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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005324
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20230111BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K8/365
A61Q11/00
A61K8/19
A61K8/20
A61K8/21
A61K8/36
A61K8/362
A61K8/24
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107152
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 敬二
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】川延 勇介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 弘子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB271
4C083AB272
4C083AB281
4C083AB282
4C083AB331
4C083AB332
4C083AB351
4C083AB352
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC291
4C083AC292
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC332
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC782
4C083AC842
4C083AC862
4C083AD302
4C083AD352
4C083AD532
4C083BB21
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】保存後も口中での分散性に優れ、味も良い、水溶性のアルミニウム塩又はカリウム塩含有の口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)水溶性のアルミニウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)スズ含有化合物、及び(C)顆粒を含有する口腔用組成物。更に、(D)冷感剤を含有する上記口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性のアルミニウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上、
(B)スズ含有化合物
及び
(C)顆粒
を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
水溶性のアルミニウム塩が乳酸アルミニウムであり、水溶性のカリウム塩が硝酸カリウムである請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(B)スズ含有化合物が、塩化スズ、フッ化スズ、酢酸スズ、グルコン酸スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、クエン酸スズ、リンゴ酸スズ、スズ酸ナトリウム及びリン酸スズから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(C)顆粒が、平均崩壊強度10~100g/個のものである請求項1~3のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(C)顆粒が、粒径53~850μmの顆粒を含むものであり、かつ組成物全体に対する前記粒径53~850μmの顆粒の含有量が0.1~15質量%である請求項1~4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項6】
(C)顆粒が、平均粒子径(D50:質量基準)60~500μmのものである請求項1~5のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項7】
(C)顆粒が、シリカ顆粒である請求項1~6のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項8】
水溶性のアルミニウム塩の含有量が、アルミニウムイオンとして0.01~1質量%であり、水溶性のカリウム塩の含有量が、カリウムイオンとして0.05~4質量%である請求項1~7のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項9】
(B)スズ含有化合物の含有量が、スズイオンとして0.02~1質量%である請求項1~8のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項10】
(B)成分のスズイオンとしての含有量と(C)成分の含有量との量比を示す(B)/(C)が、質量比として0.03~3である請求項1~9のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項11】
更に、(D)冷感剤を0.00001~0.01質量%含有する請求項1~10のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項12】
(D)冷感剤が、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、メントングリセロールアセタール、メントキシプロパン-1,2-ジオール、乳酸メンチル及びコハク酸メンチルから選ばれる1種又は2種以上である請求項11記載の口腔用組成物。
【請求項13】
