(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053106
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】通信制御方法、ユーザ装置、プロセッサ及びネットワーク装置
(51)【国際特許分類】
H04W 28/16 20090101AFI20230405BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20230405BHJP
H04W 68/00 20090101ALI20230405BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W88/06
H04W68/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018315
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2021561521の分割
【原出願日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2019214616
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のSIMを搭載可能なユーザ装置において複数の移動ネットワークからの下りリンク送信の衝突を回避可能にする方法、ユーザ装置、およびネットワーク装置を提供する。
【解決手段】ユーザ装置は、第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークに登録し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークに登録する。ユーザ装置が、第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信する候補のタイミングである第1のページング受信機会と、第2の移動ネットワークの第2のページング受信機会を特定する。第1のページング受信機会と第2のページング受信機会とが衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、第1の移動ネットワークに対して、第1のページング受信機会を決定するために使用されるユーザ装置のモバイル加入者識別子に対するオフセットを要求する情報を送信する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークと通信し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークと通信するユーザ装置を用いる通信制御方法であって、
前記ユーザ装置が、前記第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第1のページング受信機会と、前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第2のページング受信機会とが衝突するか否かを判断することと、
前記ユーザ装置が、前記第1のページング受信機会と前記第2のページング受信機会とが衝突すると判断した場合、前記第1の移動ネットワークに属するネットワーク装置に対して、前記第1のページング受信機会を決定するために使用される前記ユーザ装置のモバイル加入者識別子に対するオフセットを要求する情報を送信することと、を有する、
通信制御方法。
【請求項2】
第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークと通信し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークと通信するユーザ装置であって、
前記第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第1のページング受信機会と、前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第2のページング受信機会とが衝突するか否かを判断する制御部と、
前記第1のページング受信機会と前記第2のページング受信機会とが衝突するすると前記制御部が判断した場合、前記第1の移動ネットワークに属するネットワーク装置に対して、前記第1のページング受信機会を決定するために使用される前記ユーザ装置のモバイル加入者識別子に対するオフセットを要求する情報を送信する送信部と、を備える
ユーザ装置。
【請求項3】
第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークと通信し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークと通信するユーザ装置を制御するプロセッサであって、
前記第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第1のページング受信機会と、前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信するための第2のページング受信機会とが衝突するか否かを判断する処理と、
前記第1のページング受信機会と前記第2のページング受信機会とが衝突するすると判断した場合、前記第1の移動ネットワークに属するネットワーク装置に対して、前記第1のページング受信機会を決定するために使用される前記ユーザ装置のモバイル加入者識別子に対するオフセットを要求する情報を送信する処理と、を実行する
プロセッサ。
【請求項4】
第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークと通信し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークと通信するユーザ装置と通信する、前記第1の移動ネットワークに属するネットワーク装置であって、
前記第1の移動ネットワークから前記ユーザ装置がページングメッセージを受信するための第1のページング受信機会を決定するために使用される前記ユーザ装置のモバイル加入者識別子に対するオフセットを要求する情報を、前記ユーザ装置から受信する受信部を備え、
前記オフセットは、前記第1のページング受信機会と、前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを前記ユーザ装置が受信するための第2のページング受信機会との衝突を回避するために使用される
ネットワーク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信制御方法、ユーザ装置、プロセッサ及びネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ装置は、通信事業者(オペレータまたは通信キャリアともいう)が移動ネットワークを介して提供する移動通信サービス(音声通話サービス、データ通信サービスなど)を利用するために、加入者識別モジュール(SIM:Subscriber Identity Module)を搭載する必要がある。ユーザ装置は、SIMを使用して移動ネットワークに登録すると、登録先の移動ネットワークからの移動通信サービスを利用できる。
