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特開2023-52764急性虚血性脳卒中の処置のための方法及び医薬組成物
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  • 特開-急性虚血性脳卒中の処置のための方法及び医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052764
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】急性虚血性脳卒中の処置のための方法及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/49 20060101AFI20230404BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230404BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230404BHJP
   C12N 9/48 20060101ALN20230404BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20230404BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230404BHJP
   C12N 15/58 20060101ALN20230404BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
A61K38/49
A61P9/10 ZNA
A61K38/46
A61P43/00 121
A61P7/02
C12N9/48
C12N9/16 Z
C12N15/12
C12N15/58
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023011980
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2020514330の分割
【原出願日】2018-05-15
(31)【優先権主張番号】17305556.7
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305106.9
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】505429360
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ 13 パリ ノール
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS 13 - PARIS NORD
【住所又は居所原語表記】99,avenue Jean-Baptiste Clement,F-93430 Villetaneuse,FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】519408593
【氏名又は名称】フォンダシオン・オプタルモロジック・アドルフ・ドゥ・ロートシルト
【氏名又は名称原語表記】FONDATION OPHTALMOLOGIQUE ADOLPHE DE ROTHSCHILD
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デシル,ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ,ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】ホ-ティン-ノエ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】マジギ,ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】ロヤウ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル,ジャン-バティスト
(72)【発明者】
【氏名】ピオタン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】デュクルー,セリナ
(72)【発明者】
【氏名】ディ・メッリオ,リュカ
(72)【発明者】
【氏名】ブラン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ボワソー,ウィリアム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】急性虚血性脳卒中(AIS)の処置のための方法及び医薬組成物を提供する。
【解決手段】患者にt-PAとDNAseとの治療的に有効な組み合わせを投与することを含み、ここで、この組み合わせの投与が、t-PA単独の投与と比べて増強された治療有効性を生じる方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、t-PA及びDNAseを含む組み合わせ。
【請求項2】
t-PAが、組み換えt-PAである、請求項1記載の組み合わせ。
【請求項3】
t-PAが、天然型t-PAの酵素活性又は線維素溶解活性を保持する、天然型t-PAの修飾型である、請求項1又は請求項2記載の組み合わせ。
【請求項4】
t-PAが、野生型tPAのThr103がAsnに変更され(T103N)、野生型tPAのAsn117がGlnに変更され(N117Q)、野生型tPAのLys-His-Arg-Arg 296-299がAla-Ala-Ala-Alaに変更されている、天然型t-PAの修飾型である、請求項1~3のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項5】
t-PAが、アルテプラーゼ又はテネクテプラーゼである、請求項1~4のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項6】
DNAseが、DNAse 1である、請求項1~5のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項7】
DNAseが、組み換え型である、請求項1~6のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項8】
DNAseが、ヒト由来である、請求項1~7のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項9】
DNAseが、ドルナーゼ又はプルモザイムである、請求項1~8のいずれか一項記載の組み合わせ。
【請求項10】
急性虚血性脳卒中(AIS)の処置を必要とする患者におけるAISを処置する方法であって、患者にt-PAとDNAseとの治療的に有効な組み合わせを投与することを含み、ここで、組み合わせの投与が、t-PA単独の投与と比べて増強された治療有効性を生じる方法。
【請求項11】
AISを患う患者に処置レジメンの部分として投与されるt-PAの効力を増強するための方法であって、患者にDNAseと組み合わせた薬学的有効量のt-PAを投与することを含む方法。
【請求項12】
AISを患う患者における閉塞した頭蓋内動脈の再疎通を達成する方法であって、患者にt-PAと組み換えDNAseとの治療的に有効な組み合わせを投与することを含む方法。
【請求項13】
t-PAが、組み換えt-PAである、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
t-PAが、天然型t-PAの酵素活性又は線維素溶解活性を保持する、天然型t-PAの修飾型である、請求項10~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
