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特開2023-526292’-フコシルラクトース化合物による炎症性腸疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052629
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】2’-フコシルラクトース化合物による炎症性腸疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/702 20060101AFI20230404BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230404BHJP
   A23L 33/125 20160101ALI20230404BHJP
【FI】
A61K31/702
A61P1/04
A61K39/395 N
A23L33/125
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009479
(22)【出願日】2023-01-25
(62)【分割の表示】P 2019554840の分割
【原出願日】2018-04-07
(31)【優先権主張番号】62/482,840
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】モロー,アンディス,エル.
(72)【発明者】
【氏名】デンソン,リー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ニューバーグ,デービッド,エス.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC))を治療するか、またはIBDの再発リスクを軽減もしくは低減するための方法を提供する。
【解決手段】抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者に、有効量の2’-フコシルラクトース化合物を投与することを含む方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に実質的に記載された発明。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月7日に出願された米国仮出願第62/482,840号の米国特許法第119(e)条に基づく利益を主張し、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、および潰瘍性大腸炎(UC)は、人生の20~30代で発生率がピークとなる慢性および衰弱性障害である。クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の寛解を誘導する抗腫瘍壊死因子(TNF)治療の最適化においてかなりの進展があったが、再発は一般的であり、予測不可能であることが多い。チオプリン療法へのインフリキシマブ離脱後に再発を経験したCD患者は、Bacteroides、Clostridium coccoides、およびF.prausnitziiを含む特定の分類群のベースラインレベルが低かった。F.prausnitziiのベースラインレベルが低いことも、UCの再発率が高いことと関連している。インフリキシマブ(モノクローナル抗TNF抗体)による粘膜炎症の抑制は、この腸内毒素症を部分的にしか修正しない。したがって、IBD寛解の安定した維持のための代替アプローチが必要である。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、IBD患者の寛解を維持するために2’-フコシルラクトース(2’-FL)などの2’-フコシルラクトース化合物を使用する開発に少なくとも部分的に基づいている。例えば、2’FLは、栄養補助食品単独として、または抗炎症療法などの免疫抑制療法の補助剤として提供することができる。
【0004】
したがって、本開示の一態様は、それを必要とする対象に、有効量の2’-FL化合物を投与することにより、炎症性腸疾患(IBD)の再発リスクを軽減または低減する方法を特徴とする。例えば、対象は、抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者であり得る。
【0005】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象に、1mg/日~20mg/日の2’-FLに相当する量の2’-FL化合物を投与することにより、IBDを治療する方法を提供する。
【0006】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、2’-FL化合物を必要とする対象は、IBDを発症するリスクがあるか、IBDを有する疑いがあるか、またはIBDを有するヒト患者であり得る。例えば、2’-FL化合物を必要とする対象は、例えば、抗炎症療法を受けたか、または受けている、IBD(例えば、クローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)などが含まれるが、これらに限定されない)の寛解期にあるヒト患者であり得る。抗炎症療法は、例えば、インフリキシマブおよび/またはアダリムマブを含むがこれらに限定されないTNF阻害剤の使用などの抗TNF療法であり得る。治療される対象は、大人または子供であり得る。治療される対象は、FUT2分泌型またはFUT2非分泌型であり得る。いくつかの実施形態では、治療される対象は、7g/1000kcal未満の1日繊維摂取量を有する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、7g/1000kcal以上の1日繊維摂取量を有する。治療される対象は、コルチコステロイド、抗生物質、プロバイオティクス、および/または2’-FL化合物ではないプレバイオティクスを受けていない可能性がある。
【0007】
2’-FL化合物は、それを必要とする対象に、望ましい臨床効果を達成するのに有効な量で投与され得る。例えば、ヒト患者において短鎖脂肪酸を産生する腸内微生物(例えば、Bifidobacteria、Bacteroides、および/またはParabacteroides)の存在量を増加させるのに十分な量の2’-FL化合物を、例えば、抗炎症療法を受けたか、もしくは受けている、かつ/またはIBDの寛解期にあるヒトIBD患者に投与することができる。別の例として、ヒト患者の腸内カルプロテクチンを減少させるのに十分な量の2’-FL化合物を、例えば、抗炎症療法を受けたか、もしくは受けている、かつ/またはIBDの寛解期にあるヒトIBD患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象に投与される2’-FL化合物の有効量は、1mg/日~20mg/日の2’-FL、1mg/日~15mg/日の2’-FL、または1mg/日~10mg/日の2’-FLに相当し得る。
【0008】
2’-FL化合物は、例えば、経口投与を含む任意の投与経路を介して対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物は、例えば経口投与に適した医薬組成物または栄養補助食品として製剤化することができる。組成物は、唯一のオリゴ糖含有量として2’-FL化合物を含むか、または少なくとも1つの追加のオリゴ糖をさらに含むことができる。例示的な2’-FL化合物は2’-FLである。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物は、抗炎症療法のアジュバントとして抗炎症薬を受けているヒト患者に投与することができる。
【0009】
また、(i)対象におけるIBDの治療および/またはIBDの再発のリスクの軽減もしくは低減に使用するための医薬組成物(例えば、本明細書に記載)であって、本明細書に記載の2’-FL化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物、ならびに(ii)対象のIBDの治療および/またはIBDの再発リスクの軽減または低減に使用するための薬剤の製造における、本明細書に記載の2’-FL化合物の使用も本開示の範囲内である。対象は、抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者、例えば、IBDの寛解期にあるヒト患者であり得る。
【0010】
また、対象におけるIBDの治療および/またはIBDの再発リスクの軽減もしくは低減に使用するための栄養補助食品であって、当該組成物が本明細書に記載の2’-FL化合物を含む、栄養補助食品も本開示の範囲内である。対象は、抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者であり得、例えば、ヒト患者はIBDの寛解期にある。
【0011】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明、ならびに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様をさらに示すために含まれており、これは、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0013】
図1】潰瘍性大腸炎(UC)における微生物のシフトおよび直腸ミトコンドリア遺伝子発現の変化は、マウスにおいて2’-FLの補充によって対処されることを示す。254の直腸生検および293の便試料を、初期診断時にUCの治療を受けていない小児患者371人から収集した。試料を16S rRNAアンプリコンシーケンスにかけ、データを分析して微生物の分類学的組成を推測した。療法前の遺伝子発現の直腸全体のパターンは、206人のUC患者および18人の健康な対照のRNASeqを使用して決定された。遺伝子発現の小腸全体のパターンは、回盲部切除後に2’-FLの補充ありおよびなしのマウスのRNASeqを使用して決定された。遺伝子セット濃縮分析により、関連する生物学的プロセスが特定された。治療を受けていない小児UCにおけるミトコンドリア生合成およびマウスにおける2’-FLの補充後の遺伝子シグネチャーも、図1に示すように表に示される。
図2】微生物の酪酸産生および細胞の酪酸応答性を高めるための2’-FL/抗TNF併用療法を示す概略図である。
図3A-C】新たに診断されたクローン病(CD)に関連する分類群およびB1炎症性行動と比較したB2狭窄またはB3内部浸透性疾患の合併症を示す棒グラフである。
図4】新たに診断された潰瘍性大腸炎の疾患重症度に関連する差次的に豊富な分類群を示す棒グラフである。
図5】小児クローン病の疾患合併症に関連する回腸遺伝子シグネチャーを示すグラフである。
図6】安定した維持抗TNF療法を受けている小児および若年成人のIBD患者における栄養補助食品としての2’-FLの使用を伴う臨床試験の全体的な患者層別化戦略(左)、ならびに臨床試験の異なる段階での用量割り付け(右)を示す概略図である。
図7】安定した維持抗TNF療法を受けている小児および若年成人のIBD患者の栄養補助食品としての2’-FLのパイロットおよび実現可能性研究を提供する臨床試験の全体的な研究設計を示す概略図である。
図8】活動スケジュール(SOA)を示す表であり、図7に示すように、臨床試験中の各訪問時に実施される研究手順および評価の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
炎症性腸疾患(IBD)(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)は、人生の20~30代で発生率がピークとなる慢性および衰弱性障害である。IBDにおいて寛解を達成するために炎症性サイトカインを標的とする療法などの薬物療法を最適化する上でかなりの進展があったが、再発は一般的であり、予測不可能である。例えば、インフリキシマブまたはアダリムマブの抗TNF療法を受けているIBD患者(単一の治療施設から)の37%が、最適な治療薬の監視および投与にもかかわらず再発したことが報告された。生活の質および仕事の生産性への悪影響に加えて、IBDの再発は治療費を増加させる。したがって、IBD再発のリスクを低減するために、IBDの治療ならびにIBD寛解の維持のための代替方法および組成物を開発する必要がある。
【0015】
本開示は、2’-フコシルラクトース(2’-FL)化合物を使用してIBD患者の寛解を維持し、したがってIBDの再発リスクを低減する開発に少なくとも部分的に基づいている。例えば、2’-FLは、栄養補助食品として、または医薬組成物として、単独で、または抗炎症療法などの免疫抑制療法の補助剤としてのいずれかで提供することができる。2’-FL化合物(例えば、2’FL)の投与により、腸上皮細胞機能の必須調節因子である酪酸の微生物産生を増加させることができる。抗炎症療法(例えば、抗TNF阻害剤)によるIBDの治療は、腸の炎症を抑制して腸管内皮細胞の酪酸に対する細胞応答性を促進するが、有益な腸内細菌の存在量は増加しない。したがって、2’-FL/抗TNF併用療法は、有益な微生物叢の直接調節を提供し、抗TNF療法による細胞の酪酸応答性を促進しながら微生物の酪酸産生を増加させることができ、それによってIBDの持続的な臨床的寛解を強化する。
【0016】
したがって、2’-FL化合物を使用して対象のIBDを治療するための方法および組成物が本明細書に記載される。抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者(例えば、IBDの寛解期にあるヒト患者)に適用する場合、本明細書に記載の治療方法は、IBDの再発リスクを軽減または低減することが予想される。さらに、本明細書に記載の治療方法は、2’-FL化合物がIBDの寛解期にある患者に同時に施される抗炎症療法(例えば、抗TNF療法)のアジュバントとして提供される場合、IBDの寛解を持続するのに特に効果的であると予想される。
【0017】
いくつかの態様では、本開示は、栄養補助食品として、または医薬組成物中に提供され得る2’-FL化合物を使用して、IBDを治療する方法、またはIBDの再発リスクを軽減または低減する方法に関する。そのような栄養補助食品または医薬組成物は、単独で、または治療を必要とする対象におけるIBDの抗炎症療法の補助剤として使用することができる。
【0018】
I.2’-フコシルラクトース(2’-FL)化合物およびそれを含む組成物
2-フコシルラクトース(2’-FL)化合物は、2’-フコシルラクトース(Fucαl、2Galβ1,4Glc)のように3つの糖単位骨格を有するオリゴ糖であり、糖単位(フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)、およびグルコース(Glc))の各々は、独立して、その天然形態または修飾形態のいずれかであり得る。例えば、糖単位の修飾形態は、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3つ以上)が水素、メチル、エチル、またはアミン基に置き換えられている糖単位であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、2’-FL化合物は、例えば、乳(例えば、母乳)に見られる天然の2’-FLの化学構造と同一である化学構造を有する2’-FL(Fucα1、2Galβ1,4Glc)である。
【0020】
いくつかの実施形態では、2’-FL化合物は、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、および最大100%)の天然の2’-FL、例えば、乳(例えば、母乳)に見られる2’-FLの生物学的機能を保持する修飾された2’-FLである。いくつかの実施形態では、修飾された2’-FLは、天然の2’-FL、例えば、乳(例えば、母乳)に見られる2’-FLに比べて増強された生物学的機能を提供することができる。2’-FLのそのような生物学的機能には、腸に対するその有益な効果、例えば、抗炎症効果、抗菌付着効果、プレバイオティクス効果(例えば、短鎖脂肪酸産生微生物または酪酸産生微生物などの有益な微生物叢の存在量の増加)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、修飾された2’-FLは、(i)そのヒドロキシル基のうちの少なくとも1つ以上が水素、メチル、エチル、またはアミン基に置き換えられている、かつ/または(ii)その還元末端のグルコースがN-アセチルグルコサミンに置き換えられている2’-FLである。
【0021】
本明細書に記載の2’-FL化合物は、当技術分野で既知の任意の方法により調製することができる。例えば、2’-FL化合物は化学的に合成されるか、乳から精製されるか、または微生物において産生され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物は、乳(例えば、母乳)から単離することができる。例えば、乳を最初に遠心分離で脱脂して無脂肪乳を得る。次いで、無脂肪乳を、アセトン(例えば、50%アセトン水)およびエタノール(例えば、67%エタノール水)などの有機溶媒と混合して、乳タンパク質を沈殿させる。遠心分離時に上清を収集し、クロマトグラフィーにかける。オリゴ糖含有画分を収集してプールする。必要に応じて、こうして調製されたオリゴ糖は、従来の方法、例えば、透析または凍結乾燥により濃縮され得る。あるいは、無脂肪乳を30,000MWCO限外濾過膜に通し、拡散液を収集し、拡散液を500MWCO限外濾過装置に通し、乳オリゴ糖を含有する残余分を収集することにより、無脂肪乳から2’-FL化合物を分離することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物は、化学的に合成されるか、または微生物において産生することができる(例えば、Escherichia coli、酵母、およびCorynebacterium glutamicumなどの組換え微生物の発酵により)。例えば、WO2017/134176、WO2016/153300、WO2014/009921、WO2010/115934、WO2005/055944、およびUS8652808を参照されたい。これらの関連する開示は、本明細書で参照される目的または主題について参照により組み込まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物は、複合糖質形態(例えば、複合糖質)で提供することができる。本明細書で使用する「複合糖質」とは、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸、および糖類(例えば、オリゴ糖または多糖類)などの別の化学種に結合した糖部分(例えば、2’-FL化合物)を含有する複合体を指す。2’-FL化合物は、共有結合もしくは非共有結合を介して、または捕捉などの他の形態の(例えば、他の部分上もしくは内の一部分、または第三の部分上もしくは部分内の一方または両方の実体の)会合を介して、他の化学種に結合することができる。本明細書に記載の複合糖質は、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸、または糖類などの化学種に結合された1つ以上(例えば、1、2、3つ以上)の2’-FL化合物を含有することができる。一例では、2’-FL化合物は、その還元末端糖単位を介して、タンパク質、ペプチド、脂質、核酸、または糖類(例えば、オリゴ糖または多糖類)に共有結合している。例えば、還元末端糖単位は、N-アセチルグルコサミンであり得る。2’FL化合物が糖類(例えば、オリゴ糖または多糖類)に結合されるいくつかの実施形態では、複合糖質は、乳に見られる天然に存在する分子ではない。いくつかの実施形態では、複合糖質形態の2’-FL化合物は、天然に存在する分子ではない。
【0024】
上述の複合糖質を作製するのに適したペプチド骨格には、複数のグリコシル化部位(例えば、アスパラギン、リジン、セリン、またはトレオニン残基)および低アレルゲン能力を有するものが含まれる。例としては、アミラーゼ、胆汁酸塩刺激リパーゼ、カゼイン、葉酸結合タンパク質、グロブリン、グルテン、ハプトコリン、ラクトアルブミン、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、リポタンパク質リパーゼ、リゾチーム、ムチン、オボアルブミン、および血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
