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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053019
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】増強された幹細胞組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0789 20100101AFI20230404BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230404BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230404BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C12N5/0789
A61K35/28
A61P1/04
A61P3/00
A61P3/10
A61P7/00
A61P7/02
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P11/00
A61P11/16
A61P13/12
A61P15/08
A61P17/02
A61P19/02
A61P19/04
A61P19/08
A61P19/10
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/16
A61P29/00
A61P31/00
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P37/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023017468
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2021156680の分割
【原出願日】2012-11-29
(31)【優先権主張番号】61/566,492
(32)【優先日】2011-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】312000284
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ダン シューメーカー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ロビンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー. メンドレイン
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン デスポンツ
(57)【要約】
【課題】増強された幹細胞組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、細胞治療のための改善された方法を提供する。具体的には、本発明は、生着およびホーミングの性質が改善された、増強された造血幹細胞および造血前駆細胞の治療用組成物、ならびに治療用組成物を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、造血系の再構築を必要とする被験体に治療用組成物を移植する工程を含む、造血幹細胞および造血前駆細胞移植の有効性を改善する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の細胞または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2011年12月2日に出願された米国仮特許出願第61/566,492号の利益を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
背景
技術分野
本発明は、増強された造血幹細胞および造血前駆細胞ならびに増強された細胞を含む治療用組成物に関する。本発明は、増強された造血細胞および造血前駆細胞、および治療用組成物を作製する方法、ならびに、個体の造血系を再構築するため、および虚血に関連する状態および疾患を処置するための使用を含めた、その使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術の説明
再生医療の目的は、損傷を受けたまたは疾患にかかった細胞、組織、および臓器の機能を維持する、改善する、さらには回復させることである。医療の実施の改革を目的とした再生医療の1つのやり方は、細胞に基づく治療薬を使用して患者を処置することである。しかし、細胞に基づく治療薬の見込みが十分に理解されるためには、治療用細胞が患者に導入された際の耐容性が良好であるべきであり、該細胞は治療を必要とする部位に遊走または「ホーミング」するべきであり、該細胞により所望の治療をもたらすことができるべきである。当技術分野では、幹細胞に基づく治療薬および前駆細胞に基づく治療薬を使用するための試みがなされてきたが、ヒトの臨床実践場面における成功は、もしあってもわずかである。
【0004】
改善された細胞に基づく治療薬が有効であろう再生医療の1つの領域は、種々の遺伝病、がん、および変性疾患を処置するための、幹細胞移植、例えば、骨髄移植および造血幹細胞移植である。National Marrow Donor Program(登録商標)(NMDP)によると、生命にかかわる悪性疾患および非悪性疾患を有する患者を処置するために、世界的に年間で推定45,000~50,000の造血細胞移植が実施されている。しかし、骨髄移植には多数の欠点がある。骨髄提供は有痛性であり、時には難しく、時間がかかり、また、多くの場合、HLAドナーマッチ組織を見つけるのが不可能である。また、同種移植には移植片対宿主病(GVHD)の有意な発生率が伴う。さらに、より容易に得られる臍帯血を使用して同種造血幹細胞移植が実施されているが、臍帯血移植にもなおGVHDのリスクがある。既存の臍帯血移植の方法の他の欠点としては、移植可能な細胞の数が少ないこと、およびドナー細胞のホーミングおよび生着の欠乏が挙げられ、このどちらによっても患者の命にかかわる感染症のリスクが高くなる。さらに、臍帯血移植には、一般に、骨髄移植および末梢血移植と全く同じリスクがある。
【0005】
GVHDの発生率を低下させるため、または細胞のホーミングおよび生着する能力を増大させるために、単離された移植片内の臍帯血中のヒト造血幹細胞および造血前駆細胞の数をex vivoの状況において増大させるために多数の手法が試みられてきたが、これらの試みでは限られた成功しか得られていない。
【0006】
改善された細胞に基づく治療薬が有効であろう再生医療の別の領域は、虚血による損傷を受けた組織の処置である。組織および臓器への血流の途絶は虚血として公知である。ヒトの体内での細胞、組織、および臓器の生存能力は、適切な血流に依存している。適切な血流により、細胞に酸素、グルコース、および細胞の生理機能および代謝の調節に重要な必要性の高い栄養分がもたらされる。虚血は急性または慢性であり得る。急性型および慢性型の虚血のどちらによっても、細胞への適切な栄養分が失われ、持続する場合には、低酸素状態および/または無酸素状態になる。虚血を処置せずにいると、細胞が壊死またはアポトーシスを受け、それにより、組織または臓器の完全性および健康が危険にさらされる恐れがある。
【0007】
虚血は、米国において毎年、数百万の患者に影響を及ぼしている。虚血は、実質的に無限の種類の遺伝学的状態、環境性の傷害、外傷性傷害、または外科的介入によって引き起こされる。患者が罹患する最も一般的な種類の虚血としては、これだけに限定されないが、脳虚血、脊髄傷害、心血管虚血、肢虚血、腸管虚血、皮膚虚血(例えば、熱傷および凍傷による創傷)、ならびに、これだけに限定されないが、臓器移植、および植皮を含めた医学的手技および外科手技によって生じる虚血が挙げられる。
【0008】
現在、急性虚血および慢性虚血の消散には、多くの場合、外科的手段を用いて組織の灌流および血流を回復させることが必要であり、これにより、さらに患者に虚血性組織損傷のリスクが生じる。虚血期間後に血流が回復することにより、実際に、虚血よりも大きく損傷する可能性がある。酸素が再導入されることにより、損傷性フリーラジカルが多く生じるようになり、また、細胞外アシドーシス状態が除かれることにより、カルシウムが流入し、したがって、カルシウム過負荷になる。全体的に、潜在的に致死的な心不整脈をもたらす可能性がある再灌流傷害におけるこの結果により、壊死も著しく加速する恐れがある。虚血組織に対処する他の現存する処置としては、高圧酸素、静脈内血栓溶解薬、抗炎症剤、および新脈管形成プロモーターの局所的な適用が挙げられる。しかし、これらの処置では、一般に、もしあっても、限られた成功しか得られていない。
【0009】
したがって、再生医療において使用される細胞に基づく組成物および材料の多くは、現在は法外な費用がかかり、非効率的かつ/または安全でない。再生医療において幹細胞に基づく治療薬および前駆細胞に基づく治療薬を使用することの他の著しい欠点は、幹細胞の増殖、移動性を制御するため、または幹細胞を、治療を必要とする特定のニッシェまたは組織に導く、例えば、ホーミングさせるために利用可能な技術が欠如していることである。最終的に、細胞に基づく治療薬は再生医療を必要とするものに対する現実的な処置の選択肢とは考えられないという結果になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、増大させることができる、治療が望まれる患者の部位にホーミングすることができる、および持続的な治療効果をもたらすことができる、改善された細胞に基づく治療薬が当技術分野において実質的に必要とされている。本発明は、これらの必要性に対処し、他の関連する利点をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明は、一般に、治療的性質が改善された新規の細胞に基づく組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、一部において、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤(agent)とex vivoで接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞と、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加することとを含むヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を意図している。
【0012】
特定の実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0014】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0015】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む。
【0016】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール(clobetasol butyrate)、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン(difluorocortolone)、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル(fluocoritin butyl)、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0018】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0019】
追加的なある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0020】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0021】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約12時間にわたって接触させたものである。
【0022】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0023】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0024】
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0025】
追加的なさらなる実施形態では、細胞は、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる。
【0026】
一実施形態では、本発明は、一部において、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物、例えば、治療用組成物であって、造血幹細胞または造血前駆細胞が、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する組成物を意図している。
【0027】
追加的な実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む。
【0028】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する。
【0029】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約50倍増加する。
【0030】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約60倍増加する。
【0031】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約70倍増加する。
【0032】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約80倍増加する。
【0033】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して約40~約80倍増加する。
【0034】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して約50~約80倍増加する。
【0035】
特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して約60~約80倍増加する。
【0036】
ある特定の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、または約80倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合性タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、およびFos関連抗原2(FOSL2)からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない幹細胞または前駆細胞と比較して少なくとも約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、または約50倍増加する。
【0037】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0038】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約3倍増加する。
【0039】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0040】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0041】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される2種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0042】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される2種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約3倍増加する。
【0043】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される2種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0044】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される2種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0045】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される3種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約2倍増加する。
【0046】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される3種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約3倍増加する。
【0047】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される3種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約5倍増加する。
【0048】
他の追加的な実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを含み、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍増加し、処理した幹細胞または前駆細胞におけるHAS1、GEM、DUSP4、AREG、NR4A2、REN、CREM、COL1A1、FOSL2からなる群から選択される3種以上の遺伝子の遺伝子発現が、接触させていない細胞と比較して少なくとも約10倍増加する。
【0049】
ある特定の追加的な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0050】
さらなる追加的な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0051】
別の追加的な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む。
【0052】
別の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0053】
別の特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0054】
別のある特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種もしくは複数種のプロスタグランジン経路アゴニストまたは(ii)1種もしくは複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0055】
別のさらなる実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約2時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0056】
別の追加的な実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0057】
特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約4時間にわたって接触させたものである。
【0058】
ある特定の実施形態では、細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む。
【0059】
さらなる実施形態では、細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む。
【0060】
別の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約1%のCD34細胞を含む。
【0061】
追加的な実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約3%のCD34細胞を含む。
【0062】
特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約5%のCD34細胞を含む。
【0063】
別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約10%のCD34細胞を含む。
【0064】
さらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約20%のCD34細胞を含む。
【0065】
なおさらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約30%のCD34細胞を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約40%のCD34細胞を含む。
【0067】
別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約50%のCD34細胞を含む。
【0068】
さらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約60%のCD34細胞を含む。
【0069】
なおさらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約70%のCD34細胞を含む。
【0070】
さらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約80%のCD34細胞を含む。
【0071】
別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約90%のCD34細胞を含む。
【0072】
さらに別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約95%のCD34細胞を含む。
【0073】
追加的な実施形態では、細胞の集団をex vivoで増大させない。
【0074】
ある特定の実施形態では、組成物は、ポイントオブケアで生成され、細胞の集団を培養せずに患者に投与される。
【0075】
さらなる実施形態では、組成物は、洗浄され、1種または複数種の作用剤を実質的に含まない。
【0076】
別の実施形態では、細胞の集団は、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる。
【0077】
一実施形態では、本発明は、一部において、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を調製する方法であって、造血幹細胞または造血前駆細胞を細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させる工程であって、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0078】
特定の実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む。
【0079】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0080】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0081】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む。
【0082】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0084】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0085】
追加的なある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0086】
別のある特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0087】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0088】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0089】
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0090】
追加的なさらなる実施形態では、細胞は、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる。
【0091】
一実施形態では、本発明は、一部において、治療用組成物を調製する方法であって、造血幹細胞または造血前駆細胞をex vivoで(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと接触させる工程であって、CXCR4遺伝子発現が、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞において、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0092】
特定の実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する。
【0093】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0094】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0095】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む。
【0096】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0097】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0098】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0099】
特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0100】
さらなる特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0101】
さらなる特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約12時間にわたって接触させたものである。
【0102】
さらなる特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0103】
追加的な特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0104】
別の特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである。
【0105】
ある特定の実施形態では、細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む。
【0106】
さらなる実施形態では、細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む。
【0107】
別の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約1%のCD34細胞を含む。
【0108】
追加的な実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約3%のCD34細胞を含む。
【0109】
特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約5%のCD34細胞を含む。
【0110】
別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約10%のCD34細胞を含む。
【0111】
さらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約20%のCD34細胞を含む。
【0112】
またさらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約30%のCD34細胞を含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約40%のCD34細胞を含む。
【0114】
別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約50%のCD34細胞を含む。
【0115】
さらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約60%のCD34細胞を含む。
【0116】
なおさらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約70%のCD34細胞を含む。
【0117】
さらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約80%のCD34細胞を含む。
【0118】
別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約90%のCD34細胞を含む。
【0119】
さらに別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約95%のCD34細胞を含む。
【0120】
追加的な実施形態では、細胞の集団をex vivoで増大させない。
【0121】
ある特定の実施形態では、組成物は、ポイントオブケアで生成され、細胞の集団を培養せずに患者に投与される。
【0122】
さらなる実施形態では、組成物は、洗浄され、1種または複数種の作用剤を実質的に含まない。
【0123】
別の実施形態では、細胞の集団は、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる。
【0124】