t-PAが、野生型tPAのThr103がAsnに変更され(T103N)、野生型tPAのAsn117がGlnに変更され(N117Q)、野生型tPAのLys-His-Arg-Arg 296-299が、Ala-Ala-Ala-Alaに変更されている、天然型t-PAの修飾型である、請求項10~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
t-PAが、アルテプラーゼ又はテネクテプラーゼである、請求項10~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
DNAseが、DNAse 1である、請求項10~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
DNAseが、組み換え型である、請求項10~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
DNAseが、ヒト由来である、請求項10~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
DNAseが、ドルナーゼ又はプルモザイムである、請求項10~19のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性虚血性脳卒中の処置のための方法及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
急性虚血性脳卒中(AIS)は、脳の区画への十分な血流が突然遮断されることであり、通常は脳に血液を供給している動脈の1つにつまっている又は形成している血栓又は他の塞栓により引き起こされる。遮断がすぐに取り除かれない場合、虚血は、永続的な神経障害又は死亡に至る場合がある。組み換え組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA;アルテプラーゼ、Actilyse(登録商標)、Boehringer Ingelheim)の静脈内(IV)投与は、AISにおいて有効性が確認されている唯一の薬物療法である。この処置は、早期再疎通の点で効率が低い。2015年以来、この処置は、近位頭蓋内動脈閉塞の場合の早期再疎通率における増加及び3ヶ月目の機能的転帰の有意な改善を可能にする血管内処置(EVT)の実現に関連する。AIS処置についての時間枠は、IV t-PA注入について4,5時間以内及びEVTについて6時間以内である。この時間内であっても、症状の発生と処置との間の時間が短いほど結果が良好であるという強力な証拠がある。AISのEVTは、ステントリトリーバー又は直接吸引カテーテルなどの血栓除去デバイスを用いた血栓の機械的除去にある。
【0003】
AIS管理の主な目的は、閉塞した動脈のできるだけ速やかな早期再疎通を得ることである。この早期再疎通は、実際に、神経学的臨床転帰の主な予測因子である。AIS処置のための国際ガイドラインは、6時間までの前方循環近位部閉塞の場合にEVTに関連する症状の発生から4時間30分以内にt-PAを用いたIV血栓溶解を行うことを推奨している。しかし、IV血栓溶解は、近位部閉塞の状況の再疎通に関してあまり有効でない。実際に、内頸動脈閉塞の症例の5%及び中大脳動脈近位部の閉塞の20%という率が最近報告されている。t-PAのIV注入の有効性は、強力な化合物が全血中で希釈されること、血漿輸送の間のPAI-1などの循環性阻害物質によるt-PAの阻害、血栓に結合するt-PAの初期レベルが低いこと及び遅延型の出血性変化のリスク増大が原因で、10%に限定される。さらに、t-PAの血栓溶解効果は有益であるものの、現在使用されている所要の高用量領域でのt-PAの毒性が問題である。EVTは、高い再疎通率に関連するが、過度に専門化されており、高価であり、したがって緊急での利用が困難である。IVの血栓溶解に関連する再疎通率を増大させるための容易に投与可能な薬物処置は、AISの管理における大きな進歩になるであろう。
【0004】
好中球細胞外トラップ(NETs)は、近年、様々な形の血栓症の主なトリガー及び構造因子として特定された。NETsは、好中球由来のDNAから主として構成される細胞外の網である。近年、ある研究が、NETsからの細胞外DNAスレッドを、急性冠症候群においてt-PAにより誘導される血栓溶解の有効性を増大させるための潜在的治療標的として指定した(Mangold, A., Alias, S., Scherz, T., Hofbauer, T., Jakowitsch, J., Panzenboeck, A. & Mascherbauer, J. (2015). Coronary Neutrophil Extracellular Trap Burden and Deoxyribonuclease Activity in ST-Elevation Acute Coronary Syndrome Are Predictors of ST-Segment Resolution and Infarct Size. Circulation research, 116(7), 1182-1192)。近年、脳虚血再灌流のマウスモデルにおいて、DNAse 1単独は、ビヒクルと比較して梗塞体積を有意に低減することが分かった(De Meyer, S. F., Suidan, G. L., Fuchs, T. A., Monestier, M., & Wagner, D. D. (2012).Extracullular chromatin is an important mediator of ischemic stroke in mice. Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology, 32(8), 1884-1891)。したがって、この研究は、DNAse 1が、虚血により誘導される下流の作用を改善するために適しているであろうと開示したが、この酵素が近位部動脈再疎通率に好都合な影響を与えるとは開示できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、AISの処置のための方法及び医薬組成物に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲により定義される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
好中球細胞外トラップ(NETs)は、活性化好中球により生成されるヒストン及び顆粒タンパク質で装飾されたDNA細胞外ネットワークである。NETsは、血栓症の主なトリガー及び構造因子として特定されている。本発明者らの目的は、急性虚血性脳卒中(AIS)の患者における血管内療法の間に回収される血栓中のNETsの存在及びt-PA誘導血栓溶解に対するそれらの影響を評価することであった。したがって、本発明者らは、血管内療法で処置された108人のAIS患者からの血栓を分析した。血栓は、ヘマトキシリン/エオジン染色、免疫染色、及びエクスビボ酵素アッセイ法により特徴付けられた。追加的に、本発明者らは、AIS血栓の血栓溶解に対するデオキシリボヌクレアーゼ1(DNAse 1)の影響をエクスビボで評価した。組織学的分析により、NETsが全てのAIS血栓の組成に、特にそれらの外層における組成に寄与したことが明らかになった。血栓NETs含量の定量測定は、臨床転帰又はAISの病理発生と関連しなかったが、血管内療法手技の長さ及びデバイスのパス数と有意に相関した。エクスビボで、組み換えDNAse 1は、t-PA誘導血栓溶解を促進したのに対し、DNAse 1単独は無効であった。この研究は、血栓のNETs含量が、その原因にかかわらず、機械的アプローチ又は静脈内t-PAによる薬理的アプローチを含む再灌流の抵抗性の原因になり得ることを示唆している。これらの結果は、また、t-PA及びDNAse 1に関連する併用療法が、t-PAの有効性を可能にする相乗作用を有し得ることを示唆している。
