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特開2023-52674安定な3次元血管およびそれを形成するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052674
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】安定な3次元血管およびそれを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230404BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023010666
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2019542146の分割
【原出願日】2018-02-02
(31)【優先権主張番号】62/454,161
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508298488
【氏名又は名称】コーネル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シャーイン・ラフィー
(72)【発明者】
【氏名】ブリサ・パリクキー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定な3次元脈管構造を有する血管を形成するための方法を提供する。
【解決手段】安定な3次元血管を産生するための方法であって、a)マトリックス上でETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞を、該内皮細胞が該ETV2転写因子を少なくとも3~4週間、発現する条件下で培養して、脈管形成を誘導する工程;および、b)前記安定な3次元血管を単離する工程、を含む前記方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な3次元血管を産生するための方法であって、
a)マトリックス上でETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞を、該内皮細胞が該ETV2転写因子を少なくとも3~4週間、発現する条件下で培養して、脈管形成を誘導する工程;および
b)前記安定な3次元血管を単離する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
工程a)の細胞を追加の期間培養する工程をさらに含み、前記さらに培養する工程は、該細胞がETV2転写因子を発現しない条件下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記さらに培養する工程は少なくとも1週間、行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マトリックスは、ラミニン、エンタクチン、コラーゲン、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マトリックスは
5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン;ならびに
0.2mg/mL コラーゲンIV
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マトリックスはMatrigel(商標)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、脂肪由来内皮細胞、または器官特異的内皮細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記器官特異的内皮細胞は、心臓、筋肉、腎臓、精巣、卵巣、リンパ系、肝臓、膵臓、脳、肺、骨髄、脾臓、大腸、および小腸からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記3~4週間培養する工程は、前記内皮細胞を無血清培地において少なくとも7日間培養することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
無血清培地における前記培養は、大気中(20%)酸素圧未満で実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸素圧は5%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記培養する工程a)は、スキャフォールドまたは血管周囲サポートの非存在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法により産生された安定な3次元血管。
【請求項14】
3次元血管ネットワークを自律的に形成する能力がある安定な3次元血管。
【請求項15】
リプログラミング化内皮細胞の少なくとも1つの連続層を有する管状構造を含む、請求項14に記載の安定な3次元血管。
【請求項16】
前記リプログラミング化内皮細胞は、ETV2をコードする外因性核酸配列を含む、請
求項15に記載の安定な3次元血管。
【請求項17】
少なくとも2ヶ月間、機能的である、請求項14に記載の安定な3次元血管。
【請求項18】
対象において脈管導入を促進するための方法であって、請求項13に記載の安定な3次元血管を該対象に投与することを含む前記方法。
【請求項19】
前記投与が、前記対象において機能的3次元血管ネットワークを形成するように、前記対象において前記安定な3次元血管を植え込むことを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記機能的3次元血管ネットワークは、毛細血管、細動脈、細静脈、またはリンパ管を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オルガノイドに脈管導入するための方法であって、マトリックス上でETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共に、該内皮細胞が該ETV2転写因子を発現する条件下で、前記オルガノイドを培養する工程を含む前記方法。
【請求項22】
マトリックスはラミニン、エンタクチン、コラーゲン、またはそれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オルガノイドは、小腸オルガノイド、結腸オルガノイド、腎臓オルガノイド、心臓オルガノイド、および腫瘍オルガノイドからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記培養する工程は、塩基性FGF(FGF-2)およびヘパリンを含む培地において少なくとも7日間培養することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記脈管導入オルガノイドを単離する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記単離された脈管導入オルガノイドは対象に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記単離された脈管導入オルガノイドは外科的植え込みにより対象に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記単離された脈管導入オルガノイドを治療剤と接触させ、前記治療剤の効能を決定する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
脱細胞化器官に脈管再導入するための方法であって、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共に、該内皮細胞がETV2転写因子を発現する条件下で、前記脱細胞化器官を培養する工程を含み、前記培養する工程は、前記脱細胞化器官に脈管導入する、前記方法。
【請求項30】
前記脱細胞化器官は、心臓、腎臓、精巣、卵巣、骨、リンパ、肝臓、膵臓、脳、肺、骨髄、脾臓、大腸、および小腸からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記脈管導入は、動脈、静脈、毛細血管、細動脈、細静脈、またはそれらの組合せの形成を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記培養する工程はバイオリアクター内で行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記脈管導入脱細胞化器官を単離する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記脈管導入脱細胞化器官を対象に投与する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年2月3日に出願された米国仮出願第62/454,161号の優先権の恩恵を主張し、その米国仮出願の全内容は参照によって本明細書に組み入れられている。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
2018年2月1日に作成され、EFS-Webにより米国特許商標局に提出された、8KBの34633_7600_02_PC_PCTSequenceListing.txtという名前のASCIIテキストファイルにおける配列表は、参照によって本明細書に組み入れられている。
【0003】
本開示は一般的に、血管のような安定な3次元脈管構造を形成するための方法に関する。より具体的には、本開示は、安定な3次元人工血管、そのような脈管を形成するためのスキャフォールドを用いない方法、およびその使用を対象とする。
【背景技術】
【0004】
胚器官形成および組織再生は、機能的な長持ちする血管による脈管導入に依存する。非特許文献1。血管は、組織特異的恒常性を持続させるために、および発生中の組織の適切なパターニングおよび形態形成を導くようにパラクリンのアンジオクライン因子を供給するために、重要である。例えば、非特許文献2;および非特許文献3参照。
【0005】
血管新生として知られた過程である、傷害器官を修復するために新しい血管の形成を誘導する試みは、困難に直面している。非特許文献4参照。今まで、脈管導入を誘導するための血管新生因子の傷害器官への注射は、長期使用のために機能的な耐久性のある毛細血管を確立するのに効果的ではなかった。さらに、臨床設定への移行のために安定な血管をインビトロで作製するアプローチは、面倒で、かつ時間がかかった。例えば、現在のアプローチは、3次元脈管を形成するためにスキャフォールドの製作、血管周囲の周皮細胞の使用、および血行動態的微小環境を再現するための強制的灌流を必要とする。非特許文献5参照。
【0006】
加えて、既存のモデルは、Matrigel(商標)(Corning)のような臨床的に不適合な人工細胞外マトリックスを用い、そのことは、培養中の推定上の毛細血管ネットワークのリモデリングおよびパターニングを制限する。成熟した成体ヒト内皮細胞は、インビトロまたはインビボで、Matrigel(商標)(Corning)マトリックスにおいて血管ネットワークを形成するが、これらの血管は、安定ではなく、リモデリング潜在能力が限られており、数週間以内に退行する。
【0007】
organ-on-chipモデルを作製するためのテクノロジー(非特許文献5参照)および3次元バイオプリンティング(非特許文献6参照)は疾患モデリングおよび薬物スクリーニングを驚異的に進歩させた。しかしながら、生理学的に適切な血管細胞をこれらのアプローチへ組み込む能力は後れを取っている。具体的には、このアプローチにおいて、組織特異的上皮細胞および腫瘍細胞との直接的内皮細胞の相互作用は、人工バイオマテリアルにより持ち込まれた物理的制約のせいで制限されている。さらに、このorgan-on-chipまたは脈管スキャフォールドアプローチは、半透性人工バイオマテリアルの層による分離を必要とし、そのことは、内皮細胞と非血管細胞との間の必須の物理的細胞間相互作用を損ない、それにより、適応性または不適応性の内皮細胞リモデリング
を制限する。非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;および非特許文献10参照。
【0008】
スキャフォールド、物理的障壁、および人工マトリックスの使用の必要性が、オルガノイド培養物との内皮細胞クロストークのインビトロ研究、および組織特異的人工脈管構造の移行を制限している。したがって、器官型幹細胞と混じり合い、リモデリングすることができる内皮細胞を用いて、腫瘍オルガノイドもしくは組織特異的オルガノイドまたは脱細胞化器官に脈管導入するための新しいアプローチは、再生、薬物スクリーニング、および腫瘍ターゲティングのための臨床設定への移行を向上させるだろう。
【0009】
本開示の安定な3次元血管および方法は、現在の人工脈管よりはるかに長い持続時間の間、インビボで完全に機能的である安定な3次元人工血管の形成を決定づける、認識されていないリプログラミング要素を利用する。さらに、本明細書に開示された組成物および方法は、傷害組織、オルガノイド、および脱細胞化器官に脈管導入する能力がある器官特異的血管を生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Carmeliet,P.およびJain,R.K. Nature(2011)473、298~307頁
【非特許文献2】Ramasamy,S.K.ら Trends Cell Biol(2015)25、148~157頁
【非特許文献3】Rafii,S.ら Nature(2016)529、316~325頁
【非特許文献4】Samuel,R.ら Sci Transl Med(2015)7、309頁
【非特許文献5】Huh,D.ら Trends Cell Biol(2011)21、745~754頁
【非特許文献6】Zhang,Y.S.ら ACS Biomater Sci Eng(2016)2、1710~1721頁
【非特許文献7】Ginsberg,M.ら Cell(2012)151、559~575頁
【非特許文献8】Schachterle,W.ら Nature communications(2017)8、13963頁
【非特許文献9】Israely,E.ら Stem Cells(2013)1521頁
【非特許文献10】James,D.ら Nat Biotechnol(2010)28、161~166頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、ETS転写因子バリアント2、ETV2(ER71、ETSRP71)が内皮細胞発生を方向づけること、および可塑性、展性、および環境刺激に対する応答性がより高く、加えて、正常上皮細胞および腫瘍細胞を含む他の非血管細胞型を受け容れる原始様内皮細胞へ分化型内皮細胞をリプログラミングすることにおいて一過性ETV2発現が必須の役割を果たすことを明らかにしている。より具体的には、本開示の方法および組成物は、細胞外マトリックス成分を含有するマトリックス上で培養された内皮細胞におけるETV2転写因子の外因性発現が、結果として、周皮細胞、灌流、および厄介なスキャフォールドの使用なしに、インビトロおよびインビボで、安定かつ機能的な3次元人工血管の形成を生じることを同定している。したがって、本開示は、ラミニン、エンタクチン、および/またはコラーゲンIVを含むマトリックスのような、マトリックス上で培養され
たリプログラミング化内皮細胞が、インビトロで、加えて、インビボで、長持ちする機能的な3次元人工血管を形成するという発見を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本開示の第1の態様は、管腔を有する血管細管のような安定な3次元脈管構造を形成するための方法を対象とする。本明細書に記載された方法の大きな利点は、それらが3次元スキャフォールドを利用せず、それにより、有利なことには、人工3次元血管を形成するために現在必要とされる費用および時間のかかる要素を排除することである。本方法のさらなる利点は、生体適合性マトリックスの同定および使用であり、そのことは、結果として、安定な血管ネットワークのリモデリングおよびパターニングを生じる。このゆえに、本方法は、血管を形成するための既存の方法を損なう現在の欠点の多くを排除する。
【0013】
本開示の一実施形態において、内皮細胞が、少なくとも3週間、ETV2転写因子タンパク質を発現するように、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞をマトリックス上で培養することを含む、安定な3次元血管を形成するための方法が提供される。
【0014】
分化型内皮細胞におけるETV2転写因子タンパク質の外因性発現は、分化型内皮細胞をリプログラミングし、管腔を有する血管のような安定な機能的3次元脈管構造へ自己集合する能力をそれらに提供し、その後、その脈管構造は、単離され、例えば、傷害組織の脈管導入、オルガノイドの脈管導入、または脱細胞化器官の脈管再導入のようないくつもの目的のために用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、本方法に用いられる内皮細胞は分化型内皮細胞である。ある特定の実施形態において、分化型内皮細胞はヒト内皮細胞である。特定の実施形態において、分化型ヒト内皮細胞はヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)、ヒト脂肪由来内皮細胞、または組織/器官特異的ヒト内皮細胞である。本方法のいくつかの実施形態において、分化型内皮細胞は、器官特異的内皮細胞であり、それには、心臓、腎臓、精巣、卵巣、網膜、肝臓、膵臓、脳、肺、脾臓、大腸、または小腸の内皮細胞が含まれるが、それらに限定されない。他の実施形態において、分化型内皮細胞は、筋肉、リンパ組織、嗅覚組織、造骨組織、口腔(歯)組織、または腺組織(例えば、内分泌腺、胸腺)由来の組織特異的内皮細胞である。
