(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005317
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】リークディテクタ及びリークディテクタ用イオン源
(51)【国際特許分類】
H01J 27/26 20060101AFI20230111BHJP
H01J 37/02 20060101ALI20230111BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01J27/26
H01J37/02
H01J37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107137
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】海野 善夫
(72)【発明者】
【氏名】東 正久
(72)【発明者】
【氏名】井川 秋夫
(72)【発明者】
【氏名】寺本 晃
(72)【発明者】
【氏名】石野田 黎
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA21
5C101DD02
5C101DD16
5C101DD26
(57)【要約】
【課題】イオン源のサイズや重量をほぼ変えることなく、電極間の絶縁耐久性を向上させる。
【解決手段】被検体Xからのガスを真空引きされた分析管4に導くとともに、そのガスを分析管4内に設けられたイオン源6を用いてイオン化して検出することで、被検体Xをリーク検査するリークディテクタ100であって、イオン源6が、ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメント61と、フィラメント61と電気的に接続された電極65と、電極65が貫通するとともに、フィラメント61が配置される内部空間6Sと外部とを仕切るベース部材66と、ベース部材66に形成された電極用貫通孔66h内に設けられて、電極65及びベース部材66を絶縁する第1絶縁部材67と、前記電極65の周囲に設けられて、ベース部材66の内部空間6Sに臨む面よりも内部空間6S側に延びる第2絶縁部材68とを備えるようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からのガスを真空引きされた分析管に導くとともに、そのガスを前記分析管内に設けられたイオン源を用いてイオン化して検出することで、前記被検体をリーク検査するリークディテクタであって、
前記イオン源が、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメントと、
前記フィラメントと電気的に接続された電極と、
前記電極が貫通するとともに、前記フィラメントが配置される内部空間と外部とを仕切るベース部材と、
前記ベース部材に形成された電極用貫通孔内に設けられて、前記電極及び前記ベース部材の間に介在する第1絶縁部材と、
前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材の前記内部空間に臨む面よりも前記内部空間側に延びる第2絶縁部材とを備える、リークディテクタ。
【請求項2】
前記第2絶縁部材が、前記第1絶縁部材とは別体である、請求項1記載のリークディテクタ。
【請求項3】
前記第2絶縁部材が、前記電極が差し通される差込孔が形成されたものである、請求項1又は2記載のリークディテクタ。
【請求項4】
前記第2絶縁部材が筒状をなし、その軸方向に沿った寸法が2mm以上である、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のリークディテクタ。
【請求項5】
被検体をリーク検査するリークディテクタに用いられるものであり、真空引きされた分析管内に設けられて、当該分析管に導かれた前記被検体からのガスをイオン化させるリークディテクタ用イオン源であって、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメントと、
前記フィラメントと電気的に接続された電極と、
前記電極が貫通するとともに、前記フィラメントが配置される内部空間と外部とを仕切るベース部材と、
前記ベース部材に形成された電極用貫通孔内に設けられて、前記電極及び前記ベース部材の間に介在する第1絶縁部材と、
前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材の前記内部空間に臨む面よりも前記内部空間側に延びる第2絶縁部材とを備える、リークディテクタ用イオン源。
【請求項6】
被検体からのガスを真空引きされた分析管に導くとともに、そのガスを前記分析管内に設けられたイオン源を用いてイオン化して検出することで、前記被検体をリーク検査するリークディテクタであって、
前記イオン源が、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメントと、
