(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052641
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】インターロイキン-4受容体結合融合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230404BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230404BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230404BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230404BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230404BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230404BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230404BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230404BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230404BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230404BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230404BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230404BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230404BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20230404BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230404BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230404BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230404BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230404BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
A61P9/10
A61P43/00 107
A61P11/00
A61P15/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P37/06
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61K38/02
A61K47/64
A61K47/65
A61P13/08
A61P43/00 121
C07K14/54
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023009974
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2019168169の分割
【原出願日】2014-09-24
(31)【優先権主張番号】61/881,930
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】316012337
【氏名又は名称】メディシナ セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521102845
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファラ マーチャント
(72)【発明者】
【氏名】ラージ ケー. プリー
(72)【発明者】
【氏名】バーラトクマール エイチ. ジョシ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インターロイキン-4受容体(IL-4R)を発現する標的細胞に細胞死を誘導する融合タンパク質、発現ベクター、および癌等の過剰増殖性障害を処置する方法を提供する。
【解決手段】BAD等のアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのタンパク質部分と、環状順列置換されたインターロイキン-4等のIL-4R結合性タンパク質部分とを含む、融合タンパク質、またはその発現ベクター、それらを含む医薬組成物により癌等を処置する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン-4(IL-4)受容体結合タンパク質及びアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項2】
前記IL-4受容体結合タンパク質は、環状順列置換されている(cp)請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドは、BH3ドメインを含む請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
BH3ドメインを含む前記アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドは、Bad、Bik/Nbk、Bid、Bim/Bod、Hrk、Bak又はBaxである請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
BH3ドメインを含む前記アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドは、リン酸化を低減する変異をさらに含む請求項3又は4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
リン酸化を低減する変異をさらに含む、前記BH3ドメインを含むアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドは、Badポリペプチドである請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記融合タンパク質は、IL-4受容体(IL-4R)を発現している標的細胞の細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができる請求項1から請求項6のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記IL-4受容体結合タンパク質は、I型又はII型IL-4Rへの結合に対して選択的な変異体IL-4又はIL-13である請求項1から請求項7のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項9】
II型IL-4Rへの結合に対して選択的な前記変異体IL-4は、KFR変異形若しくはKF変異形を含み、又はI型IL-4Rへの結合に対して選択的な前記変異体IL-4は、RGA変異形を含む請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記変異体IL-13は、A11変異形又はDN変異形を含む請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
リンカーをさらに含む請求項1から請求項10のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーは、配列GSを有するか、又はユビキチン若しくはユビキチン変異形分子である請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
配列番号24~27のいずれか1つのアミノ酸配列を含む請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質をエンコードする核酸分子。
【請求項15】
配列番号35~38のいずれか1つの核酸配列を含む核酸分子。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項17】
請求項16に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞を、それを必要とする被験者に投与することを含む、細胞死を誘導する方法。
【請求項20】
IL-4Rを発現する標的細胞を、請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、又は請求項16に記載のベクターに接触させることを含む、細胞死を誘導する方法。
【請求項21】
請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞を、それを必要とする被験者に投与することを含む、癌を処置する方法。
【請求項22】
IL-4Rを発現する新生物性細胞を、請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、又は請求項16に記載のベクターに接触させることを含む、癌を処置する方法。
【請求項23】
癌を処置する方法であって、それを必要とする被験者において腫瘍微小環境でIL-4Rを発現する非悪性細胞を、請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞に接触させることを含む方法。
【請求項24】
前記非悪性細胞は、被験者が治療を開始する前に接触される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
過剰増殖性障害又は分化障害を処置する方法であって、請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞を、それを必要とする被験者に投与することを含む方法。
【請求項26】
前記過剰増殖性障害又は分化障害は、線維症若しくは過形成、炎症性病態又は自己免疫病態である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記線維症若しくは過形成は肺線維症若しくは過形成(良性の前立腺過形成など)、心臓繊維化、又は肝線維症であり、前記炎症性病態は前立腺炎、春季角結膜炎、アテローム性動脈硬化、又は特発性の肺性肺炎であり、前記自己免疫病態はグレーブス病である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
細胞死を誘導するため、又は癌を処置するため、又は過剰増殖性障害若しくは分化障害を処置するための、それを必要とする被験者における、請求項1から請求項13のいずれか一項記載の融合タンパク質、請求項14若しくは15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、又は請求項17に記載の宿主細胞の使用。
【請求項29】
前記被験者はヒトである、請求項19、21、23~27のいずれか一項記載の方法、又は請求項28に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-4受容体結合タンパク質融合体に関する。より詳細には、本発明は一つには、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのタンパク質部分に連結されたインターロイキン-4又はインターロイキン-13タンパク質部分を含む融合タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-4(IL-4)は、活性化T細胞によって産生される多面的なサイトカインであって、インターロイキン-13(IL-13)に結合することもできるIL-4受容体(IL-4R)に対するリガンドである。IL-4は、多くのサイトカインのように、先ず高親和性受容体鎖(「α」と表す)に結合し、次いでそのIL-4-α鎖複合体は、「γc」と表される第2の低親和性受容体鎖と結合する。したがって、IL-4に対する一次結合鎖はIL-4受容体アルファ(IL-4Rα)であり、これは高い親和性(KD=~10-10M)をもって結合する。IL-4/IL-4Rα複合体は次いで、IL-4受容体の第2成分、γc(「I型」受容体)と比較的低い親和性をもって結合することができる。さらに、IL-4/IL-4Rα複合体は、インターロイキン-13(IL-13)受容体α1(IL-13Rα1)(「II型」受容体)と結合することもできる。
【0003】
異なる細胞型は、異なる量のI型及びII型受容体鎖を発現する。例えば、IL-4Rαはほとんどの細胞上に存在するが、γcは一般に造血細胞上に発現され、IL-13Rα1は一般に非造血細胞上に発現される。従って、γcは、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、マスト細胞、及びほとんどのマウスB細胞上に認められる(ほとんどのヒトB細胞はγc及びIL-13Rα1の双方を発現する)が、IL-13Rα1はそうではない。
【0004】
マクロファージ及び樹状細胞を含むいくつかの骨髄由来細胞は、γc及びIL-13Rα1を発現し、その結果IL-4及びIL-13の双方に応答する。IL-13Rα1は、平滑筋及び上皮細胞を含めほとんどの非骨髄由来細胞上に認められるが、γcはないに等しい。
【0005】
I型及びII型受容体に対して差動的選択性を有する変異形(バリアント)IL-4分子が提案されている(Junttila et al. Nature Chemical Biology 8:990-998, 2012)。
【0006】
環状順列置換された(circularly permuted)分子は、線状分子(例えばリガンド)の
末端が、直接か又はリンカーを介して繋ぎ合わせられて環状の分子を形成し、その後当該環状の分子は別の位置で開環されて、元の分子の末端とは異なる末端を持つ新しい線状分子を形成するものである。IL-4の環状順列置換された変異形は、例えば2000年1月4日にPastanらに発行された米国特許第6,011,002号に記載されている。
【0007】
プログラム細胞死すなわち「アポトーシス」は、動物細胞の発生において共通の現象であり、正及び負の双方に制御される。神経細胞系及びリンパ系発生並びに細胞集団全体の恒常性維持(ホメオスタシス)における関与に加えて、アポトーシスは、アポトーシス経路の異常な制御に起因する種々の疾患及び傷害で重要な役割も果たす。例えば、アポトーシスによる神経細胞死の異常な活性化は、アルツハイマー疾患(Barinaga, Science 281 : 1303-1304)、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、発作時に引き起こされる神経細胞損
傷(Rubin, British Med. Bulle., 53(3):617-631, 1997に概説;及びBarinaga, Science
281: 1302-1303)、一過性虚血性神経細胞損傷(例えば脊髄傷害)などの多くの神経変
性疾患及び状態に関わっている。逆に、アポトーシスの異常な抑制の結果、細胞の過増殖を引き起こす可能性があり、これは癌及び他の過増殖性障害につながる。
【0008】
アポトーシスは、Bcl-2ファミリーのメンバーを含むいくつかのタンパク質によって制御されている。Bcl-2は、アポトーシスを制御するものとして同定された最初のタンパク質の1つであった(Cleary et al., Cell 47: 19-28, 1986; Tsujimoto and Croce, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 :5214-5218, 1986)。その発見以降、いくつかのBcl-2関連タンパク質(「Bcl-2ファミリータンパク質」又は「Bcl-2ファミリーメンバー」)が、アポトーシスの制御因子として同定されている(White, Genes Dev. 10: 1-15, 1996; Yang et al., Cell 80:285-291, 1995; Lomonosova, E. and G. Chinnadurai, Oncogene 27, S2-S19, 2009)。
【0009】
神経変性疾患、癌などの処置のためのいくつかの治療薬が検討されているが、臨床におけるそれらの使用を制限する限定事項を示すものである。例えば、多くの化学療法剤は、増殖している新生物性細胞においてアポトーシスを誘導することによって作用するが、それらの治療的価値は、正常細胞に対するそれらの毒性の程度によって限定される。標準的なアポトーシス阻害分子、例えばペプチド型カスパーゼ阻害剤(例えばDEVD型)での処置は、これらの阻害剤の膜透過性が低いために臨床的作業には不要であることが分かっている。
【0010】
