(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052881
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】PET検出器残光管理のための方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
A61N5/10 S
A61N5/10 H
A61N5/10 Q
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023015104
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2020500806の分割
【原出願日】2018-07-11
(31)【優先権主張番号】62/531,260
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510246448
【氏名又は名称】リフレクション メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディミトリ オルコット
(72)【発明者】
【氏名】マシュー フランシス ビエニオセック
(72)【発明者】
【氏名】ブレント ハーパー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PET検出器残光管理のための方法を提供する。
【解決手段】PET検出器の残光を引き起こす電離放射線の存在下での陽電子放出(またはPET)データの収集のための方法およびデバイスを開示する。方法は、治療セッション中にPET検出器の一致トリガ閾値を調節することを含む。方法は、治療セッション中に陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせるために使用される利得係数)を調節することを含む。放射線療法セッション中に陽電子放出データを収集するための方法は、放射線パルスがリニアックによって放出された後に所定の期間にわたって、PET検出器とコントローラの信号プロセッサとの間の通信を一時中断することを含む。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/531,260号の優先権を主張し、これは、その全体が参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、線形加速器(または他の電離放射線源)と、1つまたは複数の陽電子放出(もしくはPET)検出器とを備える、放射線療法システムで使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
放射線療法システムは、典型的には、患者腫瘍領域等の標的組織領域の照射のための治療放射線ビームを生成する、放射線源(例えば、線形加速器またはリニアック)を有する。生成された放射線ビームは、標的領域に向かって指向され得、1つまたは複数のジョーおよび/またはコリメータによってビーム限定され得るが、放射線ビームの一部は、標的領域から逸脱および/または散乱し得る。本散乱放射線は、放射線療法システムの他のコンポーネントの機能に干渉し得る。
【0004】
例えば、散乱または迷放射線は、データを精密に収集するX線および/またはPET検出器等の放射線療法システム内の種々の検出器の能力に影響を及ぼし得る。放射線療法システム内のPET検出器は、散乱または迷放射線へのPET検出器応答が真の陽電子放出事象と区別不可能であり得るように、影響を受け得る。高レベルの放射線を伴う状況では(例えば、リニアックからの、例えば、放射線パルス中に)PET検出器は、「ブランク化」および/または飽和し得る。これは、それらが陽電子放出データを有意義に検出することを不可能にし得る。
【0005】
故に、リニアックからの散乱放射線に起因する機器損傷および/またはデータ破損の危険性を管理するための方法およびデバイスを開発することが望ましくあり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、PET検出器の残光を引き起こす電離放射線の存在下での陽電子放出(またはPET)データの収集のための方法およびデバイスが開示される。一変形例では、本方法は、治療セッション中にPET検出器の一致トリガ閾値を調節するステップを含んでもよい。一致トリガ閾値は、PET検出器残光の程度が増加するにつれて増加され得る。例えば、一致トリガ閾値は、PET検出器のうちの1つまたは複数のものの暗カウント率が増加する、および/または閾値暗カウント率を超えるにつれて、増加され得る。代替として、または加えて、一致トリガ閾値は、PET検出器のうちの1つまたは複数のもののバイアス電流が増加する、および/または閾値バイアス電流レベルを超えるにつれて、増加され得る。一致トリガ閾値はまた、(例えば、PET検出器またはその周辺における)システムの測定された温度に基づいて調節されてもよく、一致トリガ閾値は、システムの温度が上昇するにつれて増加され得る。いくつかの変形例では、一致トリガ閾値は、放射線源またはリニアックの放射線出力に基づいて調節されてもよい。例えば、一致トリガ閾値は、放出された放射線パルスの数が所定の閾値を超えるときに、および/またはパルススケジュールに基づいて、ならびに/もしくは治療セッション中にリニアックによって放出される放射線の累積量に基づいて、調節されてもよい。いくつかの変形例では、一致トリガ閾値は、2つのシステムコンポーネント(例えば、リニアックおよびコリメータ)の間の同期化がシフトし、タイミングシフトが所定の閾値を超える場合に、調節されてもよい。
【0007】
いくつかの変形例では、放射線療法セッション中に陽電子放出データを収集するための方法は、放射線パルスがリニアックによって放出された後に所定の期間にわたって、PET検出器とコントローラの信号プロセッサとの間の通信を一時中断するステップを含んでもよい。例えば、所定の期間は、約100マイクロ秒またはそれを上回る、もしくは約200秒またはそれを上回り得る。代替として、または加えて、所定の期間は、少なくとも部分的にリニアック放射線パルスの幅または持続時間によって決定されてもよい。例えば、所定の期間は、リニアックパルスの持続時間よりも約25倍または約100倍長くあり得る。所定の期間が経過した後、PET検出器と信号プロセッサとの間の通信は、再開してもよく、陽電子放出データは、検出器から信号プロセッサに伝送され、および/またはコントローラによる分析ならびに/もしくは記憶のために信号プロセッサによって収集されてもよい。
【0008】
他の変形例では、放射線療法システムは、放射線源と、複数のPET検出器(例えば、PET検出器アレイ)と、複数のPET検出器の上を移動可能な放射線遮断遮蔽体とを備えてもよい。放射線遮断遮蔽体は、放射線源が放射線を放出しているときの照射間隔中にPET検出器にわたって位置付けられてもよく、放射線源が放射線を放出していないときの検出間隔中にPET検出器から離れるように位置付けられてもよい。
【0009】
放射線療法システムの一変形例は、着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを指向するように構成される、放射線源であって、各放射線パルスは、所定のパルス持続時間を有する、放射線源と、一致時間窓内に検出器の一部に入射し、一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する、一対の陽電子消滅光子を検出することによって、陽電子放出経路を検出するように構成される、複数のPET検出器と、複数のPET検出器と通信するコントローラであって、治療セッション中に一致トリガ閾値を調節するように構成される、コントローラとを備えてもよい。コントローラは、閾値数の放射線パルスが着目領域に向かって指向された後に一致トリガ閾値を調節するように構成されてもよい。閾値数の放射線パルスは、約1,000回の放射線パルスであってもよい。一致トリガ閾値は、約2つの光子トリガ~約5つの光子トリガであってもよい。一致トリガ閾値は、第1の一致トリガ閾値であってもよく、閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスであってもよく、コントローラは、第2の閾値数の放射線パルスが着目領域に向かって指向された後に、第1の一致トリガ閾値を第2の閾値に調節するように構成されてもよい。第2の一致トリガ閾値は、第1の一致トリガ閾値を上回り得、第2の閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスを上回り得る。第2の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガ~約6つの光子トリガであってもよく、第2の閾値数の放射線パルスは、約2,000であってもよい。第2の一致トリガ閾値は、第1の一致トリガ閾値未満であり得、第2の閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスを上回り得る。コントローラは、基準から10よりも大きいタイミングの変化に基づいて、一致トリガ閾値を調節するように構成されてもよい、および/または複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のものの暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、一致トリガ閾値を調節するように構成されてもよい。閾値暗カウント率は、例えば、約3Mcps~約10Mcpsであってもよい。随意に、コントローラはさらに、複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のもののバイアス電流を測定するように構成される電流検出器を備えてもよく、コントローラは、バイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに一致トリガ閾値を調節するように構成される。閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約5mA、例えば、約1mA、約3mAであってもよい。代替として、または加えて、コントローラは、放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに一致トリガ閾値を調節するように構成されてもよい。閾値放射線レベルは、約0.1cGy/分~約1cGy/分であってもよい。コントローラはさらに、信号プロセッサと、PET検出器出力信号を信号プロセッサに選択的に通信するように構成されるスイッチとを備えてもよい。スイッチは、各放射線パルス後の所定の期間にわたって信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよく、所定の期間対各放射線パルスの持続時間の比は、約25:1~約100:1であってもよい。コントローラは、各放射線パルスの持続時間および各放射線パルス後の所定の期間にわたって信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよい。コントローラは、ゲート信号に基づいて、信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよい。ゲート信号は、コントローラに、各放射線パルス後に少なくとも100マイクロ秒信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断させてもよい。いくつかの変形例では、ゲート信号は、コントローラに、各放射線パルス後に少なくとも200マイクロ秒信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断させてもよい。代替として、または加えて、コントローラは、放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づいて、一致トリガ閾値を調節するように構成されてもよい。
【0010】
また、本明細書では、PET検出器の一致トリガ閾値を自動的に調節するための方法も開示される。本方法は、一致トリガ閾値を有する、2つまたはそれを上回るPET検出器を備える、放射線療法システムの特性を測定するステップと、測定された特性がその特性の所定の閾値を超えるかどうかを決定するステップと、測定された特性がその特性の閾値を超えるかどうかの決定に基づいて、一致トリガ閾値を調節するステップとを含んでもよい。一致トリガ閾値を調節するステップは、測定された特性がその特性の所定の閾値を超える場合に、一致トリガ閾値を増加させるステップ、または測定された特性がその特性の所定の閾値にある、もしくはそれを下回る場合に、一致トリガ閾値を減少させるステップを含んでもよい。測定された特性は、2つまたはそれを上回るPET検出器の暗カウント率であってもよく、所定の閾値は、暗カウント率閾値であってもよい。測定された特性は、2つまたはそれを上回るPET検出器のバイアス電流であってもよく、所定の閾値は、バイアス電流閾値であってもよい。放射線療法システムは、温度センサを備えてもよく、測定された特性は、温度測定であってもよく、所定の閾値は、温度閾値であってもよい。代替として、または加えて、放射線療法システムは、パルスカウンタを有する、放射線源を備えてもよく、測定された特性は、パルスカウンタから測定されるパルスカウントであってもよく、所定の閾値は、パルスカウント閾値であってもよい。放射線療法システムは、放射線源と、コリメータとを備えてもよく、放射線源およびコリメータは、所定のタイミング公差とともに動作するように構成されてもよく、測定された特性は、所定のタイミング公差からの偏差の量であってもよく、所定の閾値は、タイミング偏差閾値であってもよい。
【0011】
本明細書では、陽電子消滅放出経路を検出するための方法が開示される。本方法は、1つまたは複数の放射線ビームパルスを標的領域に指向するステップであって、標的領域は、PET集中的である、ステップと、時間窓内に複数のPET検出器の一部に入射し、第1の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する、第1の一対の陽電子消滅光子によって画定される、第1の陽電子放出経路を検出するステップと、第1の一致トリガ閾値を第2の一致トリガ閾値に調節するステップと、時間窓内に複数のPET検出器の一部に入射し、第2の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する、第2の一対の陽電子消滅光子によって画定される、第2の陽電子放出経路を検出するステップとを含んでもよい。第1の一致トリガ閾値は、所定数の放射線ビームパルスが標的領域に指向された後に第2の一致トリガ閾値に調節されてもよい。第1の一致トリガ閾値を調節するステップは、放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づいてもよい。第2の一致トリガ閾値は、第1の一致トリガ閾値を上回る値を有してもよく、例えば、第2の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガであってもよく、第1の一致トリガ閾値は、約2つの光子トリガであってもよい。いくつかの変形例では、所定数の放射線パルスは、約1,000であってもよい。所定数の放射線パルスは、第1の所定数の放射線パルスであってもよく、本方法はさらに、第2の所定の数の放射線パルスが標的領域に指向された後に、第2の一致トリガ閾値を第3の一致トリガ閾値に調節するステップと、時間窓内に複数のPET検出器の一部に入射し、第3の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する、第3の一対の陽電子消滅光子によって画定される、第3の陽電子放出経路を検出するステップとを含んでもよい。第3の一致トリガ閾値は、第2の一致トリガ閾値を上回り得、第2の所定数の放射線パルスは、第1の所定数の放射線パルスを上回り得る。第3の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガ~約6つの光子トリガであってもよく、第2の所定の数の放射線パルスは、約2,000であってもよい。放射線ビームパルスはそれぞれ、パルス幅を有してもよく、複数のPET検出器は、信号プロセッサを備えるコントローラと通信してもよく、本方法はさらに、各放射線パルス後の所定の期間にわたってPET検出器から信号プロセッサへのデータの通信を一時中断するステップであって、所定の期間対パルス幅の比は、約25:1~約100:1である、ステップを含んでもよい。随意に、データの通信を一時中断するステップは、ゲート信号に基づいてもよい。ゲート信号は、放射線パルス後に少なくとも100マイクロ秒PET検出器から信号プロセッサへのデータの通信の一時中断を引き起こしてもよい、またはゲート信号は、各放射線パルス後に少なくとも200マイクロ秒PET検出器から信号プロセッサへのデータの通信の一時中断を引き起こしてもよい。第1の一致トリガ閾値は、複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のものの暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節されてもよい。閾値暗カウント率は、約3Mcps~約10Mcpsであってもよい。第1の一致トリガ閾値は、複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のもののバイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節されてもよい。例えば、閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約5mA、例えば、約1mA、約3mAであってもよい。第1の一致トリガ閾値は、放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節されてもよい。例えば、閾値放射線レベルは、約0.1cGy/分~約1cGy/分であってもよい。