前記フィラメントと電気的に接続された電極と、
前記電極が貫通するとともに、前記フィラメントが配置される内部空間と外部とを仕切るベース部材と、
前記ベース部材に形成された電極用貫通孔内に設けられて、前記電極及び前記ベース部材を絶縁する第1絶縁部材と、
前記第1絶縁部材よりも前記内部空間側に設けられて当該第1絶縁部材を覆うカバー部材とを備える、リークディテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リークディテクタ及びリークディテクタ用イオン源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリークディテクタとしては、特許文献1に示すように、被検体に流入させたヘリウムガスを分析管に導いて検出する所謂ヘリウムリークディテクタと称されるものがある。
【0003】
このリークディテクタは、分析管を真空ポンプにより真空引きすることでヘリウムを導き、この分析管内に設けたイオン源によりヘリウムをイオン化させる構成となっている。
【0004】
イオン源についてより詳細に説明すると、このイオン源は、フィラメントが取り付けられた一対の電極間に電流を流すことで、フィラメントが加熱されて熱電子が放出され、この熱電子によりヘリウムをイオン化させてイオンコレクタで検出するように構成されている。
【0005】
かかる構成において、電極は、イオン源の内部と外部とを仕切るベース部材に支持されている。より具体的に説明すると、電極は、ベース部材の貫通孔に嵌め込まれた絶縁物たるガラスを貫通して設けられており、このガラスにより、電極とベース部材との間が絶縁されるとともに、電極間の絶縁が保たれている。
【0006】
ところが、上述した真空ポンプに用いられているオイルや被検体に付着しているオイルに由来する成分が、真空引きされている分析管に引き寄せられてイオン源付近に飛来すると、フィラメントの熱により炭化されて、その炭化物が上述したガラスに付着してしまう。その結果、付着した炭化物により、電極とベース部材との間の絶縁を保つことができなくなり、電極間が橋絡されて絶縁破壊が発生し、熱電子が放出されなくなる等の問題が生じる。
【0007】
こうした絶縁破壊を防ぐべく、電極とベース部材との距離を大きく取ることが考えられるが、この場合は、電極周りの部品の大型化や、これに伴う重量の増大などが引き起こされ、イオン源の取り扱いが不便になるといった別の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、電極間の絶縁耐久性を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、被検体からのガスを真空引きされた分析管に導くとともに、そのガスを前記分析管内に設けられたイオン源を用いてイオン化して検出することで、前記被検体をリーク検査するリークディテクタであって、前記イオン源が、前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメントと、前記フィラメントと電気的に接続された電極と、前記電極が貫通するとともに、前記フィラメントが配置される内部空間と外部とを仕切るベース部材と、前記ベース部材に形成された電極用貫通孔内に設けられて、前記電極及び前記ベース部材の間に介在する第1絶縁部材と、前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材の前記内部空間に臨む面よりも前記内部空間側に延びる第2絶縁部材とを備える、リークディテクタに関する。
【0011】
本発明の第2の態様は、被検体をリーク検査するリークディテクタに用いられるものであり、真空引きされた分析管内に設けられて、当該分析管に導かれた前記被検体からのガスをイオン化させるリークディテクタ用イオン源であって、前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメントと、前記フィラメントと電気的に接続された電極と、前記電極が貫通するとともに、前記フィラメントが配置される内部空間と外部とを仕切るベース部材と、前記ベース部材に形成された電極用貫通孔内に設けられて、前記電極及び前記ベース部材の間に介在する第1絶縁部材と、前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材の前記内部空間に臨む面よりも前記内部空間側に延びる第2絶縁部材とを備える、リークディテクタ用イオン源に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベース部材における内部空間に臨む面よりも内部空間側に延びる第2絶縁部材を備えているので、この第2絶縁部材の外周面により電極とベース部材との間の絶縁距離を稼ぐことができ、その結果、電極間の絶縁耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態におけるリークディテクタの全体構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の分析管の内部構成を示す模式図。
