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特開2023-53330組織へのアブレーションエネルギーの送達のためのシステム、装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053330
(43)【公開日】2023-04-12
(54)【発明の名称】組織へのアブレーションエネルギーの送達のためのシステム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230404BHJP
   A61N 1/362 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61B18/12
A61N1/362
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021321
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2021092461の分割
【原出願日】2016-10-19
(31)【優先権主張番号】62/274,926
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516193782
【氏名又は名称】ファラパルス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスワナータン,ラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ゲイリー
(57)【要約】
【課題】パルス波形発生器とパルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置とを含むシステムを提供する。
【解決手段】アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む。パルス波形発生器はパルス状波形の形態で電圧パルスをアブレーション装置に送達するように構成される。パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセット121を含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔118は連続するパルスを分離する。パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセット122として複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔119は連続する第1のパルスのセットを分離し、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
パルス波形発生器と、
前記パルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置であって、前記アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む、前記アブレーション装置と、を含み、
前記パルス波形発生器はパルス状波形の形態で前記アブレーション装置に電圧パルスを送達するように構成され、
(a)前記パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離し;
(b)前記パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、前記第2の時間間隔は前記第1の時間間隔の前記持続時間の少なくとも3倍であり;
(c)前記パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、前記第3の時間間隔は前記第2のレベルの時間間隔の前記持続時間の少なくとも30倍である、前記システム。
【請求項2】
各第1のパルスのセットの前記パルスが少なくとも800ボルトの電圧振幅を持つ単相パルスを含み、各単相パルスの前記パルスの持続時間が約1マイクロ秒~約300マイクロ秒の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各第2のパルスのセットが少なくとも2の第1のパルスのセット及び40未満の第1のパルスのセットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
各第3のパルスのセットが少なくとも2の第2のパルスのセット及び30未満の第2のパルスのセットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
各第1のパルスのセットの前記パルスがそれぞれ少なくとも800ボルトの電圧振幅を持つ二相パルスを含み、各二相パルスの前記パルスの持続時間が約0.5ナノ秒~約20マイクロ秒の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の時間間隔が前記パルスの持続時間の少なくとも10倍である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーション装置が心外膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記アブレーション装置が心内膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
システムであって、
パルス波形発生器と、
前記パルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置であって、前記アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む、前記アブレーション装置と、を含み、
前記パルス波形発生器はパルス状波形の形態で電圧パルスを前記アブレーション装置に送達するように構成され、
(a)前記パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離し;
(b)前記パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、前記第2の時間間隔は前記第1の時間間隔の前記持続時間の少なくとも3倍であり;
(c)前記パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、前記第3の時間間隔は前記第2のレベルの時間間隔の前記持続時間の少なくとも30倍であり;
前記パルス波形発生器が、連続する第3のパルスのセット間で多くても約5ミリ秒の時間遅延を伴って複数の前記第3のパルスのセットを前記アブレーション装置に適用するように構成される、前記システム。
【請求項10】
前記アブレーション装置が心外膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アブレーションカテーテルが少なくとも4つの電極を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
各第2のパルスのセットが少なくとも2の第1のパルスのセット及び40未満の第1のパルスのセットを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
各第3のパルスのセットが少なくとも2の第2のパルスのセット及び30未満の第2のパルスのセットを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
各第1のパルスのセットの前記パルスが少なくとも800ボルトの電圧振幅を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
システムであって、
パルス波形発生器と、
前記パルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置であって、前記パルス波形発生器は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む、前記アブレーション装置と、
前記パルス波形発生器に繋がれる心臓刺激装置であって、前記心臓刺激装置は使用するとき、心臓刺激のためのペーシング信号を生成するために構成される、前記心臓刺激装置と、を含み、
前記パルス波形発生器は前記ペーシング信号と同期してパルス状波形の形態で電圧パルスを前記アブレーション装置に送達するように構成され、
(a)前記パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離し;
(b)前記パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し;
(c)前記パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し;
前記パルス波形発生器が、連続する第3のパルスのセット間で時間遅延を伴って複数の前記第3のパルスのセットを前記アブレーション装置の所定の数の電極セットに適用するように構成され、
前記パルス波形発生器が、前記パルス状波形を生成するように構成され、前記第1のパルスのセットのそれぞれ及び前記第2のパルスのセットのそれぞれ、前記所定の数の電極セット、前記時間遅延、前記パルスの持続時間、前記第1の時間間隔、前記第2の時間間隔、ならびに前記第3の時間間隔が一緒にディオファントス不等式によって制約される、前記システム。
【請求項16】