種々の実施形態では、本発明は、一部において、細胞治療を必要とする被験体を処置する方法であって、被験体にヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を投与する工程であって、造血幹細胞または造血前駆細胞が、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0125】
特定の実施形態では、被験体は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症(amegakaryocytosis/congenital thrombocytopenia)、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア(beta-thalassemia
major)、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、固形腫瘍、慢性肉芽腫性疾患、ムコ多糖症、またはダイヤモンド・ブラックファンを有する。
【0126】
ある特定の実施形態では、被験体は、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する。
【0127】
別の実施形態では、被験体は、骨髄破壊(bone marrow ablative)または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている。
【0128】
さらなる実施形態では、被験体は骨髄ドナーである。
【0129】
一実施形態では、被験体は、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する。
【0130】
特定の実施形態では、被験体は、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織と関連した少なくとも1つの症状を有する。
【0131】
種々の実施形態では、虚血は、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症(aseptic systemic inflammation)、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、移植片対宿主病、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、および組織または臓器の創傷に関連する。
【0132】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングおよび/または生着を増加させる方法であって、被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、造血幹細胞または造血前駆細胞が、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0133】
特定の実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0135】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0136】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む。
【0137】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0138】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0139】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0140】
追加的なある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0141】
別のある特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0142】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0143】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0144】
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0145】
追加的なさらなる実施形態では、細胞は、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる。
【0146】
一実施形態では、本発明は、被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングおよび/または生着を増加させる方法であって、被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程を含み、造血幹細胞または造血前駆細胞が(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとex vivoで接触させたものであり、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加している方法を意図している。
【0147】
特定の実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する。
【0148】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0149】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0150】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む。
【0151】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0153】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0154】
特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0155】
さらなる特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0156】
追加的な特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0157】
別の特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである。
【0158】
ある特定の実施形態では、細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む。
【0159】
さらなる実施形態では、細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む。
【0160】
別の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約1%のCD34細胞を含む。
【0161】
追加的な実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約3%のCD34細胞を含む。
【0162】
特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約5%のCD34細胞を含む。
【0163】
別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約10%のCD34細胞を含む。
【0164】
さらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約20%のCD34細胞を含む。
【0165】
なおさらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約30%のCD34細胞を含む。
【0166】
ある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約40%のCD34細胞を含む。
【0167】
別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約50%のCD34細胞を含む。
【0168】
さらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約60%のCD34細胞を含む。
【0169】
なおさらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約70%のCD34細胞を含む。
【0170】
さらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約80%のCD34細胞を含む。
【0171】
別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約90%のCD34細胞を含む。
【0172】
さらに別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約95%のCD34細胞を含む。
【0173】
追加的な実施形態では、細胞の集団をex vivoで増大させない。
【0174】
ある特定の実施形態では、組成物は、ポイントオブケアで生成され、細胞の集団を培養せずに患者に投与される。
【0175】
さらなる実施形態では、組成物は、洗浄され、1種または複数種の作用剤を実質的に含まない。
【0176】
別の実施形態では、細胞の集団は、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる。
【0177】
種々の上記の実施形態では、被験体は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、または固形腫瘍を有する。
【0178】
いくつかの上記の実施形態では、被験体は、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する。
【0179】
上記の実施形態のいずれかでは、被験体は、骨髄破壊または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている。
【0180】
特定の上記の実施形態では、被験体は骨髄ドナーである。
【0181】
ある特定の上記の実施形態では、細胞の集団は被験体に対して自原性(autogeneic)である。
【0182】
いくつかの上記の実施形態では、細胞の集団は、被験体の末梢血または骨髄から動員されたものである。
【0183】
種々の上記の実施形態では、細胞の集団は被験体に対して同種異系である。
【0184】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞の再構築を増加させる方法であって、被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、造血幹細胞または造血前駆細胞が、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0185】
特定の実施形態では、1種または複数種の作用剤は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む。
【0186】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0187】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0188】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む。
【0189】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0190】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0191】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0192】
追加的なある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0193】
別のある特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである。
【0194】
別のある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0195】
ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0196】
さらなる実施形態では、幹細胞または前駆細胞は少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0197】
追加的なさらなる実施形態では、細胞は、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる。
【0198】
一実施形態では、本発明は、一部において、被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞の再構築を増加させる方法であって、被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとex vivoで接触させたものであり、b)接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法を意図している。
【0199】
特定の実施形態では、接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する。
【0200】
ある特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む。
【0201】
さらなる特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される。
【0202】
別の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む。
【0203】
追加的な特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGEを含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0205】
さらなるある特定の実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0206】
特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである。
【0207】
さらなる特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである。
【0208】
追加的な特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである。
【0209】
別の特定の実施形態では、造血幹細胞または造血前駆細胞は、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである。
【0210】
ある特定の実施形態では、細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む。
【0211】
さらなる実施形態では、細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む。
【0212】
別の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約1%のCD34細胞を含む。
【0213】
追加的な実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約3%のCD34細胞を含む。
【0214】
特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約5%のCD34細胞を含む。
【0215】
別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約10%のCD34細胞を含む。
【0216】
さらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約20%のCD34細胞を含む。
【0217】
なおさらに別の特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約30%のCD34細胞を含む。
【0218】
ある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約40%のCD34細胞を含む。
【0219】
別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約50%のCD34細胞を含む。
【0220】
さらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約60%のCD34細胞を含む。
【0221】
なおさらに別のある特定の実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約70%のCD34細胞を含む。
【0222】
さらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約80%のCD34細胞を含む。
【0223】
別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約90%のCD34細胞を含む。
【0224】
さらに別のさらなる実施形態では、細胞の集団は、少なくとも約95%のCD34細胞を含む。
【0225】
追加的な実施形態では、細胞の集団をex vivoで増大させない。
【0226】
ある特定の実施形態では、組成物は、ポイントオブケアで生成され、細胞の集団を培養せずに患者に投与される。
【0227】
さらなる実施形態では、組成物は、洗浄され、1種または複数種の作用剤を実質的に含まない。
【0228】
別の実施形態では、細胞の集団は、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる。
【0229】
種々の実施形態では、細胞の集団は、1つまたは複数の臍帯血ユニット(cord blood unit)を含む。
【0230】
種々の上記の実施形態では、被験体は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、または固形腫瘍を有する。
【0231】
いくつかの上記の実施形態では、被験体は、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する。
【0232】
上記の実施形態のいずれかでは、被験体は、骨髄破壊または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている。
【0233】
特定の上記の実施形態では、被験体は骨髄ドナーである。
【0234】
ある特定の上記の実施形態では、細胞の集団は被験体に対して自原性である。
【0235】
いくつかの上記の実施形態では、細胞の集団は、被験体の末梢血または骨髄から動員されたものである。
【0236】
種々の上記の実施形態では、細胞の集団は被験体に対して同種異系である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞であって、
a)該細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞と、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加することと
を含むヒト造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目2)
前記1種または複数種の作用剤が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目3)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目4)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目5)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目6)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目7)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目8)
前記グルココルチコイドが、メドリゾンである、項目2に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目9)
少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目10)
少なくとも1種の作用剤と約1時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目11)
少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目12)
少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目13)
骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる、項目1に記載の造血幹細胞または造血前駆細胞。
(項目14)
ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む治療用組成物であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞が、該ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する、治療用組成物。
(項目15)
前記1種または複数種の作用剤が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目16)
前記接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する、項目14に記載の治療用組成物。
(項目17)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目15に記載の治療用組成物。
(項目18)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目15に記載の治療用組成物。
(項目19)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む、項目15に記載の治療用組成物。
(項目20)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目15に記載の治療用組成物。
(項目21)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目15に記載の治療用組成物。
(項目22)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種もしくは複数種のプロスタグランジン経路アゴニストまたは(ii)1種もしくは複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目14に記載の治療用組成物。
(項目23)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約2時間~約24時間にわたって接触させたものである、項目14に記載の治療用組成物。
(項目24)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目14に記載の治療用組成物。
(項目25)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドのうちの少なくとも1つと約4時間にわたって接触させたものである、項目14に記載の治療用組成物。
(項目26)
前記細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目27)
前記細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目28)
前記細胞の集団が、少なくとも約1%のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目29)
前記細胞の集団が、少なくとも約3%のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目30)
前記細胞の集団が、少なくとも約5%のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目31)
前記細胞の集団が、少なくとも約90%のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目32)
前記細胞の集団が、少なくとも約95%のCD34細胞を含む、項目14に記載の治療用組成物。
(項目33)
前記細胞の集団をex vivoで増大させない、項目14に記載の治療用組成物。
(項目34)
ポイントオブケアで生成され、前記細胞の集団を培養せずに患者に投与される、項目14に記載の治療用組成物。
(項目35)
洗浄され、前記1種または複数種の作用剤を実質的に含まない、項目14に記載の治療用組成物。
(項目36)
前記細胞の集団が、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる、項目14に記載の治療用組成物。
(項目37)
ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を調製する方法であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞を、該細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させる工程であって、該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞における該CXCR4遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目38)
前記1種または複数種の作用剤が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目37に記載の方法。
(項目40)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGE2からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目41)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む、項目37に記載の方法。
(項目42)
プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目37に記載の方法。
(項目43)
グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目44)
グルココルチコイドが、メドリゾンである、項目37に記載の方法。
(項目45)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目37に記載の方法。
(項目46)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである、項目37に記載の方法。
(項目47)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目37に記載の方法。
(項目48)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目37に記載の方法。
(項目49)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる、項目37に記載の方法。
(項目50)
治療用組成物を調製する方法であって、
造血幹細胞または造血前駆細胞を(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとex vivoで接触させる工程であって、該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目51)
前記接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目50に記載の方法。
(項目53)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む、項目50に記載の方法。
(項目55)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目50に記載の方法。
(項目56)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目50に記載の方法。
(項目57)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目50に記載の方法。
(項目58)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目50に記載の方法。
(項目59)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目50に記載の方法。
(項目60)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである、項目50に記載の方法。
(項目61)
細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む、項目50に記載の方法。
(項目62)
細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む、項目50に記載の方法。
(項目63)
細胞の集団が、少なくとも約1%のCD34細胞を含む、項目50に記載の方法。
(項目64)
細胞の集団が、少なくとも約3%のCD34細胞を含む、項目50に記載の方法。
(項目65)
細胞の集団が、少なくとも約5%のCD34細胞を含む、項目50に記載の方法。
(項目66)
細胞の集団をex vivoで増大させない、項目50に記載の方法。
(項目67)
前記組成物が、ポイントオブケアで生成され、細胞の集団を培養せずに患者に投与される、項目50に記載の方法。
(項目68)
前記組成物を洗浄し、それが前記(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドを実質的に含まない、項目50に記載の方法。
(項目69)
細胞の集団が、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる、項目50に記載の方法。
(項目70)
細胞治療を必要とする被験体を処置する方法であって、項目1に記載のヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を該被験体に投与する工程を含む方法。
(項目71)
前記被験体が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、固形腫瘍、慢性肉芽腫性疾患、ムコ多糖症、またはダイヤモンド・ブラックファンを有する、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記被験体が、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する、項目70に記載の方法。
(項目73)
前記被験体が、骨髄破壊または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている、項目70に記載の方法。
(項目74)
前記被験体が、骨髄ドナーである、項目70に記載の方法。
(項目75)
前記被験体が虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する、項目70に記載の方法。
(項目76)
前記被験体が虚血組織または虚血による損傷を受けた組織と関連した少なくとも1つの症状を有する、項目70に記載の方法。
(項目77)
前記虚血が、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、移植片対宿主病、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、および組織または臓器の創傷に関連する、項目75または76に記載の方法。
(項目78)
被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングおよび/または生着を増加させる方法であって、該被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞が、該細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目79)
前記1種または複数種の作用剤が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む、項目78に記載の方法。
(項目80)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目78に記載の方法。
(項目81)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目78に記載の方法。
(項目82)
プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む、項目78に記載の方法。
(項目83)
プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目78に記載の方法。
(項目84)
グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目78に記載の方法。
(項目85)
グルココルチコイドが、メドリゾンである、項目78に記載の方法。
(項目86)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目78に記載の方法。
(項目87)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである、項目78に記載の方法。
(項目88)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目78に記載の方法。
(項目89)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目78に記載の方法。
(項目90)
前記細胞が、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる、項目78に記載の方法。
(項目91)
被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングおよび/または生着を増加させる方法であって、該被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとex vivoで接触させたものであり、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目92)
前記接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目91に記載の方法。
(項目94)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目91に記載の方法。
(項目95)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む、項目91に記載の方法。
(項目96)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目91に記載の方法。
(項目97)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目91に記載の方法。
(項目98)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目91に記載の方法。
(項目99)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目91に記載の方法。
(項目100)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目91に記載の方法。
(項目101)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである、項目91に記載の方法。
(項目102)
前記細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む、項目91に記載の方法。
(項目103)
前記細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む、項目91に記載の方法。
(項目104)
前記細胞の集団が、少なくとも約1%のCD34細胞を含む、項目91に記載の方法。
(項目105)
前記細胞の集団が、少なくとも約3%のCD34細胞を含む、項目91に記載の方法。
(項目106)
前記細胞の集団が、少なくとも約5%のCD34細胞を含む、項目91に記載の方法。
(項目107)
前記細胞の集団が、少なくとも約90%のCD34細胞を含む、項目91に記載の組成物。
(項目108)
前記細胞の集団が、少なくとも約95%のCD34細胞を含む、項目91に記載の組成物。
(項目109)
前記細胞の集団をex vivoで増大させない、項目91に記載の方法。
(項目110)
前記組成物が、ポイントオブケアで生成され、前記細胞の集団を培養せずに患者に投与される、項目91に記載の方法。
(項目111)
前記組成物が、洗浄され、前記1種または複数種の作用剤を実質的に含まない、項目91に記載の方法。
(項目112)
前記細胞の集団が、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる、項目91に記載の方法。
(項目113)
前記被験体が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、または固形腫瘍を有する、項目78または項目91に記載の方法。
(項目114)
前記被験体が、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する、項目78または項目91に記載の方法。
(項目115)
前記被験体が、骨髄破壊または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている、項目78または項目91に記載の方法。
(項目116)
前記被験体が、骨髄ドナーである、項目78または項目91に記載の方法。
(項目117)
前記細胞の集団が、前記被験体に対して自原性である、項目78または項目91に記載の方法。
(項目118)
前記細胞の集団が、前記被験体の末梢血または骨髄から動員される、項目78または項目91に記載の方法。
(項目119)
前記細胞の集団が、前記被験体に対して同種異系である、項目78または項目91に記載の方法。
(項目120)
被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞の再構築を増加させる方法であって、該被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞が、該細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものであり、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目121)
前記1種または複数種の作用剤が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと、(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとを含む、項目120に記載の方法。
(項目122)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目121に記載の方法。
(項目123)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目121に記載の方法。
(項目124)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体または誘導体を含む、項目121に記載の方法。
(項目125)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目121に記載の方法。
(項目126)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目121に記載の方法。
(項目127)
前記グルココルチコイドが、メドリゾンである、項目121に記載の方法。
(項目128)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目120に記載の方法。
(項目129)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約1時間~約24時間にわたって接触させたものである、項目120に記載の方法。
(項目130)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目120に記載の方法。
(項目131)
前記幹細胞または前駆細胞が、少なくとも1種の作用剤と約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目120に記載の方法。
(項目132)
前記細胞が、骨髄、臍帯血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、または胎児血から得られる、項目120に記載の方法。
(項目133)
被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞の再構築を増加させる方法であって、該被験体に、ヒト造血幹細胞または造血前駆細胞を含む細胞の集団を含む組成物を投与する工程であって、
a)該造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドとex vivoで接触させたものであり、
b)該接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約30倍増加する工程を含む方法。
(項目134)
前記接触させた造血幹細胞または造血前駆細胞におけるCXCR4の遺伝子発現が、接触させていない造血幹細胞または造血前駆細胞と比較して少なくとも約40倍増加する、項目133に記載の方法。
(項目135)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE EP受容体またはPGE EP受容体に選択的に結合する化合物を含む、項目133に記載の方法。
(項目136)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択される、項目133に記載の方法。
(項目137)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む、項目133に記載の方法。
(項目138)
前記プロスタグランジン経路アゴニストが、16,16-ジメチルPGEを含む、項目133に記載の方法。
(項目139)
前記グルココルチコイドが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される、項目133に記載の方法。
(項目140)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと少なくとも約1時間にわたって接触させたものである、項目133に記載の方法。
(項目141)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約6時間にわたって接触させたものである、項目133に記載の方法。
(項目142)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約2時間~約4時間にわたって接触させたものである、項目133に記載の方法。
(項目143)
前記造血幹細胞または造血前駆細胞が、(i)1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストおよび(ii)1種または複数種のグルココルチコイドと約4時間にわたって接触させたものである、項目133に記載の方法。
(項目144)
前記細胞の集団が、約0.10%未満、0.50%未満、1.0%未満、3%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、または30%未満のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目145)
前記細胞の集団が、少なくとも約0.01%でかつ約50%以下のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目146)
前記細胞の集団が、少なくとも約1%のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目147)
前記細胞の集団が、少なくとも約3%のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目148)
前記細胞の集団が、少なくとも約5%のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目149)
前記細胞の集団が、少なくとも約90%のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目150)
前記細胞の集団が、少なくとも約95%のCD34細胞を含む、項目133に記載の方法。
(項目151)
前記細胞の集団をex vivoで増大させない、項目133に記載の方法。
(項目152)
前記組成物が、ポイントオブケアで生成され、前記細胞の集団を培養せずに患者に投与される、項目133に記載の方法。
(項目153)
前記組成物が、洗浄され、前記1種または複数種の作用剤を実質的に含まない、項目133に記載の方法。
(項目154)
前記細胞の集団が、骨髄、胎児肝臓、胎児血、胎盤、胎盤血、臍帯血、または動員された末梢血から得られる、項目133に記載の方法。
(項目155)
前記細胞の集団が、1つまたは複数の臍帯血ユニットを含む、項目120または項目133に記載の方法。
(項目156)
前記被験体が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、若年性骨髄単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、重症再生不良性貧血、ファンコニー貧血、発作性夜間血色素尿症(PNH)、赤芽球ろう、先天性無巨核球性血小板減少症、重症複合免疫不全症候群(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、重症型ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ハーラー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、脊髄異形成、不応性貧血、慢性骨髄単球性白血病、原因不明骨髄様化生、家族性血球貪食性リンパ組織球症、または固形腫瘍を有する、項目120または項目133に記載の方法。
(項目157)
前記被験体が、乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、膵がん、または肉腫を有する、項目120または項目133に記載の方法。
(項目158)
前記被験体が、骨髄破壊または骨髄非破壊化学療法または放射線療法を受けている、項目120または項目133に記載の方法。
(項目159)
前記被験体が、骨髄ドナーである、項目120または項目133に記載の方法。
(項目160)
前記細胞の集団が、前記被験体に対して自原性である、項目120または項目133に記載の方法。
(項目161)
前記細胞の集団が、前記被験体の末梢血または骨髄から動員されたものである、項目120または項目133に記載の方法。
(項目162)
前記細胞の集団が、前記被験体に対して同種異系である、項目120または項目133に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0237】
図1図1は、ヒト臍帯血CD34細胞を単一の作用剤10μM、またはdmPGE10μMと5種の異なるグルココルチコイドのうちの1種10μMの組合せのいずれかを用いて処理した場合に当該細胞において検出されたCXCR4 mRNAのレベルの増加(ビヒクル処理と比較して)を示すグラフである。グルココルチコイドは、dmPGEと相乗的に作用して、CXCR4遺伝子発現を増加させる。
【0238】
図2A図2Aは、ヒト臍帯血CD34細胞を、PGEを単独でまたはPGEと種々のグルココルチコイドの組合せを用いて処理した場合に当該CD34細胞において検出されたCXCR4 mRNAの増加を示すグラフである。データにより、グルココルチコイドがプロスタグランジン経路アゴニストと相乗的に作用して、CD34細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させることが実証される。
図2B図2Bは、ヒト臍帯血CD34細胞を、15(S)-15-メチルPGE(mPGE)を単独で、または種々のグルココルチコイドと組み合わせて処理した場合に当該CD34細胞において検出されたCXCR4 mRNAの増加を示すグラフである。データにより、グルココルチコイドがプロスタグランジン経路アゴニストと相乗的に作用して、CD34細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させることが実証される。
図2C図2Cは、ヒト臍帯血CD34細胞を、20-エチルPGE2(ePGE)を単独で、または種々のグルココルチコイドと組み合わせて処理した場合に当該CD34細胞において検出されたCXCR4 mRNAの増加を示すグラフである。データにより、グルココルチコイドがプロスタグランジン経路アゴニストと相乗的に作用して、CD34細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させることが実証される。
【0239】
図3図3は、臍帯血または動員された末梢血(mPB)に由来するヒトCD34細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを単独で、またはグルココルチコイドと組み合わせてのいずれかで用いて処理した場合に当該CD34細胞において検出されたCXCR4 mRNAの増加を示すグラフである。CD34細胞は、CD34細胞の供給起源にかかわらず処理に対して同様に応答する。
【0240】
図4A図4Aは、CD34細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを単独で、またはグルココルチコイドと組み合わせてのいずれかで用いて処理した後の、CXCR4表面タンパク質を発現しているCD34細胞の数の増加を%CXCR4+で示したグラフである。
図4B図4Bは、CD34細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを単独で、またはグルココルチコイドと組み合わせてのいずれかで用いて処理した後の、平均蛍光強度(MFI)で測定されたCD34細胞のCXCR4表面タンパク質の量の増加を示すグラフである。
【0241】
図5図5は、ヒトCD34細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを単独で、またはグルココルチコイドと組み合わせてのいずれかで用いて2時間処理する間に検出された、および該処理の後、処理を取り除いた後の追加的な4時間にわたって(培地単独で)検出されたCXCR4 mRNAの増加の動態測定値(倍数変化)および表面CXCR4タンパク質を発現しているヒトCD34細胞の数(CXCR4+細胞の%)を示すグラフである。
【0242】
図6図6は、ヒトCD34細胞を、プロスタグランジン経路アゴニストを単独で、またはグルココルチコイドと組み合わせてのいずれかで用いて4時間処理する間に検出された、および該処理の後、処理を取り除いた後の追加的な4時間にわたって(培地単独で)検出されたCXCR4 mRNAの増加の動態測定値(倍数変化)および表面CXCR4タンパク質を発現しているヒトCD34細胞の数(CXCR4+細胞の%)を示すグラフである。
【0243】
図7図7は、代表的なSDF-1トランスウェル遊走アッセイの結果を示す図である。結果は、CD34細胞をDMSO対照、dmPGE、またはdmPGEおよびメドリゾンを用いて処理することの、SDF-1への細胞遊走の効率に対する効果を示す。データにより、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したCD34細胞のSDF-1勾配に遊走する能力がビヒクルまたはプロスタグランジン経路アゴニスト単独で処理したCD34細胞と比較して増強されたことが実証される。結果は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理した細胞におけるCXCR4遺伝子発現の増加が機能的能力の増大に変換されることを示している。
【0244】
図8図8は、dmPGEを単独で、または種々のグルココルチコイドと組み合わせて用いて処理したCD34細胞のSDF-1への細胞遊走の効率を示す図である。プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したCD34細胞では、ビヒクルまたはプロスタグランジン経路アゴニスト単独で処理したCD34細胞と比較してSDF-1勾配に向かって遊走する能力の増大が示される。
【0245】
図9図9は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したCD34細胞の遊走能力の増強の持続時間を示す図である。結果により、遊走能力の増強の持続時間がCD34細胞を処理した後少なくとも4時間維持されることが実証される。
【0246】
図10図10は、代表的な中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)虚血ラットモデルからの神経学的重症度スコア(Neurological Severity Score)(mNSS)を示すグラフである。結果により、dmPGEおよびメドリゾンを用いてHSPC細胞を処理することの、MCAO卒中モデルにおける神経学的欠損を減少させる細胞の能力に対する効果が示されている。プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したHSPCを与えたラットでは、無処理の細胞またはビヒクル単独を与えたラットと比較して、神経学的欠損が減少し、神経機能が改善される。
【0247】
図11図11は、代表的な中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)虚血ラットモデルのフットフォールトアッセイ結果を示すグラフである。結果により、dmPGEおよびメドリゾンを用いてHSPCを処理することの、MCAO卒中モデルにおいて運動欠損を減少させる細胞の能力に対する効果が示されている。プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したHSPCを与えたラットでは、無処理の細胞またはビヒクル単独を与えたラットと比較して運動欠損が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0248】
詳細な説明
A.概要
本発明は、ex vivoで処理して、細胞の治療的性質を増強したヒト造血幹細胞および造血前駆細胞を提供する。具体的には、本発明の造血幹細胞および造血前駆細胞は、細胞を、ホーミングに関与する遺伝子の遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤を用いて簡単に処理することによってex vivoで改変したものである。一実施形態では、本発明の造血幹細胞および造血前駆細胞は、細胞を、CXCR4の発現を増加させる1種または複数種の作用剤を用いて簡単に処理することによってex vivoで改変したものである。本発明の治療用細胞は、無処理のヒト造血幹細胞および造血前駆細胞と比較して予想外に高レベルのCXCR4を発現する。特定の実施形態では、本発明の薬理学的に増強された細胞は、無処理の細胞と比較してCXCR4の遺伝子発現が少なくとも約30倍増加することを特徴とする。種々の実施形態では、治療用細胞はCD34細胞である。
【0249】
CXCR4は造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングおよび生着の増加に関連すると考えられており、したがって、本発明の処理した造血幹細胞および造血前駆細胞は、例えば、骨髄および虚血による損傷を受けた組織へのホーミングの増加、ならびに増殖性および再生性の増強を含め、治療的性質が増強されている。
【0250】
種々の実施形態では、本発明の細胞およびそのような増強された細胞を含有する組成物は、他の処置の中でも、造血幹細胞移植を含めた、造血幹細胞および造血前駆細胞の数を増加させることが必要または有益である状態および障害の処置において、および虚血による損傷を受けた組織の処置において有用である。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明は、一部において、本発明の増強された造血幹細胞および造血前駆細胞の表面上のCXCR4タンパク質のレベルを上昇させることにより、増強された細胞の骨髄および組織傷害部位へのホーミングを改善することを意図している。増強された造血幹細胞および造血前駆細胞により、例えば、処理した細胞の骨髄へのホーミングおよび/または生着を増加させること、および処理した細胞の、患者に投与された後にin vivoで自己再生し、増殖する能力を増大させることによるものを含め、幹細胞移植に使用する造血幹細胞および造血前駆細胞の有効性を増大させることによって、幹細胞移植の間の患者の転帰を改善することができる。
【0251】
本発明の増強された造血幹細胞および造血前駆細胞を虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を処置するために使用した場合、例えば、虚血組織における血管新生を改善すること、虚血部位における組織再生を改善すること、虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること、および/または虚血部位における細胞生存を増加させることによって、患者の転帰を改善することができる。
【0252】
B.定義
冠詞「a(1つの)」、「an(1つの)」、および「the(その)」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つ、または2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an(1つの)エレメント」とは、1つのエレメントまたは2つ以上のエレメントを意味する。
【0253】
選択肢(例えば、「or(または)」)の使用は、その選択肢のいずれか一方、その両方、またはそれらの任意の組合せを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「含む(include)」および「含む(comprise)」という用語は同義に使用される。
【0254】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%まで変動する数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照の数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さに関して±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の数量、レベル、値、数、発生頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
【0255】
「ex vivo」という用語は、一般に、好ましくは天然の条件の変更は最小にして、生体外の人工的な環境下の生組織の中またはその上で行われる実験または測定などの生体外で起こる活性を指す。特定の実施形態では、「ex vivo」における手順は、生物体から取得し、実験室の装置において、通常は滅菌条件下で、一般には数時間、または約24時間まで、しかし状況に応じて48時間または72時間までを含めた時間にわたって培養した生細胞または生組織に関与する。ある特定の実施形態では、そのような組織または細胞を採取し、凍結させ、後でex vivoにおける処理のために解凍することができる。生細胞または生組織を使用して数日よりも長く続く組織培養実験または手順は、一般には、「in vitro」とみなされるが、ある特定の実施形態では、この用語は、ex vivoと互換的に使用することができる。
