(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005276
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20230111BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107067
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リクライニング装置に加わる外力に対して、加わる外力の方向に応じてくさび状カムが円筒ボスと接することによって、摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置100は外歯歯車10と、内歯歯車20と、内歯歯車20の円筒ボス22に同軸かつ回転自在に嵌挿され、円筒ボス22近傍に延設された押圧延設部を有する回転シャフト30と、一対のくさび状カム50と、一対のくさび状カム50をそれぞれ離間する方向に付勢する弾性体60と、を備えてなり、くさび状カム50は、弾性体60による付勢方向側の遠位側端部が内歯歯車20と外歯歯車10の偏心方向に対する円筒ボス22の中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつその位置において円筒ボス22の外周面と接するカム接点を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、前記円筒ボス近傍に延設された押圧延設部を有する回転シャフトと、
前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触してなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記内歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムをそれぞれ離間する方向に付勢する弾性体と、を備えてなり、
前記くさび状カムは、前記弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記くさび状カムは、前記弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側に45°以上の位置に設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記くさび状カムの外周面との間に、両側の端部が前記くさび状カムの遠位側端部から延設するように形成されたU字ブッシュを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリクライニング装置。
【請求項4】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、前記円筒ボス近傍に延設された押圧延設部を有する回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面に接触してなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記外歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムをそれぞれ離間する方向に付勢する弾性体と、を備えてなり、
前記くさび状カムは、前記弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とするリクライニング装置。
【請求項5】
前記くさび状カムは、前記弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側に45°以上の位置に設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とする請求項4に記載のリクライニング装置。
【請求項6】
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記くさび状カムの外周面との間に、両側の端部が前記くさび状カムの遠位側端部から延設するように形成されたU字ブッシュを備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置において、
シートクッション及びシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、シートクッション及びシートバックの他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の外歯ボス部を備える外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて外周面に前記外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部を備える内歯歯車と、
前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合すると共に、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、
前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との間に介挿され、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部とに同時に接触して前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を規制すると共に、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方を摺動させ、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側とに同時に接触させる方に付勢するバネ材と、
前記回転軸の回転に伴い回転する円盤状部材であって、軸方向に延在し、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方から非接触にする方向へ押す当接面にテーパーの設けられたカム押し翼を一対備える円盤状部材と、
前記円盤状部材を前記一対のくさび状カム側に押し当て、前記テーパーの設けられた当接面を前記一対のくさび状カムへ当接させる板バネであって、付勢力は前記バネ材よりも弱く設定されている板バネと、を備えるものを提案している(特許文献1)。
【0003】
かかるリクライニング装置によれば、回転軸に連動する円盤状部材のカム押し翼によってくさび状カムを直接作動させるため、外歯歯車と、内歯歯車との間の回転抵抗が均一になり、外歯歯車と内歯歯車の回転をなめらかにすることができる、という効果を有する。
【0004】
かかるリクライニング装置は、円筒ボス部に対して半周以下の範囲でしかくさび状カムが当接していないため、車両シートのシートバックに大きな力が加わった場合に、リクライニング装置に加わる外力に対して、円筒ボス部とくさび状カムとの接触部でしか力を受けることができない、という問題点があった。そのため、加わる外力の方向に応じて一部に大きな力が加わったりした場合に、力をギア歯で受けなければならない場合もあり、このように力をギア歯で受けている場合、差動歯車となっているリクライニング装置ではスムーズに摺動回転させることができなくなるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、リクライニング装置に加わる外力に対して、加わる外力の方向に応じてくさび状カムが円筒ボスと接することによって、摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明のリクライニング装置は、シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、円筒ボス近傍に延設された押圧延設部を有する回転シャフトと、