【0012】
また、本明細書では、1つまたは複数の照射間隔中に着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを送達するように構成される、放射線源と、1つまたは複数の検出間隔中に着目PET集中領域によって放出される1つまたは複数の陽電子放出経路を検出するように構成される、複数のPET検出器と、複数のPET検出器の上を移動可能な放射線遮断フィルタとを備える、放射線療法システムが開示される。放射線遮断フィルタは、1つまたは複数の照射間隔中に複数のPET検出器にわたって位置付けられ、1つまたは複数の検出間隔中にPET検出器から離れて位置付けられるように構成されてもよい。
【0013】
本明細書では、着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを指向するように構成される、放射線源と、陽電子消滅光子を検出するように構成される、複数のPET検出器と、複数のPET検出器のバイアス電流を測定するように構成される、電流検出器と、複数のPET検出器から光子データ出力を受信するように構成される、コントローラであって、治療セッション中に測定されたバイアス電流に基づく値を有する(例えば、測定されたバイアス電流に基づいて計算される)利得係数を使用して、光子データを調節することによって、一対の一致陽電子消滅光子を検出するように構成される、コントローラとを備える、放射線療法システムが開示される。コントローラは、バイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに利得係数を調節するように構成されてもよく、例えば、閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約1mAであってもよい。いくつかの変形例では、利得係数は、測定されたバイアス電流と光子データ出力の中の陽電子消滅光子の検出の光電ピークシフトの規模との間の比であってもよい。光子データ出力を調節するステップは、光子データ出力を利得係数で乗算するステップ、または利得係数によって光子データ出力を直線的にシフトさせるステップを含んでもよい。代替として、または加えて、コントローラは、閾値数の放射線パルスが着目領域に向かって指向された後に利得係数を調節するように構成されてもよく、例えば、閾値数の放射線パルスは、約1,000回の放射線パルスであってもよい。いくつかの変形例では、利得係数は、第1の利得係数であってもよく、閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスであってもよく、コントローラは、第2の閾値数の放射線パルスが着目領域に向かって指向された後に、第1の利得係数を第2の利得係数に調節するように構成されてもよい。第2の利得係数は、第1の利得係数を上回り得、第2の閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスを上回り得る。代替として、または加えて、コントローラは、複数のPET検出器からの光子データ出力に基づいて、消滅光子の光電ピーク場所を計算するように、かつ基準レベルからの光電ピーク場所のシフトに基づいて、利得係数を調節するように構成されてもよい。代替として、または加えて、コントローラは、複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のものの暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、利得係数を調節するように構成されてもよく、例えば、閾値暗カウント率は、約3Mcps~約10Mcpsである。代替として、または加えて、コントローラは、放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに利得係数を調節するように構成されてもよく、例えば、閾値放射線レベルは、約0.1cGy/分~約1cGy/分であってもよい。
【0014】
いくつかの変形例では、コントローラはさらに、信号プロセッサと、PET検出器出力信号を信号プロセッサに選択的に通信するように構成されるスイッチとを備えてもよい。スイッチは、各放射線パルス後の所定の期間にわたって信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよく、所定の期間対各放射線パルスの持続時間の比は、約25:1~約100:1であってもよい。コントローラは、各放射線パルスの持続時間および各放射線パルス後の所定の期間にわたって信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよい。例えば、コントローラは、ゲート信号に基づいて、信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成されてもよい。いくつかの変形例では、ゲート信号は、コントローラに、各放射線パルス後に100マイクロ秒またはそれを上回って信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断させてもよく、例えば、ゲート信号は、コントローラに、各放射線パルス後に200マイクロ秒またはそれを上回って信号プロセッサへのPET検出器出力信号の通信を一時中断させてもよい。代替として、または加えて、コントローラは、放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づいて、利得係数を調節するように構成されてもよい。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
放射線療法システムであって、
着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを指向するように構成される放射線源と、
複数のPET検出器であって、陽電子消滅光子を検出するように構成される複数のPET検出器と、
前記複数のPET検出器のバイアス電流を測定するように構成される電流検出器と、
前記複数のPET検出器から光子データ出力を受信するように構成されるコントローラであって、治療セッション中に前記測定されたバイアス電流に基づいて計算される利得係数を使用して前記光子データ出力を調節することによって、一対の一致陽電子消滅光子を検出するように構成されるコントローラと
を備える、システム。
(項目2)
前記コントローラは、前記バイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに前記利得係数を調節するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記利得係数は、前記測定されたバイアス電流と光子データ出力中の前記陽電子消滅光子の検出の光電ピークシフトの規模との間の比である、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記光子データ出力を調節することは、前記光子データ出力を前記利得係数で乗算すること、または前記利得係数によって前記光子データ出力を直線的にシフトさせることを含む、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記コントローラは、閾値数の放射線パルスが前記着目領域に向かって指向された後に前記利得係数を調節するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記閾値数の放射線パルスは、約1,000回の放射線パルスである、項目5に記載のシステム。
(項目7)
前記利得係数は、第1の利得係数であり、前記閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスであり、前記コントローラは、第2の閾値数の放射線パルスが前記着目領域に向かって指向された後に、前記第1の利得係数を第2の利得係数に調節するように構成される、項目5に記載のシステム。
(項目8)
前記第2の利得係数は、前記第1の利得係数を上回り、前記第2の閾値数の放射線パルスは、前記第1の閾値数の放射線パルスよりも多い、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記コントローラは、前記複数のPET検出器からの前記光子データ出力に基づいて、消滅光子の光電ピーク場所を計算するように、かつ基準レベルからの前記光電ピーク場所のシフトに基づいて、前記利得係数を調節するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記コントローラは、前記複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のPET検出器の暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、前記利得係数を調節するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記閾値暗カウント率は、約3Mcps~約10Mcpsである、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約1mAである、項目2に記載のシステム。
(項目13)
前記コントローラは、前記放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに前記利得係数を調節するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記閾値放射線レベルは、約0.1cGy/min~約1cGy/minである、項目13に記載のシステム。
(項目15)
前記コントローラはさらに、信号プロセッサと、PET検出器出力信号を前記信号プロセッサに選択的に通信するように構成されるスイッチとを備え、前記スイッチは、各放射線パルス後の所定の期間にわたって前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成され、前記所定の期間対各放射線パルスの持続時間の比は、約25:1~約100:1である、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記コントローラは、各放射線パルスの持続時間および各放射線パルス後の所定の期間にわたって前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成される、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記コントローラは、ゲート信号に基づいて、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成される、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記ゲート信号は、前記コントローラに、各放射線パルス後に100μs以上の間、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断させる、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記ゲート信号は、前記コントローラに、各放射線パルス後に200μs以上の間、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断させる、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記コントローラは、前記放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づいて、前記利得係数を調節するように構成される、項目5に記載のシステム。
(項目21)
放射線療法システムであって、
着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを指向するように構成される放射線源であって、各放射線パルスは、所定のパルス持続時間を有する、放射線源と、
一致時間窓内に検出器の一部に入射し、一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する一対の陽電子消滅光子を検出することによって、陽電子放出経路を検出するように構成される複数のPET検出器と、
前記複数のPET検出器と通信するコントローラであって、治療セッション中に前記一致トリガ閾値を調節するように構成されるコントローラと
を備える、システム。
(項目22)
前記コントローラは、閾値数の放射線パルスが前記着目領域に向かって指向された後に前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目23)
前記閾値数の放射線パルスは、約1,000回の放射線パルスである、項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記一致トリガ閾値は、約2つの光子トリガ~約5つの光子トリガである、項目22に記載のシステム。
(項目25)
前記一致トリガ閾値は、第1の一致トリガ閾値であり、前記閾値数の放射線パルスは、第1の閾値数の放射線パルスであり、前記コントローラは、第2の閾値数の放射線パルスが前記着目領域に向かって指向された後に、前記第1の一致トリガ閾値を第2の一致トリガ閾値に調節するように構成される、項目24に記載のシステム。
(項目26)
前記第2の一致トリガ閾値は、前記第1の一致トリガ閾値を上回り、前記第2の閾値数の放射線パルスは、前記第1の閾値数の放射線パルスよりも多い、項目25に記載のシステム。
(項目27)
前記第2の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガ~約6つの光子トリガであり、前記第2の閾値数の放射線パルスは、約2,000である、項目26に記載のシステム。
(項目28)
前記第2の一致トリガ閾値は、前記第1の一致トリガ閾値未満であり、前記第2の閾値数の放射線パルスは、前記第1の閾値数の放射線パルスよりも多い、項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記コントローラは、基準から10%よりも大きいタイミングの変化に基づいて、前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目30)
前記コントローラは、前記複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のPET検出器の暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目31)
前記閾値暗カウント率は、約3Mcps~約10Mcpsである、項目30に記載のシステム。
(項目32)
前記コントローラはさらに、前記複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のPET検出器のバイアス電流を測定するように構成される電流検出器を備え、前記コントローラは、前記バイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目11に記載のシステム。
(項目33)
前記閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約1mAである、項目32に記載のシステム。
(項目34)
前記コントローラは、前記放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目21に記載のシステム。
(項目35)
前記閾値放射線レベルは、約0.1cGy/min~約1cGy/minである、項目34に記載のシステム。
(項目36)
前記コントローラはさらに、信号プロセッサと、PET検出器出力信号を前記信号プロセッサに選択的に通信するように構成されるスイッチとを備え、前記スイッチは、各放射線パルス後の所定の期間にわたって前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成され、前記所定の期間対各放射線パルスの持続時間の比は、約25:1~約100:1である、項目21に記載のシステム。
(項目37)
前記コントローラは、各放射線パルスの持続時間および各放射線パルス後の所定の期間にわたって前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成される、項目36に記載のシステム。