【
図4】同実施形態のイオン源の内部構成を示す模式図。
【
図5】同実施形態の第2絶縁体の構成を示す断面図。
【
図6】同実施形態の第2絶縁体による作用効果を説明するための模式図。
【
図7】その他の実施形態における第2絶縁部材の構成を示す断面図。
【
図8】その他の実施形態における第2絶縁部材の構成を示す断面図。
【
図9】その他の実施形態における第2絶縁部材の構成を示す断面図。
【
図10】その他の実施形態におけるカバー部材の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態におけるリークディテクタについて図面を参照しながら説明する。
【0015】
[全体構成]
本実施形態のリークディテクタ100は、例えば真空容器等の被検体Xをリーク検査するために用いられるものであり、
図1に示すように、テストポートPを介して被検体Xに配管接続されるものである。
【0016】
具体的にリークディテクタ100は、油回転ポンプ1、ドラッグポンプ2、及びターボ分子ポンプ3の3台の真空ポンプと、排気経路およびヘリウム導入経路を開閉する3個のバルブV1~V3と、分析管4と、を少なくとも備えている。尚、夫々のバルブV1~V3の開閉状態は、リークディテクタ100の操作者の指示に基づいて制御装置(不図示)により制御される。また、真空ポンプやバルブの数は、
図1に示す態様に限らず、装置構成に応じて適宜変更して構わない。
【0017】
分析管4は、ターボ分子ポンプ3、ドラッグポンプ2、バルブV1を介して油回転ポンプ1に配管接続されている。リーク試験を行う被検体Xは、テストポートP、バルブV2を介して油回転ポンプ1に配管接続されている。また、被検体Xは、テストポートP、バルブV3を介してターボ分子ポンプ3の排気口3aに配管接続されており、このバルブV3は、ヘリウムリークディテクタの逆拡散排気モード(あるいは、中間排気モード、ダイレクトフロー等の他のモードでもよい)の場合に開放される。
【0018】
被検体Xのリーク検査は以下の手順で行う。なおここでは簡単のため、逆拡散排気モードの場合についてのみ説明する。
(1)バルブV2、V3を閉じるとともに、バルブV1を開いて、分析管4内をターボ分子ポンプ3、ドラッグポンプ2、油回転ポンプ1の直列構成で所定の真空度(ヘリウムのバックグラウンド値)以下になるまで真空排気する。
(2)リーク試験の被検体XをテストポートPに取り付ける。
(3)分析管4内が所定のバックグラウンド値以下に低下した後に、バルブV2を開いて、被検体X内を油回転ポンプ1で真空排気(粗引き真空排気)する。
(4)バルブV2を閉じるとともにバルブV3を開いて、分析管4によるリーク検出を開始する。すなわち、被検体Xの外側からリーク試験箇所を介して被検体X内にヘリウム(He)ガスを流入させようとする。
(5)被検体Xのリーク試験箇所にリークがあると、被検体X内にHeガスが侵入する。このHeガスは、開放されているバルブV3、ターボ分子ポンプ3を経て分析管4に到達する。分析管4がヘリウムガスを検出することにより被検体Xのリーク量が測定される。
【0019】
【0020】
分析管4は、密閉容器5内に配置されたイオン源6と、イオン源6によりイオン化されたヘリウムイオンが出射される磁場を形成する永久磁石7と、磁場により曲げられたヘリウムイオンを通過させつつ、その他のイオン(例えば、空気中に含まれる成分由来のイオン)を通過させない中間スリット8と、中間スリット8を通過したヘリウムイオンを検出するイオンコレクタ9とを備える。
そして、本発明に係るリークディテクタ100は、このイオン源6に特徴があるので、以下に詳述する。
【0021】
イオン源6は、
図3に示すように、フィラメント61を加熱して熱電子を放出させ、この熱電子によりヘリウムをイオン化させるものである。
【0022】
イオン源6の具体的な構成の一例としては、
図3に示すように、フィラメント61、アノード62、シールド63、加速スリッド64を備えたものを挙げることができる。かかる構成において、フィラメント61表面から放出された熱電子は、正電位が印加されたアノード62に向かって飛行するが、ここでのアノード62は細い金属線からなるために、熱電子の殆どがアノード62を通過してシールド63へ向かう。そして、シールド63は負電位が印加されているため、熱電子はシールド63に到達することなく折り返し飛行を続ける。こうして往復運動する熱電子が、フィラメント61とシールド63との間に存在する気体に[山本1]衝突させることで、その気体はイオンと電子に電離する。このように電離したイオンは、正極たるアノード62に対して負極となる加速スリッド64に向かって飛行し、加速スリッド64に形成された開口部641を通過して磁場中へ出射される。なお、イオン源6の構成は、これに限らず種々のタイプのものを用いて構わない。
【0023】
本実施形態のイオン源6は、