癌細胞を選択的に排除しようと企図して、標的指向化された免疫毒素(例えば細菌性毒素などの毒性分子と、標的指向化ドメイン由来の、典型的には抗体からの分子との間の遺伝的又は生化学的融合体)が提案されている。例えば、ジフテリア毒素(DT)変異形が作製され、癌細胞を選択的に死滅させるそれらの能力について試験されている(Thorpe et al., Nature 271 :752-755, 1978; Laske et al, Nature Medicine 3 : 1362-1368, 1997)。同様に、緑膿菌(シュードモナス)外毒素(PE)融合タンパク質が、可能性のある癌療法として研究されている(Kreitman and Pastan, Blood 90:252-259, 1997; Shimamura et al. Cancer Res. 67:9903-9912; 2007)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、インターロイキン-4受容体結合融合タンパク質に関する。より詳細には、本発明は、一つには、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのタンパク質部分に連結されたインターロイキン-4受容体結合タンパク質部分を含む融合タンパク質、及びその使用を提供する。
【0012】
1つの態様では、本発明は、インターロイキン-4(IL-4)受容体結合タンパク質及びアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、IL-4受容体結合タンパク質は、環状順列置換(cp)されていてよい。いくつかの実施形態では、Bcl-2ファミリーポリペプチドは、BH3ドメイン(Bad、Bik/Nbk、Bid、Bim/Bod、Hrk、Bak又はBaxなど)を含むアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドであってよい。BH3ドメインは、リン酸化を低減する変異をさらに含みうる。リン酸化を低減する変異をさらに含むBH3ドメインを含むアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドは、Badポリペプチドであってよい。融合タンパク質は、IL-4Rを発現している標的細胞の細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができてよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、IL-4受容体結合タンパク質は、I型又はII型IL-4
受容体(IL-4R)への結合に対して選択的な変異体IL-4又はIL-13であってよい。II型IL-4Rへの結合に対して選択的な変異体IL-4は、KFR変異形又はKF変異形を含んでよい。I型IL-4Rへの結合に対して選択的な変異体IL-4は、RGA変異形を含んでよい。変異体IL-13は、A11変異形又はDN変異形であってよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質はさらにリンカーを含んでよい。リンカーは、配列GSを有するか、又はユビキチン又はユビキチン変異形分子であってよい。融合タンパク質は、配列番号24~27に示す配列を含んでよい。
【0015】
いくつかの態様では、本願明細書に記載されるような融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクター、又は当該ベクターを含む宿主細胞が提供される。いくつかの態様では、配列番号24~27に示すような、又は配列番号35~38を含む融合タンパク質をエンコードする核酸分子が提供される。
【0016】
いくつかの態様では、本願明細書に記載されるような融合タンパク質を、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクター、又は当該ベクターを含む宿主細胞含む医薬組成物が提供される。
【0017】
いくつかの態様では、細胞死を誘導する方法であって、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクター、又は当該ベクターを含む宿主細胞を、それを必要とする被験者に投与することによって細胞死を誘導する方法が提供される。
【0018】
いくつかの態様では、IL-4Rを発現する標的細胞を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクターに接触させることによって細胞死を誘導する方法が提供される。
【0019】
いくつかの態様では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクター、又は当該ベクターを含む宿主細胞を、それを必要とする被験者に投与することによって癌を処置する方法が提供される。
【0020】
いくつかの態様では、IL-4Rを発現する新生物性細胞を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクターに接触させることによって癌を処置する方法が提供される。
【0021】
いくつかの態様では、それを必要とする被験者において腫瘍微小環境でIL-4Rを発現する非悪性細胞を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクターに接触させることによって癌を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、当該非悪性細胞は、被験者が治療を開始する前に接触される。
【0022】
いくつかの態様では、過剰増殖性障害又は分化障害を処置する方法であって、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクターを、それを必要とする被験者に投与することによって処置する方法が提供される。当該過剰増殖性障害又は分化障害は、線維症若しくは過形成、炎症性病態又は自己免疫病態であってよい。当該線維症又
は過形成は肺線維症又は過形成(良性前立腺過形成など)、心臓繊維化、若しくは肝線維症であってよく、当該炎症性病態は前立腺炎、春季角結膜炎、アテローム性動脈硬化(artherosclerosis)、若しくは特発性の肺性肺炎であってよく、又は当該自己免疫病態はグレーブス病であってよい。
【0023】
いくつかの態様では、細胞死を誘導するため、又は癌を処置するため、又は過剰増殖性障害若しくは分化障害を処置するための、それを必要とする被験者における、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドを含む融合タンパク質、当該融合タンパク質をエンコードする核酸分子、又は当該核酸分子を含むベクターの使用が提供される。
【0024】
他に採用しうる態様の種々の実施形態では、前記被験者はヒトであってよい。
【0025】
本要約は必ずしも、本発明のすべての特徴を記載するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からさらに明らかになるであろう。
【0027】
【
図1】
図1は、pET 24a発現ベクターの中のcpIL-4BAD(cpIL-4g:s-BADaa)を示す図である。
【
図2】
図2は、IL-4Rα陽性腫瘍細胞(U 251)生存率に対するcpIL-4BAD(cpIL-4BADaa)の効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、過剰のIL-4(三角形)の存在下でのIL-4Rα陽性腫瘍細胞(U 251)生存率に対するcpIL-4BAD(cpIL-4BADaa)(四角形)の効果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、IL-4Rα陽性腫瘍細胞(Daudi細胞)生存率に対するcpIL-4BAD(cpIL-4BADaa)の効果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、過剰のIL-4(四角形)の存在下でのIL-4Rα陽性腫瘍細胞Daudiの生存率に対するcpIL-4BAD(cpIL-4BADaa)(三角形)の効果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、IL-4Rα陽性腫瘍細胞(U 251)のコロニー数に対するcpIL-4BAD(cpIL-4BADaa)の効果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、U 251腫瘍細胞(円形=対照)を用いた皮下神経膠腫腫瘍の発症後の無胸腺マウスにおける、cpIL-4BAD融合タンパク質の腫瘍内(四角形)及び腹腔内(三角形)注射の効果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、cpIL-4BADで処置されたマウス(腫瘍内注射群=白抜きダイアモンド形、腹腔内注射群=三角形、対照=黒塗りダイアモンド形)の生存を示すグラフである。
【
図9】
図9は、pGW07大腸菌発現ベクターを示す図である。
【
図10】
図10A~Fは、IL-4BAD(A~B)、cpIL-4BAD(C~D)及びcpS4-BAD(E~F)融合構築体の核酸(配列番号29、30及び32)及びアミノ配列(配列番号18、19及び21)を示す図である。
【
図11】
図11A~Bは、pKFR4-BAD-H6融合構築体の核酸(A;配列番号37)及びアミノ配列(B;配列番号26)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、一つには、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質に連結されたIL-4R結合タンパク質を含む融合タンパク質、及びその使用を提供する。
【0029】
IL-4R結合タンパク質
【0030】
IL-4R結合タンパク質は、IL-4及びIL-13を含む。
【0031】
IL-4タンパク質又はIL-4「タンパク質部分」は、未変性IL-4タンパク質と、さらには変異形IL-4タンパク質を包含する。「未変性」又は「野生型」IL-4配列とは、本願明細書で使用する場合、天然源から精製されたか又は組み換え技術を用いて作製されたかのヒトIL-4配列を称し、以下のとおりのアミノ酸配列(N末端に追加のメチオニンあり)を含む。
【0032】
【0033】
他に採用しうるヒトIL-4配列は、以下のとおりのアミノ酸配列(N末端に追加のメチオニンあり)を含む。
【0034】
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-4タンパク質は、例えばJunttilaら(Nature Chemical Biology 8:990-998, 2012)に
記載される、IL-13Rα1(II型受容体)に比してγc(I型受容体)に対する選択性が増強されている変異形IL-4タンパク質、又はその逆のものである。いくつかの実施形態では、γc(I型受容体)に対する選択性が増強されている変異形IL-4タンパク質は、例えばJunttilaら(Nature Chemical Biology 8:990-998, 2012)に記載され
る、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)の配列又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)に対して以下の変異:R121Q/Y124W/S125F(「RGA」又は「super-4」又は「S4」変異形)を含むIL-4タンパク質である。
【0036】
いくつかの実施形態では、IL-13Rα1(II型受容体)に対する選択性が増強されている変異形IL-4タンパク質は、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)の配列又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)に対して以下の変異:R121K/Y124F/S125R(「KFR」又は「KFR4」変異形)又はR121K/Y124F(「KF」変異形)を含むIL-4タンパク質である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-4タンパク質は、例えば、2000年1月4日にPastanらに発行された米国特許第6,011,002号に記載のように、環状順列置換されている(cp)。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるcpIL-4タンパク質は、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)の残基38~129(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)が、以下のとおり残基1~37にGGNGGリンカー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL-4
タンパク質を含む。
【0038】
【0039】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるcpIL-4タンパク質は、「RGA」又は「super-4」又は「S4」変異形に関連して、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)の残基38~129(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)が、以下のとおり残基1~37にGGNGGリンカー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL
-4タンパク質を含む。
【0040】
【0041】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるcpIL-4タンパク質は、「KFR」変異形に関連して、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)の残基38~129(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)が、以下のとおり残基1~37にGGNGGリ
ンカー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL-4タンパク質を含む。
【0042】
【0043】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるcpIL-4タンパク質は、「KF」変異形に関連して、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)の残基38~129(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)が、以下のとおり残基1~37にGGNGGリン
カー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL-4タンパク質を含む。
【0044】
【0045】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるcpIL-4タンパク質は、未変性ヒトIL-4(例えば配列番号1)又は他に採用しうるIL-4配列(例えば配列番号2)の残基105~129(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)が、例えば、2000年1月4日にPastanらに発行された米国特許第6,011,002号に記載のように、残基1~104にGGNGGリンカー及び最初のメチオ
ニン残基で連結されたIL-4タンパク質を含む。
【0046】
本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-4タンパク質の例として
は、本願明細書に記載されるもの、さらには、変異形IL-4タンパク質がIL-4受容体に結合する能力を保持するか、又は例えばJunttilaら(Nature Chemical Biology 8:990-998, 2012)に記載されるようにIL-13Rα1(II型受容体)に比してγc(I
型受容体)に対する選択性の増強又はその逆を保持するか、又は所望の生物活性を保持する限りにおいて、未変性IL-4(「変異形IL-4タンパク質」)と少なくとも80%の配列一致度(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はさらに少なくとも99%の配列一致度)を有する配列が挙げられる。
【0047】
本開示のIL-4タンパク質には、129アミノ酸の未変性IL-4タンパク質よりも小さいものでありうる断片であって、当該IL-4タンパク質断片はIL-4受容体に結合する能力を保持するか、又は例えばJunttilaら(Nature Chemical Biology 8:990-998,
2012)に記載されるようにIL-13Rα1(II型受容体)に比してγc(I型受容
体)に対する選択性の増強又はその逆を保持するか、又は所望の生物活性を保持するかの条件付きであり、未変性配列の断片として、又はcpフォーム若しくはその断片として含まれるということを理解されたい。
