミックスをインキュベートすることにより混入物除去した。一部の実施形態では、鎖置換型DNAポリメラーゼを含有する酵素ミックスを、場合によりエキソヌクレアーゼの存在下で二価カチオン(例えば、Mg2+)とともにインキュベートすることにより混入物除去した(使用されるDNAポリメラーゼが非プルーフリーディングDNAポリメラーゼを含む場合)。続いて、混入物除去した酵素及びプライマー-ヌクレオチドのミックスを使用して、環状DNA鋳型の増幅を実施した。例えば、200ngのPhi29 DNAポリメラーゼを含有するポリメラーゼ溶液を、15mM KCl、20mM MgCl2、0.01%Tween-20及び1mM TCEPを含有する5μLの50mM HEPES緩衝液(pH=8.0)中で0.1単位のエキソヌクレアーゼIIIとともにインキュベートした。インキュベーションを、30℃で約60分間又は4℃で12時間実施した。混入物除去したPhi29 DNAポリメラーゼ溶液を氷浴に移し、次に、エキソヌクレアーゼIIIを事前に不活性化することなく、標的RCAアッセイに使用した。
【0079】
環状DNA(プラスミド又はDNAミニサークルのいずれか)の増幅を、ランダムヘキサマー、又は配列+N+N(atN)(atN)(atN)*N(ATヘキサマー、配列番号6)を有するヘキサマープライマーを使用して実施し、「N」は、ランダムヌクレオチド(すなわちNは、A、C、G、又はT/Uのいずれであってもよい)を表し、「atN」は、2-アミノdA、2-チオdT、通常のG又は通常のCを表し、文字指定に先行するプラス(+)記号は、その文字で指定されたヌクレオチドがロックド核酸(LNA)ヌクレオチドであることを示し、文字に先行する星印(*)は、その文字で指定されたヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを示す。一部の実施形態では、環状DNAの増幅を、配列ビオチン-NNNN*N*N(配列番号7)を有するビオチン化ヘキサマーを使用して実施し、「N」は、ランダムヌクレオチド(すなわち、Nは、A、C、G、又はT/Uのいずれであってもよい)を表し、文字に先行する星印(*)は、その文字で指定されたヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを示す。すべてのRCA反応について、dNTP濃度を1mM(典型的には400~800μM)未満に維持して、増幅されたRCA産物DNAのヒドロゲル形成を回避した。ヒドロゲル形成は、RCA産物DNAの下流の有用性を潜在的に複雑にする場合がある。
【0080】
予め清澄化したRCA試薬を環状DNA鋳型及びヌクレオチドミックスとともに約16時間又は960分間、30℃でインキュベートすることにより、DNA増幅反応を実施した。ローリングサークル増幅の場合、増幅反応混合物は、40μMプライマー、400μM dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTPの各400μM);約1~30ngの環状DNA鋳型(プラスミド又はDNAミニサークルのいずれか)、20ng/μLのphi29 DNAポリメラーゼ、50mM HEPES(pH=8.0)、30mM KCl、20mM MgCl2、2.5%(w/v)PEG-8000、0.01%(v/v)Tween-20、及び1mM TCEPを含んだ。インキュベーションの終わりに、反応混合物を65℃で10分間加熱することにより、反応混合物中のPhi29 DNAポリメラーゼを不活性化した。一部の例では、dNTP溶液内の非チオ化dATPと比較して、チオ化dATPを1:40の比(例えば、0.01mMアルファ-S-dATP)で補充した。
【0081】
