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特開2023-5335電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005335
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20230111BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230111BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230111BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20230111BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20230111BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G03G15/02 101
F16C13/00 B
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/02
C08L71/03
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107167
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
(72)【発明者】
【氏名】宮川 新平
【テーマコード(参考)】
2H200
3J103
4J002
【Fターム(参考)】
2H200FA16
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200HB45
2H200HB46
2H200HB47
2H200MA03
2H200MA14
2H200MB05
2H200MC20
3J103AA02
3J103AA14
3J103AA23
3J103AA24
3J103AA71
3J103AA85
3J103BA41
3J103EA02
3J103EA11
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA58
3J103GA60
3J103HA03
3J103HA05
3J103HA12
3J103HA32
3J103HA33
3J103HA37
3J103HA43
3J103HA46
3J103HA47
3J103HA48
3J103HA52
3J103HA53
4J002AC01W
4J002AC06W
4J002AC07X
4J002CH04X
4J002DA036
4J002DA037
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD116
4J002FD117
4J002GQ02
(57)【要約】
【課題】局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法を提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備え、弾性体層14は、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相14aと、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相14bと、で構成され、第2相14bは、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを含有している、電子写真機器用帯電ロール10とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、
前記弾性体層は、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相と、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相と、で構成され、
前記第2相は、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを含有している、電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記弾性体層において、前記第1相は海相を構成しており、前記第2相は島相を構成している、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記第2相における前記カーボンブラックAと前記カーボンブラックBの含有比率が、質量比で、A/B=3.0以上10.0以下である、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記カーボンブラックAの比表面積が25m/g以上75m/g以下であり、前記カーボンブラックBの比表面積が140m/g以上180m/g以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記カーボンブラックAの平均粒径が35nm以上75nm以下であり、前記カーボンブラックBの平均粒径が20nm以上30nm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記弾性体層に含まれるポリマー成分100質量部に対し、前記カーボンブラックAの含有量は5質量部以上75質量部以下であり、前記カーボンブラックBの含有量は1.5質量部以上20質量部以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項7】
前記第1相には非極性ポリマーが含まれており、前記第2相には極性ポリマーが含まれている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項8】
前記非極性ポリマーはイソプレンゴムまたは天然ゴムであり、前記極性ポリマーはニトリルゴムまたはヒドリンゴムである、請求項7に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項9】
前記弾性体層の任意の5μm×5μmの範囲内における、前記第1相と前記第2相の存在比が、面積比で、第1相/第2相=0.3以上20以下である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項10】
前記第2相と前記表層との間には、前記第1相が介在している、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、