【0007】
本発明の第1の目的は、急性虚血性脳卒中(AIS)の処置を必要とする患者におけるその処置の方法であって、患者にt-PA及びDNAseを投与することを含む方法に関する。一実施態様では、本発明の方法は、患者に治療的に有効なt-PAとDNAseとの組み合わせを投与することを含む。
【0008】
本明細書に使用される「治療有効量」又は「治療的に有効な組み合わせ」又は「薬学的有効量」という用語は、本発明による組み合わせ中のt-PAの量若しくは用量、DNAseの量若しくは用量、又は両方の量若しくは用量であって、対象に重大なマイナスの副作用又は有害副作用を起こさずに(1)AISの発生を遅延若しくは予防すること;(2)AISの重症度若しくは発生率を低減すること;(3)AISの1つ以上の症状の進行、悪化、若しくは増悪を減速若しくは停止すること;(4)AISの症状の改善をもたらすこと;又は(5)AISを治癒することを目標とする量又は用量を指す。治療有効な量又は組み合わせは、AISの発生前に投与され得る。代替的又は追加的に、治療有効な量又は組み合わせは、AISの開始後に投与される場合がある。
【0009】
一実施態様では、t-PAとDNAseとの組み合わせの投与は、t-PA単独の投与と比べて増強された治療有効性を生じる。
【0010】
本発明のさらなる目的は、AISを患う患者に処置レジメンの部分として投与されたt-PAの効力を増強するための方法であって、患者にDNAseと組み合わせて薬学的有効量のt-PAを投与することを含む方法に関する。
【0011】
本発明のさらなる目的は、AISを患う患者に処置レジメンの部分として投与されたt-PAの効力を増強するための方法であって、t-PAで処置された患者にDNAseを投与することを含む方法に関する。一実施態様では、治療有効量のDNAseが患者に投与される。一実施態様では、本発明の方法は、患者に投与されることになるt-PAの用量を減少させることを可能にする。
【0012】
本発明のさらなる目的は、AISを患う患者において閉塞した頭蓋内動脈の再疎通を達成する方法であって、患者にt-PA及びDNAseを投与することを含む方法に関する。一実施態様では、本発明の方法は、患者に治療的に有効なt-PAとDNAseとの組み合わせを投与することを含む。
【0013】
本発明は、さらに、AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、t-PA及びDNAseを含む又はそれらからなる又はそれらから本質的になる組み合わせに関する。
【0014】
組み合わせに関連して本明細書に使用される「から本質的になる」という用語は、t-PA及びDNaseが本発明の組み合わせ中で唯一の治療化合物又は生物学的活性を有する化合物であることを意味する。
【0015】
本発明の別の目的は、AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、t-PA及びDNAse並びに少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体を含む又はそれらからなる又はそれらから本質的になる薬学的組み合わせである。
【0016】
本発明の別の目的は、AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、t-PAを含む第1の部分及びDNAseを含む第2の部分を含むパーツキットである。
【0017】
本発明の別の目的は、AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、t-PA及び少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を含む第1の部分と、DNAse及び少なくとも1つの薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物を含む第2の部分とを含むパーツキットである。
【0018】
本発明の別の目的は、AISの処置を必要とする患者におけるその処置における使用のための、本明細書上記のt-PAとDNAseとの組み合わせ又は本明細書上記の薬学的組み合わせ又は本明細書上記のパーツキットを含む医薬である。
【0019】
本明細書に使用される「急性虚血性脳卒中」又は「AIS」という用語は、Kidwell et al. "Acute Ischemic Cerebrovascular Syndrome: Diagnostic Criteria," Stroke, 2003, 34, pp. 2995-2998(参照により本明細書に組み入れられる)の診断基準により定義される「確定した急性虚血性心血管症候群(AICS)」を有する又はその危険がある患者を指す。したがって、急性虚血性脳卒中は、局所性脳虚血と一致する任意の重症度の神経機能障害の急性発症を指す。
【0020】
一実施態様では、患者は、AISと診断されている。
【0021】
別の実施態様では、患者には、AISを発生する危険がある。AISを発生する危険因子の例は、心房細動又は他の心塞栓疾患、大動脈弓、頸部動脈又は頭蓋内動脈に発生したアテローム性プラーク又は狭窄、自然発生的頸部解離、遺伝的素因、AISの家族歴及びその他を含むが、これらに限定されない。
【0022】
一実施態様では、患者は、ヒトである。一実施態様では、患者は、男性である。別の実施態様では、患者は、女性である。
【0023】
一実施態様では、患者は、以前にEVTにより処置されていた、又はEVTによる処置を受けることが計画されている。したがって、一実施態様によると、本発明の方法は、t-PA及びDNAseを患者に投与すること、並びに前記患者にEVTを実施することを含む。
【0024】
本明細書に使用される「処置」又は「処置する」という用語は、罹患する危険がある又は罹患した疑いがある患者、及び病気である又は疾患若しくは医学的状態に苦しんでいると診断された患者の処置を含む、予防的処置又は予防処置及び治癒的処置又は疾患修飾処置の両方を指し、臨床的再発の抑制を含む。処置は、障害の1つ以上の症状の発生若しくは障害の再発を予防、治癒、遅延させる、その重症度を低減する、若しくは改善するため、又は対象の生存期間を、このような処置なしで期待される生存期間よりも延長するために、医学的障害を有する、又は最終的に障害を獲得する場合がある対象に投与される場合がある。「治療レジメン」により、病気の処置のパターン、例えば治療時に使用される投薬パターンが意味される。治療レジメンは、誘導レジメン及び維持レジメンを含む場合がある。「誘導レジメン」又は「誘導期間」という語句は、疾患の最初の処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部分)を指す。誘導レジメンの一般的な目標は、処置レジメンの最初の期間中に患者に高レベルの薬物を提供することである。誘導レジメンは、維持レジメンの間に医師が採用する用量を超える用量の薬物を投与すること、維持レジメンの間に医師が薬物を投与する頻度を超える頻度で薬物を投与すること、又はその両方を含み得る「負荷レジメン」を(部分的に又は全体として)採用する場合がある。「維持レジメン」又は「維持期間」という語句は、病気の処置時に患者の維持のために、例えば患者を長期間(数ヶ月又は数年)寛解に保つために、使用される治療レジメン(又は治療レジメンの部分)を指す。維持レジメンは、連続療法(すなわち薬物を例えば毎週、毎月、毎年などの定期的な間隔で投与する)又は間欠療法(すなわち断続処置、間欠処置、再発時処置又は特定の所定基準[例えば、疾患の発現など]の達成時の処置)を採用する場合がある。
【0025】
