(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053424
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20230406BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20230406BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20230406BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 G
H05K1/18 C
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162442
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158229
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 恒雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172627
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】神山 悦宏
【テーマコード(参考)】
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E336AA01
5E336AA04
5E336AA16
5E336BB02
5E336BC34
5E336CC22
5E336CC55
5E336GG03
5E336GG11
5E338AA02
5E338BB75
5E338CC01
5E338CD10
5E338EE02
5E338EE13
5E338EE14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スイッチング損失、発熱、電磁的ノイズの低減及び制御安定性を向上させる電子モジュールを提供する。
【解決手段】電子モジュールは、電極部を有する1以上の電子素子と、電子素子が搭載され、電子素子に接続される配線が形成された基板と、少なくとも基板及び前記電子素子のいずれか一方を支持固定するリードフレームと、を備える。リードフレームの少なくとも一部は、前記電子素子の上部に形成される。リードフレームは、一方の側に電源端子と出力端子と接地端子とが形成される第1リードフレームと、他方の側に複数の信号端子が形成される第2リードフレームとを有する。第1リードフレームは、電子素子の電極部へ接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部を有する1以上の電子素子と、
前記電子素子が搭載され、前記電子素子に接続される配線が形成された基板と、
少なくとも前記基板及び前記電子素子のいずれか一方を支持固定するリードフレームと、
を備え、
前記リードフレームの少なくとも一部は、前記電子素子の上部に形成されること、
を特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記リードフレームは、
一方の側に電源端子と出力端子と接地端子とが形成される第1リードフレームと、他方の側に複数の信号端子が形成される第2リードフレームとを有し、
前記第1リードフレームは、前記電子素子の電極部へ接続されていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記電子素子が複数である場合の前記第1リードフレームは、複数の前記電子素子の接続部それぞれへの配線インダクタンスが均等であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記電子素子は、スイッチング素子又は整流素子であり、前記第1リードフレームの少なくとも一部は、前記スイッチング素子又は前記整流素子の全部又は一部を覆うように形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記第1リードフレームの少なくとも一部は、前記接地端子として機能するものであること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項6】
前記第1リードフレームが複数である場合において、複数の前記第1リードフレームには、それぞれの端子温度を均等化する端子温度均等化構造が形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項7】
前記端子温度均等化構造は、前記端子温度が均等になるように前記リードフレームの面積及び形状が設定してあること、
を特徴とする請求項6に記載の電子モジュール。
【請求項8】
前記端子温度均等化構造は前記リードフレームに、少なくとも切り欠け部又は穴部を有すること、
を特徴とする請求項6又は7いずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項9】
前記電子素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド半導体を含むこと、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールのインダクタンス低減と放熱とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子モジュールにおいては、電極部を有する1以上の電子素子と、電子素子が搭載され、電子素子に接続される配線が形成された基板と、基板及び電子素子を支持固定し、アルミワイヤを用いてスイッチ素子用の電極パターンと導電部材を電気的に接続して配線し、電子素子の電極部に接続されるリードフレームを備えているものが知られている。
【0003】
特許文献1には、寄生インダクタンスを小さくするために、回路基板の一端部に、絶縁基板上の導体パターンによる直流電力の入出力電極が設けられ、直流電力の入出力電極は、一端部の端縁に沿って複数の正極と複数の負極とが並べて設けられ、2つの負極の間に配置される正極と、2つの正極の間に配置される負極とを有することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、各対の上下アームにおける一方の上下アームに接続された正極側直流端子と負極側直流端子とが、各対の上下アームにおける他方の上下アームに接続された正極側直流端子と負極側直流端子とに対して、鏡面対称に配置されているので、インダクタンスを低減することができるとの開示がされている。
【0005】
特許文献3には、第1および第2絶縁層がともにセラミックス材料により形成して、第1および第2絶縁層がともに熱伝導性に優れ、かつ第1絶縁層と第2絶縁層との熱膨張係数の差が小さくなる。このため、第1および第2配線パターンが重畳されていることにより第1および第2配線パターンのインダクタンスを低くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020ー53622号公報