(項目38)
前記コントローラは、ゲート信号に基づいて、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断するように構成される、項目37に記載のシステム。
(項目39)
前記ゲート信号は、前記コントローラに、各放射線パルス後に少なくとも100μsの間、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断させる、項目38に記載のシステム。
(項目40)
前記ゲート信号は、前記コントローラに、各放射線パルス後に少なくとも200μsの間、前記信号プロセッサへの前記PET検出器出力信号の通信を一時中断させる、項目39に記載のシステム。
(項目41)
前記コントローラは、前記放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づいて、前記一致トリガ閾値を調節するように構成される、項目22に記載のシステム。
(項目42)
PET検出器の一致トリガ閾値を自動的に調節するための方法であって、
一致トリガ閾値を有する2つ以上のPET検出器を備える放射線療法システムの特性を測定することと、
前記測定された特性がその特性の所定の閾値を超えるかどうかを決定することと、
前記測定された特性がその特性の前記閾値を超えるかどうかの決定に基づいて、前記一致トリガ閾値を調節することと
を含む、方法。
(項目43)
前記一致トリガ閾値を調節することは、前記測定された特性がその特性の前記所定の閾値を超える場合に前記一致トリガ閾値を増加させること、または前記測定された特性がその特性の前記所定の閾値以下である場合に前記一致トリガ閾値を減少させることを含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記測定された特性は、前記2つ以上のPET検出器の暗カウント率であり、前記所定の閾値は、暗カウント率閾値である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記測定された特性は、前記2つ以上のPET検出器のバイアス電流であり、前記所定の閾値は、バイアス電流閾値である、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記放射線療法システムは、温度センサを備え、前記測定された特性は、温度であり、前記所定の閾値は、温度閾値である、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記放射線療法システムは、パルスカウンタを有する放射線源を備え、前記測定された特性は、前記パルスカウンタから測定されるパルスカウントであり、前記所定の閾値は、パルスカウント閾値である、項目43に記載の方法。
(項目48)
前記放射線療法システムは、放射線源と、コリメータとを備え、前記放射線源および前記コリメータは、所定のタイミング公差でともに動作するように構成され、前記測定された特性は、前記所定のタイミング公差からの偏差の量であり、前記所定の閾値は、タイミング偏差閾値である、項目43に記載の方法。
(項目49)
陽電子消滅放出経路を検出するための方法であって、
1つまたは複数の放射線ビームパルスを標的領域に指向することであって、前記標的領域は、PET集中的である、ことと、
時間窓内に複数のPET検出器の一部に入射し、第1の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する第1の一対の陽電子消滅光子によって画定される第1の陽電子放出経路を検出することと、
前記第1の一致トリガ閾値を第2の一致トリガ閾値に調節することと、
前記時間窓内に前記複数のPET検出器の一部に入射し、前記第2の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する第2の一対の陽電子消滅光子によって画定される第2の陽電子放出経路を検出することと
を含む、方法。
(項目50)
前記第1の一致トリガ閾値は、所定数の放射線ビームパルスが前記標的領域に指向された後に第2の一致トリガ閾値に調節される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記第1の一致トリガ閾値を調節することは、放射線パルスのタイミングスケジュールに少なくとも部分的に基づく、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記第2の一致トリガ閾値は、前記第1の一致トリガ閾値を上回る値を有する、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記第2の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガであり、前記第1の一致トリガ閾値は、約2つの光子トリガである、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記所定数の放射線パルスは、約1,000である、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記所定数の放射線パルスは、第1の所定数の放射線パルスであり、前記方法はさらに、
第2の所定の数の放射線パルスが前記標的領域に指向された後に、前記第2の一致トリガ閾値を第3の一致トリガ閾値に調節することと、
前記時間窓内に前記複数のPET検出器の一部に入射し、前記第3の一致トリガ閾値を超える検出器信号を生成する第3の一対の陽電子消滅光子によって画定される第3の陽電子放出経路を検出することと
を含む、項目50に記載の方法。
(項目56)
前記第3の一致トリガ閾値は、前記第2の一致トリガ閾値を上回り、前記第2の所定数の放射線パルスは、前記第1の所定数の放射線パルスよりも多い、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記第3の一致トリガ閾値は、約4つの光子トリガ~約6つの光子トリガであり、前記第2の所定の数の放射線パルスは、約2,000である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記放射線ビームパルスはそれぞれ、パルス幅を有し、前記複数のPET検出器は、信号プロセッサを備えるコントローラと通信し、前記方法はさらに、
各放射線パルス後の所定の期間にわたって前記PET検出器から前記信号プロセッサへのデータの通信を一時中断することであって、前記所定の期間対前記パルス幅の比は、約25:1~約100:1である、こと
を含む、項目49に記載の方法。
(項目59)
前記データの通信を一時中断することは、ゲート信号に基づく、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記ゲート信号は、前記放射線パルス後に少なくとも100μsの間、前記PET検出器から前記信号プロセッサへのデータの通信の一時中断を引き起こす、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記ゲート信号は、各放射線パルス後に200μsの間、前記PET検出器から前記信号プロセッサへのデータの通信の一時中断を引き起こす、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記第1の一致トリガ閾値は、前記複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のPET検出器の暗カウント率が閾値暗カウント率を超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節される、項目49に記載の方法。
(項目63)
前記閾値暗カウント率は、約3Mcps~約10Mcpsである、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記第1の一致トリガ閾値は、前記複数のPET検出器のうちの1つまたは複数のPET検出器のバイアス電流が閾値バイアス電流値を超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節される、項目49に記載の方法。
(項目65)
前記閾値バイアス電流値は、約0.1mA~約1mAである、項目64に記載の方法。(項目66)
前記第1の一致トリガ閾値は、前記放射線源から放出される放射線の量が閾値放射線レベルを超えるときに、第2の一致トリガ閾値に調節される、項目49に記載の方法。
(項目67)
前記閾値放射線レベルは、約0.1cGy/min~約1cGy/minである、項目66に記載の方法。
(項目68)
放射線療法システムであって、
1つまたは複数の照射間隔中に着目PET集中領域に向かって1つまたは複数の放射線パルスを送達するように構成される放射線源と、
1つまたは複数の検出間隔中に前記着目PET集中領域によって放出される1つまたは複数の陽電子放出経路を検出するように構成される複数のPET検出器と、
前記複数のPET検出器の上を移動可能な放射線遮断フィルタであって、前記1つまたは複数の照射間隔中に前記複数のPET検出器の上に位置付けられ、前記1つまたは複数の検出間隔中に前記PET検出器から離れて位置付けられるように構成される放射線遮断フィルタと
を備える、システム
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは、放射線療法システムの一変形例の正面図の概略図である。
【0016】
【
図1B】
図1Bは、PET検出器残光を引き起こし得る散乱X線および残光による影響を受けるPET検出器出力のプロットを図式的に描写する。
【0017】
【
図2A】
図2Aは、動的利得調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0018】
【
図2B】
図2Bは、動的PET検出器閾値調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0019】
【
図3】
図3は、PET検出器雑音レベルに基づく動的PET検出器閾値調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0020】
【
図4】
図4は、コンポーネントタイミング分布の変化に基づく動的PET検出器閾値調節のための方法の別の変形例のフローチャート図である。
【0021】
【
図5】
図5は、PET検出器暗カウント率に基づく動的PET検出器閾値調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0022】
【
図6A】
図6Aは、PET検出器バイアス電流に基づく動的PET検出器閾値調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0023】
【
図6B】
図6Bは、PET検出器バイアス電流に基づく動的利得調節のための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0024】
【
図7A】
図7Aは、PET検出器からコントローラへの陽電子放出データの通信をゲート制御するための方法の一変形例のフローチャート図である。
【0025】
【
図7B】
図7Bは、PET検出器からコントローラへの陽電子放出データの通信をゲート制御するための論理回路の一変形例の概略図である。
【0026】
【
図7C】
図7Cは、PET検出器からコントローラへの陽電子放出データの通信をゲート制御するための方法の一変形例のタイミング図である。
【0027】
【
図8A】
図8Aは、第1の構成における放射線フィルタリングの一変形例の概略描写である。
【0028】
【0029】
【
図8C】
図8Cは、第1の構成における
図8Aの放射線フィルタリングの概略描写の側面図である。
【0030】
【
図9A】
図9Aは、第1の構成における放射線フィルタリングの別の変形例の概略描写である。
【0031】
【0032】
【
図10A】
図10Aは、PET検出器残光を測定するための実験設定のパラメータおよび配列を描写する。
【0033】
【
図10B】
図10Bは、単結晶PET検出器の暗カウント率を測定するための実験設定の配列の概略描写である。
【0034】
【
図10C】
図10Cは、リニアックパルスの前、間、および後のPET検出器データおよび暗カウントのプロットを提供する。
【0035】
【
図10D】
図10Dは、経時的なリニアックパルス後のPET検出器暗カウント率のプロットを提供する。
【0036】
【
図10E】
図10Eは、経時的なリニアックパルス後のPET検出器暗カウント率のプロットを提供する。
【0037】
【
図11】
図11は、2つの一致多結晶PET検出器残光を測定するための別の実験設定のパラメータおよび配列を描写する。
【0038】
【
図12】
図12は、リニアックパルス後の時間の関数としての飛行時間PET検出器の時間分解能のプロットである。
【0039】
【
図13A】
図13Aは、リニアックビームオン時間の関数としてのバイアス電流および温度の変化の実験データプロットを描写する。
【0040】
【
図13B】
図13Bは、バイアス電流および光電ピーク場所を測定することによって生成された較正プロットを描写する。
【0041】
【
図13C】
図13Cは、利得調節による残光補正を伴って、経時的なPET検出器のエネルギー分解能のプロット(各データ系列間隔は、リニアックビームがデータ系列値1においてオンにされ、データ系列値7においてオフにされた、10分インクリメントを表す)を描写する。
【0042】
【
図13D】
図13Dは、経時的な時間分解能重心のシフト(各データ系列間隔は、リニアックビームがデータ系列値1においてオンにされ、データ系列値7においてオフにされた、10分インクリメントを表す)を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
放射線療法システムのいくつかの変形例は、治療放射線源(リニアック等)と、陽電子放出(すなわち、PET集中)組織領域からの放出を検出するための1つまたは複数のPET検出器(例えば、1つまたは複数のPET検出器アレイ)とを備えてもよい。患者は、治療セッションに先立って、PET放射性トレーサとして公知である放射性原子で標識された分子を注射され得、トレーサは、優先的に、1つまたは複数の腫瘍領域において蓄積し得る。患者の内側の放射性原子は、放射性崩壊を受け、陽電子を放出する。いったん原子から放出されると、陽電子は、迅速に近傍の電子と衝突し、その後、両方が消滅させられるであろう。2つの高エネルギー光子(511keV)が、消滅点から放出され、反対方向に進行する。2つの光子が2つのPET検出器によって同時に検出されるとき、消滅が2つのPET検出器を継合する線に沿ったいずれかの場所で起こったことが把握される。放射線療法システムは、治療セッションの前または間に陽電子放出データを収集してもよく、本放出データは、これらの腫瘍領域の照射を誘導するために使用されてもよい。例えば、放出誘導型放射線療法システムは、患者を中心として回転可能であるガントリ上に搭載される、複数のPET検出器と、リニアックとを備えてもよい。いくつかの変形例では、複数のPET検出器は、ガントリ上で相互の反対に配置される、2つのPET検出器アレイを備えてもよい。検出器によってリアルタイムで収集される放出データは、ガントリの回転を制御し、リニアックからPET集中腫瘍領域に放射線を指向するように、システムコントローラによって分析されてもよい。いくつかの変形例では、リアルタイム陽電子放出データはまた、治療計画を更新し、治療計画セッションと治療セッションとの間に起こっている場合がある任意の腫瘍移動を考慮するために、使用されてもよい。
【0044】
PET検出器は、センサ(例えば、任意の光検出器、シリコン光電子増倍管等の光電子増倍管)に結合される閃輝材料(例えば、酸化ビスマスゲルマニウム、ガドリニウムオキシオルトシリケート、またはルテチウムオキシオルトシリケート等の閃輝結晶)から成る。高エネルギー光子がPET検出器に衝打するとき、その光子からのエネルギーは、光検出器デバイスによって検出される、1つまたは複数の低エネルギー(例えば、可視光)光子を生成し得る、閃輝材料におけるシンチレーション事象を引き起こす。光検出器デバイスは、出力の不規則変動が、光子の存在を示す変動と区別不可能であり得る、基準暗カウント率または暗電流を有してもよい。暗カウントは、放電によって検出器のピクセルを発射させる。ピクセルが放電するとき、電源から電流を引き出し、電源から引き出される電流は、バイアス電流と称され得る。バイアス電流は、他の定数またはゆっくり変動する項を加えた周期時間にわたって発射した暗カウントの平均数に比例し得る、すなわち、バイアス電流は、暗電流に比例し得る。暗電流は、PET光検出器の熱雑音電流を加えた残光光電流に比例し得る。バイアス電流は、PET検出器アレイとともに含まれ得る電流測定デバイスまたはモジュールを使用して、測定されてもよい。代替として、または加えて、バイアス電流は、PET検出器の光検出器および電源と直列に配置される電流計を使用して、測定されてもよい。選択または設定された動作範囲(例えば、利得および/または感度)におけるバイアス電流ならびに/もしくは光検出器へのバイアス電流の変化を測定することは、暗カウント率および/または暗カウント率の変化のインジケーションを提供し得る(すなわち、バイアス電流の変化は、暗カウント率のシフトを示し得る)。例えば、暗カウント率が増加すると、より多数の不規則変動が検出器のピクセルをより頻繁に放電させるにつれて、より多くの電流が電源から引き出されるため、PET検出器の光検出器へのバイアス電流もまた、増加し得る。通常動作条件下で、暗カウント率は、比較的低く、例えば、1秒あたり約200万の暗カウント(cps)であってもよい。上昇した周囲温度および/または上昇したレベルの放射線は、光検出器の暗カウント率または暗電流を増加させ得る。
