(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052717
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/62 20110101AFI20230405BHJP
【FI】
F24F1/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020045722
(22)【出願日】2020-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 博則
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智亮
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA06
3L054BB02
3L054BB03
(57)【要約】
【課題】室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれる筐体を備え、室内空間に向かって良好に騒音の進入を防止することができる空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機は、室内空間の壁面に固定されて、室内熱交換器を収容する室内機12と、室内熱交換器を含む冷媒回路に接続される室外熱交換器を収容する室外機13とを備える。室外機13は、室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれて、室外空間に開放されながら遮音壁で囲まれて室内空間から隔てられる内部空間39を区画する外側筐体34と、内部空間39内に配置されて、室外熱交換器を収容する内側筐体41とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間の壁面に固定されて、室内熱交換器を収容する室内機と、
前記室内熱交換器を含む冷媒回路に接続される室外熱交換器を収容する室外機と
を備え、前記室外機は、
室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれて、前記室外空間に開放されながら遮音壁で囲まれて前記室内空間から隔てられる内部空間を区画する外側筐体と、
前記内部空間内に配置されて、前記室外熱交換器を収容する内側筐体と
を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる側壁を含んで、前記室内空間に向かって開口する収納口を区画する壁体と、前記壁体に結合されて前記収納口を塞ぐフロントパネルとを有し、
前記内側筐体は、前記室外空間に向かって開放される吸込口と、前記側壁に向かって熱交換後の空気を送り出す送風口とを有する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和機において、前記外側筐体は、前記壁体に含まれて、前記側壁との間に前記内側筐体を収容する第2側壁を備え、
前記冷媒回路は、前記室外熱交換器に接続されて、前記内側筐体で前記第2側壁に向き合わせられる側板から突出し、前記側板の板面に垂直に設定される軸線を回転軸とするねじの回転に基づき接続口の開閉を切り換える切り換えバルブを備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる側壁を含んで、前記室内空間に向かって開口する収納口を区画する壁体と、前記壁体に結合されて前記収納口を塞ぐフロントパネルとを有し、
前記冷媒回路は、前記室外熱交換器に接続されて、前記内側筐体で前記側壁に向き合わせられる側板から突出し、前記側板の板面に並列に設定される軸線を有する接続口を形成する切り換えバルブと、前記軸線を回転軸とするフレアナットの締め付けに応じて前記接続口に結合され、前記側壁の前記室内空間側の縁よりも前記室内空間側で前記外側筐体から前記室内空間に引き出される補助冷媒管とを有する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機において、前記外側筐体は、前記側壁に並行に前記壁体に対してスライド自在に支持されて、下方から前記内側筐体を支持する底板を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の空気調和機において、前記側壁の室内空間側縁は、床面に垂直方向に仕切られてフロントパネルに合わせ込まれる結合縁と、前記結合縁から室外空間側に窪んで前記補助冷媒管の進入を受け入れる逃げ縁とを有することを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項1に記載の空気調和機において、前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる左右の側壁と、前記側壁の室外空間側端から室内空間側に延びて、左右の前記側壁で挟まれる前記内部空間を上方から塞ぐ第1天壁と、前記第1天壁から室内空間側に前記側壁の室内空間側端まで延びて、開閉可能に前記内部空間を上方から塞ぐ第2天壁とを備えることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の壁面に固定されて、室内熱交換器を収容する室内機と、室内熱交換器を含む冷媒回路に接続される室外熱交換器を収容する室外機とを備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、いわゆるPTAC(Packaged