【0015】
本方法のある特定の実施形態において、外因性ETV2コード核酸は、内皮細胞内に存在する。一実施形態において、外因性ETV2コード核酸は、配列番号1に示されたヒトETV2遺伝子ヌクレオチド配列に対応し、それは、配列番号2に示されているようなアミノ酸配列を有するヒトETV2転写因子タンパク質をコードする。他の実施形態において、外因性ETV2コード核酸は、ETV2転写因子タンパク質をコードするETV2リボソーム核酸(RNA)転写産物である。
【0016】
ある特定の実施形態において、外因性ETV2核酸は、トランスフェクションまたは形質導入により内皮細胞へ提供される。特定の実施形態において、ETV2をコードする核酸は、レンチウイルスベクターのようなウイルスベクターを用いて、内皮細胞へ形質導入される。一実施形態において、外因性ETV2転写因子コード核酸は、例えば、リバースtetトランス活性化因子(rtTA)-ドキシサイクリン誘導性発現系のような誘導性発現系を用いて分化型内皮細胞へ提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で培養することを含む。ETV2タンパク質は、構成的に、または一過性に発現することができる。ある場合では、外因性ETV2転写因子は、分化型内皮細胞において少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくと
も5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間、発現して、分化型内皮細胞をリプログラミングし、かつ管腔を有する血管形成を誘導する。特定の実施形態において、外因性ETV2タンパク質は、少なくとも3~4週間、発現して、血管形成を誘導する。
【0018】
他の実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を有する内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で培養し、その後、該内皮細胞が外因性ETV2を発現しない条件下でのさらなる培養期間が続くことを含む。この場合、内皮細胞は、まず、第1の期間、外因性ETV2転写因子を発現する条件下で培養し、その後、誘導性プロモーターを活性化する能力がある物質(例えば、ドキシサイクリン、テトラサイクリン)の非存在下のような外因性ETV2を発現しない条件下で第2の培養を行うことができる。場合によっては、本方法は、外因性ETV2コード核酸を有する内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を一過性に発現する条件下で(例えば、ドキシサイクリンの存在下で)、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養し、その後、ドキシサイクリンの非存在下のような外因性ETV2を発現しない条件下で、数日間、数週間、または数ヶ月間、第2の培養を行うことを含む。
【0019】
本方法のいくつかの実施形態において、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞はマトリックス上で培養される。ある特定の実施形態において、マトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンのような定義済みの細胞外マトリックス成分で構成される。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。一実施形態において、マトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。例示的な実施形態において、ETV2発現内皮細胞は、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックス上で培養される。ラミニンおよびエンタクチンは、お互いに結合して、複合体を形成することができるので、マトリックスは、ラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、内皮細胞は、少なくとも5mg/mLの濃度でのラミニンとエンタクチンの複合体、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養されて、長持ちする機能的3次元人工血管を形成することができる。特定の実施形態において、内皮細胞は、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成されるマトリックス上で培養される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0020】
本方法の一実施形態において、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞は、無血清培地において培養される。いくつかの実施形態において、本方法は、内皮細胞を無血清培地において少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養することを含む。他の実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞を無血清培地において低酸素圧、すなわち、大気中酸素圧(20%酸素圧)未満で、培養することを含む。特定の実施形態において、細胞は、無血清培地において、4%から15%の間、5%から10%の間、4%から8%の間、または4%から6%の間の酸素圧で培養される。一実施形態において、細胞は、無血清培地において、5%の酸素圧で少なくとも7日間培養される。
【0021】
いくつかの実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞を、マトリックス上で、ETV2転写因子を発現する条件下で培養して、管腔を有する安定な3次元血管の形成を誘導する工程、および該安定な3次元血管を単離する工程を含む。
【0022】
本開示はまた、分化型内皮細胞におけるETV2タンパク質の外因性発現が、周皮細胞、灌流、およびスキャフォールドの非存在下でインビトロおよびインビボで、機能的血管ネットワークを形成する能力を有する安定な機能的3次元血管の自律的自己集合をもたらすことを明らかにしている。
【0023】
したがって、本開示の別の態様において、3次元血管ネットワークを自律的に形成する能力がある安定な3次元血管が提供される。
【0024】
ある特定の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、リプログラミング化内皮細胞の少なくとも1つの連続層で構成される、管腔を有する脈管のような管状構造を含む。いくつかの実施形態において、リプログラミング化内皮細胞は、外因性ETV2転写因子コード核酸を含有する。
【0025】
ある特定の実施形態において、安定な3次元血管の内皮細胞は、外因性ETV2転写因子コード核酸を発現する。一実施形態において、ETV2転写因子の発現は、一過性であり、すなわち、数日間、数週間、または数ヶ月間のような限りのある期間の間においてである。特定の実施形態において、ETV2転写因子の一過性発現は、例えば、リバースtetトランス活性化因子(rtTA)-ドキシサイクリン誘導性発現系のような、誘導性発現系により調節される。他の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を構成的に(すなわち、永久に)発現する内皮細胞を含有する。他の実施形態において、安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を発現する内皮細胞および外因性ETV2を発現しない内皮細胞の組合せで構成される。さらに別の実施形態において、安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を発現しないリプログラミング化内皮細胞で構成される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示の安定な3次元血管が単離される。この場合、血管は、それが形成された環境から全部または一部、取り出される。ある特定の実施形態において、単離された安定な3次元血管は、培地、培地成分および添加物、ならびにそれが形成された任意のマトリックス、例えば、Matrigel(商標)またはL.E.C.マトリックスを含まない。他の実施形態において、本開示の単離された安定な3次元血管は、培地、培地成分および添加物から取り出されているが、例えば、Matrigel(商標)またはL.E.C.マトリックスのようなマトリックスの少なくとも一部分を含む。
【0027】
本開示の一実施形態において、安定な3次元血管は機能的である。特定の実施形態において、機能的な安定な3次元血管は、その血管の中に流体を通過させる(灌流する)能力がある。他の実施形態において、機能的で安定な3次元血管は、その血管の中に血液を通過させる能力がある。さらに別の実施形態において、機能的で安定な3次元血管は、3次元血管ネットワークを形成する能力がある。一実施形態において、安定な3次元血管は、血液を組織へ輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む機能的3次元血管ネットワークを形成する(組織に脈管導入する)。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示の機能的で安定な3次元血管は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、またはそれより長い間、機能的である。特定の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、血管形成後4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれより長い間、安定である。
【0029】
本開示は、外因性ETV2を含む内皮細胞が、インビボで脈管導入する能力があるパターニングされた安定な人工血管へ自律的に組織化することを示しているので、本開示はまた、脈管導入を促進するための方法を提供する。このゆえに、別の態様において、安定な3次元血管を対象に投与することを含む、対象において脈管導入を促進するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、対象は、脈管導入することを必要としている器官のような傷害組織を有する。特定の実施形態において、対象は、傷害心臓組織、傷害肝臓組織、傷害リンパ組織、傷害腎臓組織、傷害精巣組織、傷害卵巣組織、傷害網膜、傷害膵臓組織、傷害脳組織、傷害肺組織、傷害腸組織、傷害腺組織、傷害筋肉組織、またはそれらの組合せを有する。
【0030】
一実施形態において、本方法は、脈管導入を必要としている対象の傷害組織への外科的植え込みにより対象へ安定な3次元血管を投与することを含む。特定の実施形態において、安定な3次元血管は、傷害器官またはその組織へ直接的に植え込まれる。他の実施形態において、本方法は、例えば、傷害組織への直接的な注射のような注射により、対象へ安定な3次元血管を投与することを含む。ある特定の実施形態において、安定な3次元血管は、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、またはそれらの組合せにより対象へ投与される。
【0031】
いくつかの実施形態において、対象において脈管導入を促進する方法は、インビトロで形成された少なくとも1つの安定な3次元血管を対象へ投与することを含む。他の実施形態において、方法は、インビトロで形成された本開示の2つまたはそれ以上の安定な3次元血管の投与を含む。特定の実施形態において、本方法は、傷害組織のような脈管導入を必要としている組織へ直接的に、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVで構成されたマトリックス上の複数の安定な3次元血管の投与を含む。
【0032】
いったん安定な3次元血管が対象へ投与されたならば、その機能的で安定な3次元血管は、内因性組織に脈管導入する能力がある3次元血管ネットワークを確立する。いくつかの実施形態において、安定な3次元血管は、血液を組織へ輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む3次元血管ネットワークを形成する。
【0033】
本開示の別の態様において、オルガノイドに脈管導入するための方法が提供される。この場合、オルガノイドに脈管導入するための方法は、オルガノイドを、マトリックス上で、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共に、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養して、オルガノイド上に安定な3次元血管ネットワークを形成することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、オルガノイドをマトリックス上で内皮細胞と共に培養することを含む。ある特定の実施形態において、マトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンのような定義済みの細胞外マトリックス成分で構成される。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。一実施形態において、マトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。例示的な実施形態において、オルガノイドは、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックス上で内皮細胞と共に培養される。ラミニンおよびエンタクチンは、お互いに結合して、複合体を形成することができるので、マトリックスは、ラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、オルガノイドに脈管導入するために、内皮細胞を、少なくと
も5mg/mLの濃度でのラミニンとエンタクチンの複合体、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養することができる。特定の実施形態において、マトリックスは、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0035】
一実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む培地において、オルガノイドをマトリックス上で内皮細胞と共に培養することを含む。特定の実施形態において、培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)を含む。いくつかの実施形態において、培地はヘパリンを含む。特定の実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、FGF2およびヘパリンを含む培地において、オルガノイドを、マトリックス上で内皮細胞と共に培養することを含む。
【0036】
オルガノイド、およびETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞は、マトリックス上で、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で、オルガノイドに機能的3次元血管ネットワークの形成を誘導する、すなわち、オルガノイドへ脈管導入するのに必要な任意の期間培養することができる。例えば、ある特定の実施形態において、オルガノイドおよび分化型内皮細胞が、内皮細胞をリプログラミングし、オルガノイドに、パターニングされた長持ちする人工脈管の形成を誘導するように、少なくとも1週間(7日間)、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養される。いくつかの実施形態において、脈管導入オルガノイドは、オルガノイドに渡って血液を輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む3次元血管ネットワークを有する。
【0037】
オルガノイドに脈管導入するための本方法は、任意の型のオルガノイドに適用することができる。例えば、本方法に用いられるオルガノイドは、小腸オルガノイド、結腸オルガノイド、腎臓オルガノイド、心臓オルガノイド、または腫瘍オルガノイドであり得る。いくつかの実施形態において、その方法は、腫瘍オルガノイドに脈管導入するために用いることができ、それにより、腫瘍オルガノイドは、乳がんオルガノイド、結腸がんオルガノイド、腎臓がんオルガノイド、または腸がんオルガノイドなど、組織特異的であり得る。
【0038】
本開示の脈管導入オルガノイドを、いくつもの目的のために当業者が用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための本方法は、脈管導入オルガノイドを単離することを含む。
【0039】