練歯磨又はジェル状歯磨である請求項1~12のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存後も口中での分散性に優れ、味も良い、水溶性のアルミニウム塩及び/又は水溶性のカリウム塩含有の口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔用組成物には、水溶性のアルミニウム塩や水溶性のカリウム塩が、知覚過敏予防又は抑制等の有効成分として用いられ、特に、水溶性アルミニウム塩としては乳酸アルミニウム、水溶性カリウム塩としては硝酸カリウムが、知覚過敏予防又は抑制成分として一般的に用いられている(特許文献1~3:特開2010-222325号公報、特開平5-155745号公報、特表平11-510161号公報)。
また、スズ含有化合物は、基本性能としてう蝕予防又は抑制効果を有し、また、抗菌剤としてスズイオンを含む薬剤が有効であることが提案されている(特許文献4:特開2008-143910号公報)。
水溶性のアルミニウム塩やカリウム塩が配合された口腔用組成物にスズ含有化合物を添加することで、これらの効果を同時に付与して効果向上を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-222325号公報
【特許文献2】特開平5-155745号公報
【特許文献3】特表平11-510161号公報
【特許文献4】特開2008-143910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水溶性のアルミニウム塩やカリウム塩が配合された口腔用組成物に、スズ含有化合物を配合すると、経時において製剤が硬くなり、口中での分散性が悪くなるという課題が生じ、また、上記アルミニウム塩やカリウム塩自体に金属味等の異味があることもあり、金属味を持つスズ含有化合物を添加すると、味等の使用感の悪化を招くおそれもあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、保存後も口中での分散性に優れ、味も良い、水溶性のアルミニウム塩及び/又は水溶性のカリウム塩含有の口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、水溶性のアルミニウム塩及び/又は水溶性のカリウム塩を配合した口腔用組成物に、スズ含有化合物を配合し、かつ顆粒、特にシリカ顆粒を組み合わせて配合すると、経時において製剤が硬くなることなく安定に維持されると共に、顆粒が、口中で使用時の製剤の分散を物理的に助けることで、保存後に口中で使用しても製剤の分散性に優れ、また、えぐ味が改善され、味も良好となることを知見した。即ち、本発明では、(A)水溶性のアルミニウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上、(B)スズ含有化合物、及び(C)顆粒を含有する口腔用組成物とすることによって、(A)、(B)成分の知覚過敏予防又は抑制やう蝕予防又は抑制等の作用効果が発揮されると共に、保存後も口中での分散性に優れ、また、味の良い使用感を与えることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
更に詳述すると、知覚過敏予防又は抑制効果を持つ(A)成分が配合された口腔用組成物に、う蝕予防又は抑制効果を持つ(B)成分を併用して配合すると、経時において、製剤が硬くなり、口中で使用すると製剤の分散性が悪く、特に練歯磨等の歯磨剤組成物では、保存後に練が硬くなり、ブラッシング時に練の塊が残って口中に均一に分散しなくなり、べたつきも感じられ、また、(A)、(B)成分の金属味等の異味が非常に強く発現し、これが不快なえぐ味として強く感じられ、味が悪くなった。しかし、更に、(C)成分を組み合わせて配合すると、(A)及び(B)成分の併用系において、(C)成分が、経時においても製剤が硬くなるのを防止すると共に、口中で使用時の製剤の分散を物理的に助け、練歯磨であってもブラッシング時の練の分散を物理的に助けることで、口中での分散性、特に保存後の口中での分散性を改善し、かつ、えぐ味をマスキングして改善するという、予想外の作用効果を奏した。また、顆粒は、多く使用すると、えぐ味(渋み)を呈することがあるが、本発明においては、(C)成分を好ましくは特定量で配合することによって、上記格別な作用効果を付与することができた。
また更に、本発明では、(C)成分として、特に特定の粒度及び崩壊強度の顆粒を配合すると、上記作用効果を一層優れたものとすることができた。
【0008】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)水溶性のアルミニウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上、
(B)スズ含有化合物
及び
(C)顆粒
を含有することを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕
水溶性のアルミニウム塩が乳酸アルミニウムであり、水溶性のカリウム塩が硝酸カリウムである〔1〕記載の口腔用組成物。
〔3〕
(B)スズ含有化合物が、塩化スズ、フッ化スズ、酢酸スズ、グルコン酸スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、クエン酸スズ、リンゴ酸スズ、スズ酸ナトリウム及びリン酸スズから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕又は〔2〕記載の口腔用組成物。
〔4〕
(C)顆粒が、平均崩壊強度10~100g/個のものである〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕
(C)顆粒が、粒径53~850μmの顆粒を含むものであり、かつ組成物全体に対する前記粒径53~850μmの顆粒の含有量が0.1~15質量%である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔6〕
(C)顆粒が、平均粒子径(D50:質量基準)60~500μmのものである〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔7〕
