(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023052883
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】手術ロボットシステム及びその手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20230404BHJP
【FI】
A61B34/37
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015112
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2020549685の分割
【原出願日】2019-03-05
(31)【優先権主張番号】201810218810.2
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519068560
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート メドボット(グループ)カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シア,ユーフイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー,タオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジアイン
(72)【発明者】
【氏名】シー,ユンレイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】手術器具の端部における接触力測定の精度及び正確度を改善する手術ロボットシステムを提供する。
【解決手段】手術器具は、機械的構造と、カニューレと、力センサと、を備え、機械的構造は、器具ロッドと、器具ロッドの端部に接続されている端部実行器と、を含み、カニューレは器具ロッドの端部に固定的なスリーブ401を提供し、力センサは、検知要素と、検知要素に接続されている周辺測定モジュールと、を備え、検知要素はカニューレの変形情報を獲得するためにカニューレ上に配設されており、周辺測定モジュールは、検知要素が獲得した変形情報に従って検知要素が測定した応力を取得し、検知要素が測定した応力に従って、検知要素の位置及び検知要素の検知軸の方向と、器具ロッドによってカニューレに加えられる作用する力の等価な合力及び等価な力のモーメントと、を取得し、このことにより、手術器具の端部実行器の接触力を取得する。
【選択図】
図5b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的構造と、スリーブと、力センサと、を備える手術器具であって、
前記機械的構造は、シャフトと、前記シャフトの末端に接続されているエンドエフェクタと、を備え、
前記スリーブは前記シャフトの前記末端を覆う固定的な又は取り外し可能なスリーブを提供し、
前記力センサは、少なくとも一つの検知要素と、前記検知要素に接続されている周辺測定モジュールと、を備え、前記検知要素は前記スリーブ上に配設されて前記スリーブの歪み情報を取得するように構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記検知要素が取得した前記歪み情報に基づいて前記検知要素が測定した応力を取得し、前記検知要素が測定した前記応力、前記検知要素の位置、及び前記検知要素の検知軸の方向に基づいて、前記シャフトによって前記スリーブに及ぼされる作用力の等価な合力及び等価な合モーメントの両方を取得し、このことにより前記手術器具の前記エンドエフェクタに作用する接触力を取得するように構成されている、手術器具。
【請求項2】
前記スリーブは周方向に沿って延在するくり抜き構造を備え、前記くり抜き構造は、複数の可撓要素と、前記可撓要素のうちの隣り合う二つの間に各々位置する開口部と、を備え、前記可撓要素は前記くり抜き構造よりも上にある前記スリーブの上側区域を前記くり抜き構造よりも下にある前記スリーブの下側区域に接続するように構成されており、
前記少なくとも一つの検知要素は前記可撓要素上に配置されて、前記可撓要素に対する応力を測定するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記可撓要素の弾性率は前記シャフトの弾性率以下である、請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記可撓要素の各々は内面と外面と側面とを備え、前記少なくとも一つの検知要素は前記可撓要素の前記内面、外面、又は側面上に配置されている、請求項2に記載の手術器具。
【請求項5】
前記くり抜き構造は、前記スリーブの軸方向中央部の周囲に配置されている、請求項2に記載の手術器具。
【請求項6】
前記検知要素の前記検知軸は、前記スリーブの軸方向に対して平行又は垂直になるように配置されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項7】
前記スリーブは、接着、締まり嵌め、又は挿入によって、前記シャフトの前記末端を覆う固定的なスリーブを提供する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記スリーブは、ねじ接続、ラッチ接続、又はスナップ嵌合によって、前記シャフトの前記末端を覆う取り外し可能なスリーブを提供する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記スリーブは一方の端部が前記シャフトの前記末端と同一平面にある、請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
前記周辺測定モジュールは、互いに通信可能に直列接続されている、データ取得ユニットと、信号調整ユニットと、計算及び出力ユニットと、を備え、前記データ取得ユニットは前記検知要素から出力された信号を獲得するように構成されており、前記信号調整ユニットは前記検知要素から出力された前記信号を調整するように構成されており、前記計算及び出力ユニットは前記調整された信号に基づいて計算を行って前記エンドエフェクタに対する前記接触力を取得するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記検知要素が測定した前記応力は、
によって与えられ、
上式において、iはi番目の検知要素、f
iは前記i番目の検知要素が測定した応力、ε
iは、前記i番目の検知要素の前記検知軸の方向に沿って前記i番目の検知要素が表面に配置されている前記可撓要素の歪み、g(・)は前記応力と前記歪みの間の関係を記述する関数、k
iは、前記i番目の検知要素の前記検知軸の前記方向に沿って前記i番目の検知要素が表面に配置されている前記可撓要素の応力-歪み係数、f(ε
i)は前記応力及び前記歪みに関する非線形補正項を表す、請求項2に記載の手術器具。
【請求項12】
前記接触力は等価な合力Fqと等価な合モーメントMqとを含み、
前記周辺測定モジュールは、その前記スリーブ用の座標系{p}と、その前記末端にある前記手術器具用の座標系{q}と、前記座標系{q}における前記座標系{p}の位置及び姿勢の記述子と、を確立するように構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子と、前記座標系{p}における前記検知要素の前記検知軸の前記方向の記述子と、前記検知要素が測定した前記応力と、に基づいて、前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の記述子を取得し、このことにより前記等価な合力Fqを取得するように更に構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置及び前記姿勢の前記記述子と、前記座標系{p}における前記検知要素の前記位置の記述子と、に基づいて、前記座標系{q}における前記検知要素の前記位置の記述子を取得するように更に構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の前記記述子に基づいて、前記座標系{q}における前記スリーブに作用する力のモーメントの記述子を取得し、このことにより前記等価な合モーメントMqを取得するように更に構成されている、
請求項11に記載の手術器具。
【請求項13】
前記座標系{p}における前記検知要素が測定した前記応力の記述子は、
によって与えられ、
上式において、e
iは前記座標系{p}における前記i番目の検知要素の前記検知軸の前記方向の記述子を表す単位ベクトル、f
iは前記i番目の検知要素が測定した前記応力、f
xi、f
yi、f
ziは前記座標系{p}の軸に沿った前記f
iの成分、e
xi、e
yi、e
ziは前記座標系{p}の軸に沿ったe
iの成分である、
請求項12に記載の手術器具。
【請求項14】
前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の前記記述子は、
によって与えられ、
上式において、左辺のf
iは前記座標系{q}における前記i番目の検知要素が測定した前記応力の記述子を表し、
qRは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子を表し、
前記等価な合力F
qは、
によって与えられ、
上式において、diag(・)はベクトル・の要素を対角要素とする対角行列を表し、n
x、n
y、n
zはx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複する力の数を表す、
請求項13に記載の手術器具。
【請求項15】
前記座標系{q}における前記検知要素の前記位置の前記記述子は、
によって与えられ、
上式において、r
iは前記座標系{q}における前記i番目の検知要素の前記位置の記述子、
pr
iは前記座標系{p}における前記i番目の検知要素の前記位置の記述子、
qRは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子、r
pは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置の記述子である、
請求項12又は13に記載の手術器具。
【請求項16】
前記等価な合モーメントM
qは、
によって与えられ、
上式において、n
x'、n
y'、n