本明細書に使用される「t-PA」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、組織型プラスミノーゲンアクチベーターを指す。この用語は、天然型t-PA及び組み換えt-PA、並びに天然型t-PAの酵素活性又は線維素溶解活性を保持する、t-PAの修飾型を含む。t-PAの酵素活性は、この分子がプラスミノーゲンをプラスミンに変換する能力を評価することにより測定することができる。t-PAの線維素溶解活性は、当技術分野において公知の任意のインビトロ血餅溶解活性により決定される場合がある。組み換えt-PAは、先行技術において広く記載されており、技術者に公知である。t-PAは、アルテプラーゼ(Activase(登録商標)又はActilyse(登録商標))として市販されている。t-PAの修飾型(「修飾t-PA」)は、特徴付けられており、当業者に公知である。修飾t-PAは、アミノ酸又はドメインが欠失又は置換された変種、他の分子とコンジュゲート又は融合された変種、及び修飾グリコシル化などの化学修飾を有する変種を含むが、これらに限定されない。いくつかの修飾t-PAが、PCT国際公開公報第93/24635号;EP352,119;EP382174に記載されている。いくつかの実施態様では、t-PAの修飾型は、テネクテプラーゼである。本明細書に使用される、TNK-t-PA又はTNKASE(商標)ブランドの組織型プラスミノーゲンアクチベーター変種としても公知の「テネクテプラーゼ」という用語は、Genentech, Inc.(South San Francisco Calif.)から入手可能なT103N、N117Q、K296A、H297A、R298A、R299A t-PAと称されるt-PA変種を指し、その際、野生型t-PAのThr103がAsnに変更され(T103N)、野生型t-PAのAsn117Glnに変更され(N117Q)、野生型t-PAのLys-His-Arg-Arg 296-299がAla-Ala-Ala-Alaに変更されている(KHRR296-299AAAA)。テネクテプラーゼは、チャイニーズハムスター卵巣細胞でクローニング及び発現されたヒトt-PAの遺伝子操作変種である(一般的に第三世代血栓溶解薬の概要についてはKeyt et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA、91: 3670-3674 (1994)及びVerstraete、Am. J. Med、109: 52-58 (2000)参照)。テネクテプラーゼは、アルテプラーゼと比較して増大したフィブリン特異性及び増大した半減期を有するように操作されたものである。
【0026】
一実施態様では、t-PAは、国際公開公報第2013/034710号に記載されるような変異型t-PAである。一実施態様では、前記の変異型t-PAは、配列番号:1(ヒトwt t-PA成熟型に対応)又は配列番号:2(tc-t-PAのヒトwt t-PA第1鎖に対応)の配列を含み、好ましくは配列番号:1又は配列番号:2と配列番号:3(tc-t-PAのヒトwt t-PA第2鎖に対応)との会合、又は少なくとも80%、85%、90%、95%若しくはそれを超える同一性を有するその変種からなり、その際、前記配列は、配列番号:1若しくは配列番号:2のリシン結合部位の任意のアミノ酸の、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン及びヒスチジンより選択される親水性アミノ酸による、好ましくはアルギニンによる置換からなる変異、並びに/又は配列番号:1若しくは配列番号:2の275位のアルギニンのセリンによる置換からなる変異を含む。
【0027】
一実施態様では、前記の変異型t-PAは、配列番号:1(ヒトwt t-PA成熟型に対応する)又は配列番号:2(二本鎖t-PAのヒトwt t-PA第1鎖に対応する)の配列を含み、好ましくは配列番号:1若しくは配列番号:2と配列番号:3(二本鎖t-PAのヒトwt t-PA第2鎖に対応する)との会合、又は少なくとも80%、85%、90%、95%若しくはそれ以上の同一性を有するその変種からなり、その際、前記配列は、配列番号:1若しくは配列番号:2の253位のトリプトファンの、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン及びヒスチジンより選択される親水性アミノ酸による、好ましくはアルギニンによる置換からなる変異、並びに/又は配列番号:1若しくは配列番号:2の275位のアルギニンのセリンによる置換からなる変異を含む。
【0028】
一実施態様では、前記変異型t-PAは、さらに以下の変異:
- 配列番号:1又は配列番号:2の125位のプロリンのアルギニンによる置換、
- 配列番号:1若しくは配列番号:2中のN末端のフィンガードメインの欠失及び/若しくはEGF様ドメインの欠失、並びに/又は配列番号:1若しくは配列番号:2の117位のアスパラギンのグルタミンによる置換、
- 配列番号:1若しくは配列番号:2の103位のトレオニンのアスパラギンによる置換、及び/又は配列番号:1若しくは配列番号:2の117位のアスパラギンのグルタミンによる置換、及び/又は配列番号:1の296~299位のリシン-ヒスチジン-アルギニン-アルギニン(KHRR)のアラニン-アラニン-アラニン-アラニン(AAAA)による置換、
- 配列番号:1又は配列番号:2の84位のシステインのセリンによる置換、
- 配列番号:1若しくは配列番号:2の275位のアルギニンのグルタミン酸若しくはグリシンによる置換、及び/又は配列番号:1若しくは配列番号:2中のクリングル1ドメインの欠失
のうち少なくとも1つを含む。
【0029】
本明細書に使用される、2つ以上のアミノ酸配列の配列間の関係に使用される場合の「同一性」又は「同一な」という用語は、2つ以上のアミノ酸残基の列間のマッチ数により決定される、アミノ酸配列間の配列関連度を指す。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって処理されるギャップ(もしあれば)付きアライメントにより、2つ以上の配列のうち小さい方の間の同一マッチのパーセントを測定するものである。関連アミノ酸配列の同一性は、公知の方法によって容易に計算することができる。このような方法は、Arthur M. Lesk, Computational Molecular Biology: Sources and Methods for Sequence Analysis (New-York: Oxford University Press, 1988); Douglas W. Smith, Biocomputing: Informatics and Genome Projects (New-York: Academic Press, 1993); Hugh G. Griffin and Annette M. Griffin, Computer Analysis of Sequence Data, Part 1 (New Jersey: Humana Press, 1994); Gunnar von Heinje, Sequence Analysis in Molecular Biology: Treasure Trove or Trivial Pursuit (Academic Press, 1987); Michael Gribskov and John Devereux, Sequence Analysis Primer (New York: M. Stockton Press, 1991);及びCarillo et al., 1988. SIAM J. Appl. Math. 48(5):1073-1082に記載される方法を含むが、これらに限定されない。同一性を決定するための好ましい方法は、被験配列間で最大のマッチを与えるように設計される。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GAP(Devereux et al., 1984. Nucl. Acid. Res. 12(1 Pt 1):387-395; Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, Madison、WI)、BLASTP、BLASTN、TBLASTN及びFASTA(Altschul et al., 1990. J. Mol. Biol. 215(3):403-410)を含むGCGプログラムパッケージを含む。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他の入手源から公的に入手可能である(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al., 1990. J. Mol. Biol. 215(3):403-410)。周知のSmith Watermanアルゴリズムも、同一性を決定するために使用される場合がある。