(C)顆粒が、シリカ顆粒である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔8〕
水溶性のアルミニウム塩の含有量が、アルミニウムイオンとして0.01~1質量%であり、水溶性のカリウム塩の含有量が、カリウムイオンとして0.05~4質量%である〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔9〕
(B)スズ含有化合物の含有量が、スズイオンとして0.02~1質量%である〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔10〕
(B)成分のスズイオンとしての含有量と(C)成分の含有量との量比を示す(B)/(C)が、質量比として0.03~3である〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔11〕
更に、(D)冷感剤を0.00001~0.01質量%含有する〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔12〕
(D)冷感剤が、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、メントングリセロールアセタール、メントキシプロパン-1,2-ジオール、乳酸メンチル及びコハク酸メンチルから選ばれる1種又は2種以上である〔11〕記載の口腔用組成物。
〔13〕
練歯磨又はジェル状歯磨である〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存後も口中での分散性に優れ、また、えぐ味が改善され味も良い、(A)成分と共に(B)成分を含有する口腔用組成物を提供できる。この口腔用組成物は、(A)、(B)成分による知覚過敏予防又は抑制やう蝕予防又は抑制等の作用効果を有し、これら歯周疾患の予防又は抑制用として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の口腔用組成物は、(A)水溶性のアルミニウム塩及び/又は水溶性のカリウム塩、(B)スズ含有化合物、及び(C)顆粒を含有する。
【0011】
(A)成分は、水溶性アルミニウム塩及び/又は水溶性カリウム塩である。前記アルミニウム塩は、象牙細管封鎖作用を有し、カリウム塩は象牙細管の神経鈍麻作用を有し、これらは、特に知覚過敏予防又は抑制成分として有効である。
水溶性アルミニウム塩は、例えば乳酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム、マロン酸アルミニウム、グルタル酸アルミニウム、リンゴ酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム等が挙げられ、特に、乳酸アルミニウムが好ましい。
水溶性カリウム塩は、例えば硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸アルムニウムカリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、ソルビン酸カリウム、クエン酸一カリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、グルコン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、コハク酸カリウム、リンゴ酸カリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、アセスルファムカリウム、フッ化カリウム等が挙げられ、特に、硝酸カリウムが好ましい。
これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせてもよく、また、市販品を使用できる。
【0012】
(A)成分の配合量は、使用物質に応じて調整することが好ましく、水溶性アルミニウム塩、水溶性カリウム塩の配合量は、それぞれ下記範囲が好ましい。
(A)成分として水溶性アルミニウム塩を配合する場合、その配合量は、アルミニウムイオンとして組成物全体の0.01~1%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.05~0.5%である。配合量が多いほど、知覚過敏予防又は抑制効果が得られるが、配合量が1%以下であると、口中での分散性、えぐ味が十分に改善される。
また、(A)成分として水溶性カリウム塩を配合する場合、その配合量は、カリウムイオンとして組成物全体の0.05~4%が好ましく、より好ましくは0.5~3%である。配合量が多いほど知覚過敏予防又は抑制効果が得られるが、配合量が4%以下であると、口中での分散性、えぐ味が十分に改善される。
更に、(A)成分の配合量は、アルミニウムイオン及びカリウムイオンの総配合量として組成物全体の0.01~5%が好ましく、より好ましくは0.05~4%である。この範囲内であると、知覚過敏予防又は抑制効果が発揮されると共に、口中での分散性及びえぐ味が十分に改善される。
【0013】
(B)スズ含有化合物は、う蝕予防又は抑制効果を有し、う蝕予防又は抑制成分として有効である。
スズ含有化合物としては、例えば塩化スズ、フッ化スズ、酢酸スズ、グルコン酸スズ、シュウ酸スズ、硫酸スズ、乳酸スズ、酒石酸スズ、クエン酸スズ、リンゴ酸スズ、スズ酸ナトリウム、リン酸スズ等が挙げられる。特に、塩化スズ、フッ化スズが好ましい。
塩化スズは、塩化スズ(II)(塩化第一スズ)を用いることができ、塩化スズ(II)二水和物等の水和物でもよい。フッ化スズは、フッ化スズ(II)(フッ化第一スズ)、フッ化スズ(IV)(フッ化第二スズ)を用いることができる。特にう蝕予防効果を付与することができる点から、フッ化スズ(II)(フッ化第一スズ)が好ましい。
これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせてもよく、また、市販品を使用できる。
【0014】
(B)スズ含有化合物の配合量は、スズイオンとして組成物全体の0.02~1%が好ましく、より好ましくは0.1~0.6%である。スズイオンとしての配合量が多いほど、う蝕予防又は抑制効果が得られるが、配合量が1%以下であると、口中での分散性、えぐ味が十分に改善される。
