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特開2023-52662使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052662
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/35 20220101AFI20230404BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20230404BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20230404BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
B09B5/00 Z
B09B101:67
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010399
(22)【出願日】2023-01-26
(62)【分割の表示】P 2019046545の分割
【原出願日】2019-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、使用済み紙おむつの処理に掛かる処理コストを低減させるとともに、使用済み紙おむつの構成成分を資源として有効利用することができる使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程と、下水処理場内で使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、処理工程は、使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備える使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを提供する。本発明によれば、使用済み紙おむつをそのまま下水処理場に搬送し、下水処理場内で破砕処理及び分離回収処理を行うことで、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減し、使用済み紙おむつの構成成分の再利用を可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程と、
前記下水処理場内で前記使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、
前記処理工程は、
使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、
使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項2】
前記処理工程は、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、前記下水処理場で処理された処理水を用いることを特徴とする、請求項1に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項3】
前記処理工程によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項4】
使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送手段と、
前記下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備とを備え、
前記処理設備は、
使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、
使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。
【請求項5】
前記処理設備は、前記使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を備え、
前記洗浄手段は、前記下水処理場で処理された処理水を用いることを特徴とする、請求項4に記載の使用済み紙おむつの処理システム。
【請求項6】
前記処理設備によって、前記使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入手段を備えることを特徴とする、請求項4又は5に記載の使用済み紙おむつの処理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者社会を迎える中、一般家庭、病院や福祉施設において、紙おむつの使用量は年々増加している。また、大量に排出される使用済み紙おむつの処分については、一般廃棄物として主に焼却処理が行われている。
【0003】
しかし、水分を多く含む使用済み紙おむつを焼却処理するには、高温処理や焼却設備の大型化が必要となるなど、焼却設備への負荷が大きいという問題がある。また、一般に、紙おむつは主成分としてパルプを含んでおり、資源の有効活用という観点からも、焼却処理によらず、使用済み紙おむつを再利用することが求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、使用済み紙おむつの処理として、使用済み紙おむつの破砕、洗浄、分離を行い、紙おむつを構成するパルプ、ポリマー、不織布、ビニール等を別々に分離回収する使用済み紙おむつの使用材料の再生処理設備及び再生処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-84533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された使用済み紙おむつの処理では、多量の水を必要とし、また同時に汚物処理を行うための処理設備を設ける必要がある。したがって、処理設備への投資やランニングコストなど、使用済み紙おむつの再生処理に掛かるコストが増加するという問題がある。
【0007】