【0030】
本明細書に使用される「DNAse」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、ホスホジエステラーゼ活性及びDNAを加水分解する能力を有する全ての酵素を指し、それらを含む。任意の適切なDNAseが、本発明に使用され得る。DNAseは、最も好ましくはDNAse 1(EC 3.1.21.1)である。しかし、いくつかの実施態様では、DNAseはDNAse II(EC 3.1.21.1)であり得る。DNAseは、いくつかの種に存在し、DNAを開裂することが可能な任意のDNAseが本発明に使用される場合がある。一実施態様では、DNAseは、組み換えDNAseである。DNAseは、ウシ又はブタ起源などの動物起源の場合がある。DNAseは、植物、真菌、又は微生物起源の場合がある。しかし、典型的には及び最も好ましくは、DNAseはヒト由来であり、好ましくは組み換えヒトDNAseである。ドルナーゼ(Dornase(商標))及びプルモザイム(Pulmozyme(商標))などの市販のDNAse調製物が、本発明の実施態様に使用される場合がある。
【0031】
本明細書に使用される「組み合わせ」という用語は、第1の薬物をさらなる(第2の、第3の…)薬物と一緒に提供する全ての形態の投与を指すことが意図される。
【0032】
薬物は、同時に、別々に又は順次に、及び任意の順序で投与される場合がある。一実施態様では、t-PAは、DNAseの投与前に投与される。別の実施態様では、DNAseは、t-PAの投与前に投与される。別の実施態様では、t-PA及びDNAseは、同時に投与される。
【0033】
組み合わせて投与される薬物は、それらの薬物が送達される対象に生物学的活性を有する。したがって、本発明の文脈中で組み合わせは、少なくとも2つの異なる薬物を含み、その際、一方の薬物は少なくともt-PAであり、他方の薬物はDNAseである。本明細書に使用される「t-PAの効力を増強する」という表現は、組み換えDNAseがt-PAにより誘導される線維素溶解を増大させる能力を指す。特に、DNAseは、t-PAにより提供される再疎通率を増大させるために適している。したがって、2つの薬物の組み合わせは、血栓の線維素溶解の促進を生じる。
【0034】
本明細書に使用されるように、本明細書に使用される「治療的に有効な組み合わせ」という用語は、DNAseの量又は用量と一緒になったt-PAの量又は用量であって、急性虚血性脳卒中を処置するために、特に閉塞した動脈の再疎通を達成するために十分な量又は用量を指す。所与の治療的に有効な組み合わせ中のt-PA又はDNAseの量は、異なる個体及び異なる疾患にとって異なる場合があり、その組み合わせに含まれる1つ以上の追加的な薬剤又は処置に依存するであろう。「治療有効量」は、「改善した治療転帰」が生じるように当業者によって日常的に採用される手順を使用して決定される。しかし、本発明の化合物及び組成物の合計1日使用量は、健全な医学的判断の範囲内で担当医師により決断されることが理解されよう。任意の特定の対象のための特定の治療有効用量レベルは、処置されている障害及び障害の重症度;採用される特定の化合物の活性;採用される特定の組成物、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食事;採用される特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;処置の持続期間;採用される特定のポリペプチドと組み合わせて又は相一致して使用される薬物;並びに医学において周知の同様の要因を含む多種多様な要因に依存するであろう。例えば、化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増大させることは、十分に当業者の技能の範囲内である。しかし、生成物の1日投薬量は、成人1人あたり0.01mg~1,000mg/日の広い範囲にわたり変動する場合がある。典型的には、組成物は、処置されることになる対象の症状に投薬量を調整するために活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgを含有する。医薬は、典型的には、活性成分約0.01mg~約500mg、活性成分好ましくは1mg~約100mgを含有する。薬物の有効量は、通常、0.0002mg/kg~約20mg/kg体重/日の、特に約0.001mg/kg~7mg/kg体重/日の投薬量レベルで供給される。一実施態様では、t-PA、DNAse又は本発明の組み合わせの単回用量は、好ましくはAISの急性期の間に対象に投与される(又は投与されることになる)。一実施態様では、t-PA、DNAse又は本発明の組み合わせの複数の用量が対象に投与される(又は投与されることになる)。したがって、一実施態様では、本発明の組み合わせは、分割用量として投与される。一実施態様では、対象に投与される(又は投与されることになる)t-PAの用量は、約0.01mg/kgと約5mg/kgとの間に含まれる。一実施態様では、対象に投与されるt-PAの用量は、約0.1mg/kgと約1mg/kgとの間に含まれる。一実施態様では、対象に投与されるアルテプラーゼ(本発明のt-PA)の用量は、約0.9mg/kgに等しい。一実施態様では、対象に投与されるテネクテプラーゼ(本発明のt-PA)の用量は、約0.1mg/kgと約0.4mg/kgとの間に含まれる。一実施態様では、対象に投与される本発明のDNAseの用量は、約10μg/kgと約500μg/kgとの間、好ましくは約50μg/kgと約250μg/kgとの間に含まれる。一実施態様では、対象に投与されるrhDNAse 1(本発明のDNAse)の用量は、約125μg/kgに等しい。したがって一実施態様では、本発明の方法は、対象への約0.01mg/kg~約5mg/kgの範囲のt-PAの用量の投与、並びに対象への約0.1μg/kgから約500μg/kgの範囲のDNAseの用量の投与を含む。数字に先行して本明細書に使用される「約」という用語は、前記数字の値の±10%を意味する。
【0035】
典型的には、本発明の薬物(すなわち、t-PA又はDNAse又はその組み合わせ)は、薬学的に許容し得る担体を含む医薬組成物の形態で対象に投与される。
【0036】
本明細書に使用される「薬学的に許容し得る担体」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与した場合に有害反応、アレルギー反応又は他の不都合な反応を生成しない賦形剤を指す。これは、任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤並びにその他を含む。薬学的に許容し得る担体は、無毒の固体、半固体又は液体の増量剤、希釈剤、封入材料又は任意の種類の製剤化補助剤を指す。ヒト投与のために、調製物は、FDA又はEMAなどの規制当局により要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性及び純度の基準を満たすべきである。