z'はx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複するモーメントの数を表す、
請求項15に記載の手術器具。
【請求項17】
前記くり抜き構造は前記周方向に沿って配置されている四つの可撓要素を備え、前記力センサは前記可撓要素のそれぞれ一つの外面上に各々配置されている四つの検知要素を備え、前記座標系{p}における前記四つの検知要素の検知軸の方向の記述子e
1、e
2、e
3、e
4は全て(1,0,0)
Tであり、
前記座標系{q}における前記四つの検知要素が測定した応力の記述子は、
として与えられ、
上式において、f
x1、f
x2、f
x3、f
x4はそれぞれ、前記座標系{q}のx軸の方向において前記四つの検知要素の第1から第4の検知要素が測定した応力を表し、
前記等価な合力F
qは、
によって与えられる、
請求項13に記載の手術器具。
【請求項18】
前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子である
qRは恒等行列であり、
前記検知要素の前記位置はそれぞれの中心位置として測定され、前記中心位置は前記座標系{q}において、
として記述され、
上式において、
pr
1、
pr
2、
pr
3、
pr
4は前記座標系{p}における前記四つの検知要素の前記中心位置の記述子、r
pは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置の記述子、x
1、x
2、x
3、x
4は前記座標系{q}における前記四つの検知要素の第1から第4の検知要素の前記中心位置のx軸座標、y
1、y
2、y
3、y
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記中心位置のy軸座標、z
1、z
2、z
3、z
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記中心位置のz軸座標、r
1、r
2、r
3、r
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記位置の記述子である、
請求項17に記載の手術器具。
【請求項19】
前記等価な合モーメントM
qは、
として与えられる、
請求項18に記載の手術器具。
【請求項20】
前記スリーブの全体が前記シャフトの前記末端と重なる、請求項1に記載の手術器具。
【請求項21】
スレーブを備え、
前記スレーブは、
ロボットアームと、
請求項1から20のいずれか一項に定義されている手術器具と、を備え、
前記ロボットアームは前記手術器具に取り外し可能に接続されている末端を備え、前記ロボットアームは遠隔運動中心を中心として移動するよう前記手術器具を駆動するように構成されている、手術ロボットシステム。
【請求項22】
マスターと制御ユニットとを更に備え、前記マスターは力指示器を備え、
前記制御ユニットは前記マスター及び前記スレーブの両方に通信可能に接続されており、前記制御ユニットは、前記手術器具の前記力センサから前記エンドエフェクタに作用する接触力についての情報を取得し前記情報を前記力指示器に送信するように構成されており、前記力指示器は前記エンドエフェクタに作用する前記接触力についての前記情報を示すように構成されている、請求項21の記載の手術ロボットシステム。
【請求項23】
前記スレーブは、
内視鏡と、
前記内視鏡に取り外し可能に接続されている内視鏡アームと、を更に備え、
前記手術器具の周辺測定モジュールは、前記スリーブ用の座標系{p}、前記手術器具用の座標系{q}、及び前記内視鏡用の座標系{e}を確立するように、並びに、前記座標系{q}から前記座標系{e}への回転を記述する行列
eR及び前記座標系{q}から前記座標系{e}への位置ベクトル
er=(r
x r
y r
z)
Tから、前記座標系{e}における前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の記述子を、
として取得するように構成されており、
上式において、
eFは前記座標系{e}における合力、
eMは前記座標系{e}における合モーメント、S(
er)は前記ベクトル
erに対応する反対称行列、F
qは前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の前記等価な合力、M
qは前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の前記等価な合モーメントを表し、
である、請求項21又は22に記載の手術ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療デバイスの技術分野に関し、より詳細には、手術ロボットシステム及びその手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット支援手術システムでは通常、マスター(外科医側)とスレーブ(患者側)とから成るマスター-スレーブ制御構造が採用される。マスターは通常、ロボットアーム、多次元マウス、ジョイスティック等といった構成要素に基づいた多次元の動きが可能であり、一方、スレーブは通常、端部に手術器具(例えば、持針器、電気凝固鉗子、電気手術焼灼プローブ、組織把持器、鋏、等)を保持する、複数の自由度を有するロボットアームである。動作中、ディスプレイデバイスに表示された内視鏡からの標的手術部位の3D画像に基づいて、外科医がマスターを操作し、これによりスレーブがマスターの動きに従って手術器具を駆動して、様々な手術動作、例えば、組織の開創、縫合、血管の把持、切開、焼灼、組織の凝固、等を行わせる。
【0003】
そのようなロボット支援手術システムは、以下の利点をもたらす。
【0004】
第1に、このシステムは、患者の体に設けた小さな外科的切開部を通して低侵襲性の介入を行うように設計され、この結果、患者の外傷の低減、したがって術後の痛みの軽減、早期回復、感染リスクの低減、及び輸血の必要性の最小化がもたらされる。
【0005】
第2に、これは人の手と比べ、システムによってはるかに精確かつ安定的に動作する。例えば、システムは生理的振戦を排除でき、また微小な毛細血管ですら3D視の術野内ではっきりと見ることができ、手術の高い安全性が実現される。
【0006】
しかしながら、ロボット支援システムは遠隔操作モードを基本とするので、外科医が直接の触感を得られるようにすること、組織の丈夫さを識別すること、血管の脈動を感知することができず、また、把持動作及び押圧動作に対するフィードバックが無い。フィードバックは手術器具による人体への深刻な衝突が生じた場合にしか得られない可能性があり、接触が非常に弱い場合には検知できるフィードバックを得るのが難しい。したがって、そのようなロボットに、身体組織に接触させている手術器具の末端に及ぼされる力の変動に従ってスレーブの動きを調整する、及び外科医に適切な力フィードバック指示を提供する能力を付与することにより、システムの安全性を大きく強化することができる。
【0007】
従来型の力フィードバック機構のほとんどは、ロボットの関節に配設されたトルクセンサを利用し、末端の接触トルクを関節のトルクに基づいて計算できるものである。しかしながらこの手法には、計算される接触力が実際に起こっていることをリアルタイムで十分に反映できないという点で、いくつかの欠点がある。また更に、軽微な接触力を検出できるにはトルクセンサの測定正確度及び分解能を強化する必要があるが、この結果その高い分解能を有するセンサはノイズに敏感になり、信号ひずみを引き起こし易くなり、結果的にコストが高価になる。更に、手術器具における伝達は通常、ワイヤによって実現されるが、ワイヤはその表面に張力センサを配置するには明らかに適していない。
【0008】
米国特許第8,491,574号明細書には上記の問題の解決法が開示されており、この解決法では、手術器具の末端に、外力を直接測定できる歪み検知要素が埋め込まれる。しかしながら、これには依然として以下の欠点が伴う。
【0009】
第1に、単一の手術動作に多くの手術器具が必要となるのは必然である。これらの手術器具の各々にそれぞれのセンサが設けられている場合、異なるセンサ間の測定整合性を保証することが困難になる。各センサが較正される場合ですら、全ての器具の物理パラメータの正確な記録は難しい。
【0010】
第2に、検知要素の物理特性は温度、湿度、及び気圧といった因子の影響を受け易く、検知要素の性能は、患者の体内及び体外といった環境に応じて変動する。したがって、そのような検知要素にとって、手術器具に作用する力を整合性をもって記述することは困難である。
【0011】
第3に、手術器具自体は消耗品であり、一般に10回まで使用できるが、その表面のセンサはそれよりも使用できる回数が多い。手術器具をセンサと一緒に廃棄することが経済的なやり方ではないことは明らかである。
【0012】
国際公開第2009079301号には、内側チューブと内側チューブを覆うように配設される外側チューブとを含む力センサ装置が開示されている。内側チューブの表面に歪みゲージが配設されており、内側チューブの近位端は手術器具に接続されており、内側チューブ上の歪みゲージは手術器具に作用する力を検知できるようになっている。しかしながら、この力センサ装置には、測定整合性に劣る及び測定正確度がより低い等の、いくつかの問題が伴う。
【0013】
中国特許出願公開第104764552号明細書には、手術に関わる力を検知するための力検知センサが開示されているが、これは複数の梁状部材を有する複雑な構造のものである。更に、歪みゲージが歪みを受ける構成要素上に直接配置されていないので、その検知正確度が劣っている。更に、この力検知センサには以下の問題がある。精確な数学モデルが存在しないため測定は較正に依存せざるを得ず、精確な結果を得ることが不可能になる、及び、その構造設計に起因して、軸方向の力測定を行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
手術器具の末端に対する接触力の測定の低い正確度及びセンサの不必要な廃棄を含む、従来技術の上記した問題のうちの一つ以上を解決できる手術ロボットシステム及びその手術器具を提供することが、本発明のいくつかの実施形態の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した及び関連する目的は、機械的構造と、スリーブ、と力センサと、を備える手術器具であって、
機械的構造は、シャフトと、シャフトの末端に接続されているエンドエフェクタと、を備え、
