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特開2023-52652高ビニル芳香性および低ビニル含有量を有するビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーの合成のための極性添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052652
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】高ビニル芳香性および低ビニル含有量を有するビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーの合成のための極性添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/10 20060101AFI20230404BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20230404BHJP
   C08L 25/10 20060101ALI20230404BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230404BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230404BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20230404BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C08F236/10
C08L9/06
C08L25/10
C08K3/013
C08L21/00
C08F2/38
B60C1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010231
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2019553501の分割
【原出願日】2018-03-28
(31)【優先権主張番号】17461514.6
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515308903
【氏名又は名称】シントス エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOS S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】319007860
【氏名又は名称】シントス ドボリ 7 スプウカ ズ オグラニザツィーノン オトゥポビエジャルノシチョン
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOS DWORY 7 SPOLKA Z OGRANICZONA ODPOWIEDZIALNOSCIA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】コザック、ラドスワフ
(72)【発明者】
【氏名】ボガチュ、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ワレニア、マルゴルザータ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェダ、パヴェウ
(57)【要約】
【課題】ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーであって、高いビニル芳香族含有量、低いビニル含有量および低いブロック性を有するコポリマーを提供すること。
【解決手段】本発明は、N,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのアニオン重合における使用に関する。この極性添加剤を使用すると、高いビニル芳香族性および低いビニル含有量の両方を有する一方で、ビニル芳香族単位のブロック性が調整できるコポリマーが生成できる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ1~20個の炭素原子を有し;
かつ、R、R、およびRのそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ最大20個の炭素原子を有してもよい]
を有するN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの、1つ以上の共役ジエンモノマーと1つ以上のビニル芳香族モノマーのコポリマーの製造における使用であって、前記製造はアニオン重合によるものであり、1つ以上のアニオン開始剤の存在下におけるものであり、かつ前記コポリマーが、同コポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントの含有量のビニル芳香族モノマーを有する、使用。
【請求項2】
式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンのアニオン開始剤に対するモル比が0.01~50の範囲であり、
より好ましくは0.1~30の範囲である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アニオン重合において、1つ以上のさらなる極性修飾剤が使用され、
好ましくは、前記さらなる極性修飾剤は、ルイス塩基およびルイス酸のうちの1つ以上から選択される、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
さらなる極性修飾剤のアニオン開始剤に対するモル比が約0.01~約50の範囲であり、
好ましくは、約0.1~約10の範囲である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンから選択され、
好ましくは、前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンおよびイソプレンから選択され、
特に、前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記ビニル芳香族モノマーは、スチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-プロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-ドデシルスチレン、3-メチル-5-n-ヘキシルスチレン、4-フェニルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、3,5-ジフェニルスチレン、2,3,4,5-テトラエチルスチレン、3-エチル-1-ビニルナフタレン、6-イソプロピル-1-ビニルナフタレン、6-シクロヘキシル-1-ビニルナフタレン、7-ドデシル-2-ビニルナフタレン、およびα-メチルスチレンから選択され、
好ましくは、前記ビニル芳香族モノマーは、スチレン、3-メチルスチレン、およびα-メチルスチレンから選択され、
特に、前記ビニル芳香族モノマーは、スチレンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーの調製のための方法であって、前記方法は、同コポリマーを得るために、以下のステップ:
(1)アニオン共重合を開始するために、(i)1つ以上の共役ジエンモノマーと(ii)1つ以上のビニル芳香族モノマーを含むモノマー成分を、
a)1つまたは複数のアルカリ金属塩誘導体を含む開始剤成分、ならびにb)以下の式(I):
【化2】

[式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ1~20個の炭素原子を有し、
かつ、R、R、およびRのそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ最大20個の炭素原子を有してもよい]
を有する1つまたは複数のN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンおよびb)任意選択にて、ルイス塩基およびルイス酸の群から選択される1つまたは複数のさらなる極性添加剤と、接触させるステップと、