通常、2’-FL化合物は、O結合を介してセリンまたはトレオニン残基に共有結合されるか、N結合を介してアスパラギン残基に結合され得る。これらの結合を形成するために、2’-FL化合物の還元末端の糖単位は、好ましくはアセチル化糖単位、例えば、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、およびN-アセチルマンノサミンである。2’-FL化合物は、標準的な方法を使用してペプチド(例えば、タンパク質)に結合され得る。例えば、McBroom et al.,Complex Carbohydrates,Part B,28:212-219,1972;Yariv et al.,Biochem J.,85:383-388,1962;Rosenfeld et al.,Carbohydr.Res.,46:155-158,1976、およびPazur,Adv.Carbohydr.Chem,Biochem.,39:405-447,1981を参照されたい。
【0026】
一例では、2’-FL化合物はリンカーを介して骨格分子に結合される。例示的なリンカーは、WO2005/055944に記載されている。2’-FL化合物は、酵素反応、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ反応によりリンカーに結合され得る。フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、ガラクトサミニルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、およびN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼを含むいくつかのグリコシルトランスフェラーゼを使用して、本明細書に記載の複合糖質を作製することができる。これらのグリコシルトランスフェラーゼについてのさらなる詳細は、米国特許第6,291,219号、同第6,270,987号、同第6,238,894号、同第6,204,431号、同第6,143,868号、同第6,087,143号、同第6,054,309号、同第6,027,928号、同第6,025,174号、同第6,025,173号、同第5,955,282号、同第5,945,322号、同第5,922,540号、同第5,892,070号、同第5,876,714号、同第5,874,261号、同第5,871,983号、同第5,861,293号、同第5,859,334号、同第5,858,752号、同第5,856,159号、および同第5,545,553号に見出すことができる。
【0027】
あるいは、本明細書に記載の複合糖質は、従来の方法、例えば、限外濾過膜に通すことにより、非極性溶媒に沈殿させることにより、または非混和性溶媒間に分配することにより、乳から精製することができる。
【0028】
2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤とともに製剤化して医薬組成物を形成することができる。「薬学的に許容される」担体、希釈剤、または賦形剤には、無菌で発熱物質不含のものが含まれる。適切な薬学的担体、希釈剤、および賦形剤は、当技術分野において周知である。担体(複数可)は、阻害剤と相溶性であり、かつその受容者に有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0029】
2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を含む医薬組成物は、例えば、非経口投与、経口投与、口腔投与、舌下投与、および局所投与を含む投与経路に応じて製剤化され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、香味剤または着色剤を含有し得る、粉末剤、錠剤、カプセル、胚珠、エリキシル剤、溶液、または懸濁液の形態などの医薬組成物または製剤は、即時、遅延、または制御放出用途のための経口、口腔、または舌下投与に適している。
【0031】
適切な錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、およびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカデンプン)などの崩壊剤、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、およびある特定の複合ケイ酸塩、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ-プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、およびアカシアなどの造粒結合剤を含有し得る。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、およびタルクなどの潤滑剤が含まれてもよい。
【0032】
同様の種類の固形組成物は、ゼラチンカプセルの充填剤として用いることもできる。これに関して好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁液および/またはエリキシル剤の場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を、様々な甘味料または香味剤、着色剤または染料と、乳化剤および/または懸濁剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの希釈剤と、ならびにそれらの組み合わせと混合することができる。粉末剤の場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を、様々な甘味料または香味剤、着色剤または染料と、乳化剤および/または懸濁剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの希釈剤と、ならびにそれらの組み合わせと混合することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、医薬組成物または製剤は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内投与などの非経口投与用である。
【0034】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が含まれる。水溶液は適切に緩衝されてもよい(好ましくはpH3~9)。滅菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術により容易に達成される。
【0035】
あるいは、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)は、食品/栄養補助食品業界で周知の方法に従って栄養補助食品として製剤化することもできる。一例では、2’-FL化合物を含む栄養補助食品は単独で摂取され得る。別の例では、2’-FL化合物を含む栄養補助食品は、食品および/または飲料に組み込むことができる。そのような食品および/または飲料には、とりわけ、乳、粉乳、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、シリアルなどが含まれるが、これらに限定されない。そのような食品および/または飲料には、経口栄養補助食品、栄養ドリンク、および例えば、経管栄養投与用の経腸栄養調製物も含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の態様の製剤は、唯一のオリゴ糖含有量として2’-フコシルラクトース化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の態様の製剤は、プレバイオティクス効果を提供する唯一のオリゴ糖含有量として2’-フコシルラクトース化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の態様の製剤は、腸内の短鎖脂肪酸産生微生物を増加させ、かつ/または微生物による短鎖脂肪酸(例えば、酪酸)の産生を増加させる唯一のオリゴ糖含有量として2’-フコシルラクトース化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を含み得る。
【0037】
代替の実施形態では、本明細書に記載の任意の態様の製剤は、少なくとも1つ以上の追加(例えば、1、2、3つ以上)のオリゴ糖をさらに含んでもよい。そのようなオリゴ糖の例には、例えば、以下の表1~4に示すような他の非2’-FL乳糖、フルクトオリゴ糖(FOS)、ガラクト-オリゴ糖(GOS)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0038】
本明細書に記載の任意の態様の製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルで提供され得、使用直前に滅菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存され得る。
【0039】
II.対象
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかによって治療される対象は、炎症性腸疾患(IBD)を有するか、有する疑いがあるか、または発症するリスクがある哺乳動物、例えばヒトであり得る。IBDは、消化管の慢性炎症を伴う障害である。IBDの例には、クローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
IBDの症状は、炎症の重症度および発生場所によって異なる場合がある。症状は軽度から重度まで様々であり得る。場合によっては、IBD患者は、活動的な病気期間に続いて寛解期間を経験する場合がある。クローン病および潰瘍性大腸炎の両方に共通する徴候および症状としては、下痢、発熱および疲労、腹痛およびけいれん、便中の血液、食欲減退、意図しない体重減少、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。IBDの診断は当技術分野で既知であり、例えば、血液検査、様々な内視鏡手順、および/または撮像手順を介して、熟練した専門家によって決定され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、抗炎症および/または免疫系抑制療法を受けたか、または受けているIBD対象(例えば、ヒトIBD患者)であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、抗炎症および/または免疫系抑制療法を受けている。そのような例示的な療法には、抗TNF療法が含まれるが、これに限定されない。抗TNF療法の非限定的な例には、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ナタリズマブ、ベドリズマブ、およびウステキヌマブが含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、インフリキシマブおよび/またはアダリムマブを含む抗TNF療法を受けている。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、IBDの寛解期にあるIBD対象(例えば、ヒトIBD患者)であり得る。本明細書で使用される、「寛解」という用語は、IBDに関連する少なくとも1つ以上の症状、例えば、本明細書に記載される症状の消失または緩和を指す。寛解は、完全寛解(例えば、IBDに関連する全ての兆候または症状の消失)または部分寛解(例えば、IBDに関連する少なくとも1つの徴候または症状の消失または緩和)であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、クローン病(CD)の寛解期にあるIBD対象(例えば、ヒトIBD患者)であり得る。例えば、クローン病活動指数(CDAI)スコアが150未満の場合、対象はCDの寛解期にあると決定される(例えば、Merck Manuals;Best et al.“Development of a Crohn’s disease activity index”Gastroenterology(1976)70:439-444およびBest“Predicting the Crohn’s disease activity index from the Harvey-Bradshaw Index”Inflamm Bowel Dis.(2006)12:304-310を参照されたい)。いくつかの実施形態では、10未満の加重小児クローン病活動指数(wPCDAI)スコアを有する場合、対象はCDの寛解期にあると決定される(例えば、Turner et al.“Which PCDAI Version Best Reflects Intestinal Inflammation in Pediatric Crohn Disease?”J Pediatr Gastroenterol Nutr(2017)64:254-260を参照されたい)。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、潰瘍性大腸炎(UC)の寛解期にあるIBD対象(例えば、ヒトIBD患者)であり得る。例えば、対象は、Travis et al.“Review article:defining remission in ulcerative colitis”Aliment.Pharmacol.Ther.(2011)34:113-124に提供される疾患活動指数のいずれか1つに従って、UCの寛解期にあると決定される。いくつかの実施形態では、修正潰瘍性大腸炎疾患活動指数(UCDAI)スコアが1以下、UCDAIスコアが2以下、臨床活動指数スコアが4以下、またはメイヨー臨床スコアが2以下(サブスコアが1を超えない)である場合、対象はUCの寛解期にあると決定される。いくつかの実施形態では、対象が、例えば、粘膜治癒の内視鏡的外観によって確認される直腸出血、緊急性、および排便頻度増加の完全な休止を有する場合、対象はUCの寛解期にあると決定される。例えば、Walsh and Travis“Assessing Disease Activity in Patients with Ulcerative Colitis”Gastroenterol Hepatol(NY)(2012)8:751-754を参照されたい。いくつかの実施形態では、小児潰瘍性大腸炎活動指数(PUCAI)スコアが10未満である場合、対象はUCの寛解期にあると決定される(例えば、Turner et al.“Appraisal of the pediatric ulcerative colitis activity index(PUCAI)”lnflamm Bower Dis(2009);15:1218-23を参照されたい)。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、7g/1000kcal未満の1日繊維摂取量を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、7g/1000kcal以上の1日繊維摂取量を有する。繊維摂取量を評価するために、例えば、Nutrition Data Systems for Research(NDSR)(Nutrition Coordinating Center,University of Minnesota,Minneapolis,MN)ソフトウェアおよび食品データベースを使用して、1日繊維摂取量を決定することができる。例えば、Sievert et al.“Maintenance of a nutrient database for clinical trials.”Control Clin Trials(1989)10:416-25を参照されたい。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、IBDの治療に適応されたコルチコステロイドまたは抗生物質を受けていない。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、FUT2分泌型であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、FUT2非分泌型であり得る。FUT2は、2’-FLの産生に関与するフコシルトランスフェラーゼ2遺伝子に対応する。FUT2遺伝子に不活性化多型を有する個人は、FUT2非分泌型である。FUT2の非分泌型は、フコースを含有する生来の腸内炭水化物を欠いており、これは、微生物の調節不全および慢性炎症に対する感受性を高める。
【0048】
本明細書に記載の方法によって治療される対象は、あらゆる年齢のものであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、子供、例えば18歳以下、例えば6か月~18歳までを含む対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、11歳以上、例えば11~18歳までを含む子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は5~10歳の子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は5歳未満、例えば、6か月~4歳までを含む子供であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、19~80歳までを含むなどの18歳を超える成人であり得る。いくつかの実施形態では、成人対象は19~25歳である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される成人対象は、25歳を超えて(例えば、25~80歳までを含む)いてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される成人対象は、66~80歳などの65歳を超える高齢者であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって治療される対象は、11~25歳であり得る。
【0051】
本明細書に記載の治療を必要とする対象は、定期的な健康診断により特定することができる。
【0052】
III.炎症性腸疾患(IBD)の治療
IBD、例えばクローン病(CD)または潰瘍性大腸炎(UC)を治療するために、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)および/またはそれを含む組成物のいずれか、例えば、本明細書に記載のものを、それを必要とする対象、例えば本明細書に記載のものに投与することができる。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、IBD、例えば、CDまたはUCを発症するリスクがあるヒト患者である。いくつかの実施形態では、対象は、IBD、例えば、CDまたはUCを有するヒト患者である。いくつかの実施形態では、対象は、免疫系抑制および/または抗炎症療法(例えば、抗TNF療法)を受けたか、または受けているヒトIBD患者である。いくつかの実施形態では、対象は、IBDの寛解期にあり、免疫系抑制および/または抗炎症療法(例えば、抗TNF療法)を受けているヒトIBD患者である。
【0053】
2’-FL化合物および/またはそれを含む組成物のいずれか、例えば、本明細書に記載のものを、IBD治療を必要とする任意の年齢の対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、子供、例えば6か月~18歳までを含む18歳までの対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、11歳以上、例えば11~18歳までを含む子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は5~10歳の子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は5歳未満、例えば、6か月~4歳までを含む子供であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、19~80歳までを含むなどの18歳を超える成人であり得る。いくつかの実施形態では、成人対象は19~25歳である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物および/または組成物を投与される成人対象は、25歳を超えて(例えば、25~80歳までを含む)いてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物および/または組成物を投与される成人対象は、66~80歳までなどの65歳を超える高齢者であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2’-FL化合物および/または組成物を投与される対象は、11~25歳であり得る。
【0056】
