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特開2023-53431ハイグロホロン類の新規合成中間体及びハイグロホロン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053431
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ハイグロホロン類の新規合成中間体及びハイグロホロン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/00 20060101AFI20230406BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230406BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20230406BHJP
   C07C 49/707 20060101ALI20230406BHJP
   C07C 45/62 20060101ALI20230406BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
C07C45/00
A61K31/122
A61P31/04
C07F7/10 A
C07C49/707
C07C45/62
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162457
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社コンポン研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神島 尭明
(72)【発明者】
【氏名】野中 利之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 順
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊明
(72)【発明者】
【氏名】笠井 均
(72)【発明者】
【氏名】小関 良卓
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206CB21
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB35
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB29
4H006AC44
4H006BB25
4H039CA60
4H039CF10
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ02
4H049VQ20
4H049VQ23
4H049VQ43
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS02
4H049VS20
4H049VS26
4H049VU08
4H049VV03
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗菌活性を有するハイグロホロンB及びその誘導体の製造方法、並びにその合成中間体を提供する。
【解決手段】式(IV)の化合物の二つのヒドロキシルをそれぞれ保護し、式(V)の化合物に変換する工程、式(V)のケトンを保護した後、P3を脱保護し、式(VI)に変換する工程、及び式(VI)の化合物を酸化して、式(III)の化合物に変換する工程を含む、式(III)の化合物の製造方法とする。

(P1、P2及びP3は、各々独立に、ヒドロキシル保護基)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IV)の化合物の二つのヒドロキシルをそれぞれ保護し、式(V)の化合物に変換する工程、式(V)のケトンを保護した後、P3を脱保護し、式(VI)に変換する工程、および式(VI)の化合物を酸化して、式(III)の化合物に変換する工程を含む、式(III)の化合物の製造方法:

式中、P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
【請求項2】
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、シリル系保護基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、TMS、TES、TBDMS、TIPS、TBDPS、DMIPS、DEIPS、TDS、NDMS、TPS、DPMSまたはDTBMSである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
式(III)の化合物をM-Rと反応させて式(II)の化合物を得る工程を含む、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法:

式中、Mは、金属を示し、P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【請求項6】
さらに、式(II)の化合物を式(VII)の化合物に変換する工程を含む、請求項5に記載の製造方法(式中、P1、P2およびRは請求項5で定義したとおりである。)。
【請求項7】
さらに、触媒の存在下、酸化剤を用いて、式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換する工程を含む、請求項5に記載の製造方法(式中、P2およびRは請求項5で定義したとおりである。)。
【請求項8】
前記酸化剤が、4-N-メチルモルホリン-N-オキシド、ピリジン-N-オキシド、トリアルキルアミン-N-オキシド、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、クロライト、過酸化アルキル、過酸化アシル、及び置換または未置換の過安息香酸からなる群より選択される一つまたは複数である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記触媒が、オスミウム化合物、過マンガン酸塩、鉄酸塩、ルテニウム酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、四酸化ルテニウム、二酸化鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
式(II)の化合物を式(III)の化合物に変換する工程、式(III)の化合物を式(IV)の化合物に変換する工程、式(IV)の化合物を式(VII)の化合物に変換する工程、および式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換する工程を含む、式(I)の化合物の製造方法:

式中、Mは、金属を示し、P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
【請求項11】
Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、AlおよびSnからなる群から選ばれる金属または該金属を含む基である、請求項5または10に記載の製造方法。
【請求項12】
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる、請求項5または10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基およびの
からなる群から選ばれる1以上の基である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基である、請求項5または10に記載の製造方法。
【請求項15】
P1およびP2は、それぞれ独立して、(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基である、請求項5または10に記載の製造方法。
【請求項16】
P1およびP2は、それぞれ独立して、TMS、TES、TBDMS、TIPS、またはTBDPS
である、請求項5または10に記載の製造方法。
【請求項17】
式(III)の化合物:
式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基である。
【請求項18】
式(IV)の化合物:

式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
【請求項19】
式(VII)の化合物:

式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
【請求項20】
式(VIII)の化合物:

式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
【請求項21】
式(I’)の化合物:

式中、R1は、
置換基を有していてもよいC1~C11アルキル、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
【請求項22】
R1は、置換基を有していてもよいC2~C12アルケニルである、請求項21に
記載の化合物。
【請求項23】
請求項21または22に記載の化合物、またはその塩を含有する医薬組成物。
【請求項24】
細菌感染症を治療するための請求項23に記載の医薬組成物。







【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性を有するハイグロホロンBおよびその誘導体の製造方法、およびその合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、耐性菌の種類とその耐性率が年々増加傾向にあり、何も対策を打たない場合は2050年における耐性菌による死者は1000万人を超えると予測されている(O’Neill, J.ら、抗菌薬耐性の概説:薬物耐性感染症に関する世界的な取り組み:最終報告と勧告、2016年)。したがって、耐性菌は緊急に取り組むべきヘルケア上の課題であり、それらに対抗しうる新規抗菌薬の開発は世界的にも推し進められている。しかし、現在の新規抗菌薬の開発戦略は既存の抗菌薬の中心骨格を変えずに、側鎖や周りの官能基のみを菌に合わせて変更することがほとんどである。この戦略は短期的に見れば効果的だが、数年以内に新たな耐性菌を生み出すため根本的な解決法とは言えない。そのため、従来の抗菌薬とは異なる新たな中心骨格を有する新規抗菌薬の探索・開発が求められている。
【0003】
ハイグロホロン類は2004年にライプニッツ植物生化学研究所の研究者らによってキノコ類hygrophorousから発見された炭素五員環、多数のヒドロキシ(OH)基そして長い炭素鎖を有する天然有機化合物である。また、2006年にキノコから極微量単離したハイグロホロンAの抗菌活性評価を行っており、既存の医薬品と同等の、強い抗菌作用を示したことが報告されている。その後も多くの種類のキノコ(Hygrophorus persoonii、Hygophorus olivaceoalbus、Hygrophorus pustulatus、Hygrophorus latitabundus、Hygrophorus abieticolaなど)から単離され、現在ハイグロホロンA~Hまで化合物データベースに登録されている。
【0004】
高い抗菌活性を示し、新規抗菌薬のリード化合物として期待されるハイグロホロン類であるが、報告されたその製造方法の数は少なく、以下の3報のみである。
【0005】
特許文献1には、人または家畜の真菌症の治療に使用されるハイグロホロンB12(物質特許)が開示されている。
【0006】
製造方法として、D-マンノースを出発原料として、6-エピ-ハイグロホロンB14及び4-エピ-ハイグロホロンD14を合成する方法が報告されている(非特許文献1)。
【0007】
別の製造方法として、キノコの1次代謝物である不飽和脂肪酸を原料とした生体内合成を模倣したハイグロホロンB12の合成法が報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP3087981A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chemistry Select 2018, 3, 9596-9599
【非特許文献2】Eur. J. Org. Chem. 2015, 2357-2365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、ハイグロホロンB12のみの適応(使用)方法について記載しているが、本願のような誘導体の使用について想定していない。
【0011】
非特許文献1については、マンノースから合成しているため光学活性体として生成物の合成が可能であるが、側鎖上のOH(6位または4位)の立体制御が不可能であり、エピ体しか合成できない。また、合成の最初期で側鎖の長さを決めているため誘導体の合成も課題となっている。
【0012】
非特許文献2は、1次代謝物である不飽和脂肪酸を原料としているため、誘導体の合成を想定していない。
【0013】
これらの先行技術では極限られたターゲットの合成が開示されているのみで、前述した新たな中心骨格を有する新規抗菌薬の探索・開発に課題を残す。抗菌薬を含めた医薬品の開発を視野に入れた製造では上記の天然有機化合物あるいはそのエピ体のみだけではなく、より多くのバリエーション(誘導体)の合成と活性評価によるデータ収集が必要となる。しかしながら、上記の手法ではターゲットを絞った1、2種類を合成するには効率的だが、抗菌活性評価を視野に入れた多くの誘導体の合成には適しているとは言い難い。本発明は、上記の従来技術の問題点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような状況に鑑み、本発明者らは、ハイグロホロン誘導体びその製造方法について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、シクロペンテノンを出発原料として、合成した鍵中間体を中心に側鎖に相当するセグメントの種類を任意に選択することにより、多くのハイグロホロン誘導体を有機合成化学的に提供することができることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき本発明の完成に至った。。
【0015】
すなわち、本発明は、下記記載の発明を提供することにより、上記課題を解決したものである。
(1)
式(IV)の化合物の二つのヒドロキシルをそれぞれ保護し、式(V)の化合物に変換する工程、式(V)のケトンを保護した後、P3を脱保護し、式(VI)に変換する工程、および式(VI)の化合物を酸化して、式(III)の化合物に変換する工程を含む、式(III)の化合物の製造方法:

式中、P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
(2)
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、シリル系保護基である、(1)に記載の製造方法。
(3)
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基である、(1)に記載の製造方法。
(4)
P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、TMS、TES、TBDMS、TIPS、TBDPS、DMIPS、DEIPS、TDS、NDMS、TPS、DPMSまたはDTBMSである、(1)に記載の製造方法。
(5)
式(III)の化合物をM-Rと反応させて式(II)の化合物を得る工程を含む、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法:

式中、Mは、金属を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
(6)
さらに、式(II)の化合物を式(VII)の化合物に変換する工程を含む、(5)に記載の製造方法(式中、P1、P2およびRは、(5)で定義したとおりである。)。

(7)
さらに、触媒の存在下、酸化剤を用いて、式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換する工程を含む、(5)に記載の製造方法(式中、P2およびRは、(5)で定義したとおりである。)。

(8)
前記酸化剤が、4-N-メチルモルホリン-N-オキシド、ピリジン-N-オキシド、トリアルキルアミン-N-オキシド、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、クロライト、過酸化アルキル、過酸化アシル、及び置換または未置換の過安息香酸からなる群より選択される一つまたは複数である、(7)に記載の製造方法。
(9)
前記触媒が、オスミウム化合物、過マンガン酸塩、鉄酸塩、ルテニウム酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、四酸化ルテニウム、二酸化鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、(7)に記載の製造方法。
(10)
式(IV)の化合物を式(III)の化合物に変換する工程、式(III)の化合物を式(IV)の化合物に変換する工程、式(IV)の化合物を式(VII)の化合物に変換する工程、および式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換する工程を含む、式(I)の化合物の製造方法:

式中、Mは、金属を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
(11)
Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、AlおよびSnからなる群から選ばれる金属または該金属を含む基である、(5)または(10)に記載の製造方法。
(12)
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる、
(5)または(10)に記載の製造方法。
(13)
前記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基およびの
からなる群から選ばれる1以上の基である、(12)に記載の製造方法。
(14)
P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基である、(5)または(10)に記載の製造方法。
(15)
P1およびP2は、それぞれ独立して、(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基である、(5)または(10)に記載の製造方法。
(16)
P1およびP2は、それぞれ独立して、TMS、TES、TBDMS、TIPS、TBDPS、DMIPS、DEIPS、TDS、NDMS、TPS、DPMSまたはDTBMSである、(5)または(10)に記載の製造方法。
(17)
式(III)の化合物:

式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基である。
(18)
式(IV)の化合物:

式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
(19)
式(VII)の化合物:

式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
(20)
式(VIII)の化合物:

式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
(21)
式(I’)の化合物:

式中、Rは、
置換基を有していてもよいC1~C11アルキル、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。
(22)
R1は、置換基を有していてもよいC2~C12アルケニルである、(21)に
記載の化合物。
(23)
(21)または(22)に記載の化合物、またはその塩を含有する医薬組成物。
(24)
細菌感染症を治療するための(23)に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多くのハイグロホロン誘導体を有機合成化学的に提供することができる。
【0017】
本発明によれば、多くの新規なハイグロホロン類の合成中間体を提供することができる。
【0018】
本発明によれば、抗菌作用を有する新規なハイグロホロン類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において用いられる用語について以下に説明する。特に言及しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いた用語は以下に述べる意味を有する。
【0020】
炭化水素基の例は、直鎖または分枝鎖の炭化水素基、および環式の炭化水素基を含む。ここで、いずれの炭化水素基も、1以上の-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-により介在されていてもよい。Rの例は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニルシクロアルキル、アリール等を含む。
【0021】
直鎖または分枝鎖の炭化水素基の例は、アルキル、アルケニル、アルキニル等を含む。
【0022】
本明細書において、環式の炭化水素基とは、環を構成する原子が全て炭素原子である芳香族または非芳香族の、単環式または多環式の環式基を意味する。環式の炭化水素基の例は、シクロアルキル、アリール等を含む。
【0023】
C1~C12アルキルとは、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを意味する。
【0024】
C1~C12アルキルの具体例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0025】
C2~C12アルケニルとは、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニルを意味する。
【0026】
C2~C12アルケニルの具体例は、ビニル、プロペニル、ブテニル、プロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
C2~C12アルキニルとは、2~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキニルを意味する。
【0028】
C2~C12アルキニルの具体例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
シクロアルキルの例は、C3~C8シクロアルキル、C5~C6シクロアルキル等、好ましくはC5~C6シクロアルキルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0030】
C3~C8シクロアルキルとは、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキルを意味する。
【0031】
C3~C8シクロアルキルの具体例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルである。
【0032】
C5~C6シクロアルキルの具体例は、シクロペンチルおよびシクロヘキシルある。
【0033】
「アリール基」とは、単環式または二環式芳香族性炭化水素基を示し、好
ましくはフェニル基、ナフチル基等のC6~10アリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0034】
「置換基を有していてもよい」とは、置換基を有していても、または無置換であってもよいことを意味する。置換基を有している場合、置換基は前記の置換可能な位置に、1~5個、好ましくは1~3個を有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は、各置換基はそれぞれ同一または異なっていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、好ましい置換基の例は、C1~C6アルキル基、C1~C6アルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0035】
C1~C6アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基またはヘキシル基等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0036】
C1~C6アルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等をいい、好ましくはフッ素原子及び塩素原子である。
【0038】
本発明で用いられるヒドロキシル保護基は、本発明の分野で公知の適切なヒドロキシル保護基である。“Protective Groups in Organic Synthesis”,5Th Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wutsに記載のヒドロキシル保護基を参照。例えば、ヒドロキシル保護基は好ましくは(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基、例、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、ジメチルイソプロピルシリル(DMIPS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、tert -ブチルジメチルシリル(TDS)、(2-ノルボニリルジメチルシリル)NDMS、(トリフェニルシリル)TPS、(ジフェニルメチルシリル)DPMSまたはジtert -ブチルメチルシリル(DTBMS)等である。ヒドロキシル保護基は、またC1-10アルキルまたは置換アルキル基、例、メチル、tert-ブチル、アリル、ベンジル、メトキシメチル、エトキシエチル、2-テトラヒドロピラニル(THP)等であってもよい。ヒドロキシル保護基は、また(C1-10アルキルまたはアリール)アシル基、例、ホルミル、アセチル、ベンゾイル等であってもよい。ヒドロキシル保護基は、また(C1-6アルキルまたはC6-10アリール)スルホニル基または(C1-6アルコキシルまたはC6-10アリールオキシ)カルボニル基であってもよい。
【0039】
「塩」とは、無機酸塩または有機酸塩から成り;該無機酸塩が、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩およびリン酸塩から成る群から選択され、より好ましくは塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩から成る群から選択され;該有機酸塩が、好ましくは2,5-ジヒドロキシベンゼンギ酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフタレンギ酸塩、酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、アセトヒドロキサム酸塩、アジピン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンギ酸塩、4-アセトアミドベンゼンギ酸塩、4-アミノベンゼンギ酸塩、カプリン酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、カンファースルホン酸塩、アスパラギン酸塩、樟脳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、エリソルビン酸塩、乳酸塩、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、ピログルタミン酸塩、酒石酸塩、ラウリル硫酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、エチル-1,2-ジスルホン酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクトン酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、2-オキソグルタル酸塩、グリコール酸塩、馬尿酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ラウリン酸塩、樟脳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、エンボン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、4-アミノサリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、ブタンジオアート、チオシアン酸塩、ウンデシレン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、コハク酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩から成る群から選択され、より好ましくはメシル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩および1,5-ナフタレンジスルホン酸塩から成る群から選択される。
【0040】
「細菌感染症」とは、その生物が脊椎動物、無脊椎動物、魚、植物、トリ、又は哺乳動物であるかどうかに関わらず、病原性細菌が宿主生物へ侵入し、増殖することによって引き起こす様々な疾患を指す。特に限定されないが、例えば、気道感染症、尿路感染症、呼吸器感染症、腹腔内感染、敗血症、腎炎、胆嚢炎、口腔内感染症、心内膜炎、感染性心内膜炎、肺炎、骨髄膜炎、中耳炎、腸炎、蓄膿、創傷感染、日和見感染、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、外傷・熱傷および手術創等の二次感染、骨髄炎、関節炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲腫瘍を含む)、肺腫瘍、膿胸、慢性呼吸器病変の二次感染、複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、腹膜炎、腹腔内腫瘍、胆管炎、肝腫瘍、子宮内感染、子宮付属器炎、子宮旁結合織炎、化膿性髄膜炎、眼窩感染、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼内炎(前眼球炎を含む)、顎骨周辺の蜂巣炎、顎炎等が挙げられる。別の態様として、本明細書において提供される任意の医薬組成物は、複雑性尿路感染症(cUTI)または院内感染肺炎/人工呼吸器関連肺炎(HABP/VABP)の治療のために使用することができる。当該病原性細菌は、特に限定されないが、好ましくはグラム陰性菌、より好ましくは多剤耐性グラム陰性菌が挙げられる。起因菌となる菌種としては、特に限定されないが、Enterobacteriaceaeのグラム陰性菌(大腸菌、クレブシエラ、セラチア、エンテロバクター、シトロバクター、モルガネラ、プロビデンシア、プロテウス等)、呼吸器に定着するグラム陰性菌(ヘモフィルス、モラキセラ等)およびブドウ糖非発酵のグラム陰性菌(シュードモナス、ステノトロフォモナス、バークホルデリア、アシネトバクター等)等が挙げられる。別の好ましい態様としては、FptA系透過経路を有する菌種(例えば、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス エールジノーサ(Pseudomonas aeruginosa、緑膿菌)等)によって引き起こされる細菌感染症が挙げられる。好ましくは、B.cepacia, S.marcescens, およびP.aeruginosaからなる群から選択される菌種によって引き起こされる細菌感染症が挙げられる。別の好ましい態様としては、β-ラクタマーゼ産生の薬剤耐性グラム陰性菌、より好ましくはESBL、AmpC、KPC型、IMP 型、VIM型およびPER型などからなる群から選択される1または2以上のβ-ラクタマーゼを産生している薬剤耐性グラム陰性菌が挙げられる。別の好ましい態様としては、Enterobacteriaceac、P.aeruginosa,およびA baumanniiからなる群から選択される細菌種、より好ましくは、大腸菌(Escherichia coli),肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・クロアカ コンプレックス(Enterobacter cloacae complex)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、シトロバクター・フレウンディ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・フレウンディ コンプレックス(Citrobacter freundii complex)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、シュードモナス エールジノーサ(Pseudomonas aeruginosa、緑膿菌)およびアシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)からなる群から選択される細菌種によって引き起こされる細菌感染症が挙げられる。また別の態様として、セリン型β-ラクタマーゼ(クラスA,C,およびDのβ-ラクタマーゼ)を複数産生した多剤耐性グラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染症が挙げられる。さらに別の態様として、クラスBのβ-ラクタマーゼに加えて、セリン型β-ラクタマーゼを複数産生した多剤耐性グラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染症が挙げられる。
【0041】
「治療」は、既に疾患又は状態に罹患している患者に処置を施すことを意味し、患者における特定の障害の症状の軽減、または特定の障害に関連する確かめられる測定値の改善を包含する。本明細書で使用される場合の「患者」とは、ヒトを含む哺乳類を意味する。
【0042】
本明細書に記載の化合物は不斉中心を含んでいてもよく、したがって鏡像異性体として存在してもよい。本明細書に記載の化合物が2つ以上の不斉中心を有する場合、それらはさらにジアステレオマーとして存在してもよい。鏡像異性体及びジアステレオマーはより広いクラスの立体異性体に入る。実質的に純粋な分割された鏡像異性体、そのラセミ混合物、ならびにジアステレオマーの混合物等の、全ての可能な立体異性体は、含まれることが意図される。本明細書において開示する化合物の全ての立体異性体は、含まれることが意図される。特に記載がない限り、1つの異性体への言及は任意の可能な異性体に適用される。異性体組成が明記されていない場合はいつも、全ての可能な異性体が含まれる。
【0043】
本発明の一実施態様では、本発明は、式(IV)の化合物の二つのヒドロキシルをそれぞれ保護し、式(V)の化合物に変換する工程、式(V)のケトンを保護した後、P3を脱保護し、式(VI)に変換する工程、および式(VI)の化合物を酸化して、式(III)の化合物に変換する工程を含む、式(III)の化合物の製造方法を提供する(スキーム1)。
スキーム1