(2)共重合を連続的に行うステップと、
(3)任意選択にてカップリングするステップと、
を、含み、
前記コポリマーが、同コポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントの含有量のビニル芳香族モノマーを有する、方法。
【請求項8】
共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとに基づくコポリマーであって、前記コポリマーは、
a)ポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量;
b)総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.01~約12重量パーセントの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量;および
c)総共役ジエン重合画分に基づいて、8を超えて約35重量パーセントまでのビニル含有量、を有するコポリマー。
【請求項9】
(a)ビニル芳香族モノマーの含有量は、ポリマーの総重量に基づいて、約40~約55重量パーセントである、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
(b)4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量が、それぞれが総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.05~約12重量パーセント、好ましくは約0.1~約12重量パーセント、特に約0.1~約6重量パーセント、例えば、約0.1~約3重量パーセント、または約0.1~約2.5重量パーセントである、請求項8および請求項9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
(c)ビニル含有量は、それぞれが総共役ジエン重合画分に基づいて、約10~約35重量パーセント、好ましくは約14~約30重量パーセント、特に約18~約27重量パーセントである、請求項8~10のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項12】
非結合生成物のMw/Mnは、約1.01~約3.0の範囲、好ましくは約1.01~約1.2の範囲にある、請求項8~11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
1つ以上の加硫剤の存在下で請求項8~12のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマーを加硫することを含むゴムを調製するための方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法に従って得られるゴム。
【請求項15】
請求項14に記載のゴムを含むx)ゴム成分を含む、ゴム組成物。
【請求項16】
請求項15に記載のゴム組成物であって、y)1以上の充填材をさらに含み、
好ましくは、前記充填材はシリカおよびカーボンブラックからなる群より選択され、
より好ましくは、前記充填材成分はy)シリカおよびカーボンブラックの両方を含む、ゴム組成物。
【請求項17】
充填材成分y)の量は、ゴム成分x)100質量部に対して10~150質量部(phr)であり、
好ましくは、成分y)の量は、20~140phrであり、
より好ましくは成分y)の量は30~130phrである、請求項16に記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記ゴム成分x)はまた1つ以上のさらなるゴム状ポリマーを含み、
好ましくは、前記さらなるゴム状ポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-α-オレフィンコポリマーゴム、エチレン-α-オレフィンジエンコポリマーゴム、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマーゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選択される、請求項15~17のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一項に記載のゴム組成物を含むタイヤ部品であって、好ましくは前記タイヤ部品はタイヤトレッドである、タイヤ部品。
【請求項20】
請求項19に記載のタイヤ部品を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン重合による、高ビニル芳香性および低ビニル含有量を有するビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーの製造のための特定の極性添加剤の使用に関する。極性添加剤は、特に高いビニル芳香族含有量を有し、かつコポリマー中のビニル芳香族の明確なブロック性を有するコポリマーをもたらす。本発明のコポリマーは、以下の特徴を有する:(a)ポリマーの総重量に基づいて、約30~約80重量パーセントのビニル芳香族含有量;(b)総ビニル芳香族含有量に基づいて、約0.01~約32重量パーセントまでの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族ブロックの含有量;および(c)総共役ジエン重合画分に基づいて、8を超えて約45重量パーセントまでのビニル含有量。
【背景技術】
【0002】
ランダム化された高いビニル芳香族含有量(例えば、ポリマーの総重量に基づいて30~50重量パーセントのスチレン)を有する、または部分的にブロックされた超高スチレン含有量(ポリマーの総重量に基づいて55~78重量パーセントのスチレン)を有する共役ジエンモノマー(例えば、1,3-ブタジエン)のコポリマーの製造は、低ビニル含有量(45%以下)を有するコポリマーを得たい場合には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)などの標準ランダム化剤を用いては不可能である。これは、これらのタイプの薬剤がジエンモノマーの1,2-付加を強力に促進し、即ち、それが高ビニル含有量を有するコポリマーをもたらすからである。さらに、ビニル芳香族モノマーの含有量とビニル芳香族繰り返し単位のブロック長は、極性添加剤の量の増加に伴って減少する傾向がある。
【0003】
特許文献1は、a)ポリマー中の全スチレン含有量に基づいて約40~約70重量パーセントの4を超える連続単位のブロックスチレン含有量、b)重合化された1,3-ブタジエンの総量に基づいて約25~約80重量パーセントのビニル含有量、c)ポリマーの総重量に基づいて約20~約75重量パーセントのスチレン含有量、およびd)1.5以下の分子量分布(M/M)を有するポリマーの製造を教示している。このプロセスは、i)開始剤、ii)カリウムアルコラート、およびiii)ジテトラヒドロフリルプロパン(より具体的には2,2-ジ(2-オキソラニル)プロパン)である極性剤の存在下での重合を伴う。同様に、特許文献2は、2つの極性剤を必要とする重合プロセスを教示している。第1の極性剤は、テトラメチルエチレンジアミンなどのビス-アミノアルキレンである。第2の極性剤は、ジテトラヒドロフリルプロパン(より具体的には、2,2-ジ(2-オキソラニル)プロパン)である。得られたポリマーは、重合された1,3-ブタジエンに基づいて、a)約40~約70重量パーセントのスチレン含有量、およびb)約30~約80重量パーセントのビニル含有量、を有する。実施例に示された6を超える連続スチレン単位からなるブロックスチレンの含有量は、6~17%である。
【0004】
特許文献3は、ビニル芳香族モノマーから作られた少なくとも2つのハードブロックSおよびSと、これらの間で、ビニル芳香族モノマーおよびジエンモノマーから作られた少なくとも1つのランダムソフトブロックB/Sを含むブロックコポリマーを教示しており、ここで、全ブロックコポリマーに基づいて、ハードブロックの割合は、40重量%超である。特許文献4は、例えば、全スチレン含有量の40~65重量%の4~20スチレン単位を有するスチレン配列の含有量を有するスチレン-ブタジエンコポリマーの製造を教示している。
【0005】