前記第2相を構成するポリマー成分に対し、前記カーボンブラックAと前記カーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを混錬した後、前記第1相を構成するポリマー成分を混錬する、電子写真機器用帯電ロールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器の帯電ロールにおいては、帯電能力の向上を目的に、カーボンブラックやイオン導電剤などの導電剤を多量に添加する手法や、基層のゴムをブレンドする手法などがとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-166259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯電ロールにおいて、カーボンブラックやイオン導電剤などの導電剤を多量に添加することで、帯電ロールが内部に持つ電荷量が増え、見かけ上の放電量・帯電量は上がる。しかしながら、帯電ロール内部の局所的な抵抗ムラ部分への電荷の流れが大きくなるため、放電過多となり、画像に黒点が発生する。また、帯電ロール内部の局所的な抵抗ムラ部分への電荷の流れが大きくなることで、放電ムラや帯電ムラが発生し、画像に横スジやムラが発生する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる電子写真機器用帯電ロールおよび電子写真機器用帯電ロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記弾性体層は、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相と、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相と、で構成され、前記第2相は、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを含有している。
【0007】
前記弾性体層において、前記第1相は海相を構成しており、前記第2相は島相を構成しているとよい。前記第2相における前記カーボンブラックAと前記カーボンブラックBの含有比率は、質量比で、A/B=3.0以上10.0以下であるとよい。前記カーボンブラックAの比表面積は25m/g以上75m/g以下であり、前記カーボンブラックBの比表面積は140m/g以上180m/g以下であるとよい。前記カーボンブラックAの平均粒径は35nm以上75nm以下であり、前記カーボンブラックBの平均粒径は20nm以上30nm以下であるとよい。前記弾性体層に含まれるポリマー成分100質量部に対し、前記カーボンブラックAの含有量は5質量部以上75質量部以下であり、前記カーボンブラックBの含有量は1.5質量部以上20質量部以下であるとよい。前記第1相には非極性ポリマーが含まれており、前記第2相には極性ポリマーが含まれているとよい。前記非極性ポリマーはイソプレンゴムまたは天然ゴムであり、前記極性ポリマーはニトリルゴムまたはヒドリンゴムであるとよい。前記弾性体層の任意の5μm×5μmの範囲内における、前記第1相と前記第2相の存在比は、面積比で、第1相/第2相=0.3以上20以下であるとよい。前記第2相と前記表層との間には、前記第1相が介在しているとよい。
【0008】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法は、上記の電子写真機器用帯電ロールの製造方法であって、前記第2相を構成するポリマー成分に対し、前記カーボンブラックAと前記カーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを混錬した後、前記第1相を構成するポリマー成分を混錬するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記弾性体層は、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相と、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相と、で構成され、前記第2相は、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを含有していることから、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる。
【0010】
前記弾性体層において、前記第1相は海相を構成しており、前記第2相は島相を構成していると、前記第1相による電荷のせき止めの効果が向上し、局所的な抵抗ムラがより吸収される。これにより、ロール表面からの電荷減衰がより抑えられる。
【0011】
前記第2相における前記カーボンブラックAと前記カーボンブラックBの含有比率が、質量比で、A/B=3.0以上10.0以下であると、カーボンブラックの静電容量と抵抗のバランスに優れる。これにより、放電の均一性に優れ、画像のムラがより抑えられる。
【0012】
前記カーボンブラックAの比表面積が25m/g以上75m/g以下であると、カーボンブラックAは高抵抗であり、静電容量を好適範囲に維持しやすい。そして、前記カーボンブラックBの比表面積が140m/g以上180m/g以下であると、カーボンブラックBは低抵抗であり、抵抗を好適範囲に維持しやすい。
【0013】
前記カーボンブラックAの平均粒径が35nm以上75nm以下であると、カーボンブラックAの比表面積を好適範囲にしやすく、カーボンブラックAを高抵抗にしやすい。そして、前記カーボンブラックBの平均粒径が20nm以上30nm以下であると、カーボンブラックBの比表面積を好適範囲にしやすく、カーボンブラックBを低抵抗にしやすい。
【0014】
前記弾性体層に含まれるポリマー成分100質量部に対し、前記カーボンブラックAの含有量が5質量部以上75質量部以下であると、静電容量を好適範囲に維持しやすい。そして、前記弾性体層に含まれるポリマー成分100質量部に対し、前記カーボンブラックBの含有量が1.5質量部以上20質量部以下であると、抵抗を好適範囲に維持しやすい。
【0015】
前記第1相には非極性ポリマーが含まれており、前記第2相には極性ポリマーが含まれていると、第1相と第2相の相分離が良好となり、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられやすい。そして、前記非極性ポリマーはイソプレンゴムまたは天然ゴムであり、前記極性ポリマーはニトリルゴムまたはヒドリンゴムであると、第1相と第2相の相分離が良好となり、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられやすい。
【0016】