式中、P1、P2およびP3は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
好ましくは、ヒドロキシル保護基であり、より好ましくは、(C1-10アルキルまたはアリール)3シリル基であり、もっとより好ましくは、TMS、TES、TBDMS、TIPS、TBDPS、DMIPS、DEIPS、TDS、NDMS、TPS、DPMSまたはDTBMSであるが、これらに限定するものではない。
【0044】
(IV)の化合物の二つの水酸基の保護について説明する。(IV)の化合物の二つの水酸基をそれぞれ、例えば、(Corey, E. J. et al., J. Am. Chem. Soc., 94, 6190, 1970; Morita, T. et al., Tetrahedron Lett.,21, 835, 1980; Y. Kita, et al., Tetrahedron Lett., 4311, 1979に記載されたシリルエーテル化等。総説として、Lalondw, M., Chan, T. H., Synthesis, 817-845, 1985等)に示す方法またはこれに準じた方法により、塩基の存在下に、シリルハライドと反応させることにより、式(V)の化合物へ変換ことができる。
【0045】
(シリルハライド)
シリルハライド化合物の種類は特に限定されず、当業界で用いられるものはいずれも本発明の方法に使用できる。例えば、トリアルキルシリルハライド化合物、モノアルキルジアリールシリルハライド化合物、トリアリールシリルハライド化合物等を用いることができる。シリルハライド化合物がアルキル基を有する場合には、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、またはtert-ブチル基等を用いることができる。これらのうち、メチル基またはエチル基が好ましい。シリルハライド化合物がアリール基を有する場合
にはフェニル基等を用いることができる。シリルハライド化合物を構成するハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等を用いることができ、塩素原子を用いることが好ましい。シリルハライド化合物として、より具体的には、トリメチルシリルクロライド(トリメチルクロロシランと呼ばれる場合もある。以下の化合物についても同様である。)、トリエチルシリルクロライド、tert-ブチルジメチルシリルクロライド、tert-ブチルジフェニルシリルクロライド、トリフェニルシリルクロライド等を挙げることができる。
【0046】
(塩基)
使用塩基としては、有機塩基及び無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、これらに限られないが、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、n-ブチルリチウム、カリウムtert-ブトキシドが挙げられ、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。無機塩基としては、これらに限られないが、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸セシウムが挙げられる。塩基の使用量としては、原料化合物のモル以上が好ましい。さらには、原料化合物1モルに対して通常1.0~10.0モルの範囲を例示できるが、好ましくは2.0~6.0モルの範囲が良く、より好ましくは2.0~4.0モルの範囲であることが良い。
【0047】
(溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、本発明の反応は溶媒の存在下で実施することが好ましい。本発明の反応における溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。
【0048】
本発明の反応における溶媒としては、例えば、用いる溶媒系の具体的な好ましい例としては、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、好ましくはテトラヒドロフラン(THF))、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF))、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等)が含まれるが、これらに限定されるものではない。溶媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。本発明の反応における溶媒の使用量は当業者により適切に調整されることができる。
【0049】
(反応温度)
本発明の反応温度は、特に制限されない。一つの態様においては、収率の向上、副生成物の抑制及び経済効率等の観点から、-20℃~50℃(すなわち、マイナス20℃~プラス50℃)、好ましくは-10℃~30℃(すなわち、マイナス10℃~プラス30℃)、より好ましくは0℃~25℃の範囲を例示できる。
【0050】
(反応時間)
本発明の反応時間は、特に制限されない。一つの態様においては、収率の向上、副生成物の抑制及び経済効率等の観点から、0.5時間~120時間、好ましくは1時間~72時間、より好ましくは1時間~48時間、さらに好ましくは1時間~24時間の範囲を例示できる。しかしながら、本発明の反応時間は当業者により適切に調整されることができる。
【0051】
本反応の後処理としては、反応液から生成物を取得するための一般的な処理を行えば良い。例えば、反応終了後の反応液に水、塩酸等を添加して中和し、一般的な抽出溶媒、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から反応溶媒及び抽出溶媒を減圧留去すると、目的物が得られる。このようにして得られる目的物は、必要であれば、シリカゲルクロマトグラフィーや蒸留、再結晶等の一般的精製を行い、さらに純度を高めても良い。
【0052】
式(V)の化合物を式(VI)の化合物への変換について説明する。式(V)の化合物の第1級ヒドロキシ保護基P3を切断した後、例えば(Tetrahedron, 1987, 43, 4669-4678)に示す方法またはこれに準じた方法により、ケトンを、O-(tert-ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミンのようなアミン誘導体と反応させることにより、式(VI)の化合物へ変換ことができる。
【0053】
シリル基のような保護基の切断剤としては、好ましくはピリジニウムトルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、メタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、希塩酸、希硫酸のような希鉱酸、またはテトラブチルアンモニウムフルオライドのようなアンモニウムフルオライドであり、より好ましくはパラピリジニウムトルエンスルホン酸である。使用される不活性溶媒は、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンまたはメチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エ-テル、ジメトキシエタンのようなエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくはアセトンと水の混合溶媒である。反応温度は、通常0℃~80℃(好ましくは10℃~40℃)である。反応時間は、通常10分間~24時間(好ましくは30分間~8時間)である。
【0054】
アミン誘導体としては、例えば、 O-(tert-ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン、O-(メチル)ヒドロキシルアミン、O-(イソブチル)ヒドロキシルアミン等、またはそれらの塩酸塩が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0055】
式(VI)の第一級アルコールをDess-Martin試薬と反応させることにより、式(III)のアルデヒド化合物を合成することができる。
【0056】
本発明の一実施態様では、本発明は、式(III)の化合物をM-Rと反応させて式(II)の化合物を得る工程を含む、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の製造方法を提供する(スキーム2)。
スキーム2

