(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053251
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】保護装置、斜面固定手段、ならびに保護装置の使用および製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E02D17/20 103Z
E02D17/20 102Z
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019854
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2021516656の分割
【原出願日】2019-09-24
(31)【優先権主張番号】102018123477.5
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510301231
【氏名又は名称】ジェオブルッグ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンデラー-ゲッゲルマン、コリンナ
(57)【要約】
【課題】有利な耐候性を有する一般的な装置を提供すること。
【解決手段】保護装置(34a)、特に耐浸食性保護装置、好ましくはジオテキスタイルは、保護される表面(10a)、特に地表上に面状に広がるように少なくとも構成され、ならびに物質同士の結合を介して相互接続され、かつ実質的に3次元構造(14a)を形成するように配置された複数の合成繊維(12a)で少なくとも大部分が実施される保護装置(34a)において、少なくとも大部分の前記合成繊維(12a)は、少なくとも大部分が生分解性であり、前記合成繊維(12a)は、ポリマー繊維であるとともに、モノフィラメントの合成繊維(12a)であり、個々のモノフィラメントの合成繊維(12a)の間に中空空間を有する3次元のモノフィラメントのランダム繊維布(16a)を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護装置(34a)、特に耐浸食性保護装置、好ましくはジオテキスタイルであって、保護される表面(10a)、特に地表上に面状に広がるように少なくとも構成され、ならびに物質同士の結合を介して相互接続され、かつ実質的に3次元構造(14a)を形成するように配置された複数の合成繊維(12a)で少なくとも大部分が実施される保護装置(34a)において、
少なくとも大部分の前記合成繊維(12a)は、少なくとも大部分が生分解性であり、前記合成繊維(12a)は、ポリマー繊維であるとともに、モノフィラメントの合成繊維(12a)であり、個々のモノフィラメントの合成繊維(12a)の間に中空空間を有する3次元のモノフィラメントのランダム繊維布(16a)を形成する、保護装置(34a)。
【請求項2】
前記3次元のモノフィラメントのランダム繊維布(16a)が、90%を超える空隙率を有する、請求項1に記載の保護装置(34a)。
【請求項3】
前記中空空間が、少なくとも植物の種子を収容するように構成されている、請求項1または2に記載の保護装置(34a)。
【請求項4】
前記合成繊維(12a)が0.3mm~1.5mmの直径を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項5】
前記合成繊維(12a)が疎水性である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項6】
保護装置(34a)が、その3次元構造として、前記合成繊維(12a)の平均直径の10倍を超え、有利には20倍を超え、特に有利には30倍を超える厚さを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項7】
保護装置(34a)が、その主延長面に対して垂直な少なくとも1cmの延長を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項8】
前記合成繊維(12a)の3次元構造(14a)がピラミッド状の上部構造を有しており、特に、ピラミッド状の上部構造が、少なくとも略ピラミッド型の隆起および少なくとも略ピラミッド型のくぼみの格子状配置を形成する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項9】
前記合成繊維(12a)の少なくとも一部が、PLA(ポリ乳酸)含有合成材料で少なくとも部分的に実施される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項10】
前記合成繊維(12a)の少なくとも一部が、ポリ乳酸含有合成材料とは異なる生分解性の合成材料、特に、ポリヒドロキシ酪酸(PHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、あるいはこれらの組み合わせで少なくとも部分的に実施される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項11】
前記合成繊維(12a)の少なくとも一部が、2つ以上の生分解性の合成材料の紡糸可能な混合で少なくとも部分的に実施される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項12】
前記紡糸可能な混合の1つ以上の成分が、ポリ乳酸含有合成材料として実現されており、前記紡糸可能な混合で実施された前記合成繊維(12a)の前記ポリ乳酸含有合成材料の容量パーセントは40%以上および好ましくは50%以上である、請求項11に記載の保護装置(34a)。
【請求項13】
金網(22a)を備えた請求項1乃至12のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項14】
前記金網(22a)が、互いに編組された少なくとも複数の螺旋形状の長手要素(24a)で実施される、請求項13に記載の保護装置(34a)。
【請求項15】
前記金網(22a)が、前記合成繊維(12a)で編組されている、請求項13または14に記載の保護装置(34a)。
【請求項16】
前記合成繊維(12a)の少なくとも一部が、物質同士の結合によって前記金網(22a)に接続されている、請求項15に記載の保護装置(34a)。
【請求項17】
前記金網(22a)が、3次元のマットレス状構造(48a)を有する、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項18】
前記金網(22a)が、少なくとも部分的に高張力鋼で実施されている1つ以上のワイヤ(26a)を備える、請求項13乃至17のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項19】
1つ以上の引張試験において、保護装置(34a)の1つ以上の合成繊維(12a)の1つ以上の試験繊維片(28a)が、70MPaを超える、好ましくは80MPaを超える強度を示す、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項20】
前記試験繊維片(28a)に対して耐候性試験室(30a)において500時間以上の照射および耐候性試験が行われた場合、前記試験繊維片(28a)が、少なくとも周期的に少なくともUV光照射および噴霧水による少なくとも風化作用に晒され、前記試験繊維片(28a)が、前記引張試験において、風化していない状態での前記試験繊維片(28a)の初期強度の66%以上の残存強度を示す、請求項19に記載の保護装置(34a)。
【請求項21】
1つ以上の膨張試験において、保護装置(34a)の1つ以上の合成繊維(12a)の1つ以上の試験繊維片(28a)が、500%を超える、好ましくは600%を超える伸縮性を示す、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項22】
耐候性試験室(30a)において500時間以上の照射および耐候性試験が行われた場合、前記試験繊維片(28a)が、少なくとも周期的に少なくともUV光照射および水による少なくとも風化作用に暴露され、前記試験繊維片(28a)が、前記膨張試験において、風化していない状態での前記試験繊維片(28a)の初期伸縮性の50%以上の残存伸縮性を示す、請求項21に記載の保護装置(34a)。
【請求項23】
保護装置(34a)の1つ以上の少なくとも部分的に生分解性の合成繊維(12a)の1つ以上の試験繊維片(28a)に対して行われた1つ以上の堆肥化試験において、前記試験繊維片(28a)の10%以上が2年後に生物学的に分解される、請求項1乃至22のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項24】
保護装置(34a)の1つ以上の少なくとも部分的に生分解性の合成繊維(12a)の1つ以上の試験繊維片(28a)に対して行われた1つ以上の堆肥化試験において、前記試験繊維片(28a)の最大で10%が半年後に生物学的に分解あるいは解体される、請求項1乃至23のいずれか一項に記載の保護装置(34a)。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の保護装置(34a)を備えた斜面固定(32a)。