Terminal Air Conditioner)と呼ばれる空気調和機であって、室外空間と室内空間を仕切る壁に形成される開口に嵌め込まれて、室内熱交換器および室外熱交換器を含む冷媒回路を収容する筐体を備える空気調和機が開示される。筐体内は、室外空間に開放される室外側空間と、室内空間に開放される室内側空間とに隔壁(バルクヘッド)で仕切られる。隔壁により筐体内の室外側空間と室内側空間との間では空気の移動は回避されることができる。こうして空調は実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10352594号明細書
【特許文献2】米国特許第4637223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では底板トレイ上に隔壁は設置される。底板トレイは筐体の底板に沿って筐体内に配置される。内部部品の配置の邪魔にならないよう、隔壁はできるだけ薄くすることが求められる。したがって、筐体の室外熱交換器側の空気と室内熱交換器側の空気とは隔壁を介して熱交換されることから、隔壁で十分な断熱をすることはできない。また、隔壁はできるだけ薄くすることが求められることから、遮音構造を取ることができない。室外空間の騒音は室外側空間から室内側空間に漏れ入ってしまう。
【0005】
特許文献2では、室内側熱交換器で生じたドレン水を室外側に導くドレンパン上に、隔壁は配置される。ドレンパンと隔壁との間には間隙が形成される。したがって、室外空間の騒音は室外側空間から室内側空間に漏れ入ってしまう。
【0006】
本発明は、室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれる筐体を備え、室内空間に向かって良好に騒音の進入を防止することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、室内空間の壁面に固定されて、室内熱交換器を収容する室内機と、前記室内熱交換器を含む冷媒回路に接続される室外熱交換器を収容する室外機とを備え、前記室外機は、室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれて、前記室外空間に開放されながら遮音壁で囲まれて前記室内空間から隔てられる内部空間を区画する外側筐体と、前記内部空間内に配置されて、前記室外熱交換器を収容する内側筐体とを備える空気調和機が提供される。
【0008】
室外機は室内機に組み合わせられてセパレート型の空気調和機を提供する。外側筐体が建造物壁の開口に嵌め込まれると、外側筐体の内部空間は遮音壁で室内空間から隔てられる。内部空間から室内空間に向かって空気の流通は阻止されることができる。内部空間に進入する外気と冷媒との間で室外機は熱交換を実施する。熱交換の効率は良好に確保されることができる。ここで、室外空間の騒音は遮音壁で遮られる。良好に騒音の進入は防止されることができる。室内空間の静寂性は良好に確保されることができる。
【0009】
前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる側壁を含んで、前記室内空間に向かって開口する収納口を区画する壁体と、前記壁体に結合されて前記収納口を塞ぐフロントパネルとを有してもよい。前記内側筐体は、前記室外空間に向かって開放される吸込口と、前記側壁に向かって熱交換後の空気を送り出す送風口とを有してもよい。
【0010】
建造物壁の開口はPTAC向けに決められた寸法を有する。ここでは、建造物壁の開口には室外機のみが配置されればよいことから、送風口と外側筐体の側壁との間には大きな空間が確保されることができる。こうして送風口から熱交換後の空気は効率的に室外空間に向かって排出されることができる。室外熱交換器を通過する空気の流量は促進されることができる。室外機では熱交換の効率は高められることができる。
【0011】
前記外側筐体は、前記壁体に含まれて、前記側壁との間に前記内側筐体を収容する第2側壁を備えてもよい。このとき、前記冷媒回路は、前記室外熱交換器に接続されて、前記内側筐体で前記第2側壁に向き合わせられる側板から突出し、前記側板の板面に垂直に設定される軸線を回転軸とするねじの回転に基づき接続口の開閉を切り替える切り換えバルブを備えてもよい。
【0012】