【0048】
本開示に包含されるのは、本願明細書に記載されるような、又は当該技術分野で公知のIL-4タンパク質を、エンコードする核酸分子であって、本願明細書に記載されるDNA配列に対応するRNA配列を含むが、これらに限定されないということも理解されたい。
【0049】
IL-4核酸分子の例として以下のものが挙げられる。
【0050】
【0051】
IL-13タンパク質又はIL-13「タンパク質部分」は、未変性IL-13タンパク質と、さらには変異形IL-13タンパク質を包含する。「未変性」又は「野生型」IL-13配列とは、本願明細書で使用する場合、天然源から精製されたか又は組み換え技術を用いて作製されたかのヒトIL-13配列を称し、以下のとおりのアミノ酸配列(N末端に追加のメチオニンあり)を含む。
【0052】
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-13タンパク質は、野生型IL-13タンパク質に比してIL-13Rα1(II型受容体)に対する選択性が増強されている変異形IL-13タンパク質である。例えば、IL-13変異形配列は、以下のとおりのアミノ酸配列(N末端に追加のメチオニンあり)を含んでよい。
【0054】
【0055】
いくつかの実施形態では、野生型IL-13タンパク質に比してIL-13Rα1(II型受容体)に対する選択性が増強されている変異形IL-13タンパク質は、未変性ヒトIL-13(配列番号7)の配列に対して以下の変異:L10V/E12A/V18I/R65D/D87S/T88S/L101F/K104R/K105T(「DN」変異形)を含む(ナンバリングはN末端のメチオニンを除外)IL-13タンパク質である。例えば、IL-13変異形配列は、以下のとおりのアミノ酸配列(N末端に追加のメチオニンあり)を含んでよい。
【0056】
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-13タンパク質は環状順列置換された(cp)。いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、未変性ヒトIL-13(配列番号7)の残基44~114が、以下のとおり残基1~43にリンカー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL-13タンパク質を含む。
【0058】
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、以下のとおりである。
【0060】
【0061】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、「A11」変異形に関連して、未変性ヒトIL-1
3(配列番号7)の残基44~114が、以下のとおり残基1~43にリンカー及び最初のメチオニン残基でに連結されたIL-13タンパク質を含む。
【0062】
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、以下のとおりである。
【0064】
【0065】
他に採用しうる実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、「DN」変異形に関連して、未変性ヒトIL-13(配列番号7)の残基44~114が、以下のとおり残基1~43にリンカー及び最初のメチオニン残基で連結されたIL-13タンパク質を含む。
【0066】
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示の融合タンパク質において使用することができる変異形cpIL-13タンパク質は、以下のとおりである。
【0068】
【0069】
本開示の融合タンパク質において使用することができるIL-13タンパク質の例としては、本願明細書に記載されるもの、さらには、変異形IL-13タンパク質がIL-13受容体に結合する能力を保持するか、又は野生型IL-13タンパク質に比してIL-13Rα1(II型受容体)に対する選択性の増強を保持するか、又は所望の生物活性を保持する限りにおいて、未変性IL-13(「変異形IL-13タンパク質」)と少なくとも80%の配列一致度(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はさらに少なくとも99%の配列一致度)を有する配列が挙げられる。
【0070】
本開示にかかるIL-13タンパク質には、114アミノ酸の未変性IL-13タンパク質よりも小さいものでありうる断片であって、当該IL-13タンパク質断片はIL-13受容体に結合する能力を保持するか、又は野生型IL-13タンパク質に比してIL-13Rα1(II型受容体)に対する選択性の増強を保持するか、又は所望の生物活性を保持するかの条件付きであるということを理解されたい。
【0071】
本開示に包含されるのは、本願明細書に記載されるような、又は当該技術分野で公知のIL-13タンパク質を、エンコードする核酸分子(RNA配列又はDNA配列を含むが、これらに限定されない)であるということも理解されたい。
【0072】
BCL-2ファミリータンパク質
【0073】
Bcl-2関連タンパク質又はポリペプチド(「Bcl-2ファミリータンパク質」又は「Bcl-2ファミリーメンバー」)は、アポトーシスの制御に関わっている。Bcl-2ファミリータンパク質は、2つの別異のカテゴリー、すなわち、細胞死を阻害するもの(「抗アポトーシス性」Bcl-2ファミリータンパク質)、及び細胞死を増強するもの(「アポトーシス促進性」Bcl-2ファミリータンパク質)に属する。Bcl-2ファミリータンパク質は、BH1、BH2、BH3、及びBH4と表される、1から4の保存されたBcl-2相同性(BH)ドメインを共有する。
【0074】
アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質には、Bad(例えば、受託番号:NP116784、CAG46757又はQ92934)、Bik/Nbk(例えば、受託番号:CAG30276又はQ13323)、Bid(例えば、受託番号:CAG28531又はP55957)、Bim/Bod(例えば、受託番号:NP619527)、Hrk(受託番号:O00198)、Bak、又はBaxなどのBH3ドメインを有するものが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質は、リン酸化を防止するために変異される(例えばセリン残基での変異、例えばセリンをアラニンに変異)。
【0075】
Bad(細胞死のBcl-2-関連作動薬)は、プログラム細胞死(アポトーシス)の制御因子である。Badは、Bcl-xL及びBcl-2とヘテロ二量体を形成すること、並びにそれらの死抑制因子活性を逆転させることによって細胞アポトーシスを正に制御する。Badのアポトーシス促進性活性は、そのリン酸化によって制御される。本開示の融合タンパク質において使用することができるBadタンパク質の例としては、GenBankアクセッション番号CAG46757;AAH01901.1;及びCAG46733.1のもの、さらには米国特許第6,737,511号に示される配列のもの(参照により本願明細書に援用したものとする配列)及び本願明細書に記載される、そして変異形が未変性Badタンパク質の増強された生物活性を保持するか有する限りにおいて、このような配列と少なくとも80%の配列一致度(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又はさらに少なくとも99%の配列一致度)を有する配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBadタンパク質は、リン酸化を低減するセリン変異を第112及び/又は136位に含む。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBadタンパク質は、リン酸化を低減するセリンからアラニンへの変異を第112及び/又は136位に含む。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBadタンパク質は、以下のとおりの配列、又はその断片を含む。
【0076】
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBadタンパク質は、以下のとおりの変異形配列、又はその断片を含む。
【0078】
【0079】
本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBik/Nbkタンパク質分子の例としては、以下のとおりの配列、又はその断片が含まれる。
【0080】
【0081】
本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBidタンパク質分子の例としては、以下のとおりの配列、又はその断片が含まれる。
【0082】
【0083】
本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるBim/Bodタンパク質分子の例としては、以下のとおりの配列が含まれる。
【0084】
【0085】
本開示にかかる融合タンパク質において使用することができるHrkタンパク質分子の例としては、以下のとおりの配列が含まれる。
【0086】
【0087】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質は、Bcl-2ファミリーメンバーの少なくとも断片を含み、ここでアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又は断片は、細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができる。「細胞生存を阻害すること」とは、細胞死のリスクにある細胞が生存することになる蓋然性を低減する(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。「細胞増殖を阻害すること」とは、細胞の成長又は増殖を低減する(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。「細胞死若しくはアポトーシスを増強すること」とは、細胞死のリスクにある細胞がアポトーシス、ネクローシス又はその他の何らかの型の細胞死に至ることになる蓋然性を増加させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。細胞生存の阻害、細胞増殖の阻害、又は細胞死若しくはアポトーシスの増強を測定するために好適なアッセイは、本願明細書に記載されるか、又は当該技術分野で公知のものである。
【0088】
本開示に包含されるのは、本願明細書に記載されるようなアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーをエンコードする核酸分子(例えば、RNA配列又はDNA配列)であって、本願明細書に記載されるDNA配列に対応するRNA配列を含むが、これらに限定されないということも理解されたい。
【0089】
アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの核酸分子の例としては、以下のものが挙げられる。
【0090】
【0091】
IL-4受容体結合タンパク質-Bcl-2ファミリー融合タンパク質
【0092】
本開示にかかる「融合タンパク質」は、本願明細書に記載されるような、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーに、任意の付加的配列又は部分(リンカーなど)で連結されたIL-4及びIL-13などのIL-4R結合タンパク質、さらにはこのような融合タンパク質をエンコードする核酸分子を含む。さらに含まれるのは、融合タンパク質をエンコードする核酸配列がプロモーターに作動可能に連結された組み換え核酸分子、このような分子を含むベクター、及びこのような分子を含む遺伝子導入細胞である。
【0093】
IL-4(cpIL-4及びIL-4断片並びに変異形を含む)は、Bad、Bik/Nbk、Bid、Bim/Bod、Hrk、Bak、若しくはBax又はこれらの組み合わせにより例示されるようなBH3ドメインを含むものであるアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチド、又はその断片若しくは変異形に、アポトーシス促進性活性が保持されている限り連結可能である。いずれの型のIL-4又は誘導体も使用できる。例えば、IL-4又はIL-4受容体に結合するIL-4の断片を使用できる。加えて、複数のアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形を、IL-4又はその断片若しくは変異形に連結可能であり、又は複数のIL-4タンパク質又はその断片若しくは変異形を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形に連結可能である。
【0094】
IL-13(IL-13断片又は変異形を含む)は、例えばBad、Bik/Nbk、Bid、Bim/Bod、又はHrk、又はこれらの組み合わせにより例示されるようなBH3ドメインを含むものであるアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチドに、その組み合わせ又はその断片若しくは変異形がアポトーシス促進性活性を保持している限り連結可能である。いずれの型のIL-13又は誘導体も使用できる。例えば、IL-13又はIL-13受容体に結合するIL-13の断片を使用できる。加えて、複数のアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形を、IL-13又はその断片若しくは変異形に連結可能であり、又は複数のIL-13タンパク質又はその断片若しくは変異形を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形に連結可能である。
【0095】
cpIL-4は、Bad、Bik/Nbk、Bid、Bim/Bod、Hrk、Bak、若しくはBax又はこれらの組み合わせにより例示されるようなBH3ドメインを含むものなどのアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーポリペプチド、又はその断片若しくは変異形に、アポトーシス促進性活性が保持されている限り連結可能である。いずれの型のcpIL-4又は誘導体も使用できる。加えて、複数のcpIL-4タンパク質又はそ
の断片若しくは変異形を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形に連結可能であり、又は複数のアポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質又はその断片若しくは変異形を、cpIL-4タンパク質又はその断片若しくは変異形に連結可能である。
【0096】
融合タンパク質の例を表1に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
IL-4又はIL-13のようなIL-4R結合タンパク質の、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーへの連結又は「融合」は、IL-4R結合タンパク質の一部分がアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの一部分に直接付着するように直接であってよい。例えば、IL-4R結合タンパク質のアミノ酸配列の一端を、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのアミノ酸配列の端に直接付着させることができる。例えば、IL-4R結合タンパク質のC末端をアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのN末端に連結させることができ、又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーのC末端をIL-4R結合タンパク質のN末端に連結させることができる。このような融合タンパク質を作成する方法は当該技術分野で通例のものであり、例えば組み換え分子生物学的方法を用いる。
【0102】
リンカー
【0103】
いくつかの実施形態では、IL-4R結合タンパク質部分は、リンカーによって間接的
に、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー部分に連結させることができる。リンカーは、例えば、単純に2つの部分を連結する簡便な方法として、2つの部分を空間的に分離する手段として、IL-4R結合タンパク質若しくはアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー、又はこれらの組み合わせに付加的な機能性を提供するうえで役立つことができる。
【0104】