【0037】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容し得る担体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウムなどの塩類又は電解質、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂を含むが、これらに限定されない。対象への投与に使用するために、組成物は、対象への投与用に製剤化されるであろう。
【0038】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸に、鼻腔に、口腔に、膣に又は植え込みリザーバーを介して投与される場合がある。
【0039】
一実施態様では、本発明によるt-PA及びDNAse、その組み合わせ又は薬学的組み合わせ、医薬又はパーツキットは、対象への投与のために製剤化されるであろう。本発明によるt-PA及びDNAse、その組み合わせ又は薬学的組み合わせ、又は医薬は、経口的に、非経口的に、局所的に、吸入スプレーにより、直腸に、鼻腔に、口腔に、膣に又は植え込みリザーバーを介して投与される場合がある。
【0040】
一実施態様では、t-PA及びDNAseは、同じ投与経路を介して患者に投与される。別の実施態様では、t-PA及びDNAseは、異なる投与経路を介して患者に投与される。
【0041】
一実施態様では、本発明によるt-PA及びDNAse、その組み合わせ又は薬学的組み合わせ、医薬又はパーツキットは、注射される。本明細書において使用されるものは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内注射又は注入技法を含む。本発明の組成物又は組み合わせの無菌注射用形態は、水性又は油性懸濁液の場合がある。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、当技術分野において公知の技法により製剤化される場合がある。無菌注射用調製物は、また、無毒の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒中の、例えば1,3-ブタンジオール溶液としての無菌注射液又は懸濁注射液である場合がある。採用される場合がある、許容し得るビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の固定油が、慣例的に溶媒又は懸濁媒として採用される。このために、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油が採用され得る。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射剤の調製に有用であり、オリーブ油又はヒマシ油、特にそのポリオキシエチレン化版のものなどの薬学的に許容し得る天然油も同様である。これらの油性溶液又は油性懸濁液は、また、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロース又はエマルション及び懸濁液を含む薬学的に許容し得る投薬形態の製剤化に一般に使用されている類似の分散剤を含有する場合がある。Tween類、Span類及び他の乳化剤などの他の一般に使用される界面活性剤又は薬学的に許容し得る固体、液体、若しくは他の投薬形態の製造に一般に使用されるバイオアベイラビリティー増強剤も、製剤化の目的のために使用される場合がある。
【0042】
本発明の組成物又は組み合わせは、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液又は水溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容し得る投薬形態で経口投与される場合がある。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用される担体には、乳糖及びトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤もまた、典型的には添加される。カプセル形態での経口投与のために有用な希釈剤は、例えば乳糖を含む。経口使用のために水性懸濁液が必要な場合、活性成分が乳化剤及び懸濁化剤と混合される。所望であれば、ある特定の甘味剤、香味剤又は着色剤も添加される場合がある。
【0043】
あるいは、本発明の組成物又は組み合わせは、直腸投与用の坐剤の形態で投与される場合がある。これらは、室温で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する適切な無刺激の賦形剤と薬剤を混合することによって調製することができる。このような材料は、カカオ脂、蜜ろう及びポリエチレングリコールを含む。
【0044】
本発明の組成物又は組み合わせは、また、特に処置の標的が、眼、皮膚、又は下部消化管の疾患を含む、局所適用により容易に到達可能な区域又は器官を含む場合、局所投与される場合がある。適切な局所製剤は、これらの区域又は器官のそれぞれのために容易に調製される。局所適用のために、組成物は、1つ以上の担体中に懸濁又は溶解された活性構成成分を含有する適切な軟膏として製剤化される場合がある。本発明の化合物の局所投与のための担体は、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう及び水を含むが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つ以上の薬学的に許容し得る担体中に懸濁又は溶解された活性構成成分を含有する適切なローション又はクリームとして製剤化することができる。適切な担体は、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水を含むが、これらに限定されない。下部消化管のための局所適用は、直腸坐剤製剤(上記参照)として、又は適切な浣腸製剤として成し遂げることができる。パッチも使用される場合がある。
【0045】
本発明の組成物は、また、鼻腔エアロゾル又は吸入により投与される場合がある。このような組成物は、医薬製剤化技術において周知の技法により調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又は他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を採用して食塩水中の溶液として調製される場合がある。
【0046】
以下の図面及び実施例により本発明をさらに例証する。しかし、これらの実施例及び図面は、本発明の範囲を限定するものとしていっさい解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】好中球細胞外トラップ(NETS)の負荷、急性期血栓溶解療法、及び脳卒中の原因の間の相関を示す図である。NETsの負荷と急性虚血性脳卒中患者の特徴との相関を評価するために、エンドヌクレアーゼ処理血栓により好中球エラスターゼの放出を定量することによって、血栓NETs含量を決定した。(A)、t-PA処置を受けなかった患者と比較してIV t-PAで処置された患者においてNETSの負荷は、わずかであるが有意に低減した。(B)TOAST分類によると、脳卒中の原因とNETSの負荷との間に関連はなかった(LAA:大血管アテローム性動脈硬化症;CE:心塞栓;LAC:小窩性;OTH:他の原因;UND:原因未確定)。(C)及び(D)興味深いことに、NETsの負荷は、EVT介入の長さ及びデバイスのパス数と正の相関を示した。