RCA産物DNAを、配列番号5に由来するDNAミニサークルから生成した。DNAミニサークルを生成するために、配列番号1のDNA鋳型をBamHI及びBglIIで消化し、ライゲーションにより環状化した。pCFE-GFPプラスミド及びDNAミニサークルを使用したRCA反応を、3つの異なる試験条件下:(i)ランダムヘキサマー及びdNTPを使用して、(ii)AT-ヘキサマープライマー及びdNTPを使用して、並びに(iii)チオ化dATPと混合したATヘキサマー及びdNTPを使用して実施した。すべてのRCA反応は、0.4mM dNTP(dNTPの最終濃度、及び場合によりチオ化dATP)及び40μMのプライマー(ランダムヘキサマー、ATヘキサマー、又はビオチン化ヘキサマーのいずれか)を含んだが、一部の反応については、非チオ化dATPと比較して、ホスホロチオエート化dATPを1:40の比(例えば、0.01mMアルファ-S-dATP)で添加したことを除く。RCA産物を、Quant-It(商標)Picogreen(登録商標)二本鎖DNAアッセイキット(ThermoFisher社)を使用して、100μLの総RCA反応体積から定量化した。制限されたDNA産物のアガロースゲル電気泳動もまた実施し、電気泳動バンドの強度を、公知のDNA濃度を有する標準の強度と比較した。
【0082】
(実施例2)
真核生物セルフリー抽出物中のプラスミドDNAから生成されたRCA産物DNAの発現
1-Step Human Coupled IVTキットは、脳心筋炎ウイルス(EMCV)の内部リボソーム進入部位(IRES)を含有し、TurboGFPタンパク質をコードする陽性対照ベクターとしてpCFE-GFPを含む。IRES配列のRNAフォールディングは、翻訳効率の調節に著しく影響を与えることが公知であるため、1-Stepインビトロでの転写翻訳(IVTT)キット内の成分は、EMCV IRES活性に最適化されている。
【0083】
実施例1に記載されるように、チオ化dATPの存在下又は非存在下で、ATプライマー(配列番号6)を使用して、pCFE-GFP対照ベクターをRCAにより増幅した。1-Step Coupled IVTを使用するインビトロでの転写-翻訳アッセイを、製造業者の指示により実施した。いかなる中間体精製もせずに1マイクログラムのRCA産物DNAをHela細胞溶解物(最終体積25μL)に添加し、Eppendorf ThermoMixer(登録商標)で30℃で6時間インキュベートして、RCA産物DNAのインビトロでの転写及び翻訳(IVTT)を実施した。翻訳されたセルフリーTurboGFPタンパク質を蛍光定量化前に一晩、4℃でインキュベートした。IVTTによって生成されたTurboGFPタンパク質を含有する4倍希釈した試料(PBS中)をSpectraMax M5 Microplate Readerを使用して蛍光測定に供した。活性なセルフリーTurboGFPタンパク質の蛍光を482nmで測定し、参照として精製された緑色蛍光タンパク質(GFP)(BioVision社)と比較した。セルフリーTurboGFPタンパク質の総収量は、μg/mLの単位で計算した。
図1は、いかなる中間体の浄化又は精製もなしにHela溶解物に直接適用した場合、RCA産物から蛍光TurboGFPが実質的に産生されなかったことを示す。
【0084】
RCA反応成分は、IVTTのIRES媒介翻訳を阻害して、RCA反応成分を除去する可能性があるため、0.04体積の500mM EDTA及び0.1体積の7.5M酢酸アンモニウムを添加することによって、RCA産物DNAを沈殿させ、ボルテックスにより混合した。混合物に、3.5体積の95%エタノール(室温で、25℃)を添加し、再混合後、20分間、マイクロ遠心機において20,000g、室温にてRCA産物DNAをペレット化した。DNAペレットに触れずにピペットを使用して、管から上清を注意深く除去した。次に、約200μLの70%エタノール(室温)をペレットに添加し、ボルテックスで供して混合し、20,000gで5分間、再遠心分離した。ペレットに触れずに、上清を注意深く除去した。20,000gの速度で3分間、マイクロ遠心機でDNAペレットを再回転させた後、最後の微量のエタノールを除去した(RCA DNAを不溶性にし得る過剰乾燥を避けるように注意する)。次に、DNAペレットを0.1M TE緩衝液(10mM Tris、pH7.5、0.1mM EDTA)に再懸濁し、セルフリー発現反応で使用する前に4℃で保存した。