空気調和機の設置時、切り換えバルブの接続口に冷媒管が接続された後に切り換えバルブの接続口は開弁される。こうして冷媒管内に冷媒は流通することができる。切り換えバルブの開弁にあたって軸線を回転軸としてねじは回される。ここでは、建造物壁の開口には室外機のみが配置されればよいことから、第2側壁と内側筐体の側板との間には十分な空間が確保されることができる。外側筐体の内部空間では、例えばレンチで軸線回りにねじを駆動する作業は良好に実現されることができる。
【0013】
前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる側壁を含んで、前記室内空間に向かって開口する収納口を区画する壁体と、前記壁体に結合されて前記収納口を塞ぐフロントパネルとを有してもよい。このとき、前記冷媒回路は、前記室外熱交換器に接続されて、前記内側筐体で前記側壁に向き合わせられる側板から突出し、前記側板の板面に並列に設定される軸線を有する接続口を形成する切り換えバルブと、前記軸線を回転軸とするフレアナットの締め付けに応じて前記接続口に結合され、前記側壁の前記室内空間側の縁よりも前記室内空間側で前記外側筐体から前記室内空間に引き出される補助冷媒管とを有してもよい。
【0014】
空気調和機の設置にあたって切り換えバルブの接続口には補助冷媒管が結合される。軸線回りにフレアナットはレンチで締め付けられる。液密に結合は確立されることができる。補助冷媒管の結合後、収納口から外側筐体内に内側筐体は収納される。このとき、補助冷媒管と外側筐体の側壁との干渉は回避されることができる。こうして外側筐体への収納に先立ってレンチの作業は実施されることから、十分な作業スペースは確保されることができる。補助冷媒管の結合にあたって効率的な作業は実現されることができる。
【0015】
前記外側筐体は、前記側壁に並行に前記壁体に対してスライド自在に支持されて、下方から前記内側筐体を支持する底板を備えてもよい。内側筐体の収納にあたって底板は外側筐体の壁体に対して相対的にスライドすることができる。したがって、内側筐体の収納作業は容易に実現されることができる。効率的な作業は実現されることができる。
【0016】
前記側壁の室内空間側の縁は、室内空間の床面に対して垂直方向に仕切られてフロントパネルに合わせ込まれる結合縁と、前記結合縁から室外空間側に窪んで前記補助冷媒管の進入を受け入れる逃げ縁とを有してもよい。外側筐体の側壁には補助冷媒管の配置にあたって逃げ縁が形成されるので、補助冷媒管の配置にあたって室内空間側にフロントパネルの出っ張りは回避されることができる。建造物壁から室外機の出っ張りはできる限り抑制されることができる。加えて、フロントパネルの意匠性は良好に維持されることができる。
【0017】
前記外側筐体は、前記建造物壁の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる左右の側壁と、前記側壁の室外空間側端から室内空間側に延びて、左右の前記側壁で挟まれる前記内部空間を上方から塞ぐ第1天壁と、前記第1天壁から室内空間側に前記側壁の室内空間側端まで延びて、開閉可能に前記内部空間を上方から塞ぐ第2天壁とを備えてもよい。第1天壁は建造物壁に埋め込まれて建造物壁内に遮音壁を形成する。第2天壁が室内空間内に配置されれば、第2天壁の開閉に応じて内部空間にアクセスする経路は確保されることができる。空気調和機の設置後であっても良好なメンテナンス作業は実現されることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように開示の空気調和機によれば、室外空間と室内空間を仕切る建造物壁に形成される開口に嵌め込まれる筐体を備えながら、室内空間に向かって良好に騒音の進入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】建造物の外壁から観察される室外機を概略的に示す概念図である。
【
図3】室内空間で観察される室外機を概略的に示す概念図である。
【
図5】室内空間側から観察される室外機の斜視図である。
【
図6】室外空間側から観察される室外機の斜視図である。
【
図7】
図5に対応し、内側筐体の天板の開口を開放した状態の室外機の斜視図である。
【
図8】第1切り換えバルブおよび第2切り換えバルブの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図9】室内空間側から観察される室外機の斜視図である。
【
図10】外側筐体の側壁で底板のスライドを案内するガイド板の構造を概略的に示す部分斜視図である。
【
図11】収納以前の底板の様子を概略的に示す斜視図である。
【