【特許文献2】特開2017ー11305号公報
【特許文献3】特開2016ー164919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電子モジュールの端子から電子素子への配線は、寄生インダクタンスが大きく、スイッチング損失,発熱,電磁的ノイズの低減及び電子モジュールの制御安定性の向上が要求されていた。また、従来の電子モジュールにおいては、スイッチング損失に起因する熱膨張等の熱応力に対する信頼性の向上や装置の小型化に対する要求も高まっており、特に、近年の大電流化や動作の高速化も注目され、従来の電子モジュールでは上記要求を充足することは困難になってきている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明による電子モジュールは、電極部を有する1以上の電子素子と、前記電子素子が搭載され、前記電子素子に接続される配線が形成された基板と、少なくとも前記基板及び前記電子素子のいずれか一方を支持固定するリードフレームと、を備え、前記リードフレームの少なくとも一部は、前記電子素子の上部に形成されること、を特徴とする。
【0009】
(2)本発明による電子モジュールにおいて、前記リードフレームは、一方の側に電源端子と出力端子と接地端子とが形成される第1リードフレームと、他方の側に複数の信号端子が形成される第2リードフレームとを有し、前記第1リードフレームは、前記電子素子の前記電極部へ接続されていること、を特徴とする。
【0010】
(3)本発明による電子モジュールにおいて、前記電子素子が複数である場合の前記第1リードフレームは、複数の前記電子素子の接続部それぞれへの配線インダクタンスが均等であること、を特徴とする。
【0011】
(4)本発明による電子モジュールにおいて、前記電子素子はスイッチング素子又は整流素子であり、前記第1リードフレームの少なくとも一部は、前記スイッチング素子又は前記整流素子の全部又は一部を覆うように形成されていること、を特徴とする。
【0012】
(5)本発明による電子モジュールにおいて、前記第1リードフレームの少なくとも一部は、前記接地端子として機能するものであること、を特徴とする。
【0013】
(6)本発明による電子モジュールにおいて、前記第1リードフレームが複数である場合において、複数の前記第1リードフレームには、それぞれの端子温度を均等化する端子温度均等化構造が形成されていること、を特徴とする。
【0014】
(7)本発明による電子モジュールにおいて、前記端子温度均等化構造は、前記端子温度が均等になるように前記リードフレームの面積及び形状が設定してあること、を特徴とする。
【0015】
(8)本発明による電子モジュールにおいて、前記端子温度均等化構造はリードフレームに、少なくとも切り欠け部又は穴部を有すること、を特徴とする。
【0016】
(9)本発明による電子モジュールにおいて、前記電子素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド半導体を含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)リードフレームは、電子素子の上部に形成されるため、電子モジュール内部において、基板での配線パターンとは異なる位置に立体配線がなされる。これにより、リードフレームにより形成される配線パターンを基板に形成する必要がなくなり、基板の配線面積を確保でき、配線幅が広がり寄生インダクタンスを低減することができ、かつ、リードフレームによって内部部品が確実に支持される。その結果、リードフレームと基板での配線パターンによる立体的な配線と、その支持により、基板での配線面積を十分に確保でき、小型であっても熱収縮等にも強い信頼性の高い電子モジュールを提供することができる。上記寄生インダクタンスの低減は、電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、リードフレーム及び基板による構造は、電子素子の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0018】
(2)リードフレームは、一方の側に電源端子と出力端子と接地端子とが形成される第1リードフレームと、他方の側に複数の信号端子が形成される第2リードフレームとを有し、第1リードフレームは、電子素子の電極部へ接続されているため、電子モジュール内部において、基板での配線パターンとは異なる立体的な配線がなされる。これにより、第1リードフレームにより形成される配線パターンを基板に形成する必要がなくなり、基板の配線面積を確保でき、配線幅が広がり寄生インダクタンスを低減することができ、かつ、第1リードフレームと第2リードフレームによって内部部品が確実に支持される。その結果、第1リードフレーム,第2リードフレーム及び基板による立体的な配線とその支持により、基板での配線面積を大幅に削減できることとなり、小型であっても熱収縮等にも強い信頼性の高い電子モジュールを提供することができる。上記寄生インダクタンスの低減は、電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、第1リードフレーム,第2リードフレーム及び基板による構造は、電子素子の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0019】
(3)第1リードフレームの配線インダクタンスを均等にすることにより、第1リードフレームが接続される電子素子に流れる電流変化によって生じる起電力が均等化されるため、電子素子の制御の安定化を図ることができる。
【0020】
(4)第1リードフレームの少なくとも一部は、少なくともスイッチング素子又は整流素子の全部又は一部を覆うよう形成されているため、特に、電子モジュール内に形成される回路配線の寄生インダクタンスが低減する。上記寄生インダクタンスの低減は、電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、共通の平板状リードフレームで形成した第1リードフレームの構造は、電子素子の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0021】
(5)第1リードフレームの一部は、接地端子として機能するものであるため、特に、電子モジュール内に形成される接地電位部分の回路配線の寄生インダクタンスが低減する。上記寄生インダクタンスの低減は、特に大電流容量の電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、共通の平板状リードフレームで形成した第1リードフレームの構造は、大電流容量の電子素子の放熱にも寄与するばかりでなく、大電流容量の電子素子から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0022】