【0256】
「ex vivoにおける投与」、「ex vivoにおける処理」、または「ex vivoにおける治療的使用」という記述は、一般に、1つまたは複数の臓器、細胞、または組織を生きているまたは最近死亡した被験体から得、必要に応じて、精製/富化し、処理または手順にさらす医学的手技(例えば、細胞を本発明の組成物または作用剤と一緒にインキュベートして、造血幹細胞または造血前駆細胞などの特定の細胞の増大を増強する工程を含むex vivoにおける投与工程)に関する。ex vivoにおいて処理した細胞は、ドナーまたは別の生きている被験体に投与することができる。
【0257】
そのようなex vivoにおける治療への適用は、本発明の接触させた細胞を生きている被験体に1回または複数回投与することによるものなどの、任意選択のin vivoにおける処理または手技の工程も含んでよい。これらの実施形態については、当技術分野において周知の技法に従い、本明細書の他の箇所に記載されている局所投与および全身投与の両方が意図されている。被験体に投与する細胞の量は、被験体の特性、例えば、全体的な健康、年齢、性別、体重、および薬物に対する耐容性、ならびに薬物および/または細胞移植に対する反応の程度、重症度、および種類などに依存する。
【0258】
「in vivo」という用語は、一般に、細胞の生着、細胞のホーミング、細胞の自己再生、および細胞の増大などの生体内で起こる活性を指す。一実施形態では、「in vivoにおける増大」という用語は、細胞集団がin vivoにおいて数を増加させることができることを指す。特定の実施形態では、in vivoにおける増大とは、幹細胞の自己再生および/または増殖を含む。
【0259】
「増強する(enhance)」または「促進する(promote)」または「増加させる(increase)」または「活性化する(activate)」とは、一般に、作用剤により、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して大きな生理応答(すなわち、下流の効果)、例えば、造血幹細胞および造血前駆細胞の生着/生着の潜在性の増加およびin vivoにおける幹細胞の増大の増加を生じさせる、または引き起こすことができることを指す。測定可能な生理応答は、当技術分野における理解および本明細書における記載から明らかなものの中でも、造血幹細胞および造血前駆細胞の生着、生存能力、ホーミング、自己再生、および/または増大の増加を含んでよい。一実施形態では、増加は、これだけに限定されないが、CREBリン酸化の増加、CREM発現の増加、およびCXCR4の発現の増加を含めた、PGE細胞シグナル伝達経路および/またはPGE細胞シグナル伝達経路を通じたシグナル伝達の増加の結果としての遺伝子発現の増加であってよい。造血幹細胞および造血前駆細胞の生着、生存能力、ホーミング、自己再生および/またはin vivoにおける増大の増加は、とりわけ、遺伝子発現、CFU-Cアッセイ、CFU-Sアッセイ、CAFCアッセイ、および細胞表面タンパク質発現などの当技術分野で公知の方法を用いて確認することもできる。「増加した(increased)」または「増強された(enhanced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル(作用剤が存在しない)または対照組成物によって生じる応答の1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍またはそれ超(例えば、500倍、1000倍)(その間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)に増加することを含んでよい。
【0260】
「減少する(decrease)」または「低減する(lower)」または「減る(lessen)」または「低下する(reduce)」または「軽減する(abate)」とは、一般に、作用剤により、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答と比較して少ない生理応答(すなわち、下流の効果)、例えば、アポトーシスの減少を生じさせる、または引き起こすことができることを指す。一実施形態では、減少は、通常は細胞の生存能力の低下と関連する、遺伝子発現の減少または細胞シグナル伝達の減少であってよい。「減少した(decrease)」または「低下した(reduced)」量とは、一般には、「統計的に有意な」量であり、ビヒクル(作用剤が存在しない)または対照組成物によって生じる応答の1.1分の1、1.2分の1、1.5分の1、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、6分の1、7分の1、8分の1、9分の1、10分の1、15分の1、20分の1、30分の1またはそれ未満(例えば、500分の1、1000分の1)(その間に入る1を超える全ての整数および小数点、例えば、1.5分の1、1.6分の1、1.7分の1、1.8分の1などを含む)に減少することを含んでよい。
【0261】
「維持する(maintain)」または「保存する(preserve)」または「維持(maintenance)」または「変化なし(no change)」または「実質的な変化なし(no substantial change)」または「実質的な減少なし(no substantial decrease)」とは、一般に、作用剤により、細胞において、ビヒクルまたは対照分子/組成物のいずれかによって引き起こされる応答(参照応答)と比較して、匹敵する生理応答(すなわち、下流の効果)を生じさせる、または引き起こすことができることを指す。匹敵する応答とは、参照応答と有意に異ならないまたは測定可能には異ならない応答である。
【0262】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という単語は、本明細書全体を通して、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、明記されている工程もしくはエレメントまたは工程もしくはエレメントの群を包含するが、任意の他の工程もしくはエレメントまたは工程もしくはエレメントの群を排除するものではないことを意味すると理解されたい。「からなる(consisting of)」とは、「からなる(consisting of)」という句に続くいかなるものも含み、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という句は、列挙されているエレメントが必要または必須であること、および他のエレメントは存在してはならないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、この句の後に列挙されている任意のエレメントを包含し、列挙されているエレメントに関する本開示に明記されている活性または作用に干渉も寄与もしない他のエレメントに限定されるものとする。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という句は、列挙されているエレメントが必要または必須であるが、他のエレメントは任意選択ではなく、それらが列挙されているエレメントの活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してよいまたは存在してはならないことを示す。
【0263】
ある特定の実施形態では、本発明の治療用細胞は、独特のまたは実質的に独特の遺伝子シグネチャーを含む。本明細書で使用される場合、「遺伝子発現プロファイル」、「遺伝子発現シグネチャー」または「遺伝子シグネチャー」という用語は、同じ試料、すなわち、細胞の集団について測定された複数の異なる遺伝子の発現のレベルを指す。遺伝子発現シグネチャーは、治療用細胞を当技術分野において現存する細胞および/または対照、ビヒクル、または無処理細胞と区別するために役立つ遺伝子の一群である「シグネチャー遺伝子」が同定されるように定義することができる。
【0264】
「シグネチャー遺伝子」とは、本明細書で使用される場合、シグネチャー遺伝子セットの任意の遺伝子を意味する。例えば、シグネチャー遺伝子としては、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合性タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、Fos関連抗原2(FOSL2)、およびCXCケモカイン受容体4(CXCR4)が挙げられる。明確にするために、シグネチャー遺伝子はハウスキーピング遺伝子を包含しない。
【0265】
「遺伝子発現」とは、本明細書で使用される場合、幹細胞および前駆細胞、または幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞の集団などの生物学的試料中の遺伝子の相対的な発現レベルおよび/または発現パターンを指す。特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞は造血幹細胞および造血前駆細胞である。
【0266】
本発明の治療用組成物を含む、細胞を特徴付ける遺伝子の発現を検出するために当技術分野において利用可能な方法はいずれも本発明に包含される。本明細書で使用される場合、「発現を検出すること」という用語は、遺伝子のRNA転写物またはその発現産物の数量または存在を決定することを意味する。遺伝子の発現、すなわち遺伝子発現プロファイリングを検出するための方法としては、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づく方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、免疫組織化学的方法、およびプロテオミクスに基づく方法が挙げられる。当該方法では、一般に、対象の遺伝子の発現産物(例えば、mRNA)を検出する。いくつかの実施形態では、逆転写PCR(RT-PCR)などのPCRに基づく方法(Weisら、TIG 8巻:263~64頁、1992年)、およびマイクロアレイなどのアレイに基づく方法(Schenaら、Science 270巻:467~70頁、1995年)が用いられる。
【0267】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「ある実施形態」との言及は、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。したがって、本明細書全体を通して種々の箇所において出現する「一実施形態では」または「ある実施形態では」という句は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているのではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性を任意の適切な様式で組み合わせて1つまたは複数の実施形態にすることができる。
【0268】
C.造血幹細胞および造血前駆細胞
本発明は、ヒト造血幹細胞および造血前駆細胞を提供し、幹細胞は細胞の治療的性質を増大させることができる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものである。一実施形態では、ヒト造血幹細胞および造血前駆細胞は、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたものである。好ましい一実施形態では、処理したヒト造血幹細胞におけるCXCR4の遺伝子発現は、接触させていない造血幹細胞および造血前駆細胞またはビヒクル対照を用いて処理した細胞と比較して少なくとも約30倍増加する。
【0269】
造血幹細胞は、骨髄系列(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ系列(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、および当技術分野で公知のその他の系列を含めた、生物体の全ての種類の血液細胞を生じさせる多分化能幹細胞である(Fei, R.ら、米国特許第5,635,387号;McGlaveら、米国特許第5,460,964号;Simmons,
P.ら、米国特許第5,677,136号;Tsukamotoら、米国特許第5,750,397号;Schwartzら、米国特許第5,759,793号;DiGuistoら、米国特許第5,681,599号;Tsukamotoら、米国特許第5,716,827号を参照されたい)。造血前駆細胞(HSC)は、生物体の生存期間にわたって成熟血液細胞のレパートリー全体を生成することができる関係づけられる造血前駆細胞(HPC)を生じさせる。
【0270】
本明細書で使用される場合、「造血幹細胞および造血前駆細胞」または「HSPC」という用語は、抗原マーカーであるCD34が存在すること(CD34)によって同定される、したがって、CD34細胞と特徴付けられる細胞、およびそのような細胞の集団を指す。特定の実施形態では、「HSPC」という用語は、抗原マーカーであるCD34が存在すること(CD34)および系列(lin)マーカーが存在しないことによって同定され、したがって、CD34/Lin(-)細胞と特徴付けられる細胞、およびそのような細胞の集団を指す。CD34および/またはLin(-)細胞を含む細胞の集団は、造血前駆細胞も含み、したがって、本出願の目的に関して、「HSPC」という用語は造血前駆細胞を包含することが理解される。
【0271】
「増強された造血幹細胞および造血前駆細胞」または「増強されたHSPC」とは、ex vivoにおいて、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を対照、ビヒクルまたは無処理の細胞と比較して少なくとも約30倍増加させる1種または複数種の作用剤を用いて処理したHSPCを指す。
【0272】
本明細書で使用される場合、「接触させていない」または「無処理の」細胞とは、対照作用剤以外の作用剤を用いて処理していない、例えば、それと一緒に培養していない、それと接触させていない、またはそれと一緒にインキュベートしていない細胞である。DMSO(対照作用剤)と接触させた、または別のビヒクルと接触させた細胞は、接触させていない細胞である。
【0273】
本発明のHSPCは、高レベルのCXCR4の発現を示す遺伝子発現プロファイルによって同定され、それを特徴とする。HSPCは、CXCR4遺伝子発現の増加およびCXCR4ポリペプチドの細胞表面発現の増加に基づいて特徴付けることもできる。ある特定の実施形態では、本発明のHSPCにおけるCXCR4遺伝子発現が、接触させていない細胞におけるCXCR4の発現と比較して少なくとも30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍増加する。
【0274】
特定の実施形態では、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現が、無処理のHSPCと比較して約30~約80倍増加する。さらなる実施形態では、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現が、無処理のHSPCと比較して約40~約80倍、約50~約80倍、約60~約80倍、または約50~約70倍増加する。
【0275】
本発明の処理したHSPCのCXCR4遺伝子発現または遺伝子発現シグネチャーを、細胞を1種または複数種の作用剤を用いて処理した後に決定することができる。例えば、HSPCを、ex vivoにおいて1種または複数種の作用剤を用いて処理し、洗浄して作用剤(複数可)を除去し、細胞をさらにインキュベートせずに遺伝子発現を解析することができる。
【0276】
本発明の方法において接触させ、増強された治療的性質を有するヒトHSPCは、多数の種々の他の方法で、例えば、細胞内cAMPシグナル伝達、例えばCREBリン酸化のレベルの上昇によって、もしくは生化学的アッセイによって決定される通り;遺伝子発現アッセイ、例えばマイクロアレイによって決定されるPGE/R4細胞シグナル伝達経路に関係づけられる遺伝子、例えばCREM、ならびに幹細胞および前駆細胞のホーミングおよび生着を増加させる遺伝子、例えばCXCR4の上方制御を示す遺伝子発現シグネチャー;細胞の生存能力アッセイ、例えば7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)染色によって決定される幹細胞および前駆細胞の生存能力における測定可能な低下がないこと;ならびに/またはin vitroにおけるコロニー形成単位(CFU-C)アッセイによって決定される幹細胞の自己再生する能力の増加によってなどで特徴付けることもできる。
【0277】
1.遺伝子発現の決定
「遺伝子発現」とは、本明細書で使用される場合、本発明の治療用組成物中の幹細胞および前駆細胞、または幹細胞もしくは前駆細胞を含む細胞の集団などの生物学的試料中のCXCR4などの遺伝子の相対的な発現レベルおよび/または発現パターンを指す。試料は不均一または均一な細胞の集団を含んでよく、細胞集団を試料から精製してもしなくてもよい。CXCR4などの遺伝子の発現は、cDNA、RNA、mRNA、またはそれらの組合せのレベルで測定することができる。
【0278】
CXCR4遺伝子の発現を検出するための当技術分野において利用可能な方法はいずれも本明細書に包含される。本明細書で使用される場合、「発現を検出すること」という用語は、遺伝子のRNA転写物またはその発現産物の数量または存在を決定することを意味する。遺伝子の発現を検出するための方法としては、PCRに基づく方法、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析、ポリヌクレオチドの配列決定に基づく方法、免疫組織化学的方法、およびプロテオミクスに基づく方法が挙げられる。当該方法では、一般に、対象の遺伝子の発現産物(例えば、mRNA)を検出する。いくつかの実施形態では、逆転写PCR(RT-PCR)などのPCRに基づく方法(Weisら、TIG 8巻:263~64頁、1992年)、およびマイクロアレイなどのアレイに基づく方法(Schenaら、Science 270巻:467~70頁、1995年)が用いられる。
【0279】
RNA抽出のための一般的な方法は当技術分野で周知であり、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York 1987~1999年を含めた分子生物学の標準の教本に開示されている。具体的には、RNA単離は、Qiagen(Valencia、Calif.)などの商業的な製造者からの精製キット、バッファーセットおよびプロテアーゼを製造者の指示に従って使用して実施することができる。例えば、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して培養物中の細胞由来の全RNAを単離することができる。単離されたRNAは、これだけに限定されないが、PCR分析およびプローブアレイを含めたハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用することができる。RNAレベルを検出するための1つの方法は、単離されたRNAを、検出しようとする遺伝子によりコードされるmRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させる工程を伴う。核酸プローブは、例えば、全長のcDNA、またはその部分、例えば、長さが少なくとも7、15、30、60、100、250、または500ヌクレオチドであり、ストリンジェントな条件下で本発明の内因性遺伝子、または任意の誘導体DNAまたはRNAと特異的にハイブリダイズするために十分なオリゴヌクレオチドなどであってよい。mRNAとプローブがハイブリダイズすることにより、問題の内因性遺伝子が発現されていることが示される。
【0280】
試料中の遺伝子発現レベルを決定するための代替の方法は、例えば、RT-PCR(米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(Barany、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88巻:189~93頁、1991年)、自家持続配列複製法(Guatelliら、Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 87巻:1874~78頁、1990年)、転写増幅系(Kwohら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:1173~77頁、1989年)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardiら、Bio/Technology 6巻:1197頁、1988年)、ローリングサークル複製(米国特許第5,854,033号)、または任意の他の核酸の増幅方法によって核酸を増幅するプロセス、その後、増幅された分子を当業者に周知の技法を用いて検出することを伴う。
【0281】
本発明の特定の態様では、CXCR4の遺伝子発現を定量的RT-PCRによって評価する。多数の異なるPCRまたはQPCRのプロトコールが当技術分野で公知であり、本明細書の下に例示されており、CXCR4を検出および/または数量化するための当該記載の組成物を使用した使用に直接適用することまたは適合させることができる。いくつかの状況下では、定量的PCR(QPCR)(リアルタイムPCRとも称される)により、定量的測定だけでなく、時間およびコンタミネーションの減少ももたらされるので、定量的PCRが好ましい。いくつかの場合には、完全な遺伝子発現プロファイリング技法の利用可能性は、新鮮な凍結組織および特殊化された実験室設備が必要なことに起因して限られ、それにより、そのような技術を臨床実践場面において常套的に用いることは難しい。本明細書で使用される場合、「定量的PCR(または「リアルタイムQPCR」)」とは、反応産物を繰り返し試料採取することを必要とせずに行う、PCR増幅の進行の直接モニタリングを指す。定量的PCRでは、反応産物が生成され、シグナルがバックグラウンドレベルを超えた後、反応がプラトーに到達する前に追跡されるとおり、シグナル伝達機構(例えば、蛍光)によって反応産物をモニターすることができる。蛍光の検出可能なまたは「閾値」レベルを実現するために必要なサイクル数は、PCRプロセスの開始時の増幅可能な標的の濃度に直接応じて変動し、これにより、シグナル強度を測定することによって試料中の標的核酸の量の測定をリアルタイムでもたらすことが可能になる。
【0282】
「正規化」を用いて、試料間の変動を除去することができる。マイクロアレイデータに関して、正規化のプロセスは、2つの標識色素の蛍光強度を釣り合わせることによって系統的な誤差を除去することを目的とする。色素の偏りは、色素の標識効率、熱および光感受性、ならびに2つのチャネルをスキャンするためのスキャナー設定の差異を含めた種々の原因に由来し得る。正規化因子を算出するために一般に用いられる方法のいくつかとして、(i)対数尺度ロバストマルチアレイ解析(RMA)によるものなどの、アレイ上の全ての遺伝子を使用する全体的な正規化;(ii)常に発現されるハウスキーピング/不変遺伝子を使用するハウスキーピング遺伝子正規化;および(iii)ハイブリダイゼーションの間に添加される既知量の外因性対照遺伝子を使用する内部対照品正規化(Quackenbush(2002年)Nat. Genet. 32巻(補遺)、496~501頁)が挙げられる。一実施形態では、本明細書に開示されている遺伝子の発現は、発現を対照ハウスキーピング遺伝子の発現に対して正規化することによって、または対数尺度ロバストマルチアレイ解析(RMA)を実施することによって決定することができる。
【0283】
2.幹細胞または前駆細胞の遺伝子発現プロファイル
治療用組成物は、虚血組織の処置に関連する治療的性質が増大した、処理した幹細胞または前駆細胞の集団を含む。いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、細胞をプロスタグランジン経路アゴニストおよび/またはグルココルチコイドを用いて処理することにより、細胞の、虚血組織または虚血組織と関連した1つまたは複数の(more
or more)症状を処置するために有用な治療的性質が増大する。治療的性質が増大した細胞は、CXCR4遺伝子発現の増加およびCXCR4ポリペプチドの細胞表面発現の増加を特徴とする。特定の実施形態では、治療用組成物は、遺伝子および細胞表面CXCR4の発現のレベルの上昇を特徴とする造血幹細胞または造血前駆細胞を含む。
【0284】
プロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理した幹細胞または前駆細胞、例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞は、CXCR4遺伝子発現が、無処理の細胞におけるCXCR4の発現と比較して少なくとも40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、または80倍増加することを特徴とし得る。
【0285】
治療的性質が増大した細胞は、独特の遺伝子発現シグネチャーをさらに特徴とし得、CXCR4、ヒアルロナンシンターゼ1(HAS1)、GTP結合性タンパク質GEM(GEM)、二重特異性プロテインホスファターゼ4(DUSP4)、アンフィレギュリン(AREG)、核受容体関連タンパク質1(NR4A2)、レニン(REN)、cAMP応答エレメントモジュレーター(CREM)、I型アルファ1コラーゲン(COL1A1)、およびFos関連抗原2(FOSL2)からなる群から選択されるシグネチャー遺伝子の1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種全ての発現が無処理の細胞と比較して増加する。
【0286】
他の特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理した造血幹細胞または造血前駆細胞は遺伝子発現シグネチャーを有し、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれより多くのシグネチャー遺伝子が、無処理の細胞と比較して少なくとも40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、または80倍増加する。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約15倍、20倍、25倍、30倍または35倍である。いくつかの実施形態では、全てのシグネチャー遺伝子の平均倍数変化が少なくとも約25、または30倍である。
【0287】
処理した幹細胞または前駆細胞の遺伝子発現または遺伝子発現シグネチャーを、細胞を、作用剤を用いて処理した後に決定することもでき、処理後に細胞をいくらかの期間にわたってインキュベートした後、細胞の遺伝子発現シグネチャーを決定することもできる。例えば、細胞を、ex vivoにおいて、1種または複数種の作用剤を用いて処理し、洗浄して作用剤を除去し、細胞をさらにインキュベートせずに遺伝子発現を分析することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、細胞を1種または複数種の作用剤を用いて処理し、洗浄して作用剤を細胞集団から除去し、次いで、細胞をex vivoにおいていくらかの期間にわたってインキュベートした後に、細胞の遺伝子発現シグネチャーを分析する。
【0288】
3.HSPCの供給源
本発明の方法において調製されるHSPCは、造血幹細胞および造血前駆細胞の任意の適切な供給源から得ることができ、高度に精製されたHSPCの集団(均一な集団)として、または0.01%~約100%のHSPCを含む組成物(不均一な集団)として提供し、処理することができる。例えば、これだけに限定することなく、HSPCは、未分画骨髄(CD34細胞が骨髄細胞集団の約1%未満を構成する)、臍帯血、胎盤血、胎盤、胎児血、胎児肝臓、胎児脾臓、ホウォートンゼリー、または動員された末梢血などの組成物でもたらすことができる。
【0289】
本発明の方法において使用するための適切なHSPCの供給源としては、これだけに限定されないが、造血起源の細胞を含有する体の臓器から単離されたまたは得られた細胞が挙げられる。「単離された」とは、その元の環境から取り出された材料を意味する。例えば、細胞は、そのネイティブな状態では通常それに付随する構成成分の一部または全部から分離されている場合、単離されている。例えば、「単離された細胞の集団」、「単離された細胞の供給源」または「単離されたHSPC」などは、本明細書で使用される場合、1つまたは複数の細胞が、in vitroまたはex vivoにおいてそれらの天然の細胞の環境から、および組織または臓器の他の構成成分との会合から分離されていること、すなわち、in vivoにおける物質が有意に会合していないことを指す。
【0290】
HSPCは、大腿骨、寛骨、肋骨、胸骨、および他の骨を含む成体の骨髄から得ることまたは単離することができる。HSPCを含有する骨髄吸引物は、針およびシリンジを使用して寛骨部から直接得ることまたは単離することができる。他のHSPCの供給源としては、臍帯血、胎盤血、動員された末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤、胎児血、胎児肝臓、または胎児脾臓が挙げられる。特定の実施形態では、治療への適用において使用するために十分な数量のHSPCの回収には、ドナーにおいて幹細胞および前駆細胞を動員することが必要な場合がある。
【0291】
「造血幹細胞動員」とは、幹細胞移植の前に、白血球除去のために幹細胞を骨髄から末梢血循環中に放出させることを指す。ドナーから回収される幹細胞の数を増加させることにより、治療への適用のために利用可能な幹細胞の数を有意に改善することができる。多くの場合、造血性増殖因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または化学療法剤を使用して動員を刺激する。商業的な幹細胞動員薬が存在し、G-CSFと組み合わせて使用して、被験体に移植するために十分な数量の造血幹細胞および造血前駆細胞を動員することができる。例えば、移植するために十分な数の造血細胞を回収するために、G-CSFおよびMozobil(商標)(Genzyme Corporation)をドナーに投与することができる。造血幹細胞および造血前駆細胞を動員する他の方法は、当業者には明らかであろう。
【0292】
特定の実施形態では、臍帯血からHSPCを得る。臍帯血は、当技術分野で公知の技法に従って回収することができる(例えば、そのような方法体系に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,147,626号および同第7,131,958号を参照されたい)。
【0293】