いったん脈管導入オルガノイドが得られたならば、脈管導入オルガノイドは、ヒトまたは動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル)のような対象へ投与することができる。特定の実施形態において、脈管導入オルガノイドは、外科的植え込みによりマウスへ投与することができる。
【0040】
他の実施形態において、単離された脈管導入オルガノイドは、治療剤の効能を決定するために用いることができる。この場合、脈管導入オルガノイドを、治療剤と接触させ、治療剤の存在下で、ある期間培養する。その後、培養中、オルガノイド機能、細胞の増殖および健康状態を分析して、治療剤の効能を決定することができる。
【0041】
本開示はまた、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共に脱細胞化器官を、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養することが、結果として、脱細胞化器官に機能的脈管構造の発生を生じることを明らかにしている
。したがって、本開示の一態様は、脱細胞化器官に脈管再導入するための方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための方法は、脱細胞化器官を、マトリックス上でリプログラミング化内皮細胞と共に培養することを含む。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。ある特定の実施形態において、マトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンのような定義済みの細胞外マトリックス成分で構成される。一実施形態において、マトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。例示的な実施形態において、器官は、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックス上で内皮細胞と共に培養される。マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、器官に脈管導入するために、内皮細胞を、少なくとも5mg/mLの濃度でのラミニンとエンタクチンの複合体、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養することができる。特定の実施形態において、マトリックスは、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための方法は、バイオリアクターにおける脱細胞化器官を、マトリックス上の内皮細胞と共に、外因性ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で培養することを含む。
【0044】
一実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための方法は、脱細胞化器官を、マトリックス上で内皮細胞と共に、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で、脱細胞化器官に機能的3次元血管ネットワークの形成を誘導する、すなわち、その器官に脈管再導入するのに必要な任意の期間培養することを含む。例えば、ある特定の実施形態において、脱細胞化器官およびリプログラミング化内皮細胞が、内皮細胞が脱細胞化器官上で、管腔を有する長持ちする脈管へと組織化することを誘導するように、少なくとも1週間(7日間)、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養される。他の実施形態において、内皮細胞は、脱細胞化器官に、その器官に渡って血液を輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む機能的3次元血管ネットワークを形成する。
【0045】
本方法は、任意の型の脱細胞化器官に適用することができる。例えば、内皮細胞は、脱細胞化した心臓、腎臓、精巣、卵巣、網膜、骨、内分泌腺、甲状腺、気管、リンパ節、肝臓、膵臓、脳、肺、脾臓、大腸、または小腸のような脱細胞化器官上で、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養することができる。
【0046】
本開示の脈管再導入器官を、いくつもの目的のために当業者が用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための本方法は、脈管再導入器官を単離することを含む。例示的な実施形態において、脈管再導入器官を単離し、その後、ヒトまたは動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル)のような対象へ投与することができる。特定の実施形態において、脈管再導入脱細胞化器官は、単離され、外科的植え込みによりヒト対象へ投与される。
【0047】
他の実施形態において、単離された脈管再導入脱細胞化器官は、治療剤の効能を決定す
るために用いることができる。この場合、脈管再導入脱細胞化器官を、治療剤と接触させ、治療剤の存在下で、ある期間培養する。その後、培養中、器官機能、細胞の増殖および健康状態を分析して、治療剤の効能を決定することができる。
【0048】
この特許のファイルは、カラーで作成された少なくとも1枚の図面を含有する。カラー図面を含むこの特許のコピーは、依頼および必要な料金の支払いにより、特許商標局により提供されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1-1】図1A~1Mは、外因性ETV2を含むリプログラミング化内皮細胞は、インビトロで、安定な3次元の機能的で、管腔を有する人工血管へと自己集合する。A.対照-HUVEC(CTRL-EC)またはlenti-ETV2形質導入HUVEC(R-VEC)の単層が、VECAD、ETV2、およびDAPIについて染色されたことを示す図である。B.ETV2、VEGFR2、および転写因子Fli1についての対照-ECまたはR-VECのウェスタンブロット分析を示す図である。GAPDHが負荷対照として用いられた。C.外因性ETV2を発現する内皮細胞(R-VEC)により形成された12週間目の管におけるVECADおよびETV2についての免疫染色を示す図である。D.CTRL-ECとR-VECの両方についての24時間から8週間までの管形成の時間経過の画像である。E.16週間目におけるR-VEC脈管のウェル全体の概観の図であり、組織化された血管網の存在が実証されている。F.12週間の培養を通しての様々な時点における脈管密度の定量化を示す図である。G.R-VEC、またはETS1もしくはmyrAKTを形質導入された内皮細胞を用いた場合の脈管形成の定量化を示す図である。H.Matrigel上での脈管形成アッセイにおけるETS1またはmyrAKT1形質導入HUVECについての代表的な画像を示す図である。I.外因性ETV2を発現する内皮細胞(R-VEC)により形成された人工脈管の、ポドカリキシン(頂端膜側、赤色)およびラミニン(基底膜側、緑色)での適切な管腔極性についての免疫染色を示す図である。J.8週間目/12週間目時点における外因性ETV2を発現する内皮細胞により形成された無傷の管腔人工脈管の存在を示す電子顕微鏡観察を示す図である。K.CTRL-ECとR-VECの両方についての1週間目および4週間目における細胞外マトリックスタンパク質の異なる混合物のスクリーニングの定量化を示す図である。L.8週間目時点までの、R-VECを用いた、Matrigel(商標)(corning)またはラミニン/エンタクチン/コラーゲンIV(L.E.C.)マトリックス上での脈管形成の長期間の脈管定量化を示す図である。M.電子顕微鏡観察により示されているように、Matrigel(商標)とL.E.C.マトリックスの両方が用いられた場合、外因性ETV2を発現する内皮細胞(R-VEC)により形成された人工脈管に管腔が存在することを示す図である。ns=有意性なし、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図1-2】図1-1の続き。
図1-3】図1-2の続き。
図1-4】図1-3の続き。
図2図2A~2Bは、安定な3次元血管はインビトロで機能的である。A.赤色蛍光標識ビーズでの灌流により、脈管耐久性および機能性が示された図である。B.マイクロ流体デバイスにおける、培養後6日目での脈管密度の定量化を示す図である。P<0.05。
図3-1】図3A~3Mは、外因性ETV2を含む内皮細胞は、インビボで脈管導入する能力がある、パターニングされた長持ちする血管へと組織化する。A.2ヶ月目における、CTRL-ECを含有するプラグ、およびETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)を含有するプラグの画像である。B~C.ラミニン/エンタクチン/コラーゲンIV(L.E.C.)マトリックスおよび内皮細胞を含むプラグが2ヶ月目時点および5ヶ月目時点に単離され、R-VECプラグが、CTRL-EC含有プラグと比較されたという、全載共焦点画像である。ヒト内皮細胞に特異的で、かつAlexa647(白色)にコンジュゲートされたモノクローナルVECAD抗体が、屠殺前にマウスにおいて後眼窩に注射された(生体内注射)。D.1ヶ月目および2ヶ月目における切片におけるパーセント蛍光強度として測定された脈管密度の定量化を示す図である。E.1週間目、1ヶ月目、および2ヶ月目におけるプラグの全載画像である。F.1週間目時点、1ヶ月目時点、および2ヶ月目時点におけるR-VECプラグおよびCTRL-ECプラグにおいて形成された脈管の定量化を示す図である。G.2ヶ月目におけるプラグの切片のH&E染色を示す図である。H.2ヶ月におけるプラグの切片(20μm)の免疫蛍光染色を示す図である。プラグ内で形成された脈管は、マウスPDGFRβについて染色された。I.R-VEC、ETS1発現内皮細胞(ETS1-VEC)またはmyrAKT1発現内皮細胞(myrAKT1-EC)、およびCTRL-ECを含むプラグから得られた、1ヶ月目時点におけるMatrigel(商標)プラグの画像である。J.R-VEC、ETS1-VECまたはmyrAKT1-EC、およびCTRL-ECの1ヶ月目における全載顕微鏡観察を示す図である。K.1ヶ月目におけるR-VEC、ETS1-VECまたはmyrAKT1-EC、およびCTRL-ECのH&E染色を示す図である。赤血球の存在により示されているように、リプログラミング化内皮細胞(R-VECプラグ)だけが、灌流され、かつパターニングされた脈管を形成した。L.植え込まれた脈管(ヒトVECAD、青色)およびマウス周皮細胞(マウスPDGFRβ、緑色)の染色された切片を示す図である。より小さい毛細血管および細動脈様構造の画像である。M.インビボでのマウスPDGFRβ陽性周皮細胞により包まれている、植え込まれたR-VEC脈管を示す図である。パネル(iおよびii):図3Lからのズームインされた画像。パネル(iii):植え込まれたR-VEC脈管の3D再構築。ns=有意性なし、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図3-2】図3-1の続き。
図3-3】図3-2の続き。
図3-4】図3-3の続き。
図3-5】図3-4の続き。
図4-1】図4A~4Hは、一過性ETV2発現は、安定で機能的な長持ちするヒト脈管の形成および維持に十分である。人工脈管形成は、ETV2発現がドキシサイクリンの存在により駆動される誘導性ETV2系を用いて達成された。ドキシサイクリン(Dox)は、アッセイの0日目に除去されるか、アッセイの開始後1ヶ月目に除去されるか、または常に存在するかのいずれかであった。A.rtTaのみが存在した場合、Doxが0日目に除去された誘導性ETV2の場合、Doxが1ヶ月後に除去された場合、または2Dもしくは3D培養物に連続的に加えられた場合における試料についての脈管形成を描く蛍光画像である。B.マウスが一度もDox食餌に曝されなかった場合、マウスが1ヶ月間、Dox食餌であり、その後、1ヶ月間、通常食餌に移った場合、および連続してDox食餌のままであった場合のインビボプラグアッセイの図である。赤色は、注射されたヒト内皮細胞を表す。白色は、灌流されかつ吻合した脈管を同定するために、マウスを屠殺する前に静脈内(生体内)注射されたVECADを提供する。C.一過性ETV2発現中、1ヶ月間および2ヶ月間の発生における脈管密度の定量化を示す図である。D.ドキシサイクリンが連続的に存在した場合の脈管、およびドキシサイクリンが1ヶ月後に除去された脈管に存在した管腔の電子顕微鏡観察画像の図である。E.4週間後のETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)、および培養された対照HUVECにより形成された脈管における、異なって発現した遺伝子の重複する数を示すベン図である。F.対照HUVECと比較した、培養の4週間後のR-VEC脈管間で共有された(倍数変化によりランク付けされた)上位20個の上方制御および下方制御された遺伝子を示すヒートマップである。G.培養の4週間後の、R-VEC脈管およびR-VEC単層において(倍数変化によりランク付けされた)上位25個の上方制御および下方制御された遺伝子を示すヒートマップである。H.GAPDH発現に対するqPCR分析により示されているように、1週間後および4週間後において、Dox除去によりETV2はオフに変わっていることを示す図である。ns=有意性なし、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図4-2】図4-1の続き。
図4-3】図4-2の続き。
図4-4】図4-3の続き。
図5-1】図5A~5Lは、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞はオルガノイドに脈管導入する。ヒトまたはマウス由来オルガノイドは、単独で、またはヒトCTRL-EC(対照)もしくは外因性ETV2を含有するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)と共に培養された。A.単独での、およびCTRL-ECまたはR-VEC(赤色蛍光)と共培養された、マウス小腸オルガノイド(緑色)の24時間の培養、4日間の培養、および7日間の培養時点における時間経過の代表的な共焦点顕微鏡観察画像である。B.7日間の期間に渡る、CTRL-ECオルガノイド対R-VECオルガノイドにおける脈管密度時間経過を示す図である。C.CTRL-ECと共に培養されたオルガノイド対R-VECと共に培養されたオルガノイドにおける、出芽/オルガノイドとして定量化された脈管分枝(脈管導入)を示す図である。D.単独での、CTRL-ECと共の、またはR-VECと共のヒト正常結腸オルガノイドの共培養実験についての代表的な共焦点画像である。画像は、8日目に取得された。E.8日目における結腸オルガノイド/視野の定量化を示す図である。F.8日目におけるCTRL-ECオルガノイド共培養物対R-VECオルガノイド共培養物における脈管密度/視野を示す図である。G.単独での、またはCTRL-ECと共に共培養された、もしくはR-VECと共に共培養された、結腸腫瘍オルガノイドの代表的な共焦点画像である。オルガノイドは、R-VECの腫瘍オルガノイドと共の共培養の8日目において、ケラチン20(KRT20)およびEdUについてポストステインされた。H.8日目におけるCTRL-ECまたはR-VECのオルガノイド共培養物の脈管密度の定量化を示す図である。I.8日目におけるEpCam、EDU、およびDAPIで染色された腫瘍結腸オルガノイドの免疫蛍光分析を示す図である。J.様々な正常オルガノイドおよび腫瘍オルガノイドの分枝後に達成されたR-VEC形態学的教育の概略図である。腸オルガノイドのR-VECとの密接な細胞相互作用は、結果として、幾何学的に組織化され、適切にパターニングされた適応可能な脈管の形成を生じる。対照的に、R-VECの腫瘍オルガノイドとの混合は、結果として、インビボでの異常な腫瘍脈管構造において典型的に見られる、組織化されず、崩壊した脈管の生成を生じる。したがって、ETV2を形質導入された内皮細胞は、正常なオルガノイドに対して適応し、かつ腫瘍オルガノイドに対して不適当に対応して、それにより、成体脈管構造のインビボ挙動の表現型複写するような独特の可塑性のある属性を獲得している。K.24時間目における、単独での、またはCTRL-ECもしくはR-VECと共培養された、トリプルネガティブヒト乳房腫瘍オルガノイドの代表的な共焦点画像である。L.8日目における乳房腫瘍オルガノイドのR-VEC脈管導入の共焦点画像である。リプログラミング化内皮細胞は、インビボの異常化腫瘍脈管を暗示する、組織化されず、不十分にパターニングされた脈管を形成する。**P<0.01、***P<0.001。
図5-2】図5-1の続き。
図5-3】図5-2の続き。
図5-4】図5-3の続き。
図5-5】図5-4の続き。