(6)第1リードフレームは、電子素子で発生する熱の熱伝導量を制限し、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化する端子温度均等化構造が形成されているため、第1リードフレームは、電子素子で発生する熱の熱伝導量を制限し、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化することができる。
【0023】
(7)端子温度均等化構造は、端子温度が均等になるようにリードフレームの面積及び形状が設定してある構成であると好適である。このような構成とすると、簡易な構造でインダクタンス低減を図りつつ、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化することができる。
【0024】
(8)端子温度均等化構造の熱抵抗設定では、リードフレームに切り欠け部や穴部を設けた形状でもよい。さらに、リードフレーム表面形状、例えば凹凸形状等で調整して設定してもよい。このような構成とすると、簡易な構造でインダクタンス低減を図りつつ、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化することができる。
【0025】
(9)電子素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド半導体を含むため、回路の大電流化、スイッチング高速化に対応できる電子モジュールを提供することができる。すなわち、炭化ケイ素,窒化ガリウム,酸化ガリウム,ダイヤモンド半導体を用いて回路の大電流化、スイッチングの高速化を図る場合に課題となる寄生インダクタンスに起因するスイッチング損失,発熱,電磁的ノイズ及びこれらによる電子モジュールの制御安定性や信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る電子モジュールの斜視図であり、(A)は電子モジュールの上方斜視図、(B)は(A)に示した電子モジュールの下側を上にしたときの斜視図である。
【
図2】本発明に係る電子モジュールの断面構造を示している。
【
図3】本発明に係る電子モジュールの第1リードフレームと第2リードフレームを示した断面構造である。
【
図4】電源から3相モータに供給される電力を制御するための制御回路の回路構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る電子モジュールにおける基板上の配線,電子素子及び接続子の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の電子モジュール及びリードフレームについて、図面を参照して説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成、特徴、機能等が同じ構成、要素(形状等が完全に同一ではない構成要素を含む。)については、実施形態をまたいで同じ符号を使用するとともに再度の説明を省略することがある。
【0028】
図1は、電源から3相モータに供給される電力を制御するための電子モジュール110である。
図1(A)は実施形態に係る電子モジュール110の上方斜視図、
図1(B)は、は電子モジュール110の(A)の下側を上にしたときの斜視図である。
【0029】
図1(A)、(B)に示すように、電子モジュール110は、電子モジュール本体112の上部表面に放熱部114が設けられている。電子モジュール本体112の側面には、リードフレームが設けられている。一方の側面には信号用リードフレーム116が設けられており、他方の側面には、W相用リードフレーム118,電源用リードフレーム120,接地用リードフレーム122,V相用リードフレーム124とU相用リードフレーム126が設けられている。これらのリードフレームの材料は導電性の金属であり、例えば銅等である。
【0030】
図2は、本発明に係る電子モジュール110の断面構造を示している。なお、電子モジュール本体112のパッケージと放熱部114は省略している。本発明に係る電子モジュール110は、電極部144を有する1以上の電子素子140と、電子素子140が搭載され、電子素子140に接続される配線138が形成された基板142と、少なくとも基板142又は電子素子140のいずれか一方を支持固定し、電子素子140の電極部144に接続されるリードフレーム128を備え、リードフレームの少なくとも一部は、電子素子140が実装された基板142の表面の上部に形成されている。「上部」は、基板表面に対向する位置を表し、例えば、
図2の電子モジュール110が上下逆に描かれている場合は、基板142の表面の「下部」になり、いずれの場合も発明の主旨を逸脱するものではない。
【0031】
図2(A)はリードフレーム128の一部が配線138に接続された例であり、
図2(B)はリードフレーム128の一部が電子素子140の電極部144に接続された例である。
【0032】
図2(A)は、リードフレーム128が基板142を支持固定している構成例である。基板142に配線138がパターン状に形成されており、配線138には、例えばハンダ付けで電子素子140の端子が接続されて実装されており、配線138にリードフレーム128が接続されている、リードフレーム128の一部は、この電子素子140が実装された基板142表面の対向する位置に形成されている。
【0033】
図2(B)は、リードフレーム128が電子素子140を支持固定している構成例である。電極部144を有する電子素子140が基板142に配線138を介して接続されており、電極部144にリードフレーム128が接続されている。リードフレーム128の一部は、この電子素子140が実装された基板142表面の上部に形成されている。
【0034】
図2において、リードフレーム128は、電子素子140の対向する位置に配設されるため、電子モジュール本体112のパッケージ内部において、基板142の表面に形成されるパターン状の配線138とは異なる立体的な配線がなされる。これにより、リードフレーム128により形成される配線パターンを基板142に形成する必要がなくなり、基板142の配線面積を確保でき、配線の幅を広くすることができるため、寄生インダクタンスを低減することができる。さらに、リードフレーム128によって電子モジュール本体112の内部で基板142に実装される電子素子140が確実に支持される。
【0035】
その結果、リードフレーム128及び基板142による立体的な配線とその支持により、基板142への配線面積を大幅に削減できることとなり、小型であっても熱収縮等にも強い信頼性の高い電子モジュール110を提供することができる。上記寄生インダクタンスの低減は、電子素子140の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、リードフレーム128及び基板142で構成される構造は、電子素子140の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子140から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0036】