一方、一般家庭、病院や福祉施設などで排出した使用済み紙おむつの処理として、トイレ個室内に破砕装置を設けて、使用済み紙おむつの破砕処理を行い、破砕後の使用済み紙おむつをごみとして回収することや、そのまま下水道に放流することが検討されている。しかし、トイレ個室ごとに破砕装置を設けることに係るコストの問題に加え、破砕した使用済み紙おむつの回収に係るコストや、破砕した使用済み紙おむつを下水道に放流した際の下水管渠及び下水処理場に与える影響についての検証が必要となる等、課題も多い。
【0008】
本発明の課題は、使用済み紙おむつの処理に掛かる処理コストを低減させるとともに、使用済み紙おむつの構成成分を資源として有効利用することができる使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、使用済み紙おむつを回収して下水処理場に搬送し、下水処理場内で処理を行うことで、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減し、かつ使用済み紙おむつの構成成分について資源としての利用が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムである。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の使用済み紙おむつの処理方法は、使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送工程と、下水処理場内で使用済み紙おむつを処理する処理工程とを備え、処理工程は、使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を備えるという特徴を有する。
【0011】
本発明の使用済み紙おむつの処理方法は、使用済み紙おむつをそのまま下水処理場に搬送し、下水処理場内で破砕処理及び分離回収処理を行うことで、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減し、使用済み紙おむつの構成成分の再利用を可能とする。
特に、病院や福祉施設など、1日で大量の使用済み紙おむつが排出される場合、各施設自体で使用済み紙おむつに対して破砕処理などの前処理を行う必要がなく、処理に係る手間及び処理コストを削減することが可能となる。また、使用済み紙おむつについて、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0012】
また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程は、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄工程を備え、洗浄工程は、下水処理場で処理された処理水を用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、使用済み紙おむつの分離回収工程を簡略化することが可能となる。また、使用済み紙おむつの洗浄を下水処理場で処理された処理水により行うことで、使用済み紙おむつに付着した汚物の洗浄に用いる洗浄用水に係るコストについて、大幅に削減することが可能となる。
【0013】
また、本発明の使用済み紙おむつの処理方法の一実施態様としては、処理工程によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを前記下水処理設備に投入する投入工程を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、使用済み紙おむつから除去した汚物の処理について、新規に処理設備を設ける必要がなくなる。また、使用済み紙おむつから分離回収したパルプ、高吸水性樹脂やプラスチックなどを新たな資源として下水処理設備内で利用することが可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の使用済み紙おむつの処理システムとしては、使用済み紙おむつを下水処理場に搬送する搬送手段と、下水処理場内に使用済み紙おむつを処理する処理設備とを備え、処理設備は、使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段を備えるという特徴を有する。
本発明の使用済み紙おむつの処理システムは、使用済み紙おむつをそのまま下水処理場に搬送し、下水処理場内に破砕処理及び分離回収処理を行う処理施設を設けることで、使用済み紙おむつの処理を行うものである。これにより、下水処理場内に比較的簡易な設備を設けることで使用済み紙おむつの処理を行うことができるため、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減し、使用済み紙おむつの構成成分の再利用を可能とする。
特に、病院や福祉施設など各施設自体で使用済み紙おむつに対する破砕処理などの前処理装置を備える必要がなく、処理に係る手間及び処理コストを削減することが可能となる。また、使用済み紙おむつについて、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0015】
また、本発明の使用済み紙おむつの処理システムの一実施態様としては、処理設備は、使用済み紙おむつを洗浄する洗浄手段を備え、洗浄手段は、下水処理場で処理された処理水を用いるという特徴を有する。
この特徴によれば、使用済み紙おむつの分離回収手段を簡略化することが可能となる。また、使用済み紙おむつの洗浄を下水処理場で処理された処理水により行うことができ、使用済み紙おむつに付着した汚物の洗浄に用いる洗浄用水に係るコストについて、大幅に削減することが可能となる。
【0016】