本明細書で使用する「治療する」または「治療」という用語は、疾患、疾患の症状、または疾患に対する素因を治す、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、回復させる、寛解させる、改善する、またはそれに影響を及ぼす目的で、IBDを有するか、IBDの症状を有するか、またはIBDに対して素因のある対象に、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)を適用または投与することを指す。「治療する」または「治療」という用語は、寛解を維持し、したがって再発の発生を軽減する、低減する、予防する、または遅延させる目的で、IBDの寛解期にある対象に、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)を適用または投与することも含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、治療は予防的である。「予防的」という用語は、IBDのリスクがある対象に、IBDの発生を予防するか、またはその発症を遅延させる、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)を適用または投与することを指す。
【0058】
いくつかの実施形態では、治療は治療的である。「治療的」という用語は、IBDまたはIBDの症状を有する対象に、IBDに関連する少なくとも1つ以上の症状を改善する、例えば、下痢を低減させる、便中の血液を低減する、および/または症状の再発頻度を低減させる、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)を適用または投与することを指す。
【0059】
例えば、治療は、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)の適用または投与がIBD症状の再発のリスクを軽減または低減する場合、治療的である。本明細書で使用される「再発」という用語は、IBDに関連する少なくとも1つ以上の症状の発生または悪化を指す。
【0060】
いくつかの実施形態では、治療は、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)の適用または投与がクローン病(CD)の症状再発のリスクを軽減または低減する場合、治療的である。例えば、クローン病活動指数(CDAI)スコアが150以上に増加すると、ヒト患者はCDが再発していると決定される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、例えば、治療の開始から4週間後の間に、wPCDAIに20ポイント以上の増加がある場合、CDが再発していると決定される。
【0061】
いくつかの実施形態では、治療は、単剤療法または併用治療として(例えば、免疫系抑制および/または抗炎症療法の補助剤として)、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)の適用または投与が潰瘍性大腸炎(UC)の症状再発のリスクを軽減または低減する場合、治療的である。例えば、ヒト患者は、修正潰瘍性大腸炎疾患活動性指数(UCDAI)スコアが1を超えるか、UCDAIスコアが2を超えるか、臨床活動指数スコアが4を超えるか、またはメイヨー臨床スコアが2を超える(サブスコアが1を超える)場合、UCが再発していると決定される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、例えば、粘膜の内視鏡検査によって確認される、直腸出血、緊急性、および排便頻度増加を経験する場合、UCが再発していると決定される。いくつかの実施形態では、ヒト患者は、例えば、治療の開始から4週間後の間に、PUCAIに15ポイント以上の増加がある場合、UCが再発していると決定される。
【0062】
本明細書に記載の治療方法を実施するために、有効量の2’-FL化合物およびそれを含む組成物が、治療を必要とする対象に投与され得る。
【0063】
「有効量」とは、単独で、または追加用量と一緒に、所望の応答、例えば、症状の排除または軽減、IBDの症状再発のリスクの予防または低減、下痢の低減、便中の血液の低減、体重増加、腹痛またはけいれんの低減、短鎖脂肪酸(例えば、酪酸)を産生する腸内微生物の存在量の増加、および/または腸の炎症の減少をもたらす2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)の量を指す。望ましい応答は、疾患の症状の進行または再発を阻害することである。これは、疾患の進行を一時的に遅らせることしか伴わない場合があるが、疾患の進行を永久に止めることを伴う場合もある。場合によっては、これには、疾患の再発を一時的に遅らせることしか伴わない場合があるが、疾患の再発を永久に予防することを伴う場合もある。これは日常的な方法で監視することができる。疾患の治療に対する所望の応答は、疾患の発症を遅延させること、またはさらには疾患の発症を予防することでもあり得る。
【0064】
そのような量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別、および体重を含む個々の患者パラメータ、治療期間、併用療法の性質(ある場合)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門知識内の同様の因子に依存する。これらの因子は、当業者に周知であり、日常的な実験のみで対処することができる。一般に、個々の成分またはその組み合わせの最大用量、つまり、健全な医学的判断による最高の安全用量が使用されることが好ましい。しかしながら、医学的理由、心理的理由、または任意の他の事実上の理由で、患者が低用量または耐容量を主張する場合があることは、当業者によって理解されるであろう。
【0065】
例えば、有効量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または本明細書に記載の複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、それを必要とする対象に投与した場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を投与しない短鎖脂肪酸産生腸内微生物の存在量と比較して、例えば、短鎖脂肪酸を産生する腸内微生物の存在量を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上増加させることによりもたらす。短鎖脂肪酸(例えば、酪酸)を産生する腸内微生物の例には、Bifidobacteria、Bacteroides、および/またはParabacteroidesが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、有効量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)は、それを必要とする対象に投与した場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を投与しない腸内Bifidobacteriaの存在量と比較して、腸内Bifidobacteriaの存在量を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上増加させる。そのような治療的特徴は、糞便微生物(例えば、Bifidobacteria、Bacteroides、および/またはParabacteroides)の存在量を測定することにより決定され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、有効量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、それを必要とする対象に投与した場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を投与しない微生物酪酸産生と比較して、微生物酪酸産生を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上増加させることによりもたらす。そのような治療的特徴は、例えば酪酸を含む糞便の短鎖脂肪酸の存在量を測定することにより決定され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、有効量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、それを必要とする対象に投与した場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を投与しない腸の炎症と比較して、腸の炎症を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上減少させることによりもたらす。そのような治療的特徴は、例えば、腸の炎症のバイオマーカーである糞便カルプロテクチンの存在量を測定することにより決定され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、有効量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、それを必要とする対象に投与した場合、2’-FL化合物(本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれか)を投与しない腸の炎症と比較して、腸の炎症を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上を含む、少なくとも約10%以上減少させることによりもたらす。そのような治療的特徴は、例えば、腸の炎症のバイオマーカーである糞便カルプロテクチンの存在量を測定することにより決定され得る。あるいは、そのような治療的特徴は、例えば、Enterobacteriaceaeを含むがこれに限定されない炎症促進性微生物の存在量を測定することにより決定することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)の有効量は、少なくとも0.5mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも1mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも2mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも3mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも4mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも5mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも6mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも7mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも8mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも9mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも10mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも11mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも12mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも13mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも14mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも15mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも16mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも17mg/日の2’-フコシルラクトース、少なくとも18mg/日の2’-フコシルラクト、少なくとも19mg/日の2’-フコシルラクトース、または少なくとも20mg/日の2’-フコシルラクトースに相当し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)の有効量は、20mg/日以下の2’-フコシルラクトース、15mg/日以下の2’-フコシルラクトース、10mg/日以下の2’-フコシルラクトース、9mg/日以下の2’-フコシルラクトース、8mg/日以下の2’-フコシルラクトース、7mg/日以下の2’-フコシルラクトース、6mg/日以下の2’-フコシルラクトース、5mg/日以下の2’-フコシルラクトース、4mg/日以下の2’-フコシルラクトース、3mg/日以下の2’-フコシルラクトース、または2mg/日以下の2’-フコシルラクトースに相当し得る。上記の範囲の組み合わせも含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための2’-FL化合物(例えば、明細書に記載のもの)の有効量は、0.5mg/日~20mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~20mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~15mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~10mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~8mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、または1mg/日~5mg/日の2’-フコシルラクトースに相当し得る。
【0070】
治療を必要とする対象が11~25歳であるいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)の有効量は、1mg/日~20mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~15mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~10mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、1mg/日~8mg/日の2’-フコシルラクトースに相当、または1mg/日~5mg/日の2’-フコシルラクトースに相当し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、2’-FL化合物の1日有効量(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、単回日用量で投与されるか、1日を通して所与の時間間隔で投与するための複数回用量(例えば、2~4回の用量)に分割することができる。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物の1日有効量(例えば、本明細書に記載のもの)を、朝に単回日用量として、例えば、単独で、または食品または飲料と組み合わせて投与することができる。1日を通して任意の他の時点での2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)の投与も適切である。
【0072】
2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、IBDの治療のための単一オリゴ糖として、または少なくとも1つの追加のオリゴ糖(例えば、本明細書に記載のもの)と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)は、単一オリゴ糖としてそれを必要とする対象に投与される、すなわち、対象は、唯一のオリゴ糖として2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)を与えられ、これは、他のオリゴ糖(例えば、本明細書に記載のもの)と同時に使用されない。他の実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載されるもの)は、少なくとも1つの異なるオリゴ糖と共投与される。「共投与」または「と組み合わせて」とは、同時に、連続して、断続的に、または他のレジメンでなど、治療の過程中に異なるオリゴ糖を含む2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)を対象に提供することを意味する。
【0073】
2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または本明細書に記載の複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)は、免疫系抑制剤および/または抗炎症剤、例えば、ヒトIBD患者によって摂取されるものの補助剤として投与することができる。例示的な免疫系抑制剤および/または抗炎症剤には、抗TNF剤が含まれるが、これに限定されない。抗TNF剤の非限定的な例には、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ナタリズマブ、ベドリズマブ、およびウステキヌマブが含まれる。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)は、インフリキシマブおよび/またはアダリムマブを含む抗TNF剤の補助剤として投与される。
【0074】
本明細書で使用される、「補助剤」という用語は、第1の薬剤が第2の薬剤の補助食品として提供されることを指す。第1の薬剤は、第2の薬剤の投与前、投与と同時に、または投与後に投与することができる。いくつかの実施形態では、免疫系抑制剤および/または抗炎症剤(例えば、抗TNF剤)のアジュバントとしての2’-FL化合物の投与は、例えば、IBDの再発リスクを軽減または低減することを含む、IBDの治療に相乗効果をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、免疫系抑制剤および/または抗炎症剤(例えば、抗TNF剤)のアジュバントとしての2’-FL化合物の投与は、例えば、IBDの再発リスクを軽減または低減することを含む、IBDの治療に追加の効果をもたらすことができる。例えば、治療効果は、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)と免疫系抑制剤および/または抗炎症剤(例えば、抗-TNF剤)との組み合わせにより達成される寛解の平均継続時間が、同じ用量の2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)ならびに免疫系抑制剤および/または抗炎症剤(例えば、抗-TNF剤)を用いた個々の治療の結果として起こる追加の効果よりも大幅に大きい場合、相乗的である。いくつかの実施形態では、相乗的治療効果は、平均寛解期間を少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上増加させる。
【0075】
2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)を第2の薬剤(例えば、本明細書に記載の他のオリゴ糖または免疫系抑制剤および/もしくは抗炎症剤(例えば、抗TNF剤))と同時に使用する場合、それは、本明細書に記載の任意の適切な形態(例えば、経口投与用の粉末剤または錠剤)であり得る単一の組成物に第2の薬剤と一緒に製剤化され得る。あるいは、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)および第2の薬剤(例えば、本明細書に記載の他のオリゴ糖または免疫系抑制剤および/もしくは抗炎症剤(例えば、抗TNF剤))は、個別に製剤化され得る。
【0076】