図12】フロントパネルから引き出される第1補助冷媒管および第2補助冷媒管を概略的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る空気調和機11の構成を概略的に示す。空気調和機11は室内機12および室外機13を備える。室内機12は例えば建造物内の室内空間に設置される。室内機12は、例えば室内空間の床面から2m以上の高さで室内空間の壁面に固定されることができる。その他、室内機12は室内空間に相当する空間に設置されればよい。室内機12には室内熱交換器14が収容される。室外機13には圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18が収容される。室内熱交換器14、圧縮機15、室外熱交換器16、膨張弁17および四方弁18は冷凍回路(冷媒回路)19を形成する。
【0021】
冷凍回路19は第1循環経路21を備える。第1循環経路21は四方弁18の第1口18aおよび第2口18bを相互に結ぶ。第1循環経路21には圧縮機15が配置される。圧縮機15の吸入管15aは四方弁18の第1口18aに冷媒配管を介して接続される。第1口18aからガス冷媒は圧縮機15の吸入管15aに供給される。圧縮機15は低圧のガス冷媒を所定の圧力まで圧縮する。圧縮機15の吐出管15bは四方弁18の第2口18bに冷媒配管を介して接続される。圧縮機15の吐出管15bからガス冷媒は四方弁18の第2口18bに供給される。冷媒配管は例えば銅管であればよい。
【0022】
冷凍回路19は第2循環経路22をさらに備える。第2循環経路22は四方弁18の第3口18cおよび第4口18dを相互に結ぶ。第2循環経路22には、第3口18c側から順番に室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14が組み込まれる。室外熱交換器16は、室外熱交換器16を通過する冷媒と室外熱交換器16に接触する空気との間で熱エネルギーを交換する。室内熱交換器14は、室内熱交換器14を通過する冷媒と室内熱交換器14に接触する空気との間で熱エネルギーを交換する。第2循環経路22は、四方弁18の第4口18dに接続されて室外機13から引き出され、室内熱交換器14に向かって延びるガス管22aと、膨張弁17に接続されて室外機13から引き出され、室内熱交換器14に向かって延びる液管22bとを含む。
【0023】
室外機13には送風ファン23が組み込まれる。送風ファン23は室外熱交換器16に通風する。送風ファン23は例えば羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン23の働きで気流は室外熱交換器16を通り抜ける。室外の空気は室外熱交換器16を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室外機13から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0024】
室内機12には送風ファン24が組み込まれる。送風ファン24は室内熱交換器14に通風する。送風ファン24は羽根車の回転に応じて気流を生成する。送風ファン24の働きで室内機12には室内空気が吸い込まれる。室内空気は室内熱交換器14を通り抜け冷媒と熱交換する。熱交換された冷気または暖気の気流は室内機12から吹き出される。通り抜ける気流の流量は羽根車の回転数に応じて調整される。
【0025】
冷凍回路19で冷房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第3口18cを相互に接続し第1口18aおよび第4口18dを相互に接続する。したがって、圧縮機15の吐出管15bから高温高圧の冷媒が室外熱交換器16に供給される。冷媒は室外熱交換器16、膨張弁17および室内熱交換器14を順番に流通する。室外熱交換器16では冷媒から外気に放熱する。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室内熱交換器14で周囲の空気から吸熱する。冷気が生成される。冷気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。
【0026】
冷凍回路19で暖房運転が実施される場合には、四方弁18は第2口18bおよび第4口18dを相互に接続し第1口18aおよび第3口18cを相互に接続する。圧縮機15から高温高圧の冷媒が室内熱交換器14に供給される。冷媒は室内熱交換器14、膨張弁17および室外熱交換器16を順番に流通する。室内熱交換器14では冷媒から周囲の空気に放熱する。暖気が生成される。暖気は送風ファン24の働きで室内空間に吹き出される。膨張弁17で冷媒は低圧まで減圧される。減圧された冷媒は室外熱交換器16で周囲の空気から吸熱する。その後、冷媒は圧縮機15に戻る。
【0027】
図2および
図3に示されるように、室外機13は、室外空間と室内空間を仕切る建造物壁29に形成される開口31に嵌め込まれる。開口31は建造物32の外壁面で室外空間(建造物外の空間)に開口する。ここでは、室外機13は、開放口33で室外空間に開放されながら遮音壁で囲まれて室内空間から隔てられる内部空間を区画する外側筐体34を備える。建造物壁29の開口31はPTAC(Packaged Terminal Air Conditioner)向けに決められた寸法を有する。開口31は、建造物壁29を貫通し、室外空間に室内空間を接続する。