【0045】
放射線療法システムは、ガントリ上で相互の反対に位置する、PET検出器の少なくとも2つのアレイを備えてもよい。例えば、第1のアレイ上のPET検出器は、陽電子消滅事象からの2つの高エネルギー光子が検出され得るように、反対側に位置する第2のアレイ上の対応するPET検出器を有してもよい。一変形例では、放射線療法システムは、(合計64個のPET検出器モジュールのために)32個のPET検出器モジュールをそれぞれ有する、2つのPET検出器アレイを備えてもよい。各PET検出器モジュールは、各PET検出器がその独自の光検出器を有する、PET検出器の6×12サブアレイを備えてもよい。いくつかの変形例では、各PET検出器モジュールは、PET検出器の6×12アレイ内の光検出器の全てのバイアス電流を測定および出力してもよく、PET検出器モジュール内の光検出器の全ての利得は、単一の利得入力値によって設定されてもよい。陽電子放出および消滅事象が確率事象であるため、システムのPET検出器は、短い時間間隔内で複数の高エネルギー光子を検出してもよく、コントローラは、各検出された光子の時間情報(例えば、検出の時間)、ならびにこれらの光子を検出したPET検出器の場所を使用し、陽電子消滅光子対の一部である2つの光子を決定する。例えば、2つの高エネルギー光子が、特定の時間間隔(例えば、一致時間窓)内に相互の反対に位置する2つのPET検出器によって検出される場合には、コントローラは、これら2つのPET検出器を継合する線に沿ったいずれかの場所で起こった、同一の陽電子消滅事象から生じるものとして、2つの光子をともに対合してもよい。一致時間窓は、その内側で検出された光子が一致すると見なされ得る(同一の陽電子消滅事象から生じる場合のように処理される)、時間間隔である。一致トリガ閾値は、消滅光子の検出から生じる信号と散乱放射線および/または他の雑音源(例えば、無作為検出器雑音、残光、熱雑音等)から生じる信号とを判別する、トリガ閾値であってもよい。消滅事象の場所がPET検出器のうちの1つに他方よりも近い場合、一対のうちの1つの光子は、他方よりも短い進行する距離を有し(すなわち、1つの光子は、他方よりも短い飛行時間を有し)、したがって、第2の光子が第2のPET検出器に衝打する前に、第1のPET検出器に衝打するであろう。陽電子消滅対の中の光子の検出の時間差は、消滅事象が2つのPET検出事象の間で線上に起こった場所を決定するために、コントローラによって使用されてもよい。陽電子消滅光子の飛行時間(TOF)の差を感知するために十分な時間精度を有するPET検出器は、陽電子消滅事象の場所を計算するためのシステムコントローラにTOFデータを伝送してもよい。
【0046】
治療セッション中に、リニアックは、標的領域に向かって放出される高流束X線のパルスを生成してもよい。1つまたは複数のジョーおよび/またはコリメータ(例えば、マルチリーフコリメータ)等のビーム限定デバイスは、X線の拡散を限定し、X線を標的組織領域に指向することに役立ち得る。これらのX線は、患者と相互作用してもよく、X線の一部は、患者の中の標的領域(例えば、腫瘍領域)を照射し、X線の一部は、患者によって散乱されてもよい。散乱X線は、X線検出器(例えば、MVまたはkV検出器)および/またはPET検出器等の放射線療法システムのコンポーネントと相互作用してもよい。本効果は、患者120の身体がリニアック130および標的132からX線を散乱させ得る、
図1Aで図式的に描写される。リニアックおよび標的からのX線は、治療ビーム122を形成するように、マルチリーフコリメータ134等のビーム限定デバイスによって成形されてもよい。散乱X線または放射線124は、PET検出器126に入射し、次いで、PET検出器の光検出器によって感知される、陽電子放出によって引き起こされる閃輝事象と区別不可能であり得る、閃輝事象(例えば、低エネルギー光子)を誘起し得る。陽子線療法システム等の他の放射線療法システムもまた、散乱X線または中性子のいずれかを生成し得る。陽子源からの散乱放射線もまた、シンチレーション結晶の励起を引き起こし得る。散乱放射線(および/または他の放射線源)によって引き起こされるPET検出器126の残光は、経時的に蓄積し、検出器をある期間にわたって飽和または「ブランク化」させ、それらがそのブランキング間隔中に陽電子放出データを検出することを不可能にし得る。
図1Bは、リニアックパルス101がt
pulseにおいて印加された、PET検出器100からの出力トレース110の実施例を描写する。リニアックパルスは、約2ミリ秒~約20ミリ秒(例えば、約4ミリ秒~約10ミリ秒、約5ミリ秒~約15ミリ秒、約4ミリ秒、約10ミリ秒等)のパルス間の間隔P
intervalおよび/または約100Hz~約250Hzのパルス周波数を伴って、約1マイクロ秒~約10マイクロ秒(例えば、約3マイクロ秒~約5マイクロ秒、約3マイクロ秒、約5マイクロ秒、約8マイクロ秒等)のパルス幅を有してもよい。リニアックパルスからの散乱X線/放射線102は、PET検出器100を照射し、次いで、光検出器105によって検出される、閃輝材料103の中の残光光子104を生成してもよい。出力トレース110で見られるように、残光光子は、直後から約50マイクロ秒またはそれを上回る、例えば、100マイクロ秒の期間にわたって、実質的な短期アーチファクトを引き起こし、その時間の間に、陽電子放出事象に応答するPET検出器能力は、低減または劣化される。(例えば、PET検出器飽和またはブランキングは、光検出器飽和、および/またはシンチレータがその光子出力に到達すること、ならびに/もしくはリニアックからの電気および/または磁気干渉等の結果であり得る。)本期間は、ブランキング間隔112と称され得、検出器残光の短期効果である。ブランキング間隔112は、例えば、リニアックパルスの持続時間およびエネルギーに応じて、パルスの開始から約50マイクロ秒(またはそれを上回る)まで持続し得る。初期ブランキング間隔112後、PET検出器の閃輝材料は、おそらく、ブランキング間隔112中よりも低い速度であるが、残光光子が生成され続けるように、閃輝し続け得る。これらの残光光子は、例えば、PET検出器の閃輝材料の継続的励起および/または増加したエネルギーレベルによって、生成され得る。光検出器105上のこれらの残光光子の継続的入射は、パルスが印加される前よりもリニアックパルスが印加された後に、出力トレース110においてより大きいレベルの雑音114をもたらし得る。本増加したレベルの雑音114は、リニアック前のパルスレベルまで減衰するために約1~5時間を要し得、残光の長期効果であり得る。高いレベルの散乱放射線が存在するシナリオでは、残光光子は、光検出器(例えば、シリコン光電子増倍管)を飽和状態にし得る。1つを上回るリニアックパルスが治療セッション(例えば、各パルスの間に約2ミリ秒~約10ミリ秒を伴う)中に放出されるため、以降のパルスの残光雑音は、前のパルスの残光雑音を累積的に増大させ得、PET検出器の出力トレース110上にますます雑音の多い信号をもたらし得る。これは、1つまたは複数の治療セッションの持続時間の全体を通して正確かつ精密な陽電子放出データを収集するPET検出器の能力を妨害し得る。特に、飛行時間分析のための十分な精度で一対の一致陽電子消滅光子を検出するPET検出器の能力は、短期または長期残光効果のいずれかに起因して侵害され得る。
【0047】
残光効果が、1つまたは複数の治療セッションの持続時間の全体を通して正確かつ精密な陽電子放出データを収集するPET検出器の能力を妨害し得る、別の方法は、光検出器のエネルギー分解能の劣化に由来する。上記で説明されるように、光検出器は、残光光子から飽和し得る。シリコン光電子増倍管等の光検出器は、(マイクロピクセルと称され得る)数百から数千個の離散ガイガーアバファンシェフォトダイオードを備えてもよい。個々のガイガーアバファンシェフォトダイオードまたはマイクロピクセルと相互作用する光子は、マイクロピクセルを放電させ得る。放電後、マイクロピクセルは、回復するためにある有限量の時間を要求する。本有限量の時間は、約10ナノ秒~約100ナノ秒であり得る。(例えば、閾値を超える上昇したバイアス電流から決定されるような)有意な残光が存在する場合、陽電子放出データの検出のために利用可能な離散マイクロピクセルの総数は、それらが残光光子から発射しており、陽電子消滅光子に起因するシンチレーション信号を検出することができないため、削減され得る。光検出器が残光から飽和すると、その有効または累積利得が低減される。すなわち、特定のシンチレーション事象のための残光による影響を受ける光検出器から出力される信号は、通常(すなわち、非残光)条件下で光検出器から出力される信号と比較して低減される。光検出器の利得が低減される場合には、入射光子(例えば、シンチレーション事象)の総エネルギーを測定することの定量的正確度が、劣化され得、散乱光子を拒否する能力を妨げ得る。PET検出器の感度は、残光効果によって劣化されない場合があるが、残光効果は、各シンチレーション事象のエネルギーおよびタイミング分解能の定量的正確度を低減させ得る。
【0048】
残光はまた、光検出器に、より低いエネルギーレベルにおいて陽電子消滅光子(すなわち、511keV光子)を検出または登録させ得、すなわち、エネルギースペクトル上の511keVレベルに位置する511keV光子の光電ピークの代わりに、511keV光子の光電ピークは、511keVよりも低いエネルギーレベルに位置する。一致検出コントローラまたはプロセッサは、511keV光子に基づいて陽電子消滅事象を検出する(例えば、511keVレベルを中心として心合された検出窓を設定する)ように構成されるため、511keV光子の光電ピークをより低いエネルギーレベル(例えば、検出窓の外側)にシフトさせることは、PET検出システムコントローラまたはプロセッサに陽電子消滅事象の検出を逸失させ得る。
方法
【0049】
散乱放射線の存在下でPET検出器から陽電子放出データを収集するための1つの方法は、
図2Aのフロー図に描写されるように、検出器の残光が増加するにつれて、PET検出器の光検出器(例えば、光電子増倍管)の利得を調節するステップを含んでもよい。そこで描写されるように、方法220は、放射線療法システムのPET検出器の光検出器の初期利得値を設定するステップ222を含んでもよい。本ステップは、システムの組立および/または製造中に行われてもよい、もしくは放射線療法セッションの開始の直前に行われてもよい。利得値が設定された後に、本方法は、PETトレーサを患者に注射するステップと、生成するためにリニアックをアクティブ化し、放射線パルスを1つまたは複数の標的領域に発射するステップとを含み得る、放射線療法を続けるステップ224を含んでもよい。放射線療法セッション中に、システムコントローラは、リニアックおよび/またはPET検出器ならびに/もしくは任意の他の検出器またはセンサ(例えば、電流または電圧センサ、温度センサ、放射線センサ等)の1つまたは複数のパラメータおよび/または特性を監視してもよい。コントローラは、これらの特性のうちの1つまたは複数のものがPET検出器の光検出器の利得値を調節するための基準を満たすかどうかを決定してもよい226。1つまたは複数の基準が利得値を調節するために満たされている場合には、コントローラは、例えば、光検出器のバイアス電圧を調節することによって、および/またはコントローラのプロセッサによるデータ収集または分析で使用される利得係数を調節すること(例えば、収集または分析ソフトウェア利得係数を調節すること)によって、PET検出器の利得値を調節してもよい228。例えば、所定の閾値を超える1つまたは複数のシステムパラメータは、PET検出器残光があるレベルまで増加したことを示し得、光検出器の利得値および/またはデータ収集利得係数を増加させることは、高エネルギー光子の誤検出を低減させることに役立ち得る。増加したレベルの残光において、閃輝材料によって生成される、より多くの光子が存在し得る。これらの残光光子は、PET検出器の光検出器に、より低いエネルギーレベルにおいて511keV光子の検出を登録させ得る。すなわち、PET検出器からの出力は、実際に511keV光子が検出されたときに、511keVよりも低いエネルギーレベルにおける光子が検出されたが、PET検出器の光検出器出力の規模/エネルギーが、残光に起因して低減されることを示し得る。(例えば、光検出器へのバイアス電圧を増加させることによって)PET検出器の光検出器の利得値を増加させることは、511keV光子の検出を正確に反映し、真の一致高エネルギー光子の検出率を向上させることに役立ち得るように、PET検出器の光検出器出力を増加させることに役立ち得る。代替として、または加えて、利得係数が、低減したPET検出器出力を補償するデータ収集でシステムプロセッサによって使用されてもよい。例えば、システムプロセッサは、その値が残光レベルに依存する利得係数によって、PET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせてもよい。いくつかの変形例では、
図2Aに描写される方法は、
図3-7に描写される方法とともに、PET検出器と通信するコントローラのメモリの中に記憶され得る、機械可読命令セットで実装されてもよい。種々のセンサ、PET検出器、リニアック等から等の放射線療法システムからのデータは、これらの測定に基づいて算出(例えば、分析)を実施し得、および/またはこれらの算出の結果ならびに/もしくはシステムデータを1つまたは複数のコントローラメモリの中に記憶し得る、コントローラに伝送されてもよい。コントローラによって生成されるコマンド信号は、これらのコンポーネントの動作を制御する(例えば、PET検出器の光検出器の利得値を調節する)ように、放射線療法システムのコンポーネント(例えば、PET検出器および/またはリニアック)に伝送されてもよい。
【0050】
散乱放射線の存在下でPET検出器から陽電子放出データを収集するための1つの方法は、
図2Bのフロー図に描写されるように、検出器の残光が増加するにつれて、PET検出器の一致トリガ閾値を調節するステップを含んでもよい。そこで描写されるように、方法200は、放射線療法システムのPET検出器の初期一致トリガ閾値を設定するステップ202を含んでもよい。本ステップは、システムの組立および/または製造中に行われてもよい、もしくは放射線療法セッションの開始の直前に行われてもよい。一致トリガ閾値が設定された後に、本方法は、PETトレーサを患者に注射するステップと、生成するためにリニアックをアクティブ化し、放射線パルスを1つまたは複数の標的領域に発射するステップとを含み得る、放射線療法を続けるステップ204を含んでもよい。放射線療法セッション中に、システムコントローラは、リニアックおよび/またはPET検出器ならびに/もしくは任意の他の検出器またはセンサ(例えば、電流または電圧センサ、温度センサ、放射線センサ等)の1つまたは複数のパラメータおよび/または特性を監視してもよい。コントローラは、これらの特性のうちの1つまたは複数のものがPET検出器の一致トリガ閾値を調節するための基準を満たすかどうかを決定してもよい206。1つまたは複数の基準が一致トリガ閾値を調節するために満たされている場合には、コントローラは、PET検出器の一致トリガ閾値を調節してもよい208。例えば、所定の閾値を超える1つまたは複数のシステムパラメータは、PET検出器残光があるレベルまで増加したことを示し得、一致トリガ閾値を増加させることは、一致高エネルギー光子の誤検出を低減させることに役立ち得る。すなわち、増加したレベルの残光において、閃輝材料によって生成される、より多くの光子が存在し得る。これらの残光光子は、一致高エネルギー光子を検出するPET検出器の能力を劣化または低減させ得る。PET検出器の一致トリガ閾値を増加させることは、残光光子を無視することに役立ち、真の一致高エネルギー光子の検出率を向上させることに役立ち得る。いくつかの変形例では、
図2Bに描写される方法は、
図3-7に描写される方法とともに、PET検出器と通信するコントローラのメモリの中に記憶され得る、機械可読命令セットで実装されてもよい。種々のセンサ、PET検出器、リニアック等から等の放射線療法システムからのデータは、これらの測定に基づいて算出を実施し得、および/またはこれらの算出の結果ならびに/もしくはシステムデータを1つまたは複数のコントローラメモリの中に記憶し得る、コントローラに伝送されてもよい。コントローラによって生成されるコマンド信号は、これらのコンポーネントの動作を制御する(例えば、PET検出器の一致トリガ閾値を調節する)ように、放射線療法システムのコンポーネント(例えば、PET検出器および/またはリニアック)に伝送されてもよい。
【0051】
