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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005323
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/24 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B65D47/24 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107151
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 健太
(72)【発明者】
【氏名】平野 健
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA03
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EA02
3E084EC03
3E084FA02
3E084FA09
3E084FB01
3E084FC01
3E084GA01
3E084GA06
3E084GB01
3E084GB06
3E084HA01
3E084HB09
3E084HC01
3E084HD01
3E084KA05
3E084KB01
3E084LA18
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】注出筒の内容液を安定してサックバックするため、閉弁位置に向かって安定して移動弁が移動することができるキャップを提供する。
【解決手段】キャップ10は、容器90の口部91に取り付けられるキャップ本体11と、容器90とキャップ本体11との間に配置される中栓15とを備える。キャップ本体11は、容器90の内容液Lを注ぎ出す注出筒21を有する。中栓15は、注出筒21の内部と容器90の内部とを連通する筒状体30と、筒状体30の内部で移動する移動弁体35と、移動弁体35の筒状体30からの抜け出しを規制する弾性規制部材40とを有する。筒状体30は、注出筒21側に移動した移動弁体35との間に空間が形成されるとともに、容器90側に移動した移動弁体35により封止されるものである。弾性規制部材40は、注出筒21側に移動した移動弁体35を、弾性力により容器90側に押圧する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に取り付けられるキャップ本体と、
前記容器とキャップ本体との間に配置される中栓とを備え、
前記キャップ本体が、前記容器の内容液を注ぎ出す注出筒を有し、
前記中栓が、
前記注出筒の内部と容器の内部とを連通する筒状体と、
前記筒状体の内部で注出筒側と容器側との間を移動する移動弁体と、
前記注出筒側に移動した移動弁体の筒状体からの抜け出しを規制する弾性規制部材とを有し、
前記筒状体は、前記注出筒側に移動した移動弁体との間に空間が形成されるとともに、前記容器側に移動した移動弁体により封止されるものであり、
前記弾性規制部材が、前記注出筒側に移動した移動弁体を、弾性力により容器側に押圧するものであることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
筒状体の内部が、注出筒の内部と同一軸心上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
弾性規制部材が、注出筒の内部と筒状体の内部とを連通する連通口を有することを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
弾性規制部材が、その中心に向かうにつれて容器側に突出した弾性傾斜部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
弾性傾斜部が、容器側に移動弁体との当接部を有し、
前記当接部は、前記移動弁体の移動を規制するものであることを特徴とする請求項4に記載のキャップ。
【請求項6】
移動弁体が、球状弁体であり、
中栓が、注出筒側への移動弁体の移動を案内する案内部を有し、
前記案内部が、筒状体の内面から突出したものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項7】
筒状体が、
側壁部と、
前記側壁部に容器側で接続されて開口を有する筒底部とを有し、
移動弁体が、
前記筒底部の側壁部の内側に配置され、前記筒底部の開口よりも大径で、その開口を通って容器側へ移動するのを規制する抜け止め部と、
前記筒底部の開口を通る柱部とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項8】
柱部が、
前記柱部の側面に突出した状態で柱部の軸心方向に延びる突起を有し、
前記柱部突起は、柱部の周方向に隙間を隔てて複数配置されたものであることを特徴とする請求項7に記載のキャップ。
【請求項9】
筒底部が、その開口の縁で注出筒側に突出する筒底部側環状突起を有し、
抜け止め部が、その外縁で容器側に突出する抜け止め部側環状突起を有し、
前記筒底部側環状突起が、前記容器側に移動した移動弁の抜け止め部側環状突起との間に、前記容器の内容液で封止する液封空間を形成するものであることを特徴とする請求項7または8に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に取り付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
醤油などの空気に触れると劣化しやすい内容液を保存する目的で、当該内容液を封入した容器の蓋として、弁を有するキャップが用いられている。当該キャップは、封入されている内容液を容器の外部に注ぎ出す際に弁を開き、それ以外の場合は弁を閉じて容器の内部に外部の空気が侵入することを防止している。
【0003】
このようなキャップの一例として、特許文献1には、内容液を注出させる注出筒の内部と容器の内部とを連通する内部筒と、その内部筒の内側に配置される移動弁とを有するキャップが開示されている。この特許文献1の図3に開示されているキャップは、内部筒の中で下部開口と上部開口との間を移動することができる移動弁を備えている。
【0004】
容器の内部に外部の空気が侵入するのを防止するために弁を閉じた状態、すなわち閉弁状態では、移動弁は下部開口に配置される。内容液を容器の外部に注出するためには、移動弁を上部開口に向かって移動させる。移動弁の移動は、容器から内容液を注出させたい利用者が弾力性のある容器を握ることで、内容液により移動弁を押圧することにより行う。これにより移動弁と内部筒との間に内容液が通過することのできる空間が生じて、弁を開いた状態、すなわち開弁状態となって、容器の外部に内容液を注出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-140830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなキャップでは開弁状態から閉弁状態に移行する際、内部筒の上部開口から下部開口に向かって、移動弁が移動する。これに伴い、内部筒の中では、移動弁と注出筒との間に空間が生じ、この空間に向かって注出筒の内部の内容液がサックバックされる。ところが、移動弁が下部開口に向かって安定して移動せず、内容液のサックバックが不十分となる場合がある。この場合、注出筒の内部にサックバックされなかった内容液が残存して、その内容液が容器の外部等に飛散する問題があった。
【0007】
このため本発明では、注出筒の内部の内容液を安定してサックバックするために、閉弁位置に向かって安定して移動弁が移動することができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のキャップは、容器の口部に取り付けられるキャップ本体と、前記容器とキャップ本体との間に配置される中栓とを備え、前記キャップ本体が、前記容器の内容液を注ぎ出す注出筒を有し、前記中栓が、前記注出筒の内部と容器の内部とを連通する筒状体と、前記筒状体の内部で注出筒側と容器側との間を移動する移動弁体と、前記注出筒側に移動した移動弁体の筒状体からの抜け出しを規制する弾性規制部材とを有し、前記筒状体は、前記注出筒側に移動した移動弁体との間に空間が形成されるとともに、前記容器側に移動した移動弁体により封止されるものであり、前記弾性規制部材が、前記注出筒側に移動した移動弁体を、弾性力により容器側に押圧するものであることを主要な特徴とする。
【0009】
このような構成であると、前記筒状体の内部で、前記容器側に向かって前記移動弁体が移動する際に、前記弾性規制部材の弾性力による前記容器側への押圧が、前記移動弁体に加わる。
【0010】
本発明のキャップは、筒状体の内部が、注出筒の内部と同一軸心上に配置されていることが好ましい。
【0011】
筒状体の内部と、注出筒の内部とが同一軸心上になければ、内容液の注出時の容器の姿勢によって、開弁状態となってから内容液が注出筒から注出されるまでの間に一時的にキャップの内部に溜められる内容液の量に差が生じる。よって、容器において異なる姿勢での内容液の注出を比較すると、注出開始時の注出感に差が生じる。しかし、筒状体の内部が、注出筒の内部と同一軸心上に配置されていれば、容器の姿勢が異なることにより、上記の一時的に溜められる内容液の量に差が生じないため、注出開始時の注出感に差が生じない。
【0012】
本発明のキャップは、弾性規制部材が、注出筒の内部と筒状体の内部とを連通する連通口を有することが好ましい。
【0013】
このような構成であると、連通口を内容液が通過して注出される。
【0014】
本発明のキャップは、弾性規制部材が、その中心に向かうにつれて容器側に突出した弾性傾斜部を有することが好ましい。
【0015】
弾性規制部材の弾性力は、弾性規制部材が移動弁体を規制した際に生じる弾性規制部材の変形量により定まる。弾性傾斜部の傾斜度合は、弾性規制部材の変形量を定める要素の1つであるため、このような構成であると、弾性規制部材の弾性力が、弾性傾斜部の傾斜度合によって定まる。
【0016】
本発明のキャップは、弾性傾斜部が、容器側に移動弁体との当接部を有し、前記当接部は、前記移動弁体の移動を規制するものであることが好ましい。
【0017】
このような構成であると、移動弁体の移動を前記当接部が規制する。
【0018】
本発明のキャップは、移動弁体が、球状弁体であり、中栓が、注出筒側への移動弁体の移動を案内する案内部を有し、前記案内部が、筒状体の内面から突出したものであることが好ましい。
【0019】
このような構成であると、前記移動弁体は、前記案内部により案内されるとともに、内容液が前記案内部と移動弁体との隙間を通過する。
【0020】
本発明のキャップは、筒状体が、側壁部と、前記側壁部に容器側で接続されて開口を有する筒底部とを有し、移動弁体が、前記筒底部の側壁部の内側に配置され、前記筒底部の開口よりも大径で、その開口を通って容器側へ移動するのを規制する抜け止め部と、前記筒底部の開口を通る柱部とを有することが好ましい。
【0021】
このような構成であると、前記移動弁体の抜け止め部は、前記筒底部の開口よりも大径であるため、前記移動弁体が前記筒状体の内部から容器の内部に抜け出すことがない。また、前記筒状体の開口により前記柱部が、前記移動弁体の移動を案内する。
【0022】
本発明のキャップは、柱部が、前記柱部の側面に突出した状態で柱部の軸心方向に延びる突起を有し、前記柱部突起は、柱部の周方向に隙間を隔てて複数配置されたものであることが好ましい。
【0023】
このような構成であると、前記筒状体の開口が、前記柱部突起により前記移動弁体を案内するとともに、前記柱部突起どうしの間に形成された、前記開口と移動弁体との隙間を内容液が通過する。
【0024】
本発明のキャップは、筒底部が、その開口の縁で注出筒側に突出する筒底部側環状突起を有し、抜け止め部が、その外縁で容器側に突出する抜け止め部側環状突起を有し、前記筒底部側環状突起が、前記容器側に移動した移動弁の抜け止め部側環状突起との間に、前記容器の内容液で封止する液封空間を形成するものであることが好ましい。
【0025】
このような構成であると、前記液封空間により筒状体が封止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のキャップによると、前記弾性規制部材から前記容器側に押圧が加えられた移動弁体は、閉弁位置に向かって安定して移動することができる。このため、注出筒の内部の内容液を安定してサックバックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の第1形態におけるキャップの断面図である。
図2】本発明の実施の第1形態における球状弁用筒状体の図である。(a)は断面図を示し、(b)はA-A矢視を示す。
図3】本発明の実施の第1形態において、開弁状態の球状弁用中栓部分の拡大図である。
図4】本発明の実施の第1形態において、閉弁状態の球状弁用中栓部分の拡大図である。
図5】本発明の実施の第2形態におけるキャップの断面図である。
図6】本発明の実施の第2形態におけるT字弁用移動弁体の図である。(a)断面図を示し、(b)はB-B矢視を示す。
図7】本発明の実施の第2形態において、開弁状態のT字弁用中栓部分の拡大図である。
図8】本発明の実施の第2形態において、閉弁状態のT字弁用中栓部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、2種類の形態を図1から図8を参照しながら説明する。なお、本明細書に示す「上」、「下」は、図1に示すように、キャップ10に対し、容器90が下方向に位置する状態での向きとする。また、「上」、「下」方向に対して垂直の方向を「水平」方向とする。
【0029】
まず本発明の第1形態について図1から図4を参照して説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態のキャップ10は、例えば醤油などの内容液Lを入れる容器90の口部91に取り付けられて、口部91を覆う。
【0030】
容器90は、外容器92に、内容液Lが入れられる内容器93を内包する二重構造容器である。口部91は、外容器口部92aと、外容器口部92aの内部に隙間を隔てて配置される内容器口部93aとにより構成される。外容器口部92aは、その外面に外容器螺合部92bが形成される。容器90は、口部91の蓋をした状態で押圧、すなわち外容器92を押圧すると、内容器93も外容器92の押圧方向に変形する。一見すると、外容器92と内容器93との間には、内外圧調整空間Pがあり、外容器92の変形は直接的に内容器93に伝わらない。しかし、口部91は蓋をされているため、外容器92が押圧された場合に、内外圧調整空間Pの内部の空気は外部に流出することができず、外容器92の変形に伴い、外容器92に加圧された内外圧調整空間Pの空気が、内容器93を押圧方向に変形させる。
【0031】
キャップ10は、容器90の口部91に取り付けられるキャップ本体11と、キャップ本体11に取り付けられる球状弁用中栓15(「中栓」の一例)とにより構成される。キャップ本体11には、変形することのできるヒンジ12を介して上蓋13が一体で成形されている。キャップ本体11と、ヒンジ12と、上蓋13とは、合成樹脂などを射出成形されたものである。容器90に取り付けられたキャップ10は、ヒンジ12を変形させて、キャップ本体11に形成された注出筒21を覆う位置に、上蓋13を配置することができる。このように上蓋13を配置することで、容器90は蓋をした状態となる。
【0032】
キャップ本体11は、容器90の内容液Lを注出する注出筒21と、注出筒21の下端から径方向の外向きに広がる天面部22と、注出筒21とは異なる位置で天面部22から上方向に突出する空気取り入れ口22aと、天面部22の外周から下方向に筒状に延びて容器90の口部91と螺合するキャップ本体外周筒状部23とにより構成されている。キャップ本体外周筒状部23の外周筒状部内面23aには、外容器螺合部92bに螺合する外周筒状部螺合部23bが形成されている。
【0033】
球状弁用中栓15は、注出筒21の内部と容器90の内部とを連通する球状弁用筒状体30(「筒状体」の一例)と、球状弁用筒状体30の内部に配置される球状弁35(「移動弁体」の一例)と、球状弁用筒状体30の開口に取り付けられる弾性規制部材40とにより構成される。
【0034】
図2に示すように、球状弁用筒状体30は、球状弁用筒状部31と、球状弁用筒状部31の外周部から径方向の外向きに広がる支持部33とにより構成される。球状弁用筒状部31は、軸心方向で一定の内径を有する筒状のストレート部31aと、ストレート部31aの2つの端部のうちの一方の端部に連続的に形成され、その内径が連続的に拡大する拡径部31bと、ストレート部31aの2つの端部のうちの他方の端部に連続的に形成され、その内径が連続的に縮小する縮径部31cとにより構成される。拡径部31bには、軸心方向を向く上開口31dが形成され、縮径部31cには、軸心方向を向く下開口31eが形成されている。上開口31d側にある支持部33の上面には、環状の弾性規制部材嵌合部33aが設けられている。弾性規制部材嵌合部33aよりも径方向に沿った外側の位置には、下開口31e側の面である下面から上面にわたって切欠かれた空気弁用切り欠き33bが形成されている。球状弁用筒状体30は、合成樹脂などを射出成形したものである。
【0035】
図1に示すように、キャップ本体11の外周筒状部内面23aに支持部33の外周部が対向し、キャップ本体11の内側の面に支持部33の上面が当接するように、キャップ本体11の内側に球状弁用筒状体30が配置される。また、球状弁用筒状部31の内部(「筒状体の内部」の一例)は、注出筒21の内部と、同一軸心上に配置されていることが好ましい。球状弁用筒状部31の内部と、注出筒21の内部とが同一軸心上になければ、内容液Lの注出時の容器90の姿勢によって、開弁状態となってから注出筒21から注出されるまでの間に一時的にキャップ本体11の内部に溜められる内容液Lの量に差が生じる。よって、容器90において異なる姿勢での内容液Lの注出を比較すると、注出開始時の注出感に差が生じる。しかし球状弁用筒状部31の内部が、注出筒21の内部と同一軸心上に配置されていれば、容器90の姿勢が異なることにより、上記の一時的に溜められる内容液Lの量に差が生じないため、注出開始時の注出感に差が生じない。このため、キャップ本体11に球状弁用筒状体30を配置した際に、球状弁用筒状部31の内部と、注出筒21の内部とが同一軸心上に配置されるように、球状弁用筒状部31に支持部33が形成されていることが好ましい。
【0036】
図2に示すように、球状弁35の球状弁用筒状部31の軸心方向への移動を案内する案内部32が、拡径部31bの内面(「筒状体の内面」の一例)より突出することが好ましく、案内部32は球状弁用筒状部31の軸心方向に沿って設置されていることが好ましい。一方で、案内部32を設置すると、内容液Lが通過する空間の水平方向の断面積が減少する。当該断面積の減少を低減するために、球状弁用筒状部31の周方向に隙間を隔てて、複数の案内部32を設置することが好ましい。これにより、球状弁用筒状部31の軸心方向への球状弁35の移動を、案内部32が案内するとともに、案内部32の間の隙間を内容液Lが通過する。すなわち、案内部32の設置による内容液Lの通過する空間の水平方向の断面積の減少が低減して、案内部32の設置による内容液Lの注出量の減少を低減することができる。
【0037】
図1図3図4に示すように、球状弁35は、球状弁用筒状部31のストレート部31aの内径以下の大きさ、かつ下開口31eの内径を超える大きさの外径を有し、合成樹脂などを射出成形して形成される。
【0038】
弾性規制部材40は、球状弁用筒状部31の内部に配置された球状弁35の移動を規制する部材である。弾性規制部材40は、膜状の規制部41と、規制部41の外周から下方向に筒状に延びる弾性規制部材取り付け部42と、弾性規制部材取り付け部42の外縁部の一部から径方向の外向きに延びる空気弁43とにより構成される。空気弁43は、その根元を起点に上下方向に変形することができる。弾性規制部材40は、球状弁35よりも柔らかく、弾性変形する材料により成形される。
【0039】
規制部41は、球状弁35の移動を規制する部位で、上開口31dを覆うように配置される。一方で、規制部41に上開口31dが覆われると、内容液Lが上開口31dを通過することができなくなる。よって、上開口31dから内容液Lを通過させるために、注出筒21の内部と球状弁用筒状体30の内部とを連通する連通口41bが、規制部41の外縁部に形成されていることが好ましい。
【0040】
規制部41には、その中心に向かうにつれて容器90側である下方向に突出する弾性傾斜部41aが形成されていることが好ましい。このようにすると、例えば規制部41が下方向に傾斜する弾性傾斜部41aが形成された場合と、弾性傾斜部41aが形成されていない場合とを比較すると、規制部41が上方向に押圧された際の弾性規制部材40の変形量は、前者の方が大きくなる。つまり、弾性規制部材40が押圧された際、弾性規制部材40に生じる弾性力が大きくなる。
【0041】
弾性規制部材40は、規制部41の容器90側である下面に、環状の突起である弁体当接部41c(「当接部」の一例)が形成されていることが好ましい。このようにすると、弁体当接部41cは、球状弁35の一部分と嵌まるように当接して、球状弁35の水平方向の移動を規制する。
【0042】
球状弁35と、弾性規制部材40と、球状弁用筒状体30との球状弁用中栓15に対する配置、およびその球状弁用中栓15のキャップ本体11に対する配置について、図1により説明する。
【0043】
球状弁35と、弾性規制部材40と、球状弁用筒状体30との球状弁用中栓15に対する配置ついて説明する。球状弁35は、球状弁用筒状体30の球状弁用筒状部31の内部に配置される。弾性規制部材40は、弾性規制部材取り付け部42を弾性規制部材嵌合部33aに嵌合させた状態で、空気弁用切り欠き33bと空気弁43とが、球状弁用筒状部31の軸心方向で重複するように、球状弁用筒状体30に配置される。このように球状弁用筒状体30に弾性規制部材40を配置すると、上開口31dを規制部41が覆うように配置される。
【0044】
球状弁用中栓15は、支持部33の外周が外周筒状部内面23aに対向するとともに、キャップ本体11と支持部33の上面とが当接するように配置される。また、球状弁用中栓15は、空気弁43が空気取り入れ口22aを覆う状態で、キャップ本体11に配置される。このように球状弁用中栓15をキャップ本体11に配置すると、球状弁用筒状部31の内部が、注出筒21の内部と同一軸心上に配置される。