スリーブはシャフトの末端を覆う固定的な又は取り外し可能なスリーブを提供し、
力センサは、少なくとも一つの検知要素と、検知要素に接続されている周辺測定モジュールと、を備え、検知要素はスリーブ上に配設されてスリーブの歪み情報を取得するように構成されており、
周辺測定モジュールは、検知要素が取得した歪み情報に基づいて検知要素が測定した応力を取得し、検知要素が測定した応力、検知要素の位置、及び検知要素の検知軸の方向に基づいて、シャフト上でスリーブに及ぼされる作用力の等価な合力及び等価な合モーメントの両方を取得し、このことにより手術器具のエンドエフェクタに作用する接触力を取得するように構成されている、手術器具、によって達成される。
【0016】
任意選択的に、スリーブは周方向に延在するくり抜き構造(hollowed-out feature)を備え、くり抜き構造は、複数の可撓要素と、可撓要素のうちの隣り合う二つの間に各々位置する開口部と、を備え、可撓要素はくり抜き構造よりも上にあるスリーブの上側区域をくり抜き構造よりも下にあるスリーブの下側区域に接続するように構成されており、
少なくとも一つの検知要素は可撓要素上に配置されて、可撓要素に対する応力を測定するように構成されている。
【0017】
任意選択的に、可撓要素の弾性率は、シャフトの弾性率以下である。
【0018】
任意選択的に、可撓要素の各々は内面、外面、及び側面を備え、少なくとも一つの検知要素は、可撓要素の内面、外面、又は側面上に配置されている。
【0019】
任意選択的に、くり抜き構造は、スリーブの軸方向中央部の周囲に配置される。
【0020】
任意選択的に、検知要素の検知軸は、スリーブの軸方向に対して平行又は垂直になるように配置されている。
【0021】
任意選択的に、スリーブは、接着、締まり嵌め、又は挿入によって、シャフトの末端を覆う固定的なスリーブを提供する。
【0022】
任意選択的に、スリーブは、ねじ接続、ラッチ接続、又はスナップ嵌合によって、シャフトの末端を覆う取り外し可能なスリーブを提供する。
【0023】
任意選択的に、スリーブは、一方の端部がシャフトの末端と同一平面にある。
【0024】
任意選択的に、周辺測定モジュールは、互いに通信可能に直列接続されている、データ取得ユニットと、信号調整ユニットと、計算及び出力ユニットと、を備え、データ取得ユニットは検知要素から出力された信号を獲得するように構成されており、信号調整ユニットは検知要素から出力された信号を調整するように構成されており、計算及び出力ユニットは調整された信号に基づいて計算を行ってエンドエフェクタに対する接触力を取得するように構成されている。
【0025】
任意選択的に、検知要素が測定した応力は、次式によって与えられる。
【数1】
上式において、iはi番目の検知要素、f
iはi番目の検知要素が測定した応力、ε
iは、i番目の検知要素の検知軸の方向に沿ってi番目の検知要素が表面に配置されている可撓要素の歪み、g(・)は応力と歪みの間の関係を記述する関数、k
iは、i番目の検知要素の検知軸の方向に沿ってi番目の検知要素が表面に配置されている可撓要素の応力-歪み係数、f(ε
i)は応力及び歪みに関する非線形補正項を表す。
【0026】
任意選択的に、接触力は等価な合力Fqと等価な合モーメントMqとを含み、
周辺測定モジュールは、そのスリーブ用の座標系{p}と、その末端にある手術器具用の座標系{q}と、座標系{q}における座標系{p}の位置及び姿勢の記述子と、を確立するように構成されており、
周辺測定モジュールは、座標系{q}における座標系{p}の姿勢の記述子と、座標系{p}における検知要素の検知軸の方向の記述子と、検知要素が測定した応力と、に基づいて、座標系{q}における検知要素が測定した応力の記述子を取得し、このことにより等価な合力Fqを取得するように更に構成されており、
周辺測定モジュールは、座標系{q}における座標系{p}の位置及び姿勢の記述子と、座標系{p}における検知要素の位置の記述子と、に基づいて、座標系{q}における検知要素の位置の記述子を取得するように更に構成されており、
周辺測定モジュールは、座標系{q}における検知要素が測定した応力の記述子に基づいて、座標系{q}におけるスリーブに作用する力のモーメントの記述子を取得し、このことにより等価な合モーメントMqを取得するように更に構成されている。
【0027】
任意選択的に、座標系{p}における検知要素が測定した応力の記述子は、次式によって与えられる。
【数2】
上式において、e
iは座標系{p}におけるi番目の検知要素の検知軸の方向の記述子を表す単位ベクトル、f
iはi番目の検知要素が測定した応力、f
xi、f
yi、f
ziは座標系{p}の軸に沿ったf
iの成分、e
xi、e
yi、e
ziは座標系{p}の軸に沿ったe
iの成分である。
【0028】
任意選択的に、座標系{q}における検知要素が測定した応力の記述子は、次式によって与えられる。
【数3】
上式において、f
iは座標系{q}におけるi番目の検知要素が測定した応力の記述子を表し、
qRは座標系{q}における座標系{p}の姿勢の記述子を表し、
等価な合力F
qは、次式によって与えられる。
【数4】
上式において、diag(・)はベクトル・の要素を対角要素とする対角行列を表し、n
x、n
y、n
zはx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複する力の数を表す。
【0029】
任意選択的に、座標系{q}における検知要素の位置の記述子は、次式によって与えられる。
【数5】
上式において、r
iは座標系{q}におけるi番目の検知要素の位置の記述子、
pr
iは座標系{p}におけるi番目の検知要素の位置の記述子、
qRは座標系{q}における座標系{p}の姿勢の記述子、r
pは座標系{q}における座標系{p}の位置の記述子である。
【0030】
任意選択的に、等価な合モーメントM
qは、次式によって与えられる。
【数6】
上式において、n
x'、n
y'、n
z'はx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複するモーメントの数を表す。
【0031】
任意選択的に、くり抜き構造は周方向に沿って配置されている四つの可撓要素を備え、力センサは可撓要素のそれぞれ一つの外面上に各々配置されている四つの検知要素を備え、座標系{p}における四つの検知要素の検知軸の方向の記述子e
1、e
2、e
3、e
4は全て(1,0,0)
Tであり、
座標系{q}における四つの検知要素が測定した応力の記述子は、次式として与えられる。
【数7】
上式において、f
x1、f
x2、f
x3、f
x4はそれぞれ、座標系{q}のx軸の方向における第1から第4の検知要素が測定した応力を表し、
等価な合力F
qは、次式によって与えられる。
【数8】
【0032】
座標系{q}における座標系{p}の姿勢の記述子である
qRは恒等行列であり、
検知要素の位置はそれぞれの中心位置として測定され、中心位置は座標系{q}において、次式として記述される。
【数9】
上式において、
pr
1、
pr
2、
pr
3、
pr
4は座標系{p}における四つの検知要素の中心位置の記述子、r
pは座標系{q}における座標系{p}の位置の記述子、x
1、x
2、x
3、x
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心位置のx軸座標、y
1、y
2、y
3、y
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心位置のy軸座標、z
1、z
2、z
3、z
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心位置のz軸座標、r
1、r
2、r
3、r
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の位置の記述子である。
【0033】
任意選択的に、等価な合モーメントM
qは、次式として与えられる。
【数10】
【0034】
更に、本発明ではまた、スレーブを備える手術ロボットシステムであって、スレーブはロボットアームと上で定義したような手術器具とを備え、ロボットアームは手術器具に取り外し可能に接続されている末端を備え、ロボットアームは遠隔運動中心を中心として移動するよう手術器具を駆動するように構成されている、システム、も提供される。
【0035】
任意選択的に、手術ロボットシステムは、マスターと制御ユニットとを更に備え、マスターは力指示器を備え、
制御ユニットはマスター及びスレーブの両方に通信可能に接続されており、制御ユニットは、手術器具の力センサからエンドエフェクタに作用する接触力についての情報を取得し情報を力指示器に送信するように構成されており、力指示器はエンドエフェクタに作用する接触力についての情報を示すように構成されている。
【0036】
任意選択的に、スレーブは、
内視鏡と、
内視鏡に取り外し可能に接続されている内視鏡ホルダと、を備え、
手術器具の周辺測定モジュールは、スリーブ用の座標系{p}、手術器具用の座標系{q}、及び内視鏡用の座標系{e}を確立するように、並びに、座標系{q}から座標系{e}への回転を記述する行列
eR及び座標系{q}から座標系{e}への位置ベクトル
er=(r
x r
y r
z)
Tから、座標系{e}におけるエンドエフェクタに作用する接触力の記述子を、次式として取得するように構成されている。
【数11】
上式において、
eFは座標系{e}における合力、
eMは座標系{e}における合モーメント、S(
er)はベクトル
erに対応する反対称行列、F
qはエンドエフェクタに作用する接触力の等価な合力、M
qはエンドエフェクタに作用する接触力の等価な合モーメントを表し、S(
er)は、次式で表される。
【数12】
【0037】
要約すれば、本発明において提供される手術ロボットシステム及びその手術器具は、以下の利点のうちの少なくとも一つを提供する。
【0038】
第1に、スリーブと手術器具の機械的構造の間に隙間が生じない。このことは測定正確度の改善に寄与する。
【0039】
第2に、いくつかの手術器具を使用する必要のある手術動作に関して、手術器具の各々に対して特定の較正工程を実行することができ、測定に対する器具の材料のばらつきの影響が回避される。
【0040】
第3に、異なる手術器具に対して、これらの手術器具の変形を伝達する同一のスリーブを使用できる。検知要素を手術器具の末端に直接取り付けるのと比較して、検知要素をスリーブと共に使用する場合、異なる手術器具上の異なる検知要素間の測定のばらつきから生じ得る測定誤差を回避でき、より高度な測定精度及び正確度の達成が支援される。
【0041】
第4に、検知要素をスリーブで手術器具に結合することによって、検知要素が手術器具と一緒に廃棄されるのを回避できる。手術器具は消耗品であるが、検知要素は再利用可能である。検知要素を手術器具と一緒に廃棄することは経済的なやり方ではなく、使用コストの増加につながることは、明らかである。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、複数の検知要素が所定の様式でスリーブの可撓要素上に配置され、検知要素の各々は手術器具用の座標系において所定の座標を有する。これらの所定の座標に基づいて可撓要素上の検知要素の位置を判定でき、このことにより、手術器具の末端に作用する接触力の、一つ以上の次元の測定が可能になる。これには、手術器具用の座標系に対して検知要素の位置を調整するだけで一つ以上の次元の接触力測定が達成可能な、より容易かつより単純な接触力測定手法が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施形態に係る、手術ロボットシステムの概略図。
【
図2】本発明の実施形態に係る、手術器具の機械的構造を示す概略図。
【
図3】本発明の実施形態に係る、手術動作を行っている手術器具を概略的に示す図。
【
図4a】本発明の実施形態に係る、手術器具内の力センサ及びスリーブを示す概略図。
【
図4b】本発明の実施形態に係る、手術器具内の周辺測定モジュールの構造ブロック図。
【
図5a】本発明の実施形態に係る、手術器具内でシャフトを覆うように配設されたスリーブの概略図。
【
図6a】本発明の実施形態に係る、シャフトに組み付けられていないスリーブの概略図。
【
図6b】本発明の別の実施形態に係る、シャフトに組み付けられていないスリーブの概略図。
【
図7a】本発明の実施形態に係る、一方側に応力を受け変形している手術器具の概略図。
【
図7b】本発明の実施形態に係る、手術器具の末端に作用する力及びその測定原理の分析を示す概略図。
【
図8】本発明の実施形態に係る、三次元力センサの力の測定原理を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の目的、利点、及び特徴は、本発明で提案されている手術ロボットシステム及びその手術器具の以下の説明を、添付の図面すなわち
図1から
図8と併せて読むことで、更に明らかになるであろう。各図は必ずしも縮尺通りに提示されていない非常に簡略化された形態で提供されているが、それらは単に、本明細書に開示されているいくつかの実施形態を説明する際の、便利さ及び明確さを高めることを意図したに過ぎないことに留意されたい。本明細書で使用する場合、製品の「末端」又は「遠位端」は、製品を操作する使用者から離れたその遠い方の端部を指し、一方「近位端」は、製品の使用者に近い方の端部を指す。
【0045】
図1は、本発明の実施形態に係る、手術ロボットシステムの概略図である。
図1に示すように、手術ロボットシステムは、手術用カート1と、ロボットアーム2と、手術器具3と、内視鏡4と、含むスレーブを含む。手術用カート1は、スレーブの基部の役割を果たし、その全ての機械的構成要素を支持する。好ましくは、手術用カート1は地面の上を移動して、スレーブを患者8に対して近付けたり遠ざけたりすることができる。
【0046】
ロボットアーム2は、手術用カート1上に装着され、ある空間範囲内でアーム2が移動できるような複数の自由度を有している。手術用カート1が患者8の近傍へと移動すると、手術器具3が計画された作業位置に置かれるようにロボットアーム2を調整することができる。手術器具3は、ロボットアーム2のうちの一つの末端に取り外し可能に装着されており、ロボットアーム2に駆動されて遠隔運動中心(RCM;remote center of motion)を中心として枢動できる、スレーブの作動機構として構成されている。手術器具3は、患者の体内に挿入されてそこにある病巣を治療するように構成されている、エンドエフェクタ303を有する。
【0047】
内視鏡4は別のロボットアーム2の末端に装着されており(したがってロボットアームは本明細書では「内視鏡ホルダ」とも呼ばれる)、病巣についての情報並びに手術器具3の位置及び姿勢についての情報を含むがこれらに限定されない、手術環境内の画像情報を収集するように構成されている。更に、ロボットアーム2に装着された内視鏡4は、以下に詳細に示すように、収集した手術環境内の画像情報をリアルタイムで表示するように構成されているマスターに、通信可能に接続される。内視鏡4は立体視のものであってもそうでなくてもよく、限定されない。
【0048】
図2は、本発明の実施形態に係る、手術器具の機械的構造を示す概略図である。
図2に示すように、手術器具3の機械的構造は、電源モジュール301と、シャフト302と、伝達機構と、エンドエフェクタ303と、を含む。伝達機構は、シャフト302内に収容され電源モジュール301とエンドエフェクタ303の両方に結合された、ワイヤ伝達機構であってもよい。電源モジュール301はシャフト302の近位端に配設されてもよく、エンドエフェクタ303はシャフト302の遠位端に配設されてもよい。
【0049】
電源モジュール301はエンドエフェクタ303に駆動力を提供するように構成されており、この駆動力は、伝達機構を介してエンドエフェクタ303に伝達され、エンドエフェクタ303に、枢動、開放/閉鎖、等といった多次元の動きを行わせるように構成されている。患者の病巣においてエンドエフェクタ303が行える特定の動作としては、切断、プロービング、把持、等が挙げられる。したがって、エンドエフェクタ303は、鋏、鉗子、プローブ、等として実装され得る。本発明によれば、電源モジュール301は自己給電式であってもよい。この場合、例えば、電源モジュール301は電源及びドライバを含み得る。別法として、電源モジュール301は、エンドエフェクタ303に駆動力を提供するように外部給電式であってもよい。この場合、例えば、電源モジュール301は外部電源に接続されているインターフェースを含んでもよく、好ましくは、配電モジュールを更に含み得る。
【0050】
図1に示すように、手術ロボットシステムは、イメージングシステム5とマスターマニピュレータ7とを含むマスターを更に含む。手術動作中、内視鏡4が収集した画像情報によって示されイメージングシステム5に表示される手術器具3の動きをモニタしながら、外科医6は、マスターマニピュレータ7を操作することによって、手術の必要に応じて、ピッチング、ヨーイング、回転、開放/閉鎖、等といった多次元の動きを行うように、手術器具3を制御できる。
【0051】
図3は、手術動作を行っている本発明の実施形態に係る、手術動作を行っている手術器具を概略的に示す。
図3に示すように、外科医6は、マスターマニピュレータ7を介して(同一の又は同一でない)一つ以上のそのような手術器具3を操作して、切断、プロービング、把持、及び手術動作が要求する他の動作を行うことができる。
【0052】
自明であるが、マスターマニピュレータ7による手術器具3の制御が、手術ロボットシステムのマスター-スレーブ制御の基礎である。しかしながら、そのような制御は遠隔操作を基本とするので、外科医は適用される力の大きさを直接感知できず、このことは、外科医が接触力の強度に基づいて適切な動作を行うには不都合である。これを克服するために、本発明は、外科医6が手術器具の末端に作用する力を感知することを可能にする、力フィードバック機能を有する手術器具を提供する。
【0053】
図4aは、本発明の実施形態に係る、手術器具内の力センサ及びスリーブを示す概略図である。
図4aに示すように、上で検討した機械的構成要素に加えて、手術器具3は、スリーブ401と力センサ400とを更に含む。力センサ400は、検知要素402と周辺測定モジュール403とを含む。スリーブ401は、手術器具3のシャフト302の外径と一致する内径を有する、中空の内腔を含む。更に、スリーブ401は、スリーブ401を横断する方向に周方向の閉じたリングを形成する、周方向に延在するくり抜き構造を含む。ここで、くり抜き構造がスリーブ401を横断する方向へと「周方向に延在する」とは、くり抜き構造の中央断面が、スリーブ401の軸線に対して垂直であるか又は傾斜しているかのいずれかであり得ることを意味する。くり抜き構造は、可撓要素4011のうちの隣り合う二つの間に各々ある開口部によって互いから離間された、複数の可撓要素4011を含む。この場合、可撓要素4011は、(くり抜き構造よりも上にある)スリーブの上側区域を、(くり抜き構造よりも下にある)その下側区域に結合している。この設計の場合、可撓要素4011を介してスリーブの一端から他端へと外力が伝達され、外力の大きさ及び方向は、それぞれの可撓要素4011によって伝達される力を測定することによって決定できる。この設計により、アルゴリズムの複雑さが軽減され正確度の向上した外力測定が容易になり得る。
【0054】
図8に示す好ましい実施形態では、スリーブ401の表面に周方向に延在するくり抜き構造は、中心対称に分布され十字形状を形成する、四つの可撓要素4011を含む。本発明は、くり抜き構造及び可撓要素4011の製作に関して、どの特定の方法にも限定されない。例示的な実施形態では、くり抜き構造を有するスリーブ401は、管状のブランク材から望まれない部分を機械的に、例えばワイヤカット又は電気スパークによって除去することによって、製作される。代替の実施形態では、スリーブは、可撓要素4011を上側区域及び下側区域に固定することによって製作され得る。このため、可撓要素4011は、スリーブの残りの部分と同じ材料又は異なる材料のいずれかで作製され得る。検知要素402が手術器具に作用する外力を検知するのを容易にし得る力測定感度の改善を達成するために、可撓要素4011は、シャフト302の弾性率以下の弾性率を有するように選択された材料、例えばゴムで作製され得る。
【0055】
各可撓要素4011は、内面、外面、及び側面を含む。検知要素402は、スリーブ401の可撓要素4011の内面、外面、又は側面に配設され得る。好ましくは、検知要素402の各々はスリーブ401の軸方向又は周方向に延びる検知軸を有し、可撓要素4011に作用する力の大きさを検知軸に沿って検知できる。ここで、「検知軸」が延びる方向とは、検知要素402が歪みを検知できる方向のみを指す。すなわち、検知要素402は他のどの方向においても検知能力が無い。本発明のいくつかの好ましい実施形態では、検知要素402の検知軸は、スリーブ401の軸方向と平行になるように設定される。実際には、検知要素402は、それらの検知軸がスリーブ401の軸方向と平行に延びて、検知要素402がこの方向において可撓要素4011の歪みを検知できるように装着され得る。