特許文献5は、a)ポリマー中の全スチレン含有量に基づいて約15~約35重量パーセントの6を超える連続単位のブロックスチレン含有量、b)重合された1,3-ブタジエンの全量に基づいて、約25~約80重量パーセントのビニル含有量、c)ポリマーの総重量に基づいて約35~約75重量パーセントのスチレン含有量、およびd)1.5以下の分子量分布(M/M)、を有するポリマーの製造を教示している。このプロセスは、開始剤、カリウムアルコラート、およびジアルキルエーテルである極性剤の存在下での重合を伴う。4を超える連続単位のブロックスチレン含有量は、総スチレン含有量に基づいて60~80重量パーセントであってもよい。
【0006】
非特許文献1は、極性添加剤(修飾剤)の適用により、スチレン-ブタジエンコポリマー中のスチレンのランダム化が促進され、ビニル基の含有量が増加することを教示している。スチレンの単独重合速度定数は、1,3-ブタジエンのそれよりも高くなっている。しかしながら、スチレンとブタジエンを混合すると、反応性が逆転し、1,3-ブタジエンはスチレンよりも速く重合する傾向がある。この現象は、スチレンと比較して、1,3-ブタジエンがリビングセンターとより安定したπ結合を形成する傾向があり、したがって1,3-ブタジエン重合が有利であるために観察される。スチレン/ブタジエン混合物中のブタジエンの濃度が非常に低い場合、スチレンが重合し始め、テーパー状またはブロックコポリマーが得られる(特許文献6)。この文献はまた、高温で反応を行うと非常に低いブロック性を有するスチレンとブタジエンのコポリマーを得ることができることを教示している。コポリマーは、典型的には25%以下の低いスチレン含有量を有する。また、ルイス塩基、ルイス酸(特許文献7)、ルイス塩基と酸の混合物、またはπドナー基を重合系に加えると、スチレンとブタジエンの反応性が等しくなり、これは、ランダムなスチレン-ブタジエンコポリマーを得ることを可能にする。
【0007】
特許文献8は、例えば、ルイス酸などの極性添加剤が存在しない場合、ジエンモノマー(スチレン、イソプレン)のリチウム開始溶液重合に環状アルコール(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、SDBSなど)の金属塩を使用できることを開示している。このようにして、低ビニル含有量のゴムが得られる。
【0008】
特許文献9は、2つのルイス塩基、すなわちジテトラヒドロフリルプロパン(DOP)とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)からなる極性添加剤系が、TMEDA単独の使用と比較して、短い反応時間で、かつポリマー鎖の寿命が向上した、狭い分子量分布、高いモノマー転化率を備えた、高スチレン、高ビニルSBRをもたらすことを開示している。さらに、特許文献10および特許文献11は、バッチ、セミバッチまたは連続プロセスでの、ジテトラヒドロフリルプロパンの使用は、(反応条件および適用される極性添加剤の濃度に応じて)大きく異なり、低ビニルまたは高ビニルスチレン-ブタジエンポリマーを与え、ここで、スチレン含有量が、ポリマーの重量に基づいて、一般的に10~70重量パーセントまで変化する場合があり、ブロックスチレンは8重量パーセント未満または27~50重量パーセントの間であり、かつビニル含有量は(ブタジエン画分あたり)12~40または30~80重量パーセントであり得ることを教示している。
【0009】
異なるモノマー(スチレン、ブタジエン)の充填比でスチレンとブタジエンの共重合を行い、かつスチレンが豊富な条件下でプロセスを行うことにより、ポリマー鎖に沿ってスチレンをランダム化することも可能である(特許文献12)。重合は2つの重合ゾーンで行われ、ビニル含有量が10%未満のリビングスチレン-ブタジエンゴムのセメントになり、ここで、ポリマー鎖中のスチレンに由来する繰り返し単位の総量の5%未満は、5以上のスチレン繰り返し単位を含むブロックの状態である。しかしながら、低ブロック性を有する低ビニルポリマーを得るためには、第2の反応器での転化率を95%未満、好ましくは93%未満に維持しなければならず、その結果、かなりの量の残留モノマーを除去しなければならない製品が得られることになる。ポリマーは通常、10~30重量パーセントの低いスチレン含有量を有する。
【0010】
特許文献13は、触媒としてn-ブチルリチウムの存在下でブタジエンとスチレンとの共重合においてランダム化剤としてトリアジンを使用できることを教示している。トリアジンランダム化剤は、低スチレンコポリマー(すなわち、25重量%のスチレン、75重量%の1,3-ブタジエン)中のジエン重合画分に基づいて、13.5~33.2重量パーセントの範囲のビニル含有量を与える。
【0011】
したがって、当該技術分野では、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーであって、コポリマーが、1)高いビニル芳香族含有量、2)低いビニル含有量、および3)低いブロック性を有する、コポリマーを提供するプロセスが必要である。これは単純で効果的なプロセスであるべきであり、つまり、重合が2段階で、または低変換率で実施されることが必ずしも必要であるべきではない。
【0012】
特許文献11に記載されているように、ランダム化剤を使用すると、10%未満の低ブロックスチレン含有量(スチレンの6連続単位を超える)を有する高ビニルSSBRが得られる。長いブロックスチレンは、例えば、S.フタムラ(Futamura)およびG.デイ(Day)によって報告されたように、ヒステリシスを悪化させる可能性があり、S.フタムラおよびG.デイは、カーボンブラックを充填した化合物中でブロックスチレンの含有量を2から約7%に増やすと、60℃でタン・デルタ(tan delta)の約18%の悪化を観察した(非特許文献2)。対照的に、小さなスチレンブロックを組み込むと、非特許文献3によって報告されているように、特にシリカ化合物の摩耗および引張強度が向上する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8927644B2号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0345379A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6521712B1号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0798339A2号明細書
【特許文献5】米国特許第8927645B2号明細書
【特許文献6】米国特許第3558575号明細書
【特許文献7】米国特許第3787377号明細書
【特許文献8】米国特許第6583244B1号明細書
【特許文献9】米国特許第9000109B2号明細書
【特許文献10】国際公開第WO2011/157742A1号
【特許文献11】米国特許第8981000B2号明細書
【特許文献12】米国特許第6372863号明細書
【特許文献13】米国特許第3498960B号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】アントコウィアク(Antkowiak)他、J.Polym.Sci.,PartA-1,1972年、10、1319
【非特許文献2】S.フタムラ(Futamura)およびG.デイ(Day)、Kautschuk Gummi Kunststoffe,1987,40,No.1、39~43
【非特許文献3】I.ハットリ(Hattori)他、ACS第143回ゴム部門会議(143rd Meeting of the Rubber Division of the ACS)、1993年春、論文22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーであって、高いビニル芳香族含有量、低いビニル含有量および低いブロック性を有するコポリマー、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、高スチレン、低ビニルのビニル芳香族(例えば、スチレン)-共役ジエン(例えば、ブタジエン)ゴムは、有機金属開始剤および特定の極性修飾剤(polar modifier)の存在下で、ビニル芳香族および共役ジエンモノマーのアニオン重合によって得られることが発見された。極性修飾剤(添加剤)は、以下の式(I):
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ1~20個の炭素原子を有し;
