(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052648
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】高CA反応性アルミノケイ酸塩材料を含むジオポリマー組成物の硬化時間の制御
(51)【国際特許分類】
C04B 28/26 20060101AFI20230404BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20230404BHJP
C04B 22/12 20060101ALI20230404BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230404BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20230404BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20230404BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230404BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20230404BHJP
C04B 18/162 20230101ALI20230404BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20230404BHJP
B28C 7/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B22/08 B
C04B22/12
C04B22/08 Z
C04B18/14 A
C04B14/10 A
C04B22/06 Z
C04B22/08 A
C04B18/08 Z
C04B20/00 B
C04B18/162
C04B22/14 A
B28C7/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010132
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2020531686の分割
【原出願日】2018-11-16
(31)【優先権主張番号】62/599,068
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/703,295
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/721,021
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504228117
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴン、ウェイラン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、フイ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツェ、ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】ペグ、イアン エル.
(57)【要約】
【課題】 硬化遅延剤を使用することによる硬化時間の適切な制御の改善である。
【解決手段】 本開示は、少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、少なくとも1つの遅延剤、及び少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液を含む制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、
少なくとも1つの遅延剤、及び
少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液
を含む制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、低CaクラスFフライアッシュ(FFA)及び高炉スラグ(BFS)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
前記低CaクラスFフライアッシュ(FFA)が約8重量%以下の酸化カルシウムを含むフライアッシュである、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
前記フライアッシュが少なくとも65重量%の非晶質アルミノケイ酸塩相を含む、請求項3に記載のジオポリマー組成物。
【請求項5】
前記フライアッシュが、60μm以下、50μm以下、45μm以下及び30μm以下のうちの1つの平均粒子直径を有する、請求項3に記載のジオポリマー組成物。
【請求項6】
前記低CaクラスFフライアッシュ(FFA)が5%以下の強熱減量(LOI)を有する、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高CaクラスFフライアッシュ(FFA)、クラスCフライアッシュ(CFA)、高炉スラグ(BFS)、ガラス質ケイ酸カルシウム(VCAS)、ボトムアッシュ、及びクリンカーキルンダスト(CKD)の群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項8に記載のジオポリマー組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高炉スラグ(BFS)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、クラスCフライアッシュ(CFA)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項12】
前記アルカリケイ酸塩活性剤溶液が、金属水酸化物及び金属ケイ酸塩を含み、前記金属が、カリウム、ナトリウム又は両方の組み合わせである、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの遅延剤が、アルカリ溶液中で加水分解し、アルカリケイ酸塩活性剤溶液中に存在するシリケート種を共沈させる可溶性金属塩である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項14】
前記金属塩が、塩化バリウム無水物、塩化バリウム二水和物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化鉛、硝酸鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、及び硫酸ストロンチウムからなる群から選択される、請求項13に記載のジオポリマー組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの遅延剤が、塩化バリウム無水物、塩化バリウム二水和物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、及びメタホウ酸バリウム一水和物からなる群から選択される、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの遅延剤が、約0.1~約10%BWOB、より好ましくは約0.25~約5重量%BWOBの量で使用される、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの骨材をさらに含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項18】
少なくとも1つのミクロン又はサブミクロンのフィラーをさらに含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの遅延剤を水に溶解し、ジオポリマー製品を製造するために他の成分と混合する前に少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液と組み合わせる、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つの遅延剤を水に溶解して遅延剤溶液を形成させ、そして前記遅延剤溶液を、ジオポリマー製品を製造するために他の成分と混合するときに前記少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液と共に添加する、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つの遅延剤を水に溶解して遅延剤溶液を形成させ、そして前記活性剤溶液を乾燥成分と混合した後に前記遅延剤溶液を加える、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項22】
初期硬化時間が約25分~約24時間である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項23】
初期硬化時間が約45分~約180分である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項24】
初期硬化時間が約90分~約360分である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項25】
少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、少なくとも1つの遅延剤及び少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液を組み合わせること
を含む、制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、低CaクラスFフライアッシュ(FFA)及び高炉スラグ(BFS)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記低CaクラスFフライアッシュ(FFA)が、約8重量%以下の酸化カルシウムを含むフライアッシュである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高CaクラスFフライアッシュ(FFA)、クラスCフライアッシュ(CFA)、高炉スラグ(BFS)、ガラス質ケイ酸カルシウム(VCAS)、ボトムアッシュ、及びクリンカーキルンダスト(CKD)の群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高炉スラグ(BFS)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、クラスCフライアッシュ(CFA)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記遅延剤が、可溶性金属塩を水に溶解することによって作製された遅延剤溶液を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記可溶性金属塩が、塩化バリウム、塩化バリウム脱水物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸バリウム水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム及び硫酸ストロンチウムのうちの1つから選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記遅延剤溶液を、他のすべての成分と混合する前に、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記遅延剤溶液及び前記アルカリケイ酸塩活性剤溶液を、他のすべての成分と混合するときに別々に添加する、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記遅延剤溶液を、他のすべての成分と混合する前に、約10分、30分、及び24時間のうちの1期間アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された発明は、概して、ジオポリマー組成物用の混和剤に関する。より具体的には、本発明は、特定の用途に使用され得るジオポリマー組成物及びジオポリマー系における硬化を効率的に制御するための遅延混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ある特定の反応性高Caアルミノケイ酸塩で作製されたジオポリマーは、ケイ酸カルシウム水和物とアルミノケイ酸カルシウム水和物ゲルが瞬時に形成されるため、非常に速く硬化し、固まることになる。工学技術を実践する際、ジオポリマーの硬化時間についてはかなり長いものとするべきである。これは、ポゾラン結合剤を使用して作製されたコンクリート又はモルタルが、輸送と配置を可能にするのに十分長い硬化時間を必要とすることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、硬化時間が長すぎると不経済となる。すなわち、硬化遅延剤を使用することによる硬化時間の適切な制御の改善は、建設及び建築産業におけるジオポリマー材料の適用を成功させるために重要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の概要)