本発明に係る電子モジュール110において、電子素子140は、炭化ケイ素,窒化ガリウム,酸化ガリウム,ダイヤモンド半導体を含む。このため、回路の大電流化、スイッチング高速化に対応できる電子モジュール110を提供することができる。即ち、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンド半導体を用いて回路の大電流化、スイッチング高速化を図る場合の課題となる寄生インダクタンスに起因するスイッチング損失、発熱、電磁的ノイズ及びこれらによる電子モジュールの制御安定性や信頼性の向上を図ることができる。
【0037】
電子モジュール110において、
図1に示したように、リードフレーム128は、一方の側に電源端子(電源用リードフレーム120)と出力端子(W相用リードフレーム118,V相用リードフレーム124,U相用リードフレーム126)と接地端子(接地用リードフレーム122)とが形成される第1リードフレーム130と、他方の側に複数の信号端子(信号用リードフレーム116)が形成される第2リードフレーム132とを有し、第1リードフレーム130は、電子素子140の電極部144に接続されている。
【0038】
図3は、本発明に係る電子モジュール110の第1リードフレーム130と第2リードフレーム132を示した断面構造である。第1リードフレーム130は、電源端子(電源用リードフレーム120)と出力端子(W相用リードフレーム118,V相用リードフレーム124,U相用リードフレーム126)と接地端子(接地用リードフレーム122)とを備えている。第2リードフレーム132は、複数の信号端子(信号用リードフレーム116)を備えている。第1リードフレーム130は、電子素子140の電極部144に接続されている。
【0039】
これにより、第1リードフレーム130により形成される電子モジュール本体112の内部で配線される配線パターンは、基板142に形成する必要がなくなり、基板142の配線面積を確保でき、配線幅を広げることができる。このため、寄生インダクタンスを低減することができる。さらに、第1リードフレーム130と第2リードフレーム132によって、内部で基板142に実装される電子素子140が確実に支持される。
【0040】
第1リードフレーム130、第2リードフレーム132及び基板142による立体的な配線とその支持により、基板142への配線面積を大幅に削減できることとなり、小型であっても熱収縮にも強い信頼性の高い電子モジュール110を提供することができる。上記寄生インダクタンスの低減は、電子素子140の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、第1リードフレーム130,第2リードフレーム132及び基板142から成る構造は、電子素子140の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子140から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0041】
(第1の実施形態)
次に、第1図に示した電源から3相モータに供給される電力を制御するための電子モジュール110について第1の実施形態を説明する。
【0042】
図4は、電源から3相モータに供給される電力を制御するための制御回路の回路構成を示す図である。制御回路は、U相領域、V相領域とW相領域があり、電源端子VCCと接地端子GNDに接続された直流電源(図示せず)から入力した直流電力を3相の交流電力に変換して出力端子(U,V,W)から出力する。
【0043】
U相領域には、U相第1スイッチ素子Q1,第1接続子CL1,中央配線部13U,U相第2スイッチ素子Q4,第2接続子CL4,ソース配線部15U,シャント抵抗R1,接地配線部10U、第3接続子CL7,U相第3スイッチ素子Q7,出力配線部14U,第4接続子CL10,第5接続子CL13,及び第6接続子CL16が配置されている。U相領域において、電源端子VCCは、電源配線部12,第1接続子CL1,U相第1スイッチ素子Q1,中央配線部13U,U相第2スイッチ素子Q4,第2接続子CL4,ソース配線部15U,シャント抵抗R1,及び接地配線部10Uを介して接地端子GNDと電気的に接続される。また、電源端子VCCは、中央配線部13Uから第3接続子CL7,U相第3スイッチ素子Q7,及び出力配線部14Uを介してモータ端子Uと電気的に接続され、モータ端子Uから3相モータに供給される電力の制御回路が構成されている。
【0044】
V相領域には、V相第1スイッチ素子Q2,第1接続子CL2,中央配線部13V,V相第2スイッチ素子Q5,第2接続子CL5,ソース配線部15V,シャント抵抗R2、接地配線部10V,第3接続子CL8,V相第3スイッチ素子Q8,出力配線部14V,第4接続子CL11,第5接続子CL14,及び第6接続子CL17が配置されている。V相領域において、電源端子VCCは、電源配線部12,第1接続子CL2,V相第1スイッチ素子Q2,中央配線部13V,V相第2スイッチ素子Q5,第2接続子CL5,ソース配線部15V,シャント抵抗R2,及び接地配線部10Vを介して接地端子GNDと電気的に接続される。また、電源端子VCCは、中央配線部13Vから第3接続子CL8,V相第3スイッチ素子Q8,及び出力配線部14Vを介してモータ端子Vと電気的に接続され、モータ端子Vから3相モータに供給される電力の制御回路が構成されている。
【0045】
W相領域には、W相第1スイッチ素子Q3,第1接続子CL3,中央配線部13W,W相第2スイッチ素子Q6,第2接続子CL6,ソース配線部15W,シャント抵抗R3,接地配線部10W,第3接続子CL9,W相第3スイッチ素子Q9,出力配線部14W,第4接続子CL12,第5接続子CL15,及び第6接続子CL18が配置されている。W相領域において、電源端子VCCは、電源配線部12,第1接続子CL3,W相第1スイッチ素子Q3,中央配線部13W,W相第2スイッチ素子Q6,第2接続子CL6,ソース配線部15W,シャント抵抗R3,及び接地配線部10Wを介して接地端子GNDと電気的に接続される。また、電源端子VCCは、中央配線部13Wから第3接続子CL9,W相第3スイッチ素子Q9,及び出力配線部14Wを介してモータ端子Wと接続され、モータ端子Wから3相モータに供給される電力の制御回路が構成されている。
【0046】
複数の信号端子30は、第1ゲート信号端子GTU,GTV,GTWと、中央信号端子STU,STV,STWと、第2ゲート信号端子GBU,GBV,GBWと、第3ゲート信号端子GTU1,GTV1,GTW1と、電源信号端子VLNKSと、第1及び第2サーミスタ端子RTP,RTNと、第1電流検出端子CP1,CP2,CP3と、第2電流検出端子CN1,CN2,CN3を有する。
【0047】