【0028】
外側筐体34は、
図4に示されるように、室内空間に向かって開口する収納口35を区画する壁体36と、壁体36に結合されて収納口35を塞ぐフロントパネル37と、壁体36に結合されて開放口33に設置されるグリル38とを備える。壁体36は、開口31の右端で建造物壁29の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる第1側壁(右側壁)36aと、開口31の左端で建造物壁29の壁面に直交する仮想平面に沿って広がる第2側壁(左側壁)36bと、第1側壁36aおよび第2側壁36bに並行に壁体36に対してスライド自在に支持される底板36cと、第1側壁36aおよび第2側壁36bの室外空間側端から室内空間側に延びて、第1側壁36aおよび第2側壁36bの上端に結合されて第1側壁36aおよび第2側壁36bで挟まれる内部空間39を上方から塞ぐ第1天壁36dと、第1天壁36dから室内空間側に第1側壁36aおよび第2側壁36bの室内空間側端まで延びて、開閉可能に内部空間39を上方から塞ぐ第2天壁36eとを有する。第2側壁36bは第1側壁36aに左右方向(設置時に室内の床面と平行となる水平方向)から向き合って第1側壁36aとの間に内部空間39を挟む。第1天壁36dおよび第2天壁36eは底板36cに上下方向(設置時に室内の床面と垂直となる垂直方向)から向き合って底板36cとの間に内部空間39を挟む。グリル38は、建造物32の外壁に埋め込まれてもよく、その場合には外側筐体34からグリル38は省略されてもよい。
【0029】
第1側壁36a、第2側壁36b、底板36c、第1天壁36d、第2天壁36eおよびフロントパネル37はそれぞれ遮音壁として形成される。すなわち、第1側壁36a、第2側壁36b、底板36c、第1天壁36d、第2天壁36eおよびフロントパネル37の内面には例えばウレタン樹脂製の遮音材(シート)が重ねられればよい。遮音材は例えば金属板同士の間に挟まれてもよい。第1側壁36aと、底板36cや第1天壁36d、第2天壁36eとの合わせ目は隙間なく結合されることができる。第2側壁36bと、底板36cや第1天壁36d、第2天壁36eとの合わせ目は同様に隙間なく結合されることができる。フロントパネル37と、底板36cや第2天壁36e、第1側壁36a、第2側壁36bとの合わせ目は同様に隙間なく結合されることができる。ウレタン樹脂といった遮音材は同時に断熱材としても機能することができる。
【0030】
内部空間39内には室外熱交換器16を収容する内側筐体41が配置される。内側筐体41は第1側壁36aおよび第2側壁36bの間に収容される。内側筐体41は下方から底板36cに支持される。
【0031】
内側筐体41は、外側筐体34の第1側壁36aに向き合わせられて、送風口42を区画する第1側板(右側板)43と、第1側板43に直交する姿勢で第1側板43の一端(室内空間側端)に連結されて、外側筐体34の内部空間39から内側筐体41内の通風路を仕切る第2側板(前板)44と、
図5にしめされるように、第1側板43に向き合わせられながら第2側板44の一端に連結されて、第1側板43との間に通風路を区画する第3側板45と、
図6に示されるように、第2側板44に向き合わせられながら第1側板43および第3側板45に連結されて、室外空間に向かって開放される吸込口46を区画する第4側板47とを有する。第1側板43、第2側板44、第3側板45および第4側板47は底板48から垂直方向に立ち上がる。
図5に示されるように、第1側板43、第2側板44、第3側板45および第4側板47の上端には天板49が結合される。底板48と天板49との間に通風路は区画される。ここでは、第3側板45に、部分的に、外側筐体34の第2側壁36bに向き合わせられる吸込口51が区画される。
【0032】
図5および
図6に示されるように、内側筐体41内では第3側板45の吸込口51および第4側板47の吸込口46に沿って室外熱交換器16が配置される。
図4に示されるように、送風口42に送風ファン23は設置される。送風ファン23は、軸流ファンであればよい。送風ファン23は、送風口42に向き合って、水平な軸線回りで回転するブレード52を有する。回転時にブレード52は軸方向に気流を生み出す。外気は開放口33から吸込口46、51を通って内側筐体41内に進入する。外気は室外熱交換器16を通過する。通過する空気と室外熱交換器16内の冷媒との間で熱エネルギーは交換される。送風口42から第2側壁36bに向かって熱交換後の空気は送り出される。ここで、天板49には、
図5および
図7に示されるように、内側筐体41内の通風路にアクセス可能な開口49aを塞ぐ蓋体Ldが取り付けられてもよい。蓋体Ldの開閉に応じて送風ファン23の背後や室外熱交換器16内側の空間にアクセスする経路は確保されることができる。
【0033】