前記弾性体層の任意の5μm×5μmの範囲内における、前記第1相と前記第2相の存在比が、面積比で、第1相/第2相=0.3以上20以下であると、第1相および第2相が微分散され、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰を抑える効果に優れる。
【0017】
前記第2相と前記表層との間に、前記第1相が介在していると、前記第1相による電荷のせき止めの効果が向上し、局所的な抵抗ムラがより吸収される。これにより、ロール表面からの電荷減衰がより抑えられる。
【0018】
そして、本発明に係る電子写真機器用帯電ロールの製造方法によれば、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる電子写真機器用帯電ロールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
図2】弾性体層の表層近傍の任意の5μm×5μmの範囲の相構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。図2は、弾性体層の表層近傍の任意の5μm×5μmの範囲の相構成を示す模式図である。
【0021】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は帯電ロール10の表面に現れる層となっている。
【0022】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0023】
弾性体層14は、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相14aと、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相14bと、で構成されている。図2に示すように、第1相14aと第2相14bは、互いに分離して存在している。
【0024】
第1相14aは、1種以上のポリマーを含む。第1相14aのポリマーは、高抵抗の観点から、非極性ポリマーであることが好ましい。第1相14aのポリマーとしては、イソプレンゴム(IR)、水添イソプレンゴム、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、シリコーンゴム(Q)などが挙げられる。これらは、第1相14aのポリマーとして単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらのうちでは、高抵抗で誘電相としての効果に優れるなどの観点から、イソプレンゴム、天然ゴムが好ましい。第1相14aは、高抵抗の観点から、カーボンブラックなどの導電剤を含まないか、含んでいても少量であることが好ましい。第1相14aは、少なくとも、第2相14bよりも導電剤の含有量が少量である。
【0025】
第2相14bは、2種類のカーボンブラックを含む。第2相14bのカーボンブラックは、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類である。DBP吸収量の多いカーボンブラックAは、誘電体として電荷を貯めるものとなる。DBP吸収量の少ないカーボンブラックBは、電荷を素早く流すものとなる。DBP吸収量の異なる2種類のカーボンブラックを用いることで、低抵抗を維持しつつも適度な静電容量を確保することができる。カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K6221に準拠してカーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量から算出される。
【0026】
カーボンブラックAのDBP吸収量は、静電容量の向上の観点から、より好ましくは120cm/100g以上である。また、放電性の向上の観点から、より好ましくは150cm/100g以下、さらに好ましくは140cm/100g以下である。一方、カーボンブラックBのDBP吸収量は、静電容量の向上の観点から、より好ましくは80cm/100g以上である。また、放電性の向上の観点から、より好ましくは100cm/100g以下、さらに好ましくは90cm/100g以下である。
【0027】
DBP吸収量の多いカーボンブラックAは、誘電体として電荷を貯める機能に優れるなどの観点から、比較的、高抵抗であることが好ましい。この観点から、カーボンブラックAは、比較的、比表面積が小さく、粒径が大きいものが好ましい。具体的には、カーボンブラックAは、比表面積が25m/g以上75m/g以下であることが好ましい。また、平均粒径が35nm以上75nm以下であることが好ましい。カーボンブラックAの比表面積は、より好ましくは30m/g以上70m/g以下、さらに好ましくは30m/g以上60m/g以下である。カーボンブラックAの平均粒径は、より好ましくは40nm以上70nm以下、さらに好ましくは40nm以上60nm以下である。カーボンブラックAの平均粒径が35nm以上75nm以下であると、カーボンブラックAの比表面積を好適範囲にしやすく、カーボンブラックAを高抵抗にしやすい。
【0028】
DBP吸収量の少ないカーボンブラックBは、電荷を素早く流す機能に優れるなどの観点から、比較的、低抵抗であることが好ましい。この観点から、カーボンブラックBは、比較的、比表面積が大きく、粒径が小さいものが好ましい。具体的には、カーボンブラックBは、比表面積が140m/g以上180m/g以下であることが好ましい。また、平均粒径が20nm以上30nm以下であることが好ましい。カーボンブラックBの比表面積は、より好ましくは150m/g以上180m/g以下、さらに好ましくは150m/g以上170m/g以下である。カーボンブラックBの平均粒径は、より好ましくは20nm以上25nm以下である。カーボンブラックBの平均粒径が20nm以上30nm以下であると、カーボンブラックBの比表面積を好適範囲にしやすく、カーボンブラックBを低抵抗にしやすい。
【0029】
カーボンブラックの比表面積は、BET法にて測定される値である。カーボンブラックの平均粒径は、カーボンブラックを電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径で表される。
【0030】
第2相14bは、1種以上のポリマーを含む。第2相14bのポリマーは、低抵抗の観点から、非極性ポリマーであることが好ましい。第2相14bのポリマーとしては、ニトリルゴム(NBR)、ヒドリンゴム、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などが挙げられる。これらは、第2相14bのポリマーとして単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらのうちでは、より低抵抗であるなどの観点から、ニトリルゴム(NBR)、ヒドリンゴムが好ましい。