【0015】
(C)顆粒は、(A)及び(B)成分の併用系で、経時において製剤が硬くなるのを防止し、特に保存後における口中での分散性を改善し、また、えぐ味をマスキングして改善する作用を奏する。
(C)顆粒は、下記物性を有するものが好ましく、これら物性を有する歯磨剤用の水不溶性粉体を用いた顆粒、例えばシリカ顆粒、ゼオライト顆粒、炭酸カルシウム顆粒、水酸化アルミニウム顆粒、炭酸水素カルシウム顆粒等を使用し得るが、特にシリカ顆粒が好適である。
【0016】
(C)顆粒は、崩壊性顆粒であることが好ましく、その平均崩壊強度*1は、好ましくは10~100g/個、より好ましくは15~50g/個である。10g/個以上であると、特に優れた口中での分散性を付与でき、100g/個以下であると、えぐ味の改善の点で好適である。
*1:平均崩壊強度
レオメーター(サン科学社製の「サンレオメーターCR-200D」)により、顆粒30個について1個ずつ自動破断強度測定値(顆粒1個を10mm/分の速度で圧縮した時に顆粒が崩壊するときの荷重)を測定した値の平均値(以下同様)。
【0017】
また、(C)顆粒は、JIS Z8801-1に記載の試験用篩(850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、125μm、90μm、63μm、53μm、45μm)で篩分けした際に、
・(c1)850μmを通過しない粒子(850μm on)
・(c2)850μmを通過し、250μmを通過しない粒子(850μm pass~250μm on)の合計
・(c3)250μmを通過し、53μmを通過しない粒子(250μm pass~53μm on)の合計
・(c4)53μmを通過し、45μmを通過しない粒子(53μm pass 45μm on)
として、粒径53~850μmの顆粒、即ち、(c2)と(c3)とを含むものであることが好ましい。
更に、顆粒中に含まれる粒径53~850μmの顆粒、即ち、(c2)+(c3)の合計量が、組成物全体に対して0.1~15%であることが好ましく、より好ましくは0.4~10%である。この範囲内であることが、口中での分散性及びえぐ味の改善の点で、一層好ましい。
また、(c2)+(c3)の合計量と(c1)+(c2)+(c3)+(c4)の合計量との割合を示す{(c2)+(c3)}/{(c1)+(c2)+(c3)+(c4)}が、質量比として0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.8以上、特に好ましくは0.9以上であり、1であってもよい。
(C)顆粒は、上記を満たすことが、口中での分散性及びえぐ味の改善に好適であり、特に、粒径が53μm以上の粒子であると、口中での分散性に優れ、850μm以下の粒子であると、えぐ味の改善の点で好適である。
【0018】
(C)顆粒は、下記の平均粒子径(D50:質量基準)であるものが好ましい。
平均粒子径*2は、60~500μmであることが好ましく、より好ましくは60~350μm、特に好ましくは80~200μmである。60μm以上であると、特に優れた口中での分散性を付与でき、500μm以下であると、えぐ味の改善の点で好適である。
*2:平均粒子径
(C)顆粒の平均粒子径は、JIS篩(850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、125μm、90μm、63μm、53μm、45μm)により篩分けを行った後、各篩に残存する顆粒の質量を測定し、各篩の目開きを代表径とした質量基準の粒度分布から算出した50%累積粒径の値である(以下同様)。
なお、(C)顆粒が、上記物性の中でも、特に上記特定粒径の崩壊性シリカ顆粒であると、口中での分散性及びえぐ味の改善の点で、一層好適である。
【0019】
(C)顆粒は、市販品を使用することができる。上記物性を有するシリカ顆粒として具体的には、PQコーポレーション社の「SORBOSIL BFG10」、「SORBOSIL BFG50」、東ソーシリカ社の「NIPGEL BY-001」、HUBER社の「Zeodent 9175」等を使用できる。
【0020】
(C)顆粒の配合量は、組成物全体の0.1~15%が好ましく、より好ましくは0.4~10%である。配合量が0.1%以上であると、口中での分散性及びえぐ味が十分に改善し、15%以下であると、それ自身のえぐ味(渋み)が抑制され、えぐ味が十分に改善する。
なお、上述したように、(C)顆粒中に含まれる粒径53~850μmの顆粒、即ち、(c2)+(c3)の合計量が、組成物全体に対して上記特定範囲内となるように、(C)顆粒を配合すると、口中での分散性及びえぐ味の改善の点で、とりわけ好ましい。
【0021】
本発明において、(B)成分のスズイオンとしての含有量と(C)成分の含有量との量比を示す(B)/(C)は、質量比として0.03~3が好ましく、より好ましくは0.04~1である。上記範囲内であると、口中での分散性がより優れ、また、えぐ味がより改善する。(B)/(C)の質量比が0.03未満であると、(C)成分のえぐ味(渋み)が強く出て使用感が損なわれる場合があり、3を超えると、口中での分散性及びえぐ味が満足に改善されない場合がある。
更に、(B)成分のスズイオンとしての含有量と(C)成分中に含まれる上記(c2)と(c3)の合計含有量との量比を示す(B)/{(c2)+(c3)}が、質量比として0.03~3が好ましく、より好ましくは0.04~1である。(B)/{(c2)+(c3)}の質量比が上記範囲内であると、口中での分散性が一層優れ、また、えぐ味が一層改善する。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、更に、(D)冷感剤を配合することが好ましい。(D)成分を配合すると、えぐ味を一層改善することができる。
