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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052757
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】生物学的試料の取り扱い
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20230404BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230404BHJP
【FI】
C12N1/00 A
C12N5/07
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011762
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2021118422の分割
【原出願日】2016-04-04
(31)【優先権主張番号】2015901208
(32)【優先日】2015-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】517149128
【氏名又は名称】ジェネア アイピー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ボム,エドゥアード
(72)【発明者】
【氏名】ベキット,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キゼリョブ,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ペウラ,テイジャ・ツーリッキー
(72)【発明者】
【氏名】ギリアム,キム・ジョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物学的試料の取り扱い、例えば生物学的試料の保持、操作および培養を提供する。
【解決手段】1つの型において、本発明は、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質(encapsulant)を提供し、そして別の側面において、本発明は、合成化合物を含むin vitro細胞培養を一時的に被包する方法を提供する。本発明は培養と関連する使用を有し、そしてより具体的には、生物学的試料、例えば接合子、胚、卵母細胞、幹細胞、培養空間に位置する精子、適切な多能性派生物(単数または複数)およびまたは分化した子孫、損なわれていない(intact)または分散した組織ならびに/あるいは損なわれていない生物(単数または複数)の培養およびより具体的には被包に関連する使用を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質(encapsulant)。
【請求項2】
細胞培養が、培地中に1またはそれより多い細胞を含む、請求項1記載の重層被包物質。
【請求項3】
1またはそれより多い細胞が:
卵子;
接合子;
胚;
動物/ヒト由来胚性幹細胞(単数または複数);
適切な多能性誘導体(単数または複数)および/または分化した子孫;
損なわれていない(intact)または分散した組織および/または損なわれていない生物
の少なくとも1または組み合わせを含む、請求項2記載の重層被包物質。
【請求項4】
合成化合物が、検出限界内で、慣用的な分析技術を通じて同定されるような、明確な化学組成を示し、そして:
各々特定の化学的、生物物理学的および分光学的特性を示す、
合成モノマー(単数または複数);
オリゴマーまたはポリマー;
ポリアルファオレフィンの化学誘導体および/またはコポリマー
の1または組み合わせを含む、合成小分子組成物である、請求項1、2または3記載の重層被包物質。
【請求項5】
合成化合物が少なくとも1つの炭化水素を含む、請求項1または4記載の重層被包物質。
【請求項6】
合成化合物が修飾炭化水素を含む、請求項1、4または5記載の重層被包物質。
【請求項7】
修飾炭化水素がフッ素化炭化水素を含む、請求項6記載の重層被包物質。
【請求項8】
合成化合物が、長鎖、短鎖および環状炭化水素の1または組み合わせを含む、請求項1、4または5記載の重層被包物質。
【請求項9】
合成化合物が、それぞれ、45%長鎖、38%短鎖および17%環状の混合で、長鎖、短鎖および環状炭化水素の組み合わせを含む、請求項8記載の重層被包物質。
【請求項10】
合成化合物を細胞培養に重層する工程を含む、in vitro細胞培養の一時的被包のための方法。
【請求項11】
in vitro、ex vivoおよび/またはin vivo操作のための、タンパク質(単数または複数)、DNA、RNA配列(単数または複数)、適切な構築物(単数または複数)および/または誘導体(単数または複数)、その化学的修飾または派生類似体の少なくとも1つの一時的被包のための方法であって:
合成化合物を含む、in vitro、ex vivoおよび/またはin vivo操作で利用する操作および/またはスクリーニング培地を重層する
工程を含む、前記方法。
【請求項12】
検出限界内で、NMR、HPLC、LCMSの1つを含む慣用的な分析技術によって記載されるような、よく定義された化学的化合物である合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質であって、化合物が:
i)よく定義された化学的および/または生物物理学的特性を持つ厳格に管理されたポリマー、
ii)小分子、
iii)空気より重い不活性ガス
の1つによって例示される、前記重層被包物質。
【請求項13】
合成化合物を含み、そしてそれによって被包される培地の特性および組成の変動を監視するよう適応した、in vitro細胞培養のための重層被包物質。
【請求項14】
被包された培地の監視される特性および組成が:
pH、
アンモニア濃度、
モル浸透圧濃度、
反応酸素種の存在、および
不揮発性有機化合物の存在
の1または組み合わせを含む、請求項13記載の重層被包物質。
【請求項15】
重層被包物質が:
ビタミン、
ホルモン、
増殖因子、
栄養素、
保護剤、
酸化還元トラップ、
アミノ酸およびその誘導体、
ペプトイド、
ペプチド、
タンパク質、