前記ディオファントス不等式の制約がさらに不応時間ウインドウによって特徴付けられる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
第1のパルスのセットの数及び第2のパルスのセットの数が予め決定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記パルス波形発生器がさらに、時間オフセットによって前記ペーシング信号から間隔を置いて前記パルス状波形を送達するように構成され、前記時間オフセットが約25ミリ秒より少ない、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記第3の時間間隔が前記ペーシング信号に関連するペーシング期間に相当する、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2の時間間隔が前記第1の時間間隔の前記持続時間の少なくとも3倍である、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記第3の時間間隔が前記第2の時間間隔の前記持続時間の少なくとも30倍である請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2の時間間隔が前記パルスの持続時間の前記持続時間の少なくとも10倍である、請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記アブレーション装置が心外膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記アブレーション装置が心内膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項25】
システムであって、
ユーザーインターフェースを含むパルス波形発生器と、
前記パルス波形発生器に繋がれるアブレーション装置であって、前記アブレーション装置は使用するとき患者の組織にアブレーションパルスを送達するために構成される複数の電極を含む、前記アブレーション装置と、
前記パルス波形発生器に繋がれる心臓刺激装置であって、前記心臓刺激装置は使用するとき前記患者の心臓刺激のためのペーシング信号を生成するために構成される、前記心臓刺激装置と、を含み、
前記パルス波形発生器が、少なくとも3つのレベルの階層を有するパルス状の電圧波形の形態で電圧パルスを前記アブレーション装置に送達するように構成され、
前記パルス波形発生器がさらに、前記ペーシング信号と同期して前記パルス状の電圧波形を送達するように構成され、
前記パルス波形発生器の前記ユーザーインターフェースが、前記患者の心臓による前記ペーシング信号の捕捉のユーザー確認の指示を受け取るために構成され、
前記パルス波形発生器が、ユーザー確認の前記指示の受け取りの際、前記パルス状の電圧波形を送達するように構成される、前記システム。
【請求項26】
(a)前記パルス状波形の第1のレベルの階層が第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離し;
(b)前記パルス状波形の第2のレベルの階層が第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し;
(c)前記パルス状波形の第3のレベルの階層が第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し;
前記パルス波形発生器がさらに、連続する第3のパルスのセット間で時間遅延を伴って前記アブレーション装置の所定の数の電極セットに複数の第3のパルスのセットを適用するように構成され、
前記第1のパルスのセットのそれぞれ及び前記第2のパルスのセットのそれぞれ、前記所定の数の電極セット、前記時間遅延、前記パルスの持続時間、前記第1の時間間隔、前記第2の時間間隔、ならびに前記第3の時間間隔が一緒にディオファントス不等式によって制約される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記パルス波形発生器が、ユーザー確認の前記指示の後の所定の時間間隔の後でのみ前記パルス状波形を送達するように構成される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記ユーザーインターフェースが制御入力機器を含み、前記パルス波形発生器が、前記制御入力機器のユーザー関与の際に前記パルス状波形を送達するように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記パルス波形発生器が、前記制御入力機器からのユーザー離脱の20ミリ秒以内にパルス状波形の送達を止めるように構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
パルス状波形を生成することと、前記パルス状波形をアブレーション装置に送達することとを含む方法であって、前記パルス状波形が、
(a)第1のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第1のレベルの階層であって、各パルスがパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔が連続するパルスを分離する、前記パルス状波形の第1のレベルの階層と、
(b)第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第2のレベルの階層であって、第2の時間間隔が連続する第1のパルスのセットを分離し、前記第2の時間間隔が前記第1の時間間隔の前記持続時間の少なくとも3倍である、前記パルス状波形の第2のレベルの階層と、
(c)第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第3のレベルの階層であって、第3の時間間隔が連続する第2のパルスのセットを分離し、前記第3の時間間隔が前記第2のレベルの時間間隔の前記持続時間の少なくとも30倍である、前記パルス状波形の第3のレベルの階層と、
を含む、前記方法。
【請求項31】
方法であって、
パルス状波形を生成することと、
心臓刺激装置によってペーシング信号を生成することと、
前記ペーシング信号と同期して前記パルス状波形をアブレーション装置に送達することと、を含み、
前記パルス状波形が、
(a)第1のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第1のレベルの階層であって、各パルスがパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔が連続するパルスを分離する、前記パルス状波形の第1のレベルの階層と、
(b)第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第2のレベルの階層であって、第2の時間間隔が連続する第1のパルスのセットを分離し、前記第2の時間間隔が前記第1の時間間隔の前記持続時間の少なくとも3倍である、前記パルス状波形の第2のレベルの階層と、
(c)第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含む前記パルス状波形の第3のレベルの階層であって、第3の時間間隔が連続する第2のパルスのセットを分離し、前記第3の時間間隔が前記第2のレベルの時間間隔の前記持続時間の少なくとも30倍である、前記パルス状波形の第3のレベルの階層と、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年1月5日に出願された「SYSTEMS, APPARATUSES AND DEVICES FOR DELIVERY OF PULSED ELECTRIC FIELD ABLATIVE ENERGY TO ENDOCARDIAL TISSUE」と題する米国仮特許出願番号62/274,926に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
組織に対する高い電圧の短いパルスと大きな電場の影響が過去40年以上検討されてきた一方で、組織療法のためのパルス状電場の生成は、過去20年にわたって研究室から臨床応用へと移ってきている。通常数百ボルト/センチメートルの範囲での高い電場を局所的に生成することができる組織への短い高DC電圧の適用は、細胞膜に孔を生成することによって細胞膜を壊すことができる。この電動の孔生成または電気穿孔の正確なメカニズムは不明である一方で、相対的に大きな電場の適用は細胞膜における脂質二重層にて不安定性を生成し、膜にて局所のギャップまたは孔の分布を発生させると考えられている。膜で適用される電場が閾値より高ければ、電気穿孔は不可逆性であることができ、孔は開いたままであり、膜を横切る生体分子物質の交換を可能にし、壊死及び/またはアポトーシス(細胞死)をもたらす。その後、周囲の組織は自然な過程で治癒する。
【0003】
従って、医療における既知の電気穿孔の適用及び送達方法は、特にカテーテル装置を伴った心臓不整脈のためのアブレーション療法の文脈において、高電圧の適用、組織の選択性及び安全なエネルギー送達に対処していない。さらに、健常組織に対する損傷を出来るだけ抑えながら対象とする領域の組織に選択的に高DC電圧の電気穿孔アブレーション療法を同時に効果的に送達することができる細くて柔軟で傷つけない装置についての満たされないニーズ、及び装置の再配置が出来るだけ少ないまたはない、有効で、安全且つ迅速な臨床処置を可能にする装置設計と投与波形の組み合わせについての満たされないニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
システムはパルス波形発生器とパルス波形発生器に繋いだアブレーション装置とを含む。アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む。パルス波形発生器はパルス状波形の形態でアブレーション装置に電圧パルスを送達するように構成される。パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施形態に従って、心臓生体構造の肺静脈の周りでカテーテルがぴったり包むように心外膜に配置され、その遠位シャフトに沿って配置される複数の電極を伴ったカテーテルの模式図である。
図2】実施形態に従って、各パルスについて定義されるパルス幅を持つ電圧パルスの連続を示す実例の波形を示す図である。
図3】実施形態に従って、パルス幅、パルス間の間隔及びパルスのグループ分けを示すパルスの階層を模式的に説明する図である。
図4】実施形態に従って、ネスト化した階層の異なるレベルを示す単相パルスのネスト化した階層の模式図である。
図5】実施形態に従って、ネスト化した階層の異なるレベルを示す二相パルスのネスト化した階層の模式図である。
図6】実施形態に従って、電圧パルス波形の相当する連続の適用について電極のセットが順に選択できる、番号を付けたカテーテル電極の環を模式的に示す図である。
図7】実施形態に従って、心電図の時間系列、及び心房不応期と心室不応期を共に伴い、不可逆性の電気穿孔アブレーションについての時間ウインドウを示す心臓ペーシング信号を模式的に示す図である。
図8】実施形態に従って、相当する一連の連続する心拍にわたる一連の波形パケットとして送達される電極セットの活性化の時間系列を模式的に示す図である。
図9】実施形態に従って、順番に、電圧/シグナル発生器と、ユーザーインターフェースと共にコンピュータまたはプロッセッサに伝達可能に接続される電極の選択されたサブセットに電圧を適用するように構成されるコントローラと、電圧発生器からアブレーションカテーテルに送達され得る電圧パルスから他の機器を電気的に隔離するように構成される切替ユニットとを含むシステムコンソールを含む不可逆性の電気穿孔システムの模式図である。
図10】実施形態に従って、当初の構成におけるユーザーインターフェースを示す図である。
図11】実施形態に従って、初期化機能の関与を示すユーザーインターフェースの模式図である。
図12】実施形態に従って、初期化に続く必要な工程を示すユーザーインターフェースの模式図である。
図13】前の工程の完了に続いて、システムがアブレーションエネルギーの送達の準備が整っている構成を示すユーザーインターフェースの模式図である。この構成では、ユーザーインターフェースは実施形態に従ってアブレーション用のボタンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
用語「約」及び「およそ」は言及される数的指示と併せて本明細書で使用されるとき、その言及される数的指示の10%までのプラスまたはマイナスでの言及される数的指示を意味する。たとえば、言語「約50」単位または「およそ50」単位は45単位~55単位を意味する。
【0007】
一部の実施形態では、システムはパルス波形発生器とパルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置とを含む。アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルス送達するように構成される少なくとも1つの電極を含む。パルス波形発生器は、パルス状波形の形態で電圧パルスをアブレーション装置に送達するように構成される。パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、第3の時間間隔は第2の時間間隔の持続時間の少なくとも30倍である。
【0008】
一部の実施形態では、各第1のパルスの、パルスのセットは少なくとも800ボルトの電圧振幅で単相のパルスを含む。一部の実施形態では、各単相パルスの、パルスの持続時間は約1マイクロ秒~約300マイクロ秒の範囲にある。
【0009】
一部の実施形態では、各第1のパルスの、パルスのセットはそれぞれ少なくとも800ボルトの電圧振幅で二相のパルスを含む。一部の実施形態では、各二相パルスの、パルスの持続時間は約0.5ナノ秒~約20マイクロ秒の範囲にある。
【0010】
一部の実施形態では、各第2のパルスのセットは少なくとも2の第1のパルスのセット及び40未満の第1のパルスのセットを含む。一部の実施形態では、各第3のパルスのセットは少なくとも2の第2のパルスのセット及び30未満の第2のパルスのセットを含む。一部の実施形態では、第2の時間間隔はパルスの持続時間の少なくとも10倍である。
【0011】
一部の実施形態では、アブレーション装置は心外膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む。一部の実施形態では、アブレーション装置は心内膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む。
【0012】
一部の実施形態では、システムは、パルス波形発生器とパルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置とを含み、アブレーション装置は使用するとき、アブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む。パルス波形発生器はパルス状波形の形態でアブレーション装置に電圧パルスを送達するように構成される。パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセット含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離する。一部の実施形態では、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離する。一部の実施形態では、第3の時間間隔は第2の時間間隔の持続時間の少なくとも30倍である。パルス波形発生器は、異なる電極セットにわたって適用される連続する第3のパルスのセット間で多くても約5ミリ秒の時間遅延を伴ってアブレーション装置に複数の第3のパルスのセットを適用するように構成される。
【0013】
一部の実施形態では、アブレーション装置は心外膜配置のために構成されるアブレーションカテーテルを含む。一部の実施形態では、アブレーションカテーテルは少なくとも4つの電極を含む。
【0014】
一部の実施形態では、各第2のパルスのセットは少なくとも2の第1のパルスのセット及び40未満の第1のパルスのセットを含む。一部の実施形態では、各第3のパルスのセットは少なくとも2の第2のパルスのセット及び30未満の第2のパルスのセットを含む。一部の実施形態では、各第1のパルスの、パルスのセットは少なくとも800ボルトの電圧振幅を有する。
【0015】
一部の実施形態では、システムはパルス波形発生器とパルス波形発生器に繋がれるアブレーション装置とを含み、アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む。システムはまた、パルス波形発生器に繋がれる心臓刺激装置も含み、心臓刺激装置は使用するとき、心刺激のためのペーシング信号を生成するために構成される。パルス波形発生器はパルス状波形の形態でアブレーション装置に電圧パルスを送達するように構成され、パルス状波形はペーシング信号と同期する。パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離する。パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離する。パルス波形発生器は、パルス状波形を生成するように構成され、第1のパルスのセットのそれぞれ及び第2のパルスのセットのそれぞれ、複数の第2のパルスのセット、所定の数の電極セット、時間遅延、パルスの持続時間、第1の時間間隔、第2の時間間隔、ならびに第3の時間間隔が一緒にディオファントス不等式によって制約される。
【0016】
一部の実施形態では、ディオファントス不等式の制約はさらに、不応時間ウインドウによって特徴付けられる。一部の実施形態では、第1のパルスのセットの数及び第2のパルスのセットの数は予め決定される。
【0017】
一部の実施形態では、パルス波形発生器はさらに、時間オフセットによってペーシング信号から間隔を開けたパルス状波形を送達するように構成され、時間オフセットは約25ミリ秒より少ない。一部の実施形態では、第3の時間間隔はペーシング信号に関連するペーシング期間に相当する。一部の実施形態では、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。一部の実施形態では、第3の時間間隔は第2の時間間隔の持続時間の少なくとも30倍である。一部の実施形態では、第2のレベルの時間間隔はパルスの時間の持続の持続時間の少なくとも10倍である。
【0018】
一部の実施形態では、アブレーション装置は心外膜配置のために構成されるアブレーションカテーテルを含む。一部の実施形態では、アブレーション装置は心内膜配置のために構成されるアブレーションカテーテルを含む。
【0019】
一部の実施形態では、システムは、ユーザーインターフェースを含むパルス波形発生器と、パルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置とを含み、アブレーション装置は使用するとき、患者の組織にアブレーションパルスを送達するために構成される複数の電極を含む。システムはまた、パルス波形発生器に繋がれる心臓刺激装置も含み、心臓刺激装置は使用するとき、心刺激のためのペーシング信号を生成するために構成される。パルス波形発生器は、少なくとも3つのレベルの階層を有するパルス状の電圧波形の形態で電圧パルスをアブレーション装置に送達するように構成される。パルス波形発生器はさらに、ペーシング信号と同期してパルス状の電圧波形を送達し、且つユーザー確認の指示の受け取りの際にパルス状の電圧波形を送達するように構成される。
【0020】
一部の実施形態では、パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔が連続するパルスを分離する。一部の実施形態では、パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離する。一部の実施形態では、パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離する。一部の実施形態では、パルス波形発生器はさらに、連続する第3のパルスのセット間での時間遅延を伴ってアブレーション装置の所定の数の電極セットに複数の第3のパルスのセットを適用するように構成される。一部の実施形態では、第1のパルスのセットのそれぞれ及び第2のパルスのセットのそれぞれ、所定の数の電極セット、時間遅延、パルスの持続時間、第1の時間間隔、第2の時間間隔、ならびに第3の時間間隔が一緒にディオファントス不等式によって制約される。
【0021】
一部の実施形態では、パルス波形発生器は、ユーザー確認の指示の後での所定の時間間隔の後でのみパルス状波形を送達するように構成される。一部の実施形態では、ユーザーインターフェースは制御入力装置を含み、パルス波形発生器は制御入力装置のユーザー関与の際にパルス状波形を送達するように構成される。
【0022】
一部の実施形態では、方法はパルス状波形を生成することを含む。パルス状波形は第1のパルスのセットを含むパルス状波形の第1のレベルの階層を含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形はまた、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含むパルス状波形の第2のレベルの階層を含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。パルス状波形は、第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含むパルス状波形の第3のレベルの階層を含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、第3の時間間隔は第2のレベルの時間間隔の持続時間の少なくとも30倍である。方法はアブレーション装置にパルス状波形を送達することも含む。
【0023】
一部の実施形態では、方法はパルス状波形を生成することを含む。パルス状波形は第1のパルスのセットを含むパルス状波形の第1のレベルの階層を含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離する。パルス状波形はまた、第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含むパルス状波形の第2のレベルの階層を含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、第2の時間間隔は第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍である。パルス状波形は、第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含むパルス状波形の第3のレベルの階層を含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、第3の時間間隔は第2のレベルの時間間隔の持続時間の少なくとも30倍である。方法はまた、心臓刺激装置によってペーシング信号を生成することも含む。方法はまた、ペーシング信号と同期してパルス状波形をアブレーション装置に送達することを含む。
【0024】
本明細書で開示されているのは、パルス状の電場/波形を選択的に且つ迅速に適用して不可逆性の電気穿孔による組織アブレーションを達成するための方法、システム及び装置である。一部の実施形態は電極のセットを介して組織にエネルギーを送達するための順序立てた送達スキームと共にパルス状の高電圧波形を対象とする。一部の実施形態では、電極はカテーテルに基づく電極、または細長い医療器具の全長に沿って配置される複数の電極である。一部の実施形態では、不可逆性の電気穿孔に有用なシステムには、アブレーション装置の選択される複数の電極または電極のサブセットにパルス状の電圧波形を適用するように構成されることができる電圧/シグナル発生器及びコントローラが含まれる。一部の実施形態では、コントローラは、電極の陽極‐陰極サブセットの選択されたペアを所定の順序に基づいて順番に始動することができる入力を制御するように構成され、一実施形態では、順序立てられた送達を心臓刺激装置またはペーシングシステム/装置から始動させることができる。一部の実施形態では、心臓の調律規則性における崩壊を回避するようにアブレーションパルスの波形を心臓周期の不応期に適用する。これを実行する方法の一例は、心臓刺激装置で心臓を電気的に調整し、ペーシング捕捉を確保して心臓周期の周期性と予測可能性を確立し、次いでその中にアブレーション波形が送達されるこの周期的な周期の不応期の十分範囲内にある時間ウインドウを定義することである。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書で開示されているパルス状の電圧波形は秩序において階層的であり、ネスト化構造を有する。一部の実施形態では、パルス状波形は種々の関連する時間スケールを持つパルスの階層的なグループ分けを含む。さらに、関連する時間スケール及びパルス幅、ならびにパルスや階層的グループ分けの数は、心臓ペーシングの頻度を含む一連のディオファントス不等式の1つ以上を満たすように選択することができる。
【0026】
本明細書で開示されているような電気穿孔エネルギー送達のためのパルス状波形は不可逆性の電気穿孔に関連する電場閾値を小さくすることによってエネルギー送達の安全性、効率及び有効性を高めることができ、送達される総エネルギーを減らしてさらに効果的なアブレーション損傷を得ることができる。これは結果として種々の心不整脈の治療的処置を含む電気穿孔の臨床応用の領域を広げることができる。
【0027】
本開示は、不可逆性の電気穿孔療法の迅速で選択性で且つ安全な送達のための装置及び方法に対するニーズに、一般に複数の装置で対処するので、一部の実施形態では、組織アブレーションが所望される領域にて同時に十分に大きな電場の大きさが維持され得る一方で、ピーク電場の値を低下させる及び/または出来るだけ抑えることができる。これはまた過剰な組織の損傷またはアーク放電の生成、及び局所的に高い温度上昇の可能性を低減する。
【0028】
図1はそのシャフトに沿って配置される複数の電極を伴ったカテーテル15の模式図である。カテーテルは図1では心臓7に関連して示され、カテーテル15は、参照文字10、11、12及び13(それぞれ図1における左上、左下、右上及び右下)によって示される左心房の肺静脈を囲んで心外膜に巻き付けられ、左心房の肺静脈10、11、12、13のそばで曲線に巻き付けられ及び/またはループになっている黒いバンド(たとえば、図1にて参照文字17によって示されるもの)によって示される電極を有する。一部の実施形態では、カテーテルの末端8及び9は、カテーテルの電極が肺静脈10、11、12、13を囲んでぴったり巻き付けられるのを確実にするためにきつく一緒に引かれ、シンチツール(図示せず)の中で保持される。剣状突起下心膜のアクセス位置及びガイドワイヤに基づく送達方法を用いて肺静脈を囲む多重電極アブレーションカテーテルの配置を達成する方法及び装置は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる「Catheters, Catheter Systems and Methods for Puncturing Through a Tissue Structure and Ablating a Tissue Region」と題するPCT特許出願公開番号WO2014/025394にて記載された。
【0029】
一部の実施形態では、カテーテルの電極17は金属のバンドまたは環の形態で構築することができる。一部の実施形態では、各電極17は可撓性であるように構築することができる。たとえば、電極17はカテーテル15のシャフトの周りで金属のコイル状のバネまたはらせん状の巻き線の形態であることができる。別の例として、電極(複数可)17は、シャフトに沿って配置され、電極全体に可撓性を提供する電極間のカテーテルシャフトの柔軟な部分に電気的に一緒に接続される一連の金属のバンドまたは環の形態であることができる。一部の実施形態では、電極17の少なくとも一部は、たとえば、チタン、パラジウム、銀、白金及び/または白金合金のような、しかし、これらに限定されない生体適合性の金属を含むことができる。一部の実施形態では、電極17の少なくとも一部は白金及び/または白金合金を含むことができる。一部の実施形態では、カテーテルのシャフトは、たとえば(非限定例のみの目的で)、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロンのようなポリアミド、またはポリエーテルブロックアミドのような可撓性のポリマー材料で作ることができる。電極17はカテーテル15の近位取手部分(図示せず)に導く絶縁された電気導線(図示せず)に接続することができ、導線のそれぞれでの絶縁は誘電破壊を起こさずにその厚さを横切る少なくとも700Vの電位差を持続することができる。カテーテル15は図1で示されるように心外膜に置かれる、すなわち、心膜の下に置かれる一方で、代わりの実施形態では、アブレーションカテーテルはさらにまたは代わりに心内膜配置に有用であることができる。
【0030】
図2は四角形の二重パルスの連続の形態でのパルス状の電圧波形を説明するが、パルス101のような各パルスはパルス幅または持続時間に関連付けられる。パルス幅/持続時間は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで、約0.5マイクロ秒、約1マイクロ秒、約5マイクロ秒、約10マイクロ秒、約25マイクロ秒、約50マイクロ秒、約100マイクロ秒、約125マイクロ秒、約140マイクロ秒、約150マイクロ秒であることができる。図2のパルス状波形はパルスすべての極性が同一である一連の単相パルスを説明している(ゼロのベースラインから測定して図2ではすべて正)。一部の実施形態では、たとえば、不可逆性の電気穿孔の応用について、各パルス101の高さまたはパルス101の電圧振幅は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで、約400ボルト、約1000ボルト、約5000ボルト、約10,000ボルト、約15,000ボルトであることができる。図2で説明するように、パルス101は、第1の時間間隔とも呼ばれることがある時間間隔102によって近隣のパルスから分離される。第1の時間間隔は、不可逆性の電気穿孔を生成するために、すべての値及びその間の部分範囲を含んで、約10マイクロ秒、約50マイクロ秒、約100マイクロ秒、約200マイクロ秒、約500マイクロ秒、約800マイクロ秒、約1ミリ秒であることができる。
【0031】
図3はネスト化パルスの階層の構造を持つパルス波形を紹介する。図3は、連続するパルス間の持続時間tの118のような時間間隔(第1の時間間隔と呼ぶこともある)によって分離される、パルス幅/パルスの持続時間wを伴うパルス115のような一連の単相パルスを示し、その数mはパルスの群121(パルスの第1のセットと呼ぶこともある)を形成するように配置される。さらに、波形は、連続する群の間での持続時間tの時間間隔119(第2の時間間隔とも呼ばれることもある)によって分離されるパルスのそのような群(パルスの第2のセットと呼ぶこともある)の数mを有する。図3にて122によって印が付けられたm当該パルス群の収集は階層の次のレベルを構成し、それはパルスのパケット及び/または第3のセットと呼ばれ得る。パルス幅及びパルス間の時間間隔tは双方ともすべての値及びその間の部分範囲を含んで、マイクロ秒から数百マイクロ秒の範囲内であり得る。一部の実施形態では、時間間隔tは時間間隔tよりも少なくとも3倍大きくてもよい。一部の実施形態では、比t/tはすべての値及びその間の部分範囲を含んで、約3~約300の間の範囲内であることができる。
【0032】
図4は、ネスト化パルスの階層の波形の構造をさらに詳しく述べる。この図では、一連のmパルス(個々のパルスは示さない)がパルスの群130(たとえば、パルスの第1のセット)を形成する。1つの群と次の群との間での持続時間tの群間時間間隔142(たとえば、第2の時間間隔)によって分離される一連のm当該群がパケット132(たとえば、パルスの第2のセット)を形成する。1つのパケットと次のパケットとの間での持続時間tの時間間隔(たとえば、第3の時間間隔)142によって分離される一連のm当該群が階層における次のレベル、図では134で標識される超パケット(たとえば、パルスの第3のセット)を形成する。一部の実施形態では、時間間隔tは時間間隔tよりも少なくとも30倍大きくてもよい。一部の実施形態では、時間間隔tは時間間隔tよりも少なくとも50倍大きくてもよい。一部の実施形態では、比t/tはすべての値及びその間の部分範囲を含んで、約30~約800の間の範囲にあることができる。パルスの階層における個々の電圧パルスの大きさはすべての値及びその間の部分範囲を含んで、500ボルトから7,000ボルト以上の範囲のどこかであることができる。
【0033】
図5は階層構造を持つ二相波形の連続の例を提供する。図に示す例では、151のような二相パルスは負の電圧部分と同様に正の電圧部分を有してパルスの1サイクルを完成する。持続時間tの隣接するサイクル間で時間遅延152(たとえば、第1の時間間隔)があり、n当該サイクルはパルスの群153(たとえば、パルスの第1のセット)を形成する。1つの群と次の群の間での持続時間tの群間の時間間隔156(たとえば、第2の時間間隔)によって分離される一連のn当該群がパケット158(パルスの第2のセット)を形成する。図はまた、パケット間の持続時間tの時間遅延160(たとえば、第3の時間間隔)を伴う第2のパケット162も示す。単相パルスについてと全く同じように、さらに高いレベルの階層構造を同様に形成することができる。二相パルスの各パルスの大きさまたは電圧振幅は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで、500ボルトから7,000ボルト以上の範囲のどこかであることができる。パルス幅/パルスの持続時間はナノ秒またはナノ秒以下から数十マイクロ秒の範囲にあることができる一方で、遅延tはゼロから数マイクロ秒の範囲にあることができる。群間の時間間隔tはパルス幅よりも少なくとも10倍大きくてもよい。一部の実施形態では、時間間隔tは時間間隔tよりも少なくとも約20倍大きくてもよい。一部の実施形態では、時間間隔tは時間間隔tよりも少なくとも50倍大きくてもよい。
【0034】
本明細書で開示されている実施形態は、種々のレベルの階層で波形の要素/パルスを含む階層的な波形として構造化される波形を含む。図3における115のような個々のパルスは第1のレベルの階層を構成し、関連するパルスの持続時間及び連続するパルス間の第1の時間間隔を有する。パルスのセットまたは第1のレベルの構造の要素はパルスの群/図3におけるパルス121の第2のセットのような第2のレベルの階層を形成する。他のパラメータの間では、波形に関連するのは、パルスの第2のセットの総持続時間(図示せず)、第1のレベルの要素/第1のパルスのセットの総数、及び第2のレベルの構造/第2のパルスのセットを記載する連続する第1のレベルの要素間での第2の時間間隔である。一部の実施形態では、第2のパルスのセットの総持続時間は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで約20マイクロ秒~約10ミリ秒の間であることができる。群のセット、第2のパルスのセット、または第2のレベルの構造の要素は、たとえば、群のパケット/図3におけるパルス122の第3のセットのような第3のレベルの階層を形成する。他のパラメータの間では、第3のパルスのセットの総時間の持続(図示せず)、第2のレベルの要素/第2のパルスのセットの総数、及び第3のレベルの構造/第3のパルスのセットを記載する連続する第2のレベルの要素間での第3の時間間隔がある。一部の実施形態では、第3のパルスのセットの総持続時間は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで約60マイクロ秒~約200ミリ秒の間であることができる。一般に、波形の反復構造またはネスト化構造はさらに高度の複数レベル、たとえば、10レベル以上の構造まで連続することができる。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているようなネスト化構造と時間間隔の階層を持つ階層的な波形は、不可逆性の電気穿孔のアブレーションエネルギーの送達に有用であり、異なる組織型における適用について良好な程度の制御及び選択性を提供する。種々の階層的な波形は好適なパルス発生器によって生成することができる。本明細書の実施例が明瞭さのために別々の単相及び二相の波形を特定する一方で、波形階層の一部の部分が単相であるが、他の部分が二相である組み合わせ波形も生成され/実施され得ることが言及されるべきであることが理解される。
【0036】
心臓アブレーションの治療を指向する実施形態では、上述のパルス波形は、アブレーションカテーテルのようなカテーテル上の電極のセットから選択される電極バイポールによって適用され得る。カテーテルの電極のサブセットを陽極として選択することができる一方で、アブレーションカテーテルの電極の別のサブセットを陰極として選択することができ、電極波形は陽極と陰極の間に適用される。非限定例として、アブレーションカテーテルが心外膜に置かれるアブレーションカテーテルである例では、肺静脈を囲んでカテーテルが巻き付けられてもよく、一方の電極を陽極として選択し、別の電極を陰極として選択することができる。図6は実例の環状カテーテルの構成を説明し、その際、ほぼ直径方向に対向する電極ペア(たとえば、電極603と609、電極604と610、電極605と611及び電極606と612)は陽極‐陰極のセットとして作動させることができる。開示されているパルス波形のいずれかを一連のそのような電極セットに対して徐々にまたは連続的に適用することができる。非限定例として、図6は一連の電極サブセットの活性化を描いている。第1の工程として、電極603及び609がそれぞれ陽極及び陰極として選択され、本明細書に記載されている階層的な構造を持つ電圧波形がこれらの電極の間に適用される。小さな時間遅延(たとえば、約5ミリ秒未満)を伴って、次の工程として電極604及び610がそれぞれ陽極及び陰極として選択され、再びこの電極のセットの間に波形が適用される。小さな時間遅延の後、次の工程として、電圧波形の次の適用のために電極605及び611がそれぞれ陽極及び陰極として選択される。次の工程では、小さな時間遅延ののち、電圧波形の適用のために電極606及び612がそれぞれ陽極及び陰極として選択される。一部の実施形態では、電極ペアの間に適用される波形の1つ以上は、本明細書でさらに詳細に記載されているように心臓周期の不応期間に適用される。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているアブレーションのパルス波形は、心臓の洞律動の崩壊を回避するように心臓周期の不応期間に適用される。一部の実施形態では、治療の方法には、心臓刺激装置によって心臓を電気的にペーシングし、ペーシング捕捉を確実にして心臓周期の周期性及び予測可能性を確立することと、次いで、1つ以上のパルス状のアブレーション波形が送達される心臓周期の不応期間中に時間ウインドウを定義することとが含まれる。図7は、心房及び心室双方のペーシングが適用される例(たとえば、それぞれ右心房及び右心室に位置するペーシング導線またはカテーテルによる)を説明している。横軸で表される時間と共に、図7はペーシング信号によって動かされる一連のECG波形60及び61と共に、64及び65のような一連の心室ペーシング信号ならびに62及び63のような一連の心房ペーシング信号を説明している。太い矢印によって図7にて示すように、それぞれ心房ペーシング信号62及び心室ペーシング信号64に続く心房不応時間ウインドウ68及び心室不応時間ウインドウ69がある。図7で示すように、心房及び心室双方の不応時間ウインドウ68、69の範囲内にある持続時間Tの共通する不応時間ウインドウ66を定義することができる。一部の実施形態では、電気穿孔のアブレーション波形(複数可)はこの共通する不応時間ウインドウ66に適用することができる。この不応時間ウインドウ68の開始は図7で示すような時間オフセット59によってペーシング信号64から補正される。時間オフセット59は一部の実施形態では約25ミリ秒より少なくてもよい。次の心拍で、同様に定義された不応時間ウインドウ67がアブレーション波形(複数可)の適用に利用できる次の時間ウインドウである。このようにして、共通する不応時間ウインドウの中にある各心拍で、一連の心拍に対してアブレーション波形(複数可)を適用してもよい。一実施形態では、パルス波形の階層にて上記で定義されたようなパルスの各パケットを心拍に対して適用することができるので、一連のパケットは所与の電極セットについて一連の心拍に適用される。
【0038】
一連の電極セットに対する電極活性化のタイミングの順序を、実施形態に従って図8にて説明する。電極セットj(各電極セットは一般に少なくとも1つの陽極と少なくとも1つの陰極を含む)に階層的なアブレーション波形を適用することが所望される実例のシナリオを用いて、一部の実施形態では、前述にて記載されているように心臓ペーシングを利用し、パルスのパケット(たとえば、1つ以上のパルス群または1つ以上のパルスのセットを含む)を先ず電極セット1に適用し、ほんの小さな時間遅延t(約100μs以下の桁で)を伴い、これには電極セット2に適用されるパルスのパケットが続く。その後、別の時間遅延を伴って、パルスのパケットが電極セット3等の電極セットjに適用される。電極セットjすべてにパルスのパケットを適用するこの系列632は、単一の心拍の不応時間ウインドウ(たとえば、共通の不応時間ウインドウ66または67)の間に送達され、電極セットへの各適用はその電極セットについてパケット1つを構成する。単相の階層波形の症例を検討してみる。図3で示す単相波形の例を参照すると、波形は、連続するパルス間の持続時間tの時間間隔によって分離される、それぞれパルス幅wを持つ一連の単相パルスを有し、その数mはパルスの群を形成するように配置される。さらに、波形は連続する群間での持続時間tの時間間隔によって分離される数mの当該群のパルスを有し、それによってパケットを定義する。この波形が本明細書に記載されているような電極セットjに対して順に適用されるならば、以下の不等式を書くことができる。
j[m(mw+t(m-1)+t(m-1)]+t(j-1)<T
(1)
この不等式は、パルス波形のパラメータm及びmが、アブレーションパルスの送達全体が不応時間ウインドウTの範囲内にあるように、所与の数の電極セットjについて満たさなければならない。一部の実施形態では、不応時間ウインドウTは約140ミリ秒以下であることができる。ペーシング信号に関して不応ウインドウの開始の時間オフセットは約10ミリ秒未満であることができる。時間間隔w、t、t及びtが任意であることができる一方で、(たとえば、)コンピュータプロッセッサのような有限状態の機械で実施される場合、それらは何らかの好適な単位(たとえば、マイクロ秒、ナノ秒、または複数の基礎プロセッサ時計の時間)で測定されるような整数である。電極セットjの数が与えられると、電極セットjについての波形適用の総持続時間が所与の共通する不応期よりも少ないように、方程式(1)はパルス波形のパラメータ(パルス幅、時間間隔及びパルス及び群の数)を相互に制約するディオファントス不等式を表す。一部の実施形態では、ディオファントス不等式の解のセットはパルス波形のパラメータにおける部分的な制約に基づいて見いだすことができる。たとえば、発生器は、パルス波形パラメータ及び/または関連するパラメータの一部、たとえば、パルス幅w及び時間遅延tの入力を必要とすることができ、その後、システムコンソールはパルス波形パラメータの残りを決定する。この場合、電極セットjの数も解の決定を制約するシステムへの入力である。一実施形態では、システムコンソールは、選択を行うユーザーのために1つを超えるそのような波形パラメータの考えられる解のセットを示し得る一方で、代わりの実施形態では、システムは波形パラメータを自動で選択するまたは決定する。一部の実施形態では、所定の形態にて、たとえば、パルス発生器のシステムコンソールにて解を算出することができ、かつ直接満たすことができる。たとえば、パルス波形パラメータのすべては、方程式(1)に類似するディオファントス不等式を満たすように予め決定され、波形はシステムで予めプログラムされる。たぶん、予め決定された解(複数可)は電極セットjの数に依存することができ、または代わりに解(複数可)は電極セットの最大数を仮定して予め決定することができる。一部の実施形態では、1つを超える解が予め決定され、システムコンソールにおけるユーザー選択に利用可能にされ得る。
【0039】
ディオファントス不等式(1)が単一の不応時間ウインドウについて単一の波形パケットの送達を保留する一方で、完全な波形には複数のパケットが関与することがあり得る。パケットの数は予め決定することができ、一実施形態では、すべての値及びその間の部分範囲を含んで1~28パケットの範囲であることができる。適当な不応時間ウインドウTは予め決定することができ、及び/または一実施形態では、予め定義することができ、または代わりの実施形態では、それは特定の所定の範囲内からユーザーによって選択され得る。不等式(1)が単相階層の波形について明白に記述された一方で、類似の不等式が二相波形について、または単相要素と二相要素を組み合わせる波形について記述されてもよい。
【0040】
最上位の波形階層にて一連のパケットによる複数の電極セットjへのアブレーション波形の送達の模式図を図8にて提供する。第1の波形パケット632は電極の連続全体について連続して一連の電極セットjに送達され、この順序の波形パラメータは方程式(1)のようなディオファントス不等式を満たす。この電圧波形の順序全体が単一のペーシングされた心拍の定義された不応時間ウインドウ内に送達される。1つのペーシング期間に等しいパケット遅延tの後、次の波形パケット633が同じ波形パラメータを持つ電極の順序全体について連続して電極セットjに送達される。波形の送達は、最後の波形パケット636が連続して電極セットjに送達されるまで、所定の数のパケットについて継続される。従って、アブレーション送達はパケットの数だけ多くのペーシングした心拍について生じる。波形についての電圧振幅は、すべての値及びその間の部分範囲を含んで、臨床応用について好適であり且つ好都合なように、およそ700V~およそ10,000Vの間、さらに好ましくはおよそ1,000V~およそ8,000Vの間の範囲であることができる。
【0041】
一部の実施形態では、電極セットの完全な順序を電極セット/電極サブセットのさらに小さな部分的順序にさらに分割することができる。たとえば、電極セットjの完全な順序を、第1の部分的な順序/第1のサブセットにおける電極セットj、第2の部分的な順序/第2のサブセットにおける電極セットj、等、N番目の部分的な順序における電極セットjによってN個の部分的な順序にさらに分割することができる。波形パケットは、先ず電極セットjの第1の部分的な順序、次いで電極セットjの第2の部分的な順序、等に適用され、全体にわたって心臓ペーシングが採用され、波形パケットはすべて適当な不応時間ウインドウ内に適用される。
【0042】
図9はパルス状の電圧波形の送達のために構成されるアブレーションシステム200についてのシステム構造の模式図である。システム200には、順にパルス状波形の発生器及びコントローラ202と、ユーザーインターフェース203と、発生器によって送達される電圧パルスから接続ボックス210(それには複数のカテーテルが接続されてもよい)を分離するための切替器205とを含むシステムコンソール215が含まれる。一部の実施形態では、発生器/コントローラ202はプロセッサを含むことができ、それは一連の指示書またはコードを実行する及び/または遂行するように構成される任意の好適なプロセッシング装置であることができる。プロセッサは、たとえば、一般目的のプロセッサ、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及び/または同種のものであることができる。プロセッサは、アプリケーションプロセス及び/または他のモジュール、システム及び/またはそれに関連するネットワーク(図示せず)に関連するプロセス及び/または機能を実行する及び/または遂行するように構成することができる。
【0043】
一部の実施形態では、システム200はまた、たとえば、ペーシングデータ、波形情報及び/または同種のものを保存するために構成されるメモリ及び/またはデータベース(図示せず)も含むことができる。メモリ及び/またはデータベースは独立して、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファー、ハードディスク、データベース、消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、及び/または同種のものであることができる。メモリ及び/またはデータベースは、発生器/コントローラ202に、たとえば、パルス状波形の生成及び/または心臓ペーシングのようなシステム200に関連するモジュール、プロセス及び/または機能を遂行させる命令を保存することができる。
【0044】
システム200は、たとえば、そのそれぞれが、たとえば、有線ネットワーク及び/または無線ネットワークとして実施されるローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、視覚ネットワーク、電気通信網、及び/またはインターネットのような任意の型のネットワークであることができる1つ以上のネットワークを介して他の機器(図示せず)と通信することができる。通信のいずれかまたはすべては、当該技術で既知のように保護することができ(たとえば、暗号化することができ)、または未保護であることができる。システム200は、パーソナルコンピューター、サーバー、ワークステーション、タブレット、モバイルデバイス、クラウドコンピューティング環境、これらのプラットフォーム上で実行するアプリケーションまたはモジュール、及び/または同種のものを含む及び/または包含することができる。
【0045】
システムコンソール215は、たとえば、患者の心臓の心臓周囲の空間における患者の肺静脈を囲むループのような患者の生体構造にて好適に位置するアブレーションカテーテル209にアブレーションパルスを送達する。心臓内ECG記録及びペーシングカテーテル212は接続ボックス210を介してECG記録システム208に繋がれる。ECG記録システム208は心臓刺激装置またはペーシングユニット207に接続される。心臓刺激装置207はペーシング出力を記録及びペーシングカテーテル212に送ることができる。一般に、心房及び心室双方のペーシング信号は心臓刺激装置207からの出力として生成することができ、一部の実施形態では、別々の心臓内の心房及び心室ペーシングカテーテル(図示せず)または導線が存在することができ、そのそれぞれが次いで適当な心室に配置され得る及び/または位置し得る。同一のペーシング出力シグナルもアブレーションシステムコンソール215に送られる。ペーシング信号はアブレーションシステムコンソールによって受け取られ、ペーシング信号に基づいて、本明細書に記載されているような共通の不応ウインドウの範囲内で発生器/コントローラ202によってアブレーション波形を生成することができる。一部の実施形態では、共通の不応ウインドウは心室ペーシング信号の実質的に直後に(または非常に小さな遅延の後に)開始することができ、その後およそ130ms以下の持続時間で続くことができる。この場合、アブレーション波形のパケット全体が、前に説明したようにこの持続時間内に送達される。
【0046】
アブレーションシステムコンソール215に関連付けたユーザーインターフェース203は、適用に好都合なように種々の形態で実施することができる。心外膜アブレーションカテーテルが剣状突起下のアプローチを介して送達され、図1で示すように肺静脈のそばで心外膜に置かれる場合、それはシンチツールを介して末端を通すことによって末端8及び9にて所定の位置に締められてもよい。具体的な左心房生体構造のサイズに応じて、電極のサブセットは肺静脈のそばで取り囲むように配置されてもよい一方で、電極の残りはシンチツールの中に引き込まれてもよい(図1で図示せず)ので、露出されない。そのような実施形態では、取り囲んでいる/露出された電極がアブレーションエネルギーを送達するのに選択的に使用され得る。アブレーションカテーテルと共に使用するのに好適なユーザーインターフェースの実施形態は図10にて模式的に描かれている。図10では、ユーザーが電極の各数についてそれぞれ選択650及び651を行う、ウインドウ653及び654それぞれで示されるように、ユーザーはシンチツールの中で近傍の電極の数及びシンチツールの中で遠位の電極の数を選択する。シンチツールの中にないカテーテル上の電極の相補う電極/サブセット(カテーテル電極の完全なセットから得られる)は、電気穿孔のアブレーションのためのパルス状の電場の送達で使用される露出された電極である。送達される波形の大きさは、たとえば、図10における657によって示される所定の電圧範囲にわたって移動することができるスライダー658のような入力メカニズムによって制御される。電圧振幅がいったん選択されると、ユーザーインターフェースで提供される初期化(または初期化する)ボタン655を関与させてエネルギー送達のためにアブレーションシステムを準備する。一例では、これは、カテーテルへのその後の送達のためのエネルギーを保存するためにコンデンサバンクを充電するトリガーの形態を取ることができる。
【0047】
図11に示すように、初期化するボタン660はまた初期化過程が進行中であることを示す状態表示器としても作用することができる。状態はテキスト(図11で示すような「初期化する・・・」、及び/または初期化がまだ開始されていないまたは未だに進行中であることを示すための黄色のような色)によって示すことができる。いったん初期化が完了する(たとえば、コンデンサバンクが完全にまたは十分に充電される)と、図12に示すように、同じボタン663が今や過程の完了を示し(「初期化された」)、説明されているような一部の実施形態では、それは色(たとえば、黄色から緑色への変化)及び/または形状を変えて初期化の完了をさらに示すことができる。一方、アブレーションシステムは心臓刺激装置またはペーシングユニットからのペーシング信号の受け取りを待つ。初期化過程の完了と一緒にいったんペーシング信号が検出され、及び/または確認されると、ペーシング捕捉の確認にユーザーが関与するために第2のボタン665が利用できるようになる。アブレーションシステムコンソールによってペーシング信号が検出されなければ、そのときは第2のボタン665は有効にされない。ペーシング捕捉を確認するためにユーザーはECGのディスプレイ(図示せず)をモニターし、心臓内ECG記録と併せて心臓刺激装置ペーシング出力を見ることができる(これは、予測できる共通の不応ウインドウを定めるために、心房及び心室の収縮がペーシング信号によって実際に駆動されることを確認する)。ユーザーがいったんECGデータからペーシング捕捉を視覚的に確認すると、ユーザーはその後、「ペーシング捕捉を確認する」ボタン665を使用してアブレーションシステムにてペーシング捕捉を確認することができる。
【0048】
図13に示すように、いったんアブレーションシステムにてペーシング捕捉が確認されると、システムはアブレーションまたはパルス状の電場の送達に利用できるようになる。ペーシング捕捉確認ボタンは、状況670(状況は色、形状、及び/またはその他で変化することができる)を変え、670によって示されるようにアブレーション送達の準備完了を示す。さらに、ユーザーは、アブレーション送達ボタン675を利用できるようになる。ユーザーはアブレーション送達ボタン675を利用し、ペーシングした心拍リズムと同期してアブレーションを送達することができる。一部の実施形態では、ユーザーはアブレーション送達の持続時間についてボタン675を利用し、その終了時ボタンは形状または色を変えてアブレーション送達の完了を示す。一部の実施形態では、アブレーション送達が完了する前にユーザーがボタン675から離れると、アブレーション送達は、たとえば、20ms以下のごく小さなタイムラグで直ちに停止する。一部の実施形態では、それが利用可能として表示された後、ユーザーがアブレーションボタン675を利用しなければ、安全性メカニズムとしてそれが無効にされる前に限定された持続時間の間でのみ利用可能なままである。一部の実施形態では、アブレーションボタン675はユーザーインターフェースのディスプレイ上でのソフトウェアまたは図形ボタンであることができる一方で、別の実施形態では、それはその応答がシステムによって決定される活性化または利用可能の状態に依存する機械的なボタンであってもよく、別の実施形態では、ボタン675は限定せずに、たとえば、レバー、ジョイスティック、コンピュータマウス等のような種々の制御入力機器のいずれかの形態であることができる。一実施形態では、アブレーションシステムは、たとえば、システムの動作を即座に停止させることが所望される場合、追加の安全性のために別の緊急停止ボタンを有することができる。一実施形態では、アブレーションコンソールは回転台車または車輪付きカートに載せることができ、ユーザーは無菌領域にあるタッチパネルのインターフェースを用いてシステムを制御することができる。タッチパネルは、たとえば、標準の医療レールまたはポストに搭載可能なプラスチックの筐体におけるLCDタッチパネルであることができ、タッチパネルは最低限、前述されている機能性を有することができる。インターフェースは、たとえば、透明で無菌のプラスチックの掛け布で覆うことができる。