【0056】
検知要素402は、その適用条件及び測定要件に従って、歪みゲージ、光ファイバ、又は他の構成要素として選択されてもよい。検知要素402の数の選択、及びそれらの配置の設計は、測定すべき接触力のタイプ及びセンサの信頼性に応じた柔軟な手法で行うことができる。検知要素402は、スリーブ401の可撓要素4011の内面、外面、又は側面上に、取り付けがどのように達成されるか及びそれが困難であるかどうかに応じた柔軟な手法で取り付けることができる。好ましくは、くり抜き構造及びしたがって可撓要素4011は、スリーブ401のより大きい歪みを受ける傾向のある部分(例えば、スリーブ401の軸方向中央部)に配置される。好ましくは、可撓要素4011上に配置される複数の検知要素402は、一次元又は多次元の接触力測定、例えば三次元又は六次元の接触力測定が可能である。より好ましくは、可撓要素4011の各々(例えばその外面上)には、一つの検知要素402が設けられている。
【0057】
スリーブ401の実際の設計においては、その構造強度を考慮すべきであることに留意されたい。例えば、くり抜き構造が可撓要素4011を一つしか含まないことは理論的には実現可能であるが、この場合、スリーブ401が望ましい方法で外力を伝達するには、又は、測定正確度を損なう可撓要素4011の大きな塑性変形を防止するには、スリーブ401の構造強度が弱くなり過ぎる。したがって、くり抜き構造の周上に等角に、したがって対称な十字の四つの端部に配置される四つの可撓要素4011を有する、
図8の実施形態が好ましい。
【0058】
周辺測定モジュール403は、検知要素402に通信可能に(例えば電気的に)接続されており、検知要素402が取得した可撓要素4011の(場合によっては、抵抗性のもの又は電圧等の、電気信号の形態の)歪み情報を収集し、最終的に歪み情報から手術器具の末端に作用する接触力を導出するように構成されている。この実施形態では、周辺測定モジュール403は、検知要素402から出力された電気信号を受信し、受信した電気信号に基づいて手術器具の末端に作用する接触力を演算によって導出するための、マイクロプロセッサを含み得る。マイクロプロセッサの代わりに、単チップマイクロコンピュータ(SCM)、PLCコントローラ、FPGA等の、任意の他のプログラム可能なコンピューティングデバイスを選択できる。任意選択的に、周辺測定モジュール403は、電源モジュール301に固定的に接続される。
【0059】
図4bは、本発明の実施形態に係る、手術器具内の周辺測定モジュールの構造ブロック図である。
図4bに示すように、周辺測定モジュール403は、互いに直列接続されている、データ取得ユニット4031と、信号調整ユニット4032と、計算及び出力ユニット4033と、を含み得る。具体的には、周辺測定モジュール403は、以下のプロセスに従って動作し得る。データ取得ユニット4031は、検知要素402が生成した電気信号を取得することができ、信号調整ユニット4032は、データ取得ユニット4031が取得した電気信号を、これらを増幅、デジタルフィルタリング、トレンド除去、外れ値の除去等を含むがこれらに限定されない一連の処理にかけることによって調整することができ、計算及び出力ユニット4033は、信号調整ユニット4032からの調整された電気信号を分析及び計算することによって、手術器具3の末端に作用する接触力を導出し、一次元又は多次元のいずれかであり得る接触力を出力できる。
【0060】
図5aは、本発明の実施形態に係る、手術器具内でシャフト302を覆うように配設されたスリーブ401の概略図であり、
図5bは、
図5aのスリーブ401及びシャフト302の概略部分拡大図である。
図5a及び
図5bに示すように、スリーブ401の働きにより、力センサ400は、手術器具3内でシャフト302の末端を覆うスリーブを提供する。スリーブ401がエンドエフェクタ303の近くに位置付けられるほど、手術器具3の末端に作用する力を知ることが容易になる。好ましくは、スリーブ401はシャフト302の末端の端面と同一平面にあり、締まり嵌め、挿入、接着等によって、末端に固定的に接続される。別法として、容易な組立又は分解を実現するために、スリーブ401は、ねじ接続、ラッチ接続、スナップ嵌合等によって、末端に取り外し可能に接続されてもよい。
【0061】
図6aは、本発明の実施形態に係る、シャフト302に組み付けられていないスリーブ401の概略図である。
図6aに示すように、この実施形態では、スリーブ401は任意選択的に、シャフト302を覆うように締まり嵌めによって固定的に配設され得る。この場合、検知要素402は、可撓要素4011の外面上に配設されることに限定されず、可撓要素4011の内面上(例えば、可撓要素4011の内面に形成される凹部の中)にも配設され得る。この実施形態では、スリーブ401をシャフト302に固定的に接続する締まり嵌めを、スリーブ401自体の弾性によって実現できることが明らかである。
【0062】
図6bは、本発明の別の実施形態に係る、シャフト302にまだ組み付けられていないスリーブ401の概略図である。
図6bに示すように、この実施形態では、スリーブ401は任意選択的に、シャフト302を覆うようにねじ嵌めによって取り外し可能に配設することができ、検知要素402は好ましくは可撓要素4011の外面上に配置される。特に、スリーブ401の内面上に内ねじを設けることができ、これによりシャフト302の外面に形成された外ねじとのねじ嵌めを行うことができる。そのようなねじ接続は、スリーブ401とシャフト302の間に、力測定の正確度に悪影響を及ぼし得るどのような隙間も存在しないことを保証するのに有利である。ねじ接続の場合、接続の信頼性を保証するために、スリーブ401は好ましくは、炭素繊維等の高い硬度を有する材料で作製される。
【0063】
図7aは、本発明の実施形態に係る、一方側に応力を受け変形している手術器具の概略図である。この実施形態では、手術器具3は、ロール関節304とピッチ関節305とヨー関節306とを連続的に含み、これらにより、エンドエフェクタ303のロール(それ自体の軸線上での回転)、ピッチ、及びヨーの動きがそれぞれ可能になる。この実施形態では、エンドエフェクタ303は二つのフラップを含む(したがって、エンドエフェクタは例えば鋏である)。これに応じて、フラップのうちの対応する一つをそれぞれ制御するために、二つのヨー関節(306、306')が必要となる。
図7aに示すように、エンドエフェクタ303を身体組織に接触させると、身体組織はエンドエフェクタ303に接触力Fを及ぼすことになる。明らかなことであるが、この接触力Fはシャフト302によってスリーブ401の一端に、及び更に可撓要素4011を介してその他端に伝達されることになる。接触力Fの作用下で可撓要素4011は
図7aに示すように変形することになり、この変形は検知要素402によって部分的に検知されることになる。
【0064】
図7bは、本発明の実施形態に係る、手術器具の末端に作用する力及びその測定原理の分析を示す概略図である。
図7bに示すように、手術器具3の末端が身体組織と接触させられるとき、身体組織は手術器具3に接触力Fを及ぼすことになるが、これは空間的合力F
q及び空間的合モーメントM
qと等価であり得、
図7a及び
図7bに示すように、シャフト302をスリーブ401と一緒に変形させる。同時に、手術器具3はスリーブ401から反力(F
p及びM
p)を受ける。ここで、等価な空間的合力F
qはF
pと釣り合っており、等価な合モーメントM
qはM
pと釣り合っている。スリーブ401が手術器具3に加える反力は、手術器具3がスリーブ401に及ぼす作用力を測定することによって取得でき、身体組織が手術器具3に及ぼす接触力Fは、力及びモーメントの均衡方程式から導出できる。
【0065】
図7bには、手術器具の末端が応力を受けて変形する様子が概略的に示されており、手術器具に対してその末端に座標系{q}を定義することができ、原点は例えば、図にマークされている点A、すなわちシャフト302の軸線と手術器具のピッチ関節305の回転軸との交点に位置していることが、理解されるであろう。座標系{q}はまた、ピッチ関節305の回転軸に対して垂直でありかつ初期構成においてシャフト302の軸線と一致するx軸、手術器具のピッチ関節305の回転軸と平行に延びるy軸、及び上記の両軸に対して垂直でありかつ右手の法則によって決定されるz軸も有する。ここで、「初期構成」は、手術器具3のエンドエフェクタ303がシャフト302の軸線の方向に沿って延在し、その遠位端がヨー関節から最も遠く離れて位置する構成として定義される。座標系{q}の原点は、等価な合力F
q及び等価な合モーメントM
qの作用点であり得る。この実施形態は可撓要素4011上の検知要素402のどのような特定の向き又は位置にも限定されないので、スリーブ401にとって座標系{p}が、原点が例えばその端面の中心に位置し、x軸がスリーブ401の軸線に沿って延びており、y軸及びz軸が互いに対して垂直でありかついずれも放射方向に延びている、検知要素402の位置及び向きの判定を容易にするのに役立つ基準として定義されることが望まれる。同様に、座標系{p}の原点は、スリーブに作用する合力(及び関連するモーメント)の作用点であり得る。更に、
qRは座標系{p}から{q}への変換、すなわち、座標系{q}における{p}の姿勢の記述子を表す。手術器具3からスリーブ401への力の作用点は手術器具の末端に無いので、位置ベクトルr
pはこの実施形態では、標系{q}における手術器具3がスリーブ401に及ぼす合力の作用点の位置を記述するように定義される。すなわち、これは、座標系{q}における{p}の位置の記述子である。変換ベクトル
qR及び位置ベクトルr
pはいずれも、組立中に判定された既知の量を有する。演算を単純にするために、組立中に、座標系{q}と{p}が同じ初期の向きを有することを保証するためのいくつかの手段が用いられるのが望ましく、この場合
qRは恒等行列であり、これに基づいてこの実施形態に係る座標系が確立される。当業者は、実際の要件に合うように座標系{q}及び{p}の位置及び向きを柔軟に選択できることを、了解するであろう。
【0066】
スリーブ401がシャフト302から作用力(-F
p及び-M
p)を受けて変形するとき、可撓要素4011上の検知要素402は、可撓要素4011の変形を検知できる。可撓要素4011の変形及び検知要素によって測定される応力402は、以下の関係に従う。
【数13】
【0067】