【0031】
第1相14aには非極性ポリマーが含まれており、第2相14bには極性ポリマーが含まれていると、第1相14aと第2相14bの相分離が良好となり、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられやすい。第1相14aのポリマーは、第2相14bのポリマーよりも高抵抗のものが好ましい。第1相14aのポリマーと第2相14bのポリマーの好ましい組み合わせとしては、イソプレンゴム(IR)とニトリルゴム(NBR)の組み合わせ、天然ゴム(NR)とニトリルゴム(NBR)の組み合わせである。
【0032】
第1相14aは、ポリマー種や加硫条件などにより、表面抵抗値を所望の範囲内において調整することができる。第2相14bは、ポリマー種や加硫条件、カーボンブラックAおよびカーボンブラックBの添加量などにより、表面抵抗値を所望の範囲内において調整することができる。
【0033】
第2相14bにおけるカーボンブラックAとカーボンブラックBの含有比率は、カーボンブラックの静電容量と抵抗のバランスに優れるなどの観点から、質量比で、A/B=3.0以上10.0以下であることが好ましい。より好ましくはA/B=3.0以上7.0以下、さらに好ましくはA/B=4.0以上7.0以下である。
【0034】
カーボンブラックAの含有量は、静電容量を確保しやすいなどの観点から、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、カーボンブラックAの含有量は、放電不足を抑えやすいなどの観点から、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、75質量部以下であることが好ましい。より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。そして、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、カーボンブラックAの含有量が5質量部以上75質量部以下であると、静電容量を好適範囲に維持しやすい。
【0035】
カーボンブラックBの含有量は、低抵抗を確保しやすいなどの観点から、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、1.5質量部以上であることが好ましい。より好ましくは3.0質量部以上、さらに好ましくは5.0質量部以上である。また、カーボンブラックBの含有量は、放電過多を抑えやすいなどの観点から、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは15質量部以下である。そして、弾性体層14に含まれるポリマー成分100質量部に対し、カーボンブラックBの含有量が1.5質量部以上20質量部以下であると、抵抗を好適範囲に維持しやすい。
【0036】
図2に示すように、弾性体層14において、第1相14aは海相を構成しており、第2相14bは島相を構成していることが好ましい。これにより、第1相14aによる電荷のせき止めの効果が向上し、局所的な抵抗ムラがより吸収され、ロール表面からの電荷減衰がより抑えられる。弾性体層14の上記海島構造は、第1相14aと第2相14bの存在比を調整したり、カーボンブラックAとカーボンブラックBの含有比率を調整したり、第1相14aと第2相14bの混錬方法を調整したりすることで、形成することができる。上記海相は、マトリックス相、連続相などということができる。上記島相は、ドメイン相、分散相などということができる。第2相14bは、第1相14aの海中に島状に点在する相として表される。
【0037】
弾性体層14において、第1相14aが海相を構成し、第2相14bが島相を構成していると、基本的に、第2相14bは、表層16との界面に現れない相となる。このように、第2相14bは、表層16と接していない相であることが好ましい。つまり、図2に示すように、第2相14bと表層16との間には、第1相14aが介在していることが好ましい。第2相14bと表層16との間に第1相14aが介在していると、第1相14aによる電荷のせき止めの効果が向上し、局所的な抵抗ムラがより吸収される。これにより、ロール表面からの電荷減衰がより抑えられる。第2相14bと表層16との間に介在する第1相14aの厚さtは、第1相14aによる電荷のせき止めの効果に優れるなどの観点から、10nm以上が好ましい。より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。また、第2相14bと表層16との間に介在する第1相14aの厚さtは、放電しやすさなどの観点から、2.0μm以下が好ましい。より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。第2相14bと表層16との間に介在する第1相14aの厚さtは、電子顕微鏡で観察して求めることができる。
【0038】
第1相14aは、第1相14aによる電荷のせき止めの効果を発揮するなどの観点から、表層16よりも高抵抗であることが好ましい。つまり、第1相14aは、第2相14bよりも高抵抗であり、表層16よりも高抵抗であることが好ましい。そして、第2相14bは、放電しやすさなどの観点から、表層16よりも低抵抗であるか、表層16と同じ抵抗であることが好ましい。この場合の抵抗は、表面抵抗である。
【0039】
弾性体層14において、第1相14aと第2相14bは、互いに微分散していることが好ましい。具体的には、弾性体層14の任意の5μm×5μmの範囲内における、第1相14aと第2相14bの存在比が、面積比で、第1相14a/第2相14b=0.3以上20以下であることが好ましい。上記面積比は、より好ましくは0.5以上10以下、さらに好ましくは1.0以上5.0以下である。第1相14aと第2相14bが互いに微分散していると、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰を抑える効果に優れる。弾性体層14の上記分散構造は、第1相14aと第2相14bの存在比を調整したり、カーボンブラックAとカーボンブラックBの含有比率を調整したり、第1相14aと第2相14bの混錬方法を調整したりすることで、形成することができる。弾性体層14の上記分散構造は、電子顕微鏡で観察して求めることができる。
【0040】
弾性体層14には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0041】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0042】