前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記外歯歯車の貫通孔の内周面に接触してなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記内歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムをそれぞれ離間する方向に付勢する弾性体と、を備えてなり、
前記くさび状カムは、弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とする。
【0009】
本発明は、くさび状カムを弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することとしたことによって、回転の位置に応じて、カム接点のいずれかが円筒ボスに接することになるため、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0010】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、前記くさび状カムは、弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側に45°以上の位置に設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とするものであってもよい。
【0011】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置において、前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記くさび状カムの外周面との間に、両側の端部が前記くさび状カムの遠位側端部から延設するように形成されたU字ブッシュを備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
U字ブッシュを採用することによって、くさび状カムの移動に対するタイムラグを低減し、回転シャフトの回転動作に対しクイックな操作を可能とすることができる。
【0013】
本発明のリクライニング装置は、シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、円筒ボス近傍に延設された押圧延設部を有する回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記内歯歯車の貫通孔の内周面に接触してなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記外歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムをそれぞれ離間する方向に付勢する弾性体と、を備えてなり、
前記くさび状カムは、弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側の位置にまで設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、前記くさび状カムは、弾性体による付勢方向側の遠位側端部が前記内歯歯車と前記外歯歯車の偏心方向に対する前記円筒ボスの中心における垂線よりも付勢方向側に45°以上の位置に設けられており、かつ前記位置において前記円筒ボスの外周面と接するカム接点を有することを特徴とするものであってもよい。
【0015】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置において、前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記くさび状カムの外周面との間に、両側の端部が前記くさび状カムの遠位側端部から延設するように形成されたU字ブッシュを備えていることを特徴とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の別実施形態にかかる分解斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用シート200の模式図であり、
図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、
図3は、リクライニング装置100の分解斜視図であり、
図4は
図2のA-A断面図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。また、
図3において、図中の矢印に示されたように、外歯歯車10のある方向を「正面」、内歯歯車20のある方向を「背面」という。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、
図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0019】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、
図2~
図4に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、回転シャフト30、くさび状カム50、弾性体としてスプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80を備えている。なお、
図2では、内部構造を見やすくするため、スプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80は省略されている。
【0020】
外歯歯車10は、
図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には円筒状の貫通孔12が形成されている。外歯歯車10には、正面10bに突出部13が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0021】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、
図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心C
1と内歯歯車20の中心C
2が偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、
図3に示すように、円筒ボス22が設けられている。この内歯歯車20の背面には突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0022】
くさび状カム50aとくさび状カム50bは、
図3に示すように、面対称に形成されており、くさび状カム50の凹面51(内側の面)は、円筒ボス22の外周面22aの曲面に沿うように形成され、凸面52(外側の面)は肉厚が向かい合った側から徐々に薄くなるように形成されている。このくさび状カム50aとくさび状カム50bは、肉厚の厚い側である近接側端部53が互いに向き合うように配置される。また、
図2に示すように、くさび状カム50は、弾性体(スプリング60)による付勢方向(矢印Bの方向)側である遠位側端部54が内歯歯車20と外歯歯車10の偏心方向Dに対する円筒ボス22の中心C