PET検出器の光検出器利得調節(例えば、PET検出器の光検出器の利得値および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節する)ならびに/もしくは一致閾値調節のための基準は、PET検出器のアレイ全体、および/またはPET検出器モジュール(すなわち、PET検出器のサブアレイを有する)、ならびに/もしくは単一のPET検出器にわたって測定されてもよい。例えば、各PET検出器アレイが複数のPET検出器モジュール(例えば、32個のPET検出器モジュール)を備え、各PET検出器モジュールがPET検出器のサブアレイ(例えば、PET検出器の6×12サブアレイ)を備え、各PET検出器がその独自の光検出器を有する、2つのPET検出器アレイを伴う放射線療法システムでは、基準(および/または温度、バイアス電流、雑音レベル、一致タイミング分布、光電ピーク、暗カウント率等)は、PET検出器アレイ全体にわたって、および/または個々のPET検出器モジュールにわたって、ならびに/もしくは個々のPET検出器にわたって測定されてもよい。同様に、利得および/または一致トリガ閾値は、PET検出器アレイ全体、および/または個々のPET検出器モジュール、ならびに/もしくは個々のPET検出器に関して、調節されてもよい。例えば、PET検出器モジュール内のPET検出器の全ては、同一の光検出器利得値を有してもよく、(すなわち、モジュールに印加されるバイアス電圧は、PET検出器の光検出器の全てに印加される)、バイアス電流測定は、モジュール内のPET検出器の全ての累積バイアス電流であってもよい。PET検出器モジュール毎のバイアス電流、バイアス電圧、および/または利得係数は、相互と異なり得る。すなわち、異なるレベルの残光補正が、異なるPET検出器モジュールに適用されてもよい。例えば、それぞれ32個のPET検出器モジュールを伴う2つのPET検出器アレイを伴う放射線療法システムでは、残光効果は、64個のPET検出器モジュールの64個のバイアス電流(および/または温度、雑音レベル、一致タイミング分布、光電ピーク、暗カウント率等)を測定し、次いで、残光補正を64個のPET検出器モジュールに個別に適用する(例えば、64個の潜在的に異なる利得および/または一致閾値調節を適用する)ことによって、64個のPET検出器モジュール毎に補正されてもよい。代替として、または加えて、バイアス電流(および/または温度、雑音レベル、一致タイミング分布、光電ピーク、暗カウント率等)は、個々のPET検出器の光検出器に関して、および/または複数のPET検出器モジュールを有するPET検出器アレイ全体にわたって、測定されてもよい。下記に説明される説明および変形例は、単一のPET検出器および/または光検出器のための(もしくは複数のPET検出器および/または光検出器のための)バイアス電流(および/または温度、雑音レベル、一致タイミング分布、光電ピーク、暗カウント率等)を測定し、その単一のPET検出器および/または光検出器(もしくはそれぞれ複数のPET検出器および/または光検出器)のための利得および/または利得係数ならびに/もしくは一致閾値を調節することを指し得るが、説明はまた、複数のPET検出器および/または光検出器のための(もしくは個々のPET検出器および/または光検出器のための)複数のバイアス電流(および/または温度、雑音レベル、一致タイミング分布、光電ピーク、暗カウント率等)を測定し、その複数のPET検出器および/または光検出器(もしくはそれぞれ個々のPET検出器および/または光検出器)のための利得および/または利得係数ならびに/もしくは一致閾値を調節することに適用されることを理解されたい。
【0052】
散乱または迷放射線の存在下で陽電子放出データを収集するための方法の一変形例が、
図3に描写される。方法300は、PET検出器の検出器雑音レベルと一致トリガ閾値との間の較正テーブルを生成するステップ302を含んでもよい。較正テーブルを生成する1つの方法は、PET検出器上で種々の程度またはレベルの雑音を生じさせる環境を作成するステップと、既知の速度で陽電子を放出する陽電子放出源(例えば、陽電子放出種)を提供するステップと、PET検出器出力が所定の時間分解能品質または測定基準に対応するまで、各雑音レベルにおけるPET検出器の一致トリガ閾値を調節するステップとを含んでもよい。時間分解能品質または測定基準は、放射線療法システムの製造および/または較正中に決定されてもよい。時間分解能品質は、較正源を使用して測定されてもよく、一致検出光子の時間スペクトルを分析してもよい。例えば、陽電子放出点源は、平均がPET検出器の間の点源の空間オフセットに関連し、分散が時間分解能力の質に関連する、ガウス分布に従う時間スペクトルを有してもよい。時間分解能品質を定量化するための1つの方法は、本時間スペクトルの半値全幅(FWHM)を計算するステップを含んでもよい。方法300はまた、治療セッション中にPET検出器の雑音レベルを測定するステップ304と、測定された雑音レベルを較正テーブルの中の雑音レベルと比較し306、測定された雑音レベルと対応する一致トリガ閾値を識別するステップとを含んでもよい。一致トリガ閾値は、測定された雑音レベルの変化に基づいて調節されてもよい308。例えば、一致トリガ閾値は、PET検出器上の雑音レベルが増加するにつれて増加され得る。代替として、または加えて、方法300は、PET検出器の光検出器の利得値および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算ならびに/もしくはシフトするために使用される利得係数)を調節するために使用されてもよい。例えば、方法300の変形例は、検出器雑音レベルならびに利得値および/または利得係数の間の較正テーブルを生成するステップと、治療セッション中にPET検出器の雑音レベルを測定するステップと、測定された雑音レベルを較正テーブルの中の雑音レベルと比較し、測定された雑音レベルと対応する利得値および/または利得係数を識別するステップとを含んでもよい。利得値および/または利得係数は、測定された雑音レベルの変化に基づいて調節されてもよい。
【0053】
散乱X線は、高エネルギー光子の到着時間を精密に測定するPET検出器の能力に干渉し得る。散乱X線が存在しない場合、PET検出器のタイミング精度は、タイミング誤差の範囲を有する一致タイミング分布によって特性評価されてもよい。一致タイミング分布は、例えば、上記で説明されるような点較正源を使用することによって、測定されてもよい。数千から数百万個の一致事象からの時間差が、分析されてもよく、一致タイミング分布が、タイミング分布を生成するようにビン化および/またはヒストグラム化されてもよい。タイミング分布の半値全幅(FWHM)は、PET検出器またはPETシステム全体のタイミング分解能を特性評価するために使用されてもよい。散乱放射線のレベルが増加すると、一致タイミング分布は、タイミング誤差の範囲が増加するように変化してもよい。例えば、X線の干渉がないと、PET検出器は、タイミング誤差の範囲が300psFWHMであるように、一致タイミング分布を有してもよいが、散乱X線の存在下では、一致タイミング分布は、タイミング誤差の範囲が550psFWHMであるように変化してもよい。一致タイミング分布に基づいて、散乱放射線の存在下で陽電子放出データを収集する1つの方法が、
図4に描写される。方法400は、リニアックがアクティブ化される前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、PET検出器の一致タイミング分布を測定するステップ402と、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)PET検出器の一致タイミング分布を測定するステップ404と、ステップ404で測定される一致タイミング分布をステップ402で測定される一致タイミング分布と比較するステップ406とを含んでもよい。タイミング分布が前もって測定されたタイミング分布から約10%を上回って変動する場合には、PET検出器の一致トリガ閾値は、調節されてもよい408。一致トリガ閾値を変化させる1つの方法は、コマンドを読出回路(例えば、ASIC)に送信し、タイミング比較器の電圧を増加させることによる。別の方法では、一致トリガ閾値は、光検出器上で数えられる所定数の光学光子であってもよい。本方法では、一致トリガ閾値は、一致事象をシグナリングするために検出される必要がある光子の数を変化させる(例えば、増加または減少させる)ことによって、調節されてもよい。代替として、または加えて、方法400は、PET検出器の光検出器の利得値および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算ならびに/もしくはシフトさせるために使用される利得係数)を調節するために使用されてもよい。例えば、方法400の変形例は、リニアックがアクティブ化される前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、PET検出器の一致タイミング分布を測定するステップと、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)PET検出器の一致タイミング分布を測定するステップと、治療中に測定される一致タイミング分布を治療前に測定される一致タイミング分布と比較するステップとを含んでもよい。タイミング分布が前もって測定されたタイミング分布から約10%を上回って変動する場合には、利得値および/または利得係数は、タイミング分布の変化に基づいて調節されてもよい。
【0054】
PET検出器の残光は、光検出器の暗カウント率を増加させ得、陽電子放出事象の精密な検出に干渉し得る。散乱放射線の存在下で陽電子放出データを収集するための方法の別の変形例が、
図5に描写される。本方法では、一致トリガ閾値は、PET光検出器の暗カウント率の変化に基づいて調節されてもよい。方法500は、リニアックのアクティブ化の前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、PET検出器の暗カウント率を測定するステップ502と、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)PET検出器の暗カウント率を測定するステップ504と、ステップ504で測定される暗カウント率を502で測定される暗カウント率と比較するステップ506とを含んでもよい。いくつかの変形例では、暗カウント率は、光検出器のバイアス電流を測定することによって測定されてもよく、ステップ506における比較は、バイアス電流に基づく計算された暗カウント率および/またはバイアス電流測定自体との間であってもよい。代替として、または加えて、暗カウント率は、低光子トリガを数えること(すなわち、低エネルギー光子トリガの数を測定すること)によって測定されてもよい。暗カウント率は、PET検出器アレイまたはモジュール/サブアレイ全体にわたって測定されてもよい、および/または光検出器毎の基準で測定されてもよい。ステップ504および506で測定される暗カウント率が約2Mcps~約10Mcps(例えば、約3Mcps)を上回って逸脱する場合、PET検出器の一致トリガ閾値は、調節されてもよい508。例えば、PET検出器の一致トリガ閾値は、暗カウント率が増加する、または閾値を超える(例えば、約2Mcpsを超える、約3Mcpsを超える、および/または約10Mcpsを超える)場合に増加され得る。ステップ504-508は、治療セッションの全体を通して、および/またはリニアックが使用中である間に、繰り返されてもよい。代替として、または加えて、方法500は、PET検出器の光検出器の利得値および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算ならびに/もしくはシフトさせるために使用される利得係数)を調節するために使用されてもよい。例えば、方法500の変形例は、リニアックがアクティブ化される前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、PET検出器の暗カウント率を測定するステップと、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)PET検出器の暗カウント率を測定するステップと、治療中に測定される暗カウント率を治療前に測定される暗カウント率と比較するステップとを含んでもよい。治療中に測定される暗カウント率が、治療前に測定される暗カウント率から約2Mcps~約10Mcps(例えば、約3Mcps)を上回って逸脱する場合には、利得値および/または利得係数は、タイミング分布の変化に基づいて調節されてもよい。
【0055】
PET検出器残光の効果は、光検出器のバイアス電流において測定されてもよい。バイアス電流の変化は、陽電子放出データを収集するPET検出器の能力の劣化を示し得、一致トリガ閾値を調節すること(例えば、残光効果が増加するにつれて一致トリガ閾値を増加させること)は、放出データ収集の精度を向上させることに役立ち得る。散乱放射線の存在下で陽電子放出データを収集するための方法の一変形例が、
図6に描写される。本方法では、一致トリガ閾値は、光検出器のバイアス電流の変化に基づいて調節されてもよい。バイアス電流は、光検出器のための電圧供給(高電圧供給等)を監視することによって測定されてもよい。方法600は、リニアックのアクティブ化の前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、光検出器のバイアス電流を測定するステップ602と、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)光検出器のバイアス電流を測定するステップ604と、ステップ604で測定されるバイアス電流を602で測定されるバイアス電流と比較するステップ606とを含んでもよい。ステップ604および606で測定されるバイアス電流が約0.1mA~約5mAを上回って逸脱する場合、PET検出器の一致トリガ閾値は、調節されてもよい608。代替として、または加えて、バイアス電流は、PET検出器アレイまたはモジュール/サブアレイ全体にわたって測定されてもよい、および/または光検出器毎の基準で測定されてもよい。ステップ604-608は、治療セッションの全体を通して、および/またはリニアックが使用中である間に、繰り返されてもよい。
【0056】
代替として、または加えて、PET検出器の一致トリガ閾値、および/またはPET検出器の光検出器の利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数は、リニアック(または任意の治療放射線源)および/またはPET検出器アレイもしくはその周囲における面積の温度ならびに/もしくは放射線測定に基づいて、調節されてもよい。例えば、放射線療法システムは、PET検出器アレイもしくはその近傍に、および/またはリニアックもしくはその近傍に位置し得る、1つまたは複数の温度センサを備えてもよい。これらのセンサからの温度データは、コントローラに伝送されてもよく、リニアックおよび/またはPET検出器アレイにおける温度が1つまたは複数の閾値を超える場合、PET検出器の一致トリガ閾値は、調節されてもよい。同様に、1つまたは複数の線量計(例えば、MOSFET線量計、熱ルミネセンス線量計、および同等物)は、PET検出器アレイもしくはその近傍に、および/またはリニアックもしくはその近傍に位置してもよい。これらの線量計からの放射線データは、コントローラに伝送されてもよく、リニアックおよび/またはPET検出器アレイにおける放射線レベルが1つまたは複数の閾値を超える場合、PET検出器の一致トリガ閾値は、調節されてもよい。いくつかの方法はまた、リニアックの放射線出力に基づいて、PET検出器の光検出器の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせるために使用される利得係数)を調節してもよい。例えば、放射線療法システムは、リニアックのビーム経路の中に配置される線量チャンバまたは電離チャンバを備えてもよい。電離チャンバは、リニアックによって放出される放射線の量をコントローラに伝送してもよく、これは、リニアックの放射線出力に基づいて、PET検出器の一致トリガ閾値、および/またはPET検出器の光検出器の利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節してもよい。例えば、種々の放射線出力閾値を、PET検出器の光検出器の種々の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数にマップするテーブルが、コントローラメモリの中に記憶されてもよく、コントローラは、リアルタイム電離チャンバ測定をテーブルの中の閾値と比較し、PET検出器の光検出器の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節するかどうかを決定してもよい。閾値は、現在の時点までリニアックによって放出される第1のパルスから開始する累積放射線出力に基づいてもよい、および/または所定の時間の間隔にわたる放射線出力(例えば、治療セッション中のパルス繰り返し率)に基づいてもよい。例えば、人間の胴体の中への0.1Gy/分を上回るリニアックの放射線出力レベルは、PET検出器における残光につながり得る、十分なレベルの散乱放射線を生成してもよい。