一実施形態では、HSPCは、多能性幹細胞供給源、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)から得ることができる。本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、多能性の状態に再プログラミングされた非多能性細胞を指す。被験体の細胞が多能性の状態に再プログラミングされたら、次いで、細胞を、造血幹細胞または造血前駆細胞などの所望の細胞型にプログラミングすることができる。本明細書で使用される場合、「再プログラミング」という用語は、細胞の潜在能を分化の程度が低い状態まで増大させる方法を指す。本明細書で使用される場合、「プログラミング」という用語は、細胞の潜在能を減少させるまたは細胞を分化の程度が高い状態に分化させる方法を指す。
【0294】
4.治療用細胞組成物
本発明は、本明細書に記載の増強されたHSPCを含む治療用組成物も提供する。具体的には、本発明の治療用組成物は、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させることができる1種または複数種の作用剤とex vivoで接触させたHSPCを含む細胞の集団を含み、CXCR4の遺伝子発現が、該HSPCにおいて、接触させていないHSPCと比較して少なくとも約30倍増加する。一実施形態では、本発明の治療用組成物は、ex vivoにおいてプロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理したHSPCを含む細胞の集団を含む。ある特定の実施形態では、増強されたHSPCを含む治療用組成物は全骨髄、臍帯血、または動員された末梢血である。
【0295】
特定の実施形態では、治療用組成物は、約95%~約100%がHSPCである細胞の集団を含む。本発明は、一部において、高度に精製されたHSPCの治療用組成物、例えば、約95%のHSPCを含む細胞の集団を含む組成物を使用することにより、幹細胞治療の効率を改善することができることを意図している。現在実施されている移植方法では、一般には、未分画の細胞の混合物を使用し、HSPCは、細胞集団全体の1%未満を構成する。
【0296】
いくつかの実施形態では、治療用組成物は、約0.1%未満、0.5%未満、1%未満、2%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、または30%未満のHSPCを含む細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、約0.1%未満、0.5%未満、1%未満、2%未満、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、または30%未満のHSPCを含む。他の実施形態では、細胞の集団は、約0.1%~約1%、約1%~約3%、約3%~約5%、約10%~約15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約60%~70%、約70%~80%、約80%~90%、約90%~95%、または約95%~約100%がHSPCである。
【0297】
特定の実施形態では、細胞の集団は、約0.1%~約1%、約1%~約3%、約3%~約5%、約10%~約15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約60%~70%、約70%~80%、約80%~90%、約90%~95%、または約95%~約100%がHSPCである。
【0298】
本発明の治療用組成物中のHSPCは、治療用組成物を投与する被験体に対して自己由来/自原性(「自己」)であっても非自己由来(「非自己」、例えば、同種異系、同系または異種)であってもよい。「自己由来」とは、本明細書で使用される場合、同じ被験体由来の細胞を指す。「同種異系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。「同系」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞と遺伝的に同一である、異なる被験体の細胞を指す。「異種」とは、本明細書で使用される場合、比較する細胞とは異なる種の細胞を指す。特定の実施形態では、本発明のHSPCは同種異系または自己由来のものである。
【0299】
本発明の方法において使用するためのHSPCは、成熟造血細胞、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、顆粒球、赤血球系細胞、およびそれらの関係づけられる前駆体などを骨髄吸引物、臍帯血、または動員された末梢血(動員された白血球除去産物)から枯渇させたものであってよい。成熟した、系統で関係づけられる細胞を免疫枯渇によって、例えば、固体基材(solid substrate)を、いわゆる「系統」抗原:CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、およびCD235aのパネルに結合する抗体で標識することによって枯渇させる。CD34抗原に結合する抗体で標識した基材を使用して原始造血幹細胞および造血前駆細胞を分離するその後の工程を実施して、細胞の集団をさらに精製することができる。種々の細胞供給源から幹細胞および前駆細胞を精製するためのキットが市販されており、特定の実施形態では、これらのキットは、本発明の方法と共に使用するために適している。幹細胞および前駆細胞を精製するための例示的な市販のキットとしては、これだけに限定されないが、Lineage(Lin)Depletion Kit(Miltenyi Biotec);CD34富化キット(Miltenyi Biotec);RosettaSep(Stem cell Technologies)が挙げられる。
【0300】
一実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、少なくとも細胞0.1×10個、少なくとも細胞0.5×10個、少なくとも細胞1×10個、少なくとも細胞5×10個、少なくとも細胞10×10個、少なくとも細胞0.5×10個、少なくとも細胞0.75×10個、少なくとも細胞1×10個、少なくとも細胞1.25×10個、少なくとも細胞1.5×10個、少なくとも細胞1.75×10個、少なくとも細胞2×10個、少なくとも細胞2.5×10個、少なくとも細胞3×10個、少なくとも細胞4×10個、少なくとも細胞5×10個、少なくとも細胞10×10個、少なくとも細胞15×10個、少なくとも細胞20×10個、少なくとも細胞25×10個、または少なくとも細胞30×10個である。
【0301】
特定の実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、細胞約0.1×10個~細胞約10×10個;細胞約0.5×10個~細胞約5×10個;細胞約1×10個~細胞約3×10個;細胞約1.5×10個~細胞約2.5×10個;または細胞約2×10個~細胞約2.5×10個である。
【0302】
特定の実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、細胞約1×10個~細胞約3×10個;細胞約1.0×10個~細胞約5×10個;細胞約1.0×10個~細胞約10×10個;細胞約10×10個~細胞約20×10個;細胞約10×10個~細胞約30×10個;または細胞約20×10個~細胞約30×10個である。
【0303】
別の実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、細胞約1×10個~細胞約30×10個;細胞約1.0×10個~細胞約20×10個;細胞約1.0×10個~細胞約10×10個;細胞約2.0×10個~細胞約30×10個;細胞約2.0×10個~細胞約20×10個;または細胞約2.0×10個~細胞約10×10個である。
【0304】
特定の実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、HSPC約1×10個;細胞約2×10個;細胞約5×10個;細胞約7×10個;細胞約10×10個;細胞約15×10個;細胞約17×10個;細胞約20×10個;細胞約25×10個;または細胞約30×10個である。
【0305】
一実施形態では、治療用組成物中のHSPCの量は、部分的なまたは単一の臍帯血(cord of blood)中のHSPCの量、または少なくとも体重1kg当たり細胞0.1×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞0.5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞1×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞10×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞0.5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞0.75×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞1×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞1.25×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞1.5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞1.75×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞2×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞2.5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞3×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞4×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞5×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞10×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞15×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞20×10個、少なくとも体重1kg当たり細胞25×10個、もしくは少なくとも体重1kg当たり細胞30×10個である。
【0306】
D.本発明の増強された細胞を調製する方法
本発明は、一部において、CXCR4遺伝子発現のレベルが上昇していることを特徴とするHSPCを調製する方法を意図している。特定の実施形態では、HSPCを調製する方法は、HSPCを、ex vivoにおいて、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させることができる1種または複数種の作用剤を用いて、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で処理する工程を含む。一実施形態では、本発明のHSPCを調製する方法は、HSPCを、ex vivoにおいてプロスタグランジン経路アゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理する工程を含む。
【0307】
本明細書で使用される場合、「十分な条件」または「十分な条件下で」という用語は、HSPCを1種または複数種の作用剤を用いて処理して、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を対照、ビヒクル、または無処理細胞と比較して驚くべき予想外のレベルまで増加させるための条件を指す。
【0308】
条件としては、これだけに限定されないが、細胞の供給源、細胞を処理するために使用する作用剤および作用剤(複数可)の濃度、細胞を作用剤(複数可)に曝露する時間、ならびに処理温度が挙げられる。
【0309】
1.増強された細胞の調製において有用な作用剤
本明細書で使用される場合、「作用剤」とは、作用剤を用いて処理したHSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させることができる化合物または分子を指し得、また、単独で、または別の化合物または分子と組み合わせてのいずれかで使用した場合にCXCR4の発現を増加させる化合物を指す。本発明の特定の実施形態では、2つ以上の作用剤の組合せを用いて処理したHSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させるように相乗的に作用する組合せを、増強されたHSPCの調製において使用する。特定の作用剤としては、例えば、プロスタグランジン経路を刺激することができる化合物、例えば、プロスタグランジン経路アゴニスト、ならびにグルココルチコイドが挙げられる。
【0310】
2.プロスタグランジン経路アゴニスト
本明細書で使用される場合、「プロスタグランジン経路アゴニスト」という用語は、PGEおよび/またはPGE細胞シグナル伝達経路を刺激する作用剤を含めた、プロスタグランジン細胞シグナル伝達経路を刺激し、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる作用剤を指す。本発明の細胞の調製において使用するために適したプロスタグランジン経路アゴニストの実例としては、これだけに限定されないが、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGE、およびPGE類似体が挙げられる。ある特定の実施形態では、PGEアゴニストおよびPGEアゴニストならびにその類似体が特に興味深く、いくつかの実施形態では、作用剤は、PGEEP受容体またはPGEEP受容体に優先的に結合し、それを活性化する。
【0311】
本明細書で使用される場合、「プロスタグランジンE」または「PGE」という用語は、限定することなく、任意の天然に存在するまたは化学的に合成されたPGE分子、ならびにその「類似体」を包含する。本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、別の化学的な物質、例えばPGEと構造および機能が類似しており、多くの場合、単一のエレメントまたは基によって構造的に異なるが、親の化学的性質と同じ機能が保持されるのであれば2つ以上の基(例えば、2つ、3つ、または4つの基)の修飾によって異なってもよい化学的な分子に関する。そのような修飾は当業者には常套的なものであり、それらとしては、例えば、付加または置換された化学的部分、例えば、酸のエステルまたはアミドなど、保護基、例えば、アルコールまたはチオールに対するベンジル基およびアミンに対するtert-ブトキシカルボニル(butoxylcarbonyl)基が挙げられる。アルキル側鎖に対する修飾、例えば、アルキル置換(例えば、メチル、ジメチル、エチルなど)、側鎖の飽和または不飽和のレベルに対する修飾、および修飾された基、例えば、置換されたフェニルおよびフェノキシの付加も包含される。類似体は、コンジュゲート、例えば、ビオチン部分またはアビジン部分、酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼなども含んでよく、放射性標識された部分、生物発光部分、化学発光性部分、または蛍光部分も含み得る。また、本明細書に記載の作用剤に部分を付加して、他の望ましい特性の中でも、in vivoまたはex vivoにおける半減期を増加させること、またはそれらの細胞への浸透性を増大させることなど、それらの薬物動態的性質を変更することができる。医薬の多数の望ましい品質(例えば、溶解性、生物学的利用能、製造など)を増強することが公知であるプロドラッグも包含される(例えば、例示的なEPアゴニストプロドラッグについては、そのようなアゴニストについてのその開示に関して参照により組み込まれるWO/2006/047476を参照されたい)。
【0312】
PGE「類似体」の実例としては、限定することなく、16,16-ジメチルPGE(「dmPGE」)、16,16-ジメチルPGEp-(p-アセトアミドベンズアミド)フェニルエステル、11-デオキシ-16,16-ジメチルPGE、9-デオキシ-9-メチレン-16,16-ジメチルPGE、9-デオキシ-9-メチレンPGE、9-ケトフルプロステノール、5-トランスPGE、17-フェニル-オメガ-トリノルPGE、PGEセリノールアミド、PGEメチルエステル、16-フェニルテトラノルPGE、15(S)-15-メチルPGE、15(R)-15-メチルPGE、8-イソ-15-ケトPGE、8-イソPGEイソプロピルエステル、8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGE、20-ヒドロキシPGE、20-エチルPGE、11-デオキシPGE、ノクロプロスト、スルプロストン、ブタプロスト、15-ケトPGE、および19(R)ヒドロキシPGEが挙げられる。9位においてハロゲンで置換された、PGEと類似の構造を有するPG類似体または誘導体(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2001/12596を参照されたい)、ならびに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0247214号に記載のものなどの2-デカルボキシ-2-ホスフィニコプロスタグランジン誘導体も包含される。
【0313】
これだけに限定することなく、アルプロスタジルを含めたPGE類似体も、PGE(EP)細胞シグナル伝達経路およびPGE(EP)細胞シグナル伝達経路を活性化するために使用することができ、本発明の方法において有用な作用剤として意図される。
【0314】
PGE(EP)細胞シグナル伝達経路およびPGE(EP)細胞シグナル伝達経路の刺激/活性化は、生着を増加させ、細胞の生存能力を維持し、細胞のホーミングおよび増殖を増加させる、HSPCにおける生理応答の基礎をなすことを意図する。したがって、一実施形態では、PGE受容体およびPGE受容体に結合し、それを刺激する「PGEベースではないリガンド」(すなわち、PGE/PGEアゴニスト)が本発明の方法において使用するために意図されている。
【0315】
PGEベースではないEP受容体アゴニストの実例としては、CAY10399、ONO_8815Ly、ONO-AE1-259、CP-533,536、ならびにWO2007/071456に開示されているカルバゾールおよびフルオレンが挙げられる。
【0316】
PGEベースではないEPアゴニストの実例としては、ONO-4819、APS-999Na、AH23848、ONO-AE1-329、ならびにWO/2000/038663;米国特許第6,747,037号;および米国特許第6,610,719号)に開示されている他のPGEベースではないEPアゴニストが挙げられる。
【0317】
PGEEP受容体に選択的な作用剤は、PGEEP受容体に優先的に結合し、それを活性化する。そのような作用剤のEP受容体に対する親和性は、他の3つのEP受容体、すなわちEP、EPおよびEPのいずれに対する親和性よりも高い。PGE EP受容体に選択的に結合する作用剤としては、これだけに限定されないが、5-[(1E,3R)-4,4-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-4-フェニル-1-ブテン-1-イル]-1-[6-(2H-テトラゾール-5R-イル)ヘキシル]-2-ピロリジノン;2-[3-[(1R,2S,3R)-3-ヒドロキシ-2-[(E,3S)-3-ヒドロキシ-5-[2-(メトキシメチル)フェニル]ペンタ-1-エニル]-5-オキソシクロペンチルジスルファニルプロピルスルファニル]酢酸;メチル4-[2-[(1R,2R,3R)-3-ヒドロキシ-2-[(E,3S)-3-ヒドロキシ-4-[3-(メトキシメチル)フェニル]ブタ-1-エニル]-5-オキソシクロペンチル]エチルスルファニル]ブタノエート;16-(3-メトキシメチル)フェニル-ロ-テトラノル-5-チアPGE;5-{3-[(2S)-2-{(3R)-3-ヒドロキシ-4-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]ブチル}-5-オキソピロリジン-1-イル]プロピル]チオフェン-2-カルボキシレート;[4’-[3-ブチル-5-オキソ-1-(2-トリフルオロメチル-フェニル)-1,5-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾール-4-イルメチル]-ビフェニル-2-スルホン酸(3-メチル-チオフェン-2-カルボニル)-アミド];および((Z)-7-{(1R,4S,5R)-5-[(E)-5-(3-クロロ-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-3-ヒドロキシ-ペンタ-1-エニル]-4-ヒドロキシ-3,3-ジメチル-2-オキソ-シクロペンチル}-ヘプタ-5-エン酸)、およびこれらの作用剤のいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される作用剤が挙げられる。
【0318】
特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEである。
【0319】
3.グルココルチコイド
本発明の方法において使用するために適したグルココルチコイドおよびグルココルチコイド受容体アゴニストの実例としては、これだけに限定されないが、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0320】
特定の実施形態では、グルココルチコイドは、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、またはデキサメタゾンを含む。より詳細な実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0321】
4.作用剤の組合せ
作用剤の組合せも本発明の増強されたHSPCの調製において使用することができ、特定の実施形態では、作用剤の組合せを用いてHSPCを処理することにより、処理した細胞におけるCXCR4遺伝子およびタンパク質の発現が予想外に相乗的に増加する。具体的には、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを用いて処理したHSPCではCXCR4遺伝子およびタンパク質の発現が予想外に大きく増加し、これは、処理した細胞の治療的性質が対照、ビヒクル、または無処理細胞と比較して改善されることと相関する。
【0322】
本発明の特定の実施形態では、HSPCを、1種または複数種のプロスタグランジン経路アゴニストと1種または複数種のグルココルチコイドの組合せを用いて処理する。
【0323】
本発明の特定の実施形態では、組み合わせるプロスタグランジン経路アゴニストは、PGEEP受容体またはPGEEP受容体に選択的に結合する化合物である。本発明の他の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、またはPGE類似体またはその誘導体を含む。特定の実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEである。本発明のより詳細な実施形態では、プロスタグランジン経路アゴニストは、PGEまたは16,16-ジメチルPGEである。
【0324】
いくつかの実施形態では、組み合わせるグルココルチコイドは、メドリゾン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、クロベタゾール、酪酸クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチゾール、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デスオキシコルトン、デスオキシメタゾン(desoxymethasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、二酢酸ジフロラゾン、ジフルコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルオロコルトロン、ジフルプレドナート、フルクロロロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルメタゾン(flumetasone)、フルメタゾン(flumethasone)、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルニソリド半水和物、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチン、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロコルチゾン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルプレドニデン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、アセポン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンブテプレート、酪酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、メプレドニゾン、6a-メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、モメタゾン、フロ酸モメタゾン、フロ酸モメタゾン一水和物、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドおよびウロベタゾールからなる群から選択される。
【0325】
より詳細な実施形態では、組み合わせるグルココルチコイドは、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンを含む。一実施形態では、グルココルチコイドはメドリゾンである。
【0326】
いくつかの実施形態では、HSPCを、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択されるプロスタグランジン経路アゴニストと、1種または複数種のグルココルチコイドとを含む組合せを用いて処理する。特定の実施形態では、HSPCを、PGEまたはdmPGEとグルココルチコイドとを含む組合せを用いて処理する。
【0327】
いくつかの実施形態では、HSPCを、PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、および8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEからなる群から選択されるプロスタグランジン経路アゴニストと、メドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンからなる群から選択されるグルココルチコイドとを含む組合せを用いて処理する。
【0328】
他の実施形態では、組合せは、PGEまたはdmPGEおよびメドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンを含む。より詳細な実施形態では、HSPCを、PGEまたはdmPGEとメドリゾンとを含む組合せを用いて処理する。
【0329】
5.作用剤の製剤化
cGMP実施を用いて、本発明の治療用組成物の調製において有用な作用剤を、本発明の細胞を接触させることにおいて使用するための酢酸メチルなどの有機溶媒中に製剤化することができ、それを、内毒素を含まない容器に入れて供給することができる。本発明によって意図されている作用剤は、本明細書に記載の通り、ex vivoにおいて哺乳動物の細胞に投与するために適している。ある特定の実施形態では、溶媒は、一般には、本明細書に記載の適切な有機溶媒(例えば、DMSO、DMF、DMEなど、それらの組合せまたは混合物を含める)である。1種または複数種の溶媒を特定の比率で組み合わせることができる。例えば、2種の溶媒の混合物を、全ての整数および小数点を含めた、9.5:0.5、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5などの比率で組み合わせることができる。
【0330】
「有機溶媒」または「適切な有機溶媒」という記述は、一般に、固体、液体、または気体の溶質を溶解し、溶液をもたらす、炭素を含有する液体または気体に関する。「適切な」有機溶媒とは、ex vivoにおける条件(例えば、細胞培養)下でまたはin vivoにおいて、選択された濃度で、インキュベーションまたは投与の時間にわたって、毒性または他の阻害的影響が最小であることなどにより、哺乳動物の細胞にex vivoで投与するためまたは哺乳動物の細胞と一緒にインキュベートするために適した有機溶媒であり、被験体にin vivoで投与するためにも適している。適切な有機溶媒は、本明細書に記載の作用剤の貯蔵安定性および取扱いについても適しているべきである。適切な有機溶媒の例としては、これだけに限定されないが、その混合物または組合せを含め、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメトキシエタン(DME)、およびジメチルアセトアミドが挙げられる。ある特定の実施形態では、組成物または有機溶媒は、酢酸メチルを「実質的に含まない」、つまり、組成物または溶媒中の酢酸メチルは痕跡量以下、好ましくは検出不可能な量(例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)などによって測定したところ)であるべきである。
【0331】
本明細書で使用される場合、「内毒素を含まない」という用語は、多くても痕跡量(すなわち、被験体に対する有害な生理作用がない量)の内毒素、好ましくは検出不可能な量の内毒素を含有する容器および/または組成物を指す。「内毒素を実質的に含まない」とは、細胞の用量当たりの内毒素が、生物製剤についてFDAによって許容されている、1日当たり体重1kg当たり5EUの総内毒素、平均70kgの人に対して細胞の総用量当たり350EUよりも少ないことを意味する。一実施形態では、「内毒素を含まない」という用語は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%内毒素を含まない容器および/または組成物を指す。内毒素は、特定の細菌、一般にはグラム陰性細菌に付随する毒素であるが、内毒素は、Listeria monocytogenesなどのグラム陽性細菌において見いだすことができる。最も蔓延している内毒素は、種々のグラム陰性細菌の外膜に見いだされるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、これらの細菌の疾患を引き起こす能力の中で中心的な病原的特徴を示す。ヒトでは少量の内毒素により、他の有害な生理作用の中でも発熱、血圧の低下、ならびに炎症および凝固の活性化が生じる恐れがある。したがって、少量でさえもヒトにおいて有害作用が引き起こされる可能性があるので、多くの場合、薬物製品容器から内毒素のほとんどまたは全ての痕跡を除去することが望ましい。内毒素は、当技術分野で公知の方法を用いて容器から除去することができ、例えば、容器を、HEPAフィルター付き洗浄設備内で内毒素を含まない水を用いて浄化し、250℃で発熱物質除去(depyrogenate)し、クラス100/10のクリーンルーム(例えば、クラス100のクリーンルームでは、1立方フィートの空気中に含有される0.5ミクロンよりも大きな粒子が100個以下である)の内側に位置するHEPAフィルター付きワークステーションにおいて清潔に包装する。