冷凍回路19は、ガス管22aに組み込まれて圧縮機15経由で室外熱交換器16に接続され、内側筐体41の第3側板45から突出する第1切り換えバルブ54と、液管22bに組み込まれて膨張弁17経由で室外熱交換器16に接続され、内側筐体41の第3側板45から突出する第2切り換えバルブ55とを備える。
図8に示されるように、第1切り換えバルブ54は、第3側板45の表面から垂直方向に延びる導入管54aと、導入管54aから分岐して、第3側板45の表面に並列に設定される軸線を有する接続口を形成する第1接続管54bと、導入管54aから分岐して、第3側板45の表面に並列に設定される軸線を有する吸引口を形成する第2接続管54cとを有する。導入管54aには、導入管54aに同軸に設定される軸線を回転軸とするねじの回転に基づき接続口の開閉を切り換えるねじ部材56が取り付けられる。ねじ部材56は水平軸線Hr回りの回転に応じて軸方向に変位する。ねじ部材56には、レンチの口に係り合って、軸回りでレンチの操作を許容する六角ボルトの形状が形成される。
【0034】
第1接続管54bは導入管54aから開放口33側に後向きに水平方向に延びる。第1接続管54bには軸線Hx回りのフレアナット57の締め付けに応じて第1補助冷媒管58が結合される。第1補助冷媒管58のガス路は第1接続管54bの接続口に接続される。第1補助冷媒管58は、第2側壁36bの室内空間側の縁よりも室内空間側で外側筐体34から室内空間に引き出される。第1補助冷媒管58は、第1接続管54bから線形に連続し室外空間側に水平方向に延びる第1域58aと、第1域58aから屈曲して第3側板45から遠ざかるように水平方向に延びる第2域58bと、第2域58bから屈曲して第1域58aに並列に水平方向に収納口35に向かって延びる第3域58cと、第3域58cから屈曲して第3側板45から遠ざかるように水平方向に延び、外側筐体34の第2側壁36bを貫通する第4域58dと、第4域58dから屈曲して外側筐体34の外側で垂直方向に立ち上がる第5域58eとを有する。
【0035】
第2接続管54cは導入管54aから収納口35側に前向きに水平方向に延びる。第1接続管54bおよび第2接続管54cは導入管54aから相互に反対向きに1直線上で延びる。第2接続管54cには軸線Hc回りのねじの回転に基づき吸引口の開放端を閉鎖する閉じボルト59が結合される。冷凍回路19の真空抜きにあたって第2接続管54cには真空ポンプが接続される。
【0036】
第2切り換えバルブ55は、第3側板45の表面から垂直方向に延びる導入管55aと、導入管55aから分岐して、第3側板45の表面に並列に設定される軸線を有する接続口を形成する接続管55bとを有する。導入管55aには、導入管55aに同軸に設定される水平軸線Hz回りのねじの回転に基づき接続口の開閉を切り換えるねじ部材61が取り付けられる。ねじ部材61は水平軸線Hz回りの回転に応じて軸方向に変位する。ねじ部材61には、レンチの口に係り合って、軸回りでレンチの操作を許容する六角ボルトの形状が形成される。
【0037】
接続管55bは導入管55aから開放口33側に後向きに水平方向に延びる。接続管55bには軸線Hb回りのフレアナット62の締め付けに応じて第2補助冷媒管63が結合される。第2補助冷媒管63の液路は接続管55bの接続口に接続される。第2補助冷媒管63は、第2側壁36bの室内空間側の縁よりも室内空間側で外側筐体34から室内空間に引き出される。第2補助冷媒管63は、接続管55bから線形に連続し室外空間側に水平方向に延びる第1域63aと、第1域63aから屈曲して第3側板45から遠ざかるように水平方向に延びる第2域63bと、第2域63bから屈曲して第3側板45の板面に並列に前下がりに収納口35に向かって延びる第3域63cと、第3域63cから屈曲して第3側板45から遠ざかるように水平方向に延び、外側筐体34の第2側壁36bを貫通する第4域63dと、第4域63dから屈曲して外側筐体34の外側で垂直方向に立ち上がる第5域63eとを有する。
【0038】
第2側壁36bの室内空間側の縁は、床面に垂直方向に仕切られてフロントパネル37に合わせ込まれる結合縁64と、結合縁64から室外空間側に窪んで第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の進入を受け入れる逃げ縁65とを有する。逃げ縁65はフロントパネル37で塞がれる。
図9に示されるように、逃げ縁65は樹脂材66で固められる。樹脂材66は、逃げ縁65の窪みに形成されて、第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の周囲に存在する空間を埋める。
図8に示されるように、外側筐体34の底板36cには、下方から第1補助冷媒管58の第4域58dおよび第2補助冷媒管63の第4域63dを支持するブラケット67が取り付けられる。ブラケット67は逃げ縁65の窪み内で第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63を位置決めする。
【0039】
図10(A)および