第1の広範な実施態様によれば、本開示は、少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、少なくとも1つの遅延剤、及び少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液を含む制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物を提供する。
第2の広範な実施態様によれば、本開示は、少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、少なくとも1つの遅延剤及び少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液を組み合わせることを含む、制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物の製造方法を提供する。
【0005】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の具体例としての実施形態を示し、上記の全般的な説明及び以下の詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施形態による、0%~5%の塩化バリウム一水和物BWOBを含有するケイ酸ナトリウム活性剤溶液のラマンスペクトルを示す。
【0007】
【
図2】本開示の一実施形態による、0.5%、0.75、0.875及び1.0%の塩化バリウム一水和物BWOBを含む共沈したシリケート材料のラマンスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
用語の定義が一般的に使用される用語の意味から逸脱している場合、出願人は、特に示されていない限り、以下に提供される定義を利用することを意図している。
【0009】
前述の全般的な説明及び以下の詳細な説明は、代表的及び説明的なものにすぎず、主張されるいかなる主題をも制限するものではないことを理解されたい。本出願では、特に明記しない限り、単数形の使用には複数形の場合が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に他のことを示さない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。本出願では、特に明記しない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。さらに、「含んでいる(including)」という用語ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0010】
本開示については、「含んでいる(comprising)」という用語、「有する(having)」という用語、「含んでいる(including)」という用語、及びこれらの単語の変形は、制約のないものであり、列挙された要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。
【0011】
本開示について、「上(top)」、「下(bottom)」、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「上方(above)」、「下方(below)」、「左(left)」、「右(right)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、「上へ(up)」、「下へ(down)」などの方向を示す用語は、本開示の様々な実施形態を説明する際の便宜のためにのみ使用されている。本開示の実施形態は、様々な方法で方向付けられ得る。例えば、図面に示されている図、装置などは、裏返されたり、任意の方向に90度回転されたり、反転されたりすることもあり得る。
【0012】
本開示について、値又は特性は、ある値が、その値、特性又は他の因子を使用して数学的計算又は論理決定を実行することによって導出される場合、その特定の値、特性、条件の満足度、又は他の因子に「基づいて(based)」いる。
【0013】
本開示については、より簡潔な説明を提供するために、本明細書に示される量的表現の中には、「約(about)」という用語で修飾されないものもあることに留意されたい。「約」という用語が明示的に使用されているか否かにかかわらず、本明細書で与えられたすべての量は、実際の所与の値を指すことを意味し、かかる所与の値についての実験及び/又は測定の条件による近似値を含め、当業界における通常の技能に基づいて合理的に推測されるような所与の値に対する近似値を指すことも意味する。
【0014】
本開示について、用語「実際の温度(actual temperature)」は、温度計によって測定される、任意の特定の場所における空気の実際の温度を指す。
【0015】
本開示の場合、用語「BWOB」は、材料が特定の結合剤又は結合剤のブレンドの総量に基づいて添加されるときにセメントに添加される材料の量(パーセント)として一般に認識される「結合剤の重量(by weight of binder)」を指す。ジオポリマー材料の場合、結合剤は通常、アルカリ溶液で活性化され得るポゾラン前駆体と呼ばれるポゾラン材料である。
【0016】
本開示の場合、「セメント」という用語は、他の材料を硬化させ、固め、及び接着させてそれらを結合させる、建設に使用される物質である結合剤を指す。セメントを単独で使用することはめったになく、砂と砂利(骨材)を結合するために使用し得る。細骨材と混合したセメントは、石積み用のモルタルを生成するか、砂と砂利と混合してコンクリートを生成する。建設に使用されるセメントは通常無機物であって、多くの場合石灰又はケイ酸カルシウムベースであり、水の存在下でセメントが水和する能力に応じて、水硬性又は非水硬性として特徴付けることができる。
【0017】
本開示の場合、「コンクリート」という用語は、壊れた石又は砂利、砂、セメント材料、及び水の混合物から作られた、型に広げたり流し込んだりすることができ、硬化時に石のような塊を形成する、重くて粗い建築材料を指す。いくつかの実施形態は、時間とともに固くなる流動性セメント(セメントペースト)で一緒に結合された細骨材及び粗骨材から構成される複合材料を含み得る。最も頻繁にポルトランドセメントが利用され得るが、時にはアルミン酸カルシウムセメントなどの他の水硬性セメントが使われることもあり得る。ジオポリマーは、ポルトランドセメントを含まない新しいタイプのセメント材料であると考えられている。
【0018】
本開示の場合、用語「ジオポリマー(geopolymer)」は、ポルトランドセメントを含まない持続可能なセメント結合剤系を指す。狭義には、開示された発明のジオポリマーは、有機熱硬化性ポリマーと同様の三次元ネットワーク構造を有する無機ポリマーに関連している。開示されているジオポリマーのバックボーンマトリックスは、ゼオライトのフレームワークのX線非晶質類似体であり、酸素架橋によって結合されたSi原子及びAl原子の四面体配位を特徴とし、AlO4
-についての電荷バランサーとして会合したアルカリ金属カチオン(通常はNa+及び/又はK+)を伴う。開示された発明のジオポリマーは、固体アルミノケイ酸塩粉末(用語、ポゾラン前駆体)とアルカリ活性剤の反応の結果として、アルカリアルミノケイ酸塩及び/又はアルカリアルカリ土類アルミノケイ酸塩相で構成されるアルカリ活性化材料(AAM)の1分類としてより広く見なされる可能性がある。
【0019】
本開示の場合、用語「ジオポリマー組成物(geopolymer composition)」は、固体又は液体形態のポゾラン前駆体及びアルカリ活性剤からなる混合比率のものを指す。さらに、ジオポリマー組成物は、用途に応じて、細骨材及び粗骨材、繊維及び他の混合物をさらに含み得る。
【0020】
本開示の場合、用語「モルタル」は、石、レンガ、及びコンクリートブロックなどのビルディングブロックを結合し、それらの間の不規則なギャップを埋めて密閉し、時には石積みの壁における装飾的な色やパターンを追加するために使用される細骨材を含むワーカブルペースト(workable paste)を指す。最も広い意味で、モルタルには、ピッチ、アスファルト、及び泥レンガの間で使用されるような柔らかい泥又は粘土が含まれる。セメント又はジオポリマーモルタルは、硬化すると硬くなり、堅固な構造になる。
【0021】
本開示の場合、用語「室温」は、約15℃(華氏59度)~25℃(華氏77度)の温度を指す。
【0022】
本開示の場合、「硬化する(setting)」という用語は、可塑性ペーストから非可塑性の剛体への変換を指す。
【0023】
本開示の場合、用語「硬化時間(set time)」又は「硬化(する)時間(setting time)」は、水(アルカリ活性剤溶液)がセメント(ポゾラン前駆体)に添加された瞬間から、ペーストがその可塑性を失い始める(初期硬化)時までの経過時間を指す。最終硬化時間は、水(アルカリ活性剤溶液)がセメント(ポゾラン前駆体)に添加された瞬間から、ペーストが完全にその可塑性を失い、ある一定の圧力に耐えるのに十分な硬度に達した時までの時間である。
【0024】
本開示の場合、「水に難溶性」という用語は、水100mlに対し0.1g~水100mlに対し1gの溶解度を有する物質を指す。特に明記しない限り、「難溶性」及び「水に難溶性」という用語は、水に難溶性である物質を指すために、以下の本発明の説明では互換的に使用される。
【0025】
本開示の場合、「水不溶性」という用語は、100mlの水に対し0.1g未満の溶解度を有する物質を指す。
【0026】
説明
本発明は、様々な修正形態及び代替形態が可能であり、その具体的な実施形態を、例として図面に示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、本発明は、本発明の精神及び範囲内にあるすべての修正、等価物、及び代替物を網羅することを理解されたい。
【0027】
ジオポリマーは、有機熱硬化性ポリマーの場合と同様の3次元ネットワーク構造を有するアルカリ活性化結合剤の一種である。ジオポリマーのバックボーンマトリックスは、ゼオライトのフレームワークのX線非晶質類似体であり、酸素架橋によって結合されたSi原子及びAl原子の四面体配位を特徴とし、AlO
4
-についての電荷バランサーとして会合したアルカリ金属カチオン(通常はNa
+及び/又はK
+)を伴う。名目上、ジオポリマーの実験式は、M
n[-(SiO
2)
z-AlO
2]
n・wH
2Oとして表され得、式中、Mはアルカリカチオンを表し、zは、SiとAlのモル比(1、2又は3)を表し、nは、重縮合(polycondensation)の程度を表す。アルカリ加水分解による反応性低Caアルミノケイ酸塩源の溶解により、水が消費され、アルミン酸塩種とシリケート種(silicate species)が生成する。ジオポリマー化のこの最初の段階は、フライアッシュガラスネットワークを溶解し、シリケートとアルミン酸塩の小さな反応種を生成するアルカリ性化合物の能力によって制御される:
【化1】
溶解すると、これらの種は水相の一部、すなわちすでにシリケートを含む活性化溶液になる。これにより、シリケート、アルミン酸塩及びアルミノケイ酸塩種の複合混合物が形成される。水相の種が重縮合によって大きなネットワークを形成するため、溶液はますます濃縮され、その結果アルカリアルミノケイ酸塩ゲル(AAS)が形成される:
【化2】
ゲル化後、ゲルネットワークの接続性が増加するため、この系は再構成と再編成を続け、その後の硬化プロセス中に硬化して固まる3次元アルミノケイ酸塩ネットワークをもたらす。
【0028】
これらの低Ca反応性アルミノケイ酸塩の例には、メタカオリン(MK)、ある特定の焼成ゼオライト、及び低CaクラスFフライアッシュ(低Ca FFA)が含まれる。
【0029】
メタカオリンは非晶質アルミノケイ酸塩ポゾラン材料であり、その使用はブラジルのジュピアダムのコンクリートに組み込まれた1962年にさかのぼる。は、フュームドシリカの活性に匹敵する、又はそれには及ばないが高いポゾラン活性を備えた熱活性化アルミノケイ酸塩材料である。メタカオリンは、前駆体粘土の純度と結晶化度に応じて、650℃~800℃でカオリナイト粘土を焼成することによって生成される。メタカオリンのアルカリ活性化により、周囲温度で硬化し、固まる典型的なAASゲル組成物が生成される。ジオポリマーの機械的特性と微細構造は、Si/Alの初期モル比に強く依存する。より優れた強度特性は、M2O/Al2O3のモル比が約1で、SiO2/Al2O3比が3.0~3.8の範囲である混合物に関して報告されている。
【0030】
フライアッシュは、石炭燃焼室(ボイラー)から「飛散」する微細な粉末状の物質であり、電気集塵機や繊維性フィルターの「バグハウス」などの排出制御システムやスクラバーによって捕捉される。年間約1億3100万トンのフライアッシュが生産され、そのうち約5600万トンのフライアッシュがリサイクルされる。世界中で、生成されたフライアッシュの約65%が埋め立て地又は灰池に廃棄されている。無煙炭と歴青炭を燃焼すると、通常、CaOが8%未満のクラスFフライアッシュが生成される。フライアッシュは、主にガラス状の球状粒子で構成されている。米国材料試験協会(ASTM)C618規格は、フライアッシュの2つの主要なクラス、クラスC及びクラスFを認めている。クラスFフライアッシュ(FFA:F fly ash)の(SiO2+Al2O3+Fe2O3)の下限は70%であり、クラスCフライアッシュ(CFA)の下限は50%である。酸化カルシウムの含有量が多いと、アルカリ活性化を必要とせずに、水と混合するとケイ酸カルシウムとアルミン酸カルシウム水和物の形成をもたらすセメント質の特性を有するクラスCフライアッシュになる。米国特許第5,435,843号は、セメントの初期硬化時間が約5分未満であるアルカリ活性化クラスCフライアッシュ組成物を開示している。一般に、クラスFのフライアッシュの酸化カルシウムの最大含有量は約18重量%であるが、クラスCのフライアッシュは一般に、20~40重量%など、より高い酸化カルシウム含有量を有する。低Ca FFAは通常、CaOを8重量%未満の割合で含む。低Ca FFAベースのジオポリマーは、通常、硬化し固まるのが非常に緩慢であり、周囲温度(例、室温)で硬化すると最終強度が低くなるが、その反応性は硬化温度の上昇に伴い増加する。有用な建設資材を製造するために、低Ca FFAのアルカリ活性化には高温硬化が必要である。別法として、周囲温度で硬化して固まるジオポリマー製品を製造するには、高炉スラグ(BFS:blast furnace slag)微粉末やメタカオリンなどのより反応性の高いアルミノケイ酸塩材料をブレンドしなければならない。
【0031】
高炉スラグ微粉末(ground granulated blast furnace slag)は、CaOやMgOなどのアルカリ土類酸化物が豊富な別のタイプの反応性アルミノケイ酸塩材料である。高炉スラグ微粉末は、直径が4.75 mmを超える、ポップコーン様の砕けやすい粗い構造から、密な砂サイズの粒子まで変化するガラス状の粒状材料である。粉砕すると、粒子サイズがセメントの細かさまで減少し、ポルトランドセメントベースのコンクリートの補足的なセメント質材料として使用できる。高炉スラグは本質的にアルミノケイ酸カルシウムガラスであり、典型的には27~38重量%のSiO2、7~12重量%のAl2O3、34~43重量%のCaO、7~15重量%のMgO、0.2~1.6重量%のFe2O3、0.15~0.76重量%のMnO及び1.0~1.9重量%を含む。高炉スラグは通常、ASTM C989-92により80、100及び120の3つのグレードに分類される。さらに、超微細高炉スラグはBFS 120と比較してさらに反応性が高い。例えば、MC-500(登録商標)Microfine(登録商標)セメント(de Neef Construction Chemicals)は、粒子サイズが約10μm未満で、比表面積が約800m2/kgの超微細粉炭である。BFSはほぼ100%ガラス質なので、一般にほとんどのフライアッシュより反応性が高い。BFSのアルカリ活性化により、本質的にはケイ酸カルシウム水和物(CSH)及びアルミノケイ酸カルシウム(CASH)ゲルが生成される。BFSのアルカリ活性化によって製造されたジオポリマーは、通常、周囲温度でも非常に急速に硬化し固まるため、その結果、低CaクラスFフライアッシュで製造されたジオポリマーよりもはるかに高い極限強度が得られる。組成物の中には、初期硬化の時間が60分未満であるため、混合、配置及び仕上げが困難なものもある。アルカリ活性化スラグは、低水和熱、高い初期強度及び攻撃的な環境での優れた耐久性など、ポルトランドセメントコンクリートと比較していくつかの優れた特性を有することが判明している。1既刊文献の調査は、この結合剤系が、急速な硬化や高乾燥収縮などいくつかの深刻な問題点を有することを示した。2,3これらの問題点は、それが商業活動で使用され得る前に解決されなければならない。
【0032】
最近、褐炭と亜瀝青炭の使用が大幅に増加し、米国の石炭埋蔵量のかなりのパーセンテージが、相当な量のCaOを含むフライアッシュを生成している。例えば8重量%を超え20重量%未満といった高CaO含有量を含むフライアッシュ(高Ca FFA)は、ASTM C-618により依然としてタイプFとして分類される場合がある。フライアッシュベースのジオポリマーの硬化時間は、CaO含有量が増加するにつれて指数関数的に減少するが、CaOの増加に伴って圧縮強度が増加する。4開示された実施形態により、速硬化が、12.2重量%のCaOを含有する高Ca FFAで作られた新鮮なジオポリマーで起こり得ることが見出された。CaOが20%を超えるCFAで作られたジオポリマーは通常36分以内に硬化し、例えば数分といった速硬化はごく一般的である。5明らかに、高Ca FFA(例、8%を超えるCaO)及びCFAで作られたジオポリマーは、有用な建設資材を製造するために適切な硬化制御を必要とする。6高Ca FFAのアルカリ活性化により、アルカリアルミノケイ酸塩ゲルとともに、CSHやCASHなどの水和生成物が生成される。ジオポリマーの硬化時間は、アルカリモル濃度、SiO2/M2O(M=Na、K)モル比、結合剤と水の比率(w/b)などのアルカリ活性剤溶液の特性に左右される。例えば、硬化時間は、アルカリ水酸化物のモル濃度とSiO2/M2O(M=Na、K)モル比が増加すると減少するが、w/bが増加すると増加する。反対に、固まったジオポリマーの圧縮強度は、アルカリ水酸化物のモル濃度とSiO2/M2O(M=Na、K)モル比の増加とともに増加する。
【0033】
クラスCフライアッシュは、高炉スラグといくつかの類似点がある。両方ともアルミノケイ酸カルシウムガラスである。これらのポゾラン材料は、反応性アルカリ土類アルミノケイ酸塩、又は高Ca反応性アルミノケイ酸塩と呼ばれている。BFS及びCFAに加えて、高Ca FFA、ガラス質ケイ酸カルシウム(VCAS:vitreous calcium silicate)、及びクリンカーキルンダスト(CKD:clinker kiln dust)がこのカテゴリに分類される。VCASはガラス繊維製造に伴う廃棄物である。代表的なガラス繊維製造施設では、通常、加工処理されたガラス材料の約10~20重量%は最終製品に変換されず、副産物又は廃棄物VCASとして除外され、埋め立て処分に出される。VCASは100%非晶質であって、その組成は非常に一貫しており、主に約50~55重量%のSiO2、15~20重量%のAl2O3、及び20~25重量%のCaOを含有する。ASTM C618及びC1240に従って試験した場合、粉砕VCASは、シリカフューム及びメタカオリンに匹敵するポゾラン活性を呈する。CKDは、ポルトランドセメント製造に伴う副産物であり、産業廃棄物である。世界中で毎年3000万トンを超えるCKDが生産されており、そのかなりの量が埋立地に投入されている。典型的なCKDは約38~64重量%CaO、9~16重量%SiO2、2.6~6.0重量%Al2O3、1.0~4.0重量%Fe2O3、0.0~3.2重量%MgO、2.4~13重量%K2O、0.0~2.0重量%Na2O、1.6~18重量%SO3、0.0~5.3重量%Cl-を含有し、また5.0~25重量%LOIを有する。CKDは一般に非常に細かい粉末である(例、約4600~14000cm2/gの比表面積)。アルカリ活性化中に、CSHゲル、エトリンガイト(3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O)、及び/又はシンゲナイト(アルカリ-硫酸カルシウム混合)がさらに形成されることになる。
【0034】
一般に、これらの反応性高Caアルミノケイ酸塩のアルカリ活性化で作られたジオポリマーは、ケイ酸カルシウム水和物とアルミノケイ酸カルシウム水和物ゲルが瞬時に形成されるため、非常に速く硬化し、固まる。工学技術を実践する際、ジオポリマーの硬化時間についてはかなり長いものとするべきである。これは、ポゾラン結合剤を使用して作製されたコンクリート又はモルタルが、輸送と配置を可能にするのに十分長い硬化時間を必要とすることを意味する。しかしながら、硬化時間が長すぎると不経済となる。開示された実施形態によると、固化遅延剤を使用することによる硬化時間の適切な制御は、建設及び建築産業においてジオポリマー材料を有効に適用するために非常に重要である。
【0035】
硬化時間の制御は、高Caアルミノケイ酸塩ベースのジオポリマー用の活性剤溶液組成物を適切に調合することにより達成され得る。例えば、w/bが大きく、アルカリケイ酸塩の濃度が低いと、硬化時間の長さや作業性が十分であるジオポリマーペーストが得られる可能性がある。しかしながら、硬化製品の性能は通常大きく影響を受け、かなりの強度低下と大きな乾燥収縮が予想される。近年、アルカリ活性化セメント又はジオポリマーの硬化を遅らせるために、様々な種類の混合物が使用されてきたが、それらの遅延効率は大きく異なる。3米国特許第5,366,547号は、リン酸添加剤を使用して、水酸化ナトリウム活性化高炉スラグの硬化時間を遅らせる方法を開示している。リン酸遅延剤の例としては、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、及びポリリン酸カリウムが挙げられる。これらのリン酸塩添加剤の遅延効果は、ケイ酸ナトリウム溶液がBFS又は他のタイプの高Caアルミノケイ酸塩を活性化するために使用されるときに変化する可能性がある。Kalinaら7は、ケイ酸ナトリウム活性化高炉スラグの硬化を遅らせるためにNa3PO4を使用した。固体リン酸ナトリウムをBFSとブレンドし、次にケイ酸ナトリウム活性剤溶液と混合した。高用量の遅延剤を適用して長い硬化時間又は作業可能時間を達成すると、圧縮強度が大幅に影響を受けた(減少した)。Chang8とChangら9は、リン酸のみを使用すると、臨界濃度に達した後のアルカリ活性化スラグの硬化時間が延長されるが、初期材令では圧縮強度が低下すると結論付けた。高アルカリ溶液中における高炉スラグの溶解中に放出されたCa2+イオンは、遅延剤からのリン酸アニオンに結合していると評価された。二水素カルシウム、後でリン酸水素構造が形成されることにより、溶解状態のカルシウムイオンが不足し、そのためCSHとCASHの核生成と成長が妨げられる。したがって、初期硬化時間が長くなる。