一般に、IL-4R結合タンパク質部分とアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー部分とを連結させるリンカーは、(1)2つの分子を折り重ねて互いに独立に作用させ、(2)2つの部分の機能性ドメインを干渉しうる規則二次構造を生じる傾向を有さず、(3)機能性タンパク質ドメインと相互作用しうる疎水性若しくは荷電特性を最低限とし、且つ/又は(4)2つの領域の空間的分離をもたらすように設計可能である。例えば、ある例では、IL-4R結合タンパク質とアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーとを空間的に分離して、IL-4R結合タンパク質がアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの活性を干渉し、且つ/又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーがIL-4R結合タンパク質の活性を干渉することを防止するのが望ましいことがある。リンカーは、例えば、IL-4R結合タンパク質とアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーとの間の結合に不安定性を、酵素切断部位(例えば、プロテアーゼに対する切断部位)を、安定性配列を、分子タグを、検出可能なラベルを、又は種々のこれらの組み合わせを提供するのにも使用可能である。いくつかの実施形態では、リンカーは、IL-4R結合タンパク質(cp分子内など)又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの2つのドメインの間に存在することができる。
【0105】
リンカーは、二官能性又は多官能性であることができ、すなわち、少なくとも概ね、IL-4R結合タンパク質に結合することができるか又は結合するように修飾されているリンカーの第一端部に、又はその近傍に第一の反応性官能基と、修飾されているアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーに結合することができるか又は結合するように修飾されているリンカーの反対側の端部に、又はその近傍に第二の反応性官能基とを含む。当該2つ以上の反応性官能基は、同じ(すなわちリンカーがホモの二官能性である)か、又はそれらは異なる(すなわちリンカーがヘテロの二官能性である)ことができる。
【0106】
リンカーの長さ及び組成は、かなり変動可能である。リンカーの長さ及び組成は一般に、リンカーの意図された機能と、任意に、合成の容易さ、安定性、特定の化学物質及び/又は温度パラメータに対する耐性並びに生体適合性などの他の因子とを考慮して選択される。例えば、リンカーは、IL-4R結合タンパク質及び/又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの活性を有意に干渉すべきではない。
【0107】
本開示にかかる融合タンパク質での使用に好適なリンカーには、ペプチドが含まれる。リンカーは、組み換えDNA技術を用いてIL-4R結合部分及び/又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー部分に付着させることができる。このような方法は当該技術分野で周知であり、本技術の詳細は例えば、Sambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989若しくはAusubel et al. Current
Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 1994、又はその更新版に見出される。
【0108】
リンカーペプチドは、1~500アミノ酸残基(1~100、1~50、6~30、1~40、1~20、又は30アミノ酸未満若しくは5~10アミノ酸など)の鎖長を有することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、2、3、4、5、6、7若しくは8アミノ酸の長さでありえ、又は約10、20、30、40又は50アミノ酸の長さであることができる。
【0109】
典型的には、可撓性タンパク質領域内の表面アミノ酸には、Gly、Asn及びSerが含まれ、このようなアミノ酸はリンカー配列内で使用することができる。Thr及びAlaなどの他の中性アミノ酸もまた、リンカー配列内で使用することができる。追加のアミノ酸を、リンカー内に入れて特有の制限酵素部位をリンカー配列にもたらし、融合体の構築を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えばアミノ酸配列Gly-Ser(GS)を含むものでも、又はアミノ酸配列Gly-Ser(GS)であっても、又はユビキチン配列:
GGGSMQIFVRTLTGRTITLEVEPSDTIENVRARIQDREGIPPDQQRLIFAGRQLEDGRTLSDYNIQRESTLHLVLRLRGGGS(配列番号28)若しくはその変異形を含むものでもよい。リンカーとしての使用に好適なユビキチン分子は、例えば、Bachran, Cら、"Anthrax toxin-mediated delivery of the Pseudomonas exotoxin A enzymatic domain to the cytosol of tumor cells via cleavable ubiquitin fusions MBio. 2013 Apr 30; 4(3): e00201-13、又はPCT公開第WO/2012/139112号に記載されている。
【0110】
1つの例では、補体系の酵素、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプシン、プラスミン、又はタンパク質分解活性を有する別の酵素による切断を受けやすいペプチドリンカーが使用されてもよい。別の例によれば、IL-4R結合タンパク質は、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、トロンビン又はトリプシンなどのタンパク質分解活性を有する酵素による切断を受けやすいリンカーを介して付着させることができる。加えて、IL-4R結合タンパク質は、ジスルフィド結合(例えば、システイン分子上のジスルフィド結合)を介してアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーに付着させることができる。例えば、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質に関連して、多くの腫瘍は本来、高レベルのグルタチオン(還元剤)を遊離しているので、これがジスルフィド結合を低減することができ、次いで送達の部位でアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーの遊離がなされる。
【0111】
いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質は、切断可能なリンカー領域により連結されたアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー及びIL-4R結合タンパク質を含むとよい。別の実施形態では、切断可能なリンカー領域はプロテアーゼで切断可能なリンカーであることができるが、他のリンカーで、例えば小分子により切断可能なものが使用されてもよい。プロテアーゼ切断部位の例としては、因子Xa、トロンビン及びコラゲナーゼによって切断されるものが挙げられる。1つの例では、プロテアーゼ切断部位には、疾患と関連するプロテアーゼによって切断されるものが含まれる。別の例では、プロテアーゼ切断部位は、一般に癌と関連するか又は癌により上方制御されるプロテアーゼによって切断されるものである。このようなプロテアーゼの例は、uPA、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリー、カスパーゼ、エラスターゼ、前立腺特異抗原(PSA、セリンプロテアーゼ)、及びプラスミノーゲン活性化因子ファミリー、さらには線維芽細胞活性化タンパク質である。さらに別の例では、癌関連細胞により分泌されるプロテアーゼによって切断部位が切断される。これらのプロテアーゼの例として、マトリックスメタロプロテアーゼ、エラスターゼ、プラスミン、トロンビン、及びuPAが挙げられる。別の例では、プロテアーゼ切断部位は、特定の癌と関連するか又はそれにより上方制御されるものである。的確な配列は、当該技術分野で得ることができ、当業者が好適な切断部位を選択するのに困難はないはずである。例として、因子Xaにより標的指向化されるプロテアーゼ切断領域は、IEGRである。エンテロキナーゼにより標的指向化されるプロテアーゼ切断領域は、DDDDKである。トロンビンにより標的指向化されるプ
ロテアーゼ切断領域は、LVPRGである。1つの例では、切断可能なリンカー領域は、細胞
内プロテアーゼにより標的指向化されるものである。
【0112】
リンカーは、当該技術分野で公知のような日常的な技術を用いて、IL-4R結合タン
パク質部分及び/又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバー部分に付着させることができる。
【0113】
IL-4R結合タンパク質/アポトーシス促進性Bcl-2ファミリー融合タンパク質の調製
【0114】
融合タンパク質は、当該技術分野で公知のような日常的な方法を用いて調製することができる。融合タンパク質、さらにはそれに対する修飾体は、例えば、組換えDNA技術を用いて当該融合タンパク質をエンコードする核酸を設計操作することによって、又はペプチド合成によって作製可能である。融合タンパク質に対する修飾体は、例えば、化学修飾及び/又は限定タンパク質分解を用いて融合タンパク質ポリペプチド自体を修飾することにより作製してよい。これらの方法の組み合わせも、融合タンパク質を調製するのに使用してよい。
【0115】
クローニング及びタンパク質発現の方法は、当該技術分野で周知であり、組み換えタンパク質の発現のための技術及び系の詳細な説明は、例えばCurrent Protocols in Protein
Science(Coligan, J. E., et al, Wiley & Sons, New York)に見出すことができる。
当業者であれば、組み換えタンパク質を提供するために実に様々な発現系を使用できることを理解するであろう。したがって、融合タンパク質は原核生物宿主(例えば、大腸菌、エロモナス・サルモニシダ(A. salmonicida)又は枯草菌)又は真核生物宿主(例えば、酵母菌属(サッカロマイセス属)若しくはピキア属;哺乳類細胞、例えば、COS、NIH 3T3、CHO、BHK、293、若しくはHeLa細胞;又は昆虫細胞(バキュロ
ウイルス))にて生成できる。融合タンパク質は、当該技術分野で公知の標準的な技術を用いて宿主細胞から精製することができる。
【0116】
種々の融合タンパク質の例に対する配列を表1に示す。これらの配列の変異形及び相同体は、他に採用しうる配列が所望であれば、標準的な技術(例えば、Ausubel et al, Current Protocols in Molecular Biology, Wiley & Sons, NY (1997及び更新版); Sambrook
et al., Sambrook, et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989、又はその更新版を参照のこと)を用いてクローニングできる。例えば、
核酸配列は、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)などの好適な生物から直接、mRNAを抽出し、次いでmRNA鋳型から(例えばRT-PCRにより)、又はゲノムDNAからの遺伝子をPCR増幅することにより、cDNAを合成することによって得ることができる。あるいは、IL-4R結合部分又はアポトーシス促進性Bcl-2ファミリー部分のいずれかをエンコードする核酸配列は、標準的な手法によって適切なcDNAライブラリーから得ることができる。単離されたcDNAは次いで、クローニングベクター又は発現ベクターなどの好適なベクターに挿入される。
【0117】
変異を(所望に応じて)当該技術分野で周知のインビトロ部位特異的変異誘発技術により、特定の、事前に選択した位置に導入することができる。変異は、コード配列を作り上げている適切なヌクレオチドの1つ以上の欠失、挿入、置換、反転、又はこれらの組み合わせによって導入することができる。
【0118】
発現ベクターはさらに、融合タンパク質をエンコードする配列の効率的な転写のために必要とされる転写エレメントなどの制御エレメントを含むことができる。ベクターに取り込ませることができる制御エレメントの例としては、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、及びポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子改変された融合タンパク質をエンコードする核酸配列に作動可能に連結された制御エレメントを含むベクターを、融合タンパク質を作成するために使用することができる。
【0119】
発現ベクターは、親和性タグ(例えば、金属親和性タグ、ヒスチジンタグ、アビジン/ストレプトアビジンをエンコードする配列、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(転移酵素)(GST)をエンコードする配列、マルトース結合タンパク質(MBP)をエンコードする配列又はビオチンをエンコードする配列)などの、発現された融合タンパク質の精製を容易にする異種核酸配列を付加的に含んでよい。1つの例では、このようなタグは、融合タンパク質のN-又はC-末端に付着され、又は融合タンパク質内に位置させることもできる。タグは、当該技術分野で公知の方法に従い、発現された融合タンパク質から使用に先立って除去することができる。あるいは、タグが融合タンパク質の所望の活性の能力を干渉することがないのであれば、融合タンパク質に保持させておくことができる。
【0120】
融合タンパク質は、1以上のリンカー、さらには他の部分を、所望のとおりに及び/又は本願明細書で論じられるとおりに含むことができる。これらには、アビジン若しくはエピトープなどの結合領域、又はポリヒスチジンタグなどのタグであって、融合タンパク質の精製及び加工に有用でありうるもの、さらには本願明細書に記載されるような他のリンカーを含むことができる。加えて、身体又は細胞での融合タンパク質の行き来を簡便にモニターすることが可能となるように、検出可能なマーカーを融合タンパク質に付着させることができる。このようなマーカーには、放射性核種、酵素、フルオロフォア、発色団などが含まれる。
【0121】
当業者は、エンコードされるタンパク質の生物活性に影響を及ぼすことなく数々の方法でDNAが変更されうるということはわかるであろう。例えば、融合タンパク質をエンコードするDNA配列における変化を生み出すために、PCRを使用することができる。融合タンパク質をエンコードするDNA配列におけるこのような変化は、タンパク質を発現するのに用いられる宿主細胞におけるコドン選好(preference)を至適化するために使用することができ、又は発現を促進する他の配列変化を含んでもよい。
【0122】
アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーへのIL-4R結合タンパク質の直接的な共有結合、又はリンカーを介した結合は、当該技術分野で公知のとおりの種々の形態をとってよい。例えば、共有結合は、ジスルフィド結合の形態であってよい。成分の1つをエンコードするDNAを、特有のシステインコドンを含むように設計操作することができる。第2成分は、第1成分のシステインと反応性であるスルフヒドリル基で誘導化させることができる。あるいは、スルフヒドリル基を、それ自体か、又はシステイン残基の一部としてかのいずれかにて、固相ポリペプチド技術を用いて導入することができる。例えば、ペプチド内へのスルフヒドリル基の導入は、Hiskey(Peptides 3 : 137, 1981)によって報告されている。
【0123】
アッセイ
【0124】
融合タンパク質は、当該技術分野で公知であるか又は本願明細書に記載される標準的な技術を用いてアッセイされうる。
【0125】
例えば、融合タンパク質が細胞を死滅させるか又はその成長を阻害する能力は、好適な細胞、典型的には標的又は癌細胞を発現している細胞系を用いてインビトロでアッセイされうる。一般に、選択された試験細胞系の細胞が適切な密度まで生育されて、候補融合タンパク質が添加される。融合タンパク質は、培養物におよそ少なくとも1ng/mL、少なくとも1μg/mL、又は少なくとも1mg/mL、例えば約0.01μg/mL~約1mg/mL、約0.10μg/mL~約0.5mg/mL、約1μg/mL~約0.4mg/mL添加できる。いくつかの例では、段階希釈が調べられる。適切なインキュベー