【0049】
本明細書で詳述されているような波形パラメータはシグナル発生器の設計によって決定することができ、一部の実施形態では、パラメータは予め決定することができる。一部の実施形態では、波形パラメータの少なくともサブセットは、所与の臨床応用にとって好都合であってもよい場合、ユーザーの制御によって決定されてもよい。本明細書の具体例及び記載は事実上例示であり、本明細書で開示されている実施形態の範囲から逸脱することなく本明細書で教示された材料に基づいて当業者は変形を創り出すことができる。
【0050】
本明細書に記載されている1つ以上の実施形態は、種々のコンピュータが実施する操作を行うための命令またはコンピュータコードをそれに有する非一時的なコンピュータ可読媒体(非一時的なプロセッサ可読媒体とも呼ばれ得る)によるコンピュータ保存製品に関する。コンピュータ可読媒体(またはプロセッサ可読媒体)は、それが一時的な伝達シグナル自体(たとえば、空間またはケーブルのような伝達媒体にて情報を運ぶ伝達電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体及びコンピュータのコード(コードまたはアルゴリズムとも呼ばれ得る)は具体的な目的(複数可)のために設計され、構築されるものであってもよい。非一時的なコンピュータ可読媒体の例には、たとえば、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープのような磁気保存媒体;たとえば、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)及びホログラフィックデバイスのような光学的保存媒体;たとえば、光ディスクのような磁気光保存媒体;搬送波信号処理モジュール;ならびに特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム可能な論理デバイス(PLD)、読み取り専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)デバイスのようなプログラムコードを保存し、実行するように特別に構成されるハードウェアデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されている他の実施形態は、たとえば、本明細書で開示されている命令及び/またはコンピュータコードを含むことができるコンピュータプログラム製品に関する。
【0051】
本明細書に記載されている1つ以上の実施形態及び/または方法はソフトウェア(ハードウェア上で実行される)、ハードウェアまたはそれらの組み合わせによって実施することができる。ハードウェアモジュールには、たとえば、一般目的のプロッセッサ(またはマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ)、フィールドプログラム可能なゲートアレイ(FPGA)及び/または特定用途向け集積回路(ASIC)が挙げられてもよい。ソフトウェアモジュール(ハードウェア上で実行される)は、C、C++、Java(登録商標)、Ruby、Visual Basic(登録商標)、及び/または他のオブジェクト指向型の、手続き型の、または他のプログラミング言語及び開発ツールを含む種々のソフトウェア言語(たとえば、コンピュータコード)で表現することができる。コンピュータコードの例には、コンパイラによって作製されるようなマイクロコードまたはマイクロ命令、機械語命令、ウェブサービスを作製するのに使用されるコード、及び解釈プログラムを用いてコンピュータによって実行される高レベルの命令を含有するファイルが挙げられるが、これらに限定されない。コンピュータコードの追加の例には制御シグナル、暗号化コード及び圧縮コードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
種々の実施形態を上記で記載してきたが、それらは例示の目的で提示されているのであって、限定ではないことが理解されるべきである。上記に記載されている方法が特定の順序で生じる特定の事象を示す場合、特定の事象の順序付けは改変することができる。さらに、特定の事象は、可能であれば、並行するプロセスで同時に実施されてもよいと共に上述のように順に実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆性の電気穿孔による心臓組織のアブレーションのためのシステムであって、
パルス波形発生器と、
前記パルス波形発生器に繋がれたアブレーション装置であって、前記アブレーション装置は使用するとき、組織にアブレーションパルスを送達するために構成される少なくとも1つの電極を含む、前記アブレーション装置と、を含み、
前記パルス波形発生器はパルス状波形の形態で電圧パルスを前記アブレーション装置に送達するように構成され、
(a)前記パルス状波形の第1のレベルの階層は第1のパルスのセットを含み、各パルスはパルスの持続時間を有し、第1の時間間隔は連続するパルスを分離し;
(b)前記パルス状波形の第2のレベルの階層は第2のパルスのセットとして複数の第1のパルスのセットを含み、第2の時間間隔は連続する第1のパルスのセットを分離し、前記第2の時間間隔は前記第1の時間間隔の前記持続時間よりも長く
(c)前記パルス状波形の第3のレベルの階層は第3のパルスのセットとして複数の第2のパルスのセットを含み、第3の時間間隔は連続する第2のパルスのセットを分離し、前記第3の時間間隔は前記第2のレベルの時間間隔の前記持続時間よりも長く
前記パルス波形発生器が、連続する第3のパルスのセット間で多くても約5ミリ秒の時間遅延を伴って複数の前記第3のパルスのセットを前記アブレーション装置に適用するように構成される、前記システム。
【請求項2】
前記アブレーション装置が心外膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アブレーションカテーテルが少なくとも4つの電極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
各第2のパルスのセットが少なくとも2の第1のパルスのセット及び40未満の第1のパルスのセットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
各第3のパルスのセットが少なくとも2の第2のパルスのセット及び30未満の第2のパルスのセットを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
各第1のパルスのセットの前記パルスが少なくとも800ボルトの電圧振幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーション装置が心内膜配置用に構成されるアブレーションカテーテルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス波形発生器に繋がれる心臓刺激装置であって、前記心臓刺激装置は使用するとき、患者の心臓刺激のためのペーシング信号を生成するために構成される、前記心臓刺激装置をさらに含み、
前記パルス波形発生器はさらに、前記ペーシング信号と同期してパルス状の電圧波形を送達するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記パルス波形発生器は、患者の心臓による前記ペーシング信号の捕捉のユーザー確認の指示を受け取るために構成されるユーザーインターフェースを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記パルス波形発生器は、ユーザー確認の前記指示の受け取りの際、前記パルス状の電圧波形を送達するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記パルス波形発生器がさらに、時間オフセットによって前記ペーシング信号から間隔を置いて前記パルス状波形を送達するように構成され、前記時間オフセットが約25ミリ秒より少ない、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第3の時間間隔が前記ペーシング信号に関連するペーシング期間に相当する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
各第1のパルスのセットの前記パルスが少なくとも800ボルトの電圧振幅を持つ単相パルスを含み、各単相パルスの前記パルスの持続時間が約1マイクロ秒~約300マイクロ秒の範囲にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
各第1のパルスのセットの前記パルスがそれぞれ少なくとも800ボルトの電圧振幅を持つ二相パルスを含み、各二相パルスの前記パルスの持続時間が約0.5ナノ秒~約20マイクロ秒の範囲にある、請求項13に記載のシステム。