【請求項26】
斜面に位置したまたは侵食されやすい表面(10a)あるいはこれら両方における、播種または再播種あるいはこれらの両方に対する、請求項1乃至24のいずれか一項に記載の保護装置(34a)の使用。
【請求項27】
請求項1乃至24のいずれか一項に記載の保護装置(34a)を製造する方法であって、1つ以上の構造化ステップ(36a)において、最初は互いに別個に実施されまた少なくとも大部分が生分解性の合成繊維(12a)は、少なくとも大部分が生分解性の前記合成繊維(12a)が実質的に3次元構造(14a)を有するマット状構造を形成するように、物質同士の結合によって互いに接続される方法。
【請求項28】
前記構造化ステップ(36a)に先立つ1つ以上のさらなる方法ステップ(40a)において、少なくとも大部分が生分解性の不規則に配向された前記合成繊維(12a)が、前記構造化ステップ(36a)において金網(22a)が前記合成繊維(12a)で編組されるように、前記金網(22a)の上下に層状に配置される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による保護装置、請求項25による斜面固定部品、ならびに請求項26による保護装置の使用および請求項27による保護装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保護装置、特に耐浸食性保護装置、好ましくはジオテキスタイルはすでに提案されており、保護される表面、特に地表上に面状に広がるように少なくとも構成され、ならびに圧入接続および/または物質同士の結合を介して相互接続されかつ実質的に3次元構造を形成するように配置された複数の合成繊維で少なくとも大部分が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-217973号公報
【特許文献2】特開平10-298997号公報
【特許文献3】特開2017-179080号公報
【特許文献4】特開2015-132163号公報
【特許文献5】特開2014-194157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に、有利な耐候性を有する一般的な装置を提供することである。この目的は、特許請求項1および25乃至27の特徴により本発明にしたがって達成され、発明の有利な実施およびさらなる発展は、従属項から理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、保護装置、特に耐浸食性保護装置、好ましくはジオテキスタイルに基づき、保護される表面、特に地表上に面状に広がるように少なくとも構成され、ならびに圧入接続および/または物質同士の結合を介して相互接続されかつ実質的に3次元構造を形成するように配置された複数の合成繊維で少なくとも大部分が実施されている。
【0006】
少なくとも大部分の合成繊維は、少なくとも大部分が生分解性であるよう提案される。このようにして、特に有利な耐候性が達成可能である。有利には、保護装置は、残留物を伴わずに、特に合成残留物を伴わずに、特にマクロプラスチック、マイクロプラスチックおよび/またはナノプラスチック残留物を伴わずに、および/または(重)金属残留物を伴わずに天候に耐える。このようにして、良好な環境適合性が有利に達成可能であり、その結果、生態学的に敏感な地域での使用に対して特に良好な適合性を達成することが可能である。さらに、保護装置の周囲の特に植生および/または動物群に対する高レベルの生物適合性が有利に達成可能である。例えば、繊維を含んだ保護装置の植物および/または動物に対する損傷は、有利に低レベルに維持され得る。特に、複数の合成繊維に属する少なくとも大部分の合成繊維は、少なくとも大部分が生分解性である。
【0007】
保護装置は、傾斜した地形の保護のために、特に、例えば土木工事、油圧機器を用いた建設および/または道路建設において、および/または好ましくは地質工学的な保護構造に関連して、盛土の固定および/または斜面の固定のために特に構成される。特に、保護装置は、生物工学の分野における建設活動に関連して使用するために構成されている。代替的または追加的には、保護装置は、地形、特に傾斜した地形における植物の播種および/または再播種を容易および/または可能にするように構成される。特に、保護装置、好ましくは保護装置の複数の合成繊維の少なくとも大部分は、事前に決定可能な期間の後に、例えば、1つ、2つ、または3つ以上の植生期間後に合成繊維の特に化学組成に応じて、完全に消失、特に完全に腐敗するように構成される。例えば、肥沃な表土層を備えた地形における迅速な再播種を目的とした保護装置は、特に1つまたは2つの成長期間後にほぼ完全に腐敗するような迅速に分解する合成繊維を含む。代替的に、例えば、貧弱、不毛、石の多い、または非常に急な傾斜のある土壌等の地形を対象とした保護装置は、緩やかに腐敗し、数回後、例えば、4つ、5つ、または6つ以上の成長期間後に初めて分解されるように実施される。有利には、合成繊維の分解時間は、繊維材料、特に合成材料または合成混合物の化学組成の調整によって予想される気象条件に調整可能および/または適応可能である。保護装置、特にジオテキスタイルは、特にスロープマットおよび/またはスパイクマットとして実施される。
【0008】
「圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続された複数の合成繊維で大部分が実施される」保護装置とは、保護装置の全ての個々の部分の大部分が、特に保護装置の金網のワイヤフィラメントを除いて、合成繊維であると特に理解される。「大部分」とは、特に51%、好ましくは66%、有利には75%、特に有利には85%、優先的には95%、特に優先的には99%を意味する。金網を除いて、保護装置は、圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続された複数の合成繊維で完全に実施されることが好ましい。「物質同士の結合によって相互接続された」とは、質量粒子が、例えば、はんだ付け、溶接、接着、溶融、および/または加硫などによって、原子間力または分子間力によって共に保持されることを特に意味する。「圧入接続によって相互接続された」とは、本明細書では解除可能な接続を記載するよう特に意味し、2つの構造的部品間の保持力は、好ましくは、構造的部品の幾何学的係合によっておよび/または構造的部品間の摩擦力によって互いに伝達される。
【0009】
「合成繊維」とは、特に、その主成分および/または基本的な化学成分が、有機基を有する少なくとも一つの合成または半合成的に生成されたポリマーである高分子からなる繊維であると理解される。好ましくは、合成繊維は、ポリマー繊維、優先的には合成繊維である。特に、合成繊維は押出成形されたモノフィラメントである。特に、例えば、ジュート、アシ、および/またはココナッツ繊維等の天然繊維で形成されたジオテキスタイルと比較して、生分解性、つまり、生物学的分解性の速度は、生分解性の合成繊維の化学組成を選択することで有利に調整可能であり得る。さらに、生分解性の合成繊維を用いて、化学組成を選択することにより、例えば、伸縮性、引裂き抵抗、弾力性、変形性等のさらなる材料特性を設定することが有利に可能である。合成繊維はさらに、再播種に影響を与え得る糸状菌の侵入に関して有利に影響を受けにくい。有利には、合成繊維は吸水性が低く、これはまた、特に糸状菌の侵入の恐れを低減する。特に、合成繊維は、少なくとも実質的に同一の断面形状および/または直径を有する。代替的には、合成繊維は、異なる断面形状および/または直径を有してよい。好ましくは、複数の合成繊維の合成繊維は、円形の断面および/または0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、有利には0.3mm以上、特に有利には0.4mm以上、優先的には0.6mm以上、特に優先的には1.5mmの直径を有する。生分解性の合成繊維の直径は0.4mmが好ましい。特に、合成繊維の少なくとも一部は連続的な繊維として実施され、好ましくは全ての合成繊維が連続的な繊維として実施される。代替的または追加的には、特に合成繊維の少なくとも一部は短繊維として実施され、好ましくは全ての合成繊維が短繊維として実施される。
【0010】