【0003】
近年、複数のSIMを搭載可能なユーザ装置の普及が進んでいる。2つのSIM(第1のSIM及び第2のSIM)を搭載しているユーザ装置は、第1のSIMの登録先の移動ネットワークである第1の移動ネットワークからの移動通信サービスを利用すると共に、第2のSIMの登録先の移動ネットワークである第2の移動ネットワークからの移動通信サービスを利用する場合がある。両方の移動通信サービスを利用する場合におけるユースケースについての議論が3GPP(Third Generation Partnership Project)(登録商標。以下同じ)において開始されている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP技術報告書 TR 22.834 「TR 22.834 V17.1.0」 2019年9月、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/22_series/22.834/22834-h10.zip>
【発明の概要】
【0005】
第1の態様に係る通信制御方法は、ユーザ装置を用いる通信制御方法である。前記ユーザ装置は、第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークに登録し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークに登録する。前記通信制御方法は、前記ユーザ装置が、前記第1の移動ネットワークから前記ユーザ装置への下りリンク送信を行わない非実行タイミング又は前記下りリンク送信を行う実行タイミングのいずれかを設定する設定情報を前記第1の移動ネットワークから受信することと、前記ユーザ装置が、前記設定情報により設定されたタイミングを特定するための特定情報を、前記第2の移動ネットワークに送信することと、を有する。
【0006】
第2の態様に係る通信制御方法は、ユーザ装置を用いる通信制御方法である。前記ユーザ装置は、第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークに登録し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークに登録する。前記通信制御方法は、前記ユーザ装置が、前記ユーザ装置が前記第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信する候補のタイミングである第1のページング受信機会を特定することと、前記ユーザ装置が、前記ユーザ装置が前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信する候補のタイミングである第2のページング受信機会を特定することと、前記ユーザ装置が、前記第1の移動ネットワークと前記第2の移動ネットワークのうちの優先移動ネットワークを特定することと、前記ユーザ装置が、前記第1のページング受信機会と前記第2のページング受信機会とが重複する重複タイミングが存在するか否かを判断することと、前記ユーザ装置が、前記重複タイミングが存在すると判断した場合、第1の制御又は第2の制御を行うことと、を有する。前記第1の制御は、前記重複タイミングにおいて前記優先移動ネットワークからのページングメッセージのみを受信する制御である。前記第2の制御は、前記第1の移動ネットワークと前記第2の移動ネットワークのうちの前記優先移動ネットワークではない非優先移動ネットワークに対して、ページング受信機会を変更するための要求を送信する制御である。
【0007】
第3の態様に係るユーザ装置は、第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークに登録し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークに登録する。前記ユーザ装置は、プロセッサを有する。前記プロセッサは、前記第1の移動ネットワークから前記ユーザ装置への下りリンク送信を行わない非実行タイミング又は前記下りリンク送信を行う実行タイミングのいずれかを設定する設定情報を前記第1の移動ネットワークから受信する処理を実行する。前記プロセッサは、前記設定情報により設定されたタイミングを特定するための特定情報を、前記第2の移動ネットワークに送信する処理を実行する。
【0008】
第4の態様に係るユーザ装置は、第1の加入者識別モジュール(SIM)を用いて第1の移動ネットワークに登録し、第2のSIMを用いて第2の移動ネットワークに登録する。前記ユーザ装置は、プロセッサを有する。前記プロセッサは、前記ユーザ装置が前記第1の移動ネットワークからページングメッセージを受信する候補のタイミングである第1のページング受信機会を特定する処理を実行する。前記プロセッサは、前記ユーザ装置が前記第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信する候補のタイミングである第2のページング受信機会を特定する処理を実行する。前記プロセッサは、前記第1の移動ネットワークと前記第2の移動ネットワークのうちの優先移動ネットワークを特定する処理を実行する。前記プロセッサは、前記第1のページング受信機会と前記第2のページング受信機会とが重複する重複タイミングが存在するか否かを判断する処理を実行する。前記プロセッサは、前記重複タイミングが存在すると判断した場合、第1の制御又は第2の制御を行う処理を実行する。前記第1の制御は、前記重複タイミングにおいて前記優先移動ネットワークからのページングメッセージのみを受信する制御である。前記第2の制御は、前記第1の移動ネットワークと前記第2の移動ネットワークのうちの前記優先移動ネットワークではない非優先移動ネットワークに対して、ページング受信機会を変更するための要求を送信する制御である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るユーザ装置の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係るコアネットワーク装置の構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に係るユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るシグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図7】第1実施形態の動作例1に係る動作を示す図である。
【
図8】第1実施形態の動作例2に係る動作を示す図である。
【
図9】第1実施形態の動作例3に係る動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ユーザ装置が単一の無線受信機のみを有する場合において、第1の移動ネットワークからの下りリンク送信と第2の移動ネットワークからの下りリンク送信とが同時期に発生すると、第1の移動ネットワーク及び第2の移動ネットワークのうち一方の移動ネットワークからの下りリンク送信を受信できない可能性がある。特に、第1の移動ネットワークと第2の移動ネットワークとがそれぞれ異なる通信事業者に属する場合、移動ネットワーク間の協調によりそのような問題を回避することが難しい。