また、本発明の使用済み紙おむつの処理システムの一実施態様としては、処理設備によって、使用済み紙おむつから除去あるいは分離回収されたものを下水処理設備に投入する投入手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、使用済み紙おむつから除去した汚物の処理について、新規に処理設備を設ける必要がなくなる。また、使用済み紙おむつから分離回収したパルプ、高吸水性樹脂やプラスチックなどを新たな資源として下水処理設備内で再利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用済み紙おむつの処理に掛かる処理コストを低減させるとともに、使用済み紙おむつの構成成分を資源として有効利用することができる使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施態様における使用済み紙おむつの処理システムの概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様における下水処理場の概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図である。
図4】本発明の第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係る別態様を示すフロー図である。
図5】本発明の第2の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図である。
図6】本発明の第3の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図である。
図7】本発明の第4の実施態様における使用済み紙おむつの処理システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムの実施態様を詳細に説明する。本発明における使用済み紙おむつの処理方法は、本発明における使用済み紙おむつの処理システムの構成及び作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムについては、本発明に係る使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0020】
〔第1の実施態様〕
(使用済み紙おむつの処理システム)
図1は、本発明の第1の実施態様における使用済み紙おむつの処理システムを示す概略説明図である。
本実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1aは、図1に示すように、使用済み紙おむつDを排出する排出施設10、使用済み紙おむつDの搬送手段20、複数の下水処理設備31を備える下水処理場30、及び使用済み紙おむつDの処理を行う処理設備40を備えるものである。
本実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aにおいて、排出施設10から排出された使用済み紙おむつDを、搬送手段20により回収する。回収された使用済み紙おむつDは、搬送手段20により下水処理場30に搬送された後、使用済み紙おむつDを処理する処理設備40に投入される。また、一部の下水処理設備31と処理設備40は接続されており、必要に応じて下水処理設備31から処理設備40へ、又は処理設備40から下水処理設備31へと、固形物及び/又は液体を移送することが可能とされている。図1において、太線で示された矢印は、使用済み紙おむつDの移動の流れを示すものである。
【0021】
本発明における紙おむつは、一般に紙おむつとして販売、使用されている公知のものを指す。
紙おむつの構造の一例としては。例えば、紙おむつの内側で使用者の肌に直接触れる部分である表面材と、尿を吸収する吸水材と、紙おむつの外側を覆い、おむつカバーに相当する防水材(防水シート)を含むものが挙げられる。
紙おむつの構成成分としては、例えば、表面材としてはポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維からなる不織布などが挙げられる。また、吸水材としては、パルプ、高吸水性樹脂などが挙げられる。また、防水材としてはポリエチレンフィルムなどの樹脂製フィルムや、ポリエチレンラミネート紙及びポリエチレンラミネート不織布のように樹脂による加工処理がなされた紙や不織布などが挙げられる。
【0022】
本発明の処理対象である使用済み紙おむつDは、使用状態については特に限定されない。例えば、固形状の汚物(大便等)が付着したもの、液体状の汚物(尿等)が付着したもの、あるいはその両方が付着したものが挙げられる。また、病院や福祉施設等における定期交換などにより、汚物が付着していないものについても、本発明の使用済み紙おむつDに含まれる。
【0023】
本実施態様の排出施設10は、上述した使用済み紙おむつDが排出されるものであればよく、特に限定されない。例えば、一般家庭、病院や福祉施設など、紙おむつを利用する使用者が居住ないしは滞在する施設などが挙げられる。福祉施設には、老人福祉法(平成28年4月1日施行)に規定された老人福祉施設として、介護を伴う特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、老人短期入所施設などが挙げられる。また、福祉施設の他の例としては、障害者総合支援法(平成30年4月1日施行)に規定された障害者支援施設や、児童福祉法(平成30年4月2日施行)に規定された児童福祉施設として、乳幼児の養育又は保育を行う乳児院、保育所、幼保連携型認定こども園、障害児入所施設などが挙げられる。また、排出施設10は、法律上、福祉施設には含まれないものの、老人の介護を伴う老人保健施設や有料老人ホームなども含まれる。
【0024】
排出施設10は、使用済み紙おむつDを他のごみ(一般廃棄物)と分別し、一時保管するための分別回収手段を設けることが好ましい。これにより、使用済み紙おむつDのみを効率よく回収することが可能となる。分別回収手段の例としては、使用者自身又は使用者の介助・介護を行う支援者(家族、病院職員、施設職員等)により、使用済み紙おむつDの排出ごとに専用の回収ボックス11に投入することが挙げられる。なお、回収ボックス11は、使用者の居室ごとに設けるものであってもよく、共用トイレなどの共用スペースに設置するものであってもよい。
【0025】
回収ボックス11は、消臭・脱臭機能を有するものとすることが好ましい。消臭・脱臭機能としては、例えば、回収ボックス11の素材自体が消臭・脱臭機能を有するものとすることや、回収ボックス11に別途消臭剤や脱臭剤を添加及び保持する機能を設けるものなどが挙げられる。
また、回収ボックス11は、除菌・殺菌機能を有するものとしてもよい。除菌・殺菌機能としては、例えば、回収ボックス11の素材自体が除菌・殺菌機能を有するものとすることや、回収ボックス11に別途除菌剤や殺菌剤を添加及び保持する機能を設けるものなどが挙げられる。
【0026】
また、回収ボックス11を一時保管する場所に、消臭・脱臭機能や除菌・殺菌機能を備えるものとしてもよい。例えば、臭いが外部に漏れ出さない機構・構造を有する空間を形成し、この空間内に回収ボックス11を保管することなどが挙げられる。また、殺菌灯を設けた空間内に回収ボックス11を保管することなどが挙げられる。
【0027】
排出施設10から使用済み紙おむつDを排出する際に、回収ボックス11のまま搬送するものであってもよく、複数の回収ボックス11を集約した搬送用コンテナ12として搬送するものであってもよい。これにより、排出施設10では、使用済み紙おむつDを処理するための新たな設備投資が不要となる。
【0028】
また、回収ボックス11及び搬送用コンテナ12は、使い捨てとするものであってもよく、再利用可能なものとしてもよい。例えば、回収ボックス11及び搬送用コンテナ12を使い捨て可能とした場合、下水処理場30内に搬送した後、そのまま処理設備40に投入可能な素材とすることが好ましい。これにより、下水処理場30内での作業効率を高めることが可能となる。また、例えば、回収ボックス11及び搬送用コンテナ12を再利用可能とした場合、複数回の搬送・使用に耐えるような強度を有する素材とすることが好ましい。これにより、回収ボックス11及び搬送用コンテナ12に係るコストを低減させることが可能となる。
【0029】
本実施態様の搬送手段20は、排出施設10から排出した使用済み紙おむつDを回収し、下水処理場30内の処理設備40まで搬送する搬送工程を行うためのものである。
搬送手段20は、使用済み紙おむつDを回収し、搬送することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、図1に示すように、使用済み紙おむつDが入った回収ボックス11又は搬送用コンテナ12を積み込むための荷台21aを備えた搬送車両21などが挙げられる。また、荷台21a上に幌やパネル等により荷室21bを設けるものとしてもよい。これにより、回収ボックス11が雨などで濡れることを防ぐことができる。なお、搬送車両21以外に、水上航行する移動体(船舶など)や飛行体などを用いるものとしてもよく、陸路搬送に限定されるものではない。
【0030】
搬送手段20は、1つの搬送手段20が1つの排出施設10と処理設備40間のみを搬送するものであってもよく、1つの搬送手段20によって複数の排出施設10と処理設備40の間を搬送するものであってもよい。特に、排出施設10である一般家庭や小規模な福祉施設が所定範囲内に複数存在する地域においては、1つの排出施設10のみから使用済み紙おむつDを回収、搬送するよりも、複数の排出施設10から使用済み紙おむつDを回収、搬送することが好ましい。これにより、それぞれの排出施設10(一般家庭や福祉施設等)が個別に対応するよりも効率よく使用済み紙おむつDの回収、搬送が可能となる。
【0031】
また、複数の搬送手段20を備え、使用済み紙おむつDの回収、搬送を行うものとしてもよい。例えば、搬送手段20として複数の搬送車両21を備え、排出施設10と処理設備40の間を循環搬送するものが挙げられる。これにより、使用済み紙おむつDの回収、搬送効率を上げることが可能となる。また、排出施設10ごとに搬送手段20を割り当て、処理設備40に搬送するものが挙げられる。排出施設10で回収される使用済み紙おむつDの排出量や、使用済み紙おむつDの搬送の好適なタイミングがそれぞれ異なる場合、1つの搬送手段20で排出施設10を循環するよりも、それぞれの排出施設10ごとに専用の搬送手段20を設けることで、使用済み紙おむつDの回収、搬送を効率的に行うことができるとともに、排出施設10で使用済み紙おむつDを保管する期間(時間)を短縮することができるため、排出施設10における使用済み紙おむつDの管理に係る負荷を減らすことが可能となる。
【0032】
搬送手段20による使用済み紙おむつDの回収、搬送のタイミングについては、特に限定されない。例えば、搬送手段20が定期的に排出施設10と処理設備40の間を巡回するものとしてもよく、必要に応じて搬送手段20が排出施設10又は処理設備40に移動するものとしてもよい。必要に応じて搬送手段20が移動する場合、例えば、排出施設10からの回収依頼の連絡や下水処理場30からの搬送受け入れの可不可に係る連絡に基づくもの、排出施設10における使用済み紙おむつDの排出量を算出又は予測した情報に基づくものなどが挙げられる。
【0033】
本実施態様の下水処理場30及び下水処理設備31は、既設の下水処理場における下水処理設備を利用することが好ましい。これにより、使用済み紙おむつDの処理において、大規模な設備投資をする必要がなくなる。
【0034】
また、本実施態様の下水処理場30は特に限定されないが、水処理プロセス、汚泥処理プロセス、消化ガス発電プロセスを実施可能な下水処理設備31を備えることが好ましい。これにより、使用済み紙おむつDの処理時に、下水処理設備31から排出されるものを利用することが可能となると同時に、処理後の使用済み紙おむつDの一部を下水処理設備31において再利用することが可能となる。
【0035】
図2は、本実施態様における下水処理場30の一例を示すものである。
図2に示すように、下水処理場30の下水処理設備31としては、例えば、水処理プロセスに用いる下水処理設備として、最初沈殿池31a、反応槽31b、最後沈殿池31c、消毒設備31dなどが挙げられる。また、汚泥処理プロセスに用いる下水処理設備として、濃縮設備31e、消化設備31f、脱水設備31g、焼却設備31hなどが挙げられる。さらに、消化ガス発電プロセスに用いる下水処理設備として、脱硫装置31i、ガスホルダ31j、発電設備31kなどが挙げられる。
【0036】