【0057】
いくつかの変形例では、リニアックパルスカウントを、PET検出器の光検出器の種々の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数(例えば、PET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせるために使用される利得係数)にマップするテーブルが、コントローラメモリの中に記憶されてもよい。リニアックによって放出される放射線パルスの数は、PET検出器の一致トリガ閾値を調節するためにコントローラによって使用されてもよい。例えば、コントローラは、第1の数のパルス、例えば、10,000回のパルスが、リニアックによって放出された後に、PET検出器の一致トリガ閾値を調節してもよい。コントローラは、リニアックが、付加的な数のパルス、例えば、さらに10,000回のパルスを放出し、累積パルスカウントを20,000に至らせたときに、PET検出器の光検出器の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を再び調節してもよい。PET検出器の光検出器の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節する前に、リニアックによって放出されるパルスの数(すなわち、放射線パルスの閾値数)は、特定の治療システムに存在する散乱または迷放射線のレベルに応じて、約1,000、約2,000、約4,000、約7,500、または約12,000回のパルスであってもよい。すなわち、上昇したレベルの散乱または背景放射線を伴うシステムに関して、PET検出器の光検出器の一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節する前のリニアックパルスの数は、より低いレベルの散乱または背景放射線を伴うシステムに関するよりも低くあり得る。いくつかの変形例では、テーブルは、リニアックパルス繰り返し率またはパルススケジュール(すなわち、特定の時間の間隔にわたるパルスの数および/またはパルスのタイミングスケジュール)を、PET検出器の光検出器のPET検出器一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数にマップしてもよい。これらのパラメータのうちの1つまたは複数のものは、PET検出器の光検出器のPET検出器一致トリガ閾値および/または利得値、ならびに/もしくは陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節するとき、および/または一致トリガ閾値を調節する(例えば、具体的値だけ増加または減少させる等)程度を決定するために、単独で、ならびに/もしくは本明細書に説明される方法のうちの1つまたは複数のものと組み合わせて、使用されてもよい。実施例として、治療セッションの開始時のPET検出器の初期一致トリガ閾値は、約2個の光子トリガであってもよい。光子トリガは、検出された光子を表す、電圧、電荷、またはカウントであってもよい。例えば、2個の光子トリガは、2つまたはそれを上回る光子の到着を検出するときにPET検出器のタイミング弁別器が発射することを意味する。10,000回の放射線パルスが放出された後に、一致トリガ閾値は、約5個の光子トリガまで増加され得る。さらに10,000回の放射線パルス(すなわち、累積的に20,000回の放射線パルス)が放出された後に、一致トリガ閾値は、約6個の光子トリガまで増加され得る。一致トリガ閾値を変化させる前の放射線パルスの閾値数、ならびに一致トリガ閾値変化インクリメントは、望ましくあり得るように、本実施例から変動し得る。
【0058】
図6Bは、PET検出器の光検出器の利得値が、光検出器のバイアス電流の変化に基づいて調節され得、残光に起因する光検出器(例えば、シリコン-光電子増倍管)の飽和を補償し得る、方法の一変形例を描写する。バイアス電流は、光検出器のための電圧供給(高電圧供給等)を監視することによって測定されてもよい。方法620は、リニアックのアクティブ化の前に(例えば、治療セッションの前、および/または製造ならびに/もしくは較正セッション中に)、光検出器のバイアス電流を測定するステップ622と、リニアックがアクティブ化されたときの期間中に(例えば、治療セッション中に)光検出器のバイアス電流を測定するステップ624と、ステップ624で測定されるバイアス電流を622で測定されるバイアス電流と比較するステップ626とを含んでもよい。ステップ624および626で測定されるバイアス電流が約0.1mA~約5mAを上回って逸脱する場合、PET検出器の光検出器の利得値および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数は、調節されてもよい628。バイアス電流は、PET検出器アレイまたはモジュール/サブアレイ全体にわたって測定されてもよい、および/または光検出器毎の基準で測定されてもよい。ステップ624-628は、治療セッションの全体を通して、および/またはリニアックが使用中である間に、繰り返されてもよい。いくつかの変形例では、光検出器の利得値は、コントローラのプロセッサによって、光検出器のバイアス電圧および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節すること(例えば、収集または分析ソフトウェア利得係数を調節すること)によって、調節されてもよい。例えば、利得係数が、残光効果に起因する低減したPET検出器出力を補償することに役立つために、データ収集でシステムプロセッサによって使用されてもよい。例えば、システムプロセッサは、(例えば、測定されたバイアス電流によって示されるような)その値が残光レベルに依存する利得係数によって、PET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせてもよい。利得係数は、例えば、異なるレベルの残光における511keV光子に対応する(測定されたバイアス電流の異なる値に対応する)PET検出器出力値を測定し、測定されたPET検出器出力値と511keV光子の検出に対応する(すなわち、残光がない場合の)公称出力値との間の差を求め、差対公称出力値の比を計算することによって、計算されてもよい。代替として、または加えて、利得係数は、(測定されたバイアス電流の異なる値に対応する)異なるレベルの残光における511keV光子の光電ピークシフトを測定し、シフトした光電ピークと511keVにおける(すなわち、残光がない場合の)公称光電ピークとの間の差を求め、差対シフトした光電ピークのそれぞれの比を計算することによって、計算されてもよい。測定されたバイアス電流を利得係数値にマップする較正テーブルまたはプロットが、生成されてもよい。陽電子放出データ収集で使用される利得値および/または利得係数を変化させることは、PET検出器によって記録される陽電子消滅事象のエネルギーおよびタイムスタンプを調節し、残光によって引き起こされる検出器の飽和を補正してもよい。いくつかの変形例では、利得値および/または利得係数を調節するための方法は、バイアス電流値と利得値(および/または利得係数)との間の較正テーブルを生成するステップと、治療セッション中にPET検出器の光検出器のバイアス電流を測定するステップと、測定されたバイアス電流を較正テーブルの中のバイアス電流値と比較し、測定されたバイアス電流と対応する利得値および/または利得係数を識別するステップと、次いで、較正テーブルに従って利得値および/または利得係数を調節するステップとを含んでもよい。
【0059】
図13Aは、バイアス電圧を一定に保ちながら、経時的にリニアックビームの関数としてのバイアス電流および温度の変化の実験データプロットを描写する。そこで描写されるように、ビームが時点0においてオンにされた後に、バイアス電流が約1時間にわたって約0.2mAの低いレベルから約4.2mAまで増加することが分かり得る。ビームが時点69において(すなわち、ビームがオンにされてから69分後に)オフにされるとき、バイアス電流は、約100分にわたってその基準値に戻るように下向きにドリフトする。温度もまた、光検出器においてより多くの電力を放散する必要があるため、PET検出器が加熱するにつれて上向きにドリフトする。PET検出器の中に蓄積される熱は、バイアス電圧によって増大されるバイアス電流であってもよい。本実験では、検出器において生成される熱は、ほぼ時点0で約11mWから開始する(0.2mA
*55V)が、ほぼ時点69でピークにおける約231mWまで有意に増加する(4.2mA
*55V)。温度の変化はまた、本明細書に説明されるように、陽電子放出データ収集で使用される利得係数を調節することによって補正または補償され得る、光検出器の利得値に影響を及ぼす。
【0060】
較正テーブルが、PET検出器を使用して、較正陽電子放出点源(例えば、Na-22)の陽電子放出データを測定し、測定が異なるレベルの残光において変化する様子を追跡する(すなわち、定量化する)ことによって、生成されてもよい。
図13Bは、PET検出器の6×12サブアレイを有するPET検出器モジュールにわたってバイアス電流および光電ピーク場所を測定することによって生成された、較正プロット(較正テーブルとして表され得る)を描写する。光電ピークは、PET検出器の光検出器によって検出されるようなエネルギースペクトルに沿った光検出器の511keVピークの場所である。陽電子消滅事象によって放出される光子は、同一のエネルギーを有し、したがって、全ての有効事象は、同一のエネルギー値を有する。「光電ピーク」は、全ての検出された事象のエネルギースペクトルヒストグラムプロット上の511keVピークであってもよい。
図13Bで見られ得るように、PET検出器の光検出器がさらなる残光を受けると、バイアス電流が、増加し、511keV光子の光電ピークが、低エネルギー光子が検出された場合のように検出される(例えば、511keV(公称)から400keVまで下向きに線形にドリフトする)。511keV光電ピークの本下向きシフトは、光検出器の性能を劣化させ、陽電子消滅事象に起因する511keV光子を認識または報告するその能力を妨げ得る。
図13Cは、PET検出器の光検出器の利得が511keV光電ピークの下向きシフトを補償するように調節された、経時的なPET検出器のエネルギー分解能のプロット(各データ系列間隔は、リニアックビームがデータ系列値1においてオンにされ、データ系列値7においてオフにされた、10分インクリメントを表す)を描写する。そこで描写されるように、利得調節または補正があると、エネルギー分解能は、経時的に安定したままである。前述で説明されたように、光検出器利得は、検出器へのバイアス電圧を調節することによって、調節または変更されてもよい。代替として、または加えて、データ収集でシステムプロセッサによって使用され得る利得係数は、システムプロセッサが利得係数によってPET検出器の出力を乗算および/またはシフトさせるように、調節されてもよい。一変形例では、バイアス電流値毎の利得係数は、バイアス電流プロットへの光電ピーク場所でのそのバイアス電流値における曲線または線の傾斜であってもよい。
図13Bの実施例では、利得係数は、(プロット内のデータ点に適合される)線の傾斜であってもよく、利得係数は、陽電子消滅事象を識別するようにPET検出器モジュール出力を用いて増大されてもよい。測定されたバイアス電流レベルをエネルギースペクトル上の光電ピーク場所にマップする、較正テーブルが、
図13Bのプロットに基づいて生成されてもよい。
図13Cは、異なる残光シナリオの下で利得補正を適用することの結果を示す。そこで描写されるように、異なる残光条件/レベルにおいて利得係数を調節することは、入射光子のエネルギーを測定することのエネルギー分解能または品質を比較的に一定に保つことに役立つ。(例えば、治療セッション中に)エネルギースペクトル上の光電ピークの場所を監視することは、利得が残光の効果を補償または補正するように適切に調節されている(例えば、利得が高すぎない、または低すぎない)かどうかに関するインジケーションを提供してもよい。例えば、代替として、またはバイアス電流レベルを利得値(例えば、バイアス電圧レベル、ソフトウェア利得係数)にマップする較正テーブルに加えて、治療中に、利得値および/または利得係数が光電ピーク場所に従って調節され得るように、光電ピーク場所(例えば、511keV光電ピーク場所)を利得値(および/または陽電子放出データ収集で使用される利得係数)にマップする較正テーブルが、生成されてもよい。
【0061】
光検出器利得調節が残光効果を適切に補正するかどうかを決定するために使用され得る、別の測定基準は、光検出器の時間分解能である。光検出器によって2つの別個の事象として区別可能であり得る、2つの光子検出事象の間の最小時間間隔を表す、光検出器の時間分解能は、残光効果に起因してシフトし得る。
図13Dは、PET検出器の光検出器が残光を引き起こす散乱リニアックX線を受ける際の経時的な時間分解能重心のシフト(各データ系列間隔は、リニアックビームがデータ系列値1においてオンにされ、データ系列値7においてオフにされ、回復周期がデータ系列値8-16である、10分インクリメントを表す)を描写する。タイミング重心のシフト値は、いくつかの変形例では、残光レベルを予測または推定するために使用されてもよい。光検出器の利得を調節し、残光効果を補正するためのいくつかの方法は、バイアス電流の関数としてタイミング重心シフトにおいてシフトをマップする、較正テーブルを計算するステップを含んでもよい。代替として、または加えて、タイミング重心シフトを利得値(例えば、バイアス電圧レベル、ソフトウェア利得係数)にマップする較正テーブルが、生成されてもよい。治療セッション中に、タイミング分解能(例えば、タイミング重心)が、測定/監視されてもよく、利得が残光の効果を補償または補正するように適切に調節されている(例えば、利得が高すぎない、または低すぎない)かどうかに関するインジケーションを提供してもよい。いくつかの変形例では、PET検出器の光検出器の利得は、任意のタイミング重心ドリフトを補正するように調節されてもよい。
【0062】
前述で説明されたように、散乱放射線の存在下でPET検出器から陽電子放出データを収集するための方法のうちのいずれかは、リニアックおよび/またはPET検出器ならびに/もしくは任意の他の検出器またはセンサ(例えば、電流または電圧センサ、温度センサ、放射線センサ等)の1つまたは複数のパラメータおよび/または特性を測定および監視するステップと、これらの1つまたは複数のパラメータに基づいて、残光レベルまたは重大性を決定するステップを含んでもよい。すなわち、温度、バイアス電流、放射線放出レベル、および/またはパルスカウント等のパラメータは、残光レベルまたは効果を定量化する代理として作用してもよい。これらの測定に基づいて、治療システムは、コントローラのプロセッサによって、変更をバイアス電圧に、および/または補正もしくは変更をデータ収集または分析で使用される利得値に適用する(例えば、収集または分析ソフトウェア利得係数を調節する)ことによって、PET検出器の光検出器への利得を変更してもよい。
【0063】
代替として、または加えて、いくつかの方法は、リニアック放射線パルス中に、かつ放射線パルス後の規定時間間隔にわたってコントローラによるPETデータの収集を遅延させるステップを含んでもよい。リニアックパルス中に、かつパルス後の規定時間間隔にわたってPETデータ収集および/または伝送を遅延または一時中断することは、残光雑音および/または放射線パルスアーチファクトを伴う陽電子放出データの記憶および処理を低減または排除することに役立ち得る。リニアックパルスおよび/または残光効果からの放射線アーチファクトの量は、パルスおよびパルスの直後の時間間隔中に最大であり得、上昇したレベルの雑音またはアーチファクトを伴う陽電子放出データを処理することは、不正確または不精密な一致検出をもたらし得る。いくつかの変形例では、リニアックからの放射線パルスの幅は、約5マイクロ秒またはそれ未満であり、約100~約300Hzの周波数においてパルス状であり得る。本構成では、実際の放射線ビームオン時間のデューティサイクルは、約0.05%~約0.15%である(すなわち、放射線ビームオフ時間は、約99.85%~約99.95%である)。PET検出器および/またはコントローラは、PET感度に殆どまたは全く影響を及ぼさずに、リニアックパルスならびに/もしくはリニアックパルス後の期間中にPETデータの収集を遅延および/またはゲート制御してもよい(例えば、5マイクロ秒リニアックビームパルス中に陽電子放出データの収集を遅延および/またはゲート制御する)。飛行時間PETシステムに関して、飛行時間計算から比較的に高雑音の陽電子放出データを低減または排除することは、より精密な場所計算を促進することに役立ち得る、および/または誤差限界を縮小することに役立ち得る。
【0064】