【0011】
本開示は、複数のSIMを搭載可能なユーザ装置において複数の移動ネットワークからの下りリンク送信の衝突を回避可能にすることを目的とする。
【0012】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0013】
(移動通信システム)
一実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。一実施形態に係る移動通信システムは3GPPの5Gシステムであるが、移動通信システムには、LTEが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0014】
図1は、一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、移動通信システムは、第1の通信事業者が運用する第1の移動ネットワーク40-1と、第1の通信事業者とは異なる第2の通信事業者が運用する第2の移動ネットワーク40-2と、ユーザ装置(UE:User Equipment)100とを有する。UE100は、後述の第1のSIM140-1を使用して第1の移動ネットワーク40-1に登録でき、第2のSIM140-2を使用して第2の移動ネットワーク40-2に登録できる。以下、第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2を区別しないときは単に移動ネットワーク40と呼ぶ。
【0016】
各移動ネットワーク40は、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。
【0017】
UE100は、移動可能な装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればどのような装置であってもよい。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)、タブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、及び/又は飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0018】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、NG-RANノードと呼ばれることもある。gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイス(非図示)を介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、及び/又はモビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0019】
なお、gNBがLTEのコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)に接続されてもよいし、LTEの基地局が5GCに接続されてもよい。また、LTEの基地局とgNBとが基地局間インターフェイスを介して接続されてもよい。
【0020】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMF300は、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するエリアの情報を管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0021】
図2は、UE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【0022】
図2に示すように、UE100は、受信部110、送信部120、制御部130、SIM140-1(第1のSIM)、SIM140-2(第2のSIM)、及びユーザインタフェース150を有する。UE100は、3つ以上のSIM140を有してもよい。
【0023】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0024】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0025】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサと電気的に接続された少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0026】
SIM140は、移動ネットワークから提供される移動通信サービスを受けるために加入者を特定する情報を記録する。SIM140は、加入者を特定するための情報の他、通信事業者を特定するための事業者特定情報、および加入者が契約している利用可能なサービスに関する情報を記録してもよい。SIM140は、着脱式のSIMカード(またはUSIMカード)と呼ばれるICカード、すなわち情報カードであってもよい。SIM140は、組み込み型のeSIM(Embedded SIM)であってもよい。
【0027】
SIM140-1(第1のSIM)は、第1の移動ネットワーク40-1を運用する第1の通信事業者からUE100のユーザに割り当てられている識別番号である第1のIMSI(International Mobile Subscriber Identity)を特定する情報を記録する。SIM140-2(第2のSIM)は、第2の移動ネットワーク40-2を運用する第2の通信事業者からUE100のユーザに割り当てられている識別番号である第2のIMSIを特定する情報を記録する。SIM140-1及びSIM140-2は、それぞれ別体の情報カードであってもよいし、同一の情報カードに一体化されてもよい。SIM140-1及びSIM140-2は、eSIM(Embedded SIM)に含まれてもよい。
【0028】
SIM140-1は、第1の通信事業者により管理される。SIM140-2は、第2の通信事業者により管理される。なお、SIM140-1とSIM140-2は、同一の通信事業者に管理されていてもよい。
【0029】
UE100は、SIM140-1を使用して第1の移動ネットワーク40-1に登録すると、第1の移動ネットワーク40-1を介して第1の通信事業者により提供される移動通信サービスを利用できる。また、UE100は、SIM140-2を使用して第2の移動ネットワーク40-2に登録すると、第2の移動ネットワーク40-2を介して第2の通信事業者により提供される移動通信サービスを利用できる。
【0030】
UE100のユーザは、ユーザインタフェース150を介して、SIM140-1とSIM140-2との優先順位を設定してもよい。ユーザは、SIM140-1をSIM140-2よりも優先するように設定してもよいし、SIM140-2をSIM140-1よりも優先するように設定してもよい。
【0031】
図3は、gNB200(基地局)の構成を示す図である。
【0032】