かつ、R、R、およびRのそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ最大20個の炭素原子を有していてもよい。]
を有する、N,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンである。
【0019】
式(I)に従うヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンは、ルイス塩基であるにもかかわらず極性修飾剤として作用し、ビニル含有量に強い影響を与えず、一方で優れたランダム化を提供する。総スチレン含有量、所望のブロックスチレン含有量、所望のビニル含有量および重合温度に応じて、本発明に従うヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンは、典型的には、極性修飾剤の開始剤に対するモル比が0.01~50:1の範囲にあるような量にて使用される。
【0020】
式(I)に従うヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンを用いたアニオン重合により生成される本発明のコポリマーは、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのゴム状コポリマーであり、ビニル芳香族モノマーの約30~約80重量パーセントの含有量によって特徴付けられる。
【0021】
第1の態様に従って、本発明は、エラストマーコポリマーの製造における、上記で定義された式(I)に従うヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの使用に関する。
第2の態様によれば、本発明は、エラストマーコポリマーの製造方法に関する。
【0022】
第3の態様によれば、本発明は、a)ポリマーの総重量に基づいて、約30~約80重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量;b)総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.01~約32重量パーセントの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量;およびc)総共役ジエン重合画分(polymerized fraction)に基づいて、8を超えて約45重量パーセントまでのビニル含有量、を有するエラストマーコポリマーに関する。
【0023】
第4の態様によれば、本発明は、1つ以上の加硫剤の存在下で第3の態様によるエラストマーコポリマーを加硫することを含むゴムの調製方法に関する。
第5の態様によれば、本発明は、第4の態様の方法に従って得ることができるゴムに関する。
【0024】
第6の態様によれば、本発明は、第5の態様に従うゴムを含むゴム成分を含むゴム組成物に関する。
第7の態様によれば、本発明は、第6の態様に従うゴム組成物を含むタイヤ部品に関する。
【0025】
最後に、第8の態様によれば、本発明は、第7の態様によるタイヤ部品を含むタイヤに関する。
本発明は、式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン添加剤の使用により、(特許文献12と比較して)複雑な2段階プロセスを必要とせず、あるいは低変換で重合を行う必要もなく、約30~約80重量%のビニル芳香族モノマーの含有量を有するコポリマーを容易に製造できるという驚くべき発見に基づいている。
【0026】
ビニル芳香族モノマー(特にスチレン)と共役ジエンモノマー(特に1,3-ブタジエン)とのコポリマーは、高スチレン、低ビニルのスチレンブタジエンゴム(HS-LV-SBR、30~50重量%の範囲にある総スチレン含有量)、および超高スチレン、低ビニルのスチレンブタジエンゴム(UHS-LV-SBR、50~80重量%の範囲にある総スチレン含有量)として分類され得る。本発明に従って得られたHS-LV-SBRおよびUHS-LV-SBRの両方について、総ビニル含有量は、総共役ジエン重合画分に基づいて、8重量パーセント超であり、かつ約45重量パーセントまでの範囲にある。したがって、以下の典型的な重合条件下、即ち、30~80%のスチレンの重量%含有量、0.01~50:1の範囲にあるヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン/開始剤モル比、かつ100℃未満の重合温度、にて、制御可能なスチレンブロック含有量を有するHS-LV-SBRおよびUHS-LV-SBRを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーであって、高いビニル芳香族含有量、低いビニル含有量および低いブロック性を有するコポリマー、を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン
第1の態様によれば、本発明は、以下の式(I):
【0029】
【化2】
【0030】
[式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ1~20個の炭素原子を有し;
かつ、R、R、およびRのそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ最大20個の炭素原子を有していてもよい。]
を有するN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの、1つ以上の共役ジエンモノマーと1つ以上のビニル芳香族モノマーとのコポリマーの製造における使用に関し、当該製造はアニオン重合によるものであり、1つ以上のアニオン開始剤の存在下におけるものであり、かつコポリマーが、同コポリマーの総重量に基づいて、約30~約80重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量を有する。
【0031】
好ましくは、R、R、およびRは同一であり、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアリール基から選択される。より好ましくは、R、R、およびRは同一であり、1~20個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。最も好ましくは、R、R、およびRはそれぞれメチルである。
【0032】
また、R、R、およびRは同一であることが好ましく、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアリール基から選択される。最も好ましくは、R、R、およびRはそれぞれHである。
【0033】
したがって、式(I)の化合物について、R、R、およびRはそれぞれメチルであり、そして、R、R、およびRはそれぞれHである(ヘキサヒドロ-N,N’,N’’-トリメチルトリアジン)ことが最も好ましい。
【0034】
好ましくは、式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンのアニオン開始剤に対するモル比は、0.01~50までの範囲、より好ましくは0.1~30までの範囲である(式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンを2つ以上使用する場合、この比率を計算するためのヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの量は、提示するように、式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの合計量である)。
【0035】
好ましいアニオン開始剤は有機リチウム化合物である。
有機リチウム化合物
有機リチウム化合物としては、1~20の炭素原子を有する炭化水素基を有するものが好ましい。例は、メチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、およびジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応生成物である。これらの化合物のうち、n-ブチルリチウムおよびsec-ブチルリチウムが好ましい。
【0036】
リチウムアミド