【0036】
ポルトランドセメントに一般的に使用されるある特定の遅延剤の効率は、ジオポリマーによって異なる。ポルトランドセメントで効果的なほとんどの硬化遅延性混和剤は、高アルカリ性ジオポリマー系では機能しない可能性がある。Wuら10は、酒石酸カリウム又は酒石酸ナトリウムがアルカリ活性化スラグの初期硬化時間に影響を及ぼすことはないが、最終硬化時間をわずかに短縮することを観察した。Rathanasakら11は、ポルトランドセメントで有効に機能するスクロースと石膏が、ケイ酸ナトリウム活性化高Ca FFAについては硬化時間を延長しないことを見出した。Broughtら12は、ケイ酸ナトリウム活性化スラグ系の硬化時間に対するNaClの遅延効果を調査した。NaClを高用量で添加すると、硬化と強度の両方の展開を大幅に遅らせたが、低用量、すなわちスラグの4重量%以下の場合、NaClは促進剤として機能した。別のケイ酸ナトリウム活性化スラグ系では、13硬化時間に対するNaClの効果は、結合剤の重量で(BWOB)最大20%の添加ではほとんど観察されず、その値を超えると硬化が遅延した。しかしながら、補強されたジオポリマーコンクリートにこのような大量の塩化物を添加すると、鉄筋の腐食が大幅に加速されるため、使用時間が短縮されることになり得る。
【0037】
ポルトランドセメント用の遅延剤としてのボラートの使用も非常によく知られている。しかしながら、Nicholsonら14は、アルカリ活性化フライアッシュ(クラスC)に添加されたボラートは硬化挙動に影響を与えず、逆に、結合剤の強度は、大量のホウ酸塩によって悪影響を受けることを報告した。米国特許第4,997,484号は、アルカリ水酸化物活性化クラスCフライアッシュジオポリマー組成物(可溶性シリケートを含まない)を開示している。ジオポリマー組成物は、ホウ砂を遅延剤として使用しているが、華氏73度で3~4時間硬化させた後、1800~4000psiなどの急速な強度向上を呈する。ホウ素遅延剤は、アルカリ活性化CFAジオポリマーの硬化遅延に効果的ではなかった。米国特許第7,794,537号及び米国特許第7,846,250号は両方とも、ポルトランドセメントとジオポリマー用の周知の遅延剤としてある特定の化学的化合物を開示している。ジオポリマー組成物は、油田用途又は二酸化炭素貯蔵に関してMK又はFFAベースである。これらの化合物は、85℃などの高温で坑井セメンチンググラウトの増粘を遅らせるものであり、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O)、ホウ酸、リン酸ナトリウム、及びリグノスルホナートが含まれる。
【0038】
米国特許出願第2011/0284223号は、高温でジオポリマー系の増粘を遅らせるために有機化合物を使用する坑井セメンチング適用のための組成物及び方法を開示している。ジオポリマー組成物は新しいものではなく、先行技術で開示されており、文献で広く研究されている。遅延剤として好ましい化合物には、アミノ化ポリマー、ホスホン酸アミン、第四級アンモニウム化合物及び第三級アミンが含まれる。ジオポリマーの組成自体は特有のものではないが、圧縮強度などの硬化特性に対するこれらの遅延剤の影響については、以前に開発/伝達されることはなかった。
【0039】
中国特許第102249594B号は、アルカリ活性化高炉スラグの硬化時間を遅らせるための複合遅延剤を開示している。複合遅延剤は、クロム酸ナトリウム、複素環状アミノ酸及びシリコーン界面活性剤で構成されている。中国特許第1118438C号は、ケイ酸ナトリウム活性化スラグのためのクロム酸カリウム、糖及びフェノールからなる複合遅延剤を開示している。初期硬化は1時間~70時間の間で調整され得る。しかしながら、クロマートは、流動性が高く、移動が容易で有毒なアニオン種であり、環境を汚染するリスクがあるため、遅延剤は望ましくないものであり得る。中国特許出願第101723607A号は、ケイ酸ナトリウム活性化高炉スラグの硬化時間を遅らせるための可溶性亜鉛塩を開示している。これらの亜鉛塩には、硝酸塩、硫酸塩及び塩化物が含まれる。中国の特許出願第1699251A号及び同第100340517C号は、アルカリ活性化カーボナイト/高炉スラグの遅延剤としてバリウム塩を開示している。亜鉛塩又はバリウム塩のいずれかを水に溶解し、高炉スラグに添加する。次に、アルカリ活性剤溶液を混合物に加える。別法として、塩粉末を高炉スラグと粉砕する。次に、活性剤溶液を固体ブレンドと混合する。
【0040】
残念ながら、先行技術のほとんどの遅延剤はアルカリ活性化スラグのためにのみ開発された。遅延剤の効率が結合剤組成に大きく依存することは周知である。ポルトランドセメントとアルカリ活性化スラグで効果的な遅延剤は、高Ca FFA、CFA、又は低Ca FFAとBFSのブレンドで作られたものなどのジオポリマー系では必ずしもうまく機能しない。
【0041】
先行技術で開示されている方法は、アルカリ活性化スラグの硬化時間を遅らせるために、主に2つの重要なメカニズムを採用している。遅延剤は、放出されたCa2+をキレート化及び/又は沈殿させるために添加され、Ca2+がアルカリ活性剤溶液中にすでに存在するシリケート種と反応するのを防ぐ。別の方法では、遅延剤を添加して、無水高炉スラグ粒子の表面に直接結合した保護層を形成し、それによって高アルカリ溶液に溶解する能力を低下させる。これらの付着層は、吸着種又は沈殿して表面に付着する不溶性カルシウム塩のいずれかである可能性がある。本明細書では、この方法を「保護層」と呼ぶ。中国特許第102249594B号は、シリコーン界面活性剤が高炉スラグ粒子の表面に吸着され、チャージャが導入されると、その結果反発力が発生してCa2+の移動速度を低下させ、及び/又はケイ酸アニオンの静電引力を低下させ、それによりCSHゲル形成を防止することを開示している。高アルカリ性環境での高炉スラグの溶解中に放出されたCa2+カチオンは、リン酸遅延剤、例えばNa3PO4からのリン酸アニオンに結合する。不溶性のリン酸カルシウム化合物の形成により、利用可能なCa2+が減少するため、CSH相の核生成と成長が阻害され、硬化時間が延長される。7アルカリ溶液に溶解されたホウ素化合物は、テトラヒドロキシルボラートを形成し、これがCa2+と反応する。沈殿したホウ酸カルシウム(Ca(B[OH]4)2 H2Oなど)は、高炉スラグ粒子の表面を部分的又は完全に覆う。したがって、このような不透過性のホウ酸カルシウム層の存在により、アルカリ溶液中の高炉スラグ粒子のさらなる溶解が妨げられる。15可溶性亜鉛塩は、亜鉛酸カルシウム相に変換され(例、CaZn2(OH)6・H2O)、高炉スラグ粒子を部分的又は完全に覆うため、さらなる水和又はアルカリ活性化に対してそれらを不動態化する。16,17米国特許出願第20160060170号は、硬化時間を制御するためのナノ粒子遅延剤を含むジオポリマー組成物を開示している。反応性アルミノケイ酸塩には、メタカオリン、フライアッシュ又はもみ殻灰が含まれる。反応性アルミノケイ酸塩粒子は、ケイ酸ナトリウム活性剤溶液と混合する前に、ハロイサイトナノチューブやカオリンナノクレイ粒子などのナノ粒子でコーティングされている。ナノ粒子コーティングは、ジオポリマー化反応を遅らせるためのものである。バリウム塩溶液は、高炉スラグ/カーボナタイト粉末とあらかじめ混合されている。高炉スラグ粒子の表面は水中で負に帯電しているため、Ba2+カチオンはスラグ粒子の表面に吸着する傾向がある。ケイ酸アルカリ溶液に曝されると、不溶性のバリウム沈殿物がスラグ粒子上に薄膜を形成し、スラグがアルカリ溶液と接触するのを防ぐ(中国特許出願第1699251A号)。
【0042】
ポゾラン粒子の表面における保護層の形成を利用してアルカリ活性化材料の硬化時間を遅らせる場合、保護コーティングの被覆率を改善するために、アルカリケイ酸塩溶液と混合する前に硝酸バリウムなどの金属塩の溶液をポゾラン粒子と混合しなければならない。
【0043】
開示された実施形態は、アルカリ活性化材料又はジオポリマーの硬化時間を遅らせるために金属塩を使用する新しい方法を提供する。アルカリ活性化高Ca反応性アルミノケイ酸塩の迅速な硬化は、早期硬化時でのCSH及び/又はCASHゲルの形成に関連している。高Ca反応性アルミノケイ酸塩粒子の溶解中にCa2+カチオンが放出され、カチオンはアルカリ溶液中に存在するケイ酸アニオンとほぼ瞬時に反応する。硬化の制御は、例えば、アルカリ溶液中のCa2+イオンの除去及び/又はポゾラン粒子の表面上の保護層の形成を通じて、先行技術の方法により達成することができる。硬化の制御はまた、CSH及び/又はCASHゲルの核形成及び成長のためのケイ酸種の利用能を制御することによっても達成できる。例えば、坑井セメンチングジオポリマーについて開示された方法では18、粉末アルカリケイ酸塩ガラスが使用される。ジオポリマーペーストには、早期硬化時のシリケート種はほとんど含まれていない。粉末アルカリケイ酸塩ガラスは、早期硬化時中に制御された速度でケイ酸種を溶解及び放出するため、増粘及び硬化の時間が延長される。しかしながら、この方法では、30MPaを超える強度が要求される建設資材の用途には適切ではない硬化ジオポリマーが生成される。別法として、金属塩(例、塩化バリウム)を水に溶解し、その後、生成した溶液をアルカリケイ酸塩溶液とブレンドした後、ミキサーで乾燥成分と混合する。塩化バリウムなどのこれらの金属塩は、アルカリ性溶液中で加水分解し、加水分解中にケイ酸アニオンが共沈して、ケイ酸種が枯渇した活性剤溶液が残存する。金属-シリケート相互作用の程度は、遅延の効率を決定する金属/Siのモル比に左右される。共沈したシリケートはゆっくりと再溶解し、その後の硬化プロセス中にCSH及び/又はCASHゲルのジオポリマー化及び/又は形成に利用可能となる。これにより、硬化時間が延長される。
【0044】
開示されている方法の場合、金属塩溶液を固体、すなわちポゾラン粒子に保護コーティングを施す高炉スラグと事前混合しなければならない中国特許出願第101723607A号、同第1699251A号及び同第100340517C号に開示されている「保護層」方法の場合と同等の硬化時間に到達するのに使用するバリウム塩ははるかに少なくて済む。例えば、少なくとも2%のBWOB亜鉛塩であれば、ケイ酸ナトリウム活性化高炉スラグで遅延効果を発揮する。少なくとも4%のBWOBバリウム塩であれば、ケイ酸ナトリウム活性化高炉スラグ/カーボナタイトで遅延効果を発揮する。保護層の被覆率を良くするには、より多量の遅延剤が必要であるが、通常、硬化製品の圧縮強度が大幅に低下することになる。さらに、保護層の被覆範囲は、ポゾラン粒子の表面電荷に大きく左右される。高炉スラグの表面電荷は負になる可能性があるが、フライアッシュの表面電荷は溶液中で正になる可能性がある。したがって、「保護層」法では、遅延効果の効率は、様々な反応性アルミノケイ酸塩供給源によって大きく異なることがあり得る。
【0045】
したがって、開示された実施形態は、坑井セメンチンググラウト、モルタル及びコンクリートとして適用できるジオポリマー組成物の増粘及び硬化時間を調節するための効率的な無機遅延混和剤を提供する。
【0046】
本明細書に記載されている他の実施形態は、その硬化時間が無機遅延剤(inorganic retarder)によって変えられ得るジオポリマー組成物を提供する。ジオポリマー組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有する少なくとも1つの低CaクラスFフライアッシュ、(ii)高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、ガラス質ケイ酸カルシウム、及びキルンダストの群から選択された少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩、(iii)遅延溶液(retarding solution)、及び(iv)水性アルカリケイ酸塩活性剤を含む。
【0047】