図3に示すように、gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0033】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0034】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0035】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサと電気的に接続された少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0036】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。
【0037】
図4は、AMF300(コアネットワーク装置)の構成を示す図である。
【0038】
図4に示すように、AMF300は、制御部330、及びバックホール通信部340を備える。
【0039】
制御部330は、AMF300における各種の制御を行う。制御部330は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサと電気的に接続された少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0040】
バックホール通信部340は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0041】
図5は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0042】
図5に示すように、ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0043】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0044】
PHYレイヤにおいて、無線フレーム、サブフレーム、スロット、及びシンボルを含むフレーム構造が使用される。無線フレームは、時間軸上で10個のサブフレームで構成される。各サブフレームの長さは1msである。各サブフレームは、複数のスロットで構成される。各スロットは、複数のシンボルで構成される。各サブフレームは、周波数軸上で複数個のリソースブロック(RB)を含む。各リソースブロックは、周波数軸上で複数個のサブキャリアを含む。UE100に割り当てられる無線リソース(時間・周波数リソース)のうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット、シンボル)により特定できる。
【0045】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御情報を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)として用いることができる領域である。
【0046】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0047】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0048】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0049】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPが無くてもよい。
【0050】
図6は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0051】
図6に示すように、制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0052】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRC接続状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。また、RRC接続が中断(サスペンド)されている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0053】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300のNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。
【0054】
なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。
【0055】
(第1実施形態)
上述したようなシステム構成を前提として、第1実施形態について説明する。
【0056】
一実施形態において、UE100は、単一の無線受信機(受信部110)のみを有する。この場合において、第1の移動ネットワーク40-1からの下りリンク送信と第2の移動ネットワーク40-2からの下りリンク送信とが同時期に発生すると、第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2のうち一方の移動ネットワーク40からの下りリンク送信を受信できない可能性がある。特に、第1の移動ネットワーク40-1と第2の移動ネットワーク40-2とがそれぞれ異なる通信事業者に属する場合、移動ネットワーク40間の協調によりそのような問題を回避することが難しい。以下において、このような問題を回避するための第1実施形態について説明する。
【0057】
第1実施形態に係るUE100は、第1のSIM(SIM140-1)を用いて第1の移動ネットワーク40-1に登録し、第2のSIM(SIM140-2)を用いて第2の移動ネットワーク40-2に登録する。
【0058】
UE100は、第1の移動ネットワーク40-1からUE100への下りリンク送信を行わない非実行タイミング又は下りリンク送信を行う実行タイミングのいずれかを設定する設定情報を第1の移動ネットワーク40-1から受信する。UE100が、前記設定情報により設定されたタイミングを特定するための特定情報を、第2の移動ネットワーク40-2に送信する。非実行タイミングが設定されるUE100は、当該非実行タイミングにおいてPDCCHの監視が免除される。
【0059】
これによって、第2の移動ネットワーク40-2は、第1の移動ネットワーク40-1からUE100に設定した非実行タイミングに合わせるように第2の移動ネットワーク40-2がUE100への下りリンク送信のタイミングを決定できる。また、第2の移動ネットワーク40-2は、第1の移動ネットワーク40-1からUE100に設定した実行タイミングを避けるように第2の移動ネットワーク40-2がUE100への下りリンク送信のタイミングを決定できる。よって、UE100において第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2からの下りリンク送信の衝突を回避可能である。
【0060】
