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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053445
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/02 20060101AFI20230406BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230406BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230406BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20230406BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230406BHJP
【FI】
B60K1/02
H02M7/48 Z
H02K7/116
B60L9/18 J
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162479
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 剛
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 公伸
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩慶
(72)【発明者】
【氏名】大野 大
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
5H607
5H770
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB18
3D235BB20
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD19
3D235FF03
3D235FF07
3D235FF34
3D235FF43
3D235HH02
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA06
5H125BB00
5H125FF01
5H125FF03
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC07
5H607DD03
5H607DD08
5H607EE34
5H607EE36
5H770AA21
5H770BA01
5H770QA06
5H770QA27
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】車両駆動装置に関し、簡素な構成で車両搭載性を改善する。
【解決手段】開示の車両駆動装置10は、モータハウジング11,12とギヤボックスハウジング13とインバータケース14とPN線9とを備える。モータハウジング11,12は、バッテリの電力で車両の左右輪を駆動する左モータ1及び右モータ2の外装をなす。ギヤボックスハウジング13は、モータ1,2のトルクを増幅して左右輪に伝達するギヤボックス3を内蔵し、モータハウジング11,12の間に挟装されるとともに、モータハウジング11,12に対して前後方向にオフセットして配置される。インバータケース14は、一対の半導体モジュール6,7を内蔵し、モータハウジング11,12の上方に配置される。PN線9は、バッテリと半導体モジュール6,7との間を接続し、第一空間41を通るようにインバータケース14の下面側から接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力で車両の左右輪を駆動する左モータ及び右モータの外装をなす左右のモータハウジングと、
前記左モータ及び前記右モータのトルクを増幅して前記左右輪に伝達するギヤボックスを内蔵し、前記左右のモータハウジングの間に挟装されるとともに、前記左右のモータハウジングに対して前後方向にオフセットして配置されるギヤボックスハウジングと、
直流電力を交流電力に変換して前記左モータ及び前記右モータに給電する一対の半導体モジュールを内蔵し、前記左右のモータハウジングの上方に配置されるインバータケースと、
前記バッテリと前記半導体モジュールとの間を接続し、前記左右のモータハウジングと前記ギヤボックスハウジングとで囲まれた前後方向に凸状の第一空間を通るように前記インバータケースの下面側から接続されるPN線と、
を備えることを特徴とする、車両駆動装置。
【請求項2】
前記ギヤボックスハウジングは、前記左右のモータハウジングに対して下方にオフセットして配置され、
前記インバータケースは、前記左右のモータハウジングと前記ギヤボックスハウジングとで囲まれた下方に凸状の第二空間に配置され、
前記PN線は、前記インバータケースの下面側に接続されるとともに、前記左右のモータハウジングを基準として前記ギヤボックスハウジングとは前後方向に反対側となる位置を通って下方に向けて配索される
ことを特徴とする、請求項1記載の車両駆動装置。
【請求項3】
サスペンションを介して前記車両の左右輪を支持するとともに、前記ギヤボックスハウジング及び前記左右のモータハウジングが上方に取り付けられるサスペンションクロスメンバを備え、