図6-1】図6A~6Jは、外因性ETV2を含む内皮細胞は、脱細胞化ラット腸に生着および増殖し、その再内皮化腸の異所性植え込みで、宿主脈管構造内に生着する。A.採取されたラット腸は、管腔、腸間膜動脈、および腸間膜静脈を通してカニューレ処置されたことを示す図である。スケールバー 1cm。B.脱細胞化腸は肉眼的に、天然の脈管構造スキャフォールド構造を保っていることを示す図である。スケールバー 5mm。C.播種されたR-VECは、遠位の毛細血管へ遊走し、かつそれを覆うことを示す図である。スケールバー 5mm。D.バイオリアクターにおける7日間の培養後、蛍光低密度リポタンパク質(LDL)での灌流により、開存性内皮化脈管が明らかにされていることを示す図である。スケールバー 50μm。E.R-VECが脈管構造に再配置されることを示す図である。スケールバー 100μm。F.R-VECは、脈管構造全体に均等に広がって、遠位の毛細血管および血管を形成し、一方、CTRL-ECは、器官に脈管導入することができないことを示す図である。スケールバー 500μm。G.対照ECと比較して、R-VECにより脈管導入された領域の定量化により、R-VECによる再内皮化の増加が示されていることを示す図である。H~K.蛍光イソレクチンおよび抗ヒトVE-カドヘリン抗体の生体内静脈内注射により、再内皮化腸の異所性植え込みが、その細胞の1週間後および4週間後の生着、ならびに宿主脈管構造への吻合を示していることを示す図である(スケールバー50μmおよび20μm)。P<0.05、**P<0.01。
図6-2】図6-1の続き。
図6-3】図6-2の続き。
【発明を実施するための形態】
【0050】
内皮細胞(EC)におけるETS転写因子バリアント2、ETV2(ER71、ETSRP71)の外因性発現が、機能的で安定な3次元血管および血管ネットワークを自律的に形成する能力がある、より原始的な内皮細胞へ分化型内皮細胞をリプログラミングすることにおいて必須の役割を果たすことが、本明細書で認識されている。したがって、この開示は、周皮細胞、強制灌流、および人工スキャフォールドの非存在下で、内皮細胞においてETV2を外因的に発現することにより安定な3次元血管を形成するための方法、これらの方法により産生された安定かつ機能的な3次元人工血管、およびそれを用いるための方法を提供する。
【0051】
安定な3次元血管を形成するための方法
本開示の第1の態様は、人工血管のような安定な3次元脈管構造を形成するための方法を対象とする。いかなる特定の理論にも縛られるつもりはないが、インビトロ、加えてインビボで、適切な時間の間での内皮細胞におけるETV2発現が、培養中の内皮細胞をリプログラミングして、長持ちする機能的3次元血管を形成し得ると考えられる。定義済みのマトリックス上で培養した場合、分化型内皮細胞における外因性ETV2転写因子の発現が、機能的で安定な3次元血管の自律的形成を生じる。本方法は3次元スキャフォールドを利用しないため、本明細書に提供された方法は、有利なことには、3次元血管を形成するために現在、必要とされる費用と時間のかかる要素を排除する。
【0052】
一般的に、安定な3次元血管を形成するための本方法は、生体適合性マトリックス上でETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞を、外因性ETV2転写因子を発現する条件下で少なくとも3週間培養することを含む。分化型内皮細胞におけるETV2転写因子タンパク質の外因性発現は、分化型内皮細胞をリプログラミングし、管腔を有する血管のような安定な機能的3次元脈管構造へと自己集合する能力をその細胞に与え、その後、その3次元脈管構造を単離し、例えば、傷害組織の脈管導入、オルガノイドの脈管導入、または脱細胞化器官の脈管再導入のようないくつもの目的のために用いることができる。
【0053】
一実施形態において、本方法に用いられる内皮細胞は、分化型内皮細胞(EC)である。本明細書で用いられる場合、用語「分化した」または「分化型内皮細胞」は、内皮細胞が、特定の機能に特殊化される、例えば、細胞が、最初の細胞型とは異なる1つまたはそれ以上の形態学的特徴および/または機能を獲得する、発生過程を指す。用語「分化」は、分化系列決定と、細胞の成熟の完全に分化した成体内皮細胞への発生の両方を含む。分化は、例えば、免疫組織化学法または当業者に知られた他の手順を用いて、細胞系マーカーの有無をモニターすることにより、評価される。
【0054】
内皮細胞は、当技術分野において知られた方法により得ることができる。例えば、内皮細胞は、Ginsberg,M.ら Cell(2012)151、559~575頁およびFerraraらの米国特許第6,899,822号に記載されているように、コラゲナーゼに基づいた消化アプローチを用いて、組織から単離することができる。内皮細胞系譜は、例えば、抗CD31抗体、VE-カドヘリン、または抗フォンビルブランド因子抗体で染色することにより検証することができる。ECの単離は、磁気または蛍光活性化細胞ソーティング(MACSまたはFACS)に用いられる磁気ビーズまたはフルオロフォアに付着した、VE-カドヘリン、CD31、またはVEGFR2のようなEC表面マーカーに特異的な抗体を用いて達成することができる。
【0055】
代替手段においては、内皮細胞は、商業的供給源から得られる。内皮細胞は、それらの分化した細胞系譜および複製する能力を維持する条件下で培養および維持(増殖)することができる。そのような条件は、当技術分野において十分、実証されている。例えば、単離された内皮細胞は、コーティングされた組織培養ディッシュにおいて、内皮細胞増殖サプリメントを含む完全培地中、培養することができる。その後、内皮細胞を、用いるまで、分割して、継代することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、分化型内皮細胞はヒト内皮細胞である。ある特定の実施形態において、分化型ヒト内皮細胞は、ヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)、ヒト脂肪由来内皮細胞、または組織/器官特異的ヒト内皮細胞である。本方法のいくつかの実施形態において、分化型内皮細胞は、器官特異的内皮細胞であり、それには、心臓、腎臓、精巣、卵巣、網膜、肝臓、膵臓、脳、肺、脾臓、大腸、または小腸の内皮細胞が含まれるが、それらに限定されない。他の実施形態において、分化型内皮細胞は、筋肉、リンパ組織、嗅覚組織、造骨組織、口腔(歯)組織、または腺組織(例えば、内分泌腺、胸腺)由来の組織特異的内皮細胞である。
【0057】
分化型内皮細胞は、培養されて、安定な3次元血管の形成を惹起することができる。細胞は、内皮細胞の増殖を持続させる能力がある任意の培地において培養することができ、その培地には、DMEM(高グルコースまたは低グルコース)、advanced DMEM、DMEM/MCDB 201、Eagleの基本培地、HamのF10培地(F10)、HamのF-12培地(F12)、Hayflickの培地、Iscoveの改変Dulbeccoの培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI 1640、およびCELL-GRO-FREE(Corning cellgro、Corning、NY)が含まれるが、それらに限定されない。培地は、1つまたはそれ以上の成分を追加することができ、その成分には、例えば、単独または組合せのいずれかでの、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)、好ましくは約2~15%(v/v);ウマ血清;ヒト血清;ウシ胎仔血清(fetal calf serum);β-メルカプトエタノール、好ましくは約0.001%(v/v);1つまたはそれ以上の増殖因子、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、白血球阻止因子(LIF)およびエリスロポイエチン;アミノ酸、例えば、L-バリン;ならびに、微生物汚染を制御するための1つまたはそれ以上の抗生物質および/または抗真菌剤、例えば、ペニシリンG、ストレプトマイシン硫酸塩、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、およびナイスタチンが含まれる。
【0058】
内皮細胞は、リプログラミングの前に、細胞数を増加させるために培養することができる。十分な数の内皮細胞が最初の試料から単離される場合もあるが、たとえ、許容できる数の分化型内皮細胞が最初の試料に存在したとしても、培養における細胞の増殖により、リプログラミングのために内皮細胞のよりいっそう多い供給量を提供することができる。
細胞を培養および増殖する方法は当技術分野において知られている。例えば、Helgasonら、Basic Cell Culture Protocols、第4版、Human Press Publishing、2013;およびMitryら、Human Cell Culture Protocols、第3版、Human Press
Publishing、2012参照。
【0059】
分化型内皮細胞を、分化型内皮細胞による外因性ETV2コード核酸の組込みおよび発現により「リプログラミング」することができる。
【0060】
内皮細胞は、本明細書に開示された方法に従って、管状(管腔を有する)血管および他の脈管構造を形成する内皮細胞の能力を変化させる、外因性ETV2転写因子タンパク質を発現することにより、「リプログラミング」される(より可塑性の高い状態へ脱分化するように方向づけられる)。
【0061】
用語「ETV2」または「ETV2転写因子」は、NP 055024に示されたアミノ酸配列を有するDNA結合転写因子タンパク質をコードする、RefSeq Gene
ID 2116、NCBI参照配列No.NC_000019.10に示されたヒトETS-転写因子バリアント2、ETV2(ER71、ETSRP71)を指すように、本明細書で交換可能に用いられる。本開示のETV2核酸は、アクセッション番号:NM_001300974.1、NM_014209.3、およびNM_001304549.1に示されたもののような、ETV2 DNA配列またはその一部分、およびそのRNA転写産物を含み得る。ETV2の機能的誘導体および相同体が、開示された方法における使用についてさらに企図される。本明細書で用いられる場合、「機能的誘導体」は、ETV2の生物学的機能を実施する能力を有する分子である。例えば、本明細書に開示されているようなETV2の機能的誘導体は、ETV2転写因子がそうであるように、DNAを結合し、かつ分化型内皮細胞をリプログラミングすることができる分子である。機能的誘導体には、融合タンパク質を含む、天然、合成、または組換えの供給源由来の、断片、バリアント、部分(part)、部分(portion)、均等物、類似体、変異体、模倣体が含まれる。「相同体」は、共通の祖先核酸配列から由来することにより、ETV2転写因子に関連したタンパク質である。本明細書で企図される相同体には、例えば、マウス、ラット、およびサルのような異なる種に由来したETV2タンパク質が含まれるが、それらに限定されない。
【0062】
本方法の特定の実施形態において、内皮細胞に存在する外因性ETV2コード核酸は、配列番号2に示されたヒトETV2転写因子タンパク質をコードする、配列番号1に示されているようなヒトETV2である。別の実施形態において、内皮細胞に存在する外因性ETV2コード核酸は、ヒトETV2転写因子タンパク質をコードする、ヒトETV2リボソーム核酸(RNA)転写産物である。他の実施形態において、分化型内皮細胞へ提供される外因性ETV2コード核酸は、修飾型合成RNAである。修飾型合成RNA分子は、Machnicka,MAら Nucleic Acids Res.(2013)41 D262~D267頁に示された方法のような、当業者に知られた方法により作製することができる。本発明に用いられる例示的な修飾型合成分子は、安定性(ヌクレアーゼ抵抗性を変化させる)または細胞取り込み(例えば、RNAポリヌクレオチドのコレステロール、リンカー、脂質、ポリマー、ペプチド、またはアプタマーへのコンジュゲーション)を調節する、RNAポリヌクレオチドへの化学修飾を含む。
【0063】
ETV2転写因子をコードする核酸を、当業者によく知られた方法により細胞へ提供することができる。例えば、ETV2コード核酸は、ETV2核酸配列を内皮細胞ゲノムへ組み込むことができ、または非組込み性である、つまり、ETV2遺伝子が、染色体外位置から発現してもよい。いくつかの実施形態において、ETV2コード核酸配列は、その
核酸配列が当技術分野において知られた技術によりクローニングされているベクターにより提供される。ベクターは、トランスフェクションまたはウイルス媒介性形質導入のような任意の適切な方法により導入することができる。
【0064】
ETV2転写因子を発現するのに用いられるベクターには、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および他のベクターが含まれ、それらは、いったん細胞へ導入されたならば、対象のゲノム内の染色体位置に組み込まれて、ETV2の安定な長期間発現を提供する。他のベクターには、エピソームベクター、加えて、非組込み性である、操作されたレンチウイルスベクターが含まれる。この場合、ETV2ヌクレオチド配列は、ベクター配列へクローニングされる;そのベクターは、分化型内皮細胞において増殖し、本明細書に記載された方法を用いて内皮細胞をリプログラミングするために用いられる。
【0065】
一実施形態において、ETV2核酸は、レンチウイルスベクターに含まれ、レンチウイルス媒介性形質導入により内皮細胞へ提供される。特定の実施形態において、配列番号1のETV2をコードする核酸は、レンチウイルスベクターを用いて、分化型内皮細胞へ形質導入される。一実施形態において、レンチウイルスベクターはlenti pgk-ベクターである。特定の実施形態において、配列番号1の外因性ETV2コード核酸は、例えば、リバースtetトランス活性化因子(rtTA)-ドキシサイクリン誘導性発現系のような誘導性発現系での形質導入により内皮細胞へ提供される。
【0066】
他の実施形態において、ETV2核酸は、内皮細胞へ送達されるRNA転写産物である。ある特定の具体的な実施形態において、細胞へ送達されるETV2 RNAは修飾型合成RNA分子である。RNA分子を細胞へ導入するための方法は、当業者によく知られており、そのような方法はここで用いることができる。例えば、mRNA転写産物のようなETV2 RNA転写産物は、トランスフェクションにより内皮細胞へ送達することができる。別の非限定的例において、ETV2 RNA転写産物がエレクトロポレーションにより細胞へ送達される。
【0067】
本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む分化型内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で培養することを含む。ある特定の実施形態において、ETV2タンパク質は構成的に発現する。他の実施形態において、ETV2タンパク質は、誘導性プロモーターの制御下のように、一過性に発現する。ある特定の実施形態において、外因性ETV2転写因子は、内皮細胞において、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、またはそれより長い間、発現して、内皮細胞を、管腔を有する血管を形成するように誘導する。特定の実施形態において、外因性ETV2タンパク質は、少なくとも4週間、発現して、血管形成を誘導する。別の実施形態において、外因性ETV2タンパク質は、少なくとも3~4週間、発現して、管腔形成を誘導する。
【0068】
他の実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を有する内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で培養すること、その後、該内皮細胞が外因性ETV2を発現しない条件下でのさらなる培養期間が続くことを含む。この場合、内皮細胞は、まず、第1の期間、外因性ETV2転写因子を発現する条件下で培養され、その後、誘導性プロモーターを活性化する能力がある物質(例えば、ドキシサイクリン、テトラサイクリン)の非存在下のような外因性ETV2を発現しない条件下で第2の培養を行うことができる。一実施形態において、外因性ETV2コード核酸は、培養中、一過性ETV2転写因子発現を生じる修飾型合成RNA分子である。
【0069】
いくつかの実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を有する内皮細胞を、ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、またはそれより長い間培養し、その後、ドキシサイクリンの非存在下のような外因性ETV2を発現しない条件下で、数日間、数週間、または数ヶ月間、第2の培養を行うことを含む。特定の実施形態において、内皮細胞は、外因性ETV2転写因子タンパク質を発現する条件下で、少なくとも3~4週間培養され、その後、内皮細胞は、該ETV2転写因子を発現しない条件下で、7日間から6ヶ月間まで、7日間から5ヶ月間まで、7日間から4ヶ月間まで、7日間から3ヶ月間まで、7日間から2ヶ月間まで、または7日間から1ヶ月間までの範囲の期間培養される。リプログラミングされた内皮細胞が、ETV2タンパク質を発現する条件下で培養される時間の量に関わらず、内皮細胞は、図4A~4Hに示されているように、血管のような安定な機能的3次元脈管構造を発生し続けるだろう。
【0070】
本方法は、外因性ETV2コード核酸を含有する内皮細胞をマトリックス上で培養することを含む。実際、本開示は、必須の細胞外マトリックス成分、すなわち、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVを同定しており、それらは、リプログラミング化内皮細胞を培養するために用いられる場合、周皮細胞、灌流、および厄介なスキャフォールドの使用なしに、インビトロおよびインビボで、安定かつ機能的な3次元人工脈管の形成を生じる。したがって、ある特定の実施形態において、マトリックスは、ラミニン、エンタクチン、および/またはコラーゲンのような細胞外マトリックス成分で構成される。