【0332】
特定の実施形態では、HSPCを、1種または複数種の作用剤をそれぞれ約1μM~約100μMの最終濃度で用いて処理する(例えば、それと接触させる)。ある特定の実施形態では、HSPCを、1種または複数種の作用剤をそれぞれ約1×10-14M~約1×10-3M、約1×10-13M~約1×10-4M、約1×10-12M~約1×10-5M、約1×10-11M~約1×10-4M、約1×10-11M~約1×10-5M、約1×10-10M~約1×10-4M、約1×10-10M~約1×10-5M、約1×10-9M~約1×10-4M、約1×10-9M~約1×10-5M、約1×10-8M~約1×10-4M、約1×10-7M~約1×10-4M、約1×10-6M~約1×10-4Mの最終濃度、またはその間の任意の範囲の最終濃度で用いて処理する。
【0333】
別の特定の実施形態では、HSPCを、1種または複数種の作用剤をそれぞれ約1×10-14M、約1×10-13M、約1×10-12M、約1×10-10M、約1×10-9M、約1×10-8M、約1×10-7M~約1×10-6M、約1×10-5M、約1×10-4M、約1×10-3Mの最終濃度、またはその間の任意の最終濃度で用いて処理する。1種または複数種の作用剤を含む処理では、作用剤は、互いと異なる濃度であってもよく、同じ濃度であってもよい。
【0334】
特定の実施形態では、HSPCを、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回またはそれより多く処理する(例えば、1種または複数種の作用剤と接触させる)。HSPCは、同じ容器内の1種または複数種の作用剤と断続的に、不規則に、または逐次的に接触させること(例えば、細胞の集団を、1種の薬物とある期間にわたって接触させ、培養培地を交換し、かつ/または細胞の集団を洗浄し、次いで、このサイクルを、同じまたは異なる医薬品の組合せを用いて同じ所定の期間または異なる所定の期間にわたって繰り返すこと)ができる。
【0335】
6.HSPCの処理
一実施形態では、HSPCを調製する方法は、HSPCを、ex vivoにおいて、CXCR4遺伝子発現を増加させることができる1種または複数種の作用剤を用いて、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で処理する工程を含む。HSPCは、被験体から単離した後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理することができる。別の実施形態では、HSPCを被験体から単離し、増大させた後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理する。一実施形態では、HSPCを被験体から単離し、凍結保存した後に、本明細書に開示されている作用剤を用いて処理する。
【0336】
特定の実施形態では、HSPCを、1種または複数種の作用剤、例えば、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために有効な量で、十分な時間にわたって(すなわち、十分な条件下で)用いて処理する。
【0337】
種々の実施形態では、十分な温度条件は、HSPCを1種または複数種の作用剤と一緒に、生理的に関連性のある温度、例えば、これだけに限定されないが、約22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、および39℃の温度を含めた、約22℃~約39℃(約室温~約体温)の温度範囲などでインキュベートすることを含む。特定の実施形態では、十分な温度条件は、約35℃から39℃の間である。一実施形態では、十分な温度条件は約37℃である。
【0338】
種々の実施形態では、作用剤の十分な濃度は、最終濃度が約10nM~約100μM、約100nM、約500nM、約1μM、約10μM、約20μM、約30μM、約40μM、約50μM、約60μM、約70μM、約80μM、約90μM、約100μM、約110μM、または約120μM、またはその間の任意の他の作用剤の濃度(例えば、0.1μM、1μM、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM)である。特定の実施形態では、各作用剤の十分な濃度は、最終濃度が約10μM~約25μMである。一実施形態では、作用剤の十分な濃度は、最終濃度が約10μMである。
【0339】
種々の実施形態では、HSPCを1種または複数種の作用剤を用いて処理するために十分な期間は、約60分~約24時間、約60分~約12時間、約60分~約6時間、約2時間~約6時間、約2時間~約4時間のインキュベーション期間、および、これだけに限定されないが、約60分、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間または約4時間の持続時間またはその間の任意の他の持続時間にわたる処理を含む。特定の実施形態では、十分なインキュベーション期間は約2時間~約4時間である。一実施形態では、HSPCを処理するための十分なインキュベーション期間は約4時間である。
【0340】
特定の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて、約22℃~約39℃の温度範囲、プロスタグランジン経路アゴニストの最終濃度約10μM~約25μM、およびグルココルチコイドの最終濃度約10μM~約25μMで、約1時間~約4時間、約2時間~約3時間、約2時間~約4時間、または約3時間~約4時間にわたって作用剤と一緒にインキュベートすることで処理することを含む。
【0341】
特定の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて、約22℃~約39℃の温度範囲、PGEまたはdmPGEの最終濃度約10μM~約25μM、およびグルココルチコイドの最終濃度約10μM~約25μMで、約1時間~約4時間、約2時間~約3時間、約2時間~約4時間、または約3時間~約4時間にわたって作用剤と一緒にインキュベートすることで処理することを含む。
【0342】
特定の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて、約22℃~約39℃の温度範囲、PGEまたはdmPGEの最終濃度約10μM~約25μM、およびメドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンからなる群から選択される化合物の最終濃度約10μM~約25μMで、約1時間~約4時間、約2時間~約3時間、約2時間~約4時間、または約3時間~約4時間にわたって作用剤(化合物)と一緒にインキュベートすることで処理することを含む。
【0343】
特定の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて、約22℃~約39℃の温度範囲、プロスタグランジン経路アゴニストの最終濃度約10μM~約25μM、およびメドリゾンの最終濃度約10μM~約25μMで、約1時間~約4時間、約2時間~約3時間、約2時間~約4時間、または約3時間~約4時間にわたって作用剤と一緒にインキュベートすることで処理することを含む。
【0344】
別の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて処理することを含み、約37℃(約体温)の温度でインキュベートすること、最終濃度が約10μMのPGEまたは16,16-ジメチルPGEと、最終濃度が約10μMのメドリゾン、ヒドロコルチゾン、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンからなる群から選択される化合物の組み合わせで、約4時間にわたってインキュベートすることを含む。
【0345】
別の実施形態では、接触させた細胞におけるCXCR4遺伝子発現を接触させていない細胞と比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件は、HSPCを、ex vivoにおいて処理することを含み、約37℃(約体温)の温度でインキュベートすること、最終濃度が約10μMのPGEまたは16,16-ジメチルPGEと、最終濃度が約10μMのメドリゾンの組み合わせで、約4時間にわたってインキュベートすることを含む。
【0346】
特定の実施形態では、HSPCを、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回またはそれより多く処理する(例えば、1種または複数種の作用剤と接触させる)。細胞を、同じ容器内の1種または複数種の作用剤と断続的に、不規則に、または逐次的に接触させること(例えば、HSPCを、1種の作用剤とある期間にわたって接触させ、培養培地を交換し、かつ/または細胞の集団を洗浄し、次いで、このサイクルを、同じまたは異なる作用剤の組合せを用いて、同じ所定の期間または異なる所定の期間にわたって繰り返すこと)ができる。
【0347】
E.増強された幹細胞の治療的使用
本明細書に記載のHSPCは、無処理の細胞と比較して、CXCR4遺伝子およびタンパク質の発現が増加しており、治療的性質の増強も示す。具体的には、本発明のHSPCは、骨髄、虚血組織部位、および虚血による損傷を受けた組織へのホーミングの増加を示し、生着の増加も示す。したがって、本発明のHSPCは、骨髄または虚血部位または虚血による損傷を受けた組織へのHSPCのホーミングおよび/または生着の増加を伴う処置を必要とする被験体を処置するために有用である。ある特定の実施形態では、HSPCは、造血幹細胞移植を改善するため、ならびに虚血または虚血による損傷を受けた組織を処置すること、ならびに、細胞動員によって虚血組織へのさらなる損傷を減少させることおよび/または虚血組織への損傷を修復すること、虚血組織における血管新生を改善すること、虚血部位における組織再生を改善すること、虚血組織の壊死またはアポトーシスを減少させること、ならびに/または虚血部位における細胞生存を増加させることにおいても有用である。特定の実施形態では、HPSCは、造血再構築を必要とする被験体、例えば、骨髄破壊療法を受けたまたは受ける予定である被験体などに対して有用である。
【0348】
本明細書で使用される場合、「生着」という用語は、細胞が組織などのある場所に組み込まれ、特定の場所で長い期間存続することができることを指す。細胞は、例えば骨髄に、または傷害を受けた部位もしくは虚血組織などの別の場所に生着することができる。「ホーミング」とは、HSPCが特定の領域または組織に局在化する、すなわち、そこに移動することができることを指す。ホーミングは、投与したHSPCが骨髄、または傷害を受けた部位もしくは虚血組織などの別の場所に局在化することを含んでよい。一実施形態では、細胞は化学誘引機構を用いて特定の組織にホーミングし、CXCR4の発現が増加している細胞では、CXCR4の同族リガンドであるストロマ細胞由来因子1(SDF1)を分泌している虚血組織へのホーミングが改善される。
【0349】
「被験体」とは、本明細書で使用される場合、本発明の細胞に基づく組成物を用いて処置することができる、または、CXCR4遺伝子発現が増加しているHSPCを用いて処置することができる症状を示す任意のヒトを包含する。
【0350】
種々の他の実施形態では、本発明は、それを必要とする被験体を処置する方法であって、必要とする被験体を同定すること、およびプロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを被験体に投与し、それにより、必要とする被験体を処置する工程を含む方法を提供する。
【0351】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などの用語は、これだけに限定することなく、疾患の症状の改善または排除を実現することを含めた、所望の薬理的効果および/または生理的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってよく、かつ/または、症状の改善または排除を実現する、もしくは疾患および/もしくは疾患に起因する有害な影響の部分的または完全な治癒をもたらすという点で治療的であってよい。「処置(treatment)」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患の素因があり得るが、今のところはまだそれを有すると診断されていない被験体において疾患が生じることを予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること;(c)疾患を軽減すること、例えば、疾患の退縮を引き起こすこと、例えば、疾患の症状を完全にまたは部分的に排除すること;および(d)個体を疾患前の状態に回復させること、例えば、造血系を再構築することを含む。
【0352】
「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」とは、本明細書で使用される場合、疾患または病的状態の症状または病態に対する任意の望ましい効果を包含し、また、最小のものであっても、処置されている疾患または状態の1つまたは複数の測定可能なマーカーの減少を包含し得る。「処置(treatment)」とは、必ずしも、疾患もしくは状態、または付随するその症状の完全な根絶または治癒を示さない、または必要としない。
【0353】
1.幹細胞移植方法
造血再構築、造血系の再構築、およびHSPCの数の増加を「必要とする被験体」とは、これだけに限定されないが、本明細書の他の箇所で考察されている種々の種類の白血病、貧血、リンパ腫、骨髄腫、免疫不全障害、および固形腫瘍を有する、またはその診断を受けた被験体を包含する。「被験体」とは、悪性疾患に対する処置または遺伝子治療の構成要素の過程中などの、幹細胞移植または骨髄移植の候補であるヒトも包含する。特定の実施形態では、被験体は、細胞に基づく遺伝子治療として、遺伝子改変されたHSPCを受ける。被験体とは、同種移植のための幹細胞または骨髄を供与する個体または動物も包含し得る。ある特定の実施形態では、被験体は、骨髄破壊放射線照射療法または化学療法を受けていてもよく、骨髄破壊をもたらす急性の放射線または化学物質による傷害を経験していてもよい。ある特定の実施形態では、被験体は、種々のがん処置中などの、放射線照射療法または化学療法を受けていてよい。典型的な被験体としては、作用剤または幹細胞または骨髄移植によって調節することができる、異常な量(「正常な」または「健康な」被験体よりも少ない量または多い量)の1つまたは複数の生理的活性を示す動物が挙げられる。
【0354】
造血再構築を必要とする被験体とは、がんに対する化学療法または放射線療法を受けた被験体、ならびに非悪性血液障害、特に免疫不全(例えば、とりわけ、SCID、ファンコニー貧血、重症再生不良性貧血、もしくは先天性異常ヘモグロビン症、もしくはハーラー病、ハンター病、マンノシドーシスなどの代謝性蓄積症(metabolic storage disease))、またはがん、特に、血液系悪性腫瘍、例えば、急性白血病、慢性白血病(骨髄性またはリンパ性)、リンパ腫(ホジキンまたは非ホジキン)、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、もしくは非血液系がん、例えば、固形腫瘍(乳がん、卵巣がん、脳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん、皮膚がん、肝がん、または膵がんを含む)に罹患している(例えば、それを患っている)被験体を包含する。
【0355】
被験体とは、再生不良性貧血、免疫障害(重症複合免疫不全症候群またはループス)、脊髄異形成、サラセミア(thalassemaia)、鎌状赤血球症またはウィスコット・アルドリッチ症候群に罹患している被験体も包含し得る。いくつかの実施形態では、被験体は、別の一次処置、例えば、放射線療法、化学療法、またはジドブジン(zidovadine)、クラムフェニコール(chloramphenical)またはガンシクロビル(gangciclovir)などの骨髄抑制性薬物を用いた処置の望ましくない副作用または合併症の結果生じる障害に罹患している。そのような障害としては、好中球減少症、貧血、血小板減少症、および免疫機能障害が挙げられる。
【0356】
他の被験体は、骨髄の幹細胞または前駆細胞に対する損傷を引き起こす感染(例えば、ウイルス感染、細菌感染または真菌感染)によって引き起こされる障害を有し得る。
【0357】
さらに、以下の状態に罹患している被験体にも、本発明のHSPCを使用した処置が有効であり得る:リンパ球減少症、リンパ漏、リンパうっ滞、赤血球減少症、赤血球変性障害(erthrodegenerative disorder)、赤芽球減少症、白赤芽球症;赤血球崩壊、サラセミア、骨髄線維症、血小板減少症、播種性血管内凝固(DIC)、免疫(自己免疫性)血小板減少性紫斑病(ITP)、HIV誘発性ITP、脊髄異形成;血小板増加性疾患(thrombocytotic disease)、血小板増加症、先天性好中球減少症(例えば、コストマン症候群およびシュバッハマン・ダイアモンド症候群)、新生物関連好中球減少症、小児および成人の周期性好中球減少症(cyclic neutropaenia);感染後好中球減少症(neutropaenia);骨髄異形成症候群;化学療法および照射療法に伴う好中球減少症;慢性肉芽腫性疾患;ムコ多糖症;ダイヤモンド・ブラックファン;鎌状赤血球症;または重症型ベータサラセミア。
【0358】
特定の実施形態では、被験体は、骨髄を供与した骨髄ドナーである、骨髄をまだ供与していない骨髄ドナーである、骨髄ドナー移植片レシピエントである、環境ストレス下にある造血前駆細胞を有する、貧血を有する、正常な被験体と比較して免疫細胞機能のレベルが低下している、または免疫系欠損を有する。
【0359】
ある特定の実施形態では、被験体は、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性非リンパ芽球性白血病、または前白血病を有する。
【0360】
特定の実施形態では、被験体は、例えば、異常ヘモグロビン症など、遺伝子治療を必要としている。本明細書で使用される場合、「異常ヘモグロビン症」または「異常血色素症状態」という用語は、血液中に異常なヘモグロビン分子が存在することに関与する任意の障害を包含する。異常ヘモグロビン症の例としては、これだけに限定されないが、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、およびサラセミアが挙げられる。血液中に異常なヘモグロビンの組合せが存在する異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球/Hb-C症)も包含される。
【0361】
「鎌状赤血球貧血」または「鎌状赤血球症」という用語は、本明細書では、赤血球の鎌状化に起因する任意の症候性の貧血性の状態を包含すると定義される。鎌状赤血球症の徴候としては、貧血;疼痛;および/または臓器機能障害、例えば、腎不全、網膜症、急性胸部症候群、虚血、持続勃起症および卒中が挙げられる。本明細書で使用される場合、「鎌状赤血球症」という用語は、特に、HbSにおける鎌状赤血球置換に関してホモ接合体である被験体における鎌状赤血球貧血に伴う種々の臨床的問題を指す。鎌状赤血球症という用語を使用することによって本明細書で言及される体質的な徴候としては、成長および発達の遅延、特に肺炎球菌に起因する重篤な感染症が発生する傾向の増加、再発性梗塞および最終的に脾組織の破壊を伴う、循環している細菌の有効なクリアランスが妨げられる脾機能の顕著な欠陥がある。「鎌状赤血球症」という用語には、主に腰椎、腹部、および大腿骨骨幹部(femoral shaft)に影響を及ぼし、機構および重症度が減圧痛と同様である筋骨格痛の急性エピソードも包含される。成人では、そのような発作(attack)は、一般に、数週間または数ヶ月ごとに持続時間の短い軽度のまたは中程度の発作(bout)として顕在化し、その間に平均で約1年に1回、5~7日間続く苦痛な発作(attack)に襲われる。そのようなクリーゼのトリガーとなることが公知の事象はアシドーシス、低酸素症および脱水であり、これらは全て細胞内でのHbSの重合を増強する(J. H. Jandl、Blood:Textbook of Hematology、第2版、Little、Brown and Company、Boston、1996年、544~545頁)。本明細書で使用される場合、「サラセミア」という用語は、ヘモグロビンの合成に影響を及ぼす変異に起因して起こる遺伝性貧血を包含する。したがって、この用語は、重度のまたはβサラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、ヘモグロビンH症などのαサラセミアなどのサラセミアの状態によって生じる任意の症候性貧血を包含する。
【0362】
本明細書で使用される場合、「サラセミア」とは、ヘモグロビンの産生の欠陥を特徴とする遺伝性障害を指す。サラセミアの例としては、βサラセミアおよびサラセミアが挙げられ、βサラセミアは、ベータグロビン鎖の変異によって引き起こされ、重症型または軽症型で起こり得る。重症型のβサラセミアでは、出生時には小児は正常であるが、生後1年間で貧血を発症する。軽度の型のβサラセミアでは、小さな赤血球が産生され、グロビン鎖由来の1つまたは複数の遺伝子の欠失によってサラセミアが引き起こされる。本明細書で使用される場合、「抗鎌状赤血球化タンパク質」とは、鎌状赤血球の状態における赤血球の鎌状化を導く病理学的事象を予防するまたは逆転させるタンパク質を包含する。本発明の一実施形態では、本発明の形質導入された細胞を使用して、抗鎌状赤血球化タンパク質を異常血色素症状態の被験体に送達する。抗鎌状赤血球化タンパク質は、抗鎌状赤血球化アミノ酸残基を含む変異したβ-グロビン遺伝子も包含する。
【0363】
種々の実施形態では、本発明は、一部において、造血幹前駆細胞移植用のHSPCを得、調製するための方法であって、HSPCを、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めたHSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させる工程を含む方法を提供する。
種々の他の実施形態では、本発明は、一部において、被験体における造血幹細胞および造血前駆細胞のホーミングを増加させる方法であって、HSPCを、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させる工程を含む方法を提供する。
特定の実施形態では、処理したHSPCを洗浄して、作用剤を実質的に除去し、その後、造血幹細胞のホーミングの増加を必要とする被験体に投与する。
【0364】
本発明は、一部において、それを必要とする被験体において幹細胞の生着を増加させるための方法であって、HSPCを含む細胞の集団(例えば、骨髄細胞、末梢血液細胞、および/または臍帯血細胞)をプロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させる工程、および増強されたHSPCを被験体に投与する工程を含む方法を意図している。
【0365】
特定の実施形態では、本発明は、造血再構築または造血系の再構築を必要とする被験体を処置する方法であって、造血再構築を必要とする被験体を同定する工程、および被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたある量のHSPCを投与し、それにより、造血再構築を必要とする被験体を処置する工程を含む方法を提供する。
【0366】
別の特定の実施形態では、本発明は、造血再構築、造血系の再構築、またはHSPCの数の増加を必要とする被験体を処置する方法であって、造血再構築を必要とする被験体を同定する工程、および被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたある量のHSPCを被験体に投与し、それにより、造血再構築を必要とする被験体を処置する工程を含む方法を提供する。
【0367】
別の特定の実施形態では、本発明は、造血幹細胞移植を必要とする被験体を処置する方法であって、造血幹細胞移植を必要とする被験体を選択する工程、および被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、HSPCにおけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを投与する工程を含む方法を意図している。特定の実施形態では、被験体は、造血再構築を必要としている。
【0368】
HSPCのホーミングまたは生着を増加させるため、または造血再構築、造血系の再構築を必要とする被験体を処置するため、または造血幹細胞移植を実施するための本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、HSPCを、(i)PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEおよび(ii)グルココルチコイドを含む1種または複数種の作用剤の組合せを用いて処理する。より詳細な実施形態では、組合せは、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを含む。より詳細な実施形態では、組合せは、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾンを含む。
【0369】
いかなる特定の理論にも縛られることを望むことなく、本発明は、一部において、幹細胞移植において本発明の増強されたHSPCを使用することの利点の1つが、増強されたHSPCでは、無処理のHSPCと比較して、例えば、生着の潜在性が増大し、ホーミングが改善され、in vivoにおいて増大する能力が増大しているので、移植に使用するHSPCをより少なくすることができることを意図している。
【0370】
2.虚血組織の処置方法
本発明は、虚血組織を処置するため、または、これだけに限定されないが、臓器機能の低下または喪失(これだけに限定することなく、脳、腎臓、または心臓の機能の低下または喪失)、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽を含めた、組織虚血に関連した1つまたは複数の症状を処置もしくは改善するための細胞に基づく治療に関する方法を提供する。
【0371】
虚血組織は、幹細胞の虚血性組織損傷の部位へのホーミングを増加させること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員を増加させること、虚血組織部位における血管新生を増加させること、虚血組織の壊死またはプログラム細胞死を減少させること、または虚血組織部位における細胞生存を増加させることによって処置することができる。したがって、本発明は、一部において、これらの治療的性質を有する細胞が、虚血組織もしくは虚血による損傷を受けた組織を処置すること、または虚血組織と関連した少なくとも1つの症状を処置もしくは改善することにおいて有用なはずであることを意図している。
【0372】
本明細書で使用される場合、「虚血」、「虚血状態」または「虚血事象」という用語は、脈管構造の任意の狭窄、損傷、または閉塞によって引き起こされる、任意の細胞、組織、臓器、または体の部分への血液供給の減少または停止のいずれも意味する。虚血は、時には、血管収縮または血栓症または塞栓症に起因する。虚血により、直接虚血傷害、酸素(低酸素症、無酸素症)、グルコース、および栄養分の供給の減少によって引き起こされる細胞死に起因する組織損傷が生じ得る。「低酸素症」または「低酸素状態」とは、細胞、臓器または組織が不十分な酸素の供給を受けている状態を意図している。「無酸素症」とは、臓器または組織に酸素が実質的に完全に存在しないことを指し、それが持続する場合には、細胞、臓器または組織が死に至る可能性がある。
【0373】
「虚血に関連する症状」、「虚血に起因する症状」または「虚血によって引き起こされる症状」とは、これだけに限定されないが、臓器機能の低下または喪失(これだけに限定することなく、脳、腎臓、または心臓の機能の低下または喪失)、痙攣、跛行、しびれ、刺痛、衰弱、疼痛、創傷治癒の低下、炎症、皮膚変色、および壊疽を含めた症状を指す。
【0374】
「虚血組織傷害」、「虚血性組織損傷」、「虚血に起因する組織損傷」、「虚血に関連する組織損傷」、「虚血の結果としての組織損傷」、「虚血によって引き起こされる組織損傷」および「虚血により損傷を受けた組織」とは、虚血期間の結果としての臓器または組織または細胞への形態学的損傷、生理的損傷、および/または分子的損傷を指す。
【0375】
一実施形態では、被験体は、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織の少なくとも1つの症状を示す。特定の実施形態では、被験体は、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を有する、またはそれを有するリスクがあるヒト、例えば、糖尿病、末梢血管疾患、閉塞性血栓性血管炎、脈管炎、心血管疾患、冠動脈疾患もしくは心不全、または脳血管疾患、心血管疾患、または脳血管疾患を有する被験体である。
【0376】
本発明は、特定の実施形態において、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを投与する工程を含む方法も提供する。
【0377】
一実施形態では、細胞により、幹細胞の虚血性組織損傷の部位へのホーミングが増加すること、虚血組織部位における内在性幹細胞および内皮前駆細胞の動員が増加すること、虚血組織部位における血管新生の刺激が増加すること、虚血組織の壊死またはプログラム細胞死が減少すること、または虚血組織部位における細胞生存が増加することにより、被験体に治療がもたらされる。
【0378】
種々の他の実施形態では、本発明は、虚血組織傷害を処置または改善する方法であって、被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを含む治療有効量の組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0379】