図2】エクスビボ脳卒中血餅溶解アッセイ法を示す図である。単独又は組み合わせて投与されたtPA及びDNAseの血栓溶解有効性をインビトロで比較した。これらの実験のために、血栓除去により回収された血栓を、tPA(1μg/mL)及び/又はDNAse(100U/mL)を補充したPBS中でインキュベートした。tPA及びDNAseの添加前並びに添加の10、30及び60分後に血栓の重量を評価した。最初の血栓重量に対するパーセントとして結果を表現する。データを中央値(四分位範囲)として提示する。
図3】好中球細胞外トラップは、急性虚血性脳卒中の血栓中に構成的に存在することを示す図である。DNA関連好中球エラスターゼ活性の測定によりAIS血栓中のNETsの存在を検討した。ドットプロットは、エンドヌクレアーゼ処理の前及び後に血栓の上清中に測定されたエラスターゼ活性を示す(n=23;p<0,0001)。
図4】血栓好中球由来細胞外DNA含量は、AISの原因と関連しないが、血管内手技の特徴と関連することを示す図である。A~B。(A)脳卒中の原因(LAA:アテローム性動脈硬化症;CE:心塞栓;OTH:他の原因;UND:未確定)又は(B)血管内療法前にIVのt-PA処置を投与されたこと又は投与されていないこと(p=0.03)に応じて分類された血栓間の好中球由来細胞外DNA含量(n=72)の比較。C~D。血栓の好中球由来細胞外DNA含量(n=72)と、血管内手技の長さ(C);及び達成されたデバイスのパス数(D)との相関。
図5】DNAse 1は、t-PA誘導血栓溶解をエクスビボで強化することを示す図である。血管内療法により回収された急性虚血性脳卒中血栓をt-PA及び/又はDNAse Iと共にインキュベートし、それらの溶解を血栓の経時的な湿重量変化の測定により追跡した。血栓の平均ベースライン重量は、14,6±8,4mgであった。単独又はDNAse Iと組み合わせたt-PAの血栓溶解効果の比較。(n=13;平均[SD];10分:t-PA=105.3%[7.02]に対してt-PA+DNAse I=97.73%[5.62](p=0.022)、30分:t-PA=104.8%[13.45]に対してt-PA+DNase I=75.13%[17.39](p=0.001)、60分:t-PA=82.71%[20.08]に対してt-PA+DNAse I=41.71%[26.43](p=0.007)。t-PA単独は、ベースラインと比較して60分でのわずかであるが有意な血栓重量低減と関連する(p=0.003)。B。単独又はt-PAと組み合わせたDNAse Iの血栓溶解効果の比較(n=11、平均[SD];10分:DNAse I=104.6%[12.73]に対してDNAse I+t-PA=92.91%[17.55]、30分:DNAse I=95.66%[21.29]に対してDNAse+t-PA=69.39%[21.65]、60分:DNAse I=83.36%[33.89]に対してDNAse I+t-PA=37.83%[17.65])。DNAse I単独は、ベースラインと比較して60分後に血栓重量に影響しない(p=0.06)。
【実施例0048】
好中球細胞外トラップ(NETs)は、近年、様々な形の血栓症の主なトリガー及び構造因子として特定された。NETsは、好中球由来のDNAから主として構成される細胞外の網である。近年、ある研究が、NETsからの細胞外DNAストランドを、急性冠症候群においてt-PA誘導血栓溶解の有効性を増大させるための潜在的治療標的として指定した。本研究の目的は、急性虚血性脳卒中(AIS)患者での血管内療法時に回収された血栓中のNETs負荷の、t-PA誘導血栓溶解、臨床転帰及びAISの原因に対する影響を評価することであった。
【0049】
本発明者らは、血管内療法で処置された150人のAIS患者からの血栓を分析した。血栓をHE染色、免疫染色及び酵素アッセイ法により特徴付けた。組織分析により、NETsが、大部分の血栓の、特にその表層における足場に寄与することが明らかとなった。血栓のインビトロでのエンドヌクレアーゼ処置により、量的な血栓のNETs負荷を反映している遊離DNA(p<0.001)及び好中球エラスターゼ(p<0.001)の上清中への重要な放出が明らかとなった。血栓のNETs負荷は、臨床転帰又はAISの原因と相関しなかった。組み換えデオキシリボヌクレアーゼ1(DNAse 1)は、インビトロ溶解アッセイ法においてt-PA誘導血栓溶解を促進したのに対し(p=0.02)、t-PA又はDNAse 1単独は、両方ともこれらの血栓の有意な血栓溶解を誘導するのに無効であった。
【0050】
本研究は、AIS血栓のNETs封入構造が、それらの原因及び局在とは独立してt-PA誘導血栓溶解抵抗性に関与する可能性もあることを示唆している。AIS血栓線維素溶解を促進するためのt-PAに追加したDNAse 1の同時投与を伴う戦略の有効性は、AISの処置に非常に興味深い可能性もある。
【実施例0051】
方法
試料の選択
本発明者らの施設で2015年12月と2016年12月との間に血管内療法(EVT)により処置され、血栓回収が成功した患者を本研究に登録した。地域の倫理委員会がこの研究プロトコールを承認した。
【0052】
データの収集
構造化質問票(ETISレジストリ、虚血性脳卒中における血管内処置)を使用して、患者の人口統計、血管危険因子、画像所見、処置前の生命徴候、AISの重症度及び臨床転帰を前向きに収集した。TOAST分類を使用して脳卒中の原因を分類した。
【0053】
血管内療法手技
最初の例では、インターベンション医師の自由裁量で、ステントリトリーバー又は直接吸引ファーストパス技術(direct aspiration first path technique)を使用するEVT手技を選択した。詳細な技術的手技は、以前に刊行されている。1
【0054】
急性虚血性脳卒中の血栓の収集及び処理
急性虚血性脳卒中(AIS)の血栓をEVTの終わりに収集した。それらを-20℃で直ちに凍結し、次に-80℃で保存し、かつ/又は3,7%パラホルムアルデヒド中で固定し、次にパラフィン中に包埋した。108人の患者を含めた。74人の患者からの血栓を溶解アッセイ法のため(n=24)及び/又はエンドヌクレアーゼ処置後のNE放出の測定により評価されるNETs含量の決定のために使用した。NE抗原(n=72)及び/又は活性(n=23)の測定によりNEの放出を定量した。34人の患者からの血栓をパラホルムアルデヒド中で固定し、免疫組織分析のために使用した。
【0055】
組織学及び免疫染色
脱パラフィン後に、組織切片を透過処理し、洗浄し、MPOに対する一次抗体(ウサギ抗ヒトMPO抗体、A0398、Dako)、シトルリン化ヒストンH4(ウサギ抗ヒトヒストンH4(シトルリン3)抗体、07-596、Millipore)と共にインキュベートし、続いて蛍光二次抗体と共にインキュベートし、DAPI(Sigma- Aldrich)で対比染色した。各AIS血栓にヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色も行った。
【0056】
エクスビボのNETs評価
市販のNETsアッセイキット(Cayman chemical)を使用した。このアッセイキットは、エンドヌクレアーゼと一緒のインキュベーションの前及び後の組織上清中の好中球エラスターゼ活性を測定することにある。放出された好中球エラスターゼは、細胞外DNA関連好中球エラスターゼに対応する。AIS血栓のNETs含量を定量するために、ヒト好中球エラスターゼELISAキット(HycultBiotech)を使用して、エンドヌクレアーゼ処置後に回収された血栓の上清中の好中球エラスターゼ抗原を測定した。
【0057】
エクスビボ血栓溶解アッセイ
以下のプロトコールは、Mangoldら(2)を改作したものであった。簡潔には、凍結AIS血栓を解糖し、2つの等しい部分に分割し、500rpm及び37℃のサーモミキサー上で組み換えt-PA(1μg/mL, Actilyse, Boehringer Ingelheim, Ingelheim am Rhein, Germany)及び/又は組み換えDNAse 1(100IE/ml, プルモザイム, Roche, Basel, Switzerland)の存在下のPBS中でインキュベートした。処置の開始の前並びに10、30及び60分後に超精密天秤を使用して血栓の重量を測定した。血栓の溶解をベースラインの血栓重量に対するパーセントとして表現した。