【0071】
一実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。ラミニンおよびエンタクチンは、お互いに結合して、複合体を形成することができるので、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例示的な実施形態において、ETV2発現内皮細胞は、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックス上で培養される。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。例えば、内皮細胞は、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチン、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養されて、長持ちする機能的な3次元人工血管を形成することができる。特定の実施形態において、内皮細胞は、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成されるマトリックス上で培養される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0072】
溶液または材料中の物質(例えば、分子およびタンパク質、またはそれらの複合体)の濃度を決定するための方法は、当業者に知られている。例えば、試料中の物質の濃度を決定するために、分光光度法を用いることができる。
【0073】
本方法の一実施形態において、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞は、無血清培地において、ある期間培養される。いくつかの実施形態において、本方法は、内皮細胞を無血清培地において、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養することを含む。
【0074】
他の実施形態において、本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞を無血清培地において低酸素圧で培養することを含む。いくつかの実施形態において、内皮細胞は
、無血清培地において、大気中酸素圧未満、すなわち20%酸素圧未満で培養される。特定の実施形態において、細胞は、無血清培地において、4%から15%の間、5%から10%の間、4%から8%の間、または4%から6%の間の酸素圧で培養される。一実施形態において、細胞は、無血清培地において、5%の酸素圧で培養される。特定の実施形態において、本方法は、外因性ETV2コードベクターを含む内皮細胞を無血清培地において、5%の酸素圧で7日間培養することを含む。
【0075】
持続期間または特定の培養条件に関わらず、本方法は、外因性ETV2コード核酸を含む内皮細胞を、マトリックス上で、ETV2転写因子を発現する条件下で培養して、管腔を有する安定で機能的な3次元血管の形成を誘導すること、およびそれを単離することを含む。
【0076】
「安定な」とは、3次元血管がそれの構造および機能を、長期間、例えば、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、またはそれより長い間、維持することを意味する。安定な3次元血管は、無傷の管腔を有し、適切な頂端膜側-基底膜側の極性を示し、および管状(管腔を有する)構造を少なくとも1ヶ月間、崩壊、パンク、または解離することなく、かつスキャフォールド、強制的灌流、または血管周囲サポートの使用なしに、維持する、内皮細胞の管状構造を意味する。
【0077】
本明細書で用いられる場合、用語「機能的な」は、安定な3次元血管が、典型的には天然(内因性)の血管により行われる過程を実行し得ることを意味する。例えば、本開示の機能的血管は、血液のような流体を灌流し、他の脈管(例えば、毛細血管、静脈、動脈、細動脈、細静脈、またはリンパ管)または組織へ吻合し、組織上に血管の統合されたパターニングされた(分岐した)ネットワークを自律的に形成することができ、その結果、スキャフォールド、強制的灌流、または血管周囲サポートの使用なしに、血液および/または流体が組織へ供給される(「脈管導入する」)。
【0078】
図2A~2Bおよび3A~3Mに示されているように、本方法により産生された安定な3次元血管は、流体を灌流する機能的血管を形成することができ(図2A)、かつ単離されて、対象に植え込まれた場合、毛細血管および細動脈構造を含む3次元血管ネットワークを形成することができる(図3L~3M)。さらに、図3Mに示されているように、植え込まれた安定な3次元血管は、内因性周皮細胞を、その管腔を有する脈管へ統合することにより、周囲組織へ吻合した。加えて、図1Eに示されているように、本開示の安定な3次元血管は、4ヶ月間(16週間)を超えて、安定かつ機能的のままである。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも13週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、少なくとも17週間、少なくとも18週間、少なくとも19週間、少なくとも20週間、またはそれより長い間、安定かつ機能的である。特定の実施形態において、本方法により形成された3次元血管は、少なくとも1ヶ月間または少なくとも2ヶ月間、安定かつ機能的である。他の実施形態において、本方法により形成された3次元血管は、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、またはそれより長い間、安定かつ機能的である。一実施形態において、本方法により形成された3次元血管は、4ヶ月間、安定かつ機能的である。
【0080】
安定な3次元血管組成物および治療的使用方法
本明細書に開示された培養方法は、安定な3次元血管の再現可能な産生を可能にし、そ
の3次元血管は、オルガノイドの脈管導入および傷害組織の治療的脈管導入(組織再生)のようないくつかの目的にとって有用である。本開示はまた、分化型内皮細胞におけるETV2タンパク質の外因性発現が、周皮細胞、灌流、およびスキャフォールドの非存在下で、インビトロおよびインビボで、機能的血管ネットワークを形成する能力を有する安定な機能的3次元血管の自律的自己集合をもたらすことを明らかにしている。
【0081】
したがって、さらなる態様において、本開示は、3次元血管ネットワークを自律的に形成する能力がある安定な3次元血管を含有する組成物を提供する。
【0082】
ある特定の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、リプログラミング化内皮細胞の少なくとも1つの連続層で構成される脈管のような管状構造(管腔)を含む。他の実施形態において、安定な3次元血管は、リプログラミング化内皮細胞の少なくとも2層で構成される管腔を含む。さらに別の実施形態において、安定な3次元血管は、リプログラミング化内皮細胞の少なくとも1つの層、および細胞、例えば、分化型血管内皮細胞または非血管細胞の少なくとも1つの他の層で構成された管腔を有する。他の実施形態において、安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を発現するリプログラミング化内皮細胞、および外因性ETV2を発現しない内皮細胞の組合せで構成される。
【0083】
ある特定の実施形態において、安定な3次元血管の内皮細胞は、外因性ETV2転写因子コード核酸を発現する。一実施形態において、ETV2転写因子の発現は、一過性、すなわち、数日間、数週間、または数カ月間のような限りのある期間の間である。特定の実施形態において、ETV2転写因子の一過性発現は、例えば、リバースtetトランス活性化因子(rtTA)-ドキシサイクリン誘導性発現系のような、誘導性発現系により調節される。他の実施形態において、ETV2転写因子の一過性発現は、ETV2タンパク質をコードする修飾型合成RNA分子の導入により調節される。他の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を構成的に(すなわち、永久に)発現する内皮細胞を含有する。他の実施形態において、安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を発現する内皮細胞および外因性ETV2を発現しない内皮細胞の組合せで構成される。さらに別の実施形態において、安定な3次元血管は、外因性ETV2転写因子を発現しないリプログラミング化内皮細胞で構成される。
【0084】
いくつかの実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、単離された血管である。
【0085】
安定な3次元血管またはリプログラミング化内皮細胞に関して用いられる場合の用語「単離された」は、血管または細胞が、それの天然で存在する環境、またはそれが形成された環境から取り出されており、かつ他の分子または培地を実質的に含まないことを意味する。「実質的に含まない」とは、単離された3次元血管または単離された細胞が、組成物または調製物の(乾燥重量または体積で)少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%を占めることを意味する。例えば、単離された安定な3次元血管は、培地を実質的に含まないであり得、すなわち、培地は、その調製物の体積の約20%未満、その調製物の体積の約10%未満、またはその調製物の体積の約5%未満に相当する。精製のレベルは、意図された使用に基づき得る。ある特定の非限定的例において、本開示の単離された安定な3次元血管は、安定な3次元血管を形成するために用いられた細胞培地、および細胞培地に加えられた任意の分子、例えば、サイトカイン、増殖因子、またはアミノ酸から、取り出すことができる。別の例において、リプログラミング化内皮細胞は、リプログラミング化内皮細胞を形成するために用いられた細胞培地、および任意の細胞培養添加物からその細胞を取り出すことにより単離することができるが、マトリックスの少なくとも一部分は、その単離された細胞と共に残存する。
【0086】
いくつかの実施形態において、単離された安定な3次元血管は、それが形成された環境
、例えば、細胞培養物、バイオリアクター、または対象から全部または一部、取り出される。ある特定の実施形態において、単離された安定な3次元血管は、培地、培地成分および添加物、ならびにそれが形成された任意のマトリックス、例えば、Matrigel(商標)またはL.E.Cマトリックスを含まない。他の実施形態において、本開示の単離された安定な3次元血管は、培地、培地成分および添加物から取り出されているが、例えば、Matrigel(商標)またはL.E.C.マトリックスのようなマトリックスの少なくとも一部分を含む。本開示の一実施形態において、安定な3次元血管は機能的である。特定の実施形態において、機能的な安定な3次元血管は、その管腔を有する血管の中に流体を通過させる(灌流する)能力がある。一実施形態において、機能的で安定な3次元血管は、その血管の中に血液を通過させる能力がある。さらに別の実施形態において、機能的で安定な3次元血管は、3次元血管ネットワークを形成する能力がある。いくつかの実施形態において3次元血管ネットワークは、スキャフォールド、強制的灌流、または血管周囲サポートの使用なしに、組織上に血管の統合されたパターニング化ネットワークを含み、その結果、血液および/または流体は、組織へ供給される(「脈管導入する」)。特定の実施形態において、3次元血管ネットワークは、安定な3次元血管、および少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せにより自律的に形成される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示の機能的で安定な3次元血管は、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、またはそれより長い間、機能的である。特定の実施形態において、本開示の安定な3次元血管は、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、またはそれより長い間、機能的である。一実施形態において、本開示の3次元血管は、図1Eに示されているように、少なくとも4ヶ月間(16週間)、安定である。
【0088】
脈管導入を促進するための方法
本開示の図3Lおよび3Mは、外因性ETV2を含む内皮細胞を培養することにより形成された安定な3次元血管が、植え込み後、内因性組織に脈管導入する能力がある、パターニングされた長持ちする血管ネットワークへ自律的に組織化することを示しているため、本開示の安定な3次元血管はまた、対象における傷害組織の脈管導入を促進するために用いられる。
【0089】
それゆえ、別の態様において、安定な3次元血管を対象に投与することを含む、対象において脈管導入を促進するための方法が提供される。例えば、本3次元血管は、虚血組織の修復、血管および心臓弁の形成、損傷脈管の修復、および(例えば、移植前に)操作された組織において血管の形成を誘導することのために、治療的に用いることができる。いくつかの実施形態において、対象は、脈管導入を必要としている器官のような傷害組織を有する。
【0090】
この方法は、そのような組織における脈管導入を促進するために、本開示の3次元血管を含有する組成物を、そのような処置を必要としているヒト対象へ投与することを含む。組織における脈管導入(血管新生)を促進することは、虚血性状態、例えば、心筋梗塞、うっ血性心不全、および末梢血管閉塞性疾患、脳卒中、再灌流傷害、肢虚血;ニューロパチー(例えば、末梢性ニューロパチー、または糖尿病性ニューロパチー)、臓器不全(例えば、肝不全、腎不全など)、糖尿病、関節リウマチ、および骨粗鬆症を含む状態を有し、または発症するリスクがある対象にとって有益であり得る。
【0091】
脈管導入を必要としている組織は、損傷し、かつ過剰な細胞死により特徴づけられる組
織、損傷のリスクがある組織、または人工的に操作された組織であり得る、とりわけ、心臓組織、肝臓組織、膵臓組織、腎臓組織、筋肉組織、神経組織、骨組織であり得る。特定の実施形態において、対象は、傷害心臓組織、傷害肝臓組織、傷害リンパ組織、傷害腎臓組織、傷害精巣組織、傷害卵巣組織、傷害網膜、傷害膵臓組織、傷害脳組織、傷害肺組織、傷害腸組織、傷害腺組織、傷害筋肉組織、またはそれらの組合せを有する。
【0092】
本方法は、安定な3次元血管を対象に、修復または脈管導入を必要としている組織へ、またはその組織の近くに該血管の送達を生じる様式で、投与することを含む。場合によっては、安定な3次元血管は、局所的に投与され、例えば、脈管導入を必要としている組織へ、またはその組織の近くに直接的に(例えば、注射、植え込み、または任意の適切な手段により)送達される。一実施形態において、安定な3次元血管は、脈管導入を必要としている対象の傷害組織への外科的植え込みにより投与される。特定の実施形態において、安定な3次元血管は、傷害器官またはその組織へ直接的に植え込まれる。他の実施形態において、本方法は、例えば、傷害組織への直接的な注射のような注射により、対象へ安定な3次元血管を投与することを含む。ある特定の実施形態において、安定な3次元血管は、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、またはそれらの組合せにより対象へ投与される。
【0093】
一実施形態において、安定な3次元血管は、細胞外マトリックス成分の懸濁液においてのように、マトリックスと共に投与される。特定の実施形態において、安定な3次元血管は、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)を含むマトリックス上で投与される。一実施形態において、マトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。例示的な実施形態において、血管は、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックスと共に投与される。ラミニンおよびエンタクチンは、お互いに結合して、複合体を形成することができるので、マトリックスは、ラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、血管は、少なくとも5mg/mLの濃度でのラミニンとエンタクチンの複合体、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックスと共に投与される。特定の実施形態において、マトリックスは、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0094】
いくつかの実施形態において、対象において脈管導入を促進する方法は、インビトロで形成された少なくとも1つの安定な3次元血管を対象に投与することを含む。他の実施形態において、方法は、インビトロで形成された本開示の2つまたはそれ以上の安定な3次元血管の投与を含む。
【0095】
投与経路に関わらず、いったん安定な3次元血管が対象に投与されたならば、その機能的で安定な3次元血管は、傷害組織に脈管導入する能力がある3次元血管ネットワークを確立する。例えば、安定な3次元血管は、血液を傷害組織へ輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む3次元血管ネットワークを形成することができる。
【0096】
本開示はまた、外因性ETV2転写因子を発現する分化型内皮細胞が、ある特定の細胞外マトリックス成分と共に対象に注射された場合、安定な3次元血管を自律的に形成し得ることを明らかにしている。
【0097】
したがって、本開示のさらなる態様は、マトリックス上の複数のリプログラミング化内皮細胞を組織または器官に投与することにより脈管導入を促進するための方法を提供する。例えば、本方法は、本明細書に示されたマトリックス上の外因性ETV2転写因子コード核酸を含む複数のリプログラミング化内皮細胞の投与を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、リプログラミング化内皮細胞およびマトリックスは、脈管導入を必要としている対象へ直接的に投与することができる。この場合、リプログラミング化内皮細胞およびマトリックスは、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、外科的植え込み、またはそれらの組合せにより傷害組織へ直接的に送達することができる。
【0099】
オルガノイドまたは脱細胞化器官に脈管導入するための方法
本開示の別の態様において、オルガノイドに脈管導入するための方法が提供される。この場合、方法は、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共にオルガノイドをマトリックス上で、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養して、オルガノイド上に安定な3次元血管ネットワークを形成することを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、オルガノイドをリプログラミング化内皮細胞と共にマトリックス上で培養することを含む。本方法に用いられるマトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。ラミニンおよびエンタクチンは、お互いに結合して、複合体を形成することができるので、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例示的な実施形態において、リプログラミング化内皮細胞は、ラミニンおよびエンタクチンを5mg/mLの合わせた濃度で含むマトリックス上で培養される。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。例えば、内皮細胞およびオルガノイドは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチン、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養されて、オルガノイドに長持ちする機能的3次元人工血管を形成することができる。特定の実施形態において、マトリックスは、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVで構成される。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0101】
内皮細胞およびオルガノイドは、内皮細胞の増殖および発生を持続させる能力がある任意の培地において培養することができ、その培地には、DMEM(高グルコースまたは低グルコース)、advanced DMEM、DMEM/MCDB 201、Eagleの基本培地、HamのF10培地(F10)、HamのF-12培地(F12)、Hayflickの培地、Iscoveの改変Dulbeccoの培地、間葉系幹細胞増殖培地(MSCGM)、DMEM/F12、RPMI 1640、およびCELL-GRO-FREE(Corning cellgro、Corning、NY)が含まれるが、それらに限定されない。培地は、1つまたはそれ以上の成分を追加することができ、その成分には、例えば、単独または組合せのいずれかでの、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)、好ましくは約2~15%(v/v);ウマ血清;ヒト血清;ウシ胎仔血清(fetal calf serum);β-メルカプトエタノール、好ましくは約0.001%(v/v);1つまたはそれ以上の増殖因子、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)、白血球阻止因子(LIF)およびエリスロポイエチン;アミノ酸、例えば、L-バリン;ならびに、微生物汚染を制御するための1つまたはそれ以上の抗生物質および/または抗真菌剤、例えば、ペニシリンG、ストレプトマイシン硫酸塩、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、およびナイ
スタチンが含まれる。
【0102】
一実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、線維芽細胞増殖因子(FGF)を含む培地において、マトリックス上の内皮細胞と共にオルガノイドを培養することを含む。特定の実施形態において、培地は、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)を含む。いくつかの実施形態において、培地はヘパリンを含む。特定の実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための方法は、FGF2およびヘパリンを含む培地において、マトリックス上の内皮細胞と共にオルガノイドを培養することを含む。
【0103】
オルガノイド、およびETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞は、マトリックス上で、内皮細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で、オルガノイドに機能的な、管腔を有する3次元血管ネットワークの形成を誘導する、すなわち、オルガノイドに脈管導入するのに必要な任意の期間培養することができる。リプログラミング化内皮細胞と共のオルガノイドの培養中、オルガノイドに渡って血液を輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む機能的血管ネットワークが生じるだろう。例えば、ある特定の実施形態において、オルガノイドおよび内皮細胞は、内皮細胞がオルガノイドにパターニングされた長持ちする血管へと組織化するのを誘導するように、少なくとも1週間(7日間)、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養される。
【0104】
オルガノイドに脈管導入するための本方法は、任意の型のオルガノイドに適用することができる。例えば、本方法に用いられるオルガノイドは、小腸オルガノイド、結腸オルガノイド、腎臓オルガノイド、心臓オルガノイド、または腫瘍オルガノイドであり得る。いくつかの実施形態において、その方法は、腫瘍オルガノイドに脈管導入するために用いることができ、それにより、腫瘍オルガノイドは、乳がんオルガノイド、結腸がんオルガノイド、腎臓がんオルガノイド、または腸がんオルガノイドなど、組織特異的であり得る。
【0105】
本開示の脈管導入オルガノイドを、いくつもの目的のために当業者が用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、オルガノイドに脈管導入するための本方法は、脈管導入オルガノイドを単離することを含む。
【0106】
いったん脈管導入オルガノイドが得られたならば、脈管導入オルガノイドは、ヒトまたは動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル)のような対象へ投与することができる。特定の実施形態において、脈管導入オルガノイドは、外科的植え込みによりヒト対象へ投与することができる。
【0107】
他の実施形態において、単離された脈管導入オルガノイドは、治療剤の効能を決定するために用いることができる。この場合、脈管導入オルガノイドを、治療剤と接触させ、治療剤の存在下で、ある期間培養する。その後、オルガノイド機能、細胞の増殖および健康状態を分析して、治療剤の効能を決定することができる。
【0108】
本方法に利用することができる治療剤の例には、抗炎症薬、抗血管新生分子、抗体、細胞傷害性薬、他の毒素、放射線核種、免疫細胞調節物質、小分子、エキソソーム、および遺伝子発現産物が含まれるが、それらに限定されない。例えば、化学療法剤が、その化学療法剤の抗腫瘍活性(効能)を決定するために、脈管導入オルガノイド(すなわち、腫瘍オルガノイド)へ投与される。
【0109】
本開示はまた、ETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞と共に脱細胞
化器官を、その細胞において外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養することが、脱細胞化器官に機能的脈管構造の発生を生じることを明らかにしている。
【0110】
したがって、本開示の別の態様は、脱細胞化器官を脈管再導入するための方法を提供する。脱細胞化器官に脈管再導入するための方法は、脱細胞化器官に機能的3次元血管ネットワークを形成するのに十分な期間、マトリックス上で内皮細胞と共に脈管除去器官を、培養することを含む。脱細胞化器官のリプログラミング化内皮細胞と共の培養中、そのオルガノイドに渡って血液を輸送する能力がある、少なくとも1つの毛細血管、少なくとも1つの細動脈、少なくとも1つの細静脈、少なくとも1つのリンパ性血管、またはそれらの組合せを含む機能的3次元血管ネットワークが生じるだろう。例えば、ある特定の実施形態において、脱細胞化器官および内皮細胞は、内皮細胞を、脱細胞化器官で、パターニングされた長持ちする血管へと組織化するように誘導し、その後、脱細胞化器官に脈管再導入する機能的血管ネットワークを形成するように、少なくとも1週間(7日間)、少なくとも10日間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、またはそれより長い間培養される。
【0111】
いくつかの実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための方法は、バイオリアクターにおいて、脱細胞化器官をマトリックス上の内皮細胞と共に、外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養することを含む。本方法に用いられるマトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを、少なくとも5mg/mLの合わせた濃度で含み得る。例えば、マトリックスは、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチンの複合体を含み得る。例示的な実施形態において、マトリックスは、ラミニンおよびエンタクチンを、5mg/mLの合わせた濃度で含む。特定の実施形態において、本方法に用いられるマトリックスは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVの組合せ(L.E.C.)で構成される。例えば、方法は、少なくとも5mg/mLのラミニンとエンタクチン、および少なくとも0.2mg/mL コラーゲンIVを含有するマトリックス上で培養して、長持ちする機能的な3次元人工血管を形成することを含む。特定の実施形態において、マトリックスは、5.25mg/mLの合わせた濃度でのラミニンおよびエンタクチン、ならびに0.2mg/mL コラーゲンIVを含有する。他の実施形態において、マトリックスはMatrigel(商標)(Corning)である。
【0112】
本方法は、任意の型の脱細胞化器官に適用することができる。例えば、内皮細胞は、脱細胞化した、心臓、腎臓、精巣、卵巣、網膜、骨、内分泌腺、甲状腺、気管、リンパ節、肝臓、膵臓、脳、肺、脾臓、大腸、または小腸のような脱細胞化器官上で、外因性ETV2タンパク質を発現する条件下で培養することができる。
【0113】
本開示の脈管再導入器官を、いくつもの目的のために当業者が用いることができる。したがって、いくつかの実施形態において、脱細胞化器官に脈管再導入するための本方法は、脈管再導入器官を単離することを含む。
【0114】
例示的な実施形態において、脈管再導入器官を得て、その後、ヒトまたは動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル)のような対象へ投与することができる。特定の実施形態において、脈管再導入オルガノイドは、単離され、外科的植え込みによりヒト対象へ投与される。
【0115】
他の実施形態において、単離された脈管再導入器官は、治療剤の効能を決定するために用いることができる。この場合、脈管再導入器官を、治療剤と接触させ、治療剤の存在下で、ある期間培養する。その後、脈管再導入器官機能、細胞の増殖および器官健康状態を分析して、治療剤の効能を決定することができる。
【実施例0116】
本説明は、以下の実施例によってさらに例証され、その実施例は、決して、限定するものとして解釈されるべきではない。(この出願を通して引用されているような、参照文献、発行された特許、および公開された特許出願を含む)全ての引用された参考文献の内容は、参照により本明細書に明確に組み入れられている。
【実施例0117】
材料および方法
細胞培養。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびヒト脂肪組織内皮細胞を、実験室において、Ginsberg,M.ら Cell(2012)151、559~575頁(その全内容は参照により本明細書に組み入れられている)に示されているようなコラゲナーゼに基づいた消化アプローチを用いて単離した。その後、単離された内皮細胞を、0.2%ゼラチンでコーティングされた組織培養ディッシュにおいて、完全培地(M199 400ml、熱失活FBS 100ml、Hepes 7.5ml、抗生物質 5ml、glutamax 5ml、脂質混合物 5ml、および内皮細胞増殖サプリメント
1/2ボトル(Alpha Aesar))中、増殖させた。継代後、その細胞に、lenti pgk-ETV2または空のレンチベクターを形質導入した。必要に応じて、細胞をまた、pgk-mCherryまたはpgk-GFPレンチウイルスを用いることにより標識した。その細胞を、accutaseを用いて1:2で分割し、ゼラチン化プレート上で継代した。必要に応じて、細胞を、将来的実験に用いるために凍結させた。全体として、異なるHUVECの10個より多いバッチが実験に用いられた。管形成アッセイについて用いられた内皮細胞は、継代5~10であった。
【0118】
ヒト脂肪由来内皮細胞を、機械的断片化、続いて、30分間のコラゲナーゼ消化により単離した。粗細胞集団をプラスティックディッシュ上に蒔き、5~7日間、増殖させた後、その細胞を、VE-カドヘリン CD31内皮細胞を精製するためにソーティングし、上記のように増殖させた。
【0119】
管形成アッセイ。24ウェルプレートを、インキュベーターにおいて、Matrigel(商標)(Corning) 250~300μlで30分間、コーティングした。それと同時に、ETV2を含む、または含まない細胞を、accutase処理し、カウントした。その後、細胞を、knock out血清およびサイトカイン(10ng/ml
FGF-2、10ng/ml IGF1、20ng/ml EGF、20ng/ml SCF、10ng/ml IL6)(Peprotech)を追加したStemSpan(Stem Cell Technologies)中に再懸濁した。その後、ETV2を含むかまたは含まないかのいずれかの100,000個の細胞を、各ウェルに分散させた。実験の残りについて、プレートを5%酸素においてインキュベートした。ラミニン/エンタクチン/コラーゲンIV(L.E.C)に基づいた実験について、高濃度(すなわち、15mg/ml)のラミニンおよびエンタクチン(Corning)を、リン酸バッファー溶液(PBS)中の異なる量のコラーゲンIV(Corning)と混合した。管腔形成について最も効果的な濃度のL.E.C.は、2.0mg/mLのコラーゲンIVと共に5.25mg/mL ラミニン/エンタクチン複合体で構成される最終マトリックスについて、ラミニン/エンタクチン複合体 200μl(15mg/ml)およびコラーゲンIV 100μlを含んだ。脈管密度を、24時間~16週間の経過に渡って測定した。EVOS(登録商標)倒立顕微鏡を用いて、4×倍率で、各条件および時点について各ウェルにおける4つの異なるランダム化ゾーンでの画像を撮影した。その後、全ての画像を、ImageJによるトレースを用いて脈管密度について分析した。ETS1またはmyrAKT1を形質導入された細胞について、同じ手順を用いた。
【0120】
インビトロでの管の染色。8~12週間目において、全ての培地をウェルから除去した。管を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回、洗浄し、その後、室温で30分間、固定させ、PBSで再び洗浄し、室温で1時間、ブロッキングバッファー中に置いた。その後、管を、VECAD(R&D)、ラミニン(abcam)、コラーゲンIV(abcam)、および/またはポドカリキシン(R&D)に関して染色した。次の日、管をPBSにおいて再び洗浄し、二次抗体と3時間、インキュベートし、DAPIで対比染色した。全ての画像を、Zeiss 710共焦点顕微鏡により取得した。
【0121】