開示されている遅延剤溶液は、少なくとも1つの可溶性金属塩を水に溶解することにより作製され、その少なくとも1つの可溶性金属塩は、塩化バリウム、塩化バリウム二水和物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸バリウム水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化鉛、硝酸鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム及び硫酸ストロンチウムから選択される。塩化バリウム及び硝酸バリウムが好ましい。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1つの金属塩が遅延剤溶液に溶解され、遅延剤溶液は約0.1~約10%の金属塩BWOBを含む。一実施形態では、金属塩は塩化バリウム二水和物である。塩化バリウム二水和物の用量は、約0.10~約5%BWOB、より好ましくは約0.5%~約2.5%BWOBである。
【0049】
一実施形態では、可溶性バリウム塩は水に溶解される。遅延剤溶液は、活性剤溶液を他のすべての成分と混合する前に、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合される。別の実施形態では、遅延剤溶液及び活性剤溶液は、乾燥成分と混合するときに別々に添加される。アルカリケイ酸塩活性剤溶液は、金属水酸化物及び金属ケイ酸塩を含み得、この場合金属はカリウム、ナトリウム又は両方の組み合わせである。
【0050】
開示されている実施形態は、(i)BFS、CFA、ガラス質ケイ酸カルシウム、及びキルンダストの群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩、(ii)遅延剤溶液、及び(iii)アルカリケイ酸塩溶液を含むジオポリマー組成物を提供する。
【0051】
開示されている一実施形態では、ジオポリマー組成物は、(i)BFS、CFA、ガラス質ケイ酸カルシウム、及びキルンダストの群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩、(ii)メタカオリン、(iii)遅延剤溶液、及び(iv)アルカリケイ酸塩溶液を含む。
【0052】
開示されている一実施形態において、ジオポリマー組成物は、建設用途向けのモルタル及びコンクリートを製造するために、細骨材及び/又は粗骨材、高性能減水剤又は繊維をさらに含む。
【0053】
開示されている一実施形態は、硬化時間を無機遅延剤によって調節することができる高性能及び超高性能のコンクリート組成物を提供する。高性能及び超高性能のコンクリート組成物は、(i)高炉スラグ、(ii)メタカオリン、(iii)遅延溶液、(iv)水性アルカリケイ酸塩活性剤、(v)少なくとも1つの骨材、及び(vi)少なくとも1つのミクロン/サブミクロンのフィラーを含む。
【0054】
本開示の目的は、坑井セメンチング(well cementing)、モルタル及びコンクリートとして適用され得るジオポリマー組成物の硬化時間を調節するための有効な遅延混和剤を提供することである。特に、本開示は、高Ca FFA又は高Caアルミノケイ酸塩を含有するジオポリマー系の硬化を制御するための効率的な遅延方法を提供する。
【0055】
低Caフライアッシュベースのジオポリマー
アルカリ溶液中でのフライアッシュの反応性が低いため、低Ca FFAベースのジオポリマーは、硬化して固まるのが非常に遅く、低温(例、室温)で硬化すると最終強度が低くなる。「反応性」は、本明細書では、アルカリ性溶液と反応した結合剤ポゾランの相対質量として定義される。粒径が小さいフライアッシュは、平均粒径が約1~10μmの超微細フライアッシュ(UFFA:ultrafine fly ash)などのように、通常は反応性が高くなる。UFFAは、親のフライアッシュから超微細フラクションを機械的に分離することにより注意深く加工処理される。UFFAはまた、スランプなどの望ましい作業性のためにw/b比を減らすこともでき、より優れた性能を持つ硬化したジオポリマーを生成する。石炭ガス化フライアッシュは、通常、最大粒子サイズが約5~10μmのSiO2に富んだ実質的に球形の粒子として、石炭ガス化発電所から排出される。反応性の低いフライアッシュを使用するには、周囲温度で硬化可能なジオポリマー製品を製造するために、より反応性の高い第2の結合剤が要求される。
【0056】
メタカオリンのアルカリ活性化により、適度に長い硬化時間、例えば2~6時間を有する典型的なジオポリマーゲルが生成される。メタカオリンがブレンドされるとき、生成するジオポリマー組成物は遅延混合剤を必要としない場合がある。対照的に、BFS、CFA、CKD又はVCASのアルカリ活性化により、本質的にCSH及び/又はCASHゲルが生成される。CSH及び/又はCASHをすばやく沈殿させると、硬化時間が短縮され、製品」の強度の増加率と最終強度が向上する。第2の結合剤が高Caアルミノケイ酸塩ポゾランであるとき、生成するジオポリマー系の硬化挙動は大幅に変更されることになる。フライアッシュベースのジオポリマーの硬化時間は、特に、高モルのアルカリ水酸化物及び高いSiO2/M2O(M=Na、K)モル比を有するアルカリ活性剤溶液が、有用なジオポリマー製品の製造に使用される場合、ブレンドされるBFSなどの高Caアルミノケイ酸塩ポゾランの量を増やすと指数関数的に減少する。したがって、実際の適用では、適切な硬化の制御が必要になる。
【0057】
一実施形態では、低Ca FFAは、約8重量%以下の酸化カルシウムを含むフライアッシュであり得る。フライアッシュの分類は、当技術分野で一般に理解されているASTM C618に基づく。一実施形態において、低Ca FFAは、約5重量%以下の酸化カルシウムを含む。一実施形態において、フライアッシュは、少なくとも65重量%の非晶質アルミノケイ酸塩相を含み、60μm以下、例えば50μm以下、例えば45μm以下、例えば30μm以下の平均粒径を有するべきである。一実施形態において、低Ca FFAは5%以下の強熱減量(LOI)を有する。一実施形態において、低Ca FFAは、1%以下のLOIを有する。
【0058】
本明細書に記載される一実施形態は、その硬化時間が無機遅延剤によって調節され得るジオポリマー組成物を提供する。低Ca FFAベースのジオポリマー組成物は、(i)8重量%以下の酸化カルシウムを有する少なくとも1つの低CaクラスFフライアッシュ、(ii)高炉スラグ、クラスCフライアッシュ、ガラス質ケイ酸カルシウム、及びキルンダストの群から選択された少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩、(iii)遅延溶液、及び(iv)水性アルカリケイ酸塩活性剤を含む。遅延剤溶液は、可溶性金属塩を水に溶解することによって作られ、可溶性金属塩は、塩化バリウム、塩化バリウム脱水物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸バリウム水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム及び硫酸ストロンチウムから選択される。可溶性バリウム塩が好ましい。
【0059】
一実施形態において、低Ca FFAベースのジオポリマー組成物は、メタカオリンをさらに含み、一実施形態において、ジオポリマー組成物は、コンクリート製品を製造するための細骨材及び粗骨材をさらに含む。
【0060】
高Caアルミノケイ酸塩ベースのジオポリマー
高Caアルミノケイ酸塩ポゾランのアルカリ活性化は、通常、高アルカリ性溶液に曝されるとすぐにCSH及び/又はCASHゲルを生成し、その結果、硬化時間が非常に短くなる。硬化時間を適切に制御しなければ、これらのジオポリマー材料を有用な製品の製造に使用することはできない。これらの高Caアルミノケイ酸塩の例には、高Ca FFA、CFA、BFS、VCAS、ボトムアッシュ、及びクリンカーキルンダスト(CKD)がある。
【0061】
一実施形態は、(i)高Ca FFA、BFS、CFA、ガラス質ケイ酸カルシウム、及びキルンダストの群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩、(ii)遅延剤溶液、及び(iii)少なくとも1つのアルカリケイ酸塩溶液を含む高Caアルミノケイ酸塩ベースのジオポリマー組成物を提供する。
【0062】
一実施形態において、高Caアルミノケイ酸塩は高Ca FFAであり、一実施形態において、高Caアルミノケイ酸塩はBFSであり、及び別の実施形態において、高Caアルミノケイ酸塩はCFAである。
【0063】
一実施形態において、高Caアルミノケイ酸塩ベースのジオポリマー組成物は、低Ca FFA及びメタカオリンの群から選択される少なくとも1つの低Caアルミノケイ酸塩ポゾランをさらに含む。一実施形態において、高Caアルミノケイ酸塩ベースのジオポリマー組成物は、コンクリート製品を製造するための細骨材及び粗骨材をさらに含む。一実施形態において、ジオポリマー組成物は、コンクリート製品を製造するための細骨材及び/又は粗骨材をさらに含む。
【0064】
高性能及び超高性能のコンクリート
米国特許第9,090,508号は、高性能及び超高性能のコンクリート用のジオポリマー組成物を開示している。ジオポリマー製品の高性能及び超高性能を達成するには、メタカオリンや高炉スラグなどの非常に反応性の高いアルミノケイ酸塩材料を結合剤として使用しなければならない。w/b比は非常に小さく、例えば最小限に近くなければならない。微粒子の充填密度は、製品の多孔性を最小限に抑えるために高くなければならなず、また均一性を高めるために10mmを超える粗骨材を使用するべきではない。したがって、特に配合物に高炉スラグが大量に使用されている場合、生コンクリートの硬化時間は比較的短くなる。米国特許第9,090,508号に開示されている組成物は、本質的に高炉スラグ/メタカオリンベースの二元ジオポリマーである。
【0065】
本明細書に記載されている一実施形態は、硬化時間を無機遅延剤によって調節することができる高性能及び超高性能のコンクリート組成物を提供する。高性能及び超高性能のコンクリート組成物は、(i)高炉スラグ、(ii)メタカオリン、(iii)遅延溶液、(iv)水性アルカリケイ酸塩活性剤、(v)少なくとも1つの骨材、及び(vi)少なくとも1つのミクロン/サブミクロンのフィラーを含む。
【0066】
遅延剤の配置方法
遅延剤溶液は、少なくとも1つの可溶性金属塩を水に溶解することによって調製され、少なくとも1つの可溶性金属塩は、塩化バリウム、塩化バリウム脱水物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸バリウム水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化鉛、硝酸鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム及びストロンチウム及び硫酸ストロンチウムから選択される。アルカリ性溶液中で加水分解し、アルカリケイ酸塩活性剤溶液中に元々存在するシリケート種を共沈させることができる任意の可溶性金属塩を、無機遅延混合剤として使用することができる。遅延効果は、金属の種類と用量に左右される。金属とシリケートの相互作用は、用量又はシリケートに対する金属のモル比の増加に伴って増加すると予想される。金属とシリケートの相互作用は過度であるべきではない。相互作用が圧倒的である場合、シリケート種のジオポリマー系への放出は、後続の硬化プロセス中に大きく妨げられることになり、製品の早期の圧縮強度にかなり影響を与えることになる。これらすべての金属塩の中では、バリウム塩が好ましい。
【0067】
一実施形態では、少なくとも1つの金属塩を水に溶解させる。遅延剤溶液を、すべての成分を混合する前に、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と混合する。遅延剤溶液と合わせたアルカリケイ酸塩活性剤溶液を、すべての乾燥成分を含むミキサーに注ぐ。別の実施形態において、遅延剤溶液及び活性剤溶液は、ジオポリマー製品を製造するために乾燥成分と混合するときに別々に添加される。
【0068】