式(1-1)において、iは、例えば合計n個の本実施形態に係る検知要素のうちの、i番目の検知要素を表し、fiはi番目の検知要素が測定した応力、εiは、検知要素の検知軸の方向に沿ってi番目の検知要素が表面に配置されている対応する可撓要素4011の歪み、g(・)は応力と歪みの間の関数関係、kiは、可撓要素4011の材料パラメータによって決定されるi番目の検知要素の検知軸の方向に沿った、対応する可撓要素4011の応力-歪み係数、f(εi)は較正によって取得される応力及び歪みに関する非線形補正項を表す。例示的な較正方法には以下が含まれる。(i)スリーブ401にいかなる外力も無いときに、検知要素402からの信号をチェックすることによって、検知要素402のいずれかにゼロ点ドリフトが存在するかどうかを判定する、(ii)各検知要素402の歪みが各々、スリーブ401に対する外力負荷と共に非線形に変動するかどうかを判定し、変動する場合は上記の式に非線形補正項を含める、及び(iii)計算された力の方向と実際に適用される力の方向との間の整列を確認する。自明であるが、本明細書で使用する場合、「検知要素402が測定した応力」は、検知要素402の直接の応力読取値として解釈すべきではない。そうではなく、これは、検知要素402が測定した部分の歪みから上式(1-1)に従って導出される、スリーブの対応する部分(すなわち対応する可撓要素4011)に対する応力を指している。
【0068】
更に、シャフト302がスリーブ401に及ぼす力の情報は、座標系{p}におけるi番目の検知要素の検知軸の方向の表現である、その方向と、座標系{p}におけるi番目の検知要素の位置の表現である、その作用点の位置と、を含む。検知要素402によって測定される応力、すなわちシャフト302が可撓要素4011に及ぼす作用力は、座標系{p}において以下のように表される。
【数14】
【0069】
式(1-2)において、eiは、座標系{p}におけるi番目の検知要素の検知軸の方向(すなわち検知要素402が配置される方向)の表現を表す単位ベクトル、fiはi番目の検知要素が測定した応力、fxi、fyi、fziは座標系{p}の軸に沿ったfiの成分、exi、eyi、eziは座標系{p}の軸に沿ったeiの成分、(・)Tは行列転置演算子である。
【0070】
更に、シャフト302がスリーブ401に及ぼす力の作用点の方向及び位置は、座標系{q}において以下のように表すことができる。
【数15】
【数16】
【0071】
式(1-3)において、eiは座標系{p}におけるi番目の検知要素402が配置される方向(すなわちその検知軸の方向)の表現、fiは座標系{q}におけるi番目の検知要素402が測定した応力の表現、qRは座標系{q}における座標系{p}の姿勢の表現を表す。
【0072】
式(1-4)において、priは座標系{p}におけるi番目の検知要素の位置(すなわち、作用点の位置)の表現、riは座標系{q}におけるi番目の検知要素の位置の表現、rpは座標系{q}における座標系{p}の位置の表現を表す。
【0073】
スリーブ401と手術器具のシャフト302の間の、したがって座標系{p}と{q}の間の、相対位置関係を保証するために、スリーブの端面又は表面上に又はシャフト302の表面上に、組立中の位置合わせを容易にするための溝又は線を彫る又は描くことができることに留意されたい。
【0074】
全ての検知要素が測定した応力を座標系{q}において組み合わせて、以下の結果を得ることができる。
【数17】
【0075】
式(1-5)から分かるように、手術器具の末端に作用する接触力の等価な合力は、次式である。
【数18】
その等価な合モーメントは、次式である。
【数19】
上式において、diag(・)はベクトル・の要素をその対角要素とする対角行列を表し、n
x、n
y、n
zはx、y、z方向のそれぞれにおける重複する力の数を表し、n
x'、n
y'、n
z'はx、y、z方向のそれぞれにおける重複するモーメントの数である。
【0076】
測定の正確度及び信頼性を改善するために、冗長性、すなわち意図的に追加される反復的な測定サイクルが、実際のエンジニアリング用途で使用される測定方法に場合によっては導入され得る。本発明によれば、ある方向に沿った重複する力の数は、力センサによって伝達経路に沿って力が測定された回数として解釈できる。同様に、ある方向における重複するモーメントの数は、力センサによって伝達経路に沿ってモーメントが測定された回数として解釈できる。スリーブ支援の力センサの設計及びこれが力の測定のためにどのように使用されるかについてより詳細に説明するために、具体的な例を以下に記載する。
【0077】
図8は、本発明の実施形態に係る、三次元力センサの力の測定原理を示す概略図である。
図8は、それぞれ手術器具用及びスリーブ用の、座標系{q}及び{p}を示す。上で指摘したように、座標系{q}の原点は、手術器具3のロール関節の回転軸(すなわちシャフト302の軸線)とピッチ関節の回転軸との交点に配置される。更に、座標系{q}のx軸は、ピッチ関節305の回転軸に対して垂直でありかつ初期構成においてシャフト302の軸線と一致するものとして、y軸はピッチ関節の回転軸と平行なものとして、z軸は右手の法則によって決定されるものとして、定義される。ここで、「初期構成」は、手術器具3のエンドエフェクタがシャフト302の軸線の方向に沿って延在し、その遠位端がヨー関節から最も遠く離れて位置する構成を指す。更に、座標系{p}はスリーブ401の端面上に確立される。r
pは並進を記述するベクトルを表し、
qRは座標系{p}から座標系{q}への回転を記述する行列を表す。これらはいずれも、スリーブ支援の力センサの初期装着位置によって決定される既知の量である。演算を単純にするために、
qRが恒等行列になるように、座標系{p}及び{q}が同じ方向に配向されることを組立中に保証するのが望ましい。以下の分析は座標系の正にそのような向きに基づいている。更に、手術器具の前端部におけるその任意の回転角度を、電源モジュール301内のエンコーダによって測定して、
qRをやはり既知の量とすることが可能である。
【0078】
図8に示すように、スリーブ401に含まれているくり抜き構造は、周方向に均等に配置されている四つの可撓要素4011を含む。力センサ400は、あるものと別のものを区別する目的で以下の説明でそれぞれ下付き文字1から4を与えられた、四つの検知要素402を含む。図示した例では、四つの検知要素402の各一つが、可撓要素4011のそれぞれ一つの外面上に固定的に配置されており、四つの検知要素402の検知軸は全て、スリーブ401の軸方向と平行に延びている。
【0079】
四つの検知要素は、それらの検知軸が座標系{p}においてe
1、e
2、e
3、e
4で示される個々の方向に配向された状態で、配置されている。全ての検知要素402がスリーブ401の軸方向に配向されているので、それらの方向の各々はベクトル(1,0,0)
Tに相当する。したがって、式(1-2)及び(1-3)によれば、四つの検知要素402が検知した応力は、座標系{q}において、次式として表すことができる。
【数20】
上式において、f
x1、f
x2、f
x3、f
x4は、第1から第4の検知要素が測定した応力のx軸成分である。これらの検知要素の検知軸の方向は全てx軸と平行であるので、その他の方向で測定された応力の成分、すなわちy軸及びz軸の成分は、全てゼロであることに留意されたい。
【0080】
同様に、四つの検知要素402は、座標系{p}において
pr
1、
pr
2、
pr
3、
pr
4として示されるそれぞれの位置ベクトルを有し、これらは検知要素402が配置される位置によって決定される。座標系{q}における検知要素402の表現、すなわちr
1、r
2、r
3、r
4は式(1-4)から取得でき、これらは応力の作用点の表現でもあるが、関連する式は本明細書では明記しない。位置ベクトルr
1、r
2、r
3、r
4は、次式によって与えられる。
【数21】
上式において、x
1、x
2、x
3、x
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心のx軸座標、y
1、y
2、y
3、y
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心のy軸座標、z
1、z
2、z
3、z
4は座標系{q}における第1から第4の検知要素の中心のz軸座標である。
【0081】
式(1-5)に従って作られたある方向に沿った重複する力の数の定義に従えば、この実施形態では、x軸方向の応力の各々はその伝達中に一回だけ測定され、n
x=1である。同様に、ある方向に沿った重複するモーメントの数の定義に従えば、この実施形態では、以下の条件もまた満たされる、n
y'=1、n
z'=1。したがって、手術器具の末端に作用する接触力は、式(1-5)、(1-6)、及び(1-7)を組み合わせることによって、以下のように取得できる。
【数22】
【0082】
この式(1-8)から、手術器具の末端に対して座標系{q}のx軸に沿って作用する力F
qx(軸方向の力)、並びに座標系{q}のy軸及びz軸に沿ったモーメントM
qy及びM
qzを、以下のように取得できる。
【数23】
【0083】
式(1-9)から分かるように、力センサ400の四つの検知要素402の配置により、一つ、二つ、又は三つの方向に沿った力測定が可能になる。具体的には、z1、z2、z3、z4が全てゼロであるとき、座標系のy軸に沿ったモーメントMqyはゼロになる。同様に、y1、y2、y3、y4が全てゼロであるとき、座標系のz軸に沿ったモーメントMqzはゼロになる。当然ながら、x1、x2、x3、x4は全て非ゼロ値である。
【0084】
この実施形態によれば、まず座標系{q}における検知要素の座標を判定し、次いで導出した座標に基づいてスリーブ上の検知要素の位置を判定することによって、必要に応じた一つ以上の次元の力測定を実現できる。一次元の接触力測定が必要な場合、検知要素のy軸及びz軸の座標をゼロに設定すればよい。二次元、三次元等のより多くの次元の力測定が必要な場合は、検知要素のy軸若しくはz軸、又は両方の座標を非ゼロ値に設定すればよい。その後で、スリーブ構造を必要に応じて、検知要素の担持を意図しない一切の望まれない部分を機械加工によって除去し、このことによりスリーブの断面に及ぼされる力を伝達するための可撓要素4011を有するくり抜き構造が形成されるように、設計することができる。
【0085】
先述の実施形態を参照して力センサの測定原理を詳細に説明したが、本発明が本明細書で既に列挙した上記の構成を含むがそれらに限定されず、それらに対して行われるどのような変更もまた本発明の保護範囲内にあることが意図されていることは、言うまでもない。当業者であれば上記の実施形態に照らして他の実施形態を利用可能である。