前記PN線は、前記サスペンションクロスメンバの下端部よりも上方を通るように配索される
ことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記インバータケースよりも後方に配置され、前記バッテリからの電力を中継して前記PN線を介して前記半導体モジュールに供給するジャンクションボックスを備え、
前記ギヤボックスハウジングは、前記左右のモータハウジングに対して前方かつ下方にオフセットして配置され、
前記PN線は、前記インバータケースの後方の下面側に接続され、前記ジャンクションボックスに接続される
ことを特徴とする請求項2または3記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記インバータケースが、前記半導体モジュールの下方に環状に形成されるフェライトコアを内蔵し、
前記PN線は、下面視において前記フェライトコアを避けた位置に接続される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの電力で車両の左右輪を駆動する車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つのモータ(電動機)で車両の左右輪を駆動する車両駆動装置が知られている。例えば、左右輪の各々に個別のモータを接続し、左右輪を互いに独立して駆動できるようにしたものが提案されている。このような車両駆動装置では、左右のモータの駆動力を相違させることで、左右輪に回転数差やトルク差を生じさせることができる。これにより、車両の旋回性能や旋回時の車体安定性が改善される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-184523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両駆動装置には、交流モータの回転状態を制御するためのインバータが内蔵される。車両に搭載されるバッテリの直流電力は、インバータで交流電力に変換された上で左右のモータへと供給される。また、バッテリからインバータへと供給される電気が流れるPN線(給電線)は、例えばインバータの上面や後面から挿入され、インバータ内部でバスバーに対して締結固定される。それゆえ、インバータの車両前後方向についての寸法が大きくなりやすく、車両搭載性を改善しにくいという課題がある。また、車両駆動装置の周囲にサスペンション装置やその他の構造(例えば、サスペンションクロスメンバやスタビライザ等)が配置される場合には、レイアウトの制約により、インバータの上面や後面にPN線を接続できないこともある。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成で車両搭載性を改善できるようにした車両駆動装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の車両駆動装置は、バッテリの電力で車両の左右輪を駆動する左モータ及び右モータの外装をなす左右のモータハウジングと、前記左モータ及び前記右モータのトルクを増幅して前記左右輪に伝達するギヤボックスを内蔵し、前記左右のモータハウジングの間に挟装されるとともに、前記左右のモータハウジングに対して前後方向にオフセットして配置されるギヤボックスハウジングと、直流電力を交流電力に変換して前記左モータ及び前記右モータに給電する一対の半導体モジュールを内蔵し、前記左右のモータハウジングの上方に配置されるインバータケースと、前記バッテリと前記半導体モジュールとの間を接続し、前記左右のモータハウジングと前記ギヤボックスハウジングとで囲まれた前後方向に凸状の第一空間を通るように前記インバータケースの下面側から接続されるPN線と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の車両駆動装置によれば、簡素な構成で車両搭載性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例としての車両駆動装置の模式的な分解斜視図。
図2図1に示す車両駆動装置の左側面図。
図3図1に示す車両駆動装置の内部構造を説明するための断面図。
図4図1に示す車両駆動装置のインバータを説明するための斜視図。
図5】(A)~(C)は、図4に示すインバータの三面図。
図6図4に示すインバータの内部構造を説明するための分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
図1図6は、本適用例(実施形態)にかかる車両駆動装置10の構成を説明するための図である。図中の前後,左右,上下方向は、車両駆動装置10が搭載される車両の運転者を基準として定められる方向を表す。図1に示すように、車両駆動装置10には、左モータ1,右モータ2,ギヤボックス3,インバータ4が設けられる。左モータ1及び右モータ2は、車両に搭載されるバッテリの電力を受けて車両の左右輪を駆動する電動機である。
【0010】
左モータ1は、少なくとも左輪軸に繋がる動力伝達経路に接続される。同様に、右モータ2は、少なくとも右輪軸に繋がる動力伝達経路に接続される。左モータ1及び右モータ2は、他の駆動用モータやエンジンが搭載される電気自動車やハイブリッド自動車においては、少なくとも左右輪の駆動力や制動力を増減させることで旋回力を発生させるヨーモーメント生成源として機能する。また、他の駆動用モータが搭載されない電気自動車においては、上記の機能に加えて、車両の駆動源としての機能を併せ持つ。