非実行タイミングの一例は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRC接続状態であるUE100が第1の移動ネットワーク40-1のキャリア周波数とは異なるキャリア周波数を測定するために第1の移動ネットワーク40-1との通信を中断する測定タイミングである。このような測定タイミングは、測定ギャップと呼ばれることがある。測定ギャップは、測定ギャップを設定するギャップ設定情報を含む専用RRCメッセージによってgNB200からUE100に設定される。ギャップ設定情報は、測定の周期、測定の開始タイミング、及び/又は1回の測定の継続期間などを示す情報を含む。測定の周期は、測定ギャップ繰り返し期間(Measurement Gap Repetition Period (MGRP))と呼ばれることがある。1回の測定の継続期間は、測定ギャップ長(Measurement Gap Length(MGL))と呼ばれることがある。測定の周期及び1回の測定の継続期間の組合せは、測定ギャップパターンと呼ばれることがある。
【0061】
実行タイミングの一例は、下りリンクリソースが周期的に割り当てられる下りリンク通信期間(以下、単に「下りリンク通信期間」と呼ぶ。)である。下りリンク通信期間は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRC接続状態であるUE100に設定される下りリンクSPS(Semi-Persistent Scheduling)によって特定される。下りリンクSPSでは、周期は専用RRCメッセージでUE100に設定され、割り当てリソースブロックはPDCCHでUE100に指定される。UE100は、PDCCHで指定されたリソースをRRCで設定された周期で用いる。
【0062】
実行タイミングの他の例は、RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態におけるUE100が移動ネットワーク(第1の移動ネットワーク40-1又は第2の移動ネットワーク)からページングメッセージを受信する候補のタイミングである。このようなタイミングは、ページング受信機会と称される。
【0063】
ここで、ページング受信機会について説明する。UE100は、消費電力を削減するために、DRX(Discontinuous Reception)動作を行うことが可能である。DRX動作を行うRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態におけるUE100は、着信などのUE100宛の情報を通知するためのページングを受信するためにPDCCHを間欠的に監視する。UE100は、ページング用のグループ識別子(P-RNTI)を用いて、PDCCHをデコードし、ページングチャネルの割り当て情報を取得する。UE100は、当該割当情報に基づいて、ページングメッセージを取得する。
【0064】
RRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態のDRX動作におけるページングのためのPDCCH監視タイミングは、ページング機会(Paging Occasion(PO))と称される。POは、無線フレームであるPaging Frame(PF)に対応付けられる。1つのPFに対応付けられるPOは、当該PF内にスタートしてもよいし、当該PFの後にスタートしてもよい。POは、サブフレーム単位で、1つ又は複数のサブフレームで構成されてもよい。POは、シンボル単位で、複数のシンボルで構成されてもよい。1つのPFは、1つ又は複数のPOに対応付けられている。PFとPOとの対応関係を規定するパラメータは、gNB200がブロードキャストするSIB(System Information Block)に含まれるページング関連情報に含まれる。
【0065】
gNB200及びUE100は、UE100のページング受信機会に対応するPF及びPOを、下記のように計算する。
【0066】
UE100のページング受信機会に対応するPFのシステムフレーム番号(SFN)は、下記の式(1)から求められる。
【0067】
(SFN + PF_offset) mod T = (T div N) * (UE_ID mod N) …(1)
【0068】
当該PFに対応付けられているPOのうち、UE100のページング受信機会に対応するPOは、下記の式(2)から求められるインデックスi_sによって決定される。
【0069】
i_s = floor(UE_ID/N) mod Ns …(2)
【0070】
ここで、Tは、ページングを監視するためのUE100のDRXサイクルである。DRXサイクルは、ページング周期と呼ばれることがある。DRXサイクルは、無線フレームの数で表される。また、Tは、gNB200がSIB(System Information Block)によりブロードキャストするデフォルトDRX値、及びUE100に設定されるUE固有DRX値のうち、何れか小さい方である。UE固有DRX値は、RRCメッセージ又はNASメッセージによりUEに設定される。なお、UE固有DRX値が設定されていない場合、UE100は、デフォルトDRX値を適用する。Nは、TにおけるPFの数である。Nsは、1PFに対応付けられるPOの数である。UE_IDは、「5G-S-TMSI mod 1024」により求められる値である。PF_offsetは、PFを決定するために使用される値である。
【0071】
N、Ns、及びPF_offsetは、SIBに含まれるページング関連情報に含まれる。
【0072】
5G-S-TMSI(Temporary Mobile Subscriber Identity)は、UE100が移動ネットワーク40に登録する際にAMF300によってUE100に割り当てられる一時的加入者識別子である。
【0073】
このようにして計算されるUE100のページング受信機会に対応するPF及びPOにおいて、UE100は、ページング(具体的には、PDCCH)を監視する。gNB200は、UE100に対するページングの送信が必要な場合、UE100のページング受信機会に対応するPF及びPOにおいてUE100宛てのページングを送信する。
【0074】
(第1実施形態の動作例1)
図7は、第1実施形態の動作例1に係る動作を示す図である。まず、第1実施形態の動作例1に係る動作の概要について説明する。
【0075】
動作例1の初期状態では、UE100が第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2に登録している。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRC接続状態である。UE100は、第2の移動ネットワーク40-2においてRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態である。
【0076】
図7に示すように、ステップS101において、UE100は、第1の移動ネットワーク40-1に属するgNB200-1からギャップ設定情報を受信する。UE100は、ギャップ設定情報に基づいて自UE100に設定する測定ギャップを特定する。
【0077】
ステップS102において、UE100は、自UE100に設定する測定ギャップを特定するための特定情報を第2の移動ネットワーク40-2に属するAMF300-2に送信する。
【0078】
ステップS103において、AMF300-2は、特定情報によって特定される測定ギャップに基づいて、UE100のページング受信機会を決定する。
【0079】