【0086】
更に、この実施形態の力センサは、三次元の力(一つの次元が力成分であり残り二つの次元がモーメント成分である)の測定に限定されず、二次元の力、又は六次元の力(三つの次元が力成分であり残り三つの次元がモーメント成分である)の測定にすら、適用可能であり得る。多次元の力測定の場合、検知要素の数は、最低でも接触力の次元の数を下回らない。実際には、センサを設計する工程は、測定されるべき力の次元の数の決定から始まる。測定されるべき力がn次元である場合には、少なくともn個の独立した検知要素が必要である。この後で、検知要素の位置及び向きが未知である最終的な力の測定式(例えば式(1-10))が確立され、検知要素がどのように配置されるかが、測定されるべき力の方向に基づいて決定される。例えば、測定されるべき力がx軸方向である場合、検知要素は合理的には、上記の方向において非ゼロの力測定値を計算できることを保証する(x、y、z座標が決定されている)位置及び(fx、fy、fzが決定されている)向きに配置され得る。少なくとも、可撓要素は、独立した検知要素と同じ位置及び向きを有するように設計され得る。上で提示したものは基本要件の一部に過ぎない。実際のエンジニアリング用途では、構造強度及び信頼性の改善を達成するために、上で規定したようなくり抜き構造を周に沿って形成してもよく、その場合は複数(>=2)の検知要素を組み合わせて、ある方向に沿った力の測定を行うように機能させる。
【0087】
要約すれば、本発明の力センサは手術器具の末端に配設されており、末端に作用する接触力を測定するように構成されている。また更に、力センサは手術器具と接続されているスリーブを備えており、このスリーブは以下の利点のうちの少なくとも一つを提供する。
【0088】
第1に、スリーブと手術器具の機械的構造の間に隙間が生じない。このことは測定正確度の改善に寄与する。
【0089】
第2に、いくつかの手術器具を使用する必要のある手術動作に関して、手術器具の各々に対して特定の較正工程を実行することができ、測定に対する器具の材料のばらつきの影響が回避される。
【0090】
第3に、異なる手術器具に対して、これらの手術器具の変形を伝達するようなスリーブを使用できる。検知要素を手術器具の末端に直接取り付けるのと比較して、検知要素をスリーブと共に使用する場合、異なる手術器具上の異なる検知要素間の測定のばらつきから生じ得る測定誤差を回避でき、より高度な測定精度及び正確度の達成が支援される。
【0091】
第4に、検知要素をスリーブで手術器具に結合することによって、検知要素が手術器具と一緒に廃棄されるのを回避できる。手術器具は消耗品であるが、検知要素は再利用可能である。検知要素を手術器具と一緒に廃棄することは経済的なやり方ではなく、使用コストの増加につながることは、明らかである。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、複数の検知要素が所定の様式でスリーブの可撓要素上に配置され、検知要素の各々は手術器具用の座標系における所定の座標を有する。これらの所定の座標に基づいて可撓要素上の検知要素の位置を判定でき、このことにより、手術器具の末端に作用する接触力の、一つ以上の次元の測定が可能になる。これには、手術器具用の座標系に対して検知要素の位置を調整するだけで一つ以上の次元の接触力測定が達成可能な、より容易かつより単純な接触力測定手法が含まれている。
【0093】
本発明では、手術ロボットシステムが更に提供される。手術ロボットシステムはスレーブを含む。スレーブは、ロボットアームと上記したような手術器具とを含む。手術器具はロボットアームの末端に取り外し可能に接続されており、このロボットアームによって遠隔運動中心(RCM)を中心として移動するように駆動させることができる。手術ロボットシステムはまた、マスター及び制御ユニットも含む。マスターは、エンドエフェクタに作用する接触力についての情報を示すための、力指示器を含む。制御ユニットは、マスター及びスレーブの両方に通信可能に接続されており、手術器具の力センサからエンドエフェクタに作用する接触力についての情報を取得しこれを力指示器に送信するように構成されている。
【0094】
力指示器は、手術器具3に作用する力についての情報を表示するように構成されている、イメージングシステム5であってもよい。別法として、力指示器は、モータを備えたマスターマニピュレータ7であってもよい。マスターマニピュレータ7は、手術器具3に作用する力についての情報を受信すると、手術器具3に作用する力を外科医が直接「感知」できるように、外科医の手に応答作用を及ぼすように構成されている。
【0095】
スレーブはまた、内視鏡、及び内視鏡に取り外し可能に接続されている内視鏡アームも含む。手術器具にどのような応力がかかっているかを外科医が内視鏡の視野内で容易に観察できるようにするためには、上記した手術器具の末端上の接触力測定を、内視鏡用の座標系に変換する必要がある。このようにして、手術器具の末端に作用する接触力の状態を、内視鏡の視野内で(力eF及びモーメントeMとして)観察することができ、接触力に基づいて行われている手術動作に対して外科医が何らかの必要な調整を行うことが可能になる。
【0096】
手術器具3に作用する等価な合力F
q及び等価な合モーメントM
qを式(1-10)に従って内視鏡用の座標系{e}に変換することにより、これに応じて手術器具3に作用する接触力Fは、次式に従って記述できる。
【数24】
上式において、
eFは座標系{e}における等価な合力、
eMは座標系{e}における等価な合モーメント、
eRは座標系{q}から座標系{e}への回転(すなわち、内視鏡座標系における手術器具の末端の姿勢)を記述する行列、
er=(r
x r
y r
z)
Tは座標系{q}から座標系{e}への位置ベクトル(すなわち、内視鏡の末端に対する手術器具の末端の相対位置)、(・)
Tは行列転置演算子、S(
er)はベクトル
erに対応する反対称行列を表す。S(
er)は以下によって与えられる。
【数25】
【0097】
この実施形態では、座標系{e}の原点は内視鏡の視野の中心に位置付けられる。具体的には、座標系{e}の原点は内視鏡4の末端に位置付けられ得る。座標系{e}はまた、x軸、y軸、及びz軸も有する。座標系{e}のx軸は、ロボットアーム2に接続されている内視鏡4のレンズ表面と直交するものとして定義される。任意選択的に、座標系{e}のx軸の正方向は内視鏡4の近位端(ロボットアーム2に接続されている場所)から内視鏡の末端の方を指してもよい。座標系{e}のy軸はそのx軸に対して垂直であり、同様に、座標系{e}のz軸の方向は右手の法則によって決定され得る。より好ましくは、内視鏡が立体視のものである場合には、座標系{e}のy軸は、内視鏡の二つのレンズ表面の中心を結ぶ線によって決定される。ここで、座標系{e}は当技術分野で知られている任意の好適な技法で確立され得るので、当業者は、本明細書の開示に照らして、座標系{e}を内視鏡の末端に及び座標系{q}を手術器具の末端に確立する方法を、並びに、二つの座標系の間の位置及び姿勢の変換を通して、座標系{q}における手術器具に作用する接触力Fを座標系{e}において記述する方法を、認識するであろう。
【0098】
上で提示した説明は本発明のいくつかの好ましい実施形態についてのものに過ぎず、いかなる意味でも本発明を限定しない。当業者が上記の教示に基づいて行うありとあらゆる変更及び修正は、添付の特許請求の範囲で規定される範囲内にある。
【符号の説明】
【0099】
1…手術用カート、2…ロボットアーム、3…手術器具、301…電源モジュール、302…シャフト、303…エンドエフェクタ、304…ロール関節、305…ピッチ関節、306、306'…ヨー関節、4…内視鏡、5…イメージングシステム、6…外科医、7…マスターマニピュレータ、8…患者、400…力センサ、401…スリーブ、4011…可撓要素、402…検知要素、403…周辺測定モジュール、4031…データ取得ユニット、4032…信号調整ユニット、4033…計算及び出力ユニット
【手続補正書】
【提出日】2023-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的構造と、スリーブと、力センサと、を備える手術器具であって、
前記機械的構造は、シャフトと、前記シャフトの末端に関節を介して接続されているエンドエフェクタと、を備え、
前記スリーブは、前記シャフトに固定的な又は取り外し可能なスリーブであって、前記スリーブは、前記シャフトの外径と一致する内径を有する、中空の内腔を含み、前記スリーブの内面は前記シャフトの外面と接続され、
前記スリーブは、前記関節と接触せず、
前記力センサは、少なくとも一つの検知要素と、前記検知要素に接続されている周辺測定モジュールと、を備え、前記検知要素は前記スリーブ上に配設されて前記スリーブの歪み情報を取得するように構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記検知要素が取得した前記歪み情報に基づいて前記検知要素が測定した応力を取得し、前記検知要素が測定した前記応力、前記検知要素の位置、及び前記検知要素の検知軸の方向に基づいて、前記シャフトによって前記スリーブに及ぼされる作用力の等価な合力及び等価な合モーメントの両方を取得し、このことにより前記手術器具の前記エンドエフェクタに作用する接触力を取得するように構成されている、手術器具。
【請求項2】
前記エンドエフェクタは、前記シャフトの前記末端にロール関節およびピッチ関節を介して接続され、前記スリーブは、前記ロール関節および前記ピッチ関節のいずれにも接触せず、前記スリーブは、前記シャフトの前記末端に固定的なまたは取り外し可能なスリーブであって、前記スリーブの前記内面は前記シャフトの前記末端の外面に接続される、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記スリーブは周方向に沿って延在するくり抜き構造を備え、前記くり抜き構造は、複数の可撓要素と、前記可撓要素のうちの隣り合う二つの間に各々位置する開口部と、を備え、前記可撓要素は前記くり抜き構造よりも上にある前記スリーブの上側区域を前記くり抜き構造よりも下にある前記スリーブの下側区域に接続するように構成されており、
前記少なくとも一つの検知要素は前記可撓要素上に配置されて、前記可撓要素に対する応力を測定するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項4】