ション時間(例えば、約48~72時間)の後、細胞生存又は成長を評定する。細胞生存を判定する方法は、当該技術分野で周知であって、レサズリン還元試験(Fields & Lancaster Am. Biotechnol. Lab., 11 :48-50, 1993; O'Brien et al, Eur. J. Biochem., 267:5421-5426, 2000又は米国特許第5,501,959号参照)、スルホローダミンアッセイ(Rubinstein et al, J. Natl. Cancer Inst., 82: 113-118, 1999)又は中性赤色染料試験(Kitano et al, Euro. J. Clin. Investg., 21 :53-58, 1991; West et al, J. Investigative Derm., 99:95-100, 1992)又はトリパンブルーアッセイが含まれるが、これ
らに限定されない。例えばCellTiter 96(登録商標)AQueous One 溶液細胞増殖アッセイ(Promega)など、数多くの市販のキットも使用してよい。細胞毒性は、処置培養物にお
ける細胞生存の、1以上の対照培養物における細胞生存との比較によって判定され、当該対照培養物の例としては、未処置の培養物及び/若しくは対照化合物(典型的には、既知の治療薬)で前処置された培養物、又は他の適切な対照が挙げられる。
【0126】
さらなるアッセイは、例えば、Crouchら(J. Immunol. Meth. 160, 81-8);Kangasら(Med. Biol. 62, 338-43, 1984);Lundinら(Meth. Enzymol. 133, 27-42, 1986);Pettyら(Comparison of J. Biolum. Chemilum. 10, 29-34, 1995);及びCreeら(AntiCancer Drugs 6: 398-404, 1995)に記載されている。細胞生存率は、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を含めた様々な方法を用いてアッセイすることができる(Barltrop, Bioorg. & Med. Chem. Lett. 1 : 611, 1991; Cory et al, Cancer Comm. 3, 207-12, 1991; Paull J. Heterocyclic Chem. 25, 911, 1988)。細胞生存率に対するアッセイもまた、市販のものを利用できる。これら
のアッセイには、ルシフェラーゼ技術を用いてATPを検出し、健全性(health)又は培養物における細胞数を定量する、CELLTITER-GLO(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)、及び乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)細胞毒性アッセイ(Promega)であるCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayが含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
癌の特定の型に対する選択性をもたらす融合タンパク質を、それら融合タンパク質がかかる特定の癌細胞型を標的指向化する能力について試験してもよい。例えば、IL-4R
I型又はII型を提示している細胞を標的指向化する特異的なIL-4を含む融合タンパク質は、その融合タンパク質が癌細胞を死滅させる能力と、正常細胞又は癌細胞の異なる型(例えば、IL-4RのI型又はII型を発現しないもの)を死滅させるその能力とを比較することにより、このような細胞を選択的に標的指向化する能力について評定することができる。あるいは、I型又はII型受容体特異的IL-4を含む融合タンパク質が細胞の特定の型を選択的に標的指向化できるかどうかを判定するために、当該技術分野で公知のようなフローサイトメトリー法が使用されてもよい。標識化された抗体の、結合済み融合タンパク質への結合は、標的への融合タンパク質の結合を示唆するであろう。
【0128】
同様に、細胞アポトーシスを測定するためのアッセイが、当該技術分野で公知である。アポトーシスを起こした細胞は、クロマチン凝縮、細胞収縮及び膜小疱形成(blebbing)を含む特徴的な形態学的変化によって特徴付けられ、光学顕微鏡法を用いて明確に観察することができる。アポトーシスの生化学的特徴には、DNA断片化、特定の位置でのタンパク質切断、ミトコンドリア膜透過性の増加、及び細胞膜表面上へのホスファチジルセリンの出現が含まれる。アポトーシスに対するアッセイは、当該技術分野で公知である。アッセイの例としてはTUNEL(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼビオチン-dUTPニックエンドラベリング)アッセイ、カスパーゼ活性(具体的にはカスパーゼ-3)アッセイ、並びにfas-リガンド及びアネキシンVに対するアッセイが挙げられる。アポトーシスを検出するための市販の製品には、例えば、Apo-ONE(登録商標)Homogeneous Caspase-3/7 Assay, FragEL TUNELキット(ONCOGENE RESEARCH PRODUCTS, San Diego, Calif)、ApoBrdU DNA Fragmentation Assay(BIO VISION, Mountain View, Cali
f)、及びQuick Apoptotic DNA Ladder Detection Kit(BIO VISION, Mountain View, Calif)が含まれる。
【0129】
候補融合タンパク質を試験するのに好適な様々な細胞系が、当該技術分野で公知であり、多くが市販されている(例えば、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)、Manassas, Vaより)。同様に、動物モデルが当該技術分野で公知であり、多くが市販されている。
【0130】
治療指標及び使用
【0131】
本願明細書に記載されるような、IL-4R結合タンパク質とアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーとを含む融合タンパク質は、様々な治療目的に使用することができる。一般に、本願明細書に記載される融合タンパク質は、IL-4Rを発現する細胞が関わっており、且つ細胞増殖を阻害すること又は細胞死を増強することが有益であろうような何れの疾患、障害又は病態の治療又は予防にも使用することができる。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される融合タンパク質は、I型又はII型IL-4Rを発現する細胞が関わっており、そして受容体の一方の型を他方の型を凌いで選択することが有用であって、且つ細胞増殖を阻害すること又は細胞死を増強することが有益であろうような何れの疾患、障害又は病態の治療又は予防にも使用することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含む融合タンパク質は、アポトーシス若しくは細胞死を誘導するために、又は癌などの、異常なアポトーシス若しくは細胞増殖と関連する障害を処置するために使用することができる。本願明細書で使用する場合、「癌」「癌性」「過剰増殖性」又は「新生物性」の用語は、自立成長に対する潜在能力を有している細胞(例えば、迅速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態又は病態)をいう。過剰増殖性及び新生物性の病状は、「病的」にカテゴリー付けられうる(例えば、正常からは逸脱しているが病状と関連するわけではない)。したがって、「癌」又は「新生物」で意味するのは、生理学的機能に役立つものでない細胞の望ましくない成長である。一般に、新生物の細胞は、その正常な細胞分裂調節から遊離されており、すなわち、その成長が細胞環境における普通の生化学的及び物理的影響により制御されない細胞である。ほとんどの場合、新生物性細胞は増殖して良性又は悪性、いずれかの細胞のクローンを形成する。癌又は新生物の例としては、形質転換細胞及び不死化細胞、腫瘍、並びに乳房細胞癌腫及び前立腺癌腫などの癌腫が挙げられるが、これらに限定されない。「癌(cancer)」の用語には、厳密には(technically)良
性であるが悪性になるリスクを備えた細胞成長が含まれる。「悪性腫瘍」で意味するのは、何らかの細胞型又は組織の異常成長である。「悪性腫瘍」の用語には、厳密には良性であるが悪性になるリスクを備えた細胞成長が含まれる。この用語は、何れの癌、癌腫、新生物、新生物、又は腫瘍も含む。これらの用語が意味するものに含まれるのはしたがって、組織病理学的なタイプ又は浸潤性のステージに関わらず、あらゆる型の癌性成長又は癌化プロセス、転移性組織又は悪性に形質転換された細胞、組織又は器官である。いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含む融合タンパク質は、幹細胞に影響する癌に関連して用いられない。
【0133】
ほとんどの癌は、3つの広範な組織学的分類に該当する。すなわち、主要な癌であって、上皮細胞、又は器官、腺、若しくは他の身体構造(例えば、皮膚、子宮、肺、乳房、前立腺、胃、腸)の外表面若しくは内表面を覆う細胞の癌であり、且つ転移する傾向のある癌腫;結合組織又は支持組織(例えば、骨、軟骨、腱、靱帯、脂肪、筋肉)から由来する肉腫;並びに骨髄及びリンパ組織から由来する血液腫瘍。癌の例として、癌腫、肉腫、及び造血性新生物性障害(例えば白血病)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
癌腫は、腺癌(乳房、肺、結腸、前立腺又は膀胱などの分泌をすることができる腺又は器官において一般に発症する)でありえ、又は扁平上皮癌(扁平上皮から発生し、身体の殆どの領域において一般に発症するもの)でありうる。
【0135】
肉腫は、骨肉腫又は骨原性肉腫(骨)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫若しくは中皮腫(体腔の膜裏)、線維肉腫(線維性組織)、血管肉腫若しくは血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫若しくは星状細胞腫(脳に認められる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚性結合組織、又は間葉性若しくは混合中胚葉性腫瘍(混合結合組織型)でありうる。
【0136】
造血性新生物性障害は、造血性起源の過形成性/新生物性細胞が関わる疾患を含み、例えば、骨髄、リンパ系又は赤血球系統又はその前駆細胞から生じるものである。好ましくは、前記疾患は、低分化急性白血病(例えば、赤芽球性白血病及び急性巨核芽球性白血病)から生じる。さらなる骨髄障害の例としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)及び慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられるが、これらに限定されることはなく、またリンパ系悪性腫瘍には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B系統ALL及びT系統ALLが含まれる)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病、及びワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症が含まれるがこれらに限定されることはない。
【0137】
悪性リンパ腫のさらなる型には、非ホジキンリンパ腫及びその変異形、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病及びリード・スタンバーグ(Reed-Stemberg
)病が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
癌はまた、それらの起源となった器官、すなわち、「一次部位」、例えば、乳房、脳、肺、肝臓、皮膚、前立腺、精巣、膀胱、結腸及び直腸、子宮頸部、子宮などの癌に基づいて命名されることもある。この命名は、たとえその癌が一次部位とは異なる別の身体部位に転移したとしても引き続き用いられる。一次部位に基づいて命名された癌は、組織学的分類に関連付けられうる。例えば、肺癌は一般に小細胞肺癌若しくは非小細胞性肺癌(扁平上皮癌、腺癌でありうる)、又は大細胞癌であり、皮膚癌は一般に基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、又は黒色腫である。リンパ腫は、頭部、頚部及び胸部と関連するリンパ節内で、さらには腹部リンパ節内又は腋窩若しくは鼠径リンパ節内で生じうる。癌のタイプ及びステージの同定及び分類は、例えばSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program of the National Cancer Instituteによって提供される情報を用いることに
より行なってよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質メンバー、又はその断片を含む融合タンパク質は、胃癌腫、浸潤性下垂体腺腫、胆管癌腫、子宮頸癌、リンパ腫、黒色腫、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、膵臓癌、結直腸癌、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌腫、中皮腫、横紋筋肉腫、乳癌、非小細胞性肺癌、頭頚部癌、又はカポジ癌腫などの癌を処置するために使用することができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質メンバー、又はその断片を含む融合タンパク質は、神経膠腫、髄膜腫瘍、びまん性内在性橋膠腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、未分化星状細胞腫、多形神経膠芽腫、転移性脳癌、又はCNSリンパ腫などのCNS癌を処置するために使用することができる。
【0141】
前記融合タンパク質は、癌を処置、安定化又は防止するために使用することができる。
融合タンパク質は、無痛性癌、局所再発、遠隔再発を含む再発癌及び/又は難治性癌(すなわち、他の抗癌処置に反応していない癌)、転移性癌、局所進行癌及び強侵襲性癌の処置においても使用することができる。これらに関連して、前記融合タンパク質は、細胞毒性又は細胞増殖抑制性のいずれかの効果を奏しえ、その結果、例えば、癌細胞の数又は成長の低減、腫瘍のサイズの低減、腫瘍のサイズの増加の緩徐化又は防止、腫瘍の消失又は除去とその再出現との間の無疾患生存期間の増加、腫瘍の初発又は後発(例えば転移)の防止、進行までの時間の増加、腫瘍と関連する1以上の有害症候の低減、又は癌を有する被験者の全生存期間の増加がもたらされる。
【0142】
アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含む融合タンパク質を用いて処置できる増殖性及び/又は分化障害の他の例として、肺線維症又は過形成などの増殖性非悪性疾患(良性の前立腺過形成など)、心臓繊維化、若しくは肝線維症;前立腺炎、春季角結膜炎、アテローム性動脈硬化、特発性の肺性肺炎などの炎症性病態;又はグレーブス病などの自己免疫病態が挙げられる。
【0143】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質メンバー、又はその断片を含む融合タンパク質は、細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができる。いくつかの実施形態では、IL-4R結合タンパク質-アポトーシス促進性Bcl-2ファミリー融合タンパク質は、IL-4単独、非アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質等に連結されたIL-4などの好適な対照と比較して、細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができる。好適な対照は、これまでに確立された標準も含みうる。したがって、IL-4R結合タンパク質-アポトーシス促進性Bcl-2ファミリー融合タンパク質の活性又は有効性を判定するための何れの試験又はアッセイでも、確立された標準と比較されればよく、そのたびごとに比較用の対照を含める必要はなくてよい。「細胞生存を阻害すること」とは、細胞死のリスクにある細胞が生存することになる蓋然性を低減する(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。「細胞増殖を阻害すること」とは、細胞の成長又は増殖を低減する(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。「細胞死若しくはアポトーシスを増強すること」とは、細胞死のリスクにある細胞がアポトーシス、ネクローシス又はその他の何らかの型の細胞死に至ることになる蓋然性を増加させる(例えば、少なくとも10%、20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も)という意味である。
【0144】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質メンバー、又はその断片を含む融合タンパク質は、同様の条件下であるが前記融合タンパク質と接触させずに培養された細胞と比較して、少なくとも20%、30%まで、又は50%、75%、85%若しくは90%以上も、細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することができる。細胞生存の阻害、細胞増殖の阻害、又は細胞死若しくはアポトーシスの増強を測定するために好適なアッセイは、本願明細書に記載されるか、又は当該技術分野で公知のものである。
【0145】
いくつかの実施形態では、細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することにおける、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質メンバー、又はその断片を含む融合タンパク質のIC50は約0.1ng/mL~約10,000ng/mLの範囲内、又はそれらの間の何れかの数値、例えば約0.5ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、25ng/mL、50ng/mL、75ng/mL、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、300ng/mL、350ng/mL、400ng/mL、4
50ng/mL、500ng/mL、550ng/mL、600ng/mL、650ng/mL、700ng/mL、750ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、又は1000ng/mLなどであることができる。
【0146】
「標的細胞」には、ニューロン、リンパ球、幹細胞、上皮細胞、癌細胞、新生物細胞、免疫細胞、腫瘍微小環境の非悪性細胞、過増殖性細胞などが含まれるが、これらに限定されない。選択される標的細胞は、前記融合タンパク質で処置することが意図される疾患又は傷害又は状態次第であろう。
【0147】
医薬組成物、投薬量及び投与
【0148】
本開示にかかる医薬組成物は、1以上の融合タンパク質及び1以上の無毒な、医薬的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤及び/又は佐剤を含むことができる。このような組成物は、本願明細書に記載されるような治療指標の処置での使用に好適でありうる。
【0149】
所望に応じて、組成物に他の有効成分が含まれてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含む融合タンパク質は、1以上の抗癌療法又は他の療法と一緒に、治療上有効な量で投与されうる。融合タンパク質(1種以上)は、抗癌療法又は他の療法での処置前、処置中、又は処置後に投与することができる。「抗癌療法」は、癌細胞の成長及び/又は転移を防止又は遅延する化合物、組成物、又は処置(例えば外科手術)である。このような抗癌療法には、外科手術(例えば、腫瘍のすべて又は一部の除去)、化学療法剤処置、放射線、遺伝子治療、ホルモン操作、免疫療法(例えば、治療抗体及び癌ワクチン)及びアンチセンス又はRNAiオリゴヌクレオチド療法が含まれるが、これらに限定されない。有用な化学療法剤の例としては、ヒドロキシ尿素、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ダウノルビシン(danorubicin)、
ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、シトシン、アラビノシド、ブレオマイシン、ネオカルシノスタチン(neocarcinostatin)、スラミン、タキソール、マイトマイシンC、アバスチン、ハーセプチン(登録商標)、フルオロウラシル、テモゾロミド(temozolamide)など挙げられるが、これらに限定されない。融合タンパク質(1種以上)は、2種以上の化学療法剤を用いる標準的な併用療法との使用にも好適であるということを理解されたい。抗癌療法には、今後開発される新規な化合物又は処置が含まれる。
【0150】
前記融合タンパク質放射線増感剤などの増感剤(例えば、Diehn et al, J. Natl. Cancer Inst. 98: 1755-7, 2006参照)と組み合わせて投与することもできる。一般に、増感
剤は融合タンパク質の活性を高める何らかの薬剤である。例えば、増感剤は、癌細胞成長を阻害するか又は癌細胞死滅させる、融合タンパク質の能力を高めるであろう。増感剤の例としては、IL-10に対する抗体、骨形成タンパク質及びHDAC阻害剤が挙げられる(例えば、Sakariassen et al, Neoplasia 9(l l):882-92, 2007参照)。これらの増感剤は、融合タンパク質での処置前又は処置中に投与できる。このような増感剤の投薬量の例としては、少なくとも10μg/mL、少なくとも100μg/mLなどの少なくとも1μg/mL、例えば5~100μg/mL又は10~90μg/mLが挙げられる。増感剤は、毎日、週3回、週2回、週1回又は2週に1回、投与できる。増感剤は、融合タンパク質での処置が完了した後に投与することもできる。
【0151】
前記融合タンパク質は、被験者における癌を治癒することが意図される場合、ネオアジュバント療法(一次療法に対する)の一部として、アジュバント療法レジメンの一部とし
て使用されてもよい。融合タンパク質は、進行性及び/又は強侵襲性異常増殖(例えば、外科手術又は放射線療法などの局所的な様式の処置による治癒に適していない被験者における顕性疾患)、転移性疾患、局所進行疾患及び/又は難治性腫瘍(例えば、処置に反応していない癌又は腫瘍)の処置を含め、腫瘍発生及び進行における種々のステージで投与することもできる。「一次療法」とは、被験者における癌の最初の診断に際しての第1選択の処置をいう。一次療法の例としては外科手術、広い範囲の化学療法及び放射線療法を挙げることができる。「アジュバント療法」とは、一次療法に続く療法であって、再発のリスクにある被験者に適用される療法をいう。アジュバント全身性療法は、一次療法後まもなく、例えば最後の一次療法処置の2、3、4、5、又は6週間後に開始され、再発を遅延し、被験者の生存又は治癒を延長するものである。本願明細書で論じられるとおり、アジュバント療法の一部として、融合タンパク質を単独又は1以上の他の化学療法剤と組み合わせて使用できるということが企図される。融合タンパク質と標準的な化学療法剤との組み合わせは、その化学療法剤の有効性を向上するように作用しえ、したがって、標準的な癌治療を改善するために使用することができる。本願は、標準的な処置に応答性のない薬物耐性癌の処置に特に重要でありうる。
【0152】
癌において、腫瘍の微小環境には悪性及び非悪性細胞の双方が含まれる。腫瘍微小環境は、以下の基準の1以上を用いて同定することができる:(a)悪性細胞に直接隣接した、又は同じ生理的環境を共有する非悪性細胞を含む領域;(b)拡張された腫瘍領域;(c)腫瘍に取り囲まれた、又は近接した炎症の領域;(d)制御性T細胞の数又は増殖速度が高まっている領域;及び(e)腫瘍関連マクロファージ、樹状細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、Th2細胞又は線維細胞が高まっている領域。非固形腫瘍型に関連して、腫瘍微小環境は、悪性細胞同士や、悪性細胞と何れか隣接又は近隣の非悪性細胞との間の局所細胞間相互作用によっても判定されうる。このような相互作用には、例えば、1つの細胞(悪性又は非悪性)によって産生される可溶性メディエーターの、腫瘍微小環境内の別の細胞(悪性又は非悪性)への細胞接着事象及び/又はパラクリン効果が含まれうる。
【0153】
腫瘍微小環境内の非悪性細胞は、腫瘍イニシエーション及び進行に重要である可能性がある(Reynolds et al., Cancer Res., 1996, 56(24):5754-5757)。非悪性細胞は、間質細胞とも呼ばれ、悪性細胞と同じ細胞空間、又は悪性細胞に隣接又は近接した細胞空間で占有又は蓄積するものであり、腫瘍細胞成長又は生存のモデュレーションを行う。例えば、炎症性応答及び免疫応答を支持するように通常機能している非悪性細胞は、腫瘍イニシエーション又は進行に寄与できる可能性がある。したがって、他に採用しうる実施形態では、腫瘍微小環境においてI型又はII型IL-4Rを発現する非悪性細胞の細胞生存を阻害すること、細胞増殖を阻害すること、又は細胞死若しくはアポトーシスを増強することのために、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含む融合タンパク質を使用できる。このような非悪性細胞は、腫瘍微小環境内に存在する骨髄由来サプレッサー細胞(例えば、骨髄由来単球及びtie-2発現単球)、又は抗原提示細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、B細胞)などの免疫調節性又は炎症性細胞でありえ、腫瘍進行を支持するように機能するT細胞サブセット(例えば、制御性T細胞及びTh2ヘルパー細胞)の阻害、及び/又は腫瘍微小環境内の1以上の炎症性サイトカインの産生の抑制ができる。腫瘍微小環境の非悪性細胞のうち、多くの腫瘍において高頻度で観察されるのは制御性T細胞であり、前記腫瘍にはホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(Shi et al,
Ai Zheng., 2004, 23(5):597-601(要約のみ))、悪性黒色腫(Viguier et al., J. Immunol., 2004, 173(2): 1444-53; Javia et al, J. Immunother., 2003, 26(l):85-93)
、並びに卵巣(Woo et al, Cancer Res., 2001, 61(12):4766-72)、消化管(Ichihara et al., Clin Cancer Res., 2003, 9(12):4404-4408; Sasada et a/., Cancer, 2003, 98(5): 1089-1099)、乳房(Liyanage et al, J Immunol., 2002, 169(5):2756-2761)、肺
(Woo et al, Cancer Res., 2001, 61(12):4766-72)、及び膵臓(Liyanage et al, J Immunol., 2002, 169(5):2756-2761)の癌が含まれる。制御性T細胞は、腫瘍細胞により分
泌されたケモカインに応答して、腫瘍部位で補充される。例えば、Curielら、Nat. Med.,
2004, 10:942-949を参照されたい。制御性T細胞の数の増加は、予後不良にも相関しう
る(Curiel et al, Nat. Med., 2004, 10:942-949; Sasada et al, Cancer, 2003, 98: 1089-1099)。制御性T細胞は逆に、化学療法後に低減することが観察されている(Beyer et al, Blood, 2005, 106:2018-2025)。腫瘍微小環境では、Th1細胞と比較するとT
h2細胞の率が高い可能性もあり、これは予後不良及び生存と関連する。他に採用しうる実施形態では、本発明に係る、cpIL-4-Badなどのアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーのメンバーを含む融合タンパク質は、例えば、Th2細胞を枯渇させることによりTh1>>Th2バランスを復元するために有用である。いくつかの実施形態では、本発明に係る、cpIL-4-Badなどのアポトーシス促進性Bcl-2ファミリーのメンバーを含む融合タンパク質は、腫瘍微小環境を無力化又は下方制御すべく、化学療法、放射線療法、免疫療法などに先駆けて、又はその間に、被験者に投与されてもよい。
【0154】
非悪性細胞は、線維芽細胞、筋線維芽細胞、グリア細胞、上皮細胞、脂肪細胞、脈管細胞(血液及びリンパ脈管内皮細胞及び周皮細胞を含む)、常在及び/又は補充の炎症性及び免疫性(例えば、マクロファージ、樹状細胞、骨髄サプレッサー細胞、顆粒球、リンパ球など)、上記非悪性細胞の何れかを生じさせるか又はそれに分化することができる常在及び/又は補充細胞、並びに当該技術分野で公知の、上記細胞と機能的に別異の亜型であることもできる。
【0155】
「被験者」は、処置を必要とする、ヒト、又は獣医の患者(例えば、マウス若しくはラットなどの齧歯動物、ネコ、イヌ、乳牛、ウマ、ヒツジ、ヤギ、又は他の家畜)などの哺乳動物であることができる。いくつかの実施形態では、「被験者」は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物などであってよい。被験者は、本願明細書に記載されるように、細胞増殖によって特徴付けられる状態を有するか又は有するリスクがあることが疑われるものでも、細胞増殖によって特徴付けられる状態であると診断されるものでも、又は細胞増殖によって特徴付けられる状態を有しないことが確認されている対照被験者であってもよい。細胞増殖によって特徴付けられる状態に対する診断方法、及びこのような診断の臨床的描写は、当業者に公知である。
【0156】
組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、徐放性製剤、又は粉末であることができ、薬学的に許容できる担体を用いて製剤化することができる。組成物は、トリグリセリドなどの従前の担体及び結合剤を用い、座薬として製剤化されうる。「医薬的に許容できる担体」という用語は、有効成分の生物活性の有効性に干渉せず、且つ宿主又は被験者に毒性ではない分散媒(carrier medium)又は媒体(vehicle)をいう。
【0157】
融合タンパク質は、医薬的に許容できる媒体と一緒に送達することができる。1つの例では、媒体は、安定性及び/又は送達特性を増強しうる。このため、本開示はまた、人工的膜小胞(リポソーム、ノイソーム(noisome)、ナノソーム(nanosome)などを含む)
、微小粒子又はマイクロカプセルなどの好適な媒体を、融合タンパク質の製剤に与え、又は薬学的に許容できるポリマーを含むコロイド状製剤として提供する。このような媒体/
ポリマーの使用は、徐放性融合タンパク質の徐放性を達成するのに有益でありうる。あるいは、又は加えて、融合タンパク質製剤は、ヒト血清アルブミンなどのタンパク質をインビボで安定化させる添加剤、又は当該技術分野で公知の、タンパク質治療剤のための他の安定剤を含みうる。融合タンパク質製剤は、例えば、注射によって、又はカテーテルを介して投与された場合に製剤の逆流を防ぐ作用をする1以上の粘度増強剤も含むことができる。このような粘度増強剤には、生体適合性グリコール及びスクロースが含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
1以上の融合タンパク質を含有する医薬組成物は、当該技術分野で公知の方法により、
好適な1以上の分散若しくは湿潤剤及び/又は懸濁剤であって前記したようなものを用いて、滅菌注射用の水性又は油性懸濁液として製剤化されうる。滅菌注射用調製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒な非経口的に(parentally)許容できる希釈剤又は溶剤中の滅菌注射用注射剤又は懸濁液でありうる。採用可能な許容できる媒体及び溶剤には、水、リンゲル液、乳酸リンゲル液及び等張の塩化ナトリウム溶液が含まれるが、これらに限定されない。他の例として、滅菌不揮発性油で、溶剤又は懸濁媒体として従来より採用されているもの、及び例えば合成モノ又はジグリセリドを含む、様々なブランド(bland)不揮発性油が挙げられる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の調製
に使用することができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は水溶性ポリマーに接合されて、例えば安定性若しくは循環半減期を高め、又は免疫原性を低減する。臨床的に許容できる、水溶性のポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリプロピレングリコールホモポリマー(PPG)、ポリオキシエチル化ポリオール(POG)(例えば、グリセロール)及び他のポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、又はポリオキシエチル化グルコース、及び他の炭水化物ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。PEGなどの水溶性ポリマーにポリペプチドを接合させるための方法は、例えば、米国特許公開第20050106148号及びその引用文献に記載されている。1つの例ではポリマーは、酸性エンドソーム区画から細胞質への薬物の遊離を増強するように設計されたpH感受性ポリマーである(例えば、Henry et ah, Biomacromolecules 7(8):2407-14, 2006参照
)。
【0160】