遅延時間間隔の持続時間は、前述で説明されたパラメータのうちのいずれかを含む、PET検出器雑音レベル、検出器タイミング分布、暗カウント率、バイアス電流、温度、周囲放射線レベル等のうちの1つまたは複数のものに基づいて、定性的および/または定量的に決定され得る、PET検出器残光の量に少なくとも部分的に基づいて決定されてもよい。例えば、遅延時間間隔は、約85マイクロ秒~約500マイクロ秒、例えば、少なくとも約100マイクロ秒、少なくとも約200マイクロ秒等であってもよい。いくつかの変形例では、コントローラによる陽電子放出データの収集を遅延させることは、データがリニアックパルス後の規定時間間隔中にPET検出器によって検出された場合に、陽電子放出データがコントローラによって記憶されないように、コントローラによる陽電子放出データの受信をゲート制御するステップを含んでもよい。代替として、または加えて、PET検出器からコントローラへの陽電子放出データの伝送は、リニアックパルス後の規定時間間隔中にPET検出器によって検出されるPETデータが伝送されないように、遅延されてもよい。例えば、PET検出器からコントローラへのデータ伝送は、リニアックパルス後の規定時間間隔中に一時停止されてもよく、規定時間間隔が経過した後に再開してもよい。いくつかの変形例では、コントローラによる陽電子放出データの収集を遅延させることは、リニアックパルス後の規定時間間隔後に、コントローラによって記憶された陽電子放出データを読み出すステップを含んでもよい。例えば、陽電子放出データは、リニアックパルス後の規定時間間隔中でさえも、収集され、コントローラメモリの中に記憶されてもよいが、しかしながら、コントローラは、規定時間間隔が経過した後まで、メモリから陽電子放出データを読み取らず、コントローラメモリの中に記憶された陽電子放出データは、規定時間間隔後に収集されるデータを反映する。
【0065】
図7Aは、陽電子放出データをゲート制御するための方法の一変形例のフローチャート表現を描写する。そこで描写されるように、方法700は、PET検出器への残光の効果を測定するステップ702を含んでもよい。残光の量は、限定ではないが、PET検出器雑音レベル、検出器タイミング分布、暗カウント率、バイアス電流、温度、周囲放射線レベル等を含む、本明細書に説明される測定基準のうちの1つまたは複数のものに基づいて、定性的および/または定量的に決定されてもよい。方法700は、残光の量に基づいて、ゲートトリガ閾値を設定するステップ704を含んでもよい。ゲートトリガ閾値は、その間に陽電子放出データがPET検出器から伝送されない、および/または陽電子放出データがコントローラによって記憶されない、時間間隔である。例えば、残光レベルを示すパラメータのうちのいずれかが所定の閾値(例えば、雑音レベル、タイミング、暗カウント率、バイアス電流レベル、温度レベル、放射線レベル)を超える場合、ゲートトリガ閾値は、PET検出器とコントローラとの間の陽電子放出データの通信がより長い期間にわたって一時中断されるように増加され得る。ゲートトリガ閾値は、残光がPET検出器残光前レベル(または残光前レベルの約5%以内)に戻るまで、増加したレベルに留まってもよい。方法700はさらに、ゲートトリガ閾値に基づいて、リニアックパルス中および/または後に陽電子放出データをゲート制御するステップ706を含んでもよい。方法700は、治療セッション中にコントローラによって連続的に実行されてもよい、および/または規定の時間間隔に実行されてもよい。いくつかの変形例では、方法700はさらに、測定された残光効果が選択された閾値を超える場合に、および/または前の測定からの残光の変化が選択された閾値を超える場合に、初期レベルからゲートトリガ閾値を変更または更新するステップを含んでもよい。例えば、検出器残光の量が治療セッション中に比較的に一定のままである場合、ゲートトリガ閾値は、更新されなくてもよい。しかしながら、検出器残光の量の実質的なシフト(例えば、検出器残光の増加または減少)がある場合、ゲートトリガ閾値は、更新されてもよい。ゲート制御は、約500マイクロ秒から最大約10ミリ秒まで増加されてもよい。代替として、ゲートトリガ閾値は、一定に保持されてもよい。
【0066】
図7Bは、PET検出器とコントローラのプロセッサとの間のPETデータ通信をゲート制御するための論理回路709の一変形例の概略図を描写する。(1つまたは複数のPET検出器アレイの中の)1つまたは複数のPET検出器710は、データ711を比較器712に出力してもよい。比較器712は、陽電子放出データ711のタイミング特性をコントローラのプロセッサ716からの一致トリガ閾値720と比較する。一致トリガ閾値720は、システムが開始する(例えば、事前設定されたデフォルト値に開始し得る)ときを決定してもよい、および/または上記で説明されるようにシステムが治療に使用されるにつれて更新されてもよい。陽電子放出データが一致トリガ閾値以内である場合には、陽電子放出データは、ゲート714に出力される。ゲート714は、例えば、「AND」論理ゲートであってもよい。陽電子放出データは、プロセッサからゲート714へのゲート信号718がアクティブである(例えば、「高い」)場合のみに、プロセッサ716に転送されてもよい。ゲート信号718のタイミングは、リニアックパルスおよび/またはパルス後の時間の間隔(例えば、遅延時間)中に非アクティブであり(例えば、「低い」)、リニアックパルスが経過した後および/またはリニアックパルスの前の時間の間隔後にアクティブである(例えば、「高い」)ようなものであってもよい。
図7Cは、リニアックパルス732と、(「リセット」信号と見なされ得る)ゲート信号の逆数と、リニアック、PET検出器、およびプロセッサの間で共有される共通クロック信号736との間の信号のタイミングを描写する、タイミング
図730の一実施例を描写する。本実施例では、リニアックパルス732は、約5マイクロ秒のパルス幅を有してもよい。タイミング
図730を描写した変形例では、ゲート信号734の逆数は、リニアックパルス733の開始(すなわち、立ち上がりエッジ)前の約10マイクロ秒の設定期間t
setup中に、リニアックパルス733中に、およびリニアックパルス733の終了(すなわち、立ち下がりエッジ)後の時間間隔(例えば、遅延時間)にわたって、「高い」。リニアックパルス733は、約0.001未満のデューティサイクルを伴って、約2マイクロ秒~約15マイクロ秒であってもよい。ゲート信号の逆数が「高い」、合計持続時間t
gateは、約100マイクロ秒~約3ミリ秒であってもよい。ゲート信号の逆数が「高い」間に、陽電子放出データ転送/収集は、一時停止される。陽電子放出データ転送/収集は、ゲート信号の逆数が「低い」ときに再開してもよい。ゲート信号パルスの間の持続時間(すなわち、パルス間周期t
interpulse)は、約1ミリ秒と同程度に低くあり得るが、いくつかの変形例では、リニアックパルスの間のパルス間周期は、約3ミリ秒~約10ミリ秒であってもよい。リニアックパルス733の終了後の時間間隔は、上記で説明されるように、PET検出器残光の程度に基づいて調節されてもよい。
【0067】
代替として、または加えて、本システムは、陽電子放出データ収集を放射線療法送達(例えば、リニアックアクティブ化)と交互に行ってもよい。本方法では、PET検出器は、最初に、陽電子放出データを収集する。いくつかの変形例では、PET検出器からの陽電子放出データは、画像を生成するために使用されてもよい。陽電子放出データが収集され、(例えば、コントローラメモリの中に)記憶された後、および/またはPET画像が陽電子放出データを使用して生成された後、PET検出器は、非アクティブ化または無効化されてもよい。放射線源(例えば、リニアックまたは陽子源)は、PET検出器が非アクティブ化された後にアクティブ化されてもよく、放射線パルスを標的(例えば、腫瘍領域)に放出してもよい。本交互モードでは、陽電子放出データ収集および放射線療法ビーム放出は、時間が有意に重複しない。いくつかの変形例では、PET検出器および放射線源のアクティブ化は、50/50デューティサイクル上であってもよい。これは、陽電子放出データ収集のより長い周期を可能にし得るが、治療セッションの全体的な長さを延長し得る。
【0068】
PETシステムは、残光レベルが所定の閾値を超えると陽電子放出データ収集を連動または中止してもよい。一変形例では、PET検出器の光検出器のバイアス電流が、測定されてもよく、バイアス電流が所定のバイアス電流連動閾値を超える場合、PET検出器は、データ収集を連動または中止してもよい。システムコントローラは、規則的間隔でバイアス電流をポーリングし続け、随意に、バイアス電流レベルおよび/または残光レベルを示す、臨床医または技師への通知を生成してもよい。PET検出器は、バイアス電流値が連動解放閾値よりも低いときに、データ収集を再開してもよい(すなわち、連動を解除する)。いくつかの変形例では、連動解放閾値は、連動閾値と同一であり得るが、他の変形例では、連動解放閾値は、連動閾値未満であり得る(例えば、それよりも低い)。
発振散乱遮蔽体
【0069】
放射線療法システムのいくつかの変形例は、放射線パルス中にPET検出器にわたって配置され、放射線パルス後にPET検出器から離れるように移動され得る、可動放射線遮蔽体またはフィルタを備えてもよい。放射線遮蔽体またはフィルタは、散乱放射線を吸収し、および/またはPET検出器から離れるように散乱放射線を偏向させてもよく、PET検出器残光の量を低減させることに役立ち得る。リニアックパルス中にPET検出器を覆い隠す物理的遮蔽体またはフィルタもまた、リニアックパルスと関連付けられる逆投影情報を低減または排除することに役立ち得る。いくつかの変形例では、遮蔽体は、リニアックパルス中にPET検出器を覆い隠し、リニアックパルスの前または後にPET検出器を露出してもよい。物理的遮蔽体またはフィルタと関連付けられる慣性により、PET検出器のうちのいくつかは、リニアックパルスよりも長い時間にわたって覆い隠されてもよい。
【0070】
例えば、放出誘導型放射線療法システムは、患者を中心として回転可能であるガントリ上に搭載される、複数のPET検出器と、リニアックとを備えてもよい。検出器によってリアルタイムで収集される放出データは、システムコントローラによって分析されてもよい。本放出データに基づいて、システムコントローラは、ガントリを回転させ、種々の発射角度から、リニアックからPET集中腫瘍領域に放射線を指向してもよい。いくつかの変形例では、リニアックおよびPET検出器は、回転可能な輪状または円形ガントリ上に搭載されてもよく、患者治療面積は、円形ガントリの中心に沿って(例えば、回転軸に沿って)位置してもよい。放射線療法システムは、1つまたは複数の放射線遮蔽体もしくはフィルタを備え得る、放射線フィルタリングを備えてもよい。いくつかの変形例では、放射線フィルタリングは、閉リング構造を備えてもよい一方で、他の変形例では、放射線フィルタリングは、1つまたは複数のリング区画(例えば、開リング、リングの部分区画または円弧等)を備えてもよい。放射線フィルタリングは、第1の円形ガントリの内径内に適合するように定寸されてもよい。放射線フィルタリングは、第1の円形ガントリと同一の回転軸を有してもよく、円形ガントリから独立して移動してもよい。いくつかの変形例では、放射線フィルタリングが、回転してもよい一方で、他の変形例では、放射線フィルタリングは、円形ガントリに対して発振してもよく、放射線フィルタリングは、ガントリの回転軸に沿って横方向に、ガントリの直径の中に、およびガントリの内径から外に移動される。いくつかの変形例では、放射線遮蔽体またはフィルタは、放射線フィルタリングに沿って円周方向に位置し得る、1つまたは複数の放射線遮断もしくは放射線不透過性コンポーネント(例えば、高Z材料から成るパネル)を備えてもよい。放射線フィルタリングの他の部分は、放射線透過型または放射線透過性であり得る(例えば、低Z材料から成る)。放射線フィルタリングの放射線遮断区分(すなわち、放射線遮断コンポーネントが位置する放射線フィルタリングの部分)は、PETセンサアレイのサイズおよび形状に対応するサイズおよび形状を有してもよい。第1の構成(例えば、放射線遮断構成)では、放射線フィルタリングは、放射線遮断区分がPET検出器アレイにわたって配置されるように位置してもよい。第2の構成(例えば、放射線透過性構成)では、放射線フィルタリングは、放射線透過性区分(すなわち、放射線遮断コンポーネントを有していない放射線フィルタリングの部分)がPET検出器アレイにわたって配置されるように位置してもよい。放射線フィルタリングに結合される運動コントローラ(第1の円形ガントリのための運動コントローラから分離および/または独立し得る)は、放射線フィルタリングを回転または発振させ、第1の構成と第2の構成との間で遷移させてもよい。放射線フィルタリングのための運動コントローラは、(下記でさらに説明されるように)具体的時間間隔またはスケジュールに従ってフィルタリングの位置を変更するために十分な原動力を供給する、フィルタリングに結合されるアクチュエータ、モータ、および/または駆動機構を備えてもよい。いくつかの変形例では、運動コントローラは、1つまたは複数のばねを有するばね機構と、アクチュエータシステムまたは機構(例えば、空気圧または油圧アクチュエータ、カムベースのモータ、スロット付きリンクモータ、電磁アクチュエータ等)とを備えてもよい。ばね機構は、フィルタリング運動を促進させる、および/または摩擦ならびに/もしくは牽引力に起因する運動システム内の任意のエネルギー損失を相殺することに役立つための付加的原動力を提供することによって、アクチュエータシステムまたは機構を支援してもよい。
【0071】
いくつかの変形例では、回転可能放射線フィルタリングは、リニアックパルス毎に半分の回転を行ってもよい。代替として、または加えて、発振放射線フィルタリングは、リニアックパルス毎に半分のサイクルを生じてもよい。発振放射線フィルタリングは、放射線透過型区分がPET検出器にわたって配置されるときのその速度と比較して、放射線遮断区分がPET検出器を覆い隠すときに、その速度(例えば、PET検出器アレイを横断してガントリ内径の中および外に移動する側方速度)がより高いように、PET検出器アレイにわたって心合されてもよい。その間にPET検出器アレイが散乱放射線から(例えば、リニアックパルスから)遮られる、または遮蔽される時間は、その間にPET検出器アレイが遮られていない時間と比較して、比較的に短い。すなわち、所与のリニアックパルスデューティサイクルに関して、PET検出器は、PETデータ収集モードであり、したがって、放射線フィルタリングの放射線遮断区分によって遮られなくてもよい。例えば、運動コントローラは、リニアックパルス中に(随意に、パルスの前および/または後の期間にわたって)放射線フィルタリングを第1の構成に移行させ、パルス後に(例えば、パルス間の間隔中に)放射線フィルタリングを第2の構成に移行させるように、リニアックと同期化されてもよい。リニアックパルスのデューティサイクル、パルス幅、パルス周波数は、放射線フィルタリングがリニアックパルス中に第1の構成であるように、放射線フィルタリング運動コントローラに通信されてもよい。いくつかの変形例では、運動コントローラは、放射線フィルタリングを発振させ、その経路の中でPET検出器アレイ幅を数回被覆してもよい。放射線フィルタリングの発振変位の長さ(例えば、第1の構成と第2の構成との間で発振するにつれて放射線フィルタリングによって掃引される円周または円弧長)は、PET検出器アレイの幅を上回るように選択されてもよい。これは、発振放射線フィルタリングが第1の構成であるときに覆い隠されるPET検出器の割合を低減させることに役立ち得る。例えば、PET検出器アレイの幅の9倍である長さを有する発振変位は、利用可能なPET事象の5%のみを覆い隠す。
【0072】
図8A-8Bは、PET検出器アレイ802a、802bと、システムのボア803の周囲の回転可能放射線フィルタリング804とを備える、放射線療法システム800の一変形例を描写する。回転可能放射線フィルタリング804は、第1の放射線遮断区分806aと、第2の放射線遮断区分806bとを備える。回転可能放射線フィルタリングの直径は、PET検出器アレイが搭載される円形ガントリの内径に近似するようなものであってもよい。いくつかの変形例では、回転可能放射線フィルタリングの直径は、円形ガントリの内径未満であり得る。PET検出器アレイ802a、802bは、相互の真向かいに(例えば、第1のPET検出器アレイ802aの中心が第2のPET検出器アレイ802bの中心から約180度に位置するように、相互の反対に)位置してもよい。同様に、PET検出器アレイ802a、802bの配列に対応するために、放射線遮断区分806a、806bはまた、相互の真向かいに位置してもよい。放射線遮断区分806a、806bの長さは、それらの円周長がPET検出器アレイ802a、802bの円周長と対応するように選択されてもよい。
図8Aは、放射線遮断区分806a、806b(1つまたは複数の高Z材料から成り得る)が、PET検出器アレイ802a、802bにわたって配置または整合される、回転可能放射線フィルタリング804の第1の構成を描写する。例えば、回転可能放射線フィルタリングは、リニアックパルス中に本第1の構成であってもよい。
図8Bは、リニアックが非アクティブである(例えば、パルスを発していない、またはパルス間の間隔内である)ときに、放射線遮断区分806a、806bがPET検出器アレイにわたって配置されない(すなわち、それに不整合されている)、回転可能放射線フィルタリング804の第2の構成を描写する。
図8Cは、
図8A-8Bのシステム800の概略断面図である。
図8Cは、PET検出器アレイ802a、802bが、ボア803を通した治療面801に沿って放射線から遮蔽されるように、放射線遮断区分がPET検出器アレイにわたって配置される、第1の構成で回転可能放射線フィルタリングを描写する。