(D)冷感剤は、例えば、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド、メントングリセロールアセタール、メントキシプロパン-1,2-ジオール、乳酸メンチル、コハク酸メンチル等が挙げられる。中でも、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド)が好ましい。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0023】
(D)冷感剤は、具体的は、下記に示す市販品を用いることができる。
N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド;シムライズ社製、WS-3
エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート;豊玉香料(株)製、WS-5
N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド:ジボダンジャパン(株)製、エバークール(EVERCOOL)180
N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド;ジボダンジャパン(株)製、エバークール(EVERCOOL)190
2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチルアミド;ジボダンジャパン(株)製、WS-23
メントングリセロールアセタール;シムライズ社製、MGA
メントキシプロパン-1,2-ジオール;高砂香料工業(株)製、CA10
乳酸メンチル;シムライズ社製
コハク酸メンチル(コハク酸モノメンチル);ヴィマンフィス社製
【0024】
(D)成分を配合する場合、その配合量は、組成物全体の0.00001~0.01%が好ましく、より好ましくは0.00003~0.002%である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、特に、ペースト状、ジェル状等の形態で、練歯磨、ジェル状歯磨等の歯磨剤に調製して使用することができる。調製方法は、形態や剤型に応じた常法を採用できる。
この場合、口腔用組成物の目的、剤型等に応じて、上述した成分以外にも適宜なその他の任意成分を必要に応じて配合できる。任意成分は、例えば、界面活性剤、研磨剤、増粘剤、湿潤剤、溶剤、甘味剤、香料、防腐剤、着色剤、有効成分等が挙げられる。
以下に任意成分の具体例を示す。これら任意成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合でき、また、各任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とし得る。
【0026】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、具体的には下記(i)~(iii)に示す。
(i)アニオン性界面活性剤
ラウリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩、アシルサルコシン塩、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩(テトラデセンスルホン酸塩)が挙げられ、上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
(ii)ノニオン性界面活性剤
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライドが挙げられる。
(iii)両性界面活性剤
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン、N-脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩が挙げられる。
界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.001~10%、特に0.1~5%がよい。
【0027】
研磨剤は、(C)顆粒以外のものを使用し得る。研磨剤は、例えば、無水ケイ酸、沈降性シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム・2水和塩又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤、炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム系研磨剤、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、ハイドロキシアパタイトが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
シリカ系研磨剤は、一般に、レーザー回折法で測定された平均粒子径(D50、体積基準)が30μm未満であり、また、粒径53μm以上の粒子を含有する場合でも、その含有量は微量である。
研磨剤の配合量は、通常、組成物全体の2~50%、特に10~40%である。
【0028】
増粘剤は、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー等の有機増粘剤、増粘性シリカ等の無機増粘剤が挙げられる。増粘剤の配合量は、通常、組成物全体の0.1~10%、特に0.1~8%である。
無機増粘剤は、一般に、マイクロトラック粒度測定器等のレーザー回折法で測定された平均粒子径(D50、体積基準)が30μm未満であり、また、粒径53μm以上の粒子を含有する場合でも、その含有量は微量である。
【0029】
湿潤剤は、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)等の多価アルコールが挙げられる。湿潤剤の配合量は、通常、組成物全体の2~50%である。
【0030】
溶剤は、精製水、エタノール等の炭素数1~3の低級アルコールが挙げられる。なお、エタノールは、配合する場合は組成物全体の25%以下でもよく、配合しなくてもよい。
【0031】
甘味剤は、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロースが挙げられる。
【0032】