式中、Mは、金属を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、P1およびP2は、それぞれ独立して、ヒドロキシル保護基を示す。
【0057】
式(III)の化合物を例えば、(Organic Letters, 2002,4, 1027-1029)に示す方法またはこれに準じた方法により、M-Rと反応させることにより、式(II)の化合物へ変換ことができる。
【0058】
Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、AlおよびSnからなる群から選ばれる金属または該金属を含む基である。
【0059】
炭化水素基としては、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~C10アリールが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0060】
式(II)の化合物を式(I)への変換について説明する。式(II)の化合物を式(VII)の化合物へ変換した後、酸化剤と反応させて、式(VIII)の化合物へ変更し、最後にの第2級ヒドロキシ保護基P2を切断したことにより式(I)の化合物へ変換ことができる(スキーム3)。
スキーム3
【0061】
P1およびP2を切断する方法は、前記で説明した通りである。
【0062】
(酸化剤)
本発明で使用される酸化剤は、反応が進行する限りは、いずれの酸化剤でもよい。対応する原料化合物(i)を目的化合物(ii)に酸化できる酸化剤を用いることができる。本発明で使用される酸化剤の例は、4-N-メチルモルホリン-N-オキシド、ピリジン-N-オキシド、トリアルキルアミン-N-オキシド、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、クロライト、過酸化アルキル、過酸化アシル、及び置換または未置換の過安息香酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。安全性、反応性、選択性及び経済効率等の観点から、好ましい酸化剤は4-N-メチルモルホリン-N-オキシドである。酸化剤は、単独でまたは任意の割合の2種以上の組み合わせで使用してもよい。また、酸化剤の形態は、反応が進行する限りは、いずれの形態でもよく、当業者により適切に選択されることができる。
【0063】
収率の向上及び経済効率等の観点から、本発明における酸化剤の下限としては、一般式(i)で表されるオレフィン(原料化合物)1モルに対して、0.9モル以上、好ましくは1.0モル以上を例示することができる。
また、安全性、副生成物の抑制及び経済効率等の観点から、本発明における酸化剤の使用量としては、一般式(i)で表されるオレフィン(原料化合物)1モルに対して、0.9~4.0モル、好ましくは1.0~3.0モル、より好ましくは1.0~2.5モルを例示することができる。しかしながら、本発明における酸化剤の使用量は、目的と状況に応じて、当業者により適宜調整されることができる。
【0064】
(触媒)
酸化工程に用いられる触媒としては、オスミウム化合物、過マンガン酸塩、鉄酸塩、ルテニウム酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、硝酸塩、四酸化ルテニウム、二酸化鉛等及びそれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、オスミウム化合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
用いられるオスミウム触媒は一般に酸化状態+8及び+6のオスミウム化合物である。しかしながら、低い酸化状態のオスミウム触媒前駆体を用いることも可能である。これらは反応条件下触媒活性のあるOs(VIII)及びOs(VI)種に転換される。オスミウム触媒または触媒前駆体としては、例えば、OsO4、K2Os2(OH)4、Na2Os2(OH)4、Os3(CO)12、OsCl3、H2OsCl6、〔CF3SO3Os(NH3)5〕(O3SCF3)2、ビニルピリジン担体上のOsO4、ButNOsO3を用いることが可能である。
【0066】
本発明の方法においては、オスミウム触媒はオレフィンに対し触媒量で用いられる。一般に、使用量はオレフィンを基準として0.00001~0.2モル、好ましくは0.0001~0.1モル、そして特に好ましくは0.0005~0.08モルである。
【0067】
(反応に使用される溶媒および使用量)
一つの態様では、本発明の反応は、溶媒の存在下で行われる。収率、反応性、原料類の溶解性及び経済効率等の観点から、本発明の反応に使用される溶媒の好ましい例は、反応が進行する限りはいずれの溶媒であってもよく、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等)、アルキル尿素類(例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme)、トリグリム(triglyme)等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルシクロペンチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(すなわち、酢酸n-ブチル)、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、水及び任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の反応に使用される溶媒の使用量は、反応が進行する限りはいずれの量でもよい。収率及び経済効率等の観点から、一般式(i)の化合物1モルに対して、0.1~10L(リットル)、好ましくは0.1~5L、より好ましくは0.5~5L、さらに好ましくは1~4Lの範囲を例示することができるが、溶媒の使用量は当業者により適切に調整されることができる。溶媒の組み合わせを使用するときは、上記に例示された溶媒の使用量は、反応で使用される全ての溶媒の合計量を意味する。2種以上の溶媒の組み合わせを用いるときは、2種以上の溶媒の割合は、反応が進行する限りは、いずれの割合でもよい。
【0068】
(反応温度および反応時間)
反応が進行する限りは、本発明の反応温度は特に制限されない。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、0℃~100℃、好ましくは20~50℃の範囲を例示することができる。しかしながら、本発明の反応温度は当業者により適切に調整されることができる。
また、本発明の反応時間は、特に制限されない。収率、副生成物抑制及び経済効率等の観点から、0.5時間~48時間、好ましくは1時間~24時間、さらに好ましくは1時間~12時間の範囲を例示できる。しかしながら、本発明の反応時間は当業者により適切に調整されることができる。
【0069】
本発明の一実施態様では、本発明は、式(II)の化合物を式(III)の化合物に変換する工程、式(III)の化合物を式(IV)の化合物に変換する工程、式(IV)の化合物を式(VII)の化合物に変換する工程、および式(VII)の化合物を式(VIII)の化合物に変換する工程を含む、式(I)の化合物の製造方法を提供する(スキーム4)。
スキーム4
【0070】
i)鍵中間体を経由するシクロペンテノンからのハイグロホロン類の合成法
スキーム5に示されているように、シクロペンテン(式(IV)の化合物)を原料として、有機化学的手法(化学合成)により各官能基を変換し、鍵中間体(式(III)の化合物)を合成する。得られた鍵中間体に対して炭素数12の炭素鎖を導入することで合成した化合物の官能基を変換することで、目的とするハイグロホロンB12が得ることができる。
スキーム5 ハイグロホロンB12(アルキン体を含む)の合成経路