複数の信号端子30において、第1ゲート信号端子GTU,GTV,GTWは、3つの第1ゲート配線部16U,16V,16Wにそれぞれ接続される。中央信号端子STU,STV,STWは、中央配線部1U,13V,13Wにそれぞれ接続される。第2ゲート信号端子GBU,GBV,GBWは、第2ゲート配線部17U,17V,17Wにそれぞれ接続される。第3ゲート信号端子GTU1,GTV1,GTW1は、第3ゲート配線部18U,18V,18Wにそれぞれ接続される。電源信号端子VLNKSは、電源配線部12に接続される。第1及び第2サーミスタ端子RTP,RTNは、第1及び第2サーミスタ配線部LT1,LT2にそれぞれ接続される。第1電流検出端子CP1,CP2,CP3は、第1電流検出配線部LC1U,LC1V,LC1Wにそれぞれ接続される。第2電流検出端子CN1,CN2,CN3は、第2電流検出配線部LC2U,LC2V,LC2Wにそれぞれ接続される。
【0048】
図5は、第1実施形態に係る電子モジュール110における基板142上の配線138、電子素子140及び接続子の配置を示す平面図である。
図4で示した制御回路のリードフレーム128による接続がない状態の平面図を示している。なお、基板142は符号Xで示し、電子素子140は個別の具体的な素子、例えば、スイッチ素子Q1等の符号を付して示している。配線138も同様に、配線部と接続子で示し、個別に符号を付して示している。
【0049】
基板Xは、互いに対向する2つの長辺(以下、第1辺X1、第2辺X2と称する)と、互いに対向する2つの短辺(以下、第3辺X3、第4辺X4と称する)とを有する矩形形状である。基板Xの一方の面(以下、表面Sと称する)には、金属板を張り付けてなる複数の配線部が設けられており、基板Xの他方の面(裏面)には、放熱用の金属板が張り付けられている。具体的には、基板Xの表面Sにおいて、第2辺X2側の位置には、第2辺X2に沿って第3辺X3の近傍から第4辺X4の近傍まで延びる矩形状の電源配線部12が設けられている。電源配線部12は、後述する第1ゲート配線部16Vと出力配線部14Wの間の位置において、第1辺X1側まで延び、その端部側が第1辺X1に沿って第4辺X4側に延びるL字形状の部分を有している。
【0050】
基板Xの表面Sには、モータ端子Uを介して3相モータに供給される電力を制御するための回路が構成されるU相領域と、モータ端子Vを介して3相モータに供給される電力を制御するための回路が構成されるV相領域と、モータ端子Wを介して3相モータに供給される電力を制御するための回路が構成されるW相領域とが、この順序で第3辺X3側から第4辺X4側に向かって並んで形成されている。
【0051】
基板Xの表面Sにおいて、電源配線部12に隣接する第1辺X1側の位置には、3つの中央配線部13U,13V,13Wと、3つの第1ゲート配線部16U,16V,16Wと、3つの出力配線部14U,14V,14Wが設けられている。中央配線部13Uは、第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第3辺X3側に延びるL字形状になっており、第3辺X3に隣接する位置に設けられている。中央配線部13V,13Wはそれぞれ、第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第4辺X4側に延びるL字形状になっている。中央配線部13Wは、第4辺X4に隣接する位置に設けられている。中央配線部13Vは、基板Xにおける長辺方向の略中央の位置に設けられている。
【0052】
3つの第1ゲート配線部16U,16V,16Wはそれぞれ、第2辺X2側から第1辺X1側に延びる矩形状になっている。第1ゲート配線部16Uは、第3辺X3及び中央配線部13Uに隣接する位置に設けられており、L字形状の中央配線部13Uと組み合わされた全体形状が矩形状となるように配置されている。第1ゲート配線部16Wは、第4辺X4及び中央配線部13Wに隣接する位置に設けられており、L字形状の中央配線部13Wと組み合わされた全体形状が矩形状となるように配置されている。第1ゲート配線部16Vは、中央配線部13Vに隣接する位置に設けられており、L字形状の中央配線部13Vと組み合わされた全体形状が矩形状となるように配置されている。
【0053】
3つの出力配線部14U,14V,14Wはそれぞれ、第2辺X2側から第1辺X1側に延びる矩形状になっている。2つの出力配線部14U,14Vは、2つの中央配線部13U,13Vの間の位置に、互いに隣接して設けられている。出力配線部14Uが中央配線部13Uに隣接した位置に設けられ、出力配線部14Vが中央配線部13Vに隣接した位置に設けられている。出力配線部14Wは、2つの中央配線部13V,13Wの間の位置に、中央配線部13Wに隣接して設けられている。
【0054】
基板Xの表面Sにおいて、中央配線部13U,13V,13W及び出力配線部14U,14V,14Wに隣接する第1辺X1側の位置には、3つの第2ゲート配線部17U,17V,17Wと、3つのソース配線部15U,15V,15Wと、3つの第3ゲート配線部18U,18V,18Wと、3つの接地配線部10U,10V,10Wが設けられている。第2ゲート配線部17Uは、第3辺X3に隣接する位置に設けられ、第3辺X3に沿って中央配線部13U側から第1辺X1側に延び、その端部側が第1辺X1に沿って第4辺X4側に延びるL字形状になっている。第2ゲート配線部17Wは、第4辺X4に隣接する位置に設けられ、第4辺X4に沿って中央配線部13Wから第1辺X1側に延び、その端部側が第1辺X1に沿って第3辺X3側に延びるL字形状になっている。第2ゲート配線部17Vは、中央配線部13Vに隣接する位置に設けられ、中央配線部13V側から第1辺X1側に延びる矩形形状になっている。
【0055】
2つのソース配線部15U,15Wは、第2辺X2側から第1辺X1側に延びる矩形状となっている。ソース配線部15Uは、中央配線部13U及び第2ゲート配線部17Uに隣接する位置に設けられている。ソース配線部15Wは、中央配線部13W及び第2ゲート配線部17Wに隣接する位置に設けられている。ソース配線部15Vは、中央配線部13V及び第2ゲート配線部17Vに隣接する位置に設けられ、中央配線部13V側から第1辺X1側に延びており、中央配線部13V側の幅が第1辺X1側の幅よりも大きくなった略L字形状になっている。
【0056】
第3ゲート配線部18Uは、出力配線部14Uに隣接する位置に設けられ、出力配線部14Uに沿って第4辺X4側から第3辺X3側に延び、その端部側がソース配線部15Uに沿って第1辺X1側に延びる略L字形状となっている。第3ゲート配線部18Uの第3辺X3側の端部(L字形状の角部)には、中央配線部13Uを避けるように切り欠きが設けられている。第3ゲート配線部18Vは、出力配線部14Vに隣接する位置に設けられ、出力配線部14Vに沿って第3辺X3側から第4辺X4側に延び、その端部側がソース配線部15Vに沿って第1辺X1側に延びる略L字形状となっている。
【0057】
第3ゲート配線部18Vの第4辺X4側の端部(L字形状の角部)には、中央配線部13Vを避けるように切り欠きが設けられている。第3ゲート配線部18Wは、出力配線部14Wに隣接する位置に設けられ、出力配線部14Wに沿って第3辺X3側から第4辺X4側に延び、その端部側がソース配線部15Vに沿って第1辺X1側に延びる略L字形状となっている。第3ゲート配線部18Wの第4辺X4側の端部(L字形状の角部)には、中央配線部13Wを避けるように切り欠きが設けられている。