【0085】
続いて、精製RCA DNAを使用するセルフリータンパク質発現を、Hela細胞溶解物を使用して決定した。1マイクログラムの精製RCA DNAをHela細胞溶解物に添加し、製造業者のプロトコールにより、1-Step Human Coupled IVTキットを使用してIVTTアッセイを実施した。
図1は、RCA産物DNAからのTurboGFPタンパク質収量が、IVTT反応に1μgのRCA DNAを使用した場合、プラスミドDNAよりも比較的低かったことを示す。IVTT反応(2μg及び3μg)で2×又は3×のより高い濃度のRCA産物DNAを適用することにより、TurboGFPタンパク質の収量が更に低下した(
図1に示される)。RCA DNAを1-Step Human Coupled IVTキットで示されている濃度に対して2×、4×、及び8×(500~125ng)希釈してIVTTに使用した場合、セルフリーTurboGFPタンパク質収量の増加が観察され、これは
図1に提示される。IVTT反応の総体積が25μLであったため、RCA鋳型DNAの最終濃度は5~20ng/μLの間の範囲であった。セルフリー発現の結果は、チオ化及び非チオ化RCA産物DNA間で同等であった。対照的に、プラスミドDNAを鋳型として使用した場合、プラスミドDNAを希釈すると、IVTTにおいてセルフリータンパク質の発現収量が減少した。例えば、
図1に示されるように、0.5μgのプラスミドDNA鋳型(2×希釈)は、1μgのプラスミドDNAと比較してより少ないTurboGFPタンパク質をもたらした。
【0086】
(実施例3)
DNAミニサークルから生成されたRCA産物DNAを使用したセルフリータンパク質発現
実施例2からのデータ(
図1)は、HeLa細胞溶解物を使用するIVTTアッセイの鋳型としてRCA産物DNAを使用した場合、最適なタンパク質発現のために、プラスミドDNAと比較して、4~8倍低い濃度のRCA産物DNAが必要であることを示した。この観察は、IVTT反応用のDNAミニサークルから生成されたRCA産物DNAを使用することにより更に確立された。DNAミニサークル鋳型から生成されたRCA産物DNAを調製し、IVTTによるタンパク質発現の比較に利用した。実施例1に記載されるように、EGFPタンパク質をコードするDNA配列(配列番号5)をライゲーションしてミニサークルを形成し、チオ化dATPの存在下でATプライマーを使用してRCAにより増幅した。RCA産物DNAを逐次希釈して、様々な濃度のRCA産物DNAの試料を生成した。様々な濃度のRCA産物DNAを25μLの1-Step Human Coupled IVT反応混合物に添加し、300rpmで穏やかに振とうしながらEppendorf ThermoMixerにおいて30℃で6時間インキュベートした。セルフリーEGFPタンパク質である生成されたIVTT産物を、蛍光分析前に4℃で一晩、フォールディングした。約4μLのIVTT産物をSDS-PAGEで分離し(
図3)、488nmのTyphoon variable-mode Imager (GE Healthcare社)を使用して、天然蛍光タンパク質をゲルで検出した。
図4は、約125ngのRCA産物DNAがHeLa細胞溶解物中のEGFPの最大のセルフリー発現をもたらしたことを示し、これは、プラスミドDNA鋳型から生成されたRCA産物DNAを使用する実施例2の結果と一致する。
図4に示されるように、RCA産物DNA発現収量のうちでガウス分布が観察された。結果として、
図4は、ほぼ同等の量のタンパク質が、0.5~1マイクログラムのインプットRCA DNAから、及び8~16ナノグラムのインプットRCA DNAから生成されたことを示す。更に、
図4は、インプットRCA DNAの量(0.5マイクログラム及び16ナノグラムのインプット等)間の差が96%を超える場合でさえ、セルフリータンパク質発現がほぼ同じであることを示す。対照の目的で、TurboGFPタンパク質を1マイクログラムのpCFE-GFPプラスミドから合成し(キットの製造業者の指示による)、相対的な蛍光出力を比較した。要約すると、