前記可撓要素の弾性率は前記シャフトの弾性率以下である、請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記可撓要素の各々は内面と外面と側面とを備え、前記少なくとも一つの検知要素は前記可撓要素の前記内面、外面、又は側面上に配置されている、請求項3に記載の手術器具。
【請求項6】
前記くり抜き構造は、前記スリーブの軸方向中央部の周囲に配置されている、請求項3に記載の手術器具。
【請求項7】
前記検知要素の前記検知軸は、前記スリーブの軸方向に対して平行又は垂直になるように配置されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記スリーブは、接着、締まり嵌め、又は挿入によって、前記シャフトの前記末端を覆う固定的なスリーブを提供する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記スリーブは、ねじ接続、ラッチ接続、又はスナップ嵌合によって、前記シャフトの前記末端を覆う取り外し可能なスリーブを提供する、請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
前記スリーブは一方の端部が前記シャフトの前記末端と同一平面にある、請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記周辺測定モジュールは、互いに通信可能に直列接続されている、データ取得ユニットと、信号調整ユニットと、計算及び出力ユニットと、を備え、前記データ取得ユニットは前記検知要素から出力された信号を獲得するように構成されており、前記信号調整ユニットは前記検知要素から出力された前記信号を調整するように構成されており、前記計算及び出力ユニットは前記調整された信号に基づいて計算を行って前記エンドエフェクタに対する前記接触力を取得するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項12】
前記検知要素が測定した前記応力は、
によって与えられ、
上式において、iはi番目の検知要素、f
iは前記i番目の検知要素が測定した応力、ε
iは、前記i番目の検知要素の前記検知軸の方向に沿って前記i番目の検知要素が表面に配置されている前記可撓要素の歪み、g(・)は前記応力と前記歪みの間の関係を記述する関数、k
iは、前記i番目の検知要素の前記検知軸の前記方向に沿って前記i番目の検知要素が表面に配置されている前記可撓要素の応力-歪み係数、f(ε
i)は前記応力及び前記歪みに関する非線形補正項を表す、請求項
3に記載の手術器具。
【請求項13】
前記接触力は等価な合力Fqと等価な合モーメントMqとを含み、
前記周辺測定モジュールは、その前記スリーブ用の座標系{p}と、その前記末端にある前記手術器具用の座標系{q}と、前記座標系{q}における前記座標系{p}の位置及び姿勢の記述子と、を確立するように構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子と、前記座標系{p}における前記検知要素の前記検知軸の前記方向の記述子と、前記検知要素が測定した前記応力と、に基づいて、前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の記述子を取得し、このことにより前記等価な合力Fqを取得するように更に構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置及び前記姿勢の前記記述子と、前記座標系{p}における前記検知要素の前記位置の記述子と、に基づいて、前記座標系{q}における前記検知要素の前記位置の記述子を取得するように更に構成されており、
前記周辺測定モジュールは、前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の前記記述子に基づいて、前記座標系{q}における前記スリーブに作用する力のモーメントの記述子を取得し、このことにより前記等価な合モーメントMqを取得するように更に構成されている、請求項12に記載の手術器具。
【請求項14】
前記座標系{p}における前記検知要素が測定した前記応力の記述子は、
によって与えられ、
上式において、e
iは前記座標系{p}における前記i番目の検知要素の前記検知軸の前記方向の記述子を表す単位ベクトル、f
iは前記i番目の検知要素が測定した前記応力、f
xi、f
yi、f
ziは前記座標系{p}の軸に沿った前記f
iの成分、e
xi、e
yi、e
ziは前記座標系{p}の軸に沿ったe
iの成分である、請求項
13に記載の手術器具。
【請求項15】
前記座標系{q}における前記検知要素が測定した前記応力の前記記述子は、
によって与えられ、
上式において、左辺のf
iは前記座標系{q}における前記i番目の検知要素が測定した前記応力の記述子を表し、
qRは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子を表し、
前記等価な合力F
qは、
によって与えられ、
上式において、diag(・)はベクトル・の要素を対角要素とする対角行列を表し、n
x、n
y、n
zはx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複する力の数を表す、請求項
14に記載の手術器具。
【請求項16】
前記座標系{q}における前記検知要素の前記位置の前記記述子は、
によって与えられ、
上式において、r
iは前記座標系{q}における前記i番目の検知要素の前記位置の記述子、
pr
iは前記座標系{p}における前記i番目の検知要素の前記位置の記述子、
qRは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子、r
pは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置の記述子である、請求項
13又は
14に記載の手術器具。
【請求項17】
前記等価な合モーメントM
qは、
によって与えられ、
上式において、n
x'、n
y'、n
z'はx軸、y軸、及びz軸のそれぞれの方向における重複するモーメントの数を表す、請求項
16に記載の手術器具。
【請求項18】
前記くり抜き構造は前記周方向に沿って配置されている四つの可撓要素を備え、前記力センサは前記可撓要素のそれぞれ一つの外面上に各々配置されている四つの検知要素を備え、前記座標系{p}における前記四つの検知要素の検知軸の方向の記述子e
1、e
2、e
3、e
4は全て(1,0,0)
Tであり、
前記座標系{q}における前記四つの検知要素が測定した応力の記述子は、
として与えられ、
上式において、f
x1、f
x2、f
x3、f
x4はそれぞれ、前記座標系{q}のx軸の方向において前記四つの検知要素の第1から第4の検知要素が測定した応力を表し、
前記等価な合力F
qは、
によって与えられる、請求項
14に記載の手術器具。
【請求項19】
前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記姿勢の前記記述子である
qRは恒等行列であり、
前記検知要素の前記位置はそれぞれの中心位置として測定され、前記中心位置は前記座標系{q}において、
として記述され、
上式において、
pr
1、
pr
2、
pr
3、
pr
4は前記座標系{p}における前記四つの検知要素の前記中心位置の記述子、r
pは前記座標系{q}における前記座標系{p}の前記位置の記述子、x
1、x
2、x
3、x
4は前記座標系{q}における前記四つの検知要素の第1から第4の検知要素の前記中心位置のx軸座標、y
1、y
2、y
3、y
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記中心位置のy軸座標、z
1、z
2、z
3、z
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記中心位置のz軸座標、r
1、r
2、r
3、r
4は前記座標系{q}における前記第1から第4の検知要素の前記位置の記述子である、請求項
18に記載の手術器具。
【請求項20】
前記等価な合モーメントM
qは、
として与えられる、請求項
19に記載の手術器具。
【請求項21】
前記スリーブの全体が前記シャフトの前記末端と重なる、請求項1に記載の手術器具。
【請求項22】
スレーブを備え、
前記スレーブは、
ロボットアームと、
請求項1から20のいずれか一項に定義されている手術器具と、を備え、
前記ロボットアームは前記手術器具に取り外し可能に接続されている末端を備え、前記ロボットアームは遠隔運動中心を中心として移動するよう前記手術器具を駆動するように構成されている、手術ロボットシステム。
【請求項23】
マスターと制御ユニットとを更に備え、前記マスターは力指示器を備え、
前記制御ユニットは前記マスター及び前記スレーブの両方に通信可能に接続されており、前記制御ユニットは、前記手術器具の前記力センサから前記エンドエフェクタに作用する接触力についての情報を取得し前記情報を前記力指示器に送信するように構成されており、前記力指示器は前記エンドエフェクタに作用する前記接触力についての前記情報を示すように構成されている、請求項22の記載の手術ロボットシステム。
【請求項24】
前記スレーブは、
内視鏡と、
前記内視鏡に取り外し可能に接続されている内視鏡アームと、を更に備え、
前記手術器具の周辺測定モジュールは、前記スリーブ用の座標系{p}、前記手術器具用の座標系{q}、及び前記内視鏡用の座標系{e}を確立するように、並びに、前記座標系{q}から前記座標系{e}への回転を記述する行列
eR及び前記座標系{q}から前記座標系{e}への位置ベクトル
er=(r
x r
y r
z)
Tから、前記座標系{e}における前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の記述子を、
として取得するように構成されており、
上式において、
eFは前記座標系{e}における合力、
eMは前記座標系{e}における合モーメント、S(
er)は前記ベクトル
erに対応する反対称行列、F
qは前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の前記等価な合力、M
qは前記エンドエフェクタに作用する前記接触力の前記等価な合モーメントを表し、
である、請求項
22又は
23に記載の手術ロボットシステム。