抗体および適切な誘導体、断片および全長オリゴヌクレオチドならびにその合成誘導体の1または組み合わせを含む補充供給源として用いられるよう適応している、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質。
【請求項16】
重層被包物質が:
元素感受性タンパク質、
細胞または細胞培養、
多起源組織または組織培養、および
損なわれていない生物
の1またはそれより多くを伴うスクリーニングまたは生物学的操作に用いられるよう適応している、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質。
【請求項17】
本明細書に開示するような被包物質、化合物または製品。
【請求項18】
本明細書に開示するような方法またはプロトコル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、生物学的試料の取り扱い、例えば生物学的試料の保持、操作および培養に関する。本明細書において、以後、生物学的試料、例えば接合子、胚、卵母細胞、幹細胞、培養空間に位置する精子、適切な多能性派生物(単数または複数)およびまたは分化した子孫、損なわれていない(intact)または分散した組織ならびに/あるいは損なわれていない生物(単数または複数)の培養およびより具体的には被包に関連して、本発明を記載することが好適であろう。しかし、本発明はこうした使用のみに限定されないことを認識すべきである。
【背景技術】
【0002】
[0002]本明細書全体で、単数形の単語「発明者」の使用は、本発明の1人の(単数の)発明者または1より多い(複数の)発明者を指すと解釈されうる。
[0003]本明細書における文書、デバイス、行為または知識のいかなる考察も、本発明の背景を説明するために含まれることが認識されるものとする。さらに、本明細書全体の考察は、本発明者の認識および/または本発明者による特定の関連技術の問題の同定によって生じる。さらに、本明細書における文書、デバイス、行為または知識などの素材のいかなる考察も、本発明者らの知識および経験に関して、本発明の背景を説明するために含まれ、そしてしたがって、いかなるこうした考察も、本明細書の開示および請求項の優先日またはそれ以前に、オーストラリアまたは別の地域の関連する業において、素材のいずれかが先行技術の基礎または共通する一般的な知識の一部を形成するという承認と解釈されてはならない。
【0003】
[0004]生殖補助医療(ART)は、生殖補助の手段として、先進国でますます重要となってきている。1970年代後期に世界で最初の「試験管ベビー」が誕生して以来、世界中で、現代ART法の使用を通じて、500万を超える赤ちゃんが誕生してきた。現在、世界におけるin vitro受精(IVF)サイクルの年間数は、150万を超え、そして特に発展途上国では増加しつつあると概算される。
【0004】
[0005]IVFは、多数の卵が成熟するよう誘起するため、女性の卵巣のホルモン刺激を伴う。注意深くタイミングを計り、排卵の直前に、経膣超音波ガイド針吸引により、成熟卵を卵胞から回収する。回収される卵の数は、約0~約40まで多様でありうるが、約10~約20の卵がより典型的である。卵は続いて、ヒト卵管液に基づく培地中で保存され、そして37℃でインキュベーションした後、精子との同時インキュベーション(IVF)または細胞質内精子注射(ICSI)のいずれかによって受精させる。IVFにおいて、通常約10万~約20万の精子を、小体積の受精培地中の卵母細胞に添加するか、またはICSIにおいて、細いマイクロピペットを用いて、単一の精子を卵に直接注射する。受精は、約12~20時間後、父性(精子由来)および母性(卵由来)前核の存在によって確認される。受精率は、0~100%の間で多様でありうるが、約60%~約70%の受精率が一般的と見なされる。
【0005】
[0006]次いで、受精胚を約2~6日間、実験室において培養し、この間、胚は1細胞から約100細胞より多くまで発生する。発生した胚は、通常、卵割段階(通常、第2~3日の約4~8細胞)または胚盤胞段階(第5日の>100細胞)のいずれかで、着床および妊娠のため、患者の子宮にトランスファーされる。あるいは、胚は、いずれかの段階で、後の胚トランスファーのために凍結保存されることもある。
【0006】
[0007]体外での配偶子および胚の取り扱いは、胚の生存および発生に必要な細胞プロセ
スを支持する、最適な微小環境を必要とする。これは、培地および最適なインキュベーション条件の組み合わせを通じて達成される。正しい温度および胚の内部pH(pHi)の維持が特に重要であり、そしてこれらは、配偶子および胚を、適切に緩衝された(例えば重炭酸緩衝)培地中で、温度(+37℃)およびガス調節(約5~6%COおよび約5~20%O)されたインキュベーター中に維持することによって達成される。
【0007】
[0008]しかし、多様なIVF関連工程、例えばICSIまたは胚を周囲条件に曝露する評価のためには、これらの条件から胚を取り除く必要がある。制御されたインキュベーション環境からの除去中に胚を保護するため、in vitro受精(IVF)法中、重層と称されるように、培地上部に層を形成するため、ミネラルオイルと称される天然存在および抽出油が一般的に用いられる。これは、微量液滴法として知られ、そして胚評価を容易にし、小体積の培地中で胚を培養することを可能にし、例えば細胞質内精子注射(ICSI)、補助孵化等の取り扱い中の環境から配偶子または胚を保護し、pHおよび温度の安定化を提供し、モル浸透圧濃度変動を軽減し、そして全体に、胚発生改善に関連する。例えば、ミネラルオイルは、生体異物が胚に影響を及ぼすのを防ぐことによって、胚増殖を改変すると報告されてきている。ミネラルオイルで重層された小体積の培地中の多数の胚の培養は、胚によって分泌される自己分泌増殖因子の濃度上昇を可能にし、発生速度増進を生じることが注目されてきている。一般的に、ミネラルオイル重層は:
1. 大気および空気伝染病原体から培地小滴を分離する物理的バリアを提供し:
2. ガス拡散を遅延させ、したがって、培地のpH、温度、モル浸透圧濃度および酸素濃度を定常レベルに維持し、胚をその微小環境における重大な変動から守り;
3. 蒸発を防止して、加湿されていないインキュベーターの使用を可能にし;アンモニアを含む代謝副産物の自由な拡散を防止し;
4. 液体可溶性生体異物を除去する
と認識される。
【0008】