ステップS104において、AMF300-2は、決定したUE100のページング受信機会を設定するための情報(以下、「ページング設定情報」と呼ぶ。)をUE100に送信する。ページング設定情報は、上述の5G-S-TMSI、UE固有DRX値等を示す情報を含む。
【0080】
次に、S102~S104の各動作を詳細に説明する。
【0081】
S102において、特定情報を送信する際に、UE100は、gNB200-2を介して特定情報をAMF300-2に送信する。UE100は、特定情報を、ページング受信機会を設定又は変更するための要求と一緒に送信してもよい。
【0082】
特定情報を送信する際に、UE100は、gNB200-2に対してRACH(Random Access Channel)手順を行う。UE100は、gNB200-2に対してRRC接続を確立した後に、特定情報を送信してもよい。UE100は、gNB200-2に対してRRC接続を確立する前に、RACH手順におけるMSG3メッセージとともに特定情報を送信してもよい。
【0083】
ここで、UE100がRRC接続を確立した後において特定情報を送信する場合、UE100は、RRC接続状態において、gNB200-2を介してページング設定情報をAMF300-2から受信する(ステップS104)。
【0084】
また、UE100がMSG3メッセージとともに特定情報を送信する場合、UE100は、gNB200-2に対してRRC接続を確立していない状態(RRCインアクティブ状態又はRRCアイドル状態)において、gNB200-2を介してページング設定情報をAMF300-2から受信してもよい(ステップS104)。gNB200-2は、MSG3メッセージとともに特定情報をUE100から受信する場合、RRC接続を確立するためのメッセージをUE100に送信せずに、特定情報をAMF300-2に転送する。そして、gNB200-2は、AMF300-2から受信したページング設定情報をUE100に送信する。
【0085】
UE100は、特定情報を送信する際に、第1の移動ネットワーク40-1との通信への悪影響を与えないために、第1の移動ネットワーク40-1から設定される測定ギャップ中に特定情報を送信してもよい。或いは、特定情報を送信する前に(ステップS102の前に)、UE100は、gNB200-1に対してRRC接続の中断を要求し、RRC接続が中断された状態(RRCインアクティブ状態)に遷移してから、特定情報を送信してもよい。
【0086】
ステップS103において、AMF300-2は、UE100が第2の移動ネットワーク40-2からページングメッセージを受信するためのページング受信機会が測定ギャップ内になるように当該ページング受信機会を決定する。例えば、AMF300-2は、まず、特定情報によって、UE100の測定ギャップに対応する複数のサブフレームを特定する。次に、AMF300-2は、特定した複数のサブフレームのうちの一部のサブフレームを、UE100のページング受信機会に対応するPOとして決定する。必要に応じて、AMF300-2は、gNB200-2がブロードキャストするSIBに含まれるページング関連情報をgNB200-2から取得し、ページング関連情報参照してPOを決定してもよい。
【0087】
ステップS104において、AMF300-2は、ページング設定情報を、gNB200-2を介してUE100に送信する。
【0088】
上述のMSG3は、RRCインアクティブ状態においてRRC接続の回復を要求するためのメッセージ(RRCResumeRequestメッセージ)であってもよいし、RRCアイドル状態においてRRC接続の確立を要求するためのメッセージ(RRCSetupRequestメッセージ)であってもよい。
【0089】
動作例1では、UE100は、所定のトリガ条件を満たす場合に特定情報を送信してもよい。以下において、特定情報を送信するトリガ条件について説明する。所定のトリガ条件は、少なくとも次の第1の条件乃至第3の条件の1つを含む。
【0090】
第1の条件は、UE100が第2の移動ネットワーク40-2からページングメッセージを受信するためのページング受信機会と、第1の移動ネットワーク40-1からUE100に設定されている測定ギャップとが重複しないことである。ページング受信機会と測定ギャップとが重複する重複タイミングが存在すれば、UE100は当該重複タイミングにおいてページングを受信できるので、特定情報を送信する必要がない。
【0091】
UE100がギャップ設定情報をgNB200-1から受信した後(ステップS101の後)、ステップS102の前において、gNB200-2が送信するSIBに含まれる情報と、第2の移動ネットワーク40-2に登録する際にAMF300-2から割り当てられる一時的加入者識別子(5G-S-TMSI)とに基づいて、ページング受信機会を特定する。UE100は、特定したページング受信機会と測定ギャップとが重複するか否かを判断し、重複しないと判断した場合、ステップS102において特定情報を送信する。
【0092】
第2の条件は、UE100が第1の移動ネットワーク40-1と確立している無線ベアラ(ユーザデータ送受信用のベアラ)の優先度が閾値以上であることである。無線ベアラの優先度は、当該無線ベアラにマッピングされるユーザデータのトラフィックの種類によって決定される。例えば、トラフィックの種類が音声通話である場合、優先度が高く決定され、トラフィックの種類がメール、チャット、及び/又はWeb閲覧などである場合、優先度が低く決定される。
【0093】
無線ベアラの優先度が高い(優先度が閾値以上)場合、当該無線ベアラでの下りリンクユーザデータの受信と第2の移動ネットワーク40-2に対応するページング受信機会とが衝突しないために、UE100は設定情報を送信する。一方、無線ベアラの優先度が低い場合、当該無線ベアラでの下りリンクユーザデータの受信と第2の移動ネットワーク40-2に対応するページング受信機会とが衝突する場合、ページングの受信をユーザデータの受信よりも優先してもよいので、UE100は特定情報を送信する必要がない。
【0094】
第3の条件は、UE100を所持するユーザが、第1の移動ネットワーク40-1に対応するSIM140-1を、第2の移動ネットワーク40-2に対応するSIM140-2よりも優先するように設定していることである。
【0095】
動作例1では、設定情報は、非実行タイミングとして、RRC接続状態におけるDRX動作の休止期間を設定してもよい。特定情報は、非実行タイミングとして休止期間を特定してもよい。
【0096】
動作例1では、特定情報は、UE100がページングメッセージを受信可能なタイミングを特定してもよい。AMF300-2は、ページング受信機会が当該タイミング内になるように当該ページング受信機会を決定してもよい。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1から設定された非実行タイミングに基づいてこのような受信可能なタイミングを決定してもよい。
【0097】
(第1実施形態の動作例2)
図8は、第1実施形態の動作例2に係る動作を示す図である。
【0098】
動作例2の初期状態では、UE100が第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワークに登録している。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態である。UE100が第2の移動ネットワークにおいてRRC接続状態である。