【0058】
接地配線部10U(第1接地配線部)は、第3ゲート配線部18Uに隣接する位置に設けられ、第3ゲート配線部18U側から第1辺X1側に延びた略矩形形状になっている。接地配線部10Uは、第3ゲート配線部18U側の幅が第1辺X1側の幅よりも若干大きくなっている。接地配線部10V(第2接地配線部)は、第3ゲート配線部18V及び接地配線部10Uに隣接する位置に設けられ、接地配線部10Uに沿って第3ゲート配線部18V側から第1辺X1側に延びて略矩形形状になっている。接地配線部10Vは、第3ゲート配線部18V側の幅が第1辺X1側の幅よりも若干大きくなっている。接地配線部10W(第3接地配線部)は、第3ゲート配線部18Wに隣接する位置に設けられ、第3ゲート配線部18W側から第1辺X1側に延びる矩形形状になっている。
【0059】
基板Xの表面Sにおいて、第1辺X1側の位置には、3つの第1電流検出配線部LC1U,LC1V,LC1Wと、3つの第2電流検出配線部LC2U,LC2V,LC2Wと、1つの第1サーミスタ配線部LT1と、1つの第2サーミスタ配線部LT2とが設けられている。第1及び第2サーミスタ配線部LT1,LT2は、第2ゲート配線部17Vと第1辺X1の間の位置に、第1辺X1に沿った方向に並んで設けられている。第1及び第2サーミスタ配線部LT1,LT2は、第2ゲート配線部17Vから第1辺X1側に向かって延びており、中間部で斜めにクランク状に折り曲げられた形状になっている。
【0060】
第1電流検出配線部LC1Uは、ソース配線部15Uに隣接する位置に設けられ、ソース配線部15Uに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第3辺X3側に延びるL字形状になっている。第1電流検出配線部LC1Uの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R1の下でソース配線部15Uに接続されている。第1電流検出配線部LC1Vは、ソース配線部15Vに隣接する位置に設けられ、ソース配線部15Vに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第4辺X4側に延びるL字形状になっている。
【0061】
第1電流検出配線部LC1Vの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R2の下でソース配線部15Vに接続されている。第1電流検出配線部LC1Wは、ソース配線部15Wに隣接する位置に設けられ、ソース配線部15Wに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第3辺X3側に延びるL字形状になっている。第1電流検出配線部LC1Wの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R3の下でソース配線部15Vに接続されている。
【0062】
第2電流検出配線部LC2Uは、接地配線部10Uに隣接する位置に設けられ、接地配線部10Uに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第4辺X4側に延びるL字形状になっている。第2電流検出配線部LC2Uの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R1の下で接地配線部10Uに接続されている。第2電流検出配線部LC2Vは、接地配線部10Vに隣接する位置に設けられ、接地配線部10Vに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第3辺X3側に延びるL字形状になっている。第2電流検出配線部LC2Vの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R2の下で接地配線部10Uに接続されている。
【0063】
第2電流検出配線部LC2Wは、接地配線部10Wに隣接する位置に設けられ、接地配線部10Wに沿って第2辺X2側から第1辺X1側に延び、その端部側が第3辺X3側に延びるL字形状になっている。第2電流検出配線部LC2Wの第2辺X2側の端部は、シャント抵抗R3の下で接地配線部10Wに接続されている。
【0064】
接続子は、板状の導電性部材に折り曲げ加工等を施されている。3つの第1接続子CL1~CL3、3つの第2接続子CL4~CL6、3つの第3接続子CL7~CL9、3つの第4接続子CL10~CL12、3つの第5接続子CL13~CL15、3つの第6接続子CL16~CL18は、各スイッチ素子の上面の電極に接続される第1接続部と、表面S上の配線部に接続される第2接続部と、第1接続部及び第2接続部を繋ぐ連結部とを有している。この連結部は、当該接続子によって接続する2つの配線部を短絡させないように断面視略コの字状のアーチ形状になっている。3つの第1接続子CL1~CL3、3つの第2接続子CL4~CL6及び3つの第3接続子CL7~CL9は、各スイッチ素子のソース電極と表面S上の配線部とを接続するもので、すべて同じ形状をしている。
【0065】
これらの接続子の第1接続部はソース電極の幅に対応した幅となっており、第2接続部は第1接続部よりも幅が狭くなっている。3つの第4接続子CL10~CL12、3つの第5接続子CL13~CL15、及び3つの第6接続子CL16~CL18は、各スイッチ素子のゲート電極と表面S上の配線部とを接続するもので、すべて同じ形状をしている。これらの接続子の第1接続部はゲート電極の幅に対応した幅となっており、第2接続部は第1接続部よりも幅が広くなっている。
【0066】
U相第1スイッチ素子Q1、V相第1スイッチ素子Q1、W相第1スイッチ素子Q1は、それぞれ電源配線部12上に配置されている。U相第1スイッチ素子Q1は、電源配線部12上の第3辺X3に近い位置に設けられている。V相第1スイッチ素子Q2は、電源配線部12上における第2辺X2に沿った方向の略中央の位置に設けられている。W相第1スイッチ素子Q3は、電源配線部12上の第4辺X4に近い位置に設けられている。U相第1スイッチ素子Q1、V相第1スイッチ素子Q1、W相第1スイッチ素子Q1は、それぞれ、各スイッチ素子の表面側にソース電極とゲート電極とが並んで形成され、裏面側にドレイン電極が形成されている。U相第1スイッチ素子Q1は、ゲート電極が第3辺X3側に配置され、ドレイン電極が電源配線部12に接続されるように設けられている。
【0067】
U相第1スイッチ素子Q1のソース電極は第1接続子CL1を介して中央配線部13Uに接続され、U相第1スイッチ素子Q1のゲート電極は、第4接続子CL10を介して第1ゲート配線部16Uに接続されている。V相第1スイッチ素子Q2は、ゲート電極が第4辺X4側に向くように配置され、ドレイン電極が電源配線部12に接続されるように設けられている。
【0068】