【0011】
左モータ1及び右モータ2は、内部にステータ,ロータ,モータ軸等の電動機要素を内蔵した構造を持つ。これらの要素は、図3に示すように、各モータ1,2の外装をなす左右のモータハウジング11,12(左モータハウジング11,右モータハウジング12)の中に収容される。ステータは、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心にコイルを巻き付けた構造を持ち、モータハウジング11,12に固定される固定子である。ロータは、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心に永久磁石を内挿した円筒状の回転子であり、ステータの中心軸と同心の状態でその内側に遊挿されて軸状のモータ軸に固定される。ステータに通電される交流電力の周波数を変更することで、ステータの内側における磁界の回転速度が変化し、ロータ及びモータ軸の角速度が変更される。モータ軸の一端は、ギヤボックス3に接続される。
【0012】
ギヤボックス3は、左右のモータハウジング11,12の間に挟装される駆動力伝達装置である。このギヤボックス3は、外装をなすギヤボックスハウジング13とこれに内蔵される歯車機構とを有する。歯車機構は、左モータ1及び右モータ2のトルクを増幅して左右輪に伝達する機構である。また、歯車機構には、左輪軸と右輪軸との間にトルク差を生じさせるための機構(例えば差動歯車機構や遊星歯車機構など)が含まれる。
【0013】
本実施例のギヤボックスハウジング13は、左右のモータハウジング11,12に対して前後方向かつ下方にオフセットして配置される。具体的に表現すれば、図2に示すように、左モータ1及び右モータ2の回転軸Cを基準として、側面視でギヤボックス3が車両前方かつ下方に偏った位置に配置されるように、左右のモータハウジング11,12とギヤボックスハウジング13との位置関係が設定される。このようなレイアウトにより、左右のモータハウジング11,12の間には、前後方向かつ下方にへこんだ盆地状の凹部8が形成される。図3に示すように、本実施例の車両駆動装置10では、この凹部8を利用して凹部8の内側にインバータ4が配設される。
【0014】
インバータ4は、直流回路の電力(直流電力)とモータ1,2側の交流回路の電力(交流電力)とを相互に変換する変換器(DC-ACインバータ)である。このインバータ4は、直流電力を交流電力に変換して左モータ1と右モータ2との双方に給電する機能を持つ。インバータ4の外装をなすインバータケース14の内部には、コンデンサ5と一対の半導体モジュール6,7(左半導体モジュール6及び右半導体モジュール7)とが設けられる。インバータケース14は、左右のモータハウジング11,12の上方(左右のモータハウジング11,12とギヤボックスハウジング13とで囲まれた凹部8)に配置され、左右のモータハウジング11,12に対して固定される。また、インバータケース14は、コンデンサ5や半導体モジュール6,7の上面側を覆う形状のインバータ上ケース15と、下面側を覆う形状のインバータ下ケース16とを組み合わせて形成される。
【0015】
ここで、凹部8のうち、側面側から見てモータハウジング11,12に対して前後方向に隣接する空間を第一空間41と呼ぶ。また、左右のモータハウジング11,12とギヤボックスハウジング13とで囲まれる空間のうち、側面側から見てモータハウジング11,12の上方に隣接する空間を第二空間42と呼ぶ。これらの第一空間41及び第二空間42を、図2中に二点鎖線で示す。第一空間41は、その前面側または後面側が前後方向に突出した形状(凸状)に形成される。また、第二空間42は、その下面側が下方に突出した形状(凸状)に形成される。インバータケース14は、第二空間42に配置される。
【0016】
コンデンサ5は、モータ1,2に供給される電力を平滑化するための電子部品である。電流制御型のインバータにおいては、半導体モジュール6,7で変換された交流電力の給電ラインにコンデンサ5が介装される。また、電圧制御型のインバータにおいては、直流電力の入力側にコンデンサ5が介装される。コンデンサ5は、言わば一種のフィルターとして機能して、モータ1,2に供給される電流を安定させる役割を担う。
【0017】
半導体モジュール6,7は、基板(電子回路用基板)上に複数のスイッチング素子やダイオードなどを含む三相ブリッジ回路を形成してなるパワーモジュールである。各スイッチング素子の接続状態を断続的に切り替えることで、直流電力が三相の交流電力に変換される。スイッチング素子には、サイリスタ,IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子が用いられる。一方の半導体モジュール6で生成された交流電力は左モータ1に給電され、他方の半導体モジュール7で生成された交流電力は右モータ2に給電される。
【0018】
図1図2に示すように、インバータ上ケース15の中央部(前後方向の中央)には、上方に向かって膨出した形状の第一膨出部31が形成される。コンデンサ5は、第一膨出部31の下方側の内側に取り付けられ、インバータ上ケース15から吊り下げられた状態になるように固定される。また、第一膨出部31よりも車両後方には第二膨出部32が設けられ、第一膨出部31よりも車両前方には第三膨出部33が設けられる。半導体モジュール6,7についても、コンデンサ5と同様に、膨出部32,33の下方側の内側に取り付けられ、インバータ上ケース15から吊り下げられた状態になるように固定される。