「実質的に3次元構造」を形成する合成繊維とは、複数の合成繊維の個々の合成繊維は、3つの空間方向全てを含む異なる方向に配向される/配向され得るものとして、および/または合成繊維は、特に少なくとも部分的および/または断面的に、保護装置の面状に広がる方向に対して垂直な方向の配向を有するものとして、特に理解される。特に、保護装置は3次元的に構造化されている。特に、保護装置は、面状に広げることが可能な3次元の生地である。その3次元構造として、保護装置は、好ましくは、面状に広がる方向に対して垂直な延長を有し、特に厚さを有する。該厚さは合成繊維の平均直径の10倍を超え、好ましくは15倍を超え、有利には20倍を超え、特に有利には30倍を超え、優先的には50倍を超え、かつ特に好ましくは、合成繊維の平均直径の500倍よりも小さい。3次元構造は特に中空空間を含む。特に、保護装置は不透明ではない。しかしながら代替的には、3次元構造が中空空間を含まないおよび/または不透明に実施されることも考えられる。特に、合成繊維の3次元構造はピラミッド状の上部構造を有する。特に、ピラミッド状の上部構造は、少なくとも略ピラミッド型の隆起および少なくとも略ピラミッド型のくぼみの格子状配置を形成する。その結果、表面上にある合成繊維の3次元構造により、有利には、表面との表面摩擦を増加させることができる。好ましくは、保護装置は透水性を有する。特に、個々の合成繊維は、好ましくは、生分解性の合成材料以上のさらなる材料および生分解性を制御するために使用され得る添加物を含まずに全体として実施される。代替的には、合成繊維の少なくとも一部は、コアシェル構造を形成することができる。該コアシェル構造では、1つ以上の異なる材料、例えば、ココナッツまたはジュート繊維等の天然繊維で形成されたコアが、生分解性の合成材料で形成されたシェルで包まれている。そのようなコアシェル構造は、液体に対する天然繊維の吸収能力の制御を有利に可能にする。
【0011】
播種時に植物の種子が構造に捕らえられるため、傾斜した地形上でも動かず、特に雨等に流されなることがないように、3次元構造は特に構成されている。さらに、3次元構造で捕らえられた種子に対して、特に、種子を例えば水たまり等の過度に湿った地面を避けて保つことが可能であるため腐敗を防ぐような、発芽を成功させるために過度に湿ったおよび/または過度に乾燥した状態から保護されるため、良好な発芽条件が有利に提供され、同時に、合成繊維の広い表面上の結露によって十分な量の湿度が供給されるために発芽が促進される。その他、3次元構造は保護装置に対して有利に高度の滑り摩擦を特に提供するので、3次元構造は有利に河床の安定化に貢献する。
【0012】
「合成繊維の少なくとも大部分が生分解性である」とは、合成繊維の大部分が生分解性の合成材料で実施されていると特に理解される。優先的には、全ての合成繊維が生分解性である。「大部分が生分解性」である合成繊維とは、合成繊維の材料の大部分が生分解性であることが特に理解される。好ましくは、合成繊維は完全に生分解性である。特に、合成繊維は酸化型分解性の合成材料を含まない。特に、生分解性の合成繊維は、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、および/またはポリプロピレンを含まない。
【0013】
「生分解性」とは、生物学的に分解可能および/または生物学的に腐敗可能であることを特に意味する。特に、生分解性の合成繊維は、大部分が二酸化炭素(CO2)および環境に準拠した期間内で低い、好ましくはごく少量の環境毒性を持つ分別可能な残留物に分解するように構成される。優先的には、環境に準拠した期間内に、合成繊維の有機部分が90%以上CO2に分解される。特に、生分解性の合成繊維の分解は、少なくとも大部分が微生物の影響を受ける。特に、生分解性の合成繊維は、分解によって完全にCO2および/またはバイオマスへ変換されることが好ましい。優先的には、環境に準拠した期間後、CO2に変換されなかった合成繊維の残留物のうち、90%は最大ふるい穴の直径が2mmのふるいを通して分別することが可能である。環境に準拠した期間は、特に6か月以上、好ましくは12か月以上、有利には2年以上、優先的には3年以上、特に優先的には5年以上である。さらに、環境に準拠した期間は、特に最大35年、好ましくは25年、有利には15年、優先的には最大10年、特に優先的には5年である。特に、合成繊維の残留物は、亜鉛、銅、ニッケル、カドミウム、鉛、水銀、クロム、モリブデン、セレン、ヒ素、蛍光元素の濃縮を含まない、または上記元素の濃縮をわずかにしか含まず、標準DIN EN 13432:2000で設定されている制限を超えない。好ましくは、特にポリ塩化ビニルの残留物とは対照的に、合成繊維の残留物は、塩化水素の濃縮を全く含まない。特に、合成繊維は自然な堆肥化過程に対する悪影響を及ぼさない。特に、合成繊維と同様に実施された試験繊維は、該試験繊維が標準DIN EN ISO 14855:2004-10で定められた堆肥化条件下で試験された場合、環境毒性、分別可能性、および環境に準拠した期間内でのCO2への変換に関して少なくとも上記の条件を満たす。生分解性の合成繊維は、少なくとも大部分、好ましくは完全に、バイオベースの、特に非化石の原材料から製造されることが好ましい。特に、生分解性の合成繊維は、生物、特に微生物によってバイオマスへと完全に代謝され得る。
【0014】
「構成される」とは、具体的に計画、設計、および/または備えられていることを特に意味する。特定の機能のために構成されているものとは、そのものが、1つ以上の適用状態および/または動作状態で特定の機能を満たすおよび/または実行するものであることが特に理解される。
【0015】
合成繊維の少なくとも一部が、PLA(ポリ乳酸)含有合成材料で少なくとも部分的に実施される場合、有利な耐候性を有する保護装置が有利に達成可能である。特に、PLA合成材料は、再生可能な原材料から有利に生産が可能なため、少なくとも実質的にニュートラルなカーボンフットプリントを有利に提示し、気候、ひいては異常気象の頻度への悪影響が特に回避できる。さらに、PLA合成材料製の繊維は、有利には、かなりの風化作用の後でも、特に安定した、特に一定の引張強度を有する。有利には、PLA合成材料製の繊維は疎水性である。有利には、PLA合成材料製の繊維は、紡糸可能および/または押出成形が可能である。有利には、PLA合成材料製の繊維は着火しにくい。72.06gmol-1の密度で、PLA合成材料製の繊維は、有利に軽量であり、保護装置の総重量を有利に低レベルに保つことができる。好ましくは、全ての合成繊維が、少なくとも部分的にPLA合成材料で実施される。合成繊維の少なくとも一部または全ての合成繊維は、完全にPLA合成材料で実施されていると考えられる。
【0016】
さらに、合成繊維の少なくとも一部が、ポリ乳酸含有合成材料とは異なる生分解性の合成材料、特に、ポリヒドロキシ酪酸(ドイツ語でPHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)で少なくとも部分的、特に完全に実施される場合、特に保護装置の1つ以上の特性、例えば引張強度、伸縮性、および/または堆肥化可能性、および/または度合いのそれぞれ、風化中の特性の変化を設定できる速度は、予想されるおよび/または最適化することができる条件に適合させることができるので、有利な耐候性を有する保護装置が、有利に達成可能である。例えば、合成繊維の一部は、PLA合成材料で実施されてよく、また合成繊維の別の部分は、PLA合成材料とは異なる生分解性の合成材料で実施されてよい。その結果得られる保護装置は、2つ以上の異なる生分解性の合成材料製かつ、圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続されている合成繊維の混合物として特に実現される。これにより、異なる生分解性の合成材料の特性を組み合わせることが有利に可能になる。
【0017】
さらには、合成繊維の少なくとも一部、好ましくは大部分が、少なくとも2つ、特に正確には2つの生分解性の合成材料の紡糸可能な混合で少なくとも部分的に、好ましくは完全に実施されることが提案される。これは特に、有利な耐候性を備えた保護装置を実現することを可能にする。特に、このようにして、保護装置の1つ以上の特性、例えば、引張強度、伸縮性および/または堆肥化可能性、および/または度合いのそれぞれ、特性、特に材料特性が風化中に変化する速度等の、特に保護装置の合成繊維の材料特性を、予想される条件に適合および/または最適化することが特に可能である。このようにして、特に、異なる生分解性の合成材料の特性を合成繊維に有利に組み合わせることができるため、特に、新しい特性を有する最適化された保護装置を達成することができる。「紡糸可能」という用語は、押出成形が可能であることを特に意味する。紡糸可能な合成材料および/または紡糸可能な混合は、特に、長手要素、好ましくはモノフィラメントに形成されてよく、少なくとも、長手方向延長に対して垂直に走る最大横方向延長よりも10倍以上、好ましくは50倍以上、優先的には100倍以上大きい長手方向延長を有する。「混合」とは、ポリマー混合、好ましくは混合可能なポリマー混合、または適合性ポリマー混合を特に意味し、これは、2つ以上の合成材料、特に生分解性材料の純粋な物理的混合物を特に構成する。特に、混合は、PLA+PCL混合、PLA+PBAT混合、PLA+PHBV混合として、または好ましくはPLA+PBS混合として実現される。
【0018】