[0009]細胞に基づくアッセイ、例えば幹細胞アッセイ、in vitro、細胞に基づくもの、組織培養および損なわれていない生物を伴うin vivoアッセイの分野において、ミネラルオイル重層の他の適用がある。
【0009】
[0010]用語「ミネラルオイル」は、本明細書において、以後、天然存在未精製オイルの精製の液体副産物を指すと解釈されるであろう。
[0011]上記の利点にも関わらず、胚培養のためのミネラルオイルの使用に関連するいくつかの注目される問題がある。極端な場合、ミネラルオイル重層の使用は、IVFに意図される油がその目的に不適切であると証明された際、製品リコールを生じうる。問題のいくつかには:i)複雑な化学薬品混合物としてしばしば提示される、不純物を含む、ミネラルオイルの定義されない組成物;ii)内因性構成要素、例えば多環芳香族炭化水素、(ポリ)不飽和有機物、ヘテロ芳香族物質、および日光、空気/酸素に曝露された産物の両方に関連する毒性(限定されるわけではないが;精製不足および/または不適切な品質管理によって引き起こされる毒性;ならびに輸送および/または保管中に獲得された毒性)が含まれる。特に、ヒト血清アルブミン(HSA)および/または関連添加剤は、おそらく、反応酸素種の形成を安定化させ、そして増加させることによって、過酸化油の毒性効果をさらに増加させることが注目されてきている。シリコンオイルは、ミネラルオイルおよび特にパラフィンオイル両方の代替物として導入されてきているが、おそらくZn不純物のため、胚にいくぶん毒性であると報告された。いくつかのグループが、胚発生に関して、他のミネラルオイルと異なるパラフィンオイルの優れた性能を報告してきている
【0010】
[0012]反応性および/または毒性不純物を減少させるかまたは除去するため、文献に多くの予防措置が記載されてきている。例えば、組織培養用のSAGETMオイルは、未精
製油からの徹底的な、そしてしたがって制御された精製プロセスから生じると報告されてきている。生じた産物を、胚に毒性でありうる、過酸化、金属、イオウ誘導体および安定化剤に感受性である不飽和炭素結合に関してスクリーニングする。類似の請求において、主に飽和パラフィンを含有する滅菌濾過パラフィンオイルに基づく、VitrolifeTM製品OVOILTM9の適用は、洗浄したミネラルオイルよりも、桑実胚および胚盤胞への有意により高い発生率を生じた10。精留EmbryoMaxTM濾過ライトミネラルオイルがEMD Milliporeから入手可能であり11、GM501ミネラルオイルがGynemedにより紹介されてきている12。LifeGlobal GroupによるLifeGuardTMもある13。いくつかの商業的に入手可能なミネラルオイルの胚発生に関する「直接」比較もまた記載されてきている14。一般的な推奨として、多くの著者らは、精製パラフィンオイル(単数または複数)を用い、そして実際の製造者が徹底的にその培養オイルを試験することが必要であることを示唆する。これらの推奨にもかかわらず、パラフィンオイルを含む商業的に入手可能なミネラルオイルの利用は、以下に関連して胚へのかなりの毒性/催奇形性リスクを持つ:
i)生物学的および/または医学的使用に適する、ミネラルおよび/またはパラフィンオイルの標準化、厳格に管理された精製、およびさらに精製プロトコルの一般的な欠如。これらは、毒性化学基の最初からの存在、あるいは輸送および/または保管中に油が毒性を獲得する能力につながりうる。
【0011】
ii)限定されるわけではないが、多環芳香族炭化水素、(ポリ)不飽和脂肪族および芳香族化合物、複素環分子、不揮発性芳香族アミン(例えばアニリン)およびフェノール、スルフィド、そのオリゴマーおよび低分子量反応性ポリマーおよび他の細胞傷害性種を含む、微量の生体異物の信頼性がある検出を可能にしない、分析技術(NMR、GC MS、HPLC);
iii)パラフィン/ミネラルオイルの複雑な化学組成は、油の多様な生物物理学、化学特性、胚生存性および発生結果を潜在的に生じうる15
【0012】
[0013]上述の欠点のため、胚などの生物学的試料の実験室およびcGMP操作両方に適した物理特性、例えば表面張力、粘性、容易な取り扱い/実現可能性、分配係数/混和性、気体/液体拡散能等を示す、均質、安定で、化学的および生物学的に不活性であり、そして容易に入手可能な材料、好ましくは油に関する継続する必要性がある。
【0013】
【化1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0014]本明細書に記載する態様の目的は、先行技術の上述の欠点の少なくとも1つを克服するかまたは軽減し、あるいは少なくとも先行技術の有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[0015]本明細書記載の態様の第一の側面において、重層微量液滴型の、または別に一般的に、あまり特徴付けされていない多くの化合物で構成された、生物学的試料のためのミネラルオイル被包物質(encapsulant)を置換するため、本発明者によって、以下の1または組み合わせを含む、解決策が提供される:
・慣用的な分析技術、例えばNMR、HPLC、LCMSおよび他のものによって、検出限界内で記載されるような、そしてi)よく定義された化学的および/または生物物理学的特性を持つ、厳格に管理されたポリマー(単数または複数)、ii)小分子(単数または複数)、iii)空気より重い不活性ガス(単数または複数)によって例示されるような、よく定義された化学的化合物または化合物の混合物。Arのような不活性ガスは、生物学的試料を被包する不活性媒体の例である。
【0016】
・混和性でなく、非毒性であり、そして必要な被包物質特性を特徴とする、不活性化学的化合物または化合物の混合物。
・任意のUV/UV可視/IR光吸収/発光技術および/または生物物理学的方法によって例示されるような、慣用的検出技術を通じて、スクリーニング培地の監視を可能にする、化学的化合物または化合物の混合物を含む、透明な被包物質。この意味で、スクリーニング培地は、胚培養、酵素アッセイ、細胞/組織/損なわれていない生物に基づく検出技術に適用可能でありうる。
【0017】
・生物学的試料を被包するかまたはこれに重層するために適応し、そしてその下に含有される培地の特性および組成の変動を監視するために使用可能な、化合物または化合物混合物。これには、限定されるわけではないが;pH、アンモニア濃度、モル浸透圧濃度および反応酸素種または揮発性有機化合物の存在が含まれる。
【0018】
・重層された培地から毒性物質を除去するために使用可能である、化合物または化合物混合物。
・ビタミン、ホルモン、増殖因子、栄養素、保護剤、酸化還元トラップ、アミノ酸およびその誘導体、ペプトイド、ペプチド、タンパク質、抗体および適切な誘導体、断片、および全長オリゴヌクレオチドならびにその合成誘導体を含有する補充供給源として用いられるよう適応した化学的化合物または化合物混合物。
【0019】
・元素感受性タンパク質、細胞/細胞培養、多起源組織/組織培養、損なわれていない生物を伴う他のスクリーニング/生物学的操作に用いられるよう適応した、化学的化合物または化合物混合物。
【0020】
[0016]上記を念頭に、本発明は、態様の1つの側面において、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質を提供する。
[0017]重層被包物質の使用に際し、細胞培養は、培地中に1またはそれより多い細胞を含むことも可能である。好ましくは、1またはそれより多い細胞は:
卵子;
接合子;
胚;
動物/ヒト由来胚性幹細胞(単数または複数);
適切な多能性誘導体(単数または複数)および/または分化した子孫;
損なわれていない(intact)または分散した組織および/または損なわれていない生物
の少なくとも1または組み合わせを含む。
【0021】
[0018]合成化合物は、好ましくは、検出限界内で、慣用的な分析技術を通じて同定されるような、明確な化学組成を示し、そして:
各々特定の化学的、生物物理学的および分光学的特性を示す、
合成モノマー(単数または複数);
オリゴマーまたはポリマー;
ポリアルファオレフィンの化学的誘導体および/またはコポリマー
の1または組み合わせを含む、合成小分子組成物である。
【0022】
[0019]あるいは、合成化合物は少なくとも1つの炭化水素、修飾炭化水素を含む。修飾炭化水素はフッ素化炭化水素を含むことも可能である。
[0020]態様のさらなる側面において、合成化合物は、長鎖、短鎖および環状炭化水素の1または組み合わせを含む。これに関連して、合成化合物は、それぞれ、45%長鎖、38%短鎖および17%環状の混合で、長鎖、短鎖および環状炭化水素の組み合わせを含むことも可能である。
【0023】
[0021]本発明の態様の別の側面において、合成化合物を細胞培養に重層する工程を含む、in vitro細胞培養の一時的被包のための方法を提供する。好ましくは、合成化合物は、合成油であることも可能である。
【0024】
[0022]本発明の態様のさらに別の側面において、in vitro、ex vivoおよび/またはin vivo操作のための、タンパク質(単数または複数)、DNA、RNA配列(単数または複数)、適切な構築物(単数または複数)および/または誘導体(単数または複数)、その化学的修飾または派生類似体の少なくとも1つの一時的被包のための方法であって:
合成化合物を含む、in vitro、ex vivoおよび/またはin vivo操作で利用する操作および/またはスクリーニング培地を重層する
工程を含む、前記方法を提供する。好ましくは、合成化合物は合成油である。
【0025】
[0023]本発明の態様のさらに別の側面において、検出限界内で、NMR、HPLC、LCMSの1つを含む慣用的な分析技術によって記載されるような、よく定義された化学的化合物である合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質であって、化合物が:
i)よく定義された化学的および/または生物物理学的特性を持つ厳格に管理されたポリマー、
ii)小分子、
iii)空気より重い不活性ガス
の1つによって例示される、前記重層被包物質を提供する。
【0026】
[0024]態様のさらに別の側面において、本発明は、合成化合物を含み、そしてそれによって被包される培地の特性および組成の変動を監視するよう適応した、in vitro細胞培養のための重層被包物質を提供する。被包培地の監視される特性および組成は:
pH、
アンモニア濃度、
モル浸透圧濃度、
反応酸素種の存在、および
不揮発性有機化合物の存在
の1または組み合わせを含むことも可能である。
【0027】
[0025]態様のさらに別の側面において、本発明は、重層被包物質が:
ビタミン、
ホルモン、
増殖因子、
栄養素、
保護剤、
酸化還元トラップ、
アミノ酸およびその誘導体、
ペプトイド、
ペプチド、
タンパク質、
抗体および適切な誘導体、断片および全長オリゴヌクレオチドならびにその合成誘導体の1または組み合わせを含む補充供給源として用いられるよう適応している、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質を提供する。
【0028】
[0026]態様のさらに別の側面において、本発明は、重層被包物質が:
元素感受性タンパク質、
細胞または細胞培養、
多起源組織または組織培養、および
損なわれていない生物
の1またはそれより多くを伴うスクリーニングまたは生物学的操作に用いられるよう適応している、合成化合物を含むin vitro細胞培養のための重層被包物質を提供する。
【0029】
[0027]本発明の態様内で、重層被包物質は、検出限界内で、慣用的な分析技術を通じて同定されるような、明確な化学組成を示し、そして:
各々特定の化学的、生物物理学的および分光学的特性を示す、
合成モノマー(単数または複数);
オリゴマー/ポリマー;
ポリアルファオレフィンの化学誘導体および/またはコポリマー
の1または組み合わせを含む、合成小分子(モノマー、独立型化合物)、オリゴマーまたはポリマーを含む、完全合成油である、合成油である合成化合物を含む。
【0030】
[0028]好ましい態様は、以下の1または組み合わせを含む、in vitro細胞培養のための重層被包物質およびその使用を提供する:
検出限界内で、慣用的な分析技術、例えばNMR、HPLC、LCMSおよび他のものによって記載されるような、そしてi)よく定義された化学的および/または生物物理学的特性を持つ、厳格に管理されたポリマー、ii)小分子、iii)空気より重い不活性ガスによって例示されるような、よく定義された化学組成媒体。好ましくは、不活性ガスの形で、Arは排除される。
【0031】
混和性でなく、非毒性であり、そして必要な被包物質特性を特徴とする、不活性化学組成媒体;