【0019】
図2図4に示すように、バッテリと半導体モジュール6,7との間を接続する給電用のPN線9は、第一空間41を通るようにインバータケース14の下面側から接続される。このPN線9とインバータケース14との接続箇所は、ギヤボックスハウジング13の後方であって左右のモータハウジング11,12に挟まれた空間に配置される。PN線9は、インバータケース14の下面側に接続されるとともに、左右のモータハウジング11,12を基準としてギヤボックスハウジング13とは前後方向に反対側となる位置を通って下方に向けて配索される。
【0020】
本実施例では、図2に示すように、ジャンクションボックス30から延出したPN線9が、サスペンションクロスメンバ29(サスクロス構造部材)を避けて配索される。ジャンクションボックス30は、バッテリからの電力を中継してPN線9を介して半導体モジュール6,7に供給する装置であり、インバータケース14よりも後方に配置される。PN線9は、インバータケース14の後方の下面側に接続され、ジャンクションボックス30に接続される。
【0021】
サスペンションクロスメンバ29は、サスペンションを介して車両の左右輪を支持する部材である。ギヤボックスハウジング13及び左右のモータハウジング11,12は、サスペンションクロスメンバ29の上方に取り付けられる。また、PN線9は、サスペンションクロスメンバ29の下端部よりも上方を通過するように配索される。このように、インバータケース14の下面側にPN線9を接続することで、凹部8のスペースが有効活用され、車両駆動装置10の全体形状がコンパクトになる。また、車両後方の一方向からPN線9の組付けを実施できることから、PN線9の接続にかかる作業性が大幅に改善される。
【0022】
図5(A)~(C)はインバータ4の内部構造を示す三面図であり、図6はインバータ下ケース16が取り外されたインバータ4を下方から斜め上方に見上げた状態を示す分解斜視図である。インバータケース14の中には、フェライトコア17と樹脂プレート18と複数のバスバー20とコントロール基板25と樹脂部材26とが設けられる。フェライトコア17は、インバータ4のノイズ対策として用いられる部品であり、環状(ドーナツ型)に形成されたセラミックの磁性体である。図5(B),(C)に示すように、フェライトコア17は左半導体モジュール6の下方に配置される。
【0023】
樹脂プレート18は、フェライトコア17と左半導体モジュール6との間に配置される樹脂製の板状部材であり、インバータ上ケース15に対して吊り下げ固定される。この樹脂プレート18には、フェライトコア17の孔に対応する大きさの開口部19が設けられる。また、樹脂プレート18の内部には、ノイズの伝播を抑制する磁性シートで形成されたシールド層が設けられる。これにより、例えば左半導体モジュール6で発生した電磁波が樹脂プレート18の下方側へと波及しにくくなり、コントロール基板25への電磁干渉が抑制される。なお、コントロール基板25は、半導体モジュール6,7の制御基板である。
【0024】
バスバー20は、大電流を効率よく伝えるための導体棒であり、棒状や板状の金属を配設位置に適合するように屈曲させた形状に形成される。このバスバー20は、フェライトコア17及び開口部19の内部を通るように配索される。バスバー20の一端は、図5(C)に示すように、下面視においてフェライトコア17を避けた位置でPN線9に接続される。また、バスバー20の他端は、半導体モジュール6,7に接続される。
【0025】
樹脂部材26は、フェライトコア17とバスバー20と半導体モジュール6,7のコントロール基板25とを保持する樹脂製の部材である。図6に示すように、フェライトコア17の直下方に位置する箱状部34は他の部分よりも下方にへこんだ形状であり、フェライトコア17の前後に段差が形成される。この段差を利用して、コントロール基板25がフェライトコア17の前方で樹脂部材26の下方に吊り下げ固定される。コントロール基板25は、樹脂部材26の板面のうち、半導体モジュール6,7が位置する上面側とは反対側の下面側に配置される。また、樹脂部材26の内部には、樹脂プレート18と同様に、ノイズの伝播を抑制する磁性シートで形成されたシールド層が設けられる。これにより、コントロール基板25への電磁干渉がさらに抑制される。
【0026】
箱状部34の下面には、フェライトコア17の孔に対応する大きさの貫通孔27が設けられる。この貫通孔27を通って、バスバー20がフェライトコア17や開口部19の内部を貫通するように設けられる。また、箱状部34における車両前方側の側面には、作業孔28が設けられる。作業孔28は、バスバー20と左半導体モジュール6との接続箇所に設けられる締結具を締め付ける際に、工具を挿入するための開口部である。
【0027】
図6中に示すバスバー20には、第一バスバー21,第二バスバー22,第三バスバー23,第四バスバー24が一対ずつ含まれている。第一バスバー21は、締結具を介してPN線9に接続され、箱状部34の下面と後方側面とに沿って配索される。第二バスバー22は、箱状部34の下面側において第一バスバー21に接続されるとともに、フェライトコア17の孔を通って左半導体モジュール6に接続される。左半導体モジュール6は、第一バスバー21及び第二バスバー22を介してPN線9に接続され、バッテリの電力を供給される。