リチウムアミド化合物の例は、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムN-メチル-ピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミドおよびリチウムメチルフェネチルアミドである。これらの化合物のうち、重合開始能の観点から好ましいのは、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミドおよびリチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドであり、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジドおよびリチウムピペリジドが特に好ましい。
【0037】
また、2つ以上のアニオン開始剤が使用される場合、総モル量は、本明細書で言及されるモル比の計算に使用される。
本発明のコポリマーの調製は、式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンを単一の極性修飾剤として使用することにより、または式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの、ビニル基の形成も促進するさらなる極性修飾剤(ルイス塩基および/またはルイス酸など)との組み合わせの適用により可能である。式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンとともに、1つ以上のさらなる極性修飾剤がアニオン重合において使用されることが好ましい。好ましくは、さらなる極性修飾剤は、ルイス塩基およびルイス酸の1つまたは複数から選択される。より好ましくは、さらなる極性修飾剤は、ジテトラヒドロフリルプロパン、テトラメチルエチレンジアミン、メントール酸ナトリウム(sodium mentholate)、およびテトラヒドロフランから選択される。
【0038】
したがって、本発明の重合プロセスは、典型的には、三級アミン、アルコラートまたはアルキルテトラヒドロフルフリルエーテルなどの極性修飾剤の存在下で実施される。
使用できる特定の極性修飾剤のいくつかの代表例には、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、オクチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ドデシルテトラヒドロフルフリルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、およびN-フェニルモルホリンが挙げられる。
【0039】
カリウムまたはナトリウム化合物は、重合開始剤の反応性を高めることを目的とする場合、または得られたポリマーに芳香族ビニル化合物をランダムに配置することを目的とする場合、または得られたポリマーに単鎖としての芳香族ビニル化合物を含有させることを可能にすることを目的とする場合、重合開始剤とともに添加されてもよい。重合開始剤とともに添加されるカリウムまたはナトリウムとしては、例えば、以下のものを使用することができる:イソプロポキシド、tert-ブトキシド、tert-アミルオキシド、n-ヘプタオキシド、ベンジルオキシドおよびフェノキシドに代表されるアルコキシドおよびフェノキシド;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸およびオクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウムまたはナトリウム塩。
【0040】
好ましくは、さらなる極性修飾剤のアニオン開始剤に対するモル比は、約0.01~約50の範囲、より好ましくは約0.1~約10の範囲である。2つ以上のさらなる極性修飾剤が使用される場合、さらなる極性修飾剤の総モル量は、本明細書で言及されるモル比を計算するために使用される。
【0041】
本発明に従って使用される共役ジエンモノマーは、好ましくは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンから選択される。より好ましくは、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンおよびイソプレンから選択される。特に、本発明に従って使用される共役ジエンモノマーは1,3-ブタジエンである。
【0042】
また、本発明に従って使用されるビニル芳香族モノマーは、好ましくは、スチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-プロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-ドデシルスチレン、3-メチル-5-n-ヘキシルスチレン、4-フェニルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、3,5-ジフェニルスチレン、2,3,4,5-テトラエチルスチレン、3-エチル-1-ビニルナフタレン、6-イソプロピル-1-ビニルナフタレン、6-シクロヘキシル-1-ビニルナフタレン、7-ドデシル-2-ビニルナフタレン、およびα-メチルスチレンから選択される。より好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、3-メチルスチレンおよびα-メチルスチレンから選択される。特に、本発明に従って使用されるビニル芳香族モノマーはスチレンである。
【0043】
第2の態様において、本発明は、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーの調製のための方法に関し、この方法は、同コポリマーを得るために、以下のステップ:
(1)アニオン共重合を開始するために、(i)1つ以上の共役ジエンモノマーと(ii)1つ以上のビニル芳香族モノマーとを含むモノマー成分を、
a)1つまたは複数のアルカリ金属塩誘導体を含む開始剤成分ならびにb)以下の式(I):
【0044】
【化3】
【0045】
[式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ1~20個の炭素原子を有し、
かつ、R、R、およびRのそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R、R、およびRはそれぞれ最大20個の炭素原子を有していてもよい]
を有する1つまたは複数のN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンと、b)任意選択にて、ルイス塩基およびルイス酸の群から選択される1つまたは複数のさらなる極性添加剤と、接触させるステップと、
(2)共重合を連続的に行うステップと、
(3)任意選択にてカップリングする(coupling)ステップと、
を、含む。
【0046】
共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーのコポリマーの調製のための方法のさらなる詳細は、特許文献1(米国特許第8,927,644B2号明細書)に示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
好ましくは、カップリング剤は、ハロゲン化スズカップリング剤またはハロゲン化ケイ素カップリング剤である。より好ましくは、ハロゲン化ケイ素カップリング剤は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四フッ化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、ヘキサクロロジシラン、ヘキサブロモジシラン、ヘキサフルオロジシラン、ヘキサヨードジシラン、オクタクロロトリシラン、オクタブロモトリシラン、オクタフルオロトリシラン、オクタヨードトリシラン、ヘキサクロロジシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロ-2,4,6-トリシラヘプタン、1,2,3,4,5,6-ヘキサキス[2-(メチルジクロロシリル)エチル]ベンゼン、および一般式(III)
-Si-X4-n(III)
[式中、Rは、1~20個の炭素原子を有する1価の脂肪族炭化水素基または6~18個の炭素原子を有する1価の芳香族炭化水素基であり、nは0~2の整数であり、Xは塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素原子である]