【0099】
図8に示すように、ステップS111において、UE100は、第1の移動ネットワーク40-1に属するgNB200-1から、UE100が第1の移動ネットワーク40-1からページングメッセージを受信するためのページング受信機会を設定するための設定情報を受信する。設定情報は、gNB200-1がブロードキャストするSIBに含まれる、ページング受信機会に対応するPF及びPOを計算するためのパラメータを含む。このようなパラメータは、上述のデフォルトDRX値、PF_offset、N、及びNsなどを含む。
【0100】
UE100は、設定情報に含まれるパラメータと5G-S-TMSIとUE固有DRX値と、に基づいてページング受信機会に対応するPF及びPOを特定する。
【0101】
ステップS112において、UE100は、ページング受信機会を特定するための特定情報を第2の移動ネットワーク40-2に属するgNB200-2に送信する。特定情報は、UE100が特定したページング受信機会に対応するPF及びPOを示す情報であってもよい。特定情報は、PF及びPOを特定するための情報(5G-S-TMSI、デフォルトDRX値、UE固有DRX値、T、N、Ns、PF_offset等)であってもよい。
【0102】
ステップS113において、gNB200-2は、特定情報によって特定されるページング受信機会(PF及びPO)に基づいて、UE100に対して下りリンクユーザデータを送信しないタイミングを決定する。例えば、gNB200-2は、ページング受信機会に対応するPOに属するサブフレームを、UE100に対して下りリンクユーザデータを送信しないタイミングとして決定する。
【0103】
ステップS114において、gNB200-2は、決定したタイミングを設定するための情報をUE100に送信する。
【0104】
動作例2では、UE100は、所定のトリガ条件を満たす場合に特定情報を送信してもよい。所定のトリガ条件は、上述の第3の条件を含んでもよい。
【0105】
(第1実施形態の動作例3)
図9は、第1実施形態の動作例3に係る動作を示す図である。
【0106】
動作例3の初期状態では、UE100が第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2に登録している。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRC接続状態である。UE100が第2の移動ネットワーク40-2においてRRC接続状態である。
【0107】
図9に示すように、ステップS121において、UE100は、第1の移動ネットワーク40-1に属するgNB200-1から、下りリンク通信期間を設定するための設定情報(下りリンクSPSを設定する情報)を受信する。UE100は、設定情報に基づいて下りリンク通信期間を特定する。
【0108】
ステップS122において、UE100は、gNB200-1により設定される下りリンク通信期間を特定するための特定情報を第2の移動ネットワーク40-2に属するgNB200-2に送信する。特定情報は、下りリンク通信期間を示す情報であってもよい。特定情報は、下りリンクSPSを設定する情報であってもよい。
【0109】
ステップS123において、gNB200-2は、特定情報によって特定される下りリンク通信期間に基づいて、UE100に対して下りリンクユーザデータを送信しないタイミングを決定する。例えば、gNB200-2は、下りリンク通信期間に属するサブフレームを、UE100に対して下りリンクユーザデータを送信しないタイミングとして決定する。
【0110】
ステップS124において、gNB200-2は、決定したタイミングを設定するための情報をUE100に送信する。
【0111】
動作例3では、UE100が特定情報を送信するトリガ条件を触れていない。動作例3の変更例1では、UE100は、所定のトリガ条件を満たす場合に特定情報を送信する。所定のトリガ条件は、少なくとも上述の第2の条件、第3の条件、及び後述の第4の条件の1つを含む。第4の条件は、UE100が第1の移動ネットワーク40-1と確立している無線ベアラの優先度が、UE100が第2の移動ネットワーク40-2と確立している無線ベアラの優先度よりも高いことである。
【0112】
(第2実施形態)
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。
【0113】
第1実施形態では、UE100が、第1の移動ネットワーク40-1がUE100に設定した実行タイミング又は非実行タイミングを特定するための特定情報を第2の移動ネットワーク40-2に送信することにより、下りリンク送信の衝突を回避可能にしていた。第2実施形態では、主にUE100の自律的な動作によって、このような問題を解決する。
【0114】
第2実施形態に係るUE100は、第1のSIM(SIM140-1)を用いて第1の移動ネットワーク40-1に登録し、第2のSIM(SIM140-2)を用いて第2の移動ネットワーク40-2に登録する。
【0115】
UE100は、第1の移動ネットワーク40-1からページングメッセージを受信する第1のページング受信機会を特定する。UE100は、第2の移動ネットワークからページングメッセージを受信する第2のページング受信機会を特定する。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1と第2の移動ネットワークのうちの優先移動ネットワークを特定する。UE100は、第1のページング受信機会と第2のページング受信機会とが重複する重複タイミングが存在するか否かを判断する。UE100は、重複タイミングが存在すると判断した場合、第1の制御又は第2の制御を行う。第1の制御は、重複タイミングにおいて優先移動ネットワークからのページングメッセージのみを受信する制御である。第2の制御は、第1の移動ネットワーク40-1と第2の移動ネットワークのうちの優先移動ネットワークではない非優先移動ネットワークに対して、ページング受信機会を変更するための要求を送信する制御である。
【0116】
第1の制御によって、UE100において第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2からのページングメッセージの送信が衝突する場合、優先ネットワークに対応するページングメッセージの受信を確保できる。
【0117】
第2の制御によって、UE100において第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2からのページングメッセージの送信の衝突を回避できる。
【0118】
【0119】
第2実施形態の初期状態では、UE100が第1の移動ネットワーク40-1及び第2の移動ネットワーク40-2に登録している。UE100は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態である。UE100が第2の移動ネットワーク40-2においてRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態である。