【0073】
図9A-9Bは、(ボア903の周囲に配置され得る)円形ガントリの内径内で放射線フィルタリングを回転させる代わりに、放射線フィルタリング900が円形ガントリの内径の中および外に側方に発振する、放射線フィルタリング900の別の変形例の概略断面図を描写する。発振放射線フィルタリング900は、PET検出器アレイ904a、904bのサイズおよび形状と対応するサイズおよび形状を有し得る、第1および第2の放射線遮断区分902a、902bを備えてもよい。
図9Aは、発振放射線フィルタリングが円形ガントリの内径内に位置する(すなわち、放射線遮断区分がPET検出器アレイにわたって配置される)、発振放射線フィルタリング900の第1の構成を描写する。上記で説明されるように、放射線遮断区分は、散乱放射線を反射および/または吸収するための高Z材料の1つまたは複数のパネルを備えてもよく、PET検出器アレイにわたって配置されるとき、PET検出器上の散乱放射線の入射を低減または排除することによって、PET検出器残光を低減させることに役立ち得る。
図9Bは、放射線遮断区分902a、902bが、PET検出器アレイにわたって配置されない(すなわち、それに整合されない)、発振放射線フィルタリングの第2の構成を描写する。発振放射線フィルタリングの側方移動は、矢印901によって示される。発振放射線フィルタリングは、PET検出器アレイ904a、904bがボア903を通した治療面901に沿って放射線から遮蔽されるように、リニアックパルス中に第1の構成であってもよく、リニアックが非アクティブである(例えば、パルスを発していない、またはパルス間の間隔内である)ときに第2の構成であってもよい。
【0074】
上記に説明される回転可能または発振放射線フィルタリングの変形例は、円形または輪状であるが、他の変形例では、放射線フィルタは、高いレベルの散乱放射線が予期される時間間隔中にPET検出器の上を移動され、比較的に低いレベルの散乱放射線が予期される時間間隔中にPET検出器から離れるように移動される、放射線遮断または放射線不透過性材料のブロックであってもよい。例えば、放射線フィルタは、アーム、レール等の上に搭載されてもよい、および/またはPET検出器にわたって、かつそれから離れるようにそれらを移動させる、アクチュエータもしくはモータに結合されてもよい。
【実施例0075】
図10Aは、PET検出器残光が測定および特性評価された、実験設定の一実施例を描写する。PET検出器上の短期および長期残光が、測定された。アクリル散乱標的1000が、6MeVリニアック1002から放射線を散乱させるために使用された。標的1000は、アクリルの40cm×40cm×20cmブロックであった。一致して起動される2つのPET検出器に入射する散乱放射線が、患者の放射線散乱をシミュレートするように、PET検出器1004を使用して測定された。標的1000の中心は、PET検出器1004から53cmであった。6MeVリニアック1002は、153Hzにおいて3マイクロ秒パルス幅を伴って、アクリルファントム1000上にX線放射線の10cm×10cm場を生成した。設定全体は、約20cmの長さをそれぞれ有する、複数の鉛ボックス1006によって封入された。リニアックビーム1010の経路内の第1の線量チャンバ1008と、PET検出器1004の背後に位置する第2の線量チャンバ1008と、リニアック1002から最も遠い標的1000の壁上に位置する線量チャンバ1008とが存在した。フィルム1009が、リニアック1002に最も近い標的1000の壁上に位置した。
図10Bは、
図10Aの設定と併用された2つの単結晶PET検出器1012(LYSOシンチレーション結晶を伴う)および1014(LFSシンチレーション結晶を伴う)の概略描写である。PET検出器1012、1014の両方は、飛行時間測定が可能であり、PETデータ収集への散乱放射線の影響を測定するために使用される、固体光検出器または光電子増倍管1016(MPPC(SiPM)光検出器等)を使用した。
【0076】
PET検出器で使用されるシリコン光電子増倍管(SiPM)は、その暗カウント率性能によって特性評価されてもよい。SiPMは、単一光子に敏感であり得、暗カウントは、検出器における熱電子雑音事象である。シンチレーション検出器は、短期残光を生じ、これらは、シンチレーションパルスの間に持続する光学光子を生成する。これらは、検出システムの観点から暗カウントに近似する。センサの暗カウント率(DCR)は、それがリニアックパルスに対して起こった時間の関数として特性評価された(
図10C)。リニアックパルスの直前のDCRおよびリニアックパルスから50マイクロ秒~200マイクロ秒後のDCRが、特性評価された。これらの分析に基づいて、約200マイクロ秒だけコントローラによるPETデータの収集を遅延させることは、DCRを許容レベルまで低減させることに役立った。
【0077】
光センサのための初期DCRは、1秒あたり2Mの暗カウントであった。これは、デバイスのためのベンダからの仕様に合致した。
図10Dは、LYSOシンチレーション結晶のためのリニアックへの合計時間露出の関数としてDCRを描写する。リニアックがパルス状であるため、最小DCRは、予期される通りにリニアックパルスの直前にあった(
図10D、一番下のトレース)。DCRがリニアックパルスの直後に測定される場合、それは、有意に高い。したがって、残光に寄与する、短期的な一定の減衰がある。
【0078】
図10Eは、2つの異なる結晶、すなわち、LFSおよびLYSOに関する、LYSOシンチレーション結晶のためのリニアックへの合計時間露出の関数としてDCRを描写する。リニアックは、連続的に3,600秒または1時間にわたって起動される。リニアックが経時的に起動されると、残光は、シンチレーション結晶の中に蓄積する傾向がある。本残光は、センサの暗カウントと区別されることができない。これは、SiPMの信号対雑音比を有意に劣化させる。センサが約2Mの暗カウント/秒のDCRにおいて始動することに留意されたい。残光の1時間後、これは、1秒あたり10Mの暗カウントをはるかに上回って増加する、または5倍悪化する。
【0079】
図11は、2つの多結晶PET検出器を使用して残光を測定するための実験設定の別の実施例を描写する。
【0080】
図12は、各曲線が異なる一致トリガ閾値における時間分解能を描写する、リニアックパルス後の種々の時点における飛行時間PETモジュールのプロットである。示されるように、残光雑音は、PET検出器モジュールの閾値を増加させることによって軽減され得る(
図11)。残光効果は、PET検出器電子機器のトリガ閾値を変更することによって軽減された。治療中にシステムのDCRを測定し、システムのタイミング性能を向上させることに役立つように閾値を適合することが、可能であり得る。
【0081】
本明細書に説明される放射線治療システムは、プロセッサと、1つまたは複数のメモリとを有する、コントローラを備えてもよい。コントローラは、1つまたは複数のプロセッサと、1つまたは複数のプロセッサと通信する、1つまたは複数の機械可読メモリとを備えてもよい。コントローラは、有線または無線通信チャネルによって、放射線療法システムおよび/または他のシステムに接続されてもよい。いくつかの変形例では、放射線治療システムのコントローラは、患者と同一または異なる部屋の中に位置してもよい。例えば、コントローラは、患者プラットフォームに結合される、または患者および/またはオペレータに隣接する運搬車もしくは医療用カート上に配置されてもよい。
【0082】
コントローラは、多数の汎用または特殊目的コンピューティングシステムもしくは構成に準拠して実装されてもよい。本明細書に開示されるシステムおよびデバイスと併用するために好適であり得る、種々の例示的コンピューティングシステム、環境、および/または構成は、限定ではないが、パーソナルコンピューティングデバイス、ネットワークアプライアンス、ルーティング/コネクティビティコンポーネント等のサーバまたはサーバコンピューティングデバイス、ポータブル(例えば、ハンドヘルド)またはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、および分散型コンピューティングネットワーク内または上に具現化される、ソフトウェアまたは他のコンポーネントを含んでもよい。
【0083】
ポータブルコンピューティングデバイスの実施例は、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、タブレットPC、ファブレット(スマートフォンより大きいが、タブレットより小さい、パーソナルコンピューティングデバイス)、スマートウォッチの形態をとるウェアラブルコンピュータ、ポータブル音楽デバイス、および同等物を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、命令またはコードのセットを起動および/または実行するように構成される、任意の好適な処理デバイスであってもよく、1つまたは複数のデータプロセッサ、画像プロセッサ、グラフィック処理ユニット、物理処理ユニット、デジタル信号プロセッサ、および/または中央処理ユニットを含んでもよい。プロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または同等物であってもよい。プロセッサは、アプリケーションプロセスおよび/または他のモジュール、システムと関連付けられるプロセスならびに/もしくは機能、および/またはそれと関連付けられるネットワークを起動ならびに/もしくは実行するように構成されてもよい。下層デバイス技術は、種々のコンポーネントタイプ、例えば、相補的金属酸化物半導体(CMOS)のような金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)技術、エミッタ結合論理(ECL)のようなバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマーおよび金属共役ポリマー金属構造)、混合アナログおよびデジタル、または同等物で提供されてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、メモリは、データベースを含んでもよく、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、消去可能プログラマブル読取専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能な読取専用メモリ(EEPROM)、読取専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等であってもよい。メモリは、プロセッサに、1つまたは複数の治療計画、前の治療セッションおよび/または現在の治療セッション(例えば、リアルタイム画像データ)中に収集される画像データ、生物学的活性、画像データから抽出される生理学的および/または解剖学的データ、更新または適応された治療計画、更新または適応された線量送達命令、放射線療法システム命令(例えば、ガントリ、療法用放射線源、マルチリーフコリメータ、PET検出器、および/または放射線療法システムの任意の他のコンポーネントの動作を指示し得る)、ならびに治療送達と関連付けられる画像および/またはデータ処理等のシステムと関連付けられるモジュール、プロセス、および/または機能を実行させるための命令を記憶してもよい。
【0086】
本明細書に説明されるいくつかの実施形態は、その上に種々のコンピュータ実装動作を実施するための命令またはコンピュータコードを有する、非一過性コンピュータ可読媒体(非一過性プロセッサ可読媒体とも称され得る)を伴う、コンピュータ記憶製品に関する。コンピュータ可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、それ自体が一過性伝搬信号(例えば、空間またはケーブル等の伝送媒体上で情報を搬送する伝搬電磁波)を含まないという意味において、非一過性である。媒体およびコンピュータコード(コードまたはアルゴリズムとも称され得る)は、具体的目的または複数の目的のために設計および構築されるものであってもよい。非一過性コンピュータ可読媒体の実施例は、限定ではないが、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープ等の磁気記憶媒体、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)、およびホログラフィックデバイス等の光学記憶媒体、光ディスク等の磁気光学記憶媒体、ソリッドステートドライブ(SSD)およびソリッドステートハイブリッドドライブ(SSHD)等のソリッドステート記憶デバイス、搬送波信号処理モジュール、ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、読取専用メモリ(ROM)、およびランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス等のプログラムコードを記憶および実行するように特別に構成されるハードウェアデバイスを含む。本明細書に説明される他の実施形態は、例えば、本明細書に開示される命令および/またはコンピュータコードを含み得る、コンピュータプログラム製品に関する。
【0087】
ユーザインターフェースは、オペレータまたは臨床医と治療計画システムとの間の通信インターフェースとしての役割を果たし得る。ユーザインターフェースは、入力デバイスと、出力デバイス(例えば、タッチスクリーンおよびディスプレイ)とを備え、支持アーム、外部磁石、センサ、送達デバイス、入力デバイス、出力デバイス、ネットワーク、データベース、およびサーバのうちの1つまたは複数のものから入力データおよび出力データを受信するように構成されてもよい。1つまたは複数のセンサからのセンサデータは、ユーザインターフェースによって受信され、視覚的に、聴覚的に、および/または触知フィードバックを通して、1つまたは複数の出力デバイスによって出力されてもよい。別の実施例として、入力デバイス(例えば、ジョイスティック、キーボード、タッチスクリーン)のオペレータ制御は、ユーザによって受信され、次いで、ユーザインターフェースが制御信号を1つまたは複数の支持アーム、外部磁石、空洞内デバイス、および送達デバイスに出力するために、プロセッサおよびメモリによって処理されてもよい。
【0088】
いくつかの変形例では、出力デバイスは、発光ダイオード(LED)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセントディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、薄膜トランジスタ(TFT)、有機発光ダイオード(OLED)、電子ペーパ/電子インクディスプレイ、レーザディスプレイ、および/またはホログラフィックディスプレイのうちの少なくとも1つを含む、ディスプレイデバイスを備えてもよい。
【0089】
いくつかの変形例では、放射線療法システムは、例えば、それぞれ、任意のタイプのネットワーク(例えば、有線ネットワーク、無線ネットワーク)であり得る、1つまたは複数のネットワークを介して、他のコンピューティングデバイスと通信してもよい。無線ネットワークは、いかなる種類のケーブルによっても接続されない、任意のタイプのデジタルネットワークを指し得る。無線ネットワーク内の無線通信の実施例は、限定ではないが、セルラー、無線、衛星、およびマイクロ波通信を含む。しかしながら、無線ネットワークは、インターネット、他のキャリア音声およびデータネットワーク、ビジネスネットワーク、ならびにパーソナルネットワークとインターフェースをとるために、有線ネットワークに接続してもよい。有線ネットワークは、典型的には、銅ツイストペア、同軸ケーブル、および/または光ファイバケーブルを経由して搬送される。広域ネットワーク(WAN)、都市規模ネットワーク(MAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットエリアネットワーク(IAN)、キャンパスエリアネットワーク(CAN)、インターネットのようなグローバルエリアネットワーク(GAN)、および仮想プライベートネットワーク(VPN)を含む、多くの異なるタイプの有線ネットワークが、存在する。以降、ネットワークは、典型的には、インターネットを通して相互接続され、統一されたネットワーキングおよび情報アクセスシステムを提供する、無線、有線、公衆、およびプライベートデータネットワークの任意の組み合わせを指す。
【0090】
セルラー通信は、GSM(登録商標)、PCS、CDMAまたはGPRS、W-CDMA、EDGEまたはCDMA2000、LTE、WiMAX、および5Gネットワーキング規格等の技術を包含してもよい。いくつかの無線ネットワーク展開は、複数のセルラーネットワークからのネットワークを組み合わせる、またはセルラー、Wi-Fi、および衛星通信の混合を使用する。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるシステム、装置、および方法は、無線周波数受信機、送信機、および/または光学(例えば、赤外線)受信機ならびに送信機を含み、1つまたは複数のデバイスおよび/またはネットワークと通信してもよい。