表層16を形成する主材料としては、特に限定されるものではなく、ポリアミド(ナイロン)系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、変性されたものであっても良い。変性基としては、例えば、N-メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。
【0043】
表層16は、粗さ形成用粒子を含んでいてもよい。粗さ形成用粒子は、表層16の表面に粗さを付与するための粒子である。つまり、表層16の表面に凹凸を付与するための粒子である。表層16の表面凹凸は、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を増加させ、放電を促す。これにより、帯電性を向上させ、横スジやムラなどの画像不具合を抑えることができる。
【0044】
粗さ形成用粒子は、樹脂製粒子などが用いられる。粗さ形成用粒子の材料は、特に限定されるものではない。粗さ形成用粒子は、カルボニル基を有するポリマーで構成されることが好ましい。カルボニル基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。
【0045】
粗さ形成用粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、平均粒子径3.0μm以上50μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径5.0μm以上30μm以下のものが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて観察し、表面観察時に見える粗さ形成用粒子の直径を粒径とし、任意の20点の平均で表す。
【0046】
粗さ形成用粒子の表層16における含有量は、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、表層16のバインダーポリマー100質量部に対し、3質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0047】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズ、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。
【0048】
表層16の体積抵抗率は、帯電性などの観点から、半導電領域に設定するとよい。具体的には、例えば、1.0×10~1.0×1010Ω・cmの範囲内に設定するとよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。表層16の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~3.0μmの範囲などに設定するとよい。表層16の厚さは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0049】
帯電ロール10は、軸体の外周面上に弾性体層14を形成し、弾性体層14の外周面上に表層16を形成することにより、作成することができる。
【0050】
弾性体層14は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、軸体をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の弾性体層形成用組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体の表面に未架橋の弾性体層形成用組成物を押出成形するなどにより、軸体の外周に弾性体層14を形成する。
【0051】
弾性体層形成用組成物は、第2相14bを構成するポリマー成分に対し、カーボンブラックAとカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを混錬した後、第1相14aを構成するポリマー成分を混錬することにより、形成することができる。
【0052】
表層16を形成するには、表層形成用組成物を用いる。表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。
【0053】
表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。
【0054】
表層16は、弾性体層14の外周面上に表層形成用組成物を塗工するなどの方法により、形成できる。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。塗工された表層16には、必要に応じて、紫外線照射や熱処理を行なっても良い。
【0055】
以上の構成の帯電ロール10によれば、弾性体層14において、低抵抗の第2相14b中にDBP吸収量の小さいカーボンブラックBが存在することで、電荷が素早く流れ、低抵抗を確保することができる。また、このカーボンブラックBとともに低抵抗の第2相14b中に存在するDBP吸収量の大きいカーボンブラックAが誘電体として電荷をためる機能を発揮するとともに、低抵抗の第2相14bと分離して存在する高抵抗の第1相14aが誘電相となって電荷をせき止め、均一化することで、局所的な抵抗ムラが吸収される。これにより、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる。
【実施例0056】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
<弾性体層形成用組成物の調製>
NBR40質量部に対し、カーボンブラックA-1を50質量部、カーボンブラックB-1を10質量部配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、第2相形成用組成物を調製した。次いで、第2相形成用組成物に対し、イソプレンゴム60質量部、過酸化物架橋剤5質量部、加硫助剤3質量部、触媒3質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、弾性体層形成用組成物を調製した。
【0058】
<弾性体層の作製>
成形金型(パイプ状)に芯金(直径8mm)をセットし、弾性体層形成用組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの弾性体層を成形した。
【0059】
<表層形成用組成物の調製>
粗さ形成用粒子とバインダーポリマーとを配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用組成物を調製した。
・バインダーポリマー(PU):根上工業製「ART Resin UN-333」
・粗さ形成用粒子(PU):根上工業製「アートパールC-600透明」平均粒径10μm