のアルキルシリコンハロゲン化物から選択される。
【0048】
また、星形構造を有する単位の割合は、本発明のコポリマーの0重量%~75重量である。
第3の態様に従って、本発明は、共役ジエンモノマーおよびビニル芳香族モノマーに基づくコポリマーに関し、コポリマーは、
(a)ポリマーの総重量に基づいて、約30~約80重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量;
(b)総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.01~約32重量パーセントの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量;および
(c)総共役ジエン重合画分に基づいて、8を超えて約45重量パーセントまでのビニル含有量、
を有する。
【0049】
コポリマーは、好ましくは、(a)ポリマーの総重量に基づいて、約35~約65重量パーセント、好ましくは約40~約55重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量を有する。
【0050】
コポリマーは、好ましくは、それぞれが総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、(b)約0.05~約18重量パーセント、より好ましくは約0.1~約12重量パーセント、特に約0.1~約6重量パーセント、例えば、約0.1~約3重量パーセント、または約0.1~約2.5重量パーセントの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量を有する。
【0051】
さらに、本発明のコポリマーは、好ましくは、(c)それぞれが総共役ジエン重合画分に基づいて、約10~約35重量パーセント、好ましくは約14~約30重量パーセント、特に約18~約27重量パーセントのビニル含有量を有する。
【0052】
また、本発明のコポリマーは、好ましくは、約1.01~約3.0の範囲、好ましくは約1.01~約1.2の範囲の非結合生成物の比Mw/Mnを有する。
第4の態様に従って、本発明は、1つ以上の加硫剤の存在下で第3の態様に従うエラストマーコポリマーを加硫することを含むゴムを調製するための方法に関する。この方法において、エラストマーコポリマーの架橋のための助剤(架橋剤)が存在していてもよく、あるいはゴムを充填材と結合するための助剤(auxiliaries)、または充填材のより良好な分散のための助剤、またはエラストマーコポリマーから製造されたゴムの化学的特性および/または物理的特性の改善のための助剤が存在していてもよい。使用される特定の架橋剤は、硫黄および硫黄ドナー化合物である。
【0053】
さらに、第5の態様に従って、本発明は、第4の態様の方法に従って得ることができるゴムに関する。
また、第6の態様に従って、本発明は、第5の態様に従うゴムを含むx)ゴム成分を含むゴム組成物に関する。
【0054】
ゴム組成物は、好ましくはさらにy)1つ以上の充填材を含み、より好ましくは、充填材はシリカおよびカーボンブラックからなる群から選択され、最も好ましくは充填材成分y)はシリカおよびカーボンブラックの両方を含む。ゴム組成物は、主にタイヤの生産のために、高度に強化されたゴム成形品の生産に使用できる。本発明のゴム組成物は、既知の反応促進剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、遅延剤、金属酸化物、および活性剤などの他の助剤をさらに含んでもよい。
【0055】
ゴム組成物に使用できる充填材は、ゴム産業で使用されるすべての既知の充填材を含む。これらは、活性充填材だけでなく、非活性充填材も含む。例は、例えば、10~1000m/g(BETおよびCTAB表面積)、好ましくは30~400m/gの比表面積を有し、かつ一次粒子サイズが10~1000nmである、ケイ酸塩の溶液からの沈殿を介してまたは、ハロゲン化ケイ素の火炎加水分解(flame hydrolysis)を介して生成される微粒子シリカである。シリカは、関連する場合、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Ti、またはZrの酸化物など、他の金属酸化物との混合酸化物;BET表面積は20~400m/gであり、かつ一次粒子径は10~1000nmであるケイ酸アルミニウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩(例えばケイ酸マグネシウムまたはケイ酸カルシウム)などの合成ケイ酸塩;カオリンやその他の天然に存在する形態のシリカなどの天然ケイ酸塩;酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;フレームブラックプロセス、チャンネルブラックプロセス、ファーネスブラックプロセス、ガスブラックプロセス、サーマルブラックプロセス、アセチレンブラックプロセス、またはアークプロセスにより調製されたカーボンブラックであって、そのBET表面積は10~250m/gであり、例えば:伝導ファーネス(CF)、超伝導ファーネス(SCF)、超摩耗ファーネス(super abrasion furnace)(SAF)、中間超摩耗ファーネス(ISAF)、中間超摩耗ファーネス低ストラクチャ(structure)(lSAF-LS)、中間超摩耗ファーネス高モジュラス(modulus)(ISAF-HM)、中間超摩耗ファーネス低モジュラス(lSAF-LM)、中間超摩耗ファーネス高ストラクチャ(lSAF-HS)、高摩耗ファーネス(HAF)、高摩耗ファーネス低ストラクチャ(HAP-LS)、高摩耗ファーネス高ストラクチャ(HAP-HS)、微細ファーネス高ストラクチャ(FF-HS)、半強化ファーネス(SRF)、導電ファーネス(extra conductive furnace)(XCF)、高速押出ファーネス(FEE)、高速押出ファーネス低ストラクチャ(FEE-LS)、高速押出ファーネス高ストラクチャ(FEE-HS)、汎用ファーネス(GPF)、汎用ファーネス高ストラクチャ(GPF-HS)、万能ファーネス(APP)、半強化ファーネス低ストラクチャ(SRF-LS)、半強化ファーネス低モジュラス(SRF-LM)、半強化ファーネス高ストラクチャ(SRF-HS)、半強化ファーネス高モジュラス(SRF-HM)および中熱(MT)カーボンブラック、またはASTM分類による以下のタイプ:N110、N219、N220、N231、N234、N242、N294、N326、N327、N330、N332、N339、N347、N351、N356、N358、N375、N472、N539、N550、N568、N650、N660、N754、N762、N765、N774、N787およびN990カーボンブラックである、カーボンブラック、の形態を取ることもできる。
【0056】
上記の充填材は、単独でまたは混合物として使用することができる。特に好ましい実施形態では、ゴムは、さらなる充填材成分として、微粒子シリカなどの淡色充填材とカーボンブラックとの混合物を含み、ここで、淡色充填材のカーボンブラックに対する混合比(重量による)は、0.05:1~25:1、好ましくは0.1:1~22:1である。充填材の量は、典型的には、ゴム成分x)100重量部に基づいて、10~500重量部の範囲である。10~200重量部を使用することが好ましい。
【0057】
好ましくは、第6の態様に従うゴム組成物は、ゴム成分x)100質量部に対して10~150質量部(phr)の範囲の充填材成分y)の量、より好ましくは、成分y)の量は20~140phrであり、最も好ましくは成分y)の量は30~130phrである。
【0058】
第6の態様に従うゴム組成物は、1つ以上のさらなるゴム状ポリマーを含むゴム成分x)を有することも好ましく、より好ましくは、さらなるゴム状ポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-α-オレフィンコポリマーゴム、エチレン-α-オレフィンジエンコポリマーゴム、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマーゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選択される。