【0058】
統計解析
ノンパラメトリック分散分析(Kruskal-Wallis)に続く、対応のあるデータの比較のためのWilcoxon順位和検定又は対応のないデータの比較のためのMann-WhitneyのU検定を使用してデータを解析した。連続変数について平均±SDとして、質的変数について数字(パーセンテージ)として結果を提示する。統計解析について、PrismGraph 4.0ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA)を使用した。P<0.05の値を統計的に有意と見なした。
【0059】
結果
患者の特徴
本発明者らは、本研究に2015年12月と2016年12月との間の108人の患者を含めた。患者の特徴を表Iに示す。これらの特徴は、最近公表されたEVT治験の特徴に類似している。
【0060】
好中球細胞外トラップは、急性虚血性脳卒中の血栓中に構成的に存在する
H&E染色後のAIS血栓の形態計測分析により、調査されたすべての血栓中に多数の多形核細胞が存在することが明らかとなった。NETsを示唆している細胞外核酸のストランドが、組織学的に分析された34個の血栓すべてに、特にそれらの表層に見いだされた(データは示さず)。
【0061】
免疫蛍光検出により、細胞外DNAを含有する区域が、NETsに対応するシトルリン化ヒストン及び顆粒好中球タンパク質(MPO)と共局在したことが確認された(データは示さず)。AIS血栓中にNETsが存在することを確認するために、本発明者らは、23個の血栓におけるエクスビボNETsアッセイ法を実現した。このアッセイ法のために、エンドヌクレアーゼ処置後に血栓から放出されるNE活性を測定することによりNETsの存在を検討した。NEの活性は、エンドヌクレアーゼのインキュベーション後に増大したことから、すべての血栓中にNETsが存在したことを確認した(図3)。
【0062】
好中球由来細胞外DNA含量は、EVT手技の長さ及びデバイスのパス数と相関する
エンドヌクレアーゼで処置された血栓(n=72)から放出されるNE抗原を測定することにより血栓好中球由来細胞外DNA含量を定量した。NETs含量と脳卒中の原因、3ヶ月の機能的帰結又は最終TICIスコアとの間に有意な相関はなかった(図4A)。IVのt-PAで以前に処置された患者からのNETsの血栓含量は、IV t-PA療法を受けなかった患者からの血栓と比較して有意に低減した(図4B)。最終的に、NETs含量は、血管内手技の長さ及びデバイスのパス数と正の相関を示した(図4C~D)。
【0063】
DNAse 1を用いたNETsの標的化はエクスビボのt-PA誘導血栓溶解を促進した
DNAse 1によるNETsの標的化が血栓溶解を増強することができるかどうか試験するために、本発明者らは、24個のAIS血栓においてエクスビボ溶解アッセイ法を行った。第1の実験で、本発明者らは、t-PA単独に対してt-PA+DNAse 1を比較した(n=13)。DNAse 1をt-PAに添加することは、エクスビボ血栓溶解を有意に促進した。第2の実験において、本発明者らは、DNAse 1単独をt-PA+DNAse 1に対して比較した(n=11)。DNAse 1単独は、有意な血栓溶解を誘導するのに無効であった(図5A~B)。
【0064】
考察
本発明者らの研究は、(1)脳卒中の原因に関係なく、すべてのAIS血栓がNETsを含有すること、(2)NETsが、AIS血栓の外層に主に局在すること、(3)NETs含量が、血管内手技の長さ及びデバイスのパス数と関連すること、(4)t-PA及びDNAse 1の同時投与が、t-PA又はDNAse 1単独と比較してエクスビボ血栓溶解を促進することを示している。
【0065】
本発明者らの知見は、NETsがAIS血栓の重要な構成成分であることを示している最近の報告と一致する。後者の研究は、非心臓性血栓と比較して心臓起源のAIS血栓でNETsの量が有意に高いことを見いだした。本研究において、本発明者らは、NETsと脳卒中の原因との間に相関を見いだしていないが、おそらくより重要なことに、血栓の起源とは無関係に、NETsが血栓の足場に寄与することを示している。この特定の構築は、DNAse 1の存在下でのエクスビボt-PA誘導血栓溶解の劇的な増大により示唆されるようにt-PA抵抗性に関与し得る。本発明者らの結果は、DNAse 1がヒト冠動脈血栓及びAIS血栓のt-PA誘導溶解を強化するのを助けることもできることを示している最近の証拠を支持している。注目すべきことに、本発明者らは、本明細書でDNAse 1単独による処置が、エクスビボで血栓溶解効果を有しないことを示し、このことは、血栓溶解の成功を誘導するために、フィブリン及び好中球由来細胞外DNAマトリックスの両方が標的化されなければならないことを示している。
【0066】
以前の研究は、細胞外DNA及びヒストンが、フィブリンの構造を実際に修飾し、フィブリンを機械的及び酵素的破壊に対してより抵抗性にすることを示している。この事実は、NETs含量と、再疎通の成功を達成するために行われるデバイスのパス数との間に観察された相関を説明し得る。この見通しでは、NETsは、血栓と動脈壁の間又は血栓とEVTデバイスとの間の相互作用に関与し得るので、EVT時の血栓除去の成功にとっての困難を増大させている。
【0067】
興味深いことに、以前の実験研究は、虚血-再灌流モデルにおけるDNAse 1注入の影響をすでに評価している。脳虚血-再灌流のマウスモデルにおいて、DNAse 1単独は、ビヒクルと比較して梗塞体積を有意に低減することが見いだされた。ラット心筋虚血-再灌流モデルでは、DNAse 1単独は無効であったが、DNAse 1及びt-PAの同時投与は、梗塞サイズを有意に低減した。これらの一致しない結果は、脳におけるDNAse 1単独の効果に有利であろう、脳毛細血管におけるt-PAの内因性発現により説明される場合がある。10したがって、IVのt-PAに加えてDNAse 1の投与は、近位動脈再疎通率だけでなく、下流の微小血管血栓症に好都合な影響を有する可能性もある。
【0068】
血栓溶解のさらなる最適化は、t-PA抵抗性に対する内皮の寄与の評価によってもたらされる場合がある。例えば、プロテインC経路は、凝固及び炎症に重大な役割を演じる。実際、以前の研究は、可溶性内皮プロテインC受容体の増大が大血管閉塞を有するAIS患者における血栓溶解抵抗性に関連することを示した。11
【0069】
最終的に、これらの証拠は、大血管中に埋没した血栓、活性化内皮及び下流の微小血管血栓症を標的化する治療法を含む、今後のAIS処置の「薬理学的カクテル」を支持するものである。12
【0070】
結論
NETsは、少なくとも部分的に、血栓t-PA抵抗性を担う足場を形成する。本発明者らのデータは、DNAse 1注入がAISにおけるIVのt-PA誘導血栓溶解の有効性を改善するための相乗作用を有し得るという概念を支持している。
【0071】
【表1】
【0072】
表I。血栓が収集され、本研究のために使用された急性虚血性脳卒中患者(n=108)の臨床特徴。SD:標準偏差;LAA:大血管アテローム性動脈硬化症;CE:心塞栓;OTH:他の原因;UND:未確定;IV:静脈内;MCA:中大脳動脈;ICA:内頸動脈;BA:脳底動脈;NIHSS:米国国立衛生研究所脳卒中スケール;TICI:脳梗塞での血栓溶解。
【0073】
参考文献
本出願にわたり、本発明が属する技術の現状を様々な参照が説明している。これらの参照の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023052764000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明
【外国語明細書】