【0045】
球状弁用中栓15が配置されたキャップ本体11は、容器90の口部91を覆うように配置される。キャップ本体11は、外容器螺合部92bに外周筒状部螺合部23bを螺合することにより、容器90の口部91に配置される。このようにキャップ本体11を、容器90に配置することで、内容器93の内部と球状弁用筒状体30の内部とがつながって、内容器93の内部と注出筒21の内部とがつながる。また、空気弁43が、その根元で下方向に変形することで、キャップ本体11の空気取り入れ口22aと、内外圧調整空間Pとがつながる。
【0046】
キャップ10が、開弁状態から閉弁状態へ移行する際の弁の動作について、図3図4により説明する。
【0047】
開弁状態の球状弁用中栓15周辺の拡大図を図3に示す。例えば外容器92を外側から押圧して、内外圧調整空間Pを加圧すると、内容器93の内部の圧力が上昇して、注出筒21側へ内容液Lが球状弁35を押圧して、球状弁用筒状体30の内部で、注出筒21側へ向かって、球状弁35が移動する。球状弁35が拡径部31bに達すると、球状弁35と球状弁用筒状部31との間に内容液Lの通過することができる液通路LPが生じ、開弁状態となる。この後、弾性規制部材40は、球状弁35に押圧されて注出筒21側への変形を伴いながら、球状弁35の移動を規制する。なお、球状弁35と球状弁用筒状部31との間に液通路LPが生じる状態が開弁状態であるが、図3は開弁状態のうち、球状弁35が弾性規制部材40に規制された状態を示している。
【0048】
閉弁状態の球状弁用中栓15周辺の拡大図を図4に示す。外容器92への押圧を解除すると、内外圧調整空間Pへの加圧が解除され、内容器93の内部の圧力が下がる。内容器93の内部の内容液Lの一部は注出されているため、内容器93の内部の圧力は大気圧よりも小さくなる。内容器93の内部と外部との間には圧力差が生じて、これにより球状弁用筒状体30の内部で下方向へ向かって球状弁35が移動し、キャップ10は開弁状態から閉弁状態へ移行する。この際、弾性規制部材40の変形を伴って規制されていた球状弁35は、内容器93の内部と外部との間の圧力差により生じる下方向への力に加え、弾性規制部材40により生じる弾性力により下方向へ力を加えられる。これにより、球状弁35は下方向へ安定して移動することができる。球状弁35が下方向へ移動すると、球状弁用筒状体30の内部の球状弁35に対して上方向にサックバック空間LSが生じる。球状弁35の移動により生じたサックバック空間LSは、一時的に周囲の空間よりも圧力が低くなるため、注出筒21の内部に残存していた内容液Lは、サックバック空間LSにサックバックされる。このように下側へ安定して球状弁35が移動するため、キャップ10は、注出筒21の内部に残存する内容液Lを安定して、サックバック空間LSにサックバックすることができる。
【0049】
球状弁35は、縮径部31cに着座するまで移動する。なお、球状弁35と球状弁用筒状部31との間に液通路LPのない状態が閉弁状態であるが、図4は閉弁状態のうち、球状弁35が縮径部31cに着座した状態を示している。この他に、本発明の実施の形態の場合は、ストレート部31aを球状弁35が移動している状態も閉弁状態となる。
【0050】
次いで図5から図8を参照しながら、本発明の第2形態について説明する。第1形態では、移動弁体の一例として球状弁35(球形状の弁体)について説明したが、第2形態では、抜け止め部および柱部を有する弁について説明する。本発明の第2形態は、キャップ本体11と、T字弁用中栓16とにより構成される。T字弁用中栓16の基本的な構成は、本発明の第1形態の球状弁用中栓15と同様である。球状弁用中栓15と異なるのは、球状弁用筒状体30の代わりに、それとは形状の異なるT字弁用筒状体50(「筒状体」の一例)を使用し、球状弁35の代わりに、それとは形状の異なるT字弁60(「移動弁体」の一例)を使用している点である。なお、このように異なる点があるが、本発明の第2形態は、本発明の第1形態と、同様の弁の開閉動作を行う。
【0051】
図5に示すように、T字弁用筒状体50は、T字弁用筒状部51と、T字弁用筒状部51の外周部から径方向外向きに広がる支持部52とにより構成される。T字弁用筒状部51は、その内面である側壁部51aと、側壁部51aに容器90側で接続される筒底部51bとにより構成される。筒底部51bには、T字弁用筒状部51の軸心方向に向かって下開口51cが形成されている。なお、その他の構成は、球状弁用筒状体30と同様である。T字弁用筒状体50は、下開口51cが支持部52に対して、容器90側に向くようにキャップ本体11に取り付けられる。