【0059】
さらなるゴム状ポリマーは、天然ゴム、または第5の態様に従うゴム以外のいくつかの合成ゴムであってもよい。さらなるゴム状ポリマーの量は、ゴム混合物中のゴムの全量に基づいて、通常、0.5~90重量%、好ましくは10~70重量%の範囲である。さらなるゴム状ポリマーの量は、ゴム組成物のそれぞれの意図された用途に依存する。
【0060】
さらなるゴム状ポリマーの例は、天然ゴム、および合成ゴムである。文献から知られている合成ゴムが例として提示されている。それらは、BR-ポリブタジエン、ABR-ブタジエン-C1-4-アルキルアクリレートコポリマー、CR-ポリクロロプレン、IR-ポリイソプレン、SBR-1~60重量%、好ましくは10~50重量%のスチレン含有量を有するスチレン-ブタジエンコポリマー、IIR-イソブチレン-イソプレンコポリマー、NBR-3~60重量%、好ましくは15~40重量%のアクリロニトリル含有量を有するブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、HNBR-部分水素化または完全水素化NBRゴム、EPDM-エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、およびこれらのさらなるゴム状ポリマーの混合物、を含む。自動車用タイヤの製造に関心のある材料は、より具体的には、天然ゴム、エマルジョンSBR、およびガラス転移温度が-100℃を超えるソリューションSBR、Ni、Co、TiまたはNdに基づく触媒を用いて生成されるシス含有量が高い(>90%)のポリブタジエンゴム、および最大85%のビニル含有量を有するポリブタジエンゴム、ならびにこれらの混合物、である。
【0061】
本発明の第7の態様に従って、タイヤ部品は、第6の態様に従うゴム組成物を含む。好ましくは、タイヤ部品はタイヤトレッドである。
最後に、そして第8の態様に従って、タイヤは第7の態様のタイヤ部品を含む。
【0062】
特に、本発明は、高いスチレン含有量を有するジエンゴム、および特に高度に強化されたゴム成形品の製造、特に好ましくはタイヤの製造に役立つゴム加硫物の製造のためのその使用に関し、これらは、特にウェットスキッド耐性(wet skid resistance)が高く、機能化されたときの転がり抵抗が低く、非常に良好な取り扱い性を備えている。本発明のゴム中の非常に高いスチレン含有量は、ゴム組成物に非常に良好な引張特性ならびに高い引裂抵抗を付与する。さらに、スチレンブロックの含有量が少ないため、ゴムマトリックス内にスチレンドメインが作製されることを回避する。
【0063】
本発明の利点は、以下の実施例から特に明らかである。
【実施例0064】
コポリマーの特性評価
ビニル含有量(%)
BS ISO 21561:2005に基づいて600MHz H-NMRによって測定した。
【0065】
結合スチレン含有量(%)
BS ISO 21561:2005に基づいて600MHz H-NMRによって測定した。
【0066】
ブロックスチレン含有量(%)は、600MHz H-NMRによって測定した。
6以上の連続したスチレン単位からなるブロックスチレンの含有量は、6.7ppm超で共鳴するオルトPh-プロトン信号の相対強度を使用して、Y.タナカ(Tanaka)他、ラバー・ケミストリー・アンド・テクノロジー(Rubber Chemistry and Technology)、1981年、54、No.4,685-691、によって報告された方法に従って決定した。
【0067】
連続する4以上のスチレン単位からなるブロックスチレンの含有量は、独国特許第69712962号明細書に記載の方法に従って、6.94~6ppmの範囲で共鳴するオルトPh-プロトン信号の相対強度を使用して決定した。
【0068】
4~6の連続単位からなるブロックスチレンの含有量は、上記のブロックスチレン含有量の両方の間の差から計算した。
分子量決定
ゲル透過クロマトグラフィーは、溶離液としてTHFを用い、サンプル調製のために、PSS Polymer Standards Serviceのマルチカラム(ガードカラム付)を介して行った。多角度レーザー光散乱測定は、Wyatt TechnologiesのDawn(登録商標)Heleos(登録商標)II光散乱検出器、DAD(PDA)Agilent 1260 Infinity UV-VIS検出器およびAgilent 1260 Infinity屈折率検出器を用いて行った。
【0069】
ガラス転移温度(℃)
PN-EN ISO 11357-1:2009に基づいて測定した。
ムーニー粘度(ML 1+4,100℃)
以下の、予熱=1分間、ロータ作動時間=4分間および温度=100℃の条件下にてLロータを用いて、ASTM D 1646-07に基づいて測定した。
【0070】
実施例
すべての実験は、異なる反応条件が適用された同じ調製方法で実施した。
重合
不活性化ステップ
シクロヘキサン(10kg)を窒素パージした22リットルの反応器に加え、シクロヘキサン中の1.6Mのn-ブチルリチウム溶液2gで処理した。溶液を還流条件下で加熱し(80~82℃)、10分間激しく攪拌して、反応器の洗浄および不活性化を行った。その後、溶媒を排水バルブを介して除去し、窒素を再びパージした。
【0071】
一般的な重合手順
シクロヘキサンを不活性化された反応器に入れ、続いてスチレンとブタジエンモノマーを加えた。ここで、スチレンとブタジエンの質量比(ST/BD)は、所望のスチレン含有量(30~80重量%)に依存した。次に、所望の含有量のスチレンブロック(ブロック性)を提供するために、1,3,5-トリメチルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(TMT)を反応器に導入し、ここで、TMTの開始剤に対するモル比は、総スチレン含有量に応じて0.01~50:1の範囲とした。溶媒、モノマー、および添加剤の量は、反応の規模に基づいており、表1および2に示されている。
【0072】
反応器内の溶液を加熱し、プロセス全体の間、継続的に攪拌した。反応混合物の温度は60~90℃に保たれ、ここで、正確な温度はビニル単位の含有量を決定し、スチレン単位のブロック性に部分的に影響した。次に、n-ブチルリチウム(BuLi)を添加して重合プロセスを開始した。ここで、n-BuLiの正確な量がポリマーの分子量を決定した。反応は、120分まで等温プロセスとして実施した。n-ブチルリチウムと比較して2倍モル量の窒素パージされたイソプロピルアルコールを使用して反応溶液を停止し、そして、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール(1.0phrポリマーにて)の添加によって迅速に安定化した。
【0073】
ポリマー溶液をストリッパーに移した。反応器に新たな(fresh)シクロヘキサンの一部を流し、その内容物もストリッパーに移した。ポリマー溶液の総質量の2倍の量で蒸留水をポリマー溶液に添加し、次にストリッパーの内容物を蒸気で処理した。シクロヘキサンの全量が除去されるまで蒸気ストリッピングが実行され、くず状のゴム(rubber crumbs)が得られた。次に、くず状のゴムをストリッパーから取り出し、室温まで冷却し、粉砕し、熱風流で乾燥した。
【0074】
反応条件、使用したレシピ、および得られたポリマーの特性の詳細を表1および表2に示す。表1の実施例1~8は、約40%のスチレンを含むHS-LV-SBRにおけるビニル基の形成およびスチレンのブロック性に対する、モル比として表されるTMT/n-BuLiの含有量の増加の影響を示す。表1の実施例9~15は、45%~80%のスチレンを含むUHS-LV-SBR中のスチレンのブロック性に対する、一定のモル比のTMT/n-BuLi(約5/1)の影響を示している。
【0075】
表2の実施例16~21は、約40%のスチレンを含むHS-LV-SBRにおけるビニル基の形成およびスチレンのブロック性に対するTMTおよびTMEDAの混合物の使用の影響を示している。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
【表2】

以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
以下の式(I):
【化4】

[式中、R 、R 、およびR のそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R 、R 、およびR はそれぞれ1~20個の炭素原子を有し;