図10(B)に示されるように、第1側壁36aの下端には、第1側壁36aの板材から内向きに折り曲げ成型され、収納口35から開放口33まで線形に延びるガイド板71が結合される。ガイド板71には底板36cの1側縁(右縁)が第1側壁36aに平行にスライド自在に受け止められる。同様に、図示されないものの、第2側壁36bの下端には、第2側壁36bの板材から内向きに折り曲げ成型され、収納口35から開放口33まで線形に延びるガイド板が結合される。ガイド板には底板36cの他側縁(左縁)が第2側壁36bに平行にスライド自在に受け止められる。こうして底板36cは特定の範囲でガイド板71上をスライド移動することができる。底板36cの前端(室内空間側端)には、底板36cの板材から上向きに折り曲げ成型される縦壁72が結合される。縦壁72の左右端には、左右方向外側に向かって広がる重ね片73が形成される。ガイド板71の上方で第1側壁36aの前端には内向きに広がる規制片74が形成される。規制片74は第1側壁36aの板材から内向きに折り曲げ成型される。規制片74に重ね片73が重ねられると、底板36cは外側筐体34の内部空間に収容される。
【0040】
室外機13は室内機12に組み合わせられてセパレート型の空気調和機11を提供する。外側筐体34が建造物壁29の開口31に嵌め込まれると、外側筐体34の内部空間39は遮音壁で室内空間から隔てられる。内部空間39から室内空間に向かって空気の流通は阻止されることができる。内部空間39に進入する外気と冷媒との間で室外機13は熱交換を実施する。熱交換の効率は良好に確保されることができる。ここで、室外空間の騒音は遮音壁で遮られる。良好に騒音の進入は防止されることができる。室内空間の静寂性は良好に確保されることができる。
【0041】
建造物壁29の開口31はPTAC向けに決められた寸法を有する。ここでは、建造物壁29の開口31には室外機13のみが配置されればよいことから、送風口42と外側筐体34の第1側壁36aとの間には大きな空間が確保されることができる。こうして送風口42から熱交換後の空気は効率的に室外空間に向かって排出されることができる。室外熱交換器16を通過する空気の流量は促進されることができる。室外機13では熱交換の効率は高められることができる。
【0042】
空気調和機11の設置にあたって、外側筐体34は組み立てられる。第1天壁36dに第1側壁36aおよび第2側壁36bは組み付けられる。続いて、底板36cの組み付けに先立って第1側壁36a、第2側壁36bおよび第1天壁36dの組立体は建造物壁29の開口31に設置される。組立体は室内空間から建造物壁29の開口31に挿入されればよい。ここでは、第2天壁36eの設置位置は室内空間内に維持されることができる。
【0043】
図11に示されるように、第1側壁36aおよび第2側壁36bには底板36cが連結される。底板36cは第1側壁36aのガイド板71および第2側壁36bのガイド板上に設置される。このとき、底板36cは室内空間側に最大限に引き出されることができる。底板36c上に内側筐体41が設置されると、第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55は外側筐体34の収納口35よりも室内空間側に位置する。したがって、底板36cの可動範囲は、第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55と第2側壁36bの結合縁64との位置関係に基づき調整されればよい。
【0044】
空気調和機11の設置にあたって第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55の接続口にはそれぞれ第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63が結合される。結合にあたって第1補助冷媒管58は第1接続管54bおよびブラケット67に支持されることができる。第2補助冷媒管63は接続管55bおよびブラケット67に支持されることができる。こうして第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63は定位置に位置決めされることができる。
【0045】
第1補助冷媒管58のフレアナット57は軸線Hx回りにレンチで締め付けられる。液密に結合は確立されることができる。第2補助冷媒管63のフレアナット62は軸線Hb回りにレンチで締め付けられる。液密に結合は確立されることができる。第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の結合後、収納口35から外側筐体34内に内側筐体41は収納される。このとき、フレアナット57、62は第2側壁36bの結合縁64よりも室内空間側に位置することから、第1補助冷媒管58や第2補助冷媒管63と外側筐体34の第2側壁36bとの干渉は回避されることができる。こうして外側筐体34への収納に先立ってレンチの作業は実施されることから、十分な作業スペースは確保されることができる。第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の結合にあたって効率的な作業は実現されることができる。