一実施形態では、遅延剤溶液を、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と約30分間混合してから、他のすべての成分と混合する。別の実施形態では、遅延剤溶液を、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と約10分間混合してから、すべての成分を混合する。別の実施形態では、遅延剤溶液を、アルカリケイ酸塩活性剤溶液と約24時間混合してから、すべての成分を混合する。別の実施形態では、遅延剤溶液を、レディミックストラックでの混合中にコンクリートに添加する。この場合、遅延剤溶液は硬化ブレーキとしての役割を果たし、緊急事態などの現場への輸送中に混合コンクリートがレディミックストラックで硬化するのを防ぐ。
【0069】
一実施形態では、少なくとも1つの金属塩が遅延剤溶液に含まれ、遅延剤溶液は約0.1~約10%の金属塩BWOBを含む。一実施形態では、金属塩は塩化バリウム二水和物である。塩化バリウム二水和物の用量は、約0.10~約5%BWOB、より好ましくは約0.5%~約2.5%BWOBである。
【0070】
一実施形態では、金属塩はメタホウ酸バリウム一水和物であり、一実施形態では、遅延剤溶液は、塩化バリウム二水和物及び硝酸亜鉛を含み、一実施形態では、遅延剤溶液は、硝酸ストロンチウム及び塩化亜鉛を含む。
【0071】
遅延メカニズム
以下の例は、本開示のジオポリマーの硬化時間を遅らせるためのメカニズムを説明するものである。
【0072】
開示された実施形態によると、金属塩を使用して、早期硬化時にCSH及び/又はCASHゲルの核形成及び成長に利用可能である活性剤溶液中のシリケート種の放出を制御することにより、アルカリ活性化材料又はジオポリマーの硬化時間を制御する新しい方法が提供される。選択された実施形態では、ラマン分光法によってケイ酸ナトリウム活性剤溶液中の加水分解された塩化バリウムとシリケートの共沈プロセスを研究するために実験を行った。一連の試験では、塩化バリウム脱水物溶液とケイ酸ナトリウム溶液を0.5時間混合した後、上清液と沈殿物のラマンスペクトルを、塩化バリウムの用量を増やしながら監視した。第2の一連の試験では、塩化バリウムとケイ酸ナトリウム溶液を合わせた溶液を混合し、0.5時間、2時間及び24時間それぞれ塩化バリウム二水和物の固定用量で熟成させた。次に、これらの塩化バリウム/ケイ酸ナトリウム溶液の上清液のスペクトルを記録した。
【0073】
水酸化ナトリウムビーズ(純度99%)をDI(脱イオン)水に溶解し、PQ CorpのタイプRuケイ酸ナトリウム溶液と合わせて、ケイ酸ナトリウム活性剤溶液を調製した。塩化バリウム二水和物(99%純度)を、DI水に個別に溶解した。活性剤溶液の組成を表1に示す。NaOHのモル濃度は5に固定され、SiO
2/Na
2Oの質量比は、例1~4を通して1.25であった。試験に使用した活性剤溶液は、高Ca FFAジオポリマー組成物の一部であり、塩化バリウム脱水物の用量は、フライアッシュ結合剤の重量として表された。
【表1】
【0074】
単一回折格子分光器-ノッチフィルターマイクロラマンシステムを使用して、ラマンスペクトルを集めた。Melles-Griotモデル45 Ar+レーザーにより、広帯域偏光回転子(NewportモデルPR-550)を介してレーザー顕微鏡に向けられた5145オングストローム波長の入射光が提供され、レーザー顕微鏡は、長い作動距離のMitutoyo 10顕微鏡対物レンズを介してレーザー光を25ml透明バイアル中の沈殿した固体又は溶液に導いた。レーザー光出力は、試料で約22mWであった。散乱光はアナライザーの偏光子を通して方向付けられ、散乱光は150μmの開口部を通って進み、次にホログラフィックノッチ及びスーパーノッチフィルター(Kaiser Optical Systems)に進んだ。分光器は1200gr/mmの回折格子(Richardson Grating Laboratory)を使用した。JY-Horiba HR460分光器の入射スリットを6cm-1の解像度に設定して、50~1600cm-1のスペクトルを収集した。分光器はCCl4を使用して周波数校正されたため、記録された周波数は±1cm-1以内の精度である。平行偏光(VV)スペクトルは、入射レーザー光が垂直に偏光されている場所で収集された。
【0075】
ラマン振動の帰属を表2に示す。帰属は、Halaszら
19、20に従って為された。結果を、上清液については
図1に、沈殿した固体については
図2に示す。
【表2】
【0076】
図1は、4つの用量の塩化バリウム脱水物の場合に0.5時間塩化バリウム溶液と混合した後のケイ酸ナトリウム溶液の上清試料のラマンスペクトルを表す。遅延剤なしの活性剤溶液(RM-BC-0)のスペクトルは、Q
0、Q
1、及びQ
2タイプのシリケート種が活性剤溶液を占めていることを明確に示す。Q
0タイプのシリケート種は完全に解離している(
図1)。塩化バリウム二水和物を含む試料のすべての上清液(表1)は、Ba/Siモル比が0.04(RM-BC 0.875)の非常に低い用量であっても、実質的にはシリケート種を含んでいない。これは、塩化バリウム溶液がアルカリケイ酸ナトリウム活性剤溶液と混合されたときに、活性剤溶液中に元々存在していたほとんどすべてのシリケートが水酸化バリウムと共沈したことを示唆している。シリケート種はケイ酸バリウム複合体として沈殿するため、ジオポリマー化に利用できる可溶性シリケートの濃度は、早期硬化時中には非常に低い。シリケート種の利用可能性が限られているため、CSH及び/CASHゲルの核生成と成長が妨げられることにより、硬化時間の遅延がもたらされる。
【0077】
図2は、3つの用量の遅延剤の場合に塩化バリウム溶液と活性剤溶液とを0.5時間混合した後の共沈固体のラマンスペクトルを示す。遅延剤が最小用量(RM-BC 0.875)である共沈試料は、Q
0、Q
1及びQ
2タイプのシリケート種に関連するバンドに加えて、1062cm
-1で新しい振動バンドが発生する鋭利なラマンスペクトルパターンを示す。1062cm
-1バンドは、Q
3シリケート種に帰属させることができる。このラマンスペクトルを遅延剤なしの活性剤溶液のスペクトル(
図1、RM-BC00)と比較すると、開示された実施形態では、遅延剤を追加すると、完全に解離したシリケート種(Q
0)と他のタイプのシリケート種の相対比率が低下することが見出された。明らかに、バリウムカチオンはシリケート種とある程度相互作用し、その結果シリケート種の重合が増加することになる。
【0078】
遅延剤の用量の増加に伴い、それぞれのラマンバンドの強度は減少した。遅延剤が5%BWOB又は0.23のB/Siモル比に増加すると(
図2)、それぞれのラマンバンドはほぼ完全に消失したことから、バリウムとシリケート種との間の顕著な相互作用は沈殿複合体で誘導されることが示された。高用量の塩化バリウム二水和物で相互作用が増加すると、シリケート種の放出が大幅に遅延するため、硬化時間が大幅に延長され、その間初期強度が低下した硬化ジオポリマーが生成される。
【0079】
例
発明対象に関する例
以下の例は、その好ましい実施形態における本開示の実施を説明するものである。
【0080】
例1~21の試料の調製には、以下の原料を用いた。2つのフライアッシュを使用した。1つは、Headwater Resources(Jewett fly ash)が販売する米国テキサス州のJewett Power Stationの高CaO FFA(12.5%)であった。このフライアッシュは12.2重量%のCaOを含み、0.15%の強熱減量(LOI)を有する。Si+Al+Fe酸化物の合計は79.57重量%であり、ASTM C618によるクラスFフライアッシュの最小要件である75重量%を超えていた。2つ目のフライアッシュは、オーストラリアのNeilsens Groupからの低Ca FFAであった。このFFAは、より粗いフライアッシュの分類の生成物であった。そのLOIは0.15%未満であった。Si+Al+Fe酸化物の合計は約93重量%であった。高炉スラグ微粉末グレード120(NewCemスラグセメント)は、メリーランド州ボルチモアにあるLafarge-Holcim’s Sparrow Pointプラントから得られた。ASTM C989によると、活性度指数は約129であった。高炉スラグは、約38.5%のCaO、38.2%のSiO2、10.3%のAl2O3、及び9.2%のMgOを含み、平均粒子径は13.8μm、50体積%は7μm未満であった。メタカオリン(Kaorock)は、ジョージア州サンダーズビルのThiele Kaolin Companyから得られた。メタカオリンの粒子サイズは0.5~50μmで、50体積%は4μm未満であった。Fe-Si合金からの産業廃棄物であるシリカフュームはNorchem Inc.から得られた。シリカフュームは2.42重量%の炭素を含んでいた。シリカフュームは、アルカリ水酸化物溶液にシリカフュームを溶解することにより活性剤溶液を調製するために使用されるか、又は超高性能コンクリート試料の調製においてサブミクロンの反応性フィラーとして添加された。
【0081】
ブルーストーン#7(AASHTO T-27)を粗骨材として使用した。飽和表面乾燥(SSD)状態にするため、乾燥骨材を24時間水に浸し、次いで乾いた布を使用して、骨材表面から遊離水を手動で除去した。SSD又はオーブン乾燥状態の川砂が使用された。Trident固体用湿度計(モデルT90)を使用して、細骨材試料の水分量を測定した。U.S.SilicaのMin U-SIL(登録商標)粉砕石英粉末を使用して、超高性能コンクリートを調製した。石英粉末の粒径は1~25μmで、中央粒径は約5μmである。
【0082】
PQ、CorpのタイプRuケイ酸ナトリウム溶液を使用して、アルカリケイ酸塩活性剤溶液を調製した。SiO2/Na2Oの質量比は約2.40であった。入手した溶液は、約13.9重量%のNa2O、33.2重量%のSiO2及び52.9重量%の水を含有する。水酸化ナトリウムビーズ(純度99%)と水酸化カリウムフレーク(純度91%)を使用して、アルカリ活性剤溶液を調製した。
【0083】
例1~例7
米国テキサス州のJewett Power Stationからの高CaクラスFフライアッシュを含むジオポリマー試料を調製した。混合組成を表3に示し、成分はグラムで示した。バッチサイズは約5000グラムであった。Jewettフライアッシュは約12.2重量%のCaOを含んでいた。例1及び例2からのジオポリマー試料は、比較のために遅延剤ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)を用いて調製された。リン酸ナトリウムは、先行技術又は文献において遅延剤として開示された。SHMPの用量はそれぞれ1.50%と2.25%のBWOBであった。例#4~例#7のジオポリマー試料については、0.50%~1.00重量%BWOBの用量で遅延剤塩化バリウム二水和物を用いて調製し、遅延効率を実証した。
【0084】
NaOHビーズ(純度99%)を水に溶解し、次いで、生成した溶液をタイプRuケイ酸ナトリウム溶液と合わせて、活性剤溶液を調製した。塩化バリウム二水和物又はメタリン酸ナトリウム(SHMP)を別々に水に溶解して、遅延剤溶液を調製した。遅延剤溶液を2時間混合した後、高強度のK-Labミキサー(Kercher Industries)中のJewettフライアッシュに6分間注いだ。得られた新鮮なペーストをすぐに型(高さ3インチ及び高さ40mm)に移し、振動テーブルで約1分間処理して、閉じ込められた気泡を除去した。新鮮なペーストについて、Vicatronic Automatic Vicat装置(モデルE004N)を使用して初期及び最終の硬化時間を判定した。以降、前記装置をASTM C191に従ってAutoVicatと呼ぶ。
【表3】
【0085】
対照試料(例3、BC00)の初期硬化時間は29分であると判定され、最終硬化時間は45分であった。0.50%BWOBの塩化バリウム二水和物を添加すると、初期硬化時間は47分に、最終硬化時間は78分に増加した(例4)。塩化バリウム二水和物を0.75%BWOBに増やすと、初期硬化時間は68分に、最終硬化時間は99分に増加した(例5)。塩化バリウム二水和物を0.875%BWOBに増やすと、初期硬化時間は114分に、最終硬化時間は144分に増加した(例6)。塩化バリウム二水和物を1%BWOBにさらに増やすと、初期硬化時間は391分に、最終硬化時間は450分に増加した(例7)。等温熱量測定データは、遅延剤の添加がジオポリマーの水和熱を大幅に低減することを明らかにした。