一般に、下水処理場30に下水道(下水管渠)を介して流入した下水は、最初沈殿池31a、反応槽31b、最後沈殿池31c、消毒設備31dを経て、処理水Wとして河川などに放流される。また、最初沈殿池31a及び最後沈殿池31cで排出した汚泥は、濃縮設備31eに送られて濃縮処理を行った後、消化設備31fで嫌気性消化を行い、消化ガスの回収を行う。消化処理後の汚泥は脱水設備31gにより脱水処理され、焼却設備31hで焼却処分される。また、回収した消化ガスは脱硫装置31iを介しガスホルダ31jに一時貯留され、発電設備31kにて電気と熱のエネルギーを回収することができる。
なお、回収したエネルギーのうち、電気エネルギーは下水処理場30内の各種設備で使用し、熱エネルギーは消化設備31aの加温に使用することができる。また、回収したエネルギーを下水処理場30外で利用するものであってもよい。
【0037】
処理設備40は、搬送された使用済み紙おむつDを処理する処理工程を行うためのものであり、下水処理場30内に設けられている。また、処理設備40は、使用済み紙おむつDを破砕する破砕手段41、使用済み紙おむつDを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段42を備えている。さらに、処理設備40は、下水処理設備31の一部と相互に移送可能又は供給可能となるように接続されている。
【0038】
破砕手段41は、使用済み紙おむつDを破砕する破砕工程を行うためのものである。
破砕手段41としては、使用済み紙おむつDの表面材や防水材を破断し、内側の吸水材(パルプ及び高吸水性樹脂)を外部に放出させることができるものであればよく、特に限定されない。破砕手段41の具体的な例としては、例えば、破砕刃による裁断を行うものや、多数の針がついた部材を繰り返し刺し込むものなどが挙げられる。
【0039】
破砕手段41により破砕された使用済み紙おむつCDの大きさは、特に限定されない。例えば、下限としては1センチメートル四方とすることが挙げられる。これにより、使用済み紙おむつDの内側にある吸水材を確実に外部に放出させることが可能となる。また、上限としては、15センチメートル四方とすることが挙げられる。これにより、使用済み紙おむつDの内側から吸水材を外部に放出させるとともに、破砕にかかる時間及びコストを削減することが可能となる。
また、破砕された使用済み紙おむつDの形状は、正方形に限定するものではなく、長方形や短冊状とするものであってもよい。また、破砕された使用済み紙おむつDの形状は、定形状であることに限定するものではなく、不定形であってもよい。
さらに、破砕された使用済み紙おむつDは、大きさ及び形状が全て略均等となるものとしてもよく、大きさ及び形状の異なるものが混合している状態であってもよい。
【0040】
また、破砕手段41は、湿式状態又は乾式状態のいずれで行ってもよいが、後段の分離回収手段42における操作が容易となることなどから、湿式状態で破砕することが好ましい。なお、破砕手段41を湿式状態で行う場合、水の供給源については、特に限定されないが、後述するように下水処理設備31から供給されるものとすることなどが挙げられる。
【0041】
分離回収手段42は、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程を行うためのものである。
分離回収手段42としては、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収することができるものであれば特に限定されない。例えば、サイズによる分級、比重差による分離、溶媒に対する可溶性又は不溶性に基づくものなどが挙げられる。
【0042】
また、破砕された使用済み紙おむつCDを構成する構成成分としては、例えば、パルプD1、高吸水性樹脂D2、プラスチックD3、汚物D4などが挙げられる。なお、分離回収手段42によって、全ての構成成分を個別回収するものであってもよく、一部の構成成分が複数種類混合した状態で回収するものとしてもよい。
【0043】
分離回収手段42の具体的な例としては、例えば、乾式状態で破砕された使用済み紙おむつCDの大きさを高吸水性樹脂D2の粒子よりも大きくした場合、破砕された使用済み紙おむつCDを、高吸水性樹脂D2の粒子の大きさと同程度のメッシュを有する篩などの分級機にかけることが挙げられる。これにより、高吸水性樹脂D2を、パルプD1、プラスチックD3及び汚物D4から分離することが可能となる。また、高吸水性樹脂D2を分離した後、パルプD1、プラスチックD3及び汚物D4は、撹拌機を備えた分離槽(水槽)に投入する。分離槽で撹拌を行った後、撹拌を停止することで、プラスチックD3が水面に浮上し、パルプD1及び汚物D4から分離される。また、パルプD1と汚物D4をスクリーンなどにより分離することで、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収することができる。なお、分離槽に供給する水の供給源については、特に限定されないが、後述するように下水処理設備31から供給されるものとすることなどが挙げられる。
【0044】
また、分離回収手段42の他の例としては、湿式状態で破砕された使用済み紙おむつCDに対して、ポリマー分解剤を添加して撹拌を行った後、水面に浮上するプラスチックD3を回収することが挙げられる。また、ポリマー分解剤により高吸水性樹脂D2がモノマー化して水溶化するため、パルプD1と高吸水性樹脂D2と汚物D4は、スクリーンなどにより分離することが可能となる。これにより、破砕された使用済み紙おむつCDを構成成分ごとに分離回収することができる。また、破砕手段41を湿式状態で行うことにより、破砕手段41及び分離回収手段42を1つの槽内で行うことが可能となる。これにより、処理設備40における破砕及び分離回収に係る処理操作が容易となるとともに、処理設備40の省スペース化やコスト削減が可能となる。
【0045】
なお、処理設備40は、下水処理場30に対して新規に設けるものに限定されるものではない。例えば、下水処理場30において、生ごみなどの固形物をバイオマスとして受け入れている実績がある場合、下水処理場30には、消化設備31fに対して、異物除去や破砕処理などの前処理を行う前処理設備32が設けられている。本実施態様の処理設備40として、前処理設備32を活用し、使用済み紙おむつDの破砕及び分離回収を行うものとしてもよい。これにより、処理設備40についても既設の設備を利用することで、設備投資に係るコストを低減することが可能となる。