2における垂線Vよりも付勢方向側の位置にまで設けられている。さらに、くさび状カム50は、垂線Vより近位側及び遠位側の両方でそれぞれ少なくとも1つ以上の円筒ボス22とのカム接点(F
1、F
2、F
3、F
4)を有している。より好ましくは、垂線Vよりも付勢方向側に45°以上の位置に設けられており、かつ前記位置において円筒ボス22の外周面と接するカム接点(F
1、F
2、F
3、F
4)を有するように設けることが好ましい。
【0023】
回転シャフト30は、内歯歯車20の円筒ボス22に対して同軸上で回転自在に嵌挿されている。また、回転シャフト30は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション31が設けられている。さらに、回転シャフト30は、一対のくさび状カム50a、50bの遠位側端部54の近傍又は接するように延設された押圧延設部32を有している。すなわち、くさび状カム50aとくさび状カム50bの遠位側端部54の間に押圧延設部32が形成される。これにより、回転シャフト30を回転させることによって、くさび状カム50を押圧して回転させることができる。
【0024】
スプリング60は、弾性体で作製されており、
図3に示すように、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有している。端部62a、62bは、それぞれくさび状カム50の近接側端部53に接しており、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向に付勢している。
【0025】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aと、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0026】
このロック状態から、回転シャフト30を例えば
図2において、反時計方向に回転させると、回転シャフト30の押圧延設部32によってくさび状カム50bが押圧される。くさび状カム50bと外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aに対して、クサビ角が設定してある。くさび状カム50bの押圧により、クサビ角内周面はくさび状カム50bとの間にスキマが発生しクサビが外れる。これにより、くさび状カム50と円筒ボス22及びくさび状カム50と外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。この際に、回転の位置に応じて、カム接点(F
1、F
2、F
3、F
4)のいずれかが円筒ボス22に接することになるため、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0027】
なお、第1実施形態においては、回転シャフト30によってくさび状カム50を直接押圧して回転させるものとしたが、
図5に示すように、くさび状カム50の凸面52(外側の面)側に略U字形のブッシュ90を備えていてもよい。略U字形のU字ブッシュ90は、
図5に示すように、略U字形に作製されており、開環部を形成するブッシュ端部91a、91bのいずれもがくさび状カム50の遠位側端部54から延出するように配置されている。くさび状カム50は、U字ブッシュ90の内周に収まるように、第1実施形態に対して小さく形成されている。くさび状カム50は、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとU字ブッシュ90の内周面に接触させることによって、外歯歯車10と内歯歯車20の相対回転を規制するとともに、回転シャフト30を回転することによって押圧延設部32によってU字ブッシュ90が押圧され同様に回転する。またU字ブッシュ90の内壁面との間にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。ブッシュ90の回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。回転シャフト30、U字ブッシュ90は、内歯歯車20に対して、反時計方向に回転し、この結果、U字ブッシュ90と円筒ボス22及びU字ブッシュ90と外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト30、U字ブッシュ90とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。かかるU字ブッシュ90を採用することによって、くさび状カム50の移動に対するタイムラグを低減し、回転シャフト30の回転動作に対しクイックな操作を可能とすることができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100が
図6に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100に対して、外歯歯車10の中心に円筒ボス14が設けられており、内歯歯車20の中心に貫通孔25が設けられている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0029】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、内歯歯車20の貫通孔25の内周面25aと、外歯歯車10の円筒ボス14の外周面14aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0030】
このロック状態から、回転シャフト30を回転させると、回転シャフト30の押圧延設部32によってくさび状カム50bが押圧される。くさび状カム50bと内歯歯車20の貫通孔25の内周面25aに対して、クサビ角が設定してある。くさび状カム50bの押圧により、クサビ角内周面はくさび状カム50bとの間にスキマが発生しクサビが外れる。これにより、くさび状カム50と円筒ボス14及びくさび状カム50と内歯歯車20の貫通孔25との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。この際に、回転の位置に応じて、カム接点(F1、F2、F3、F4)のいずれかが円筒ボス14に接することになるため、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0031】
なお、第2実施形態においては、回転シャフト30によってくさび状カム50を直接押圧して回転させるものとしたが、第1実施形態と同様に、くさび状カム50の凸面52(外側の面)側に略U字形のブッシュ90を備えていてもよい。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…外歯歯車、10b…正面、11…外歯、12…貫通孔、12a…内周面、13…突出部、14…円筒ボス、14a…外周面、20…内歯歯車、21…内歯、22…円筒ボス、22a…外周面、23…突出部、25…貫通孔、25a…内周面、30…回転シャフト、31…セレーション、32…押圧延設部、50…くさび状カム、50a…くさび状カム、50b…くさび状カム、51…凹面、52…凸面、53…近接側端部、54…遠位側端部、60…スプリング、61…環状部、62a,62b…端部、70…スプリングカバー、80…プレートカバー、90…U字ブッシュ、91a…ブッシュ端部、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート