IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

特開2023-532移動端末試験システム及び移動端末試験方法
<>
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図1
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図2
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図3
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図4
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図5
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図6
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図7
  • 特開-移動端末試験システム及び移動端末試験方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000532
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】移動端末試験システム及び移動端末試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/17 20150101AFI20221222BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20221222BHJP
【FI】
H04B17/17
H04B17/29 200
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101415
(22)【出願日】2021-06-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横堀 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 圭一郎
(57)【要約】
【課題】全てのテストケースの試験が完了する前に、有用な試験結果を短時間で得ることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供する。
【解決手段】3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末100に対して順次実行する移動端末試験システム1であって、試験方針を設定するための操作部30と、複数のテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる試験実行制御部12と、操作部30により設定された試験方針と、複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定部16と、を備え、試験実行制御部12は、優先順位決定部16により決定された優先順位で、複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末(100)に対して順次実行する移動端末試験システム(1)であって、
試験方針を設定するための試験方針設定部(30)と、
前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御部(12)と、
前記試験方針設定部により設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定部(16)と、を備え、
前記試験実行制御部は、前記優先順位決定部により決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させることを特徴とする移動端末試験システム。
【請求項2】
前記優先順位決定部は、前記試験方針設定部により設定された試験方針が第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験システム。
【請求項3】
前記試験方針設定部により設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定部(14)を更に備え、
前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げることを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験システム。
【請求項4】
前記試験方針設定部により設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成部(15)を更に備え、
前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成部により生成されたテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項3に記載の移動端末試験システム。
【請求項5】
3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末(100)に対して順次実行する移動端末試験方法であって、
試験方針を設定するための試験方針設定ステップ(S1)と、
前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御ステップ(S2,S26,S34,S36)と、
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定ステップ(S25,S27,S30,S33,S35)と、を含み、
前記試験実行制御ステップは、前記優先順位決定ステップにより決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させることを特徴とする移動端末試験方法。
【請求項6】
前記優先順位決定ステップは、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項5に記載の移動端末試験方法。
【請求項7】
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定ステップ(S28)を更に含み、
前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げることを特徴とする請求項5に記載の移動端末試験方法。
【請求項8】
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成ステップ(S32)を更に含み、
前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成ステップにより生成されたテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項7に記載の移動端末試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末試験システム及び移動端末試験方法に関し、特に、移動端末の3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストを実行する移動端末試験システム及び移動端末試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各国でミリ波帯の周波数を運用する5Gのサービスが開始され、5Gスマートフォンなどの5G用移動端末の生産が本格化している。5G用移動端末の設計開発会社又はその製造工場においては、5G用移動端末が備えている無線通信アンテナを介して送信電波の出力レベルや受信感度を測定し、5G用移動端末が所定の基準を満たしているか否かを判定する性能試験が行われる。
【0003】
このような性能試験の中には、移動端末や基地局装置が3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格に準拠しているか否かを確認するコンフォーマンステストがある。コンフォーマンステストでは、試験目的、合否判定基準、試験条件、Test IDで識別される複数の試験項目、及び試験手順が定義されたテストケース(Test Case:TC)が実行される。
【0004】
特許文献1には、試験装置それぞれのソフトウェアの入れ替えを含む動作設定を1組のテストケースとして、複数のテストケースを自動的に実行する試験システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-199719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3GPP規格のTS 38.522に記載のとおり、実行されるべきテストケースは明確化されているが、試験システムでは任意のテストケースを実行可能であり、実行順序についても定められていない。このため、テストケースの実行順序によっては、テストケースごとの定められた試験時間どおりの所要時間を無為に費やしてしまう場合がある。
【0007】
類似した試験条件においては、移動端末内で使用される変復調回路、RF回路、filter回路や、それらの回路の設定が同様であるため、試験条件のうちのあるパラメータを変えながら複数回試験を実行する場合などに、合格(以下、「PASS」とも称する)が連続したり、逆に不合格(以下、「FAIL」とも称する)が連続したりすることが起こる。
【0008】
一方で、例えばPASSする可能性の高いテストケースを優先的に実行したいという要求や、逆にFAILする可能性の高いテストケースを優先的に実行して、FAILとなった原因の究明を行いたいという要求がある。しかしながら、従来の試験システムでは、試験順序を効率化して、試験目的に応じた試験結果を優先的に得たいという要求に応えることができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、全てのテストケースの試験が完了する前に、有用な試験結果を短時間で得ることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る移動端末試験システムは、3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末に対して順次実行する移動端末試験システムであって、試験方針を設定するための試験方針設定部と、前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置に実行させる試験実行制御部と、前記試験方針設定部により設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定部と、を備え、前記試験実行制御部は、前記優先順位決定部により決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させる構成である。
【0011】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、試験方針と、実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、実行が完了していないテストケースの優先順位を決定し、この優先順位に従って実行が完了していないテストケースの試験の測定を測定装置に実行させるようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、全てのテストケースの試験が完了する前に、有用な試験結果を短時間で得ることができる。
【0012】
また、本発明に係る移動端末試験システムにおいては、前記優先順位決定部は、前記試験方針設定部により設定された試験方針が第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、試験方針が第1の方針である場合に、実行済みのテストケースの試験結果においてPASSとなった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げるようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、PASSする可能性の高いテストケースを優先的に実行して、3GPP規格への準拠度合を確認することができる。
【0014】
また、本発明に係る移動端末試験システムは、前記試験方針設定部により設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定部を更に備え、前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げる構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、試験方針が第2の方針である場合に、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定し、特定した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げるようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、FAILする可能性の高いテストケースの実行の優先度を下げ後回しにすることにより、有用な試験結果を得るまでの試験時間を短縮することができる。
【0016】
また、本発明に係る移動端末試験システムは、前記試験方針設定部により設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成部を更に備え、前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成部により生成されたテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係る移動端末試験システムは、試験方針が第2の方針である場合に、実行済みのテストケースの試験結果において試験結果がFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含む類似テストケースを生成し、この類似テストケースの優先順位を上げるようになっている。これにより、本発明に係る移動端末試験システムは、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、FAILする可能性の高い類似テストケースを優先的に実行して、FAILの要因を検証することができる。
【0018】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末に対して順次実行する移動端末試験方法であって、試験方針を設定するための試験方針設定ステップと、前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置に実行させる試験実行制御ステップと、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定ステップと、を含み、前記試験実行制御ステップは、前記優先順位決定ステップにより決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させる構成である。
【0019】
また、本発明に係る移動端末試験方法においては、前記優先順位決定ステップは、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【0020】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定ステップを更に含み、前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げる構成であってもよい。
【0021】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成ステップを更に含み、前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成ステップにより生成されたテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、全てのテストケースの試験が完了する前に、有用な試験結果を短時間で得ることができる移動端末試験システム及び移動端末試験方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る移動端末試験システムの構成を示すブロック図である。
図2】試験周波数、BWP帯域幅、及びSSB配置の組合せの一例を示す図である。
図3】テストケースの実行手順を示す概念図である。
図4】本発明の実施形態に係る移動端末試験システムを用いる移動端末試験方法の処理を示すフローチャートである。
図5図4のフローチャートにおける処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】ある試験条件の組合せにおける試験項目ごとの試験結果の表示例を示す表である。
図7図4のフローチャートのステップS3で肯定判断がなされた場合の処理を示すフローチャートである。
図8】テストケースごとの試験結果の表示例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る移動端末試験システム及び移動端末試験方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1に示す本実施形態に係る移動端末試験システム1は、主に疑似基地局として動作して、複数のテストケースの試験を移動端末100に対して順次実行するものである。移動端末試験システム1は、測定装置10と、制御装置20と、操作部30と、表示部31と、を備える。
【0026】
測定装置10は、移動端末100と無線通信接続又は有線通信接続を行って、移動端末100の送受信特性を測定するものである。測定装置10は、移動端末100の送信特性として、例えば、送信電力、エラーベクトル振幅(EVM)、IQコンスタレーション、スペクトラム等を測定可能である。また、測定装置10は、移動端末100の受信特性として、例えば、パケットエラーレート(PER)やフレーム受信レート(FRR)等を測定可能である。
【0027】
制御装置20は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、移動端末試験システム1を構成する上記各部の動作を制御するものである。また、制御装置20は、ROM等に記憶された所定のプログラムをRAMに移してCPUで実行することにより、後述するテストケース記憶部11、試験実行制御部12、合否判定部13、不合格要因特定部14、類似テストケース生成部15、優先順位決定部16、及び傾向記憶部17の少なくとも一部をソフトウェア的に構成することが可能である。なお、テストケース記憶部11、試験実行制御部12、合否判定部13、不合格要因特定部14、類似テストケース生成部15、優先順位決定部16、及び傾向記憶部17の少なくとも一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することも可能である。あるいは、テストケース記憶部11、試験実行制御部12、合否判定部13、不合格要因特定部14、類似テストケース生成部15、優先順位決定部16、及び傾向記憶部17の少なくとも一部は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0028】
テストケース記憶部11は、3GPP規格に準拠したコンフォーマンステストのテストケースの情報を記憶している。また、テストケース記憶部11は、後述する類似テストケース生成部15により生成されたテストケース(以下、「類似テストケース」とも称する)の情報も記憶できるようになっている。
【0029】
試験実行制御部12は、テストケース記憶部11から読み出したテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる制御を行う。また、試験実行制御部12は、後述する優先順位決定部16により決定された優先順位で、テストケース記憶部11に記憶された複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる制御を行う。
【0030】
合否判定部13は、測定装置10による測定結果と合否判定基準に基づいて、テストケースの試験結果が合格(PASS)であるか不合格(FAIL)であるかを判定するようになっている。さらに、合否判定部13は、実行済みのテストケースの試験条件又は試験条件の組合せごとの試験結果が、それぞれPASSであるかFAILであるかを傾向記憶部17に記憶させるようになっている。
【0031】
試験条件は、移動端末100が送受信する信号の周波数、強度、及び位相に関する試験を行うために、測定装置10に設定される条件である。試験条件は、例えば、試験周波数[Low/Mid/High Range]、BWP配置[Low/Mid/High test channel bandwidth]、BWP帯域幅、SCS(Subcarrier Spacing)[Lowest, Mid, Highest]、RB(Resource Block)配置、変調方式、SNR(Signal-to-Noise Ratio)限界、TCI(Transmission Configuration Indicator)のQCL(Quasi Co-Location)設定[SSB(Synchronization Signal/PBCH block)/CSI-RS(Channel State Information Reference Signal)]などである。
【0032】
操作部30は、移動端末試験システム1の試験方針として、第1の方針(以下、「類似PASS調査」とも称する)と第2の方針(以下、「類似FAIL調査」とも称する)のいずれかを設定するための試験方針設定部を構成する。類似PASS調査は、試験結果がPASSとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定する試験方針である。また、類似FAIL調査は、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定する試験方針である。
【0033】
不合格要因特定部14は、操作部30により設定された試験方針が類似FAIL調査である場合に、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定するようになっている。また、不合格要因特定部14は、特定した試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目がFAILになる原因を分析し、その分析結果を表示部31に表示するようになっていてもよい。
【0034】
類似テストケース生成部15は、操作部30により設定された試験方針が類似FAIL調査である場合に、実行済みのテストケースの試験結果においてFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含む類似テストケースを生成するようになっている。例えば、類似テストケース生成部15は、試験結果がFAILとなった各試験条件のパラメータをユーザによる操作部30への操作入力に応じて変更することによって、類似テストケースを生成することが可能である。類似テストケースは、FAILとなった原因の特定のために不合格要因特定部14において用いられるものであり、必ずしも3GPP規格に準拠したものでなくてもよい。
【0035】
以下、不合格要因特定部14によるFAILの原因の分析について説明する。図2は、試験周波数、BWP帯域幅、及びSSB配置の組合せの一例を示す図である。ここで、DC_1A_n78Aは、LTEバンド1と5Gバンドn78の組合せのデュアルコネクティビティを表している。また、DC_3A_n41Aは、LTEバンド3と5Gバンドn41の組合せのデュアルコネクティビティを表している。
【0036】
例えば、試験周波数がDC_3A_n41A、BWP帯域幅が100MHz、SSB配置がHigh Rangeの組合せを含む試験項目の試験結果がFAILになったとする。この組合せのうち、試験周波数をDC_1A_n78Aに変化させたテストケース(又は類似テストケース)の試験項目の試験結果がPASSになった場合には、FAILの原因は相互変調歪である可能性が高い。この場合、不合格要因特定部14は、相互変調歪が原因で試験結果がFAILになった可能性がある旨を表示部31に表示する。
【0037】
また、例えば、試験周波数がDC_3A_n41A、BWP帯域幅が100MHz、SSB配置がHigh Rangeの組合せを含む試験項目の試験結果がFAILになったとする。この組合せのうち、BWP帯域幅を20MHzに変化させたテストケース(又は類似テストケース)の試験項目の試験結果がPASSになった場合には、FAILの原因は帯域内の周波数特性と変復調性能である可能性が高い。この場合、不合格要因特定部14は、帯域内の周波数特性と変復調性能が原因で試験結果がFAILになった可能性がある旨を表示部31に表示する。
【0038】
また、例えば、試験周波数がDC_3A_n41A、BWP帯域幅が100MHz、SSB配置がHigh Rangeの組合せを含む試験項目の試験結果がFAILになったとする。この組合せのうち、SSB配置をLow Rangeに変化させたテストケース(又は類似テストケース)の試験項目の試験結果がPASSになった場合には、FAILの原因は位相同期の問題である可能性が高い。この場合、不合格要因特定部14は、位相同期不良が原因で試験結果がFAILになった可能性がある旨を表示部31に表示する。
【0039】
優先順位決定部16は、操作部30により設定された試験方針と、テストケース記憶部11に記憶された複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、テストケース記憶部11に記憶された複数のテストケースのうちの実行が完了していない全てのテストケースの優先順位を決定する。また、優先順位決定部16は、実行予定のテストケースを実行予定の順に表示部31に一覧表示させるようになっていてもよい。
【0040】
例えば、優先順位決定部16は、操作部30により設定された試験方針が類似PASS調査である場合に、実行済みのテストケースの試験結果においてPASSとなった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げる。
【0041】
また、例えば、優先順位決定部16は、操作部30により設定された試験方針が類似FAIL調査である場合に、不合格要因特定部14により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げる。
【0042】
また、例えば、優先順位決定部16は、操作部30により設定された試験方針が類似FAIL調査である場合に、不合格要因特定部14により試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合には、実行済みのテストケースの試験結果においてFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含む既存のテストケースの優先順位を上げる。
【0043】
また、例えば、優先順位決定部16は、操作部30により設定された試験方針が類似FAIL調査である場合に、不合格要因特定部14により試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合には、類似テストケース生成部15により生成された類似テストケースの優先順位を上げる。
【0044】
試験実行制御部12は、周波数制御部12aと、強度制御部12bと、位相制御部12cと、リソース制御部12dと、を含む。
【0045】
周波数制御部12aは、移動端末100で使用される周波数に関する試験条件を測定装置10に設定するものである。周波数に関する試験条件は、試験周波数、BWP配置、BWP帯域幅などであり、移動端末100内のフィルタの組合せや、フィルタの性能などに対応している。試験周波数は、LTEバンド、5Gバンド、又はLTEバンドと5Gバンドの組合せ(Band combo)などである。
【0046】
例えば図3に示すように、試験周波数がDC_1A_n78Aの場合は、移動端末100の動作条件は、変復調回路の帯域設定がDC_1A_n78A、RF回路の内部発振設定が2.1GHz及び3.5GHz、Filter回路の内部選択設定が2~3GHz及び3~4GHzなどとなる。これらの動作条件が、測定装置10により移動端末100に設定された後に、試験周波数ごとにテストケースが繰り返し実行される。
【0047】
強度制御部12bは、移動端末100から送信される信号の強度に関する試験条件を測定装置10に設定するものである。強度に関する試験条件は、SNR限界などである。強度に関する試験条件は、移動端末100内のフィルタの性能や、復調性能などに対応している。
【0048】
位相制御部12cは、移動端末100から送信される信号の位相に関する試験条件を測定装置10に設定するものである。位相に関する試験条件は、TCIのQCL設定などである。位相に関する試験条件は、移動端末100内の復調性能などに対応している。
【0049】
リソース制御部12dは、移動端末100から送信される信号のリソースに関する試験条件を測定装置10に設定するものである。変復調性能に関する試験条件は、変調方式、RB配置などである。変復調性能に関する試験条件は、移動端末100の変復調性能などに対応している。
【0050】
試験実行制御部12は、ユーザによる操作部30への操作入力により、類似PASS調査と類似FAIL調査のどちらかを実行する制御を行うようになっている。類似PASS調査と類似FAIL調査の概要は以下のとおりである。ここでは、説明を簡略化するために、初期設定では、移動端末試験システム1が4つのテストケースTC1~TC4を、TC1、TC2、TC3,TC4の順に実行する予定になっているものとする。
【0051】
例えば、類似PASS調査において、テストケースTC1の試験周波数が、5Gバンドn78のLow/Mid RangeでPASS傾向であり、High RangeでFAIL傾向である場合、優先順位決定部16は、残りのテストケースTC2~TC4の中から、試験周波数がLow/Mid Rangeの試験条件を有するテストケースを選出する。仮に、テストケースTC3がHigh Range条件のみのテストケースである場合、優先順位は、テストケースTC2のLow/Mid Rangeが最も高く、テストケースTC4のLow/Mid Range、テストケースTC2のHigh Range、テストケースTC3のHigh Range、テストケースTC4のHigh Rangeの順に低くなっていく。
【0052】
このようにして、移動端末試験システム1は、PASS傾向の高いテストケースを優先的に実行することによって、全てのテストケースの試験が完了する前に、試験結果がPASSとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定することができる。
【0053】
また、例えば、類似FAIL調査において、テストケースTC1の試験周波数が、5Gバンドn78のLow/Mid RangeでPASS傾向であり、High RangeでFAIL傾向であり、移動端末100の送信信号のレベルは問題ないが、信号品質が悪い可能性があることが不合格要因特定部14の分析により分かったとする。この場合、優先順位決定部16は、残りのテストケースTC2~TC4の中から、信号品質を測定するテストケースの優先順位を選出する。仮に、テストケースTC3がHigh Range条件のみの信号品質測定のテストケースである場合、優先順位は、テストケースTC3のHigh Rangeが最も高く、テストケースTC2のHigh Range、テストケースTC4のHigh Range、テストケースTC2のLow/Mid Range、テストケースTC4のLow/Mid Rangeの順に低くなっていく。そして、テストケースTC3のHigh RangeもFAILした場合、不合格要因特定部14は、移動端末100の信号品質不良が原因で試験結果がFAILになった可能性がある旨を表示部31に表示する。
【0054】
このようにして、移動端末試験システム1は、FAIL傾向の高いテストケースを優先的に実行することによって、全てのテストケースの試験が完了する前に、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せと、FAILの原因を特定することができる。
【0055】
操作部30は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部31の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。操作部30は、ユーザが表示画面に表示されている特定の項目の位置を指やスタイラス等で触れた際に、タッチセンサが表示画面上で検出した位置と項目の位置との一致を認識することにより、各項目に割り当てられた機能を実行するための信号を制御装置20に出力する。操作部30は、表示部31に操作可能に表示されるものであってもよく、あるいは、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されるものであってもよい。
【0056】
ユーザによる操作部30への操作入力により、試験方針、移動端末100の仕様、各種試験条件のパラメータなどの設定を行うことが可能である。
【0057】
表示部31は、液晶ディスプレイやCRT等の表示機器で構成され、制御装置20による表示制御に基づき、測定装置10による移動端末100に対する送受信特性の測定に関わる設定画面や試験結果などの各種表示内容を表示画面に表示するようになっている。この表示内容には、例えば、テストケースの実行順序の予定、測定装置10による移動端末100の送受信特性の測定結果などが含まれる。さらに、表示部31は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0058】
以下、移動端末試験システム1を用いる移動端末試験方法について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0059】
まず、試験実行制御部12は、ユーザによる操作部30への操作に応じて、試験方針や、移動端末100の仕様などの各種情報を設定する(試験方針設定ステップS1)。
【0060】
次に、試験実行制御部12は、実行予定の複数のテストケースのうち、実行されていないか、又は、実行が完了していない1つのテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる(試験実行制御ステップS2)。
【0061】
次に、試験実行制御部12は、操作部30により試験方針の設定が行われているか否かを判断する(ステップS3)。操作部30により試験方針の設定が行われている場合には、試験実行制御部12は、後述するステップS21の処理を実行する。一方、操作部30により試験方針の設定が行われていない場合には、試験実行制御部12は、ステップS4の処理を実行する。
【0062】
ステップS4において、試験実行制御部12は、実行されていないか、又は、実行が完了していないテストケースが残っているか否かを判断する(ステップS4)。実行すべきテストケースが残っている場合には、再びステップS2以降の処理が実行される。一方、実行すべきテストケースが残っていない場合には、ステップS5の処理が実行される。
【0063】
ステップS5において、試験実行制御部12は、ステップS2等で実行された全てのテストケースの試験結果を表示部31の表示画面に表示制御する(ステップS5)。
【0064】
以下、図5のフローチャートを参照しながら、ステップS2の処理の一例を説明する。ここでは、5Gバンドn1について、移動端末100の最大送信レベルの特性に関するテストケースを実行する場合を例に挙げて説明する。なお、それぞれの試験条件は説明のための例示である。
【0065】
まず、試験実行制御部12の周波数制御部12aは、5Gバンドn1のLow/Mid/High Rangeのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS11)。
【0066】
次に、試験実行制御部12の周波数制御部12aは、BWP帯域幅として、例えば、10MHz、20MHz、40MHzのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS12)。
【0067】
次に、試験実行制御部12の周波数制御部12aは、SCSとして、例えば、15kHz、30kHzのうちのいずれかを測定装置10に設定する(ステップS13)。以上のステップS11~S13は、試験条件の設定を行うためのステップである。
【0068】
次に、試験実行制御部12は、Test IDが1~6の試験項目の試験の測定を、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せで測定装置10に実行させる(ステップS14)。
【0069】
合否判定部13は、測定装置10による最大送信レベルに関する測定結果に基づいて、Test IDが1~6の試験項目の試験結果がPASSであるかFAILであるかを判定する(ステップS15)。
【0070】
試験実行制御部12は、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて未実行の試験項目の試験が残っているか否かを判断する(ステップS16)。ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて未実行の試験項目の試験が残っている場合には、再びステップS14以降の処理が実行される。一方、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せにおいて全ての試験項目の試験が完了した場合には、ステップS17の処理が実行される。
【0071】
試験実行制御部12は、図6に示すように、ステップS11~S13で設定された試験条件の組合せでの試験項目の試験結果を、表示部31の表示画面に表示制御する(ステップS17)。
【0072】
試験実行制御部12は、ステップS11~S13で設定されていない試験条件の組合せが残っているか否かを判断する(ステップS18)。未設定の試験条件の組合せが残っている場合には、再びステップS11以降の処理が実行される。一方、全ての試験条件の組合せが設定された場合には一連の処理が終了する。
【0073】
このように、試験実行制御部12は、ステップS11~S13で試験条件の組合せを変更しながら、各試験項目の試験を実行する。
【0074】
以下、ステップS3で操作部30により試験方針の設定が行われていると判断された場合の処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0075】
まず、合否判定部13は、ステップS2等で実行されたテストケースの試験の結果を、周波数、強度、位相などの試験条件と対応付けて傾向記憶部17に記憶させる(ステップS21)。傾向記憶部17は、これらの試験条件又は試験条件の組合せごとに、試験結果(PASS又はFAIL)を記憶する。
【0076】
さらに、ステップS21において、合否判定部13は、ステップS2等で実行されたテストケースにおける試験項目のうち、PASSした試験項目における試験条件又は試験条件の組合せがPASS傾向であることを傾向記憶部17に記憶させる。例えば、ステップS2等で実行されたテストケースにおいて、特定の変調方式(ここでは、「Modulation1」とする)を含む試験項目が全てPASSした場合、合否判定部13は、Modulation1を試験条件に含む試験項目がPASS傾向であることを傾向記憶部17に記憶させる。
【0077】
同様に、ステップS21において、合否判定部13は、ステップS2等で実行されたテストケースにおける試験項目のうち、FAILした試験項目における試験条件又は試験条件の組合せがFAIL傾向であることを傾向記憶部17に記憶させる。例えば、ステップS2等で実行されたテストケースにおいて、特定の変調方式(ここでは、「Modulation1」とする)を含む試験項目が全てFAILした場合、合否判定部13は、Modulation1を試験条件に含む試験項目がFAIL傾向であることを傾向記憶部17に記憶させる。
【0078】
次に、試験実行制御部12は、試験方針設定ステップS1において設定された試験方針が類似PASS調査と類似FAIL調査のどちらであるかを判断する(ステップS22)。類似PASS調査が設定されている場合には、ステップS23の処理が実行される。一方、類似FAIL調査が設定されている場合には、ステップS28の処理が実行される。
【0079】
ステップS23において、試験実行制御部12は、ステップS2又は後述するステップS26で実行されたテストケースの各試験項目の試験結果のうち、1つでもFAILがあるか否かを判断する(ステップS23)。ステップS2又は後述するステップS26で実行された各試験項目のテストケースの試験結果に1つもFAILがない場合には、ステップS24の処理が実行される。一方、ステップS2又は後述するステップS26で実行された各試験項目のテストケースの試験結果のうち、1つでもFAILがある場合には、ステップS27の処理が実行される。
【0080】
ステップS24において、試験実行制御部12は、ステップS21で記憶されたPASS傾向にある試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースの実行が全て完了しているか否かを判断する。例えば、試験実行制御部12は、Modulation1を試験条件に含む試験項目が定義されているテストケースが全て実行完了済みであるか否かを判断する。ステップS21で記憶されたPASS傾向にある試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースを全て実行完了済みでない場合には、ステップS25の処理が実行される。一方、ステップS21で記憶されたPASS傾向にある試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースを全て実行完了済みである場合には、ステップS4の処理が実行される。
【0081】
ステップS25において、優先順位決定部16は、実行済みのテストケースの試験結果においてPASSとなった試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースのうち、実行完了済みでないテストケースの優先順位を最上位に設定し、実行が完了していない全てのテストケースの実行順序を更新する(優先順位決定ステップS25)。
【0082】
次に、試験実行制御部12は、ステップS25で優先順位が最上位に設定されたテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる(試験実行制御ステップS26)。例えば、ステップS2等で実行されたテストケースにおいて、Modulation1を試験条件に含む試験項目が全てPASSした場合、試験実行制御部12は、PASS見込みの試験条件であるModulation1を含む試験項目が定義されたテストケースを優先実行する。ステップS26の処理が完了すると、再びステップS21以降の処理が実行される。
【0083】
ステップS27において、優先順位決定部16は、FAILした試験に共通して含まれる試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースの優先順位を下げるように、実行が完了していない全てのテストケースの実行順序を更新する(優先順位決定ステップS27)。例えば、優先順位決定部16は、ステップS2等で実行されたテストケースについて、Modulation1と、試験周波数がHigh Rangeの条件との組合せを含む試験項目についてのみFAILが発生した場合、該当する試験条件の組合せが含まれるテストケースの優先順位を下げる。この結果、ステップS27以降に実行されるステップS2においては、Modulation1と、試験周波数がLow/Mid Rangeの条件との組合せを含む試験項目が定義されているテストケースが優先的に実行される。ステップS27の処理が完了すると、ステップS4の処理が実行される。
【0084】
ステップS28において、不合格要因特定部14は、ステップS2等で実行されたテストケースの各試験項目の試験結果のうち、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定する(不合格要因特定ステップS28)。
【0085】
次に、試験実行制御部12は、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せが不合格要因特定ステップS28により特定できたか否かを判断する(ステップS29)。ここでの判断は、例えば、試験条件ごと、又は、試験条件の組合せごとのFAIL数が所定の閾値を超えたか否かなどで行われる。不合格要因特定ステップS28により試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せが特定できた場合には、ステップS30の処理が実行される。一方、不合格要因特定ステップS28により試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せが特定できなかった場合には、ステップS31の処理が実行される。
【0086】
ステップS30において、優先順位決定部16は、不合格要因特定ステップS28により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースの優先順位を下げるように、実行が完了していない全てのテストケースの実行順序を更新する(優先順位決定ステップS30)。ステップS30の処理が完了すると、ステップS4の処理が実行される。
【0087】
ステップS31において、試験実行制御部12は、ユーザによる操作部30への操作入力により、類似テストケースを生成するための指示が入力されたか否かを判断する。類似テストケースを生成するための指示が操作部30に入力された場合には、ステップS32の処理が実行される。一方、類似テストケースを生成するための指示が操作部30に入力されなかった場合には、ステップS35の処理が実行される。
【0088】
ステップS32において、類似テストケース生成部15は、実行済みのテストケースの試験結果においてFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含む類似テストケースを生成する(類似テストケース生成ステップS32)。
【0089】
次に、優先順位決定部16は、類似テストケース生成ステップS32により生成された実行完了済みでない類似テストケースの優先順位を最上位に設定し、実行が完了していない全てのテストケースの実行順序を更新する(優先順位決定ステップS33)。
【0090】
次に、試験実行制御部12は、優先順位決定ステップS33で優先順位が最上位に設定された類似テストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる(試験実行制御ステップS34)。ステップS34の処理が完了すると、再びステップS21以降の処理が実行される。
【0091】
ステップS35において、優先順位決定部16は、実行済みのテストケースの試験結果においてFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せを含む試験項目が定義されているテストケースのうち、実行完了済みでないテストケースの優先順位を最上位に設定し、実行が完了していない全てのテストケースの実行順序を更新する(優先順位決定ステップS35)。
【0092】
次に、試験実行制御部12は、ステップS35で優先順位が最上位に設定されたテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させる(試験実行制御ステップS36)。ステップS36の処理が完了すると、再びステップS21以降の処理が実行される。
【0093】
図8は、図4のフローチャートのステップS5で表示部31に表示される試験結果の一例を示している。なお、ここでは、説明の簡略化のためにテストケースの数が4であるとしている。各テストケースTC1~TC4の試験結果は、各テストケースTC1~TC4に定義された全ての試験項目がPASSした場合にPASS、それ以外の場合がFAILとなる。
【0094】
図4のフローチャートでは、ステップS2において1つのテストケースの試験が全て実行されるとしたが、テストケースによっては測定が数時間~数十時間かかるものもあるため、本実施形態の移動端末試験システム1は、PASS見込みがない試験項目が定義されたテストケースの試験は途中で切り上げるなど、無駄な測定を省くものであってもよい。その場合、移動端末試験システム1は、ステップS2における1つのテストケースを1つの試験項目に読み替えた処理を実行するとともに、ステップS2以降において、テストケース単位の処理又は判断を試験項目単位の処理又は判断に読み替えた処理を実行することになる。これにより、例えば、あるテストケースにおいてTest IDが1の試験項目がFAILした場合に、Test IDが2以降の試験項目の実行を省略して、次のテストケースの試験に進むことなどが可能になる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、試験方針と、実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、実行が完了していないテストケースの優先順位を決定し、この優先順位に従って実行が完了していないテストケースの試験の測定を測定装置10に実行させるようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、全てのテストケースの試験が完了する前に、有用な試験結果を短時間で得ることができる。
【0096】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、試験方針が類似PASS調査である場合に、実行済みのテストケースの試験結果においてPASSとなった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げるようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、PASSする可能性の高いテストケースを優先的に実行して、3GPP規格への準拠度合を確認することができる。なお、類似PASS調査の途中結果の状況から類似PASS調査を途中で終了し、類似FAIL調査を開始するようにしても良い。
【0097】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、試験方針が類似FAIL調査である場合に、試験結果がFAILとなる試験条件又は試験条件の組合せを特定し、特定した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げるようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、FAILする可能性の高いテストケースの実行の優先度を下げ後回しにすることにより、有用な試験結果を得るまでの試験時間を短縮することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、試験方針が類似FAIL調査である場合に、実行済みのテストケースの試験結果において試験結果がFAILとなった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含む類似テストケースを生成し、この類似テストケースの優先順位を上げるようになっている。これにより、本実施形態に係る移動端末試験システム1は、未実行のテストケースを、PASSする可能性の高いものとFAILする可能性が高いものとに分類し、FAILする可能性の高い類似テストケースを優先的に実行して、FAILの要因を検証することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 移動端末試験システム
10 測定装置
11 テストケース記憶部
12 試験実行制御部
12a 周波数制御部
12b 強度制御部
12c 位相制御部
12d リソース制御部
13 合否判定部
14 不合格要因特定部
15 類似テストケース生成部
16 優先順位決定部
17 傾向記憶部
20 制御装置
30 操作部
31 表示部
100 移動端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末(100)に対して順次実行する移動端末試験システム(1)であって、
試験方針を設定するための試験方針設定部(30)と、
前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御部(12)と、
前記試験方針設定部により設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定部(16)と、を備え、
前記試験実行制御部は、前記優先順位決定部により決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させることを特徴とする移動端末試験システム。
【請求項2】
前記優先順位決定部は、前記試験方針設定部により設定された試験方針が、試験結果が合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験システム。
【請求項3】
前記試験方針設定部により設定された試験方針が、試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定部(14)を更に備え、
前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げることを特徴とする請求項1に記載の移動端末試験システム。
【請求項4】
前記試験方針設定部により設定された試験方針が前記第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成部(15)を更に備え、
前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成部により生成されたテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項3に記載の移動端末試験システム。
【請求項5】
3GPP規格で規定された複数のテストケースの試験を移動端末(100)に対して順次実行する移動端末試験方法であって、
試験方針を設定するための試験方針設定ステップ(S1)と、
前記複数のテストケースの試験の測定を測定装置(10)に実行させる試験実行制御ステップ(S2,S26,S34,S36)と、
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針と、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの試験結果とに応じて、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの優先順位を決定する優先順位決定ステップ(S25,S27,S30,S33,S35)と、を含み、
前記試験実行制御ステップは、前記優先順位決定ステップにより決定された優先順位で、前記複数のテストケースのうちの実行が完了していないテストケースの試験の測定を前記測定装置に実行させることを特徴とする移動端末試験方法。
【請求項6】
前記優先順位決定ステップは、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が、試験結果が合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項5に記載の移動端末試験方法。
【請求項7】
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が、試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定ステップ(S28)を更に含み、
前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げることを特徴とする請求項5に記載の移動端末試験方法。
【請求項8】
前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が前記第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成ステップ(S32)を更に含み、
前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成ステップにより生成されたテストケースの優先順位を上げることを特徴とする請求項7に記載の移動端末試験方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明に係る移動端末試験システムにおいては、前記優先順位決定部は、前記試験方針設定部により設定された試験方針が、試験結果が合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明に係る移動端末試験システムは、前記試験方針設定部により設定された試験方針が、試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定部を更に備え、前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げる構成であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、本発明に係る移動端末試験システムは、前記試験方針設定部により設定された試験方針が前記第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成部を更に備え、前記優先順位決定部は、前記不合格要因特定部により前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成部により生成されたテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
また、本発明に係る移動端末試験方法においては、前記優先順位決定ステップは、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が、試験結果が合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第1の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において合格となった試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が、試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する第2の方針である場合に、前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せを特定する不合格要因特定ステップを更に含み、前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより特定された試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースの優先順位を下げる構成であってもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
また、本発明に係る移動端末試験方法は、前記試験方針設定ステップにより設定された試験方針が前記第2の方針である場合に、前記複数のテストケースのうちの実行済みのテストケースの前記試験結果において不合格となった試験条件又は試験条件の組合せに類似した試験条件又は試験条件の組合せを含むテストケースを生成する類似テストケース生成ステップを更に含み、前記優先順位決定ステップは、前記不合格要因特定ステップにより前記試験結果が不合格となる試験条件又は試験条件の組合せが特定されていない場合に、前記類似テストケース生成ステップにより生成されたテストケースの優先順位を上げる構成であってもよい。