V相第1スイッチ素子Q2のソース電極は第1接続子CL2を介して中央配線部13Vに接続され、V相第1スイッチ素子Q2のゲート電極は、第4接続子CL11を介して第1ゲート配線部16Vに接続されている。W相第1スイッチ素子Q3は、ゲート電極が第4辺X4側に配置され、ドレイン電極が電源配線部12に接続されるように設けられている。W相第1スイッチ素子Q3のソース電極は、第1接続子CL3を介して中央配線部13Wに接続され、W相第1スイッチ素子Q3のゲート電極は、第4接続子CL12を介して第1ゲート配線部16Wに接続されている。
【0069】
U相第2スイッチ素子Q4,V相第2スイッチ素子Q4,W相第2スイッチ素子Q6は、それぞれ、中央配線部13U,13V,13W上の第1辺X1側の位置に設けられている。U相第2スイッチ素子Q4,V相第2スイッチ素子Q4,W相第2スイッチ素子Q6は、それぞれ、各スイッチ素子の表面側にソース電極とゲート電極とが並んで形成され、裏面側にドレイン電極が形成されている。U相第2スイッチ素子Q4は、ゲート電極が第3辺X3側に配置され、ドレイン電極が中央配線部13Uに接続されるように設けられている。U相第2スイッチ素子Q4のソース電極は、第2接続子CL4を介してソース配線部15Uに接続され、U相第2スイッチ素子Q4のゲート電極は、第5接続子CL13を介して第2ゲート配線部17Uに接続されている。V相第2スイッチ素子Q5は、ゲート電極が第4辺X4側に向くように配置され、ドレイン電極が中央配線部13Vに接続されるように設けられている。
【0070】
W相第2スイッチ素子Q5のソース電極は、第2接続子CL5を介してソース配線部15Vに接続され、W相第2スイッチ素子Q5のゲート電極は、第5接続子CL14を介して第2ゲート配線部17Vに接続されている。W相第2スイッチ素子Q6は、ゲート電極が第4辺X4側に配置され、ドレイン電極が中央配線部13Wに接続されるように設けられている。W相第2スイッチ素子Q6のソース電極は、第2接続子CL6を介してソース配線部15Wに接続され、W相第2スイッチ素子Q6のゲート電極は、第5接続子CL15を介して第2ゲート配線部17Wに接続されている。
【0071】
U相第3スイッチ素子Q7,V相第3スイッチ素子Q8,W相第3スイッチ素子Q9は、それぞれ、出力配線部14U,14V,14Wの略中央の位置に設けられている。U相第3スイッチ素子Q7,V相第3スイッチ素子Q8,W相第3スイッチ素子Q9は、それぞれ、各スイッチ素子の表面側にソース電極とゲート電極とが並んで形成され、裏面側にドレイン電極が形成されている。U相第3スイッチ素子Q7は、ゲート電極が第1辺X1側に向くように配置され、ドレイン電極が出力配線部14Uに接続されるように設けられている。U相第3スイッチ素子Q7のソース電極は、第3接続子CL7を介して中央配線部13Uに接続され、U相第3スイッチ素子Q7のゲート電極は、第6接続子CL16を介して第3ゲート配線部18Uに接続されている。V相第3スイッチ素子Q8は、ゲート電極が第1辺X1側に向くように配置され、ドレイン電極が出力配線部14Vに接続されるように設けられている。
【0072】
V相第3スイッチ素子Q8のソース電極は、第3接続子CL8を介して中央配線部13Vに接続され、V相第3スイッチ素子Q8のゲート電極は、第6接続子CL17を介して第3ゲート配線部18Vに接続されている。W相第3スイッチ素子Q9は、ゲート電極が第1辺X1側に向くように配置され、ドレイン電極が出力配線部14Wに接続されるように設けられている。W相第3スイッチ素子Q9のソース電極は第3接続子CL9を介して中央配線部13Wに接続され、W相第3スイッチ素子Q9のゲート電極は、第6接続子CL18を介して第3ゲート配線部18Wに接続されている。
【0073】
3つのシャント抵抗R1~R3はそれぞれ、ソース配線部15U,15V,15W及び接地配線部10U,10V,10Wの第1辺X1側の位置に、ソース配線部15U,15V,15W及び接地配線部10U,10V,10Wに跨って設けられている。シャント抵抗R1は、ソース配線部15Uと接地配線部10Uとを接続するように跨がって設けられている。シャント抵抗R2は、ソース配線部15Vと接地配線部10Vとを接続するように跨がって設けられている。シャント抵抗R3は、ソース配線部15Wと接地配線部10Wとを接続するように跨がって設けられている。
【0074】
サーミスタRTは、第1サーミスタ配線部LT1の第2辺X2側の端部側と第2サーミスタ配線部LT2の第2辺X2側の端部側に跨がって設けられている。
【0075】
電源端子VCC、3つのモータ端子U,V,W及び接地端子GNDは、基板Xとは別の基板等に接続される各端子の外部接続部が第2辺X2の外側位置に第2辺X2に沿って並ぶように設けられている。第3辺X3側から順番に、モータ端子U、モータ端子V、接地端子GND、電源端子VCC、モータ端子Wの順に配置されている。
【0076】
電源端子VCCは、封止部材Aの外部に配置される外部接続部と、その外部接続部に繋がる基体部と、その基体部から延びた先端部に設けられた内部接続部とを有する。電源端子VCCの内部接続部は、電源配線部12に実装された第1スイッチ素子Q2の側方位置において、電源配線部12に接続される。電源端子VCCの外部接続部は、当該内部接続部から第2辺X2方向に延びて封止部材Aの外部に突出した位置に配置される。
【0077】
モータ端子Uは、出力配線部14Uに接続される。モータ端子Vは、出力配線部14Vに接続される。モータ端子Wは、出力配線部14Wに接続される。
【0078】
複数の信号端子30は、3つの第1ゲート信号端子GTU,GTV,GTWと、3つの中央信号端子STU、STV,STWと、3つの第2ゲート信号端子GBU,GBV,GBWと、3つの第3ゲート信号端子GTU1,GTV1,GTW1と、電源信号端子VLNKSと、第1及び第2サーミスタ端子RTP,RTNと、3つの第1電流検出端子CP1,CP2,CP3と、3つの第2電流検出端子CN1,CN2,CN3である。複数の信号端子30は、基板Xとは別の基板等に接続される各端子の外部接続部が第1辺X1の外側位置に第1辺X1に沿って並ぶように設けられている。
【0079】
第1リードフレーム130は、
図5におけるそれぞれの配線部(接続部)より、
図4に示した対応関係から、封止部材の外部に配置される外部接続部(図示せず。)と1対1で接続される。接地端子GNDの第1リードフレーム130は、封止部材の外部に配置される外部接続部(図示せず。)と内部の接地配線部10U,10V,10Wを接続する。
【0080】
電子素子140が複数である場合の第1リードフレーム130は、複数の電子素子140の接続部それぞれへの配線インダクタンスを均等にすることが好ましい。電子素子140は、少なくともスイッチング素子又は整流素子であり、第1リードフレームの少なくとも一部は、少なくともスイッチング素子又は整流素子の全部又は一部を覆うよう形成されている。また、第1リードフレーム130の少なくとも一部は、接地端子として機能するものであることが好ましい。さらに、第1リードフレーム130には、制御信号に対して高電圧で大電流が流れる端子をまとめて配置するのが好ましく、このため、複数の電子素子140の接続部それぞれへの配線インダクタンス、即ち、各リードフレームのインダクタンスを均等にすることで、流れる電流変化によって生じる起電力が均等化されるため、電子素子140の制御の安定化を図ることができ、ノイズの低減効果も奏する。