紡糸可能な混合の1つ以上の成分がポリ乳酸含有合成材料として実現され、紡糸可能な混合で実施された合成繊維のポリ乳酸含有合成材料の容量パーセントが40%以上、好ましくは50%以上、有利には60%以上、特に有利には70%以上、優先的には80%の場合、有利な材料特性が達成可能である。特に好ましくは、全ての合成繊維のPLA合成材料の容量パーセントが50%から60%の間である。PLA合成材料の比較的高い引張強度を、PBAT合成材料またはPBS合成材料の比較的高い伸縮性と組み合わせることが特に有利に可能である。有利には、このようにして、生分解性の合成繊維が達成可能であり、純粋なPBAT合成繊維、純粋なPBS合成繊維、または純粋なPCL合成繊維よりも高い引張強度を有し、特に純粋なPLA合成繊維よりも高い伸縮性を有する。特に、混合は、混合比が80:20のPLA+PCL混合、混合比が50:50のPLA+PBAT混合、混合比が60:40のPLA+PBAT混合、50:50の混合比を有するPLA+PBS混合として、または好ましくは60:40の混合比を有するPLA+PBS混合として実現される。代替的には、生分解性の合成材料のさらなる混合比および/またはさらなる組み合わせが考えられる。
【0019】
その他、合成繊維の少なくとも大部分、特に少なくとも生分解性の合成繊維が、熱可塑的に変形可能であることが提案される。このようにして、合成繊維、特に保護装置の容易なモデル化が可能であり、したがって、圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続される合成繊維の特に複雑な3次元構造が有利に可能である。さらに、保護装置の製造のために、特に、個々の合成繊維間の物質同士の結合が有利に達成可能である。特に、合成繊維は、150℃を超える、好ましくは160℃を超える、有利には180℃を超える、優先的には200℃を超える、特に優先的には220℃未満の温度で熱可塑的に変形可能である。特に、熱可塑性変形は、良好な押出成形のための十分条件である。
【0020】
さらに、合成繊維は、好ましくは合成繊維の大部分の間に中空空間を有する、特に3次元の、好ましくはモノフィラメントのランダム繊維布を形成することが提案される。有利には、このようにして、特に植物の種子に対してモノフィラメントのランダム繊維布の中空空間での発芽に好ましい条件、特に湿度条件が与えられるので、特に良好な播種性が達成可能である。有利には、植物の種子は、モノフィラメントのランダム繊維布に容易に捕らえられる。モノフィラメントのランダム繊維布は、3次元のランダムな不織布材料を特に形成する。モノフィラメントのランダム繊維布は、モノフィラメントのランダム繊維布構造を特に有する。モノフィラメントのランダム繊維布構造は、単純な3次元構造を特に可能にする。さらに、保護装置の有益な透水性および光透過性、特に保護装置の低い総重量は、複数の中空空間を有するモノフィラメントのランダム繊維布構造によって有利に達成可能である。さらに、モノフィラメントのランダム繊維布構造により、有利には、斜面材料の微細な物質、例えば、小石および/または小さな土塊は、保護装置を通過することができず、特に保持される。微細な物質は、有利には、モノフィラメントのランダム繊維布構造中に固定される。これは有利には、保持効果をさらに向上させる。モノフィラメントのランダム繊維布構造は、特に、全方向に、特に不規則に、無秩序に延びるモノフィラメントを形成する複数の合成繊維で実施されている。モノフィラメントのランダム繊維布構造の合成繊維は、数回曲げられ、よじられる。モノフィラメントのランダム繊維布構造は、乾燥したアジアのインスタント麺を特に連想させる。特に、モノフィラメントのランダム繊維布構造の交点において、モノフィラメントのランダム繊維布の個々のモノフィラメントは、(熱可塑的に)相互接続され、特に互いに溶融している。
【0021】
追加的または代替的には、合成繊維は、3次元的に構造化され、閉じた、特に可撓性の表面平面を形成する不織布材料状構造を実現することが提案される。これは有利には、ジオテキスタイルの上側と下側との間の分離および/またはフィルタリング機能を備えたジオテキスタイルを達成させる。特に、閉じた表面平面は、少なくとも実質的に卵パック状の3次元構造を有する。特に、卵パック状の3次元構造は、互いに対して規則的にまたは不規則的に配置されたくぼみおよび隆起を含む。好ましくは、くぼみおよび隆起はピラミッド状の上部構造を形成する。
【0022】
保護装置が金網を含む場合、好ましい保護効果、特に良好な耐浸食性保護効果が有利に達成可能である。金網を備えた保護装置は、有利には、高い強度および/または安定性を有する。有利には、金網は、保護される地形の土壌および/または岩、それぞれの石を保持するように構成される。このようにして、高レベルの固定が有利に達成可能である。特に、金網は規則的なメッシュ形状を有する。代替的には、個々のメッシュのメッシュ形状が他のメッシュと異ってもよい、および/または金網が不規則なメッシュ形状を有してもよい。特に、金網は、特に規則的な菱形メッシュ形状を有する。これは有利には、小さな石の塊でも確実に保持することを可能にする。代替的には、金網は、異なるメッシュ形状、例えば、正方形メッシュ形状、六角形メッシュ形状、および/または円形メッシュ形状を有してよい。特に、金網のワイヤは、例えば、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、またはそれを上回るまたは下回る厚さ、またはその中間の値を持つ直径を有する。さらに、長手要素が複数の構成要素、特に、例えばワイヤロープ、ストランド、またはワイヤ束等の場合のように複数のワイヤを含む場合は、より大きな、特に著しく大きな直径が考えられる。特に、金網のワイヤは、腐食保護層、例えば、溶融亜鉛めっきによって塗布された亜鉛層、Al/Zn腐食保護層、Al/Zn/Mg腐食保護層等を含む。代替的には、ワイヤは耐錆鋼および/または不錆鋼で実施される。特に、腐食防止層は、単位面積あたりの質量が110g/m2以上、好ましくは150g/m2以上、優先的には200g/m2以上、特に優先的には250g/m2以上である。特に、金網は面状に実施される。特に、金網は、ランダム繊維布および/または不織布材料状構造の主延長面に対して少なくとも実質的に平行に延びる主延長面を有する。好ましくは、金網は、保護装置の全平面延長の少なくとも大部分にわたり延びる。優先的には、金網は、保護装置の全平面延長にわたり完全に延長する。構造部の「主延長面」とは、特に、構造部を完全に取り囲んでいる最小の仮想的な長方形の直方体の最大の側面に平行であり、特に長方形の直方体の中心点を通って延びると理解される平面である。「実質的に平行」は、本明細書では特に、特に平面において、基準方向に対して方向の配向を定義することを意味し、方向は、基準方向と特に8°未満、有利には5°未満、特に有利には2°未満だけ異なる。
【0023】
さらに、金網は、少なくとも互いに編組された螺旋形状の長手要素で実施されることが提案される。このようにして、特に有利に構造化された金網が製造可能である。そのような金網は、有利には、高い引張強度を有する。有利には、そのような金網は、保護装置、特にランダム繊維布または不織布材料状構造に巻かれるように実施される。このようにして、実装および/または輸送が有利に可能になる。特に、長手要素は、長手方向延長に対して垂直に走る最大横方向延長よりも10倍以上、好ましくは50倍以上、好ましくは100倍以上大きい長手方向延長を有する。特に、螺旋形状の長手要素のうちの1つ以上、好ましくは全ての螺旋形状の長手要素が、少なくとも単一のワイヤ、ワイヤ束、ワイヤストランド、ワイヤロープおよび/または1つ以上のワイヤを有する別の長手要素から製造される。「ワイヤ」は、本明細書では、細長いおよび/または薄い、および/または少なくとも機械的に曲げることができるおよび/または可撓体を特に意味する。有利には、ワイヤの断面は、その長手方向に沿って、少なくとも実質的に一定の、特に円形または楕円形である。特に有利には、ワイヤは丸いワイヤとして実施される。しかしながら、ワイヤが、少なくとも部分的にまたは完全に、扁平ワイヤ、正方形のワイヤ、多角形ワイヤ、および/またはプロファイルワイヤとして実施されることも考えられる。
【0024】
特に、長手要素は、扁平な、特に平らにプレスされた螺旋の形状を有する。螺旋形状の長手要素は、1つ以上の第1の脚、1つ以上の第2の脚、および第1の脚と第2の脚を互いに接続する1つ以上の曲げ領域を特に有する。有利には、互いに編組された隣接する螺旋形状の長手要素は、それらの曲げ領域を介して接続されている。特に有利には、異なる螺旋形状の長手要素の2つの曲げ領域が互いに接続、特に互いに引っ掛けられている。特に、金網の螺旋形状の長手要素は、同一の回転方向を有する。有利には、2つの螺旋形状の長手要素は、特にそれらの端部の第1、および/または第1端部の反対側に位置するそれらの端部の第2のそれぞれで、互いに結び付けられる。
【0025】
特に、互いに編組された螺旋形状の長手要素は、互いに絡み合っている。好ましくは、螺旋形状の長手要素の長手方向は、螺旋形状の長手要素の主延長方向に少なくとも実質的に平行または平行に配向される。好ましくは、螺旋の主延長面は、金網の主延長面に少なくとも実質的に平行に、少なくとも金網の面状に配置された状態および/または平面的に広げられた状態で配置される、特に、金網が取り付けられた状態とは異なってよい。本明細書における物体の「主延長方向」とは、特に、物体を完全に取り囲んでいる最小の幾何学的な長方形の直方体の最長の縁に平行に延びると理解される方向である。
【0026】