【0052】
図6に示すように、T字弁60は、側壁部51aの内側に配置され、下開口51cよりも大径で、T字弁60が下開口51cを通って容器90側へ移動するのを規制する円板形状の抜け止め部61と、抜け止め部61の二つの対向する面のうちの一方の面からその軸心方向に向かって延び、下開口51cを通る円柱状の柱部62とにより構成される。このような構成であると、T字弁60は、T字弁用筒状部51の内面に沿って、その軸心方向に移動することができる。また柱部62が下開口51cを通るため、T字弁60がT字弁用筒状部51の軸心方向に移動する際には、柱部62を下開口51cが案内して、T字弁60のT字弁用筒状部51の径方向への移動を低減する。
【0053】
一方で、柱部62を下開口51cに通すと、下開口51cにおいて、液通路LPの水平方向の断面積が小さくなり、柱部62を備えない移動弁体を使用する場合と比較して、内容液Lの注出量が減少する。内容液Lの注出量の減少を低減するために、柱部62は、側面から突出した状態で柱部62の軸心方向に延びる柱部突起62aを有することが好ましく、柱部突起62aは、柱部62の周方向に隙間を隔てて複数配置されることが好ましい。また、柱部突起62aは、下開口51cの軸心方向長さよりも長いことが好ましく、柱部62の上端から下端に至ることが好ましい。柱部62が柱部突起62aを有することで、T字弁60がT字弁用筒状部51の軸心方向に移動する際に、柱部突起62aの外径と、下開口51cの内径とにより、T字弁60は案内される。よって、柱部突起62aの外径の大きさを下開口51cの内径の大きさに合わせさえすれば、柱部62の断面積を小さくすることが可能となる。このため、下開口51cと柱部62との間に生じる液通路LPが、柱部突起62aが形成されていない場合よりも大きくなり、柱部62を備えることによる内容液Lの注出量の減少を低減することができる。
【0054】
図7に示すように、T字弁用筒状体50は、筒底部51bが、下開口51cの縁で注出筒21側に突出する筒底部側環状突起53を有することが好ましく、T字弁60は、抜け止め部61が、その外縁で容器90側に突出する抜け止め部側環状突起63を有することが好ましい。このような構成であると、図8に示すように、筒底部51bにT字弁60が着座した際に、抜け止め部側環状突起63の面と、その抜け止め部側環状突起63と対向する筒底部側環状突起53の面との間に液封空間Sが形成される。図6に示すように、液封空間Sを内容液Lが満たすことで、T字弁用筒状体50は封止される。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態に限られるものではなく、移動弁体の移動が弾性規制部材により規制される際に、弾性規制部材が弾性変形を伴って、移動弁体の移動を規制するという本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0056】
本発明の実施の形態では、キャップ10が取りつく容器90として、二重構造容器を例示したが、上記本発明の趣旨を逸脱しなければ、容器は二重構造とする必要はない。
【0057】
図6に示す本発明の実施の形態のT字弁用筒状体50にT字弁60が着座した際に、抜け止め部側環状突起63の側面が、筒底部側環状突起53の側面と隙間を隔てて対向しており、それらの間の空間に液封空間Sが形成されていた。しかし、抜け止め部側環状突起63の面と、その面と対向する筒底部側環状突起53の面との間に液封空間Sが形成されるという本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 キャップ
11 キャップ本体
15 球状弁用中栓
16 T字弁用中栓
21 注出筒
30 球状弁用筒状体
31d 上開口
31e 下開口
32 案内部
35 球状弁
40 弾性規制部材
41 規制部
41a 弾性傾斜部
41b 連通口
41c 弁体当接部
50 T字弁用筒状体
51c 下開口
53 筒底部側環状突起
60 T字弁
61 抜け止め部
62 柱部
62a 柱部突起
63 抜け止め部側環状突起
90 容器
91 口部
L 内容液
S 液封空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8