【0081】
リードフレームのインダクタンスLsは、各リードフレームの長をLとし、幅をWとし、厚さをHとしたときに、以下の式で算出される。
【数1】
【0082】
この計算式により、第1リードフレーム130の各インダクタンスを均等にする設計が可能である。
【0083】
図6は、第1の実施形態を示した図である。
図6(A)は平面図、
図6(B)は断面図を示している。電子素子140が配線138と接続子で実装された基板142にリードフレームを設けている。第1リードフレーム130には、W相用リードフレーム118,電源用リードフレーム120,接地用リードフレーム122,V相用リードフレーム124,U相用リードフレーム126があり、各リードフレームのインピーダンスを均等にしている。接地用リードフレーム122は、基板142の3か所に配線する必要があるため、接地用リードフレーム122を3つに分枝した形状として、接地用分枝リードフレーム123U,接地用分枝リードフレーム123V,接地用分枝リードフレーム123Wを設けている。第2リードフレーム132は、信号端子部134のリードフレームである。
【0084】
基板142に位置する各リードフレームは、
図6(B)に示すように、電子素子140が実装された基板142の表面に立体的に形成されている。
【0085】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態を示した図である。
図7(A)は平面図、
図7(B)は断面図を示している。第1の実施形態と相違する点は、接地用分枝リードフレーム123U,接地用分枝リードフレーム123V,接地用分枝リードフレーム123Wを、他のリードフレームと異なる空間位置に設けたことである。その他は、第1の実施例と同様である。
【0086】
接地用分枝リードフレーム123U,接地用分枝リードフレーム123V,接地用分枝リードフレーム123Wを、他のリードフレームと異なる空間位置に設けたことで、電子素子140が実装された基板142の表面の対向する位置において、複数の層に立体的に形成することができる。このため、基板142の表面の対向する位置において、リードフレームが重なる場合であってもリードフレームの配置が可能となり、インピーダンスの低減を図ることができる。
【0087】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態を示した図である。
図8(A)は平面図、
図8(B)は断面図を示している。第2の実施形態と相違する点は、接地用分枝リードフレーム123U,接地用分枝リードフレーム123V,接地用分枝リードフレーム123Wに、接地用共通リードフレーム123Cを設けたことである。その他は、第2の実施例と同様である。
【0088】
接地用共通リードフレーム123Cを設けたことで、第1リードフレーム130が複数である場合において、複数の第1リードフレーム130は、それぞれの端子温度を均等化する端子温度均等化構造が形成されている。接地用共通リードフレーム123Cは、基板表面を覆う平板状のリードフレームであり、スイッチング素子や整流素子の全部又は少なくとも一部と、他の第1リードフレーム130を覆うため、端子温度を均等化する構造となっている。
【0089】
第3実施形態に係る電子モジュール110において、第1リードフレーム130のインダクタンスが均等化され、第1リードフレーム130が接続される電子素子140に流れる電流変化によって生じる起電力が均等化されるため、電子素子の制御の安定化を図ることができる。第1リードフレーム130の少なくとも一部は、スイッチング素子や整流素子の全部又は少なくとも一部を覆うよう形成されているため、特に、電子モジュール110内に形成される回路配線の寄生インダクタンスが低減する。寄生インダクタンスの低減は、電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。
【0090】
また、接地用共通リードフレーム123Cは、平板で形成されているため、電子素子140の放熱にも寄与するばかりでなく、電子素子140から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。接地用共通リードフレーム123Cは、特に、電子モジュール110内に形成される接地電位部分の回路配線の寄生インダクタンスが低減する。寄生インダクタンスの低減は、特に大電流容量の電子素子の動作時の損失低減やノイズ低減にも寄与する。また、共通の平板状リードフレームで形成した接地用共通リードフレーム123Cの構造は、大電流容量の電子素子の放熱にも寄与するばかりでなく、大電流容量の電子素子から発せられる電磁的ノイズを遮蔽する効果も奏する。
【0091】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態を示した図である。
図9(A)は平面図、
図9(B)は断面図を示している。第3の実施形態と相違する点は、接地用共通リードフレーム123Cに切り欠け部146や穴部148を設けたことである。その他は、第3の実施例と同様である。
【0092】
接地用共通リードフレーム123Cに、少なくとも切り欠け部146又は穴部148を設けたことで、端子温度均等化構造のリードフレームとなる。切り欠け部146及び穴部148は、複数であってもよい。端子温度均等化構造は、接地用共通リードフレーム123Cに切り欠け部146や穴部148を有するため、簡易な構造でインダクタンスの低減を図りつつ、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化することができる。
【0093】
端子温度均等化構造は、端子温度が均等になるようにリードフレームの面積及び形状を設定する構成である。リードフレームの面積及び形状を設定するに際しては、端子温度が均等になるように熱抵抗を設定する。この熱抵抗設定では、上記切り欠け部や穴部の他、リードフレーム表面形状で調整して設定する等してもよい。このような構成とすると、簡易な構造でインダクタンス低減を図りつつ、電源端子と出力端子と接地端子の各端子温度を均等化することができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0095】
110 電子モジュール
112 電子モジュール本体
114 放熱部
116 信号用リードフレーム
118 W相用リードフレーム
120 電源用リードフレーム
122 接地用リードフレーム
123U 接地用分枝リードフレーム
123V 接地用分枝リードフレーム
123W 接地用分枝リードフレーム
123C 接地用共通リードフレーム
124 V相用リードフレーム
126 U相用リードフレーム
128 リードフレーム
130 第1リードフレーム
132 第2リードフレーム
134 信号端子部
136 接続子
138 配線
140 電子素子
142 基板
144 電極部
146 切り欠け部
148 穴部