かつ、R 、R 、およびR のそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R 、R 、およびR はそれぞれ最大20個の炭素原子を有してもよい]
を有するN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンの、1つ以上の共役ジエンモノマーと1つ以上のビニル芳香族モノマーのコポリマーの製造における使用であって、前記製造はアニオン重合によるものであり、1つ以上のアニオン開始剤の存在下におけるものであり、かつ前記コポリマーが、同コポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントの含有量のビニル芳香族モノマーを有する、使用。
[付記2]
式(I)のヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンのアニオン開始剤に対するモル比が0.01~50の範囲であり、
より好ましくは0.1~30の範囲である、付記1に記載の使用。
[付記3]
アニオン重合において、1つ以上のさらなる極性修飾剤が使用され、
好ましくは、前記さらなる極性修飾剤は、ルイス塩基およびルイス酸のうちの1つ以上から選択される、付記1または付記2に記載の使用。
[付記4]
さらなる極性修飾剤のアニオン開始剤に対するモル比が約0.01~約50の範囲であり、
好ましくは、約0.1~約10の範囲である、付記3に記載の使用。
[付記5]
前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンから選択され、
好ましくは、前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンおよびイソプレンから選択され、
特に、前記共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエンである、付記1~4のいずれか一項に記載の使用。
[付記6]
前記ビニル芳香族モノマーは、スチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-プロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-ドデシルスチレン、3-メチル-5-n-ヘキシルスチレン、4-フェニルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、3,5-ジフェニルスチレン、2,3,4,5-テトラエチルスチレン、3-エチル-1-ビニルナフタレン、6-イソプロピル-1-ビニルナフタレン、6-シクロヘキシル-1-ビニルナフタレン、7-ドデシル-2-ビニルナフタレン、およびα-メチルスチレンから選択され、
好ましくは、前記ビニル芳香族モノマーは、スチレン、3-メチルスチレン、およびα-メチルスチレンから選択され、
特に、前記ビニル芳香族モノマーは、スチレンである、付記1~5のいずれか一項に記載の使用。
[付記7]
共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーの調製のための方法であって、前記方法は、同コポリマーを得るために、以下のステップ:
(1)アニオン共重合を開始するために、(i)1つ以上の共役ジエンモノマーと(ii)1つ以上のビニル芳香族モノマーを含むモノマー成分を、
a)1つまたは複数のアルカリ金属塩誘導体を含む開始剤成分、ならびにb)以下の式(I):
【化5】

[式中、R 、R 、およびR のそれぞれは、独立して、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R 、R 、およびR はそれぞれ1~20個の炭素原子を有し、
かつ、R 、R 、およびR のそれぞれは、独立してH、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基、またはそれらの組み合わせであり、R 、R 、およびR はそれぞれ最大20個の炭素原子を有してもよい]
を有する1つまたは複数のN,N’,N’’-置換ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンおよびb)任意選択にて、ルイス塩基およびルイス酸の群から選択される1つまたは複数のさらなる極性添加剤と、接触させるステップと、
(2)共重合を連続的に行うステップと、
(3)任意選択にてカップリングするステップと、
を、含み、
前記コポリマーが、同コポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントの含有量のビニル芳香族モノマーを有する、方法。
[付記8]
共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとに基づくコポリマーであって、前記コポリマーは、
a)ポリマーの総重量に基づいて、約35~約55重量パーセントのビニル芳香族モノマーの含有量;
b)総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.01~約12重量パーセントの4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量;および
c)総共役ジエン重合画分に基づいて、8を超えて約35重量パーセントまでのビニル含有量、を有するコポリマー。
[付記9]
(a)ビニル芳香族モノマーの含有量は、ポリマーの総重量に基づいて、約40~約55重量パーセントである、付記8に記載のコポリマー。
[付記10]
(b)4を超える繰り返し単位を有するビニル芳香族モノマーブロックの含有量が、それぞれが総ビニル芳香族モノマー含有量に基づいて、約0.05~約12重量パーセント、好ましくは約0.1~約12重量パーセント、特に約0.1~約6重量パーセント、例えば、約0.1~約3重量パーセント、または約0.1~約2.5重量パーセントである、付記8および付記9のいずれか一項に記載のコポリマー。
[付記11]
(c)ビニル含有量は、それぞれが総共役ジエン重合画分に基づいて、約10~約35重量パーセント、好ましくは約14~約30重量パーセント、特に約18~約27重量パーセントである、付記8~10のいずれか一項に記載のコポリマー。
[付記12]
非結合生成物のMw/Mnは、約1.01~約3.0の範囲、好ましくは約1.01~約1.2の範囲にある、付記8~11のいずれか一項に記載のコポリマー。
[付記13]
1つ以上の加硫剤の存在下で付記8~12のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマーを加硫することを含むゴムを調製するための方法。
[付記14]
付記13に記載の方法に従って得られるゴム。
[付記15]
付記14に記載のゴムを含むx)ゴム成分を含む、ゴム組成物。
[付記16]
付記15に記載のゴム組成物であって、y)1以上の充填材をさらに含み、
好ましくは、前記充填材はシリカおよびカーボンブラックからなる群より選択され、
より好ましくは、前記充填材成分はy)シリカおよびカーボンブラックの両方を含む、ゴム組成物。
[付記17]
充填材成分y)の量は、ゴム成分x)100質量部に対して10~150質量部(phr)であり、
好ましくは、成分y)の量は、20~140phrであり、
より好ましくは成分y)の量は30~130phrである、付記16に記載のゴム組成物。
[付記18]
前記ゴム成分x)はまた1つ以上のさらなるゴム状ポリマーを含み、
好ましくは、前記さらなるゴム状ポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-α-オレフィンコポリマーゴム、エチレン-α-オレフィンジエンコポリマーゴム、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマーゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴムからなる群より選択される、付記15~17のいずれか一項に記載のゴム組成物。
[付記19]
付記15~18のいずれか一項に記載のゴム組成物を含むタイヤ部品であって、好ましくは前記タイヤ部品はタイヤトレッドである、タイヤ部品。
[付記20]
付記19に記載のタイヤ部品を含む、タイヤ。