図4に示すように、フィラメント61と、フィラメント61それぞれに電気的に接続された一対の柱状の電極65とを備え、これらの電極65間に電流を流すことにより、フィラメント61が加熱されて熱電子を放出させるように構成されている。なお、本実施形態では、一対のフィラメント61が設けられており、これらのフィラメント61と電極65との間には導電部材611が介在している。また、上述したアノード62にも電極65が電気的に接続されており、この電極65を介してアノード62に正電位を印加できるようにしてある。
【0024】
かかる構成において、上述した複数本の電極65が電気的に接続されてしまうと絶縁破壊を引き起こすことから、これらの電極65は互いに絶縁されている必要がある。
【0025】
そこで、イオン源6は、
図4及び
図5に示すように、電極65を支持する金属製のベース部材66と、電極65及びベース部材66を絶縁する第1絶縁部材67とを備えている。
【0026】
ベース部材66は、
図5に示すように、電極65を支持するとともに、フィラメント61が配置される内部空間6Sと外部とを仕切る平板状のものである。ここでのベース部材66は、例えば鉄製の円板であり、その厚み方向に貫通させてなる電極用貫通孔66hが形成されている。ただし、ベース部材66の材質や形状は、図示したものに限らず、適宜変更して構わない。
【0027】
電極用貫通孔66hは、電極65が貫通する例えば円形状をなすものである。本実施形態では、複数の電極用貫通孔66hが、例えばベース部材66の中心周りに等間隔に設けられている。ただし、電極用貫通孔66hの形状、配置、及び個数は、図示した態様に限らず、適宜変更して構わない。
【0028】
第1絶縁部材67は、上述した電極用貫通孔66h内に設けられた例えばガラス等の絶縁物である。本実施形態では、電極用貫通孔66hに第1絶縁部材67たるガラスが予め充填されており、このガラスを溶融させた状態で電極65を差し込み冷やすことで、電極65が第1絶縁部材67を貫通した状態でベース部材66に支持されている。これにより、第1絶縁部材67は、電極65とベース部材66との間に介在してこれらを絶縁している。
【0029】
そして、本実施形態のイオン源6は、
図4及び
図5に示すように、第1絶縁部材67と協働して電極65とベース部材66との間を絶縁する第2絶縁部材68をさらに備えている。
【0030】
この第2絶縁部材68は、電極65の周囲に設けられた例えばアルミナなどの絶縁物であり、本実施形態では第1絶縁部材67とは別体のものである。ただし、第2絶縁部材68としては、第1絶縁部材67と一体のものであっても構わない。
【0031】
より具体的に説明すると、第2絶縁部材68は、
図4及び
図5に示すように、例えば円筒状など、電極65が差し込まれる差込孔68hが形成されたものである。この差込孔68hを介して第2絶縁部材68は電極65に差し通されており、これにより第2絶縁部材68は電極65の外周面を取り囲むように配置されている。
【0032】
第1絶縁部材67と第2絶縁部材68とは、互いに対向して配置されており、第1絶縁部材67と第2絶縁部材68との対向面671、681が互いに接触している。すなわち、ここでの第2絶縁部材68は、第1絶縁部材67の内部空間6Sに臨む面から内部空間6S側に延びている。
【0033】
本実施形態では、第1絶縁部材67の対向面671よりも、第2絶縁部材68の対向面681の方が小さく、第1絶縁部材67の対向面671の内側に第2絶縁部材68の対向面681の全体が収まっている。ただし、第2絶縁部材68の対向面681は、第1絶縁部材67の対向面671と同一サイズ(同一形状)であっても良いし、第1絶縁部材67の対向面671よりも大きくても良い。
【0034】
そして、この第2絶縁部材68は、
図5に示すように、上述したベース部材66の内部空間6Sに臨む面661(以下、ベース面661ともいう)よりも内部空間6S側に延びており、言い換えれば、第2絶縁部材68の外周面682が、ベース面661よりも内部空間6S側に延びている。
【0035】
第2絶縁部材68の外周面682は、ベース面661に対して直交する方向又はその直交方向から傾斜した方向に延びており、具体的な形状としては、その延びる方向に沿って波打った波打形状(リップル形状)、同方向に沿って凹凸が設けられた凹凸形状、又は、同方向に沿って真っすぐ延びる直管形状などを挙げることができる。
【0036】
この実施形態では、第2絶縁部材68は、その軸方向がベース面661に対して直交する筒状のものであり、例えば絶縁碍子等を利用したものである。
【0037】
この第2絶縁部材68の外周面682が軸方向に沿って長いほど、ベース部材66と電極65との間の絶縁距離が長くなる。従って、ベース部材66と電極65との間の絶縁距離を稼ぐ観点からは、第2絶縁部材68の軸方向に沿った寸法(高さ寸法)は、長い方が好ましく、具体的には第2絶縁部材68の直径の少なくとも1/2倍以上であることが好ましい。または、第2絶縁部材68の軸方向に沿った寸法(高さ寸法)は、好ましくは、電極65の高さの10%以上、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは50%以上である。あるいは、第2絶縁部材68の軸方向に沿った寸法(高さ寸法)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上である。特に高さ寸法2mm以上の領域には後述する炭化物が付着し難いことが実験より判明した。
【0038】
[本実施形態の作用効果]
このように構成されたリークディテクタ100によれば、ベース部材66におけるベース面661よりも内部空間6S側に延びる第2絶縁部材68を備えているので、この第2絶縁部材68の外周面682により電極65とベース部材66との間の絶縁距離を稼ぐことができる。
具体的には、絶縁に寄与する面は、第1絶縁部材67における、ベース部材66と平行で、内部空間6Sに臨む面、および、第2絶縁部材68における、ベース部材66と直交する外周面682と、ベース部材66と平行な面とにより構成されていることにより、絶縁距離を増大させることができる。
その結果、イオン源6のサイズや重量をほぼ変えることなく、電極65間の絶縁耐久性を大幅に向上させることが可能となる。
【0039】
より具体的に説明すると、真空ポンプ1~3に用いられているオイルや被検体Xに付着したオイルに由来する成分がフィラメント61の熱により炭化されるので、その炭化物がフィラメント61の方向から飛来してくる結果、その炭化物が第1絶縁部材67に付着しやすい。しかしながら、その炭化物はフィラメント61の方向から飛来してくることから、
図6に示すように、第2絶縁部材68の外周面682には方向的にこの炭化物が付着しにくいので、この外周面682により電極65とベース部材66との間の絶縁を保つことができ、上述したように電極65間の絶縁耐久性の向上を図れる。
【0040】
[その他の実施形態]
その他の実施形態について説明する。
【0041】
例えば、前記実施形態では第1絶縁部材67と第2絶縁部材68が互いに接触している態様を説明したが、
図7に示すように、第1絶縁部材67と第2絶縁部材68が非接触であっても構わない。この場合、第1絶縁部材67としては、電極用貫通孔66hの全体に充たされている必要はない。また、第2絶縁部材68としては、ベース面661から内部空間6S側に延びるとともに、電極用貫通孔66hを塞ぐように配置された態様を挙げることができる。
【0042】
また、第2絶縁部材68としては、円筒状のものに限らず、例えば断面が三角形状、矩形状、多角形状をなす筒状のものであっても構わないし、ベース面661よりも内部空間6S側に延びる形状であれば、筒状である必要もなく、種々の形状として構わない。
【0043】
前記実施形態では、第1絶縁部材67と第2絶縁部材68とが別体である態様を述べたが、
図8に示すように、第1絶縁部材67と第2絶縁部材68が一体であっても良く、この場合の第2絶縁部材68は、ベース面661よりも内部空間6S側に位置している部分である。
【0044】
また、第2越円部材への炭化物の付着を防ぐといった観点からは、
図9に示すように、第2絶縁部材68における第1絶縁部材67に対面する対向面681の一部が、第1絶縁部材67と非接触であっても良い。これならば、対向面681の一部には炭化物が付着しにくく、電極65とベース部材66との絶縁を保つことができる。
【0045】
さらに、第1絶縁部材67への炭化物の付着を防ぐといった観点からは、
図10に示すように、第1絶縁部材67よりも内部空間6S側に設けられて第1絶縁部材67を覆うカバー部材69を備えていても良い。この場合、カバー部材69としては、必ずしも絶縁性を有している必要はなく、種々の材質のものを用いて構わない。
【0046】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【0047】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態又はその変形は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(第1項)一態様に係るリークディテクタ100は、被検体Xからのガスを真空引きされた分析管4に導くとともに、そのガスを前記分析管4内に設けられたイオン源6を用いてイオン化して検出することで、前記被検体Xをリーク検査するリークディテクタ100であって、
前記イオン源6が、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメント61と、
前記フィラメント61と電気的に接続された電極65と、
前記電極65が貫通するとともに、前記フィラメント61が配置される内部空間6Sと外部とを仕切るベース部材66と、
前記ベース部材66に形成された電極用貫通孔66h内に設けられて、前記電極65及び前記ベース部材66の間に介在する第1絶縁部材67と、
前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材66の前記内部空間6Sに臨む面661よりも前記内部空間6S側に延びる第2絶縁部材68とを備える。
【0049】
このように構成されたリークディテクタ100によれば、ベース部材66におけるフィラメント61が配置される内部空間6Sに臨む面661よりも内部空間6S側に延びる第2絶縁部材68を備えているので、この面から内部空間6S側に向かう方向に電極65とベース部材66との間の絶縁距離を稼ぐことができ、その結果、電極65間の絶縁耐久性を大幅に向上させることが可能となる。第1絶縁部材は、ベース部材と平行な面において絶縁の効果を有し、第2絶縁部材は、ベース部材と直交する面と平行な面とにおいて絶縁の効果を有する。第2絶縁部材のベース部材と直交する面において、炭化物が付着しにくいことから、きわめて良好に絶縁効果を維持することができる。
【0050】
(第2項)他の一態様に係るリークディテクタ100は、第1項の態様のリークディテクタ100において、前記第2絶縁部材68が、前記第1絶縁部材67とは別体である。
このような構成であれば、第1絶縁部材67やこの第1絶縁部材67が設けれたベース部材66としては既存のものを用いることができるので、これまでの装置構成を大きく変えることなく、電極65間の絶縁耐久性を大幅に向上させることができる。
【0051】
(第3項)他の一態様に係るリークディテクタ100は、第1項又は第2項の態様のリークディテクタ100において、前記第2絶縁部材68が、前記電極65が差し通される差込孔68hが形成されたものである。
このような構成であれば、第2絶縁部材68を電極65に差し通すことで、電極65とベース部材66との絶縁距離を長くすることができるので、生産性を担保することができる。
【0052】
(第4項)他の一態様に係るリークディテクタ100は、第1項乃至第3項のうち何れか一項のリークディテクタ100において、前記第2絶縁部材68が筒状をなし、その軸方向に沿った寸法が2mm以上である。
第2絶縁部材の高さ寸法が2mm以上の領域には炭化物が付着し難いことが実験により判明したので、このような構成であれば、絶縁についてのより顕著な効果を奏することができる。
【0053】
(第5項)一態様に係るリークディテクタ用イオン源6は、被検体Xをリーク検査するリークディテクタ100に用いられるものであり、真空引きされた分析管4内に設けられて、当該分析管4に導かれた前記被検体Xからのガスをイオン化させるリークディテクタ用イオン源6であって、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメント61と、
前記フィラメント61と電気的に接続された電極65と、
前記電極65が貫通するとともに、前記フィラメント61が配置される内部空間6Sと外部とを仕切るベース部材66と、
前記ベース部材66に形成された電極用貫通孔66h内に設けられて、前記電極65及び前記ベース部材66の間に介在する第1絶縁部材67と、
前記電極の周囲に設けられて、前記ベース部材66の前記内部空間6Sに臨む面661よりも前記内部空間6S側に延びる第2絶縁部材68とを備える、リークディテクタ用イオン源6。
【0054】
このように構成されたリークディテクタ用イオン源6によれば、上述したリークディテクタ100と同様の作用効果、すなわち第2絶縁部材68により電極65とベース部材66との間の絶縁距離を稼ぐことができ、電極65間の絶縁耐久性を大幅に向上させるといった作用効果を奏し得る。
【0055】
(第6項)一態様に係るリークディテクタ100は、被検体Xからのガスを真空引きされた分析管4に導くとともに、そのガスを前記分析管4内に設けられたイオン源6を用いてイオン化して検出することで、前記被検体Xをリーク検査するリークディテクタ100であって、
前記イオン源6が、
前記ガスをイオン化させる熱電子を放出するフィラメント61と、
前記フィラメント61と電気的に接続された電極65と、
前記電極65が貫通するとともに、前記フィラメント61が配置される内部空間6Sと外部とを仕切るベース部材66と、
前記ベース部材66に形成された電極用貫通孔66h内に設けられて、前記電極65及び前記ベース部材66を絶縁する第1絶縁部材67と、
前記第1絶縁部材67よりも前記内部空間6S側に設けられて当該第1絶縁部材67を覆うカバー部材69とを備える。
【0056】
このように構成されたリークディテクタ100によれば、第1絶縁部材67への炭化物の付着をカバー部材69により抑えることができるので、電極65間の絶縁耐久性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
100:リークディテクタ
X:被検体
4:分析管
6:イオン源
61:フィラメント
62:アノード
63:シールド
64:加速スリット
65:電極
66:ベース部材
66h:電極用貫通孔
661ベース面
67:第1絶縁部材
671:対向面
6S:内部空間
68:第2絶縁部材
68h:差込孔
681:対向面
682:外周面
69:カバー部材