【0060】
<表層の作製>
表層形成用組成物の攪拌を続けながら、弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に厚さ1.0μmの表層を形成した。これにより、実施例1の帯電ロールを作製した。
【0061】
(実施例2)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックA、カーボンブラックBの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0062】
(実施例3)
弾性体層形成用組成物の調製において、IRとNBRの配合比を変更し、カーボンブラックAの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0063】
(実施例4~5)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックAの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0064】
(実施例6)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックBの種類を変更し、カーボンブラックA、カーボンブラックBの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0065】
(実施例7)
弾性体層形成用組成物の調製において、IRとNBRの配合比を変更し、カーボンブラックBの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0066】
(実施例8~11)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックA、カーボンブラックBの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0067】
(実施例12~13)
弾性体層形成用組成物の調製において、IRとNBRの配合比を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0068】
(比較例1~5)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックの種類を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0069】
(比較例6~7)
弾性体層形成用組成物の調製において、IRおよびNBRの加硫条件を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。実施例1に対し、比較例6は、加硫温度を上げ、加硫時間を短くした。また、実施例1に対し、比較例7は、加硫温度を下げ、加硫時間を長くした。
【0070】
(比較例8~9)
弾性体層形成用組成物の調製において、カーボンブラックBの配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0071】
(比較例10)
弾性体層形成用組成物の調製において、イソプレンゴム100質量部に対し、カーボンブラックA-1を50質量部、カーボンブラックB-1を10質量部、酸化物架橋剤5質量部、加硫助剤3質量部、触媒3質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。したがって、弾性体層は、イソプレンゴムを含む1相のみで構成されている。
【0072】
(比較例11)
弾性体層形成用組成物の調製において、NBR100質量部に対し、カーボンブラックA-1を50質量部、カーボンブラックB-1を10質量部、酸化物架橋剤5質量部、加硫助剤3質量部、触媒3質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。したがって、弾性体層は、NBRを含む1相のみで構成されている。
【0073】
弾性体層形成用組成物の材料として、以下の材料を準備した。
(ベースポリマー)
・イソプレンゴム(IR):日本ゼオン製「Nipol IR2200」
・ニトリルゴム(NBR):日本ゼオン製「Nipol 1041」
(カーボンブラックA)
・A-1(DBP吸収量124ml/100g、BET比表面積43m/g、平均粒径41nm):旭カーボン製「旭♯60H(N-568)」
・A-2(DBP吸収量160ml/100g、BET比表面積75m/g、平均粒径35nm):デンカ製「デンカブラック」
・A-3(DBP吸収量115ml/100g、BET比表面積42m/g、平均粒径44nm):東海カーボン製「シーストSO」
・A-4(DBP吸収量155ml/100g、BET比表面積25m/g、平均粒径75nm):東海カーボン製「シーストGFY」
・A-5(DBP吸収量125ml/100g、BET比表面積126m/g、平均粒径20nm):東海カーボン製「シースト7HM」
(カーボンブラックB)
・B-1(DBP吸収量70ml/100g、BET比表面積180m/g、平均粒径25nm):オリオンエンジニアドカーボンズ製「Special Black4」
・B-2(DBP吸収量110ml/100g、BET比表面積140m/g、平均粒径20nm):昭和キャボット製「ショウブラックIP1500」
・B-3(DBP吸収量110ml/100g、BET比表面積20m/g、平均粒径85nm):旭カーボン製「旭♯50H」
(その他のカーボンブラック)
・X-1(DBP吸収量175ml/100g、BET比表面積165m/g、平均粒径21nm):三菱化学製「♯3400B」
・X-2(DBP吸収量58ml/100g、BET比表面積180m/g、平均粒径18nm):三菱化学製「♯1000」
・X-3(DBP吸収量360ml/100g、BET比表面積800m/g、平均粒径32nm):ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンEC300J」
【0074】
作製した帯電ロールについて、第1相と第2相の表面抵抗値を測定した。また、第1相と第2相の面積比を測定した。さらに、下記の画像評価を行った。
【0075】
(表面抵抗値の測定)
作製した帯電ロールの断面を日立ハイテクサイエンス製の走査型プローブ顕微鏡「AFM5100N」で、DFMモードにてカンチレバー「SI-DF3」を用い1μm走査し、第1相と第2相のそれぞれについて表面抵抗(Ω・cm)を導出した。
【0076】
(面積比の測定)
作製した帯電ロールの断面を日本電子株式会社製の走査電子顕微鏡「JSM-7200F」で、5μm×5μmの範囲を1,000,000倍率で観察し、第1相と第2相の面積比を算出した。