本明細書に記載のIBD治療の施行は、当技術分野で既知の任意の方法によって達成することができる(例えば、Harrison’s Principle of Internal Medicine,McGraw Hill Inc.,18th ed.,2011を参照されたい)。併用治療の場合、各薬剤は同じ経路または異なる経路で投与され得る。投与は局所的または全身であり得る。投与は、例えば、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、動脈内、または皮内)または経口であり得る。異なる投与経路用の組成物は、当技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Pharmaceutical Press,22nd ed.,2012を参照されたい)。組成物は、遅延放出、延長放出、持続放出、徐放性、パルス放出、制御放出、加速放出、および高速放出、標的放出、プログラム放出、ならびに胃貯留剤形を含む放出調節剤形として製剤化することもできる。これらの剤形は、当業者に既知の従来の方法および技術に従って調製することができる。投与量は、治療中の特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別、および体重を含む個々の患者パラメータ、治療期間、併用療法の性質(ある場合)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および専門知識内の同様の因子に依存する。用量は、当業者によって決定され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)および第2の薬剤(例えば、本明細書に記載の他のオリゴ糖(複数可)または免疫系抑制剤および/もしくは抗炎症剤(例えば、抗TNF剤))は、経口投与され得る。経口投与には、口腔、舌、および舌下投与も含まれる。いくつかの実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)を含む組成物は、経口投与用の固体、半固体、または液体組成物(例えば、医薬組成物または栄養補助食品)で提供され得る。適切な経口剤形には、錠剤、カプセル、丸薬、トローチ、ロゼンジ、芳香錠、カシェ、ペレット、薬用チューイングガム、顆粒、バルク粉末剤、発泡性もしくは非発泡性の粉末剤または顆粒、溶液、エマルジョン、懸濁液、溶液、ウエハ、スプリンクル、エリキシル剤、およびシロップが含まれるが、これらに限定されない。活性成分(複数可)に加えて、組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、潤滑剤、流動促進剤、着色剤、色素移動阻害剤、甘味料、および香味剤を含むがこれらに限定されない、1つ以上の薬学的に許容される、または食用の担体もしくは賦形剤を含有することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)は、注射(例えば、静脈内または腹腔内などの非経口)により投与することができる。非経口投与用の調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。そのような剤形は、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤のうちの1つ以上も含有し得る。剤形は、例えば、組成物の濾過、組成物の照射、または組成物の加熱により滅菌され得る。それらは、使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体を使用して製造することもできる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載のIBD治療以外の、またはそれに加えて措置をとることをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、IBDのリスクがある対象のIBD症状の発症を監視すること、または治療の有効性を監視することをさらに含む。監視は、例えば、腸の炎症および/または腸の微生物叢を評価するための身体検査、内視鏡検査、および/または便試料検査を含み得る。対象が2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質のいずれかの本明細書に記載のもの)の投与用量に応答しない場合、医師は、例えば、対象の医学的および/または身体的状態に基づいて2’-FLの用量を増加させることができるが、但し、用量を増加しても、腹部膨満、腹痛、悪心、軟便、および/またはガス感などの顕著な胃腸症状を引き起こさないことを条件とする。
【0080】
IV.IBD治療で使用するためのキット
本開示の別の態様は、本明細書に記載のIBD治療で使用するためのキットに関する。したがって、いくつかの実施形態では、そのようなキットは、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)、またはそれを含む医薬組成物、またはそれを含む栄養補助食品を含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用するための指示書を含み得る。指示書は、IBD治療のための、2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載の遊離オリゴ糖として、または複合糖質形態のいずれかの本明細書に記載のもの)、またはそれを含む医薬組成物もしくは栄養補助食品組成物の投与の説明を含み得る。2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)、またはそれを含む医薬組成物または栄養補助食品組成物に関する指示書には、一般に、意図する治療の投与量、投与スケジュール、および投与経路に関する情報が含まれる。そのような指示書には、推奨される体重ベースの投与量および/または年齢ベースの投与量も含まれる場合がある。
【0082】
本書に記載のキットで提供される指示書は、典型的には、ラベルまたは添付文書に書かれた指示書(例えば、キットに含まれる紙)であるが、機械可読指示書(例えば、磁気または光学ストレージディスクに記載される指示書)も容認される。ラベルまたは添付文書は、組成物が対象のIBD治療に使用されることを示す。いくつかの実施形態では、ラベルまたは添付文書は、例えば、本明細書に記載されるように、組成物が特定の対象群での使用に適していることを示し得る。例えば、ラベルまたは添付文書は、組成物が免疫系抑制および/または抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者(例えば、ヒトCDまたはUC患者)での使用に適していることを示し得る。いくつかの実施形態では、ラベルまたは添付文書は、組成物が安定した維持抗TNF療法を受けているヒトIBD患者(例えば、ヒトCDまたはUC患者)での使用に適していることを示し得る。本明細書に記載の方法のいずれかを実施するための指示書が提供され得る。
【0083】
キットの2’-FL化合物(例えば、本明細書に記載のもの)、またはそれを含む医薬組成物もしくは栄養補助食品組成物は、適切に包装され得る。適切な包装には、バイアル、ボトル、瓶、軟包装(例えば、密封されたマイラー袋もしくはビニール袋、またはポリエチレンライナー付きの紙袋)などが含まれるが、これらに限定されない。包装は、単位用量、バルク包装(例えば、複数用量包装)またはサブ単位用量であり得る。
【0084】
キットは、任意選択で、緩衝液および解釈情報などの追加の構成要素を提供する場合がある。通常、キットは、容器、および容器上もしくは容器に関連付けられたラベルまたは添付文書を含む。
【0085】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての出版物は、本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【0086】
一般的な技法
本発明の実施は、特に明記しない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技術を用い、これらは当技術分野の技術範囲内である。そのような技法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti andJ.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献に完全に説明されている。
【0087】
さらに詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての出版物は、本明細書で参照される目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例0088】
実施例1:炎症性腸疾患における2’-フコシルラクトースの投与および有効性
炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、および潰瘍性大腸炎(UC)は、人生の20~30代で発生率がピークとなる慢性および衰弱性障害である(Kaplan et al.,Gastroenterology,152:313-321e2,2017)。寛解を達成するための薬剤の最適化においてかなりの進歩があったが、再発は一般的で予測不可能である(Minar et al.,Inflamm Bowel Dis,22:2641-2647,2016;Minar et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,62:715-22,2016)。微生物叢の変化は、腸の炎症および臨床的再発を駆動する可能性が高い(De Cruz et al.,J Gastroenterol Hepatol,30:268-78,2015;Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、Rajca et al.,Inflamm Bowel Dis,20:978-86,2014、Varela et al.,Aliment Pharmacol Ther,38:151-61,2013、Wills et al.,.PloS One,9:e90981,2014)。インフリキシマブ(モノクローナル抗TNF抗体)による粘膜炎症の抑制は、この腸内毒素症を部分的にしか修正しない(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015)。
【0089】
IBD分野の進展に対する重大な障壁は、臨床的再発を予防するために微生物叢を直接調節するエビデンスに基づくアプローチの欠如であった(Kaplan et al.,Gastroenterology,152:313-321e2,2017、Sartor et al.,Gastroenterology,152:327-339e4,2017)。多種多様なプレバイオティクスが市販されているが、適切な臨床的および微生物的エンドポイントを用いた制御された用量設定研究がないため、それらの使用に関する情報に基づいた意思決定を行うことができない(Ghouri et al.,Clin Exp Gastroenterol,7:473-87,2014)。
【0090】
TNF-アルファ阻害剤は効果的であるが、この療法は潜在的な毒性が高く、IBDの特徴である腸内毒素症(微生物の調節不全)に直接対処しない(Lewis et al.、Cell Host Microbe、18:489-500、2015)。本明細書に提示されるのは、IBD患者の寛解を維持するためのプレバイオティクスヒト乳オリゴ糖、2’-フコシルラクトース(2’-FL)の使用に関する。パイロット用量設定試験を使用して、IBD患者における2’-FLの補充が、安全かつ忍容性が高く、同時に短鎖脂肪酸(SCFA)産生微生物叢の存在量を増やし、腸の炎症を減らすかどうかを評価する。この研究では、最先端のゲノムアプローチを利用して応答を評価する。この研究は、重要な安全性および有効性のデータを提供する。この研究は、増加する世界的なIBD患者の人口の臨床的寛解を維持するための、個別化微生物治療介入への臨床診療における根本的なシフトを支持する。
【0091】
多施設RISK小児CDおよびPROTECT小児UC開始コホート研究は、臨床結果に関連するゲノムおよび微生物因子を試験するために行われた(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。早期抗TNF療法により、RISK CDコホートの内部浸透性合併症への進行が低減されたが、狭窄合併症は低減されなかったことがわかった(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017)。ミトコンドリア機能を調節する回腸遺伝子の低発現と細胞外マトリックス(ECM)産生を駆動する回腸遺伝子の高発現との間の不均衡は、狭窄に進行した患者において見られた(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017)。明確な微生物分類群は、同様にして合併症に関連した(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017)。PROTECT UCコホート内で、疾患の重症度に関連する分類群は主にRuminococcaceaeおよびLachnospiraceae科からのものであり、2つの一般的な共生生物:Faecalibacterium prausnitzii(既知の短鎖脂肪酸(SCFA)産生株)およびDorea formicigenerans(クロストリジウムクラスターXIVのメンバー)を含む(図1およびデータ示さず)。遺伝子発現の直腸全体のパターンには、リンパ球の活性化および関連する細胞外マトリックス(ECM)応答の誘導が含まれるが、ミトコンドリア機能を調節する遺伝子プログラムは大幅に抑制された(図1)。コルチコステロイド(CS)の寛解率は、ミトコンドリア経路の調節不全の程度と逆相関しており、調節不全の最高四分位の32%から最低四分位の71%(p=0.0004)であった。2’-FLの補充は、SCFA産生Parabacteroidesの特定の増加を含む微生物アルファ多様性を増強した(Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。2’-FLによって誘導される主な小腸遺伝子シグネチャーは、ミトコンドリア機能の増強のためのものであった(図1)(Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。この研究では、IBD患者における2’-FLの補充が、新規治療標的としてのSCFA産生微生物の誘導を介して、腸のミトコンドリア機能を増強し得るかどうかを評価することが求められている。
【0092】
IBDの栄養補助食品としての2’-FLの用量依存的な安全性、忍容性、および有効性を定義する。
インフリキシマブまたはアダリムマブの抗TNF療法を受けている安定した寛解期の小児および若年成人のIBD患者に対する毎日の栄養補助食品として、1、5、または10gmの2’-FLが提供される。安全性および忍容性は、有効な臨床疾患活動指数、電子症状追跡装置、糞便代謝産物アッセイ、および糞便カルプロテクチンを使用して評価される。有効性は、粘膜炎症のバイオマーカーとして、糞便Bifidobacteriaの増加および糞便カルプロテクチン存在量の減少に対する2’-FLの用量依存的効果を測定することにより評価される。
【0093】
腸内微生物群集および関連するSCFA産生に対する2’-FLの補充効果を決定する。
確立されたゲノムおよびメタボロミクスアプローチを利用して、腸内微生物群集およびSCFA産生に焦点を当てた関連する代謝機能に対する、グルコースプラセボと比較した2’-FL用量範囲の効果を試験する。
【0094】
研究設計
安定した維持インフリキシマブまたはアダリムマブ(抗TNF)療法を受けている小児および若年成人のIBD患者における栄養補助食品としての2’-FLの単一施設無作為化用量範囲研究を行う。この研究の主な目的は、2’-FL用量依存的な安全性および有効性のデータを得て、より大きな多施設プラセボ対照RCTの設計を導くことである。包含基準には、現在、安定した抗TNF維持療法を受けているコルチコステロイドを含まない寛解期にある11歳以上の男性および女性のCDおよびUC患者が含まれる。
【0095】
過去6か月間に臨床的再発を経験した場合、または前月に抗生物質、プロバイオティクス、プレバイオティクスを受けた場合、患者は除外される。3日間の食事日誌を使用して、通常の食事の違いが応答の違いと関連しているかどうかを決定し、参加者は安定した食事を維持するよう奨励される。研究のスケジュールおよび手順を表1に要約する。
【表5】
【0096】
コーディネーターの電話は、4回の試験訪問の各々の前、および5、6、もしくは7週目に発生する。Orchestra症状追跡装置からのデータは毎週得られるが、毎日得られる4~8週目は例外である。安全性ラボには、CBC、CMP、PT/INR、およびU/Aが含まれる。
【0097】
胃腸(GI)症状、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、および糞便微生物群集のベースラインデータを収集するために、患者は4週間の導入期間を完了する。スマートフォンベースの症状追跡装置を利用して、腹痛、悪心、軟便、およびガス感を含む、患者が報告した2’-FL忍容性の指標を追跡する。これらのパラメータは、最近の無作為化比較試験(RCT)で20g用量の2’-FLを受けた健康な成人ではやや増加したが、低用量の2’-FLでは変動しなかった(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。これら4つの症状の各々の重症度は、(1)症状なし~(10)重度の症状の範囲の10ポイントのリッカートスケールで報告され、ベースライン~4週目、4週目~8週目、および8週目~20週目の時間期間の各参加者の平均スコアが計算される。参加者は、4週間にわたって、2’-FLの3つの日用量のうちの1回分を摂取するように無作為化される。健康な成人における最近の2’-FLの用量設定RCTにより、2週間にわたる5、10、および20g/日の用量で安全かつ忍容性が高く、腸の炎症のバイオマーカーとしての糞便カルプロテクチンに変化がないことがわかった(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。Bifidobacteriumの3倍の増加が10gの用量で観察された(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。したがって、投与群あたり5人のCDおよび5人のUC対象において、4週間にわたって1、5、および10g/日の2’-FLを試験する。2’-FLの粉末剤は単回投与パケットで提供される。参加者は、毎朝朝食を摂取する直前に粉末剤を水に溶かすように求められる。患者の自己報告データは、毎日の症状および2’-FLの摂取を記録するように求められる4~8週目の2’-FLの摂取量について得られる。患者およびその両親は、30治療日のうちの少なくとも24日の無作為化用量の摂取として定義される、許容レベルに対する2’-FLの順守を改善するために、自動生成される無料の携帯電話テキストおよび/または電子メールリマインダプロンプトも提供される。その後、12週間のフォローアップ期間を完了して、4週間の補充期間中の臨床疾患活動、自己報告のGI症状、血漿サイトカイン、および糞便カルプロテクチンまたは微生物叢について検出された任意の変化の安定性を決定する。
【0098】
研究のエンドポイント
主要安全性エンドポイントは、疾患活動の有効な指標、CD患者の加重小児クローン病活動指数(wPCDAI)、およびUC患者の小児潰瘍性大腸炎活動指数(PUCAI)を使用した臨床的再発である(Turner et al.,Inflamm Bower Dis,15:1218-23,2009、Turner et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,64:254-260,2017)。臨床的再発とは、4~8週目のwPCDAIでは20ポイントを超えた、PUCAIでは15ポイントを超えた増加として定義される(Turner et al.,Inflamm Bower Dis,15:1218-23,2009、Turner et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,64:254-260,2017)。投与群の3人以上の対象が臨床的再発を経験するか、またはGI症状忍容性スコアの全体的な増加が観察された場合、その用量は安全ではなく、十分に忍容されないと結論づけられる。副次的安全性エンドポイントは、症状追跡装置を使用して収集された忍容性のGI症状スコアおよび糞便カルプロテクチンである。主要有効性エンドポイントは、4~8週目の各投与群内での2’-FL補充による糞便Bifidobacterium属存在量の増加である。Illumina MiSeqプラットフォームを使用して、試料ごとに平均深さ20,000ペアエンドフィルタ処理されたリードの16S-DNAプロファイルを生成し、V4(515F/806R)領域を標的とするプライマーセットを使用する(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014)。リード処理およびエラー修正は、パーセント類似性(すなわち、OTU)クラスタリング手法よりも感度が高く具体的であることが示されているRのDADA2パッケージおよびアルゴリズムを使用して、高性能コンピューティングクラスターで実施される(Callahan et al.,Nat Methods,13:581-3,2016)。副次的有効性エンドポイントは、4~8週目の腸の炎症のバイオマーカーとしての糞便カルプロテクチンの低減である。
【0099】
統計分析
一次分析はプロトコルごとに行われ、無作為化された30の2’-FL用量のうちの少なくとも24を摂取した患者のみが含まれる(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。補充前後のBifidobacterium存在量、糞便カルプロテクチン、GI症状忍容性スコア、および血漿サイトカインの違いは、ボンフェローニの多重比較補正との混合ANOVA(またはノンパラメトリック同等物)を使用して試験される。モデルは、4~8週目の主な関心の応答の変化を比較する対象内対比を用いた混合効果回帰により適合される。フィッシャーの正確確率検定を使用して、2’-FL介入群の各々の間の8週目の臨床的再発率の違いを比較する。4~8週目の再発回数の用量内比較は、対応のあるデータの正確な試験を使用して行われる。健康な成人の最近のRCTに基づいて(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)、10gの用量で2’-FL補充後8週目に糞便Bifidobacterium存在量の2倍の増加および糞便カルプロテクチンの2倍の減少を検出することが予想される。高次元データの分類および統計学習アプローチを使用して、2’-FL補充に対する微生物群集構造の違いを特定する。
【0100】
関連する生物学的変数の検討
2’-FLの安全性および有効性に影響を及ぼす可能性のある生物学的変数には、年齢、性別、人種/民族、FUT2分泌型の状態、CDまたはUCのIBD診断、糞便カルプロテクチンによって測定される粘膜炎症、およびベースライン微生物群集が含まれる(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015、Currier et al.,Clin Infect Dis,60:1631-8,2015、Payne et al.,JAMA Pediatr,169:1040-5,2015、Tong et al.,ISME J,8:2193-206,2014、Wacklin et al.,PLoS One,6:e20113,2011)。11歳以上の同数の男女、およびCCHMC IBD人口全体に比例した白人(90%)およびアフリカ系アメリカ人(10%)の対象が登録される。任意の予想しない安全信号が特定されるまで、年少の子供は除外される。年齢、性別、人種、CD対UC診断、4週目の糞便カルプロテクチンおよび微生物叢、ならびにFUT2分泌型の状態の効果は、多施設RCTの設計を導くために探索様式で試験される。
【0101】
試料サイズ
2’-FL投与群あたり参加者10人の試料サイズは、平均(SD)糞便Bifidobacterium相対存在量が10gの用量でベースラインの7(2)から2週間後に20(4)に増加した、健康な成人の最近の用量設定RCTに基づく(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。最近の報告に基づいて、CD患者の糞便Bifidobacterium存在量においてより大きな変動を観察することが予想される(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017)。したがって、2’-FL投与群あたり10人の参加者がいる場合、複数の試験を考慮する各投与群内の糞便Bifidobacterium存在量において5(4)の平均増加を検出するためには、α=0.0167で80%の検出力である。Bifidobacterium存在量においてより大きな変動が観察されるならば、平均差のSDが予想の2倍である場合、相対存在量の平均10の増加を検出するためには、80%の検出力が保持される。10%の中断率が想定されているため、33人の参加者が登録される。
【0102】
募集、フォローアップ、および保持
対象は、現在、インフリキシマブまたはアダリムマブの維持療法を受けている持続的寛解期にある11歳以上のIBD集団から登録される。患者の訪問は、ベースライン、ならびに4、8、および20週目に義務付けられる。研究コーディネーターは、各研究訪問の前、ならびに研究手順の維持および順守を支援するために、5、6、もしくは7週目に電話で患者に連絡する。忍容性の欠如についての新たなシグナルが2’-FL用量に関して検出された場合、その用量に対する無作為化の早期停止が実施される。
【0103】
実施例2:安定した維持抗TNF療法を受けている小児および若年成人のIBD患者における栄養補助食品としての2’-FLのパイロットおよび実行可能性研究
以前のIBD RCTで研究されたプレバイオティクスは、オリゴフルクトース濃縮イヌリン(OF-IN)、フルクト-オリゴ糖(FOS)、ガラクト-オリゴ糖(GOS)、およびオオバコを含んだ(Benjamin et al.,Gut,60:923-9,2011)。103人の活動的なCD患者における15gのFOSの4週間のRCTは、臨床応答についてプラセボと比較して利益を示さなかった(Benjamin et al.,Gut,60:923-9,2011)。
【0104】
微生物のSCFA産生および上皮ミトコンドリア機能
微生物のSCFA代謝産物である酪酸は、酸化的リン酸化およびATP産生のエネルギー源として、およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性を介した遺伝子転写の調節因子としての2つの機構を介して腸上皮細胞(IEC)機能を調節する(Donohoe et al.,Cell Metab,13:517-26,2011、Kaiko et al.,Cell,167:1137, 2016)。無菌マウスから単離された結腸細胞は、酸化的リン酸化およびATP産生の低下を示す(Donohoe et al.,Cell Metab,13:517-26,2011)。結果には、下痢および体重増加不良が含まれる。結腸細胞のミトコンドリア機能の欠陥は、酪酸産生細菌株であるButyrivibrio fibrisolveとの単一結合により救助することができる(Donohoe et al.,Cell Metab,13:517-26,2011)。転写コアクチベーターであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-γコアクチベーター1-α(PGC1A)は、腸上皮におけるミトコンドリア生合成の中心的な調節因子である(Cunningham et al.,J Biol Chem,291:10184-200,2016)。標的IEC PGC1Aの欠失は、デキストラン硫酸ナトリウム投与後のバリア機能障害および大腸炎の重症度の増加を引き起こす(Cunningham et al.,J Biol Chem,291:10184-200,2016)。粘膜の治癒を経験するIBD患者では、酪酸輸送、シグナル伝達、およびミトコンドリアの酸化を調節するEC遺伝子の炎症抑制は、インフリキシマブ抗TNF療法によって大幅に修正される(De Preter et al.,Inflamm Bowel Dis,4:e30,2012)。しかしながら、インフリキシマブによる粘膜炎症の抑制は、最近の小児CD研究におけるBifidobacterium存在量の増加と関連していなかった(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015)。本明細書で論じる研究では、図2に図示するように、抗TNF療法で安定した寛解期にあるCDおよびUC患者における2’-FL投与が安全かつ忍容性が高く、酪酸産生微生物叢に対して用量依存的な効果を発揮するかどうかを決定する。
【0105】
炎症性サイトカインを標的とするいくつかのIBD療法が診療所に届いているが、微生物叢を直接調節する機構に基づいたアプローチは使用されていない(Sartor et al.,Gastroenterology,152:327-339e4,2017)。この研究は、抗TNF免疫抑制の状況において初めて補助微生物療法を試験することにより、現在の臨床診療パラダイムに挑戦する。基礎研究および橋渡し研究は、IBDの病因における微生物叢および関連代謝物の役割を確固たるものにした(Sartor et al.,Gastroenterology,152:327-339e4,2017)。現在、世界中で疾患の発生率の上昇に寄与している環境因子が、主に、宿主の遺伝的変異と相互作用する炎症促進性微生物のシフトを引き起こして、慢性粘膜炎症を駆動することによってそうしたことが理解されている。この研究では、FUT2遺伝子酵素によって合成されたプレバイオティクス三糖である2’-FLがIBDの治療薬として使用される。FUT2遺伝子の多型(不活化変異、または非分泌型の状態)は、CDのリスク増加と関連しているため、FUT2分泌型の状態に関連する2’-FLの最適用量を決定して、応答における患者の変動源を考慮することができる個別化臨床試験にも役立つ(McGovern et al.,Hum Mol Genet,19:3468-76,2010)。最先端の電子症状追跡装置、微生物のハイスループットシーケンス法、および糞便代謝産物アッセイを利用して、応答を正確に評価する(Integrative HMPRNC.,Cell Host Microbe,16:276-89,2014)。本明細書で論じられる研究の結果は、個別化微生物治療介入への臨床診療における根本的なシフトを支持する。
【0106】
予備研究
lmproveCareNow(ICN)小児IBD質改善(QI)ネットワークに参加している95の施設で、過去1年間に患者の47%が再発した(improvecarenow.org)。Cincinnatiの施設では、インフリキシマブまたはアダリムマブの抗TNF療法を受けている患者の37%が、最適な治療薬の監視および投与にもかかわらず再発した(Minar et al.,Inflamm Bowel Dis;2016、Minar et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,62:715-22,2016)。生活の質、ならびに学校および仕事の生産性への悪影響に加えて、再発は治療費を増加させる。最近の費用対効果分析に基づくと、米国のアダリムマブまたはインフリキシマブ療法の年間薬局費用は、年間27,664ドル~92,300ドルの範囲である(Yokomizo et al.,BMJ Open Gastroenterol,3:e000093,2016)。Cincinnatiの施設では、再発した抗TNF療法を受けている患者の間で年間治療費の中央値が16,862ドル増加した。比較すると、日用量10gでの2’-FLの年間費用は約500ドルであり、非常に費用効果の高い補助治療オプションが提供されると推定される。
【0107】
2’-FLは、F.prausnitziiおよび他の有益な微生物の酢酸栄養共生により酪酸産生を増強する、Bifidobacteriumの成長を促進する(Rios-Covian et al.,FEMS Microbial Lett,362,2015、Yu ZT et al.,Glycobiology,23:1281-92,2013)。逆に、2’-FLは、より重度の症状を伴うIBD患者で増加する、Enterobacter sppまたはEscherichiaの成長を支持しない(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、Morgan et al.,Genome Biol,13:R79,2012、Yu ZT et al.,Glycobiology,23:1281-92,2013)。これらのプレバイオティクス効果に加えて、2’-FLは、病原体の付着を阻害し、細菌産生に対する上皮炎症応答を抑制することにより、腸内で直接的な抗炎症効果も発揮する(He et al.,Gut,65:33-46,2016、Yu et al.,J Nutr,146:1980-1990,2016)。2’-FLは回盲部切除後のマウスの体重増加を促進することが報告された(Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。これは、Parabacteroidesの拡大およびミトコンドリア機能の腸遺伝子シグネチャーの誘導に関連した(Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。ラットでの2’-FLの前臨床安全性試験により、雄および雌の両方で5gm/kgbw/日の無毒性量(NOAEL)が確立された(Goulet et al.,Regul Toxicol Pharmacol,68:59-69,2014)。2’-FL補充粉乳を与えられた乳児は、対照粉乳を与えられた乳児と比較して成長速度が改善され、血漿サイトカインプロファイルが低下した(Goehring et al.,J Nutr,146:2559-2566,2016、Marriage et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr;61:649-58,2015)。健康な成人における最近のRCTでは、2’-FLが1日5gm~20gmの用量範囲で安全かつ忍容性が高く、Bifidobacteriumの拡大およびProteobacteriaの減少を促進したと報告された(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。しかしながら、2’-FLがIBD集団で同様の利益を発揮するかどうかは不明である。以前の研究では、活動性粘膜炎症の状況において、2’-FL標的微生物叢における著しいシフト、ならびに結腸酪酸吸収および酸化的代謝の低減が示された(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、Morgan et al.,Genome Biol,13:R79,2012、De Preter et al.,Inflamm Bowel Dis,18:1127-36,2012)。活動性粘膜炎症の状況での微生物のニッチおよび宿主の酪酸代謝におけるこれらの変化は、2’-FL治療の利益を低減する可能性がある。これは、活動性大腸炎の状況での局所酪酸浣腸療法の混合結果を説明し得る(Scheppach et al,.Gastroenterology,103:51-6,1992)。したがって、より効果的なアプローチは、最初に抗TNF療法で粘膜炎症を抑制し、次に2’-FLの補充を利用してSCFA産生微生物叢の拡大を促進し、寛解の維持を増強することである(図2)。
【0108】
CDの疾患合併症および治療応答に関連する微生物シフト
多施設CCFAが支援するRISK開始コホート研究は、療法前の診断時に登録された913人の小児CD患者の初期の治療応答、および36か月のフォローアップ中の疾患合併症の続発と関連する臨床学的、人口統計学的、ゲノム、微生物、および免疫因子について試験するために行われた(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。遺伝子発現の回腸および直腸の全体的なパターン、ならびに回腸、直腸、および糞便の微生物群集は、それぞれ、243および22人のCD患者の代表的なサブセットでハイスループットシーケンスを使用して決定された(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。未処置の回腸および直腸の治療において、酪酸産生Blautia、Parabacteroides、およびRoseburiaの収縮と併せて、Veillonellaceaeを含む炎症促進性属の拡大が特定された(図3A)(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014、(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。明確な分類群は、同様にしてB2狭窄またはB3内部浸透性合併症への進行と関連しており、宿主生物学の調節における役割を示唆した(図3Bおよび3C)。ベースラインの微生物存在量を含む多変量ロジスティック回帰モデルは、診断から6か月後のステロイドおよび外科手術を行わない寛解(SFR)の予測において、臨床的、人口統計的、およびゲノム因子のみを含むものよりも優れていた(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。このモデルでは、BlautiaおよびVeillonellaceaeの相対存在量は、抗TNF暴露を考慮した後にSFRを達成する可能性と関連した(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。重要なことに、データはこれらの炎症促進性および抗炎症性微生物が互いに共排除し、抗生物質の同時使用が腸内毒素症を悪化させるモデルを支持した(Gevers et al.,Cell Host Microbe,15:382-92,2014)。
【0109】
UCの疾患重症度と関連する微生物シフト
RISK研究の成功に続いて、NIH/NIDDKが支援するPROTECT開始コホート研究を行い、療法前の診断時に登録された431人の小児UC患者におけるメサラミン単独によるSFRの達成と関連する臨床学的、人口統計学的、ゲノム科学、微生物、および免疫因子について試験した。遺伝子発現の直腸の全体的なパターン、ならびに直腸および糞便微生物群集は、それぞれ、206および371人のUC患者の代表的なサブセットでハイスループットシーケンスを使用して決定された。合計で、48の操作的分類単位(OTU)が疾患の重症度と関連しており、疾患の重症度の増加に伴い連続的な増加または減少を示した(FDR閾値:0.5)(図4)。大半のOTUは疾患の重症度と負の相関関係があり、これらの細菌分類群の喪失がUCの悪化と関連していることを示した。主に、これらのOTUは、RuminococcaceaeおよびLachnospiraceae属からのものであり、2つの一般的な共生生物:F.prausnitzii(SCFA産生株として知られる)およびDorea formicigenerans(クロストリジウムクラスターXIVのメンバー)を含む。Veillonella disparおよびMegasphaeraなどの多くのVeillonellaceae生物を代表する6つのOTUの増加は重症度の増加と関連した。大規模な前向きな開始コホート研究からのこれらのデータは、IBDにおけるSCFA産生微生物叢の調節において2’-FLの用量依存的な効果の試験を支持する。
【0110】
ミトコンドリア機能障害の回腸遺伝子シグネチャーは小児CDの疾患合併症と関連している
RISKコホート内の遺伝子発現の回腸の全体的なパターンにはかなりの不均一性があったが、群間の比較は遺伝子発現における顕著な違いを明らかにした(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014)。解析により、そうでなければB2狭窄合併症のリスクが高い患者でミトコンドリア機能遺伝子シグネチャーの濃縮が特定され、合併症がないままであった(B1保護、図5)。逆に、細胞外マトリックス(ECM)遺伝子シグネチャーの増強は、それでも狭窄に進行した予測低リスク患者で検出された(B2低確率)。ミトコンドリア呼吸鎖に関与する遺伝子(GO経路:0022900およびGO経路:0045333;暗い陰影)は「B1保護」で上方制御され、ECM産生に関与する遺伝子(GO経路:0005201;明るい陰影)は「B2低確率」で上方制御された。これらの遺伝子シグネチャーを含む疾患合併症の多変量ロジスティック回帰モデルは、臨床学的、人口統計学的、血清学的因子のみを含むものよりも優れていた(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017)。より高い回腸ミトコンドリア機能遺伝子シグネチャーの発現は、モデルにおいて狭窄性合併症を発症する可能性の低下と関連した(HR(95thCl):0.69(0.51,0.94)、p=0.019)が、より高いECM遺伝子シグネチャーの発現は、狭窄合併症を発症する可能性の増加と関連した(HR(95thCl):1.7(1.12,2.57)、p=0.012)。これらのデータは、2’-FLによる酪酸産生微生物叢の拡大などの腸上皮細胞(IEC)ミトコンドリア機能を増大するアプローチにより、CD治療応答および結果を改善することができることを示す。
【0111】
小児UCにおける臨床的重症度および治療応答と関連するミトコンドリア機能障害の直腸遺伝子シグネチャーは、マウスにおいて2’-FL補充によって調節される。
PROTECT UCコホート研究に登録された患者に対して、直腸遺伝子発現の同様の分析を行った。UC患者と対照との間で≧1.5の倍率変化および0.001の偽発見率(FDR)で差次的に発現した遺伝子を使用して、発病プロセスを定義した。これらには、リンパ球活性化および関連する細胞外マトリックス(ECM)応答が含まれた(図1-表)。ミトコンドリア生合成PGC1Aの主調節因子は、ミトコンドリア生合成およびATP産生を調節する遺伝子と関連して、UCで4倍抑制された。驚くべきことに、これらの同じ上皮エネルギー経路は、マウスにおいて、2’-FLの補充によって誘導された(図1-表)(Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。コルチコステロイドで治療された中等度から重度の患者の中で、4週目の寛解率は、ミトコンドリア経路の調節不全の程度と逆相関しており、調節不全の最高四分位の32%から最低四分位の71%(p=0.0004)であった。これらのデータは、2’-FLによる酪酸産生微生物叢の拡大などの直腸のミトコンドリア機能を増大するアプローチにより、UC治療応答を改善することができることを示す。まとめると、これらの研究は、マウスにおいて2’-FLによって誘導される上皮ミトコンドリア機能の遺伝子シグネチャーが、酪酸産生微生物のシフトおよび小児CDおよびUC患者の療法に対する応答不良と関連して抑制されることを示す(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017、Mezoff et al.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,310:G427-38,2016)。これらのデータは、新規治療標的としての酪酸産生微生物の誘導を介した上皮ミトコンドリア機能の増強により、IBDにおける2’-FL補充を支持する。
【0112】
リスク/利益評価
既知の潜在的なリスク
この研究に関連するリスクは、2’-FLまたはグルコースの補充および静脈穿刺と関連する。2’-FL補充と関連するリスクには、腹痛、悪心、軟便、および/またはガス感を含むGI症状の潜在的な用量依存的増加が含まれる。末梢血のサンプリング(静脈穿刺)と関連するリスクは、痛み、打撲、失神(まれ)、および/または感染(まれ)である。
【0113】
既知の潜在的な利益
前臨床および臨床研究の結果に基づいて、プレバイオティクス2’-FLによる栄養補充は、例えば、有益な微生物を増大し、有害な微生物を阻害し、炎症促進性サイトカインを抑制することによるIBD寛解の維持に効果的であり得る。健康な幼児および成人において安全かつ忍容性が高いことが示されている。
【0114】
この研究の結果は、2’-FL投与が安定した寛解期のCDおよびUC患者において安全かつ忍容性が高いかどうかに関する貴重な情報を提供し、腸の健康および安定した寛解を促進するSCFA産生微生物叢に用量依存的な効果を発揮する。この知識は、第III相無作為化臨床試験の設計に役立つ。最終的に、この知識を利用して臨床診療を改善することができる。
【0115】
潜在的なリスクおよび利益の評価
参加者が曝されるリスクは、おそらく軽度から中程度である。研究は、この患者集団の有害反応のプロファイルに精通している経験豊富な消化器専門医が研究を監視することにより、2’-FLに関連するリスクを軽減する。全身性(血漿サイトカイン)の変化または粘膜炎症(糞便カルプロテクチン)なく健康な成人集団で十分に忍容された2’-FLの用量範囲が利用される。加えて、高用量(5g/日および10g/日用量)に無作為化された参加者が、少なくとも10人の参加者が低用量を完了するまで薬を服用し始めないように、適応投与試験設計が利用される。
【0116】
小児患者のケアに経験のある専門家が手順を実施することにより、静脈穿刺に関連するリスクを軽減する。
【0117】
研究参加の潜在的な利益は、参加者の潜在的なリスクを上回る。
目的およびエンドポイント

【表6】
【0118】
研究設計
全体的な設計
この研究は、用量依存的様式で糞便Bifidobacterium存在量および酪酸を増加させる一方で、IBDにおける2’-FLの補充が安全かつ忍容性が高いかどうかを評価する。そのために、2施設の第I/IIa相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定臨床試験を行う。2つの研究群があり、1つは2’-FLを摂取するように無作為化され、もう1つはプラセボ群に無作為化される。患者は、次の最高用量で無作為化が開始される前に、最低用量群の安全性を評価することを可能にする段階的アプローチを使用して、層内のプラセボまたは治療群に無作為化される。試験の期間が短く、各段階でプラセボおよび低用量群に無作為化された患者を含めることで、任意の観察されるコホート/時間効果の試験および考慮が可能となることを考えると、患者を後のより高い用量群に無作為化する際のバイアスの可能性は低い。
【0119】
2’-FLまたはグルコースプラセボでの補充は4週間にわたって行われる。日用量を追跡し、患者から報告された症状を毎週捕捉する。この研究には4回の訪問が必要である:1)4週間の導入期間を含むスクリーニング/ベースライン訪問、2)無作為化のための訪問、3)投与完了時の訪問、4)12週間後のフォローアップ訪問。
【0120】
この研究は、IBDにおける2’-FLプレバイオティクスの最初の用量設定無作為化臨床試験(RCT)であり、最先端のメタゲノムおよびメタボロームアプローチを利用して応答を評価する。FUT2遺伝子の多型はCDリスクと関連しているため(McGovern et al.,Hum Mol Genet,19:3468-76,2010)、FUT2分泌型の状態に関する2’-FLの最適用量が将来の個別化臨床試験にも役立つように決定される。これらの研究は、有益な微生物叢を直接調節し、それによって持続的な臨床的寛解を増強する際に2’-FLの有効性を試験するための将来の第III相RCTを支持する重要な第I/IIa相の安全性および有効性のデータを提供することにより、本分野に大きな影響を与える。最終的に、これらの研究は、個別化微生物治療介入への臨床診療における根本的なシフトを促進する。
【0121】
用量
健康な成人における最近の2’-FLの用量設定RCTにより、2週間にわたる5、10、および20g/日の用量で安全かつ忍容性が高いことがわかった(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。Bifidobacteriumの3倍の増加、およびProteobacteriaの低減が10gの用量で観察された(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。腹部膨満および軟便を含むGI症状のわずかな増加が20gの用量で報告されたが、2’-FLを中止した参加者はいなかった(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。CDを有する成人の以前のRCTは、20gの異なるプレバイオティクス、オリゴフルクトース濃縮イヌリンを毎日利用することにより、臨床的疾患活動を低下させ、酪酸産生を増加させる有効性を示したが、これは、高いGI不耐性(主にけいれんおよび鼓腸)率および治験薬の中止と関連した(De Preter et al.,Clin Transl Gastroenterol,18:1127-36,2013)。したがって、場合によっては、20g/日の2’-FL用量が十分に忍容されない場合がある。場合によっては、10g/日の2’-FL用量が、Bifidobacterium存在量および酪酸産生を増加させるのに効果的であり得る。したがって、20人のUCおよび20人のCD対象において、4週間にわたって、1、5、および10g/日の2’-FLを評価する。20人のUCおよび20人のCD対象のプラセボとして2g/日のグルコースが利用される。
【0122】
CDとUC患者との間の糞便カルプロテクチンによって測定されるベースライン微生物群集および粘膜炎症のレベルの違いは、2’-FLの補充に対する応答に影響する可能性がある。通常の食物繊維摂取量が2’-FLに対する応答に影響を与える可能性もある(Holscher et al.,J Nutr,145:2025-32,2015)。健康な成人におけるアガベイヌリンプレバイオティクス補充についての以前の研究では、総食物繊維+アガベイヌリン摂取量と糞便酪酸との間に正の相関関係が示された(Holscher et al.,J Nutr,145:2025-32,2015)。さらに、3つの施設で142人の小児IBD患者を含んだ研究において、平均(SD)食物繊維摂取量が健康な成人において感知できる糞便酪酸と関連した摂取範囲の下限の1日あたりわずか14(7)グラムであったことがわかった(Holscher et al.,J Nutr,145:2025-32,2015)。さらに、IBD患者の2’-FLのGI不耐性は、健康な成人の最近のRCTで検出されたよりも低い用量で生じる可能性がある(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016、De Preter et al.,Clin Transl Gastroenterol,18:1127-36,2013)。したがって、登録は疾患表現型(CDまたはUC)で均衡がとれており、通常の食物繊維摂取量および投与群はこれらの因子の層内で無作為化される。
【0123】
試験終了の定義
参加者は、図8に列記される活動スケジュール(SoA)に示されるように、最後の訪問を含む全ての研究訪問を完了した場合、研究を完了したと見なされる。
【0124】
調査対象母集団
包含基準
この研究に参加する資格を得るには、個人は以下の全ての基準を満たしている必要がある:(1)署名および日付の入った同意文書の提出、(2)全ての研究手順を完了する意思があることの表明および研究期間中参加可能であること、(3)11~25歳の男性または女性、(4)クローン病または潰瘍性大腸炎と診断された、(5)疾患が寛解中、(6)コルチコステロイドを受けていない、(7)アダリムマブまたはインフリキシマブの安定した抗TNF維持用量を受けている、ならびに(8)研究期間を通して食事を大幅に変更しないという合意。これには、通常の食事をビーガン食、特定の炭水化物食(SCD)、または排他的経腸栄養(EEN)食に変更することが含まれる。
【0125】
除外基準
次の基準のいずれかを満たす個人は、この研究への参加から除外される:(1)過去6か月の間にwPCDAIまたはPUCAI>10と定義される臨床的再発を経験した、(2)前月中に抗生物質、プロバイオティクス、またはプレバイオティクスの薬剤のいずれかを使用、(3)セリアック病、糖尿病、または排他的であると判断された他の併存症の診断、(4)4週間以内の別の治験薬または他の介入による治療、(5)ラクトース分解に関する問題、(6)妊娠。
【0126】
出産の可能性のある参加者は、研究中から研究栄養補助食品の最後の投与を停止してから少なくとも30日間の間は効果的な避妊方法を使用する必要がある。
【0127】
最初の基準を満たす参加者は、追加のスクリーニングおよび4週間の導入期間を経て、ベースラインデータを収集される。以下の追加除外基準のいずれかを有する参加者は、研究へのさらなる参加から除外される。
●以下のように定義されるベースラインスクリーニングラボの異常な結果:
○WBC>1.5ULN
○CMP w LFT>2.0ULN
●GSRS症状アンケートの平均ベースライン合計スコアが>3のGI症状
●ベースラインおよび4週目でのwPDCAIおよびPUCAI値が≧10
【0128】
ライフスタイルの検討
この研究中、参加者は、研究の過程で安定した食事を維持するように求められる。
【0129】
研究介入の管理
研究介入の説明
2’-フコシルラクトース粉末剤(2’-FL)は、母乳オリゴ糖プレバイオティクスである。2006年の食品医薬品局による補完代替医療製品およびその規制に関する業界向けFDAのガイダンスによると、プレバイオティクスは選択的方法で結腸の細菌の成長および/または活動を刺激することにより宿主に有益に影響を及ぼす非消化性食品成分である。国立補完統合衛生センター(NCCIH)によると、プレバイオティクスは生物学に基づく実践に分類される。この研究では、抗TNF療法の補完的な栄養補助食品として使用されている。
【0130】
グルコース粉末剤は、プラセボ対照薬として利用される。グルコースは主要なエネルギー源であり、その遊離状態で植物の果実および他の部分に天然に存在する。
【0131】
用量および投与
合計160人の参加者は、4週間にわたって、2’-FLまたはグルコースプラセボの3つの日用量のうちの1つを摂取するように無作為化される。80人の参加者はクローン病の患者であり、80人の参加者は潰瘍性大腸炎の患者である。参加者は、逃した用量は逃した用量の日遅くに摂取してもよいと指示される。
【0132】
最初の群では、120人の参加者が3つの群のうちの1つの2’-FLを受ける:
●群1:1g/日;n=40(CD20人/UC20人)
●群2:5g/日;n=40(CD20人/UC20人)
○10人が群1を完了した後
●群3:10g/日;n=40(CD20人/UC20人)
○10人が群2を完了した後
【0133】
2番目の群では、40人の参加者、CD20人/UC20人が2gのグルコースプラセボを受ける。
【0134】
階層化された段階的な無作為化が用いられる。層は、研究施設、疾患表現型(例えば、CD/UC)、および通常の繊維摂取量(<または>=7g/1000kcal/日)によって定義し、20人の参加者の8つの等しく均衡のとれた層を得る。これにより、次の最高用量で無作為化が開始される前に、最低用量群の安全性を評価することが可能となる。用量群/疾患表現型群が十分な安全性の問題を経験した場合、その群および全てのより高い用量群への割り付けは中止される。
【0135】
8週目の投与終了後、参加者は12週間のフォローアップ期間を完了し、補充期間中の臨床疾患活動、自己報告のGI症状、血漿サイトカイン、および糞便カルプロテクチン、微生物叢、または代謝物について検出された任意の変化の安定性が決定される。
【0136】
製剤および包装
2’-フコシルラクトース(2’-FL)は白色の均質な粉末であり、中性からやや甘く、異臭はない。乾物は96%を占め、含水率は4%である。分析の結果は、全体の含有量が2’-フコシルラクトース93%、他の糖類3%、水分4%であることを示す。包装は、ポリエチレンライナーを備え、容量正味25kgの多層紙袋からなる。薬剤の名前がラベルに表示される。グルコースは甘味の白色の粉末である。
【0137】
参加者は、必要な量を飲料または食品に追加することにより、朝食時に毎朝2’-FLまたはグルコースを摂取するように指示される。食事日誌は、製品が一緒に摂取された食品または飲料を記録するために、参加者によって保管される。
【0138】
バイアスを最小化するための手段:無作為化および盲検
全体的な登録および無作為化スキーマを図6に図示する。二重盲検プラセボ対照階層化段階的無作為化を用いる。
【0139】
層は、研究施設、疾患表現型(例えば、CD/UC)、および通常の繊維摂取量(<または>=7g/1000kcal/日)によって定義し、20人の参加者からなる8つの等しく均衡のとれた層を得る。
【0140】
患者は、段階1での無作為化がプラセボ1gに対して1:1の比率、段階2での無作為化がプラセボ1g、5gに対して1:1:2の比率、段階3での無作為化がプラセボ1g、5g、10gに対して1:1:2:4の比率で、合計20人のCDおよび20人のUC参加者が各投与群に無作為化化される、段階的アプローチを使用して層内のプラセボまたは治療群に無作為化される。割り付け比率のシフトによる順次段階化により、次の最高用量で無作為化が開始される前に、最低用量群の安全性および忍容性を評価することが可能となる。投与/疾患表現型群が十分な安全性または不耐性の問題を経験した場合、その群および全てのより高い用量群への割り付けは中止される。2、4、および8の自然ブロックサイズを使用して、それぞれ、段階1、2、3で層内の投与群に患者を無作為化し、均衡を確保するために各段階で最適な無作為化を選択する。
【0141】
研究介入のコンプライアンス
胃腸症状評価尺度を使用した2’-FL摂取量に関する患者の自己報告データは、症状および毎日の2’-FL摂取を記録するように求められた4、5、6、7、および8週目に得られる。コーディネーターは、28治療日のうちの少なくとも24日の無作為化用量の摂取として定義される許容レベルへの2’-FL順守を改善するために、補充期間中に毎週参加者に電話をかける。
【0142】
併用療法
処方薬、市販薬、および栄養補助食品を含む併用薬は、全ての研究訪問時に記録される。コルチコステロイド、抗生物質、プロバイオティクス、プレバイオティクス(2’-FL以外)、および他の治験薬は、研究中は許可されない。臨床的寛解が失われた場合、参加者は標準的な治療に従って治療される。
【0143】
研究の評価および手順
有効性の評価
有効性エンドポイントデータを得るために、以下の評価および手順が行われる。
便試料の収集およびシーケンス:
便試料は、DNAおよびRNA抽出のために参加者から収集される。DNAおよびRNAは、機械的溶解を加えたAllPrep DNA/RNA Mini Kit(QIAGEN)で単離される。続いてRNAがDNAに逆転写され、試料がQuant-iT PicoGreen dsDNA Assay(Life Technologies)によって定量化され、50pg/mlの濃度に正規化される。100~250pgの入力DNAを含むNextera XT DNA Library Preparationキット(Illumina)を使用して、製造業者の指示に従い全ゲノムショットガンシーケンスライブラリを調製する。ライブラリは、Labcyte Echo550リキッドハンドラーを使用して各ライブラリの等量を転送することによりプールされる。プールされた各ライブラリの濃度および挿入サイズの範囲は、Agilent Bioanalyzer DNA1000キット(Agilent Technologies)を使用して確認される。続いてライブラリは、試料あたり2.5Gbの配列を標的とするペアエンドモード(2x101bp)でIllumina HiSeq2000プラットフォームでシーケンスされる(Kugathasan et al.Lancet,389:1710-1718,2017;Schirmer et al.,Cell,167:1125-1136 e8,2016)。
【0144】
メタゲノムおよびメタトランスクリプトーム分析:
試料に十分なシーケンスリードがある場合、試料は分析に含まれる。リードは、最初に、KneadData(huttenhower.sph.harvard.edu/kneaddata)を使用して処理された。これには、品質トリミング(trimmomaticパラメータ:MAXINFO:90:0.5)、最小リード長60bpに基づくリードフィルタ処理、およびヒトゲノム(参照ゲノムhg19)に整列したリードをフィルタ処理することによる潜在的な人間汚染の除去が含まれる。品質管理されたペアエンドリードは、Bowtie2を使用して固有のクレード特異的マーカー遺伝子のデータベースに対して整列され、分類学的プロファイルはMetaPhlAn2.2で推測された(Segata et al.,2012)。その後の分析では、試料の種および属の組成が考慮された。機能プロファイリングは、HUMANnN2(huttenhower.sph.harvard.edu/humann2)を使用して実施された。簡単に言えば、リードは機能的に注釈が付けられたパンゲノムのカスタマイズされたデータベースに対してマッピングされ、分類学的プロファイリングステップ中に特定された生物のみが考慮される。それらのそれぞれのUniRef50ファミリーへのパンゲノム内のタンパク質配列の機能的注釈は、ソフトウェアにより提供される。マッピングすることができないリードは、その後、完全なUniRef50データベースに対して整列される。群集の合計は、各タンパク質ファミリー(RPK)について計算され、相対的な存在量に変換される。その後のダウンストリーム分析のために、これらの何万もの遺伝子ファミリーは、より広範な機能的カテゴリーにさらに群化された:分子機能および生物学的プロセスに焦点を当てた、MetaCyc代謝経路および有益なGOカテゴリー。
【0145】
具体的には、選択されたGO用語には各々UniRef50で>2,000のタンパク質に注釈が付けられ、それらの全ての子孫の(より具体的な)用語には<2,000のタンパク質に注釈が付けられた。
【0146】
メタボローム分析:
データは、極性代謝物の負のイオンモードMS分析を使用して、Nexera X2 U-HPLCシステム(Shimadzu Scientific Instruments;Marlborough,MA)およびQ Exactive/Exactive Plus orbitrap質量分析計(Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)で構成されるLC-MSシステムを使用して取得する。LC-MS試料は、イノシン-N4(Rios-Covian et al.,FEMS Microbial Lett;2015)、チミン-d4、およびグリココール酸-d4内部標準(Cambridge Isotope Laboratories;Andover,MA)を含有する4容量の80%メタノールを加えたタンパク質沈殿により、便ホモジネート(30μL)から調製される。試料を遠心分離し(10分、9,000xg、4℃)、上清を150×2.0mm Luna NH2カラム(Phenomenex;Torrance,CA)に直接注入する。カラムを、10%移動相A(水中20mM酢酸アンモニウムおよび20mM水酸化アンモニウム)および90%移動相B(75:25v/vアセトニトリル/メタノール中10mM水酸化アンモニウム)の初期条件、続いて、100%移動相Aへの10分の線形勾配で、400μL/分の流速で溶出する。MS分析は、70,000の解像度および3Hzデータ取得速度で、m/z60~750でのフルスキャン分析を使用して、負のイオンモードのエレクトロスプレーイオン化質量分析を使用して実行する。追加のMS設定は次のとおりである:イオンスプレー電圧、-3.0kV;毛細管温度、350°℃;プローブヒーター温度、325℃;シースガス、55;補助ガス、10;およびSレンズRFレベル40。
【0147】
データ処理:
生のLC-MSデータは、各LC-MSシステムに接続されたデータ取得コンピューターに収集され、その後、Broad Instituteの内部ネットワークを介してアクセスされる堅固な冗長ファイルストレージシステム(lsilon Systems)に保存される。データ処理は、5つのDell Precision T7600ワークステーションのうちの1つを使用して行われ、各々、8つのコアXEON E5-2687Wプロセッサ、32GBのDDR3RAM、および4つの600GB SASハードドライブのRAID0アレイに2TBのストレージが装備されている。非標的データは、Progenesis CoMetソフトウェア(v2.0,Nonlinear Dynamics)を使用して処理され、ピークの検出および同位体分離(de-isotope)、クロマトグラフィー保持時間の整列、ならびにピーク面積の統合が行われる。不明のIDのピークは、方法、m/z、および保持時間によって追跡される。非標的代謝物のLC-MSピークの特定は、最初に、i)測定された保持時間および質量を各バッチで分析された参照代謝物の混合物に一致させる、ii)Broad Instituteの方法を使用して特徴づけられた>600の化合物の内部データベースを一致させる、およびiii)正確な質量を>40000の代謝物の外部データベースにのみ一致させる(Human Metabolome Database v3)ことにより行われる(Wishart et al.,Nucleic Acids Res,41:D801-7,2013)。外部データベースと一致する化合物は、利用可能である場合、参照標準を分析することにより確認される。
【0148】
人口統計:
参加者の年齢および性別に関する情報は、スクリーニングのために行われる医療記録の審査の一環として収集される(以下を参照されたい)。人種は訪問1で収集される。
【0149】
糞便カルプロテクチン:
糞便カルプロテクチンは、広いダイナミックレンジにわたって優れた直線性を示したモノクローナル抗体ベースのELISA(Bohlmann Laboratories,Switzerland)を使用して測定される(Burri.,et al.Clin Chim Acta,416:41-7,2013)。
【0150】
血漿サイトカイン:
先天性および適応免疫応答を表す13の血漿サイトカインは、以前に報告された高感度ビーズベースのマルチプレックスアッセイ(Luminexを使用したMilliplex Multiplex Assay)を使用して測定される(Dorn et al.,Psychosom Med,78:646-56,2016)。
【0151】
繊維摂取量:
3回の予告なしの24時間食事思い出しインタビューを、ベースライン、ならびに4および8週目に行い、通常の繊維摂取量の層内(高/低)での患者の無作為化、および通常の食事の違いが2’FLに対する応答の違いに関連するかどうかを決定することを可能にする。食事の思い出しは、USDAの自動マルチパス方式(AMPM)を使用して専門家のインタビュアーによって実施され、参加者によって報告された食品および量の正確かつ一貫した記録を確実にする(Moshfegh et al.,Am J Clin Nutr,88:324-32,2008)。研究用の栄養データシステム(Nutrition Data Systems for Research)(NDSR)(Nutrition Coordinating Center,University of Minnesota,Minneapolis,MN)ソフトウェアおよび食品データベースを使用して、1日の総エネルギー、主要栄養素、繊維摂取量、ならびに摂取された食品群品目を評価する(Sievert et al.,Control Clin Trials,10:416-25,1989)。
【0152】
FUT2分泌型の状態:
FUT2分泌型の状態は、感染性および炎症性の両方の状態に関係しており、反対の傾向にあった。FUT2+(分泌型)の個人はロタウイルスおよびノロウイルス胃腸炎のリスクが増加する(Currier et al.,Clin Infect Dis,60:1631-8,2015、Payne et al.,JAMA Pediatr,169:1040-5,2015)が、FUT2-(非分泌型)の個人は、CDのリスクが増加する(McGovern et al.,Hum Mol Genet,19:3468-76,2010)。さらに、FUT2非分泌型は、粘膜の炎症がない場合でも、Bifidobacteriumを含む2’-FL標的微生物叢の減少を示す場合がある(Rausch et al.,Proc Natl Acad Sci USA,108:19030-5,2011、Tong et al.,ISME J,8:2193-206,2014、Wacklin et al.,PLoS One;2011,6:e20113、Wacklin et al.,PLoS One,9:e94863,2014)。分泌型の状態は、遺伝子型または表現型によって測定することができる。米国における遺伝子型判定は、FUT2遺伝子(rs601338)の単一ヌクレオチド428G>A多型の分析を伴う。米国の人口の23%が、フコシル化された腸の炭水化物の欠乏をもたらすこの不活性化変異のホモ接合型である。表現型の上では、非分泌型の状態は、Ulex europaeus-1(UEA-1)レクチン酵素イムノアッセイを使用して、「分泌型炭水化物」について全唾液試料を試験することにより測定することができる。UEA-1イムノアッセイは、FUT2遺伝子酵素のアルファ1,2-フコース結合産物を検出する(Kazi et al.,J Infect Dis,215:786-789,2017、Morrow et al.,J Pediatr,158:745-51,2011)。研究により、分泌型炭水化物を遺伝的に合成することができるFUT2+分泌型の個人は、分泌型炭水化物の産生量が少なく、非分泌型の個人と表現型の上では似ているように見えることがわかっている。したがって、この研究では、FUT2の遺伝子型および表現型の両方が測定される。
【0153】
安全性および他の評価
登録前に、スクリーニングの目的で以下が実施される。
【0154】
医療記録の審査:
参加予定者に関する既存の情報を審査して、性別、年齢、診断、現在の薬、薬歴、併存症、およびアレルギーを決定する。
【0155】
安全性データを得るために、研究への参加資格(患者集団)を決定し、研究全体を通して以下の評価および手順を実施する。
【0156】
身体検査およびバイタルサイン:
身体検査は、各研究訪問時に行われる。バイタルサインが収集され、体温、心拍数、呼吸数、および血圧を含む。これらの訪問時に体重も収集される。
【0157】
採血:
血液試料が採取され、CBC、CMP、およびESRが分析される
【0158】
採尿:
妊娠する可能性がある女性の参加者は、ベースライン訪問時に尿妊娠検査を受ける。
【0159】
唾液試料:
訪問1で唾液試料を収集して、FUT2表現型分泌型の状態を測定する。
【0160】
加重小児クローン病活動指数(wPCDAI)および小児潰瘍性大腸炎活動指数(PUCAI):
wPCDAIおよびPUCAIは、それぞれ、CDおよびUC群の臨床疾患活動を測定するために利用される。これらは、臨床的寛解および再発の十分に確立されたカットポイントで小児IBD集団において検証されている。wPCDAIおよびPUCAIスコアは、ベースライン、ならびに4、12、20週目に得られる(Turner et al.,Inflamm Bower Dis,15:1218-23,2009、Turner et al.,Gastroenterology,133:423-32,2007)。wPCDAIおよびPUCAIの両方について、安定した臨床的寛解の登録基準を満たすために、ベースラインおよび4週目に<10の値が必要である。
【0161】
IMPACT III:IMPACT-IIIのアンケートは、ベースライン、ならびに4、8、および20週目に生活の質(QOL)を測定するために使用される。IMPACT-IIIはIBD集団で検証されており、総スコアの信頼性に優れている(Otley et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,35:557-63,2002、Otley et al.,Inflamm Bowel Dis,12:684-91,2006)。144以上のスコアは、良好な生活の質を示すものとして使用される。
【0162】
GSRSアンケート:
GSRSアンケートを利用して、腹痛、悪心、軟便、およびガス感を含む、患者が報告した2’-FL忍容性の指標を追跡する。これらのパラメータは、最近のRCTで2’-FLの20gの用量を受けた健康な成人ではやや増加したが、低用量の2’-FLでは変動しなかった。各参加者には、各研究訪問時にGSRSアンケートが提供される。次に、各参加者は、治療(4~8週目)期中にGSRSアンケートを毎週受け取る。15の胃腸症状の重症度は、(1)症状なし~(7)重度の症状の範囲の7ポイントのリッカートスケールで報告され、ベースライン~4週目、4週目~8週目、および8週目~20週目の時間期間の各参加者の平均スコアが計算される。
【0163】
毎日の食物繊維摂取量を含む通常の食事:
3回の予告なしの24時間食事思い出しインタビューを、ベースライン、ならびに4および8週目に行い、通常の繊維摂取量の層内(高/低)での患者の無作為化、および通常の食事の違いが2’FLに対する応答の違いに関連するかどうかを決定することを可能にする。食事の思い出しは、USDAの自動マルチパス方式(AMPM)を使用して専門家のインタビュアーによって実施され、参加者によって報告された食品および量の正確かつ一貫した記録を確実にする(Moshfegh et al.,Am J Clin Nutr,88:324-32,2008)。研究用の栄養データシステム(Nutrition Data Systems for Research)(NDSR)(Nutrition Coordinating Center,University of Minnesota,Minneapolis,MN)ソフトウェアおよび食品データベースを使用して、1日の総エネルギー、主要栄養素、繊維摂取量、ならびに摂取された食品群品目を評価する(Sievert et al.,Control Clin Trials,10:416-25,1989)。患者は、研究の過程で安定した食事を維持するように奨励される。
【0164】
血漿サイトカインおよび糞便カルプロテクチン:
血漿サイトカインおよび糞便カルプロテクチンを測定して、それぞれ、全身性および粘膜の炎症を評価する。先天性および適応免疫応答を表す13の血漿サイトカインを、高感度ビーズベースのマルチプレックスアッセイを使用して測定する。糞便カルプロテクチンは、他の利用可能なアッセイキットよりも広いダイナミックレンジにわたって優れた直線性を示したモノクローナル抗体ベースのELISAを使用して測定される。
【0165】
統計上の検討
目的1の研究では、2’-FLの投与が、維持抗TNF療法を受けている安定した寛解期のCDおよびUC患者において安全かつ忍容性が高いかどうかを決定する。目的2の研究は、微生物群集をより大きなBifidobacterium存在量および酪酸産生にシフトし、血漿サイトカインおよび糞便カルプロテクチンによってそれぞれ測定される全身性および粘膜の炎症を低減する際の2’-FLの有効性の指標に焦点を当てる。これには、糞便微生物のメタゲノミクス、メタトランスクリプトミクス、およびメタボロミクスが含まれる。これらは4、8、20週目に試験される。現在のPROTECT、RISK、およびHMP2の研究と同じ方法論が用いられる(Integrative HMPRNC.,Cell Host Microbe,16:276-89,2014)。
【0166】
目的1:IBDの栄養補助食品としての2’-FLの用量依存的な安全性および忍容性を定義する。2’-FLは寛解期のIBD患者の栄養補助食品として安全かつ忍容性が高いことが予想される。
【0167】
主要目的1のエンドポイント:4~8週目の各投与群内での2’-FLまたはグルコース補充による忍容性のGSRS症状スコアの変化。
【0168】
副次的目的1のエンドポイント(複数可):CD患者にはwPCDAI、UC患者にはPUCAI、血漿サイトカイン、および糞便カルプロテクチンを使用した臨床的再発。
【0169】
目的2:IBDの栄養補助食品としての2’-FLの用量依存的な有効性を定義する。2’-FLは用量依存様式で糞便Bifidobacterium存在量および酪酸を増加させることが予想される。
【0170】
主要目的2のエンドポイント:4~8週目の各投与群内での2’-FLまたはグルコース補充による糞便Bifidobacterium属存在量の変化。
【0171】
副次的目的2のエンドポイント:4~8週目の各投与群内での2’-FLまたはグルコース補充による、酪酸を含む糞便SCFA、Enterobacteriaceaeを含む炎症促進性分類群、血漿サイトカイン、および糞便カルプロテクチンの変化。
【0172】
試料サイズの決定
目的2で説明したように、CDまたはUC内の2’-FL投与群あたり20人の参加者の試料サイズは、主要有効性エンドポイントである糞便Bifidobacteriumの増加に基づく。目的1の主要エンドポイントは、2’-FL投与群およびグルコースプラセボ群の各々におけるGSRS忍容性スコアの平均変化である。健康な成人の最近の2’-FL RCTでは、投与群あたり10人の参加者が、2gのグルコースプラセボ群と比較して、20gの2’-FL群で軽度のGI症状の増加を示すのに十分であった。これには、20gの2’-FL群における排便の平均(SD)毎日頻度の1.3(0.3)から1.6(0.4)への増加が含まれる。2’-FL投与群あたり20人のCDまたはUC参加者がおり、ベースラインの総GSRSスコアが2.5、そしてプラセボでは変化がないと仮定すると、a=0.05(両面)および検出力=0.80で、1gの2’-FLで0.2単位、5gの2’-FLで0.7単位、10gの2’-FLで1.25単位ほど小さい総GSRSスコアで、線形変化についての投与群間の違いが検出されるはずである。加えて、平均差/標準偏差(すなわち、標準化された効果サイズ)が1.25を超えない場合、統計的検出力は、最初の10人の対象がプラセボおよび1gの2’-FLに無作為化された後に総GSRSスコアにおいて2倍増加の検出が検出されることを可能にするには十分である。例えば、統計的検出力は、プールされた標準偏差がSD=2を超えない場合、プラセボと1gの2’-FLとの間の総GSRSスコアの2.5の差を検出するのに十分なはずである。プラセボに無作為化されたより大きな数を考えると、より大きな検出力が段階2で実現される。20%の中断率または評価不能率が想定されているため、100人のCDおよび100人のUC参加者が登録される。
【0173】
インフリキシマブを受け、糞便カルプロテクチンレベルが<250μg/gの小児および若年成人のCD患者からのショットガンメタゲノム配列データを調べると、この研究でのBifidobacterium存在量のベースライン変動はSD=10.6%に達する可能性があることを示す(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015)。試料サイズの決定は、次の仮定に基づいて実施された:ベースライン平均Bifidobacterium存在量6.8%、平均Bifidobacterium存在量で予想される線形用量応答がプラセボで6.8%、1gの2-FLで7.6%、5gの2-FLで10.7%、そして10gの2-FLで14.6%、およびBifidobacterium存在量のプールされた標準偏差10.6%、ならびに投与群への均等割り付け。したがって、a=0.05(両側)および検出力=0.80の場合、各群において合計20人の患者により、成人について報告されたレベルに対応するレベルでの介入に対する平均差の検出が可能となる。Bifidobacterium存在量の変動が健康な成人で観察される変動に近い場合、より大きな検出力が実現する。
【0174】
関連する生物学的変数の検討
2’-FLの安全性および有効性に影響を及ぼす可能性のある生物学的変数には、年齢、性別、人種/民族、FUT2分泌型の状態、CDまたはUCのIBD診断、食物繊維摂取量、糞便カルプロテクチンによって測定される粘膜炎症、およびベースライン微生物群集が含まれる(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015、Currier et al.,Clin Infect Dis,60:1631-8,2015、Tong et al.,ISME J,8:2193-206,2014、Wacklin et al.,PLoS One,6:e20113,2011)。これらのうち、CDまたはUCのIBD診断および食物繊維摂取量が最大の効果を有する可能性がある。したがって、CDまたはUCの十分な参加者を各投与群に登録して、これらを独立して評価し、登録は通常の食物繊維摂取量について4つの群間で均衡をとる。11歳以上の同数の男女、およびIBD人口全体に比例した白人(90%)およびアフリカ系アメリカ人(10%)の対象が登録される。
【0175】
分析対象集団
一次分析はプロトコルごとに行われ、無作為化された30の2’-FLの用量のうちの少なくとも24を摂取した患者のみが含まれる(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。二次分析は、治療の意図(ITT)スキーマに基づいており、各患者は無作為化された群に含まれる。
【0176】
統計分析
一般的なアプローチ
記述統計およびグラフ分析を使用して、各時点での4つの群全体のGSRS忍容性スコア、臨床的再発率、疾患活動指数スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、およびQoLを記載する。
【0177】
主要目的のエンドポイントの分析
主要な安全性の結果は、記述統計を利用し、グラフ分析は、各時点での4つの群全体の臨床的再発率、疾患活動指数スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、ならびに腹痛、悪心、軟便、およびガス感の忍容性スコアを記載するために使用する。忍容性の主な決定は、健康な成人の最近の2’-FL RCTで利用された忍容性と同じ指標である胃腸症状評価尺度(GSRS)に基づく(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。4~8週目のグルコースプラセボ群内の臨床的再発率およびGSRSの変化を利用して、2’-FLの各用量の安全性および忍容性を評価する。グルコースプラセボ群と比較して、CDまたはUCの2’-FL投与群においてGSRSの2倍増加が観察された場合、その用量は十分に忍容されなかったと結論づけられる。グルコースプラセボ群で観察された臨床的再発率を超えて、CDまたはUCの2’-FL投与群でさらに2人の対象が臨床的再発を経験した場合、その用量は安全ではないと結論づけられる。
【0178】
主要な有効性の結果は、補充前後の糞便Bifidobacterium存在量の投与群間の平均変化の違いである。Bifidobacterium存在量の違いは、目的1に記載されるように平均変化についての試験を提供する時間と治療の相互作用項で線形混合効果回帰を使用して調べられる。特定の投与群間の違いに関する事後試験は、2-FL用量の増加の線形傾向の特定に焦点を当てた線形対比を使用して比較される。試験は、CDおよびUC患者に対して別個に行われる。高次元データの分類および統計学習アプローチを使用して、2’-FL補充に対する微生物群構造の違いを特定する。
【0179】
副次的目的のエンドポイントの分析
副次的安全性および忍容性の結果は、補充前後の疾患活動指数スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、忍容性スコア、およびQoLの投与群間の平均変化の違いを調べる。違いは、平均変化についての試験を提供する時間と治療の相互作用項で線形混合効果回帰(LMER)を使用して調べられる。特定の投与群間の違いに関する事後試験は、より高い用量レベルで安全性および忍容性に影響があるかを特定することに焦点を当てた線形対比を使用して比較される。疾患表現型による治療に対する応答の違いを評価するために、試験は、CDおよびUC患者に対して別個に行われる。かなりの違いが観察される場合、相互作用の形式試験が行われる。12週目に収集された安全性および忍容性の指標は、フォローアップ時の症状の安定性を調べるためにLMERフレームワークに組み込まれている。LMERフレームワークを使用して、対象内の観察を入れ子にし、投与群に応じて傾斜の違いを試験することにより、GSRSからの忍容性の毎週の変化率の違いを試験する。時間との潜在的な非線形関連は、グラフアプローチおよびモデル適合統計を使用して特定され、必要に応じて多項式項または制限3次スプラインを使用してモデル化される。フィッシャーの正確確率検定を使用して、2’-FL介入群の各々の間の8週目の臨床的再発率の違いを比較する。4~8週目の再発回数の用量内比較は、対応のあるデータの正確な試験を使用して行われる。健康な成人の最近の2’-FL RCTに基づいて、2’-FLの3つの用量の各々は、CDおよびUCの両方の群のグルコースプラセボと比較して安全かつ忍容性が高いと予想される。FUT2分泌型および非分泌型は、2’-FLの各用量について安全性および忍容性について同様のプロファイルを示すと予想される。
【0180】
LMERは、補充前後の糞便カルプロテクチン、GI症状忍容性スコア、血漿サイトカイン、Enterobacteriaceaeを含む副次的有効性結果の平均差を試験するためにも使用される。健康な成人の最近のRCTに基づいて、10gの用量の2’-FLを補充してから8週目に、糞便Bifidobacterium存在量の2倍の増加、およびEnterobactericaeを含むProteobacteria phylum内の分類群の大幅な低減を検出することが予想される。最近の小児CD研究は、糞便カルプロテクチンによって測定された粘膜炎症の低減にもかかわらず、8週間にわたる抗TNF誘導療法の全体的な平均(SD)糞便Bifidobacterium存在量に変化がないことを示した(ベースライン:6.5(14.8)対8週目:6.8(10.6))。したがって、2’-FL応答の特異性を示すグルコース補充による糞便Bifidobacterium存在量に変化はなく、用量依存性を示す1gおよび5gの2’-FLの用量では変化が少ないと予想される。糞便SCFA産生微生物の増加と一致して、SFCA分析では、2’-FLの補充による糞便酪酸濃度の有意な増加が検出されると予想される。乳児用粉乳の2’-FL補充は、健康な新生児の循環血漿サイトカインを低減することが示されたため、2’-FL補充は、用量依存様式で血漿サイトカインおよび糞便カルプロテクチンの両方も低減し、グルコース補充では変化はないと予想される。FUT2非分泌型は、2’-FL補充の利益が大きくなる傾向を示すと予想される。
【0181】
安全性分析
ImproveCareNow(ICN)Quality Improvement Collaborativeのために収集されたIBD患者集団管理レポートからのデータに基づいて、安定した維持抗TNF療法を受けている患者の10%以下が4週間にわたって臨床的再発を経験すると予想される(Minar et al.,Inflamm Bowel Dis,22:2641-2647,2016;Minar et al.,J Pediatr Gastroenterol Nutr,62:715-22,2016)。2-’FLの3つの用量の各々およびグルコースプラセボついて、臨床的再発を経験する対象の数が決定される。CDまたはUCのグルコースプラセボ群内で、GSRSアンケートを使用して収集された臨床的再発率およびGI症状忍容性スコアの変化を利用して、2’-FLの各用量の安全性および忍容性を評価する。プラセボ群で観察された臨床的再発率を超えて、CDまたはUCの投与群でさらに2人の対象が臨床的再発を経験した場合、その用量は安全ではないと結論づけられる。同様に、GSRSアンケートを使用して収集されたGI症状忍容性スコアにおいて有意な2倍増加がプラセボ群と比較して観察された場合、CDまたはUCの投与群の経験では、その用量は十分に忍容されなかったと結論づけられる。
【0182】
ベースライン記述統計
記述統計およびグラフ分析を使用して、研究登録時の4つの群全体の臨床的および人口統計学的特徴、FUT2分泌型の状態および食物繊維摂取量、ベースラインGSRS忍容性スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、糞便微生物群集および機能、ならびにQolを記載する。
【0183】
計画中期分析
中間分析では、参加者を次の最高用量に無作為化する前に、各2’-FL用量の安全性および忍容性を評価する。患者は、段階1での無作為化がプラセボまたは1gに対して1:1の比率、段階2ではプラセボ1g、5gに対して1:1:2の比率、段階3ではプラセボ1g、5g、10gに対して1:1:2:4の比率で、予想合計20人のCDおよび20人のUC参加者が各投与群に無作為化化される、段階的アプローチを使用して層内のプラセボまたは治療群に無作為化される。割り付け比率のシフトによる順次段階化により、次の最高用量で無作為化が開始される前に、最低用量群の安全性および忍容性を評価することが可能となる。投与/疾患表現型群が十分な安全性または不耐性の問題を経験した場合、その群および全てのより高い用量群への割り当ては中止される。2、4、および8の自然ブロックサイズを使用して、それぞれ、段階1、2、3で層内の投与群に患者を無作為化し、均衡を確保するために各段階で最適な無作為化を選択する。無関係な統計学者が無作為化を生成し、調剤のためにコンピューターで生成されたリストを薬局に提供する。このアプローチの利点は、より高い用量に移行する前に安全性を評価し、治療に対する応答に影響を与える可能性のある因子全体の均衡をとることを可能にすることである。試験の期間が短いことを考えると、患者を後の時点でより高い用量群に無作為化する際のバイアスの可能性はない。各段階でプラセボおよびより低い用量群に無作為化される患者を含めることにより、任意の観察されるコホート/時間効果の試験および考慮が可能になる。
【0184】
部分群分析
主要目的1の分析はプロトコルごとに行われ、無作為化された28の2’-FL用量のうちの少なくとも24を摂取した患者のみが含まれる(Elison et al.,Br J Nutr,116:1356-1368,2016)。二次分析は、治療の意図(ITT)スキーマに基づいており、各患者は無作為化された群に含まれる。記述統計およびグラフ分析を使用して、各時点での4つの群全体のGSRS忍容性スコア、臨床的再発率、疾患活動指数スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、およびQolを記載する。安全性および忍容性の結果は、補充前後のGSRS、疾患活動指数スコア、血漿サイトカイン、糞便カルプロテクチン、およびQolの投与群間の平均変化の違いを調べる。臨床的再発は、4~8週目に、wPCDAIに20ポイント以上、およびPUCAIに15ポイント以上の増加があると定義される(Haberman et al.,J Clin Invest,124:3617-33,2014、Holscher et al.,J Nutr;2015,145:2025-32、Schirmer et al.,Cell,167:1125-1136 e8,2016、Wishart et al.,Nucleic Acids Res,41:D801-7,2013)。CDの痛みおよび便、ならびにUCの便および血液の主要な患者報告結果(PRO)要素も別個に調べる。忍容性の主な指標は、GSRSの投与群間の平均変化である。違いは、平均変化についての試験を提供する時間と治療の相互作用項で線形混合効果回帰(LMER)を使用して調べられる。4~8週目の変化を試験する一次分析(すなわち、予備-事後試験の介入)では、ケンワード-ロジャー補正を使用して、F検定および指定された非構造化相関構造の正しい自由度を得る。特定の投与群間の違いに関する事後試験は、より高い用量レベルで安全性および忍容性に影響があるかを特定することに焦点を当てた線形対比を使用して比較される。疾患表現型による治療に対する応答の違いを評価するために、試験は、CDおよびUC患者に対して別個に行われる。かなりの違いが観察される場合、相互作用の形式試験が行われる。12週目に収集された安全性および忍容性の指標は、フォローアップ時の症状の安定性を調べるためにLMERフレームワークに組み込まれている。LMERフレームワークを使用して、対象内の観察を入れ子にし、投与群に応じて傾斜の違いを試験することにより、GSRS忍容性スコアの毎週の変化率の違いを試験する。時間との潜在的な非線形関連は、グラフアプローチおよびモデル適合統計を使用して特定され、必要に応じて多項式項または制限3次スプラインを使用してモデル化される。フィッシャーの正確確率検定を使用して、2’-FL介入群の各々の間の8週目の臨床的再発率の違いを比較する。4~8週目の再発回数の用量内比較は、対応のあるデータの正確な試験を使用して行われる。健康な成人の最近の2’-FL RCTに基づいて、2’-FLの3つの用量の各々は、CDおよびUCの両方の群のグルコースプラセボと比較して安全かつ忍容性が高いと予想される。これは、2’-FL投与群およびグルコースプラセボ群の各々の間で、GSRS忍容性スコアの平均変化、または臨床的再発率に違いがないことを示すことによって決定される。
【0185】
主要目的2の分析はプロトコルごとに行われ、無作為化された28の用量のうちの少なくとも24の補充を含む全ての研究手順を完了した患者のみが含まれる。二次分析は、治療の意図(ITT)スキーマに基づいており、各患者は無作為化された群に含まれる。記述統計を使用して、4つの群間の微生物叢の分類学的および機能的プロファイル、糞便SCFA、血漿サイトカイン、ならびに糞便カルプロテクチンの違いを示す。主要な有効性の結果は、補充前後の糞便Bifidobacterium存在量の投与群間の平均変化の違いである。Bifidobacterium存在量の違いは、目的1に記載されるように平均変化についての試験を提供する時間と治療の相互作用項で線形混合効果回帰(LMER)を使用して調べられる。特定の投与群間の違いに関する事後試験は、2-FL用量の増加の線形傾向の特定に焦点を当てた線形対比を使用して比較される。異なる投与量群間でBifidobacteriumの相対存在量を比較することに加えて、Bifidobacteriumの患者内変動の違いも、分散の均一性のフリグナー-キリーン検定を使用して評価される。これらの相対的な変化は、その後、qPCRによる絶対存在量測定値の変化と比較される。試験は、CDおよびUC患者に対して別個に行われる。さらに、ブレイ-カーティス距離を用いた主座標分析を使用して、全体的な群集構成の違いを調査する。これに続いて、2’-FL補充への応答に関連する特定の分類学的および機能的な微生物の特徴が特定される。この目的に向けて、微生物群集データに適合した線形モデル化システムが使用され、年齢、民族、および性別などのマイクロバイオームに影響を与える主要な因子を制御し、同じ患者からの複数の試料を考慮する(MaAslin:huttenhower.sph.harvard.edu/maaslin)。さらに、患者群の株レベルの違いは、十分な被覆度およびそれらの機能的意味を有する種のSNPプロファイルを比較することによって調べられる。LMERは、補充前後の糞便カルプロテクチン、GSRS忍容性スコア、血漿サイトカイン、SCFA、およびEnterobacteriaceaeを含む副次的有効性結果の平均差を試験するためにも使用される。健康な成人の最近のRCTに基づいて、10gの用量の2’-FLを補充してから8週目に、糞便Bifidobacterium存在量の2倍の増加、およびEnterobactericaeを含むProteobacteria phylum内の分類群の大幅な低減を検出することが予想される。最近の小児CD研究は、糞便カルプロテクチンによって測定された粘膜炎症の低減にもかかわらず、8週間にわたる抗TNF誘導療法の糞便Bifidobacterium存在量に変化がないことを示した(Lewis et al.,Cell Host Microbe,18:489-500,2015)。したがって、2’-FL応答の特異性を示す2’-FL補充の患者とは対照的に、グルコース補充の患者では糞便Bifidobacterium存在量の変動の程度が小さくなり、1gおよび5gの2’-FL用量では変化が少ない。代謝物分析により、10gの2’-FL補充で糞便酪酸濃度の有意な増加が検出されると予想される。乳児用粉乳の2’-FL補充は、健康な新生児の循環血漿サイトカインを低減することが最近示さたため、2’-FL補充は、用量依存様式で血漿サイトカインおよび糞便カルプロテクチンの両方も低減し、グルコース補充では変化はないと予想される(Goehring et al.,J Nutr,146:2559-2566,2016)。これに続いて、SCFA、糞便カルプロテクチン、および血漿サイトカインの変化に関連する細菌種および機能の群を特定するために、階層的総当たり(All-against-All)有意性試験(HAllA:huttenhower.sph.harvard.edu/halla)を行う。FUT2非分泌型は、2’-FL補充の利益が大きくなる傾向を示すと予想される。
【0186】
探索分析
年齢、性別、人種、4週目の糞便カルプロテクチンおよび微生物叢、通常の繊維摂取量、ならびにFUT2分泌型の状態の効果は、多施設RCTの設計を導くために探索様式で試験される。記述統計が計算され、モデルはこれらの部分群の各々に個別に適合し、重要な違いが観察された場合に相互作用の形式試験が考慮される。
【0187】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全てが任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示される各特徴は、同じ、同等の、または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示される各特徴は、単に一般的な一連の同等または同様の特徴の一例である。
【0188】
上記の説明から、当業者は本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の様々な変更および修正を行い、様々な用途および条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0189】
等価物
本明細書でいくつかの発明の実施形態を説明し図示したが、当業者は、機能を実施し、かつ/または結果を得るための様々な他の手段および/もしくは構造、ならびに/または本明細書に記載される利点の1つ以上を容易に想定し、そのような変形および/または修正の各々は、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が本発明の教示が使用される特定の用途(複数可)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載される特定の発明の実施形態に対する多くの同等物を認識するか、または確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例として提示されており、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明の実施形態が具体的に説明および特許請求される以外の方法で実施することができることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせが本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0190】
本明細書で定義および使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味に対して優先すると理解されるべきである。
【0191】
本明細書に開示される全ての参照、特許、および特許出願は、各々が引用される主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては文書全体を包含する場合がある。
【0192】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される不定冠詞「a」および「an」は、そうでないと明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0193】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される、語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわち、場合によっては結合的に存在し、他の場合では選言的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列記される複数の要素は、同じように解釈されるべきである、すなわち、要素の「1つ以上」がそのように結合される。具体的に特定されるそれらの要素に関連するかまたは関係しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に特定される要素以外に、他の要素が任意選択で存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などの非限定言語と組み合わせて使用される場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態では、Aのみ(任意選択で、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)を指し得る。
【0194】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は包括的、すなわち、いくつかの要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが2つ以上、および任意選択で、追加の列記されていない項目も含むと解釈されるものとする。「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用される場合、「からなる」などのそうでないと明確に示される用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」などの排他性の用語が先行する場合、排他的な代替案(すなわち、「一方もしくは他方であるが、両方ではな)を示すものとのみ解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用される場合、「本質的にからなる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0195】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される、1つ以上の要素のリストに関して「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列記されている各および全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないと理解するべきである。また、この定義により、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連しないかどうかにかかわらず、その要素が任意選択で存在することが可能である。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上のAを含み、Bが存在せず(および任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のBを含み、Aが存在せず(および任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意選択で2つ以上のBを含む(および任意選択で他の要素を含む)などを指し得る。
【0196】
また、そうでないと明確に示されない限り、2つ以上のステップまたは行為を含む本明細書で主張される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は、方法のステップまたは行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解するべきである。

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患(IBD)の再発リスクを軽減または低減するための方法において使用するための、2’-フコシルラクトースを含む組成物であって、前記方法は、それを必要とする対象に有効量の前記2’-フコシルラクトースを投与することを含み、前記対象は、IBDの寛解期にあり、かつ抗TNF療法である抗炎症療法を受けたか、または受けているヒトIBD患者であり、前記2’-フコシルラクトース化合物は、短鎖脂肪酸を産生する腸内微生物の存在量を増加させるかつ/またはヒト患者の腸内カルプロテクチンを減少させる、組成物