香料は、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。香料の配合量は、通常、組成物全体の0.01~2%である。
【0033】
防腐剤は、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
着色剤は、青色1号、青色2号、緑色3号、黄色4号、黄色5号、赤色106号、赤色227号、カラメル、酸化チタン、雲母チタン等が挙げられる。
【0034】
任意の有効成分は、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素含有化合物、デキストラナーゼ等の酵素、アラントイン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸銅、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール、ゼオライト、グリセロリン酸カルシウム、オウバクエキスが挙げられる。
【実施例0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0036】
[実施例、比較例]
表1、2に示す組成の口腔用組成物(練歯磨)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。
なお、実施例の口腔用組成物は、いずれも知覚過敏予防又は抑制効果とう蝕予防又は抑制効果を有していた。
【0037】
(1)経時における口中での分散性(直後品の口中での分散性、保存後品の口中での分散性)
被験者の専門パネラー10人が、約1gの練歯磨を歯ブラシ上に1cm押出して載せ、普段と同じ方法で歯磨きを行い、ブラッシングしている際の口中での練の分散性の良さについて、下記の評価基準で評価した。
なお、評価には、製造直後の練歯磨、40℃で1ヵ月間保存後の練歯磨を使用し、それぞれのブラッシング開始から10秒間経過後の口中での練の状態から、直後品の口中での分散性、保存後品の口中での分散性を評価した。
評価基準
4点:口腔内での分散性が非常に良い(練の塊が残らない)
3点:口腔内での分散性が良い(わずかに不均一な練の部分があるが気にならない)
2点:口腔内での分散性が良くない(練の塊が口中に残っている)
1点:口腔内での分散性が非常に悪い(練の大きな塊が残っている)
専門パネラー10人が評価した結果を平均した値から、以下の判定基準で判定した。
判定基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
【0038】
(2)えぐ味のなさ
被験者の専門パネラー10人が官能評価した。
ラミネートチューブに充填した練歯磨を歯ブラシ上に1cm押出して載せ、普段と同じ方法で歯磨きを行い、水ですすいだ後、5分間経過後の口に残ったえぐ味について、以下に示す評価基準で評価した。
評価基準:
4点:えぐ味を全く感じない
3点:えぐ味をわずかに感じる
2点:えぐ味を感じる
1点:えぐ味を非常に強く感じる
専門パネラー10人が評価した結果を平均した値から、以下の判定基準で判定した。
判定基準
☆:平均点4.0点
◎:平均点3.5点以上4.0点未満
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点1.0点以上2.0点未満
【0039】
使用した原料の詳細を下記に示す。
(A)乳酸アルミニウム;富士フィルム和光純薬(株)製、乳酸アルミニウム
(A)硝酸カリウム;大塚化学(株)製、硝酸カリウム
(B)塩化スズ;富士フィルム和光純薬(株)製、塩化スズ(II)二水和物
(B)フッ化スズ;富士フィルム和光純薬(株)製、フッ化スズ(II)
(C)シリカ顆粒A;
PQコーポレーション社製、SORBOSIL BFG10
(粒度分布(JIS Z8801-1記載の試験用篩使用):{(c3)}/{(c1)+(c2)+(c3)+(c4)}=0.99、850μm onは無、45μm passは微量(0.1%未満)、平均崩壊強度*1:44g/個、平均粒子径*2:105μm)
(C)シリカ顆粒B;
PQコーポレーション社製、SORBOSIL BFG50
(粒度分布(JIS Z8801-1記載の試験用篩使用):{(c2)+(c3)}/{(c1)+(c2)+(c3)+(c4)}=0.99、850μm onは無、45μm passは微量(0.1%未満)、平均崩壊強度*1:32g/個、平均粒子径*2:270μm)
*1:平均崩壊強度、*2:平均粒子径の測定法等の詳細は、上述の記載と同じである。
なお、(c1)、(c2)、(c3)、(c4)については、上述の記載と同じである。
(D)N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド;
ジボダンジャパン(株)製、エバークール180
(D)N-(2-(ピリジン-2-イル)-3-p-メンタンカルボキサミド);
ジボダンジャパン(株)製、エバークール190
シリカ(研磨剤);
EVONIC社製、ZEODENT103
(粒度:JIS Z8801-1に記載の試験用篩の目開き45μmを通過、
平均粒子径(マイクロトラック粒度測定器/日機装社製で測定、D50、体積基準:
10μm)
香料Aの組成の詳細は後述の通りである。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
香料Aの組成;
ペパーミント油 50
ペパーミント精製油(前溜部20%カット) 5
ペパーミント精製油(前溜部・後溜部15%カット) 5
スペアミント油 1
スペアミント精製油(前溜部20%カット) 1
和種ハッカ油 1
和種ハッカ精製油(前溜部30%カット) 1
メントール 10
カルボン 1
1,8-シネオール 1
アネトール 5
シンナミックアルデヒド 1
オイゲノール 1
メチルサリシレート 1
フレーバー1(表3) 1
フレーバー2(表4) 1
フレーバー3(表5) 1
フレーバー4(表6) 1
フレーバー5(表7) 1
フレーバー6(表8) 1
フレーバー7(表9) 1
溶剤(表10) 残
合計 100%
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
【表9】
【0050】
【表10】