任意のUV/UV可視/IR光吸収/発光技術および/または生物物理学的方法によって例示されるような、慣用的検出技術を通じて、スクリーニング培地の監視を可能にする、化学組成媒体を含む、透明な被包物質。この意味で、スクリーニング培地は、胚培養、酵素アッセイ、細胞/組織/損なわれていない生物に基づく検出技術に適用可能でありうる。
【0032】
ビタミン、ホルモン、増殖因子、栄養素、保護剤、酸化還元トラップ、アミノ酸およびその誘導体、ペプトイド、ペプチド、タンパク質、断片および全長オリゴヌクレオチドならびにその合成誘導体を含有するフィーダー層として用いられるよう適応した化学組成媒
体。
【0033】
元素感受性タンパク質、細胞/細胞培養、多起源組織/組織培養、損なわれていない生物を伴う他のスクリーニング/生物学的操作に用いられるよう適応した、化学組成媒体。
[0029]他の側面および好ましい型は、明細書に開示され、そして/または付随する請求項に定義され、本発明の説明の一部を形成する。
【0034】
[0030]本質的に、本発明の態様は、生物学的試料の取り扱いの信頼性がある制御が、ポリマー、小分子および/または空気より重い不活性ガスを含み、そしてi)よく定義された化学的および物理学的基準、ii)純度および安全性、iii)取り扱いの実現可能性および容易さ、iv)胚科学および/または一般的な生物学的試験要件との適合性を示す、合成油(単数または複数)または合成化合物によって例示されるような完全合成の完全に特徴付けられた物質の使用によって容易になりうるという認識に由来する。こうした特徴付けられた物質は、一般的に用いられる「ミネラルオイル」に対する優れた代替物を提供する。
【0035】
[0031]本明細書に記載しそして想定する態様の記載する発明は、細胞、組織に基づくか、または胚の発生/増殖を取り扱う、任意の動物/ヒト発生研究に一般的に適用可能であると予期される。本発明から利益を得る可能性がある潜在的な市場の代表的な例には、任意の/すべての動物、ヒトIVF施設、病院および診療所、初期研究および発生の両方を扱う薬学的およびバイオテクノロジー企業、胚または関連する培養を伴う研究の前臨床および臨床側面、専門研究施設、大学およびコンソーシアムを含むアカデミアが含まれる。
【0036】
[0032]本アプローチの重要な競合的利点には:
1.臨床/cGMP環境へのプロトコルの容易な適応を可能にする,合成化合物のよく定義された一貫した化学組成;
2.提唱される適用の再現性、一貫性、実現可能性;
3.化学的不活性、すなわち日光、温度、空気/酸素、特殊培地構成要素に対する耐性を提供する、「活性反応物質」の非存在;
4.より優れた胚微小環境制御/被包、補充剤アクセスおよび毒性代謝物質の除去を可能にする、油(単数または複数)の最適化された(生物)物理学的および(生物)化学的特性
が含まれる。
【0037】
[0033]本発明の態様の適用可能性の完全な範囲は、本明細書の以下に提供する詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例が、本発明の好ましい態様を示しつつ、例示のみによって提供されることを理解すべきであり、これは、本明細書の開示の精神および範囲内の多様な変化および修飾が、この詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろうためである。
【0038】
[0034]本発明の好ましいおよび他の態様のさらなる開示、目的、利点および側面は、態様の以下の説明を参照することによって、当業者にはよりよく理解されることも可能であり、この説明は、例示のみのために提供され、そしてしたがって本開示の限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
[0035]本発明の好ましいおよび他の態様のさらなる開示、目的、利点および側面は、付随する図と組み合わせて、態様の以下の説明を参照することによって、当業者にはよりよく理解可能であり、これらは、例示のみのために提供され、そしてしたがって本開示の限定ではない。
図1図1は、本発明の好ましい態様にしたがって、SageTM IVFオイルを重層したGenea018における多能性マーカーの分析(融合画像)を例示する。
図2図2は、本発明の好ましい態様にしたがって、化合物1を重層したGenea018における多能性マーカーの分析(融合画像)を例示する。
図3図3は、本発明の好ましい態様にしたがって、化合物2を重層したGenea018における多能性マーカーの分析(融合画像)を例示する。
図4図4は、本発明の好ましい態様にしたがって、化合物3を重層したGenea018における多能性マーカーの分析(融合画像)を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[0036]先行技術におけるミネラルオイルの使用とは対照的に、好ましい態様で、本発明者らはよく特徴付けられた合成ポリマー(単数または複数)、合成または天然モノマー小分子有機化合物(単数または複数)またはその適切な混合物を、限定されるわけではないが他の小分子、ポリマー、酸化防止剤、栄養素、限定されるわけではないがヌクレオチドおよびヌクレオチド配列、オリゴマー(例えばDNA、RNA、その断片および/または合成類似体)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体およびよく定義されそして制御された化学組成、胚適合性(生物)物理学的および(生物)化学的特性、安定性を示す他の好ましい生体分子を含む生体分子、ならびに胚または一般的なin vitro/ex vivoタンパク質および細胞生物学用の食品等級または医学デバイス等級(National Sanitation Foundation分類により、H-1またはそれより高い)として商業的に容易に入手可能な不活性「サイレント」媒体構成要素を含む、さらなる構成要素とともに使用することを提唱する。さらに、これらのおよび関連する化合物の物理学的、化学的および生物学的特性を、生物学的試料に適した望ましい生理学的および臨床的結果を獲得するために、合成によりまたは添加剤を通じて、さらに最適化することも可能である。
【0041】
[0037]代表的な較正アプローチの最初の段階において、本発明者らは、商業的供給源から、いくつかのポリアルファまたは関連するポリマーおよび適切な(コ)ポリマーを同定した。代表的な例は以下を含む:
・食品等級合成油ISO 220,55 Gal(http://www.grainger.com/product/CRC-Food-Grade-Synthetic-Oil-ISO-12G564)
・食品等級シリコンスプレー(Weston BrandTM、http://www.schaefferoil.com/276-food-grade-lube.html)
・Summit SyngearTM食品等級(FG)完全合成潤滑剤(http://www.klsummit.com/products/lubricant/syngear-fg-series)
・SprayonTM LU209食品等級合成油(http://www.sprayon.com/product-categories/industrial-lubricants/food-grade-synthetic-oil-aerosol-lu209)
・LubriplateTM NSF H1登録食品機械潤滑剤(https://www.lubriplate.com/Products/NSF-H-1-Registered-Food-Machinery-Lubricants.aspx)
[0038]態様に関して、重要な選択基準には、以下が含まれる:
1. 仮の分子量MW<5,000Dを持つ真の有機小分子油。好ましい候補は、限定されるわけではないが、長鎖アルカン、シクロアルカン、長鎖脂肪族アルコール、エーテル、エステル、アミド、ラクトン、ラクタム等を含む、例示されるようなよく特徴付けされた「不活性」モノマーまたはポリマーである。
【0042】
2. 密度、粘性(動力学的および力学的)、表面張力等を含む、特定のセットの生物物理学的、化学的、安定性、毒性基準
3. 一般的に安全と認識される、すなわちGRASである、合成またはよく定義された天然起源油;
4. 有機および無機物質の両方を含む、よく定義された化学組成および(微量)不純物;
5. 例えば日光、空気/酸素および温度などに対する、化学的安定性および不活性性。生物学的安定性/不活性性、胚および/または適切なオリゴヌクレオチド、タンパク質、細胞、組織、損なわれていない生物単離/被包潜在能力;
6. 選択基準5に定義される目的と適合する物理学的特性。これらは、揮発性、融点、沸点、独立型安全性、引火点、分子量、粘性範囲、表面張力、気体/液体拡散/混和性潜在能力等を含む;
7. 化合物の蒸発防止を可能にする、したがってモル浸透圧濃度、温度およびpH変動を防止するため、培地の重層として使用されることを可能にする、物理学的特性;
8. 好ましい添加剤でのアクセス、修飾、相乗潜在能力の実現可能性、および使用/操作の容易さ;
9. 商業的実現可能性。
【0043】
[0039]上述の基準を満たす、被包重層のための同定されるリード候補を、パラフィン/ミネラルオイル(単数または複数)に関して記載される標準プロトコルにしたがって、幹細胞および胚発生アッセイにおいてさらに評価して、候補をさらに選択することも可能である。さらに、物理学的/生物学的特性をさらに最適化するため、小分子に基づくモノマー化合物および/または関連完全合成化合物(単数または複数)を含む被包重層に化学的/生物学的不活性添加剤を添加することが想定される。これらの添加剤には、限定されるわけではないが、それぞれの界面活性剤、反応酸素種/代謝産物スカベンジャーおよび/または栄養素、遺伝子改変アンチセンスDNAまたはRNA配列、ペプチド、タンパク質、ペプチド、ペプトイドおよび他の好ましい分子が含まれる。
【0044】
[0040]添加剤を含むリード候補化合物をまた、元素感受性タンパク質、細胞、細胞培養、多起源組織、組織培養および損なわれていない生物を伴う、他のスクリーニングおよび生物学的操作に用いることもまた可能である。
【0045】
[0041]多くの単一の小分子に基づく化合物が、商業的に容易に入手可能であり、そしてさらに、多様な合成法を通じて、特定の胚培養明細にマッチするようにカスタマイズすることも可能である。利用可能な化学薬品クラスには、多様な長さの分岐、直鎖および環状すべての炭化水素、ならびに修飾炭化水素(限定されるわけではないがフルオロカーボンが含まれる)が含まれる。
【0046】
[0042]1つの態様において、ポリアルファオレフィン(PAO)を利用してもよい。PAOは商業的に容易に入手可能であり、そしてさらに、多様な合成法を通じて、特定の胚培養明細にマッチするようにカスタマイズすることも可能である。これに関連して、以下の列挙する参考文献をこうした目的に利用することも可能である:
【0047】
【化2】
【0048】
[0043]ここ20年に、多数の刊行物が食品等級(National Sanitation Foundationに指定されるようなH-1)として、ポリアルファオレフィ
ン(PAO)の有用性を記載していることは注目する価値がある。したがって、PAOが食品産業において安全な材料であり、そして本発明者の推論および調査によって、PAOは、本発明の態様で利用する合成化合物の候補として、安全にそして有効に合成されうることが現在、明らかに示される。
【0049】
[0044]本発明の開示する態様が、in vitro、細胞に基づく、組織培養、および損なわれていない生物を伴うin vivoアッセイのより広いアレイで使用可能であることがさらに予期される。具体的には、前述の不活性化合物を直接適用して、実際のスクリーニング培地(限定されるわけではないが、96、384、1536ウェルまたは任意の別のプレートのスクリーニングウェル、開放または閉鎖チャネル微少流体デバイス中の(微量)液滴(単数または複数)等を含む)を、環境への曝露から防護し、そして/または体積、組成物、モル浸透圧濃度、栄養素含量等を含む重要なスクリーニングパラメーターを維持することも可能である。本発明は、任意の慣用的、中程度またはハイスループット分配技術を用いて、要素に感受性でありうる生物学的物体、細胞、組織および生物をスクリーニングするために特に有益である。生物学的試料の重層被包剤として、用いられる開示される「不活性化合物」によって提供されるさらなる利点(単数または複数)にはまた、UV-可視、近IR、遠IR分光測定、電磁共鳴を含む一般的な非侵入性光吸収、発光、散乱検出技術、ならびに限定されるわけではないが表面プラズモン共鳴(SPR)、熱融解および他のアッセイ技術を含む生物物理学的プラットホームに対する完全透過性も含まれてもよい。代表的な例には、限定されるわけではないが、以下が含まれる:
-i)空気/酸素、UV光感受性、モル浸透圧濃度、pHタンパク質のin vitro操作(保管、分配、スクリーニング)。例えば、サイトカインおよびケモカインタンパク質ファミリーによって例示されるような、多数のSHおよび/またはS-S結合を含む生体分子;限定されるわけではないがヒストン脱アセチル化酵素、ヒストン脱メチル化酵素、ヒストンアセチラーゼ、メタロプロテイナーゼ、ヒドロラーゼ等を含むエピジェネティックターゲットによって例示されるような、限定されるわけではないが、Zn、Mg、Mn、Cu、Feを含む、配位金属(単数または複数)を特徴とするタンパク質/酵素;
-ii)q-PCR、トランスフェクションおよび遺伝子編集技術によって例示されるような、限定されるわけではないが、内因性、損なわれていない、断片化、化学修飾DNA、mRNA、shRNA、siRNA、miRNAを含む、任意のヌクレオチド配列のin vitro操作;
-iii)限定されるわけではないが、ヒト/動物由来の胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、これらの直接または進行(分化)派生物、幹細胞の遺伝子操作派生物等によって例示されるような幹細胞(単数または複数)またはその適切な派生物(単数または複数)の任意の操作を含む、細胞に基づくスクリーニング;
-iv)限定されるわけではないが、マイクロタイター、ミディまたはマクロプレート、微量流体デバイス、静置、懸濁液滴、流動システムまたは類似のものを含む、適切な処理容器中の任意の細胞培養。これらの細胞培養には、限定されるわけではないが、ヒト/動物胚/細胞、臓器/組織由来ニューロン、心筋細胞、線維芽細胞、肝細胞、腎臓細胞によって例示されるような、特定の分化したヒト/動物細胞;幹細胞/初代細胞/癌細胞/他の不死化細胞、遺伝子改変/操作された細胞、安定および/または一過性トランスフェクション細胞、蛍光、放射能、ラジカルおよび/または他の検出機能で標識された細胞等が含まれる。
【0050】
-v)適切な健康、疾患、修飾またはトランスフェクション細胞株を用いた、分化、増殖、遊走、接着、運動性、走化性および他の細胞アッセイによって例示されるような、機能/表現型スクリーニング;
-vi)ウニ胚、ゼブラフィッシュによって例示されるような、関心対象のおよび/または損なわれていない生物の、損なわれていないまたは懸濁された組織を用いた、スクリーニング(例えばマトリジェルに基づくクローン原性アッセイ(単数または複数))、お
よび恒常性の維持が非常に重要である他のin vivoアッセイ(単数または複数)。
【実施例0051】
細胞および胚培養のための重層としての合成化合物の使用に関する予備的実験データ
[0045]本発明の態様に伴う本発明者らが実施した試験の実験結果は以下の通りである:
目的
[0046]細胞および胚培養において、3つの合成化合物の実現可能性に関する予備的試験を実行すること。
【0052】
1. 実験1-幹細胞
1.1. 実験法
[0047]材料:
[0048]試験化合物:
・化合物1
・化合物2
・化合物3
[0049]製造者より入手可能なパンフレットにしたがって、選択した試験化合物は、パラフィン性合成油と高純度炭化水素に基づく油圧(hydraulic)および潤滑化合物である。これらは基油(basic oil)および添加剤の組み合わせであり、食品加工産業で使用可能である。特に、化合物1は、短鎖、長鎖および分岐、完全飽和炭化水素の混合物であり、芳香族群は存在しない。化合物1の範囲に属するであろう、適切な候補の例は、情報源:「TURMOSYNTHTM VGシリーズ技術情報」に見られ、そして技術情報を以下の表1に提示する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1
[0050]3つの選択した化合物の合成のための製造プロセスは、混合容器内での特定の原材料の組み合わせを含む。これは、天然産物(未精製油)の分留および精製を伴い、最終産物に到達するミネラルオイルプロセスとは異なる。
【0055】
[0051]ヒト胚性幹細胞株(hESC)
・手動で継代、マウス線維芽細胞フィーダー層上で培養
・Nunc IVF 1ウェルプレート上、KnockOutTM血清置換16(「KSR」)培地中、37℃、6%CO、5%Oおよび89%Nの巨大インキュベーター中で細胞を培養
[0052]用いたhESC株は、手動で継代したヒト胚性幹細胞株であった。実験用のプレートは、以前の継代後、8日目のhESCコロニーを手動で切り出しそして除去した後に残ったプレートであった。残ったコロニーはなお培養可能であるが、最終的に分化し始め、そして多能性を失い、そして適切にフィードされない場合は変性すらする。各プレートは異なる細胞株および継代数由来の細胞を含有した。
【0056】
[0053]対照培養をプレーティングし、そして胚培養に通常用いられるSageTM IVFオイルを重層した。これは、SageTM IVFオイルおよび試験化合物の下で培養される細胞の能力の間の比較を行うことを可能にするためであった。
【0057】
[0054]KSR培地を継代のため交換しているため、実験は各プレート1mlの新鮮な培地で始まった。実際の実験のため、各ウェルには、20% Oで、20%Oおよび5%COインキュベーター中、一晩平衡化しておいた試験油1mlを重層した。次いで、プレートを低酸素インキュベーター(6%CO、5%Oおよび89%N)中でさらに一晩培養した。
【0058】
[0055]翌日、プレート上の培地を新鮮なKSR培地と交換し、そして次いで、続く2日間、培地交換なしに放置した。プレート調製時、一晩培養後(第1日)、さらに3日間培養した後(第4日)および第7日に細胞の外見を観察し、この際、3つの抗体マーカー(SSEA-4、Oct-4およびNanog)を用いて免疫組織化学染色も行った。これらの特定の分子マーカーの存在は、幹細胞の多能性状態を立証するため、これらを用いた。SSEA-4、Oct-4またはNanogのいずれかの下方制御は、細胞が分化しつつあり、そしてもはや多能性ではなく、つまりhESCがストレス下にあることを示す。その時点ですべてのプレートを廃棄し、そして実験を完了した。
【0059】
1.2. 結果および考察