【0071】
また、スキーム6に示されているように、任意の炭素鎖を選択することで、より、長い炭素鎖あるいはより短い炭素鎖を持つハイグロホロン誘導体へと展開可能である。
スキーム6 素鎖の異なるハイグロホロン誘導体の合成経路
【0072】
3重結合を還元せずにエノン部位を構築することにより、3重結合をもつハイグロホロン類も合成できる。さらに、出発原料に光学活性体を用いることで最終生成物も光学活性体を得ることができる。
【0073】
スキーム7は、ハイグロホロンB12及びそのアルキン体の全合成を示す。
スキーム7
【0074】
シクロペンテノンから単工程で鍵中間体を合成することが可能である。鍵中間体は天然物であるハイグロホロンB12の炭素鎖を導入することに適している。さらに任意の炭素鎖なども導入することができ、より多くのハイグロホロン誘導体へと誘導可能となるため、従来の合成法の課題であった合成ターゲットの自由度の低さを克服することができる。
【0075】
本発明の一実施態様では、式(III)の化合物:

(式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基である)を提供する。
【0076】
本発明の一実施態様では、式(IV)の化合物:

(式中、P1およびP2は、それぞれ独立して、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。)を提供する。
【0077】
本発明の一実施態様では、式(VII)の化合物:

式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。)を提供する。
【0078】
本発明の一実施態様では、式(VIII)の化合物:

(式中、P2は、シリル系保護基であり、
Rは、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。)を提供する。
【0079】
本発明の一実施態様では、式(I’)の化合物:

(式中、R1は、
置換基を有していてもよいC1~C11アルキル、
置換基を有していてもよいC1~C12アルキル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルケニル、
置換基を有していてもよいC2~C12アルキニル、
置換基を有していてもよいC3~C8シクロアルキル、および
置換基を有していてもよいC6~10アリール基からなる群から選ばれる。)を提供する。好ましくは、R1は、置換基を有していてもよいC2~C12アルケニルである。
【0080】
本発明で開発した鍵中間体は新規物質であり、そこから派生される合成中間体を含めたハイグロホロン誘導体もそのほんどが新規物質である。また、ハイグロホロン類の誘導体の報告例は、前記の2例のみである。従って、本発明の鍵中間体を経由して合成可能なハイグロホロン類であれば、炭素鎖のみならず芳香族を結合可能であると考えられ、網羅的に新規化合物を合成できるため、既知の製造方法(合成法)よりもバリエーションの探索・製造という点では優れているといえる。
【0081】
本発明の一実施態様では、式(I’)の化合物、またはその塩を含有する医薬組成物を提供する。
【0082】
本発明の一実施態様では、細菌感染症を治療するため式(I’)の化合物、またはその塩を含有する医薬組成物を提供する。
【実施例0083】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0084】
本明細書中、室温は10℃から35℃を示す。なお、実施例における各物性の測定には次の機器を用いた。
【0085】
H核磁気共鳴スペクトル(H-NMR):AVANCE-400(Burker社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン
13C核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR):AVANCE-400(Burker社製)、内部基準物質:テトラメチルシラン
【0086】
質量分析:MircOTOF-Q II-S1(Burker社製)
【実施例0087】
2-{[(tertブチルジメチルシリル)オキシ]メチル}-4-[(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オンの製造
公知文献(T. Kamishima, M. Suzuki, S. Aoyagi, T. Watanabe, Y. Koseki, H. Kasai, Tetrahedron Lett., 60, 1375-1378 (2019))に従って、化合物1を合成した。トリイソプロピルトリフラート (1.8 mL、6.72 mmol)と2、6-ルチジン(0.97 mL、8.42 mmol)を化合物1(1.36 g、5.61 mmol)のジクロロメタン溶液に加え、アルゴン雰囲気、室温で1.5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物2(2.23g、98%)を無色油状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.078 (s, 3H), 0.085 (s, 3H), 0.92 (s, 9H), 1.06-1.12 (m, 21H), 2.39 (dd, J = 2.0, 18.2 Hz, 1H), 2.81 (dd, J = 5.8, 18.2 Hz, 1H), 4.37 (t, J = 2.0 Hz, 2H), 4.99-5.03 (m, 2H), 7.32 (q, J = 2.2, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ -5.31, -5.30, 12.2 (3C), 18.04-18.05 (6C), 18.4, 25.9 (3C), 46.8, 58.0, 69.2, 147.2, 157.2, 205.1 ppm
【実施例0088】
2-(ヒドロキシメチル)-4-[(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オンの製造
スカンジウムトリフラート(173 mg、0.352 mmol)と水(2.5 mL、140 mmol)を化合物2(2.80 g、7.04 mmol)のアセトニトリル溶液に加え、室温で5時間半攪拌した。飽和塩化炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物3(1.53 g、81%)を無色油状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 1.05-1.16 (m, 21H), 2.11-2.15 (m, 1H), 2.39 (dd, J = 2.1, 18.3 Hz, 1H), 2.83 (dd, J = 6.0, 18.6 Hz, 1H), 4.34-4.45 (m, 2H), 5.02-5.05 (m, 1H), 7.31-7.32 (m, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 12.2, 18.03, 18.06, 46.5, 57.6, 69.3, 145.5, 157.7, 206.1 ppm
【実施例0089】
(E)-5-{[(tert-ブチルジメチル)オキシ]イミノ}-3-[(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン-1-カルボアルデヒドの製造