種々の他の実施形態では、本発明は、虚血組織傷害に関連する症状を処置または改善する方法であって、被験体に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを投与する工程を含む方法を提供する。
【0380】
本発明の組成物を用いた処置に適した組織の実例としては、中胚葉系組織、内胚葉系組織、または外胚葉系組織が挙げられる。本発明の組成物を用いた処置に適した他の組織としては、これだけに限定されないが、皮膚組織、骨格筋組織、心筋組織、平滑筋組織、軟骨組織、腱組織、骨組織、脳組織、脊髄組織、網膜組織、角膜組織、肺組織、肝組織、腎組織、膵組織、卵巣組織、精巣組織、腸組織、胃組織、および膀胱組織が挙げられる。
【0381】
特定の実施形態では、血液供給が損なわれ、虚血である、または虚血になるリスクがある任意の組織を、本発明の方法を用いて処置することができる。
【0382】
被験体において虚血を引き起こすもしくは虚血に関連する、または虚血のリスクを増加させる、または被験体に1つまたは複数の(more or more)虚血の症状を引き起こす、したがって、本発明の方法を用いて処置または改善するために適した遺伝的障害、症候性の状態、外傷性傷害、慢性の状態、医療介入、または他の状態の実例としては、これだけに限定されないが、急性冠状動脈症候群、急性肺傷害(ALI)、急性心筋梗塞(AMI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、動脈閉塞性疾患、動脈硬化症、関節軟骨欠損、無菌性全身性炎症、アテローム硬化性心血管疾患、自己免疫疾患、骨折、骨折、脳浮腫、脳低灌流、バージャー病、熱傷、がん、心血管疾患、軟骨損傷、脳梗塞、脳虚血、脳卒中、脳血管疾患、化学療法誘発性ニューロパチー、慢性感染、慢性腸間膜虚血、跛行、うっ血性心不全、結合組織損傷、挫傷、冠動脈疾患(CAD)、重症肢虚血(CLI)、クローン病、深部静脈血栓症、深部創傷、潰瘍治癒の遅延、創傷治癒の遅延、糖尿病(I型およびII型)、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病誘発性虚血、播種性血管内凝固(DIC)、塞栓性脳虚血、移植片対宿主病、凍傷、遺伝性出血性毛細血管拡張症、虚血性血管疾患、高酸素傷害、低酸素症、炎症、炎症性腸疾患、炎症性疾患、傷害を受けた腱、間欠性跛行、腸管虚血、虚血、虚血性脳疾患、虚血性心疾患、虚血性末梢血管疾患、虚血胎盤、虚血性腎疾患、虚血性血管疾患、虚血再灌流傷害、裂傷、左主冠状動脈疾患、肢虚血、下肢虚血、心筋梗塞、心筋虚血、臓器虚血、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、パーキンソン病、末梢動脈性疾患(PAD)、末梢動脈疾患、末梢性虚血、末梢性ニューロパチー、末梢血管疾患、前がん、肺水腫、肺塞栓症、リモデリング障害、腎臓虚血、網膜虚血、網膜症、敗血症、皮膚潰瘍、実質臓器移植、脊髄傷害、卒中、軟骨下骨嚢胞、血栓症、血栓性脳虚血、組織虚血、一過性脳虚血発作(TIA)、外傷性脳傷害、潰瘍性大腸炎、腎臓の血管疾患、血管の炎症性の状態、フォンヒッペル・リンダウ症候群、および組織または臓器の創傷が挙げられる。
【0383】
本発明の方法を用いて処置または改善するために適した、被験体において虚血を引き起こすもしくは虚血に関連する、または虚血のリスクを増加させる、または被験体において1つまたは複数の(more or more)虚血の症状を引き起こす遺伝的障害、症候性の状態、外傷性傷害、慢性の状態、医療介入、または他の状態の他の実例としては、外科手術、化学療法、放射線療法、または細胞、組織、または臓器の移植(transplant)もしくは移植(graft)に起因する虚血が挙げられる。
【0384】
種々の実施形態では、本発明の方法は、脳血管虚血、心筋虚血、肢虚血(CLI)、心筋虚血(特に、慢性心筋虚血)、虚血性心筋症、脳血管虚血、腎臓虚血、肺虚血、腸管虚血などを処置するために適している。
【0385】
種々の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されている治療用細胞組成物を使用して、血流、酸素供給、グルコース供給、または組織への栄養分の供給を増加させることが望ましい虚血組織を処置することができることを意図している。
【0386】
3.増大したHSPC
本発明は、さらに、本発明によって提供される増強されたHSPCを、被験体に投与する前にex vivoでもin vitroでも増大させないことを意図している。特定の実施形態では、増大させていないHSPCの集団を得、HSPCの集団を、本明細書において提供されるプロトコールに従ってex vivoにおいて処理して、増強されたHSPCSを得、増強されたHSPCを洗浄して処理用作用剤(複数可)を除去することができ、HSPC集団をex vivoで増大させることなく、増強されたHSPCを患者に投与する。いくつかの実施形態では、HSPCは、臍帯血を含めた、ドナーから得たものであり、HSPCの処理の前もしくは処理の後、または治療用組成物を患者に投与する前のいかなる時点においても増大させない。
【0387】
一実施形態では、増大させていないHSPCの集団を処理し、集団内のHSPCの任意の実質的なex vivoにおける細胞分裂の前、または任意のex vivoにおける実質的な細胞分裂に必要な時間の前に患者に投与する。他の実施形態では、増大させていないHSPCの集団を処理し、集団内のHSPCの任意の実質的なex vivoにおける有糸分裂の前、または任意の実質的なex vivoにおける有糸分裂に必要な時間の前に患者に投与する。いくつかの実施形態では、増大させていないHSPCの集団を処理し、集団内のHSPCの倍加時間の前に患者に投与する。いくつかの実施形態では、増大させていないHSPCの集団を処理し、HSPCの処理の6時間以内、12時間以内、または24時間以内に患者に投与する。他の実施形態では、増大させていないHSPCの集団を処理し、HSPCの処理の2時間以内に患者に投与する。
【0388】
種々の実施形態では、本発明のHSPCは、ex vivoにおいて1種または複数種の作用剤、または作用剤の組合せを用いて処理する前、または患者に投与する前のいかなる時点でも培養しない。いくつかの実施形態では、HSPCを約24時間未満培養する。他の実施形態では、HSPCを約12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、または2時間未満培養する。
【0389】
他の実施形態では、本発明は、HSPCを作用剤で処理して増強されたHSPCを得る前に増大させたHSPCを提供する。臍帯血、骨髄、末梢血、ホウォートンゼリー、胎盤血または他の供給源のいずれから得たかにかかわらず、HSPCは、所望の通り、任意の適切な、市販のまたは特別に定義された、血清を伴う、または伴わない培地で成長または増大させることができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hartshornら、Cell Technology for Cell Products、221~224頁、R. Smith編;Springer Netherlands、2007年を参照されたい)。例えば、ある特定の実施形態では、無血清培地においてCD34細胞を成長および増大させるために有用であることが示されているアルブミンおよび/またはトランスフェリンを無血清培地に利用することができる。また、とりわけ、Flt-3リガンド、幹細胞因子(SCF)、およびトロンボポエチン(TPO)などのサイトカインを含めることもできる。HSPCは、バイオリアクターなどの容器中で成長させることもできる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Liuら、Journal of Biotechnology 124巻:592~601頁、2006年を参照されたい)。HSPCをex vivoにおいて増大させるために適した培地は、例えばリンパ系組織の解離から生じる可能性があり、造血幹細胞および造血前駆細胞、ならびにそれらの後代のin vitro、ex vivo、およびin
vivoにおける維持、成長、および分化を支持することが示されている間質細胞(例えば、リンパ細網間質細胞)などの支持細胞も含んでよい。
【0390】
種々の実施形態では、被験体に投与する増強されたHSPCは、顆粒球(例えば、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、および単球(例えば、単球、マクロファージ)を含めた全骨髄、臍帯血、動員された末梢血、造血幹細胞、造血前駆細胞、ならびに造血幹細胞および造血前駆細胞の後代を含めた細胞の不均一な集団である。
【0391】
4.HSPCおよびその組成物の投与
種々の実施形態では、本発明は、一部において、処理したHPSCを、それを必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。本明細書に記載の方法において使用される細胞の集団を投与するために適した方法としては、これだけに限定されないが、静脈内投与および動脈内投与などの血管内投与の方法を含めた非経口投与が挙げられる。本発明の細胞を投与するための追加的な例示的な方法としては、筋肉内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内および胸骨内の注射および注入が挙げられる。
【0392】
一実施形態では、HSPCのホーミングまたは生着を増加させるための方法は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを非経口投与する工程を含む。
【0393】
一実施形態では、造血再構築、造血系の再構築、または造血幹細胞移植を実施するための方法は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを非経口投与する工程を含む。
【0394】
好ましい実施形態では、HSPCを被験体の静脈内に投与または注入する。
【0395】
HSPCのホーミングまたは生着を増加させるため、または造血再構築、造血系の再構築を必要とする被験体を処置するため、または造血幹細胞移植を実施するための本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、(i)PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEおよび(ii)グルココルチコイドを含む1種または複数種の作用剤の組合せを用いて処理したHSPCを静脈内に投与または注入する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを用いて処理したHSPCを静脈内に投与または注入する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾンを用いて処理したHSPCを静脈内に投与または注入する工程を含む。
【0396】
特定の実施形態では、虚血、虚血組織、または少なくとも1つの虚血の症状を有する個体に組成物を投与することができる。最も好ましくは、投与の部位は、意図された活性の部位の近くまたは最も近く、すなわち、組織虚血の近くの部位である。被験体が全体的な虚血にさらされている場合には、静脈内投与などの全身投与が好ましい。機構に縛られることを意図することなく、治療用組成物を投与すると、HSPCが傷害に起因して産生された走化性因子に応答して虚血組織に遊走またはホーミングして、虚血組織の治療または虚血組織と関連した少なくとも1つの症状の処置および改善をもたらす。
【0397】
HSPCを虚血領域に直接注射することもでき、幹細胞を、組織虚血の領域に供給する動脈に注入することもできる。被験体において、通常は虚血組織の領域に供給する血管が完全に閉塞している場合には、注入のために選択する動脈は、完全に閉塞した血管の分布内の虚血組織に側副流をもたらす血管であることが好ましい。
【0398】
本発明のHSPCおよび治療用組成物は、被験体への注射または埋め込みによる導入を容易にする送達デバイスに挿入することができる。そのような送達デバイスは、チューブ、例えば、細胞および流体をレシピエント被験体の体内に注射するためのカテーテルを含んでよい。一実施形態では、チューブは、さらに本発明の細胞を被験体の所望の場所に導入することができる針、例えば、シリンジを有する。特定の実施形態では、細胞は、カテーテル(「カテーテル」という用語は、物質を血管に送達するための種々のチューブ様システムをいずれも含むものとする)を介して血管に投与するために製剤化する。
【0399】
一実施形態では、虚血組織、または虚血による損傷を受けた組織を処置するための方法は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを非経口投与する工程を含む。
【0400】
一実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織と関連した少なくとも1つの症状を処置または改善するための方法は、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを非経口投与する工程を含む。
【0401】
好ましい実施形態では、HSPCを静脈内に、または虚血部位に直接注射することによって投与する。
【0402】
虚血または少なくとも1つの虚血の症状を処置または改善するための、本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、(i)PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEおよび(ii)グルココルチコイドを含む1種または複数種の作用剤の組合せを用いて処理したHSPCを静脈内に投与する工程または直接注射する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを用いて処理したHSPCを静脈内に投与または注入する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾンを用いて処理したHSPCを静脈内に投与または注入する工程を含む。
【0403】
特定の実施形態では、組成物を、例えば、創傷、例えば、非治癒性創傷、潰瘍、熱傷、または凍傷の表面などの虚血性組織損傷の部位に局所的に投与することができる。
【0404】
本発明の組成物は、(1)例えば、細胞移植片、生体適合性足場などの一部として滅菌した溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤として、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射または硬膜外注射による非経口投与に適合させたものを含めた、固体または液体の形態で投与するために特別に製剤化することができる。種々の実施形態では、損傷を受けた、傷害を受けた、または疾患にかかった組織または臓器、例えば、虚血組織の修復、置き換え、および/または再生を促進するための生体適合性足場または移植片が提供される。
【0405】
ある特定の例示的な実施形態では、本発明のHPSCを必要とする被験体を処置するための方法は、本発明のHPSCを含む生体適合性足場または細胞移植片を提供する工程を含む。本明細書で使用される場合、「生体適合性足場」または「細胞移植片」という用語は、細胞に基づく組成物を誘導または誘引してin vivoにおいて細胞、組織または臓器を修復、再生、または置き換えることのために適した患者または被験体の表面に注射する、適用する、またはその内部に生着させる1つまたは複数の細胞に基づく組成物、細胞、組織、ポリマー、ポリヌクレオチド、格子、および/またはマトリックスを含む生体適合性の天然構造および/または合成構造を指す。
【0406】
特定の例示的な実施形態では、埋め込み物は、任意の適切な形態に成形することができ、皮膚の創傷に適用するための特定の深さもしくは高さを有する3次元の形状または平らなシート様形状の組織を調製するために特に重要な役割を有する生体適合性マトリックスを含む。バイオマテリアル科学は、確立され、発展している分野である(Takayamaら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、209~218頁;Saltmannら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、221~236頁;Hubbellら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、237~250頁;Thomsonら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、251~262頁;Pachenceら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、263~278頁)。
【0407】
化学者らにより、細胞の成長をin vitro、ex vivo、およびin vivoにおいて誘導し、調節するためのポリマーを含む生体適合性足場を合成するための方法が開発されてきた。ポリマーの物理特性を調節して、特定の強度および粘度の固体マトリックスおよび液体マトリックスを創製することができる。いくつかのポリマーはin vivoで安定であり、1年、2年、3年、4年、5年、10年、15年またはそれより長きにわたって患者の体内に留まる。他のポリマーは同様に生分解性であり、時間を経て固定速度で再吸収されて、新しく合成される細胞外マトリックスタンパク質によって置き換えられる。再吸収は、埋め込み後、数日~数週間または数ヶ月以内に起こり得る(Pachenceら、Principles of Tissue Engineering、第2版、Lanza RP、Langer R、Vacanti J.編、Academic Press、San Diego、2000年、263~278頁)。
【0408】
他の例示的な実施形態では、生体適合性足場は、生体吸収性材料を含む。多孔質キャリアは、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キトサン、キトサン誘導体、ポリロタキサン、ポリロタキサン誘導体、キチン、キチン誘導体、ゼラチン、フィブロネクチン、ヘパリン、ラミニン、およびアルギン酸カルシウムからなる群から選択される1つの構成成分または複数の構成成分の組合せで作製されていることが好ましく、支持体のメンバーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体、ポリ乳酸-ポリカプロラクトン共重合体、およびポリグリコール酸-ポリカプロラクトン共重合体からなる群から選択される1つの構成成分または複数の構成成分の組合せで作製される(例えば、米国特許第5,077,049号および同第5,42,033号、および米国特許出願公開第2006/0121085号を参照されたい、各特許および特許出願のポリマー製剤およびそれを作製する方法の全体が本明細書に組み込まれる)。
【0409】
本発明の特定の例示的な実施形態では、生体適合性足場または細胞移植片は、粘性の生体適合性液体材料を含む。生体適合性液体は、体温でゲル化することができ、アルギン酸塩、コラーゲン、フィブリン、ヒアリン、または血漿からなる群から選択される。粘性の生体適合性液体材料は、不規則な組織欠損を埋めることができる可鍛性の3次元のマトリックスと組み合わせることもできる。マトリックスは、これだけに限定されないが、ポリグリコール酸-ポリ乳酸、ポリ-グリコール酸、ポリ-乳酸、または縫合糸様材料を含めた材料である。
【0410】
さらなる例示的な実施形態では、マトリックスを含む生体適合性足場または細胞移植片を細胞、組織、および/または臓器の発達を促すまたは容易にする所望の形状(例えば、2次元構造または3次元構造)に成形することができる。埋め込み物は、メッシュまたはスポンジなどの繊維を有するポリマー材料から形成されていてよい。そのような構造により、細胞を成長させ、増殖させることができる十分な面積がもたらされる。足場または細胞移植片のマトリックスは、時間を経て生分解され得、したがって、動物質(animal matter)が発達するにしたがってそれに吸収されることが望ましい。適切なポリマーは、ホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよく、また、これだけに限定されないが、グリコール酸、乳酸、プロピルフマレート、カプロラクトンなどを含めた単量体から形成され得る。他の適切なポリマー材料としては、タンパク質、多糖、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン(polyphosphozene)、または合成ポリマー、特に、生分解性ポリマー、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。
【0411】
シート様の足場および移植片により、皮膚組織、歯根被覆手順用の膜、膜性組織(例えば、硬膜)、扁平骨(例えば、頭蓋骨、胸骨)などに対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。管状の埋め込み物および移植片により、動脈、静脈、尿管、尿道、神経、長骨(例えば、大腿骨、腓骨、脛骨、上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、中足骨など)などに対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。他の3次元の埋め込み物および移植片により、臓器移植物(例えば、肝臓、肺、皮膚、心臓、膵臓など)、骨リモデリングまたは全種類の骨の補修、歯科インプラントに対する、または筋肉移植片、腱移植片、靭帯移植片、および軟骨移植片に対する修復治療、置換え治療、および/または再生治療がもたらされる。
【0412】
一実施形態では、虚血組織または虚血による損傷を受けた組織と関連した少なくとも1つの症状を処置または改善するための方法は、虚血組織に、プロスタグランジン経路アゴニストとグルココルチコイドの組合せを含めた、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を増加させる1種または複数種の作用剤と、細胞におけるCXCR4遺伝子発現を、接触させていない細胞におけるCXCR4遺伝子発現のレベルと比較して少なくとも30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、または80倍増加させるために十分な条件下で接触させたHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。
【0413】
虚血組織または虚血による損傷を受けた組織と関連した少なくとも1つの症状を処置または改善するための、本明細書に記載の方法の特定の例示的な実施形態では、虚血組織に、(i)PGE、dmPGE、15(S)-15-メチルPGE、20-エチルPGE、または8-イソ-16-シクロヘキシル-テトラノルPGEおよび(ii)グルココルチコイドを含む1種または複数種の作用剤の組合せを用いて処理したHSPCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、虚血組織に、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、またはアルクロメタゾンを用いて処理したHPSCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。より詳細な実施形態では、該方法は、虚血組織に、(i)PGEまたは16,16-ジメチルPGEおよび(ii)メドリゾンを用いて処理したHPSCを含む生体適合性足場または細胞移植片を直接投与する工程を含む。
【0414】
F.本発明の投与準備済みの組成物
本発明の処理した細胞の組成物は滅菌されており、ヒト患者に適しており、投与できる状態にある(すなわち、いかなるさらなる加工も伴わずに投与することができる)。いくつかの実施形態では、治療用組成物は患者に注入できる状態にある。本明細書で使用される場合、「投与準備済みの(administration-ready)」、「投与できる状態にある」または「注入できる状態にある」という用語は、被験体に移植または投与する前にいかなるさらなる処理または操作も必要としない本発明の細胞に基づく組成物を指す。
【0415】
患者に投与するために適した、滅菌された治療的に許容される組成物は、1種または複数種の薬学的に許容されるキャリア(添加物)および/または希釈剤(例えば、薬学的に許容される培地、例えば、細胞培養培地)、または他の薬学的に許容される構成成分を含んでよい。薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、一部において、投与する特定の組成物によって、ならびに治療用組成物を投与するために用いる特定の方法によって決定される。したがって、本発明の治療用組成物の多種多様の適切な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版 1985年を参照されたい)。
【0416】
特定の実施形態では、幹細胞および/または前駆細胞を含む治療用細胞組成物は、薬学的に許容される細胞培養培地を含む。本発明の細胞に基づく組成物を含む治療用組成物を、経腸投与方法または非経口投与方法によって別々に、または他の適切な化合物と組み合わせて投与して、所望の処置目的を果たすことができる。
【0417】
薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、処置されているヒト被験体に投与するために適するように、純度が十分に高く、毒性が十分に低くなければならない。薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、さらに、治療用組成物の安定性を維持または増加すべきである。薬学的に許容されるキャリアは、液体であっても固体であってもよく、本発明の治療用組成物の他の構成成分と組み合わせたときに所望の容積、粘稠度などがもたらされるように計画的な投与様式を考慮して選択される。例えば、薬学的に許容されるキャリアは、これだけに限定することなく、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、増量剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、硬化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)であってよい。本発明の組成物のための他の適切な薬学的に許容されるキャリアとしては、これだけに限定されないが、水、塩類溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0418】
そのようなキャリア溶液は、緩衝液、希釈剤および他の適切な添加物も含有してよい。「緩衝液」という用語は、本明細書で使用される場合、その化学的構成により、pHを有意に変化させずに酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本発明により構想される緩衝液の例としては、これだけに限定されないが、ダルベッコリン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル液、水中5%ブドウ糖(D5W)、ノーマルセーライン/生理食塩水(0.9%NaCl)が挙げられる。
【0419】
これらの薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤は、治療用組成物のpHを約3から約10の間に維持するために十分な量で存在してよい。そのように、緩衝剤は、重量対重量ベースで組成物全体の約5%までであってよい。例えば、これだけに限定されないが、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの電解質も治療用組成物に含めることができる。
【0420】
一態様では、治療用組成物のpHは、約4~約10の範囲である。あるいは、治療用組成物のpHは、約5~約9、約6~約9、または約6.5~約8の範囲である。別の実施形態では、治療用組成物は、pHが前記pH範囲のうちの1つである緩衝液を含む。別の実施形態では、治療用組成物のpHは約7である。あるいは、治療用組成物のpHは約6.8~約7.4の範囲である。さらに別の実施形態では、治療用組成物のpHは約7.4である。
【0421】
本発明の滅菌組成物は、非毒性の薬学的に許容される媒体中の滅菌した溶液または懸濁液であってよい。「懸濁液」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞が固体支持体に付着していない非接着性の状態を指し得る。例えば、懸濁液中に維持される細胞は、撹拌することができ、培養皿などの支持体に接着していない。
【0422】
懸濁液は、細かく分割された種が別の種と組み合わさった分散物(混合物)であり、前者は、細かく分割され混合されているので急速に沈降しない。懸濁液は、溶液を含めた液体媒体などのビヒクルを使用して調製することができる。特定の実施形態では、本発明の治療用組成物は、幹細胞および/または前駆細胞が、許容される液体媒体または溶液、例えば、食塩水または無血清培地中に分散し、固体支持体に付着していない懸濁液である。日常生活において最も一般的な懸濁液は、液体水中の固体の懸濁液である。使用することができる許容される希釈剤、例えば、ビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム(食塩水)溶液、および無血清の細胞培養培地がある。いくつかの実施形態では、懸濁液の作製に高張性溶液が使用される。さらに、滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒として慣習的に使用されている。非経口的な適用のために特に適したビヒクルは、溶液、好ましくは油性溶液または水溶液、ならびに懸濁液、乳液、または埋め込み物からなる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してよく、それらとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランが挙げられる。いくつかの実施形態では、輸液は、対象組織に対して等張性である。いくつかの実施形態では、輸液は対象組織に対して高張性である。
【0423】
本発明の投与準備済みの治療用組成物を含む薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、および他の構成成分は、臨床レジメンにおいて使用される治療用組成物を可能にする米国医薬品グレード試薬から得られる。一般には、任意の媒体、溶液、または他の薬学的に許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含めたこれらの完成した試薬は、使用する前に、濾過滅菌などの当技術分野における従来の様式で滅菌され、種々の望ましくない混入物、例えば、マイコプラズマ、内毒素、またはウイルスの混入について試験される。薬学的に許容されるキャリアは、一実施形態では、ヒトまたは動物起源の天然のタンパク質を実質的に含まず、造血幹細胞および造血前駆細胞を含めた治療用組成物の細胞の集団を貯蔵するために適している。治療用組成物は、ヒト患者に投与されることが意図されており、したがって、ウシ血清アルブミン、ウマ血清、およびウシ胎仔血清などの細胞培養物構成成分を実質的に含まない。