電子顕微鏡観察。組織を、無血清培地またはリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、その後、0.1Mカコジル酸ナトリウムバッファー pH7.2中2.5%グルタルアルデヒド、4%パラホルムアルデヒド、および0.02%ピクリン酸の改変Karnovskyの固定液で固定させた。1%四酸化オスミウムにおける二次固定後、1.5%フェリシアン化カリウム試料を、段階的エタノールシリーズにより脱水させ、Epon類似体樹脂に包埋した。超薄切片を、Leica Ultracut S ultramicrotome(Leica、Vienna、Austria)においてDiatomeダイアモンドナイフ(Diatome、USA、Hatfield、PA)を用いて切り出した。切片を、銅グリッド上に収集し、鉛でさらに対比させ、100kVで作動したJEM 1400電子顕微鏡(JEOL,USA,Inc.、Peabody、MA)において観察した。画像を、Veleta 2K×2Kデジタルカメラ(Olympus-SIS、Germany)で記録した。
【0122】
3次元血管の灌流能力を評価するためのビーズフロー。各デバイスは、シリコンウエハーマスターから成型された2層のポリジメチルシロキサン(PDMS;Sylgard 184;Dow-Corning)から形成された。デバイスを、プラズマエッチング機(PlasmaEtch)でプラズマ処理し、続いて、トリメトキシシラン(Sigma)で一晩、処理した。使用前に、デバイスをMiliQ HOで一晩、洗浄した。2.5mg/ml ウシフィブリノーゲン(Sigma)および3U/ml ウシトロンビン(Sigma)における3百万個のリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)または対照の非トランスフェクション化内皮細胞(CTRL-EC)の混合物を、デバイスへ2本の400μm鍼治療用針(Hwato)で注射した。細胞とゲルの混合物を重合させた後、針を引き抜き、2つの中空チャネルを形成した。ETV2形質導入内皮細胞(リプログラミング化内皮細胞)および非形質導入内皮細胞(対照)を別々に、中空チャネルへ播種し、次の日、2つの親脈管が形成された。細胞を、内皮細胞増殖培地2(Promocell)において培養し、6日目まで、培地を毎日、新しくした。6日目、デバイスを、シリンジポンプ(Harvard Apparatus)に接続し、4μm赤色蛍光ミクロスフェア(Invitrogen)を、各デバイスにおける親脈管の1つへ50μL/分で注射した。デバイス内を流れる蛍光ビーズの低速度撮影を、Andor Zyla sCMOS 5.5MPカメラ(Andor)を備えたNikon Eclipse TiE(Nikon)で、50ミリ秒間隔で撮った。蛍光ビーズの低速度撮影画像を、一緒に積み重ね、ImageJソフトウェアを用いて、HUVEC脈管でオーバーレイした。
【0123】
例示的な血管のインビボ評価。レンチウイルス空ベクターまたはlenti-ETV2ベクターを形質導入され、かつGFPまたはmCherry蛍光マーカーで標識された、ヒト臍帯静脈由来内皮細胞(HUVEC)およびヒト脂肪由来ヒト内皮細胞(2百万個の細胞/プラグ)を、雄または雌週齢8~12週間のSCID-beigeマウス(Taconic)に皮下注射した。細胞を、まず、PBS(50μl)中に再懸濁し、その後、上記のようなMatrigel(商標)またはL.E.C.マトリックス(350μl)と混合した。細胞/マトリックス懸濁液はまた、FGF-2(10ng/ml)、VEGF-A(20ng/ml)、およびヘパリン(100ng/ml)を含んだ。各マウスは、対照細胞についての1つとETV2を発現する細胞についての1つである、2つのプラ
グを受けた。1週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、または5ヶ月目において、マウスに、ヒト内皮細胞だけを検出するAlexa-647にコンジュゲートしたVECAD(クローンBV9 - Biolegend)(PBS 100μl中25μg)を注射して、ETV2発現ヒト内皮細胞(リプログラミング化、R-VEC)および非ETV2発現ヒト内皮細胞(対照)の灌流および吻合潜在能力を評価した。全載画像を、カバースリップ底を含有するウェルを用いてZeiss 710共焦点顕微鏡で直接的に取得した。プラグを4%PFA中、一晩、固定させ、その後、エタノール中で脱水させ、またはさらなる免疫染色のためにスクロース中に置いた。脱水したプラグを切片化し、H&Eで染色した。切片を、下記のように免疫染色のために処理した。ETS1発現細胞および/またはmyrAKT1発現細胞を1ヶ月間、植え込みした時、同じ手順に従った。
【0124】
組織切片の免疫染色。前に4%PFA中に固定され、かつスクロース中で処理された凍結切片(20μM)を、PBSで1回、洗浄した。その後、そのスライドを、ブロッキングバッファー中室温で30分間、および一次抗体(1:500)中4℃で一晩、インキュベートした。次の日、スライドを、室温で10分間、3回、洗浄し、その後、蛍光コンジュゲート型二次抗体中、3時間、インキュベートした。最後に、スライドを、10分間、3回、洗浄し、DAPIで対比染色した。切片にカバースリップを載せ、さらにそれを用いて、共焦点顕微鏡で画像を取得した。ストロマ染色について、マウス血管周囲細胞を検出するPDGFRβ抗体(1:500、Biolegend)を用いた。各プラグの異なる部分由来の切片から数個の画像を取得した。各条件および時点について、異なるスライドから少なくとも12個の画像が得られた。画像を、ImageJを用いて処理し、各画像視野の領域に対する脈管領域のパーセンテージを、ImageJソフトウェアにおける閾値機能を用いることにより定量化した。
【0125】
前もって形成された安定な3次元人工血管の移植。Matrigel(商標)またはL.E.C.マトリックス上に上記のように形成された8~12週間後の人工血管を、培地を除去することにより単離し、Matrigel(商標)またはL.E.C. 200μlでオーバーレイした。30分以内に、ゲル化プラグをSCID-beigeマウスへ皮下に投与した。プラグ全体を、皮下切開により形成されたポケットへ外科的に挿入し、縫合して閉じた。2週間後、吻合および灌流された血管の形成を検出するために、マウスに、ヒトVECADに対する生体内抗体を注射した。
【0126】
腸組織の採取および器官の脱細胞化。腸を、体重が250g~350gの範囲であるSprague Dawleyラットから採取した。簡単に述べれば、無菌条件下で正中開腹術を実施し、腸を曝露させた。単離された区域を灌流する腸間膜動脈および腸間膜静脈を保存しながら、5cmの長さの腸の区域を単離した。両方の血管を、26Gカニューレでカニューレ処置し、腸管腔を、1/4インチの有棘コネクターを用いてカニューレ処置した。単離された腸区域を、蠕動ポンプ(iPump)を用いて1ml/分で脈管構造および管腔を灌流することにより脱細胞化した。脱細胞化過程は、milliQ水を24時間、デオキシコール酸ナトリウム(Sigma)を4時間、およびDnase I(Sigma)を3時間、灌流することからなった。脱細胞化腸を、使用前にガンマ線照射で滅菌した。
【0127】
バイオリアクター培養。脱細胞化腸に、5百万個のGFP ETV2ヒト内皮細胞(外因性ETV2を発現するリプログラミング化EC)または5百万個のGFP対照内皮細胞(CTRL-EC)のいずれかを播種した。細胞を、腸間膜動脈および腸間膜静脈を通して播種した。播種された腸を、無菌条件下でバイオリアクターの内部へ搭載した。24時間後、灌流を、蠕動ポンプ(iPump)を用いて1ml/分で腸間膜動脈を通して開始した。細胞を、20%熱失活FBS、1% Pen-Strep、1.5% HEPES(Corning)、1% Glutamax(商標)(Gibco)、1% 脂
質混合物(Gibco)、1% ヘパリン(Sigma)および15μg/ml 内皮細胞増殖サプリメント(Merck)を追加したM199/EBSS(HyClone)中、最初の5日間、増殖させ、その後、細胞を、1.1% knock-out血清(Thermo)、1% Pen-Strep、1% Glutamax、10ng/ml FGF(Peprotech)、20ng/ml EGF(Invitrogen)、10ng/ml IGF2(Peprotech)、20ng/ml SCF(Peprotech)、および10ng/ml IL6(Peprotech)を追加したStemSpan(Stemcell Technologies)中、2日間、増殖させた。7日後、再内皮化された腸を、無菌条件下で採取し、植え込みのために5×7mmの区域を切除した。その後、残りの腸組織を、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、蛍光顕微鏡観察による画像化のためにマウントして、調製した。脈管の開存性を評価するために、いくつかの再内皮化された腸を、蛍光標識LDLまたはヒトPECAM(CD31)に対する抗体で生体内灌流させた。
【0128】
異所性移植片植え込み。週齢8~12週間の免疫不全NOD-SCID-ガンマ(NSG)マウスを、2~5%イソフルラン-酸素ガス混合物で麻酔した。鎮痛の誘導時にブプレノルフィン0.1mg/Kgを投与した。無菌条件下で、正中開腹術を実施した。胃をその切り込みから外面化させ、網を、大きく曲がった状態から伸ばした。その後、操作された腸の区域を、網の包みの閉鎖を確実にするために8/0縫合糸を用いて、網内に包んだ。胃および網を、腹部に戻し、6/0縫合糸を用いて開腹を閉じた。動物を、手術後すぐに通常に食べたり飲んだりするようにさせ、術後の期間中、さらなる薬物療法を与えなかった。1週間または4週間後、マウスに、蛍光標識抗VECADまたは蛍光標識イソレクチンを静脈内注射し、安楽死させた。移植片を、網の包みと共に回収し、4%パラホルムアルデヒド中で固定させ、蛍光顕微鏡による画像化のためにマウントし、調製した。
【0129】
機能的脈管の灌流、吻合、サイズ、形、および密度の分析。インビトロでの内皮の再脈管化の定量化を、10×視野における5×5の面積上で実施した。画像を、ImageJソフトウェアを用いて、閾値を設定し、かつ腸面積に対してCD31シグナルに覆われる面積を定量化することにより、処理した。GFPおよびVE-カドヘリンが陽性の細胞のインビボ定量化を、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM710)で獲得された画像上で実施し、20×視野における3×3の面積を評価した。脈管パラメータの評価を、Angiotoolソフトウェア(National Cancer Institute)を用いて実施した。
【0130】
オルガノイド単離および培養。マウス小腸オルガノイドを、O’Rourke,K. P.ら Bio Protoc.(2016)6(その全内容は参照により本明細書に組み入れられている)に以前に記載されているように、単離および維持した。ヒト結腸陰窩および腺腫の単離;オルガノイドの培養および維持を、Sugimoto,S. & Sato,T. Methods Mol Biol(2017)1612、97~105頁(その全内容は参照により本明細書に組み入れられている)に以前に記載されているように実施した。正常組織および腺腫組織を収集した。簡単に述べれば、10mMニコチンアミド(Sigma-Aldrich)と共にWnt3a、R-spondin-3、およびNogginを含有する無血清培地中で培養物を成長させ、Matrigel(商標)(Corning)において増殖させた。オルガノイドを、10μM Y27632(Tocris Bioscience)を追加したTrypLE Select(Thermofisher)において消化させることにより、7日間ごとに継代した。
【0131】
リプログラミング化ヒト内皮細胞とのオルガノイドの共培養。MCherry ETV2 ECまたは対照(CTRL)EC(4百万個の細胞/mlの最終濃度)を、マウス小腸オルガノイド、正常なヒト結腸、または患者由来腫瘍オルガノイドと、24ウェルプレ
ートにおけるMatrigel(商標)バブル 75μl中、またはチャンバースライドにおけるMatrigel(商標)バブル 40μl中で混合し(正常なオルガノイドは1:2継代し、腫瘍オルガノイドは1:3で継代した)、FGF-2(10ng/ml)およびヘパリン(100ng/ml)を添加したオルガノイド培地において培養した。24時間目、4日目、5日目、7日目において、生きている培養物から画像を取得した。8日目において、共培養物を固定させ、マウント全体を、ケラチン20(KRT20)、EdU、および/またはEpCamで染色した。
【0132】
RNAライブラリー調製および配列データ処理。全RNA 少なくとも100ngを、各試料について単離し(TRIzol LSのフェノール-クロロホルム分離)、QiagenのRNeasy Mini Kitを用いて精製した。RNAの品質を、Agilent Technologies 2100 Bioanalyzerを用いて検証した。RNAライブラリー調製物を、Illumina TruSeq RNA Library Preparation Kit v2(非ストランド型およびポリA選択)を用いて、調製および多重化し、10nM cDNAを、51塩基ペアエンドリードを生じるIlluminaのHiSeq 2500によるハイスループットシーケンシングのためのインプットとして用いた。シーケンシングリードを、逆多重化し(bcl2fastq)、高品質リードを、HUVEC試料について構築されたUCSC hg19ゲノム、およびマウスECについて構築されたUCSC mm10ゲノムのトランスクリプトーム配列参照へマッピングした(TopHat2;Bowtie2)。遺伝子量測定(FPKM値)について、マッピングされたリードを、転写産物へ組み立て、定量化した(Cufflinks)。FPKM<1を有する遺伝子を、フィルターにかけて除去し、塩基-2
log変換されたFPKM値を、MDS、volcano、およびヒートマップのプロットをプロットするために用いた。遺伝子オントロジー分析を、DAVID Bioinformatics Resource Toolsを用いて実施した。ベン図内に示されたP値は、超幾何分布曲線の累積分布関数(CDF)に基づいて計算された。
【0133】
ChIPおよび抗体。ChIPアッセイを、実験あたりおよそ1×10個の細胞を用いて実施した。簡単に述べれば、細胞を、1%パラホルムアルデヒド(PFA)中、37℃で10分間、クロスリンクさせ、その後、0.125M グリシンにより停止させた。クロマチンを、Bioruptor(Diagenode)を用いて剪断して、200~400塩基対の断片を生じ、Dynabeads M-280(Invitrogen)
75μlと結合した抗体 2~5μgと4℃で一晩、インキュベートした。磁気ビーズを洗浄し、クロマチンを溶出した。ChIP DNAを、リバースクロスリンクさせ、カラム精製した。ChIPを、以下の抗体を用いて実施した:Flag(Sigma F1804);H3K4me3(Abcam ab8580);およびH3K27ac(Abcam ab4729)。QIAGEN RNeasy kitを用いてRNAを単離した。RNA-seqライブラリーを、Illumina TruSeq RNA Sample Preparation Kitで調製した。ChIP-seqライブラリーを、Illumina TruSeq DNA Sample Preparation Kitで調製した。RNA-seqライブラリーとChIP-seqライブラリーの両方を、Illumina HiSeq 4000 systemでシーケンシングした。
【0134】
ChIP-seqリードを、BWAアラインメントソフトウェア(バージョン0.5.9)を用いて参照ヒトゲノム(hg19、Genome Reference Consortium GRCh37)に対してアラインメントした。ミスマッチがリード長の4%以下である単一の最良マッチング位置にマッピングされた固有リードを、ピーク同定およびプロファイル作成のために保持した。配列データを、百万個のリードに対して標準化することによりIGVで可視化した。インプットDNAからのシーケンシングデータを対照として、ソフトウェアMACS2をChIP-seqデータに適用して、ETV2のゲ
ノム濃縮(ピーク)または特異的なヒストン修飾を同定した。生じたピークを、ETV2についてp値<0.05およびK4me3またはK27ac修飾についてp値<0.01によるフィルターにかけた。リードカウント数を、HOMERにより個々のプロモーターにおいて算出した。各同定されたピークに、HOMERにより、プロモーター(転写開始部位から±2kb)、遺伝子本体、または遺伝子間領域をアノテーションした。
【実施例0135】
内皮細胞における外因性ETV2の一過性発現はインビトロで、長持ちし、かつ安定な3次元人工血管を形成する
本研究は、分化型内皮細胞におけるETV2の一過性誘導が、内皮細胞を、非血管細胞に対する細胞親和性の増強を獲得し、加えて、インビトロおよびインビボで安定な3次元人工脈管を形成するように耐久性およびパターニング可塑性を生じるように、リプログラミングするだろうことを示す。ETV2転写因子発現が脈管形成を変化させるかどうかを決定するために、ETV2を形質導入された内皮細胞を、単一細胞FACSソーティングし、クローン的に増殖させた。内皮細胞における外因性ETV2発現は、一貫して、細胞外マトリックスの表面に局在する場合が多い、人工血管の組織化された耐久性のある幾何学的パターンを有する分岐型出芽血管ネットワークの形成を生じた。
【0136】