【0046】
前処理装置32は、本実施態様の処理設備40に係る構造を全て満たすものであってもよく、一部を流用可能なものであってもよい。前処理装置32が、処理設備40の構造の一部のみを満たす場合、処理設備40として必要な構成のみを新規に設けるものとしてもよい。これにより、新規設備に掛かるコストを大幅に低減させることができる。
【0047】
本実施態様の紙おむつ処理システム1aにおいては、使用済み紙おむつDの処理に係る設備の一部として、既存の下水処理場30内の下水処理設備31を利用するものとしている。そのため、処理設備40自体を大規模な設備とする必要がなく、例えば1つの槽からなるもの等、簡易的な設備とすることができる。これにより、使用済み紙おむつDの処理に係るコストを大幅に低減させることが可能となる。
【0048】
図3は、本実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図を示す。なお、図3においては、図2で示した下水処理場30における下水処理設備31の構成を一部省略して示している。
【0049】
排出施設10から回収され、下水処理場30に搬送された使用済み紙おむつDは、まず処理設備40に投入される。
処理設備40では、破砕手段41により使用済み紙おむつDを破砕する破砕工程が行われ、破砕された使用済み紙おむつDは分離回収手段42に供給されて、構成成分ごと(例えば、パルプD1、高吸水性樹脂D2、プラスチックD3及び汚物D4など)に分離回収される分離回収工程が行われる。
【0050】
このとき、図3に示すように、処理設備40に対して最終沈殿池31c又は消毒設備31dから処理水Wを供給し、破砕手段41及び分離回収手段42における水の供給を行うものとしてもよい。また、使用済み紙おむつDを処理した後の処理設備40の洗浄に処理水Wを用いるものとしてもよい。これにより、処理に必要な水の供給を下水処理場30内で賄うことができ、水の供給に係るコストを大幅に低減させることが可能となる。特に、消毒設備31dからの処理水Wを供給することで、使用済み紙おむつDの処理において消毒の効果を得ることができる。
【0051】
また、図3に示すように、処理設備40と発電設備31kを接続し、発電設備31kにて回収された電気エネルギーが処理設備40に供給されるようにすることが好ましい。これにより、処理設備40を駆動するための電気エネルギーについて、下水処理場30内で賄うことができ、使用済み紙おむつの処理システム1aのランニングコストを低減させることが可能となる。
【0052】
処理設備40での処理後、分離回収された各構成成分は、下水処理場30内でさらに処理を行うものとしてもよく、資源として利用するものとしてもよい。また、分離回収された各構成成分を下水処理場30外に搬出して資源として利用するものとしてもよい。
【0053】
図4は、本実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理の別態様に係るフロー図を示す。なお、図4においては、図2で示した下水処理場30における下水処理設備31の構成を一部省略して示している。
【0054】
図4に示したように、下水処理場30において、生ごみなどの固形物をバイオマスとして受け入れる際には、消化設備31fに対して前処理設備32を設け、異物除去や破砕処理などの前処理を経た後に、消化設備31fに投入することが行われている。
【0055】
本実施態様においては、例えば、バイオマスの受け入れがないときの前処理設備32を、本実施態様の処理設備40として流用し、使用済み紙おむつDの処理を行うものとすることが挙げられる。このとき、前処理設備32に対して最終沈殿池31c又は消毒設備31dから処理水Wを供給し、破砕手段41及び分離回収手段42における水の供給を行うものとしてもよい。また、使用済み紙おむつDの処理した後の前処理設備32の洗浄に処理水Wを用いるものとしてもよい。これにより、処理に必要な水の供給を下水処理場30内で賄うことができ、水の供給に係るコストを大幅に低減させることが可能となる。
【0056】
前処理設備32での処理後、分離回収された各構成成分は、下水処理場30内でさらに処理を行うものとしてもよく、資源として利用するものとしてもよい。また、分離回収された各構成成分を下水処理場30外に搬出して資源として利用するものとしてもよい。
【0057】
以上のように、本実施態様における使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムは、使用済み紙おむつを排出施設から未処理のまま回収し、下水処理設備に設けた処理設備及び下水処理設備を用いて処理を行うことで、使用済み紙おむつの処理に掛かるコストを低減するとともに、使用済み紙おむつの構成成分を分離回収することができ、資源として活用することが可能となる。
【0058】
特に、病院や福祉施設など各施設自体で使用済み紙おむつに対する破砕処理などの前処理装置を備える必要がなく、処理に係る手間及び処理コストを削減することが可能となる。また、使用済み紙おむつについて、新たな資源としての利用を促進することができる。
【0059】
〔第2の実施態様〕
図5は、本発明の第2の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図である。なお、図5においては、図2で示した下水処理場30における下水処理設備31の構成を一部省略して示している。
第2の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1bは、図5に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、使用済み紙おむつDを洗浄する洗浄手段43を更に設けるものである。また、洗浄手段43は、下水処理場30にて処理された処理水Wを用いるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0060】