[0056]すべての試験化合物下でhESCは増殖し続け、そして第7日に多能性を示した。図1~4は、それぞれ、SageTM IVFオイル、化合物1、化合物2および化合物3の重層下で培養した培養7日後の細胞を示す。化合物3の重層下で培養した細胞の発生は、SageTM IVFオイル(対照)の重層下で培養したものと非常に類似である。化合物1および化合物2の重層下で培養した細胞は、完全な単層は形成しなかったが、単に変性したわけではなく、そしてしたがって化合物1および化合物2は、直ちに細胞傷害性ではなかった。しかし、これらは、化合物3またはSageTM IVFオイルほど適切に、細胞増殖のための環境を提供しない可能性もある。
【0060】
[0057]試験化合物に対する細胞の予備的反応を試験することのみを意図したため、増殖率または細胞分化率に関する詳細な情報は、この実験では得られなかった。
[0058]この実験で用いた細胞は、単細胞ではなく、コロニーとして維持され、そして継代されたhESC株であった。この培養法は、なお、ヒト胚から新規株を最初に得る際に用いられる方法であり、そしてまた初期継代にも用いられ、幹細胞株の完全性を最適に維持し、そして特に単細胞として酵素的に継代した場合に、より後の継代で生じうるような染色体変動を回避する。
【0061】
[0059]図1は、SageTM IVFオイルを重層した、Genea018における多能性マーカーの分析を例示する(融合画像)。図2は、化合物1を重層した、Genea018における多能性マーカーの分析を例示する(融合画像)。図3は、化合物2を重層した、Genea018における多能性マーカーの分析を例示する(融合画像)。図4
、化合物3を重層した、Genea018における多能性マーカーの分析を例示する(融合画像)。
【0062】
1.3. 結論
[0060]幹細胞は、すべての化合物の重層を適用した際、生存し、そして増殖した。化合物3の重層下で培養した細胞は、対照(SageTM IVFオイル)と類似の増殖を示した。化合物1および化合物2の重層下で培養した細胞は、化合物3およびSageTM
IVFオイル下の細胞に関して見られうるような完全な単層を形成しなかったが、なお、増殖を示し、そして培養7日後も死ななかった。したがって、いずれの化合物も細胞傷害性ではなく、そしてすべて細胞増殖を可能にしたことが明らかである。さらに、試料各々における3つの多能性マーカーすべての蛍光を示す画像から、hESCが、すべての試験および対照化合物下で7日間培養した後、その多能性を維持したことが見てとれる。
【0063】
2. 実験-胚
2.1. 実験法
[0061]材料:
[0062]試験化合物:
・化合物1
・化合物2
・化合物3
[0063]SageTM IVFオイル(対照)
[0064]Single-Stepヒト胚培養培地
[0065]Falcon(登録商標)60mmプレート
[0066]2PN段階のマウス胚
[0067]60mm Falcon(登録商標)ペトリ皿を、マウス胚のルーチンの培養の通りに、Single-Stepヒト胚培地およびSageTM IVFオイル(対照化合物)、化合物1、化合物2または化合物3(試験化合物)とともに調製した。簡潔には、9x20μlの液滴を、6mlの対照または試験化合物下に調製し、そしてCook MINCTMインキュベーター17中、+37℃、6%CO、5%Oおよび89%Nで一晩平衡化させた。翌日(第1日)、卵丘細胞を取り除いた後、2PN段階にあると分類された胚を液滴中に入れた。各液滴には10を超えない胚を入れた。次いで、第2、5、6および7日、ルーチンのマウス胚アッセイ(MEA)プロトコルにしたがって、発生に関して胚を評価した。
【0064】
2.2. 結果および考察
[0068]胚発生および品質は、評価のすべての段階で、対照および化合物3の間で匹敵した。培地を化合物1または化合物2で重層した際、胚は最初の細胞分裂前に変性した。したがって、化合物1および化合物2は幹細胞に対して毒性ではないが、これらはどちらも胚に対しては明らかに毒性である。
【0065】
2.3. 結論
[0069]化合物3での培地の重層は、胚が胚盤胞段階に完全に発生することを可能にした。発生した胚の量およびその品質は、対照および試験群間で統計的に異ならなかった。化合物1または化合物2での培地の重層は、ほぼ即時の胚変性を引き起こした。
【0066】
[0070]本発明は、その特定の態様に関連して記載されてきているが、さらなる修飾(単数または複数)が可能であることが理解されるであろう。本出願は、一般的に、本発明の原理にしたがい、そして本発明が関連する業の既知のまたは習慣的な実施内で想定されるような、そして本明細書にこれまでに示す本質的な特徴に適用可能であるような、本開示からの逸脱を含めて、本発明のいかなる変動使用または適応も含むと意図される。
【0067】
[0071]本発明は、本発明の本質的な特性の精神から逸脱することなく、いくつかの型で具体化することが可能であるため、上記態様は、別に明記しない限り、本発明を限定するものではなく、むしろ、付随する請求項に定義するような、本発明の精神および範囲内で、広く解釈されなければならないことを理解しなければならない。記載する態様は、すべての観点で、例示のみであり、そして限定ではないと見なされるものとする。
【0068】
[0072]多様な修飾および同等のアレンジは、本発明の精神および範囲、ならびに付随する請求項内に含まれるよう意図される。したがって、特定の態様は、本発明の原理が実施可能な多くの方法の例示であると理解されるものとする。以下の請求項において、「ミーンズ・プラス・ファンクション」節は、定義する機能を実行するような構造を含むことを意図し、そして構造的同等物だけでなく、同等の構造を含むことを意図する。例えば、釘およびネジは、釘が筒状表面を使用して、木製部分をともに固定し、一方ネジが螺旋状表面を使用して、木製部分をともに固定する点で、構造的同等物ではない可能性があるが、木製部分を留める環境においては、釘およびネジは同等の構造である。
【0069】
[0073]「含む/含むこと」および「含まれる/含まれること」は、本明細書において用いた際、言及する特徴、整数、工程または構成要素の存在を明記するよう解釈されるが、1またはそれより多い他の特徴、整数、工程、構成要素またはその群の存在または付加を排除しない。したがって、背景が明らかに別であることを要求しない限り、本明細書および請求項全体で、単語「含む」、「含むこと」、「含まれる」、「含まれること」等は、独占的または網羅的な意味ではなく、包括的意味であると見なされるものとし;すなわち「限定されるわけではないが、含む」の意味であると見なされるものとする。
図1
図2
図3
図4