【0077】
(ムラ画像)
作製した導電性ロールを導電性ロールとしてコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。ムラ画像が確認されなかった場合を良好「○」、ムラ画像が確認された場合を不良「×」とした。
【0078】
(横スジ画像)
作製した導電性ロールを導電性ロールとしてコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。横スジ画像が確認されなかった場合を良好「○」、横スジ画像が確認された場合を不良「×」とした。
【0079】
(黒点画像)
作製した導電性ロールを導電性ロールとしてコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。画像に黒点が確認されなかった場合を良好「○」、画像に黒点が確認された場合を不良「×」とした。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
比較例1は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相中に、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAは含まれておらず、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBのみが含まれている。このため、静電容量が不足して、帯電不足となり、画像評価において横スジが発生している。比較例2は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相中に、カーボンブラックAは含まれておらず、カーボンブラックBとDBP吸収量が160cm/100g超のカーボンブラックが含まれている。このため、静電容量が大きすぎて放電不足となり、帯電不足となって、画像評価において横スジが発生している。
【0083】
比較例3は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相中に、カーボンブラックBは含まれておらず、カーボンブラックAのみが含まれている。このため、誘電性が優先されすぎて放電不足となり、帯電不足となって、画像評価において横スジが発生している。比較例4は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相中に、カーボンブラックBは含まれておらず、カーボンブラックAとDBP吸収量が70cm/100g未満のカーボンブラックが含まれている。このため、静電容量が不足して帯電不足となり、画像評価において横スジが発生している。
【0084】
比較例5は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相中に、カーボンブラックBは含まれておらず、カーボンブラックAとDBP吸収量が160cm/100g超のカーボンブラックが含まれている。このDBP吸収量が160cm/100g超のカーボンブラックは、比表面積が800m/gと高いため、電荷が流れすぎて放電過多(異常放電)となり、画像評価において黒点が発生している。
【0085】
比較例6は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第1相の表面抵抗値が高すぎるため、誘電性が優先され、放電不足となり、帯電不足となって、画像評価において横スジが発生している。比較例7は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第1相の表面抵抗値が低すぎるため、電荷が流れすぎて放電過多(異常放電)となり、画像評価において黒点が発生している。
【0086】
比較例8は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相の表面抵抗値が低すぎるため、電荷が流れすぎて放電過多(異常放電)となり、画像評価において黒点が発生している。比較例9は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されているが、第2相の表面抵抗値が高すぎるため、抵抗が不足して帯電不足となり、画像評価において横スジが発生している。
【0087】
比較例10は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されておらず、IRを含む1相のみで構成され、IRを含む相中に2種のカーボンブラックA,Bを含んでいる。また、比較例11は、弾性体層がIRを含む第1相とNBRを含む第2相の2相で構成されておらず、NBRを含む1相のみで構成されNBRを含む相中に2種のカーボンブラックA,Bを含んでいる。このため、比較例10,11では、誘電相となる相が存在せず、静電容量が不足して、帯電不足となり、画像評価において横スジが発生している。
【0088】
これに対し、実施例は、弾性体層が、表面抵抗値が1.6×1014Ω・cm以上8.8×1015Ω・cm以下である高抵抗の第1相と、表面抵抗値が1.3×10Ω・cm以上4.9×10Ω・cm以下である低抵抗の第2相と、で構成され、第2相は、DBP吸収量が115cm/100g以上160cm/100g以下であるカーボンブラックAと、DBP吸収量が70cm/100g以上110cm/100g以下であるカーボンブラックBの2種類のカーボンブラックを含有している。このため、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる。比較例1に示すように、弾性体層が高抵抗の第1相を含んでいても、DBP吸収量の小さいカーボンブラックBのみを含むだけでは、静電容量が不足して、帯電不足となり、不十分である。また、比較例3に示すように、弾性体層が低抵抗の第2相を含んでいても、DBP吸収量の大きいカーボンブラックAのみを含むだけでは、誘電性が優先されすぎて放電不足となり、帯電不足となって、不十分である。また、比較例10,11に示すように、弾性体層が2種のカーボンブラックA,Bを含んでいても、2種のカーボンブラックA,Bの含まれる相が1相のみだけでは、静電容量が不足して、帯電不足となり、不十分である。実施例のように、弾性体層が高抵抗の第1相と低抵抗の第2相を含み、第2相においてDBP吸収量の大きいカーボンブラックAとDBP吸収量の小さいカーボンブラックBを併せて含むことで、局所的な抵抗ムラ部分によるロール表面からの電荷減衰が抑えられ、良好な画像が得られる。
【0089】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 帯電ロール
12 軸体
14 弾性体層
16 表層
14a 第1相
14b 第2相
図1
図2