典型的には、ワクチンは、溶液として又は懸濁液としてのいずれかの注射剤型に調製される。注射に好適な固体形態もまた、エマルションとして、又はリポソームに封入されたポリペプチドを用いて調製されうる。細胞は、当該技術分野で公知の何れか好適な担体中にて注射される。好適な担体は、典型的には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、リピド凝集体、及び不活性ウイルス粒子などの、ゆっくりと代謝される巨大高分子を含む。このような担体は、当業者にとっては周知である。これらの担体は、アジュバントとしても機能しうる。
【0161】
アジュバントは、ワクチンの有効性を増強する免疫賦活剤である。有効なアジュバントには、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、ムラミルペプチド、バクテリア細胞壁成分、サポニンアジュバント、及び免疫賦活剤として作用して組成物の有効性を増強する他の物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0162】
ワクチンは、用量剤形に適合するように投与される。有効量とは、疾患又は障害の治療又は予防に有効な、単回投与量、複数回投与スケジュールにて投与されるワクチンを意味する。好ましくは、かかる用量は、新生物の成長を阻害するのに有効である。投与される用量は、処置すべき被験者、被験者の健康及び身体状態、被験者の免疫系が抗体を産生する潜在能力、望まれる保護の度合い、及び他の関連因子に応じて変化するであろう。必要とされる有効成分の正確な量は、医師の判断によるものとされよう。
【0163】
本願明細書に記載される医薬組成物は、意図された目的を成し遂げるのに有効な量の、1以上の融合タンパク質を含む。典型的には、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリーメンバーを含有する融合タンパク質を含む組成物は、細胞増殖によって特徴付けられる疾患、障害若しくは状態に既に罹患しているか、又はこのような疾患、障害若しくは状態などのリスクにある患者に、細胞増殖と関連する症候を治癒若しくは少なくとも部分的に停止させるのに、又は細胞成長を低減するのに十分な量で投与される。
【0164】
当業者はしたがって、投与すべき投薬量は規定される限定に支配されるものでないことを認識するであろう。治療目的のために投与する前に、融合タンパク質の投薬量は、加減するか、又は特定の目的のために改める必要があるかもしれず、例えば全身投与のために必要な融合タンパク質の濃度は、局所投与に使用される場合と異なりうる。同様に、治療剤の毒性は投与方法及び使用される組成物全体(例えば、緩衝液、希釈剤、さらなる化学療法剤など)によって変化しうる。
【0165】
本発明に係る医薬組成物の「有効量」には、治療上有効量又は予防上有効量が含まれる。「治療上有効量」とは、投薬量及び必要な期間で、疾患、障害又は治療されるべき状態の症候を寛解させるのに有効な融合タンパク質の量をいう。化合物の治療上有効量は、被験者の病状、年齢、性別、及び体重などの因子、並びにその化合物が被験者において所望の応答を引き出す能力に応じて変動しうる。投薬治療方式は、最適の治療反応をもたらすように調整されてよい。治療上有効量はまた、融合タンパク質の何らかの毒性又は有害な効果よりも治療上有益な効果が上回るものである。当業者の潜在能力をもってすれば充分に、化合物の治療上有効な用量の決定はなされる。例えば、治療上有効な用量は当初、本願明細書に記載されるものなどの細胞培養液アッセイ、又は動物モデルのいずれかにて、見積もることができる。「予防上有効量」とは、投薬量及び必要な期間で、神経障害の症候の発症の遅延、又は癌の寛解の継続などの、所望の予防的結果を成し遂げるのに有効な融合タンパク質の量をいう。適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために、動物モデルも使用することができる。このような情報は次いで、ヒトを含む他の動物における投与のための有用な用量及び経路を、当業者に公知の標準的な方法を用いて決定するために使用することができる。
【0166】
最終的な製剤中の融合タンパク質の濃度は、少なくとも0.1mg/mLで、少なくとも1ng/mL又は少なくとも1μg/mL又は少なくとも1mg/mLなどとすることができる。例えば、最終的な製剤中の濃度は、約0.01μg/mLと約1,000μg/mLの間であることができる。1つの例では、最終的な製剤中の濃度は、約0.01mg/mLと約100mg/mLの間である。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗アポトーシス性Bcl-2ファミリータンパク質、又はその断片を含む融合タンパク質は、約10ng/mLから約10,000ng/mLまでの範囲の濃度で、又は、約25ng/mL、50ng/mL、75ng/mL、100ng/mL、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、300ng/mL、350ng/mL、400ng/mL、450ng/mL、500ng/mL、550ng/mL、600ng/mL、650ng/mL、700ng/mL、750ng/mL、800ng/mL、850ng/mL、900ng/mL、950ng/mL、1000ng/mL、1500ng/mL、2000ng/mL、2500ng/mL、3000ng/mL、3500ng/mL、4000ng/mL、4500ng/mL、5000ng/mL、5500ng/mL、6000ng/mL、6500ng/mL、7000ng/mL、7500ng/mL、8000ng/mL、8500ng/mL、9000ng/mL、9500ng/mL、又は10000ng/mLなど、その間のいずれかの値で投与される。
【0168】
いくつかの実施形態では、アポトーシス促進性Bcl-2ファミリータンパク質、又はその断片を含む融合タンパク質は、約0.1ng/mLから約10,000ng/mLまでの範囲の濃度で投与される。
【0169】
しかしながら、投与されるべき化合物(1種以上)の実際の量は、治療されるべき状態、選択された投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重、及び応答性
、並びに患者の症候の重症度を含む関連状況を考慮して、医師により決定されることになる点は理解されるであろう。前記投薬量範囲は、例として示すに過ぎず、発明の範囲を限定することは何ら意図されない。場合によって、前記範囲の下限を下回る投薬量レベルで充分すぎることがあり、一方他の場合にあっては、有害な副作用を起こすことなくさらに多くの用量を用いうるが、これは例えば、1日全体にわたる投与のために先ず、当該さらに多くの用量をいくつかの少ない容量に分割することにより行なわれうる。
【0170】
当業者は、前記投薬量がとりわけ、使用される融合タンパク質の型、及び処置される障害又は状態の型に依存することになるとわかるであろう。
【0171】
一般に、本開示にかかる融合タンパク質は、実質的にヒト配列を含み、したがって、例えば、非ヒト配列を含む他の分子又は免疫毒素よりも抗原性が低い。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質は、少なくとも80%、例えば、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のヒト配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示にかかる融合タンパク質は、例えば、免疫毒素、又はIL-4又はIL-13などの未変性IL-4R結合タンパク質よりも実質的に低用量で投与することができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、前記融合タンパク質は、被験者に投与されると、あるレベルの抗体応答を誘発することがあり、ある場合にはこれが望ましくない副作用を導きうる。したがって、必要に応じて、融合タンパク質の抗原性を当該技術分野で公知のように、及び/又は本願明細書に記載されるように評定することができる。例えば、融合タンパク質のインビボ毒性効果は、処置中の動物体重に対するそれらの効果を測定すること、及びその動物の死亡後に血液学的プロファイル及び肝臓酵素分析を実施することによって評価することができる。融合タンパク質の一般的な毒性は、当該技術分野で公知の方法によって試験することができる。例えば、融合タンパク質の全体としての全身毒性は、単回静脈内注射後にマウスの100%(すなわちLD100)又はマウスの50%(すなわちLD50)が死亡する用量を求めることによって調べることができる。そのLD100又はLD50の少なくとも約2、5、又は10倍未満の用量を、ヒトなどの他の哺乳動物への投与に対して選択することができる。
【0173】
本願明細書に記載される融合タンパク質に対する抗体応答の反応速度論及び大きさを、免疫が保たれているマウスにおいて求めることができ、それらは免疫が保たれているヒトにおいて使用される可能性のある投薬計画の開発を容易にするために使用できる。C57-BL6系統などの免疫が保たれているマウスに融合タンパク質の静脈内用量が投与される。種々の間隔で(例えば、単回投与後、複数回投与後)マウスを屠殺して、血清を得る。抗融合タンパク質抗体の存在を検出するために、ELISAによるアッセイを使用することができる。
【0174】
マウスからの血清試料は、当該技術分野で公知のとおりに抗融合タンパク質抗体の存在について評定できる。別の例として、Sticklerら、J. Immunotherapy, 23 :654-660, 2000に記載のとおりに、タンパク質の抗原性を決定するためにエピトープマッピングも使用
できる。手短に言えば、樹状細胞及びCD4+ T細胞として知られる免疫細胞を、注目
するタンパク質に曝されていないドナー群(community donors)からの血液より単離する。当該タンパク質長にかかる合成小ペプチドを次いで、培養中の細胞に添加する。特定のペプチドの存在に応答した増殖が、T細胞エピトープは当該配列に包含されていることを示唆する。このペプチド配列はその後、前記融合タンパク質において削除または修飾して、これによりその抗原性を低下させることができる。
【0175】
治療的有効性及び毒性も、例えば、半有効量、つまりED50(すなわち集団の50%
で治療上有効な用量)及び半致死量、つまりLD50(すなわち集団の50%に対して致死的な用量)の決定によるなど、標準的な薬剤手段によって決定することができる。治療的用量と毒性効果量との用量比は、「治療指数」として知られており、比、LD50/ED50として表現できる。細胞培養液アッセイ及び動物試験から得られたデータを、ヒト又は動物での使用のための広範な投薬量を製剤化するのに使用できる。このような組成物に含有される投薬量は通常、ED50を含む濃度の範囲内にあり、低毒性又は無毒性を示す。その投薬量は、採用される剤形、被験者の感受性、及び投与の経路などに応じてこの範囲内で変動する。
【0176】
前記融合タンパク質の投与は、傷害内とすることができ、例えば、直接的に、アポトーシスの組織部位内へ;細胞成長を必要とする部位内へ;細胞、組織又は器官が細胞死のリスクにある部位内へ;又は過増殖の部位内へ若しくは腫瘍内への直接注射によるものとされうる。あるいは、融合タンパク質は全身投与することができる。融合タンパク質を化学療法剤と組み合わせて投与することを含む併用療法の方法のため、組成物が投与される順序は入れ替え可能である。同時投与も想定される。
【0177】
癌の処置において典型的には、融合タンパク質は患者に全身投与され、これは、例えば、患者の血流内へのボーラス(巨丸剤)注射又は持続注入による。あるいは、融合タンパク質は、局所的に、腫瘍の部位に(腫瘍内に)投与されてもよい。融合タンパク質が腫瘍内に投与される場合、その投与は例えば、局所的、局部的、限局的、全身的、対流強化送達(convection enhanced delivery)又はこれらの組み合わせなど、何れの経路とすることもできる。
【0178】
1以上の既知化学療法剤と併用する場合、その化学療法剤の投与前若しくは投与後に化合物を投与することができ、又はそれらを同時に投与することもできる。1以上の化学療法剤は、例えば、ボーラス注射若しくは持続注入により全身に投与されてもよく、又はそれらは経口投与されてもよい。
【0179】
動物への投与のために、様々な経路による投与用に医薬組成物を製剤化できる。例えば、組成物を局所、直腸若しくは非経口投与用に、又は吸入若しくはスプレーによる投与用に製剤化できる。本願明細書で使用する場合、「非経口」の用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、髄腔内、胸骨内注射又は注入技術を含む。腫瘍内への直接注射又は注入も企図される。対流強化送達もまた、融合タンパク質を投与するのに使用することができる。
【0180】
1つの例では、ブラキセラピー(brachytherapy)の複数の注射アプローチと同様の投
与アプローチを用いて癌を有する被験者に融合タンパク質を注射することができる。例えば、医薬組成物又は製剤の形態にあり、且つ適切な投薬単位とされた精製融合タンパク質の複数のアリコートを、針を用いて注射してもよい。融合タンパク質の投与の他に採用しうる方法は、当業者には明らかであろう。このような方法には、例えば、治療が必要な被験者に融合タンパク質の持続注入を提供するために、カテーテル又は埋め込み型のポンプを使用することが含まれる。
【0181】
例えば脳腫瘍又は他の局所化腫瘍を処置すべく、例えば、融合タンパク質の注入用カテーテルの配置のために、当該技術分野で公知のような、ソフトウェア計画プログラムを、ブラキセラピー処置及び超音波と組み合わせて使用できる。例えば、針の位置づけ及び配置を、一般に超音波ガイド下に成し遂げることができる。全量、したがって患者に投与される注射及びデポジット(deposits)の数は、例えば、処置すべき器官の容量又は面積に従って調整することができる。好適なソフトウェア計画プログラムの例は、脳への対流強化送達のための、ブラキセラピー処置計画プログラムVariseed 7.1(Varian Medical Systems, Palo Alto, Calif.)又はiPlan(BrainLab, Munich, Germany)である。このよう
なアプローチは、とりわけ前立腺癌及び脳癌の処置において成功裡に実施されている。
【0182】
融合タンパク質は、中枢神経系(CNS)において細胞生存を阻害、又は細胞増殖を阻害するのに使用できる。送達の部位が脳である場合、融合タンパク質は脳に送達することができなければならない。血液脳関門は、大循環から脳及び脊髄内への多くの治療薬の取り込みを制限する。血液脳関門を越える分子は、2つの主要機構すなわち、自由拡散及び促通輸送を使用する。血液脳関門の存在がゆえに、CNS内の特定の融合タンパク質が有益な濃度に達するのに、特定の薬物送達方略の使用が必要となりうる。CNSへの融合タンパク質の送達は、いくつかの方法によって成し遂げることができる。
【0183】
一つの方法は、神経外科的技術に基づくものである。例えば、心室内、病巣内、又は髄腔内注射など、CNS内への直接の物理的導入によって融合タンパク質を送達することができる。心室内注射は、例えば、オマヤレザバー(Ommaya reservoir)などのリザーバに付着させた心室内カテーテルによって容易に行うことができる。導入の方法はまた、再充電可能又は生分解性のデバイスによっても提供される。別のアプローチは、血液脳関門の透過性を高める物質による、血液脳関門の破壊である。例として、マンニトールなどの低拡散性物質、エトポシドなどの脳血管透過性を高める医薬品、若しくはロイコトリエンなどの血管作用薬の動脈内注入、又はカテーテルによる対流強化送達(CED)が挙げられる。さらに、組成物を処置を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい場合があり、これは例えば、外科手術の間の局所注入により、注射により、カテーテルの使用により、又は埋没物(implant)の使用(埋没物は、多孔質、非多孔質、又はゲル状の材料の
ものであり、サイラスティック膜などの膜、又は繊維を含む)によって成し遂げることができる。好適な膜は、Gliadel(登録商標)(Eisai Inc.)である。
【0184】
細胞死のモデュレーションを必要としている細胞(例えば、患者の細胞)への治療剤の導入のために、非ウイルスのアプローチを採用することができる。例えば、リポフェクション(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al., Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989; Staubinger et al., Methods in Enzymology 101 :512, 1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジン接合(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263 : 14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264: 16985, 1989)の存在下に細胞