【0424】
本発明は、一部において、薬学的に許容される細胞培養培地、具体的には、本発明の組成物および/または培養物の使用も意図している。そのような組成物は、ヒト被験体に投与するために適している。一般的に言うと、本発明の所望の再プログラムされた細胞および/またはプログラムされた細胞の維持、成長、および/または健康を支持する任意の媒体が、薬学的細胞培養培地として使用するために適している。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清培地である。
【0425】
治療用組成物は、組成物を含む細胞の集団を貯蔵するために適した無血清培地を含んでよい。種々の実施形態では、無血清培地は動物質を含まず、必要に応じて、タンパク質を含まなくてよい。必要に応じて、培地は、生物薬剤的に許容される組換えタンパク質を含有してよい。「動物質を含まない(animal-free)」培地とは、構成成分が、非動物供給源に由来する培地を指す。動物質を含まない培地ではネイティブな動物タンパク質を組換えタンパク質に置き換え、栄養分は、合成の植物供給源または微生物供給源から得る。対照的に、タンパク質を含まない培地は、タンパク質を実質的に含まないと定義される。
【0426】
本発明において使用される無血清培地は、ヒト治療プロトコールおよび製品に使用するために適した製剤である。1つの無血清培地は、米国特許第5,945,337号に記載のQBSF-60(Quality Biological,Inc.)である。QBSF-60は、米国医薬品グレードの構成成分を用いて最適化されており、基本培地IMDMとそれに加えて2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、ヒト注射用グレードの血清アルブミン(4mg/ml)(Alpha Therapeutic Corporation)、部分的鉄飽和型ヒトトランスフェリン(300μg/ml)(Sigma Chemical CorporationまたはBayer Corporation)およびヒト組換えナトリウムインスリン(0.48U/ml)(Sigma)で構成される。当技術分野で公知の他の無血清培地としては、これだけに限定されないが、Life Technologies CatalogueのStemPro-34無血清培養培地;Capmanyら、Short-term, serum-free, static culture of cord blood-derived CD34 cells: effects of
FLT3-L and MIP-1α on in vitro expansion
of hematopoietic progenitor cells、Haematologica 84巻:675~682頁(1999年);Daley、J Pら、Ex vivo expansion of human hematopoietic
progenitor cells in serum-free StemProTM-34 Medium、Focus 18巻(3号):62~67頁;Life Technologies Catalogue information on AIM V serum free culture media;BioWhittaker Catalogue information on X-VIVO 10 serum
free culture media;発明の名称がSerum-free basal and culture medium for hematopoietic and leukemia cellsである5,397,706号;no cell proliferation;Kurtzbergら、18巻:153~4頁(2000年);Kurtzbergら、Exp Hematol 26巻(4号):288~98頁(1998年4月)が挙げられる。
【0427】
上記の培地の例は例示的なものであり、決して本発明において使用するために適した培地の配合を限定するものではないこと、ならびに当業者に公知であり、利用可能な多くのそのような培地が存在することは当業者には理解されよう。
【0428】
種々の実施形態では、本発明の治療用組成物は、ヒト血清アルブミン(HSA)、例えば、5%HSA、および低分子量(LMW)デキストランの滅菌溶液を含む。
【0429】
治療用組成物は、マイコプラズマ、内毒素、および微生物の混入物を実質的に含まない。特定の実施形態では、治療用組成物は、約10μg/ml未満、5μg/ml未満、4μg/ml未満、3μg/ml未満、2μg/ml未満、1μg/ml未満、0.1μg/ml未満、0.05μg/ml未満のウシ血清アルブミンを含有する。
【0430】
内毒素に関して、「実質的に含まない」とは、細胞の用量当たりの内毒素が、生物製剤についてFDAによって認められている、1日当たり体重1kg当たり5EUの総内毒素、平均70kgの人に対して細胞の総用量当たり350EUよりも少ないことを意味する。
【0431】
マイコプラズマおよび微生物の混入に関して、「実質的に含まない」とは、本明細書で使用される場合、当業者に公知の一般に認められている試験について読み取りが陰性であることを意味する。例えば、マイコプラズマ混入は、肉汁培地中で治療用組成物の試料を継代培養し、1日目、3日目、7日目、および14日目に37℃で寒天プレートに適切な陽性対照および陰性対照と一緒に分布させることによって決定される。試料の外観を、顕微鏡で、100×で陽性対照および陰性対照の外観と比較する。さらに、接種した指標細胞培養物を3日間および5日間インキュベートし、DNA結合性蛍光色素を使用し、落射蛍光顕微鏡法によって600×でマイコプラズマの存在について検査する。試料は、寒天培地および/または肉汁培地の手順および指標細胞培養の手順によりマイコプラズマ混入の証拠が示されなければ、申し分ないとみなされる。
【実施例0432】
(実施例1)
処理したHSPCにおけるCXCR4 mRNAの発現レベル
Fluidigmプラットフォームを使用したCXCR4 qPCR
【0433】
ex vivoにおいて処理したヒト臍帯血由来CD34細胞(Stem Cell
Technologies、Vancouver、BC、Canada)からの遺伝子発現のリアルタイムPCR転写物定量を、BioMark Dynamic Array
microfluidicsシステム(Fluidigm Corporation、South San Francisco、CA、USA)を使用して実施した。
【0434】
臍帯血または動員された末梢血に由来するCD34細胞を、10μMのプロスタグランジン経路アゴニスト単独、または10μMのグルココルチコイドとの組合せと一緒に、無血清増殖培地(Serum-Free Expansion Medium)(SFEM;例えば、StemCell Technologies、Inc.からのStemSpan(登録商標))中、37℃、5%COで4時間処理した。プロスタグランジン経路アゴニストは、16,16-ジメチルPGE(dmPGE)、20-エチルPGE2(ePGE)、15(S)-15-メチルPGE2(mPGE)、およびPGEを含んだ。グルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メドリゾン、アルクロメタゾン、またはトリアムシノロン(triamcinalone)を含んだ。処理後、細胞をSFEMで洗浄し、300gで10分遠心分離した。
【0435】
次いで、Pico Pure RNA Isolation Kit(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を使用して、処理した細胞から全RNAを単離した。High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA、USA)を使用して、50ngの単離された全RNAから相補DNA(cDNA)を逆転写した。
【0436】
参照の対照遺伝子3種(GAPDH、HPRT1、およびQARS)を含め、特定の標的遺伝子(96種)について、96種の遺伝子に特異的なApplied BiosystemsTaqMan Assay(表1を参照されたい)の混合物200nMを使用し、TaqMan PreAmp Master Mix Kit(Life Technologies)プロトコールを使用して、cDNAを予め増幅した。cDNAからの特異的標的増幅(STA)を、製造者のプロトコールを使用して、標準のサイクル条件での14サイクルの増幅を用いて実施した。試料について、反応混合物は、3.0μLのGene Expression Master Mix(Life Tech.)、0.3μLのSample Loading Buffer(Fluidigm)、1.5μLの希釈した(1:5滅菌nH2O)STA cDNA、および96.96Dynamic
Array(Fluidigm)の試料注入口にローディングするための1.2μLの滅菌diHOを含有した。
【0437】
試料を5~9ウェルで反復試験した。反応混合物は、2.5μLの遺伝子特異的TaqManアッセイ(Gene Specific Taqman Assay)(20×)および96.96Dynamic Array(Fluidigm)上のアッセイ注入口にローディングするためのアッセイローディング緩衝液(Assay Loading Buffer)(Fluidigm)2.5μLを含有した。NanoFlex IFC
Controller HX(Fluidigm)を使用して96.96Dynamicアレイをローディングし、BioMark Real-Time PCR System(Fluidigm)を使用してリアルタイム反応を実施した。
【0438】
結果を、BioMark Real-Time PCR Analysisソフトウェアを使用して解析した。試料反復物から平均Ctを算出し、3種の参照遺伝子(GAPDH、HPRT1、QARS)の平均値を使用してビヒクルのみの試料に対してデルタ-デルタCt(ΔΔCt)を算出した。28を超えるCtを算出から排除した。結果をExcel棒グラフ(Microsoft Corp.、Redmond、WA、USA)で示したが、そこではCXCR4についての平均倍数変化(2^ΔΔCt)が示されている。エラーバーは反復測定の+/-標準偏差(SD)を示す。
【0439】
結果
SFEM中で10μMの16,16-ジメチルPGE(22倍)、または10μMのdmPGEと10μMのグルココルチコイドの組合せ(50~61倍)を用いて処理した臍帯血CD34細胞において、DMSO処理した細胞と比較してCXCR4 mRNA発現の増加が観察された。10μMのdmPGEと、5種の異なるグルココルチコイドのうちのいずれか1種10μMの組合せで処理した後にCXCR4+ mRNAのレベルの相乗的な増加が検出された(図1)。グルココルチコイドは、dmPGE2と相乗的に作用して、CXCR4遺伝子発現を増加させる。
【0440】
SFEM中で、他のプロスタグランジン経路アゴニスト、10μM PGE(8~61倍の増加)(図2A)、10μMの15,15-メチルPGE(16~50倍の増加)(図2B)、および10μMの20-エチルPGE(16~55倍の増加)(図2C)をグルココルチコイドと組み合わせて用いて4時間にわたって処理した臍帯血CD34細胞においても、DMSO処理した細胞と比較した場合に同様の相乗的なCXCR4 mRNA発現の増加が観察された。グルココルチコイドは、他のプロスタグランジン経路アゴニストとも相乗的に作用して、CXCR4遺伝子発現を増加させる。
表1:Applied Biosystems TaqManアッセイ
【表1】
Applied Biosystems StepOnePlusを使用したCXCR4 qPCR
【0441】
ex vivoにおいて処理した臍帯血CD34細胞(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC、Canada)および動員された末梢血 CD34細胞(All Cells、LLC、Emoryville、CA、USA)からのリアルタイムPCR転写物定量を、Applied Biosystems StepOne Plusシステム(Life Technologies Corporation、Carlsbad、CA、USA)を使用して実施した(図3参照)。CD34細胞をSFEM中、37℃、5%COで、10μMの16,16-ジメチルPGE(dmPGE)を単独で、または10μMのメドリゾンと組み合わせて用いて4時間にわたって処理した。処理後、細胞をSFEMで洗浄し、300gで10分遠心分離した。
【0442】
次いで、Pico Pure RNA Isolation Kit(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を使用して処理した細胞から全RNAを単離した。High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Life Technologies)を使用して50ngの単離された全RNAから相補DNA(cDNA)を逆転写した。
【0443】
cDNA試料に対して2連でリアルタイムPCR解析を実行した。反応混合物は、1μLのGene Specific Taqman Assay(20×)および10μLのGene Expression Master Mix(Life Technologies)を含有し、残りの体積の9μLは、10ngのcDNAおよび滅菌diHOを含有した。
【0444】
CXCR4の結果(表1からのアッセイ)を、Applied Biosystems
StepOne Software v2.1 Analysisソフトウェアを使用して解析した。試料反復物から平均Ctを算出し、GAPDHの結果(表1からのアッセイ)を参照遺伝子として使用してビヒクルのみの試料に対してデルタ-デルタCt(ΔΔCt)を算出した。結果をExcel棒グラフ(Microsoft Corp.、Redmond、WA、USA)で示したが、そこではCXCR4についての平均倍数変化(2^ΔΔCt)が示されている。エラーバーは、反復測定の+/-標準偏差(SD)を示す(図1~3、図5、および図6を参照されたい)。
【0445】
結果
臍帯血由来CD34細胞および動員された末梢血から単離したCD34細胞のどちらにおいても、SFEM中で10μMの16,16-ジメチルPGEを用いて4時間処理した後、同様のCXCR4 mRNA発現の増加が観察された(それぞれ22倍および27倍の増加)。臍帯血由来CD34細胞および動員された末梢血から単離したCD34細胞のどちらにおいても、SFEM中でプロスタグランジン経路アゴニスト(dmPGE)とグルココルチコイド(メドリゾン)の組合せで4時間処理した後、同様の相乗的なCXCR4 mRNAの増加が検出された(それぞれ60倍および59倍)(図3)。CD34細胞は、供給起源にかかわらず、いずれの処理に対しても同様に応答する。
【0446】
(実施例2)
CD34細胞をdmPGEとメドリゾンの組合せで処理することにより、CXCR4表面タンパク質発現が増加する
凍結させたCD34+ CBおよびPBにおけるCXCR4表面発現解析
CD34臍帯血(CB)細胞(Stem Cell Technologies)およびCD34動員された末梢血(mPB)細胞(All Cells)を、SFEM中、37℃、5%COで2時間および4時間にわたって、10μMのdmPGE、dmPGEおよびメドリゾン、または対照としてDMSOを用いて処理した。処理後、細胞をSFEMで洗浄し、300gで10分遠心分離した。次いで、細胞をSFEMに再懸濁させ、37℃、5%COで多様な時間にわたってインキュベートした。
【0447】
mPB CD34細胞およびCB CD34細胞を、SFEM中、2時間または4時間にわたってdmPGE、dmPGEおよびメドリゾン、またはDMSOを用いて処理し、次いで、処理中および処理後の異なる時点において細胞をCXCR4表面タンパク質発現について評価した(表2)。CXCR4レベルを測定するために、処理した細胞を300gで10分遠心分離し、Lineageカクテル 1-FITC、CD34-APC、CXCR4(CD184)-PEを含有する染色培地に再懸濁させ、氷上で20分インキュベートした。次いで、新鮮な染色培地を細胞に加えて、残留する結合していない抗体のいずれも細胞から洗い流し、細胞を300gで10分遠心分離し、この洗浄手順を2回繰り返した。染色された細胞をGuava EasyCyte 8HTフローサイトメーター上に得、FloJo Software Package(Treestar)を使用して解析を実施した。
表2.CXCR4タンパク質表面解析のために用いた処理および時点
【表2】
【0448】
結果
SFEM中、37℃で、2時間および4時間にわたって10μMの16,16-ジメチルPGEならびにdmPGEおよびメドリゾンを用いて処理した臍帯血またはmPB細胞由来のCD34細胞において、DMSO処理した細胞と比較した場合、CXCR4
RNA発現の増加が観察された。細胞供給源にかかわらず、どちらの細胞型についても、dmPGEおよびメドリゾンを用いた4時間の処理の2時間後(図5および図6)にCXCR4+細胞の最も高い百分率が得られた。動員された末梢血CD34細胞については、対照の8%と比較して、細胞の75%がCXCR4+を発現した(図5)。臍帯血CD34細胞については、対照試料の3~6%と比較して、dmPGEおよびメドリゾン処理後に細胞の25%がCXCR4を発現した(図6)。
【0449】
ヒト骨髄由来のCD34細胞を、16,16-ジメチルPGEおよびdmPGEとメドリゾンの組合せに応答するそれらの能力についても試験した。この場合、予め凍結させた骨髄CD34を、SFEM中、37℃で4時間にわたって10μMの16,16-ジメチルPGE+10μMのメドリゾンを用いて処理した。次いで、細胞を洗浄し、SFEMに2時間再懸濁させた。次いで、CXCR4表面タンパク質を以前に記載されている通りフローサイトメトリーによって評価した。BM CD34細胞をSFEM中で10μMの16,16-ジメチルPGEを単独でまたは10μMの16,16-ジメチルPGE+10μMのメドリゾンを用いて処理することにより、CXCR4タンパク質の発現のレベルが、それぞれ12倍および20倍に増加する。さらに、SFEM中で10μMの16,16-ジメチルPGE+10μMのメドリゾンを用いて処理することにより、CXCR4細胞の百分率が12倍増加する(図4Aおよび図4B)。
【0450】
(実施例3)
SDF-1 トランスウェル遊走アッセイ
方法
96ウェル走化性チャンバー、5μM孔径のポリカーボネート膜(Corning Inc.、Corning、NY)を製造者の指示に従って使用してトランスウェル遊走アッセイを実施した。簡単に述べると、次いで、CD34細胞を、37℃で4時間にわたって16,16-ジメチルPGE(dmPGE)、dmPGEおよびグルココルチコイド、またはDMSO対照をStemSpan(登録商標)培地(Stem Cell
Technology、Vancouver、Canada)中10μMの濃度で用いて処理した。次いで、細胞を遠心分離によって洗浄し(300×g、10分)、トランスウェルアッセイ緩衝液(Phenol Red Free RPMI培地(Mediatech)、0.5%無脂質BSA(Sigma-Aldrich)に75μl当たり細胞40,000~60,000個の濃度で再懸濁させた。
【0451】
処理効果の持続時間を試験するために、処理した細胞の一部分を遠心分離によって洗浄し(300×g、10分)、dmPGE2も、グルココルチコイドも、DMSOも無しのStemSpan(登録商標)培地に37℃で4時間再懸濁させ、次いで、再度遠心分離によって洗浄し(300×g、10分)、トランスウェルアッセイ緩衝液(Phenol
Red Free RPMI培地(Mediatech)、0.5%無脂質BSA(Sigma-Aldrich)に75μl当たり細胞40,000~60,000個の濃度で再懸濁させた。
【0452】
プレートの上部のチャンバーには細胞懸濁液75μlを加え、下のウェルには0ng/mlまたは50ng/mlのSDF1α(R&D system、Minneapolis、MN)を含有するトランスウェルアッセイ培地235μlを加えた。37℃、5%COで2.5時間インキュベートした後に下のウェルの総細胞数をフローサイトメトリーによって得た。
【0453】
結果
CD34細胞を、DMSO対照、dmPGE、またはdmPGEおよびメドリゾンを用いて上記の通り処理した。下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに処理した細胞を入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGEで処理することにより、DMSO対照と比較してSDF1に駆動される遊走が増加した(図7参照)。dmPGEとメドリゾンを組み合わせて処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がdmPGE単独またはDMSO対照を超えて増加した(図7参照)。したがって、SFEM中でdmPGE、またはdmPGEおよびメドリゾンを用いて処理したCD34細胞は、DMSO対照で処理した細胞と比較して、SDF1に向かってより効率的に遊走した。
【0454】
CD34細胞を、DMSO対照、dmPGE、またはdmPGEおよびグルコステロイド(glucosteroid)(メドリゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、またはデキサメタゾン)を用いて上記の通り処理した。下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに処理した細胞を入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGEで処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がDMSO対照と比較して増加した(図8参照)。さらに、dmPGE2をメドリゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、アルクロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、またはデキサメタゾンのいずれかと組み合わせて処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がdmPGE2単独またはDMSO対照よりも有効に増加した(図8参照)。したがって、SFEM中でdmPGE、またはdmPGEおよび種々のグルココルチコイドを用いて処理したCD34細胞は、DMSO対照で処理した細胞と比較して、SDF1に向かってより効率的に遊走し、プロスタグランジン経路アゴニスト/グルココルチコイドで処理した細胞の遊走性の増強は特定のグルココルチコイドに限定されないことが示された。
【0455】
dmPGE/グルココルチコイドで処理した細胞のSDF-1への遊走効果の増強の持続時間を試験した。CD34細胞を、DMSOまたはdmPGEおよびメドリゾンを用いて処理した。新鮮に処理した細胞または処理し、さらなる処理を伴わずに追加的な4時間にわたってインキュベートした細胞(上記の通り)を、下部のチャンバーに0ng/mLのSDF1または50ng/mLのSDF-1が入ったトランスウェル培養プレートの上部のチャンバーに入れた。遊走を、加えた細胞に対する%、すなわち、上部のチャンバーに最初に加えた細胞の数に対して正規化した下部のチャンバー内の細胞の数として表した。dmPGEおよびメドリゾンで処理することにより、SDF1に駆動される細胞遊走がDMSO対照と比較して増加した(図9参照)。さらに、dmPGEおよびメドリゾンで処理し、さらなる処理無しで追加的な4時間にわたってインキュベートした細胞は、新鮮に処理した細胞と同様に遊走した。したがって、プロスタグランジン経路アゴニスト/グルココルチコイドで処理した細胞のSDF-1への遊走効果の増強は少なくとも4時間にわたって安定であり、この効果は処理した細胞を被験体に投与する場合にも存在することが示される。
【0456】
(実施例4)
PGEおよびPGE/グルココルチコイドで処理したCD34+細胞により、ラット虚血モデルにおける神経機能および運動機能が改善される
方法
成体の雄のWistarラットを、右中大脳動脈を遮断することによる一過性の限局性虚血MCAOモデル(中大脳動脈閉塞)に供した。先端を丸くした外科用ナイロン縫合糸を、中大脳動脈の起点を塞ぐまで外頸動脈から内頸動脈の内腔に進めた。2時間後に、縫合糸を除いて再灌流させた。再灌流の1日後に、ラットに、尾静脈を介してハンクス平衡塩類溶液(Hanks Balanced Salt Solution)(HBSS)、DMSOで処理したCD34細胞、またはdmPGEおよびメドリゾンを用いて処理したCD34細胞のいずれかを注射した。増強された細胞の効果の持続力を増大させるために、ホスホジエステラーゼ(phospodiesterase)4阻害剤(YM976)も含めた。本発明者らの研究により、PDE4型の阻害剤では増強された細胞の性質は有意に変化しないことが実証されている。細胞を、培養培地で化合物またはDMSOと一緒に37℃で4時間インキュベートした。注射する前に、前処理した細胞を遠心分離し、得られた上清を吸引し、細胞ペレットをHBSSに再懸濁させた。
【0457】
注射の1日後および1週間後、2週間後、3週間後、4週間後および5週間後に、ラットを、実験群についてマスクされている研究者によって実施した行動試験を用いて神経学的欠損について評価した。運動試験、感覚試験、平衡試験および反射試験の公開されたパネルに基づいて改変神経学的重症度スコア(Neurological Severity Score)(mNSS)を算出した(Chenら、Stroke 32巻:2682~2688頁(2001年))。
【0458】
さらに、注射の1日後および1週間後、2週間後、3週間後、4週間後および5週間後に、処置したラットにおいて、動物に穴の開いた通路を横断させるフットフォールト試験を用いて運動機能を評価した。前肢のステップの総数および左前肢が穴に落ちた踏み誤りの数を測定した。
【0459】
結果
ラットに、処理したHSPCを投与し、処理効果によりMCAO卒中モデルにおける神経学的欠損を減少させる能力について試験した。片側性虚血性脳傷害の24時間後に、処理したHSPCを静脈内に注射した。一連の行動試験を用いて神経機能を評価し、mNSSとして報告した。dmPGEおよびメドリゾンを用いて処理した細胞により、7日目、14日目および35日目におけるmNSSがビヒクル対照と比較して有意に改善されたが、DMSOで処理した細胞では、mNSSに有意な影響はなかった(図10参照)、*p<0.05(1群当たりn=6)。
【0460】
ラットに、dmPGEおよびメドリゾンを用いて処理したHSPCを投与し、処理効果により、MCAO卒中モデルにおける運動欠損を減少させる能力について試験した。片側性虚血性脳傷害の24時間後に、処理したHSPCを静脈内に注射した。運動機能を穴の開いた通路を横断したときの%フットフォールトとして評価した。dmPGEおよびメドリゾンを用いて処理した細胞により、7日目および35日目における%フットフォールトがビヒクル対照と比較して有意に減少したが、DMSOで処理した細胞では、%フットフォールトに有意な影響はなかった(図11参照)。*p<0.05(1群当たりn=6)。
【0461】
したがって、プロスタグランジン経路アンタゴニストおよびグルココルチコイドを用いて処理したHSPCにより、ラットMCAOモデルにおける虚血およびそれに関連する症状が有効に処置された。
【0462】
(実施例5)
方法
処理した全臍帯血からのLin(-)CD34細胞の単離
ヒト全臍帯血単核細胞をStem Cell Technologies(Vancouver、Canada)から入手した。解凍したら、細胞を、LMD/5%HSA培地中で16,16-ジメチルPGEまたは適切な対照、例えば、DMSOを用いて処理した。
【0463】
処理後、細胞をLMD/5%HSA培地で洗浄し、室温で650×gで10分間遠心分離し、冷選択緩衝液(CaもMgも含まないリン酸緩衝食塩水(PBS);2mMのEDTA;および0.5%HSA)に再懸濁させた。Lineage(Lin)Depletion Kit(Miltenyi Biotec、CA)、その後にCD34富化キット(Miltenyi Biotec)を使用して磁気選択を実施した。系統枯渇およびCD34細胞の富化はQuadroMACS(商標)分離器を使用し、製造者の指示に従って実施した。このプロセスの間、細胞を4℃で保持した。処理した全臍帯血からLin-CD34細胞を単離したら、一定分量をフローサイトメトリーによって分析して、純度を評価した。細胞の純度は90%を超えた。Affymetrix解析のために、Pico Pure RNA Isolation Kit(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用したRNA抽出のために大多数の細胞を使用した。
【0464】
上記の実施例に記載のCD34細胞は、臍帯血、動員された末梢血および骨髄細胞から記載の通り単離し、Stem Cell TechnologiesおよびAll Cells LLCから入手した。これらの細胞を受け取ったら、分化細胞混入のレベルを、フローサイトメトリーにより、CD34細胞の表面上に存在する系統マーカーの量に基づいて決定した。系統マーカーを発現しているCD34細胞は、系統陰性CD34細胞と同じ自己再生能力を有さない分化した前駆細胞である。これらの会社から入手し、本明細書の実験において参照されているCD34細胞は全て、少なくとも85%がCD34/Lin(-)細胞であった。
【0465】
上記の種々の実施形態を組み合わせてさらなる実施形態をもたらすことができる。本明細書において参照され、かつ/または本出願データシートに列挙されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。必要であれば、実施形態の態様を種々の特許、出願および公開の概念を使用するように改変して、なおさらなる実施形態をもたらすことができる。
【0466】
上記の詳細な説明を踏まえて、これらおよび他の変化を実施形態に行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定するものと解釈されるべきではなく、可能性のある実施形態を、そのような特許請求の範囲に権利が与えられる等価物の全範囲と共に全て含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示により限定されない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】