その他、金網は、特に2つ以上の面において、合成繊維で編組されることが提案される。このようにして、特に、合成繊維構造、特にランダム繊維布、好ましくはスパイクマットおよび/または不織布材料状構造の有利な組み合わせが可能になる。有利には、金網および合成繊維構造、特にランダム繊維布、スパイクマットおよび/または不織布材料状構造は、単一の作業工程で配置することができる。これは有利には、実装を簡単にする。さらに、合成繊維の生物学的分解の後でも、傾斜した地形、特に盛土の恒久的な固定が有利に達成可能である。特に、これにより、容易な播種と高度な固定の利点を組み合わせることが可能になる。特に、金網および合成繊維構造、特にランダム繊維布、スパイクマットおよび/または不織布状構造は、破損のない分離が不可能であるように接続されている。「破損のない分離が不可能であるように」という用語は、損傷することなく互いからは分離不能であることを特に意味する。「合成繊維で編組される」という用語は、物質同士の結合によって相互接続された合成繊維の不規則な構造に金網が組み入れられたこと、および/または金網が2つ以上の面で、好ましくは全ての面で、物質同士の結合によって相互接続された合成繊維に囲まれていることを特に意味する。特に、合成繊維で実施され金網を取り囲む不規則に配置された3次元網に対して、金網は支持網状のものを形成する。
【0027】
合成繊維の少なくとも一部が、物質同士の結合によって金網に接続されることが提案される。このようにして、有利には、金網と合成繊維の特に安定した組み合わせが達成可能である。
【0028】
さらに、金網は3次元のマットレス状構造を有することが提案される。このようにして、保護装置、特に金網の高い可撓性が、金網の主延長面に垂直な荷重方向の荷重に関して達成可能である。例えば、これは有利には、保護装置上を、特に実装中に歩行可能および/または制限内で運転可能にする。3次元のマットレス状構造はさらに有利には、地形の表面構造との摩擦、特に噛合いを増強することを可能にする。これは有利には、特に侵食をさらに減少させる点で、地形の安定化の改善に繋がる。金網の3次元のマットレス状構造により、設置された保護装置の3次元構造、特にランダム繊維布の特に経時的な平坦化を、好ましくは低レベルに維持することができるように、合成繊維、特に3次元のランダム繊維布によって実施される3次元構造のスパン高さを有利に支持することがさらに可能である。「マットレス様構造」とは、特に、構造の面状延長に垂直な方向にクッション能力を有すると理解される3次元の面状構造である。
【0029】
金網が、特に500N/mm2以上、好ましくは750N/mm2以上、有利には1000N/mm2以上、特に有利には1770N/mm2以上、優先的には2500N/mm2以上、特に優先的には3000N/mm2の引張強度を有する、少なくとも部分的に高張力鋼で実施された1つ以上のワイヤを含む場合、保護装置の特に高い安定性が有利に達成可能である。特に、これにより高レベルの固定が実現できる。
【0030】
さらに、1つ以上の引張試験において、1つ以上の特に少なくとも実質的に風化していないおよび/または保護装置の少なくとも実質的に新品同様の合成繊維の1つ以上の試験繊維片、特に保護装置の繊維束の1つ以上の試験繊維束片は、70MPaを超える、好ましくは80MPaを超える、優先的には90MPaを超える、特に優先的には100MPaを超える強度を示すことが提案される。このようにして、保護装置の高い、特に初期の堅牢性が有利に達成可能である。これは有利には、特に実装中および/または播種中に、特に保護装置上を歩行可能および/またはある程度は運転可能であることによって、容易な実装および/または播種を可能にする。さらに、このようにして、特に良好な保持能力が達成可能であり、これは特に、例えばジュートまたはココナッツ繊維で実施された通常の侵食防止マットの保持能力よりも優れている。特に、試験繊維片、特に試験繊維束片は、保護装置の合成繊維、特に保護装置の合成繊維の束と少なくとも実質的に同一である。優先的には、「実質的に同一」とは、製造上の公差を除いて、および/または製造技術の可能性の限界において同一であることを意味する。特に、試験繊維片は1つの部分からなる実装で具体化される。好ましくは、試験繊維束片は、10以上、好ましくは20以上の合成繊維を含み、保護装置が異なる種類の繊維を含む場合、試験繊維束片の組成は、保護装置の合成繊維の平均的な組成に対応する。特に、試験繊維片は直線的である。特に、試験繊維片および/または試験繊維束片は、1cm以上、好ましくは2cm以上、優先的には10cm以上、最大で20cmの長さを有する。特に、引張試験において、試験繊維片および/または試験繊維束片は、それぞれ、つかみ具によって引張試験装置内で端部が固定され、つかみ具は、引張試験において互いに離れるように移動される。特に、引張試験では、つかみ具は20mm/minの速度で互いに離れるように移動され、つかみ具で発生するそれぞれの力は、試験繊維片および/または試験繊維束片が破断するまで測定される。結果として生じる強度は、試験繊維片および/または試験繊維束片の断面領域に相対的に作用し、破断することなく試験繊維片および/または試験繊維束片によって生じる最大力と特に同等である。好ましくは、強度は平均強度とされ、特に、平均強度の決定には、10回以上の個別の測定の統計を要する。「実質的に新品同様」とは、UV光、湿度、引張荷重による事前の損傷がないことを特に意味する。試験繊維片および/または試験繊維束片の「強度」とは、試験繊維片および/または試験繊維束片の引張強度であると特に理解される。
【0031】
さらに、試験繊維片、特に試験繊維束片に対して、耐候性試験室で500時間以上の、特に標準化された照射および耐候性試験が行われた場合、試験繊維片、特に試験繊維束片は、少なくとも周期的に少なくともUV光の照射および噴霧水による少なくとも風化作用に暴露され、試験繊維片、特に試験繊維束片は、引張試験において、風化していない、特に少なくとも実質的に新品同様の状態の試験繊維片、特に試験繊維束片の初期強度の66%以上、好ましくは75%以上、有利には85%以上、優先的には90%以上、特に優先的には95%の残存強度を提示することが提案される。このようにして、特に保護装置の設置後の最初の植生期間中に、保護装置の高レベルの固定が有利に達成可能である。さらに、実装前および/または実装中の設置場所において保護されていない状態で保管することは、限られた期間許可されてよい。「初期強度」は、合成繊維の製造後の強度および/または合成繊維の風化前の強度を特に意味する。
【0032】
特に、照射および/または耐候性試験は、少なくとも一連の照射および風化作用の周期を含み、その間、試験繊維片、特に試験繊維束片は、所定の環境条件に暴露される。照射と風化作用の周期の持続時間は、特に120分である。照射および耐候性試験の実施中、特に照射および風化作用の周期は停止することなく繰り返される。500時間の照射および耐候性試験は、一連の250回の少なくとも実質的に同一の照射および風化作用の周期を特に含む。特に、照射および風化作用の周期は、好ましくは連続的に、300nm乃至400nmの波長範囲の紫外線を、60W/m2±2W/m2の照射強度で、好ましくは、日光UV照射のシミュレーション用のそれぞれのフィルターを備えたキセノンランプにより照射することを含む。各照射および風化作用の周期は、試験繊維片、特に試験繊維束片が噴霧水で噴霧に暴露される18分間の噴霧段階と、試験繊維片、特に試験繊維束片に対して、噴霧水が噴霧されない102分間の乾燥段階とをさらに含む。特に、耐候性試験室での照射および耐候性試験の実行中、耐候性試験室の温度は、好ましくは一定で、38℃±3℃である。特に、照射および耐候性試験の実行中、耐候性試験室内の相対湿度は、好ましくは一定で、50%±10%である。特に、照射および耐候性試験の実行中、耐候性試験室内の試験繊維片、特に試験繊維束片のブラック標準温度は、好ましくは一定で、65℃±3℃である。照射および耐候性試験の過程は、標準DIN EN ISO 4892-2:2013-06によるProceudure AのCycle 1の条件に従うことが優先的である。
【0033】
さらに、1つ以上の膨張試験において、1つ以上の特に少なくとも実質的に風化していないおよび/または保護装置の少なくとも実質的に新品同様の合成繊維の1つ以上の試験繊維片、特に保護装置の繊維束の1つ以上の試験繊維束片は、500%を超える、好ましくは600%を超える伸縮性を有することが提案される。このようにして、保護装置の高い、特に初期の可撓性、特に弾力性が有利に達成可能である。これは有利には、特に実装中および/または播種中に、特に保護装置上を歩行可能および/または制限内で運転可能である場合に、容易な実装および播種を可能にする。さらに、地面の不均一性に対する保護装置の好ましい形状方向の適応性を達成することが有利に可能である。特に、膨張試験において、試験繊維片または試験繊維束片は、それぞれ、つかみ具によって膨張試験装置内で端部が固定され、つかみ具は、膨張試験において互いに離れるように移動される。膨張試験装置は、好ましくは、引張試験装置と同様に実施される。好ましくは、引張試験装置は、引張試験の実行以外に膨張試験の実行のためにも構成され、膨張試験装置は、膨張試験の実行以外に引張試験の実行のためにも構成される。特に、膨張試験では、つかみ具を20mm/minの速度で互いに離れるように移動され、試験繊維片または試験繊維束片の長さ変化は、試験繊維片および/または試験繊維束片が破断するまで測定される。結果として生じる伸縮性は、特に、破断することなく試験繊維片および/または試験繊維束片によって維持される最大長さ変化である。好ましくは、伸縮性は、平均伸縮性として理解され、特に、平均伸縮性の決定には、10回以上の個別の測定の統計を要する。
【0034】
耐候性試験室で500時間以上の、特に標準化された照射および耐候性試験が行われた場合、試験繊維片、特に試験繊維束片は、少なくとも周期的に少なくともUV光の照射および水による少なくとも風化作用に暴露され、試験繊維片、特に試験繊維束片は、膨張試験において、風化していない、特に新品同様の状態の試験繊維片、特に試験繊維束片の初期伸縮性の50%以上、好ましくは66%以上、有利には75%以上、特に有利には85%以上、優先的には90%以上、特に優先的には95%以上の残存伸縮性を提示し、保護装置上を再度歩行する必要がある例えば再播種のために、有利には、設置した保護装置の再加工が可能になる。さらに、このようにして、有利には、設置場所での実装前および/または実装中の保護されていない保管が、限られた期間許可されてよい。「初期伸縮性」は、合成繊維の製造後の伸縮性および/または合成繊維の風化前の伸縮性を特に意味する。
【0035】
保護装置の少なくとも部分的に生分解性の合成繊維の1つ以上の試験繊維片、特に保護装置の少なくとも部分的に生分解性の繊維束の1つ以上の試験繊維束片に対して行われた1つ以上の堆肥化試験において、試験繊維片、特に試験繊維束片の10%以上、好ましくは30%以上、有利には50%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上が、2年後、特に4年後、好ましくは6年後、優先的には8年後に、生物学的に分解および特に解体することが提案される。このようにして、特に有利な耐候性が達成可能である。良好な環境適合性が達成されることが有利に可能であり、したがって、生態学的に敏感な地域での使用に特に良好な適合性を有利に可能である。特に、生分解性は、設置場所で予想される環境条件に適応可能であり、および/または保護装置の意図された使用法に適応可能である。特に、生分解性は、生分解性を増加または減少させる少量の添加剤を添加することによって調整可能である。例えば、表面における播種および/または再播種用に構成された保護装置の合成繊維は、有利には迅速に生物学的に分解可能でありおよび最大2年後に少なくとも大部分が分解され、好ましくは分解の大部分が保護装置の稼働の2年目に起こる。代替的には、例えば、主に再播種を伴わない耐浸食性保護用に構成された保護装置の合成繊維は、より長く耐久性があり、5年後、特に8年後、好ましくは10年後にも生分解性の合成繊維の少なくとも大部分がまだ残るように、生物学的分解は後で起こる。特に、堆肥化試験は、制御された堆肥化条件より試験堆肥化設備で実行される。優先的には、堆肥化試験は、標準DIN EN ISO 14855:2004-10に規定されている堆肥化条件により実行される。制御された堆肥化条件は、特に、生分解性の合成繊維と接種材料との混合を含み、好ましくは、該混合は、好気性堆肥化設備からの通気性のある堆肥として実施され、大きな不活性物体を少なくとも実質的に含まない。本明細書では、生分解性の合成繊維は、合成繊維の個々の全表面積が2cm×2cmよりも小さくなるように特に細かい。堆肥化試験において総乾物の全接種材料に対する比率は、特に5:10乃至5.5:10の間である。堆肥化試験において有機乾物の全接種材料に対する比率は、特に1.5:10未満である。堆肥化試験において有機乾物の総乾物に対する比率は、特に3:10未満である。1部の接種材料と5部の脱イオン水で構成される混合物のpH値は、特に7.0から9.0の間である。堆肥化試験における接種材料の活動は、生物学的に分解可能な標準物質、例えば20μm未満の粒子サイズのTLCセルロース標準フィルムが、10日以内に有機乾物1グラム当たり50mg乃至150mgのCO2を放出するように特に実施される。特に、接種材料と生分解性の合成繊維との混合物は、3リットル以上の内容積を有する試験堆肥化設備の容器内で堆肥化試験に供され、接種材料と生分解性の合成繊維との混合物で容器の3分の2以上が満たされている。充填された試験堆肥化設備の容器は、58℃±2℃の一定温度、および水飽和した少なくとも実質的にCO2を含まない雰囲気に特に暴露される。堆肥化試験中、試験堆肥化設備の容器は週に1回振られる。接種材料と生分解性の合成繊維との混合物の水分率は、特に実質的に50%以上の一定である。接種材料と生分解性の合成繊維との混合物のpH値は、堆肥化試験全体において特に7.0乃至9.0の間である。
【0036】
保護装置の少なくとも部分的に生分解性の合成繊維の1つ以上の試験繊維片、特に保護装置の少なくとも部分的に生分解性の繊維束の1つ以上の試験繊維束片に対して行われた堆肥化試験において、試験繊維片、特に試験繊維束片の最大10%、好ましくは最大15%、有利には最大20%、優先的には最大30%は、半年後、好ましくは2年後、有利には4年後、特に有利には6年後、優先的には8年後、特に優先的には10年後に生物学的に分解することが提案される。このようにして、最初の植生期間中に、保護装置の高レベルの安定性および/または固定が有利に達成可能である。さらに、最初の植生期間中に、根付く植生に対する良好な支持が有利に可能になる。その他、合成繊維による耐浸食性保護は、少なくとも耐浸食性保護に寄与する十分な植生がまだない間は、つまり最初の植生期間中は、有利に維持され得る。
【0037】
さらに、保護装置を有する斜面固定が提案される。これは有利には、斜面固定に対して高い環境適合性を提供することを可能にする。
その他、特に斜面に位置したおよび/または侵食されやすい表面、特に地表における播種および/または再播種に対する、保護装置の使用が提案される。このようにして、特に有利な発芽条件によって、および/または分散した種子が大雨で洗い流されるのを有利に防止することによって、特に効率的な播種が可能になる。
【0038】
さらに、保護装置を製造する方法であって、1つ以上の構造化ステップにおいて、最初は互いに別個に実施されまた少なくとも大部分が生分解性の合成繊維は、少なくとも大部分が生分解性の合成繊維が実質的に3次元構造を有するマット状、特にスパイクマット状構造、好ましくはモノフィラメントのランダム繊維布構造を形成するように、圧入接続および/または物質同士の結合、特に合成繊維の加熱によって互いに接続される方法が提案される。このようにして、特に、上記の有利な特性を有する保護装置を製造することができる。
【0039】
構造化ステップに先立つ1つ以上のさらなる方法ステップにおいて、少なくとも大部分が生分解性の不規則に配向された合成繊維は、構造化ステップにおいて金網が合成繊維で編組されるように、金網の上下に層状に配置されることがさらに提案される。このようにして、特に、上記の有利な特性を有する保護装置を製造することが可能であり、これは、金網によって有利に追加的に補強される。
【0040】
本発明による保護装置、本発明による斜面固定、本発明による保護装置の使用、および/または本発明による保護装置の製造方法は、本明細書では、上記の用途や実装に限定されない。特に、本明細書に記載の機能を実現するために、本発明による保護装置、本発明による斜面固定、本発明による保護装置の使用、および/または本発明による保護装置の製造方法は、本明細書において記載された数とは異なる複数の個々の要素、構造上の構成要素、およびユニットを含んでよい。
【0041】
以下の図面の説明から、さらなる利点が明らかになる。図面には、本発明の1つの例示的な実施形態が示されている。図面、説明および特許請求の範囲は、組み合わせて複数の特徴を含む。当業者は、意図的に特徴を別々に検討し、さらに適切な組み合わせを見つけるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図7】引張試験装置による引張試験および膨張試験のフローチャート。
【
図8】照射および耐候性試験を実施するための耐候性試験室。
【
図9】金網を備えた保護装置の製造方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、斜面固定32aならびにその下にある土壌および/または石、それぞれの岩の横断面を示す。斜面固定32aは、侵食に対して斜面を固定するように構成されている。斜面固定32aは、土砂滑りおよび/または斜面材料の流出に対して斜面を固定するように構成されている。斜面固定32aは、保護装置34aを含む。保護装置34aは、耐浸食性保護装置として実施されている。保護装置34aは、ジオテキスタイルとして実施されている。保護装置34aは、保護される斜面の表面10a上に面状に広がるように構成されている。保護装置34aは、斜面の地表を面状に覆うように構成されている。保護装置34aは、パネルの形状で実施され、輸送用に巻くことができるように実施される。保護される表面10aを覆うため、保護装置34aのパネルは、表面10a上に展開され、個々のパネルの側縁で相互接続され、保護される表面10a上に張力ロープおよび係留要素42aによって広げて固定される。保護装置34aはスパイクマットを形成する。