内へ核酸分子を投与することによって、又は外科的条件下にマイクロインジェクションすることによって(Wolff et al., Science 247: 1465, 1990)、当該核酸分子を導入する
ことができる。好ましくは核酸は、リポソーム及びプロタミンと組み合わせて投与される。
【0185】
遺伝子導入は、インビトロ形質移入を含む日ウイルスの手段を用いて成し遂げることもできる。このような方法には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔、及びプロトプラスト融合の使用が含まれる。リポソームも、細胞内へのDNAの送達に対して潜在的に有益でありうる。患者の病変組織内への融合タンパク質の移植は、培養可能細胞型内にエキソビボで正常核酸を導入し(例えば、自家又は異種の初代細胞又はその後代細胞)、次いでその細胞(またはその子孫)を標的指向化組織内に注射することによって成し遂げることもできる。
【0186】
ポリヌクレオチド療法において使用するためのcDNA発現は、好適なプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアン・ウイルス40(SV40)、又はメタロチオネインプロモーター)の何れかから導かれ、適切な哺乳類の制御エレメントの何れかによって制御されることができる。例えば、所望に応じて、特定の細胞型において遺伝子発現を優先的に導くことが知られているエンハンサーを、核酸の発現を導くために使用することができる。使用されるエンハンサーとしては、組織特異的又は細胞特異
的エンハンサーとして特徴付けられるものを挙げることができるが、これらに限定されない。あるいは、ゲノムクローンが治療的構築体として使用されるのであれば、同族の制御配列によって、又は所望に応じ、前記プロモーター又は制御エレメントのいずれかを含め異種供給源に由来する制御配列によって、制御を媒介させることができる。
【0187】
本発明を、以下の実施例にてさらに説明する。
【実施例0188】
実施例1
【0189】
本実施例は、環状順列置換されたIL-4タンパク質の作製を記載する。
【0190】
IL-4のコード配列は、新しいアミノ末端及び新しいカルボキシ末端を創出して、認識されるように設計している。再編制の部位を選択して、コーディング領域を、合成により、又は未変性配列を鋳型として用いて作り出す。別々のコーディング領域を増幅するためにPCRを使用することができ、かかる別々の断片の5 ’及び3 ’端が重なるように設計することで新しいコード配列の形成が可能になり、当該コード配列では、新しく作製されたペプチドが、例えば未変性タンパク質では第40番目のアミノ酸でありうるものが第一アミノ酸をエンコードできるようになっている。環状順列置換されたリガンド作製の具体例は、米国特許第6,011,002号に提供されている。
【0191】
以下の配列は、参考として使用される。
【0192】
【0193】
実施例2
【0194】
cpIL-4-BADは、標準的な技術を用いて調製し、インビトロでIL-4Rαを発現している癌細胞につき、及び無胸腺ヌードマウスモデルにおけるIL-4Rα陽性異種移植腫瘍につきcpIL4-PEを参照として用いて調べた。その結果、cpIL-4-BADは、癌細胞の死滅、及び腫瘍の退行に有効であることが示唆された。
【0195】
より詳細には、pET24a発現ベクター内のキメラプラスミドcpIL-4BADでBL21(DE3)pLysS細菌を形質導入することにより、cpIL-4-BAD融合タンパク質を調製した(
図1)。新しく形質転換された細菌をカナマイシンを含むLB上に播種した。コロニーを拾い、グルコース、MgCl
2及びカナマイシンが濃縮されて
いるスーパーブロス(superbroth)1リットルに移し、1mM IPTGで細胞を誘導し
た。細胞の成長を、6時間モニターした。IL-4-BAD融合タンパク質は、HiTrap Columnと、次いでMonoSカラムを2回使用して、リフォールディングさせて精製し、その後cpIL-4-BAD画分をSDS-PAGE電気泳動によって評価した。この方略で、約0.980mg/LのcpIL-4BAD(pH6.5)、及び約2.930mg/LのcpIL-4BAD(pH6.8)が得られた。
【0196】
6ウェルのペトリ皿に四つ組で、IL-4Rα陽性腫瘍細胞(U 251細胞及びDa
udi細胞)を完全培地中に一晩播種した。0.1~1000ng/mLのcpIL-4BADを添加して、プレートをCO2インキュベーター中で37℃にて5日間インキュベーションした。5日目に、プレートを1 X PBSで洗浄し、細胞をトリプシン処理で剥離した。トリプシンを不活化した後、トリパンブルー色素排除技術を用いて生細胞を計数した。
【0197】
その結果、cpIL-4BAD融合タンパク質は、インビトロで濃度依存的にU 25
1細胞を死滅させ、IC
50値は約0.6ng/mLであることが示唆された(
図2)。100倍過剰のIL-4は、cpIL-4BADがU 251細胞を死滅させる能力を阻
止し、cpIL-4BAD活性が特異的であることを立証するものであった(
図3)。また、5日間の細胞生存率アッセイで、IC
50値は約0.3ng/mLから1000ng/mLを越えるまでに上昇した。
【0198】
cpIL-4BAD融合タンパク質は、インビトロで濃度依存的にDaudi細胞を死滅させ、IC
50値は約0.1ng/mLであった(
図4)。100倍過剰のIL-4がまた、cpIL-4BADがDaudi細胞を死滅させる能力を阻止し、cpIL-4BAD活性が特異的であることを立証するものであった(
図5)。5日間の細胞生存率アッセイで、IC
50値は約0.3ng/mLから1000ng/mLを越えるまでに上昇した。
【0199】
コロニー形成アッセイで、cpIL-4BAD融合タンパク質は、IL-4Rα陽性腫瘍細胞のコロニー数を減少させることも見出された。より詳細には、5000のU 25
1細胞を10cm培養プレート(合計プレート6枚)に播種し、cpIL-4BADを添加してその細胞を10日間インキュベーションした。コロニーをCrystal Blueで染色して計数した。その結果、cpIL-4BADは、インビトロで濃度依存的にU 251コロ
ニー数を低減させ、IC
50値は約5ng/mLであることが示唆された(
図6)。
【0200】
U 251腫瘍細胞で皮下神経膠腫腫瘍を発症させた後の無胸腺マウスにおいて、cp
IL-4BAD融合タンパク質の有効性を、評定した。より詳細には、cpIL-4BADを腫瘍内(IT)に100μg/kg(注射6回)及び腹腔内に(IP)100μg/kg(注射6回)、注射した。0.2% HAS/PBSを、媒体対照として使用した。評定される結果は、腫瘍サイズ及び生存であった。その結果、cpIL-4BADの腫瘍内投与は、プラセボ対照で処置された動物と比較して6回の注射後に、有意に腫瘍成長を退行させることが示唆された。腹腔内投与は、腫瘍内処置マウスと比較して劇的に腫瘍を退行させた。マウスの両群における腫瘍は40日を越えると再発し、ここで対照群のマウスは第36日に2000mm3の腫瘍となっていたため倫理上の理由で安楽死させた(
図7)。cpIL-4BADで処置されたマウスは、プラセボ処置マウスより長期間生存してもいた(
図8)。
【0201】
実施例3
【0202】
さらに6つのIL-4Rα陽性細胞系を、cpIL-4BAD融合タンパク質及びcp
IL-4PEに対するそれらの感受性につき、同様の実験条件下で調べた。IC50値は、トリパンブルー色素排除技術を用いて細胞を計数することによって決定した(表3)
【0203】
【0204】
実施例4
【0205】
IL-4BAD、cpIL-4BAD及びcpS4-BAD融合タンパク質を発現させて精製した。より詳細には、IL-4BAD、cpIL-4BAD及びcpS4-BADのcDNAをpGW07大腸菌発現ベクターのBamFII/XhoI部位にPCRクローニングした(
図9)。得られたベクターは、DNA配列決定によって確認した(
図10A-D)。
【0206】
タンパク質発現は、大腸菌細胞において実施した。IL-4BAD、cpIL-4BAD及びcpS4-BADタンパク質を、不溶性型で1L培養物において発現させ、IMACを用いて変性条件下に精製し、その後「迅速希釈」タンパク質リフォールディングを行った。非還元SDS-PAGEにより調べたところ、「迅速希釈」によるリフォールディングで、凝集体のないインタクトなタンパク質が生成されていた。最終的な試料サイズ及び濃度は以下のとおりであった。IL-4BADは、UV280nmによる測定で0.24mg/mLにて約3.5mL、(1mg/mlでのUV280nm吸光度=1.14)であった。cpIL-4BADは、UV280nmによる測定で0.23mg/mLにて約3.5mL(1mg/mlでのUV280nm吸光度=1.13)であった。cpS4-BADは、UV280nmによる測定で0.23mg/mLにて約3.5mL(1mg/mlでのUV280nm吸光度=1.25)であった。タンパク質は、保存用緩衝液組成物:500nM NaCL、10mM Na-リン酸塩、pH7.0、1%グリセロール、1μΜ EDTA、0.01%Tween20中で保存した。
【0207】
BL21(DE3)pLysS-RARE2細胞を、IL-4BAD、cpIL-4BAD及びcpS4-BADタンパク質発現構築体で形質転換させ、100μg/mLのAmpを追加したLBプレートに播種し、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、プレートからのコロニーを掻き取って、100μg/mLのAmpを含むLB液体培地に再懸濁させた。次いで培養物を曝気しながら37℃で成長させ、細胞培養液のOD600が約0.5に達したら1mM IPTGによってタンパク質発現を誘導した。誘導は約4時
間、30℃にて継続した。その後細胞ペレットを集めて-20℃で保存した。誘導しなかった培養物及び誘導した培養物の試料10μLを50μLの還元タンパク質ローディング緩衝液中で95℃にて10分間沸騰させることにより溶解させてSDS-PAGEゲルに流した。誘導後4時間に集めた試料1mLからの細胞は、低浸透圧性緩衝液中で溶解させ、超音波処理して13,000rpmで10分間遠心分離した。可溶性及び不溶性の画分
からのアリコートを、還元タンパク質ローディング緩衝液中で沸騰させて、SDS-PAGEゲルで分析した。IL-4BAD、cpIL-4BADタンパク質に対して観察された概算発現レベルは、粗製材料の50mg/Lより多かった。cpS4-BADに対して観察された概算発現レベルは50mg/Lより多かった。IL-4BADは、ほぼ完全に不溶性であることが見出され、若干の可溶性型が含まれていた(5%未満)。cpS4-BADは主に、不溶性の画分中にあった。
【0208】
誘導された培養物からの細胞ペレットを室温で溶解させ、封入体画分を集めてPBS-Tで洗浄した。不溶性材料は、8M尿素で可溶化し、3mLの、Niがチャージされた樹脂に結合させた。樹脂は、15倍カラム容量の洗浄緩衝液で洗浄し、イミダゾールを含む洗浄緩衝液8倍カラム容量の段階的勾配溶出にて、結合したタンパク質を溶出させた。各画分から7.5μLをSDS-PAGEゲルで分析した。最大量のIL-4BAD(約6mg)及びcpIL-4BAD(約8mg)の画分を合わせて、リフォールディングさせた。残りの画分は、-20℃で保存した。
【0209】
IL-4BAD及びcpIL-4BAD画分を合わせ、1mM DTTの添加によって
還元し、各透析緩衝液変化で増加する濃度で尿素を追加した保存緩衝液(150mM N
aCl、10mM HEPES、pH7.4、0.01%Tween20)に対する、緩
やかな段階的透析に付した。各透析段階後に、UV分光法によりタンパク質濃度を測定した:IL-4BADは約0.8mgであり;cpIL-4BADは約0.45mgであった。試料はその後、SDS-PAGEゲルに流した。
【0210】
25μLの各タンパク質(~0.6mg/mL、200mMイミダゾール画分)を、以下の緩衝液1mLで希釈した:20mM HEPES、pH7.4、1%グリセロール、
10μΜ EDTA、0.01%Tween(緩衝液1);10mM Na-リン酸塩、pH7.0、1%グリセロール、10μΜ EDTA、0.01%Tween(緩衝液2)
;及びPBS、pH7.2(緩衝液3)。試料は、室温で一晩保存した。翌日、試料を13,000rpmで10分間回転させ、各試料におけるペレットの存在を観察して表2に記録した。(+++)は、大量のペレットを示し、(-)は目視可能なペレットがないことを示す。
【0211】
【0212】
試料は、非還元SDS-PAGEゲルでも分析した。リフォールディングされた試料は、Amicon 10 kDa MWCOを用いて100μLに濃縮し、回転沈降させて、各試料のアリコート7.5μLをSDS-PAGEゲルに流した。
【0213】
迅速希釈フォールディングを用いて精製プロセスを繰り返した。IL-4BAD、cpIL-4BAD又はcpS4-BADを含有する200mMイミダゾール画分4mlを、200mLのリフォールディング緩衝液(500mM NaCl、10mM Na-リン酸塩、pH7.0又は6.0又は7.8、1%グリセロール、10μΜ EDTA、0.0
1%Tween)で迅速に希釈し、室温で一晩インキュベーションして、4,000rpm、4℃にて20分間回転沈降させ、Amicon 10 kDa MWCOを用いて3mLに濃縮し、そしてDG-10カラムを用いて緩衝液を保存緩衝液(500mM NaCl、10mM Na-リン酸塩、pH7.0又は6.0又は7.8、1%グリセロール、1μΜ EDTA、
0.01%Tween)に交換した。最終的な試料濃度は以下のとおりであった:約0.24mg/mLにて3.5mLのIL-4BAD;約0.23mg/mLにて3.5mLのcpIL-4BAD。最終試料を、SDS-PAGEゲルに流した。
【0214】
cpS4-BADの最終濃度は、約0.23mg/mLにて約3.5mLであった。最終試料は、SDS-PAGEゲルに流した。
【0215】
実施例5
【0216】
pKFR4-BAD-H6融合タンパク質(
図11A-B)を以下のとおりに調製した。pKFR4-BAD-H6のcDNAは、pET-21a(+)ベクターのNdel/Xhol部位にPCRクローニングした。次いでベクターをHMS174(DE3)細胞に形質転換させて、0.1mM IPTGで3時間誘導した。誘導前後に試料をSDS-
PAGEゲルに流した。細胞をペレット化して、20mM Tris-HCl、300m
M NaCl、20mMイミダゾールを含有するpH8.0の緩衝液中で超音波処理する
ことにより溶解させ、試料をSDS-PAGEゲルに流した。
【0217】
封入体を、20mM Tris-HCl、300mM NaCl、20mMイミダゾール、20mM β-ME、7M GuaHCl、pH8.0の溶解用緩衝液中に溶解させた。その後上清をNi2+アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。pKFR4-BAD-H6は、還元及び非還元条件下に20mM Tris-HCl、300mM NaCl、300mMイミダゾール、8M尿素、pH8.0によって溶出させた。精製プロセス全体にわたって試料を採取した。
【0218】
精製後、pKFR4-BAD-H6を透析緩衝液:0.1%TFA、30%アセトニトリル中、還元条件及び非還元条件下に透析して、約2.67mg/mLの濃度が得られた。
【0219】
実施例6
【0220】
IL-4Rを発現している細胞系に対する融合タンパク質の効力を評価するために、10%FBS(Life Technologiesより)、2mM L-グルタミン(Gibcoより)及び10
mM HEPES(Gibcoより)を含有するRPMI1640(Gibcoより)中でI型IL
-4Rを発現するHH懸濁細胞を培養した。cpS4-BADを、その細胞懸濁液に加えた。細胞懸濁液を約1×104細胞/ウェルの量で96ウェルIsoplateへと注ぎ込んだ。細胞懸濁液を5%CO2インキュベーター中37℃にて48時間インキュベーションした。48時間のインキュベーション終了前に、100μCi/mLの[3H]-チミジンを含む完全培地を調製して10μLを培養の各ウェルに添加した。[3H]-チミジンと6時間インキュベーションした後に、50μLの50%トリクロロ酢酸を各ウェルにゆっくりと加えて4℃で2時間インキュベーションした。その後プレートをdH20で5回洗浄して風乾した。100μLのシンチレーション液を各ウェルに加えて、プレートを室温で一晩放置した。翌日、MicroBeta Triluxにて放射活性を読み取った。データを集め、対照ウェル(細胞のみ)からの読み取り値を用いて標準化した。バックグラウンドの読み取り値(ブランク)は全てのウェルの読み取り値から差し引き、阻害(%阻害)を計算した。cpS4-BADのIC50は約126.3ng/mLであり、これは参照として用いたMDNA55(cpIL4-PE;362.4ng/mL)よりも約3倍高かった。
【0221】
すべての引用文献は、参照により本願明細書に援用する。
【0222】
本発明を1以上の実施形態に関して説明している。しかしながら当業者には、請求項に定義する本発明の範囲から逸脱せずに、いくらかの変更及び修飾を施しうることが明らかであろう。