【0046】
本実施形態では、外側筐体34は、第2側壁36bに並行に壁体36に対してスライド自在に支持されて、下方から内側筐体41を支持する底板36cを備える。内側筐体41の収納にあたって底板36cは外側筐体34の壁体36に対して相対的にスライドすることができる。したがって、内側筐体41の収納作業は容易に実現されることができる。効率的な作業は実現されることができる。
【0047】
底板36cが第1側壁36aのガイド板71および第2側壁36bのガイド板に沿って最大限に壁体36内に押し込まれると、内側筐体41は外側筐体34の内部空間39内に収納される。第1側壁36aでは規制片74に底板36cの重ね片73は重ねられる。同様に第2側壁36bでは規制片に底板36cの重ね片は重ねられる。
【0048】
その後、第2側壁36bの逃げ縁65では第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の周囲に樹脂材66の流動体は適用される。樹脂材66の固化を待って逃げ縁65は塞がれる。外側筐体34の遮音性は確保されることができる。樹脂材66の適用にあたってブラケット67は流動体の骨材として機能することから、樹脂材66は固化まで良好に逃げ縁65内に保持されることができる。
【0049】
第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55の接続口にガス管22aおよび液管22bが接続された後に第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55の接続口は開弁される。こうして冷媒管内に冷媒は流通することができる。第1切り換えバルブ54および第2切り換えバルブ55の開弁にあたって水平軸線Hr、Hz回りにねじ部材56、61は駆動される。ここでは、建造物壁29の開口31には室外機13のみが配置されればよいことから、第2側壁36bと内側筐体41の第3側板45との間には十分な空間が確保されることができる。外側筐体34の内部空間39では、例えばレンチで水平軸線Hr、Hz回りにねじ部材56、61を駆動する作業は良好に実現されることができる。
【0050】
内側筐体41が外側筐体34の内部空間39に収納された後に、第2天壁36eは設置されることができる。第2天壁36eは第1側壁36aの上端および第2側壁36bの上端に密に結合される。結合にあたって例えばウレタン製の遮音材は挟み込まれることができる。第1天壁36dおよび第2天壁36eの合わせ目では両者は隙間なく接する。こうして第1天壁36dは建造物壁29に埋め込まれて建造物壁29内に遮音壁を形成する。第2天壁36eが室内空間内に配置されれば、第2天壁36eの開閉に応じて内部空間39にアクセスする経路は確保されることができる。空気調和機11の設置後であっても良好なメンテナンス作業は実現されることができる。
【0051】
外側筐体34の収納口35はフロントパネル37で閉じられる。外側筐体34の第2側壁36bには第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の配置にあたって逃げ縁65が形成されるので、第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63の配置にあたって室内空間側にフロントパネル37の出っ張りは回避されることができる。建造物壁29から室外機13の出っ張りはできる限り抑制されることができる。加えて、フロントパネル37の意匠性は良好に維持されることができる。
【0052】
図12に示されるように、第1補助冷媒管58および第2補助冷媒管63はフロントパネル37から引き出されてもよい。こうした構成では、外側筐体34は建造物壁29の開口31に完全に収容されることができる。建造物壁29の壁面とフロントパネル37とは面一に設定されることができる。こうして室外機13は様々な壁厚の建造物壁29に対して利用されることができる。
【符号の説明】
【0053】
11…空気調和機、12…室内機、13…室外機、14…室内熱交換器、16…室外熱交換器、19…冷媒回路(冷凍回路)、29…建造物壁、31…開口、34…外側筐体、35…収納口、36…壁体、36a…側壁(第1側壁)、36b…第2側壁、36c…底板、36d…第1天壁、36e…第2天壁、37…フロントパネル、39…(外側筐体の)内部空間、41…内側筐体、42…送風口、45…側板(第3側板)、46…吸込口、54…切り換えバルブ(第1切り換えバルブ)、55…切り換えバルブ(第2切り換えバルブ)、58…補助冷媒管(第1補助冷媒管)、63…補助冷媒管(第2補助冷媒管)、64…結合縁、65…逃げ縁、Hb…(接続口の)軸線、Hr…(ねじの)軸線(水平軸線)、Hx…(接続口の)軸線、Hz…(ねじの)軸線(水平軸線)。