洗浄手段43は、使用済み紙おむつDを洗浄して汚物D4を除去する洗浄工程を行うためのものである。また、洗浄手段43に用いる水は、下水処理場30内の最後沈殿池31c又は消毒設備31dから排出される処理水Wを用いるものである。
洗浄手段43としては、使用済み紙おむつDから汚物D4を除去することができるものであれば特に限定されない。例えば、洗浄手段43として洗浄槽(水槽)を設け、洗浄増内に搬送された使用済み紙おむつDを投入し、撹拌混合後、洗浄槽内の水を抜くことで、洗浄済みの使用済み紙おむつDを得るものが挙げられる。また、洗浄手段43の他の例としては、例えば、高圧水を使用済み紙おむつDに噴射することで汚物D4を剥離させて除去することなどが挙げられる。
【0061】
本実施態様の処理設備40において、破砕手段41及び分離回収手段42の前段に、洗浄手段43を設けることで、分離回収手段42において、汚物D4の分離に係る工程が不要となる。これにより、分離回収手段42により分離回収される構成成分は、主として資源として再利用が可能なものとなるため、分離回収後の構成成分に係る再利用が容易となる。
【0062】
本実施態様により、使用済み紙おむつの分離回収手段を簡略化することが可能となる。また、使用済み紙おむつの洗浄を下水処理場で処理された処理水により行うことができ、使用済み紙おむつに付着した汚物の洗浄に用いる洗浄用水に係るコストについて、大幅に削減することが可能となる。
【0063】
〔第3の実施態様〕
図6は、本発明の第3の実施態様の使用済み紙おむつの処理システムにおける使用済み紙おむつの処理に係るフロー図である。なお、図6においては、図2で示した下水処理場30における下水処理設備31の構成を一部省略して示している。
第3の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1cは、図6に示すように、第1の実施態様の使用済み紙おむつの処理システム1aに係る処理設備40において、分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を下水処理設備31に投入する投入手段44を更に設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0064】
投入手段44は、分離回収手段42により分離回収された使用済み紙おむつDの構成成分を、下水処理設備31に投入する投入工程を行うためのものである。
投入手段44としては、処理設備40から排出される構成成分D1~D4を下水処理設備31へ移送可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、構成成分D1~D4のうち、含水率又は流動性が高いものについては、配管による移送とすることが挙げられる。これにより、構成成分の移送を容易に行うことができ、かつ構成成分の移送量に係る制御も容易となる。また、構成成分D1~D4のうち、含水率又は流動性が低いものについては、移送用容器に充填し、移送用移動体により移送することが挙げられる。これにより、配管の詰まりなどが生じるおそれがなく、構成成分を確実に移送することが可能となる。
【0065】
投入手段44の具体的な例としては、例えば、分離回収手段42で分離回収された汚物D4を消化設備31f(又は最初沈殿池31a)に投入するための配管とすることが挙げられる。これにより、汚物処理を既存の下水処理設備31で行うことが可能となり、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減させることが可能となる。また、配管は、常時開放されているものとしてもよく、汚物D4の投入時だけ開放するように制御するものとしてもよい。
【0066】
また、投入手段44の他の例としては、例えば、分離回収手段42で分離回収されたプラスチックD3を焼却設備31hに投入するための移送用容器及び移送用移動体とすることが挙げられる。これにより、プラスチックD3を焼却設備31hにおける燃料及び燃料助剤として用いることが可能となる。
なお、移送用移動体は、移送用容器を積載する車両(台車等)に限定されるものではない。例えば、作業者が人力で運ぶことについても、本実施態様の移送用移動体44cに含まれるものである。
【0067】
本実施態様の投入手段44により投入される構成成分及び投入対象である下水処理設備31は、これに限定されるものではない。例えば、パルプD1や高吸水性樹脂D2についても、下水処理設備31に投入して更に処理を行うものとしてもよく、あるいは資源として利用するものとしてもよい。
【0068】
本実施態様によって、使用済み紙おむつから除去した汚物の処理について、新規に処理設備を設ける必要がなくなる。また、使用済み紙おむつから分離回収したパルプ、高吸水性樹脂やプラスチックなどを新たな資源として下水処理設備内で再利用することが可能となる。
【0069】
また、本実施態様の投入手段は、第2の実施態様における処理設備40にも適用することができる。例えば、洗浄手段43により除去された汚物D4及び/又は汚物D4を含む汚水を、投入手段44により最初沈殿池31a又は消化設備31fに投入し、汚物処理を行うことが挙げられる。これにより、汚物処理を既存の下水処理設備31で行うことが可能となり、使用済み紙おむつの処理に係るコストを低減させることが可能となる。
【0070】
〔第4の実施態様〕
図7は、本発明の第4の実施態様における使用済み紙おむつの処理システムを示す概略説明図である。
第4の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1dは、図7に示すように、第1の実施態様に係る使用済み紙おむつの処理システム1aにおいて、使用済み紙おむつDの回収、搬送のタイミングに係る連絡や使用済み紙おむつDの排出量に係る情報を集約して管理する情報管理部50を設けるものである。なお、図7中の一点破線は、制御可能に接続されていることを示している。
【0071】
情報管理部50は、排出施設10や下水処理場30からの連絡及び使用済み紙おむつDの排出量に係る情報などに基づき、使用済み紙おむつDの回収、搬送のタイミングを設定、指示することができるものであればよく、特に限定されない。