【0044】
斜面固定32aは、1つ以上の係留要素42aを含む。係留要素42aは、ソイルネイルおよび/またはロックネイルとして実施される。係留要素42aは、斜面の表面10a上の保護装置34aを締結して位置を固定するように構成されている。保護装置34aを固定するために、係留要素42aは、特にドリルまたはハンマーによって、垂直にまたは傾斜して斜面の土壌および/または岩石に挿入される。係留要素42aは、1つ以上のアンカープレート44aを含む。アンカープレート44aは、例えば釘頭として係留要素42aと一体的に、または例えばスパイクプレートとして係留要素42aとは別に実施されてよい。アンカープレート44aは、係留要素42aの保持力を少なくとも保護装置34aに伝達するように構成されている。斜面固定32aは、規則的または不規則的な間隔で保護装置34aの表面全体に分散された複数の係留要素42aを含み、間隔の寸法は、斜面の特性(地形および地質)に依存する。
【0045】
保護装置34aは、斜面に位置するため侵食されやすい表面10aにおける播種および/または再播種に少なくとも使用されるように構成されている。
図2は保護装置34aの上面図の部分を示す。保護装置34aは、少なくとも大部分が複数の合成繊維12aで実施される。合成繊維12aは、圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続されている。複数の合成繊維12aのうちの少なくとも大部分の合成繊維12aは、少なくとも大部分が生分解性である。合成繊維12aは、互いに不規則に配置される。合成繊維12aは、少なくとも一部は連続的な繊維として実施される。合成繊維12aは、少なくとも一部は最大長20cmの短繊維として実施される。合成繊維12aは、3つの空間方向全てに延在する。合成繊維12aは、長繊維状に実施される。合成繊維12aは、モノフィラメントを形成する。合成繊維12aは、0.15mmから0.4mmの間の直径を有する。合成繊維12aは疎水性である。
【0046】
堆肥化試験では、生分解性の合成繊維12aおよび/または生分解性の合成繊維12aの試験繊維片28a(
図6または
図8も参照)は、10%以上が2年後に生物学的に分解される。堆肥化試験では、生分解性の合成繊維12aおよび/または生分解性の合成繊維12aの試験繊維片28aは、最大で10%が半年後に生物学的に分解または解体した。合成繊維12aは、少なくとも新品同様の状態では、70MPaより高い平均強度を有する。合成繊維12aは、少なくとも新品同様の状態で、500%を超える平均伸縮性を有する。合成繊維12aは、少なくとも新品同様の状態で、熱可塑的に変形可能である。
【0047】
合成繊維12aの少なくとも一部は、PLA(ポリ乳酸)含有合成材料で少なくとも部分的に実施される。合成繊維12aの少なくとも一部は、ポリ乳酸含有合成材料とは異なる生分解性の合成材料で少なくとも部分的に実施される。例えば、合成繊維12aは、ポリヒドロキシ酪酸(PHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)および/またはポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)で少なくとも部分的に実施される。合成繊維12aの少なくとも一部は、2つ以上の生分解性の合成材料の紡糸可能な混合で少なくとも部分的に実施される。紡糸可能な混合の1つ以上の成分は、ポリ乳酸含有合成材料として実現されている。紡糸可能な混合で実施された合成繊維12a中のPLA(ポリ乳酸)含有合成材料の容量パーセントは40%以上である。
【0048】
図3は、保護装置34aの側面図を示す。保護装置34aは、実質的に3次元構造14aを有する。
図3の側面図は、任意の視線方向からの保護装置34aを示す。合成繊維12aは、実質的に3次元構造14aを形成するように互いに配置される。保護装置34aは、保護装置34aの主延長面に対して垂直な少なくとも1cmの延長を有する。合成繊維12aは、ランダム繊維布16aを形成する。ランダム繊維布16aは、3次元のランダム繊維布16aとして実施される。ランダム繊維布16aは、モノフィラメントのランダム繊維布16aとして実現されている。合成繊維12aは、保護装置34aにモノフィラメントのランダム繊維布構造を与える。ランダム繊維布16a、特にモノフィラメントのランダム繊維布構造は、個々の合成繊維12a(モノフィラメント)の間に複数の中空空間を含む。ランダム繊維布16aは、90%を超える空隙率を有する。ランダム繊維布16aは、700g/m
2未満、好ましくは500g/m
2未満の面密度を有する。中空空間は、少なくとも植物の種子を収容するように構成されている。ランダム繊維布16aは、ランダム繊維布16aの合成繊維12aが特に大きな表面積を形成するように実施される。ランダム繊維布16aの表面は、結露の形成を促進するように構成されている。ランダム繊維布16aの合成繊維12aは、不規則に配向される。ランダム繊維布16aの合成繊維12aは、不規則に分布している。ランダム繊維布16aの合成繊維12aは、不均一に配向される。ランダム繊維布16aの合成繊維12aは、不均一に分布している。
【0049】
図2乃至
図5は、概略的かつ例示的な表示であり、特に、ランダム繊維布16a内の合成繊維12aの正確な配置または合成繊維12aの描写された配置の規則性は、作図の条件によるものであり、ランダム繊維布16aにおける合成繊維12aの実際の配置に必ずしも対応しないことを意味することが特に指摘される。
【0050】
図4は、合成繊維12aのランダム繊維布16aに組み入れられた金網22aが加工された保護装置34aの上面図の部分を示す。保護装置34aは金網22aを含む。金網22aは、メッシュ状の金網として実現されている。金網22aは、互いに編組された複数の螺旋形状の長手要素24aで実施される。長手要素24aは、ワイヤ26aで実施されている。この場合、ワイヤ26aの直径は2mmである。長手要素24aは、ワイヤ束、ワイヤストランド、またはワイヤロープ等として実施することも考えられる。さらに、ワイヤ26aは、例えば、1mm未満、約1mm、約2mm、約4mm、約5mm、約6mm、またはそれ以上の直径等の異なる直径を有することも考えられる。ワイヤ26aは、少なくとも部分的に高張力鋼で実施されている。ワイヤ26aは少なくとも500Nmm
-2の引張強度を有する。この場合、ワイヤ26aは少なくとも1770Nmm
-2の引張強度を有する。当然、前述のように他の引張強度、特に2200Nmm
-2を超える引張強度も考えられる。特に、ワイヤ26aは超高張力鋼で製造されると考えられる。金網の総引張強度は少なくとも53kN/m以上である。
【0051】
長手要素24aは、耐腐食性被膜状のものを含む。耐腐食性被膜は、Zn/Al被膜として実現されている。耐腐食性被膜を有するワイヤ26aは、クラスAワイヤを構成する。長手要素24aは、扁平な螺旋の形状を有する。長手要素24aは、長手延長方向46aを有する。長手要素24aは、長手延長方向46aに垂直な方向に互いに引っ掛けられている。互いに引っ掛けられおよび/または編組されている長手要素24aは、互いに絡み合っている。互いに編組された金網22aの長手要素24aは、菱形メッシュ50aを形成する。金網22aの菱形メッシュ50aは、101mm*175mmの寸法を有する。これよりも寸法が大きいまたは小さいメッシュ50aも当然に考えられる。金網22aは、長手延長方向46aに垂直な方向に巻き上げることができる。
【0052】
金網22aは、合成繊維12aに囲まれている。金網22aは、合成繊維12aで編組されている。金網22aには、合成繊維12aが巻き付けられている。金網22aは、ランダム繊維布16aに組み入れられている。合成繊維12aは、金網22aの下および上に配置されている。ランダム繊維布16aは、金網22aの周りに配置されている。金網22aは破損することなくランダム繊維布16aからの取り外しができない。合成繊維12aの少なくとも一部は、物質同士の結合によって金網22aに接続されている。合成繊維12aと金網22aとの物質同士の結合のため、合成繊維12aは、少なくとも部分的に溶融されおよび/または金網22aに押し付けられる。
【0053】
図5は、金網22aを備えた保護装置34aの側面図を示す。
図5の側面図は、保護装置34aの金網22aの長手要素24aの長手延長方向46aに平行な視線方向からの保護装置34aを示している。金網22aは、3次元のマットレス状構造48aを有する。マットレス状構造48aは、金網22aの主延長面に垂直な方向において、金網22aにばね容量を与える。金網22aの主延長面に垂直な方向における金網22aの延長は、金網22aの主延長面に対して垂直な方向におけるランダム繊維布16aの延長の70%以上、好ましくは90%以上である。金網22aの主延長面に垂直な方向における金網22aの延長は、金網22aのワイヤ26aの直径の4倍以上、好ましくは6倍以上である。
【0054】