O-(tert-ブチルジメチルシリル)ヒドロキシルアミン(775 mg、5.26 mmol)、無水硫酸マグネシウム(169 mg、1.40 mmol)及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(88 mg、0.351 mmol)を化合物3(1.0 g、3.51 mmol)のトルエン溶液に加え、アルゴン雰囲気、加熱還流で1.5時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物(1.98 g)のジクロロメタン溶液にデスマーチン試薬(1.78 g、4.21 mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。クロロホルムで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物4をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物5(1.14 g、79%, 2工程)を淡黄色の油状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.190 (s, 3H), 0.195 (s, 3H), 0.95 (s, 9H), 1.05-1.17 (m, 21H), 2.64 (dd, J = 2.9, 18.3 Hz, 1H), 3.26 (dd, J = 6.9, 18.5 Hz, 1H), 5.04-5.07 (m, 1H), 7.12-7.13 (d, J = 2.9 Hz 1H), 10.0 (s, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ -5.1, 12.2, 18.1, 18.4, 26.2, 37.6, 72.3, 138.9, 152.1, 163.8, 188.0 ppm
【実施例0090】
(E)-2-(1-ヒドロキシトリデク-2-イン-1-イル)-4-(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン O-(tert-ブチルジメチル)オキシムの製造
n-ブチルリチウム(1.59M ヘキサン溶液、1.14 mL、1.82 mmol)を1-ドデセン(0.39 mL、1.82 mmol)の2-メチルテトラヒドロフラン溶液に加え、アルゴン雰囲気、-20℃で30分攪拌した。続いて、化合物5(500 mg、1.21 mmol)のの2-メチルテトラヒドロフラン溶液を加えてさらに1時間攪拌した。飽和ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物6(644 mg、92%)を淡黄色のあめ状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.168-0.17 (6H), 0.195 (s, 3H), 0.87 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 0.93-0.94 (9H), 1.05-1.14 (m, 21H), 1.26-1.43 (m, 14H), 1.48-1.51 (m, 2H), 2.21-2.28 (m, 2H), 2.54 (dd, J = 2.2, 18.4 Hz, 1H), 3.15-3.22 (m, 1H), 3.63 (d, J = 5.3Hz, 0.5H), 3.82 (d, J = 5.3Hz, 0.5H), 4.94-4.98 (m, 1H), 5.19-5.20 (m, 0.5H), 5.28-5.29 (m, 0.5H), 6.45-6.46 (m, 0.5H), 6.49-6.50 (m, 0.5H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ -5.2, 12.1, 12.2, 14.3, 18.1, 18.4, 18.89, 18.9, 22.8, 26.18, 22.19, 28.7, 29.1, 29.3, 29.5, 29.7, 29.8, 32.0, 37.7, 37.8, 59.5, 59.6, 72.21, 72.24, 77.7, 77.9, 86.9, 87.0, 141.7, 141.8, 143.2, 143.6, 166.2, 166.5 ppm
【実施例0091】
(E)-2-(1-ヒドロキシトリデク-2-イン-1-イル)-4-(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン オキシムの製造
スカンジウムトリフラート(12.8 mg、0.0259 mmol)と水(0.19 mL、10.4 mmol)を化合物6(300 mg、0.519 mmol)のアセトニトリル溶液に加え、室温で1時間半攪拌した。飽和塩化炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物7(206 mg、91%)を淡黄色のあめ状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.05-1.17 (m, 21H), 1.22-1.39 (m, 14H), 1.49-1.54 (m, 2H), 2.23-2.28 (m, 2H), 2.59 (dd, J = 2.3, 18.3 Hz, 1H), 3.15 (brs, 0.5H), 3.18-3.25 (m, 1H), 3.36 (brs, 0.5H), 4.34-4.45 (m, 2H), 4.97-5.02 (m, 1H), 5.20 (s, 0.5H), 5.27 (s, 0.5H), 6.53-6.54 (m, 0.5H), 6.55-6.56 (m 0.5H), 7.18 (brs, 0.5H), 7.22 (brs, 0.5H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 12.2, 14.3, 18.1, 18.9, 19.0, 22.8, 28.7, 29.1, 29.3, 29.5, 29.7, 29.8, 32.0, 37.3, 58.7, 58.9, 72.2, 72.3, 77.7, 77.9, 87.3, 141.5, 141.6, 162.6, 162.9 ppm
【実施例0092】
2-(1-ヒドロキシトリデク-2-イン-1-イル)-4-(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-2-エン-1オンの製造
酢酸アンモニウム(830 mg、10.8 mmol) を水(1.5 mL)に溶解させ、化合物7(200 mg、0.431 mmol)のTHF溶液に室温で加えた。次いで、三塩化チタン溶液(2.66 mL)を室温で加えた後、30分間60℃で加熱した。水を加え、反応を停止させた後、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物8(39.7 mg、41%)及びepi-8 (26.1 mg、27%) をそれぞれ得た。
化合物8:1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.05-1.19 (m, 21H), 1.27-1.40 (m, 14H), 1.50-1.57 (m, 2H), 2.26 (td, J = 2.0, 7.1 Hz, 2H), 2.46 (dd, J = 2.1, 18.3, 1H), 2.85-2.91 (m, 2H), 3.36 (brs, 0.5H), 5.03-5.06 (m, 1H), 5.21-5.22 (m, 1H), 7.43 (q, J =3.4 Hz, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 12.2, 14.3, 18.02, 18.05, 18.9, 22.8, 28.6, 29.0, 29.3, 29.4, 29.6, 29.7, 32.0, 46.8, 57.8, 68.8, 87.7, 145.4, 168.6, 204.9 ppm
化合物epi-8:1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.87 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.05-1.18 (m, 21H), 1.26-1.39 (m, 14H), 1.48-1.54 (m, 2H), 2.25 (dt, J = 2.0, 7.1 Hz, 2H), 2.43 (dd, J = 2.1, 18.3 Hz, 1H), 2.80 (dd, J = 5.8, 18.3 Hz, 1H), 3.05 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 5.02-5.05 (m, 1H), 5.26 (brs, 1H), 7.43 (q, J =3.5 Hz, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 12.1, 14.3, 18.02, 18.04, 18.9, 22.8, 28.6, 29.0, 29.3, 29.5, 29.7, 29.8, 32.0, 46.8, 58.1, 68.9, 87.7, 145.1, 168.9, 205.4 ppm
【実施例0093】
2,3-ジヒドロキシ-2-(1-ヒドロキシトリデク-2-イン-1-イル)-4-(トリイソプロピル)オキシ)シクロペンタ-1-オンの製造
オスミウム(VI)酸カリウム二水和物(2.3 mg、6.13 μmol)とN-メチルモルホリン N-オキシド(42.8 mg、0.306 mmol)を化合物8(55 mg、4.92 mmol)のテトラヒドロフラン-水の混合溶液に加え、40℃で3.5時間半攪拌した。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物9(24.3 mg、41%)を淡黄色の油状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.04-1.20 (m, 21H), 1.22-1.37 (m, 14H), 1.46-1.52 (m, 2H), 2.21 (dt, J = 2.0, 7.1 Hz, 2H), 2.44 (ddd, J = 1.0, 3.7, 20.6 Hz, 1H), 2.58 (brs, 1H), 2.85 (dd, J = 7.4, 19.6 Hz, 1H), 3.34 (brs, 1H), 3.72 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 4.35 (d, J = 1.9 Hz), 1H), 4.45-4.48 (m, 1H), 4.55 (d, J = 9.8 Hz, 1H) ppm
【実施例0094】
ハイグロホロンB12の製造
10%パラジウム/炭素(1.7 mg)を化合物9(16.8 mg、0.0348 mmol)のメタノール溶液に加え、水素ガス雰囲気下、室温で5.5時間攪拌した。反応終了後、セライトろ過により得られた濾液を減圧留去し、化合物10の粗生成物を得た。粗生成物10のエタノールに1M塩酸水溶液を加え、90℃で30分間加熱還流した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ハイグロホロンB12(6.7 mg、63%、2工程)を白色個体として得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3H), 1.25-1.36 (m, 20H), 1.52-1.62 (m, 2H), 2.07 (d, J = 8.3, 1H), 2.94 (d, J = 7.3, 1H), 3.58 (s, 1H), 3.77 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 4.72 (ddd, J = 1.4, 2.2, 7.3 Hz, 1H), 6.30 (dd, J = 1.3, 6.1 Hz, 1H), 7.64 (dd, J = 2.3, 6.1 Hz, 1H) ppm; 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 14.3, 22.8, 26.3, 29.5, 29.6, 29.67, 29.7, 29.77, 29.8, 31.4, 32.1, 71.6, 73.5, 76.0, 133.7, 163.7, 207.5 ppm
また、得られた各データは非特許文献2と一致した。さらに光学活性体であった場合、旋光度は単離した天然物と良い一致を示した。[α]D25 = +23.0 (c= 0.10 in MeOH), [ref.3] [α]D27=+20.7 (c = 0.135, MeOH)]
【実施例0095】
ハイグロホロンB12-アルキンの製造
化合物9(8.0 mg)のエタノールに1M塩酸水溶液を加え、90℃で30分間加熱還流した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ハイグロホロンB12-アルキン(3.2 mg、63%、2工程)を白色アモルファス状物質として得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.25-1.31 (m, 15H), 1.41-1.46 (m, 2H), 2.16 (dt, J = 2.0, 7.1 Hz, 1H), 2.88 (d, J = 7.9, 1H), 2.91 (d, J = 8.8, 1H), 3.83 (s, 1H), 4.55 (dt, J = 1.9, 8.8 Hz, 1H), 4.85 (dt, J = 1.7, 7.6 Hz, 1H), 6.31 (dd, J = 1.5, 6.1 Hz, 1H), 7.64 (dd, J = 2.2, 6.1 Hz, 1H) ppm