【0086】
比較として、1.5%BWOBのメタリン酸ナトリウムによるドーピングでは、初期硬化時間は35分、最終硬化時間は57分であった。メタリン酸ナトリウムを2.25%BWOBに増加すると、初期硬化時間は38分、最終硬化時間は63分とわずかな増加を示した。明らかに、本遅延剤は、先行技術又は文献に開示されている遅延剤よりもはるかに効率的である。
【0087】
例8~10
表4に示す混合組成の二元FFA/BFSジオポリマーモルタル試料を調製する。成分はグラムで示した。オーストラリアのNeilsens Concreteからの低CaクラスFフライアッシュ、Lafarge-Holcimからの高炉スラグ微粉末、及び川砂(飽和表面乾燥)を、Waring7クォートプラネタリーミキサーで3分間混合した。NaOHビーズを水に溶解し、次いで、生成した溶液をタイプRuのケイ酸ナトリウム溶液と合わせて、活性剤溶液を調製した。活性剤溶液を使用前に一晩放置した。塩化バリウム二水和物がある場合は、個別に水に溶解した。遅延剤の用量を0.875%BWOBに固定した。
【0088】
塩化バリウム二水和物を含まない活性剤溶液(例#8)をFFA/BFS/砂混合物に注ぎ、中速で5分間混合した。フレッシュモルタルを、ASTM C191に準拠したAutoVicatを使用して硬化時間について測定した。初期硬化時間は114分、最終硬化時間は186分であった。
【0089】
遅延剤溶液を活性剤溶液と30分間混合した後、ジオポリマーモルタル試料を調製した(例9)。フレッシュモルタルについて、ASTM C191に準拠したAutoVicatで硬化時間を測定した。初期硬化時間は249分で、最終硬化時間は348分であった。
【0090】
活性剤溶液を乾燥成分混合物に注いだときに、遅延剤溶液を添加した(例10)。混合物を5分間混合した。フレッシュモルタルを、ASTM C191に準拠したAutoVicatを使用して硬化時間について測定した。初期硬化時間は236分、最終硬化時間は342分であった。
【表4】
【0091】
例11~13
例8~10で使用されたものと同じ混合組成の二元FFA/BFSジオポリマーモルタル試料を調製する(表4)。オーストラリアのNeilsens Groupからの低CaクラスFフライアッシュ、オーストラリア、Wagnersからの高炉スラグ微粉末、及び川砂(飽和表面乾燥)を、Waring 7クォートプラネタリーミキサーで3分間混合した。NaOHビーズを水に溶解し、次いで、生成した溶液をタイプRuのケイ酸ナトリウム溶液と合わせて、活性剤溶液を調製した。活性剤溶液を使用前に一晩放置した。塩化バリウム二水和物がある場合は、個別に水に溶解した。遅延剤の用量を1.25%BWOBに固定した。
【0092】
塩化バリウム二水和物を含まない活性剤溶液(例#11)をFFA/BFS/砂混合物に注ぎ、中速で5分間混合した。フレッシュモルタルを、ASTM C191に準拠したAutoVicatを使用して硬化時間について測定した。初期硬化時間は59分で、最終硬化時間は144分であった。圧縮強度は、7日間の硬化後は4081psiで、28日間の硬化後は8032psiに増加した。
【0093】
遅延剤溶液を活性剤溶液と30分間混合した後、ジオポリマーモルタル試料を調製した(例12)。フレッシュモルタルについて、ASTM C191に準拠したAutoVicatで硬化時間を測定した。初期硬化時間は136分で、最終硬化時間は198分であった。圧縮強度は、7日間の硬化後は3673psiで、28日間の硬化後は7734psiに増加した。
【0094】
活性剤溶液を乾燥成分混合物に注いだときに、遅延剤溶液を添加した(例13)。混合物を5分間混合した。フレッシュモルタルを、ASTM C191に準拠したAutoVicatを使用して硬化時間について測定した。初期硬化時間は114分、最終硬化時間は180分であった。圧縮強度は、7日間の硬化後は4064psiで、28日間の硬化後は7970psiに増加した。
【0095】
例14~16
ジオポリマー性の超高性能コンクリート(GUHPC)を調製するために、メタカオリン(5.71重量%)と高炉スラグ微粉末(14.72重量%)を高強力ミキサー(K-Lab、Kercher Industries)で混合した。活性剤は、NaOHとしてNa2O(2.12重量%)、KOHとしてK2O(1.35クォート%重量%)、タイプRuケイ酸ナトリウム溶液としてSiO2(3.95重量%)、及び水(10.15重量%)を混合して調製した。塩化バリウム二水和物がある場合は個別に水に溶解し、試料を調製する5分前に活性剤溶液と合わせた。次いで、活性剤溶液をMK/BFSブレンドに注ぎ、約350rpmで3分間混合した。次いで、乾燥川砂(50重量%)と石英粉(10.00重量%)を混合物に加え、3分間混合し続けた。混合の終了に向けて、シリカフューム(2.00%)を加え、3分間混合し続けた。生成するペーストについては、AutoVicat又は手動のVicat装置を使用して、初期硬化時間を判定した。ペーストを2インチx4インチの円筒型に注ぎ、室温で硬化させた。圧縮強度を、Test Mark CM-4000-SD圧縮で28日間硬化させた後に測定した。圧縮機は、NISTトレーサブル規格に基づいて校正されている。
【0096】
塩化バリウム二水和物が存在しない場合(例14)、初期硬化時間は約30分と推定され、圧縮強度は28日間の硬化後、約19972psiであった。1重量%BWOBの塩化バリウム二水和物を添加した場合(例15)、初期硬化時間は54分であり、28日間の硬化後の圧縮強度は約20146psiであった。2重量%BWOBの塩化バリウム二水和物を添加した場合(例16)、初期硬化時間は89分に増加し、28日間の硬化後の圧縮強度は約19424psiであった。
【0097】
例17~18
GUHPC試料を調製するために、メタカオリン(5.92重量%)と高炉スラグ微粉末(15.28重量%)を高強力ミキサー(K-Lab、Kercher Industries)で混合した。活性剤は、NaOHとしてNa2O(1.08重量%)、KOHとしてK2O(2.47クォート%重量%)、シリカフュームとしてSiO2(3.80重量%)、及び水(9.45重量%)を混合することにより調製した。シリカフュームをアルカリ水酸化物溶液に溶解し、生成した活性剤溶液を使用前に1週間熟成させた。塩化バリウム二水和物がある場合は個別に水に溶解し、次いで試料を調製する10分前に活性剤溶液と合わせた。次いで、活性剤溶液をMK/BFSブレンドに注ぎ、約350rpmで3分間混合した。次に、乾燥川砂(50重量%)と石英粉(10.00重量%)を混合物に加え、3分間混合し続けた。混合の終了に向けて、シリカフューム(2.00%)を加え、3分間混合し続けた。生成したペーストについては、手動のVicat装置を使用して、初期及び最終の硬化時間を判定した。ペーストを2インチx4インチの円筒型に注ぎ、室温で硬化させた。圧縮強度を、28日間の硬化後に測定した。
【0098】
塩化バリウム二水和物を使用しない場合(例17)、初期硬化時間は15分であり、最終硬化時間は19分であり、28日間の硬化後の圧縮強度は約26418psiであった。1.5重量%BWOBの塩化バリウム二水和物を添加した場合(例18)、初期硬化時間は73分であり、最終硬化時間は81分であり、28日間の硬化後の圧縮強度は約23817psiであった。
【0099】
例19~20
例19及び20は、ジオポリマーコンクリートに可溶性バリウム塩を使用した硬化の制御における効率を実証している。
【0100】
両方のコンクリート試料の混合組成物には、78.75重量%の骨材が含まれ、粗骨材と細骨材の質量比は1.74であった。結合剤には、80%の低CaO FFAと20%の高炉スラグが含まれていた。w/b比は0.47であり、NaOHモル濃度は5.7であり、SiO2/Na2Oの質量比は活性剤溶液について1.15であった。ジオポリマーコンクリート試料を調製するために、オーストラリアのNeilsens Groupの低CaO FFA、Lafarge-Holcimの高炉スラグ、及び川砂(SSD条件)を高強力ミキサー(K-Lab、Kercher Industries)で3分間混合した。NaOHビーズを水に溶解し、次いで、生成した溶液をタイプRuのケイ酸ナトリウム溶液と合わせて、活性剤溶液を調製した。活性剤溶液を使用前に一晩放置した。
【0101】
遅延剤なしの活性剤溶液(例#19)をFFA/BFS/砂混合物に注ぎ、300rpmで3分間混合した。次に、SSD粗骨材(グレード#7)を添加し、低速の混合速度(例、20rpm)で5分間混合した。生コンクリートをふるいにかけて、硬化時間についてASTM C403に準拠したAcme Penetrometerで測定されるモルタル試料を得た。生コンクリートも3インチx6インチの円筒型に注ぎ、振動テーブルで1分間振動させた。試料に蓋をし、圧縮強度を測定するまで室温で硬化させた。初期硬化時間は75分であり、最終硬化時間は168分であった。7日間の硬化後の圧縮強度は4509psiであり、28日間の硬化後は7992psiに増加していた。
【0102】
例19に記載したのと同じ手順を使用して、遅延剤を伴う追加のコンクリート試料を調製した(例20)。塩化バリウム二水和物を別々に水に溶解した。遅延剤の用量は1.00%BWOBであった。生コンクリート試料を調製する前に、遅延剤溶液を活性剤溶液と30分間混合した。生コンクリートをふるいにかけ、ASTM C403に準拠したAcme Penetrometerの使用による硬化時間についてのモルタル試料を得た。初期硬化時間は313分であり、最終硬化時間は572分であった。圧縮強度は、7日間の硬化後は3707psi、28日間の硬化後は7259psiであった。
【0103】
例21
遅延剤溶液を含まない例#8と同じ混合組成物を30分間混合し、次いで遅延剤溶液(3%塩化バリウムBWOB)を混合しながらペーストに注ぎ、さらに10分間混合した。混合を停止した後、モルタル試料を硬化時間判定のためにASTM C191に供した。活性剤溶液を乾燥混合物に注いだ後約7.4時間で、モルタル試料は硬化の兆候を一切示さないことから、遅延剤が硬化を効率的に遅らせることが示された。遅延剤は、レディミックストラックで輸送中の生ジオポリマーコンクリートの緊急硬化ブレーキに使用され得る。
【0104】
本開示の多くの実施形態を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、修正及び変更が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示のすべての例は、本発明の多くの実施形態を示す一方で、非限定的な例として提供され、したがって、そのように示される様々な実施態様を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0105】
参考文献
以下の参考文献は上記で言及されており、参照により本明細書に組み込まれる。
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3.J.L.Provis、J.S.J.van Deventer、「アルカリ活性化材料」(Alkali Activated Materials)スプリンガー:ホーテン(Springer:Houten)、オランダ、2014年。
4.E.I.Diaz、E.N.Allouche、S.Eklund、「ジオポリマーの原料としてのフライアッシュの適合性に影響する要因」(Factors Affecting the Suitability of Fly Ash as Source Material for Geopolymers)、燃料(Fuel)89(2010)992-999頁。