図6は、引張試験装置52aの概略図を示している。引張試験装置52aは、引張試験を実施するように構成されている。引張試験装置52aは、膨張試験装置としても機能する。膨張試験装置は、膨張試験を実行するように構成されている。引張試験装置52aは、2対以上のつかみ具54aを含む。つかみ具54aは、空気圧で閉鎖および/または開放可能である。つかみ具54aは、試験繊維片28aを挟むおよび/または締め付けるように構成されている。つかみ具54aは、引張試験装置52aの保持要素56a、58aに固定されている。引張試験装置52aのタワー60aに沿って垂直に移動可能であるように、1つ以上の上部保持要素56aが支持されている。
【0055】
試験繊維片28aは、保護装置34aの合成繊維12aと同様に実施されている。試験繊維片28aは、合成繊維12aの直径と少なくとも実質的に同一の直径を有する。試験繊維片28aは、合成繊維12aの材料組成と少なくとも実質的に同一の材料組成を有する。試験繊維片28aは、少なくとも実質的に直線的である。
【0056】
引張試験を実施するため、つかみ具54aは、モータ駆動で互いに離れるように移動可能である。つかみ具54aの動きは、本明細書では、固定された試験繊維片28aの長手方向に少なくとも実質的に平行な方向に直線的に行われる。引張試験装置52aは、1つ以上の力センサ要素62aを含む。力センサ要素62aは、試験繊維片28aの強度を感知するように構成されている。力センサ要素62aは、試験繊維片28aに作用する張力を感知するように構成されている。引張試験装置52aは、1つ以上の距離センサ要素64aを含む。距離センサ要素64aは、試験繊維片28aが破断するまで、試験繊維片28aの最大伸長距離を感知するように構成されている。距離センサ要素64aは、力センサ要素62aとの相互作用で試験繊維片28aの伸縮性を感知するように構成されている。距離センサ要素64aは、特にカメラ等の光学距離センサとして実施される。代替的には、距離センサ要素64aは、例えば、スピンドルまたはステッピングモータによって得られる移動経路を検出する、スピンドルまたはステッピングモータの測定装置として実施されてよい。
【0057】
図7は、引張試験および膨張試験のフローチャート、特に、試験繊維片28aの強度および/または伸縮性を測定する方法を示す。1つ以上の方法ステップ66aにおいて、試験繊維片28aは、新たに製造されるかまたは新たに製造された保護装置34aから取り出される。1つ以上のさらなる方法ステップ68aにおいて、試験繊維片28aの直径が測定される。1つ以上のさらなる方法ステップ70aにおいて、試験繊維片28aは、引張試験装置52aのつかみ具54aに固定される。1つ以上のさらなる方法ステップ72aにおいて、つかみ具54aは、制御された状態で特に20mm/分の速度で互いに離れるように移動される。その結果、試験繊維片28aは引き伸ばされ、引張荷重が与えられる。試験繊維片28aが引き離されている間、試験繊維片28aで発生する張力は、力センサ要素62aによって検出および記録される。1つ以上のさらなる方法ステップ74aにおいて、つかみ具54aの離間移動が停止される。つかみ具54aの離間移動は、例えば、測定された張力の急激な減少により力センサ要素62aが試験繊維片28aの破断を検出するとすぐに停止される。1つ以上のさらなる方法ステップ76aにおいて、試験繊維片28aの破断の前につかみ具54aによって移動する距離が、距離センサ要素64aによって測定される。試験繊維片28aの伸縮性は、つかみ具54aの初期距離との比較によって計算される。1つ以上のさらなる方法ステップ78aにおいて、試験繊維片28aの強度は、試験繊維片28aの破断前に測定された最大張力に基づき、力センサ要素62aによって判定される。
【0058】
引張試験では、試験繊維片28aは70MPaを超える、好ましくは80MPaを超える強度を示す。膨張試験では、試験繊維片28aは、500%を超える、好ましくは600%を超える伸縮性を示す。ランダム繊維布16aは合成繊維12aで実施される。合成繊維12aは、試験繊維片28aと少なくとも実質的に同一であり、したがって風化していない状態では同程度の強度および伸縮性を有する。
【0059】
図8は、耐候性試験室30aを示す。耐候性試験室30aは、照射および耐候性試験を実行するように構成されている。耐候性試験室30aは、1つ以上の試験繊維片28aおよび/または1つ以上の試験繊維束片82aの保持、特に固定のために構成された、1つ以上の保持装置86aを含む。耐候性試験室30aは、1つ以上の照射ユニット80aを含む。照射ユニット80aは、耐候性試験室30aに収容され好ましくは保持装置86aに固定された試験繊維片28aまたは試験繊維束片82aに対して、UV光を照射するように構成されている。UV光は、日光のUV成分に類似したスペクトルを有する。照射ユニット80aは、1つ以上のキセノンランプを含む。耐候性試験室30aは、1つ以上のスプレーユニット84aを備える。スプレーユニット84aは、耐候性試験室30に収容され好ましくは保持装置86aに固定された試験繊維片28aまたは試験繊維束片82aに対して、噴霧水を周期的に噴霧するように構成されている。噴霧水は、特に、風化作用の種類に応じて、脱イオン水、雨水に類似した淡水、または海水に類似した塩水である。さらに、耐候性試験室30aは、耐候性試験室温度および/または試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aのブラック標準温度を判定する温度センサ88aを含む。さらに、耐候性試験室30aは、耐候性試験室30a内の相対湿度を判定する湿度センサ90aを含む。耐候性試験室30aは、スプレーユニット84aおよび照射ユニット80aを制御および/または調整し、耐候性試験室30aにおける少なくとも耐候性試験室温度および相対湿度を設定するように少なくとも構成された制御および/または調整ユニット(図示せず)を含む。耐候性試験室30aは、標準DIN EN ISO 4892-2:2013-06のProcedure A,Cycle 1の要件に従って、照射および耐候性試験を実行するように構成されている。
【0060】
耐候性試験室30aにおいて500時間の照射および耐候性試験を行い、試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aは、少なくとも周期的に少なくともUV光の照射および噴霧水による少なくとも風化作用に暴露された。試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aは、引張試験装置52aによる引張試験において、風化していない状態での試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aの初期強度の66%以上に相当する残存強度を有した。耐候性試験室30aにおいて500時間の照射および耐候性試験を行い、試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aは、少なくとも周期的に少なくともUV光の照射および水による少なくとも風化作用に暴露された。試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aは、膨張試験において、風化していない状態での試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aの初期伸縮性の50%以上の残存伸縮性を有した。ランダム繊維布16aは合成繊維12aで実施される。合成繊維12aは、試験繊維片28aおよび/または試験繊維束片82aと少なくとも実質的に同一であり、したがって風化した状態では同程度の強度および伸縮性を有する。
【0061】
図9は、金網22aを備えた保護装置34aを製造する方法のフローチャートを示す。1つ以上の方法ステップ38aにおいて、生分解性の合成繊維12aは、押出成型によって製造される。さらなる方法ステップ40aにおいて、不規則に配向された生分解性の合成繊維12aは、方法ステップ40aに続く構造化ステップ36aにおいて金網22aが合成繊維12aで編組されように、金網22aの上下に層状に配置される。構造化ステップ36aにおいて、最初は互いに別個に実施されている少なくとも大部分が生分解性の合成繊維12aは、少なくとも大部分が生分解性の合成繊維12aが実質的に3次元構造14aを有するマット状構造を形成するように、圧入接続および/または物質同士の結合によって相互接続される。
【符号の説明】
【0062】
10…表面、12…合成繊維、14…3次元構造、16…ランダム繊維布、18…不織布状構造、20…表面平面、22…金網、24…長手要素、26…ワイヤ、28…試験繊維片、30…耐候性試験室、32…斜面固定、34…保護装置、36…構造化ステップ、38…方法ステップ、40…方法ステップ、42…係留要素、44…アンカープレート、46…長手延長方向、48…マットレス状構造、50…メッシュ、52…引張試験装置、54…つかみ具、56…保持要素、58…保持要素、60…タワー、62…力センサ要素、64…距離センサ要素、66…方法ステップ、68…方法ステップ、70…方法ステップ、72…方法ステップ、74…方法ステップ、76…方法ステップ、78…方法ステップ、80…照射ユニット、82…試験繊維束片、84…スプレーユニット、86…保持装置、88…温度センサ、90…湿度センサ。