【0120】
図10に示すように、ステップS201において、UE100は、第1の移動ネットワーク40-1からページングメッセージを受信するための第1のページング受信機会(PF及びPO)を特定する。ページング受信機会は、上述のデフォルトDRX値、UE固有DRX値、PF_offset、N、Ns、及び5G-S-TMSIなどによって特定される。
【0121】
ステップS202において、UE100は、第2の移動ネットワーク40-2からページングメッセージを受信するための第2のページング受信機会(PF及びPO)を特定する。ページング受信機会は、上述のデフォルトDRX値、UE固有DRX値、PF_offset、N、Ns、及び5G-S-TMSIなどによって特定される。
【0122】
ステップS203において、UE100は、第2の移動ネットワーク40-2と第1の移動ネットワーク40-1のうちの優先移動ネットワーク40を特定する。ここで、UE100は、次の第1の方法又は第2の方法で優先移動ネットワーク40を特定する。
【0123】
第1の方法は、ページング周期(すなわち、上述式(1)におけるTの値)の長い移動ネットワーク40を優先移動ネットワーク40として特定する方法である。一定期間内において、ページング周期の短い移動ネットワーク40においてUE100のページング受信機会に対応するPOの数が、ページング周期の長い移動ネットワーク40においてUE100のページング受信機会に対応するPOの数よりも多い。そのため、UE100は、ページング周期の短い移動ネットワーク40からのページングメッセージの受信に関して、重複タイミングにおいて受信しなくても、ページング受信機会に対応する他のPOで受信できる。
【0124】
第2の方法は、SIM140-1とSIM140-2のうち、ユーザが優先すべきと設定しているSIMに対応する移動ネットワーク40を優先移動ネットワーク40として特定する方法である。ここで、UE100が第1の移動ネットワーク40-1を優先移動ネットワークとして特定し、第2の移動ネットワーク40-2を非優先移動ネットワークとして特定することを仮定して説明を進める。
【0125】
ステップS204において、UE100は、ステップS201において特定した第1のページング受信機会(PF及びPO)と、ステップS202において特定した第2のページング受信機会(PF及びPO)とが重複する重複タイミングが存在するか否かを判断する。
【0126】
重複タイミングが存在すると判断する場合(ステップS204:YES)、ステップS205において、UE100は、重複タイミングにおいて第1の移動ネットワーク40-1からのページングメッセージのみを受信する(第1の制御)。又は、ステップS205において、UE100は、第2の移動ネットワーク40-2に対して、ページング受信機会を変更するための要求を送信する(第2の制御)。
【0127】
UE100が第2の移動ネットワーク40-2に対して、ページング受信機会を変更するための要求を送信する場合、第2の移動ネットワーク40-2に属するAMF300-2は、当該要求をgNB200-2を介して受信する。AMF300-2は、当該要求に応じて、UE100に割り当てる一時的加入者識別子(5G-S-TMSI)を変更する。AMF300-2は、変更後の一時的加入者識別子を特定する情報をUE100に送信する。ここで、一時的加入者識別子を変更することは、一時的加入者識別子を新に生成すること、又は、既にUE100に割り当てている一時的加入者識別子にオフセットを設けることである。変更後の一時的加入者識別子を特定する情報は、新しい一時的加入者識別子を示す情報であってもよいし、一時的加入者識別子に設けるオフセットを示す情報であってもよい。
【0128】
UE100から第2の移動ネットワーク40-2に対して送信する、ページング受信機会を変更するための要求は、変更要求(変更をAMF300-2に一任する)であってもよく、自UE100に割り当てられている一時的加入者識別子(5G-S-TMSI)を特定の一時的加入者識別子への変更を要求する要求であってもよい。後者の場合、UE100は、新たな5G-S-TMSIの候補を指定し、要求に含めて送信する。UE100は、移動ネットワーク40-1から割り当てられている5G-S-TMSI又は5G-S-TMSIの一部(例えば、上述の「UE_ID」)を通知してもよい。
【0129】
AMF300-2は、一時的加入者識別子にオフセットを設ける場合は、UE100をページングする際に、UE100宛のページングメッセージに、当該オフセットを示す情報を含めて、gNB200-2に送信する。
【0130】
(その他実施形態)
第1実施形態では、UE100は、下りリンク送信を行う実行タイミングを設定する設定情報を第1の移動ネットワーク40-1から受信し、前記設定情報により設定された下りリンク送信を行う実行タイミングを特定するための特定情報を、第2の移動ネットワーク40-2に送信していた。その他実施形態では、UE100は、上りリンク送信を行う実行タイミングを設定する設定情報を第1の移動ネットワーク40-1から受信し、前記設定情報により設定された上りリンクタイミングを特定するための特定情報を、第2の移動ネットワーク40-2に送信してもよい。上りリンク送信を行う実行タイミングの一例は、上りリンクリソースが周期的に割り当てられる下りリンク通信期間(以下、単に「下りリンク通信期間」と呼ぶ。)である。下りリンク通信期間は、第1の移動ネットワーク40-1においてRRC接続状態であるUE100に設定される上りリンクSPSによって特定される。上りリンクSPSでは、周期は専用RRCメッセージでUE100に設定され、割り当てリソースブロックはPDCCHでUE100に指定される。UE100は、PDCCHで指定されたリソースをRRCで設定された周期で用いる。
【0131】
UE100は、2つのSIM140(SIM140-1及びSIM140-2)を同時に使用する際に移動ネットワーク40へ通知を行っても良い。当該通知が行われた場合、先に登録が完了している第1の移動ネットワーク40-1は、UE100が第2の移動ネットワーク40-2への登録および通信を行うためのギャップ設定を行ってもよい。UEは当該ギャップ設定を用いて、第2の移動ネットワーク40-2へアクセスを行う。また、UE100は、3つ以上のSIM140を同時に使用する際に、その旨を移動ネットワーク40へ通知を行っても良い。この場合、先に登録が完了している一の移動ネットワーク40は、UE100が残りの2つの移動ネットワーク40への登録および通信を行うためのギャップ設定を行ってもよい。
【0132】
UE100、gNB200、及びAMF300が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。UE100及びeNB200が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップセットが提供されてもよい。
【0133】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0134】
本願は、日本国特許出願第2019-214616号(2019年11月27日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。