レンチウイルスベクターによるETV2の投与を、免疫染色およびウェスタンブロット分析により、典型的な平面状単層丸石形を形成する扁平内皮細胞と、3次元(3D)管を形成する扁平内皮細胞の両方において評価した。図1A~1C参照。7日間の培養に渡って、5%酸素圧(正常酸素圧)における無血清条件下で、外因性ETV2を発現するヒト臍帯静脈内皮細胞または成体脂肪由来内皮細胞(R-VEC)は、図1D~1Fに示されているように、外因性ETV2を含まない対照内皮細胞と比較して、機能的3D人工脈管を形成することにおいて有意に優れており、脈管形成において50倍より高い増加を示した。注目すべきことには、形成された3次元人工脈管は、図1Eに示されているように、16週間より長い間、インビトロで維持されることができた。
【0137】
分化型内皮細胞の、管腔を有する安定な3D人工血管へ自己集合する能力が、転写因子の他のETSファミリーの管の属性であるかどうかを決定するために、分化型内皮細胞に、別のETS転写因子、ETS1を形質導入した。さらに、ETV2が、内皮細胞へ血管新生機能を、その細胞生存を増加させることにより与えるのかどうかを調べるために、内皮細胞に、構成的に活性のあるミリストイル化AKT1(myrAKT1)を形質導入した。図1Gに示されているように、ETS1発現もmyrAKT1発現も、分化型内皮細胞が安定な3D人工血管を形成するのを、ETV2のようには可能にしなかった。したがって、分化型ヒト内皮細胞における外因性ETV2発現が、その細胞をリプログラミングし、かつ、人工血管を形成するための既存の方法により必要とされる人工スキャフォールド、周皮細胞被覆、強制的灌流、またはずり応力に束縛されることなく、安定な3D血管へ自己集合する能力をそのECに提供することが示されている。
【0138】
適切な管腔形成は、人工3D血管機能に必要とされる。図1Hに示されているように、共焦点顕微鏡により、本開示の安定な3D人工血管における連続した中断されていない管腔の存在が明らかにされている。その脈管は、適切な極性化を現し、ポドカリキシンが頂端膜側に発現し、基底膜側にラミニンが発現した(図1I)。さらに、図1Jに示されているように、脈管形成後8~12週間目において、人工3D血管は、開存性管腔およびタイトジャンクションを有する分岐パターニング脈管を自律的に形成する。したがって、本開示の安定な3次元血管は、管腔を有し、かつ適切な頂端膜側-基底膜側極性を示す。
【0139】
インビトロでの脈管パターニングおよびオルガノイド形成のための現在のアプローチは、Matrigel(商標)のような細胞外マトリックスの粗調製物の使用を必要とする
。Matrigel(商標)は、多数の消化されたマトリックス成分を含有し、それゆえに、特定の成分が脈管形成またはそれらのオルガノイド細胞成分との相互作用に必要とされるかどうかを決定することは困難である。脈管細胞外マトリックスの多数の組合せによりスクリーニングして、マトリックス成分、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIV(L.E.C.)の正確な化学量論が、本開示の安定な3D血管の自己集合を可能にすることが決定された。顕著なことには、図1Kに示されているように、対照のナイーブのヒト内皮細胞が、L.E.C.をマトリックスとして用いた場合、血管ネットワークを形成しなかった。さらに、図1Lに示されているように、L.E.C.およびMatrigel(商標)上で形成された脈管は、8週間を超えて、類似した脈管密度および分岐を示した。電子顕微鏡観察により、L.E.C.上に形成された脈管における管腔の存在が確認された。図1M参照。総合すれば、分化型内皮細胞におけるETV2の外因性発現は、少なくともラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVを含むマトリックス上で安定な3次元人工血管を形成する。
【0140】
灌流、および層流を持続させるR-VEC脈管の能力を試験するために、蛍光標識された、対照-EC(CTRL-EC)またはETV2をコードする外因性核酸を含む内皮細胞を、マイクロ流体デバイスにおいて、並行して播種した。図2Aに示されているように、播種後、外因性ETV2を発現する内皮細胞は、管腔を有する脈管へと組織化および自己集合したが、対照細胞は、血管を生成することができなかった。いったん人工血管の血管ネットワークが確立されたならば、本開示の安定な3次元人工血管が層流を持続させ得るかどうかを決定するために、mCherry標識ビーズ(4μM)を、そのデバイスの1つのチャネルを通して循環させた。図2Aに示されているように、外因性ETV2を発現する内皮細胞から形成された安定な3次元人工血管は、チャネルに渡るビーズの流れに耐えた。対照的に、対照の非ETV2形質導入内皮細胞(CTRL-EC)を含むチャネルを渡って、ビーズは流れなかった。さらに、図2Bに示されているように、外因性ETV2を発現する内皮細胞から形成された人工血管において、CTRL-ECを含有するものと比較して、脈管密度が有意に高かった。したがって、外因性ETV2を発現する内皮細胞から形成された安定な3次元の管腔を有する血管細管は、血管周囲サポートも、スキャフォールドによる、限定をもたらす拘束も必要とせずに、灌流を持続させる。
【実施例0141】
外因性ETV2を発現する内皮細胞はインビボで安定な3次元機能的脈管を形成する
外因性ETV2を発現する内皮細胞の、機能的なパターニング化脈管を持続させる潜在能力を、インビボのマウスモデルを用いて評価した。この場合、SCID-beigeマウスに、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIV(L.E.C.)と混合された、mCherryまたはGFP標識の、対照ヒト内皮細胞、または外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞を含有するプラグを皮下に植え込んだ。植え込みから1~5ヶ月後、脈管導入の程度(脈管存続および既存のマウス脈管構造への吻合)を、図3A~Mに示されているように、生体内染色により評価した。図3Aは、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)を有するプラグを投与されたマウスが、対照の非ETV2形質導入内皮細胞を投与されたマウスより、見かけ上はより多く脈管導入されたことを示している。全載共焦点写真と後のプラグの切片化の両方により、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞を投与されたマウスにおいて、対照のETV2を発現しない内皮細胞プラグと比較して、はるかに高い脈管密度、組織化、およびパターニングが明らかにされた。
【0142】
安定な3D人工血管の、液体を灌流し、かつマウス脈管構造へ吻合する能力を調べることにより、脈管機能をインビボでさらに評価した。図3B~C参照。さらに、図3Dに示されているように、脈管密度は、1ヶ月目時点と2ヶ月目時点の両方において、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞を注射された動物において、対照ECより
、有意に高かった。同様の結果は、1週間目時点、1ヶ月目時点、および2ヶ月目時点において、L.E.C.の代わりにマトリックスとしてMatrigel(商標)を用いて形成された人工血管の機能性を分析した場合に得られた。図3E~F参照。組織学的分析により、機能的な灌流脈管が、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞に関して、対照内皮細胞と比較して、よりずっと高い率で形成されたことが示された。図3G。さらに図3Hは、本開示の安定な3D血管がマウス周皮細胞を含有したことを示しており、その周皮細胞は、管腔幾何学的配置をさらに安定させている。顕著なことには、myrAKT1またはETS1を形質導入された内皮細胞は、機能的ではない人工脈管を形成した。例えば、これらの脈管は、図3I~3Kに示されているように、灌流されておらず、マウスにおいて脈管導入することはできなかった。前述を鑑みれば、本開示の外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞は、定義済みのマトリックスにおける単一細胞集団として注射された場合、インビボで、脈管化して、機能的血管ネットワークを形成する。
【0143】
同様に、外因性ETV2を発現する内皮細胞から形成された安定な3次元血管が、単一細胞懸濁液として投与される代わりに植え込まれた場合、脈管機能性および脈管密度は、長い期間をかけて、維持された。これは、本開示の安定な3D血管を、器官特異的組織を再生するためにオルガノイドと共に移植し得ることを示している。外因性ETV2を発現する内皮細胞は、8週間培養されて、インビトロで安定な血管ネットワークを形成し、その後、それを、SCID-beigeマウスへ、完全に形成された血管移植片として皮下注射した。その後、マウスに、灌流された脈管を同定するためにVEcad抗体を注射した。図3Lおよび3Mに示されているように、マウスPFGFRβ周皮細胞が、移植された脈管の周りにリクルートされて、毛細血管様脈管および小さい細動脈の血管ネットワークを安定化および形成したことから、植え込まれた脈管は、内因性マウス血管と機能的に吻合した。したがって、本開示の3次元血管は、安定で機能的であり、かつスキャフォールドも血管周囲サポートも必要とすることなく、移植の応力を持続させる。これは、本開示の安定な3D血管が、対象において脈管導入を促進するための実行可能な媒介物であることを示している。
【実施例0144】
一過性ETV2発現は機能的人工血管を形成する
ETV2の一過性発現が、安定な3D血管形成を持続させるのに十分であるかどうかを決定するために、リバースtetトランス活性化因子(rtTA)-ドキシサイクリン誘導性発現系を用いた。定量的PCR分析により、ドキシサイクリン除去でのETV2の急速な下方制御が確認された。図4H。上記のインビトロの脈管形成アッセイおよびインビボのプラグアッセイにより、ETV2発現が、4週間目(すなわち、1ヶ月目)において脈管が適切に生じるまで必要とされるだけで、その後は必須でなかったことが示されている。図4A~B。実際、図4C~Dに示されているように、培養の最初の4週間の間にETV2を発現する内皮細胞により形成された人工脈管が、それらのETV2が賦与した脈管適応性を持続させた。
【0145】
さらに、図4Eおよび4Fに示されているように、インビトロで培養された内皮細胞と比較した場合、ETV2を発現する内皮細胞により形成された人工脈管は、新鮮に単離された内皮細胞との転写の類似性を獲得している。顕著なことには、3D人工血管が4週間目において安定になるため、上方制御された遺伝子の発現は、下方制御されて、その細胞は、全体的な微小環境の環境に適応する。図4G参照。
【実施例0146】
ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞がオルガノイドに脈管導入する
ETV2を発現する内皮細胞についての、マウス、ヒト、または悪性上皮のオルガノイ
ド培養物において、分枝する、すなわち、分岐3次元血管ネットワークを形成する潜在能力を、解明した。GFP標識ヒトまたはマウス小腸オルガノイドを、ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)またはナイーブ内皮細胞(CTRL-EC)のいずれかと混合した。図5Aに示されているように、R-VECは、24時間以内に、高度に組織化された3D脈管を形成し、かつ陰窩蕾を含有する幹細胞と分化型絨毛様中央ドメインの両方を付随することができた。ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞による腸オルガノイドの脈管導入は、より組織化されて、4日目および7日目までに、事実上あらゆるオルガノイドユニットに広がって分枝する、パターニング化脈管を形成した。対照的に、ナイーブの非ETV2形質導入内皮細胞(CTRL-EC)は、オルガノイドの存在下で脈管を形成することができず、それにより、オルガノイドに脈管導入する能力を欠損した。図5A
【0147】
図5Bおよび5Cに示されているように、オルガノイドあたりの脈管密度および形成された毛細血管の数は、リプログラミング化内皮細胞と共に培養されたオルガノイドにおいて有意により高いことが見出された。
【0148】
図5D~5Fに示されているように、ヒト由来正常結腸オルガノイドに関して、ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞は、分枝し、血管ネットワークを形成した。さらに、結腸オルガノイドの脈管密度、数、加えて、オルガノイドサイズが、ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞と共培養された場合、より高いことが見出された。したがって、リプログラミング化内皮細胞は、分化型内皮細胞が、内因性上皮細胞に結合して、機能的血管ネットワークを形成することを可能にする。
【0149】
図5G~5Jに示されているように、24時間以内に、ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)は、腫瘍オルガノイドへ遊走し、腫瘍オルガノイドに、積極的かつ豊富に脈管導入したが、ナイーブ内皮細胞(CTRL-EC)は、そのように行うことができなかった。例えば、図5Gは、7日間で、全ての腫瘍オルガノイドが、分枝状態にされ、組織化されていない非常に高密度の脈管集団を有したことを示している。図5Hに示されているように、脈管密度はまた、対照の非ETV2形質導入内皮細胞と比較して、R-VEC共培養物においてずっと高いことが見出された。上皮マーカーEpCamについての染色により、腫瘍結腸オルガノイド細胞とリプログラミング化内皮細胞との間の密接な細胞間相互作用が明らかにされた。図5I参照。顕著なことには、リプログラミング化内皮細胞が組織化された血管網を形成した、正常な腸と結腸オルガノイドの共培養と違って、腫瘍オルガノイド内の脈管は、腫瘍脈管構造を模倣して、組織化されず、形およびサイズが異常であった。図5Gおよび5J参照。
【0150】
トリプルネガティブ乳がんオルガノイドを含む他の患者由来腫瘍オルガノイドもまた、図5K~5Lに例示されているように、同様の結果を生じた。
【0151】
前述を鑑みれば、本開示のリプログラミング化内皮細胞および安定な3D人工血管は、多くの異なる組織型のオルガノイドに脈管導入する能力があり、それらが導入される環境に適応し、正常なオルガノイドおよび腫瘍原性オルガノイドの設定においてリモデリングおよび形態が変化した挙動を示す。例えば、図5J参照。
【実施例0152】
リプログラミング化内皮細胞は脱細胞化器官に脈管導入する
再生医学において、毛細血管および細動脈を含む長持ちする機能的脈管構造の生成は、まだ達成されていない。具体的には、大口径脈管は、内皮細胞でコロニー形成することができるが、器官またはモデル器官へ、長期に渡って分配される血液供給を提供することができるより小さい毛細血管サイズの脈管を形成することは困難である。ここで、外因性E
TV2を発現するリプログラミング化内皮細胞を、脱細胞化腸器官モデルへ導入し、そのモデルにおいて、それらは、バイオリアクターの内部でのインビトロで、脈管化構造を確立することができた。図6A~B参照。結果は、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞(R-VEC)が、脱細胞化腸の毛細血管に豊富に配置され、腸壁の全領域に渡る均等な分布を達成したことを示す。図6C参照。図6D~6Eに示されているように、CD31抗体での生体内染色およびアセチル化LDL取り込みにより、対照の非ETV2形質導入内皮細胞(CTRL-EC)を用いた場合と比較して、R-VECを用いた場合、ずっと高い脈管被覆が明らかにされた。図6Fおよび6Gに示されているように、再内皮化領域の定量化および血管ネットワークパラメータが、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞のより高い脈管導入潜在能力を裏付けている。インビトロでの1週間の培養後、脈管再導入された腸を、免疫不全NOD-SCID-γマウスの網に植え込んだ。1週間目および4週間目の両方において、生体内イソレクチンおよびヒトVEcad注射により示されているように、外因性ETV2を発現するリプログラミング化内皮細胞は、脱細胞化腸に脈管導入し、大口径脈管(動脈および静脈)および小口径脈管(毛細血管)の連続性を保持して、マウス脈管構造へ吻合した。図6H~6J参照。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
【配列表】
2023052674000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な3次元血管を産生するための方法であって、
a)マトリックス上でETV2転写因子をコードする外因性核酸を含む内皮細胞を、該内皮細胞が該ETV2転写因子を少なくとも3~4週間、発現する条件下で培養して、脈管形成を誘導する工程;および
b)前記安定な3次元血管を単離する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
3次元血管ネットワークを自律的に形成する能力がある安定な3次元血管。
【請求項3】
リプログラミング化内皮細胞の少なくとも1つの連続層を有する管状構造を含む、請求項2に記載の安定な3次元血管。
【請求項4】
前記リプログラミング化内皮細胞は、ETV2をコードする外因性核酸配列を含む、請求項3に記載の安定な3次元血管。
【請求項5】
少なくとも2ヶ月間、機能的である、請求項2に記載の安定な3次元血管。
【外国語明細書】