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7.L.Kalina、V.Bilek Jr.、R.Novotny、M.Moncekova、J.Masilko及びJ.Koplik、「アルカリ活性化高炉スラグの水和プロセスに対するNa3PO4の影響」(Effect of Na3PO4 on the Hydration Process of Alkali-Activated Blast Furnace Slag)、材料(Materials)9(2016)395-403頁。
8.J.J.Chang、「ケイ酸ナトリウム活性化スラグペーストの硬化特性に関する研究」(A Study on the Setting Characteristics of Sodium Silicate-activated Slag Pastes)、セメント及びコンクリート研究(Cement and Concrete Research)33(2003)1005-1011頁。
9.J.J.Chang、W.C.Yeih、C.C.Hung、「ケイ酸ナトリウムベースのアルカリ活性化スラグペーストの特性に対する石膏とリン酸の影響」(Effects of Gypsum and Phosphoric Acid on the Properties of Sodium Silicate-based Alkali-activated Slag Pastes)、セメント及びコンクリート複合材料(Cement and Concrete Composites)27(2005)85-91頁。
10.C.Wu、Y.Zhang、Z.Hu、「アルカリスラグセメントの特性と適用」(Properties and Application of Alkali-slag Cement)、中国セラミック協会ジャーナル(Journal of the Chinese Ceramic Society)21(1993)175-181頁。
11.U.Rattanasak、K.Pankhet、P.Chindaprasirt、「高カルシウムフライアッシュジオポリマーの特性に対する化学混和剤の影響」(Effect of Chemical Admixtures on Properties of High-calcium Fly Ash Geopolymer)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ミネラルズ・メタラジイ・アンド・マテリアルズ(International Journal of Minerals Metallurgy and Materials)18(2011)364-369頁
12.A.R Brough、M.Holloway、J.Sykes、A.Atkinson、「ケイ酸ナトリウムベースのアルカリ活性化スラグモルタル:パートII。塩化ナトリウム又はリンゴ酸の添加の遅延効果」(Sodium silicate-based alkali-activated slag mortars:Part II.The retarding effect of additions of sodium chloride or malic acid)、セメント及びコンクリート研究(Cement and Concrete Research)30(2000)1375-1379頁。
13.A.R.Sakulich、E.Anderson、C.Schauer、M.W.Barsoum、「アルカリ活性化スラグ/石灰岩細骨材コンクリートの機械的及び微細構造の特性評価」(Mechanical and Microstructural Characterization of an Alkali-activated Slag/Limestone Fine Aggregate Concrete)、建設及び建築材料(Construction and Building Materials)23(2009)2951-2957頁。
14.C.L.Nicholson、B.J.Murray、R.A.Fletcher、D.Brew、K.J.Mackenzie、M.Schmucker、「ホウ酸塩構造単位を含む新規ジオポリマー材料。ジオポリマー世界会議の議事録掲載」(Novel Geopolymer Materials Containing Borate Structural Units.In Proceedings of the World Congress Geopolymer)、パース、オーストラリア、2005年9月;31-33頁。
15.M.Davraz、「セメント系複合材料の特性に対するホウ素化合物の効果」(The Effects of Boron Compounds on the Properties of Cementitious Composites)、複合材料の科学と工学(Science and Engineering of Composite Materials)17(2010)1-18頁。
16.G.R.Qian、D.D.Sun、J.H.Tay、「水銀及び亜鉛をドープしたアルカリ活性化スラグマトリックスの特性評価パートII。亜鉛」(Characterization of mercury-and zinc-doped alkali-activated slag matrix Part II.Zinc)、セメント及びコンクリート研究(Cement and Concrete Research)33(2003)1257-1262頁。
17.G.R.Qian、D.D.Sun、J.H.Tay、「アルカリ活性化スラグマトリックスにおける水銀と亜鉛の固定化」(Immobilization of Mercury and Zinc in an Alkali-activated Slag Matrix)、有害物質ジャーナル(Journal of Hazardous Materials)B101(2003)65-77。
18.W.L.Gong、H.Xu、W.Lutze、I.L.Pegg、「坑井密閉用途のポンパブルジオポリマー組成物」(Pumpable Geopolymer Compositions for Well Sealing Applications)、米国特許出願15/597,227、2017年5月17日出願、申請中(2016)。
19.I.Halasz、M.Agarwal、R.B.Li、N.Miller、「振動分光法により溶解したケイ酸ナトリウムの構造について何が分かるか?」(What Can Vibrational Spectroscopy Tell about the Structure of Dissolved Sodium Silicates?)マイクロポーラス及びメソポーラス材料(Microporous and Mesoporous Materials)135(2010)74-81頁。
20.I.Halasz、M.Agarwal、R.B.Li、N.Miller、「水性Na2SiO3溶液の振動スペクトルと解離」(Vibrational Spectra and Dissociation of Aqueous Na2SiO3 Solutions)、カタリシス・レターズ(Catalysis Letters)117(2007)34-42頁。
【0106】
本出願で引用されたすべての文書、特許、雑誌記事及び他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本開示はある特定の実施形態を参照して開示されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本開示の範囲及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対する多くの修正、改変、及び変更が可能である。したがって、本開示は、記載された実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等内容物によって定義される全範囲を有することが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩、
少なくとも1つの遅延剤溶液、及び
少なくとも1つのアルカリケイ酸塩活性剤溶液
を含む制御可能な硬化時間を有するジオポリマー組成物であって、
前記少なくとも1つの遅延剤が、アルカリ溶液中で加水分解し、前記アルカリケイ酸塩活性剤溶液中に存在するシリケート種を共沈させる可溶性金属塩であって、
前記少なくとも1つの遅延剤が、塩化バリウム無水物、塩化バリウム二水和物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、及びメタホウ酸バリウム一水和物からなる群から選択され、
前記少なくとも1つの遅延剤が、0.5~5%BWOBの量で使用される、
ジオポリマー組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、低CaクラスFフライアッシュ(FFA)及び高炉スラグ(BFS)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
前記低CaクラスFフライアッシュ(FFA)が8重量%以下の酸化カルシウムを含むフライアッシュである、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
前記フライアッシュが少なくとも65重量%の非晶質アルミノケイ酸塩相を含む、請求項3に記載のジオポリマー組成物。
【請求項5】
前記フライアッシュが、60μm以下、50μm以下、45μm以下及び30μm以下のうちの1つの平均粒子直径を有する、請求項3に記載のジオポリマー組成物。
【請求項6】
前記低CaクラスFフライアッシュ(FFA)が5%以下の強熱減量(LOI)を有する、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高CaクラスFフライアッシュ(FFA)、クラスCフライアッシュ(CFA)、高炉スラグ(BFS)、ガラス質ケイ酸カルシウム(VCAS)、ボトムアッシュ、及びクリンカーキルンダスト(CKD)の群から選択される少なくとも1つの高Caアルミノケイ酸塩を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩がメタカオリン(MK)をさらに含む、請求項8に記載のジオポリマー組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、高炉スラグ(BFS)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反応性アルミノケイ酸塩が、クラスCフライアッシュ(CFA)及びメタカオリン(MK)を含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項12】
前記アルカリケイ酸塩活性剤溶液が、金属水酸化物及び金属ケイ酸塩を含み、前記金属が、カリウム、ナトリウム又は両方の組み合わせである、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項13】
前記金属塩が、塩化バリウム無水物、塩化バリウム二水和物、硝酸バリウム、亜硝酸バリウム、メタホウ酸バリウム一水和物、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化鉛、硝酸鉛、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、及び硫酸ストロンチウムからなる群から選択される、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの骨材をさらに含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのミクロン又はサブミクロンのフィラーをさらに含む、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項16】
初期硬化時間が25分~24時間である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項17】
初期硬化時間が45分~180分である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項18】
初期硬化時間が90分~360分である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【外国語明細書】