例えば、排出施設10や下水処理場30からの連絡を受け付け、連絡内容に基づいて搬送手段20の移動経路を設定し、搬送手段20の運転員に通知を行うものが挙げられる。なお、連絡手段及び通知手段は特に限定されず、電話、メールやSNSなどの情報端末を用いたもの等、公知の技術を用いることができる。
また、排出施設10に使用済み紙おむつDの排出量に係る情報を得るための検出器51を設け、検出器51の検出結果を情報管理部50に集約し、搬送手段20の移動経路の設定及び搬送手段20の運転員への通知を行うものが挙げられる。検出器51は、使用済み紙おむつDを一時保管する回収ボックス11又は搬送用コンテナ12に設けられ、具体例としては、重量計などが挙げられる。これにより、排出施設10からの連絡を待つ必要がなく、事前に搬送手段20の移動経路を設定することができ、効率よく使用済み紙おむつDの回収を行うことができる。また、検出器51の代わりに、排出施設10の稼働状態を示す情報(排出施設10に居住中又は滞在中の使用者数、前日の使用済み紙おむつDの排出量等)を情報管理部50に集約するものであってもよい。これにより、使用済み紙おむつDの排出量を予測することが可能となり、検出器51などの新たな設備投資が不要となる。
【0072】
情報管理部50は、オペレーターにより、各種連絡や情報を集約し、使用済み紙おむつDの回収、搬送を指示するものであってもよく、各種連絡に対する自動応答、情報収集、解析を経て、使用済み紙おむつDの回収、搬送の指示までの一連の工程を全てプログラムにより自動化するものであってもよい。
【0073】
本実施態様により、搬送手段20による使用済み紙おむつDの回収、搬送をより効率よく行うことが可能となる。
【0074】
なお、上述した実施態様は使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムの一例を示すものである。本発明に係る使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムを変形してもよい。
【0075】
例えば、本実施態様において、排出施設から分別回収する使用済み紙おむつには、一部使用済み生理用品を含むものとしてもよい。一般的な紙おむつと一般的な生理用品は、それぞれ構成される成分が似ていることから、本発明の処理方法及び処理システムを好適に適用することが可能となる。これにより、使用済み紙おむつ及び使用済み生理用品という新たな資源の有効活用をより一層促進することが可能となる。
【0076】
また、本実施態様において、分離回収手段はパルプを上質パルプと低質パルプに分けることができるスクリーン及びその他の付帯設備を設けるものとしてもよい。これにより、使用済み紙おむつDから分離回収した構成成分をさらに細分化することができ、また、それぞれの資源に応じた再利用を行うことが可能となる。
【0077】
また、本実施態様において、搬送された使用済み紙おむつの量がごく少量であった場合、分離回収手段による構成成分の分離をプラスチックD3とそれ以外(パルプD1、高吸水性樹脂D2及び汚物D4)とし、プラスチックD3のみ燃料助剤として焼却設備に投入し、それ以外のものを最初沈殿池又は消化設備に投入して処理を行うものとしてもよい。これにより、分離回収手段を簡略化し、下水処理場に与える影響を少なくした状態で、使用済み紙おむつの処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の使用済み紙おむつの処理方法及び使用済み紙おむつの処理システムは、一般家庭、病院や福祉施設などから排出される使用済み紙おむつの処理及び使用済み紙おむつの構成成分の再利用において好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0079】
1a,1b,1c,1d 処理システム、10 排出施設、11 回収ボックス、12 搬送用コンテナ、20 搬送手段、21 搬送車両、21a 荷台、21b 荷室、30 下水処理場、31 下水処理設備、31a 最初沈殿池、31b 反応槽、31c 最後沈殿池、31d 消毒設備、31e 濃縮設備、31f 消化設備、31g 脱水設備、31h 焼却設備、31i 脱硫装置、31j ガスホルダ、31k 発電設備、32 前処理設備、40 処理設備、41 破砕手段、42 分離回収手段、43 洗浄手段、44 投入手段、50 情報管理部、51 検出器、D 使用済み紙おむつ、CD 破砕された使用済み紙おむつ、D1 パルプ、D2 高吸水性樹脂、D3 プラスチック、D4 汚物、W 処理水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-02-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつを処理する使用済み紙おむつの処理方法において、
前記使用済み紙おむつを破砕する破砕工程と、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収工程と、
前記分離回収工程で分離回収された前記使用済み紙おむつの構成成分を、下水処理場内の消化設備に投入する投入工程と、を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項2】
前記分離回収工程は、前記使用済み紙おむつから少なくともパルプを分離回収し、回収されたパルプが前記消化設備に投入されることを特徴とする、請求項1に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項3】
前記消化設備は、嫌気性消化であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用済み紙おむつの処理方法。
【請求項4】
使用済み紙おむつを処理する使用済み紙おむつの処理システムにおいて、
前記使用済み紙おむつを破砕する破砕手段と、
前記使用済み紙おむつを構成成分ごとに分離回収する分離回収手段と、
前記分離回収工程で分離回収された前記使用済み紙おむつの構成成分を、下水処理場内の消化設備に投入する投入手段と、を備えることを特徴とする、使用済み紙おむつの処理システム。