図3及び
図4は、環状鋳型(
図2のDNAミニサークル構築物)から生成されたRCA産物DNAの必要量が、真核生物セルフリー溶解物における所望のタンパク質発現のためのプラスミドDNAの必要量よりも4~8倍低いことを示す。
【0087】
(実施例4)
DNAミニサークルから生成された磁気ビーズコンジュゲートRCA産物DNAからのセルフリー発現
実施例3からのDNAミニサークル配列(配列番号5)から生成されたビオチン化RCA産物DNAを、ストレプトアビジンビーズにコンジュゲートし、HeLa細胞抽出物におけるインビトロでの転写及び翻訳に使用した。DNAミニサークル(配列番号5)を、ビオチン化ヘキサマープライマー(配列番号7)又は非ビオチン化ATヘキサマー(配列番号6)プライマーを使用してRCAによって増幅し、結果として生じる増幅産物をPicoGreenアッセイによって定量化した。一部の実施形態では、結果として生じる粗製RCA産物を、MICROCON遠心フィルターを使用して予め精製して、ビーズコンジュゲーションの前に過剰なビオチン化ヘキサマープライマーを除去した。粗製又は精製RCA産物DNAをストレプトアビジンビーズと混合して、ビーズのマイクロリットルあたり約24ng又は50ngのRCA産物DNAを捕捉できるようにした。ストレプトアビジンビーズにコンジュゲートしたRCA産物DNAの相対量を、ストレプトアビジンビーズをPstIで消化し、PicoGreenアッセイにより放出されたDNA量を定量化することにより確認した。代表的なビーズ調製プロトコールの定量結果をTable 3(表4)に提示する。収集するために磁石を使用してPBS中でビーズを徹底的に洗浄した後、一定量(2.8μL)のビーズを1-Step Human Coupled IVT反応(25μL)に移し、セルフリーEGFP翻訳を、SDS-PAGEゲルにおける天然蛍光により比較した(
図5)。EGFP蛍光を、488nm Typhoon variable-mode Imagerを使用して(ゲル内で)画像化した。
図5は、IVTT反応混合物の1マイクロリットルあたり5ngの推定される鋳型濃度でビオチン-ストレプトアビジンカップリングによりストレプトアビジンビーズに捕捉した場合、DNAミニサークルから生成されたRCA産物DNAから蛍光EGFPが効果的に産生されたことを示す。ビオチン化RCA産物DNAは、いかなる中間体精製も必要とせずに、ストレプトアビジンビーズに効果的にカップリングした。予期した通り、非ビオチン化ATプライマーとともにインキュベートしたビーズを使用しても、セルフリーEGFP発現はほとんど観察されないか又は全く観察されなかった。過剰なヘキサマープライマーを除去するためのMICROCONフィルターの使用は、粗製調製プロセス(
図5、レーン2を参照されたい)と比較して、より高い非特異的発現に寄与した(
図5、レーン3を参照されたい)。対照の目的で、TurboGFPを1マイクログラムのpCFE-GFPプラスミドDNAから合成し(キットの製造業者の指示による)、相対的な蛍光出力を比較した。
【0088】
【0089】
前述の実施例は、本発明のいくつかの特色の例示であり、すべての可能な実施形態の多様なものから選択された実施形態である。本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化することができる。本明細書では本発明のある特定の特色のみを例示し、説明したが、当業者は、この開示の恩恵を受けて、修正/変更を行ってパラメータを最適化することができる。したがって、前述の実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載される本発明を限定するのではなく、例示としてみなされるべきである。必要に応じて、範囲が提供されており、それらの範囲には、その間のすべての部分範囲が含まれる。