芳香族を有するハイグロホロンの製造
【実施例0096】
(E)-2-[ヒドロキシ(フェニル)メチル]-4-[トリイソプロピルシリル(オキシ)]-シクロペンタ-2-エン-1-オン-オキシムの製造
フェニルマグネシウムブロミド(3.0M THF溶液、61 μL、0.182 mmol) を化合物5(50 mg, 0.121 mmol)の2-メチルテトラヒドロフラン溶液に加え、アルゴン雰囲気、-20℃で1.5時間攪拌した。飽和ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物10を精製せずに用いた。粗生成物10のアセトニトリル溶液にスカンジウムトリフラート(3.0 mg、6.1 μmol)と水(44 μL、2.42 mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。飽和塩化炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応を停止させた。酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物11(31.6 mg、70%、2工程)を淡黄色のあめ状物質で得た。
低極性11:1H NMR (400 Mz, CDCl3)δ 0.89-1.13 (m, 21H), 2.58 (dd, J = 2.1, 18.2 Hz, 1H), 3.16 (dd, J = 6.6, 18.3 Hz, 1H), 3.43 (brs, 1H), 4.95-4.99 (m, 1H), 5.53 (s, 1H), 6.22-6.23 (m, 1H), 7.28-7.42 (m 6H) ppm;
高極性11:1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.86-1.12 (m, 21H), 2.60 (dd, J = 2.2, 18.2 Hz, 1H), 3.19 (dd, J = 6.5, 18.3 Hz, 1H), 3.62 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.94-4.97 (m, 1H), 5.59 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 6.08-6.09 (m, 1H), 7.0 (brs, 1H), 7.30-7.42 (m 5H) ppm.
【実施例0097】
2-[ヒドロキシ(フェニル)メチル]-4-[トリイソプロピル(オキシ)]-シクロペンタ-2-エン-1オンの製造
酢酸アンモニウム(605 mg、7.85 mmol) を水(0.8 mL)に溶解させ、化合物11(118 mg、0.314 mmol)のTHF溶液に室温で加えた。次いで、三塩化チタン溶液(1.9 mL) を室温で加えた後、30分間60℃で加熱した。水を加え、反応を停止させた後、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を飽和水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物12(40.8 mg、36%)とその異性体12(21.7 mg、19%) をそれぞれ得た。
化合物12:1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ1.02-1.12 (m, 21H), 2.41 (dd, J = 2.1, 18.4 Hz, 1H), 2.81 (dd, J = 5.9, 18.4 Hz, 1H), 3.01 (d, J = 3.9 Hz, 1H), 4.98-5.02 (m, 1H), 5.55 (brs, 1H), 7.17-7.18 (m, 1H), 7.30-7.41 (m 5H) ppm.
異性体12:1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ1.01-1.15 (m, 21H), 2.39 (dd, J = 2.1, 18.4 Hz, 1H), 2.86 (dd, J = 5.9, 18.4 Hz, 1H), 3.23 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.89-5.00 (m, 1H), 5.59 (brs, 1H), 7.07-7.08 (m, 1H), 7.31-7.41 (m 5H) ppm.
【実施例0098】
1,2-ジヒドロキシ-5-オキシ-3-[(トリイソプロピルシリル)オキシシクロペンチル](フェニル)メチルアセテートの製造
化合物12(21 mg、0.0582 mmol)のCH2Cl2溶液に、無水酢酸(11 μL、0.116 mmol)、ピリジン(14 μL、0.175 mmol)、DMAP(0.7 mg)を室温で加えた後、室温で1時間攪拌した。反応溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物13(15.1 mg)得た。その後、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物(0.7 mg、1.88 μmol)とN-メチルモルホリン N-オキシド(8.8 mg、0.0750 mmol) を化合物13(15.1 mg、0.0375 mmol)のテトラヒドロフラン-水の混合溶液に加え、3時間加熱還流した。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、化合物14(8.9 mg、54%)を淡黄色の油状物質で得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ1.08-1.27 (m, 21H), 2.05 (s, 3H), 2.43, (s, 1H), 2.80-2.84 (m, 2H), 3.39 (s, 1H), 3.83 (s, 1H), 4.44-4.46 (m, 1H), 6.53 (s, 1H), 7.34-7.36 (m, 2H), 7.53-7.56 (m 3H) ppm.
【試験例】
【0099】
【試験例1】
【0100】
MIC試験(高濃度)
臨床検査標準協会(CLSI)のブロス微量希釈法に示す方法またはこれに準じた方法(Tetrahedron Lett., 2019, 60, 1375-1378)により6つの標準菌種に対する各サンプルの抗菌活性を測定した。測定濃度は2~256 μg/mLであった。陽性対照としてゲンタシンを用いた。その結果を以下に示す。
表1

上記表1に示したように本発明の化合物(HB12-アルキン体)は、HB12-ラセミ多および光学活性体より、優れた抗菌作用を有することは判明した。
【試験例2】
【0101】
MIC試験(低濃度)
臨床検査標準協会(CLSI)のブロス微量希釈法に示す方法またはこれに準じた方法(Tetrahedron Lett., 2019, 60, 1375-1378)により、2つの標準菌種に対する各サンプルの抗菌活性を測定した。測定濃度は0.25~16 μg/mLであった。陽性対照としてゲンタシンを用いた。その結果を以下に示す。
表2
上記表2に示したように本発明の化合物(HB12-アルキン体)は、HB12-光学活性体より、優れた抗菌作用を有することは判明した。