【0028】
第三バスバー23は、一端が左半導体モジュール6に対して締結具を介して共締めされるとともに、他端がコンデンサ5に接続される。第四バスバー24は、一端が右半導体モジュール7に接続され、他端がコンデンサ5に接続される。コンデンサ5の内部では、第三バスバー23と第四バスバー24とが電気的に接続される。右半導体モジュール7は、バスバー21~24だけでなくコンデンサ5を介してPN線9に接続され、バッテリの電力を供給される。
【0029】
[2.作用,効果]
(1)上記の車両駆動装置10では、図2に示すように、ジャンクションボックス30から延びるPN線9が第一空間41を通るようにインバータケース14の下面側から接続される。このような構造により、例えばインバータケース14の上面や後面にPN線9が接続される構造と比較して、インバータ4の前後方向の寸法や上下方向の寸法を短縮することができ、インバータ4の全体形状をコンパクトにすることができる。また、凹部8のうち、ギヤボックスハウジング13よりも後方側のスペースを有効活用することができるため、車両駆動装置10を小型化することができる。加えて、PN線9の周囲が左右のモータハウジング11,12とギヤボックスハウジング13とで囲まれるため、PN線9の保護性を高めることができる。さらに、車両後方の一方向からPN線9の組付けを実施できることから、PN線9の接続にかかる作業性を大幅に改善することができる。したがって、上記の車両駆動装置10によれば、簡素な構成で車両搭載性を改善することができる。
【0030】
(2)上記の車両駆動装置10では、図2に示すように、ギヤボックスハウジング13が左右のモータハウジング11,12に対して下方にオフセットして配置される。また、インバータケース14は、下方に凸状の第二空間42に配置される。これにより、車両駆動装置10の上下方向の寸法を小さくできる。また、インバータケース14の下面側に接続されるPN線9は、左右のモータハウジング11,12を基準としてギヤボックスハウジング13とは前後方向に反対側となる位置を通って下方に向けて配索される。これにより、効率的にデッドスペース(図2中の後方下側の空間)を利用でき、車両駆動装置10を小型化することができる。
【0031】
(3)上記の車両駆動装置10では、PN線9がサスペンションクロスメンバ29の下端部よりも上方を通るように配索される。このような構成により、サスペンション機能を阻害することなくPN線9を配索できるとともに、PN線9の周囲をサスペンションクロスメンバ29で保護することができる。
(4)上記の車両駆動装置10では、PN線9がインバータケース14の後方の下面側に接続され、ジャンクションボックス30に接続される。ジャンクションボックス30は、インバータケース14よりも後方の比較的近い位置に配置される。このような構成により、PN線9と周囲の構造体との干渉を避けつつ、PN線9の配索レイアウトをシンプルにすることができ、PN線9の接続にかかる作業性を改善することができる。
【0032】
(5)上記の車両駆動装置10では、図5(C)に示すように、フェライトコア17を避けた位置でPN線9がインバータケース14に接続される。これにより、側面視においてフェライトコア17と同程度の高さとなる位置で、PN線9とバスバー20とを接続することができるようになり、PN線9を全体的に上方へ移動させることができる。例えば、図2に示すように、車両駆動装置10の下方に干渉物(サスペンションクロスメンバ29)が存在する場合であっても、無理なくPN線9を配索することができる。したがって、PN線9や車両駆動装置10やその周辺に配置される各種装置(例えばサスペンションクロスメンバ29やジャンクションボックス30等)に関する、レイアウトの自由度を高めることができる。
【0033】
[3.変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0034】
例えば、上述の実施例ではモータ1,2の回転軸Cを基準として、側面視でギヤボックス3が車両前方かつ下方に偏った位置に配置された車両駆動装置10を例示したが、ギヤボックス3を車両後方かつ下方にオフセットさせてもよい。少なくとも、ギヤボックスハウジング13を左右のモータハウジング11,12に対して下方にオフセットさせることで、凹部8を利用したインバータケース14の配置が容易となり、その下面側にPN線9を接続しやすくなる。したがって、上記の実施例と同様の作用,効果を獲得することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,2 モータ
3 ギヤボックス
4 インバータ
5 コンデンサ
6,7 半導体モジュール
8 凹部
9 PN線
10 車両駆動装置
11,12 モータハウジング
13 ギヤボックスハウジング
14 インバータケース
15 インバータ上ケース
16 インバータ下ケース
17 フェライトコア
18 樹脂プレート
19 開口部
20 バスバー
21 第一バスバー
22 第二バスバー
23 第三バスバー
24 第四バスバー
25 コントロール基板
26 樹脂部材
27 貫通孔
28 作業孔
29 サスペンションクロスメンバ
30 ジャンクションボックス
31 第一膨出部
32 第二膨出部
33 第三膨出部
34 箱状部
41 第一空間
42 第二空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6